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海未「もうすっかり癖になりました。音を殺して歩くのが」

1名無しさん@転載は禁止:2017/09/27(水) 19:14:43 ID:UKYbIIWQ
――理事長室


穂乃果「勝負、ですか?」

理事長「ええ。皆μ'sには戦って欲しいと思っているの」

理事長「今やスクールアイドルのトップに立ったμ's。その実力の程を知りたい、とね」

ことり「お母さん、唐突すぎるよぉ…」

理事長「もちろん勝者には景品を出すわ。私が、望むことなんでも叶えてあげる」


ザワッ……!

2名無しさん@転載は禁止:2017/09/27(水) 19:15:18 ID:UKYbIIWQ
海未「な…」

絵里「なんでも……?」

花陽「そ、それは本当ですか!?」

理事長「嘘はつかないわ」

真姫「……勝負の方法は?」

理事長「24時間。24時間の間にこの割符を奪い合いなさい」ジャラ…

にこ「『LOVELIVE!』の九枚の割符ね」

理事長「最後に持っていた割符が一番多かった者が勝者よ」

凛「……」グッ、グッ

希(凛ちゃんは既に臨戦態勢か…)

理事長「乗る人は割符を手に取りなさい。取ったその瞬間から勝負が始まるわ」



ザッ……!



理事長「……全員参加、のようね」

理事長「さぁ、割符を手に取りなさい!」



スッ……!

3名無しさん@転載は禁止:2017/09/27(水) 19:15:54 ID:UKYbIIWQ
―刹那


凛「シャッ!」


凛の拳が希の顔面を狙い、うなる。オーラを拳に集中させた凛の一撃をくらえばひとたまりもない。

凛が希を狙ったことに特別な意味はなかった。ただ『近くにいたから』という理由で、躊躇なく希を襲ったのだ。

希としては完全に不意を突かれた形……しかし


希「……」ヒョイ

凛(!? かわされた!?)

希「……」ニッ

凛「!!!」


ダダダダダダダッ

4名無しさん@転載は禁止:2017/09/27(水) 19:16:12 ID:UKYbIIWQ
希は難なく凛の攻撃をかわし、理事長室を後にした。

凛は希を追わなかった。否、追えなかった。

確実に決まったと思った一撃をかわし、笑みを浮かべた希。

凛はふつふつと湧きあがる怒りを抑えるだけで精一杯だった。

5名無しさん@転載は禁止:2017/09/27(水) 19:16:31 ID:UKYbIIWQ
――空き教室


ガラガラガラ…


希「……ふぅ、危なかったぁ」

希(分かってたとはいえ、やっぱり凛ちゃんは危険やな)

希(恐らく強化系……それもかなりの素質持ちや。元々の身体能力と相まって、厄介この上ないやん)

ガラッ

希「!」ザッ

にこ「おっと、ストップ。待ちなさいよ希」

希「にこっち」

にこ「あんたの割符を奪おうってわけじゃないわ。ここは一つお互い協力しようと思ってね」

希「協力?」

にこ「そうよ。ぶっちゃけあんたの能力じゃ一人で勝ち残るのは相当キツイでしょ? にこと組めば生き残る確率上がるわよ?」

希「! にこっち、知ってたんか、ウチの能力」


同じグループの仲間とはいえ、念能力者にとって自分の能力を誰かに知られるのはかなりの危険を伴う。

μ'sとてそれは例外ではなく、九人はお互いの能力をほとんど知らなかった。

6名無しさん@転載は禁止:2017/09/27(水) 19:16:46 ID:UKYbIIWQ
にこ「ま、なんとなくだけどね」

にこ「で、どう? 悪い提案じゃないと思うけど」

希「……」

希「まぁ、いいけど」

にこ「やりぃっ。よろしくね希」




にこ「じゃ、まずはお互いの能力を見せ合いましょう」

希「ん。ウチはこれやね」ズズズ…



『水晶の言葉(フォーチュン・テラー)』



希「タロットカードを使って近い未来を見通す能力や」

希「理事長室で凛ちゃんの攻撃をかわせたのは、この能力をあらかじめ発動していたからやん」

にこ「おっけー、次はわた――」

希「!!」


ガシャァァァァァァァァァァン!

