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善子「Black Sheep」

565名無しさん@転載は禁止:2018/03/15(木) 20:26:51 ID:ZoJ3UmI.
――

花丸「図書室、懐かしいな〜」

ルビィ「最後はずっといたもんね、私たち」

善子「……そうね」

花丸「……これであらかた回ったずらね」

ルビィ「戻ろうか?」

2人はあえて、部室と屋上だけは避けて校舎を回った。

Aqoursの思い出が強く残る場所は避けてくれたのだろう。最後まで優しいな。

善子「ねぇ、2人とも」

ルビィ「ん?」

花丸「ずら?」

善子「先に戻っててくれない? 少し1人で回りたいの」

566名無しさん@転載は禁止:2018/03/15(木) 20:27:43 ID:ZoJ3UmI.
善子「……」

静まった校舎を一人で歩く。

少しだけ感傷的になって、窓から外を見る。

夕日が浦の星を、内浦を照らしている。

この時間は、ちょうどAqoursの練習をしている時間だったかな。

もう来ることもないと思っていた場所。だけど、来たら来たでやっぱり思い出がよみがえってきて。

少しだけ、悲しくなる。

もし、全部うまくいっていたら。私が真っ当な人間であったなら。

そんな意味のないことを考えてしまう。

気がつくと目の前には、屋上に続く階段があった。

Aqoursの思い出がたくさん詰まっている場所だ。

そして、私がすべてを壊した場所。

567名無しさん@転載は禁止:2018/03/15(木) 20:28:14 ID:ZoJ3UmI.
善子「……」

屋上へ続く階段を登ろうとした、その時。

「善子ちゃん!!!」

善子「……ルビィ?」

ルビィ「ま、待って……善子ちゃん……」ハァハァ

善子「どうしたのよ、そんな息切らして」

ルビィ「善子ちゃん、善子ちゃん……」

善子「……なんて顔してんのよ、何かあったの?」

ルビィ「善子ちゃん……」

善子「?」

ルビィ「行かないで」ギュ

善子「……!」

ルビィ「どうか、いなくならないで……」

568名無しさん@転載は禁止:2018/03/15(木) 20:28:55 ID:ZoJ3UmI.
ルビィ「2年前のあの日、Aqoursが終わってしまった日」

ルビィ「お姉ちゃんたちはバラバラになって、曜さんも、千歌さんも梨子さんもいなくなって」

ルビィ「ルビィには、もう花丸ちゃんと善子ちゃんしかいない」

ルビィ「もう、誰にもいなくなってほしくないの……」

善子「……」

ルビィ「ルビィね、怖かったの。善子ちゃんが東京に行ったとき」

ルビィ「もしかしたら、善子ちゃんは戻ってこないんじゃないかって」

ルビィ「浦の星でできたたくさんの友達が、みんないなくなっちゃうって」

569名無しさん@転載は禁止:2018/03/15(木) 20:32:29 ID:ZoJ3UmI.
ルビィ「卒業したら、確かに私たちはバラバラになっちゃうけど、会えないわけじゃない」

ルビィ「たまに休みの日とかに予定合わせてここに帰ってきて、花丸ちゃんと3人でごはん食べに行ったり」

ルビィ「20歳超えたら、お酒とかも飲んで……大人になっても、そうやってずっと一緒でいたいって思うの」

ルビィ「ねぇ、そんなことを考えてたのは、ルビィだけなの……?」

善子「……そんなこと、ないわ」

善子「私だって、あんたたちとそうやって生きていきたいって思う」

ルビィ「じゃあ、どうして」

ルビィ「どうしてそんな、悲しそうな顔してるの……?」

570名無しさん@転載は禁止:2018/03/15(木) 20:32:48 ID:ZoJ3UmI.


善子「……そっか。バレてたか」

ルビィ「わからないと思った? ルビィが、善子ちゃんのことを。なにもわからないって」

ルビィ「バカにしないでよ! 善子ちゃんが考えてることなんか全部わかる! 2年前からずっと!」

ルビィ「ぜんぶ、わかるんだから……」グスッ

善子「……そうね。あんたはずっと、私を理解してくれていたわね」

善子「あんただけは、私の心をわかってくれた。それにどれだけ救われたか」

ルビィ「……」

善子「感謝してるわ。あんたに会えて本当によかった」

571名無しさん@転載は禁止:2018/03/15(木) 20:33:05 ID:ZoJ3UmI.
善子「なにも、突然こうしようって決めたわけじゃないのよ。いつかやろうって思ってた」

善子「それが今日、いろんなことが重なって、今やらなきゃって思ったの」

ルビィ「それって、さっき鞠莉さんからもらってた手紙と関係あるの?」

善子「ああ、これ? そうね。これがきっかけなのかも」

ルビィ「何が書いてあるの……?」

善子「これね、私宛ての曜さんの遺書なんですって」

ルビィ「え……?」

善子「今日までマリーがあずかっててくれたみたい。律儀よね」

572名無しさん@転載は禁止:2018/03/15(木) 20:33:45 ID:ZoJ3UmI.
善子「……私ね、思いだしたの。いろんなこと」

善子「浦の星に来たけど塞ぎ込んでたこと。みんなに会えて、アイドル始めたこと」

善子「そのおかげで毎日が楽しくなったこと。幸せな気持ちになれたこと」

善子「……好きな人ができたこと」

善子「ねぇ、私、本当に幸せだったの。Aqoursのみんなが、曜さんがいればなにもいらなかった」

善子「幸せ過ぎて嬉しくて、だからそれが壊れたとき、私は耐えられなかった」

善子「だから、私はAqoursを……」

ルビィ「……」

573名無しさん@転載は禁止:2018/03/15(木) 20:34:03 ID:ZoJ3UmI.
善子「でも、あんなことをしたのに誰一人として私を責めなかった」

善子「そんな優しい人に囲まれながら、あんたみたいな友達がそばにいながら、私はとうとうまともな人間になれなかった」

善子「どこまで行っても私は、人間モドキでしかなかった」

善子「そんな私が、このままのうのうとあなたたちと一緒に、生きていていいわけがない」

善子「いつか絶対に、あなたたちをまた不幸にする」

ルビィ「そんな……」

善子「だから、こうしなくちゃいけないの。そう決めたの」

ルビィ「そんなのどうだっていい!」

善子「!」

ルビィ「やめてよ! そんなの、そんなの勝手だよ!!!」

善子「ルビィ……」

ルビィ「ルビィ言ったよ!? 善子ちゃんの味方だって! 善子ちゃんを応援して、支えてあげるって! そう決めたって!」

善子「……」

ルビィ「善子ちゃんみたいな人が、一生懸命幸せになろうって頑張ってて、ルビィはそれが本当に素敵だって思った」

ルビィ「だから善子ちゃんが選んだ道を、最後まで見届けたいって……」

善子「……じゃあ、ルビィ」

574名無しさん@転載は禁止:2018/03/15(木) 20:34:33 ID:ZoJ3UmI.
善子「私が決めたこと、最後まで応援してくれる?」

ルビィ「ぁ……」

善子「あなたは私を一番理解してくれた。それは同じ疾患者で、そういう疾患をもってるから、というのもあるけど」

善子「それ以上に、あなたは私を心の底から親友だと思ってくれていたから」

善子「だから、私が今どれだけの決意で言ってるのか、わかるわよね?」

ルビィ「ずるい、ずるいよ、そんなの……」

善子「……ごめんね、あなたには最初から最後まで、つらい思いさせてばかり」

善子「結局あなたにも、なにも返せなかったわね」

善子「こんなこと言うの、ずるいと思うんだけど……」



善子「あなたは私の、最高の親友よ」

ルビィ「う、うぅぅぅ……ぐすっ、よしこ、ちゃん……っ」グスグス

575名無しさん@転載は禁止:2018/03/15(木) 20:35:22 ID:ZoJ3UmI.

善子「最後に、あなたと話せてよかった」

善子「どうか、花丸と一緒に幸せに生きてね?」

ルビィ「うぅ……うん……」

善子「花丸にも謝っておいて」

ルビィ「わかった」

ルビィ「ごめんね善子ちゃん。こんなみっともないことしちゃって」

善子「ううん。嬉しいわ」

ルビィ「本当はまだ、納得できてないけど……」

ルビィ「でも、善子ちゃんが、決めたことなんだもんね」

善子「……ええ」

ルビィ「じゃあ私は、頑張ルビィって、言わなきゃね」ニコッ

善子「……ありがとう」

ルビィ「いってらっしゃい、善子ちゃん」

576名無しさん@転載は禁止:2018/03/15(木) 20:35:53 ID:ZoJ3UmI.
善子「……」

――

鞠莉「これを――」

善子「これは?」

鞠莉「曜の遺書よ」

善子「……え、でも遺書はもう」

鞠莉「実は曜はもう一つ遺書を書いていたの。あなた宛てにね」

善子「……!」

鞠莉「あなたが卒業したら渡すようにって、曜のお母様からあずかっていたの」

鞠莉「もちろん中身は読んでないわ」

善子「……ありがとう、ございます」

鞠莉「確かに渡したわ。曜の最後のメッセージ。しっかり受け止めてね」

――

577名無しさん@転載は禁止:2018/03/15(木) 20:36:31 ID:ZoJ3UmI.
善子ちゃんへ

これを読んでいるということは、もう私はいなくなってしまっているでしょう。

まずは、あんな形でお別れになってしまったことを謝らせてほしい。ごめんなさい。

あの日善子ちゃん言われたこと。確かにその通りだと思う。

私は昔からいろんなことが一人でできて、辛いこととかも一人でなんとかしてしまえる。

だから誰かに頼らないで、私が頑張れば誰にも迷惑はかからない。みんなに心配かけなくていいって一人で背負いこんじゃう癖がある。

苦しいと思うことはもちろんあった。

でも、それを嫌だと思ったことは一度もないんだ。

私は、みんなが笑っている顔がすき。千歌ちゃんの元気な笑顔も、梨子ちゃんの優しい笑顔も。

善子ちゃんの幸せそうな笑顔も。

それを守るためなら、私がどれだけ苦労したっていいって思ってた。

でもそうすることで、善子ちゃんを傷つけてしまうとは思ってなかった。

バカだよね?

一番私を心配してくれた善子ちゃんを傷つけないようにしてたのに、それが一番善子ちゃんを追いつめてたなんて。

私ね、今まで善子ちゃんみたいに本気で心配してくれる人なんていなかったんだ。

もちろん果南ちゃんや千歌ちゃんは心配してくれた。でも、あんなに本気で怒ってくれたのは善子ちゃんだけ。

ううん。そうじゃないね。善子ちゃんを本気で怒らせるくらい、私はバカなことをしてたんだ。

だから善子ちゃんがああいうことをしたのも、千歌ちゃんと梨子ちゃんが壊れちゃったことも私のせい。

私は私の生き方が正しいってずっと思ってたけど、大切な人たちを傷つけてしまうなんて思ってもみなかった。

もうこれ以上、誰も不幸にしたくない。だからこうするしかないと思ったんだ。

大丈夫! 辛いのは慣れてるから!

578名無しさん@転載は禁止:2018/03/15(木) 20:37:14 ID:ZoJ3UmI.


……なんて、冗談。

これはね、辛いことじゃないの。私がそうしたいからそうするの。

自分のしたいようにしてみようかなって思って、こうするんだ。

辛くなんかないよ。むしろこれは自分勝手なわがまま。

善子ちゃんはわかってくれるよね? 私はもうたくさん我慢してきたんだから。

初めてのわがままくらい、許してくれるよね?



……ごめんね。悲しませちゃうこと、わかってるよ。

一緒に学校行こうって約束、破っちゃってごめん。

私を守るって言ってくれて、嬉しかった。

いつでも私のことを心配してくれて、嬉しかった。

善子ちゃんと出会えて、本当によかった。


私にこんなことを言う資格なんてないけど、善子ちゃん、どうか幸せに生きてください。

私の分も、きっと笑顔で生きてください。

本当にありがとう。大好きだよ。


渡辺曜


――

善子「……」パラッ

――


そうだ

最後になっちゃったけど、ひとつだけ

579名無しさん@転載は禁止:2018/03/15(木) 20:39:36 ID:ZoJ3UmI.
 
 
「卒業、おめでとう」

580名無しさん@転載は禁止:2018/03/15(木) 20:39:54 ID:ZoJ3UmI.
――屋上

ギィ……

善子「……」


屋上にはたくさんの思い出がある。

Aqoursの練習場所としてたくさんの時間を過ごしたんだから、まあ当然か。

インドアの私には練習は辛かったけど、それと同じくらい楽しかった。

笑顔があったから。

たくさんの幸せな笑顔があったから。私は頑張れた。

楽しかった。

人間モドキの私が、真っ当な学生生活を送れるなんて……

これ以上の幸せなんかなかった。

そうだ。ここにはたくさんの幸福があるんだ。

581名無しさん@転載は禁止:2018/03/15(木) 20:40:19 ID:ZoJ3UmI.
善子「……」スッ

私はゆっくりと柵の外側へと移動した。

ここからは内浦の町が一望できる。

……ここにも、たくさんの思い出があった。

といってもやっぱりAqoursの思い出ばかりだけれど。

淡島神社で走りこみしたっけ。今はもう走れないだろうな。

合宿もやったなあ。海の家手伝って、曜さんの料理もおいしかった。

町の人と協力してスカイランタン作って、PVも作って。

あそこで寄り道したり、あそこに遊びに行ったり……

……

……ああ、なんだ。私……



善子「幸せ、だったのね」ポロポロ

582名無しさん@転載は禁止:2018/03/15(木) 20:40:42 ID:ZoJ3UmI.
後ろをふり向けば、Aqoursで過ごした楽しい思い出。

前を向けば、たくさんの幸福な景色。

ああ、ここにはすべてがある。

満たされている。

胸の真ん中あたりがポカポカして、とても幸福な気持ちだった。

だから。

だから私は、その場所から一歩踏み出すことが、何も怖くなかった。

583名無しさん@転載は禁止:2018/03/15(木) 20:41:09 ID:ZoJ3UmI.
その瞬間、私は地面へと吸い込まれていく。

完全な自由落下。

最後の瞬間。

全ての意識が鮮明になって、逆さまになりながら内浦の町へと目を向けた。


善子「……美しい」


思い出だけが輝いていて、美しかった。

……。

これで、終わる。

ようやく終わるんだ。

あはは、最初から、こうするべきだったんだ。

そうしたら誰も、千歌さんも梨子さん、曜さんも、不幸にならないですんだ。

……どうしてこうなったのかな?

最初からこうなるって決まってたのかな?

私は何がしたかったのかな……

もういい。

もういいわ。

もうやるべきことなんてない。

ここに忘れものなんてない。

いや、これはもう忘れものなんかじゃなくて、いらないものだ。

なにも、いらない。

欲しがってはいけないんだから。

584名無しさん@転載は禁止:2018/03/15(木) 20:41:34 ID:ZoJ3UmI.
私には、何も……。

何も、いらないんだ……。

……。

…………ああ。

ああ、ああ、ああ!!!

曜さん! 曜さん曜さん!!! 曜さん!!!

大好き! 大好きでした! あなたを愛していました!!!

ずっと、死ぬことなんて怖くなかったのに!!!

あなたがいたから! あなたを愛してしまったから!!!

欲しがってしまった!!! 私なんかが! あなたを!

愛されたいと思ってしまった!!!

あなたがいなくなってからも、ずっとあなたを愛し続けました!

あなたがもうここにいなくても!

触れられなくても! 声が届かなくても!

あなたを愛し続けていました!!!

585名無しさん@転載は禁止:2018/03/15(木) 20:42:25 ID:ZoJ3UmI.
――卒業おめでとう

ひどい! 最後にそんなことを言うなんて!!!

私は、その言葉を、あなたの声で聴きたかったのに!!!

最後の最後に、こんなにもあなたを愛しく思うなんて!!!

叶うなら……

叶うなら最後に――

あなたの声が、あなたの温もりが……!

586名無しさん@転載は禁止:2018/03/15(木) 20:42:52 ID:ZoJ3UmI.
――善子ちゃん




善子「……え?」

587名無しさん@転載は禁止:2018/03/15(木) 20:43:17 ID:ZoJ3UmI.
――善子ちゃん


善子「あ……」

善子「あぁ……!」ポロポロ

善子「曜さん……っ!」

――うん。久しぶり。善子ちゃん

善子「なんで、そんな、どうして」

――迎えにきたんだ。いてもたってもいられなくて

善子「曜さん、曜さん!」ギュ

588名無しさん@転載は禁止:2018/03/15(木) 20:44:01 ID:ZoJ3UmI.
――善子ちゃん、結局こっちにきちゃったんだね。

善子「曜さん! 私、ごめんなさい、私……!」

――ううん。責めてないよ。むしろ、嬉しい。また善子ちゃんのそばにいられるんだね。

善子「私、ずっとあなたに謝りたくて……!」

――うん。私も謝りたい。はなしたいこと、いっぱいあるんだ。

善子「私も……私もです!」

――たくさん話そうよ。時間はいっぱいあるから。それで……

――千歌ちゃんと梨子ちゃんにも謝りにいこう? 私も一緒に謝るから。

――それで、仲直りしてさ、4人でたくさん楽しいことしよ? また一緒に、スクールアイドル始めよう?

