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SS練習スレ2

677 ◆ii/SWzPx1A:2014/11/17(月) 23:33:40 ID:mw6HMfWM
 男……。
 男、男……。
 いないのか……?
 男、男、男……。
 男男男男男男……。
 いないのか……っ!?
 男男男男男男男男男男男男男男男男男男……。
 男は、男はっ!
 男はいないのかっ!?

 織斑一夏は自分の席に座りながら、身を縮みこませて俯いていた。
 圧倒的な視線量の暴力。身を守る術のない無力感。頼るもののない絶大な孤独。今の一夏はそれらと戦っているのだ。
 なにしろ周囲にいるのは一人の例外なく女子生徒である。自分の周囲だけではない。このIS学園の敷居をまたいだ時から男など影も形も存在していなかった。
 そして会う人間の誰しもが、まるで自分のことを珍獣でも見るかのような視線をぶつけてくるのだからたまらない。勘弁してくれよ、と声を大にして言いたいところだ。言ってもまた注目の的になるのがオチだろうが。

 織斑一夏がいかにして女子高の真っ只中に放り出される羽目になったのか。事情はこうである。

 歯車が狂ったのは二月の中旬。私立『藍越学園』の入試会場に向かったときのことだ。
 会場に入った一夏の目の前にはあったのは、試験用紙などではなく甲冑のようなパワードスーツ『IS』であった。女性にしか動かせないはずのその兵器を、一夏がなんとなしに気分で触ってみたら……何故か動いてしまった。
 それからは日本がひっくり返ったような大騒ぎ。保護という名目で入学を強制されて、あれよあれよと状況に流されていき現在に至る。世界初の男性IS操縦者。たった一人の男子生徒として。
……ちなみに大本の原因は『藍越学園』と『IS学園』の入試会場を間違えたことにあるのだが、今更に後悔しても手遅れである。

(それにしたってよ……俺はウーパールーパーじゃないっての……)

 一夏は二十世紀に大流行したという珍獣になった気分で、じっと机の表面を見つめ続ける。現状での頼みの綱は一つだけ。教室の隅っこの方にいるのを発見した、懐かしき幼なじみ・篠ノ乃箒だけである。
 剣道の全国大会で優勝したことは新聞記事で読んでいたが、実際に会うとなるとおよそ六年ぶりの再会だ。何から話せば良いのか少し戸惑う部分もあるのだろう。
 しかし、ここで自分に寄ってきて『久しぶりだな』の一言でもくれれば、随分と気が楽になるのだが……こうなったらこちらから助けを求めてみよう。
 一縷の望みをかけて、一夏は机から顔を上げた。そして――

 ――チラッ。

 ――フイッ。

 特徴である赤髪のポニーテールがコンニチワした。

(くそっ、この恥ずかしがり屋さんめっ。もう少しリアクション取ってくれても良いじゃねえかよぅっ)

 ため息を吐いて視線を机の上へと戻す一夏。望みは絶たれた。今後のことを考えると気は沈んでいく一方だ。
 千冬姉に申し訳が立たんよな。と一夏は思う。
 ただ一人の肉親である姉が『高校にぐらいは入っておけ。お前が余計な心配をする必要はない。そら、姉の言うことは素直に聞かんか』と言ってくれたこともあり、本当は中学を卒業して働きに出るつもりだったのを、高校まで進学させてもらうことになったのだ。
 高圧的暴君だが世界一偉大な姉に感謝の念を持ちながら、大いに高校三年間の青春を楽しむこと。そして立派に卒業・就職をすることが自分の役目であるというのに……。
 このままではマトモな学園生活なぞ望むべくもない。脳までウーパールーパーになりそうである。これでは三年後の自分はえらが張り、つぶらで可愛らしい瞳になっているかもしれない……そんなことは絶対に御免だった。ウーパールーパーになっても就職が上手くいくとは思えない。

 ああ……男がほしい。贅沢は言わない。一人、たった一人だけで良い。男がほしい。
 この苦悩を共有し、共に肩を抱き合い、慰めあえる相手がほしい。
 共に喜び、怒り、泣き、笑い……これから三年間、熱い友情を育んでいける男が。


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