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善子「Black Sheep」
363
:
名無しさん@転載は禁止
:2017/12/30(土) 04:04:16 ID:ehvE8gps
千歌「梨子ちゃんおかえり!」
善子「(予選が終わると同時に梨子さんも戻ってきた)」
善子「(私たちは予選を通過し、梨子さんもコンクールで入賞してきて、どちらもうまくいって一安心)」
善子「(Aqoursは再び9人で活動を再開し、地区予選に向けて練習を開始することにした)」
曜「梨子ちゃんお疲れさま。大成功だったみたいだね!」
梨子「うん。おかげさまで。曜ちゃん、急に私の代役になってくれたみたいでごめんね?」
曜「そんな気にしないでよ! 梨子ちゃんのためだもん」
梨子「そっか、ありがとう!」
千歌「ともかく、また一緒にがんばろうね!」
善子「(作詞、作曲、衣装の担当でAqoursの中心でもある二年生三人が揃って、私たちもより本調子に近い形で練習に取り組んだ)」
善子「(新しい曲も衣装も順調に進んでいって、予選通過の勢いもありみんなのモチベーションも高く、Aqoursはかつてないほどの仕上がりを見せていた)」
善子「(そして同時にわずかな歯車のズレがあるのを私とルビィ、そして果南さんが感じていた)」
善子「(それに何も言わないまま、目を背けたまま、私たちは地区予選の準備を進めた)」
364
:
名無しさん@転載は禁止
:2017/12/30(土) 04:04:35 ID:ehvE8gps
――生徒会室
鞠莉「いやー悪いわね? 二人にも手伝わせちゃって♪」
ダイヤ「全く偶然居合わせたからって一年生に手伝わせるなんて……」
ルビィ「大丈夫だよお姉ちゃん」
ダイヤ「ルビィ……! なんていい子なの……!」ナデナデ
果南「善子ちゃんもありがとね」
善子「いえ、私も時間あったので」
鞠莉「というかそもそも! ダイヤが書類整理を怠ってたから手伝うはめになったんでしょー?」
ダイヤ「うっ……それは」
果南「まあまあ! ルビィちゃんと善子ちゃんも手伝ってくれてるんだし、早く終わらせよ!」
365
:
名無しさん@転載は禁止
:2017/12/30(土) 04:05:40 ID:ehvE8gps
善子「(数日後、マリーとの面談の最中にダイヤさんから書類の整理を頼まれ)」
善子「(最初はマリーに頼むつもりだったらしいが偶然居合わせていた私とルビィも手伝う流れになった)」
善子「(面談自体は滞りなく進んだものの、マリーは私のことをどこかいぶかしんでいるようで)」
善子「(……実際、それは当たっているのだと思う)」
鞠莉「ダイヤったらこんなにため込む前に言ってくれればいいのに〜……ん?」
ダイヤ「どうしました?」
鞠莉「いや、これ……」ピラ
ダイヤ「ああ、懐かしいですわね。Aqoursの入部届け。千歌さんが何度も持ってきましたわ」
果南「へぇ〜。こんなのあったんだね」
鞠莉「でもなんだか意外かも」
果南「なにが?」
鞠莉「入部希望のところ。千歌っちと曜の名前があるけど」
366
:
名無しさん@転載は禁止
:2017/12/30(土) 04:06:28 ID:ehvE8gps
鞠莉「私てっきり、今のAqoursは千歌っちと梨子から始まったのだと思ってたわ」
善子「……」
果南「……! ま、鞠莉っ」
善子「マリー、今なんて言ったの?」
鞠莉「えっ」
善子「今、なんて言ったのよ」
許せなかった。
それは曜さんの大切な思い出だ。初めて千歌さんと共に歩み始めた、その証だ。
それを貶めた。踏みにじった。
誰もかれも、どうしてそうやって曜さんを追いつめるんだ。
この人の小さな幸せすら、奪っていくんだ。
許せない。許せない。ゆるせない……
367
:
名無しさん@転載は禁止
:2017/12/30(土) 04:07:13 ID:ehvE8gps
ルビィ「善子ちゃん」
善子「!!」
ルビィ「……大丈夫?」
善子「ええ……」
善子「ごめんなさい、マリー。私……」
鞠莉「……いいえ、私も配慮にかける発言だったわ。ごめんなさい」
果南「……二人ともそろそろ行ってもいいよ。あとは私たちだけでやっとくからさ」
ダイヤ「ルビィ、善子さん、ありがとうございました。助かりましたわ」
ルビィ「うん。じゃあ、先に失礼します」
善子「失礼します」
ピシャ
368
:
名無しさん@転載は禁止
:2017/12/30(土) 04:08:28 ID:ehvE8gps
鞠莉「……しくじったわ」
果南「大丈夫。あとで私もフォロー入れとくから。それに善子ちゃんも悪気があったわけじゃないよ」
鞠莉「わかってる……」
ダイヤ「善子さんは、大丈夫なんですの?」
鞠莉「正直言うと、ちょっと危ないかも」
ダイヤ「では……」
鞠莉「でもね、もう少しあの子を信じてみたいの」
ダイヤ「何かあってからでは遅いんですのよ?」
鞠莉「それは……」
果南「そうならないために鞠莉がちゃんと見てあげるんでしょ?」
鞠莉「……うん」
果南「なんであの子に特別肩入れしてるかわからないけど私も相談されたからさ、協力するからね」
ダイヤ「ええ。そのために私たち3年生がいるのですから」
鞠莉「ありがと……」
369
:
名無しさん@転載は禁止
:2017/12/30(土) 04:08:52 ID:ehvE8gps
善子「はぁ……はぁ……」
ルビィ「善子ちゃん……」
善子「大丈夫。大丈夫だから」
善子「(ああダメだ。ちょっとした感情の昂ぶりでこうなってしまう)」
善子「(自分で制御できない、突き動かされるみたいに……)」
ルビィ「うん。わかってるよ。けど無理しないでね」
善子「えぇ……」
ルビィ「花丸ちゃんのとこ戻ろうか。お昼ごはん待っててくれてるから」
―――
花丸「あ! 二人ともようやく来てくれた! 待ったずらよ〜」
ルビィ「ごめんごめん、ちょっと長引いちゃって」
善子「先食べてても良かったのに」
花丸「せっかく三人いるんだからみんなで食べたいずら」
善子「そう。ありがと」
ルビィ「今日はどこで食べようか?」
花丸「中庭のベンチなんてどう? 久しぶりにお外で食べたいずら!」
ルビィ「あー、あそこ空いてるかな。善子ちゃんそこの窓から見てきてくれる?」
善子「ん」
370
:
名無しさん@転載は禁止
:2017/12/30(土) 04:09:23 ID:ehvE8gps
善子「(……二人は優しい)」
善子「(こんな私を心配してくれて、一人にしようとしない)」
善子「(特にルビィは私が危ないのをわかってて、それでも力になろうとしてくれる)」
善子「(花丸も私の疾患について詳しく知らないけど、知らないなりに気遣ってくれる)」
善子「(……二人とも、大切、だけど)」
善子「(いつか、二人のことも……)」
善子「あっ、中庭だったわね、もう誰か使って……」
善子「……」
371
:
名無しさん@転載は禁止
:2017/12/30(土) 04:09:45 ID:ehvE8gps
千歌「梨子ちゃんの卵焼きおいしそう! ひとつちょーだい!」パクッ
梨子「ああ! まだいいって言ってないのに!」
千歌「あーごめんごめん、おいしそうだったからつい……」
梨子「ついじゃないよ! うう、最後にとっておいたのに……」
曜「あはは、梨子ちゃん私のハンバーグちょっとあげるよ」
梨子「ありがと曜ちゃん……」
善子「……」
372
:
名無しさん@転載は禁止
:2017/12/30(土) 04:11:37 ID:ehvE8gps
ルビィ「善子ちゃんどうだった?」
善子「他の人が使ってたわ。別の場所にしましょ」
花丸「……善子ちゃんどうしたの? なんだかとっても怖い顔してる……」
善子「ううん、なんでもないの。ちょっとトイレにいってくるわ」
ルビィ「……」
花丸「ねぇルビィちゃん、マルたちにもできることってないのかな。善子ちゃん、いつも辛そうで……」
ルビィ「ないよ」
花丸「……」
ルビィ「私たちは善子ちゃんを信じてあげることしかできない。だからそばにいて、いつでも迎えてあげよう」
花丸「……うん」
373
:
名無しさん@転載は禁止
:2017/12/30(土) 04:12:16 ID:ehvE8gps
遅れて本当にすみません
できれば年内にもう一回更新したいです
374
:
名無しさん@転載は禁止
:2017/12/30(土) 13:28:20 ID:/8j92MxY
善子ちゃん…
375
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/01/11(木) 00:00:47 ID:7hG2sBsc
年明けてるぞ
376
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/01/13(土) 02:11:41 ID:qNQfQA4.
私の中の心が少しずつずれていく。
真っ黒で醜い気持ちが溢れていく。
そばにいてくれる人のために、そばにいたい人のために、こんな気持ちはあってはいけない。
だから私は、ずっと抑え続けた。
普通の、本当にどこにでもいるような真っ当で優しい人になるために。
そうなりたかったから。
だって、そうじゃなきゃいけない。誰かが不幸になるなんて、そんなの嘘だ。
私は誰かと、一緒にいたいと思えるような誰かと幸せになりたいだけだった。
それを、許してくれないのは
「どうして……?」
そして、その日がやってきた。ある日の練習終わりのことだった。
377
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/01/13(土) 02:12:27 ID:qNQfQA4.
千歌「み、みんな!」
果南「どしたの千歌」
千歌「えっと、みんなに報告したいことがあって……」
ダイヤ「なんですの改まって。もしや歌詞が遅れてるとか……」
千歌「もー違いますよ! アイドルとはちょっと関係ないんだけど……梨子ちゃん」
梨子「う、うん」タタタ
千歌「実はね」
この時点で、私はなんとなくわかっていた
千歌「私たち」
これから千歌さんが言う言葉を
千歌「この度」
その無邪気で幸福な、絶望的な言葉を
千歌「お付き合いすることになりました!」
378
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/01/13(土) 02:14:30 ID:qNQfQA4.
不思議だけどその光景を私は、驚くほど冷静に見ていた。
もちろんショックではあった。これは恐れていたこと。今後2年生は3人でいても、曜さんだけは疎外されてしまうだろうこと。
なにより、今までギリギリで成り立っていた曜さんの恋が、完全に終わってしまったこと。
今の曜さんがどんな気持ちでいるか。それらを考えればショックではあったのだが。
ぷつり、と糸が切れたような。
諦めを通り越して完全に何も感じなくなって、私は立ち尽くしていた。
379
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/01/13(土) 02:15:53 ID:qNQfQA4.
事情を知っているルビィと果南さん、マリー。そしてなんとなく察していた花丸とダイヤさんはとてもやりづらそうに反応していた。
そんな態度を気づかれないように、いちおうの祝福の言葉を投げかけて。
今一番気にかけるべき曜さんの様子をうかがっていた。
そして、当の曜さんは……
曜「わあ! そうなんだ! とってもお似合いだよ二人とも!」
梨子「そ、そうかな///」
曜「うん! 二人は最高のパートナーだよ! ずっと見てきた私が保証する!」
千歌「ありがとう曜ちゃん! こうなったけど、今まで通り3人で一緒にいようね」
梨子「うん。曜ちゃんも変わらず一緒にいてほしいな」
曜「あはは、ありがと! たまに空気読んで二人の邪魔はしないようにするよ!」
梨子「もう、曜ちゃんったら///」
380
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/01/13(土) 02:17:35 ID:qNQfQA4.
曜「本当に、おめでとう。千歌ちゃん、梨子ちゃん」
それはおそらく、曜さんの心の底からの祝福の言葉だった。
嘘偽りのない本当の気持ち。親友二人の幸せを心から喜んで祝っていた。
強がりなどではない。それはみんなわかっていた。曜さんはそういう人だとみんな知っていたから。
曜さんの恋は確実にここで終わってしまって、でも曜さんの悲しみを見ることはできなかった。
本当に彼女はこの二人を幸福を喜ぶだけで、悲しい気持ちなど全くないかのように見えた。
それがありえないことだと、私が一番知っていたのに。
曜さんは自分の不幸を、自分だけで抱える人だとわかっていたのに。
最後まで私は気づかなかった。
だから、その次の練習の日。
今までずっと、不幸も苦労も痛みも悲しみも、すべてを抱えてそれでも笑ってきた、誰よりも強かった彼女が。
そんな今までが嘘だったかのように、曜さんはあっさりと壊れた。
381
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/01/13(土) 02:18:11 ID:qNQfQA4.
遅れましたすみません
いつも読んでくれてありがとうございます
382
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/01/13(土) 03:04:32 ID:z/Z9TFZQ
待ってた
383
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/01/13(土) 05:05:51 ID:jcNTUCvM
ついに来てしまったか…
384
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/01/13(土) 11:22:15 ID:Iff0k.NQ
曜ちゃんはどうなってしまうんだ…
385
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/01/13(土) 11:56:26 ID:uT31DZh.
更新待ってた
386
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/01/17(水) 18:36:34 ID:9c9ws/Qs
めっちゃ気になる
387
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/01/23(火) 03:52:02 ID:CdwjlX5I
―――
果南「よーし、それじゃあみんな今日は淡島神社走るよ!」
千歌「うへぇ……何度やっても慣れないよね〜」
梨子「まあまあ千歌ちゃん、これくらい頑張らないと」
千歌「あはは、そだね」
鞠莉「ダイヤはついてこられるかしら〜?」
ダイヤ「なっ、鞠莉さんこそ私に置いていかれないよう注意なさい!」
果南「善子ちゃん、体調良くなってないなら無理しちゃだめだよ。自分のペースでいいからね」
善子「え、ええ」
善子「(……今は集中しなきゃ。地区予選も近いしみんなに迷惑かけられない)」
善子「(幸い運動してたら気が紛れるし、変な考えも起こらない)」
善子「(それに、私のせいですべてがめちゃくちゃになるなんてこと、許されない)」
善子「(ルビィもマリーも、みんな私を信じてくれてるんだから)」
388
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/01/23(火) 03:52:30 ID:CdwjlX5I
――
善子「はぁ、はぁ……」
善子「(やっぱりキツイわねこれ)」
善子「(それになんだか前よりつかれやすくなってる気がする……寝不足が響いてるのかしら)」
善子「(……それでもルビィとずら丸よりは速く走れているけど)」
善子「(ともかく頂上までもう少し……)」
善子「……ん? あれって……」
善子「(……! 踊り場で誰か倒れて…!)」
389
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/01/23(火) 03:53:16 ID:CdwjlX5I
曜「はぁ……っはぁ……っ」
善子「……っ! 曜さん!」
曜「ぁ……よしこ、ちゃ……」
善子「曜さん一体……!」
曜「ごめ……うまく、はしれな……くて」
善子「(……すごい熱! どうしよう、このまま放っておくわけには)」
善子「(でも曜さんを抱えていくなんて私にはできないし……)」
ルビィ「よ、善子ちゃん?」
善子「!」
ルビィ「それ、曜さん!? どうしたの!? 大丈夫なの!?」
善子「ルビィ! 曜さんのことお願い!」
ルビィ「善子ちゃんは!?」
善子「先行って果南さん呼んでくるから!」ダッ
390
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/01/23(火) 03:53:52 ID:CdwjlX5I
善子「(待ってて曜さん、すぐに戻りますから!)」
善子「(急がなきゃ! 疲れたとか言ってらんない!)」タタタタ
善子「……っはぁ、着いた……!」
果南「おっ、善子ちゃんおつかれ、はい水……」
善子「果南さん!」
果南「ど、どしたの?」
善子「曜さんを……曜さんを助けて!」
391
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/01/23(火) 03:54:21 ID:CdwjlX5I
―――鞠莉の部屋
果南「鞠莉の家が近くで助かったね。お医者さんも常駐してるし」
鞠莉「そうね。うちのドクターによると貧血、脱水症状、あとは疲労の蓄積による衰弱が原因みたい」
千歌「曜ちゃん、無理させすぎちゃったのかな……」
ダイヤ「曜さんはスクールアイドル以外にも飛び込みもやってますし、それに加えて衣装も作っていますからね……」
花丸「でも少し休めば大丈夫なんでしょう? 大きな病気とかじゃないのは不幸中の幸いずら……」
鞠莉「それとね、もしかしたらなんだけど」
梨子「何か、あるんですか?」
鞠莉「うん。精神的な問題も関わっているかもしれない、という話だったわ」
千歌「悩みがあるってこと?」
鞠莉「可能性の話だけどね。曜の普段の健康状態から考えて、疲労などでここまで衰弱するとは考えにくいらしくて」
鞠莉「曜本人も自覚しないうちに、ストレスを抱え込んでいたのかもしれないわ」
392
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/01/23(火) 03:54:37 ID:CdwjlX5I
果南「確かに曜は体調不良とは無縁みたいな子だったし、そう言われると納得しちゃうかも」
ダイヤ「……ともかく、曜さんには安静にしてもらいましょう。自宅療養を2,3日ほど」
ダイヤ「幸い予選まではまだ時間はあります。要領のいい曜さんであれば遅れは取り戻せるでしょう。衣装の方は……」
善子「できる限り私が進めておくわ。曜さんほどうまくないけど全くやらないよりはマシでしょ」
ルビィ「ルビィも手伝うよ!」
ダイヤ「……ええ、ではお願いしますわ」
393
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/01/23(火) 03:56:55 ID:CdwjlX5I
―――
曜「みんなごめんなさい! 大事な時期に迷惑かけちゃって……」
千歌「ううん! 曜ちゃんが病気とかじゃなくてよかったよ〜」
果南「大丈夫だよ。まだ時間はあるんだし無理しない程度にがんばろ?」
善子「(曜さんが元気になるまでそう時間はかからなかった。果南さんの言う通り元々体力もあって健康な人だから治りも早い)」
善子「(ただ、鞠莉さんの言っていたことがみんな気にかかっているようで)」
善子「(そしてなんとなく曜さんの不調の原因を察してしまっているから、余計に気を使いづらくなっていた)」
善子「(千歌さんと梨子さんにいたっては曜さんの苦悩を知るはずもない)」
善子「(けれど同学年で、片や幼馴染みという立場故に過剰に、そして純粋に曜さんを心配している)」
千歌「曜ちゃん、調子悪かったみたいだけど、なにか悩んでることとかない?」
梨子「曜ちゃんはいろいろやることがあって大変だし、私たちにできることがあるならなんでも言ってほしいの」
善子「(……して、しまっている)」
善子「(自分たちが原因であることなどつゆ知らず。その思いやりは無垢で純粋で、悪意がないから性質が悪い)」
394
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/01/23(火) 03:57:11 ID:CdwjlX5I
善子「(そんな状況を見て、私を含む他の6人は心穏やかではない)」
善子「(なんとかしたくてもどうしようもない。でもこのまま見ていられるようなものでもない)」
善子「(いつもの練習にみんながやりづらさを覚えながら、それでも私たちは予選に向けて準備をしなければならない)」
善子「(いつしかAqoursには、仲良しグループとはとても言えないような、いいしれない重い空気が漂っていて)」
善子「(私にとって、おそらくみんなにとっても、もはやAqoursは居心地のいい場所ではなくなっていた)」
善子「(そして……)」
395
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/01/23(火) 03:57:43 ID:CdwjlX5I
中途半端ですみません
できれば明日続きかきます
396
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/01/23(火) 05:07:56 ID:7nrNWIBo
乙です
これはきつい…
397
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/01/24(水) 01:49:57 ID:Kdgftkcc
乙
398
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/01/24(水) 12:19:22 ID:N7rmvrog
深夜に更新します
399
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/01/24(水) 12:40:43 ID:JVKLhYCo
よっしゃ
400
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/01/24(水) 21:18:26 ID:kwTjFpck
待ってます
401
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/01/25(木) 04:09:18 ID:137J91jo
千歌「曜ちゃん、また体調崩しちゃったって……大丈夫かな」
梨子「心配だよね。曜ちゃんやっぱり無理しすぎてるんじゃ……」
善子「(その後曜さんはまた体調を崩して学校を欠席した。当然私たちは曜さんの負担を心配した)」
善子「(二年生である千歌さんと梨子さんは特に穏やかではなくて、様子見とお見舞いのために放課後曜さんの家に向かった)」
善子「(私も家が近いのでついていくことになった。純粋に曜さんが心配というのもあったけど)」
善子「(この二人と曜さんだけにするのが、なぜか無性に不安だった)」
402
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/01/25(木) 04:09:37 ID:137J91jo
―――曜の部屋
千歌「曜ちゃん? 大丈夫?」
曜「あ、千歌ちゃん梨子ちゃん! 善子ちゃんも!」
千歌「あ、起きなくていいよ! 無理しちゃダメ」
梨子「曜ちゃんまた体調崩したって聞いて、心配でお見舞いに来たの。具合は大丈夫?」
曜「あはは、心配かけちゃったね。もうすっかり大丈夫なんだけど一応安静にしてるよ」
善子「曜さん飛び込みも忙しいんだから、ちゃんと疲れとってよね」
曜「自分でも気づかないもんだね〜参ったよ」
403
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/01/25(木) 04:09:58 ID:137J91jo
千歌「もう。ちゃんと休んでって言ったのに! 大事な時期なんだし気を付けてね?」
曜「うん、わかってる。今度は大丈夫だからさ、安心してよ」
梨子「お願いよ? 千歌ちゃんも曜ちゃんがいないと調子でないみたいだし」
曜「……そっか」
善子「……」
千歌「曜ちゃん、大丈夫? ぼーっとしてるけど」
曜「えっ、あ、ごめん、別になんでもないんだけど……」
千歌「本当に? やっぱり熱とかあるんじゃ」スッ
曜「いやっっっ!!!」パシィ
404
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/01/25(木) 04:10:38 ID:137J91jo
千歌「え」
善子「……!」
曜「あ……」
梨子「よう、ちゃん?」
曜「あ、ああぁぁぁ……ちがっ、違うのちかちゃん、ごめんね、そんなつもりじゃ」
曜「ごめんね、ごめんなさい、い、いたかったよね? わたし、わたし、ぁぁぁぁ……」ガタガタ
梨子「曜ちゃん? ねえ曜ちゃん!」
千歌「よ、曜ちゃん落ち着いて? 大丈夫。私なら大丈夫だから」
曜「ちがうの、ちがうの、わたしがわるいの、ぜんぶ、ぜんぶわたしがわるいのちかちゃん、ごめっ、ごめん、なさ……」グスッ
梨子「曜ちゃん? 曜ちゃんどうしちゃったの!?」
曜「あぁぁぁりこちゃ、ごめんなさい、わたし、わたっ、りこちゃんが、うぅぁぁ、あ」ポロポロ
405
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/01/25(木) 04:11:03 ID:137J91jo
千歌「曜ちゃん! 曜ちゃんってば!」ガシッ
曜「ひっ……!」ビクッ
善子「ダメ! ちかさ」
曜「やだぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!」
406
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/01/25(木) 04:12:24 ID:137J91jo
千歌「よ……」
曜「やだ、やだやだやだやだ、いっちゃやだ、いかないでちかちゃん! わたし、やだよ、やだやだやだぁ!!!」
千歌「曜ちゃん! そばにいるよ! どこにもいかないよ!」
曜「やだ、やだ、ひとりぼっち、やだぁ、ひどい、なんで、ちかちゃん、みんな、だれか、」グスグス
千歌「ようちゃ」
善子「よ、曜さん!」ガシッ
曜「あぅ、あ?」
善子「私、私です! 善子です! 津島善子!」
曜「あ、よ、よしこ、ちゃん……よしこちゃぁ……」グスグス
善子「大丈夫、大丈夫ですから。ね?」ギュ
曜「う、うぅぅぅ、よしこちゃん……よしこちゃん……」ギュ
407
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/01/25(木) 04:12:41 ID:137J91jo
千歌「よ、善子ちゃん……」
梨子「善子ちゃん、これって」
善子「……千歌さん、梨子さん。外で待っててくれませんか?」
千歌「で、でも」
善子「……」ジッ
千歌「……」
梨子「千歌ちゃん。いったん外に出よ?」
千歌「……うん」
408
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/01/25(木) 04:13:12 ID:137J91jo
短くてすみませんけどここまで
いつも見てくれてる方々ありがとうございます
409
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/01/25(木) 04:39:46 ID:X7hDZ6Ao
曜ちゃん…
辛い…
410
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/01/26(金) 02:16:25 ID:xtI9gVzk
乙
411
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/03(土) 04:34:02 ID:00pDLBEw
遅れてすみません
日曜日には更新します
412
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/03(土) 05:30:56 ID:ZXOe35As
待ってる
413
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/03(土) 06:42:31 ID:O5J1Ve3Q
待ってます
414
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/05(月) 03:42:42 ID:w1dbAgJE
善子「……」
曜「すぅ……すぅ……」
善子「(あの後、曜さんはずっと泣き続けていた)」
善子「(「ごめんなさい」と何度もつぶやきながら)」
善子「(誰に言っているのかは、わからなかった)」
善子「(それから泣きつかれたのか、子どものように眠ってしまった)」
曜「すぅ……」
善子「……」ナデナデ
415
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/05(月) 03:42:59 ID:w1dbAgJE
曜「ちか、ちゃん……」
善子「……!」
曜「……すき」グスッ
善子「曜さん……」
善子「(こんな状況になって、ようやく曜さんは自分の想いを口にした)」
善子「(何年も温めてきた、大きな大きな想いを)」
善子「(もう決して、報われることのない想いを)」
きっともう、ずっと前から限界だったんだろう。いや、限界なんてとっくに超えていた。
脆くて危うい、そしてなによりも強い優しさで成り立っていた曜さんの心は、今日完全に終わってしまった。
――ああ、この人はもうダメだ。
私にはわかった。誰よりも人を壊してきた私は、曜さんがどれだけ壊れてしまったかを把握してしまった。
ずっと傷ついて、それを隠して笑顔でい続けて、自分を犠牲にしてみんなの幸せを願って。
そして最後には壊れてしまった、この哀れで愛しい先輩を、私は……
――天使のようだと思った。
416
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/05(月) 03:43:16 ID:w1dbAgJE
――曜の家の前
善子「……」ガチャ
梨子「善子ちゃん!」
善子「……帰ってなかったのね」
千歌「その、曜ちゃんのことなんだけど……」
善子「……話すことはありません」
千歌「な、なんで!? だってあんな……」
千歌「あんな曜ちゃん、今まで一回も見たことないよ……」
梨子「千歌ちゃん……」
千歌「ねえ善子ちゃんお願い。何か知ってるなら……私にできることがあるなら教えてよ……」
善子「……」ギリ
梨子「……善子ちゃん?」
善子「明日、昼休みに屋上に来てください」
善子「そこで全部、教えてあげます」
417
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/05(月) 03:43:53 ID:w1dbAgJE
――善子の家
善子「ただいま……」
善子母「あらおかえり。今日は早いのね」
善子「晩ごはん、今日はいらない」
善子母「……そう。食べたくなったら言ってね?」
善子「……うん。ありがとう」
418
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/05(月) 03:44:06 ID:w1dbAgJE
――善子の部屋
善子「……」ドサッ
善子「う……うぅ……」グスッ
善子「どうして……どうして……」
どうして、こうなってしまったんだろう。
私はただ、曜さんに幸せになってほしかっただけだった。
本当にそれだけだった。
だって曜さんは、私を人間にしてくれた。
人間になれない、どうしようもなく救いようのない人間モドキの私でも、真っ当に生きられるんだって教えてくれた。
あの人のためならどんなことだってしようって思えた。
「でも、あなたは何もしなかったわ」
真っ暗な私だけの空間。声のする方に振り向くと、私がいた。私とおんなじ顔をした、邪悪な笑みを浮かべる私がいた。
善子?「曜さんを助けたいと思いながら。曜さんを幸せにしたいと思いながら。曜さんを守りたいと思いながら」
善子?「結局あなたは何もしなかった」
419
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/05(月) 03:44:22 ID:w1dbAgJE
善子「ち、違う! 私は……」
善子?「何も違わないわ。日に日に傷ついて弱っていく曜さんを見て、あなたはただどうにかなるように願っていただけ」
善子?「曜さんからもらうだけもらって、何も返さないままじゃない」
善子「違う私は、本当に……」
善子?「誰かを幸せにできると思った?」
善子「あ……あぁ……」
420
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/05(月) 03:44:38 ID:w1dbAgJE
善子?「たくさんたくさん、傷つけてきた。壊してきた。ダメだって思いながら、抗えなかった」
善子?「そして、それで構わないって思った」
善子「違う!!!」
善子?「大好きなものが、大好きな人が壊れていくのがたまらなく好きだった。どうなっていくのか見たくてしょうがなかった」
善子「黙れ!!!」
善子?「私一人だけが、楽しかった!」
善子「黙れ!!!!!!」
善子?「本当は、曜さんが傷ついて壊れていくのを見るのが楽しかったんじゃないの?」
善子「黙れ!!! 殺すぞ!!!」
目の前の私の髪を掴んで、思い切り地面に叩きつけた。
何度も何度も叩きつけた。加減なんて一切しなかった。本気で壊そうとしたから。
久しくこんなことはしていなかった。する必要なんてなかったし、そうしようなんて思いもしなかったから。
だから、久しぶりの何かを壊す感触に、私は、ワタシハ……
421
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/05(月) 03:44:55 ID:w1dbAgJE
……いつからだろうか。
幼い頃。それこそまだ花丸と一緒に幼稚園に通っていた頃。
私は自分が、本当の天使だと思った。
お母さんが私を天使みたいだって言ったから。
みんなが笑顔をくれて、私の周りにいる人はみんな幸せだったから。
みんな私をたくさん愛してくれたから。
だから私もみんなを愛した。
「私本当は天使なの!」
みんなを愛してみんなに愛される。そんな私は本物の天使なんだと疑わなかった。
422
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/05(月) 03:45:10 ID:w1dbAgJE
「そうじゃないって気づいたのは、いつだったかな」
また背後から声がした。振り向くと幼い姿の、幼稚園の頃の私がいた。
よしこ「私、みんなをたくさん愛したよ」
よしこ「みんなのことが大好きで、喜んでもらえることはなんでもやった」
よしこ「みんな笑ってて、幸せそうで……」
よしこ「でも突然、それら全てを壊してみたくなった」
よしこ「いま愛してくれるみんなを、例えば思いっきり嫌いになってみたらどうなるんだろう」
よしこ「傷つけて傷つけて、思いきり壊してみたらどうなるんだろう」
よしこ「思い始めたら止まらなくて」
よしこ「一度壊してみたら、とてもとても気持ちよくて」
よしこ「私、本当は、壊すために愛していたのかなって……」
423
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/05(月) 03:45:39 ID:w1dbAgJE
よしこ「ねえ、今もそうなの?」
善子「違う! 違う! 私はもうあの頃の私じゃない!」
善子「今度こそ、今度こそ誰も壊さずに、誰も不幸にしないままで、みんなを愛して、みんなに愛されるって決めた……」
善子「そう決めた! だから、だから……」
善子?「だから私を押しのけて、あなたが生まれた」
善子「っ……!」
頭を掴んで地面に叩きつけたままだった私が、おもむろに顔を上げて睨んできた。
その眼差しにすくんだ私は、頭を離してよろよろと後ずさった。
424
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/05(月) 03:45:59 ID:w1dbAgJE
よしこ「ねえわたし。覚えてる?」
よしこ「わたしたち、大好きな人たちをたくさん傷つけてきたね」
よしこ「わたし、みんながだいすきだったよね」
よしこ「……ようさんが、だいすきなんだよね」
善子?「……愛されたかった?」
善子「……愛され、たかった」
善子?「おこがましいのね。醜い人間モドキのくせに」
善子「……そう、ね」
よしこ「わたしたち、どこで間違えちゃったのかな……」
よしこ「……それとも、最初から間違いだったのかな」
善子「……わからない」
善子?「わからないまま、みんなを壊して……それで」
善子「なにを、してたのかしらね……はは」
425
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/05(月) 03:46:12 ID:w1dbAgJE
よしこ「……ねえ」
よしこ「これから、どうしたい?」
善子「……?」
よしこ「もう、今度こそわたしは幸せにはなれないよ」
善子?「曜さんが壊れてしまったからね」
善子「……」
よしこ「なにが、できるかな?」
善子?「何を望むのかしら」
426
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/05(月) 03:46:33 ID:w1dbAgJE
善子「私は……」
私はこの学校で曜さんに出会った。
最初は相容れないと思った。私とは正反対の、不幸なことなんか何もなくて、毎日が幸せな人なんだと思った。
でも違った。曜さんは私が考えているよりももっともっと素晴らしい人で……
文字通り完璧な人だった。誰もが羨み憧れ心を寄せる、太陽のように眩しい人。
私のような人間モドキがあの人と一緒にいられるなんて奇跡みたいだった。
本当に幸せだった。何もかも輝いて見えた。
こんな私でも、真っ当に生きられるんじゃないかって、この人のそばでならそれができるって思えた。
でも救えなかった。
私は何も出来なかった。
失ってしまった。
427
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/05(月) 03:46:45 ID:w1dbAgJE
もうあの人が私に笑いかけてくれることはないだろう。
だから、今までのことを思いだしていた。
――善子ちゃん
名前を呼んでくれるだけで心が弾んだ。
――善子ちゃん!
