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海未「もうすっかり癖になりました。音を殺して歩くのが」

1名無しさん@転載は禁止:2017/09/27(水) 19:14:43 ID:UKYbIIWQ
――理事長室


穂乃果「勝負、ですか?」

理事長「ええ。皆μ'sには戦って欲しいと思っているの」

理事長「今やスクールアイドルのトップに立ったμ's。その実力の程を知りたい、とね」

ことり「お母さん、唐突すぎるよぉ…」

理事長「もちろん勝者には景品を出すわ。私が、望むことなんでも叶えてあげる」


ザワッ……!

105名無しさん@転載は禁止:2017/09/27(水) 20:00:02 ID:UKYbIIWQ
数分の後、三人は真姫を見据えた。

希・にこ・ことり「……」ザッ

その目には確かな光が宿り、先ほどまでの焦りや不安は消え失せている。

真姫(へえ、まだここから出るのを諦めてなさそうね)

真姫「作戦会議は終わったのかしら?」

希「うん、待たせたね真姫ちゃん」

にこ「ここから出させてもらうわよ、真姫」

真姫(何言ってるか聞こえないけど、自信満々ね)

真姫(とりあえず、警戒すべきは――)チラッ

希「さあ、頼むでノ○タン!」

ノ○タン「……」タンッ

希の声に従い、白猫は身軽な動きで走り出した。

さながらダンスを踊るかのようなステップで真姫との距離を詰める。

患者「! まきちゃん」ザッ

当然それを阻むため、患者が立ちふさがる。

106名無しさん@転載は禁止:2017/09/27(水) 20:00:24 ID:UKYbIIWQ
患者「まきちゃん」

ボッ…!

その容赦ない攻撃が白猫を襲う。

ノ○タン「……」

ドゴッ!!

白猫はなす術なく吹き飛ばされ、地面にたたきつけられた。

真姫「?」

真姫(何か仕掛けがあるのかと思ったら……何もない?)

具現化系の能力には具現化された物体に特殊な能力が付加されていることが多く、この白猫もそうであろうと真姫は考えていた。

そして、その考えは――正しかった。

患者「ま き ちゃ ん」

真姫(!? これは……)

患者「ま  き  ちゃ  ん」フラフラ

真姫(白猫を殴った患者の動きが……遅くなった!?)

107名無しさん@転載は禁止:2017/09/27(水) 20:01:02 ID:UKYbIIWQ
希「真姫ちゃんは丁寧に能力の解説してくれたから、ウチも教えてあげる」

真姫「……」

ノ○タン「……」ムクッ

希「この子には直接的な攻撃力は一切なし、その代わりどんな攻撃も受け付けない。無害ゆえに無敵ってわけや」

希「ただ…一緒に遊んでくれる人の時間の感覚を狂わせる、それだけの能力」

真姫「……」

希「そうや。時間を忘れて遊べるように、日がくれたことに気づかないくらいに、いつまでも、いつまでも遊べるように…ね」

患者「ま ま ま」ガクガク

にこ(あの白猫にとっては『触れること』も『遊んでくれた』に含まれるわけね…)

希「患者っていっても、元は真姫ちゃんのファンの人達やん? 人としての感覚が生きてる以上、この能力からは逃れられないで」

希「はい、以上で能力の解説終わり〜」ニヤニヤ

真姫(耳栓してるから何も聞こえないけど、バカにされたらしいことは伝わってくるわね…)ムカッ

ノ○タン「……」タッ

患者「まきちゃん」ドガッ

ノ○タン「……」ニッ

患者「ま……ま?」フラフラ

真姫(どうやらあの白猫を攻撃すると患者の動きが遅くなるみたいね)

真姫(このままだと、まともに動ける患者がいなくなる…!)

108名無しさん@転載は禁止:2017/09/27(水) 20:01:20 ID:UKYbIIWQ
希(読み通り、患者の操作は遠隔操作(リモート)でなく自動操作(オート)で行われているみたいやね)

希(つまり、真姫ちゃんの意志で患者の動きを止めることはできない!)

にこ「いい感じね…よし、打ち合わせ通りいくわよ、ことり!」

ことり「は〜い」

真姫(くっ……能力の解除をさせるわけにはいかない! 私がこの戦いで生き残るには、ここでこの三人を倒すのが絶対条件…!)

