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長谷川チンドン繁盛記

1名無しさん:2016/10/29(土) 09:48:46
このスレは架空のチンドン屋さんの話です。
ある特定の組織・団体を指し示す物ではありません。

2名無しさん:2016/10/30(日) 19:13:57
◎長谷川チンドン繁盛記 プロローグ◎

 長谷浩二(45)は浅い夢を見ていた。
 妻と娘が長谷と営業車の写真を撮っている場面、それは悪徳フランチャイズのHPに掲載する写真を撮る為だった。
 奈菜『お父さん、もっと自然に笑いなよ!』
 娘の指摘通りで長谷の笑顔はぎこちなく少しこっけいだった、その姿を見て妻からも自然と笑みがこぼれた。
 その時はまだ、長谷親子は希望に満ち溢れていたのだ。
 近所の子供が長谷の営業車を指さしママに尋ねた『なんであの車あんなに派手なの?』
 ママは淡々と答えた『あれはチンドン屋さんが使う車だからよ』
 長谷はそこで夢から目覚めた、そして憂鬱な1日が始まりを告げた。
 この物語は長谷親子が絆を取り戻す物語です。

3名無しさん:2016/10/30(日) 19:14:29
◎長谷川チンドン繁盛記 第1話◎

 長谷浩二(45)は朝から自身でピックアップした業界の顧客に飛び込み営業をおこなっていた。
 長谷は研修で培った営業トークを羅列したが、現実は決して甘くは無かった。
 訪問企業の担当者は言った『うちにはもう10年来の付き合いがある業者がいるんだよね』
 長谷は粘るが担当者は『この仕事は看板じゃ仕事は無いよ、判る? 最大手のドーナツ屋本舗でも使えない奴には仕事は無いし・・』
 長谷の表情が露骨に暗くなると担当者は『失礼,おたくがNo1だったっけ?』
 長谷は開業して1か月半で痛感していた、この家業は経験こそが物を言う事を。
 大きく分けると2つの問題が浮上した、顧客の要望に応えられない事と価格面だ。
 第一に、顧客が望むニーズにこのフランチャイズの用意するメニューでは対応が出来ないのだ。
 特殊な技術とはいえ、他事業者を凌駕するコンテンツは無く同じ土俵での競合となるのである。
 第二に価格面に関しても高額なロイヤリティを加味した価格設定の為、同業他社に後れを取る状況なのである。
 又、長谷は優良であるはずの開業エリアでも重い十字架を背負うのであった。

4名無しさん:2016/10/30(日) 19:15:05
◎長谷川チンドン繁盛記 第2話◎

 長谷浩二(45)は今日、広瀬‘通称 鼠先輩’の現場に助っ人で呼ばれている。
 長谷は開業後、近隣地域の先輩に声を掛けたがその多くの回答は無給なら呼ぶや、そもそも仕事自体無い加盟店がほとんどだった。
 ‘鼠先輩’は数少ない対価を得られる加盟店だったのである。しかし貰える日当は12,000円だが、長谷には有り難かった。
 ‘鼠先輩’は小柄だがフットワークの良さと愛嬌で顧客や同業者から仕事をゲットしていた。
 ただ、開業してから1年半の経験を持つ‘鼠先輩’ですら繁忙期以外は仕事の確保に苦労しているのが実情である。当然、応援を
 頼める様な仕事は限られるのである。
 ‘鼠先輩’は長谷に対して気さくに話をしをしてくれた、長谷が開業したエリアについての事だ。
 長谷のエリアは非常に競争が激しく競合他社がひしめいている事や、このフランチャイズでも長谷が4代目で有る事をである。
 そして退会した先代の2人は引き続きこの家業を長谷のエリアで行っている事などをである。
 長谷があてがわれたエリアは決して優良エリアでは無かったのである。
 今日の現場は長谷と‘鼠先輩’以外に‘ウザい君 名前不明’と‘便乗君 名前不明’がいて4人での作業となった。
 午前中の作業が遅れて昼食が少し後にずれ込む事を‘鼠先輩’が説明をしていると‘ウザい君’が噛みついた。
 『昼食は12時からが当たり前。どういう現場管理してんのウザいし』すかさず‘便乗君’が同調する。
 ‘鼠先輩’が仕方なく許可を出すと2人は現場を後にした、残りの作業は長谷と‘鼠先輩’で行う事となった。
 又、夕方の定時となり若干の作業を残していたが、‘ウザい君’がまた噛みついた。
 『残業なんてウザいし、早く帰ってオナニーしないといけないんだけど』隣で‘便乗君’がニヤツイていた。
 そして2人は許可も無く現場から帰ってしまった。
 世の中いろんな奴が居るなあと長谷は思った。

5名無しさん:2016/10/30(日) 19:15:35
◎長谷川チンドン繁盛記 第3話◎

 長谷浩二(45)は地道に飛び込み営業を続けた結果、若干だが仕事を発注してくれる得意先が出来てきた。
 今日の仕事は近隣から数人の応援を必要とした。その中にはこの地域で一番優秀と噂される駿河‘出来過ぎ君’が居た。
 長谷は元受として現場を仕切っていたが経験不足から、段取りなどが上手くは出来ていなかった。
 ‘出来過ぎ君’は仕事のスピードや精度が優れているのもさることながら、絶妙なタイミングで長谷の仕切りをアシストしてくれた。
 長谷は‘出来過ぎ君’のアシストのおかげで初めての元受仕事を無事に終わらせる事ができた。
 長谷はその夜、‘出来過ぎ君’を誘い飲みの席を設けた。
 色々な話が聞けた、‘出来過ぎ君’は元々この業界での仕事に従事していた事、この本部の実態を理解した上で加入した事、この地域
 で現状などなど。
 ‘出来過ぎ君’は言った『独立開業したんだから本部の仕事をあてにするより、看板だけ使って自分のお客を増やせば良いんだよ』
 長谷を含めて本部への不満を口にする加盟店も多い中‘鼠先輩’や‘出来過ぎ君’はこの環境に順応しているのである。
 長谷は複雑な思いでその話を聞くしかなかった。
 長谷と研修を共にした‘でんがな’と‘次郎長’からも長谷よりは明らかに良いスタートがきれている報告をもらっている。
 長谷は感じていた、他者との比較で嫉妬する自分の嫌な部分と見通しの立たない自分自身の未来をである。
 その数日後、営業を終えて帰宅すると家には妻と娘の姿はなかった。

