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フレイ様人生劇場SSスレpart5〜黎明〜

1迷子のフレイたま:2004/03/02(火) 22:57
愛しのフレイ・アルスター先生のSSが読めるのはこのスレだけ!
|**** センセイ、          ・創作、予想等多種多様なジャンルをカバー。
|台@) シメキリガ・・・       ・本スレでは長すぎるSSもここではOK。
| 編 )    ヘヘ         ・エロ、グロ、801等の「他人を不快にするSS」は発禁処分。
|_)__)   /〃⌒⌒ヽオリャー     ライトH位なら許してあげる。
|       .〈〈.ノノ^ リ))    ・フレイ先生に信(中国では手紙をこう書く)を書こう。
        |ヽ|| `∀´||.      ・ここで950を踏んだ人は次スレ立てお願いね。
     _φ___⊂)__
   /旦/三/ /|     前スレ:フレイ様人生劇場SSスレpart4〜雪花〜
   | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|. |    http://jbbs.shitaraba.com/bbs/read.cgi/anime/154/1070633117/
   |オーブみかん|/    
              既刊作品は書庫にあるわ。
             ○フレイスレSS保存庫 ttp://oita.cool.ne.jp/fllay/ss.html

              こっちも新しい書庫よ。
             ○フレイたんSS置き場 ttp://fllaystory.s41.xrea.com/top.html

2迷子のフレイたま:2004/03/02(火) 22:58
スンマソ、うっかりとってしまったのでたてますた。
自分は最近投下しておりませんが、皆さんの投下楽しみにロムってます。

3ミリアリア・あの子許せない 71:2004/03/06(土) 18:13
第2部 4. 私はどうすればいいんだろう? 8-1/8
[フレイ? 何よ、あの子!!]

カズイの言葉で、私の中に溢れ出したヘリオポリスの思い出。
まだトールとは彼氏・彼女でなく、キラへの打ち明けられぬ想いに、胸を焦がしていたころ。

* * *

騒がしい店内。あちこちで交わされる会話。カトウゼミと私のサークル、その他の合コン。
新しい友達、新しい出会いが、あちこちで生まれる中、私は結局、いつものメンバーで
話に花を咲かせていた。

「トール、今度出るCPUどう思う」
「ううん、結局ベンチマーク、大して変わんないのな」私の話に、トールは残念そうに答える。
「そうだね、量子サーキットの新技術を生産設備の関係で見送ったからね」キラの言葉。

「まったく、それ、やってりゃな」とトール。
「でも、本当は軍関係で先に発注されてて、キャンセル品が一部流れるという噂もあるよ」
「え!ほんと? キラ」キラの言葉に、私は目を輝かせる。

「ああ、複数の情報を総合するとね」
「キラ君、それだよ、それ。そうこなくっちゃ。よし、それ狙うぞ」盛り上がるトール。

「キラ、よく知ってる。色々、情報調べてるんだ」
「ミリィほどじゃ無いよ。たまたま、見つけただけで」キラは、少し照れるように話す。

私はキラを、うっとりと見つめる。キラは知識をひけらかすことはしないけど、
本当に良く知ってる。マニアックなトールになんなく話を合わしていける。そして、私とも。

サイは、そんな私達の話に付いて行けないようで、ヤレヤレという顔をしていた。

ふいに、後ろから、明るい声がした。
「サイ、こっちに来ない?」
「フレイ!」
サイは、そう言って振り向いた。声の主は、新入生のフレイ・アルスター。
私と同じサークル。結構いいとこの、お嬢さん。

「先輩たち、難しい話をしていますね」

フレイは、新入生らしい丁寧な言葉で話しかける。でも、それが、私には、ちょっと鼻につく。
サークルでは、友達と意外と好き勝手しているのだ。意識はしていないかもしれないけど、
表と裏を使い分けて、こういう場では、自分を飾るようなようなタイプ。合コンでも、
いろいろな人に愛想を振りまいている。そして、今、店の片隅でたむろしている私達の
ところへもやってきたのだ。

「ねえ、向こうにドリンクあるわよ。サイ、行きましょうよ」
「うん、フレイ、だけどね、今日はちょっと……」

「今日はどうだっての、サイ?」

フレイは、私のゼミの人とは、それほど会っていないはずなのに、サイには、やたら馴れ馴れしい。
男に甘えるような仕草が、私をイライラさせる。でも、それだけでは無い。私は、チラと後ろを見やる。
そこにいるキラの目は、さっきから、ずっと、フレイに注がれている。美しくセットした髪。
赤毛の後ろ髪が揺れる。それからキラの目は離れない。

キラ! フレイのこと見とれて! フレイ? 何よ、あの子!!

4ミリアリア・あの子許せない 72:2004/03/06(土) 18:17
第2部 4. 私はどうすればいいんだろう? 8-2/8
[みんな撮るよー!]

フレイに見とれているキラ。キラ、あの子のこと、まさか……
私は、振り向いて小さく声をかける。
「キラ!」

でも、私の声は少し上ずっているのが自分でも分かる。そんな私の言葉にキラはハッとしたように
視線を私に戻す。

「その人、キラっていうんですか?」 あの子が無邪気に聞いた。

「ああ、はじめまして、キラ・ヤマトです」
「私、フレイ・アルスター。よろしくね」

しばしの間、あの子とキラの視線が合う。

「あ、俺、トール・ケーニヒ」トールが割り込むように話す。

私の行動が、意図せずに、あの子とキラの自己紹介になってしまい。私は内心面白くなかった。

「みんな撮るよー!」
カズイの声がした。カズイが一眼レフのプロ用デジカメを構えて、私達を見ている。
あの子は、それだけで、カメラに向けて満面の笑顔を浮かべている。トールが立ち上がって、
大げさにポーズを付ける。私も慌てて笑顔を作る。

パシャッ! パシャッ! シャター音が数回響いた。

「どれどれ」トールが、わざわざカズイのデジカメのモニタを覗きに行く。あの子とサイも
肩を並べながらモニタを覗き込んでいる。残ったキラに、私は目を向ける。キラは、
あの子に見とれていた素振りは、既に消えて、見つめる私に微笑みを返す。
私はホッとして、嬉しくて堪らなくなる。

「カズイ、後で写真ちょうだい」と私。
「俺、データも、もらい!」とトール。
「僕もデータもらうよ」キラ。
「カズイ、2枚分な。フレイにも、後で写真渡すよ」あの子の方を向いて話すサイ。
「うん、サイ」サイを見つめている、あの子。

「ちょっと、ちょっと。いっぺんに言わないでよ」カズイは困ったような素振りながらも嬉しそうだ。

口々にカズイに話しかける声。カズイの撮る写真には平和が詰まっていた。カズイは平和な私達を残す大事な仲間だった。

* * *

私、キラ、トール。サイとあの子。そしてカズイ。平和な時。
あの子の存在も平和へのスパイス。成り行きにまかせる私を刺激し、キラへの想いを再確認させていた。
でも、あの平和な時は今は無い。

私達みんなを明るくさせていたトールは、もういない。
キラは昔とは変わった。悲しくなるくらい。
あの子は暴走し、キラを変えて、そして姿を消した。
サイは失意に落ち込み、そして、立ち直った後、私と微妙な関係になっている。
その上、平和な時を記録していたカズイも、私達の前から姿を消す。

昔の私達は帰って来ない。私はどうすればいいんだろう?

5ミリアリア・あの子許せない 作者:2004/03/06(土) 18:20
うちのSS独自のヘリオ組回想です。結局、予定分をサイズ制限で二つに分けました。
これのフレイ版も存在していて、ちょっと先になりますが出てきます。
次は、またフレイSSに戻ります。

前スレ、目次を入れたら、いきなり、リストから消えてしまいました。
過去ログ倉庫まで行けば見れますが、一度に開くとサイズが大きいですし、
もう少し入れずに、保持しておいた方が良かったですね。済みません。

前スレの最後の投下への感想です。

>>The Last War
お帰りなさい。一連の作品、どんどん良くなっています。今回のクリスとセシウスの決着で、
アスランに言ったカガリの最終話の台詞の絡ませ方なんか最高でしたよ。

>>流離う翼たち
キースとカズイの会話、大笑いさせていただきました。

>>過去の傷
食事会、ラクスとアスランは、別なんですね。ミリィは、相変わらずモーションかけて、キラ困惑気味。
そして、マリューさん登場。ムウを失ったマリューさんは、どうしているのでしょうか?

6流離う翼たち・424:2004/03/06(土) 22:37
 そこは既に異界であった。異様な空気と臭気が充満し、かつては普通に美味しく食べられたであろう食材が異界の技によって形容し難い何かへと変貌を遂げている。それらを目の当たりにしている審査員たちは一様に顔色を失い、気の弱いサイは今にも気を失いそうになっている。
 そして、最初の料理が6人の前に並べられた。

「うーん、一応頑張ってみたんだけど」

 ミリィが出してきたのはトーストに半熟の目玉焼き。簡単なサラダにコンソメスープという朝食風味なメニューだった。これなら確かに失敗はしないだろう。出だしとしてはまあまあのメニューだ。だが、5人がトーストを手にする中で、何故かトールは何にも手を付けようとはしなかった。
 そして、サラダを食べたキラがいきなり糸が切れた人形のようにその場に突っ伏した。それを見た参加者たちがぎょっとしてキラを見やる。

「おい、どうしたキラ?」

 心配したサイが声をかけるが、キラは何かに堪える様に顔を顰め、ぴくぴくと痙攣している。そして、それを見たトールが落ち着いた声で目の前のメニューを見る。

「ふむ、今回はサラダか」
「どういうことだ?」

 フラガがトールに問いかける。トールはトーストにバターを塗りながらそれに答えた。

「いえ、ミリィの料理は必ずどれか一品が地雷なんです。今回はサラダのドレッシングでしょうね」
「つまり、君はそれを知っていて黙って様子を伺っていたと?」

 フラガの詰問に、トールは視線を泳がせることで答えた。フラガはトールの計算高さに呆れたものの、自分もキラの犠牲を無駄にせぬようサラダを横にどける。
 だが、4人の何ともいえない視線がトールに集まってしまう。その視線にさらされたトールが戸惑った声を上げた。
 
「な、なんだよ!?」
「いや、なんと言うか、なあ?」

 フラガが何とも言えない目でトールを見た後、視線を他の2人に向ける。他の2人にも同様の意思が見て取れる。そう、みんなトールに同情しているのだ。お前の未来の食生活は暗いぞと。2人の関係を知らないオルガは我関せずとばかりに食事を続けていた。勿論サラダは退けている?
 男たちがそんな失礼な事を考えているとも知らず、ミリィは目配せをしている男たちをキョトンとした顔で見ていた。ちなみに、キラは5分後に何とか復活した。

 しかしまあ、ミリィの食事は極めて問題点の無い、いや、恐ろしい問題があるような気もするが、食べれるので問題は無い。問題なのはここからなのだ。

7流離う翼たち・作者:2004/03/06(土) 22:43
>> 過去の傷
ラクスが怖い・・・・・・ミリィはモーションかけてるし
平和は何処に行ったんだ?
マリューさんは久しぶりに会ったようですね。大丈夫でしょうか

