■掲示板に戻る■ ■過去ログ 倉庫一覧■
穂乃果「龍狩りだよっ!」 Part16
-
前スレ
【SS】穂乃果「龍狩りだよっ!」
ttp://hope.2ch.net/test/read.cgi/lovelive/1443023253/
【SS】穂乃果「龍狩りだよっ!」 Part2
ttp://hope.2ch.net/test/read.cgi/lovelive/1443864610/
【SS】穂乃果「龍狩りだよっ!」 Part3
ttp://hope.2ch.net/test/read.cgi/lovelive/1444320925/
【SS】穂乃果「龍狩りだよっ!」 Part4
ttp://hope.2ch.net/test/read.cgi/lovelive/1444835503/
【SS】穂乃果「龍狩りだよっ!」 Part5
ttp://hope.2ch.net/test/read.cgi/lovelive/1445421892/
【SS】穂乃果「龍狩りだよっ!」 Part6
ttp://hope.2ch.net/test/read.cgi/lovelive/1445790203/
【SS】穂乃果「龍狩りだよっ!」 Part7
ttp://hope.2ch.net/test/read.cgi/lovelive/1446116967/
【SS】穂乃果「龍狩りだよっ!」 Part8
ttp://hope.2ch.net/test/read.cgi/lovelive/1446368799/
【SS】穂乃果「龍狩りだよっ!」 Part8※(実質9)
ttp://hope.2ch.net/test/read.cgi/lovelive/1446826399/
【SS】穂乃果「龍狩りだよっ!」 Part10
ttp://hope.2ch.net/test/read.cgi/lovelive/1447286111/
穂乃果「龍狩りだよっ!」※(実質11)
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/anime/10627/1447506477/
穂乃果「龍狩りだよっ!」 Part12
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/anime/10627/1448038787/
穂乃果「龍狩りだよっ!」 Part13
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/anime/10627/1448716334/
穂乃果「龍狩りだよっ!」 Part14
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/lite/read.cgi/anime/10627/1449582479/
穂乃果「龍狩りだよっ!」 Part15
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/anime/10627/1450530101/
-
おつおつ
今年もよろしくお願いします
-
明けましておめでと乙
-
穂乃果「雪穂!!」
雪穂「え、お姉ちゃん…?お姉ちゃんなの!?」
穂乃果「雪穂ぉぉぉっ!!!」
雪穂「お姉ちゃん…!!お姉ちゃぁんっ!!」
英玲奈に連れられ街の内部へと踏み入れた穂乃果たち。
近未来的な光景に目を奪われるのも束の間、ソワソワとしたような、自分のことのように嬉しそうな、そんな表情の英玲奈に案内されたのは彼女の自室。
そして開いた扉の中へと促され、そこにいたのは亜里沙と雪穂!
穂乃果と雪穂は顔を見合わせ、驚きながらもすぐさま駆け寄り、そして抱擁を!!
雪穂「お姉ちゃんっ…会いたかったよぉぉぉ…!!」
穂乃果「雪穂…私もだよ…!無事でよかったぁ…!!」
亜里沙「えへへ、二人とも嬉しそう」
英玲奈(まずは雪穂…家族との再会まで守り抜けた、か。頑張ったじゃないか、私。ふふ…)
-
ぎゅっと強く、姉の胸元へと顔を埋める雪穂。
血が繋がらない関係という海未の勘違いを二人が知ることもなく、今も昔も変わらずただ一人の姉であり妹なのだ。
その様子を目に、亜里沙も思わず顔を綻ばせている。英玲奈は思うところがあるようで、一歩後ろで感極まった表情を。
また、にこと真姫も共に過ごした時間で穂乃果の仲間たちについて、とりわけ妹の雪穂についての話は何度も聞いている。
王宮の地下で一度姿を見てはいるが、しっかりと見るのは初めて。興味深げに姉妹の姿を見つめている。
真姫(雪穂ちゃんが死にかけて倒れて、穂乃果が落ちて、それ以来の再会よね)
にこ(あれが穂乃果の妹?ふぅん、穂乃果に似ず賢そうね)
穂乃果「あ、なんか失礼なことを考えられた感じがする」
そんな再会の一時を過ごし、穂乃果と亜里沙も抱き合って再会を喜び、にこや真姫と妹二人も挨拶を交わし終える。
さて、そんな中。話さなければならないことがある者が一人。
-
英玲奈「あー、穂乃果。一つ報告があってだな」
穂乃果「へ?どうしたの英玲奈さん、かしこまっちゃって」
雪穂「あ、そっか…えへへ」
英玲奈「その、穂乃果。私と雪穂なんだが…お付き合いをさせてもらっている!」
真姫「ヴェッ!?」
にこ「はぁぁ!?」
穂乃果「へええ…!ビックリだけど、でも意外とお似合いかも?」
雪穂「えへへ…ありがと。お姉ちゃん」
英玲奈「ただ、その…話はそれで終わりじゃなくてだな。実は…亜里沙とも付き合っているんだ」
亜里沙「亜里沙たちは三人で付き合ってるんです!」
真姫「ヴェェェエ!!??」
にこ「はぁぁぁぁ!!!?」
英玲奈「も、申し訳ない…そうなっている」
穂乃果「うへぇぇ…二度ビックリだなぁ…」
英玲奈「穂乃果!姉としての怒りはもっともだ!二股との非難も甘んじて受けよう!
だが、これだけは信じてくれ…私は二人ともを心から愛している!生涯を賭して責任を取る!これは誠意の証だ!!!」
-
そう叫び、英玲奈は平身低頭の謝罪から膝を折り、額を地へとべったり付けた土下座へと移行する!
これには場の全員が驚き、真姫が「ヴェェ!!?イミワカンナイ!!!」とお得意のフレーズを繰り出し、にこは唖然と口を開き…
が、穂乃果だけは同じた様子がない。
なにやら穏やかな笑みを浮かべ、そして口を開く。
穂乃果「英玲奈さん、そんなに謝らなくても大丈夫大丈夫!」
英玲奈「な…か、軽いな。私が言うのもなんだが」
穂乃果「だって三人はそれぞれ好きなんでしょ?じゃあそれが一番だよ!
穂乃果だって海未ちゃんとことりちゃん、それににこちゃんと真姫ちゃんとも付き合ってるから!」
英玲奈「な、え?にこが、真姫で…?」
雪穂「ね、言ったでしょ英玲奈さん。お姉ちゃんはその辺、なんていうか…ラフだから」
英玲奈が妹二人と三人で交際、穂乃果とにこと真姫も三人で交際。
それぞれがそれぞれに衝撃の告白、もはや風紀の乱れだとかそういうレベルではなく、互いに呆気に取られて呆れ気味。
だがただ一人、穂乃果の価値観からすればいずれもさしたる問題ではない。
穂乃果(全員が幸せ!いいことだね!)
楽しげに笑う穂乃果。
笑いつつ、穂乃果本人も気付いていないが無意識化では英玲奈と亜里沙、そして雪穂の関係性へと考察を深めている。
英玲奈が二人を頼みにしている部分もあるが、やはり年上らしく決定的な主導権は英玲奈にある。
つまり英玲奈を落とせば、年下二人もセットで…
と、実妹を含めてそんな発想が心の奥底にある辺りは性癖の歪曲も板に付いてきたと言えるだろう。
真姫(今更だけど、希が言ってた巷では同性愛がトレンドだって話は本当だったのね…)
-
王都からの地下鉄でやってきた穂乃果たちは、王国軍からの尖兵ではないかと街の指導者たちに警戒されている。
英玲奈が三人の身元を保証するため、全員で深層の司令部へと向かう必要があった。
向かう道すがら、穂乃果たちは今までの都市とは様子の違う街並みに目を奪われつつはしゃいでいた。
穂乃果「すっごい!四角い箱から飲み物が!食べ物も!」
雪穂「ああ、自販機ね。便利だよねー」
にこ「え?この自販機っての無料なの!?」
英玲奈「いや、そこの読み取り口にかざしたカードが口座と結びついていてだな。
……説明しようと思ったが、私もよくわからん」
真姫「エレベーターとかリフトだらけ。壁は妙に透明だし、少し落ち着かない街ね」
亜里沙「でも、道の繋がりを覚えたらすっごい便利ですよ!」
先に到着していた分、雪穂たちは魔術都市の革新的な文明に若干の慣れがある。
英玲奈たちが案内をしつつの散策だが、穂乃果がくるくるとよそ見をして時間がかかる。
穂乃果「自販機のパン美味しい〜!」
雪穂「相変わらずマイペースだなぁ」
-
右手にはウインナーパン。
左手にはコーンマヨパン。
パンを二刀流とばかりに握りしめ、かじりながら周囲を見回す。
スケルトン素材の建物が立ち並び、文字通りの透明感は清廉かつ整然。
一見すると平和な街並みだ。
けれど、人々の表情には暗い影が落ちている。
それも当然だろう。上を見上げれば、半透明の防壁へと天使たちが延々と攻撃を続けているのが見えるのだ。滅亡へのカウントダウンは着々と刻まれている。
リフトを乗り継ぎ奥へと進み、辿り着いた先は司令部だ。
あまり大人数で押し掛けるのも好ましくない。英玲奈と穂乃果、それに王族の真姫が説明のために中へと入ることにする。
にこ「じゃ、にこたちはここで待ってるわよ」
そう告げ、にこは司令室前の壁へともたれかかった。
やれやれとばかり、ため息を一つ吐く。
そこには移動と未知の地への疲れ。
と、それだけではない。加えて…
にこ(ママ…)
-
西の街から英玲奈たちを逃し、生死知れずとなった母の身を案じている。
街の中を移動する最中、英玲奈たちがにこの母に救われた事、そして別れ際の状況を聞いたのだ。
強敵との対峙。
そしてその相手だった山田先生と呼ばれる青ジャージの熾天使は今もなお健在。高空で天使の軍勢を指揮している。
行方不明のまま、敵が健在…となれば、どうしても悪い想像は募る。
そんな状況で、にこは珍しく心労の色を見せていた。
にこ「……」
真姫「にこちゃん…」
英玲奈「……雪穂、亜里沙。にこの様子を見ていてやってくれ。頼んだぞ」
亜里沙「任せてください!」
心配ばかりしていても仕方がない。
にこの様子を気にしつつも、三人は威厳ある静謐に満ちた司令室へと足を踏み入れた。
-
司令室。
司令たちは総じて高齢、男が四人に女が一人。
壮年から老齢まで、その全員が思慮深げかつ厳とした眼差しを浮かべていて、こういう状況に不慣れな穂乃果はついつい臆してしまう。
だが幼少から王宮で揉まれ、四騎士としての年月を経てきた英玲奈は10の眼を目の前に、一切の躊躇をなく自身の主張を押し出してみせる。
英玲奈「説明させていただいた通り、第一王女である西木野真姫を含む三人。彼女たちの身元は私が保証します」
「ふむ…」
「まあ、貴女が言うのであれば」
「……」
五人の司令たちはそれぞれの顔に思惑を窺わせながらも、英玲奈の強固な主張に押される形で穂乃果たちの滞在を認めざるを得なかった。
実質的な軍の指揮官となっている英玲奈にそっぽを向かれれば対天使戦の手立てを失うことへと直結する。上手く飼っておかねばならないのだ。
その英玲奈がこうも力強く保証する以上、司令たちの中に異を唱えられる者は一人としていなかった。
-
英玲奈「感謝します」
頭を下げる英玲奈。
自分たちのために主張してくれる彼女の助けになればと、穂乃果と真姫も自身の決意を述べてみることにする。
穂乃果「私たちも天使と戦います!」
真姫「……それに、父の責任は娘の私が取るわ」
室内、司令たちの視線は真姫へと注がれる。
司令と名乗ってはいるが、彼らは政治家だ。
これまでは都市機能の維持に専心してきたが、西木野王家の正統な後継者である真姫が現れたことで状況が変わってくる。
王都と西の都が陥ちた現況、残る大都市はこの魔術都市と、西木野王が居を構える南部の要塞だ。
仮に、この天使との戦の流れで王が討たれれば王位は真姫へと移る。
そして真姫へと恩を売っておけば、この都市での権力に留まらず、国政の中枢への進出も見えてくる。
-
「歓迎いたしますよ、真姫姫様」
老獪な政治屋たちは顔を見合わせ、改めて真姫の参入へと歓迎の意を示した。
…そんな五人の司令たちの中、白髪痩身に眼鏡の神経質そうな男が脂汗を垂らしている。
彼は西木野王への内通者。
海未ら四騎士たちのブリーフィングに出ていた突入のための秘策。
王の下で高い地位を与えられる約束と引き換えに、あと数時間とせず襲来する王国軍を内部へと引き入れる役目を負っているのはこの男だ。
しかし、ここで一転して難しい立場へと晒される。
敵を引き入れるバリア解除は司令五人いずれかの認識ID承認によって可能となる。
つまり、スパイ行為を行ったという記録は絶対的に残ってしまうのだ。
と、しても。
これまでは魔術都市での立場を捨てても問題ないと思えるほどにこちらにいる旨味がなかった。近々この都市は必ず陥ちると目しているのだ。
しかし、真姫が現れた。街の状況の危険性に変わりはないが、こちらにも立身出世のルートが出現したのだ。
-
取捨選択の機会に、白髪の男は眼鏡のズレを指先で直し…
そんな男を、穂乃果は凝視している。
賢者となり本人の地力が増したことで以前からの殺意感知は一層の進化を遂げ、細かな悪意までを感知できるようになっている。
穂乃果「眼鏡のおじさん、何か企んでない?」
「なっ…!?」
突然の問い。予想もしていなかったのだろう。
男は瞬間の狼狽を見せ、しかし取り繕いながら穂乃果を睨み付ける。
「姫君はともかく、お前は英玲奈の保証がなければ追い出されても文句の言えん身なのだぞ。わきまえろ」
穂乃果「うーん…どうして焦ってるの?」
穂乃果は怯まない。
睨み合いが持続され…他の司令たちのとりなしを受け、その場は収められることとなる。
だが、そのやりとりは無駄とはならない。
英玲奈(穂乃果の勘は鋭いと聞く。あの男…警戒が必要だな)
-
重ね重ね、防衛に関する実質的な指揮権の一端は英玲奈にある。
穂乃果の言葉を受け、英玲奈はバリアの維持システムを一時的に強化することを内心に決めた。
当面の間、バリア解除には司令二人以上の許可が必要となるように変更しようというのだ。
これは裏切りを画策する司令の意図を的確に読み当てていて、英玲奈らしい流石の判断だったと言えるだろう。
しかし…この英断が不運にも、状況の悪化を招くことになる。
とはいえ、未来は見えない。その場ごとの最善を尽くす。それだけだ。
英玲奈が一礼を、穂乃果と真姫もそれに従う。
そして司令室から立ち去ろうとし…
ふと、穂乃果が司令室の中に飾られた絵へと視線を向けて声を上げる。
-
穂乃果「あれ、これって十二卿龍?」
英玲奈「ん?ああ、そうだ。十二卿龍と龍皇アークトゥルス」
真姫「ここは全部描かれてるのね。各地の壁画には八体までしか残ってないって聞いてたけど」
「仮にも魔術都市の深奥、高密度マナの結集体である十二卿龍の研究は他都市よりも進んでいるのですよ」
「一般には秘匿されていますが、魔術都市の上層では以前から存在は確認されていたのです」
穂乃果「へえぇ…」
その中には真姫の母に宿っていたモルドレッドの姿もある。
真姫は少し感慨深げにそれを見つめている。
父、西木野王もガウェインやランスロットなどについての知識を独自に有していたのだ、十二卿龍全てを把握している者が別でいても不思議ではない。
と、穂乃果が首を傾げる。
穂乃果「あれ?一体多いよ?」
-
一体多い。
穂乃果のそんな主張に、真姫は平然とした調子で声を返す。
真姫「龍皇アークトゥルスでしょ?」
穂乃果「違うよー、ちゃんと龍皇は数えてるって。十四体いるんだよ」
真姫「え?……十四体、いるわね」
英玲奈「本当だな。絵などあまり気にしたことはなかったが…」
穂乃果「あ、ほら。あの端っこによくわかんないのがいるよ」
狐につままれたような顔をしている穂乃果たちへ、司令の一人の老人が説明をしてくれる。
「一体、未確認の十二卿龍がいるはずなのだ。所在も名前も不明、その絵も想像に過ぎない」
穂乃果「へえ〜…」
まだまだ知らないことはあるものだ。
龍皇であるはずの穂乃果にも知られていない十二卿龍の存在に感心するが、今は関係のない話。
もう一度礼をして、三人は司令室から退出した。
…
司令室の話し合いから三時間の後、南部の要塞から王国軍の飛行戦艦が高空へと飛翔した。
低速での飛行、魔術都市へと到達するまではおよそ半日。
甲板には海未と、マスクを被り狩猟部隊へと扮装したヒデコ、フミコ、ミカの三人の姿。
ヒデコ「き、緊張するなぁ…」
フミコ「私たちの真似してれば大丈夫だよ」
ミカ「海未ちゃんもいるし、私たちが揃えば完璧よ!」
海未「私たちの働きに全てが掛かっています。理想は花陽とあんじゅが来る前に全てを終わらせること。……頑張りましょう!」
開戦の火蓋が迫る。
-
今日はここまで
新年もよろしくね
-
おつおつ
よろしくやで〜
-
乙
王様は出ないようで安心
-
新年早々乙。
しかし、14体目だと…!?
-
乙ー
5人いても四天王とか思い出してじわじわくる
-
乙!
あけおめっ!状況が悪化する要因が気になるね
-
龍皇が十二龍卿に含まれてないって明言されたの今回が初めてだっけ?
前に含むか含まないかは不明って書かれてたと思うけど
-
おつ
-
おつ
あけおめです
-
おつ
海未が苦労させられそうな予感
-
おっつおっつ
-
おつ! 新年早々嬉しいなー
-
14体や、ウチを入れて
-
時刻は夜を迎えている。
穂乃果は英玲奈と二人、都市の最も主な防衛施設である迎撃塔への入り口が立ち並ぶエリアを見て回っていた。
英玲奈「見ての通り、砲台と魔力増幅陣が備えられているわけだ」
穂乃果「おおっ、便利だね!これで天使と戦ってるのかぁ」
英玲奈「ああ、魔術やスキルが強化されるからな。説明としてはこんなところか」
ここへと穂乃果を招いたのは英玲奈だ。
対天使の防衛戦に穂乃果たちも参加してもらう以上、設備を把握しておく必要があった。
本来であれば三人全員に説明をしておきたいところだったのだが、気疲れしている様子のにこと、移動で疲労を溜めている様子の真姫は自室で待機。
代表して穂乃果だけが英玲奈に帯同していた。
と、通り一遍の説明が終わり、英玲奈は表情を和らげて伸びをする。
英玲奈「終わりだよ。長い説明に付き合わせてすまなかった」
穂乃果「ふへぇ…覚えることが多くて頭が…」
英玲奈「ふふ、真姫たちの分も夕食を買って帰ろうか」
穂乃果「さんせーい!」
-
司令室で街への滞在を認められた穂乃果たちには、英玲奈と同様のIDカードが支給されている。
これにより店舗や自販機での買い物が可能となっている。
穂乃果はうきうきとした表情で自販機へカードをかざし、パンと飲み物を買って笑顔。
穂乃果「えへへ、昼食べて美味しかったんだよねぇ〜」
英玲奈「おいおい、またパンか」
穂乃果「私は毎食パンでも全然いいんだけどなー」
英玲奈「栄養が偏るぞ?せめて野菜も食え」
他の都市とは異なり、自販機以外の店舗も大半が無人だ。
二人が立ち寄ったのは二十四時間営業の店舗。
ケース内には整然と商品が並べられていて、そこには彩り豊かな食べ物の数々が。
さすがは魔術都市というだけあり、弁当や惣菜類の数々は作りたての温かさを保っている。
穂乃果「うわー!どれも美味しそう!」
英玲奈「ふふ、君はパンを買っただろ?」
穂乃果「いやあ…これはこれで美味しそうで…」
英玲奈「好きなのを取るといいさ。パンは明日でも食べられるからな」
穂乃果「うんっ!うわぁ、こっちのご飯は湯気が。花陽ちゃんなら大喜びだろうなー」
-
特殊なテクノロジーと品揃えに感動しきりの穂乃果。
それを横目に微笑みつつ、英玲奈は手早く食品を選び、人数分の弁当とサラダなどをカゴに入れて脇へ提げている。
随分と慣れた様子、ここは英玲奈にとって普段から行きつけの店なのだ。
全員分の食事を購入したところで、穂乃果はレジ脇に視線を奪われている英玲奈に気が付く。
英玲奈「………」
穂乃果「英玲奈さん?どしたの?」
英玲奈「……ん、ああいや、なんでも…」
問われ、取り繕うような表情を見せる。
ふと思い付いたように、英玲奈は穂乃果へと眼差しを向ける。
英玲奈「穂乃果、甘い物を食べたくはないか?もし食べたければ買っても構わないぞ」
その表情には明らかな期待の色。そう、英玲奈はとびきりの甘党だ。
以前は希たちの前でその甘党ぶりを隠そうともしていなかったが、しかし最近はスイーツに対してはしゃぐのが恥ずかしいという感覚が芽生えているようだ。
なので、穂乃果をダシにして買おうと目論む。
しかし穂乃果が買いたいと言うのを待ち切れず、その片手は既に生クリームたっぷりのフルーツロールへと伸ばされている。
さらに無意識、高揚に狼の耳と尻尾がピクピクと動いている状態。
この都市に来てからは人前で戦う機会も多く、隠す必要もなくなったために人狼の耳と尻尾は常に出している。
-
穂乃果「英玲奈さん、甘い物が大好きなのは真姫ちゃんたちから聞いてるから気にしなくていいよー」
英玲奈「そ、そうだったか…」
無駄な考えだったようで、英玲奈は頬を赤らめる。
そして照れを隠すようにフルーツロールにプリン、コーヒーゼリーとティラミス、甘い物をひょいひょいとカゴへ突っ込み、まとめて会計を済ませていく。
その間も腰から生えた尻尾はしきりに左右に揺れている。
穂乃果(うーん、英玲奈さん可愛いなぁ…)
海未、ことり、真姫、にこ。
穂乃果が攻略してきた面々だ。
既に四人、ノーマルだった高坂穂乃果はもはや過去。
英玲奈の可愛さに気付き、そしてナチュラルに攻略を考え始める。
あんじゅとの激しい闘いの経験も積み重ねられていて、その眼力は瞬時にして英玲奈の弱点を見抜いてみせた。
店を出て、二人で荷物を分担して帰る道中。
穂乃果の本能が牙を剥く!
-
穂乃果「あ、英玲奈さん!ちょっとこっち来て!」
英玲奈「なんだ、何かあったのか?」
穂乃果の視線の先にあるのは建物の物陰。
透明な建造物が多いが、諸々の角度が重なりちょうど通りから死角になっている位置取り。
言葉巧み…かはわからないが、勢い任せに英玲奈を誘い込み、そこで好感度を得るべくスキンシップを図ろうと目論んでいるのだ…!
だが、堅物の中に柔らかさを秘めた、そんな印象に反して英玲奈は意外にもチョロくはない。
なにしろ、四騎士時代はあのあんじゅからしきりにイタズラを仕掛けられつつも堕とされることなく耐えていた実績がある。
雪穂と亜里沙の場合は保護欲を拗らせて英玲奈から手を出してしまったが、だからこそ余計に!
二人に愛を誓った今、そう易々と堕とされはしない!
が、あんじゅに手を出されていた頃とは違う点が一つ。
そして増えた弱点も一つ。
-
穂乃果(穂乃果にはわかるもんね。英玲奈さんは尻尾の付け根が弱い!!)
恐るべき洞察眼!!
そう、英玲奈の尻尾の付け根、尾てい骨の付近には敏感な神経が集中しているのだ!!
弱点を把握されている以上、路地に誘い込まれてしまえば経験豊富の域へと辿りつつある穂乃果に利があるのは明らか。
ああ、哀れ英玲奈は五人目の餌食となってしまうのか…そして英玲奈を足掛かりに、雪穂、亜里沙へも魔手が伸びてしまうのか!!
雪穂「お姉ちゃーん、英玲奈さーん」
英玲奈「ん、雪穂か。どうした?」
雪穂「そろそろかなーと思って、荷物持ちに来たよ。
……って、どうしてそんな道に行こうとしてるの?」
英玲奈「いや、穂乃果がそっちに何かを見つけたようでな」
雪穂「え、でもそこ行き止まりだよ?」
穂乃果「いや〜、はは。勘違い…だったかも!」
雪穂(……あやしい)
姉妹の感覚は、姉の企みを本能的に見抜いていた。
穂乃果へと駆け寄り、耳に声を潜めて警告を!
-
雪穂(お姉ちゃん!英玲奈さんに手を出そうとしないでよ!)
穂乃果(むむ、ばれた…!)
雪穂(英玲奈さんは私と亜里沙のなんだからね!)
穂乃果(私も混ぜてよー!)
雪穂(お姉ちゃんにはもう四人もいるんでしょ!?節操なし!)
勘が働いたのだろうか。
雪穂が迎えに来たことにより、英玲奈は間一髪のところを危うく救われた格好だ。
しかし当人はそんな事実にはまるで気付くことなく、買ったスイーツに視線を落とす。
英玲奈(早く食べたいな。よし、新商品のカスタードたっぷりシューから食べよう、そうしよう…)
考えながら姉妹の会話が終わるのを待ち続けるのだった。
-
…
同じく魔術都市、時間はさらに経過して深夜。
深層の一室で、一人の男が苦境に立たされていた。
白髪痩身、眼鏡に神経質な相貌。
穂乃果にその企みを、曖昧ながらに看破されてしまった老司令だ。
場所は自室、いるのは自分一人だけ。
けれど怯えたように声を潜めつつ、小型の通信機に向けて悲鳴じみた声を発している。
「ですので…どうか突入作戦の延期を!西木野真姫と他に二名が到達したせいで状況が変化してしまったのです!!」
-
もういい年の老人が半泣きも隠さず、顔を歪めて必死の訴えだ。
バリアの解除操作は英玲奈により強化の指示が出されていて、司令二人以上の連名でなければ解除が行えないように変えられてしまった。
元より、都市防衛における最重要ファクターである防壁は二人以上で管理されるべきという意見があったのだ。
しかし機を見て裏切ろうと画策する彼が、緊急時に柔軟に対応できるようにと理由を付けては現在の体制を維持してきていた。
が、それも既に過去。バリアが解除できない以上は作戦の変更を求める他ない!
……彼の困窮と期待に反し、返ってきた言葉は冷酷な物だった。
絵里「それは残念ね。でも作戦の変更はしないわ。既に戦艦は魔術都市の近郊に位置している」
「馬鹿な!防壁の解除ができないのにどうしようと…」
絵里「少しばかり難易度は上がるけれど、こちらには強硬手段もある。あなたが協力しないのであれば切り捨てる。それだけよ」
-
老司令は机を殴りつける!
絢瀬絵里!四騎士だか知らぬが、この高慢な冷血女は一体何を言っているのだ!
状況は伝えた!防壁を解除する権限は既に自分にないと説明しただろうが!!
そんな怒りを見透かしたかのように、絵里は言葉を続ける。
絵里「協力を得られないなら…そうね、あなたと王の密約をそちらの司令室へ送り付けるのも面白いかもね」
「は…!?話が違う!話が…!そんなことになれば私は投獄!下手をすれば死刑だ!!なんと言われようと、動きようがないんだよ!!」
絵里「本当にそうかしら?そちらに真姫が現れたことで日和見を決めた…私にはそうとしか思えない」
その意識がないではない。
どちらに付くべきかは考えた。
だが重ね重ね、防壁の解除はできないのだ!!
-
絵里「確かに、部分解除はできなくなったわね。でも司令の立場なら、都市の動力を瞬間的にシャットダウンさせることは可能でしょう?」
「な……!!」
悪魔の囁きだった。
事実、彼のIDを使えばコントロール室へと立ち入ることは可能。
機械で全自動に管理されているシステムをダウンさせてしまえば、予備電源に切り替わるまでの10秒の間は防壁が消滅する。
ただし、王国軍を引き入れるための部分解除ではない。
10秒の間、全ての防壁が消滅してしまうのだ。
そう、天使の侵入を防ぎ止めているバリアの全てが!!
その結果、何が起きるか。
それがわからないほどに愚昧な老人ではない。
「そ、そんなこと、出来るはずが…!」
絵里「それなら結構よ。街を売ろうとした悪人として憎まれ、蔑まれ、牢獄で惨めに朽ち果てるのね」
「あ、ああ…!!」
まともな選択肢など残されていない。
住民の全てを売っての地位か、投獄と死か。
自業自得、迫られた二択。ここに至って自身を犠牲にできるほど、老司令は高潔な性格をしていない。
-
……通信の先、甲板の上では王国軍の突入部隊が準備を整えている。
既に座標は都市高空へと到達。
戦艦の高度は天使たちよりも遥か高く、光翼の軍勢には勘付かれない位置だ。
絵里を筆頭に、希、海未、凛、そして部下たち。
いつものような大人数ではなく、E-ナンバーズも狩猟部隊も隠密行動が前提の人数だ。
その中には海未の手勢に扮したヒデコ、フミコ、ミカの姿も。
絵里「希、海未、凛。防壁が消えるわ。突入の準備を」
凛「白百合部隊の初陣…腕が鳴るにゃ!海未ちゃん希ちゃん、何人仕留められるか競争しよ!」
希「ええよ凛ちゃん。ふふ、真姫ちゃん、にこっち、英玲っち。三人がいるなんて、余計に昂ぶるやん!」
海未「し、白百合部隊…その名前、正式採用になったのですね」
希「んん?海未ちゃん乗ってなくない?」
凛「海未ちゃん最近テンション低いよー」
海未「そ、そんなことはありませんよぉー!!?」
希「不自然に語尾が上がってない?」
フミコ(う、海未ちゃん海未ちゃん!なにか悪そうなことしないと…!)
-
海未は慌て、目を見開き手をブンブンと振ってみせてから村正をスラリと引き抜く。
月光に翳し…舌を這わせる!
海未「ククク、夜闇に血霧を吹かせてみせましょう…!」
希「出たァ!伝家の宝刀“刀舐め”!いただきました〜!」
凛「ヒュー!小物っぽさが最強にクールにゃー!!」
絵里「………」
海未(うっ、…え、絵里が疑いの目でこちらを見ていませんか?)
ミカ(もうあっち向いたわ。多分気のせい気のせい…)
ヒデコ(ナイスファイト海未ちゃん!)
瞬間、夜空へ遠泣きのような軋みが響き渡る。
それは広大な魔術都市の複雑な動力回路が遮断されていく音で、さながら葬送のサイレンのようで。
老司令が絵里の提案…という名の、実質的な脅迫を飲んだのだ。
賽は投げられた。
数秒とせずに防壁が消え失せ、魔術都市は戦場へと化すだろう。
甲板の全員が呼吸を整え…
絵里≪……降下≫
防壁が砕け散り、そして戦いが幕を開ける!!!
-
…
英玲奈たちの部屋。
広さは十分にあり、穂乃果たち三人も同室に泊まっている。
五つの寝息が静かに寝室を満たしていて…夜闇にサイレンが鳴り響く。
老司令の利己と保身は、10秒間の防壁の消滅を招いた。
穂乃果が彼の悪意を指摘し、英玲奈が警備を強化し…これがなければ、侵入してきたのは絵里らだけだったのだろう。
しかし、10秒の時間は大量の天使たちの侵入を許すのには十分すぎる時間だった。
結果として、英玲奈の判断が最悪を招いたことになる。
けれど結果論、最善を尽くしたに過ぎない。
…
鳴り響くサイレンは、眠る穂乃果や英玲奈たちを数秒と経たずに叩き起こすだろう。
しかし、既に起きている者が一人。
にこ「……ママ」
眠れていない。
にこは今でも母の生存を信じているが、それでも…仇かもしれない相手が空の上にいるのだ。とてもまともには眠れない。
にこはサイレンに状況を知る。
まるで天使の侵入を心待ちにしていたかのように、立ち上がり、素早く装備を着込む。
力は手に入れた。
仇敵を間近に、勝負の時は今。
しかし、にこは暴走はしない!
一人で突っ込むような愚行には出ない!
目覚めながらも状況を掴めずにいる穂乃果たちへ、力強く声を張り上げる!!
にこ「アンタたち!!起きなさい!!」
真姫「に、にこちゃん…?」
穂乃果「これ、何の音!?」
英玲奈「バカな…最高ランクの警報だと!?」
にこ「戦いの時間よ!!!」
-
今日はここまでで
-
うおー気になる!
お疲れ様、次も楽しみにしてるよ
-
乙
個別ルート的なのは無くなったのかな?
-
年明けからありがとう
-
リリホワはリリホワだった
-
乙!
相変わらず英玲奈可愛い!
-
心では泣きながら刀を舐める海未ちゃん想像してワロタw
-
この三分の二レズ妹も堕とす気か!?と思ったけど
真相聞いてない穂乃果からしたら血繋がってないから問題もないのか・・・
-
今日は12時過ぎてからの投下かも
-
まってる
-
都市内にはけたたましく警報が鳴り響き、急ぎで武装を整えた兵士たちが入り込んだ天使の迎撃へと駆けていく。
10秒間の防壁消失は、前線にいた天使たちの侵入を招いていた。不幸中の幸いは全兵が侵入したわけではないことか。
後方で指揮を執っていた熾天使“山田先生”は未だ防壁外に留まっていて、状況は決定的な破綻へは至っていない。
しかし同時、喧騒に紛れて四騎士、そしてヒフミを含む部下たちが魔術都市の上層へと侵入を果たす。
絵里が幾百枚の薄氷で速度を減衰させるためのクッションを形成し、味方の全員が高空落下から一切の傷を負うことなく着地を成功させていた。
ミカ(ひいぃぃっ…死ぬかと思った!)
フミコ(私あんまり高いところは得意じゃないのに…)
海未(何度経験しても慣れませんね、この落下というのは…)
ヒデコ(みんなしっかり。ここからが大事だよ!)
-
都市の警戒の大半は天使に向けられている。とはいえ、礫氷を撒き散らしながら落下突入を果たした絵里たちに誰も気付かないというのは無理な話。
降り立った位置は深夜のハイウェイ。月光が照らす夜陰の中、オレンジの照明が無機質な道を赤く染めている。
緊急の警報に、乗り捨てられた車にバイクがずらりと並んでいる。
その車列は見慣れぬ流線型、未来的なフォルムは性能の高さを窺わせる。
海未たちは一帯を見渡し…
そこへ!近辺にいた都市兵たちが、武器を手にして駆け寄ってくる!
都市の兵士には魔術師が多く配備されている。
効率的に文明化された機械杖を構えて迎撃の構えを取る。が、電速!!
その背後には既に凛が回り込んでいる!!
凛「雑魚は寝とくといいにゃ〜」
以前にも増して鋭さを増した、凛の瞬打四連が夜に煌めく!
その軍服は特製、発電機能のある素材で作られているために問題なく電撃を使うことが可能だ。
弧を描いた雷光が兵士たちの首筋を撫で、連続して精神を断ち切ってみせる。
さらに希の紫罰が敵を捉え、絵里が氷壁に敵を封じ、海未が峰打ちで素早く昏倒させていく。
新たな四騎士が集った力は凄まじく、雑兵などが抗することのできる域ではない。
攻撃一つ放つことができないままに、十数名の敵は完全に沈黙させられてしまった!
が、静寂も束の間。
自動防衛システムが戦闘を検知し、ハイウェイの道路が開いてガードロボット、ガーディアンが顔を覗かせる!
-
絵里「三人、お願いね」
希「海未ちゃん凛ちゃん!ここは白百合部隊の本領発揮や!!」
凛「おっけー!」
海未「了解です!」
魔術機構によって動くガーディアンはつるりと丸みを帯びた外観をしている。
体長は3メートルほど。双手にはマナを光線として撃ち放つブラスターが装着されていて、放たれる光は壁床に、そして躱し損ねたE-ナンバーズの一体に易々と穴を穿つ威力!
凛「遅いよっ!」
機械に対しても凛の最速行動は有効。目にも留まらぬ速度で巨体の背後へと回り込んでいる。
手へと装備されているのはオトノキ村近郊の洞窟で手に入れた“鋼の指”
そして雷と共に放たれる貫手!!
凛「これなら効くはずだよねっ!!!」
衝撃を逸らす丸みのあるボディ、さらに周囲には攻撃に反発する力場も張られている。
生半可な攻撃は弾く性能を有しているが、しかし!雷速の一点集中打はそれを見事に貫通してみせた!
雷光が迸る!!!
ただ物理的に貫くだけではない。指先を起点に、内部へと電撃を拡散させる!!
電撃が堅牢な防御を誇るガーディアンの内側、その反力場を発生させる機構を破壊し、それと同時に希が詠唱を始めている。
-
希「祝筵、聖櫃、菫の刑架。無窮なるは教理、不可視の鬼手にて裁かれよ。『鬼吼葬(エンケルヘイル)』や!!」
唱えた希の手から何かが出るわけでもなく、空間や大気に変化が起きるわけでもなく、ただシンプルに防衛ロボットの胸部装甲へと深く深く、四指の爪痕が刻み込まれる!!
コイズミの里で猛威を奮った一撃。実体はないが、地影に攻撃の軌道は映し出されている。
が、ガーディアンがそんなことを知るはずもない。剥がされた装甲板、露出した内部機構へと向けて部下たちの銃口が一斉に火を噴く!!
フミコもミカも、ヒデコも若干不慣れながらもショットガンを乱射していて、その間隙を縫うように海未が敵へと駆け寄っていく!
海未「お膳立てしてもらったような状況ですが…決めます!」
洗脳を受けていた間に絵里や希らとの戦闘訓練を繰り返し、海未の戦闘スキルは飛躍的な上昇を見せている。
ガーディアンは装甲を剥がれはしたが未だ健在、両腕のブラスターから海未めがけて光線を放つ!!
タン、と軽やかに跳ねて回避。
身を屈めて回避、半身に、跳躍、刀身で弾き、体を低くして疾走!
海未(オトノキ村での敗北で理解しました。私は今まで『転移』に頼りすぎていた。必要なのは自身の回避性能を高めること。そして…)
-
ガーディアンの砲身から光線が乱射される。
反応して飛翔!
ジュッ!と足元をマナの収束体が焼き穿つ音を聞きながら、海未の体はさながらムーンサルトのように宙を舞っている。
軍服にぴたりと沿うしなやかな四肢が月光に伸ばされ、手にした村正の刀身が怪しく輝き、その様はまるで一枚の絵画。
しかし空中で回避軌道は取れない!そこを狙い、ガーディアンは肩部からミサイルの発射口を展開。斉射!!!
凛「海未ちゃん危ない!!」
海未「いえ、心配ご無用」
足を空に、頭を地へと向けた姿勢のままに、海未は素早く手へと水の矢を顕現させる。
そして放つ!
狙いはガーディアン…ではなく、その足元だ。
ドパン!と矢が弾け、水が迸り、ミサイルは対象を見失って空を彷徨う。
希「おー!上手い!」
海未「使うべきは、決定機を作り出すタイミング」
放った水を足掛かりに、『転移』を発動させていた!
ブラスターにミサイル。自力での回避を見せた間に敵の攻撃手段は使わせている。
生み出されたインターバル、そこを見計らって懐へと飛び込み…!
キン、と納刀。
海未「眠りなさい」
爆散!!!
-
燃料パイプや重要な電気系統を一刀の下に断つ斬撃だった。
動力源の高濃縮マナが行き場を失い、内圧が高まり派手に爆発炎上!!!
もちろん海未は転移で後方へと退避している。
斬ったのは機械で葛藤もなく、表情は涼しげでかつ、若干得意げに鼻を膨らませている。
希「ヒュー!流石やねぇ海未ちゃん!!!」
凛「決め方のクサさ!やっぱり海未ちゃんにゃー!!」
海未「フ…その気になればこんなものです」
ミカ(闇が抜けてもちょっと厨二っぽさが残ってるわね…)
フミコ(元々そういうの好きだしね…)
コイズミの里での闇っぷりを見ているフミコとミカが苦笑いを浮かべる中、ヒデコはマスク越しに絵里の様子を窺っている。
絵里の表情は何かを考慮しているようで、その様子に警戒を高め…
絵里「さて、二手に別れましょうか」
海未「…!ええ、そうですね」
-
隊の分散、ここからが海未の狙っていた展開だ。
突入後に二手に別れる作戦は事前に通達されていた通り。そして、この組み分けには一つのルールが存在している。
海未(槍使いである絵里と、剣士である私。壁役のできる完全な前衛は私たち二人で、必然的に絵里とは別行動になります)
凛と行動ならすぐさま凛のチョーカーを破壊して洗脳を解除。五人で希へと速攻を仕掛ける。
希であっても順序が逆になるが、やるべきことは変わらない。
その作戦は海未の読みに基づいていて、ヒデコらもそこに異論はなし。
ヒデコ(一般的な戦術セオリーだね。海未ちゃんの読みはごく妥当…だけど)
聖騎士として研ぎ澄まされたヒデコの感覚は不吉を読み取る。
絵里の視線は希、凛、海未と眺め…
そして十人以上いる狩猟部隊の中から、マスクで顔を隠しているはずのヒデコ、フミコ、ミカだけを見据える。
その瞳には敵意!
-
絵里「希、凛と二人で行動してくれる?」
海未「な…」
凛「え、凛と希ちゃん?」
希「別にいいけど、エリチは海未ちゃんと動くん?」
絵里「ええ。お願いね」
海未「………」
ヒデコ(これは、まずい)
絵里、そして海未の様子がおかしいことを察し、希と凛は不安げな顔を浮かべる。
けれど、留まっている間はない。
狙うべきは魔術都市の動力の源にして、超高密度のエネルギー体であるメインコア。
サイズとしては一人で持ち運べる程度で、それを奪い取ってこいというのが西木野王からの厳命だ。
希「エリチ…海未ちゃん…」
凛「先、行ってるからね?」
絵里「ええ、気を付けてね」
海未「……すぐに後を追いますので」
-
希と凛が去っていく。
寄り付く敵兵を薙ぎ倒しつつ、街の深層へと向かっていく。
絵里の視線による牽制は鋭く、海未は目論見を看破されていることを明確に悟る。
絵里「海未、それにヒデコと、フミコさんにミカさんだったかしら」
フミコ「ば、バレてる…!」
四人に緊張が走る。
海未の洗脳が解かれていることだけでなく、ヒデコらの存在まで看破されてしまっている。
もはやここでの絵里との交戦は不可避!
海未は闇のスキルである暗黒空間から武具を引き出し、ヒデコへと投げる。
泥塑の斧に炎波の盾、輝星の鎧とヒデコの愛用武具だ。
慣れぬ軍服を脱ぎ捨て、手早くそれを身につける。
その間も絵里が仕掛けてくる様子はなく、静かに佇んでいるのみ。
警戒に身構えつつ、間を繋ぐように海未が問いを。
海未「……私たちを倒すのなら、希と凛と三人で仕掛けるのが早かったのでは?」
絵里「任務もこなさなくちゃいけないもの。相手は四人、私だけで十分よ」
-
絵里は自身の部下、狩猟部隊や機械兵たちも希と凛と共に行かせている。
場に残っているのは絵里と海未ら四人だけ。純粋な4対1の構図だ。
絵里の聖槍アルタキエラが刃を光らせ…
海未「ふふっ…」
絵里「あら、何かおかしかったかしら」
海未「なんだか安心しましたよ、絵里」
この状況下、穏やかに笑う海未に疑問を抱くのは絵里だけでない。ヒデコら三人も海未の真意を測りかねている。
注がれる四の視線。そんな中で、海未は親しみを込めた目を絵里へと向けた。
海未「私の意図がわかっていたなら要塞の時点で捕らえればよかったのです。
龍の意思が、貴女にどれほどの洗脳を施しているのかはわかりませんが…
凛と、そして希。二人が助け出されることにどこかで期待を抱いているのですね」
絵里「……」
絵里は答えない。
海未の指摘を前に、ほんのわずかにかつての絵里を思わせる理知的な優しさを浮かべてみせて、そして槍を眼前に。
絵里「おしゃべりの暇はないわ、お互いにね」
-
絵里は刃へと掌をあてがい、ゆっくりと撫でる。
それは空間全域を支配する得意魔術の始動姿勢!
律儀にそれを待つ道理はなし!
ヒデコ「行くよ!!」
フミコとミカは連携して散弾を雨霰と放つ。
海未は刀を振り抜き、遠距離斬撃である『血霧の太刀』を。
ヒデコは斧を地に叩き付けて『ランドスパイク』を発動させる!
が、絵里の対応は見事にして華麗。
怜悧な目線だけで『玻璃の神霜』、氷華の盾を眼前へと展開して散弾を防御。
たん。と軽やかな一歩で高々と跳躍!
白雪が舞うように質感のない動きでヒデコの足元への一撃を回避。
続き、海未が振り抜いた一閃は剣斬軌道に沿って相手の体内の水分を操作、離れた位置から斬り裂いたような手傷を負わせてみせる一撃だ。
しかし絵里は指の先から髪の一本に至るまで、全身にたおやかさを纏わせたように、空中で体をくるりと回してみせた。
それはほんの一回転にすぎない。
けれど言葉に尽くせぬ美しさと力強さが表れていて、優美な踊り子を思わせる動きで、海未たちは一瞬、戦いを忘れて目を奪われ…
絵里『聖零の世界(ラグナレイ)』
-
青く!!空間支配の術式が発動する!!
瞬時に体を捻り、海未が狙った斬撃部位を視界から隠すことで明確なイメージを霧散させたのだ。
マナ操作の礎はイメージ力。狙った箇所を隠されれば高度な技術を発動させることは難しい!
夜闇と橙の照明灯に照らされていたハイウェイが、一挙に青々と輝く氷の世界へと姿を変える!
それは絵里の力が最大限に高まることを意味していて、海未は警戒に叫ぶ!!
海未「気を付けて!!絵里は時間停止が使えま……!?」
絵里「その通りよ、海未」
ヒデコ「ッッ!?海未ちゃん!!」
絵里の槍が海未の腹部を刺し貫いている!!
誰も見えなかった、反応するどころではない。その瞬間が見事に消し飛んでいるのだ。
海未は口から血を吐き、絵里を睨み付ける。
海未「なんと…タチの悪い…!」
絵里「海未、あなたのことは好きよ。けれど、今はまともに勝負してあげる理由がないの」
ミカ「こ、氷が…!」
-
海未の腹を貫通した槍から、見る間に氷が広がり海未の全身を包み込まんとする。
コイズミの里でアスモデウスなどを捕らえた時と同じく、冷凍により生け捕ってしまおうというのだ。
だが、大人しく捕まるほどに海未は軟弱ではない!
海未『……っ、転、移!!』
フミコ「回復は任せて!『ウインドヒール!!』」
絵里のマナは海未と同じく青。
空間を凍てつく青で満たす『聖零の世界』の発動下であれば、海未も環境に気兼ねなく転移を使うことができるのだ。
転移で槍と凍結から逃げると同時、サポートの術を心得ているフミコが即座に治癒術を発動する!
すかさずミカが『プラズマボム』を撃つ!!
触媒から放たれた特大の雷球は、ハイウェイを抉り飛ばしながら絵里へと迫っていく。
絵里「悪くない技ね。けど、仲間との連携が前提でしょう?」
一閃!!
低速で迫る、視界を埋めるほどの大雷球は聖槍の一振りで塵と消えてしまう。
海未は負傷、フミコは回復、ミカは大技の直後。
散った雷に霞む視界の先、次はヒデコが近距離戦か、もしくはランドスパイクを仕掛けてくるかと身構え…
しかしいずれも否!!
迫るのは大エンジンの駆動音だ!!
-
ヒデコ「絵里ちゃんには悪いけど…轢くッッ!!」
絵里「な、っ…!?」
とっさに飛び退く!辛うじて回避に成功だ。
絵里がいた場所を車輪が踏み抜き、そしてそのまま巨大な車体がハイウェイを遠方へと疾走していく。
絵里「トラック…?」
そう、絵里を掠めて走り去って行ったのは50tの積載量を誇るトラックだ!
開幕で海未が重傷を負ったこの状況下、ヒデコが即座に下した判断は海未が癒えるまでの逃走戦だった。
ヒデコは絵里と同じ聖騎士とはいえ、まだ“成り立て”だ。
さらに龍の力も足されていて、フミコとミカの戦力をプラスしても絵里を相手に遅れを取る可能性は高い。
ヒデコ(勝つには海未ちゃんがいることが大前提…!)
-
ヒデコ、フミコ、ミカは言葉を交わさずとも意思を疎通させてみせる。
まずミカが絵里へ、目眩しのプラズマボムを!