善子「……はいっ! はいっ!」

589名無しさん@転載は禁止:2018/03/15(木) 20:44:44 ID:ZoJ3UmI.
もう一度だけ会いたくて。

たとえ幻でも、こうしてあなたに触れられたことが嬉しくて。

まぶしくて、美しい世界の中で、私たちはふたりきり。

その一瞬の中で、私は曜さんを抱きしめた。

強く。強く抱きしめた。

もう離しませんからね。

ずっとこうしたかったんです。

言葉よりも速く伝えた。

言葉よりも正しく伝えた。

曜さんもまた優しく笑って、私を強く抱きしめた。

彼女の胸に抱かれて、私は静かに目をつぶった。

590名無しさん@転載は禁止:2018/03/15(木) 20:51:11 ID:ZoJ3UmI.

善子?「おめでとう私」

よしこ「ありがとう私」

「これで、幸せだね」


善子「……うんっ!」

人生で幸せなこと。

大好きな人のそばにいられること。

ああ、私……

こんなに幸せでいいのかしら……

大好きな人の暖かさにつつまれて、私は心の底から幸福だった。

本当に本当に、幸福だった。



BAD√ おわり

591名無しさん@転載は禁止:2018/03/15(木) 20:54:13 ID:ZoJ3UmI.
長らくお待たせしましたBAD√完結です。
この後はノーマル、ハッピーと続きます。
いつも読んでくださっている方々ありがとうございます。

592名無しさん@転載は禁止:2018/03/15(木) 21:12:59 ID:YSf.e7GQ
乙、最高のBAD ENDだった
このよしルビの関係性がめっちゃ好きだわ
ノーマル、ハッピーも待ってるぞ

593名無しさん@転載は禁止:2018/03/15(木) 21:16:47 ID:YSf.e7GQ
あと全く別作品の曲だが「甘き死よ、来たれ」がラストシーンに凄い合ってて聴きながら読むと色々ヤバかった

594名無しさん@転載は禁止:2018/03/15(木) 21:25:29 ID:SdxkDm/k
すっごいなあ……

595名無しさん@転載は禁止:2018/03/15(木) 21:36:17 ID:nMo27rVM
最後の最後で幸せを感じることができたのが切なすぎる…
あと事情を知ってるルビィちゃんはともかく残されたマルちゃんと鞠莉ちゃんの事を思うと胸が苦しい…

ノーマル、ハッピーどちらも楽しみにしてます

596名無しさん@転載は禁止:2018/03/16(金) 00:17:08 ID:PDTYhv8o
言葉で表現するには色々と難しいけど良かったです

597名無しさん@転載は禁止:2018/03/16(金) 03:31:58 ID:yMBQIjqQ
ハッピーエンドの間違いでは?
よったん最後は幸せになれたじゃないか

598名無しさん@転載は禁止:2018/03/16(金) 17:28:20 ID:JLTlJm4I
愛する人も主人公も仲間も死ぬハッピーエンドとは

599名無しさん@転載は禁止:2018/03/16(金) 17:39:42 ID:LzR7CE06
善子ちゃんの気持ちとしてはハッピーエンドかな、とも思いましたが読む側からするとあんまりハッピーじゃないので一応バッドとしました
大筋としての話はバッドで書いたのでノーマル、ハッピーは今までと比べると少しボリュームが少ないかもしれません

600名無しさん@転載は禁止:2018/03/17(土) 00:21:53 ID:zYuml7FI
長らく乙
面白かったけど善子視点だとBADっぽい終わりではなかったかな
理由はどうあれ全てを壊したわけだから何か報いを受けながら退場してもよかったと思う
善子よりも曜が一番不幸な印象だった

続きも楽しみにしてる

601名無しさん@転載は禁止:2018/03/17(土) 17:25:12 ID:etaX4446

この後も楽しみにしてる

602名無しさん@転載は禁止:2018/03/17(土) 23:58:20 ID:1tOY4Fk2
その後の現世とかやってくれたらすごく鬱々とできそう
でもまあとりあえずは次ノーマル期待

603名無しさん@転載は禁止:2018/03/18(日) 00:54:57 ID:Um.6aag6
すごく好きなんだけど、やっぱりみんなの笑顔が見たいなぁ……

604<削除>:<削除>
<削除>

605名無しさん@転載は禁止:2018/03/26(月) 06:52:28 ID:yRivWmeM
お待たせしましたノーマル√です
>>342の次から分岐です

606名無しさん@転載は禁止:2018/03/26(月) 06:53:02 ID:yRivWmeM


善子「(それから数日、私も練習に復帰して全体のダンスもある程度完成してきた)」

善子「(……この二人以外は)」

千歌「わわっ!?」ドン

曜「あっ、ご、ごめん!」

千歌「ううん。私がタイミングずれちゃったの。こっちこそごめん」

善子「(曜さんは梨子さんのポジションに入り、千歌さんとダンスを合わせることになったけど……)」

善子「(何度練習しても噛み合わないまま時間だけが過ぎていった)」

善子「(どうしても二人のパートだけが合わなくて、曲全体のダンスが完成しても肝心の見せ場である二人のダンスが完成しないままだった)」

ダイヤ「おかしいですわね……そこまで難しいダンスではないようですが」

果南「そうだね。千歌と曜はいつも息ピッタリだから、これくらいはできると思うんだけど……」

607名無しさん@転載は禁止:2018/03/26(月) 06:53:20 ID:yRivWmeM

千歌「ごめんね。どうしても梨子ちゃんの動きに合わせちゃって……」

曜「……そっか。私も合わせられるように頑張るよ」

善子「……」

果南「二人ともちょっと休憩。いったん落ち着こう」

千歌「はーい」

曜「うん」

果南「……」

善子「(梨子ちゃんの動きに合わせちゃって、か)」

善子「……」

608名無しさん@転載は禁止:2018/03/26(月) 06:54:05 ID:yRivWmeM


善子「(……なによそれ)」

善子「(今あなたと踊っているのは曜さんなのに)」

善子「(梨子さんのことしか頭にないってワケ?)」

善子「(曜さんはあなたに合わせようと頑張っているのに……)」

善子「(……ゆるせない)」

609名無しさん@転載は禁止:2018/03/26(月) 06:54:46 ID:yRivWmeM

果南「んー、どうしたもんかな……」

ダイヤ「ここまで合わないのは想定外ですわ……」

鞠莉「ちょっと考える必要があるわね」

花丸「どうしちゃったんだろ、心配ずらね」

ルビィ「うん……」

善子「……」

善子「果南さん」

果南「ん? どうしたの」

善子「ちょっと提案なんですけど」

果南「おっ、何か思いついたの? 聞かせてよ」

善子「あのね」


善子「この曲のセンター、私にやらせてほしいの」

610名無しさん@転載は禁止:2018/03/26(月) 06:56:36 ID:yRivWmeM
果南「なっ……」

曜「えっ……」

千歌「ちょ、ちょっと待ってよ! それは……」

果南「そうだよ善子ちゃん。いくらなんでも急すぎる」

善子「でも、本番まで悠長に待ってられるの? いつまでたっても噛み合わないじゃない」

善子「いっそ組み合わせを変えた方がいいと思うんだけど」

ダイヤ「一理、ありますが……」

果南「そうは言っても……」

千歌「待って! 私、この曲は絶対にセンターをやりたい!」

千歌「踊れなくなった梨子ちゃんの分まで、せめて私が踊りたいの!」

善子「(梨子ちゃん梨子ちゃん。そればっかりね……)」

果南「それにそもそも善子ちゃんはこのパート踊れるの? たとえ変えるにしたって、できなきゃ意味がないよ」

善子「……じゃあ曜さん。試しにこのパート、私と合わせてみましょ」

曜「う、うん」

611名無しさん@転載は禁止:2018/03/26(月) 06:56:57 ID:yRivWmeM
――

曜「……!」

ルビィ「すごい……」

花丸「本当に合ったずら……」

鞠莉「天界的合致、デース」

果南「タイミングバッチリだ……練習してたの?」

善子「ええ、まあ」

善子「(毎日見てるから、というのもあるけど、こっそりちょっと練習しただけなのにこうもぴったり合うとは)」

善子「(……いや、千歌さんが、合わなすぎるだけか)」

千歌「……っ」

善子「どう? 私なら曜さんに合わせられるでしょ? 今からでもポジションを変えれば……」

千歌「ま、待ってよ! 私、ここまでがんばってきたんだから、最後までやり遂げたいよ! こんなところで投げ出したくない!」

612名無しさん@転載は禁止:2018/03/26(月) 06:57:11 ID:yRivWmeM
善子「……千歌さん、あなた梨子さんのことが気になるんでしょ?」

千歌「!」

善子「だからダンスにも集中できてないし、なにより曜さんと合わせられない」

善子「元々梨子さんとのダンスだから多少は仕方ないにしても、これだけ練習してるのに合わないなんておかしいわ」

千歌「……」

善子「東京に行った梨子さんが心配なのはもっともだけど、ダンスに影響が出てる以上センターは任せられない」

千歌「で、でも……!」

613名無しさん@転載は禁止:2018/03/26(月) 06:57:30 ID:yRivWmeM
千歌「私、この曲踊りたい! 確かに曜ちゃんと合わせられなくて、今はできないかもしれないけど」

千歌「それでも! 私にとって大事な曲なの! 絶対間に合わせるから! だからもうちょっとだけ……」

善子「……ちょっと聞きたいんだけど千歌さん。あなたはどうしてそんなにこの曲のセンターにこだわるの?」

千歌「それは、さっきも言った通りだよ。梨子ちゃんの分まで私が頑張りたいって……」

曜「千歌ちゃん……」

善子「(イライラする)」

善子「(ダメだ、止められない……)」

善子「(気持ちが……怒りが……)」

善子「……さっきから梨子さんのことばっかりだけどね」

善子「今あなたの隣で踊ってるのは曜さんなんだけど?」

千歌「……っ!」

善子「曜さんはあなたに合わせようと必死で頑張ってる。なのにあなたは梨子さん梨子さんって……」

善子「曜さんの気持ちを少しでも考えたことがあるの!?」

614名無しさん@転載は禁止:2018/03/26(月) 06:57:59 ID:yRivWmeM

善子「もっとはっきり言ってあげましょうか?」

善子「あなたは梨子さんとじゃないとこのダンスを合わせる気がないんでしょ?」

千歌「ち、ちが……」

果南「善子ちゃん!!! 言い過ぎだよ!」

善子「(どうしよう……止まらない)」

善子「当然よね。梨子さんのコンクール曲を元にした、大事な曲だものね。そりゃあ他の人とは合わせたくないわ」

千歌「……っ」

善子「(今まで押しとどめていた気持ちが、どんどん溢れてくる)」

善子「梨子さんと合わせられないんだから、もうセンターにこだわる理由はないでしょ?」

善子「(このまま全部、この気持ちが流れ出したら……)」

善子「私なら曜さんと合わせられる。いいじゃない。私がセンターで。なんなら曜さんをセンターにしてもいい。パフォーマンスのレベルは高いし適任よ」

善子「ともかく千歌さんにセンターは任せられない、それだったら……」



曜「善子ちゃん!!!」パシン!

善子「……っ!」

615名無しさん@転載は禁止:2018/03/26(月) 06:58:39 ID:yRivWmeM
曜「いい加減にして」

善子「……」

曜「千歌ちゃんはこのパートをずっと練習してる。私と合わせられるように」

曜「突然のことだから私も驚いたけど、それは千歌ちゃんだって同じ」

曜「千歌ちゃんだって本当は梨子ちゃんと合わせたいのに、こうして私に合わせてくれてるの!」

曜「それなのに、なんてそんなひどいことを言うの!」

善子「(ああ、もう……)」

善子「(自分がないがしろにされていることはどうでもいいって、どうしてあなたは……)」

善子「(あなたは……!)」

616名無しさん@転載は禁止:2018/03/26(月) 06:58:52 ID:yRivWmeM
善子「……っそれがおかしいって言ってるんです! ひどいのは千歌さんの方よ!」

善子「曲は全員のためにある! これは千歌さんと梨子さんのための曲じゃない!」

善子「梨子さんと合わせられないからって、リーダーがこんな体たらくでいいと思うの!?」

善子「この際だからはっきり言うけど、この人はあなたのことを何も考えてないわ!!!」

曜「……このっ! 分からず屋!」

617名無しさん@転載は禁止:2018/03/26(月) 06:59:06 ID:yRivWmeM

果南「ストップ、二人ともそこまで」ガシッ

ルビィ「善子ちゃん、落ち着いて?」

鞠莉「曜、あなたもよ」

善子「……ルビィ」

曜「……鞠莉ちゃん」

果南「今やるべきなのは、どうすればステージを成功させられるのかをみんなで考えることだよ」

善子「……はい」

曜「……うん」

618名無しさん@転載は禁止:2018/03/26(月) 06:59:22 ID:yRivWmeM
鞠莉「でも実際どうするの? あと本番まで一週間と少ししかないわ」

ダイヤ「練習の時間も限られてきます。どうするにせよ早めに決めなければ」

果南「……千歌と曜にはこのまま練習を続けてもらう」

千歌「! 果南ちゃん……!」

果南「せっかくここまでやってきたんだし、同じ体格の二人がセンターだとやっぱり見栄えがいい。なにより……」

果南「千歌と曜ならできると思うから」

曜「果南ちゃん……」

果南「でも善子ちゃんの言うことも一理ある。このままだと一番の見せ場を失敗してしまうかもしれない」

果南「だから3日。3日以内にダンスが合わなければ千歌は善子ちゃんと変わってもらう」

善子「……!」

619名無しさん@転載は禁止:2018/03/26(月) 06:59:45 ID:yRivWmeM
果南「……折衷案として挙げてみたけど……みんなの意見はどうかな?」

ダイヤ「まあ、落としどころではありますね」

鞠莉「いいと思うわ。これなら二人とも納得いくまでできるでしょう」

花丸「おらは賛成ずら」

ルビィ「うん。ルビィも。千歌さんと善子ちゃんの負担が増えちゃうのは心配だけど……」

果南「そうだね。そこは無理をしないでほしい。3人はどう?」

曜「私は、千歌ちゃんがそれでいいなら……」

果南「どう? 千歌」

千歌「……うん。どのみち本番までにちゃんと完成させなきゃだから、それでいいよ」

果南「善子ちゃんは?」

善子「私も、二人のダンスがちゃんと噛み合うなら……ダンスが完成するなら異論はないわ」

620名無しさん@転載は禁止:2018/03/26(月) 06:59:57 ID:yRivWmeM
果南「よし。じゃあこの方針で行こうか。今日のところはいい時間だし解散しよう」

ダイヤ「明日の練習は午後からです。遅刻しないように!」



ルビィ「……善子ちゃん、大丈夫?」

善子「大丈夫……落ち着いてるわ。ありがとう」

ルビィ「なら、いいけど……あとでちゃんと謝ろうね?」

善子「……わかってる」

621名無しさん@転載は禁止:2018/03/26(月) 07:01:39 ID:yRivWmeM
――部室

善子「……千歌さん」

千歌「……ん?」

善子「さっきは、ごめんなさい」

善子「いくらなんでも言い過ぎたわ。千歌さんだって頑張ってるの、私はちゃんと見てたのに……」

千歌「……ううん。善子ちゃんの言う通り、そもそも私がちゃんとできないからこんなことになったわけだし……」

千歌「善子ちゃんだって、このままじゃいけないって思って、強く言ってくれたんでしょ? むしろありがとうだよ」

善子「そんな、やめてよ。ひどいこと言ったのに……」

千歌「いいの。結果的にはうまいこと本番への保険もできたし、私も頑張らなきゃって思えたから!」

善子「千歌さん……」

千歌「それに善子ちゃんの言ったこと、確かにその通りだと思うから。私、リーダーなんだから、Aqoursのこと考えないとダメだよね」

千歌「失敗しちゃったら、それこそ梨子ちゃんに心配かけちゃうし!」

善子「……」

622名無しさん@転載は禁止:2018/03/26(月) 07:01:56 ID:yRivWmeM
善子「……ともかく、ごめんなさい。本番まで頑張りましょう」

千歌「うん!」

善子「それじゃあ、また明日」

千歌「……善子ちゃん」

善子「はい?」

千歌「あのね、良ければ、なんだけど……」

千歌「今日、うちに泊りにこない?」

623名無しさん@転載は禁止:2018/03/26(月) 07:02:19 ID:yRivWmeM
とりあえずここまで
いつも読んでくださる方ありがとうございます

624名無しさん@転載は禁止:2018/03/26(月) 12:43:18 ID:sxA1JHuk
ノーマル√きた!

