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『プリキュアシリーズ』ファンの集い!2
333
:
一六
◆6/pMjwqUTk
:2018/01/21(日) 21:24:46
最初は途切れ途切れの、ごく小さな音だった。ラブを抱き締めるせつなのすぐ後ろで、植木鉢が不意にカタカタと音を立て始めたのだ。
音は次第に大きくなり、間断の無いものになっていく。それと共に高まっていく、何とも言えない嫌な気配――。
せつなが硬い表情で後ろを振り返ろうとする。その矢先、さっきから植木を見つめていたサウラーの鋭い声が飛んだ。
「みんな、伏せろ!」
皆まで聞かず、せつなが腕の中のラブを庇いながら地面に身体を投げ出す。
ウエスターが少女を、サウラーが老人を、それぞれ抱えるようにして倒れ込む。それと同時に鈍い破裂音が響き、六人の上に、バラバラと土と陶器の破片が降り注いだ。
「はぁ、びっくりしたぁ……」
もぞもぞと起き上がろうとするラブを制して、せつなが素早く身体を起こし、植木の方を向いて身構える。そして――そのまま息を呑んだ。
粉々に砕けた植木鉢の残骸が散らばっているその後ろに、いつの間にか壁が出来ている。いや、それは壁ではなく、高くそびえ立つ透明な筒だった。その中にいっぱいに湛えられているのは、薄黄色に濁った液体。
「これは……」
せつなの声が震える。
見間違えるわけがない。かつて自分がイースとして集めていたもの。その行いを激しく悔いて、たとえ命を落としても、その蓄積を無きものにしたいと願ったもの――。
それは、ラブがE棟で目の当たりにしたという“不幸のゲージ”と、このラビリンスで新たに集められた、不幸のエネルギーだった。
半ば呆然とゲージを見つめるせつなの視界を切り裂くように、その時、何かが下から上へと一瞬で通り過ぎた。植木鉢が壊れて――いや、おそらく鉢を自ら壊して自由になった植木が、根を剥き出しにしたまま、一直線に上へ向かって飛んで行く。
「あっ!」
今度はラブが声を上げた。植木は、見上げるほどに高いゲージの縁の上まで飛び上がったかと思うと、そこで僅かに軌道を変えて、ゲージの中へ飛び込んでしまったのだ。
途端にまるで沸騰したかのような大量の泡が、ゲージの中から沸き起こった。
跳ね起きたラブが、そしてウエスターとサウラーが、せつなの隣に立ち、固唾を飲んでゲージを見つめる。ウエスターに腕を掴まれたままの少女は厳しい表情でゲージを睨み付け、老人は皆の後ろから恐る恐る覗き見る。
六人が見守る中、泡に包まれた植木は、見る見るうちに細く小さくその姿を変え、やがて完全に消え失せた。
「木が……不幸のエネルギーに、溶けちゃった……」
ラブがかすれた声で呟く。だがそれに答える者は誰も居なかった。
(何……? この感じ……!)
せつなの額から汗が噴き出す。さっきの嫌な気配とは比べ物にならないほど、辺りの空気が突然不穏な色をまとったように感じた。
心が痛いくらいに張りつめて、声が出せない。身体はいつの間にか臨戦態勢に入って、周囲の些細な変化も決して逃すまいと身構えている。
何かが――とてつもない何かが起ころうとしている。心臓がそう警告するように、ドクン、ドクン、とうるさいくらいに鳴っている。
すぐに最初の変化が起こる。それはゲージの中に巻き起こった、小さな渦だった。渦は次第に大きくなり、やがてゲージの幅いっぱいに広がって、人の顔のような模様を形作る。それを見て、ウエスターが喉の奥から絞り出すような声を発した。
「ノーザ……さん」
ゲージの中のノーザの顔が、それに答えるかのようにニヤリと笑う。そして次の瞬間、その顔が再び変化し始めた。
長い髪と顔との境界がなくなって、より大きくいかつい頭の輪郭を形作る。大きな目はより鋭く、鼻は大きく、唇は分厚く形を変えて――。
「……!」
老人が言葉にならない声を上げて、腰が抜けたようにその場に崩れ落ちた。そのままずるずると後ずさって、あたふたと物陰に身を隠す。その姿を嘲笑うかのように、ゲージから空に向かって真っ黒な霧が噴き上がった。
見る見るうちにどんよりと暗くなっていく空。その空の真ん中に、とてつもなく大きなものが、忽然と姿を現す――!
風も無いのにバタバタとはためくローブ。
大きく広げられた両腕。
その上に見えるのは、全てを射抜くような鋭い眼光を持った、初老の男性の顔……。
驚きに目を見開くラブの隣で、せつな、ウエスター、サウラーの三人は、ただ空を見上げたまま、まるで彫像にでもなったように微動だにしない。
ラビリンスの空を覆い尽した巨大な姿は、彼らを傲然と見下ろして、天の頂から重々しい声を轟かせた。
「我が名は――メビウス。全世界の統治者なり――!」
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