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善子「Black Sheep」

1名無しさん@転載は禁止:2017/05/10(水) 01:37:40 ID:JFf8Mvsk
ああ、この手の人間か。


最初に思ったのはこんなことだった。

運動ができて勉強ができて、人付き合いも上手で友達もたくさん。

いわゆる典型的なリア充というやつで、それは私とは正反対の人種だった。

どうせ私のようなインドアで社交性のない人間とは馬が合わないのだろう。

そして得てして私のような人間はこのタイプの人間を嫌悪する。

こういう人のありかたが人間のあるべき姿だとわかっているし、この人自身とてもいい人だと思う。

でもだからこそ自分の人間としての不完全さが浮き彫りにされているような気分にもなった。

私みたいな社会に適合できない人間モドキとは住む世界が違うのだ。

だから私は、この人とはある程度仲良くはなれても、深い友好関係を築くことはないだろうと思った。

しかしこの人のそれは度を越していた。

364名無しさん@転載は禁止:2017/12/30(土) 04:04:35 ID:ehvE8gps
――生徒会室

鞠莉「いやー悪いわね? 二人にも手伝わせちゃって♪」

ダイヤ「全く偶然居合わせたからって一年生に手伝わせるなんて……」

ルビィ「大丈夫だよお姉ちゃん」

ダイヤ「ルビィ……! なんていい子なの……!」ナデナデ

果南「善子ちゃんもありがとね」

善子「いえ、私も時間あったので」

鞠莉「というかそもそも! ダイヤが書類整理を怠ってたから手伝うはめになったんでしょー?」

ダイヤ「うっ……それは」

果南「まあまあ! ルビィちゃんと善子ちゃんも手伝ってくれてるんだし、早く終わらせよ!」

365名無しさん@転載は禁止:2017/12/30(土) 04:05:40 ID:ehvE8gps
善子「(数日後、マリーとの面談の最中にダイヤさんから書類の整理を頼まれ)」

善子「(最初はマリーに頼むつもりだったらしいが偶然居合わせていた私とルビィも手伝う流れになった)」

善子「(面談自体は滞りなく進んだものの、マリーは私のことをどこかいぶかしんでいるようで)」

善子「(……実際、それは当たっているのだと思う)」

鞠莉「ダイヤったらこんなにため込む前に言ってくれればいいのに〜……ん?」

ダイヤ「どうしました?」

鞠莉「いや、これ……」ピラ

ダイヤ「ああ、懐かしいですわね。Aqoursの入部届け。千歌さんが何度も持ってきましたわ」

果南「へぇ〜。こんなのあったんだね」

鞠莉「でもなんだか意外かも」

果南「なにが?」

鞠莉「入部希望のところ。千歌っちと曜の名前があるけど」

366名無しさん@転載は禁止:2017/12/30(土) 04:06:28 ID:ehvE8gps
鞠莉「私てっきり、今のAqoursは千歌っちと梨子から始まったのだと思ってたわ」

善子「……」

果南「……! ま、鞠莉っ」

善子「マリー、今なんて言ったの?」

鞠莉「えっ」

善子「今、なんて言ったのよ」


許せなかった。

それは曜さんの大切な思い出だ。初めて千歌さんと共に歩み始めた、その証だ。

それを貶めた。踏みにじった。

誰もかれも、どうしてそうやって曜さんを追いつめるんだ。

この人の小さな幸せすら、奪っていくんだ。

許せない。許せない。ゆるせない……

367名無しさん@転載は禁止:2017/12/30(土) 04:07:13 ID:ehvE8gps
ルビィ「善子ちゃん」

善子「!!」



ルビィ「……大丈夫?」

善子「ええ……」

善子「ごめんなさい、マリー。私……」

鞠莉「……いいえ、私も配慮にかける発言だったわ。ごめんなさい」

果南「……二人ともそろそろ行ってもいいよ。あとは私たちだけでやっとくからさ」

ダイヤ「ルビィ、善子さん、ありがとうございました。助かりましたわ」

ルビィ「うん。じゃあ、先に失礼します」

善子「失礼します」

ピシャ

368名無しさん@転載は禁止:2017/12/30(土) 04:08:28 ID:ehvE8gps
鞠莉「……しくじったわ」

果南「大丈夫。あとで私もフォロー入れとくから。それに善子ちゃんも悪気があったわけじゃないよ」

鞠莉「わかってる……」

ダイヤ「善子さんは、大丈夫なんですの?」

鞠莉「正直言うと、ちょっと危ないかも」

ダイヤ「では……」

鞠莉「でもね、もう少しあの子を信じてみたいの」

ダイヤ「何かあってからでは遅いんですのよ?」

鞠莉「それは……」

果南「そうならないために鞠莉がちゃんと見てあげるんでしょ?」

鞠莉「……うん」

果南「なんであの子に特別肩入れしてるかわからないけど私も相談されたからさ、協力するからね」

ダイヤ「ええ。そのために私たち3年生がいるのですから」

鞠莉「ありがと……」

369名無しさん@転載は禁止:2017/12/30(土) 04:08:52 ID:ehvE8gps
善子「はぁ……はぁ……」

ルビィ「善子ちゃん……」

善子「大丈夫。大丈夫だから」

善子「(ああダメだ。ちょっとした感情の昂ぶりでこうなってしまう)」

善子「(自分で制御できない、突き動かされるみたいに……)」

ルビィ「うん。わかってるよ。けど無理しないでね」

善子「えぇ……」

ルビィ「花丸ちゃんのとこ戻ろうか。お昼ごはん待っててくれてるから」


―――

花丸「あ! 二人ともようやく来てくれた! 待ったずらよ〜」

ルビィ「ごめんごめん、ちょっと長引いちゃって」

善子「先食べてても良かったのに」

花丸「せっかく三人いるんだからみんなで食べたいずら」

善子「そう。ありがと」

ルビィ「今日はどこで食べようか?」

花丸「中庭のベンチなんてどう? 久しぶりにお外で食べたいずら!」

ルビィ「あー、あそこ空いてるかな。善子ちゃんそこの窓から見てきてくれる?」

善子「ん」

370名無しさん@転載は禁止:2017/12/30(土) 04:09:23 ID:ehvE8gps
善子「(……二人は優しい)」

善子「(こんな私を心配してくれて、一人にしようとしない)」

善子「(特にルビィは私が危ないのをわかってて、それでも力になろうとしてくれる)」

善子「(花丸も私の疾患について詳しく知らないけど、知らないなりに気遣ってくれる)」

善子「(……二人とも、大切、だけど)」

善子「(いつか、二人のことも……)」

善子「あっ、中庭だったわね、もう誰か使って……」

善子「……」

371名無しさん@転載は禁止:2017/12/30(土) 04:09:45 ID:ehvE8gps
千歌「梨子ちゃんの卵焼きおいしそう! ひとつちょーだい!」パクッ

