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SS練習スレ2

388螺子巻鳥 ◆l.5pQ38hy6:2013/01/13(日) 23:53:20 ID:lOh8sW8U
 稼がれた距離を詰めるべく、シンは飛ぶ。全推力を前進に当て、落ちる前に貫く。取れる行動はそれしかないからこそ迷いはない。

(前へ!)

 呪文のように念じながら、飛ぶ。しかし、運命はほんの少し、なのはの方に味方した。

「ーーバスターッ!」

 完成する、なのはの砲撃呪文。視界が桜色に染まり、体が後方へと押し流されてゆく。
 それでも、シンは諦めなかった。

(前へ、前へ、前へ!)

 桜色の砲撃の中、それを振り切るようにインパルスが飛ぶ。装甲をほとんど吹き飛ばされ、内蔵機構を所々露出しながら、その姿は、よろよろと斜め前方に墜落する。
 力尽きかけたフォースシルエットのブースターが、最後の一瞬、吼えた。

『とど、ケエエエエエッ!』

 壊れかかったスピーカーから、ノイズ混じりの絶叫が走る。先ほどの三分の一、もう小刀ぐらいの長さしかなくなったビームサーベルを、なのはに向かって突き出す。
 その一撃は、確かになのはの右袖を裂いた。

(ここ、までか……)

 全対魔装甲剥離、並びに砲撃のダメージにより全部位にレッドダメージが入っている。フォースシルエットも沈黙し、もはや墜落するしかないインパルスの右手首を、白い手が掴んだ。
 確認するまでもない。今さっきバリアジャケットの袖を切り裂かれた、高町なのはの細い腕。

「捕まえた……っ。結構重いね、これ」
「手伝うよ、なのは。この中に人が入ってるから落としたら駄目」

 それなりの重量があるバリアアーマーを掴んで離さない、小さな手。少しして後ろからも浮力を感じ、自分がどうなったのかを悟るシン。

(あそこまでした俺の手を、それでも捕まえるのか……)

 求めて伸ばしたその手に、捕まえるまで決して諦めない姿。それはまるで、あの日の自分と重なるようで。

「インパルス、兵装解除」

 諦めたような、憑き物が落ちたような声でシンが小さく命じる。何も掴めなかった自分の手は、こうして高町なのはに捕まった。


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