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デジモンアドベンチャー02業-KARMAN-
1
:
沐鳥
:2011/08/28(日) 11:03:15
はじめまして、沐鳥と申します。
今まで頭の中で小説を思い浮かべてみることは幾度かあったのですが実際に投稿等をしたことはありませんでした。
そんな中ここにたどりつき、自分も投稿してみたいと思い投稿してみました。
投稿どころか掲示板の利用も初めてなので不作法な点があるかもしれませんが暖かくみてもらえれば光栄です。
よろしくお願いします
66
:
沐鳥
:2012/02/19(日) 10:06:15
「……さて、どうする? このまま俺達と戦うのか、それとも仲間の元へ急ぐか?」
デスアローによる爆音で止まっていた戦闘を再開するか京達にクロスモンが尋ねる。
「ど、どうしよう……!」
京達が返答に困っていると
「皆、早く大輔達の所に!」
ホウオウモンが京達に撤退するように勧めた。
「ホウオウモン!?」
「ここは私が引き受ける! だから早く!」
「で、でも!」
それでも京達迷っていると
「やれやれ……帰るぞ、メガドラモン、ギガドラモン。」
先にクロスモン達の方が撤退を始めた。
「……何のつもり?」
「こっちもやられた仲間のことが気がかりでね。そっちが撤退しないってならこっちから撤退しようかなと。ちょうど迎えも来たみたいだし。」
エンジェウーモンの問いにクロスモンがそう答えた時、ユキダルモンによく似ているツチダルモンというデジモンがデジビードルを運転して近づいてきているのが確認できた。
「悪いな、ツチダルモン。」
クロスモンから退化した兼定とムーチョモンはデジビードルに乗り込みメガドラモンとギガドラモンに指示を出す。
「もう作業は終わってるかもしれないがお前らは一応タケルの元に戻って手を貸してやってくれ。」
「了解しました。」
「ま、待ちなさい!」
京が制止するも兼定達はそれぞれ新たな自分の持ち場に向かって行きその場から立ち去って行った。
「……どうする?」
「どうするって言われても……」
「これはこれで好都合です。急いで皆の所へ向かいましょう!」
シルフィーモンに促され京達も大輔達の元へ急行した。
67
:
沐鳥
:2012/02/19(日) 10:29:01
「ふう……」
「お疲れ様です!」
戦闘に巻き込まれない位置に待機していたコウガモンがデスモンから退化した久志とトイアグモン(ウィルス)に労いの言葉を掛ける。
「ああ、それじゃ他の足止め役の救護に向かうぞ!」
「はっ!」
久志達はすぐさま次の目的地に向かうためその場を後にした。
「うぐぁ……」
「く、そ……」
「ブ、ブイモン!」
一方、パイルドラモン、ディノビーモン、ズドモン、シャッコウモンの四体はデスモンに敗れ、それぞれ成長期に退化して地面に伏せてしまっていた。
そんなパートナー達に大輔達が駆け寄る。
「ごめん、大輔……」
「何言ってんだ。お前達はよくやったよ。」
大輔達がパートナー達を労っていると
「み〜ん〜な〜無事!?」
京達が大輔達の元へ到着した。
「空君、なんでピヨモンとたった二人だけで動いたりしたんだ!?」
「ご、ごめんなさい。」
丈が空とピヨモンの行動を強く咎めると空は素直に頭を下げた。
「まあまあ、それより皆の容態は!?」
ブイモン達は深く傷ついていたが幸いにも致命傷になり得るものは一つもなかった。
「良かった〜!」
大輔達が安堵の溜息をつくとディーターミナルに通信が入った。
「ゲンナイさんからだ。」
ゲンナイからのメールにはこう記されていた。
『選ばれし子供達よ、急な話で悪いんじゃがチンロンモンからの使者がワシの所に来ておる。済まないがワシの家に集合してほしい。頼む。』
「チンロンモンからの使者ぁ!?」
「なにか分かったのかしら?」
「とりあえず、ゲンナイさんの家に行ってみましょう。」
かくして大輔達はチンロンモンからの使者の待つゲンナイの家へ向かっていった。
68
:
沐鳥
:2012/02/19(日) 11:13:48
PANDORA DATA FILE Vol.2
パンドラ十災将
坂東 兼定 (ばんどう かねさだ)
お台場中学校一年D組在籍
パートナー ムーチョモン(⇔アカトリモン⇔パロットモン⇔クロスモン)
お台場中学校生徒指導教諭石頭の『目の上のたんこぶ四人衆』の一人。
正直タケルは基本教員にたてつくことはないが兼定、虎徹、則宗の三人は我が強く石頭の偏見に満ちた理論を絶対に受け入れず口論や暴挙に至る事もあるので、校内では三人とその友人であるタケルに不良のレッテルが貼られている。
その中でも兼定は一番、素行が悪くしばしば石頭との激しい口論を繰り広げている。
しかし、その激しい口論が幸いして(?)、早い内に話し合いは無意味と判断する虎徹、則宗と比べて手を出すこと自体は割と遅め。
十災将の中でも血気盛んな方で最前線に立って戦いに挑む事も少なくなく、そしてそれを楽しんでいるようなそぶりも見せる。
筆者備考
前回、これ何時やったっけと思うぐらい久々のオリジナルキャラクターの紹介です。
大輔、賢、ヒカリ、そしてタケルと同い年のキャラは絶対に何人か用意しようと思っていたので彼の設定は結構早い内に頭の中にありました。
ちなみにムーチョモンの進化系譜は『デジモンストーリーサンバースト ムーンライト』から持ってきました。
ここで、前回アズマの紹介で書きもらした事を一つ。
デビタマモンのブラックデスクラウドの形質変化は技名の『クラウド』つまり『雲』という部分に着目して作りました。
『雲』、つまりは水もしくは氷、だったら固体の状態の雲を盾代わりに使えるんじゃないか? そう考えこんな設定が生まれました。おかしな発想かもしれませんが……
そんなこんなで様々な技の応用がこの小説では登場すると思いますがそれも含めて楽しんで頂けるとうれしいです。
(まあ、アグモンとガブモンの究極体進化の失敗やパラディンモードの敗北、マトリックエヴォリューションの使用など既に好き勝手な設定で今更かもしれませんが……)
69
:
沐鳥
:2012/02/26(日) 11:00:41
第二十三話 四聖獣と十二神将
「すまん、遅れた!」
ゲンナイからの連絡を受け太一がゲンナイの家に到着しパンドラ側についているタケルとパタモンを除いた選ばれし子供達とそのパートナーが全員揃った。
「みんな、急な召集に良く応じて集まってくれたの。」
「ゲンナイさん、挨拶はいいですから本題を。」
「ふむ、それもそうじゃな。『ミヒラモン』入って来てくれ。」
ゲンナイが呼び掛けると奥から虎のような容姿をしたデジモンが現れ太一達に一礼する。
「彼の名はミヒラモン。チンロンモンが名を連ねている四聖獣に仕えている十二神将という一団の一体じゃ。」
「チンロンモン様の命により選ばれし子供達の力になるべく馳せ参じました。」
「十二神将のデジモンは皆、完全体じゃから大きな戦力になってくれるはずじゃ。」
「完全体!」
「それは心強いな!!」
新たな仲間の登場に太一達の顔が明るくなる。
すると、ある事を思い出して京が部屋の中心に移動して話し出す。
「そうそう、実はいい知らせがもう一つあるのよ!!」
「えっ、なになに!?」
太一達の視線が一斉に京に集まる。
「なんと! 空さんとピヨモンがマトリックスエヴォリューションを会得しました〜!!」
「ええ〜!?」
「マジでか!?」
京が発表した朗報にみんなが更に盛り上がった。
しかし、その中で一人だけ少し難しい顔をしている者がいた。
「ミヒラモン、どうかした?」
その様子に気付いたアグモンがその難しい顔をしていたミヒラモンに話しかける。
ミヒラモンは発言するのを少し迷っていたが意を決して自分が話すべきであろう事柄を話し出した。
「……マトリックスエヴォリューションの会得は確かに大きな戦力に成り得ましょう。しかし、それは同時に相手から強く警戒される事にもなります。また、まだ一組しか会得していない事もあり十災将が束になって武之内嬢やピヨモン殿に襲いかかって来るかも知れません。どうか、警戒を怠らぬようにお願いします。」
「確かに……それにホウオウモンだけに負担を強いるわけにもいかないわ。」
ミヒラモンの指摘にテイルモンも同調する。
「それからチンロンモン様の話によるとマトリックスエヴォリューションにもデメリットが存在するようなのです。」
「デメリット!?」
「どういう意味だ!?」
更に注意を促すミヒラモンに太一が問いかける。
「これはもう一つ私がお伝えしなければならぬ話にも関わりがありますので順を追って説明致しましょう。我が主、チンロンモン様が初めて十災将と接触した日の事でございます。」
「初めて接触した日ってインペリアルドラモンがザンバモンと戦った日?」
「はい。あなた方と別れた後、チンロンモン様はその日の内に同じく四聖獣であらせられるシェンウーモン様の元を訪ねられたのでございます。」
70
:
沐鳥
:2012/03/18(日) 09:12:01
「お待ちください、チンロンモン様! 今、シェンウーモン様にお取次ぎ致しますので!!」
「構うなクンビラモン。事は一刻を争うのだ、私から直接彼に話す。」
チンロンモンはクンビラモンの静止を振り切りシェンウーモンの拠点の廊下を進む。
(私の思い違いならいいが、そうでなかったとしたら……)
チンロンモンがそう思案しながら廊下を進むと応接間として使っている部屋から声が聞こえてきた。
「シェンウーモン様、この度はご助力して頂き誠にありがとうございます。」
(この声は、ヴァジラモンの声か。どうやらシェンウーモンも一緒らしいな。)
チンロンモンはシェンウーモンの配下の十二神将、ヴァジラモンの言葉でシェンウーモンが応接間にいると考えそこに向かって歩を進める。
「よいよい、可愛い配下とその『パートナー』の為じゃ。それよりもこれからきちんとヴィカラーラモンの所で治療を受けるんじゃぞ。」
(む……パートナー?)
応接間から聞こえてきたシェンウーモンの言葉に疑問を感じたチンロンモンは応接間に入る前に思わず立ち止まった。
そして、次にチンロンモンの耳に聞こえてきたのはそこで聞くと思いもしなかった声と名前だった。
「分かってるよ。本当に助かったよ、シェンウーモン。」
「よいよい。体を大事にしなさい『則宗』よ。」
(『則宗』だと!?)
「シェンウーモン!!」
チンロンモンは選ばれし子供達から聞いた十災将の一人の名を聞いて応接間に突入する。
そこには自分と同じく四聖獣に名を連ねるシェンウーモン。
十二神将の一体でシェンウーモンの直属の配下ヴァジラモン。
そして十災将の一人にしてコテモンのパートナーである少年、菊池則宗の姿があった。
71
:
沐鳥
:2012/03/18(日) 09:41:03
「チ、チンロンモン様!」
「やれやれ、おぬし、間の悪い時にやってきてくれたのう。」
チンロンモンの姿を見てヴァジラモンは動揺し、シェンウーモンは肩をすくめた。
「どういう事だ、シェンウーモン! この少年はデジタルワールドを破壊して回っているパンドラという組織の幹部、十災将の一人だぞ!!」
「そうじゃったかのぅ?」
とぼけるシェンウーモンをチンロンモンはさらに問い詰める。
「先ほど、配下とそのパートナーと言っていたな。この少年のパートナー、コテモンが完全体に進化した姿がヴァジラモンなのか!?」
「……そこまで聞こえておったか。」
チンロンモンの問いにシェンウーモンは諦めたようにため息をついた。
「おぬし、言うとおりじゃ。我が配下、ヴァジラモンはパンドラが誇る十災将、菊池則宗のパートナーじゃ。」
「それでは、彼らが撤退した時、突如現れた霧は……!」
「無論、わしが生み出したものじゃ。」
「何故だ!? 何故パンドラに協力している!?」
「生憎、それに答えるわけにはいかぬのう。」
「……そうか、ならば今ここで私が十災将の一角を討ち取らせてもらうぞ!」
シェンウーモンの態度にもはや問答無用と判断したチンロンモンは戦闘態勢をとる。
「則宗、下がっていてくれ。」
意を決したヴァジラモンが則宗を下がらせ応戦しようとするが
「おぬしもじゃ、ヴァジラモン。」
とシェンウーモンに呼び止められた。
「シェンウーモン様!?」
「チンロンモンはわしに任せて則宗を連れて逃げるんじゃ。」
「しかし!」
「おぬしも則宗もチンロンモンの技を受け止めた時に腕を痛めておろう。それにここでチンロンモンと戦ったらあの時、戦闘を回避したのが無駄になるじゃろう。安心せい、ヴィカラーラモンには後でわしからパンドラの方に出向くよう言っとくから則宗を安全な所へ。」
「……承知致しました。則宗、私の背に!」
「分かった!」
シェンウーモンに促され則宗とヴァジラモンはすばやく撤退を図る。
「待て!」
「おぬしの相手はわしじゃ、チンロンモン!」
則宗達を追いかけようとするチンロンモンだったがシェンウーモンに邪魔をされて取り逃がしてしまう。」
「……仕方ない。まずはお前を倒しパンドラについての情報を得るとしよう!!」
「そう簡単にいくかのう? 霧幻!」
「蒼雷!」
四聖獣の凄まじい力がぶつかり合い辺りに爆音が響いた。
72
:
沐鳥
:2012/03/18(日) 10:54:44
「四聖獣の一体がパンドラに協力ぅ!?」
「それでチンロンモンは!?」
ミヒラモンにシェンウーモンの拠点で起こった事の一部始終を聞いた太一達はチンロンモンの安否をミヒラモンに尋ねた。
「チンロンモン様はシェンウーモン様との戦いで深手を負われましたが、お命には別状ありません。しかし、しばらくは戦いに参加する事は難しいでしょう。」
「そ、そうか……」
意気消沈する太一達を励ますようにミヒラモンが話を続ける。
「今、チンロンモン様の命を受けて私と同じチンロンモン様の配下の十二神将が残りの四聖獣、スーツェーモン様と、バイフーモン様に選ばれし子供達への協力を求めに向かっていますのでどうかあまりお気を落としませんようにお願いします。」
「本当か!? ……ありがとう。」
その言葉に勇気付けられた太一達は話の話題をマトリックスエヴォリューションの事に切り替えた。
「チンロンモンの攻撃で負傷したという事はマトリクスエヴォリューションの状態で進化したデジモンのダメージは一体化した人間にも強く影響するという事ですか?」
「恐らくは。」
光子郎とミヒラモンはシェンウーモンが発した言葉と則宗の状態を踏まえたマトリックスエヴォリューションの危険性について考察すると実体験として空も意見を述べる。
「確かにホウオウモンになっている時は感覚を共有しているって感じがしたわ。」
「一応、戦闘はデジモン側が中心を担っていると思いますがそれを差し引いてもデジモンと人間では打たれ強さに差が出ると思われます。注意するに越した事はないかと。」
「強力な進化故にそのリスクも大きいって事か……」
「かといって、リスクを避けて普通の究極体進化を実現してもあいつらに勝てる見込みは薄いしな。」
「ど、どうしよう……」
マトリックスエヴォリューションのリスクの前に一同が黙り込んでしまっているとその沈黙を破り太一が口を開く。
「……やっぱり、強くなるしかなんじゃないか。」
「えっ……?」
「今、マトリックスエヴォリューションのリスクにビビッてたら、何時までたってもパンドラには勝てりゃしないだろ。リスクが怖いのならそのリスクを感じさせなくなるくらい強くなるぐらいしか今の俺達には残されてないんじゃないか。」
「……そうだな。それにタケル達……十災将の連中もそれを承知での上で戦ってるはずだ。俺達だけが危険を避けるわけにはいかないな。」
太一の案にヤマトも同意を示した。
そして
「そうですね。それに相手を殺さずにして倒す方法はいくらでもありますし、それが実行できれば高石君達にデジタルワールドを破壊している理由も聞きだせるかもしれませんしね。」
「そのためにも強くならないといけないしな。」
大輔と賢も意見を述べると他の仲間達も
「それもそうだね。」
「今はそれしか思いつきませんしね。」
「だけど、それがこの戦いを終わらす一番の近道だと思うわ。」
次々と目に力を取り戻し奮い立った。
そして全員の意見が一つにまとまった所で太一がその場を締める。
「よし。ミヒラモン、情報ありがとな。そんじゃ気合を入れなおした所で今日は家に帰って次に備えるぞ。解散!」
こうして新たな仲間に『十二神将』ミヒラモンを加えた太一達は一度それぞれの家に帰り来るべき次の戦いに備えゲンナイの家を後にしていくのであった。
73
:
沐鳥
:2012/03/20(火) 10:06:37
第二十四話 出没! 十人目の十災将
ミヒラモンから新たな情報を得ることができた数日後、太一はそれまでの戦いの成果と今後の作戦について話し合うべく、光子郎の家を訪れていた。
「現状はどんな感じになってんだ?」
「パンドラに所属する普通のデジモンとなら問題なく戦えます。しかし……」
「十災将か……」
「はい、いかに戦いを有利に進めていても彼らが現れると一気に形勢を逆転されてしまいます。」
「やっぱり、マトリックスエヴォリューションを使えるのが空とピヨモンだけってのがきついなぁ。」
「そうですね。」
「おまけに十災将もまだ九人しか顔を知らないし、どうしたもんか……」
椅子に座って考え込む太一に囁きが聞こえる。
(……一刻も早くマトリックスエヴォリューションを会得するべき。)
「そうだよなぁ。でもどうすりゃいいんだ?」
(……筋トレ?)
