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デジモンアドベンチャー02 〜光と闇〜

1ヤム&マリ:2006/10/15(日) 15:49:09
皆さんお久しぶりです。
僕たちもここへ移りました。
これからもよろしくお願いします。

378ヤム:2011/03/25(金) 18:33:14

その時、テイルモンが何かを見て叫ぶ。

「! ヒカリ!!」
「「「えっ!?」」」

テイルモンがさす方向を見る。そこには…

「ヒカリちゃん!」

大量のモニターとパネルの前に、大きなカプセルに入ったヒカリがいた。

「ヒカリ!」
「ヒカリさん!」
「ヒカプー!」

テイルモンが走りだし、北野と梓が続く。だが、

「! 待って下さい!」

不意に、北野が前のテイルモンを捕まえ後ろの梓に言う。

「北野…?」
「どうしたの?」
「これは…」

北野は、目の前にある物に触れる。

それは、ガラスの壁だった。透明故に気付かなかったが、行く手を遮っている。危うくテイルモンはぶつかる所だった。

「ガラス? んなもん壊して行け」

ようやく抜け出した魁人が歩み寄りながら言う。

「ええ、そうね」

それに頷き、梓は魁人の頭を掴む。

「え?」
「あんたの頭で…」
「ええ!? まだ怒ってんの!? いやだ! もういやだよ梓さブルァッ!!」

梓により魁人はガラスの壁に激突するが、次の瞬間、ものすごい勢いで魁人は跳ね返り後方へ飛んで行った。

(((梓さんには胸の事について話はしないようにしよう…)))

タケル達は、哀れ飛んでいく魁人を見てそう思った。

「タケリュ、誰かいるよ?」

タケルの頭に乗ったパタモンが、ヒカリの入ったカプセルの傍らを指す。

その人影は、カプセルに寄り掛かるように床に座っていた。

「冬扇!?」

戻ってきた魁人が驚いたように言う。

「なんであいつがここに……!?」
「きっと、戦えない彼はここでヒカプーを見張ってたんでしょ」
「でも、あれ……」

北野は眼をこらして冬扇の様子を見る。

「眠ってませんか?」
「そうだな…クダモン。このガラスぶっ潰すぞ」
「おう」

魁人が言い、クダモンが応えたその時、

「止した方が良い。それはギガハウスにもあった『跳ね返しガラス』。攻撃すれば今の君のように跳ね返ってくる」
「!? 誰だ!?」

不意に聞こえる声の主にタケルが訊く。すると…

「タケルさん! アレ!」

北野が再び冬扇の方を指差す。冬扇とヒカリの近く、何もない空間にひびが入った。

「何だ!?」

ひびは徐々に広がって行き、バラバラと崩れ、そこから出てきたのは…

「! 君は!」
「また会えたな。『希望』の少年よ」

『闇の十三衆・第十三階位』―――アル=ミナだった。

379ヤム:2011/03/26(土) 08:48:19

第九十五話  暗黒のΩ

「解り合う……だと?」

暁は眼を細める。周囲に獏哉、舞、東谷にDウォーグレイモン達が集まる。

「まだそんな甘い事を考えているのか? 第一、俺達はお前等と解り合うつもりなどない」
「そっちがそうでも解り合ってやる。俺達は、その為に来た」

大輔の周りにも、賢、京、伊織にアルフォース達が集まる。

「ふん、本当はヒカリを助けるためだろ?」
「違う! 違くはない! それもあるが……えっとつまり…」
「両方よ両方」

若干混乱する大輔の代わりに京が言う。

「私達は、ヒカリちゃんだけじゃなく、貴方達も助けにきたのよ。ヒカリちゃんだって、貴方達を助けようとしていたのよ」
「その結果、戦争を起こす為の材料となる力をこちらに与えてしまったら本末転倒よ」

舞が鼻を鳴らして言う。

「あんた達も、もういい加減気付きなさい。闇には勝てないわ。知ってるでしょ? 『闇の十三衆』って言う、桁外れデジソルジャーが13人もいるのよ。あたし達にてこずるようじゃ、この先すぐに死ぬわよ」
「俺達は負けない。絶対に戦争なんか起こさせない。そして……お前達を死なせはしない!!」

大輔とアルフォースが走りだす。

「んじゃ今ここでくたばれぇ!!」

対して暁とDウォーグレイモンも走り出す。

『アルフォースセイバー!』
『Dドラモンキラー!』

聖剣と爪が激しく火花を散らし交わる。

「アカツキ! もうやめるんだ! 純人だけじゃなく、他の仲間も失うぞ!」
「さりげなくカタカナの発音で呼ぶな! これ以上俺の仲間は死なせねえ!」

暁はアポロモンの力を発動し、炎を大輔に放つ。

「アカツキ! 止めろ!」
「そんなに使ったら死んじゃう!」

獏哉達の叫び声が聞こえるが、無視して連発する。大輔は激しく動き回り、炎をかわして行く。

「アカツキ! その力は使うな!」
「お前に心配される覚えはねええ!!」

不意に暁の膝が崩れる。だがすぐさま気力で立ち、炎を放って行く。

「アカツキィイイイイ!!」

大輔は双刃で炎を弾き、防ぎ、いなして行く。しかし完全にかわせる訳ではなく。熱気に皮膚は火傷し、髪の先が燃えていく。普通なら倒れるほどの灼熱の中、『白闘士』を着た大輔は走っていく。

「お前……その力使い続けたら……本当に死んじまうぞ!!」
「死は覚悟している! 純人が死んだときから、俺はあいつ等を守る為に力を手に入れた! その為には俺の死など関係ない!!」

暁の口端から血が流れる。

「獏哉も! 舞も! 東谷も! 冬扇も! 俺が守る!」

大輔は熱気を感じ、双刃を交差に構える。暁は右手を前へかざす。

「その為に……その為だけにこの力を手に入れた! アポロモン!」

暁の右手から、灼熱の炎が放たれ、大輔を呑みこんだ。

「「「大輔(さん)!!」」」

賢、京、伊織が叫ぶ。暁は勝利を確信し、口端を釣り上げる。

「終わりだ! これで!!」


「――――まだ終わってねえ」


「!!?」

眼前で燃え盛る炎が盛り上がったと思うと、突き破って大輔が飛び出す。

「何ぃ!?」
「この…」

大輔は双刃をD-3に戻し、右拳を強く握り締める。

「馬鹿野郎がああああああ!!」

そして、全力で暁を殴り飛ばした。

380ヤム:2011/03/26(土) 08:49:20


要塞内部・管制室

「何だコイツ!?」

魁人は、突然の奇抜な格好をした者の登場に声を上げる。その横で、タケルが表情を強張らせる。

「……『闇の十三衆』…」
「! 何…!?」
「闇の…」
「この人が…!?」

北野、梓も驚きにアル=ミナを凝視する。

「や。我は『十三階位』であって、それ程強くはないのだよ」

対するアル=ミナは柔和な笑みを浮かべる。不意に、周囲を浮遊する12個のデジコアの内1つが禍々しく光る

「「「っ!!?」」」
「おっと。いやいや、気にしないでくれ。彼は血気盛んだから」

身構えるタケル達にアル=ミナは手を振って言う。光るデジコアを両手で取り、目の前に掲げる。

「彼は余程、君達『真の選ばれし子供』が憎いみたいだ」
「『彼』……?」

タケル達が訝しげにしているのをよそに、アル=ミナはそのデジコアへ囁き語りかける。

「君を出すのはまだまだ先だ。傷も癒えてない。この場は堪えてはもらえないだろうか?」

しばらくし、デジコアは少しずつ静かになっていき、やがて沈黙した。

「……さて…」

アル=ミナはデジコアを周囲を浮遊する中に戻すと、ヒカリと冬扇の元へ向かう。

「! おい! 何する気だ!? って言うか、冬扇に何した!?」
「彼は眠らせただけだ。命を取る予定は今のところない」

アル=ミナはそう言って冬扇を無視し、ヒカリの入ったカプセルを見る。

「しかし、『誇り』の少年よ。貴殿はこの冬扇と戦ったのだろう? 彼の者を心配する理由が何処にある」
「あたし達は……そいつを、暁達をヒカプーと一緒に救いにここへ来たのよ!」
「! 馬鹿っ梓!」
「え? はっ!」

梓は慌てて口をふさぐ。梓の今の言葉は、暁達が闇を裏切ることを思わせるものだった。
しかし、アル=ミナは平然と言う。

「ああ、構わない。彼等を連れていきたければ、そうすると良い」
「「「!?」」」
「しかし彼の者達は、そう簡単には『闇』を抜けようとは思わない」

アル=ミナはカプセルのハッチに手を当てる。

「何故なら、彼等の『誓い』は、『闇』でしか成し得る事が出来ないからだ」
「! ヒカリちゃんに何をする気だ!?」

タケルがアル=ミナを睨み言う。テイルモンに梓も叫ぶ。

「止めろ!!」
「ヒカプーに手ぇ出すんじゃないわよこのヘンテコリン野郎! ちょっとでも触れたら殺す!!」
「安心したまえ。貴殿達が思うほど、我は悪い事はしない」

近くのパネルを叩き、ハッチを開く。中の溶液が全て流れ出し、倒れるヒカリを受け止める。

「ヒカプーに触れたな!? ブッ殺す!!」
「落ち着くのだ。美しい顔が台無しだぞ?」
「えっ……そ、そう……?」
「真に受けんな梓。誤魔化しのお世辞だ」 ドスッ 「うがっ!」
「『光の器』に傷をつけるつもりは無い」

アル=ミナはヒカリにつけられたヘルメットや端子を離して行く。

「既に力は奪い終わった。もうこの少女に価値は無い」
「何!?」
「力を……奪い終わった!?」
「そんな…だって輔は3日かかるって…」

困惑するタケル達。アル=ミナは淡々と話しを続ける。

「しかし我にとっては、この少女にはまだ価値がある」

周囲の12個のデジコアが淡く光り、アル=ミナとヒカリを取り囲むように旋回する。

「! ヒカプー!」

梓はガラスに張り付く。僅かな衝撃さえ跳ね返され、梓は尻もちをつく。

「梓!」
「梓大丈夫?」

心配する魁人とラブラモンの手を振り払い、梓は『跳ね返しガラス』の壁に体当たりする。跳ね返され、引っくり返る。

「くそ! 止めろ! ヒカプーに手を出すな!」

既にアル=ミナはこちらの声を聞いておらず、12個のデジコアの光が増し、旋回速度も徐々に上がっていく。

「くそ! くそぉ!」
「止めろ梓!」

何度も体当たりをしては、弾き飛ばされる梓を、魁人が受け止める。

「だって……だってヒカプ…ヒカッ……ヒカリが……!」
「っ!!」

魁人は眼を見開く。

「ヒカリは……私の大切な……!」

梓は、その両の眼から涙を流していた。

381ヤム:2011/03/26(土) 08:49:59

梓から聞いた事がある。ジョーカーに両親を殺された梓に、笑顔を取り戻させてくれたのはヒカリだと。梓にとって、ヒカリの存在がとても大きなものであるという事を。

「っ……クダモン!」
「! なんだ?」
「東京タワーでやったアレ! やるぞ!」
「! ああっ!」

クダモンは魁人の右腕に巻きつく。『誇り』の紋章が光り、魁人は大きく拳を引く。

「梓! お前等! 下がってろ!!」
「魁人さん!?」
「これも返されないとは限らねえ! 被害の無いとこまで離れてろ!」
「でも…それじゃ魁人さんが……!」

食い下がるタケルに、魁人は手で制す。

「俺の女泣かせた奴は……俺の手でぶっ飛ばす」
「っ……はい…!」
「梓さん! 離れてください!」

タケルと北野は梓を連れその場を離れる。テイルモン達パートナーが庇うように前へ出る。

「魁人さん!」
「おう」

「……む」

アル=ミナはそこで、魁人の様子に気付く。そして、僅かな驚きをその眼に宿す。

「ほう、アレを使えるか…」

「おおおおおおおるぁああああああああああっ!!!」

魁人は右拳を全力で壁に叩きこむ。

『誇突・クダモンストライク!!』



要塞内部・大広間

「っ……ぐぁ!」

暁は背中から倒れる。

「アカツキ!?」
「「アカツキ!」」

獏哉、舞、東谷が駆け寄る。

「っ……お前…!」

暁は炎を放とうとする。が、

「っ…な……!?」

暁達は、驚愕に眼を見開く。

大輔は……泣いていた。

「馬鹿野郎……アカツキ…! 守る為にその力を使って、お前が死んだらそれこそ本末転倒じゃねえか……!」
「っ!!」
「お前達の過去に何があったか解らねえ。お前達が闇で何を目的として生きているのかも解らねえ。けどそんなの、仲間の命に代えられるものなのかよお!!」
「「「っ!!」」」