ことり(『禁断症状(スピカテリブル)』を使わずにここから出られるなら、それに越したことはないよね)

ことり(ここは素直に協力してあげようかなっ♪)



『脳内麻薬(チュンチュントリッパー)』――発動!




真姫(……? なに、これ…?)

ことり「操作能力はおまけみたいなものでね、チュンチュントリッパーはこっちが本命なんだ」

真姫(目が……ことりから離せない…!?)

109名無しさん@転載は禁止:2017/09/27(水) 20:01:48 ID:UKYbIIWQ
ことりの能力(チュンチュントリッパー)はオーラを相手を魅了するフェロモンに変える能力。

声に乗せて飛ばすこともできるが、そのままでも十分に効果を発揮する。

否、むしろ飛ばさずに使うのが本来の使い方であった。

ことり「ふふふ」チュンチュン

真姫(な、なんなのこの胸のときめきは……///)チョロローン

変化系能力者であることりにとって操作能力は相性が悪く、本人が言ったとおり『おまけ』にすぎない。

本来この能力は、(主に海未に対する)お願いや、(主に海未に対する)交渉、さらには相手の(主に海未に対する)戦意喪失を狙うものなのだ。

その効果は相手がチョロければチョロいほど大きく、μ's随一のチョロさを誇る真姫がこの力に対抗できる道理など当然なかった。

真姫(くううううっ……///)チョロロローン

ことり(さて、ちゃんと役目は果たしたよ、二人とも。あとはよろしくね)

真姫「!!」

真姫(しまった…ことりに気を取られている間に――!)

110名無しさん@転載は禁止:2017/09/27(水) 20:02:06 ID:UKYbIIWQ
患者「まきちゃん」

患者「まきちゃん」

患者「まきちゃん」



ワラワラワラワラ……



真姫(希とにこちゃんを、見失った!)

真姫(気配を絶って、患者の中に紛れたわね……!)ギリッ



『秘密の診察室』内、ことのぞにこまきの攻防――戦況は、逆転しつつあった。

111名無しさん@転載は禁止:2017/09/27(水) 20:02:58 ID:UKYbIIWQ
――



絵里「フー……」

ズズズズズ……

花陽(バレエの衣装が消えて…その代わりに、オーラが何かを形作ってる…!)

凛(成長した絵里ちゃんの能力も具現化系か……次は何が来る…!?)

絵里「凛。私はね、自分の過去を乗り越えるということはつまり、自分の過去を客観視できるようになるということだと思うの」

絵里「この能力はまさにその結果。私の過去(冷戦時代)を客観視できるようになったことで生まれた力よ」

ズォォォォ…!

渦巻き続けていたオーラがやがてその動きを止め、絵里が作り出したモノの正体が明らかになった。

見る者の目を奪う鮮やかな金髪に、澄み渡った青空を思わせる碧眼、メリハリのあるハラショーなスタイル――

凛「これは……!」



エリチカ「チカ」



凛(絵里ちゃん!?)

112名無しさん@転載は禁止:2017/09/27(水) 20:03:16 ID:UKYbIIWQ
トッ……!

凛「!!」

凛が驚きを飲み込む間もなく、絵里『達』の姿が消えた。

ガガガガガガッ……!


花陽(!! 速い……!)


戦いを見守る花陽が驚くのも無理はない。

絵里が作り出した己の分身は、絵里本人と全く変わらないスピードで凛を追いつめていたのだから。


凛(……っっ!! 絵里ちゃんの分身(ダブル)…! 本物の絵里ちゃんと何の遜色もないにゃ…!)

凛(しかも具現化して作り出された以上、どんな仕掛けがあるか分かったものじゃない……迂闊に触れる訳にはいかない…!)


凛の読みは正しく、その対応もまた正しい。

しかし、今の状況は絵里が二人に増えたことと同義であり――

113名無しさん@転載は禁止:2017/09/27(水) 20:03:44 ID:UKYbIIWQ
絵里「はぁぁぁぁっ!!」

凛「くっ……!」バッ

エリチカ「がら空きチカ!」タンッ

凛(!! しまっ……!)

