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「あなたは昔から男の子だよ?」√菜々

1名無しさん@転載は禁止:2021/10/11(月) 00:20:49 ID:nfnLK1A2
春。
出会いと別れの季節、春。

それはここ、虹ヶ咲学園にも当然訪れる。
三年生は卒業して、新入生が新たに加わる。

それは今までもあったことだし、今更戸惑うこともない。

たった一つだけ、あることを除けば。

歩夢「──どうしたの? 今日は朝からなんだか調子が悪そうだけど……」

侑「あ、あぁ……いや、なんでもないよ、歩夢」

歩夢「ならいいんだけど……何か困ってることとか、悩みごとがあったら、なんでも相談してね!」

幼馴染みの上原歩夢。
自分で言うのもなんだけど、可愛い女の子だと思う。そんな子が幼馴染みだと……羨ましがられるんだ。

そう──特に、今は。

歩夢「そういえば、今日は身体測定があるんだって。『女子』は更衣室使うみたいだけど、間違って入っちゃだめだよ〜」

自分が──女の子から、男の子に変わってしまっている今は。

☆☆☆

侑「はぁ〜〜〜なにがなんだか……」

まさか眠りから覚めたら男の子になっちゃってるなんて……いや、わけわかんないよ。
わけわかんないけど、仕方ないから順応する。

わかっていることは、歩夢とは変わらず幼馴染みであること、自分のことは僕と呼ぶ事、そして一番驚いたのは、ここではスクールアイドル同好会が存在しないこと。

スクールアイドルという文化自体はあるようだけど……。

先生「はい、身長169センチ、体重は57キロね」

侑「ご、57……」

先生「ん? どうしたの?」

侑「いえ……」

女の子の体のときを、かんがえるとちょっとショックだったけど、別にこれくらいが普通、というかちょっと軽いらしい。

むしろ身長はもう少し欲しいくらいだね、なんて言われた。

(むしろ、視線が高くなって変な感じ)

まさか歩夢を見下ろす日が来るとは思わなかった。

(でも、なにはともあれ、だよね)

どんな理屈、ファンタジーで私が男の子になってしまったのかはわからないけど、普通に日常を送らないと。

もしかしたら、そのうち元に戻れるかも……しれないし。

「え〜と、となると気を付けないといけないことは……」

うっかり女子トイレにはいらない、男子のちんちん見えても動揺しない、僕っていうこと、男の子っぽく過ごすこと。

2名無しさん@転載は禁止:2021/10/11(月) 00:28:42 ID:nfnLK1A2
侑「ふんふふ……あれ」

あれは……。

菜々「……」

菜々ちゃんだ。
生徒会長モードで、三編み眼鏡。
すれ違い様に、ハンカチを落としたから拾ってあげた。

侑「おーい、せつ菜ちゃん」

あっ、違うか。ついスクールアイドルのなまえで……これじゃ反応してくれないか。
と思っていたら。

菜々「っ!?」

もんのすごくびっくりした様子でギギギと首を振り向く。怖。

侑「あ、いまのは、えーと……」

菜々「こちらに」

侑「え? あっ、ちょっ!?」

いきなり手を引かれて人気のないところ──学校の屋上につれてこられた。

3名無しさん@転載は禁止:2021/10/11(月) 00:33:34 ID:nfnLK1A2
侑「あ、あの〜……」

菜々「た、たしか……高咲、侑さん、でしたよね……?」

汗ダラダラでどうみても動揺している。

侑「う、うん……」

菜々「……お願いします!! みんなには秘密にしていてくださいぃ……!」

侑「ちょっ、ちょっとまって?! な、なんのこと!?」

菜々「とっ、とぼける気ですか!? 私のその名前を知っているのに……! 一体いつのイベントで……!」

侑「い、イベント?」

菜々「とっ、とにかく! 私がコスプレイヤーってことは内密に……!」

侑「こ、コスプレイヤー?」

それって、あれだよね?
アニメとか漫画の……キャラとのなりきりというか、なんというか。

菜々「そうじゃなかったら、私に対してせつ菜なんて呼ぶわけがありません……!」

4名無しさん@転載は禁止:2021/10/11(月) 00:34:32 ID:nfnLK1A2
本当はリアルアイドルにしようと思っていましたが、たぶん無理だと感じたのでこんなノリです。
また明日に。

5名無しさん@転載は禁止:2021/10/11(月) 10:55:37 ID:JC8HEsl6
期待してるぜ

6名無しさん@転載は禁止:2021/10/11(月) 23:50:26 ID:FQGW7yYQ
菜々√の話ちょいちょい出てたしマジで楽しみ

7名無しさん@転載は禁止:2021/10/11(月) 23:55:54 ID:nfnLK1A2
侑「いやっ、それはその……」

菜々「お願いします……本当に……なんでもしますから……!」

そのセリフはちょっと危険なんだよなぁと思いつつ、とにかく私は言い訳を考えていた。

侑「その……ファンだったんだ! ずっと! だからつい話しかけちゃって〜、その、そんな感じで……」

菜々「そ、そうなんですか……うぅ、ファンと言ってもらえることは嬉しいのに、複雑な気もします……」

侑「そ、そうそう。だから別に誰かに言うつもりもないし、何か菜々ちゃんに要求するつもりでもないから……!」

菜々「……本当ですか?」

侑「ほ、ほんとうほんとう」

8名無しさん@転載は禁止:2021/10/12(火) 00:01:45 ID:KbKhLZw2
菜々「……わかりました。あなたの言葉を信じます」

菜々ちゃんはそこでようやく落ち着きを取り戻した。

菜々「……私もすみません、取り乱して」

侑「い、いやいや。僕の方こそ、いきなりでごめんなさい」

菜々「……でも」

侑「?」

菜々「私を……優木せつ菜のファンということは……Twitter……とか、も……」

そうか、その為のアカウントもあるのか。
うーん……知らない、というのもなんだか違和感あるし、ここは知っていることにするか……。

侑「あー……うん、まぁ知ってる……」

菜々「で、ですよね……は、はは。……私の、生徒会長としてのモードが……崩れたでしょう……あんなにアニメや漫画のことばかり呟いて」

あぁ、やっぱり菜々ちゃん、アニメ漫画好きは変わらないんだ。そこはちょっと安心したかも……。

9名無しさん@転載は禁止:2021/10/12(火) 00:09:29 ID:KbKhLZw2
侑「い、いやそんなことないよ! なんだったら、直接いろいろ教えてほしいくらい!」