625名無しさん@転載は禁止:2018/03/26(月) 19:34:40 ID:f60jefSc
なんだ、謙遜してたけどノーマルも面白いじゃないか!
バッド見たからこそこの切り込み方は面白い

626名無しさん@転載は禁止:2018/03/27(火) 06:58:17 ID:RVsHwgUs
ちかっちにイライラしちゃうけどそれもまた心地よい
楽しみすぎて夜しか眠れません

627名無しさん@転載は禁止:2018/03/28(水) 01:05:34 ID:kAx8qMvA

言い方はアレだけど善子が全面的に正しい

628名無しさん@転載は禁止:2018/03/31(土) 19:35:23 ID:3qSfmKi6
千歌が頑張ってるのもわかるが善子に共感してしまうなぁ
それにしてもまさかのちかよしお泊まり展開に期待しかない

629名無しさん@転載は禁止:2018/04/04(水) 09:33:55 ID:4CcBp3r2
更新待ってるぞ〜

ふと思ったが、もしこのまま千歌が善子に惚れて怒濤のちかよしルートに切り替わったらどうなるだろう……

630名無しさん@転載は禁止:2018/04/10(火) 02:32:10 ID:Cmt6syi.

――千歌の家

志満「あら善子ちゃんいらっしゃい! ゆっくりしていってね!」

志満「善子ちゃん会えるの本当に楽しみだったの! 来てくれてありがとうね〜」

善子「あはは、どうも……」



善子「……なんなの?」ボソボソ

千歌「あはは、実は志満姉、善子ちゃんのファンなんだよね……」

善子「だから呼ばれたってこと?」

千歌「以前から言われてたんだよ。どうにかして善子ちゃん呼べないかーって。志満姉がわがまま言うなんて滅多にないから、善子ちゃんだいぶ好かれてるね!」

善子「まあ、好かれてるのは嬉しいけど……」

631名無しさん@転載は禁止:2018/04/10(火) 02:32:55 ID:Cmt6syi.
――千歌の部屋

善子「それで?」

千歌「うん?」

善子「どうして私を呼んだの? お姉さんに会わせるだけが目的じゃないんでしょ」

千歌「あぁ、うん……」

善子「……ダンスのこと?」

千歌「そだね。まぁ今更言い淀んでもしょうがないかぁ」

善子「変なところで遠慮するのね。私を誘った時とかかなり強引だったのに」

千歌「あはは……」

善子「まぁいいわ。何を悩んでるの?」

632名無しさん@転載は禁止:2018/04/10(火) 02:33:32 ID:Cmt6syi.
千歌「どうしたら、いいのかなって……」

善子「……」

千歌「私ね、善子ちゃんに言われた通り梨子ちゃんのことで頭がいっぱいだった」

千歌「でもそれじゃいけないって気づかされて考えてみたの。曜ちゃんのこと」

善子「……どうだった?」

千歌「わからない……」

633名無しさん@転載は禁止:2018/04/10(火) 02:33:54 ID:Cmt6syi.
千歌「どこが変なのか考えてみたけどわからないの」

千歌「曜ちゃんね、昔から何でも一人で解決しちゃうから、なにか悩みがあっても私じゃ力になれなかった。ううん。なるまでもなかった」

千歌「でもね、今曜ちゃんが何かに悩んでて、また一人で解決しようとしてるのはわかるんだ」

千歌「曜ちゃんすごいから、今回も一人で解決しちゃうかもしれない。でもそれじゃダメなんだって思う」

善子「それはどうして?」

千歌「善子ちゃん前にさ、私にとって曜ちゃんがどういう存在なのかって聞いたよね?」

善子「……はい」

634名無しさん@転載は禁止:2018/04/10(火) 02:35:17 ID:Cmt6syi.
千歌「曜ちゃんはなんでもできて、クラスのみんなからも好かれる人気者で、みんなのヒーローだった」

千歌「いつだって曜ちゃんの周りには人がいて、そのみんなが笑顔で……昔から本当にすごい子だったの」

千歌「私みたいななんにも取り柄ない普通の人じゃ、友達にすらなれないはずなんだ」

千歌「私は小さいころに偶然曜ちゃんと知り合って、それからずっと仲良くしてきたからそばにいられるだけ」

千歌「それだけなのに、曜ちゃんは私が困ったり悩んだりしてるときはいつも助けてくれた」

千歌「だけど何もできない私は曜ちゃんに恩返しはできなくて」

千歌「確かに友達って、そういう損得で考えるものじゃないってわかってるけど、どうしてもそれを負い目に感じちゃって……」

善子「……それでも、二人はずっと一緒にいたんでしょう?」

635名無しさん@転載は禁止:2018/04/10(火) 02:36:37 ID:Cmt6syi.
千歌「曜ちゃんは優しいからね。それでも一緒にいてくれて……今だって一緒にいてくれる」

千歌「スクールアイドルも一緒に始めてくれて、たくさん助けてくれる」

千歌「私はそれにずっと甘えてきて……きっと曜ちゃんも、私が考えてることわかるんだろうね」

千歌「それを長い間ずっと放っておいて、甘え続けたから。本当に深い本音とか、話せなくなっちゃった」

千歌「これ以上、曜ちゃんに迷惑かけられない、重荷を背負わせたくないから」

善子「……」

千歌「……私ね、曜ちゃんの誘いをずっと断ってきたんだ。水泳一緒にやろうって言われててね」

千歌「でもあんなすごい曜ちゃんと一緒にやっていく自信がなかったの」

千歌「けど今は違う。スクールアイドル始めて、私にも全力で打ち込めるものができた」

千歌「いつも一生懸命に頑張ってる曜ちゃんと、初めて並ぶことができた気がするんだ」

千歌「もう曜ちゃんに追い付けなかった私じゃない。今まで曜ちゃんの誘いを断ってきたけど」

千歌「スクールアイドルは、絶対に曜ちゃんとやり遂げたいって思うんだ」

636名無しさん@転載は禁止:2018/04/10(火) 02:37:04 ID:Cmt6syi.
千歌「スクールアイドルやって、曜ちゃんと並んで踊る初めての機会だから」

千歌「だから今曜ちゃんが何かに悩んでるなら、今度こそ私が力になりたい」

千歌「……でも」

善子「でも?」

千歌「いざそう思っても、今まで私は曜ちゃんの優しさに甘えてたから、そういう悩みとか本音とか聞いたことないってことに気づいて」

千歌「今になってわかったんだ。私は曜ちゃんと一緒にいただけで、曜ちゃんのことなにも理解できてなかったって」

善子「……」

千歌「ねえ善子ちゃん。私どうしたらいいのかな。曜ちゃんのことわからないまま、曜ちゃんの隣にいる資格なんてない」

千歌「まして、一緒に踊るなんて……」

637名無しさん@転載は禁止:2018/04/10(火) 02:37:31 ID:Cmt6syi.
善子「(……私は、どうするべきなのだろう)」

善子「(曜さんのことを考えていなかった千歌さんに憤っていたのは事実)」

善子「(だから千歌さんに曜さんを任せるくらいなら、私が代わりに曜さんに合わせようと思った)」

善子「(それは千歌さんは曜さんのことを考えてないって思っていたからだけど、そうじゃなかった)」

善子「(千歌さんはわからなかったんだ)」

善子「(幼馴染みとは思えないようなねじれた関係が、そうさせてしまった)」

善子「(両方が両方に負い目を感じつづけて、それでもお互いを想い続けてここまできて)」

善子「(そんな歪な関係をずっと続けてきたんだ)」

638名無しさん@転載は禁止:2018/04/10(火) 02:37:44 ID:Cmt6syi.
善子「(このまま、千歌さんと曜さんがわかり合えないままでいたなら、きっとダンスは上手くいかない)」

善子「(それどころか、これからずっと二人は歪な関係のまま)」

善子「(……いいんじゃないか)」

善子「(だって、そうすれば私は曜さんと二人でダンスができる)」

善子「(それにこのままいけば千歌さんはきっと梨子さんと結ばれる。そうすれば曜さんは千歌さんを諦めざるを得なくなる)」

善子「(傷心の曜さんを健気に心配して、優しい言葉をかけてあげれば、きっと曜さんは私に振り向いてくれる)」

善子「(そうだ、そうすればきっと、私は幸せに……)」

639名無しさん@転載は禁止:2018/04/10(火) 02:38:15 ID:Cmt6syi.
――きっと私、邪魔者なんだ。スクールアイドルなんて、やらないほうが……

――私が、いなければよかったんだ


善子「(……違う)」

善子「(そうじゃないでしょ、津島善子……!)」

善子「(私は決めた。あの人を守るって。誰よりも強くて誰よりも弱いあの人を守るって決めたじゃない)」

善子「(曜さんが幸せになれるように、なんでもするって……!)」

善子「(自分のために曜さんを傷つけるなんてあってはならないこと)」

善子「(願うのは私の幸せじゃない。曜さんの幸せを叶えるの)」

善子「(そのために、私がすべきこと……)」

善子「(……)」

640名無しさん@転載は禁止:2018/04/10(火) 02:38:49 ID:Cmt6syi.
今回はここまで。遅れてすみません。
いつも見てくださる方々ありがとうございます。

641名無しさん@転載は禁止:2018/04/10(火) 03:23:01 ID:GMxZWqX2

なんかちょっとだけBADの臭いがする

642名無しさん@転載は禁止:2018/04/10(火) 04:53:06 ID:HZQk0B6Q
善子ちゃんが善い子すぎて辛い…

643名無しさん@転載は禁止:2018/04/11(水) 07:57:58 ID:9iX00Pwc
ノーマルだとどうなるのやら…
続きが気になるな

644名無しさん@転載は禁止:2018/04/11(水) 09:01:22 ID:Wqj7kPus
ノーマル=アニメ版エンドなのかな?
そこに至るまでのよっちゃんの心理描写がすごく気になる

645名無しさん@転載は禁止:2018/04/26(木) 11:55:16 ID:1leJe2MA
更新遅れております。申し訳ありません。
明日、明後日には更新できればと思います

646名無しさん@転載は禁止:2018/04/26(木) 12:19:34 ID:YAn6sHsc
待ってます

647名無しさん@転載は禁止:2018/04/26(木) 23:55:50 ID:x5sN43p6
楽しみに待ってる

648名無しさん@転載は禁止:2018/04/28(土) 04:48:52 ID:sKPoISdY
善子「千歌さんはどうしたいの?」

千歌「……え?」

善子「千歌さんはこのまま曜さんとわかり合えないままでいいの?」

善子「それとも、曜さんを理解したいと思うの?」

千歌「そ、そんなの当たり前だよ! 私は曜ちゃんのこと、ちゃんと理解したい!」

善子「本当に?」

千歌「え……」

善子「本当にそう思うの?」

千歌「う、うん。そう思うよ」

善子「……わかった。千歌さんがそう言うなら私も協力する」

千歌「善子ちゃん……!」

649名無しさん@転載は禁止:2018/04/28(土) 04:49:11 ID:sKPoISdY
善子「……じゃあ、私の知ってることを教えます。曜さんには内緒ね」

千歌「……うん」

善子「曜さんって小さい頃からいろんなことできたんでしょ?」

千歌「そうだね。人気者で、本当にみんなのヒーローみたいだった」

千歌「私はそんな曜ちゃんを見るのが好きだったな。私が一番最初に曜ちゃんを見つけて、それが誇らしかった」

善子「曜さんも、千歌さんが喜んでくれるのが嬉しかったと言っていたわ。だからいろんなこと頑張ったって」

千歌「曜ちゃん……」

善子「でも千歌さん、本当に誇らしかっただけ? それ以外に何も思わなかった?」

千歌「え?」

善子「いつからか千歌さんは悲しそうな顔をするようになったと、曜さんが言っていたわ」

千歌「……」

善子「ねぇ、千歌さんは、本当はどう思っていたの?」

650名無しさん@転載は禁止:2018/04/28(土) 04:49:26 ID:sKPoISdY
千歌「……曜ちゃんが誇らしかったのは本当だよ。頑張る曜ちゃんが好きなのも嘘じゃない」

千歌「本当に素敵で、キラキラして輝いてた」

千歌「でもね、そんな曜ちゃんに比べて私には何もない」

千歌「何をやっても普通で、誇れることなんてない」

千歌「いつかね、曜ちゃんみたいに、私もなにかできるんじゃないかって思ってた」

千歌「曜ちゃんみたいに輝いて、曜ちゃんの隣に立つのにふさわしい人になれると思ってた」

千歌「……そんなふうに考えてたけど、私はなにもできないまま成長して」

千歌「曜ちゃんは相変わらず輝いてて、みんなのヒーローだった」

千歌「それでもね、曜ちゃんはなんにもない私の隣にずっといてくれた」

千歌「いろんなこと一緒にやろうって誘ってくれて……結局、できなかったけど」

善子「それは、どうして?」

651名無しさん@転載は禁止:2018/04/28(土) 04:49:42 ID:sKPoISdY
千歌「怖かったんだ。また途中で諦めて、曜ちゃんに失望されるのが」

千歌「曜ちゃんはそんなことしないってわかってるけど、どうしても耐えられなくて……」

千歌「逃げるみたいに、いつも曜ちゃんの誘いを断って……」

千歌「そんなことを続けてたら、いつからか曜ちゃんは私に遠慮するようになって、私も曜ちゃんを追いかけることを諦めて」

善子「……」

千歌「それでも、私は曜ちゃんと一緒にいたかった」

千歌「曜ちゃんのこと、本当には理解できないってわかっていながら、曜ちゃんの優しさを利用して縛りつけた」

千歌「一緒にいるのが当たり前の存在で、私は曜ちゃんが、本当に大切だったから……」

652名無しさん@転載は禁止:2018/04/28(土) 04:50:34 ID:sKPoISdY
千歌「私と曜ちゃんは昔からの親友で、でもそういうふうに変にこじらせちゃったから、本心とか本音とか、私たちは言い合えないんだ」

善子「そっか……」

善子「(曜さんも千歌さんも、こんなすれ違いをずっと続けて、それでも一番近くにいて)」

善子「(……そんなねじれた関係を、続けてきたんだ)」

善子「(お互いの本当の気持ちがわからないくらい絡まってねじ曲がって、それでもお互いが大切だったんだ)」

善子「(私は、千歌さんは梨子さんに夢中で、曜さんのことなんか何も考えていないと思っていたけど)」

善子「(……どうすれば、二人はわかり合えるんだろう)」

善子「(誰かが二人を導いてあげなきゃ、ずっとこのままだ)」

善子「(私は……私のするべきことは……)」

善子「……」

653名無しさん@転載は禁止:2018/04/28(土) 04:50:49 ID:sKPoISdY
善子「千歌さん、曜さんは泣いていたわ」

千歌「え…?」

善子「東京のライブから帰って来た日。みんなが寝た後にこっそり抜け出して、一人で泣いてた」

千歌「そんな、なんで……曜ちゃんが泣くなんて」

善子「信じられない?」

千歌「だって曜ちゃんはみんなのヒーローで、誰よりも強い人で……私とは違うもん」

千歌「なんにもない私とは、全然違う……」

善子「曜さんは強いから、自分みたいに泣いたりしない。そういうこと?」

千歌「……うん」

654名無しさん@転載は禁止:2018/04/28(土) 04:51:04 ID:sKPoISdY
善子「……あのね千歌さん。確かに曜さんは強い人よ。誰よりも優しくて、みんなを笑顔にして、自分もいつも笑顔で」

善子「でもね、いくら強いからって、辛いことがあっても平気なわけじゃない」

千歌「!」

善子「東京であんな結果になって、悔しかったのは曜さんも一緒」

善子「曜さんだって、千歌さんと一緒に悔しがって、泣きたかったんじゃないの?」

千歌「……曜ちゃん」

善子「……千歌さん。ずっと聞きたいことがあったの」

千歌「……え?」

655名無しさん@転載は禁止:2018/04/28(土) 04:51:21 ID:sKPoISdY
善子「大会が終わって東京から帰るとき、曜さんはずっとあなたを心配していましたよね?」