その隙に運転スキルのあるヒデコがハイウェイに停止していたトラックに目を付け、フミコが海未を抱え上げて運び込む。
絵里の視界がプラズマに覆われている隙にすかさずミカも乗り込み、そして疾走!!
幸い運転席が前と後ろに広めに取られているトラックで、後部に海未を寝かせてフミコが治療を施す!
海未「す、すみません…私のせいで…」
ヒデコ「気にしない気にしない。時間停止なんて反則だよ」
ミカ「連続では使えないのよね?今のうちに距離を開けちゃおう!」
フミコ「ごめん、治療にはもう少し時間が掛かりそう!」
-
ヒデコは順調にトラックを走らせている。
西の都の角ばった車とは雰囲気が異なる流線型のフォルムだが、操作性にさほど変わりはない。
逃げつつも、車を向かわせているのは希たちが立ち去った方角でもある。
ヒデコ「こっちに移動しておけば、後から追いつくこともでき……」
ミカ「どうしたの?ヒデコ」
ヒデコの顔には緊張が走っている。
バックミラーに映し出されているのは一つ、急速に迫るのは蒼白の光。
モンスターめいたエンジン音を轟かせながら、ハイウェイを滑るように駆け抜けてくる一台のマシン!!
ヒデコ「絵里ちゃんが追ってきてる!!真っ白なバイクで!!」
絵里「意外と思われるけれど、好きなのよ。こういうの!」
アクセルが強く捻られ、バロロロと重い音と共に一層の加速!加速!!加速!!!
その車体は青白に鋭く麗しく、注視すれば絵里の氷によって補強、チューンアップが施されている!
その本体は転がっていた適当なバイクに過ぎない。絵里はどんなバイクであれ、自身の魔術で愛車へと変貌させることが可能なのだ!
一般に濃縮マナ燃料により車体は動かされるが、絵里のバイクは絵里自身のマナ、つまりは耀龍ランスロットの膨大なマナによって動かされている!
故に得られる速度は爆速!!!
絵里「さあ、恐怖のカーチェイスの時間よ…!」
-
ターミネーターだな
-
ミカが助手席から身を乗り出し、ショットガンで絵里を狙い撃つ!
ダン!ダン!と、走行中でも正確な発砲をしてみせるのは狩猟部隊で鍛え上げられた技術だ!
だが、巧みに躱される。
そして絵里からは氷柱の砲弾が撃ち返されてくる!
ミカ「きゃあっ!?あ、危なかった!」
フミコ「気を付けて!ミカ!」
まだ若干の距離がある。
しかしこれ以上詰められれば、タイヤを破壊されて走行を止められてしまう!
さらなる加速が必要だ。けれど、今以上の加速で放棄された車の数々を回避するには尋常でないテクニックが必要となる。
ヒデコは、すうっ……はあぁ……と呼吸を整え、呟く。
ヒデコ『大魔誅滅…!!』
本来は戦闘用、自身の身体能力の全てを限定的、飛躍的に高めるスキル!
それを運転のために発動させ、集中と反射神経を高め、さらにアクセルを踏みしめる!!
少しでも時間稼ぎを。全力を注ぐべきはここ。
絵里さえ倒せればそれでいいのだ。そう、絵里さえ倒せれば。
凛と希を優先して救い、絵里へと当たるプランはあくまで最善系。
戦術眼に優れたヒデコを含めて策を練った以上、当然ながら次善策も用意されている!
ヒデコ(二人とも、頼んだよ!)
-
だめだ、自転車に棒さして転ぶ4コマが浮かんでしまった
-
どうしてバイクと合体しないんだ…?
-
一方、先行した希と凛。
近接武器を持って受け役に回れる人材こそいないが、近接戦自体は凛だけでなく希も得意。
数こそある程度は限られているが、『斥』の符もある。
続々と現れる都市の警備兵を蹴散らし、部下たちはやられていくが二人は無傷。
やはり格が違う。そう思わせる見事な戦いぶりで、非常時により停止したエレベーターダクトを通り抜けて都市の中心部へと到達していた。
希「んー、見慣れん街でなかなか面白いなぁ」
凛「ここはなんだろ?キラキラしたお店がいっぱいあるよ」
希「ショッピングモールやないかな?」
凛「なるほどー」
緊張感のない会話は相変わらず。
しかし、二人の背後には既に蹴散らされた警備システムに兵が累々と積み重ねられている。
ここを抜けてあと10分足らずで中枢部に到達する。そこからはメインコアまで間近だ。
メインコアを奪えば都市の全機能が停止する。
そうなれば防壁は完全に解除され、あの天使たちの軍勢が完全に街へと侵入を果たす…
今でも外周部では激戦が繰り広げられている。
その戦線が無力な一般住民のいる都市圏へと届けば、どうなるかは火を見るよりも明らか。
しかし、今の希と凛にそれを気にするほどの慈悲はない。
希「ク、クッヒヒ…あと少しでこの街もおしまい。楽しみやねぇ…!」
凛「全滅タイムにゃー」
凛はともかく、希の侵食は一刻の猶予もない段階へと踏み入れている。
誰かが救わなければ、体内の闇の眷属が姿を現す時はもうすぐそこまで…
凛「!?希ちゃん、バリア!!」
希『式符・斥!!』
-
今のエリチカはかしこさ255やな
-
まるで機関砲、高空から降り注いだのは氷の礫。
希の斥力障壁はそれをしっかりと防ぎ、しかしその攻撃が挨拶に過ぎないことは互いに理解している。
舞うのは氷鳥フレスベルグ。
コイズミの里の召喚獣であり、そのマスターは言うまでもなし。
すたた、と。希と凛の目の前に二人が降り立った。
希「へえ、優木あんじゅ。ウチの前任やん」
あんじゅ「ええ。あなたとの面識は薄いけれど…同じ呪術師のよしみ。助けに来てあげたわ?」
凛「かよちん!無事だったんだね!会いたかったよ!凛はずっと、ずっとかよちんに会いたかった!」
花陽「凛ちゃん…!」
凛「かよちん…かよちん…!この世界は危ないよ。もうどこにも行っちゃダメ。凛が、凛がかよちんを捕まえて、一生一緒に守ってあげるから。
かよちんは凛のモノだよ。かよちんは他の誰とも喋っちゃダメ。かよちんは凛だけ見てて。かよちんかよちんかよちんかよちんかよちんかよちんかよちん…!!!!!」
希「お、おお…ここに来て凛ちゃんの闇がいい感じに…」
あんじゅ「ねえ、仲間なんだから引かないであげなさいよ」
花陽「凛ちゃん…希ちゃんも。絶対、私たちが助けてみせるから!!」
凛「かよちん!!!!」
極大の雷光!!!!
凛ちゃんサンダーが解き放たれると同時、花陽とあんじゅの戦闘が幕を開ける!!
-
今日はここまでで
-
ちんかよ!
乙!
-
りんぱないいっすね〜^^
かよちんがヤンデレなのが世間一般においてはメジャーな風潮があるけど
凛ちゃんがヤンデレなのがgood
-
乙!
巨大トラックが出てきた時は計らずもスタゲ爆発四散シーンが蘇ってしまったわ
残存戦力は対天使に、かな?
-
かよちんが闇落ちしたら強制契約連発してくるから凛ちゃんキラーだよな
-
>>82
このかよちんなら闇落ちしなくても隙があればしそうな気がするw
-
おつおつ!
敵味方続々集結してるな
-
希って賢者兼じゅじゅちゅしなんか
-
エリチカに凍らされた高速を大型トラックで爆走できる時点で凄まじい運転技術だなヒデコは
-
騎乗2以上とかホンマにセイバーやないか!
-
>>85
闇落ちしてから本来向いてる呪術師になってたはず
-
病み凛ちゃんたまらん
-
カーチェイスまでやってくれるとは技が多彩だなあ
-
花陽たちが戦闘へ突入したのと同刻、都市外周部。
障壁が失われた間に内部へと入り込んだ天使は数百を数える。
その一兵一兵が人間とは比較にならない高い戦闘力を誇っていて、かつ矢や弾丸の類は光の翼が弾き落としてしまう。
求められるのはそれを突破できる高火力か、もしくは近接での戦い。
しかし近寄れば当然ながら攻撃を受ける危険が増し、天使との戦いで隙を見せれば心を砕かれる。
そうなってしまえば物理的な負傷とは異なり治癒魔術での復帰も望めず、都市の軍勢は徐々に戦力を削られていく劣勢の中にあった。
英玲奈「くそっ、理解ってはいたが…厳しいな!」
既に状況は総力戦。英玲奈は指揮官ながらに最前線に立ち、獅子奮迅の戦ぶりを見せている!
-
前後左右から白金の鎧を纏った天使たちが迫る。
輝ける剣槍に弓、それぞれに異なる武器は対処を誤れば必死。
この場面においてモノを言うのはクールな思考と、絶対的な身体能力!!
鼻、耳、眼差し。皮膚に、舌先で味わうのはひりついた戦場の空気。
長期を経て完全に乗りこなすに至った人狼の体、五感、超感覚を隅々にまで高める!
「グ、ルル…!」と野生じみた唸りを漏らし、低く低く、地べたへと這いつくばる。
右手には愛剣たるエクセリオン。普段とは異なる逆手持ちだ。
振って斬るのではなく、突き出して断つ!より感覚的に、より野生的に。
モデル並みの美麗を誇るスラリと長い脚、そこへ力が漲り集中し、筋繊維が強靭に膨れ上がる!鋼鉄の柱を思わせる強度へと変貌を遂げる!
そして…解放!!!
英玲奈「ぅぐるァッッ!!!!」
その咆哮は人語に非ず!
-
今夜は満月だ。人狼の因子が本来の性質、激烈なまでの破壊衝動で英玲奈の思考を染め…
しかし飲まれない。
雪穂や亜里沙、それに真姫も見ている。そんな場所で醜態を晒せるものか。
瞳を血に滾らせ、人間と怪物のギリギリの境界へと身を浸した英玲奈は周囲の天使たちを感覚に捉える!
英玲奈(5、6…7体!)
めしり、と地面が踏み砕かれて瞬斬!!!
駆けて斬っては方向を変え、目にも留まらぬ速度でたちまちのうちに四体を地へと伏せる。
視線鋭く次の獲物を定め、そこへ槍の一撃が叩き伏せられる!!
「死ねっ!!」
英玲奈「貴様がなッ!!!!」
刃を沿わせて手首を返し、穂先を巻き取り柄を撫でるように擦り上げる!!
天使の片腕が撥ね飛び、カウンターの勢いそのままに首を落とし、「次!!!」と吠える!
-
いつもよりも荒々しい口調は人狼化の影響が色濃く出ているためだろう。
四方から飛来した矢を躱す!
跳躍からの錐揉み回転で避け、宙空で体勢を整えないままに重砲を作動させて砲火!!!
アクロバティックに放たれた砲撃が数体の敵を翼ごと破って墜としてみせた。
圧倒的な戦いぶり!
その様子は押され気味の防衛戦の中、人々の心を奮い立たせる。
軍勢の士気を高めているのは英玲奈だけではない。
真姫「やああああっっ!!!」
フランベルジェの紅光が閃く!
その動きに英玲奈のような人外のキレはない。
けれど母より正式な継承を受けた触媒剣は威力を大きく増していて、斬撃の炎が拡散!!
空から襲ってくる敵を2、3と打ち倒す。
そんな真姫へ敵の魔術、白く輝く剣が雨のように降り注ぐ。
その数は無尽!
勇ましく剣を振るっていた真姫はすっかり青ざめ、バタバタと慌ただしく逃げ回る!
真姫「ゔぇぇえ!!?」
「真姫様を守れ!!!」
-
兵士たちが一斉に集い、真姫を庇うように盾を構えて防御魔術を張り巡らせる!
真姫の戦闘力は英玲奈のような歴戦の勇士の域には達していない。
だが王国の姫君が前線で剣を振るっているという事実、それ自体が戦意を高める旗印としての意味を持っている!
自身の天性のカリスマが人々の気を高めているとは思いもせず、真姫は自分が多くの人に庇われたことに驚いた顔を浮かべている。
さらに民兵の中の一人、真姫を抱きとめるように庇ってみせた年上の女性の顔に見惚れ…
「ご無事でよかったです、真姫様!」
真姫「あ、ありがとう…」チョロッ
毛先をくるくるといじりつつ、目を伏せて頬を染めている。
そんな真姫へと睨みを利かせるのはにこだ!
にこ「なーにテレテレしてんのよ!!」
真姫「し、してない!」
にこ「フン、顔が真っ赤じゃない」
真姫「にこちゃんには関係ないでしょ。こっちばっかり見てないで敵に気を付けなさい!」
にこ「見てないわよ!生意気ね!」
真姫「なによ!」
-
戦場の最中にあっても二人はいつもの調子、丁々発止と言い合いを繰り広げる。
一つ一つの台詞に思考をそれほど伴わせていない、条件反射的に口から飛び出す言葉の応酬だ。
言い合いの内容はともかく、傍目には口喧嘩に気を取られている二人は無防備にも見える。
しかし問題なし!
にこは新たに作り上げた装備を全面的に活かし、猛然の奮闘を見せている!
敵の天使たちの中、いかにも天使然と人間を見下した思考の男がいる。
白金に輝けるシュガーローフ型の兜、その隙間から垣間見える瞳には温度がない。
熾天使直属の部下、前線における指揮官である彼は、戦場を泰然と睥睨していた。
下等、下等、下等。
光翼を前に効力を成さない豆鉄砲を撃ち、程度の低い魔術で無駄に抗おうとしてみせる。
ああ、なんと醜い。
彼の中における美意識の最高峰は、熾天使にして彼らの長たる理事長にある。
輝ける三対六枚の翼!
あれこそが無駄を廃した理性美の極み!
対して、彼の視線の先で戦いを繰り広げている小柄な少女などは彼の美意識の対極に位置しているとさえ言える。
-
にこ「どりゃあああっ!!落ちなさい!!!」
攻撃の隙間を転がり、必死の形相で地を這い回りつつオートマチックの二丁拳銃を発砲!!
光翼に弾丸の大半を阻まれつつも、数を撃てば当たるの精神で数発を当てているようだ。
そして回避!放たれた魔術を前方へとつんのめり、ゴロゴロゴロ!と猛然と床に前転を決めて逃れてみせる。
爆風に揺れる黒のツインテール。にこの姿に、指揮官である天使は一匹の虫を思い浮かべ…
「排除する」
彼基準における醜い物に存在価値はない。
直々に浄化してやろうと、双手に巨大な戦輪を一つずつ顕現させる!
そして体を回転させると同時、伸ばした腕から連続して二輪のチャクラムを投げ放つ!!
にこ「ちょ、なによそれ!!?」
「消えろ」
-
水平に放たれた二つの戦輪は左右へと膨らむ軌道を見せ、そこからにこへと目掛けて急速に内へと切れ込んでくる。
神聖に輝く軌道、明確な滅却の意思が込められているのが見る目に明らかだ。
にこは判断も素早くバックステップを踏み、その軌道上から逃れる。が、駄目!
にこ「追ってくるんだけどおぉぉ!!?」
仮にも天使の指揮官級、彼が使う武器が普通のチャクラムであるはずがない。
一旦捉えれば仕留めるまで追い続ける脅威の兵器であり、人の足で逃れられるはずもなし。
天使はニヤリと笑みを浮かべ、しかし次の瞬間、驚かされることとなる。
なんだあれは!!
黒ツインテの女が上着に羽織った戦闘用ジャケットを脱ぎ捨て、対衝撃用ボディスーツ姿を晒すと同時、一瞬にして高空へと飛び上がったのだ。
凄まじいジャンプ?翼が生えた?
否、にこの背には極限まで小型化されたジェットパックが装着されている!!
背面に噴き出る炎!アクロバティックに小柄なツインテールが宙を舞う!
-
実戦投入は初なのか、どこかぎこちない挙動のままにオートマチックの双銃が激烈に火を噴く!!
ドガガガガガガガガガガガカ!!!!!
なんという連射!
既ににこの速射能力は常人の域を遥か置き去りにしていて、空中で側転を決めながらの
ミニガンめいた弾丸の嵐!
狙うのはにこを追って空へと軌道を変じたチャクラムだ。
数を撃てば当たる!!片方の破壊に成功!!
にこはジェットパックの噴射を止め、地面へ降り立つ。
チャクラムの投擲主である天使を見据える!
にこ「アンタ、リーダー級ね!その首もらうわよっ!!」
「舐めるな下等生物!!」
にこの背後に残る一つの戦輪が迫る!
狂乱的な聖光を放ちながら激しく回転するディスク。
それを視認することもなく、にこは再びジェットパックをほんの一瞬だけ噴射!
華麗なるバック転でそれを躱すと同時、盛大な連射で二つ目のチャクラムをも破壊してみせた!!!
-
なかなか。
天使の観察眼は目の前のツインテール女の評価を改めつつあった。
美意識に叶わない点はともかくとして、動きは鋭い。
だが、武器はあくまで銃。天使に対しては相性の悪い武器であり、ならば数で圧せば良いだけの事。
前線指揮官の男が指を弾き鳴らすと同時、にこへと数人の天使が一斉に殺到する。
その拳銃では捌き切れまい。よしんば耐えてみせたとして、私が手ずから終わらせてやるだけのこと。
天使はその両腕へ、今度は二本の光剣を現してにこへと止めを刺さんと狙い澄ます!
だが、にこの口元には不適な笑み!
にこ「よっし、釣れたわね!!」
攻撃が殺到!!
複数名が純粋な圧力を与える『聖力』で押さえつけ、そこを槍などの武器で仕留めるという天使勢の確殺パターンだ。間違いなく『聖力』が捉えていた。
はずなのに、「にごぉぉっ!!」と濁音まじりの悲鳴と共ににこは包囲を抜け出している!
にこ「にこにーが可愛すぎるからってぇ〜!そんなに押しかけて来ちゃ、どぅめどぅめどぅめ〜!……ふう、危なっ」
そして集った天使たちの足元に、コロコロと一つの黒い塊が。
大爆発!!!!
-
「何だ!?」
にこ「デトネーター!使い切りで万の値が張る超高級爆弾よ。感謝しなさい!」
どこにそんな代物を…
と、指揮官の天使に二度目の驚きが。
ごく目立たないように見事に収納しているが、全身のあちらこちらへと武器が隠されている!
指先が下を向く形、にこの右手が天使へと向けられる。
注視すれば、掌側の手首には目立たぬように黒塗りされた謎の管。
にこ『ラブにこ火炎放射ァァ!!!!』
「なんだと!!?」
炎!!!
天使へ向かって糸を引くように、収束された炎が噴射される。
悠然と戦況を眺めていた指揮官は、ここで初めて回避行動を余儀なくされる!
-
慌てて避けるその後を火炎が追いかけ、その熱が通り過ぎた後の床を赤くドロドロに溶かしている。
そんな炎を手首から噴射して火傷をしないのだろうか?
そこは抜かりなし。戦闘前に右手へと、耐火ジェルをたっぷりと塗り付けてあるのだ!
追いつつ、左手で腰の装置を叩く。
すると両腰に小型の発射口が開き、そこから小型のミサイルが二発!!
炸裂!炸裂!
爆風によろめいた天使は、人間を相手に初めての脅威を覚える。
彼の目には逃走からの一転攻勢、続々と多様な攻撃を仕掛けてくるにこが生きた武器庫の如く見え始めている。
だが、びっくり箱のようなものだ。ネタが多く驚かされるが、結局のところ単なる人間。一撃で仕留められる小物!
回避から転じてにこへと攻撃を仕掛けようと向き直り、その面前!!
にこ「どっせええええい!!!!」
「なぜ生身で向かって…!うぐおおおっっ!!!?」
-
にこは再びジェット噴射を作動させていた!
ただし上へではない。前へだ!!
跳躍をトリガーに、低空を滑るように高速移動!
天使が防から攻へと移る際に見せた一瞬の隙へ、さながら隼のような低空飛びヒザ蹴りを叩きこんで見せたのだ!!!
「うぐおああああっっ!!!その噴射を止めろ!!!」
にこ「止めるわけないでしょうがアホ!!!」
にこの膝には対衝撃プロテクターが仕込まれていて、直撃の瞬間に硬化して天使のアバラを砕き内臓を叩き潰している。
さらに両手に握られているのは再び二丁拳銃!距離感は今にもキスできてしまいそうなほど!!
にこ「この距離なら避けようもないでしょうが!!『ラブにこショット』!!!」
-
何発もの銃弾が天使の腹部を突き破る!
そこでにこは重心を傾け、ジェットパックを切り、後方へと鮮やかに回転着地を決めてみせる。
天使は勢いを殺せぬままに、硬質な壁面へと盛大に叩き付けられた!!
惨劇!!
人間を見下してきた彼はボロクズの死体と化し、その魂は天へと送還。これでは指揮を執ることはもはや叶わない!
それを見届け、真姫が声を上げる!!
真姫「みんな頑張りなさい!ここが踏ん張りどころよ!」
オオ!と鬨の声が上がる。
王女の声は高らかに響き渡り、敵の指揮官の撃破が一同へと知れ渡る!!
無機質な天使たちに若干の動揺が走り、英玲奈はそこを見逃さず、一斉攻撃の指示を出す!!
-
雪穂と亜里沙は互いをカバーしつつ、無理をせずに堅実に!
少しずつ、少しずつ、相手の数を減らしていく。
そして二人には敵を減らすよりも大切な仕事があった。
穂乃果「二人ともありがとう。もういいよ!」
雪穂「行けっ!お姉ちゃん!」
亜里沙「お願いしますっ!!」
大魔術の準備をしていた穂乃果を守る。それが二人の役目だったのだ。
カン…と杖が打ち鳴らされ、そして詠唱。
穂乃果「秩序と神祗、混濁と終焉。焔の眼に歪曲を正せ」
敵味方の把握に時間を要していた。
桜龍モルドレッドとの戦いで会得した大魔術。
母の『焔』とも、ツバサの『亜空灼火法』とも違う、穂乃果自身が編み出したオリジナルの大魔術!!
穂乃果『陽の紅焔(プロミネンス)!!!』
-
瞬間、夜空までが炎明かりに照らされ赤く染まる。
穂乃果を中心に、静かに無音で、放射状に拡散していく炎環。
超高温、穂乃果が敵と認識した者を炭も残さず灰塵と化してみせる太陽の炎!
眩い光に味方は目を覆い、敵は炭化して蒸発。
百もの天使を消し飛ばし、残ったのは深々と降り積もる灰のみ!!
雪穂「す、ごっ…!?」
ドッと歓声が上がる!!!
未だ外部に敵の大半は残されている。戦場を抜け、さらに街の内部へと入り込んでいった天使もいる。対応しなければならない。
だが、苦境にあった戦場を一瞬で勝利へと導いた賢者、高坂穂乃果の名が戦場へと轟き渡る!!!
雪穂と亜里沙は瞳を尊敬に染め、にこは苦笑い。
にこ「目立つ奴ね…ホント」
真姫「……ちゃんと見てたわよ。にこちゃんの頑張りも」
-
そんな中、英玲奈は一人でかすかな不安を胸に宿していた。
英玲奈(驚くほどの魔力…これが穂乃果の力。敵だけを焼き払い、味方は炎に巻かれながらも熱さを感じず。
だが、もし…龍皇の魂が、穂乃果が人間を敵と認識してしまったら、その時は…)
ふと、顔を上げる。
人々に囲まれながら、英玲奈へとサムズアップを向けてくる穂乃果。その表情は満面の笑顔だ。
杞憂だろう。思いを振り払ったところで、司令部からの通達が入る。
英玲奈「天使とは別の侵入者がメインコアへと向かっているだと?」
捉えられた映像を目に、穂乃果たちはそれぞれに驚きを。
映像にはっきりと残されているのは都市部へと侵入し、派手に破壊活動を行った希と凛の姿だ。
穂乃果たちはそれぞれに顔を見合わせる。
メインコアを奪われれば障壁が消失する。そうなれば致命的だ…!
-
真姫「ここはとりあえず大丈夫そう。行きましょう!」
英玲奈「ああ。止めてやらなければ」
にこ「希のアホ!洗脳なんかされてんじゃないわよ!引っ叩いて正気に戻してやるわ!!」
亜里沙「それだけじゃない…お姉ちゃん!お姉ちゃんのマナを感じる!」
英玲奈「絵里か。確かに、この二人がいるなら来ているはずだな。海未もいるんだろうか」
真姫「考えても仕方ないわ。どっちにしろメインコアに辿り着けば守れるはずよ」
雪穂「……よし、私と亜里沙は絵里さんのマナを辿ろう!」
亜里沙「うんっ…!」
五人それぞれのやり取りを、穂乃果は黙して聞いている。
仲間たちの襲撃となれば真っ先に反応しそうなものだが…
静かに集中を高め、そして口を開く。
-
穂乃果「私は一人で行くよ」
雪穂「えっ…?」
英玲奈「……何か感じるのか」
穂乃果「うん、もう一人…強い悪意を感じるんだ。行かなきゃいけない!」
その悪意の源は都市の中心、聳え立つ中央管制塔の頂点へと降り立った。
コウモリめいた鋭い黒翼は四枚。支倉かさねだ。
狂気と執着に染まった瞳は目下を見降ろしていて、目的も意思もなく、ただ高坂穂乃果を呼び出すためだけにメインコアへと至ろうとしている。
いや、目的はある。さほど重要視しているわけでもないが、曖昧ながら目的がある。
メインコアの奪取ではなく、破壊!!
叩き壊し、都市を再起不能に陥れ、友人二人の仇を取るべく熾天使である恩師を付け狙う。
かさね「都市の人間と戦ってる最中、不意打ちで仕留める!これが一番だよね、私って頭いい〜」
嘯き、広域に拡散して天使たちを焼き払った穂乃果の炎を見つめている。
選ばれた者の力を目の当たりに、乾いた笑みを。
かさね「来なよ。高坂穂乃果…!」
-
今日はここまで
-
おつです
-
何かかさねちゃんガロウみたいになってる
-
かさねちゃん相手に一人で戦うとかコンマ判定ありなら欠損が出るレベル
-
かさねちゃんのキャラすごい好きだわ
-
にこ・フェット
まだ隠し玉が多そうでいいな
-
にこちゃんはそのうち衛星砲とか使いそう
-
英令奈は遠近こなせて強さのバランスが一番いいかもしれんね
-
おつおつ、にこ・フェットたのしすぎ
-
かさねはスーパーサイヤ人
-
反対からみたら龍皇相手に一人で挑むんだよな
-
>>120
そう見るとヤバいな
下手したら死にそう
-
西木野王ならいざ知らずこんな可愛い娘をハノケチェンが見逃すはずが無いよ!(^8^)
-
俺にはもうにこにーが竜胆流メイドにしか見えない
-
にこのバトルほんとすき
-
やっぱ安価&コンマ判定を止めた為に>>1のモチベーションが下がって仕舞ったのかな?
全てはことり召喚失敗と希戦の麻痺判定を立て続けに引き腐りよったあの日の粗大塵野郎共の責任やの
今ものうのうと迷惑掛けるだけの為に生き恥晒し続けとるんやろなw
-
火蓋を切った戦いは、一局面における勝敗だけでは判じることができない。
王国軍の介入により、もはや人間対天使という単純な構図ではなくなっている。
様々な要因が絡み合い、戦況は刻一刻と変化していく。
天使軍の全体指揮を執っている熾天使ウリエル、山田博子はその六翼を輝きに揺らめかせつつ、戦音轟く魔術都市を見下ろしていた。
山田「来てるのか…あのバカ」
呟いた一言は冷酷な天使ではなく、多くの天使たちを育ててきた教師としての視線。
優れた戦士である彼女は鋭敏にそのマナを感知している。
教え子であり、ボタンの掛け違いで自分を憎むに至ってしまった支倉かさねのマナを。
上位生命体、天使という種族の特徴として、階級が上になるほど人間的な感情への理解、情緒も高まっていく。
理事長が愛娘であることりに慈悲と理解を示したように、山田博子もまた“先生”としてかさねを案じているのだ。
-
が、階級が上であれば厳格さも増す。
だからと言って職務を疎かにするつもりはなく、理事長同様に人間文明を終わらせるという目的の帰結は不動。
魔術都市の攻略は重要な一戦だ。
迷走している教え子、かさね一人に構っている暇はない。
内部へと入り込んだ天使たちが防壁の発生装置を破壊するのが望まれるのだが、イレギュラー…高坂穂乃果の登場により多くの兵力が一掃されてしまった。
さらに内部へと潜入した兵士たちもいるが、期すべきは万全。
ウリエルはかさね同様、自身の教え子である優秀な戦士へと声を掛ける。
山田「相川、白瀬。行けるか?」
涼「お任せを、先生」
小雪「行けます…」
呼びかけに応え、軍列の中から前へと出る二人の天使。
相川、そう呼ばれた少女のフルネームは相川涼。
麗人と呼ぶべき涼やかな容姿だ。
纏う衣服は“貴族”や“舞台”を連想させる美麗な物で、腰には装飾の施された細剣を帯びている。
鎧姿の軍勢の中で一際異彩を放つ存在であり、装備を堅牢に固めていないことが逆にその実力を窺わせる。
もう一人の少女、白瀬小雪はどこか儚げな印象。例えるならば妖精だとか、そういう形容が似合うかもしれない。
その表情には引っ込み思案の色。それは人間であればマイナスに働きがちな個性。
だが無機質な天使たちの中で、明確に性格を有しているというのはそれ自体が実力の証明と言える。
相川涼に寄り添うように立っていて、その衣服は淑女めいた藍色のドレス。
-
小雪「頑張ろうね、涼ちゃん」
涼「ああ、ワタシたちの力を見せよう。雪ちゃん」
山田「白瀬の能力で障壁の内部へ。二人でこの壁の解除を目指してくれ」
師の言葉に頷き、二人は手を繋ぎ合わせ…落下していく。
障壁は目の前、生身で触れれば天使であれ無事では済まない!
が、小雪は涼の手を握りしめて呟く。
小雪「白夢、霧の中の森…」
詠唱なのだろうか。人のそれとは法則性を異にするチャントを諳んじ、そして二人の姿は障壁を透過する!
小雪『万物透過(ディープダイバー)』
物理的な物であれ、魔術に起因するものであれ、小雪の特殊なスキルはありとあらゆるものをすり抜ける。
マナの波長が合う涼だけがそれに追随することが可能。
先行している天使たちがいるとは言え、二人だけでの突入に意味があるのだろうか?
その答えは…涼の展開した翼にある!!
涼「素敵だよ、雪ちゃん。さあ…舞台の開幕だ!!」
背に光り輝くのは三対六翼の翼!!
それは理事長や山田先生と同階級、熾天使の証!
相川涼、別名を熾天使ガブリエル。
山田先生が育てた天使たちの中で最も優秀な一人。
若さと謙虚な心根から未だ部下の地位にあれど、その力は極大!
隣に付き添う小雪もその背に二対四枚の翼、その実力に間違いはない。
放たれる遠距離攻撃を物ともせず、二人は街へと急速に降っていく!!
-
一方ハイウェイ。爆走、爆走!!
制限時間付きの身体能力強化『大魔誅滅』の能力をフルに活用し、ヒデコは大型トラックのハンドルを勢いよく切り回す。
身体に負担のかかる能力だ。目周りの血管や神経がビキビキと腫れ、全身に鈍痛が広がっていく。
だがその能力は人外の高みへ!!
広大な魔術都市の全域へ、網目状に張り巡らされたハイウェイは視界の果てまで延々と続いている。
その一面は白く氷に覆われていて、絵里が発動させた氷結支配領域『聖零の世界』の影響下にある。
その最大効果範囲は絵里が視認できる一体全て。そしてバックミラーには映る恐怖、背後から絵里が猛然の追走。
ピタリと距離を詰められている以上、絵里の領域から逃れるのは不可能に近い。
トラックを選んだのは正解だった。
重く安定感のある車体で路面の氷結を踏み砕きながら走行していく!
-
対して絵里は蒼白のバイクに身を屈め、十二卿龍のマナを動力に生み出される速度は直線速度で300km/hにも達そうかという勢い。
さらに瞳には攻撃的な光。
片手を掲げて氷の鏃に弾丸、さらには氷槍、絶え間なく攻撃を放ち続けてくるのだ。
ガリリ!ジャリリ!トラックの背部を鋭氷が食い破る音が恐ろしい!
必然、逃げなければならないヒデコも重トラックの性能限界、270km/hオーバーで動体視力と反射の極限へと挑んでいる。
もはやチキンレースめいた逃走劇!!
高速道路の路上には避難する人々が乗り捨てた車がぽつりぽつりと放置されていて、レースゲームの障害物めいてヒデコの邪魔をしてみせる。
それでも時刻が深夜であったことは幸いだろう。
放置車両の数はそれほど多くはなく、精緻なハンドル操作でギリギリすり抜けられる程度。
が、前方にヒデコは舌打ちを!
ヒデコ「衝撃来るよ!!」
フミコ「きゃああっ!!?」
-
避けようのない位置に車が!トラックの角が掠める!
完全な回避は無理と判断し、極力速度の落ちない角度での衝突を選択。
眼力鋭く車体の向きを立て直し、そのまま疾走を続ける!
ミカ「ナイスヒデコ!」
ヒデコ「危なかった…!」
それだけではない。
大型トラックと端を掠めた放置車両はその角度が真横へと変わり、後に続いて追ってくる絵里の走行進路を大幅に狭めてみせたのだ!
危機を転じて攻撃へ。
リスクを踏みつつ多大なリターンを。
ヒデコの超集中は神域のドライビングテクニックを実現させていた。
そして助手席のミカと以心伝心、即座に連携!
ミカ「稜威の戯号、曲離する電界。御厨の終域に青々と爆ぜろ!『プラズマボム』!!」
-
狭まった道幅へ、すかさずプラズマボムを配置される。
完璧な封鎖!そこにはバイク一台が通り抜ける隙間さえ残されていない。
絵里「ハラショー!!」
道を塞がれ、絵里は素直な賞賛を口にする。
その顔には笑顔。口調のテンションも高い!
バイクによる高速の追走戦を楽しんでいるのだ!
進路をわずかに傾け、右手がアクセルを強く捻る。
さらなる加速!!
マシンが唸りを上げ、一切の迷いなく妨害物である車両へと突撃!
そして左手には聖槍を眼前に掲げ、氷でその刃を極大に補強する。
重く、長く、鋭く。
円錐形のヴァンプレイトが形成され、バイクは騎馬!槍は突撃槍へ!
ガギャ!と金属を突き破る硬音と共に車両を突破!
爆発炎上と車両の残骸を背後に残し、絵里はますますスピードを上げる!!
絵里「なかなか楽しいわね。次はどんな手を見せてくれるのかしら!」
ヒデコ「怪物じみてるね!」
-
トラックとバイク、二台は大カーブへと差し掛かる。
幾層にも道路が交差しているジャンクション地帯、巨大な車体のヒデコは減速せざるを得ない。
それでも可能な範囲で速度を保ちながらカーブへと突入!
しかし絵里はスピードを落とさない!
路面に水平に近いほどに車体を傾け、そして!!
ミカ「なにあれぇぇ!!?」
ヒデコ「壁を走ってる!!」
絵里「ハラショー!!!」
CAUTION!CAUTION!CAUTION!
ハイウェイの管理局と直結した電光掲示板には暴走への警告が表示され、しかし構わず二台は通過!
キャノンボールめいた加速!!
カーブ地帯を抜けると、ヒデコらと絵里の距離は間近へ迫っていた!
さらにまずいことに、ヒデコの運転能力を強力に高めていた『大魔誅滅』の効果時間が切れつつある。
身体へと掛かっていた負担が和らぐのを感じつつ、焦りに唇を噛みしめ…
フミコが声を上げる!!
-
フミコ「海未ちゃんは八割ぐらい回復したよ!」
海未「すみません…あと少しです!」
ヒデコ「よしっ…ミカ、5秒ハンドルお願い」
ミカ「ええっ!?私運転できないよ!!?」
ヒデコ「気合いで!それで海未ちゃん『転移』を!」
海未「わかりました!」
海未がヒデコの手を取り、瞬時に二人の姿が運転席からかき消える。
その転移先はトラックのわずかに後方、絵里の目前だ!
海未『破壊剣!!!』
ヒデコ『大強撃!!!』
絵里「…!」
二人は攻撃を、絵里にではなく路面へと放つ。
轟撃!!
氷漬けのハイウェイが数十トンの爆薬で発破されたかの如く砕け割れ、崩落!
凍結が浸透しているがために脆くなっていたのだ。
生じた巨大な亀裂が絵里とトラックとの間を見事に隔て、そしてすぐさま転移で運転席へ!
-
ヒデコ「ただいま!」
フミコ「おかえり!二人ともさっすがだね!」
ミカ「後ろからは…来てないわ!これで時間が稼げる!」
海未「いたた…傷口が痛いです…」
フミコ「オッケー、治療再開するね!」
絵里を倒さなければならない状況に変わりはなく、戦いは控えている。
しかし一旦追走が途切れ、車内へと安堵の空気が漂う。
だが、助手席のミカが気付き…青ざめた顔で警鐘を。
ミカ「絵里さんの視界から出たはずなのに、路面が凍ったまま…?」
フミコ「……!?み、見て!右側!!」
ハイウェイは先程の急カーブ地帯とは異なり
、右曲がりになだらかな曲線を描いている。
その高速道路の外部、高空。
そのカーブをショートカットするように、美しい氷のアーチが架けられている。
空から響き渡る猛々しいエンジン音!そこを疾駆するのは絵里のモンスターバイクだ!!
-
どこか自慢げな絵里。
ハンドルを握るヒデコと寸時、瞳が交錯し…
絵里「私の勝ちよ」
絵里は車体を引き上げるようにしてウィリー!!
氷で形成したジャンプ台で大跳躍を決め、そしてトラックの上空へ!!
ヒデコ「ヤバい!!攻撃来るっ!!」
トラックの直上、宙空。
絵里の頭上に膨大な氷粒が集まり、収束して巨砲へと姿を変える。
その砲身には高密度のマナが集中し、オーロラを思わせる“揺らぎ”が生じている。
絵里『零帝の耀砲(ツァーリ・プーシュカ)』
極光が迸り、炸裂!!!
走行していたトラックを襲う冷気はさながら冥界の氷河。
凍てつく暴流が大気を軋ませる。
たちまちのうちに数百メートルの氷山にトラックは封じ込められ、
圧壊!!!
爆散!!!
-
ハイウェイ戦熱いな…
-
半径3キロ四方に冷気が吹き荒れるほどの氷撃だ!!
結晶し膨れ上がる氷の中に囚われた車体は数秒と持たずに破壊されてしまった。
が、四人は直前に辛うじて脱出を成功させている。
海未「……なんと馬鹿げた威力ですか」
ミカ「ひ、ひええっ…!」
フミコ「やばいよやばいよ…!」
ヒデコ「やるしかないみたいだね」
絵里「転移で逃げたのね。流石よ」
四人を認めている。戦いを楽しんでいる。
絵里はその手に専用の武器、聖槍アルタキエラを捧げ持ち、もう逃げられまいと四人を睨めつける。
追いつかれこそしたが、幸い海未の回復は間に合っている。
問題となるのはヒデコが一度きりの『大魔誅滅』を使い切ってしまったこと。だが、それだけだ。
絵里「楽しいチェイスはおしまい。さあ、戦いの時間よ」
もう退路はない。
四人は武器を構え、激闘へと誘う絵里の視線と対峙する!!
-
少し時間空くよ
もうちょい投下すると思う
-
一旦乙な
絵里ちゃんの戦闘は綺麗でいいな
-
おつ!
エリーチカさん、実は希ちゃんが側に居ない時の方がかしこくなるのでは…
-
一気に来て読むの追っつかねぇずら
トンネルんとこはなぜかジョジョのダービー戦想像したw
-
強い(確信)
-
力押しすぎる
-
ひでこあんじゅらへんから一気に飛ばして読んでる
-
コンマ選択肢ないとテンポ良くて読みやすい あるとスリルがある
一長一短だよな
-
sage書くとこまちがえた…
-
絵里コンマあるといまいち活躍できなかったからね
全敗してた気がする
-
絵里ちゃんほんと格好いい
ポテンシャルをフルに発揮してくれるとまた別の楽しさがあるよね
-
園田といい綾瀬といい敵になると本当に頼もしいな
-
>>150
絵里は敵になってからコンマ悪すぎて全くといっていいほど活躍してなかったんだよなぁ・・・
-
これって絵里ちゃんを大人しく中枢まで向かわせてガブリエルと戦い合わせた方がいいんじゃないか?
-
ヒデコが相手する相手の動きが
キャラ動かす基本みてるみたいで楽しかった
本来こう動くのかって
-
場所は変わり、ショッピングモール!
希と凛、あんじゅと花陽の戦いは、花陽ら二人が事前に打ち合わせていた通りの展開へ。
あんじゅ「現れなさい、闇の障壁」
術式と呼ぶほどに複雑なものではなく、闇のマナを圧縮拡大して生んだ暗黒の壁。
シンプルながら、呪術師の高みにあるあんじゅの作り出すそれは恐るべき強度を秘めている。
それは凛が放った雷光を見事に遮断してみせる。
凛は誰よりも素早い。追って、電撃を込めた直突きを放つ。が、弾かれる!!
そして壁は変形、戦場を分断する!
凛「何この壁!ビクともしないよ!?」
希「おーっと…また分断作戦ってわけや」
あんじゅ「また、と言われても。私は知らないわ?」
花陽「凛ちゃん、相手は私だよ!」
凛「かよちん…!!」
-
希vsあんじゅ、凛vs花陽の構図。
コイズミの里で、聖龍ボールスが希に対して用いた作戦の再利用というわけだ。
だが…希と凛の二人にとっても、この状況は決して悪いものではなかった。
凛は言わずもがな、既に花陽しか眼中にない。
元々悩みの少ないタイプ、母との離別も乗り越えている。
そのためこれまでは闇の洗脳に深く付け入られる隙がなかったが、花陽を目の前にしたここに来てその友情と愛情の境目の感情を爆発させている!
明るく朗らかな印象に反し、存外に嫉妬深い面があるのだ。
今の凛にとっての恐怖は花陽が自分を見てくれなくなること。誰かに奪われてしまうこと。
ならば捕まえて独占すればいい!!!
花陽は親友の内面にある、意外に闇の深い悋気と激情を理解している。
凛「かよちんの可愛い声も、ふわふわな体も、髪の毛一本一本も、唾液も目ヤニも切った爪も、全部全部全部全部凛のモノだよ?」
花陽「知ってるよ。ふふ…そんな凛ちゃんも可愛いよ。だから!」
-
ボールスが呼べれば最善、だがまだ実力不足で呼べない。
凛をよく知るデュラハーンは詰めの段階に。
花陽が杖で地を叩き、先ず呼び出すのは『おばけナイト』だ!!
『先陣は任せてもらおう、マスター』
長く戦線を支えてきた一体。
がらんどうの甲冑から響く声は花陽を勇気付ける!
花陽(凛ちゃんは強い。全員使い切るぐらいの気持ちで…!)
里を旅立ってからの期間でマナの総量をさらに増やしている。
出し惜しむつもりはなし。
おばけナイトが凛との攻防を始めると同時、さらに軍団ゴブリンを追加召喚!
そして宣言!!
花陽「反対だよ。凛ちゃんを私のモノにしてあげるから!!」
-
親友同士、互いを手に入れようと凌ぎを削る奇妙な戦いとの隣。
あんじゅと希が繰り広げる戦いは狂気めいた様相を呈している!!
あんじゅ『呪式・深泥』
希「うへえ…!なんやこれ!?」
あんじゅに容赦はない!
漆黒の泥が希の足元へと纏わりつき、見る間のうちに全身を覆って地へと沈めようとする。
決まれば石の中に。有無を言わせぬ開幕即死攻撃!
が、易々と殺られる希ではない。
希「ちょ、これ洒落に…なってないやろぉ!!!」
-
同じ呪術師同士だからこそ、その即死術の恐ろしさも理解できる。
すかさず体へと炸の符を貼り付け、衝撃波で泥を弾き飛ばす!
あくまで緊急の回避策、当然体へもダメージが入る。
希はゲホっと咳き込み、そこへあんじゅはすかさず次の術を!
あんじゅ『呪式・縛』
希「小技を…そんなの動けば当たらんよ!」
あんじゅ『呪式・詠』
希「うっ…ぐ!?心がザワザワして、体の動きが鈍る…!アカンアカンアカン!」
あんじゅ『呪式・闇澪』
希「ちょおおっ!動きを鈍らせて闇の弾丸とか反則やろぉぉぉ!!」
あんじゅ「よく避けるわね、あなた…」
希「淡々と即死系とか怖すぎやろ…ないわ…」
ありとあらゆる即死術で武装したあんじゅ。
そんな攻め手に希はドン引き気味、今のところどちらが悪役だかわかったものではない。
-
そんな凛ちゃんも好きですっ!
-
もちろん、あんじゅにも考えはある。
希が運命を共にするべき大切な仲間だと理解していて、それでも即死術を容赦なく放ち続けるのはこの程度は避けてくるだろうと予測しているからだ。
希はやたらに悲鳴を上げて逃げ回ってはいるが、実際は同じ呪術師同士。
手の内は知れていて、その回避にはある程度の余裕がある。
希「お返しや!!『紫罰』!!」
広々としたショッピングモールの通路へ、縦横無尽に影の帯が這い回る!
少しでも掠めれば麻痺に自由を奪われるのは過去の戦いに実証済み。
しかし手の内が読めるのはあんじゅも同様。
迫る闇をゆらり、ゆらりと穏やかな歩調で躱す。
交差する影をするりと潜り、希へと視線を飛ばして片手を煽る。
あんじゅ「もっと上の術があるでしょ?」
希「チィッ…余裕綽々すぎやろ。それはお互い様やん!!」
睨み合う。双方に闇の魔力が高まり…
あんじゅ(彼女の内に潜む闇の根源を、極限の戦いの中で引きずり出す)
詠唱が開始される!
希「黒鬼、赤霊、青魔、白厄。四端の柱、六臂の姫幕。奔れ脈経、死室に噎せべ!!」
あんじゅ「阿骨打、水楼、慚愧十戒。外典覧じて理理の箍を弾劾せよ」
希『異端結界(ゼノキュール)!!!』
あんじゅ『禁式・泥濘奈落』
空間が希の支配する闇の箱庭へと塗り替えられ、足元の全てがあんじゅの操る闇の沼へ。
互いの魔力が反発混合し、拡散。
二人の視界が漆黒に染まる。
華やかなショッピングモールの光景は既に彼方。戦いは深淵へ、深淵へ…!
-
今日はここまでで
-
乙
絶対殺すマンあんじゅ様大好き
-
っていうか凛ちゃんなかなかの変態にゃー
-
乙
お互いに独占欲丸出しのりんぱないいぞ〜
-
のぞにこの戦闘中の緊張感のなさ好き
-
乙!
このりんぱな対決
結果がどっちに転ぼうが、ごく自然にレズ堕ち出来るように仕向けている辺り
>>1の油断ならぬレズカラテの業前がひかっておる
-
ハイウェイ………キャノンボール…………サンダーボルト……………うっ頭が
-
「ハラショー!ハラショー!」言いながらバイクで壁走ったり、氷で道作りながら時速約300kmでトラックを追いかける金髪ポニテ・・・新手の都市伝説の誕生である
-
凛ちゃんと契約して欲しい
-
おもしろすぎる
毎日更新乙です
-
おつです
-
じゅじゅちゅし同士のバトルが厨二全開で最高です
-
今帰宅したから更新もうちょい待ってな
多分12時までには
-
いえいえ今日も来てくれてありがとう
待ってる
-
かよちんの
凛ちゃんはわたしの物宣言!
にアスモデウスとユニコーン大満足。
-
あんじゅと行動を共にしても堕ちてないあたりさすが花陽ね
-
こんな時間までお疲れ様です
-
ビシャリ、グシャリ。
一歩一歩を踏みしめるたびに、足元が重く粘る。
泥濘奈落に囚われて、今いる場所は悪夢の裏側の底の亜空間。
希はやれやれ困ったなぁと口にする。
けれど自分の口から漏れてきたのはあえあえおいえええと母音すら定かではない音。
既に異端の闇と自我の境界が曖昧へと傾きつつあって、仕方がないので(めっちゃホラーやん)と心に浮かべる。
人ではない何か、赤子の鳴き声が延々と響いている。
脳内に直感で訴えかける暗暗闇、埋濁。
蠢く手の手の手の手の手の手の手の手が頭蓋の内側を優しく撫でて誘いを。
希(うわっ、早速耳障りやな…)
-
泥濘に足を掬われ奈落の底。
落ちて沈んで、共倒れの無間地獄。
希が放った『異端結界』も効力を発揮しているため、おそらくは優木あんじゅ自身も泥濘奈落の底へと飲まれているはず。
ぬまり、にちり、耳に鼻に目に、無遠慮に忍び入る“なまもの”の感覚。例えるなら腐肉の舌先、ヌロヌロとした触感が全身、穴という穴と毛穴の中へと産毛の一本一本と、
皮膚の裏側を延々延々延々延々とナメクジの質感の百足が這い回っているような。
まぶたの裏側に感じる、感じる!虫が入り込んでいる!虫が入り込んでいる!虫が入り込んでいる!虫が入り込んでいる!虫が入り込んでいる!
