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SS練習スレ2
357
:
ちくわヘルシー
◆ii/SWzPx1A
:2012/12/07(金) 00:13:18 ID:ti0jsaAw
「お兄ちゃん、たっだいまぁーーっ!」
「あぁ、おかえりマユ――」
「合格おめでとう、とおーーっ!」
「うわっと!」
背負ったランドセルを床へと落とし、マユは走る勢いに任せてソファ目がけてダイブしてきた。捻った上半身でなんとか体を支えて抱きとめると、マユは大きく口を開けてはしゃぎ声を上げる。
「こらこら、危ないから飛び込むのは止めろって」
「大丈夫です〜。だってお兄ちゃんが助けてくれるも〜ん」
「そんなことしてると、パンツ見えちゃうぞ?」
「きゃっ、お兄ちゃんのえっち! ラッキースケベ!」
「それは俺のせいじゃないってば」
指差した先ではスカートの裾がソファの背に引っかかっている。抱えたマユを下ろしてやると、またマユはおかしいというようにケラケラと笑った。
「あははっ! じゃあお兄ちゃんが鈍いせい〜!」
「鈍いってマユ、何がだよ?」
「マユは教えてあげませんよ〜だ。試験に合格しても鈍いまま〜」
「合格? マユ、知ってたのか?」
「お父さんからメールで聞いたの。お兄ちゃん、マユに教えてくれなかったし」
そう言って不満そうに俺の額を小突くマユ。とりあえず謝る俺の横に座ると、テレビの放送内容に気付いてあっと声を上げた。そう言えばマユは音楽番組をよく見てたっけ。
『I really really love you! My honey! So! Hold me! Kiss me! Love me! Say yes!』
「せい、いえーっす! お兄ちゃん、ベッキーのライブ見てたの?」
「いや、たまたま点けてただけで……マユはこの人好きなんだっけ?」
「そうなの! お父さんの友達ですごい楽しい人なんだよ! 会うといろんなお話聞かせてくれるし、遊びに連れてってくれるの!」
マユはさっとソファの上に立ち、踊りの振り付けを真似はじめた。歌詞の方もそうだけど、ここまで完璧に覚えられるなんて。テレビに映っているアイドルと寸分違わぬ動きを見せるマユに、ちょっと感心してしまった。
「マユもあんな風に、アイドルとかになりたいって思うのか?」
「う〜ん……ベッキーは好きだけど、三十路手前で彼氏もいないって、小学生に泣きつくのはいや〜」
「そっか……」
アイドルに秘められた真実の一端を垣間見てしまった気がした。聞かなかったことにしよう。
「……お腹空いてるだろ? 今お昼作るから、ちょっと待ってて」
「うん! 何を作ってくれるの?」
「ええっと、冷蔵庫の残りで……海老チャーハンに、玉子スープかな」
「わあ、中華! でもお兄ちゃん、マユの分は――」
「量はあっても油は控えめ、だろ。分かってるよ」
「さすがぁっ! お兄ちゃん大好きっ!」
マユは俺のことをお兄ちゃんって言って慕ってくれている。
でも、この子はあの“マユ”じゃない。俺の知っているマユじゃない。
“マユ”は国語とかの方が得意だったけど、マユは算数とかの方が点数が良くて。
“マユ”はダイエットとか気にしなかったけど、マユは結構そういうの気にしてて。
“マユ”はアイドルに興味はなかったけど、マユはCDとかもいっぱい持っていて。
“マユ”にも俺にも母さんはいたけど、マユはお母さんを早くに亡くしていて。
けれど二人とも、料理もファッションも大好きだ。俺とゲームだってするし、動物園とかにも、大喜びで出かけていく。それにスゴイ甘えん坊で、いつも俺をみると飛んできてくっついている。
違っていて、とてもよく似ている、二人のマユ。二人とも同じように、俺にとって大切な子で……マユがまるで本当の妹みたいに思える。
だからマユと一緒にいて、こうして過ごす何気ないひと時が心地良くて、どこかやるせなかった。
◇
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