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デジモンアドベンチャー02 〜光と闇〜外伝
1
:
ヤム
:2008/06/23(月) 23:12:39
どうも。
本編もあまり進められないままこのような物を立てさせていただきました。
このスレッドは〜光と闇〜本編に登場するキャラの外伝を書くものです。
出来る限り本編と両立させていきたいです。
宜しくお願いします。
2
:
ヤム
:2008/06/23(月) 23:16:47
ではまず、皆さんに以下から見たい外伝を選んで下さい
・魁人&梓外伝
・北野外伝
・長編旅人話(本編の旅人話とは別です)
選んでリクエストしてくれたら嬉しいです。
待ってます!!
3
:
オメガモン
:2008/06/26(木) 20:43:31
俺は旅人話がいいです。
4
:
DRAGON
:2008/06/27(金) 16:29:55
初めまして、ヤムさん。
DIGIMON ULTIMATE WORLDという小説を書いているDRAGONと言います。
僕も「長編旅人話」がいいです。
楽しみにしています!!
5
:
ヤム
:2008/09/25(木) 13:42:00
デジモンアドベンチャー02〜光と闇〜外伝
俺は旅人、2つの世界を行き来する旅人・・・
これは、その意味不明な人生を歩む俺の物語・・・・
1年前・・・
「危ねぇ!!」
キキイィィィィィィィィィィッ!!!!
ドゴッ
「あっ・・・」
ピーポーピーポーピーポーピーポー・・・・
何が起こったんだろう?
俺は確か・・・春休みがあけ、小学6年生に進学し・・・
ダルイ始業式を終え・・・帰りに・・・
そうだ・・・俺は大型トラックに轢かれそうになった子供を助けて・・・自分が撥ねられて・・・
死んだ?
旅人話 〜その力は誰の為に・・・〜
「ん・・・」
俺が目を開けると天井があった。
俺は白いベッドに寝ていた。体中に包帯が巻かれている。特に酷いのが両手だった。肘から指先まで包帯とギブスで隠れている。
「・・・あー」
生きてた
嬉しくもなければ悲しくもない。正直興味ない。
自分の生死にすら興味ないって・・・
「はは・・・」
ベッドの周りには点滴といろんな機械があった。
「・・・ん〜」
とりあえず唸る。そう言えばなんであの子供は轢かれそうになったんだっけ?確か飛んでったボールをとろうと・・・いや、もういい、メンドい・・・
その時、病室のドアが開いた。
「!」
病室の入り口には幼馴染の女の子、鳴(メイ)がいた。メイは俺と目が会うとあんぐりと口をあけた。
「や」
俺は1文字挨拶をする。
メイは口をパクパクさせる。
「・・・悟」
メイはそう言うと今来た廊下に戻って叫んだ。
「悟!悟!起きた!悟!起きた!」
そう言うとメイは走っていった。原始人のように単語を並べて叫びやがって。
しばらくするとメイを先頭に医者や看護婦が走ってきた。
「君!大丈夫かね?」
医師が聞く。
「ご覧の通り、満身創痍です」
俺は静かに言った。俺がまだまともに喋ることが出来るのを確認すると、医師は近くの椅子に座った。
「悟君、君はトラックに轢かれたんだ」
「知ってます」
「そして君はこの病院に運ばれてきた」
「はいはい」
「君はあちこちを骨折し、まさに虫の息だった」
「医者が虫の息とか言うな」
「そして君は2週間目を覚まさなかった」
「そして現在に至る」
「その通り」
医者との会話はホイホイと進んだ。
「今お父さんに電話したからね」
看護婦の一人が言う。
「はい・・・・は!?」
親父が!?
「いや、ですから悟君のお父さんを・・・」
「サアァァァァァァァトオォォォォォルウゥゥゥゥゥゥ!!!!」
「お、来たようだ」
医師が言う。
総員退避!!!退避ィ!!!直ちに撤退せよ!!繰り返す!これは訓練ではない!!繰り返す!これは訓練ではない!!!
そして、病室に飛び込むひとつの巨大な影・・・親父
「てめえええええええええ!!!!事故なんか起こしやがってええええええ!!!!」
親父はそのまま空中から俺の顔面に向かい数多の豪傑どもを屠ってきた膝蹴りを繰り出す。
「ギャアアアアアアア!!!勘弁親父イイイイイイ!!!」
俺は何とか首を曲げ、親父の膝をかわす。ベッドに風穴が開く。
しかし、親父の殺人拳は止まらない。
「お、落ち着いてくださいお父さん!!!」
医師達が親父を止めにかかる。そうだ早く!止めて!
「悟!悪くない!子供!助けた!」
メイは何時まで原始言葉で喋ってんだああああああ!!!!
