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果林「田舎の宴会に参加するだけで5万円もらえるバイト?」
1
:
名無しで叶える物語◆BhHjuToN★
:2025/06/29(日) 09:01:37 ID:???00
果林「何かいいバイトないかしら?」
果林「やっぱり求人誌はいいものないわね」ポイッ
スマホ
果林「またSNSで探してみましょう」スッ
果林「……」タップ
果林(私はニジガク卒業後、事務所所属の新人モデルになった)
果林(でも、モデル業だけでは生活費と服のカード返済が成り立たない状況。なので同じニジガクで居酒屋をやっている彼方の店のバイトを掛け持ちして、なんとか生活している毎日……)
果林(今月、誕生日の私は彼方から日々の感謝と友達のよしみで、月末に休みをもらった)
76
:
名無しで叶える物語◆K7CnEEzU★
:2025/08/16(土) 11:40:18 ID:???Sd
おっすオラ
77
:
名無しで叶える物語◆6QxkQE1Z★
:2025/08/16(土) 12:28:19 ID:???Sr
スキヤキの〆に入れるやつ……?
78
:
名無しで叶える物語◆fsFmmQy8★
:2025/08/16(土) 13:58:11 ID:???00
こんな素敵なお姉さまを生贄にするなんて、私、千歌ちゃんのこと軽蔑する
79
:
名無しで叶える物語◆hfbjsFu0★
:2025/08/17(日) 21:36:05 ID:???00
「あっ、しいたけの声だ!」
「……いらっしゃったみたいね」
「それでは皆さん、笑顔でワタツミさんをお迎えしましょう」ニコッ
果林(女将の合図で姉妹たちが大広間の襖を開け放ち、皆が赤黒いゼリーが盛られた箱膳を前に背筋をただし、笑顔をつくる)
果林(その引きつった笑みを浮かべる皆の表情には、これから来るモノへの畏怖を必死に隠そうとしている意思が読み取れた)
ピタッ……ピタッ……
果林「!」
果林(奥の廊下のほうで音がする。シンと静まりかえった会場だからよく聞こえていた)
ピタッ……ピタタッ
果林(音は連続して徐々に大きくなってくる。真夜中の、漆黒の海からあがって真っ直ぐこちらに向かってくるソレが出す音に耳をすませると、複数の足音のようだ)
果林(こっちに来てる……!)
ペタッ……ペタタッ
果林(その時、音が変わる……ついに、ソレが宴会場の畳の上に現れた気配を感じた)
80
:
名無しで叶える物語◆K7CnEEzU★
:2025/08/17(日) 21:43:43 ID:???Sd
😨
81
:
名無しで叶える物語◆hfbjsFu0★
:2025/08/17(日) 22:32:42 ID:???00
果林「……」ゾクッ
果林(見ちゃダメ見ちゃダメ見ちゃダメよ……!)
果林(廊下から宴会場にやってきたソレがこちらに歩み寄ってくる音を感じながら、必死で箱膳の数センチ先の畳表を凝視して、目線を下に伏せ続ける)
果林(正座をしたまま手は両膝に置き、頭はややうつむき加減で表情が見えないように振舞う──それが私なりの精一杯の対策だった)
スッ
果林(ヒッ……!)
果林(しばらくして視界の端に入ってきたのは人間の足や腕。それが何本も連なってゾロゾロと行進するかのように目の前を通り過ぎていく)
果林(それらの色は白く、というより石鹼のように妙にスベスベとした肌で、水でふやけているのか異常に膨張しており、風船のようにパンパンで重量感がある)
果林(うっ……臭い……!)
果林(しかも、ツンとくる潮のにおいに混じって表現のしようがない異臭を放っていた)
82
:
名無しで叶える物語◆jQi1ofTw★
:2025/08/17(日) 23:14:39 ID:???Sd
えべっさんだ
83
:
名無しで叶える物語◆hfbjsFu0★
:2025/08/18(月) 07:28:31 ID:???00
ピタリ
果林(動きがとまった……?)
