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Maxwell's equations
――宗教なき科学は不完全であり、科学なき宗教は盲目である。
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永久に続くのではないかと思われる苦痛だった。
苦い離別で人生の階段を転げ落ち、そのまま落ち続けるだけの十年余りだった。
落ちている間、何一つ幸せらしいものを感じることはない。
ただ運命を呪いながら、落ちて、落ちて、落ちて、落ちて、落ちて。
少女は、お釈迦様の垂らした蜘蛛の糸で救い上げられた。
彼女は喜んだ。この人のために生きようと、ずいぶん久しぶりに笑った。
けれど、お釈迦様は程なく死んでしまった。
かつて少女がそうだったように、人生の階段をごろごろと転げ落ちて、動かなくなった。
少女はお釈迦様を助けられなかった。
少女は嘆いた。
少女は喚いた。
少女は叫んだ。
少女は少女は少女は少女は少女は少女は少女は。
呪った。
奇跡とは等しく薄汚れていることを少女は悟った。
この人界を生きる上で、眼に見えないものに祈りをかけることが如何ほど無意味であるかを理解した。
釈迦の無念と神への不信は、純粋無垢だった少女を魔女へと変えた。
それでも、魔女となっても彼女は非力だった。
世界を変える力などどこにもない。少女にできたことは、自分の世界をつくることだけだった。
けれどつくった世界はどれもガランドウ。光だけがあって、どこまでも空寒いハリボテの偽物。
それでも、少女は一心不乱に願って繰り返した。
誰より神秘を呪っていながら、その実少女は誰より目に見えない奇跡を欲していた。
その奇跡の名を少女は知らなかったが、追い求めていたのは皮肉にも、とある聖遺物の特徴と合致していた。
どんな願いでも叶える力を。
自分だけが扱える、汚れていない絶対の奇跡を。
しかし、小さな魔女はあまりに弱い。
諦めて膝を付き、いつぶりかの涙を流した。
そんな彼女の前に、誰かが立っていた。
そんな彼女の前に、誰かが立っていた。
それが誰なのかを、少女はついぞ正しく理解しなかった。
彼もそれでよかったし、少女もそれでよかった。
彼は少女の箱庭を変える。より理性的に、それでいて精微な姿へと。
そのような御業を披露しておきながら、彼は言った。
己は神秘を望まない。己が望むのは、科学の果てである。
彼の言葉は難しくて、少女には理解できなかった。
けど、自分たちはどちらも、神秘なんてものはこれっぽっちも望んじゃいないことだけはわかった。
それから世界は完成した。
偽りの日々が二十四時間、一秒のズレもなき精巧さで積み重なっていく。
紛い物なれど、それは否定しようのない一つの世界であり、宇宙であった。
最後に、少女と彼は世界の窓を開けた。
作り物の魂では、どれだけ似通ったものを作り重ねて混ぜ合わせても、所詮本物には到底敵わない。
こればかりは、世界を司る二人でもどうしようもなかった。
だから窓を開けて、外からこの世界へ招き入れることにしたのだった。
こうして、魔女の庭は彼女と友人のものだけではなくなってしまった。
その代わり、魔女と彼がこの世界の何をさしおいても育てたがった『器』は、ついに完璧な姿となった。
あとは、これに注ぎ込むものを集めるだけ。
魔女は笑った。ずいぶん久し振りに笑った。
もうじきすべてが叶うと思うと――幼い心は隠しきれず高揚し、きゃっきゃとはしゃぎたい気分になった。
そうして、魔女を助けた科学の男もやはり笑っていた。
怜悧で、とても冷たい笑顔だった。
輝かしさも愚かしさもともに承知している。
なれば我こそ人が持つ物質文明への幻想、その代行者として生き果てよう――彼方の誓いは霊核の奥に今もまだ、ある。
この世界は神秘でできている。
しかし内部は0と1の地平に支配され、黄金に瞬く今はまだ飢えたその器も、内ではいびつな機関音を鳴らしていた。
この世界は科学でできている。
――少女は、『神秘』を見放したのだ。
さあ、聖杯戦争を始めよう。
心配しなくても、神様なんていやしない。
思うがままに戦って、思うがままに願いを叶えよう。
すべてを、願いのもとに。
<ルール>
版権キャラによる聖杯戦争企画です。
<時間帯>
深夜(0〜4)
朝(4〜8)
午前(8〜12)
昼(12〜16)
夕方(16〜20)
夜(20〜0)
<舞台設定>
舞台は架空の街です。ちなみに擬似的な電脳世界でもあります。
施設は基本、現代に存在するものなら何を用意しても構いません。
マスター達は聖杯によって『この世界の住人』としての役割をあてがわれますが、これに準ずるか抗うかは本人の自由となります。
住人はすべてNPCですが、殺しすぎるとルーラーのサーヴァントから討伐令が発令されることがあります。
<サーヴァント、マスターについて>
マスターが死亡した場合、サーヴァントは消滅します。令呪の全損による消滅はありません。
逆にサーヴァントが死亡した場合も、マスターは半日の猶予を経た後消滅します。
ズガンは可としますが、その場合はオリキャラのみでお願いします。
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続いて候補作を投下します。
強く、強く――願いは強く。繋ぐよその手を、還るよ明日に、きっと懐かしいあの場所へ――――
▼ ▲
「私が――私が、悪いんです」
鎮守府に配属され、早数週間。
個性豊かな仲間たちに囲まれて、大分生活にも慣れてきた。
海に跋扈する異形の生命体、深海棲艦と唯一戦うことのできる少女たち。それが艦娘。
最初は海上戦闘を行うだけでもやっとの有様だったが、今では急な出撃、交戦にもちゃんと対応できるようになった。
それでも、やはり人並みにドジを踏むことはある。その辺はまあ、ご愛嬌として。
この数週間、色々なことがあった。
楽しかったことも、辛かったことも、怖かったことも、不甲斐なかったことも。
思えばそれを強く自覚するようになったのは、初めて仲間を失った時からだったか。
悲しみに暮れる友人を見て、もっと頑張らなければと思った。
それから先も力不足を痛感することは多々あって、だからだろうか、いつしかこんなことを願うようになっていった。
――強くなりたい。
誰かに助けられるのではなく、逆に彼らを助けて恩返しできるくらいになってみたいと。
もちろんそれは漠然とした目標のようなもので、走り続けるために設置した仮初めのゴールテープみたいなものだ。
一朝一夕で叶う願いじゃないんだから、じっくり向き合っていこうと思っていた。
しかし。彼女はそんな願いをしるべに、悪い夢へと迷い込む。
目が覚めた時、そこにあるのは過ごし慣れてきた鎮守府の天井ではなかった。
見渡す限りの朝焼けの空。見慣れたものなんて、どこにもありはしなかった。
駆逐艦、吹雪。
強くなりたいと願った未熟な少女。
彼女の願いは、聞き届けられる。
叶うか、破滅か――そのどちらかの未来以外を、すべて捨て去ることで。
▽ △
そうして、聖杯戦争に参加させられてしまった彼女。
特型駆逐艦「吹雪」は、あてもなく一日中作り物の町を彷徨い歩き。
「……くっ……」
窮地に立たされていた。
彼女が今居る場所は、午後十一時の神宮である。
時間が遅いとはいえ観光名所。肝試しを目論む若者たちがいないとも限らなかったが、そういう人影は見当たらない。
神聖なお宮の境内で事を構えるのは、吹雪と二人の敵手。
片眼鏡をかけた嫌味そうな英国紳士と、灰色のローブに身を包んだ妙齢の女だ。
二人は荒事に向いた体格とはお世辞にも言い難い痩せ型だ。普通に考えて、艦娘の吹雪が遅れを取る理由はないだろう。
そう、この状況がもしも普通であったなら、彼女にとっては苦でもなかったのだ。
「きりがない……!」
吹雪が苦戦しているのは、ひとえにこれが異常な状況であるからに尽きた。
女の持つ、淡く輝く水晶。その瞬きが強くなるたびに、おぞましい姿の化け物が現れる。
幸い一匹一匹は吹雪の武装で蹴散らせる程度でしかなかったが、無尽蔵に湧かれては、彼女の処理速度にも限界がある。
「おやおや……少し危惧していましたが、どうやらこのお嬢さん、本当にサーヴァントを連れていないらしい」
「馬鹿よねえ。もしサーヴァントさえいたなら、まだ勝負にはなったかもしれないのに」
下卑た微笑みで、吹雪の敵手たちは談笑している。
どうやらこのまま、化け物たちに吹雪を喰らい殺させるつもりのようだった。
慢心なのか、はたまた悪い趣味なのか。どちらにせよ、これだけは彼女にとって功を奏する。
この世界へ放り込まれるにあたって、吹雪も聖杯戦争のルールについては刷り込まれていた。
あの水晶の女は『サーヴァント』――艦娘でも深海棲艦でもなく、それでいてそのどちらよりも強大な神秘存在。
彼女が本気で殺す気になったなら、自分では太刀打ち出来ないだろう。
まして、今はまだサーヴァントすらいないのだ。
いつ、私のサーヴァントは現れるんだろう。
焦燥感ばかりが吹雪を苛む。
前向きが取り柄の彼女をしても、この状況には堪えるものがあった。
どんなに良い方向に考えても、どうしてもひとつのよくない未来が頭を過っていく。死という、冷たい結末の。
(でも……数は多いけど、一匹一匹はそれほどでもない……!)
武装を使い、敵を一度に三匹爆散させた。
残りはざっと見渡しただけでも、今倒した十倍以上はいるだろう。
サーヴァントの意思で自由に増やせるのだから、馬鹿正直に相手などとてもじゃないがしていられない。
(敵を倒しながら距離を取って、ある程度まで離れたら一気に―――!)
そこで吹雪が打ち出した回答は、逃げる、というものだった。
サーヴァントの力らしい力を、彼女はまだこの召喚術以外に知らない。
しかし、だからと言って油断すれば、どんな目に遭うか分かったものではないのだ。
慢心はせず、あくまに堅実に。そんな彼女の考えは、こと聖杯戦争を生き抜く上で間違いなく正しいものといえた。
砲の音が鳴って、醜い悪魔が血飛沫をあげる。
吹雪は集中力を決して切らさず、一発たりとも外さずに、確実に追手を仕留めていく。
足は常に後方へ。なかなかに神経を摩耗する立ち回りだったが、そこは命を懸けた戦闘に一日の長がある艦娘だ。
追ってくる悪魔の数はまるで減っていない。しかし、とりあえず十分なだけの距離は取った。
唇を噛み締めて小さく頷き、吹雪は踵を返して走り出す!
悪魔は一体一体が弱いだけじゃなく、足も遅いようだった。
まず追いつかれることはないだろう。このまま逃げ切ってみせる――強い覚悟で走る吹雪。だが、現実は非情であった。
「っ!? つ、うっ……」
走り抜けようとした全身で、虚空と衝突した。
そこに遮蔽物のようなものは存在しない。何もないのに、確かにその虚空は吹雪の逃走を防ぐ壁として機能していた。
じんじんとこみ上げる鈍痛を堪えながら手を伸べてみると――やはりある。見えない壁が、ここにある。
ならばと、そこから少し離れた場所からの逃走も試みた。しかし、どこも同じように不可視の行き止まり。
混乱と焦りの中、吹雪は絶望に滲んだ声を漏らす。
「どうして……」
「英霊を舐めないでもらいたいものね。
退路を断つ結界術くらい、サーヴァントなら持っていてもおかしくない。そうは考えなかったの、お嬢ちゃん?
なら覚えておきなさい。他のクラスならともかく、あたしみたいなキャスターにとっては……」
独り言のような問いかけに、返答する声があった。
ばっと振り返ると、相も変わらずの厭味ったらしい微笑みを浮かべた紳士と、そのサーヴァント。
自らのクラスをキャスターと明かしたそのサーヴァントは、最後通牒を突きつける。
いつしか、悪魔相手に確保した距離も無意味なものと成り果てていた。
三十どころか、百は居そうなおぞましい軍勢……それを背後に、英霊の女とそのマスターは悪辣に嗤う。
「こんなの、片手間でだって出来ることよ。――あら、ごめんなさい。覚える必要はなかったわね」
「そうですよ、キャスター。このお嬢さんは、今ここで貴女の贄となるのですから」
思わず、今度は恐怖から後ずさりをする。
背中に硬いものが当たった。例の、退路塞ぎの結界だ。
逃げ切ってしまえば助かると信じて打った策は、結局袋小路に誘導されているだけに過ぎなかった。
怖い。
吹雪は慣れない頃の出撃以上の感情を、目の前の二人に対して覚えていた。
深海棲艦とは違う、生きている人間と元人間なはずなのに、どうしてこれほどまでに恐ろしいのか。
そして確信してしまう。自分はきっと、今日ここで殺されるだろうと。
サーヴァントも連れていない状態では、たとえ艦娘といえども――この偽物の町を生き延びることはできない。
「怯えてしまって、可哀想に……キャスター。楽にしておやりなさい」
「承知」
やりなさい、その号令が響くなり、侵攻を止めていた悪魔たちがまた一斉に襲いかかってくる。
人は今際の際に、時間が止まったような感覚に陥るという話があるが、本当なのだなと吹雪は知った。
記憶の中をよぎっていくのは、艦娘になる前のことではない。
艦娘になってから――あの鎮守府で過ごした、騒がしくも楽しい日々のことだ。
けれど、それももうこれで終わり。
お世話になった先輩たちや睦月ちゃんたちにお別れを言えないのは残念だけど、きっと私はここまで。
すべてを諦めて、目を閉じる。次に目を開くときには、平和な世界と静かな海が待っていると信じて――――――、
――――――――違う
「ッ!」
反射的に、身体が動いていた。
一度は撃つことすらやめた武装を再び、目の前の悪魔たちに放つ。
至近距離から艦娘の兵装を受けた彼らは、例外なく苦悶と血飛沫をあげて消えていく。
奇しくもこの密集度であれば、吹雪の砲撃一発で、先程までの二倍以上の成果を挙げられるようだった。
「な―――まだ足掻く気なの? 見苦しいわよ」
そんな悪罵の声など、今の吹雪の耳には入らない。
思い出せ、私は何を願ってここに来たのかを。
こんな戦争なんて私は望んでいなかったけど、町に呼ばれるくらいの価値ある願いを持っていたはず。
「私はッ」
馬鹿みたいに全部相手取らずに、足元の悪魔を踏み台にして、吹雪は一直線に魔女の英霊へと走り出した。
これにはさしもの敵手たちも驚愕を禁じ得ない。
一瞬だけ生まれた思考の空白。これを逃すわけにはいかないと、吹雪はひたすら速度を早めていく。
「私は―――ッ!!」
強く―――強く、冬の日の吹雪のように、強くなりたい。
それが私の願い。聖杯に認められた、価値ある願いのかたち。
聖杯なんかに託す願いじゃない、そんなことは分かってる!
だけど、だけど―――それは、生きることを諦めていい理由にはならない!
元の世界に帰るため、吹雪は自身の武装を魔女の水晶に向ける。
あの水晶が悪魔を召喚するのなら、それを壊せば状況を打開できるはずだ。
そしてそれは、余裕綽々であったキャスターを焦らせるほど彼女の弱点を射ていた。
「このっ、図に乗るな!」
それでも、吹雪の猛攻はキャスターを倒すには至らない。
足元から伸びた蔓のような物体が、吹雪の手足を、砲を、がっちりと縛って拘束する。
吹雪は決死にもがくが、魔力の蔓は彼女の力ではびくともしなかった。
「……まあ、少しは冷やっとさせられたわ。褒めてあげる。だから―――誇りに思って、死になさいッ!!」
余程自分が軽んじた小娘に足元を掬われかけたのが気に入らなかったのか、キャスターは美貌を歪めて怒号を飛ばす。
水晶に紫色の魔力が収束していき、やがてそれは一発の鏃に姿を変えた。
今までは所詮マスター狩り、大した力を使うでもなく道楽気分だったのだろうが、こうなってはそうもいかない。
この鏃は、彼女がサーヴァントと戦うための魔術だ。当然、吹雪に耐えられるわけがない。
今度こそ、ダメなのか。
絶望的な状況の中、しかし吹雪の光はまだ失われていなかった。
帰るんだ、あの場所へ。睦月ちゃんやみんなが待っている、私達の鎮守府に帰るんだ。
こんなところで死ぬわけにはいかない。だから、どうかお願い。
もう一度だけ、奇跡をください。
そんな吹雪の願いが、天に通じることは決してない。
この聖杯戦争という箱庭に、神様などという胡乱げなものの介入する余地はない。
あるとすれば、そう。
「―――Feuer」
召喚に応えて現れる、サーヴァントくらいのもの。
明後日の方向から響き渡った砲声にキャスターが振り返るよりも早く、鏃を充填した彼女の水晶が粉々に爆散する。
込められた魔力が霧散して煙状になって消えていく様を呆然と見つめるキャスター。
そんな彼女とは裏腹に、現れたサーヴァントは実に得意げな表情で悠然と歩を進めていた。
「遅れてごめんなさいね、マスター。現界に手間取っちゃって」
「え……それじゃあ、あなたが」
「もちろん」
吹雪の手を取ると、彼女を自分の背後に隠す。
背中に注がれる視線を感じながら、やはり実に得意げな顔で、彼女のサーヴァントは宣言した。
「私が、貴女のサーヴァントよ。日本の駆逐艦ちゃん」
頼みの宝具を破壊されたキャスター。
突然の出来事にわけも分からず慌てふためいている彼女のマスター。
これまでの戦況などとっくに覆っていた。
どちらが勝つのかなんて、言うまでもない。
「Feuer」
38cm連装砲の砲塔が火を噴く。
たったそれだけで、呆気なく神宮の魔女は塵と消えた。
▽ ▲
「ビスマルクさん……いえ、ライダーさんも私と同じ艦娘だったんですか!?」
「ええ。私はドイツの戦艦だから、日本の貴女達にはあまり馴染みがないかもしれないけどね」
「凄いです……艦娘がサーヴァントになるなんて!」
「ふふん、私が凄いなんて当たり前でしょう? 何言ってるのよ。でも、もっと褒めてもいいのよ?」
神宮での戦いを終えた吹雪とビスマルクは、石段に腰かけて自己紹介をし合っていた。
キャスターのマスターは自分のサーヴァントが倒されたと知るなり情けない声をあげてどこかへ走り去ってしまった。
追撃はしていないから今のところ無事だとは思うが、これからどうなるかは彼次第だろう。
ライダー、ビスマルクは、吹雪と同じく艦娘として深海棲艦と戦っていたと語った。
それを聞いた吹雪は大層驚かされたのだが、彼女いわくライダーで呼ばれたのは少々不満だという。
艦娘は船のルーツを持っている。
したがって砲撃に重きを置いたならアーチャー。
機動力や馬力を重視したならライダーと、主にその2クラスのどちらかで召喚されることになる。
戦艦なんだから、せっかくなら砲撃の威力が優れている方がよかったわ。
不満気にぼやくビスマルクをどう宥めたものか苦心したが、少し褒めるとすぐ機嫌を直してくれた。
体型も経験も吹雪よりずっと大人な彼女も、根っこの部分では意外と子供っぽいのかもしれない。
「ねえ吹雪。貴女、帰りたいんだったわね? 本当に聖杯はいらないの?」
「はい。それはもちろん、私だって願いはありますけど……でもそれは、自分の力で叶えるものですから!」
「ふふ、そう。……うん、気に入ったわ。
責任持って元の世界まで帰してあげるから、大船に乗ったつもりで任せておきなさい!」
豊満な胸を張る彼女の姿に、吹雪は安堵感を覚える。
国籍も戦った戦場も異なるふたりだったが、艦娘として戦った経歴は同じ。
互いに通じ合うものもある――駆逐艦「吹雪」、並びに戦艦「ビスマルク」……聖杯戦争、攻略開始。
【クラス】
ライダー
【真名】
Bismarck@艦隊これくしょん
【ステータス】
筋力C 耐久B 敏捷B 魔力C 幸運B 宝具C (平常時)
↓
筋力C+ 耐久A 敏捷B+ 魔力C+ 幸運B 宝具C (第二改造)
↓
筋力B 耐久A+ 敏捷B+ 魔力B 幸運A 宝具C (第三改造)
【属性】
秩序・善
【クラス】
ライダー
【真名】
Bismarck@艦隊これくしょん
【ステータス】
筋力C 耐久B 敏捷B 魔力C 幸運B 宝具C (平常時)
↓
筋力C+ 耐久A 敏捷B+ 魔力C+ 幸運B 宝具C (第二改造)
↓
筋力B 耐久A+ 敏捷B+ 魔力B 幸運A 宝具C (第三改造)
【属性】
秩序・善
【クラススキル】
対魔力:B
魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。
大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。
騎乗:C
騎乗の才能。大抵の乗り物、動物なら人並み以上に乗りこなせるが、
野獣ランクの獣は乗りこなせない。
【保有スキル】
艦娘:A
ドイツ戦艦・Bismarckが少女として転生した。
水上ではステータス以上の力を発揮することが可能である。
戦闘続行:B
瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。
【宝具】
『第二改造(ビスマルク・ツヴァイ)』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
更なる改装を瞬間的に施すことによって、自らのステータスを上昇させることが出来る。
一度この宝具を使用すれば、もう改装前の状態へ戻すことは不可能。しかし魔力消費が劇的に変わるというわけではない。
『第三改造(ビスマルク・ドライ)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
更なる改装を瞬間的に施すことによって、自らのステータスを上昇させることが出来る。
一度この宝具を使用すれば、もう改装前の状態へ戻すことは不可能。
三度目の改装とあってか能力も格段に上昇しているため、マスターにかかる負担も第二改造時より大きくなっている。
【weapon】
艦娘としての武装。改造の度に変わる。
【人物背景】
ドイツが誇るビスマルク型超弩級戦艦のネームシップ、ビスマルク。
欧州最大の戦艦であり、短いながらもWWII有数のド派手な戦歴から日本人にとっての大和同様に世界では知名度・人気共に非常に高い。
【サーヴァントとしての願い】
吹雪を聖杯戦争から脱出させる。
【マスター】
吹雪@艦隊これくしょん(アニメ版)
【マスターとしての願い】
聖杯戦争からの脱出
【weapon】
艦娘としての武装。
【能力・技能】
艦娘:C
特型駆逐艦・吹雪が少女として転生した。
水上ではステータス以上の力を発揮することが可能。
彼女はサーヴァントではないので、Cランクにとどまっている。
【人物背景】
アニメ版艦隊これくしょんの主人公。
【方針】
脱出狙い。聖杯は要らない。
投下終了です。
主従の募集締切はとりあえず12月中ほど〜年明けくらいまでで考えています。
エクストラクラスなどもどしどし応募ください。
伸びることはあっても、早まることはまずないのでご安心下さい。
なんか長くね? なのは、>>1 が遅筆だから数を書くの時間かかるっていうのもあります。
それでは、改めましてよろしくお願いします。
続いて候補作を投下します。
死ね、死ね、死ね、死ね。
憎悪の声が、地獄のような場所で響いていた。
いや、正しくここは地獄と呼んで然るべき場所だった。
少なくとも少女にとって、ここは忌むべき世界の象徴だった。
歯を食い縛り、押し寄せる苦痛に耐える。
嬌声など、あげるわけがない。
春日野椿にとってこの行為は、どこまでも苦痛でしかないのだから。
――こんな。
汚らわしい体が、少女の絹のような素肌に触れる。
汗と唾液と汚い液体が飛び散る、ここは少女を閉じ込める檻の中だった。
