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虹の向こうに

17南・皐月・裂禾(桃):2011/02/20(日) 11:36:39 ID:SZxEcXWM


彼女は、俺の初恋の人だった。
けど、今は違う…もう、違う。




『幸せになって』






彼女は、とても綺麗な人だった。当時、中学生だった彼女。
――名前は、更科音。
母さんが音がアルバイトしたいって言って来たから雇ってあげたと言っていた。


俺は音のことが好きだ。だからよく一緒に居た。
学校から帰ると必ず「おかえり」と言って迎えてくれた。
たまに見る横顔が好きだった。空を見る顔とか、考えるときの顔とか全部好き。



「俺、いつか強くなる。そんで音を守る。約束な!!」
「そっか、それじゃあ楽しみしとかないとね。裂禾、頑張って」


そう言ったら頭を撫でてくれた。いつも子供扱いされて嫌だけけど、頭を撫でられるのは嫌いじゃない。







それから1年過ぎた。俺は高学年に進級した。それと同時に俺の中で何かが変化した。

1つは手の先から炎が出るようになった。知ってる…『アリス』って言うやつだ。
兄弟の雅兄や都姉はこの『アリス』というものを持ってるのが分かって『アリス学園』という所に行ってしまった。

そんなの、嫌だ。音と離れたくない。嫌だ。
だから、母さんたちには話さなかった。学園には行きたくない。



もう1つ変化があった。嗅覚、聴力、視力において去年よりよくなっていた。
前から良かったが、さらによくなったのだ。嗅覚は若干だが、視力と聴力においてはずば抜けてだ。
遠くの物がよく見える。遠くからの声もよく聴こえる。
母さんに聞こうかなと思ったが、途中からだんだん慣れていき、生活に害がないので気にしなくなった。

すぐに聞けば、あんなことにはならなかった。






満月の夜に、音と一緒に桜を見に行ったんだ…。
あぁ、綺麗だねって言おうとしたら黄金色に輝く満月が目に入って、経験したことの無いような激しい頭痛がした。
何が起こったのか分からない。


気がつけば、目の前が赤々としていた。周りの木々が燃えてて―――――音が倒れてて…音から血が流れていた。
俺が…やった?何故!?どうして?何で!!
腕が痛む。腕と手を見ると、爪が長く鋭く尖っていてその爪で自分自身の腕を引っ掻いていた。
体が震えだし、目尻から大粒の涙がボロボロとこぼれる。腕が痛いからじゃない…俺が、音を!音がっ!!
そのとき誰かに抱きしめられた。この匂い、すごく大好きな匂いだ。


「裂禾……ごめん、なさい。大河さん、に言われていたこと…忘れてた、私が悪い、の…
 『満月の日には絶対裂禾を外に出しては駄目』そう、言われていたのに…ごめんね、ごめんね」

音だった。傷だらけなのに、力を振り絞って俺を抱きしめてくれている。
だから俺も意識が朦朧とするなか力を振り絞って声を出す。



「お、と…ごめん。やく、そく…まもれなかっ…」



そこで―――意識が途切れてしまった。


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