果林(足や腕の行進が止むと、私の視界の上からスルスルと男女子供の白い腕たちが箱膳めがけ下りてきて)
カチャカチャ
果林(皿にある不気味なゼリーを手づかみして、細かくちぎって上に引き上げていくと……)
ブチュ
クチャクチャ
果林(動物がエサをむさぼっている咀嚼音が私の頭の上から聞こえてきた)
果林「……」チラッ
果林(気づかれないようにチラリと横目で左右を見ると、ソレが同じように腕を伸ばして箱膳のゼリーを手づかみで上に持っていって食べている)
果林(その光景を前にしても、ほかの人たちは背筋を伸ばしたまま微動だにせず、異常を日常として受け入れているかのようだった)
84
:
名無しで叶える物語◆hfbjsFu0★
:2025/08/18(月) 07:29:25 ID:???00
クチャクチャ
果林「……」ブルブル
果林(見ちゃダメ見ちゃダメ見ちゃダメよ……!)
果林(あなたたちは夏の恒例行事かもしれないけど……初体験の私はすごく怖いしキモすぎて無理ッ!!心を無にできるわけないわ!!)
果林(ていうか、何なのアレ?動物?でもゼリーを食べてるから虫みたいだし……あれ、海に虫っているの?でも人間の腕がいっぱいある虫なんていたかしら?)
クチャクチャ
果林(ああもう!私勉強が苦手だからわからないわよ!帰ったら彼方に聞いてみないと!)
クチャクチャ
果林(もう、早く終わって……こう思えば思うほど時間が長く感じるのよね……サイアクよ)
果林(恐怖と好奇心で取っ散らかった脳内の思考を何とか理性で抑え、この時間が早く終わるよう念じていたその時──)
85
:
名無しで叶える物語◆hfbjsFu0★
:2025/08/18(月) 07:30:55 ID:???00
ビチャ
果林「えっ?」クイッ
果林(頭上にやわらかい何かが落ちたはずみで、つい反射的に顔をあげてしまった)
86
:
名無しで叶える物語◆K7CnEEzU★
:2025/08/18(月) 07:34:44 ID:???Sd
あっ…
87
:
名無しで叶える物語◆hfbjsFu0★
:2025/08/19(火) 23:19:05 ID:???00
果林(目の前に、巨大な、醜悪で、臭う、この世の物とは思えない存在がいた)
果林(ソレは宴会場の入口から真ん中の上座まで伸びる体長をもち、体高は天井につり下がっている蛍光灯に触れそうなほど高い)
果林(胴体はひどい臭気を放ち、その表面は蛍光灯に照らされて白くテカテカと輝いていた。全体はブヨブヨと肥え太っており、青黒い血管のような管が表皮を縦横無尽に張り巡らされている)
果林(そして、その長く重そうな胴体をさっき見ていた手足たちが支えて浮かせている様子から、まるで釣り餌のゴカイやムカデが巨大化したみたいだった)
果林(だけなら良かったんだけど……)
果林(私を恐ろしさとキモさのあまり震え上がらせたのは、その胴体にたくさんの人間の目や口が貼り付き、無数の腕が体毛のように生えていてプラプラと揺れていること。その様子がすごく醜い)
ブチュ
クチャクチャ
果林(つぎに私の目に映ったのは、その生えた腕の一部が箱膳のゼリーにソロソロと手を伸ばし、小さくちぎってはパクパクと小魚のように開く口たちに持っていって食べさせている姿だった)
果林「ヒッ……!」
果林(おぞましい食事の光景を見て思わず息を吸い込んだ瞬間──胴体の目たちが一斉に私のほうへギョロリと濁った瞳を向けた)
88
:
名無しで叶える物語◆hfbjsFu0★
:2025/08/19(火) 23:21:00 ID:???00
果林「ぁっ……」
果林(目が、合ってしまった......!なんとか反らさないと……って、身体が動かない!?)
