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善子「Black Sheep」
1
:
名無しさん@転載は禁止
:2017/05/10(水) 01:37:40 ID:JFf8Mvsk
ああ、この手の人間か。
最初に思ったのはこんなことだった。
運動ができて勉強ができて、人付き合いも上手で友達もたくさん。
いわゆる典型的なリア充というやつで、それは私とは正反対の人種だった。
どうせ私のようなインドアで社交性のない人間とは馬が合わないのだろう。
そして得てして私のような人間はこのタイプの人間を嫌悪する。
こういう人のありかたが人間のあるべき姿だとわかっているし、この人自身とてもいい人だと思う。
でもだからこそ自分の人間としての不完全さが浮き彫りにされているような気分にもなった。
私みたいな社会に適合できない人間モドキとは住む世界が違うのだ。
だから私は、この人とはある程度仲良くはなれても、深い友好関係を築くことはないだろうと思った。
しかしこの人のそれは度を越していた。
607
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/26(月) 06:53:20 ID:yRivWmeM
千歌「ごめんね。どうしても梨子ちゃんの動きに合わせちゃって……」
曜「……そっか。私も合わせられるように頑張るよ」
善子「……」
果南「二人ともちょっと休憩。いったん落ち着こう」
千歌「はーい」
曜「うん」
果南「……」
善子「(梨子ちゃんの動きに合わせちゃって、か)」
善子「……」
608
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/26(月) 06:54:05 ID:yRivWmeM
善子「(……なによそれ)」
善子「(今あなたと踊っているのは曜さんなのに)」
善子「(梨子さんのことしか頭にないってワケ?)」
善子「(曜さんはあなたに合わせようと頑張っているのに……)」
善子「(……ゆるせない)」
609
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/26(月) 06:54:46 ID:yRivWmeM
果南「んー、どうしたもんかな……」
ダイヤ「ここまで合わないのは想定外ですわ……」
鞠莉「ちょっと考える必要があるわね」
花丸「どうしちゃったんだろ、心配ずらね」
ルビィ「うん……」
善子「……」
善子「果南さん」
果南「ん? どうしたの」
善子「ちょっと提案なんですけど」
果南「おっ、何か思いついたの? 聞かせてよ」
善子「あのね」
善子「この曲のセンター、私にやらせてほしいの」
610
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/26(月) 06:56:36 ID:yRivWmeM
果南「なっ……」
曜「えっ……」
千歌「ちょ、ちょっと待ってよ! それは……」
果南「そうだよ善子ちゃん。いくらなんでも急すぎる」
善子「でも、本番まで悠長に待ってられるの? いつまでたっても噛み合わないじゃない」
善子「いっそ組み合わせを変えた方がいいと思うんだけど」
ダイヤ「一理、ありますが……」
果南「そうは言っても……」
千歌「待って! 私、この曲は絶対にセンターをやりたい!」
千歌「踊れなくなった梨子ちゃんの分まで、せめて私が踊りたいの!」
善子「(梨子ちゃん梨子ちゃん。そればっかりね……)」
果南「それにそもそも善子ちゃんはこのパート踊れるの? たとえ変えるにしたって、できなきゃ意味がないよ」
善子「……じゃあ曜さん。試しにこのパート、私と合わせてみましょ」
曜「う、うん」
611
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/26(月) 06:56:57 ID:yRivWmeM
――
曜「……!」
ルビィ「すごい……」
花丸「本当に合ったずら……」
鞠莉「天界的合致、デース」
果南「タイミングバッチリだ……練習してたの?」
善子「ええ、まあ」
善子「(毎日見てるから、というのもあるけど、こっそりちょっと練習しただけなのにこうもぴったり合うとは)」
善子「(……いや、千歌さんが、合わなすぎるだけか)」
千歌「……っ」
善子「どう? 私なら曜さんに合わせられるでしょ? 今からでもポジションを変えれば……」
千歌「ま、待ってよ! 私、ここまでがんばってきたんだから、最後までやり遂げたいよ! こんなところで投げ出したくない!」
612
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/26(月) 06:57:11 ID:yRivWmeM
善子「……千歌さん、あなた梨子さんのことが気になるんでしょ?」
千歌「!」
善子「だからダンスにも集中できてないし、なにより曜さんと合わせられない」
善子「元々梨子さんとのダンスだから多少は仕方ないにしても、これだけ練習してるのに合わないなんておかしいわ」
千歌「……」
善子「東京に行った梨子さんが心配なのはもっともだけど、ダンスに影響が出てる以上センターは任せられない」
千歌「で、でも……!」
613
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/26(月) 06:57:30 ID:yRivWmeM
千歌「私、この曲踊りたい! 確かに曜ちゃんと合わせられなくて、今はできないかもしれないけど」
千歌「それでも! 私にとって大事な曲なの! 絶対間に合わせるから! だからもうちょっとだけ……」
善子「……ちょっと聞きたいんだけど千歌さん。あなたはどうしてそんなにこの曲のセンターにこだわるの?」
千歌「それは、さっきも言った通りだよ。梨子ちゃんの分まで私が頑張りたいって……」
曜「千歌ちゃん……」
善子「(イライラする)」
善子「(ダメだ、止められない……)」
善子「(気持ちが……怒りが……)」
善子「……さっきから梨子さんのことばっかりだけどね」
善子「今あなたの隣で踊ってるのは曜さんなんだけど?」
千歌「……っ!」
善子「曜さんはあなたに合わせようと必死で頑張ってる。なのにあなたは梨子さん梨子さんって……」
善子「曜さんの気持ちを少しでも考えたことがあるの!?」
614
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/26(月) 06:57:59 ID:yRivWmeM
善子「もっとはっきり言ってあげましょうか?」
善子「あなたは梨子さんとじゃないとこのダンスを合わせる気がないんでしょ?」
千歌「ち、ちが……」
果南「善子ちゃん!!! 言い過ぎだよ!」
善子「(どうしよう……止まらない)」
善子「当然よね。梨子さんのコンクール曲を元にした、大事な曲だものね。そりゃあ他の人とは合わせたくないわ」
千歌「……っ」
善子「(今まで押しとどめていた気持ちが、どんどん溢れてくる)」
善子「梨子さんと合わせられないんだから、もうセンターにこだわる理由はないでしょ?」
善子「(このまま全部、この気持ちが流れ出したら……)」
善子「私なら曜さんと合わせられる。いいじゃない。私がセンターで。なんなら曜さんをセンターにしてもいい。パフォーマンスのレベルは高いし適任よ」
善子「ともかく千歌さんにセンターは任せられない、それだったら……」
曜「善子ちゃん!!!」パシン!