>> ミリアリア・あの子許せない
前スレのまとめ、乙でした
ミリィの過去の回想ですか。この頃は普通に平和だったのに
何気にカズィがとっても重要な位置にいるw

8過去の傷・71:2004/03/06(土) 23:26
マリュ−はフレイに微笑んだ。
「お久しぶりね」
「はい、会いたかったです」
「でもその前に聞いておきたいことがあるのよね・・・ほらなぜ転属したはずの貴女がザフトの脱出ポッドに乗っていたのか。
フレイは息を吸うと全てを話し始めた。
クル−ゼに捕らえられザフトに入れられたこと、ザフトでの生活のことなど、そしてクル−ゼにあるディスクを託されアズラエルに渡した・・・そしてそれが戦争の引き金になったことなど、全て話した。
「そう・・・そんなことがあったの・・・辛かったわね」
「はい、でもこれは罰だったのかもしれません」
「罰?」
「はい・・・私キラに酷いことしたから・・・いろんなことしたから、キラを戦争の道具として利用して・・・それがキラに対しての復讐だと決めて・・・そんな女なんです私は・・・だから罰だったんです・・・転属することが決まった時点で・・・私怖かった・・・それからはずっと一人で・・・ほんとにいつ死ぬかなって・・・私キラに謝りたかった、謝らなきゃって・・・ごめんなさいって・・・ずっと苦しくて、怖くて・・・闇に閉じこもってました・・・」
「そう、でも良かったわね戻れて、キラ君に会えて・・・怖かったでしょうね、ほんとに・・・」
フレイが涙声になる・・・そして泣き出した。
「は・・・はい・・・うう・・・私・・・怖かった・・・ずっと・・・うう・・・マリュ−さん!」
元上司の胸に泣きながら飛び込んだ、そしてマリュ−は微笑むと赤い髪の少女を優しく抱きしめた。
「辛かったわね、怖かったわね、一人でよく頑張ってきたわね・・・偉いわ貴女は」
「うう・・・そんな私・・・暖かい、バジリ−ル中尉も暖かく抱きしめてくれました」
「ナタルが?・・・そう・・・ねえフレイさん・・・顔を上げて皆を見てみて、ほら皆の場所に、キラ君の場所に戻れたじゃない」
顔を上げるフレイ、皆を見渡す・・・キラが・・・サイが・・・皆が優しい目でフレイを見ている、その光景にフレイは、泣き顔で嬉しそうに微笑んだ、そして・・・。
「皆・・・ただいま」

通路を歩いているキラとマリュ−。
「そうですか、来たばかりなのにもう帰還するんですか、残念です」
「ごめんなさいね、でもまた来るわ・・・それよりフレイさんは・・・」
「フレイは・・・彼女は・・・僕が全て悪いんです・・・フレイのお父さんを守れなかった僕が・・・彼女はいろんな運命に翻弄された・・・」
「ええ・・・もしかすると彼女がだれよりも一番の戦争の被害者かもしれないわね・・・」
「はい、僕もそう思います・・・これからは僕が彼女の側にずっといてあげます、ずっと見守ってます、もうフレイを一人にはさせません」
「ええ・・・お願い・・・キラ君」
「はい」
マリュ−去りながら言った。
「私は・・・あんな幼い少女の運命を狂わせた・・・彼女に心の傷を負わせた戦争というのを私は絶対に許さないわ」
「・・・・・・」(フラガ少佐のことで傷ついてるだろうにあの人は・・・やっぱり立派な人だ)

ドアの前に来たキラは、フレイの様子を見ようとしてつい嬉しそうに微笑んだ、フレイはカガリとミリアリアの間だ楽しそうにくすくすと笑っていた、それはキラが一番好きなフレイの表情だった、そう・・・ヘリオポリスのキャンパスで見たあの無邪気に笑っていたあのフレイだった、本当のフレイ・アルスタ−という一人の本当に楽しそうな表情だった。

9過去の傷・作者:2004/03/06(土) 23:39
>>ミリアリア・あの子許せない
おおお、これは平和だった頃の・・・ミリィの回想ですね、というよりミリィはこの頃からフレイ様にちょっとした敵意というか嫉妬というか。
>>翼たち
ここは戦争だ、おいおいミリィでこれなら、これから六人とも地獄以上の苦しみを味わうみたいですね、ある意味モビルス−戦より怖いです、なにげにト−ル同情されてるし、でもさすがに彼は詳しいですね、それよりもっと同情されるのはキラでは?

10リヴァオタと八アスのためでなく:2004/03/07(日) 08:59
ガロードは本屋で大藪春彦の本を数冊買った。
「戦士の挽歌」の全巻、「狼の追跡」「ヘッドハンター」「戦場の狩人」だ
ガロードは店長のロメロに言った
「おじさん?」
「なんだ」
「本買いに着たんだけど」
「そうか」
「大藪の新刊入れててくれよ」
「そうだ、いいものがある」
ロメロは小さなカプセルを出した
「なにこれ?」
「これを飲むと胃の中で消化され、数メートルの大爆発するものだ」
「もらっとくよ」
ガロードは店を出た
ガロードはジェリドとばったり会いあとをつけた。
ジェリドは喫茶店に入った。そこでジェリドはコーヒーとカレーを頼んだ
ガロードはジェリドの隣の席に着き、コーヒーを飲む
ジェリドはトイレに向かった。いまだ!ガロードは思った
ガロードはジェリドのコーヒーにカプセルを入れた。
ガロードは喫茶店を去った。数分後、コーヒーを飲んだジェリドは
喫茶店で大爆発をした。ガロードは明日の新聞にどうどう的に公表される
だろうと思った。

11刻還り:2004/03/07(日) 16:36
キラはカガリ達からバクゥを離すようにバクゥを誘導する。
その意図を察してフラガも追随する。

「逃がすかよ。」

バクゥより発射されるミサイルを盾で防ぎながらビームライフルによる牽制、離脱。
それを繰り返す。

「ここまで離れれば。」

照準をきっちりとバクゥに合わせ、トリガーを引く。
ビームは一直線に走る。
そして、砂塵を舞い上げた。

「外れた。」

もう一度撃つ。
しかし、結果は同じ。

「キラ、熱滞留のせいだ。」

熱滞留。
ストライクのビームが外れる原因。
地上での戦闘が初めてキラにとって気付かない現象。
さらに、ストライク自体が宇宙用に設定されている。
ちなみにスカイグラスパーは地上用であることによりある程度補正がされており、フラガ自身が地上での戦闘を経験しているため命中率が

ストライクより高いのだ。

「ありがとうございます。」

キラはすぐさま端末を引っ張り出し、瞬時にデータを打ち込んでゆく。
わずか10秒にも満たない時間にである。
キラの卓越した能力は戦闘時の不利を一瞬にしてなくした。
そして、次の一撃はバクゥに直撃、大破させる。

「やってくれるな、一瞬にして熱滞留をプログラムに組み込んだ。」

戦闘を遠巻きに見ていたバルドフェルドは、素直に感嘆の言葉を述べる。
バクゥは残り1機。
完全に不利である。

「隊長どうしますか?」
「後退する。これ以上の損害はごめんだからな。」
「はっ。」

ダコスタはすぐにバクゥのパイロットに撤退を命令し、自身もジープを走らせた。

「面白い相手というのは厄介なものだ。」

呟いたバルドフェルドの口元は狩猟者としての笑みを浮かべていた。

12刻還り:2004/03/07(日) 16:38
此度の戦争で“明けの砂漠”の被害は甚大であった。
先に駆け出していった者達のほとんどが還らぬ者となり、哀しみと怒りの空気が一帯を包んでいる。
生存者の中にも無傷ですんだ者は少なく、何とか一命を取り留めたような重傷者もいる。
カガリと一緒に戦っていたアフベドという少年だ。
アフベドはバクゥの爆発に吹き飛ばされた衝撃で意識を失っている。
カガリはそんなアフベドを心配して手を握り締めていた。

「あんたらはこんなことがしたかったのか?こんな風に命を捨てる。」

スカイグラスパーから降りてきたフラガは見下ろしながら言う。

「なんだと。」

フラガの言葉に突っかかってくるカガリ。
カガリは正面からフラガをにらみつけながる言う。

「みんな必死で戦った、戦っているんだ。大事な物、大事な人を護るために必死でな。」
「護るための戦い?死ぬための戦いの間違いじゃないのか。」

カガリの拳がフラガに向けられる。
しかし、その拳はフラガの顔を捉える前に腕を掴まれた。

「護るって言うんなら、死んじゃ意味ないんだよ。待っている人のところに帰らなきゃな。」
「痛っ。」

掴まれている腕に力が込められ、カガリの腕に痛みが走る。
フラガの言葉に、カガリは衝撃を感じる。
知っていたはずであった。
戦争で仲間死ぬのを見るのは初めてではない。
誰かが死ぬたびに誰かが哀しみに包まれる。
それを見るのが嫌だった。
だから、必死だった。

(なのに・・・)

カガリは自分の行動が正しいのかわからなくなってきた。

13刻還り・作者:2004/03/07(日) 17:14
短い・遅い・行間のミスと3拍子そろっております。
皆様が心配(期待)なされていたフレイ様の出撃はありません。
まだw

>>流離う
ミサじゃなくてマリューのみならずミリアリアまでとは・・・
フレイ様の料理に期待ですね。
きっと、胃が溶けるようなものを作ってくれるにちがいないw

>>過去の傷
マリューの登場で和やかな雰囲気です。
フレイ様も笑っておられます。
ミリアリアの行動がフレイ様にどんな影響をあたえるのか?
続きが期待です。

>>キラフレ
祝投下です。
黒々としたフレイ様が白くなることを願いながらも黒でもいいかなっと。。
続きを待っています。

>>The Last War
クリスとセシウスの決着がつき、着々と締めへと向かっていますね。
円満なる完結を願っています。

>>ミリアリア
平和な頃の思い出ですね。
ミリアリアはどういう思い出トールと付き合っていたのだろう?
少し、トールがかわいそうです。

>>リバアス
ガロード、他人を巻き込むのはどうかと・・・

14流離う翼たち・425:2004/03/07(日) 22:44
 ミリィの次に料理を持ってきたのはカガリだった。出てきたのは野菜スープと、何処から出てきたのかご飯である。一体アークエンジェルの何処に米があったのだろうと誰もが思ったが、あえて口にはしない。それよりももっと大きな疑問が先ほどからこの食堂に満ちているからだ。いや、時折調理場から聞こえる怪しげな声とか、謎の悲鳴とか、奇怪な音とか・・・・・・

「どうだ、私もやれば出来るだろう」

 えへんと胸を張るカガリ。だが、スプーンでご飯を口に運んだキラはすぐに顔を顰めた。

「・・・・・・生煮えだ」

 それを皮切りに次々と出てくる不満の山。

「この人参、皮が剥いてないぞ」
「なんで野菜スープに長ネギが?」
「塩が多すぎだ」
「煮込み時間が足りない。野菜に芯がかなり残っている」
「不味いぞ」

 最後のオルガの感想は余りにもストレートだった。その直後にオルガの頭にカガリの投げたお玉が直撃し、綺麗な音を立てる。額にモロに食らったオルガは大きくのけぞった後、強引に身体を戻して文句を口にした。

「ってえな、何しやがる!」
「やかましい。いきなり不味いなんて言いやがって!」
「本当の事だろうが。お前ちゃんと試食したのか!?」
「試食? そんな物いらん!」
「ちょっと待ちやがれ、この自信二乗女!」

 何とも酷い事を言うオルガ。カガリは顔を真っ赤にして怒っているが、他の5人はオルガの言葉に内心で頷いていたので、誰もカガリの擁護はしなかった。
 そして遂にカガリは切れた。

「もう怒った、表に出ろ!」
「良い度胸だ、後悔するなよ阿婆擦れ!」
「誰が阿婆擦れだ!?」

 右手に柳刃包丁持って怒りを露にするカガリと、拳を握るオルガ。このまま流血の惨事にと誰もが思ったが、それが激突するより早くオルガの頭に拳骨が落ち、カガリの後頭部にハリセンが叩き込まれた。

「ぐぁあああ!」
「きゅう・・・・・・・」

 頭を抱えて悶絶するオルガと、ハリセンの一撃で気絶してしまうカガリ。カガリを殴ったのはフレイだった。

「もう、この娘は。カッとなるとすぐに手が出るんだから」
「「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」」

 フレイの呆れた呟きを聞いて6人は思った。そのハリセンは何処から出てきたんだと。

15流離う翼たち・作者:2004/03/07(日) 22:50
>> 過去の傷
マリューさんが笑っている。でも、マリューさんよりキラが笑っている方が驚きなのは何故w?
とりあえずフレイ様は幸せそうですね。マリューさんはまだまだ大変でしょうが

>> リヴァオタと八アスのためでなく
コーヒーとカレー、ジェリドの食生活は一体?