梨子「ああ! まだいいって言ってないのに!」

千歌「あーごめんごめん、おいしそうだったからつい……」

梨子「ついじゃないよ! うう、最後にとっておいたのに……」

曜「あはは、梨子ちゃん私のハンバーグちょっとあげるよ」

梨子「ありがと曜ちゃん……」


善子「……」

372名無しさん@転載は禁止:2017/12/30(土) 04:11:37 ID:ehvE8gps
ルビィ「善子ちゃんどうだった?」

善子「他の人が使ってたわ。別の場所にしましょ」

花丸「……善子ちゃんどうしたの? なんだかとっても怖い顔してる……」

善子「ううん、なんでもないの。ちょっとトイレにいってくるわ」

ルビィ「……」

花丸「ねぇルビィちゃん、マルたちにもできることってないのかな。善子ちゃん、いつも辛そうで……」

ルビィ「ないよ」

花丸「……」

ルビィ「私たちは善子ちゃんを信じてあげることしかできない。だからそばにいて、いつでも迎えてあげよう」

花丸「……うん」

373名無しさん@転載は禁止:2017/12/30(土) 04:12:16 ID:ehvE8gps
遅れて本当にすみません
できれば年内にもう一回更新したいです

374名無しさん@転載は禁止:2017/12/30(土) 13:28:20 ID:/8j92MxY
善子ちゃん…

375名無しさん@転載は禁止:2018/01/11(木) 00:00:47 ID:7hG2sBsc
年明けてるぞ

376名無しさん@転載は禁止:2018/01/13(土) 02:11:41 ID:qNQfQA4.
私の中の心が少しずつずれていく。

真っ黒で醜い気持ちが溢れていく。

そばにいてくれる人のために、そばにいたい人のために、こんな気持ちはあってはいけない。

だから私は、ずっと抑え続けた。

普通の、本当にどこにでもいるような真っ当で優しい人になるために。

そうなりたかったから。

だって、そうじゃなきゃいけない。誰かが不幸になるなんて、そんなの嘘だ。

私は誰かと、一緒にいたいと思えるような誰かと幸せになりたいだけだった。


それを、許してくれないのは


「どうして……?」


そして、その日がやってきた。ある日の練習終わりのことだった。

377名無しさん@転載は禁止:2018/01/13(土) 02:12:27 ID:qNQfQA4.
千歌「み、みんな!」

果南「どしたの千歌」

千歌「えっと、みんなに報告したいことがあって……」

ダイヤ「なんですの改まって。もしや歌詞が遅れてるとか……」

千歌「もー違いますよ! アイドルとはちょっと関係ないんだけど……梨子ちゃん」

梨子「う、うん」タタタ


千歌「実はね」


この時点で、私はなんとなくわかっていた


千歌「私たち」


これから千歌さんが言う言葉を


千歌「この度」


その無邪気で幸福な、絶望的な言葉を


千歌「お付き合いすることになりました!」

378名無しさん@転載は禁止:2018/01/13(土) 02:14:30 ID:qNQfQA4.
不思議だけどその光景を私は、驚くほど冷静に見ていた。

もちろんショックではあった。これは恐れていたこと。今後2年生は3人でいても、曜さんだけは疎外されてしまうだろうこと。

なにより、今までギリギリで成り立っていた曜さんの恋が、完全に終わってしまったこと。

今の曜さんがどんな気持ちでいるか。それらを考えればショックではあったのだが。

ぷつり、と糸が切れたような。

諦めを通り越して完全に何も感じなくなって、私は立ち尽くしていた。

379名無しさん@転載は禁止:2018/01/13(土) 02:15:53 ID:qNQfQA4.
事情を知っているルビィと果南さん、マリー。そしてなんとなく察していた花丸とダイヤさんはとてもやりづらそうに反応していた。