7名無しさん@転載は禁止:2017/09/27(水) 19:16:59 ID:UKYbIIWQ
にこ「……な」

にこ「何が起こったの…いきなり窓ガラスが割れて……」

希「ぐ……フォーチュン・テラーで未来を見てなかったら…終わってるところやった…」

にこ「! 希!」

希「大丈夫…かすっただけや」

にこ「今のは……屋外からの攻撃ね!」


ビーーーン……


希「念の矢…か」

希「にこっち、ひとまずここをでよう」

にこ「え、ええ」

8名無しさん@転載は禁止:2017/09/27(水) 19:17:17 ID:UKYbIIWQ
――どこかの建物の屋上


海未「……ちっ、外しましたか」

海未「私の『愛と欲望と憎しみの矢(ラブアローシュート)』をかわすとは…たいしたものです」

海未「まぁ……いいでしょう。24時間あるんです、じっくりと行かせてもらいますよ…」フフ…

9名無しさん@転載は禁止:2017/09/27(水) 19:17:57 ID:UKYbIIWQ
希に攻撃をかわされたショックから立ち直った凛は、理事長室を後にした。

他のメンバーも勝負が始まると同時に散り散りになり、既に理事長室に残っていたのは凛だけだった。

凛(さて、と。どうするかにゃ〜)

凛(サーチアンドデストロイでメンバーを屠っていけば24時間待つ必要もなく凛の勝ちだけど…さっきの希ちゃんの例があるからなぁ)

凛は強化系能力者として自分が類まれなる才能をもっていることを自覚していた。

それゆえ、さきほど希を一撃で仕留められなかった事実は凛を慎重にさせる。

凛(う〜〜〜ん……)


そして、最悪のタイミングで最悪の相手は現れた。


ことり「凛ちゃん♪」


凛「!!」

10名無しさん@転載は禁止:2017/09/27(水) 19:18:12 ID:UKYbIIWQ
――保健室


凛「……」

ことり「そんなに怖い顔しないでよ〜。私は凛ちゃんと一緒に頑張っていこうって提案してるだけだよ?」

理事長室での一件がなければ、凛は先手必勝でことりを屠っていたことだろう。

そのうえ、ことりの得体の知れないオーラが凛に二の足を踏ませてしまった。

ことり「はい、お茶入ったよ」コトッ

凛「……いらないにゃ」

ことり「も〜、つれないなぁ」

ことり「これから一緒に勝利を目指すんだからさ。もっと愛想よくいこうよ〜」

凛「なにが狙いなの?」

ことり「狙いなんて何もないよ?」ニコッ

凛「……」

11名無しさん@転載は禁止:2017/09/27(水) 19:18:31 ID:UKYbIIWQ
凛はことりを襲うか決めかねていた。

見たところ完全に隙だらけ。凛の実力をもってすれば簡単に戦闘不能に追いやることは可能。

だがしかし――凛は致命的なミスを犯していた。


凛(……?)

凛(なんだろう、これ……甘い、香りが…)

ことり「ほらほら、チーズケーキも用意したんだよ? 一緒に食べようよ〜」

凛「い、いら…な…」

凛(頭が……ぼーっと、して…)

ことり「……」ニヤリ



ガクッ…



ことり「ダメだなぁ凛ちゃんは。顔を突き合わせた時から既に勝負は始まってるんだよ?」クスクス

12名無しさん@転載は禁止:2017/09/27(水) 19:19:01 ID:UKYbIIWQ
――部室



花陽「ガツガツ! グァフグァフ!!」

白米を炊いたことによる湯気と熱気がこもる部室の中、小泉花陽は一心不乱にコメを食べ続けていた。

花陽「ムシャムシャムシャ! ゴグン!」

炊飯器の数は五つ。食べ終わっては炊き、食べ終わっては炊く。既に何度これを繰り返したのだろうか。

花陽(いける……今日は…イケル!!)

