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ベジーティアたんのみ女の子/シリアス

1スレ514@管理人:2005/09/19(月) 23:17:30
SS条件
>ベジーティアたんのみ女体化のSSに限ります
>このスレは、シリアスだと思う作品を投下してくだちい
>エロすぎるのは控えてください

2614:2005/09/21(水) 17:01:26
初投稿いっきまーす。
スレからネタ借りました。

一通り溜まっていた仕事を片付け終えて、あたしはソファーに倒れ込んだ。
ああ、疲れた。
肩が凝って仕方がない。

身重なのに、こんなに仕事を頑張るあたし。カワイソウ。
身重なのに、あたしを癒やしてくれるヤムチャはここにはいない。
あのバカはただ今修行中。あたしってカワイソウ。

「ブルマサマ」

大きくなったお腹を見る。
もうそろそろ、この子のためにも仕事、休んだほうがいいかもしれない。

「ブルマサマ」

疲れた体を癒やすために、お風呂にでも入ろうかしら。
お気に入りのアロマを入れて、お気に入りの音楽をかけながら。

「ブルマサマ。ブルマサマ」
「あによ」

さっきからうるさい接客用ロボ。なんであたしのところに来るのよ。

「ブルマサマ。ベジーティアサマがオモドリニナラレマシタ」
「ベジーティアが?」

あの戦闘マニアのお姫さまが帰ってきたみたいだ。
3ヶ月ぶりに。
あの子のことだから、帰ってくるなりすぐにママのところに行ってるはずだ。
あの大飯食らいのサイヤ人は。

3614:2005/09/21(水) 17:02:08
案の定、ママの料理が出来上がるのを、
テーブルにちょこんと座って待ってる女の子が1人。
いまかいまかと待ち続ける姿は子供みたいで可愛いんだけど。

「あんたねぇ、なによその格好…」

頭はボサボサ、体中泥だらけ、原型のつかめないボロボロの布きれをまとい、
まるでこれじゃあ狼少女。
とんだお姫さまだ。

「すぐ、お風呂に入ってきなさい」
「なんだ、お前か」
「お前か、じゃないの!そんな格好でいられると部屋が汚れちゃう
じゃない。さ、入ってきなさい」
「お前の指図は受けん」
「ご飯、あげないわよ」
「作るのはお前の母親だ。お前じゃない」
「……」

ダメだ。
ご飯のこととなると、梃子でも動かないわこいつ。

「ベジーティアちゃんお腹減らしてるんだからかわいそうじゃないの〜。
ブルマさんもご一緒にいかが?」
ママまでもこいつの味方。

ほんと、ママもベジーティアには甘いんだから。
ここで妥協して一緒にご飯食べちゃうあたしも相当甘いんだろうけどね。

4614:2005/09/21(水) 17:02:51
お腹いっぱいになったベジーティアは素直なもので、
あたしの言った通りにお風呂に向かう。
あたしがそのまんま一緒に入ろうとするのも、もう慣れっこなのか何一つ文句も言わな
い。
と言うか、あたしにゴシゴシ洗われるのを結構気に入ってるみたい。
自分の嫌なことをされて我慢出来るほどできた性格してないしね、こいつ。

「ほんと汚れてるわねぇ。
ちゃんとお風呂に入ってたの?」
「水浴びぐらいはしていた」
「今度からカプセルハウス持っていきなさいよ。あんな原始人みたいな格好して…」

サイヤ人とはいえ、こいつも女の子だ。
孫くんたちとは違い、細く華奢な体。
この細っこい体のどこからあれだけのパワーが出るんだろう、といつも不思議に思う。
肌もスベスベしていて気持ちいい。
体もふくよかで柔らかい。
やっぱり女の子。
…っと、なんかあたし変態みたいね。

次は見た目より柔らかい髪を、ゴシゴシ洗う。
気持ちいいのか、ベジーティアは大人しく目を瞑っている。
ちょっと可愛い。
髪の毛を洗い終わり、全身の泡を洗い流してあげる。
水気でしなだれた髪でまるで別人みたい。
あたしが笑うと、ベジーティアは怪訝そうに瞳を向けて、
そのままザブンと湯船に浸かった。
あたしも体を洗いはじめる。
スベスベの玉のようなお肌を気遣うように。
お腹のあたりは特に優しく。
ああ、あたしの肌の綺麗さも惚れ惚れするわ。
ふと、あたしに注がれる視線を感じた。
湯船に浸かりながらあたしの一点を見つめているベジーティア。

5614:2005/09/21(水) 17:03:23
「…お腹のこと?」こくり、と頷く。
「太ったな」
「しっ失礼ね!太ったんじゃないわよバカッ!これは妊娠してんのっ」
「妊娠…?」

目をぱちくりさせて、不思議そうな顔してる。
妊婦を見たの、初めてなのかしら。

「そ、もう8ヶ月よ。あと2ヶ月もすれば可愛い可愛いあたしの赤ちゃんが生まれるって
ワケ」
「地球の女っていうのは、随分原始的な方法で子を生むのだな」
「あんたの星は違ったの?まさか口からタマゴを…」
「そういう種族もいたがサイヤ人は違う。たいていの者は人工受精の後生育カプセルの中
で育てられ、そして10ヶ月後に出される」
「味気ないわねぇ〜、あんたもそうやって生まれたの?」
「私は…違う。王族だけは…女の腹に子を孕ませる。私もそうして母上から生まれた」
「ベジーティアのお母さんか…きっと美人だったんでしょうね」

髪を洗い流し、あたしもベジーティアと同じ湯船に浸かる。
広い湯船は2人が入ってもまだまだ余裕がある。
ベジーティアはどこか遠くを見つめるように目を細めていた。
けれど、その顔もみるみるうちに歪んで軽蔑の色が浮かんでくる。

「私を見ていつも泣いているだけの、てんで戦闘力の低い、クズみたいな女だった。」

ベジーティアはそう、吐き捨てた。

6614:2005/09/21(水) 17:04:10
「あんたねぇ、自分のお母さんにクズは無いでしょうよ」
「ふん、戦闘力の無いサイヤ人はただのクズだ。
私たちサイヤ人はおまえらみたいに親子の間に特別な感情は持たない
親子であっても気に入らない奴は殺す、それがサイヤ人だ」

そう言ってニヤリと笑う。
ふーん、それじゃあ孫くんは特別なのかしら。
淡白なやつだけど。

「親子か…」

あたしは無意識にお腹を撫でていた。

「あたしね、今まで子供なんて欲しいと思ったこともなかった。そりゃヤムチャは愛して
るけどさ、それとこれとは別だって。子供なんてうるさいだけだし」

ベジーティアはあたしの目をみて、静かに話しを聴いている。
あたしもベジーティアの黒い瞳を覗き込んで、そのまま続けた。

「でもね、妊娠したって分かったとき初めは戸惑ったけどすごく嬉しかった。未来、どう
なるか分かんないけど絶対この子を生もうって。
そん時分かったの。ああ、あたしこの子を愛してるんだって」
「……」
「愛してなんてなかったら、10ヶ月も自分と違う生き物をお腹の中で育てられるもんで
すか。ベジーティアのお母さんもきっと…」
「ふん、くだらん。
女戦士にとって最も忌むべきことは子を産むことだ。妊娠時は戦闘力も下がり、闘えなくな
る。そんなふざけた話、あるか」
「そんなこと言っちゃってぇ。あんたもいつかお母さんになるかも知んないのよ?」

なんて言うと、何を考えたのか見る見るうちに真っ赤になっていく。
茹でたこみたい、と思った時にはもうギャンギャンと吠えたてていた。

7614:2005/09/21(水) 17:04:45
「な、そんことあってたまるか!!ふざけたことを言うな!!」
「あら、ふざけてないわよ」

子孫を残すってのは本能の一つであるんだし、食欲旺盛、戦闘大好きなサイヤ人が子づく
り大好きでも別に不思議じゃない。
と言うより、ベジーティアの孫くんに対する拘りが、ただの敵対心から来るものではない
ようにあたしには思えたから。
いつか、孫くんの子を作ってきたりして。なんてあたしは冗談半分に想像した。
きっとものすごく強いんでしょうね。

「バカらしい、もうあがるぞ」

興奮して上せたのか、少しフラフラしている。

「ねぇ、また修行に行くの?」
「貴様には関係ない」
「私たちの未来に関係あるじゃない。これでも感謝してんだから」
「貴様らのために戦うんじゃない。私のためだ」
「分かってるって。あんたがどう思おうと、あたしは感謝してんの。お礼と言ってはなん
だけど、あんたの言ってた300倍の重力室、もう出来てるわよ」

それを聞くなり、ベジーティアの顔に喜びが浮かぶ。

「何っ!?ほんとうかっ!!」
「ほーんと」

普段無表情な分、とても新鮮だ。
そんなベジーティアをゆっくり眺める間もなく、あいつはあたしに背を向けてバスルーム
を出ていった。
きっと、この後すぐ重力室に向かって修行するんだろう。
せっかく帰ってきたってのに、忙しいやつね。