暁達の脳裏に浮かぶは、死んだ純人の姿。

――――隠し事の出来ない、お調子者で馬鹿な奴。それでいて、大切な『家族』の1人。

そんな彼を失い。暁は覚悟を決めた。自分が、獏哉達を守っていくと。その為に、アポロモンと融合した。

「あっ……!」

暁は獏哉達を見る。獏哉達も、暁を見ていた。

「獏哉……舞……東谷……」
「……暁…」
「アカツキ…」
「アカツキ……お前も純人と同じ、大事な『家族』だ」
「!!」
「お前まで……居なくならないでくれ……!」

獏哉の眼から、涙が流れる。舞と東谷も、泣いていた。

「……お前等…」

暁は、自分の眼からも涙が流れるのを感じる。

「………俺は…」
「ウヲオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!」
「ガルルルルルァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」

「「「!!?」」」

突然の咆哮。大輔達と暁達は同時にそれを見る。

「なっ……何だあれ!?」

大輔が叫ぶ。

アルフォースが足止めしていたDウォーグレイモンと、Dメタルガルルモンが咆え、目を赤く光らせている。全身から闇の力を発し、禍々しく空間を染めていく。

「あ…暁! 何だよアレ!?」
「っ……!?」

戸惑う獏哉の問いに、暁は答えられなかった。

「……まさか…」

そしてその眼は、最大級の恐怖に染まっていた。

382ヤム:2011/03/26(土) 08:50:42


『狭間』・『光闇の神殿』

「っ!! 来た!!」
「おっと☆?」

不意に大声を上げ行く座から立ち上がるロード。ジョーカーは驚きトランプタワーを崩してしまう。

「おいおい☆ どうしたロー…」

言いかけ、ジョーカーは固まる。

「……ヒャハ☆ 成程☆」



要塞周辺

「!? 何だ!?」
「これは…」

双子と対峙していた一樹と輔は同時に要塞を見る。2人ともボロボロだ。

「……ねえ、何が起きてるの?」
「わかんない。何か……大きな力が…」

対峙するボロボロの双子も首を傾げ合う。

「もしかして、ロードとアル=ミナが言ってたあれかな?」
「ああ、あれじゃない?」
「あれ……?」

一樹は双子を見る。双子は揃って言った。

「「ロードが暁達を拾った理由、役立たずになっても殺さずに置いた理由…」」
「拾った……? 殺さずにいた……?」
「「そう、全てはあのデジモンを手に入れる為……」」



要塞内部・管制室

「うわぁっ!?」

突然の激しい揺れに、魁人は足元を崩し倒れてしまう。『誇突』も不発になってしまう。
梓達も、突然の揺れに立っていられなくなる。

「何だ……地震!?」
「いえ! 要塞は宙に浮いています。恐らく…」

北野は一方を見る。

「大輔さん……!」

「ほう……」

アルミナはデジコアの動きを止め、大広間の方向を見る。

「彼等の強い執念と感情が、アレを見事創り上げたか…」

アル=ミナはヒカリを横たえる。背後の空間に亀裂が入り、空間に裂け目が出来た。アル=ミナはその中に入っていく。

「用は済んだ。我は戻るとしよう」
「っ! 待て!」

タケルが叫ぶ中、アル=ミナは空間の裂け目の中に姿を消して行く。

「また会おう。『希望』の少年、『誇り』の少年、『幸福』の少女、『守護』の少女よ」

アル=ミナが姿を消すと同時に、目の前のガラスの壁が消えた。タケル達は急いでヒカリの元へ向かう。

「ヒカリ! 大丈夫か!?」
「ヒカリちゃん!!」

テイルモンとタケルが必死に呼びかけるが、ヒカリは眼を閉じたまま目を覚まさない。

「っ……! おい冬扇! 起きろ!」

魁人は傍らで眠る冬扇の肩を掴み激しく揺らす。冬扇はしばらく唸った後、薄く眼を開いた。

「ん……? っ!! お前等! どうやってここに…!」

その時、要塞の揺れがさらに激しくなった。北野と梓は悲鳴を上げる。

「オイお前、この揺れは何だ!?」
「な……何の事だ!? 何が何だか……」

冬扇は何が起こったのか解らず動揺している。魁人は舌打ちし、管制室の扉に向かう。

「かっ…魁人!」
「大輔達を助けに行ってくる!」
「っ…待て! 俺も暁達が…!」

冬扇も慌てて立ち上げ理、魁人を追いかけた。
タケルは天を仰ぎ、表情を険しくする。

「一体……何が……!?」



要塞内部・大広間

「……な……!?」
「こっ…コイツは……!」

大輔達と暁達は絶句していた。彼等の前方で、DウォーグレイモンとDメタルガルルモンが闇と化し、1つになっていく。そして1つとなった闇は形を作っていく。

「馬鹿な……何故なれるんだ……!?」
「その姿は……!」

そこには、右腕がDメタルガルルモン、左腕がDウォーグレイモン、全身が暗黒の色をした、全世界の子供達が知る聖騎士の姿があった。

「「「オメガモン……!?」」」

383ミィナ:2011/03/26(土) 11:13:01
純人の事を思い出すシーンにはついつい泣きました…。感動です!
でもその余韻に浸る暇もなく異常が起きオメガモンの登場…!
ロードが暁達に望んでいた事もこれで納得ですね。
でもこれで用済みになった暁達はどうなるんでしょうか?
最終的な暁達の選択が気になります!

384ヤム:2011/03/26(土) 13:57:46

第九十六話  共闘

「くくく……くはははははははははははははははははははははははっ!! 遂に……遂に進化したか!!」

黒須は腹を抱え、天を仰ぎ笑い続ける。笑い声が神殿中に響く中、ジョーカーも不敵な笑みをこぼす。

「ヒャハ☆ 確か、その為に暁達を拾ったんだったよな☆?」
「くくくく……ああ、そうだ」

黒須は邪悪な笑みを浮かべ語りだす。

「『闇の紋章』を持ってしても、ロイヤルナイツをD化することはできない。イグドラシルに仕えていたのだから当然と言えば当然だが……俺はロイヤルナイツ程の力が必要だった」

黒須はモニターを表示する。モニターには要塞大広間の真ん中に佇む暗黒騎士を見据える。

「特に、オメガモンはな」
「ヒャハ☆ そんなに欲する程のものなのか☆?」
「ああ、特にオメガモンは俺が知るなかで最強の座に最も近いロイヤルナイツだ。D化すれば、『十三衆』以上にもなりえる」
「んで☆? あんたはどうやってコイツを進化させた☆?」
「暁達に与えた闇の力は特殊だと話したな? 暁達の恐怖、悲哀、憤怒、絶望、執念によって増幅し、強化されていく」
「つまり☆ 暁達のそれらの感情が、Dオメガモンを生み出したと☆」
「いや、違う」
「ヒャ☆?」

ジョーカーは首を傾げる。黒須はモニターから目を離さずに言う。

「俺があいつ等に与えた力にはもう1つ、特殊な設定がしてある」
「設定☆?」
「『自己進化プログラム』」
「ヒャ☆!?」

ジョーカーは間の抜けた声を出してしまう。

「おいおいおい☆ 聞いた事ねえぜそんなもん☆ 『自己進化』? 勝手に進化するってことか☆? じゃ暁達いらねえじゃん☆」
「いや、その『自己進化プログラム』は負の感情に反応しなければ働かない。だから俺は…」
「暁達にそのプログラムを入れたってことか☆?」

黒須は頷く。ジョーカーははーっと息を吐く。

「成程☆ んで遂にこうなったと☆」
「ああ、タイミングとしては最高だ。Dオメガモンには自我が芽生える様にしており、暁達の指示なしに大輔達と戦うだろう」
「自我☆? んなもんが芽生えんのか☆?」
「他のDデジモンと同じ、俺に忠実な闇の兵士だがな。それ以外は隙にしていい事になっている。今あそこにいるDオメガモンは、邪悪で残虐で恐大で、大輔達にとっては最悪な敵だろう」
「ふむふむ……む☆?」

顎に手を当て頷くジョーカーは再び首を傾げた。

「待てよ☆ そんなに凶暴な奴じゃ暁達も危ねえぞ☆? 一緒に殺され…」

言いかけ、ジョーカーは気付く。黒須はジョーカーを見る。その眼は、驚くほどに冷めきっていた。

「あいつ等はもう『用済み』に決まっているだろう」
「……ワーオ☆ 極悪〜☆」



要塞内部・大広間

「ゴギャアアアアアアッ!!」
「っ……!!」

Dアトラーカブテリモンが悲鳴を上げており、Dリリモンは苦痛に声も出ない。
Dアトラーカブテリモンは体を漆黒のグレイソードに貫かれ、DリリモンはDオメガモンに踏みつけられていた。

「……なんだよ……これ…」

東谷は金属バットを落とし、震える声で言う。Dアトラーカブテリモンは徐々にデータの塵となって消えていく。

「そんな……なんで……!?」

舞も恐怖に体を震わせる。DリリモンはDオメガモンの脚の下でもがくが抜け出す事が出来ない。

「…………」

Dオメガモンは右腕を一振りする。Dメタルガルルモンの口から大砲が飛び出す。そしてその銃口を、足元のDリリモンに向ける。

「っ! 止めて!!」

Dリリモンの姿が暗黒エネルギー砲の呑まれ、一瞬にして消えた。Dアトラーカブテリモンも、デジタマモ残さずに消滅した。

「馬鹿な……! 何故あいつはDアトラーカブテリモンとDリリモンを殺してるんだ!?」
「オイ! 止めろ!」

獏哉が走りだし、Dオメガモンの前に出る。Dオメガモンは獏哉を見下ろす。

385ヤム:2011/03/26(土) 13:58:16

「……何だ貴様は? 殺されたいのか?」
「「「っ!!?」」」
「喋った!?」
「アグモン達の……いや! 新たな自我が芽生えたのか!?」
「邪魔だ失せろ」
「!!」