>> 刻還り
アフメド君、生きてたんですねえ。良かった
何気にカガリを叱るのは兄貴の役目ですか。黒キラじゃないからキラは怒らないかな

16散った花、実る果実34:2004/03/07(日) 22:57
今日は・・・・色々なことがあったような気がする・・・・
いつもと同じだけの長さの一日だけど・・・・ミリアリア・・・リスティアと出会い、あれほど嫌っていたザフトの軍服に袖を通し・・・・
あんなに異端視していたザフトの軍人とこれだけ色々なことが話せるとは思ってなかった。
ミリアリアと同じ名前だって事で親近感を感じたせいもあるけど・・・多分それだけじゃないだろう。
・・・・少し前の私だったら、きっとコーディネイターだという事だけで、話そうともしなかったと思う。
コーディネイターが嫌いってずっと思ってたけど・・・多分、私の偏見が余計相手の態度を頑なにさせていた事もあったのだろう。
カレッジにいた頃は隠すようにはしていたけど・・・それでも私のコーディネイターへの偏見は、パパが死んだ後ほどじゃないけど、やっぱりしっかりとあったもの。
・・・・まだ・・・・・コーディネイターが怖くないわけじゃないけど・・・・・・・

ミリアリア・・・ミリィ・・・・クルーゼ隊はまだアークエンジェルを追っていると言う事だった。
という事は、ミリアリアは無事なのだろうか。
『違う・・・・違う、私・・・・・・違う!』
あの時彼女が本当に言いたかった事はなんだろう。
彼女がコーディネイターの捕虜にナイフを向けた瞬間、あの瞬間だけはやっぱり私と同じ気持ちだったろう、と今でも思う。
でも、その次の瞬間は・・・?
私はまだコーディネイターへの憎しみを止められずにいた。
復讐をとめようとしたミリアリアへわずかなりとも憎しみを感じた。
私を止めたミリアリアの気持ちは?何故彼女は私を止めたの。
人殺しが恐ろしくなった?ううん、違う。形はどうあれ私たちはキラにそれを強いてきた。
相手が生身の人間だから怖気づいた?でもそれなら自分の体を張ってまで助けることもないだろう。
自分が手を引けばそれで済む。
なら何故。
自分が間違っていることに気が付いた?コーディネイターというくくりで相手を決めてしまうことに。
たとえば今日リスティアに私が投げかけた数々の失言。
もし私が彼女をナチュラルだと思っていたら言わずに済んだこともあったろう。
その逆もまた言える。
彼女が私の事をコーディネイターだと思っていたらファーストネームで呼ばれることにあれほど拒絶を示しはしなかったろうし、その後の会話もまた違ったものになっただろう。
ミリアリアはそんな、“コーディネイター”と“ナチュラル”で人を決めることが間違っているとあの瞬間気が付いたのだろうか・・・・
私のコーディネイターへの憎しみを目の当たりにして?
それとも・・・・・・

17散った花、実る果実35:2004/03/07(日) 22:57
ピッ
電子音がして扉が開いた。
「ミ・・・・・リスティア・・・・・」
「あなたの生活必要品をお持ちしました。最低限必要と思われるものは用意しましたが、不足があれば申し出てください。本日は隊長は戻られませんが、明日には戻ると言う事でしたので。」
「ありがとう・・・・」
「いえ、これも仕事ですから」
そういう彼女の語調にはなにやら力がない。一体どうしたんだろう?
「そんな不思議そうな目で見ないで下さい。・・・あなたと話していて、そんな素直な反応が返ってきたのが初めてで、ちょっとびっくりしただけです。」
素直?
「『ありがとう』。最初の頃は神経を尖らせてピリピリしていましたし、コーディネイターを貶める発言が多かったように思います。・・・違いますか?」
「それは・・・・・・でも、あなただってお互い様じゃない。何かっていうと、『これだからナチュラルは』って反応してたくせに」
彼女は肩をすくめて
「だってそう思ってましたから。まあ、プラントで生活しているとナチュラルと接することも滅多にありませんし、少なかったそれもけしていい思い出ではありませんでしたしね。」
どう聞いてもナチュラルを認めていない台詞だったけど、今までの刺だらけの口調ではなかった。
「前に何かあったの?」
彼女は、しょうがないな、といった感じに微笑んで、
「まあまず妬まれます。戦争が始まる前は、プラントと地球で学生同士の交流会みたいなものが催されていたのですが・・・・そのときこう言われまして。」
「なんて言われたのよ。」
すると彼女はこれ以上ないだろう完璧な笑みを浮かべてこう言った。
「確かにコーディネイターだけあって綺麗よね。でも所詮作られたものでしょ。整形してるのと一緒じゃない。」
・・・・うわ・・・・・・・・・
そのコの気持ちもわからなくはないけれど・・・・言い過ぎというか・・・・・それは流石にみっともないというか・・・・・・
「それはその娘たちが悪いわね・・・・ひがみ根性もいいところだわ。私はコーディネイターは不自然な存在だと思っているし、やっぱり今も抵抗感があるけど・・・・でもその発言もどうかと思うわ。」
「それがナチュラルに対する嫌悪感がはっきり模られるのに一役買ったことは間違いないわね。まあ、元々能力の低いナチュラルに大してあまり評価していなかったことは否めないけど。」
あれ?ちょっと待って?
「ねえ、・・リスティア。彼女達の発言は勿論あちらに非があると思うわよ。でも、あなたにもそれを言われる原因があったんじゃないの?」
プライドの高いだろう彼女は途端にむっとして、
「どういうことよ」と構えてきた。
「・・・だって、それ以前から、ナチュラルに対して・・・いわゆる優越感を持っていたわけでしょう。もし、初対面の人間に『あなたは私より劣った存在よ』って態度隠そうともせずとられたら・・・・やっぱりあなただって気持ちいいものじゃないでしょう?」
しかし彼女は不服な様子を崩さなかった。
「でもナチュラルとコーディネイターの間に能力の差があるのは歴然とした事実よ。しょうがないじゃない、ナチュラルとコーディネイターは違うんだから。」
・・・私も少し前まではそう思っていた。でも・・・・
「でも、そういうのはやっぱり違うんじゃないかしら。私たち同じ人間でしょう。もしあなたの両親がナチュラルだったら、あなた両親を軽蔑するの?」
「・・・・!私は、両親のことを馬鹿にするようなことなんて絶対しないわよ。私の両親はコーディネイターだけど・・・・・」
「だけど辿っていけば、あなたの血は必ずナチュラルに突き当たるわよ。だって、コーディネイターは3代目以降は出生率が格段に下がるって・・・それにコーディネイターが生まれた歴史を考えてもあなたのおじいさんおばあさんあたりは多分ナチュラルにあた・・」
「でも今は!」
私の言葉を遮るように彼女は言った。
「今の戦争をごらんなさい。コーディネイターの旗頭であるパトリック・ザラがなんて言っているか。もう、ナチュラルとコーディネイターは別の種なのよ。
私たちは進化したの。自分の子供にもより確実に素晴らしい能力を与える事ができるのよ・・・・」

18散った花、実る果実/作者:2004/03/07(日) 23:15
>>ミリアリア・あの子許せない
前スレまとめお疲れ様でした!
ヘリオポリス回想、いいですね。こんな平和な時があったのに何故って、共通の印象だと思うんですが、切実な思いですよね・・・

>>キラ♀フレイ♂
男フレイ様、ますます黒々と・・・・・
ミリィがちと可哀想な気もしますが、この辺で危険に気がついて身を引けるといいですね。
・・・彼女等の保身のために・・・・・・(苦笑)

>>The Last War
連載中止しなくてよかったです。私も楽しみに待っている一人なので。
セシウス、どうも幸せになれそうでよかったです。セシウスとクリス、いいコンビですよね。
この戦争が終わった後もこの調子でからんでいて欲しいです。

>>流離う翼たち
フレイ様のハリセン、出た!!(笑)
いやしかし、すごい緊張感に満ちたコンテストが・・・・
フレイ様の料理が怖・・・いえいえ、楽しみです。

>>過去の傷
マリューとフレイ様の対話、心が温まりますね。
・・・・ナタルもここに帰ってこれたら・・・・

>>刻還り
フラガさん、カガリにもお兄さん役を果たしてますね。
この人、なんだかんだ言って面倒見いいですよねえ。本編で異動命令の出てた教官ってのも、あながち間違った選択でもなかったかもしれないですねえ・・・

>>リヴァオタ
爆破ですか!また過激な・・・(笑)

19過去の傷・72:2004/03/07(日) 23:16
「くすくす・・・あらキラ」
「フレイ楽しそうだね」
今のフレイはほんとに可愛い、やっと本来のフレイに戻ったようだ、あのへリオポリスのキャンパスで無邪気に友達と楽しそうにはしゃいでいたフレイ、ほんとうにあの頃のフレイに戻ってくれてよかったとキラは思った、やっと彼女を救い出すことが出来たような感じだ。
「ええと、では食事会を始めようか」
「あ、きゃ!キラごめんね」
ミリアリアが水を誤ってかけてしまったのだ。
「キラちょっと来て」
そしてミリアリアに外に連れ出された。
「そう、なら私はカガリと楽しくお話してるわ、カガリ好きになっちゃった!もうカガリったら可愛いんだから!カガリ最高♪もう親友よ♪」
「そ、そうか・・・お前・・・人変わってるぞ・・・」
(楽しそうですね、フレイさん)
(え!?ティファ)
通路にて。
「はい、拭いてあげる」
「あ、ありがとう」
「っていうかわざとだけどね♪」
「え!?なんでそんなこと」
「二人きりになれないでしょ・・・キラちょっと目を閉じて・・・」
わけがわからない様子のキラだったが、仕方なく目を閉じた。
それを確認したミリアリアは、キラに近寄ると胸を押し付けるようにキラに抱きつきそれから唇を唇に強く押し付けた。

「どうしたものか・・・」
マリュ−が部屋でラクスと話しているので部屋を出たアスランは、プロヴィデンスの前に来ていた。
(これが隊長の搭乗していた機体か・・・隊長は一体何者だったんだ?・・・俺達とは違うのか?・・・ま、まさか隊長は二ュ−タイプだったのか?・・・)

20過去の傷・作者:2004/03/07(日) 23:20
感想は明日書きます、すいません、時間が・・・それにずっとなかなかつながらなくて。
すいません、あわてて書いた感じです。

21リヴァオタと八アスのためでなく:2004/03/08(月) 08:18
キラとフレイは美術館に来ていた。美術館では「子供たちが書くドラえもん」
とテーマした子供たちが作者の展覧会である。
「ねぇキラあの絵いいね」
「うん」
フレイが指さした絵は「黄昏のドラえもん」である。
絵は「http://www.geocities.co.jp/MusicStar-Guitar/1658/d-36.jpg
「フレイあれなんてどう?」
「あれってドラえもんがスイカ割する奴?」
絵のタイトルは「スイカ割りをするドラえもん」である
絵は「http://www.geocities.co.jp/MusicStar-Guitar/1658/d-45.jpg
ほかに「一休みしているドラえもん」や
絵は「http://www.geocities.co.jp/MusicStar-Guitar/1658/d-20.jpg
「サザエさんと競演」などある。
絵は「http://www.geocities.co.jp/MusicStar-Guitar/1658/d-49.gif
だが今、フレイとキラにハプニングがあった。
フラフラする男がやってきた
「ねぇキラあれ?」
「なに?」
「ゾンビじゃない」
「えっ!んなありえないこというなよ」
そのときゾンビらしき男が隣の男に噛み付いた!
「ぎゃー!」
「フレイ!やっぱり逃げよう」
キラとフレイは一目散に逃げた。

22私の想いが名無しを守るわ:2004/03/08(月) 16:57
>>リヴァオタ
ほのかあにシュールな絵満載ですね。最初スゴイヤツがくるかと思ってビビッて
ましたが、何とも云いようもない絵ばかりです。予言の実現の阻止のために何か
しているかと思いきや、のん気に美術館に行ったりして、相変わらずヘンな人達ですな。

