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繪里子の多角関係を妄想するスレ 十二角目

269名無しの字はななしで変換できる:2012/01/23(月) 21:15:35 ID:x40qN/t6
「“30までに結婚”、できなかったね」

意地悪なことを言った。
収録前の空き時間を潰していた喫茶店。
向かい合う、窓際の明るい席で。
えりちゃんはあんまり気にせず、そうなんだよ、と笑った。
あたしはちょっと反省して、ごめん、と呟く。

えりちゃんに先を越されないで済んだ安心感、なら、まだ相応の嫌味でよかったのかもしれない。
でも実際はもう少し見苦しくって、あたしは十年越しの想いをまだ引きずっている。
「でもやっぱ節目じゃん?だから中村、してみようと思うよ。プロポーズってやつ」
「は?」
「タイミング窺ってんだよねー」
「は?」
ぢゅーっとジュースを吸い上げて、えりちゃんは事もなげに大胆告白をしている。
一安心して油断しきってたところだったから、ミンゴスにはそれ大打撃だよ、えりちゃん。
「彼氏いたんだ。ていうかプロポーズって男の人がするものだよ?」
「やだー麻美ちゃん。古いー」
「変人さんに言ってもわかんないかなぁ」
イライラや不安を隠しながら、あたしは精一杯、親友ならどう話すだろうと思いながら演じていた。
好きだとは言えない、まして結婚してなんて死んで生まれ変わらない限り言えないあたしが、悪あがきにしがみついてる“親友”のあたしなら。
「ていうか、彼氏じゃないし」
チョコレートケーキをぱくぱく口に運びながら、えりちゃんはきょとんとしている。
きょとんとしたいのはあたしだ。
「ん?」
「ぜんっぜん、今までそんな話とかした事ないんだけど、だからほら、節目だからさ?当たって砕けてみようと言う」
「……勇者だねぇ、おまえさんは」
ああ、あたしの大好きな人は、なんて勇敢なんだろう。
呆れ笑いするあたしの胸にある気持ちを、あたしなら絶対ぶつけられない。

フられちゃえ。

あたしは、親友の笑顔で、口先だけの励ましも言えないまま、心からそう思っていた。
えりちゃんはあたしの手付かずのチーズケーキにフォークを伸ばしながら、上目遣いで「言っていい?」と聞く。
「いいんじゃない?好きにしなよ。えりちゃんの人生でしょ」
「冷たいなぁ」
ぱく、と、それには一言の伺いもなく勝手にケーキを一口。
もう一口分すくって、あたしに差し出した。
あたしは反射で口を開ける。
ぱく、とケーキを入れた瞬間。
「麻美ちゃん、中村と結婚しよう?」
口の中いっぱいに広がる、甘い甘い愛の言葉。
「えっ、え…?」
「三十になったらいろいろ吹っ切れたよ。だから、」
「待って、ちょっと待って、」
「麻美ちゃんの事、もっと好きになっていい?」

三十路の勇者は乙女な顔で、可愛らしいプロポーズをくれた。
あたしは精一杯の勇気と大声で、後も先も考えず、愛の一択を叫んだ。




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