幸い足元には真っ黒な水たまりがあるので眼球を取り外して洗えばすっきりするだろうと考えて目へとてのひらをあてがい瞼へと指を突き入れる。
目玉が取れなくてなかなか出てきてくれないのでグチリグチリと指でこねくりまわしているとやがてトロトロとしたゼリー状で薄ピンク色の液体が瞳の裏側から垂れてくる。
鼻の奥につっかえるような粘り気を感じて風邪を引いたかなと強めに鼻を啜ると茶色くてベタベタとした膿が口の中に親指ほどの塊になって逆流。
舌の上に止まっているそれを吐き出したいのだが粘着質だ。仕方がないから飲み込む。
そうするとまた鼻の奥に粘り気を感じて風邪を引いたかなと強めに鼻を啜ると茶色くてベタベタとした膿が口の中に親指ほどの塊になって逆流。
舌の上に止まっているそれを吐き出したいのだが粘着質だ。仕方がないから飲み込む。
そうするとまた鼻の奥に粘り気を感じて風邪を引いたかなと強めに鼻を啜ると茶色くてベタベタとした膿が口の中に親指ほどの塊になって逆流。
舌の上に止まっているそれを吐き出したいのだが粘着質だ。仕方がないから飲み込む。
そうするとまた。そうするとまた。飲み込む。飲み込む。飲み込む。飲み込む。飲み込む。
百回繰り返したところでやめなきゃと気付くと胃の奥で飲み込んだ膿が腐っていて卵の腐ったような硫黄臭がせり上がってきて気持ち悪いから吐き出す。
ぐぷぇ!と吐くと拳ほどの大きさの毛を毟った鳥のような生物が喉を通って生み出される。ひどく臭くてゼリー状の眼球でア、ア、ア、と吐き気を催す鳴き声で騒ぎ立てる。
その声がまた吐き気を呼んで、きっと膿を一度飲み込むごとに腹の中に一匹これが作られていて、じゃああと九十九回これを吐き生みながら濃密な硫黄臭に耐えなければならないのかと思うともう気が狂ってしまった方が楽なのでは。
-
希「あ、ああああ、ああ、あああああああ」
吐く。吐く吐く吐く。
肌を這い回っている。醜悪ななにかが唇を眉を、肌の凹凸を鼻腔を、なにかの唾液が跡を残していく錯覚。
にちゃにちゃと足音、周囲から這ってくる不貞数の気配、人でないなにかが希を取り囲んで無遠慮に全身を撫ぜる。
不快と嫌悪に叫ぼうとするが声が出ない。
ふと自分の手を見ると…てらてらと粘り気のある鱗。東條希の肉体が人でない彼らと同質のなにかへと変質する。
不明瞭で曖昧ななにかが絶え間なく内臓を突き上げる。嘔吐感、嘔吐感。体内で異物が膨れ上がっている。
希(気持ち悪い、気持ち悪いよ…我慢や、この段階は幻覚の類。耐えてればいつか術が終わる)
-
禁式・泥濘奈落。
十二卿龍でさえ葬り去った空間、黒沼の胎内。
ここで自我を消化されてしまえば、向かう先は永遠にして永劫の地獄。
ここは未だ入り口、現世との境界。何故なら生じている現象は言語で表せる範囲。この先に人の理解は及ばない。
貪食の闇は常に新たな贄を求めていて、例えば飲まれた疫龍パーシヴァルや銀龍ラモラックの自我はとうの昔に溶けて消えて闇の苗床。
希「え……ウチ、ずっとここに?」
希の全身の血流が冷え切っていく。
呪術師としての闇への耐性でここまでを耐えてきた。
だが、認識してしまった。闇の恐怖を。
そうなれば後は空間に溶け込み、いずこかへ向かうだけ。
希「あ、ああああ…!嫌や、嫌!ウチは、私は、まだこんなところで…
やだ!やだよ!助けて…死にたくない!行きたくない行きたくない行きたくない…!!
怖い怖い怖い…!やめてください!おねがいします助けてください…!
いや!い、い、ぎぃ、い…!やだ、触らないで…掴まないで!う、あ…胃が…げぼ、っ…!
胃が腐ってる…胃に変なのがいっぱいいる…!げえっ…!おげええっ、ゲボ、ぐええっ、…息ができな…!
死んじゃう…!いやだ!体の中に入ってこないで!助けて、助けてエリチ…私死にたくない、まだみんなと…あっ、ひ、ぐぅっ…!
痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!!!!!!痛い!痛い痛い!!!お願いしますお願いしますお願いします…!もうやめてください許してください…!ぎ、う、ひあああああああああああああああ!!!!!!!」
-
希の『異端結界』と、あんじゅの『泥濘奈落』が作り出した常闇の箱庭。
ついに耐性が決壊してしまった希の絶叫が響き渡る中、あんじゅはずっと希の目の前に立っている。
沼に囚われて正気を失った希からは視認できていないだけで、初めからずっと手を伸ばせば触れられる位置で希の状態を観察している。
互いの術式が発動してから30秒ほど。あんじゅは希に同じく、闇の沼に下半身を沈めた状態で狂気狂乱の中で希を観察している。
術に囚われてみる闇の悪夢は体感時間が何十倍にも引き伸ばされていて、希が受けている責め苦は数時間にも及んでいるはず。
あんじゅ自身はアバドンを調伏して以降、以前にも増して強固な闇への耐性を得ている。
故に泥濘奈落の狂気にも耐えることができている。
もちろんあんじゅも理解に遠い闇の饗宴の中にいる。
耳には異種の赤子の啼き声が響いていて、怖気の立つコールタールめいた腕が脚を舐めるように這い上がってくる。
眼球がとろけて歯が抜け落ちて舌が黒く膨れ上がって気道を塞いで呼吸ができない。粟立つ鳥肌の一粒一粒がプチリ、ブチュリと潰れて漏れる体液と共に数百の蛆が穴から顔を覗かせる。
さらに希の『異端結界』が重く息苦しいプレッシャーを与えてきて、瘴気に呼吸さえ困難な…
あんじゅ「くだらない」
無視!
腐敗、汚濁、理解の及ばないなにか。根源的な恐怖と嫌悪感を煽り、狂気を与え、闇に染めて飲み込むのがこの呪術。
理屈だけで言えば、完全に無視することができれば無害。
と言っても無茶な話なのだが、闇の一つの峰を極めたあんじゅには可能なのだ。
-
あんじゅ(ごめんなさい希ちゃん。あなたを助けるためには、まだ。まだ追い込んで…)
囚われた肉体と精神が向かう先は人智を超えた世界の外側。
希の肉体は漆黒に染まり、飲まれる限界の際にある。
容れ物が死ねば中身も死ぬ。
極限まで追い込めば希の中に潜む闇の根が姿を現すはず。
だが、希は抵抗の術を失ったように短く強く、聞いている側が苦しくなるような絶叫を繰り返す。
それはあまりに惨い様。
知性からの美しさといたずら心に満ちた愛らしさ、それらを兼ね備えたいつもの姿は、叫び、目を剥き、狂乱に怯える今の希には見られない。
駄目だ、やり方が間違っていたのかもしれない。
完全に飲まれてしまえばあんじゅにも引き戻すことはできない。希は英玲奈たちにとっての友人、ここで失うわけには…
-
希「ヒ、ヒヒ…」
あんじゅ「……あら、様子が変わったわね」
希「どうせ死ぬなら…もう、どっちでも変わらんやろ…」
あんじゅ「そうよ…それでいい。見せてみなさい。あなたの中身を!」
悪寒を催す闇、邪気が渦を巻く。
それはコイズミの里で使おうとして絵里に止められた闇の術式。自身をも喰らう破滅の言霊。
希「閻羽芒星、聖凪。廻り廻れ紫微宮、旧世の落胤へ引導を渡せ。ごめんね…さよなら、エリチ」
あんじゅ(さあ、何が出るかしら…)
希「受肉せよ、『堕醜王イプセン』」
ずる…と、希の足元が落ち窪む。その質感はピンクに紫がかったドドメ色。
腐肉の塊と化した足元にグポリと希の全身が飲み込まれ、指先が救いを求めるように空を泳いだ。
-
希の姿はもう見えない。
宿主を取り込むタイプらしく、残されたのは異臭。
片腕を垂らし、魔道書を片手に待ち構えるあんじゅ。
ずる、ずるると肉塊がせり上がり、現れたのは巨大で醜悪な…
“何”と表現するのは難しい。腐肉の塊が寄り集まって、そこに大量の骸骨が取り込まれ、辛うじて人型を成している。
右腕が極端に肥大していて、体が傾いている。身をよじらせるたびに組織が崩れ、体液が漏れ、損壊部の肉が盛り上がってすぐに再生を。
顔らしき部分には真っ黒な穴が三つだけ空いていて、おそらくは目である二つの穴は何を映すこともなく、あんじゅへと向けられている。
口からゴポ、と音が漏れ…死の息があんじゅ目掛けて吐き出される!!!
あんじゅ「障壁」
動じず遮断を。
幸いにして空間は希の発動させた『異端結界』の中。
精神に負担の掛かる環境ではあるが、闇のマナに満ちているため呪術の発動には適している。
黒い薄膜一枚を隔てて怪物の姿を眺め、その戦力を観察する。
-
あんじゅ(意外ね)
あんじゅは小首を傾げている。
彼女の疑問は目前の魔物へと向けられている。
“堕醜王イプセン”?
聞いたことのない存在だ。
希の能力の高さを見るに、高名な悪魔や闇の眷属が巣食っているものだと思っていたのだが。
あんじゅ(無名なのに強大な魔力。なら、逆な警戒するべきかしら?)
事実、強力かつ智謀に長けたタイプの大魔が敢えてその存在を潜めているパターンもないではない。警戒して損はないだろう。
考察ながらに拍手を一つ。泥濘奈落を解除したのだ。
“中身”を引きずり出した以上、阿鼻叫喚の術式を継続する必要もない。
眼前の怪物を叩き潰し、東條希を解放する!
病的に肥大した右腕が持ち上げられ、滴り落ちた肉液が足元であぶくとなり弾ける。
そして槌の如く、腕があんじゅへと振り下ろされる!!
-
あんじゅ「泥梨、縊死してゆく光子。貪婪せよ、耽溺せよ。九天の彼方に滅罪を見よ。蔓延れ奈落の王『アバドン』」
素早い詠唱と同時、あんじゅの口から一匹の蝗が吐き出される。
ブブ、と羽音を鳴らし、空を舞う…それを右手で掴み、握り潰す。
あんじゅ「黒魔の鎧」
右腕、蝗を潰した掌から色彩が反転し、黒赤の装甲が全身へと広がっていく。
ギ、ゴゴと重い扉が開くような音を伴い、
古騎士の街でヒデコと共に対したアバドン、その虫殻を身に纏ったような姿へと変化する。
黒き甲冑の騎士へ!目元には赤く破壊の意思が燃える!
漆黒のマナが集まり、棒状の武器が形成される。
その棒を掲げ、振り下ろされた腕を易々と受け止める!!!
衝撃に足元が凹み、空間がヒビ割れるほどのエネルギーが迸る!!
だが、漆黒の鎧姿と化したあんじゅはまるで動じず。
凛の雷撃を受けても無傷でいた防御性能を遺憾なく発揮し、巨腕を弾き飛ばしてみせた。
棒の両端へとマナの黒刃が伸びる。漆黒のダブルセイバーへ!
両剣の中央部、柄を握って体の前で舞うように取り回す。
中段の構えから片手を軸に、体の左右へと交互に旋風の如く斬撃を!!
-
あんじゅ「的が大きいと当て易くって助かるわぁ」
斬、斬斬斬斬!!!
削ぎ、突き、棒術で言う舞花棍の動作。
体の回転を活かし、膂力ではなく遠心力で幾重にも斬撃を重ねていく!!
腕を輪切りにされ、闇の怪物はくぐもった声を滲ませる。
が、斬ったそばから再生していく。
すると堕醜王イプセンを形成する肉塊のその胸元、肉がぐちゃりと音を立てて開き、そこから姿を現したのは磔刑の姿勢で両腕を吊るされ囚われた希の姿。
希は意識を完全に支配されているようで、だらりと手首が垂れ下がっている。
だが首筋に巨大な腐肉の腫瘍がへばりついていて、おそらくは全身を魔の傀儡とされている状態だ。
種肉が脈打つたびに口からは苦しげな喘ぎが漏れ、その体がピクリと揺れる。
なるほど、堕醜王という忌まわしい名前なだけはある。
生物としての形を保っているさえ怪しい状態にも関わらず、左手を希へと伸ばす。腐った指がどこか好色な動きで希の豊満な体を撫で回している。
-
あんじゅ「屍肉の類のくせに色欲があるの?醜くて素敵ね」
希「あ、う…『病毒の塔(イルビル)』ゥァ…!」
暗黒空間の中、地から雨後の筍さながらに続々とグロテスクな色彩の塔が現れる。
人間を集めて擦り潰し、脳漿や内臓や諸々が垂れ流しになっているのをそのまま上へ伸ばした、そんな外観が8本。
そして虹色にも見える汚染された空気を撒き散らし始め、オトノキ村で見せたそれよりもさらに毒性が上昇している。
一息吸えば肺腑が腐れる瘴気を前に、しかしあんじゅは怯まない!
あんじゅ(苦しくない。魔黒の鎧は流石…)
アバドン。かつてあんじゅの身と心を苛んでいた魔雄は栄光も遥か遠く、今やあんじゅの可愛い下僕。
その力の残骸を纏う“魔黒の鎧”、黒騎士姿はあの大暴れを見せたアバドンにも似た戦闘力を得られると同時、闇のマナに対して完全にも等しい耐性を有している。
凛や海未の攻撃に損傷を負わず、圧倒的な優勢を見せたのにもそこに理由がある。
今の凛の『凛ちゃんサンダー』には闇のマナが混じっているがため、鎧の耐性で防ぎきることが可能だったのだ。
腐乱と病原体を吐き出す塔を、一閃!!!
黒の斬光が幾度と閃き、露悪趣味的な骨肉の塔を一斉に切り崩してみせる!
-
希≪何故邪魔をずる゛蝗の王゛!!≫
希の口から漏れる声は酷く濁っていて、明らかに希自身が発したものではない。
“堕醜王イプセン”
得体の知れぬ闇の住人が人語を発したことに、あんじゅはフルフェイスの兜の下で口元を笑ませる。
気位の高い闇の住人たちは、よほどのことがない限りは相手へと合わせることを好まない。
それが戦闘の最中、アバドンの力を見た途端に人の言葉で対話をえらんだ!
あんじゅ(つまり、イプセンの力はアバドンよりも劣る)
希≪この゛娘゛は我のモノだ!!邪魔ヲ゛すれば゜貴様を゜…≫
あんじゅ「あら、どうしてくれるの?臭くて汚い格下さん」
煽る!
仮にも王の称を冠する存在、コケにされればその実力の底を見せてくるはず。
あんじゅ(そこを潰す!!)
-
勝負は急がなければならない。
アバドンの装甲は強力だが、マナの消耗も激しい。
まだ猶予はあるが、決めきれずに生身でこの空間に放り出されるというのは避けなければならない。
醜悪で好色な腐肉の化物。希と揃ってそこへ嫁入り…
そんなミイラ取りがミイラになるような展開は死んでもごめんだ。
案の定、煽りに応じて希の口から怒りの咆哮が!
闇が濁流のように喉から溢れ出し、呪詛の奔流が兜の防護越しにあんじゅを苛もうとしている。
と、イプセンが希を介して詠唱を!
希「汚濁の水泡、幽寂の薄羽。糾えるは阿鼻の螺旋。孕め、諂え、鬼胎に呻け。『不浄童子(パンデミオン)』」
地中から汚濁が滲み出る!
街中であれば下水管が炸裂したのかと思い違うような、顔をしかめてしまう臭気が一帯を満たす。
そして不浄の水が立ち上がり人型を象り、あんじゅの視界を埋める億百の兵を成す…!
なるほど、王を冠するだけはある。
万では数え足りない数の軍勢を顕現させ、それが一斉に殺到する!!
-
あんじゅ「ああ…可愛くないし、美しくもない。つくづく悪趣味。希さん、あなたハズレを引いたものね…」
ダブルセイバーが踊る!!
体を捌き、斬り伏せ、斬り上げて巻き打ちに。
足元から掬い上げるような斬撃を左右から繰り出し、背を反らしながら背後へ攻撃!
マナの刃を消して棒を支点に、殺到する穢汚の兵士たちを足蹴に足蹴に足蹴に蹴って蹴って蹴って体を水平に飛び渡るように蹴りながら弾き飛ばして宙へ!棒を旋回させて高空から数体を薙ぎ払う!
ムービースターばりのアクションを決めてみせ、早くも90体は倒しただろうか。
さあ、残るは敵は億以上!
あんじゅ「多すぎ。やってられないわ」
希≪どこま゜で保づ?゛≫
勝機を見たか、イプセンは嘲笑うような口調を。
それが不愉快で、そして慢心に底を見て。
あんじゅは一挙の決着を決断する!
-
あんじゅ「あなたの底、見えちゃった。ふふっ」
希≪何゛を゜…≫
あんじゅ「離淵の芥、惑乱する東星。六道の外輪に是否を糺せ!!」
問いに返すのは迷いなき詠唱。
眼前に蠢く腐濁の群れに、もはや対話の余地も必要もなし。
黒騎士、あんじゅの掌から闇の雫が零れ落ち…
獄炎が津波の如く吹き上がる!!!
あんじゅ『黒闇の終宴(アポカリプス)』
呪式ではなく、アバドンが用いた闇の奔流。
魔の頂点に列する悪魔に相応しい、シンプルかつ破滅的な絶対撃!!!
大多数を薙ぎ払うには何よりも適した黒の暴流が視界を埋め尽くし、億の『不浄童子』たちを瞬時に滅死へと送り込む!
そして黒の爆流は希に纏わりついた穢らわしい醜悪の塊へも襲いかかり…!
希≪バカな゛!!こん゜な゛の゛は…!!≫
あんじゅ「あっはは!汚らしい部下もみぃんな流れちゃったわね?あとはあなたが死ねば…完っ全にフルハウス!」
希≪ア゛……!!!≫
-
このあんじゅ様はフルハウスどころかロイヤルストレートフラッシュやで!
-
圧力に、まともな悲鳴さえ上がらない。
片や無名の異形、片や闇に名を轟かせる大魔。
隠れた実力者、そんな可能性に警戒したが、問題はなし!
地獄を顕ずる漆の波濤はその暴圧を以って希から腐肉の全てを引き剥がし、希本人にはあんじゅがマナの制御で守っているので問題はなし。
濁流が消え、あんじゅの黒騎士態が解除される。
マナは大幅に減少したが、まだ残量がある。これなら花陽の援護に向かうことも可能だ!
空間は正常へと戻り、戦っている間に随分と場所を移動していたらしくショッピングモール内に設けられた大劇場の入り口へと移動している。
夜間、襲撃の最中。当然ながら無人。
観劇はわりと好きだ。こんな時でなければゆっくり劇場を見て回るのも一興…
あんじゅ「おかしい…」
-
違和感に気付く。
堕醜王イプセン、あれは確実に仕留めた。そこに問題はない。
が、戦闘中…
イプセンが顕現して以降、希が使ったのは全て腐毒や瘴気の類の術式ばかり。
『紫罰』や『鬼吼葬』など、東條希が最も得意とする影の術式を一切使ってこなかった。
堕醜王イプセンの戒めから解放され、倒れている希。
その体からは、さらなる闇…
いや、今までより純度の高い“影”のマナが周囲へと集まり、そして優美なロングドレスを希の体へと織り成す。
ゆらり。影のように立ち上がり、あんじゅへと視線を送り…
あんじゅ「……が、っふ…!?」
臭気と汚泥にまみれていた姿はとは真逆。
今の希には気高い品性と妖聖な美貌が宿っている。
そしてすらりと差し伸べた指先から、伸びた影は薄刃のように、あんじゅの腹部を刺し貫いている。
希≪ありがとう。私の力の邪魔をしていた、変な“蓋”を退けてくれて≫
あんじゅ「痛…ぁっ…」
貫かれた事で理解した。
希に潜む力、その真の根源を。
影という不定かつ実態のないものを、まるで布のように、また刃のように実体化してみせている。
数多く闇の眷属はいれど、そんな芸当が出来るのはただ一人。
あんじゅ「影の女王、スカアハ…」
希≪ふふっ…ご名答≫
あんじゅ「……反則じゃないかしら?二体も巣食ってるだなんて…!」
腹部の傷は浅くない。
ローブの下に着た上質なシャツに血が滲み、赤く染まって滴り落ちる。
スカアハは闇の眷属だが、魔族とはまた種族を異にしている。
一つ確実なのは、あんじゅの中にいるアバドンに勝るとも劣らない格の存在だということ!
あんじゅ(……厳しい、わね)
アバドンとスカアハの格が拮抗しているのであれば、あんじゅ自身のマナ消耗と負傷は…
億している暇はない!
仲間のためにこの局面、負けるわけにはいかないのだ。
残り少ない魔力で魔黒の鎧を顕現させ、あんじゅは希へと挑みかかる!!
-
今日はここまでで
-
おつおつ!
最初の一撃がゲイ・ボルグじゃなくてよかった…
-
お疲れ様
闇のお偉いさん方はのんたんの体で遊びすぎやで
-
このSSのあんじゅは本当にかっこいいな
-
おつおつ
久々にマトリックス思い出したで
-
なるほど
希が稀な生まれつきのダブルディール持ちな理由がこれか
-
ギャルあんじゅアバ丼みたいに別に現れる訳じゃ無いのか
龍に精神乗っ取られてる状態に近いのかね
-
アバドンと同等というから聖書かソロモン関係の有名所かな?と思ってたらそっちか
-
メガテンでお馴染み
-
ポジションはギリシャ神話だとハデスにあたるのかな
普通に魔王クラスだな
-
プライドみたい
-
こよ闇対決が今までで1番面白いかもしれん
>>1の美麗な戦闘描写が光るな
-
泥濘奈落の描写力やばすぎ
よくあんなに読んでて気持ち悪くなるものを書けるなぁ
-
イプセンがアバドンの半分程度の力だとしても希はあんじゅの1.5倍の闇を抱えていたことになるな
よく狂わずにいれたな
-
実際半分狂ってたやん
-
それでもスゲェよ
-
あんじゅが勝ちそうだけどのんたんにも見せ場欲しいなぁ
-
え、負けそうに見えるけどな
にこたちが残ってるし
-
…
あんじゅと希が闇の空間を保ったまま戦線を移動させていった、その後。
屋内モールは一階と二階までが吹き抜けになっていて、まっすぐ続く通路の両脇にテナントが延々と並んでいる形状。
そんな具合、そこで花陽と凛の戦いが続いている!
『コアァァァ!!!』
高空で氷鳥フレスベルグが高らかに鳴き、地上へと向けて蒼翼を羽ばたかせる。
翼から数枚の羽根が放たれ、それを基軸として形成された氷の弾丸が雨霰と降り注ぐ!
『構え…放て!!』
『イー!!!』
フレスベルグの攻撃にタイミングを併せ、おばけナイトの指揮に従い軍団ゴブリンたちは一斉に手槍を投げ放つ!
一体一体は脆弱なゴブリンだが、集えば数の暴力へ。おばけナイトの指示を仰げばちょっとした部隊へ姿を変える。
さらに甲冑自身も軍用のマスケット銃と大型の弩弓を手に、両方を撃つ!撃つ!撃つ!!
対象は言わずもがな、凛だ!
-
花陽「凛ちゃん!当たって!」
凛「これくらい…全然簡単だもんね!」
左半身を前、肘を体の前で折り曲げて高速で歩を刻む。
暴風にも負けず、降り注ぐ雹弾を見極め、ステッピング、スウェーバックで回避する。
そして雷速のジャブ、『紫電』を嵐の如く乱打する!
避ける!撃つ!弾く弾く弾く!!!
花陽「すごいスピード…!かっこいいよ凛ちゃん!」
凛の構えはボクシングで言うところのヒットマンスタイル。
腕をムチのようにしならせ、『紫電』は下から上へと軌道を描くフリッカー気味に。
本来は防御よりは攻撃に主眼を置いた戦型なのだが、雷猫族の身体性能を人間の常識で捉えることは不可。
敵弾を撃ち落とせる速度があるならば攻撃こそが最大の防御!!
凛「もっともっともっともっと速く速く速く速く速く速く!!!!!!」
撃って叩いて弾いて落とし、手槍の一つを掴み取って上へと投げ放つ!!!
凛「落ちろぉー!!!」
-
忍者の投擲スキルは伊達ではない。鋭い身のこなしから放たれた槍が上空のフレスベルグを穿つ。
首元に大穴が開き、苦しげな鳴き声一つ。花陽の空戦の軸たる氷鳥が消失する。
さらに凛はクナイを投げ放つ!
回避動作の中、無駄なく軽やかに放った刃がゴブリンたちの数体を貫通して撃破!
凛「召喚獣邪魔!凛とかよちんの間に立たないで!」
花陽「まだまだ!」
いつもなら召喚獣の負傷離脱には心配と労いの声を上げる花陽だが、今日は違う。
フレスベルグとゴブリンたち、倒れた召喚獣に心の中だけで感謝し、すかさず次の召喚を!
花陽「カマイタチさん!お願い!」
キュキュと小動物の鳴き声、直後!
凛の周囲が烈風に刻まれていく!!
凛「むっ…見たことない子だね。かよちんが強くなってて、凛とっても嬉しいよ」
花陽「ありがとう凛ちゃん。カマイタチさん!そのまま追い込んで!」
-
開けた位置はカマイタチの動きを制限しない。左巻きの軌道、螺旋の回転で飛び回りつつ斬風を。
カマイタチはその身を小型の台風と化し、凛に後退を余儀なくさせる。
風を纏い自在に飛翔、通過した後に風による斬撃を残していく。
下級召喚には見合わぬ威力と低消費。その様はまるでミキサー!
花陽の手持ちきっての高燃費、優良な召喚獣だ!
凛(むむ、さすがかよちん。凛の弱いとこを知ってる…)
凛がいかに高速で逃げ回れても、モールは屋根のある屋内。
直線に続く通路であり、左右へと動き回れる範囲には限りがある。
かといってテナント店への中へと逃げ込んだのでは袋小路。下がり続けるしかないのだ。
眼前で暴風に通路が砕けていく。
凛は吹き抜け状の通路を二階へと飛び上がり、手すりの上を器用に走って奥へと急ぐ。
花陽「追いましょう!」
『行くぞ!!』
『イ゛ー!!』
-
花陽の声に応じ、二メートルと半ほどに姿を現しているおばけナイトを筆頭に、残り13体のゴブリンたちがカマイタチと凛の後を追っていく。
カマイタチの暴風撃は未だ継続されている。
一階から二階、店舗のウインドウガラスや休憩用のベンチに自販機、観葉植物に、落下防止の柵、凛が走っている手すり。全てを微塵に斬り刻んでいく!!
花陽(頑張って、カマイタチさん!)
下級召喚でこれほどの威力を出せるのには理由がある。
事前に召喚獣たちへ、花陽は絶対的な方針を伝えていた。
それは“全力”をという指示!
現状、洗脳状態を考慮せずに絵里や希も含め、仲間と呼べるのは17人。
その中でも花陽はかなり上位の戦力を有している。
多くの召喚獣と契約を果たし、そして誠実な人格から強い絆を結んでいる。
攻撃に回復、補助に撹乱なんでもござれ。
そんな花陽だが、しかし多方面に広がった戦線の中、花陽は凛との一戦で燃え尽きる覚悟でいる。
凛の強さを最も知っているのは花陽。温存を考えた戦術で勝てるとは微塵も思っていない!
-
花陽(凛ちゃんは私よりも…ううん、私の方が強い!強くなくちゃいけない!!)
油断はなく、全召喚を使い果たす心算。
故に、召喚獣たちへはマナの温存や長期戦は視野に入れず、呼び出されれば指示を待たずに最強最大の技を繰り出すよう言ってあるのだ!
そして迷いと思考なく放たれているのがカマイタチの竜巻めいた乱流!!
花陽「私は勝つよ。凛ちゃんっ」
一方、凛も無策に逃げ惑っているわけではない。
凛「にゃにゃにゃ!!これ怖いにゃああああ!!!?」
慌ただしく叫びながらの逃走、けれど脳内には先の算段も立てている。
二階に飛び上がったのは適当な動作ではない。まだ長く続くモールの通路、先の一階に見えたのは…
凛「噴水!!」
噴水を中心として円形にベンチが並べられた休憩エリアだ。
深夜のため水の噴出はないが、そこへ目掛け、凛は二階から跳躍する!!
凛「いっくにゃー!!『ビリビリキィィィック』!!!」
花陽「あっ!」
-
高所からの落下の勢いを含め、斜め軌道からの高速電撃飛び蹴り!!
観賞用のオブジェクトでもある噴水を激烈に割り壊し、直結した水道管が炸裂!水が暴発する!!!
そして勢いよく吹き上がり散布された水には、凛がビリビリキックに纏わせた電撃が伝播し…!
『ギュッ!!?』
痺れにカマイタチの爆進が止まる。
拡散した電撃は決して威力を保ってはいない。が、カマイタチはあくまで小柄な小動物だ。
そして止まってしまえば、その隙を凛が見逃すはずもなし!
凛『紫電!!!』
電光が走り、殴り飛ばされたカマイタチが壁へぶつかり姿を消す。
そこへ追いついてきたゴブリンたちが、手槍を片手に一斉に挑みかかる!!
彼らの手槍は魔力によるもの。投げようとすぐに手元へと再生する優れ物!
が、威力はそれなりに過ぎず。数の暴力には優れていれど、一定の強さを越える相手へ抗する手段は有していない。
凛『散華雷脚!!!』
『イ゛イ゛ーッ!!!』
-
花陽の目には、凛が一度の蹴りを繰り出したようにしか見えない。
が、花火のように電光が弾けた。瞬時にゴブリンたちの8体が吹き飛ばされる!!
残るゴブリンたちは即座に槍衾を形成し、点ではなく面で凛へと当たる。
一気に穂先が迫り、そこで凛は全身の電撃を解放する。
『凛ちゃんサンダー』の発動だ!!
極雷のビームが幅広く一帯を薙ぎ払い、残っていたゴブリンたちを消し飛ばす!
凛「よし、次…ってあれ!?視界が悪くなってる!」
ゴブリンたちは犬死にしに突貫したわけではない。次策のための時間稼ぎを!
凛がゴブリンたちに気を取られていた間に、花陽はラミアを呼び出していた。
そしてラミアは一帯へ撒き散らされていた水気を少しずつゆっくりと霧へ変え、気付かれないように視覚封鎖の結界を完成させていた。
そして銃声!!!
霧が生じる前に凛の位置を把握、狙いを定めていたおばけナイトが銃と矢を凛めがけて放ったのだ!
正確無比の遠距離撃が、凛の腹部と脚を穿ち貫く!!
-
花陽「やっ…!」
凛「てないよ!!『雷震』!!!」
花陽「わぁっ!?」
凛「成長したのはかよちんだけじゃないよ!」
『凛カーネイション』、“転生”を文字った回避技術。
被弾に反応した全身雷化による完全回避!!
そして弾丸で方向を特定、瞬時におばけナイト、花陽、ラミアのそばへ。
初期から凛の戦線を支えてきた雷震、指向性の閃光と雷音を放つ擬似スタングレネード。
その効果時間はおおよそ6秒ほど、ならば凛には十分すぎる!!
花陽が全幅の信頼を置く幽玄の甲冑おばけナイト。
その存在が攻防に睨みを利かせていて、まず断つべきラインはここだと凛は判断を。
そこからは速い!!
-
凛「はあああっ!!」
身を沈めて雷爪の四連撃は『瞬打四連』!
霊体へも雷撃は有効。
痺れたところに背中をあてがい、鉄山靠の要領で爆雷を放つは『雷勁』!!
絵里や希、海未との実戦訓練を経て、凛の技術はさらなる進歩を見ている。
雷勁を受け、相手は必然後方へとたたらを踏む。
脚を踏みしめ、そこへ両掌を突き伸ばして胸部プレートを痛打。『双雷掌』!!!
そして連鎖して生じる隙、瞬時に100にも及ぶ蹴弾はまさに電速!『散華雷脚』!!!!
鋼の耐久を誇るおばけナイトであれ、この超連撃をまともに受けて耐えられるはずもなし。
決めの大技、ギロチンの如き超威力を誇る『御雷槌』を放つまでもなく甲冑を沈め、ここまでのコンボに要した時間はわずかに3秒強!!
残る対象は花陽と見知らぬ蛇人の少女。
凛は雷速の思考で判断を。
凛(蛇の子は無視でいいや。かよちんを気絶させて終わり!!)
-
召喚獣であるラミアは花陽を倒せば消えるため、凛の判断は正しい。
凛はコンマ0.3秒で花陽の前へと歩をずらし、無駄に痛めつけたくはないと『紫電』を選択する。
稲妻のジャブで顎を掠めれば意識を刈り取るには十二分。
眩さに目を瞑ったままの親友を前に、凛は脳裏に万感の想いを。
凛(ずっと離れててごめんねかよちん。きっと大変な想いをさせたよね。もう安心して。凛が絶対にかよちんを守るから。守れるのは凛だけだから。凛と、凛と凛と凛と!!かよちんと凛だけがこの世界にいればいい!!!)
感極まった思考は0.1秒。残された時間は3秒以上。
小数点以下の世界に生きる凛にとって、それは全てを終わらせるに事足りる時間で…
花陽「凛ちゃんっっ!!!」
凛「え…っ!?」
花陽が召喚杖を力強くスイングしている!!
技術も何もあったものではない力任せの一撃、だがしっかりと強振されていて、凛の頭部へと目掛けて横薙ぎに。
何より、凛は意表を突かれて動くことができない!!
-
凛「むむむ…!」
回避している。
ピシリと電が光り、凛は無傷で後方へ。
自動完全回避、『凛カーネイション』が再びの発動だ。
だが、それは凛にとっても電力の減衰を意味している。
今の流れで確勝の算段でいたため、電気の残量は一割以下だ。
なんで?どうしてこんなに早く復帰したの?
そんな凛の疑問が口にされるよりも速く、テレパスで通じているかのように花陽は返事を。
花陽「凛ちゃんが一番隙を見せるのは、雷震を決めた後。だからね、凛ちゃんがカマイタチさんに追いかけられてる間に呼んでおいたの」
花陽のローブの内側から、遠慮がちにパタパタと現れたのは『キンモクセイ』。
戦闘力は皆無だが、要所要所で勝利のキーとなってきた花の精。
彼女が得意とするのは状態異常回復で、閃光による視聴覚の喪失も状態異常。癒すことは可能だった。
故に、花陽の騙し打ちが成立する!
-
花陽「凛ちゃんのことは誰よりも知ってるから。たぶん、凛ちゃんよりも」
凛「さすがかよちんにゃ…」
花陽「でもね…今の攻撃、凛ちゃんが最初に私を狙ってればそこで凛ちゃんの勝ちだったんだよ」
凛「う、そうかも」
花陽「ねえ凛ちゃん。私を守ろうって、無傷で捕まえようって思ってるよね」
凛「それは、うん。かよちんは凛が絶対絶対守るよ」
花陽「ふふ…ありがとう、凛ちゃん。でもね、私はそれじゃ嫌。凛ちゃんと肩を並べて戦いたい。大好きな親友だから、凛ちゃんに並べるライバルでいたい!!」
凛「かよちん…」
花陽「全力で来てよ凛ちゃん!!!私が欲しいなら、私を凛ちゃんのモノにしたいなら、殴ってボコボコにするつもりで来て!!!」
花陽の叫びをじっと聞き、親友の目を見つめ、凛はそこに本気を見て…
ゆっくりと頷く。
凛「………うん。わかった」
そして花陽の視界から、凛の姿が消える。
花陽「が…っ!!?」
-
縮地めいた瞬動はまるでテレポート。
花陽の面前へと現れた凛は、腹部へと『紫電』を!!
顎は狙わなかったのではない、花陽が凛へと語りかけながらも腕と杖でガードしていたために狙えなかったのだ。
そこに凛は花陽の本気を見ている。そして親友への敬意として、放った一撃は花陽の鳩尾へと食い込み、横隔膜を突き上げている。
空気が全て漏れ出し、呼吸ができず視界が白く明滅する。
気絶してもおかしくない一撃に、花陽は腹を押さえてよろめいて…
しかし倒れない!!!
花陽「ゲ、ゲホ…!ぐ、げぇ…っ…!う、ううっ!倒れない…よ。これでわかったよね、凛ちゃん。私は凛ちゃんの、対等な敵だから!!!」
『花陽!大丈夫!?』
花陽「心配…しないで、大丈夫だから!ラミアちゃん!」
-
息を吸い直せば腹回りから全身へと激痛が走る。
肋骨にヒビが入っているのかもしれない。
純後衛の立場上、これまでまともに攻撃を受けたことがなかった花陽にとっては“アバラが折れる”だとかの言葉は漫画やドラマで耳にする定型句でしかなかった。
物語ではポキリポキリとクッキーめいてよく折れるが、実際に痛めてみればこんなにも苦しい…!
だが、ようやく凛と同じ立場に立てた。負傷に心折れない戦士になれた。
そんな気がして、花陽は凛へと強い眼差しを向ける!
花陽「絶対負けないよ、凛ちゃん!」
凛「……凛も。かよちんには負けたくない!」
凛は花陽に一打を決め、すぐさま距離を離している。
今放った紫電でほぼ電力は底。花陽のそばにらラミアも控えている以上、一旦逃げに入って電力の再チャージが望まれる。
凛にとっての花陽は、大好きで大好きで狂おしいほど大好きで、自分の命よりも大切だと断言できる親友。だからこそ負けたくない!!
そして改めての宣戦布告。
凛は一枚の布を花陽へと掲げてみせる。
凛「凛は絶対負けないって、このパンツに誓うよ」
花陽「ん?」
-
花陽は凛が手にしている布切れは薄緑の控えめなデザイン。
小さくフリルがあしらわれていて、シンプルな外見ながらも可愛げを保っているあたりが花陽好み…というか、花陽が今日穿いていた物と同じショーツだ。
ローブの下、下半身がやけにスースーとしている。
……まさか。
恐る恐る手で触れ、確認を。
花陽「え、あれ?それ、えっ?ええっ!穿いてない!?ピャアアアアア!!!?」
凛「言ったでしょ、かよちんの全ては凛の物だって。それはパンツももちろん!!!」
おそらくは紫電の一撃を決めてみせた、そのタイミングだろう。
丈の長いスカート状であるローブの中へとどう手を入れ込んだのかはまるでわからないが、凛は花陽のショーツを盗み取っていたのだ!!
恐るべし妙技!まさに神速!!
激しい戦いの中で汗に湿ったパンツが凛の手に握り締められている!!!
顔を真っ赤にする花陽の横で、ラミアが微妙な表情を。
『そんな暇があれば攻撃すれば良かったんじゃ…』
凛「いい匂いにゃー」
花陽「か、被っちゃダメぇぇぇ!!!ユニコーンさん回復お願い!!」
『あっ、ちょ、今そいつ呼んだら…』
-
凛はパンツを頭に被っている!!
なんという変態行為!ああ、闇の洗脳とはかくも恐ろしいものなのか!!
花陽は羞恥に顔を紅蓮と染め、凛を追いかけて下着を奪還するため回復能力を持つユニコーンを召喚する。
損傷した肋骨を治癒しておきたい。ごくまともな判断だ。だが…
花陽の詠唱に伴い、カカ、カカッと蹄が鳴って現れたのは白き性、もとい聖獣ユニコーン。
ラミアがあからさまに顔をしかめる中、ユニコーンは花陽の赤く染まった顔、そして凛が頭に被っている若草色のショーツを目に…
パカラ、パカラパカラ!パカラパカラとしきりに蹄で地を打ち鳴らす。
『Congratulation…!Congratulation…!おめでとう…!おめでとう…!』
白馬の瞳からは涙が、清廉な岩清水の如く流々と湧き出て止まることはない。
打ち鳴らす蹄は拍手の代替。本能的に悟ったのだ。花陽にとっての永遠の伴侶となりえる少女がそこにいると。
そう。少女、同性。
花陽の純潔は約束された…!おめでとう…!おめでとう…!
ラミアが尾で駄馬の尻を猛烈に殴りつける!!!
『さっさと花陽ちゃんを癒すんだよ駄馬ァ!!!』
『御意に!!!』
凛「なんかそいつキモいしさっさと逃げるにゃー」
花陽「待って凛ちゃぁん!!それを被ったまま行かないでぇぇぇ!!!!」
凛は電撃の再チャージを目的に、ショッピングモールの奥地へと逃走を始める。
傷を治した花陽はユニコーンへと跨り、ラミアとローブの中にキンモクセイを伴って追走を開始する!
ダレカタスケテー!
恥じらいからの悲鳴が響くも、応えるのはユニコーンの荒ぶる鼻息のみ。
戦いは深層へと向かっていく…!
-
…
天から地へ、豪快な断裂が駆け下りていく!!
都市中央に位置する管制塔の外壁が、天辺から地上へと力任せに断ち切られ、こじ開けられていく!!
かさね「脆い脆い脆い脆い脆い!!!!!」
かさねの大鎌が唸りを上げている。
何かのスキルを使用しているわけではなく、この大切断は純粋な斬れ味によるもの。
放浪の間に狩り回った天使たちの中には今のかさねと同じく四つ羽を持つ高位の物もいた。
その天使たちが所持していた武器を元から使っていた大鎌へと取り込み、以前と比べて遥かにその強度を増している。
既に絵里のアルタキエラ、ツバサの二剣などのように伝説級の武器へと存在を昇華させている。
武器を再度練り上げる過程で、意図すれば高名な武器を再現することも可能だったろう。
けれど、かさねは愛用の武器に名を望まない。
幾多の世界で日陰に回ってきた自分たちを重ねるように、大鎌はあくまで“無銘”。
だが、その刃から柄までは最硬かつ鋭利を誇る金属であるオリハルコンで形成されている。
その斬れ味は推して知るべし!
中に働く人々の悲鳴が響く。
突然外壁が上から真っ二つに割れていくのだ、恐怖という他ない!
とは言え、かさねに名もなき人間を殺める趣味も暇もない。
ただ派手に壁を叩き壊し、内部を覗いているのみだ。
かさね「見つけた!」
-
かさねが見出したのは管制室だ。
黒い翼に推力を生じさせ、かさねは室内へひらりと舞い込む。
悲鳴をあげる職員たちに目もくれず、大モニターに表示されている全体構造図をしげしげと観察。
かさね「ふーん、地下にかなり広い空間があるんだね。その一番下にメインコア…か」
「め、メインコアが狙いなのか!?」
かさね「そうそう。邪魔しないでね」
発砲!!
かさねではない。職員がピストルの引鉄を弾いたのだ。
当然ながら、そんな豆鉄砲の一発で負傷するかさねではない。
翼のオートガードを発動させることさえなく、首を傾けて飛来した弾丸を回避して頬を膨らませる。
かさね「邪魔しないでってば」
職員たちへと掌を翳す。
基本となる天使術『聖力』を、詠唱も術名もなしに発動させてみせる!
純粋な力の壁が人々を叩き、一箇所の壁へとまとめて弾き飛ばす。
かさね「モブのよしみ。殺さないであげるよ。へっへ、キミたち棚からモチだねー」
言動はどこまでもシニカル。
だが、飛ばした先は大怪我になりにくい位置、段ボールが積まれた一角へ。
行動こそ狂気じみているが、ところどころには優しさと気遣いを垣間見せる。
現状の暴走もその根にコンプレックスはあれど、親友たちを失ったことがトリガーであり、きっと彼女の本質は優しさなのだろう。
それでも、その瞳は衝動に突き動かされている。
かさね「……もう後戻りはできないよ、かさね」
破壊的な力を下へ向け、床に大穴を穿って下階へ、下階へと向かっていく。
同じく、管制塔の入り口には穂乃果の姿が。
かさねの心に渦巻く敵意を鋭敏に感じ取っていて、吸い寄せられるようにこの地へ。
穂乃果「全てをめちゃくちゃにするつもりなんだね」
互いが互いの存在を本能的に察知している。
穂乃果「それなら…あなたを殺すよ」
邂逅の時は近い。
-
今日はここまでで
-
乙 おめでとう
-
駄馬さん久しぶり
-
『パンツのこと書いてる暇があればもっと進めたら良かったんじゃ…』
-
俺もノーパンかよちんに跨られたい!
-
駄馬とかいうカイジの黒服
かよちんが殴られるの初か…
-
パンツスティーラー星空凛
おめでとう…!おめでとう…!
-
ありがとうじゃなくておめでとうって言うあたり趣深い
パンツをかぶる所作が風流ですらある
-
乙です
>>231
>傷を治した花陽はユニコーンへと跨り、ラミアとローブの中にキンモクセイを伴って追走を開始する!
>>231
>傷を治した花陽はユニコーンへと跨り
>>231
>No Pantsの少女が私に 跨 り ッ!!!
Excellent!!!!!
-
性獣さんキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
-
駄馬のせいでせっかくのキンモクセイの活躍が隠れた感ある
-
駄馬はブレないな
-
りんちゃんはかよパンを
顔に装着したのか
頭に装着したのか
是非細かく描写してもらいたい
-
おうふ…頭にって書いてあったな。
自決
-
変態仮面スタイルは越えてはいけないラインや
-
パンツ被ることによって凛ちゃんの防御力upだな
-
全能力が天元突破しそう
-
闇の洗脳こわいわー(棒)
-
安価無いならコスト考えて契約しなくてもよかったな
-
海未ほどじゃないけど、凛も見方の時は仕事しないのに敵に回ると無駄に強いな
-
凛ちゃんは伝説級の兜を装備したしこれから先頭防具は必要ないね!
ことうみも、ほのパン・ほのブラを装備する事で覚醒したりしないのかな
-
先頭防具に空目した
-
>>247
だが待って欲しい
匂いがするような被り方と言ったら…
フォオオオオ!!!
-
キモチワルイ
-
>>253
イケイケ路線は所属勢力が巨大な時ならある程度成果を収めるというし
ちょっとの判断ミスが死につながりやすい少数勢力時には頭の使い方がモノを言うのは然り
-
>>258
ついでに海未ちゃんの微妙な戦績ってコンマ運によるものが大きいしね
今回は相手が悪かったけど
-
闇凛ちゃんの戦績が良いのなんてコンマが無いからに尽きるでしょ
連打避けるチャンスも無い
-
安価コンマなしはお互いが最善手を選択し続けた場合こうなるってイメージ
-
今帰ってきたから更新もうちょい待ってな
1時ぐらいかも
-
待ってる
-
お疲れさん
無理せずにな
-
…
ヒデコ「う、おわあああああっ!!!」
ヒデコを先頭に、ハイウェイから続々と人影が飛び降りる。
ミカ、海未、フミコと続き、多層構造の魔術都市を数十メートルに渡り落下!!
海未「こ、これは怖いですね…っ!?」
ミカ「やめてよー!クールな海未ちゃんが怖がると余計に怖いっ!」
フミコ「か、風よーっ!!クッションになってえ!!」
四人を包み込むように旋風が。
猛烈な風が巻いて、ふわりと体を浮き上がらせる。
ヒデコ「うひぁ…これ、嫌な感覚!」
海未「あれですね、エレベーターに乗った時のふわっとした…」
フミコ「あ、わかるわかる」
ミカ「言ってる場合じゃないって!上見て上〜!!」
-
上方、高速道路が路面のみならず側面から裏側まで大規模凍結!!!
絵里が最も得意とする汎用凍結術『玻璃の神霜(フラジャイル)』だ。
戦闘用魔術に求められる高峰は、その威力効率と局面対応力の二点にあるとされる。
例えばツバサや穂乃果の『亜空灼火法』や、あんじゅの『泥濘奈落』などは高火力、また殲滅性能で威力面の高みに。
海未の『転移』は移動と防御回避が基本。
だが剣技を活かして攻撃に転用していて、局面対応力に長けた術だと言える。
絵里の『玻璃の神霜』は氷刃としての物理破壊、盾壁の形成による防御、凍結による拘束、ハイウェイチェイスで見せた橋のような足場形成。
そして何よりアスモデウスをも敗北へと追い込んだ攻撃力の高さ。
魔術としておよそ求められる限り全ての要素を高レベルで兼ね備えている。
が、勝つためには当然ながら、それを攻略しなければならないわけだ。
-
そして勝つために、攻略しなければならない要素がもう一つ。
海未(時間停止魔術…!)