はじめの内は嘔吐すらしたが、人間の体はご丁寧に、苦痛へ慣れるという機能を持っている。
今じゃ、椿は嫌がる素振りさえ見せない。ただ行為が終わるのを待って、その間世界を呪い続けている。
――こんな世界、なくなってしまえばいい。
椿は生まれつき目に障害を抱えていた。
自由に視認できるのは手元くらいのもので、だからここから抜け出すことも自分ではできない。
良心の呵責に駆られた誰かが椿を助け出してくれる――そんな希望もとうの昔に捨てた。
千里眼の巫女なんてインチキを信じるような連中が、どうして椿を助ける理由があるだろう。
彼らは、こうすることでご利益に預かれると本気で信じているのだ。
おめでたい頭。いや、真におめでたいのは、こんな無様な自分自身の姿かもしれない。
椿は恨んだ。
未来を見、選ぶ日記を手に入れて、変わったことは少しだけだった。
椿は呪った。
しかし哀れかな。春日野椿は千里眼の巫女でも何でもない。
奇跡を起こすことなんて出来るはずもないのだから、その思いは所詮思いどまりだ。
世界を壊すのはおろか、世界を変えることだってできない。
「辛いかい」
その時、何かが飛んだ。
弱視の目ではぼんやりとしか認識できなかったが、とにかく赤いものだった。
どさりと何か重たくて水っぽいものが地面に落ちる音がして、それから悲鳴が響いた。
何が起きたのか分からない。分からないけれど、何かが起きたことは分かる。
「辛いだろうね。それに悔しいだろう」
でも、それは今日で終わりだ。
そう言って手を差し伸べるのは、女の子のようにも見える綺麗な顔立ちの少年だった。
年は椿と近いか、少し上くらいだろうと思う。
おずおずと伸ばした椿の痩せた手を、少年は優しく取ってくれた。
その姿は孤独の中にあった椿には、物語の王子様みたいに眩しく見えて――
「サーヴァント、キャスター。君の願いを叶えるために、現界した」
椿はすべてを思い出した。
雪崩のように溢れてくる記憶が、ここはどこなのか、自分は何を思ってやって来たのかを教えてくれる。
ここは架空の世界。
椿を取り囲む何もかもは、精巧に作られただけの偽物に過ぎない。
父が死んでいるのも変わらない、母が死んでいるのも変わらない、千里眼日記があるのも変わらない。
けれどサバイバルゲームは起きていなくて、自分は神の座とはまた別なものを目指して戦わなければならない。
椿は負けた。天野雪輝と我妻由乃を殺すことに失敗した挙句、逆に殺されてしまった。
でも終わりではなかった。その証拠に、椿は生きている。
神にはなれなかったが、そんなことは今や心底どうでもいい。
まだ手段はある――世界を滅ぼす手段も道具も、あれで終わりなんかじゃないのだから。
「ソウダ。お前はまだ終わりじゃナイ」
少年の背後から現れた仮面がにやにや笑っている。
四つの目がぎょろぎょろ蠢いて、一糸まとわぬ椿を見つめていた。
しかしその目は、小娘の裸などに欲情した軽い目ではない。
「世界を壊したいのダロウ。ならば我らを使うとイイ」
「ダメだよ、ティキ。最後に決めるのはこの娘なんだから」
弱視に閉ざされた、虚ろな瞳が少年の瞳孔を見上げる。
彼は微笑んでいた。天使のような美少年は柔和な顔をして、ゆっくりと椿の頭へ手を置き、左右へ動かした。
初対面の相手にするには気安すぎる対応は、しかしこの少年によく似合っていた。
彼ならば何をしても許されるような、そんな魅力……『カリスマ』というのだろうか。
今や椿にとっての地獄は、彼女を責め続けた鬼達にとっての地獄へ早変わりした。
辺りには死臭が立ち込めて、全裸の椿の肌にも肉片が飛沫した感覚がある。
たとえ偽物の景色であれ、これで彼女を縛るものは何もなくなった。
椿が望めば、彼と謎の仮面は瞬く間に教団そのものを滅ぼしてしまうだろう。
椿は、自分の唇をなぞった。
――それは、弧を描いていた。椿は今、笑っていたのだ。
それを見て、少年も笑った。四ツ目の仮面は相変わらずニヤニヤと気味悪く笑っている。
「聖杯を、手に入れるわ」
口をついて言葉が出た。
これではまだ満足できない。
どれだけ見た目を取り繕ったとしても、偽物は偽物。
それを手当たり次第に壊した程度で満たされるほど、春日野椿の絶望は軽くなかった。
「いいよ。力を貸そう。君が求める限りの力を、僕らは君へもたらそう」
椿が望み、キャスターはそれに合意した。
それを合図にしたかのように、『御目方教』の敷地一帯が闇の帳に包まれる。
信者の動揺とざわめきがここに居ても伝わってくるが、知ったことではない。
彼らはこれから喰われ、乗っ取られ、存在のすべてを聖杯戦争のために捧げることになるのだ。
強い未練や現世への執着を抱いて死んだ人間は、やがて悪霊となって人の世を害し始める。
手を変え品を変え、その姿さえも醜く変貌させて、我欲に溺れた化け物と成り果てる。
本来キャスターの力は、そういったこの世のルールからあぶれた存在をあるべき場所へ導くためにある力だ。
しかし、今の彼にとって悪霊とは裁くべきものではなく、目的を遂げるために最も都合がよい道具である。
文字通り魂を売り渡すことでのみ身に付けられる『禁魔法律』と呼ばれる御業が、それを可能としていた。
キャスター、円宙継は魂を喰う。だがそれ以上に、魂を歪めて利用する。
討伐令? そんなものは知ったことじゃない。第一、追い立てられることには慣れているのだ。
(ムヒョ、確かに君は強い。天才だ。今の僕でもひょいと飛び越えてしまうんだろうね、君のことだから)
キャスターは英雄などではない。彼は、英雄の栄光を憎み狂った男である。
可憐な出で立ちの内側にコールタールよりもなおどす黒く淀んだものを渦巻かせて、数えきれないほどの人数を殺めてきた外道である。椿の目には彼は眩く移ったかもしれないが、それは大きな間違いだ。
そんな彼が『多少』悲惨な境遇にあるだけの娘に肩入れし、愛情をもって接するなど当然ありえない。
そもそもそのように殊勝なことを考えていたなら、彼の宝具でもある『仮面の男』を彼女へ会わせようとはしないだろう。
椿もまた、道具の一つだ。ただしこちらには、壊してはならないという制約が付いて回るが。
それでも彼女の憎しみは役に立つ。一言、相性が良い。その点だけは、聖杯の巡り合わせに感謝していた。
(だから――僕は君の全てを奪おう。君が絶望と嘆きに溺れて死んだ時、初めて僕の復讐は終わりを告げるんだ)
そのためなら、何だって利用する。
キャスターは、自分のマスターへもう一度優しく微笑んだ。
椿は窶れ、疲れ切った悲痛な有様で、それでもそれへ微笑み返した。
そんな彼女の右の手の甲には、とある不気味な文様が浮かび上がっていた。
黒い六つの三角形に囲まれた、白目と黒目が反転した印。
本来、これは逆の色彩があてがわれているべきものだ。
それを恣意的に反転させた意味合いは反逆。すなわち、あるべき場所を外れた――『反逆者』であることを示す印。
人はこれを、禁魔法律家の証とも呼ぶ。
キャスターも仮面(ティキ)も、これを体に宿していた。
椿も今、これを手に入れた。未来を視るしかできなかった巫女は今、真の意味での戦う力を手に入れたのだ。
禁魔法律は闇の力。
魂を売って契約を結び、一度でもその力を用いたが最後、死しても契約が白紙になることはない。
使い続ければいずれ魂は擦り切れ、自我がなくなり、悪霊が生まれる。
少女はそれに気付かず、また気付けるはずもなかった。
その目は弱視だが、彼女の心は今、まさに盲目であったのだから。
世界を滅ぼす――その願いを糧に、春日野椿は堕ちた。今度こそ、這い上がることのできない闇の底へ。
【クラス】
キャスター
【真名】
円宙継@ムヒョとロージーの魔法律相談事務所
【パラメーター】
筋力D 耐久C 敏捷D 魔力A+ 幸運E 宝具A
【属性】
混沌・悪
【クラススキル】
陣地作成:B
魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。
『工房』の形成が可能。
道具作成:B
魔力を帯びた器具を作成できる。
【保有スキル】
精神汚染:E
精神を病んでいる為、他の精神干渉系魔術をごく稀にシャットアウトする。
同ランクの精神汚染を持つ人物以外とは意気投合しにくい。
カリスマ:D
軍団を指揮する天性の才能。団体戦闘において、自軍の能力を向上させる。
カリスマは稀有な才能で、一軍のリーダーとしては破格の人望である。
変化:A
自分の姿を自由自在に変化させる。
彼の場合、この高いランクはそれだけ生前に霊的存在へ近付いたことを意味する。
禁魔法律:EX
自分の魂を闇に売ることで地獄の使者と契約を結び、その力を借りる禁断の技。
煉を必要としないため、魔法律家でなくても使うことができる。
禁魔法律を一度でも使うと、使者との契約を破棄することはできない。
使い続けることで魂は擦り切れ、使用者自身が悪霊に近い存在になり、自我も消えてしまう。
【宝具】
『嗤う屍面相(ティキ)』
ランク:A+ 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
生前、キャスターが行動を共にしていた禁魔法律家の怪人『ティキ』を召喚し使役する宝具。
ティキはEXランクの『スキル:禁魔法律』を持ち、その行動によって生ずる魔力はキャスターによって賄われる。
反逆者の印が入った手袋を身につけており、キャスター以外の禁魔法律家をたとえマスターであれ操作できる。
加え、ティキを殺す手段はこの聖杯戦争には現存していないため、キャスターが死亡する以外に彼を退けるすべはない。洗礼詠唱をはじめとした浄化系は一応効き目はあるようだが、完全に消滅させたければ相当な高ランクをもってする必要がある。
非常に強力な宝具なのは間違いないが、忘れるなかれ。彼はキャスターのしもべであるが、断じて味方ではないのだ。
キャスターの奥の手は、この宝具と自らを一体化させ、より強大な力を得ること。
こうなった彼の魔力はEXランクにまで増幅され、魔術師としても禁魔法律家としても埒外の領域へ到達する。
【weapon】
なし
【人物背景】
禁魔法律家団体『箱舟』に接触し、事実上統率していた禁魔法律家の少年。
幼い頃から病気の母親を救いたい一心で、魔法律の執行人を目指していた。
しかし友人の才能への嫉妬・怨恨と愛する母の死がきっかけで理性の箍が外れ、やがて善悪の区別がつかなくなり、禁魔法律の世界に足を踏み入れる。生真面目で没頭すると周りが見えない性格が災いして、人から外れた存在となった。
かつて執行人の地位を争ったその実力はすべて、闇の力によって手に入れた禁魔法律に変えられている。それ故、禁魔法律家でも群を抜いた実力を持つ。自らの体を黒い蝶へ変えて離脱するなど、生前から霊に近付いており、それだけに霊の操作を日常茶飯事のような気軽さで行うことができる。
彼は紆余曲折の末に友人と和解し、裁きを受け入れ収監されるのだが、マスターの椿が悪心をもって彼を召喚したため、禁魔法律家のリーダーとして暗躍していた頃の彼が呼び出された。
【マスター】
春日野椿@未来日記
【マスターとしての願い】
聖杯を手に入れて世界を滅ぼす
【weapon】
『千里眼日記』
巻物の形をした未来日記。
御目方教の信者たちが未来に得る情報が巻物へ報告され、全未来日記の中でも最大級の情報量を誇る。
非常に広範囲にして膨大な情報量が記載されるが、その長所こそが弱点の一つ。
信者が得る情報は何から何まで自動的に報告されてしまうので、本当に必要な情報を必要な時に見つけにくい。
実際、信者たちの報告の中には取るに足らない事までが多数記されていた。
また、あくまで他人が得る情報なので所有者本人には真偽の判別ができず、使用にあたっては書かれた予知は全て信じることが前提条件となる。従って情報操作や攪乱にも極端に弱く、催眠術や暗示の使い手は天敵。
【能力・技能】
本来の椿は日記以外に特別な力を何も持たない。
だが、今の彼女はティキの力で禁魔法律家と化している。
【人物背景】
十二人の日記所有者の一人で、六番目の所有者『6th』。
巫女装束を着た、黒髪の少女。瞳が虚ろなのは極度の弱視によるもので、手元を見るのが精一杯なほど目が悪い。
新興宗教団体『御目方教』の巫女にして千人を越える信者を統率する教祖。幼い頃から「未来を見通す千里眼の持ち主」として祀られ、世俗から離れた生活を送っていた。ただしこれは両親が彼女を御目方教の象徴として飾る為のでっちあげ。
両親が事故死してからは教団のナンバー2であった男の陰謀で慰み者にされ、支えにしていた亡き母から貰った手毬をも紛失してしまったことで自分を取り巻く世界の全てを激しく憎むようになる。
【方針】
教団の力を使って他のマスターを炙り出し、殺す。
投下終了です。
一応テーマは『科学と神秘』だったりしますが、ぶっちゃけルーラーが科学側ってだけなので、別に気にしなくていいと思います。(俺も気にしません)
更に更に投下します。
るり、らら。
子供の歌声が響く。
ここは教会だった。
そして少女は、そこで夢見ていた。
少女は恋をしていた。
たとえそれが誤った形であろうとも、それは間違いなく恋心だった。
非凡な才能を有して生まれ落ちた少女は、定められたように最優の英霊を呼んだ。
そして少女は、恋に落ちた。
自分をも含めた、すべてのものを巻き添えに。
すべてのものが彼女のために狂い落ちた。
泥濘んだ地面に空いた大穴が、周囲のあらゆるものを引き込んでいくように。
そして少女は、すべての希望を裏切って無敵だった。
誰も少女を倒せなかった。
それどころか、勝負さえできなかった。
触れれば殺す英霊は彼女に心酔し、明晰なる錬金術師は主との盟約をあっさりと違えた。
そして少女は、無敵のままに最強の剣を振るい続けた。
ある者は快楽の内に絶頂死した。
ある者は彼女の計略で破滅した。
太陽王の神殿が砕け散った。
そして少女は――零と壱の狭間に魅入られた。
気付けば見知らぬ街に立っていた。
この街には父がいて、妹がいた。
だが、少女の目は誤魔化せない。彼女は最初から何も忘れていなかった。
そして少女は、これが聖杯戦争であり、如何なる事情か、自分は本来の戦争を離脱させられ放り込まれたのだと知った。
とんだ迷惑を働いてくれたものだと思う。
どうやら現実世界ではないようだが、肉体を破壊されれば死ぬ、という点で変わりはないらしい。
厄介な話だが、しかし少女は悲観はしなかった。
どうせ生まれるものは同じなのだから、ついでに持って帰ればいいとだけ考えていた。
少女は自分の敗北など、最初から視野にさえ入れていなかった。
無邪気に遊ぶ子供達の声をバックコーラスに、少女はステンドグラス越しの陽気に微睡んでいた。
肌は絹のようにきめ細やかでシミ一つなく、顔の造形などは最早溜息が出そうなほどに美しく整っている。
どこか幼気な雰囲気が付随しているのもまた、男性の心を掴むにはおあつらえ向きといえるだろう。
無防備に微睡む少女の姿を視界へ収めたのは、教会の重い扉を押し開けた一人の青年だった。
幸い今は神父は不在だったが、もしも彼の者が目にしたならば驚いたに違いない。
灰色の頭髪を讃えたその青年は、およそ現代を生きるのにはまず間違いなくそぐわない戦装束に身を包んでいたからだ。
鎧の重厚さは偽物などと微塵も気取らせず、また彼自身の纏う空気もまた、一般人とはどこか一線を画している。
「マスター」
主と呼ばれた少女は、んん、と可愛らしい寝ぼけ声を出した後、眠たげに細められた目を擦って覚醒した。
欠伸をしながら視線を向け、「あら、セイバー」と事も無げに言ってのける。
一見すると危機感を全く持たないマスターであるが、実際に危険などではなかったのだから仕方ない。
彼女を仮に見つけた者があったとして、殺害できた可能性は英霊を伴っていようと低いだろう。
「午睡は構わないが、しかし直に日が落ち始める。今晩はマスターも出るのだろう?」
「……ええ。ありがとう、セイバー……」
未だ眠そうに立ち上がる少女は、セイバーを先導して家路への道を歩み始めた。
その華奢な後ろ姿を霊体化しながら見つめ、セイバーの英霊は疑問を抱いていた。
どこからどう見ても、こうしている彼女は普通の年頃の少女だ。
動作の一つ一つに気品があり、その美貌も相俟って生きる分に苦労はしないだろうが、逸脱したものは感じない。
にも関わらず、彼女の体に循環する魔力の桁は常人とは確実に桁が二つは外れている。
月並みな言葉を、ましてマスターには向ける言葉では絶対になかったが、怪物という呼称が最も正しい次元だと思う。
この偽りの街で行われる聖杯戦争が、本来の様式とは大幅に異なっているらしいことはセイバーも知っていた。
だからイレギュラーな事情を持ったマスターが現れるのは不自然なことではなく、むしろ危惧すべきことである。
だが……それでも、この少女――沙条愛歌という少女にだけは釈然としないものを感じるのだ。
例えようもない、何か。そう、言葉に出来ない『不安』を感じる。
自分にとって最大の味方であるはずなのに、こんな心境になる理由が皆目解らない。
立てば芍薬座れば牡丹、歩く姿は百合の花を地で行き、作り物の妹と戯れる姿は微笑ましいの一言に尽きる。
なのに彼女を見ていると、英霊だとか英雄だとかそういったものを一切無視した本能的な不安に囚われる。
まるで底の見えない深淵を覗いているような――堪えようのない感覚を。
セイバーはかぶりを振って、脳裏へ浮かんだ不安を否定した。
彼女が何を抱えていようと、自分は彼女を勝利へ導くべく召喚されたサーヴァントだ。
ならば戦おう。竜殺しと謳われたこの身がどれほど通用するかは定かではないが、捨てたものでもないと思っている。
英霊ジークフリートは、静かに己の剣を握り締めた。落陽に至りつつある街を、少女と共に歩いていた。
――沙条愛歌にとっての『セイバー』は、『騎士王アーサー・ペンドラゴン』のみである。
彼女は自分の呼んだ英雄に、全く執着を寄せていない。
そしてそのことへ、微塵の疑問も感じていないのだ。
セイバーが違和感の正体へ至れなかったのも無理はない。沙条愛歌は、彼を騙そうとはしていない。だからボロが出るはずもないし、そんなことがあるとすれば、それは彼女の辣腕が振るわれた時だけだ。
沙条愛歌の世界はアーサー・ペンドラゴンで完結している。
最強無敵の怪物王女は電脳の大地においても、変わらず無欠であり、完璧な――『悪』であった。
【クラス】
セイバー
【真名】
ジークフリート@Fate/Apocrypha
【パラメーター】
筋力A 耐久A+ 敏捷B 魔力B 幸運E 宝具A+
【属性】
混沌・善
【クラススキル】
騎乗:B
騎乗の才能。大抵の乗り物なら人並み以上に乗りこなせるが、
魔獣・聖獣ランクの獣は乗りこなせない。
【保有スキル】
黄金律:C
人生において金銭がどれほどついて回るかの宿命。
金銭には困らぬ人生を約束されている。
仕切り直し:A
窮地から脱出する能力。
不利な状況であっても逃走に専念するのならば、相手がAランク以上の追撃能力を有さない限り逃走は判定なしで成功する。
竜殺し:A
竜の属性を持つ相手に対して特攻、特防の性能を誇る。
【宝具】
『幻想大剣・天魔失墜(バルムンク)』
ランク:A+ 種別:対軍宝具 レンジ:1〜50 最大捕捉:500人
竜殺しを為した、呪いの聖剣。
原典である魔剣『グラム』としての属性も持ち、手にした者によって聖剣にも魔剣にも成り得る。
柄に青い宝玉が埋め込まれており、ここに神代の魔力が貯蔵・保管されていて、真名を解放することで大剣を中心とて半円状に拡散する黄昏の剣気を放つ。またグラムと同じく、竜種の血を引く者に対しては追加ダメージを与える。
他の対軍宝具と比べて宝具発動の為に必要なタメが非常に少なく、追撃・連発が可能な特性がある。
『悪竜の血鎧(アーマー・オブ・ファヴニール)』
ランク:B+ 種別:対人宝具 レンジ:- 防御対象:1人
背中を除く全身にファヴニールの血を浴びた逸話の具現。
Bランク以下の物理攻撃と魔術を完全に無効化し、更にAランク以上の攻撃でもその威力を大幅に減少させ、Bランク分の防御数値を差し引いたダメージとして計上する。
また正当な英雄による宝具の攻撃の場合はB+相当の防御数値を得る。ただし竜種特攻などの宝具やスキルを所持している場合はプラス分が計上されない。その防御力は赤のランサーの槍撃を受けても微傷程度で済むほど。
但し伝承の通り、背中にある菩薩樹の葉が張り付いていた跡が残っている部分のみ効果は発揮せず、呪いによりその個所を隠すことも出来ない。その上一度背中を負傷すると治癒魔術でも修復は難しい。
【weapon】
宝具。
【人物背景】
ニーベルンゲンの歌に登場する英雄。
ネーデルランドの王子であり、数多の冒険を成し遂げてニーベルンゲン族の財宝を手に入れ、邪悪なる竜ファヴニールを倒して「竜殺し(ドラゴンスレイヤー)」の称号を冠するまでに至った勇者。さらにその倒した竜の血を浴びることで不死身となり無敵の肉体を手に入れた大英雄である。
仕切り直し、竜殺しの二つのスキルは「Grand Order」より。
また、マスターとして最高適性である沙条愛歌に召喚されたことでパラメータが上昇している。
【マスター】
沙条愛歌@Fate/Prototype 蒼銀のフラグメンツ
【マスターとしての願い】
元の聖杯戦争へ戻る。ついでに聖杯を獲得する
【weapon】
なし
【能力・技能】
魔術回路の量は少ないが、誕生したその時から根源と接続されているためにあらゆる事象を知り、あらゆる全てを認識する機能を有した全知全能状態にある。
系統を問わずあらゆる魔術を極めており、その能力は神代の魔術師さえ超えているとされる。空間移動をはじめとした魔術もお手の物で使いこなすが、「自分の行き着く先」だけは絶対に視ようとも、また知ろうともしない。
【人物背景】
「第一位・熾天使」の階梯を有するマスター。
セイバーに恋慕の情を抱いた事で彼の望み=「故国の救済」を完遂させる為に暗躍し、はぐれサーヴァントであるアサシン、奥多摩山中の戦闘でマスターを陥落させて従えたアーチャー、愛歌の才覚に魅せられ美沙夜を売って自分の元に付いたキャスターを手駒として暗躍の限りを尽くした。ヒロインでありラスボス。
【方針】
他の主従を潰す。手駒も適度に作っておきたい
投下終了です。
投下&スレ立てお疲れ様です
科学を要素として打ち出したのは、これまでにない面白い特徴ですね
早速ですが、自分も投下させていただきます
錬金術。
それは科学の入り口たる魔術。
かつて魔術より生じた科学。
幻想と現実との橋渡しとして、その両極に立った術法である。
この世で最も価値ある物質たる、金。
それを無より生み出そうとしたのが、そもそもの錬金術の起こりであった。
あらゆる物質を精錬し、金へと至ろうとする過程で、様々な物質が解剖された。
分解された物質の、その構造が解明されて、世の理として知れ渡った。
望まれた成果は得られてはいない。賢者の石など存在しない。
されどその過程で得られた知識は、その後の世界の発展に、大きく貢献することになった。
常識を超えようという願いは、それとは別の扉を開き、新たな常識を世にもたらしたのだ。
それは今日まで息づく、金よりも価値のある知識であった。
さりとて、それは一面に過ぎない。
万象を理解するその技術体系の、ほんの一部の顔でしかない。
ある者は錬金術という技術に、それこそ金を求めただろう。
されどある者はその技術に、全く別のものを求めていた。
物質の解明というプロセスを、そのまま主目的として見なし、世界を分析し続けた者達もいたのだ。