絵里の分身に触れずに追撃をいなし続けることは、不可能だった。


バキッ……!


凛「ぐっ……!?」

花陽「凛ちゃん!」


凛(一撃の重さも、本物並か……!)

絵里「あら」


絵里「触れちゃったわね、凛」ニヤッ


エリチカ「残念チカ」


ドクンッ…


凛(!?)


絵里達が笑みを浮かべたのと同時、凛の頭の中に恐ろしい映像が浮かび上がった。

114名無しさん@転載は禁止:2017/09/27(水) 20:04:09 ID:UKYbIIWQ
凛『はぁ〜、美味しかったにゃー』

花陽『ふふ、凛ちゃん。ほっぺにニラがついてるよ?』

凛『え!?』

花陽『ほら、ここ』フキフキ

凛『うぅ、恥ずかしいにゃ…でもありがとかよちん!』

花陽『えへへ、どういたしまして。凛ちゃん、今度は皆も誘って行こうね』

凛『かよちん、ナイスアイディアにゃ! うー、テンション上がるにゃ!』ダッ

花陽『凛ちゃん、急に走るとあぶな――』

キキィィィィィィィィィィ……!

凛『……え?』

花陽『凛ちゃんっ!!』



ドンッ……!!


ドサッ…



凛『え……?』

凛『……かよちん?』

凛『……かよちんっ!!!』

115名無しさん@転載は禁止:2017/09/27(水) 20:04:34 ID:UKYbIIWQ
凛「う……あ……ぁ……」ガタガタ

花陽「り、凛ちゃん!?」


絵里「黒歴史(トラウマ)を客観視して生み出されたのが私の分身。要するに――」

絵里「こっちの私(エリチカ)は、私から切り離された黒歴史そのものよ」


エリチカ「迂闊に触れると、ヤケドするチカ」ドヤッ


絵里「触れればどうなるか、想像はつくでしょう?…って、聞こえてないかしらね」

凛「っ……はぁ…は、あ……っ…ぁ……」ブルブル

花陽(凛ちゃん……!)

116名無しさん@転載は禁止:2017/09/27(水) 20:04:54 ID:UKYbIIWQ
『ありふれた悲しみの果て(ダンサーインザダーク)』が成長して生まれた絵里の能力、『冷戦時代(エリーチカタイム)』。


自身の分身(ダブル)を具現化する能力だが、オーラで出来ていることと、口が半開きなこと以外は本物と遜色はない。


更に、触れた者に本人にとっての最大級のトラウマを『植え付ける』。


成長する以前の能力がトラウマを『掘り起こす』能力だったことから、まさに延長線上に位置する能力と言えよう。


賢(かしこさ)と愚(ポンコツ)の同居。


それが、絵里がありふれた悲しみの果てにたどり着いた解答(能力)だった。

117名無しさん@転載は禁止:2017/09/27(水) 20:05:16 ID:UKYbIIWQ
絵里「講釈はこの辺にして、続きといきましょうか」ザッ

凛「はぁ……はぁ……くっ…!」ズッ…!


シュゥゥゥ…


凛「……!?」

凛(オーラが…練れない!?)


念は心の状態に応じて精度が大きく変わる。

今の凛の精神状態では、まともに念が使えないのも至極当然だった。

そして、その好機をみすみす逃す絵里ではない。


絵里「…」ザッ

エリチカ「いくチカ……必殺技!」ザッ


凛を挟み込むように分身と向かい合う絵里。

両の掌には今までとは比にならないほどのオーラが込められている。

しかし絶対的優勢にありながら、絵里の心の中にはある危惧があった。

絵里(……私の動きを完全にトレースしてみせた凛の潜在能力、これ以上戦いが長引けば、凛の牙はーー)



―――

――



118名無しさん@転載は禁止:2017/09/27(水) 20:05:42 ID:UKYbIIWQ
絵里『何故です! 生徒会も廃校を阻止するために活動させてください!』

理事長『それは駄目よ』

絵里『……分かりました』

絵里『だったら…力ずくで…!』ズォッ…!