花陽は操作系能力者である。

μ'sの中で、自分が一番念の才能がないことをすぐに思い知った花陽は、それを補うために重すぎる制約を課した。



コメ……十キロ。

13名無しさん@転載は禁止:2017/09/27(水) 19:19:36 ID:UKYbIIWQ
能力を発動するために必要な米の摂取量がそれである。

食べ始めから食べ終わるまでのプロセスを能力発動の準備段階とし、自身にそれを強制。

十キロ食べ終わるまでは『絶』の状態となり、自分の意思で食べるのをやめることは出来ない。

もし途中で発動を解けば、一か月米が食べられなくなるというペナルティがついている。

その代わりに――食べきることができれば莫大なオーラを手にし、目的を遂行するまで倒れることのないバーサーカーと化す。

この上なく大きな覚悟が、花陽の能力の強さを底上げしたのだった。



花陽(これが私の能力『米米米米米米米米(コメコメパラダイス)』!! 勝ち残ってお米をありったけ食べさせてもらいます!!)ムシャムシャムシャムシャムシャムシャ

14名無しさん@転載は禁止:2017/09/27(水) 19:20:12 ID:UKYbIIWQ
ガラッ


花陽「!?」ムシャムシャムシャ

真姫「! 花陽」

花陽(な……真姫ちゃん!? まずい…今はオーラを出せない!)ムシャムシャムシャ

真姫「誰かいるかと思ったら、こんな時までお米なのね…」

花陽(あと…あと少しなのに! あとほんの一キロ程度で能力が発動できるのに!)ムシャムシャムシャ

真姫(……なぜ臨戦態勢に入らないの? それどころか僅かなオーラすら纏っていない…?)

花陽(ぐっ……! ここで能力を解除したら一か月お米が食べられない…! 解除は出来ない!)ムシャムシャムシャ

真姫(もしや――これはなにかしらの制約?……なら、今が絶好のチャンスってわけね)





花陽が全くオーラを出さないことを悟った真姫は、ゆっくりと花陽に近づく。

15名無しさん@転載は禁止:2017/09/27(水) 19:20:33 ID:UKYbIIWQ
花陽(くぅっ! もう……ここまでなの!?)ムシャムシャムシャ

真姫「悪いわね、花陽。私も、勝って叶えたい願いがあるのよ」

真姫は花陽の背後に立つと、オーラを右手に集中させた。


だが――


花陽「……?」ムシャムシャムシャ

花陽(攻撃、してこない?)ムシャムシャムシャ

真姫の右手は振り上げられたままで止まってしまっていた。

真姫「……っ!」

相手が凛ならば真姫は躊躇なく右手を振り下ろしただろう。

しかし、目の前にいるのは花陽。高校に入って初めて出来た大切な友達で、小動物のような雰囲気を醸し出す、真姫にとっては妹のような存在だった。

気絶させるだけとはいえ、手刀を振るえるはずがなかった。

16名無しさん@転載は禁止:2017/09/27(水) 19:20:51 ID:UKYbIIWQ
真姫(そう……そうよ。勝利の条件は割符を多く持っていること)

真姫(気絶させる必要なんか、どこにもないじゃない)

真姫は右手を下し、花陽の制服のポケットをまさぐった。

花陽(真姫ちゃん……)ムシャムシャムシャ

真姫「ごめんね、花陽……」

ぽつりとそう呟くと、花陽の持っていた『L』の割符を手に、真姫は部室を後にした。

17名無しさん@転載は禁止:2017/09/27(水) 19:21:05 ID:UKYbIIWQ
そして真姫が去った数分後、花陽の咆哮が校舎内に響き渡った。

18名無しさん@転載は禁止:2017/09/27(水) 19:21:27 ID:UKYbIIWQ
――生徒会室



穂乃果「……」

絵里「……」



無言で向かい合う二人。新旧の生徒会長の瞳にはお互いの姿が映り込む。



穂乃果「えへへ、こうしてると絵里ちゃんがμ'sに入る前を思い出すね」

絵里「ふふ、そうね。あの頃は私がスクールアイドルをやるなんて夢にも思わなかったわ」

19名無しさん@転載は禁止:2017/09/27(水) 19:21:47 ID:UKYbIIWQ
穂乃果が笑いかけ、絵里がそれに応える。

和やかに談笑しているようにも見えるが、その実、互いに仕掛けるタイミングをうかがっているのだった。

相手のオーラの僅かな揺らぎ、まばたきすれば見逃してしまう程の小さな隙。

さき程から会話をしつつもそれを探す二人だったが、一向にその機会は訪れない。



穂乃果(さすがは絵里ちゃん……つけ入る隙を与えてくれないね)

絵里(埒が明かない……けど、相手は穂乃果。焦れば勝負は一瞬でついてしまう)




こう着状態の中、闘いの火ぶたは意外な形で落とされた。

20名無しさん@転載は禁止:2017/09/27(水) 19:22:08 ID:UKYbIIWQ
ピャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ……!!!