善子「……っ!」
615
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/26(月) 06:58:39 ID:yRivWmeM
曜「いい加減にして」
善子「……」
曜「千歌ちゃんはこのパートをずっと練習してる。私と合わせられるように」
曜「突然のことだから私も驚いたけど、それは千歌ちゃんだって同じ」
曜「千歌ちゃんだって本当は梨子ちゃんと合わせたいのに、こうして私に合わせてくれてるの!」
曜「それなのに、なんてそんなひどいことを言うの!」
善子「(ああ、もう……)」
善子「(自分がないがしろにされていることはどうでもいいって、どうしてあなたは……)」
善子「(あなたは……!)」
616
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/26(月) 06:58:52 ID:yRivWmeM
善子「……っそれがおかしいって言ってるんです! ひどいのは千歌さんの方よ!」
善子「曲は全員のためにある! これは千歌さんと梨子さんのための曲じゃない!」
善子「梨子さんと合わせられないからって、リーダーがこんな体たらくでいいと思うの!?」
善子「この際だからはっきり言うけど、この人はあなたのことを何も考えてないわ!!!」
曜「……このっ! 分からず屋!」
617
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/26(月) 06:59:06 ID:yRivWmeM
果南「ストップ、二人ともそこまで」ガシッ
ルビィ「善子ちゃん、落ち着いて?」
鞠莉「曜、あなたもよ」
善子「……ルビィ」
曜「……鞠莉ちゃん」
果南「今やるべきなのは、どうすればステージを成功させられるのかをみんなで考えることだよ」
善子「……はい」
曜「……うん」
618
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/26(月) 06:59:22 ID:yRivWmeM
鞠莉「でも実際どうするの? あと本番まで一週間と少ししかないわ」
ダイヤ「練習の時間も限られてきます。どうするにせよ早めに決めなければ」
果南「……千歌と曜にはこのまま練習を続けてもらう」
千歌「! 果南ちゃん……!」
果南「せっかくここまでやってきたんだし、同じ体格の二人がセンターだとやっぱり見栄えがいい。なにより……」
果南「千歌と曜ならできると思うから」
曜「果南ちゃん……」
果南「でも善子ちゃんの言うことも一理ある。このままだと一番の見せ場を失敗してしまうかもしれない」
果南「だから3日。3日以内にダンスが合わなければ千歌は善子ちゃんと変わってもらう」
善子「……!」
619
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/26(月) 06:59:45 ID:yRivWmeM
果南「……折衷案として挙げてみたけど……みんなの意見はどうかな?」
ダイヤ「まあ、落としどころではありますね」
鞠莉「いいと思うわ。これなら二人とも納得いくまでできるでしょう」
花丸「おらは賛成ずら」
ルビィ「うん。ルビィも。千歌さんと善子ちゃんの負担が増えちゃうのは心配だけど……」
果南「そうだね。そこは無理をしないでほしい。3人はどう?」
曜「私は、千歌ちゃんがそれでいいなら……」
果南「どう? 千歌」
千歌「……うん。どのみち本番までにちゃんと完成させなきゃだから、それでいいよ」
果南「善子ちゃんは?」
善子「私も、二人のダンスがちゃんと噛み合うなら……ダンスが完成するなら異論はないわ」
620
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/26(月) 06:59:57 ID:yRivWmeM
果南「よし。じゃあこの方針で行こうか。今日のところはいい時間だし解散しよう」
ダイヤ「明日の練習は午後からです。遅刻しないように!」
ルビィ「……善子ちゃん、大丈夫?」
善子「大丈夫……落ち着いてるわ。ありがとう」
ルビィ「なら、いいけど……あとでちゃんと謝ろうね?」
善子「……わかってる」
621
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/26(月) 07:01:39 ID:yRivWmeM
――部室
善子「……千歌さん」
千歌「……ん?」
善子「さっきは、ごめんなさい」
善子「いくらなんでも言い過ぎたわ。千歌さんだって頑張ってるの、私はちゃんと見てたのに……」
千歌「……ううん。善子ちゃんの言う通り、そもそも私がちゃんとできないからこんなことになったわけだし……」
千歌「善子ちゃんだって、このままじゃいけないって思って、強く言ってくれたんでしょ? むしろありがとうだよ」
善子「そんな、やめてよ。ひどいこと言ったのに……」
千歌「いいの。結果的にはうまいこと本番への保険もできたし、私も頑張らなきゃって思えたから!」
善子「千歌さん……」
千歌「それに善子ちゃんの言ったこと、確かにその通りだと思うから。私、リーダーなんだから、Aqoursのこと考えないとダメだよね」
千歌「失敗しちゃったら、それこそ梨子ちゃんに心配かけちゃうし!」
善子「……」
622
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/26(月) 07:01:56 ID:yRivWmeM
善子「……ともかく、ごめんなさい。本番まで頑張りましょう」
千歌「うん!」
善子「それじゃあ、また明日」
千歌「……善子ちゃん」
善子「はい?」
千歌「あのね、良ければ、なんだけど……」
千歌「今日、うちに泊りにこない?」
623
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/26(月) 07:02:19 ID:yRivWmeM
とりあえずここまで
いつも読んでくださる方ありがとうございます
624
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/26(月) 12:43:18 ID:sxA1JHuk
ノーマル√きた!
625
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/26(月) 19:34:40 ID:f60jefSc
なんだ、謙遜してたけどノーマルも面白いじゃないか!