ふと、思い出される、さっきの会話。

「ベジーティアの子供かあ…」

何故か、あたしの頭に浮かんできたのは未来から来た、あの黒髪の少年。

「まさかね…」

その考えを振り払うように、あたしはゆっくりと湯船に身を沈めた。

8641:2005/09/21(水) 17:06:40
うわ、てか614じゃないし。641だし。
ごめん、614。心の底から反省です。

つか…これシリアスなのかねえ…
なんか違う気が…ま、いいか。

9スレ514@管理人:2005/09/22(木) 21:04:43
あげ

10悟空ってなんで地球に来たんだっけ?:2005/09/26(月) 01:46:25
誕生日ネタ ベジ悟?悟ベジ? どっちでもいいよわかんないよ


「サイヤ人に誕生日を祝う習慣など無い!」
 そう言い捨て、カブセルコーポレーションを飛び出したものの、ペジーティアの頭の中はそのことでいっぱいだった。



 久しぶりに修行から帰ってきた悟空と御飯。懐かしい面々と再会を果たした後、クリリンが言った何気ない言葉で全員が固まった。
「悟空の誕生日っていつなんだ?」
静寂に包まれた部屋。クリリンが申し訳なさそうに肩をすぼめる。
「さあ…オラそんなの考えたことなかったしな」
悟空が地球に来た経緯を皆は知っている。だからこその静寂。悟空の無邪気な顔が何故か寂しさを募らせる。
「じゃあさ。こーゆーのはどう?」
その後ブルマが言ったのはなんと、自分と悟空が初めて会った日を誕生日にしようということだった。
なんて自分本位な…という空気が流れたが、「オラは構わねえぞ」の一言が決定打となった。
悟空とブルマが初めてあった日はこの日のちょうど三日後。悟空はいらないと言っていたが、皆はプレゼントを渡す気で満々だった。
皆が思案している中、またもやクリリンの一言が全員を固まらせる。
「ベジーティアは何を渡すんだ?」
全員がギクリとなる。なんせベジーティアが誕生日を祝うはずがないだろう、と最初から決め付けていたからだ。
しかもさっきから機嫌が悪いらしいベジーティアに、なんの躊躇もなくクリリンが声をかけたのだから、
全員(悟空除外)がベジーティアの動向を伺うように、話をやめてベジーティアに視線を送った。
「…………っ…!」
急に顔を赤くしたベジーティアに、皆はきょとんとした顔になる。
そしてその後、ベジーティアは冒頭の行動を起こしたのだ。

11花火志願の名無しさん:2005/09/26(月) 02:01:13
「………ちっ」
カプセルコーポレーションを飛び出した後、ベジーティアはいつも修行の場として使っている、
荒廃した大地の上で先ほどから気弾を乱射していた。しかしそれでも、この腹立たしさは消えない。
「…………私がなんでカカロットに…」
プレゼントをあげなくてはならないのだ。本当に、腹立たしい。
大体戦闘民族ともあろう者が誕生日プレゼントなどもらっても嬉しいのか?
サイヤ人が求めるのは、「強さ」と「敵」だ。それ以外のものなどサイヤ人にとって無価値。
無価値……なのだが…。
(何をあげれば……カカロットは喜ぶだろうか…………ハッ!)
駄目だ。カカロットの誕生日をブルマが言い出してから、このばかりを考えてしまう。
無理矢理違うことを考えようとしても、最後はかならずこれに行き着く。自分はサイヤ人として失格であろう。
そこでベジーティアの思考は一時中断する。目の前に急に現れた男に言葉を無くす。
初めて敗北の苦汁と、強さの意味を教えてくれた男。唯一ライバルと認めた男。
傍にいると、離れたくなくなる笑顔をする男……

「何をしにきた…カカロット」

12花火志願の名無しさん:2005/09/26(月) 02:12:54
「いや、おめえの様子がおかしいからよー。ちっと見に来たんだよ。へーいつもここで修行してんのかー」
「………私は別に、可笑しくは無い。他に用が無いなら帰れ」
言葉と気持ちがここまで逆さだと、思わず自嘲するような笑いがこみ上げる。
だから私は駄目なのだ。姫としてのプライドが、本当に伝えたい気持ちを邪魔する。
「ま、いいじゃねえか。ついでだし、オラと修行しねえか?」
………たぶんこっちが悟空の本音だ。カカロットのほうがよっぽどサイヤ人らしい。
「貴様…誕生日を祝われることが嫌で、私をダシに使って逃げてきたな?」
「嫌ってわけじゃねーんだが…なんか落ち着かなくてよー。修行のほうがよっぽどオラに合うだろうしな」
「フン…………もういい」
さっきまでプレゼントのことで悩んでいた自分が馬鹿らしくて、また笑えた。
「私からの誕生日プレゼントだ。受け取れ」
威力を適度にせープした気弾を悟空に向けて放った。悟空はギョっとした顔でそれをかわした。
「あぶねーじゃねーか!」
額にうっすら汗をうかべ、こちらに怒声を送る悟空を見て、いつか修行以外で、二人きりになれたら…とベジーティアは願った。

やはり私は、サイヤ人には向いていない――――――。

13花火志願の名無しさん:2005/09/26(月) 02:19:24
一部誤植が…まあいいや訂正もしないもん

14スレ514@管理人:2005/09/26(月) 19:31:06
誕生日に何かあげようとするベジーティアたん
けなげだーデレデレだーイイヨイイヨー
クリリンは自ら進んで地雷を踏む男だなww

15スレ514@管理人:2005/09/26(月) 20:30:04
文ぬけてたつうか間違ってた
何あげたら喜ぶかついつい考えるベジーティアたんは乙女だなと書こうとしただ
心の中ではデレデレなのにツンツンぶるベジーティアたんテラモエス

16花火志願の名無しさん:2005/09/26(月) 23:46:09
乙女ベジーティアたん!イイネ!
こういう可愛らしいベジーティアたんはばっちこーいですよ

17花火志願の名無しさん:2005/10/01(土) 10:36:01
すまんアゲ

18花火志願の名無しさん:2005/10/02(日) 02:02:53
あげ

19花火志願の名無しさん:2005/10/03(月) 19:23:29
age

2017号の地図(仮題):2005/10/20(木) 01:58:57
17号父親編、とりあえず、プロローグいってみます。

長いです。ベジーティアまだ出て来ません。
原作が手元に無く、週末にでも漫喫に読みに行くつもりなので、
それによってこのプロローグ自体無かったことになるかもしれません。

2117号の地図(仮題):2005/10/20(木) 02:02:37
CCのリビング。ブルマは手足を四方に投げ出して天井を眺めていた。
セル・ゲームにおいて悟空がこの世を去ってしまってから、2日後のことだ。
彼の葬式は昨日終り、未来から来た少年も既にこの時空間を去った。

終った、ねー

白い喪失感が、部屋を静かに満たしている。喧騒に彩られた彼女の人生には珍しい空白の時間だった。

ズゥゥゥン… 低い振動がCCを揺るがした。

あー、ベジーティアのやつ、また重力室壊した

ブルマは反射的に眉間にシワを寄せ、ついで小さく笑んだ。
それは、数年前から繰り返されている、彼女の日常だったから。

2217号の地図(仮題):2005/10/20(木) 02:05:13
ベジーティア。戦闘民族の誇り高い王女。
孫君のいない今、宇宙で唯一の、純粋なサイヤ人。
彼女はここへ戻ってきたわ。孫君のいないこれからを、生きていくために。

正直、私はちょっと心配してたのよ。あの子の孫君への感情は激しすぎて、
あの子の心の、ほとんど全てを占めてると言ってもいいくらいだったから。
あたしが、このスーパー頭脳でその感情に適切な名前をつけてやった時には、
怒りくるってCC(ひとの家)半壊させて文字どおり飛び出してったっけ。
思春期の暴走ってやぁねー。

でもね、本人が認めようが認めまいがオカメハチモクってやつよ。
ベジィ、あんたは孫君に負けてからの数年、
ひたすらその感情にすがって生きてたの。

2317号の地図(仮題):2005/10/20(木) 02:07:27
でも、その感情だけが本当にあなたの全てってわけじゃなかったわけ。
だから、戻って来れたんだわ。CCでの日常に。

大丈夫。あなたの一番強い感情は孫君の死と共に行き場を失ったけど、
これからはこの数年の間に、あなたがみつけたもう一つの感情を育てていけばいいの。

に、しても。

「なんでアタシってばこんなにベジーティアの面倒見ちゃうのかしらねー?」

あ、ベジィが帰って来たってことは、
またあのスットコドッコイに出入り禁止令だしとくか。

2417号の地図(仮題):2005/10/20(木) 02:10:54
スットコドッコイとは、今を去ること3年前、己の実力も恋人もかえりみず
ふらふらとベジーティアにコナをかけようとした男で、その名をヤムチャという。
ブルマと彼は当時恋人同士であり長年にわたり同棲していたのだが、
そのことがあった直後にブルマはきっちりヤツをCCから叩き出した。

後になって、事情を知った知り合いに

「普通の女はそういう時、安定した付き合いの男でなく、
新参の居候の女の方を『泥棒猫』と呼んで追い出すものだ」

と言われたが、
ブルマの頭には、そんな発想はひとかけらも浮かばなかったと断言できる。

2517号の地図(仮題):2005/10/20(木) 02:13:24
「ふん、恋より友情をとる私ってなんていい女…って、友情?
 友情かしらねぇ。こんなに献身的につくしてあげるなんて、
むしろトランクスの父親って私じゃないかって気がしてくるわ」

そういえば、少し肌寒くなってきたかもしれない。
トランクスの様子を見てあげなきゃ。
むくりと起き上がると、ブルマはブルマ自身の、新しい日常を開始した。

――重力室の方で、また地響きがしたようだ。

2617号の地図(仮題):2005/10/20(木) 02:16:16
* * * * * * * * * * * * * * * * *

トランクスのための部屋は、ブルマのいたリビングの続きの間だ。
CCは広いが、トランクスを泣きだしても誰も気づけないような場所で
一人きりにさせる気はブルマには無かった。

赤ん坊は眠っているのか、さっきからずっとおとなしくしている。

ブルマは子ども部屋へ入っていった。
ドキリとした。

全く気配を感じなかったのだが、
ベビーベッドのはたに、すらりとした人影があった。
黒髪の、しかしここにいる可能性のある人物ではない。

2717号の地図(仮題):2005/10/20(木) 02:18:13
先ほどまた重力室を破壊したらしきトランクスの母親よりも背が高く、
黒い髪も、その一すじも重力に逆らうことなく、さらりと垂れている。