能力を発動し、暴走状態となった花陽の雄叫び。

それに合わせて生徒会室の緊張が解かれ、穂乃果と絵里の姿が消える。

吹き飛ぶ机、宙に舞うプリント、遅れて聞こえてくる轟音。

窓ガラスは割れ、壁に巨大な亀裂が走り、天井の照明が落ちる。

生徒会室は本来の役割を忘れ、修羅の踊り狂う戦場へと変わった。

21名無しさん@転載は禁止:2017/09/27(水) 19:22:32 ID:UKYbIIWQ
ザッ……!



穂乃果「……ふぅ〜、さっすが。一筋縄じゃいかないね」

絵里「能力も使わずに私に勝てるなんて思ってるわけじゃないでしょ?」クスッ

穂乃果「それは絵里ちゃんもでしょ」

絵里「だってまだ使う必要があるとは思えないもの」

穂乃果「言ってくれる、ね!」ダンッ



穂乃果が再び絵里の元へ駈け出した時――



ビシッ……



生徒会室の床が、不穏な音を立てた。

22名無しさん@転載は禁止:2017/09/27(水) 19:22:48 ID:UKYbIIWQ
――理事長室


理事長「……」


ゴォッ…… ガシャァァァァン…… ピャァァァァァァァァァ……


床から小刻みに伝わってくる振動。響き渡る異音。



天井から落ちてくるホコリを眺めながら、理事長は考える。



理事長(彼女たちがここまでとは…24時間もいらなかったかもしれないわね……)

理事長(下手をすれば数時間――下校時刻までに勝負は決まる……!)



理事長(……)ウズッ…

23名無しさん@転載は禁止:2017/09/27(水) 19:23:10 ID:UKYbIIWQ
――保健室


ピャァァァァァァァァァァァァァァァ……!


ことり「なんだか外が随分騒がしいなぁ」

凛「……ん」

ことり「あ、凛ちゃん。起きた?」

凛「あれ……凛、どうして保健室にいるんだっけ?」ボーッ

ことり「えーっと、貧血で倒れたんだよー。そうだよね?」

凛「あ、そうだった。すっかり忘れてたにゃー♡」

ことり「凛ちゃん、お手」

凛「にゃー♡」ポン

ことり(ふふふ、いい感じに回ってるみたい)

ことり(私の『脳内麻薬(チュンチュントリッパー)』♡)

24名無しさん@転載は禁止:2017/09/27(水) 19:23:27 ID:UKYbIIWQ
南ことりは変化系能力者である。

『脳内麻薬(チュンチュントリッパー)』はまず自身のオーラを、相手を魅了するフェロモンに変化させる。

そして声に乗せてそのオーラ(フェロモン)を放出し、耳から相手の脳内へ侵入。

長時間ことりの声を聴いた者を操作し支配下に置く、恐ろしい能力なのだ。

ただし、完全に支配下におくには長い時間を必要とし、定期的に声を聴かせなければ洗脳が解けてしまう。

そのうえ、ことり自身はほぼ戦闘能力を持たないと言っていい。

凛が問答無用で襲いかかっていれば、ことりはなすすべなく倒されていただろう。

凛が最初に希を狙ったのは、ことりにとっては僥倖という他ない。

25名無しさん@転載は禁止:2017/09/27(水) 19:23:42 ID:UKYbIIWQ
ことり「さーて、そろそろ行こうか凛ちゃん」

凛「うん♡」

ことり「あ、その前に〜……凛ちゃんの能力ってなぁに?」

凛「強化系は技を持たなくても、修行を続ければそれが必殺技になるって聞いたから、特別な技はないにゃ♡」

凛「ただ、凛はこのスタイルを『天衣無縫の型(凛ちゃんスタイル)』と名付けているよ♡」

ことり「そっか〜。いい子いい子」ナデナデ

凛「えへへへ♡」




ガラッ

26名無しさん@転載は禁止:2017/09/27(水) 19:24:04 ID:UKYbIIWQ
にこ「! 希。ことりが出てきたわよ」コソコソ

希「うん。…って、凛ちゃんも一緒かい!?」コソコソ

にこ「どうも様子がおかしいわね……ことりの能力かしら?」

希「あんまり強くなさそうなことりちゃんから、って思ったのに…凛ちゃんが一緒じゃ厳しいで」

にこ「そうね。多分戦闘能力だけならμ'sでトップでしょ?」

希「んー、どうするにこっち?」

にこ「……しょうがないわねー。私がこっそりついて行って隙を探るわ」



にこ「にっこにっこにー! あなたのハートににこにこにー! 笑顔届ける矢澤にこにこー! にこにーって覚えてラブにこっ!」


ボワン!