菜々「へ……?」

侑「菜々ちゃっ……中川さんのおすすめのアニメとかあったら教えてほしいなって……」

菜々「た、高咲さん……幻滅、しないんですか?」

侑「げ、幻滅? どうして?」

菜々「だって私は……生徒会長なのに……」

侑「……そんなの関係ないよ! 中川さんは中川さんだし……」

侑「大好きなものを、ちゃんと好きだって言えるのはいい事だと思うよ、僕は。むしろ、尊敬する」

菜々「……高咲さん」

菜々ちゃんは指をもじもじしながら、口を開いた。

菜々「……さっきまで、本当はあなたのことが少し怖かったんです」

10名無しさん@転載は禁止:2021/10/12(火) 00:13:40 ID:KbKhLZw2
菜々「急にせつ菜の名前で呼んで……でも、不思議と今は、落ち着きます」

菜々「……どうしてでしょう」

侑「……まぁ、お互い。あまり話したこともなかったし」

菜々「ただの同級生でしたからね。……高咲さん、よければ……放課後、生徒会まで来てもらえませんか?」

侑「うん、いいけど……」

菜々「……おすすめのアニメ、教えてあげます」

11名無しさん@転載は禁止:2021/10/12(火) 00:19:19 ID:KbKhLZw2
今回はここまで。
最初、菜々ちゃん、って呼ばせちゃいましたが関係が進展するまでは中川さん呼びで。

なかなかじっくりかと。
菜々にとって侑は初めての、しかもアニメや漫画の話をオープンにできる男友達になります。

後これは迷いましたが、友達の段階で雰囲気に流されてキスとかイロイロする展開です。

また明日に。

12名無しさん@転載は禁止:2021/10/12(火) 00:54:07 ID:CVN1xUYA
乙乙
菜々√の話はちょいちょいされてたから超楽しみにしてた
ズルズルいく関係いいね 期待

13名無しさん@転載は禁止:2021/10/12(火) 01:41:43 ID:wnXFkBhA
俺も菜々コスプレイヤー設定で書いたことある
これは期待大だわ

14名無しさん@転載は禁止:2021/10/12(火) 22:09:46 ID:nhgfxBlI
評論家ぶるつもりないしなりたくもないけど、導入としてはなかなか良いと思う
2人で人知れずコソーリな雰囲気はヨハネの時の部活を彷彿とさせるけど、また展開が違いそうだし続きを読みたくなってくる

15名無しさん@転載は禁止:2021/10/12(火) 23:49:29 ID:KbKhLZw2
★★★
 
約束通り生徒会へ。

菜々「あっ、高咲さん……来てくれたんですね」

侑「約束したからね。……でもなんで生徒会で?」

菜々「それは……その。自分を抑えられるか心配だったので……っと、ところで高咲さんっ。普段、アニメはどれくらい観ますか?」

侑「うーん……あんまり見ないけどあれ好きだよ。鬼滅」

菜々「いいですねっ! 私も大好きです! ……無限列車編は観に行きましたか!?」

おっと心配ってこういう事か。
明らかにテンションが抑えられなくなってきている。

侑「いや、実は観に行ってないんだよね」

菜々「なっ……!」

ガーン! いや、というよりそんなまさか……という顔になる。見ていて飽きないなぁ、菜々ちゃん。

菜々「それはもったいないです……これだけは言えます、TVアニメシリーズを観て面白いと思ったのなら、無限列車編は必ず観て損はありません!」

侑「そんなにおもしろかったんだ?」

菜々「それはもう! 制作スタッフの、煉獄さんへの愛とリスペクト、そしてスタッフロールの……うぅ、これは劇場で観ていただかないと……いや! 高咲さん、これはもう劇場へ足を運ぶしかありません!」

侑「でも公開してから結構経つけど、まだやってるのかな」

菜々「はい! そこはロングヒットを記録しちゃって、まだまだ上映中です! あぁ、こう話していると、3回は観に行ったのにまた行きたく……!」

侑「3回!? 同じ映画を?」

16名無しさん@転載は禁止:2021/10/14(木) 00:16:49 ID:zdRj6ztQ
明日再開。
このペースではアニガサキ二期がやってきてしまいそうですが、どうなることでしょう。

17名無しさん@転載は禁止:2021/10/14(木) 23:18:53 ID:zdRj6ztQ
菜々「はい! 一回目はシンプルに楽しんで、二回目はキャラクターに感情移入しながら、三回目は細かい作画の部分を見たりとか……はっ!」

そこで我に返った様子の菜々ちゃん。

菜々「す、すみません、やっぱり私、テンションが上がってしまって……」

侑「いやいや、良いよ。本当に好きなんだね」

菜々「はい! 大好きです!」

ペカッー! とした太陽みたいな笑顔。
……このモードの菜々ちゃん、めちゃくちゃモテそう。いや、今が可愛くないとかそういうことじゃなくてね。

こうもニッコニコだとこっちまで広角があがりそうになる。

18名無しさん@転載は禁止:2021/10/14(木) 23:47:17 ID:zdRj6ztQ
侑「でもそんなに面白いなら、観に行ってみようかなぁ」

菜々「それは、ぜひ! もう満点と行っても過言ではありませんから!」

侑「あ、そうだ。一緒に行かない?」

菜々「へ?」

キョトンとした顔。
あれ、いきなり距離詰めすぎたかな……?