6名無しさん:2016/10/30(日) 19:16:07
◎長谷川チンドン繁盛記 第4話◎

 長谷浩二(45)はこの悪徳フランチャイズが年に一度開催する総会に出席していた。
 そこでは久しぶりに再会した‘でんがな’や‘次郎長’達の戦友と話が盛り上がった。
 ‘でんがな’は開業早々に理解のある業界関係者と巡り合いそこそこ仕事には困らない状況を作れている様だが、
 技術の未熟さからそれなりのクレーム処理に追われているとの事。
 ‘次郎長’は実直な人柄から知人を中心に仕事を紹介してもらう良いスキームが出来ている様で話っぷりからも仕事は順調に
 推移している様だった。
 話を聞くと‘でんがな’と‘次郎長’も長谷と同じく、この本部から受けた顧客紹介はそれぞれ1件に留まっている。
 まるで何かの証拠作りの様にである・・・・
 その時、悪徳フランチャイズ主催者のいる方向から聞き覚えのある声が聞こえてきた・・・・『御意っ』
 3人の視線は自然とそちらに向かい、そして3人はそちらを凝視せざろうえなかった。
 そこには運営スタッフの名札を付けた‘子豚野郎’がいたのである。
 ‘子豚野郎’はこちら気づきニヤリと笑った、その笑顔は無機質で冷たかった。
 長谷達が受ける顧客紹介が少ない事の因果関係は不明だが、この悪徳フランチャイズに反目の思いを抱いたのはこの瞬間からだ。
 総会も終わり営業に明け暮れる日常が始まる。
 最近、娘とはまともな会話をしていない。仕事が無く娘の親友のご両親から仕事を貰った事で親友になじられた娘はその子とは
 疎遠になり悪い仲間と付き合う様になって帰宅も遅くなった。
 妻も家計の足しにとパートに出るようになってから帰りが遅くなった。
 長谷一家の歯車は緩やかに壊れていった。

7名無しさん:2016/10/30(日) 19:16:41
◎長谷川チンドン繁盛記 第5話◎

 長谷浩二(45)は仕事に注力する事、その思いで妻や娘との関係をないがしろにしていたのかもしれない。
 思う様に成果の上がらない自分自身に苛立ち家族に対して負い目の様な物が有った。
 長谷一家はそのデリケートな部分に干渉しない事でぎりぎり家族関係を構成していた。
 仕事は地道に営業を重ねる事で、提携先や個人の顧客を掴みつつあった。
 ただ、この家業を継続して生業にするにはあまりに細くて弱い柱である。
 長谷が営業で活動して感じた一番の問題は、強い柱になる可能性が高い大手企業が個人との提携を許容していない事だ。
 長谷達はフランチャイズに加盟していても、所詮は一人親方なのである。
 逆の立場になれば当然である、ちゃんとした会社であれば飛び込みで来た人間を真に受けることは無いだろう。
 おのずと受け入れてくれる先は限定されるのである。
 その時は突然とやってきた。
 本部からの通達で全加盟店エリアフリー及び、本部紹介入札の知らせである。
 長谷は優良なエリアでの残り一枠で開業したはずで有るが、見事に裏切られた知らせとなった。
 ただしすでにこの悪徳フランチャイズの内情を知ってしまった長谷にはさほどの驚きは無いが怒りだけは感じた。
 一部の癒着加盟店を除きメリットの無いルール変更である。
 その知らせを受けた‘鼠先輩’や‘出来過ぎ君’達、数少ない優良加盟店はこの悪徳フランチャイズに見切りを
 つけて、退会・独立をする事になった。
 退会する優良加盟店に対してこの悪徳フランチャイズが行った行為は想像を絶する物だった。

8名無しさん:2016/10/30(日) 19:17:11
◎長谷川チンドン繁盛記 第6話◎

 長谷浩二(45)が加盟する悪徳フランチャイズは長谷が加入する前に情報端末の導入による月負担金増で加盟店と
 揉めた過去があった。受け入れを拒否した加盟店は一方的に契約解除されたのである。
 今回のエリアフリー及び、本部紹介入札でも難色を示す加盟店には同様な処置が無慈悲に実行されたのである。
 こんな悪徳フランチャイズのイメージアップに貢献していた優良加盟店も例外なく、一方的な契約解除・残契約
 期間のロイヤリティ支払いを強要された。
‘鼠先輩’や‘出来過ぎ君’は個人でこの家業を継続する道を選んだ、長谷自身も選択の時は迫っていた。
 長谷は家族問題も抱えていた、その夜、長谷・妻・娘は今の現状について話し合う事となった。
 妻や娘は長谷が悪徳フランチャイズに加盟するのに決して賛成では無かった事。
 開業後、妻や娘と距離を取る長谷に対する気持ちの変化。
 長谷は初めて知らされた事実だった。
 上手くいかないほとんどの原因が、長谷自身にあった事をである。
 一度壊れかけた家族関係は簡単には修復出来ないかもしれない、ただ自分が招いてしまった事である。
 今すべき事は1つ。
 長谷はこの悪徳フランチャイズからの退会を決めた。


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