ヒデコ「路地に走るよ!」
風に護られて地上へと着地した四人は、すぐさま市街地へと逃走を開始する。
あの大規模凍結がある以上、開けた場所で戦うのは不利を招くばかり!
四人を追い、ハイウェイから絵里が跳躍!
最も戦術に長けたヒデコが指揮を執り、絵里の死角へと逃げ込むべく四人は都市の細道を目指す。
絵里「ふふっ…これはどうかしら!」
地へ爪先を向けた綺麗な落下姿勢のまま、絵里が腕を振るって打ち出すのは10、20…一目には数え切れない数の氷槍!
その技の威力は鉄板を貫くほどだと海未は知っている。
必然、焦る!!
-
海未「あれはまずいですよヒデコ!」
ヒデコ「了解っ!!」
立ち止まって振り返り、ヒデコは炎波の盾を前へ。
盾へ元から備えられた特性、以前に茫龍ケイの魔術攻撃を防いでみせた、氷を溶かす熱気のバリアを解放する。
ドジュワ!と激しい音。
氷が溶けて水へ、蒸気へ!
並の氷魔術であれば十分に防げる効力。
いや、十二卿龍の攻撃を防いだのだから、相当に高位の冷気までに対応が可能な武具だ。
だが絵里の…十二卿龍でも高位の力を持っている耀龍ランスロットの氷は伊達ではない!
フミコ「と、突破されそうじゃない…?」
ミカ「攻撃の量が多すぎる!」
ヒデコ「ちぃっ…海未ちゃん!!」
海未「承知です!!」
-
ヒデコはあんじゅから授かった泥塑の斧と、長い付き合いとなっている炎波の盾を。
海未は闇の空間を生じさせ、武器収納庫としているそこから抜き出すのは“鬼丸国綱”と“数珠丸恒次”の天下五剣が内から二刀。
ヒデコ「ええ…凄い名刀をひょいっと出したね」
海未「体制側に属していた役得ですかね」
二人は肩を並べ、熱壁を突破して飛来する槍を斬る!弾く!弾く、斬る、斬り落とす!!
腕が振るわれ刃光が煌めき、砕かれた氷礫が細雪のようになって一帯に舞い散る。
海未とヒデコ、旅の序盤から長らく前衛として肩を並べてきた二人は今や侍と聖騎士。
互いに上級職へと上り詰め、息を合わせて肩を並べている。
数えること17発目の氷撃を打ち払い、背後のフミコとミカへ届いた弾は一撃となし。
盤石の防御を見せ、しかし四人の顔はなおさら引きつっていく。
ミカ「な、なによ、あれぇ…!!」
海未「出ましたね、絵里の大技の一つ。『氷星剣(エルシエル)』…!」
-
既に地上へと降り立った絵里は逃げていく海未らを見つめ、慌てて追う様子もなく歩を進めている。
その手は指先までがすらりと伸び、美しく天へと向けられていて、頭上に形成されていくのは巨大な蒼氷の剣。
その特性は鋭利な斬れ味、単純な質量による破壊力。さらには強力な退魔の波長までを秘めている。
魔物の類であればひとたまりもなく討滅せしめる威力で、人であればそれ以前の問題。回避に失敗すれば圧殺、ぐちゃみその微塵に切り刻まれて即死は免れない!
あの大質量だ、炎波の盾の熱波をも悠々と超えてくるだろう。
ヒデコと海未の武器で防ぎ止められるレベルでもない。
『転移』で逃げる…否、目的は逃走ではなくあくまで戦闘勝利。海未のマナを無為に乱用すべきではない。
路地に逃げ込むまでにはあと少しの距離があり、『氷星剣』の防御は必須。
ならば、残された選択肢は一つ。
-
絵里「これくらいで死ぬあなたたちじゃないわよね。さあ、どう捌くかしら!!」
海未(それは…絵里、貴女に頂いた力で!)
軌道の空気までを凍らせながら飛来する氷の剣。
海未は右手を面前に差し出し、青く光り輝くのはマナ操作を補助する“蒼の指輪”だ。
旅の序盤に魔術への入門として絵里に与えられた指輪は、今でも海未の支えとなっている。
打ち消しの魔力はいかなる魔術へも一定の効果を発揮する。
短いスパンで連発できないのが欠点だが、避けねば必死のこの場面で使わなければいつ使う!
海未「打ち消しを!!」
蒼光が輝き、一瞬にして大氷塊が瓦解、消滅する!
溶けたり砕けたりではなく、マナの粒子の結束が緩み、術式が分解されたのだ。
海未たちの目には消滅したようにしか見えず、ともかく防御に成功。
そしてそのまま路地へと折れて逃げ込む!
-
ミカ「危なかった…ナイスよ海未ちゃん!」
海未「ええ!このまま一旦距離を置いてしまいましょう」
魔術都市はところどころ、入り組んだ構造の路地が存在している。
四人が駆けていく街の一角は透過するスケルトン調の壁ではなく銀色の素材が多く用いられていて、何箇所かの角を曲がってしまえば死角。絵里から隠れてしまうことが可能だ。
まだ背後に絵里は来ていない。駆けていく四人。
やがて十字路へと差し掛かり、即座にヒデコが方向を決断。
ヒデコ「次の角を左へ!」
フミコ「オッケー!って…きゃああ
っ!!?」
ヒデコ「嘘ぉっ!?」
ヒデコ、フミコ、ミカ、海未の順で走っていた。
先頭二人がほぼ同時に角を曲がろうとして、そこで驚愕に悲鳴!!
絵里「ふふ、遅かったのね」
-
なんとそこには絵里の麗笑。
後方にいたはずがいつの間に回り込んで…!
絵里「そしてお休みなさい」
先端部は剣に近い刃、聖槍と言いつつも実態は矛。
そんなアルタキエラが冷たく光り、二列目にいるフミコへと一撃を突き放つ!!
対多数戦の基本に忠実に、パーティーの軸である回復役を狙う目論見だ。
突然にして予想外の会敵、さらに近接戦に適応していないフミコはまるで反応できず、その胸元へと刃が伸ばされる!
ヒデコ「っ、ぜああっ!!」
絵里「あら、いい反応ね」
斧を振り回し、間一髪のタイミングで穂先を上へと反らす!
ヒデコはその戦術眼に基づき、常時あくまで冷静だ。治癒役のフミコが狙われる可能性は頭の中にあった。
故に、突然の絵里の襲来にも反応が可能だったのだ。
-
初撃を防がれるも、絵里は繰り出した槍をすぐさま引いて突き出す。
するると静かに、しかし銃弾よりも遥か高速で繰り出される一突!
見切り、盾で受ける。と、再び槍が引かれて腕が伸びる。二突!
ヒデコ(突きが重い…っ!!)
絵里(どこまで耐えられる?)
肘の屈伸だけでなく、肩に腰、足捌きまでを活かし、連続の突きが放たれる。
既に狙いはフミコからヒデコへとシフト、穿ち貫かんと狙うは額、肩、喉首!前腕!脇腹!腰部!大腿!膝に脛に踝に跳ね上げて心臓!!
長い柄のしなりを存分に利用し、振動に槍の穂先がブレる。
剣や斧の割に素直な軌道とは異なり、視覚的な受けにくさが加わってくる。
-
盾で、斧の腹で、刃で頭で盾で。
左右の腕が幾度となく交互に一撃を弾き、辛うじて深刻な被弾を防ぎ続けている。
が、攻撃が重ねられるたびにヒデコの体へと軽傷が蓄積していく。
そしてアルタキエラの凍刃は、徐々に傷口から体へと凍結を行き渡らせる!
熾烈な攻防は数秒の間に濃縮されている。
フミコとミカはショットガンへと武器を持ち替え、海未は二刀を構えてヒデコの支援へと前へ踏み出している。しかし間に合わない!!
ヒデコ(肘が氷で…動きが!)
絵里「まずは一人!」
絵里の視線が宙空へと氷のレールを三つ。攻撃軌道を描き出す。
アルタキエラがその軌条に沿って、超高速の連撃を!
-
氷で刃を大型剣の如く補強し、重量に任せた一撃目は殴打。
ハンマーにも等しい重量打だ!
「ぐっ…!」と呻き、斧で受けたヒデコの右腕へと衝撃と痺れ。
これでは数秒、右の動きが封じられてしまう。
氷の刃が形を変える。ひたすらに鋭く刺突に適した形状へ!
滑るように押し出された槍は抉る軌道を腹部に。
刺突、熟達の頂へと達した槍使いである絵里が幾度となく繰り返してきた動作。その速度は凛の電速にも及ぶ。
辛うじて左手が反応…!盾が槍を防ぐも、左手が弾かれる!
右は痺れ、左は弾かれ、鉄壁を誇るヒデコの防御がガラ空きとなり…
残された氷のレールが一本。
絵里は槍を短く持ち、腰と上体を旋風の如く捻り回した。
ヒデコ「……!かはっ…」
絵里「ダスヴィダーニャ、ヒデコ」
-
決着撃は薙ぎ。
憂慮なく真横一文字に振り抜かれた恐るべき一撃は、ヒデコの胸元を真横に裂いて致死に近い傷を刻んでいた…!
絵里の目的は殺傷にない。
四人を捕らえ、海未を含めて再びの洗脳を施し戦力の増強を狙っている。
ヒデコの傷口は瞬間的に凍結され、そのまま動きを拘束すべく四肢に胸部が氷塊に覆われる。
絵里「死にはしない。けれど動けもしない。リタイアよ」
体調がまともであれば力任せに戒めを破ってくる恐れもあるが、今の死にかけたヒデコでは不可能だろう。
残るは三人。フミコとミカがショットガンを構えている!
フミコ「よくも…よくもヒデコに!!」
ミカ「容赦しないんだからぁ!!」
-
お!やってるやってる
作業後の楽しみだ
-
連携!!
呼吸を噛み合わせ、二人は完全なる交互のタイミングで散弾のトリガーを引く!
支給された武器と侮るなかれ。数メートルの至近で高密度の弾丸。
まともに被弾すれば、たとえ絵里であれ重症は免れない!
絵里「まともに受ければ、ね」
軽やかに指が踊り、紡がれるのは折り重なる氷の壁!
幾重にも幾重にも、入念に厳重に堅牢に油断なく形成された氷壁。
二人が放った散弾の嵐にヒビを走らせつつも、見事に受け止めて絵里は無傷!!
ミカ「げげえっ!!?」
フミコ「こ、この距離でも効かないのぉ!?」
と、大仰に驚いてみせる二人はあくまで布石。
海未が転移で、絵里の上方へと飛翔している!
-
コンマがあればヒデコ耐えてたな
-
ヒデコがやられたその直後、高度な判断を下す間などない。
けれどフミコにミカ、そして海未は偶然ではなく共通した意思を持って、即席の連携攻撃を組み上げている。
伊達に小村オトノキ村で、数少ない同年代として育ってきていない。
互いの思考を読み取るなど造作もなし!!
…とは流石にいかない。
三人が今取っている行動は、事前にヒデコが局面別で細やかに組み立てていた戦闘計画の一つなのだ!
海未(プランD。流石です、ヒデコ)
プランDはまずヒデコが倒れた場合の対応策。
盾役である自分が先んじて転がってしまう可能性は十分に踏まえていた。
フミコとミカの斉射は銃撃の光に音に、いかに絵里であれ注意をわずかに削がれるだけの騒々しさ。
そこを付き、海未が死角へと転移を決めて攻撃を!!
-
海未「闇よ、水よ…!『黒水弾(バラクーダ)』!!!」
二刀一閃!!!
轟然と撃ち落とされるのは純粋な破壊力だけを有した斬弾だ!
速度は高速、威力は甚大。
しかし絵里はそこまでを読んでいた…!!
絵里「まだまだ。甘いわね、海未?」
海未「っ!!」
絵里の体からは純粋な凍結のマナ、凄まじい冷気が放出される!
穂乃果のように口から吐き出しはしないが、龍のブレスに等しい性質を持つ大技。『耀氷陣(ミスティール)』を発動させたのだ!
本来であれば凍らせられるはずもない、荒ぶる闇の結集体『黒水弾』が一塊の氷へと変えられ彼方へと跳ね除けられる。
海未は辛うじて『転移』で回避!
瞬時にフミコとミカの傍へ退避を。
海未「すみません…決めきれなかった」
フミコ「気にしない気にしない!まだ私たちは無傷なんだから!」
ミカ「攻め方を変えなきゃダメそうね…!」
-
強がるが、順調にマナは消費されていっている。
倒れたヒデコとの間には絵里が陣取っていて、フミコの治癒魔術も届かない。
状況は3対1へ……
否、否。プランDはまだ終わっていない。
海未の攻撃が失敗するところまでを織り込み済み。それどころか海未の『黒水弾』までが布石なのだ。
ヒデコ(頑張って、三人とも)
ヒデコの意識は失われていない。
それどころか、ある程度にまで傷が回復している。
そう、事前に回復予約『アースヒール』を発動させていたのだ!
絵里の気付かぬところで、未だ戦況は4対1!
互いが互い、魔術にスキルを用いる真剣勝負。
そんな場で格上相手に勝つには、見せていない技をひた隠しに、いかに初見殺しを決めるかが肝要だとヒデコは知っている。
ヒデコが回復術、それも回復予約を使えるというのは絵里が知らない情報。ならば騙し打ちに用いるべき!
だが、死んだふりから素直に斬りかかったところで倒されてくれる相手ではない。
なので死んだふりで、ヒデコは特等席で絵里の観察を!
時間停止を破るのが目下最大の勝利条件。穴はある。必ずあるはず。
完全無欠の術であるなら、既に世界は西木野王の手へと落ちているはずなのだ!
-
海未フミコミカの三人がうるさめの攻勢を掛けて絵里の注意を引いてくれているため、今のところ絵里がヒデコの回復に勘付く様子はない。
その気になれば氷の戒めを解けるが、まだその時ではない。
ヒデコ(考えるんだ私。違和感を見つけろ。
路地に先回りをされたのはまず間違いなく時間停止。
……なら、どうして時間中の追い抜きざまに攻撃を仕掛けなかったの?)
海未が二刀で必死に絵里の攻撃を受けている。
フミコとミカが風雷の魔術と銃撃を織り交ぜて援護。
時間を稼ぎつつ、猛攻を凌いでいる。が、ジリ貧…
心配だが、加勢することがヒデコの役目ではない。
与えられた猶予を思考へ。考察へと脳の全てを傾ける!
ヒデコ(こっちを舐めてるって線はない。絵里さんはそこらの三下とはワケが違う。
ならやっぱり、仕掛けられなかった理由があると見るべきだ。
時間停止を使うまでの行動を思い出せ。そこに何か…弱点があるはず)
時間停止で海未を重症へと追い込んだ。
ハイウェイでの追走戦。
飛び降りて氷槍の乱撃。からの氷星剣による高威力攻撃。
マナ消費の問題?
いや、それなら短期決戦を仕掛けてくるはず。
体への負担が激しい?
考えにくい。二度見て、時間停止の前後で動きや表情に変化はなかった。痩せ我慢ってこともないだろう。
一度目は攻撃を仕掛けてきた。
二度目は仕掛けてこなかった。
初見殺し…
向こうに欠陥があるのではなく、こちらに対応できる策があるのか?
二度目の直前は『氷星剣』で…
ヒデコ(なるほど、そういうこと…なのかな?)
名探偵の如くズバリ!とは行かないが、ヒデコは解法の裾を捕まえることに成功する。
少なくとも、絵里が何を警戒しているのかは理解できた!
-
ちょっと半端だけど今日はここまでで
-
乙!
また凄くいいとこで切るから明日が楽しみすぎるじゃないか!!
-
乙乙
全員生き生きしてて楽しい
-
今更だけど海未ちゃん洗脳解けた状態で闇マナ使いまくっていいの?
-
>>288
力を宿す、そのベースは海未が右に持つ村正。
邪念を叩き折られ、妖力と斬れ味だけを遺した名刀へとことりの光の力、翼の力が流れ込み、そして神々しく輝く剣が海未の手元へと現れる
-
めっちゃ面白い
-
海未ちゃんの指環すごいな
大魔術も打ち消せるのか
-
絵里ちゃんがヒデコに食らわせたの無双三段っぽくて格好いい
-
>>291
地力が上がってるんだろうな
-
オトノキ戦で早々にやられたやつとは思えん
-
なんか王宮の地下でやられた時も含めてツバサに弱い印象
-
付き合い長い四騎士仲間には、致命的なポンコツポイントを見破られていると自己保管しているわ
-
更新は1時過ぎで
-
無理すんなよー
と言いつつ来るのは楽しみにしてしまう
-
おつです
楽しみに待ってる
-
味方の海未は相変わらず弱いなと思ったけど、村正の戦闘経験は無くなってるみたいだし妥当な所か
-
海未が弱いってのよりも絵里が強すぎるんじゃないの?
-
えりち、精神面以外はハイスペックだからなぁ・・・
-
今は話の流れが予めあるからめっちゃ強い絵里もコンマ復活したら弱いんだろうなぁ
弱点は高次元意思
-
海未『破壊剣!!』
海未は武器を持ち替え、闇マナの運用に適した村正へと片手を持ち替えている。
そして防御に長けた数珠丸恒次との二刀へ破壊の力を纏わせ、一撃ごとの威力を上げた状態で絵里に立ち向かう!
絵里「なるほど、受けつつ隙を見出すには悪くない戦術よ。けど…」
海未「な、足元に…っ!」
息詰まる攻防の最中、戟の間を縫ったほんの一瞬のタイミングに、トンと爪先を鳴らしたのは絵里。
対応し、海未の足元から氷塊がせり上がる!
瞬間に発動させた、術でさえない氷のため、尖った形状ではなくそれ自体が海未を傷付けることはない。
が、足の下へと急にツルツル滑る物体が現れたのだ。海未は思わずバランスを崩してしまう!
-
絵里「フラついたところへ…えい♪」
海未「くううっッ!!はあっ!!!」
絵里「ハラショー!上手よ海未。ほら、もっと踊って見せて!」
上体が傾いだ無理な体勢、そこから体幹、全身のバネを使った前蹴りで槍を跳ね上げた!
間髪入れずに腹筋と気合いで強引に頭を引き戻し、刃の削り合いへと寸時の復帰を!
そんな海未のポテンシャルを目の当たりに、敵のはずが絵里は嬉しそうだ。
西の街で指輪を与えたためか、同じ青マナだからか、絵里は以前から海未を気に入っているところがある。
絵里「ねえ海未、私が勝ったら貴女を愛人1号にしてもいい?」
海未「へ!?あいじ…は、破廉恥ですっ!!!」
絵里「隙あり」
海未「どへぁっ!?卑怯ですよ!それに私には穂乃果とことりがいますので、お断りさせていただきます」
-
絵里「ふふっ…二人いるなら三人目がいてもいいんじゃない?」
海未「だ、駄目です!そもそも愛人とはなんですか!愛人とは!」
絵里「ふふ、希がいるもの。んん〜…こうなるとにこも欲しいわね…
いっそ穂乃果たちも加えて、エリチカハーレムを作っちゃおうかしら?」
海未「は、は、破廉恥ですぅぅ!!!」
フミコ「う、海未ちゃん…ファイト!」
ミカ「負けたらヤられちゃうよ!」
絵里「あら、あなたたちも対象よ?」
フミコ「ひっ…!?」
ミカ「め、目が怖い…!」
海未(た、助けてください!穂乃果ぁ!ことりぃ!)
-
海未、フミコにミカ。
三人を見据える絵里の眼光は、獲物を見つけたキューティーパンサーめいている。
…と言っても、あの性愛の権化アスモデウスから“無性愛者”と罵られた絵里。
併せ見るに、おそらく今の言動は海未に精神的な揺さぶりを掛ける意図なのだろう。
だが少なくとも可愛い後輩という意識はあるようで、絶対に手元に置いておきたいお気に入りという点には間違いないようだ。
海未(こ、これは厳しいです!!)
面前、絵里の繰り出す槍術はまるで嵐…いや、ブリザードの如し。
防御戦型である二刀の構えで上下左右へと穂先を打ち反らしつつ、穂先が顔の横を掠めればひりつくほどの凍気に背筋が凍る。
-
とうとうμ'sからまだノンケっていえそうなのが希しかいなくなってもうた・・・
-
海未(ヒデコが軽傷からの氷に倒されたように、擦り傷にさえ警戒が必要…)
受け続けているだけではジリ貧だ。
本来であれば一旦距離を置き、『血霧の太刀』などの遠距離攻撃で戦線を組み立て直す戦術もある。
だが、背後に近接適性のないフミコとミカを庇っているこの状況では迂闊に動くこともできない!
役割の問題だ。後ろの二人が足手まといというわけではなく、援護と回復を担ってもらわねばならない。
今の海未の役目はあくまでアタッカーではなく壁、ならば集中するまで。
刀だけに頼っていては活路が開けない。ここは蹴りだ!
海未「せああっ!!」
絵里「っと、」
体勢を低めて水面蹴りを放ち、それを絵里は小さく飛んで回避。
と、蹴りのままに体を一回転させ、体勢を高くしてローリングソバットを!!
-
節穴かよ
-
>>308
木皿がいる!
-
その挙動は下腿の筋力を限界まで活かしていて、体術を得意とする凛仕込み。
重感の中に軽やかさとしなやかさを覗かせるその動きはどこか雷猫族を彷彿とさせる。
そして単なる蹴りではなく、爪先には以前から暗器の仕込み刃!
海未(これでどうです!!)
絵里(なかなか…!)
効果的な攻撃だった。
絵里は避けつつも、予想外の攻撃に若干ながら体勢を崩す。
その隙へ、フミコが術式を発動させる!
フミコ『ウインドミル!!!』
風で真空を作り出して刃を生成するのは風術における基礎術だ。
それを発展させ、数枚の風刃を連動させて扇風機のように回転する風の車輪を作り出す!
メイスを振り上げる動作に応じ、引き裂く力に特化した風輪が絵里へと襲いかかる!
-
絵里「出が早い。威力もなかなか。いい術ね」
褒めつつ、すぐさま術の欠陥を見抜いてくる。
迫る風輪の中心部を槍の石突きでトンと突き、強烈な冷気を生じさせる。
風輪の中心は台風の目のように凪の空間。
そこへの冷気により空気圧が変化。風の術式が霧消する!
と、理屈はともかく風の斬輪の速度は決して遅くない。
これだけの動作を的確にこなして回避を成功させるなど、とても人間業ではない!
フミコ「嘘ぉ!?」
海未「なんと…!?」
ミカ「まだまだぁ!!『エレクトリックフォール!!!』」
サンダーボール。プラズマボム。ミカの得意とする雷の魔術はこれまでに二つ。
だが、コイズミの里を旅立ってから無為に時間を過ごしていたわけではない。フミコに同じく新術を手に入れている。
-
ミカ(サンダーボールやプラズマボムを撃ってると、空間には雷のマナが少しずつ溜まっていく。
それを敵の頭上に集めて、一気に落とす!!)
上から下へ。
生み出される電撃はマナ操作による擬似的な電流とは一味違え、より本物の雷に近い!
絵里「これも良い技。けど、届かないわ」
玻璃の神霜を発動させている!
茫龍ケイの雷撃を防いだように、氷華を模して形成した盾が雷を受け止め拡散させる。
ミカ「これでもダメなの!!?」
海未(二人の連続攻撃でもダメですか…ならば!)
絵里へ目掛け、海未は二刀を投げ放つ!
凛のように投擲スキルがあるわけでもなく、単純にそこそこの速度で放たれた刃。
が、予想外の行動に絵里が虚を突かれる。
-
絵里(ふぅん…)
海未(素人投げとは言え名刀。避け損ねたなら刺さりますよ!)
絵里「戦い方に柔軟性が出てきたわね…」
生真面目な海未は、刀を取り回すようになるにあたって武術書を読みながらの鍛錬を欠かさなかった。
その性格は素早く海未の技量を達人の域に達させたが、しかし独創性や柔軟性に欠くのが海未の欠点。
少なくとも絵里はそう目していた。
が、ここに来て新たなトリッキーさを見せている!
絵里「弾く!」
絵里は半身を引き、柄を捌き回して二本を叩く。
穂先が斜めに弧を描き、肩より上へと刃が上げられた姿勢へ。
-
一般に言われる前提として、槍に対して刀は不利。
海未と絵里の近接技量は拮抗しているが、一対一でまともにやりあって勝つためには三倍の段位が必要と言われるほど。
ひたすらにリーチの差が物を言うのだ。
海未(なので、投げて持ち替えを)
海未の手には長尺の刀である“物干し竿”が握られている。
それは三尺を優に越える大刀!リーチ差への対策だ。
が、それでも長さは槍に及ぶものでない。焼け石に水か?
否、海未は次の一撃に全力を注ぐつもりなのだ。その技は超高速連続三連突…
海未『無明剣ッ!!!』
絵里「……!!」
-
肉体の限界を越える超人めいた挙動、ほぼ同着で三度の突きが絵里を襲う!!
一つの攻撃機に心血を注ぐなら、刃が少しでも長いに越したことはない。
氷盾を噛み砕いて一突!
構えられた柄と火花を散らし二突!
そして三突目が絵里の肩口を掠める!!!
海未(初のダメージ!!)
絵里(やるじゃない、海未。けど…)
海未(これでは一歩足りない。もう一段上の剣技が必要です…!)
フミコ、ミカ、海未。
三人に行動直後の隙が生じ、絵里にとって絶好の決定機。
一網打尽とすべく、一帯を覆い尽くす大氷結を…!!
ヒデコ(今だ!攻撃っ!)
-
ここが機と見て力任せ。
凍結に皮膚が剥がれるのにと構わず氷の束縛を解き、ヒデコは自由を取り戻して襲いかかっている。
金髪、美しいポニーテールが靡き…
…絵里が振り向く!
絵里「…後ろ!」
ヒデコ「バレたか!けどこのまま…『斧撃乱舞』!!」
戒めの氷を砕いたヒデコが躍り掛かっている!
気付いてはいなかった。だが絵里は的確な反応を見せ、二人の視線が交錯。
ヒデコは手首で捻りを入れつつ、泥塑の斧で連斬を!
足元が削り飛び、空気が轟と裂かれ、縦振りに一撃。
しかし絵里は反応!!
三撃全てを叩き、弾き、挙句踏み込んでヒデコへと肘打ちを叩き込む!
-
ヒデコ「ぐ…っ!」
絵里「傷が治ってる。ふふ…聖騎士ってことに警戒しておくべきだったわね」
フミコ「まだまだっ!!」
ミカ「次は私たちよ!!」
ヒデコが攻撃を仕掛けた一瞬に、フミコとミカはショットガンへと持ち替えている。
絵里に対して牽制にしかならないことは理解している。が、阿吽の呼吸でヒデコが逃れるための間を作るべく連射!!!
再びマナの散弾が猛然と放たれ、絵里が氷盾を作り出す間にヒデコは一歩引き下がり距離を置く。
ヒデコ、フミコ、ミカ。
三人の動きは見事に連動していて、絵里に行動の隙を与えない。
ヒフミトリオの名は伊達ではない!
海未は介入の隙を見計らいつつ、念頭から離れないのは時間停止だ。
どう動くべきか、仕掛けていいものか…
ヒデコ「泥塑の斧よ!!」
-
斧が足元を叩き、アスファルトが剥がれて塊を形成し、泥人形が…
いや違う。立ち上がったのは体長4メートルにも及ぶ巨大なゴーレムだ!
泥人形の使役は技術としては召喚に近い。
南の要塞都市で花陽と合流した際にコツを聞き、小型の泥人形と大型のゴーレムを使い分けられるようになっていた。
巨大な拳が鉄槌と振り落とされ、その威力はビルをも倒壊させるほど!!
一撃、二撃!
三撃四撃!!
電柱を引きちぎり、地面を揺るがし、壁を凹ませて激動!!
石と金属で形成された巨人は絵里をゆっくりと後退させるだけの攻撃力を有していて…
絵里は眼前へ迫った拳へ、そっと掌を合わせる。
絵里「邪魔よ」
-
瞬時、完全凍結。
完全に全身を凍りつかせたゴーレムを槍で叩く。
ヒビが走り…崩壊!!!
絵里「……逃げられたわね」
ヒデコの隠し技は四人が体勢を立て直す時間を稼ぐには十分だった。
初見の技で戦線を組み立て、隙を見出しつつ凌ぐ。
少なくともこの局面は、そんなヒデコの思考通りに事を進められたと言えるだろう。
逃げた、とは言っても本当に逃げてしまうわけにはいかない。
絵里を倒さないことには全てが好転しないのだ。
数ブロック先の路地でゼェハァと息を切らしつつ、四人はここからの戦術を手短に話し合う。
-
フミコ「はぁ、はぁあっ…!怖い!めちゃくちゃ怖い!」
ミカ「なんていうか、クレイジーな感じじゃないのが逆に怖いよ!」
海未「絵里の場合は私や希のように闇の力を使っているわけではありませんからね…
あくまで本人の知性や品格は保たれたまま、敵となっている」
ヒデコ「いやー厄介だね…!」
が、四人はプランDを完遂してみせた。
ヒデコが動いて逃走へと三人を導いたということは、絵里の時間停止を破る算段を見出したという事だ!
三人の期待の目がヒデコへと集まり、頷いて一言。
ヒデコ「魔術についての知識はあんまりないから、あくまで事実からの推測ね」
海未「ええ、心得ています」
ヒデコ「絵里ちゃんが時間停止を使ったのは二度…」
ヒデコは語る。
初見は度外視して、二度目の時間停止に着目するべきだと。
止められる時間はおそらくごく短い。
その上で、万全を期すために攻撃を放ってきた。
氷槍をヒデコと海未が防ぎ、氷星剣を海未が打ち消しの力で防ぎ…
ヒデコ「ここで時間停止を使ってきたよね。で、その直前には海未ちゃんが打ち消しを放ってる。
つまり…青マナの“打ち消し”なら、時間停止を打ち消せると見た」
憶測。だが断言。
ヒデコの眼力を信じる三人は一切の異を唱えない。
が、海未が首を傾げる。
海未「時間を止められて…で、その後にどうやって解除すればいいのです?」
-
海未の疑問は至極真っ当。
時間を止められているということは知覚も思考も停止しているわけで、認識できない相手の行動を解除しろと言われても方法がわからない。
フミコ「なるほど」
ミカ「確かに」
フミコとミカも同調。そしてヒデコの答えを待つ。
当然、ヒデコもそこは認識した上での発言だ。
少し難しい顔をして、海未へと一言。
ヒデコ「海未ちゃん、打ち消しのマナを常時全身に纏い続けることはできる?」
海未「常時?ええ、可能だと思います。あの技は魔力消費も多いわけではありませんし」
ミカ「連発はできないけど、発動させっぱなしは大丈夫なんだね」
フミコ「でもヒデコ、それって…」
今度は三人が神妙な顔になる。
顔を見合わせ、懸念する点は同じと判じて海未が口を開く。
海未「その間は私のマナも打ち消されるので、スキル類をまるでつかえなくなってしまいますが…」
ヒデコ「うん、そうだよね」
-
つまり。とヒデコが示したのは、至ってシンプルな策だった。
ヒデコ「海未ちゃんは時間停止への牽制で、ずっとマナを纏っておいて。
そうすれば、いつ時間を止められても海未ちゃんだけは動けるから」
絵里が安易に時間停止を仕掛けてこなかったのは、海未による解除とカウンターを警戒していたからだ。
海未が常に動ける状態で待機していたならば、それは大きな牽制となるだろう。
プラス、時間停止を発動中は絵里も魔術が使えないと見える。
凍結を使えるならばカウンターを恐れず、四人を一息に氷塊で包み込んでしまえばよかったのだ。
そして、決然とした表情で言い放つ。
ヒデコ「で、絵里さんは…私たち三人で追い込む!!」
フミコ「う、ええ…!?」
ミカ「私たちだけで!?」
ヒデコ「大丈夫、できるよ。私たちヒフミトリオが揃えば!」
力強い言葉!
フミコとミカは顔を見合わせ…そして三人は頷き合う。
幼い頃から一緒に仲良く育ってきて、この三人が揃って出来なかったことなど今までに皆無!!
その様子を頼もしく見つめながら、海未は決意に気持ちを高める。
ヒデコたち三人が絵里を追い込んでくれれば、絵里は形振り構わず時間停止へと持ち込んでくるはず。
そこからは手負いの絵里と海未の真っ向勝負だ。
海未(無明剣では決めきれなかった…今の自分を越えなければ勝ち得ない。勝負です、海未!)
-
今日はここまでで
-
おつおつ
いつも更新ありがとう
-
ヒフミvs絵里ちゃんは厳しそうだけどこのSSのヒデコならやってくれそうな不思議
-
まずは袖に磁石を付けてだな…
-
こいつらちょっと目を離すとすぐハーレムを作ろうとしやがる(歓喜)
-
龍皇クラスに神モブが挑む
-
ヒデコ 「穂乃果!絵理ちゃん捕まえておいたよ!」
フミコ 「ついでに洗脳も解いておいたよ!」
ミカ 「ついでに西木野王も捕まえておいたよ!」
-
ヒフミ有能すぎww
-
>>331
そこで西木野王を殺さずに捕まえておいてくれるヒフミ有能
-
せっかくパワーアップしてラスボスの風格を取り戻したのに
かさねちゃんによってギャグキャラ勢に戻された西木野王カワイソス(´・ω・`)
-
回避したけど死亡コンマ2連発には爆笑したわw
-
30%50%で生き残ったのはなかなかの運だよな
-
あそこでやられて強制契約された方が強者として素晴らしい見せ場が有ったかもしれぬ
-
ちょっと風邪で体調悪いから今日は更新なしで
すまんね
-
おお、お大事に
いつもありがとな
-
インフルも本格化してきたし、御自愛くださいな
-
ゆっくり休んでくれ
-
むしろもっと休んでもらいたいくらいです。毎日お疲れ様です!
-
いつもお疲れ様
-
お大事に
報告してくれると助かる
-
今日まで休むよ
-
お大事にね
-
ゆっくり寝てね
-
更新楽しみにしてます
ご自愛くだしあ
-
多分11時過ぎに更新で
-
ひゃっほー!
-
…
あんじゅ「はあああっっ!!」
あんじゅのダブルセイバーが円を描き、幻惑的な太刀筋が二度、三度と希を捉えた。いや、捉えたはずだ。
だが影の女王スカアハの宿主と化した希の体は刃を透過してしまう。
直撃の瞬間、実体を失して体を影そのものへと変じているのだ。
闇術に精通したあんじゅでさえ理解が及ばない。それほどに驚異的なスキル!
希≪ごめんね。意味ないんよ、それ≫
あんじゅ「なんなのよ…もう」
希≪『影輪(ノラ)』≫
アバドンの黒鎧を纏ったあんじゅは闇に対する完全耐性を有しているのだが、希の影はまた性質が異なるのか耐性を掻い潜ってくる。
-
あんじゅの周囲を薊色の影が円環状に包み込んだ。
輪の中央へと圧力が集束し、動けず、抜け出せず…
あんじゅ「が、ぐ…!?」
ミキサー状に力が渦を巻くのがわかる。
闇が胡蝶めいて飛沫と舞い、内臓を締め上げられるような感覚にあんじゅは息を吐き漏らす。
圧迫、全身が雑巾めいて搾り上げられる。
先に貫かれた腹部の傷から血が滲み、気を抜いてしまい…遥か上方へと打ち上げられた!!
あんじゅ「っ…あああああっ!!」
大劇場のエントランス、天井から吊り下げられたシャンデリアへとあんじゅの体が叩き付けられた。
華々しい音を響かせ、シャンデリアが粉々に砕け散り、降り注ぐ鋭片にも構わず希はあんじゅを見上げている。
-
これが幾度目の負傷だろうか。
砂漠に倒れた副官のマナ、今もあんじゅを守護している白のマナが何度も傷を癒してくれているのだが、それでも追いつかないほどに圧倒され続けている。
全身へと刻まれたダメージは深刻…
アバドンのフルフェイスメット、紅く染まった目元越し。
あんじゅは赫と殺意を燃やす!!
あんじゅ(殺らないと殺られる…!)
強力かつ不可解な力で砲弾のごとく弾き上げられたあんじゅは天井へと全身をめり込ませている。
力尽くで戒めを崩し、地上の希へと全力の降下を!
落下の最中にアクロバティックに宙返りを決め、左手を振るい闇の蝗を弾丸の如く撃ち放つ。
着弾!!
ナパーム掃射めいて床が黒炎を上げる!
赤絨毯のエントランスホールは瞬時に地獄めいた火災の様相へ。
むせ返るような熱気が屋内を包み込む…!
希≪それも効かんよ≫
-
だが希は平静のまま、高熱の中にも反応は希薄。
豊かな表情が抜け落ちたかのように、どこか虚ろに中空のあんじゅを見上げている。
いつの間にか髪が編み込まれ、横へと垂らされている。
闇の淑女とでも称すべきその姿には威圧が漂っていて、漂うオーラに気圧されてしまう。
が、臆してはいられない。生き残らなければならないのだ。
手にした漆黒の棒、その片端へと闇のマナを分厚く固めて大刃を形成。
ダブルセイバーとは異なり、鉞めいた形状へ。
ヒデコと長期を共に過ごし、絆で結ばれ、見稽古ではあるが斧の取り回しには一定の知識がある。
両剣が通用しないならば刃のマナ密度をさらに高めて強行突破するまで!
あんじゅ「これなら、どうかしら…!」
希≪うん…ちょっと危ないかな。それじゃあ、『陰翅(ニルファ)』≫
希の背肩へ、カラスアゲハめいた漆黒の翅が現れる。
薄翅には不穏の色が漂っていて、ゆらゆらとはためくたびに星雲を思わせる鱗粉が空にそよぐ。
-
あんじゅ(綺麗…)
意識を奪われるが、それも間隙。
構わず!
闇の大斧を高々と振り上げ、重量がままに刃を振り落とす。
アバドンの鎧はさながらパワードスーツ。全身の筋力も強度を増していて、闇で足場をかためて蹴る!
猛烈に前方回転しつつ、ギロチンのように落下する刃が希へと襲いかかる!!
あんじゅ「え…?」
希の『陰翅』が生物的に滑らかな動作を見せる。
闇の大斧を包み込み、勢いを殺さぬままに地面へと受け流してみせたのだ。
衝撃!!
あまりの威力に硬質な床が波打ち、レッドカーペットがめくれ上がり、床一面に亀裂が走る…!
だが、どんな威力があろうと外れてしまえば意味はなし。
希は完全なる無傷!
そして、あんじゅの手足が翅に縛られてしまう。
-
手傷を負ってしまっている。マナが残り少ない。
二つの不利な要素もあり、今の攻防で勝負は決してしまった。
そして陰翅があんじゅの武器である漆黒の棒を包み込み、微塵に砕き割ってしまった。
あんじゅ「なんで…」
希≪ごめんね、勝負やから。トドメをささせてもらうよ≫
陰翅が四肢を縛る。
その動きは自在、細く分割され、厚みのない触手を思わせる形状へ。
ごくわずかな隙間から、陰翅が音もなく鎧の内側へ。
一体何を…思う間もなく、ミシリメシリと嫌悪感のある音が。
希は殻鎧を引き剥がそうとしている!
アバドンの鎧は生体レベルで体に密着するものであり、自ら解除しない限りは易々と外れる物ではない。
が、力尽くで…!
あんじゅ「ああああああっ!!!が、ぎ…ぃ…う、あっ!!!ああ゛!あああああああ…!」
-
バキ、メキ…
希の陰翅の力は常軌を逸している。いや、物理的な力ではなく物理法則自体へ干渉しているらしい。
甲殻類の殻を剥がすイメージ…身と殻を割りちぎるように、あんじゅの全身に想像を絶する激痛が走る。
あんじゅの絶叫がエントランスホールへ響き渡る。
鎧が剥がされ、露わになったあんじゅの全身には黒い液体が鮮血の如くこびりついている。
希、スカアハは倒れたあんじゅを温度のない瞳で見下ろし、今度は厚みのない刃状に変形させた翅を四枚に分割し、希の四肢へと突き刺す。
突き刺す。突き刺す、突き刺す突き刺す突き刺す突き刺す突き刺す突き刺す。
手足が鮮血に真っ赤に染まる。
細かに切り傷が刻まれ、貫通して、既に手足は機能を失っている。
衣を裂くような悲鳴が長く長く続き、筋肉と腱を引き裂かれ、たちまちのうちにあんじゅは体の自由を奪われてしまう。
あんじゅにいつもの余裕は既になく、意識を保っているのもやっと…
-
だが、希はその様を見ても感情を揺るがせることはない。
まるで虫の標本をピン留めするかのように、淡々と刃を突き刺していく。
あんじゅ「………う、ぁ…」
既にまともな声も出ないほどの深手。
苦痛が精神の限界を越えたのか、自身の力不足を悔いてか。
あんじゅの瞳から一雫の涙が零れ落ちる。
そして溢れ出る血液と共に、残されていた少ない魔力が体外へと流れ出ていった。
…あんじゅが弱かったわけでは決してない。
二体を宿しているという常識外の希の体質に不意を突かれた腹部への一撃と、連戦によるマナの消耗。
イレギュラーな要因が積み重なっていた。
だが、正当な理由はあれど負けは負け。
生殺与奪の権利は希にある。
細身のスペードめいた形状の四枚の刃が四肢へ、万が一にも動かぬように床へと刺し留める。
貫かれた瞬間、あんじゅの体が小さくピクリと跳ねた。
抵抗はなし。ただそれだけの反応を示す体力しか残されていないのだ。
-
希はゆっくりと馬乗りになり、マウントポジションを取り、力の失われた紫色の瞳をじっと覗き込む。
かつてあんじゅがことりへとしたように、瞳を通して互いのマナを循環させ、その本質を見透かす行為。
スカアハの冷たいマナが骨身へと浸透し、あんじゅは瞼の裏に明確な死の影を見る。
あんじゅ「………」
希≪うん、大体わかったわ≫
希特有のイントネーションでの喋りなのだが、底に血が通っていない。
肌が泡立つような寒気を感じるのは、出血のせいだけではないだろう。
そして希は薄く、ごく薄くだが、口元を歪ませ…
あんじゅの頸部へと指を掛ける。
希≪ヒデコちゃんには申し訳ないけど…さよならやね≫
あんじゅ「……か…っ……は…」
希に躊躇はない。
徐々に、徐々に指の力が強められていき、気道が狭められ、圧搾に視界が白く…
……失った家族、部下たちの顔が脳裏へと映し出される。
あんじゅ(走馬灯の類、なのかしら…)
-
必然の成り行き、悪人ばかりとはいえ、多くを殺めてきた。
不必要に奪った命は一つとしてない。だが、それでもきっと多すぎた。
幸せに死ねるはずがないとは思っていた…
そもそもアバドンに飲み込まれて消えるはずだった命。
それをヒデコに救われ、しばらくの幸せを。少しのおまけをもらったようなものだったのだ。
スカアハを宿している希の口調は穏やかだ。
表情にも鬼気はなく、あくまで淡々とした様子に見える。
だが…臨死の際、目に映る。
希の顔には薄らかではあるが、確実に愉悦が宿っている。
アバドンのような悪魔とは違う。
イプセンのような魔人でもない。
けれど、スカアハもやはり闇の眷属なのだ。
ついに喉骨をへし折り、気道を押し潰さんと希の指に万力の圧が込められる。
-
希≪は、はは…!≫
あんじゅ(駄目ね…この子も、このままだと人格を食い潰される。それは死…)
ついに希は爛とした目であんじゅへと顔を近付け、死に様を拝もうと瞳に深淵を浮かべる。
上品を装おうとそれは上辺。
“死”という黒に惹かれるのは闇の眷属の特性なのだ。
今際の狭間、あんじゅの心に宿ったのは純粋な意思。
同じ闇に苦しめられている希を救いたい。救われるのが自分だけであっていいはずがない…!
あんじゅ(お願い…アバドン)
希≪お、っと…!≫
あんじゅは口内へとマナの残滓をかき集め、黒蝗を一匹吐き出した。
予想外の抵抗に希の手が放され、あんじゅの肺腑へと空気が取り込まれて咳き込む!
-
一気に酸素が全身を駆け巡り、脳に思考が戻ってくる。
だがそれは新たな絶望。正確に状況を認識すればするほど、どうにもならないことがはっきりと認識される。
マナは今ので底。
吐き出した蝗に特殊な能力があるわけでなく叩き落とされ、四肢は未だ闇の薄刃に貫かれたまま動かない。
希は気を取り直した様子で立ち上がり、静かな殺意を湛えてあんじゅの頭蓋へと靴底を乗せる。
そのまま力任せに頭を踏み砕こうというのだ!
頭が軋み…それでも諦めない。
諦め癖はもう捨てた!
あんじゅ(私は諦めない…!!)
希≪……ごめんね≫
にこ『ラブにこ…ケンカキィィィック!!!!』
希≪へ?≫
顔を上げると眼前に矢澤!その靴底!
ジェットパックを吹かして決断的な飛び蹴り!!!
-
希≪へぶぁっ!!?≫
陰翅でガードを試みるも、底に鉄板を仕込んで重量と威力を補強したにこの足が希の顔面を捉えた!!
ラブにこケンカキックを受けてよろめく希。にこは一瞬ジェットを停止し、再度噴射!
体を器用に横回転させ、延髄斬りの要領で回し蹴りを繰り出した!!
わずか数秒、ここまでが不意打ちの範疇!
希は受けに回した陰翅ごと、クッションしきれずに10メートルを吹き飛ばされる!
希≪っぐう…!?≫
にこ「ぬぁぁにが闇よ!!にこより目立ってんじゃないわよ!!」
希≪ひ、久しぶり…そして頭おかしいんちゃう!?いきなり蹴りって!≫
にこの蹴りにより、あんじゅは死の淵から解放される。
その背を抱え起こすのは英玲奈だ。王宮地下で束の間の再会を果たして以来。
幾度となく肩を並べてきた四騎士。
これ以上なく心強い援軍に、あんじゅは深々と息を漏らした。
-
おぉきてた!この時期だしお体を大事にねー
しかしもしこれ克服できれば希の強化っぷりが凄いことになるな
-
あんじゅはもう生き延びても四肢が機能しなさそうだな
-
パイセンが助けに来た安心感すげえ
-
あんじゅ「え、れな…」
英玲奈「頑張ったな…あんじゅ。お前は私の、四騎士の誇りだ」
あんじゅ「ふふ…相変わらず、おおげさ…ね…」
そこであんじゅは気を失う。
助かった。もう大丈夫。役目は終えた。
諸々、悔いるべき点を投げ打って安堵に身を任せてしまえるほどに、四騎士同士の絆と信頼は篤いのだ。
そう、役目は終えている。
闇の瘴気と腐毒を操る『堕醜王イプセン』は、闇への耐性を有するあんじゅでなければ苦戦と損耗を強いられる相手だっただろう。
それを単騎で討ち取ったのだから、あんじゅには休む権利がある。
手足から力を抜き、浅く息を立てるあんじゅの頬を撫でる。
英玲奈は仲間へと最大の敬意を表し、床へと横たえたあんじゅを庇って前に立つ。
床を転がった希は立ち上がり、ペースを乱されたことに不服げな顔を一瞬浮かべる。
深呼吸…スカアハを礎とした冷然を取り戻した。
-
希は足元から闇の網を拡げる!
広範囲に『紫罰』を放ち、にこに英玲奈を一網打尽にしようというのだ!
だが、この二人が来れば当然ながらもう一人。
真姫「私もいるわよ!!輝け…フランベルジェ!!」
女王の剣が触媒たる性能を十全に発揮し、影を打ち払えるだけの輝炎を生み出す。
そして炎を拡散させ、闇術の影を薙ぎ払ってみせた!!
真姫「……随分、雰囲気が変わったわね。希」
希≪……これがウチの真の姿。心配しないで、苦しみはない。とっても気分がいいんよ≫
にこ「ふっざけんじゃないわよ!や、違うわね…
ふざけなさいよ!!真面目くさった顔して…アホか!クソ寒いのよ!
極限でもふざけるのを忘れない。それが東條希でしょうが!!」
一方的にまくし立て、そんなにこへと希が向けるのは影の女王たる視線。
もう乗せられることはない。静かに敵と見做す…それだけ。
にこは打てど響かぬ希へ舌打ちを。
次いで、英玲奈が口を開く。
-
英玲奈「私にとって真姫は主、四騎士は戦友。
希…君とにこは、私にとって初めての純粋な友達なんだ。
そして知っているだろうが、私はとびきり友達想いだ。殴ってでも、噛んででも、意地でも。君を元に戻してみせるぞ」
淡々と静かに。
けれど、その中には燃える決意と情熱が秘められている。
さらに真姫が希へ語りかける。
真姫「あなたが連れ出してくれて、私の世界は変わった。
王宮だけ、真っ白な壁に囲まれた白紙の世界。そこに鮮やかな色をくれた。
今あなたが闇の中に…真っ暗な中にいるなら、今度は私が助ける番よ、希」
希は答えない。
親友である三人の言葉に奥底の心は動いたのか、その表情からは察せない。
言葉への返事は…
希≪『鬼吼葬(エンケルヘイル)』≫
真姫『炎閃(フレイムタン)!!!』
技をぶつけ合う!!