侑「あぁ、いやもちろん嫌だったら……」

菜々「い、いえ! 嫌とかじゃなくて……その、私。この趣味を隠すために、映画とか漫画とか……そういうものを観たり買ったりする時は、一人で行ってたので……」

菜々「ちょっと、初めての事態に、ドキドキしちゃいまして……」

19名無しさん@転載は禁止:2021/10/14(木) 23:57:25 ID:zdRj6ztQ
菜々「その、上手くは言えないんですけど……私もぜひ、一緒に!」

侑「じゃあ、さっそく今週の土曜日なんてどう?」

★★★

菜々ちゃんと映画を観に行く約束をした日の夜。

侑「ものすごい早さで距離が縮まったな……」

我ながら驚きだ。
それに菜々ちゃんの順応の早さも……。

侑「あ……そうだ」

菜々ちゃんの……優木せつ菜のTwitterをしらべてみよう。見たってことにしちゃってるし、確認も込めて。

侑「あ……これか。……って、え?! フォロワー7万人!?」

これすごいんじゃ……?

侑「というか、コスプレのクオリティすご……自分で作ってるのかな……?」

なんのアニメなのかはわからないけれど、どれもこれもものすごい完成度だ。菜々ちゃん自身が可愛いのもあるけど。

侑「……いやこれ、ちょっと……露出多くない……?」

たまにある少々肌色多め。そういう格好なんだろうけど……なんだろう、この背徳感。

侑「……だ、だめだダメだ。……ん?」

20名無しさん@転載は禁止:2021/10/14(木) 23:59:56 ID:zdRj6ztQ
新しいつぶやきが表示される。

『今日は新しいお友達ができました! これから仲良くできると嬉しいなぁ。さっそく今度一緒に心を燃やしに行くので今から楽しみです!』

侑「……私のことだよね」

お友達、か。
そう思ってくれてると、嬉しいね。 

侑「これから楽しくなりそうだなぁ」

21名無しさん@転載は禁止:2021/10/17(日) 04:21:58 ID:ISZC4pzs
★★★

菜々「……っと」

Twitterに書き込みをしてから、ふと高咲さんのことを思う。
理由はわからないけれど、なんだかすごく話しやすい人。

菜々「私のことを理解してくれてる……それだけでも、十分嬉しいな」

というよりも、アニメや漫画の趣味をひとに話すことが出来なかった。
真面目な生徒会長……それが私だったから。

だから、知らなかった。好きなことを好きという事があんなに楽しい事を。

22名無しさん@転載は禁止:2021/10/18(月) 14:53:51 ID:n8za02NY
高咲さんも良い人そうだし、バレてしまって正解だったのかもしれない。

これからが楽しみです。

★★★

そして土曜日はあっという間にやってきて。

侑「あっ、中川さん早いね。もしかして待たせちゃったかな」

菜々「いえ! 私も本当にいま着いたばかりです」

待ち合わせの15分前、菜々ちゃんは先にそこにいた。

侑「……」

菜々「? どうしたんですか、高咲さん? なにかついてるでしょうか?」

侑「あぁいやいや、なんでもないよ」

私服について褒めようと思ったけど、まだそのような距離感じゃないと思い止めた。

23名無しさん@転載は禁止:2021/10/19(火) 07:54:38 ID:dO7acIGE
★★★

早速私達は映画館へと向かう。
公開してからもう結構経つのに、まだまだお客さんは多い。さすがは大人気アニメといったところか。

チケットを購入して中へ。

その際に入場者特典ということで、劇中の生コマフィルムというものが配られた。

菜々「高咲さん、それは観終わった後に見るのがいいですよ! 場面によってはネタバレにもなってしまいますから……!」

侑「そうなんだね、じゃあそうしよう」

教えてもらいながら座席で待っていると、シアター内が暗くなりお約束の映画泥棒のあれが流れ、無限列車編が始まった。

24名無しさん@転載は禁止:2021/10/19(火) 18:02:25 ID:dO7acIGE
★★★
上映が終了して、私達はシアターを出た。

菜々「うぅ、やっぱり何度観てもいいですね……」

侑「あれは煉獄さんカッコよすぎるね。さん付け以外じゃ呼べないよ」

ハンカチで涙を拭う菜々ちゃんと感想を伝え合う。
活き活きとここが好きとか、あのシーンはたまらないとか。

侑「あ、そういえば……フィルム開けてなかったな」

菜々「早速明けてみましょう! ちなみに私は、煉獄さんがお弁当食べているところでした」

特典のフィルムを開封してみる。
思ったよりもちっちゃくて、明かりで透かさないと少し見にくいけど……。

菜々「えっ!?」

そのシーンは私でもいいシーンと思えるものだった。
最後の方で見せる、煉獄さんのほほえみだった。

菜々「わっー! すごい良いですね……」

菜々ちゃんは羨ましそうに私のフィルムを見ていた。

侑「よかったら譲ろうか?」

菜々「えっ!? い、いいんですか!?」

25名無しさん@転載は禁止:2021/10/20(水) 15:08:02 ID:k3uinU5M
侑「もちろん、はい、どうぞ」

菜々「わぁ……! ありがとうございます! 大切にします……!」

嬉しそうに両手で包む。
こうやって喜ぶ姿が見られるのなら、なんでも渡してしまいそう。
さて、とりあえず映画の感想も程々に。

侑「まだまだ時間もあるし、どこか行きたい場所はある?」

菜々「いいんですか? じゃあ……」

★★★

やってきたのはアニメイト。
初めて来たけど漫画やライトノベルがたくさん、CDやBlu-rayもこんなに。

菜々「やっぱりここはいいところです……」

26名無しさん@転載は禁止:2021/10/20(水) 16:53:01 ID:k3uinU5M
大好きなライトノベルの最新刊を手に取りうっとりとした表情。
それがとても豊かで私も菜々ちゃんを見ているだけで退屈しない。

菜々「あっ! 高咲さん! これとかすっごくおすすめです!」
菜々「これはもう後半の怒涛の展開がすごくて……!」
菜々「あぁっ〜! 来月出るBlu-rayの特典いいなぁ……」
菜々「高咲さん!」