「た、太一さ……」
「そうだな、デジモンと一体化して戦うなら俺達人間も体力をつけといた方がいいかもしれないな。」
(……一日腕立て、腹筋、背筋それぞれ200回、100mダッシュを100本、それぞれ300セットずつ?)
「たい……」
「いやいや、それ厳しくないか? オーバーワークじゃねえか?」
(……じゃあ、マンションの屋上から飛んでみたり、滝壺にダイブしてみる?)
「太一は……」
「いや、もはや特訓じゃねえだろ。ただの身投げだろ。」
(……大丈夫……たぶん。)
「何が大丈夫なの? たぶんで死ぬ……」
「「「ストップ!!」」」
太一と囁く声の会話に業を煮やした光子郎、アグモン、テントモンが会話を中断させる。
「なんだよ、急に叫ん……うおぁ!?」
その声に驚いて光子郎達に顔を向けようとした太一は光子郎達の声以上に驚いて反対側に転げ落ちてしまった。
「だ、誰だお前!?」
太一が顔を向けた時、黒いボディースーツに身を包んだ見覚えのない少女の顔が太一の顔の真ん前にあったのだ。
「……ヤッホー。」
「ヤッホーじゃねえよ。俺に囁きかけてきたのはお前か? 脅かすんじゃねえよ!」
「……うん、そうだよ。」
「ていうかすぐに気づかない太一にびっくりだよ。」
「うっ……」
アグモンの鋭いツッコミが太一にグサリと刺さる。
「それよりもどこから入ってきたんですか!?」
気持ちを切り替えて光子郎が進入経路を問いただすと少女は
「……壁?」
と辺りを見渡してから答えた。
「何で疑問形なんだよ。絶対今考えただろ。」
「……質問を変えます。あなたは誰ですか?」
この質問に少女は
「それは八神太一が知ってる。」
と答えた。
「はああああ!?」
「ほんまでっか、太一はん!?」
「いや知らねえよ。何処で会った!?」
太一がそう質問すると少女はこう答えた。
「高校の入学式。」
「へっ?」
「私、太一と同じ高校の同じ学年。クラス三つ離れてるけど入学式を一緒に出てるから顔を見たことがあるかも。」
「わかるか、そんなもん!!」
少女の回答に太一達は思わずずっこける。
少女はそれを気にせず今度は光子郎をおしのけてパソコンをいじり始めた。
「か、勝手にいじらないでください!」
光子郎が注意するが少女はそれを黙殺してなにかを取り出しパソコンに向かってこう言い放った。
「デジタルゲートオープン。」
「えっ……!?」
「何だと!?」
「……またね。」
太一達が驚いた隙に少女はゲートを開いてデジタルワールドに消えていった。
「今のってまさか!」
「追いかけるぞ!!」
そして太一達は、急いで少女を追いかけにデジタルワールドに向かうのであった。
74
:
沐鳥
:2012/03/20(火) 10:38:42
「くそっ、あいつどこ行きやがった!!]
太一、光子郎、アグモン、テントモンは光子郎の家に突如現れた少女を追ってデジタルワールドに足を踏み入れていた。
「僕らの他のデジヴァイスの反応はありません。あの女性は一体……」
「あっ光子郎危ない!!」
「えっ……」
「……たあ。」
アグモンが危険を知らせるが既に遅く、光子郎の顔面は死角から走ってきた先ほどの少女が放ったドロップキックで弾けとんだ。
「光子郎はーん!!」
テントモンが悲鳴を上げ2〜3m吹き飛ばされた光子郎はピクリとも動かない。
「…………」
蹴った当人はというと蹴り飛ばした光子郎を一瞥しただけで後は何事もなかったように走って逃げ去った。
「あっ待ちやがれ! テントモン、光子郎を任せたぞ。」
慌てて太一とアグモンは少女を追いかける。
しかし、太一の脚力をもってしても一向に少女との差はつまらなかった。
「はあはあ、あいつは一体何者なんだ!?」
「うわぁ!」
「アグモン!?」
少女を追いかけているうちに砂浜に出た太一達であったが、その砂浜の砂に足を取られアグモンが転んでしまった。
「大丈夫か!?」
それで太一が後ろを振り返りもう追跡ができないと思われたその時
「真〜央〜!!」
砂浜に響く怒号で少女も足を止めた。
「何だ!?」
「あれは……」
太一達が辺りを見渡すと一台のデジビードルがこちらに向かってくるのが確認できた。
デジビードルは少女の傍で止まり運転していたデジモンが降りてきた。
「……ヤッホー、『ラック』。」
「ヤッホーじゃない! 無断でフラフラ出歩くなっていつも言ってるだろう!!」
ラックと呼ばれたデジモンが少女を叱りつけると少女は不愉快そうに眉をひそめ反論する。
「……書置き、残した。」
「『行って来る』としか書かれてない書置きは残したといわない!!」
しかし、その反論は一蹴される。
「お、おい……あれ……」
一方、太一達は少女とデジモンの喧嘩ではなくデジビードルから降りてきたデジモンの容姿に驚いていた。
なぜなら
「た、太一……」
「黒い……アグモン?」
そのデジモンはまさしく黒い皮膚を持ったアグモンに他ならなかったからである。
75
:
沐鳥
:2012/03/25(日) 10:12:24
「黒い……アグモン?」
デジビードルに乗って現れた黒いアグモンは、ある程度少女を叱る(少女に反省の色は無い)と、太一達に視線を移し、ゆっくりと太一達に近づいてくる。
「な、なんだ?」
思わず身構える太一達だったが黒いアグモンは、太一達が想像しなかった行動をとった。
「すいません、うちの真央が迷惑かけたみたいで。これ、つまらないものですがどうぞ。」
黒いアグモンは丁寧に頭を下げて謝罪をして太一達に菓子折りを差し出したのだ。
「えっ……ああ、ご丁寧にどうも。」
黒いアグモンの態度に毒気を抜かれた太一達は素直に菓子折りをうけとってしまう。
「えっと……君達は一体?」
「申し遅れました。俺はブラックアグモン。周囲からは『ラック』って呼ばれることが多いな。そして彼女は、俺のパートナーの神谷真央。俺達はパンドラの十災将の一組でもある。」
「はあ、なるほど。」
アグモンの質問にブラックアグモン(以後、ラックと表記)は丁寧に答え、自分達の素性をばらす。
自己紹介が一通り済んだ時点で真央がある提案をする。
「……偶然白と黒のアグモンが揃った事だし、一勝負してみる?」
「僕、白くないけどな。」
「その前にきちんと謝罪しなさい。」
「…………」
自分の提案を無視して二体のアグモンにツッコミを入れられた真央は気分を害してふてくされた。
「ま、まあ、お前らが十災将だってわかったからにはこのままさようならって訳にも行かないな!」
あわてて太一が真央の提案に返答すると真央はすぐに気をとりなおした。
「……じゃあ、ルール説明するから。」
「お前がルールを決めるのか?」
「……ルールは簡単。」
今度は真央がラックの疑問を無視して独断でルールを説明する。
「……まず、成長期同士で戦い始めて適当なタイミング一段階ずつ進化してって常に同じ世代で戦う。戦闘不能になったら負け。……それだけ。」
「随分大雑把で回りくどいルールだな。」
「……普通に戦ったら太一達が弱すぎて勝負にならない。」
「真央、失礼だぞ。」
「……で、どうするの?」
真央が太一に改めて勝負するかどうかを尋ねる。
(同じ世代同士で戦うって事は現在こっちが究極体に進化できない以上相手も究極体にはならないって事だよな。それならこっちにも勝機はありそうだし何かパンドラの情報を手に入れる事が出来るかもしれない。……断る理由は無いか。)
「よし、そのルールで戦わせてもらおう。頼むぞアグモン!」
「任して、太一!」
「……ラック。」
「やれやれ、仕方ないな。」
二体のアグモンはそれぞれパートナーの一歩前に歩み寄り戦闘の構えをとって対峙した。
76
:
沐鳥
:2012/03/25(日) 10:57:06
第二十五話 漆黒の竜戦士、再臨
「「ベビーフレイム!!」」
アグモン同士の戦いはまずベビーフレイムの打ち合いで始まった。
「クロスファイト!」
ベビーフレイムがぶつかり合い相殺される中で、アグモンはラックに接近戦を挑みにいく。
「おっと!」
ラックはアグモンの最初の一撃をかわすと続いて二撃目、三撃目をも華麗にいなしてバランスを崩したアグモンに回し蹴りを放つ。
「アグモン!」
「痛たたた……」
「悪いな。俺、接近戦の方が得意なんだ。」
「大丈夫か、アグモン?」
「うん、だけどあいつ……強い!」
「ベビーフレイムの威力はほぼ一緒だしな……そうだ、いい考えがあるぞ! 耳を貸せ!!」
太一がアグモンに耳打ちをする。
「よし、アグモンもう一度クロスファイトだ!」
耳打ちが終了すると太一はアグモンの背を叩いて送り出しアグモンが再びラックに接近する。
「何をする気だ……?」
そしてアグモンがラックに攻撃をしかけ、それをラックがかわそうと動いたその時、
「アグモン、進化だ!」
「何!?」
アグモン 進化 グレイモン!
アグモンがすばやくグレイモンに進化してラックに襲いかかった。
「ラック!」
ブラックアグモン 進化 グレイモン(ウィルス)!
しかし、ラックもそれにすばやく対応し青い体色をしたグレイモンに進化する。
二体のグレイモンは組み合って力勝負に入る。
「……そんな不意打ちでラックは倒せない。」
「それはどうかな?」
「…………?」
真央の言葉に太一が不敵な笑みをこぼすとグレイモン達に動きが出た。
「うぐぅ……!」
少しずつラックがグレイモンの力に押され後退していく。
「すばやく対応が出来たとはいえ最初から力勝負に持ち込もうとしたグレイモンの方が不意を突かれたラックより重心が安定してるんだよ!」
そして、どんどんラックの態勢が崩れていきグレイモンがラックを押し倒した。
「よっしゃ!!」
作戦がうまく決まったと思い太一はガッツポーズをしたが次の瞬間、
「はあっ!」
「う、うわああ!?」
ラックは押し倒される力を逆手にとってグレイモンに巴投げを喰らわした。
「グ、グレイモン!?」
「……だから、そううまくいかないって言った。」
真央は小さな声でそう呟く。
「くそっ大丈夫か、グレイモン!?」
「うん、大丈夫。」
「こうなったら、完全体に進化だ!」
グレイモン 超進化 メタルグレイモン!
作戦に失敗した太一達は今使える最大の力で対抗すべくグレイモンはメタルグレイモンに進化する。
それと同様に
「……ラック。」
グレイモン 超進化 メタルグレイモン(ウィルス)!