一瞬、ブルマは数時間前に見送った未来の少年を連想した。だが、別人だ。
三角定規のように整った無機質な横顔が、ベッドの中のトランクスを見下ろしている。

「17号…!」

人造人間がわずかにこちらを向く。
ブルマはとっさに、目でトランクスの無事を確認した。
トランクスは、予想に反して眠ってはいなかった。
目つきが悪いと評された目を開けて、見慣れない人造人間(モノ)を見ていた。

2817号の地図(仮題):2005/10/20(木) 02:20:11
「いやだ! どうしてセキュリティが反応しなかったのかしら」
「機械なんて、オレの仲間みたいなもんだ」

言うと、17号はブルマへの興味を一切なくしたように、視線を戻した。
「何しに来たのよ」
最初に聞いて当然だった疑問を、ブルマは口にする。

「――未来の「コレ」は、今頃オレを破壊しただろうかな」
色の無い声が、時制の無茶苦茶なセンテンスを発した。

2917号の地図(仮題)作者:2005/10/20(木) 02:29:34
今日できてるのはここまで。長くて萌えなくてごめんなさい。
読んでわかるとおり、プロローグにしてエピローグです。

ここの未来トランクスは黒髪直毛で、
ブルマver.と同じくらいの身長とハンサム度ではないかと。

でも、ブルマがトランクスの父親を知っているのかなどはまだ考えて無いです。
そもそも、どうしても無理だと思ったら、17号以外を父親にしてしまうかも。
本スレでも言われてたとおり黒髪なら全員いけるし。

仮題は、『17歳の地図』という小説が(読んでないけど)あったなーと思ってつけただけで意味はなし。

30花火志願の名無しさん:2005/10/20(木) 04:22:00
イイヨイイヨー
こっからの展開が楽しみだす
黒髪なら誰でもいけるよなぁwww
いっそのことクリリンでも…(あ、そのばやい鼻が…)
漏れの脳内トランクスも父親よって髪の色が変わるだけなんでwww

31花火志願の名無しさん:2005/10/20(木) 09:36:40
>>30
マーロンちゃんは成長してから鼻はえてたから問題ないよw

32スレ514@管理人:2005/10/20(木) 21:09:33
17号パパキターー!17号が父親だと未来がかなすい杉な

33スレ514@管理人:2005/10/20(木) 21:12:26
ブル雄父の場合の、トランクスとベジーティアたんファミリードラマっぽ話投下すます

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小さな薬瓶と水差しを握りしめたトランクスは、音を極力立てないよう小走りで駆け寄りベッドのカーテンを捲る。
「母さん…具合、どうですか?」
そこには赤い顔をしてこんこんと眠り続ける彼の母…ベジーティアがいた。

ここは精神と時の部屋、昼は灼熱、夜は極寒の、絶好(?)の荒行スポットである。
もともとサイヤ人は寒さを嫌う質らしく、ベジーティアは混血のトランクスよりもやたら寒がって、
昼にどんなに無茶な修行をしていても夜になると必ずふとんに籠ってしまっていた。
それでも昼夜の気温差にやられ、風邪を引いてしまったのだった。

部屋の中に薬はなく、本来なら外に出て治療してもらうべきなのだろうが、
それをベジーティアに提案したらにべもなく却下された。
今回はとにかく時間がない。人造人間に対抗するため、彼らによる被害を最小にとどめるため、
外での一日を最大限に生かさねばならない(とベジーティアが考えるはずはないが、
少なくともトランクスにとってはそうだった)。
なのでトランクスだけ外に出て、神殿の番人という怪しい黒い人に風邪薬をもらって戻ってきたのだった。
精神と時の部屋を出ていたのはほんの少しの時間だったが、ここでは外の1日が365日になってしまう。
実際トランクスが体感した時間よりも相当長い時間、ベジーティアは放っておかれたことになるだろう。
そのせいか、彼女はトランクスが部屋を出る前より悪化しているようだった。話しかけても反応がない。

34スレ514@管理人:2005/10/20(木) 21:13:16
焦ったトランクスは、ベジーティアのそばに駆け寄る。
「か、母さん!?大丈夫ですかっ!」
それでも声をおさえて耳元で話し掛けると、ベジーティアはうっすらと目を開く。
熱のせいで涙が滲み、焦点があっていない黒い瞳がトランクスを映し、熱で乾いた唇がわずかに動く。
その唇から普段の彼女からは想像も付かない弱々しい掠れ声が漏れる…何かをぼそぼそ呟いている。
「な、なんですか?かあさん…」
あまりに細い声なので何と言っているのか聞こえない。トランクスは彼女の口に耳を寄せて、
かすかな呼吸とも声とも取れぬ程の音を拾おうとする。
「…………うるさい」
拾った言葉は、息子が立てる音を非難するものだった。
「……………すみません、熱冷ましもらってきたので飲んでください、少しは楽になりますよ」
我ながら我慢強いと思いながら薬を差し出すと、ベジーティアはぼうっとそれを見たまま口を開ける。
飲ませろ、ということらしい。
しかたないのでサイドテーブルに置いた粥に付けた匙を取り、薬瓶の薬を入れて口元に運ぶ。
それをこくりと飲み込んで、苦いと文句を言うベジーティアに水差しの水を飲ませながら匙を戻す。
サイドテーブルに置いてあった、薬をもらうため部屋を出ていく前に彼が作った柔らかく煮た粥は、手を付けられずにひからびていた。

35スレ514@管理人:2005/10/20(木) 21:13:40
「辛くても何か食べたほうがいいです、回復遅れてしまいますよ」
トランクスがそう言って覗き込むと、ベジーティアは言葉を無視して眠りにつこうと瞼を閉ざしてしまう。
「あの、なにか食べたいものありますか?作れるものだったら作ってみますけど…」
眠るのなら、何か食べてからのほうがいい。
「………」
トランクスが根気強く言うと、それに反応してベジーティアの唇がかすかに動いた。何かを言おうとしている。
「え?」
しかし口の中から音が漏れてこず、聞き取れない。
さっきと同じように口に顔を近付けて、何とか言葉を拾う。
「………あれが、食べたい」
どうやら、そう言っているようだった。

「あ、あれ??あれって何です?」
トランクスが何を指しているのかを聞くと、ベジーティアは目を閉ざしたまま眉根を寄せ、上掛けをすっぽり被ってしまう。
「……………………もう、いい」
トランクスは、逆立った髪の毛の先だけ見せて、拗ねたように隠れてしまった母に途方に暮れる。
普通はオレがするほうです、そういうことは。
声に出すと、またうるさいと言われそうなので心の内だけでぼやく。それにしても…

あれって、なんだろう?

普段のベジーティアは何でも食べるしその中でも肉類が好きだが、風邪で弱っている今、それを欲しがるとは思えない。
かといって、やわらかい粥もお好みではないらしい。
うんうん唸って考えて、それでも分からなかったのでトランクスは、自分の場合を考えてみた。

36スレ514@管理人:2005/10/20(木) 21:14:16
オレが風邪を引いた時は。

……父さんが、いつも手製のアプリコットのシロップ煮を作ってくれた。
機械いじりは大得意でも料理はすこぶる下手な父だったけれど、風邪の時に出してくれるそれだけは甘過ぎず酸っぱすぎず、実にいい案配の味だったのだ。だからトランクスは、それが大の好物だった。
不思議に思ったトランクスは、父にその理由を問うてみたことがある。

「そりゃ、俺の母さんのレシピだもん、不味くできるわけないさ」
「お父さんのお母さん?ぼくのお婆ちゃん?」
そう言うトランクスに、父は懐かしそうな顔をする。
トランクスは、この顔を見るのがなんとなく苦手だった。
彼の知らない、美しい時代を思い出す時のこの顔は、彼の居場所がないような気にさせられるからだ。
「台所なんて入ったことなかったし、もう少し色々教えて貰えば良かったんだろうけど…これだけは自分で作れるようになりたかったんだ」
そうして、いつかお前も誰かに作ってやりなさいと、トランクスにお婆ちゃん秘伝のレシピを教えてくれたのだった。

そうだ、
「あいつ、これだったら食べてくれたからな」
父が作り方を教えてくれながら、ぽつりと零した言葉。

『あいつ』が誰かは言わなかったけれど、きっと。

37スレ514@管理人:2005/10/20(木) 21:15:04
食料貯蔵庫には、主食の謎の粉と水の他に、不思議なツボがある。
どうしても『アレ』が食べたい!そんなふうに思った時、ツボの中に『アレ』の食材が入っているのだ。
案の定、そこにはつやつやした杏の実と必要な材料が入っていた。

ベジーティアは、多めに作ったシロップ煮を全て平らげてしまった。
トランクスも好物だったので少し食べたかったのだが、こうもペロリと平らげられると何やらくすぐったい心持ちになる。

浮いた気分のままトランクスは、手桶で濡らして絞った手ぬぐいをベジーティアの熱い額に乗せる。
額に置かれた手ぬぐいの上、彼の手に、別の手が重なる。
その熱さにびくりとしてしまってからトランクスは、目を丸くして母を見た。
赤くすべすべの頬、熱で滲む涙をためた閉ざされた瞼、甘いシロップで潤みを得た唇、彼の手の甲で感じる、熱い、手のひら。
トランクスはなにやらドキドキしてきて、同じような赤い顔になりながらベジーティアに呼び掛ける。
「かかか、母さん?」
滑稽なほどにどもりながら。
ベジーティアの甘く濡れた唇が、掠れた音を零す…

