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SS練習スレ2

612シンの嫁774人目:2014/03/24(月) 21:22:28 ID:cE1z7Mk.
Episode4 シン

 ミッションから帰ると、エントランスにシンさんがいたので、ラウンジに連れ込んで一杯奢らせた。
 これで前回の遺恨を水に流す辺り、自分は結構心が広いと思う。少なくともミッション中に誤射(という名の報復)するよりは、遥かにマシだろう。
 奢らせるついでに、前回気になったことを聞いてみることにした。

「――えっ、俺が『クレイドル』を抜けてから何してたかって?」

 突然の質問にシンさんは面食らったような顔をしたが、やがてぽつりぽつりと話し始めた。

「……まぁ、色々だよ。アラガミを狩りながら貧しい地域の支援をしたり、集落同士の紛争を調停したり」

 それは、『クレイドル』の活動と何が違うのだろう? そう尋ねると、シンさんは苦笑しながら首を振った。

「大きく違うさ。まず、『クレイドル』は支部同士の相互扶助組織だが、こっちは本部主導のプロジェクトだ。その分、本部の意向が強く反映されてる」

 ますます意味が分からない。支援は潤沢だが口うるさい、ということではなさそうだが……?
 もう少し詳しく話を聞いてみよう。



 →「紛争の調停と平和維持」
   「貧困地域への生活支援」
   「子供達への教育活動」
   「もういいです」

「これは、まぁ言葉の通りだな。仲の悪い集団同士の住み分けを推進したり、対話による交渉を仲介したり。ただ、時には武力で押さえつけることもある」

 ……それは、人に神機を向けるということか? 自然と表情が険しくなるのが分かる。きっと今、自分はシンさんを睨んでいるのだろう。

「いや、流石にそこまで鬼畜なことはしないよ。何より人手が足りない。アラガミの相手だけでも手一杯なのに、人間まで相手する余裕なんてないさ」

 幸いにも、シンさんはそう言ってこちらの懸念を否定した。だがその理由は、とても手放しで喜べるものではない。
 シンさん曰く、ゴッドイーターとは別に、旧世代の銃器で武装した治安維持専門の部隊があるらしい。
 アラガミや神機使いにとってはオモチャみたいなものだが、普通の人間相手ならばそれで十分なのだそうだ。

「アリサ達に、こんな真似させられるかよ……」

 そう呟くシンさんの、疲れ切ったような顔が妙に印象的だった。



   「紛争の調停と平和維持」
 →「貧困地域への生活支援」
   「子供達への教育活動」
   「もういいです」

「こいつは『クレイドル』の活動と重なるところがあるな。フェンリルの庇護のない地域に食料や物資を支援したり、仕事を斡旋したり」

 シンさん曰く、斡旋する仕事は食料などの生産活動が中心らしい。銃を持って殺し合うより、鍬でも持って畑を耕す方がよほど建設的、だそうだ。

「ただし『クレイドル』と違って、こっちはサテライトの自立なんてこれっぽっちも考えてない。生活基盤を掌握して、フェンリルの管理下で飼い殺しにするのが一番の目的だ」

 生活基盤の掌握。言い換えれば、生産から消費まで、何もかもをフェンリルに依存した経済体制の構築だ。
 サテライトを生かすも殺すもフェンリルの胸三寸。わざわざ武力で焼き払う必要はない。ライフラインを断ち切れば、そのうち勝手に干上がるのだから。
 第三者に命を握られて、それでも内紛を続ける馬鹿はいない。飼い主の期限を損なえば、待っているのは破滅だ。

 ……えぐい。最初はイイハナシダナーとちょっとは見直していたのに、見事に台無しだ。

「どんな時でも、胃袋を掴んだ奴が一番強いのさ」

 茶化すような口調とは裏腹に、シンさんの顔はちっとも笑っていなかった。


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