衝撃が拡散し、エントランスと劇場を隔てた壁が崩れ落ちた。
希は影のように劇場内へ。
英玲奈はあんじゅを安全な位置へと横たえ、そして三人も後を追う!
-
衝撃にシステムが誤作動したのか、大劇場の中には明かりが煌々と灯されている。
1000を大きく超える席が連なっていて、その合間を三人は並び駆ける。
ステージの幕は上がっている。
その手前から伸びる花道には希の姿。
影で紡がれたドレスを身に纏い、壇上の照明を背に、普段見せる笑顔とは異なる神秘的な艶笑を浮かべている。
希≪みんなはウチの大切な友達。だけど、今はそんなこと関係ないんよ≫
にこ「はん。生憎、シカト食らうのが一番嫌いなのよ。目ぇ覚ますまでぶん殴ってやるわ!」
高まる開戦の機運。
希は影の翅を、三人はそれぞれの武器を構え、タイミングを見計らい…
背後、壇上のその上からするりと二人の人影が。
いや、ありえない。どこからそこへ?
天井をすり抜けたとしか…
そこで全員が、現れた二人の姿に息を飲む。
涼「雪ちゃん、ここは?」
小雪「ごめん涼ちゃん、場所を間違えたみたい…」
涼「構わないさ。どうやらここは劇場…役者が五人。ふふ、胸が高鳴るね」
相川涼と白瀬小雪。
熾天使ウリエルこと山田博子が障壁の破壊のために派遣した二人の天使だ。
天使の力は翼の枚数に現れる。
小雪は四枚。そして涼は三対六枚。その意味は…
希≪へえ…≫
英玲奈「ここで熾天使のお出ましとはな…!」
-
今日はここまでで
-
超乙
エレナと相川ちゃんは何気にイケメン女子対決やね
-
乙!
サイド三つ編みの黒ドレスのんたんとかラスボスの風格あり過ぎw
-
乙な
ほんとパイセンすき
-
乙
そういえば真姫ちゃん達にとって旅の始まりはこの四人だったっけ
-
にこのとりあえす「ラブにこ」って付けときゃオッケー的なネーミングセンス大好き
-
陰翅(ニルファ)って格好いいな
闇術は特に格好いいのが多いわ
-
ニルファがあるならサルファもあるかな?
-
サルファマスタード?
-
ラブにこツァーリボンバ
-
鎧ごと皮膚剥がれたかと思ったわ
-
今帰ってきたから更新遅くなるよ
1時までには
-
おつおつ
書いてくれるのは嬉しいけど病み上がりだし無理しないでね
-
麗人と美女。
現れた二人の天使は見目麗しい相貌に、ピンと筋の通った所作を身につけている。
とりわけ目が行くのはやはり六枚翼の熾天使だ。
美しく装飾された貴族服に袖を通していて、真姫らへと軽やかに微笑みを見せる。
右足を引き、右手を体へと添え、左手を水平にして一礼。
涼「ワタシは相川涼。またの名を熾天使ガブリエル」
Bow and scrape。
貴族式の礼を見事にこなしてみせ、真姫たち三人はその立ち振る舞いの美しさに息を飲む。
纏う“雰囲気”に圧倒されるままに接近を許し、そして涼と名乗る天使は跪き、真姫の手の甲へと口付けをしてみせた。
涼「以後お見知り置きを。美しき姫君」
真姫「ヴェェ…!よ、よろしく…」チョロッ
にこ「ちょっ、何してくれてんのよこのイケメン風女!あとチョロってんじゃないわよ真姫ィ!!」
英玲奈「ま、真姫に口付けを…この無礼者!手討ちだ!手討ちにしてやる!」
-
くるりと踵を返し、ギャアギャアと騒ぐ三人を背に悠々と歩く涼。
その仕草の全てには自身の実力への自信が漲っていて、それは敵をも寸時魅了するほどのユニセックスな美しさへと繋がっている。
と、もう一人の天使は垂らした両手の指を組み合わせ、儚げな表情の中に若干の不満を見せている。
小雪「手にキス…」
涼「安心して。大切な人は雪ちゃんだけさ」
小雪「涼ちゃん…」
希「あの、参加するならイチャついてないで自己紹介はよ済ませてくれんかな。ウチはもう臨戦態勢なんよ」
小雪「あ、ごめんなさい。私、白瀬小雪。涼ちゃんと同じ天使」
にこ「なぁんか緊張感に欠けるわね…」
小雪の姿は麗人然とした涼とは対照的。
藍色のドレスは少女としての美を強調していて、指先にまで細やかな神経が行き届いた姿はバレエダンサーを思わせる。
六枚翼の熾天使、それは理事長と山田先生を含め、四人しかいないはずの天使側の最高戦力。
その一人が眼前に降り立ったとなれば、極限の警戒で対するべきだろう。
-
涼「それにしても劇場とはね。ワタシたちにお誂え向きの舞台だよ、雪ちゃん」
小雪「そうだね、涼ちゃん」
真姫「……マイペースね」
英玲奈「天使というのはどうも人間とは感覚が違うらしい」
理事長、山田先生。
二人の熾天使と相対した経験のある英玲奈は、高位の天使は敵対していても敵意をあからさまにしてこない傾向を知っている。
そもそも管理者を称する天使たちは、人間側とは違い戦闘という感覚が薄いのかもしれない。
下位種族である人間が反旗を翻したところで、例えるならば大人が暴れる幼児を宥めるような感覚で見ているのかもしれない。
そんな考察を英玲奈が手短に述べ、共にプライドの高い真姫とにこは頬筋を引き攣らせる。
真姫「そう言われると腹立つわね…」
にこ「ムカつくのよ!!」
両手へと銃を引き抜き、すかさず引鉄を弾く!
-
にこの発砲には躊躇がない。
抜き放って撃つまでに0.2秒を要さない高速。それを両手でこなしてみせるのがにこの腕前だ。
左手で希へ、右手で小雪へ。
マナで生成された物理弾を二発ずつ!
希≪ふふ、流石はにこっち。話が早くて好きや≫
小雪≪小雪には当たらないよ≫
希の体は影のように弾丸を透過する。
あんじゅとの戦いで見せた回避技術だ。
同様に、小雪も弾丸を透過して無傷。
着弾の瞬間に体が白い光へと変化したようにも見えた。
にこ「チィッ…たまには普通の奴と戦わせなさいよね!」
にこは攻撃の空振りに悪態を吐くが、しかし透過能力を確認できただけで小手調べとしては上々。
真姫は希の透過を考察する。
-
真姫「さっき、にこちゃんのの蹴りは当たってたわよね。不意打ちなら通るのかしら?」
にこ「不意打ち?ふん…仕込み武器を使うにはもってこいね!」
真姫「同じ透過なら、あっちの天使も同じ…?」
小雪≪………≫
英玲奈は輝剣エクセリオンを手に、砲の制御盤が付随したガントレットを面前へ掲げた姿勢。
静かに天使二人の目的を考察している。
まだ防壁が破られた報告はない。おそらくだが、白瀬小雪と名乗る天使の透過能力で侵入してきたのだろう。
目的は…
英玲奈(制御装置か)
-
メインコアとは別に、防壁の制御機構が地下に存在している。
そしてその場所はこの近辺。
普通には英玲奈でも易々と立ち入れない警備体制なのだが、透過能力があるならば…
英玲奈「ここで止めなければな」
希≪天使だかなんだか知らないけど、まとめて黙らせる。それだけや≫
英玲奈たちに希、それぞれが戦いへとなだれ込もうという中、天使の二人もようやく武器を手に身構える。
涼「いずれにせよ対決は避けられないようだね。ならば、こちらは姫君を守るとしよう」
英玲奈「なんて芝居がかった口調で喋るやつだ。大時代にも程があるぞ」
にこ「アンタも結構似たようなもんだけどね」
英玲奈「え?」
小雪「涼ちゃんには、手を出させないから」
-
小雪が背伸びをし、涼の頬へと軽くキスを。
人前にも関わらず、二人に一切の照れはない。
涼は小雪の頬へと手を添え、愛しげに撫でて見つめ合い…
にこ「ああもう!何よコイツら!二人の世界かましてんじゃないわよ!」
真姫「イチャつきたいなら帰りなさいよ」
希≪にこっちと真姫ちゃんがそれを言うんやね…≫
にこ「は?」
真姫「何がよ」
ビィィィ…と機械音。
先の衝撃に機械が誤作動を起こしたのだろうか、鳴り響くのは開演のブザー。
英玲奈(私が行くぞ!)
最初に動いたのは英玲奈。
にこと真姫に短く目配せ。突撃の意思を示して即座に突撃!!
-
今宵は満月。
野生を全開に「グゥア!!」と咆哮を猛らせる。
ホール内の座席を蹴り壊し、四方へと見境のない猛進だ。
攻撃の対象は三人、英玲奈は目的を定めぬ高速移動から跳ね上がり、天井を蹴って天使の二人へと落下する!
涼≪お相手しよう≫
英玲奈「ヴゥゥァア!!!」
涼は腰からレイピアを抜き放つ。
細身で刺突を主とする武器だが、マナで強化し英玲奈の剣を受ける!
だが英玲奈の攻撃はそれに留まらない。
十字状に交錯した刃の上で器用にバランスを取り、手首を捻ってレイピアの柄へと体重を掛け、まるでカポエイラとばかりに空中で体を回して横蹴り!
涼≪ふふ、なかなか≫
-
熾天使の翼がそれを受けている。
それは攻防に機能するマナの高密度結集体であり、この間合いで触れ続けるのは危険!
天使である以上、精神破壊の技を持っていると見るべきだ。
英玲奈「オオ゛ァ!!(食らえ!!)」
深度の深い人狼化に人語を発せずとも、英玲奈の冷静な思考は冴えたまま。
すかさず砲を作動させ、熾天使へと四連砲火を叩き込みつつ反動で後方へと逃れる!
英玲奈(が、無効か)
涼は六枚の翼で身を覆い隠し、見事に防御を成功させていた。
英玲奈の人外の動きを目の当たりに、興味深げに目を細める。
涼「人狼の力、面白い」
小雪「涼ちゃん、怪我はない?」
涼「大丈夫。これくらいならね」
-
状況は三勢力、一人である希は慎重に状況を見極めている。
にこは油断なく希へと目を配り、真姫は戦況全体へと着目。
英玲奈が砲撃の勢いに任せ、仲間二人の元へと飛び戻る。
ピリつく膠着の中、熾天使の目が希、真姫、英玲奈、にこと順に見据えていく。
涼「見事な役者揃いだね。魔女、姫君に騎士…」
真姫「希、私、英玲奈のこと?」
希≪キザな子やな…≫
にこ「ちょっと、にこは何よ」
涼「君は…ふふ、さしずめスカラムーシュかな?」
にこ「ハァ?すか…?」
真姫「黒い服のピエロよ。よかったわね、ピッタリじゃない」
にこ「ああん!?誰が道化よ!!?」
怒声一番、にこがジェットパックを吹かす!
にこ「真姫ぃ!」
真姫「本当にやるの…?どうなっても知らないわよ。飛んできなさい!!」
ぴょいと小ジャンプ。からの真姫!
大剣の腹でにこの靴底をスマッシュ!!
ジェット噴射の勢いと相まって、にこの小柄な体が宙空を爆発的な速度で側転していく!
涼「な…」
小雪「…え?」
希「は…!?」
にこ「に゛ごぉぉぉおおおお!!!!」
狂気の回転兵器パンジャンドラムめいた超回転。天使二人に影の女王と化した希、三人全員が呆気に取られてしまっている。
空中突撃を敢行しながらも、両手で銃を乱撃!!
弾丸が嵐の如く劇場の中を乱れ飛んで敵を牽制。
涼と小雪は翼でそれを防ぎつつ、涼は剣、小雪は魔術の狙いを希へと定めている。
天使はまず三勢力の構図の単純化するため、希を仕留めてしまう狙いらしい。
英玲奈「まずい!真姫!」
真姫「わかってるわ!」
真姫たち三人の目的はあくまで希を救い出すこと。
天使たちに希を倒されてしまっては困るのだ。
故に、敵である希を守るべく二人が動く!
真姫(ああもう!ややこしい戦況ね…!)
-
眠いから今日はここまでで
-
おつかれー
今日も華麗な更新でした
-
おつおつ
ゆっくり休むんやで
-
乙な
いつもありがとう
-
おつ
>>1の「に゛ごぉぉぉおおおお!!!!」ほんとすき
-
ラブにこパンジャンドラムで草
-
王国から脱出した四人が劇場で集結。今度は姫を救ってくれた魔女を救う
すごくいい(小並感)
でもこののんたんめっちゃ強そう
-
おつおつ
ゆっくり休んでください
-
にこまき(物理)
-
全身の皮剥がされて四肢をずたずたに切り刻まれ、応急処置もなくその場に放置
アバドン倒しても不幸体質は全く改善されてなくて草
-
>>403
フラタニティあるから回復されてていいんじゃない?
-
不幸になるほどレズパワーが増しそう
-
パイセンたち回復要員いないからね…
-
まだ家に帰れてないから今日は更新無理かも
ちょっと今週は忙しいもんで申し訳ない
-
1月は忙しいよな
お疲れさん
-
報告してくれるだけありがたい
乙です
-
なぁに、待てば待つほど更新の喜びが大きくなるってなもんだ。
>>1のペースで更新を続けていってもらいたい
-
楽しんでるよー
体に気をつけて
-
待ってるよー
-
連疲れが溜まってるんだったら休んでもらっても構わんよ?
-
やっぱり安価やコンマを廃止にしたら飽きちゃった?
-
大学生なんでしょ
今テスト期間だし
-
今日は12時頃更新するよー
-
ニートが久々に働いたから疲れて更新出来なかっただけだろww
-
新年早々働くニートはいないだろ
大学生のテスト期間、早い所はもうやってるのか
-
>>418
新年早々wwww
お前いつまで正月気分なの?w
あっ お前もニートで年中休みだからわからんのか
外に出ろよwwwwwwwww
-
あからさまな荒らしだし管理スレに通報したら?
-
>>418
無理すんなよ…といいつつwktk!
-
アンカーまつがえたorz
>>416
無理すんなよ…といいつつwktk!
-
まきちゃん一行の皮剥ぎリョナが見れるのか
-
熾天使ガブリエル、相川涼の能力は当然ながらに高い。
熾天使の域へと力を高めたのはごく最近のこと。理事長と山田先生の二人に比べれば力は若干劣る。
それでも天使術の基礎である『聖力』を放てば鉄壁をも砕き、精神汚染系の術式も理事長には及ばないながら、高レベルで使いこなしてみせる。
何より、彼女の特色として挙げられるのはその剣技だ。
右手に握るは護拳鍔のレイピア『クルセイダー』
人類よりも優れた文明を有する天使たちの技術の粋として作り出された名剣。
これをフルに活かし、近接戦を主として正面きっての立ち会いを信条としている。
下位生命体である人間に対して礼節など不要。
天使たちにはそんな思考の持ち主が多いのだが、反して“上位生命体に相応しい振る舞いを”とノブリスオブリージュめいた考え方を持っているのが涼だ。
-
敵を侮らず、かつ正々堂々と。
相手へとリスペクトを。何をしてきてもおかしくないと踏まえて動いている。
故に、弾丸を撒き散らす暴走車輪と化したにこが突っ込んできても慌てずに対応を。
涼(防御は私が。雪ちゃんは構わず攻撃を仕掛けてくれるかい?)
小雪(うん、わかった)
にこ「でぇぇえええりゃああ!!!!」
ジェットパックを全開に空中を恐るべき速度で側転しながらも、方向感覚を失ってはいない。
それでいて攻撃の行き先は弾に聞いてくれとばかり、予見しにくいテンポとタイミングで天使二人へと弾丸が向かう!
涼≪火を吹きながら回る姿、まるで座天使だね≫
にこ「なんだか知らないけど蜂の巣になれええええええ!!!!」
涼≪フフ…そうはいかないさ!≫
-
体の軸をブレさせず、涼の剣先が踊る。
肩の角度がわずかに動き、面前へと差し出されていた刃は体から水平へ移動。
傍目にはただそれだけの変化しか見られない。
が、英玲奈の動体視力はその剣閃を微かに捉えていた。
英玲奈(なんだ、あの動きは…!)
腕を鞭の如くしならせ、にこが双銃で放った17発にも及ぶ弾丸の全てを的確に切り落としている!
その動きは光速!
人間であれば腕や関節が悲鳴を上げて壊れてしまうだろう。しかし並行して自己治癒を施しているようで、腕に負担が掛かった様子は見られない。
人間とは明確に異なる剣術!
そもそも刺突武器であるレイピアで斬撃をこなしている時点で、まるで違う技術体系と考えるべきだろう。
そして涼は縮地めいた足捌きを見せる。
にこが飛び転がっていく方向へと瞬間的に回り込んだのだ。
今のにこが急激に方向を変えることは難しい。斬られてしまう!
-
英玲奈「にこ!」
真姫「にこちゃんは大丈夫!希を!」
英玲奈「ああ、頼むぞ!」
白瀬小雪が希へと向かっている。
希も全身から影を滲ませていて、易々とやられるとは考えにくい。
それでも相手は天使、警戒に越したことはない。英玲奈は介入を狙い駆け出す!
涼≪斬らせてもらうよ≫
このまま進めばにこの先に待ち受けるのは死。
目視できずとも、涼の剣技の恐ろしさはにこと真姫の二人にも理解できている。
にこ「ちょ、やば…真姫ィ!!!」
真姫「わかってるわ…よおおおおっ!!!!」
唐突!真姫がフランベルジェを振り上げた!
面前、長大な大剣を抱えるように持ち上げる様はまるでマグロの一本釣り。
と、よく見れば刃に細く頑強なワイヤーが巻き付けられている。
-
真姫が剣を上げたと同時、鋼線が一気に引かれてピンと張り詰める。
その先端を視線で辿ればにこの手首にあるワイヤー射出機構。にこの体がグイ、と引かれ…跳ね上げられる!!
真姫「どっせえええい!!!」
にこ「うっ、ぎゃあああああ!!!」
にこはコントロールを失しつつも、ジェット噴射を停止して涼へと向かう突撃軌道から逃れる。
高速突撃から急速なブレーキ、さらに宙を振り回され、にこの腕がギシギシと痛む。
にこ(痛たたたたァ…!緩衝機構を組み込みまくっておいて正解ね!)
真姫「ぎぎぎ…!」
真姫の腕が唸る!
母の下で過ごした期間、大剣を振り回すために筋トレを繰り返してきたのだ。
四肢、背筋が見事にパンプアップ。歯を食いしばって唸りつつにこを回避させてみせた!
涼≪空中に…面白い戦い方をするね、キミたちは≫
-
構わず、涼は剣を振り抜いた。
レイピア状の剣、『クルセイダー』の刃渡りはおよそ70センチほど。
だが、死天使の斬撃はその刀身からはまるで想像し得ない範囲へと拡散する!!
にこ「っ、!」
ワイヤーに振り回されていたにこは瞬間的にジェットパックを再噴射。空中で体の位置をずらす…
斬閃!!!
およそ8メートルほど離れた位置、空中。
硬質なワイヤーが見事に鋭断される!
にこ「やばっ、吹かしてなけりゃ死んでた……」
パラ…と、上から破片が落ちる。
にこと真姫は頭上へと目を向け、驚愕に息を飲む。
にこ「って、ちょっと嘘でしょ!?」
真姫「ヴェェェ…!」
-
遥か上方の天井を視認し、にこと真姫は驚きの声を上げる。
涼が振り抜いた斬撃軌道に沿って、劇場の天井が斬り崩されているのだ!!
つまり相川涼の間合いは十数メートルに及ぶ。
否、相手は天使の最高峰。“それ以上”を考えておくべきだろう。
にこは真姫のそばへと舞い戻り、慄然とした表情で呟く。
にこ「なぁによアレ。ふざけた性能して…」
真姫「にこちゃん。あの技、連発はできないんじゃない?」
にこ「む…確かにね。あれをブンブン振り回しゃ勝ちなんだし、それをしてこないってことは…」
涼≪フフ、その通り。けれど私の力がそれだけだと思わないことだね≫
真姫「っ、来る!」
-
翼をはためかせ、涼が二人へと突撃を!
六翼から生み出される速度は凄まじく、瞬間移動めいて眼前へと現れた涼の剣を真姫は辛うじて受ける!
真姫「ぐ、う…!」
重ねられる斬撃、鋭く抉り込むような刺突。
大剣を盾のように操り防ぐが、小回りのまるで異なる細剣を捌くのは容易でなく、真姫はすぐに体勢を崩されてしまう。
苦し紛れ、全力で逆袈裟の振り上げを放つ!
真姫「受けなさい!『炎閃っ!!』」
涼≪ワイルドな姫君だね。だが…そう甘くはないよ!≫
真姫「わわっ…!?」
細剣の腹でフランベルジェの柄を抑え、体を半身に捌きながら斜めへと受け流す。
真姫の炎閃は明後日の方向へと逸れ、いつの間にか涼の左手にはマインゴーシュめいた短剣が握られている!
真姫の剣は高く振り上げた直後。
胴体は完全なフリーとなっていて、真姫の顔面から血の気が引く…!
-
真姫(これ、死…!)
涼≪おやすみ、赤の姫君≫
真姫の脇腹へと真っ直ぐに刃が突き出される!
そこへ割り込むのはにこだ!
真姫「にこちゃん!」
にこ「いちいち…キザったらしいのよ!!!」
涼≪おや…面白い武器を使うね!≫
にこが握っているのはマナ光で形成された刃。
涼のレイピアより少し短い刀身。
魔動四輪などの燃料として使われる濃縮マナの、さらに濃度が高い物を束へと組み込んでいる。
にこの貧弱な魔力を効率よく活かすために考え出した手段。
わずかな魔力をトリガーとしてピンクに輝く刃が形成され、涼の『クルセイダー』と切り結べるだけの名剣が生み出される!
-
にこが蓄えた豊富な武器知識を活かし、ゼロから作り上げたオリジナルの武器。
それを右手に逆手持ち。振り上げ、涼の短剣を真姫から逸らしてみせた!
にこ(まだまだ!)
左手には銃を握っている。
互いの呼吸を認識できるほどの至近距離から連射!!
にこ「これならどう!!」
涼≪いや、無駄さ≫
この距離からの発砲であっても、熾天使の翼は銃弾へと反応を示す。
にこがクイックドローで放った5発全てを翼で防ぎ、さらに真姫のスマッシュをレイピアで弾き、そして翼が白く輝く!
-
この泥くさいにこまきすき
-
涼≪『白翼の恩寵(ディストピア)』≫
ことりが初めて暴走した際に使ったスキルと同一。
翼で包み込んだ相手の精神を退化、破壊せしめる驚異の天使術だ。
数ある天使術の中でも高位に位置する物であり、ことりが初覚醒でそれを使ってみせたのは熾天使の実子たる血の成せる技だろう。
さておき、にこと真姫がそれを見るのは初めてだ。
だが迸るマナに、その危険性を瞬時に理解する!
両側から白い翼が二人を包み込み…
にこ「逃げるわよ!!」
真姫「ひ、きゃああああ!!!?」
にこは真姫を抱きしめ、コントロールを無視してジェットパックを噴射する!
左右、後方まで翼の囲いが回り込んでいて、逃げるべきは上!
瞬時に天井付近まで吹き飛び、慣れていない真姫は全身へ掛かるGに素っ頓狂な悲鳴を上げる!!
-
真姫「こ、こ、怖…怖…!」
にこ「白目剥かない!泡吹かない!急転換行くわよ!漏らさないでよ…ねっ!!!」
にこは器用に姿勢の上下を入れ替え、天井を全力で蹴って飛ぶ!
真姫がさらなる絶叫!!!
にこが蹴った天井はちょうどクルセイダーの斬閃が捉えた位置。
斬られたことで脆くなっていたのだろう。
にこの蹴りを受け、その一部が崩れ落ち…
にこ「いやいや」
真姫「イミワカンナイ…」
天井に隙間が開き、上階の様子が垣間見える。
設置されている巨大な鉄球めいたオブジェが真っ二つに切断されている。
そしてさらに上の天井が見事に切り裂かれている。
幾多の物質を経てなお、その斬れ味が鈍る様子はなく…
-
真姫「斬った軌道の物を全部斬ってる…?!」
にこ「んなアホな!!」
涼≪では、もう一撃お見せしよう≫
地上、細剣クルセイダーに再び白のマナが結集している。再びあの技を放とうとしている!
涼≪『万物断裁(アンサラー)』≫
にこ「ってえ!させるわけないでしょ!真姫!しがみついてなさい!」
真姫「うんっ…!」
真姫を抱えていた手が自由になり、にこは身体中に仕込んでいる武器から幾つかを手に取る。
閃光弾に煙幕弾を手に持てるだけ!宙へとばら撒き、着弾を待たず早撃ちで全てを撃ち抜く!!
-
にこ「目を瞑って!」
真姫「っっ!!」
涼≪っ…、なかなか強引だ≫
迸る閃光と煙幕に、涼の視界が完全に遮られる。
翼によるマナ感知能力で捉えようとするが、にこは抜け目なく濃縮マナ結晶体を砕いた粉末をばら撒いている。
それはチャフさながらに熾天使の探知を遮ってみせる!
涼≪面白い…備えあれば憂いなしを体現したような戦いぶりだね≫
にこ(備えあれば憂いなし?違う!備えなけりゃ確実に死ぬのよ!!にこみたいなのはね!!!)
涼≪ん…?≫
コロコロ、と足元に硬質な音。
涼が下を見ると、そこには…
涼≪手榴弾?≫
にこ「デトネーター!とびっきりの高級爆弾よ!くたばりなさい!!」
-
閃光弾と煙幕弾をばら撒いた際、一発だけ爆弾を紛れさせてあったのだ。
そして大爆発!!!!
広い劇場内へと轟音が響き渡る。
真姫「や、やった!?」
にこ「フラグ立てに行くのやめなさいよ。まあどうせ倒せてはいないだろうけど…」
爆炎の中に人影。
翼で体を覆ったようで、涼は健在!
にこは舌打ちも露わに、一旦距離を置くべく壇上の方向へと向かう。
壇上では英玲奈、希、白瀬小雪が三つ巴の戦いを繰り広げているのだ。
英玲奈の支援を!場合によっては戦う相手を入れ替えるのも手か。
にこ(あの剣技はヤバい…けど、英玲奈なら対抗できるかもしれない!)
-
一旦ここまでで
風呂入ってから元気だったらもうちょい書くかも
-
乙!
万物断裁(アンサラー)って格好いいな
-
乙!
本当に戦闘描写が素敵ですわ…(*´ω`*)
-
真姫ちゃんの中堅〜弱キャラ感がすごい好き
-
やっぱザッピングより決着まで駆け抜ける方が好きだな
-
無理しなくていいからねー
-
>>444
書くのは作者本人だからな。
まぁ俺も2並列くらいならザッピングでも気にならないけど
さすがに3並列4並列でザッピングされるとちょっとなーとは思う。
-
なんかのSSで言われてたけど、架空戦記読み慣れてるやつは
3つ4つのザッピングなんて茶飯事らしいゾ
素人がそんなこと言われてもはぁ?って感じだが
まぁ上手く書き分けられるかと読者がついてこれるかは別問題だね
-
あれ、そんなに読みにくかったか
まあ尺的にどの戦闘も終わりに向かうからもうザッピングはないよ
今日は多分8時頃ね
-
いや、読みやすいと思うよ。俺はすごく楽しんでる
こういうの読み慣れてるかどうかってだけなら気にしなくていいと思うけどなあ
-
ちゃんと読みやすいし面白いぞ
ハナから一つ一つの戦いを完結まで書かれたら他の戦況を忘れそうだしザッピングでよかったよ
-
地の文で引き込まれるからほんとおもしろい
-
めいたは使いすぎ
-
めいた多用はヘッズの嗜みだからセーフ
-
読みやすさに不満はないぞい
-
毎日これだけが最近の楽しみです
-
英玲奈「はあああっ!!!」
小雪≪当たらないよ≫
英玲奈「せあああっ!!!」
希≪ウチにも当たらんよ≫
英玲奈「うぐぐぐ…!『牙狼斬』『牙狼斬』!!」
英玲奈は人狼の身体能力を漲らせ、床を踏み砕き、エクセリオンを振り抜く!
完全なる敵対者である小雪には胴体へ、首筋へと急所撃を。
止めたい仲間である希へは手首やアキレス腱へと動きを止めるべく斬撃を。
高速で駆け抜けながらの斬撃にも関わらず、その狙いは的確だ。
輝剣で床を削って微弱にブレーキを掛けつつ、強靭な脚力からの蹴りを交えてコンボを繰り出す!
……が。
-
希≪当たらないって言っとるやん、英玲っち…≫
英玲奈「あ、希。その英玲っちってやつ、嫌いじゃないぞ!」
希≪同い年の友達やからね。にこっち、エリチ、英玲っち…と≫
英玲奈「だから大人しく私にやられろ!」
希≪それは無理や!≫
小雪≪『万物透過(ディープダイバー)』≫
希は体を影へ。小雪は体を白い光へと変え、英玲奈の物理攻撃をするりするりとやり過ごしてしまう。
英玲奈「ぐああああ!!くそっ!くそぉっ!ずるいぞお前たち!!」
小雪≪そう言われても…≫
いつもの冷静さはどこへやら、地団駄を踏みつつ悔しさを全面に表す英玲奈。
剣で斬ろうと砲撃を放とうと、まるで当たらないのでは腹が立つのも当然か。
-
英玲奈の戦闘力は仲間たち全員の中でも上位に位置している。
そこに難点を見出すとすれば、物理かつ直線的で変化球的な攻め手に欠く点ぐらいだろう。が、普段はそれを問題としないほどに疾く強い!
しかし、スカアハを宿した希と小雪の二人はある種英玲奈にとっての天敵とも呼べる存在かもしれない。
透過による回避を阻止するためには意表を突いた攻撃が必要。
が、いかに速く速く速く速く動こうが英玲奈の攻撃は物理斬打砲撃に限られている。
相手が並ならともかく、魔人と化した希と四翼の天使小雪は共に戦闘巧者。
英玲奈の攻撃を見事に、まるで一部の隙もなく躱し続けてみせる。
そして当然、二人も攻撃を繰り出してくる!
希≪紫淵の羽衣、歪曲と希死。結跏の聖譚に断章を穿て。『乱黒刃(ジーラ)』≫
小雪≪遥け日の茉莉、虚ら日の柊。虚構の顎、舞い廻りて白沫に沈め。『白無鞭(イレイザー)』≫
-
希の体から、影がさながら濃密な霧のように四方一面へと滲み出す。
床へ壁へ、舞台幕へと紫紺が染め、本来の希とは異なる重苦しい魔力が空間を満たす。
対し、四翼を開いた小雪は両手から純白の帯を垂らす。
それはマナで織り成された攻防一体の武器。涼と組み、透過能力による潜入を果たすのがメインの小雪にとって数少ない、そして極めて強力な戦闘手段。
英玲奈(……来る!!)
希の影が網目状に広がる!
床に壁から空中へと。
蜘蛛が巣を成すように紫影が張り巡らされ、英玲奈と天使を一網打尽とすべく猛然の拡散を見せる!
英玲奈は跳躍!
高跳びの要領で身を捻り、影の隙間を抜けて着地と同時に身を沈め、床を転がる。必死の回避を!
それでも完全にやり過ごすことは叶わず、脚に脇腹にと影が触れる。途端、英玲奈の顔が苦痛に歪む…!
-
英玲奈(っ、触れた部分が抉れて…!影に食い破られたような…大丈夫、深手ではない)
白瀬小雪の表情は起伏が緩やかだ。
スカアハの攻撃を目の当たりにしてもそれに変わりはなく、あくまで淡々とした様子で白のリボンを鞭と振るう。
二本の白線が曲線を描き、希が作り出した影の斬撃網の上をなぞり…
聖光の結集体である白布は影を拭う。
まるで鉛筆で黒塗りをした上に新品の消しゴムを掛けたように、小雪の白が影の猛撃を防ぎ止める!
白布はさらに伸ばされ、新体操のリボンを想起させる複雑な挙動の攻撃が織り成される。
英玲奈はこれも躱す!
希の影から逃れつつ、さらに光の帯をも回避する。
影を、光を、影を光を、影、光、光光影光影影影!!
咆哮猛り、地を駆け弾丸もかくや。魔人と天使の間で人狼が躍動する!
-
英玲奈(体感でわかる。あの攻撃を希へと掠らせてはいけない…!私が囮になりつつ隙を狙うんだ!)
小雪≪ごめんなさい…邪魔です≫
希≪そこまで高めたんやね、人狼の力。英玲っちは凄いよ。今は邪魔やけど!!≫
英玲奈「っ、うおおっ!!!」
光は影へ、影は光へと侵食を。
希と小雪、二人の力は相克関係にあり、希と小雪の攻撃が交差。
英玲奈は超強化された視覚、嗅覚、五感全てを極限集中。格子の如く組み合わされた攻撃の隙間をくぐり抜けてみせる。
さらに間隙を縫い、双方へ雨霰と砲火を撃ち込み続けている!
まさに人外、神技の域。
もはやその動きは降りしきる雨を避けるに等しい!
-
小雪≪すごいね、涼ちゃんより速いかも。小雪には真似できないよ。だけど…≫
いかな人狼の身体能力にも限界はある。
通れるとも思えぬ隙間を抜けて、軽傷を重ねながらも深刻な傷を避けて立ち回ってきた英玲奈。
だが、ついに回避不能のタイミングで小雪の攻撃が眼前へと迫る。
苦虫を噛んだ表情を浮かべ…輝剣エクセリオンを抜き放つ!
英玲奈「避けられないならば受けて斬るまで!」
小雪≪それは無理だよ≫
英玲奈「!?剣をすり抜けて…!」
小雪本人の体が透過するように、『万物透過』の能力は彼女の手元から伸ばされている武器にまで適応されている。
受けようにも斬ろうにも、実体がないのではどちらも不可。
受けの目算を完全に崩され、英玲奈の体へ純白のリボンが触れ…
-
英玲奈(こ、れは…!私の精神が、消え…っ…)
希≪…っ、……『鬼吼葬』!!≫
英玲奈「ぐっは…!!」
小雪≪あっ≫
小雪の白無鞭が英玲奈の体を通り抜ける直前、希が操る不可視の鬼手が英玲奈を激烈に叩きつけた!
上から下へ、舞台上へと全身がへばりつくような豪撃。英玲奈の骨肉が軋み、肺腑から全ての酸素が吐き出される。
が、痛みに思考を白黒とさせながらも天使の攻撃による精神瓦解からはすんでのところで逃れていた。
精神を削られかけ、痛打を受け、未だ朦朧とする意識の中、英玲奈は希と視線を交わらせる。
英玲奈(助けて、くれたのか?)
希(……寝とき。次は助けんから)
-
夜蝶を模した翅が巨きく広げられ、黒の中に青味がかった部位が照明を透かして美しく輝いている。
天使もまた二対四枚の翼を広げ、その純な輝きは幾多の天使たちの中でも一際汚れのない物だろう。
直接の交戦を妨害し続けていた英玲奈は伏している。
希は強い。だが、小雪のスキルが強烈な精神干渉系であることは英玲奈が身を以て実証した。
闇は光に強いが、光もまた闇に強い。
万が一にも掠れば英玲奈とは比肩にならないダメージが希の心へと刻まれることになる。
元よりイプセンやスカアハの侵食で負担を掛けられている希、そこへさらなる負荷が掛かれば…
小雪≪……?変な音が…お姫様が飛んできた?≫
希≪うわっなんやあれ…真姫ちゃんがめっちゃフラついて飛んでる≫
にこ「喜びなさい!にこにーもいるわよ!」
希≪あ、ちっちゃくて見えんかったわ≫
真姫「だって。にこちゃん」
にこ「ブン殴る!」
-
上空!!
ジェットパックの設計に対して過重気味に、にこと真姫の二人が涼から逃れつつ飛来する!
燃料が切れ気味なのか、二人分の体重のせいで不安定なのか、にこの背部のジェット噴射はブボボと奇妙に耳に付く音を撒き散らしながらの飛行だ。
と、にこはおもむろにサングラスを掛ける。
真姫はぎゅっと目を瞑っていて、さらに二人共に耳へと特殊な耳栓を詰め込んでいる。
床に伏した英玲奈も察し、耳を塞いで瞳を閉じる!
にこ「閃光弾を食らえ!」
希≪うおっまぶしっ≫
小雪≪きゃっ…!≫
-
爆発的な光量が一帯を満たす!
にこの閃光弾は一種の気化爆弾だ。
手へと魔力を溜め、握りしめることで内部に点火。
プラスチック製の容器の底に細かに穿たれた微細な穴から、点火の圧力がアルミニウムの粒子を押し出す。
放出、拡散された粒子は空中の酸素と結合し、着火発光!
威圧的な音響パルスが無差別に周囲を打ち据える!
英玲奈(っ…!なかなか痺れるな!)
人工物であろうと光は光。
希が織り成した影を、さらには小雪の白光の帯をも曖昧にし、瞬間的に無効化する。
全てに万全を期すにこは仲間たちの能力に対しても対策装備を盛り込んでいる。
閃光弾は汎用性があるのはもちろん、希のような影を操る敵への対抗策としても想定した武装だった。
それは見事に効果を発揮!小雪までを無力化できたのは幸運か。
-
閃光弾と侮るべきではない。
人間がまともに受ければ視覚に聴覚が長時間麻痺してしまう代物だ。
だが魔人スカアハの希、上級天使の小雪。
二人は共に人間より優れた身体機能を有している。
5秒足らずでの復帰が可能…逆を言えば、5秒近くの猶予がにこに与えられている!
透過する二人への対策は意識外の攻撃。
それをにこは極めてシンプルに捉える。
にこ(要はビビらせて攻撃すればいいんでしょ!)
閃光弾を投じると同時、手首からワイヤーを射出している。
小型のアンカーが小雪の腕へと巻き付き、そしてにこはスイッチを作動!
-
にこ(電撃ッッ!!!)
小雪≪…!!ぅ…≫
涼≪させるかっ!!≫
駆け付けた涼の鋭剣がワイヤーを切断!
小雪への通電はほんの一瞬に終わったが、それでも電撃ワイヤーの高圧電流に小雪はよろめき、ダメージを受けているようだ。
涼≪ごめん、雪ちゃん…絶対に守ると言ったのに…≫
小雪≪大丈夫だよ、涼ちゃん。ちょっと痺れただけ…≫
涼の顔には悔悟。
これ以上、一つたりと怪我を負わせまいと瞳に明確な闘志が宿り…
そこへ英玲奈が躍り掛かる!!
英玲奈「フ、選手交代と行こうか」
真姫「気をつけてね!英玲奈!」
涼≪邪魔をしないでくれ…!≫
-
希や小雪の攻撃を受け、英玲奈は既に完調ではない。
それでも今までの相手は透過透過透過。
実体があるだけマシだとばかり、表情は水を得た魚のよう。
全身の筋肉をバネに、高速の斬撃を挑み掛ける!
英玲奈「っ、つあああっ!!!」
涼≪……速いな≫
エクセリオンとクルセイダー。
人と天使それぞれの高みに位置する剣が刃を交わし、火花を散らす。
相川涼は英玲奈これまでに見た中で最上位に位置する剣士だ。
だが臆さない。何故なら…
英玲奈(ツバサ以上であるはずがない!)
-
四騎士の仲間が一人、ツバサへの信頼は絶対だ。
英玲奈にあんじゅ、そして対立しがちだった絵里でさえ、“最強の剣士”という基準は綺羅ツバサにある。
その最強の戦いぶりを幾度となく見てきた。故に、ツバサ以外の剣士相手に遅れを取るつもりはない!
涼≪悪いが、すぐに終わらせる!『万物断…≫
英玲奈「させるかっ!!」
英玲奈はあくまで剣士ではない。
重砲士にして人狼、それが戦闘オプションの一つとして剣を装備しているだけのこと。
その戦型はまるで邪道を厭わない!
体を床へ滑らせ、高速のスライディングから脚を振り上げる!
決断的なオーバーヘッドキック!!
手を補助に、鋼のような腹筋と足筋が逆さギロチンめいて涼の肘を叩いた!
涼≪……ッッ!≫
英玲奈「天使だろうが、人の形を成している以上は関節を叩けば動きは止まる!」
-
決殺剣たる『万物断裁』を始動で止められ、わずかに眉をしかめた涼。
英玲奈はさらに追撃を!
蹴り上げた脚を高々と掲げ、腕力を頼みに腰を駒のように回転。
頸部へと目掛けて斜め上からの踵落としを放つ!!
涼は翼で防ぐも、舞踏を思わせる連撃はまだ終わらない。
重砲が火を噴く!翼で防ぐ!反動で強引に体勢を立て直し、剣を突き出す!
そこからは高速の撃剣戦へ。
翼と天使術、さらにはリーチ無視の絶対断。離れてしまえば英玲奈が不利。
だが小雪がぽつりと口にした通り、速度では英玲奈がわずか上を行く。
インファイトに持ち込んでしまえば少なくとも対等!
先天性の戦闘センス、後天性の野生の勘。
二つを併せ、有利不利の絶対条件を瞬時に看破。
英玲奈は決して涼に距離を置かせない!
-
涼≪強い。山田先生が仰っていた西の都の生き残りだね?≫
英玲奈「あの熾天使には随分と世話になった。ここでお前を倒すのが、我々人類の反撃の狼煙だ!」
英玲奈は全体重を乗せた踏み込み、薄ら蒼く輝く輝剣を突き出す!!獣の牙撃が一撃!!
涼は翼を盾に、剣先がそれを突き破る!
細剣と短剣の二本を交差させ、刃を受け…!
涼≪……折られた、か≫
レイピア使いの防御を担う短剣、マインゴーシュ型の一振りが英玲奈の猛撃にへし折れている。
胸部、心臓を狙った英玲奈の一突きは小型剣が犠牲となってわずかに逸れ、涼の肩口から鮮血…!
-
英玲奈「なるほど。熾天使も血は紅いらしい」
涼≪キミは…素晴らしい役者だね≫
涼の傷は決して浅くない。重症一歩手前の傷だ。
……血が滴っている。
一滴、二滴…数え切れないほどに。
床へと血溜まり。夥しい血は、英玲奈の脇腹から。
英玲奈「……っ、ぐ…」
涼≪惜しむらくは、雪ちゃんたちとの戦いで負っていた傷だ≫
わずかに。本当にわずかに、英玲奈の突剣は鈍っていた。
希と小雪との戦い、さらに言えば防護壁の防衛戦から。
都市を守るべく前線指揮官として、ただ戦えば良いだけではない立場に身を置き、心身へと積み重なった負荷は計り知れない。
目に見えない疲労が蓄積され、細かな失血と重なり、英玲奈の一撃を鈍らせたのだ。
-
とはいえ、並の剣士では…
否。達人級の剣士だろうと防げる一撃ではなかっただろう。
六枚の翼を障壁として猶予を得ることができた熾天使だからこそ、1秒以下の隙を生み出すことができたのだ。
英玲奈の剣が上へと逸らされたその間隙、涼は瞬時にレイピアを突き出していた。
これ以上ないタイミングでのカウンター。英玲奈は避けること能わず、脇腹を裂かれ、そして…
英玲奈(……腸が)
声が出ない。既に意識すら危うい。
うずくまり、悔しさに拳を一つ。弱々しく地へと打ち付け…
やがて、その体から力が抜けた。
英玲奈は息をしていない。脈動が止まっている。
内臓を抉られ、溢れ出た血は既に…
涼は目を閉じ、偉大な戦士へと黙礼を捧げて踵を返す。
涼≪雪ちゃん、今行くよ≫
-
とりあえずここまでで
-
あんじゅに続いて英玲奈も死んだか。王様の唐突な死亡判定の時も思ったがモブを殺しにかかってるな
-
魔力のないツバッさんやばいやん
-
うおっ、英玲奈が…
まだ死んでないはず…
-
乙。
葉隠覚悟は腸がはみ出しても「問題無し!」って戦闘続行してたしへーきへーき
-
一対一の状況は危険だと言われてたけど安価選択がないと避けようがないよね
穂乃果好きな奴は覚悟した方が良さそう
-
また後で更新あるかもなのかな?続き気になる〜
-
地味にGUN道ネタが入ってて草
-
うおっまぶしっ
-
にこと真姫。
二人は英玲奈と立ち替り、希と小雪と三つ巴の戦闘へと突入している。
常日頃、反発してみたり軽く茶化しあったりが定番と化しているコンビだ。
今更深く語ることもないが、そのコンビネーションは盤石!
真姫が最上の触媒たる大剣に炎を灯し、前へ出て振り回す!
真姫「えーいっ当たれ!当たりなさいよ!」
小雪≪お姫様、ちょっとうるさいです…≫
大振り癖は相変わらず。
彼女は仲間内で唯一、職と呼べる職を有していない。
仮にジョブを定めるとすれば、そのままシンプルに“姫”、あるいは姫剣士だか姫騎士とでも言ったところだろう。
-
西木野家、王家の血筋には非常に優れたマナの力が備わっている。
わざわざ職へ就いて魔力傾向を整理せずとも、そのままで十分な素養が秘められているのだ。
が、現状において真姫のスキルは十分とは言い難い。
それは何よりも年齢。
仲間内では雪穂と亜里沙を除けば年若い方。10代における一年は大きな時間であり、歳が一つ違えばその身体能力にも差が生まれるものだ。
細かいことを言えば海未とは一ヶ月しか年齢差がないが、それはさておき。フランベルジェは15歳の少女が流麗に振り回すにはいささか長大に過ぎる!
ので。筋力を鍛えた!
-
真姫「だあああっ!!!」
希≪ひえっ…腕がめっちゃ筋肉質になってる…≫
切り、突き、薙ぎに払いと基礎動作に忠実に。
色気は出さず、技術不足は筋力で補う!
長らく箱入りで育てられてきた真姫が仲間たちへと肩を並べるために、その高い知性で導き出した最も効率の良い答えは“脳筋”に他ならなかった!
真姫「大人しく!この!マッキーの!!一撃を受けなさいっ!!!」
小雪≪こ、怖い…!≫
希≪この子は賢いんかアホなんか、たまーにわからんくなるね…≫
-
実際のところ、ある程度の理には叶っている。
技を極めようとすれば道に果てなし。老いても剣の道を探求し続けている剣士さえいるわけで、一線を越えた域まで高めるだけと言っても時間が掛かる。
ならばパワーを!
育ち盛りの年頃、真姫は割に身長も高く、成長が早い方だ。
ある程度体が出来上がっている以上、筋力トレーニングに無理も出ない。
旅に出て以降フランベルジェを振り回し続け、力を伸ばすための下地はあった。
そして母と過ごした数ヶ月の時間。徹底した筋力トレーニングに努め…結果!
真姫「でやあ!!!」
希≪ゆ、床が!メッキメキにヒビ割れて…!ちぃっ!≫
小雪≪っ…涼ちゃんの負担を減らさなきゃ。倒してみせる!≫
-
希、そして小雪が反撃に出る!
それぞれに自分以外の三人へ、影と光で攻撃を繰り出す。
防御よりも攻撃に意識を割いている真姫は、自然と窮地へ追い込まれる!
が、前述の通り。にこと真姫の連携はパーフェクトだ!
にこ「ええっと…『ラブにこ閃光弾!!』」
真姫「それ言わなきゃダメなの?」
希≪だあああっ!鬱陶しいなぁああっ!!!≫
小雪≪その光の、すごく邪魔です…!≫
真姫が考えなしの攻撃に終始しているのは、にこに防御面の大部分を任せているため。
ある程度の数を準備してきた閃光弾は、希と小雪の攻撃を妨害するには最適のアイテムだった。
-
もちろん、初撃のような完全なるスタン状態を作り出すとまではいかない。
希は濃密に固めた影でバイザーのように顔を覆い、小雪は四翼を音と光の防御へと回している。
それでも攻撃を中断させるには十分!
そして光と音に意識を奪われているタイミングで、真姫の強烈な一撃が小雪へと向かう!!
真姫『炎閃!!』
小雪≪っ…!≫
真姫「ついに翼で受けたわね。いつまでもスカスカ避けてられると思った?」
小雪≪涼ちゃん、私は…負けないよ≫
-
同じタイミング、にこは希へと攻撃を仕掛けている!