38レ514@管理人:2005/10/20(木) 21:15:57

「…ブル、ま」

…そういえば、この部屋の中で半端に伸びたトランクスの髪は、質はもちろん、長さも今の父の髪にそっくりなのだった。
トランクスは、何故だか分からないが物凄くがっかりしながら、寝ぼけているらしい母に訂正する。
「オレは父さんじゃないですよ、しっかりしてください」
そう言ってベジーティアの手を剥がそうとする。
「いくな」
しかし、ベジーティアが続けて言った言葉にその手は遮られる。
気付けば母の熱い手は、彼の手に添えられているだけだった。自分達に比べてもろい身体を持つ父を、傷つけない加減。
気恥ずかしいけれどとても嬉しくて、トランクスはもう片方の手を、彼女の額と彼の手の上に乗った、熱い手の上に乗せる。

安心したように長く息を付いて眠りにつくベジーティアを見ながらトランクスは、
全部が終わって帰る時には、父さんの母さん--お婆ちゃんにいくつかレシピをもらっていこうと思った。

39花火志願の名無しさん:2005/10/21(金) 00:08:09
なんか感動しちゃったわい
トランクスいい子だね
ベジーティアたんも可愛い
ほのぼのしていいね

40花火志願の名無しさん:2005/10/21(金) 00:32:01
こういうのもいいなあ。

41花火志願の名無しさん:2005/10/21(金) 22:06:59
>>38途中から、リレーでないのに続けさせていただきます417です。
おれ作なのでもちろんエロスレです。
ええ話台なし木綿なさいの近親相姦もどき、トランクスいけない子!みたいな話です。

…514さんマジ木綿なさい…

42スレ514@管理人:2005/10/24(月) 22:51:30
感想まりがーノシ
いちおうファミリードラマ目指してみたからほのぼの言ってもらうと嬉しい
>41
エロ見たよースゴスwwwトランクス悪い子だww

43花火になった名無しさん:花火になった名無しさん
花火になった名無しさん

44花火志願の名無しさん:2005/10/30(日) 22:56:33
「孫、人造人間について何かトランクスから聞いていないのか。」
「トランクスは見れば一目で分かるとしか言ってなかったな。」
一目で分かるか、街に降りたヤムチャは何気なく近くの交差点に目をやった。
「なあ、悟空ひょっとしたらアレか。」
ヤムチャの指さした方向に19号と書かれた手足の付いた茶筒(*1)とセーラ服を着たロボットにしか見えない女の子がいた。

両者の外見は
*1 19号と書かれている○カ沢(魁クロマ○ィ高校) *2背中に20号の文字がある鈴木ロ○子(○ボこみ)

45花火志願の名無しさん:2005/10/31(月) 20:31:22
これから超シリアスな展開になるのw
メカ沢はベジーティアたんにぬっこわされちゃうのか

46星のお姫様の続き:2005/12/15(木) 22:16:20
今度からこっちに投下します。


謹慎中の彼女の部屋の扉をノックする音がした。
ぼんやりとしながらベッドに寝そべっていた彼女は
体を起こすのもおっくうで、腕だけを伸ばしてベッドサイドから
スカウターを取り上げる。
どうせナッパの奴だろう、とスカウターの数値を見てみると違う戦闘力が表示されていた。
数値からして下級戦士のようだ。
「誰だ…俺は今謹慎中の身だ」
そう扉の向こうにそういうと、彼女は再び寝具にくるまった。
「ラディッツだ」
と、扉の向こうが返事する。
ラディッツ…?聞いたこともない名前だ。
彼女がそう考えていると、部屋に通してもらえないのをはじめから承知だったのか
その男が扉越しに話しかけてきた。
「ナッパの奴が姫様に謝っておいてほしいと…」
しばらくだまりこんで彼女はこう答えた。
「………あいつは何故自分で来ない」
「『姫様にあわせる顔がねぇ』って…」
でかい図体のくせにひどく落ち込んでいるナッパの姿が目に浮かんで、
彼女は思わず噴き出しそうになりながらも、ドアの向こうに尋ねる。
「あの筋肉バカは、俺のせいで王から罰をくらったか?」
「いいや、あいつは何のお咎めもなかったようだ。でもだいぶ落ち込んでる」
それを聞いて彼女はいくらか安心し、
「あいつは昔っから俺に弱いからな」
と小さく笑った。
「ナッパに言っておけ。俺は何も怒っちゃいない」


本日はここまで。

47花火志願の名無しさん:2005/12/15(木) 22:41:13
GJです、せっかくだからあげますね

48スレ514@管理人:2005/12/19(月) 21:52:10
GJ!ラディッツでてきた、悟空の話題とかでるのか
あと、まとめのタイトルを星のお姫様に修正すますた!

49花火になった名無しさん:花火になった名無しさん
花火になった名無しさん

50星のお姫様の続き:2005/12/19(月) 23:45:03
星のお姫様の続きです。

>>47
age忘れてた。ありが㌧
>>48
修正まりが㌧

謹慎期間が終了したその日、彼女はさっそくなまった体を鍛えなおそうと、
トレーニングルームにブロリーを呼び出した。
彼はサイヤ人には珍しく、どこか物悲しそうな顔をした青年だ。
目が合うと、悲しそうで頼りない目はそのままに、口がゆっくり笑みの形を作る。
「何か辛い事でもあったか」
と、定番の台詞でからかうと、
「この顔は生まれつきで…」
と寝起きのような声でゆっくり返してくる。
別に寝起きでもなんでもなくて、このしゃべり方も彼独自のものだった。
強そうに見えない顔、強そうに聞こえない声。
それでも彼は彼女に次ぐ実力者で、彼女はよく彼と拳を交えた。
彼女が肩慣らしを終えた頃、
「この位で勘弁してください」
と、彼は根をあげるような台詞を言う。
だが、彼は全力など出していなかった。
彼女がまだまだこれからじゃないか、と言うと、
「父上にしかられます」
と、彼はうつむく。
「父上とは王のことか?それともお前の親父…バラガスのことか?」
と彼女が問うと、
「どちらもです」
と、ポツリと彼はこぼす。
彼のそんな態度に短気な彼女はだんだんイライラしてきて、早口になっていった。
「お前が幼い頃に王に受けた扱いは俺も知っているぞ。
だがな、たとえそれを差し引きしてもお前は王と父に振り回されすぎだ。
力があるのに何故使おうとしない?」
「………」
そうなのだ。彼は彼女の前でも一度も本気を見せたことがないのだ。
野心もなさそうな彼が何故強いのか彼女には分からなかった。

とりあえず、ここまで。

51星のお姫様の続き。:2005/12/20(火) 20:41:37
続き。


ブロリーと別れ自室に戻ると
スカウターを外し、ブーツとグローブと戦闘服を
ベッドの上に投げ捨てて、汗を洗い流そうと
備え付けのシャワールームに向かった。
ぬるま湯を浴びながら、そういえば、ナッパの奴はどうしたかな、と彼女は考えた。
以前は鬱陶しいくらいに自分の傍を離れようとしなかったのに、
あの日以来、姿を現していない。

彼女は王女ではあるが、軍に入った以上は、一員として扱われることを望んだため、
彼女に与えられたこの部屋も、ほかの戦闘力の高い戦士たちと変わらない。
だから物騒だ、と言ってナッパは彼女の部屋の扉の番をした。
そんな必要はない、と何度も言ったのに、言うことを聞かなかった。

そうだ、今、扉の外にあいつはいないんだ…と考えると、急に不安になった。
扉の鍵は癖で開けっ放しだ。自分は今裸で無防備だ。
スカウターはベッドサイドに置いたままで、
部屋に誰かが入ってきても音を立てない限りは分からない…
そんなことをする奴がいたとして、彼女は一瞬でスミクズにできるのに、
何故だか鼓動は早くなって慌てて体を洗い流し、バスローブをはおった。

52星のお姫様の続き:2005/12/20(火) 20:42:10
「お姫さん、勝手にお邪魔してるぜ」
恐る恐るシャワールームから部屋を覗き込むと、男の声がした。
ビクッと体を振るわせた彼女に笑いかけながら男が立ち上がると。
白のマントのすそがひらりと揺れた。
「お前か、ターレス」
正体が分かったとたん、彼女がしかめっ面で言うと、
「おーおー、見ないうちにまた一段と女らしくなったじゃないか」
男の目線が彼女の頭のてっぺんから足の先までを行き来する。
「女らしく」という言葉に彼女はさらに険しい表情をしたが、
浅黒い肌の男は気がついていない様子だった。
「そんな顔しないでくれよ、せっかくの可愛い顔が台無しだぜ?」
「生憎だが俺のしかめっ面は生まれつきだ」
さも憎らしそうに彼女が言うが、男はそれを楽しんでいる様子だった。
「お姫さんを喜ばせようと、面白い話をいくつか持ってきたのに、
出直したほうがよさそうだな」
と、男はあらためて彼女の姿を好奇の目で見つめてくる。
彼女はその視線に耐えながら、強気の声で言い放つ。
「とっとと言いやがれ。くだらん話だったら許さんからな」
彼女が椅子に腰を下ろすと、男も嬉しそうにそれに従った。

53星のお姫様の続き:2005/12/29(木) 22:33:08
ターレスはサイヤ人だがその軍には入らず、
少数の仲間を率いて様々の星を渡り歩いている、いわばならず者だった。
しかし、時々母星に帰ってきて、珍しい品を王に献上したりしていたので
彼女も彼とは面識があった。
最後に合ったときは、ナントカの実、というのを手に入れたと言っていたが、
と彼女が思い出していると、ターレスが足を組み替えながら言う。
「面白い話を聞かせるって言ったよな、
 バーダックの奴が今日遠征から帰って来るそうだ」

バーダックが?