バッド見たからこそこの切り込み方は面白い
626
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/27(火) 06:58:17 ID:RVsHwgUs
ちかっちにイライラしちゃうけどそれもまた心地よい
楽しみすぎて夜しか眠れません
627
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/28(水) 01:05:34 ID:kAx8qMvA
乙
言い方はアレだけど善子が全面的に正しい
628
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/31(土) 19:35:23 ID:3qSfmKi6
千歌が頑張ってるのもわかるが善子に共感してしまうなぁ
それにしてもまさかのちかよしお泊まり展開に期待しかない
629
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/04/04(水) 09:33:55 ID:4CcBp3r2
更新待ってるぞ〜
ふと思ったが、もしこのまま千歌が善子に惚れて怒濤のちかよしルートに切り替わったらどうなるだろう……
630
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/04/10(火) 02:32:10 ID:Cmt6syi.
――千歌の家
志満「あら善子ちゃんいらっしゃい! ゆっくりしていってね!」
志満「善子ちゃん会えるの本当に楽しみだったの! 来てくれてありがとうね〜」
善子「あはは、どうも……」
善子「……なんなの?」ボソボソ
千歌「あはは、実は志満姉、善子ちゃんのファンなんだよね……」
善子「だから呼ばれたってこと?」
千歌「以前から言われてたんだよ。どうにかして善子ちゃん呼べないかーって。志満姉がわがまま言うなんて滅多にないから、善子ちゃんだいぶ好かれてるね!」
善子「まあ、好かれてるのは嬉しいけど……」
631
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/04/10(火) 02:32:55 ID:Cmt6syi.
――千歌の部屋
善子「それで?」
千歌「うん?」
善子「どうして私を呼んだの? お姉さんに会わせるだけが目的じゃないんでしょ」
千歌「あぁ、うん……」
善子「……ダンスのこと?」
千歌「そだね。まぁ今更言い淀んでもしょうがないかぁ」
善子「変なところで遠慮するのね。私を誘った時とかかなり強引だったのに」
千歌「あはは……」
善子「まぁいいわ。何を悩んでるの?」
632
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/04/10(火) 02:33:32 ID:Cmt6syi.
千歌「どうしたら、いいのかなって……」
善子「……」
千歌「私ね、善子ちゃんに言われた通り梨子ちゃんのことで頭がいっぱいだった」
千歌「でもそれじゃいけないって気づかされて考えてみたの。曜ちゃんのこと」
善子「……どうだった?」
千歌「わからない……」
633
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/04/10(火) 02:33:54 ID:Cmt6syi.
千歌「どこが変なのか考えてみたけどわからないの」
千歌「曜ちゃんね、昔から何でも一人で解決しちゃうから、なにか悩みがあっても私じゃ力になれなかった。ううん。なるまでもなかった」
千歌「でもね、今曜ちゃんが何かに悩んでて、また一人で解決しようとしてるのはわかるんだ」
千歌「曜ちゃんすごいから、今回も一人で解決しちゃうかもしれない。でもそれじゃダメなんだって思う」
善子「それはどうして?」
千歌「善子ちゃん前にさ、私にとって曜ちゃんがどういう存在なのかって聞いたよね?」
善子「……はい」
634
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/04/10(火) 02:35:17 ID:Cmt6syi.
千歌「曜ちゃんはなんでもできて、クラスのみんなからも好かれる人気者で、みんなのヒーローだった」
千歌「いつだって曜ちゃんの周りには人がいて、そのみんなが笑顔で……昔から本当にすごい子だったの」
千歌「私みたいななんにも取り柄ない普通の人じゃ、友達にすらなれないはずなんだ」
千歌「私は小さいころに偶然曜ちゃんと知り合って、それからずっと仲良くしてきたからそばにいられるだけ」
千歌「それだけなのに、曜ちゃんは私が困ったり悩んだりしてるときはいつも助けてくれた」
千歌「だけど何もできない私は曜ちゃんに恩返しはできなくて」
千歌「確かに友達って、そういう損得で考えるものじゃないってわかってるけど、どうしてもそれを負い目に感じちゃって……」
善子「……それでも、二人はずっと一緒にいたんでしょう?」
635
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/04/10(火) 02:36:37 ID:Cmt6syi.
千歌「曜ちゃんは優しいからね。それでも一緒にいてくれて……今だって一緒にいてくれる」
千歌「スクールアイドルも一緒に始めてくれて、たくさん助けてくれる」
千歌「私はそれにずっと甘えてきて……きっと曜ちゃんも、私が考えてることわかるんだろうね」
千歌「それを長い間ずっと放っておいて、甘え続けたから。本当に深い本音とか、話せなくなっちゃった」
千歌「これ以上、曜ちゃんに迷惑かけられない、重荷を背負わせたくないから」
善子「……」
千歌「……私ね、曜ちゃんの誘いをずっと断ってきたんだ。水泳一緒にやろうって言われててね」
千歌「でもあんなすごい曜ちゃんと一緒にやっていく自信がなかったの」
千歌「けど今は違う。スクールアイドル始めて、私にも全力で打ち込めるものができた」
千歌「いつも一生懸命に頑張ってる曜ちゃんと、初めて並ぶことができた気がするんだ」
千歌「もう曜ちゃんに追い付けなかった私じゃない。今まで曜ちゃんの誘いを断ってきたけど」
千歌「スクールアイドルは、絶対に曜ちゃんとやり遂げたいって思うんだ」
636
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/04/10(火) 02:37:04 ID:Cmt6syi.
千歌「スクールアイドルやって、曜ちゃんと並んで踊る初めての機会だから」
千歌「だから今曜ちゃんが何かに悩んでるなら、今度こそ私が力になりたい」
千歌「……でも」
善子「でも?」
千歌「いざそう思っても、今まで私は曜ちゃんの優しさに甘えてたから、そういう悩みとか本音とか聞いたことないってことに気づいて」
千歌「今になってわかったんだ。私は曜ちゃんと一緒にいただけで、曜ちゃんのことなにも理解できてなかったって」
善子「……」
千歌「ねえ善子ちゃん。私どうしたらいいのかな。曜ちゃんのことわからないまま、曜ちゃんの隣にいる資格なんてない」
千歌「まして、一緒に踊るなんて……」
637
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/04/10(火) 02:37:31 ID:Cmt6syi.