そんな態度を気づかれないように、いちおうの祝福の言葉を投げかけて。

今一番気にかけるべき曜さんの様子をうかがっていた。

そして、当の曜さんは……

曜「わあ! そうなんだ! とってもお似合いだよ二人とも!」

梨子「そ、そうかな///」

曜「うん! 二人は最高のパートナーだよ! ずっと見てきた私が保証する!」

千歌「ありがとう曜ちゃん! こうなったけど、今まで通り3人で一緒にいようね」

梨子「うん。曜ちゃんも変わらず一緒にいてほしいな」

曜「あはは、ありがと! たまに空気読んで二人の邪魔はしないようにするよ!」

梨子「もう、曜ちゃんったら///」

380名無しさん@転載は禁止:2018/01/13(土) 02:17:35 ID:qNQfQA4.
曜「本当に、おめでとう。千歌ちゃん、梨子ちゃん」


それはおそらく、曜さんの心の底からの祝福の言葉だった。

嘘偽りのない本当の気持ち。親友二人の幸せを心から喜んで祝っていた。

強がりなどではない。それはみんなわかっていた。曜さんはそういう人だとみんな知っていたから。

曜さんの恋は確実にここで終わってしまって、でも曜さんの悲しみを見ることはできなかった。

本当に彼女はこの二人を幸福を喜ぶだけで、悲しい気持ちなど全くないかのように見えた。



それがありえないことだと、私が一番知っていたのに。

曜さんは自分の不幸を、自分だけで抱える人だとわかっていたのに。

最後まで私は気づかなかった。


だから、その次の練習の日。

今までずっと、不幸も苦労も痛みも悲しみも、すべてを抱えてそれでも笑ってきた、誰よりも強かった彼女が。


そんな今までが嘘だったかのように、曜さんはあっさりと壊れた。

381名無しさん@転載は禁止:2018/01/13(土) 02:18:11 ID:qNQfQA4.
遅れましたすみません
いつも読んでくれてありがとうございます

382名無しさん@転載は禁止:2018/01/13(土) 03:04:32 ID:z/Z9TFZQ
待ってた

383名無しさん@転載は禁止:2018/01/13(土) 05:05:51 ID:jcNTUCvM
ついに来てしまったか…

384名無しさん@転載は禁止:2018/01/13(土) 11:22:15 ID:Iff0k.NQ
曜ちゃんはどうなってしまうんだ…

385名無しさん@転載は禁止:2018/01/13(土) 11:56:26 ID:uT31DZh.
更新待ってた

386名無しさん@転載は禁止:2018/01/17(水) 18:36:34 ID:9c9ws/Qs
めっちゃ気になる

387名無しさん@転載は禁止:2018/01/23(火) 03:52:02 ID:CdwjlX5I
―――

果南「よーし、それじゃあみんな今日は淡島神社走るよ!」

千歌「うへぇ……何度やっても慣れないよね〜」

梨子「まあまあ千歌ちゃん、これくらい頑張らないと」

千歌「あはは、そだね」

鞠莉「ダイヤはついてこられるかしら〜?」

ダイヤ「なっ、鞠莉さんこそ私に置いていかれないよう注意なさい!」

果南「善子ちゃん、体調良くなってないなら無理しちゃだめだよ。自分のペースでいいからね」

善子「え、ええ」

善子「(……今は集中しなきゃ。地区予選も近いしみんなに迷惑かけられない)」

善子「(幸い運動してたら気が紛れるし、変な考えも起こらない)」

善子「(それに、私のせいですべてがめちゃくちゃになるなんてこと、許されない)」

善子「(ルビィもマリーも、みんな私を信じてくれてるんだから)」

388名無しさん@転載は禁止:2018/01/23(火) 03:52:30 ID:CdwjlX5I
――


善子「はぁ、はぁ……」

善子「(やっぱりキツイわねこれ)」

善子「(それになんだか前よりつかれやすくなってる気がする……寝不足が響いてるのかしら)」

善子「(……それでもルビィとずら丸よりは速く走れているけど)」

善子「(ともかく頂上までもう少し……)」

善子「……ん? あれって……」

善子「(……! 踊り場で誰か倒れて…!)」

389名無しさん@転載は禁止:2018/01/23(火) 03:53:16 ID:CdwjlX5I
曜「はぁ……っはぁ……っ」

善子「……っ! 曜さん!」

曜「ぁ……よしこ、ちゃ……」

善子「曜さん一体……!」

曜「ごめ……うまく、はしれな……くて」

善子「(……すごい熱! どうしよう、このまま放っておくわけには)」

善子「(でも曜さんを抱えていくなんて私にはできないし……)」

ルビィ「よ、善子ちゃん?」

善子「!」

ルビィ「それ、曜さん!? どうしたの!? 大丈夫なの!?」

善子「ルビィ! 曜さんのことお願い!」 

ルビィ「善子ちゃんは!?」

善子「先行って果南さん呼んでくるから!」ダッ

390名無しさん@転載は禁止:2018/01/23(火) 03:53:52 ID:CdwjlX5I


善子「(待ってて曜さん、すぐに戻りますから!)」

善子「(急がなきゃ! 疲れたとか言ってらんない!)」タタタタ

善子「……っはぁ、着いた……!」

果南「おっ、善子ちゃんおつかれ、はい水……」

善子「果南さん!」

果南「ど、どしたの?」

善子「曜さんを……曜さんを助けて!」

391名無しさん@転載は禁止:2018/01/23(火) 03:54:21 ID:CdwjlX5I
―――鞠莉の部屋

果南「鞠莉の家が近くで助かったね。お医者さんも常駐してるし」

鞠莉「そうね。うちのドクターによると貧血、脱水症状、あとは疲労の蓄積による衰弱が原因みたい」

千歌「曜ちゃん、無理させすぎちゃったのかな……」

ダイヤ「曜さんはスクールアイドル以外にも飛び込みもやってますし、それに加えて衣装も作っていますからね……」

花丸「でも少し休めば大丈夫なんでしょう? 大きな病気とかじゃないのは不幸中の幸いずら……」

鞠莉「それとね、もしかしたらなんだけど」

梨子「何か、あるんですか?」

鞠莉「うん。精神的な問題も関わっているかもしれない、という話だったわ」

千歌「悩みがあるってこと?」

鞠莉「可能性の話だけどね。曜の普段の健康状態から考えて、疲労などでここまで衰弱するとは考えにくいらしくて」

鞠莉「曜本人も自覚しないうちに、ストレスを抱え込んでいたのかもしれないわ」

392名無しさん@転載は禁止:2018/01/23(火) 03:54:37 ID:CdwjlX5I
果南「確かに曜は体調不良とは無縁みたいな子だったし、そう言われると納得しちゃうかも」

ダイヤ「……ともかく、曜さんには安静にしてもらいましょう。自宅療養を2,3日ほど」

ダイヤ「幸い予選まではまだ時間はあります。要領のいい曜さんであれば遅れは取り戻せるでしょう。衣装の方は……」

善子「できる限り私が進めておくわ。曜さんほどうまくないけど全くやらないよりはマシでしょ」

ルビィ「ルビィも手伝うよ!」

ダイヤ「……ええ、ではお願いしますわ」

393名無しさん@転載は禁止:2018/01/23(火) 03:56:55 ID:CdwjlX5I
―――


曜「みんなごめんなさい! 大事な時期に迷惑かけちゃって……」

千歌「ううん! 曜ちゃんが病気とかじゃなくてよかったよ〜」

果南「大丈夫だよ。まだ時間はあるんだし無理しない程度にがんばろ?」

善子「(曜さんが元気になるまでそう時間はかからなかった。果南さんの言う通り元々体力もあって健康な人だから治りも早い)」

善子「(ただ、鞠莉さんの言っていたことがみんな気にかかっているようで)」

善子「(そしてなんとなく曜さんの不調の原因を察してしまっているから、余計に気を使いづらくなっていた)」

善子「(千歌さんと梨子さんにいたっては曜さんの苦悩を知るはずもない)」

善子「(けれど同学年で、片や幼馴染みという立場故に過剰に、そして純粋に曜さんを心配している)」


千歌「曜ちゃん、調子悪かったみたいだけど、なにか悩んでることとかない?」

梨子「曜ちゃんはいろいろやることがあって大変だし、私たちにできることがあるならなんでも言ってほしいの」


善子「(……して、しまっている)」

善子「(自分たちが原因であることなどつゆ知らず。その思いやりは無垢で純粋で、悪意がないから性質が悪い)」

394名無しさん@転載は禁止:2018/01/23(火) 03:57:11 ID:CdwjlX5I
善子「(そんな状況を見て、私を含む他の6人は心穏やかではない)」