Dオメガモンが、獏哉に向け漆黒のグレイソードを振り上げた。

「馬鹿な……何で…」
「獏哉! 逃げろ!!」
『Dグレイソード!!』
『アルフォースセイバー!!』

Dグレイソードと蒼い聖剣が激しく交わる。Dオメガモンと獏哉の間に、アルフォースが入りこんでいた。

「む……?」

Dオメガモンは突然現れたように見えたアルフォースに首を傾げる。

「何だ貴様は? 邪魔をするな」
『フェンリルソード!!』
『ヴァイキングアックス!!』
『爆針!!』

Dオメガモンに3つの攻撃が炸裂する。しかしDオメガモンは1歩も動かない。アルフォースは神速の速さで獏哉を抱え暁達の元へ移動する。

「獏哉!」
「大丈夫か!?」

舞と東谷は獏哉の身の安全を確認する。しかし暁は、目を細めアルフォースを見据える。

「俺達は、お前達を救うために来たんだ」

アルフォースは問われる前に答える。そこへ大輔がやってくる。

「アカツキ!」
「……礼は言わない」
「要らねえ! それより…」

大輔は、ヴァルキリモン達が攻撃しているDオメガモンを見る。

「あいつ…お前達を迷いなく殺そうとしたぞ」
「っ……解ってる…!」

暁は拳を震わせる。何故そんな事になったのかは……予想できる。だが、認めたくない。
だが大輔は、彼等が最も認めたくない言葉を、彼等の為に言った。

「お前等は……ロードに見限られたんだ」
「っ……!!」

暁の表情が歪む。舞と東谷も、恐怖に真っ青になる。

「あ、アカツキ……俺達は…」

呆然とした状態から正気に戻った獏哉は暁を見る。暁は顔を伏せる。

「っ……どうしてこんな事に……俺達は…俺達は…!」
「アカツキ! もう止せ! もう闇には居られないんだ! 俺達と共に…」
「大輔!」

咄嗟にアルフォースが大輔の背後に立つ。聖剣を水平にして防御の姿勢になる。

直後、アルフォースにDグレイソードが叩きつけられる。その激突の衝撃波で大輔と暁達は吹き飛び転がる。

「「「うわあああああっ!」」」
「大輔ぇ!」
「大輔さん! っ…!」

伊織は手の甲の痛みに顔をしかめる。『イグドラシルの葉』を当て止血、治療し、竹刀を拾う。

「京さん! Dオメガモンを抑えましょう!」
「っ……うん! ヴァルキリモ…あぁっ!」

先程オメガモンがいた所には、ホークモンとアルマジモンが倒れていた。

「ホークモン!」
「アルマジモン!」

京と伊織はパートナーに駆け寄る。

「み、京さん…」
「伊織……やっぱりオメガモンは強いぎゃ…」
「そんな……!」
「何とかして、あいつを止めないと……イノセントスティングモン!」

賢が指示し、イノセントスティングモンが飛び立つ。

「貴様ら全員、この私が消し去ってくれる」

Dオメガモンは威圧感のある声で言うとアルフォースから離れる。宙を飛び、右腕の漆黒のガルルキャノンを向けてくる。

「まずい! 逃げろ!!」
「アカツキ!!?」

暁はアルフォースの横を抜けて前に出る。

「ばっ…何やってんだ!」

大輔がすぐにあとを追う。

「失せろゴミ共」

Dオメガモンの銃口に、暗黒エネルギーが集中する。

「っ……賢! アルフォース!」
「ああ! イノセントスティングモン!」
「アポロモン……!!」

大輔と賢はD-3をかざし、アルフォースとイノセントスティングモンはブイモンとワームモンに退化する。暁は両手に炎を発生させる。

386ヤム:2011/03/26(土) 13:58:48

『Dガルルキャノン!!』

Dオメガモンが強大な暗黒エネルギー砲を放つ。それと同時に、

『スーパーポジトロンレーザー!!』
「はあああああああああああああっ!!」

図太い光線と灼熱の炎弾が放たれる。

「ぬ……?」

両者の攻撃は相殺しあって消える。そこには…

「アカツキ! その力は使うんじゃねえ! コイツは俺達に任せろ!」
「黙れ失せろカタカナの発音で呼ぶな。これは俺達の問題だ」

大輔と賢を両肩に乗せたインペリアルドラモンファイターモードと、炎を見に纏う暁がいた。

「あ…アカツキ!」

舞が駆け寄ろうとするが、

「来るな!」

暁の鋭い声が飛ぶ。

「俺は大丈夫だ! お前等を残して死ぬつもりはない!」
「でもアカツキ! そんな奴相手じゃ…」

言いかける舞の肩に獏哉が手を置く。

「獏哉!?」
「………おい、アカツキ」

獏哉は真剣な表情で暁を見る。

「本当に、死ぬ気はねえんだな?」
「……ああ」
「これからも、俺達は一緒だよな?」
「………ああ」
「………そっか」

獏哉は安心した様に溜息をつく。そして、

「大輔! 賢!」
「「!」」

突然呼ばれ大輔と賢は振り返る。獏哉は真っ直ぐに2人を見据え言う。

「アカツキが死なねえよう、一緒に戦ってくれるか?」
「何!?」

その言葉に驚いたのは暁だった。獏哉はやれやれと言った感じに溜息をつく。

「もう俺達の居場所はねえんだ。だったら、コイツ等と共闘して行こうじゃねえか」
「……馬鹿な…」
「アカツキ!」

舞が叫ぶ。

「私……暁と一緒なら、闇でも光でもいい! 何処へでもついて行くよ!」
「っ!! 舞……!」

暁は眼を見開く。舞の肩に東谷が手を置く。

「てか、それって告白? ウホー青春だねー」
「ひぇ!? ちっちが…!」
「ま、良いんじゃねえの?」

東谷は舞の頭をポンポン叩く。

「純人や俺達の意志はどうあれ、俺達が今を生きるにはその手しかねえ。打算的に俺はOKだ」
「東谷…」

その時、管制室へとつながる通路から2つの人影が現れる。

「大輔! 皆! 無事か!?」
「アカツキ! 獏哉! 舞! ミツル!」
「魁人さん!?」
「どうしてここに…」
「冬扇!」
「塁! あんたヒカリはどうしたの!?」
「いやもうヒカリは渡してもいいだろ…」

魁人はインペリアルドラモンに駆け寄る。

「あれは……確か…」
「Dオメガモンです」
「! 合体進化したってのか…!」
「魁人さん、お願いです」

大輔はインペリアルドラモンから降りて言う。

「獏哉達が巻き込まれないよう、守ってやってください」
「何!?」

魁人は顔をしかめる。しかし、この状況から全てを察する。

「……そうか、何とかやったか…」
「まだ、解り合えてはいませんが…」
「そうか、解った。京! 伊織! お前等も来い!」
「「はい!」」

387ヤム:2011/03/26(土) 13:59:39

魁人、京、伊織は、獏哉達の護衛に向かった。暁はそれを見て目を細める。

「余計なことを…」
「礼ぐらい言ったらどうだ?」
「要らんとさっき言っただろう」
「言った?」
「言った」

首を傾げる大輔に賢が頷く。暁は前に向き直る。

「………来るぞ」

Dオメガモンは、漆黒のマントをバッと広げ、大輔達を鋭い視線で見る。

「ゴミ共がうじゃうじゃと……まとめて消してやる」
「……何か、キャラ怖くない?」
「あれが闇の自我なのだろう。行くぞ!」

インペリアルドラモンが飛び立ち、Dオメガモンが後を追う。

「くたばれええええ!!!」

Dオメガモンは前方を飛ぶインペリアルドラモンにDガルルキャノンを放つ。それを…

「させるかああああっ!!」

アポロモンの灼炎が相殺する。

「っ……人間のガキ如きが……!」
『ポジトロンレーザー!!』
「っ…!? くああああっ!!」

意識の逸れたDオメガモンに光線が炸裂する。Dオメガモンは踏みとどまり、瞳を怒りの真紅に染める。

「テメエ等……皆殺しだあああああ!!!」
「させるかあああああ!!」

対する暁は深紅の瞳を輝かせ、炎を発する。

「獏哉達を護る! 『俺達は生き続ける』!! それだけは……その『誓い』だけは守って見せる!!!」

388智美:2011/03/27(日) 00:54:52
はじめまして!!
一応一通り拝見しています。DΩモン強そうです…;;
敵キャラ(?)の漫才が面白いです。敵じゃなかったら大輔たちとのコントが見てみたいです((
随分前の話題ですが幼少ヒカリ可愛いですよねっ(私ロリコンです←)
ウォーゲームの時のヒカリは可愛過ぎて死にそうです(自重しろ。
私も長編書くときがあるのですが此処まで続くことがありません(爆)
続きがとても楽しみです! これからも頑張って下さいっ
乱文失礼しました=3

389ヤム:2011/03/27(日) 22:36:46



『Dオメガモン』

不意に、何処からか声が聞こえた。Dオメガモンと大輔達と暁達は動きを止める。

「この声……!」
「ロード!!」
「ろ、ロード様!」

Dオメガモンは腕を交差し頭を下げる。

『Dオメガモン、お前は自我を持って生まれた俺の新たなる下僕だ』
「はっ! 我が主、何なりと……!」

ロードに対してのみ、凶暴なDオメガモンは忠実な兵士となる。

『お前は自由だ。ただ1つ、俺の命令にさえ従順であれば後は好きにして良い』
「はっ!」
『まずは命令だ。その場にいる全員を始末しろ』

その場にいる全員―――その中には勿論、暁達が含まれていた。

「はっ! 黒須様の仰せのままに!」

Dオメガモンは交差した腕を広げ、大輔達を見下ろす。

『皆殺しだ』
「っ……!! ロードォオオオオオオ!!」

怒りに暁が叫ぶ。何処からか聞こえてくる声に語りかける。

「ロード! 貴様は本当に俺達を…捨てたのか!? 俺達は……コイツを生み出すために利用されていただけなのか!?」



「…………」

要塞内を映すモニター。画面いっぱいに映る暁の懇願するような表情を前に、黒須は黙り込む。

『応えてくれロード! あの時俺達を拾ったのは……この為なのか!? 俺達の「誓い」が果たせるようにしてくれるという言葉は偽りだったのか!?』
「………………」



『当然だ。お前達は用済みだ』
「「「っ!!!」」」

暁達の表情に絶望の色が現れる。

『お前達は闇でありながら、善良の心を持っている。今こそ、大輔達に寝返りを求められるようでは、お前達はもう駄目だ』
「俺達は……俺達はあんたの為に戦ってきた!!」
『ああ、その成果としてヒカリを捕まえた事は大手柄だ。だが…』

ロードの声が、一気に冷たくなる。

『やはりお前らは要らん。Dオメガモンを手に入れた今、命を削るリスクを持った失敗作のデジソルジャーであるお前と、デジソルジャーですらないそいつらは最早役立たずだ』
「っ……貴様ぁぁあああああああ!!!」

暁の怒りを表すように炎は激しく燃え盛る。ロードの嘲るような声が聞こえる。

『ああ、気が変わったぞ暁。今そこでDオメガモンと共に大輔達を倒せ』
「「「っ!!!」」」

暁達、そして大輔達の表情が変わる。

『ちゃんと息の根を止め、殺すんだ。お前の手で。そうすれば、お前達は生かしてやる』
「っ……!!」
「テメエ! 嘘言ってんじゃねえ!」

東谷が声を荒げ言う。しかしロードは澄ました口調で言う。

『信じる信じないはお前等の自由だ。最後に選択権ぐらいはくれてやる』
「っ………!」
「アカツキ!」
「!」

大輔が言う。

「信じるな! ロードにその気はねえ! 俺達と一緒に、コイツを倒すんだ!!」
「……小僧、まずは貴様から殺してやろう」
『暁が答えるまで待て。Dオメガモン』
「はっ! 我が君!」

空中で跪くDオメガモン。何とも奇妙だ。ロードは再度暁に訊く。

『答えは……? 暁……』
「………」

暁は俯いて何も言わない。大輔はまさかと言った様子で暁を見る。

「あ、アカツキ……!」
「……俺は………大輔達の味方になるつもりはない」
「「「っ!!?」」」

390ヤム:2011/03/27(日) 22:37:17

大輔達の表情に驚愕が現れる。ロードは楽しそうに笑う。

『そうか。なら今すぐ…』
「だが……」

暁は顔を上げる。その眼には、燃えるような意志が宿る。

「テメエに従う気ももう無いんだよ! 黒須凶魔!!!」

轟炎。Dオメガモンを灼熱の炎が取り囲む。

「む!?」
『………そうか』

ロードの声は一気に冷めきる。

『殺せ。Dオメガモン』
「はっ! マイロード!」
『呼び方を統一しろ』
「イエス・サー!」
『…………』

呆れたような溜息が聞こえ、ロードの声は途切れた。

『Dグレイソード!!』

Dオメガモンはマントをバッと広げ周囲の炎を避け、黒い斬撃を放つ。それをインペリアルドラモンは飛んでかわす。そのままDオメガモンの背後まで回りこむ。

『ポジトロン…』
「うぜえええっ!!」

Dオメガモンは振り返りざまにDグレイソードで斬りかかる。
その左腕を、炎の鞭が巻きついて止める。

「炎が……っ! しゃらくせえ!!」

DオメガモンはDガルルキャノンを放つ。

「「「アカツキ!!」」」
「っ…くそ……!」

暁は走って逃れようとするが、エネルギー砲は強大で避けきれない。
そして、暁の姿はエネルギー砲に呑まれ、一体が爆発する。

「あっ…!」
「アカツキィィイイイイイイイイイ!!」
「っ……!」

獏哉達が絶叫し、魁人は絶句する。


「っ……かはっ! がはっ!」

爆煙が漂う中、暁は無事であった。何故か直撃は免れた。その訳は…

「っ……大輔!!?」

暁の前で、光の双刃を構え仁王立ちする大輔がいた。全身ボロボロでありながらも、しっかりとその場に佇む。

「あ…アカツキ……!」

大輔はかすれるような声を出し振り向く。頭から血を流しながら、大輔はニッと笑う。

「無事か……良かった…!」
「馬鹿かテメエ!? 何仲間になった気で助けていやがる!? 俺は闇でもお前等の味方でもねえんだぞ!!」
「…いいじゃねえか…」
「!?」

双刃が戻り、大輔は膝をつく。暁は慌てて大輔の体を支え腰を下ろす。

「お、おい! しっかりしろ!」
「俺が……助けたかったんだ…」

391ヤム:2011/03/27(日) 22:38:09


咳と共に血を僅かに吐きながら大輔は言う。

「お前等に何があったのか……お前達の『誓い』が何か、誰との誓いかなんてのも知らねえ……。俺達は何も解り合っちゃいねえ……けど…俺が助けたかったんだ」
「っ……馬鹿だろお前……!」
「はは……知ってる」

大輔は力なく笑う。震える手で『白闘士』のポケットに手を入れ、『イグドラシルの葉』を取り出す。

「アカツキ……俺達は確かに今は仲間じゃねえ。だが、利害は一致してるだろ……?」

大輔は葉を噛み、体力を回復する。震えながら立ち上がり、暁を真っ直ぐに見る。

「今はそれが理由でもいい。だからどうか……俺達と共に戦ってくれ……!」
「…………」

暁は大輔の視線を受け止め、自分も立ち上がる。

「……今回だけだ」


「だ、大輔えええ!!」

インペリアルドラモンは、大輔が飛び込んだ後の爆煙に向かう。だが…

「行かせるかゴミがあああ!!」

Dオメガモンが前に回り込む。インペリアルドラモンと賢は歯噛みする。

「はっはー! 小僧め勝手に死んだか!」
「どけえ!」
「貴様も死ぬがいい!!」

DオメガモンはDガルルキャノンを放つ。インペリアルドラモンはポジトロンレーザーで対抗する。

「っ…ぐっ…!」

インペリアルドラモンが押される。Dオメガモンの攻撃は先ほどよりも強力だ。

「フハハハハハハハハッハハハハハハハハハハッ! 貴様も死ねえ!!」

DオメガモンはDガルルキャノンを放ちながらDグレイソードを構える。その時、

轟ッ!!

