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えばんふみ先生について語るスレ

9二雪:2010/07/11(日) 05:16:46 ID:eETmOAnY0

その頃、葉は自転車で学校の校門へ向かっていた。
次の目的地は、校門。
海辺で見付けた紙には、そう書いてあった。
夏休みの最中でも大きく開いている校門にたどり着くと、鉄の柵にはさっきと同じような紙が結び付けてある。
その中には、こんな言葉が書かれていた。

この門をくぐるのが。
毎日ユウウツだった。
だけど、たった1人だけ。
強引に教室まで引っぱってくれた。
本当は、それが。
とても嬉しかったの。

その次のメッセージに従って、葉が次に向かったのは裏庭。
そこにあった1本の木の枝には、次のような言葉の書かれた紙が結んであった。

クラスで大そうじした時。
クラスの中心になってる葉くんを見て。
カッコいいなって思ったんだよ。

紙に書かれている樹里の無邪気な文章を読んだ葉は、生まれて初めて“カッコいい”なんて言われて、少し照れる。
そして……。

さあ。
いよいよゴール間近です!

奥の森へ。

学校の奥にある小さな森は、誰もいなくて静かだった。
さぁ……と、気持ちのいい風が吹き抜けていく中、葉は何も言わずに黙って森の中を歩いて行く。

と、葉の目の前にある1本の木の幹に、1枚の変な貼り紙が。
その貼り紙には、「ゴール!!」と大きく書かれた文字と、
樹里が自分で書いたらしい、ふざけたVサインの絵。
そして、貼り紙の中央下には「↓」の記号。
その「↓」の記号が指し示す木の根元のくぼみには、葉の両手に収まるくらいの小箱がひとつ。
「……宝箱? 一体、何が入って――。」
葉が不審に思いながら箱のフタを開けると、中には4つに折りたたまれた紙が。
その紙に書かれていたのは……。

おめでとう。ゴールです!
疲れたでしょ?
ここまで付き合ってくれて、
本当にありがとう!

これを読んだ葉は、樹里のおどけた言葉使いに思わず拍子抜けした。
「……ゴールって……。」
いったい何のためにこんな……と、葉は柄にもなく笑ってしまいそうになる。
が、気を取り直して、その後に続く文章を読み始めると、葉の表情はみるみるうちに変わっていった。

「……バカな……! そんなバカなこと、あってたまるか!!」

読み終わった時、葉の顔は真っ青になっていた。心臓は今にも壊れそうなほど激しく鼓動し、足元はガクガク震えて、この場ですぐにも卒倒してしまいそうな感覚が葉を襲う。
その時、葉のポケットに入っていた携帯がけたたましく鳴った。
ビクッ。
突然の着信音に、葉は息が止まるほど驚く。が、それでも葉はできるだけ冷静を装いながら、携帯の受信ボタンを押した。
「……はい。」
葉がそう言った次の瞬間、葉の知らない大人の女性の声が早口に聞こえてきた。
『……もしもし? 夏目葉くん? 三神樹里の母です。』
「!? 三神のお母さん!? まさか……!」
樹里の母だと名乗る女性の声を聞いて、葉の心は激しく動揺した。女性の声には、まるで何かに追い詰められているような不安と危機感がこもっている。
『葉くん! お願い! 今すぐ中央病院の301号室まで来て!! でないと、あの子はもう……!!』
今にも泣き出しそうな、悲鳴にも近い女性の訴えを聞いた葉は、今の自分に残された気力を限界まで振りしぼって立ち上がると、校門へ向かって駆け出した。


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