善子「(……私は、どうするべきなのだろう)」
善子「(曜さんのことを考えていなかった千歌さんに憤っていたのは事実)」
善子「(だから千歌さんに曜さんを任せるくらいなら、私が代わりに曜さんに合わせようと思った)」
善子「(それは千歌さんは曜さんのことを考えてないって思っていたからだけど、そうじゃなかった)」
善子「(千歌さんはわからなかったんだ)」
善子「(幼馴染みとは思えないようなねじれた関係が、そうさせてしまった)」
善子「(両方が両方に負い目を感じつづけて、それでもお互いを想い続けてここまできて)」
善子「(そんな歪な関係をずっと続けてきたんだ)」
638
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/04/10(火) 02:37:44 ID:Cmt6syi.
善子「(このまま、千歌さんと曜さんがわかり合えないままでいたなら、きっとダンスは上手くいかない)」
善子「(それどころか、これからずっと二人は歪な関係のまま)」
善子「(……いいんじゃないか)」
善子「(だって、そうすれば私は曜さんと二人でダンスができる)」
善子「(それにこのままいけば千歌さんはきっと梨子さんと結ばれる。そうすれば曜さんは千歌さんを諦めざるを得なくなる)」
善子「(傷心の曜さんを健気に心配して、優しい言葉をかけてあげれば、きっと曜さんは私に振り向いてくれる)」
善子「(そうだ、そうすればきっと、私は幸せに……)」
639
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/04/10(火) 02:38:15 ID:Cmt6syi.
――きっと私、邪魔者なんだ。スクールアイドルなんて、やらないほうが……
――私が、いなければよかったんだ
善子「(……違う)」
善子「(そうじゃないでしょ、津島善子……!)」
善子「(私は決めた。あの人を守るって。誰よりも強くて誰よりも弱いあの人を守るって決めたじゃない)」
善子「(曜さんが幸せになれるように、なんでもするって……!)」
善子「(自分のために曜さんを傷つけるなんてあってはならないこと)」
善子「(願うのは私の幸せじゃない。曜さんの幸せを叶えるの)」
善子「(そのために、私がすべきこと……)」
善子「(……)」
640
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/04/10(火) 02:38:49 ID:Cmt6syi.
今回はここまで。遅れてすみません。
いつも見てくださる方々ありがとうございます。
641
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/04/10(火) 03:23:01 ID:GMxZWqX2
乙
なんかちょっとだけBADの臭いがする
642
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/04/10(火) 04:53:06 ID:HZQk0B6Q
善子ちゃんが善い子すぎて辛い…
643
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/04/11(水) 07:57:58 ID:9iX00Pwc
ノーマルだとどうなるのやら…
続きが気になるな
644
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/04/11(水) 09:01:22 ID:Wqj7kPus
ノーマル=アニメ版エンドなのかな?
そこに至るまでのよっちゃんの心理描写がすごく気になる
645
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/04/26(木) 11:55:16 ID:1leJe2MA
更新遅れております。申し訳ありません。
明日、明後日には更新できればと思います
646
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/04/26(木) 12:19:34 ID:YAn6sHsc
待ってます
647
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/04/26(木) 23:55:50 ID:x5sN43p6
楽しみに待ってる
648
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/04/28(土) 04:48:52 ID:sKPoISdY
善子「千歌さんはどうしたいの?」
千歌「……え?」
善子「千歌さんはこのまま曜さんとわかり合えないままでいいの?」
善子「それとも、曜さんを理解したいと思うの?」
千歌「そ、そんなの当たり前だよ! 私は曜ちゃんのこと、ちゃんと理解したい!」
善子「本当に?」
千歌「え……」
善子「本当にそう思うの?」
千歌「う、うん。そう思うよ」
善子「……わかった。千歌さんがそう言うなら私も協力する」
千歌「善子ちゃん……!」
649
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/04/28(土) 04:49:11 ID:sKPoISdY
善子「……じゃあ、私の知ってることを教えます。曜さんには内緒ね」
千歌「……うん」
善子「曜さんって小さい頃からいろんなことできたんでしょ?」
千歌「そうだね。人気者で、本当にみんなのヒーローみたいだった」
千歌「私はそんな曜ちゃんを見るのが好きだったな。私が一番最初に曜ちゃんを見つけて、それが誇らしかった」
善子「曜さんも、千歌さんが喜んでくれるのが嬉しかったと言っていたわ。だからいろんなこと頑張ったって」
千歌「曜ちゃん……」
善子「でも千歌さん、本当に誇らしかっただけ? それ以外に何も思わなかった?」
千歌「え?」
善子「いつからか千歌さんは悲しそうな顔をするようになったと、曜さんが言っていたわ」
千歌「……」
善子「ねぇ、千歌さんは、本当はどう思っていたの?」
650
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/04/28(土) 04:49:26 ID:sKPoISdY
千歌「……曜ちゃんが誇らしかったのは本当だよ。頑張る曜ちゃんが好きなのも嘘じゃない」
千歌「本当に素敵で、キラキラして輝いてた」
千歌「でもね、そんな曜ちゃんに比べて私には何もない」
千歌「何をやっても普通で、誇れることなんてない」
千歌「いつかね、曜ちゃんみたいに、私もなにかできるんじゃないかって思ってた」
千歌「曜ちゃんみたいに輝いて、曜ちゃんの隣に立つのにふさわしい人になれると思ってた」
千歌「……そんなふうに考えてたけど、私はなにもできないまま成長して」
千歌「曜ちゃんは相変わらず輝いてて、みんなのヒーローだった」
千歌「それでもね、曜ちゃんはなんにもない私の隣にずっといてくれた」
千歌「いろんなこと一緒にやろうって誘ってくれて……結局、できなかったけど」
善子「それは、どうして?」
651
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/04/28(土) 04:49:42 ID:sKPoISdY
千歌「怖かったんだ。また途中で諦めて、曜ちゃんに失望されるのが」
千歌「曜ちゃんはそんなことしないってわかってるけど、どうしても耐えられなくて……」
千歌「逃げるみたいに、いつも曜ちゃんの誘いを断って……」
千歌「そんなことを続けてたら、いつからか曜ちゃんは私に遠慮するようになって、私も曜ちゃんを追いかけることを諦めて」
善子「……」
千歌「それでも、私は曜ちゃんと一緒にいたかった」
千歌「曜ちゃんのこと、本当には理解できないってわかっていながら、曜ちゃんの優しさを利用して縛りつけた」
千歌「一緒にいるのが当たり前の存在で、私は曜ちゃんが、本当に大切だったから……」
652
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/04/28(土) 04:50:34 ID:sKPoISdY
