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ベジーティアたんのみ女の子/シリアス

67星のお姫様の続き:2005/12/31(土) 12:39:03
な、何だってんだ?
しばらくぽかんとして、その場を動けなかった。
彼の表情はいつもの物悲しそうな、頼りないものとは違っていたし、
何よりその身を包んでいる雰囲気がガラっと変わってしまったように思えたのだ。
またしてもぽつんと部屋に残されてしまった。

ブロリーを追うべきか、ほうっておくべきか…と考えると、
そういえば「カカロット」と口にしていた。
知り合いだったのか?
でも何だか尋常じゃない感じがした、あいつがあんな顔をするなんて、と
気が付けばブロリーを追いかけていたのだ。

スカウターをつかえば間違いない、
と、彼の戦闘力を探してみる。

「何故…」

勇み足だった彼女の足が止まってしまう。
彼の戦闘力を探しても「該当者0人」と空しく表示されるだけだった。
「故障したのか?」
とスカウターを手にとってみた。
手に取るといつもと形が違う、そうだ、ターレスに新型をもらってそのまま…
「あいつめ、不良品を渡しやがったな、くそったれ!」
仕方ない、俺が先にそのカカロットとかいうのに会えばいいんだ、
と彼女は再び足を速めた。

68星のお姫様の続き:2005/12/31(土) 12:39:34
彼女がそこにたどり着くと、看守は驚いて気をつけの姿勢をとった。
「ここは、あなた様のような方が足を踏み入れるところでは…」
「うるさいぞ、俺も前科もちだ、知っているだろう?」
彼女がすごみをきかせると、看守はそれ以上何もいえない様子だった。
ここは他の星の捕虜や犯罪人を捕らえておく牢獄である。
母星の横に寄り添うように飛ぶ、小さな惑星まるごとが「牢獄」なのだ。
「バーダックのせがれでカカロットというガキがいるはずだ」
案内しろ、と彼女が言うと、看守はそれに大人しく従う。
「はい、変わった奴で…」
「牢獄」には薄暗く細く長い廊下があり、
その両脇に犯罪者が一人一人入れられている独房がある。
彼女がコツコツと音を立てて歩くと、
看守が「足音はなるべく立てないで下さい」と言う。
彼女が「何故だ?」と問う前に答えが聞こえてきた。
「あああああ、王よ、どうか慈悲を」だの、
「素晴しい王をたたえて賛美いたします」だの、
「惑星ベジータに栄光あれ!」だの、
聞きたくもない声が廊下じゅうに響く。
「誰も彼も王に許しを請うておるのです」
戦闘が生きがいの奴らをつないでおけば二日もたたずこうなります、
と看守が不気味な笑みを浮かべた。
「で、そのカカロットというのは…」
と彼女が言うと
「ここにおります」
と看守が一つの房の前に立った。
「中へ通せ、話がしたい」

69星のお姫様の続き:2005/12/31(土) 12:41:10
看守が引き止めるのを簡単に振り払って、
彼女はカカロットの前にたった。
バーダックのガキと聞いていたので、安易に小さな子供を想像していたのだが、
出で立ちは青年のようでどうやら自分と同年代のようだ。
「顔を上げろ」
と彼女が言うと、大人しく顔を上げる。
「驚いたな、まさにバーダックのガキの顔してやがる」
ラディッツは言われなければわからん顔をしていたのにな、
と彼女が独り言を言うと、その「カカロット」は
情けない顔で「なぁ、いつになったら、腹いっぱい飯が食えんだ?」
と、また顔を下げてしまう。
「腹がすいているのか、よし、何か食わせてやる」
彼女が言うと、それまでの顔が嘘のようにパァっと顔が明るくなった。
「俺について来い、カカロット」
彼女はカカロットをつないでいる鎖を解こうとした。
ふと、その手が止まる。
「そうだ、念のため…」
故障していると思われるスカウターで測るのも可笑しいが、念のためなのだ。
スカウターがピッと音をたててはじき出した数値は…
「たったの500…」
バーダックの血を受け継いでいるというのなら、
どんなすごい戦士なんだろうと思ったのだが…
そう思いながら、彼女はカカロットの鎖を再びはずしにかかった。