一緒にいるだけで胸が高鳴った
――善子ちゃん!!
お話するだけでドキドキが止まらなかった。
――善子ちゃん!!!
その笑顔だけで、私は救われた。
428
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/05(月) 03:48:16 ID:w1dbAgJE
善子「曜さん……」
私のすきなひと。わたしの、たいせつなひと。
善子「……」
また笑ってほしかった。愛されたかった。
それはもう叶わないけれど、今も心の底からそう思ってる。
じゃあ今の私に、できることは……
善子「……あなたは、どうしたい?」
よしこ「わたし?」
善子「うん。なにがしたい?」
よしこ「うーん……」
この子はかつての私。私の一番最初の姿。
だからこの子の願いこそが、私の最初の願い。一番の願い。
私は、その願いを……
429
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/05(月) 03:48:53 ID:w1dbAgJE
しこ「……あのね、わたし」
よしこ「わたし、今度こそ、ちゃんと、みんなに、だれかに、愛してもらえることがしたい」
よしこ「できれば、ようさんに愛してほしいけど、わがままはいわないよ」
よしこ「どんなことだっていいよ。いいことでも、わるいことでも」
よしこ「そうしたら、わたしはきっと」
よしこ「きっと……」
よしこ「……」
よしこ「だれかに愛されたまま、ぜんぶおわることができるとおもうの!」
430
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/05(月) 03:50:51 ID:w1dbAgJE
善子「それが、私の願いなの?」
よしこ「うん!」
善子「……そっか」
きっとこれは幸せな夢だったんだろう。
私が普通の人間みたいに、笑って、友達を作って、部活動がんばって……
そして、好きな人もできた。
振り向いてもらうことはできなかったけど、それでも幸せだった。
毎日が楽しくて、思い切り夢中になれた。
短い夢の中で、私はきっと幸せだった。
だから……
431
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/05(月) 03:51:10 ID:w1dbAgJE
善子?「私は、これでいいの?」
善子?「これで私は救われるの?」
……いや、私に救いなんてきっとない。
私の救いは、この幸せな夢の中にしかない。
曜さんがいてくれる、この夢の中だけいにある。
それがなくなった今、もう何もいらない。
止まれないまま、全てを壊して、壊して壊して壊し続けて……
432
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/05(月) 03:52:30 ID:w1dbAgJE
よしこ「できる?」
よしこ「こんなことになっても、わたし、さいごにだれかに愛してもらえる?」
善子「なんだ、そんなこと……」
善子「そんな、こと……」グスッ
善子「う……うぅ……」グスグス
よしこ「……私たちはやっぱり、醜い人間モドキだね」
善子「……うんっ……!」グスッ
善子?「幸せな夢は、ここでおしまい」
善子?「壊してしまいましょう。私たちを不幸にするもの全部」
433
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/05(月) 03:52:53 ID:w1dbAgJE
いつの間にか幸せになっていいって、勘違いしてたんだ。
これは幸せな夢の中のできごと。
目が覚めて現実に戻る時が来たの。
私はここでしか生きられない。
こんな地獄でしか生きられない。
よしこ「……だいじょうぶ?」
善子「……ええ、でも少しだけ泣かせてほしいの」
善子?「夢の中とはいえ、この場所を、この人たちを大切にしてきたものね」
善子「うん。でも……」
でも、これでおしまい。
失うんじゃない。ただ元に戻るだけ。
浦の星での津島善子は、全部夢だったの。
さあ、起きなさい。目を覚まして。
『私』に戻りましょう。
おやすみなさい。津島善子。
434
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/05(月) 03:53:41 ID:w1dbAgJE
めっちゃわかりにくいですけどなんとなくで感じ取ってくれれば。
いつも読んでくださる方々ありがとうございます。
435
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/05(月) 04:34:31 ID:91CohO9E
読んでてめちゃくちゃ辛い…
みんな誰かと一緒にただ幸せになりたかっただけなのに…
辛すぎる……
436
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/05(月) 05:28:47 ID:9sE7ebVY
乙
盛り上がって参りましたな
437
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/05(月) 09:27:33 ID:ZAzs4bNA
脳内会議すき
438
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/05(月) 23:37:00 ID:Ae/ZV.B.
待ってた!乙
よぴこ…。
439
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/06(火) 01:53:18 ID:a/JHaSjw
つらすぎる…
440
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/08(木) 04:40:39 ID:t68qN6bE
善子「……」
シャッ
善子「まぶし……」
―――
善子「おはようお母さん」
善子母「あら早いのね」
善子「うん。なんか今日は調子がいいの」
善子母「そう。元気になったみたいで良かったわ」
善子「うん。ありがとう」
――
善子「(すごく、すごく気分がいい)」
善子「(こんなに気持ちのいい朝は初めてかも)」
善子「(ずっと眠れない夜が続いてたけど……今日は本当によく眠れた)」
善子「ほんとに、目が覚めたみたい」
441
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/08(木) 04:40:58 ID:t68qN6bE
ハッシャシマス――
善子「(一人で登校、か。久しぶりかも)」
善子「(ずっと……)」
――善子ちゃん!おはヨーソロー!
――善子ちゃんおはよー!
――おはよ。朝から元気ね
善子「(みんなが、いたのに……)」
善子「……」
善子「……ひっ…………」ガタガタ
善子「(大丈夫。もう、決めたの。私は……)」
442
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/08(木) 04:41:15 ID:t68qN6bE
――学校
果南「よ、善子ちゃん!!!」
善子「……果南さん?」
果南「……千歌に聞いたんだ。その、曜のこと」
善子「あぁ……」
果南「……ごめん。私、善子ちゃんに頼まれたのに、結局……」
善子「いいんです。私も果南さんに押しつけて、自分では何もしなかったから」
果南「そんな……」
善子「大丈夫。これからは私がやります」
善子「私が、やるべきでした」
果南「……」
443
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/08(木) 04:41:39 ID:t68qN6bE
果南「(なんだろう、善子ちゃん今日はいつもと違うような)」
果南「(昨日までとはまるで反対で……)」
果南「……なんであんなに、すがすがしいような顔してるの……?」
善子「(……以前の私だったら、果南さんも普通に壊しちゃってたかな)」
善子「(完全に昔みたいに戻ったわけじゃないみたい。自分でも、わからないけど)」
善子「ま、いいか」
善子「(私のやることは、変わらない……)」
444
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/08(木) 04:41:56 ID:t68qN6bE
善子「(その後は誰にも会わなかった。登校時間をずらしたのもあるけど……)」
善子「(マリーに見つからなかったのは幸いだと思う。あの人は鋭いから何か言われそうだし、最悪病院に引きずられていたかもしれない)」
善子「(ルビィと花丸は同じクラスだから会わざるをえないけど、会話は最低限にした)」
善子「(もし話すことで私の気が変わって、二人を壊そうとしてしまったら、私でも抑えられないから)」
善子「(昼休みまでは絶対にアクシデントがあってはいけないから、なるべくいつも通りの私でいるようにした)」
善子「(そんな心配とは裏腹に、びっくりするぐらい時間は穏やかに過ぎていった)」
善子「(むしろよく眠れたから授業も頭に入ってきたし、いつも以上に調子がいいと思った)」
善子「(そして……)」
445
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/08(木) 04:42:39 ID:t68qN6bE
――昼休み
善子「(……時間だ。行こう)」
「待って」
善子「……」
「どうしたの? 今日はあんまり話してくれないね」
ルビィ「善子ちゃん」
446
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/08(木) 04:43:08 ID:t68qN6bE
短いですけどここまで
更新できるときにしておきます
447
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/08(木) 05:08:17 ID:MsxlWiyI
乙です
待ってますよ
448
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/08(木) 11:54:19 ID:ifKl5f/g
いよいよ正念場か
449
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/09(金) 01:53:10 ID:j8SBSq7E
乙
このあたりがルート分岐点かな
450
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/09(金) 04:41:03 ID:3PRfHXQE
ついにルビィちゃんが動くか
ところでこれ読んでる人は
つらい(本当につらい)
つらい(歓喜)
のどっちなんだろ
451
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/11(日) 05:01:08 ID:JnDioNjs
――数か月前・理事長室
ルビィ「かじょーせー……?」
鞠莉「イエス。過剰性。それが善子の疾患の正体よ」
ルビィ「ご、ごめんなさい、よくわからないです……」
鞠莉「そうね、簡単に言うと……」
鞠莉「あの子は自分の心にブレーキをかけられない」
鞠莉「ある方向に過剰に心が動くから、自分で自分をコントロールできないの」
鞠莉「これは禁止されているからやってはいけない。これをやると皆が悲しむ、みんなが傷つく」
鞠莉「そういうことって、普通の人はやってはいけないことだって判断できる。だから実行には移さないわよね」
ルビィ「……はい」
鞠莉「でもあの子は違う。強烈なエゴが心と身体を突き動かすの。倫理とか自分の意思とか、そういうのを全て吹き飛ばしてね」
鞠莉「気づいたらそれをし終わっている。そんなレベルで自分を制御できない」
鞠莉「心の過剰な動きに身体を支配される。それがあの子の『過剰性』よ」
452
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/11(日) 05:01:34 ID:JnDioNjs
ルビィ「善子ちゃんは、それが原因で……」
鞠莉「ええ。小学校高学年あたりからその兆候が見られて、中学1年の頃に爆発した」
鞠莉「その結果あの子は施設送り。中学の3年ほぼ全てをそこで過ごしたわ」
鞠莉「それから中学卒業と同時に疾患の改善が認められて今に至る。という感じよ」
ルビィ「なるほどわかりました……でも、2つほどいいですか?」
鞠莉「何かしら?」
ルビィ「その『過剰性』、確かに厄介な疾患ですけど冷静に考えればそれほどじゃない」
ルビィ「自分をコントロールできない人なんていくらでもいます。どうして善子ちゃんだけ特別異常な扱いをされてたんですか?」
ルビィ「……あんな適応指数、その疾患にしては高すぎます」
453
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/11(日) 05:01:56 ID:JnDioNjs
鞠莉「そうね。理由はいくつかあるわ」
鞠莉「確かに自分をコントロールできない人はいくらでもいる。私たち疾患者の心は自動的で、こういう状況ならこうするしかない、っていうふうにできている」
鞠莉「ルビィの場合だと相手の気持ちに敏感過ぎる。だからその気持ちが気になってなにも言えなくなる。そんな具合にね」
ルビィ「……はい。今は、大分改善しましたけど」
鞠莉「善子の場合、コントロールできないとはいってもその方向性、どこに心が向かうかが問題なの」
ルビィ「方向性……」
鞠莉「あの子は過剰に他人を傷つける方向に心が向かってしまう」
鞠莉「他人を傷つける恐れのある凶暴性。善子はそれが異常に強かった」
鞠莉「それに関係してでしょうね。性格も突然豹変することもあったらしいわ」
鞠莉「普段は明るく優しいけど、突然残虐で冷酷な性格になることがあったみたい」
鞠莉「善子は『過剰性』に伴う二重人格も患っていた。そんな複雑な心の構造をしている。だから……」
ルビィ「だからあんな、適応指数95なんて数字が……」
454
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/11(日) 05:02:55 ID:JnDioNjs
ルビィ「……もう一つ。善子ちゃんはそんな状態から、どうやって今の状態に?」
ルビィ「今の善子ちゃんはいたって普通の女子高生。変な言動は目立つけど根は真面目で心優しい女の子だよ」
ルビィ「そんな凶悪な一面があったとはとても……」
鞠莉「特別施設に入れられて治療を受けていく中で、あの子なりに考えたんでしょうね。どうすればいいのかって」
鞠莉「本当はあの子もひどいことすることは望んでない。でも心と身体が言うことを聞かない。そんな現状をどうにかしたいって」
鞠莉「どうすれば自分を抑えられるのか。誰も傷つけないですむのか。自分にできることを考えたらしいわ」
鞠莉「それであの子が思いついたのは、自分の疾患を利用することだった」
ルビィ「疾患を、利用? そんなことが……」
鞠莉「私も聞いたときは少し驚いたわ。そんなことできるのかって」
鞠莉「善子は自分の『過剰性』は消せないと思った。だから心の向かう方向を無理やり変えた」
鞠莉「『誰かを傷つけること』から『誰も傷つけず、平穏に過ごすこと』にね」
455
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/11(日) 05:03:32 ID:JnDioNjs
鞠莉「つまり今の善子は『みんなを傷つけないで、平穏に過ごそう』と過剰に思いこんでいる状態ってこと」
ルビィ「無理やり、自分を抑えてるってことですか……」
鞠莉「そうね。善子は試行錯誤の末それができるようになって、今のように普通の人らしい性格になった」
鞠莉「いうなれば今の善子は、第3の人格ってところかしら」
ルビィ「第3の人格……」
鞠莉「でも善子の中の『過剰性』が消えたわけじゃない。何かの拍子にあの子の心が誰かを傷つけようとしてしまうかもしれない」
鞠莉「そこで、あなたにお願いがあるの」
ルビィ「……なんですか」
456
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/11(日) 05:04:18 ID:JnDioNjs
鞠莉「善子が変な気を起こさないように、様子を見ててほしいの」
鞠莉「事情を知っててクラスメイトで、人の気持ちに敏感なあなたは適任だと思う」
ルビィ「そんな、善子ちゃんを疑うようなことを、ルビィにやれって言うんですか」
鞠莉「……気が進まないのはわかる。私も友達を監視するようなことを生徒に、ルビィにさせたくなんてない」
鞠莉「でも善子は私たち疾患者の中でも特別なの。あなたも噂は聞いたことはあるでしょ?」
ルビィ「……」
鞠莉「お願い。善子をまた昔みたいにならないためにも、協力してほしいの」
ルビィ「……はい」
457
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/11(日) 05:05:11 ID:JnDioNjs
わかりにくいかもしれませんがルビィの回想です
短いですけど明日も更新します
458
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/11(日) 05:24:19 ID:f9Ce9ARE
ルビィちゃんがどう動くかで話が大きく変わりそう…
459
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/12(月) 04:13:19 ID:Ag7zBYWg
――
ルビィ「今日はいつもと違って調子良さそうだね? 顔色もよくなったし」
ルビィ「なにかいいことでもあったのかな、善子ちゃん?」
ルビィ「……じゃないねぇ、なんか初めまして、みたいだよ」
善子「ふふ、そうかもね」
ルビィ「善子ちゃん、これからどこかに行くの?」
善子「ちょっと、ね。」
ルビィ「……」
ルビィ「(ああ、鞠莉さん。善子ちゃんは、もう……)」
460
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/12(月) 04:13:58 ID:Ag7zBYWg
ルビィ「……善子ちゃんは、決めたの?」
善子「決める?」
ルビィ「これから、どうするのかなって。善子ちゃん、顔は冷静でも心が穏やかじゃないよ」
善子「……あんたが何を知ってるっていうのよ」
ルビィ「わからないけど……でも、これからとっても大事なことをしに行くんでしょ?」
ルビィ「善子ちゃんの……ううん。Aqoursの今後を大きく変えるような、そんなこと」
善子「……相変わらず察しがいいのね。その通りよ」
ルビィ「……そっか」
461
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名無しさん@転載は禁止
:2018/02/12(月) 04:14:30 ID:Ag7zBYWg
善子「あんたはどうするの」
ルビィ「うん?」
善子「もうわかるでしょ? 今の私は、あんたの知ってる津島善子じゃない」
善子「どうせマリーから言われてるんでしょ? 私を監視するようにって」
ルビィ「……」
善子「マリーはきっと、私がこうなることをずっと恐れてた」
善子「あんたは人の心に敏感だから、私がこうなったらすぐにわかる」
善子「だからあんたはいつも私のそばにいた。いつでも私を止められるように。マリーにすぐに知らせられるように」
ルビィ「……」
善子「どうする? マリーに報告しに行く? それとも私を止める? もし邪魔するなら……」
ルビィ「止めないよ」
462
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/12(月) 04:15:07 ID:Ag7zBYWg
善子「……は?」
ルビィ「私は善子ちゃんを止めない。鞠莉さんに報告もしない。むしろ逆」
ルビィ「善子ちゃんを応援するよ。頑張ルビィっ、てね」
善子「……正気? 私がどんな人間だったか知ってるでしょ?」
ルビィ「話には聞いてるよ」
善子「だったら……!」
ルビィ「でも、Aqoursを始めてからの善子ちゃんのことはもっと知ってる」
善子「……!」
ルビィ「言ったでしょ? 私はなにがあっても善子ちゃんの味方だって」
ルビィ「それは今も変わらない。ううん。これから先だって変わらない」
ルビィ「鞠莉さんに言われたって、私は善子ちゃんの邪魔は絶対にしない」
463
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/12(月) 04:15:31 ID:Ag7zBYWg
善子「どうして……?」
ルビィ「……私たちみたいな人間モドキは、幸せにはなれない」
ルビィ「それは私たちが他人と自分を不幸にする疾患を持ってるからとかじゃなくて……」
ルビィ「……きっと『そうなるようにできている』から」
ルビィ「私たちは絶対に、幸せになれない道を歩かなきゃいけない。そんなふうにできている」
ルビィ「理屈とかじゃない。もっと大きな流れ……運命みたいなもので決まってるの。善子ちゃんなら、なんとなくわかるでしょ?」
善子「……ええ」
ルビィ「でも、善子ちゃんはキレイな心を持ってた」
ルビィ「私と同じで絶対に幸せになれないのに、どうして? って思ったよ」
464
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/12(月) 04:15:49 ID:Ag7zBYWg
ルビィ「でもね、善子ちゃんと関わっていくうちにわかった」
ルビィ「善子ちゃんは強い心を持ってる。一度決めたらそこに向かおうとする、過剰なくらい強い決意がある」
ルビィ「幸せになろうって思ったんだよね? 幸せにしたいって思ったんだよね?」
善子「でも、私は何もできなかった。結局こんなことになって……」
ルビィ「それでも、ルビィはすごいと思った。ルビィは諦めたから。幸せになる勇気なんてなかったから」
ルビィ「だからね、私は……」
465
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/12(月) 04:17:09 ID:Ag7zBYWg
ルビィ「私は、善子ちゃんが選んだ道に最後までついていくよ。それがいいことでも、わるいことでも」
ルビィ「それで善子ちゃんを応援して、支えてあげる。それが私の決めたこと」
善子「……それで、いいの? 絶対に後悔するわよ?」
ルビィ「それでもいいよ。これから先何があっても、たとえ善子ちゃんに壊されたって、後悔なんてしない。恨んだりしない」
善子「……意味、わかんない」
ルビィ「知らなかった? 私善子ちゃんのこと、けっこう好きなんだよ?」
善子「……はは、もの好きね」
ルビィ「そんなことない。善子ちゃんは素敵な子だよ」
466
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/12(月) 04:17:44 ID:Ag7zBYWg
善子「そんなこと言ってくれるのは、後にも先にもあんただけよ」
善子「でもありがと。ちょっとだけ、嬉しい」
ルビィ「ちょっと、かぁ」
善子「ちょっと、よ」
ルビィ「……ねえ善子ちゃん、『Black Sheep』って言葉があるんだけど、何のことか知ってる?」
善子「……私みたいな人間のことよ」
ルビィ「……」
善子「ありがとルビィ。もう行くわ」スタスタ
ルビィ「……」
ルビィ「『私たち』だよ……」
467
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/12(月) 04:18:03 ID:Ag7zBYWg
――屋上前
善子「……」
善子「(まさかルビィがあんなこと言ってくれるなんて)」
善子「(もし、昔の私にルビィみたいな理解者がいてくれたら……)」
善子「(……いや、きっと壊してたわね。他の人と同じように)」
善子「(じゃあなんで今、私はルビィに何もしないの……?)」
善子「(昔の私と今の私で、何が違うんだろう……)」
468
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/12(月) 04:18:19 ID:Ag7zBYWg
――善子ちゃん
善子「(……そうだ。私は、曜さんがもう悲しまないように)」
善子「(あの人に二度とあんな顔させないために、こうなったんだ)」
善子「(今の私には目的がある。大切に思える人がいる)」
善子「(……こんなことしたって、きっと誰一人幸せにならない。どころか、不幸になるだけ)」
善子「(でも決めたから。私を、曜さんを不幸にするものは全部壊すって)」
善子「(正しいとか正しくないとか、いいこととかわるいこととか、どうだっていい)」
善子「(そう決めた。だから)」ガチャ
469
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/12(月) 04:18:33 ID:Ag7zBYWg
千歌「あっ、善子ちゃん!」
梨子「善子ちゃん……」
善子「お待たせしました。千歌さん。梨子さん」
善子「(今日ここで、全部終わらせる)」
470
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/12(月) 04:18:51 ID:Ag7zBYWg
今回はここまで
いつも読んでくれる方々ありがとうございます
471
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/12(月) 09:24:10 ID:Td7FrpCQ
あぁ…
472
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/17(土) 04:21:47 ID:bUy1R/6w
不謹慎だがわくわく
473
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/20(火) 15:44:15 ID:Yja6eC..