「っ!?」

爆煙を突き抜け、灼熱の炎が飛び出しDオメガモンに迫る。

「くっ!」

Dオメガモンはマントを翻し炎をいなし、距離を取る。爆煙から白い服を着た人影が飛び出す。大きく弧を描き広間を駆けまわる。

「大輔!?」
「っ! あのガキ生きてたか! だとすると…」

Dオメガモンはまだ残る爆煙の中を注視する。大輔よりも、アポロモンの力を持つ暁に警戒する。
その時、賢はDオメガモンに聞こえない声量で言った。

「! いや、『白闘士』を着ているがアレは…」

走っているのは、『白闘士』を着た―――――暁だった。体に纏う爆煙が暁の赤髪を大輔のような赤茶色に見せたのだ。さらに頭に付けたゴーグルが反射し目を欺けた。

「何!?」

Dオメガモンが、爆煙の中にいたのが大輔だと気付いたころには、暁は背後に回り込んでいた。

「……覚悟は出来た」

暁は懐から小さなカプセルを取りだす。フランクモンから受け取った『D-apollo』だ。

「だが、死ぬつもりもねえ」

暁は『D-apollo』を呑みこむ。途端全身から、今までとは比べ物にならないほどの炎が発生した。

「っ!? アカツキ……!?」
「まさか…」

獏哉、東谷、冬扇は眼を見開く。舞は涙を流し叫ぶ。

「アカツキ……駄目ええええええええええ!!!」

「完全解除! アポロモン!!!」

392ヤム:2011/03/27(日) 22:46:34

ミィナさんに智美さん。感想ありがとうございんます。

先に謝らませんていただきます。ごめんなさい。大変申し訳ございません。

今月中に暁達と決着と付けるつもりと言いましたが、大変申し訳ございませんが叶いそうにありません。

残すとこ明日1日のみ、それも書けるか否か微妙なところでございまして……orz
勿論書けたら書けるとこまで書かせて頂きます。が、あまり期待はしないでください。
せっかく見て頂いているのに本当に申し訳ありません。いつまた書けるかこっちも見当がつきません。ちびヒカ書きたかったです。(ロリじゃない! 断じて!

そういうわけですので、こちらもぎりぎりまで頑張りますのでよろしくお願いします。

393ヤム02:2011/05/17(火) 00:47:33
携帯から試しカキコミ

誰か人いませんか?!?

394ひーは:2011/05/17(火) 05:43:21
ひーはさんならここにいるよ!

395ヤム02:2011/06/05(日) 22:10:14

第九十七話  太陽神アポロモン

「なっ……!?」

凄まじい闘気と熱気にDオメガモンはDグレイソードを掲げて顔を覆う。

「くっ……なんだ…!?」
「そんな……馬鹿な…!?」
「ウソ……でしょ!?」

魁人達も同じようにし、獏哉や舞は驚愕に目を見開く。


広間の中心では、本物に比べればあまりにも小さいが、それでも彼らには巨大な太陽があった。

「アカ…ツキ…?」
「「大輔!」」

呆然とする大輔の元に、インペリアルドラモンと賢が寄る。

「大丈夫か!?」
「……賢…見ろよあれ…」

大輔は太陽を指差し言う。賢とインペリアルドラモンはいぶかしみながらも振り返る。

その時、太陽が光となって霧散した。

「「「!!?」」」

大輔達も、Dオメガモンも、其の姿に僅かながらも圧倒され、そして魅了された。

「……綺麗だ…」

誰かが、そう言った。


炎色の長い髪、獅子のような顔、紅蓮の鎧、両の手の甲からは灼熱の炎が噴出し、頭上には小さな太陽を思わせる火炎球。其の姿は正に神話の太陽神を髣髴とさせる神々しさだった。

「………何だ、貴様は?」

Dオメガモンは凶悪な正気を取り戻し、アポロモンを睨む。
Dガルルキャノンを振り上げ、アポロモンに照準を定める。

「目障りだ。消えろ」

図太い暗黒エネルギー砲が放たれる。エネルギー砲は真っ直ぐにアポロモンに向かう。

「! アカツキ!!」

大輔が叫ぶと同時に、エネルギー砲はアポロモンに命中し、一帯が爆発する。

「いやあああああっ!! アカツキィイイイイイ!!」

舞の絶叫が響く。Dオメガモンは高らかに笑う。

「ハアァーーッハッハッハッハ!! 雑魚が! 塵と化したか!!」


「………………誰が、何て?」


「「「!!?」」」

その場の全員が目を見開き、両手で顔を覆う舞はハッと顔を上げる。

「……アカツキ?」

その時、爆煙が一気に蹴散らされ、全身から炎を噴出するアポロモンが現れる。

「なっ……何ィ!?」

Dオメガモンが驚愕の声を上げる。アポロモンは炎を収め、次の瞬間にDオメガモンに向け飛翔する。

「おおおおおおおおおおっ! くたばれええええええええっ!!」

DオメガモンはアポロモンにDガルルキャノンを3発連続で放つ。
アポロモンは内2発を右へ左へ避け、最後の1発を灼熱の炎で相殺する。

「っ……!」

Dオメガモンは再びDガルルモンを放とうとするが、

「オオオオオオオオオッ!!」

アポロモンは一気に距離をつめ、Dオメガモンの頭を鷲掴みにする。五指を頭蓋に食い込ませ、そのまま空中を驀進していく。

「っ……離せえ!!」

DオメガモンはDグレイソードを振り上げるが、アポロモンはもう片方の手でそれを止める。

「ハアアアアアアアアッ!!」

そして、アポロモンはDオメガモンを広間の壁に叩き付ける。衝撃で広間は激しく震え、壁一面に亀裂が広がる。

「っく……!」

Dオメガモンは、直ぐに距離をとったアポロモンを憎悪のこもった目で睨みつける。

「おのれええええええ!! 貴様楽に死ねると思…」

Dオメガモンの表情が固まる。前方のアポロモンは、両手の光玉を輝かせ構えていた。

『アロー・オブ・アポロ!!』

両手の光玉から灼熱の矢が連続して放たれる。流星群の如き焔が、Dオメガモンを飲み込み、壁を貫く。

「ぐあああああああああああああっ!!」

Dオメガモンは炎に飲まれともに、要塞の中心を突き進む。

「「!!?」」

タケル達はその気配を感じ振り向く。同時に一方の壁が砕け散り、Dオメガモンが飛び出す。

「なっ何!? 何々!?」
「あのデジモンは…」
「っ!? オメガモン!!?」

タケルは腕に抱えるヒカリを着たのに預け、パタモンと前にでる。

「ぐっ……くそおおっ!! ……あん?」

Dオメガモンは怒りと痛みに呻き、そこでタケル達に気付く。

「オメガモン! どうして君が……!?」
「タケリュ! 危ないよ!!」

タケルが歩み寄って語りかけ、パタモンがそれに続く。

Dオメガモンは、邪悪な笑みをその眼に表す。

「選ばれし子供……くくくっ……死ねえええええええええ!!」
「「!!」」

タケルとパタモン目掛け、Dグレイソードが振り下ろされる。

396ヤム02:2011/06/05(日) 22:10:56

その時、

「オオオオオオオオオオオオオッ!!」

Dオメガモンが出てきた穴からアポロモンが飛び出し、Dグレイソードを炎ではじく。

「えっ!!?」
「ぐあっ!」

アポロモンはタケルの頭上に浮遊し、Dオメガモンを蹴り飛ばす。

「君は……!?」

驚くタケルや北野たち。その時、北野の腕の中で眠るヒカリの瞼が僅かに開く。

「……暁…くん……?」



「つ……強え……! 何だありゃ…」

魁人はDオメガモンとアポロモンの消えてった大穴を見つめ呟く。京と伊織も、呆然としていた。

その時、

「そんな……どうして……?」
「?」

振り向くと、獏哉達が恐怖にも似た驚愕の表情を浮かべていた。

「どうしたの? 彼はデジソルジャーなんでしょ? 完全解除したって不思議じゃ…」
「あいつは『成り損ない』なんだよ!」

きょとんとする京の言葉に東谷は憤りを露わに怒鳴りつける。

「あいつはアポロモンの力をリスク付で手に入れただけで、アポロモンとの融合には失敗している!! 本来暁はあの姿になることはできないんだよ!!」
「「「!?」」」

魁人、京、伊織、そして少し離れたところでそれを聞いていた大輔と賢は驚きを顔に表す。

「じゃあ……なんで…!?」

誰もが疑問を抱くなか、不意にその言葉が発せられた。

「……『D-apollo』」
「「「!?」」」

その場にいた全員が、顔を伏せて震える舞を見る。獏哉は眼を見開く。

「……おい、今……何て言った…?」
「『D-apollo』だと……?」
「……完全解除の直前、アカツキが懐から出して飲んだのを見たの…」

舞は顔を上げる。その両の眼からは大量の大粒の涙が零れていた。

「アカツキは………自分を犠牲に私達を助けようとしているのよ!!」

「っ!!」

大輔は両眼を最大級に見開き、直ぐに歩き出す。全身の痛みなど気にならない。

「大輔!」
「賢…インペリアルドラモン……行くぜ」

賢とインペリアルドラモンはしばらく硬直していたが、直ぐに強い意志を持って頷く。

「お願い…アカツキを……助けて……!!」

舞は胸の前で手を組んで膝を突き、誰に言うでもなく祈る。獏哉達も大輔達に言う。

「っ……頼む! あいつを救ってやってくれ!!」
「………ああ」

魁人も強く頷き、拳をパンと手に当てる。京と伊織も、インペリアルドラモンの後に続く。

その時、インペリアルドラモンの全身から、眩い光が放たれた。

397ヤム02:2011/06/05(日) 22:13:59

どうも、お久しぶりです。
大学進学してから早二ヶ月、実に懐かしいとネカフェの中から(笑

短くて申し訳ありませんが今日はここで、また余裕が出来次第書き込みますので、感想よろしくお願いいたします。

では

398ひーは:2011/06/05(日) 23:18:48
久しぶりの投稿でも質が落ちてない すごいっす!
時間見つけてちょくちょく続きお願いしますね

399空輝:2011/06/08(水) 00:20:11
ヤム02さん初めまして。
ご挨拶が遅れてしまってすみません…新参者の空輝です。
戦闘での描写が細かくてとても素晴らしく、楽しみにしていました!
次回の更新も楽しみに待っています。

400ヤム02:2011/06/08(水) 18:40:11

『アロー・オブ・アポロ!』

アポロモンは両手から灼熱の矢を連続で放つ。無数の矢は弧を描き、四方からDオメガモンに迫る。

「おおおおおっ!」

DオメガモンはDグレイソードを大きく振り、すべての矢を薙ぎ払う。

「!!」
「いつまでも調子に乗るなあああ!!」

Dオメガモンはマントを広げ飛翔、アポロモンに迫る。

「っ……!」

アポロモンは迎撃しようと両手を前へ構えるが、

「遅いっ!!」

Dオメガモンはその手を蹴り上げる。アポロモンの体勢が崩れ隙ができる。Dオメガモンはがら空きになったアポロモンの腹部に右手の大砲を向ける。

「っ!?」
「死ねえ!!」

ゼロ距離で暗黒エネルギー砲が放たれる。アポロモンは暗黒砲の中に飲まれていった。

「ああっ!」
「やられちゃった!」
「ちょっと! どっちが敵でどっちが見方なのよ!?」

タケルと北野が声を上げ、梓が困惑の声を上げる。その時、

「……暁くん」
「え!?」

北野は自分の腕の中を見る。ヒカリの瞼はわずかに開かれ、彼女は声を発していた。

「彼を……彼等を助けないと…」
「ヒカリさん!?」
「「え!?」」
「ヒカプー!?」

タケルとテイルモンが振り返り、梓が直ぐにヒカリの顔を覗き込む。

「ヒカプー! 大丈夫!? 痛い所ない!? 欲しい物ある? わかった! 今すぐロードのくそ野郎のタマぁ取ってきて…」
「お、落ち着いてください梓さん。そんな事言ってません」

あまりにも必死で混乱する梓を北野がなだめる。タケルとテイルモンが同じようにヒカリの顔を覗き込む。

「ヒカリ!」
「ヒカリちゃん!」
「……テイルモン…タケルくん…アッズー…北野さん…」

ヒカリは視線だけを動かし彼等を確認し、直ぐにまた瞼を閉じる。

「お願い……彼等を……助け…て…」
「ヒカプー!」
「ヒカリ!」
「……彼ら…? 暁……? っ! まさか…」

タケルは上方に振り返る。そこにはDオメガモンと、全身から炎を噴出させるアポロモンがいた。

「咄嗟に全身を炎で覆ったか……だが…」

Dオメガモンはフッと笑う。アポロモンの咄嗟の防御は、大きな効果は出さなかった。

「っく……!」

アポロモンは苦痛に顔を歪める。右腕の負傷が激しく、だらりと垂れ下がって震えている。

(一撃……たった一撃でこれ程……っ! さっきまでは手を抜いていたとでも言うのか……!)