数分後・・・
「言ったよなぁ・・・悟。厄介ごとは例えどんな理由でも起こしちゃならねえって」
俺は大怪我しているのに正座をさせられている。
「はい、確かに言いました・・・」
「何故かわかるか?」
「はい・・・」
「それはだなぁ・・・父親の俺が巻き込まれるのがメンドくせえからだ」
今の台詞を聞いた皆さん、お気付きでしょうか?その通り、俺の親父は鬼です。
本来後4ヶ月で退院の俺はこの人ならざる者のお陰で退院するのが半年先になった。
6
:
ヤム
:2008/09/25(木) 21:20:06
それから4ヶ月後・・・
「それじゃあ両腕のギブスをはずすよ」
医師が言う。
「ハイよ」
俺は意思に腕を差し出す。
いやはや大変だったこの4ヶ月・・・両手が使えないため、飯はメイに食べさしてもらったと言う羞恥。周りの目がきつかった。最悪親父に無理やり飯を口に詰め込まれたことも・・・
「やっと腕が使える・・・」
「治ってすぐ激しく使ってはだめだよ」
医師が言う。
「えー、もう悟にご飯食べさせてあげることはできないの〜」
メイがつまらなそうに言う。
「黙らんかこの原始少女」
俺はヤレヤレと首を振る。その時
「おいーっす!元気かー!」
病室にもう一人の幼馴染の男の子、エリヤが来た。
「何しに来たこの芋虫」
「存在自体がこの惑星の迷惑であるお前に言われたくない」
「黙れ、この世の何よりも無駄に二酸化炭素を吐き出している奴が」
「ならお前は早く死んで土になって光合成により二酸化炭素を酸素へと変えてくれる植物達の肥料になったほうが今よりまだ価値のある生き方だぞ」
「「・・・・・」」
俺とエリヤはしばらく黙ったあと大笑いした。今の会話が俺達2人の挨拶代わりだ。
「ん?もう腕使えるのか?」
エリヤは医師がギブスをはずしているのを見て言う。
「ああ」
「なんだよ、今日もメイにご飯食べさせてもらうとこ見ようと思ったのに」
こいつは性格が悪い。俺に並ぶ。
「はい、とったよ。しばらくは汗や垢がたまっていた所為で臭うけど・・・」
そう言うと医師は包帯の塊を持って病室を出る。
「わぁ・・・ほんとに酷い」
メイが鼻をつまむ。素直な奴め・・・・
「お前ホントに人間か?」
エリヤが言う。お前よか人間だ。
その時、俺は驚くべきものを見た。
「な・・・!?」
俺の両腕には白い鉄甲が装着していた。
「なんだこれ!?」
俺はその鉄甲を様々な方向から見る。
「?どうしたの?悟?」
メイが言う。いや、普通気付くだろ!!
「どう見てもおかしいだろ!?」
俺は二人に鉄甲を見せる。すると
「?おかしいって?」
メイは首を傾げ、
「変態悟が鏡でも見たか?そらおかしいな」
エリヤは相変わらず殴りたくなる。
「お、お前らには見えないのか?」
しかし、俺には確かに見える。
「見えるって?」
メイは再び首を傾げる。
「とうとう脳にまでカビが繁殖したか」
エリヤを殴る。
「さっきから何言ってるの?悟」
オイオイ、こいつらホントにみえねぇのかよ。
「だからコレ!」
俺は再び2人に両腕を差し出す。
「・・・いや、普通の腕だよ」
「ウム、実に臭い腕だ。馬の糞もこの臭いには・・・」
殺
俺はエリヤを冥界へ送った後、再び腕を見る。
「・・・・・ん?」
あれ???普通の腕だ。臭い腕だ。馬の糞もこの臭いには・・・ってエリヤと同じ子と言ってどうする。
「ぐふっ、入院の間に腕を上げたな我が友よ・・・もう教えることは何も・・・無い・・・・」
まだ生きてたエリヤはそう言うと再び冥界へ逝った。
「大丈夫?」
メイが言う。マジで俺おかしく思われてるぞ。
「あ、ああ悪い、疲れてるんだと思う」
そう言うと俺はベッドに寝転ぶ。
「今日はもう、帰ってくれ」
「・・・・うん」
メイは頷くとエリヤの棺を後ろに従え、病室を出た。
ドラクエかよ・・・
俺の腕は・・・あの鉄甲はなんだったのか・・・俺の胸には不安が渦巻いていた。
その時、
「おう!メイちゃん!」
廊下で声がした。ん?この声・・・まさか・・・
「あ、悟パパ。こんにちは」
・・・・・・・・親父が来たアアアアアアアアアアアアア!!!!総員退避!!!退避ィ!!!直ちに撤退せよ!!繰り返す!これは訓練ではない!!繰り返す!これは訓練ではない!!!ってか悟パパなんて呼び方初めて聞いたぞ!!
「その後ろの棺は・・・エリヤ坊主か?」
「はい。これから教会へ行って蘇らせるところで・・・」
「そうか、んじゃあこれ持ってけ。この先のモンスターは手強いからな」
「わ!有難うございます!!」
ちょっと待て!!お前等何者だ!?
―メイは『鋼の剣』を手に入れた。―
今のアナウンスなんだ!?
「おおう!!入るぜ!!」
俺の病室に大魔神ОYAJIが現れた。
「んぎゃあああああああああああああああああ!!!!!」
―GAME OVER―
7
:
ヤム
:2011/03/08(火) 23:25:16
………どうも。『デジモンアドベンチャー02〜光と闇〜外伝』『長編旅人話』の主人公、旅人こと斎藤悟です。
えー……皆さん覚えているでしょうか? 『〜光と闇〜外伝』というこのスレ自体を。
そうです。ヤムのドドドドドアホが衝動的に作ってしまい、2年以上もの間放置されていたものです。
全く、なんなのさこれ? 『長編旅人話』の続きはどうなったの? あまりにも放置するからきっと多分多くの人が前回の『GAMEOVER』が終話宣言だと思っちゃってるよ。「え? これで終わり?」的な感じになってるよ。まだ続くよマジで。これで終わったらどこが『長編』なのさ。詐欺で訴えるよ? ってなるよ?