千歌「私と曜ちゃんは昔からの親友で、でもそういうふうに変にこじらせちゃったから、本心とか本音とか、私たちは言い合えないんだ」
善子「そっか……」
善子「(曜さんも千歌さんも、こんなすれ違いをずっと続けて、それでも一番近くにいて)」
善子「(……そんなねじれた関係を、続けてきたんだ)」
善子「(お互いの本当の気持ちがわからないくらい絡まってねじ曲がって、それでもお互いが大切だったんだ)」
善子「(私は、千歌さんは梨子さんに夢中で、曜さんのことなんか何も考えていないと思っていたけど)」
善子「(……どうすれば、二人はわかり合えるんだろう)」
善子「(誰かが二人を導いてあげなきゃ、ずっとこのままだ)」
善子「(私は……私のするべきことは……)」
善子「……」
653
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/04/28(土) 04:50:49 ID:sKPoISdY
善子「千歌さん、曜さんは泣いていたわ」
千歌「え…?」
善子「東京のライブから帰って来た日。みんなが寝た後にこっそり抜け出して、一人で泣いてた」
千歌「そんな、なんで……曜ちゃんが泣くなんて」
善子「信じられない?」
千歌「だって曜ちゃんはみんなのヒーローで、誰よりも強い人で……私とは違うもん」
千歌「なんにもない私とは、全然違う……」
善子「曜さんは強いから、自分みたいに泣いたりしない。そういうこと?」
千歌「……うん」
654
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/04/28(土) 04:51:04 ID:sKPoISdY
善子「……あのね千歌さん。確かに曜さんは強い人よ。誰よりも優しくて、みんなを笑顔にして、自分もいつも笑顔で」
善子「でもね、いくら強いからって、辛いことがあっても平気なわけじゃない」
千歌「!」
善子「東京であんな結果になって、悔しかったのは曜さんも一緒」
善子「曜さんだって、千歌さんと一緒に悔しがって、泣きたかったんじゃないの?」
千歌「……曜ちゃん」
善子「……千歌さん。ずっと聞きたいことがあったの」
千歌「……え?」
655
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/04/28(土) 04:51:21 ID:sKPoISdY
善子「大会が終わって東京から帰るとき、曜さんはずっとあなたを心配していましたよね?」
善子「なんであなたはあの日、曜さんになにも答えなかったの?」
千歌「あ……」
善子「そのくせ梨子さんには本音を話して、最後には立ち直って」
善子「……ねぇ、私、あなたを許せないわ」
善子「曜さんがあの日なんて言ったか、わかる?」
千歌「……」
善子「『私は千歌ちゃんを傷つけてばっかりだ。きっと私は邪魔者なんだ。スクールアイドルなんてやらない方がよかった』」
千歌「!」
善子「『私なんて、いなければよかった』」
善子「そう言っていましたよ?」
656
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/04/28(土) 04:51:47 ID:sKPoISdY
千歌「そんな、私……」
善子「千歌さん、私わからないんです」
善子「梨子さんも曜さんも、あなたを心配してくれていたのは同じなのに、なんで曜さんには何も答えなかったの?」
善子「……なんで曜さんから逃げたの?」
善子「あの日のあなたの行動が、曜さんを傷つけた。だから私は、あなたを許せない」
善子「あなたに曜さんの隣で踊ってほしくない。今のあなたと一緒だと曜さんが傷つくから」
善子「私は曜さんを守るから。何があっても守るから」
千歌「善子ちゃん……」
善子「決めてください。曜さんから離れるか、それとも……」
657
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/04/28(土) 04:51:59 ID:sKPoISdY
千歌「私、考えなきゃ……」
千歌「本当は曜ちゃんのことがずっと怖かった。ううん、曜ちゃんと向き合うのが、曜ちゃんに捨てられるのが怖かった」
千歌「でも、逃げてちゃいけないんだ」
千歌「私が弱いせいで、ずっと曜ちゃんを悲しませて、傷つけてきた」
千歌「曜ちゃんの……ううん、私たちのこと、ちゃんと考えなきゃ」
千歌「それで、曜ちゃんと話さなきゃ。私のこと。曜ちゃんのこと。これからの私たちのこと」
千歌「もう逃げたりしないって。ちゃんと曜ちゃんのこと見るからって。私のことも見てほしいって」
千歌「だから……」
千歌「だから、今すぐ会いに行かなきゃ!」
658
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/04/28(土) 04:52:12 ID:sKPoISdY
善子「……そう。それがあなたの答えなのね」
千歌「ダメ、かな」
善子「それは千歌さんが曜さんのために考えた答えなんでしょ?」
善子「じゃあ、悪いわけないわ」
千歌「ごめんね、お泊りに誘ったの私なのに」
善子「いいえ、むしろそれでいい。曜さんのこと、よろしくね?」
千歌「うん!」
659
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/04/28(土) 04:52:27 ID:sKPoISdY
千歌「行ってきます!」
善子「待って千歌さん! 最後に一つだけ」
千歌「?」
善子「曜さんはこうも言っていたわ」
善子「『千歌ちゃんと一緒に何かを頑張りたい。最後まで一緒にやりとげたい』って」
千歌「……!」
善子「気を付けてね?」
千歌「うん! ありがとう善子ちゃん!」
――
善子「(……まさか今から向かうなんてね。これは予想してなかった)」
善子「(でもよかった。曜さんと千歌さんの間の壁は、これできっとなくなる)」
善子「(今まで失ってきた時間を埋めてくれるはず)」
善子「あとは、信じるしかないか……」
志満「あら? 千歌ちゃんったらお客様をおいていくなんて……旅館の娘失格ね」
善子「えっ!? お、お姉さん!?」
志満「志満って呼んでいいのよ〜?」
善子「志満、さん……」
660
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/04/28(土) 04:53:23 ID:sKPoISdY
志満「善子ちゃんごめんね? 千歌ちゃんってちょっと強引なところあるから」
善子「いいんです。千歌さんのそういうところ、好きなので」
善子「それに、私も行ってほしいって思ったから」
志満「……そっか。信頼されてるのね」
善子「ええ……」
志満「よし! じゃあ善子ちゃん、寝るのにはまだ早いでしょ? 少しお話しましょ♪」
善子「へ?」
志満「善子ちゃんとじっくり話す機会ってもうないと思うし! いろんなお話聞きたいわ!」
善子「ええっと私で良ければ……というかいつでも来ますよ」
志満「あら嬉しい♪ さ、入って。お茶とお菓子を用意するから!」
善子「……はい」ニコッ
661
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/04/28(土) 04:53:51 ID:sKPoISdY
遅れました。申し訳ありません。
いつも読んでくれてる方々ありがとうございます。
662
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/04/28(土) 08:57:09 ID:.P1BP7qo
善子ちゃんホントに善い子
663
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/04/30(月) 02:31:30 ID:5bioqETM
乙
少しでも浄化されればいいが
664
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/05/01(火) 17:04:28 ID:AsTmB8Gk
これで仮に曜は救われたとして善子はどうなるのか…
続きが気になりますね
665
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/05/13(日) 05:27:46 ID:rFH163Vw
まだかな…?