遅れてすみません
明日深夜更新予定です
474
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/20(火) 21:10:46 ID:1NTZDdB2
待ってます
475
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/22(木) 06:23:21 ID:CgRVzVx2
すみません、もうちょい推敲したいので遅れてしまいます
金曜深夜には必ず
476
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/22(木) 12:50:43 ID:W1eSGX8s
待ってますよ
477
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/23(金) 22:46:36 ID:DOvpBdJk
ぼちぼち金曜の深夜だな
478
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/24(土) 04:12:43 ID:XYyqDd8o
千歌「善子ちゃん、あの、曜ちゃんのこと教えてくれるって」
善子「ええ。もちろん教えますよ。そのためにきたもの」
善子「全て包み隠さず教えることを約束するわ」
梨子「じゃあ、千歌ちゃん」
千歌「……うん。単刀直入に聞くけど、今曜ちゃんに何が起こってるの……?」
善子「……そうね、まず初めに言っておくけど」
479
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/24(土) 04:13:25 ID:XYyqDd8o
善子「曜さんはもうダメです」
善子「私たちが何をしても、もう以前の明るくて優しい曜さんには戻らないわ」
千歌「……え?」
梨子「ま、待ってよ! それってどういう……」
善子「言葉通りの意味よ。曜さんはもうAqoursに戻ってこれない。私たちとまともに会話すらできないかもしれない」
善子「そういう意味で終わりってことです」
480
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/24(土) 04:13:49 ID:XYyqDd8o
千歌「な、なんで……?」
善子「ん?」
千歌「曜ちゃんはどうして、こんなことに……」
善子「限界が来たから」
千歌「え?」
善子「曜さんは疲れたんです。苦痛しかない毎日に。報われない人生に」
千歌「苦痛……? 疲れたって、どういうこと?」
善子「……本当に、何も知らないのね」
481
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/24(土) 04:14:09 ID:XYyqDd8o
善子「千歌さんあなた、本当に曜さんの幼馴染みなの?」
善子「今日までの曜さんを見て、何も気づかなかったの?」
千歌「え、えっと、最近体調崩してるみたいだから、無理してるのかなとは思ってたけど」
善子「(……やっぱり、その程度の認識か)」
善子「(曜さんがずっと悩んでたことなんて知らないで、自分はのうのうと楽しく過ごしてたってわけね)」
善子「(ああ、本当に、腹が立ってきた……)」
千歌「ねえ善子ちゃん。善子ちゃんは曜ちゃんがどうしてこうなっちゃったか知ってるんでしょ? 教えてよ!」
482
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/24(土) 04:15:12 ID:XYyqDd8o
善子「(よくもまあそんなことが言えたわね……)」ギリ
善子「……じゃあ、教えるわ。よーく聞きなさい」
善子「曜さんがあんなふうに壊れた原因はね……」
千歌「……」
梨子「……」
善子「あなたたちのせいよ」
483
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/24(土) 04:15:52 ID:XYyqDd8o
千歌「……え?」
梨子「私たちの……せい?」
善子「あなたたちが曜さんを除け者にして、二人だけで幸せそうに過ごして」
善子「それをずっと曜さんに見せびらかしてきたから、曜さんはああなった」
千歌「そ、そんな! 私たちそんなつもりじゃ……!」
善子「あなたたちにそのつもりがなくても、実際曜さんは悲しんでいた」
善子「最初は私も気にしてなかったわ。千歌さんと梨子さんが仲良さそうにしてるのを遠巻きに眺めてただけで、大した意図はないんだろうと思った」
善子「あなたたちが3人で仲良く話してるところも見てたしね」
484
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/24(土) 04:16:09 ID:XYyqDd8o
善子「でもその一方で曜さんは悩んでたわ。自分が一緒にいることで、千歌さんを苦しめてるんじゃないかって」
善子「千歌さんのためにしてきたことが、千歌さんを傷つけているんじゃないかって」
千歌「そんなことない! そんなこと思ったことないよ!」
千歌「曜ちゃんは小さいころからずっと一緒で、私が困ってたら助けてくれて……」
千歌「何もない普通の私なんかのそばにずっといてくれた!」
善子「……へえ」
千歌「だから私は」
善子「それ、一度でも曜さんに言ってあげた?」
千歌「え……」
485
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/24(土) 04:16:33 ID:XYyqDd8o
善子「あなた、曜さんが何かを成すたびに喜んでいたけど、だんだん笑わなくなって悲しい顔をしていたそうじゃない」
善子「曜さんはね、千歌さんにそんな顔をさせてしまったことをずっと悩んでいたみたいよ」
千歌「それは、違うよ……私は、曜ちゃんと一緒になにかをできないのが悔しくて……」
千歌「曜ちゃんを妬んだりとか憎んだりとか、そんなこと思ってたわけじゃない!」
梨子「そ、そうだよ! 千歌ちゃんは、曜ちゃんと一緒に何かをやりたいって、今一緒にスクールアイドルができて嬉しいって」
梨子「それで、スクールアイドルをやり遂げて、曜ちゃんと向き合える時がきたら、その気持ちをちゃんと伝えようって……」
善子「『その時』と言わず、ちゃんと機会を作って気持ちを伝えていたら、曜さんは傷つかずに済んだのにね?」
千歌「……っ」
善子「結局あなたは曜さんの優しさに甘えていただけですよ」
千歌「うぅ……」
486
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/24(土) 04:18:36 ID:XYyqDd8o
善子「まあでも、私にはちょっと信じられないわ。あなたが曜さんと一緒で嬉しいなんて」
千歌「ど、どうして!? 本当のことだよ!」
善子「……そのわりにはあなた、曜さんのことなにもわかってないし、ぞんざいに扱うわね」
善子「一緒にスクールアイドル始めてくれて、最初についてきてくれたのは曜さんなのに」
善子「そんな曜さんを差し置いて、あなたは梨子さんばかり大切にしていた」
梨子「そ、そんなことない! 千歌ちゃんは曜ちゃんだって大切に思ってたよ!」
487
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/24(土) 04:18:51 ID:XYyqDd8o
善子「いいや千歌さん、あなたは曜さんのことをそれほど大事には思ってないわ」
千歌「ち、違うよ、私は本当に、曜ちゃんが……」
善子「覚えてる? 私たちが東京でライブして、0票で帰って来た日のこと」
千歌「……」
善子「あの日、みんなが沈んでいる中あなたは一人だけ明るく振る舞っていたわね」
善子「でも本当はあなたも悔しかったし悲しかった。みんなを不安にさせないためにその気持ちを隠していた」
善子「結局あの日は梨子さんがあなたを慰めて、本音を話させたんだっけ?」
梨子「……それが、なんなの?」
488
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/24(土) 04:19:41 ID:XYyqDd8o
善子「いや、それ自体は別にどうでもいいの。同じグループのメンバーなんだし。心配し合って手を取り合うのは当然」
善子「私もそこを責めるつもりはありません。千歌さんが本音を話すことができて、Aqoursは再スタートを切ることができた」
善子「むしろあの日、あんなことがあって良かったと思ってるわ」
善子「……でもね、覚えてる?」
千歌「え……」
善子「あの日大会が終わって0票を知らされてから、曜さんはずっとあなたを心配して声をかけていたわよね?」
千歌「!!」
善子「でもあなたはそれを無視した。悔しくないとか嘘をついて、あげく最後には曜さんの呼びかけに答えもしなかった」
千歌「そんな、違う私、そんなつもりじゃ……」
善子「……ねえ、さっきも言ったけど、私はあの日の出来事を本当に素晴らしいと思ってる」
善子「海岸で抱き合うあなたたちはドラマのワンシーンみたいに美しかった。とても感動したわ」
489
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/24(土) 04:20:30 ID:XYyqDd8o
善子「でもおかしくない?」
善子「だって千歌さん、曜さんが心配して声をかけた時は嘘をついて明るく振る舞っていたのに」
善子「梨子さんが一言声をかけたらすーぐ泣いて本音を話しちゃうなんて」
千歌「……っ!!」
善子「梨子さんも曜さんも、どちらも千歌さんのことを案じていたのは変わらない」
善子「なのに梨子さんの時だけ随分対応が違うじゃない?」
千歌「ぁ……」
善子「ちょっと教えてほしんだけど……それあなたの中でどういうふうに帳尻があってるのかしら?」
善子「大切と言っていたわりには随分ぞんざいな対応するのね?」
千歌「あぁぁぁ……」ガクガク
490
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/24(土) 04:21:36 ID:XYyqDd8o
梨子「善子ちゃんやめて! これ以上はいくらなんでも……」
善子「あなたたちこそ被害者ぶるのはやめなさい。曜さんの気持ちを知ろうとしないで、優しさに甘えて」
善子「傷ついてることも知らずに、トドメをさしたのはあなたたちよ?」
梨子「そんな、だって曜ちゃん、そんなこと一言も……」
善子「曜さんのせいって言いたいわけ?」
善子「曜さんはね、自分の気持ちを打ち明けたら、あなたたちが気を遣って過ごさなきゃいけなくなるって思った」
善子「あなたたちを傷つけないために! あなたたちが幸せに笑っていられるために!」
善子「ひとりで気持ちを抱えて、自分だけが傷つくことにしたのよ!」
491
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/24(土) 04:22:34 ID:XYyqDd8o
善子「……こんなことになっても、曜さんはまだあなたたちのことが大好き」
善子「どれだけ傷ついたって、それが自分だけで済むならって一人でずっと泣いていたのよ!」
善子「そんな優しい曜さんに、よくもそんなことが言えたわね!!!」
梨子「っ……!」
千歌「うっ、ひぐっ、うぅぅ……ぐすっ……っ」
善子「……あの日、曜さんは泣いていたわ」
善子「千歌さんをまた傷つけてしまったって。私なんか千歌ちゃんのそばにはいない方がいいんだって」
千歌「や、やめて……」
善子「私なんかいなければよかったんだって、泣いていましたよ?」
492
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/24(土) 04:23:21 ID:XYyqDd8o
千歌「わ、わたし……あぁ、曜ちゃん……曜ちゃん!」ダッ
善子「どこに行くんですか?」ガシッ
千歌「決まってるよ! 私、曜ちゃんに謝らなきゃ! 今までのこと全部! それで」
善子「それでまた、許してもらうのね」
千歌「……え?」
善子「謝れば曜さんは絶対に許してくれるわ。そしてまた笑顔で学校にきて、スクールアイドル続けてくれる」
善子「今までのように傷つきながら、そしてその傷を笑って誤魔化しながらね」
千歌「ぁ……」
善子「……いいわ、行けばいいじゃない。それで曜さんに許してもらいなさい」パッ
千歌「う……あぁ……」
善子「良かったですね千歌さん! 曜さんを犠牲にすれば、あなたたちはまた仲良し3人組に戻れますよ!」
493
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/24(土) 04:24:12 ID:XYyqDd8o
千歌「あ、あぁぁ私、なんてことを……曜ちゃんを……うぅ」ガクッ
梨子「ち、千歌ちゃん!」
千歌「うぅぅ、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……」グスグス
梨子「……善子ちゃん! なんてことを言うの!」
梨子「こんな、わざわざ千歌ちゃんを責めるような、まるで千歌ちゃんが悪者みたいな……!」
善子「何言ってるの梨子さん。私はただ曜さんについて聞かれたから教えただけ」
善子「本当のことしか言ってないわ」
善子「曜さんの親友だって言いながら、曜さんのこと何一つ理解できていなかったあなたたちに文句を言われる筋合いはない」
梨子「……っ」
善子「むしろ感謝してほしいわ。大切な親友の心境を教えてあげたんだからね」
494
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/24(土) 04:24:50 ID:XYyqDd8o
梨子「……それでも」
梨子「それでも! 千歌ちゃんにこんなこと言う必要はなかった! よそ者で、千歌ちゃんと曜ちゃんの仲を引き裂いた私ならともかく」
梨子「千歌ちゃんは、本当に曜ちゃんを想ってたよ!」
善子「……呆れた。まだそんなこと言うの?」
善子「それが本当だったらこんなことにはなってないって、さっきも言ったでしょう?」
善子「千歌さんは曜さんの優しさを無下にしてずっと踏みにじってきた。今まで曜さんが傷ついてきた分、傷つく必要があるわ」
善子「だって、曜さんだけが不幸になって、曜さんを傷つけ続けたあなたたちが幸せになるなんて、そんなの通らないもの」
梨子「……狂ってる」
495
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/24(土) 04:26:41 ID:XYyqDd8o
善子「狂ってる? 曜さんの優しさにつけこんで幸せになろうとしたあなたたちがそれを言うの?」
梨子「……っ」
善子「私からすれば、あなたたちの方が狂ってるわ」
梨子「……わからないよ、こんなの」
梨子「曜ちゃん、ずっと私たちといて、毎日一緒にお弁当食べて、時々おかずを分けてくれたりして」
梨子「衣装だってすごいもの作って、誰にでも優しくて、いつだって笑ってて……」
梨子「曜ちゃんがどんなこと思ってたかなんて、わからないよ……!」
善子「わからない? 当たり前でしょう?」
善子「梨子さん。あなたに曜さんの気持ちがわかるわけがないわ」
496
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/24(土) 04:28:31 ID:XYyqDd8o
善子「――だってあなたは所詮、千歌さんに救われただけだもの」
梨子「……ぁ」
善子「千歌さんのために曜さんが犠牲にしてきた13年を、あなたが理解できるはずがない」
梨子「そんな……私、曜ちゃん……」グスッ
善子「さて、曜さんの気持ち、少しでも理解できた?」
善子「曜さんの痛み、少しでも理解できた?」
善子「あなたたちが曜さんを傷つけた。曜さんをあんなふうにした」
善子「いいですか? 全部、ぜーんぶ、あなたたちのせいです」
善子「優しい曜さんが何も言わないから、私が代わりに言ってあげます」
善子「あなたたちは――」
「なに、してるの」
善子「……え」
善子「(この、声は……)」
497
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/24(土) 04:29:04 ID:XYyqDd8o
善子「(そんな、そんなはずない! あの人がこんなところにいるわけがない!)」
「ねえ善子ちゃん」
善子「嘘、嘘よ、なんで……」
曜「私の親友に、なにしてるの……!」
善子「……曜さん」
498
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/24(土) 04:30:12 ID:XYyqDd8o
遅れましてほんとうに申し訳ありません
いつも読んでくれてる方々ありがとうございます
499
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/24(土) 04:39:56 ID:pB3n/Ing
これは辛い…
善子ちゃん……
500
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/24(土) 09:30:50 ID:Ty1aVyXY
すごい
501
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/24(土) 15:25:19 ID:wfZ1ZO4E
曜ちゃん…
502
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/24(土) 17:48:18 ID:/2aC0QpI
血が出る展開じゃなくて良かった
503
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/24(土) 19:13:53 ID:vdf.DERM
前々から思ってたけどこのSSセリフがかっこいいというかすごい引き込まれるな
504
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/25(日) 00:26:30 ID:qayoIONU
続き気になるなぁ
505
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/28(水) 06:19:37 ID:PTBv.v2w
善子「曜さん、どうして……」
曜「さっき遅れて学校に来たんだよ。千歌ちゃんと梨子ちゃんが屋上に行ったって聞いたから来てみれば」
曜「……善子ちゃん。二人にひどいこと言ったね」
善子「(聞かれてたのね……)」
善子「(けどそれは事実。許せなかったとはいえ二人を傷つけたのは変わらない。というかそれが目的だった)」
善子「(でも、私は……私は……)」
曜「どいてよ善子ちゃん」スッ
善子「……っ!」
曜さんはなにも言えないままでいた私を冷たく睨みつけて、それから足早に私の前で崩れ落ちている二人の下に向かった。
いつもの優しい曜さんの面影なんてまるでなくて、冷酷に、けれど激しい怒りを抱えている。
こんな曜さんを見るのは初めてで、私はただ叱られる子供のように身をすくめるしかなかった。
506
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/28(水) 06:19:57 ID:PTBv.v2w
曜「……千歌ちゃん、梨子ちゃん」
千歌「え、あ、ようちゃん……?」
梨子「どうして、ここに? 今日は休みなんじゃ……」
曜「さっき来たんだ。それで二人のこと探しててね」
千歌「あぁ……、曜ちゃん、ごめんね、ごめんなさい、私、ずっと曜ちゃんのこと傷つけて……」グスッ
曜「そんなことないよ。私は千歌ちゃんと一緒で、ずっと楽しかったし嬉しかった」
曜「千歌ちゃんが『曜ちゃんすごいね』って言ってくれるだけで、私は幸せなんだから」
千歌「う、うぅ、曜ちゃん……!」グスグス
507
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/28(水) 06:20:14 ID:PTBv.v2w
梨子「曜ちゃん、私も謝りたい……曜ちゃんのこと無自覚に傷つけて、千歌ちゃんと二人の仲を邪魔して……」
曜「そんなこと思ってないよ。梨子ちゃんがいたから、私たちスクールアイドル始められて、千歌ちゃんだって一生懸命頑張れたんだから」
曜「梨子ちゃんが浦の星に来てくれてよかったって思ってる。私ね、梨子ちゃんのこと、大好きだよ」
梨子「よう、ちゃん……ごめんね……」グスッ
曜「謝らないで? 梨子ちゃんは何も悪いことしてないんだから」
曜「千歌ちゃんも泣かないでよ。悲しいことなんて何もないんだよ」
508
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/28(水) 06:20:29 ID:PTBv.v2w
善子「(……ああ、そうやって)」
善子「(そうやってあなたは、許してしまうんだ……)」
善子「(自分が傷つくことなんて構わずに、誰かが悲しまないように、自分以外の人が笑えるように)」
善子「(そうやって全部背負いこんで、それでもこうして笑顔でいようとして)」
善子「(私はそれが許せないから)」
善子「(曜さんの優しさを食い物にするやつらが許せないから!)」
善子「(これ以上、曜さんに傷ついてほしくなかったから……)」
509
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/28(水) 06:20:41 ID:PTBv.v2w
曜「……って」
善子「……え」
曜「謝ってよ善子ちゃん。二人に謝って!」
曜「ひどいこと言ったのを、ちゃんと謝ってよ!」
善子「……!」
善子「(なんで、どうして)」
善子「(その二人の方がよっぽど曜さんにひどいことをしてるのに)」
善子「(なんでまだその二人に優しくするの)」
510
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名無しさん@転載は禁止
:2018/02/28(水) 06:20:58 ID:PTBv.v2w
善子「(……認めない。たとえ曜さんの言葉でも)」
善子「(私は、絶対に……)」
善子「(絶対に……)」
善子「……」
曜「どうしたの? はやく謝って」
善子「……せん」
曜「……聞こえないよ。もっと大きい声で」
善子「……ません」
曜「二人にも聞こえるように!」
善子「謝りません!!!」
曜「!!!」
511
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/28(水) 06:21:12 ID:PTBv.v2w
善子「だって私は間違ってない!!!」
善子「曜さんが悲しんでることなんて知らないで、のうのうと笑って過ごしてたこの人たちを許せない!」
善子「曜さんの気持ちを踏みにじった千歌さんも! 居場所を奪った梨子さんも!」
善子「そのことを理解すらしていない二人を、私は許さない!」
善子「謝るのはこの人たちでしょう!? 曜さんを除け者にして、二人だけでわかり合って」
善子「曜さんのことたくさん傷つけた! だから」
曜「善子ちゃん!!!」パシン!
善子「……っ!」
512
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/28(水) 06:21:24 ID:PTBv.v2w
善子「(たぶん、本気で叩かれた気がする)」
善子「(あの曜さんがこんなことまでするくらいに、私は許されないことをしたのだろう)」
善子「(でもこれでいい。これは、私が許せなかっただけ。それだけの話。誰に許しを請うつもりもない)」
善子「(曜さんに嫌われたって、見捨てられたって構わない)」
善子「(曜さんを傷つけるもの、不幸にするもの全部、許さないって決めたんだから)」
善子「(だから……)」
善子「たとえ曜さんの言うことでも、私は謝らない!」
曜「……善子ちゃん」
513
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/28(水) 06:21:37 ID:PTBv.v2w
曜「善子ちゃん、私前に言ったよね」
曜「私は善子ちゃんが、誰かを傷つけちゃいそうなら止めてあげるって」
曜「……これはきっと私が弱くて、善子ちゃんに頼りすぎちゃったから起こったこと。だけど」
曜「それでも私は、二人を傷つけたことは許せないの! だから……ちゃんと、謝ってよ」
善子「……いいえ、いいえ! 私は許してもらおうなんて思わない!」
善子「だって! ここで許したらまた曜さんが傷つくんでしょう!?」
善子「私はどんなことがあっても曜さんを守るって決めたもの!」
善子「誰にも理解されなくたって! たとえ曜さんにさえ理解されなくたっていい!」
善子「私は絶対謝らない!!!」
曜「善子ちゃん!」バッ
善子「……っ」
514
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/28(水) 06:22:00 ID:PTBv.v2w
「そこまでよ、二人とも」
善子「え……」
曜「ま、鞠莉ちゃん……」
鞠莉「曜、その手を降ろしなさい。後輩を叩いちゃだめよ」
鞠莉「善子も落ち着いて。ちょっと興奮し過ぎ」
善子「マリー……」
鞠莉「……これ以上は、もうやめて」
515
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/28(水) 06:22:52 ID:PTBv.v2w
今回はここまで
いつも読んでくれてる方々ありがとうございます
おそらく次でバッドエンド√ラストです
516
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/02/28(水) 12:35:03 ID:w9HD2us.
乙です
このルートはよっちゃんが可哀想すぎる…
517
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/01(木) 01:19:32 ID:5uhHFNps
乙
善い子だなー
518
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/01(木) 23:00:03 ID:npVoDsYg
愛 だよなあ…
519
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/02(金) 23:53:06 ID:7IhkXmEk
曜ちゃんは確かに自分はこれでいいんだって感じで嫌なことでも黙って受け入れそう
520
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/06(火) 03:23:13 ID:4.ZUo67I
曜「邪魔しないでよ鞠莉ちゃん! 私たちはいま……」
鞠莉「曜」ギロ
曜「っ……」
鞠莉「……そんなことよりも、あなたにはやることがあるでしょう?」
曜「!! 千歌ちゃん! 梨子ちゃん!!」
千歌「うっ……うぅ……ひぐっ、うう……」
梨子「……」グスッ
鞠莉「曜。二人を連れて理事長室まで来てちょうだい。話があるわ」
曜「……うん」
521
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/06(火) 03:23:30 ID:4.ZUo67I
鞠莉「善子」
善子「……はい」
鞠莉「あなたのことは、あの子に頼んであるから」
善子「(……あの子?)」
ルビィ「善子ちゃん……」スッ
善子「ルビィ……あんたも来てたのね」
ルビィ「……うん」
鞠莉「あとは任せるわ。曜。ちかっちと梨子を連れてついてきて」
曜「……うん。二人とも立てる?」
梨子「……私は大丈夫、だけど」
千歌「う、ぐすっ、ひっ……うぅ……」
曜「……肩貸すよ。行こう千歌ちゃん」
千歌「うぅ……ようちゃん、ごめんね……ごめんなさい……」グスグス
曜「……」
鞠莉「……行くわよ」
522
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/06(火) 03:23:46 ID:4.ZUo67I
バタン
善子「……」
ルビィ「あの、善子ちゃんごめんね。鞠莉ちゃんに気づかれて、足止めはしたんだけど……」
善子「いいえ。むしろいいタイミングだったわ。やることはやったから」
ルビィ「……そっか。やったんだね」
善子「……うん」
ルビィ「大丈夫?」
善子「後悔は、してない。私はきっと、ずっとこうしたかったんだとすら思ってる」
善子「……許せなかった。あの人たちを。それが、間違っていることでも……」
ルビィ「善子ちゃん」ギュ
善子「……」
ルビィ「間違ったことでも、それが善子ちゃんの選んだことなら、ルビィは褒めてあげる」
ルビィ「つらかったね。がんばったね」
善子「……うん……うん……っ!」グスッ
523
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/06(火) 03:24:24 ID:4.ZUo67I
ルビィ「これからどうなるかはわからない。もしかしたら、もうAqoursはダメかもしれないけど……」
善子「……ごめん」
ルビィ「ううん。私は善子ちゃんを責めないよ」
ルビィ「でも、善子ちゃんはこれからどうしたい?」
善子「……先のことは何も考えてなかったわ。私はきっと施設送りだろうけど、もうどうなっても構わない」
善子「ただ、これからも曜さんが傷つかないでいられるようにしてあげたい、かな」
ルビィ「うん。善子ちゃんのしたいようにするといいよ。私も手伝うからさ」
善子「……ルビィ、ありがとう」
そこから先のことはよく覚えてない。
やることをやって緊張の糸が切れてしまったのか、私はぷっつりと意識を失ったそうだ。
私はその後お母さんに迎えに来てもらって、気づいたら家のベッドで横になっていた。
524
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/06(火) 03:24:40 ID:4.ZUo67I
あとからルビィがうちに来ていろいろ教えてくれた。
私はマリーから3日の自宅謹慎言い渡された。そして来月から3ヵ月、東京の特別施設で検査をしなければならない。
2年生の3人は学校に来ていないらしい。
千歌さんは部屋で一人でずっと泣いていて、食事にもあまり手をつけていないそうだ。
梨子さんも部屋に閉じこもって、名前を呼んでも生返事しかしないらしい。
曜さんは最初は学校に来ていて、そんな様子の2人を励まそうとしたけどやがて諦めて、とうとう学校にも来なくなってしまったようだ。
要の3人を失ったAqoursがまともに活動などできるはずもなく。
私たちは地区予選を辞退した。
必然的に浦の星を存続させる方法はなくなり、統廃合はほぼ決定してしまったらしい。
525
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/06(火) 03:24:53 ID:4.ZUo67I
善子「……失礼します」
謹慎が明けて、私は理事長室に呼びだされた。
今までのこと、屋上でのこと、そしてこれからのことを話し合うとのことだ。
私一人では心細いだろう、ということでルビィもついてきてくれた。
鞠莉「あなたを責めるつもりはない。これは監視を怠った私のミス」
鞠莉「だけどこんなことが起こってしまった以上、あなたの検査は避けられない。少しの間東京に行ってもらうわ」
善子「……はい」
ルビィ「善子ちゃんは、どうなるんですか?」
鞠莉「検査結果次第ね。指数が高く疾患が重度と判断されればそのまま向こうで施設通い」
鞠莉「良い結果なら帰ってこられるかもね」
ルビィ「そう、ですか……」
526
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/06(火) 03:25:05 ID:4.ZUo67I
鞠莉「あと2年生については私が今動いてる。それぞれのお宅に訪問してるけど……相変わらずね」
鞠莉「ちかっちも梨子も、まともに会話すらしてくれない。『私が悪いです』の一点張りでね」
鞠莉「ちかっちのほうは幼馴染みの果南が行っても、何も話してくれなかったみたい」
善子「……」
鞠莉「……確かに、あの子たちは曜のことを考えているようで考えられていなかった」
鞠莉「善子の話を聞いてもちかっちと梨子に非がある部分は少なくないと思う」
鞠莉「でも、あなたもあの二人が全部悪いだなんて思ってないでしょう?」
善子「……」
527
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/06(火) 03:25:19 ID:4.ZUo67I
鞠莉「ちかっちと梨子が曜を理解できていなくて、知らず知らずのうちに追いつめる形になってしまっていたのは事実」
鞠莉「二人が恋仲になってしまったことも、曜がショックを受けた原因」
鞠莉「それが決定打になったみたいだけど、曜自身二人を祝福したい気持ちは確かにあった」
鞠莉「何より、誰かが恋人同士になることが悪いことなわけがない。人が人を好きになっただけなんだから」
鞠莉「あなたもそこは、分かってたはずよ」
善子「……はい。それでも私は、私は……」
鞠莉「……まあ、私たちは理屈じゃないものね」
鞠莉「気持ちはわかるわ。だからといって許されるわけではないけれど……」
528
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/06(火) 03:25:33 ID:4.ZUo67I
鞠莉「それとね、曜のことなんだけど」
善子「……!」
鞠莉「あの子もだいぶ精神的に参ってるわ。というか、本格的に壊れちゃってるかも」
善子「え……」
ルビィ「それって……」
鞠莉「普通に会話はできるんだけど、ちかっちの名前が出ると大泣きし始めてね」
鞠莉「全く話が通じなくなっちゃう。あの屋上でのことがあった日はちゃんとしていたんだけど」
鞠莉「ちかっちと梨子に謝りながら、ひとりぼっちはやだ、って泣きながらずっとつぶやいてる」
善子「……」
鞠莉「……近いうち、検査に回されるかもね」
善子「そう、ですか」
529
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/06(火) 03:26:03 ID:4.ZUo67I
鞠莉「それと、Aqoursの活動は休止。私たち3年はもうスクールアイドルを続けないわ」
ルビィ「えっ……」
善子「……」
鞠莉「後輩が苦しんでるのに、先輩の私たちがアイドルやってるわけにはいかないから」
鞠莉「あなたたちが悩んでること。悲しんでること。気づけたはずなのに……」
鞠莉「私は、私たちはなにもできなかった。後輩を助けられなかった」
鞠莉「だから、私たちはここでおしまいにすることにしたの」
530
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/06(火) 03:26:18 ID:4.ZUo67I
ルビィ「あの!!!」
鞠莉「うん?」
ルビィ「わ、私は、花丸ちゃんとスクールアイドル、続けたいです……」
ルビィ「もしかしたら、みんな元気になって、元通りになって、そうしたら……」
ルビィ「……その時、戻ってこられる場所があればいいなって、思うんです」
鞠莉「それはもちろんオッケーよ。あなたたちは何も悪いことしてないもの。3年生もできるだけ手伝ってあげる」
善子「ごめんね、ルビィ。私のせいで……」
ルビィ「違うよ! 善子ちゃんを責めたいわけじゃないの。ただ……」
ルビィ「ただルビィは、みんなも、善子ちゃんも戻ってきてくれるって、信じたいから……」
善子「……」
531
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/06(火) 03:26:36 ID:4.ZUo67I
鞠莉「色々な手続きは私とダイヤの方でしておくわ。何か困ったらいつでも言って」
鞠莉「私たちはいつまでも、あなたたちの先輩なんだからね」
ルビィ「はい」
善子「……はい」
鞠莉「はぁ……それにしても、あの子たちは本当にダメね」
鞠莉「自分の気持ちはちゃんと伝えなきゃダメだって、バカな先輩たちがダメな見本を見せたあげたのに」ポロポロ
鞠莉「善子、ルビィ。あなたたちはこうなっちゃダメよ?」
――
理事長室をから出ると、中からマリーの泣き声が聞こえてきた。
私が巻き起こしたこと。二年生が壊れてしまったこと。
Aqoursがバラバラになってしまったこと。
それら全てを嘆いて、悲しんでいるのだと思う。私は引き起こした張本人だから慰めの言葉なんて言えない。
いっそ思いっきり責めてくれたのなら楽になれるのだけど、みんなは優しかった。
私はあの時のことを後悔はしていない。でも千歌さん達を傷つけたことが許されるとも思っていない。
あの人たちには確かに怒りがあったけれど、同時に大事な先輩でもあった。そんな矛盾に似た思いが私にはあったから。
私は奇妙な達成感と罪悪感でいっぱいになりながら、検査に送られる日を待った。
その間ルビィと花丸は、何もなかったかのように私に接してくれた。
532
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/06(火) 03:26:56 ID:4.ZUo67I
――
東京に向かう日は、あっという間に来た。
ルビィ「善子ちゃん、体調には気を付けてね」
善子「うん。ありがと」
花丸「寂しくなるずらね」
善子「……ごめんね」
花丸「ううん。でも、必ず帰ってきてね」
ルビィ「花丸ちゃんと、待ってるからね」
善子「……うん」
ルビィと花丸に見送られて、私は3か月の施設通いに向かった。
施設、とはいってもほぼ学校のようなもので、校舎もあり学年も分かれている。
普通の高校と違うのは専用の設備があることくらいで授業なども普通に行われるし、寮暮らしになること以外生活に大きな変化はない。
私はここで普通に授業を受けつつ、検査と経過観察によって今後のことを決められる。
ここに残って治療を受けるか、浦の星に戻るか。
533
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/06(火) 03:27:12 ID:4.ZUo67I
「善子、あなた結局ここに戻ってきたのね」
「やー! よっちゃん久しぶり〜! 元気してましたか〜?」
中学の頃、こっちの施設に通っていたときに仲良くしていた友達がいて、幸い一人で寂しいということはなかった。
むしろ気心の知れた仲間がいて気が紛れた。まあ、この二人以外は変な人の方が多いのだけど。
私と同じように疾患を持っている二人は、私がここに戻ってきた経緯については同情してくれた。
私たちには、よくあることだから。
理解してくれる、というのは思った以上に私を安心させてくれた。
ルビィと花丸といるときとはまた違う安心感。
辛かったね。
大丈夫だよ。
そんな優しい言葉をかけてくれる二人が、いつも私を心配してくれたルビィと花丸と重なって見えて、なぜか涙が出そうになった。
534
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/06(火) 03:27:26 ID:4.ZUo67I
こっちに来てからも2年生、特に曜さんのことは気になった。
けれど私にはどうすることもできないのも事実で、そこはマリーやルビィ達に任せるしかなかった。
でも、これでよかったのかもしれない。
あの人たちと同じ土地にいる、ということが心の負担になっていて、正直耐えられそうになかった。
ここにいる間は、千歌さんと梨子さんへの憎悪と後ろめたさ、曜さんへの罪悪感を忘れられる。
それは罪から目を背ける卑怯なことだけど、私にはもうどうしようもなかった。
あんな別れ方をしたからもう会ってくれないかもしれないけど、今でも曜さんを慕う気持ちは変わらない。
でも結果として私は曜さんを守るどころかもっと傷つけてしまって、そのことだけがただ悲しかった。
結局私には、みんなを不幸にすることしかできないんだ、と。
友達二人に励まされながらもどこか上の空で、諦めに似た無気力が私を覆っていた。
そんなふうに大人しくしていたからか、私の精神状態は特に異常なし、経過良好と見られ、3か月も待たずに浦の星に戻ることになった。
535
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/06(火) 03:28:08 ID:4.ZUo67I
友達二人がささやかなお別れ会を開いてくれて、帰り際には見送りにまで来てくれた。
「よっちゃん、また来てね! いつでも待ってるよ!」
「戻ってきちゃダメな所なんだけど……でもまた会おうね」
短い間でも私を元気づけて一緒にいてくれた二人との別れを惜しみながら、私はあの場所へ帰る。
幸せな思い出と、それと同じくらい大きな悲しみが残る浦の星へ。
その帰り道に、私のスマホに一件のメッセージが入った。
差出人は……
「曜さん……?」
――善子ちゃん、明日会えない? うちに来てくれると嬉しいな
536
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/06(火) 03:28:55 ID:4.ZUo67I
すみません、思ったより長くなりそうなので分割します
次こそバッドエンド√ラストです
いつも読んでくれてる方々ありがとうございます
537
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/06(火) 04:10:07 ID:Qz/RGLfY
おつ
待ってる
538
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/06(火) 10:30:20 ID:gLRwfHSA
待つ
539
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/06(火) 12:20:19 ID:ni1LdnH.