理事長『絢瀬さん、二度言わせないで』



理事長『そ れ は 駄 目 よ』ズ……



絵里『!?』

絵里『…わ…分かりました』

理事長『そう。いい子ね』ニコッ

絵里(……今のオーラ……)ゾクッ…



―――

――



119名無しさん@転載は禁止:2017/09/27(水) 20:06:07 ID:UKYbIIWQ
絵里(あの理事長にさえ届きうるかもしれない……!)

絵里(そこまで成長される前に、ここで確実に――潰す!)


ズォォォォォォォォォォォォォォォッ!!


凛(この、オーラ……やばい、にゃ…)

凛(逃げないと……)


花陽『凛ちゃんっ!!』


凛「!!…ぅ……ぁ……」

凛(ダメだ…動けそうも、ないにゃ……)

絵里「これで終わりよ、凛」グッ

エリチカ「オワリーチカ」グッ


ダンッ!


それは


分身と共に、敵を挟み込むように打ち出す……外側(肉体)と内側(精神)を同時に破壊する渾身の掌撃である――


絵里・エリチカ「――『破羅掌』」



ドッ……!!

120名無しさん@転載は禁止:2017/09/27(水) 20:06:28 ID:UKYbIIWQ
凛「……?」

凛が疑問符を浮かべたのも無理はない。

覚悟していた衝撃は予想より遙かに軽く、優しささえ感じられたのだから。

だが、凛はすぐに自分の間違いに気づく。


凛「!!……ぁ……ぁ……」


今の衝撃は、絵里の攻撃を受けたわけではなく――


花陽「……」カハッ…


花陽が、自分を庇ったのだと……


凛「かよちんっっっ!!!」


ぐらり、と横様に倒れた花陽を抱き抱え、凛は花陽の顔をのぞき込んだ。

力なく閉じられた両目とは裏腹に、口元には微かに笑みを浮かべている。

121名無しさん@転載は禁止:2017/09/27(水) 20:06:49 ID:UKYbIIWQ
花陽「りんちゃん……よかった…無事で…」

凛「かよちん…なんで…どうして……」

花陽「えへへ…変だよね。自分でも分かってるよ…」

花陽「これは勝負なんだから、凛ちゃんを庇う理由なんかないって……」

花陽「でも……でも私……どんな理由があったって……!」



花陽「お米と…………あと凛ちゃんだけは……!!」


ガクッ…



凛「…………かよちん?」

花陽「……」

凛「ねえ…かよちんてば……」

凛「か……」

花陽「……」

凛「……ぁ」

122名無しさん@転載は禁止:2017/09/27(水) 20:07:08 ID:UKYbIIWQ
絵里「あらあら、花陽ったらしょうがないんだから。凛を庇う必要なんてないのに」

エリチカ「ま、花陽らしいといえばらしいチカ」

絵里「そうね。…さて、じゃあ今度こそ…」ザッ


凛「……」


絵里が止めを刺さんと近づいてきても、凛は身動き一つしない。

魂を抜かれてしまったように、呆然と花陽を見つめ続けている。

空っぽになった頭の中では、花陽との思い出が走馬灯のように去来していた。

123名無しさん@転載は禁止:2017/09/27(水) 20:07:27 ID:UKYbIIWQ
かよちん


花陽『いいお米ってやつは、害虫に好かれちゃうんだ』


かよちん


花陽『バカ野郎! こんな水でびちゃびちゃの米が食えるか!』


かよちん


花陽『ファイナルライブのチケットを手に入れる。これがどんな狩り(ハント)よりも難しいの』


かよちん



かよちんかよちんかよちんかよちんかよちんかよちんかよちんかよちんかよちんかよちんかよちんかよちんかよちんかよちんかよちんかよちん

124名無しさん@転載は禁止:2017/09/27(水) 20:07:51 ID:UKYbIIWQ
ヒュゥゥゥ……


絵里「!」ザワッ…

戦い(ライブ)の中で絵里に備わった直感が、凛の変化を敏感に感じ取り、警鐘を鳴らした。

『何か来る』と素早く感知し、臨戦態勢へ。

ここまでは絵里の『本能』。そして『体感』する事で知る

凛の変化は、予想を遙かに越えたものであることを――

125名無しさん@転載は禁止:2017/09/27(水) 20:08:11 ID:UKYbIIWQ
もうこれで


終わってもいい


だから


ありったけを






ォォォォォォォォォォォォォ……!!