666
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/05/14(月) 06:31:01 ID:JtW9UwII
更新遅れております。申し訳ありません。
私事ですがブラック企業に入ってしまったため思うように時間がとれておりません。
水曜、木曜には更新したいです。
667
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/05/14(月) 07:48:20 ID:L0fKaW3Q
待ってるぞい
668
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/05/14(月) 17:15:42 ID:G9Al4LrA
ゆっくり自分のペースで進めてくださいな
669
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/05/14(月) 17:32:17 ID:7hBOJqFA
自分の生活を優先してくれ
670
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/05/16(水) 02:51:26 ID:nyFQBXNw
堕ちないようにね
671
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/05/16(水) 15:30:56 ID:/yO3dyMM
いつまでも待ってるので自分のペースで楽しんで
672
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/05/19(土) 05:10:44 ID:dN/lJ7LU
――翌日
花丸「おぉ……」
ルビィ「すごい……」
ダイヤ「完璧、ですわね」
果南「……驚いたよ、昨日のうちに練習したの?」
千歌「うん! どう? すごいでしょ!」
果南「うん。完璧。振りまで新しくしてくるなんてね」
果南「それに、このダンスなら二人にピッタリだ。よくできてるよ」
曜「えへへ、ありがとう!」
鞠莉「congratulations! 最高にクールよ二人とも!」ダキッ
曜「わっ、苦しいよ鞠莉ちゃん」
673
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/05/19(土) 05:10:59 ID:dN/lJ7LU
善子「(翌日の練習、千歌さんと曜さんはいきなり自分たちのパートを見てほしいと言って)」
善子「(私たちの前でいきなり新しい振り付けを披露して、完璧に踊ってみせた)」
善子「(おそらく昨日の夜、千歌さんが曜さんの家に行って、そのまま完成させたんだろう)」
善子「(二人の様子を見ると、千歌さんはうまくやってくれたようだ)」
善子「(曜さんは昨日までと違って以前のような明るい笑顔を見せていて)」
善子「(本当に、出会った頃のような曜さんに戻っていた)」
674
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/05/19(土) 05:12:38 ID:dN/lJ7LU
――
曜「善子ちゃん!」
善子「……曜さん」
曜「あの、昨日はごめん」
善子「……」
曜「善子ちゃんは私の、みんなのことを考えて言ってくれたのに、あんなこと……」
善子「……」
曜「だから、ごめんなさい」
善子「千歌さんとは……」
曜「え……」
善子「千歌さんとは、どんな話をしたの?」
675
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/05/19(土) 05:12:51 ID:dN/lJ7LU
曜「え、なんで千歌ちゃんがうちに来たって知ってるの……?」
善子「まあまあいいじゃない。それで何をお話したの?」
曜「……別に、大した話はしてないんだ」
曜「千歌ちゃんがいきなり家にきて教えてくれたの。私が気づかなかった、私自身のこと。そして、千歌ちゃんのこと」
曜「それから、私たちだけのダンスを作ろうって言ってくれて」
曜「それで、不思議とあっという間にできあがっちゃってね、それこそ拍子抜けするくらい」
曜「でもそれだけじゃなくて、千歌ちゃんが言ってくれたことが私を助けてくれた」
曜「苦しいことも悲しいことも全部なくなっちゃうくらい……」
676
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/05/19(土) 05:13:03 ID:dN/lJ7LU
―回想
千歌「あ、この写真懐かしいね。運動会のときとか。確か曜ちゃんは一位で」
千歌「凄かったなぁ……」
曜「……」
千歌「……曜ちゃんあのね、私、謝りたくて」
曜「……え?」
千歌「話すこと、話さなきゃいけないこと、たくさんある」
曜「千歌ちゃん……」
千歌「私、曜ちゃんのこと何もわかってなくて、傷つけちゃったよね?」
曜「ダンスのこと? それは千歌ちゃんが気にすることじゃ……」
千歌「それもある……けどそれだけじゃないよ」
曜「千歌ちゃん……?」
677
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/05/19(土) 05:13:14 ID:dN/lJ7LU
千歌「……東京のイベントから帰って来た日」
曜「!」
千歌「曜ちゃん、私のことたくさん心配してくれたよね。大丈夫?って。悔しくないの?って」
千歌「私、あの時何も言えなかった。曜ちゃんの前で泣けなかった」
千歌「悔しいって、言えなかった」
千歌「曜ちゃんも泣いてなかったから。だから曜ちゃんの前では私も泣かないって思った」
千歌「でも本当は曜ちゃんもつらかったんだよね……?」
千歌「私が悲しくならないように、笑顔で頑張って、慰めようとしてくれたんだよね?」
曜「……」
千歌「だから曜ちゃんには、弱い部分を見せたくなかった。心配させたくなかった」
千歌「でも結局それが曜ちゃんを傷つけた。曜ちゃんの気持ちを踏みにじった」
曜「そ、そんなことないよ!」
678
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/05/19(土) 05:13:31 ID:dN/lJ7LU
曜「私だって千歌ちゃんの気持ちを考えないであれこれ余計な心配して、逆に傷つけちゃって」
曜「梨子ちゃんがいなかったら、それこそ取り返しがつかなかったと思うし……」
千歌「でも、曜ちゃんの気持ちを無下にしたのは本当のことだよ」
千歌「私ね、曜ちゃんは何も言わなくてもわかってくれるって、ちゃんと伝わってるって勘違いしてたんだ」
曜「……」
千歌「覚えてる? 私たちずっと一緒だったよね。何をするにも一緒で、いつも二人で並んで……」
千歌「それが当たり前だった。離れることなんか一度もなかった」
千歌「でも、いつからか曜ちゃんはどんどんすごくなって、私は隣にいられなくなって、いつしか後ろから眺めるだけになった」
千歌「一緒にできないことが増えても、曜ちゃんは「仕方ないね」って、優しく笑ってくれた」
千歌「いつか一緒に何かを頑張るんだって、私を信じてくれた」
千歌「それを私は、ずっと裏切ってきた」
千歌「いつか私も曜ちゃんみたいに輝けるんだって、そんな都合のいいことを考えながら曜ちゃんを縛りつけた」
679
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/05/19(土) 05:13:47 ID:dN/lJ7LU
千歌「曜ちゃんを悲しませるってわかってたのに。なにも一緒にできないってわかってたのに」