善子「なんであなたはあの日、曜さんになにも答えなかったの?」

千歌「あ……」

善子「そのくせ梨子さんには本音を話して、最後には立ち直って」

善子「……ねぇ、私、あなたを許せないわ」

善子「曜さんがあの日なんて言ったか、わかる?」

千歌「……」

善子「『私は千歌ちゃんを傷つけてばっかりだ。きっと私は邪魔者なんだ。スクールアイドルなんてやらない方がよかった』」

千歌「!」

善子「『私なんて、いなければよかった』」

善子「そう言っていましたよ?」

656名無しさん@転載は禁止:2018/04/28(土) 04:51:47 ID:sKPoISdY
千歌「そんな、私……」

善子「千歌さん、私わからないんです」

善子「梨子さんも曜さんも、あなたを心配してくれていたのは同じなのに、なんで曜さんには何も答えなかったの?」

善子「……なんで曜さんから逃げたの?」

善子「あの日のあなたの行動が、曜さんを傷つけた。だから私は、あなたを許せない」

善子「あなたに曜さんの隣で踊ってほしくない。今のあなたと一緒だと曜さんが傷つくから」

善子「私は曜さんを守るから。何があっても守るから」

千歌「善子ちゃん……」

善子「決めてください。曜さんから離れるか、それとも……」

657名無しさん@転載は禁止:2018/04/28(土) 04:51:59 ID:sKPoISdY
千歌「私、考えなきゃ……」

千歌「本当は曜ちゃんのことがずっと怖かった。ううん、曜ちゃんと向き合うのが、曜ちゃんに捨てられるのが怖かった」

千歌「でも、逃げてちゃいけないんだ」

千歌「私が弱いせいで、ずっと曜ちゃんを悲しませて、傷つけてきた」

千歌「曜ちゃんの……ううん、私たちのこと、ちゃんと考えなきゃ」

千歌「それで、曜ちゃんと話さなきゃ。私のこと。曜ちゃんのこと。これからの私たちのこと」

千歌「もう逃げたりしないって。ちゃんと曜ちゃんのこと見るからって。私のことも見てほしいって」

千歌「だから……」

千歌「だから、今すぐ会いに行かなきゃ!」

658名無しさん@転載は禁止:2018/04/28(土) 04:52:12 ID:sKPoISdY
善子「……そう。それがあなたの答えなのね」

千歌「ダメ、かな」

善子「それは千歌さんが曜さんのために考えた答えなんでしょ?」

善子「じゃあ、悪いわけないわ」

千歌「ごめんね、お泊りに誘ったの私なのに」

善子「いいえ、むしろそれでいい。曜さんのこと、よろしくね?」

千歌「うん!」

659名無しさん@転載は禁止:2018/04/28(土) 04:52:27 ID:sKPoISdY
千歌「行ってきます!」

善子「待って千歌さん! 最後に一つだけ」

千歌「?」

善子「曜さんはこうも言っていたわ」

善子「『千歌ちゃんと一緒に何かを頑張りたい。最後まで一緒にやりとげたい』って」

千歌「……!」

善子「気を付けてね?」

千歌「うん! ありがとう善子ちゃん!」

――

善子「(……まさか今から向かうなんてね。これは予想してなかった)」

善子「(でもよかった。曜さんと千歌さんの間の壁は、これできっとなくなる)」

善子「(今まで失ってきた時間を埋めてくれるはず)」

善子「あとは、信じるしかないか……」

志満「あら? 千歌ちゃんったらお客様をおいていくなんて……旅館の娘失格ね」

善子「えっ!? お、お姉さん!?」

志満「志満って呼んでいいのよ〜?」

善子「志満、さん……」

660名無しさん@転載は禁止:2018/04/28(土) 04:53:23 ID:sKPoISdY
志満「善子ちゃんごめんね? 千歌ちゃんってちょっと強引なところあるから」

善子「いいんです。千歌さんのそういうところ、好きなので」

善子「それに、私も行ってほしいって思ったから」

志満「……そっか。信頼されてるのね」

善子「ええ……」

志満「よし! じゃあ善子ちゃん、寝るのにはまだ早いでしょ? 少しお話しましょ♪」

善子「へ?」

志満「善子ちゃんとじっくり話す機会ってもうないと思うし! いろんなお話聞きたいわ!」

善子「ええっと私で良ければ……というかいつでも来ますよ」

志満「あら嬉しい♪ さ、入って。お茶とお菓子を用意するから!」

善子「……はい」ニコッ

661名無しさん@転載は禁止:2018/04/28(土) 04:53:51 ID:sKPoISdY
遅れました。申し訳ありません。
いつも読んでくれてる方々ありがとうございます。

662名無しさん@転載は禁止:2018/04/28(土) 08:57:09 ID:.P1BP7qo
善子ちゃんホントに善い子

663名無しさん@転載は禁止:2018/04/30(月) 02:31:30 ID:5bioqETM

少しでも浄化されればいいが

664名無しさん@転載は禁止:2018/05/01(火) 17:04:28 ID:AsTmB8Gk
これで仮に曜は救われたとして善子はどうなるのか…
続きが気になりますね

665名無しさん@転載は禁止:2018/05/13(日) 05:27:46 ID:rFH163Vw
まだかな…?

666名無しさん@転載は禁止:2018/05/14(月) 06:31:01 ID:JtW9UwII
更新遅れております。申し訳ありません。
私事ですがブラック企業に入ってしまったため思うように時間がとれておりません。
水曜、木曜には更新したいです。

667名無しさん@転載は禁止:2018/05/14(月) 07:48:20 ID:L0fKaW3Q
待ってるぞい

668名無しさん@転載は禁止:2018/05/14(月) 17:15:42 ID:G9Al4LrA
ゆっくり自分のペースで進めてくださいな

669名無しさん@転載は禁止:2018/05/14(月) 17:32:17 ID:7hBOJqFA
自分の生活を優先してくれ

670名無しさん@転載は禁止:2018/05/16(水) 02:51:26 ID:nyFQBXNw
堕ちないようにね

671名無しさん@転載は禁止:2018/05/16(水) 15:30:56 ID:/yO3dyMM
いつまでも待ってるので自分のペースで楽しんで

672名無しさん@転載は禁止:2018/05/19(土) 05:10:44 ID:dN/lJ7LU
――翌日


花丸「おぉ……」

ルビィ「すごい……」

ダイヤ「完璧、ですわね」

果南「……驚いたよ、昨日のうちに練習したの?」

千歌「うん! どう? すごいでしょ!」

果南「うん。完璧。振りまで新しくしてくるなんてね」

果南「それに、このダンスなら二人にピッタリだ。よくできてるよ」

曜「えへへ、ありがとう!」

鞠莉「congratulations! 最高にクールよ二人とも!」ダキッ

曜「わっ、苦しいよ鞠莉ちゃん」

673名無しさん@転載は禁止:2018/05/19(土) 05:10:59 ID:dN/lJ7LU
善子「(翌日の練習、千歌さんと曜さんはいきなり自分たちのパートを見てほしいと言って)」

善子「(私たちの前でいきなり新しい振り付けを披露して、完璧に踊ってみせた)」

善子「(おそらく昨日の夜、千歌さんが曜さんの家に行って、そのまま完成させたんだろう)」

善子「(二人の様子を見ると、千歌さんはうまくやってくれたようだ)」

善子「(曜さんは昨日までと違って以前のような明るい笑顔を見せていて)」

善子「(本当に、出会った頃のような曜さんに戻っていた)」

674名無しさん@転載は禁止:2018/05/19(土) 05:12:38 ID:dN/lJ7LU
――

曜「善子ちゃん!」

善子「……曜さん」

曜「あの、昨日はごめん」

善子「……」

曜「善子ちゃんは私の、みんなのことを考えて言ってくれたのに、あんなこと……」

善子「……」

曜「だから、ごめんなさい」

善子「千歌さんとは……」

曜「え……」

善子「千歌さんとは、どんな話をしたの?」

675名無しさん@転載は禁止:2018/05/19(土) 05:12:51 ID:dN/lJ7LU
曜「え、なんで千歌ちゃんがうちに来たって知ってるの……?」

善子「まあまあいいじゃない。それで何をお話したの?」

曜「……別に、大した話はしてないんだ」

曜「千歌ちゃんがいきなり家にきて教えてくれたの。私が気づかなかった、私自身のこと。そして、千歌ちゃんのこと」

曜「それから、私たちだけのダンスを作ろうって言ってくれて」

曜「それで、不思議とあっという間にできあがっちゃってね、それこそ拍子抜けするくらい」

曜「でもそれだけじゃなくて、千歌ちゃんが言ってくれたことが私を助けてくれた」

曜「苦しいことも悲しいことも全部なくなっちゃうくらい……」

676名無しさん@転載は禁止:2018/05/19(土) 05:13:03 ID:dN/lJ7LU
―回想

千歌「あ、この写真懐かしいね。運動会のときとか。確か曜ちゃんは一位で」

千歌「凄かったなぁ……」

曜「……」

千歌「……曜ちゃんあのね、私、謝りたくて」

曜「……え?」

千歌「話すこと、話さなきゃいけないこと、たくさんある」

曜「千歌ちゃん……」

千歌「私、曜ちゃんのこと何もわかってなくて、傷つけちゃったよね?」

曜「ダンスのこと? それは千歌ちゃんが気にすることじゃ……」

千歌「それもある……けどそれだけじゃないよ」

曜「千歌ちゃん……?」

677名無しさん@転載は禁止:2018/05/19(土) 05:13:14 ID:dN/lJ7LU
千歌「……東京のイベントから帰って来た日」

曜「!」

千歌「曜ちゃん、私のことたくさん心配してくれたよね。大丈夫?って。悔しくないの?って」

千歌「私、あの時何も言えなかった。曜ちゃんの前で泣けなかった」

千歌「悔しいって、言えなかった」

千歌「曜ちゃんも泣いてなかったから。だから曜ちゃんの前では私も泣かないって思った」

千歌「でも本当は曜ちゃんもつらかったんだよね……?」

千歌「私が悲しくならないように、笑顔で頑張って、慰めようとしてくれたんだよね?」

曜「……」

千歌「だから曜ちゃんには、弱い部分を見せたくなかった。心配させたくなかった」

千歌「でも結局それが曜ちゃんを傷つけた。曜ちゃんの気持ちを踏みにじった」

曜「そ、そんなことないよ!」

678名無しさん@転載は禁止:2018/05/19(土) 05:13:31 ID:dN/lJ7LU
曜「私だって千歌ちゃんの気持ちを考えないであれこれ余計な心配して、逆に傷つけちゃって」

曜「梨子ちゃんがいなかったら、それこそ取り返しがつかなかったと思うし……」

千歌「でも、曜ちゃんの気持ちを無下にしたのは本当のことだよ」

千歌「私ね、曜ちゃんは何も言わなくてもわかってくれるって、ちゃんと伝わってるって勘違いしてたんだ」

曜「……」

千歌「覚えてる? 私たちずっと一緒だったよね。何をするにも一緒で、いつも二人で並んで……」

千歌「それが当たり前だった。離れることなんか一度もなかった」

千歌「でも、いつからか曜ちゃんはどんどんすごくなって、私は隣にいられなくなって、いつしか後ろから眺めるだけになった」

千歌「一緒にできないことが増えても、曜ちゃんは「仕方ないね」って、優しく笑ってくれた」

千歌「いつか一緒に何かを頑張るんだって、私を信じてくれた」

千歌「それを私は、ずっと裏切ってきた」

千歌「いつか私も曜ちゃんみたいに輝けるんだって、そんな都合のいいことを考えながら曜ちゃんを縛りつけた」

679名無しさん@転載は禁止:2018/05/19(土) 05:13:47 ID:dN/lJ7LU
千歌「曜ちゃんを悲しませるってわかってたのに。なにも一緒にできないってわかってたのに」

曜「ち、違うよ! 私が勝手に千歌ちゃんのそばにいたいって思っただけ!」

曜「私だって千歌ちゃんを悲しませるってわかってて、千歌ちゃんのそばに居続けた」

千歌「……それは、どうして?」

千歌「曜ちゃんはどうして、そこまでして私のそばにいてくれたの?」

曜「……私は」

曜「私は千歌ちゃんと、一緒のことに夢中になってみたかったから」

千歌「……曜ちゃん」

曜「自分勝手なわがままだってわかってるよ。迷惑だってわかってるよ。でも私は」

680名無しさん@転載は禁止:2018/05/19(土) 05:14:02 ID:dN/lJ7LU
千歌「ありがとう」

曜「え……」

千歌「私もそうだよ。ずっとそう思ってたの」

千歌「曜ちゃんと一緒に、何かをやり遂げたいって思ってた」

曜「……嘘だ」

千歌「本当だよ」

曜「嘘だ!」

曜「だって千歌ちゃん悲しんでたよ! 私と一緒にいて苦しそうだった!」

曜「運動会で一番を取った時も! 水泳に誘った時も! 私の高飛び込みを見るときも!」

曜「何かで一番を取るたびに、ずっと悲しそうだった!」

曜「千歌ちゃんは、私と一緒なのは嫌なんだって……!」

681名無しさん@転載は禁止:2018/05/19(土) 05:14:55 ID:dN/lJ7LU
千歌「曜ちゃん」ギュ

曜「……!」

千歌「ごめんね」

曜「え……」

千歌「私が弱かったから。曜ちゃんのことずっと傷つけてきたんだよね」

曜「違う、千歌ちゃんは弱くなんかない」

曜「私が、邪魔者だったから……! 私がいなければ、千歌ちゃんはもっと幸せだった!」

曜「もう私なんていらないでしょ!? みんなが……梨子ちゃんがいるんだから!」

千歌「曜ちゃん!」

曜「……っ」

682名無しさん@転載は禁止:2018/05/19(土) 05:16:05 ID:dN/lJ7LU
千歌「そんなふうに考えちゃうくらい、苦しかったんだね」

千歌「ごめんね、全然知らなかった」

千歌「昔はさ、言葉なんかなくてもなんでもわかり合えてたのに」

千歌「今は、曜ちゃんが悲しんでることも苦しんでることも、なにもわからなくなっちゃった」

千歌「言葉にしないとわからないことだってたくさんあるのに、私たちは大丈夫って安心して……」

千歌「だから、曜ちゃんはこんなに苦しいんだよね?」

曜「千歌ちゃん……!」

千歌「曜ちゃん、私の気持ち、聞いてくれる……? ちゃんと伝えたいんだ」

曜「……うん」

683名無しさん@転載は禁止:2018/05/19(土) 05:16:35 ID:dN/lJ7LU
千歌「曜ちゃん」

千歌「たくさん悲しませちゃってごめんなさい」

千歌「辛い思いさせちゃってごめんなさい」

千歌「もう逃げないから。もう間違わないから」

千歌「私は、スクールアイドルで輝くから、曜ちゃんと同じようにヒーローになるから」

千歌「私の輝きを、特等席で見ていてほしい! あの頃みたいに、私の隣で笑っていてほしい!」

千歌「曜ちゃん、私と一緒に、踊ってくれる?」

684名無しさん@転載は禁止:2018/05/19(土) 05:22:42 ID:dN/lJ7LU
曜「……あはは」

千歌「曜ちゃん?」

曜「私バカだ……バカ曜だ……」グスッ

曜「……うん。千歌ちゃん。私ももう逃げない」

曜「千歌ちゃんと一緒なら、私はなんだって頑張れる」

曜「ううん。千歌ちゃんと一緒に、頑張りたい!」

曜「千歌ちゃんと一緒に、スクールアイドルに夢中になりたい!」

曜「だから千歌ちゃん、私と一緒に踊ってください!」

千歌「うん!」

曜「……ああ、久しぶりに千歌ちゃんの隣にいる気がする」

千歌「もう離れたりしないでね。私も一緒に走るから」

曜「うん!!!」

685名無しさん@転載は禁止:2018/05/19(土) 05:23:29 ID:dN/lJ7LU
――

曜「私は、もう大丈夫」

曜「千歌ちゃんが私の気持ちをわかってくれたから。千歌ちゃんの気持ちもちゃんとわかったから」

曜「千歌ちゃんのそばにいていいってわかったから。もう悲しくない」

曜「大好きな気持ちだって隠さない!」

曜「すっごく幸せで、なんでもできちゃいそうなんだ!」

善子「……そっか」

曜「……善子ちゃんには、たくさん心配かけて、迷惑もかけちゃったね」

善子「ううん。曜さんが元気になったなら私は良かった」

曜「心細いときも善子ちゃんがいてくれて、本当に助けられた」

曜「いつも私のこと考えてくれて……それだけで私はたくさん救われた」

曜「ありがとう。善子ちゃんに会えて本当に良かった」

686名無しさん@転載は禁止:2018/05/19(土) 05:24:12 ID:dN/lJ7LU
曜「大好きだよ! 善子ちゃん!」

善子「……!」

曜「これからはちゃんと先輩らしくするから、よろしくね!」

善子「……はい」

――

善子「曜さん、先に帰ってていいですよ」

曜「えー? 一緒に帰ろーよ」

善子「ちょっと用事があって。それに……」

曜「それに?」

善子「大好きは隠さないんでしょ?」

曜「え……! えぇっとぉ///」

善子「今日は私より、一緒にいるべき人がいるはずですから」

曜「う、うん///」

善子「……がんばってね曜さん。応援してる」

曜「……! うん!!!」

687名無しさん@転載は禁止:2018/05/19(土) 05:25:02 ID:dN/lJ7LU
曜「じゃあまた明日! 練習がんばろうね!」


ガラッ

善子「……」

善子「……はは」

善子「バカね、私ってば」

688名無しさん@転載は禁止:2018/05/19(土) 05:25:52 ID:dN/lJ7LU
大変遅れましてすみません。
時間がかかっても絶対に完結はさせますので。
いつも読んでくださる方々ありがとうございます。

