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SS練習スレ2

602シンの嫁774人目:2014/03/17(月) 22:29:54 ID:cE1z7Mk.
 アリサさんやコウタ隊長、そしてソーマ博士も、アラガミが地上を喰い荒らした『後』に生まれた世代だ。
 旧世代、人類がまだ戦争という名の共喰いを繰り返していた時代を、彼らは知らない。
 そして辛うじて旧世代と言えるリンドウさんも、表面的な知識はともかく、残念ながら理解は期待できないらしい。
 リンドウさんの故郷、極東。かつて『日本』と呼ばれたこの地域は、世界的に見ても極端に『平和ボケ』した国だったそうだ。

「アリサもコウタも、リンドウさんも、人間の善性って奴を信じてる。『衣食足りて礼節を知る』って言うけど、それを本気で信じてるんだ」

 衣食足りて礼節を知る。それはある意味、『クレイドル』の理念そのものではないか。

「……でも、俺はそうは思わない。アラガミの脅威を取り除くだけ、ゆりかごを作るだけじゃ駄目なんだ」

 たとえ全てのアラガミを排除し、世界を人類の手に取り戻しても、待っているのは旧世代への逆行、人と人とが争う時代の再来だ。
 シンさんが言いたいのは、つまりそういうことだろう。
 今、少しだけ分かった気がする。シンさんは人間の悪性に絶望しているのだ。この人にとって、アリサさん達の理想は、ただの甘い夢物語に過ぎないのかもしれない。

 ……だが、それでも思うのだ。人の強さを信じたい、と。

 アリサさんは言っていた。誰もが手をこまねいて見ているしかない問題に対して、解決への一歩を踏み出すのが『クレイドル』だと。
 たとえシンさんが言うように、人間が争いを捨てられない、どうしようもない生き物だとしても、そこから目を逸らし、諦めてはいけないのではないか。

 古来より人間は強大な敵と対峙し、常にそれを退けてきた。ジュリウスの言葉だ。
 終末捕喰だって止められたのだ。たかが人の負の側面の一つや二つ、目を逸らさずに向き合いさえすれば、乗り越えられない訳がない。

 そしてもう一つ、気づいたことがある。

 シンさんは人間に絶望しているのかもしれない。だがそれでも、彼は本当は、まだ諦めていないのではないか?
 だって、彼は一度も『クレイドル』の理念を否定してはいないじゃないか。
「足りない」とは言った。「それだけでは駄目だ」とは言った。だが、「それでは駄目だ」とは言わなかったじゃないか。

 そこにひと筋の希望を見た気がした。



【HINT:シンがブラッドバレッド「小型状態異常回復弾」を習得しました】


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