23The Last War・11:2004/03/08(月) 17:47
「くっ、何だこいつらは!?」
「動きが速すぎて・・・、捉えきれない!」

 その頃、キラとアスランは敵旗艦から出撃した全長50メートルは超えるであろう巨大なMS、そしてそれと共に出現したMAサイズの機体群から攻撃を受けていた。二人は人が乗っているかどうかさえ怪しまれるスピードを誇る小型機から射掛けられるビームに翻弄されていたが、巨大MSの方はまるで彼らの動きを窺うかのように全く動きを見せようとはしない。

「このままじゃ埒があかない!キラ、まずあのデカブツから片付けるぞ!!」
「分かった!」

 小型機からの攻撃を逃れ、アスランはS.ジャスティスをMA形態に変形させ、同機の最強武器であるヒュドラを、キラはネオストライクの全武装による一斉射撃を仕掛けた。

「!こっちの攻撃が、効かない?」
「馬鹿な、奴は回避すらしていないぞ!」

 それらは確かに敵MSに達した筈だった。しかし敵を撃破するどころか、まるでダメージを受けた様子も無い。だが次の瞬間、更に彼らを驚愕させる事態が起こった。

「うおっ!?・・・キラ、大丈夫か!?」
「あ、ああ!でも、今のは一体・・・?まるでこちらの攻撃を跳ね返したみたいだ・・・」

 突然敵MSが反撃に転じてきた。しかし敵が何らかの搭載火器を用いた様子は無く、そのタイミングはあまりに早過ぎた。

「・・・さっきのホークアイとかいう奴が言っていた隠し玉というのは、こいつのことか?」
「多分・・・そうに違いないよ!」

 その時、二人の間に何者かが横槍をいれてきた。

「・・・ようこそ、前大戦を終結させた英雄達よ。ファントム総帥の名の元に、私は君達を歓迎しよう・・・」
「!?お前は・・・!」
「やはり貴様だったか、アレクセイ・ブランバルト!」

 その賞賛の言葉とは裏腹に、全く感情というものを感じさせないその声は、この時の二人にとっては既に忘れられないものとなっていた。

(・・・あの時、僕を・・・、そしてフレイを殺そうとした・・・。こいつが、ファントムの・・・?)

 キラの中で、特殊医学研究所での記憶が甦ってきた。それに伴ってか、彼の右腕が僅かに反応した。

「・・・ここまで来れば分かるだろう?貴様等をここに誘い込んだ訳が・・・」
「ああ。どうやら貴様等は、余程俺達のことが恐ろしいようだな?」
「フッ、何とでも思うがいい。だがその逆を言えば、貴様等さえ除けば後は問題は無い、ということだ・・・」

 キラの様子を知る訳も無く、アスランとアレクセイは互いに皮肉を交えている。長きに渡り戦い続けてきただけに、言葉の一つ一つには積み重ねられた重みが込められている。

「それはこちらも同じだ!トップである貴様さえ倒せば、ファントムは瓦解してこの戦いも、そしてこんな狂った時代も終わる!」
「・・・」

 アスランのその台詞を聞き、キラはハッとした表情を見せた。

「のこのこと俺達の前に出てきたことを、後悔させてやる!行くぞ、キラ!!」

 そう言うと、アスランはアレクセイの乗る巨大MSに突撃を仕掛けようとした。しかし・・・。

「・・・待ってくれ、アスラン!」
「!・・・キラ!?どうしたんだ!?」

 S.ジャスティスの前に突然キラのネオストライクが立ちはだかった。キラの突然の意外な行動に、アスランも驚きを隠せなかった。やがてネオストライクはアレクセイの乗るMSへと向き直った。

「お願いだ!もうこんなことはやめて、降服してくれ!」
「!なっ!?キラ、何を言ってるんだ!?」
「・・・」

 キラがアスランを止めてまでしようとしたこと、それは敵への降服勧告だった。その突拍子も無い行動に、アスランも思わず絶句した。

「分かってよアスラン!コロニーも地球に迫ってるのに、僕らがこんな無意味な戦いをしてる暇は無い筈だよ!だから、出来ることなら無用な戦いを避けたいんだ!!」
「しかし、お前も分かっている筈だ!こいつが、こいつ等が今まで何をしてきたかぐらいは・・・!」
「でもっ、戦うだけじゃ何も解決しないよ!」

 その時、二人の様子を窺っていたアレクセイが口を開いた。

「・・・フッ、急に何を言い出すかと思えば・・・。ではキラ・ヤマト、貴様に一つ聞こう・・・」
「!?」

 そして彼は、キラに思いもかけないことを問い掛けてきた。

「貴様は、私を許すことが出来るのか?あの時、あの女を撃ったこの私を・・・」

24The Last War・作者:2004/03/08(月) 18:14
 本当に申し訳ありませんでした。何で自分はあんな先走ったことをしたんでしょうか?
 それからこのSSにはフレイ様ももちろん登場します。もちろん戦闘以外での出番ですので、ご安心下さい。

》流離う翼たち
 ミリィやカガリの時点でこんな有様なんですね。カガリはなんとなく予想がつきましたがw。
 この先どんな料理が登場するのか、そして誰が優勝するのか、あと皆生きて帰れるかが気になりますw。

》過去の傷
 マリューさん、自分だって辛いのでしょうに・・・。強い人ですよね。フレイ様と同じく幸せになってもらいたいです。
 ミリィのアプローチはどんどん積極的になってますが、そろそろフレイ様にも知られやしまいか不安です。

》刻還り
 アフメドが助かりましたね。これだけでも大きな変化だと思います。反対にキラはいまいちパッとしない気もしますがw。
 この後は虎さんとの出会いになりますが、ここにも変化が生じるんでしょうか?期待です。

》散った花、実る果実
 フレイ様とリスティアさんの関係が次第に変わってきましたね。親密とは呼べませんが、互いの正直な思いを言い合えるような仲にはなってきたのではないかと。
 今回のエピソードはナチュラルとコーディネイター、両者の溝の深さを感じました。

》リヴァオタ
 ジェリドが爆死・・・。ちょっとスカッとしたというのは酷いでしょうかw?でもガロードのしたこともどうかと思いますが・・・。

25リヴァオタと八アスのためでなく:2004/03/08(月) 20:44
ガロードはこの調子なら銀行強盗と列車強盗ができると思った。さっそく彼は
中古車会社でロータリー搭載で赤の75年型マツダコスモを買った。次に銃砲店で
ウィンチェスターM70を買った。
愛車になったコスモをかっ飛ばしている途中、あるものを見た。
それはクルセイダーズのメンバーのチェーン・アギだ。ガロードはチェーンの
ところで車をストップさせた。
「やぁチェーン」
「あら?ガロード」
「このところどうだ?」
「いまいちよ」
「なぁ?チェーン,俺とやり直さないか?今なら間に合うぜ」
「おことわり」
「ちぇ」
ガロードはコスモを急発進させた。

26リヴァオタと八アスのためでなく:2004/03/08(月) 20:55
キラとフレイは美術館から出た。すると目の前に
ヤンキー座りをするドラえもんのコスプレをした三人の男に
であった。はっきり言ってこういうのだ「http://www.geocities.co.jp/MusicStar-Guitar/1658/d-118.jpg
赤いドラえもんが声をかけてきた
「よぅよぅ姉ちゃん金かしてくれよ」
次に青いのが
「俺たちお小遣いないのよ」
そして最後に緑のが
「俺たち「魔太郎」の新刊がほしいのよ。姉ちゃん、金貸さないと
 恨み念法使うぜ」
「あんたたち馬鹿じゃないの!貸すわけないでしょ」
フレイはタンカを切った。
「だいたいいい年してドラえもんのコスプレをおかしいわ」
「んだとこのアマ!」
「恨み念法使うぞ!」
逆にフレイはイオナズンを唱えた。
ドラえもんのコスプレをした三人を吹っ飛ばしたのだ。
すごいよフレイ!
「すごいよフレイ」
キラはつぶやいた。

27流離う翼たち・426:2004/03/08(月) 22:30
 そして、遂にフレイの料理が出てきた。器に盛られているのはシチューだと言う。赤っぽい色からするとアイリッシュシチューなのだろうか。しかし、問題なのはそこではない。何故に鍋から出されたはずのシチューからポコリと泡が立つのだ? この不可思議な香りは何だ? そもそも煮込んだ筈の肉や野菜は何処に行った?
 疑問は尽きないが、当面の問題はそこではない。問題なのは、この怪しげな物体Xを口に運ばなくてはならないという現実だ。
 サイは無言でトールを見た。トールもまた自分を見ている。

「ど、どうぞ、サイ」
「い、いやいや、トールこそお先に」

 お互いにスケープゴートは御免だとばかりに笑顔で先を譲り合っている。その表情には生き残るのに必死なサバイバルの現実がまざまざと浮かんでいる。生き残る為には友情など売り渡すほどの利己心が必要なのだ。

 そして、誰も手をつけないこのシチュー? の製作者、フレイは悲しそうな顔でキラを見た。

「キラ・・・・・・・・・」
「くぅっ」

 上目遣いの悲しげな視線にキラは自分の心がぐらつくのを確かに感じた。所詮は彼も男だということなのだろう。そして遂にその視線に耐えられなくなったキラはスプーンを掴むと、まるで特攻をかける直前のパイロットのような、何かを諦めた表情で宣言した。

「キラ・ヤマト、突貫します!」

 スプーンでシチューをすくい、口に運ぶ。それを誰もが固唾を呑んで見守る中、ふいにキラが小さなうめき声を上げた。

「大丈夫か!?」
「傷は浅いぞ、しっかりしろ!」

 トールが肩を叩き、フラガが何処からとも無く洗面器を持ち出してくる。だが、次のキラの反応は全員の予想とは大きく違うものであった。

「あれ、食べられる?」

 失礼極まりない発言だが、この場では誰もそれをおかしいとは思わなかった。まさか、この異臭を発する物体Xは可食物だというのか。キラを除く5人は信じられないという表情でスプーンにそれを1匙すくい、恐る恐る口に運んだ。

「・・・・・・・・・確かに、食えるな」
「不味いけど、食べられるぞ」
「・・・・・・この匂いと見た目で何故食べられる?」
「こう、理不尽なものを感じるな」
「だが不味い事は隠せないぞ」

 一同はどうしてこれが食べられるのかしきりに首を捻っていた。見た目からすれば今までで一番ヤバげと言うか、どう見ても食える代物ではないのに。しかし、食べられるだけで不味い事には変わりは無かった。
 そして、その真の恐怖はこの後襲ってきたのだ。

ドンッ!! ズズ、ズゥゥゥンン・・・・・・

 突如として下腹部から衝撃がきた。
 これまで経験したことも無いメガトン級の衝撃が全身を駆け抜ける。破壊の中心点は腹から下腹部へと移行し、お尻の辺りがやんごとなき状態に陥った。キラのコーディネイターとしての強靭な肉体でさえ、その猛威の前には全くの無力であった。

「だ、誰か・・・・・・助けて・・・・・・」

 キラが必死の形相で助けを求めるが、誰にも彼を救う事は叶わなかった。他の5人も同様に真っ青な顔に滝のような脂汗を流し、全身全霊の力でよろよろと食堂を後にして行く。あの凶暴なオルガでさえ顔を悲痛に引き攣らせ、苦悶に脂汗を流しているのだ。
 そのまま彼らは暫くの間、トイレから帰って来なかったのである。