乙です
相手のことを想って行った行動がこうも辛い結果になるなんて人同士が分かり合うのって難しい…
540
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/06(火) 15:21:49 ID:OgtDL81w
友達二人ってまさかお花ちゃんたちか
どうなるかドキドキする
541
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/07(水) 00:57:12 ID:bAT4JM3E
おつ
542
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/07(水) 01:14:19 ID:84HlhgXQ
ようちゃんも、こわれてしまったのか…
543
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/11(日) 18:00:50 ID:LQqOODKE
一気に読んでしまった…
こういう誰も悪くないはずなのに関係が壊れてしまう話めっちゃ好き
バッド√ラスト楽しみ
545
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/15(木) 06:43:35 ID:ZoJ3UmI.
すみません、少し見直しするので夜に投稿します
546
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/15(木) 08:09:16 ID:b3KFj2Vw
待ってるぞ
547
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/15(木) 12:49:23 ID:bRavJmV6
待ってます
548
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/15(木) 20:20:19 ID:ZoJ3UmI.
コンコン
善子「曜さん。善子です。入りますよ?」
ガチャ
曜「ああ、善子ちゃん……久しぶりだね」
久しぶりに会った曜さんはずいぶんとほっそりとしていて、以前の元気で明るい彼女とはまるで別人だった。
曜「ごめんね、急に呼びだしちゃって。昨日東京から帰って来たばかりなんでしょ?」
善子「ううん、大丈夫。私も会いたかったから」
曜「そっか……」
549
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/15(木) 20:20:38 ID:ZoJ3UmI.
曜「善子ちゃん」
善子「……はい」
曜「ごめんね」
善子「……え?」
曜「私あの時、混乱して善子ちゃんに強く当たっちゃって。謝りたかったんだ」
善子「な、なに言ってるの! そもそも私があの二人にひどいことを言ったから……」
曜「それでも。はたいちゃったのはやりすぎだったと思うから。だからごめんね」
善子「……どうして」
曜「え?」
550
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/15(木) 20:20:51 ID:ZoJ3UmI.
善子「どうしてそんなに、優しいんですか」
善子「どうしてそうやって、何もかも許してしまうんですか」
善子「辛いこと、許せないこと、そういうもの全部抱え込んで」
善子「自分が我慢すればいいって、それでみんなが喜んでくれるって」
善子「曜さんはこんなに苦しんでいるのに!」
曜「……」
善子「私はそれが許せなかった! 曜さんが、じゃない。曜さんの優しさに甘えて、傷つける人たちが許せなかった!」
善子「だから……」
曜「善子ちゃん」
善子「……っ」
551
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/15(木) 20:21:04 ID:ZoJ3UmI.
曜「善子ちゃんの言う通り、私は周りのみんなが、千歌ちゃんが笑ってくれるなら、私自身はどうなってもいいって思ってた」
曜「果南ちゃんにはさ、一人で抱え込むなって、もっと頼りなよって言われたこともある」
曜「私もね、何度か助けてもらおうって思ったことはあるんだけど、やっぱり自分ひとりでも何とかなるかな、とも思えて」
曜「それなら、そんなことで他の人に迷惑かけちゃだめだなって思っちゃうんだ」
曜「私は、一人で大丈夫だって」
善子「……」
552
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/15(木) 20:21:19 ID:ZoJ3UmI.
曜「……善子ちゃんは、いつも私の心配をしてくれたよね」
曜「私が苦しいとき、つらいとき、いつだってそばにいて元気づけようとしてくれた」
曜「善子ちゃんに迷惑かけないように、私も善子ちゃんを頼りすぎないようにしてたけど」
曜「……ごめんね。それが善子ちゃんを傷つけていたんだよね」
善子「そんな! そんなこと……」
曜「初めて会ったときさ、善子ちゃんが疾患を抱えてるって知って、私が力になって助けてあげようって思ってたのに」
曜「逆に私が、善子ちゃんを追いつめて、悪化させる原因を作っちゃったんだ」
曜「だからあれは、私のせいなんだ」
553
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/15(木) 20:21:36 ID:ZoJ3UmI.
曜「ごめんね善子ちゃん。こんな情けない先輩で……」グスッ
曜「ずっと、謝りたかったの……いつも心配してくれた善子ちゃんを、傷つけちゃったこと」グスグス
善子「(……ああ、そうか)」
善子「(私もまた、私が嫌う人たちのように)」
善子「(曜さんに、許されていたんだ)」
善子「(その優しさに甘えて、曜さんを食い物にしていたんだ)」
善子「……」
554
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/15(木) 20:21:49 ID:ZoJ3UmI.
善子「……曜さん」ギュ
曜「善子ちゃん……?」
善子「あなたは強い人だから」
善子「どんなに辛いことがあっても、それを受け止めて、笑顔でいられる人だから」
善子「そんなあなただから、私は幸せになってほしいと思ったんです」
善子「これからは、私があなたを守りますから」
善子「もう、一人で泣かないで」ギュ
555
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/15(木) 20:22:12 ID:ZoJ3UmI.
曜「善子ちゃん……」
善子「はい」
曜「私やっぱり、千歌ちゃんと梨子ちゃんは大切な友達だと思ってる」
曜「だから、どんなことがあっても、あの二人を傷つけたことを肯定することはできない」
善子「……」
曜「だからね、私は善子ちゃんにこう言うよ」
曜「私を守ろうとしてくれて、ありがとう」
善子「……っ!」ポロポロ
その言葉が、私にはなによりも愛おしく思えて、涙が止まらなかった。
こんなことになってまだ、こんな私に、そんな言葉をくれるなんて。
きっと誰よりも辛いはずなのに。友達を傷つけた私が憎くて仕方無いはずなのに。
私を許してくれる曜さんは、そんな気持ちさえも包んで、溶かして。
また一人で泣いて、傷つくのだろう。
笑顔でい続けるのだろう。
そんなあなたが、私は大好きなんです。
556
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/15(木) 20:22:27 ID:ZoJ3UmI.
――
曜「じゃあね、善子ちゃん。気をつけて帰ってね」
善子「はい。曜さんも……ゆっくりやすんで」
善子「また一緒に、学校行きましょう」
曜「うん! 頑張るよ」
善子「じゃあ」
曜「またね!」
曜さんは笑顔で私を見送ってくれた。
以前のような明るく優しい、私の大好きな笑顔で。
それが、私が見た最後の曜さんの笑顔だった。
557
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/15(木) 20:22:43 ID:ZoJ3UmI.
その翌日、曜さんは自室で亡くなった。
リストカットによる自殺だそうだ。
部屋には遺書が残されており、ご両親やAqoursのみんなへの感謝、そして謝罪が書かれていた。
私が見たのは、手首を見なければどこにも傷なんてない。いつもの優しくて綺麗な顔立ちをした曜さんだった。
だから、少し呼びかければすぐにでも起き上がって、あの笑顔を見せてくれるように思えた。
でも、そうはならない。
彼女はもう目を覚ますことはないし、大好きな飛び込みをすることもない。
歌うことも、踊ることも。
私の大好きな、あの優しい笑顔を見せてくれることも、もうあり得ない。
信じられなかった。
だってこんなに、綺麗な顔をしているのに。
558
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/15(木) 20:23:19 ID:ZoJ3UmI.
ルビィと花丸は泣いていた。
マリーとダイヤさんは悲痛な表情で俯いて、果南さんは怒っていた。
梨子さんは魂が抜けたような顔をして、千歌さんは葬儀に来なかった。
私は、ただ立ち尽くしていた。泣くこともなく、怒ることもなく。
いろんな気持ちがありすぎて、どの気持ちが一番かわからなかったから。
また一緒に、学校へ行こうって言ってくれたのに。
ありがとうって、言ってくれたのに。
559
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/15(木) 20:23:38 ID:ZoJ3UmI.
曜さんの煙が上がった。
その日は雲一つない晴天で、煙の白がよく映えた。
まるであなたの瞳のように、綺麗に澄んだ青空でした。
ああ、もうあなたに会うことはないんですね。
もう私の名前を、呼んではくれないんですね。
その時になって、ようやく私は曜さんとのお別れを実感して、少しだけ泣いた。
その後のことはよく覚えていない。
心ここにあらず、という感じで、残り少ない浦の星での学校生活を過ごした。
そして、2年が過ぎた。
560
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/15(木) 20:23:52 ID:ZoJ3UmI.
浦の星は予定通り春に廃校し、私たちは沼津の高校へ通学することになった。
私はもともと沼津に住んでいるから不便なことはない。
もう浦の星に行くこともないと思うと少し寂しいけれど、同時に安堵もしている。
あそこには、幸福と不幸の両方の思い出があるから。
ルビィと花丸とは相変わらずで、3年になっても同じクラスで3人一緒にいた。
私の疾患はもう完全になくなってしまったようで、心が空になったみたいにむなしさが溢れていた。
私の中の強い衝動は完全に消えてなくなってしまって、怖いくらい静かになった心には、何も残らなかった。
きっと曜さんが最後にくれた言葉が、そしてお別れが私の中の化け物を消してくれたのだろう。
静かすぎて逆に不安にもなったけど、曜さんからの贈り物と考えると、この空虚さも悪くないと思えた。
561
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/15(木) 20:24:26 ID:ZoJ3UmI.
千歌さんと梨子さんについては知らない。本当に何も知らない。
私の耳に二人のことは届いてこなかったし、ルビィと花丸も何も言わなかったから。
ただまあ、なんとなく予想はつく。
きっと元に戻らないくらい壊れてしまっているのだろう。
あの後に2人で会ったのか、会話をしたのかは知らない。
でも曜さんの死を知った2人が、まともでいられるはずはないから。
まあ、私の思惑通り、相応の傷を負ってはくれたのだろう。
今はその事実にすら、悲観もしないし感慨も湧かない。
562
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/15(木) 20:25:12 ID:ZoJ3UmI.
――梨子の部屋
――曜ちゃんに謝りに行ってきます。それで仲直りして、今度は曜ちゃんが寂しくないように、ずっと一緒にいてあげようと思います。
――梨子ちゃんごめんなさい。勝手にいなくなってしまうこと、許してください。
梨子「……いってらっしゃい、千歌ちゃん」ガサッ
梨子「私ももう少ししたらそっちに行くよ」
梨子「曜ちゃんにもちゃんと謝る。それでもし許してくれるなら」
梨子「私も、一緒にいても、いいかな……」グスッ
梨子「う、うぅ……ひぐっ、うぇ、ぐすっ……」
梨子「千歌ちゃん、曜ちゃん。ごめんね。私がここにこなければ、二人はずっと仲良しのままだったのに……」
梨子「ごめんなさい……ごめん、なさいっ……」
563
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/15(木) 20:25:25 ID:ZoJ3UmI.
そして、瞬く間に私たちは卒業を迎えた。
鞠莉「卒業おめでとう、3人とも」
ルビィ「あっ! 鞠莉さん!」
花丸「久しぶりずら〜」
私たちが卒業式を終えて3人で帰ろうとしていたところに、マリーが来てくれた。
今日に合わせて海外の大学から帰ってきてくれたらしい。
善子「そんなわざわざ来てくれなくてもいいのに」
鞠莉「ふふっ、まあそう言わずに! ちょっとしたプレゼントをあげようと思ってね」
ルビィ「プレゼント?」
鞠莉「3人とも、浦の星の校舎に行かない?」
564
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/15(木) 20:26:28 ID:ZoJ3UmI.
廃校になった浦の星は校舎自体はまだ残っていて小原家が所有している。
だから小原家のマリーの許可さえあればまだ入ることはできる。
最後の思い出に浦の星を見て回るといい、というマリーの計らいだった。
鞠莉「まあその後にパーッとお祝いでもしましょ!」
花丸「お祝い! 楽しみずら!」
ルビィ「えへへ、そだね!」
鞠莉「さ、鍵は空けたから好きに見て回るといいわ。私はここで待ってるから」
善子「ありがとうマリー」
鞠莉「ううん。いってらっしゃい。それと善子」
善子「?」
鞠莉「これを――」
565
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/15(木) 20:26:51 ID:ZoJ3UmI.
――
花丸「図書室、懐かしいな〜」
ルビィ「最後はずっといたもんね、私たち」
善子「……そうね」
花丸「……これであらかた回ったずらね」
ルビィ「戻ろうか?」
2人はあえて、部室と屋上だけは避けて校舎を回った。
Aqoursの思い出が強く残る場所は避けてくれたのだろう。最後まで優しいな。
善子「ねぇ、2人とも」
ルビィ「ん?」
花丸「ずら?」
善子「先に戻っててくれない? 少し1人で回りたいの」
566
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/15(木) 20:27:43 ID:ZoJ3UmI.
善子「……」
静まった校舎を一人で歩く。
少しだけ感傷的になって、窓から外を見る。
夕日が浦の星を、内浦を照らしている。
この時間は、ちょうどAqoursの練習をしている時間だったかな。
もう来ることもないと思っていた場所。だけど、来たら来たでやっぱり思い出がよみがえってきて。
少しだけ、悲しくなる。
もし、全部うまくいっていたら。私が真っ当な人間であったなら。
そんな意味のないことを考えてしまう。
気がつくと目の前には、屋上に続く階段があった。
Aqoursの思い出がたくさん詰まっている場所だ。
そして、私がすべてを壊した場所。
567
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/15(木) 20:28:14 ID:ZoJ3UmI.
善子「……」
屋上へ続く階段を登ろうとした、その時。
「善子ちゃん!!!」
善子「……ルビィ?」
ルビィ「ま、待って……善子ちゃん……」ハァハァ
善子「どうしたのよ、そんな息切らして」
ルビィ「善子ちゃん、善子ちゃん……」
善子「……なんて顔してんのよ、何かあったの?」
ルビィ「善子ちゃん……」
善子「?」
ルビィ「行かないで」ギュ
善子「……!」
ルビィ「どうか、いなくならないで……」
568
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/15(木) 20:28:55 ID:ZoJ3UmI.
ルビィ「2年前のあの日、Aqoursが終わってしまった日」
ルビィ「お姉ちゃんたちはバラバラになって、曜さんも、千歌さんも梨子さんもいなくなって」
ルビィ「ルビィには、もう花丸ちゃんと善子ちゃんしかいない」
ルビィ「もう、誰にもいなくなってほしくないの……」
善子「……」
ルビィ「ルビィね、怖かったの。善子ちゃんが東京に行ったとき」
ルビィ「もしかしたら、善子ちゃんは戻ってこないんじゃないかって」
ルビィ「浦の星でできたたくさんの友達が、みんないなくなっちゃうって」
569
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/15(木) 20:32:29 ID:ZoJ3UmI.
ルビィ「卒業したら、確かに私たちはバラバラになっちゃうけど、会えないわけじゃない」
ルビィ「たまに休みの日とかに予定合わせてここに帰ってきて、花丸ちゃんと3人でごはん食べに行ったり」
ルビィ「20歳超えたら、お酒とかも飲んで……大人になっても、そうやってずっと一緒でいたいって思うの」
ルビィ「ねぇ、そんなことを考えてたのは、ルビィだけなの……?」
善子「……そんなこと、ないわ」
善子「私だって、あんたたちとそうやって生きていきたいって思う」
ルビィ「じゃあ、どうして」
ルビィ「どうしてそんな、悲しそうな顔してるの……?」
570
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/15(木) 20:32:48 ID:ZoJ3UmI.
善子「……そっか。バレてたか」
ルビィ「わからないと思った? ルビィが、善子ちゃんのことを。なにもわからないって」
ルビィ「バカにしないでよ! 善子ちゃんが考えてることなんか全部わかる! 2年前からずっと!」
ルビィ「ぜんぶ、わかるんだから……」グスッ
善子「……そうね。あんたはずっと、私を理解してくれていたわね」
善子「あんただけは、私の心をわかってくれた。それにどれだけ救われたか」
ルビィ「……」
善子「感謝してるわ。あんたに会えて本当によかった」
571
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/15(木) 20:33:05 ID:ZoJ3UmI.
善子「なにも、突然こうしようって決めたわけじゃないのよ。いつかやろうって思ってた」
善子「それが今日、いろんなことが重なって、今やらなきゃって思ったの」
ルビィ「それって、さっき鞠莉さんからもらってた手紙と関係あるの?」
善子「ああ、これ? そうね。これがきっかけなのかも」
ルビィ「何が書いてあるの……?」
善子「これね、私宛ての曜さんの遺書なんですって」
ルビィ「え……?」
善子「今日までマリーがあずかっててくれたみたい。律儀よね」
572
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/15(木) 20:33:45 ID:ZoJ3UmI.
善子「……私ね、思いだしたの。いろんなこと」
善子「浦の星に来たけど塞ぎ込んでたこと。みんなに会えて、アイドル始めたこと」
善子「そのおかげで毎日が楽しくなったこと。幸せな気持ちになれたこと」
善子「……好きな人ができたこと」
善子「ねぇ、私、本当に幸せだったの。Aqoursのみんなが、曜さんがいればなにもいらなかった」
善子「幸せ過ぎて嬉しくて、だからそれが壊れたとき、私は耐えられなかった」
善子「だから、私はAqoursを……」
ルビィ「……」
573
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/15(木) 20:34:03 ID:ZoJ3UmI.
善子「でも、あんなことをしたのに誰一人として私を責めなかった」
善子「そんな優しい人に囲まれながら、あんたみたいな友達がそばにいながら、私はとうとうまともな人間になれなかった」
善子「どこまで行っても私は、人間モドキでしかなかった」
善子「そんな私が、このままのうのうとあなたたちと一緒に、生きていていいわけがない」
善子「いつか絶対に、あなたたちをまた不幸にする」
ルビィ「そんな……」
善子「だから、こうしなくちゃいけないの。そう決めたの」
ルビィ「そんなのどうだっていい!」
善子「!」
ルビィ「やめてよ! そんなの、そんなの勝手だよ!!!」
善子「ルビィ……」
ルビィ「ルビィ言ったよ!? 善子ちゃんの味方だって! 善子ちゃんを応援して、支えてあげるって! そう決めたって!」
善子「……」
ルビィ「善子ちゃんみたいな人が、一生懸命幸せになろうって頑張ってて、ルビィはそれが本当に素敵だって思った」
ルビィ「だから善子ちゃんが選んだ道を、最後まで見届けたいって……」
善子「……じゃあ、ルビィ」
574
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/15(木) 20:34:33 ID:ZoJ3UmI.
善子「私が決めたこと、最後まで応援してくれる?」
ルビィ「ぁ……」
善子「あなたは私を一番理解してくれた。それは同じ疾患者で、そういう疾患をもってるから、というのもあるけど」
善子「それ以上に、あなたは私を心の底から親友だと思ってくれていたから」
善子「だから、私が今どれだけの決意で言ってるのか、わかるわよね?」
ルビィ「ずるい、ずるいよ、そんなの……」
善子「……ごめんね、あなたには最初から最後まで、つらい思いさせてばかり」
善子「結局あなたにも、なにも返せなかったわね」
善子「こんなこと言うの、ずるいと思うんだけど……」
善子「あなたは私の、最高の親友よ」
ルビィ「う、うぅぅぅ……ぐすっ、よしこ、ちゃん……っ」グスグス
575
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/15(木) 20:35:22 ID:ZoJ3UmI.
善子「最後に、あなたと話せてよかった」
善子「どうか、花丸と一緒に幸せに生きてね?」
ルビィ「うぅ……うん……」
善子「花丸にも謝っておいて」
ルビィ「わかった」
ルビィ「ごめんね善子ちゃん。こんなみっともないことしちゃって」
善子「ううん。嬉しいわ」
ルビィ「本当はまだ、納得できてないけど……」
ルビィ「でも、善子ちゃんが、決めたことなんだもんね」
善子「……ええ」
ルビィ「じゃあ私は、頑張ルビィって、言わなきゃね」ニコッ
善子「……ありがとう」
ルビィ「いってらっしゃい、善子ちゃん」
576
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/15(木) 20:35:53 ID:ZoJ3UmI.
善子「……」
――
鞠莉「これを――」
善子「これは?」
鞠莉「曜の遺書よ」
善子「……え、でも遺書はもう」
鞠莉「実は曜はもう一つ遺書を書いていたの。あなた宛てにね」
善子「……!」
鞠莉「あなたが卒業したら渡すようにって、曜のお母様からあずかっていたの」
鞠莉「もちろん中身は読んでないわ」
善子「……ありがとう、ございます」
鞠莉「確かに渡したわ。曜の最後のメッセージ。しっかり受け止めてね」
――
577
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/15(木) 20:36:31 ID:ZoJ3UmI.
善子ちゃんへ
これを読んでいるということは、もう私はいなくなってしまっているでしょう。
まずは、あんな形でお別れになってしまったことを謝らせてほしい。ごめんなさい。
あの日善子ちゃん言われたこと。確かにその通りだと思う。
私は昔からいろんなことが一人でできて、辛いこととかも一人でなんとかしてしまえる。
だから誰かに頼らないで、私が頑張れば誰にも迷惑はかからない。みんなに心配かけなくていいって一人で背負いこんじゃう癖がある。
苦しいと思うことはもちろんあった。
でも、それを嫌だと思ったことは一度もないんだ。
私は、みんなが笑っている顔がすき。千歌ちゃんの元気な笑顔も、梨子ちゃんの優しい笑顔も。
善子ちゃんの幸せそうな笑顔も。
それを守るためなら、私がどれだけ苦労したっていいって思ってた。
でもそうすることで、善子ちゃんを傷つけてしまうとは思ってなかった。
バカだよね?
一番私を心配してくれた善子ちゃんを傷つけないようにしてたのに、それが一番善子ちゃんを追いつめてたなんて。
私ね、今まで善子ちゃんみたいに本気で心配してくれる人なんていなかったんだ。
もちろん果南ちゃんや千歌ちゃんは心配してくれた。でも、あんなに本気で怒ってくれたのは善子ちゃんだけ。
ううん。そうじゃないね。善子ちゃんを本気で怒らせるくらい、私はバカなことをしてたんだ。
だから善子ちゃんがああいうことをしたのも、千歌ちゃんと梨子ちゃんが壊れちゃったことも私のせい。
私は私の生き方が正しいってずっと思ってたけど、大切な人たちを傷つけてしまうなんて思ってもみなかった。
もうこれ以上、誰も不幸にしたくない。だからこうするしかないと思ったんだ。
大丈夫! 辛いのは慣れてるから!
578
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/15(木) 20:37:14 ID:ZoJ3UmI.
……なんて、冗談。
これはね、辛いことじゃないの。私がそうしたいからそうするの。
自分のしたいようにしてみようかなって思って、こうするんだ。
辛くなんかないよ。むしろこれは自分勝手なわがまま。
善子ちゃんはわかってくれるよね? 私はもうたくさん我慢してきたんだから。
初めてのわがままくらい、許してくれるよね?
……ごめんね。悲しませちゃうこと、わかってるよ。
一緒に学校行こうって約束、破っちゃってごめん。
私を守るって言ってくれて、嬉しかった。
いつでも私のことを心配してくれて、嬉しかった。
善子ちゃんと出会えて、本当によかった。
私にこんなことを言う資格なんてないけど、善子ちゃん、どうか幸せに生きてください。
私の分も、きっと笑顔で生きてください。
本当にありがとう。大好きだよ。
渡辺曜
――
善子「……」パラッ
――
そうだ
最後になっちゃったけど、ひとつだけ
579
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/15(木) 20:39:36 ID:ZoJ3UmI.
「卒業、おめでとう」
580
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/15(木) 20:39:54 ID:ZoJ3UmI.
――屋上
ギィ……
善子「……」
屋上にはたくさんの思い出がある。
Aqoursの練習場所としてたくさんの時間を過ごしたんだから、まあ当然か。
インドアの私には練習は辛かったけど、それと同じくらい楽しかった。
笑顔があったから。
たくさんの幸せな笑顔があったから。私は頑張れた。
楽しかった。
人間モドキの私が、真っ当な学生生活を送れるなんて……
これ以上の幸せなんかなかった。
そうだ。ここにはたくさんの幸福があるんだ。
581
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/15(木) 20:40:19 ID:ZoJ3UmI.