70星のお姫様の続き:2005/12/31(土) 12:41:39
「そんなにうまいか?カカロット」
「うん、うん、うげげ、げほっ」
がっついている時に馬鹿正直に答えたものだから、
のどにつかえたらしい。
彼女が背中をたたいてやると、
なみだ目を浮かべながら「サンキュー」
と言って、再び食べ物に夢中になった。

彼女は自分の体によくなじむ椅子に腰掛けて
ふう、とため息をついた。
ここは彼女の部屋で、へんちくりんな服を着た彼に似合う部屋ではない。
でも、他の部屋では人目につくので仕方なく、つれてきたのだ。
改めてその顔を見ると、一生懸命食べているせいもあるのか少し幼く見えた。
「カカロット、それを食い終えたら俺の質問に答えろよ」
彼女が言うと「うん」と素直に答える。
「その格好じゃ目立つだろうし、お前に服をやったほうがいいかもな」
彼女はカタログを広げた。
「背格好は、バーダックと同じくらいか、これでいいだろう」
おい!ナッパ!用意しろ!と彼女は全快して再び勝手に部屋の門番をしているナッパに言いつけた。
ナッパは扉の向こうからなみだを目にためて言う。
「姫様、俺が用意するんですかい?その間その男と二人っきりになっちまう」
「情けない声を出すな!だから負けたんだ、馬鹿、とっとと用意しろ!」
「ううう、どうかご無事で」
涙を拭きながらナッパは旅立った。

71星のお姫様の続き:2005/12/31(土) 12:42:12


「馬鹿な奴…」


彼女があきれていると、カカロットが遠慮なしにゲップをした。
「こ、この!下品な奴め!」
「はぁ〜腹いっぱいだ、オラもう食えねぇ」
叱る彼女におかまいなしでカカロットが満足そうに言う。
「おめぇ、いい奴だな、ありがとう」
にかっと笑うその顔は、彼女が見てきたどの男も見せたことのない顔だ。
「礼を言うよりも俺の質問に答えろよ」
「うん、何だ?」
「その前に…口の周りに沢山食べかすが付いてるぞ、何とかしろ」
「んー?うん」
言われてカカロットの舌が口の周りを一周した。
「とれた!」
誇らしげに言う。
「な、なんて汚い野郎なんだ、それに…」
今まで気がつかなかったのが不思議なくらい、
カカロットの体から異臭が漂ってきていた。
「お前、ろくに風呂にも入っていないんだろ?」

「風呂?なんだ?それ」

彼女がずっこけたのは言うまでもない。

72星のお姫様の続き:2005/12/31(土) 12:42:35
汚い男をいつも自分が使っている浴室に入れるとは、
と彼女は情けない気持ちでいっぱいになりながら湯を張った。
「おい、カカロット、服を脱いだらこっちへ来い!」
脱衣所にいる男を呼びつけると、素直に現れたのだが、彼女は絶句した。
「なななな何て格好してるんだ!前をかくせ、馬鹿野郎!!」
「うん?」
前も隠さず現れた男に、思わず目を覆う。
「こうか?」
と言うので振り返ると、タオルで自分の目を隠している。彼女は再び絶句した。

自分が見ないようにするしかないらしい。と彼女は覚悟を決めた。
「カカロットこの湯の中につかれ、肩までだ」
素直に言うことを聞くので、何とか風呂に入れてやることぐらいは我慢するしかない。
ばっちぃ男をこのまま自分の部屋においておくほうが不快なのだ。
「あのさ、さっきから言ってる『カカロット』って何だ?」
「お前の名前だろう?」
彼女が手にした洗髪剤で髪を洗ってやると、
染みる、と涙声を出した。目を閉じてろカカロット、という彼女の言葉に彼は言う。
「オラそんな名前じゃねぇよ、じいちゃんにもらった『孫悟空』って名前がある」
「ソンゴクウ?」

73星のお姫様の続き:2005/12/31(土) 12:43:00
やさしかったじいちゃんのこと。
形見の玉のこと。
一緒に戦う仲間がいたこと。
地球という星での暮らしを、カカロットは彼女に聞かせた。
「それにしてもどうして風呂に入らなかったんだ」
と聞くと、
「川でいっぱい泳ぐと匂いも汚れも取れた」
と原始的な答えが返ってきた。
そういえば、彼が身につけていた服もただの布切れのようで
サイヤ人が身に着けているようなプロテクターの役目も担うものではないようだ。