28過去の傷・73:2004/03/08(月) 22:49
ミリアリアからの突然のキスにキラは驚いたあと戸惑った、なおも彼女は唇を押し付けてくる、目を閉じている彼女は伺わずキラは呆然とした表情でされるがままになっていた。
それにしてもこのキスといいミリアリアの意図はなんなのだろうか、それにしてもこんなに積極的なミリアリアもめずらしい、まるでフレイのようだ・・・おそらく、いや推測であるがミリアリアはト−ルが死んで彼氏がいない状態だ、いままではキラやフレイを励ましたりアドバイスしたりする位置にいた彼女、だが頭のどこかに寂しいという気持ちがいつもあったのだろう・・・さらに知り合いを見るとカップルばかりだ、キラとフレイ、ラクスとアスラン(この二人とはあまり親しくはないが実際の現状である)、カガリとサイ(これは違うかもしれないが)その時気が付くと自分だけ一人だった・・・そしてキラとフレイに嫉妬してしまう・・・そしていままでつもりに積もった気持ちが我慢出来なくなり一気に爆発してしまったというのが実態だと思われる。
まだ唇を押し付けていた彼女がゆっくりとキラの唇から離れる、するとキラはつい唇を手で触る、それを色気のある目で微笑むミリアリア。
「あ、あのミリアリア・・・」
ミリアリアはキラの顔と当たりそうなぐらい近くでささやく。
「ミリィって呼んで・・・ト−ルがそう呼んでたように」
「ミ、ミリィ・・・その」
「じゃあ戻るわね・・・夜、部屋で待ってるわ・・・」
そう言うとミリアリアは戻っていった・・・残ったキラは・・・ミリアリアのやわらかい唇の感触を残したまま呆然とその場に立っていた。

「お、おい抱きつくなフレイ!」
「いいじゃない、ほんとカガリって可愛い♪頬にキスしたくなっちゃう」
「や、やめろ私はそんな趣味はな、ないぞ!」
「友達になってくれる?なら離れてあげる」
「も、もう十分友達だろ!た、たのむ離れてくれ!私あんまり体触られるの嫌いなんだ!」
「そう、ならいいわ離れてあげる」
そしてあわててカガリはフレイから逃げるように反対側の席に座る。
「ねえ、カガリなんっていうのかしら・・・ええと・・・そうモビルなんとかってやつの操縦って難しいの?」
カガリはその話題に安心したように落ち着きを取り戻した。
「モビルス−ツか、お前操縦に興味あるのか?」
「う−んというより好奇心ってやつ?ほらキラの姿見るとなんか知りたくなっちゃって」
(二ュ−タイプ能力持ってるフレイさんなら大丈夫です)
(あらそう?ありがとうティファ)
「よし、なら基本的なことから言うからちゃんと聞いておけよ」
「うん、カガリおねがい」(それのしてもキラ遅いわね、どうしたのかしら・・・)

「なんかこの前戦闘になったんですって?」
「はい・・・残念なことになりましたわ、もう戦争は私も嫌ですのに」
ラクスの部屋で話しているラクスとマリュ−、艦長同士の対談だ。
「ア−クエンジェルはどうですか?キラ様にアスラン、サイさんとミリアリアさんとフレイさんはこの艦に正式に所属することになりましたが他のクル−の皆さんなどは全てそちらにいらっしゃいますよね?」
「ええ、でも人員不足もないし、上手くやってるわ、ところでキラ君も皆元気そうでよかったわ、特にフレイさんがね、彼女は可哀相な子なの、だから元気な顔が見れて本当に良かったわ」
「はい、アスランもキラ様も皆元気です、皆が元気な顔でいてくれて艦長であり指揮官である私としても嬉しいことですわ・・・とっても・・・ところでア−クエンジェルはこの後どうなさるおつもりですか?もう発つと聞きましたが」

29流離う翼たち・作者:2004/03/08(月) 22:49
フレイ様の料理が終わりました。次はいよいよ本命、マリューさんです。
フラガ少佐は愛の為に死地わが身を躍らせるのでしょうかw

>> 散った花、実る果実
ううむ、リスティア嬢の言うことも正しいけど、私はコーディネイト反対派
フレイ様は随分おとなしくなってますね。さて、次はどうなるか楽しみです

>> 過去の傷
ふ、フレイ様の性格がはっちゃけてきている。カガリが引くほどにw
ティファは何時でも何処でも出てきますな。ある意味恐ろしい能力です

>> リヴァオタと八アスのためでなく
すいません、ネタが分かりませんでした。絵は微妙にシュールですがw

>> The Last War
化け物が出てきましたね。まるでクインマンサです
しかし、キラはまだ不殺なんて考えてるんですか。そんな考えが誰も守れなかった原因なのに
アレクセイの質問にキラは答えられるのでしょうかな

30過去の傷・作者:2004/03/08(月) 23:07
>>散った花、実る果実
ううむ、リスティア嬢の意見も正しいかもしれませんね、ただなんかな、でもフレイ様もだんだん和解し合うかもしれませんね。
>>The Laut War
おお、なんというこれは危険すぎるっていうよりもキラにとってアクセレイの質問は辛いものかもしれませんね、どう答えるんでしょうか?
>>翼たち
え!?フ、フレイ様・・・まあこうなるとは思ってはいましたが、それにしてもキラって運が無いというか、でも六人ともなんとか耐えて(違うか?)ますな、そしてお待ちかね艦長さんですね♪私はフレイ様が最後だと思ってました。

31ザフト・赤毛の虜囚 20:2004/03/09(火) 04:03
5.充足 1/1
[私は、今、満たされている]

私はキラのメモリチップを素肌に抱きしめて眠っている。キラを感じる。心が暖かくなる。
キラが、私の心を満たしている。それは心と繋がった肉体をも満たして行く。

* * *

私は、裸の女性を抱きしめている。心には愛しさを感じる。下半身に昂ぶりを感じる。
爆発しそう。裸の女性は、顔を上気させ、さっきから、ひとつの言葉だけを呟いている。

「ユーレン、ユーレン、ユーレン、ユーレン!!」

私が、この女性を満たしている。私の体が愛しいと感じている。

* * *

メモリチップに眠るキラの言葉が、私を酔わせる。
「僕は君を必ず守る。何があっても守るよ。いつまでも。約束する」
キラ守ってね。私をいつまでも見守っていて。

* * *

私が爆発する。汗に濡れる柔らかい肌を抱きしめる。やがて、それが終わり、
体には現実感が戻って来る。でも、私の心は、まだゆっくり引いて行く興奮の余韻を求めている。
そして、私の抱く女性も、その余韻を慈しむように、私に囁きかける。
「ユーレン、もう少し抱いていて」

私の心が体を動かし、とろけるようなキスをかわす。
「ヴィア……」
「ユーレン、嬉しい……」

* * *

私の体はキラを待っている。熱いキラを求めている。体が覚えている幾重ものキラの記憶が、
私を満たしていく。

* * *

余韻を慈しみながら女性を抱きしめる私。でも、既に放出を果たした体は、急速に醒めて行く。
周囲を見回した。そこにある鏡に映った私の顔。それは、金髪で、優しい目の男性。私が以前から
見ている愛しい人。私の愛しい人。切なさで一杯の私の心は、それに触れたくて鏡に手を伸ばす。

唐突に、感覚が切り替わった。私の本当の体に……
そこで感じたのは痛み。床に打ち捨てられた体。心に繋がれた解き放てない鎖。

これは、数年前の虜囚の私。私は赤毛の虜囚、メルデル・シェトランド。
そのころ、私は分からなかった。でも、今は、時々感覚が切り替わっていた相手が誰なのか分かる。
私の愛しい人。私達は出会った。でも出会った時は、既に遅かった。
求めても手の届かない想い。満たされない想い。

* * *

私は捕虜、フレイ・アルスター。私は、今、満たされている。キラの思い出に満たされている。
だけど、それは、既に終わったこと。私に未来はない。今、このときだけ……

32ザフト・赤毛の虜囚 21:2004/03/09(火) 04:05
6.継承 1/12
[戦争に行くのだよ]

「フレイ・アルスター。疲れているところ済まないが、出かけることになった。
すぐに準備をしてくれ。もっとも、準備するような荷物も無いだろうが」

昨夜は、キラのメモリチップを抱いて、少し安らかに眠れた私を、クルーゼは急きたてるように、
また外套を着せて部屋を連れ出し、潜水艦のデッキの連絡機に乗せた。キャビンを通るクルーゼと私を、
じろじろと見るザフトの兵士達。昨日見たイザークという兵もいた。赤い軍服を着ている。
他にも赤い軍服の兵士は何人もいて、その中には私と年が変わらないような女の子もいた。
クルーゼは、私を個室に入れると機長と話すからと行って出て行った。
やがて、連絡機が離陸した。戻ってきたクルーゼは、私に言った。

「少しアチコチ連れ回すことになるが我慢してくれ」
「私を、どこに連れて行くつもりなの」

「戦争に行くのだよ」
「え?」

「連合が油断しているところを、間を置かず、パナマを落とせとは評議会も無茶を言う。
確かにアラスカと両面作戦で軍備を展開してはいたのだがな」

私にはクルーゼの言っていることが分からない。

「まあ、君には後でゆっくり聞かせよう。また、君の方の話を聞かせてくれ」

私は答えずに、服の中の拳銃に手を触れる。

「ここでは銃は出さない方がいい、すぐ隣はザフトの兵士が一杯だ。撃たなくても
銃を持っているところを見られれば、君は射殺される」

私はさぐる手を止めた。

「話したくなければ、それでもいい。いつか、君の言うパパのことを聞かせてもらおう」

クルーゼは、椅子に深く座ると、やがて寝息をたて始めた。

パナマ? また戦争? 私には不安だけがある。だけど、少しでも不安をやわらげるものは、
私の手の中にあった。キラのメモリチップ。私は見つからないように厳重に隠し持っていた。
今は中身を見ることはできなくても、それがあるだけで、キラの色々なことが思い出され、
私を癒した。私は、キラの胸に抱かれて眠ったことを思い出しながら、クルーゼ同様、
眠りについた。

33ザフト・赤毛の虜囚 22:2004/03/09(火) 04:11
6.継承 2/12
[でもね、ユーレンとは、腐れ縁だもの]

「ねえ、メル元気出して」

私は、ハッとした。私の前にはヴィアがいる。私を癒すように優しい声を出している。
私は病室のベッドに横になっている。体の芯に痛みが残っている。やがて、意識が
はっきりしてくる。それは、心にも残った痛みを思い出させる。

「メル大丈夫よ、今は体を直すことだけを考えて」
「うん、ありがとうヴィア」

ここは、L4コロニー・メンデル。私が結婚して、既に二年が経過している。
私の夫アル・ダ・フラガは、自分の子供をコーディネータとして生ませるために、私を、
ここメンデルの遺伝子研究所に行かせた。既に知り合っていたユーレンとヴィアは、今は、
私がコーディネータの子供を産むための担当医になっている。

私は何度も手術を受けている。だけど、遺伝子操作して受精させた胚は、どうしても
私に着床せず、着床しても流産したりで、失敗続きだった。ヴィアは、手術の度に傷つく私を
親身に心配してくれている。私も本当にヴィアを信頼している。

「アルって、とても優しいのよ。失敗は私のせいじゃ無いって言ってくれてるし。
少し良くなったら、ヨーロッパへ旅行に連れて行ってくれるって」
「うらやましいな、メル。うちの旦那なんか、研究ばっかで、どこも連れて行ってくんないもの」

私は、ヴィアを心配させたくなくて嘘を付いている。一生懸命、夫のフラガのいいところを探して
話をする。だけど、本当はヨーロッパへも仕事で行く話。私の夫フラガが優しかったことなんて一度も無い。

「でも、ユーレンだって優しいでしょ」
「昔の話だわ。もう口喧嘩ばっか。現在、別居生活、記録更新中よ」

でも、ヴィアはひとしきりぼやいた後、必ず、こう付け加える。
「でもね、ユーレンとは、腐れ縁だもの。離れられないよね」

私は、そんなヴィアが羨ましい。憎らしいくらい。

「何の話だい?」
ユーレンが入ってきた。私達に話しかける。

「少なくとも、アンタを誉めてる話じゃ無いわね」
ヴィアは、私に目くばせして入れ代わりに部屋を出て行った。

「どうしたんだ、ヴィアは?」
「ううん、大したことじゃないから」私は、ごまかすようにユーレンに言った。

「ところで、メルデル。また、フラガ氏から、君を調べるように言ってきたけど」
「そう。いいわ、うちの人の気の済むようにして」

「それで、また君は傷つくことになる。本当にいいのか?」
「仕方ないもの……」

失敗する度に、フラガは、私を虐待し、私の体を徹底的に調べさせた。
だけど、何の解決にもならなかった。ユーレンの検視では、私には問題は無いはず
だと言っていた。

私は、私を奴隷のように扱うフラガを憎んでいる。絶対、フラガの子供なんか
産んでやるもんかと思っていた。それが、失敗の引き金になっているのかもしれなかった。

フラガに無理矢理に結婚させられた時、私は学校の親友を事実上失った。誰も、私を軽蔑して
近寄って来ない。フラガの知り合いの婦人も、私を汚らしいものを見るような目で見る。
私の気の許せる友達はヴィアだけだった。だから、私がフラガを憎んでいることを
ヴィアには知られたくなかった。