善子「(なんとかしたくてもどうしようもない。でもこのまま見ていられるようなものでもない)」

善子「(いつもの練習にみんながやりづらさを覚えながら、それでも私たちは予選に向けて準備をしなければならない)」

善子「(いつしかAqoursには、仲良しグループとはとても言えないような、いいしれない重い空気が漂っていて)」

善子「(私にとって、おそらくみんなにとっても、もはやAqoursは居心地のいい場所ではなくなっていた)」

善子「(そして……)」

395名無しさん@転載は禁止:2018/01/23(火) 03:57:43 ID:CdwjlX5I
中途半端ですみません
できれば明日続きかきます

396名無しさん@転載は禁止:2018/01/23(火) 05:07:56 ID:7nrNWIBo
乙です
これはきつい…

397名無しさん@転載は禁止:2018/01/24(水) 01:49:57 ID:Kdgftkcc


398名無しさん@転載は禁止:2018/01/24(水) 12:19:22 ID:N7rmvrog
深夜に更新します

399名無しさん@転載は禁止:2018/01/24(水) 12:40:43 ID:JVKLhYCo
よっしゃ

400名無しさん@転載は禁止:2018/01/24(水) 21:18:26 ID:kwTjFpck
待ってます

401名無しさん@転載は禁止:2018/01/25(木) 04:09:18 ID:137J91jo

千歌「曜ちゃん、また体調崩しちゃったって……大丈夫かな」

梨子「心配だよね。曜ちゃんやっぱり無理しすぎてるんじゃ……」

善子「(その後曜さんはまた体調を崩して学校を欠席した。当然私たちは曜さんの負担を心配した)」

善子「(二年生である千歌さんと梨子さんは特に穏やかではなくて、様子見とお見舞いのために放課後曜さんの家に向かった)」

善子「(私も家が近いのでついていくことになった。純粋に曜さんが心配というのもあったけど)」

善子「(この二人と曜さんだけにするのが、なぜか無性に不安だった)」

402名無しさん@転載は禁止:2018/01/25(木) 04:09:37 ID:137J91jo


―――曜の部屋

千歌「曜ちゃん? 大丈夫?」

曜「あ、千歌ちゃん梨子ちゃん! 善子ちゃんも!」

千歌「あ、起きなくていいよ! 無理しちゃダメ」

梨子「曜ちゃんまた体調崩したって聞いて、心配でお見舞いに来たの。具合は大丈夫?」

曜「あはは、心配かけちゃったね。もうすっかり大丈夫なんだけど一応安静にしてるよ」

善子「曜さん飛び込みも忙しいんだから、ちゃんと疲れとってよね」

曜「自分でも気づかないもんだね〜参ったよ」

403名無しさん@転載は禁止:2018/01/25(木) 04:09:58 ID:137J91jo
千歌「もう。ちゃんと休んでって言ったのに! 大事な時期なんだし気を付けてね?」

曜「うん、わかってる。今度は大丈夫だからさ、安心してよ」

梨子「お願いよ? 千歌ちゃんも曜ちゃんがいないと調子でないみたいだし」

曜「……そっか」

善子「……」

千歌「曜ちゃん、大丈夫? ぼーっとしてるけど」

曜「えっ、あ、ごめん、別になんでもないんだけど……」

千歌「本当に? やっぱり熱とかあるんじゃ」スッ



曜「いやっっっ!!!」パシィ

404名無しさん@転載は禁止:2018/01/25(木) 04:10:38 ID:137J91jo


千歌「え」

善子「……!」

曜「あ……」

梨子「よう、ちゃん?」

曜「あ、ああぁぁぁ……ちがっ、違うのちかちゃん、ごめんね、そんなつもりじゃ」

曜「ごめんね、ごめんなさい、い、いたかったよね? わたし、わたし、ぁぁぁぁ……」ガタガタ

梨子「曜ちゃん? ねえ曜ちゃん!」

千歌「よ、曜ちゃん落ち着いて? 大丈夫。私なら大丈夫だから」

曜「ちがうの、ちがうの、わたしがわるいの、ぜんぶ、ぜんぶわたしがわるいのちかちゃん、ごめっ、ごめん、なさ……」グスッ

梨子「曜ちゃん? 曜ちゃんどうしちゃったの!?」

曜「あぁぁぁりこちゃ、ごめんなさい、わたし、わたっ、りこちゃんが、うぅぁぁ、あ」ポロポロ

405名無しさん@転載は禁止:2018/01/25(木) 04:11:03 ID:137J91jo

千歌「曜ちゃん! 曜ちゃんってば!」ガシッ

曜「ひっ……!」ビクッ

善子「ダメ! ちかさ」



曜「やだぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!」

406名無しさん@転載は禁止:2018/01/25(木) 04:12:24 ID:137J91jo
千歌「よ……」

曜「やだ、やだやだやだやだ、いっちゃやだ、いかないでちかちゃん! わたし、やだよ、やだやだやだぁ!!!」

千歌「曜ちゃん! そばにいるよ! どこにもいかないよ!」

曜「やだ、やだ、ひとりぼっち、やだぁ、ひどい、なんで、ちかちゃん、みんな、だれか、」グスグス

千歌「ようちゃ」

善子「よ、曜さん!」ガシッ

曜「あぅ、あ?」

善子「私、私です! 善子です! 津島善子!」

曜「あ、よ、よしこ、ちゃん……よしこちゃぁ……」グスグス

善子「大丈夫、大丈夫ですから。ね?」ギュ

曜「う、うぅぅぅ、よしこちゃん……よしこちゃん……」ギュ

407名無しさん@転載は禁止:2018/01/25(木) 04:12:41 ID:137J91jo


千歌「よ、善子ちゃん……」

梨子「善子ちゃん、これって」

善子「……千歌さん、梨子さん。外で待っててくれませんか?」

千歌「で、でも」

善子「……」ジッ

千歌「……」

梨子「千歌ちゃん。いったん外に出よ?」

千歌「……うん」

408名無しさん@転載は禁止:2018/01/25(木) 04:13:12 ID:137J91jo
短くてすみませんけどここまで
いつも見てくれてる方々ありがとうございます