物質を理解し続けることは、いずれ世界を理解することに繋がる。
世界の在り様を分析し、解明し続けることは、世界を理解するための、共通した尺度を作ることと同義だ。
それはかつて失われた、統一言語の具現であった。
言葉を分かたれる以前の人類が、互いに不自由なく意志疎通をしていた、神代の時代の言の葉だった。
錬金術。
それは世界を暴く技法。
世界の真理を詳らかにし、世界と分かり合うための言語。
これより語られるのは、その術に翻弄された者の物語。
科学と神秘の境界でこそ、語られるべき物語。
世界と分かり合うことを理解せず、それ故に優しい心を壊し、全てを喪った一人の少女の、その残り香を辿る物語である。
◆ ◇ ◆
苦く、えぐるような味だった。
それは青年が嗜んでいた、煙草だけが理由ではないだろう。
キャロル・マールス・ディーンハイムが、口づけによって得た想い出は、そうした味を伴うものだった。
「進捗の方はどうなっている」
ぶっきらぼうな青年の声が、彼女に向かって語りかける。
魔術師(キャスター)の名と共に復活を遂げ、奇跡の担い手となってしまった、サーヴァントへと問いかける。
生前理解の拒絶として受け止めた、奇跡の体現者となってしまった現状は、あまりにも皮肉なものだった。
もっとも、今の己の有り様を、生前と表することが的確なのかは、キャロル自身も自信がなかったが。
「モノがモノだ。相応に時間はかかるだろう。オレとてシャトーの準備の方にも、時間を割かねばならないのだからな」
無茶な要求をしたからには、相応に納期を遅らせてもらう。
キャロルは己がマスターへとそう応えた。
冗談のような話だが、彼女を召喚したマスターは、ロボット兵器のパイロットだった。
禍つ神の映し身、嶽鑓御太刀神(タケノヤスクナズチ)。
彼と不可分の存在でありながら、この場へと持ち込むことが叶わなかった、空を震わす黒鉄の神。
キャロルの道具作成スキルを知った彼は、あろうことか、その神像を、錬金術にて模造しろと言い出したのだ。
「錬金術は奇跡ではない。理詰めの技術の結晶に、真なる神は宿らない。お前の想い出にあった力を、全て引き出すことはかなわないぞ」
「構わん。それはそれで面白いハンデだ」
にいと不敵に笑いながら、青年はそう言い放った。
力強さを感じさせながらも、どこか危うさの漂う表情だ。
あるいはかつてのキャロル自身も、こんな顔をしていたのだろうか。
「……お前が聖杯に望むのは、一人の人間と紡ぐ未来だったな」
故にキャロルはそう切り出した。
己の内に浮かんだ疑問を、正直に言葉にして尋ねた。
「それがどうした」
「重要な話だ。お前は己と同じ闇へと、その者を引きずり込むことで、共に生きることを望んでいたな」
「何が言いたい」
遠回しなキャロルの問いかけが、整った顔立ちを歪ませる。
笑みを浮かべていた青年の顔が、不満げなそれへと変化していく。
「だがお前の想い出は、こう望んでいた。そいつだけは日の当たる場所で、穏やかに生きていてほしいと」
それが嶽鑓御太刀神の想い出と共に、キャロルが受け取った感情だった。
細かな理由は定かではないが、青年は地獄の只中にいた。
路地裏で残飯を食う日々を過ごした。仲間と信じていた者には、背中から銃弾を浴びせられた。
生きるため、殺したいほど憎い相手に、這いつくばり命乞いをしたこともあった。
彼にはそれ以外、何もなかった。何も持つことができなかったが故に、何も望むことができなかった。
唯一願うことができたのは、自分ではなく大切な他者が、幸福に生きていくことだけだ。
こんなどん底の苦しみを、決して味わうことがないようにと、祈り続けることしかできなかった。
「その心は、恐らくは今も、お前の奥底に息づいている」
そして青年は、今になっても、恐らくはその想いを捨てきれていない。
いかな経緯かは不明だが、邪神に魅入られ穢された今でも、その心は残り続けている。
「その正と負の心の矛盾は、いつかお前を殺すことになる。本当に望むものは何か、一度考えておくことだ」
それは聖杯を望むことよりも、よほど重要な大前提だ。
オレはそれを拒んだせいでこのザマだと、キャロルはマスターに向かって言った。
ここに在るキャロル・マールス・ディーンハイムは、本人の魂そのものではない。
錬金術の対価として、捧げられ燃やされた想い出の、その情報の集合体だ。
喪った想い出を継ぎ合わせただけで、一つの人生を構築できた。
それほどに多くを投げうって、結果何も為すことができなかった。
目的を誤魔化し見失い、さまよい続けたその果てが、こんなものを吐き出した搾り滓だ。
同じ運命を辿ることは、たとえそれが他人であっても、快いとは思えなかった。
「何かと思えば、そんなことか」
されども男は、嘲笑する。
キャロルの数百年の後悔を、そんなものかと鼻で笑う。
「この胸に宿る白も黒も、いずれも俺の本心だ」
それに対して迷いはない。
どちらの結末を歩んだとしても、全く別の道に行き着いたとしても、後悔することは決してない。
どんな形であれ、己はあいつを、幸福へと導けるのならばそれでいい。
そこに自分という存在が、隣に立てるのであればなお素晴らしい。
「そんなことも受け入れられないから、お前はそうして破滅したのだ」
邪神オロチの八つが首の、その筆頭たる一の首。
嶽鑓御太刀神を担いし魔人――白き衣と剣のツバサは、迷うことなく言い放ったのだった。
【クラス】キャスター
【真名】キャロル・マールス・ディーンハイム
【出典】戦姫絶唱シンフォギアGX
【性別】女性
【属性】混沌・悪
【パラメーター】
筋力:E 耐久:C 敏捷:D 魔力:A+ 幸運:E 宝具:B
【クラススキル】
陣地作成:A
魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。
“工房”を上回る“神殿”を形成することが可能。
道具作成:A
魔力を帯びた器具を作成できる。
生前、聖遺物すら加工したそのスキルは、最高レベルにまで到達している。
自動人形・オートスコアラーの作成までは不可能だが、
アルカ・ノイズを生成し、下僕として使役することはできる。
【保有スキル】
錬金術:A
万象の構造を解明し、分解・再構成することを目的とする技術。
キャロルは数百年の研鑽により、この術を極めて高いレベルで修得している。
火・水・風・土の四大元素(アリストテレス)を始めとする、様々なエネルギーを行使することが可能。
絶唱:-(A)
本来はFG式回天特機装束・シンフォギアの決戦機能。
肉体の保護を度外視し、聖遺物の能力を限界まで引き出す滅びの歌である。
キャロルは宝具『終焉を爪弾く殲琴(ダウルダブラ・ファウストローブ)』発動時のみ、この歌を歌い上げることができる。
錬金術の力でバックファイアをねじ伏せ、永続的に歌うことが可能となった絶唱は、
理論上、地球人類70億のフォニックゲインに匹敵するほどの破壊係数を叩き出す。
高速神言:B
呪文・魔術回路との接続をせずとも魔術を発動させられる。
大魔術であろうとも一工程(シングルアクション)で起動させられる。
想い出の焼却:E
錬金術の戦闘エネルギーは、「想い出」と通称される、脳内の電気信号を対価に引き出されるものである。
普通に戦うだけならば、キャロル自身に影響が出ることはない。
しかし宝具の発動など、多大な「想い出」を要する戦術を取った場合には、彼女の脳や記憶に相応のダメージが及ぶことになる。
記憶の完全焼滅は、キャロルの魂の死を意味する。
このため、霊魂である現在のキャロルが、記憶を燃やし尽くすということは、そのまま死へと直結する。
【宝具】
『終焉を爪弾く殲琴(ダウルダブラ・ファウストローブ)』
ランク:B 種別:対人宝具(自身) レンジ:- 最大捕捉:1人
筋力:C 耐久:A 敏捷:C 魔力:A++ 幸運:E
ケルト神話の主神、ダグザが用いたとされる竪琴。
その破片を錬金術によって、プロテクターへと錬成した宝具である。
これを装着することによって、キャロルのパラメーターは、上記のように向上される。
音色によって増幅された錬金術と、鋼糸魔弦を用いたワイヤー戦法が基本戦術。
更に、上述した絶唱を歌い上げることによって、その破壊力は乗算的に上昇していく。
ただし、これほどの戦闘能力を発揮するには、相応の量の「想い出」が必要となっており、
長時間の戦闘は、装者に深刻な記憶障害のリスクをもたらすことになる。
『忌城は黙示の闇に聳える(チフォージュ・シャトー)』
ランク:C 種別:対界宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:1000人
堕ちた英霊の居城の名を冠した、異端技術の結晶体。キャロルら一派の居城である。
物理的ダメージの一部を異空間へと転移・霧散させる、位相差障壁の技術を応用しており、その守りはまさに鉄壁。
内部にも敵の「想い出」を読み取り、忌むべき過去を具現化させるなど、様々な防衛システムが組み込まれている。
しかしその最大の真価は、錬金術の分解エネルギーを放出し、世界そのものを破界することにある。
宝具『終焉を爪弾く殲琴(ダウルダブラ・ファウストローブ)』の絶唱を受け、
滅びの歌を拡散する音叉と化したこの城は、世界の万象を分解し、現世に黙示録を再現する。
……とはいえ、この機能を使うためには、エネルギーを沿わせるための、
フィールドの龍脈の理解・解明が必要不可欠であり、すぐに使うことはできない。
『碧の獅子機(アポカリプティック・マスターテリオン)』
ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:1〜50 最大捕捉:500人
混沌にて完全を犯し、万物を滅ぼす錬金術の極北。
宝具『終焉を爪弾く殲琴(ダウルダブラ・ファウストローブ)』を最大駆動させ、
鋼糸魔弦によって生成される、緑碧の光を放つ巨獣である。
攻防ともに破格のスペックを保有しており、その顎から放たれる太陽の炎は、立ちはだかる敵全てを焼き尽くす。
もっとも、この宝具が発動されることは、キャロルの「想い出」の完全焼滅とほぼイコールとなっており、
戦闘後の彼女の心身が、残り続けるという保障はできない。
【weapon】
アルカ・ノイズ
神話の時代に生み出された、生きた対人兵器・ノイズを、錬金術によってアレンジしたもの。
上述した位相差障壁に回されるリソースは、この過程で減少しており、銃撃でも怯むほどに弱体化している。
ただしその最大の真価は、触れただけで万物を分解する、圧倒的な攻撃力にある。
キャロルはこのアルカ・ノイズを、自らのスキルによって生成可能。
【人物背景】
魂と想い出をホムンクルスに転写し、数百年の長きを生きた錬金術師。
見た目は童女のそれだが、宝具『終焉を爪弾く殲琴(ダウルダブラ・ファウストローブ)』発動時には、成人女性の姿へと成長する。
父イザークを殺されたことをきっかけに、世界を完全解剖する「万象黙示録」の実現のため、長きに渡って暗躍し続けていた。
可愛らしい容姿に似合わず、一人称は「オレ」。
全てを見通す聡明さと、容赦を知らない苛烈さを持ち合わせている。
一方で、極限状態まで追い詰められた時には、外見年齢そのままの童女のように、必死に泣き喚く姿も見られていた。
かつては天真爛漫で、父親思いの優しい少女であったという。
イザークは世の中のために錬金術を使い、多くの人々を救ってきたが、
その技術は世間には神の奇跡と区別がつかず、故に神の座を穢す異端者として恐れられていた。
遂にイザークは火刑に処せられ、彼の「生きて世界を識るんだ」という遺言を受けたキャロルは、
父の遺志を継ぎたいという思いと、父の復讐を果たしたいという憎しみの、矛盾する二つの心に囚われるようになる。
そのため、世界を識る=世界を分解し分析するという論理から、万象黙示録という破滅を目指し、外道をひた走ることを選んだ。
しかしイザークが伝えきれなかった、最期の言葉の回答は、
世界を滅ぼすことではなく、世界を理解し許すことだと告げられ、彼女の論理は完全に破綻。
万象黙示録も頓挫し、世界との無理心中を図ったものの、最終的にはシンフォギア装者達によって阻止された。
今回召喚されたキャロルは、現世に生きた本人ではなく、
彼女によって焼却された、「想い出」が結晶化して意識化した存在である。
そのため、現世に生きたキャロルが失った、数百年分全ての記憶を有している。
キャロル本人の魂が、どのような顛末を辿ったのかは、未だ不明な点も多い。
【サーヴァントとしての願い】
今はまだ定まっていない
【基本戦術、方針、運用法】
本気を出すことが死に直結する、超短期決戦型サーヴァント。
一応魂喰いなどを駆使して、外部から魔力を得ることができれば、
その分だけ想い出の焼却量を減らすこともできるが、燃費が燃費なだけに相当な量が必要となってしまう。
このため序盤では防戦に徹し、宝具『忌城は黙示の闇に聳える(チフォージュ・シャトー)』の準備が整った瞬間に、一気に勝負を決するのが上策と言えよう。
アルカ・ノイズは神秘性に乏しいため、上級サーヴァントにはその分解能力を発揮できない可能性もあるが、
マスターを直接攻撃することにおいては、十分な戦力となり得る。
【マスター】
ツバサ@神無月の巫女(アニメ版)
【マスターとしての願い】
自分と大神ソウマにとって、最も幸福な未来を獲得する
【weapon】
嶽鑓御太刀神(タケノヤスクナズチ)
邪神・ヤマタノオロチの一部である、黒いボディを有した鋼の巨人。
背中には光の翼を背負っており、自在に空を飛ぶことが可能。
メイン武器は刀剣で、他にも両目からの光線や、胸からの熱線などの武器を保有する。
当然ながら本来は、聖杯戦争に持ち込めるような代物ではない。
しかし、一流の道具作成者であるキャロルの下、その力を擬似的に再現した機体が建造中である。
もちろんオロチの力は宿されていないため、本物に比べると、スペックはいくらか落ちる。
剣
両刃の刀剣。特筆すべき能力はないものと思われる
煙草
愛煙家であるらしく、日頃から煙草を持ち歩いている。
【能力・技能】
オロチの首
ヤマタノオロチの力を受けた、八人の眷属の一人。
ツバサはその筆頭たる一の首であり、目覚めた七人の中でも、最強クラスの実力を有している。
強い魔力による身体強化と、前述するオロチの分身を操ることが可能。
剣術
刀剣を操る戦闘技術。
【人物背景】
世界滅亡を目論む邪神・ヤマタノオロチに選ばれた、オロチ衆と呼ばれる軍団の一人。
一の首であるツバサの力は、他のメンバーの力を大きく凌駕しており、「世界を支配する器」であるとすらも評されている。
ただし当の本人は、世界を「地獄」と呼んで嫌悪しており、自ら支配しようとする気は全くない。
年齢と苗字は不明だが、飲酒(原作コミックにて嗜んでいる)や喫煙を行っていることから、成人している可能性はある。
余裕ぶった含みのある態度が特徴的だが、その内面には黒々とした欲望が渦巻いている。
自分の望むものを手に入れるためには、一切手段を選ばない。
実際には激情家としての側面も持ちあわせており、戦闘時には怒り狂う姿も見られる。
その正体は、主人公・来栖川姫子に想いを寄せる少年・大神ソウマの実の兄。
親から虐待を受けていたツバサは、ソウマを守るためにこれを殺害。自身は罪を一人で背負い、縁を切って姿を消した。
その後裏社会へ流れ着いてからは、地獄のような凄惨な日々を送っており、もはや弟の幸福のみが、彼の唯一の望みとなっていた。
しかし、共にオロチ衆に選ばれたはずのソウマは、姫子を守るためにオロチを裏切り、自らの敵となってしまう。
この残酷な運命を呪ったツバサは、もはやなりふり構うことをやめ、
無理やりオロチの力を目覚めさせてでも、彼を手に入れることを望むようになる。
しかしその心の根幹には、できることなら、幸せな人生を歩ませたかったという想いが、今でも残っているような節が見られる。
光を望む慈愛の心と、闇を望む心中願望――その矛盾する心の混沌が、ツバサという人間の有り様である。
今回は、ソウマとの再会を果たす前の時点から、聖杯戦争の舞台へと招かれている。
【方針】
まどろっこしいやり方は趣味ではない。宝具や嶽鑓御太刀神の準備中も、敵マスターを狩りに行く
投下は以上です
「神無月の巫女(アニメ版)よりマスターとしてツバサを、
「戦姫絶唱シンフォギアGX」よりキャスターとしてキャロル・マールス・ディーンハイムを書かせていただきました
新企画立ち上げ&候補作の投下お疲れ様です。
以前他企画に投下した候補作のリファインになりますが、私も投下させていただきます。
世界は『情報』で出来ている。
物質、力、物理法則―――
この世界のあらゆる事象は、数値パラメータと数式によって『情報』として記述することができる。
それはすなわち、この『物質世界』に存在する全ての要素が、全く同時に『情報』というもうひとつの実体を持っていることを意味する。
『情報』とは、コンピュータ端末のディスプレイに表示される文字列のような見せ掛けの存在ではない。
それは、森羅万象すべての『存在情報』のリンクによって構成された広大で煩雑な『情報の海』の内部に現実に存在している。
世界を形作っているのは『物質』と『情報』という二重構造。
二つの実体は常に互いに影響を及ぼしあい、あらゆる現象はその相互作用によって引き起こされる。
―――情報の変位は、現実世界を書き換える。
2180年代初頭、ハノーバーのフリードリヒ・ガウス記念研究所で初めて証明されたこの結論は『情報制御理論』と名付けられ、その後幾多の試行錯誤を経て、ひとつの成果を挙げることになる。
情報の書き換えを実現するほどの超高速演算能力を実現するために、脳内に生体コンピュータ『I-ブレイン』を与えられた者たち。
身体能力を加速し、重力を書き換え、分子運動を制御し―――思考によって物理法則を超越する、最強の戦闘兵器。
神秘に拠ってではなく、純然たる科学により超常を為す異端の申し子たち。
彼らは、魔法士と呼ばれた。
◇ ◇ ◇
『貴子の言う通りだと思う。だからオレ、強くなる』
雨に濡れて涙を流したあの日、誰より尊敬する彼女に強くなると誓ったことを覚えている。
『ありがとう。あなたがそう言ってくれることが、あたしの"誇り"だったわ……』
何もかもが間に合わず、彼女がただ腕の中で息絶えるのを見ることしかできなかったことを覚えている。
『杉村君がねっ……優しい人ですごく救われた―――っ』
流浪の果てにようやく見つけ出した想い人の言葉を覚えている。
これは過去。オレの記憶、過去の記憶。強くなると誓い、絶対に守ると誓い、しかしそれさえ叶わなかったオレの記憶の断片。
守りたいと思った人たちの体が目の前に横たわっている。慶時も、千草も、豊も、三村も。オレが大切に思っていた彼らは皆オレの腕をすり抜けていく。
飛び散った血と肉片が視界を赤に染める。
痛みに歯を食いしばり、堪えきれずに倒れ伏す。
声の限り叫んでも、奇跡は起きない。
神さまなんてどこにもいない。
そして。
『あたしも杉村君のことっ
―――好きだよおっ……』
目の前には、近づいてくる死の足音と、ぼやける空と。
泣き腫らした、彼女の笑顔。
正義に力はなく、誓いは意味を持たず、伸ばした手は何にも届かない。
そこで杉村弘樹の意識は終わっていた。
彼は最後まで、自分を呪った。
自分の無力さを、少年は呪った。
◇ ◇ ◇
―――騎士、黒沢祐一は……
これは過去。俺の記憶、彼女の記憶。忘れかけていた記憶の断片。
―――騎士、黒沢祐一は……世界で、一番きれいなもののために戦って……
舞い散る桜の下、彼女と二人で過ごした時間を覚えている。
それは誓い、騎士の誓い。世界がなくなっても、人が滅びても、それでも守らなければならないものがあると彼女は言った。
『あるか? そんなもの』
『……ない、かな?』
彼女の言葉は予想以上に気恥ずかしいもので、しかし不思議と心に残るものだった。
だから照れ隠しでそんなことを言ってしまったが、そのせいで彼女の顔は寂しげなものに変わってしまって。
『……いや』
だから。彼女を見つめる目を細め、その頬へと手を伸ばした。
頬を撫でる柔らかな風の感触も、木々の隙間から差し込む日の光も、全ては遠い過去のものだけれど。
『あるかもしれないな、そういうの』
それでも。
それでも確かに―――彼女は笑っていた。
◇ ◇ ◇
夕日が差し込む教室に、二つの影があった。
少年と、男だった。窓枠に手をかけ遠くを見ている学生服の少年と、壁にもたれかかり腕を組んでいる黒服の男。
少年はともかく男のほうは中学校の教室という場所に不釣合いであったが、既に放課後を迎え人の気配が無くなったこの教室で、それを指摘する者は誰もいなかった。
「えっと。その話は、本当なのか……?」
少年―――杉村弘樹は窓枠にかけていた手を離すと、未だ壁にもたれかかった姿勢のサーヴァント―――セイバーに問いかける。
問いを受け、セイバーはそこで初めて視線を杉村へと向け、静かに首肯した。
聖杯戦争。にわかには信じがたい話だ。しかし杉村は、そんな与太話にも近い言を否定しきれずにいた。
何故なら、つい先ほどまで当たり前のように過ごしていたこの日常は、「プログラム」によって破壊されていたはずなのだから。
そして杉村自身、桐山和雄と戦い、敗れ、誰より好きだった彼女を守りきれず死んでしまったことを覚えている。
死んだはずの人間が生きている。それが聖杯によるものだとすれば、話の筋は合う。
「それで、君は何を願う?」
目を伏せていた杉村に、セイバーがそう声をかけた。
願い。この戦争を勝ち抜き、聖杯に託す願いが何であるのか。
「君が"ここ"にいるということは、つまり君が何らかの願いを抱いたという証左だ。君がそのために戦うというなら、俺は最後まで共に戦おう。
しかし、少しでも迷いがあるというのなら。悪いことは言わない、君はマスターの座を降りるべきだ」
一見突き放したようなセイバーの言葉。しかしそれは冷徹さの現れではなく気遣いの類であることは杉村にも察することができた。
迷いを抱いたまま勝ち抜けるほど聖杯戦争は甘くない。道半ばで無残に殺されるくらいならば、最初から戦わないほうがいいとセイバーは言っているのだ。
「……オレは、みんなと一緒に過ごした時間を取り戻したい」
無意識にそんな言葉が溢れていた。
それを受けてセイバーは、そうか、と短く頷いた。セイバーは既に杉村からプログラムの説明を受けている。なのでおおよその見当はついていたのだろう。
「死者の復活……いや、察するに君の巻き込まれた殺し合い自体を無かったことにするのが君の願いか」
「ああ。生きていたいのはみんな同じなのに、それでも殺し合わせようなんてゲームを、オレは絶対に許さない。だから」
そこで少年は息を継ぎ、そして言った。
強く、強く、自分の心に刻み付けるように。
「オレはプログラムと同じように、この聖杯戦争だって認めない。たった一つの希望をチラつかせて殺し合わせるようなものに、正義なんてあるはずないんだっ!」
そこに正義はあるのか。杉村はずっとそれを考えていた。
聖杯戦争、万能の願望器。ああ確かに、杉村には叶えたい切実な願いが存在する。
けれど、本当にそれでいいのか? 願いを叶えるために他者を殺してまわるのは、自分の命を守るためにプログラムに乗って殺人者になることと何の違いがあるのだ?
そんなことで平和を取り戻して、オレは本当に、琴弾や貴子や、七原に顔向けできるのか?