果林(何とか醜い存在が発する視線を避けようともがくが、硬直して声はおろか目さえ動かせない)
スルスル
果林(必死に身をよじらせようとしている私に向かって、無数の手が伸びてきた)
果林「ぅ……!」
果林(ま、まさか私を餌と認識して、その手でゼリーみたいに身体を掴んでちぎってゆっくり食べるつもりなの!?)
果林(い、嫌よ!!痛いとかそういうレベルじゃないわよそれ!!骨になるまで肉をちぎり取られる最期なんてお断りよ!!)
果林(だ、誰か助けて!!こんなバケモノの餌になるためにバイトしてるわけじゃないの!!)
果林(命の危険を感じ、触手のように伸びてくる手に必死で叫んで抵抗しようともがくけど……やっぱり動けないしまともに声も発せない)
スルスル
果林(あと少しの距離で手が私に届く……全てを諦めきったその時)
チリーン
89
:
名無しで叶える物語◆hfbjsFu0★
:2025/08/19(火) 23:23:11 ID:???00
チリーン
果林(宴会場全体に凛とした透き通る金属音が二度、響き渡った)
ピタッ
果林(その瞬間、私に伸びていた手の動きが止まった。そして、私を凝視していた眼球たちは再び箱膳のほうを向き、同時に手も私から完全に離れると)
ブチュ
クチャクチャ
果林(再びゼリーの方へ伸ばし、捕食動作を繰り返し始めた)
果林(よ、良かった……!)
果林(さっきまで硬直していた身体も元に戻り、その安心感と解放感がドッと押し寄せてきたからか、私はフッとその場で意識を失ってしまった)
「……お……り……ん」ユサユサ
「……終わったよ、果林さん!」ユサユサ
果林「えっ……!?」バッ
果林(再び三姉妹の末っ子に揺り起こされ、意識を取り戻した)
90
:
名無しで叶える物語◆hfbjsFu0★
:2025/08/19(火) 23:25:33 ID:???00
果林「あっ、あれは!?」キョロキョロ
果林(周囲を慌てて見渡す。さっきまでいたバケモノは宴会場から完全に消え去っていて、箱膳に盛られていたゼリーは皿を残してキレイに無くなっていた)
果林(夢だったのかしら……)
果林(そう思ってしまうほど現実離れした体験だったが)
「あっ、頭に供物がついてますよ!」
「はい、チカちゃん。タオル」スッ
「動かないでくださいね……はい!とれました」ニコッ
果林「あ、ありがとう……」サスサス
果林(やっぱり現実なのね……生きててよかった……!)
ポトッ
果林「あら?頭から何か……白い、石?」
果林(頭から膝に落ちた丸い小石を拾い上げる。すると気付いた仲居が説明した)
「……あっ!それ、ワタツミさんからの賜物!ときどきくれるんだよ!供物が美味しかったときとか、供物を落としてしまったおわびにって」ニコッ
果林「へ、変に礼儀正しいのね……」
果林(あの醜い姿なのに、とは決して言わなかった)
91
:
名無しで叶える物語◆hfbjsFu0★
:2025/08/19(火) 23:27:31 ID:???00
「しかもご利益があるんです!この石をかいだリコちゃんとヨウちゃんがすごいデレデレになってすぐ……えへへ」ニタァ
果林「かいだ……?」キョトン
「こらバカチカ!都会の人に下品なこと言ったらウチらのイメージダウンになるだろが!」バシッ
「いったぁ!ミト姉なにも殴る事なくない!?」
ギャイギャイ
果林(この姉妹、いつもなにかしらケンカしてるわね……とりあえず石はもらっておきましょう。捨てたらマズイことになりそうだし)
スッ
果林(ところで……私をバケモノから遠ざけてくれたあの音は一体、なんだったのかしら……?)
