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フレイ様人生劇場SSスレpart5〜黎明〜

723キラ(♀)×フレイ(♂)・46−9:2004/06/18(金) 01:00
「もう、止めとけ、アスラン。そいつに何を言っても無駄だ」
実に意外な人物が、精神的な呼吸困難に喘いでいたアスランを救った。
本来、仰ぐ旗の色から、アスランよりもフレイに組する立場であるはずのカガリが、
まるでアスランを庇うかのように、嫌悪の感情を隠さずにフレイを睨んだ。
アスランは驚いた表情で、フレイは興味深そうな瞳で、カガリを見つめている。

「さっき、コイツの母親は、連合の外務次官とか言っていただろ?
お前が戦闘のプロであるように、多分、フレイは言葉のスペシャリストだ。
会話を正論と理論武装で塗り固めた上で、己の主張の矛盾を排して言質を取らせず、
逆に敵側の言質を抑えた上で、相手の主張の矛盾には鋭く突っ込みを入れてくる。
そういう、口先一つで、黒いカラスを白と言いくるめる事も可能な厄介な連中さ。
だから、アスラン。あんまり、コイツの言うことを真に受けない方が良いぞ」
アスランを慰めながら、カガリは、フレイに感じていた潜在的な反発心の源が何なのか、
ようやく、把握する事が出来た。ようするに、フレイは、カガリが世界で一番嫌いな人物
と良く似ていたのだ。そう、口先一つで、世界を欺き続けてきた、オーブの獅子とかいう
偉そうな呼称で呼ばれている、彼の実…ではなくて、最近、仮と知らされた父親に。


「僕は、単に老婆心から、アスラン君に忠告しただけなんだけどね。
アスラン君はキラに討たれても本望かも知れないけど、彼のキラへの葛藤なんて、
彼の仲間達にとっては、どうでも良い話しだろ?」
かつて、トールがフレイの正体を見破ったように、カガリも数多の失敗から、
フレイの本性を突き止め、最良の対処の仕方を学んだようだ。
一瞬、今度はカガリを論破しようかとフレイは思ったが、そろそろ眠くなってきたので、
止めることにした。結局、彼は、カガリに拉致られたまま、一睡もしていなかったのだ。
「君とキラの愛憎劇に巻き込まれて、君の仲間が死んだりしなければ良いけどね」
睡魔の誘惑に身を委ねながら、最後にそれだけをアスランに告げると、フレイはゴロン
と寝転がって、会話を打ち切った。眠気がフレイの理性に皹を入れたのか、今まで、
完璧な理論武装を施していたフレイの論述の中に、僅かに本音が入り混じっていたが、
自分一人の思考に囚われていたカガリもアスランも、その傷の存在に気がつかなかった。

フレイは毛布に包まって、軽い寝息の音を立て始めた。もはや、目の前の二人の敵兵
に対して、物理的な危険度は感じていなかったアスランは、フレイの言葉の刃に、
心をズタズタに切り刻まれて精神的に参っていたので、自分もそろそろ寝ようかと
考えた刹那、テレパシーのような小さな音声が、彼の耳元に届いてきた。

「心配するな、アスラン。フレイが何と言おうと、キラはお前が知っているキラのままだ。
泣き虫でお人好しで……、まあ、ちょっと…いや、かなり気が多いのが少し困り者だけどな」

一瞬、頭の中を妖精が囁いたのかとアスランは己の理性を疑ったが、どうやら声の発生源
はカガリのようだ。彼は照れているのか、例の傷のない頬だけを赤く染めて、ソッポを
向いている。どうやらカガリは、フレイには聞かれないように、コーディの聴力なら
聞き取れるであろう可聴域すれすれの小声で、態々アスランに囁きかけてくれたようだ。

「ありがとう」
アスランは心からの謝意と笑顔でそう呟き、カガリは傷のある側の頬も含めて、真っ赤に
なると、ぶっきらぼうに、そのまま毛布を被って、アスランから顔を背けた。


今回の無人島での長い一日で、アスランは最大の敵と同時に、一人の知己を得た。
アスランはカガリとの間に、無意識化での奇妙な友情を成立させ、キラを挟んだ
二人の間に、アンチフレイ同盟が結成される運びとなる。


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