善子「……」スッ
私はゆっくりと柵の外側へと移動した。
ここからは内浦の町が一望できる。
……ここにも、たくさんの思い出があった。
といってもやっぱりAqoursの思い出ばかりだけれど。
淡島神社で走りこみしたっけ。今はもう走れないだろうな。
合宿もやったなあ。海の家手伝って、曜さんの料理もおいしかった。
町の人と協力してスカイランタン作って、PVも作って。
あそこで寄り道したり、あそこに遊びに行ったり……
……
……ああ、なんだ。私……
善子「幸せ、だったのね」ポロポロ
582
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/15(木) 20:40:42 ID:ZoJ3UmI.
後ろをふり向けば、Aqoursで過ごした楽しい思い出。
前を向けば、たくさんの幸福な景色。
ああ、ここにはすべてがある。
満たされている。
胸の真ん中あたりがポカポカして、とても幸福な気持ちだった。
だから。
だから私は、その場所から一歩踏み出すことが、何も怖くなかった。
583
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/15(木) 20:41:09 ID:ZoJ3UmI.
その瞬間、私は地面へと吸い込まれていく。
完全な自由落下。
最後の瞬間。
全ての意識が鮮明になって、逆さまになりながら内浦の町へと目を向けた。
善子「……美しい」
思い出だけが輝いていて、美しかった。
……。
これで、終わる。
ようやく終わるんだ。
あはは、最初から、こうするべきだったんだ。
そうしたら誰も、千歌さんも梨子さん、曜さんも、不幸にならないですんだ。
……どうしてこうなったのかな?
最初からこうなるって決まってたのかな?
私は何がしたかったのかな……
もういい。
もういいわ。
もうやるべきことなんてない。
ここに忘れものなんてない。
いや、これはもう忘れものなんかじゃなくて、いらないものだ。
なにも、いらない。
欲しがってはいけないんだから。
584
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/15(木) 20:41:34 ID:ZoJ3UmI.
私には、何も……。
何も、いらないんだ……。
……。
…………ああ。
ああ、ああ、ああ!!!
曜さん! 曜さん曜さん!!! 曜さん!!!
大好き! 大好きでした! あなたを愛していました!!!
ずっと、死ぬことなんて怖くなかったのに!!!
あなたがいたから! あなたを愛してしまったから!!!
欲しがってしまった!!! 私なんかが! あなたを!
愛されたいと思ってしまった!!!
あなたがいなくなってからも、ずっとあなたを愛し続けました!
あなたがもうここにいなくても!
触れられなくても! 声が届かなくても!
あなたを愛し続けていました!!!
585
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/15(木) 20:42:25 ID:ZoJ3UmI.
――卒業おめでとう
ひどい! 最後にそんなことを言うなんて!!!
私は、その言葉を、あなたの声で聴きたかったのに!!!
最後の最後に、こんなにもあなたを愛しく思うなんて!!!
叶うなら……
叶うなら最後に――
あなたの声が、あなたの温もりが……!
586
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/15(木) 20:42:52 ID:ZoJ3UmI.
――善子ちゃん
善子「……え?」
587
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/15(木) 20:43:17 ID:ZoJ3UmI.
――善子ちゃん
善子「あ……」
善子「あぁ……!」ポロポロ
善子「曜さん……っ!」
――うん。久しぶり。善子ちゃん
善子「なんで、そんな、どうして」
――迎えにきたんだ。いてもたってもいられなくて
善子「曜さん、曜さん!」ギュ
588
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/15(木) 20:44:01 ID:ZoJ3UmI.
――善子ちゃん、結局こっちにきちゃったんだね。
善子「曜さん! 私、ごめんなさい、私……!」
――ううん。責めてないよ。むしろ、嬉しい。また善子ちゃんのそばにいられるんだね。
善子「私、ずっとあなたに謝りたくて……!」
――うん。私も謝りたい。はなしたいこと、いっぱいあるんだ。
善子「私も……私もです!」
――たくさん話そうよ。時間はいっぱいあるから。それで……
――千歌ちゃんと梨子ちゃんにも謝りにいこう? 私も一緒に謝るから。
――それで、仲直りしてさ、4人でたくさん楽しいことしよ? また一緒に、スクールアイドル始めよう?
善子「……はいっ! はいっ!」
589
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/15(木) 20:44:44 ID:ZoJ3UmI.
もう一度だけ会いたくて。
たとえ幻でも、こうしてあなたに触れられたことが嬉しくて。
まぶしくて、美しい世界の中で、私たちはふたりきり。
その一瞬の中で、私は曜さんを抱きしめた。
強く。強く抱きしめた。
もう離しませんからね。
ずっとこうしたかったんです。
言葉よりも速く伝えた。
言葉よりも正しく伝えた。
曜さんもまた優しく笑って、私を強く抱きしめた。
彼女の胸に抱かれて、私は静かに目をつぶった。
590
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/15(木) 20:51:11 ID:ZoJ3UmI.
善子?「おめでとう私」
よしこ「ありがとう私」
「これで、幸せだね」
善子「……うんっ!」
人生で幸せなこと。
大好きな人のそばにいられること。
ああ、私……
こんなに幸せでいいのかしら……
大好きな人の暖かさにつつまれて、私は心の底から幸福だった。
本当に本当に、幸福だった。
BAD√ おわり
591
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/15(木) 20:54:13 ID:ZoJ3UmI.
長らくお待たせしましたBAD√完結です。
この後はノーマル、ハッピーと続きます。
いつも読んでくださっている方々ありがとうございます。
592
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/15(木) 21:12:59 ID:YSf.e7GQ
乙、最高のBAD ENDだった
このよしルビの関係性がめっちゃ好きだわ
ノーマル、ハッピーも待ってるぞ
593
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/15(木) 21:16:47 ID:YSf.e7GQ
あと全く別作品の曲だが「甘き死よ、来たれ」がラストシーンに凄い合ってて聴きながら読むと色々ヤバかった
594
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/15(木) 21:25:29 ID:SdxkDm/k
すっごいなあ……
595
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/15(木) 21:36:17 ID:nMo27rVM
最後の最後で幸せを感じることができたのが切なすぎる…
あと事情を知ってるルビィちゃんはともかく残されたマルちゃんと鞠莉ちゃんの事を思うと胸が苦しい…
ノーマル、ハッピーどちらも楽しみにしてます
596
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/16(金) 00:17:08 ID:PDTYhv8o
言葉で表現するには色々と難しいけど良かったです
597
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/16(金) 03:31:58 ID:yMBQIjqQ
ハッピーエンドの間違いでは?
よったん最後は幸せになれたじゃないか
598
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/16(金) 17:28:20 ID:JLTlJm4I
愛する人も主人公も仲間も死ぬハッピーエンドとは
599
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/16(金) 17:39:42 ID:LzR7CE06
善子ちゃんの気持ちとしてはハッピーエンドかな、とも思いましたが読む側からするとあんまりハッピーじゃないので一応バッドとしました
大筋としての話はバッドで書いたのでノーマル、ハッピーは今までと比べると少しボリュームが少ないかもしれません
600
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/17(土) 00:21:53 ID:zYuml7FI
長らく乙
面白かったけど善子視点だとBADっぽい終わりではなかったかな
理由はどうあれ全てを壊したわけだから何か報いを受けながら退場してもよかったと思う
善子よりも曜が一番不幸な印象だった
続きも楽しみにしてる
601
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/17(土) 17:25:12 ID:etaX4446
乙
この後も楽しみにしてる
602
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/17(土) 23:58:20 ID:1tOY4Fk2
その後の現世とかやってくれたらすごく鬱々とできそう
でもまあとりあえずは次ノーマル期待
603
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/18(日) 00:54:57 ID:Um.6aag6
すごく好きなんだけど、やっぱりみんなの笑顔が見たいなぁ……
604
:
<削除>
:<削除>
<削除>
605
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/26(月) 06:52:28 ID:yRivWmeM
お待たせしましたノーマル√です
>>342
の次から分岐です
606
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/26(月) 06:53:02 ID:yRivWmeM
善子「(それから数日、私も練習に復帰して全体のダンスもある程度完成してきた)」
善子「(……この二人以外は)」
千歌「わわっ!?」ドン
曜「あっ、ご、ごめん!」
千歌「ううん。私がタイミングずれちゃったの。こっちこそごめん」
善子「(曜さんは梨子さんのポジションに入り、千歌さんとダンスを合わせることになったけど……)」
善子「(何度練習しても噛み合わないまま時間だけが過ぎていった)」
善子「(どうしても二人のパートだけが合わなくて、曲全体のダンスが完成しても肝心の見せ場である二人のダンスが完成しないままだった)」
ダイヤ「おかしいですわね……そこまで難しいダンスではないようですが」
果南「そうだね。千歌と曜はいつも息ピッタリだから、これくらいはできると思うんだけど……」
607
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/26(月) 06:53:20 ID:yRivWmeM
千歌「ごめんね。どうしても梨子ちゃんの動きに合わせちゃって……」
曜「……そっか。私も合わせられるように頑張るよ」
善子「……」
果南「二人ともちょっと休憩。いったん落ち着こう」
千歌「はーい」
曜「うん」
果南「……」
善子「(梨子ちゃんの動きに合わせちゃって、か)」
善子「……」
608
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/26(月) 06:54:05 ID:yRivWmeM
善子「(……なによそれ)」
善子「(今あなたと踊っているのは曜さんなのに)」
善子「(梨子さんのことしか頭にないってワケ?)」
善子「(曜さんはあなたに合わせようと頑張っているのに……)」
善子「(……ゆるせない)」
609
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/26(月) 06:54:46 ID:yRivWmeM
果南「んー、どうしたもんかな……」
ダイヤ「ここまで合わないのは想定外ですわ……」
鞠莉「ちょっと考える必要があるわね」
花丸「どうしちゃったんだろ、心配ずらね」
ルビィ「うん……」
善子「……」
善子「果南さん」
果南「ん? どうしたの」
善子「ちょっと提案なんですけど」
果南「おっ、何か思いついたの? 聞かせてよ」
善子「あのね」
善子「この曲のセンター、私にやらせてほしいの」
610
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/26(月) 06:56:36 ID:yRivWmeM
果南「なっ……」
曜「えっ……」
千歌「ちょ、ちょっと待ってよ! それは……」
果南「そうだよ善子ちゃん。いくらなんでも急すぎる」
善子「でも、本番まで悠長に待ってられるの? いつまでたっても噛み合わないじゃない」
善子「いっそ組み合わせを変えた方がいいと思うんだけど」
ダイヤ「一理、ありますが……」
果南「そうは言っても……」
千歌「待って! 私、この曲は絶対にセンターをやりたい!」
千歌「踊れなくなった梨子ちゃんの分まで、せめて私が踊りたいの!」
善子「(梨子ちゃん梨子ちゃん。そればっかりね……)」
果南「それにそもそも善子ちゃんはこのパート踊れるの? たとえ変えるにしたって、できなきゃ意味がないよ」
善子「……じゃあ曜さん。試しにこのパート、私と合わせてみましょ」
曜「う、うん」
611
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/26(月) 06:56:57 ID:yRivWmeM
――
曜「……!」
ルビィ「すごい……」
花丸「本当に合ったずら……」
鞠莉「天界的合致、デース」
果南「タイミングバッチリだ……練習してたの?」
善子「ええ、まあ」
善子「(毎日見てるから、というのもあるけど、こっそりちょっと練習しただけなのにこうもぴったり合うとは)」
善子「(……いや、千歌さんが、合わなすぎるだけか)」
千歌「……っ」
善子「どう? 私なら曜さんに合わせられるでしょ? 今からでもポジションを変えれば……」
千歌「ま、待ってよ! 私、ここまでがんばってきたんだから、最後までやり遂げたいよ! こんなところで投げ出したくない!」
612
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/26(月) 06:57:11 ID:yRivWmeM
善子「……千歌さん、あなた梨子さんのことが気になるんでしょ?」
千歌「!」
善子「だからダンスにも集中できてないし、なにより曜さんと合わせられない」
善子「元々梨子さんとのダンスだから多少は仕方ないにしても、これだけ練習してるのに合わないなんておかしいわ」
千歌「……」
善子「東京に行った梨子さんが心配なのはもっともだけど、ダンスに影響が出てる以上センターは任せられない」
千歌「で、でも……!」
613
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/26(月) 06:57:30 ID:yRivWmeM
千歌「私、この曲踊りたい! 確かに曜ちゃんと合わせられなくて、今はできないかもしれないけど」
千歌「それでも! 私にとって大事な曲なの! 絶対間に合わせるから! だからもうちょっとだけ……」
善子「……ちょっと聞きたいんだけど千歌さん。あなたはどうしてそんなにこの曲のセンターにこだわるの?」
千歌「それは、さっきも言った通りだよ。梨子ちゃんの分まで私が頑張りたいって……」
曜「千歌ちゃん……」
善子「(イライラする)」
善子「(ダメだ、止められない……)」
善子「(気持ちが……怒りが……)」
善子「……さっきから梨子さんのことばっかりだけどね」
善子「今あなたの隣で踊ってるのは曜さんなんだけど?」
千歌「……っ!」
善子「曜さんはあなたに合わせようと必死で頑張ってる。なのにあなたは梨子さん梨子さんって……」
善子「曜さんの気持ちを少しでも考えたことがあるの!?」
614
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/26(月) 06:57:59 ID:yRivWmeM
善子「もっとはっきり言ってあげましょうか?」
善子「あなたは梨子さんとじゃないとこのダンスを合わせる気がないんでしょ?」
千歌「ち、ちが……」
果南「善子ちゃん!!! 言い過ぎだよ!」
善子「(どうしよう……止まらない)」
善子「当然よね。梨子さんのコンクール曲を元にした、大事な曲だものね。そりゃあ他の人とは合わせたくないわ」
千歌「……っ」
善子「(今まで押しとどめていた気持ちが、どんどん溢れてくる)」
善子「梨子さんと合わせられないんだから、もうセンターにこだわる理由はないでしょ?」
善子「(このまま全部、この気持ちが流れ出したら……)」
善子「私なら曜さんと合わせられる。いいじゃない。私がセンターで。なんなら曜さんをセンターにしてもいい。パフォーマンスのレベルは高いし適任よ」
善子「ともかく千歌さんにセンターは任せられない、それだったら……」
曜「善子ちゃん!!!」パシン!
善子「……っ!」
615
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/26(月) 06:58:39 ID:yRivWmeM
曜「いい加減にして」
善子「……」
曜「千歌ちゃんはこのパートをずっと練習してる。私と合わせられるように」
曜「突然のことだから私も驚いたけど、それは千歌ちゃんだって同じ」
曜「千歌ちゃんだって本当は梨子ちゃんと合わせたいのに、こうして私に合わせてくれてるの!」
曜「それなのに、なんてそんなひどいことを言うの!」
善子「(ああ、もう……)」
善子「(自分がないがしろにされていることはどうでもいいって、どうしてあなたは……)」
善子「(あなたは……!)」
616
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/26(月) 06:58:52 ID:yRivWmeM
善子「……っそれがおかしいって言ってるんです! ひどいのは千歌さんの方よ!」
善子「曲は全員のためにある! これは千歌さんと梨子さんのための曲じゃない!」
善子「梨子さんと合わせられないからって、リーダーがこんな体たらくでいいと思うの!?」
善子「この際だからはっきり言うけど、この人はあなたのことを何も考えてないわ!!!」
曜「……このっ! 分からず屋!」
617
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/26(月) 06:59:06 ID:yRivWmeM
果南「ストップ、二人ともそこまで」ガシッ
ルビィ「善子ちゃん、落ち着いて?」
鞠莉「曜、あなたもよ」
善子「……ルビィ」
曜「……鞠莉ちゃん」
果南「今やるべきなのは、どうすればステージを成功させられるのかをみんなで考えることだよ」
善子「……はい」
曜「……うん」
618
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/26(月) 06:59:22 ID:yRivWmeM
鞠莉「でも実際どうするの? あと本番まで一週間と少ししかないわ」
ダイヤ「練習の時間も限られてきます。どうするにせよ早めに決めなければ」
果南「……千歌と曜にはこのまま練習を続けてもらう」
千歌「! 果南ちゃん……!」
果南「せっかくここまでやってきたんだし、同じ体格の二人がセンターだとやっぱり見栄えがいい。なにより……」
果南「千歌と曜ならできると思うから」
曜「果南ちゃん……」
果南「でも善子ちゃんの言うことも一理ある。このままだと一番の見せ場を失敗してしまうかもしれない」
果南「だから3日。3日以内にダンスが合わなければ千歌は善子ちゃんと変わってもらう」
善子「……!」
619
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/26(月) 06:59:45 ID:yRivWmeM
果南「……折衷案として挙げてみたけど……みんなの意見はどうかな?」
ダイヤ「まあ、落としどころではありますね」
鞠莉「いいと思うわ。これなら二人とも納得いくまでできるでしょう」
花丸「おらは賛成ずら」
ルビィ「うん。ルビィも。千歌さんと善子ちゃんの負担が増えちゃうのは心配だけど……」
果南「そうだね。そこは無理をしないでほしい。3人はどう?」
曜「私は、千歌ちゃんがそれでいいなら……」
果南「どう? 千歌」
千歌「……うん。どのみち本番までにちゃんと完成させなきゃだから、それでいいよ」
果南「善子ちゃんは?」
善子「私も、二人のダンスがちゃんと噛み合うなら……ダンスが完成するなら異論はないわ」
620
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/26(月) 06:59:57 ID:yRivWmeM
果南「よし。じゃあこの方針で行こうか。今日のところはいい時間だし解散しよう」
ダイヤ「明日の練習は午後からです。遅刻しないように!」
ルビィ「……善子ちゃん、大丈夫?」
善子「大丈夫……落ち着いてるわ。ありがとう」
ルビィ「なら、いいけど……あとでちゃんと謝ろうね?」
善子「……わかってる」
621
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/26(月) 07:01:39 ID:yRivWmeM
――部室
善子「……千歌さん」
千歌「……ん?」
善子「さっきは、ごめんなさい」
善子「いくらなんでも言い過ぎたわ。千歌さんだって頑張ってるの、私はちゃんと見てたのに……」
千歌「……ううん。善子ちゃんの言う通り、そもそも私がちゃんとできないからこんなことになったわけだし……」
千歌「善子ちゃんだって、このままじゃいけないって思って、強く言ってくれたんでしょ? むしろありがとうだよ」
善子「そんな、やめてよ。ひどいこと言ったのに……」
千歌「いいの。結果的にはうまいこと本番への保険もできたし、私も頑張らなきゃって思えたから!」
善子「千歌さん……」
千歌「それに善子ちゃんの言ったこと、確かにその通りだと思うから。私、リーダーなんだから、Aqoursのこと考えないとダメだよね」
千歌「失敗しちゃったら、それこそ梨子ちゃんに心配かけちゃうし!」
善子「……」
622
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/26(月) 07:01:56 ID:yRivWmeM
善子「……ともかく、ごめんなさい。本番まで頑張りましょう」
千歌「うん!」
善子「それじゃあ、また明日」
千歌「……善子ちゃん」
善子「はい?」
千歌「あのね、良ければ、なんだけど……」
千歌「今日、うちに泊りにこない?」
623
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/26(月) 07:02:19 ID:yRivWmeM
とりあえずここまで
いつも読んでくださる方ありがとうございます
624
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/26(月) 12:43:18 ID:sxA1JHuk
ノーマル√きた!
625
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/26(月) 19:34:40 ID:f60jefSc
なんだ、謙遜してたけどノーマルも面白いじゃないか!
バッド見たからこそこの切り込み方は面白い
626
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/27(火) 06:58:17 ID:RVsHwgUs
ちかっちにイライラしちゃうけどそれもまた心地よい
楽しみすぎて夜しか眠れません
627
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/28(水) 01:05:34 ID:kAx8qMvA
乙
言い方はアレだけど善子が全面的に正しい
628
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/03/31(土) 19:35:23 ID:3qSfmKi6
千歌が頑張ってるのもわかるが善子に共感してしまうなぁ
それにしてもまさかのちかよしお泊まり展開に期待しかない
629
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/04/04(水) 09:33:55 ID:4CcBp3r2
更新待ってるぞ〜
ふと思ったが、もしこのまま千歌が善子に惚れて怒濤のちかよしルートに切り替わったらどうなるだろう……
630
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/04/10(火) 02:32:10 ID:Cmt6syi.
――千歌の家
志満「あら善子ちゃんいらっしゃい! ゆっくりしていってね!」
志満「善子ちゃん会えるの本当に楽しみだったの! 来てくれてありがとうね〜」
善子「あはは、どうも……」
善子「……なんなの?」ボソボソ
千歌「あはは、実は志満姉、善子ちゃんのファンなんだよね……」
善子「だから呼ばれたってこと?」
千歌「以前から言われてたんだよ。どうにかして善子ちゃん呼べないかーって。志満姉がわがまま言うなんて滅多にないから、善子ちゃんだいぶ好かれてるね!」
善子「まあ、好かれてるのは嬉しいけど……」
631
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/04/10(火) 02:32:55 ID:Cmt6syi.
――千歌の部屋
善子「それで?」
千歌「うん?」
善子「どうして私を呼んだの? お姉さんに会わせるだけが目的じゃないんでしょ」
千歌「あぁ、うん……」
善子「……ダンスのこと?」
千歌「そだね。まぁ今更言い淀んでもしょうがないかぁ」
善子「変なところで遠慮するのね。私を誘った時とかかなり強引だったのに」
千歌「あはは……」
善子「まぁいいわ。何を悩んでるの?」
632
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/04/10(火) 02:33:32 ID:Cmt6syi.
千歌「どうしたら、いいのかなって……」
善子「……」
千歌「私ね、善子ちゃんに言われた通り梨子ちゃんのことで頭がいっぱいだった」
千歌「でもそれじゃいけないって気づかされて考えてみたの。曜ちゃんのこと」
善子「……どうだった?」
千歌「わからない……」
633
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/04/10(火) 02:33:54 ID:Cmt6syi.
千歌「どこが変なのか考えてみたけどわからないの」
千歌「曜ちゃんね、昔から何でも一人で解決しちゃうから、なにか悩みがあっても私じゃ力になれなかった。ううん。なるまでもなかった」
千歌「でもね、今曜ちゃんが何かに悩んでて、また一人で解決しようとしてるのはわかるんだ」
千歌「曜ちゃんすごいから、今回も一人で解決しちゃうかもしれない。でもそれじゃダメなんだって思う」
善子「それはどうして?」
千歌「善子ちゃん前にさ、私にとって曜ちゃんがどういう存在なのかって聞いたよね?」
善子「……はい」
634
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/04/10(火) 02:35:17 ID:Cmt6syi.
千歌「曜ちゃんはなんでもできて、クラスのみんなからも好かれる人気者で、みんなのヒーローだった」
千歌「いつだって曜ちゃんの周りには人がいて、そのみんなが笑顔で……昔から本当にすごい子だったの」
千歌「私みたいななんにも取り柄ない普通の人じゃ、友達にすらなれないはずなんだ」
千歌「私は小さいころに偶然曜ちゃんと知り合って、それからずっと仲良くしてきたからそばにいられるだけ」
千歌「それだけなのに、曜ちゃんは私が困ったり悩んだりしてるときはいつも助けてくれた」
千歌「だけど何もできない私は曜ちゃんに恩返しはできなくて」
千歌「確かに友達って、そういう損得で考えるものじゃないってわかってるけど、どうしてもそれを負い目に感じちゃって……」
善子「……それでも、二人はずっと一緒にいたんでしょう?」
635
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/04/10(火) 02:36:37 ID:Cmt6syi.
千歌「曜ちゃんは優しいからね。それでも一緒にいてくれて……今だって一緒にいてくれる」
千歌「スクールアイドルも一緒に始めてくれて、たくさん助けてくれる」
千歌「私はそれにずっと甘えてきて……きっと曜ちゃんも、私が考えてることわかるんだろうね」
千歌「それを長い間ずっと放っておいて、甘え続けたから。本当に深い本音とか、話せなくなっちゃった」
千歌「これ以上、曜ちゃんに迷惑かけられない、重荷を背負わせたくないから」
善子「……」
千歌「……私ね、曜ちゃんの誘いをずっと断ってきたんだ。水泳一緒にやろうって言われててね」
千歌「でもあんなすごい曜ちゃんと一緒にやっていく自信がなかったの」
千歌「けど今は違う。スクールアイドル始めて、私にも全力で打ち込めるものができた」
千歌「いつも一生懸命に頑張ってる曜ちゃんと、初めて並ぶことができた気がするんだ」
千歌「もう曜ちゃんに追い付けなかった私じゃない。今まで曜ちゃんの誘いを断ってきたけど」
千歌「スクールアイドルは、絶対に曜ちゃんとやり遂げたいって思うんだ」
636
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/04/10(火) 02:37:04 ID:Cmt6syi.
千歌「スクールアイドルやって、曜ちゃんと並んで踊る初めての機会だから」
千歌「だから今曜ちゃんが何かに悩んでるなら、今度こそ私が力になりたい」
千歌「……でも」
善子「でも?」
千歌「いざそう思っても、今まで私は曜ちゃんの優しさに甘えてたから、そういう悩みとか本音とか聞いたことないってことに気づいて」
千歌「今になってわかったんだ。私は曜ちゃんと一緒にいただけで、曜ちゃんのことなにも理解できてなかったって」
善子「……」
千歌「ねえ善子ちゃん。私どうしたらいいのかな。曜ちゃんのことわからないまま、曜ちゃんの隣にいる資格なんてない」
千歌「まして、一緒に踊るなんて……」
637
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/04/10(火) 02:37:31 ID:Cmt6syi.
善子「(……私は、どうするべきなのだろう)」
善子「(曜さんのことを考えていなかった千歌さんに憤っていたのは事実)」
善子「(だから千歌さんに曜さんを任せるくらいなら、私が代わりに曜さんに合わせようと思った)」
善子「(それは千歌さんは曜さんのことを考えてないって思っていたからだけど、そうじゃなかった)」
善子「(千歌さんはわからなかったんだ)」
善子「(幼馴染みとは思えないようなねじれた関係が、そうさせてしまった)」
善子「(両方が両方に負い目を感じつづけて、それでもお互いを想い続けてここまできて)」
善子「(そんな歪な関係をずっと続けてきたんだ)」
638
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/04/10(火) 02:37:44 ID:Cmt6syi.
善子「(このまま、千歌さんと曜さんがわかり合えないままでいたなら、きっとダンスは上手くいかない)」
善子「(それどころか、これからずっと二人は歪な関係のまま)」
善子「(……いいんじゃないか)」
善子「(だって、そうすれば私は曜さんと二人でダンスができる)」
善子「(それにこのままいけば千歌さんはきっと梨子さんと結ばれる。そうすれば曜さんは千歌さんを諦めざるを得なくなる)」
善子「(傷心の曜さんを健気に心配して、優しい言葉をかけてあげれば、きっと曜さんは私に振り向いてくれる)」
善子「(そうだ、そうすればきっと、私は幸せに……)」
639
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/04/10(火) 02:38:15 ID:Cmt6syi.
――きっと私、邪魔者なんだ。スクールアイドルなんて、やらないほうが……
――私が、いなければよかったんだ
善子「(……違う)」
善子「(そうじゃないでしょ、津島善子……!)」
善子「(私は決めた。あの人を守るって。誰よりも強くて誰よりも弱いあの人を守るって決めたじゃない)」
善子「(曜さんが幸せになれるように、なんでもするって……!)」
善子「(自分のために曜さんを傷つけるなんてあってはならないこと)」
善子「(願うのは私の幸せじゃない。曜さんの幸せを叶えるの)」
善子「(そのために、私がすべきこと……)」
善子「(……)」
640
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/04/10(火) 02:38:49 ID:Cmt6syi.
今回はここまで。遅れてすみません。
いつも見てくださる方々ありがとうございます。
641
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/04/10(火) 03:23:01 ID:GMxZWqX2
乙
なんかちょっとだけBADの臭いがする
642
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/04/10(火) 04:53:06 ID:HZQk0B6Q
善子ちゃんが善い子すぎて辛い…
643
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/04/11(水) 07:57:58 ID:9iX00Pwc
ノーマルだとどうなるのやら…
続きが気になるな
644
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/04/11(水) 09:01:22 ID:Wqj7kPus
ノーマル=アニメ版エンドなのかな?