真央達もラックがアグモンがデジモンカイザーによって暗黒進化した時と同じ青いメタルグレイモンに進化して迎え撃った。
77
:
沐鳥
:2012/03/28(水) 10:03:18
「青いメタルグレイモン……!」
「行くぞ!」
青いメタルグレイモンに進化したラックは間合いを詰めメタルグレイモンにトライデントアームを振りかざした。
メタルグレイモンもまたトライデントアームでそれを受け止める。
「うおおっ!」
「何っ!?」
ラックの攻撃を受け止めた後、メタルグレイモンが押し返しにいくと、その力に押し負けてラックは後方に追いやられる。
「よし!」
「パワーはあちらの方が上だったか……!」
「ギガデストロイヤー!」
メタルグレイモンがギガデストロイヤーを放つとラックは上空へと飛び上がる。
そのラックを追ってギガデストロイヤーも上空へと軌道を変えた。
「かわしきれないか……」
追走してくるギガデストロイヤーにラックは意を決して振り返りギガデストロイヤーを正面に捉える。
「ギガデストロイヤー!」
そして自分もギガデストロイヤーを放ちメタルグレイモンのギガデストロイヤーを打ち落とすと、その爆発にラックの体は飲み込まれた。
「……ぶはぁっ!」
「トライデントアーム!」
メタルグレイモンはラックが爆煙から抜け出た所を狙って攻撃を仕掛けにいく。
だが、ラックはすばやく対応し、攻撃を受け流してすぐさま反撃する。
「うぐぅ!」
「メタルグレイモン!」
強くラックに蹴り飛ばされたメタルグレイモンは地面に激突する。
ラックは更に追撃の為メタルグレイモンに接近しようとした。
その時、
「うがぁ!?」
背後から激しい攻撃がラックに降りかかった。
78
:
沐鳥
:2012/03/28(水) 10:37:05
「うがぁ!?」
「お兄ちゃん、メタルグレイモン!」
「ヒカリ、光子郎、京ちゃん、伊織!」
攻撃が飛んできた方角から光子郎ら四人とそれぞれ完全体に進化したパートナーデジモンが現れ太一とメタルグレイモンの元に駆けつける。
「お前ら、どうしてここに!?」
「僕が救援を頼んだんです。」
一緒にデジタルワールドに入った光子郎以外の三人に太一が尋ね、光子郎が真央に蹴られた顔を押さえながら説明する。
「そ、そんな事より、な、なんで青いメタルグレイモンが居るんですか!?」
「あいつは十災将の一体が完全体に進化した姿だ。」
ラックの姿を見て動揺する京に太一は事のいきさつを簡潔に話す。
「でも、青いメタルグレイモンはイービルスパイラルの影響でアグモンが暗黒進化したデジモンじゃ……」
「大輔君の話ではデジタルワールドに刻まれたキメラモンによる傷跡を本にキメラモンへの進化を可能にしたデルタモンと戦ったそうです。おそらくあの青いメタルグレイモンもその類でしょう。」
伊織の疑問には光子郎が答えた。
一方、真央とラックの方は
「……ラック……無事?」
「なんとかな。」
真央がラックに近づき無事を確認する。
「……せっかく面白い所だったのに。」
「まあ、こっちの事情は伝わってなかったんだ、仕方がないだろ。……それより……」
ラックは勝負に水を差されふてくされる真央をなだめると気になっていた疑問を口にした。
「泉光子郎君の顔が腫れているように見えるんだが、何か心当たりはないか?」
「…………」
「……なるほど。」
(後でお詫びの品を送っておこう。)
真央の無言の返答で光子郎の怪我の原因を悟ったラックはそう心に誓うのであった。
「……興が冷めちゃった。ラック、進化しよ。」
「!!」
進化という単語に反応して太一達が真央の方に振り向く。
「やれやれ、仕方がないな。……今の俺の姿で究極体の想像はつくと思うが、あまりびっくりするなよ。」
ラックが太一達に注意を促す。
そして、
「……マトリックスエヴォリューション。」
「ま、まさか……」
メタルグレイモン(ウィルス) 進化 ブラックウォーグレイモン!
漆黒の竜戦士が再び、選ばれし子供達の前に立ち塞がった。
79
:
沐鳥
:2012/03/28(水) 11:33:02
PANDORA DATA FALE Vol.3
パンドラ十災将
神谷 真央 (かみや まお)
お台場西高校一年E組在籍
パートナー ブラックアグモン(通称ラック)⇔グレイモン(ウィルス)⇔メタルグレイモン(ウィルス)⇔ブラックウォーグレイモン
太一が通うお台場西高の生徒(太一は一年A組)。
もともと、口数の多い方ではなく、学校では特に人に話しかけることはしない。
あまり真央の事を知らない生徒にはおしとやかな美少女と思われるそうだが、実際にはきまぐれでイタズラ好きな性格である。
神出鬼没で、どこでどう現れるかはパートナーのラックですら把握しきれていない。
おまけにいつの間にかいなくなるのでラックはとても忙しい生活を送るはめになっている。
そのうえ空手、柔道、合気道の有段者で身体能力が高いうえに頭もそんなに悪くないのでかなりタチが悪い。
ちなみに光子郎の家に現れたのは町をフラフラしてて光子郎の家に向かっている太一を見つけ追跡し忍び込んだ。
その能力(?)を買って諜報部隊の隊長を任そうという話があったが本人にやる気はなく、このままではラックの負担が増えすぎるというわけで自分で立候補していた田辺カイがそのポジションについた。
パートナーのラックの方は、礼儀正しく有能で(真央は別に無能ではないが)面倒見もいいので、ほかの十災将や部下からの信頼が厚い。
太一のアグモンに比べてパワーは劣るものも真央とともに練習した空手、柔道、合気道のテクニックを駆使して戦うのがラックの戦闘スタイルである。
作者備考
十災将の中で最も時間をかけずに名前と性格の基盤が完成したキャラです。
あえて困った点を言えば初登場のタイミングとブラックアグモンとアグモンの呼び分けです。
何故、ダークタワーから生まれたデジモンであったブラックウォーグレイモンが普通のデジモンとしてパートナーとともに現れたかを悩んだ末、このような形に収まりました。
アグモンと間違えないようにニックネームを決めようと思って、最初に『クロ』というのが挙がったんですが、なんかありきたりだなと思い、考えた結果ブラックアグモンという名から『ラック』としました。(これもありきたりかもしれませんが)
この文章を別の小説のスレに書き込んでしまいました。
普通だったらありえないようなミスを犯してしまい本当に申し訳ありませんでした。
80
:
沐鳥
:2012/03/29(木) 10:59:07
物語を進める前に昨日、私がしでかしたミスについて今一度お詫び申し上げます。
本当に申し訳ありませんでした。
第二十六話 予期せぬ救援
「ブ、ブブブ、ブラックウォーグレイモン!?」
「やはり、そうなったか……!」
再び、立ち塞がるブラックウォーグレイモンを前に選ばれし子供達の体に力がこもる。
「悪いな。さすがに五対一じゃ厳しいからな、究極体に進化させてもらった。
ブラックウォーグレイモンことラックは太一達に軽く頭を下げると、
「……それじゃあ、行くぞ!」
一気に間合いを詰め攻撃を仕掛けてきた。
「く、来るぞ!!」
「トップガン!」
「ホーリーアロー!」
「ニギミタマ!」
突っ込んでくるラックに向かってシルフィーモンとエンジェウーモン、そしてシャッコウモンが攻撃を繰り出す。
しかし、ラックはその攻撃を最小限の動きでかわす、あるいは受け流す形であっという間に三体の懐に潜り込んだ。
「はっ!」
「うがぁっ!」
「きゃあ!」
右肘での打撃と左足での蹴りがシルフィーモンと、エンジェウーモンに決まり二体は吹き飛ばされる。
「「「うおおおぉ!!」」」
それと入れ替わる形でメタルグレイモンとアトラーカブテリモンが左右から、更にシャッコウモンが上からラックを押しつぶそうと襲いかかり三体のパワーで攻め立てる。
「ブラックトルネード!」
「ぐぅぅぅっ!」
「うわああっ!」
「がぁぁぁっ!」
だが、ラックがその場で高速回転をしてブラックトルネードを放ちメタルグレイモン達を弾き飛ばした。
「メタルグレイモン!」
「アトラーカブテリモン!」
「シルフィーモン!」
「シャッコウモン!」
「エンジェウーモン!」
太一達がそれぞれのパートナーの元へ駆け寄る中、ラックは上空に飛び上がり太一達に向かってこう言い放った。
「今日はこれでゲームセットだ!」
そして、ラックは体を大きく反らすと両手の間に強大なエネルギーが集まってくる。
「まずい、ガイアフォースだ!」
ラックが反らしていた体を元に戻しガイアフォースを撃とうとしたその時だった。
「海!」
「鳴!」
「墨!」
「「「銃〜!!」」」
81
:
沐鳥
:2012/04/01(日) 09:20:55
「海
82
:
沐鳥
:2012/04/01(日) 09:49:53
申し訳ありません。
再びミスを致しました。
「海!」
「鳴!」
「墨!」
「「「銃〜!!」」」
ガイアフォースを放とうとしたラックに三方向から真っ黒な物体が襲い掛かった。
「うっ!?」
ラックは反射的にガイアフォースを中止し防御の構えをとる。
真っ黒な物体はラックに衝突すると液体へと変化した。
「これは……墨?」
「宝棒(パオバン)!」
「ミヒラモン!?」
更に別方向からミヒラモンが現れその尻尾を変化させた三節棍を地面に叩きつけ砂埃を舞い上げる。
「ぐっ!」
砂埃はラックの視界を塞ぎ動きを止めさせる。
それが収まりラックの視界が開けると、
「……撤退したか。」
すでに太一達の姿はどこにも確認できなかった。
「……ふう。」
「……ラック。」
まだ敵が潜んでないかと警戒したラックはその気配を探し、それでもいないと判断すると退化する。
「真央、さっきの墨の攻撃はもしかすると……」
「……うん、そうかも。……でも、それより。」
「それより?」
「……体、洗ったほうがいいと思う。」
「……あ。」
真央に言われラックは自分の体を確認すると体色が黒いため見た目がまるで変わっていないが、先ほどの墨の弾丸によってラックの体は墨まみれになっていた。
「……汚れは人間側には関係ないみたい。」
「そうみたいだな。」
ラックは真央の言葉に相槌を打つと墨を洗い流すため波打ち際に歩いていった。
83
:
沐鳥
:2012/04/01(日) 10:32:22
「はあはあ、なんとか撒いたか。」
「みなさん、ご無事ですか。」
「ありがとう、ミヒラモン。助かったよ。」
ラックとの戦闘を離脱する事ができた太一達はミヒラモンに礼を言った。
「いえいえ、私も彼らの協力がなければうまくいっていたか……」
「そういえば、さっきのって……」
「「「ヒカリちゃ〜ん!」」」
広東語でヒカリを呼ぶ声が聞こえると、ミヒラモンが言った『彼ら』が太一達に合流した。
「あなた達は!」
「香港の!」
「ヒカリちゃん、久しぶり!」
「ヒカリちゃん、元気してた?」
「ヒカリちゃん、怪我は無い?」
パートナーのシャコモンを引き連れ現れた香港の選ばれし子供達、ホイ三兄弟は次々とヒカリに近づき話しかける。
すると、
「あ、スイッチ入った。」
「な、何す……すいませんでした!」
妹に近寄る輩を前に太一が鬼を形相を浮かべヒカリからホイ三兄弟を引っぺがす。
ホイ三兄弟もそれに抵抗しようとするがあまりにも凄まじい太一の剣幕に恐れをなし、光子郎の後ろに避難する。
「……光子郎、そいつらはなんだ?」
「えっと……香港の選ばれし子供達です。」
光子郎はドスのきいた声で質問する太一にホイ三兄弟を紹介する。
「こ、この方は……?」
「あの人は八神太一さん。実質的な僕らのリーダーでヒカリさんのお兄さんです。
「ヒ、ヒカリちゃんのお兄さん!?」
恐る恐る太一のことを光子郎に尋ね、ミヒラモンを通じて太一のことを聞かされるとホイ三兄弟はさっきとは打って変わって横に整列し姿勢を正した。
「単純だね。」
「そうでんな。」
「ヒカリちゃん、モテモテ〜。」
「ここに大輔さんがいなくてよかったですね。」
「更に騒ぎが大きくなってたがや。」
「確かに。」
その風景を見ていた京達は思い思い事を口にした。
「ところで、どうして彼らが?」
気を取り直して光子郎が香港にいるはずのホイ三兄弟がミヒラモンと現れた理由をミヒラモンに聞いた。
「少しでもみなさんの力になればとチンロンモン様の計らいでゲートを開いて世界各国の選ばれし子供達に呼びかけたのです。」
「でも時差の問題があるのでは?」
「2002年のクリスマス、あなた方も時差を気にせず世界各国にあふれたデジモン達の救済を行ったではありませんか。あのときのお礼もかねて皆、快く要請に応じてくれたのです。」
光子郎とミヒラモンの会話の様子から会話の内容を察したホイ三兄弟は光子郎に向かって親指を突き出す。
「もしかして、ほかの選ばれし子供達も!」
「はい。パンドラと接触している選ばれし子供達もいるかもしれません。立て続けの戦闘になるかもしれませんが今日はそちら増援にも向かって頂けませんでしょうか。」
「よし、わかった。みんな、行くぞ!」
こうしてミヒラモンの頼みを受け入れ、ホイ三兄弟を加えた太一ら選ばれし子ども達は他の仲間の増援に向かうのであった。
84
:
沐鳥
:2012/04/07(土) 10:08:34
第二十七話 外国の選ばれし子供達・十二神将連隊VS十災将
太一達が十災将・神谷真央、ブラックアグモンのラックと接触していたちょうどその頃、別地点では十災将・菊池則宗とパートナーのコテモンを大将に据えたパンドラの部隊が活動を行っていた。
「則宗様、コテモン様、作業の方が軌道に乗った模様です。」
パンドラに所属しているデジモンの一体、アシュラモンが則宗達に報告をする。
「分かった、ご苦労様。」
「則宗……」
「大丈夫だよ、コテモン。……アシュラモン頼みがあるんだけど。」
「なんでございましょうか?」
「今日の仕事、この後は君が指揮を執ってもらえないかな。」
「……は?」
アシュラモンは突然の則宗の頼みにきょとんとした。
「何、ちょっとこの辺に妙なのが迷い込んだみたいでね。」
「……それならば、則宗様達のお手を煩わせるともこの私が。」
その後に話した則宗のセリフで事の次第を把握したアシュラモンはそう答えたが、則宗はその申し出を断る。
「ま、そう言わないでよ。ここは僕らが出た方が何かと得だと思うんだ。君なら隊を率いて仕事を完遂出来るとも思ったんだけど、駄目かな?」
則宗にそう言われアシュラモンは少し考え込むと
「分かりました。このアシュラモン、命にかえてもこの任務、はたしてみせます!」
と返した
「……命がけで頑張るのはいいけど、本当に死なないように頼むよ。」
そんなアシュラモンに則宗は苦笑する。
「それでは!」
アシュラモンは則宗達に一礼し部隊に戻っていく。
「さてと……そろそろ出てきたらどうですか?」
アシュラモンを見送った則宗が振り返り声をかけると物陰から七つの影が現れた。
「よくまあ、時差を無視して遠い所から来たねぇ。確か……」
「アメリカの選ばれし子供達、サム、ルー、スティーブの三人とそのパートナーのフレアリザモン、トータモン、ユキダルモン。」
「そして、十二神将の一体にして四聖獣バイフーモンの直属の配下、シンドゥーラモン。」
「……よく調べているな。」
声に出して確認する則宗達に鶏に似た容姿を持つデジモン、シンドゥーラモンが感心する。
「まあ、頭の隅には置いておこうって事にはなってたからね。」
「……ならば、我らの目的もすでに分かっておろう!」
則宗の返答を聞いてシンドゥーラモンが戦う構えをとる。
それに合わせアメリカの選ばれし子供達もそれぞれ構えた。
「コテモン、進化だ。」
コテモン 進化 ムシャモン!