それを考えると、彼女は不思議で不思議でたまらなくなってくる。
戦闘力がたった500のこの脳みその足りない男が、
戦士2人を倒したというのだ。
防御に長けた服を着ていた訳でもない。
では、何かの武器で倒したとか…彼女が考えていると、
「なあ、おめぇけっこう強いだろ?いっぺん戦ってみてぇなぁ」
とカカロットが無邪気に言ってきた。
「さっきの扉にいた奴も結構強かったけどさ、おめぇの方が強いだろ?」
スカウターもなしで何故分かるんだ?と聞きたかったが
何故かくやしい気がして彼女はだまりこんだ。

74星のお姫様の続き:2005/12/31(土) 12:43:32
「カカロット、体は自分で洗えるよな?」
せっけんを含んでふわふわのスポンジを手渡す。
「うん、オラ、頑張る!」
そんな母と息子のような会話をして微笑んでしまったり。
目の前の男は確かに「年齢のわりに」は、幼い顔をしている。
だが「少年」という言葉はもうその肉体には似合わない。
「なぁ、オラまだおめぇの名前聞いてない」
腕をゴシゴシしながら尋ねてくる。
「ベジーティアだ」
彼女が教えると「ムツカシイ名前だなー」と。
「もう忘れちまった、えへへ」と。
青年であるのに、これはどうだろう。
大丈夫なんだろうか?と思ってしまった。

彼女は母性本能というものに目覚めているのに気が付いていない。

75星のお姫様の続き:2006/02/13(月) 23:05:53
時間が空いてしまって申し訳ない。
また少しずつ投下させてください。


「姫様!戻りましたぜ」
とナッパの声がする。
「おう、ずいぶん早いじゃないか」
彼女が部屋の扉まで戻ると、
ナッパが男物の下着と、戦闘服一式、それにスカウターをうやうやしく彼女に渡す。
「助かったぜ、礼を言うぞ、ナッパ」
「そ、そんな、へへへ」
ナッパの目がウルウルになった。嬉しいのか悲しいのかはっきりしない顔をして。
「カカロット、体は拭けたか?」
「まーだだよ、もうちっとかかる」
その会話にナッパは絶句した。彼女がいつもつかう洗髪剤の香りもする。
もしかして、もしかすっと、もしかして。
あの野郎を風呂に…。

「カカロット、着替えの服はここに置くぞ」
「うん、サンキュー」

ああああああああああああああああ、間違いねぇっ!
ナッパの苦悩は続く。


「なんだ、まだ濡れたままじゃないか」
そう言って彼女はカカロットの髪に手を伸ばし、丁寧に拭いてやる。
「しかも、服が前後ろ反対だぞ」
ついでにみだしなみも整えてやる。
「スカウターはこう、付けるんだ」
戦士の出来上がりだ、と彼女は言いながら、その男を見つめた。
ボロボロの服を着て、うなだれていた時とは別人のようだ。
バーダックが若い頃はこんな風だったのかもしれない、
と考えると何故だか鼓動が早くなった。

彼女は恋をしているのか?
それは彼女自身も知るところではない。

76スレ514@管理人:2006/02/13(月) 23:37:21
続き投下GJ!
ナッパ落ち着け誤解誤解!!

77花火志願の名無しさん:2006/02/17(金) 01:31:33
素晴らしい…!
しばらくこないうちにこんな良作が…!

頑張ってください!

78星のお姫様の続き:2006/06/24(土) 21:50:59
超がつくほどに久々になってスマソ

ナッパが初めて彼女に出会った時、彼女は彼の大きな両手の平に乗るほどの赤ん坊だった。
彼はその腕を認められ、王の傍にいるようになって久しいが、
あんなに目を細めて喜んだ王の顔は見たことがなかった。
若いころから伸ばした立派な髭のおかげだけではないが、
王のイメージと言えば、専ら「威厳」の二文字であるから、
その変貌ぶりと言ったら、笑い話になってもいいほどだった。
そんな王と一緒に独り身のナッパは自分に娘が出来たかのように喜んだ。
ナッパだけではない。全てのサイヤ人がその誕生を祝福した。
たった一人、産後、青白い顔をしていた王妃を除いては。