にこ「真っ黒なドレスに蝶の羽?随分とご立派な格好じゃない。希ぃ」
希≪一般人がしゃしゃるのもここまでにしとき、にこっち。もう世界が違うんよ≫
にこ「はっ、にこは宇宙一スペシャルな存在よ?世界の主人公がいなくなったんじゃ、クソつまんないじゃない」
希≪相変わらずやね。ウチ、にこっちのそういうところ大好きよ。手足を捥いでペットにしたげるわ!≫
にこ「上等じゃない!ウシ乳ぃぃ!!」
希は影のバイザーで閃光弾へとほぼ完全な防御を決めている。
それでも強烈な光により、攻撃用に展開した影は消滅している。ここからの数秒がにこに許された攻撃のチャンスだ。
希(一般人。そう煽ったけど、もちろん私はこの子を侮ってない。何を仕掛けてくるか一番わからない)
にこ(なんだかんだ、希はにこに思考が近い。符術なんて器用貧乏な術を使いこなしてるのがその証拠。下手を打てば読まれる…)
-
不意打ちを決めるにせよ、一撃での無力化に銃弾は適さない。
にこの使用している短銃は他の武器との併用を前提としていて、どちらかといえば牽制用。
複数発を浴びせればともかく、それ単発でのストッピングパワーには欠けている。
にこが選択したのは浅紅色に輝くマナ・ブレード。左手には銃。
二つを利用しての接近戦を。
逆手持ちで懐へ潜り込み、刃を最短距離で繰り出す!
刀や剣ではなく、長尺のナイフとしての取り回しだ。
押し出すように斬り、首筋へと突き立てる動きを。
手首で返し、軽やかなステップと共に希の豊満な胸元へ刺突。
当然、その全ては影へと化した希にやり過ごされる。
刃へと意識を集めさせ、左手は希の大腿部へと発砲している!
が、それも影をすり抜けて床に穴を。
-
いいセンスだ。
-
希≪無駄やで、にこっち≫
にこ「…すっかり化け物ね、アンタ」
希≪知ってる≫
希の全身から影が迸る!
紫罰、鬼吼葬、陰翅、乱黒刃。
式符・炸に囮、消、斥。
“影の女王”スカアハにより司られる闇の数々、さらには希本人の符術までが縦横無尽、四方自在ににこへと襲いかかる!
それでもにこは避ける!
肩へ、腰へ、頬へ、手傷を負いながらも致命傷を避けて回避。
もはや理屈ではない。
にこにあるのは気合いと根性、母譲りの一般人代表の意地だけ。
ツインテールを揺らしながら毎度おなじみ、這って転げ回って、這いずり回って、虫めいた動作で回避を続けている!
-
希≪その鬱陶しさ、つくづく尊敬するわ…≫
にこ「粘ってナンボよ…!アンタを助けられずに、こんな場所で死んでたまるもんか!」
希≪…ありがとね、友達でいてくれて。でも、もう終わりや。にこっちの事はよく知ってる≫
にこ「……」
希≪その異常な集中力の限界はだいたい三度まで。体はまだ元気でも、神経の限界が来てるやろ?≫
にこ(っち…相変わらず勘のいい…)
希≪ウチはスピリチュアルやからね≫
にこ「……っ!!希の体を返しなさい!!なんだかよくわかんない奴!!!」
-
既に多くを使い、閃光弾は残り少ない虎の子。
希はそれを察した上で、にこの懐へと警戒を配っている。
が、にこは希の予想に逆らい、肘に仕込んだ武装を撃つ!
希(光が…っ!曳光弾!?)
にこ「返せ!!大切な!!友達なのよ!!!」
相川涼に切断された、手首に仕込んだ電撃ワイヤーを引き抜く!
放電!!激しいスパークと共に高圧スタンガンが空中へと漏電する!
希はそれも避ける!
にこは逆の手首を突き出す。
グレネード弾を射出!それは液体窒素をブチ撒ける冷凍弾!
希はそれも避ける!
火炎放射を!仕込み手裏剣を射出!
希はそれも避ける!
前腕部には小型のミサイルが仕込まれている。
にこの装備購入費の大部分を占めている高級品だ。
追尾式のそれを放つ!!
希はそれも避ける…目標を見失った弾頭はフラフラと空を舞い、天井へと衝突して爆炎を。
次の武装は…打ち止めか。にこの動きが止まった。
にこの顔を、絶望の色が染める…
-
にこ「う、あああああっ!!!!」
全身に仕込んだ多種多様な武装を徹底してやり過ごされ、にこは再びブレードを振り回し、銃撃を重ねる。
だが『陰翅』が躍動。
刃状に変化した陰がアッパーを思わせる軌道で跳ね上げられ、にこの両手に残された武器を遠くへと弾き飛ばしてしまった。
そして両腕を陰が捉え…
希の眼前へとにこが吊るし上げられる。
希≪まるでビックリ箱やね。けど驚かん。にこっちならなんでもやってくるって知ってるから。…尊敬してるから≫
にこ「……リスペクトどうも。じゃあこいつはどうかしら!!」
残された最後の攻撃手段は体術。
出会ってすぐの頃、王宮に侵入した夜に兵士たちを仕留めてみせたように、鋭く希の腕へと脚を絡めてへし折るべく力を込める!
……当然、希の体は影へ。
にこの脚から締め上げる感覚が失われる。
-
希≪ごめんねにこっち。言った通り、腕と脚を斬っておしまいや≫
にこ「………」
手足へと陰の刃をあてがわれ、下に着込んだ防刃作用のあるスーツを刃がすり抜け、皮膚。肉。血が滲み…
ごとり。音を立て、床へと落ちたのはにこの右腕だ。
にこ「っ…!!ああああああっ!!!!!」
希≪………ごめん。ごめんね、にこっち…本当に、ごめんね…≫
希は笑っている。嗜虐の愉悦に笑んでいる。
そして親友を痛めつけている事実に、瞳からは涙が溢れ出ている。
にこ(それでいいのよ…希!!)
にこは不敵な笑みを!
右腕を失い、傍目に勝負が決し…
希の中に、ついに完全なる油断を見出したのだ!
-
にこの脚先は関節技をすかされて宙ぶらりんのまま、希の腹部へと向いている。
瞬間!
にこの右脚の戦闘ズボンが弾け飛び、まるで外見的な違和感のなかった脚の回りに重厚な砲身が現れる!
極限まで小型化され、膝から下へと巻き付ける形で収納していたのは口径7.62mmの銃身を6本備えたガトリング砲だ!!
希≪は…?ミニガn…≫
にこ「食らえっ!!!!」
狂気的なドラムロール。大楽団がスネアドラムを打ち鳴らすような轟音!
にこの右脚から遅るべき勢いで、驟雨のごとく弾丸が放たれる!!
希≪が、く…は……っ!!≫
にこ「まだ…!まだぁっ…!!!」
希≪ひ、が!ぐぁ…!!≫
希の全身が打ち据えられる。
雑多な武器に頼ることを決めたが、にこも重砲士に変わりない。
使う物は使う、常からそんな思考のにこ。
仕込めるのであれば重砲も仕込む。当然だ!
-
にこが片腕族の仲間入りしやがった!これで勝つる!
-
死亡、欠損ふえてきたな
いよいよ中盤のクライマックスってかんじ
-
今更だが>>1結構鬼畜な性癖もってるんじゃないかw
-
スカアハを宿し、透過に頼らずとも影のドレスによって強靭な物理耐性を有した希の体へ、弾丸が絶え間なく食い込み続ける!
重砲の中では低質とされるガトリング砲だが、ほぼ零距離での接射ならば威力は十二分!!
穿つ穿つ穿つ!!!
穿つ穿つ穿つ穿つ穿つ!!!!!!!
希≪か、…ふざ…けるな…人の子ふぜい≫
穿つ穿つ穿つ穿つ穿つ穿つ穿つ穿つ穿つ穿つ穿つ穿つ穿つ穿つ穿つ穿つ穿つ穿つ!!!!!!!!!!!!!
希≪あああああああああああああっ!!!!!!!!!≫
希の体を借り、希の声を、言葉を使い続けてきたスカアハがついに怒りの声を、そして悲鳴を上げる!
が、構わず。魔人の悲鳴など、耳を傾ける価値もない。
にこが聞きたいのは希の声。希が自己を取り戻したその声だけだ!!
-
単に>>1がリョナに目覚めただけだろ
-
にこ「い、ぎ…あっ…!」
破滅的な連射により、6本の銃身は加速度的に加熱されていく。
発砲の火花がにこの脚を焦がす。
振動が骨を揺らす、関節を痛めつける。にこの小柄な体へと深刻なダメージを刻みつけていく。
あくまで奥の手。使用を控えるのは反動が重いから。
無理な形で装備しているため、無視できないレベルで負担が掛かるのだ…!
脚の骨が砕け、ひしゃげ、畳まれてしまうのではないかと思わせる痛み。それも無視!!
ガキン。
にこ「……」
希≪ぎ、…が…ぁ…弾、切れ、みたいねぇ…!この、影の…女王、スカアハを、侮るんじゃ…!≫
にこ「希ぃ…!!歯ァ食いしばりなさい!!!!」
-
これにこも死にはしないまでも、戦線からは離脱なのかな
-
スカアハの声は無視。何の興味もない。
にこは満身創痍の体へ、ゼンマイを巻くようにして叱咤を入れる。
手にしたのは正真正銘、最後の仕込み武器。
ポケットに放り込んであった小型のナックルダスターで!希の顔面へ!!
にこ「さっきブン殴るって言ったわよね。にこ、有言実行派だから」
希≪無視を!するn…がっ、ばああッッッ!!!?≫
拳を振り抜いた!!!
金属片が希の頬を捉え、全身の体重を乗せた一撃が思い切りよく振り抜かれる!!
希はたたらを踏み、よろめき、口から血と、抜け折れた奥歯が落ち…
希≪あ、あ……ああああ…!!!≫
〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!
耳を劈くような金切声、長い、長い…長い長い長い長い長い絶叫が希の喉から響き渡る。
-
ところで龍はどうなったのか
-
にこの戦い方からしてサイボーグ化でもするんでしょ
ダーク路線に戻すなら離脱もありそうだけど
-
それは断末魔か、絶望の悲鳴か。
そう、敗北を喫したのだ。
魔人の一つの頂点たるスカアハ。
影の女王たるスカアハが、一介の小柄な少女に!
広がっていた影が一気に収束し、希の体内へするりと収まった。
あんじゅのアバドンに同一。完膚なき敗北を喫し、既にその魔力は失われている。
希が全身へと負った傷は、スカアハへと還元される。
無傷…いや、スカアハの力が風前の灯火となった状態で受けた頬へのパンチ一撃の傷だけが希へと残り、腫れた頬と折れた歯の痛みに一瞬だけ顔をしかめ、崩れ落ちたにこの体を抱きしめた。
希「にこっち…にこっち…!ごめん…ウチのせいで、こんな傷を…!」
にこ「……でえい!鬱陶しい!!!」
希「痛ぁーっ!!?なにするんや!!」
-
パイセン凄いな。てっきりだるまかと思ったが
-
※片腕取れてます
-
湿っぽいのは好まないとばかり、にこはボロボロの体で希へと頭突きを一発!
傷の痛みに呻きながらも、悪友然と歯を見せて笑みを一つ!
にこ「やぁぁぁぁ……っと!!らしい顔に戻ったじゃない」
希「……うん。ありがとう…ありがとう!にこっち!」
にこ「フン、それでこそよ。アンタは笑ってなさい!痛たた…!?あれあるでしょ、治癒の札みたいなやつ…」
希「あ、うん。『式符・癒』!」
にこ「痛っ!ケガ人よ!アンタにやられたケガ人よ!?もっといたわりなさい!」
希「ええ…さっき謝ろうとしたら怒ったやん…」
にこ「……じゃ、あとは頼んだわよ」
右手を失い、右脚に酷い重症を負い、にこは既に限界。これ以上の戦いは不可能だ。
あんじゅが闇を使役できているように、スカアハを御した希にも闇のマナは依然残されている。
失血と負傷に意識を失いかけているにこの頬を優しく撫で、身を横たえさせ、影でバリアを形成する。
真姫は依然、白瀬小雪と鎬を削る激戦を続けている。
にこから閃光弾を幾つか手渡されていたようで、それを上手く使いつつ凌いでいるようだ。
互いに決め手を欠くのか、それぞれに目立った外傷はない。
が、希は息を飲む。
少し離れた位置で英玲奈と戦っていた相川涼が、六翼をはためかせて真姫の元へと向かっているのだ!
希(そんな…英玲奈ちゃんが…!?)
気になるが、まずは真姫の援護だ。
熾天使の肩には深い傷が刻まれているが、それでも二対一へと持ち込まれれば真姫に勝ち目はない!
希「真姫ちゃん!今行くよ!」
-
ここまでで
かよちん誕生日おめ
-
乙!
にこちゃんも義手化かな?
あんえれの二人が死んでない事を祈る…
-
乙!
あんじゅさんはまだ大丈夫だけど英玲奈は鼓動が止まってる描写あるからアカンなあ
亜里沙ちゃんが発狂するで
-
にこだけまるで男塾を読んでいるようだ
-
昨日から読みはじめて追い付いた
ま、まあ右腕自体が残ってるなら多少はね?
穂乃果みたいに磨り潰されたわけじゃないし……
-
キャラ増えすぎた弊害で間引かれた英玲あんにこかわいそす
次はヒフミのぞほの当たりが危なそう
-
勝手に間引かれたと確信してるけど、荒らしなの?
-
死んでるわけないでしょ
-
致命傷は負ったけど死んだとは言われてないね。
まだ予断は出来ないけど
-
左腕ぐらいで騒ぐなよ。あんじゅなんか四肢を滅多挿しにされてるから殆どだるまだぞ…
英玲奈の腸漏れは魔法で治るのかな?
-
>>516
にこぷり!女塾!
-
死んでたら英玲奈の武器選んだ人はご愁傷様ってことで
-
ファンネルビットは出番すらなかったな。モブは全員惨殺されるだろうしあの場では何を選んでも無駄だったと思う
-
今までの1の書き方からして安価なくなったからってさっくり死亡はないっしょ
-
相変わらずすぎて草
作者も今頃ため息ついてるだろうよ
-
ニヤニヤしてるだろうよアホがアホみたいに踊ってくれて
-
11時頃に更新するよ
-
ヤッター
-
ひゃっほー乙乙!!
-
他のメンバーが気になるな!!
-
真姫はこれまで年上の仲間に守られながら、コンビネーションを組みながらの戦闘が大半だった。
偶然の流れから風呂場で人狼と相対したことはあったが、それも短時間での決着だった。
それが今、透過による絶対防御と強力な精神干渉を有する上級天使との一対一の対決において持ち前のセンスを開花させつつある。
真姫(ずっと透過し続けられるわけじゃないのよね?燃費の問題か…わからないけど、それなら)
小雪≪心を消してあげる。避けないで…≫
真姫「当ててみなさいよ、自力でね」
小雪≪……『白無鞭』≫
真姫「その技は強いけど、バリエーションがないわ。閃光弾!」
小雪≪っ…、光のせいで…≫
真姫(燃費が問題なら、要は攻め立て続ければいい!)
-
刀身をなぞり、剣へと炎を纏わせる。
西木野家は炎の操作に長けた一族だ。
『炎閃』は高度なマナ操作力を活かし、炎へと斬撃の性質を持たせた一撃。
斬撃を炎へと転じ、リーチを広範囲に拡大させつつ汎用性のある優秀な技。
だが、これまではほぼ一辺倒。
小雪へと向けた言葉ではないが、自身もバリエーションに欠けていた。
読まれれば当たらないのは当然。別の攻撃パターンが必要だ!
真姫『炬火の斬伐(ティソーナ)』
小雪(技の雰囲気が違う。注意しなくちゃ)
真姫「受けなさい!!!」
斬撃の拡散を狙い、『炎閃』は真横、あるいは斜め軌道に攻撃を放つことが多かった。
対して、新たな技は大上段!振りかぶっての斬断を!
-
小雪は当然ながら透過を発動させ、警戒からバックステップを踏む。
自身の絶対回避を信頼してはいるが、過信しない。
真姫「だあああっー!!」
小雪(うん。当たらない)
真姫(まだよ!!)
猛撃は空振り。リーチの長い剣先がかすかに小雪の皮膚をかすめていたが、透過は過不足なく発動し、真姫の剣は床を噛み砕いた。
そこからが『炬火の斬伐』の真骨頂だ!
刃に込められた炎熱のエネルギーが足元でうねり、駆け巡り、木造りの舞台床を高熱に炎上させる。
一帯へと炎が走り、小雪は透過を続けながらも熱煙に形のよい眉を傾ける。
まだだ!真姫は力任せに刃を90度回転!
バキバキと床材を攪拌し、掬うように荒々しく刃を振り上げた!
新技にお誂え向きの舞台だった。
まさにトーチの如く燃える大量の木片が、小雪へと目掛けて火弾と化して飛ぶ!
-
真姫(ただの炎じゃないわ。一度着火すれば長く残り続ける力強い炬火。それがこの技!)
斬、火、弾と断続的な攻撃。
振り上げ、木片を弾いた挙動からワンステップを挟み、そのまま自然に次の斬へ。
真姫の体力の限り、四分の三拍子で刻み続ける永続的な攻撃。
そして腕力と体力には自信がある。筋トレと持久力トレーニングの成果は嘘をつかないのだ。
赤髪が炎と燃え、紫眼が情熱を宿す。
天性のリズム感は小雪に反撃の隙を、それどころか透過解除の間を与えない!
黒白の鍵盤を踏むように、メロディーを奏でるように。
一意専心、楽しげな大剣舞が格上の天使を追い込んでいく!
小雪(このままじゃ…!)
-
真姫が推測を立てた通り、『万物透過』は上級天使の豊富なマナを礎としても消耗が激しい。
常時発動ではなく相手の攻撃に応じ発動させているのはそのため。
真姫が巧みに繰り出す怒涛の連撃を前に、小雪はきりりと唇を噛む。
彼女の立場も、あるいは真姫と似ている。
極めて優秀な天使だ。数々の戦功を挙げてきている。
ただ、経てきた戦闘の大半は性格と戦闘スタイルの両面で相性の良い涼と組んでのもの。
単独戦闘の経験はそれほど多くはなく、防御とサポートに偏ったスタイルはそもそも単独戦闘に向かない。
真姫(仲間が優秀すぎると、いざって時に苦労するわよね?)
真姫の優れた頭脳と洞察眼はその事実をも見抜いている。
自称、クールで冷静沈着。AB型は伊達ではない!
-
小雪(もう…駄目!)
殺人的な上下動、フランベルジェが熱を放つ。
天使の顔にかすかな苦悶、小雪の透過状態に限界が訪れている。
透過の長時間維持は、いわば無呼吸で走り続けているようなものだ。
魔力消費も激しいが、一度のインターバルを挟めばまだ行ける。が、真姫はそのタイミングを与えてくれない!
小雪(攻撃する隙もない…あ!)
真姫のリズムが乱れた。
後退する小雪へと一定かつ最適の歩幅で攻撃を放ち続けていた真姫が、一瞬顔をしかめて挙動を止め、大きく息を吸ったのだ。
無呼吸連打は真姫も同じ!
いくら鍛えてあろうが人は人。いつまでも暴れ続けられるわけがないのだ。
小雪は隙を見逃さない。
必須は透過の解除、再発動。さらに狙うは近接状態を活かして攻撃を。
-
小雪(当てられたら、勝ち…!)
小雪が実体化する!
と、真姫はそれを狙っていた。息継ぎはフェイク!
深く深く、無呼吸行動はあと三秒維持できる。
視線を煌めかせ、足を前へ。
小雪≪足を踏…!≫
真姫「これで逃がさない!!」
燃え盛る豪断!!!
大剣の重みを存分に活かした一撃が天使の頭上へ、再度の透過発動には一拍間に合わない!
小雪≪っ…!≫
真姫「!!?」
-
必死の戦いを繰り広げていた真姫には、他の戦況に気を配る余裕などまるでなかった。
気付けば、視界の片隅でにこが倒れている。
希は正気を取り戻したらしく、焦燥を浮かべて真姫へと駆け寄ってきている。
振り下ろした剣は受け止められた。
外見では大剣を受けるべくもない細身のレイピアが、頑強に!
地に根差した大樹のような重みを漂わせ、力強く真姫の大技を受けている。
小雪≪涼ちゃん…!≫
真姫「止められ…っ、違う!それより…!」
涼≪すまない。待たせたね、雪ちゃん≫
真姫「なんで、なんであなたがこっちに来るのよ。だって…あなたは英玲奈と戦ってて…!」
涼≪彼女は勇敢な戦士だった。万全だったなら…生死は逆だったかもしれない≫
真姫「生死?嘘、嘘よ。英玲奈が…英玲奈は死なない…!」
小雪≪涼ちゃんは嘘を言わないよ≫
-
真姫の手が震える。膝が震える。
喉がわななき、声が定まらない。
真姫にとって、希は王宮から世界へと羽ばたく道を示してくれた大切な友人だ。
にことは深い深い絆で結ばれた。穂乃果の強引な導きによってではあるが。
ただ、その二人と比べても、統堂英玲奈は真姫にとって特殊な存在だった。
幼少から王宮で共に過ごしてきた。
人に囲まれながらも孤独な中で、唯一心を許せる相手だった。
心の通い合わぬ父よりもよほど家族。大切な姉にも等しい存在。
そして王宮を抜け出してからは英玲奈の人狼化など紆余曲折を経ながらも、示してきてくれた強さは四騎士の名に相応しい頂にあった。
例え熾天使が相手だろうと、負けるはずがない…負けるはずが!
-
事実として、眼前に立っているのは相川涼。
肩口に深い剣傷が残されてはいるが健在。
つまり、英玲奈は。
茫然自失。真姫の顔から血の気が失せ…
涼は静かに、真姫へとクルセイダーの狙いを定める。
二人の天使は決して“悪”ではない。
が、立場が違う。成すべき目的がある。
涼≪すまない。容赦はできないよ≫
小雪≪…ごめんね≫
希「っ!!待ったああああっ!!『陰翅』&『斥』や!!」
影が滑るように、希が真姫の前へと身を呈すべく走ってくる!
符を翳して斥力バリアを形成し、さらに二枚の影の羽で三重の防壁を成して真姫を守ろうと言うのだ。
しかし相川涼は甘くはない。
熾天使の操る剣は希の介入を許可するほどに遅くはない。
物理的に間に合わない距離なのだ。真姫が気力を取り戻し、自ら抗わない限り…!
-
小雪≪邪魔させない。ここは…涼ちゃん。『白朧の顎(ジャバウォック)』を使うね≫
涼≪ああ、フォローするよ≫
希「真姫ちゃん!!」
真姫「……英玲奈…」
希は狼狽する。
ここに来て真姫が心神喪失。これでは…
涼は右手に利剣を構えたまま、左手で少し小さな小雪の手を握った。
その仕草は愛しげで、二人はきっと特別な関係にあるのだろう。
指を絡ませて繋がれた天使たちの手の間を強大なマナが循環している。
感知能力の類がなくてさえ、その強力な光は視覚に露わだ。
熾天使と上級天使の連携撃。まともに受ければどうなるかは明白!
希(仕方ない、どうにか凌ぐしか…!)
-
ス…と。
小雪の背から胸へ、細身かつ鋭利な剣光が突き出した。
輝剣エクセリオン。その刃は力を入れずとも、肋骨を通して心臓を刺し貫いてみせる。
小雪≪え…っ…≫
涼≪雪、ちゃん…?≫
深く切り込まれた脇腹を片手で押さえ、血を滲ませながらも瞳には未だ力強い光。
天使の生命力は人間よりも幾らか強い。
ので、英玲奈は刃を回し、容赦なく抉る!
英玲奈「一人…討ったぞ!」
真姫「英玲奈ぁ!!」
希「英玲っち!!」
小雪≪か、ふっ…≫
涼≪そんな、そんな…!どうしてだ…!≫
-
小雪の口から鮮血が溢れ出した。
いかな天使であれ、心臓を抉り壊されては生命維持は望むべくもなし。
愕然と身を震わせる涼へ、英玲奈は苦苦とした表情を浮かべながらも言い放つ。
英玲奈「お前たち天使は知らないかもしれんが…これは人の編み出した、古典的かつ最上の不意打ち」
真姫とは異なる方向性で見出した透過の攻略法。
それはある意味での正攻法。
英玲奈「死んだふりだ!!!」
深手を負った瞬間に得た天啓、とっさの思いつき。
気合いで心臓を止めた!
そして気合いで再び動かした!
心臓とは要するに筋肉の塊。
今宵は満月、人狼としてのコンディションは最高にある。
全身が上質な筋繊維と化している英玲奈には不可能ではない!
人狼の身体能力を、軍人魂を舐めるなよ!とは英玲奈の弁。
-
英玲奈「ついでに、腸が溢れるのは腹筋で止めている!」
希「あ、アホや…この子、ガチの脳筋や…!」
小雪(息ができない…体が冷たくなっていく…)
涼≪……≫
白瀬小雪にとって、相川涼の言葉は絶対の基準だ。
それを見抜き、英玲奈は利用したのだ。
英玲奈「お前が私を仕留めたといえば、もう私へは一片の警戒さえ払わなくなるだろうと踏んだのさ…!」
が、限界だ。
致死に迫る深手を負っているのは事実で、英玲奈はその場へと崩れ落ちる。
口から血を吐き、今度こそ鼓動が微弱に。
すぐさま希が影を操り、英玲奈の体を寄せる。
にこと同様に『癒』の符を貼り付け、闇のバリアで覆い隠して保護。
あくまで応急処置。あとは本人の生命力に掛けるだけだ。
希「ゆっくり休んどき!」
真姫「良かった…傷は酷いけど、英玲奈なら大丈夫よね」
-
対照的に。
英玲奈から致命撃を受け、さらに念入りに刃を捻られ、白瀬小雪の生命の灯が潰えようとしていた。
一般に、天使たちは受肉しての人間体が滅ぶことに感慨を持たない。
魂は消えず、上位次元へと還るのみ。魂の本質も変わらない。
だが、支倉かさねが仲間たちの死に深い悲哀を抱いたように、再度の受肉は別人に生まれ変わるにも等しい。
魂の本質を重視する天使たちにとってそれは些事。
しかし人間と同じく互いを愛している涼と小雪にとって、それは人と変わらず死。永別に他ならない。
最期の呼気を深く漏らし、白瀬小雪はゆっくりと目を閉じた。
-
小雪≪また…会おうね、涼ちゃん≫
涼≪……ああ、約束だよ。雪ちゃん≫
小指を絡め、約束の指切りを一つ。
優しくそっと撫でるように、熾天使は愛する人の瞼を閉じた。
涼(共に生き、共に老い、決してキミを一人にはしない。そう誓ったのに…守れずに…)
真姫「………」
希「…立場が違う。仕方ないんよ、真姫ちゃん」
真姫「…大丈夫。わかってるわ」
静かに立ち上がり、相川涼は静かに真姫と希を見据える。
涼≪恨む…のは、筋違いだね。これは戦い。互いの正義に殉じるだけ≫
真姫「そうね、アナタも倒すわ。悪いけど」
涼≪キミたちを恨みはしない。けれど、私が生きようとする理由もなくなった≫
希(……アカン感じやね)
涼≪身が滅びようと構わない。既にこの身を保つ理由もなし≫
-
相川涼の『万物断裁(アンサラー)』は熾天使に相応しく、世の理へと干渉する強力無比の技だ。
その剣閃軌道に位置したならば、距離を置こうと切断から逃れる術はなし!
それを連発しなかったのには相応の理由がある。
高威力高消費。物理法則さえ歪めてみせる熾天使も、魔力が尽きては何もできない。
そして必殺の切断撃の消費は、人間が思い描くそれとは訳が違う。
短いスパンで放てば生命さえ蝕む絶技なのだ。
が、涼はおもむろに剣を振るった。
涼≪『万物断裁(アンサラー)≫
希「危ないっ!!!」
真姫「きゃあっ!!?」
希が真姫を抱きしめて飛び退く。
イプセンにスカアハと闇の根源を御し、身体能力が若干の向上を見ているのだ。
床へと転がり緊急回避!
とっさに這いつくばった二人の頭上を剣圧が掠める。
辛うじての回避に青ざめ…る暇もない!
-
涼≪『万物断裁(アンサラー)≫
希「ちょっ!!」
真姫「れ、連発!?」
次は斜めに!
二人はその身を竦ませ、頭を屈めて必死の回避を。
涼≪『万物断裁(アンサラー)≫
真姫「はあああ!!?」
希「まずい!この子、完全に捨て身や!」
涼≪…すぐに行くよ≫
万物断裁を身体限界を超えて放つ、放つ、放つ…!
自失に大振りの気こそあるが、神域の剣技を駆る熾天使を相手にいつまでも回避を続けられるはずもない!
希が符と影を利用し、強固な防衛壁を展開する!!
内へと取り込んだスカアハの力を利用している。
そこに符をも重ね、超防御は敵の攻撃同様に物理法則を歪めるに至っている。
-
だが、相川涼は委細構わず。
消耗に翼が激しく光り、その体からはオーバーヒートの如くマナが漏出している。
体が自壊を始めているのだ!
愛する人、守るべき人を失い、もはやこれは盛大な自殺。
希と真姫、背後に英玲奈とにこ。
防壁が途切れれば、すぐさま四人の命は絶たれてしまう。
希「このままじゃ、ジリ貧や!いずれ破られる…!」
真姫「……にこちゃん。英玲奈。あんじゅ。三人のためにも、こんなところで負けられない…!」
暴走する熾天使を前に、私に何ができる?
真姫は母の言葉を思い出す。
「フランベルジェはレガリアと対の宝具」
ママが使っていた触媒。今の私なら…!
-
真姫「一火十炎百爆千劫。万理、根源の炉にてヴィゾヴニルの翼尾を食み、喰らい、貪食せよ…!」
希「その詠唱は!」
熾天使を屠るにはこれ以上にない、人智の結晶たる火術の極致。
そう、西木野王が王都を焼き払った…
真姫(それじゃ駄目なのよ!)
都市を、人類を守るのだ。
全てを焼いてはいけない。
そこからさらなる制御を。
母は超えた。父を超える…!
噴火で何もかもを台無しにするのではなく、フランベルジェを突き立て、地火のエネルギーを剣へと宿す。
赫赫と燃え上がる大剣で、涼へと『炎閃』の要領で炎を放つ!
真姫「見なさい…これが私流…!『世界火(レーヴァテイン)!!!』」
-
>>546
覚悟完了!
-
無軌道、ただひたすらに超常的な大火ではない。
剣へと濃縮した炎を振るうと共に、炎の爆流が巨砲が如く放たれる!
圧縮されている。
例えるならば大地の炎のエネルギーを灼熱かつ極大のレーザーが如く!
当人は気付いていないが、その性質は父である西木野王が操る熱線と酷似している。
やはり血か。希はそこに断てぬ血脈と縁を見る。
2000°Cを超える暴熱が迸る。
けれど真姫の才による制御を経て、軌道の外へと熱を漏らすことはない。
涼≪………≫
眼前へと迫る爆流を前に、涼は自身の敗北を悟り、身を屈める。
血の気が失せた小雪の肌は、名の通りに雪のような白肌に。
涼はその頬へと優しく触れ、そっと目を閉じた。
涼≪雪ちゃん。次は…人の子に生まれるのも面白いかもしれないね≫
炎熱が全てを飲み込む…!
軌道上が溶けて焦げて、劇場の壁へと大穴が穿たれ、天使二人は影を残さず消滅していた。
真姫(……さようなら)
-
関係ないけど涼ちゃんのスタイルってやばいんだよな
168cmでB89W58H85
-
世界火の余韻が失せ、全てを溶かした炎熱は真姫のマナ操作によりすぐに温度を霧と散らす。
敵を打ち払い、後に災禍を残さぬ最上の剣技。
壁を抜き、視界の果てまで熱による大穴が貫通。長距離までを真姫の炎は抉り取っていた。
真姫「あ、他に戦ってる子たちを巻き込んでなければいいけど…」
希「ま、まあ大丈夫やろ…多分。って、わわっ…!」
ズズ、と劇場全体へ震動が走った。
自棄を起こした相川涼が四方八方へと飛ばした万物断裁により、建物の全域へと斬線が刻み込まれているのだ。
そこへ真姫が大穴を穿った。そうなれば…全てが瓦解を始める!!
希「こ、これはまずい!真姫ちゃんアカンよ!」
真姫「な、何よ!私は悪くないわよ!」
希「せ、攻めてるわけやないよ!?とりあえず急ごう!真姫ちゃんはにこっち抱えて!ウチは英玲っちを!」
真姫「ぎゃああああ!!!崩れてくる!!!」
と、劇場の入り口に都市の衛生兵たちが姿を見せる。
「こちらへ!!」
希「行こう真姫ちゃん!!」
瀕死の状態にあったあんじゅの治療を依頼するため、英玲奈が連絡を入れていたのだ。
退路は確保されている。
全員が劇場の外へと走っていく。
激闘の跡を残し、真姫たちは慌てふためきながら崩れゆく劇場を後にした。
-
今日はここまでで
-
>>554
真姫ちゃんレーザーの温度は6000度(地球のマントルの温度)が良いと思います
-
おつ
-
乙乙!
凛ちゃんかよちんのつんぐほぐれつを見て癒されたい
-
エレナ何処の承太郎だよw・・・そういえば昔出てたアレの格ゲーもカプコンか
-
クッソ熱い
英玲奈のキャラやっぱめちゃくちゃ好きだわ
-
熾天使戦ヤバイな…理事長とかよりは弱いって書かれてたけど真姫ちゃんたち大金星やね
-
よかった!
三人はとりあえず戦線離脱だけど死んでなければ次がある!
-
気合いで心臓止めるとか…まあ世の中には気合いで時空超える奴もいるし普通か
-
全員活躍してて素晴らしい
-
真姫ちゃん大剣ブン回しまくっても平気な筋力身につけて真姫ちゃんならぬムキちゃんになった訳だな。
-
おそらくはこの世界の前衛はみんなマッチョ
-
真姫ちゃんの厚い胸板に甘えたい
-
>>569 世界火で焼かれてしまえ
-
まきちゃんのキャラデザがCLAMPの絵柄で脳内変換されるようになってきた
-
12時ごろ更新するよ
-
毎日ホント楽しみ
-
伝説の兜を装備した凛ちゃんVSかよちん
or
穂乃果ちゃんVSかさねちゃん かな?
うーん楽しみだ
-
ヒデコと真姫ちゃんに腹筋ズリされたい
-
英玲奈の腹筋に頬擦りしたい
-
1は筋肉フェチ
-
…
『オ゛アアアアアッッッ!!!!!』
フードコートエリアに絶叫が響き渡る。
聖馬ユニコーンがその腹部へ、凛の雷撃打をしたたかに受けたのだ。
諸手を突き伸ばしての『双雷掌』
掌へと溜めた電撃が打突の衝撃と共に相手の体内へと駆け巡り、擬似的なカウンターショックが聖馬の心臓を揺らす。
かわいい少女から電撃を受け、性獣はどこか嬉しげ。
それでもダメージは軽くない!
花陽「ゆ、ユニコーンさぁん!!!」
凛「かよちんから離れろ!!変態馬!!」
-
電気の大半を失い、ショッピングモールの中を逃走していた凛。
だがここに来て一転、その全身へは突如として電気が復活していて、バチチと激しい電撃音を鳴らしている。
見れば、フロアの隅に配されたジェネレーターが叩き壊されている。一目に漏電は明らかだ。
花陽(きっとあそこから充電を…)
凛の電気は七割ほどまでの回復を得ている。
ユニコーンにまたがり追走していた花陽へと反転し、その雷速を生かして打突!
結果、ユニコーンは走行から動きを止めて床へと倒れこむ!
凛「フゥゥー!かよちんに近寄るな…!」
-
凛の瞳には悋気と強い警戒の色。
半分入った雷猫族の血がそうさせるのか、怒り狂った猫さながらに声を上げて威嚇!
聖馬ユニコーンの変態性をしっかりと感じ取っているのだ。
これに関しては凛が正しい。
まあ、凛は凛で花陽のパンツを頭に被ったままなのだが。
花陽「大丈夫ですか!ユニコーンさん!」
花陽は馬の背から転げ落ち、背中を痛打しつつもユニコーンへと安否を問う!
人間ならば少なくとも意識を持って行かれかねない電撃。
召喚獣の手持ちも減少しつつある。
ここでユニコーンを失えば戦況は厳しい…
が、流石は中級召喚。一撃で倒れるほどには脆くない。
無駄に清らかな目で花陽へとウインク一つ、蹄を鳴らして立ち上がる。
-
幼なじみのパンツ被った変態猫対その幼なじみを乗せてハッスルしてる処女百合厨変態馬か・・・
-
開始早々笑わせんなwww
-
『ンっハァァァ…!変態少女に変態馬と罵られつつ電撃プレイ!ひとえに日頃の行いが良いからでしょうねえ!』
凛「凛は変態じゃない!かよちんが好きなだけ!」
花陽「り、凛ちゃん…嬉しいけど、パンツは返してほしいかな」
凛「言ったよね。かよちんの全ては凛のモノだって…」
花陽「ビャアッ!!?パンツを舐めちゃダメぇぇぇ!!!!」
『おっといけない。これではそろそろ鼻血が致死量へと達してしまう…』
凛とユニコーンの高速移動に遅れ、ラミアがスルルとフードコートへと入ってきた。
速度の差に遅れたことで緊張の面持ちだったが、一同のやりとりを目の当たりに肩透かしを受け表情は呆れ気味。
『何してんの…』
と、凛は雷速の挙動でラミアへと躍りかかる!
静から動への移行は目にも留まらぬ速度。その様はまるで虎か豹かの鋭さだ。
-
だが蛇人の少女ラミアも人外にして中級召喚。
人間ならまだ10代。
経験の浅さがネックだったが、マスターたる花陽と共に徐々の成長を遂げている。
上体の外見こそ人だが、目鼻耳に加えて蛇の有する赤外線感知、ピット器官に類する物を有している。
『反応っ!!』
鋼の指から放たれる雷爪四連撃、瞬打四連を回避してみせる!
フードコートの白い簡易テーブルを転がしつつ、一人と一体は戦闘の中に眼光を交わし合う。
花陽とユニコーンも加勢するべく動いている。が、凛の連撃は高速!
凛「避けられた…けど!」
-
凛はさらに旋風と身を翻し、横回転から足裏で蹴りを放つ!ソバットだ!
これもラミアは柔軟性を活かして回避!
凛の攻撃はまだ続く!
蹴りを放った脚を伸ばし、逆脚でとんぼ返りを決めると共に放つのは首狩りの鋭さを秘めたサマーソルトキック!!
ラミアは大剣の柄でこれを辛うじて受ける!
刃で応じるには凛の挙動が速すぎるのだ!
凛「まだ!!!」
凛は経験を重ねる中で、拳法ベースの雷猫族の戦型へと空中戦の要素を組み込み独自の戦闘スタイルを完成させつつある。
跳ね舞い、組み付き、叩きつける。
その技術体系を例えるならば空中戦を主体とするプロレス、ルチャリブレ。
このスタイルに辿り着くには試行錯誤があった。
元の雷猫族の体術は、雷猫族の男性を使用者のベースとして考案された物だ。
大人の骨格、筋力、体重を乗せ、そこへ雷電を乗じて撃拳を叩き込む!
-
雷“猫”族と称されているが、その理想系は猛虎が如し。
凛の母が女性ながらに達人たりえたのは、大人になるまでの長い鍛錬が故。
技を磨き、威力の伝導を高めるために鋼と鍛え上げた下腿にモノを言わせていたのだ。
だが凛の年齢ではそうもいかない。一撃に重みが足りない。ならばどうするか。
凛(跳んで、全体重を乗せる!!)
メキシコで発展した格闘技であるルチャリブレはこの世界には存在しない。
だが、凛は独自かつ単独でそれに類する体術を練り上げてみせた。
西木野王や絵里がその戦力を欲した通り、星空凛はまさに天才!
-
闘技場の時の強さは頭1つ抜けていたものな
-
テーブルへと突いた腕を軸に、両脚を揃え、全体重を乗せて回し蹴りを放つ!
『ぐっは!!!』
ラミアの胸へと脚が叩き付けられ、同時に電撃が骨の髄までを痺れさせる。
凛は蹴りからの着地と同時、流れるような動作で頭から花陽のパンツを手に取る。
そしてルチャドーラの多くがそうであるように、顔面へと下着を被せて覆面へ!
呼吸…深呼吸…!
凛「きた…きたきたきたきたきたにゃああ
ああ!!!!!」
花陽の香りは凛にとっての脳内麻薬のトリガーだ!全身へ駆け巡るエンドルフィン!
激しい攻撃動作に耐えられるだけの陶酔恍惚が凛を突き動かす!!
-
アカン、変態仮面フォームだ…(絶望)
-
つまり変態仮面…
-
『ひえ…!』
ごく常識的な倫理観と恋愛観を持つラミアにとって、凛の行動はひたすら異様に映る!
色々な意味でこのままじゃヤバい…!
そう判じたラミアは魔力を練り、解放!
(霧よ…!)
瞬時に視界全域を一寸先さえ見通せぬ濃霧が包み込む。
これで凛にはラミアの姿が見えないはず。対してラミアにはピット器官が。
濃霧の中にもサーモグラフィーめいて凛の姿を捉えることが可能!
電熱に熱輝する凛は…迷いなくラミアへと向かってくる!
-
フォオオオオオオオオオオ!!!!!
-
『なっ、なんで!?』
凛は答えない。
良質の集中状態が維持されていて、花陽以外の全ては凛にとってノイズ!
全身から放射されている微弱な電気をソナーとし、ラミアの位置を探知してみせたのだ。
鋭く跳躍!
正面からラミアの両肩へと脚を乗せ、頭部を両脚で挟み込む。
ぐらり、と自分の体重を後ろへ傾け、そのまま振り子めいて下方へ回転…!
ロックされた頭部は逃れられないまま、車輪の回転に巻き込まれるが如く、ラミアの天地が逆さへ回転する!!
そして凛は蛇の下半身を両腕で抱きつかみ、回転海老固めの形でフォールを決めた!
一連の流れはウラカンラナインベルティダ!ルチャリブレの大技だ!
が、ラミアは高速の動作に面食らい慌てつつもまだ健在。
絵里固めはあくまで人間の骨格に向けたもの。下半身が蛇のラミアにとっては完全に関節を留めるに至らない。
-
絵里固め……くらってみたいチカ!
-
『こんなの…力を込めればすぐに抜け…!』
凛「凛は雷猫族だよ。電撃!!!」
『っが…!?うあああっっ!!!』
体を捕らえ、頭部から背骨へとくまなく密着した形を作るのが目的だったのだ。
脊椎へと沿って高圧の電撃を流されて無事でいられるはずもなし!
ラミアの視界が白雷に染まり、花陽へと謝る間もなくその姿がマナ光へと分解され消失する。
連続して繰り出した一つ一つの技に名は付けていない。
集中状態から状況に応じて体術を繰り出し、その連撃の全ては自由律。
超速の連撃、かつ必ず仕留める。
闇に染まっていた海未が凛の攻撃を目に、若干のドヤ顔を浮かべながら授けた名は…
凛『凛獄殺』
花陽「っ、強い…ラミアちゃんが…」
-
豪鬼かよ
-
よっしゃゲージ減った
-
花陽の守りがいよいよ手薄に。
凛は狂乱と虚静を共生させた視線で花陽を見据え、いよいよその愛を独占すべく、手へと装備した鋼の指をキシリと鳴らした。
凛「あと一体。デュラハーンは呼ばせないよ」
花陽(まだ…全員を連続して呼ぶには、私のマナは少しだけ足りない。あと2分稼げればマナの自然回復で、デュラハーンさんを呼べるようになる…!)
ユニコーンは珍しく黙し、戦塵にたてがみを靡かせる。
地へと降り立っている花陽の前、一、二歩と蹄を鳴らして凛を見据える。
『うら若き乙女二人の純愛。それは素晴らしいものだ。ですが、愛は押し付るものであってはならない』
凛「うるさいよ。馬のクセに」
『マスター、貴女は私が守りましょう。聖馬としての誇りに賭けて…!』
花陽「ユニコーンさん…!」
-
性罵の間違いじゃないかにゃー?
-
処女厨から変態紳士にクラスアップしやがった
-
聖馬はいつになく真面目な調子で語ると、気高く輝く一角で花陽へと優しく触れる。
『必ずや勝利を』
花陽(…!)
いつもふざけてばかりいるが、なんだかんだで大人の立場として花陽を真面目に守護しようという気持ちもあるのだ。
蹄を鳴らしてリズムを取り…
凛へと突撃を敢行する!!!
『小泉花陽っっ!!!!万歳ぁぁぁぁい!!!!』
挙げる手はないが万歳突撃!
死地へと向かう下級兵めいた心持ちでの突撃は、さすがの凛にも若干の危機意識を抱かせる。
身構え、その突進を待ち構え……交錯!!!
-
行き違いに一撃が交わされ、凛の腕は電撃を帯びて…
どう、と音を立ててユニコーンが倒れる…!
『無念っ…!!』
花陽「ユニコーンさぁぁぁんっ!!!」
凛(ちょっとビックリしたけど…)
気合だけではどうにもならないこともある!
ユニコーンはあくまで中級召喚。
既に凛の実力は中級一体だけで御せる域ではなくなっている!
ユニコーンの角は凛を捉えていた。
が、自動回避を発動させて逃れると同時、凛の一撃がユニコーンの体躯を貫いていたのだ…!
花陽「デュラハーンさ…!」
凛「させないよっ!!」
凛が花陽へと組み付いた!
二人はゴロゴロと床に転げ回る形になり、前衛職な分で力で勝る凛が、花陽から杖を奪い取らんと手を掛ける!
-
凛「かよちん!杖を渡すにゃ!!」
花陽「い、やだ…!絶対に…渡さないっ!!」
激しい揉み合いの中、被っていた下着が落ちて凛の表情が露わになる。
歯を食いしばり、必死で、悲しげで、花陽は凛の抱える寂しさと悲哀を感じ…
凛「………ごめんね。電撃!!!!」
花陽「っ…!ぎ…!!」
高圧スタンガンさながらの電圧が花陽の体を叩く。
痺れというよりは打痛。鈍器で打ち据えられたような重みが花陽の全身へと走り…
花陽「あ…!」
凛「こんな杖、もう持たなくていいんだよ」
凛は思い切り、決して手の届かぬ位置へと杖を放り投げた。
目算にして20メートルほど。木製の杖が壁へ当たり、カランと音を立てて床に落ちた。
杖を失えば召喚士は無力。
狼狽に息を飲む花陽を、凛は両腕でぎゅっと抱きしめ…
凛「ずっと…凛が守るから」
雷撃が轟く!
抱きしめた状態での放電。人間が耐えられる限界を超えた雷。
親友であり、愛する相手であり、ライバルと認めたからこそ。
凛は花陽へ、致死域へ限りなく近い雷撃を。
電熱に焦がされた花陽の口から煙が漏れ…
凛は強く強く、花陽を抱きしめる。
凛「連れ帰って、すぐに治してあげるからね…」
-
今日はここまでで
-
うおっ負けた?
-
乙な
明日の更新が待ち遠しい
-
乙
明日は海未&ヒフミの続きか穂乃果かそれとも別の誰か達か・・・どれにせよ楽しみ
-
パンツがずり落ちて深刻な表情を露にされても困るんだが…
-
お、洗脳全キャラコンプかな?
-
今のところ殆どが負け試合で草。敵に回った味方は本当に強いな
-
え、そうかな…りんぱなとオトノキ防衛戦くらいしか負けてないような…
圧勝してもつまらないからちょうどいいような気も
-
安価スレで自分らが関われなくて負ける試合ほどつまらんものはない
-
まだ負けって確定してないのにうるさいな
ことりとツバサも向かってる描写があったけど未登場で相手がいない状態だし
-
味方総当たりさせればジャンプ漫画並みの引き延ばしできるな!
-
伏線っぽいのもあるし場面が移るまで決着はわからんよ
パンツでルチャ覆面とかいうアホ発想すき
-
勝手な憶測でガヤガヤ騒いで相変わらずだなお前ら
-
戦術眼+とは一体…
-
ピンチになると負けだー!って騒ぐ奴って顔濡れたアンパンマン見て泣いてる幼児みたい
-
いつものやつだろ
ほっとけ
-
遠回しに自分の望む展開にしようとしてるっぽい
-
この作者外野で展開代えてしまうところ有るからな
好きにやってほしい
-
そこらの糞SSより普通におもしろい件
-
ID変えて連投してる?
