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SS練習スレ2
100
:
シンの嫁774人目
:2011/11/08(火) 22:03:35 ID:8XYJbSzk
奴の右手が『福音』の頭を鷲掴みし、ぎりぎりと万力のように締めつける。瞬間、掌の内側がピカッと光り、ズガンという轟音とともに『福音』の頭に亀裂が入る。
あの光は、ビーム? あの野郎、掌に荷電粒子砲を仕込んでやがるのか!?
しかも『絶対防御』を突破し、本体の装甲にヒビを入れるほどの大威力だ。もしもあの時、殴られるのではなく、あれを撃ち込まれていたらと思うとゾッとする。
『a…AAAAAAAAAAAAAAAA!!!』
甲高いマシンボイスが大気を揺さぶる。『福音』の悲鳴だ。全身の装甲が卵の殻のようにひび割れ、小型のエネルギー翼が羽毛のように『福音』を包む。
直後、あのエネルギー弾雨が零距離から奴を直撃。爆音が轟き、黒煙が二体のISを覆い隠す。
「やったか!?」
俺は思わず叫んだ。あれだけの数のエネルギー弾をまともに食らって無事である筈がない。それは確信というより、願望だった。
黒煙が晴れ、奴の姿が蒼穹に浮かび上がる。奴は――無傷だった。
奴の身体を覆い隠す全身装甲。灰色一色だったそれは、しかし今は白と青に変わり、背中の翼と合わせて鮮やかなトリコロールカラーを形成している。
「まさか――第二形態移行!?」
奴の変身にセシリアが悲鳴を上げる。だが、それは違うと俺は思った。
奴はただ装甲の色が変わっただけだ。『白式』の一次移行(ファースト・シフト)や、『福音』の二次移行のような劇的な変化とは違う。
現に全身装甲のツートンカラーは徐々に薄まり、元の灰色に戻りつつある。恐らくだが、装甲の色を変えることで飛躍的に防御力を上げているのだろう。
そして常時あの形態でいないのは、多分エネルギーの消耗が激しくて長時間維持できないのだろう。そう、俺の『零落白夜』と同じように。
つまり、あれが奴の単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)。そして全身装甲の秘密だったのだ。
奴が『福音』の頭を握りしめ、再び掌部ビーム砲を撃ち込む。ひび割れた頭部装甲が砕け散り、内部フレームが剥き出しになる。
不意に『福音』のエネルギー翼が消失した。エネルギー切れだ。
俺達との激闘と、二度の『絶対防御』の発動によって、今の『福音』には『光の翼』を維持するだけのシールドエネルギーがもう残っていないのだろう。
だらりと四肢を脱力した『福音』を右手で掴んだまま、奴はその胸に左手を突き立てた。そしてブチブチと配線を千切りながら、何かを抉り出す。
『福音』が身体を一度大きく痙攣させ、死んだようにそれきり動かなくなった。
奴の左手に握られたもの。まるで命を持つように明滅する、菱形立体のクリスタル。それはISの心臓部、『福音』のISコアだった。
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