否、否だ。そこに正義なんてあるはずがない。
オレが憧れた正義は、強さは、そんなものであっていいはずがない。
だからこそ―――
「オレは聖杯戦争を破壊する。聖杯なんてものはぶっ壊して、裏に誰かが関わっているというならダンクシュートを決めてやる」
「……ならば、君は死ぬことになるぞ。負けると言っているのではない、聖杯の恩寵を拒むならば、既に死したはずの君が帰るべき場所はない」
「それだって折込済みさ。でも、これだけは譲れないんだ」
そりゃ杉村だって、死ぬのは嫌だし途轍もなく怖い。願いだって叶えたいし、みんなに会いたいという気持ちは胸を引き裂かんばかりに膨れ上がっている。
だが、それでも。
それでも、この想いだけは譲れないのだ。
「だから頼む、セイバー。オレに力を貸してくれ」
沈黙。杉村の言葉を受け、セイバーは黙したまま動かない。
やはり断られるか。そう思いかけて心細くなりそうになる気持ちを、しかしそれでも奮い立てる。
自分で決めた道は決して曲げはしない。それが例え自分のサーヴァントに反旗を翻されたとしても。
そんな風に一人で悲壮な覚悟すら決めようとしていた杉村に、幾ばくかの無言の後にセイバーが声を発した。
「……いいだろう、マスター。俺は君の考えに従おう」
「! いいのか、セイバー!」
泣きそうにも見えた杉村の顔が、一気に満面の笑みへと変わる。
あまりにも素直に喜びの感情を見せる杉村に、セイバーは少々頬を緩めながら答えた。
「とはいえ、厳しい戦いになるぞマスター。聖杯を破壊するということは、すなわち全てのマスターとサーヴァントを敵に回すということだ。
聖杯戦争とは元よりそうではあるが、しかし同盟や停戦さえ望めんだろう。それは分かっているな?」
「ああ、分かっているさ。ありがとう、セイバー……あ、だけどそれだとセイバーの願いは……」
心の底から嬉しそうにセイバーの手を握り感謝する杉村は、しかし一転してあたふたと申し訳なさそうにセイバーを伺っている。
そんな杉村の様子に苦笑しながら、セイバーは答えた。
「それは気にしなくていい。俺も聖杯にかける願いを持ち合わせてはいるが、何より優先すべきとまでは思っていない」
「……そうか。何から何まで本当にありがとう、セイバー」
―――つくづくオレは縁に恵まれているな。
この頼りがいのあるサーヴァントを前に、杉村はそう述懐する。
思えば自分の周りには何にも代えがたい凄い人達がたくさんいた。それは友人だったり、師であったり、想いを寄せる人であったりと様々だが、共通するのは杉村をして尊敬できる者ばかりだということだ。
そして今、また一人信頼できる凄い仲間を手に入れることができた。
「……そういえば、まだ真名で名乗っていなかったな」
ふと、セイバーがそんなことを言って。確かに言われてみればこの黒衣の騎士の名前を、自分はずっとセイバーとだけ呼んでいたことを思い出した。
「元シティ神戸自治軍『天樹機関』少佐、黒沢祐一だ。よろしく頼む、マスター」
「ああ。こちらこそよろしくな、祐一さん」
そうして彼らは一歩、足を踏み出した。
願いの矛盾に目を逸らさず、己の弱さに目を背けず。
この世に死があることを知り、悲しみがあることを知り、絶望があることを知り。
それでも、明日を夢見ることを諦めずに歩き続けるという、果てしない戦いへと向けて
【クラス】
セイバー
【真名】
黒沢祐一@ウィザーズ・ブレイン
【ステータス】
筋力A 耐久A 敏捷C 魔力C 幸運B 宝具D
【属性】
中立・中庸
【クラススキル】
対魔力:E
無効化は出来ない。ダメージ数値を多少削減する。
セイバーにあるまじき低さであるが、未来の英霊故の神秘性の薄さからこのランクとなっている。
騎乗:C
乗り物を乗りこなす能力。大抵の乗り物は乗りこなせる。
【保有スキル】
I-ブレイン:A
脳に埋め込まれた生体量子コンピュータ。演算により物理法則をも捻じ曲げる力を持つ。
セイバーのそれは自身の肉体の制御に特化しており、身体能力制御・情報解体の2つのスキルを使用可能。
また、I-ブレイン自体が100万ピット量子CPUの数千倍〜数万倍近い演算速度を持ちナノ単位での思考が可能。
極めて高ランクの高速思考・分割思考・直感に相当する。
(身体能力制御):A
自身の肉体に限定した物理法則の改竄。身体能力及び知覚速度を大幅に上昇させる。騎士剣・紅蓮、もしくは森羅が手元にない状況では性能が著しく低下する。
強化されるのはあくまで速度のみであり、筋力といった他のパロメータに一切変動はない。
(情報解体):B
自身と接触した物体の存在情報へとハッキングし存在情報を消去することで物理的には分子・原子単位まで分解する。単純に物質を破壊するだけではなく、空気を解体して真空の盾を作る・歪んだ空間を解体して元に戻すといった応用が効く。
ただし情報面における強度の高い物体(つまり思考速度の速い物体)である生物やサーヴァント、高度AIの類は解体不可能。
同ランク以下の宝具であるならば解体可能。
黒衣の騎士:A
三度目の世界大戦において最強騎士『紅蓮の魔女』に並び立ち戦場を席巻した畏怖と憧憬の代名詞。セイバーの在り方そのもの。かつて紅蓮の魔女と交わした騎士の誓い。
セイバーは紅蓮の魔女が没した後は名実共に世界最強の騎士として君臨し、その戦闘力は他の追随を許さなかった。
同ランクの心眼(真)・戦闘続行・勇猛・無窮の武練を内包する。
単独行動:B
マスター不在でも行動できるスキル。
Bランクであるならばマスター不在でも二日程度なら現界可能。
【宝具】
『自己領域(パーフェクト・ワールド)』
ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:2
光速度・万有引力定数・プランク定数を改変し、自身の周囲1mほどの空間を「自分にとって都合のいい時間や重力が支配する空間」に書き換える。
重力操作による飛行、及びこの領域と一緒に移動することで亜光速による移動が可能。使い方によっては擬似的な空間転移すらできる。
欠点としては、騎士剣・紅蓮が失われたら発動できないこと、自己領域展開中は身体能力制御及び情報解体が使用できないこと、領域内に他者が侵入した場合はその人物も同一条件下で動けること、壁などといった膨大な体積を持つ物体と接触した場合は領域面に矛盾が生じ自動的に解除されてしまうことが挙げられる。
『狂神二式改・森羅(万象之剣)』
ランク:D 種別:対軍宝具 レンジ:1 最大捕捉:1000
かつてセイバーが握るはずだった騎士剣。透き通った緑色の大剣であり、その中枢に搭載された機能こそがこの宝具である。なんらかの形で騎士剣・紅蓮が失われた状態でのみ発動可能。
敵の数や動き、周囲の地形などの要素から最適運動曲線、つまり「最も効率良く殲滅を行うことが出来る仮想上の曲線」を導き出し、それを現実に当てはめての戦闘を可能とする。相手の物理的な弱点箇所を看破し攻撃するためクリティカル補正が付属する。
発動中はI-ブレインにより肉体が完全に支配され自動的に戦闘行動を行う。眼前の敵を殲滅するまで自分の意志で止めることは不可能。また、発動中はI-ブレインにより仮想骨格を形成され、I-ブレインの存在する脳髄を除くあらゆる欠損を仮想的に補うことが可能。
ただしこの宝具の使用中は加速度的にマスターの魔力を消費し、セイバーのI-ブレインひいては霊核そのものに多大な負荷をかけ続けるので長期の戦闘に陥った場合は自滅の恐れがある。
また、この宝具はあくまで殲滅のための機能であるため防御・回避は一切考慮されず、無防備なまま相手の攻撃を受けることとなる。宝具発動中は仮想骨格により半不死となるも、致命傷を負った状態で宝具を解除すれば待つのは死のみである。
敵か己を殺すまで決して止まることができない狂した神の剣。
【weapon】
騎士剣・紅蓮
セイバーが持つ真紅の大剣。I-ブレインの演算処理を補助する外部デバイスだが、騎士の本領である近接戦闘を想定し剣の形を取っている。
銀の不安定同素体であるミスリルで構成されており非常に頑強。セイバーのスキルである身体能力制御及び情報解体の性能を大幅に底上げする効果を持つ。
【人物背景】
かつてシティ神戸に所属していた軍人であり、22世紀末の世界大戦で活躍した英雄。「騎士」のカテゴリに属する魔法士であり、紅蓮の魔女と謳われた七瀬雪を除けば世界最強の騎士と名高い。
恋人であり戦友でもあった七瀬雪がマザーコアとなってシティ神戸を生き永らえさせてからは世界を転々としていたが、雪の次代を担うはずのマザーコア(ヒロイン)が主人公に奪取された現場に居合わせたことをきっかけに10年ぶりに神戸へと帰還し主人公と敵対する。
一人の犠牲の上に1000万の人々を支えるマザーシステムを根底では間違っていると思いながらも、雪が死んだことの意味を失くさないためにシティを守っていた。神戸の事件が終結した後に主人公と和解し、その後は再び世界を放浪することになる。
【サーヴァントとしての願い】
大気制御衛星の暴走事故そのものを無かったことにするのではなく、灰色の雲の下に生きる人と魔法士が足掻いた結果として『青空』を取り戻す。
ただし聖杯に固執するほど強く願っているわけではないため、今はマスターの意志を最優先。
【マスター】
杉村弘樹@バトル・ロワイアル(漫画)
【マスターとしての願い】
プログラムを無かったことにして皆のいる日常を取り戻す。
しかし、己の中にある正義に背くことはできない。
【weapon】
なし
【能力・技能】
拳法を習っており、神童と呼ばれるほどの腕を持つ。漫画の終盤では世界との合一化まで果たした。
【人物背景】
かつてプログラム(クラスメイト同士の殺し合い)に巻き込まれ、そこで死亡した中学生。長身・強面・無愛想の三拍子が揃っているため怖く見られがちだが実際は心優しくシャイな好青年。
元々は気弱な性格故にいじめに遭っていたが、幼馴染の千草の叱咤を受けて強くなると決意し拳法を習い始めた。
プログラムにおいては幼馴染である千草貴子と片思いの相手だった琴弾加代子の捜索を最優先に動いており、千草との別れ・親友である七原との遭遇を経てついに琴弾を発見・保護することに成功する。
しかし直後に桐山の襲撃を受け、善戦するも一歩及ばず敗北、琴弾と共に死亡する。
【方針】
セイバーの言う通り、願いを未だ捨てきれないのも事実であるが、最終的に聖杯を破壊することは確定事項。
少なくとも危険人物に容赦はしないし、いざとなれば命を奪う覚悟もできている。
投下を終了します
お二方、投下ありがとうございました。
>ツバサ&キャスター
キャロルちゃんほんとすき。
錬金術も科学の一端という理由付けにはなるほどと唸らされました。
しかし、ロボット兵器の模倣とはなかなか強力な戦力になるでしょうね……
>杉村弘樹&セイバー
真っ直ぐな杉村がとてもまぶしい。
プログラムで文字通り人生を狂わされた彼だからこそ、聖杯戦争に対する否定は重みがありますね。
セイバーとの関係も良好ですし、有力な対聖杯主従になる気がします。
自分も投下します。
彼は世界をより良き方へ導こうとしていた。
そのやり方が世間にどう認識されようが構わない、そういう強い意志を原動力として行動していた。
彼は天才とは程遠い凡人だったが、それでも生来資質はあったのだろう。
迷いながら、時には呵責に揺らされながら、しかし彼は止むことなく鉈を振るった。
法では裁き切れない犯罪者を殺すことで社会の犯罪意識を抑圧し、邪魔立てするならば誰であろうと殺した。
彼の周囲はただの一度としてそれを評価しなかったが、彼の存在と辣腕が世界の理不尽を削り取っていたのは確かだ。
どんな政治家が演説をしても変えることの出来なかった人類の悪性を、彼は間違いなく変えてみせたのだ。
それは恐怖による犯罪意識の弾圧ではあった。だが、彼以外の誰かにここまでは決して出来なかったろう。
人間としての倫理を捨て去り、自分が世界の裁定者となることで社会を変えた――その功績はまさしく、人類史に語り継がれるべきものに違いない。
されど、彼はどこまでも人だった。『新世界の神』は、所詮一つの幻想のカタチに過ぎなかったのだ。
「……俺は、生き返ったのか」
時刻は夜の十時を回った頃。
高層建築物の屋上に佇んで、自分の掌を見下ろしそんなことを呟く青年は、かつて神と盲信された男である。
犯罪者にとっての死神。腐敗した現代社会の救世主――通称『キラ』。人としての名前を、夜神月。
人類数千年の歴史は長かれど一人の人間が犯した殺人の数であれば、まず月に敵う者はいないだろう。
彼が死神の道具を使って犯し……もとい『裁いて』きた罪人の数は、非現実的な領域にさえ到達していたはずだ。
正真正銘の新たなる世界、犯罪者の存在による理不尽を誰もが味わうことなく生きられる世界を作るのに十分な数を彼は殺してきた。しかし悲しきかな。夜神月青年の奮闘は、世界を作り変えるその手前で無碍に断たれてしまった。
「信じられないな――火傷の痕も撃たれた傷も綺麗さっぱりなくなってる。本当に魔法みたいだ」
結論から言えば、夜神月は負けた。
人間の知恵と父親の強さを前に、完全な敗北を喫した。
そして最期には、自分を救済者へ仕立て上げた死神にさえ見捨てられ、呆気なく炎にまかれて焼け死んだ。
悪夢の殺人兵器とも、世界を導く希望とも称された死神のノートも失われた。
これを敗北と言わずして何とする。負け惜しみを考え出すにも苦労する、文字通りの完全敗北。
しかし、ここに一つの奇跡が起きた。
炎にまかれて消えたはずの『神』は今、確かにこうして再臨を果たしている。
名前を知るだけで殺す力は失われ、ただの人間と成り果てたが……彼という人間と、その記憶だけは残っている。
月はネオンの明かりが喧しく照らし立てる夜の繁華街を見下ろして、今置かれている状況を整理する。
――夜神月が、『キラ』を思い出したのはつい数時間前のことだった。
市内に存在する大学院へ通うなんてことのないいち学生として、彼は講義を受け、帰途に着いていた。
別に寄り道をする気分でもなかったし、今日はさっさと家に帰ってゆっくりしようと思っていた。
部屋でポテトチップスでも食べながらのんびり時間を使う。
あまり褒められた時間の使い方とは言えないが、たまにはこんな日があったっていい。
そんななんてことのない一日の終わりだった。あまりに平凡で変哲もなく、覚醒のきっかけなどどこにもない。
夜神月という青年はきっと、何も思い出せずに偽りの街のピースとなるはずだったのだろうと思う。
この日常が作られたものであることも知らずに暢気な顔をして、自分が何者かさえ思い出すことなく惰性に溶けていく。
彼がどう思うかはさておいて、きっとそれは、月にとっては最も幸せな顛末だったに違いない。
死神によって人生を狂わされ破滅した哀れな青年にとっては、あまりに幸福な後日談だ。
普段通りの帰り道を歩く。
その時、道の端である光景を見た。
繁華街ではありふれた光景。いかにもひ弱そうな高校生が、ガラの悪い大人数名に囲まれて縮み上がっている。
カツアゲだ。そう呼んでしまえば可愛く聞こえるが、立派な恐喝罪にあたる。
それを見て、月は溜息を吐き出した。
誰も彼もが見てみぬふりだ。加害者の連中は、自分の行為が犯罪だという自覚さえロクに持ってはいまい。
力と数をひけらかし我が物顔で弱者から搾取する――なんて理不尽だろうと思った。
ただ、それは何も今に始まったことではない。
父親が警察関係者である都合、嫌でも耳に入る凶悪事件の話。
ニュース番組はやれどこの誰が誰に殺された、あの事件の犯人は懲役何年の刑に処されたと毎日のように騒いでいる。
何も変わらない。今までも、これからも、きっと、永遠に変わることはない。
それこそ人間が存在し続ける限り、この理不尽な社会が揺るぐことはないのだ。
誰かが行動しない限りは。それも、個人レベルの些細な反抗や申し立てでは役者が足りない。
力が必要だ。権力でも武力でもなく、もっと確実に世界を変えるための力が必要だ。
例えば、そう。
神のように――自分の手を汚さず、些細な情報だけで相手を殺す手段、とか。
月は踵を返した。
足取りは早まっていた。
更に言えば、息だって荒くなっていた。
数分前まで平凡な帰り道を謳歌していた夜神月青年は、もうどこにもいない。そう、どこにも。
頭の中に広がっていたのは――炎に包まれて手を伸ばす自分を、ひとりの死神が嘲笑っている記憶。
そうして今に至る。
ほんの小さな社会の理不尽は、偽物の社会に閉ざされていた『神』を目覚めさせた。
夜神月ではなく、キラという一個の概念を。
人間の奮闘によって消し去られ、倉庫とともに燃え尽きた時代の救世主を、夜神月という青年の人生を犠牲に甦らせた。
「死神の次は聖杯……いよいよ漫画の世界らしくなってきたな」
「然り。世には数多の物語がありますが、この現実に優る享楽的な台本は二つとありますまい。
The play's the thing
まさしく、この旅こそうってつけだ――というわけですな」
聖杯戦争。
それは英霊の座なる場所から英雄を召喚して潰し合わせ、『万能の願望器』をめぐって殺しあう小さな戦争。
まるで慣れ親しんだ常識のように記憶野へ貯蔵されていたその情報を引き出して反芻し溢した言葉に、応える声がある。
日本人離れした顔立ちとどこか独特の雰囲気を醸し出した彼は、世辞にも英雄らしい姿形はしていなかった。
そして事実、彼は英雄ではない。英雄ではないが、世界に名を残した英霊であることは確かだった。
ある意味でそれは、夜神月という人間に相応しい選抜であったといえるだろう。
「俺達の戦力じゃ三騎士はおろか、他の英霊を倒すことだって難しい。
エンチャントだったか。それを使っても、俺が戦線に出るには足りないのは明らかだ。だからまず、他のマスターに取り入ろうと思う。そしてそいつの影に隠れ、聖杯戦争を進めていく」
淡々と月は、これから始まる聖杯戦争における指針を話し始めた。
彼の呼んだ劇作家の英霊、ウィリアム・シェイクスピアのクラスはキャスターである。
定例に漏れず戦闘向きのステータスはしておらず、キャスター同士の比べ合いでも優れるかどうかは怪しい。
しかしシェイクスピアはエンチャントというスキルを持つ。その名の通り効力は他者の強化――これを欲しがる輩は多かれ少なかれ必ず存在すると月は踏んだ。少なくとも、取り入るまでは難しくないはず。
「もちろんただ依存するわけじゃない。どれだけ同盟として友好を深めようが、最終的には殺し合うんだ。
……だから当然、手を打っておく必要がある。上手く協力者を脱落させて自由に動ける状況を作り出しつつ、それでいて敵にも考えられる最大限のダメージを負わせられる作戦を。
まだ具体案は上がっちゃいないが……やれる――と思う。いや、やってみせる」
「ハハハハ! 良い軍略、そして覚悟だ!
その通り、吾輩は死なないのではなく死ねず、同時に戦えない! 働きますが戦わない!」
呵々大笑してとんでもないことを言ってのける劇作家は、しかし内心、此度の主へ強く期待していた。
キャスターは平凡な人物を忌む。何故ならつまらない。すぐに操作される登場人物など、面白味の欠片もない。
だが夜神月――この青年はそうではない。彼は力に溺れるのではなく、その力を呑み込むほどの資質を持っている。
さぞかし彼が聖杯を手に入れたなら、面白い物語を繰り広げてくれるのだろう。
無論、勝ち取るまでの過程でも然りだ。劇作家としてその道を見届けられることを、心より嬉しく思う。
「俺は聖杯を手に入れる。そして――今度こそ、新世界の神となる。それはきっと、俺にしか出来ない」
月は爛々と輝いていた。
それに照らされる青年の姿はどこか超然とすらしており、そこに日常の似合う夜神月の面影はない。
キャスターはこの状況を歓迎し、しかし同時に惜しく思った。
彼ほどの男が生命を賭して挑んだ命題――その生命が尽きるまでの物語。
それに携わることができていたなら、一体どれほど素晴らしいものが書けたろうと、そう思うのだ。
【クラス】
キャスター
【真名】
ウィリアム・シェイクスピア@Fate/Apocrypha
【パラメーター】
筋力E 耐久E 敏捷D 魔力C++ 幸運B 宝具C+
【属性】
中立・中庸
【クラススキル】
陣地作成:C
魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。
小規模な”工房”の形成が可能。
【保有スキル】
エンチャント:A
任意の対象を強化することが可能。
自己保存:B
自身はまるで戦闘力がない代わりに、マスターが無事な限りは殆どの危機から逃れることができる。
つまり、本人は全然戦わない。
【宝具】
『開演の刻は来たれり、此処に万雷の喝采を(ファースト・フォリオ)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1〜30 最大捕捉:1人
世界改変型宝具。世界を閉塞させ、脚本を産み出し、物語を強制させる。
対象者の精神に働きかけ、シェイクスピアが書いた物語を幻覚のように体験させることができる。その強制力は固有結界にも匹敵し、あらゆる攻撃を無効化する抵抗力を持つルーラーですら逃れることはできない。ただし肉体的なダメージや苦痛まで与えることはできないため、戦闘に用いるとすればショッキングな光景を見せて「心を折る」ことに使う程度である。成功すれば、対象を完全無防備な状態にするバッドステータス「放心」が付与される。
本来なら相手の真名を把握していない限り、有効活用することのできない宝具だが、逆に真名を看破している場合は相手の親しい人や因縁のある人物、トラウマの元となった者を呼び出し、ピンポイントで心の隙を突く悪辣な精神攻撃宝具と化す。
【weapon】
なし
【人物背景】
歴史上においても高名な劇作家。
卓越した人間観察眼からなる内面の心理描写により、「ハムレット」、「マクベス」、「オセロ」、「リア王」の四大悲劇をはじめ、「ロミオとジュリエット」、「ヴェニスの商人」、「夏の夜の夢」、「ジュリアス・シーザー」、「お気に召すまま」など数多くの傑作を執筆し、英文学史上において名声と知名度を欲しいままにした。
聖杯大戦において赤のサーヴァントとして召喚される。
本来の召喚者であるマスターではなくシロウ達に与し、彼らの野望を知りながら協力しているが、自らの「物語」への欲からバーサーカーにミレニア城塞の在り処を教え、暴走させるトラブルメーカーでもある。
【マスター】
夜神月@デスノート(ドラマ版)
【マスターとしての願い】
聖杯を使い、新世界の神として再臨する
【weapon】
なし
【能力・技能】
特殊能力はなし。ノートも持っていない。
『キラ』として暗躍し、警察の捜査や天才探偵を欺き続けた経験則が特筆すべき技能か。
【人物背景】
対象の名前を書くだけで殺害を行える『デスノート』を用い、犯罪者の粛清による社会の新生を志した青年。
最期は敗北して無残に死亡するが、死神と出会いさえしなければ平凡な一人の大学生であった。
【方針】
正面からの殴り合いは徹底して避けつつ、他の陣営を利用して立ち回る
投下終了です。地味にシェイクスピアはうちのカルデアの主力です
これより投下します。
1942年。
春も過ぎ去りつつある中、東部戦線において任に当たっていたルドル・フォン・シュトロハイム大佐は突如として本国に呼び戻された。
あまりにも不可解な帰還であった。
シュトロハイムの身体はドイツ科学の粋を集めて機械化されている。戦力としては同じドイツ科学の粋を集めた戦車達に勝るとも劣らない。
戦況はまだソ連の反攻を凌いだばかり、今後も彼が必要とされるのは明白だ。
だが、シュトロハイム自身は薄々勘付いてもいた。
「シュトロハイム大佐、聖杯というものを知っているかね?」
「……知識としては」
将軍に返した言葉は濁っている。
彼らしくない声色は、如実に彼の心情を現しているかのようだ。
聖杯。
古から伝わる、イエス・キリストの伝説。
不老不死を齎すともされる、奇跡の杯。
思わずシュトロハイムは、部屋を――不敬にならない範囲でだが――見渡していた。
お伽話にしか聞こえない内容だが、締め切った執務室でわざわざお伽話を話すこともあるまい。
「何者かが聖杯を探索しているという噂も、耳にしたことがあります。
どこから流されているのかは存じておりませんが」
シュトロハイムは明言を避けた。総統が追い求めているということも言わなかった。
この手の情報は嫌でも彼の耳に入ってくるものだし、扱いについても心得ている。
かつての彼もまた、そういった「お伽話」を研究していたのだから。
「では、本日よりその噂を真実と認めたまえ。
君にはアーネンエルベにて、聖杯探索の任が与えられることになった。
かつて『石仮面』と『柱の男』を担当した経験を見込んでのことだ」
――こうなったか。
口からため息を零さないために、シュトロハイムは少しばかりの労力を必要とした。
お伽話に付き合わされることを不満に思っているのではない。
むしろ、彼自身は聖杯があってもおかしくはあるまいとすら考えている。
あの究極生命体(アルティミット・シイング)の存在を見た今、常識外の存在を否定するなど出来はしない。
落胆はただ一つ、東部戦線を見捨てる形になったことだ。
昨年のバルバロッサ作戦の失敗において、シュトロハイムは致命的なダメージを受けていた。
彼自身の身体ではない。物資と技術者達の損耗である。
単体で戦車に勝るとも劣らぬ戦力を有する身体は、一方で維持にもまた相応の技術と物資を有する「金食い虫」だ。
冬将軍が陣取る東部戦線ともなれば、メンテナンスの負担は更に大きい。
今までのような力を発揮できない可能性はシュトロハイム自身が予想していたし、軍上層部にも届いていただろう。
ならばどうなるか。
可能性としてはそのまま東部戦線で戦い続け、身体の限界と共に名誉の戦死を遂げるか。
或いは、後方に回されるか。
シュトロハイムは誇り高きドイツ軍人として前者であってほしいと願っていたが……現実は、世知辛いものだ。
そのような内心を表に出すことなく、シュトロハイムは二言三言交わしたのち敬礼と共に退出した。
生身の人間では有り得ない、機械の足音を残して。
※ ※ ※
その後のルドル・フォン・シュトロハイムについては記録に残っていない。
とある不動産王はアーサー王伝説さながらの聖杯探求に巻き込まれたというが、ナチスから見て敵国の人間であることや本人の性分などから信憑性は薄いとされている。
ともあれ確実に言えることは、シュトロハイムはスターリングラードの激戦を見ることもなくいなくなったというだけだ。
彼の行方を知るものがあるとすれば、それこそ聖杯のみであろう。
――そう。
聖杯のみが、彼の行く末を知る。
※ ※ ※
「我がナチスの科学力はァァァァァァァアアア!
世界一ィィィイイイイ!」
「ガ…………!」
街中にシュトロハイムの叫び声が響き渡る。
同時に、青く輝く光の線が対峙していた男の身体を貫通した。
もし見ている者がいれば、奇っ怪な光景だと思うに違いない。
機械化された怪人が奇妙な叫び声を上げつつ、眼帯のようなパーツから光線を放つのだから。
だが、対峙していた男も尋常ではなかった。
穴を穿たれた身体をものとせず、追撃として放たれた銃弾の雨を容易く回避しシュトロハイムに迫る。
空中で建築物を蹴り迫る男の姿に、しかしシュトロハイムは不敵に笑った。
同時にその機械化された腕から青色の刃が現れる!
「ブァカ者がァアアアア!
ナチスの科学は……世界一イイイイ!!」
かつてのカーズの輝彩滑刀のごとく展開されたパーツは、その性能もまた光の流法と共通する高周波振動ブレードである!
その切れ味は男が振りかざした剣は愚か、男自身すら両断した!
「俺の身体は我がゲルマン民族の最高知能の結晶であり誇り!!
英霊に劣るものではないわァ!」
「……少なくとも、その武器は私の宝具によるものだが」
「むッ、キャスター!」
男の――敵サーヴァントの消滅を確認し、高らかに吠えるシュトロハイムの背後で老年の男が肩を竦めた。
サーヴァント・キャスター。
ルドル・フォン・シュトロハイムに従う英霊である。
だが、先の戦いで彼が戦った様子はない――
即ちキャスターはマスターに戦わせ、そしてマスターであるシュトロハイムが敵サーヴァントを真っ向から打ち破ったのだ。
明らかに、聖杯戦争としてあってはならない結果である。
「武装の調子はどうだ、マスター。
私の宝具は奇妙な武装を提案することがあってな」
「フフフ、全く問題ない。
この身体で戦車と戦ってきた俺の戦闘データは既に万全よ。
しかし惜しいなァ、この宝具があればあの究極生命体とも戦えたかもしれん」
不敵な笑みを浮かべながら、シュトロハイムは武装の一部を展開した。
それらはかつての彼には存在しなかったパーツだ。
既に紫外線照射装置は超小型のビーム砲に換装され、新装備として腕には高周波振動ブレードがされている。
腰部の機関砲も外見こそ変わらないが、弾丸はかつてのそれとは違う特殊弾を装填済みだ。
明らかなバージョン・アップ。彼が受けたのは単純な改造ではない。
見るものが見ればその異常さに気づいたであろう。
それらが全て、宝具であるという事態に。
「恐らく腕の刃はシグルブレイドを元にしたものだろう。
あれはガンダムに使っていた頃から耐久性に難があった、多様は控えてもらいたい」
「ならば、貴様の宝具とやらで新装備を用意することだ。
サーヴァントが先ほどの雑魚のような者ばかりではないのだろう!」
キャスターの宝具――『進化するガンダム』。
それは零から新たなる宝具を生み出す、規格外の宝具である。
事前に元となる武器を用意する必要もなければ、使用に習熟を必要とすることもない。
何より、機械化されていたシュトロハイムの身体に新装備を換装することはキャスターにとっては容易であった。
今のシュトロハイムは宝具人間と化しており、サーヴァントとの真っ向勝負すらも可能とする。
「随分と急くのだな」
「当然よ。聖杯探求が俺の任務……一刻も早く聖杯を持ち帰らればならんッ!