ってなわけで、作者がようやく続きを書く気になったので、本編は一度置いておき(てか本編の執筆がなかなか続かないのも再開の理由の一つだが、これはここだけの秘密の話だ。誰にも言っちゃ駄目だゼ☆指切りするか? いい? あっそう)、『長編旅人話』再開です。
「嗚呼……めんどくせえ…」
正直俺はこんな感じだが、そんなわけでよろしく。
ん? 何まだあんの? ああ、はいはい。
えーと、ヤムの代わりに言わせて頂きます。
今進行中の『長編旅人話』。これが終わった場合、次の外伝を何にするか、皆さんの希望を聞きたいとのことです。以下の4つの中から選んでください。
『梓&魁人外伝』
その名の通り、梓と魁人の話です。今現在交際中だという2人の出会いに馴れ初め(同じか?)、大坂時代のやんちゃな魁人、可憐な乙女(っ!?)であり男嫌いであった梓、『黒狼』等、要は本編に出る前の2人のエピソードですね、はい。長編です。
『北野外伝』
北野の話です。『梓&魁人外伝』と同じく、本編に出てくる前、転校する前の北野の日常、そして恋愛(?)、何故大輔を好きになったのかと言う大きな謎の答えもあるかも!?あと北野の実はすんげえ家庭についても……!?長編です。
『if話』
短い題だな……。まあ『if』ってのは『もし』って意味であり、『もしこのメンバーでこんなことしたらどうなるか?』ってな感じのシチュを書いて行く奴です。この場合だけは再び皆さんにリクエストなど頂くやもしれませんので悪しからず。物によってと作者の気分によっては書かないかもしれませんので悪しからず(オイ)。短編です。場合によっては他の外伝と並行するやもしれません。
『長編旅人話2』
…………何さ『2』て。もう良いっしょ俺もうヤダよ疲れたよ寝たいよ。
えー……題の通りです。はい。時間軸は現在です。選ばれし子供が苦労してる中コイツは何をしているのか、ってな感じです。長編……いやものによって短編かもしれないです。
以上4つです。多くの意見お待ちしています。
最後に一つ。
誠に申し訳ありませんが、ヤムはこの春大学に入ることとなりまして、そうなると春から更新するのが難しくなるかもしれません。上のような事を言ったそばから無責任なこと言って申し訳ありません。もちろん更新できるよう努力しますので、大学行くまでにはなるべくしっかりと更新して行くつもりなので、悪しからず、よろしくお願い致します。
8
:
ひーは
:2011/03/08(火) 23:48:41
魁×梓ですかねぇ
9
:
ミィナ
:2011/03/09(水) 11:06:47
初めまして、ミィナです!
実はずっと前からヤムさんの小説の大ファンだったのですが自分のパソコンはないわ受験はあるわで書き込み出来ませんでした。
その両方が解決したので書かせて頂きます!
本編で書こうと思ったのですが外伝を始めるとの事なのでリクエストをと思いまして。
私は『長編旅人話2』が気になります!
悟大好きです!
いろいろと大変でしょうが頑張って下さい!応援しています!
これからよろしくお願いします!
10
:
ヤム
:2011/03/11(金) 22:43:19
言った傍から2日も休んでしまい申し訳ありません!!
大学の入寮試験に落ちてしまい、急遽アパートを探しに奔走してきました。
ひーはさん早速リクエストありがとうございます。
ミィナさんはじめまして。大ファンですかありがとうございます! この先どうなるかわかりませんがこれからもよろしくお願いいたします。
悟大好きですか、自分も彼はお気に入りです。そんな悟からの返事は…
悟「べっ、別に嬉しくなんかないんだからねっ!」
聞かなければ良かったです。
早速リクエストをしてくれたひーはさんにミィナさん。そしてこの後にリクエストしてくれるかもしれない方々へ。申し訳ありませんが1つだけ訂正させてください。
リクエストは4つの中から1つと言いましたが、やはり2つ希望を聞こうと思います。ひーはさんとミィナさんはあと1つを言って頂ければ結構です。
ご迷惑をおかけします。何とか今日は更新するつもりです。
11
:
ヤム
:2011/03/11(金) 23:05:46
結局、あの白い鉄甲が何だったのか、解らずじまいで時が過ぎて行った。ちょくちょくあの鉄甲は俺の腕に現れたが、誰にも見えず、何も起こらないまま、俺は次第に気にしなくなった。
病院を退院し、1か月が過ぎたある冬の頃。
「ふええええええ〜〜〜〜〜〜ん!! 悟うううううううう!!」
「ええい寄るな」
涙と鼻水をダラダラと流しながらしがみ付いてこようとするメイの頭を掴んで止める。ったく、汚えな。
「行かないで! マイスウィートウジ虫!! ブゲッ!」
嘘泣きしながら気持ち悪いことぬかすエリヤを蹴り飛ばす。ったく、汚えな(存在が)。
「何で引っ越すのよ悟!!」
「何度も言ったろ? 親父の都合だ」
その都合が何かは俺には解らない。大方、親父が昔入ってた不良グループの上司からのお達しなのだろう。全く、あの歩く凶悪兵器は裏で何をやってんだか……。
「引っ越すっつっても東京だぞ。神奈川の隣だろが」
「寂しいでしょうが!! もう会えないかもしれないのよ!」
「嬉しいでしょうが!! 二度と顔見せに来んじゃねえぞ!」
泣きじゃくるメイに満面の笑みのエリヤ。解ってる、エリヤはこういう奴だ。口ではこう言うが心の底じゃあ……。
嬉しくて堪らないだろう。
「畜生テメエホントに幼馴染か!?」
「幼馴染? 何それ食える? ねえラ○ト、この幼馴染食っていい?」
「駄目よグラ○ニー、こんな幼馴染食べたらおなか壊しちゃう」
馬鹿2人が某ハイ・ファンタジー漫画の黒服のデブとボンキュッボンの真似をしだした。解る人には解る。だが俺は敢えて無視。
俺は黙って荷物の入った引っ越しトラックの荷台に乗り込む。
「「待て」」 ガシッ 「ぎゃああ!?」
後ろから服の裾を掴まれ頭から落とされる。何しやがるコノヤロウ!! 殺す気か!?
