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SS練習スレ2
598
:
シンの嫁774人目
:2014/03/16(日) 07:43:06 ID:cE1z7Mk.
Episode1 シン
「――ミッションに同行してくれてありがとう。おかげで手早くカタがついた」
討伐目標のアラガミの沈黙を確認し、今回のミッションの同行者、シンさんが労いの声をかけてきた。
元・フェンリル極東支部第一部隊隊長、シン・アスカ。
現隊長のコウタさんや、同じ『クレイドル』のアリサさん、ソーマ博士、リンドウさんなどによると、自分と彼はよく似ているらしい。
らしいのだが、彼の話を色々と聞かされても、いざ本人を目の前にしてみても、いまひとつ実感が湧かない。
どちらかと言うと、元上官で『ブラッド』の前隊長、ジュリウスの方が近い気がする。
「……どうしたんだ?」
見られていることに気づいたのか、シンさんが胡散げな表情で尋ねてくる。そんな風に眉間にしわが寄った顔で睨まれると、その、怖い。
そう言えば、この人とこうして話すのは初めてな気がする。
最終決戦の際、文字通り地球の反対側から応援に駆けつけ、極東支部の人達とともにサポートに回ってくれたのは知っている。
だがあの時は、全てが終わったのを見届けるとすぐに帰ってしまい、彼と会うことはできなかった。
キュウビ討伐の時も、結局彼だけは最後まで極東支部に戻らず、『クレイドル』全員集合とはならなかった。
回収班の到着まではまだ時間がある。いい機会だから、噂の彼と話をしてみるのもいいかもしれない。
さて、どうやって話しかけよう?
「コウタ隊長達と仲悪いの?」
→ 「服、白くないんですね」
とりあえず、一番気になっていたことを聞いてみた。
アリサさんをはじめ、『クレイドル』の人達は、全員(デザインの差異はあるが)白い制服を着用していた。
彼も『クレイドル』の筈なのだが、着ている服は白くない。私服なのかとも考えたが、背中にフェンリルマークがついている以上、それはないだろう。
そう言えば、彼のことを語るコウタ隊長達の様子も、少しおかしかった気がする。仲間のことを誇る一方で、その表情にはどこか陰があった。
もしかすると、彼はあまり仲間と上手くいっていないのかもしれない。
「……服? ああ、そういうことか」
シンさんは自分の身体を見下ろし、納得したように頷いた。
「別に不思議なことじゃないさ。そもそも、今の俺はクレイドルの所属じゃないからな」
何でもないことにように告げられたシンさんの言葉は、しかしこちらにとっては全く不意打ちだった。
いや、確かにアリサさんも、コウタ隊長も、ソーマ博士やリンドウさんも、彼が『クレイドル』だとは一言も言っていないが。
しかしあれだけ熱く語るのだから、同じ部隊の仲間だと思うのは当然だろう。ある意味、詐欺だ。
「……どうして、『クレイドル』を抜けたんですか?」
思わず、そんな疑問を口に出した。些か棘のある口調になってしまったが、致し方ない。
シンさんは「今は違う」と言った。ということは、かつてはこの人も『クレイドル』の所属だったのだろう。
それにリンドウさんによれば、そもそも『クレイドル計画』自体、彼とアリサさんの発案だった筈だ。
それなのに、言い出しっぺの彼が計画を抜けるのは無責任だ。アリサさんの苦労を知っている分、余計にそう思う。
「……あー。何て言うべきかなぁ……?」
シンさんは困ったように顔を逸らした。
「確かに、『クレイドル計画』は素晴らしいと俺も思う。皆で助け合って、皆が安心して眠れる世界(ゆりかご)を作る。うん、確かにいい『夢』だ」
ひとつひとつ言葉を選ぶように、シンさんは慎重に思いを口にする。そして――、
「――でも、俺はどうしても、皆と同じ『夢』を見ることはできなかった」
その全てを、切って捨てた。
「……どうして?」
「多分、言ってもお前には分からないだろうさ。いや、分かっちゃいけないんだ」
刃物のように突き刺さる拒絶の声。それ以降、「話は終わりだ」とでも言うようにシンさんは口を閉ざした。
どうやら、シンさんと『クレイドル』の人達との間には、想像以上の確執があるようだ。
そしてもう一つ気づいたことがある。
やはり彼はジュリウスに似ている。肝心なことは全部独りで抱え込んでしまう、ジュリウスに……。
【HINT:シンの神機が強化され、新たなスキル「復讐への憤怒」「B:近接攻撃力↑」を習得しました】
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