一方、則宗達もコテモンが成熟期ムシャモンに進化して応戦の準備を整えた。
「裏切り者のヴァジラモン共々ここで成敗してくれる!」
シンドゥーラモンはフレアリザモン、トータモン、ユキダルモンの三体を引き連れムシャモンに立ち向かっていった。
85
:
沐鳥
:2012/04/07(土) 11:26:03
「シェルファランクス!」
手始めにトータモンが甲羅のブレードを射出しムシャモンに攻撃する。
「プーヤヴァーハ!」
さらにシンドゥーラモンがシェルファランクスの間を縫って電撃をムシャモンに放つ。
「ぐっ!」
ムシャモンは紙一重で攻撃をかわすが
「ムシャモン、左だ!」
「絶対零度パーンチ!」
ムシャモンの左側からツキダルモンがパンチを繰り出す。
ムシャモンはかろうじて愛刀、白鳥丸でガードするもそのパワーに押され数メートル弾き飛ばされる。
「まだまだ行くぞ、フレイムヒット!」
フレアリザモンが更に火炎弾を放ちムシャモンはまたも白鳥丸で防御したが則宗が立っている位置の近くまで弾き飛ばされる。
「大丈夫!?」
「ああ。」
則宗はムシャモンのダメージを気にかけると、次に先ほどの相手の動きについてムシャモンに伝える。
「トータモンのシェルファランクスはダメージを与えるために撃ってるんじゃない。ムシャモンにわざとかわさせて動きをコントロールするために使ってるみたいだ。そこにシンドゥーラモンの電撃を合わせてさらに誘導して残りの二体が移動先に先回りして攻撃してくるよ。」
「!?」
「なるほど。分かった、ありがとう。」
「それだけじゃない。ユキダルモンとフレアリザモンもムシャモンじゃなくて白鳥丸で防がれるのを見越して白鳥丸の同じ個所を狙って繰り出されてる。」
「何?」
「恐らく炎と氷の技で交互に急激に温めるのと冷やすのを繰り返してひびを入れて破壊するのが目的だと思う。白鳥丸でもそれを繰り返されたらまずいぞ!」
「まったく、計算と打ち合わせをしっかりやったという感じの作戦だな。」
「初見でそこまで看破されるとは……!」
則宗の洞察力にシンドゥーラモン達は驚きの表情を浮かべる。
「しかし、だからといってそう簡単に破れはしない! 行くぞ!!」
気を取り直してシンドゥーラモン達は再びムシャモンを攻撃する。
則宗が推理したようにトータモンのシェルファランクスとシンドゥーラモンのプーヤヴァーハでムシャモンの動きを誘導し、フレアリザモンとユキダルモンの攻撃を白鳥丸の同じ個所に叩き込む。
『ぴしぃっ!』
「くっ……!」
そして、ムシャモンの白鳥丸にひびが入る。
「みんな、あと一息だ!」
サム達がシンドゥーラモン達にエールを送る。
「……少し侮りすぎたか。」
ムシャモンは、白鳥丸に入ったひびを見て呟く。
「連携を絶たないとまずいな。……仕方ない、ムシャモン、超進化だ!」
「おう!」
ムシャモン 超進化 ヴァジラモン!
86
:
沐鳥
:2012/04/07(土) 11:26:42
ムシャモン 超進化 ヴァジラモン!
則宗の掛け声でムシャモンが完全体、ヴァジラモンに進化する。
「完全体に進化されたか!」
「案ずるな、今までのように戦えれば、必ず勝機が見えてくるはずだ。」
完全体に進化されたことで浮足立ちそうだったフレアリザモン達をシンドゥーラモンが落ち着かせる。
だが、
「確かにその作戦が決まればそちらの勝ちが濃厚になるだろう。しかし、私が完全体になった時点でその作戦は破られた!」
「何ぃ?」
ヴァジラモンの言葉に則宗以外の者が難色を示すがヴァジラモンは、それを気にせず両手に持つ二振りの宝剣(パオチェン)を逆手に持ち直した。
「! まずい、回避だ!!」
「ローダ!」
ヴァジラモンの必殺技をシンドゥーラモンが間一髪で見抜きシンドゥーラモン、フレアリザモン、ユキダルモンの三体はローダによる地割れをかわした。
しかし、動きが遅いトータモンはその地割れに足を捕られてしまった。
「トータモン!」
アメリカの選ばれし子供達とフレアリザモン、ユキダルモンの意識がトータモンに集中する。
「敵から意識を切るな!」
慌ててシンドゥーラモンが叫ぶも
「遅い!」
一瞬の隙を突きヴァジラモンがフレアリザモンとユキダルモンを斬りつける。
「ぐ……が……」
「フレアリザモン!」
「ユキダルモン!」
二体はそのまま地面に倒れこんでしまった。
「おのれ、プーヤヴァーハ!」
残ったシンドゥーラモンがヴァジラモンに電撃を放つ。
ヴァジラモンはそれを確認すると二振りある宝剣の片方をシンドゥーラモンのいる方向の適当な所に投げる。
「何を……?」
するとシンドゥーラモンが放ったプーヤヴァーハは軌道を変え吸い寄せられるようにヴァジラモンが投げた宝剣に命中した。
「宝剣を避雷針代わりに……!?」
そして、ヴァジラモンがもう片方の宝剣を振りかぶりシンドゥーラモンに襲いかかる。
「くっそ……!」
シンドゥーラモンは頭や羽を鎧に引っ込め防御態勢を取ろうとしたが、時すでに遅くヴァジラモンに斬られてしまった。
「シンドゥーラモン!」
シンドゥーラモンはその場に崩れ落ち地面に伏した。
「お疲れ、ヴァジラモン。」
戦闘が終わりヴァジラモンを労う則宗。
「それじゃ、アシュラモン達が心配するから早く行こうか。」
「そうだな。則宗、私の背に。」
「Wait!」
制止するスティーブを黙殺し則宗とヴァジラモンはその場を立ち去っていった。
87
:
沐鳥
:2012/04/08(日) 10:14:53
「シザーアームズ!」
「シャドウシックル!」
「うおっ! おっと!!」
ロシアの選ばれし子供達、ユーリ、ローラ、アンナの三人は十災将の内、青山久志と遭遇し戦闘を行っていた。
「やれやれ、戦いにくいな。」
久志のパートナー、トイアグモン(ウィルス)が進化したメカノリモンが上空にいるロシアの選ばれし子供達のパートナー、クワガーモン、スナイモン、ユニモンの三体を見上げながら呟く。
『クワガーモンとスナイモンのヒットアンドアウェイと時間差攻撃とユニモンのホーリーショットでの援護射撃か。自分達の能力を上手く生かしてるな。』
メカノリモンの内部に搭乗している久志がロシアの選ばれし子供達の戦い方に感心する。
「だけど、そう簡単に負けるわけにはいかないんだなこれが!トゥンクルビー……」
メカノリモンが反撃しようとトゥインクルビームを放とうとしたその瞬間、
『メカノリモン、下だ!」
久志の叫びと共に地面から鉾が飛び出しメカノリモンに襲い掛かる。
メカノリモンは久志のサポートもあって突如現れた鉾を回避した。
「あっぶねえ!」
「おのれ、我が宝鉾(パオグー)をかわすか。」
鉾が飛び出てきた辺りの地面が盛り上がり中から巨大の蛇のデジモンが姿を現した。
『十二神将、サンティラモン。』
「飛行能力を備えるロシアの選ばれし子供達を使って俺の注意を上空に向けさせ自分は地下に潜って攻撃する作戦か。流石は十二神将で最も狡猾で残忍っていわれるだけあると言っといた方がいいか。」
「次は外さぬ。我らの策略の前に朽ち果てるがいい。」
サンティラモンはそう言い残すと再び地面に潜っていく。
「これは、ちょっとまずいかな?」
その後、ロシアの選ばれし子供達とサンティラモンは上から下からとメカノリモンを攻め立てる。
メカノリモンもその攻撃についていき攻撃をかわし続けていたが
「おっ!?」
「ホーリーショット!」
「クリシュナ!」
着地に失敗し一瞬動きを止めたメカノリモンにユニモンとサンティラモンが同時に攻撃を繰り出した。
「うわっ!」
技の際に生じた煙から久志が吐き出される。
「やったぁ!」
勝利を予感し喜ぶロシアの選ばれし子供達だったが
「気を抜くな! まだじゃ!!」
「ふぅ、間一髪だったな。」
メカノリモン 超進化 エクスティラノモン!
サンティラモンの叫びと共にメカノリモンが完全体エクスティラノモンに進化する声が上空から聞こえる。
「飛行能力が乏しくても攻撃に合わせて利用し今お前達のいる地点より高い地点まで飛び上がることはできるのさ。」
「プリティアタック!」
エクスティラノモンは落下の勢いをプラスした打撃を上からユニモンに叩き込む。
「ブラックマター!」
更にエクスティラノモンは怪しげな黒い球体をクワガーモンとスナイモンに喰らわした。
エクスティラノモンの攻撃をまともに受けてしまった三体は地上に向けて落下してしまう。
「クワガーモン!」
「スナイモン!」
「ユニモン!」
ロシアの選ばれし子供達の悲鳴がこだまする中、エクスティラノモンはサンティラモンに向かって落下してくる。
「クリシュナァ!」
サンティラモンはエクスティラノモンに向かって力一杯にクリシュナを放つ。
しかし、エクスティラノモンはその攻撃のスピードと自分の落下速度を合わせ白刃取りを決めた。
「莫迦な……!」
「うおおおぉ!」
「エクスティラノモンは、サンティラモンの宝鉾を足場に利用しサンティラモンに飛び掛かり重い攻撃を浴びせかけた。
88
:
沐鳥
:2012/04/08(日) 10:35:53
「くそっ! 早く他の選ばれし子供の所に……!!」
太一達、日本の選ばれし子供達がミヒラモンとホイ三兄弟と共にアメリカ、ロシアの選ばれし子供達の元へ駆けつけた時にはすでにパンドラとの戦いには決着がついてしまっていた。
事態を重く見た太一達はアメリカの選ばれし子供達をホイ三兄弟、ロシアの選ばれし子供達を京と伊織に介抱を任せ、残りの者で今日デジタルワールドに入っているインドの選ばれし子供ミーナとベトナムの選ばれし子供ディエンの元に急いでいた。
「デジヴァイスの反応はこの辺なのですが……」
「お兄ちゃん、あそこ!」
ヒカリが指をさした先には大型のデジモンがたくさん横たわっていた。
「あのデジモンは、ブラキモンね。」
「む……あそこにいるのは、チャツラモン!」
ミヒラモンが同じ十二神将のチャツラモンを見つけ近づくとその場にはミーナとディエンがパートナーのメラモンとゴリモンと共にブラキモンの介抱をしているのが確認できた。
「チャツラモン!」
「おお、ミヒラモンか。」
「何があったのだ!? なぜこんなにも多くのブラキモンが負傷している!?」
ミヒラモンがチャツラモンに尋ねるとチャツラモンは恐々と答える。
「……パンドラの仕業だ。」
「何だと!?」
「パンドラの仕業って少なくても二十体はいるぞ!?」
驚く太一達にチャツラモンは詳細を説明する。
「我々はパンドラの部隊を捜索していた途中、ここに集まっていたブラキモンの群れを見かけたのだ。そしてもう少しすると東の方角から群れに向かってパンドラの一団も現れた。」
89
:
沐鳥
:2012/04/08(日) 11:21:23
‐回想‐
「あれは、パンドラ!?」
「よし、準備はいいか? 行くぞ!」
「待てい!!」
パンドラを発見し飛び出そうとする選ばれし子供達をチャツラモンが止める。
「逸るではない、ブラキモンは完全体であそこにいる数もざっと数えて二十、対してあのパンドラと目される一団は成熟期のサンドヤンマモン、タクスモンが十体前後。今はしばし様子を見よう。」
そしてブラキモンの群れもパンドラの一団を見つけると一斉にそちらの方に警戒の目を向け睨み付ける。
「話には聞いていたが随分多く集まったな。」
「どうする? あちらは道を譲りそうにないぞ。」
「この世界を救った選ばれし子供達の敵が自分達の前を通ろうとしてるんだ、当たり前ちゃ当たり前だな。」
「だがこの道を通らないと仕事に支障がでるぞ。」
「道は作るしかないな。」
タクスモン達が話しているとその背後から何者かがその話に割り込んだ。
「こ、虎徹様!」
前に出てきた蝶野虎徹とパートナーのツカイモンが打ち合わせをする。
「僕が何とかするよ。」
「頼むぞ、ツカイモン。進化は?」
「完全体で。」
「よし、行け!」
ツカイモン 進化 ソウルモン!
ソウルモン 超進化 マミーモン!