409名無しさん@転載は禁止:2018/01/25(木) 04:39:46 ID:X7hDZ6Ao
曜ちゃん…
辛い…

410名無しさん@転載は禁止:2018/01/26(金) 02:16:25 ID:xtI9gVzk


411名無しさん@転載は禁止:2018/02/03(土) 04:34:02 ID:00pDLBEw
遅れてすみません
日曜日には更新します

412名無しさん@転載は禁止:2018/02/03(土) 05:30:56 ID:ZXOe35As
待ってる

413名無しさん@転載は禁止:2018/02/03(土) 06:42:31 ID:O5J1Ve3Q
待ってます

414名無しさん@転載は禁止:2018/02/05(月) 03:42:42 ID:w1dbAgJE
善子「……」

曜「すぅ……すぅ……」

善子「(あの後、曜さんはずっと泣き続けていた)」

善子「(「ごめんなさい」と何度もつぶやきながら)」

善子「(誰に言っているのかは、わからなかった)」

善子「(それから泣きつかれたのか、子どものように眠ってしまった)」

曜「すぅ……」

善子「……」ナデナデ

415名無しさん@転載は禁止:2018/02/05(月) 03:42:59 ID:w1dbAgJE
曜「ちか、ちゃん……」

善子「……!」

曜「……すき」グスッ

善子「曜さん……」

善子「(こんな状況になって、ようやく曜さんは自分の想いを口にした)」

善子「(何年も温めてきた、大きな大きな想いを)」

善子「(もう決して、報われることのない想いを)」


きっともう、ずっと前から限界だったんだろう。いや、限界なんてとっくに超えていた。

脆くて危うい、そしてなによりも強い優しさで成り立っていた曜さんの心は、今日完全に終わってしまった。

――ああ、この人はもうダメだ。

私にはわかった。誰よりも人を壊してきた私は、曜さんがどれだけ壊れてしまったかを把握してしまった。

ずっと傷ついて、それを隠して笑顔でい続けて、自分を犠牲にしてみんなの幸せを願って。

そして最後には壊れてしまった、この哀れで愛しい先輩を、私は……


――天使のようだと思った。

416名無しさん@転載は禁止:2018/02/05(月) 03:43:16 ID:w1dbAgJE
――曜の家の前

善子「……」ガチャ

梨子「善子ちゃん!」

善子「……帰ってなかったのね」

千歌「その、曜ちゃんのことなんだけど……」

善子「……話すことはありません」

千歌「な、なんで!? だってあんな……」

千歌「あんな曜ちゃん、今まで一回も見たことないよ……」

梨子「千歌ちゃん……」

千歌「ねえ善子ちゃんお願い。何か知ってるなら……私にできることがあるなら教えてよ……」

善子「……」ギリ

梨子「……善子ちゃん?」

善子「明日、昼休みに屋上に来てください」

善子「そこで全部、教えてあげます」

417名無しさん@転載は禁止:2018/02/05(月) 03:43:53 ID:w1dbAgJE

――善子の家

善子「ただいま……」

善子母「あらおかえり。今日は早いのね」

善子「晩ごはん、今日はいらない」

善子母「……そう。食べたくなったら言ってね?」

善子「……うん。ありがとう」

418名無しさん@転載は禁止:2018/02/05(月) 03:44:06 ID:w1dbAgJE
――善子の部屋

善子「……」ドサッ

善子「う……うぅ……」グスッ

善子「どうして……どうして……」


どうして、こうなってしまったんだろう。

私はただ、曜さんに幸せになってほしかっただけだった。

本当にそれだけだった。

だって曜さんは、私を人間にしてくれた。

人間になれない、どうしようもなく救いようのない人間モドキの私でも、真っ当に生きられるんだって教えてくれた。

あの人のためならどんなことだってしようって思えた。

「でも、あなたは何もしなかったわ」

真っ暗な私だけの空間。声のする方に振り向くと、私がいた。私とおんなじ顔をした、邪悪な笑みを浮かべる私がいた。

善子?「曜さんを助けたいと思いながら。曜さんを幸せにしたいと思いながら。曜さんを守りたいと思いながら」

善子?「結局あなたは何もしなかった」

419名無しさん@転載は禁止:2018/02/05(月) 03:44:22 ID:w1dbAgJE
善子「ち、違う! 私は……」

善子?「何も違わないわ。日に日に傷ついて弱っていく曜さんを見て、あなたはただどうにかなるように願っていただけ」

善子?「曜さんからもらうだけもらって、何も返さないままじゃない」

善子「違う私は、本当に……」

善子?「誰かを幸せにできると思った?」

善子「あ……あぁ……」

420名無しさん@転載は禁止:2018/02/05(月) 03:44:38 ID:w1dbAgJE
善子?「たくさんたくさん、傷つけてきた。壊してきた。ダメだって思いながら、抗えなかった」

