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SS練習スレ2
99
:
シンの嫁774人目
:2011/11/08(火) 22:03:00 ID:8XYJbSzk
気がつけば俺は《雪片弐型》を振り上げ、仮面のISに斬りかかっていた。間合いを詰め、渾身の力で刃を振り下ろ――せない!?
よく見れば奴が《雪片弐型》の柄尻に左の掌底を押し当て、がっちりと俺の右腕を固定している。
思わず息を呑む、その一瞬が命取りだった。次の瞬間、振り抜かれた奴の右拳が俺の顔面に突き刺さっていた。
バランスを崩し、海面へ真っ逆さまに落下する。ヤバい、と水没を覚悟した次の瞬間、まるで時間が止まったかのように海面ギリギリで身体がぴたりと静止した。
「しっかりしろ、一夏!」
耳を打つ鋭い叱咤の声。ラウラだった。そうか、AIC(停止結界)で俺の落下運動を打ち消して助けてくれたのか。
「サンキュ、ラウラ! 助かったぜ」
ラウラに礼を言い、俺は再び飛翔。あの仮面野郎めがけて一直線に突き進む。だがその時、それまで大人しくしていた『福音』が動いた。
頭部からエネルギーでできた『光の翼』が噴出。羽ばたくと、無数の欠片が羽根のように飛び散る。その一つ一つが、超高速で敵を撃ち抜く超高密度のエネルギー弾だ。
怒涛の勢いで降り注ぐエネルギー弾雨を前に、俺達は咄嗟に回避、または防御の構えを取った。
だが一人、あの仮面野郎だけは動かない。奴はただ、脚の小型近接ブレードを右手で無造作に抜き放ち――、
――次の瞬間、俺達はとんでもない光景を目の当たりにした。
ガッ!ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッ――!
やかましく耳を打つ金属音。怒涛の勢いで押し寄せる何十、何百というエネルギー羽根の嵐を、それ以上の超々高速で振るわれる刃がことごとく叩き落としている。
何だよあれ? 何なんだよあれ!?
まさかあいつ、あれだけの数の羽根を全部知覚して、その一つ一つに正確に斬撃を叩き込んでるのか? あんな短いナイフ一本で!?
いや、あり得ないだろ。ハイパーセンサーがあっても無理だろ、そんなの!
唖然とする俺達を余所に、奴は右手のナイフを『福音』めがけて投擲。間髪入れず、腰のバレルを展開。二門のレールガンが連続で火を噴いた。
さらに奴は一連の反撃と同時進行で、背中の大型推進翼を展開。がばりと口を開けた紅翼の中から、さらに三枚の小型推進翼が顔を出す。
スラスターが点火され、左右五枚ずつの紅翼の先に巨大な『光の翼』が形成される。が、それも一瞬。いや、正確には、俺達の眼が、次の瞬間には奴を見失っていたのだ。
一方、『福音』は自慢の超高速・超精密機動で、迫りくる刃と弾丸を難なく回避――したかに見えた。
だが『福音』の逃げた先には、既に仮面のISが瞬時加速で回り込んでいた。いや、正確には、奴が瞬時加速で移動した先に、『福音』の方が誘導されていたのだ。
これは後で束さんに聞いた話だが、『福音』などの無人ISの強みの一つは、AI(人工知能)制御による無駄のない完璧な機動であるらしい。
人間のような感情による揺らぎがないから、敵がいつ、どんな奇抜な攻撃を仕掛けても、正確に分析し、最適な回避行動を選択、実行することができるという。
だがそれは逆に言えば、絶妙なタイミングで的確な攻撃を行えば、無人機の動きを好きなように誘導できるということでもある。
それは瞬間的な判断が問われる高機動戦であるほど、少ない手数でより多くの選択肢を削り、相手を追い込みやすくなる。らしい。少なくとも千冬姉はそう言っていた。
完璧だからこそ起きる弊害、その矛盾が機械制御の限界だと二人は口を揃えて言う。でもはっきり言って、俺には何が何だかさっぱり分からない。
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