「うおおお! マミーモン様ぁ!!」
ツカイモンが一気にマミーモンまで進化するとタクスモン達から歓声が上がった。
「あいつの完全体はマミーモンか!」
「前にデジタルワールドで暴れまわったとされるマミーモンとは雰囲気が別物だがな。」
チャツラモン達はマミーモンをしっかりと観察する。
「おい、てめえら! マミーモン様が出てきたからにはもはやお前らなんざ敵じゃねえ! おとなしく道を開けやがれ!!」
「うるさいぞ。」
「あ、すいません。」
テンションが上がったタスクモンはブラキモンに挑発をしマミーモンに怒られる。
「貴様らに道を譲る意思がなくとも我らはその道を通させてもらう。」
「ウガアアアッ!」
マミーモンの言葉を無視してブラキモンの群れがパンドラに襲い掛かる。
しかし、
「何だと!?」
様子を見ていたチャツラモン達は驚愕した。
パンドラに襲い掛かろうとしたブラキモンの体が急に停止したのだ。
「フーッ、フーッ!」
ブラキモン達は必死に前に進もうとするが、その体は金縛りにあったかのように動かない。
そして、マミーモンが手を上に挙げる仕草をすると、
「そんなバカな……!」
ブラキモンの巨体がゆっくりと宙に浮いた。
「行くぞ。」
虎徹の合図でパンドラの一団は宙に浮いたブラキモンの下を通過する。
そして、
「これを解いたらこちらに向かってくるか?」
「あーそうだな。」
「ならば、仕方あるまい。」
マミーモンがその手を握り締めると
「ギィィヤァァッ!!」
ブラキモンの体がボンレスハムのようになり悲鳴が飛びかった。
「うわっ!」
「あの野郎……!」
「……こんなものか。」
マミーモンがそう言うとブラキモン達が地面に落ちた。
そしてブラキモン達はそのまま地面に伏して動かない。
「さて、急ぐか。」
「虎徹様、マミーモン様、俺に乗ってください!」
「おっ、悪いな。」
虎徹とマミーモンがタクスモンの背に乗りその場を後にする。
「逃がすか……!」
「待てい!」
虎徹達を追おうとするメラモンを再びチャツラモンが止める。
「今、奴らを追って貴様に何が出来る!」
「そうよ、メラモン。今はブラキモン達を助けましょう。」
「……くっ!!」
パートナーのミーナに言われ、メラモンは追跡を思いとどまる。
そして、彼らは介抱のため横たわるブラキモンの群れに近づいていった。
90
:
沐鳥
:2012/04/15(日) 09:41:53
「ツカイモンの完全体はマミーモン!?」
「たった一体でブラキモン達を!?」
「マミーモンにそんな能力がありましたでしょうか?」
チャツラモンの口から語られる内容に太一達は動揺を隠せずにいた。
「奴がいかようにしてそれをなしたかは漠然として詳しくはわかりかねるがとにかく下手に戦いを挑むのは得策ではないと判断した。」
「確かにそれが最善の策かもしれないな。」
「それにしてもよく作戦を組み立て、打ち合わせをしたアメリカやロシアの選ばれし子供達が負けてしまうなんて……」
「やっぱり早くマトリックスエヴォリューションを使えるようにならないときついか。」
ブラキモンの介抱をしながら太一達は話し合う。
「だけど、どうすればいいんだろう。」
「……ここはやはり、空さんにマトリックスエヴォリューションを使えるようになった時の状況を詳しく聞いてそこから手探りで進めていくしかないでしょうね。」
「そうだな。……ミヒラモン、確か世界中の選ばれし子供達の内、今日デジタルワールドに来たのは今までに会ったメンバーだけだったっけ?」
「はい、アメリカのサム殿、ルー殿、スティーブ殿、香港のホイ三兄弟、ロシアのユーリ殿、ローラ嬢、アンナ嬢、そしてここにおられるインドのミーナ嬢とベトナムのディエン殿が本日デジタルワールドに赴いた選ばれし子供達です。」
「それじゃ、空に話を聞くのは後回しにして今日の所はお開きにしよう。今日は色々あってみんな疲れているだろう。」
「そうね、それがいいわ。」
「私、京さん達に連絡するね!」
「それでは、僕はアメリカと香港の選ばれし子供達に。」
こうして選ばれし子供達は太一の提案で光子郎とヒカリが他の選ばれし子供達に連絡をし新たな十災将との邂逅、外国の選ばれし子供達の参戦、そして不可思議な十災将、マミーモンの能力の事など様々な出来事が起こった一日を終えそれぞれの家へと帰っていった。
91
:
沐鳥
:2012/04/15(日) 10:21:01
PANDORA DATA FILE Vol.4
パンドラ十災将
青山 久志 (あおやま ひさし)
有明高校二年C組在籍
パートナー トイアグモン(ウィルス)⇔メカノリモン⇔エクスティラノモン⇔デスモン
パンドラ十災将最年長の男。
年下の十災将や部下のデジモンの成長を後ろから見守ったり、時には先頭を切って周りを引っ張ったりするパンドラ内で頼りにされる存在である。
パンドラ発足時、そんな彼をリーダーに推す声も多々あったが彼はそれを丁重に辞退し、よりリーダーに向いていると感じた虎徹をリーダーに推薦した。
パートナーのトイアグモンが成熟期に進化したメカノリモンに自ら騎乗してメカノリモンをサポートする戦い方をしていた所為かマトリックスエヴォリューションを会得するために使った時間は十災将の中でもっとも短かったらしい。
ちなみにパンドラに所属するデジモンが『○○様』と様付けで呼ぶとき他の十災将が下の名前で呼ばれるのに対し彼だけは『青山様』と名字で呼ばれている。
作者備考
小説を進めていくにあたって、『あれ、こいつの完全体って出番ある?』と思い急遽登場させた外国の選ばれし子供達と十災将の戦いいかがだったでしょうか。
これからもちょくちょくと外国の選ばれし子供達が出てくると思います。
未熟な文章が更に未熟になると思いますがよろしくお願いします。
彼については頼りない所が多々ある選ばれし子供達最年長の丈に対し頼りがいのある年長者というイメージで書いています。
名前が決まったときは東北楽天ゴールデンイーグルスの投手二人(今は一人メジャーリーグに移籍しましたが)から取ったみたいな名前だなと思ってしまいましたが、実際には個人的に好きな時代劇の登場人物から由来しています。
書く必要が無いとは思いますが真央や久志が通う高校の名前は適当に考えたものです。
92
:
沐鳥
:2012/04/15(日) 10:46:36
PANDORA DATA FILE Vol.5
パンドラ十災将
菊池 則宗 (きくち のりむね)
お台場中学校一年D組在籍
パートナー コテモン⇔ムシャモン⇔ヴァジラモン⇔ザンバモン
お台場中学校生徒指導教諭石頭の『目の上のたんこぶ四人衆』の一人。
物腰は柔らかだが自分がおかしいと感じたことには納得できる説明があるまでとことん納得しない。
自分と相手が分かり合えないと感じれば実力行使も辞さない。
パンドラが四聖獣シェンウーモンという強力な後ろ盾を持った直接的な要因でもある。
冷静に状況を判断し動ける精神力をもっている。
パートナーのコテモンは気弱な性格だが進化すると一人称が『僕』から『私』に変わり性格も百戦錬磨の武人のようになる。
作者備考
彼も成熟期のムシャモンが出番が無いのではと思い外国の選ばれし子供達と戦ってもらいました。
思えば、究極体、完全体、成熟期とあべこべな登場順でしたね。
進化形態が出たのは則宗達の方が先でしたが、同じタイミングでの紹介だったので五十音順で久志達の紹介を先にさせていただきました。
お気づきの方も多いかもしれませんが彼の名前の由来は名刀『菊一文字則宗』です。
この刀はかの有名な新撰組の沖田総司が所持していたという逸話が存在していたので、同級生二人の名前も同じく新撰組の近藤勇と土方歳三の愛刀から『虎鉄』『兼定』と決定しました。
ただ、『名字もそこから持ってくるのはくどいかな』と思ってそこは変えました。
93
:
沐鳥
:2012/05/04(金) 09:25:02
第二十八話 海上乱戦
ある日、パンドラがネットの海で活動を開始しようとしているという情報を入手した選ばれし子供達は、丈や伊織をはじめとした水中での戦闘に適応できる選ばれし子供達と現地のデジモン達とでパンドラを迎え撃とうと先回りをしていた。
「情報通りパンドラと思われる集団がまっすぐこちらにむかってきている。」
外国の選ばれし子供達との通訳と並行して偵察に出ていたエージェントのユーカリが丈達にパンドラのいる方角、距離、移動速度などを事細かに伝えた。
「ありがとうございます、ユーカリさん!」
「どうするんだ、丈?」
「えっと……どうしようかな。」
報告を受けて、丈、伊織、ズドモン、それからサブマリモンの四人が作戦を考える。
「出来れば正面からぶつかるのは避けたいですよね。」
「被害は少ないほうがいいだぎゃ。」
「でも、あっちはこっちの居所が分かるだろ。奇襲は難しいんじゃないか?」
「う〜ん……そうだ、三つにチームを分けるんだ!」
「えっ!?」
「どういう事ですか!?」
丈は自分が思いついた作戦を伊織達に説明する。
「確かに僕ら選ばれし子供達の動きはパンドラに筒抜けかもしれない。でも、さすがのパンドラでもそこで生活しているデジモン達の動きまでは把握しきれていないはずだ。だったら僕らが囮になってパンドラを引きつけている隙に他のデジモン達に左右に回り込んでもらって三方向からパンドラを囲い込むんだ。」
「なるほど……それなら相手の意表を突く事が出来るかもしれませんね。」
伊織達が丈の作戦に賛成を示すと更に意見を聞くため、丈達はユーカリのもとに訪れた。
「確かに面白い作戦だ。試してみる価値はあるだろう。」
「よし、さっそくみんなに伝えよう!」
ユーカリの賛同を得た丈達は手分けして外国の選ばれし子供達とその他のデジモン達に作戦の内容を伝えに回った。
「なあなあ、丈。」
その途中ズドモンがふと頭に浮かんだ疑問を丈に問いかける。
「パンドラの連中がさオイラ達と戦わないように迂回し始めたらどうするんだ?」
「うーん、それは心配しなくてもいいんじゃないかな。」
「どうして?」
「相手はこっちの動きはある程度分かってるんだから迂回するつもりなら最初からそうしてるんじゃないかな?」
「あー、なるほど。」
こうして丈達は着々と戦いの準備を整えていった。
94
:
沐鳥
:2012/05/04(金) 10:11:55
「計算通りならそろそろパンドラと遭遇する地点のはずだ。みんな、気を引き締めてくれ。」
「分かりました!」
作戦の全容をくまなく伝え挟撃のための囮役となった選ばれし子供達はパンドラを待ち構えていた。
そして、事前に予測していた通り進行方向から
「隊列を崩すな! いつ選ばれし子供達とはち合わせてもいいようにするんだ!!」
一体のデジモンが周囲に注意を促す声が聞こえてきた。
「あれは……メガシードラモン?」
「いや、よく似ているがあれはワルシードラモンだ!」
「ワルシードラモン……完全体か。」
「十災将はいないようですね。」
「そうだね。十災将には水中戦ができるデジモンはいないみたいだから今回は部下に任せているのかもしれない。」
選ばれし子供達が敵戦力の分析をしているとパンドラ側も選ばれし子供達に気付く。
「お前達は、パンドラのデジモンか!?」
「いかにも。私は偉大なる十災将よりこの隊の指揮を任されたワルシードラモンという者だ。選ばれし子供達よ、我らの行く手を阻むならば海の藻屑となるがいい!」
「来るぞ!」
「イビルアイシクル!」
「ハンマースパーク!」
ワルシードラモンは手短に名乗ると氷柱を生み出し選ばれし子供達に攻撃してきた。
それに対しズドモンがハンマースパークを撃ち氷柱は打ち砕かれる。
「ハイドロプレッシャー!」
「「デッドリーシェード!」」
氷柱が砕かれるのと同時にパンドラのデジモンのシェルモンと二体のゲソモンが攻撃を仕掛ける。
「「「海鳴墨銃!」」」
その攻撃は香港の選ばれし子供達、ホイ三兄弟のパートナー、オクタモンによって阻まれる。
「「「ツインネプチューン!」」」
しかし、対応した時に生じた隙を狙い三体のエビドラモンがオクタモン達に襲いかかった。
「オキシジェンホーミング!」
「アイスアロー!」
「ヴァリアブルダーツ!」
ここはサブマリモンとアメリカの選ばれし子供マイケルとオーストラリアの選ばれし子供ディンゴのパートナー、シードラモンとシーサモンの三体によって未然に防がれた。
「サブマリンアタック!」
「ホーン&タスク」
「ダークストローム!」
その後、敵味方入り乱れての混戦状態になり双方とも拮抗した展開になったが
「シェイキングパルス!」
「ぐぁぁ!」
「何!?」
丈が考えた作戦通りに動いていたデジモン達が戦いに合流する。
「援軍だ!」
「パンドラを押し潰せぇ!!」
援軍の登場により戦況は一気に選ばれし子供達に有利になりパンドラのデジモン達を追い詰めていく。
「くっ……このままでは!」
「オキシジェンホーミング!」
サブマリモンの攻撃でワルシードラモンの体勢が崩れる。
「ハンマースパーク!」
「しまっ……!」
すかさずその隙を突いてズドモンがトールハンマーを振りかぶった。
その時
「サンダージャベリン!」
「うわっ!?」
トールハンマーに雷撃が命中してズドモンの体勢が乱れハンマースパークは不発に終わった。
「サブマリンアタック!」
それを見てサブマリモンは急遽、ワルシードラモンに追撃を仕掛けるが
「ヘブンズナックル!」
上空から降り注ぐ光の束がサブマリモンの行く手を阻んだ。
「い、今のは!」
丈達が上空を見上げるとそこには今まで共に戦ってきたかつての仲間、エンジェモンが、そして雷撃が放たれてきた方角からは
「大丈夫か、兄弟!」
「メガシードラモンか。助かった、感謝する。」
雷撃を放ったメガシードラモンとその他大勢を従えて裏切りの選ばれし子供、高石タケルがその姿を現した。
95
:
沐鳥
:2012/05/04(金) 10:33:46
第二十九話 蹂躙の糸
「タケル様とエンジェモン様だ!」
「タケル様達が助けに来てくれたぞ!」
十災将に名を連ねるタケルとエンジェモンが現れた事でパンドラの士気が一気に高まる。
「タケルさん!」
「タケル……君!」
タケルの姿を見て息をのむ丈達に構わずタケルはメガシードラモンに掴まりワルシードラモンの所に移動する。
「申し訳ありません、タケル様。」
「謝る必要は無いよ。こっちこそ遅れてごめん。」
頭を下げるワルシードラモンにタケルは微笑みかけるとすぐ鋭い目つきで丈達に視線を移す。
「タケル君、君は……」
「はい、これが僕の選んだ道です。」
初めて十災将としてのタケルを目の当たりにした丈にタケルが言葉を返す。
「丈……」
「分かってる。説得できるくらいならこんなことにはなっていない。」
(……似てるな。)
丈とズドモンを見てタケルは昔の事を思い出す。
(ゴマモンが初めてズドモンに進化した時、僕とパタモンも一緒にいて、メガシードラモンと戦ったんだっけ。……あれから幾月も経って今度はメガシードラモンを仲間に丈さん達と戦う、か。)
「タケル様?」
物思いにふけるタケルにメガシードラモンが声をかける。
「ん? ああ、大丈夫。大したことじゃない。」
「伊織……」
「行きますよ、サブマリモン。仲間として、そしてジョグレスパートナーとして僕達がタケルさん達を止めるんだ!」