可愛いなこの子。
もしも尻尾がついてたらぶんぶんぶんぶん揺れてるよこれ。

27名無しさん@転載は禁止:2021/10/21(木) 05:51:54 ID:bCuFCMVM
鬼滅ファンかw

28名無しさん@転載は禁止:2021/10/21(木) 08:17:44 ID:Rd4q.Zss
菜々わんちゃん可愛い

29名無しさん@転載は禁止:2021/10/22(金) 17:57:33 ID:IHcJt7C6
菜々「それでですね! ……はっ! す、すみません、私また一人で盛り上がっちゃって……」

先程までの元気いっぱいな菜々ちゃんとは違い突然しゅんとしおれてしまう。

侑「ううん、大丈夫だよ。むしろもっと他のところも教えてほしいな」

そう伝えると再び太陽のような笑顔をみせてくれる。

菜々「! ……じゃ、じゃあ次はあっちです!」
 
★★★

今日は一日、菜々ちゃんの向かう先に付き合っていた。まったく退屈することもなく私も知らないところへ行けてたのしかった。

30名無しさん@転載は禁止:2021/10/25(月) 00:17:23 ID:kaAX9BlE
菜々「今日はとっても楽しかったです! 高咲さん、また遊びに行ってくれますか……?」

侑「もちろん。」

31名無しさん@転載は禁止:2021/10/25(月) 00:19:27 ID:kaAX9BlE
侑「もちろん。こっちからもどんどん誘っちゃうね」

そう伝えると菜々ちゃんは嬉しそうに「ありがとうございます!」と応えた。

菜々「じゃあ……また月曜日に。あ、そうです。高咲さん、連絡先……交換しませんか?」

侑「あ、そうだね。そうしておこう」

これからも遊ぶだろうし、必要なはず。
私達はそこでようやくLINEの交換をした。

32名無しさん@転載は禁止:2021/10/25(月) 23:54:07 ID:kaAX9BlE
木曜には再開。

展開は早めでやります。やっぱり自分は序盤を書くのが本当に苦手です。

33名無しさん@転載は禁止:2021/10/26(火) 05:24:27 ID:FFJGuWYE
楽しみに待ってる

34名無しさん@転載は禁止:2021/10/29(金) 22:54:10 ID:b//hIjX2
★★★

初めて男の子と二人だけで遊びに行きました。
楽しくて、着飾らなくて。
いちばん自然体の私でいられた。

菜々「楽しかったなぁ……」

今日一日、私が振り回していただけだった気もするけれど……。

菜々「そうだ、高咲さんのLINE……今日は楽しかったです、また遊びましょう……っと」

35名無しさん@転載は禁止:2021/10/29(金) 23:07:07 ID:b//hIjX2
すると高咲さんからも「僕も楽しかったよ」と返事。

菜々「……ふふ」

★★★

それから私達は、生徒会室などでよくお喋りするようになった。
菜々ちゃんが大っぴらにアニメや漫画の話をすることを避けるから、自然と。

36名無しさん@転載は禁止:2021/10/30(土) 00:45:18 ID:km2wQRRY
もちろん他の生徒会役員の人たちが帰ってからだ。

菜々「高咲さん、どうでしたか?」

侑「いや……めちゃくちゃ面白かった。夢中になって一気に観ちゃって」

菜々「ですよね! もうあの勢いは止められません……!」

ビシリと人差し指を高く掲げて、菜々ちゃんは高らかに。

菜々「穴を掘るなら天を衝く! 墓穴ほっても掘り抜けて、突き抜けたなら俺の勝ち! ……いやぁ、自分で言っても痺れちゃいます」

侑「あの成長っぷりは惚れ惚れしちゃうね」

37名無しさん@転載は禁止:2021/10/31(日) 01:20:22 ID:RtH874qI
菜々「最高です! あぁ、やっぱり誰かと感想が直接言い合えるのはいいですね……!」

菜々ちゃんは本当に、心底嬉しそうに語る。

菜々「……あっ、そうだ! 高咲さん、つぎの日曜日は空いていますか?」

侑「うん、特に用事はないよ」

菜々「それなら私の家で鑑賞会しませんか? お母さんもお父さんもお仕事なので!」

38名無しさん@転載は禁止:2021/10/31(日) 01:21:54 ID:RtH874qI
じっくりな内容にはちょっとならないかもしれません。

39名無しさん@転載は禁止:2021/10/31(日) 01:33:09 ID:VnNIBq4k
うん、良いと思うよ
次が控えてるからね、ふふっ

40名無しさん@転載は禁止:2021/10/31(日) 12:08:48 ID:O/wq/dfU
菜々ちゃん話が合って嬉しいからって男の子を両親のいない日に家に呼ぶのは大胆やぞ!

41名無しさん@転載は禁止:2021/11/01(月) 01:09:12 ID:RqAnvXio
せつ菜√で歩夢を完全崩壊させるという話だったが、果たして…

42名無しさん@転載は禁止:2021/11/01(月) 03:26:06 ID:7q2zRz.A
★★★

一週間もあっという間に週末となり、私は菜々ちゃんのお家にお呼ばれした。

しかしまぁ、菜々ちゃんも今までにそういう相手がいなかった故の興奮からなんだろうけど、まだ出会ってから間もない男子を家に呼ぶなんて。

私だったからいいけど。

菜々「あっ、高咲さん! ようこそいらっしゃいました!」 

侑「おじゃまします」

ワンピースタイプの私服。
幼さが全面に出ていて、可愛らしさが溢れている。

菜々「さぁ! さっそくリビングへ! こんな時じゃないと、鑑賞会なんてできませんからね!」

袖を掴んではやくはやくと誘導される。
その仕草が小さな子どものようで妙に癒やされてしまった。

43名無しさん@転載は禁止:2021/11/01(月) 03:35:10 ID:7q2zRz.A
菜々「今回観るのは、実は私もまだ観たことはないんですよね。受験とかと重なっていたこともあって……今回ようやくBlu-rayを購入したんです!」