モブ女生徒「よっし、行ってくるわ」コソコソ

希「気をつけてな〜」

27名無しさん@転載は禁止:2017/09/27(水) 19:25:47 ID:UKYbIIWQ
モブ女生徒「……」スタスタスタ

ことり「凛ちゃん、よしよし」ワシャワシャ

凛「ふにゃぁ〜ん♡」

ことり「ふふ、最初に会うのは誰かな〜?」


モブ女生徒(凛がことりのしもべみたいになってるわね。条件は分からないけど、操作系の能力かしら?)


ことり「ん?」クルッ

モブ女生徒「!!」

ことり「……」ジッ

モブ女生徒「……」ペコリ

モブ女生徒(だ、大丈夫…落ち着きなさい! にこの『怪人二十五面相(プリティ♡にこにー)』を見破れる者などいないわ!)

モブ女生徒(ここで引きつった顔をすれば目ざといことりには絶対にばれる! その辺を歩いてるモブキャラを演じるのよ!)

28名無しさん@転載は禁止:2017/09/27(水) 19:26:03 ID:UKYbIIWQ
ことり「……」ニコッ

ことり「……」フリフリ

モブ女生徒(!)フリフリ

ことり「……うーん、誰とも会わないねぇ凛ちゃん」

凛「にゃー♡」

モブ女生徒(……ふぅ、良かった。ばれてないっぽいわね)

29名無しさん@転載は禁止:2017/09/27(水) 19:26:23 ID:UKYbIIWQ
矢澤にこは特質系の能力者である。

その能力、『怪人二十五面相(プリティ♡にこにー)』は他者への変身を可能とする。

変身の制限時間は三十分、一度成功すれば肉親にもそれを見破ることは出来ない。

非常に便利な能力に思えるが、能力発動のためには以下の五つの条件を全てクリアする必要がある。



1.変身する対象に『にっこにっこにー』を25回以上やらせる

2.変身する対象に自分のことをほめさせる

3.変身する対象の私物を一つ奪う

4.変身する対象をどつく

5.変身前に『にっこにっこにー! あなたのハートににこにこにー! 笑顔届ける矢澤にこにこー! にこにーって覚えてラブにこっ!』と言う



ちなみにμ'sのメンバー全員に対して既に4番目までの条件を達成している。

30名無しさん@転載は禁止:2017/09/27(水) 19:26:40 ID:UKYbIIWQ
モブ女生徒(あとはタイミングを見計らってことりに近づき、隙だらけのところを襲う!)



戦闘能力で他のメンバーに劣る希とにこがうちだした戦略は至極単純であった。


『逃げ続けること』


勝利条件は24時間後の割符の枚数。無理に戦闘をする必要はない。

にこの能力で不意を突き割符を奪い、希の能力で危険を察知し避ける。

お互いが三枚の割符を手にすれば、少なくとも負けることはない。



モブ女生徒(勝負に勝つってのは、勝負に負けないこと。どんな手を使っても勝ち残って、妹達に美味しいもの食べさせてあげるんだから!)グッ


にこが決意を心に刻んだその時、それは再びやってきた。

31名無しさん@転載は禁止:2017/09/27(水) 19:27:05 ID:UKYbIIWQ
ガシャァァァァァァン!


突然廊下の窓ガラスが割れ、破片が辺りに飛び散る。

ことり「……わぁ〜、ビックリした。ありがとう、凛ちゃん」

凛「えへへ、どういたしまして♡」

モブ女生徒(なっ……あれを止めたっての!?)