「了解だぎゃぁ!」
伊織とサブマリモンが気合いを入れなおすと
「タケル、私の事は構わずメガシードラモン達の指揮を頼む。」
「分かった。気を引き締めていこう、エンジェモン。」
「丈、行くぞ!」
「ああ!」
中断していた海上での選ばれし子供達とパンドラの戦いが再開された。
96
:
沐鳥
:2012/05/04(金) 10:57:54
「ハンマースパーク!」
ズドモンが放つ攻撃をメガシードラモンとワルシードラモンは左右に別れて回避する。
「イビルアイシクル!」
ズドモンはワルシードラモンが繰り出してきた反撃をトールハンマーで打ち砕くが
「サンダージャベリン!」
時間差でメガシードラモンが放った攻撃がズドモンを襲う。
「くっ!」
「アイスアロー!」
「ヴァリアブルダーツ!」
しかし、サンダージャベリンはズドモンに命中する手前でシードラモンとシーラモンによって防がれた。
「援護します!」
「ありがとう!」
シードラモン、シーラモンと共にパートナーのマイケルとディンゴが戦いに加わりメガシードラモンとワルシードラモンに対抗する事になった。
「ヘブンズナックル!」
「オキシジェンホーミング!」
一方、エンジェモンを相手に戦う伊織とサブマリモンは海の中と空の上という間合いが離れた状態での戦闘のため、自然と相手の遠距離攻撃をかわしつつ、こちらも遠距離攻撃を繰り出すという戦い方になっていた。
「大丈夫ですか、サブマリモン?」
「問題ないがや。でもこのままじゃ埒があかないだぎゃ。」
「確かに……」
サブマリモンの攻撃は上空のエンジェモンには決まらず、反対にエンジェモンの攻撃は海中のサブマリモンに入らず戦況は均衡していた。
「……そうだ!」
何とかして均衡を破ろうと思案していた伊織に一つの作戦が浮かんだ。
「何か思いついたんだぎゃか?」
「はい。少々危険かもしれませんが、やってくれますか?」
「もちろんだぎゃ!」
サブマリモンは伊織の申し出を聞き入れ伊織が思いついた作戦を把握する。
「これは持久戦になるな。ヘブンズナックル!」
エンジェモンが海面にヘブンズナックルを叩き込み大きな飛沫が上がる。
すると、
「うおおお!」
「何だと!?」
その飛沫の中からサブマリモンが飛び出てきた。
飛沫が跳ね上がる衝撃を利用してサブマリモンは一気にエンジェモンの所まで飛び上がる。
「サブマリンアタックか!」
「オキシジェンホーミング!」
「うっ!?」
エンジェモンがサブマリンアタックへの対処の構えを取ろうとするとサブマリモンはオキシジェンホーミングを放ってエンジェモンの動きを封じる。
そして
「サブマリンアタック!」
サブマリモンの攻撃が無防備のエンジェモンに炸裂した。
97
:
沐鳥
:2012/05/06(日) 10:23:18
「うわぁ!」
「エンジェモン!?」
エンジェモンの悲鳴を聞きとりメガシードラモンに掴まっていたタケルの意識がズドモン達の戦いからそれる。
その一瞬は激しく動く戦いでタケルをメガシードラモンから振り落とすのには十分だった。
「あっ!」
「タケル様!」
サブマリンアタックを受けたエンジェモンとメガシードラモンから振り落とされたタケルの体が海へと落下する。
ように思われたが、
「くっ……!」
エンジェモンは海に落ちる前に体勢を立て直した。
「そんな……いくらエンジェモンでも、サブマリンアタックをもろに受けたはずなのに!」
そして、タケルはというと、
「わっ!?」
「え……そんなバカな!?」
海に落ちる寸前まるで見えない壁にぶつかったかのようにその体は『空中にとどまった』。
「いったい、何が!?」
そして、異変はズドモンやサブマリモンにも襲いかかった。
「ぐがっ!?」
上空に飛び上がった後、再び海へと降下していたサブマリモンの体はタケルとおなじように『空中』で動きを止めた。
「サ、サブマリモン!?」
「か、体が動かないがや……!」
そして、ズドモンも、
「じょ、丈……!」
「どうした、ズドモン!?」
「身動きが……できない!」
「なんだって!?」
まるで金縛りにあったかのように体が動かなくなっていた。
ズドモンやサブマリモンだけでなくその他の選ばれし子供達のパートナーやその味方のデジモンでさえ一切の行動を封じられていた。
「こ、これは……」
タケルが目の前で起こる異変をまじまじと観察していると背後から声をかけられた。
「やれやれ、帰りが遅いから心配してきてみれば……」
「随分とかっこ悪いことになってんじゃねえか。」
「あ……ありえない!」
そして、その声の持ち主が選ばれし子供達の視界に入るとその場は驚愕の渦に飲み込まれた。
「……やっぱり、テツ達か。」
そこには、パンドラのリーダー蝶野虎徹とパートナーのマミーモンが『宙を歩いて』近づいてきていたのだ。
98
:
沐鳥
:2012/05/12(土) 12:08:25
「一体どうなっているんだ!?」
「マミーモンだけなら百歩譲ってザンバモンのように空中を歩いても普通の人間であるはずのタケルさん達が宙に浮いている……!?」
「あー違う違う。」
動揺する丈と伊織の言葉を聞いて虎徹は右手をヒラヒラと振る。
「我らにザンバモンのように天を走る能力は備わっていない。」
「そ、それじゃあ……」
「周りをよく見てみろ。」
「貴様らが動けなくなった理由もすぐにわかる。」
虎徹とマミーモンに言われ丈達は周囲を注意深く観察する。
「これは……糸?」
よく見るとタケル達の足元とズドモン達の周りにわたって極細の糸が張り巡らされていた。
「布ってのは細い繊維を織りあげて作られている。マミーモンの包帯もそうだ。その織り目を再び繊維に変えスネークバンテージで張り巡らせ、敵を拘束したり、足場に使ったりしているんだ。」
虎徹は淡々と丈達に手の内を明かした。
「それにしても……」
そして、虎徹とマミーモンは改めてタケルとエンジェモンを睨むと、
「何、戦闘中に集中切ってんだ。死にてえのか、てめえは!」
「うっ……!」
虎徹は厳しい言葉がタケルに突き刺さった。
「エンジェモン、貴様もサブマリモンにいいように踊らされよって……我がサブマリンアタックが決まる直前に糸で後ろに引いてやらねばその程度では済まなかったぞ!」
「ぐっ……!」
エンジェモンにもマミーモンから厳しい言葉が突きつけられる。
「それでエンジェモンのダメージが小さかったのか……!」
海上で選ばれし子供達の動きが封じられている中、タケルとエンジェモンに対する虎徹とマミーモンの説教が続く。
「だいたい、てめえら最近働きすぎなんだよ!」
「貴様らが倒れてこっちの仕事が増えるのはご免だぞ!」
「「は、はい……」」
「……虎徹様。」
そうこうしているうちに海中から顔を出したパンドラ所属のデジモンが虎徹に声を掛けてきた。
「どうした?」
「任務、完了いたしました。」
「そうか。ちなみに負傷者は?」
「はい。傷を負っているものはすぐさま手の空いているものが随伴して治療に向かっております。」
「わかった。……悪いな、丸投げしちまって。」
「いえ、マミーモン様が大半の海中の敵の動きを封じて下さったのでさほど苦労は致しませんでした。」
「海の中まで!?」
虎徹達の会話でマミーモンの攻撃範囲が海中にまで広がっていると知った丈達は驚愕した。
そして、虎徹とマミーモンは話を丈達に振る
「さて、いつもなら拘束を解いて遊んでやってもいいんだが。」
「生憎、今の我らにはそれはど時間に余裕がないのだ。」
「……どういう意味だ?」
丈達は虎徹達の言葉の意味を測り損ねる。
「こういう意味だ。」
マミーモンが片手を頭の横まで挙げて拳を握りしめる。
「うっ……ぐあああああ!」
その動作と連動し張り巡らされていた糸がズドモン達を容赦なく締め上げ辺りに悲鳴が響き渡った。
99
:
沐鳥
:2012/05/13(日) 08:59:49
「伊織、丈先輩!」
十災将、マミーモンによって海で敗北を喫したという連絡を受け、大輔達お台場中在籍組はゲンナイの家へと駆け込んだ。
「みんな……」
ゲンナイの家で丈と伊織は頭にバスタオルを乗せ幼年期にまで退化してしまったプカモンとウパモンを介抱していた。
「大丈夫なんですか!?」
「まあ、なんとかね。」
「マミーモンの攻撃を受けなかったデジモン達が助けてくれました。」
「他のみんなも命には別状なかったよ。」
「良かった〜。」
丈達の無事に大輔達は安堵する。
そして、話題はマミーモンが使った技についてに切り替わる。
「包帯を糸に変化させて攻撃するなんて……」
「デビタマモンのブラックデスクラウドといい、技を色々と工夫して来ますね。」
「十災将の強さにはマトリックスエヴォリューションだけじゃなくてそういう所にあるのかもしれないな。」
「応用力か……」
「…………」
十災将が駆使する力を前に大輔達は沈黙する。
「……まあ、無理に警戒して動きが硬くなってしまってもしかたがない。今日の所は家に帰って次に備えよう。」
沈黙を振り払い、丈が声をかけ大輔達はすぐに来る次の戦いに向けそれぞれ帰宅していった。
100
:
沐鳥
:2012/05/13(日) 09:40:13
第三十話 昼休み
「え〜っと、空の話をまとめると……」
ある日のお台場西高校の昼休み、太一は人目につかない木陰でアグモンとともに昼食を食べながら事前に空から聞いていたマトリックスエヴォリューションを発現した時の詳細を確認していた。
「マトリックスエヴォリューションに必要なのは戦う覚悟やパートナーと一緒に戦おうとする心って所か。」
「僕はいつでも太一と一緒のつもりだよ。」
「そうだよなぁ。それなのになんで俺達には使えないんだろう……」
太一が昼食を食べるのも忘れて考え込んでいると
「……フゥー。」
「うわぁぁぁ!?」
いきなり何者かに耳に息を吹きかけられ太一は驚いて飛び上がってしまった。
「お、お前らは!」
「……予想通りの反応。」
「なにやってんだ、お前は。」
太一が振り返るとそこには敵である十災将、神谷真央(息を吹きかけた犯人)とパートナーのラックことブラックアグモン(それを冷めた目で見ている人)がいた。
「何でお前達がここに!?」
「……同じ学校に通ってるんだから出くわしても不思議じゃない。」
「それはそうだけど、何の用だ!?」
「……特には。」
「無いのかよ!」
「太一、ツッコミの声が大きい。」
声を荒らげる太一をアグモンがいさめる。
「あのさ、これ泉光子郎君に渡しといてくれないかな。」
「うん、わかった。」
「…………」
ラックは先日、光子郎が食らった真央のドロップキックのお詫びの品を取り出しアグモンがそれを受け取る。
「……これ、何?」
「あっ!」
太一がアグモンとラックのスムーズなやり取りに気を取られているとマトリックスエヴォリューションについて記載されたメモを真央に奪われた。
「返せ!」
「……これ、マトリックスエヴォリューションについて?」
「そうだよ、なんか文句あっか?」
真央の質問に太一はぶっきらぼうに答える。
「武之内空から情報を得たのか?」
「うん。」
「確か隣のお台場東高に通ってるんだっけか。」
「うん、空とヤマトが東高に通ってる。」
「……お前ら、なんか打ち解けてないか? 敵なのに。」
アグモン達の会話に太一が苦言を呈する。
「……中々、殊勝な心がけ。ほめてあげる……えらい。」
「なんか馬鹿にされている気がする……」
真央の言葉に太一は不愉快そうな顔をするがとりあえず次に十災将に遭遇した時に聞こうと思っていた事を聞くことにした。
「お前ら、タケルに一体何を吹き込んだんだ!」
「……吹き込む?」
101
:
沐鳥
:2012/05/13(日) 10:16:35
「お前ら、タケルに一体何を吹き込んだんだ!」
「……吹き込む?」
「お前達はどこまでタケルの事を知っている!?」
「…………?」
太一の質問がいまいち理解できない真央に代わってラックが逆に太一に尋ねた。
「今、ここで言うタケルの事というのは1992年の戦いの内、デビモンとの戦いの事と捉えていいか?」
「そうだ。タケルはあの時大切なパートナーを失った。それがきっかけであいつは闇の力を忌み嫌うようになった。だがパンドラには闇の力によって生み出されたブラックウォーグレイモン、つまりはお前や魔王型のデスモン、闇の力を持つデビタマモンやマミーモン、更にはタケルのトラウマの元凶のデビモンのデータを組み込んで誕生したキメラモンまでいるじゃねえか。いつものタケルならそういうメンバーの中でデジタルワールドの破壊なんて手伝うはずがねえ! お前らはタケルに一体何を吹き込みやがった!!」
「……何だか、悪者扱いされた。」
「いや、彼にとって俺達は悪者だろう。」
太一の言い方に不満げな真央は太一に言い返す。
「……元々はタケルを中心に集まったのに。」
「ハァ!?」
真央の発言に首をひねる太一にラックが詳しく説明する。
「要するに真央が言いたいのは俺達がタケルを丸めこんで仲間に引きずり込んだんじゃなくて、タケルとパタモンの協力者として俺達が集まったって言いたいんだ。」
「ふざけた事抜かしてんじゃねえ! タケルがすべての元凶だって言いてえのか!?」
激昂する太一にラックは落ち着いて対応する。
「そういう意味じゃない。俺達十災将は元々、別の目的の集まりだった。その中心にいたのがタケル達だったんだ。」
「あれ? でもリーダーはタケルじゃなかったよね。」
ラックの説明を静かに聞いていたアグモンがふと疑問をこぼした。
「最初の集まりにはリーダーという存在は必要なかったからな。パンドラとして活動を始める時に全員をまとめるリーダーが必要だろうって事で虎徹が選ばれたんだ。」
「へえ〜。」
「十災将やパンドラに所属するデジモンに闇の力を持つものが出たのはただの偶然だ。タケル達を洗脳してどうこうって話じゃない。」
更にラックの話は続く。
「タケル達は俺達と出会ったことで闇の力を憎悪し打ち消すだけじゃなく、その力を利用する術を覚えたんだ。」
「タケルが闇の力を利用するだと!?」
「そう。それも力に溺れキメラモンを作り出したデジモンカイザーとは違う、柔軟で強固な使い方だ。」
「……タケルの事を解ったような口を利くんじゃねえ!」
「お言葉だが、今のタケルの事なら君達よりは理解しているつもりだ。」
「…………!」
その言葉で太一がラックに殴りかかろうとしたその時、
『キーンコーンカーンコーン』
昼休み終了を知らせるチャイムが鳴り響いた。
「……どうやら、時間切れのようだ。では、またな。」
「待て!」
太一が引き止める前に真央とラックはその場を後にする。
「くそっ!」
「太一……」
太一はやり場のない怒りを抑えきれず傍らの木の幹にぶつけ、アグモンはそんな太一を心配そうに見つめていた。
102
:
沐鳥
:2012/05/19(土) 09:53:52
続きを書きこむ前に
前回、1999年とする所を1992年と入力していたみたいです。(なんで2を入力したんだか)
度々のミス、申し訳ございませんでした。
第三十一話 打倒 十災将
「……太一さん。」
「あ゛あ゛っ!?」
「……いえ、何でもありません。」
「……なんか、太一先輩機嫌悪いっすね。」
「聞いた話では昼休みに神谷真央とブラックアグモンに絡まれたそうだ。」