曜「ち、違うよ! 私が勝手に千歌ちゃんのそばにいたいって思っただけ!」
曜「私だって千歌ちゃんを悲しませるってわかってて、千歌ちゃんのそばに居続けた」
千歌「……それは、どうして?」
千歌「曜ちゃんはどうして、そこまでして私のそばにいてくれたの?」
曜「……私は」
曜「私は千歌ちゃんと、一緒のことに夢中になってみたかったから」
千歌「……曜ちゃん」
曜「自分勝手なわがままだってわかってるよ。迷惑だってわかってるよ。でも私は」
680
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/05/19(土) 05:14:02 ID:dN/lJ7LU
千歌「ありがとう」
曜「え……」
千歌「私もそうだよ。ずっとそう思ってたの」
千歌「曜ちゃんと一緒に、何かをやり遂げたいって思ってた」
曜「……嘘だ」
千歌「本当だよ」
曜「嘘だ!」
曜「だって千歌ちゃん悲しんでたよ! 私と一緒にいて苦しそうだった!」
曜「運動会で一番を取った時も! 水泳に誘った時も! 私の高飛び込みを見るときも!」
曜「何かで一番を取るたびに、ずっと悲しそうだった!」
曜「千歌ちゃんは、私と一緒なのは嫌なんだって……!」
681
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/05/19(土) 05:14:55 ID:dN/lJ7LU
千歌「曜ちゃん」ギュ
曜「……!」
千歌「ごめんね」
曜「え……」
千歌「私が弱かったから。曜ちゃんのことずっと傷つけてきたんだよね」
曜「違う、千歌ちゃんは弱くなんかない」
曜「私が、邪魔者だったから……! 私がいなければ、千歌ちゃんはもっと幸せだった!」
曜「もう私なんていらないでしょ!? みんなが……梨子ちゃんがいるんだから!」
千歌「曜ちゃん!」
曜「……っ」
682
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/05/19(土) 05:16:05 ID:dN/lJ7LU
千歌「そんなふうに考えちゃうくらい、苦しかったんだね」
千歌「ごめんね、全然知らなかった」
千歌「昔はさ、言葉なんかなくてもなんでもわかり合えてたのに」
千歌「今は、曜ちゃんが悲しんでることも苦しんでることも、なにもわからなくなっちゃった」
千歌「言葉にしないとわからないことだってたくさんあるのに、私たちは大丈夫って安心して……」
千歌「だから、曜ちゃんはこんなに苦しいんだよね?」
曜「千歌ちゃん……!」
千歌「曜ちゃん、私の気持ち、聞いてくれる……? ちゃんと伝えたいんだ」
曜「……うん」
683
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/05/19(土) 05:16:35 ID:dN/lJ7LU
千歌「曜ちゃん」
千歌「たくさん悲しませちゃってごめんなさい」
千歌「辛い思いさせちゃってごめんなさい」
千歌「もう逃げないから。もう間違わないから」
千歌「私は、スクールアイドルで輝くから、曜ちゃんと同じようにヒーローになるから」
千歌「私の輝きを、特等席で見ていてほしい! あの頃みたいに、私の隣で笑っていてほしい!」
千歌「曜ちゃん、私と一緒に、踊ってくれる?」
684
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/05/19(土) 05:22:42 ID:dN/lJ7LU
曜「……あはは」
千歌「曜ちゃん?」
曜「私バカだ……バカ曜だ……」グスッ
曜「……うん。千歌ちゃん。私ももう逃げない」
曜「千歌ちゃんと一緒なら、私はなんだって頑張れる」
曜「ううん。千歌ちゃんと一緒に、頑張りたい!」
曜「千歌ちゃんと一緒に、スクールアイドルに夢中になりたい!」
曜「だから千歌ちゃん、私と一緒に踊ってください!」
千歌「うん!」
曜「……ああ、久しぶりに千歌ちゃんの隣にいる気がする」
千歌「もう離れたりしないでね。私も一緒に走るから」
曜「うん!!!」
685
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/05/19(土) 05:23:29 ID:dN/lJ7LU
――
曜「私は、もう大丈夫」
曜「千歌ちゃんが私の気持ちをわかってくれたから。千歌ちゃんの気持ちもちゃんとわかったから」
曜「千歌ちゃんのそばにいていいってわかったから。もう悲しくない」
曜「大好きな気持ちだって隠さない!」
曜「すっごく幸せで、なんでもできちゃいそうなんだ!」
善子「……そっか」
曜「……善子ちゃんには、たくさん心配かけて、迷惑もかけちゃったね」
善子「ううん。曜さんが元気になったなら私は良かった」
曜「心細いときも善子ちゃんがいてくれて、本当に助けられた」
曜「いつも私のこと考えてくれて……それだけで私はたくさん救われた」
曜「ありがとう。善子ちゃんに会えて本当に良かった」
686
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/05/19(土) 05:24:12 ID:dN/lJ7LU
曜「大好きだよ! 善子ちゃん!」
善子「……!」
曜「これからはちゃんと先輩らしくするから、よろしくね!」
善子「……はい」
――
善子「曜さん、先に帰ってていいですよ」
曜「えー? 一緒に帰ろーよ」
善子「ちょっと用事があって。それに……」
曜「それに?」
善子「大好きは隠さないんでしょ?」
曜「え……! えぇっとぉ///」
善子「今日は私より、一緒にいるべき人がいるはずですから」
曜「う、うん///」
善子「……がんばってね曜さん。応援してる」
曜「……! うん!!!」
687
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/05/19(土) 05:25:02 ID:dN/lJ7LU
曜「じゃあまた明日! 練習がんばろうね!」
ガラッ
善子「……」
善子「……はは」
善子「バカね、私ってば」
688
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/05/19(土) 05:25:52 ID:dN/lJ7LU
大変遅れましてすみません。
時間がかかっても絶対に完結はさせますので。
いつも読んでくださる方々ありがとうございます。
689
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/05/19(土) 08:45:40 ID:F8Lu11hU
乙です
善子ちゃんが善い子すぎて辛いよ…
690
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/05/19(土) 15:32:44 ID:mj1OtEwQ
乙
待つ
691
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/05/19(土) 16:22:19 ID:MNyKbjVI
そうやって今度はお前が寂しいの我慢するんやな……
692
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/05/20(日) 00:41:15 ID:qDLlXUnc
更新きてた!嬉しい
イッチありがとな
693
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/05/22(火) 18:00:02 ID:FueVTOq.
