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アルト×シェリルに萌えるスレ138

154バタフライ・ノット Alto side〜croire en cet amour?〜:2014/11/21(金) 15:33:50 ID:???
 唇を震わせながら、シェリルは意地を張って叫んだ。
「いいから行きなさいよ!」
 ここで応じてはいけないとわかっていながら、アルトもついつい声を荒げる。
「なっ、なんだよその言い方!」
「そっちこそなによ!あたしはね、あんたの翼にはなりたくても、足枷になんかなりたくないの!
 …わかってたわ。アグレッサーになるって聞かされたときから、いつかこうなるって。
 アルトはあたしをおいてどこかに行ってしまうんだって、わかってたはずじゃない…!」
 最後の方はアルトにではなく、自分に言い聞かせるような言葉だった。
 張り続けていた虚勢が解けて、自分でもどうしようもないままに、シェリルの頬をほろほろと涙が伝ってゆく。
 どうして彼女はこんなに強がるのだろう、一人ですべてを背負おうとするのだろう。
「…ごめんなさい。このときが来たら、ちゃんと、素直におめでとうって、言うつもりだったのに…」
 本当に可愛くない女ね、とシェリルは自嘲するような薄い笑みを浮かべ、ぎゅっと唇を噛んでうつむいた。
「シェリル、俺は…」
「…言わないで!いま聞いたら、それがどんな応えでも、あたしは明日歌えなくなる…」
 シェリルの肩が震え、あとからあとから涙が零れてゆく。
 そうしてシェリルは、アルトが恐れていた誤解を口にした。
「だ、いじょうぶ、だから…そうよ、パパとママが死んで、ずっと独りで生きてきたんだもの…
 あたしなら、平気だから…だから、あんたと別れたって…」
「えっ、ちょっ、別れるって…?!」
 思いがけない言葉にアルトが瞠目する。
 そんな彼の問い掛けに応えることさえできず、シェリルはただ肩を震わせて泣いている。

 シェリルに出会い、あの戦いから生還し、生きて迎えてもらえただけで十分に幸せだった。
 これ以上望むものなどないと思っていた。
 だけど、人々が美しいこの惑星に降り立ち、復興へ向けて前を向き歩き出す姿を見たら、今度はたったひとりの人を幸せにしたいと思ったのだ。
 銀河中にその歌をとどろかせる気高い妖精が、濡れた翼を乾かすための空を守っていたい。
 俺はもう、一人前のふなのり。
 この大きな星の上で、二人のもろい砂の船を、おまえを乗せて漕いでゆきたい…

「…違うんだ、シェリル。泣かせるつもりなんかなかったんだ」
「…え?」
 自分のふがいなさに情けなくなるアルトの視線と、涙に濡れたシェリルの視線がかち合った。
 空色の瞳が、何を言われているのかわからないと語っている。
 いま言わなければ。
 幼い日の出会いも、フロンティアでの再会も、戦火の中の別れとそして再会も、信じられないほどの小さな奇跡が積み重なって、二人の歴史を作ってきた。
 だけど、自分から呼ばなければ奇跡は起きない。
 幸運に見合うだけの努力をしなければ、女神は振り向かないのだ。
 アルトはシェリルの瞳をまっすぐに見据え、緊張に頬を染めてささやいた。
 そのまっすぐな、愛情に満ちた表情は、かつて一度だけアルトがシェリルに見せたものー
 バジュラクイーンとともに消える直前、最後に愛を告げたときの表情だった。


「ーいっしょに、来てくれないか?」




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