絵里(……なに)


絵里(なに、これ)



『それ』は、叫んだ。

126名無しさん@転載は禁止:2017/09/27(水) 20:08:45 ID:UKYbIIWQ
「ピャアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」

127名無しさん@転載は禁止:2017/09/27(水) 20:24:04 ID:UKYbIIWQ
臓腑にまで響く恐ろしい咆哮

先ほどまでとは別人のように荒々しく、危険な気配(オーラ)

その場に居合わせたのが凡夫ならば尻餅をついていたあろうことは想像に難くない

しかし、対峙する絵里は



絵里(冷戦時代(エリーチカタイム)――限界を超えて舞え!)ズォッ…!

エリチカ「チカァァァァァァァァァ!!」



恐れることなく、臨戦態勢をとっていた

128名無しさん@転載は禁止:2017/09/27(水) 20:49:14 ID:UKYbIIWQ
絵里(やはり凛の牙は、理事長にさえ届き得た……!)

絵里(ここで私が、仕留める…!)

エリチカ「チカァァッ!!」

極限まで研ぎ澄ました己の分身(エリーチカタイム)で凛を攻撃する絵里

だがその一撃は空を切った

絵里「!?」

完全に捉えたと確信した一撃は外れ、絵里は凛の姿を見失った

絵里(どこへ…!?)

辺りを見回す絵里

ここにいるのは自分と、横たわった花陽のみ

そこで、絵里はふと割れた窓の向こうをを見た

絵里(……な……)




「来いよ。かよちんは傷つけたくない」

129名無しさん@転載は禁止:2017/09/27(水) 20:55:39 ID:UKYbIIWQ
絵里の目がとらえたのは、もちろん凛である

だが絵里は目の前にいるのがあの凛だとは、どうしても思えなかった




リン「こっちにゃ……」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ


リン「ついて来い」ゴゴゴゴゴゴゴゴ



長く、天を突くがごとく上へと伸びている髪

スカートから生えている丸太のような脚

制服は今にもはちきれそうなほどに筋肉で盛り上がっている

さらには、十五歳とは思えぬ迫力を備えた容貌(かお)

130名無しさん@転載は禁止:2017/09/27(水) 21:05:49 ID:UKYbIIWQ
凛はそう言うと、絵里に背中を向け歩き出した

後姿にも、あの華奢な少女の面影はどこにもない


絵里(方法はわからないけれど、強制的に成長したんだわ…!)

絵里(私を倒せる年齢(レベル)まで…!)


凛の突然にして大きすぎる変化に動揺しつつも、絵里は賢さを保ち現状を分析した

当然、凛が背を向けている好機(チャンス)を、見逃しはしない

凛に向けて、渾身の一撃を見舞う





絵里・エリチカ「「十……破羅掌ォォォォォォォォォ!!」」





そして

それが絵里の放った、最後の一撃となった

131名無しさん@転載は禁止:2017/09/27(水) 21:06:51 ID:UKYbIIWQ








132名無しさん@転載は禁止:2017/09/27(水) 21:15:44 ID:UKYbIIWQ


途切れかけた意識の底で絵里は、恐怖していた



(凛……)



魅力を捨て去ることでしか成し得ないであろう能力……!!

二度と女の子らしい服が着られなくなってもいい!!

それ程の決意と覚悟でなければ不可能!!

天賦の可愛さを持つ者が更に

その可愛さを全て投げ出してようやく得られる程の力!!




(凛……そのままでは、あなたは……)

133名無しさん@転載は禁止:2017/09/27(水) 21:33:05 ID:UKYbIIWQ
今回はここまで

今度こそ完結させたい

134名無しさん@転載は禁止:2017/09/27(水) 22:58:24 ID:g2FyhJQU
見たことある
期待しかない

135名無しさん@転載は禁止:2017/09/28(木) 00:51:59 ID:fqfOWdUg
前読んでた
頼むから冨樫の二の舞だけは…

136名無しさん@転載は禁止:2017/09/28(木) 01:51:46 ID:7bxMHynM
懐かしすぎる
希とか絵里の能力は覚えてたけどリンさんは記憶に無いな
前回どこまでやってたっけ

