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SS練習スレ2

387螺子巻鳥 ◆l.5pQ38hy6:2013/01/13(日) 23:52:45 ID:lOh8sW8U
 そう思うシンの背後を、雷光が走り抜けた。

『あれは……!』

 スピーカー越しのくぐもったつぶやきが、空中に溶ける。常識を逸脱したスピードで三体のゴーレムを砕き、さらに雷光が前方のゴーレムさえも粉砕する。
 駆け抜ける金色の髪が稲妻に見えるほど、その姿は鮮烈で華麗だった。

(これだけのスピード……。「黄金の雷光」か!?)

 時空管理局のAAA級魔道士、フェイト=T=ハラオウン。最速とも称される彼女の名前ぐらいは、シンでさえ知っている。
 彼女も「標的」の一人であり、速度差がありすぎるという理由で優先目標からは外れているから。
 次いで空から降り注ぐ、桜色の閃光。一度見たからこそ、その正体には感づいている。
 上空に、彼女がいる。時空管理局が誇るエースオブエース。ここにきて、シンは一つ覚悟を固めた。
 逃げ場はもはや、ない。フェイトを振り切ることは事実上不可能に近いし、空をも塞がれてはそもそも逃走経路がない。ならばせめて……。

『シン!』
『レイ……。記録を、頼む』

 装備を完了したレイの声に短い通信で頼みごとをして、シンはきっと天を見上げた。覚悟をきめた声で、装備を要求する。

「セット、フォースシルエット」
『Roger!』

 システムから返ってくる、短い宣言。
対装甲ナイフが腰に格納され、代わりに銃と楯が転送される。背部に大型のブースターも装着され、重量バランスが整えられる。
 相手が何か言う前に、頭上の敵、高町なのはに向かって引き金を引いた。短く、そして明確な敵対のサイン。
 ビーム・ライフルを速射しながら、シンはなのはに向かって飛び上がる。

『可能性があるとはいえ、無茶をする……』
『戦うことが?』

 ザクウォーリアのカメラ越しに戦場を見上げるレイの耳に、第三者からの通信が入る。あっさりと通信機の波長を見破られた事実に奥歯を噛みしめながら、隣に来る姿に一瞬だけ視線をやった。

『なのはは、強いよ?』
『シンには、負けられない理由がある。高町なのはに対しては、特に』

 アクセルシューターに翻弄されるシンを見据えながら、フェイトは念話を飛ばす。意外にも、短い返答が返ってきた。
 不利な状況から逃れようとビームサーベルを振るい、バルカンを打ちながらなのはに肉薄する、シン。

『満足するまでやらせるしかない。どの道、俺たちは手詰まりだ。ここからは逃げ出せない』
『シン、だっけ。彼は逃げないよ。そしてきっと、なのはに捕まえられる』

 距離が離れた。本来ならしなくてもいいチャージの時間をとるなのはと、そこにわずかな希望を託すシン。

『どういうことだ?』
『あんなに必死に、何かを守ろうとする人を。なのはは絶対に見捨てないから』

 シンが加速するのを見送りながら、フェイトはそういって空に舞い上がった。なのはに加勢するのか、と一瞬だけ思ったが、それにしては遅すぎる。


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