管理スレから
69 : 管理人 2015/07/16(木) 22:59:31 ID:???
ssの内容やss作者を煽るレスは基本的に全て削除します
読んでる人にも邪魔だろうし、削除と規制依頼出すよ
-
煽るのではなく感想いってるつもりだったが…
ちょっと言い過ぎだったかすまんかった
-
あ、自分は>>613と>>627ね
バッテリーの都合上、携帯の電源切ること多いからID良く変わるのよ
依頼に出してる他3レスについては知らん
規制されるかもしれないけど憶測系のレスは辞めるようにします
-
ここまで悪い展開が続くとクソ安価狙いの奴にスナイプされてるのとたいして変わらないし安価戻らないかな
味方同士の不毛な戦闘で再起不能レベルの重症負わされるのはさすがにきつい。安価があれば良くも悪くも盛り上がるが
-
悪く盛りがりすぎたから今の安価なしになったんだよ
-
620だけど1回しか書いとらんよ。
別に煽るつもりもなくただの感想書いただけだけ。
-
ポジティブな感想しか書けないのか…
-
今思えば、音の木村編のトリスタン召喚と希の紫罰の僅か3割引いた奴の罪が重いな
まだ生きてるんかな?
この先行きても迷惑しか掛からないんだから
ロープと椅子さえあったら誰でも出来るんだし、さっさと手前で始末して欲しいわ
-
>>635
こういうレスの方がよっぽど進行の妨げになると思った
-
ちょっと疲れたし、今日の分まで更新したらしばらく休むよ
-
ゆっくり休んでくれ〜
また更新待ってるぞ!
-
無自覚荒らし多すぎんよー
たかがSS(貶める意図じゃなくな)なんだし余裕もって見ようぜ
-
>>613 >>618 >>620 >>625 >>627
削除しました続くようなら規制します
-
ただ感想書いただけなのに削除かよ
-
疲れが取れて気が向いたらまた更新してくれれば嬉しいさ
気長に待つよー
-
規制するなら毎回あの時○○したやつの罪が重いとか言ってるやつだろ
信者装った荒らしにしか見えんし、ガチの狂信者ならそれはそれで
-
リアルでも今大変そうだしな
いつでも更新待ってるぜ!
-
言いたいことがあるなら管理スレに書き込んでくださいね
-
憶測で展開を叩くのは感想とは言わんからな
作者じゃないけど同じ奴が荒らしてんのかと思ったわ
-
平気で自演するくせに同一人物と思われるレスには厳しいんだな
賞賛だけほしいならよそいけよ
-
>>645
消された事より、1が削除申請の対象に選んだ判断基準に疑問があるんだから管理スレで議論する話じゃないと思うけど?
-
何か勘違いしてないこの掲示板はss作者の為に立てた掲示板だよ
読者様の為の掲示板ではない
作者が不快に思うレスは消すそれが不満なら2ちゃんに行きなさい
以後この話を続けるようなら削除します
-
>>1
期待して待っとるぞ
-
だからといってここで議論することでもない
文句あるなら見るなよ
書いてくれてる>>1にも楽しみにしてる奴にも迷惑だよ
-
うわぁ…
-
というか管理スレで書かれてるぞ
69 管理人 sage 2015/07/16(木) 22:59:31 ID:???
ssの内容やss作者を煽るレスは基本的に全て削除します
-
>>647からの>>649でクソワロタ
-
なんか伸びてるし削除までされてて草
BiBiのカップリング聞きながら待ってます
-
言いたいことも言えないこんな世の中じゃ
-
管理人が素敵過ぎる
>>1頑張ってください
-
ほんわかレス推奨やで
-
>>1の書きたい様に書いて更新できるときに更新する。
それが全てだな。
応援してるし毎日楽しみにしてるぞ
-
とりあえず>>1のやりたいようにやってくれと
思ってるやつもいるということは忘れないでくれよな
とにかくお疲れ
-
迸った電流を受け、心臓が心室細動を起こして痙攣を。
闘技場から経てきた幾多の戦いの中で、凛が飽きるほど目にしてきた光景だ。
殺伐とした世界を生き抜いてきただけあり、凛はどれだけの電量を流せば人が死に、死なないかを正確に把握している。
花陽へと浴びせたのは決して死なない威力の電撃だ。
しかし、人が意識を保てるレベルのものでもない。
凛の思考回路で万事に花陽が優先されるのは昔から。
いや、洗脳を受けたことでより執着が強まっている。
既に本来の命令であるメインコアの強奪は凛の頭から抜け落ちていて、内通者によって用意された離脱ポイントへと向かって飛空戦艦で花陽を快癒させることしか意識にない。
凛(すぐに治療…あれ?)
-
故に、腕の中に抱きしめた花陽の心臓が未だ力強く脈を刻んでいることに、凛は純粋な疑問を抱いた。
臓腑を焼かれ、口から煙を上げつつも意思を保っている!
凛「かよちん…?なんで、まだ…」
花陽「言ったよね、凛ちゃん。私は…負けない!!うぐぐぐ…!」
凛「ち、力が強い!?なんでにゃ…!」
凛が固く閉じた腕をこじ開けようと、花陽は自身の両腕に一杯の力を込める!
凛は花陽の全てを知っている、つもりだ。
幼少期はもちろん、闘技場から助け出されてからは常に寝ても覚めてもそばを離れず、生活の八割を共にしてきたと体感している。
そして一緒に過ごさない空白の時間についてはたくさんの会話を交わしてきた。
身長体重にスリーサイズ。さらには筋肉量。花陽のものなら一目でわかる。
それがわかれば発揮される力もわかるわけで、しかし今、凛の束縛から逃れようとしている花陽の力は予測よりも遥かに強い!
そもそも、何故意識を保てているのかがわからない!
-
花陽「は、な、し、て〜…!!!」
凛「や、やだ!絶対に離さないもん!お願い、抵抗しないで…」
花陽「ぎぎ、あと…ちょっと…!」
凛「ごめん…ごめんね!もう一度電撃にゃあああっ!!!」
花陽「っ〜!!!」
雷光が弾け、電撃の余波にフロアの照明が一部ショートする。
なんで気絶しないの?疲労に調整を間違えた?
凛はそう考えた。なので先よりわずかばかり強めの電流!!
花陽の体が衝撃に跳ねる。
筋肉の痙攣により半ば強制的に上がる花陽の悲鳴は、凛の心をも削り摩耗させる。
-
だがまだだ!
花陽はなお意識を保ったままに力を強める!
これ以上、これ以上花陽を傷付けたくない。
凛「もうやめようよ!!諦めてよ…ねえ、二人でどこかへ逃げちゃおう!凛はかよちんだけは失いたくない!お母さんみたいにいなくならないで!!」
花陽「……そんなことを言うのは凛ちゃんらしくないよ。私もね、凛ちゃんが一番大事。
でも他のみんなも大事!取り戻さなくちゃいけないものもある!
凛ちゃんにも見せたい、コイズミの里を。凛ちゃんとずっと一緒にいるためには、戦わなくちゃダメなの!!」
何度電撃を流そうと、花陽が倒れることはない。
それは気力の問題ではない。
持続回復に防護、そして腕力強化。
白の力を有する聖馬ユニコーンはバフの系統術を得意としている。
花陽はユニコーンの力で守られている。
凛へと突撃を仕掛ける前、花陽へと角で触れた時に、守護の複合術を施していたのだ。
聖馬は性癖に難こそあるが、嘘は言わない。
敗れてなお花陽を守っている!
-
花陽「っ、えーいっ!!」
聖馬により強化された力で、ついに花陽は凛を振りほどいた!
直後、凛の背へと二つの塊が体当たりを敢行する!!
凛「痛っ!痛いにゃ!なに!?」
『エ゛ェェ』『ヴメェェ』
花陽「ありがとう!ワルパカさん!」
最もマナ消費が少なく召喚も瞬時。
下級召喚のワルパカをあらかじめ呼び出し、物陰へと待機させていたのだ。
ワルパカの本来の姿は異なる。
花陽の母が最も多く使役した召喚獣で、下級召喚にして主力。
幾度もの使役を重ね、すっとぼけた顔をしている二体の魔力の姿を、花陽はついにはっきりと捉える。
花陽(そうか、そういう…)
が、まだだ。ワルパカの力を活かす時は今ではない。
反射的に痛いと口にしてはいるが、凛は全身雷化による回避を成功させている。
だが体中マナを大きく減らしているのは傍目に明らかだ!
-
花陽(凛ちゃんの電気はかなり減ってる!いける!)
召喚杖の末端には透明な糸が巻きつけてある。
袖の内へと仕込んだリールで一息に巻き取り、手元へ!
召喚士に杖がなければ無力。
そんな弱点は百も承知。
一生懸命に考え、器用なフミコとミカに手伝ってもらって作ったギミックだ。
今は別行動をしているフミコとミカ、ヒデコにあんじゅ、海未。それに仲間たち全員の身が心配だ。
案じ…振り払う!
花陽(私なんかが心配しなくてもみんなは大丈夫。勝つ事が大事!)
花陽はデュラハーンの召喚を。
凛は一撃を叩き込まんと身構える。
-
花陽(デュラハーンさんを…!)
凛「遅いよかよちん!凛の『紫電』なら…」
ーーー斬閃!!!
凛「にゃっ…!なに!?」
建物の高所を斬線が薙いだ。
音もなく鋭く、窓ガラスや壁材がわずかにこぼれ落ちる音だけがその斬撃を凛へと知らせる。
凛はその正体を知らないが、相川涼の『万物断裁』の軌道が一斬、距離を離したここへも及んだのだ。
崩れる建物に凛は怯み、紫電の始動に遅れが及ぶ。
対し、花陽は怯まない。高所を通り抜けた斬撃に気付いていない!
電撃による天性のソナーを有し、感知には凛の方が長けている。
その性能差が勝負を逆へ分けた!
いや、あるいは迷いと覚悟の差が明暗を分けたのかもしれない。
成すべきことに疑問はなく、強く意志した花陽。
その心に諸々のノイズは悪影響を及ぼさない。
-
花陽「静黒、路果ての来訪者よ。大禍、寂光、鷺の遠星に伽藍の帳を下ろせ。『デュラハーン』さんっ!!!」
凛「しまった…!?」
凛の意表を突く事に成功し、生じた隙に上級召喚を。
闇の帳が舞い降り、颯爽と渦を巻き、漆黒のマントの中から首なしの騎士が姿を現す!
『凛。少々お痛が過ぎるようですね』
凛「ッ…!来るなら来いにゃ!今の凛なら余裕だもんね!!前だって勝った!今度だって楽勝にゃ!!」
尊大な口ぶりとは逆に、凛の全身には緊張と警戒が漲っている。
夜闇を束ねて黒槍を成すその姿が、母が拳骨を振りかざして凄んでいる様と重なって見える。
切っ先を向けられ、一瞬ピクリと身じろぎ。
母との思い出を完全に取り戻した今の凛にとって、母の友人だったデュラハーンの存在は単なる強者とは一線を画している。
-
蓄積した電撃も減じている。生首の視線による拘束もある以上、立ち回りに間違いは許されない。
眼を細め、間合いを測り…
劫!と。
今度は溶火だ!!
真姫が放った世界火の熱が、三人のいるフロアの片端を溶かして削り取っていった。
轟音と灼熱、デュラハーンが魔力を高め…
先の斬閃の過ちを二度は繰り返さない!
凛は集中を掻き乱されないよう息を飲み、ただデュラハーンの動きにだけ集中を。
花陽(凛ちゃんっ!!)
凛「えっ…!」
隙に乗じ、死角から回り込んできたのは花陽だ!
-
凛は応じようと体勢を立て直し、その中に内心で疑問を抱く。
絶好のタイミングの飛び出しだった。凛のガードは間に合わない。
花陽には何らかの能力上昇が付与されている。
それらを踏まえても、花陽の力で凛を一撃でノックアウトするのは不可能。
杖で殴られた直後、カウンターで一撃を入れれば今度こそ花陽を昏倒させられる。
そうなればせっかく召喚したデュラハーンも消え、凛の勝利。
凛(どうして…ううん!チャンスにゃ!まずはこの一発を耐える!)
倒す、倒される。
洗脳により好戦性を高めた凛の思考は純粋な戦闘へとだけ向けられていて、花陽側の勝利条件は何かという点が抜け落ちていた。
花陽が見据えているのは凛ではない。海未から事前に聞かされていた洗脳装置、凛の首へと装着されたチョーカー!
-
花陽「ええええいっ!!!!!」
凛「!!?」
親友への想いを込め、全力で振り抜いた。
技術ではない。信念の一打だ!
戦闘に耐えられるよう、チョーカーの装置はある程度頑強に設計されている。
それでも花陽の想いは勝る!
全力でのフルスイング。当て損なうことなど決してない!
機械は砕け、ひび割れ。
凛の脳へと影響を及ぼしていた闇のマナが遮断される。
それに従い、糸が切れた操り人形のように、体がぐらりと傾いで床へ…
しっかりと、花陽がその細身を抱き留めた。
凛「かよちん…」
花陽「おかえり、凛ちゃん」
凛「えへへ…ただいま」
笑みを交わし、頬を寄せ合い、傷つけあった後でもこの二人にわだかまりは生まれない。
海未、希、凛。
三人の洗脳が解け、残るは絵里。
海未にヒデコらは死角の多い遊園地区画へと絵里を誘い込み、不敵に笑みを。
海未(ヒデコの秘策…任せてみましょう!)
-
ここで一区切りで
エタるつもりはないけどしばらく休むから、一応残りの予定してた流れだけ書いとくよ
総力戦で絵里撃破
穂乃果vsかさね
かさねが穂乃果を嫌ってた理由とか
かさね撃破
山田先生撃破
最終ダンジョン出現
ここから安価
短めのサブイベ色々
好感度イベントに決着
安価とかでパーティーを3つに分割
最終決戦
-
乙かれ
復帰楽しみに待ってます
-
おつ、
-
乙
ずっと待ってる
-
楽しみだ
乙
-
乙。
西木野王はどうなるん!?西木野王は?
-
乙
待ってる
-
おつ
続き楽しみだわ 楽しみなだけに流れは書かないでほしかったかも
-
乙やで
ユニコーンいい仕事するわあ
-
ありがとう、復帰を楽しみに待ってるよ
ここのスレって保守とかはいらないんだよな?
-
お疲れ様でした
ユニコーン有能すぎて、ほんと性格が惜しいのが笑える
-
お疲れ様でした
デュラさんの二人のお母さんポジっぽいところ好き
CV田中敦子な感じ
-
デュラハンはミネバに仕えるハマーン様と想像してる。
テイルズシリーズや他のRPGみたいにサブイベントは沢山みたいとこだなぁ
-
お疲れ様です
復帰を待ってます
ゆっくり休んでください
-
感動的なシーンだけど凛ってまだ花陽のパンツ被ってんの?
-
乙カレー!ずっと待ってるよ!
-
>>686
>>603で落ちてるからセーフ
-
続きが楽しみすぎる
ゆっくり休んでね
-
いつもの癖で開いちまった…
続きの描写が見たくて仕方ない
-
これから先凛ちゃんがピンチの時
かよちん!アレお願い!!
って脱ぎたてかよパンを装着してハイパー凛ちゃんモードみたいになるんだろうか
続きが気になるぜ
-
総力戦でエリーチカ・・・もし戦闘不能になってるエレあんにこが居ても簡単に行きそうにないのが怖いな
その分かなり盛り上がりそうだけど
-
乙。養生ください
希とあんじゅの闇組にも期待
-
>>692
かよちんもマナ切れだしな
-
時間停止の弱点は見えてるし、全員でかかれば何とか…なるかな?
-
絢瀬絵里(CV明坂聡美)1人に対する代償がデカイだろうなぁ…そうなると天使対策ガガガ
-
天使はアバドンとスカアハがいるから問題ない。あんじゅは手足が殆ど無くなってるから分からんが
-
>>696
エスデス様かな
-
まさぐれ部活もの
-
絵里はのんたんの口八丁でぽんこつエリーチカになるから、実質ランスロット戦と見ていいだろう
ヒデコがあんじゅさんと離れたのが痛いね
-
そういえばはるか昔にはホモカップルだけで構成された部隊があり、猛威をふるったという話がある…
-
>>701
愛する者を守ろうとより奮戦したそうだな(むろん男同士で)
-
某有名征服王「もう二度と彼等とはやりあいたくない(同志を失う的意味で)」
-
ここは雑談スレではありませんよ
-
誘導くらいしろやボケが
-
本当ここのやつらくっさいな
-
RPG終盤のお約束、航空移動手段が手に入るとしたらはかさね撃破〜サブイベント辺りかな?
…時期的にラスダン突入以外出来ること少なそうだけど
-
西木野王は下手したら真姫ちゃんのサブイベで軽く消化されそう
-
全員は乗れないだろうけど、航空移動手段ってかよちん持ってない?一応竜化したエリチとかトリスたんもいるけど
対エリチの戦闘楽しみだな。ラスボス()の西木野王よか絶対きついでしょ
-
ラスボスは前にちょっと出た14番目の龍か理事長じゃね
-
衛生兵をきっちり呼んでる英玲奈は流石のファインプレーだよな
-
この先にテッドブロイラーがいるが
LOVEマシンの設定は完璧かどうかというような問題
-
>>701 >>702
だからレズが強いのか
-
理事長と真姫ママが恋仲だった場合は詰む模様
-
余裕でありえるんだよなぁ
-
はやくかえってこないかな
-
この流れで西木野王実際に死んでたらどうなってたのかすげえ気になる
>>
かさね『集約する脅威(メナスライザー)!!!!』
西木野王「ッッッ!!?」
コンマ
銃弾
01〜30 ガウェイン死亡
31〜00 回避
大鎌
偶数 ガウェイン死亡
奇数 回避
判定
ttp://yomogi.2ch.net/test/read.cgi/mog2/1448879442/
銃弾>>277
大鎌>>278
-
これ65%で死んでたんだぜ……
-
65%ってことは1的には王死亡ルートが正史だったんだろうか
-
王撃破→エリチが王の洗脳を解けず、二代目の西木野王として君臨
って感じにしたかったのかもね
最初っから>1が自由に書いたver.の龍狩りも見てみたい
-
>>720 穂乃果の腕か…
-
西木野王が死んだらかさねかエリチが似たポジについたんじゃないの?
-
西木野王やその後の召喚、紫罰回避ちゃんと温すぎる救済措置を用意してくれているのに
悉く無様を晒した塵芥共よ
お前らのせいで>>1が書かなくなってしまったわ
責任取って電車か崖へ飛び込めや
-
>>723 運だからさぁ…誰も責められないと思うんだけど
-
もうこの流れ飽きたからやんなくていいよ
-
総力戦…ヒフミwith海未に戦い終えて戦闘可能な面子だけでやるのか
それともことりとツバサも合流するのか…(穂乃果はかさねが行かせてくれなさそう)
-
ほのスメルと同じか
-
2月には帰って来るのだろうか作者さん
-
帰ってくるのかとか言ってる奴は急かしてるのか?
休ませてやれよ
-
煽り方が明らかに同一人物
-
俺も自殺教唆罪って未遂でも成立するんだよなあ
-
俺もってなんだ…ミスった
-
煽るなんて美しくないな…やはり女性。それも男の汚れを知らぬ処女こそが至高!
-
きも
-
痛々しい描写増えてきたしストレス溜まってるんだろうな。王宮地下辺りまでは文句なしに面白かった
-
それも糞選択選ぶ底無しの馬鹿と
3割以下の低確率を逆スナイプしやがった間抜けの所為
-
続きが楽しみだ
-
2月は休ませてやれよ
-
そんなこと書くと2月に復帰するつもりだったら書きづらくなるんじゃないかな?
ゆっくり休んで書きたくなったらまた書いておくれ
復帰楽しみに待ってるよ
-
さすがに神経質すぎる
-
ワロタ
-
このままだと雑談でこのスレ埋まりそう
-
2月は来ないの?
-
2月なら三日前に来たが
-
復帰が待ち遠しい
日に三回は更新ないか見に来てる
-
ゆっくり休んでほしいけど、その気持ち気持ちはわかるな
起床時と三食風呂の前後と就寝前と暇な時間には更新無いか確かめてる
-
最初から見返して見るとどいつもこいつも殺意増し増しで草
-
なにこれおんもしれぇ
最初から見てこよ
-
こんな終盤から読み始めてどうする(正直序盤の方が面白いぞ)
-
えたらない宣言があってよかった
-
色々忙しくて更新できなくてすまんね
もうちょい待っててな
-
ずっと待ってる
-
おかえり
-
むしろ今まで良く毎日続けたよなぁ…どんな情熱だよ
-
すごいワクワクしてきた
-
まってる
-
待ってるとも!
-
いつまでも
-
おかえり
-
海運王ってなんだっけ
あらすじにのってないんだけど
-
スルーしてくれ自己解決したわ
-
>>760
かなり無理ゲーな依頼(クラーケン討伐、なお船一つ分の荒くれもの揃いの冒険者を説得して纏めないと勝てなかったらしい)出して
その後直前にトンズラこいた穂乃果たちに刺客送ったりしたけど
最後は龍皇教団侵入した際にあんじゅにこいつも信者だったけどもう殺しといたからと
本人登場する前に退場した
あと凛ちゃんがいた当時の闘技場経営してたのもこいつ
-
闘技場経営してたのか
うろ覚えなとこおおいしこの機会に見返すか
-
>>763
ごめん、ちょっと自分も覚え間違いしてた
闘技場経営してたんじゃなくてスポンサーしてたんだった…まあ、時代劇の悪代官と悪徳商人ぐらいの違いしかないけど
-
パロミデスやクラーケンに挑んでみるのも悪くなかったかなと最近思い始めてる
-
>>1の容赦ないダメージ描写を見るに死亡欠損のオンパレードだった気がする
-
でえじょうぶ
ドラゴンボールで生き返るから気にスンナ
-
世界をアドベンチャーしてドラゴンのタマを殺ってく話だからな
-
逃げてから>>1が攻略法バラしたあとは兎も角当時はホントそれまでのコンマ運の悪さも合わさって絶望ムード全開なうえ阿鼻叫喚だったなw
ヒデコはヒデコで旗立てようとするしw
アレから人数も増えて全員パワーアップしてるしやろうと思えば穂乃果達だけでもイケるかな?
-
>>1の過去作が気になる
-
クラーケンに関してはどうなるか見ては見たかったけど回避して正解だったろ
本筋以外で人数減らして大事なところであいつが生きてればってなると困るし
逆に本筋では安牌ばっかりじゃなくてもっと冒険してもいいとは思うけど
-
クラーケンで逃げてないとヒデコ脱落だったろうしな
あの時は「また穂乃果ハーレム増えるのか」しか思ってなかったけど、あんヒデを始めとしてここまで有能キャラになるとは想像出来なかった
-
クラーケン戦は本編終わった後にでも当時のステータスで戦ってみたいな
実際戦ってみるとどんなもんだったか見てみたい
-
花陽たちを溺死に追い込んだリバイヤが気になる
-
今更だか凛ちゃんのレールガンにレベル5って突っ込むなら
ヘビ博士にもつっこむべき
俺は見た瞬間錯覚したイザナミかって
龍一覧もつくって
-
酔って書き込んだのかな?
-
未成年は飲酒しちゃダメだぞー
-
おっ大丈夫か大丈夫か
-
>>778
それは違くね?
それならラブライブ!の新たな道として考えるべきだろアイマスのゼノグラシア的な感じでな
-
なんかこっち移ってから悪い意味で人減ったよね
にわかが消えたんならいいけど
残ったのは臭いやつと粘着荒らしが大半という
-
こいつ荒らそうとしているようにしか見えないんだが
-
まだ寒いけどもうすぐ春だからなぁ…
…春と言えば真姫ママこと桜龍モルドレッドと戦ってからまだ2か月経ってないのか…
-
>>778
お前>>775と同一人物だろ
まず友達に自分の主張が正しいかどうか判定お願いしてみ
友達減ると思うから
-
どうでもいいし禁書もブリーチも好きだがお前臭すぎるぞ
-
厨学生が変な夢を持っちゃっただけだろほっとけほっとけ
-
作者次第だけど内容と無関係なレスは規制してほしい
-
これは小学生レベルやろ
-
わろた(真顔)
-
仕事しろよ管理人
-
また余計な負担が
-
更新きたとおもったじゃねえか
-
この一連の会話した奴全員消えたらいいと思う
コンマ結果に文句言うバカにも反応した連中でしょ
-
取り敢えず言えるのは電撃に出すのに禁書混ぜたら速攻で落ちるだろとだけ
-
おい待てこのままだと本当に雑談でこのスレ終わるぞ自重しろ
-
クラーケンでの安価は選択肢にあるのを選んだたけで周りが叩きまくってたのがなぁ
-
いや死ねよパクリ
-
(構うなよ…)
-
>>が
>>なだけで凄く小中学生に見えてしまう不思議
-
>>804
けど多少はね?
-
こりゃ当分戻ってこないな
-
伸びてたか再開したのかと期待したらこれだよ
つーか全角の安価って意味あんのかよ
-
ないよ釣られすぎ
-
消えたw
-
管理スレに通報されてるな
管理スレ
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/anime/10627/1432387696/
-
通報者はGJ
-
1人巻き添えになってるけど、暴言気味だったのでまあいいでしょう
-
久々に来たら削除されてて草
-
よーやく流れに追い付いたと思ったら、1ヵ月くらい更新なかったんだな
早く続き来ないかな
-
フフ、適当な時間に更新がないかと確認に来る奴がまた一人増えたか…
-
後で更新するよ
-
お待ちしておりました…!
-
>>818
待ってた!ずっと待ってた…!!
-
お久しぶりです
来てくれてありがとー
-
楽しみ
-
まきちゃん
-
まじすか!期待してます!!
-
1ヵ月振りの龍狩りだぁあああああ!!
-
>>818
ありがとう!
ちょくちょくきてて良かった
体は大切にね
-
>>672
これ書かないでほしかったな…
-
誰にだって我慢の限界はあるさ
もう触れてやるな
-
全力で忘れろ・・・
-
大局的に観れば作者の判断が一番正しいことは多いのよ?
-
久しぶりの龍狩りに血が騒ぎよるわい
-
>>827
すまんね
まあ中断中に事故死とかする可能性だってあるし、何かあった時のためのマナーって事で許してね
-
カツ、カツと、具足の足音が無人の遊園地に響き渡る。
天使の侵攻の最中、一般人たちはその全員がシェルター内へと閉じこもっていて、娯楽施設に人がいるはずもない。
だというのに、観覧車、メリーゴーランド、ジェットコースターに、振り子よろしく揺れる海賊船。
様々なアトラクションは、粛々と煌びやかにその動きを続けている。
絵里「ふう…ず、随分とふざけた場所に逃げ込んだものね」
中央管制塔で黒煙が上がっている。
様々な魔力の昂りとぶつかり合い、そして消滅を感じ取った。
遊園地が無人のままに動いているのは、戦いの余波で動力系に不備が出ているのかもしれない。
絵里「こっ、こんなところに逃げ込んで…一体、ど、どうしようっていうのかしら…?」
-
忘れてはならない、現在の時刻は夜間だ。
人気のない夜闇の中に、煌々と灯るアトラクションの灯り。
閑散とした中に楽しげなBGMが流れ、偽りの賑わいが空間を満たしている。
そう、既にヒデコの策は始まっている!
絵里の本質である怖がりという性格を海未から聞き、その弱点を最も的確に抉るべきシチュエーションを最短時間で考慮した。それがこの場所なのだ!
今の絵里は耀龍ランスロットに精神を乗っ取られている。
だが、根深い恐怖心というのは易々と消せるものではない。
夜の、無人の、遊園地。
まともな大人でさえ恐怖を覚えるシチュエーション、ビビり屋の素因を持っている絵里が平静を保てるはずもない!
海未「なるほど…流石はヒデコ」
ヒデコ「悪いけど、盤外戦術で行かせてもらうよ」
-
静かに、眈々と様子を窺うヒデコ。
もちろん目視ではない。園内奥に設置されている監視モニター室で、安全圏から絵里の動向を視認しているのだ。
隣には海未の姿。万が一手当たり次第の時間停止を発動された時のため、ヒデコと共にモニター室にいる。
そして、残る二人は別の場所に。
ヒデコ「剣で斬る、槍で突く、魔術を放つ。それだけが戦闘じゃないよ。精神を苛む!それも立派な戦術だ!フミコ、ミカ!」
フミコ「準備オッケー!」
ミカ「いつでも行けるわ!」
作戦開始!
三人の間で無線を介した合図が交わされ、楽しげに流れていた園内BGMが突如ストップする。
絵里「ひっ…!?な、何!?」
パシ、パシと照明が明滅する。
故意に明滅させている。
スピーカーからはお化け屋敷で利用されている、退廃的かつ恐怖を煽るBGMが流れ出す。
それだけではない。音響調整はヒデコに掛かればお手の物、故意に断続的に、掠れたノイズを混ぜることで恐怖心を煽る!
-
絵里「どっ、どこにいるの!?出てきなさい!」
まだ虚勢を張る余裕はあるらしい。これでは足りない。
魔術は心理状態に左右されるものだ。
ほぼノータイムで放たれる恐ろしい氷の術式、あれを阻害するためには、極度の恐慌に陥れた状態で戦闘に入る必要がある!
ざ、ざ。
ノイズが不快かつ生理的な嫌悪感を催させる。
絵里の目に、依然として海未やヒデコらの気配はなし。
ハイウェイで気分も高らかに追走劇を見せた時とはまるで異なる引きつった表情。絵里の探索の足はすっかり鈍っている。
絵里が冷静であれば、魔力の消費を度外視した大規模凍結で四人を燻り出してしまう戦術も選択肢に入っただろう。
実行しないにせよ、少なくともそれをブラフに四人へとプレッシャーをかけることはできた。
だが、そんな余裕は今の絵里にはない。
…と、中央の噴水広場で絵里の足が止まった。
不穏な気配を感じたのだ。
視認できる位置、園内の奥まった場所にある迷路から、人が歩み出てくる気配を感じている。
-
絵里「な、なるほど。脅かすのはそろそろ十分、ってわけね」
ヒデコたちの全員か、あるいはバラけて一人、ないし二人が囮として現れるか。
いずれにせよ蹂躙するのみ!
聖槍アルタキエラを構え、全身に重油のように絡みつく恐怖心を振り払うべく気勢を上げる!!
絵里「ダヴァイッッ!!(来なさい!!)」
かた、かたた。
奇妙な足音。しゃき、しゃきと金属の擦れ合う音。
迷路の奥から現れたのは…
「キャハハハハ!!!」「ケタタタ!!!」
「アソボウ!アソボウ!」「コッチニオイデ、コッチニオイデ」
「ゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラ!!!!!」
絵里「い、嫌あああああ!!!?」
-
奇怪なメイクを施した、10体を越える大量のピエロたちだ!
手にはそれぞれ大鋏、斧、鉈、ハンマー、いずれもが殺意に満ちた武器を手にしている!
口々、甲高い声で早口に喚きながら、絵里へと手招きをしつつカクカクとした早歩きで迫ってくるではないか!!
これは絵里にとって予想外に過ぎた!
強引に取り戻していた戦意が明後日の方向へと飛び散ってしまう!
絵里「ひぁ、ひっ…!?こ、来ないで!来ないでえええ!!!」
「アソボウ!アソボウ!アソボウ!アソボウ!」
これには絵里の我慢も限界を迎えてしまう!
人々は避難しているはず。いるはずのないピエロ!それが大挙して押し寄せてきたのだから恐怖以外の何物でもない!
ミカ(ようし、大成功!)
実のところ、あのピエロたちは魔術都市に相応しい高等技術で製造されたゴーレムの類なのだ。
魔力でその動きに細かな制動を加えることができるマスコットであり、通常の営業時は訪れた客たちをにこやかに迎えている。
まあ、それでも怖いという意見は多いのだが。
-
ともかく、そんなピエロゴーレムたちを操るのにミカの雷の魔力と緻密なマナコントロールはおあつらえ向きだった。
故に、ピエロの大軍が絵里を追い回している!
絵里「ひゃああああ!!?嫌っ!嫌ぁ!希ぃ!にこ!亜里沙ぁ!!助けて!嫌あ!!げほっ!!」
ヒデコ「これは…」
海未「き、効き目は抜群のようですね…」
奥底へ沈められたはずの地の人格がすっかり露呈している。
もちろん、しばらくの間一緒に過ごしていた海未は彼女の中に茶目っ気のある性格が残されていたのは知っている。
だが、こうも情けない姿を見せられるとそれはそれで反応に困る部分もある。
絵里「いやあああ!!おうちかえる!!」
海未「え、絵里。あの怖がりようは…目も当てられません」…」
ヒデコ「ま、まあ。あれは誰だって怖いよ。私だって悲鳴上げて逃げ回ると思う。うん」
-
フォローを忘れない辺りは流石にヒデコ、気遣いの人だ。
だが同時に、一切の容赦なく作戦を遂行し続ける指揮官の気質も有している!
ヒデコ「次、フミコ」
フミコ「ラジャ!」
ピエロに追い回されている絵里。
氷で一斉に凍らせてしまえばそれまでなのに、心が乱れてそれどころではないらしい。
西木野王は人造生命体として絵里を造る際に、このメンタル面をもう少し補強してあげられなかったのだろうか…
と、半ベソをかいて逃げ回る絵里の耳へ、次に飛び込んできたのは何かが地面を転がる音。
高速回転する地鳴り、そして鋼の唸り声…
絵里「な、なんなのよぉ…!」
夜闇に幾筋もの光、モーターの駆動と排気音。
どこからともなく現れたゴーカートが6台、8台、10台以上!猛然と絵里へ突撃を敢行する!
ただの車両ではない。
その運転席にはお土産品のジョークグッズ、骸骨マスクを被ったマネキンが座らされていて、絵里は殺人ピエロと骸骨カートに追い回される形となる!!
-
絵里「ひぇあああああああああ!!!??」
もう悲鳴さえまともな響きではなく、敵ながら可哀想になるほど。
こちらはフミコの担当だ。得意とする風の魔術で大量のカートのハンドルを遠隔操作、さらに加速!
絵里へと向けて時速70キロオーバーで鉄の塊を進軍させていく!
フミコ「ちょっと申し訳ないけど…ここは轢き逃げアタックだ!」
絵里「ひぃい嫌ああっ!怖いぃぃぃ!!!助けてえええ!!!うげ…っ!げぇっ…!」
監視カメラの粗い映像でもわかるほどに動揺も顕著、目にたっぷりの涙を溜めて逃げ回る絵里。
怖すぎるのだろう、全力でえづいている。
四騎士だとか十二卿龍だとか、その手の肩書きがどうでもよくなるほどに取り乱して錯乱。
ある意味で相手が悪かった。
正面対決ならいざ知らず、素早く環境を整えることに掛けてはヒフミトリオに勝るものなし。
設備把握に諸々の仕込み、それをわずかな時間で完璧にこなしてみせた三人の恐ろしさはまさに神域!
-
そして当然ながら、脅かすだけではない。
監視カメラ室からはヒデコ、そして海未の姿が消えている。
地下にある従業員通路を最短距離で走り抜け、姿を現した場所はジェットコースターの隣。
ヒデコ「スタンバイ完了!」
フミコ「こっちももう少しだよ!」
ミカ「あと15秒!」
海未(なんというか…この三人、恐ろしい!)
殺人ピエロの武器で攻撃する。ゴーカートで轢く。
いずれも普通であれば有効な攻撃手段だが、相手は優れた鎧と龍の防御力を有している絵里だ。その攻撃を成功させたとして、動きを止めるダメージには至らない。
なので、フミコとミカは付かず離れずの距離を保ったままに絵里を追い回す。
高所からその動向を眺めつつ、見事な連携で絵里を園内のある場所へと誘導していく。
そして宣言通りの15秒。
目論見のままに、絵里は狙い通りのポイントへと到達する!
-
それはジェットコースターの車両が逆さになり、地面スレスレをレーンが通る屈指の恐怖ポイント。
動力のままに猛然と滑走するコースター。
そのレーンの側に、ヒデコが斧を構えて立っている。
全力ダッシュで駆けてきた絵里と、待ち構えるヒデコの視線が交錯!
絵里≪あっ、いた!?よくも…よくもこんな怖い目に遭わせてくれたものね…!!≫
海未「ヒデコ!来ます!」
ヒデコ「ごめんね絵里さん!そしてもう一回、先に謝っておく。ごめんなさい!!」
恐怖からの怒りに燃える絵里。
槍を構え、全身に氷のマナを膨れ上がらせ…その声色は人外の魔力に満ちている!
対し、謝罪するヒデコ。
その背後からは世界最速、魔術動力で500km/hを超えるコースターが凄まじい勢いで現れる。
ヒデコ「多分死なないとは思うけど!!『大強撃』ッッッ!!!!」
絵里≪…!?≫
-
万事一切を顧みない凄絶な強振!
動く相手に当てるのは難しい一撃だが、ヒデコの狙いは絵里ではない。コースターでもない。叩くのはレール!
泥塑の斧が鋼鉄の軌条を叩き、折り、砕き、へし曲げ!
高速の車両は行先を見失い、その速度をほぼ保ったままに地面へと突貫する!!
その先には絵里だ!!!
絵里「」
ゴシャ!ともグチャ!とも付かない鈍い音。
直後、猛然と地面を削りながらジェットコースターは絵里を飲み込み、たちまちのうちに遥か遠方のレストランへと突っ込んでいく。
絵里の姿はどこにもない。
車両の突端に飲み込まれたのは明らかで、大質量×超高速。たとえ龍の力を有していようと、無事であるはずがない!
海未「え、絵里ィィィ!!?」
ヒデコ「や、やりすぎたかな!?」
フミコ「死んではない、と思うけど…」
ミカ「エグい音がしたよ…」
-
あまりにも容赦のない戦術…
もちろん敵同士。こちらも生き残るために必死、容赦する必要はない。のだが、それでも今の光景は流石に心配になる。
作戦を遂行し、集まった四人は気遣う視線を大事故の現場へと向けている。
まともな人間があれに巻き込まれればミンチになるのは間違いなく…
ヒデコ「……っと、心配ないみたいだね」
四人は同時に気付く。
周囲の気温が急激に低下していることに。
喋る呼気はたちまち白く凍てつき、鎧を動かせば関節部が軋む。
フミコが海未の顔を見ると、その睫毛には霜が付き始めている…
空間が蒼白に輝いている!
水分が凍結し、足元が、樹々が、金属の全てに氷霜が広がっていく!
その発生源はジェットコースターが飛び込んだレストラン。
絵里は生きている!その魔力をフルに、全てを凍らせるべく大魔術を発動させている!
-
海未「これは…!『聖零の世界(ラグナレイ)』です!!」
フミコ「逃げよう!!」
このまま待っていたのでは全員が凍らされてしまう。
四人は脱兎の如く駆け出し、それを追うように足元は分厚い凍結に覆われていく。
吹雪が吹き荒れ、たちまちのうちに足元が雪原へと姿を変えていく…!
ミカ「これって…ヤバいよ!」
ヒデコ「落ち着いて!プランBに移行するよ!」
瓦礫が崩れる。
ひしゃげた車両が凍結し、砕け、そこから歩み出たのは五体満足の絵里だ。
絵里≪痛かったけど…ふう。おかげで頭が冷えたわ≫
流石に無傷とはいかず、身体中のあちこちへと手傷が刻まれている。
だがそれでも動きに支障のないレベルを保っていて、異様なのはその外見だ。
氷の双角、翼に尾。
首や四肢が蒼輝する氷の鎧で補強されている。
聖槍アルタキエラもまた氷でさらなる大刃へと強化されていて、龍人めいたその様相は耀龍ランスロットの人間体、その完成形といったところだろうか。
-
冷気に支配された世界の中、絵里の視界に四人の姿はない。
しかし、雪の積もった路面には四人の足跡が残されている。
もう安易な逃走は許さない。
ダメージに足取りは重いが、着実に、ゆっくりと四人の足跡を追っていく。
そして辿り着いた場所は…
絵里≪ミラーハウス。なるほど、面白い場所ね≫
魔術師たちの集う都市の遊園地。その中のアトラクションの一つであるミラーハウスは、魔術による突破を許可しない。
一面に張られた鏡を魔術で破壊しようと試みても、マナを拡散させる処理が施されていて全体に魔力が散るばかり。上手く作用しないのだ。
この中では絵里の大規模凍結もせいぜい冷凍室程度。
動きを鈍らせることはできても即座に致死威力を出すには至らない。
だが、敢えて踏み込む。
ジェットコースター攻撃という予想だにしない命の危機に、ランスロットの力をさらに高めた絵里。
今は槍さえあればいい。
怜悧な瞳のままに、手練手管のヒフミトリオが待ち構える魔境へと足を踏み入れる!
-
ヒデコ(…お、来たね)
絵里には聞こえない程度の小声。
ヒフミに海未は依然、小型の無線機で常に情報を共有している。
通常の鏡よりもさらに特殊な製法の魔術鏡が張り巡らされたミラーハウスの中には、光が屈折、乱反射してそれぞれの姿をあらぬ位置へと映し出してみせる。
ヒデコの目の前には絵里の姿がある。
が、絵里は踏み込んだばかり。これはもちろん虚像だ。
別の場所へと散ったフミコとミカにもそれぞれの偽りの姿が映し出されていて、各自を混乱へと誘うべく奇妙な空間が形成されている。
フミコ「はああああっ!!!」
絵里≪…!≫
絵里の背後、メイスを掲げたフミコが突進を!
とっさに反応、振り向き槍を振るう。だが鏡の錯視だ。
ミカ「ショットガンを食らえ!」
絵里≪今度はミカ…≫
銃口が火を噴く!絵里は飛び退き、回避を試みる!
が、これも偽物。
ヒデコ「隙ありッッ!!!」
絵里≪本命はこれね!≫
-
読んでいた!
フミコやミカの攻撃では絵里に対しては威力不足。ならば牽制に留め、ヒデコが本命となるのが道理。
そこへカウンターの一振りを。しかしこれも鏡だ!
絵里の視界には常時、三人が入れ替わり立ち替わりに現れては偽の攻撃を仕掛けていく。
それどころか、五人、六人…鏡の悪戯か、ヒデコヒデコフミコミカミカミカ。
絵里の視界には乱反射した敵影が幾人も幾人も。
気を抜けばブラフの中に本命の一撃が混ざっているかもわからず、一瞬たりとも油断が許されない!
絵里≪………面倒ね≫
ミカ(よしよし、疲れてる疲れてる)
フミコ(私は絶対受けたくないなぁ。この攻撃)
ヒデコ(流石はミカだね!)
絶え間ない陽動、完璧な連携。
絵里は今、ヒフミトリオの真骨頂こと超連携『トライアングルアタック』の只中に陥っているのだ!
-
海未(トライアングルアタック…なんと恐るべき攻撃なのでしょう)
戦闘から離れた場所に位置し、海未は戦闘の趨勢を眺めている。
傍観者であればこそわかることもある。海未が絵里の立場なら、この状況は既に詰んでいる。
『トライアングルアタック』とは、単に三人が同時攻撃を仕掛ける技ではない。
フミコが空気の流動を読み、一帯のありとあらゆる位置関係を把握。
ミカがマナを電気化、発信。ヒデコとフミコの脳と電気信号のリンクを形成し、三人の思考は共有される。
そして最も思考力に長けたヒデコが情報を活かし、即座に戦略を組み立てる。
攻撃、防御、フェイントに撤退。全てのタイミングは三人の間で盤石。
それぞれの絆と能力を活かし、詰め将棋のように相手を追い込む戦術、それこそがトライアングルアタック!
相手が格上だろうと、三人揃えば対等以上に戦える自信がある!
フミコ「今度はこっちから…『エアバレット』!」
ミカ「痺れちゃえ!『プラズマボム』!」
ヒデコ「足元にも注意だよ。『ランドスパイク』!」
明後日の方向から飛来する風弾、どこかに設置された雷爆弾は反射で増殖して見え、そして足元から斬撃が噴き上がる!
対応に苦慮する絵里、その死角からショットガンの弾丸!
魔術、魔術、散弾、斬撃!
ヒデコが斬りかかっては走り抜け、追おうとすれば魔術が襲いかかってくる!
-
戦闘、勝負の鉄則は相手の嫌がることを続けること。そしてこれこそ究極の嫌がらせ。
ヒットアンドアウェイを突き詰めた戦術を前に、絵里の体に無視できないダメージが蓄積されていく。
魔力が拡散するこの場所では時間停止も使えない。
魔力を帯びた聖槍では鏡を物理的に破壊するのも不可能。
緩やかに明白に、絵里が敗北へと追い込まれていっている。
絵里≪出てきて勝負しなさい!≫
フミコ(それができればやってるよ!)
ミカ(ありったけのマナで…プラズマボムをもう一発!)
フミコもミカも魔力の残量は底が近い。
どこかで決定機を仕掛ける必要がある。勝負所は…
ヒデコ「ここだぁあああ!!!!」
絵里≪なっ…その動きは!?≫
-
鏡像が最も多く交錯するポイント、そこへ絵里が到達するのを待ち構えていた!
フミコの風によるソナー、ミカの電気による反射把握と伝達、構造を完璧に知っているからこその一手。
絵里の目には八人のヒデコ!
斧盾を諸手に、まるで人外めいた動きで八方から迫ってくる!!
ヒデコは発動させている。二度目の『大魔誅滅』を!
一度きりの大技の“もう一度”。脳と神経系に多大な負担を掛けながらの超機動!
鼻に瞼に、過度の負荷を受けて粘膜からは出血も夥しい。だが強い!疾い!!
ヒデコ『斧撃乱舞ッッッ!!!』
絵里≪っ、無茶な真似を…!≫
旋風めいて躍る刃、高速の三連撃が絵里へ迫る!
それが×8、斬撃の数は24!
視覚的にはもはやシュレッダーにも等しい大技を前に、絵里はバックステップを素早く二つ、三つ、静かに呼吸を深め…
絵里≪………ダスヴィダーニャ≫
ヒデコ「……っ、!」
ヒデコの斧は絵里の脇腹へ、決して浅くはない一撃を刻む。
しかし…絵里はそれを甘んじて受けたのだ。
即座に自分の傷を凍結。これでまだ動ける。
そしてヒデコの実像を見極め、カウンターだ!槍を横薙ぎに一閃!
海未「ヒデコっ!!」
-
ヒデコの胸部に真横一文字の斬閃が刻まれ、それは致命の一撃…
が、あくまで絵里に四人を殺めるつもりはない。
傷口へと掌をあてがい、瞬時に凍らせて塞ぐ。これで命を保つには十分。
念には念を、床に転がった斧は氷塊の中へと封じ込めておく。
絵里≪私にランスロットの生命力がなければ、間違いなく貴女の勝ちだったでしょうね≫
あとは残る三人を狩り、都市深奥のメインコアを奪う任務を遂行するのみ。
斧の斬撃を受けてなお、それをこなせるだけの体力は残されて…
ヒデコ「まだ…だっ!!」
絵里≪なっ、動いたら駄目よ!?≫
強引に立ち上がる。傷を塞いだ氷が砕ける…!
致死量に迫る血を流しながら、ヒデコは絵里を力任せに押す!
半死人の不意打ち。虚を衝かれた絵里は、背後へフラ、フラと押され…
ヒデコ「役目は、果たしたよ…!」
絵里≪しまっ…!?≫
-
そこにはミカが置いたプラズマボム!
残された魔力の限界一杯、数発分の雷撃が蓄積されている!
足が触れ…、爆雷!!!
響き渡る炸裂音、
いかな氷鎧に身を包んだ絵里であれ、高威力を重ねた雷地雷をモロに受ければ…!
海未「ヒデコっ!」
ミカ「大丈夫!?」
フミコ「すぐに治療を…!」
駆け寄る三人!
抜かりなく治癒術のマナは残してある。
倒れたヒデコへとすぐさま治療を開始するフミコ。
海未は刀を、ミカはショットガンを構え、電気の残滓と粉塵の中、絵里の姿へと目を凝らし…
ミカ「……やった、かな?」
海未「……ミカ。希から聞いたのですが、その手の発言は“フラグ”と言うそうですよ。ロクな結果を招かないと…」
煙が晴れ、二人の目に映ったのは倒れている絵里の姿。
肌の露出している部位、手の甲などには電撃傷の跡。その全身を過不足なく高圧電流が駆け抜けたのだと一目に理解できる傷だ!
-
海未「や、やった!やってたみたいですよ!!すぐに縛って確保を…」
ミカ「待って!まだ動くよ!」
ゆっくりと。
その全身に負った傷は浅くないが、絵里はまさに怪物的な耐久力で身を起こす。
だが、口からは煙。そして血。
ゆらりと立ち上がった絵里へ、ミカ、そしてフミコのショットガンを借り受けた海未が躊躇なく発砲を!!
散弾の斉射が雨霰と向かい、絵里の傷身を叩く。
血を流しながら…
王者の威圧を滲ませ、呟く。
絵里≪耀龍…ランスロットの、真の力を見せてあげる≫
その身体が耀く!!!