「悟! ホントに行っちゃう……んだよね…」
メイは目に涙を浮かべながらも、俺に心配を掛けさせないよう笑顔を作る。畜生、お前そんなに健気な奴だったか……?
「体に気をつけてね! ハンカチとテッシュ持った? ちゃんとおじさんの言うこと訊くんだよ!? 手紙……絶対書くから!」
勘違いをするな皆さん。このセリフはメイではなくエリヤだ。この野郎気味悪い事しやがって…。
「ちょっ……エリヤ! 私が言おうと思ってたのに! 悟、体に気をつけてね! ハンカチとテッシュ…」
「言わんでいい」
メイの頭にソフトチョップをする。そしてエリアと向き合う。
照れくさいが、もう簡単には会えなくなる。それなりの事は言わなければな…
「……あ〜…まあ、元気でな。エリヤ」
「……ん……お前もな。悟」
互いに右手を出し握手をする。何か、ホントに照れくさいな。
「おい悟、さっさとしろ」
「うい〜」
親父が引っ越しトラックの助手席から顔を出し言う。俺は最後にもう一度メイとエリヤを見る。
「………じゃあな」
「うん……っ! うんっ!」
全く。泣くなら泣くで無理に笑わなくてもいいんだぞメイ。
「………また、たまには神奈川に戻ってこいよ…」
解ってる。顔背けたって肩震えてるぞエリヤ。
おっと、そろそろ俺も限界だ。涙腺が危険信号を出している。これ以上は……
「また……な。メイ。エリヤ」
あーあ。声震えてるよ。涙まで流してホントらしくねえ。
まあ、今日ぐらい良いか……
トラックが出発し、俺は家具などが積まれている荷台の隅で丸くなる。朝早いからウトウトと眠くなる……。
そして、俺の奇妙な人生は幕を開けた。
12
:
ヤム
:2011/03/12(土) 00:06:42
「…………オイ」
声が聞こえる。親父じゃないな。メイやエリヤである訳もない。知らない声だ。
「………オイ、起きろ」
声は明らかに俺に向け話しかけている。ったく、うるせえな。
「……オイお前。いい加減に起きやがれ」
あーあーうるさいうるさい。誰だか知らんが後にしてくれ。俺は眠いんだ邪魔するな。
「オイコラ!! いい加減起きやがれ!!」
っ……あ〜〜〜〜も〜〜〜〜!!
「クソッ! 俺の眠りを妨げるのは誰だあ!!」
眠い目をこすり、魔王よろしくのセリフを吐き起き上がる。すると…
「ん? 俺か? 俺はティラノモン」
眼前に立つ赤い恐竜のような怪物が言った。
………………………ン?
「おい、お前ニンゲンか?」
赤い恐竜は俺を指さし聞いてくる。
OK。状況を整理しよう。
俺は東京に引っ越すことになり、引っ越しのトラックの荷台の中で寝た。
それからどれ位の時が経ったのかは分からないが、話しかけてくる声に目を覚ます。
そして、起きると目の前には喋る赤い恐竜……。
「フム……」
俺は顎に手を当て考える。これらから導き出される答えは一つ。
「なんだ、ゆ…」
「夢じゃねえぞ」
畜生! 人が言い終わる前に否定しやがって!! 空気読め赤い怪物!
「……………あ」
俺は思い出す。今巷で有名になっている異世界の生物……名前は確か…
「デジモン?」
「お? 知ってるのか。俺はティラノモン。お前はニンゲンか?」
ティラノモンと名乗るデジモンは、鋭い爪の生えた指をこちらに向け聞いてくる。アブねえなおい。
「……あ、ああ、俺は人間だ」
何かよく解らないが、相手は話を望んでいるようだ。とにかく俺は問いに答えてみる。
するとティラノモンは嬉しそうに笑う。
「おおっ! そうかそうか! やっぱニンゲンか!」
上機嫌そうに笑うティラノモン。なんだ、害はなさそうだ。俺はてっきり食われるものかと思った。いやービビった。
「じゃあニンゲン食わせろ」
前言撤回。メーデーメーデーッ! 今すぐ逃げろ目が本気だ!!
「待てゴルァ食わせろおおおおおおっ!!」
「んぎゃああああああああああああっ!!」
なに!? 何なの!?
俺は兎に角ティラノモンから逃げようと走り出す。そして気付く。ここが緑豊かな草原である事に。
「まさか……ネットで噂されているデジモンの世界か!?」
「ほう! よく知ってるな! だがここが何処と解ろうとテメエに未来はねえ!! 今すぐここで俺に食われろ!!」
ティラノモンはドスンドスンと地面を響かせ突進してくる。ヤバい! 本気でヤバい! あれは完璧に獲物を狩るときの眼だ!!