果林(もしかして……と腰の巾着袋に手を伸ばそうとしたそのとき。三姉妹の次女がケンカをやめて私の隣にきて肩を叩き、機嫌よく言った)
「よかったなゴクウにされなくて。都会人なのに根性あるじゃねえか」ポン
果林「そ、そうかしら……?」アハハ
果林(皿のゼリーみたいにアレに食われるのがゴクウというのね……なんとなく察してたわ)
92
:
名無しで叶える物語◆hfbjsFu0★
:2025/08/19(火) 23:29:40 ID:???00
「これで内浦の海も安全だね。夏のシーズンも安心してお客さんとダイビングできるかなん」
「良かったねカナンちゃん!」
ザワザワ
果林(バケモノに食事を与える儀式を無事に終え、参加者からも安堵の声が漏れた)
果林(それを合図に、女将が立ち上がって)
「皆さん。ワタツミさんが今年も豊漁と息災を約束なされました!」
「これより、お祝いの宴を始めましょう!」
パチパチパチパチ
「チカちゃん、みなさんに当旅館自慢のお料理と飲み物を」
「はーい!」スタスタ
「さて……みなさんにお料理もビールもいきわたったところで──」
「乾杯!」
果林「かんぱーい!」フフッ
果林(女将の乾杯音頭で、私たち人間だけの豪華な宴会が始まった)
93
:
名無しで叶える物語◆aF4PGKih★
:2025/08/20(水) 07:15:59 ID:???00
ヒィ〜ハラハラしたよ…
94
:
名無しで叶える物語◆hfbjsFu0★
:2025/08/20(水) 07:31:04 ID:???00
果林(宴会は盛り上がった。私は旅館が用意してくれた地元の海産物を贅沢につかった料理を味わい、すっかり打ち解けた周囲の人たちと酒を飲み交わした)
果林「……美味しい!刺身もいいけど、このタコの酢の物が最高ね!」モグモグ
「新鮮でしょー?カナンちゃんが素潜りでとってきたんだ」
果林「へえ、すごいじゃない……!」
「あはは、全然すごくないって……あ、果林ちゃんは泳げたりする?海はきれいだよー」
果林「もちろんよ。私、島出身なの」
「ええ!?ホントですか!こんなに東京っぽい雰囲気なのに」
「ならぜひコッチでダイビングして欲しいな。ここの海も島に負けないくらいきれいだから」
果林「ええ、機会があればぜひお願いするわ」フフッ
果林(そこには都会と田舎の隔たりはなかった──きっと、あの体験をした者たちだけが得られる奇妙な連帯感のおかげかもしれない)
果林(終始楽しい宴会を過ごして部屋に戻ったころ、ふと窓をみると夜も明けかかっていた)
ボフッ
果林「おやすみなさーい……」
果林(ほろ酔い気分で私は布団に飛び込んだ)
95
:
名無しで叶える物語◆K7CnEEzU★
:2025/08/20(水) 07:34:12 ID:???Sd
良かったー
サンキューエマさん
96
:
名無しで叶える物語◆6QxkQE1Z★
:2025/08/20(水) 07:56:53 ID:???00
平和で良かったな
……このまま平和で終わるんだよな?
97
:
名無しで叶える物語◆ZGksGqQr★
:2025/08/20(水) 07:57:50 ID:???00
勝ったな風呂入ってくる
98
:
名無しで叶える物語◆hfbjsFu0★
:2025/08/20(水) 22:39:31 ID:???00
果林(目が覚めたのは、だいぶ太陽が上った朝。時計をみると、チェックアウトの予定時刻を数時間すぎていた)
果林(起こしに来なかったのはサービス精神かしら?)
果林「さてと、帰る準備しなきゃ」スクッ
果林(洗顔をしてリュックから持ってきた服を引っ張り出して着替えを済ませ、浴衣と布団をたたんでおく)
果林「よしっ、と……せめて片付けしやすいようにしておかないとね」
果林「寮にいたときエマによく注意されてたし」
果林「エマといえば……あっ、巾着の中!忘れるとこだったわ」スッ
果林(適当にそれっぽくたたんだ浴衣の巾着袋から、エマからもらったカウベルを取り出した。そして、昨晩の奇妙な体験を思い起こす)
果林(もしかして、これがあのバケモノから守ってくれたのかしら?)