689名無しさん@転載は禁止:2018/05/19(土) 08:45:40 ID:F8Lu11hU
乙です
善子ちゃんが善い子すぎて辛いよ…

690名無しさん@転載は禁止:2018/05/19(土) 15:32:44 ID:mj1OtEwQ

待つ

691名無しさん@転載は禁止:2018/05/19(土) 16:22:19 ID:MNyKbjVI
そうやって今度はお前が寂しいの我慢するんやな……

692名無しさん@転載は禁止:2018/05/20(日) 00:41:15 ID:qDLlXUnc
更新きてた!嬉しい
イッチありがとな

693名無しさん@転載は禁止:2018/05/22(火) 18:00:02 ID:FueVTOq.
善子ォ!と叫びたくなる展開だな…
気長に待ってるぞい

694名無しさん@転載は禁止:2018/05/23(水) 00:05:24 ID:XjapuQEo
バッドエンドより悲しいんだが……

695名無しさん@転載は禁止:2018/05/24(木) 02:53:20 ID:6Kc1V9OQ


696名無しさん@転載は禁止:2018/06/07(木) 21:35:46 ID:gScrE.yw
ドン・ファンの隠しネタ
http://bit.ly/2JVc7to

697名無しさん@転載は禁止:2018/06/12(火) 19:02:01 ID:Bm/EGKgQ
遅れてしまい申し訳ありません
週末には更新したいと思います

698名無しさん@転載は禁止:2018/06/12(火) 20:38:49 ID:sWW9W3xw
正座待機

699名無しさん@転載は禁止:2018/06/18(月) 12:44:54 ID:dAVEwUSY
wkwk

700名無しさん@転載は禁止:2018/06/18(月) 16:12:04 ID:6VEtf0Ho
すみません、深夜に更新します

701名無しさん@転載は禁止:2018/06/19(火) 02:00:13 ID:9vdDAIZM
それから私たちは予備予選を迎え、最大限のパフォーマンスをした。

結果は大好評で予選はトップ通過、大きな反響を呼んだようで 千歌さんと曜さんの試みはうまくいったようだった。

もちろん私も、Aqoursのみんなも全力でやった。二人の努力を無駄にしないため、梨子さんのため、ラブライブのため。

いろいろな理由があったけれど私はやっぱり曜さんのために頑張った。

曜さんの努力を、想いを無駄にしたくなかったから。

なにより、 曜さんが幸せそうだったから。

702名無しさん@転載は禁止:2018/06/19(火) 02:00:32 ID:9vdDAIZM
梨子さんが帰ってくる日はAqours全員で駅まで迎えに行き、みんなで梨子さんを讃えた。


千歌「お帰り梨子ちゃん!」

曜「梨子ちゃん!お疲れ様!」


梨子さんはコンクールを終え、無事に受賞を果たしたそうだ。

Aqoursの予選も梨子さんのコンクールもうまくいって私たちは一安心するとともに、その先の地区予選へむけてますます士気を高めた。

それから千歌さんの家でささやかなお祝いのパーティーをして、その日はそのままお泊まりをした。

703名無しさん@転載は禁止:2018/06/19(火) 02:01:02 ID:9vdDAIZM

――夜

善子「…」


私は相変わらず眠れないままで、余計なことばかりを考えている。

本当にこれでよかったのか。

いいやこれでよかったはずだ。

そんな意味のない自問自答を繰り返して、自分が正しかったのかどうかを一人で考えていた。

それはなんど繰り返しても同じ結論になり、その結論も本当に正しいのかとまた考え直し、そんな堂々巡りが終わらなかった。

そうしたまましばらく経って、やっぱり眠れそうにないので起き上がった。

当然だけどみんな眠っていて、かすかに波の音が聞こえていた。

ただ、ひとつだけ……


善子「(また、千歌さんと梨子さんがいない……)」


以前のように二人だけで……

でも、あの時とは状況が違う。

千歌さんと曜さんはああやってわかり合えて、想いだってちゃんと伝わってるはず。

だから、私が心配するようなことなんてなにもない。

……考えすぎ、だろうか。


善子「……」

704名無しさん@転載は禁止:2018/06/19(火) 02:01:21 ID:9vdDAIZM
――外

善子「はぁ……」


私は以前のように外に出ていた。

どうせあのまま眠るなんてできないし、風にでも当たろうと思った。

ふと、曜さんの言葉を思い出す。

――ありがとう。善子ちゃんに会えて本当に良かった!

――大好きだよ! 善子ちゃん!


善子「……」


そばにいたい。

知りたい。知ってもらいたい。

役に立ちたい。褒められたい。

それだけですべてが満たされるような気がした。

私はそれだけでいいと、本当に思っていた。

曜さんの幸せを手伝うことができれば、それ以上の幸せはないと。

705名無しさん@転載は禁止:2018/06/19(火) 02:01:40 ID:9vdDAIZM
そして私は曜さんの幸せに協力できた。

曜さんへ恩返しをできた。

それで、いいはずなのに……


「梨子ちゃん、やったんだね」

「うん。千歌ちゃんのおかげだよ」



……!

千歌さんと、梨子さんだ。

前と同じ場所……気づいたらここにきていた。

そうか、二人ともここにいたんだ。

そういえばコンクール前にもここへ来ていたっけ。


「それで千歌ちゃん。この前のことなんだけど……」

「……」

「返事、聞かせてくれるかな」

706名無しさん@転載は禁止:2018/06/19(火) 02:02:10 ID:9vdDAIZM
クッソ短くてすみません
今週中にもう一回更新できればと思います

707名無しさん@転載は禁止:2018/06/19(火) 02:53:52 ID:KdxWYKwI

きっとああなるんだと思うけどまだ怖い

708名無しさん@転載は禁止:2018/06/19(火) 04:04:12 ID:GV1TsbFs
バッドエンドは終わったにしても何をもってノーマルエンドとするのか期待

709名無しさん@転載は禁止:2018/06/19(火) 04:24:18 ID:3B6X1eFU
乙です

710名無しさん@転載は禁止:2018/06/21(木) 12:40:32 ID:hbFNN/sQ
待ってた

711名無しさん@転載は禁止:2018/06/30(土) 11:34:15 ID:GiiZzUWA
続き来てた!
千歌がどう答えるのかめっちゃ気になるな…

712名無しさん@転載は禁止:2018/07/02(月) 04:26:56 ID:pLefcOAY
善子「……」


二人を見つけられたのは全く偶然。

少しだけ期待はしていたけど、本当に出くわすとは思わなかった。

咄嗟に隠れて二人の会話に耳を傾ける。

いけないことだとわかっていても、止められなかった。


梨子「千歌ちゃんのおかげで、諦めてたピアノをまた始められた」

梨子「ううん、それどころか以前よりももっと前に進めた。自分でも驚いてる」

梨子「私一人じゃ絶対ここまでこれなかった。千歌ちゃんの言葉がなかったら私、もうとっくに終わってた」

梨子「全部、全部ちかちゃんのおかげだよ」

千歌「……」

梨子「……もう一度言うね」

梨子「千歌ちゃん、大好きだよ」

713名無しさん@転載は禁止:2018/07/02(月) 04:27:14 ID:pLefcOAY
前と同じ言葉。

あの時私は耐えきれずに逃げた。だからあの後にどんな会話があったのか詳しくは知らない。

けどこうしてまた告白をしているということは、まだ返事をしていないのだろう。

正直、今も怖い。今すぐにでもみっともなくこの場から逃げだしたい。

でも、それでも千歌さんの答えを知りたいと思った。

ここまできたら、逃げるなんて選択肢はなかった。

714名無しさん@転載は禁止:2018/07/02(月) 04:27:35 ID:pLefcOAY
千歌「梨子ちゃん……」

梨子「……」

千歌「ありがとう。梨子ちゃんの気持ち、すごく嬉しい」

善子「……っ」

千歌「普通でなんにもない私でも、梨子ちゃんの力になれるなんて思ってなかった。だから本当に嬉しいよ」

梨子「千歌ちゃん……」

千歌「……でもごめん。梨子ちゃんの気持ちには答えられない」

善子「……!」

梨子「……そっか」

715名無しさん@転載は禁止:2018/07/02(月) 04:27:50 ID:pLefcOAY
梨子「理由を聞かせてくれる?」

千歌「……私ね、普通なの」

梨子「え……」

千歌「何をやっても普通で、輝くことなんてできない。そんな、何も出来ない人間」

梨子「……」

千歌「いつか、何か大きなことができるんじゃないかって、根拠もないまま期待して、気づいたら高2になってた」

千歌「私はこのまま、何も成し遂げないまま高校を出て、なんとなくで大学に通って、就職して……普通の人生を過ごすんだろうなって思った」

千歌「でもスクールアイドルに出会って、梨子ちゃんに出会って……私の人生は劇的に変わった」

千歌「普通を抜けだして、輝けるって。本気で頑張れることを見つけて、ここまできた」

716名無しさん@転載は禁止:2018/07/02(月) 04:28:08 ID:pLefcOAY
千歌「……あのね、梨子ちゃんと会えたこと、本当にうれしく思ってる」

千歌「私と同じで何かに悩んでて、前に進む方法がわからなくて」

千歌「梨子ちゃんがピアノと向き合おうって頑張ってるのを見てたら、私も一緒に頑張ろうって思える」

千歌「梨子ちゃんが隣にいると一緒に成長できている気がして、不思議だけど勇気をもらえる」

千歌「そんな梨子ちゃんと出会えたのは運命だって、奇跡だって思う」

717名無しさん@転載は禁止:2018/07/02(月) 04:28:21 ID:pLefcOAY
千歌「でも、でもね。私考えたんだ。私が本当に大事にしていたものってなんなのかって」

梨子「……それは?」

千歌「私のずっと近くにあったもの。だけど、蔑ろにしてきたもの」

千歌「考えてみると、私の夢はそこから始まったんだって思ったの」

千歌「みんなと一緒に輝きたい。私はスクールアイドルでそれを叶えようと思った」

千歌「でも私のその夢の始まりは、もっと前……ずっと昔だった」

梨子「……」

千歌「何もない普通の私のそばに、ずっといようとしてくれた人」

718名無しさん@転載は禁止:2018/07/02(月) 04:28:37 ID:pLefcOAY
千歌「私はその子と違って何も出来なかった。だからその子のすごいところをずっと見てるだけだった」

千歌「いろんな人に囲まれて、いつも笑顔で、どんなこともできちゃう、私のそばにいるにはもったいないくらいの子」

千歌「私はその子とずっと一緒で、大好きで、そんな姿を誇らしいと思ってて……」

千歌「それと同時に、ああはなれないんだろうなってあきらめて、一人で勝手に壁を作ってた」

千歌「その子はね、ずっと私をいろんなことに誘ってくれた。遊びだったり趣味だったり部活だったり」

千歌「私はきっとそのどれも上手くできないから、本気になれないからその子をがっかりさせちゃうって思って、ずっと断ってきた」

千歌「……それがその子を傷つけるってわかってて、そばに居続けた」

719名無しさん@転載は禁止:2018/07/02(月) 04:28:51 ID:pLefcOAY
千歌「その子はいつも『仕方無いね』って優しく笑ってくれて、私はそれに甘え続けて……ずっと傷つけて」

千歌「そんな私と、それでも一緒になにかをやりたいって言ってくれた。一緒にスクールアイドルやるって言ってくれた」

千歌「何一つ返せなかったのに、傷つけ続けたのに、私の夢を一緒に追いかけてくれるって言ってくれた」

千歌「何もないって思ってた私でも、この子にできることがあるとするなら、今を一緒に、全力で駆け抜けること」

千歌「私の夢はきっと、その子と輝きたいって願いから始まったんだ」

千歌「みんなと輝くこと。それが私の夢。だけど……」

千歌「一番最初に、一緒に輝きたいって思ったのは、その子なんだ」

720名無しさん@転載は禁止:2018/07/02(月) 04:29:05 ID:pLefcOAY

千歌「……だから、ごめんなさい。私はその子の隣にいたいって思うから、梨子ちゃんの隣にはいられない」

梨子「……そっか」


千歌さんが言い終えると、二人はしばらく無言だった。

どういう顔をしていたのかは私の場所からはよく見えなかった。

千歌さんの言葉を聞いて、私は呆然としていた。

驚いた、嬉しい、悲しい。

いろんな気持ちがあったけれど、一番は千歌さんの想いに感動したから。

強く曜さんを想う気持ちが、私には眩しいと思った。今までの千歌さんとはあまりにも違って言葉が出なかった。

721名無しさん@転載は禁止:2018/07/02(月) 04:29:22 ID:pLefcOAY
梨子「……あぁーあ! フラれちゃった!」

千歌「り、梨子ちゃん?」

梨子「残念だけど、千歌ちゃんがそう言うならしかたないね」

梨子「もう、その子には告白したの?」

千歌「えっと、実はまだなんだ……」

梨子「じゃあ、もしかしたら千歌ちゃんがフラれる可能性もあるわけだ」

千歌「うぅ、そう、なのかな……」

梨子「そうなったら、私にもチャンスがあるってことだよね?」

千歌「え、えぇ!?」

梨子「なんて、冗談。ごめんね、いじわるしたくなっちゃった。でもフったんだからこれくらい許してね?」

千歌「あはは、私は何も言えないよ……」

722名無しさん@転載は禁止:2018/07/02(月) 04:29:37 ID:pLefcOAY
梨子「まぁ、私は千歌ちゃんには本当に感謝してる。それが伝えられたなら、いいかな」

千歌「……うん」

梨子「今度は千歌ちゃんが、夢を叶えてね」

千歌「……うん!」

梨子「じゃ、私はもう少しここにいるから、千歌ちゃんは先に戻っててくれる?」

千歌「え、でも……」

梨子「傷心なんだから、ちょっと一人になりたいの。それくらいいいでしょ?」

千歌「……わかった。先に戻ってるからね」

梨子「……千歌ちゃん」

千歌「ん?」

梨子「……がんばってね」

千歌「……うん。ありがとう梨子ちゃん」

723名無しさん@転載は禁止:2018/07/02(月) 04:29:53 ID:pLefcOAY
千歌さんが家に戻るのを見て、私はいまだに動けないでいた。

目の前で起こった出来事をどう受け止めればいいかわからなかった。

呆然とただ立ち尽くしてどれくらい経ったのか、私の意識を引き戻したのは


梨子「善子ちゃん? そんなところで何してるの?」


梨子さんの言葉だった。


梨子「ふふ、奇遇だね? こんなところで、こんな時間に」

善子「……」

724名無しさん@転載は禁止:2018/07/02(月) 04:30:17 ID:pLefcOAY
お待たせしました、今回はここまで
いつも読んでくれてる方々ありがとうございます

725名無しさん@転載は禁止:2018/07/02(月) 04:43:03 ID:1aKog8.w
乙です

726名無しさん@転載は禁止:2018/07/02(月) 07:41:59 ID:y5268qSI

みんないい子なのに辛いな、幸せになってもらいたい

727名無しさん@転載は禁止:2018/07/02(月) 13:51:59 ID:sU9Dk55g
http://pr4.work/g/kiyo

728名無しさん@転載は禁止:2018/07/02(月) 21:07:53 ID:P9CU90dw
待ってたよ!

