アルト×シェリルに萌えるスレ138 - 1413192012

147：バタフライ・ノット Alto side～croire en cet amour?～：2014/11/21(金) 15:22:28 ID:???: 　誰か夜明けの感傷で　ぎゅっと抱いてくれないか
　夢の軌道にはじかれて飛び散るだけの愛の涙
　それが　むき出しの痛みでもいい
　宿命に呼び戻された　北極星が泣いてる
　どうせ迷路生き抜くなら　
　君を尽きるまで愛して　死にたいよ…

　ラジオから流れてきた最愛の人の歌声に、アルトは熱心に走らせていたペンを止めた。
　勤務終わりのSMSのカフェテリアで、コーヒー片手にアグレッサー試験の勉強をしているところだった。遅番と夜勤の入れ替わりの時間で、カフェテリアに他の人影はない。
（…懐かしい曲だな）
　聞こえてくるのは『ノーザンクロス』、今にして思えば、曲が生まれる刹那にアルトが初めて立ち会った曲だ。
　この歌詞に込められた激しくも悲しいシェリルの想いにアルトが気づいたのは、廃墟となった街にひとり立つ、囚人服姿のシェリルを見つけたときー彼女に迫る最期に、そして彼女への想いに気づいたときだった。
　戦いは終わり、シェリルは病を克服したというのに、今でもこの曲を聴くと、死を覚悟して歌い続けたシェリルの苦しみが、そして彼女の孤独に気づいてやれなかった後悔が蘇り、胸がかきむしられる想いになる。
（だけど、もうあんな想いはさせない。俺がおまえをひとりぼっちにしない、シェリル）
　無意識に拳をぎゅっと握りしめ、アルトは遠くの船団にいるはずの愛しい人を想った。
　人類が存亡の危機に陥った、あのバジュラ戦役から5年。
　歌姫たちの歌声をバジュラに届けるため、決死の思いで一世一代の翼の舞を見せ、7週間の時間旅行の末にこの本物の空のある青く大きな星に帰ってきた【バジュラ戦役の英雄】早乙女アルトは、バジュラが譲ってくれた美しい惑星に生活拠点を置きながら、SMSのパイロットとして忙しい日々を送っていた。
「…今なら、誰も見てないか」
　たとえ相手がシェリルであっても勤務中に私用電話はしない生真面目なアルトだが、今日はもう退勤してカフェテリアを利用しているだけだし、誰にも見とがめられることはないだろう。
　あたりをきょろきょろと見回しながら携帯を取り出し、一番頻繁にかける番号を選ぶ。
　案の定留守電に切り替わったが、今はライブの真っ最中のはずなので当然だろう。アルトは手短にメッセージを残した。
『えーっと、シェリル？そろそろ終わる頃か？こっちはみんな元気にしてる。ランカがおまえのライブ見に行きますってはしゃいでたぞ。
　俺も休みとれれば最終日あたりに行けそうだから…ちゃんと食うもん食って、しっかり寝ろよ。こっちに着いたら連絡してくれ』
　長く話せば寂しさを隠しきれなくなりそうで、アルトはぶっきらぼうだと自分でも苦笑しながら短い電話を切った。
　画面に表示された通話時間は1分にも満たない。
（会えなくて寂しい、くらい、素直に言えばいいんだろうけどな）
　気障な台詞もさらっと言えてしまう眼鏡の相棒が少しだけ羨ましい。
　いや、そんな彼も本命の前ではアルトと大して変わらない不器用さなのだから、おあいこなのだろうか。