各種動画サービスで配信されているアニメの、劇場版。それでもあえて現物を手に入れるあたりは菜々ちゃんらしい。 

菜々「もちろんTVアニメシリーズは見ているんですけども」

侑「なるほどね、それであの総集編を観てって言ってたんだね」

菜々「はい! 満遍なく楽しむために!」

44名無しさん@転載は禁止:2021/11/01(月) 16:45:11 ID:7q2zRz.A
今回のために全話を観るには時間がかかるから、総集編をオススメされていた。

菜々「ではではさっそく、視聴開始!」

★★★

劇場版の内容はTVシリーズからの続きではなく、よくある劇場版オリジナルのストーリー。
平和を取り戻したあとに、再びやってくる危機に立ち向かう主人公たち。
劇場版オリジナルキャラクターとの因縁や、ヒロインと主人公のすれ違い。

それらを乗り越えて、黒幕を力を合わせて打ち倒す……という、下手に奇をてらわず、王道をいったストーリーだったのだけど。

仲直りをした主人公とヒロインが、決戦に向かう前の前夜。

菜々「わ、わ……」

ベッドに倒れ込み、まあまあねっとりしたキスシーン。

侑「はは、これ劇場で見てたらちょっと気まずいね……中川さん?」

菜々「お、終わりましたか?」

菜々ちゃんは両の手のひらで目を隠していた。

45名無しさん@転載は禁止:2021/11/01(月) 17:21:54 ID:7q2zRz.A
侑「えーと……まだだよ」

菜々「そ、その……ちゅーが終わったら教えて下さい……」

ちゅー、って。

侑「……観なくていいの?」

菜々「こ、ここはいいんです……!」

侑「でもせっかくの劇場版だよ、観ないと損じゃない?」

菜々「うぅ……」

ちょっといじわるだったかなとも思ったけれど、菜々ちゃんは指の隙間からチラリと見ていた。

46名無しさん@転載は禁止:2021/11/01(月) 17:49:03 ID:7q2zRz.A
そんなハプニング(?)もあったけれど、2時間たっぷり映画を堪能した。

菜々「お、おもしろかったですね! さ、さすがは劇場版といった作画でしたし、最高、でしたね……」 
 
そう言うが菜々ちゃんにはまだ少し動揺が残っている。
それがなんだか可愛らしかったから、私のわずかにある加虐心がうずいた。

侑「……キスシーンとか、結構苦手なんだ?」

菜々「……いろいろ、想像しちゃって」

菜々「どんな感じなんだろうとか、……気持ちいいのかなとか……」

侑「……」

菜々「……」

まずい……。
自分から話振っておいて気まずい空気を作ってしまった……!

47名無しさん@転載は禁止:2021/11/01(月) 18:00:10 ID:7q2zRz.A
菜々「……高咲さんは、したことはないんですか?」
 
侑「えっ、な、無いよ! そんな……」 

菜々「そ、そうですか……」

侑「あ、あはは……お互いまだまだ子供だね……なんなら試しにしてみる〜、なんて……」

菜々「え……」

侑「あっ、いや! 冗談冗談!」

菜々「あ……そう、ですよね」

侑「……え?」

なに、その反応。

48名無しさん@転載は禁止:2021/11/01(月) 18:03:06 ID:7q2zRz.A
侑「……ねぇ、中川さん」

菜々「ぁ……」

そんな反応されたら、意地悪したくなるのは当然でしょ。

侑「もしも僕が本気で言ってたら……どうしてたの?」

菜々「それは、その……」

49名無しさん@転載は禁止:2021/11/01(月) 18:08:52 ID:7q2zRz.A
侑「……」

侑「してみない?」

菜々「……」

そう言うと、菜々ちゃんは目線を合わせては来なかったけれど……こくりと、控えめに頷いた。

50名無しさん@転載は禁止:2021/11/01(月) 21:22:44 ID:Mkumh7dI
うおおおおおおおおおお!!!!!!

51名無しさん@転載は禁止:2021/11/02(火) 02:53:36 ID:ZyP6HH3w
おいおいおい!!
盛り上がってまいりました!!!

52名無しさん@転載は禁止:2021/11/02(火) 08:07:26 ID:OUFWyk4U
環境音だけが耳に入ってくる。
車が走り去る音、雀の鳴き声、クラクションの音、発情期の猫の騒がしい鳴き声。

菜々「……」

言葉を探しているのか、菜々ちゃんは黙ったままだ。
それもそうかもしれない、どんな流れかこれからクラスメイトの、その上最近仲良くなったばかりの男子とキスをしようと言うのだから。

平然とされていたら、それはそれでショックなような。

侑「中川さん」

結局、この状況にしたのは私だから。
リードするのは当然私じゃないと。

菜々「ぁっ……」

そこでようやく菜々ちゃんと目線があった。
紅潮した顔。少し潤んだ瞳。
薄い桜色の唇に、私は自然と引き寄せられていた。

侑「ん……」

菜々「ふぁむ……!」

ちゅくり、と音を立てて唇が重なりあった。
重なりあった、というよりも本当に触れ合うだけのソフトなキス。

菜々ちゃん風に言うのなら、これがまさに「ちゅー」だった。

53名無しさん@転載は禁止:2021/11/02(火) 08:16:04 ID:OUFWyk4U
あまり長すぎても、なんだかよろしくない気がして早めに唇を離した。

菜々ちゃんはなんだか呆けてしまっていた。
ポッー、と何も考えられていない。そんな顔だった。

侑「中川さん?」

菜々「あっ、は、はい……気持ちよかったです……」

侑「えっ、あ、あぁ、それなら良かった……」

予期していなかった言葉に保っていた余裕が崩された。
さすがに今の発言が結構な事だと気づいたのか、ぶわっと顔をほんのりどころか真っ赤にさせて、「違うんです!」と両手を交差させて何かを否定した。