俺は兎に角逃げながら叫ぶように訊く。
「待て! 何で俺を食う!? 確かに俺は誠実で正義感があり、頭も運動神経も良く人類のお手本のような美少年だが、食って旨いという保証はねえぞ!!」
「ガハハハハハハハハハハハ!! ニンゲンを食えば最強の力を得る事が出来るんだよ! 俺はテメエを食って最強になる!!」
「ハァア!? 誰がんな事言ったんだよ!?」
「噂だ!!」
「噂で殺されてたまるかこの野郎おおおおおお!!!」
俺はピッチを上げる。幸いこの噂で人を食おうとする馬鹿は鈍重で追いつかれる事は今のところ兆しもない。このまま一気に振り切れば…
「おい! あそこにいるの……ニンゲンじゃねえか!?」
「ホントだ! ニンゲンだ!」
「最強になれるって言う…」
「待ちやがれニンゲンーーー!!」
後方から聞こえてくるティラノモンとは異なる声。まさか……
13
:
ヤム
:2011/03/12(土) 00:07:28
「…んでこうなるんだよおおおおおお!!!」
俺、ただ今全力疾走驀進中。背後にはティラノモンを筆頭とした大量のデジモン共。
「待てゴルァア!! 食わせろニンゲン!!」
「逃げんじゃねえオラァ!! 血肉撒き散らして死ねや丁寧に拾って食ってやるから!!」
「グルァアアアアアアアアアアアア!!」
「ギャオオオオオオオオ!!」
「オケオケ…オケケケケケケケケケケケケケケッ!!」
チンピラみたいに叫ぶ奴もいれば、鼓膜を揺るがす咆哮を放つ奴もいれば、不気味な奇声を上げる奴もいる。
だああああああ畜生ぉおおおお!! どうすりゃいいんだこの野郎ぉおおおお!! この際親父でもいいから誰か助けてぇええええ!! いややっぱ親父以外で…。
「だれかぁあああああああ!! 助けてぇええええ!!」
その時、
「止めろ貴様等!!」
「!?」
その力強い声に、俺もデジモン達も立ち止まってしまう。そして、前方から迫る巨体に呆然とする。
「貴様等! そこにいるのはニンゲンか!? ニンゲンを見かけたら襲ってはいけないと長老が言っていたであろうが!!」
それは、首の長い恐竜型デジモンであった。
「ブラキモン! 邪魔すんじゃねえ! 俺はこの人間を食って最強になるんだよ!!」
ティラノモンがそのデジモン、ブラキモンに食い下がる。それに対しブラキモンはフンを溜息をもらす。
「そのような根拠のない噂、信じてどうする。くだらない」
「なっ……なんだとぉ!」
いつの間にか俺を包囲していたデジモン達が怒りにブラキモンに威嚇の声を上げる。って言うかテメエ等ちゃっかり食おうとしてんじゃねえ。
ブラキモンはもう一度溜息をつくと、大きく息を吸う。
「馬鹿ものがあああああ!!」
ビリビリビリビリッと空気が振動する。周囲のデジモン達は肩をすくめ後退してしまう。
「貴様等! この人間がもし選ばれし子供だったらどうする!?」
「! 何!?」
「選ばれし子供だと……!?」
「オケ……オケケッケケケケケッケ!?」
ブラキモンの言葉に困惑し始めるデジモン達。何だ選ばれし子供って?
「でもよおブラキモン、パートナーも連れてねえし、コイツは違うだろ? 食っていい?」
ティラノモンがしつこく俺を狙う。ブラキモンは呆れたように首を振る。
「駄目に決まっておろう。パートナーがいなかろうと、あたらしい選ばれ真子供かもしれぬだろう。それに、我等が世界を救ってくれた子供たちと同じ人間。それを食おうなどと…」
「う……」
ティラノモンが委縮する。ブラキモンはくわっと眼を大きく見開く。
「控えおろう! この者は偉大なる人間様だ!! 退がれ! 退がれい!!」
「ひっ……ははぁああああ!!!」
ブラキモンの厳格な怒声にティラノモン達はひれ伏す。時代劇みたいだなオイ。
しかしブラキモンはなおもティラノモン達を糾弾する。
「もっと退がらぬかぁ!! ええいそこ! 頭が高ぁあい!!」
いや、あんたが一番高いよ。と突っ込みたいのをこらえ、俺はブラキモンの巨体を見上げ続ける事によって疲れた首を揉む。ま、助かったみたいだな。
「……ふむ」
ブラキモンは満足そうにうなずくと、俺を見下ろしてくる。
「すまなかった。人間殿。この者どもには私からきつく…」
「いや、もういいから。とにかく俺を食わないようにだけ言っといてな」
足早にその場を離れようとする。こんな危険な世界、とっとと出て行くさ。
だが、俺の進行方向にブラキモンは大きな脚を置く。
「あ?」
何だよもううんざりだ。俺が見上げると、ブラキモンは言った。
「侘びと言っては何だが、我が村へ来ないか?」
「断る」
そして、俺はその場を去ろうと脚をよけ歩き出す。途端、
「取り押さえろ!!」
「「「ウオオオオオオオオオ!!」」」
「うおおおおおおおおおお!?」
ブラキモンの声にデジモン達が飛び掛かってくる。って…
んぎゃあああああああああああああああああああああああああああああ!!!!
14
:
ヤム
:2011/03/12(土) 22:52:39
「……ん?」
俺は眩しい日差しを瞼越しに感じ、瞼を薄く開ける。目の前に広がるのは清々しい蒼穹の大空。
ああ、なんだ。さっきまでのはやっぱり夢か。全く、別れに加えロクでもない事が続くな。
ここは……外か? 一体……?