でも、それ以上に、ユーレンに、自らの手で傷ついていく私を見せるのが辛かった。

34ザフト・赤毛の虜囚 作者:2004/03/09(火) 04:20
フレイSS新章開始します。パナマ戦の話ですが、かなり、TV本編と変更してます。
フレイSS前半第一部の最初の山場となる予定ですが、正直言って重い話です。
次の章を経て、その次くらいになると、少し明るくなるはずですが……

>>刻還り
黒キラで無くても、戦闘中にOS書き換えて、ブートストラップ再起動するのは同じですね。
しかし、結局、カガリは殴られこそしないものの、黒キラの代わりにフラガに怒られましたか。
一応、怒るのはサイーブの役目でもあるはずなんですが、カガリにはスポンサーの弱みがあるからでしょうか。

>>散った花、実る果実
ミリアリア・リスティアとフレイ様の話、重いテーマに入っていて、この戦争の縮図のようになっていますね。
「自分の子供にもより確実に素晴らしい能力を与える事ができるのよ」このリスティアの言葉は純粋な親心で、
美しいと思います。でも、TV本編の回想シーンからすると、祖父母の世代で、それを考えていたかというと……。
それに、リスティアの世代以降は、出生率が低いのですよね。厳しい話です。

>>The Last War
アレクセイ、無茶苦茶なものに乗ってますね。キラは、どうするつもりなのでしょう。

>>流離う翼たち
なにげに最初の被害者になるキラが哀れ。それにしても、この惨事に際して女性陣の
リアクションが無いのが、結構恐い。
それと、オルガ君「阿婆擦れ」は酷いです。せめて、ひらがなで……

>>過去の傷
ミリィの心情分析しているとこみると、まさかキラは正当化して…… それと、キラは、ディアッカのことに気づいていないのか?
フレイ様、異様なテンションで、カガリと仲良くしてますが、このままMSへ、なだれ込み?
そして、フレイ様を気づかうマリューさん。どうして、すぐに行ってしまうのでしょう?

35The Last War・12:2004/03/09(火) 21:34
「!・・・それは・・・」

 キラは戸惑いの表情を見せた。その問いが、明らかに自分を試すためのものであることは、すぐに分かった。しかし、その意図には誤算があった。もしあの時、フレイ、かつてのネメシスがこの男に命を奪われていたとしたら、キラは許すことは出来なかったかもしれない。だが・・・。しばらくして、彼はその問いに答えた。

「・・・僕は、元々貴方を恨んではいないよ」
「何・・・?」
「彼女は、今でも生きてる。・・・但し、あの時の記憶は、無くしてるけど・・・」
「・・・そうか。まさか、そんなことが・・・」

 その事実を聞かされ、アレクセイはやや驚いた様子は見せたものの、すぐに元のポーカーフェイスを取り戻した。そして彼は同じ問いをアスランにも投げかけてきた。

「・・・それではアスラン・ザラ、貴様にも聞こう。この戦いの元凶であり、幾人もの貴様の仲間を殺してきた私をどう思う?」
「!・・・」

 アスランはしばし考え込んだ後、答えを導き出した。

「・・・正直なところ、俺は貴様を許せない。だが、これからの貴様の心次第でそれがどうなるかは分からない」
「!アスラン・・・」

 その言葉を聞き、キラの顔が綻んだ。親友であるアスランが自分の意図を理解してくれたことは、何より嬉しかった。
 そしてアレクセイは何かを思案した上で、結論を下した。

「・・・成る程、貴様達の言いたいことは理解できた・・・」
「じゃあ・・・!」

 人は必ず分かり合える。かつて自分とネメシス、現在はフレイがそうすることが出来た時以来、キラは再びそう考える様になっていた。そしてその僅かな望みに、彼はこの場所においても賭けてみたかった。しかし・・・。
 
「やはり貴様等は、只の愚か者だ・・・!」
「えっ?」
「!避けろ、キラッ!!」

 アスランの声が耳に入った次の瞬間、巨大MSが咆哮した。その時、キラの意識が一瞬途切れた。

「・・・外れた、か・・・」
「・・・貴様ぁ!」

 望みは、無残にも踏み躙られた。アレクセイは搭乗する巨大MSの頭部に内蔵された大型ビーム砲によってキラを狙撃した。それにいち早く気がついたアスランは、間一髪でキラを救出した。

「・・・”許す”?何様のつもりだ?私と同じ、価値無き命の分際で・・・!」
「何だと・・・!?」
「第一、もう分かっている筈だ。我々はもう、理解し合うことなど出来ないことにな・・・」
「・・・薄々、分かってはいたよ・・・」

 アレクセイの非情な言葉を前に、キラは悲しげに呟いた。

「分かってはいたけど・・・、それでも僕は・・・!」
「止せ。お前の気持ちは分かる。だが、もう無駄だ・・・」

 アレクセイを睨みつけながら、アスランはキラを諭した。

「・・・アスラン?」
「・・・こいつはもう・・・、『人間』じゃない・・・!」
「フン、何を今更・・・?」

 キラは驚きを隠せなかった。アスランが口にしたその台詞には、相手への明確な敵意が込められていた。まさか、彼が他人にそのような言葉を吐きかけるなど、思いもよらなかった。しかしそれを聞いても尚、アレクセイの顔から余裕の表情が消えることは無かった。

「・・・それと、ようやく思い出したぞ、貴様の乗るその機体のことを!・・・貴様等は、この戦いに父上の亡霊まで甦らせたのか!?」
「ほう、気付いていたか。このアプカリプスについて・・・」
「!アスラン、それって・・・!?お父さんの亡霊って、どういうことさ!?」

 キラは何かを知っているらしきアスランにそのことを問い質した。その時の彼からは、普段の冷静さは感じられなかった。

「・・・あのMSの名はアプカリプス。かつて、ザフトでジェネシス防衛を目的に計画された機体だ・・・!」
「!・・・ジェネシス・・・!?」

36過去の傷・74:2004/03/09(火) 22:48
(勉強になりますね、私も今度乗ってみます、ガロ−ドに内緒で)
(私も乗るわよ)
「どうだ?理解できたか?」
「ええ、とても参考になったわ、ありがとうカガリ」
「しかし驚いたな、まさかお前みたいな奴が操縦に興味あったなんてな」
「そう?あらミリアリア」
「ねえ皆、もう今日は遅いし食事会は明日にしない?」
「そうね、私もそう思うわ、パックする時間だし、カガリは?」
「そうだな、私もそう思う、ところでサイはどこ行ったんだ?」

通路を歩いていたキラは部屋の前で待っていたミリアリアと会う。
「あ、ミリィ・・・」
「部屋に来て」
「いや、そのことだけどミリィ、あの・・・」
「来てくれないと部屋に上がるわよ、大丈夫よフレイはシャワ−室にいま入ってるわ」
キラは大きくため息をつくと。
「分かったよ」

「さあキラなぐさめて」
「いや、ミリィあの・・・ト−ルに悪いよ、それに僕はフレイが・・・」
「ト−ルは死んだわ、ねえキラ・・・ト−ルの代わりになって・・・」
ミリアリアが抱きついてくる。
「そんな・・・ごめん、ト−ルの代わりなんて僕には出来ないよ」
「キラはいつも優しいのね、でもねキラ、その優しさで傷つく人もいるのよ」
「え?・・・」
ミリアリアは涙を流す。
「キラは優しすぎるのよ!キラ!!!キラは私にも優しくしてくれた!でもその優しさで傷つく人もいるの!!!キラ分かってない!なにも分かってない!全然分かってない!!!キラはただ優しいだけ!!!物事からただ逃げてるだけじゃない!」
「!!!・・・く!」
ミリアリアはキラの胸に泣きながら顔を埋めて何度も胸を叩いた。
キラはそんな彼女を見て心が痛みショックを受けた、ミリアリア自身もなにを言ってるのかは自分自身理解してない、ただト−ルやディアッカがいないという寂しさや苦しさ、そしてイライラがたまっていた、そしてそれを全てキラにぶつけてしまったみたいだ。
「ミリィ、落ち着いて、ね?」
キラが手を差し出す、しかしそれを彼女は手で振り払う。
「同情してんの?あたしに」
「え?そんなつもりは」(どうしたんだ?ミリィは・・・まるでア−クエンジェルにいた頃のフレイみたいだ・・・)
「嘘よ!私にト−ルがいないからって同情してるんでしょ!それで私を完全に拒絶しないだけなんでしょ!?なんでよ・・・なんでキラなんかに!勘違いしないで!キラに恋愛感情なんて私持ってないわ!」
ミリアリアの表情はかなり険しかった、相当怒っているようだ、こんな彼女の表情をキラは見たことない、それにしても彼女は一体どうしてしまったんだろうか・・・?
「同情で付き合ってくれたのならはっきり言って迷惑だわ!!!」
キラはそんな彼女を哀れんでいるような表情で見ていた、胸も痛んだ、それは叩かれているからではない。
「なんで・・・なんでキラに同情されなきゃなんないのよ!!!なんでキラなんかに!!!」
「ミ、ミリィ・・・僕そんなつもりは・・・悪いことしたなら謝るよ・・・だからもうやめて・・・」
「黙って!!!いまは私がしゃべってるの!!!それに謝りたいならなぐさめてよ!いつも可哀相なキラ!いつも一人ぼっちのキラ!だれかに頼らないと駄目なキラ!そうでしょ!寂しいのキラの方じゃないの!同情されたいのはキラのほうじゃない!なのになんで・・・なんで私があんたなんかに同情されなきゃなんないのよ!!!なに勘違いしてんの!」
「ミリィ・・・」
この言葉にはキラも傷ついた、それにしてもミリィがこんな一面を見せるなんてキラは思ってもみなかった。
「ごめん、なら帰るね、もうこういうのはやめよう、フレイに悪いし・・・」
「キラ失礼だよ」
「え?」
「女の子の前で他の女の子のこと考えるなんて目の前にいる女の子に対して失礼よ・・・」
そう言うとキラの唇に自分の唇を強く押し付けた。
キラには抵抗する気力がなかった。

37過去の傷・作者:2004/03/09(火) 23:01
>>ザフト・赤毛の虜囚
なんかフレイ様孤独ですね、でもいい能力持って、でもザフト以降のフレイ様は見ていて可哀相だった、はやく開放してほしかったな。
>>The Last War
やはり理解し合うことは無理ですね、この人には言っても無駄かもしれませんね。
それにしてもザラ議長の亡霊ですか、でもまさかジェネシスが関係していたとは、これはやっかいだぞ、どうするキラにアスラン。

38ザフト・赤毛の虜囚 23:2004/03/10(水) 06:47
6.継承 3/12
[そんな自分が辛かった]

「フレイ・アルスター起きたまえ、ここで乗り換える」
「う、うううん」

私は目をこすりながら起き出した。移動する連絡機の座席で、すっかり眠っていた。
眠っているうちに、また、まぶたが潤んでいる。覚えていないけど、また悲しい夢を
見たのだろうかと思った。

クルーゼに連れられて連絡機を降りている時、また、他のザフトの兵隊達が、私を
冷ややかな目で見ている。その視線が私は辛かった。アークエンジェルでも、私は
クルーに溶け込めず冷ややかな視線に晒されたことがある。キラを探そうと、
整備兵やサイ達のいる食堂を訪れた時のこと。あの時は、キラに会いたいという意思が、
その視線に晒されて逃げ出したくなる私を押さえた。それで、私のことを理解してくれた人もいた。
でも、ここはザフト、私は捕虜だ。私を理解してくれる人などいるはずが無い。