99
:
名無しで叶える物語◆hfbjsFu0★
:2025/08/20(水) 22:40:18 ID:???00
果林「……」フリッ
シーン
果林「……やっぱりね。エマも鳴らないっていってたし」
果林「それに、あの宴会で仲良くなった若い娘たちにそれとなく尋ねても何も聞こえなかったみたいだし……」
果林「……気のせいね」スッ
果林(早く忘れたい体験だったし、深く考えなかった私はカウベルとバケモノからの贈り物をリュックにしまった)
果林「さてと、バイト代もらって東京に帰りましょう!」
果林(酔いは醒めたのに、ややテンション高めで部屋を退去した)
100
:
名無しで叶える物語◆hfbjsFu0★
:2025/08/20(水) 22:41:46 ID:???00
ロビー
「昨晩はありがとうございました。こちらは報酬と──」
「──東京までの交通費です」スッ
果林「いいお部屋に泊まらせてもらって、温泉も楽しんだうえにバイト代まで……何から何までありがたいわ」ペコッ
果林(チェックアウトを済ませると、女将が報酬の入った封筒を渡す。私は中身を確認してリュックにしまうと、高待遇に礼を述べた)
「果林さん、またきてね!今度はもっと東京のスクールアイドルのお話、聞かせてね!」
「私たち大歓迎だからさ」
果林(玄関を出た私の見送りに三姉妹が来てくれた。そして、最後に女将が)
「朝香果林さん。あなたはもう内浦の一員、仲間です」
ギュッ
果林「えっ!?」
「旅館の従業員一同、またのご利用を心よりお待ちしております」ニコッ
果林「は、はい……」
果林(急に手を強く握って笑顔で言われ、若干引きつった笑みで返事してしまった)
101
:
名無しで叶える物語◆hfbjsFu0★
:2025/08/20(水) 22:42:39 ID:???00
果林(名残惜しい気持ちを抱きつつ、旅館の玄関に待たせてある沼津駅行きのタクシーに乗り込む)
果林「……」チラッ
果林(リュックを後部座席に置き、乗り込むついでに旅館のほうへ振り返ってみる)
果林(三姉妹が満面の笑みを浮かべて手を振っていた。そして昨日、玄関脇にあった不気味な飾りつけは片付けられて跡形もない)
果林「……」ペコッ
バタン
果林(小さく頭を下げて、ドアを閉じる。すぐにタクシーは発進し、そこで振り返ってみたら旅館が小さくなるまで三姉妹は手を振り続けていた)
102
:
名無しで叶える物語◆hfbjsFu0★
:2025/08/20(水) 22:44:03 ID:???00
果林「いい旅館だったわ……」
果林(今度エマと彼方と三人で遊びに行こうかしら?)
果林(みんなで温泉楽しんで、美味しいお魚を食べて、深夜までおしゃべりして……近くの海でダイビングして、ね)
果林(そう思いながら、私は無意識にリュックをギュッと胸に抱き寄せ)
果林「でも──」
果林「──海開きの前日には二度と利用することはないわ」ボソッ
おわり
103
:
名無しで叶える物語◆9tumoP8u★
:2025/08/20(水) 23:30:33 ID:???Sa
こわすぎる
104
:
名無しで叶える物語◆6QxkQE1Z★
:2025/08/21(木) 00:34:34 ID:???00
いい話だったけど、まぁ怖えな
105
:
名無しで叶える物語◆K7CnEEzU★
:2025/08/21(木) 04:21:37 ID:???00
無事で良かった
106
:
名無しで叶える物語◆ZGksGqQr★
:2025/08/21(木) 06:04:56 ID:???Sd
乙
田舎怖い
107
:
名無しで叶える物語◆hfbjsFu0★
:2025/08/22(金) 23:28:53 ID:???00
おまけなのですが、後日談を投下します
108
:
名無しで叶える物語◆hfbjsFu0★
:2025/08/22(金) 23:29:58 ID:???00
数日後 東京
果林「またここに来ちゃったわ……」
果林(沼津から帰ってきた私は、渋谷にある神社の銀杏並木の鳥居前にいた)
果林「……」スタスタ
果林(並木道を通って本殿へ。なりふり構わず飛び込んだあの頃と比べ、すっかり並木は緑に覆われていた。出来た木陰が、さらに神社の神々しい雰囲気を生み出している)
果林(彼女、いるかしら……?)
