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SS練習スレ2

28なのポネタ05:2011/05/07(土) 23:14:01 ID:aJC0MPNs
「? 早く言え」
「ん、んん。ごめんな」
 可愛らしく小首を傾げる闇統べる王に、はやては邪な心を誤魔化すように咳払いをし、
「前に言うとった、私の部隊が稼動準備中や」
 本題に入った。随分と脱線してしまい事故が起きてしまったが、幸い怪我人等は出なかったのが奇跡だ。周囲の人達も、いつの間にか元に戻っている。ただシン達の近くにいた局員達は、いつの間にか姿を消していたが。
「今二人は管理局から退いた身や」
 闇統べる王は眼光を鋭くし、雷刃の襲撃者ははやての話を聞いていないのか欠伸をしている。
「そんな二人にこんな事頼むのは間違ってる思うけど……それでも……!」
 はやては居住まいを正し、マテリアル達に頭を下げた。
「魔導師として、機動六課に、私に力を貸してください」
 闇統べる王は黙ってはやての下げた頭を睨み据え、雷刃の襲撃者は彼女とシンを交互に見比べた。彼ははやての話を予め把握していたのだろうか、特に驚きもせず、黙っていた。
「その体勢を止めろ。話が出来ない」
 闇統べる王の冷たい声に、はやてはゆっくりと顔を上げた。
 闇統べる王がはやてに向ける全てのものは、いつだって無機質で冷酷だった。彼女から見れば、はやては闇の書の主、闇を統べる王の玉座を放棄した腰抜けに他ならなかった。許せなかったのだ。
「今日呼び出したのはそれが全てか?」
「そうや」
「そうか……」
 闇統べる王は伏目がちに立ち上がり、律儀に椅子を戻して踵を返す。彼女が向いた先は、食堂の出入り口。
「断る。私も忙しい身だ。貴様の『仲良しごっこ』に付き合う気はない」
「…………」
「おい」
 言い過ぎだろ、とシンが険の篭もった声と視線を闇統べる王の背中に向けるが、彼女は詫びれもせずそのままだった。
 はやては若干顔を伏せ、唇を噛み締める。テーブルの下の手は、管理局の制服をきつく握り締めていた。
『仲良しごっこ』と皮肉を漏らされても、はやては何も言い返せなかった。
 機動六課にスカウトした局員に、はやてに近い人が多かったからだ。
 組織の中で、親しい人と一緒に仕事をしたいという気持ちは誰にでもある。だが、はやてのそれは、あからさま過ぎた。
 管理局の上層部にも、闇統べる王と同じ意見を持つ者は少なくなかった。
「だが」
「……え?」
 闇の欠片事件では敵同士、解決後もいがみ合うといっていい程、絶望的な仲の悪さ。口を開けば挑発と皮肉が飛び交い、最悪の場合バリアジャケットを展開するまでに至った。
 絶対に仲直りしない、できっこない――幼いはやては、常にそう思っていた。十年経った今では、その気持ちは和らいでいるが、彼女と分かり合えるとは微塵も思っていない。
 はやては、闇統べる王を通して、自分自身を見ているような気がしたのだ。もしかしたら――守護騎士達やなのは達と出会えず、一人ぼっちだったら。姿形が同じというのも、それに拍車を掛けている。
 そのような、憎まれ口しか聞いた事のない闇統べる王の、穏やかな声色に、はやては耳を疑った。


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