「お? 起きたか?」
……ああそうか、ここは東京の新居か。確か広いベランダがあったな。ここはそこか…。
「おーい。コイツ起きたぞー」
んじゃ何で俺はこんなとこで寝てるんだ? ああそうか、トラックで寝ていた俺を親父が運んでくれたのか…。俺の親父は優しいなあ……。
「お、なになに? 起きたの?」
「ホントだ! 起きてる起きてる!」
「誰か長老を呼んできて! 急いで!」
うん、そうに違いない。もうこの際それが現実でもいいから…
「なーなー。お前起きてるんだろ? 何で動かないの?」
だから、頼むから俺の視界に見える化け物どもよ消えてくれ。
「畜生……! なんてことだ…!!」
俺は頭を抱え仰天する。いくら現実逃避のためとはいえ、あのトドをも一撃で仕留めるクソ親父を優しいだなんて思ってしまうとは……。
「おえええええっ!! 気持ち悪っ!」
「あ、吐いた」
「にーちゃんが吐いたー!」
「吐いた吐いたー!」
俺の周囲で飛び跳ねてうるさく喚くのは、黒や白、赤やヘルメットのチビデジモンだ。そしてここは、この村の中心にある公園の芝生。
ここは、デジモンの村……俺はあの大量のデジモン共に捕らえられ(その時に気絶し)、ここに運ばれてきたようだ…。
「ほっほっほ。眼が覚めたか人間の少年」
俺の前にいるのは長老と呼ばれる白毛むくじゃらのデジモン。変なデザインの杖をついて愉快そうに笑う。うん……それよりもまあ……ちょっ…待…
「おええええええええええええええええっ!」
「あ、また吐いた」
「すごい量だねっ」
黒と赤のチビデジモンが言う。当たり前だ。あの親父を優しいなどと……うっ、また…。
「おべれろろろろろろろろろろろろろろっ!!」
「長老大変だ血まで吐きだした!!」
「ほっほっほ。何のこれしき、人間はわしらデジモンには劣るが体は頑丈じゃよ」
その後、俺は長老とやらの家に招かれる。
「落ち着いたかの? わしはこのデジモンの村を収める長老、ジジモンじゃ」
バケツを抱える俺に白い毛むくじゃらデジモンが名乗る。周囲のチビ共も跳ねまわり勝手に自己紹介を始める。
「ボクはボタモン!」と黒いチビ。
「おいらツノモン!」と赤いチビ。
「あたい…ユキミ、ボタモン…」と白いチビ。
「拙者はカプリモンと申す。以後お見知りおきを…」とヘルメットのチビ。
ヘルメットの奴はツッコんだら負けか……?
3秒ほど考え、答えを出す事を放棄する。それより俺には訊かなきゃならねえ事がある。
「俺をどうする気だ? 食うのか?」
「そうじゃな。まずはぐつぐつ煮込んだ鍋の中に突っ込み、調味料と炒めた野菜も加え、さらによーく煮込んで……冗談じゃ」
俺は窓に足をかけた状態で止まる。何だ冗談か。リアルに鍋がぐつぐつ煮えてたから……。いや、別に怖かった訳じゃねえよ? は? ビビってねえしこれは冷汗じゃなくて……あれだ、俺の人生に迸る情熱と酒と女が具現化したものだ。
「わしらはお主に危害を加えるつもりはない。先程はティラノモンやブラキモンが失礼したが……許してやってくれんかの? ティラノモンは最強何ぞ目指す馬鹿で、ブラキモンは自分の厚意を無下にされるのが嫌いなだけじゃ」
冗談じゃねえ。んな事で死んじまったらどうすんだよ。
「許す気はねえ…」
「今日は人間パスタじゃ」
「…と言おうと思ったが気が変わった。何故なら俺は俺は誠実で正義感があり、人の過ちも許せるような人類のお手本のような美少年だからだ」
危うく叩いて潰して捏ねて伸ばして細く切ってぐつぐつ茹でてチュルルと頂かれるとこだった。このジイさんチビのくせに変な威圧感がありやがる。
「ほっほっほ。何事も何者も、許しあう事が出来れば世界は平和になるものじゃ」
良い事言って命沙汰を誤魔化したつもりかジジイ。
「……さて、少年よ。わしもお主に訊きたい事がある」
ジジモンが改めて俺に向き合う。訊きたい事? ……まあ、スリーサイズ以外なら教えてやってもいいが…。
「パートナーを連れていない所を見ると、お主は選ばれし子供ではない…では、どうやってこのデジタルワールドへとやって来た?」
それは、俺自身が知りたい事でもあった。
15
:
ヤム
:2011/03/12(土) 22:55:08
今日は外伝はここまでです。内容薄くてごめんなさい。ギャグもこのところ不調でして…
外伝書きながらも、もちろん本篇も進めていくつもりですので、そちらもよろしくお願いします。
16
:
ヤム
:2011/03/23(水) 22:40:59
「ふむ…成程のう…」
俺はジジモンにこれまでの経緯を説明した。長老と言われるだけあって、ジジモンは貫録のある態度で思案する。
決まって長老と言うのは物知りだ。きっとこの事態について何か思い当るところがあるのだろう。
「ふむ………さっぱり解らん」
前言撤回。このジジイ、ただのチビの役立たずだった。
「おいっ! 冗談じゃねえぞ! このままこの奇妙奇天烈奇想天外なデンジャラス世界にいつまでもいろってのか!」
「そう言ってものう……わしには皆目見当つかんのじゃ。お主にパートナーデジモンは居らぬ。デジタルワールドと関わりを持った事は今まで一度も無い。人間界でもデジモンとの関わりは無い…」
「わかんないね!」
「わかんないよ!」