729名無しさん@転載は禁止:2018/07/03(火) 01:42:33 ID:bVWZqnXA

良かったというべきか

730名無しさん@転載は禁止:2018/07/10(火) 07:57:10 ID:WaaDhi/Y
幸せなのに切ない……

731名無しさん@転載は禁止:2018/07/14(土) 03:55:42 ID:rxnP88zg

善子「梨子さん……」

梨子「やっぱり今の、見てた?」

善子「…………」

梨子「ああごめんね。別に責めるつもりはないの。ただ、恥ずかしいところ見られちゃったなって」

善子「そんなこと……」

梨子「あのさ、善子ちゃん……」

梨子「ちょっと傷心で寂しいから、一緒にいてくれる? 一人だと心細くて……」

梨子「……死んじゃいそうだからさ」

善子「……はい」


それから私は梨子さんと並んで防波堤に座って、朝焼けの海を眺めていた。

薄青い空間はいつの間にかオレンジの日に照らされて、そして朝を迎える。

どこか透明な空気の中、波の音だけを聞いていた。

私も梨子さんも、一言も話さなかった。

732名無しさん@転載は禁止:2018/07/14(土) 03:56:00 ID:rxnP88zg
――数日後


曜「善子ちゃん!」

善子「曜さん? どうしたの?」

曜「その、報告したいことがあって」

善子「報告?」

曜「え、えっとね、その、私……」

善子「……落ち着いて曜さん。ちゃんと聞いてますから」

曜「う、うん。ごめん。あのね善子ちゃん、私……」


曜「千歌ちゃんと、お付き合いすることになったんだ」

733名無しさん@転載は禁止:2018/07/14(土) 03:57:14 ID:rxnP88zg
善子「……そう、なんですね」

曜「うん。善子ちゃんにはたくさんお世話になったから、一番に伝えたくて」

曜「善子ちゃんのおかげだよ。いつも支えてくれて、元気づけてくれて……」

善子「いいえ。曜さんはずっとがんばってきたんだから。それが報われただけ」

曜「……あのね、善子ちゃんがいなかったら、私はずっと何も言えないままで」

曜「ずっと千歌ちゃんとわかり合えないままだったかもしれない」

曜「もしそうなったら私、取り返しのつかないことをしたかもしれない」

曜「だから善子ちゃん、ありがとう」

734名無しさん@転載は禁止:2018/07/14(土) 03:57:31 ID:rxnP88zg
――


「善子ちゃん」


善子「……梨子さん」

梨子「さっき千歌ちゃんから聞いたの。曜ちゃんとお付き合いすることになったって」

善子「私も……曜さんから同じことを聞きました」

梨子「そっか。善子ちゃんもか」

善子「私もちょっとだけ焚き付けた側だから」

梨子「うん。千歌ちゃんも言ってたよ」

善子「千歌さんが?」

梨子「善子ちゃんに言われて、ずっと悩んでた大事なことの答えが出せたって」

善子「……」

梨子「それが曜ちゃんとのことだったみたいだけど……」

735名無しさん@転載は禁止:2018/07/14(土) 03:57:44 ID:rxnP88zg

梨子「……こんなこと考えても仕方ないんだけどさ」

梨子「もしかしたら、善子ちゃんが何も言わなければ、千歌ちゃんは私の隣に来てくれたのかな?」

善子「……」

梨子「私が東京に行かないで千歌ちゃんのそばにいて、曜ちゃんの付け入る隙もないくらい千歌ちゃんを求めたら……」

梨子「千歌ちゃんと恋人同士になれたのかな……?」

善子「梨子さん……」

梨子「……なんて、冗談だよ。変なこと言ってごめんね」

736名無しさん@転載は禁止:2018/07/14(土) 03:58:04 ID:rxnP88zg
梨子「私の千歌ちゃんへの想いと、曜ちゃんの千歌ちゃんへの想い。そして、千歌ちゃん自身の想い……」

梨子「単純に私が負けちゃっただけ、なんだよね」


……力なく笑う梨子さんに、かける言葉がなかった。

梨子さんが選ばれなかった理由。

私が千歌さんを焚き付けたこと。それは間違いなく原因の一つだ。

梨子さんの言う通り、私があの日千歌さんに何も言わなければ結果は違っていたかもしれない。

軽はずみな気持ちで言ったわけじゃない。

曜さんに悲しい顔をしてほしくなかった。

幸せになってほしかった。

だから私はああしたんだと思う。

私自身がどうなろうと構わないって、決めたから。

737名無しさん@転載は禁止:2018/07/14(土) 03:58:24 ID:rxnP88zg
梨子「……善子ちゃんは」

善子「?」

梨子「善子ちゃんはこういう経験、ある?」


こういう経験、とは……

失恋という意味だろうか

梨子さんは今まさに失恋をしたばかり。

想い人に気持ちを伝えて、そのうえで断られた。

私は、どうだろう。

……。

738名無しさん@転載は禁止:2018/07/14(土) 03:58:48 ID:rxnP88zg
善子「失恋なんて、とうてい言えない」

善子「もっと弱くて惨めで、土俵に上がってもいない」

善子「何も伝えられなくて……失恋すら、できなかった」

梨子「……そっか。まあ、どっちが偉いとかないけどね。私も善子ちゃんも結果は同じだし」

梨子「善子ちゃんも善子ちゃんで頑張ってたこともあるだろうし、本当にそれぞれだよ」

善子「……」




梨子「ねえ善子ちゃん。改めて聞きたいんだけど……」

梨子「善子ちゃんは曜ちゃんのこと、好き?」

739名無しさん@転載は禁止:2018/07/14(土) 03:59:31 ID:rxnP88zg
お待たせしました。今回分です。
ノーマル√はおそらく次で最後になります。
読んでくださってる方々ありがとうございます。

740名無しさん@転載は禁止:2018/07/14(土) 08:52:47 ID:BE8zISnw
善子ちゃんと梨子ちゃんの心境が心にグサグサくる……
ふたりとも良い子過ぎて辛い……

741名無しさん@転載は禁止:2018/07/14(土) 13:19:53 ID:cDN6x2tk
ノーマルってなんだっけ……?ってレベルで切なすぎてつらい……

742名無しさん@転載は禁止:2018/07/15(日) 02:53:02 ID:itBpi.pw


743名無しさん@転載は禁止:2018/07/15(日) 02:56:07 ID:PA7SHG/A
http://nazr.in/11y6

744名無しさん@転載は禁止:2018/07/27(金) 23:50:34 ID:lLhKWdGQ
ノーマルという名のビターエンドだね…
結末が気になるところだ

745名無しさん@転載は禁止:2018/08/21(火) 01:47:48 ID:uEIohNPw
気長に待つか

746名無しさん@転載は禁止:2018/08/26(日) 10:24:20 ID:.LQc7MCA
まだかな…?

747名無しさん@転載は禁止:2018/08/28(火) 07:55:39 ID:6VIjKqdY
大変お待たせして申し訳ありません
明日、明後日の夜には投稿できるよう調整しております
次の更新でノーマル√完結予定です

748名無しさん@転載は禁止:2018/08/28(火) 08:39:13 ID:7mYbRMo6
待ってた

749名無しさん@転載は禁止:2018/08/28(火) 12:23:35 ID:FBHI.fQ2
正座待機

750名無しさん@転載は禁止:2018/08/29(水) 04:46:22 ID:RQRBOq1I
ゆっくり待ってるよ

751名無しさん@転載は禁止:2018/08/30(木) 05:25:34 ID:bsHOfXsw


善子「はい、好きです」

善子「笑った顔が好き。かっこいいところが好き。何でもできるところが好き。明るいところが好き。優しいところが好き」

善子「実は弱くて臆病なところが好き。泣き虫なところが好き。なんでも一人で抱え込んじゃうところも好き」

善子「全部私のものにしたいくらい、大好きで……」

善子「心の底から、愛していました」

梨子「……素敵だね」

梨子「私も、そうだったんだ……千歌ちゃんを、本当に愛してたよ」

752名無しさん@転載は禁止:2018/08/30(木) 05:26:36 ID:bsHOfXsw
――


梨子「善子ちゃんさ、これで良かったって思ってる?」

善子「え……」

梨子「なんとなくわかるんだ。善子ちゃんの考えてること。同族だからかな?」

善子「どうかしら。よくわかりません」

善子「最初は、あの人が笑ってくれれば、幸せになってくれればよかった」

善子「ううん。それは今でも同じ。だけど……」

善子「…………」

梨子「……辛いね、善子ちゃん」

梨子「好きな人の幸せが、自分の幸せだったら良かったけど……」

梨子「そううまくはいかないね」

善子「……本当に良かったはずなの。私はずっと、こうなることを望んでた。そのために頑張ってきた」

善子「私は、私の願いを叶えた。だからこれでいいはずなの」

善子「それでも、悲しいのは……」

善子「……ああ、そっか」

梨子「善子ちゃん?」

善子「ねえ梨子さん」




善子「私の初恋……曜さんへの初恋、終わっちゃった……」

753名無しさん@転載は禁止:2018/08/30(木) 05:27:02 ID:bsHOfXsw

梨子「……うん、私も。残念だけどね」

善子「梨子さんは、悲しくないの?」

梨子「もちろん悲しいよ? 今も一人になったら泣いちゃいそうなくらい」

善子「……」

梨子「でもね善子ちゃん。私って曜ちゃんのことも大切な友達だって思ってるから」




梨子「ちゃんと、祝福できるよ」


――


梨子「じゃあ私はここで。また明日ね善子ちゃん」

善子「ええ。さよなら」

梨子「……あのさ、たまにこうして二人でお話したりしない?」

梨子「善子ちゃんとは立場が同じだから、いろいろわかってくれると思うし」

梨子「……私もわかってあげられると思う」

善子「……ええ。ぜひ」

梨子「ふふっ。ありがとね」

754名無しさん@転載は禁止:2018/08/30(木) 05:28:54 ID:bsHOfXsw


――

私と話している間、梨子さんは笑顔を崩さなかった。

でも私はその心の内を推し測ることは出来なかった。

私も梨子さんも同じように失恋をしたけれど、同じ心の傷を負ったとは限らない。

いや、私は曜さんに失恋した反面、曜さんを幸せにするという望みを叶えられた。

けど梨子さんはただ失恋をしただけ。

私などでは理解できない傷を負っているのだろうと思う。

梨子さんと会話して、少しだけ理解することは出来た。

でも少しだけだ。

私や梨子さんのこの気持ちは、これからどこへ行くのだろう。どこへ行けばいいのだろう。

答えなんか出るはずもなく、私の心はどこかぽっかり穴の開いてしまったような、そんな気持ちになった。

755名無しさん@転載は禁止:2018/08/30(木) 05:29:12 ID:bsHOfXsw
――数日後、屋上

善子「……」


今日はAqoursの練習は休み。

地区予選の準備が思った以上に順調。メンバーのやる気もかなり高まっている。この勢いのまま練習を重ねていこう。

とみんな思っていたけれど…


ダイヤ「オーバーワークはいけません。勢いとやる気にまかせて無茶をしすぎると怪我にもつながってしまいますわ」


とのことで、落ち着いた時間をとろうとのことだった。

確かに私自身もその通りで、やる気ももちろんあるけれどそれ以上に他のことを考えたくなかったからAqoursの活動にうちこんでいた。

だからこういうふうに時間が空いてしまうと余計なことばかり考えてしまう。

一人でいると、なおさら。

それでもこうしてなにもないはずの屋上に来ているのは、どうしてだろう。

……いいや、むしろ何もない方がいいから。誰もいない方がいいからなのかもしれない。

一人だと思い悩むくせに、誰かがいても煩わしいと思う。

この気持ちに出口はなかった。

756名無しさん@転載は禁止:2018/08/30(木) 05:29:28 ID:bsHOfXsw
ルビィ「善子ちゃん」

善子「……ルビィ」


気が付くと、後ろにルビィがいた。

放課後、すぐに教室からいなくなった私を心配してきてくれたのだろうか。

それとももっと前から、私の気持ちを読み取っていたのだろうか。

……優しい子だ。


ルビィ「あのね、善子ちゃん、その……」

善子「……心配してくれてるの? 大丈夫よ」

ルビィ「善子ちゃん、でも……」

善子「ルビィ、私、今本当にうれしいの」

善子「曜さんが本当に幸せそうで……あんなに心から嬉しそうにしてる曜さんなんて初めて見た」

善子「だから、私も……すごく、幸せなの」

善子「すごく、すごく……」グスッ

善子「本当よ、本当なの」グスッ

善子「本当の、本当に、幸せ、なの」

善子「幸せ……なんだから……!」ポロポロ

757名無しさん@転載は禁止:2018/08/30(木) 05:29:45 ID:bsHOfXsw

ルビィ「……善子ちゃん」ギュ

ルビィ「ルビィね、善子ちゃんが頑張ってきたこと知ってるよ」

ルビィ「今までたくさん、辛い思いして、我慢して、戦ってきたこと、ちゃんと知ってる」

ルビィ「だからね、だからね、善子ちゃんは本当に立派で」



ルビィ「素敵な、人間だよ」ポロポロ




善子「……なによ、なんでアンタが泣いてるのよ」

善子「アンタが……泣くことなんて、ないでしょ……」ポロポロ

ルビィ「だって、だってぇ……善子ちゃんがつらいの、わかるから」ポロポロ

ルビィ「ルビィは……ルビィだけは、わかるんだから……!」ポロポロ

ルビィ「一緒に、泣かせてよ……」

善子「バカね……本当にバカよアンタは」

善子「でも、ありがとね……」グスッ

ルビィ「善子ちゃん、つらかったね」

ルビィ「頑張ったね……!」

善子「う、うぅ……うぁぁぁぁぁ……!」

758名無しさん@転載は禁止:2018/08/30(木) 05:30:08 ID:bsHOfXsw
――

ルビィ「えへへ、ごめんね善子ちゃん。ルビィまで泣いちゃって……」

善子「ううん、こっちこそ。ありがとう」

ルビィ「善子ちゃんのしたこと、間違ってないよ」

ルビィ「つらい選択だったと思うけど……ルビィはとっても誇らしいよ」

善子「……」

ルビィ「……これからも、つらいだろうけど」

善子「うん。もう大丈夫」

善子「……とは言えないかもしれないけど、頑張る」

善子「だって、曜さんが笑ってくれたんだもの」

ルビィ「……」

善子「幸せになって、くれたんだもの」

759名無しさん@転載は禁止:2018/08/30(木) 05:30:23 ID:bsHOfXsw
ルビィ「……うん。きっと、善子ちゃんのおかげだよ」

ルビィ「曜さんも千歌さんも、善子ちゃんに感謝してる」

善子「……ええ。そうだと、いいわね」

ルビィ「ね、そろそろ帰ろうよ。今日は沼津にでも遊びに行かない? 花丸ちゃんも行きたいって言ってるんだ」

善子「……うん。行きましょうか」

ルビィ「えへへ! じゃあ早く教室まで戻ろうよ! 花丸ちゃんも待ってるよ!」タタタ

善子「ええ……」


ルビィは楽しそうに駆けだした。

人の気持ちを理解し過ぎて同調してしまう子だ。

さっきも泣いていたように、今もつらいのだと思う。

それでも、私を気遣ってくれているのだろう。

こんな私を心配してくれている。

……。

760名無しさん@転載は禁止:2018/08/30(木) 05:30:38 ID:bsHOfXsw
善子「あ……」

ふと屋上から校門を眺めると、千歌さんと曜さんが歩いているのを見つけた。


千歌「〜〜〜〜〜」

曜「〜〜〜〜〜!」



善子「……」


二人とも、とても幸せそうだった。

今まで二人が楽しそうに話しているのは何度も見てきた。

でも、今は違う。もっと、楽しいよりももっと満ち足りている顔で。

ああいうのを、幸せと呼ぶのだろう。

あんなに生き生きと、輝かしい目をした曜さんなんて初めて見た。

私では曜さんを、あんなふうに笑わせてあげることなんかできなかっただろう。

きっと千歌さんでなければいけなかった。曜さんを救えるのは、千歌さんだけ。

……私は、その手助けをしただけ。

それだけだ。

私にできたのは、それだけだ。

だから、これでいいんだ。

私は正しいことをしたんだ。

761名無しさん@転載は禁止:2018/08/30(木) 05:30:54 ID:bsHOfXsw

善子「うっ……ぐすっ……あぁ……」

悲しいことなんてなにもない。

悲しいなんてあるわけない。

でも……

……。

…………ああ。

ああ、ああ、ああ!!!

曜さん! 曜さん曜さん!!! 曜さん!!!

大好き! 大好きでした! あなたを愛していました!!!

叶うなら、あなたの隣を歩いて……

あなたを支えたかった!