おしめを変えたことは流石に無いが、幼少の頃から今日その日まで、
彼女を親のような気持ちで見守ってきた。
彼女が軍に入ることを志願した時に、王に「娘をたのむ」と言われたから、
という理由だけではない。
王がそうした以上に、彼は彼女を甘やかした。
彼女が強気で少々わがままなのは、彼に責任があると言ってもいい。
事実、彼女は戦闘以外では彼に依存しっぱなしだ。

彼女に悪い虫がつこうとするものなら、影でこっそり威嚇していたナッパである。
この「カカロット」の存在は放っておくわけにはいかない。
しかし彼女が楽しそうにしている以上、口出しできる訳がなかった。

サイヤ人の女性に好みの異性のタイプを尋ねれば、十人が十人、口をそろえ、
「強い男」と返すだろう。容姿や性格などは、二の次である。
スカウターが示すカカロットの強さを見てナッパは自分を無理やり安心させることにした。
しかし、逆に考えればどうして彼女が
そんな男に世話を焼いてやるのかが不思議なのだが。

79星のお姫様の続き:2006/06/24(土) 21:51:32
「ナッパ、俺の話をちゃんと聞いていたか?!」
突然の彼女の大声にナッパは驚いた。
悶々としているうちに彼女が話しかけていたようである。
「す、すまねぇ…」
「ブロリーの奴がこいつを知っているみたいだったんだ」
「へえ、ブロリーが」
「知り合いかと思ったが、こいつはこの星のことは覚えているはずがない」
「そりゃそうだ、覚えてたらとっくに帰還してるだろうに」
カカロットを二人で見つめるが、不思議そうにこちらを見つめ返してくるだけだ。
「それに、さっきからブロリーの居所も分からないんだ」
彼女はターレスにもらった新型だといってよこしたスカウターはとっくに外し、
自分のスカウターを装着していたが、ブロリーの戦闘力は依然、見つからないままである。

80花火志願の名無しさん:2006/06/25(日) 00:18:55
キタデェ

81花火志願の名無しさん:2006/06/25(日) 13:04:09
キター!
ナッパさん素敵

82花火志願の名無しさん:2006/06/25(日) 18:16:16
ナッパハァハァ
このベジティめっちゃんこイイカワイイ
つか設定がすき

83花火志願の名無しさん:2006/07/27(木) 18:47:28
つ づ き! つ づ き!

84花火志願の名無しさん:2006/08/25(金) 00:47:28
続き…

85花火志願の名無しさん:2006/08/25(金) 00:47:37
続き…

86花火志願の名無しさん:2006/10/06(金) 20:28:17

魔人ブウとの戦いから帰還した悟空、ベジーティア、デンデ、サタン、犬、魔人ブウ。

全宇宙、現世、あの世、全てを救った戦い抜いた戦士たちは家族や仲間・・・帰りを待つ者たちがいる地球へと送り届けられた。その直前での地球で戦士達の帰りを待つものは、魔人ブウへの勝利を喜び合っていた。

「やっぱり、あの2人は凄いぜ!!」

顔に傷を持つ男が喜び、笑顔でそう言うと、全世界―――全宇宙を救った戦士の1人、戦いの途中に逆転の機転を思考し、見事その作戦で逆転勝利へと導いた女戦士の息子トランクスが満面の笑みで笑い、口を開いた。

「オレのママだもん!!ママは強いから当たり前だろー!!」

その息子の声に、その息子の父親であるブルマは微笑みを浮かべていた。

「なあ、ピッコロ・・・ベジーティアは地獄には落ちなかったってことなのか?」

「らしいな。多分閻魔がもしもの時のためにベジーティアの魂を残しておいたのだろう・・・そのおかげで助かった」

「帰って・・・くるかな?この地球に」

「きっと帰ってくるだろう」

ピッコロのその言葉に、ベジーティアの夫のブルマは嬉しくてたまらないといった笑みを浮かべた。

『早く・・・早く帰ってこい・・・』

『会いたい・・・』

そう思いながら、未だに騒ぐ仲間達を微笑を浮かべて見つめていた。

「パパ!」

急に息子に呼びかけられ、ブルマは息子に視線を移し、少し屈んだ。

「パパ・・・実はママが・・・ママが自爆する前にオレ、ママに抱きしめてもらったんだ」

そのトランクスの言葉に、ブルマは驚き、目を見開いた。ベジーティアがトランクスを抱きしめるどころか、抱いたこなど1度もなかったからだ。そのベジーティアがトランクスを抱きしめた・・・そのことに驚きを隠せないブルマ。だが、そのことに驚いているブルマは息子の更に続けられた言葉に青い瞳を揺らす。