にこの目に映るのはことりに向かって飛んできたらしい念の矢を、すんでのところで止めた凛だった。


凛(恐ろしく速い一撃。凛じゃなきゃ見逃しちゃうね)

ことり(これは――海未ちゃんかな。凛ちゃんは私の傍にいて欲しいところだけど……しょうがないか。遠くから狙われたらどうしようもないし)

32名無しさん@転載は禁止:2017/09/27(水) 19:27:25 ID:UKYbIIWQ
ことり「ねぇ凛ちゃん」

凛「なぁに?♡」

ことり「ことりを狙った悪い子を、懲らしめてきてくれる? 出来るだけ早くね」

凛「了解にゃー♡」

言うが早いか、凛は四足獣のように体を丸め、両手両足を地面に踏ん張った。

大腿筋がビキビキと音を立てて膨れ上がり、眼光は獣のように鋭さを増す。



凛「せーの」


トッ、と音がしたかと思うと、凛の姿は消えていた。

33名無しさん@転載は禁止:2017/09/27(水) 19:27:43 ID:UKYbIIWQ
――どこかの建物の屋上


ヒュンッ……!


海未「!!!!」


ザシュッ!


海未「ぐっ!」

凛「ありゃ、とったと思ったんだけどにゃ〜」

海未「……」ポタポタ…

海未(数瞬気づくのが遅ければ、右腕を持っていかれてましたね…)

凛「ことりちゃんに言われたとおり、海未ちゃんを懲らしめてやるにゃ。覚悟してね?」

海未「……ふふ、ようやく元気な獲物が釣れました」

34名無しさん@転載は禁止:2017/09/27(水) 19:28:02 ID:UKYbIIWQ
ことり「さ〜て、と」

モブ女生徒(!! 凛がことりから離れた…! 今が千載一遇の好機!)

モブ女生徒「だ、大丈夫ですか!?」タタタッ

ことり「あ、さっきの…うん。大丈夫」

モブ女生徒「怪我とかしてないですか?」

ことり「大丈夫だよ〜。……痛っ」

モブ女生徒「やっぱりどこか怪我したんじゃないですか? ちょっと見せてください」

ことり「うん。じゃあお願いしようかな〜」

モブ女生徒(ことりを、とる!!)

35名無しさん@転載は禁止:2017/09/27(水) 19:28:20 ID:UKYbIIWQ
能力を駆使し、ことりを狙うにこ。



希(にこっち……!)


物陰から気配を消して二人を見守る、希。



そして――



真姫「……」ジッ…

36名無しさん@転載は禁止:2017/09/27(水) 19:28:40 ID:UKYbIIWQ
――生徒会室


花陽「ピャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」


生徒会室の床を破壊して現れたのは、自身の能力の操り人形となった花陽だった。

普段のようにやさしげな微笑をうかべる彼女の面影はそこにはなく、ギラギラした光を目から放っている。

その一撃の威力は凄まじく、一階と二階の境目が消え、穂乃果と絵里は宙に放り出されてしまった。

絵里(や……)

穂乃果(やばい……!!)

37名無しさん@転載は禁止:2017/09/27(水) 19:29:03 ID:UKYbIIWQ
花陽「パナァァァァァァァアアアァァ!!」

花陽の最初の狙いは穂乃果だった。

握り固めた右こぶしを打ち込まんと、両者の間合いが一瞬で詰まる。

しかし、二人の間に生徒会室にあった長机が落ちてきた。

花陽「ぴゃあぁあぁぁあぁぁぁああ!!」

穂乃果「……!!!」

それにもかまわず打ち込まれた花陽の拳は、長机を突き破り、穂乃果に命中する。

穂乃果(!!!!……お……!!!)


ドギャァァァァァァァ!!


穂乃果は吹き飛ばされ、隣の部屋の壁を突き抜けて見えなくなった。




その数秒後、どこかに何かが激突する音が響いた。

38名無しさん@転載は禁止:2017/09/27(水) 19:29:19 ID:UKYbIIWQ
トッ……

絵里「……」

花陽「ぱなぁぁぁぁぁぁぁ……!」

構造が吹き抜けに変えられた教室に二人は降り立った。



絵里(これが花陽の念能力……ね)



絵里(正直、勝負とはいえ花陽を傷つけるのは抵抗がある……なんて思っていたけれど)



花陽「ぴぁぁぁああぁぁぁぁぁぁぁ!!」


絵里「躊躇していたら、こっちが食われるわね……!」ズッ……!

39名無しさん@転載は禁止:2017/09/27(水) 19:29:52 ID:UKYbIIWQ
――どこかの建物の屋上

凛「獲物……?」

海未「いかにも。待っていましたよ、あなたのような者が近づいてくるのを」

凛「遠くから矢で狙い撃ちしてた割には、大口をたたくね海未ちゃん」


海未は十中八九放出系の能力者だと凛は当たりをつけていた。

それもそのはず、ここから音ノ木坂学院までの距離は約300メートル。体から離したオーラを維持することに長けた放出系でなければ、先ほどの狙撃は不可能。

そして、そこから導きだされる一つの仮説――


凛(恐らく海未ちゃんは――接近戦が苦手!)

