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呉井 歳美by出栖川

3第九次ダンゲロスメインGK:2012/06/13(水) 00:59:35
葱は歳美が指し示した方向を見る。
果たしてそこには冷たい亡骸と化した最愛の妹の姿があった。
葱は目の前が真っ暗になり、足元からは大地の感覚が無くなるのを自覚したが、しかし精一杯の冷静を装い後輩に声をかけた。
「そうか、お前は良くやってくれた、何も気に病む必要はない。そう、そんなことより奴らを、こんなことをした奴らの仲間ををぶっ殺す事を考えよう」
歳美はきっとモカを取り戻そうと必死に闘ってくれたのだ。しかし敵が卑怯にもモカを巻き込み、そして妹は死んでしまったのだ。怨むべきは敵陣のクソどもであり歳美にはなの恨みもない。むしろ友人を巻き込んでしまった事で彼女は深く傷ついているに違いない。
歳美はモカと同じくらい心やさしい少女なのだ。今は彼女を慰めてやらねばならない。それが先輩としての務めだ。
そう思いながらもその視線はモカの遺体から一瞬も外せずにいる。
――ああ、モカ!モカ!あんなに似合っていた制服が血みどろに!あのキラキラ輝いていた目も虚ろになって。その細い身体も袈裟がけに両断されて…
――袈裟がけに両断!?
葱はようやく妹の亡骸から視線を外し、憎むべき大男の死体に目を向けた。
そう大男を絶命せしめた一刀とモカを殺した凶刃は正しくまったく同じ太刀筋であった。
「これは一体…」
葱は頭の中が急速に冷めていくのを感じた。彼がこの魔人学園にあって恐れられているのはその魔人能力ゆえではない。本当に危険な状況においてこそより一層冴えわたる頭脳がためであった。
――まさか歳美は相手ごとモカを斬ったのか?だが何故だ、歳美の「血風剣」は同時に敵と味方を切っても発動しない。そもそも歳美はあの力を使うのに抵抗を持ってたハズだ。
葱は歳美がその能力「血風剣」を使った時の事を思い返していた。

生徒会と番長グループのよくある抗争。しかしその最中で敵の卑怯な手により味方の一人が致命傷を負ったのだ。その男は日ごろから歳美とウマが合わず幾度となく衝突していた相手であった。
もう助からないと見たその男は、歳美に自らの命を「血風剣」の糧としろと言ったのであった。
泣きながら歳美は拒否しようとしたのだが、男が力なく笑いながら「最後の頼みぐらい聞けよ」と言った事で覚悟を決めたのか、何度も「ごめんなさいごめんなさい」と繰り返しながら男を介錯し、その魔剣によってもっとも手ごわい敵の魔人を仕留めたのであった。
しかしその後の歳美の落ち込みようは半端ではなく、葱含め仲間たちは彼女にこんな残酷な魔人能力はもう二度と使わせまいと誓ったのだった。

そんな彼女が敵ごと、部外者でしかも友人のモカを手にかけるハズがないではないか。葱はそう自分に言い聞かせた。しかし脳漿の反対側では必死にそれを否定し、さらなる危機を全力で告げていた。
瞬間、歳美の十三代兼定が閃き、己の中の不吉な考えを必死に否定していた葱は一瞬反応が遅れ、その身を翻そうとした時には既に彼の身体は両断されていた。
消えゆく意識の中で葱は歳美の兼定の白刃が血のように赤く風のように渦巻く禍々しい妖気で包まれているのを見た。
これこそが自分の仲間の命を、想いを、無念を、恨みを刃へ宿し必殺の剣と変える呉井歳美の魔人能力「血風剣」である。


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