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フレイ様人生劇場SSスレpart5〜黎明〜

825人為の人・PHASE−34:2004/09/13(月) 14:32
いつまで自分はここにいていいのだろうか。そんな考えが繰り返し
脳裏をかすめる中、その日僕とラクス、それにシーゲルさんを
加えた面々はクライン邸の庭で「優雅」に紅茶を飲んでいた。
もう戦争は遠いどこかの話なのだと思い始めていた。できることなら
このまま逃げ続けて、楽をしたい。そんなふざけた考えすら頭を
もたげるようになって、僕はティーカップを取る手も進まなかった。
そんな中、目の前のディスプレイに衝撃的な事実が映った。
オペレーション・スピットブレイク。直前までパナマと告げられていた
攻撃の矛先は、その実行にあたって突然アラスカに変更されたのだ。
アラスカ。そこにはアークエンジェルが「いる」。僕のことを死んだと
思い、ザフトが攻撃を加えてくることも知らないたくさんの人達が。
僕は自分を呪った。結局そういう奴なんだ、きっと攻撃対象が
アラスカでなければ見向きもしなかっただろうと。それでもただ
思い出すのは懐かしい人々、そして最後にあの子の不安そうな顔。
ティーカップを取り落とし震え始めた僕を、ラクスが見つめていた。

確かに僕は何もできないのかもしれない。僕一人が戦場に突っ込んで
いった所で、急に戦争が終わるわけでもない。でも、このまま何も
できないからといって何もしなかったらもっと何もできない。
そのまま世界は僕の、平和を願う人達の手の届かないところへと
行ってしまう。だから、僕はまた戦わなければならない。本当に
戦わなければならないのが何かを見極めて、ただそのために。
ラクスは僕の決意に似た言葉を受け止め、僕を案内していく。
まだ心のもやもやは取れていなかった。けれど突き上げるような衝動は
それすら無視させていくようで、僕はとにかく行動することを望んだ。
ザフトのエリートの象徴である赤服を身につけて、僕は新たなる剣への
道を歩む。その先導者であるラクスがクライン邸で僕に言いたかった
のが何であるかを、僕は分かったつもりになっていた。

目の前に置かれたMSは「ガンダム」だった。そして僕の横にいた
女性の名はラクス・クラインだった。そして彼女の頬に口づけを
したのは、キラ・ヤマトという名の僕だった。僕の行く道に必要だと
言ってくれたラクスのためにも、平和を望む全ての人々のためにも、
そして何より僕自身のためにも、僕はすぐさまMSを起動させる。
そう、果てしなく矛盾する可能性を秘めた決心が揺らぐその前に、
僕はこの戦争を何としてでも終わらせたいと願っていたのだった。
そして事実、僕にはそのための力があった。フリーダム。
自由の翼を得た僕は、再び漆黒の宇宙へと飛び出した。
すさまじい機動性を持つ機体が僕の手で、迎え撃つザフトの
パイロットを圧倒する。コクピットを狙わないように、爆発しない
ように。これ以上の犠牲を出さないためにもそれが一番と考えた僕は、
敵の武器や移動手段だけを破壊していくことに集中した。
途中で一機のシャトルとすれ違ったが、その時の僕はそこにアスランが
乗っていたことなど気づきもしなかった。気持ちは前だけを見ていた。
やがて青い地球は次第に大きくなり、僕の目が北米大陸を捉えた。
ごく一部の人だけしか知りえない結末が、すぐそこに迫っていた。


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