* * *

その後も、数日、クルーゼに連れられるまま、何度も飛行機を乗り継いで行った。移動ばかりで
疲れたけど、乗り換えの準備で忙しくて、クルーゼが、あの時のように私に迫って来ないのが救いだった。

* * *

途中、夜眠れずに連絡機の窓から、まっくらな外を眺めていると、はるか下の遠くに
火のような点が一つだけ灯るのが見えた。昼間は、ずっと海しか見えなかった。
島の都市の光か、なにかだったのだろうか。個室に入ってきたクルーゼが、私が、その光を見ているのに
気づいて言った。

「ああ、あれは島で大きな戦闘があったらしい。島全体が燃えている。詳しいことは不明だが、
近くに連合の艦船もキャッチしている。こちらには気づいていないようだがな」

話している時、クルーゼは少し頭を押さえるような素振りをした。私は不審な顔で、
クルーゼを見つめる。

「ふむ、生きていたのか…… いやなんでも無い。少し気になっただけだ。ちょっと因縁のな。
まあ、君には関係…… 無くは無いが…… いや、気にしないでくれたまえ」

なんだか、訳の分からないことを言っている。
そう言って、クルーゼは、また個室を出て行った。いったい何しに来たんだろう。

私は、再び窓の外に視線を移した。
あれは、戦闘の火の光。また人の命が失われている。私は、その光を見ているうちに、悲しくなった。
ずっと戦争ばかり。キラがまた泣いているような気がした。戦争の辛さに涙をこぼしているような気がした。
泣かなくなったキラだったのに、一人逝って、また泣いているような気がした。

でも、そんなキラを、もう二度と私の胸で癒してあげることはできない。そんな自分が辛かった。

39ザフト・赤毛の虜囚 24:2004/03/10(水) 06:51
6.継承 4/12
[ユーレンの馬鹿野郎!]

「自然の受精ってのはね。二億もの精子が競い合い、たった一つだけ卵子と結ばれるのよ。
まさに劇的瞬間」

私は、その声に我に返った。私は研究室のソファに座っている。その前で、ヴィアは
大げさに手を広げて語っている。

「それまで、精子は長い長い旅をして、卵管まで辿りつくのよ。そして卵子と結ばれて、
また卵管を戻って子宮に入って行く。ここで私の仮説だけど、精子って子宮を旅してきて
そこで、自分の戻るべき場所を先に見つけて覚えているのだと思う。そして、卵子と一緒に、
そこへ戻って着床する。それで赤ちゃんになる」

ヴィアは遺伝子工学と産婦人科の専門だけど、話す内容は難しい用語とかは使わずに、
くだけていて、私でも分かりやすい。

「それに対して、体外で受精させた精子は、自分の戻る場所を覚えていないじゃない。
それで迷って失敗することが多いんじゃないかな」

ヴィアは自説を唱え終え、私に目くばせする。

「おい、ヴィア、面白い説だけど、精子に記憶なんてないぞ。それに、そんなこと言ったら
コーディネータなんて出来ないだろ。実際には、もう何人ものコーディネータが社会に
出ているんだから」

ユーレンは言う。ユーレンはヴィアほどはロマンチストじゃ無い。それにヴィアは反発する。

「そんなの分からないじゃない、生きて動いているんだもの、ねえ、メルもそう思うでしょ」

「でも、ヴィア、二億の残りの、ほとんどは死んじゃうでしょ。それって可哀想だと思う」
私は生きて結ばれる方より、なぜか死んで行く方が気になる。それを辛く感じる。

「だから、そういう考え方すると辛くなるよ。精子は、男から女に遺伝子を運ぶ単なる器だ。
個々の精子ひとつひとつは捨て駒でも生命のシステムの一部なんだよ。可哀想と
いうのは当たらない。そう思わなきゃ。なあ、メルデル」

ユーレンの言葉は厳しいようで、私への気づかいがある。でも、ヴィアは、いつものように憎まれ口を叩く。

「はいはい、分かった、分かった。ロマンの無いこと。まったく、冗談の分からない男ね」
「おい、やめろよ。メルデルも見ているのに」

「メルがいるんだもの。だったら、もうちょっと優しく言ってもいいじゃない」

「やめてよヴィア、私のことはいいから」私は、二人の喧嘩を止めようとする。

「もう、せっかく、メルが退院する日なのに。ユーレンの馬鹿野郎!」

ヴィアは乱暴な言葉を吐くと、逃げるように出て行った。

ヴィアは興奮すると、男言葉になって、相手に正論を突きつけて決して譲らない。だから、
横暴で頑固なフラガと話すと、こじれることは確実だ。だから、研究所の所長は、決してヴィアを
フラガに合わせず、フラガとの応対は、もっぱらユーレンが担当だった。だから、ユーレンは
私とフラガとの関係に気づいていた。

「明日、フラガ氏は宇宙港に迎えに来る。やはり、君には問題が無いと報告書には書いておいたが」
「そんなの素直に聞く訳ないわ。ユーレン、いっそ、本当に、私が子供を産めないように、
無茶苦茶にしてちょうだい。その方が楽」

「そんなに、自分を傷つけるなよ」
「同情はいらないわ。私、どうせ汚れた奴隷だもの」

「メルデル……」

ユーレンは私を悲しそうに見つめていた。私も目に涙を浮かべてユーレンを見つめる。
私はユーレンに顔を埋めたかった。

──「ユーレンの馬鹿野郎!」

でも、ヴィアの乱暴な言葉使いに潜む愛情を知る私に、そんなことはできない。
私はヴィアとユーレンを仲直りさせたいと思っていた。

40ザフト・赤毛の虜囚 作者:2004/03/10(水) 06:53
ヴィアの性格とか、TV本編では限られた情報しか無いので、かなり脚色してますけど、どうかな。
次は、フレイSSの一部ですけど、章としては番外となるヴィア視点のエピソードを一話入れます。

>>The Last War
アレクセイは、ネメシスのことには、少し反応したようですね。しかし、ジェネシスは自身が
ローエングリーンさえ受けつけないほど強固なのに、プロヴィデンスとか、アプカリプスとか無茶苦茶に
強いMSに守られることになっていたなんて……

>>過去の傷
まさか、ミリィがフレイ様のTV28話と同じシチュエーションになるとは……
この後、フレイ様はキラの言葉に逃げ出しましたが、ミリィは逃げない様子。いったいどうなるのでしょう。

41流離う翼たち・427:2004/03/10(水) 19:23
 そして、とうとうマリューの番がやってきた。何となく精根尽き果てている審査員たちは、それでも不屈の闘志、ではなく、話の都合の為にゾンビの如く復活してきている。些か耐久力に欠けるためか、サイとトールはすでに目の焦点が合っておらず、根性が足りないキラは何やらシンジ君症候群に陥り、「逃げちゃ駄目だ・・・・・・」とかぶつぶつと呟き続けていた。
 テーブルに置かれたカレーの皿を見て、とりあえず正気の4人は安堵した。正気を無くしてるっぽいサイとトールは目の前のカレーに気付いているかどうかが怪しい。
 見た目は赤みがかったカレーソースのかかった白米。つまりカレーライスである。匂いも問題は無い。だが、調理中に呟いていた材料を考えるとこれもまともな食べ物でない事くらい、容易く察する事が出来る。というより、フラガの持つ第六感が全力で告げているのだ。

「これを食えば、死して屍拾うものなし」

 と。

 だが、出された以上最低でも一口は口にしないといけないだろう。たとえそれが死に至る行為だと分かっていても、だ。フラガは恐る恐る視線を上げ、調理をしたマリューを見る。マリューは期待と不安を顔一杯に映し出しながら固唾を呑んで自分を見ている。
 その顔を見て、フラガは覚悟を決めた。あんなに期待されてるのに、今更逃げられるかよ!
 意を決したフラガはスプーンに山盛りのカレーを迷うことなく口に頬張った。

「・・・・・・・・・ぐぅ!?」

 一瞬意識が飛んだ。これはもう不味いとかいうレベルではない。今までに食べたいかなる物体にも共通点が見出せない不思議な味わいと、舌にねっとりと粘りつき、何時までも後を引く不可思議な舌触り。まるで舌の上でこの世の悪意が塊となって踊っているかのようだ。これを食べ慣れれば不味い事で有名な軍用のレーションが珠玉の美味に感じられるようになるだろう。
 だが、フラガはその苦痛を顔に出すことなく、表面自然を装いながら1匙、また1匙と皿の中身を減らしていった。ちなみに制服で隠された部分には脂汗が滝のように流れており、その苦痛を伝えている。
 なんだか平気そうなフラガを見てオルガとキサカがスプーンを取った。キラだけは何故か先ほどからフレイが必死な目で自分を見ているのが気になっており、あえて2人の様子を伺っている。ちなみに残る2人は既に一口食べる前の段階でリタイア状態である。
 オルガとキサカがスプーンを口に運び、次の瞬間には悶絶して声も上げられ無い苦痛を全身で訴えている。それを見たキラとフレイとミリアリアがビクリと体を半歩引き、改めて視線を交し合う。

「な、何なの、このカレーは?」
「さあ?」
「ナタルさんが食べたら病院送りと言ってたけど・・・・・・」

 ちなみにカガリは未だに昏倒中。
 
 この恐るべき料理を、フラガはなんと完食してしまった。最後の一口が口に運ばれ、殻になった更にスプーンが置かれる。そしてグラスに残された水を飲み干した後、何とも開放感に包まれた爽やか過ぎる笑顔になった。

「美味しかったよ」

 それだけ言い残し、フラガは食堂から出て行った。残る5人はというと、オルガとキサカはカレーの皿に顔を突っ込んで何やら断末魔としか思えないヤバゲな痙攣をしているし、相変わらず二人は復活していない。そしてキラはといえば再びシンジ君症候群、いや、もっと後ろ向きに「逃げなくちゃ駄目だ」とか呟いている。

42流離う翼たち・作者:2004/03/10(水) 19:43
>> ザフト・赤毛の虜囚
メルデルは意外と怒ってるんですね。
ユーレンに横恋慕するのも凄いですが、ユーレンもまた悪意を持つ男だしなあ
ヴィアさんは案外口が悪いんですね。まるでカガリだw

>> The Last War
流石はパトリック。準備万端でジェネシスを動かしてたんですなw
これがあの時あったら、プラントの勝利で戦争は終わってたでしょうに
何気にアスランが切れてる

>> 過去の傷
頑張れミリィ、このままキラを押し切るんだw
このまま行けばキラは人間失格の烙印を押される事に

43過去の傷・75:2004/03/10(水) 22:40
強引に唇を押し付けてくるミリアリア・・・。
「く・・・やめてくれ!」
キラはミリアリアを突き放した、しかしまた抱きつきキスしてくる。
「ミリィ・・・やめ・・・やめろ・・・やめてくれ!」
再度ミリアリアを突き放す。
「なによ、フレイとだってこれくらいのことしてるんでしょ!」
「ミリィいいかげんにしてくれ!でも・・・多少同情の気持ちも・・・少しはあったよ・・・ごめん・・・でも・・・」
「やっぱりそうじゃない・・・同情してるんじゃない!なによ・・・同情!?あんたが私に!?なんでキラなんかに同情されなきゃなんないのよ!いつも可哀相なのはキラの方じゃない!そんなに心が弱いからフレイに付け入れられるのよ!それなのになんでよ・・・なんであんたなんかに同情されなきゃなんないのよ!同情なんて迷惑だわ!だいたい・・・同情されたいのはあんたの方でしょ!!!寂しいのはあんたの方じゃない!いまのキラはいえ・・・以前からそう・・・キラはただの偽善者よ!!!」
「!!!・・・く!」
キラは部屋を飛び出した。