「ママ・・・パパを大切にしろって・・・そう言ってたんだ・・・」

「ベジーティアが・・・。ママが・・・?」

「うん。・・・ママ、早く帰って来るといいね。オレ、遊園地連れてってもらうんだ!」

トランクスがそう嬉しそうに言い、悟天の元へと走って行く後ろ姿をブルマは見つめながら目を閉じた。

瞼の裏に見えるのはベジーティアと出会ったころから今までの事。

最初は、悟空達や地球を侵略しにきた最悪の敵だった。

87花火志願の名無しさん:2006/10/06(金) 20:44:43
そして、なめック星ではナメック星人を殺し、下手をすれば自分も殺されていたかもしれなかった。

地球で、家へと来る事を誘った。


最初は彼女の寂しそうな姿を見て、気になりだした。

次第に、彼女を目で追うようになった。

そして、その気持ちが恋だというのに気が付いた。

彼女の孤独を救うことは自分ではできないかもしれない。でも、一緒にいたかった。

真剣な思い、それにきっと彼女は応えてくれた。だから身体を許してくれた。

そして、トランクスが産まれた。

セルとの戦いが終わり、悟空は死に、もう戦いはやめると言い出した。

最初は驚いた。でも、トランクスを鍛えるうちに、元の彼女に戻り始めた。

戦うことを今までは止めはしなかったが、やはり心配だった。だから内心、戦いをやめると言い出した時はホッとした。

でも、やっぱり、戦っている彼女の事も好きだった。

トランクスを鍛える内、彼女らしさが戻って逆にホッとした。


幸せだった。


彼女が自爆をし、ブウを倒そうとしたあの日までは。

88花火志願の名無しさん:2006/10/06(金) 20:57:59
彼女が死んだと聞かされ、泣いた。

男だとか、人目を気にするだとか気にならなかった。

後から後から涙は溢れる一方だった。

ああ、こんなにも自分は彼女を愛してたんだ、そう思った。

そんなことはわかりきっていることだったが、改めてこんな形で気付かせなくってもいいじゃないか、そう思った。

確実に彼女は地獄へ落ちた。だから自分が死んでも彼女に会うことはできない。

最後に見た姿があんな姿だったなんて嫌だった…


だから、自分が生き返り、愛しい彼女の声を聞いたときは嬉しくて仕方なかった。

きっと、彼女と悟空ならブウを倒してくれる。そう信じていたから。

そしてその後、必ず自分と息子の元に帰って来てくれる・・・そんな思いがあった。


ブルマは笑みを浮かべたまま、溜息を漏らし、自らと同じ色の空を仰いだ。


そして・・・

神殿の騒ぎが先程の比ではなくなった。その原因・・・

ブルマは愛しい人を目にとめ、息が止まるようだった。

89花火志願の名無しさん:2006/10/06(金) 21:34:40

「悟空!!ベジーティア!!」

「悟空さ!!」

「ベジーティア!!」

「ママ!!」

仲間達が、救世主達の名を呼び、駆け寄る。

悟空の家族が、夫へと父親へと抱きつく。チチは泣いていた。
悟空は小さな息子を抱き上げている。これからは家族4人で暮らしていけるその喜び。嬉しくて仕方ないのだ。


「ママ!!」

トランクスが尊敬し、大好きな母親に飛びつく。母親―――ベジーティアはその息子が飛びついてきた行為を素直に抱きとめた。トランクスの目が少し潤んでいる・・・

「ベジーティア・・・」

ブルマは妻―――ベジーティアの名を呼ぶ。ベジーティアはブルマの瞳を真っ直ぐに見つめた。

「お帰り・・・ベジーティア」

ブルマはトランクスを抱きしめたままのベジーティアへと微笑みかけた。

『抱きしめたいのに・・・ずるいぞ、トランクス』

一瞬息子をジーっと見つめると、ベジーティアの横に立ち、今地球へと、自らの隣へと帰ってきた愛しい人の肩を抱きしめた。普段のベジーティアなら振り解かれるだろうが、今のベジーティアは振り解こうともしなかった。