そこに至るまでのよっちゃんの心理描写がすごく気になる
645
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/04/26(木) 11:55:16 ID:1leJe2MA
更新遅れております。申し訳ありません。
明日、明後日には更新できればと思います
646
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/04/26(木) 12:19:34 ID:YAn6sHsc
待ってます
647
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/04/26(木) 23:55:50 ID:x5sN43p6
楽しみに待ってる
648
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/04/28(土) 04:48:52 ID:sKPoISdY
善子「千歌さんはどうしたいの?」
千歌「……え?」
善子「千歌さんはこのまま曜さんとわかり合えないままでいいの?」
善子「それとも、曜さんを理解したいと思うの?」
千歌「そ、そんなの当たり前だよ! 私は曜ちゃんのこと、ちゃんと理解したい!」
善子「本当に?」
千歌「え……」
善子「本当にそう思うの?」
千歌「う、うん。そう思うよ」
善子「……わかった。千歌さんがそう言うなら私も協力する」
千歌「善子ちゃん……!」
649
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/04/28(土) 04:49:11 ID:sKPoISdY
善子「……じゃあ、私の知ってることを教えます。曜さんには内緒ね」
千歌「……うん」
善子「曜さんって小さい頃からいろんなことできたんでしょ?」
千歌「そうだね。人気者で、本当にみんなのヒーローみたいだった」
千歌「私はそんな曜ちゃんを見るのが好きだったな。私が一番最初に曜ちゃんを見つけて、それが誇らしかった」
善子「曜さんも、千歌さんが喜んでくれるのが嬉しかったと言っていたわ。だからいろんなこと頑張ったって」
千歌「曜ちゃん……」
善子「でも千歌さん、本当に誇らしかっただけ? それ以外に何も思わなかった?」
千歌「え?」
善子「いつからか千歌さんは悲しそうな顔をするようになったと、曜さんが言っていたわ」
千歌「……」
善子「ねぇ、千歌さんは、本当はどう思っていたの?」
650
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/04/28(土) 04:49:26 ID:sKPoISdY
千歌「……曜ちゃんが誇らしかったのは本当だよ。頑張る曜ちゃんが好きなのも嘘じゃない」
千歌「本当に素敵で、キラキラして輝いてた」
千歌「でもね、そんな曜ちゃんに比べて私には何もない」
千歌「何をやっても普通で、誇れることなんてない」
千歌「いつかね、曜ちゃんみたいに、私もなにかできるんじゃないかって思ってた」
千歌「曜ちゃんみたいに輝いて、曜ちゃんの隣に立つのにふさわしい人になれると思ってた」
千歌「……そんなふうに考えてたけど、私はなにもできないまま成長して」
千歌「曜ちゃんは相変わらず輝いてて、みんなのヒーローだった」
千歌「それでもね、曜ちゃんはなんにもない私の隣にずっといてくれた」
千歌「いろんなこと一緒にやろうって誘ってくれて……結局、できなかったけど」
善子「それは、どうして?」
651
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/04/28(土) 04:49:42 ID:sKPoISdY
千歌「怖かったんだ。また途中で諦めて、曜ちゃんに失望されるのが」
千歌「曜ちゃんはそんなことしないってわかってるけど、どうしても耐えられなくて……」
千歌「逃げるみたいに、いつも曜ちゃんの誘いを断って……」
千歌「そんなことを続けてたら、いつからか曜ちゃんは私に遠慮するようになって、私も曜ちゃんを追いかけることを諦めて」
善子「……」
千歌「それでも、私は曜ちゃんと一緒にいたかった」
千歌「曜ちゃんのこと、本当には理解できないってわかっていながら、曜ちゃんの優しさを利用して縛りつけた」
千歌「一緒にいるのが当たり前の存在で、私は曜ちゃんが、本当に大切だったから……」
652
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/04/28(土) 04:50:34 ID:sKPoISdY
千歌「私と曜ちゃんは昔からの親友で、でもそういうふうに変にこじらせちゃったから、本心とか本音とか、私たちは言い合えないんだ」
善子「そっか……」
善子「(曜さんも千歌さんも、こんなすれ違いをずっと続けて、それでも一番近くにいて)」
善子「(……そんなねじれた関係を、続けてきたんだ)」
善子「(お互いの本当の気持ちがわからないくらい絡まってねじ曲がって、それでもお互いが大切だったんだ)」
善子「(私は、千歌さんは梨子さんに夢中で、曜さんのことなんか何も考えていないと思っていたけど)」
善子「(……どうすれば、二人はわかり合えるんだろう)」
善子「(誰かが二人を導いてあげなきゃ、ずっとこのままだ)」
善子「(私は……私のするべきことは……)」
善子「……」
653
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/04/28(土) 04:50:49 ID:sKPoISdY
善子「千歌さん、曜さんは泣いていたわ」
千歌「え…?」
善子「東京のライブから帰って来た日。みんなが寝た後にこっそり抜け出して、一人で泣いてた」
千歌「そんな、なんで……曜ちゃんが泣くなんて」
善子「信じられない?」
千歌「だって曜ちゃんはみんなのヒーローで、誰よりも強い人で……私とは違うもん」
千歌「なんにもない私とは、全然違う……」
善子「曜さんは強いから、自分みたいに泣いたりしない。そういうこと?」
千歌「……うん」
654
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/04/28(土) 04:51:04 ID:sKPoISdY
善子「……あのね千歌さん。確かに曜さんは強い人よ。誰よりも優しくて、みんなを笑顔にして、自分もいつも笑顔で」
善子「でもね、いくら強いからって、辛いことがあっても平気なわけじゃない」
千歌「!」
善子「東京であんな結果になって、悔しかったのは曜さんも一緒」
善子「曜さんだって、千歌さんと一緒に悔しがって、泣きたかったんじゃないの?」
千歌「……曜ちゃん」
善子「……千歌さん。ずっと聞きたいことがあったの」
千歌「……え?」
655
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/04/28(土) 04:51:21 ID:sKPoISdY
善子「大会が終わって東京から帰るとき、曜さんはずっとあなたを心配していましたよね?」
善子「なんであなたはあの日、曜さんになにも答えなかったの?」
千歌「あ……」
善子「そのくせ梨子さんには本音を話して、最後には立ち直って」
善子「……ねぇ、私、あなたを許せないわ」
善子「曜さんがあの日なんて言ったか、わかる?」
千歌「……」
善子「『私は千歌ちゃんを傷つけてばっかりだ。きっと私は邪魔者なんだ。スクールアイドルなんてやらない方がよかった』」
千歌「!」
善子「『私なんて、いなければよかった』」
善子「そう言っていましたよ?」
656
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/04/28(土) 04:51:47 ID:sKPoISdY
千歌「そんな、私……」
善子「千歌さん、私わからないんです」
善子「梨子さんも曜さんも、あなたを心配してくれていたのは同じなのに、なんで曜さんには何も答えなかったの?」
善子「……なんで曜さんから逃げたの?」
善子「あの日のあなたの行動が、曜さんを傷つけた。だから私は、あなたを許せない」
善子「あなたに曜さんの隣で踊ってほしくない。今のあなたと一緒だと曜さんが傷つくから」
善子「私は曜さんを守るから。何があっても守るから」
千歌「善子ちゃん……」
善子「決めてください。曜さんから離れるか、それとも……」
657
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/04/28(土) 04:51:59 ID:sKPoISdY
千歌「私、考えなきゃ……」
千歌「本当は曜ちゃんのことがずっと怖かった。ううん、曜ちゃんと向き合うのが、曜ちゃんに捨てられるのが怖かった」
千歌「でも、逃げてちゃいけないんだ」
千歌「私が弱いせいで、ずっと曜ちゃんを悲しませて、傷つけてきた」
千歌「曜ちゃんの……ううん、私たちのこと、ちゃんと考えなきゃ」
千歌「それで、曜ちゃんと話さなきゃ。私のこと。曜ちゃんのこと。これからの私たちのこと」
千歌「もう逃げたりしないって。ちゃんと曜ちゃんのこと見るからって。私のことも見てほしいって」
千歌「だから……」
千歌「だから、今すぐ会いに行かなきゃ!」
658
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/04/28(土) 04:52:12 ID:sKPoISdY
善子「……そう。それがあなたの答えなのね」
千歌「ダメ、かな」
善子「それは千歌さんが曜さんのために考えた答えなんでしょ?」
善子「じゃあ、悪いわけないわ」
千歌「ごめんね、お泊りに誘ったの私なのに」
善子「いいえ、むしろそれでいい。曜さんのこと、よろしくね?」
千歌「うん!」
659
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/04/28(土) 04:52:27 ID:sKPoISdY
千歌「行ってきます!」
善子「待って千歌さん! 最後に一つだけ」
千歌「?」
善子「曜さんはこうも言っていたわ」
善子「『千歌ちゃんと一緒に何かを頑張りたい。最後まで一緒にやりとげたい』って」
千歌「……!」
善子「気を付けてね?」
千歌「うん! ありがとう善子ちゃん!」
――
善子「(……まさか今から向かうなんてね。これは予想してなかった)」
善子「(でもよかった。曜さんと千歌さんの間の壁は、これできっとなくなる)」
善子「(今まで失ってきた時間を埋めてくれるはず)」
善子「あとは、信じるしかないか……」
志満「あら? 千歌ちゃんったらお客様をおいていくなんて……旅館の娘失格ね」
善子「えっ!? お、お姉さん!?」
志満「志満って呼んでいいのよ〜?」
善子「志満、さん……」
660
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/04/28(土) 04:53:23 ID:sKPoISdY
志満「善子ちゃんごめんね? 千歌ちゃんってちょっと強引なところあるから」
善子「いいんです。千歌さんのそういうところ、好きなので」
善子「それに、私も行ってほしいって思ったから」
志満「……そっか。信頼されてるのね」
善子「ええ……」
志満「よし! じゃあ善子ちゃん、寝るのにはまだ早いでしょ? 少しお話しましょ♪」
善子「へ?」
志満「善子ちゃんとじっくり話す機会ってもうないと思うし! いろんなお話聞きたいわ!」
善子「ええっと私で良ければ……というかいつでも来ますよ」
志満「あら嬉しい♪ さ、入って。お茶とお菓子を用意するから!」
善子「……はい」ニコッ
661
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/04/28(土) 04:53:51 ID:sKPoISdY
遅れました。申し訳ありません。
いつも読んでくれてる方々ありがとうございます。
662
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/04/28(土) 08:57:09 ID:.P1BP7qo
善子ちゃんホントに善い子
663
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/04/30(月) 02:31:30 ID:5bioqETM
乙
少しでも浄化されればいいが
664
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/05/01(火) 17:04:28 ID:AsTmB8Gk
これで仮に曜は救われたとして善子はどうなるのか…
続きが気になりますね
665
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/05/13(日) 05:27:46 ID:rFH163Vw
まだかな…?
666
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/05/14(月) 06:31:01 ID:JtW9UwII
更新遅れております。申し訳ありません。
私事ですがブラック企業に入ってしまったため思うように時間がとれておりません。
水曜、木曜には更新したいです。
667
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/05/14(月) 07:48:20 ID:L0fKaW3Q
待ってるぞい
668
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/05/14(月) 17:15:42 ID:G9Al4LrA
ゆっくり自分のペースで進めてくださいな
669
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/05/14(月) 17:32:17 ID:7hBOJqFA
自分の生活を優先してくれ
670
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/05/16(水) 02:51:26 ID:nyFQBXNw
堕ちないようにね
671
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/05/16(水) 15:30:56 ID:/yO3dyMM
いつまでも待ってるので自分のペースで楽しんで
672
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/05/19(土) 05:10:44 ID:dN/lJ7LU
――翌日
花丸「おぉ……」
ルビィ「すごい……」
ダイヤ「完璧、ですわね」
果南「……驚いたよ、昨日のうちに練習したの?」
千歌「うん! どう? すごいでしょ!」
果南「うん。完璧。振りまで新しくしてくるなんてね」
果南「それに、このダンスなら二人にピッタリだ。よくできてるよ」
曜「えへへ、ありがとう!」
鞠莉「congratulations! 最高にクールよ二人とも!」ダキッ
曜「わっ、苦しいよ鞠莉ちゃん」
673
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/05/19(土) 05:10:59 ID:dN/lJ7LU
善子「(翌日の練習、千歌さんと曜さんはいきなり自分たちのパートを見てほしいと言って)」
善子「(私たちの前でいきなり新しい振り付けを披露して、完璧に踊ってみせた)」
善子「(おそらく昨日の夜、千歌さんが曜さんの家に行って、そのまま完成させたんだろう)」
善子「(二人の様子を見ると、千歌さんはうまくやってくれたようだ)」
善子「(曜さんは昨日までと違って以前のような明るい笑顔を見せていて)」
善子「(本当に、出会った頃のような曜さんに戻っていた)」
674
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/05/19(土) 05:12:38 ID:dN/lJ7LU
――
曜「善子ちゃん!」
善子「……曜さん」
曜「あの、昨日はごめん」
善子「……」
曜「善子ちゃんは私の、みんなのことを考えて言ってくれたのに、あんなこと……」
善子「……」
曜「だから、ごめんなさい」
善子「千歌さんとは……」
曜「え……」
善子「千歌さんとは、どんな話をしたの?」
675
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/05/19(土) 05:12:51 ID:dN/lJ7LU
曜「え、なんで千歌ちゃんがうちに来たって知ってるの……?」
善子「まあまあいいじゃない。それで何をお話したの?」
曜「……別に、大した話はしてないんだ」
曜「千歌ちゃんがいきなり家にきて教えてくれたの。私が気づかなかった、私自身のこと。そして、千歌ちゃんのこと」
曜「それから、私たちだけのダンスを作ろうって言ってくれて」
曜「それで、不思議とあっという間にできあがっちゃってね、それこそ拍子抜けするくらい」
曜「でもそれだけじゃなくて、千歌ちゃんが言ってくれたことが私を助けてくれた」
曜「苦しいことも悲しいことも全部なくなっちゃうくらい……」
676
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/05/19(土) 05:13:03 ID:dN/lJ7LU
―回想
千歌「あ、この写真懐かしいね。運動会のときとか。確か曜ちゃんは一位で」
千歌「凄かったなぁ……」
曜「……」
千歌「……曜ちゃんあのね、私、謝りたくて」
曜「……え?」
千歌「話すこと、話さなきゃいけないこと、たくさんある」
曜「千歌ちゃん……」
千歌「私、曜ちゃんのこと何もわかってなくて、傷つけちゃったよね?」
曜「ダンスのこと? それは千歌ちゃんが気にすることじゃ……」
千歌「それもある……けどそれだけじゃないよ」
曜「千歌ちゃん……?」
677
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/05/19(土) 05:13:14 ID:dN/lJ7LU
千歌「……東京のイベントから帰って来た日」
曜「!」
千歌「曜ちゃん、私のことたくさん心配してくれたよね。大丈夫?って。悔しくないの?って」
千歌「私、あの時何も言えなかった。曜ちゃんの前で泣けなかった」
千歌「悔しいって、言えなかった」
千歌「曜ちゃんも泣いてなかったから。だから曜ちゃんの前では私も泣かないって思った」
千歌「でも本当は曜ちゃんもつらかったんだよね……?」
千歌「私が悲しくならないように、笑顔で頑張って、慰めようとしてくれたんだよね?」
曜「……」
千歌「だから曜ちゃんには、弱い部分を見せたくなかった。心配させたくなかった」
千歌「でも結局それが曜ちゃんを傷つけた。曜ちゃんの気持ちを踏みにじった」
曜「そ、そんなことないよ!」
678
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/05/19(土) 05:13:31 ID:dN/lJ7LU
曜「私だって千歌ちゃんの気持ちを考えないであれこれ余計な心配して、逆に傷つけちゃって」
曜「梨子ちゃんがいなかったら、それこそ取り返しがつかなかったと思うし……」
千歌「でも、曜ちゃんの気持ちを無下にしたのは本当のことだよ」
千歌「私ね、曜ちゃんは何も言わなくてもわかってくれるって、ちゃんと伝わってるって勘違いしてたんだ」
曜「……」
千歌「覚えてる? 私たちずっと一緒だったよね。何をするにも一緒で、いつも二人で並んで……」
千歌「それが当たり前だった。離れることなんか一度もなかった」
千歌「でも、いつからか曜ちゃんはどんどんすごくなって、私は隣にいられなくなって、いつしか後ろから眺めるだけになった」
千歌「一緒にできないことが増えても、曜ちゃんは「仕方ないね」って、優しく笑ってくれた」
千歌「いつか一緒に何かを頑張るんだって、私を信じてくれた」
千歌「それを私は、ずっと裏切ってきた」
千歌「いつか私も曜ちゃんみたいに輝けるんだって、そんな都合のいいことを考えながら曜ちゃんを縛りつけた」
679
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/05/19(土) 05:13:47 ID:dN/lJ7LU
千歌「曜ちゃんを悲しませるってわかってたのに。なにも一緒にできないってわかってたのに」
曜「ち、違うよ! 私が勝手に千歌ちゃんのそばにいたいって思っただけ!」
曜「私だって千歌ちゃんを悲しませるってわかってて、千歌ちゃんのそばに居続けた」
千歌「……それは、どうして?」
千歌「曜ちゃんはどうして、そこまでして私のそばにいてくれたの?」
曜「……私は」
曜「私は千歌ちゃんと、一緒のことに夢中になってみたかったから」
千歌「……曜ちゃん」
曜「自分勝手なわがままだってわかってるよ。迷惑だってわかってるよ。でも私は」
680
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/05/19(土) 05:14:02 ID:dN/lJ7LU
千歌「ありがとう」
曜「え……」
千歌「私もそうだよ。ずっとそう思ってたの」
千歌「曜ちゃんと一緒に、何かをやり遂げたいって思ってた」
曜「……嘘だ」
千歌「本当だよ」
曜「嘘だ!」
曜「だって千歌ちゃん悲しんでたよ! 私と一緒にいて苦しそうだった!」
曜「運動会で一番を取った時も! 水泳に誘った時も! 私の高飛び込みを見るときも!」
曜「何かで一番を取るたびに、ずっと悲しそうだった!」
曜「千歌ちゃんは、私と一緒なのは嫌なんだって……!」
681
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/05/19(土) 05:14:55 ID:dN/lJ7LU
千歌「曜ちゃん」ギュ
曜「……!」
千歌「ごめんね」
曜「え……」
千歌「私が弱かったから。曜ちゃんのことずっと傷つけてきたんだよね」
曜「違う、千歌ちゃんは弱くなんかない」
曜「私が、邪魔者だったから……! 私がいなければ、千歌ちゃんはもっと幸せだった!」
曜「もう私なんていらないでしょ!? みんなが……梨子ちゃんがいるんだから!」
千歌「曜ちゃん!」
曜「……っ」
682
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/05/19(土) 05:16:05 ID:dN/lJ7LU
千歌「そんなふうに考えちゃうくらい、苦しかったんだね」
千歌「ごめんね、全然知らなかった」
千歌「昔はさ、言葉なんかなくてもなんでもわかり合えてたのに」
千歌「今は、曜ちゃんが悲しんでることも苦しんでることも、なにもわからなくなっちゃった」
千歌「言葉にしないとわからないことだってたくさんあるのに、私たちは大丈夫って安心して……」
千歌「だから、曜ちゃんはこんなに苦しいんだよね?」
曜「千歌ちゃん……!」
千歌「曜ちゃん、私の気持ち、聞いてくれる……? ちゃんと伝えたいんだ」
曜「……うん」
683
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/05/19(土) 05:16:35 ID:dN/lJ7LU
千歌「曜ちゃん」
千歌「たくさん悲しませちゃってごめんなさい」
千歌「辛い思いさせちゃってごめんなさい」
千歌「もう逃げないから。もう間違わないから」
千歌「私は、スクールアイドルで輝くから、曜ちゃんと同じようにヒーローになるから」
千歌「私の輝きを、特等席で見ていてほしい! あの頃みたいに、私の隣で笑っていてほしい!」
千歌「曜ちゃん、私と一緒に、踊ってくれる?」
684
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/05/19(土) 05:22:42 ID:dN/lJ7LU
曜「……あはは」
千歌「曜ちゃん?」
曜「私バカだ……バカ曜だ……」グスッ
曜「……うん。千歌ちゃん。私ももう逃げない」
曜「千歌ちゃんと一緒なら、私はなんだって頑張れる」
曜「ううん。千歌ちゃんと一緒に、頑張りたい!」
曜「千歌ちゃんと一緒に、スクールアイドルに夢中になりたい!」
曜「だから千歌ちゃん、私と一緒に踊ってください!」
千歌「うん!」
曜「……ああ、久しぶりに千歌ちゃんの隣にいる気がする」
千歌「もう離れたりしないでね。私も一緒に走るから」
曜「うん!!!」
685
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/05/19(土) 05:23:29 ID:dN/lJ7LU
――
曜「私は、もう大丈夫」
曜「千歌ちゃんが私の気持ちをわかってくれたから。千歌ちゃんの気持ちもちゃんとわかったから」
曜「千歌ちゃんのそばにいていいってわかったから。もう悲しくない」
曜「大好きな気持ちだって隠さない!」
曜「すっごく幸せで、なんでもできちゃいそうなんだ!」
善子「……そっか」
曜「……善子ちゃんには、たくさん心配かけて、迷惑もかけちゃったね」
善子「ううん。曜さんが元気になったなら私は良かった」
曜「心細いときも善子ちゃんがいてくれて、本当に助けられた」
曜「いつも私のこと考えてくれて……それだけで私はたくさん救われた」
曜「ありがとう。善子ちゃんに会えて本当に良かった」
686
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/05/19(土) 05:24:12 ID:dN/lJ7LU
曜「大好きだよ! 善子ちゃん!」
善子「……!」
曜「これからはちゃんと先輩らしくするから、よろしくね!」
善子「……はい」
――
善子「曜さん、先に帰ってていいですよ」
曜「えー? 一緒に帰ろーよ」
善子「ちょっと用事があって。それに……」
曜「それに?」
善子「大好きは隠さないんでしょ?」
曜「え……! えぇっとぉ///」
善子「今日は私より、一緒にいるべき人がいるはずですから」
曜「う、うん///」
善子「……がんばってね曜さん。応援してる」
曜「……! うん!!!」
687
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/05/19(土) 05:25:02 ID:dN/lJ7LU
曜「じゃあまた明日! 練習がんばろうね!」
ガラッ
善子「……」
善子「……はは」
善子「バカね、私ってば」
688
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/05/19(土) 05:25:52 ID:dN/lJ7LU
大変遅れましてすみません。
時間がかかっても絶対に完結はさせますので。
いつも読んでくださる方々ありがとうございます。
689
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/05/19(土) 08:45:40 ID:F8Lu11hU
乙です
善子ちゃんが善い子すぎて辛いよ…
690
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/05/19(土) 15:32:44 ID:mj1OtEwQ
乙
待つ
691
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/05/19(土) 16:22:19 ID:MNyKbjVI
そうやって今度はお前が寂しいの我慢するんやな……
692
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/05/20(日) 00:41:15 ID:qDLlXUnc
更新きてた!嬉しい
イッチありがとな
693
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/05/22(火) 18:00:02 ID:FueVTOq.
善子ォ!と叫びたくなる展開だな…
気長に待ってるぞい
694
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/05/23(水) 00:05:24 ID:XjapuQEo
バッドエンドより悲しいんだが……
695
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/05/24(木) 02:53:20 ID:6Kc1V9OQ
乙
696
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/06/07(木) 21:35:46 ID:gScrE.yw
ドン・ファンの隠しネタ
http://bit.ly/2JVc7to
697
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/06/12(火) 19:02:01 ID:Bm/EGKgQ
遅れてしまい申し訳ありません
週末には更新したいと思います
698
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/06/12(火) 20:38:49 ID:sWW9W3xw
正座待機
699
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/06/18(月) 12:44:54 ID:dAVEwUSY
wkwk
700
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/06/18(月) 16:12:04 ID:6VEtf0Ho
すみません、深夜に更新します
701
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/06/19(火) 02:00:13 ID:9vdDAIZM
それから私たちは予備予選を迎え、最大限のパフォーマンスをした。
結果は大好評で予選はトップ通過、大きな反響を呼んだようで 千歌さんと曜さんの試みはうまくいったようだった。
もちろん私も、Aqoursのみんなも全力でやった。二人の努力を無駄にしないため、梨子さんのため、ラブライブのため。
いろいろな理由があったけれど私はやっぱり曜さんのために頑張った。
曜さんの努力を、想いを無駄にしたくなかったから。
なにより、 曜さんが幸せそうだったから。
702
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/06/19(火) 02:00:32 ID:9vdDAIZM
梨子さんが帰ってくる日はAqours全員で駅まで迎えに行き、みんなで梨子さんを讃えた。
千歌「お帰り梨子ちゃん!」
曜「梨子ちゃん!お疲れ様!」
梨子さんはコンクールを終え、無事に受賞を果たしたそうだ。
Aqoursの予選も梨子さんのコンクールもうまくいって私たちは一安心するとともに、その先の地区予選へむけてますます士気を高めた。
それから千歌さんの家でささやかなお祝いのパーティーをして、その日はそのままお泊まりをした。
703
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/06/19(火) 02:01:02 ID:9vdDAIZM
――夜
善子「…」
私は相変わらず眠れないままで、余計なことばかりを考えている。
本当にこれでよかったのか。
いいやこれでよかったはずだ。
そんな意味のない自問自答を繰り返して、自分が正しかったのかどうかを一人で考えていた。
それはなんど繰り返しても同じ結論になり、その結論も本当に正しいのかとまた考え直し、そんな堂々巡りが終わらなかった。
そうしたまましばらく経って、やっぱり眠れそうにないので起き上がった。
当然だけどみんな眠っていて、かすかに波の音が聞こえていた。
ただ、ひとつだけ……
善子「(また、千歌さんと梨子さんがいない……)」
以前のように二人だけで……
でも、あの時とは状況が違う。
千歌さんと曜さんはああやってわかり合えて、想いだってちゃんと伝わってるはず。
だから、私が心配するようなことなんてなにもない。
……考えすぎ、だろうか。
善子「……」
704
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/06/19(火) 02:01:21 ID:9vdDAIZM
――外
善子「はぁ……」
私は以前のように外に出ていた。
どうせあのまま眠るなんてできないし、風にでも当たろうと思った。
ふと、曜さんの言葉を思い出す。
――ありがとう。善子ちゃんに会えて本当に良かった!
――大好きだよ! 善子ちゃん!
善子「……」
そばにいたい。
知りたい。知ってもらいたい。
役に立ちたい。褒められたい。
それだけですべてが満たされるような気がした。
私はそれだけでいいと、本当に思っていた。
曜さんの幸せを手伝うことができれば、それ以上の幸せはないと。
705
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/06/19(火) 02:01:40 ID:9vdDAIZM
そして私は曜さんの幸せに協力できた。
曜さんへ恩返しをできた。
それで、いいはずなのに……
「梨子ちゃん、やったんだね」
「うん。千歌ちゃんのおかげだよ」
……!
千歌さんと、梨子さんだ。
前と同じ場所……気づいたらここにきていた。
そうか、二人ともここにいたんだ。
そういえばコンクール前にもここへ来ていたっけ。
「それで千歌ちゃん。この前のことなんだけど……」
「……」
「返事、聞かせてくれるかな」
706
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/06/19(火) 02:02:10 ID:9vdDAIZM
クッソ短くてすみません
今週中にもう一回更新できればと思います
707
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/06/19(火) 02:53:52 ID:KdxWYKwI
乙
きっとああなるんだと思うけどまだ怖い
708
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/06/19(火) 04:04:12 ID:GV1TsbFs
バッドエンドは終わったにしても何をもってノーマルエンドとするのか期待
709
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/06/19(火) 04:24:18 ID:3B6X1eFU
乙です
710
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/06/21(木) 12:40:32 ID:hbFNN/sQ
待ってた
711
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/06/30(土) 11:34:15 ID:GiiZzUWA
続き来てた!