40名無しさん@転載は禁止:2017/09/27(水) 19:30:20 ID:UKYbIIWQ
勝負が始まるとすぐに学院から離れ、この建物の屋上まで来た海未。

そこからの正確無比な遠距離狙撃。

あれだけの精度の射撃を行うためには、必ずある程度の『溜め』の時間が存在するはず。

距離を詰められることを何より恐れているだ、と。

凛は頭の中でこの理論を組み立てたわけではない。持ち前の直感で『何となく』そう思ったに過ぎなかった。

海未「……なるほど。あなたはこう考えているのですか? これだけ離れた場所から攻撃をするような私が、近接戦闘で強いはずがない、と」

海未は口元に微笑を浮かべた。

まるで『全て分かっていますよ』とでも言いたげに。

海未「もしあなたにそう思われているのだとしたら、少々心外です」

海未「『愛と欲望と憎しみの矢(ラブアローシュート)』による狙撃など、前菜に過ぎませんよ」

41名無しさん@転載は禁止:2017/09/27(水) 19:30:50 ID:UKYbIIWQ
凛の見立て通り、園田海未は放出系能力者である。

能力名は『愛と欲望と憎しみの矢(ラブアローシュート)』。オーラを矢の形に変化させ打ち出す狙撃能力。

発射する際は弓道の一連の型をとる必要があり、射出までに時間がかかるのが難点だが、『溜め』にかける時間によっては1キロ先の目標をも射抜く。

矢には海未が普段から心の内に秘めた愛と欲望と憎しみが込められ、命中してしまった者はそのいずれかの感情が爆発する。

能力の性質上、相手が自分の姿を確認している場合は命中させることが難しく、不意打ちに特化した能力と言える。

42名無しさん@転載は禁止:2017/09/27(水) 19:31:24 ID:UKYbIIWQ
凛「前菜……?」

海未「ええ。これをかわせない程度の腕なら、本気で戦うに値しない。それを見分けるための遠距離狙撃です」

海未「もし矢をかわし私までたどり着くことができれば、そこでようやく『死合い(メインディッシュ)』に変わるわけです」

海未の言葉の真意を凛は測りかねていた。

単なる強がりなのか、はたまた――

凛「……ま、いいや」

凛「どっちにしろことりちゃんに急いで片づけてくるように言われてるし、さっさと始めるにゃー」

海未「ええ、身を以て体感してください」

海未「私の言葉が、ハッタリかどうかを」ニコッ

凛「……」トンッ!



『天衣無縫の型(凛ちゃんスタイル)!!』



ズギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャ!!

43名無しさん@転載は禁止:2017/09/27(水) 19:31:51 ID:UKYbIIWQ
電光石火。

そう呼ぶにふさわしい疾さ、迫力。

常人の目には海未の周囲のみ台風が巻き起こっているようにしか見えないだろう。

持ち前の運動能力(バネ)と強化系能力者としての天性の素質(センス)。

それらが噛み合わさり驚異的なスピードを生み出される。

四方八方から繰り出される目にも止まらぬ連続攻撃。

そのうえ、一撃一撃が必殺の威力を持つ。

並みの能力者ならば、何をされたか分からないまま沈んでいたことだろう。

だが――園田海未は並の能力者とは程遠かった。


海未「……」


ババババババババババババ!

44名無しさん@転載は禁止:2017/09/27(水) 19:32:10 ID:UKYbIIWQ
凛「……!?」


凛の猛攻を紙一重でかわし、絶妙なタイミングでいなす。

暴風にさらされても折れることなくしなる林のごとく、凛の攻撃を捌き続ける。

凛(攻撃が――まるで当たらない…!!)

わずかな動揺が凛の攻撃の手を緩ませる――


海未「ふっ!!」


海未の掌底が凛をとらえ、凛は地面にたたきつけられる。


凛「ぐっ……はっ…!」

海未「すいませんね、凛。私はたしかに放出系能力者……しかし」


海未は極めて穏やかに凛を見下ろし、にっこりとほほ笑んだ。



海未「もっとも得意とするのは、己の拳を使った近接戦闘です」


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