137名無しさん@転載は禁止:2017/09/28(木) 06:08:49 ID:vmCzHTyg
なっつ

138名無しさん@転載は禁止:2017/09/30(土) 01:50:19 ID:yJLD/5zM
再放送期待してる
落ちたのってどの辺りだっけ

139名無しさん@転載は禁止:2017/10/02(月) 07:18:03 ID:TLDFT.eU
>>138

>>127から新規っぽいかも

140名無しさん@転載は禁止:2017/10/04(水) 13:37:39 ID:IJFUQzbU
中々面白い
期待してる

141名無しさん@転載は禁止:2017/10/07(土) 05:02:59 ID:fuOkUTt6
凛と絵里の死闘の決着から時を前後して、穂乃果と海未もまた激しい闘いを繰り広げていた。

先の戦闘でお互いにダメージを負った状態であり、奇しくもその消耗の度合いは全く同様であると言ってよい。

しかし条件が同じであれ、優勢に戦闘を進めていたのは海未であった。

穂乃果「はぁ……はぁ……」

海未「穂乃果、あなたの動き……凛より更に分かりやすいですね」

海未「その上スピードは凛には及ばない。万が一にも私があなたに負けることはあり得ないですね」

142名無しさん@転載は禁止:2017/10/07(土) 05:04:12 ID:fuOkUTt6
疲労が溜まってきていることでその速度は本来の半分以下。凛のスピードを体感した海未にはスローモーションに見える程である。

海未は持ち前の見切りの鋭さを用いて、穂乃果のオーラの流れを観察した。

海未「……」

穂乃果(右ストレートでぶっとばすまっすぐ行ってぶっとばす右ストレートでぶっとばすまっすぐ行ってぶっとばす右ストレートでぶっとばすまっすぐ行ってぶっとばす右ストレートでぶっとばすまっすぐ行ってぶっとばす)

143名無しさん@転載は禁止:2017/10/07(土) 05:05:04 ID:fuOkUTt6


穂乃果「まだ…… まだっ!」

穂乃果が海未に向かって駆ける。



海未(……これほどまでに分かりやすいオーラの流れもありませんね。次の行動を全て正確に教えてくれています)

穂乃果「おりゃぁ!」

海未「ふっ!」

見切った通りに飛んできた右のストレートを軽くいなし、カウンターを見舞う。

穂乃果「うぐっ!」

穂乃果の体が数メートル吹っ飛び、地面を転がった。

穂乃果「く……はぁ……はぁ……」

海未「穂乃果、いい加減能力を使ったらどうですか」

144名無しさん@転載は禁止:2017/10/07(土) 05:05:53 ID:fuOkUTt6


穂乃果「!」

海未「まさか単なる肉弾戦で私に勝てると思っている訳でもないでしょう」

海未「そのまま能力を使わないつもりなら、次の一撃で決めさせてもらいますよ」ズッ…

穂乃果(ふふ、勝てると思ってる……訳ないじゃん!)

穂乃果(使いたくても、使えないんだよ……!)

145名無しさん@転載は禁止:2017/10/07(土) 05:07:16 ID:fuOkUTt6


高坂穂乃果は強化系の念能力者である。

能力名は『天運(ドリームセンセーション』。

自身の『運』を強化する非常に強力な能力である。

道でお金を拾うといった小さな幸運から、果ては天候にさえもその力は及ぶ。

その強大な力の代償は、念の精度が下がるという大きなデメリット。

更に、この能力は自分では発動のタイミングを選ぶことが出来ない。

使いやすさを捨て、能力の強さを優先させた結果、このような歪な能力が生まれたのであった。

……と、本人は思いこんでいる

146名無しさん@転載は禁止:2017/10/07(土) 05:08:15 ID:fuOkUTt6


穂乃果(あわよくば『天運(ドリームセンセーション)』で決めたかったんだけど、現実は厳しいか)