菜々「いっ、今のはその、違くて……!」

侑「……いいんじゃない? 確かめたかった事、だったんだから」

菜々「ぁ、う、ぅう……」

54名無しさん@転載は禁止:2021/11/02(火) 08:23:36 ID:OUFWyk4U
侑「……でもさ」

菜々「?」

侑「いや……僕から言い出しておいて何を、と思うかもしれないけど……良かったの? 僕で」

ファーストキスが──そう続けて私は菜々ちゃんに伝えた。

菜々「……私は、嫌とは思いませんでした。初めてのキスが、高咲さんで」

面と向かって言われてしまうと、さすがに目を逸らしたくなった。
ファーストキスの相手で良かったなんて言われたら、そうなるでしょ。
それもこんな菜々ちゃんみたいな可愛い子に。

55名無しさん@転載は禁止:2021/11/02(火) 08:29:40 ID:OUFWyk4U
あんまりにもときめいてしまったから──

侑「……もう一回してもいい?」

菜々「は、はい……んっ」

瞳を閉じて唇を差し出す菜々ちゃん。
写真に納めたいくらいたまらない瞬間だった。
とにもかくにも、私は遠慮なく二度目のキスをした。

★★★

菜々「じゃあ……高咲さん、また学校で」

侑「うん。またね」

私達は、キスをした。
だけど関係はこれからも変わらない──話の合う、仲のいい友達。

だから今日のキスは、本気のキスじゃなくて……どんなものかを確かめ合う「練習」のようなものとお互いにそう思うことにした。

キスごっこ、とでも言うのかな。

56名無しさん@転載は禁止:2021/11/02(火) 08:31:32 ID:OUFWyk4U
夕方頃に。

57名無しさん@転載は禁止:2021/11/02(火) 17:25:24 ID:OUFWyk4U
でもしちゃったことには違いはなくて。
今でもまだ、菜々ちゃんの唇の感触が残っている気がした。
ふにふにしていて、信じられないくらい柔らかくて。

許されるのなら、もう一回したいな……なんて思っていた。

★★★

初めてキスをしてしまいました。
まだ、仲良くなってから一ヶ月も経っていない男の子と。

急激な速度の展開に、私の体の火照りは未だに治まらない。

こんなに簡単にキスをしてしまっていいのかな……でも、あれは練習って、お互いに納得したから……。

菜々「……練習」

練習という建前があれば……他のことも……。

菜々「っ! いけません、そんなことばかり考えたら……!」

58名無しさん@転載は禁止:2021/11/02(火) 17:28:44 ID:OUFWyk4U
でも……私の頭の中には様々な妄想が膨らむ。

菜々「……二人だけの、秘密なら」

……そう、二人だけの秘密にすれば。
何をしても……いいんじゃ……?

菜々「……」

★★★

月曜日、当たり前に学校は始まる。
ごく普通に登校して、授業を受ける。

友だちと話して、歩夢とも話して……。
放課後、菜々ちゃんとも雑談をする。 

他に誰もいない生徒会室で。

今日はなにもないらしく、放課後になってすぐに会えた。

59名無しさん@転載は禁止:2021/11/02(火) 17:33:00 ID:OUFWyk4U
菜々「ほら、これとかすごく良くないですか?」

侑「どれどれ……」

生徒会室のソファに隣同士に座り、菜々ちゃんがスマホで見せてくれるアニメの名場面を一緒に眺めていた。

スマホの小さな画面を共有して見るから、肩が触れ合う程度の距離。
でも私達は、友達だから……気にしない。

60名無しさん@転載は禁止:2021/11/02(火) 17:38:34 ID:OUFWyk4U
菜々「ふふ、ここが大好きで……」

菜々ちゃん嬉しそうに揺れると、尻尾のように三編みも揺れる。
何気なく、私は三編みについて聞いてみた。

侑「そういえば、三編み以外にはしないの?」

菜々「? そう、ですね……特には考えたことはなかったのですが……どうしてですか?」

侑「いや……」

その先を続けようかは迷ったけれど、私は言いたい事は言う主義。

侑「三編みも可愛いけど……他の髪型も似合いそうだなって」

61名無しさん@転載は禁止:2021/11/02(火) 17:57:46 ID:OUFWyk4U
菜々「あっ、ありがとうございます……」

侑「……」

照れ照れともじもじ。
そんな菜々ちゃんが可愛らしくて。

ドキドキして……。

侑「中川さん」

菜々「は、はい」

侑「……また練習しない?」

それは、つまりは。
キスしよう、って行っているのと同じことだった。

菜々「……はい」

ギシりとソファがきしむ。
私が身体を動かせ、菜々ちゃんの方へ乗り出したから。

侑「ん……」  

菜々「ぅうむ……!」

外では運動部の声が飛び交っている。
そんな中、私は汗一つかかず、菜々ちゃんとキスをしている。

昨日に続き、二度目のキス。
それがソフトな触れ合うキスで終わる訳が無くて──

侑「……中川さん、他のやり方も試してみようよ」

★★★

菜々「こ、こうですか……?」
 
侑「うん……」

私は変わらずソファに座ったまま。
菜々ちゃんは、私の膝の上に対面して座ってもらう。
女の子座りの体制で、私の膝に。

何をするかというと。
その体制のまま、お互いに抱きしめ合い……そのままキスをする。

侑「ん……」

菜々「っ、むぁ……」

菜々ちゃんのぬくもりと、密着する身体。
たまらない。
あまりにもたまらなかった。

62名無しさん@転載は禁止:2021/11/02(火) 18:02:42 ID:OUFWyk4U
侑(舌いれちゃお……)