太一とアグモンが高校で真央とラックと話をしたその日の放課後、太一達はヤマト、空、光子郎、ミミ、大輔、京、ヒカリらと共にデジタルワールドへと赴いていた。
「確か、この辺りで十二神将と待ち合わせのはずなんだけど……」
「済まぬ、少し遅れた。」
「チャツラモン!」
太一達が十二神将との待ち合わせ地点にいると以前に顔を合わせたことのあるチャツラモンが二体のデジモンを引き連れて現れた。
「紹介しよう。右が私と同じくバイフーモン様にお仕えしているマクラモン。左がスーツェーモン様にお仕えしているパジラモンだ。」
チャツラモンの紹介で太一達はマクラモンとパジラモンの二体と軽く挨拶をする。
「これだけの面子がそろえば奴らにも後れを取るまい。」
「……ホントにそうなのかしら。」
それなりの戦力が揃い士気が高まる中でミミが不意に不安をこぼした。
「ミミさん、今更何言ってんすか!?」
「だって究極体同士の戦いでも圧倒されたのよ! 今までだって大人数で挑んでもろくに勝ってないし……」
「……ミミさんの指摘はもっともです。しかし、僕達もずっと手をこまねいているだけじゃありませんよ。」
不安がるミミを落ち着かせるように光子郎が言う。
「何か考えがあるのか!?」
「はい。うまく行けば十災将から金星を奪えるかもしれません。」
そして、太一達は光子郎の言葉に耳を傾ける。
「この前、丈さん達が使ったという作戦を参考に考えたんですが……」
103
:
沐鳥
:2012/05/19(土) 10:13:21
「申し上げます。デジタルワールドに入った選ばれし子供達はこちらに向け移動を始めました。
パンドラの部隊の指揮に一人で当たっていた十災将、田辺カイは伝令役のコウガモンより報告を受ける。
「よし、みんなはこのまま作業を続行してくれ。僕達は選ばれし子供達を迎撃する。イガモン、行くよ。」
「ああ。」
「我々もお供いたします。」
カイはすぐさまパートナーのイガモンと数体の部下を引き連れ選ばれし子供達を迎え撃ちに出撃した。
「この森を抜けた先で選ばれし子供達と遭遇すると思われます。」
「みんな、気を引き締めろ。」
「はっ!」
事前に予測を立てた地点に近づきカイが周囲に警戒を呼び掛け部下のデジモンが返事をした時だった。
「トライデントアーム!」
「ホーンバスター!」
「なっ……!」
「カイ様、イガモン様!」
カイ達の周囲の木々がすごい勢いでなぎ倒されカイとイガモンは部下のデジモン達と完全に引き離された。
「よっしゃ、うまくいったぞ!」
「流石は光子郎はんが考えた作戦や!」
「彼とイガモンを引き離すのがベストだったんですが……」
「何、そこまで行かなくてもこれで十分成功さ。」
茂みに潜んでいた空とピヨモンを除いた選ばれし子供達と完全体に進化したパートナーデジモン達がカイとイガモンを取り囲んだ。
その姿を遠目から見たパンドラのデジモンに動揺がはしる。
「あれは選ばれし子供達!」
「馬鹿な! 遭遇地点と多少の誤差はあってもここで出くわすのは早すぎるぞ!」
「我々もいつまでも貴様らをのさばらせはしないという事だ。」
「き、貴様らは!」
冷静さを失いかけているパンドラのデジモン達の前には十二神将が現れた。
104
:
沐鳥
:2012/05/19(土) 11:03:02
‐回想‐
光子郎は自分の考えた作戦の説明を始めていた。
「丈達が使った作戦?」
「自分達が囮になって他のデジモン達にパンドラを包囲してもらったってやつか?」
「はい。あの戦いには敗れはしたものの作戦自体は成功したといっていいでしょう。」
「確かにそうだろうけど、その時と今回じゃあまるで違うんじゃない?」
ミミの質問に軽く頷き光子郎は説明を続ける。
「確かにその時と今回は全く違うものです。戦力や場所、そして僕が考えている『目的』も。」
「目的ぃ?」
光子郎の言葉に太一達は首を傾げる。
「今まで僕達はパンドラの破壊活動を阻止する事を目的として戦いを挑み、十災将によって苦汁をなめてきました。」
「そうだな。」
「十災将の力は今の僕達にとって脅威的なものがあります。現状ではホウオウモンしか太刀打ちはできないでしょう。」
「確かに……な。」
「そしてホウオウモン一体では十災将を複数相手にするのは無茶な話です。」
「そりゃそうだ。」
「ですが、ホウオウモンに完全体を複数加えた布陣で十災将の内たった一人を相手にするならばどうでしょう。」
「一人!?」
「ええ。十災将一人にそれと同等の実力を持つホウオウモン。そこに僕達がまとまって戦いを挑むことが出来れば勝てない相手ではないはずです!」
「なるほど……目的が違うってのは『まず、確実に十災将を戦闘不能にする』って意味か。」
ヤマトが光子郎の話を整理する。
「十災将は絶対的なパンドラの要です。そこを叩けばおのずとパンドラの活動を弱めることが出来るはずです!」
「そうか……それで、何をするんだ?」
「まず、この場でピヨモン以外の皆は完全体に進化してもらいます。」
「ピヨモン以外?」
「はい。進化した後は空さんにすべてのデジヴァイスを回収してもらいます。」
「えっ、何で?」
「パンドラ側はデジヴァイスの反応を基本にこちらが活動の妨害をしてくると思った時、対応してくる事が多いようなので先に進化を済ましておいてデジヴァイスを囮に使えるようにするんです。」
「なるほど……でも何で空さん?」
「マトリックスエヴォリューションがデジヴァイスの反応にどう影響するかがいまいち掴めなくて……」
「あぁ、そうか……」
「デジヴァイスを回収し終えたら相手の戦力の偵察を行います。十災将が一人で指揮に当たっている隊を狙いあらかじめ仕掛けておいた罠に空さんとピヨモンで十災将をおびき寄せてもらいます。」
「そんな都合よく見つかるのか?」
太一が怪訝な顔を示すが光子郎はそれについても説明を怠らなかった。
「そんなに難しい事じゃないと思いますよ。」
「何で?」
「先日、パンドラのリーダー蝶野虎徹とそのパートナーのマミーモンは『自分達には時間の余裕が無い』とほのめかしていました。彼らの目的は未だ不明ですが、時間に余裕が無くなってきて十災将が一人しか部隊につけないとしてもおかしくないということを指していると思います。」
「な、なるほど。」
「ところで、おびき寄せるってどうやるの?」
「あらかじめ決めた地点に罠を仕掛けますのでパンドラの部隊に近づくように見せかけてそこに誘導してください。」
「分かったわ。」
「パンドラ側も空さん達が来ているとすれば十災将自らが出るしかないものと思われます。」
「部隊から離れた所を突くんだな!」
「はい。空さん達ならすぐに合流して全員で戦うこともできるはずです。」
ここで京が光子郎に質問する。
「そう言えば他の十災将が援軍に駆けつけるってことは……」
「確かにそれも考えられますが、神谷真央と初めて遭遇した時にブラックアグモンが彼女を探し出すのを苦労したようにほのめかしてます。恐らくスデルスホルダーに入れられたD-3はパンドラでも反応をキャッチできないのでしょう。時間は十分にあると思います。」
これで、光子郎の説明が完了した。
「よし! それじゃあ皆、さっそく進化だ!!」
‐回想終わり‐
105
:
沐鳥
:2012/05/19(土) 11:17:54
「くっ……早く救援を!」
「そうはいかん。」
カイたちの窮状を伝えようとするパンドラのデジモンに十二神将が立ちふさがる。
「我らが貴様らの方に来たのはパンドラ本隊に情報が回らないようにするため……貴様らはここで朽ち果てるがいい!!」
十二神将は冷静さを取り戻しきれていないパンドラのデジモンに攻撃を開始した。
『ドゴォォォン!』
十二神将の戦いが始まり激しい音を立てて爆煙が吹きあがった。
「カイ……」
「分かってる。」
その音を聞いてカイとイガモンは音のした方へ走りだそうとする。
「そうは行くか!」
しかし、その行く手はパイルドラモンとワーガルルモンによって塞がれた。
「そんなに部下の事が心配か?」
「……まあ、大輔さんが千人いてもどうしようもない仕事をたった一体で完璧にこなしてくれますからね。」
「何だと、てめえ!」
「挑発だ、乗るな。」
質問を挑発で返されて怒る大輔の首根っこをヤマトが掴んで止める。
「みんなー!」
「空さん、バードラモン!」
そんな事をしている内に空がバードラモンに掴まり太一達に合流した。
「多勢に無勢で悪いがここでお前達を倒させてもらう。みんな、行くぞ!」
「…………」
「状況は最悪……かな?」
戦う構えをとる選ばれし子供達を前にしてもカイは冷静さを失わず淡々と状況を整理して呟いた。
106
:
沐鳥
:2012/06/24(日) 09:25:23
第三十二話 両雄再起
「ギガデストロイヤー!」
「カイザーネイル!」
「くっ!」
メタルグレイモン達の連携攻撃がイガモンに降り注ぐ。
「デスペラードブラスター!」
「ぐあっ!」
「イガモン!」
「よし、こちらが優勢です! 一気にたたみかけましょう!!」
「おう!」
光子郎の指示で選ばれし子供達の攻撃はさらに勢いを増す。
「イガモン、大丈夫か!?」
その合間を縫いイガモンに駆け寄ったカイが尋ねた。
「ああ、なんとかな……」
「このままじゃ悪戯に体力を消耗するだけだ。行くぞ、進化だ!」
そう言ってカイはD-3を構えた。
「マトリックスエヴォリューション!」
「させない! ホーリーアロー!」
「トップガン!」
進化を阻止しようとシルフィーモンとエンジェウーモンが攻撃を放ちカイとイガモンは土埃の中に消える。
「……どうだ?」
イガモン 進化 イーバモン!
「危ない!」
土埃でカイ達を見失い動きを止めたシルフィーモンとエンジェウーモンに向かって真っすぐ銃撃が襲いかかる。
とっさにワーガルルモンとパイルドラモンが助けに入りシルフィーモンとエンジェウーモンは銃撃を回避した。
そして土埃は晴れ選ばれし子供達の前に独特な形状を持つサイボーグ型デジモン、イーバモンがその姿を見せた。
「進化されたか……」
「まあ、元々進化される事を前提にした作戦だから深く考える事は無いだろう。」
「バードラモン、行くわよ!」
カイ達が究極体に進化したのを見て上空では、空がデジヴァイスを構える。
「マトリックスエヴォリューション!」
バードラモン 進化 ホウオウモン!
「こっからが本番だ! みんな、行くぞ!」
太一の号令で選ばれし子供達は一斉にイーバモンに立ち向かった。
107
:
沐鳥
:2012/06/30(土) 10:15:18
「トライデントアーム!」
「ワイルドスクラッチ!」
メタルグレイモンとアトラーカブテリモンの近接攻撃をイーバモンがかわす。
「フラウカノン!」
「ブレインラプチュアー!」
その進行方向からリリモンが攻撃するが、素早く対応したイーバモンにフラウカノンは撃ち落とされた。
「みんな、下がって!」
ホウオウモンの要請でメタルグレイモン達はイーバモンから離れる。
「スターライトエクスプロージョン!」
上空からホウオウモンが放った黄金色の粒子がイーバモンに降り注ぐ。
「ぐぅっ!」
その広範囲にわたる攻撃にイーバモンといえども完全に防御することはできなかった。
「カイザーネイル!」
「デュアルソニック!」
「ぐあっ!」
更に動きの止まったイーバモンにワーガルルモンとシルフィーモンが追撃を叩き込んだ。
「くっ……流石に分が悪いか?」
「みんな、一斉攻撃だ!」
「クリムゾンフレア!」
「ギガデストロイヤー!」
「カイザーネイル!」
「デスペラードブラスター!」
「ホーンバスター!」
「フラウカノン!」
「トップガン!」
「ホーリーアロー!」
選ばれし子供達の攻撃がイーバモンに向けて一斉に放たれた。
その時、
「ぐああああっ!」
イーバモン達を分断する為に作った柵が激しい爆音と共に崩壊しチャツラモン、マクラモン、パジラモンの三体が吹き飛ばされてきた。
しかも運の悪い事に破壊された柵の残骸がイーバモンへの攻撃を遮ってしまった。
「チャツラモン、マクラモン、パジラモン!?」
「すまない、選ばれし子供達よ……」
「何があったんだ!?」
「ハーッハッハッハッ!」
傷つき地面に横たわるチャツラモン達に質問すると太一達の耳に柵が破壊された辺りから高笑いが聞こえてきた。
「こ、この声は……!」
「十災将、新井陣!」
「マメモン!」
「見参!」
「ってか!」
「……元気。」
「今日はスーパースターモンの運転はなかったらしいからな。乗り物酔いしなかったからこのテンションなんだろう。」
「えっ、スーパースターモンがうちの隊にいるのって俺を酔わせてテンション下げるため!?」
「マジで!?」
「……知らなかったの?」
そこには十災将、新井陣と神谷真央、そしてそのパートナー、マメモンと青いメタルグレイモンに進化したラックの姿があった。
108
:
沐鳥
:2012/07/15(日) 10:04:27
「イーバモン様、ご無事ですか!?」
戦闘の前にイーバモンと行動を共にしていたデジモンがイーバモンに駆け寄っていく。
「そんな……たとえ情報を完全に遮断できないとしても来るのが早すぎる!」
「悪くない作戦だったかもしれないが……」
十災将が更に二組現れた事に動揺する太一達、選ばれし子供達にイーバモンとラックの二人が淡々と説明をする。
「選ばれし子供達の中にマトリックスエヴォリューションが使える者が出ればその者を中心に十災将の一人を孤立させ潰しに来る可能性はこちらでも検討されていた。」
「だから、通常業務をこなす部隊と別に情報の伝達に特化した部隊を組織したんだ。」
「このような状況に陥ったとき出来る限り早く救援に駆けつけられるようにな。」
「それに……今回は十二神将にその事を悟られないように一芝居打ってくれた奴らがいて不意を突けたしな。」
少し回りくどいような言い方でラックにほめられてイーバモンのそばにいるデジモン達は照れる仕草をする。
そんあ部下にイーバモンも話しかける。
「それにしても十二神将に手痛くやられたようだな。」
「申し訳ありません。」
「……まあ、いい。」
イーバモンはボロボロの状態の部下達のを見て左手の銃を構えた。
「ブレインラプチュアー!」
そして、目の前の部下達に一発ずつ銃弾を打ち込んだ。
「なっ!?」
今まで部下を大切に扱っていた十災将の突然の行動に驚く太一達だったが、攻撃を喰らったデジモンはダメージを受けるどころか見る見るうちに傷が塞がり回復していく。
「これで大丈夫だろう。お前達は戻って隊に合流してくれ。」
「はっ!」
回復したデジモン達はイーバモンに一礼してその場を立ち去る。
「どうなってんだ!?」
先程、リリモンのフラウカノンを打ち落とした同名の技で回復したデジモン達をみて困惑する選ばれし子供達を見てラックが説明を始める。
「イーバモンのブレインラプチュアーは打った対象のデータを吸収する技だ。その吸収する内容をダメージに限定することで受けた対象の傷を『奪った』って感じだ。」
ラックの簡単な説明が終わると今度は陣が前に出てきて話す。
「さあ、そろそろお喋りは終わりにしましょうや。今日ははなっから本気でやらせてもらいますよ! 先輩方、お覚悟を!!」
そして、真央と陣はD-3を構える。
「……ラック。」
「マメモン!」
「「マトリックスエヴォリューション!」」
メタルグレイモン 進化 ブラックウォーグレイモン!