善子?「そして、それで構わないって思った」

善子「違う!!!」

善子?「大好きなものが、大好きな人が壊れていくのがたまらなく好きだった。どうなっていくのか見たくてしょうがなかった」

善子「黙れ!!!」

善子?「私一人だけが、楽しかった!」

善子「黙れ!!!!!!」

善子?「本当は、曜さんが傷ついて壊れていくのを見るのが楽しかったんじゃないの?」

善子「黙れ!!! 殺すぞ!!!」

目の前の私の髪を掴んで、思い切り地面に叩きつけた。

何度も何度も叩きつけた。加減なんて一切しなかった。本気で壊そうとしたから。

久しくこんなことはしていなかった。する必要なんてなかったし、そうしようなんて思いもしなかったから。

だから、久しぶりの何かを壊す感触に、私は、ワタシハ……

421名無しさん@転載は禁止:2018/02/05(月) 03:44:55 ID:w1dbAgJE
……いつからだろうか。

幼い頃。それこそまだ花丸と一緒に幼稚園に通っていた頃。

私は自分が、本当の天使だと思った。

お母さんが私を天使みたいだって言ったから。

みんなが笑顔をくれて、私の周りにいる人はみんな幸せだったから。

みんな私をたくさん愛してくれたから。

だから私もみんなを愛した。

「私本当は天使なの!」

みんなを愛してみんなに愛される。そんな私は本物の天使なんだと疑わなかった。

422名無しさん@転載は禁止:2018/02/05(月) 03:45:10 ID:w1dbAgJE
「そうじゃないって気づいたのは、いつだったかな」

また背後から声がした。振り向くと幼い姿の、幼稚園の頃の私がいた。

よしこ「私、みんなをたくさん愛したよ」

よしこ「みんなのことが大好きで、喜んでもらえることはなんでもやった」

よしこ「みんな笑ってて、幸せそうで……」

よしこ「でも突然、それら全てを壊してみたくなった」

よしこ「いま愛してくれるみんなを、例えば思いっきり嫌いになってみたらどうなるんだろう」

よしこ「傷つけて傷つけて、思いきり壊してみたらどうなるんだろう」

よしこ「思い始めたら止まらなくて」

よしこ「一度壊してみたら、とてもとても気持ちよくて」

よしこ「私、本当は、壊すために愛していたのかなって……」

423名無しさん@転載は禁止:2018/02/05(月) 03:45:39 ID:w1dbAgJE

よしこ「ねえ、今もそうなの?」

善子「違う! 違う! 私はもうあの頃の私じゃない!」

善子「今度こそ、今度こそ誰も壊さずに、誰も不幸にしないままで、みんなを愛して、みんなに愛されるって決めた……」

善子「そう決めた! だから、だから……」



善子?「だから私を押しのけて、あなたが生まれた」


善子「っ……!」

頭を掴んで地面に叩きつけたままだった私が、おもむろに顔を上げて睨んできた。

その眼差しにすくんだ私は、頭を離してよろよろと後ずさった。

424名無しさん@転載は禁止:2018/02/05(月) 03:45:59 ID:w1dbAgJE
よしこ「ねえわたし。覚えてる?」

よしこ「わたしたち、大好きな人たちをたくさん傷つけてきたね」

よしこ「わたし、みんながだいすきだったよね」

よしこ「……ようさんが、だいすきなんだよね」


善子?「……愛されたかった?」

善子「……愛され、たかった」

善子?「おこがましいのね。醜い人間モドキのくせに」

善子「……そう、ね」

よしこ「わたしたち、どこで間違えちゃったのかな……」

よしこ「……それとも、最初から間違いだったのかな」

善子「……わからない」

善子?「わからないまま、みんなを壊して……それで」

善子「なにを、してたのかしらね……はは」

425名無しさん@転載は禁止:2018/02/05(月) 03:46:12 ID:w1dbAgJE
よしこ「……ねえ」

よしこ「これから、どうしたい?」

善子「……?」

よしこ「もう、今度こそわたしは幸せにはなれないよ」

善子?「曜さんが壊れてしまったからね」

善子「……」

よしこ「なにが、できるかな?」

善子?「何を望むのかしら」

426名無しさん@転載は禁止:2018/02/05(月) 03:46:33 ID:w1dbAgJE
善子「私は……」

私はこの学校で曜さんに出会った。

最初は相容れないと思った。私とは正反対の、不幸なことなんか何もなくて、毎日が幸せな人なんだと思った。

でも違った。曜さんは私が考えているよりももっともっと素晴らしい人で……

文字通り完璧な人だった。誰もが羨み憧れ心を寄せる、太陽のように眩しい人。

私のような人間モドキがあの人と一緒にいられるなんて奇跡みたいだった。

本当に幸せだった。何もかも輝いて見えた。

こんな私でも、真っ当に生きられるんじゃないかって、この人のそばでならそれができるって思えた。



でも救えなかった。

私は何も出来なかった。



失ってしまった。

427名無しさん@転載は禁止:2018/02/05(月) 03:46:45 ID:w1dbAgJE
もうあの人が私に笑いかけてくれることはないだろう。

だから、今までのことを思いだしていた。

――善子ちゃん

名前を呼んでくれるだけで心が弾んだ。

――善子ちゃん!

一緒にいるだけで胸が高鳴った

――善子ちゃん!!

お話するだけでドキドキが止まらなかった。

――善子ちゃん!!!

その笑顔だけで、私は救われた。

428名無しさん@転載は禁止:2018/02/05(月) 03:48:16 ID:w1dbAgJE
善子「曜さん……」


私のすきなひと。わたしの、たいせつなひと。


善子「……」


また笑ってほしかった。愛されたかった。

それはもう叶わないけれど、今も心の底からそう思ってる。

じゃあ今の私に、できることは……


善子「……あなたは、どうしたい?」

よしこ「わたし?」

善子「うん。なにがしたい?」

よしこ「うーん……」

この子はかつての私。私の一番最初の姿。

だからこの子の願いこそが、私の最初の願い。一番の願い。

私は、その願いを……

429名無しさん@転載は禁止:2018/02/05(月) 03:48:53 ID:w1dbAgJE
しこ「……あのね、わたし」

よしこ「わたし、今度こそ、ちゃんと、みんなに、だれかに、愛してもらえることがしたい」

よしこ「できれば、ようさんに愛してほしいけど、わがままはいわないよ」

よしこ「どんなことだっていいよ。いいことでも、わるいことでも」

よしこ「そうしたら、わたしはきっと」

よしこ「きっと……」

よしこ「……」





よしこ「だれかに愛されたまま、ぜんぶおわることができるとおもうの!」

430名無しさん@転載は禁止:2018/02/05(月) 03:50:51 ID:w1dbAgJE
善子「それが、私の願いなの?」

よしこ「うん!」

善子「……そっか」


きっとこれは幸せな夢だったんだろう。

私が普通の人間みたいに、笑って、友達を作って、部活動がんばって……

そして、好きな人もできた。

振り向いてもらうことはできなかったけど、それでも幸せだった。

毎日が楽しくて、思い切り夢中になれた。

短い夢の中で、私はきっと幸せだった。

だから……

431名無しさん@転載は禁止:2018/02/05(月) 03:51:10 ID:w1dbAgJE
善子?「私は、これでいいの?」

善子?「これで私は救われるの?」

……いや、私に救いなんてきっとない。

私の救いは、この幸せな夢の中にしかない。

曜さんがいてくれる、この夢の中だけいにある。

それがなくなった今、もう何もいらない。

止まれないまま、全てを壊して、壊して壊して壊し続けて……

432名無しさん@転載は禁止:2018/02/05(月) 03:52:30 ID:w1dbAgJE
よしこ「できる?」

よしこ「こんなことになっても、わたし、さいごにだれかに愛してもらえる?」

善子「なんだ、そんなこと……」

善子「そんな、こと……」グスッ

善子「う……うぅ……」グスグス

よしこ「……私たちはやっぱり、醜い人間モドキだね」

善子「……うんっ……!」グスッ

善子?「幸せな夢は、ここでおしまい」

善子?「壊してしまいましょう。私たちを不幸にするもの全部」

433名無しさん@転載は禁止:2018/02/05(月) 03:52:53 ID:w1dbAgJE
いつの間にか幸せになっていいって、勘違いしてたんだ。

これは幸せな夢の中のできごと。

目が覚めて現実に戻る時が来たの。

私はここでしか生きられない。

こんな地獄でしか生きられない。

よしこ「……だいじょうぶ?」

善子「……ええ、でも少しだけ泣かせてほしいの」

善子?「夢の中とはいえ、この場所を、この人たちを大切にしてきたものね」

善子「うん。でも……」

でも、これでおしまい。

失うんじゃない。ただ元に戻るだけ。

浦の星での津島善子は、全部夢だったの。

さあ、起きなさい。目を覚まして。

『私』に戻りましょう。



おやすみなさい。津島善子。

434名無しさん@転載は禁止:2018/02/05(月) 03:53:41 ID:w1dbAgJE
めっちゃわかりにくいですけどなんとなくで感じ取ってくれれば。
いつも読んでくださる方々ありがとうございます。

435名無しさん@転載は禁止:2018/02/05(月) 04:34:31 ID:91CohO9E
読んでてめちゃくちゃ辛い…
みんな誰かと一緒にただ幸せになりたかっただけなのに…
辛すぎる……

436名無しさん@転載は禁止:2018/02/05(月) 05:28:47 ID:9sE7ebVY

盛り上がって参りましたな

437名無しさん@転載は禁止:2018/02/05(月) 09:27:33 ID:ZAzs4bNA
脳内会議すき

438名無しさん@転載は禁止:2018/02/05(月) 23:37:00 ID:Ae/ZV.B.
待ってた!乙
よぴこ…。

439名無しさん@転載は禁止:2018/02/06(火) 01:53:18 ID:a/JHaSjw
つらすぎる…

440名無しさん@転載は禁止:2018/02/08(木) 04:40:39 ID:t68qN6bE
善子「……」

シャッ

善子「まぶし……」


―――

善子「おはようお母さん」

善子母「あら早いのね」

善子「うん。なんか今日は調子がいいの」

善子母「そう。元気になったみたいで良かったわ」

善子「うん。ありがとう」

――

善子「(すごく、すごく気分がいい)」

善子「(こんなに気持ちのいい朝は初めてかも)」

善子「(ずっと眠れない夜が続いてたけど……今日は本当によく眠れた)」

善子「ほんとに、目が覚めたみたい」

441名無しさん@転載は禁止:2018/02/08(木) 04:40:58 ID:t68qN6bE
ハッシャシマス――

善子「(一人で登校、か。久しぶりかも)」

善子「(ずっと……)」

――善子ちゃん!おはヨーソロー!