春に、出会いと別れの不安の中を一緒に踏みだしたかった。

夏に、茹だるような暑さの中を連れまわしてほしかった。

秋の冷たい風の中、身を寄せて「寒いね」なんて二人で笑って歩いて。

冬に、冷たくなったあなたの手を包んであげたかった。

762名無しさん@転載は禁止:2018/08/30(木) 05:31:08 ID:bsHOfXsw
願っていました。

あなたとの幸せな未来を、願っていました。

でも、そうか。

もう、終わるんだ。

あなたに恋をした夢の時間が、もう終わろうとしている。

だけど、どうしてだろう。

とても悲しくて、でもとても暖かい。

……きっと、思い出があったから。

とても優しい思い出があったから。

私は、曜さんに救われた。

どうしようもない、救いようのない人間モドキの私を、人間にしてくれた。

嬉しかった。

私でも、まっとうな人間になれるんだって思えた。

私でも、幸せに生きられるんだって、教えてくれた。

763名無しさん@転載は禁止:2018/08/30(木) 05:31:25 ID:bsHOfXsw
それは、初恋の夢。

この手に触れようとした瞬間に消えてしまった。

けれど、胸には確かに残っていた。

あの時もらった優しさが。

暖かさが。

私を救ってくれた笑顔が。

まだ私を、照らしてくれていた。


善子「……うん」


歩ける。

だって私は教えてもらったから。

私の生き方を教えてもらったから。

大切なものを見つけるうれしさ。

それを失う悲しさ。

そして、幸せを追いかける大変さ。

曜さんからもらったものぜんぶ。

これは私の宝物だ。

ぜんぶ抱えて生きていくんだ。

764名無しさん@転載は禁止:2018/08/30(木) 05:31:39 ID:bsHOfXsw

善子「大丈夫」


歩こう。

私にはまだ行くことのできる道がある。

進もう。

嬉しいことも悲しいことも全部抱えて。

きっとそれが、生きるということ。

私はまだ、歩きはじめたばかりだ。

765名無しさん@転載は禁止:2018/08/30(木) 05:31:53 ID:bsHOfXsw
――

ルビィ「あっ、善子ちゃん来たよ!」

花丸「遅いずら! ルビィちゃんが呼びに行ったっていうのに何してたの?」

善子「ごめんね、ちょっと……」

花丸「ちょっと?」

善子「ううん。なんでもない。行きましょ」

花丸「……そっか」

ルビィ「じゃあ早く行こう! 遊ぶ時間なくなっちゃうよ!」

善子「ちょ、ちょっとルビィ! 引っ張らないでよ!」

花丸「あぁ! 二人ともまってよ〜!」

ルビィ「えへへ……!」

善子「……!」

花丸「置いてかないでほしいずら〜!」

ルビィ「急いで花丸ちゃん! バス来ちゃうよ!」

善子「早く行くわよ!」

花丸「も〜!」

善子「……ふふ」

766名無しさん@転載は禁止:2018/08/30(木) 05:32:08 ID:bsHOfXsw


曜さん。

おめでとうございます。

あなたが幸せで、私も幸せです。

あなたに恋をして本当に良かった。

幸せな夢を見られて本当に良かった。

全部あなたにもらったもの。

大切な友達。尊敬できる先輩。

スクールアイドル。

私の生きる意味。まっとうな人生。

でも、それだけじゃきっとダメで。

これからは、曜さんがくれたものにしがみついているだけじゃダメなんだ。

私、がんばります。

曜さんがくれたものが間違いじゃないって、証明するために。

767名無しさん@転載は禁止:2018/08/30(木) 05:32:49 ID:bsHOfXsw
ねぇ、曜さん。

私も。

私もきっとあなたのように幸せになります。

だから、いつかその時が来たら。

あなたのとびきりの笑顔で、祝福してください。


ノーマル√ おわり

768名無しさん@転載は禁止:2018/08/30(木) 05:37:13 ID:bsHOfXsw
お待たせしてすみません、ノーマル√ラストです
不完全燃焼な感じでアレですが一応これで完結ということで

次はハッピーエンド√に続きます

769名無しさん@転載は禁止:2018/08/30(木) 08:16:39 ID:T3SbuJaI
おつ
ハッピールートも待ってる

770名無しさん@転載は禁止:2018/08/30(木) 08:35:53 ID:0e9oY08M
おつ
ハッピーエンド楽しみ

771名無しさん@転載は禁止:2018/08/30(木) 20:25:10 ID:ZPcvJWNM
乙です
ハッピーエンド√も楽しみに待っております

772名無しさん@転載は禁止:2018/08/30(木) 20:31:19 ID:tR1ZJ5BA
不完全どころかトゥルー感すらあるのだが。

773名無しさん@転載は禁止:2018/08/31(金) 06:38:22 ID:RGp1IVx2
おつ
善子はもちろん、祝福できるって言い切った梨子も良い子だな
ハッピーエンドも楽しみにしてる

774名無しさん@転載は禁止:2018/09/01(土) 19:37:55 ID:ZQeaQaZs
乙、ノーマル√はビター風味なエンドだったね
バッドエンド√でも思ったけどこの善子とルビィの関係性好きだわ
ハッピーエンド√も待ってます

775名無しさん@転載は禁止:2018/09/05(水) 01:54:19 ID:Y37VIjyo

曜が分裂でもしないとハッピーエンドにならなそうだけどどうなるのかな

776名無しさん@転載は禁止:2018/09/22(土) 20:05:55 ID:gWrDMf7o
ここまで来ると全員に幸せになってもらいたいものだ

777名無しさん@転載は禁止:2018/10/18(木) 20:35:29 ID:2/JGha12
そろそろ続きを……

778名無しさん@転載は禁止:2018/10/21(日) 02:01:11 ID:Q2IbOsdw
待ってるぜ

779名無しさん@転載は禁止:2018/11/09(金) 05:19:44 ID:5Qwzc.2Y
大変お待たせして申し訳ありません
今週中に再開します

780名無しさん@転載は禁止:2018/11/09(金) 07:41:54 ID:unXh9qBA
待ってた

781名無しさん@転載は禁止:2018/11/09(金) 08:30:48 ID:s/V94egc
正座待機

782名無しさん@転載は禁止:2018/11/11(日) 15:35:26 ID:V98tAuiQ
待ってました
期待

783名無しさん@転載は禁止:2018/11/12(月) 04:32:06 ID:U9sxIV4A
大変お待たせしました
ハッピーエンド√になります
>>417からの分岐ですが、更新が空き過ぎてしまいましたので
最初の数レスは既存の文章を修正して再掲しております

784名無しさん@転載は禁止:2018/11/12(月) 04:32:27 ID:U9sxIV4A
――善子の家

善子「ただいま……」

善子母「あらおかえり。今日は早いのね」

善子「晩ごはん、今日はいらない」

善子母「……そう。食べたくなったら言ってね?」

善子「……うん。ありがとう」


――善子の部屋

善子「……」ドサッ

善子「う……うぅ……」グスッ

善子「どうして……どうして……」

785名無しさん@転載は禁止:2018/11/12(月) 04:32:48 ID:U9sxIV4A
どうして、こうなってしまったんだろう。

私はただ、曜さんに幸せになってほしかっただけだった。

本当にそれだけだった。

だって曜さんは、私を人間にしてくれた。

人間になれない、どうしようもなく救いようのない人間モドキの私でも、真っ当に生きられるんだって教えてくれた。

あの人のためならどんなことだってしようって思えた。


「でも、あなたは何もしなかったわ」


真っ暗な私だけの空間。声のする方に振り向くと、私がいた。

私とおんなじ顔をした、不気味な笑みを浮かべる私がいた。


善子?「曜さんを助けたいと思いながら。曜さんを幸せにしたいと思いながら。曜さんを守りたいと思いながら」

善子?「結局あなたは何もしなかった」

786名無しさん@転載は禁止:2018/11/12(月) 04:33:09 ID:U9sxIV4A
善子「ち、違う! 私は……」

善子?「違わないわ。日に日に傷ついて弱っていく曜さんを見て、あなたはただどうにかなるように願っていただけ」

善子?「曜さんからもらうだけもらって、何も返さないままじゃない」

善子「違う私は、本当に……」

善子?「誰かを幸せにできると思った?」

善子「あ……あぁ……」

善子?「たくさんたくさん傷つけてきた。壊してきた。ダメだって思いながら、抗えなかった」

善子?「そして、それで構わないって思った」

善子「違う!!!」

善子?「大好きなものが、大好きな人が壊れていくのがたまらなく好きだった。どうなっていくのか見たくてしょうがなかった」

善子「黙れ!!!」

善子?「私一人だけが、楽しかった!」

善子「黙れ!!!!!!」

善子?「本当は、曜さんが傷ついて壊れていくのを見るのが楽しかったんじゃないの?」

善子「黙れ!!! 殺すぞ!!!」

目の前の私の髪を掴んで、思い切り地面に叩きつけた。

何度も何度も叩きつけた。加減なんて一切しなかった。本気で壊そうとしたから。

久しくこんなことはしていなかった。する必要なんてなかったし、そうしようなんて思いもしなかったから。

だから、久しぶりの何かを壊す感触に、私は、ワタシハ……

787名無しさん@転載は禁止:2018/11/12(月) 04:33:34 ID:U9sxIV4A
……いつからだろうか。

幼い頃。それこそまだ花丸と一緒に幼稚園に通っていた頃。

私は自分が、本当の天使だと思った。

お母さんが私を天使みたいだって言ったから。

みんなが笑顔をくれて、私の周りにいる人はみんな幸せだったから。

みんな私をたくさん愛してくれたから。

だから私もみんなを愛した。

「、私本当は天使なの!」

みんなを愛してみんなに愛される。そんな私は本物の天使なんだと疑わなかった。

788名無しさん@転載は禁止:2018/11/12(月) 04:34:09 ID:U9sxIV4A


「そうじゃないって気づいたのは、いつだったかな」

また背後から声がした。振り向くと幼い姿の、幼稚園の頃の私がいた。

よしこ「私、みんなをたくさん愛したよ」

よしこ「みんなのことが大好きで、喜んでもらえることはなんでもやった」

よしこ「みんな笑ってて、幸せそうで……」

よしこ「でも突然、それら全てを壊してみたくなった」

よしこ「いま愛してくれるみんなを、例えば思いっきり嫌いになってみたらどうなるんだろう」

よしこ「傷つけて傷つけて、思いきり壊してみたらどうなるんだろう」

よしこ「思い始めたら止まらなくて」

よしこ「一度壊してみたら、とてもとても気持ちよくて」

よしこ「私、本当は、壊すために愛していたのかなって……」

789名無しさん@転載は禁止:2018/11/12(月) 04:34:34 ID:U9sxIV4A
よしこ「ねえ、今もそうなの?」

善子「違う! 違う! 私はもうあの頃の私じゃない!」

善子「今度こそ、今度こそ誰も壊さずに、誰も不幸にしないで、みんなを愛して、みんなに愛されるって決めた……」

善子「そう決めた! だから、だから……」


善子?「だから私を押しのけて、あなたが生まれた」


善子「っ……!」


頭を掴んで地面に叩きつけたままだった私が、おもむろに顔を上げて不気味に睨み、そして立ち上がる。

その眼差しにすくんだ私は、よろよろと後ずさった。





よしこ「ねえわたし。覚えてる?」

よしこ「わたしたち、大好きな人たちをたくさん傷つけてきたね」

よしこ「わたし、みんながだいすきだったよね」

よしこ「……ようさんが、だいすきなんだよね」

790名無しさん@転載は禁止:2018/11/12(月) 04:34:46 ID:U9sxIV4A
善子?「……愛されたかった?」

善子「……愛され、たかった」

善子?「おこがましいのね。醜い人間モドキのくせに」

善子「……そう、ね」

よしこ「わたしたち、どこで間違えちゃったのかな……」

よしこ「……それとも、最初から間違いだったのかな」

善子「……わからない」

善子?「わからないまま、みんなを壊して……それで」

善子「なにを、してたのかしらね……はは」

791名無しさん@転載は禁止:2018/11/12(月) 04:35:09 ID:U9sxIV4A
よしこ「……ねえ」

よしこ「これから、どうしたい?」

善子「……?」

よしこ「もう、今度こそわたしは幸せにはなれないよ」

善子?「曜さんが壊れてしまったからね」

善子「……」

よしこ「なにが、できるかな?」

善子?「何を望むのかしら」


善子「私は……」

私はこの学校で曜さんに出会った。

最初は相容れないと思った。私とは正反対の、不幸なことなんか何もなくて、毎日が幸せな人なんだと思った。

でも違った。曜さんは私が考えているような順風満帆な人なんかじゃなくて、必死であがいて、努力していて。

だから、素晴らしくて。

文字通り完璧な人だった。誰よりも人間らしくて美しい。誰もが羨み憧れ心を寄せる、太陽のように眩しい人。

私のような人間モドキがあの人と一緒にいられるなんて奇跡みたいだった。

本当に幸せだった。何もかも輝いて見えた。

こんな私でも、真っ当に生きられるんじゃないかって、この人のそばでならそれができるって思えた。

792名無しさん@転載は禁止:2018/11/12(月) 04:35:39 ID:U9sxIV4A
でも救えなかった。

私は何も出来なかった。



失ってしまった。


もうあの人が私に笑いかけてくれることはないだろう。

だから、今までのことを思いだしていた。

――善子ちゃん

名前を呼んでくれるだけで心が弾んだ。

――善子ちゃん!

一緒にいるだけで胸が高鳴った

――善子ちゃん!!

お話するだけでドキドキが止まらなかった。

――善子ちゃん!!!

その笑顔だけで、私は救われた。

793名無しさん@転載は禁止:2018/11/12(月) 04:35:52 ID:U9sxIV4A
善子「曜さん……」


私のすきなひと。わたしの、たいせつなひと。


善子「……」


また笑ってほしかった。愛されたかった。

今の私に、できること……

794名無しさん@転載は禁止:2018/11/12(月) 04:36:16 ID:U9sxIV4A

善子?「壊してしまいましょう」

善子「……え?」

善子?「壊しちゃうの。Aqoursを、みんなを、ぜーんぶ壊しちゃうのよ!」

善子?「だって、Aqoursなんてものがあるから曜さんは壊れてしまった」

善子?「Aqoursが……千歌さんと梨子さんがいるかぎり曜さんは苦しみ続ける」

善子?「そんなの許せないでしょ? あの二人だけが幸せで、曜さんは不幸なままなんて」

善子?「ね、そう思わない?」


よしこ「……それで、いいかな?」


善子「……」



Aqoursを壊す。千歌さんと梨子さんを、壊す。

簡単だ。ちょっと心を攻撃すれば、優しいあの人たちはすぐに壊れる。

Aqoursの中心であるあの二人が壊れれば、当然Aqoursもなくなる。

曜さんを苦しめた原因。Aqoursの活動。千歌さんと梨子さん。

それがなくなれば、どれだけ気持ちのいいことだろうか。

そうすればもう、曜さんは苦しまなくていい。

いいじゃないか。最高だ。

曜さんを壊した報いを受けさせてやろう。

私ならできる。たやすいことだ。

795名無しさん@転載は禁止:2018/11/12(月) 04:36:55 ID:U9sxIV4A
でも……

じゃあ、そうすれば、曜さんは笑ってくれるだろうか。

また、私の名前を呼んでくれるだろうか。

優しくて素敵な笑顔で、明るくて元気な声で「善子ちゃん」って。


――善子ちゃん


善子「……」


……違う、そうじゃない。

誰も傷つけないって決めた。

真っ当な人間になるって決めた。

もし私がそんなふうに全部壊してしまったら、きっと曜さんは悲しむ。

自分のせいだって、自分がみんなを傷つけたんだって思い込んで自分を傷つける。

そうしたら今度は私が曜さんを壊してしまう。


善子「……そうじゃない」

善子?「……?」

善子「私は、私たちはもうそんなことしない。今度こそ誰も傷つけないで、誰かのために頑張るって決めた」

よしこ 「……」

善子? 「へえ? どうやって」

善子 「……わからない」

善子?「はあ?」

796名無しさん@転載は禁止:2018/11/12(月) 04:37:22 ID:U9sxIV4A

善子「わからない、けど、がんばるの」

善子?「何言ってるの。今までさんざんそうやって耐えようとして、それでも誰かを傷つけずにいられなかったくせに!」

善子?「今だって、憎くて壊したくてたまらないくせに!」

善子「……そうね、きっと私、根っこの部分は何も変わってない。いくら取り繕っても拭おうとしても、絶対になくならない」

善子?「そうよ! 私たちはそうやって生きるしかない! そういうふうにできている!」

善子?「どうしようもないの、決まっているの! だから……!」

善子「でも……」

797名無しさん@転載は禁止:2018/11/12(月) 04:37:37 ID:U9sxIV4A
善子「もう、それを言い訳にしたりしない。たとえどこかで失敗しても、そこから目を背けない。自分がしたことを忘れない」

善子?「だから! そんなことやったって最後には全部壊れちゃうの! どうしようもないのよ!」

善子「大丈夫。どうしようもないって思っても、きっとみんなが助けてくれる」

善子?「何を根拠に! Aqoursだって曜さんだって、きっと最後には私を排斥する! なんでそう言い切れるの!」


善子「だって、そう、信じてる」

善子?「な……」

よしこ「……!」

善子「きっとみんなが、曜さんが、また私を助けてくれる。私をAqoursに誘ってくれた時みたいに。そんな気がするわ」

善子?「……根拠もなにもない、ただの妄想じゃない! 世界はそんなに優しくない!」

善子?「そんな、そんな世界……」

よしこ 「そんな世界は、いや?」

善子?「そんな、そんな世界だったら……」



善子?「どれだけ、よかったか……」

798名無しさん@転載は禁止:2018/11/12(月) 04:37:50 ID:U9sxIV4A
善子「以前の私とはもう違う。本当に大切に思える、思ってくれる仲間がいる」

善子「今度こそうまくいく。私はみんなを信じたい」

よしこ「……いいんじゃないかな」

善子?「ちょっと……!」

よしこ「わたしがそう決めたなら、そうしようよ。がんばってみよう」

善子?「……後悔するわ。絶対に」

よしこ「そうかもね……でも、大好きな人だから。初めての気持ちだから。そのためにがんばりたい」

よしこ「『わたし』も本当は、そう思うでしょ?」

善子?「……」

よしこ「わたしたちは、曜さんが大好き。このままなんて嫌だよね」

善子「本当は怖い。けど、Aqoursのために、曜さんのために、がんばってみたい」

善子?「なんで、そこまで……そんなに前を向こうと思えるの」

799名無しさん@転載は禁止:2018/11/12(月) 04:39:16 ID:U9sxIV4A
善子「どうにかできるとしたら、きっと私しかいない」

善子「……それに」

善子?「……」

善子「曜さんのことが、好きだから」

善子「好きな人に愛する人に幸せになってほしい」

善子「私のしたことで曜さんが笑ってくれるなら……」


善子「それは、素敵なことじゃない?」ニコッ

善子?「……!」

よしこ「……」


善子「行ってくるわ」

800名無しさん@転載は禁止:2018/11/12(月) 04:41:18 ID:U9sxIV4A
大変遅れまして申し訳ありません
上手く時間が取れませんでしたがここからは間が空かないよう心がけます

待っていてくださった方々は本当に申し訳ありません、そしてありがとうございます
たまにレスでケツを蹴り上げてくれればと思います

801名無しさん@転載は禁止:2018/11/12(月) 07:17:37 ID:heh9j1Gw
待ってたぞ

802名無しさん@転載は禁止:2018/11/12(月) 21:29:25 ID:7JszDlhc
待ってました
善子ちゃん……頑張れ……!