穂乃果「……やっぱり、このままじゃダメか」

海未「?」

穂乃果は口元に笑みを浮かべると、制服の袖を捲り上げた。

その両手首には赤いリストバンド。

それらが外されると、穂乃果の両手を繋ぐように迸る錠(オーラ)が露になった。

147名無しさん@転載は禁止:2017/10/07(土) 05:08:59 ID:fuOkUTt6


海未「……呆れた人ですね。ハンデをつけて闘っていたのですか」

穂乃果「ははは、切り札は最後まで見せないものでしょ?」

穂乃果(外すよ……お母さん)

穂乃果の脳裏に数ヶ月前の出来事が思い浮かんだ。

148名無しさん@転載は禁止:2017/10/07(土) 05:10:06 ID:fuOkUTt6



――


ほのパパ「……」ズズズズズズ…

ォォォォォォ……


『黙して語らず(サイレント・ファーザー)』



ズシッ…!
穂乃果「うっ!?」

穂乃果「な、何これ!? 何か重!」

ほのママ「『黙して語らず(サイレント・ファーザー)』、お父さんの能力よ。重く感じるのは当然よ、その錠の中に穂乃果、あんたの能力が封じ込めてあるんだから」

149名無しさん@転載は禁止:2017/10/07(土) 05:10:55 ID:fuOkUTt6


穂乃果「私の能力が?」

ほのママ「そう、お父さんの能力は相手の念能力を沈黙させる(封じ込める)。あんたはそれを解錠しない限りその中の念能力は使えないわ」

穂乃果「えー!? 」

ほのママ「解除するには、絶対負けてたまるかと思った時に解号を言う必要があるわ」

穂乃果「ていうか意味わかんないんだけど! なんでいきなりこんなのつけさせられなきゃいけないの!?」

ほのママ「修行よ。解号は教えといてあげるから、頑張んなさい」

ほのパパ「……」

穂乃果「もー! お母さん!」

150名無しさん@転載は禁止:2017/10/07(土) 05:14:43 ID:fuOkUTt6

ほのママ(能力を封じ込まれた状態で過ごすことは穂乃果にとって大きな足枷になる)

ほのママ(そしてその足枷(フラストレーション)は穂乃果の底力を飛躍的に向上させるでしょう)

ほのママ(……強くなるのよ、穂乃果)

『天運(ドリームセンセーション)』を穂乃果に教えたのはほのママであり、穂乃果はそれが修行のための方便であることに気づいてはいなかった。

151名無しさん@転載は禁止:2017/10/07(土) 05:17:38 ID:fuOkUTt6

――


海未「あなたの本気(百パーセント)、見せてください穂乃果」

海未「そのすべてを受け止めて、私が勝ちます!」

穂乃果「……」フゥゥゥゥ…





穂乃果「……開(アンコ)!」

152名無しさん@転載は禁止:2017/10/07(土) 05:18:54 ID:fuOkUTt6
今回はここまで

書きたいシーンが尽きるまで続きます

153名無しさん@転載は禁止:2017/10/07(土) 09:21:02 ID:yVtWbfhY
タイトル見て思い出したわ
1年以上ぶりだよな

154名無しさん@転載は禁止:2017/10/08(日) 14:16:11 ID:DKXRaYs6
まさかの幽白

155名無しさん@転載は禁止:2017/10/08(日) 15:19:45 ID:YWTbol8o
本来アンテなのがなんでアンコなのかわかんなかったけど和菓子屋だからか 草生えたわ

156名無しさん@転載は禁止:2017/10/29(日) 16:44:41 ID:SBmqa2wg
続きはよ

157名無しさん@転載は禁止:2017/10/29(日) 17:01:05 ID:pllUsGjk
パシュッ!

キィィィィィィィィィ…!

海未「む……!」

海未(穂乃果のオーラが一段と研ぎ澄まされていく……!)

海未(ゾクゾクきますね、いい感じです)ニッ

穂乃果「フゥゥゥゥ…」

穂乃果「ファイトだよっ!」ダッ

先刻と全く同じ攻撃(突進)。

海未ならば赤子の手を捻るように受け流すことが出来る。




つい先刻(さっき)まで――

158名無しさん@転載は禁止:2017/10/29(日) 17:02:07 ID:pllUsGjk


穂乃果「おおおぉぉぉぉ!」

ギュオッ!

