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『プリキュアシリーズ』ファンの集い!2

138一六 ◆6/pMjwqUTk:2016/09/04(日) 18:49:09
 少女にぐいっと腕を引っ張られたと思った瞬間、ラブは見覚えの無い、狭いトンネルのような場所に立っていた。
 振り返っても何も見えず、前を向くと、先を歩く少女の姿がかろうじて見えるだけのほの暗い場所。
 慌てて彼女の背中を追いかける。程なくして急に視界が開け、二人は大きな建物の前に出た。

「ここはどこ? 何のための建物なの?」
「軍事養成施設・E棟。歴代のイースが生まれ育った場所よ。今は政府によって封鎖されているけど」
「え……じゃあ、せつなもここで!?」
 少女の言葉に、ラブは目を見開いてから、改めて目の前の建物をしげしげと見つめる。

 大きな扉を中心に、左右に広がる黒々とした壁。その造りだけを見ると、どことなく占い館に似た佇まい。だがこの建物は周囲を高い塀で囲まれていて、森の中にあった占い館とは、受ける印象が随分違う。
 より無機質で、硬質で、他を寄せ付けない堅固な要塞のような雰囲気が感じられる場所――。
 少女の方は、そんなラブの様子には目もくれず、中央の重そうな扉に向かって、さっと右手を翳した。

 ギィ、という音を立ててゆっくりと扉が開く。
「開いた……。自動ドア?」
「いや、私が開けた。データを読み込ませてね」
 面白くもなさそうな声でそう言って、少女が無造作に建物に足を踏み入れる。慌てて続くラブの後ろで、大きな音を立てて扉が閉まった。

 入ったところはホールのような、だだっ広い場所だった。壁も床も、全てがグレー一色。その中でまず目に入ったのが、左右に伸びる長い階段だ。色合いやデザインは大きく異なるが、造り自体は、やはりどことなく占い館を思わせる。ラブは不思議な懐かしさを感じながら、階段の中程に目をやった。

(確かあの辺りに、せつなが立ってたんだよね。急に声を掛けられて、びっくりしたっけ……)

 初めて会った時のせつなの動きを目で追うように、ゆっくりと視線を動かす。が、少女は階段まで歩を進めると、ラブの視線とは逆の、地下へ伸びる階段の方へと足を向けた。
 少女に続いて、ラブも階段を下りる。そして地下の部屋にあるものを目にした途端、さっきまでの感傷は一辺に吹き飛んだ。

 一階と同じくグレーの壁に覆われた、薄暗い一室。その真ん中に置かれていたのは、天井まで伸びた透明な円柱状のゲージだった。かつて占い館で見たものほど大きくはないが、一人ではとても抱えきれない太さの筒の中に、濁った液体がラブの膝の高さくらいまで溜まっている。

「これって……まさか!」
 ラブが声を震わせた、その時。
「あら? 珍しい顔ねぇ。あなたがここに居るということは、その子の言うことも、あながち間違いでもなさそうね」
 どこかから妖艶な声が響いて、ラブは再び目を見張った。

 ゲージの前に突如、大柄な女性が現れる。腰まで伸びた濡れ羽色の髪。鮮血のように真っ赤な唇。そして相手を射すくめるような、鋭い眼光――。
「……ノーザ! どうして!?」
 思わず大声を上げてから、ラブはごしごしと目をこすった。ノーザの姿が、何だか透明がかっているように見えたからだ。それどころか、よく見るとその体の向こうに、後ろのゲージがぼんやりと透けて見えている。
 ノーザの姿は実体を伴ったものではなく、ただの映像のようだった。どうやらゲージの前に置かれた、まるで枯れ木のように見える小さな植木の枝先から投影されているらしい。

「あなた、本当にノーザなの? ホンモノはどこにいるの? このゲージは何? もう一度、不幸を溜めるつもりなの? 何のために!?」
「相変わらずうるさいわねぇ。少しお黙りなさいな」
 ノーザがそう言うと同時に別の枝がしなやかに伸び、蔦となってラブに襲いかかった。
 少女がラブの前に飛び出すと、手首を軽く返しただけで蔦を弾いた。ラブのすぐ横の壁が蔦の一撃を喰らって、その表面の一部がボロリと崩れ落ちる。
 目をパチパチさせるラブに一瞬だけ鋭い視線を送ってから、少女は真っ直ぐノーザの映像に向き合った。

「お手柔らかに。相手は生身の人間ですよ?」
「あら、ごめんなさい。それにしても、プリキュアを人質に取るなんて、なかなかやるじゃないの。こうしておけば、裏切り者の幹部たちも迂闊に手が出せないというわけね」
「……」
 少女はそれには答えず、ラブを制して自分の後ろに下がらせる。


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