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デジモンアドベンチャー T・T・E 〜D-Generation's War〜

87たらこ:2007/04/14(土) 01:05:31
『勇気編』・第三十九話

Evolution.127 『マモルタメノチカラ (前編)』

ゴオオオオオオオオオオオオ!!

プクモンが消滅した大きな焼けこげた地面―――その横で、オメガドラモンは
勝利の雄叫びを上げていた。

体から垂れ流されている、強大で禍々しいエネルギーは、あれだけの大技を撃
った後にもかかわらず、微塵も衰えることなく健在していた。

暫くして、公園中に広がっていたその雄叫びは不意に鳴り響くのを止めた。そ
の代わり、今度は削岩機が岩を削るような轟音が鳴り響き始めた。

轟音の大元は・・・雄叫びを上げるのを止め、公園を破壊し始めたオメガドラモ
ンの爪の先からだった。鋭い爪が、公園の床を、柵を、遊具を、斬り裂き、
粉砕していった。

「止めろ、オメガドラモン!!」

見かねた大輔が、オメガドラモンに向かって声を張り上げた。だが、オメガド
ラモンは破壊を止めようとはしなかった。それどころか・・・

「グルァァァァァッ!!」

何と、大輔の方に爪を向けてきたのだった。鋭い爪先が、月光を反射してキラ
リと輝く。

光の筋が鮮やかな弧を描き、パッと紅色の血が飛び散る。オメガドラモンの右
の爪に、紅色をした大輔の血が付着した。

大輔は、とっさに後ろへと跳び、オメガドラモンの爪をかわしていた。だが、
流石に避けきることは出来ず、左肩に浅めの切り傷が出来ていた。ささやかに
流れ出る鮮血が、大輔の服をほのかに紅く染めている。

「オメガドラモン・・・お前、本当にオレの声が聞こえてないのか・・・?」

傷を右肩で押さえ、荒い息をつきながら言った。その声には、どこか寂しげな
雰囲気が漂っていた。

「グルルルルルルル・・・!!」

オメガドラモンは、大輔に白けた視線を向けた。まるで、興味を失ったかのよ
うに。そして、一瞥を投げると今度は太一とコロモンの方へと、両腕を振り上
げて飛びかかっていったのであった。

「グルァァァァァァァ!!」

「う、うわぁぁぁ!!」

「や、止めろ!!」

大輔の説得も虚しく、オメガドラモンの爪が太一の首筋へと向かっていった。

次の瞬間には、激しい痛みと、永遠の眠りが襲ってくるんだろう。そう思って、
太一はそっと目を瞑った。

だが、予想したはずの痛みと睡魔は襲ってこなかった。怪訝に思い、ゆっくり
と目を開いた。そして、その目に映った光景は・・・

「だ・・・大輔・・・」

大輔が太一とコロモンのことを庇ってオメガドラモンの爪を、体で受け止めて
いた。左肩から右の脇腹にかけて、袈裟懸けに深い切り傷が出来ていた。大量
の血が滴り落ち、砕けた地面に血溜りを作っていた。

「ゲホッ・・・・・・!!オメガ・・・ドラモン・・・・・・」

掠れた声で、咳き込みながら言った。傷が、肺に達してしまっているのだろう。
息苦しそうだ。

「ゲホッ・・・・・・何やってんだ・・・早く、目ぇ覚ませよ・・・・・・」

そう呼びかけながら、大輔はオメガドラモンの肩を抱いた。禍々しいエネルギ
ーを直に感じ、少しだけ吐き気を覚える。

「グルル・・・?」

さっきとは打って変わった、不思議そうな表情を浮かべ、オメガドラモンが静
かに唸った。瞳に映る光が、一瞬だけ正常さを取り戻した。だが、それもつか
の間。直ぐに、真っ赤に血走った目へと戻ってしまう。

「ゲホッ・・・お前のその力は、すごく黒くて、近くにいるだけでエネルギーに
当てられて、吐き気がする・・・だけどよぉ・・・」

一旦言葉を切って、大輔はオメガドラモンの顔を見上げた。その目には、未だ
野生の光が爛々と輝いていた。とても痛々しい。・・・だが、大輔は視線を逸ら
すことなく、オメガドラモンの目を見ていた。

「お前のその力は・・・『護るための力』だろ・・・?護るってのは・・・敵を傷つけ
ることじゃないんだ・・・大切な仲間を・・・傷つけさせないためのもんだ・・・」

涙がこぼれ落ち、オメガドラモンの肩を打つ。少し・・・ほんの少しだけ、オメ
ガドラモンの目に正常さが戻ってきた。


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