果林(本殿の前で辺りを見回す。時刻は昼過ぎ、熾烈な暑さもようやく落ち着いてきた時間帯だからいるはずだ)
果林「あっ、とりあえずお賽銭を……」スタスタ
果林「5円でいいわよね?」チャリン
ジャラジャラ
パンパン
果林「……」
果林(技芸上達、美容守護、無病息災、交通安全、恋愛成就……っと)
果林「よし……」クルッ
「5円で願いすぎったら願いすぎよ」
果林(振り返ると金髪巫女が立っていた)
109
:
名無しで叶える物語◆hfbjsFu0★
:2025/08/22(金) 23:30:44 ID:???00
果林「あら、さっそく待ち人が来たじゃない」
果林「願いがひとつ叶ったわね」フフッ
「……それ、願ってないじゃない」フン
果林(金髪巫女は小さく悪態をつく。彼女は赤い封筒落としのバイトで呪いにかかった私を助けてくれた恩人だった)
「何の用ったら用、と言いたいとこだけど察しがつくわ」
「アンタ、また何か妙な物を神聖なここに持ち込んできたわね?」ジッ
果林(訝しげな目つきをする彼女に訪問の目的を告げる)
果林「ちょっと見て欲しいものがあるの」
果林「沼津のある場所でもらった石なんだけど……ご利益とかあるかしら?」
「ふーん、石ね……」
「……とにかく、この暑い場所で話すのも何だから……こっちに来なさいったら来なさい」
果林(金髪巫女の案内で社務所に入った)
110
:
名無しで叶える物語◆6QxkQE1Z★
:2025/08/22(金) 23:32:03 ID:???00
おぉっ、豪華だな
111
:
名無しで叶える物語◆hfbjsFu0★
:2025/08/22(金) 23:32:10 ID:???00
「……はい、冷たいお茶よ。緑茶で良かったかしら?」
果林「かまわないわ。ありがとう」
果林(冷房の効いた社務所に通され、テーブルを挟んでお互い対面する形で腰かけた)
果林(お茶でひと息ついて早速、金髪巫女が切り出す)
「それで……その石を見せてくれない?」
果林「これ、なんだけど……」スッ
果林(ハンドバッグからティッシュにくるまれた石をテーブルに置いて開いてみると……アッと驚いた)
果林「あら?石の色が変わってるわ。なんか黄ばんで灰色っぽくなってる……」
「これ、触ってもいいかしら?」
果林「どうぞ……あ、嗅ぐと何か起こるみたいだから気を付けてよ?」
「大丈夫ったら大丈夫。私はショービジネスで神通力を鍛えてるから安心なさい」
果林(ほんとうに芸能界ってそういう能力も必要なのかしら……?)