803名無しさん@転載は禁止:2018/11/12(月) 23:03:27 ID:7mvBct7o
続ききた!
ハッピーエンド√はそこからの分岐なのか…
ここからどうなるのか楽しみだ

804名無しさん@転載は禁止:2018/11/14(水) 00:57:36 ID:dmWLFa76
めっちゃ楽しみにしてる

805名無しさん@転載は禁止:2018/11/20(火) 02:39:16 ID:T/L/GnoM


806名無しさん@転載は禁止:2018/12/09(日) 16:59:45 ID:2GfYAYZ6
これの更新が楽しみでしたらば覗いてる

807名無しさん@転載は禁止:2019/01/12(土) 22:07:04 ID:.pK.Vos2
もう1ヶ月か……

808名無しさん@転載は禁止:2019/01/15(火) 21:58:47 ID:KKyv/c5s
おうケツ蹴り上げに来たぞ!
待ってるぞ!

809名無しさん@転載は禁止:2019/01/15(火) 23:24:53 ID:z1SKVa5k
久々にBAD√一気読みしたけどやっぱ凄いわこの話……
HAPPY√も待ってるぞい

810名無しさん@転載は禁止:2019/01/15(火) 23:31:27 ID:KKyv/c5s
>>809
俺も同じことして発破かけたくなった
>>584ここの独白とか好きすぎるんだわ

811名無しさん@転載は禁止:2019/02/08(金) 02:19:55 ID:IsGvDhUs
待ってるぞ

812名無しさん@転載は禁止:2019/02/09(土) 20:17:39 ID:dCWLZPEw
初見だったけど、一気に読んでしまった……
仕事多いと大変ですよね
どうかこんな素敵な作品をかける自分の心を病ませることないように
ご自愛ください。続きも楽しみにしています。

813名無しさん@転載は禁止:2019/02/10(日) 05:05:53 ID:bPQEH3c.
同じく初見
バット√もノーマル√も善子の心情が手に取るようにわかってボロボロ泣いてしまった
続きをゆるゆる楽しみにしてます

814名無しさん@転載は禁止:2019/03/05(火) 23:07:58 ID:RKj.4IUA
まだか

815名無しさん@転載は禁止:2019/03/08(金) 11:42:40 ID:4aY873TM
>>1です。ゴミが参りました
本当に申し訳ありません。今更信用も何もないと思いますが4月までには完成させたいと思っております
手始めに明日続きを更新させてください

816名無しさん@転載は禁止:2019/03/08(金) 18:30:28 ID:dl60Gn2s
おお! 待ってました!!!

817名無しさん@転載は禁止:2019/03/08(金) 19:48:49 ID:./uijS9I
待ってましたよ!

818名無しさん@転載は禁止:2019/03/09(土) 12:08:59 ID:UYg0f69I
>>815
ゴミだろうがなんだろうが、最後に立ってた奴が偉くて強いんだよォ!!
待ってる!!

819名無しさん@転載は禁止:2019/03/09(土) 23:12:03 ID:3TK.3jIg
善子「おはようお母さん」

善子母「あら早いのね」

善子「うん……」

善子母「どうしたの? まだ具合悪いの?」

善子「ううん、そうじゃないの。大丈夫」

善子母「そう。元気になったみたいね。良かった」

善子母「……なんだか高校に入ってから楽しそうね」

善子「そう、かな」

善子母「うん。善子がまた楽しそうに笑ってくれて嬉しいわ。素敵なお友達を見つけたのね」

善子「……うん」

善子母「スクールアイドル、頑張ってね」

820名無しさん@転載は禁止:2019/03/09(土) 23:12:30 ID:3TK.3jIg

――

バス停

善子「(素敵なお友達)」

ハッシャシマス――

――善子ちゃん!おはヨーソロー!

――善子ちゃんおはよー!

――おはよう。朝から元気ね

善子「(みんな……)」

善子「……」

善子「(大丈夫。私は、今度こそ……)」


――学校

果南「善子ちゃん!」

善子「……果南さん」

果南「……千歌に聞いたんだ。その、曜のこと」

善子「あぁ……」

果南「……ごめん。私、善子ちゃんに頼まれたのに、結局……」

善子「いいんです。私も果南さんに押しつけて、自分では何もしなかったから」

果南「そんな……」

善子「大丈夫。これからは私がやります」

善子「私が、やるべきでした」

果南「……」

善子「みんなが大事だって思ってたのに逃げてばかりで、どうにかなるように願ってるだけで……」

善子「だからたくさん傷つけちゃった。みんなのこと」

善子「でも、だから頑張りたい。みんながまた、Aqoursとして活動できるように」

善子「私、Aqoursが大切だから」

果南「……一人で頑張りすぎないでね。私でも、ダイヤでも鞠莉でも、善子ちゃんの味方だから」

善子「……はい。 ありがとう果南さん」

821名無しさん@転載は禁止:2019/03/09(土) 23:12:51 ID:3TK.3jIg
昼休みの時間は長いような短いような、不思議な感覚で過ごした。

千歌さんと梨子さんに会って、私に何ができるのか。

本当に曜さんを、Aqoursを元通りにできるのか。

やらなきゃいけない。でも怖かった。

また私のせいで全て壊しちゃうんじゃないかって。

何かのはずみで二人をめちゃくちゃにして、Aqoursを、全てを台無しにしてしまうのが怖かった。

緊張なんて生易しいものじゃなくて、私の気持ちはいろんなものに押しつぶされてしまいそうで。

ルビィと花丸ともまともに会話もできないくらいだった。

でもこれは私がやるべきこと。やらなきゃいけないこと。

絶対に曜さんを助けて、みんなも幸せにする。

絶対、絶対に。

そして…

822名無しさん@転載は禁止:2019/03/09(土) 23:13:05 ID:3TK.3jIg
――昼休み

善子「(……時間だ)」

(私がやらなきゃ、今度こそ、私が……)


「善子ちゃん」


善子「……ルビィ」

ルビィ「どうしたの? 今日はあんまり話してくれないね」

ルビィ「ひどい顔してる。何か良くないことでもあったの?」

善子「ううん。そんなんじゃないわ、大丈夫」

ルビィ「……どこか行くの?」

善子「ええ、ちょっと、ね」

ルビィ「……」

823名無しさん@転載は禁止:2019/03/09(土) 23:13:22 ID:3TK.3jIg
ルビィ「善子ちゃん、行っちゃダメ」

善子「え?」

ルビィ「今の善子ちゃん、すごく苦しそうだよ。心が今にも押しつぶされそうで、壊れちゃいそう」

ルビィ「なのに、なんとかしなきゃって必死でもがいて、傷つきながら無理やり前に進もうとしてる」

ルビィ「…これから善子ちゃんがすること、なんとなくわかるよ。善子ちゃん……ううん、Aqoursの今後を大きく変えるような、とても大事なこと、なんだよね」

善子「……アンタには隠し事できないわね」


ルビィ「……私ね、鞠莉さんに言われてるんだ。善子ちゃんに何か変化があったらすぐに知らせるようにって。私の疾患なら善子ちゃんになにかあったらそれに気づけるからって」

善子「へぇ、じゃあどうするの? 今の私は危ないから、マリーに報告しに行くの? それともアンタが私を止める?」

善子「悪いけどこれはとても大事なことなの。私がやらなきゃいけないこと。いくらルビィでも邪魔するなら……」

ルビィ「違うの」

善子「!」

ルビィ「たしかに鞠莉さんにはそう言われてるよ。善子ちゃんを止めてあげてって。でもね……」

ルビィ「今は私自身が、善子ちゃんに前に進んでほしくないの」

ルビィ「だってそんなに傷ついてボロボロな気持ちで、これからもっともっと辛いことをしなきゃいけないんでしょ?」

ルビィ「これ以上傷つく善子ちゃん、見たくないよ」

善子「ルビィ……」

ルビィ「ごめん。ごめんね? 私、善子ちゃんの味方になるって言ったのに、こんなこと……」

824名無しさん@転載は禁止:2019/03/09(土) 23:13:42 ID:3TK.3jIg
善子「……前から気になってたんだけど、あんたはどうしてそんなに、私に優しいの?」

善子「こんな、私みたいな、最低なヤツに……」

ルビィ「……私たちみたいな人間モドキは、幸せにはなれない」

ルビィ「それは私たちが他人と自分を不幸にする疾患を持ってるからとかじゃなくて……」

ルビィ「……きっと『そうなるようにできている』から」

ルビィ「私たちは絶対に、幸せになれない道を歩かなきゃいけない。そんなふうにできている」

ルビィ「理屈とかじゃない。もっと大きな流れ……運命みたいなもので決まってるの。善子ちゃんなら、なんとなくわかるでしょ?」

善子「……ええ」

ルビィ「でも、善子ちゃんはキレイな心を持ってた」

ルビィ「私と同じで絶対に幸せになれないのに、どうして? って思ったよ」

825名無しさん@転載は禁止:2019/03/09(土) 23:13:56 ID:3TK.3jIg
ルビィ「それは善子ちゃんと関わっていくうちに、すぐにわかった」

ルビィ「善子ちゃんは強い心を持ってる。一度決めたらそこに向かおうとする、強い気持ちがある」

ルビィ「幸せになろうって思ったんだよね? 幸せにしたいって思ったんだよね?」

ルビィ「私はね、それをすごいと思った! 私は諦めたから。幸せになる勇気なんてなかったから」

ルビィ「だからね、私は……」

ルビィ「ルビィは……」

ルビィ「……」

善子「……」

826名無しさん@転載は禁止:2019/03/09(土) 23:14:14 ID:3TK.3jIg
ルビィ「……あのね善子ちゃん。善子ちゃんは、私にとって本当に特別なんだ」

ルビィ「花丸ちゃんとはまた違う、でも同じくらい特別な人なの」

ルビィ「……いなくなってほしくない」

ルビィ「また、善子ちゃんみたいな人に、さよならって言いたくないの」

善子「ルビィ……」

827名無しさん@転載は禁止:2019/03/09(土) 23:14:33 ID:3TK.3jIg
善子「……バカね」コツン

ルビィ「痛ぁい!? 何するの善子ちゃぁ!」

善子「いなくなるとかなんとか、大袈裟なのよアンタは」

善子「いい? 私は何も怖いことしに行くわけじゃない。不幸になりに行くわけでもない」

善子「みんなと一緒に幸せになるために、やらなきゃいけないことがあるだけ」

ルビィ「善子ちゃん……」

善子「でもね、私は臆病だからちょっとだけ勇気がいるの。1人じゃ怖くて、不安でたまらない。だから」

善子「ルビィ、アンタが私を応援してくれる?」

828名無しさん@転載は禁止:2019/03/09(土) 23:14:48 ID:3TK.3jIg
ルビィ「……それは、きっと善子ちゃんが幸せになるために必要なことなんだよね?」

善子「もちろん。そんでもってアンタも幸せになるの」

ルビィ「そっかぁ……」

ルビィ「えへへ、そっかぁ……!じゃあ、ルビィが応援しないわけにはいかないね!」

ルビィ「うん、応援するよ! ルビィは善子ちゃんの1番の味方だもん! だから……」

ルビィ「頑張って、幸せになって。私たちみたいな人間モドキでも幸せになれるって、ルビィに教えて?」

善子「ええ、任せなさい」

ルビィ「うん! 頑張ルビィ、だよ! 善子ちゃん!」

善子「うん!」

善子(……私バカね。みんなのために頑張るって、昨日決めたばっかりなのに)

善子(そうだった。今の私には、私の幸せを願ってくれる人がいる。応援してくれる人がいる)

善子(それはルビィだけじゃない。花丸も、果南さん達もそうで、それが見えなくなっていたみたい)

善子(本当に、浦の星に来て、Aqoursに出会えて良かった)

善子(だから、もう一度取り戻したい。また9人で、スクールアイドルをやりたい)

善子(そして今度は私が曜さんを助けるんだ)

829名無しさん@転載は禁止:2019/03/09(土) 23:16:50 ID:3TK.3jIg
ルビィ「善子ちゃん、落ち着いたみたいだね」

善子「ええ、おかげさまでね。それにしても私が特別なんてねー。嬉しいこと言ってくれるじゃない」

ルビィ「なんだ、知らなかったの? 私けっこう善子ちゃんのこと好きなんだよ。いつか言ったでしょ?」

善子「言ったっけ?」

ルビィ「……うん、言ったよ。きっとどこかで、もう伝えたよ」

善子「そっか。覚えてないけど、あんたが言うならそうなんでしょ。ありがとね」

ルビィ「うん。じゃあ、いってらっしゃい」

ーー

ルビィ「……行っちゃった」

ルビィ「善子ちゃん、Black Sheepって言葉、知ってるかな」

ルビィ「えへへ、きっと、今の善子ちゃんにはもう縁のない言葉だね」

830名無しさん@転載は禁止:2019/03/09(土) 23:17:34 ID:3TK.3jIg
お久しぶりの更新です
次の更新も急ぎますのでよろしくお願いします

831名無しさん@転載は禁止:2019/03/10(日) 02:27:46 ID:y5mqt4eY
お帰り、待ってたぞ!
続きが楽しみだわ、あの惨劇がどう変わるのか!

832名無しさん@転載は禁止:2019/03/10(日) 04:25:40 ID:Aan2lj9Y
善子ちゃんがんばルビィ
そんなに急かずに自分のペースで続けてくださいな

833名無しさん@転載は禁止:2019/03/10(日) 10:51:11 ID:IRsxXawE
続きキタァアアア!!
やっぱりこのSSの善子とルビィの関係が好きすぎてヤバいわ……
どんな結末を迎えるのか凄い楽しみにしてるけど自分のペースでよいからね!

834名無しさん@転載は禁止:2019/03/10(日) 22:49:28 ID:ddImDuLc
待ってた。
ありがとう。楽しみにしてるよ。

835名無しさん@転載は禁止:2019/03/11(月) 14:51:48 ID:3KIDwMI.
うおおおお!!!!!
めっちゃ良い!!!!!

836名無しさん@転載は禁止:2019/03/12(火) 01:52:49 ID:Y1hcFLxQ

次は5ヶ月以内にたのむ

837名無しさん@転載は禁止:2019/04/03(水) 02:31:29 ID:TGuKM3LE
待っとるよ

838名無しさん@転載は禁止:2019/06/14(金) 04:22:16 ID:zWqXJWDM
まだか

839名無しさん@転載は禁止:2019/09/14(土) 12:43:00 ID:ZVkyb/5k
生存報告だけでもいいから更新してくれ

840名無しさん@転載は禁止:2020/02/05(水) 19:00:24 ID:0bUttr9k
まだまだ待ってるぞい

841名無しさん@転載は禁止:2020/04/19(日) 23:43:24 ID:Txfd5NYA
まってるぞ…

842名無しさん@転載は禁止:2020/11/10(火) 17:08:13 ID:MbY0hmfg
私待ーつーわ
いつまでも待ーつーわ

843名無しさん@転載は禁止:2021/03/11(木) 21:28:16 ID:d.y.uJDo
マジでずっと待ってる

844名無しさん@転載は禁止:2021/05/31(月) 00:30:14 ID:WEDuyuA.
ハッピー√心待


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