彼女が身を乗り出したのをターレスは見逃さない。
バーダックは下級戦士ながら高い戦闘能力を誇り、
いくつもの武勇伝を持っており、
性格は粗暴で、戦いを好み、「サイヤ人」を絵に描いたような男だ。
そして下級戦士たちが王の次に憧れる戦士である。

54星のお姫様の続き:2005/12/29(木) 22:34:04
勝手に作り上げられた武勇伝もあるだろうに、
とターレスはひそかに毒づく。


…気に入らないのだ。


下級戦士と同じく、彼女もどうやらその武勇伝とやらにお熱だ、
と聞いて、半信半疑でターレスはこんな話を持ってきたのが。
バーダックの話を持ち出した途端、
彼女の目がまるで、そう、恋をしている者のようになったのが…
恋の意味すら知らないというのに。
自分と同年代の彼女と、その「数々の武勇伝を持つ男」とは親子のような年齢の差がある。
それでも、男に敵意しか持っていないような彼女が
関心を持っているのが気に入らない。
「そうか…一度会って戦ってみたいと思っていた…」
血が騒ぐ、というやつだろうか。
それを抑えるかのように彼女はグッと拳を握った。

55星のお姫様の続き:2005/12/29(木) 22:34:51
「おっと、面白い話ってのはそれで終わりじゃない」
つ、と席を立った彼女をターレスは引き止める。

「そのバーダックの星送りになったガキがまだ生きてたんだとさ」

彼女は再び席に着こうとはせず、
「それで?」
と、目で続きを促す。
「そのガキってのがさ…次男で…ああーっと、名前はなんだったか?
 そう、カカロットとかいう名前だったかな、
 送られた星でのうのうと暮らしていたらしいが…今日帰還したそうだ。」
「よくある話じゃないか」
と、つまらなさそうに彼女が言う。
「話は最後まで聞くもんだぜ、お姫さん。
 そいつ…迎えにいったそいつの兄貴…ラディッツとお姫さんの大事な…
 ナッパをボッコボコにしてくれたようだぜ」
「なんだと…?」
ここに来る途中で治療ポッドの前を通ったが、
あれはなかなか治らんだろう、とターレスは付け加える。

56星のお姫様の続き:2005/12/30(金) 16:04:18
サイヤ人…とくに下級戦士達は血縁者に対する感情がないといってもいい。
試験管の中でしばらく育ち、物心付いたときには他の星に立っており、
自分の父母の名前は母星に帰還してから知るというパターンが多いのだ。
父母のほうも自分の子供そっちのけで戦闘にあけくれる毎日だ。
ただ、血がつながっているという事実だけ。
彼ら達にとっては都合のいい民族形態だったかもしれない。
わが子が星送りになろうが
親が死のうが、子が死のうが、目の前の戦闘が第一なのだ。

そんな中で父を尊敬するように、母を慕うように想うのが王と王妃である。
王族のみが、正しい肉親への感情を持っているこの星では、
自分たちに帰る星と、戦いの地を提供してくれる彼らに
サイヤ人達は失われかけの感情を抱く。
いたわりの心を与えてくれるという王族に、皆、焦がれていた。
この自己中心的な民族がまとまっているのはそのせいだ。
そして彼女…王女に多くの若い戦士達は好意を寄せていたのだった。
戦闘馬鹿の戦士達は純粋に王族に恋をしていたのだ。

57星のお姫様の続き:2005/12/30(金) 16:04:45
このターレスも例にはもれず、彼女に密かな感情を抱いてここへやってきた。
いつも彼女にまとわりついて離れないナッパがいないとみえて、
これは好都合、と部屋に勝手にあがりこんだのだ。

流れ星のように星々の間を通り抜けてきた彼は
今まで沢山の女達と「お知り合い」になってきたというのに、
彼女が目の前にいるというだけで、どこかぎこちない自分に苦笑する。
何でもないように振舞ってはいるのだが、落ち着かない。
彼女の口がつむぎだす一言一言をこぼさない様に聴覚は忙しそうだし
視覚的にも彼女の唇の動きにですら翻弄されているようでもある。
自分のものにしてみたい、と思うと同時に、
生まれたての雛に触れるように、優しくしてやりたいとも思う。

58星のお姫様の続き:2005/12/30(金) 16:05:22


「そのカカロットとかいう奴が…ナッパを倒したと言うのか…?」

奴はエリートだ。星送りになった者に破れるなど…
ありえん、と彼女が自分に言い聞かせるように呟くと、
彼が銀色をしたケースを取り出し、彼女に渡した。
「最新型のスカウターだ」
と、彼が言う。開けると、彼女が今使っているものと外見も
細部が異なる型のスカウターが収まっていた。
「まだ手に入りにくいんだぜ、それ」
精密機械であるそれをそっと手にとって、それから装着してみる。
「桁が5つも違うだろ」
と、彼が言う。戦闘力の数値を表示する桁数のことだ。
「こんな余計な桁など…」
と、スカウターを覗き込みながら彼女が言うと、
「そこが最新式。測定できるのさ、そういう奴らを」
彼女は一瞬彼が何を言ったのか分からなかった。
5桁も違う戦闘力の奴だって?

今使っている型は自分の戦闘力を測るのがやっとだ。
だが、彼はそれ以上の奴がいる、と言うのである。

59星のお姫様の続き:2005/12/30(金) 16:05:47
「よその銀河ではそういう奴らがちらほら出始めたらしい」
もっとも…そのバーダックのガキが
そんな力を持っているとは思わない、と、ターレスは言った。

「そうだったとしても、面白そうじゃないか」
と、彼女はにべもなく言う。
態度は素っ気無いのに、どこか落ち着きが無く、
うずうずしている様子だ。
怖いという気持ちも少しはあるかもしれないが、
未知の敵の強さに嫉妬し、焦がれているようだ。
自分の力に絶対の自信があるとみえる彼女が
少しはショックを受けるかと思っていたターレスは、
その態度にますます彼女に惹かれた。

60星のお姫様の続き。:2005/12/30(金) 20:20:15
その戦士は死の淵から何度でも蘇るという。


「薬が切れちまっていけねぇ」
と、男が浴びるように酒を飲む。
「で、姫さん、俺なんかに何のようだ?」
その問いかけに彼女はだんまりだ。
ターレスにしばらく引き止められはしたが
彼女はすぐさま男の部屋を訪れた。
そして顔を見るなり伝説の男もよくある顔だ、と彼女は思う。
先ほど別れたターレスと同じタイプの顔だ。
ただ、左頬に鋭利な刃で傷つけられたと思われる傷がある。
「俺ぁよ」
と男が勝手に話し始めた。
「星に帰ってくるのは嫌なんだ、薬はなかなか効かねぇ体なんでな」
男の言う薬というのは酒のことで、母星にいるより、
よそで戦っていたほうがいいという、まさに典型的タイプである。
「だのに、王が俺を呼びつけるもんで、何事かと思ったら」
名前も忘れちまったクソガキがよ、やらかしたっつぅじゃねぇか。
彼女に酒臭い息を浴びせながら男の愚痴は続く。


「…始末をつけろ、と言われたのか?」
彼女の口から出た言葉に男の気が一瞬ピンと張り詰める。
だが次の瞬間には、粗暴な気が戻っていて。
「ガキ同士の喧嘩に親を呼びだすたぁ、とんだ笑い話だぜ」
どうせどっちもクズだ。くず入れに入れるのが道理ってもんだろう。
と、男は言う。飲み損ねた酒をぬぐいながら。

61星のお姫様の続き:2005/12/30(金) 20:20:50
「酔っ払いが無茶しても手元が狂って怪我するだけだ」
俺が片付けてやろう、と彼女が言うと
「何だ、心配してくれんのか?お優しい姫さんが、下級戦士とやらによ、へへへ」
と、バーダックは下手な笑みを貼り付けた顔で彼女の髪に触れた。
「汚い仕事は俺達の仕事だ、まぁ、汚いとも思っちゃいねぇがよ」
バーダックに髪を撫でられて彼女は不思議な気持ちになった。
ギラギラとした気を漂わせているように思うのに、
彼女に向けられる表情は、王が彼女に向けるもののようだ。
まるで、娘を慈しむような目をしている。
彼の娘になったような奇妙な感覚に陥って
「俺が、王に直訴してやろう」
と彼女は真剣に言ったのだが、
「大丈夫だ、親父にまかせとけ」
子供を抱いたこともない、節くれだった指が
子供をあやすように再び彼女の髪を撫でた。

そして、部屋の扉を開けながら、
「男の部屋に独りで来ちゃいけねぇよ」
と笑い、出て行った。
「ガキ扱いしやがって…」
主を失って暗い部屋に残された彼女は、
どっかりと椅子に腰を下ろし独り考えあぐねた。

62星のお姫様の続き:2005/12/31(土) 12:36:24
「父上、私です」
いろいろ考えても埒があかないので
スカウターのスイッチを入れ、お決まりの文句で王に話しかけた。
それを待っていたかのようにすぐ返答があった。
「ベジーティア、久しいな、元気にしているか」
「父上、ご尊顔を久しく拝みに参らず、身勝手な私をどうぞお許しください」
自分が従順な娘のそぶりをみせれば、王が喜ぶのを知っての発言である。
「お前が健やかであればよい、父も母も心配しておる」
母のことを聞いて彼女は苦い気持ちになったが、今はそれどころではない。
「父上は真に私を案じてくださっておりますか」
親馬鹿な王に今更する質問ではなかったが、
今回はこれを持ち出さねばなるまい。と彼女は思う。
「父は誰よりお前の身を案じておる」
当然の答えが返ってきた。
「もし私が再び禁忌を犯してもでしょうか、不安で心の安らぎがありません」
「もちろんだ、お前は私の娘ではないか」
王が想像通りの答えをポンポンと返してくるので、彼女は用意しておいた剣で切ってかかる。
「もし私が母上を殺してもそうでしょうか?」
…返事はなかった。
「母娘で憎しみあうのはどんなにか、辛いことでしょう」
と、彼女が付け加えると、王が安心したのが分かる。
「仮定の話でも驚いたぞ、ベジーティア」

「父上」

と、彼女が急に強い口調で言う。
私の意がお分かりですか、と更に言うと王はうろたえた。
「始末は私がつけます。口出しは無用です」
父と息子を何故戦わせるのですか、そう言って一方的に彼女は通信を切った。