千歌がどう答えるのかめっちゃ気になるな…
712
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/07/02(月) 04:26:56 ID:pLefcOAY
善子「……」
二人を見つけられたのは全く偶然。
少しだけ期待はしていたけど、本当に出くわすとは思わなかった。
咄嗟に隠れて二人の会話に耳を傾ける。
いけないことだとわかっていても、止められなかった。
梨子「千歌ちゃんのおかげで、諦めてたピアノをまた始められた」
梨子「ううん、それどころか以前よりももっと前に進めた。自分でも驚いてる」
梨子「私一人じゃ絶対ここまでこれなかった。千歌ちゃんの言葉がなかったら私、もうとっくに終わってた」
梨子「全部、全部ちかちゃんのおかげだよ」
千歌「……」
梨子「……もう一度言うね」
梨子「千歌ちゃん、大好きだよ」
713
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/07/02(月) 04:27:14 ID:pLefcOAY
前と同じ言葉。
あの時私は耐えきれずに逃げた。だからあの後にどんな会話があったのか詳しくは知らない。
けどこうしてまた告白をしているということは、まだ返事をしていないのだろう。
正直、今も怖い。今すぐにでもみっともなくこの場から逃げだしたい。
でも、それでも千歌さんの答えを知りたいと思った。
ここまできたら、逃げるなんて選択肢はなかった。
714
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/07/02(月) 04:27:35 ID:pLefcOAY
千歌「梨子ちゃん……」
梨子「……」
千歌「ありがとう。梨子ちゃんの気持ち、すごく嬉しい」
善子「……っ」
千歌「普通でなんにもない私でも、梨子ちゃんの力になれるなんて思ってなかった。だから本当に嬉しいよ」
梨子「千歌ちゃん……」
千歌「……でもごめん。梨子ちゃんの気持ちには答えられない」
善子「……!」
梨子「……そっか」
715
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/07/02(月) 04:27:50 ID:pLefcOAY
梨子「理由を聞かせてくれる?」
千歌「……私ね、普通なの」
梨子「え……」
千歌「何をやっても普通で、輝くことなんてできない。そんな、何も出来ない人間」
梨子「……」
千歌「いつか、何か大きなことができるんじゃないかって、根拠もないまま期待して、気づいたら高2になってた」
千歌「私はこのまま、何も成し遂げないまま高校を出て、なんとなくで大学に通って、就職して……普通の人生を過ごすんだろうなって思った」
千歌「でもスクールアイドルに出会って、梨子ちゃんに出会って……私の人生は劇的に変わった」
千歌「普通を抜けだして、輝けるって。本気で頑張れることを見つけて、ここまできた」
716
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/07/02(月) 04:28:08 ID:pLefcOAY
千歌「……あのね、梨子ちゃんと会えたこと、本当にうれしく思ってる」
千歌「私と同じで何かに悩んでて、前に進む方法がわからなくて」
千歌「梨子ちゃんがピアノと向き合おうって頑張ってるのを見てたら、私も一緒に頑張ろうって思える」
千歌「梨子ちゃんが隣にいると一緒に成長できている気がして、不思議だけど勇気をもらえる」
千歌「そんな梨子ちゃんと出会えたのは運命だって、奇跡だって思う」
717
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/07/02(月) 04:28:21 ID:pLefcOAY
千歌「でも、でもね。私考えたんだ。私が本当に大事にしていたものってなんなのかって」
梨子「……それは?」
千歌「私のずっと近くにあったもの。だけど、蔑ろにしてきたもの」
千歌「考えてみると、私の夢はそこから始まったんだって思ったの」
千歌「みんなと一緒に輝きたい。私はスクールアイドルでそれを叶えようと思った」
千歌「でも私のその夢の始まりは、もっと前……ずっと昔だった」
梨子「……」
千歌「何もない普通の私のそばに、ずっといようとしてくれた人」
718
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/07/02(月) 04:28:37 ID:pLefcOAY
千歌「私はその子と違って何も出来なかった。だからその子のすごいところをずっと見てるだけだった」
千歌「いろんな人に囲まれて、いつも笑顔で、どんなこともできちゃう、私のそばにいるにはもったいないくらいの子」
千歌「私はその子とずっと一緒で、大好きで、そんな姿を誇らしいと思ってて……」
千歌「それと同時に、ああはなれないんだろうなってあきらめて、一人で勝手に壁を作ってた」
千歌「その子はね、ずっと私をいろんなことに誘ってくれた。遊びだったり趣味だったり部活だったり」
千歌「私はきっとそのどれも上手くできないから、本気になれないからその子をがっかりさせちゃうって思って、ずっと断ってきた」
千歌「……それがその子を傷つけるってわかってて、そばに居続けた」
719
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/07/02(月) 04:28:51 ID:pLefcOAY
千歌「その子はいつも『仕方無いね』って優しく笑ってくれて、私はそれに甘え続けて……ずっと傷つけて」
千歌「そんな私と、それでも一緒になにかをやりたいって言ってくれた。一緒にスクールアイドルやるって言ってくれた」
千歌「何一つ返せなかったのに、傷つけ続けたのに、私の夢を一緒に追いかけてくれるって言ってくれた」
千歌「何もないって思ってた私でも、この子にできることがあるとするなら、今を一緒に、全力で駆け抜けること」
千歌「私の夢はきっと、その子と輝きたいって願いから始まったんだ」
千歌「みんなと輝くこと。それが私の夢。だけど……」
千歌「一番最初に、一緒に輝きたいって思ったのは、その子なんだ」
720
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/07/02(月) 04:29:05 ID:pLefcOAY
千歌「……だから、ごめんなさい。私はその子の隣にいたいって思うから、梨子ちゃんの隣にはいられない」
梨子「……そっか」
千歌さんが言い終えると、二人はしばらく無言だった。
どういう顔をしていたのかは私の場所からはよく見えなかった。
千歌さんの言葉を聞いて、私は呆然としていた。
驚いた、嬉しい、悲しい。
いろんな気持ちがあったけれど、一番は千歌さんの想いに感動したから。
強く曜さんを想う気持ちが、私には眩しいと思った。今までの千歌さんとはあまりにも違って言葉が出なかった。
721
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/07/02(月) 04:29:22 ID:pLefcOAY
梨子「……あぁーあ! フラれちゃった!」
千歌「り、梨子ちゃん?」
梨子「残念だけど、千歌ちゃんがそう言うならしかたないね」
梨子「もう、その子には告白したの?」
千歌「えっと、実はまだなんだ……」
梨子「じゃあ、もしかしたら千歌ちゃんがフラれる可能性もあるわけだ」
千歌「うぅ、そう、なのかな……」
梨子「そうなったら、私にもチャンスがあるってことだよね?」
千歌「え、えぇ!?」
梨子「なんて、冗談。ごめんね、いじわるしたくなっちゃった。でもフったんだからこれくらい許してね?」
千歌「あはは、私は何も言えないよ……」
722
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/07/02(月) 04:29:37 ID:pLefcOAY
梨子「まぁ、私は千歌ちゃんには本当に感謝してる。それが伝えられたなら、いいかな」
千歌「……うん」
梨子「今度は千歌ちゃんが、夢を叶えてね」
千歌「……うん!」
梨子「じゃ、私はもう少しここにいるから、千歌ちゃんは先に戻っててくれる?」
千歌「え、でも……」
梨子「傷心なんだから、ちょっと一人になりたいの。それくらいいいでしょ?」
千歌「……わかった。先に戻ってるからね」
梨子「……千歌ちゃん」
千歌「ん?」
梨子「……がんばってね」
千歌「……うん。ありがとう梨子ちゃん」
723
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/07/02(月) 04:29:53 ID:pLefcOAY
千歌さんが家に戻るのを見て、私はいまだに動けないでいた。
目の前で起こった出来事をどう受け止めればいいかわからなかった。
呆然とただ立ち尽くしてどれくらい経ったのか、私の意識を引き戻したのは
梨子「善子ちゃん? そんなところで何してるの?」
梨子さんの言葉だった。
梨子「ふふ、奇遇だね? こんなところで、こんな時間に」
善子「……」
724
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/07/02(月) 04:30:17 ID:pLefcOAY
お待たせしました、今回はここまで
いつも読んでくれてる方々ありがとうございます
725
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/07/02(月) 04:43:03 ID:1aKog8.w
乙です
726
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/07/02(月) 07:41:59 ID:y5268qSI
乙
みんないい子なのに辛いな、幸せになってもらいたい
727
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/07/02(月) 13:51:59 ID:sU9Dk55g
http://pr4.work/g/kiyo
728
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/07/02(月) 21:07:53 ID:P9CU90dw
待ってたよ!
729
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/07/03(火) 01:42:33 ID:bVWZqnXA
乙
良かったというべきか
730
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/07/10(火) 07:57:10 ID:WaaDhi/Y
幸せなのに切ない……
731
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/07/14(土) 03:55:42 ID:rxnP88zg
善子「梨子さん……」
梨子「やっぱり今の、見てた?」
善子「…………」
梨子「ああごめんね。別に責めるつもりはないの。ただ、恥ずかしいところ見られちゃったなって」
善子「そんなこと……」
梨子「あのさ、善子ちゃん……」
梨子「ちょっと傷心で寂しいから、一緒にいてくれる? 一人だと心細くて……」
梨子「……死んじゃいそうだからさ」
善子「……はい」
それから私は梨子さんと並んで防波堤に座って、朝焼けの海を眺めていた。
薄青い空間はいつの間にかオレンジの日に照らされて、そして朝を迎える。
どこか透明な空気の中、波の音だけを聞いていた。
私も梨子さんも、一言も話さなかった。
732
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/07/14(土) 03:56:00 ID:rxnP88zg
――数日後
曜「善子ちゃん!」
善子「曜さん? どうしたの?」
曜「その、報告したいことがあって」
善子「報告?」
曜「え、えっとね、その、私……」
善子「……落ち着いて曜さん。ちゃんと聞いてますから」
曜「う、うん。ごめん。あのね善子ちゃん、私……」
曜「千歌ちゃんと、お付き合いすることになったんだ」
733
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/07/14(土) 03:57:14 ID:rxnP88zg
善子「……そう、なんですね」
曜「うん。善子ちゃんにはたくさんお世話になったから、一番に伝えたくて」
曜「善子ちゃんのおかげだよ。いつも支えてくれて、元気づけてくれて……」
善子「いいえ。曜さんはずっとがんばってきたんだから。それが報われただけ」
曜「……あのね、善子ちゃんがいなかったら、私はずっと何も言えないままで」
曜「ずっと千歌ちゃんとわかり合えないままだったかもしれない」
曜「もしそうなったら私、取り返しのつかないことをしたかもしれない」
曜「だから善子ちゃん、ありがとう」
734
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/07/14(土) 03:57:31 ID:rxnP88zg
――
「善子ちゃん」
善子「……梨子さん」
梨子「さっき千歌ちゃんから聞いたの。曜ちゃんとお付き合いすることになったって」
善子「私も……曜さんから同じことを聞きました」
梨子「そっか。善子ちゃんもか」
善子「私もちょっとだけ焚き付けた側だから」
梨子「うん。千歌ちゃんも言ってたよ」
善子「千歌さんが?」
梨子「善子ちゃんに言われて、ずっと悩んでた大事なことの答えが出せたって」
善子「……」
梨子「それが曜ちゃんとのことだったみたいだけど……」
735
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/07/14(土) 03:57:44 ID:rxnP88zg
梨子「……こんなこと考えても仕方ないんだけどさ」
梨子「もしかしたら、善子ちゃんが何も言わなければ、千歌ちゃんは私の隣に来てくれたのかな?」
善子「……」
梨子「私が東京に行かないで千歌ちゃんのそばにいて、曜ちゃんの付け入る隙もないくらい千歌ちゃんを求めたら……」
梨子「千歌ちゃんと恋人同士になれたのかな……?」
善子「梨子さん……」
梨子「……なんて、冗談だよ。変なこと言ってごめんね」
736
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/07/14(土) 03:58:04 ID:rxnP88zg
梨子「私の千歌ちゃんへの想いと、曜ちゃんの千歌ちゃんへの想い。そして、千歌ちゃん自身の想い……」
梨子「単純に私が負けちゃっただけ、なんだよね」
……力なく笑う梨子さんに、かける言葉がなかった。
梨子さんが選ばれなかった理由。
私が千歌さんを焚き付けたこと。それは間違いなく原因の一つだ。
梨子さんの言う通り、私があの日千歌さんに何も言わなければ結果は違っていたかもしれない。
軽はずみな気持ちで言ったわけじゃない。
曜さんに悲しい顔をしてほしくなかった。
幸せになってほしかった。
だから私はああしたんだと思う。
私自身がどうなろうと構わないって、決めたから。
737
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/07/14(土) 03:58:24 ID:rxnP88zg
梨子「……善子ちゃんは」
善子「?」
梨子「善子ちゃんはこういう経験、ある?」
こういう経験、とは……
失恋という意味だろうか
梨子さんは今まさに失恋をしたばかり。
想い人に気持ちを伝えて、そのうえで断られた。
私は、どうだろう。
……。
738
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/07/14(土) 03:58:48 ID:rxnP88zg
善子「失恋なんて、とうてい言えない」
善子「もっと弱くて惨めで、土俵に上がってもいない」
善子「何も伝えられなくて……失恋すら、できなかった」
梨子「……そっか。まあ、どっちが偉いとかないけどね。私も善子ちゃんも結果は同じだし」
梨子「善子ちゃんも善子ちゃんで頑張ってたこともあるだろうし、本当にそれぞれだよ」
善子「……」
梨子「ねえ善子ちゃん。改めて聞きたいんだけど……」
梨子「善子ちゃんは曜ちゃんのこと、好き?」
739
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/07/14(土) 03:59:31 ID:rxnP88zg
お待たせしました。今回分です。
ノーマル√はおそらく次で最後になります。
読んでくださってる方々ありがとうございます。
740
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/07/14(土) 08:52:47 ID:BE8zISnw
善子ちゃんと梨子ちゃんの心境が心にグサグサくる……
ふたりとも良い子過ぎて辛い……
741
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/07/14(土) 13:19:53 ID:cDN6x2tk
ノーマルってなんだっけ……?ってレベルで切なすぎてつらい……
742
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/07/15(日) 02:53:02 ID:itBpi.pw
乙
743
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/07/15(日) 02:56:07 ID:PA7SHG/A
http://nazr.in/11y6
744
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/07/27(金) 23:50:34 ID:lLhKWdGQ
ノーマルという名のビターエンドだね…
結末が気になるところだ
745
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/08/21(火) 01:47:48 ID:uEIohNPw
気長に待つか
746
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/08/26(日) 10:24:20 ID:.LQc7MCA
まだかな…?
747
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/08/28(火) 07:55:39 ID:6VIjKqdY
大変お待たせして申し訳ありません
明日、明後日の夜には投稿できるよう調整しております
次の更新でノーマル√完結予定です
748
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/08/28(火) 08:39:13 ID:7mYbRMo6
待ってた
749
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/08/28(火) 12:23:35 ID:FBHI.fQ2
正座待機
750
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/08/29(水) 04:46:22 ID:RQRBOq1I
ゆっくり待ってるよ
751
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/08/30(木) 05:25:34 ID:bsHOfXsw
善子「はい、好きです」
善子「笑った顔が好き。かっこいいところが好き。何でもできるところが好き。明るいところが好き。優しいところが好き」
善子「実は弱くて臆病なところが好き。泣き虫なところが好き。なんでも一人で抱え込んじゃうところも好き」
善子「全部私のものにしたいくらい、大好きで……」
善子「心の底から、愛していました」
梨子「……素敵だね」
梨子「私も、そうだったんだ……千歌ちゃんを、本当に愛してたよ」
752
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/08/30(木) 05:26:36 ID:bsHOfXsw
――
梨子「善子ちゃんさ、これで良かったって思ってる?」
善子「え……」
梨子「なんとなくわかるんだ。善子ちゃんの考えてること。同族だからかな?」
善子「どうかしら。よくわかりません」
善子「最初は、あの人が笑ってくれれば、幸せになってくれればよかった」
善子「ううん。それは今でも同じ。だけど……」
善子「…………」
梨子「……辛いね、善子ちゃん」
梨子「好きな人の幸せが、自分の幸せだったら良かったけど……」
梨子「そううまくはいかないね」
善子「……本当に良かったはずなの。私はずっと、こうなることを望んでた。そのために頑張ってきた」
善子「私は、私の願いを叶えた。だからこれでいいはずなの」
善子「それでも、悲しいのは……」
善子「……ああ、そっか」
梨子「善子ちゃん?」
善子「ねえ梨子さん」
善子「私の初恋……曜さんへの初恋、終わっちゃった……」
753
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/08/30(木) 05:27:02 ID:bsHOfXsw
梨子「……うん、私も。残念だけどね」
善子「梨子さんは、悲しくないの?」
梨子「もちろん悲しいよ? 今も一人になったら泣いちゃいそうなくらい」
善子「……」
梨子「でもね善子ちゃん。私って曜ちゃんのことも大切な友達だって思ってるから」
梨子「ちゃんと、祝福できるよ」
――
梨子「じゃあ私はここで。また明日ね善子ちゃん」
善子「ええ。さよなら」
梨子「……あのさ、たまにこうして二人でお話したりしない?」
梨子「善子ちゃんとは立場が同じだから、いろいろわかってくれると思うし」
梨子「……私もわかってあげられると思う」
善子「……ええ。ぜひ」
梨子「ふふっ。ありがとね」
754
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/08/30(木) 05:28:54 ID:bsHOfXsw
――
私と話している間、梨子さんは笑顔を崩さなかった。
でも私はその心の内を推し測ることは出来なかった。
私も梨子さんも同じように失恋をしたけれど、同じ心の傷を負ったとは限らない。
いや、私は曜さんに失恋した反面、曜さんを幸せにするという望みを叶えられた。
けど梨子さんはただ失恋をしただけ。
私などでは理解できない傷を負っているのだろうと思う。
梨子さんと会話して、少しだけ理解することは出来た。
でも少しだけだ。
私や梨子さんのこの気持ちは、これからどこへ行くのだろう。どこへ行けばいいのだろう。
答えなんか出るはずもなく、私の心はどこかぽっかり穴の開いてしまったような、そんな気持ちになった。
755
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/08/30(木) 05:29:12 ID:bsHOfXsw
――数日後、屋上
善子「……」
今日はAqoursの練習は休み。
地区予選の準備が思った以上に順調。メンバーのやる気もかなり高まっている。この勢いのまま練習を重ねていこう。
とみんな思っていたけれど…
ダイヤ「オーバーワークはいけません。勢いとやる気にまかせて無茶をしすぎると怪我にもつながってしまいますわ」
とのことで、落ち着いた時間をとろうとのことだった。
確かに私自身もその通りで、やる気ももちろんあるけれどそれ以上に他のことを考えたくなかったからAqoursの活動にうちこんでいた。
だからこういうふうに時間が空いてしまうと余計なことばかり考えてしまう。
一人でいると、なおさら。
それでもこうしてなにもないはずの屋上に来ているのは、どうしてだろう。
……いいや、むしろ何もない方がいいから。誰もいない方がいいからなのかもしれない。
一人だと思い悩むくせに、誰かがいても煩わしいと思う。
この気持ちに出口はなかった。
756
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/08/30(木) 05:29:28 ID:bsHOfXsw
ルビィ「善子ちゃん」
善子「……ルビィ」
気が付くと、後ろにルビィがいた。
放課後、すぐに教室からいなくなった私を心配してきてくれたのだろうか。
それとももっと前から、私の気持ちを読み取っていたのだろうか。
……優しい子だ。
ルビィ「あのね、善子ちゃん、その……」
善子「……心配してくれてるの? 大丈夫よ」
ルビィ「善子ちゃん、でも……」
善子「ルビィ、私、今本当にうれしいの」
善子「曜さんが本当に幸せそうで……あんなに心から嬉しそうにしてる曜さんなんて初めて見た」
善子「だから、私も……すごく、幸せなの」
善子「すごく、すごく……」グスッ
善子「本当よ、本当なの」グスッ
善子「本当の、本当に、幸せ、なの」
善子「幸せ……なんだから……!」ポロポロ
757
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/08/30(木) 05:29:45 ID:bsHOfXsw
ルビィ「……善子ちゃん」ギュ
ルビィ「ルビィね、善子ちゃんが頑張ってきたこと知ってるよ」
ルビィ「今までたくさん、辛い思いして、我慢して、戦ってきたこと、ちゃんと知ってる」
ルビィ「だからね、だからね、善子ちゃんは本当に立派で」
ルビィ「素敵な、人間だよ」ポロポロ
善子「……なによ、なんでアンタが泣いてるのよ」
善子「アンタが……泣くことなんて、ないでしょ……」ポロポロ
ルビィ「だって、だってぇ……善子ちゃんがつらいの、わかるから」ポロポロ
ルビィ「ルビィは……ルビィだけは、わかるんだから……!」ポロポロ
ルビィ「一緒に、泣かせてよ……」
善子「バカね……本当にバカよアンタは」
善子「でも、ありがとね……」グスッ
ルビィ「善子ちゃん、つらかったね」
ルビィ「頑張ったね……!」
善子「う、うぅ……うぁぁぁぁぁ……!」
758
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/08/30(木) 05:30:08 ID:bsHOfXsw
――
ルビィ「えへへ、ごめんね善子ちゃん。ルビィまで泣いちゃって……」
善子「ううん、こっちこそ。ありがとう」
ルビィ「善子ちゃんのしたこと、間違ってないよ」
ルビィ「つらい選択だったと思うけど……ルビィはとっても誇らしいよ」
善子「……」
ルビィ「……これからも、つらいだろうけど」
善子「うん。もう大丈夫」
善子「……とは言えないかもしれないけど、頑張る」
善子「だって、曜さんが笑ってくれたんだもの」
ルビィ「……」
善子「幸せになって、くれたんだもの」
759
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/08/30(木) 05:30:23 ID:bsHOfXsw
ルビィ「……うん。きっと、善子ちゃんのおかげだよ」
ルビィ「曜さんも千歌さんも、善子ちゃんに感謝してる」
善子「……ええ。そうだと、いいわね」
ルビィ「ね、そろそろ帰ろうよ。今日は沼津にでも遊びに行かない? 花丸ちゃんも行きたいって言ってるんだ」
善子「……うん。行きましょうか」
ルビィ「えへへ! じゃあ早く教室まで戻ろうよ! 花丸ちゃんも待ってるよ!」タタタ
善子「ええ……」
ルビィは楽しそうに駆けだした。
人の気持ちを理解し過ぎて同調してしまう子だ。
さっきも泣いていたように、今もつらいのだと思う。
それでも、私を気遣ってくれているのだろう。
こんな私を心配してくれている。
……。
760
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/08/30(木) 05:30:38 ID:bsHOfXsw
善子「あ……」
ふと屋上から校門を眺めると、千歌さんと曜さんが歩いているのを見つけた。
千歌「〜〜〜〜〜」
曜「〜〜〜〜〜!」
善子「……」
二人とも、とても幸せそうだった。
今まで二人が楽しそうに話しているのは何度も見てきた。
でも、今は違う。もっと、楽しいよりももっと満ち足りている顔で。
ああいうのを、幸せと呼ぶのだろう。
あんなに生き生きと、輝かしい目をした曜さんなんて初めて見た。
私では曜さんを、あんなふうに笑わせてあげることなんかできなかっただろう。
きっと千歌さんでなければいけなかった。曜さんを救えるのは、千歌さんだけ。
……私は、その手助けをしただけ。
それだけだ。
私にできたのは、それだけだ。
だから、これでいいんだ。
私は正しいことをしたんだ。
761
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/08/30(木) 05:30:54 ID:bsHOfXsw
善子「うっ……ぐすっ……あぁ……」
悲しいことなんてなにもない。
悲しいなんてあるわけない。
でも……
……。
…………ああ。
ああ、ああ、ああ!!!
曜さん! 曜さん曜さん!!! 曜さん!!!
大好き! 大好きでした! あなたを愛していました!!!
叶うなら、あなたの隣を歩いて……
あなたを支えたかった!
