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SS練習スレ2

685そろそろ ◆o8DJ7UhS52:2015/10/10(土) 01:50:39 ID:j3Q0BMrg

 基地へとたどり着いた軍用車両から降り、暖房の効いた室内に入るが、その温もりに人心地付く暇は無い。
 引き続き兵士に案内され、無言のまま数分程歩いた先、シンが通されたのは『司令室』と言う札が下げられた部屋だ。
 部屋の中には、見るからに高級将校と分かる服装の二人の男がシンを待ち受けていた。

「Gフォース、特別機動旅団所属、シン・アスカ中尉です」
「私がこの千歳基地司令の広井だ。こちらは……」
「防衛軍化学科中佐、渡良瀬です」

 姿勢を正し敬礼するシンに対し、二人の男も返礼する。
 広井と渡良瀬は、表には出さなかったが、シンのその意外な若さに少し驚いた。
 意に介さずカ、あるいは知らずか、シンは上座の執務机に座った広井のしぐさに応え、渡良瀬の反対側のソファーに腰を下ろす。
 間に置かれたテーブルには数枚の資料が用意されていて、シンも早速それに視線を落とし、広井と渡良瀬は、シンが一読するのを無言で待つ。

「……宇宙怪獣、ですか」

 呼んでいる内に段々と険しくなったシンの苦々しい表情と呟き。
 それは渡良瀬等、防衛軍が纏めた資料に書かれた、昨日に発生した隕石の調査結果であった。
 この隕石落着と消失事件こそ、シンがこの地へ送られた原因であった。

「私は隕石の落着現場に最初に乗り込んだ人間なんですが、何かが落下した後はあっても隕石の痕跡はまったく存在しなかった」
「隕石は当初は、アリューシャン方面の海上へ降下する軌道を取っていたのを、この基地でもモニターしていた。だが突然、隕石はこの北海道へと軌道を変えた……つまり自分で動いたと言う事になる」

 広井と渡良瀬の、当事者達の発言は、資料の根拠の信頼性を高めるに十分であった。

「不自然な動きをした隕石が行方不明となる。これは隕石ではなく、何らかの生命体である事は明白だ。この事態に君達Gフォースの力を必要とするのは当然の事だ。千歳……いや、北海道全体を見渡しても、怪獣と戦うには戦力も経験も不足している」

 広井の声色からは指揮官としての苦慮がありありと伺えた。
 原則として、Gフォースは各国の要請に応じて、あるいは緊急と判断された場合、強権を発動し該当地域へと展開し作戦に当たる。
 人知を超えた怪獣の力は、その対処が一瞬でも遅れてしまえば、何千何万の人命、築き上げた文明が一瞬で失われてしまう。
 怪獣の甚大な被害を最低限に抑えなければ、当事国の政府の存亡にも関わる事態であり、今回の様に異変の前兆を捉える事が出来たならば、よほどの事態でもない限りGフォースに出動要請が出される。
 シンの派遣は、不測の事態に対する抑えである。
 今回シンが選ばれたのは、要請が行われた時点で最も現場の近くいた事もあるが、彼が日本の文化圏、言語にもある程度通じているため、今後現地入りしてくる後続の部隊を受け入れるための調整役としての理由もあった。

「現在、我々化学科の方で落着地点の捜索を行っていますが、今までに採取された手がかりは極めて少なく、加えては現在Gフォース側から提供された怪獣のデータに一致する物はありません」
「このデータはGフォースに既に送っている……アスカ中尉。前線士官として今回の怪獣の正体や数。君はどう推測するかね」

 広井の問いかけに対し、シンはしばし逡巡する。
 シンはこれまで幾度となく、宇宙や別次元からの侵略者と戦い、その中で特に多かったのが怪獣があった。
 人類を守る人型兵器の何倍も大きい怪獣は、たった一匹でも甚大な被害をもたらす悪夢の様な存在であり、たった一匹でもその始末に多大な犠牲を伴う存在だ。
 
「これがヤプールやX星人の仕業なら、奴らは隕石が落ちた時点で行動を開始しているか、もっと隠れたり、自然現象に見せかけて怪獣や軍団を送り込むはずです。隕石の軌道を変えるなんて警戒される動きをするとは思えない」

 既に隕石落着から24時間近く経過している。陽動と言う可能性もあるが、だが奇襲をかけるにしても、人類側に体勢を整える時間を与えて過ぎている。
 幾度と無く戦っている内に、おかしな話だが、相手のやり口、理論や法則といった物をはある程度推測出来るようになっていた。
 だが今回はその理論、経験則から外れた存在で、シンが統制された既存の軍勢の攻撃ではないと考える根拠になっていた。


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