「そうだ、つまり遠距離ではビ−ムライフルで攻撃したり威嚇するんだ、そして接近したらビ−ムサ−ベルで攻撃だ、要領はだいたい分かったみたいだな・・・そして攻撃されそうになったらシ−ルドで防御するんだ」
「シ−ルド?盾みたいなの?」
「盾か、まあそうだな・・・モビルス−ツにはだいたい付いてるぞ、まあモビルア−マ−にはほとんど付いてないけどな、でもお前素質あるかもな」
「そう、カガリありがとう」
「あ、ああ、明日は実際機体に触れさせてやる」
「ほんと!?カガリ・・・ありがとう、で、どの機体に乗るの?」
「私の機体・・・ストライク・ル−ジュだ」

カガリと別れたフレイは、部屋に戻った。
「キラ?遅くなってごめんね」
「・・・・・・」
キラは下を向いて座っていた。
「キラ?どうしたの?」
「あ、いや・・・なんでもな・・・く!うう・・・ああ・・・あああ」
突然キラが泣き出す、なにがあったのだろうか・・・どうやらなにかショックを受けているようだ。
「キラ!」
フレイはキラを抱きしめる。
「うう、フレ・・・く!・・・うう・・・あ・・・ああああ!」
キラの体が震えている・・・どうしたのだろうか・・・なにかに怯えているようにも見える。
「くう、うあああ・・・うう・・・僕は・・・く!」
キラが声を出して泣いている、相当なにかにショックを受けている様子だ。
「あああ!うう・・・あ・・・あ・・・あああ・・・」
フレイは驚いていたが・・・優しく微笑んだ。
「キラ・・・大丈夫よ、私がいるわ、だから大丈夫・・・貴方には私がいるじゃない、キラには・・・キラには私がいるから、大丈夫・・・」
「フレイ・・・うああ・・・うう・・・ああ」
フレイはキラの背中を優しく揺すってやる。
「私がいるから・・・ね?」
キラは怯えた表情で泣きながらフレイを見上げた、それにフレイは優しく微笑む。
「うう、フレイ・・・僕・・・」
「キラ、私がずっとキラにはついてるから・・・キラには私がいるから・・・だから怖がらないで・・・大丈夫だから・・・ね?キラ」
「ううう・・・フレイ!!!」
キラはフレイの胸に顔を埋めた、そのキラをフレイは優しく見つめる。
「守るから
「うう・・・フレイ」
優しくキラの髪を撫でる。
「私がキラは守るから」
キラの顔をこちらに向けさせる。
「私の想いがキラを・・・」
「うう・・・」
「私の想いが・・・貴方を守るから」
そう言うと同時にキラの震えている唇に優しく唇を重ねた。
フレイのキスにキラは・・・目を開けていたが、フレイに甘えるように目を・・・瞳を閉じた、フレイのキスの感触は温かく感じた、ミリィとは比べ物にならにほど・・・心まで温かく守ってくれた。

44過去の傷・作者:2004/03/10(水) 22:51
>>ザフト・赤毛の虜囚
メンデル・・・結構その気ありみたいですね、それにしてもヴィアはどことなく性格とはカガリに似てますね。
>>翼たち
最後なんか奇跡起きるかなと思ってましたが。
少佐は絶対無理してると思う・・・たぶん・・・出た瞬間吐き出すとか?

45ザフト・赤毛の虜囚 25:2004/03/11(木) 01:36
番外 1
[ヴィアとユーレン]

私は、今、ユーレンに抱かれている。まだ、ユーレンに初めて抱かれて、それほどは
経っていない。でも、私は大きな声を上げている。
「ユーレン、ユーレン、ユーレン、ユーレン!!」

私は、彼に感じている。彼に満たされている。

* * *

ユーレンは幼馴染。小さい頃、両親の仕事で大西洋連邦に引っ越して、言葉も分からず
戸惑う私に、何くれとなく接してくれたのがユーレンだった。でも、私は素直じゃない。
まわりの環境が悪かったから、覚えた言葉も乱暴なものの方が早かった。

「お前、大きな、お世話だ。私のことなんてほっとけよ!」
「親父とお袋の馬鹿野郎! あんなの本当の親じゃない」
「私は一人でやっていく。いつまでも子供じゃない。見守ろうなんて思い上がりもいいとこだ」
「お前さぁ、お前さぁ。本当に、そう思って言ってるのかよ。本当に、私のこと思って言っているのかよ!」
「あいつは汚いやつだ、なんで、あんなのの肩持つんだよ。私の論文の内容を盗んだんだぞ」
「なんで、こんな私のこと気にかけるんだよ。もうダメだよ。徹夜したって間に合う訳ないだろ。
 もう、落第で充分だよ。どうせ私なんか、誰も振り向かないんだ」
「合格おめでとうだって? 何だよ、私は感謝なんてしないぞ。くそ、なんで涙なんか、くそ!」
「何考えてんだよ。お前が落第して、どうすんだよ。それで恩を売ったつもりかよ。この馬鹿野郎!!」

泣いたり怒ったり、喧嘩ばっかり。何回、酷い言葉をかけたか、もう覚えていない。
それでも、私とユーレンはカレッジのドクターコースまで付き合った。離れられない。私の本当の心。

二人、遺伝子研究所への就職が決まった時、やっと、女らしい言葉で言えた素直な気持ち。

「ユーレン良かったな……
 ……ユーレン。こんな私でも、ずっと一緒にいていい?」

* * *

「もう、せっかく、メルが退院する日なのに。ユーレンの馬鹿野郎!」

また、私はユーレンに酷い言葉を投げかける。私がせっかくメルを元気づけるために
考えてきたこと否定して。ユーレンの馬鹿野郎。メルもメルよ、ユーレンにやさしい言葉なんて
いらないわ。付け上がるばっかりよ。

遺伝子操作、コーディネータ。ジョージ・グレンによって世界に広まった新たな人類の進む道と混乱。
私は、遺伝子操作にアレルギーを持つ人達みたいに何でもかんでも否定はしない。使い方で、
いくらでも役に立つ道はある。でも、単に人を複製するクローンだけは許せない。生命のシステムを
否定して、人を作り出す。それには所詮、女が犠牲になる。自分の子供でもない他人を産むなんて。
産ませるだけの役目を女に押しつけるなんて。私は絶対許さない。

ユーレン。私は、そんな研究に取り組む、あなたを絶対認めない。何度でも言ってやる。
「ユーレンの馬鹿野郎!!」

* * *

ユーレンの動きとともに、私もクライマックスに達する。だけど、その余韻は、私を捕らえて離さない。
身動きも出来ない私は、体から離れたユーレンを、なんとか掴もうと必死で手を伸ばす。
すると、ユーレンは自ら、私を抱きしめキスをくれた。とろけそうに熱いキスを。

「ヴィア……」
「ユーレン、嬉しい……」

ユーレン、愛してる。

* * *

あの時の、あなたの温もり。今でも覚えている。私一人の家。私一人のベッド。
バカ…… ユーレンのバカ……

46ザフト・赤毛の虜囚 作者:2004/03/11(木) 01:39
ヴィアとユーレンのお話しでした。次は、フレイの話に戻りますが……
ちなみに、公式年表ではフレイ様は、拉致から二週間以上かけて潜水艦でパナマまで行っていますが、
うちのSSでは、飛行機を使って何気に時間を巻いています。

>>流離う翼たち
フラガ少佐って漢(おとこ)ですね。マリューさんと二人の行く先に幸有らんことを……
キラは、これのトラウマで、もうエヴァ(?)には乗りたく無いとか、言いだすんじゃないでしょうか。

>>過去の傷
キラの方がミリィから逃げ出しましたか。
ミリィは切れると恐いですね。ディアッカの時もそうでしたが。
でも、キラの自業自得もあるような気がする。それで、フレイに泣きつくとはキラ情けないぞ。
「シ−ルド?盾みたいなの?」このフレイ様のリアクションは、らしくて笑いました。

47私の想いが名無しを守るわ:2004/03/11(木) 18:17
>>ザフト・赤毛の虜囚
メルデル篇はE○Aの「ネ○フ誕生」のエピソードみたいで好きですね。
しかし後の展開を考えると物悲しいですね。「お前が落第して、どうすんだよ」
←バカな会話ですな。だけど微笑ましいです。
>>過去の傷
㍉の主張は結構利己的だったりするわけですが、話の中に結構真実が
混じっているから、始末に負えないというか、たちが悪いですね。
>>流離う翼たち
フラガはいいですね。「開放感に包まれた爽やか過ぎる笑顔になった」
←目に浮んできますね。読んでて目頭が熱くなってきました。
「不可能を可能にする」漢の生き様を見せていただきました。
>>The Last War
また生ぬるいことを言ってますが、良くも悪くもキラらしいというところ
でしょうか。巨大MSを前にキラとアスランの動揺が良く伝わってきます。
>>リヴァオタ
なぜにフレイ様イオナズンを唱えられるのだ。キラでなくても驚きます。
三人ドラえもんコスプレ笑えました。何者?
>>散った花、実る果実
リスティアは種族の優越の話と親の情愛の有無が簡単に結びつくところが
ちょっと軍国少女ぽくって面白いですね。フレイ様は逆に少し冷静になっ
てきて、寛容になったというか、立場が少しずつ優位に立った感じがしますね。
>>刻還り
フラガが美味しいところというか、ヨゴレ役引き受けてますね。本編の
キラがいきなり殴っちゃっていたので、フラガの落ち着いた対応が引き立ってます
>>キラ♀
㍉とトールも意図せざる共犯者へと転落してしまったようですね。恐るべし。
キラが死ねばAAの撃沈の可能性も大きくなるのに、もう刺し違える気満々ですね。

48流離う翼たち・428:2004/03/11(木) 19:37
 フレイとミリアリアはどうしたものかと顔を見合わせたが、一応出された料理を一口も食べずに下げるというのは流石に礼儀に反するので、ここは心を鬼にして一口食べさせなくてはならないだろう。すでに現実から逃避している2人は意図的に除外されている。

「キラ、一応、一口は食べてね」
「フレイ、それは僕に死ねと?」

 キラは隣で突っ伏している2人を横目に問いかける。既に2人とも痙攣という状態が終わり、動かなくなっている辺りがかなり怖い。
 フレイは嫌々と首を横に振るキラを見て小さく溜息を吐くと、無言でミリアリアを見た。それを見たミリアリアが仕方なさそうにキラに一枚のプリントを見せる。それを見たキラが一瞬首を捻り、そしてそのプリントが示す真の意味を悟って顔を引き攣らせた。

「ミ、ミリィ、これは!?」
「これから暫くの献立予定。ピーマンとか人参とかばかりよねえ」
「ミリィ・・・・・・」

 キラが泣きそうな顔でミリアリアを見る。キラは野菜が嫌いなのだ。それを見たミリアリアが邪な笑顔でキラに交換条件を突きつける。

「でも、キラがちょっと頑張ってくれたら、この献立を変えても良いんだけどなあ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 暫く考えていたキラは、がっくりと肩を落とすとスプーンを取り、死刑執行を待つ囚人のような、何かを諦めた表情でスプーンを口に運び、3人目の失神者となった。
 カレーに顔を突っ込んでピクピクと痙攣しているキラを見ながら、フレイはミリアリアに問いかけた。

「ところでミリィ、あなた、食事のメニューなんか弄れるの?」
「そんなのできるわけ無いでしょ」
「え、じゃあさっきのは?」
「よく見なさいよ」

 ミリアリアは先ほどの献立表をみせた。そう、日付の辺りを。そこには、丁度先月の日付が付いていたのである。

「・・・・・・先月の献立?」
「そう。キラはそれに気付かずに取引しただけよ。だから明日からの献立はこれとは違ってるわ」
「・・・・・・悪魔ね」

 フレイはミリアリアの知略に恐れを抱いた。彼女は敵にしてはいけない人間なのだろう。
 なお、フラガは自室に戻った後倒れてしまい、内臓疾患で2日ほど生死の境をさまよう事になる。そんなフラガをすっかり機嫌の直ったマリューが手の空く限り看病して一層の病状悪化を招いたという些細な事件もあったりする。


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