63星のお姫様の続き:2005/12/31(土) 12:37:01
王が自分に弱いのはよく知っている。
これで、バーダックが手を汚さずにすんだぞ、と彼女は単純に喜んだ。
自分の憧れの戦士は、想像とはズレていたような気がしたが、
それでも憧れが失われたわけではない。
あとは情報を集めてそのクソガキをみてやろう、と思った。
そして、力比べをしてやろう、と思っていた。


彼女はターレスに聞いた治療ポッドへ足を運んだ。
そこはいつも医療班の者がせわしなく働いていて
気をつけないとすぐにぶつかって邪魔をしてしまう。
彼女は壁伝いに歩いていた。
沢山あるポッドの中からナッパが入れられているものを探すのは
骨が折れそうだが、忙しそうに働いている者を呼び止めるのも気が引けた。
これも違う…これも。
あいつは体が大きいほうだから、きっと大きなポッドに…
と、考えていると、騒がしく叫ぶ声が聞こえた。
「姫様、無事ですかぃ!」
ナッパの声に間違いはなさそうだ。自分の姿を見つけて叫んでいるらしい。
「だめですよ、まだ排液がすんでません」
ポッドから出ようとしているとことをなだめられているのを見つける。
「ナッパ、俺に汚いものを見せようって訳か?」
とからかうと、
「す、すまねぇ」
と自分がすっ裸なのを思い出したらしく大人しくポッドに収まっていた。

64星のお姫様の続き:2005/12/31(土) 12:37:28
大人しくなったナッパを医療班にまかせて
ナッパと連れ立っていった奴はどいつだ?と医師に尋ねる。
「ええ、こちらの方です。あのバーダックの息子だそうですよ」
指差した先にも治療ポッドがあり、まだ治療中のようである。
「こちらの方はもう少しかかりそうです」
深い緑色の液の中で、長い髪が、揺れている。
「ラディッツとか言う名前だったな…弟にひどくやられたって聞いたが?」
彼女は、目を閉じたままの男に話しかけるように、尋ねた。
「骨折が全身で8箇所、おまけに内臓にも損傷あり、重症ですよ」
データを眺めながら医師は言う。
「そいつは驚いた、で、とっちめた方はどこに入ってるんだ?」
彼女が問うと、ここにはいません、と医師は言う。
「何故だ、わざわざ他所で治療してるのか?」
彼女の問いかけに、医師はいいえ、と首を振る。


「一つも傷を負っていないからです」

65星のお姫様の続き:2005/12/31(土) 12:38:04
「ナッパとラディッツ…
 お前は知らんだろうけど、とにかく男2人を相手にして
 お前は無傷で勝てると思うか?」
「無傷で…ですか」
自分に次ぐ実力者のブロリーを捕まえて質問してみた。
「分かりません、でも」
「でも?」
「貴女なら」
外見は弱そうな男は笑ってみせる。
「貴女はきっと勝つでしょう、何故なら」
この男は、ゆっくりと、独特で不思議な喋り方をするのだ。
「サイヤ人はみんな貴女に、弱い」
「…?」
彼女が首をかしげると、寂しそうな目をした男はどこか恥ずかしそうにしていた。

66星のお姫様の続き:2005/12/31(土) 12:38:35
話に付き合ってくれたブロリーに事の次第を話そうと、
「バーダックのことは知っているよな?」
と切り出すと、彼は浮かない顔をしてみせた。
「はい、よく…」
「奴には2人のガキが…」
と続けると、ますます沈んだ顔をした。
ぐっと腕を組み、何かに耐えているようである。
「気分でも悪いか?」
と彼女が尋ねても「いいえ、大丈夫です」としか返さない。
「その…ガキなんだがな、星送りになった弟のほうが
 迎えにいった兄貴をボコボコにして帰ってきたんだ」

名前は…と彼女が続けようとすると、

カカロット…

そう言いながら、すっくとブロリーは立ち上がった。
「おい、何で知ってるんだ?ブロリー…」
引きとめようと見上げたその顔は、今まで彼女が見たどの表情とも違っていた。

67星のお姫様の続き:2005/12/31(土) 12:39:03
な、何だってんだ?
しばらくぽかんとして、その場を動けなかった。
彼の表情はいつもの物悲しそうな、頼りないものとは違っていたし、
何よりその身を包んでいる雰囲気がガラっと変わってしまったように思えたのだ。
またしてもぽつんと部屋に残されてしまった。

ブロリーを追うべきか、ほうっておくべきか…と考えると、
そういえば「カカロット」と口にしていた。
知り合いだったのか?
でも何だか尋常じゃない感じがした、あいつがあんな顔をするなんて、と
気が付けばブロリーを追いかけていたのだ。

スカウターをつかえば間違いない、
と、彼の戦闘力を探してみる。

「何故…」

勇み足だった彼女の足が止まってしまう。
彼の戦闘力を探しても「該当者0人」と空しく表示されるだけだった。
「故障したのか?」
とスカウターを手にとってみた。
手に取るといつもと形が違う、そうだ、ターレスに新型をもらってそのまま…
「あいつめ、不良品を渡しやがったな、くそったれ!」
仕方ない、俺が先にそのカカロットとかいうのに会えばいいんだ、
と彼女は再び足を速めた。

68星のお姫様の続き:2005/12/31(土) 12:39:34
彼女がそこにたどり着くと、看守は驚いて気をつけの姿勢をとった。
「ここは、あなた様のような方が足を踏み入れるところでは…」
「うるさいぞ、俺も前科もちだ、知っているだろう?」
彼女がすごみをきかせると、看守はそれ以上何もいえない様子だった。
ここは他の星の捕虜や犯罪人を捕らえておく牢獄である。
母星の横に寄り添うように飛ぶ、小さな惑星まるごとが「牢獄」なのだ。
「バーダックのせがれでカカロットというガキがいるはずだ」
案内しろ、と彼女が言うと、看守はそれに大人しく従う。
「はい、変わった奴で…」
「牢獄」には薄暗く細く長い廊下があり、
その両脇に犯罪者が一人一人入れられている独房がある。
彼女がコツコツと音を立てて歩くと、
看守が「足音はなるべく立てないで下さい」と言う。
彼女が「何故だ?」と問う前に答えが聞こえてきた。
「あああああ、王よ、どうか慈悲を」だの、
「素晴しい王をたたえて賛美いたします」だの、
「惑星ベジータに栄光あれ!」だの、
聞きたくもない声が廊下じゅうに響く。
「誰も彼も王に許しを請うておるのです」
戦闘が生きがいの奴らをつないでおけば二日もたたずこうなります、
と看守が不気味な笑みを浮かべた。
「で、そのカカロットというのは…」
と彼女が言うと
「ここにおります」
と看守が一つの房の前に立った。
「中へ通せ、話がしたい」

69星のお姫様の続き:2005/12/31(土) 12:41:10
看守が引き止めるのを簡単に振り払って、
彼女はカカロットの前にたった。
バーダックのガキと聞いていたので、安易に小さな子供を想像していたのだが、
出で立ちは青年のようでどうやら自分と同年代のようだ。
「顔を上げろ」
と彼女が言うと、大人しく顔を上げる。
「驚いたな、まさにバーダックのガキの顔してやがる」
ラディッツは言われなければわからん顔をしていたのにな、
と彼女が独り言を言うと、その「カカロット」は
情けない顔で「なぁ、いつになったら、腹いっぱい飯が食えんだ?」
と、また顔を下げてしまう。
「腹がすいているのか、よし、何か食わせてやる」
彼女が言うと、それまでの顔が嘘のようにパァっと顔が明るくなった。
「俺について来い、カカロット」
彼女はカカロットをつないでいる鎖を解こうとした。
ふと、その手が止まる。
「そうだ、念のため…」
故障していると思われるスカウターで測るのも可笑しいが、念のためなのだ。
スカウターがピッと音をたててはじき出した数値は…
「たったの500…」
バーダックの血を受け継いでいるというのなら、
どんなすごい戦士なんだろうと思ったのだが…
そう思いながら、彼女はカカロットの鎖を再びはずしにかかった。

70星のお姫様の続き:2005/12/31(土) 12:41:39
「そんなにうまいか?カカロット」
「うん、うん、うげげ、げほっ」
がっついている時に馬鹿正直に答えたものだから、
のどにつかえたらしい。
彼女が背中をたたいてやると、
なみだ目を浮かべながら「サンキュー」
と言って、再び食べ物に夢中になった。

彼女は自分の体によくなじむ椅子に腰掛けて
ふう、とため息をついた。
ここは彼女の部屋で、へんちくりんな服を着た彼に似合う部屋ではない。
でも、他の部屋では人目につくので仕方なく、つれてきたのだ。
改めてその顔を見ると、一生懸命食べているせいもあるのか少し幼く見えた。
「カカロット、それを食い終えたら俺の質問に答えろよ」
彼女が言うと「うん」と素直に答える。
「その格好じゃ目立つだろうし、お前に服をやったほうがいいかもな」
彼女はカタログを広げた。
「背格好は、バーダックと同じくらいか、これでいいだろう」
おい!ナッパ!用意しろ!と彼女は全快して再び勝手に部屋の門番をしているナッパに言いつけた。
ナッパは扉の向こうからなみだを目にためて言う。
「姫様、俺が用意するんですかい?その間その男と二人っきりになっちまう」
「情けない声を出すな!だから負けたんだ、馬鹿、とっとと用意しろ!」
「ううう、どうかご無事で」
涙を拭きながらナッパは旅立った。

