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SS練習スレ2

611シンの嫁774人目:2014/03/24(月) 21:19:31 ID:cE1z7Mk.
Episode3 シン

「――大将! おおい、大将!」

 ミッションから帰投するや、いきなり耳に飛び込む野太い声。思わぬ出迎えに、シンさんと思わず顔を見合わせた。
 何事か、と呆気にとられて固まっていると、こちらへのっしのっしと大柄な影が近づいてくる。負傷しているのか、左腕を吊った初老の大男だ。
 鍛え上げられた体躯、老いを感じさせない鋭い目つき。どう見ても、堅気の人間とは思えない。

「あれっ、ゲンさん!?」

 隣でシンさんが驚いたような声を上げる。あんた、このヤクザ(仮)と知り合いなの?

   「知り合い?」
 →「借金取り?」

「いきなりヤクザ扱いたぁ酷ぇな、若いの。そんなこと言われたのは初めてだぜ? 鬼軍曹とはよく言われるがな」

 ヤクザ(仮)はそう言って、無精髭の生えた顎先を右手で擦る。よくよく見れば確かにその手首には、神機使いの証である赤い腕輪が嵌められている。

「俺は百田ゲン。とっくの昔に引退したロートルだが、今はこいつの副官というか、参謀みたいなことをやってる」
「ゲンさんは元軍人で、極東支部でも最古参の神機使いだったんだ」

 つまり俺達の大先輩だ、というシンさんの補足に、ずっと昔に受けたラケル博士の講義を思い出した。
 まだゴッドイーターの安定した運用技術が確立する以前、俗に『第零世代』と呼ばれる最初期の神機使いは、主に志願した軍人だったらしい。
 彼らの奮闘と、そして犠牲によって蓄積されたデータが、現在の第一世代以降の神機運用の基礎となっているのだ。
 そして副官というゲンさんの自己紹介にも、なるほどと納得した。
 あのリンドウさんですら世間知らずの甘ちゃん扱いするシンさんだ。この人と仲良くできるのは、それこそゲンさんのような本物の軍人くらいのものだろう。

「それよりゲンさん、どうして極東に?」
「おう、それなんだがな……」

 二人はそのまま難しい顔をして、よく分からない話をしながら立ち去ってしまった。
 最近はやっと『ブラッド』隊長の肩書きが板についてきたと自負していただけに、二人の話が半分も理解できなかったのは少し悔しい。

 そう言えば、シンさんは今、何をしている人なのだろう? 本当に今更な疑問だが、よく考えると、あの人のことを何も知らないことに気づいた。
『クレイドル』を抜けたことは知っている。「副官」というゲンさんの言葉から、今は何か部隊を率いていることも推測できる。
 しかしその所属や目的、活動内容などはさっぱり分からない。次に会った時には、その辺りの話を聞いてみるのもいいかもしれない。

 そしてもう一つ、気づいたことがある。
 ……あの野郎、何気にミッションの報告とかの後処理を、全部こっちに押しつけて帰りやがった。


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