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SS練習スレ2

684そろそろ ◆o8DJ7UhS52:2015/10/10(土) 01:45:40 ID:j3Q0BMrg

 夕焼けが、世界を赤く染め上げる黄昏の時間。
 一人の少女が、丘の上から遠い地平線へと沈み行く夕日を眺めていた。
 自身の金糸の様な髪を煌かせる、夕焼けの赤を見つめる青い瞳は憂いを帯びている。
 彼女は一人、冷たい風と、彼女自身の寂しさに包まれていた。
 最初は小さかったが、近付くにつれて、静かな空を、静かだった世界を打ち破るかの様な、巨大な飛行機のエンジン音が、彼女の頭上を通り過ぎるて行く。
 どこから来て、どこへ行くのだろう。
 平和な様に見える世界は、だがいつ静寂が破られるか分からぬ程に不安定で、危険と隣り合わせであった。
 この北の大地も、戦場になってしまうのだろうか。
 少しばかり不安な気持ちで、ターニャは自らの運命を大きく騒がせる人間を乗せた巨大な鉄の鳥を見送った。

 ・ ・ ・

 完全に日が沈んだ時間。
 コンクリートの滑走路へと、一機の巨大な輸送機が着陸する。
 その与圧され、気温を整えられた機内から、横付けされたタラップへと一歩足を踏み出すと、全身を刺す様な冷たい外気が、そこが厳冬の地である事を知らせるかの様に身を包み込んでくる。
 寒さと、それが想起させる過去の記憶とに体を震わせながら、鋼鉄のラッタルを一歩一歩しっかりと降りていく。

 極東日本。北海道千歳航空基地。
 その広大な滑走路の一角に降り立った大型軍用輸送機は、一人の男と、男の半身とも言うべき“力”を北の大地へと運んで来た。

「お待ちしておりました、アスカ中尉」
「出迎えご苦労様です」
「早速ですが、司令がお待ちしております」

 コンクリートの滑走路へと降り立った男、シン・アスカを敬礼で出迎える兵士の後ろには、すでにエンジンが温まった軍用車が控えている。
 わずかな挨拶の時間ですら惜しい状況である事をお互い心得ており、車は基地を目指して滑走路を走り出す。

 ・ ・ ・

「ねぇ由子、新しく来る人の話、知ってる?」
「新しい人? この時期に転属なの?」

 千歳基地では、千名近くの人員が昼夜を問わず働いている。
 日頃から訓練を重ねる隊員達も、だがその本質は市井の人達と何ら変わらず、食堂で休憩時間に入った女性隊員性達が、会話に華を咲かるのはいつの時代も必然である。
 同い年の同僚から話を振られた桜町由子は、その噂とやらに何の見当も付かず、またその友人が語りたくて仕方が無いと言う雰囲気を発していたから、素直に耳を傾ける事にした。

「違う違う、外からの出向だよ」
「外ってどこよ」
「聞いて驚きの……何とGフォース!」

 Gフォースと言う単語に、由子と同様に話を聞いていた女性隊員達はいっせいに色めき立つ。
 その騒ぎ様に、周囲に居た他の隊員達も思わず振り向いてしまう程だ。
 由子も声こそ上げなかったが、その表情は驚きに満ちている。

「Gフォースが来るって事は、怪獣がここに来るのかな」

 由子の驚きと同時に浮かび上がった疑問を口にすると、それまで色めき立っていた隊員達の様子が一転して静まり返る。
 みな、思い当たる節があったからだ。

「まぁ、そうなるよね」
「昨日の隕石……かな、やっぱり」
「隕石が移動したって噂でしょ? どう考えてもおかしい話だよね」
「ここ、戦場になるのかな……」

 食堂に、重い空気が漂った。
 怪獣が現れれば、戦闘になる事は避けられず、自分達は怪獣と立ち向かわねばならない。
 自らの死の可能性を考えて、それを不安がらずにいる事など、実戦経験の無い彼女達には無理な話であった。

 ・ ・ ・


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