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呉井 歳美by出栖川

2第九次ダンゲロスメインGK:2012/06/13(水) 00:59:05
■武勇伝
希望崎学園の3年生・迫沢葱は学園に人気のない夜中に、さらに学園の中でも人気のない山中を独りとぼとぼと歩いている。
彼がこんな時間に歩いているのは他でもない、彼はこれから自分の大切な仲間たちを裏切ろうとしているのだ。
葱は彼の所属する陣営の長の中学時代からの友人であり、また後輩の面倒見がいいことから多くの後輩から兄のように慕われている。
しかし彼はその友を、後輩たちを裏切ってでも守らなければならないものがある。それは最愛の妹・モカである。
魔人である葱と違い普通人であるモカ。その彼女が敵陣営の何者かにさらわれたのだ。
相手が誰なのかは分からないが彼の下駄箱に入れられた手紙にはモカを連れ去った事と、要求、そしてその受け渡しの時間と場所が記されていた。
彼は犯人の要求に従って、自陣営の魔人能力を明かしていないメンバーの能力を知りうる限り文書にしたため、それを懐に忍ばせ夜の学園をゆく。
「しかし、果たしてこれで相手はモカを返してくれるのだろうか…この情報を渡したところでモカは戻らず、むしろさらに要求はエスカレートしていくのではないか…?」
そう不安がよぎる。しかしそうであっても妹を見捨てるわけにはいかない。魔人能力が覚醒し、親に勘当同然にこの学園に入学させられた自分を追ってこの学園を受験し、晴れて今年から希望崎学園の生徒として通い始めた心やさしい妹。彼女を守るためならばたとえ世界ですら敵に回してもいい、友を仲間を裏切る罪悪感に心をズタズタにされそうになりながらも葱はそう心に決めていた。
「このあたりの、ハズだが」
山中の少しだけ開けた場所に出て葱は周りを見渡す。月は雲に隠れ視界が悪いが、生え茂った草むらに一つの大岩が転がっているのは確認できた。
相手はまだ来ていないのだろうか。葱はその岩に腰かけようとした。
そこで気づいた。その大岩に見えた物、それは岩などではなかった。胴体を袈裟がけに斬られた大男だったのだ。
「な、なんだ、これ?」
月が半分ほど雲から出る。
そこで葱は一人の人影が立っているのを見た。それは見慣れた人物だった。
彼の陣営の可愛い後輩であり、そして最愛の妹の友人でもある少女、呉井歳美。
「お前どうしてここに?」
自分で言っておきながら葱は何が起こったのか大体の予想がついていた。おそらくはこの倒れている大男こそが今回の事件の犯人なのだ。モカが行方不明になった事を気付いた歳美が何らかの形でこの男を倒しモカを助けてくれたのだろう。
「お前が片づけてくれたんだな。それで、モカはどこだ?」
「そこです」
歳美はごく自然に答えた。月の光はまだ十分ではなく、その表情がどのようなものであるかはうかがい知ることが出来ない。


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