果林(相変わらず胡散臭い巫女に疑いの目を向けている間、石を手に取った巫女は丁寧に眺め、そのにおいを嗅いだ。すぐに戻してこう告げた)
「わかったわ。これ、龍涎香よ」
112
:
名無しで叶える物語◆hfbjsFu0★
:2025/08/22(金) 23:34:18 ID:???00
果林「りゅうぜんこう……?」キョトン
「ええ。通称──アンバーグリス。香料なの」
果林「香料……ということは天然アロマ、とか?」キョトン
「そんなところ。普通の香料は香木とか植物由来なんだけど、これは海岸に流れ着くことで手に入る動物由来の特殊な香料なの」
果林「へえ……」
「それに超高級よ、それ」
果林「い、いくらなの……?」
「色といい香りも最高だし、価値は同じ重さの金の何倍も高いかもね」
果林「ええっ!?コレ金より高いの!?」
果林(驚いた!そんな高級なものをあのバケモノがくれるなんて……福の神だったのね、アレ)
113
:
名無しで叶える物語◆hfbjsFu0★
:2025/08/22(金) 23:36:48 ID:???00
果林「ふふっ……」ニヤニヤ
「……」ジトッ
果林「あっ!で、その……悪いものとかじゃないってことよね?」
「ええ。これ自体は何の問題もないわ」
「龍涎香を削った破片を香炉で焚くと、その香りは潮っぽくて甘く野性的。リラックス作用があり、嗅がせた人間を惚れさせる媚薬にもなるらしいの」
果林「媚薬……なるほどね……」
果林(わかった、三姉妹の末っ子が言いかけた石の効果がそれね)
果林(私もエマに嗅がせてエッチなことしようかしら?あ、石を売るのもいいわね。高級らしいしオークションで売れば……)
「でもこれ──常世のもの──でしょ?アンタ、どこで手に入れたの?」
果林(心のなかでニヤついている私に対し、巫女が真剣な顔で尋ねてきた)
114
:
名無しで叶える物語◆hfbjsFu0★
:2025/08/22(金) 23:39:37 ID:???00
果林「……床屋で手に入るわけないじゃない」
「違うったら違う!常世ったら、とこよ!」
「これは普通の龍涎香じゃないわ。常世、つまり神の世界から来た物よ、対象への効果は凄まじいものになる……」
「……アンタ、また何か変なバイトでこの世のものじゃないのと関わったわね?」
果林「……え?まあ、そうね」
果林(ホント命知らずなのね、と呆れてため息をつく巫女。せっかくなのであの三姉妹がいうワタツミさんについて尋ねてみた)
果林(もちろん経緯を全て偽りなく話して判断してもらう。もし彼女じゃなかったら、きっと私は頭のおかしい人間だと思われるような体験談を)
果林(聞き終えた彼女は静かに口を開いた)
「それ、寄神ね」
115
:
名無しで叶える物語◆6QxkQE1Z★
:2025/08/22(金) 23:39:47 ID:???00
確かクジラの腸内で生成される石だったっけな
116
:
名無しで叶える物語◆hfbjsFu0★
:2025/08/22(金) 23:43:01 ID:???00
果林「よりがみ……?」
「ええ。またの名を恵比寿、別の世界から来た意味の蕃神──」
「──海沿いの地域で寄神や海神とも呼んでいる存在だわ」
果林「海神……だからみんなワタツミさんって呼んでたのね……あっ!」
果林「ちょっと待って、エビスってビールにあるふくよかな顔をして釣り竿持ってるポテ腹おじさんっぽい福の神でしょ?」
果林「なんであんなバケモノがエビスなの……?」
「あれは江戸時代に創作された絵ったら絵よ。福の神ってのも、平安時代に人間が勝手に決めて祀ったの」
「そもそも、神が人間の姿をしているって誰が決めたの?本物の神を見た人間なんて、せいぜい頭のおかしい人間扱いされるのを嫌がって口を閉ざすか、生贄になってるかよ」
果林(確かに……もしエマや彼方に言っても、まともに信じてくれないと思ったから神社に来たのよね)
117
:
名無しで叶える物語◆hfbjsFu0★
:2025/08/22(金) 23:45:03 ID:???00
「寄神の正体は、常世とつながると信じられてる海の水平線からやってきて、海岸に流れ着いた生物──主にクジラのことなの」
「不漁による飢饉で苦しんでいた漁村の浜に、衰弱してたり死んでるクジラが漂着したことでその死肉を食らい、内容物を売ることで村人の命が助かった伝説にちなみ、神として崇められてるわ」