アポロモンはDオメガモンをにらみつける。

(これが…D化したオメガモン……! ロードが俺達を利用し望んだ力…)

「ククク…」

Dオメガモンは再びDガルルキャノンを構える。

「くっ……」

アポロモンは歯噛みする。

(俺たちは……こいつを生むために利用されただけ…)

『Dガルルキャノン!!』
『アロー・オブ・アポロ!!』

暗黒エネルギー砲と灼熱の矢が放たれる。互いの技は相殺しあい、両者の間で大爆発が起こる。

401ヤム02:2011/06/08(水) 18:40:34

「っ……奴は…!?」

アポロモンは爆煙の周りを注視する。力を溜め、敵が来るのに備える。

「っ……来い!!」

その時、爆煙が一気に霧散する。その先から、強力な闇の力を感じる。

「何!?」

そこには、DガルルキャノンとDグレイソードを交差させ、強大なエネルギーを溜めたDオメガモンがいた。

「不味い…っ!」

アポロモンが構え直すころにはもう遅い。Dオメガモンは邪悪な意思をその目に宿す。

『Dオメガフォース!!』

交差された両腕から、巨大で強大な暗黒波動が放たれる。球状のその力は、絶対的な質量とエネルギーを持って、アポロモンを滅しようと迫る。

「っ……くそ……!」

逃げる事は不可、炎を放とうにも、この技に対抗できるほどの炎を溜める暇はない。アポロモンは、苦渋に目を閉じる。

(ここまでか……っ!)


『スーパーポジトロンレーザー!!』
『レーザージャベリン!!』
『アークティックブリザード!!』
『ダンガンブラストファイア!!』
『セブンヘブンス!!』
『オーロラアンジュレーション!!』
『ヘルファイア!!』


「「っ!!?」」

Dオメガモンとアポロモンは目を見開く。Dオメガモンの暗黒波動は、余所からのいくつもの強力な攻撃により打ち消された。

「なにぃいいい!!?」

Dオメガモンは突然のことにほえる。その時、

「アカツキィイイイイイイイ!!!」

大広間へと通じる通路から声がする。通路からはヴァルキリモン、ヴァイクモン、ダンガンドラモン、そして……インペリアルドラモン『パラディンモード』が現れた。

「アカツキ! お前を一人で戦わせはしねえ!!」

インペリアルドラモンパラディンモードの肩に乗った大輔が言う。

「……大輔…」
「その通り」

反対から声がする。見るとそこにはセラフィモン、ヴァロドゥルモン、ケルベロモンがいた。タケルはアポロモンを鋭く見据える。

「状況はわからないけど、僕はまだ君を許してはいないよ、暁」

「でも…」とタケルは続け、溜息をつく。

「ヒカリちゃんに頼まれたし、ここは共闘するよ」
「……お前等…」

アポロモンは驚愕に目を見開く。両サイドにインペリアルドラモンやセラフィモン達が並ぶ。

「貴様ら……余程死にたいようだな…」

対峙するのは、殺意を全身から噴出すDオメガモン。

大輔はにっと笑い、アポロモンを見る。

「……行くぜ、暁。あいつを……俺たちが協力して倒すんだ」
「おい、お前等何を…」

アポロモンは言葉を言いかけたが、すぐに諦めたように溜息をつく。

「……ったく、どいつもこいつも…」
「……来るっ!」

セラフィモンが言う。Dオメガモンはマントを広げ、正面から迫る。

「皆殺しだああああああああっ!!!」

対するアポロモンたちもDオメガモンに向かう。

「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」」」

402ヤム02:2011/06/20(月) 21:22:11



「インペリアルドラモン……パラディンモードだと?」

モニターを前に、ロードは顔をしかめる。

「ヒャハ☆ 何が起こるかわかんねえなこの戦い☆」
「……大輔達と暁一派、双方の思いがこの状況を作り出したのだろう」

後方からの声に振り返る。12個のデジコアを携えたアル=ミナがそこに立っていた。

「いや、恐らく人間界にいる太一達の思いもあるようだな。彼らの意思を継いだ大輔達は、更なる境地へと達したのだろう」
「どこへ行っていた? アル=ミナ」
「我がどこへ行こうと我の自由」

目を細め睨むロードにアル=ミナは淡々と答える。

「さて、D化したオメガモンと、手を取り合った真の選ばれし子供とアポロモン…」

アル=ミナは視線を上げモニターを見る。

「輪廻の運命(さだめ)のみ、その答を知る」



『ヴァイキングアックス!』

ヴァイクモンはミョルニルをDオメガモン目掛け振り下ろす。

「フン!」

DオメガモンはDグレイソードを頭上に掲げ、易々と受け止める。

『アウルヴァンディルの矢!』

別方向からヴァルキリモンが矢を放つ。DオメガモンはDガルルキャノンを放つ。矢は一瞬にして暗黒エネルギー砲に呑まれ、ヴァルキリモンはギリギリでそれをかわす。

『ヘルファイア!』
『ダンガンブラストファイア!』

また別方向から、ケルベロモンとダンガンドラモンの攻撃が来る。

「ゴミが…」

Dオメガモンは飛翔してかわそうとする、が、左腕に拘束を感じ動けない。

「っ…なあ!?」

見るとヴァイクモンのミョルニルが左腕に巻きついていた。ヴァイクモンはミョルニルと全力で引く。

「逃がさんだぎゃ!」
「この……っ!」

不意に引っ張られ、バランスを崩したDオメガモンを、地獄の炎と凄まじい閃光が飲み込む。

「ぐああああああっ!!」
「やったか!?」

しかし、すぐにDオメガモンは奔流の中から飛び出す。

「ヴァイクモン!」
「OKだぎゃ!」

セラフィモンとヴァロドゥルモンがDオメガモンの前に回りこみ、ヴァイクモンは再びミョルニルの鎖を引く。

「っくそがあああああ!!」
『セブンヘブンス!!』
『オーロラアンジュレーション!!』

七つの光球と七色の奔流がDオメガモンに炸裂する。だが、その直前にDオメガモンはDガルルキャノンを放っていた。

「! ぐあああああっ!!」

それは、下で鎖を引くヴァイクモンに炸裂した。

「ヴァイクモン!!」
「ぐうう…」

ヴァイクモンはボロボロになりながらも、その手はしっかりと鎖を握っていた。

「まずは貴様だ」
「!!」

鎖を引かれる感覚がなくなる。同時にその声はすぐ近くから聞こえる。

目の前には、DグレイソードとDガルルキャノンを交差させこちらに向けるDオメガモンが立っていた。

「ヴァイクモン!」
「くたばれえ!!」

Dオメガモンの交差した両手から巨大な波動が発生する。

『Dオメガフォース!!』

至近距離。ヴァイクモンは巨大な球状の力に飲み込まれる。

「うぎゃあああああああああああああああああああああああっ!!」
「ヴァ…ヴァイクモォォォーーン!!」

巨大な球状の波動は収まることなく、内部でヴァイクモンを破壊し続ける。

「うぎゃあああああああああっ!!」
「ふははははははははっ!! 塵と化せ!!」
「やめねえかああああ!!」

横からインペリアルドラモンパラディンモードが突進し、Dオメガモンに体当たりする。波動は徐々に小さくなり、その場には退化したウパモンが残っていた。

403ヤム02:2011/06/20(月) 21:22:36

「ウパモン!」

伊織は急いで駆け寄り、ウパモンを抱えその場を離れる。

「伊織……ゴメンだぎゃ」
「よくがんばりました。ウパモン」

申し訳なさそうにするウパモンに伊織は労いの言葉をかける。

「っ……やはり強い…」

アポロモンは歯噛みする。しかし、すぐに気を切り替え、戦闘に参加する。

「おおおおおるぁ!!」

Dオメガモンはインペリアルドラモンを引き離す。インペリアルドラモンは純白の翼を羽ばたかせ飛翔する。

「くはは……残り7体か」

Dオメガモンは邪悪な目つきで対する者達を見回す。

「どれ……3分で1体にしてやろう」

Dオメガモンは両腕を振り、マントをはためかせる。その全身から、強力な闇の力が発せられる。

「っ……まだこれだけ力が…!」

インペリアルドラモンは背筋が凍るような恐怖を本能的に感じた。

「………行くぞ。ゴミども」

Dオメガモンは飛翔し、消えた。

「え!?」
「速い!」

梓とタケルが声を上げる。その横で、北野は視線を巡らせる。そして、恐怖に目を見開く。

「危ない! ヴァロドゥルモン!!」
「!!?」

気づいたときには、ヴァロドゥルモンの背中にDオメガモンは着地していた。

『パージシャイン!』

ヴァロドゥルモンは全身から防御の聖なる光を発し身を覆う。しかし、

「何だそれは?」

DオメガモンはDガルルキャノンを放つ。防御の光も呆気なく、ヴァロドゥルモンは暗黒エネルギーに呑まれる。

「うああああああっ!!」
「ヴァロドゥルモン!」
「あと6体」

再びDオメガモンの姿が消える。

「ぐっ!!?」
「貴様は何だ? 完全体でこの俺に挑むのか?」

ケルベロモンの頭を踏みつけ、Dオメガモンはつまらなそうに言う。

「ケルベロモン!」
『ダンガンブラストファイア!!』

魁人が叫び、ダンガンドラモンが閃光を発する。

「おっと」
「なっ…!?」

Dオメガモンは足をどけるとケルベロモンを蹴り上げる。ケルベロモンはそのままダンガンドラモンの攻撃射線に入ってしまい…

「ぐあああああああっ!!」

閃光をもろに食らってしまう。Dオメガモンはそのままケルベロモンを盾に攻撃を凌ぐ。

「しまった!」
「っ……こん畜生がああ!!」

魁人が怒りに叫ぶ。

「ふん」

Dオメガモンは退化したラブラモンを高く放り、そのままラブラモン目掛けDガルルキャノンを放つ。

「なっ!?」
「ラブラモン!!」

素早くダンガンドラモンが動き、暗黒エネルギー砲からラブラモンを庇う。

「ぐあああああああっ!!」
「くおおおおおっ!!」

退化したクダモンと、ラブラモンと魁人が空中から落下する。

「か……魁人ぉ!!」
「あと……4体」

Dオメガモンは邪悪な意思をその目に、退治するインペリアルドラモン、セラフィモン、ヴァルキリモン、アポロモンを見据えた。

404ヤム02:2011/06/20(月) 21:23:50

ひーはさん空輝さん感想ありがとうございます。
短くてすいません。時間がなくて…(汗

感想よろしくお願いします。

405ひーは:2011/06/20(月) 23:11:17
時間がなくても良い作品ならまんぞくです

殺すことにとまどわないDオメガモン とてもこわいです
大輔たちはこんな邪悪な物体を倒せるのか!!
続きもがんばってください

406空輝:2011/06/22(水) 00:55:55
1VS8にも関わらず、圧倒的な強さを誇るDオメガモン…容赦ないですね。
残る4体はこの難敵相手にどのような戦いを見せるのでしょうか。

私もこんなに良い小説を読ませていただけるだけで嬉しいです。
まず一番大事なのは私生活だと思いますので、お気になさらず!
続きを楽しみに待っています。

407ヤム02:2011/07/21(木) 16:15:32

「強い……!」

アポロモンは歯噛みする。Dオメガモンは全身から闇のオーラを発し、こちらを眺め回す。

「残り1分半……次はどいつだ?」
「セラフィモン! 私に続いてください!!」

ヴァルキリモンはそう言うと真っ直ぐにDオメガモンに向かう。セラフィモンもすぐに続く。

「なっ……!?」

それに対しアポロモンは驚愕する。

(馬鹿な……仲間がやられたのを…奴の強さを見てないのか!? なぜあいつらは立ち向かえる!?)
「暁!」
「!」

見るとインペリアルドラモンがすぐ横に来ていた。その肩には大輔と賢が乗っていた。

「いくぜ……俺達が力を合わせなきゃあいつは倒せねえ」

大輔は先ほど拾ったゴーグルを頭につけると、ニッとアポロモンに笑いかける。

「遅れるなよ?」
「っ! ……ふん!」

アポロモンは鼻を鳴らす。同時にアポロモンとインペリアルドラモンもDオメガモンに向かう。

『レーザージャベリン!』

ヴァルキリモンが光の槍を放つ。DオメガモンがそれをDグレイソードで弾いた途端、

「っ!?」

光の槍は大爆発し、Dオメガモンはそれに飲み込まれる。

「………チィッ!」

少しして、爆発からDオメガモンが脱出する。そこには既に、セラフィモンが待ち伏せしていた。

『セブンヘブンス!!』

セラフィモンが7つの光球を放つ。DオメガモンはDグレイソードを大きく振りはじく。しかし、弾けたのは3つまでで、残り4つは命中する。

「っち……!」

大したダメージはなく、DオメガモンはすぐさまセラフィモンにDガルルキャノンを向ける。その背後に、インペリアルドラモンとアポロモンがいることに気付くかずに…

『インペリアルキック!!』
『スーパーコロナックル!!』
「なっ……ぐおおおっ!!」

Dオメガモンは背中にもろに食らってしまい、落下する。すかさずヴァルキリモンが追撃に構える。

『ホークインフェルノ!!』

両手を合わし、そこから赤い光線が放たれる。

『Dガルルキャノン!!』

Dオメガモンはとっさに身を返し暗黒砲を放つ。光線と暗黒砲は相殺しあう。

「面白い……ゴミが粘るじゃねえか!!」

Dオメガモンは暗黒な笑みを浮かべ、すぐにその表情が凍りつく。

「なっ……!?」

―――体が動かない!?