同胞が生身の肉体をすり減らしてきたというのに、俺一人が安穏としてはおれんわ!」
シュトロハイムは聖杯戦争に参加していながらも、見ているのは聖杯ではない。
彼が見ているのは東部戦線だ。彼が参加しているのは第二次世界大戦だ。
名誉の戦死の機会を奪われた男は、聖杯探求に意義を見い出すことができずにいた。
「一つ聞いておこう、マスター」
故に、キャスターは問いを投げかける。
「仮に聖杯の力で、過去をよりよく変えられるとしたら……どう考える」
「知らん。
俺の受けた命令は総統閣下の元へ聖杯を持ち帰ること、使うことに興味はない」
「………………」
キャスターは口を閉ざした。
結果的に、この問いは彼が抱く僅かな悔いに自ら触れる形になったからだ。
そしてシュトロハイムは会話は終わりだとばかりに陣地へと戻っていく。
結局、キャスターも従わざるを得なくなる。
(聖杯の力でより多くの人を救いたい――
ここまで来れば単なる我欲でしかないと、分かってはいるのだ)
キャスター……フリット・アスノの経歴はまさに英雄と呼ぶに足る。救世主と呼んでもいい。
地球の人々を守り、ヴェイガンの民を救った。
戦争を終わらせ、死病を癒やした。
だがそれでも――辿った道のりの全てが正しいとは決して言い切れず、紆余曲折の中で多数の人々を失ってきたことを他ならぬフリット自身が自覚していた。
(私は全力を尽くした。自分にできる限りでよい世界を作り上げた。
しかし、それでも……
聖杯の力で過去を変え、もっと早く正しき道に戻れるのであればと。
より多くの人々を救えるのであればという思いが僅かにある)
長らくフリットは憎悪に囚われ、道を誤った。
確かに戦争の長期化はフェザール・イゼルカントの狂気によるものだろう。
だがフリットは個人に責任を押し付けて満足できるような人間ではなかったし、そんなことを言える立場でもなかったのだ。
(歴史を変えるということを、マスターはどう思うのだろうな)
周りを見渡せば、和やかな時代の風景が目に入ってくる。
用意された舞台は20世紀から21世紀のもの。フリットからすれば遠い過去の時代だ。
聖杯はモチーフとなる時代の知識を与えてはいるが、結果として彼は己がマスターが参加していた大戦の結果も知ることになった。
(ナチス・ドイツは滅ぶ。
それこそ聖杯の力を使わない限りは……)
先の問いかけで口を閉ざしたもう一つの理由がそれだ。
フリットはシュトロハイムが信奉する国の末路を知ってしまった。
この場で使うにせよ持ち帰るにせよ、聖杯を得なければ未来はあるまい。
だが、それを告げていいのか。
シュトロハイムは明らかに残してきた者達に縛られている。
最悪、ヴェイガンを殲滅するなどと息巻いていた頃の自分を生み出すような事にならないか――
それがフリットを悩ませていた。
自らの従僕の考えを知らず、シュトロハイムはただ前進する。
故国の未来さえも、知らずに。
【クラス】キャスター
【真名】フリット・アスノ
【出典】機動戦士ガンダムAGE
【性別】男性
【属性】秩序・善
【パラメーター】
筋力:E 耐久:E 敏捷:D 魔力:C 幸運:E 宝具:EX
【クラススキル】
陣地作成:B
魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。
"工房"を形成することが可能。
道具作成:EX
魔力を帯びた器具を作成できる。
自らの宝具を活用することにより、新たな「宝具」を零から創造することさえ可能とする。
【保有スキル】
騎乗:C
騎乗の才能。
キャスターとして現界したことで本来より劣化している。
Xラウンダー:A
未知の領域「X領域」を扱う人間の総称。
直感スキルと同じ効果を発揮し、更に騎乗スキルの発動時に補正を加える。
星の開拓者:EX
人類史のターニングポイントになった英雄に与えられる特殊スキル。
あらゆる難航・難行が、「不可能なまま」「実現可能な出来事」になる。
【宝具】
『進化するガンダム』
ランク:EX 種別:対機宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
アスノ家に伝わるメモリーユニット『AGEデバイス』が中心となる『AGEシステム』及び『AGEビルダー』の総称。
生物の進化と自己成長を設計の基本とし、様々なガンダムを生み出してきた。
ただし戦艦の改造や磁気嵐の撤去装置の作成からわかるように、ガンダム以外にその機能を使うことも可能。
フリットの存在が救世主として英霊に昇華された事で、その象徴たるAGEシステムは一定のデータを取得することで新たな宝具を創造する規格外の宝具と化した。
設計・製作は極めて早く、戦闘中に武装を更新することすら可能。
反面、どのような武装が作られるかキャスターですら予測できない。
更に戦闘データに合わせて作成した結果、その局面にしか対応できないような極端な武装が作られる恐れがある。
またAGEビルダーのサイズの関係から事前に設置するための場所を確保しなくてはならない上、
キャスターとして召喚されたためガンダムそのものは持ってくることができず、本来ならガンダムに搭載されるAGEシステムのコアユニットが無防備な状態になってしまっている。
一応、相応の量の材料もしくは魔力があれば新たなるガンダムを製造することは可能である。
【weapon】
なし。
ガンダムが無い状態では戦闘能力を持たない。
【人物背景】
信じていた正義に囚われ、殲滅主義者と化した老人。
それでも背負う運命が過去の記憶を目覚めさせ、ようやく救世主として立ち戻った。
なお、このサーヴァントはキャスター以外にライダーとセイヴァーの適性を持つ。
ライダーとしての全盛期は中年時、セイヴァーとしての全盛期は少年時である。
【サーヴァントとしての願い】
地球もヴェイガンも救ったことそのものに悔いはない。
ないが、もっと人々を救うこともできるのではないかと、ほんの僅かな悔いを残す。
【マスター】
ルドル・フォン・シュトロハイム@ジョジョの奇妙な冒険
【マスターとしての願い】
聖杯の確保
【weapon】
機械化された身体。
各種武装や装甲はキャスターによって作られた宝具と交換され始めており、その性能はサーヴァントとの正面対決を可能とする。
【人物背景】
ナチスドイツの軍人。
かつては「石仮面」と「柱の男」の研究に携わっていたが、その際に機械化されて復活。
第二次世界大戦においては東部戦線に回される。
本来ならばジョセフと再会することもなくスターリングラードで戦死するはずだったが、アーネンエルベの聖杯探求に回されたことで様々な冒険を経たのち聖杯戦争に参加する。
【方針】
キャスターは後方に下げ、宝具化された身体で自ら戦う。
投下終了です。
投下乙です。
シュトロハイムがアーネンエルベの聖杯探求に回されるというのは面白い発想だと思いました。
鯖のフリットは直接戦闘出来ませんが、シュトロハイムが鯖とも戦闘可能というあたりで釣り合いも取れている……のかも。
いかにして宝具を活かしていくかが肝になりそうです。
自分も投下します。
建原智香は魔法少女だ。
どれだけ鍛えても人間では不可能なほどの大ジャンプができるし、走る速度も時速三桁の大台に届く。
自画自賛のようになって気恥ずかしいが、見た目も普通の少女とは比べ物にならないほど可憐で完璧だ。
肌にはシミなんてあるはずなく、思春期のお悩みの代名詞であるニキビやそばかすとも一切無縁。
愛されるために生まれたような造形美――魔法少女は本当に美しく、可愛らしい。
とはいっても箒で空を駆け回ったり、派手なビームで悪と戦うなんて華やかな魔法は使えない。
中にはそういう絵になる魔法を使える魔法少女も当然いるだろうが、少なくとも彼女はそうではなかった。
魔法少女「ペチカ」の魔法は、「美味しい料理を作ることができる」魔法だ。
材料はなんでもいい。一定時間以上触れていることさえできれば、どんなものだって見違えるような美味しい料理になる。
食べればたちまち身体の奥底から元気が湧いてきて、不機嫌な人だって自然と笑顔になる。
それほどのものを作れる魔法。彼女はそれを、ごくささやかな幸せのために使っていた。
そう、ごくささやかな幸せさえあれば、ペチカはそれで幸せだった。
普段の冴えない見た目ではお近付きになど到底なれない、気になる男の子と仲良くなりたい。
ほんのそれだけ叶うならそれでいいとペチカは思っていた。
例えば魔法の力を使って料理を作り、それを売り物にしてお金儲けしようだとか、そういう発想は特になかった。
ペチカはあくまで平々凡々とした幸せを満たすために、そして日々ちょっとした人助けに勤しむ魔法少女であれればそれでよかった。けれど、世界は「それでいい」とは納得してくれなかった。
とあるビジネスホテルの一室で、ペチカは上品なベッドの上にちょこんと座り、唇を噛み締めていた。
聖杯戦争が始まれば、当然マスターであるペチカの命を狙う輩はごまんと現れる。
この街には精巧に再現されたペチカの家があって、家族もいた。
たとえ偽物だとしても、幸せに暮らしていた家族に危害を加えられるのは嫌だ。
そんな彼女のわがままをサーヴァントが聞き、彼が少しばかり非合法な手段で獲得したお金で手配したのがこのホテルだ。百万円以上のお金をオーナーへ預けているから、聖杯戦争が終わるまでは自由に出入りできると見ていい。
わがままを言ってからものの十分としない内に手配を済ませた手腕に驚かされたが、それ以上に申し訳ない思いがあった。
彼は聖杯に託したい願いがあって自分のところへ召喚されたのに、自分はこのざまだ。
何をしたいか、何をすべきなのか。死にたくはないけれど、自分に戻る場所は果たしてあるのか。
――ペチカは、ここにいるべきでない存在だ。人間としても、魔法少女としても、彼女の物語はもう終わっている。
悩んで、戸惑って、恐れて、泣いて、そうして辿り着いた結果に喰いはない。
けれど、それにこういう形で後日談を与えられるとは夢にも思っていなかったから、こうして迷っている。
聖杯を手に入れて、あの悪夢のようなゲームで死んだ魔法少女を蘇らせる、というのも考えた。
でもそれでいいのかと考えて、また迷うことになった。
聞こえだけは綺麗だが、それではいけない気がする。……理由はうまくいえないが、とにかくそう思うのだ。
「やはり簡単に答えは出ませんか、マスター」
その時、部屋の扉が開いた。
それが誰かなんて分かりきっているのに、やはり起こっている事が事だから心臓がどきりとする。
そこに立っているのは案の定、自分のサーヴァントである黒髪の男性だった。
中性的な整った顔立ちを、ペチカは綺麗だと思う。
彼はアサシンのサーヴァントだ。真名についてははぐらかされたが、なんでも少々特殊な名前を持っているらしい。
「一人にしてしまってすみません。ここを第二の根城とする以上、多少の工作を施してきました」
そう言って彼は、何本かの不穏な導線をペチカへ見せてにこりと笑った。
何をしてきたのかは分からないが、とにかくこの人は何でもできる。
それこそホテル相手に無理な契約を速攻で取り付けてみたり、種も仕掛けもないような超人技を披露してみせたり。
魔法少女のペチカよりもずっと超人らしい超人だ。本人もそれは自負しているのか、割と不敵な物言いも目立つ。
彼は窓際に立って街を見下ろしながら、ペチカへ背を向けたまま問いかけた。
穏やかな声だった。彼には自分と違って迷いがないんだなあと、聞いた途端にペチカは理解した。
「私はね。マスターが聖杯戦争を受け入れようと拒もうと、正直なところどちらでもいい」
「え……?」
聖杯戦争についてごちゃごちゃとした認識しかしていないペチカにも、その発言がサーヴァントらしからぬものだということは分かった。彼らは彼らなりの願いがあってここへ来た。ならば、聖杯を手に入れようとするのは当然だ。
それをマスターが拒む選択を取るなど、主従関係崩壊の理由としては本来十分すぎる。
ペチカが彼に相談しなかった理由の一つがそもそもそれだ。しかしその不安は、他ならぬ彼の言によって杞憂であったと知らされることになった。
「もちろん、聖杯を手に入れて願いを叶えようというなら協力しましょう。
私にも当然願いはある。それが正しいか間違っているかはさておいて、聖杯が手に入るならそれに越したことはない。
『この私』として呼ばれた以上は、この願いを丸きり不要と切り捨てることは出来ませんから」
「じゃあ――じゃあ、私が聖杯なんていらないって言ったら……」
「その時は、君を聖杯戦争から生きて帰らせることに尽力します」
さらりと言ってのけるそのありようは、優男風の見た目に反して異常なほどの頼もしさがあった。
「迷っているならそれも善し。
昔話はまたの機会としますが、私は本来――ある子どもたちを導いてほしいと願われた身でね。聖杯の獲得にそこまで頓着していない理由も、言ってしまえばそれです。私に願いを託した人は、きっと聖杯の力など望んではいないでしょうから。
……ただ彼女がもしも今の私を見ていたなら、きっと君のことを『導く』ことを願うはずだ」
だから私は、君が何を選ぼうと、最後まで君のサーヴァントで居続けますよ。
そう言って、アサシンのサーヴァントは笑った。
ペチカはその笑顔に、なんだか心があったかくなるのを感じた。
――どこか学校の先生と話しているような安心感を感じている。不安がまるきり氷解するとまではいかなかったけれど、少なくともいい方向へ転んだのは確かだと思った。
気付けばペチカはぺこりと小さく頭を下げて、「ありがとうございます」とお礼を言った。
まだ、どうするべきかの答えははっきりと出せていない。……それでも。ちゃんとこの聖杯戦争と向き合って自分なりの答えを出そうと思うことはできた。
「……あ」
そこで。ふと、思い立つ。
「あの……ちょっとだけ、待っていてください」
「?」
ペチカはささっと部屋の奥へ引っ込んだ。
部屋に備え付けられた陶器製のコップをテーブルの上に置いて、宿泊の感想を書くアンケート用紙を数枚握り締める。
それから五分ほど経った。何をしているのか不思議に思ったアサシンが覗き込んだ時には、もう『仕上がって』いた。
「お礼に――その。これ、どうぞ。よかったら飲んでみてください」
「これは……ビシソワーズか」
ビシソワーズ。
北米で愛されている料理で、いわゆるじゃがいもの冷製スープだ。
バターでポロネギとじゃがいもを炒めてからブイヨンを加えて煮、裏ごしして生クリームで伸ばし、冷やす。
そういう工程を経て作られるスープだから、こんな短時間で作ることは本来できないが――ペチカの魔法にそんな手順は必要ない。手で触れて、五分待つ。それだけでいい。
アサシンはそれを受け取ると、少し不思議そうな顔をしてから口に運んだ。
味わった途端――目を見開く。
「これは……」
――『旨い』。
かつて世界中を股にかけて暗殺業を営んでいた彼は、当然あらゆる食文化を一通りは味わったつもりだった。
しかし、これほどのものはかつてなかったと言っていい。
冷えているのに飲み込む度に身体が元気になっていく。味わいは舌を通じて神経へ幸福感を与え、気付けばもう一口を啜っている。……旨い。天下の殺し屋をして唸らざるを得ないものが、このスープには凝縮されていた。
それを見て、ペチカはほんのり笑った。
自分に出来ることは少ないけれど、少しずつでも探していこうと思った。
その姿はまさしく、正しい形の魔法少女だった。
【クラス】
アサシン
【真名】
死神@暗殺教室
【パラメーター】
筋力C 耐久D 敏捷A+ 魔力E 幸運C 宝具B
【属性】
混沌・善
【クラススキル】
気配遮断:A-
サーヴァントとしての気配を絶つ。
完全に気配を絶てば、探知能力に優れたサーヴァントでも発見することは非常に難しい。
【保有スキル】
専科百般:A
萬に通ずる殺し屋の能力。
戦術、学術、隠密術、狩猟術、話術、医術、武術、馬術、
その他総数32種類に及ぶ専業スキルについて、彼自身の宝具によるブーストも含めてBランク以上の才能を発揮できる。
対英雄:D
時に国家要人すら仕留めてきた逸話の具現。
英雄に値する人物へ攻撃を仕掛ける場合、初撃に限りその耐久値を1ランクダウンさせる。
破壊工作:A
戦闘を行う前、準備段階で相手の戦力をそぎ落とす才能。
トラップの達人。
ランクAならば、相手が進軍してくる前に六割近い兵力を戦闘不能に追いこむ事も可能。
ただし、このスキルが高ければ高いほど、英雄としての霊格は低下していく。
【宝具】
『萬の術技』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:1~30 最大補足:1~50人
凡そあらゆる技能技術を会得し、暗躍の限りを尽くした逸話が宝具化したもの。
彼はあらゆる殺し方を極めた暗殺者であるため、様々な武芸を達人の次元で使用することが出来る。
この宝具によって「専科百般」「破壊工作」のスキルも間接的に強化されている。
『反物質・月殺しの種(アンチマター・アースキャンサー)』
ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:1~40 最大補足:1~50人
生前、彼がある機関によって実験動物とされる事で手に入れた、人智を超えた破壊の力。
この状態になったアサシンの気配遮断スキルは大きく低下し、全身から反物質の触手が出現する。この触手の殺傷能力は極めて高く、彼の弱点である耐久力の高い敵へも一定の効果を見込むことができる。
宝具使用時、アサシンはBランク相当の狂化スキルを獲得するが、理性を完全に失う事はない。
ただ狂化の影響で周囲へ目を配る力は目に見えて減退しており――或いはこの宝具を使用している間こそが、最強の殺し屋にとって最大の隙なのかもしれない。
彼自身は進んでこの宝具を使おうとはしない。何故ならこれは、彼にとって忌むべき過去の焼き直しでもあるからだ。
【weapon】
大体なんでも
【人物背景】
地球上で最高の殺し屋と評される人物。凄腕の殺し屋たちを次々と襲撃していくことから「殺し屋殺し」と呼ばれる。「死神」は仇名で本名は不明。神出鬼没、冷酷無比で夥しい数の屍を積み上げ、「死」そのものと呼ばれるに至った男。
仕事の最中に自身の弟子に裏切られたことである研究所にモルモットとして捕らわれてしまい、そこで人体で反物質を生成する研究の実験体として実験の日々を送ることになる。
研究所が自身を始末しようとすると反物質の力を開放して脱走を図る。その圧倒的なスキルと触手により警備員を瞬く間に倒していくが、彼を止めようとしたあぐりが触手地雷に貫かれて重傷を負った事で自分の力を後悔した死神は、彼女の最後の言葉を実行するために自ら弱くなることを望み、作中主人公である「殺せんせー」となった。
【マスター】
ペチカ@魔法少女育成計画restart
【マスターとしての願い】
迷い中。
【weapon】
フライ返し
【能力・技能】
『とても美味しい料理を作れるよ』
どんな材料からでも驚異的に美味な料理を作ることができる魔法。どんな料理でも作れるが、食器は作れない。
また、ペチカ自身が知らない料理を作ることも不可能。
材料を無視して料理を作れるものの、手で材料とするものへ五分触れている必要がある。料理の量は材料の量に比例する。
【人物背景】
本名は建原智香。
かつて「森の音楽家クラムベリー」の試験に参加し、生き残った過去を持つ『クラムベリーの子供達』。
【方針】
まずは生きることに専念。
投下終了です。
アサシンのステータス作成にあたり、「Fate/Fanzine Circle-聖杯戦争封神陣-」様の該当キャラステータスを参考とさせていただきました。この場を借りてお礼申し上げます。
投下します。
星に手は届かない。
されど、星に憧れることは出来る。
人はその輝きを渇望するのだから。
◆◆◆◆
その日の夜空は、光の海だった。
空には、無数の天体―――――星が輝いていた。
それは地球の果て、大気圏を越え、その先の宇宙という大海に浮かぶ無数の光。
自らの手が届かぬ世界に存在する数多の煌めき。
まるで電飾のように輝きを放つそれらに、少女は心を奪われる。
銀色の髪を靡かせる少女は、小さな丘に座り込み夜空を眺めていた。
幼き日、父と母に連れられて夜の世界へと飛び出した。
冷たい風の吹く丘の上で、星の輝きを目にした。
思えば、あれが生まれて初めての『天体観測』だったのだろう。
幼き少女は神秘すら感じる無数の光に心を奪われた。
何度も手を伸ばして、掴み取ろうとした。
しかし、届く筈も無い。
宇宙の彼方にある星を、重力に引かれたちっぽけな少女が掴み取れる筈が無い。
天上で確かに輝き続け、されど決して届かぬ光。
少女は、そんな星々に憧れた。
「…綺麗」
少女―――アナスタシアは、星空を見上げてぽつりと呟く。
こうして静かに星空を視るのは、いつぶりなのだろうか。
東京では地上の光に遮られ、あまり星が見れなかった。
それ故にミナミと「いつか天体観測をしよう」と約束をしたこともあった。
都会でアイドルという星になってから、ゆっくりと天体観測をする機会など殆ど無くなっていた。
それが今、こうして静かに星を眺めている。
まるで御伽話のようだと思っていた。
自分は星を見る夢を見ているのかと錯覚してしまう程に、現状への実感が掴めなかった。
あらゆる願いを叶える聖杯を巡る、聖杯戦争。
サーヴァントという英雄の霊を従え、他の主従を倒して勝ち残る為の闘い。
何故自分がこんなコトに巻き込まれてしまったのか、見当も付かない。
自分はただのアイドルだ。
特別な資質など何も持っていない、普通の少女に過ぎないのだ。
今の自分に何が出来るのか、それさえも見つけられていない。
ただ今は、そんな現実から目を逸らすように星の輝きに見蕩れていた。
アナスタシアの恐怖を少しでも癒してくれるのは、夜空に輝く星だけだった。
大切な相棒であり、姉の様な存在でもある新田美波は此処にはいない。
そのせいか酷く心細く感じる。
いつの間にか拳をギュッと握る力が強くなっていた。
しかし、今のアナスタシアは決して孤独ではない。
そう、彼女はマスターとして召還された。
つまり彼女には自らの従者であるサーヴァントがいるのだ。
「……ドゥー、ドゥールドゥー……」
ふと、すぐ傍から口ずさむような歌声が聞こえてくる。
余り聞き慣れないフレーズの曲だが、どこか懐かしい感覚がする。
そんな不思議な歌を、従者はさえずるように口ずさんでいたのだ。
アナスタシアは、いつの間にか姿を現していた自らの従者――――『サーヴァント』へと視線を向ける。
魔術師のサーヴァント、キャスター。彼は自らをそう語っていた。
同時に自分は『魔術』とは無縁の存在であり、キャスターとして召還されたのは極めて異例な事態であるとも。
現に彼の姿は一般に連想される魔術とは程遠い外見だった。
スキンヘッドの頭髪。奇妙な装束。全身を覆うチューブ。太陽の意匠が描かれたプロテクター。
魔術師というよりも――――何故か、何故なのかは解らないが、アナスタシアはある存在を連想していた。
そう、ニンジャである。
日本に引っ越して以降、忍者は時代劇で何度も見たことがある。
自分の知る忍者とは余りにも掛け離れた姿であるのに、何故か彼の姿をニンジャであると連想せずにはいられなかった。
キャスターを召還したあの時。
彼は『自分は聖杯を欲している』と言っていた。
そして他の主従もまた聖杯を手にする為に襲ってくるだろう、とも。
キャスターが聖杯を欲する意図を聞き出すことは出来なかった。
彼の瞳に恐怖を覚えたからだ。
矮小な人間である自分を歯牙にも掛けないような冷酷な瞳を、恐れたからだ。
悪意に晒される経験のなかったアナスタシアはその時直感したのだ。
キャスターにとって、自分は勝つ為の駒でしかないのだと。
だが、今のキャスターの表情からは奇妙なものを感じていた。
彼もまた、自分と同じように星空を眺めている。
その姿はどこか寂しげで、悲しげにも見えた。
空を眺めている時の彼の目は、確かに『憧れ』のようなものを帯びていた。
宇宙の果ての輝きへの渇望が微かながらも感じられた。
しかし、同時にその瞳からは悲しみの様なものも感じ取れたのだ。
幾ら手を伸ばそうと決して届かぬ光への、乾いた悲しみ。
確信は無いが、キャスターがそんなものを感じている様に見えたのだ。
「貴方も…スヴェズダ、星を見るのは…好きですか?」
アナスタシアは、ぽつりと呟く。
彼女はキャスターの表情の意図が知りたかった。
冷酷な戦士という印象を抱いていた彼の悲しみに、確かな関心を抱いたのだ。
故に彼女は、曖昧で率直な質問を投げ掛ける。
「嫌いではないが、好きという訳でもない」
返ってきたのは、平坦で曖昧な返答。
アナスタシアは何も言わず、彼の答えを耳にする。
淡々とそう答えたキャスターは、彼女の疑問を遮る様に言葉を続ける。
「…マスターよ、お前が矮小なモータルであることは理解している。
しかし、だからと言ってお前はこうして星を眺めながら踞るだけか?