菜々「んんっ!?」

当然驚く菜々ちゃん。
口内に潜り込む自分のものではない舌に、とても敏感に反応した。

菜々「ん、ぁ、んん……」

菜々ちゃんもそれに応じた。
……やっぱり菜々ちゃんも興味津々なんだ、こういう事に。

じゅるじゅると互いの唾液を啜る音が、絶対に生徒会室で響いていい音じゃない音が下品に響き渡る。

菜々「ぷはぁっ! ぁっ、はぁっはぁ……!」
  
呼吸も忘れてキスをしていた。
唇我離れた時、あまりにも粘り気を残していた唾液が、私と菜々ちゃんの唇を繋ぐ橋になっていた。、

63名無しさん@転載は禁止:2021/11/02(火) 18:02:57 ID:OUFWyk4U
今回はここまで。
また明日に。

64名無しさん@転載は禁止:2021/11/02(火) 22:38:51 ID:9Tvr37Aw
悪くないけど、出会って1ヶ月足らずでこの状況はすごく軽いように思えてしまう面もあるような気がしないでもない

65名無しさん@転載は禁止:2021/11/02(火) 22:39:46 ID:/faolb1E
いや、エロゲやギャルゲーでもそんなもんか…

66名無しさん@転載は禁止:2021/11/03(水) 08:05:53 ID:hEWPu7XY
侑「……ぶっちゃけ、どう? こんなこと、出会って間もない男子とするの」

菜々「……私もよくわかりません。でも……」

私の方に顎を乗せて、絞り出すように囁やく。

菜々「今更、もどれません……こんな事知ったら」

侑「……」

……これは結構責任重大かもしれない。
傍から見たら、控えめな生徒会長に手を出したチャラ男みたいになってる。

今的にはパリピか? いやなんでもいいか。
私そんなんじゃないし……。

侑(でも……)

そんな事を言われて、姿を見せられたら。
もっといろんなこと、教えてあげたくなるし。
誰にも渡したく無くなる。

67名無しさん@転載は禁止:2021/11/03(水) 08:14:57 ID:hEWPu7XY
ゾクゾクした。
そう感じる私は、悪い子かもしれない。

そう思いながらも、私はその日3度目のキスを菜々ちゃんとした。

★★★
下校して、自分の部屋で。


菜々「あっ、ぁ、ぁっ、はっ……」

ベッドの上で自身を慰めていた。
枕に顔を埋めていないと大きい声が出てしまいそうだった。

菜々「んっ、んんんっ〜……っ!」

クリトリスを刺激して絶頂を迎える。
足がピンと伸びて、快感に酔う。

菜々「ふぅ、ふう、はぁ……」

……またしちゃった。
最近……すこし増えた。オナニーの回数が。

68名無しさん@転載は禁止:2021/11/03(水) 10:57:08 ID:NYWSt8AE


69名無しさん@転載は禁止:2021/11/03(水) 17:22:54 ID:hEWPu7XY
体の火照りが治まらない。
一体いつからこんなに、こんなことばかり考えるようになってしまったんだろう。

乱れた衣服を直しながら理由を探る。  
いや……探る、と言ったけれどどう考えても一つしか思い当たることがない。

舌を指で掴んでみる。
ぐにぐにと、縦に横に。
でも、やっぱりあのキスの感覚にはどうしてもならない。

70名無しさん@転載は禁止:2021/11/03(水) 17:44:33 ID:hEWPu7XY
キスがあんなに気持ちいいことだなんて知らなかった。
軽々しく失ったファーストキスだったかもしれないけど、それで良かったと想ってしまうほど。

……誰でも良かったわけじゃない。
高咲さん……不思議な人。
初めて会った気がしない、心通わせる人。

71名無しさん@転載は禁止:2021/11/03(水) 17:50:12 ID:hEWPu7XY
菜々「……だめ! 高咲さんとは、そんないやらしい関係じゃなくて……」

初めての男の子の友達。
軽い女子と思われてたりしたら、嫌だな……どう思ってるんでしょうか。

それを確かめるためにも……早く会って、またお話がしたいな。

72名無しさん@転載は禁止:2021/11/03(水) 17:59:55 ID:hEWPu7XY
★★★

侑「おはよう、中川さん」

菜々「おはようございます、高咲さん」

校門にて生徒会役員の人たちが定例の簡易的な服装チェック。
そこには当然菜々ちゃんの姿もある。

菜々「……高咲さん、ボタンはちゃんと留めましょうね」

侑「え、あぁ、ごめん」

学ランはなんだか首元がうっとうしくて、第一ボタンを外していることが多かった。今回はついに見つかってしまったという感じだ。

菜々「服装の乱れは風紀の乱れに繋がりますよ」 
 
そう言って、菜々ちゃんは私の第一ボタンを留める。

侑「い、いいよ自分でするから」

菜々「……次からはちゃんと、してくださいね」

はっとした顔をしたかと思えば、誤魔化すように注意された。

73名無しさん@転載は禁止:2021/11/03(水) 18:00:14 ID:hEWPu7XY
また明日に。

74名無しさん@転載は禁止:2021/11/04(木) 00:14:50 ID:C4vbnkRs
ネクタイ付けてあげてるみたいで良いね

75名無しさん@転載は禁止:2021/11/04(木) 17:22:43 ID:FE.epT/g
他の生徒会役員の人たちも「どうして急に……」と小声でヒソヒソ。
注意はしても、わざわざ留めてあげるなんて、旗から見ればそりゃあどうしてとなるだろう。

歩夢「……」

一緒に登校していた歩夢も、何も言わないけれど訝しげな表情を浮かべていた。

76名無しさん@転載は禁止:2021/11/04(木) 17:43:46 ID:FE.epT/g
侑「……ありがと」

菜々「いえ……」

そしてこれが原因で、大した騒ぎでもないのだけれど面倒なことになる。
クラスで菜々ちゃんと付き合ってるのか? って聞かれることが増えた。

歩夢まで訊いてきたくらいだ、まぁそれも仕方ないのかな。

私は付き合ってないよ、と色んな人に答えた。
それでも怪しまれたけど……。

それは菜々ちゃんも同じだったようで。

生徒会室の、いつものお喋り中。

菜々「高咲さんって……モテるんですね」

侑「え、なんで?」

菜々「今日、言われたんです。『生意気だ』って……」

侑「えぇ? どうして?」

77名無しさん@転載は禁止:2021/11/05(金) 04:23:41 ID:5rBOF1F6
生意気!