71星のお姫様の続き:2005/12/31(土) 12:42:12


「馬鹿な奴…」


彼女があきれていると、カカロットが遠慮なしにゲップをした。
「こ、この!下品な奴め!」
「はぁ〜腹いっぱいだ、オラもう食えねぇ」
叱る彼女におかまいなしでカカロットが満足そうに言う。
「おめぇ、いい奴だな、ありがとう」
にかっと笑うその顔は、彼女が見てきたどの男も見せたことのない顔だ。
「礼を言うよりも俺の質問に答えろよ」
「うん、何だ?」
「その前に…口の周りに沢山食べかすが付いてるぞ、何とかしろ」
「んー?うん」
言われてカカロットの舌が口の周りを一周した。
「とれた!」
誇らしげに言う。
「な、なんて汚い野郎なんだ、それに…」
今まで気がつかなかったのが不思議なくらい、
カカロットの体から異臭が漂ってきていた。
「お前、ろくに風呂にも入っていないんだろ?」

「風呂?なんだ?それ」

彼女がずっこけたのは言うまでもない。

72星のお姫様の続き:2005/12/31(土) 12:42:35
汚い男をいつも自分が使っている浴室に入れるとは、
と彼女は情けない気持ちでいっぱいになりながら湯を張った。
「おい、カカロット、服を脱いだらこっちへ来い!」
脱衣所にいる男を呼びつけると、素直に現れたのだが、彼女は絶句した。
「なななな何て格好してるんだ!前をかくせ、馬鹿野郎!!」
「うん?」
前も隠さず現れた男に、思わず目を覆う。
「こうか?」
と言うので振り返ると、タオルで自分の目を隠している。彼女は再び絶句した。

自分が見ないようにするしかないらしい。と彼女は覚悟を決めた。
「カカロットこの湯の中につかれ、肩までだ」
素直に言うことを聞くので、何とか風呂に入れてやることぐらいは我慢するしかない。
ばっちぃ男をこのまま自分の部屋においておくほうが不快なのだ。
「あのさ、さっきから言ってる『カカロット』って何だ?」
「お前の名前だろう?」
彼女が手にした洗髪剤で髪を洗ってやると、
染みる、と涙声を出した。目を閉じてろカカロット、という彼女の言葉に彼は言う。
「オラそんな名前じゃねぇよ、じいちゃんにもらった『孫悟空』って名前がある」
「ソンゴクウ?」

73星のお姫様の続き:2005/12/31(土) 12:43:00
やさしかったじいちゃんのこと。
形見の玉のこと。
一緒に戦う仲間がいたこと。
地球という星での暮らしを、カカロットは彼女に聞かせた。
「それにしてもどうして風呂に入らなかったんだ」
と聞くと、
「川でいっぱい泳ぐと匂いも汚れも取れた」
と原始的な答えが返ってきた。
そういえば、彼が身につけていた服もただの布切れのようで
サイヤ人が身に着けているようなプロテクターの役目も担うものではないようだ。

それを考えると、彼女は不思議で不思議でたまらなくなってくる。
戦闘力がたった500のこの脳みその足りない男が、
戦士2人を倒したというのだ。
防御に長けた服を着ていた訳でもない。
では、何かの武器で倒したとか…彼女が考えていると、
「なあ、おめぇけっこう強いだろ?いっぺん戦ってみてぇなぁ」
とカカロットが無邪気に言ってきた。
「さっきの扉にいた奴も結構強かったけどさ、おめぇの方が強いだろ?」
スカウターもなしで何故分かるんだ?と聞きたかったが
何故かくやしい気がして彼女はだまりこんだ。

74星のお姫様の続き:2005/12/31(土) 12:43:32
「カカロット、体は自分で洗えるよな?」
せっけんを含んでふわふわのスポンジを手渡す。
「うん、オラ、頑張る!」
そんな母と息子のような会話をして微笑んでしまったり。
目の前の男は確かに「年齢のわりに」は、幼い顔をしている。
だが「少年」という言葉はもうその肉体には似合わない。
「なぁ、オラまだおめぇの名前聞いてない」
腕をゴシゴシしながら尋ねてくる。
「ベジーティアだ」
彼女が教えると「ムツカシイ名前だなー」と。
「もう忘れちまった、えへへ」と。
青年であるのに、これはどうだろう。
大丈夫なんだろうか?と思ってしまった。

彼女は母性本能というものに目覚めているのに気が付いていない。

75星のお姫様の続き:2006/02/13(月) 23:05:53
時間が空いてしまって申し訳ない。
また少しずつ投下させてください。


「姫様!戻りましたぜ」
とナッパの声がする。
「おう、ずいぶん早いじゃないか」
彼女が部屋の扉まで戻ると、
ナッパが男物の下着と、戦闘服一式、それにスカウターをうやうやしく彼女に渡す。
「助かったぜ、礼を言うぞ、ナッパ」
「そ、そんな、へへへ」
ナッパの目がウルウルになった。嬉しいのか悲しいのかはっきりしない顔をして。
「カカロット、体は拭けたか?」
「まーだだよ、もうちっとかかる」
その会話にナッパは絶句した。彼女がいつもつかう洗髪剤の香りもする。
もしかして、もしかすっと、もしかして。
あの野郎を風呂に…。

「カカロット、着替えの服はここに置くぞ」
「うん、サンキュー」

ああああああああああああああああ、間違いねぇっ!
ナッパの苦悩は続く。


「なんだ、まだ濡れたままじゃないか」
そう言って彼女はカカロットの髪に手を伸ばし、丁寧に拭いてやる。
「しかも、服が前後ろ反対だぞ」
ついでにみだしなみも整えてやる。
「スカウターはこう、付けるんだ」
戦士の出来上がりだ、と彼女は言いながら、その男を見つめた。
ボロボロの服を着て、うなだれていた時とは別人のようだ。
バーダックが若い頃はこんな風だったのかもしれない、
と考えると何故だか鼓動が早くなった。

彼女は恋をしているのか?
それは彼女自身も知るところではない。

76スレ514@管理人:2006/02/13(月) 23:37:21
続き投下GJ!
ナッパ落ち着け誤解誤解!!

77花火志願の名無しさん:2006/02/17(金) 01:31:33
素晴らしい…!
しばらくこないうちにこんな良作が…!

頑張ってください!

78星のお姫様の続き:2006/06/24(土) 21:50:59
超がつくほどに久々になってスマソ

ナッパが初めて彼女に出会った時、彼女は彼の大きな両手の平に乗るほどの赤ん坊だった。
彼はその腕を認められ、王の傍にいるようになって久しいが、
あんなに目を細めて喜んだ王の顔は見たことがなかった。
若いころから伸ばした立派な髭のおかげだけではないが、
王のイメージと言えば、専ら「威厳」の二文字であるから、
その変貌ぶりと言ったら、笑い話になってもいいほどだった。
そんな王と一緒に独り身のナッパは自分に娘が出来たかのように喜んだ。
ナッパだけではない。全てのサイヤ人がその誕生を祝福した。
たった一人、産後、青白い顔をしていた王妃を除いては。

おしめを変えたことは流石に無いが、幼少の頃から今日その日まで、
彼女を親のような気持ちで見守ってきた。
彼女が軍に入ることを志願した時に、王に「娘をたのむ」と言われたから、
という理由だけではない。
王がそうした以上に、彼は彼女を甘やかした。
彼女が強気で少々わがままなのは、彼に責任があると言ってもいい。
事実、彼女は戦闘以外では彼に依存しっぱなしだ。

彼女に悪い虫がつこうとするものなら、影でこっそり威嚇していたナッパである。
この「カカロット」の存在は放っておくわけにはいかない。
しかし彼女が楽しそうにしている以上、口出しできる訳がなかった。

サイヤ人の女性に好みの異性のタイプを尋ねれば、十人が十人、口をそろえ、
「強い男」と返すだろう。容姿や性格などは、二の次である。
スカウターが示すカカロットの強さを見てナッパは自分を無理やり安心させることにした。
しかし、逆に考えればどうして彼女が
そんな男に世話を焼いてやるのかが不思議なのだが。

79星のお姫様の続き:2006/06/24(土) 21:51:32
「ナッパ、俺の話をちゃんと聞いていたか?!」
突然の彼女の大声にナッパは驚いた。
悶々としているうちに彼女が話しかけていたようである。
「す、すまねぇ…」
「ブロリーの奴がこいつを知っているみたいだったんだ」
「へえ、ブロリーが」
「知り合いかと思ったが、こいつはこの星のことは覚えているはずがない」
「そりゃそうだ、覚えてたらとっくに帰還してるだろうに」
カカロットを二人で見つめるが、不思議そうにこちらを見つめ返してくるだけだ。
「それに、さっきからブロリーの居所も分からないんだ」
彼女はターレスにもらった新型だといってよこしたスカウターはとっくに外し、
自分のスカウターを装着していたが、ブロリーの戦闘力は依然、見つからないままである。

80花火志願の名無しさん:2006/06/25(日) 00:18:55
キタデェ

81花火志願の名無しさん:2006/06/25(日) 13:04:09
キター!
ナッパさん素敵

82花火志願の名無しさん:2006/06/25(日) 18:16:16
ナッパハァハァ
このベジティめっちゃんこイイカワイイ
つか設定がすき

83花火志願の名無しさん:2006/07/27(木) 18:47:28
つ づ き! つ づ き!