既にイクサの火蓋は落とされている。自ら戦えとは言わぬが、聖杯戦争のマスターとしての覚悟は引き締めろ」
キャスターの表情が、冷酷な戦士のものへと変貌する。
彼の表情に再び恐怖を覚え、アナスタシアの顔に不安が浮かぶ。
キャスターの言う通り、既に聖杯戦争は始まっているのだろう。
自分と同じ様にサーヴァントを従え、聖杯を獲得する為に戦う者達が襲い掛かってくるのだろう。
その時になったら――――自分は、どうすればいいのだろう。
荒事とも闘いとも無縁だった少女に、その答えを導き出すことは出来なかった。
自分に願いなど無い。
ただ一つ、望むとすれば。
生きて帰りたい。ただそれだけだ。
恋い焦がれたステージの上にまた立ちたい。
星空の様な舞台の上で、また歌いたい。
アイドルという星として、精一杯輝き続けたい。
ただ、それだけだった。
【クラス】
キャスター
【真名】
スターゲイザー@ニンジャスレイヤー
【パラメーター】
筋力A+ 耐久B(EX) 敏捷B+ 魔力C+ 幸運C 宝具B++
【属性】
中立・悪
【クラス別スキル】
陣地作成:E+
宝具で召還した『静止衛星』を常時展開する陣地として扱い、スターゲイザーに恩恵を与える。
道具作成:E+
カラテ粒子と静止衛星からのデータ送信によってスターゲイザーの肉体を『構築』する。
【保有スキル】
心眼(真):A
修行・鍛錬によって培った洞察力。
窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す“戦闘論理”。
カラテ:A+
ニンジャの基本的な戦闘技術。
ランクが高いほど体術や戦術眼に優れ、更にあらゆる判定におけるクリティカルの成功率が増す。
カラテとは一種のエゴ。卓越したカラテは道理すらも跳ね除け、クリティカル判定を押し通す。
カリスマ:C
軍団を指揮する才能。
前線で戦闘部隊を指揮する能力に長ける。
電子の遺産:A
喪われし技術の遺産たるスターゲイザーの肉体がスキルへと昇華されたもの。
常時発動する宝具「無到の桃源、星の観測者(スターゲイザー)」の魔力消費を大幅に減少させる。
【宝具】
「無銘(ニンジャソウル)」
ランク:C 種別:対人(自身)宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
スターゲイザーに憑依したニンジャソウルそのもの。
ニンジャソウルに憑依された者はニンジャと化し、超人的な身体能力を獲得する。
「無到の桃源、星の観測者(スターゲイザー)」
ランク:B++ 種別:対人(自身)宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
宇宙に存在する『静止衛星』、およびそれによって齎される不死技術『ナノカラテエンジン』の宝具。
かつてスターゲイザーが所属していたメガトリイ社の遺産とも言えるテクノロジー。
静止衛星は陣地作成スキルによって常時展開されており、スターゲイザーの肉体のデータを絶え間なく送信し続けている。
送信された肉体のデータをスターゲイザーの魔力によって再構築することで、如何なる負傷や欠損を負おうと瞬時に再生することが可能。
更にスターゲイザーの霊核が破壊された際、即座に霊核の修復を行い宝具を機能させる。
この宝具によってスターゲイザーは不死身と化しており、実質的にEXランク相当の耐久値を発揮している。
ただし固有結界などの「外界から隔離された異空間」では静止衛星の電波が届かず、不死性は無効化される。
【Weapon】
カラテ(体術)。
【人物背景】
邪悪ニンジャ組織「アマクダリ・セクト」の幹部であり最古参メンバーの一人。
部下を率いて前線に赴くことの多い武闘派であり、戦士としても指揮官としても卓越した能力を持つ。
かつて電子ネットワークを専門とするメガトリイ社に所属していたが、会社消滅後はそのロストテクノロジーを軍事企業オナタカミに持ち込み強い影響力を発揮している。
宇宙開発を行っていたメガトリイ社の遺産を受け継ぐスターゲイザーは宇宙や星を『放逐された楽園』と捉えており、手が届かぬことに乾いた悲しみを抱く。
【サーヴァントとしての願い】
日本を支配するテック(科学技術)の浄化。
【方針】
聖杯を獲る。
【マスター】
アナスタシア@アイドルマスター シンデレラガールズ
【マスターとしての願い】
なし
【weapon】
なし
【能力・技能】
歌と踊りが出来る。
【人物背景】
北海道出身、15歳のアイドル。愛称はアーニャ。
ロシア人の父と日本人の母を持つハーフであり、銀髪とロシア語混じりの口調が特徴。
素直で純粋な性格。天体観測を趣味としている。
いつか新しい天体を見つけて名前を付けるのが夢らしい。
【方針】
生きて帰りたい。
投下終了です
投下します
《白い男》、という噂がある。
それは突如として現れては、犯罪者や得体の知れない怪物などといった闇の住人を討伐する何者か、というものだ。
先進国家の諜報・情報組織が行方を追い続ける重要人物。と、されている。
伝説の人物だった。
おとぎ話に過ぎない、と肩を竦める者も多い。
当然だ。現実として存在する犯罪者ならともかく、怪物を相手にするなど、子供が読む漫画本じゃあるまいに。
実際に遭遇したと語る目撃者は数多いて、中には名乗られたとも証言する者もいたが、どうにも、名乗ったのは過去の歴史上の人物のもの、つまりは偽名である。
まさか歴史上の人物名をそのまま指名手配できるはずもなく、当然の帰結として多くの者は眉唾物として聞き流す。
けれど、噂は確かに広がっている。
闇夜に現れ、悪を裁く、白き異装の男。その影を。
◆◆◆◆
男が所属する組織は、一般にその名を知られてはいない。
それは企業でも、法人でも、まして国家直属云々でもない。
男が所属しているのが、狂信的な宗旨を持った犯罪集団であるからだ。
名と存在を知るのは各国の情報・諜報組織や、それらの暗闘に関わる極一握りの者程度か。
つまるところ、男のいた組織とは、社会のどす黒い暗部のさらに底のあたりを這いうねる集団であった。
暗黒と陰謀を是とする秘密結社にあって尚、自滅的かつ破滅的な集団だった。生産性と呼べるものが欠片もなく、手段が目的となっているような刹那主義の集まり。
彼らの目的とは、つまりは殺人だ。市井の民や、あるいは情報組織同士の抗争において間抜けを晒した者を連れ去り、人知れず殺す。そこに殺人以上の目的などなく、故に彼らは躊躇というものを持ち合わせない。
同時に、彼らはそんな子供じみた稚気にあって、しかしそれだけでは終わらない《暗部》を抱えていた。
世の中には正気を疑う例外的存在や規格外と呼べる驚嘆すべきものが稀に存在する。
それは何処の国家のものとも知れない、アフリカ大陸の秘境だとか、古代のエジプトだとか、南極の古代遺跡だとか。
如何にも妖しげな出自を謳う組織や個人というのは何時の世にも必ず一定数存在して、それは件の殺人集団も例に漏れず、如何にも妖しげな出自を標榜していた。
とある神性の信仰及び魔術的な技術を有するというそれは、今や使い古された出来の悪い三流小説のようで、しかし集団内においてはこの世の真理として機能していた。
そして、幸か不幸か、その曖昧靄な謳い文句は現実のものであった。
かの組織はかつて大英帝国においてとある陰謀を企てたが、事前にこれを察知した国の保全組織、及び知られざる諮問探偵に対立し、結果として全組織が壊滅したという末路に至った。
それは紛れもない事実であり、構成員は須らく死したか投獄され、その活動は完全なる根絶を辿った。
そう、例外たる一人を除いては。
集団において真理とされた眉唾物の神秘、出自も知れぬ魔術書。それを手にしたことにより魔術的超人と化し、付け焼刃のそれを駆使しまんまと逃げおおせた男を除けば。
「どうだ、キャスター。駒の補充は万全か」
問いかけるのは痩身の男だった。顔は死人のように青ざめ、頬はこけ、しかしフードの奥から垣間見える窪んだ眼球だけがぎらついた情熱を放っている。
彼こそが魔術師であった。殺人集団に奉じられていた供物を手に、ただ一人その恩恵にあずかることのできた落伍者だった。
神の恩寵を手にしたと盲信する男だ。その実足りない才能を補うために常時魂を削られつつある愚者だ。
対するキャスターは妖艶な女の姿をしていた。無論、それが彼女の手繰る魔術による見せかけであることは彼女しか知らない事実である。
黒のローブを纏った「如何にも」な外見は、正しくその印象を裏切ることのない魔術礼装である。人種さえもわからないその黒い姿は、一見するだけで異様さが際立つ。
彼女は気配の隠蔽や魔力向上の効果を持つそれを纏い、顔には侮蔑の表情を隠そうともせず浮かべていた。
だが構うものか。どうせこの仮初のマスターなど、既に碌な視力すら有してはいないのだから。
「攫ってきたNPCのことなら、仔細抜かりはありませんわマスター。
既に100を超える子供たちを工房へと誘致しております。明日の朝にはある程度【形】になるでしょう」
「ならいい。俺は負けられんからな」
それっきり、男はぶつぶつと何やら呟きながら中空の一点を見つめるだけの置物に変じた。
キャスターを召喚した時から比べると随分悪化している。以前ならば、震える手で何かしらの作業くらいはできたのだが、とうとう死期も近づいているらしい。
ここらが潮時か、そうキャスターは内心で嘆息する。マスター代えの面倒を考えると憂鬱な気分になる。
既にキャスターの中でこの哀れなマスターを切り捨てることに躊躇いなどない。元よりキャスターは裏切りのサーヴァント、それも生半に魔術へ手を出し破滅する愚者など本来歯牙にもかけぬ塵屑だ。
むしろ、僅かな間でも大いなる魔術師である自分の役に立ったことを光栄に思えばいいとさえ、キャスターは本気で思っていた。
尚も言葉にならない呻きを発し続ける男を無視し、キャスターは邸宅内部に作成した工房へと足を運ぶ。
扉を開けば、そこには生気を失った瞳をした子供たちが所狭しと並べられていた。
夜ごとに街へ出て子供を攫う黒衣の怪人物は、既に街角で語られるフォークロアとして成立していた。形振り構わないその有り様は、まさしく彼女のマスターたる痩身の男による強制である。
本来隠れ潜むことを常套とするキャスターにとっては自殺行為に等しいが、しかし降って湧いた万能感に酔いしれる男は聞く耳を持たなかった。
はっきり言って悪手の一言だが、こうして事が成されてしまった以上は先を見る他にない。
キャスターは言葉なく頷くと、黒外套の中からぬらりと重く鋭い凶刃を抜き払った。
それは恐ろしい武器であると同時に、ある種の魔術礼装でもあった。
感受性の強い人間であれば、その形状のおぞましさのあまり卒倒し兼ねないほどのものだ。
あるいは年若く弾力に富んだ感受性を持つ幼い者であれば、形状から放たれる原始的な力強さを感じ得たかも知れない。
アセイミナイフ。西洋魔術における儀式短剣だ。
それを使って、それを突き立てて、一体キャスターは何をしようというのか。
殺すのだ、子供たちを。
ある者は生贄に、ある者は礼装に、ある者は傀儡人形に。
用途の違いはあれど、作業の過程において殺されることは不可避である。
魔術的な条件が揃うこの日この時まで雌伏の時を過ごさねばならなかったが……しかしこの作業が成れば、自らよりも格上のサーヴァントに伍することも十分可能であるし、マスター不在でもある程度行動することもまた可能となる。
これでようやくクソッタレの愚物からはおさらばだ。
「黒き御身の名において」
「穢れし禍つの威に依りて」
「血を流せ、雫を垂れよ、心臓を捧げるのだ」
「捧げよ」
「捧げよ」
「捧げよ」
女は陶然と酔いしれるように何事かを口にする。
それは聞くだにおぞましい呪詛の羅列、あるいは彼女の信奉する神性へと捧げる言葉か。
いずれにせよ常人が聞けばそれだけで精神に異常をきたしかねないそれは無謬の悪風となって、精神を硬直させられているはずの子供たちでさえも無意識のうちに恐怖で打ち震える。
子供が発する恐慌の声を、女は決して忘れない。
決して悔恨や罪悪感などではない。その逆だ。
己のために、己が信奉する神性のために、捧げられる生贄たちの悲鳴と苦痛は、彼女にとっては小鳥の囀りにも等しい安らぎとなって現れる。
さあ、歓喜の時間の始まりだ。
これより自分は両手を血に染め、愚かなるマスターから解放される。
そして捧げるのだ、子供たちの柔肉を、魂を。
悲鳴を耳にしよう。
苦悶を目にしよう。
さあ、尊き神の御名をここに。
いざ。
いざ。
いざ。
いざ。
いざ。
―――いざ!
「待て」
と―――
女の背中に呼びかける声があった。
まさに、彼女が最初の子供の首にナイフをかけようという数瞬前のことだ。
狂信に酔う彼女は振り返った。
呼び止めたのは男だった。
己がマスターではない。
白い男、だった。
男は白い姿をしていた。
白色の服装は何処かの小国の海軍服のようにも見受けられる。
男だ。人間。
彼の瞳には揺るぎない意思があった。
頸部に巻き付けられた長い長い黒布は風もないのにはためいている。
「約定の輝きと、我が雷電の名の下に」
時折、黒布の周囲に光が疾る。
「罪業なるもの。疾く去れ」
──それは、夜闇のただ中でひときわ強く瞬く雷光の輝きに似ていた。
◆◆◆◆
「な、あァ!?」
突如として邸宅を襲った轟音と光に、キャスターのマスターは動揺を隠し切れなかった。
忘我のままに時を過ごしていた男に飛び込んできた極大の振動は男の体を持ち上げ、無様に転がって壁に頭を叩きつけるに至った。
錯乱した精神もこれにはたまらず正気を取り戻し、何事かと頭を上げて見やれば、そこには漆黒の帳があった。
【屋根が吹き飛んでいた】。跡形もなく、爆撃でも受けたかのようにすっぽりと。頭上にはただ満天の星空が広がっていた。
そして見たのだ。天頂へと駆け上る、御柱の如き雷を。
「ば、馬鹿な! キャスターはどうしたんだ!?」
男の混乱の無理はない。何故ならこの邸宅はキャスターの手により魔術的な要塞と化していたのだから。
邸宅全体には存在を検知できないよう認識阻害の結界が張られていたし、仮に近づく者があれば例えアサシンであろうと容易に検出できるセンサーも完備されている。
空間を異相にずらし、警備には使い魔を多数配置。単なる魔術師程度であれば100人押し寄せようと容易く撃退可能な戦力があったというのに。
何時の間に、それを突破されたというのか。
分からない、だから男は遁走を開始する。
如何に外法で頭をやられようと、己への脅威に敏感なのは生物としての本能が為せる業だ。
男は開け放たれた扉へ向かって、転びそうになりながら、それでも必死に足掻き駆け寄って。
「ッ、邪魔だ、どけぇ!」
だから、【扉の前で立ちふさがる誰か】を正確に認識することもなく、ただ我武者羅に魔術を放ったのだ。
粉砕される扉枠、舞い散る破片に焦げ付く悪臭。
一撃必殺の手応えと、人を殺したという確信が焦燥に沈む男の心を一時潤す。
恐怖に固まった口が少しだけ喜悦に歪み、そのまま外へ走り去ろうとして……
「待て、俺はまだここにいるぞ」
聞こえてきた声に、再び体が硬直する。
そこには、魔術で消し飛ばしたはずの人影が、しかし確かな実像を持って存在した。
「幕だ、コンラート・ベンソン。お前の妄執もここで終わる。
もはや何処にも逃げられんぞ」
ここでようやく、男―――コンラート・ベンソンと呼ばれた魔術師紛いは、己に相対する者の姿を確と認識した。
奇妙な風体の男だった。見たことのない意匠の服を纏い、背にはマントのようなものを羽織っている。軍帽にも似た帽子を被り、顔には眼鏡をかけていた。
ベンソンの知らぬことではあるが、それは書生服にも似た軍服であった。それも極東の島国の、半世紀以上も前のものとくれば、彼が知らぬのも無理はない。
そして、ベンソンは笑っていた。
なんだ、お前素人じゃないか、と。
軍服の男からは、魔術的な力の流れが一切感じられなかった。サーヴァントどころか魔術師ですらない。そして曲がりなりにも殺人集団で培った眼識から、目の前の男が銃器に相当する装備を一切所持していないことも即座に見抜いた。
端的に言って丸腰の間抜け、それがこいつだ。例え何某かの格闘術を修めていようが、今や神の御業を行使する己には敵うべくもなし。
そう判断し、ベンソンは優越と喜悦に口を歪めているのだ。
彼は認識しない。たった今、ベンソンが神の御業を自称する半端な魔術をいとも容易く回避されたという事実を。
彼は理解しない。目の前の男が、たかが借り物の力に溺れる程度の愚物に劣るような存在でないことを。
彼は認めない。既に脳神経の大半をやられ、現実を正しく解さない彼に、そんな理性は残されていない。
だからこそ、この結末は不可避だったのだろう。
「ごばがァッ!?」
真っ直ぐに放たれた正拳が顎をかち上げ、硬直した隙に懐へ潜り込んでの肝臓打ち。くの字に折れた体の作用を利用し、そのまま一気に背負い投げ。
床に背を叩きつけられたベンソンは、今何が起こったのかさえ理解することが許されない。
拳の間合いに、歩法、理合、呼吸の妙。なんだそれは、理解不能だ。
力任せに魔術を振るうしか能のなかったベンソンの、これが限界である。
彼の手から零れ落ちた魔術書を、男は躊躇なく踏み砕く。
書の形をしていたそれは、しかし鉱石のような硬質の響きと共に砕け散り、破片は塵となって宙へと消えた。
瞬間、ベンソンの体は大きく痙攣し、一瞬の後に全ての動きを停止した。
死んでいた。ベンソンは、今や呼吸さえしていなかった。
いいや、とっくの昔に死んでいた彼を、魔術書の魔力が無理やりに生かしていたのだろう。
見れば、彼の肉体の一部は既に腐敗して、鼻に突き刺さるような腐臭が立ち込めている。
愚かにも禁断の魔書に手を出した者の、これが末路であった。
「そちらも終わったか、セイヴァー」
声のしたほうを見やれば、そこには白い男が佇んでいた。
軍服の男―――白い男に曰く、セイヴァーか―――は、振り返りもせずに答えた。
「ああ、仔細問題はない。それよりそっちはどうだったんだマスター」
「こちらも特に問題ないな。子供らも既に解放している。数人は少々催眠の根が深くはあったが……なに、私に不可能はない」
不遜に笑う彼に、セイヴァーは深く嘆息した。
別に嫌うわけではないが、この手のタイプの人間は生前の自分の周りにはいなかった。
故に、少々疲れる。
「故にこそ、だ。セイヴァー、私はこの聖杯戦争において無限の正義を成す。
不撓不屈の男よ。
尊くも輝く英雄よ。
私はお前に劣らぬほどに、いずれ万人を救ってみせるとも」
だが、これも悪くない。
人々の輝きを尊び、守り抜こうとする気概。
それはセイヴァーとて違いはないのだから。
セイヴァーは当初、サーヴァントとして呼び出された身の上に憤りを感じていた。
悪なる者に仕えるつもりは毛頭無く、そうでなくともマスターを勝利に導くために超常の力を振るうことを強制される可能性もあった。
けれど、現実にそうはならなかった。
セイヴァーとて、力なき者を救うためならば理想を曲げ力を再び得ることも辞さなかっただろうが。
それでも、この奇矯なるマスターにそんなものは不要であった。
故にこそ、セイヴァーはこのどこまでも青臭く、馬鹿としか言いようのない男をマスターとして認めたのだ。
真実、彼らは英雄であるために。
「それが、お前の見出す真か」
「そうだ。私はかつて人々を救えなかった。
かの者より鳳の雷とフランクリン機械帯を賜った私は、しかし、それによって誰をも救うことができなかったのだ。
そうだ。誰をも」
悔恨を口にする男は、しかし不屈の輝きを目に宿す。
それは、大空に輝く雷を、一つの形に押し込めたようで。
「故に」
「私は命尽きるまでに、かつて救えなかった百の倍の人々を佑けよう」
そうして、二人は揃って空を見上げた。
気付けば、既に日は昇っていた。
「陽が、出てきたな」
「ああ。本当の動乱はこれから始まる」
まさに光が立ち昇らんとする中で、二人は現実に立ち向かうため未来を見ていた。
朝へ―――かつて見た夢の日々へ至るために。
◆◆◆◆
某月某日、市内某所。
この数日間で予想もしなかった言葉を聞いて、その夫婦は耳を疑った。
まずしたことは、己の正気を疑うこと。次にこれが夢であること。最後に、自分が白昼夢を見ている可能性を考慮し、しかし全てがそうではないことを確かめると、呆けたように立ち尽くし、しかしすぐさま滂沱の涙を流し互いを抱きしめた。
己の子供の無事を喜び、歓喜に打ち震え、以前は信じてもいなかった神に感謝を捧げた。
ああ、どうか。
どうか私たちの子を助けてください、と。
そう願って良かった。
そう、彼らは見も知らぬ誰かに、感謝の言葉を送った。
『行方不明の子供たちを全員保護』
『犯人と思しき人物の自宅が半壊』
『首謀者と思われる男の行方は不明』
『目撃情報』
『事件現場付近で目撃される人影は、二人』
『必ず二名が目撃される』
『時代錯誤の旧日本軍の軍服』
『夜闇に目立つ、白色の服装』
一夜のうちに駆け巡ったニュースは、街の全てに伝播した。
それは人々の興味を呼び、幾つもの噂がまことしやかに囁かれた。
電撃的な行動。
恐れを感じるほどに激しい破壊行為。
建築物を圧壊させ、悪辣な者に容赦はしない。
あまりにもこの目立ちすぎる手口。
これは《白い男》の仕業である。
そう、結論付けるものも少なくなかった。
けれど真実を知る者はおらず。
結局、真相は闇の中である。
【クラス】
セイヴァー
【真名】
柊四四八@相州戦神館學園八命陣
【ステータス】
通常時
筋力E 耐久E 敏捷E 魔力- 幸運EX 宝具-
邯鄲法
筋力B(可変) 耐久B(可変) 敏捷B(可変) 魔力A(可変) 幸運A+(可変) 宝具A
盧生
筋力EX 耐久EX 敏捷EX 魔力EX 幸運EX 宝具EX
【属性】
中立・善
【クラススキル】
対魔力:-→A→EX
魔力ダメージに対する耐性。
通常時は一切の効果を成さないが、邯鄲法使用時及び盧生覚醒時には上記のランクに変化する。
カリスマ:C→C→EX
軍団を指揮する天性の才能。団体戦闘において、自軍の能力を向上させる。
カリスマは稀有な才能で、小国の王としてはCランクで十分と言える。
また、盧生とは人類の代表者であると共に全ての人間の夢を背負う者であるため、盧生として覚醒した場合最高ランクのカリスマ性を発揮する。
対英雄:-
セイヴァーはこのスキルを保持しない。そも、彼こそが英雄としての誇りを一身に背負うべき者である。
【保有スキル】
盧生:-→-→EX
ある種の"悟り"を開いた人間の証であり、人類の代表者とも称される「阿頼耶識を理解できる」資質を持つ者のこと。
盧生となった者は邯鄲の夢から己の思想に沿った神仏・超常的存在を呼び出すことが可能となり、阿頼耶識からのバックアップに加え、同ランクの菩提樹の悟りに匹敵する対粛清防御を持ち合わせる。
しかし盧生として覚醒しない限りそれらの効果は得られず、通常時及び邯鄲法使用時は単に悟りを開いたことによる絶対的な精神防壁のみが保障される。
邯鄲の夢:-→A→EX
夢界において発現する超常現象を制御する術。
この術は身体能力を増強する戟法、守りを司る楯法、能力射程を広げる咒法、力や物質等を解析・解体する解法、イメージを具現化し現実に創造する創法の5つに分かれる。
セイヴァーはこの5つ全てに高い適正を持つが、逆に一点特化の者には敵わない。端的に言ってしまえば器用貧乏に近い資質である。
通常時において一切機能しない。
変容:-→B+→-
筋力・耐久・敏捷・魔力・幸運の能力値を一定の総合値から振り分け直す。
元々はセイヴァーの保有する五常・破ノ段の一つだが、宝具には至らずスキルとして具現している。
通常時において一切機能しない。
無形の輝き:EX→-→-
常人の身で神々の黄昏を踏破したセイヴァーの生き様が現れたスキル。
時に不可能を可能とし、あらゆる難行を身一つで踏破できる可能性を保障する。
星の開拓者や奇蹟とも類似したスキルであるが、本質的には異なっている。
それは誰しもが持つことの許された信念と努力。
現実にない異能などただの夢であり、世の行く末を憂うなら自分ひとりの力でなんとかしてみせろという、只人としての輝きである。
心眼(真):A
修行・鍛錬によって培った洞察力。
窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す“戦闘論理”。
逆転の可能性がゼロではないなら、その作戦を実行に移せるチャンスを手繰り寄せられる。
【宝具】
『犬田小文吾悌順』
ランク:-→B 種別:対軍宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:不定(仲間の数だけ)
セイヴァーの保有する五常・破ノ段の一つ。その能力は「仲間たちの間で成立する意識の完全同調」及び「仲間同士で成立する全能力の共有化」。
前者は簡単に言ってしまえば仲間同士で使用可能なテレパシー。特に集団での戦いにおいては高い長所になり得る。