「わ、わかんない…」
「わからんのだ! 文句を言うな小僧!」
チビ共も口々に言う。とりあえずナメた口利くカプリモンを殴る。
「ぬ? 何かしたか?」
………っ! コイツヘルメットかぶってやがったっけ…。くそう拳が痛いぜ…。
「仕方ないのう、しばし待っておれ。わしより物知りのデジモンを呼んでくる」
「あんた長老じゃねえのか?」
「長老が物知りと誰が決めた!?」
「キレるなジジイ!」
ジジモンは「全く、最近の若いモンは…」などと呟きながら家を出ていく。一体あんたは現代の人間を何処まで知っているんだ……。
全く、一体どうなってやがる。俺がここにいるってことは、人間界に今俺は存在しないってことか……うわ、親父の奴驚くかな……。
「良い気味だクソ親父」
「うわ、悪い顔…」
「ねーねーサトルー遊んでー」
ボタモンとプチモンが俺に飛び掛かってくる。空中で叩き落とす。
「ぷぎゃっ!」
「ひ、ひでえコイツ!」
「うるせえよチビ共。考え事してんだ邪魔すんな」
「考え事…?」
「貴様如きが考え事とは、実に珍しき事だな」
「テメエは俺の何を知ってんだ!?」 ゴンッ 「っ………!」
畜生このメットチビめ……何処となくエリヤに似てやがる。
しばらく俺はそのままジジモンの家に待機していた。
その時、不意に家にジジモンが慌てた様子で飛び込んできた。
「さ、悟! 今すぐ何処かに隠れるんじゃ!」
「は?」
おいおい、物知りを連れてくるんじゃねえのか? ボケたか爺さん。
「はやく! 早く隠れるのじゃ!」
「はあ…」
何だよ全く…。俺はジジモンに急かされ、家の隅にある古びた巨大な壺に入らされる。壺には何も入っておらず、俺の体は充分に収まった。ただ漬物臭い…。
「ぬ、何故拙者まで…」
「うわっ!?」
何だ!? カプリモン!? 一緒に詰め込まれたか…。
その時、外に金属質の足音が聞こえた。
「ジジモン殿、何を騒いでおられる?」
「これはこれはダルクモン様。どうしてこのような辺境の村に…?」
若い女性の凛とした声と、ジジモンの平然とした声が聞こえる。俺とカプリモンは壺の中で息をひそめた。
17
:
ヤム
:2011/03/23(水) 22:41:34
「いえ、丁度ドゥフトモン様と兵を連れ遠征に来ていた所で…」
女性の声は美しく凛としたものであるが、その中には物腰柔らかな印象も受けられる。
「わー! ダルクモン!」
「ダルクモンだダルクモンだ!」
カプリモンを除くチビ共の騒ぐ声が聞こえる。
「それより……わが軍の偵察部隊が先程、不穏な動きを見たと報告したのです」
「不穏……と言いますと?」
ジジモンの疑問のこもった声が聞こえる。
「この村の者…それも多数が、人間の子供を襲っていた。と…」
……………ああ、アレか…
「ほっほっほ、人間の子供……とな? さあて、わしは存じませんが…」
ジジモンは老人特有のゆっくりとした口調で言う。流石爺さん。見た目の年齢なだけ場数は踏んでいるようで演技も上手い。
ふーむ。どうやらダルクモンとやらいうのは偉いデジモンのようだな。なら当然色々な事を知っている……つまり、俺がどうしてこの世界に来たのか、そんでどうやって帰るのかを知っているかもしれない。なんだ、わざわざ隠れる必要ないじゃないか。
「そうですか。ドゥフトモン様が、もし本当に人間の子供がいたのなら、力づくでも必ず連れて来いと言われているのです」
前言撤回。俺はこの壺の中で生きていく。あのデジモンが失せるまで。
「ほっほっほ、ドゥフトモン様は相も変わらずのご様子で。ダルクモン様も、遠征などとあちこちを連れまわされ大変ですなあ」
「む、いや、私は大丈夫なのです。しかし、他兵のデジモン達がついて行けないのです。私も、もう少し訓練内容を少しだけでも軽くするよう進言しているのですが…」
「ほっほっほ、ドゥフトモン様の心情は『力』。その思想は多くの若い者達を逞しくしまする。儂の村のティラノモンもその思想に従い、『最強になる』などと申しておりまする」
成程、俺が喰われる原因はそのドゥフトモンとやらの思想のお陰か、どうしようそいつ殴りたい。
「はははは、最強ですか。実に逞しいですね」
「ほっほっほっほ」
ダルクモンとジジモンの愉快な笑い声が聞こえる。
………アレ? 俺はいつまでこの漬物臭い巨大壺に居ればいいの?
「ほっほっほ……。さて、先程の話ですが、先程も申した通り、わしは人間の子供など見ておりませぬなあ。この村の若い者が騒いでいたのは、何かの間違いでは?」
「そうでございますか。解りました。では失礼します」
ジジモンの言葉に、ダルクモンが杞憂の溜息をつくのが聞こえる。おお、やっと行くか…
「ほっほっほ、遠征、頑張って行って下され」
「ありがとうございます。ではこれで…」
ダルクモンの金属質の足音が家を出ていこうと離れていく。その時、
「ぶええっくしょい!! っきしょーめっ!」
「んなああああっ!?」
んぎゃあああああカプリモン!!? 色々ツッコみたいがとりあえずこんな時にくしゃみするんじゃねええええ!!
「何じゃと!?」
「何奴!?」
……………あ。
俺とカプリモンは思わず壺から姿を露わしてしまっていた。って、しまったあああああああああああああっ!!
