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SS練習スレ2

43そろそろ ◆o8DJ7UhS52:2011/06/28(火) 22:15:01 ID:DpzTyaio
昼の世界の住人である人間達の住む、里と呼ばれる場所。
本来であれば寝静まっているはずのそこも、近年では里を訪れる夜の世界の住人である妖怪が増えた事と、その妖怪達相手に商売をするある種たくましい人間達が現れ、何時しか里は眠らない街となっていた。
そんな里の、喧騒の絶えない深夜の繁華街から遠く離れた場所に長屋街と呼ばれる場所が存在する。
月明かりの下、全ての住人が眠りに付いたその場所に、場違いのように窓から明かりが漏れている小さな家があった。

窓から漏れ出していたのはランプの灯、そのランプの灯に照らされた部屋の中には二つの人影があった。
一人はこの家の住人であるシン。
もう一人は客人であり、シンの友人である烏天狗のはたて。
はたては珍しい経緯を持った外来人であるシンの取材を兼ねて遊びに来る事があり、今回もその用件で訪れていた。

だが今は取材をする訳でもなく、かと言って遊んでいるわけでもなく、ただ二人は互いに背を向け合い黙って座っていた。
シンはランプのすぐ近くに座り、手を動かし何かの作業をしていた。
一方のはたては肌布団に身を包み、ただ静かにぺたんと座り込んでいた。
肌布団に包まっていて判り辛いが、はたての上半身はブラジャーを身に着けているだった。
本来はその上に身に着けているはずのはたてのブラウスは、今はシンが手にしており、ランプの灯を頼りに縫い針でブラウスから外れたボタンを取り付けていた。

しばらくの間そうして、やがてシンが大きく息を吐き出す。
それは作業の終わりの合図であった。

「終わったぞ」
「ありがとう…シンって裁縫できるんだ。何だか意外」
「裁縫は兵隊の重要な仕事だったりするからな。てかあんたが出来ないだけだろ」

くすりと笑うシンに、はたても釣られて笑う。
シンは補修を終えたブラウスをはたてへと手渡す。
それを受け取ろうとはたてが手を伸ばす際、肌布団が少しはだけてしまい、シンは思わず顔ごと視線を反らす。
はたてはシンのそんな反応が面白かった。

「今更恥ずかしがる? 全部見たのに」
「いやそういう訳じゃなくてだな…恥ずかしいって言うか、その…あーもう、いいから早く着ろ」

先程までの位置へと戻り再び背を向けて座る。
不貞腐れているのが隠れていないシンの後姿を少しの間眺めてから、はたてはブラウスに袖を通しはじめる。

「なぁ、これからどうするんだ?」
「帰るわ、夜の闇に紛れてね」
「そっか…」

背中越しにかけられたシンの問いかけに、少々格好を付けた口調で返すはたて。
シンはそれに素っ気無く、そして短い言葉で応えた。
最も素っ気無いと思っているのはシンだけで、はたてにはその声が普段と比べてトーンが落ちている事が分かり、知らぬ内にだが笑みが浮かんだ。
何となく後ろ髪を引かれる気持ちがあったが、そうも行かないとはたては立ち上がる。

「いたっ」

だが立ち上がろうと腰に力を入れた所で痛みが走る。
股関節から来るその痛みに、少しばかりひざを落としてしまう。


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