――善子ちゃんおはよー!

――おはよ。朝から元気ね

善子「(みんなが、いたのに……)」

善子「……」

善子「……ひっ…………」ガタガタ

善子「(大丈夫。もう、決めたの。私は……)」

442名無しさん@転載は禁止:2018/02/08(木) 04:41:15 ID:t68qN6bE
――学校

果南「よ、善子ちゃん!!!」

善子「……果南さん?」

果南「……千歌に聞いたんだ。その、曜のこと」

善子「あぁ……」

果南「……ごめん。私、善子ちゃんに頼まれたのに、結局……」

善子「いいんです。私も果南さんに押しつけて、自分では何もしなかったから」

果南「そんな……」

善子「大丈夫。これからは私がやります」

善子「私が、やるべきでした」

果南「……」

443名無しさん@転載は禁止:2018/02/08(木) 04:41:39 ID:t68qN6bE
果南「(なんだろう、善子ちゃん今日はいつもと違うような)」

果南「(昨日までとはまるで反対で……)」

果南「……なんであんなに、すがすがしいような顔してるの……?」


善子「(……以前の私だったら、果南さんも普通に壊しちゃってたかな)」

善子「(完全に昔みたいに戻ったわけじゃないみたい。自分でも、わからないけど)」

善子「ま、いいか」

善子「(私のやることは、変わらない……)」

444名無しさん@転載は禁止:2018/02/08(木) 04:41:56 ID:t68qN6bE
善子「(その後は誰にも会わなかった。登校時間をずらしたのもあるけど……)」

善子「(マリーに見つからなかったのは幸いだと思う。あの人は鋭いから何か言われそうだし、最悪病院に引きずられていたかもしれない)」

善子「(ルビィと花丸は同じクラスだから会わざるをえないけど、会話は最低限にした)」

善子「(もし話すことで私の気が変わって、二人を壊そうとしてしまったら、私でも抑えられないから)」

善子「(昼休みまでは絶対にアクシデントがあってはいけないから、なるべくいつも通りの私でいるようにした)」

善子「(そんな心配とは裏腹に、びっくりするぐらい時間は穏やかに過ぎていった)」

善子「(むしろよく眠れたから授業も頭に入ってきたし、いつも以上に調子がいいと思った)」


善子「(そして……)」

445名無しさん@転載は禁止:2018/02/08(木) 04:42:39 ID:t68qN6bE
――昼休み


善子「(……時間だ。行こう)」



「待って」


善子「……」

「どうしたの? 今日はあんまり話してくれないね」


ルビィ「善子ちゃん」

446名無しさん@転載は禁止:2018/02/08(木) 04:43:08 ID:t68qN6bE
短いですけどここまで
更新できるときにしておきます

447名無しさん@転載は禁止:2018/02/08(木) 05:08:17 ID:MsxlWiyI
乙です
待ってますよ

448名無しさん@転載は禁止:2018/02/08(木) 11:54:19 ID:ifKl5f/g
いよいよ正念場か

449名無しさん@転載は禁止:2018/02/09(金) 01:53:10 ID:j8SBSq7E

このあたりがルート分岐点かな

450名無しさん@転載は禁止:2018/02/09(金) 04:41:03 ID:3PRfHXQE
ついにルビィちゃんが動くか
ところでこれ読んでる人は

つらい(本当につらい)
つらい(歓喜)

のどっちなんだろ

451名無しさん@転載は禁止:2018/02/11(日) 05:01:08 ID:JnDioNjs
――数か月前・理事長室

ルビィ「かじょーせー……?」

鞠莉「イエス。過剰性。それが善子の疾患の正体よ」

ルビィ「ご、ごめんなさい、よくわからないです……」

鞠莉「そうね、簡単に言うと……」

鞠莉「あの子は自分の心にブレーキをかけられない」

鞠莉「ある方向に過剰に心が動くから、自分で自分をコントロールできないの」

鞠莉「これは禁止されているからやってはいけない。これをやると皆が悲しむ、みんなが傷つく」

鞠莉「そういうことって、普通の人はやってはいけないことだって判断できる。だから実行には移さないわよね」

ルビィ「……はい」

鞠莉「でもあの子は違う。強烈なエゴが心と身体を突き動かすの。倫理とか自分の意思とか、そういうのを全て吹き飛ばしてね」

鞠莉「気づいたらそれをし終わっている。そんなレベルで自分を制御できない」

鞠莉「心の過剰な動きに身体を支配される。それがあの子の『過剰性』よ」

452名無しさん@転載は禁止:2018/02/11(日) 05:01:34 ID:JnDioNjs
ルビィ「善子ちゃんは、それが原因で……」

鞠莉「ええ。小学校高学年あたりからその兆候が見られて、中学1年の頃に爆発した」

鞠莉「その結果あの子は施設送り。中学の3年ほぼ全てをそこで過ごしたわ」

鞠莉「それから中学卒業と同時に疾患の改善が認められて今に至る。という感じよ」

ルビィ「なるほどわかりました……でも、2つほどいいですか?」

鞠莉「何かしら?」

ルビィ「その『過剰性』、確かに厄介な疾患ですけど冷静に考えればそれほどじゃない」

ルビィ「自分をコントロールできない人なんていくらでもいます。どうして善子ちゃんだけ特別異常な扱いをされてたんですか?」

ルビィ「……あんな適応指数、その疾患にしては高すぎます」

453名無しさん@転載は禁止:2018/02/11(日) 05:01:56 ID:JnDioNjs
鞠莉「そうね。理由はいくつかあるわ」

鞠莉「確かに自分をコントロールできない人はいくらでもいる。私たち疾患者の心は自動的で、こういう状況ならこうするしかない、っていうふうにできている」

鞠莉「ルビィの場合だと相手の気持ちに敏感過ぎる。だからその気持ちが気になってなにも言えなくなる。そんな具合にね」

ルビィ「……はい。今は、大分改善しましたけど」

鞠莉「善子の場合、コントロールできないとはいってもその方向性、どこに心が向かうかが問題なの」

ルビィ「方向性……」

鞠莉「あの子は過剰に他人を傷つける方向に心が向かってしまう」

鞠莉「他人を傷つける恐れのある凶暴性。善子はそれが異常に強かった」

鞠莉「それに関係してでしょうね。性格も突然豹変することもあったらしいわ」

鞠莉「普段は明るく優しいけど、突然残虐で冷酷な性格になることがあったみたい」

鞠莉「善子は『過剰性』に伴う二重人格も患っていた。そんな複雑な心の構造をしている。だから……」


ルビィ「だからあんな、適応指数95なんて数字が……」

454名無しさん@転載は禁止:2018/02/11(日) 05:02:55 ID:JnDioNjs
ルビィ「……もう一つ。善子ちゃんはそんな状態から、どうやって今の状態に?」