その眩さに思わず目を覆う海未とミカ。
二人の体が影となり、フミコには動く余裕が残された。
絵里の身体、その内側から膨大なマナが湧き上がる。
そしてフミコはすぐさま理解する。絵里は次の手段へ、龍体へと移行するつもりだ。
絵里にとっての不利益しかもたらさない鏡の迷宮を、巨大な龍体で物理的に破壊するつもりなのだ!!
瞬間、ヒデコへの応急処置を済ませたフミコは海未へ駆け寄り、その身体へと風の魔術を叩きつける!!
海未「な…っ!何を!?」
フミコ「あとはお願いね!海未ちゃん!」
-
凝縮された風が弾け、海未は鏡の迷宮から見る間のうちに押し出される!
ヒデコ、フミコ、ミカ。
どこまでも周到な三人は、思考共有の中で決めていたのだ。
いざという場面では海未を逃すことを最優先に!
現状、絵里の時間停止に抗える唯一の戦力。それを失うことが決してあってはならない!
海未「馬鹿なっ!!」
海未が無意味な抗議の声を張り上げる中、絶望的な咆哮が夜空へ朗々と響き渡る。
キュルル…と、氷雪が軋む様、または聖麗な楽器を思わせる龍の声。
その巨身でミラーハウスを砕きながら現れたのは耀龍ランスロット。
幼い頃から幾度も物語で目にしたような、絵に描いたお手本の如きドラゴンの姿。
ただしその前身は氷で覆われていて、光に照らされ美しい耀輝に満ちて、カラットを重ねたダイヤモンドとも見紛う高貴なる姿…!
幾多の戦いを重ねてきた海未にはわかる。
あの氷は事実、ダイヤにも劣らない硬度を有している。
元の姿、絢瀬絵里の美貌をそのまま龍に移し替えたような、
そんな美麗を見せつけられて、怜悧な視線を向けられて。
海未「あれに、一人で勝てと…?」
-
建物は粉々だ。ヒデコたちが無事かもわからない。
削っているはずの絵里の体力にも底が見えず、まるで光明の見えない戦況に、海未の戦意が喪われかけ……
キン、と鋭音。
絵里、ランスロットの背首へ、超硬質の体表へと剣閃が刻まれる!
高空から落下、小柄な何者かが勢いよく斬撃を浴びせたのだ!
ツバサ「やる気をなくすには早すぎないかしら!園田海未!」
海未「綺羅ツバサ…!?」
ツバサ「この私の七星剣と天羽々斬、ダイヤだろうがなんだろうが、斬れないものはないのよ!」
ことり「海未ちゃんっ!!」
海未「ことりぃっ…!!」
窮地に現れたのは愛してやまない大親友!
海未の声はこれまでにないほどの喜色に満ちている!
神々しい光翼を広げて現れた天使、そして天才の二人。
これ以上ない援軍は、ヒデコの描いた勝算の一つ。
立地と距離から考えて、二人は間に合うと踏んでいた!
ことり「うふふ、海未ちゃんが無事で安心しました♪」
海未「ですが、ヒデコたちが…」
ことり「大丈夫。酷い怪我でも、ことりが絶対治してみせるから!」
ことりの一言一言は海未にとって何よりの力になる。
開幕の一太刀を浴びせ、海未、ことり、ツバサが並び立ち、第二ラウンドの開幕だ。
海未「相手は絵里ですが…敢えてこう言いましょう!」
海未「龍狩りですっ!!」
-
ここまでな
続きはまた近いうちに
-
>>858
お疲れ様!
続きも楽しみにしてゆっくり待ってるね
-
乙
-
>>858
久しぶりに乙!
何故か渡辺宙明の音楽をバックに後ろ回し蹴りしてる渡洋史が目に浮かんだけど多分気のせいだなw
-
3人組かっこいいなあ
-
待ってたぜ
-
乙
やっぱり面白いわ
-
野暮なことを言うようだけれど、相変わらずのクオリティの高さに安心
無理しないようにな
-
おお、更新きてた!面白い!
-
乙乙!
ウミチャーの龍狩り宣言熱すぎィ!
あと遊園地とミラーハウスで、まほよ5章前編を思い出した
-
1乙
待ってたよー、楽しみにしてます
-
元が王道ストーリーだし
ネタバレ喰らっても大したことないよね
-
王道っていっても穂乃果の左腕みたいな欠損欠員も書く気満々なこの>>1だから少しは残念だったかもね
まあネタバレのことは頭の隅に置いて全力で楽しみます。
-
乙
前半のコミカルな感じも好きだし
後半のバトル描写も相変わらず面白い
-
おお、来てた!相変わらず面白い
ボム踏んでふらついてる絵里に平気で追い討ちのショットガンをぶち込むらへんがこのSSの味だよね
-
エスデス様の次は大紅蓮氷輪丸とは…
-
どこぞの氷雪系最強さんも時間停止ぐらいやってくれませんかね
-
もう明らかに王様より強そうで草はえる
パロミデスも強いと言われてたが龍の中でも悲しいほどの差がありそう
-
>>875
国王間違いなくラスボス張れるぐらい強いはずなんだけど如何せん夜明け前とはいえ最初に戦った時のやられ方やかさねの即死攻撃避けたときの描写がギャグっぽかったり
本人の性格もどこか小者臭いから過小評価されがちなんだよね…
-
王顔面殴られすぎ問題
-
エリーチカのシコルスネタは流石に草
-
相変わらず面白い!
-
毎日あったのが異常なクオリティー
-
高級伊勢海老が粉々バラエティー
-
全然レスがないな
-
レスがレス
-
落ちないからレスする必要がない
-
無駄なレスして更新来る前に完走してもな・・・
-
総合の停滞した空気…!
-
試しに再開してみたけど筆がのらなかった感じかな
-
期間空いててすまんね
もうちょい待っててな
-
いつまでも絵里との決戦楽しみにしながら待ってます
-
ゆっくりでええで
-
顔見せてくれただけで安心
急がなくていいからね
-
はーい
-
地の文が多くなってるね
-
まってる
-
昨日から読み始めて追いついたけど面白いなこれ。続きまってます
-
面白いです!
自分のペースで書いて下さい
-
んだよ、更新来たと思ったのに!
-
まってるぞ
-
まってる
-
まってる
-
まってますぜ
-
まだなのか
-
そういえば穂乃果ってアレでまだレズじゃなかったっけ?
-
まってる
-
まってる
-
こわ
-
気付いたら生存報告だけしてほしいな〜
それだけで安心度が全然違うからさ
-
もうこりゃ帰ってこんかな?
-
エタるつもりは無い(キリッ
-
仕事がこの時期ピークなやつなのかもなあ
-
龍狩り始まったのが去年の9月だから、その辺りまで来ないんじゃないか
-
間隔空いててごめんごめん
今週中に一回は更新するつもりだよ
-
おかえりなさい
外野が煩くてすまんね
-
今日はアニヲタwikiに真姫ちゃんの項目も立ってたし>>1も帰ってきたいい日だ
-
お帰りー
凄い嬉しい
-
やったぜ
-
ツバサ「で、あれ。絵里なわけ?」
身を翻して空中斬撃、からのクルリと一回転。
華麗な着地を決めてみせ、若干ドヤ顔気味のツバサが海未に問う。
苦境の中の援軍は相も変わらず飄々と。小兵ながらにマイペースな天才剣士のままでいた。
そんな様子に海未は小さく苦笑、要点をかいつまんだ返事を。
海未「ええ…あのマナは間違いなく絵里のもの。二人とも氷のブレスに気を付けてください。数キロ四方の環境を一変させる力があります」
ことり「うぅん、それはすごいね〜…」
ツバサ「ッたく、氷に光が反射してピカピカチカチカ!眩しいったらないわね」
-
仲間とは不思議なもので、二人の緊迫感のなさは海未の胸を覆っていた絶望の暗雲を払ってくれた。
隆麗と聳える威容は氷の龍。その眼光を真っ向に受けて返し、刀の柄に力を込める。
海未「時にツバサ、貴女は封印状態のままのようですね」
ツバサ「あーうん、残念ながらね。凛は?」
海未「はぐれてしまいました…面目もない…」
ことり「………うんっ、大丈夫!凛ちゃんのマナは元に戻ってるのを感じるよ。花陽ちゃんが頑張ったみたい♪」
海未「本当ですか…!」
天使の力を得ていることり。その感知能力は海未よりも遥かに優れている。
マナを断絶されているツバサの感知はもちろん論外で、頼みになるのはことりだけ。
二人はその言葉にホッと胸を撫で下ろした。
海未「よかった…頑張ったのですね、花陽」
ツバサ「まずは一安心ね!」
-
ツバサ「…」
一安心。
そう言いつつ、ツバサの言葉はどこか歯切れが悪い。それは何故か?
しばらくの期間を共に過ごしたことりはその理由を、ツバサの気持ちを理解できている。
ことり「英玲奈さんは無事だよ。あんじゅさんも…大怪我はしてるけど、大丈夫みたい」
ツバサ「…!本当!?」
それを聞いた途端、ツバサの表情に明るみが差した。
海未(ふふ…結局、ただの友達ではないですか)
内心、海未はツバサの様子ににおかしみを、そして親しみを感じずにはいられなかった。
互いの力量を認め合い、互いの意思を尊重し、戦場において立場を違えれば命の奪い合いも辞さない。それが誇りであり絆。
そんな随分と物々しい関係性のはずの四騎士だったが、蓋を開けてみればなんのことはない。ツバサの表情は、古くからの親友たちの安否が気がかりでならない少女の顔だ。
その感情は海未が仲間を案じるのとまるで同じで、それは英玲奈もあんじゅも同様なのだろう。
共感に頬が緩む。気色悪げに横目を向けてくるツバサへ、海未は心からの笑みを返してみせた。
-
ことり「他のみんなも大丈夫。大怪我をしている子もいるけど、生きてさえいてくれれば!」
海未「その通り。命あっての物種ですからね」
ツバサ「じゃ、私たちも生きてここを切り抜けないとね?」
年長らしくツバサが会話を締め、そして三人の瞳が戦意に冴える。
絵里≪おしゃべりは十分かしら?≫
十二卿龍は高密度マナが具現化した存在。人の姿でなくなってもその思考力が失われるわけではなく、絵里の声は本人そのまま。
ただし声帯からではなく魔力を振動させて響かせている声で、海未たちの臓腑へ痺れるような威圧感を与えてくる。
会話が終わるまでの間、絵里が仕掛けてこなかったのは手加減でも侮りでもない。ツバサに引き裂かれた体表の氷を修復させていたのだ。
少しの時間を要し、氷は塞がれ、今は既に傷が残されていない。全ては振り出しに戻った…?
否、洗脳されていた時に肩を並べて戦った海未は知っている。
ツバサの剣撃こそ修復されたが、人間体で負った傷は龍化しても癒えるわけではない。ヒデコたちの残した爪痕は確かに絵里へと刻み込まれている。
繋いでくれた勝機、それを手繰り寄せるのだ!
-
海未「二人とも、もう一つだけ手短に情報共有を。絵里は時間を止められます」
ことり「え、ええっ!?」
海未「ですが、私は停止した時間の中でも動けます」
ツバサ「なんでよ?」
海未「あ、細かい理屈を説明している暇はなさそうです!」
絵里≪耀氷陣(ミスティール)≫
絵里の龍体が冷たく強く、視覚だけで凍り付いてしまうような白光を放った。
瞬間、見る間に一帯が凍てつく!まるで零下の津波に飲まれたかの如く、遠く聳える高層ビルの、その屋上の避雷針までが見事に氷に包み込まれてしまった!
ことり「す、ごいっ…見える範囲全部が真っ白な氷に…!」
海未「何という、無体な威力です…!」
その戦力を侮っていたわけではもちろんない。警戒しすぎるほど警戒し、過大なほどに評価をしていた。
それでも空想と、実際に目の当たりにする大魔力の迸りとでは迫力が違う。身に迫る危機の切実性が違う。
氷点下の蹂躙、驚愕に目を見開く二人。
もちろん寒い。極寒に包まれている。
まともな思考さえままならない冷凍庫と化した空間の中、唯一平静を保っているのはツバサだ。
ツバサ(ふふん、龍になっても戦術に変わりはなしっと)
-
そう、彼女と絵里は同じく四騎士。
海未やことりよりも随分と長く時間を過ごし、手の内と癖を把握している。
ツバサ(凍結範囲とスピードがバカみたいに上がってるけど、本質は昔からの戦術そのまんま。
本人を中心として放射状に、足元から“わかりやすく”氷を広げていく。
相手はその光景への警戒に意識を取られる…けど、絵里の本命は気温の急速低下。警戒心から戦闘を引き伸ばせば伸ばすほど、体は冷えて肺腑が凍っていく。しまいには息もできなくなって、そのままチェックメイト…ってのがあいつの常套戦術)
跳ね駆ける!
ツバサ「だったら!それよりも早く、迅く、速攻!絵里ィィィッッッ!!!」
絵里≪まずはあなたからね。来なさいツバサ…!≫
巨大を誇る氷龍の体には幾多の足場がある。
氷だけに滑るが、そこは天才ツバサの卓越したバランス感覚が苦にしない。
自分よりも遥かに大きな敵と戦う場合には数種類の定石があり、その一つは最接近から懐を荒らす戦法。ツバサは瞬時にそれを選択している。
が、(甘い…)と内心に絵里。
-
マナによる身体性能の底上げがないツバサがいくら急いだところで、強化された絵里の速さを上回れるはずもない。
爪が龍尾か、否、顎に輝く氷牙でツバサを狙う!
絵里≪知っているかしら?太古の龍はね…人肉が主食だったそうよ!≫
ツバサ「フフン…やっぱり弱くなってるわね!絵里!」
絵里≪な…っ≫
ツバサの捨て身の吶喊に意識を奪われていた。
時間にしてわずか数秒、大きな隙を見せたわけではない。
が、対している相手にはことりがいる。
熾天使の娘に相応しいだけの魔力を身に纏う存在、一瞬でもフリーにすれば敗北に直結しかねない。
だのに、ツバサに気を取られて数秒を与えてしまった。明らかな失策!
ことり(今回こそ、力を貸してもらいますね…?)
ことり「采花の幻月、閏の輪紋。八華追蹤、罪科と星。遥けき古聖よ蛮神よ。祈死残壊の刃を鳴らせ!お願いっ、『鋭龍トリスタン』さんっ!!」
海未「召喚を…!流石はことりです!」
絵里(っ、しまった…)
-
絵里は思わず息を飲む。
そうだった。西木野王が手駒としていた十二卿龍の一体はことりのビギナーズラックで召喚契約を成されてしまったのだった!
オトノキ村の戦車隊との戦いでは不発に終わっていた召喚。
だが今、淀みなく諳んじてみせた詠唱は既に契約が完全なものとなっていることを示している。
十二卿龍としての格はランスロットが上。
ただ、耀龍ランスロットはその強大さ故に見合う器が不在な時期が長かった。
そしてトリスタンは膨大な戦闘経験を重ねてきた強者。
これまでに顕現してきた総時間の差を考慮に入れれば、間違っても侮るべき相手ではない。
来る!
ことりの翼が白光を放ち、放出されたマナがそのままトリスタンの人間体を構成する。
ツバサは特攻から一転、急ブレーキからの反転で一目散に絵里から距離を離していく。あくまで時間稼ぎだったのだろう。
ならば絵里もトリスタンの迎撃に集中するのみ。
そしてことりの傍らに現れたのは!
ことり「よろしくね、トリスタンちゃん♪」
≪ふん、この私に力を貸してほしいってわけね≫
切れ長の瞳に高慢かつ高飛車な口調。
その姿はいかにも強者然とした雰囲気…とは、あまり言えないかもしれない。
フリル付き、少女趣味な白のブラウス。上品な仕立てのスカート。綺麗に整えられた綺麗な長髪。
特に大柄というわけでもないことりの、その隣に並んでいるだけでも随分と小柄に見える身長。
絵里(……?)
鋭龍トリスタン!
ついに現れたその姿は、10代前半ほどのちょこんとした少女のものだった。
-
絵里(今のトリスタンの器は私たちよりは年上の女性、冷酷で優れた殺し屋だった人物と聞いているけれど…)
≪南ことり。貴様はこの鋭龍トリスタンに、夥しき血と闘争を求めるか?ならば与えよう。力を、破壊を!そして争いの果てに全ての破滅を…!≫
(^8^) 「うふふ…トリスタンちゃぁん?」
≪ひっ…!ご、ごめんなさい…≫
絵里(…聞いてたのとはまるで違うわね。一体どうなってるのかしら)
自身と同じ十二卿龍が相手。
迂闊に仕掛けず様子見…というだけでなく、絵里が攻めに転じないのは困惑含み。
目の前のトリスタンらしき少女は見聞きしていたのとはまるで異なる可愛らしい姿で、挙句、ことりに威圧感のある笑顔を向けられて怯えている有様だ。
(調教済みってわけね)とツバサ。
彼女はこの中で唯一、ことりがトリスタンを御するまでの道程を概ねながら知っている。
オトノキ村で召喚が不発に終わり、育ての父が昏睡に陥ってしまった事をことりは深く悔やんでいた。
そして、土壇場で非協力的な姿勢を示したトリスタンに腹を据えかねていた。
それからこの一戦に至るまでの日々と旅路の中、ことりは毎夜毎晩のように鬼気迫った様子でトリスタンとの対話を試みていた。
そして見事、威圧し、調伏してしまったのだ!
-
ツバサ(あれね、まさに猛禽類の眼光って感じで)
海未(龍ながら、気の毒に。怒ったことりは…恐ろしいですから)
海未はその過程を知らないが、トリスタンの怯えように大方を察する。
滅多に怒らない人が怒ると怖いという定番の通り、ことりのそれはとびきりの恐怖!
声を荒げたり暴力的になったりするわけではないが、静かだからこその威というものがある。
長い付き合いで数える程度しか目にしていないが、海未の深層にトラウマとして焼き付いているほどだ。
海未(それが心での、一対一の対話。逃げ場もない状況となれば…うう、考えたくもありません。鋭龍トリスタン…お察しします)
ことりが指先を微かに動かすだけで、トリスタンの肩がビクン!と震える。
「うふふ、トリスタンちゃんはかわいいね〜♪」とことりは楽しげな口調で少女の頬をなぞる。
もはや主従は誰の目にも明らかで、捕食されないよう祈る、そんな風にも見えるトリスタンの姿には哀愁すら漂っている。
容姿の年齢退行は天使術の類だろうか。
可愛らしい衣服と併せ、ことりが彼女の全てを作り変えてしまった…のかもしれない。
海未(ことり…お気に入りの着せ替え人形を手に入れた。といった表情をしていますね…)
これこそが天使の御業。可哀想なトリスタン!
-
絵里(…見た目はともかく)
すっかり可愛らしくなった同輩を面前に、しかし絵里は一片の油断もしない。
少女と化した鋭龍の、その痩躯に秘められた膨大な魔力を感知している。
ことり「それじゃあトリスタンちゃん、全力でお願い♪」
≪はあっ…仕方ないわね…!≫
途端、少女の全身が金属質に変性する。
それはぐにゃりと引き伸ばされて薄く薄く、平らに広がって湾曲する。
伸びて、膨張し、薄く鋭く幾重にも、魔力に研磨されて澄まされて、ものの数秒で奇怪な龍が姿を現す!
ィききき希あァ亜亜亜亜!!!!!
黒板を引っ掻くような耳障りな異音、巨刃が組み合わさり龍を模したような外見。
龍とは言うが、既存の生物で例えるならばカマキリに印象が近い。
その全身は無機質でありながら有機的。
刃紋は溢れんばかりの魔力を映して揺らぎ、波のようにうねり、絶え間なく脈動している。
金属生命体。それが鋭龍ランスロットの特質だった。
≪ィィち稀稀キキキキぃ氣ィィキキキ…!!!≫
口らしき部位から漏れるのは言語の体を為さない異音。そしてそれは龍のブレス!
発した声は音として空気中を伝播し、吐き出された魔力を礎に歪で醜悪な刃を作り出す!
鋭龍のブレスは無尽に続く刃の嵐!!
口だけでなく、腕や脚を擦り奏でた異音がそのまま刃へと転じて音速で疾る。
数十メートル規模の刃が数十、百単位で輝龍ランスロットへと向かっていく!!
-
絵里≪その程度…私には通用しない!≫
絵里、ランスロットの翼が耀く!
自らが凍てつかせた大気から冷気を司るマナを収束吸収し、それをそのまま放出する!!
十二卿龍の対峙に似つかわしく、極大規模の冷凍光線がトリスタンの刃のブレスを迎え撃つ。
基礎出力ではランスロットが上。猛烈な勢いの冷気が刃を凍らせ、弾き、退ける。
龍の戦いはなにも息のぶつけ合いだけではない。トリスタンは三日月状の刃が折り重なって象られた奇妙な体を軋み鳴らし、刃で構築された四指で絵里へと斬りかかる!
が、全身が氷のランスロットも、鋭さ、切れ味でも決して負けてはいない。
大味な力のぶつけ合い!
トリスタンの思考が龍の本能、闘争の愉悦に染まって、視界の全てを無残に破壊すべく…
ことり「トリスタンちゃん」
≪わ、わかってるわよ…!≫
鋭龍の立場はあくまでサポート!
事前の対話で戦力分析は済んでいる。トリスタンではランスロットに勝てない。ならば役割は矛ではなく盾。
無理をせず、倒されずに渡り合うのが役目。
勝てないとは言ってもある程度の同格で戦線を保てる龍がいればこそ、数的有利が活き始める。
-
ことり「忌日、蛇月の深冷。神威の烙印を実白に下せ。『災禍(カラミティ)』っ!」
翼をはためかせ、舞い上がったことりは高空から羽を撒き散らす。
高位の天使にのみ許された力、限定的な運命操作が絵里へと不運というデバフを施す。
海未(大召喚から間を置かずの天使術。オトノキ村での共闘、あの時よりもさらに力を増していますね…ことり!)
海未は時間停止のカウンター役として少し引いた位置で隙を窺う。
もちろん棒立ちではない。刀は鞘に納め、サブ武器として携帯している弓を引き絞る。
旅路の中で刀を主に扱う侍へと転じたが、忘れてはならない。元々は弓使いなのだ。
轟音。シャンデリアが砕けるような軋り、散華。
トリスタンの刃がランスロット…絵里の体へとぶつかり、氷の体が水晶かダイヤモンドかと美しく宙に散る。
十二卿龍同士だけあり、良い勝負をしている。
絵里はその龍口から壮麗な咆哮を奏で、怒りに満ちた響きで凍気のブレスを、無数の氷刃を飛ばして応じている。
その姿は靭く、美しく、しかし儚く。
人外めいた規模の戦闘はさながら“絢瀬絵里”の人間性を擦り削りながら戦っているよう。
そんな姿に海未は、ギリ…と歯噛みをする。
-
海未(旅路での邂逅、洗脳を受けた間のしばしの共同生活。その中で私は、絢瀬絵里という人間の高潔さを知っている。愛らしさを知っている。
希や亜里沙、それに私も、あなたを必要としている人間がたくさんいる!だから絶対に助けます!)
海未「あなたの邪念を撃ちぬくぞぉ〜っっ!!ラブアローっ…シュートぉ!!!」
ツバサ「えっなにそれ」
若干引きつつ、ツバサが今度こそ本当の突撃を仕掛けていく。
咆哮がぶつかり合う衝撃の波濤、その嵐中を掻い潜るように、身を低くして駆けていく。
ツバサ(海未ってば、おかしくなったのかしら。ま、それはともかくここまでは順調ね)
猪突猛進、直情径行。
を装ってその実、ツバサの内面は冷めていてクレバーだ。
ツバサ(各地の戦いが終結してる。となれば、これだけ派手に戦えば援軍も期待できそうね)
ことりから仲間たちの無事を聞いた瞬間、思考を占めたのは安堵が五割。残りの半分は抜け目のない残存戦力計算に。
都市内で戦っていた仲間たちの能力、対戦カードの可能性、敵に回っていた者たちの帰還、天使の介入によるイレギュラー。
諸々の可能性を含めて踏まえ…
ツバサ(最低で二人。援軍を計算に入れる)
-
卓越した思考力は、増援を不確定要素から必然へと置き換える。
天才。それ故の突拍子もない、常識の枠外からズレた発言で奇人変人と見られることもあるが、実際は頭の良い少女なのだ。
そして、その明晰な思考の全てを戦いに、勝利に注いでいる。
常在戦場常勝不敗。
綺羅ツバサの思考は寝ても覚めても、食事や風呂の最中でも、穂乃果を想って興奮していても、どんな時もどこかクール。
“最強”の名、それはただ力があるだけでは決して辿り着かない領域。
勝つべき手順を冷静に、正確に、着々と組み立てる。そのためにはまず疾走!
青々と冴えた寒冷の中で、真っ白な呼気を追い越しながら前へ、前へ。
きらりさらりと降り注ぐ粒子は龍の戦いで砕けた体の欠片、刃と氷の細かな礫。
当たれば容赦なく皮膚を裂くそれを、ツバサは小刻みに、かつ大胆なステップで躱しながら進んでいく。
ことり(ツバサちゃん、すごい…!まるで踊ってるみたい…!)
海未(この方は…世が世なら、こうして大勢の人々を魅了する職についていたのかもしれませんね)
さながら氷輝のステージ。
二人を魅了しながらも、ツバサ当人の脳内は詰将棋のように攻めの手順を組み上げる。
ツバサ「絵里ぃぃッッ!!!」
絵里≪ツバサ…!!≫
絵里、耀龍ランスロットの眼光がツバサを見捉える。
すかさず氷尾を振り回し、強打でトリスタンとの距離を強引に引き剥がし、ツバサの接近に備える!
-
ツバサ(そう、姿形は変わろうがあれは四騎士絢瀬絵里。絵里は私の挑発にはノッてくる)
耀龍ランスロットは他の龍に比べ、絵里の意識を大きく残している。そこを利用できる。
単なる怪物との戦いと、人との戦いはまるで異なる。
相手の人間性、こだわり、信念信条、コンプレックス、全てが戦いを構築する要素となる。
四騎士として鎬を削ってきたツバサと絵里。英傑揃いの四人の中でも、とりわけ優れているのがツバサと絵里の二人だった。
それだけに、絵里は綺羅ツバサという存在への意識が強い。そこを突く!
ツバサ「絵里、5って、なんの数字かわかるかしら?」
絵里≪……≫
ツバサ「わかるわよね?この綺羅ツバサちゃんがあなたに連勝している数!通算で39勝30敗。フフ、一気に差が付いてきちゃった。そしてここで勝って、勝ち越しが10。優劣はすっかり明らかね?」
絵里≪そうはならないわ。私は龍の力を得た。そっちはマナを使えない状態≫
ツバサ「はっ、だから?」
絵里≪はっきり言ってあげる。今のあなたは…素人にしか見えない!!!≫
ツバサ(はいノッた。この辺がチョロいのよねえ、絵里って)
-
ツバサは四騎士として、十二卿龍とも幾度かの戦いを経てきた。龍の戦い方を知っている。
強靭な顎撃、爪による斬壊、龍尾の薙ぎ払い。そしてブレス。ひどく大雑把に分けてしまえば、龍の攻撃はこの四択だ。
その中で、全ての龍に共通してブレスは別格。膨大なマナを消費する奥の手にして切り札。
ここぞという場面で龍が頼るのはブレスだと、ツバサは経験則で学んでいる。
挑発が功を奏し、絵里が激情に駆られているのは明らか!
絵里(ブレスで仕留めてみせる)
ツバサ(どうせブレスでしょ?)
どの龍も属性は違えどブレスは二種類。広域に影響を及ぼすものと局所集束型と。
ランスロット、そのブレスは全身から冷気を発散して大気を凍てつかせる『耀氷陣』が広域型。
比べ、威力の高い集束型は口から吐き出すオーソドックスなものだ。
絵里の口元へ、空間が歪曲するほどに高濃度な冷気のマナが集まっていく!
ツバサ(あからさまにカッカしてる。確実に集束型をブッ放してくる)
絵里≪終わりよ≫
ツバサ「わかりやすいの…よっ!!!!」
-
絵里、ランスロットが口を開く、その瞬間!
ツバサは懐から筒状の何かを取り出し、思い切り振りかぶって投げ放った!!
ツバサ「どストライクっっ!!」
乾坤一擲。憂慮なき全力で投じられたそれは、絵里が今にも絶対的な寒冷を解き放とうとしている龍口へと完璧なコントロールで飛び込んだ。
………炸裂!!
絵里≪…!!!?ゥが…アっ!!!≫
炸裂!!炸裂!!
目の眩む、耳を劈くような爆発が絵里の口内で数度と膨れ上がる!
マナに感応して強烈に燃え上がるタイプの爆薬だ。
ブレスを放つ直前の絵里、その口は莫大なマナ溜まりになっていて、そこに放り込んだのだから威力は推して測るべし!
ツバサ「あっはははは!!!どうかしら、綺羅ツバサお手製の超強力爆弾の味は!!!」
絵里(こんな物…一体どこで…!)
ツバサ「一体どこで〜…とか、考えてるかしら?材料はどっかの馬鹿たちが大量に放置していってくれたわ。オトノキ村にね!」
絵里(…っ。まさか、あの戦車群から…!)
ツバサ「あれだけ材料があれば、私なら爆弾を作るくらい余裕。だって、天才だから!!」
海未「な、なんて出鱈目な…」
ことり「うん…でもしばらく一緒に過ごしてわかったんだ。ツバサちゃん、変人だけど頭はいい…!」
絵里(綺羅…ツバサっ…!)
ツバサ「マナがないからって舐めたわね?絵里!」
-
これでもかとばかりドヤ顔!
そしてようやく爆発の連鎖が収まった。
ランスロットの首から先は爆発をまともに受け、見るも無残に吹き飛んでいる!
四つ脚でたたらを踏み、よろめく首なしの耀龍。そこへすかさずトリスタンの刃が無数と突き刺さる。
絵里(やってくれる…わね…)
全身が氷で構成された龍という特性上、龍体が欠損しようが再び氷で再生することは可能だ。
トリスタンの乱撃を受けながらも、絵里は急速に破壊された部位を再生させていく。
マナが枯渇するまでは無限再生が可能。それが耀龍ランスロットの一つの特徴だ。
絵里(けれど危なかった。もう一つあの爆弾があれば、きっと再生が追いつかないほどの損傷を受けていたわ)
ツバサ(決めきれない、か。もっと時間があれば…あと一発ぐらいは爆弾を作ってきてたんだけど)
“もう一発”がないことは絵里も理解している。持っているなら今、すかさず畳み掛けてきているはずなのだ。
ツバサらの立場で見れば、ここは温存を選択する場面ではない。それがわからないツバサではない。
(攻めてこないのなら、今ので打ち止めね)と的確な判断を下し、そして絵里は防戦と修復に専心している。
…頭が冷えた。
手痛い一撃を浴びせられ、ランスロットという大きな力にハイになっていた思考が元へ戻った。
落ち着いて考えてみれば、ツバサの挑発的な言動は明らかにブレスを、絵里が口を開けるのを誘っていた。
侮った結果だ。精神面に隙がある。それが今まで、絵里がツバサに後れを取ってきた原因。
絵里≪だけど、今日の私は…まだ健在よ≫
-
パキ、パキリと軋音。
大気が氷結し、ランスロットの龍首が再生を果たした。
そう、今の絵里には失策をチャラに出来るだけの強大な力がある!
そして一度思考をクールに傾けてみれば、戦場の全体が見えてくる。
絵里(ことりが海未の隣に…いつの間に。
私がトリスタンとツバサに気を取られている間に近付いたのね。策でも練っているのかしら?)
ツバサ「絵里ィ!今のあなたはデカいだけの雑魚ってやつね!ほら、私を倒すんでしょ?さっさとやってみなさいよ!」
絵里(また。しきりに挑発を繰り返している。海未たちに注意を向けさせたくない…と。なるほどね)
ツバサ(…反応しない。頭が冷えてしまったのなら、挑発作戦はここまでね)
海未「ことり、気をつけて。絵里の様子が変わりました」
ことり「うんっ…気を抜いたら危ないね。海未ちゃんに手は出させませんっ」
絵里は思考する。
トリスタンやツバサにばかり意識を奪われていたが、倒す順序を正しく定め直すべきだと考える。
海未、ことり、ツバサ、鋭龍トリスタン。まず狙うべきは…
「凛ちゃんっ!」「うんっ!いくにゃ!」
-
緊迫の戦場に割り込む、愛らしい声が二つ。
それは絵里にとって忌々しく、海未たちにとってはこの上ない福音そのもの!
ツバサ「来たわねっ。援軍!」
海未「凛っ!!」
ことり「花陽ちゃぁんっ!!」
花陽「デュラハーンさんっ!お願い!」
『お任せを、お嬢様』
凛「電撃ぃぃっ…ビリッビリに溜まりまくってるにゃあああ!!!」
『宵の穿砲(ナシェーラ)』
凛『凛ちゃんレールガンッッッ!!!!!』
濾過し、不純物を取り除いたような純黒。一点の曇りなき漆黒の魔弾を、花陽の想いと共にデュラハーンが放つ。
そして凛はすっかり十八番、仕込みクナイを手元に滑らせる。華々しく雷華を撒き散らし、超速の投擲を!!
「それだけじゃないわ!!」
-
花陽たちから少し離れた位置、燃える赤髪が夜風に揺れる!
母の形見フランベルジェに炎を燻らせ、威風堂々の風格を漂わせた王女、西木野真姫の姿がそこにある!
真姫「エリー、ごめんね。パパのせいで迷惑を掛けちゃって」
大好きなママだって倒してみせたのだ、今さら十二卿龍を面前にして畏れはなし。
熾天使を討ち果たした経験は、真姫の心を一層の高みへと導いた。
既に王家の炎は手懐けた。あとは父が撒き散らした不幸の全てに始末を付けるだけ!
真姫「炎よ、集まりなさい。そしてっ…!『世界火(レーヴァテイン)』!!!」
花陽、凛の攻撃に追従するタイミング。
三つの高密度エネルギーは波状を成し、甚大な威力で絵里へと襲いかかる。
いずれもが特級の破壊力、いかな絵里でもまともに受けるわけにはいかない!
絵里≪厄介ね…!≫
すかさず、耀氷陣を発生させる!
凍てつく暴嵐でトリスタンを一時的に遠ざけ、そしてランスロットの巨身をカバーするように氷点下の鎧を纏っていく!
-
吹き荒れるブリザード、その中に聳える氷壁は重厚な存在感を放っている。
真姫、凛、花陽のデュラハーンからの攻撃の威力を、寒風で減衰させ、堅牢な氷塊で受け止める!!
雷撃が弾け、魔弾が穿ち、劫火が猛るも突破は成らず。
真姫はフランベルジェを担ぎ上げ、少し不機嫌に眉をしかめて口元を笑ませる。
真姫「流石はエリーね、やるじゃない」
星のエネルギー、大地の底で眠る溶岩の熱を操る世界火を受けて凌ぎきる。
四騎士にして十二卿龍、その力は伊達ではないと知り、それならと真姫は再びマナを練る。
長い旅路の中、真姫の明晰な頭脳が学んできた勝利の鉄則はただ一つ。
鍛えた筋力で!圧倒的な火力で!ひたすらにゴリ押すこと!!
真姫(攻撃は最大の防御…至言よね!)
良質な集中を保てている。
クールで冷静沈着に、ランスロットを見据えて…
そんな真姫の背後から躍りかかる影が!
-
凛「にゃああああっ!!!見つけた!さっきの炎の!」
真姫「ゔぇええっ!?な、何よあなた!」
凛「さっき凛とかよちんがいた場所のすぐそばを!その炎の技がゴオオー!って焼いていったの!もし運が悪かったらかよちんがヤケドしちゃってたかもしれないんだから!」
花陽「り、凛ちゃん!まだ戦いの途中だよぉ!?」
真姫「はあ!?なによそれ、知らない!っていうかあなたたち誰!」
花陽「あ、え、ええと!小泉花陽と言います!」
凛「凛だよ!」
花陽「真姫姫様…ですよね?あの、前に王宮の地下でちょっとだけ会ったことがあるんだけど…」
真姫「思い出した。穂乃果の仲間にいたわね、二人とも」
凛「西木野さんのせいで危うく凛もかよちんも死ぬとこにゃ!」
真姫「よ、よくわからないけど…悪かったわよ…!」
『花陽お嬢様、攻撃が来ます』
花陽「ぴゃああっ!?デュラハーンさん!防御をお願い…!」
絵里≪これ以上人数が増えると厄介ね。氷の中で大人しく眠って…≫
「いーや、大人しくするんは…エリチの方や!」
絵里≪…!!≫
-
場の一同の、そして絵里の耳へと届いた声は…
絵里(希…!!)
聞き間違うはずもない。
既に最愛の親友、あるいはそれ以上の存在として絵里の心に根を張ってしまった存在なのだ。
確とした意志の芯を取り戻したその声音は、闇の浸食から彼女が解き放たれた事実を絵里に知らせる。
希が命の危機を脱したことに安堵を覚え、しかし敵に回ったのなら倒す。相手が誰だろうと、そこにブレは生じない。
絵里(あなたも氷に閉じ込めるわ、希。そして全てが終わったら…残された時間、一緒に過ごしてもらうんだから)
絵里は一切の迷いなく、視線を上に向ける。
周囲には油断なく目を配っていた。だがいつの間にか、希の声は間近。
であれば、上空!
抜け目のない希のことだ、真姫たちの攻撃の間に唯一の死角である直上からの接近を果たしていたと、そう絵里は考えた。
そして見上げた先には黒天。人影は…ない!
都市の照明、そして夜陰の月光に照らされ、ランスロットの胴体の下にはその巨身に応じた影が広がっている。
龍影。その黒がわずかに、不穏に蠢く。
物理法則などまるで無視し、たぽり。
影の表層が水面のように、ゆっくりと波紋が拡がっていく…その中心。“滲むように”現れたのは黒衣の希!
希「ざーんねん。下なんよ、エリチ」
-
絵里≪……流石は希。一筋縄ではいかない、か≫
あんじゅがアバドンを御してその力を得たように、希もまた影の女王スカアハとの高次融合を果たしている。
なれば影の領域は希の支配下。影へと潜行し、影から影へと渡り移って胴の下へと潜り込んだというわけだ。
その姿は優美な黒のドレス、背にはカラスアゲハを思わせる闇の対翼、『陰翅(ニルファ)』を予め発動させている。
スカアハを宿した状態での基礎戦型は整った。あとは最愛の親友へ、想いと魔力を叩き込むのみ!
希「糾える飛廉の庭、存える幽世の泡。刀麻脈系、是術と奇譚。踊れ奔れ、月狂の眼に転ぜよイドラ!『影霊祭(オルギニス・ロア)』!!」
ちょうどランスロットを覆い包む規模、世界をモノクロに染め抜く闇の半球が拡大する。
現世を飾る多々の色彩は存在を溶かし、絵里の視界はまるで色付けをする前の絵画、ごくごくシンプルな線のみで構成されたような空間へと変貌を遂げる。
絵里(これは…!)
まったく初見の技だ。しかし絵里の脳内、戦闘者の本能が激しい警鐘を鳴らしている!
絵里の『聖零の世界』やあんじゅの『泥濘奈落』を筆頭に、世界の法則を大幅に塗り替える技は総じて危険極まるのだ。
とっさに氷翼を羽ばたかせ、龍尾で地面を叩いて術式の効果範囲から逃れるべく移動を試みる。
だが絵里を包囲した面々がそれを許さない!
ことりの『聖力』が背を圧し、花陽のデュラハーンが眼光で翼の動きに制限を掛ける。
ランスロットの力をすれば無理やりに振りほどくことは容易い。
それでも稼がれた二秒ほどは、希の大技が絵里を完全に捕捉するのに十全すぎる時間だった!
-
希「うちもエリチも、ちょ〜っとみんなに迷惑かけすぎたよ…不可抗力やけども。だからここで止めるよ!絶対に!!」
絵里≪う、グ…の、ぞみ…ぃッ!!≫
理を超越した異様なる半球空間の中、絵里の体を描いている黒線が微細に緩んで解けていく。
まるで縄の繊維をほぐしていくように、絵里の、ランスロットの体が、その細胞が、遺伝子が塩基配列の単位で分解されていく!
それは影国の女王による暴虐の下知!極黒の狂乱!
有無を言わせぬ凄絶な死の定めが、支配領域を埋め尽くしている!
ツバサ「うっあ、ヤバいわね…これ!」
真姫「凄い!だけど…」
凛「の、希ちゃん!?やりすぎにゃ!絵里ちゃんが死んじゃうよ!!」
絵里≪うあああ…っぐ、ああああっ…!!≫
希「ごめんエリチ、痛いよね…でもわかってるんよ。これだけで倒しきれるほど甘くないって…!」
絵里≪流石は、私の希。わかってるわね…この程度で…私は終わらない!≫
崩れていく龍体を引きずり、一歩、一歩、また一歩。強固な意志力による不屈の前進。
生身の人間が受ければ崩れてしまう空間の中でも、絵里は耀龍の耐久力で耐え続けている…!
半壊、否、八割ほどが崩壊したランスロットの首が影の半球を抜け出る。
頭部が折れ、地面へと落ちる…ガシャン、とガラスのように割れたその中から、よろめきながら絵里が立ち上がった。
その瞳には未だ継戦の意志が爛と燃えている。十二卿龍最強たるランスロット、その名は決して伊達でなく、まだ魔力も尽きていない。
絵里≪まだ…まだよ…!≫
希「エリチ…」
ツバサ「で。ちょっと落ち着いて戦況を眺めてみたらどうかしら?」
絵里≪………≫
-
希、ツバサ、海未、ことり、真姫、龍、花陽。
肩で息をしながら見回せば、居並んだ敵の数は七人。
いや、さらにはデュラハーンとトリスタンが主人たちを守り戦うべく控えている。
九対一。絶対的不利の状況下、それでも絵里の目元は不敵に微笑う。
海未「もう諦めてください、絵里!」
ことり「絵里ちゃん、ことりが協力すれば、きっとランスロットの意志を抑え込むこともできるから…戻ってきて!お願い…っ!」
絵里「ランスロットの意志…ね。考えてみれば、もう亜里沙は人質に取られていない。海未、凛、希。三人も助かった…」
絵里の瞳は碧く穏やかな輝きを宿し、ゆっくりと面々の顔を見つめていく。
とりわけ海未、凛、希。王の支配下から逃れれた三人を見る目は優しく、慈しみの色が浮かんでいる。
絵里「じゃあ、これを付けている必要はもうないわね」
おもむろに、鎧の内側へと指で触れる。
摘まみ取ったのは小型の通信機。絵里や周囲の全ての声や音を漏らさず拾って西木野王の要塞へと届ける物で、それは絵里らの翻意を防止する役割を担っていた。
それを絵里は瞬時に凍らせ、そして指先で押し潰した。
海未「それは…!」
絵里「ええ、これで西木野王への忠義はおしまい。もう半端な言動をする必要もないってわけ」
希「エリチ!じゃあ…!」
絵里「元々まともに従うつもりなんてなかった。だけど…ごめんね、希。通信機を砕いたのは、西木野王と切れたというだけ」
絵里は呼吸を整え直し、言葉を続ける。
-
絵里「実はね、私はもうランスロットと和解しているの。目的が共通している…と言った方が的確かしら」
絵里は語る。
耀龍ランスロットはまつろわぬ龍。裏切りの龍。
人に龍たちの歴史は知られていないが、かつて龍皇アークトゥルスが封じられた時に先鋒に立ったのはランスロットだった。
反骨の心は今も変わらず。自らの上に立つ者がいるなら、必ずや反攻の機会を窺う。
アークトゥルスだろうがガウェインだろうが、頭上に蓋があるなら壊すまで。
器とした絵里と精神世界で対話を交わす中、やがて双方がその目的の一致に気付く。
西木野王を、ガウェインを倒す。
のみならず龍皇を、天使を、絵里にとって退けるべき全ての敵は、ランスロットにとっても同様だったのだ。
そして既に、ランスロットは絵里にその力だけを貸し与えている。
絵里が完全なる自身の意思で、目指す先はただ一つ。
絵里「私は万難を排してでも進むわ。あなたたち全員を退けて、都市の中枢、メインコアへと辿り着いてみせる」
希「どうして…!王様に従わないなら、もうそんな必要ないやろ!」
-
絵里「魔術都市の動力源、メインコアが生成するマナの量は十二卿龍のそれをも凌駕するわ」
希「それがどうしたって言うん!?」
絵里「希。私はメインコアをこの身に取り込むつもりよ」
希「はあ!?」
絵里「ランスロットの力をメインコアで底上げすればどうなると思う?ガウェインも熾天使も、龍皇アークトゥルスさえも凌駕する存在へと昇華する…!」
希「………」
真姫「ち、ちょっとエリー、何考えてるのよ。いくら龍の器だからって、生物が体に取り込めるマナの量には限度があるわ。そんなことをしたら、多分…一ヶ月もしないうちに命が」
ツバサ「……はぁん、そういうこと。頭でっかちの絵里らしい…バカバカしい考えね」
希「そうや…そうだよ…!ほんっとにバカバカしいよ!エリチ!自分を犠牲にしてなんて考えたら駄目…!」
海未「…!」
否定も肯定もせず、絵里はただ静かに佇んでいる。
絵里の意図を察して身を震わせる希へ向けて、随分と長く見せていなかったナチュラルな笑顔をふわりと浮かべる。
絵里「一ヶ月もあれば十分よ。醜い争いも悲しい殺し合いも、全てを私が終わらせてみせる。
その先の平和に、きっと私はいないけれど…構わない。
亜里沙、希…みんなが二度と悲しい戦いに巻き込まれない世界を。この命が尽きるまでに完全なシステムを作り上げてみせる。だからみんな、そこを退いてくれないかしら」
希「そんな理由で退けと言われて…退くわけないやろが!!!アホエリチ!!!こぉの…ポンコツ!!!」
-
影のドレス、漆黒の淑女とでも呼ぶべき貞淑な装いとは真逆の様子。怒髪天の憤慨。
希はグシャグシャと怒り心頭に髪をかきむしり、苛立たしげに絵里を睨みつけて地を踏み鳴らす。
希「亜里沙ちゃんも!今ダウンしてるけどにこっちも!ウチも!寂しくて死ぬわドアホぉ!!!
そんなっ…ふざけた考えは…!キスしてでも止めたるから覚悟せなアカンでエリチぃぃぃ!!!でぃ、ディィープなやつや!!からのワシワシやあああ!!!」
絵里「ちょ、ちょっと希…!?」
海未「はっ、破廉恥ですよ希!?」
(^8^) 「デーデッデー」
花陽(う、嬉しそう。変態ことりちゃん…久しぶりに見たなぁ)
真姫「…言ってる当人が一番恥ずかしそうだけど」
凛「言うだけ言って両手で顔を覆っちゃったにゃ」
ツバサ「さぁて。素直に通そうってのは一人もいないみたいだけど?」
絵里「……みんな、優しいのね」
絵里≪大好きよ、みんな。愛してる、希。だからこそ…私はみんなの世界を守る。永久氷晶の中で!全てが終わるまで眠っていて!!≫
全ての事情を、思いの丈を晒した。
絶対の理由がある。譲れない思いがある。
戦いは決着へと向け、詰めの局面へと突入する!
-
今日はここまでで
今週中に絵里戦決着まで投下するよ
-
まだ読み終わってないけど超乙!相変わらず迫力ある
-
影霊祭(オルギニス・ロア)ってすごいかっこいい(こなみ)
-
一気にきててびびった
-
乙
ことりちゃんほんと好き
-
乙乙!
さぁ盛り上がって参りました
-
当然のように裏切るランスロット君すき
-
乙
-
やっぱりくっそ面白いね
-
おかえり
ありがとう
-
おかえり!
面白くてわくわくする!
-
トリスタン気の毒かわいい
土壇場で協力しなかった罪は重いからね、仕方ないね
-
(・8・)…。
(^8^)♡
-
めっちゃ面白いな、書いてる側は安価のが面白いのかもしれんけど
-
大まかなあらすじネタバレしてんのにこんだけ面白いって凄いと思う
-
希ちゃん登場でBGM硝子の花園脳内に流れた!
-
百合はあかーん!と言っていたあの頃の面影はどこにもないな
-
>>956
ニューリーダー病やんけ!
-
もうずっと読んでないわ…
-
>>965
>>976
裏切らないランスロットは綺麗なスタースクリームほどの価値しかない
-
今日来るかな、明日かな?
めっちゃ楽しみ
-
次スレでやるよ
穂乃果「龍狩りだよっ!」 Part17
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/anime/10627/1461421088/
-
おつ
-
希の言動が超リアルに想像できた
■掲示板に戻る■ ■過去ログ倉庫一覧■