マメモン 進化 ランプモン!
「きゅ、究極体が三体……!」
選ばれし子供達の前にパンドラの究極体デジモンが三体立ち塞がった。
109
:
沐鳥
:2012/07/16(月) 10:27:13
「ファントムターバン!」
「ぐああっ!」
ランプモンの操るターバンが周囲にいたメタルグレイモン、ワーガルルモン、アトラーカブテリモン、リリモンの四体をなぎ倒した。
「デスペラードブラスター!」
「トップガン!」
「ホーリーアロー!」
パイルドラモン、シルフィーモン、エンジェウーモンの三体はイーバモンに同じ方向から同時に攻撃を仕掛ける。
しかし、イーバモンはそれに動じることなく右手の銃を構える。
「プラネットデストロイヤー!」
そこから放たれた一撃はパイルドラモン達の必殺技をかき消し、そして勢いもそがれることもなくパイルドラモン達を飲み込んだ。
「うわぁぁっ!」
それによりパイルドラモン達はそれぞれブイモン、ホークモン、テイルモンに退化してしまった。
「ブイモン!」
「ホークモン!」
「テイルモン!」
「み、みんな!」
「余所見をしている暇は無いぞ!」
ホウオウモンは劣勢にたたされる仲間をなんとか助けようとするが体躯とスピードを生かし接近戦を仕掛けに来るラックを振り切れずにいた。
「うがぁっ!」
「きゃぁぁ!」
「アトラーカブテリモン!」
「リリモン!」
そして、その間にアトラーカブテリモンとリリモンが力尽き退化してしまう。
「くそっ!」
「俺達、こんなに脆かったのか……!」
たった二体、十災将が加わっただけであっという間に窮地にたたされる現状にブイモンが心底悔しそうにつぶやく。
「なんつうか、張り合い無いなぁ。」
「文句をたれるな。気持ちはわからんでもないが。」
「くっそ……!」
「なめやがって!」
残された完全体、メタルグレイモンとワーガルルモンは必死に戦いを挑むがランプモンとイーバモンの前になすすべも無く弾き飛ばされる。
「メタルグレイモン!」
「ワーガルルモン!」
太一とヤマトがパートナーに駆け寄る。
「大丈夫……」
「まだ……戦える!」
かなりのダメージの受けて地面に倒れこんだメタルグレイモン達はパートーナーの呼び声で再び立ち上がる。
「こんな所でやられるわけにはいかない!」
「お前達を倒して、タケルの目を覚まさせるまでは!」
パートナー達の言葉を聞いて太一とヤマトは思う。
(仲間として、タケルを止めるために俺達はここで逃げるわけにはいかねえ!)
(あいつが……タケルが今何を考えているか俺にはわからない。だけど、みんながあいつのために必死になって戦ってくれている。みんなの気持ちに応えるためにもこんな所で……)
太一とメタルグレイモン、そしてヤマトとワーガルルモンが一斉に叫ぶ。
「「「「絶対に負けてたまるかぁぁぁ!!」」」」
そして、その言葉に呼応するかのように太一とヤマトのデジヴァイスが輝きだした。
「な、なんだ!?」
「これって空さんの時と同じ……」
「お兄ちゃん!」
その輝きに京とヒカリが太一達に声をかけようとするが二人はそれを言われる前にデジヴァイスを構えた。
「いくぞ、メタルグレイモン!」
「ワーガルルモン!」
「「マトリックスエヴォリューション!」」
メタルグレイモン 進化 ウォーグレイモン!
ワーガルルモン 進化 メタルガルルモン!
デジヴァイスから漏れ出す光と共に二体の英雄が、再び戦場にその姿を現した。
110
:
沐鳥
:2012/07/21(土) 10:19:48
PANDORA DATA FILE Vol.6
パンドラ十災将
新井 陣 (あらい じん)
お台場小学校六年B組在籍
パートナー サンダーボールモン⇔マメモン⇔ランプモン
大輔のサッカー部の後輩でパンドラのムードメーカー的存在。
基本的にお調子者で他の十災将と比べ気の抜けた行動が多いがやるべき事はきちんと取り組むのでそれほどパンドラ内では問題とはなっていない。
ちなみに究極体に進化したときは一人称が『吾輩』に変わる。
作者備考
完全なボケ担当として考えたキャラクターです。
進化ルートに悩んだキャラでもあります。
ここまで来るともしかしたらお気づきの方もおられるかもしれませんが、オリジナルキャラクターの究極体は以前に玩具として発売されたD-3のボスデジモンにしています。
ランプモンは登場作品が少なく比較的進化前の姿で多く起用されていると思われるマメモンを進化前に設定しました。
111
:
沐鳥
:2012/07/21(土) 10:32:02
PANDORA DATA FILE Vol.7
パンドラ十災将
田辺 櫂 (たなべ カイ)
お台場小学校六年B組在籍
パートナー イガモン⇔ベーダモン⇔イーバモン
パンドラの中の光子郎の立場を担っている少年。
パンドラの活動に積極的で諜報、研究、開発の三部門の責任者でもある。
ステルスホルダーやシェンウーモンから譲り受けたデジビートルの量産も彼の研究の成果である。
好物はスルメでよく研究室でイガモンと共にスルメを咥えながら研究に没頭しているのが見かけられるそうだ。
ちなみにベーダモンの必殺技の一つ『悪魔の投げキッス』は性格と合わなくて気持ち悪いから使うなと周囲から言われているらしい。
作者備考
オリジナルキャラクター紹介に作者備考の欄をつけたのはいいのですが追記する内容が無くなってきました。
進化ルートはデジモンストーリーロストエボリューションを使用しました。
112
:
沐鳥
:2012/07/28(土) 15:19:16
第三十三話 つかめ、初勝利!
「「マトリックスエヴォリューション!」」
メタルグレイモン 進化 ウォーグレイモン!
ワーガルルモン 進化 メタルガルルモン!
太一とヤマトのデジヴァイスが輝き二人はパートナーと一体化して究極体へと進化する。
「ウォーグレイモンとメタルガルルモンか……データを採るために誰か残しておくべきだったか。」
「今更そんなこと言ったってしゃあねえよ。ファントムターバン!」
太一達が進化を終えるとすぐさまランプモンが攻撃を仕掛けてきた。
「行くぞ、メタルガルルモン!」
「おう! コキュートスブレス!!」
迫る来るファントムターバンにメタルガルルモンがコキュートスブレスを放つ。
それによりターバンは凍りついて動きを止めた。
その間にウォーグレイモンは上空に飛翔する。
「ブレインラプチュアー!」
「ガルルトマホーク!」
イーバモンがウォーグレイモンに狙いを定めブレインラプチュアーを放つがそれをメタルガルルモンが妨げる。
「くっ! ラック、いったぞ!!」
「何っ!?」
「ブレイブトルネード!」
ウォーグレイモンは更に上昇しホウオウモンとラックの戦いに割って入る。
「ウォーグレイモン!」
「こいつは俺の方が戦いやすいはずだ! ホウオウモンはメタルガルルモンと一緒に下の二体を!!」
「分かったわ!」
ウォーグレイモンっと入れ替わりでホウオウモンは降下する。
ウォーグレイモンは猛スピードでラックに突進し攻撃する。
ラックはその攻撃をなんとかさばき最終的に二体は組み合う形になった。
「ホウオウモンと戦って消耗してるな。動きにこの前みたいなキレがないぞ!」
「くっ……!」
「それにウォーグレイモン同士で戦ってみて分かった。お前の方がテクニックは上だがパワー勝負なら俺の方が……強い!」
そう言うとウォーグレイモンは力任せにラックを振り回し下方に投げ飛ばした。ラックはそのまま地上でメタルガルルモン達と戦っていたイーバモンに衝突する。
「痛って……すまん、イーバモン!」
「ああ。」
「おいおい、大丈夫かぃ?」
「今だ!」
ランプモンが衝突した二体を気遣い十災将が一か所に集まったのを見計らいウォーグレイモン達が勝負に出た。
「Gクロスフリーザー!」
「スターライトエクスプロージョン!」
「ガイアフォース!」
113
:
沐鳥
:2012/07/29(日) 08:49:54
「Gクロスフリーザー!」
「スターライトエクスプロージョン!」
「ガイアフォース!」
ウォーグレイモン達が一斉に放った攻撃が十災将を飲み込み辺りに爆煙がたちこめる。
「やった……のか?」
「かなりの広範囲を攻撃していたのでかわしようがないと思いますが……」
やがて視界が開けると十災将がいたところには所々が破損している氷の山が出来ていた。
「これって……?」
「メタルガルルモンのGクロスフリーザーで氷結されたものがウォーグレイモン達の攻撃とぶつかり合いこうなったのでしょう。」
「とりあえず、中を割ってみるか。」
警戒しながらウォーグレイモン達が氷塊を砕いていく。
「こ、これは……!」
すると内部は空洞になっており、地面には大きな穴が開いていた。
「どうなってんだ?」
皆が困惑する中、光子郎が砕けた氷の欠片と地面の穴を調べ一つの仮説を立てた。
「氷の中に布のようなものが混じっている所があります。そして、地面に開いた穴にはドリルのようなもので掘られた形跡がありました。これらを踏まえて考えると恐らく、ウォーグレイモン達の攻撃をランプモンがドーム状に展開して防ぎ、その一方でブラックウォーグレイモンがブラックトルネードで穴を掘り脱出したと思われます。」
「な、なるほど……」
光子郎の仮説に他の面々はとりあえず納得し状況を整理しなおす。
「あいつら、今近くにいないよな?」
「そう……みたいだな。」
「十災将を退けたってことだよな。」
「そうですね。」
「これって俺達の勝ち?」
「そうね。そう考えていいんじゃない?」
「…………」
整理し終えた選ばれし子供達は一呼吸置くと、
「よしゃぁぁぁ!」
「十災将を相手に私達、勝ったんだ!」
勝利の喜びを思い切り爆発させ、大きな希望を抱きその場を後にするのであった。
114
:
沐鳥
:2012/07/29(日) 09:40:56
-パンドラ本部-
「ふぅ……」
「あ、ちょうどよかった。」
パンドラの本部に備え付けられたシャワールームから出てきた十災将、蝶野虎徹は、タケルに声をかけられた。
「どうした?」
「実は……」
タケルは要件を虎徹に説明をする。
「お前、マジで"あれ"を準備したのか!?」
「うん、あの話、実行してくれないかな?」
「へいへい、了解。」
「それじゃ、お願い。」
話を終えるとタケルは虎徹とわかれ足早に走り去って行った。
「……やれやれ、あいつちゃんと休み取ってんのかな?」
虎徹はそう呟くとタケルの依頼をこなすため行動を始めるのであった。
第三十四話 暗躍
「今日はいい天気だな!」
ある日の日曜日、デジタルワールドへ行く予定ではなく部活も休みだった大輔は連戦が続くチビモンを労おうとチビモンを連れてフジテレビの近くまで外出していた。
「チビモン、何か食いたいものとか行きたい場所とかあるか?」
「うーん……あっ!」
大輔が肩から下げたショルダーバックに身を潜めていたチビモンが何かを見つけ声を上げた。
「大輔、あれ!」
「あれは……蝶野!?」
休日に思わぬ所で発見したパンドラリーダー蝶野虎徹は背中に小さめのリュックサック、肩にはクーラーボックスを下げたいで立ちでフジテレビに入って行った。
「あいつ、何をする気だ?」
不審に思った大輔達も虎徹を追ってフジテレビに入る。
人混みをかきわけ、虎徹に悟られないように追跡を続けるといつの間にか人気のない場所に出ていた。
「この辺でいいか……」
虎徹がそう呟くと背中のリュックサックからもぞもぞと彼のパートナーのツカイモンが這い出てきた。
「ツカイモン、頼む。」
「オーライッ。」
ツカイモン 進化 ソウルモン!
ソウルモン 超進化 マミーモン!
(こんな所で完全体に?)
(なんで……?)
「……ネクロフォビア。」
大輔達が物陰に隠れて様子を窺っているとマミーモンはネクロフォビアを発動する。
その術により、虎徹達の正面には立体的に黒い影が集まってきた。
「さてと……」
影の集束が終わると虎徹がクーラーボックスから何かを取り出した。
(なんだ、あれ?)
(ただの葉っぱ……じゃないよな。)
虎徹が取り出した木の葉のような形の物質を大輔達が注視していると虎徹はその物質を目の前の影の塊に埋め込んだ。
すると、その影は揺らめき別の存在に姿を変えた。
「あれ……!」
(しーっ!)
その変化で生じたものを見て思わず叫びだしそうになったチビモンの口を慌てて大輔が塞いだ。
(大輔、あの"デジモン"は!)
(ああ、あれは……)
((ウィザーモン!))
大輔達の前で復活させられたウィザーモンに意識は無く、そのまま倒れこんでマミーモンに支えられる。
「どうやら、上手くいったみたいだな。そんじゃ……」
虎徹はウィザーモンの復活を確認して新たにリュックサックから小さな機械を取り出す。
「場所を移すか。」
その機械のスイッチを押すと空間が歪み大きな穴を開けた。
(な、なんだよあれ!?)
「……本当に開くんだな。」
「全くカイもとんでもない物作りやがったな。しかもこのクオリティで試作品だろ。」
穴が開いたのをみて少し呆れた表情を浮かべた虎徹とマミーモンはウィザーモンを抱え穴の中に消える。
「あいつら、ウィザーモンに何をする気だ!?」
「急いで追うぞ、チビモン!」
慌てた大輔達はその穴が閉じてしまう前に穴の中へと突入しウィザーモンを連れ去った虎徹達を追いかけて行った。
115
:
颯大
:2018/08/11(土) 19:36:25
続きは、まだですか
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