見ると四肢すべてに光の輪が付いていた。Dガルルキャノンも、上へ向けてから少しも動かない。

「この光……てめえかあ!!」

Dオメガモンはセラフィモンに向かって吼える。セラフィモンは光輪を指し言う。

「先ほど貴様が食らった4発の『セブンヘブンス』には相手の動きを拘束する力が備わっていた」
「っ……!!」

Dオメガモンは全身から闇の力を発し、光の輪を破壊しようとする。その時、Dオメガモンの表情に初めて焦りが表れた。

すぐ上空で、インペリアルドラモンがポジトロンレーザーを胸にはめ、アポロモンが背中の火炎球に、強大なエネルギーを溜め、凝縮し、力を増大させていた。

「Dオメガモン…」
「覚悟しろ!!」

インペリアルドラモンの胸部から超強大なエネルギー砲が、アポロモンの火炎球から超灼熱の太陽球が放たれる。

『ギガデス!!!』
『ソルブラスター!!!』
「っ……おのれえええええええ!!!」

エネルギー砲と太陽球がDオメガモンを飲み込んだ。

408ヤム02:2011/07/21(木) 17:02:11

第九十八話 

要塞周辺

「!!?」

一樹は不意に要塞を見る。要塞の下部の一部が爆発し、要塞が傾く。

「これは…」
「あいつ等がうまくやっているようだな」

輔は額から流れる血をぬぐい、剣を構える。対峙する双子も、荒い呼吸を整えながら横目で要塞を見る。

(……もう、いいよね?)
(うん。帰っていいと思う)

ニーナとニヤは小声で確認し、数歩輔と一樹に気づかれないように交代する。

「どこへ行く?」
「「!!?」」

双子の視界から輔が消え、その声が背後から聞こえた。双子はとっさに振り返り構えるが、

パンッ

同時に輔は手を叩く。双子は見えない力に吹き飛ばされる。

「「うわああああっ!!」」
「!? 輔!?」

一樹は驚いた顔で輔を見る。輔は無表情で言う。

「お前は余所を気にしすぎだ一樹。俺達の殺す相手はこいつらだ」
「殺すって…」

一樹は輔のその言葉に恐怖を感じる。今の輔からは、以前の輔の面影がまったく感じられない。
輔は神剣を双子に向ける。

「さあ、お前たちもそろそろ本気を出せ」
「「っ……!」」

双子は同じ顔で怒りを露にし、D-3を構える。

「「完全解除!!!」」



要塞内部・管制室

「うわわわわわわわわわわわっ!?」

要塞全体が傾き、床が斜めになる。ヒカリを抱えた梓は斜面に足を取られ倒れる。

「梓さん!」
「ヒカリちゃん!」

すぐに近くのパネルに捕まった北野とタケルが梓へ手を伸ばすが届かない。梓は徐々に急斜面になる床を滑り落ちていく。

「っ…ヒカプー!!」

梓はせめてヒカリだけでもと、ヒカリを胸にしっかりと抱く。高速で壁に叩きつけられようとしたその時、

「できるだけ丸くなれ!」

声が聞こえ、梓はヒカリを抱いたままできる限り体を縮める。直後に全身が大きな体に抱きしめられる。直後、梓は壁に激突する。何者かのお陰で痛みはない。

「っく…」
「! 魁人!?」

振り返ると黒ランをきた男、魁人がすぐ後ろにいた。

「大丈夫か? 梓」
「カイトォーーーー!!」
「うぎゃ!?」

梓は歓喜に魁人に抱きつく。そのすぐ横でまた何者かが壁にぶつかる。

409ヤム02:2011/07/21(木) 17:02:42

「っ…てぇ…!」
「! あんたは……」

そこには気絶したクダモンとラブラモンを抱えた冬扇がいた。
周りを見回すと、タケル、北野(ファルコモンを抱えている)、京は上で何かに掴まり、他にも伊織とウパモンを東谷が受け止めていた。

「あ…ありがとうございます」
「気にすんな。おー痛ぇ…」

あわてて頭を下げる伊織に東谷は顔をしかめて答える。さらにその横では…

「ふう。急に傾いたからびっくりしたわ」
「………」

獏哉の顔面を踏みつけ汗をぬぐう舞がいた。哀れ顔面クッションにされた獏哉はピクリとも動かない。
東谷はその様を見て一言。

「……よし。全員無事だな」
「無事ですかあれが!?」
(馬鹿! 舞のやることに文句を言うな! とって食われるぞ)
「食わないわよ!!」

舞のとび蹴りに東谷の首がゴキリと鳴る。

「うぎゃあああああっ!! 首が! 首がいてええ!?」
「生きてる証拠よ。喜びなさい」

舞はふんと鼻を鳴らし、平衡を取り戻す要塞の中でアポロモンを見る。

「アカツキ…」


「やったか…!?」
「無傷ではないはずだ…」

大輔の言葉に賢が答える。管制室の床には大穴が開いており、煙があふれ出ている。

「気をつけろ。いつ来るかわからん」

アポロモンが言う。ヴァルキリモンとセラフィモンも集まり、大穴に向け構える。

長い静寂。不気味なその静けさは時を何倍も長く感じさせる。



ガラッ…



「「「!!!」」」

大穴からわずかに音が聞こえた途端、4体は構える。

「………来る…」






「グルァ…」



アポロモンの体を、漆黒の刃が貫く。

「…………え?」

アポロモンは視線をおろす。そこにはDグレイソード『のみ』があった。

「「「………え?」」」

大輔も、インペリアルドラモン達も、魁人達も獏哉達も、何が起こったのか理解に時間がかかった。



「あ……アカツキイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!」

410ハチベエ:2011/07/22(金) 19:39:33
はじめまして!デジアド改やってますハチベエです。ヤムさんの小説凄く面白いです!お体に気をつけて、面白い小説を書いてください

411ハチベエ:2011/07/22(金) 19:39:35
はじめまして!デジアド改やってますハチベエです。ヤムさんの小説凄く面白いです!お体に気をつけて、面白い小説を書いてください

412ヤム02:2011/07/28(木) 20:28:24


「かっ……!」

アポロモンは激痛の中、己に何が起こったのか再度確認する。
己の体を深く貫いているのは、Dオメガモンの左腕である、Dグレイソード。しかし、そこにDオメガモンの姿はない。Dグレイソードは肩口から切り離され、独立して動いている。

「な…にが……!?」

その答えを考える暇もなく、Dグレイソードが動いた。

視界に己の鮮血と砕けた鎧が見える。Dグレイソードは刃を抜くとアポロモンを袈裟懸けに切り裂いた。アポロモンの意識はそこで途絶えた。


「アカツキィイイイイイイイイイ!!!」

大輔が叫ぶ中、アポロモンは力なく、管制室の壁一面のコンソールやモニターへと落下した。

「何だ!? 何が起こっている!?」

何が起こったか解らず硬直するヴァルキリモン。その背後で、影が動く。

「ヴァルキリモン! 危ない!!」
「なっ!? ぐああああっ!!」

ヴァルキリモンを背後から暗黒エネルギー砲が吹き飛ばす。ヴァルキリモンは不意討ちにまともに食らい倒れる。そこには、Dオメガモンの右腕、Dガルルキャノンが砲口から煙を上げ空中に浮いていた。

「何だ!? 奴の腕だけが動いているのか!?」

Dグレイソードの攻撃をかわすセラフィモンが言う。

その時、管制室中心の大穴から黒い触手が大量に飛び出す。

「何!?」

黒い触手はセラフィモンの四肢に巻き付き、動きを封じる。

「セラフィモン! ぐあっ!!」

助けようとするインペリアルドラモンをDガルルキャノンが吹き飛ばす。

「っ…この……!」

セラフィモンは何とか逃れようと身をよじらせる。しかし、その目の前にDグレイソードが回りこんできた。

「っ……!!」
「セラフィモン!!」

Dグレイソードは容赦なく、セラフィモンの鎧を砕きその身を切り裂く。

「っがぁ……!!」

セラフィモンは力無く地へ落下し、パタモンへ退化する。ヴァルキリモンもしばらく呻きホークモンへ退化する。

「パタモン!」
「ホ、ホークモン!!」
「一体何が起こっているんだ!?」
「解らない! だが…」

賢は触手の這い出る大穴のそこを見据える。

「奴はまだ生きている……!!」

直後、大穴から漆黒の騎士が飛び出す。腕の無いはずのそいつは、両の肩口から黒い触手を大量に吐き出している。その両眼は鮮血のような、凶暴な真紅だ。

「何だあれ!?」

全身漆黒のDオメガモンが着地すると、傍らにDグレイソードとDガルルキャノンが集まる。

そして、Dオメガモンの顔において、本来口がある部分に、真一文字の亀裂が走る。

「「「………!?」」」

全員が緊張する中、Dオメガモンは上を仰ぐ。

口元の亀裂が裂け、ギラリと大量に並ぶ鋭い牙が覗く。そのまま、口は限界がないように裂け、大きく開かれる。

「っ!! 耳を塞げ!!!」

それは本能が告げる直感でしかなかった。インペリアルドラモンのその言葉に、大輔に賢、下にいるタケル達や獏哉達も従った。

直後、

「――――――――――――――――――――――――――――――!!!!!!!!」

それは最早、叫びと呼べる範疇ではなかった。Dオメガモンが放つその音は、大気を震わせるどころか切り裂き、壁や天井を割るどころか砕き、子供達を脅かすにはあまりにも禍々しい。

「うわあああああああああああああああああああああっ!!!」
「きゃああああああああああああああああああああああああっ!!!」
「があああああああああああああっ!!!」

子供達の悲鳴が誰のものでもなく重なりあった。



「ヒャハ☆ 面白いことになったなあ☆ これも計算のうちか☆?」

ジョーカーは白仮面をモニターからロードへと移す。

「…………」

しかし、ロードは表情を変えずただ静かにモニターを眺めているだけであった。

「………ふむ」

それを横目に見て、アル=ミナは顎に手を当てる。

(どうやら、『仕込み』は無駄ではなかったようだな…)

413ヤム02:2011/07/28(木) 20:32:54

ひーはさん、空輝さん、ハチベエさん感想ありがとうございます。

忙しくてなかなか更新できなくすいません(汗

Dオメガモンの謎の変化にその力、そして残るはインペリアルドラモンパラディンモードのみ。戦いの行く末は如何に……!?
そして影で蠢くアル=ミナの思惑。その目的とは…!?

すいませんが今日はここまでです。また感想・質問等よろしくお願いします。

414kokoro:2011/08/28(日) 16:19:01
>>楽に稼げるアルバイトの件。情報載せておきます(#^^)b☆

415kokoro:2011/08/30(火) 17:35:21
>>楽に稼げるアルバイトの件。情報載せておきます(*・ω・)☆

416yuri:2011/08/31(水) 12:55:07
>>楽に稼げるアルバイトの件。情報載せておきます(・_・)!