84花火志願の名無しさん:2006/08/25(金) 00:47:28
続き…

85花火志願の名無しさん:2006/08/25(金) 00:47:37
続き…

86花火志願の名無しさん:2006/10/06(金) 20:28:17

魔人ブウとの戦いから帰還した悟空、ベジーティア、デンデ、サタン、犬、魔人ブウ。

全宇宙、現世、あの世、全てを救った戦い抜いた戦士たちは家族や仲間・・・帰りを待つ者たちがいる地球へと送り届けられた。その直前での地球で戦士達の帰りを待つものは、魔人ブウへの勝利を喜び合っていた。

「やっぱり、あの2人は凄いぜ!!」

顔に傷を持つ男が喜び、笑顔でそう言うと、全世界―――全宇宙を救った戦士の1人、戦いの途中に逆転の機転を思考し、見事その作戦で逆転勝利へと導いた女戦士の息子トランクスが満面の笑みで笑い、口を開いた。

「オレのママだもん!!ママは強いから当たり前だろー!!」

その息子の声に、その息子の父親であるブルマは微笑みを浮かべていた。

「なあ、ピッコロ・・・ベジーティアは地獄には落ちなかったってことなのか?」

「らしいな。多分閻魔がもしもの時のためにベジーティアの魂を残しておいたのだろう・・・そのおかげで助かった」

「帰って・・・くるかな?この地球に」

「きっと帰ってくるだろう」

ピッコロのその言葉に、ベジーティアの夫のブルマは嬉しくてたまらないといった笑みを浮かべた。

『早く・・・早く帰ってこい・・・』

『会いたい・・・』

そう思いながら、未だに騒ぐ仲間達を微笑を浮かべて見つめていた。

「パパ!」

急に息子に呼びかけられ、ブルマは息子に視線を移し、少し屈んだ。

「パパ・・・実はママが・・・ママが自爆する前にオレ、ママに抱きしめてもらったんだ」

そのトランクスの言葉に、ブルマは驚き、目を見開いた。ベジーティアがトランクスを抱きしめるどころか、抱いたこなど1度もなかったからだ。そのベジーティアがトランクスを抱きしめた・・・そのことに驚きを隠せないブルマ。だが、そのことに驚いているブルマは息子の更に続けられた言葉に青い瞳を揺らす。

「ママ・・・パパを大切にしろって・・・そう言ってたんだ・・・」

「ベジーティアが・・・。ママが・・・?」

「うん。・・・ママ、早く帰って来るといいね。オレ、遊園地連れてってもらうんだ!」

トランクスがそう嬉しそうに言い、悟天の元へと走って行く後ろ姿をブルマは見つめながら目を閉じた。

瞼の裏に見えるのはベジーティアと出会ったころから今までの事。

最初は、悟空達や地球を侵略しにきた最悪の敵だった。

87花火志願の名無しさん:2006/10/06(金) 20:44:43
そして、なめック星ではナメック星人を殺し、下手をすれば自分も殺されていたかもしれなかった。

地球で、家へと来る事を誘った。


最初は彼女の寂しそうな姿を見て、気になりだした。

次第に、彼女を目で追うようになった。

そして、その気持ちが恋だというのに気が付いた。

彼女の孤独を救うことは自分ではできないかもしれない。でも、一緒にいたかった。

真剣な思い、それにきっと彼女は応えてくれた。だから身体を許してくれた。

そして、トランクスが産まれた。

セルとの戦いが終わり、悟空は死に、もう戦いはやめると言い出した。

最初は驚いた。でも、トランクスを鍛えるうちに、元の彼女に戻り始めた。

戦うことを今までは止めはしなかったが、やはり心配だった。だから内心、戦いをやめると言い出した時はホッとした。

でも、やっぱり、戦っている彼女の事も好きだった。

トランクスを鍛える内、彼女らしさが戻って逆にホッとした。


幸せだった。


彼女が自爆をし、ブウを倒そうとしたあの日までは。

88花火志願の名無しさん:2006/10/06(金) 20:57:59
彼女が死んだと聞かされ、泣いた。

男だとか、人目を気にするだとか気にならなかった。

後から後から涙は溢れる一方だった。

ああ、こんなにも自分は彼女を愛してたんだ、そう思った。

そんなことはわかりきっていることだったが、改めてこんな形で気付かせなくってもいいじゃないか、そう思った。

確実に彼女は地獄へ落ちた。だから自分が死んでも彼女に会うことはできない。

最後に見た姿があんな姿だったなんて嫌だった…


だから、自分が生き返り、愛しい彼女の声を聞いたときは嬉しくて仕方なかった。

きっと、彼女と悟空ならブウを倒してくれる。そう信じていたから。

そしてその後、必ず自分と息子の元に帰って来てくれる・・・そんな思いがあった。


ブルマは笑みを浮かべたまま、溜息を漏らし、自らと同じ色の空を仰いだ。


そして・・・

神殿の騒ぎが先程の比ではなくなった。その原因・・・

ブルマは愛しい人を目にとめ、息が止まるようだった。

89花火志願の名無しさん:2006/10/06(金) 21:34:40

「悟空!!ベジーティア!!」

「悟空さ!!」

「ベジーティア!!」

「ママ!!」

仲間達が、救世主達の名を呼び、駆け寄る。

悟空の家族が、夫へと父親へと抱きつく。チチは泣いていた。
悟空は小さな息子を抱き上げている。これからは家族4人で暮らしていけるその喜び。嬉しくて仕方ないのだ。


「ママ!!」

トランクスが尊敬し、大好きな母親に飛びつく。母親―――ベジーティアはその息子が飛びついてきた行為を素直に抱きとめた。トランクスの目が少し潤んでいる・・・

「ベジーティア・・・」

ブルマは妻―――ベジーティアの名を呼ぶ。ベジーティアはブルマの瞳を真っ直ぐに見つめた。

「お帰り・・・ベジーティア」

ブルマはトランクスを抱きしめたままのベジーティアへと微笑みかけた。

『抱きしめたいのに・・・ずるいぞ、トランクス』

一瞬息子をジーっと見つめると、ベジーティアの横に立ち、今地球へと、自らの隣へと帰ってきた愛しい人の肩を抱きしめた。普段のベジーティアなら振り解かれるだろうが、今のベジーティアは振り解こうともしなかった。

ベジーティア自身、そのブルマの温かな手を肩に感じ、生きている実感を感じていた。

そして、皆が皆、勝利の喜びを分かち合い、皆は翌日C.Cへと集まることを約束し、各自家へと帰ることになった。


「あ、そうだ。ベジーティア!」

悟空はベジーティアの名を呼び、帰ろうとする3人を引き止めた。

「何だ・・・カカロット」

「おめぇのおかげでかてたんだ。ありがとな。それと、おめぇが生き返ってくれて良かった。じゃあ、またな!!」

「フン・・・」

そして2人は不敵に、だが壮絶な戦いを切り抜けた戦友として、笑い合い、家族を連れ、帰路へとついた。


ああ・・・やっと終ったのだ。厳しい戦いが・・・

90花火志願の名無しさん:2006/10/06(金) 23:13:53

ブウとの戦いが終わり、ベジーティアがブルマとトランクスの元へと帰ってきたその日。

帰って早々、戦いの汚れを落とすべく風呂へと入り、その後、家族で食事をとったベジーティア。家族の皆が笑顔で自分の帰りを迎えてくれている・・・ベジティアはこの世へと帰ってきたことを実感した。



その日の夜。

「疲れただろ、ベジーティア。」

「・・・」

返答はない。だが、ブルマはそんなことは気にしなかった。

「トランクス、凄く嬉しそうだった。やっぱりベジーティアの事大好きみたいだな。さっきまでお前にべったりだったからな。やっと寝たみたいだけど」

ブルマはベジーティアの腰掛けるソファーの横に座る。もう会えないと思っていた妻の隣へ。

「ベジーティア・・・もう死ぬな・・・俺達を置いて死ぬなよ・・・」

ブルマはそう言いながら自分よりかなり小さなベジーティアを強く抱きしめた。腕に抱いたそのぬくもり。もう失いたくない。

「・・・悪かった・・・」

ブルマは驚き、抱きしめたまま目を見開いた。

あやまった?あのベイーティアが?

「・・・オレは・・・昔の自分のオレに戻りたかった。でも・・・」

「戻れなかった・・・だろ?孫君から聞いた」

「・・・」

ベジーティアは頷き、ブルマの広い背へと手を回し、ブルマの体温、心臓の音を感じていた。

「それと、これはトランクスから聞いた。ベジーティア、お前、俺やトランクスや地球を守るために戦ってくれたんだろ?凄く嬉しかった」

「ブルマ・・・」

「でも、それと同じくらい悲しかった。俺たちにとって、お前はいなくちゃいけない。だから・・・」

そこで1度、ブルマは言葉を切り、少し身体をはなしてベジーティアの深い夜色の瞳を真っ直ぐに見つめた。

「俺の・・・俺たちのそばにいてくれよ・・・もう絶対死ぬようなまねするな・・・」

真剣な瞳。真剣な声色。陽気で明るいブルマのその言葉や態度。ベジーティアは『ブルマ』という男の存在で自分が救われ、変わる事ができた。地球を好きになったのもこの男の存在がかなり多きいだろう・・・。それを今改めて感じ、愛しげにブルマの大きな手を握り締めた。

「ああ・・・もうお前やトランクスと会えないのは嫌だ・・・」

ベジーティアは本音を語った。

バビディへの洗脳時も、ブウと戦っている時も死を決意した時も、心の中で思うのは愛する家族のこと。

ブルマ・・・

トランクス・・・


死して尚、身体を与えられた時、やはり思うのはその家族のこと・・・

もう会えないのかと思うとやりきれない思いばかりがベジーティアの中で膨れ上がる。
もう触れることのできないあの温かな大きな手。自分を好いてくれるあの小さな温かな手。

もうはなれたくはない。

あんな思い、もうしたくない。

お互いにそう思い合い、見詰め合っていた。

そして、どちらからともなく顔を近づけ、互いの唇に互いのソレを重ねた。




終わり




ごめん、へタレなくせに投下して本当スマソ…

91花火志願の名無しさん:2006/10/10(火) 04:06:43
うはーw
久々にいいもんありがとう!!

92花火志願の名無しさん:2006/10/14(土) 23:28:13
久しぶりに覗いたら、凄いのキテタ!!GJ!

93スレ514@管理人:2006/10/30(月) 22:05:25
GJ!!ベジーティアたんはブル雄とだと良い夫婦てかんじだ


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