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SS練習スレ2

306螺子巻鳥 ◆l.5pQ38hy6:2012/06/30(土) 06:45:22 ID:aMj.7YNQ
 天を見上げる。突き抜けるような青空の中、人影一つ。
 無限に広がるような空が、そこに集約してゆくような錯覚。

「……っ!」

 上がりそうになる悲鳴を押し殺す。そこにいるというだけで威圧されそうな姿。空中にある、杖を構えた白い人影。

「どうして?」

 問い掛けには答えない。代わりに背中のブースターをふかす。
 相手がどうあれ、今は自分の相棒を信じるしかない。そう自分に言い聞かせ、シンは己を包む相棒、インパルスのスロットルを開ける。
 体を宙に押し上げる推力に任せるまま、右手に握ったライフルの引き金を引く。こちらが放つ一撃は、同じ色のバリアにあっさりと防がれる。

「どうして戦わなくちゃいけないの?」

 こちらの攻撃など意にも介さず、話し掛けようとする声。この期に及んで話し合おうとする言葉に、歯軋りしながら届かない言葉を投げる。

「あんたは俺か討つんだ! 今日、ここでっ!」

 戦う気配を察知したのか、人影が動く。杖を一降りすると、桜色の球体が空間に生まれる。その数、八つ。
『Accel Shooter』
 一つがライフルに当たり、手からこぼれる。それでも止まれない。言葉の代わりに、白い筒を手にした。
 ブースターで体勢を戻す間に、筒から光の剣が生まれる。ビームサーベルだ。
 飛び交う桜色の誘導弾を切り払う。シールドで防ぐ手間が惜しい。
 続けざまに打ち込むサーベルの一撃を、手にした杖に受け止められる。

「戦わなくていい方法があるのかもしれない。一緒に頑張れるのかもしれない!
 でも、話してくれなくちゃ何もわからないよ!」
「あんたが! あんたがそうだから戦うんだ!」

聞こえた声に押されたのか、わずか白い人影が押し込まれる。姿勢制御用のバーニヤさえも推力に変え、前へ。ただ前へ!

「高町なのはっ!」

 突き進む。着地など考えない突撃。ライフルでの射撃戦では、どうやったって勝てはしない。
 相手は砲撃と射撃のエキスパート。活路を見出せるのは接近戦以外にありえないのだ。
『Divine Shooter』
 少しだけ開いた隙間にねじ込むように、射撃魔法が舞う。桜色の弾丸を打ちながら後退するなのは。
 流石にそれを追うことはできず、バルカンでの迎撃によって弾丸を撃墜する。低威力の弾頭だが、それなりに役に立つ。今のような迎撃とか。

「止まれないんだね。自分では、もう」

 杖を振るう、なのは。距離を稼いだら、彼女のやることはただひとつ。

「止めるよ、この一撃で。そうしたら、ゆっくり話そうか。本当に分かり合えないのかどうか、
 やってみないと分からないよ」

 さっぱりとした言葉に迷いはない。こうやって彼女は勝ち続け、敵とも分かりあってきた。
 相手の内側にふみこんで、友達になるために邪魔な障害を木っ端微塵に吹き飛ばす。
 それが高町なのは。時空管理局が誇るエースオブエース。

「……」

 だからこそ、シンはブースターを高めて行く。アフターバーナーまで使えば方向転換は出来ない。
 もしもこの状態から彼女の得意技が炸裂すれば、避けることの出来ない自分はもう立ち上がれない。
 だが、と。そこでシンは考えるのを止めた。全て分かった上で、あえて真っ正面から突っ切る。

「あんた一人で終わりにする。だから、越える!」

 そう、不意打ちでは意味がない。真っ正面からの対決で乗り越えなくては、ここで戦う意味はない。
 稼いだ距離のうちで、なのはがシンを貫くか。チャージが終わるその前に、シンがなのはを貫くか。
 分かりやすい結果に落ち着いた勝負の行方。

「全力、全開っ!」
「フルブースト!」

 救われるべき人を救うために戦い、勝利してきた機動六課の英雄、高町なのは。
 戦争を憎み、誰も争わなくていい世界を望み、敗北し続けてきた男、シン・アスカ。
 彼らが何故出会い、こうして戦っているのか。
 それを知るためには、少し時間を巻き戻す必要がある。


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