78名無しさん@転載は禁止:2021/11/05(金) 11:00:01 ID:.qr3HPzg
侑くん、そんなにモテる設定あったの?

79名無しさん@転載は禁止:2021/11/06(土) 05:14:45 ID:71Kzc6DQ
菜々「高咲さんの事が好きな人が、たくさんいるという事でしょうか……『あんたみたいな地味な奴は引っ込んでて』と……」

……。
地味……? 
菜々ちゃんが?

菜々「でも、それもそうかもしれません。確かに私は、目立っては居ませんし、地味な女子と言われても……」

侑「いや、中川さんは地味なんかじゃないよ」

たまらず口を挟んでしまった。
こんなに可愛い子が地味って──いや、地味が悪いということではない──何をどう思ったらそう言えたんだ。

侑「中川さんは可愛いんだから、そんな言葉、真剣に捉えなくていいよ」

菜々「へ……!? あ、ありがとう、ございます……」

80名無しさん@転載は禁止:2021/11/06(土) 05:18:15 ID:71Kzc6DQ
侑「それに、僕が……まぁモテるとかはどうでもいいけど、ていうかそんなの知らないし。そんな事言う子は、僕は好きじゃないかな」

菜々「……じゃあ、どんな女の子が好みなんですか?」

好みの女の子……か。
なんだか私に聞かれていると思うと不思議な感覚だけれど、私はありのままの気持ちで答えた。

侑「そりゃあ、一緒にいて楽しい人だよ」

81名無しさん@転載は禁止:2021/11/06(土) 05:29:02 ID:71Kzc6DQ
菜々「……そう、なんですね」

侑「うん」

……。

侑(あっ)

いや……いまの、なんか。
ちょっと気まずくなる事言ったか……?

菜々「……き、今日はそろそろ帰りましょうか。ね?」

侑「そ、そうだね」

★★★

結局、そのままモヤモヤとした空気で解散。

侑「菜々ちゃん、なんておもったかなぁ、あれ」

……それも気になるけれど。

侑「……今朝のアレで菜々ちゃんが何か言われちゃうんなら、なおさらみんなの前では話せないかもね」

まだしばらくは、生徒会室でのお喋りが続きそうだ。

82名無しさん@転載は禁止:2021/11/06(土) 08:32:26 ID:3EvIz2co
侑ちゃん君無自覚天然たらし

83名無しさん@転載は禁止:2021/11/07(日) 23:53:20 ID:htBOoyzI
★★★

それからも私達の秘密のお喋りは続いた。
新しいアニメや、漫画、夏に開催される一大イベントの事。

菜々「実はもう用意はできていて……!」

侑「用意? あ、もしかしてコスプレの衣装?」

菜々「はい! ……そうだ、高咲さんにも確認してもらいたい事があるので、よろしければ明日のお休みは家に来ませんか?」

侑「そうだね、お邪魔しようかな」

私と菜々ちゃんの関係は良好だった。
キスはしてしまったけれど、お互いに水に流して、今でも仲良くしてもらっている。

あれ以来、やましいことをしているわけでもない……本来の関係に戻れた気がした。

84名無しさん@転載は禁止:2021/11/07(日) 23:58:41 ID:htBOoyzI
★★★
翌日、土曜、菜々ちゃんの家。

菜々「あっ、高咲さん、お待ちしてました!」

侑「おじゃまします……親御さんは」

菜々「お父さんもお母さんもお仕事です。お茶を持っていくので、私の部屋で待っていてくれますか?」

それに頷き、私は菜々ちゃんの自室へ。
程なくして、グラスになみなみと注がれた麦茶を持ってきてくれた。

侑「ありがとう……それで、確認してもらいたいものって?」

菜々「ふふ、それは……これです!」

ばっ、とその衣装を広げて見せてくれる。
これは……恐らくは夏に向けてのコスプレ衣装なんだろうけど。

侑「これは何のキャラクター?」

菜々「ウマ娘のサクラバクシンオーです!」

85名無しさん@転載は禁止:2021/11/08(月) 00:09:21 ID:yvj1xfVY
まだ見たことのないやつだ、どんなキャラクターなんだろう。
菜々ちゃんはそんな私の心を見透かしたかのように、それがどんなキャラクターなのかを動画で見せてくれた。

元気いっぱい、猪突猛進、学級委員長……なるほど。

侑「……」

菜々「?」

結構、合ってるかも。確かに。

86名無しさん@転載は禁止:2021/11/08(月) 00:17:12 ID:yvj1xfVY
菜々「客観的な意見を聞きたくて……ちょっと着替えてきますね」

★★★

菜々「──どうでしょうか!」

侑「おお……!」

実際に生のコスプレを目の当たりにすると、中々の破壊力だ。
それに……ウマ耳が可愛らしくハマっていて、いや、うん。

侑「す……すっごいかわいい!」

語彙力完全崩壊、ソレしか言えなかった。
菜々ちゃんも少し照れくさそうに、ほっぺたをかきながら「ありがとうございます」と笑った。

菜々「尻尾もなかなかクオリティ高くないですか? 私、これすごく気に入ってて」

フリフリと尻尾を揺らすために、背を向けて腰をふる。

侑「うん、すごい……いや、すごい」

菜々「ふふ、ありがとうございます」

87名無しさん@転載は禁止:2021/11/08(月) 00:20:33 ID:yvj1xfVY
それにしてもこの衣装……結構際どい気もするけど……脇とか全開だし。

菜々「……それと、もう一つお願いがあって」

侑「なに?」

菜々「実は〜、高咲さんにちょっと来てみてほしいものがあって……」

★★★

侑「こ、こ、これは……ちょっと……!」

菜々「えっー! すごいです、高咲さん、もう女の子にしか見えませんよ!」

菜々ちゃんに着せられたのは、同じくウマ娘のキャラクター……キタサンブラックというらしい、それの衣装だった。

菜々「なぜか似合う気がしたんですが……これほどとは」


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