417ヤム02:2011/09/01(木) 16:46:01

(暗い……真っ暗だ…)

―………! ……!―

(体中が痛む……指一本も動かせない…)

―…キ……ツキ……!―

(当たり前か。『D-apollo』を使ったんだ。俺の体はもう…)

―アカ…キ! しっか……て!―

(何だ…? 声が……誰かが…)


「「「アカツキ!!!」」」


「!?」

アポロモンは閉じていた瞼を開いた。目の前には両目から大粒の涙をポロポロ零す舞の顔があった。

「アカツキ!!」
「大丈夫かアカツキ!?」

視界の横から獏哉が顔を出す。アポロモンは視線をめぐらす。倒れている自分の周りには、他にも東谷や冬扇がいた。

「お前ら……。 !? Dオメガモンは!?」

アポロモンは体を起こそうとするが、体中に痛みが走り、すぐに頭を落とす。

「動かないで! 酷い傷なんだから!!」

舞がアポロモンの肩を抑える。その押さえる手が、恐怖に震えていた。

「………舞…」
「お願い……もう、無理しないで…」

舞は顔を伏せる。アポロモンの装甲に、涙が落ちる。
アポロモンは自分の体の傷を見る。腹部から背中にかけて貫かれ、胴を大きな裂傷が走っている。

そして、そこからは血液ではなく。データの粒子が湧き出ていた。

「………ああ……そうか…」

アポロモンは納得し、嘆息する。

「もう……俺は人間じゃないんだな…」



「『D-apollo』……どんな効果があるんだ?」

『光闇の神殿』・フランクモンの研究室

「フェフェフェ、突然来て何故そんなことを聞く? ウィンラン」

フランクモンはモニターで要塞内の闘いを眺めながら、後方で研究室内を見回すウィンランに訊く。

「別に。お前の作った物がどれほどのものか、お前の技術力の程を知りたくてな」
「フェフェフェ、建前にしてはらしくないことを言う」

フランクモンは椅子を回転させ、後方を振り返る。

「『D-apollo』は成り損ないである暁をアポロモンの姿へ完全解除させるための薬であるものだ。だがそれは、本来成れないものへ成らすための強引な力だ」
「……それで? 『副作用』は?」

ウィンランはデスクに置かれている機材や資料を適当に手に取ったりしながら訊く。フランクモンは肩をすくめて答える。

「『副作用』ではない。これは本来作用する力によるものだ」

フランクモンは淡々と語り始める。

「貴様のように完成されたデジソルジャーは、完全解除時には体がデータ体へと変換され、デジモンとなる。部分解除の時にはその部位のみがデータ体へと。つまり今の貴様はただの人間。斬れば真っ赤な血の吹き出る人間だ」
「しかし、失敗作の暁には人間体からデータ体への変換、つまり完全解除ができない。そんな暁を完全解除させるには……」

ウィンランは手に取ったメモリースティックを手元で転がす。

「暁を完全にデータ体……デジモンそのものにする」
「フェ、その通り」

フランクモンは愉快そうに口端を吊り上げる。

「そもそも何故暁がアポロモンの力を使うと命が削れるか。それは完成作でもないのに人間体のままデジモンの力を使うからだ。人間の子供如きが神レベルのデジモンの技を使うにはそれ位の代償は必要だ」
「そして貴様の言った通り、それらを解決するには暁をデジモンにするしかない。そしてそれを成すために作ったのが『D-apollo』」
「そんなことが可能なのか?」
「もちろん簡単ではない。人間の体の組成式を完全に破壊し、データ体へと書き換える。今のように発動時は無痛だが、あと1時間もすればアポロモンは全身に激痛苦痛が走り悶え苦しむ。その後は人間の姿に戻ることは可能だが、それはデータ体でできた人間に似せて作られた姿」
「……力を得るために、暁は人であることを捨てたか…」

ウィンランは研究室の一面を占める本棚を眺める。1つのファイルを取ってはパラパラ目を通して元に戻し、また他のファイルを取る。

「フェフェフェ、さらにこの薬を使った後も、暁の苦痛は終わらない」
「……何だと?」

ウィンランは眉をひそめてフランクモンを見る。

「万が一この戦いを生き抜いたとしても、暁はアポロモンの姿になる度に命を削ることとなる。言ってみればこちらが『副作用』なのかも知れぬ」
「……では、暁は…」
「フェフェフェ、まあ、長生きは出来ない」

笑うフランクモン。ウィンランは黙り込み、手に持つファイルを元に戻し研究室の扉へ向かう。

「素晴らしい技術力だな。フランクモン」
「もう戻るのか?」
「ああ」

ウィンランは一度も振り返らずに研究室を出て行った。

418ヤム02:2011/09/01(木) 16:46:55


要塞内部・管制室

「キシャアアアアアアアアアアアア!!!」

Dオメガモンは奇声を上げ、両肩口から出る黒い触手を鞭の様にしならせ放つ。

「避けるんだ!」
「くっ……!」

賢の支持にインペリアルドラモンは飛翔し触手から逃れる。しかし、触手は延々と伸びて追ってくる。

「大輔!」
「おうよ!」

賢の指示を受け、大輔は背後から迫る触手を光の双刃で切り払う。斬られた触手の先端は黒い霧となって霧散する。

「賢! この触手闇で出来ているぞ!」
「闇に充満するこの世界では無限に作成できるか…」

賢は顎に手を添え考える。その目は、Dオメガモンの背後にある大穴を見据える。

「せめて、あの穴を塞いで要塞内に闇の力が入り込まないようにしないと…」

その時、インペリアルドラモンの進行方向にDグレイソードとDガルルキャノンが回りこむ。

「! 不味い!」
「大輔! 賢ちゃん! しっかり掴まって!」

後方から触手群、前方から闇の斬撃と砲撃が放たれる。直前にインペリアルドラモンは上昇しかわす。しかし、

「キャジャアアアアアアアアア!!」
「何!?」

上昇したインペリアルドラモンの背後に、Dオメガモン本体が飛び回り込んでいた。

「くっ…2人共ごめん!!」
「「うわっ!!」」

インペリアルドラモンは両肩に乗る2人を下に投げた。

直後、インペリアルドラモンの首筋に、Dオメガモンが鋭い牙を突き立て食らい付いた。

「ぐ……うああああああああああ!!」

「インペリアルドラモン!!」
「うわあああああああ!!」

落下していく大輔と賢。2人が地面に叩きつけられる直前、ディアトリモンが滑り込んで受け止める。

「うげっ!?」
「うわっ!?」
「大輔さん! 一乗寺さん! 大丈夫ですか!?」

ディアトリモンはすぐにファルコモンに退化し、北野が駆け寄る。

「サ…サンキュー北野、ファルコモン…」
「ああ、助かった」
「いいえ、でも、これでもうファルコモンも限界で…もう進化できません…」

大輔は打った頭を振り、賢は立ち上がり上を見る。そして、驚愕に目を見開く。

「イ……インペリアル!!!」
「なっ……!?」

遅れて見た大輔は絶句し、来たのは青ざめて口元を両手で覆う。

インペリアルドラモンは首元を噛み付かれたまま、全身を触手で巻きつかれ、まるで頭の2つある黒いミノムシのようになっていた。

「……あの野郎…!」
「インペリアルを……捕食するつもりだ」

419ヤム02:2011/09/01(木) 17:23:47

「不味い! このままじゃあ…」
「魁人! どうするつもり!?」

拳を握り締める魁人の腕を梓が掴む。

「このまま何もしないわけにはいかねえ!」
「クダモンはもう戦えないわよ!! 1人で何するつもり!? こらあんたも」

梓はもう片方の手を伸ばしタケルの首根っこを掴む。

「梓さん! 何かしなければインペリアルドラモンだけじゃなく僕達も全滅してしまいます! ヒカリちゃんだって…!」
「だからあんたも1人で何が出来るのさ! 持ってきた『イグドラシルの葉』もあと1枚しかない! 大体あたし達はヒカプーを助け出すために乗り込んだんだから…! まずヒカプーを安全なところに…」
「あれ?」

そこで、デジモン達の介抱をしていた京と伊織が首を傾げる。

「それでそのヒカリちゃんはどこに…?」
「「「…………なに?」」」

5人は互いの顔を見合い、誰もが首を横に振る。梓はハッとし、自分の懐やポケットを漁る。

「どうした?」
「……あたしの持っていた『葉』がない…」
「テイルモンも見あたらな…あっ! あそこです!」

周りを見回し、伊織が一方を指した。



「……あんた……!」

舞を始め獏哉たちは目を見開く。アポロモンも、視線だけを見て驚愕する。

「……お前…!」

そこには、テイルモンに支えられ、ヒカリが立っていた。フラフラで青ざめていたが、ヒカリは真っ直ぐな目でアポロモンを見る。

「………お願い…」

テイルモンに『イグドラシルの葉』を渡され、ヒカリはそれを噛む。

「私達と一緒に…」

ヒカリのD-3が輝き、光の聖弓が発動される。聖弓のその輝きと大きさは、今までにない規模のものであった。
アポロモンの目が驚愕から、温かい優しいものに変わった。

「………ああ…」



「く…ぐあぁぁああぁああああああ……!」

インペリアルドラモンは激痛に呻く。牙はさらに深く深く食い込み、Dオメガモンは本当に食い千切らんとする。全身を触手に拘束され、周囲をDグレイソードとDガルルキャノンに囲まれ、逃げるすべはない。

(ここ……までか……!)


「インペリアルドラモン! 畜生!!」

大輔はどうすることも出来ない悔しさに拳から血を流す。賢は打つ手なしに俯く。

(もう……駄目だ……!)


黒い触手に巻きつかれたインペリアルドラモンとDオメガモンを、轟炎が飲み込んだ。


「「「!!?」」」


「ギャシャアアアアアアアアア!!!」

轟炎から、所々炎に焼かれたDオメガモンが吐き出され落下した。黒い触手はすべて焼き散り、床の大穴は炎の壁に塞がれる。

そして、轟炎が収まりそこにいたのは…

「お前……!」
「悪いな。少しへばってただけだ」

インペリアルドラモンと、全身から煌く炎を噴出すアポロモンの姿があった。

「アカツキ!!」

大輔は顔を笑みに染め、アポロモンを見上げる。アポロモンも二ッと笑う。

「よう大輔、お前らはこんなもんか?」
「へっ……うるせえよ! お前こそ大丈夫かよ!」
「はっ! そんなの…」
「っ! 危ない!」

インペリアルドラモンが叫ぶ。左右からDグレイソードとDガルルキャノンが迫る。

「いらねえ心配だ!!」

アポロモンは両手を左右にかざし、轟炎を放つ。DグレイソードとDガルルキャノンは炎に呑み込まれ吹き飛ぶ。

「いくぞ! あの気味悪い化物をぶっ倒す!!」

アポロモンは下にいるDオメガモンを睨み付ける。インペリアルドラモンは若干戸惑いを見せたが、すぐに嬉しそうに頷く。

「……ああ!!」

アポロモンとインペリアルドラモンは一斉に、Dオメガモンに目掛け飛翔した。

420saorin:2011/09/02(金) 08:04:52
世の中には簡単で儲かる仕事があるもんだ(;・ω・)☆

421ヤム:2011/09/07(水) 23:44:11

第九十九話  決着! 貫くオメガソード

『光闇の神殿』

「ほう、まだやるつもりのようだな」

アル=ミナは顎に手を当て感心したように言う。不意に、今まで黙っていたロードが立ち上がる。

「……雷黄(ライコウ)を呼べ」



人間界・輔の家

「皆、集まってくれてありがとう」

太一は、集まってくれた仲間達に礼を言った。

「どうしたんだ太一? 急に呼び出して」

太一の正面にいるヤマトは腕を組み訝しげに言う。その右隣にいる空も何事かと表情を険しくしている。

「何か……あったの?」
「ありました」

答えたのは太一の隣に立つ光子郎だ。集まった中で、彼が最も衰弱しているように見えた。

「テントモンとパルモンが死にました」
「「「っ……!!」」」

ヤマト、空、そして丈の表情が強張る。
光子郎は胸の中心に手を当てる。

「感じるられるんです。もう、テントモンはいないという事が……」
「……うん。僕も、東京タワーでゴマモンが死んだのは何となく感じ取った」

丈も胸に手を当て言う。光子郎はノートパソコンを開き、全員に見えるように近くのテーブルの上に置く。

「今はこちらに来れませんが、ミミさんも同じです」

パソコンは映像通信を開いており、目を真っ赤に泣き腫らしたミミが映っていた。

『なんだか……心にぽっかり穴が開いた感じ…』
「……テントモンとパルモンは、彼等が何とか救ってくれたようね」
「そして、その症状は俺やヤマトには現れていない」

太一は腕を組み言う。ヤマトは太一を見る。

「つまり……」
「ああ、大輔達は今ウォーグレイモン・メタルガルルモンと戦っている」
「…………」

ヤマトの表情が曇る。賢の前では気丈に見せていたが、やはり大事な親友と大事な後輩が戦うというのは考えるだけでも苦痛だ。

太一は、しばらく目を閉じていたが、やがて強い眼差しを見せた。

「……俺達も、これ以上ジッとしている訳にはいかねえ」
「いかねえって、僕達にはどうする事も出来ないよ?」

丈が言う。

「僕達は人格に変化は及ばなかったけど、それぞれ紋章の力はマインドバンデッドによって奪われ消えたんだ。もう僕達に出来ることは…」
「いいや、消えてねえ」

太一はかぶりを振った。

「例え紋章のエネルギーが奪われようと、俺達の心はまだここにある」

太一は自分の胸の中心を指す。

「俺の『勇気』は消えてねえ。ヤマトの『友情』も消えてねえ。空の『愛情』も消えてねえ。光子郎の『知識』も消えてねえ。ミミちゃんの『純真』も消えてねえ。丈の『誠実』も消えてねえ。奪われても俺達のそれは、無限に生まれる」