春に、出会いと別れの不安の中を一緒に踏みだしたかった。
夏に、茹だるような暑さの中を連れまわしてほしかった。
秋の冷たい風の中、身を寄せて「寒いね」なんて二人で笑って歩いて。
冬に、冷たくなったあなたの手を包んであげたかった。
762
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/08/30(木) 05:31:08 ID:bsHOfXsw
願っていました。
あなたとの幸せな未来を、願っていました。
でも、そうか。
もう、終わるんだ。
あなたに恋をした夢の時間が、もう終わろうとしている。
だけど、どうしてだろう。
とても悲しくて、でもとても暖かい。
……きっと、思い出があったから。
とても優しい思い出があったから。
私は、曜さんに救われた。
どうしようもない、救いようのない人間モドキの私を、人間にしてくれた。
嬉しかった。
私でも、まっとうな人間になれるんだって思えた。
私でも、幸せに生きられるんだって、教えてくれた。
763
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/08/30(木) 05:31:25 ID:bsHOfXsw
それは、初恋の夢。
この手に触れようとした瞬間に消えてしまった。
けれど、胸には確かに残っていた。
あの時もらった優しさが。
暖かさが。
私を救ってくれた笑顔が。
まだ私を、照らしてくれていた。
善子「……うん」
歩ける。
だって私は教えてもらったから。
私の生き方を教えてもらったから。
大切なものを見つけるうれしさ。
それを失う悲しさ。
そして、幸せを追いかける大変さ。
曜さんからもらったものぜんぶ。
これは私の宝物だ。
ぜんぶ抱えて生きていくんだ。
764
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/08/30(木) 05:31:39 ID:bsHOfXsw
善子「大丈夫」
歩こう。
私にはまだ行くことのできる道がある。
進もう。
嬉しいことも悲しいことも全部抱えて。
きっとそれが、生きるということ。
私はまだ、歩きはじめたばかりだ。
765
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/08/30(木) 05:31:53 ID:bsHOfXsw
――
ルビィ「あっ、善子ちゃん来たよ!」
花丸「遅いずら! ルビィちゃんが呼びに行ったっていうのに何してたの?」
善子「ごめんね、ちょっと……」
花丸「ちょっと?」
善子「ううん。なんでもない。行きましょ」
花丸「……そっか」
ルビィ「じゃあ早く行こう! 遊ぶ時間なくなっちゃうよ!」
善子「ちょ、ちょっとルビィ! 引っ張らないでよ!」
花丸「あぁ! 二人ともまってよ〜!」
ルビィ「えへへ……!」
善子「……!」
花丸「置いてかないでほしいずら〜!」
ルビィ「急いで花丸ちゃん! バス来ちゃうよ!」
善子「早く行くわよ!」
花丸「も〜!」
善子「……ふふ」
766
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/08/30(木) 05:32:08 ID:bsHOfXsw
曜さん。
おめでとうございます。
あなたが幸せで、私も幸せです。
あなたに恋をして本当に良かった。
幸せな夢を見られて本当に良かった。
全部あなたにもらったもの。
大切な友達。尊敬できる先輩。
スクールアイドル。
私の生きる意味。まっとうな人生。
でも、それだけじゃきっとダメで。
これからは、曜さんがくれたものにしがみついているだけじゃダメなんだ。
私、がんばります。
曜さんがくれたものが間違いじゃないって、証明するために。
767
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/08/30(木) 05:32:49 ID:bsHOfXsw
ねぇ、曜さん。
私も。
私もきっとあなたのように幸せになります。
だから、いつかその時が来たら。
あなたのとびきりの笑顔で、祝福してください。
ノーマル√ おわり
768
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/08/30(木) 05:37:13 ID:bsHOfXsw
お待たせしてすみません、ノーマル√ラストです
不完全燃焼な感じでアレですが一応これで完結ということで
次はハッピーエンド√に続きます
769
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/08/30(木) 08:16:39 ID:T3SbuJaI
おつ
ハッピールートも待ってる
770
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/08/30(木) 08:35:53 ID:0e9oY08M
おつ
ハッピーエンド楽しみ
771
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/08/30(木) 20:25:10 ID:ZPcvJWNM
乙です
ハッピーエンド√も楽しみに待っております
772
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/08/30(木) 20:31:19 ID:tR1ZJ5BA
不完全どころかトゥルー感すらあるのだが。
773
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/08/31(金) 06:38:22 ID:RGp1IVx2
おつ
善子はもちろん、祝福できるって言い切った梨子も良い子だな
ハッピーエンドも楽しみにしてる
774
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/09/01(土) 19:37:55 ID:ZQeaQaZs
乙、ノーマル√はビター風味なエンドだったね
バッドエンド√でも思ったけどこの善子とルビィの関係性好きだわ
ハッピーエンド√も待ってます
775
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/09/05(水) 01:54:19 ID:Y37VIjyo
乙
曜が分裂でもしないとハッピーエンドにならなそうだけどどうなるのかな
776
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/09/22(土) 20:05:55 ID:gWrDMf7o
ここまで来ると全員に幸せになってもらいたいものだ
777
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/10/18(木) 20:35:29 ID:2/JGha12
そろそろ続きを……
778
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/10/21(日) 02:01:11 ID:Q2IbOsdw
待ってるぜ
779
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/11/09(金) 05:19:44 ID:5Qwzc.2Y
大変お待たせして申し訳ありません
今週中に再開します
780
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/11/09(金) 07:41:54 ID:unXh9qBA
待ってた
781
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/11/09(金) 08:30:48 ID:s/V94egc
正座待機
782
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/11/11(日) 15:35:26 ID:V98tAuiQ
待ってました
期待
783
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/11/12(月) 04:32:06 ID:U9sxIV4A
大変お待たせしました
ハッピーエンド√になります
>>417
からの分岐ですが、更新が空き過ぎてしまいましたので
最初の数レスは既存の文章を修正して再掲しております
784
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/11/12(月) 04:32:27 ID:U9sxIV4A
――善子の家
善子「ただいま……」
善子母「あらおかえり。今日は早いのね」
善子「晩ごはん、今日はいらない」
善子母「……そう。食べたくなったら言ってね?」
善子「……うん。ありがとう」
――善子の部屋
善子「……」ドサッ
善子「う……うぅ……」グスッ
善子「どうして……どうして……」
785
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/11/12(月) 04:32:48 ID:U9sxIV4A
どうして、こうなってしまったんだろう。
私はただ、曜さんに幸せになってほしかっただけだった。
本当にそれだけだった。
だって曜さんは、私を人間にしてくれた。
人間になれない、どうしようもなく救いようのない人間モドキの私でも、真っ当に生きられるんだって教えてくれた。
あの人のためならどんなことだってしようって思えた。
「でも、あなたは何もしなかったわ」
真っ暗な私だけの空間。声のする方に振り向くと、私がいた。
私とおんなじ顔をした、不気味な笑みを浮かべる私がいた。
善子?「曜さんを助けたいと思いながら。曜さんを幸せにしたいと思いながら。曜さんを守りたいと思いながら」
善子?「結局あなたは何もしなかった」
786
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/11/12(月) 04:33:09 ID:U9sxIV4A
善子「ち、違う! 私は……」
善子?「違わないわ。日に日に傷ついて弱っていく曜さんを見て、あなたはただどうにかなるように願っていただけ」
善子?「曜さんからもらうだけもらって、何も返さないままじゃない」
善子「違う私は、本当に……」
善子?「誰かを幸せにできると思った?」
善子「あ……あぁ……」
善子?「たくさんたくさん傷つけてきた。壊してきた。ダメだって思いながら、抗えなかった」
善子?「そして、それで構わないって思った」
善子「違う!!!」
善子?「大好きなものが、大好きな人が壊れていくのがたまらなく好きだった。どうなっていくのか見たくてしょうがなかった」
善子「黙れ!!!」
善子?「私一人だけが、楽しかった!」
善子「黙れ!!!!!!」
善子?「本当は、曜さんが傷ついて壊れていくのを見るのが楽しかったんじゃないの?」
善子「黙れ!!! 殺すぞ!!!」
目の前の私の髪を掴んで、思い切り地面に叩きつけた。
何度も何度も叩きつけた。加減なんて一切しなかった。本気で壊そうとしたから。
久しくこんなことはしていなかった。する必要なんてなかったし、そうしようなんて思いもしなかったから。
だから、久しぶりの何かを壊す感触に、私は、ワタシハ……
787
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/11/12(月) 04:33:34 ID:U9sxIV4A
……いつからだろうか。
幼い頃。それこそまだ花丸と一緒に幼稚園に通っていた頃。
私は自分が、本当の天使だと思った。
お母さんが私を天使みたいだって言ったから。
みんなが笑顔をくれて、私の周りにいる人はみんな幸せだったから。
みんな私をたくさん愛してくれたから。
だから私もみんなを愛した。
「、私本当は天使なの!」
みんなを愛してみんなに愛される。そんな私は本物の天使なんだと疑わなかった。
788
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/11/12(月) 04:34:09 ID:U9sxIV4A
「そうじゃないって気づいたのは、いつだったかな」
また背後から声がした。振り向くと幼い姿の、幼稚園の頃の私がいた。
よしこ「私、みんなをたくさん愛したよ」
よしこ「みんなのことが大好きで、喜んでもらえることはなんでもやった」
よしこ「みんな笑ってて、幸せそうで……」
よしこ「でも突然、それら全てを壊してみたくなった」
よしこ「いま愛してくれるみんなを、例えば思いっきり嫌いになってみたらどうなるんだろう」
よしこ「傷つけて傷つけて、思いきり壊してみたらどうなるんだろう」
よしこ「思い始めたら止まらなくて」
よしこ「一度壊してみたら、とてもとても気持ちよくて」
よしこ「私、本当は、壊すために愛していたのかなって……」
789
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/11/12(月) 04:34:34 ID:U9sxIV4A
よしこ「ねえ、今もそうなの?」
善子「違う! 違う! 私はもうあの頃の私じゃない!」
善子「今度こそ、今度こそ誰も壊さずに、誰も不幸にしないで、みんなを愛して、みんなに愛されるって決めた……」
善子「そう決めた! だから、だから……」
善子?「だから私を押しのけて、あなたが生まれた」
善子「っ……!」
頭を掴んで地面に叩きつけたままだった私が、おもむろに顔を上げて不気味に睨み、そして立ち上がる。
その眼差しにすくんだ私は、よろよろと後ずさった。
よしこ「ねえわたし。覚えてる?」
よしこ「わたしたち、大好きな人たちをたくさん傷つけてきたね」
よしこ「わたし、みんながだいすきだったよね」
よしこ「……ようさんが、だいすきなんだよね」
790
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/11/12(月) 04:34:46 ID:U9sxIV4A
善子?「……愛されたかった?」
善子「……愛され、たかった」
善子?「おこがましいのね。醜い人間モドキのくせに」
善子「……そう、ね」
よしこ「わたしたち、どこで間違えちゃったのかな……」
よしこ「……それとも、最初から間違いだったのかな」
善子「……わからない」
善子?「わからないまま、みんなを壊して……それで」
善子「なにを、してたのかしらね……はは」
791
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/11/12(月) 04:35:09 ID:U9sxIV4A
よしこ「……ねえ」
よしこ「これから、どうしたい?」
善子「……?」
よしこ「もう、今度こそわたしは幸せにはなれないよ」
善子?「曜さんが壊れてしまったからね」
善子「……」
よしこ「なにが、できるかな?」
善子?「何を望むのかしら」
善子「私は……」
私はこの学校で曜さんに出会った。
最初は相容れないと思った。私とは正反対の、不幸なことなんか何もなくて、毎日が幸せな人なんだと思った。
でも違った。曜さんは私が考えているような順風満帆な人なんかじゃなくて、必死であがいて、努力していて。
だから、素晴らしくて。
文字通り完璧な人だった。誰よりも人間らしくて美しい。誰もが羨み憧れ心を寄せる、太陽のように眩しい人。
私のような人間モドキがあの人と一緒にいられるなんて奇跡みたいだった。
本当に幸せだった。何もかも輝いて見えた。
こんな私でも、真っ当に生きられるんじゃないかって、この人のそばでならそれができるって思えた。
792
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/11/12(月) 04:35:39 ID:U9sxIV4A
でも救えなかった。
私は何も出来なかった。
失ってしまった。
もうあの人が私に笑いかけてくれることはないだろう。
だから、今までのことを思いだしていた。
――善子ちゃん
名前を呼んでくれるだけで心が弾んだ。
――善子ちゃん!
一緒にいるだけで胸が高鳴った
――善子ちゃん!!
お話するだけでドキドキが止まらなかった。
――善子ちゃん!!!
その笑顔だけで、私は救われた。
793
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/11/12(月) 04:35:52 ID:U9sxIV4A
善子「曜さん……」
私のすきなひと。わたしの、たいせつなひと。
善子「……」
また笑ってほしかった。愛されたかった。
今の私に、できること……
794
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/11/12(月) 04:36:16 ID:U9sxIV4A
善子?「壊してしまいましょう」
善子「……え?」
善子?「壊しちゃうの。Aqoursを、みんなを、ぜーんぶ壊しちゃうのよ!」
善子?「だって、Aqoursなんてものがあるから曜さんは壊れてしまった」
善子?「Aqoursが……千歌さんと梨子さんがいるかぎり曜さんは苦しみ続ける」
善子?「そんなの許せないでしょ? あの二人だけが幸せで、曜さんは不幸なままなんて」
善子?「ね、そう思わない?」
よしこ「……それで、いいかな?」
善子「……」
Aqoursを壊す。千歌さんと梨子さんを、壊す。
簡単だ。ちょっと心を攻撃すれば、優しいあの人たちはすぐに壊れる。
Aqoursの中心であるあの二人が壊れれば、当然Aqoursもなくなる。
曜さんを苦しめた原因。Aqoursの活動。千歌さんと梨子さん。
それがなくなれば、どれだけ気持ちのいいことだろうか。
そうすればもう、曜さんは苦しまなくていい。
いいじゃないか。最高だ。
曜さんを壊した報いを受けさせてやろう。
私ならできる。たやすいことだ。
795
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/11/12(月) 04:36:55 ID:U9sxIV4A
でも……
じゃあ、そうすれば、曜さんは笑ってくれるだろうか。
また、私の名前を呼んでくれるだろうか。
優しくて素敵な笑顔で、明るくて元気な声で「善子ちゃん」って。
――善子ちゃん
善子「……」
……違う、そうじゃない。
誰も傷つけないって決めた。
真っ当な人間になるって決めた。
もし私がそんなふうに全部壊してしまったら、きっと曜さんは悲しむ。
自分のせいだって、自分がみんなを傷つけたんだって思い込んで自分を傷つける。
そうしたら今度は私が曜さんを壊してしまう。
善子「……そうじゃない」
善子?「……?」
善子「私は、私たちはもうそんなことしない。今度こそ誰も傷つけないで、誰かのために頑張るって決めた」
よしこ 「……」
善子? 「へえ? どうやって」
善子 「……わからない」
善子?「はあ?」
796
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/11/12(月) 04:37:22 ID:U9sxIV4A
善子「わからない、けど、がんばるの」
善子?「何言ってるの。今までさんざんそうやって耐えようとして、それでも誰かを傷つけずにいられなかったくせに!」
善子?「今だって、憎くて壊したくてたまらないくせに!」
善子「……そうね、きっと私、根っこの部分は何も変わってない。いくら取り繕っても拭おうとしても、絶対になくならない」
善子?「そうよ! 私たちはそうやって生きるしかない! そういうふうにできている!」
善子?「どうしようもないの、決まっているの! だから……!」
善子「でも……」
797
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/11/12(月) 04:37:37 ID:U9sxIV4A
善子「もう、それを言い訳にしたりしない。たとえどこかで失敗しても、そこから目を背けない。自分がしたことを忘れない」
善子?「だから! そんなことやったって最後には全部壊れちゃうの! どうしようもないのよ!」
善子「大丈夫。どうしようもないって思っても、きっとみんなが助けてくれる」
善子?「何を根拠に! Aqoursだって曜さんだって、きっと最後には私を排斥する! なんでそう言い切れるの!」
善子「だって、そう、信じてる」
善子?「な……」
よしこ「……!」
善子「きっとみんなが、曜さんが、また私を助けてくれる。私をAqoursに誘ってくれた時みたいに。そんな気がするわ」
善子?「……根拠もなにもない、ただの妄想じゃない! 世界はそんなに優しくない!」
善子?「そんな、そんな世界……」
よしこ 「そんな世界は、いや?」
善子?「そんな、そんな世界だったら……」
善子?「どれだけ、よかったか……」
798
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/11/12(月) 04:37:50 ID:U9sxIV4A
善子「以前の私とはもう違う。本当に大切に思える、思ってくれる仲間がいる」
善子「今度こそうまくいく。私はみんなを信じたい」
よしこ「……いいんじゃないかな」
善子?「ちょっと……!」
よしこ「わたしがそう決めたなら、そうしようよ。がんばってみよう」
善子?「……後悔するわ。絶対に」
よしこ「そうかもね……でも、大好きな人だから。初めての気持ちだから。そのためにがんばりたい」
よしこ「『わたし』も本当は、そう思うでしょ?」
善子?「……」
よしこ「わたしたちは、曜さんが大好き。このままなんて嫌だよね」
善子「本当は怖い。けど、Aqoursのために、曜さんのために、がんばってみたい」
善子?「なんで、そこまで……そんなに前を向こうと思えるの」
799
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/11/12(月) 04:39:16 ID:U9sxIV4A
善子「どうにかできるとしたら、きっと私しかいない」
善子「……それに」
善子?「……」
善子「曜さんのことが、好きだから」
善子「好きな人に愛する人に幸せになってほしい」
善子「私のしたことで曜さんが笑ってくれるなら……」
善子「それは、素敵なことじゃない?」ニコッ
善子?「……!」
よしこ「……」
善子「行ってくるわ」
800
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/11/12(月) 04:41:18 ID:U9sxIV4A
大変遅れまして申し訳ありません
上手く時間が取れませんでしたがここからは間が空かないよう心がけます
待っていてくださった方々は本当に申し訳ありません、そしてありがとうございます
たまにレスでケツを蹴り上げてくれればと思います
801
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/11/12(月) 07:17:37 ID:heh9j1Gw
待ってたぞ
802
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/11/12(月) 21:29:25 ID:7JszDlhc
待ってました
善子ちゃん……頑張れ……!
803
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/11/12(月) 23:03:27 ID:7mvBct7o
続ききた!
ハッピーエンド√はそこからの分岐なのか…
ここからどうなるのか楽しみだ
804
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/11/14(水) 00:57:36 ID:dmWLFa76
めっちゃ楽しみにしてる
805
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/11/20(火) 02:39:16 ID:T/L/GnoM
乙
806
:
名無しさん@転載は禁止
:2018/12/09(日) 16:59:45 ID:2GfYAYZ6
これの更新が楽しみでしたらば覗いてる
807
:
名無しさん@転載は禁止
:2019/01/12(土) 22:07:04 ID:.pK.Vos2
もう1ヶ月か……
808
:
名無しさん@転載は禁止
:2019/01/15(火) 21:58:47 ID:KKyv/c5s
おうケツ蹴り上げに来たぞ!
待ってるぞ!
809
:
名無しさん@転載は禁止
:2019/01/15(火) 23:24:53 ID:z1SKVa5k
久々にBAD√一気読みしたけどやっぱ凄いわこの話……
HAPPY√も待ってるぞい
810
:
名無しさん@転載は禁止
:2019/01/15(火) 23:31:27 ID:KKyv/c5s
>>809
俺も同じことして発破かけたくなった
>>584
ここの独白とか好きすぎるんだわ
811
:
名無しさん@転載は禁止
:2019/02/08(金) 02:19:55 ID:IsGvDhUs
待ってるぞ
812
:
名無しさん@転載は禁止
:2019/02/09(土) 20:17:39 ID:dCWLZPEw
初見だったけど、一気に読んでしまった……
仕事多いと大変ですよね
どうかこんな素敵な作品をかける自分の心を病ませることないように
ご自愛ください。続きも楽しみにしています。
813
:
名無しさん@転載は禁止
:2019/02/10(日) 05:05:53 ID:bPQEH3c.
同じく初見
バット√もノーマル√も善子の心情が手に取るようにわかってボロボロ泣いてしまった
続きをゆるゆる楽しみにしてます
814
:
名無しさん@転載は禁止
:2019/03/05(火) 23:07:58 ID:RKj.4IUA
まだか
815
:
名無しさん@転載は禁止
:2019/03/08(金) 11:42:40 ID:4aY873TM
>>1
です。ゴミが参りました
本当に申し訳ありません。今更信用も何もないと思いますが4月までには完成させたいと思っております
手始めに明日続きを更新させてください
816
:
名無しさん@転載は禁止
:2019/03/08(金) 18:30:28 ID:dl60Gn2s
おお! 待ってました!!!
817
:
名無しさん@転載は禁止
:2019/03/08(金) 19:48:49 ID:./uijS9I
待ってましたよ!
818
:
名無しさん@転載は禁止
:2019/03/09(土) 12:08:59 ID:UYg0f69I
>>815
ゴミだろうがなんだろうが、最後に立ってた奴が偉くて強いんだよォ!!
待ってる!!
819
:
名無しさん@転載は禁止
:2019/03/09(土) 23:12:03 ID:3TK.3jIg
善子「おはようお母さん」
善子母「あら早いのね」
善子「うん……」
善子母「どうしたの? まだ具合悪いの?」
善子「ううん、そうじゃないの。大丈夫」
善子母「そう。元気になったみたいね。良かった」
善子母「……なんだか高校に入ってから楽しそうね」
善子「そう、かな」
善子母「うん。善子がまた楽しそうに笑ってくれて嬉しいわ。素敵なお友達を見つけたのね」
善子「……うん」
善子母「スクールアイドル、頑張ってね」
820
:
名無しさん@転載は禁止
:2019/03/09(土) 23:12:30 ID:3TK.3jIg
――
バス停
善子「(素敵なお友達)」
ハッシャシマス――
――善子ちゃん!おはヨーソロー!
――善子ちゃんおはよー!
――おはよう。朝から元気ね
善子「(みんな……)」
善子「……」
善子「(大丈夫。私は、今度こそ……)」
――学校
果南「善子ちゃん!」
善子「……果南さん」
果南「……千歌に聞いたんだ。その、曜のこと」
善子「あぁ……」
果南「……ごめん。私、善子ちゃんに頼まれたのに、結局……」
善子「いいんです。私も果南さんに押しつけて、自分では何もしなかったから」
果南「そんな……」
善子「大丈夫。これからは私がやります」
善子「私が、やるべきでした」
果南「……」
善子「みんなが大事だって思ってたのに逃げてばかりで、どうにかなるように願ってるだけで……」
善子「だからたくさん傷つけちゃった。みんなのこと」
善子「でも、だから頑張りたい。みんながまた、Aqoursとして活動できるように」
善子「私、Aqoursが大切だから」
果南「……一人で頑張りすぎないでね。私でも、ダイヤでも鞠莉でも、善子ちゃんの味方だから」
善子「……はい。 ありがとう果南さん」
821
:
名無しさん@転載は禁止
:2019/03/09(土) 23:12:51 ID:3TK.3jIg
昼休みの時間は長いような短いような、不思議な感覚で過ごした。
千歌さんと梨子さんに会って、私に何ができるのか。
本当に曜さんを、Aqoursを元通りにできるのか。
やらなきゃいけない。でも怖かった。
また私のせいで全て壊しちゃうんじゃないかって。
何かのはずみで二人をめちゃくちゃにして、Aqoursを、全てを台無しにしてしまうのが怖かった。
緊張なんて生易しいものじゃなくて、私の気持ちはいろんなものに押しつぶされてしまいそうで。
ルビィと花丸ともまともに会話もできないくらいだった。
でもこれは私がやるべきこと。やらなきゃいけないこと。
絶対に曜さんを助けて、みんなも幸せにする。
絶対、絶対に。
そして…
822
:
名無しさん@転載は禁止
:2019/03/09(土) 23:13:05 ID:3TK.3jIg
――昼休み
善子「(……時間だ)」
(私がやらなきゃ、今度こそ、私が……)
「善子ちゃん」
善子「……ルビィ」
ルビィ「どうしたの? 今日はあんまり話してくれないね」
ルビィ「ひどい顔してる。何か良くないことでもあったの?」
善子「ううん。そんなんじゃないわ、大丈夫」
ルビィ「……どこか行くの?」
善子「ええ、ちょっと、ね」
ルビィ「……」
823
:
名無しさん@転載は禁止
:2019/03/09(土) 23:13:22 ID:3TK.3jIg
ルビィ「善子ちゃん、行っちゃダメ」
善子「え?」
ルビィ「今の善子ちゃん、すごく苦しそうだよ。心が今にも押しつぶされそうで、壊れちゃいそう」
ルビィ「なのに、なんとかしなきゃって必死でもがいて、傷つきながら無理やり前に進もうとしてる」
ルビィ「…これから善子ちゃんがすること、なんとなくわかるよ。善子ちゃん……ううん、Aqoursの今後を大きく変えるような、とても大事なこと、なんだよね」
善子「……アンタには隠し事できないわね」
ルビィ「……私ね、鞠莉さんに言われてるんだ。善子ちゃんに何か変化があったらすぐに知らせるようにって。私の疾患なら善子ちゃんになにかあったらそれに気づけるからって」
善子「へぇ、じゃあどうするの? 今の私は危ないから、マリーに報告しに行くの? それともアンタが私を止める?」
善子「悪いけどこれはとても大事なことなの。私がやらなきゃいけないこと。いくらルビィでも邪魔するなら……」
ルビィ「違うの」
善子「!」
ルビィ「たしかに鞠莉さんにはそう言われてるよ。善子ちゃんを止めてあげてって。でもね……」
ルビィ「今は私自身が、善子ちゃんに前に進んでほしくないの」
ルビィ「だってそんなに傷ついてボロボロな気持ちで、これからもっともっと辛いことをしなきゃいけないんでしょ?」
ルビィ「これ以上傷つく善子ちゃん、見たくないよ」
善子「ルビィ……」
ルビィ「ごめん。ごめんね? 私、善子ちゃんの味方になるって言ったのに、こんなこと……」
824
:
名無しさん@転載は禁止
:2019/03/09(土) 23:13:42 ID:3TK.3jIg
善子「……前から気になってたんだけど、あんたはどうしてそんなに、私に優しいの?」
善子「こんな、私みたいな、最低なヤツに……」
ルビィ「……私たちみたいな人間モドキは、幸せにはなれない」
ルビィ「それは私たちが他人と自分を不幸にする疾患を持ってるからとかじゃなくて……」
ルビィ「……きっと『そうなるようにできている』から」
ルビィ「私たちは絶対に、幸せになれない道を歩かなきゃいけない。そんなふうにできている」
ルビィ「理屈とかじゃない。もっと大きな流れ……運命みたいなもので決まってるの。善子ちゃんなら、なんとなくわかるでしょ?」
善子「……ええ」
ルビィ「でも、善子ちゃんはキレイな心を持ってた」
ルビィ「私と同じで絶対に幸せになれないのに、どうして? って思ったよ」
825
:
名無しさん@転載は禁止
:2019/03/09(土) 23:13:56 ID:3TK.3jIg
ルビィ「それは善子ちゃんと関わっていくうちに、すぐにわかった」
ルビィ「善子ちゃんは強い心を持ってる。一度決めたらそこに向かおうとする、強い気持ちがある」
ルビィ「幸せになろうって思ったんだよね? 幸せにしたいって思ったんだよね?」
ルビィ「私はね、それをすごいと思った! 私は諦めたから。幸せになる勇気なんてなかったから」
ルビィ「だからね、私は……」
ルビィ「ルビィは……」
ルビィ「……」
善子「……」
826
:
名無しさん@転載は禁止
:2019/03/09(土) 23:14:14 ID:3TK.3jIg
ルビィ「……あのね善子ちゃん。善子ちゃんは、私にとって本当に特別なんだ」
ルビィ「花丸ちゃんとはまた違う、でも同じくらい特別な人なの」
ルビィ「……いなくなってほしくない」
ルビィ「また、善子ちゃんみたいな人に、さよならって言いたくないの」
善子「ルビィ……」
827
:
名無しさん@転載は禁止
:2019/03/09(土) 23:14:33 ID:3TK.3jIg
善子「……バカね」コツン
ルビィ「痛ぁい!? 何するの善子ちゃぁ!」
善子「いなくなるとかなんとか、大袈裟なのよアンタは」
善子「いい? 私は何も怖いことしに行くわけじゃない。不幸になりに行くわけでもない」
善子「みんなと一緒に幸せになるために、やらなきゃいけないことがあるだけ」
ルビィ「善子ちゃん……」
善子「でもね、私は臆病だからちょっとだけ勇気がいるの。1人じゃ怖くて、不安でたまらない。だから」
善子「ルビィ、アンタが私を応援してくれる?」
828
:
名無しさん@転載は禁止
:2019/03/09(土) 23:14:48 ID:3TK.3jIg
ルビィ「……それは、きっと善子ちゃんが幸せになるために必要なことなんだよね?」
善子「もちろん。そんでもってアンタも幸せになるの」
ルビィ「そっかぁ……」
ルビィ「えへへ、そっかぁ……!じゃあ、ルビィが応援しないわけにはいかないね!」
ルビィ「うん、応援するよ! ルビィは善子ちゃんの1番の味方だもん! だから……」
ルビィ「頑張って、幸せになって。私たちみたいな人間モドキでも幸せになれるって、ルビィに教えて?」
善子「ええ、任せなさい」
ルビィ「うん! 頑張ルビィ、だよ! 善子ちゃん!」
善子「うん!」
善子(……私バカね。みんなのために頑張るって、昨日決めたばっかりなのに)
善子(そうだった。今の私には、私の幸せを願ってくれる人がいる。応援してくれる人がいる)
善子(それはルビィだけじゃない。花丸も、果南さん達もそうで、それが見えなくなっていたみたい)
善子(本当に、浦の星に来て、Aqoursに出会えて良かった)
善子(だから、もう一度取り戻したい。また9人で、スクールアイドルをやりたい)
善子(そして今度は私が曜さんを助けるんだ)
829
:
名無しさん@転載は禁止
:2019/03/09(土) 23:16:50 ID:3TK.3jIg
ルビィ「善子ちゃん、落ち着いたみたいだね」
善子「ええ、おかげさまでね。それにしても私が特別なんてねー。嬉しいこと言ってくれるじゃない」
ルビィ「なんだ、知らなかったの? 私けっこう善子ちゃんのこと好きなんだよ。いつか言ったでしょ?」
善子「言ったっけ?」
ルビィ「……うん、言ったよ。きっとどこかで、もう伝えたよ」
善子「そっか。覚えてないけど、あんたが言うならそうなんでしょ。ありがとね」
ルビィ「うん。じゃあ、いってらっしゃい」
ーー
ルビィ「……行っちゃった」
ルビィ「善子ちゃん、Black Sheepって言葉、知ってるかな」
ルビィ「えへへ、きっと、今の善子ちゃんにはもう縁のない言葉だね」
830
:
名無しさん@転載は禁止
:2019/03/09(土) 23:17:34 ID:3TK.3jIg
お久しぶりの更新です
次の更新も急ぎますのでよろしくお願いします
831
:
名無しさん@転載は禁止
:2019/03/10(日) 02:27:46 ID:y5mqt4eY
お帰り、待ってたぞ!
続きが楽しみだわ、あの惨劇がどう変わるのか!
832
:
名無しさん@転載は禁止
:2019/03/10(日) 04:25:40 ID:Aan2lj9Y
善子ちゃんがんばルビィ
そんなに急かずに自分のペースで続けてくださいな
833
:
名無しさん@転載は禁止
:2019/03/10(日) 10:51:11 ID:IRsxXawE
続きキタァアアア!!
やっぱりこのSSの善子とルビィの関係が好きすぎてヤバいわ……
どんな結末を迎えるのか凄い楽しみにしてるけど自分のペースでよいからね!
834
:
名無しさん@転載は禁止
:2019/03/10(日) 22:49:28 ID:ddImDuLc
待ってた。
ありがとう。楽しみにしてるよ。
835
:
名無しさん@転載は禁止
:2019/03/11(月) 14:51:48 ID:3KIDwMI.
うおおおお!!!!!
めっちゃ良い!!!!!
836
:
名無しさん@転載は禁止
:2019/03/12(火) 01:52:49 ID:Y1hcFLxQ
乙
次は5ヶ月以内にたのむ
837
:
名無しさん@転載は禁止
:2019/04/03(水) 02:31:29 ID:TGuKM3LE
待っとるよ
838
:
名無しさん@転載は禁止
:2019/06/14(金) 04:22:16 ID:zWqXJWDM
まだか
839
:
名無しさん@転載は禁止
:2019/09/14(土) 12:43:00 ID:ZVkyb/5k
生存報告だけでもいいから更新してくれ
840
:
名無しさん@転載は禁止
:2020/02/05(水) 19:00:24 ID:0bUttr9k
まだまだ待ってるぞい
841
:
名無しさん@転載は禁止
:2020/04/19(日) 23:43:24 ID:Txfd5NYA
まってるぞ…
842
:
名無しさん@転載は禁止
:2020/11/10(火) 17:08:13 ID:MbY0hmfg
私待ーつーわ
いつまでも待ーつーわ
843
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/03/11(木) 21:28:16 ID:d.y.uJDo
マジでずっと待ってる
844
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/05/31(月) 00:30:14 ID:WEDuyuA.
ハッピー√心待
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