後者は英霊固有のものも含めたスキル・宝具のシェアリング。他者のスキル・宝具をセイヴァーが使用したり、逆にセイヴァーのスキルを他者に譲り渡すこともできる。
ただし他者のスキル・宝具を使用する際には全てのステータスがその他者のものに置き換わってしまう。セイヴァーのスキル・宝具を譲り渡す場合においても、その相手のステータスはセイヴァーと同一のものになる。
更にこの宝具で使用できるスキル・宝具は一度につき一つきり。複数のスキル・宝具を同時使用することはできない。
この宝具の対象になるのは「セイヴァーとの間に相互の信頼関係を結んだ人物」に限られる。
通常時において一切機能しない。
『犬江親兵衛仁』
ランク:-→A 種別:対国宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:1000
セイヴァーが保有する五常・急ノ段。
セイヴァーの思想に賛同する者を強制協力に巻き込み、セイヴァーの戦闘ボーナスを強化する宝具。上昇率は巻き込んだ人数に比例する。
協力強制の条件は「勇気」を抱くこと。ただしその勇気は憧憬や標といった正道への希求によるものに限られ、例えば恐怖や忌避感から引き出された勇気は対象外となる。
通常時において一切機能しない。
『終段顕象・仁義礼智忠信孝悌』
ランク:-→-→EX 種別:神霊宝具 レンジ:1〜999 最大補足:8
セイヴァーの保有する五常・終ノ段。その力は集合無意識の中から人々の思い描いた神格を召喚するというもの。
この宝具においてはセイヴァーとの相性が最も良い八犬士が召喚される。彼らの原典はあくまで架空の英雄譚であるが、集合的無意識の海において人々に思われることにより神格に相当する力を持ち合わせている。
原典通り、あるいは原典以上の能力を持ち、それぞれが怪力無双を誇る剛拳、火遁の術、戦況を見通す戦略眼、魔性に対する特攻等を有している。
通常時及び邯鄲法使用時において一切機能しない。
『仁義八行・如是畜生発菩提心』
種別:人意 レンジ:0 最大補足:1
セイヴァーが希求の果てに辿りついた真理。盧生として獲得した唯一無二の悟り。
人生の無常、真理、そしてそれに立ち向かう勇気。すなわち無形の輝きであり、その誇りこそを強さとする人の意志。
つまるところセイヴァーの得た悟りとは、「盧生としての力の全てを捨て去り、ただの人間として生きていく」というもの。
この意思があるかぎり、セイヴァーは盧生や邯鄲法行使者としての権能を一切使用しない。「できない」のではなく、「しない」。
セイヴァーは通常時において生身の人間と同程度の身体能力しか持ち合わせず、霊体化などといったサーヴァントとしての基本的な力すら行使できない。一切の魔力を持たず、その身は神秘を含まない物理攻撃にすら容易く傷つけられる。
セイヴァーはかつて最強の盧生を相手に夢の力を捨て去り、世の行く末を憂うのならば自分の力だけで立ち向かえと諭した。
そして事実、セイヴァーは生身の人間のまま第二次世界大戦を未然に防ぎ、その意思を示している。
【weapon】
邯鄲法使用時においては創法により作られたトンファーを使用する。
【人物背景】
質実剛健な正義の仁。曲がったことや非合理なこと、怠慢その他の締まらない諸々が嫌いで自他共に厳しいが、その辛辣な言動は冷淡さの表れではなく困った者を放っておけない面倒見のよさの裏返しである。
戦神館學園の特科生であり、甘粕事件に際し邯鄲の夢に潜航、最終的に最強の盧生とされた甘粕正彦を打倒する。
盧生として抱く属性は「英雄」。甘粕事件の後は盧生としての力の全てを捨て去り、真実生身の人間のまま、未来の可能性を知った者としての責任を果たし、第二次世界大戦の未然の防止に成功する。
【サーヴァントとしての願い】
人々の安寧。しかし彼は聖杯の恩寵を求めない。
【運用法】
単純なスペックだけで言うならば、あらゆる聖杯戦争において最弱のサーヴァントと言えるだろう。
なにせその身体スペックは生身の人間と変わらず、一切の異能を行使しない。戦力としてはこの上なく脆弱で、戦闘はマスターに依存する。
しかし英霊としての格は間違いなく最上級であるし、積み重ねた鍛錬は並みの英霊では追随できない域に在る。あらゆる難行を不可能なまま乗り越える様は、正しく英雄と呼んで過言ではない。
なお令呪一画で邯鄲法の解禁、令呪三画で盧生として一時的な覚醒が可能となるが、それはセイヴァーの意志を捻じ曲げる行為であり、彼が英雄として在る根源そのものを凌辱する蛮行であることを忘れてはならない。
【マスター】
ニコラ・テスラ@黄雷のガクトゥーン
【マスターとしての願い】
聖杯戦争そのものの破壊。
【weapon】
フランクリン機械帯・フランクリン機械腕:
テスラの雷電能力を制御し、時に拡大応用させる碩学機械式ベルト。
電界の剣:
周囲に浮かぶ5本の剣状の発光体を操る。
その核は深淵の鍵と呼ばれ、その正体は黒の王(ニャルラトテップ)の暗黒物質そのもの。神々の残骸である。
【能力・技能】
バリツ:
遠い過去に友より学んだ武技であるとのこと。よく分からんがすごい。
碩学:
電気学を修めた天才碩学。
《蒸気王》チャールズ・バベッジと《雷電公》ベンジャミン・フランクリンに師事した彼は世界でも最高峰の頭脳を持つ。
雷電魔人:
あらゆる電気・電力・電子を操るという異能。
雷の鳳と呼ばれる新大陸の祖霊から与えられた永劫の呪詛にして祝福。いわば神霊の権能そのものである。
亜光速による移動、大都市全域をカバーする索敵能力、電送による時間軸すら超越する特殊回避、雷化による透過、他者の精神操作、キロ単位の空間転移、電磁力による虚空跳躍、強靭な再生能力、完全な0秒思考に相当する高速思考と応用範囲は広い。専ら使われるのは雷電による攻撃。
雷電の一つ一つが神霊級の魔力行使であり、十万都市さえ鏖殺する黄金王や惑星をも滅ぼし尽くすクトゥルーの神体《星砕きし水の塊》すら一撃で打ち砕く。それは相手が非実体でも例外とはならない。
本来であるならば世界に存在しないはずの幻想である彼は人との縁が無ければ即座に消滅する運命にあるが、本聖杯戦争においては電脳世界であるからか、何かの力が働いているからか、それとも《世界の外側》にあるからか。理由は分からないが存在の確立に問題はない模様。
ただし、その影響か現在はある程度の制限がかけられている模様。
《世界介入》:
基底現実を限定的に書き換える、云わば世界改変能力の一種。
元から保有する再生能力と相まって、例え全身を砕かれ霊核を抹消され存在否定の咒を重ねがけされようと平然と復活できる。
ただし本聖杯戦争では上手く機能していない模様。
電気騎士:
第3次テスラ・コイル実験の折にテスラが製作した巨大な戦闘機械人形であり、雷の鳳が残した永遠の呪いの一つ。
普段は世界の果てに隠しており、フランクリン機械帯に5本の“深淵の鍵”を差し込むことで呼び出すことができる。
大味すぎる設計がたたってちゃんと完成しておらず、理論上は如何なる動力を以てしても動かすことができないが、テスラ自身が動力となることで、初めて“神経が通った”状態となって稼働する。
機械として動いているのではなく、テスラの電気エネルギーを全身に巡らせて無理矢理に動かしているだけ。
騎士の全身をかけ巡る雷電の擬似神経を動かすには弛まぬ集中が必要となり、雷電の身でなければ刹那の内に絶命してしまう。
雷電魔人としての権能を極限まで増幅させ、十万都市を鏖殺する薔薇の視線を更に億倍強化した攻撃すら防ぐ毎秒2万枚の雷電防御膜を構築し、専用の武装を獲得する。
基本的に対人や等身大の相手には使わず、超質量の存在と相対する場合にのみ使用する。
本聖杯戦争においては呼び出す際の消耗が上昇している。
【人物背景】
狂気なりし雷電王。正義を為すために世界中の犯罪組織を潰して回る怪人物《白い男》その人。
天才碩学であり、少年時代にはカダス北央帝国にて《蒸気王》チャールズ・バベッジに多くを学び、その後合衆国に渡り《雷電公》ベンジャミン・フランクリンに師事する。
20歳の時に行ったフランクリン雷電実験の際に雷の鳳に接触。かの存在に無限の正義を為すことを誓い、鳳の呪いを一身に受けた。
そして1902年、ニューヨーク現象数式実験を阻むために《時計人間》ロード・アヴァン・エジソンに戦いを挑むも敗北、アルカトラズ時間牢獄に囚われる。
正義を為せなかった自分に生きる価値はないと時間牢獄の中でうなだれていたが、そこを訪れた黄金に輝く薔薇の魔女に叱咤・激励されたことで奮起。
自身の助けられなかった数百万の100倍の人々を助けると誓い、活動を開始。最初に《血塗られた舌》と呼ばれる邪神崇拝集団を壊滅させた。
「私は貴女より祝福を賜った。
なれば、私は、此より先は何者にも屈しはしない」
「たとえ、万象が立ち塞がろうとも」
ちなみに御年92歳である。
【方針】
聖杯戦争の破壊。
投下を終了します
新企画立ち上げお疲れ様です。
拙作でございますが、御祝儀代わりに投下いたします
De profundis clamavi
われ深き淵より汝を呼べり
.
1:
最強とか、最高とか。
そう言った称号を約束されて生まれてくると言うのは、どんな気持ちなのだろうか。
その事実を、誇るのか。それとも、重圧から来るプレッシャーで、潰されるのか?
彼女の場合は、そのどちらでもなかった。最強或いは、決戦兵器と言う名目で生まれて来た彼女は、自身の出自に寂しさを感じていた。
『大和』、と言う名前は、この女性には相応しくないのかも知れない。
皮膚の下の血管が透けて見えそうな程白い、玉の肌。余分な贅肉など欠片も見当たらない、スラッとした身体つき。
それでいて豊満で女性的な乳房。何よりも、優艶な女性美を匂わせるその、可憐な顔立ち。育ちの良さが窺い知れようと言うものであった。
このような女性には、もっと相応しい名前があるだろう。花子と言う在り来たりな名前ですら、この女性を表す名であると言うのなら、それに恥じぬ輝きを持つに相違ない。
なのに彼女の名は、大和なのだ。そう、彼女は艦娘だから。帝国海軍に於いて、最強かつ来たるべき戦争に向けての切り札となるべき宿命を背負って生まれた大戦艦・大和の生まれ変わり、それが、彼女なのだから。
史実における大和の存在が、徹底的に秘匿されていたと言うのは有名な話である。
国民は愚か、帝国陸軍、果ては同じ同胞(はらから)である筈の海軍からも、帳簿操作や情報統制を駆使し隠し通したと言うのは良く知られている。
そして、徹底した情報統制の末に衆目に御披露目されたこの虎の子の戦績が、実は思った程に芳しくない事も、少し歴史を紐解けば解る事だった。
大和は、己の前身であった、大艦巨砲主義の申し子のようなあの戦艦の記憶を色濃く残していた。
遺していたからこそ、深海棲艦との戦いの時ぐらいは、華々しく活躍し、前世の無念を晴らしてやろうと決め込んでいたのだ。
だが、戦う相手が米国の艦船から未知の怪物に変貌を遂げても、大和は大和であった。
彼女はこの場においても、決選兵器と言う扱われ方をされていたのだ。決選兵器、秘密兵器。聞こえは良いだろう。
しかしその実、こう言った名称と言うのは『平時に扱うには難のある面倒くさいもの』と言った意味が暗に込められているものだ。
結局、舞台が変わろうとも、彼女の扱いは、さして変わらなかった。何時来るかとも解らない『その時』を待ちながら、海面を走る白いさざ波を眺める毎日を過ごす。
一緒に戦い、友情を確認出来る相手もいないその日々に、大和は、もう慣れた。慣れる度に、心にぽっかりとした穴が空いて行き、寂しくなる。
艦娘とは、戦う事が第一義の存在である。
決戦兵器の名を冠した大和が自分が出張る程の戦いがないと言う事は、鎮守府は全く追い込まれていないと言う事を意味するに等しい。
それはそれで、良い事なのだ。良い事なのだが……これでは、最強と言う名前の意味合いも、廃れて来ると言う物だった。
決戦兵器、最強の戦艦。
そう言った名目で生まれて来た自分自身。戦えない『戦』艦と言う自らの在り方に思い悩んでいた、そんな時に、大和はこの街にやって来た。
名前も知らない街。辛うじて、生国である日本の街である事は解る。違うのは、この街には深海棲艦などと言う無粋な、平和を脅かす人類の敵がいないと言う事。
尚の事、これでは大和の存在など、お払い箱に等しい……と言う事には、ならなかった。
そう、彼女は知っている。自分はこれから、聖杯戦争と言う、深海棲艦が絡む代わりに、サーヴァントと言う超常存在を用いて戦う、神代の戦いに身を投じねばならない事を。
何で、とも、如何して? とも思った。この身と、授かった力は人類の敵である深海からの侵略者と戦う為のもの。彼ら以外に振るって良いものではないのだ。
初めて発揮する、戦艦大和としての力。それがまさか、このような局面で訪れようとは……。深く、深く、大和はその事を悲しんでいた。
「……貴方は、悲しくないのかしら?」
複雑な表情で、大和は目の前を見上げた。見上げなければ、全貌を見渡せなかった。
鋼の崖(きりぎし)のような物であった。
研磨されたステンレスを思わせる色の金属で出来た巨大な壁が、大和の目の前に広がっている。
間近で見ても解る程の重量感と、金属特有の冷たさが、彼女の身体にひしひしと伝わってくる。
この鋼こそが、大和の呼び出したサーヴァント。戦艦をモチーフにした艦娘である大和に相応しく、そのクラスはライダーであると言う。
そして奇しくも、このライダーが騎乗する物は、『ヤマト』、と言うらしい。サーヴァントは、マスターの性格や在り方に牽引されると言うが、自身の存在に呼応するように、このライダーも現れたのであろうか?
「……悲しいわよね、同じ『やまと』なんだから……」
「……だからね……」
言って、大和はその鋼の壁にそっと触れた。濡れた氷に直に触っているかのような、そんな冷たさだった。
このヤマトには、暖かみも無い。船員達が御国の為に命を掛けて戦ったと言う熱き思いのうねりも感じない。何処までも冷たい、鋼の肌触り。
「もう、おかしな事は止めましょう、ライダー。私と同じ名前の……海に沈んだ大和を駆る貴方に、人を殺すような真似は、して欲しくないの……」
その声は、お願いと言うよりは、最早懇願に似ていた。
鋼の壁は、黙して語らない。一陣の風が、大和を目掛けて横殴りに吹き荒んだ。孕まれた風の冷たさは、ライダーが否、と答えているように思えてならなかった。
.
2:
街の海沿いの砂浜に、正体不明の鋼の艦船が漂着したと言うのは、大きなニュースになっていた。
地球上の如何なる金属の種類にも該当しない、銀色に似た光を放つ、巨大な船。
帆を掛ける為のポールが存在する事からも、石油や石炭で動かない、前時代的な帆船の類と断定する向きもある。
向きもあると言ったのは、これが一目見てただならぬテクノロジーで作られている、とも受けとる事が可能であったからだ。
先ず素人目を引くのが、船体の表面を走る、光の筋。電気の様なエネルギーが船体内部で生み出され、用いられている事は明白であった。
それだけではない、造船に携わるプロフェッショナルが見れば、誰でも解るだろう。これほど大きな艦船を、金属で加工出来る等、ただの技術で出来る事ではない。
高度な造船技術を以て作られた船である事は、明白である。しかし、所在が解らない。何処の国の、何処の造船所で作られたのか、一切不明。
このような艦船を生み出した所は、この地球上の如何なるところにも存在しない、完全なる身元不明艦であった。
今や街の名物となった、このオーパーツ船を見ようと足を運ぶ地元住人や、他県の者も、どれどれと言った感じで見物しにくる者も多い。
街の自治体としては、観光がてらにお金を落としてくれる人物が大勢やって来てくれている為に、万々歳であった。
――それだけであったのならば、どれ程平和な事だったろう。
街にやって来るのは、物好きな見物人や船に興味のある、所謂マニアだけではない。
オーパーツだ未知の文明の漂着物だ、と言う噂が立つ艦船である。中が気になり、入って見たいと言う欲求を持った人間も少なくない。
それだけならばまだ可愛い方だ。中には、船の中に在るであろうお宝を、「ちょいと失敬」と言った風に頂戴する、トレジャーハンター気取りの物盗りもいる始末だ。
――誰もが寝静まった、深夜の二時を見計らってやってきた、この六人もそんな連中であった。
カーライトに照らされたその顔は、一様に若い。車を運転できる事からも、大学生の面々であろう。
彼らは他県からやって来た大学生で、遊びと言ったら飲み会麻雀ゲーセン旅行と、兎に角金のかかる男達であった。
そんなものだから、バイトで金を稼いでも万年貧困、奨学金も本来の使い方をせずに遊びに溶かす始末だ。
「今月も金ねーなー」、と愚痴っていた所に、この艦船の噂を聞いたのである。
当初は他県の話だし興味もないからスルーしていたのだが、ひょっとしたら凄い値打ち物が中に転がっているかも、と言う噂を聞き、彼らは車を走らせたのだ。
今ならこの船は誰の物でもない。所持者の存在しない漂着物なのである。誰も所有権を出張していない今がチャンスとばかりに、彼らは船内に忍び込み、
中に眠っているかもしれないお宝をゲットする、そんなつもりでいたのである。
「……すっげ、本当に光ってるぜ」
時事のニュースなどあまり見ない彼らは、一人でに船の表面が幾何学的な文様に光ると言う話を信じられないでいた。
だが、現実は彼らの目に映る光景の通り。何の動力で光っているのか一切解らないが、噂の通り、幽玄な光を船体の表面が走っている。
「まるで遺跡みたいだな……」、仲間の一人がそう呟く。確かに、そんな感じはしなくもない。いやもしかしたらこれは、船の形をした遺跡なのではなかろうか?
だったら尚の事、お宝が眠っていると言う物だ。気分はインディ・ジョーンズの映画の主人公宛らだった。
車のエンジンを切り、キーを抜き、彼らは意気揚々と船の方へと向かって行く。
……ベッと言う意味不明な声が、最後尾で響いた。
「転んだのかよオイ」、と思い、一番前を走っていた男が、振り返りライトを当てた。男につられて、残りの仲間も同じような行動をとる。
――一瞬、彼らは状況を理解出来ていなかった。同じサークルの仲間の一人が、身体を頭頂部から臍までを断ち切られた状態で、砂浜に前のめりに倒れていたのだ。
砂は血を吸い、トウガラシの粉の様になっている。呆然としていた男五人の内、二人の身体が、骨肉と様々な組織液を吹き散らせながらグチャグチャに吹き飛んだ。
頭上に、この無惨な事件の下手人が現れた。それは、鎌で出来た車輪とも言うべき姿をした器物で、鎌の刃の部分にカマイタチ状の風を纏っているのだ。
その車輪は高速で回転し、一人の仲間の方に向かって行った。ぷぎゅ、と言う声と同時に、彼の身体は頭頂部から股間まで真っ二つにされ、内臓を砂浜に零しながら死亡する。
漸く状況を呑み込めた後の二人が、酷く情けない声を上げて、倒けつ転びつ、その場から逃げ去ろうとする。
大量の火薬を搭載した手榴弾を近距離で喰らったかのように、後の二人の身体が爆散した。
彼の背後には、下半身が馬の様な生物で、上半身が牛の角を携えた鬼の様な生物で構成された怪物が、絵本に出てくる鬼が所有する金棒の如き獲物を振り抜いていた。
化物が、酷く醜い嘶きを上げた。
殺された男達の体躯の半分以下と言う矮躯の生き物が、殺された男達に殺到した。
ぐちゅり、ぐちゅり、ぶつり、がつり、と言う、意地汚い咀嚼の音が、誰もいない砂浜に鳴り響く。
男達は、死んで天国に赴く際に、果たして気付けたであろうか。この船が漂着してからの数日間、全く船の内部の様子に関する報道が成されなかった事を。
そして、この街の住人達は、気付けているのだろうか。船が漂着してからの数日間で、行方不明者の数が爆発的に増えて行っていると言う事実を。
鋼の船は、黙して語らない。
月の光よりも明るい、謎の動力源による光が、船体を走って行く。咀嚼音が止まり、静かな波がよせてはかえす音が響くようになった頃には、砂浜には肉の残滓も骨の欠片も、全く見当たらないようになっているのだった。
.
【クラス】
ライダー
【真名】
常闇ノ皇@大神
【ステータス】
筋力A 耐久A+(EX) 敏捷C 魔力A++ 幸運E 宝具EX
【属性】
混沌・悪
【クラススキル】
対魔力:EX(A+)
ライダー本人の値ではなく、正確にはライダーの宝具の値である。ライダー本体の値はカッコ内の通り。
ありとあらゆる、害意ある魔力的な干渉を跳ね除けるだけでなく、物理的な攻撃ですらも遮蔽する。
極めて高ランクの神性或いは、タカマガハラ由来の人物でない限りは、船に触れる事すらも出来ない。
騎乗:-
ライダーは騎乗の逸話を持たない。厳密には宝具に騎乗しているのではなく、宝具を乗っ取っていると言う形のライダーである。
そして、宝具を乗っ取ってこそいるが、ライダーはこの騎乗物を動かす事は出来ない。
【保有スキル】
無我:EX
ライダーは精確には人格を持った生き物ではなく、妖力と言うエネルギーが形を成した生まれた、力そのものである。
従って人間的な性格が存在せず、性質としては無機物のそれに近い。精神干渉をランク問わず全て無効化する。
妖怪創造:A+++
この世に二つとあり得ぬ古今独歩の闇の象徴、妖魔の絶対的君主と言われるライダーの圧倒的権能。
自らの魔力が許す限り、ほぼ無限大に妖怪を創造し、宝具である箱舟から外部に輸出させる事が出来る。
但し聖杯戦争の制限により、鬼や天狗と言ったレベルの妖怪を生み出すとなると魔力を消費。
サーヴァントに匹敵する強さを誇る、ヤマタノオロチやキュウビ、エキビョウに双魔神などを創造するとなると莫大な魔力を消費する。
致命的弱点:A+++
生前の逸話から来る、致命的な弱点。
このランクとなると、それは最早弱点と言う言葉ですら生ぬるく、それを突かれたその瞬間、因果律の定めにより消滅が確約されるレベル。
ライダーの弱点は、『太陽』とその光である。その光に晒された瞬間、ライダーはたちどころに消え失せる。
また、『太陽神』、或いはその神霊縁の英霊と交戦を行った場合でも、ライダーは敗北が定められている。
【宝具】
『希望と平和の船(箱舟ヤマト)』
ランク:EX 種別:対城宝具 レンジ:- 最大補足:1000〜(収容人数)
そもそもこの宝具は、神代の時代に、月に住んでいた民がタカマガハラの住民に対して与えたとされる巨大な鋼の船である。
この宝具には謎が多く、月の民が何故タカマガハラの住民達にこの船を寄与したのか、未だに明らかになっていない。
解っている事は、ライダーがこの宝具を乗っ取った事で、船内は様々な妖怪の巣窟になっていると言う事と、この内部の妖怪が嘗て、
タカマガハラの住民を残さず食い殺したと言う事だけである。ライダーは平時はこの船の内部に籠り、様々な妖怪を産みだし、外部にそれを放ち続けている。
箱舟が有する魔力は膨大、生半な事では枯渇する事はないが、スキルにもある通り、無計画にサーヴァント並の強さの妖怪を生み出した場合にはその限りでない。
非常に頑丈で、A+ランク以上の対城宝具ですら破壊する事は困難ないし不可能なレベルだが、万が一破壊されるような事があった場合には、
太陽の光を致命的な弱点とするライダーは、最早消滅を免れないであろう。
『常闇ノ皇』
ランク:EX 種別:対界宝具 レンジ:1〜 最大補足:1〜
世界に闇と妖怪を振り撒き、悪徳と混沌の世を生み出そうとする暗黒の君主。全ての妖怪を統べる百鬼夜行の主。
ライダーは厳密には妖怪ではなく、妖力と言うエネルギーその物の様な存在で、妖怪ですらも有している筈の自我や意識が存在しない。
その姿はおどろおどろしい姿とは対極にあるような、無機的な、機械やカラクリ仕掛けを思わせるような球体と言った風情で、生物的なイメージを欠片も有さない。
ライダーは交戦状態になると自らの身体を、それこそ機械仕掛けの様に変化させ、内部に搭載された神秘と科学の融合体の様な兵装で相手を殲滅する。
但しこれらの戦闘能力は船内、或いは、夜間の外部でしか発揮出来ず、太陽の光を弱点とするライダーは日中の外部ではその戦闘力を発揮出来ない。
また伝承の通り、太陽神或いは、太陽神の庇護を受けた人物との交戦の場合でも、ライダーは因果律により敗北が定められている。
【weapon】
自身の身体の中に備わる兵装。
【人物背景】
嘗て、ナカツクニのカムイはラオチ湖に漂着した、箱舟ヤマトの最奥に君臨していた妖怪達の君主。
彼はナカツクニに漂着してから、ある男を探す為に妖怪を生み出し続け、その人物の捜索の為に魑魅魍魎達をナカツクニに放出し続けた。
これこそが、ナカツクニの異変や凶事の原因であり、常闇ノ皇は世界に起る怪異の元凶となった存在である。
最終的に、大いなる慈母と彼の戦友であり、常闇ノ皇自身が探し求めていた天神族の男の手に打たれ、敗れ去るのであった。
【サーヴァントとしての願い】
???