善子ォ!と叫びたくなる展開だな…
気長に待ってるぞい
694
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/05/23(水) 00:05:24 ID:XjapuQEo
バッドエンドより悲しいんだが……
695
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/05/24(木) 02:53:20 ID:6Kc1V9OQ
乙
696
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/06/07(木) 21:35:46 ID:gScrE.yw
ドン・ファンの隠しネタ
http://bit.ly/2JVc7to
697
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/06/12(火) 19:02:01 ID:Bm/EGKgQ
遅れてしまい申し訳ありません
週末には更新したいと思います
698
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/06/12(火) 20:38:49 ID:sWW9W3xw
正座待機
699
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/06/18(月) 12:44:54 ID:dAVEwUSY
wkwk
700
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/06/18(月) 16:12:04 ID:6VEtf0Ho
すみません、深夜に更新します
701
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/06/19(火) 02:00:13 ID:9vdDAIZM
それから私たちは予備予選を迎え、最大限のパフォーマンスをした。
結果は大好評で予選はトップ通過、大きな反響を呼んだようで 千歌さんと曜さんの試みはうまくいったようだった。
もちろん私も、Aqoursのみんなも全力でやった。二人の努力を無駄にしないため、梨子さんのため、ラブライブのため。
いろいろな理由があったけれど私はやっぱり曜さんのために頑張った。
曜さんの努力を、想いを無駄にしたくなかったから。
なにより、 曜さんが幸せそうだったから。
702
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/06/19(火) 02:00:32 ID:9vdDAIZM
梨子さんが帰ってくる日はAqours全員で駅まで迎えに行き、みんなで梨子さんを讃えた。
千歌「お帰り梨子ちゃん!」
曜「梨子ちゃん!お疲れ様!」
梨子さんはコンクールを終え、無事に受賞を果たしたそうだ。
Aqoursの予選も梨子さんのコンクールもうまくいって私たちは一安心するとともに、その先の地区予選へむけてますます士気を高めた。
それから千歌さんの家でささやかなお祝いのパーティーをして、その日はそのままお泊まりをした。
703
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/06/19(火) 02:01:02 ID:9vdDAIZM
――夜
善子「…」
私は相変わらず眠れないままで、余計なことばかりを考えている。
本当にこれでよかったのか。
いいやこれでよかったはずだ。
そんな意味のない自問自答を繰り返して、自分が正しかったのかどうかを一人で考えていた。
それはなんど繰り返しても同じ結論になり、その結論も本当に正しいのかとまた考え直し、そんな堂々巡りが終わらなかった。
そうしたまましばらく経って、やっぱり眠れそうにないので起き上がった。
当然だけどみんな眠っていて、かすかに波の音が聞こえていた。
ただ、ひとつだけ……
善子「(また、千歌さんと梨子さんがいない……)」
以前のように二人だけで……
でも、あの時とは状況が違う。
千歌さんと曜さんはああやってわかり合えて、想いだってちゃんと伝わってるはず。
だから、私が心配するようなことなんてなにもない。
……考えすぎ、だろうか。
善子「……」
704
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/06/19(火) 02:01:21 ID:9vdDAIZM
――外
善子「はぁ……」
私は以前のように外に出ていた。
どうせあのまま眠るなんてできないし、風にでも当たろうと思った。
ふと、曜さんの言葉を思い出す。
――ありがとう。善子ちゃんに会えて本当に良かった!
――大好きだよ! 善子ちゃん!
善子「……」
そばにいたい。
知りたい。知ってもらいたい。
役に立ちたい。褒められたい。
それだけですべてが満たされるような気がした。
私はそれだけでいいと、本当に思っていた。
曜さんの幸せを手伝うことができれば、それ以上の幸せはないと。
705
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/06/19(火) 02:01:40 ID:9vdDAIZM
そして私は曜さんの幸せに協力できた。
曜さんへ恩返しをできた。
それで、いいはずなのに……
「梨子ちゃん、やったんだね」
「うん。千歌ちゃんのおかげだよ」
……!
千歌さんと、梨子さんだ。
前と同じ場所……気づいたらここにきていた。
そうか、二人ともここにいたんだ。
そういえばコンクール前にもここへ来ていたっけ。
「それで千歌ちゃん。この前のことなんだけど……」
「……」
「返事、聞かせてくれるかな」
706
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/06/19(火) 02:02:10 ID:9vdDAIZM
クッソ短くてすみません
今週中にもう一回更新できればと思います
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