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『劇場版プリキュア』を楽しもう!

137makiray:2018/09/29(土) 22:00:40
Soliste Echo(08/12)
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「マジカル!」
 キュアエコーは駆け出した。自分の体が軽くなっていることに気づく余裕はなかった。
「エコー!
 エコーも一緒だったんですね。ありがとうございま――」
「ウソバーッカの中で、ほかのプリキュアを見なかった?」
 キュアエコーは、彼女には珍しく、キュアマジカルの言葉を遮るように言った。
「ほかの…」
「ブラックやホワイトがいた筈なの」
「見てません…」
 キュアマジカルの肩からキュアエコーの手が落ちる。
(思い違い…?)
 その可能性はあるだろうか。
 キュアエコーは顔を上げた。まだ腹を押さえている鬼火をにらみつけるように。
(誰か。
 私の声が聞こえますか?!)
 キュアエコーの思いが飛ぶ。
(…誰…?)
 それは弱い。だが、戻ってきた声に全員が顔を上げた。
「今の声…」
「まだ、誰かが捕まってるの?」
「でも、みんないるよね…」
 キュアエールやキュアホイップたちがお互いの顔を見る。
「まさか、フローラたちがこの中にいるっていうこと?」
 キュアミラクルが叫んだ。頷くキュアエコー。
 花見の計画があったことを知っているキュアホイップたちは、「全員と連絡が取れない」ということを聞いて、さすがに偶然とは考えられない、と思った。
「それに」
 キュアエコーは視線をさらに上げた。プリキュアたちが変身したときの光はもう消え、ウソバーッカの大きな体の背後も、自分たちの後ろも、空全体が闇に閉ざされている。多くの人がその下で怯えているはずだ。
「この状態で、ブラックやホワイト、ハッピーやサニー…40人もいるプリキュアが一人も活動していないなんて。
 ありえない」
 以前のキュアエコー、あるいは坂上あゆみを知るものなら、その断言口調に驚いたかもしれない。
 そして、再会と、もう解決も同然と喜んでいるキュアエールたちとは正反対の、頬が強張り、緊張をたたえたその目に。
「エコー…」
 キュアホイップが小さな声で言った。
 そうか、まだ一人なんだ。
 キュアエコーは気づいた。
 事態が好転してなどいないこと。そして、弱っているように見えるウソバーッカだが、まだプリキュアを内部にとらえていられるだけの力は持っていることに気づいていたのは、キュアエコー一人だった。
(まだだ)
「グレル、エンエン、行くよ」
「うん」
「おぉっ!」
「エコー、どうするの?」
 キュアエコーが振り向く。
「みんなを助けに行きます」
「ウソバーッカの中に?」
「無茶だよ。
 あの中は!」
「みなさんが出られたんですから、大丈夫です」
「だけど」
 それに、限界が近い。クローバーの光で一時的に力は戻ったが、そう長くは持たないような気がする。今のうちに、みんなを助け出さなければ。そして、キュアミラクルたちにバトンタッチするのだ。
 キュアエコーは、シズクからもらった「扉」のカードを取り出した。何度も使ったせいで縁が欠けている。
 このカードを使えるのは、「思いを届けるプリキュア」、キュアエコーだけだ。役目を果たさなければ。
 キュアエコーはそのカードをウソバーッカに向けて投げた。闇の中を白い線が伸びていく。
 カードから溺れ落ちた光は小川のせせらぎのように揺れた。地面を蹴るキュアエコー。
「エコー!」
「こちらはお願いします!」
 信じていないのではない。任せていく。シズクがあのカードを預けてくれたように。
「みなさん、もうすぐ行きます!」


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