果林「つまり漂着クジラね?私が子供のころ、島にも流れ着いて駐在さんや役場の大人たちが浜に駆けつけて大騒ぎしたわ……」
「そう。その伝説が私たち人間に福をもたらす神として、寄神から福の神エビスとしてイメージが日本人に定着した訳ったら訳なの」
果林「ふーん……」
「あ、その龍涎香ね、それ……クジラの排泄物よ」
果林「ええっ!?じゃあ私たち、ウンコの香りを楽しんでるの!?」
「正確には違うけど、間違いじゃないといえば間違いないわね」
果林「げぇ……」
果林(金のウンコじゃない……ばっちい、と思わず顔をしかめた)
118
:
名無しで叶える物語◆hfbjsFu0★
:2025/08/22(金) 23:46:32 ID:???00
果林「あれ?」
果林「ワタツミさんが寄神やエビス、つまりクジラをベースにした神様ってわかったけど……」
果林「あの旅館で見たバケモノはクジラというより……人間のパーツがくっついた集合体みたいだったわよ?」
果林「なんでそんな姿なのかしら……」
果林(その疑問を口にすると、金髪巫女は周囲をはばかるような小さな声で答えを教えてくれた)
119
:
名無しで叶える物語◆hfbjsFu0★
:2025/08/22(金) 23:47:41 ID:???00
「……その近くに、ちょっとした伝承があるの」
「大昔、ひどい飢饉が沿岸の村を襲った。魚も獲れず野菜も育たず、多くの村人が空腹に苦しんでいた」
「あるとき、嵐のあとにクジラが浜に漂着した。これを天の恵みと思った村人はクジラの死肉を食らい、生き延びたことを感謝して寄神として祀ったの」
「それから数十年後──また飢饉が襲って、再び村人は苦しんだ。そして願ったの」
「また寄神様がいらっしゃる、と」
「そして嵐のあと、たくさん浜に漂着したものがあった。でもそれはクジラではなく──割れた木の板に混じって、衰弱した漂流者や遺体……つまり難破船とその乗組員だったのよ」
「流れ着いたものがクジラじゃないことに村人は絶望したが、すぐに考えを改めた……これも寄神様のお恵み、だとね」
果林「えっ、まさか人を……!?」
「ええ。浜で拾った木の板を組み、それをたき火にして浜で拾った死肉や新鮮な肉をキレイに食べたわ」
果林「……」ゾッ
120
:
名無しで叶える物語◆hfbjsFu0★
:2025/08/22(金) 23:51:40 ID:???00
「その後、この地域で飢饉は無くなった。でもその代わり、海開きをしても漁師や海で遊ぶ子供が海底に引きずり込まれて消えたあと、骨になって浜に流れ着くようになった」
「これはあの時の祟りだと思った村人は、ソレを祟り神として手厚く祀り……海開きの前にソレを招き、供物を捧げて自分たちを食べないよう約束してもらったの」
「そして人間に約束の証を残し、来年まで海の安全と豊漁を授ける」
果林「ソレが、ワタツミさん……」
「もしかしたらね。まあ聞いた感じだと腹詰み、でワタツミと呼んでいるだけかもしれないけど」
「でもクジラの出す龍涎香を証として与え、水死体の腕や足を持った姿って……その怨念がこもった集合体って感じがしないかしら?」
「事実、あの辺りで海の事故が一切、起きてないのもその儀式のおかげかもしれないわね」
果林(何度も憶測だけど、という金髪巫女の前で私は身震いした)
果林(そのあと、巫女に礼をいい、部屋に帰ると龍涎香をメイク道具入れの奥に丁寧にしまったわ……たぶん、二度と出すことはない……かも)
後日談おわり
121
:
名無しで叶える物語◆hfbjsFu0★
:2025/08/22(金) 23:54:43 ID:???00
これで果林さん闇バイトシリーズ3話は完結です
途中で放置して申し訳ありませんでした
122
:
名無しで叶える物語◆ZGksGqQr★
:2025/08/23(土) 00:00:49 ID:???00
乙!
完結させてくれてありがたい
123
:
名無しで叶える物語◆fsFmmQy8★
:2025/08/23(土) 02:35:37 ID:???00
また書いてね
124
:
名無しで叶える物語◆6QxkQE1Z★
:2025/08/23(土) 04:03:58 ID:???00
乙、大変良く楽しめた
ありがとう
125
:
名無しで叶える物語◆jQi1ofTw★
:2025/08/23(土) 08:28:12 ID:???00
乙でした
面白かった
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