海未「!(速い……!)」

海未「くっ!」バッ

穂乃果「っとと…」

海未(紙一重……さっきまでとは動きのキレが違う)

海未(やはりあのリストバンドを外したことで何らかの能力が発動したと考えるのが妥当、何故今の今まで隠していたのかは知りませんが、オーラの急激な増加と身体能力の向上から考えて……)

驚いたのはほんの一瞬。

海未の頭の中で今までの戦闘経験と現在の状況が照らし合わされていく。

159名無しさん@転載は禁止:2017/10/29(日) 19:19:40 ID:pllUsGjk


海未(十中八九穂乃果は強化系の能力者! それも……)

穂乃果「ファイト……だよっ!」ダンッ!

海未(かなり……強い!)



『黙して語らず(サイレント・ファーザー)』が解かれたことで発動した穂乃果の能力――

その名は『戦闘応援歌(ファイトクラブ)』

己に対する声援が力に変わる(※晴れの日しか発動しない)。

他人に対して使うサポートタイプの能力に思えるが、穂乃果は専ら自分の強化にこの能力を用いる。

それが可能になるのも使い手の性格故。

160名無しさん@転載は禁止:2017/10/29(日) 19:22:40 ID:pllUsGjk

そう、穂乃果は――

穂乃果(思い出せる……私の頭の中に、皆の声が響いてる!)


『穂乃果ー、頑張れー!』

『ファイトー!』

『頑張れ頑張れ気持ちの問題だもっと熱くなれよお前!』


穂乃果(皆の声が聴こえる限り、いくらでも頑張れる!)

貰った声援を決して忘れない――!

161名無しさん@転載は禁止:2017/10/29(日) 19:25:01 ID:pllUsGjk



穂乃果「はぁぁぁぁぁっ!」ボッ

海未「くっ……!」

海未(受けきれない…穂乃果から止めどなく溢れるオーラ、どんどん強くなっていく……!)

海未(これ以上戦闘が長引けば負けるのは、私の方ですね……)

海未(……あなたにだけは、もう使いたくありませんでしたが)

海未(穂乃果、私は……あなたに負けたくない!)

現状を冷静に分析し、最良の手を打ち続けてきた海未の手が止まりかける。

しかし、すぐに考えを改め、海未は穂乃果を真っ直ぐに見据えた。

162名無しさん@転載は禁止:2017/10/29(日) 19:25:55 ID:pllUsGjk


海未「穂乃果、次で最後です」

海未「あの時とは違う、私の全力をぶつけます!」

穂乃果「そうこなくっちゃ」

穂乃果「本気の海未ちゃんに勝った後のパンだからこそ、美味しいんだよ……!」ズォォォォ!


ダンッ!


走り出した両者のシルエットが交錯する。

穂乃果の『戦闘応援歌(ファイトクラブ)』

そして海未の……

163名無しさん@転載は禁止:2017/10/29(日) 19:27:03 ID:pllUsGjk



持ち前の身体能力と併せて、放つと同時に手のオーラを爆発(放出)させることで驚異的な速度を生み出す――


海未(『超音速平手(ラピッドインパクト)』!!)


ガッ……!



穂乃果「……」

海未「……」

互いの全力をぶつけ合い闘い抜いた二人。

その口元には笑みが浮かんでいた。

穂乃果「……」

海未「……」フッ……

海未「穂乃果」

海未「あなたの勝ちです」

164名無しさん@転載は禁止:2017/10/29(日) 19:27:51 ID:pllUsGjk


海未の体が静かに傾き、倒れた。

穂乃果「前に一回貰っておいて良かったよ」

実力的にはほぼ互角。


両者の勝敗を分かつ原因となったのは


穂乃果「海未ちゃんのビンタが痛いって1番よく知ってるのは、私だからね」

165名無しさん@転載は禁止:2017/10/29(日) 19:28:42 ID:pllUsGjk
今回はここまで

166!ken:99:2017/10/30(月) 07:49:49 ID:r03yGw1Q
松岡修造に応援されててワロタ

167名無しさん@転載は禁止:2017/12/08(金) 17:18:15 ID:AIjWn5tc
まだか

168名無しさん@転載は禁止:2018/01/15(月) 21:02:04 ID:rl0Kyk/g
冨樫ったか…


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