ベジーティア自身、そのブルマの温かな手を肩に感じ、生きている実感を感じていた。

そして、皆が皆、勝利の喜びを分かち合い、皆は翌日C.Cへと集まることを約束し、各自家へと帰ることになった。


「あ、そうだ。ベジーティア!」

悟空はベジーティアの名を呼び、帰ろうとする3人を引き止めた。

「何だ・・・カカロット」

「おめぇのおかげでかてたんだ。ありがとな。それと、おめぇが生き返ってくれて良かった。じゃあ、またな!!」

「フン・・・」

そして2人は不敵に、だが壮絶な戦いを切り抜けた戦友として、笑い合い、家族を連れ、帰路へとついた。


ああ・・・やっと終ったのだ。厳しい戦いが・・・

90花火志願の名無しさん:2006/10/06(金) 23:13:53

ブウとの戦いが終わり、ベジーティアがブルマとトランクスの元へと帰ってきたその日。

帰って早々、戦いの汚れを落とすべく風呂へと入り、その後、家族で食事をとったベジーティア。家族の皆が笑顔で自分の帰りを迎えてくれている・・・ベジティアはこの世へと帰ってきたことを実感した。



その日の夜。

「疲れただろ、ベジーティア。」

「・・・」

返答はない。だが、ブルマはそんなことは気にしなかった。

「トランクス、凄く嬉しそうだった。やっぱりベジーティアの事大好きみたいだな。さっきまでお前にべったりだったからな。やっと寝たみたいだけど」

ブルマはベジーティアの腰掛けるソファーの横に座る。もう会えないと思っていた妻の隣へ。

「ベジーティア・・・もう死ぬな・・・俺達を置いて死ぬなよ・・・」

ブルマはそう言いながら自分よりかなり小さなベジーティアを強く抱きしめた。腕に抱いたそのぬくもり。もう失いたくない。

「・・・悪かった・・・」

ブルマは驚き、抱きしめたまま目を見開いた。

あやまった?あのベイーティアが?

「・・・オレは・・・昔の自分のオレに戻りたかった。でも・・・」

「戻れなかった・・・だろ?孫君から聞いた」

「・・・」

ベジーティアは頷き、ブルマの広い背へと手を回し、ブルマの体温、心臓の音を感じていた。

「それと、これはトランクスから聞いた。ベジーティア、お前、俺やトランクスや地球を守るために戦ってくれたんだろ?凄く嬉しかった」

「ブルマ・・・」

「でも、それと同じくらい悲しかった。俺たちにとって、お前はいなくちゃいけない。だから・・・」

そこで1度、ブルマは言葉を切り、少し身体をはなしてベジーティアの深い夜色の瞳を真っ直ぐに見つめた。

「俺の・・・俺たちのそばにいてくれよ・・・もう絶対死ぬようなまねするな・・・」

真剣な瞳。真剣な声色。陽気で明るいブルマのその言葉や態度。ベジーティアは『ブルマ』という男の存在で自分が救われ、変わる事ができた。地球を好きになったのもこの男の存在がかなり多きいだろう・・・。それを今改めて感じ、愛しげにブルマの大きな手を握り締めた。

「ああ・・・もうお前やトランクスと会えないのは嫌だ・・・」

ベジーティアは本音を語った。

バビディへの洗脳時も、ブウと戦っている時も死を決意した時も、心の中で思うのは愛する家族のこと。

ブルマ・・・

トランクス・・・


死して尚、身体を与えられた時、やはり思うのはその家族のこと・・・

もう会えないのかと思うとやりきれない思いばかりがベジーティアの中で膨れ上がる。
もう触れることのできないあの温かな大きな手。自分を好いてくれるあの小さな温かな手。

もうはなれたくはない。

あんな思い、もうしたくない。

お互いにそう思い合い、見詰め合っていた。

そして、どちらからともなく顔を近づけ、互いの唇に互いのソレを重ねた。




終わり




ごめん、へタレなくせに投下して本当スマソ…

91花火志願の名無しさん:2006/10/10(火) 04:06:43
うはーw
久々にいいもんありがとう!!

92花火志願の名無しさん:2006/10/14(土) 23:28:13
久しぶりに覗いたら、凄いのキテタ!!GJ!

93スレ514@管理人:2006/10/30(月) 22:05:25
GJ!!ベジーティアたんはブル雄とだと良い夫婦てかんじだ


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