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SS練習スレ2
318
:
262
◆VB6swS8Xl.
:2012/07/11(水) 01:50:04 ID:MGLfQ4OY
……純白の機体が緑色に輝く世界を駆ける。
──戦闘機のように丸みを帯びた胸部。流線型を崩さないスマートな手足。
そのヒロイックな外観に似合わず、それは大半の人間から畏怖される"力"だ。今の世界で最強を誇る兵器の一角にして、個人が運用できる最も巨大な武力の象徴。
──アーマード・コア"ネクスト"
一時は百機近く運用され、戦場の主役となっていたそれも、今では数えるくらいしか残存していない。その生き残りの一機を操る"彼"は、紛れもなく最強の兵士の一人だった。
「……間もなく作戦領域に入る。状況は?」
年季の入った落ち着いた声。情報が得られない戦場で勝つことは出来ない。それを"彼"は身を以て知っている。
『変わらない。相変わらず静止している』
「そうか。……誘われているな」
それでも、情報が意味を持たない状況というのは存在している。
『そろそろ敵機が見えるはずだ。……本当に単独でいいんだな?』
情報を分析する手段が存在しないとき、情報を分析する時間を待てないとき。そして……。
「選択肢のないネクスト戦だ。静かに戦いたい」
情報を生かす手段の存在しないとき。勘と経験で戦う"彼"にとって、適切でないオペレートなど意味のあることではなかった。
『わかった。……無責任だろうが、こう言っておく』
──君ならやれる、幸運を
その言葉の直後、通信が途切れる。サポートを頼んでいるわけでもない。殺し、殺される瞬間を伝える必要など無いのだから、それで十分だった。
それに、目標は直ぐそこにいる。ズーム性能に劣るカメラ故に黒い点にしか見えていなかったが。
「目標補足」
OB(オーバード・ブースト)をカット。推進力を失った機体がつんのめり、"彼"の細やかなスラスター制御で綺麗に地面に着く。
──私は思索者だ、自分だって破壊して見せる
はっきりと捉えられるようになった目標たる蒼い機体は、ただ、佇んでいた。淡い緑に輝くPA(プライマルアーマー)を纏い、その紅いゴーグルを光らせて。
──私は撃つ者だ、それしかできない子供なのだから
不意に途切れたはずの通信から、それなりに年を喰った男の歌声が聞こえる。意識を通信モジュールに向ければ、別の回線が開かれていた。"首輪付き"の肉声か。
「……懐かしい」
遠い昔の詩。まだこの世界に国家と呼べる物が残っていた時代の、派手好きな歌手が路上でシャウトしていたラブソング。
──煽動し、衆目を集め、そしてその"先"に気付いた
多くの時代の思想家が愛した、迷える人々の詩。それを目の前の"リンクス"は歌っていた。"彼"は愛機の足を止め、それに聴き入る。
──貴方は私と"海の底"を語れるか?
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