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SS練習スレ2

355ちくわヘルシー ◆ii/SWzPx1A:2012/12/07(金) 00:12:07 ID:ti0jsaAw
 始まりはマユって女の子を助けたあの日からだ。

 研究所からなんとか脱出できて、目覚めてから事情を聞かされてすぐに、俺は他の人たちと話が食い違うことに気付いた。
 コズミック・イラ、ナチュラル、コーディネイター、モビルスーツ、ZAFTに地球連合、オーブ。そしてロゴス、デスティニープランをめぐる戦争。
 俺の知っていることの何もかも、誰も知っている人はいなかった。
 逆に他の人たちが知っていることが俺には全然分からなくて、手に入れられる情報を片っ端から調べても、俺の常識が通じない場所にいることを突きつけられるだけだった。

 加えて問題になるのは話が通じないこと以外にもあった。火事の現場に俺がいたことだ。
 あの火事については原因が不明らしい。武器の開発室から出火したせいで、可燃物や爆発物に燃え移ったりしたのが大火事に繋がったそうだ。
 でも自動制御の防災機能が全部停止していたこと、それが整備不良のせいではないことも調べで分かった。それに肝心などうして開発室から火が出たのかが、結局分からないままだ。
 身元不明の不審人物が原因不明の火事の現場に、というのは疑われないのが無理な話だ。
 俺は病院でどれだけ事情聴取と検査をされたんだろう。当たり前だけど俺は嘘もついてないし異状だって無い。
 最後に精神鑑定さえしても結果は真っ白。ますます事態はややこしくなるばかり。

 それでもずっと、俺の言うことを信じてくれたのが葛城さんだ。
 葛城さんは火事になった建物――つまり俺が暮らしている「日本IS技術開発研究所・通称『葛城研』」の主任で、マユのお父さんだ。見た目は無精ヒゲを生やしてだらしないけれど、かなり偉い人らしい。ここも政府直属の研究機関ということで、すごい重要な場所だそうだ。
 葛城さんの口添えのおかげで、俺は今日も研究所暮らしをしている。
 そんなことが認められるのも、俺が動かしたパワードスーツ『IS』が原因だった。

『IS』――正式名称『インフィニット・ストラトス』。
 宇宙開発用に作られたマルチタイプのパワードスーツで――類を見ないその高性能が災いし、『兵器』として軍事転用された。
 世界はお互いに冷戦状態になり、終いにISは国の威信をかけて取り組まれる『スポーツ』へと形を変えて今に至っている。
『スポーツ』になったというのも、ISが兵器として致命的な欠陥を抱えているからだ。ISは「女性にしか扱えない」。
 国防の要・技術の最先端が女性だけのものとあれば、女性の社会進出は急速に進んでいき、今やこの世界はどこでも「女尊男卑」の風潮で――

『――何よ男のくせに! 女性の気持ちが分からないなら黙ってなさい!』
『そうよそうよ! 引っ込んでなさいよっ!』
『さっさと出て行きなさい! 女の言うことが聞けないのっ!?』
『女性を立てるのは男性として当然でしょう!?』

 暴言がテレビから矢継ぎ早に届いてくる。
 研究所敷地内にある葛城さん宅のリビングで、俺はぼんやりとテレビを眺めていた。
 こんな会話があろうことか国会中継から聞こえてくる世界だ。どれだけ世界が平和で、そして女性が中心になっているかが良く分かる。

『こんな簡単なことも分からないの? 男ってやっぱり馬鹿なのね!』
『無知、無知、無恥の三重苦。少しは足りない頭を使う術を覚えたら?』
「……うるさい、余計なお世話だ」

 俺の前にある机には、放り出されたテキストが置かれている。頬杖をついてさぼっている最中とあって、テレビの罵声が耳に痛い。
 すぐにリモコンに手を伸ばしてチャンネルを変えると、無難そうな音楽番組に切り替わった。


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