その場の全員が太一を見る。太一は力強く頷く。

「俺達は何も終わっちゃいねえ。俺達の『思いの力』は……決して無くなったりはしねえ!!」
「「「「「!!!」」」」」

その場の全員の胸の中心に、紋章が光り浮かびあがる。

「これは……!」
「紋章!?」
『え? え!? 何で!?』
「太一……」

太一は眼を閉じる。

「教えてくれたのは……あいつ等だ。アグモン達を失った俺達は前へ進むことをしなかった。だが、あいつ等は違う。苦しみや悲しみを乗り越え、全てを切り開くために、前へ進んでるんだ」

目を開き、太一はニッと笑う。

「俺達が遅れる訳にはいかねえだろ?」

422ヤム02:2011/09/07(水) 23:44:49


要塞内部・大広間

「「おおおおおおおおおおおおおおお!!!」」
「ギシャアアアアアアアア!!」

管制室へ続く通路を破砕し、Dオメガモンが大広間に転げ出る。続いてインペリアルドラモン、アポロモンも大広間へと出る。

「ここの広さなら十分に戦えるぜ!」
「皆は入ってこないように!」

大輔と賢は言うとインペリアルドラモンの肩に乗る。インペリアルドラモンは白い翼をはばたかせ飛翔する。

「キシャアアアアアアアア!!!」

Dオメガモンは怒りの声を上げる。両肩口にDグレイソードとDガルルキャノンが装着する。マントは闇に包まれると形を変え、蝙蝠のような禍々しい羽になる。

『ポジトロンレーザー!!』
『アロー・オブ・アポロ!!』

上からインペリアルドラモンの光線、前方からアポロモンの灼熱の矢が放たれる。

「ショアッ!!」

Dオメガモンの黒翼が羽ばたき飛翔、2つの攻撃をかわしDオメガモンはDグレイソードを大きく振り、斬撃を放つ。同時にDガルルキャノンからも暗黒砲を放つ。
インペリアルドラモンとアポロモンはそれぞれ攻撃をかわし、一気に距離を詰める。至近距離から大技を叩きこもうと力を溜める。しかし、

「! まずい!」

Dオメガモンは両腕を前で交差させる。『Dオメガフォース』の構えだ。2体は咄嗟に急ブレーキで止まり後退する。

「まずいな……奴の遠距離攻撃をかわそうと近付けば一番危ないあの技が来る……」
「何とかして奴の動きを封じなければな…」

そう言いアポロモンは両手を胸の前で合わせ組む。組んだ両手に炎の力が宿る。

「俺が奴の動きを止める。一瞬だけだろうが、その隙をついてくれ」
「………わかった」

インペリアルモンが頷き、アポロモンは組んだ両手を振り上げる。

『バーニングプリズン!!』

アポロモンが両手を振り下ろし床に叩きつける。同時にDオメガモンの周囲から幾つもの火柱が上がる。まるでDオメガモンを炎の牢獄に閉じ込めるように、炎の柱は一斉にDオメガモンを呑みこんだ。

「ギシャアアアアアアア!!」

すぐさまDオメガモンは『Dオメガフォース』で炎を打ち消す。その時すでに、インペリアルドラモンはDオメガモンの後方に回り込んでいた。

(好機!)

Dオメガモンはインペリアルドラモンに気付いていない。Dオメガフォースはエネルギー量から連発できるものではない。先程溜めた力に更にエネルギーを加算し、インペリアルドラモンは放つ。

『ギガデス!!』

ポジトロンレーザーを胸部に装着し、極太エネルギー砲を放つ。
狙いは違わず、強力なエネルギー砲はDオメガモンを呑みこみ大爆発した。



管制室

「きゃああ!」
「うわあぁ!」

爆発の振動で要塞内が大きく揺れる。大輔達や獏哉達は何とかそれぞれ持ち堪えるが、

「あうっ……!」
「ヒカリ! しっかり!」

ヒカリだけは耐えられず倒れてしまう。急いでテイルモンがヒカリをしっかりと捕まえる。

「ヒカプー!」
「ヒカリちゃん!」

梓とタケルも駆け寄り、ヒカリの体を支える。

「無理しちゃダメだ!」
「タケルくん……でも…」
「タケル! テイルモン! とにかくまずはヒカプーを外に出すよ!」

梓の言葉にタケルとテイルモンが頷く。しかし、

「いや……っ」

ヒカリは身をよじらせそれに抵抗する。
「ヒカプー!?」
「お願いアッズー……待って…」

ヒカリは虚ろになりかけた目で、大広間へ続く通路、その先で繰り広げられる激戦を見る。

「この戦いを……『彼等』の闘いを見ておきたいの!」

423ヤム02:2011/10/30(日) 20:02:18

「ギィルルァア……」

爆煙の中で、Dオメガモンが立ち上がるのが見える。

「しぶといな…」
「大技を何度ぶつけても立ち上がるぞ…」

大輔とアポロモンは表情を険しくして言う。その横で、賢は顎に手を当て思案する。

「確かにダメージは与えている。しかし、どの攻撃にも決定打がない」
「………つまり?」
「あいつはおそらく、アポロモンの大火力にも、インペリアルドラモンのエネルギー攻撃にも強い耐性がある。派手にやられても、実質的なダメージ値は低いんだ」
「じゃあどうする? 自慢じゃないが俺は炎以外の攻撃方法はないぞ」
「こちらも、パラディンモードになって光の属性値が上がってはいるが…」

アポロモンとインペリアルドラモンが口々に言う。賢は「なら……」と顔を上げ大輔を見る。

「大輔……あっいや…」

しかし、賢はすぐにその考えを却下する。その方法はあまりにも危険…。

「よし! 俺の双刃だな」

大輔は頷き、D-3を双振りの白剣にお復元する。剣は驚いた顔で大輔を見る。

「大輔!?」
「なんだと……!?」

アポロモンも驚きに顔をしかめる。それは確かにDオメガモンを倒す方法かもしれない。だがしかし…

「お前の……お前自身の手で殺すことになるかもしれないんだぞ…! オメガモンを…!」
「覚悟を決めて、ここへ来た」

大輔は即答する。その目には強い意志があった。しかし、アポロモンはそれに怒りを感じる。

「っ……お前……それで本当に…」
「喋りすぎたようだよ」

インペリアルドラモンが言う。Dオメガモンは僅かな間に回復していた。漆黒の翼を広げ、大きく膝を曲げ跳躍の準備をしていた。

「来るっ!」
「チッ……!」
「アポロモン! 炎の壁!」
「あっ……ああ!?」

回避していたアポロモンは、大輔の突然の指示に慌てて急ブレーキをかけ止まる。

「早く! 出来るだけ時間を稼いでくれ!!」

Dオメガモンが飛翔し迫る。

「くっ……そ…!」

アポロモンは急いで轟炎を放ち障壁を作る。Dオメガモンは勢いのまま炎の壁に激突する。

「ジャアアクァアアアアア!!」
「このっ……! 大人しくしてろ!」

もがくDオメガモン。アポロモンはさらに炎を放ち、Dオメガモンを拘束する。

「大輔……本当にやるのか…?」

賢は心配そうに大輔を見る。対する大輔はジト目で見返す。

「何だよ。賢だって最初そうするよう言おうとしたくせに」
「それは……」

自分の失態に言いづまる賢。大輔はニッと笑う。

「冗談だよ。直ぐに考え直そうとしてくれたろ?」
「大輔……」
「おい! いつまで時間稼ぎさせる気だ!?」

アポロモンが炎を放出し続けながら叫ぶ。大輔は「おっと」と双刃を構え、目を閉じる。

「……おい大輔!」
「!?」

アポロモンは首だけ回し、後ろの大輔を見る。

「……大丈夫なんだな?」
「ああ。もう誰も傷つけさせやしねえよ」

大輔は目を開けるともう一度ニッと笑う。

「ヒカリちゃん達も、お前達も、オメガモンだってな」
「………あ、そう」

アポロモンは何だか不満そうに前に向きなおる。


(俺が言ってるのは、お前自身のことなんだが……)

Dオメガモンは炎の拘束から飛び出す。すぐさま飛翔し、別方向から攻撃しようとDガルルキャノンを構える。

「キルァッ!?」

しかし、直ぐ目の前には既にアポロモンがいた。拳に轟炎と眩い光を纏い、大きく引いていた。

「わざと抜けられるようにしたんだよ」

拳の炎が増幅する。

(全く、ヒカリと言いこいつと言い…)

「シャアアアアアアアッ!!」

Dオメガモンは大口を開ける。ズラリと並ぶ鋭い牙の奥に、邪悪なエネルギーが凝縮されていく。

『フォイボスブロウ!!!』

アポロモンの轟炎の光拳が放たれる。Dオメガモンが口から闇の瘴気のようなものを吐き出すが関係ない。そのまま顔面に拳を炸裂させ、ぶっ飛ばした。

「ギャシャアアアアアアアアアアア!!!」

(もっと早く判り合えれば良かったかもな…)

アポロモンはフッと、僅かに口端を吊り上げた。


「頼む! 賢! インペリアル!」
「「ああ!」」

2人が頷くのを確認し、大輔は双刃を交差させ、目を閉じた。

(武蔵……あんたの力……使わせてもらうぜ…)

424ヤム02:2011/10/30(日) 20:53:57
裏話

『光闇の神殿』・東方掛橋

「ウィンラン・レイ」

無感情な声に、ウィンランは大理石で出来た橋の中心で足を止める。振り返ると、後方数メートル先に緑目緑髪の少女が立っていた。

(いつの間に…気配を感じない…?)

ウィンランは目を細め、少女に向き直る。

「見ない顔だな。新入りか? 用は何だ?」
「了解。質問にお答えます」

少女は機械的な喋り方で答えた。

「前者の質問。私は『ネオアンドロモン』、コード『X−CC(イクスシーシー)』。フランクモン様の作品であり、貴方様とは初対面、新入りでございます」
「フランクモン……」

その名が出た途端、ウィンランは表情を険しくする。その名が出たことで、後者の質問の答えも得た。

「後者の質問にお答えします。先ほどフランクモン様の研究室から盗み取った、フランクモン様の研究データの一部を返していただきます」
「……流石に気付くか…」

ウィンランは懐から1つのフロッピーディスクを取り出す。

「そこまで重要なものなのか、この研究データは?」
「了解。質問にお答えします。私はフランクモン様のご命令どおりに動くだけであり、その研究データの重要度は理解しておりません」
「ネオアンドロモンと言ったか?」
「お答えします。『ネオアンドロモン』は私以外にも多く製作されています。フランクモン様と私達は、互いをコードで呼び合います」
「ではX−CC。お前は人間か?」
「お答えします。私は『ネオアンドロモン』。人間ではなくデジモンであります」
「その姿が本来の……いや通常の姿か?」
「イエス」

ウィンランは内心で驚愕する。目の前にいる少女の姿形はどこからどう見ても人間そのものであった。

「お前達は何の用途で造られた?」
「機密情報です。秘匿します」
「同じ組織の者である俺にもか?」
「秘匿します。『同じ組織の者』であっても、『仲間』ではございませんので」
「言うじゃねえか造り物」

ウィンランは苦笑し、右手のフロッピーディスクを懐に戻す。

ドゴンッ!!

「!!?」

ウィンランは目を見開く。直ぐ目と鼻の先に、 無表情のX−CCはいた。先程までいた所では、大理石の地面が陥没していた。そのしなやかな右脚は大きく振り上げられ、ウィンランの右手を蹴り上げた。手にあったフロッピーディスクは高く宙を舞う。

「お返し願います」
「断ったら?」
「了解。質問にお答え…」

X−CCは一瞬で回転し、右回し蹴りでウィンランを蹴り飛ばす。

「…する前に力尽くで取り返します」

跳躍。 X−CCはフロッピーディスクに手を伸ばす。

「セイバージャスティモン」

X−CCとフロッピーディスクの間に、無数の剣が出現。刃を X−CCに定め、飛来する。
X−CCは空中で身を翻す。1本目をかわし、その柄尻を蹴って横へ移動。続いての剣群も、かわしては蹴ってと移動していく。結果、元の位置に戻る様になり、再びフロッピーディスクに手を伸ばす。

「よっと」

しかし、それよりも早くウィンランがフロッピーディスクを取る。

両者は間を開き橋の上に着地する。

「最終申告です。データをお返しください」
「力尽くじゃなかったのか? 来いよ」

機械的に話すX−CC に対し、ウィンランは挑発の笑みを浮かべ言った。

425!ninja:2012/02/02(木) 07:19:41
光と闇と無だよ。

426名無し:2014/08/13(水) 02:42:40
つづきは?

427自称ヤム:2022/10/07(金) 22:24:14
続きみたい?


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