18
:
ヤム
:2011/03/24(木) 00:22:04
「貴様! 何者だ!?」
手足に金色の鎧を着け、4枚の翼をもつ女性型天使デジモンが腰の後ろに差した剣を掴み俺に言う。恐らくこいつがダルクモンだ。
「まさか……人間の子供!?」
ダルクモンはジジモンを鋭い目で見る。
「ジジモン! これはどういう事だ!」
「こ、これは…」
ジジモンは困ったように言いづまる。頼む爺さん! 何とかしてこの場を…
「この人間の子供が突然儂の家に上がり込んでは匿えと言ってきたのじゃ! 人質が取られてしまい、儂らは脅されて仕方なく…」
「ってこらジジィイイイイイイイイイイイ!!!」
なんて奴だ手のひら反して俺を売りやがった!! ってか人質ってこのカプリモンの事か!? コイツのキャラからして人質なんて…
「うええ〜〜〜〜〜んっ! 助けてダルクモン様ぁ〜〜〜!!」
「誰だお前!!?」
カプリモンこいつ……将来大物になるな…って、んな事言ってる場合じゃねえ! 何とかして誤解を解かねえと…
「き…君! 人質を放すんだ!」
…………ン?
ダルクモンは剣から手を放し、こちらを宥める様に手を前に出す。
「お、落ち着くんだ! 先程は力づくとは言ったが、私は君に危害を加えるつもりはない! 頼む、その子に罪は無い! 解放してやってくれ!」
「……え〜〜〜と…」
もしかしてコイツ、動揺してる? 良く見りゃジジモンやチビ共も呆然としている。こんなダルクモンは見たこと無いといった風だ。
「頼む! その子を解放してやってくれ! 君の要求は呑む! だから…」
あ、要求しても無いのに呑んだ。
「……成程…」
俺は悪どい笑みを浮かべる。
コイツ………『馬鹿』だな?
「いいや放さねえ! コイツは貴重な人質だ!」
「くっ……卑劣な……!」
いやそんな悔しそうに卑劣とか言われても……あんたが勝手にジジイの言葉を鵜呑みにしてるわけであって……まあいい、これは俺に都合のいい展開になって来た。
「おら動くんじゃねえ! 剣を捨てな! 他に仲間はいねえかアアン!?」
「待て! 解った! 動かない! 剣を捨てる! 仲間なら2人外にいる!」
うわおコイツ本物の馬鹿だ。言っても無いのに剣だけじゃなく足鎧から仕込みナイフを取り出して捨ててるし。って、仲間が居るのか……厄介だな。
(おい貴様、何のつもりだ?)
俺の腕に囚われている(?)カプリモンが聞いてくる。
(良いからお前は泣いてろ。俺を庇ったなんて知れたらことだろ?)
「うええ〜〜〜〜んっ! こわいよお〜!」
コイツ……大した奴だ…。その見事な嘘泣きのお陰でダルクモンは更に焦りを見せる。
「待て! その子に手を出すな! 君のお父さんとお母さんが泣き喚き散らすぞ!」
そこは普通に泣くでいいだろ、喚き散らすなよ。
19
:
ヤム
:2011/03/24(木) 00:22:36
「うるせえ! ゴチャゴチャ言ってんじゃねえ! 大体俺の親父はこれくらいじゃ泣かねえし母さんはとっくに死んだ」
「っ……そうなのか……!?」
ん? 何だコイツ急に辛気臭い顔になって…
「済まない……君にとってつらい事を聞いてしまった…」
「…………」
……………うわあ、何かめんどくせえ。
「ま…まあ…いいや。んで、お前の仲間だが…」
「いや、良くない」
「は?」
……オイ、何眼に涙浮かべてこっち寄ってんだ? 何でそんなに微笑んでんだ?
「安心しろ。私は君の敵ではない。ただ君に、立ち直ってもらいたいだけだ…」
「……えと…あの…」
「そうか…母君を失ったか」
ダルクモンは俺を優しく抱擁する。
「辛かったな…」
「うるせえっ!!」 がんっ 「「痛い!」」
俺はカプリモンでダルクモンを殴る。ダルクモンははっと正気に戻り、さっと俺と距離を取る。そして打ちつけた頭を擦りながら俺を指さす。
「きっ……貴様! その子に手は出すなと言ったはずだ!」
何処までコイツは馬鹿なんだ…。
と、その時…
「ダルクモン、どうした?」
「ダルクモン殿?」
家の中に2体のデジモンが入って来た。しまった! 外に控えてた2体のデジモンか……!
「ディノヒューモン! ムシャモン!」
ダルクモン驚いた表情で2体のデジモンを見る。
ヤバい! こっちは生身の人間1人に対し向こうはデジモン3体、状況は一気に不利に…
「2人とも済まんっ!」 ドスッ! 「ふぐぅっ!?」 「ディノヒューモン! ダルクモン貴様何を…!」 ドゴッ 「くあっ!」
「………ん?」
……何か、仲間2人を打倒したぞあいつ…。
ダルクモンは倒れる2人を見下ろし、悔しそうに表情を歪める。
「済まない2人とも……! 若い芽を摘まれる訳にはいかんのだ……!」
「「「…………」」」
俺もジジモンも、チビ共も黙りこくる。
ああ……そうか…。
俺は天井を仰ぎ、細く息を吐き出す。
コイツは………超ド級の『アホ』なんだ…。
20
:
星神男!ninja
:2012/02/04(土) 01:27:43
デジモンアドベンチャーアーティクルアートシアター!?♪。
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