ルビィ「今の善子ちゃんはいたって普通の女子高生。変な言動は目立つけど根は真面目で心優しい女の子だよ」

ルビィ「そんな凶悪な一面があったとはとても……」

鞠莉「特別施設に入れられて治療を受けていく中で、あの子なりに考えたんでしょうね。どうすればいいのかって」

鞠莉「本当はあの子もひどいことすることは望んでない。でも心と身体が言うことを聞かない。そんな現状をどうにかしたいって」

鞠莉「どうすれば自分を抑えられるのか。誰も傷つけないですむのか。自分にできることを考えたらしいわ」

鞠莉「それであの子が思いついたのは、自分の疾患を利用することだった」

ルビィ「疾患を、利用? そんなことが……」

鞠莉「私も聞いたときは少し驚いたわ。そんなことできるのかって」

鞠莉「善子は自分の『過剰性』は消せないと思った。だから心の向かう方向を無理やり変えた」

鞠莉「『誰かを傷つけること』から『誰も傷つけず、平穏に過ごすこと』にね」

455名無しさん@転載は禁止:2018/02/11(日) 05:03:32 ID:JnDioNjs
鞠莉「つまり今の善子は『みんなを傷つけないで、平穏に過ごそう』と過剰に思いこんでいる状態ってこと」

ルビィ「無理やり、自分を抑えてるってことですか……」

鞠莉「そうね。善子は試行錯誤の末それができるようになって、今のように普通の人らしい性格になった」

鞠莉「いうなれば今の善子は、第3の人格ってところかしら」

ルビィ「第3の人格……」

鞠莉「でも善子の中の『過剰性』が消えたわけじゃない。何かの拍子にあの子の心が誰かを傷つけようとしてしまうかもしれない」

鞠莉「そこで、あなたにお願いがあるの」

ルビィ「……なんですか」

456名無しさん@転載は禁止:2018/02/11(日) 05:04:18 ID:JnDioNjs
鞠莉「善子が変な気を起こさないように、様子を見ててほしいの」

鞠莉「事情を知っててクラスメイトで、人の気持ちに敏感なあなたは適任だと思う」

ルビィ「そんな、善子ちゃんを疑うようなことを、ルビィにやれって言うんですか」

鞠莉「……気が進まないのはわかる。私も友達を監視するようなことを生徒に、ルビィにさせたくなんてない」

鞠莉「でも善子は私たち疾患者の中でも特別なの。あなたも噂は聞いたことはあるでしょ?」

ルビィ「……」

鞠莉「お願い。善子をまた昔みたいにならないためにも、協力してほしいの」

ルビィ「……はい」

457名無しさん@転載は禁止:2018/02/11(日) 05:05:11 ID:JnDioNjs
わかりにくいかもしれませんがルビィの回想です
短いですけど明日も更新します

458名無しさん@転載は禁止:2018/02/11(日) 05:24:19 ID:f9Ce9ARE
ルビィちゃんがどう動くかで話が大きく変わりそう…

459名無しさん@転載は禁止:2018/02/12(月) 04:13:19 ID:Ag7zBYWg

――

ルビィ「今日はいつもと違って調子良さそうだね? 顔色もよくなったし」

ルビィ「なにかいいことでもあったのかな、善子ちゃん?」

ルビィ「……じゃないねぇ、なんか初めまして、みたいだよ」

善子「ふふ、そうかもね」

ルビィ「善子ちゃん、これからどこかに行くの?」

善子「ちょっと、ね。」

ルビィ「……」

ルビィ「(ああ、鞠莉さん。善子ちゃんは、もう……)」

460名無しさん@転載は禁止:2018/02/12(月) 04:13:58 ID:Ag7zBYWg
ルビィ「……善子ちゃんは、決めたの?」

善子「決める?」

ルビィ「これから、どうするのかなって。善子ちゃん、顔は冷静でも心が穏やかじゃないよ」

善子「……あんたが何を知ってるっていうのよ」

ルビィ「わからないけど……でも、これからとっても大事なことをしに行くんでしょ?」

ルビィ「善子ちゃんの……ううん。Aqoursの今後を大きく変えるような、そんなこと」

善子「……相変わらず察しがいいのね。その通りよ」

ルビィ「……そっか」

461名無しさん@転載は禁止:2018/02/12(月) 04:14:30 ID:Ag7zBYWg
善子「あんたはどうするの」

ルビィ「うん?」

善子「もうわかるでしょ? 今の私は、あんたの知ってる津島善子じゃない」

善子「どうせマリーから言われてるんでしょ? 私を監視するようにって」

ルビィ「……」

善子「マリーはきっと、私がこうなることをずっと恐れてた」

善子「あんたは人の心に敏感だから、私がこうなったらすぐにわかる」

善子「だからあんたはいつも私のそばにいた。いつでも私を止められるように。マリーにすぐに知らせられるように」

ルビィ「……」

善子「どうする? マリーに報告しに行く? それとも私を止める? もし邪魔するなら……」


ルビィ「止めないよ」

462名無しさん@転載は禁止:2018/02/12(月) 04:15:07 ID:Ag7zBYWg

善子「……は?」

ルビィ「私は善子ちゃんを止めない。鞠莉さんに報告もしない。むしろ逆」

ルビィ「善子ちゃんを応援するよ。頑張ルビィっ、てね」

善子「……正気? 私がどんな人間だったか知ってるでしょ?」

ルビィ「話には聞いてるよ」

善子「だったら……!」

ルビィ「でも、Aqoursを始めてからの善子ちゃんのことはもっと知ってる」

善子「……!」

ルビィ「言ったでしょ? 私はなにがあっても善子ちゃんの味方だって」

ルビィ「それは今も変わらない。ううん。これから先だって変わらない」

ルビィ「鞠莉さんに言われたって、私は善子ちゃんの邪魔は絶対にしない」

463名無しさん@転載は禁止:2018/02/12(月) 04:15:31 ID:Ag7zBYWg

善子「どうして……?」

ルビィ「……私たちみたいな人間モドキは、幸せにはなれない」

ルビィ「それは私たちが他人と自分を不幸にする疾患を持ってるからとかじゃなくて……」

ルビィ「……きっと『そうなるようにできている』から」

ルビィ「私たちは絶対に、幸せになれない道を歩かなきゃいけない。そんなふうにできている」

ルビィ「理屈とかじゃない。もっと大きな流れ……運命みたいなもので決まってるの。善子ちゃんなら、なんとなくわかるでしょ?」

善子「……ええ」

ルビィ「でも、善子ちゃんはキレイな心を持ってた」

ルビィ「私と同じで絶対に幸せになれないのに、どうして? って思ったよ」


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