【基本戦術、方針、運用法】
無敵に等しい対魔力と防御性能を誇る箱舟ヤマトに籠っている限り、原則全く手出しが出来ないライダー。
しかし、日光を受けたその瞬間敗北が決定するライダーの為に、どちらかと言えば運用方法はキャスターのそれに近い。
内部に籠り妖怪を生み出し続け、外部に混沌を生み出す事が仕事のライダーである。
但し、マスターはその性質上船内に立ち入る事は出来ず、無防備な姿を強要してしまう。
単独行動スキルを持たないライダーは、マスターを殺された時点で実質詰みである為、如何に知性を有した妖怪を産みだし、彼女を守る事が肝要となるであろう。
【マスター】
大和@艦隊これくしょん(アニメ版)
【マスターとしての願い】
戦艦として活躍はしたい。しかし、このような活躍は望むべくではない
【weapon】
艦装は、装備させて貰えていない
【能力・技能】
海上での戦闘に優れている。尤も、今は発揮出来ない。
【人物背景】
決戦兵器と言う触れ込みの、大和型の戦艦の艦娘。長門型の二名よりは役に立つ
吹雪と出会う前の時間軸からの参戦
【方針】
ライダーには大人しくしてもらいたいが……
投下を終了いたします
皆様投下乙です。
>アナスタシア&キャスター
アーニャちゃんかわいい。
それはさておきまして、とても綺麗な雰囲気の作品でした。
アーニャはどれだけ速く答えを出せるかで、今後の命運が変わりそうだなあ……。
>ニコラ・テスラ&セイヴァー
格好いい。とにかくその一言に尽きる主従だ……
セイヴァーの方は一般人も同然の状態でありながら、経験だけを頼りに戦うというのが渋くていいなあ。
テスラは鱒としてはかなり強力なので、セイヴァーが鯖としては無力とはいえ結構いいチームとして活躍するかもしれませんね。
>大和&ライダー
まさかの大和繋がり。
自分と同じ名の船を駆る存在だからこそ、殺戮に同意できない大和が切ない。
ライダーは非常に強力ですが、大和の方は実質戦う技能を取り上げられているのでそこが厳しいかもしれませんね。
余談ですが、新宿聖杯の方も毎回楽しみに拝読させていただいております。超面白いです。
私も投下します。
夢を見ていた。
とても長く、幸せな夢だ。
好きな人と結婚して、子供ができた。
手のかかる長男しんのすけと、まだ言葉も喋れないのに、既に変わり者の頭角を現しつつある長女ひまわり。
毎日ヘトヘトになるまで残業して帰るのはなかなかどうしてハードだが、家で家族が迎えてくれると疲れも吹っ飛ぶ。
そりゃ時には喧嘩もする。離婚騒動なんてのもあったし、信じられないような事件に巻き込まれたこともあった。
喉元過ぎれば熱さを忘れるのことわざ通り、今では全部がいい思い出だ。
笑ったことも泣いたことも、ドキドキしたことも怖かったことも。
全部が、頭の中に思い出として残ってる。
絶対に忘れないし忘れられるような薄っぺらなものじゃ到底ない、かけがえのない家族の記録。
俺は――『野原ひろし』だった。そう思っていた。
でも違ったんだ。
あいつらにとっての『野原ひろし』は、俺じゃなかった。
俺が生きてきた人生も家族との思い出も、何もかも、本物のコピーでしかなかった。
俺にとってのしんのすけは世界に一人だけだ。
俺にとってのひまわりも、世界に一人だけだ。
綺麗なお姉さんにどれだけ鼻の下を伸ばしたって、俺の妻は野原みさえ、ただ一人だ。
けど、しんのすけにとっての父ちゃんは俺じゃない。
ひまわりのパパも、みさえにとっての『あなた』も、俺じゃない。
コピーなんかじゃなくて……本物の『野原ひろし』。それだけが、必要だった。――俺の居場所はそこにはなかった。
『野原ひろし』は――ビル壁に凭れて、機械の右手を見つめる。
あの時永遠に動かなくなったはずの身体(ボディ)は、どういうわけかまた動くようになっていた。
喜ぶべきことのはずなのに、どうしても喜ばしいとは思えない。
何故なら彼にはもうやるべきことも、やり残したこともないからだ。
決着は着いた。あの腕相撲に偽物の彼は負けて、本物の父は勝ったのだから。
それで偽物の役目は終わり。あとは本物と一緒に家族がいつまでも幸せで、笑っていてくれることを祈るばかりだった。
しかし、今、『野原ひろし』は生きていた。
身体が機械なことを鑑みると、再起動していた、という方が適切かもしれない。
曰く、聖杯戦争。
願いを懸けて潰し合う、物騒な戦いらしい。
バカバカしいと『野原ひろし』は吐き捨てた。
その悪趣味な漫画みたいな趣向もそうだが、その機会をよりによって自分へ渡してきたことに失笑が漏れた。
仮にその聖杯を手に入れたとして、何を願うというんだ。
『本物の野原ひろし』になりたいと願う? ――馬鹿を言え。『野原ひろし』は、かぶりを振ってそれを否定する。
自分が本物に成り代わるということはつまり、彼らにとっての父親を奪うことだ。
しんのすけ達を想っていれば、そんな行動に出ることなんて出来るわけがない。
それに……『野原ひろし』は負けた身だ。自分は野原家の一員じゃないと、敗北を通じて思い知らされた負け犬だ。
なら、潔く消えるのが格好いいってものだろう。情けなく縋りつくような真似をしようとは到底思えない。
『野原ひろし』は苦笑して、降参とばかりに両手を挙げた。
すると彼を追い立てていた黒づくめの暗殺者は怪訝な顔をし、今にも擲たんとしていた刀子を停止させる。
その言いたいことは分かる。要は、解せない、と思ったのだろう。
聖杯戦争に呼ばれておきながら、サーヴァントとやらを呼ぶこともなく殺される結果へ甘んずる姿勢が。
「心配しなくても、罠なんてねえよ」
聖杯戦争の仕組みに言いたいことはあるし、ろくでもないとも思う。
だが、願いを叶えたいという心を持つ連中の邪魔をするよりかは、さっさと退場した方がいいとも思った。
聖杯を手に入れても叶えたい願いはない。生き延びても、行く場所もない。
なのにいたずらに生き永らえて、まじめに願い事と向き合っている奴の障害になるなど――あんまりひどい話ではないか。
せめてやるなら一思いにやってくれ。そう言って、ひらひら手を振った。
暗殺者はやはり怪訝な表情を浮かべたまま、再び刀子を構えた。
それから、行き場をなくした機械の脳天めがけて、それをしなやかな動きで擲った。
と、同時のことだった。
二発の鋭い炸裂音が鳴って、『野原ひろし』を殺害せんとしていた刀子が粉々に砕け散った。
『野原ひろし』と暗殺者が同時に瞠目した。暗殺者が何が起きたのかを理解する前に、その首が胴から離れて捻れ飛んだ。
それで終わりだった。暗殺者の身体が粒子のように溶け始め、やがて虚空へ消えていった。
そして――路地の一角から機械の男へと歩み寄ってくる、小さな少女がひとり。
「――お怪我はありませんか、司令官(マスター)」
暗殺者を吹き飛ばした下手人とは思えないほど、幼い見た目だった。
年は高く見積もっても小学校高学年ほどだろう。
下手をすればもっと小さいかもしれない。そんな少女が、今、さも当然のように砲を放ったのを機械は見た。
諌める言葉は浮かばなかった。それに、きっと見当違いな言葉しかかけられないだろうと思った。
彼女は、『野原ひろし』を『司令官(マスター)』と呼んだ。こんな奇妙な機械をそんな風に呼ぶ者など、この作られた街の――聖杯戦争の舞台となる街の中には、きっと一人しか存在しない。
「……君が」
「はい。アーチャーのサーヴァント、名を『朝潮』と申します」
律儀に頭を下げ、真名を名乗る姿はまさしく利口な子供といった様子だ。
『野原ひろし』は、自身のサーヴァントと出会ったとしても態度を変えるつもりはなかった。
聖杯戦争をやる気はないから諦めてくれと、そう言うつもりだった。
しかし、現れたのは予想に反して小さな女の子。それは彼にとっても少なくない衝撃で――同時に、ある疑問を抱かせた。
「朝潮ちゃん――か。
朝潮ちゃんは、なんで聖杯が欲しいんだ?」
「…………」
不躾な質問だったかと少し後悔したが、どの道聞かないことには話が始まらない。
「ある戦争を、終わらせたいのです」
その言葉は、小さな子供が口にしたとは到底思えないほどの重みを孕んでいた。
「平和だった海は、水底から現れた『敵』によって奪われました。
そして私や……私の仲間達は、それから海を奪い返すために日夜戦っていました。
しかし――敵の侵食はあまりにも根が深かった。戦争が終わる気配はなく、散っていく仲間も多く出る始末」
もはや、それを終わらせるには――聖杯の力へ頼るしかないんです。
淀みなく言ってのける姿は、その突拍子もなく、それでいて重い事情が疑うべくもない真実であることを物語っていた。
『野原ひろし』は戦慄する。こんな子どもが戦場に立たされ、こんなことを言う世界があることに。
そして彼は自分の身勝手さを恥じた。考えてみれば当たり前のことだが、マスターとサーヴァントは一蓮托生の関係にある。聖杯をいらないと言って投げ出すのは勝手だが、それはアーチャーという少女の願いをも踏み躙ることを意味するのだ。
「……そっか。分かったよ」
『野原ひろし』は、自分の内に湧き上がってくる熱いものを感じていた。
聖杯戦争は間違っている。それでも、この子を見捨てて身勝手に勝負へ背を向けるのは『格好悪いこと』だ。
最愛のしんのすけからとーちゃんと呼ばれた男が、そんな真似をしていいはずがない。
……たとえそこに『ロボ』の枕詞が付いていたとしても、だ。
「んじゃ、まずはメシでも食いに行くか!」
「え……あの、サーヴァントに食事は――」
「はっはっはっ! 気にすんなって、子どもは食わねえと大きくなれないぞ!」
『野原ひろし』だった男の人生は終わった。
ここから先は延長戦だ。相変わらず聖杯にかける望みはないし、随分不真面目なマスターだと自分でも思う。
ただ。この小さなサーヴァントの願いは叶えてあげたいと――そう思うのだ。
【クラス】
アーチャー
【真名】
朝潮@艦隊これくしょん
【パラメーター】
筋力D 耐久D 敏捷B 魔力E 幸運B 宝具D
↓
筋力C 耐久C 敏捷A 魔力E 幸運B 宝具D
【属性】
秩序・善
【クラススキル】
艦娘:A
駆逐艦・朝潮が少女として転生した。
水上ではステータス以上の力を発揮することが可能である。
自己保存:E
危機的状況に際して、生き残れる可能性が上昇する。
【宝具】
『改装――朝潮改』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
更なる改装を瞬間的に施すことによって、自らのステータスを上昇させることが出来る。
一度この宝具を使用すれば、もう改装前の状態へ戻すことは不可能。しかし魔力消費が劇的に変わるというわけではない。
【weapon】
(平常時)12.7cm連装砲、61cm四連装魚雷
(朝潮改)10cm連装高角砲、61cm四連装(酸素)魚雷
【人物背景】
朝潮型駆逐艦のネームシップ。
バランスの取れた量産型駆逐艦として建造され、戦線を支えた。
彼女の進化改良型が後の陽炎型駆逐艦となる。
【マスター】
ロボとーちゃん@クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ!逆襲のロボとーちゃん
【マスターとしての願い】
聖杯はいらないが、アーチャーの願いを叶えたい
【weapon】
『ロボとーちゃん』
彼の体そのもの。様々な機能が内蔵されているが、無理は禁物。
【人物背景】
『野原ひろし』の記憶を持つロボット。
息子と触れ合い、もう一人の自分と戦い、そして負けた。
【方針】
聖杯戦争のノウハウはよくわからないが、とにかく安全第一。
投下終了です。
投下します
少女が歩むのは花の旅路。
いずれ現実を知り、苦悩するのが定めであろうとも。
世界の全てが絶望に溶けようとも――この少女騎士(リリィ)は希望に溢れている。
●
その町へ越谷小鞠が足を踏み入れたのは、まったくの偶然だった。
小鞠は魔術師ではない。
それどころか、魔術なんてものがこの世にあるとすら信じていないごくごく普通の女の子。
人と違うところといえば、ドが付く田舎に住んでいることと……歳の割に細(こま)い体をしていることくらいのもの。
だから彼女を『町』が選んだのは紛れも無い偶然の結果なのだ。
その悪魔じみた偶然がなければ、小鞠は一生、魔術だの聖杯だのといった単語とは無縁に暮らしていたことだろう。
しかし、小鞠は選ばれてしまったのだ。
0と1の方程式で構築された、その『町』に。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ……、」
幼く可愛らしい顔貌を不安と恐怖で歪ませて、越谷小鞠は見慣れない町並みを息を切らしながら駆け抜けていた。
通行人の体とぶつかることも多々あったが、いちいち謝っているだけの精神的余裕さえ今の彼女にはない。
だってまず、歩道を走っていて人とぶつかるということ自体が、小鞠にとっては珍しい事だったから。 ――ここ、どこ。走ったせいで喉が傷んで声にできず、心の中で彼女はそう問うた。
道はアスファルトで舗装されて、道路には自動車が何十台と行き来している。 コンビニが、スーパーマーケットが、雑貨屋がドラッグストアが病院が、そこかしこに立ち並んでいた。
一般的な価値観で都会と呼べるかどうかは別としても、小鞠の住む村に比べれば立派な大都会に見える。
どうして自分がこんな場所にいるのか、小鞠にはさっぱり心当たりがなかった。
記憶にあるのは、学校の大掃除に付き合わされてくたくたになって帰宅しようとしていたところまで。
迷いようもない何度も通った道であるのに、気付けば彼女はこの見知らぬ街へ迷い込んでいた。
「何でなのん……」
普段は出さないようにしている訛りが無意識に口から漏れてしまうほど、小鞠は狼狽している。
無理も無いだろう。 彼女が今着ている制服は、旭丘分校のものではなかった。
××市立××中学校と、ご丁寧に袖口に刺繍までしてある。
言うまでもなく、小鞠はこんな街に縁はない。
行った覚えもないし、第一前後の流れがあまりにも不自然だ。学校帰りに遠く離れた知らない街へ迷い込むなんて、それはまるで、この前妹から聞かされた怪談のようで……
「ひぃっ」
よせばいいのに自分で記憶を掘り返し、余計に顔を青褪めさせる小鞠。
よぎった想像を払拭すべく、乳酸で痛む足を押して走り出すが、その行動はことごとく裏目に出た。
ぜぇぜぇ肩で息をしながら走り続けること五分弱。気付けば人気のない、裏路地めいた場所。
がっくりと脱力して地面へへたり込み、小鞠はぐすぐすとべそをかき始める。
――そもそも、なんでこんなことになったのよ……。
考えても答えは出てこない。今日はいつも通り登校して、こき使われて、それからそれから……
「うぅ、なんか変な模様まで手に浮かんでるし……もうやだっ……」
聖杯戦争。 願望機を巡る争いに巻き込まれた証として、彼女の右手には、赤々とした三画の刻印『令呪』が顕れていた。
模様は見ようによっては花のようにも見え、そこそこ綺麗ではあるが、しかし状況が状況だ。
……どうしよう。
途方に暮れ、ぼうっと空を見上げる。
――その時、小鞠はごく当たり前の、こういう時に一番大事なことへ気が付いた。
「! そうだ、お巡りさん! お巡りさんなら、きっとお家まで帰してくれるわよねっ!」
実に安直。 この町にある学校の制服を着ていることなどについてはどう説明す るのかなど、一切考えてはいなかったが。
とりあえず小鞠は希望を見出し、地面を蹴るようにしてもう一度走り出した。
あまり超人じみた体力の持ち主ではないが、田舎育ちなだけはあってひ弱でもない。
何よりも、八方塞の現況に活路が見えたという喜びが彼女を大きく後押ししていた。
しかし、少女、越谷小鞠の受難はまだ終わりそうにもなく。
「わぶっ!?」
「……あぁ……? 痛えじゃねぇか、どこ見て歩いてんだコラ」
「あ……ご、ごめんなさいっ……!」
「おい、待てや。誰も行っていいなんて言ってねえだろ」
路地から飛び出る際、柄の悪い青年に思い切りぶつかってしまったのだ。
しかもぶつかった相手は、見るからに虫の居所が悪いようであった。
小鞠のあずかり知らないことだが、この青年は今、ちょっとした条例違反で切符を切られたばかりだった。
その矢先に不注意で衝突してきた少女がいるのなら、どうするかなど言うまでもなかろう。
背丈も小さく、いざとなれば気弱な小鞠は、八つ当たりのターゲットにするにはもってこいである。
「とりあえず、財布出せ。そしたら許してやるよ」
「え……」
「何意外そうな顔してんの? “今ならそれだけで勘弁してやる”って言ってんだぞ」
年も身長も上の異性に恫喝されている小鞠の姿は、心なしかいつもよりも更に小さく見える。
ふるふると小さく体を震わせて脅える彼女を、通行人は憐憫の目で見ながら、しかし誰一人助けようとはしない。
学校で習った通りに大声で助けを呼ぼうにも、これだけ密接されていれば逆に危険だ。 もし従わなければどうされてしまうのか。
……それから先を考えるのが怖くて、小鞠は静かに財布を取り出した。
震える手で、青年にそれを差し出す。
相手は乱雑に財布を奪い取ると、中身を改め始めた。 額が予想より少なかったのか不満気な表情をしていたが、丁度いいストレス発散にはなったのだろうか。
奪った財布を懐に仕舞うと、後は何も言わずに立ち去ろうとする。
どこの街でも当たり前に横行しているであろう、胸糞の悪い光景だった。
周りの大人達も、自分が巻き込まれるのを恐れて手出ししないのだから、これでは公開処刑と変わらない。
ぐすっ。小鞠が遂に堪え切れず、鼻を啜った――その時だ。
「待ちなさい」
凛とした――しかしまだ幼さを残した声が、去ろうとする悪輩を怖じることなく引き止めたのだ。
その声は、小鞠の背後から聞こえていた。
べそをかいて震える少女の頭にぽんと手を置くと、毅然とした面持 ちで彼女を庇うように前に出た人物。
彼女を一言で表現するならば、“可憐”に尽きた。
金髪を黒いリボンで纏め上げた、コスプレイヤーと見紛うような格好。
下手な容姿ですれば滑稽でしかないだろうそれは、しかしこの異国情緒漂う少女にはこの上なく似合っている。
「な……なんだてめえ。も、文句でもあんのかよっ」
「言うまでもありません。 女性、それも子女から金品を巻き上げるなど――恥を知りなさい! 」
「チッ……おい、一体どこの国のお嬢さんだか知らねえがよ……!」
衆人環視の中で、多少見た目が美しいとはいえ異性に罵倒されたことで逆上したのか。
青年は少女の胸倉を掴み上げた。
しょせん単なるコスプレ女。
どれだけ凄んだところで、男がちょっと脅してやれば簡単に折れる程度の器に決っている。
そう思っていたのだが、伸ばした手は簡単に少女の細腕で掴み取られ、そのままぐるりと捻られた。
こんな少女の、どこからこんな力が出るのか。
疑問符が浮かぶほどに彼女の力は強く、力押しではびくともしない。
予期せぬ逆襲に遭ったことと、これまで黙って傍観していた通行人たちからクスクスと笑い声が聞こえ始めたこと。
それらの要因が重なって、いよいよ気恥ずかしくなったのか、青年は小鞠の財布を乱暴に空いた方の手で軽く投げ捨てると、捻り上げる力が緩んだのを見計らって脱兎の如く逃げ出していった。
「まったく。何時の時代にも、ああいう輩は居るものですね――と。お怪我はありませんか、“マスター”?」
周囲からは、この奇矯な、それでいて勇気ある少女を讃える拍手がいつしか巻き起こっていた。
同時に見て見ぬふりをするのみだった自分達を民は恥じる。
次は自分がああしてみたいと、年端もいかない娘に憧れをさえ覚える者もあった。
そんな空気に満更でもなさそうにしながら、少女は小鞠をこう呼んだ。――“マスター”と。
初対面の相手にするには不可解な呼称。
しかし小鞠は、それすらどうでもよく思えるほどの感情に支配されていた。
綺麗というよりかはまだ“可愛い”と称するのが正しいだろう顔立ち。
お人形のようにシミ一つない肌――けれど何よりも、自分より大きな、怖い男の人に果敢に立ち向かうその姿が。
「――か」
「?」
まだまだ夢見がちな女の子、越谷小鞠の目には、とてもとても眩しく、何より――
「かっこいい……!!」
“格好よく”写っていた。
●
鞄の中にあった見覚えのない学生証に目を通すと、小鞠は至って簡単に、自分の家へと辿り着くことができた。
……もちろん、“元の世界の”越谷小鞠の家ではなかったが。
それでも家族構成はまったく同じ。
騒がしくも憎めない妹と、怒ると怖いが家族思いな母と、寡黙で頼れる兄が、いつも通りに小鞠を待っていた。 遅れたことに小言を言いつつも優しく出迎えてくれた母に少し謝って、家族団欒の夕食を摂る。
普段通りの自分でいられたか今ひとつ自信がなかったが、どうにかそれをやり過ごして。
――自分の部屋へ戻る……もとい部屋を“訪れ”て、そこでようやっと小鞠は一息つく。
「セイバーさん、居ますか?」
「はい、居ますよ。……やっぱり、聖杯が用意した日常には慣れませんか?」
「まあ、そうですね……いっそ、私の知る夏海達と完全に違っていてくれたら割り切れたかもしれませんけど……」
わずかな時間を共にしただけだが、この『越谷家』では確かに小鞠の知るままの家族達が暮らしていた。
会話の内容こそ少し違ったけれど、それでも一人ひとりの性格から癖まで、そっくりそのまま一緒だった。
これでは、偽物とはいえ蔑ろにできない。小鞠の胸中を察してか、少女……セイバーも静かに唇を噛んだ。
「あ、セイバーさんが気にすることじゃありませんよっ! よく分からないけど、多分私が悪いんだと思いますし……」
小鞠はセイバーに助けられてから、家へと向かう道中で自分の置かれている状況を聞かされた。
聖杯戦争。
どんな願いでも叶えることのできるという、魔法のようなアイテムを巡ったその名の通りの『戦争』。
どうやらセイバーの話によると、小鞠はそんな恐ろしい催しへと巻き込まれてしまったらしい。
――願いを叶えるなんて余計なお世話だ、と思わずにはいられなかった。
自分には戦争をしてまで叶えたい願いなんてないし、第一今のままでも十分幸せな暮らしを送れていたのに。
「でも安心してください。マスターは私が護ります。それで必ず、本当のマスターの家へと帰してみせますから」
「セイバーさん……!」
「あ……えっと、自分で名乗っておいて何なんですけれど」
表情を輝かせて見上げる小鞠に、セイバーは少しばつが悪そうに言った。
「実は私、まだ剣士としては半人前なんです。なので、どうか“セイバー・ リリィ”とお呼びください」
「セイバー……リリィ、さん?」
「はい。改めてになりますが、これからよろしくお願いしますね。私のマスター、コマリ」
【クラス】
セイバー
【真名】
アルトリア・ペンドラゴン(リリィ)@Fate/Unlimited Codes
【ステータス】
筋力C 耐久C 敏捷B 魔力A 幸運A+ 宝具B
【属性】
秩序・善
【クラススキル】
対魔力:B
魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。
大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。
騎乗:C
騎乗の才能。大抵の乗り物、動物なら人並み以上に乗りこなせるが、 野獣ランクの獣は乗りこなせない。
【保有スキル】
直感:B
戦闘時、つねに自身にとって最適な展開を感じ取る能力。
視覚・聴覚に干渉する妨害を半減させる。しかし、勘がいいのも考え物。
とにかく目に付く人の悩みを敏感に感じ取ってしまうため、会う人会う人、つい手助けをしてしまう事に。
魔力放出:A
武器ないし自身の肉体に魔力を帯びさせ、瞬間的に放出することによって能力を向上させる。
いわば魔力によるジェット噴射。強力な加護のない通常の武器では一撃の下に破壊されるだろう。
花の旅路:EX
後年の騎士王と呼ばれる時代と比べ、まだまだ半人前の騎士。
全体的に能力は低下しているが、その分マスターに要求する魔力負担も軽い。
宝具を使わない通常戦闘に限り、本来の三分の一の魔力供給で活動できる。
【宝具】
『勝利すべき黄金の剣』
ランク:B(条件付きでA+) 種別:対人宝具
カリバーン。
本来は王を選定するための剣。
対人宝具の『対人』は敵ではなく、これから所有するものに向けられたもの。
その持ち主が王として正しく、また完成した時、その威力は聖剣に相応しいものとなる。
本来、カリバーンは式典用のもの。これを武器として用い、真名を解放すればエクスカリバーと同規模の 火力を発揮するが、その刀身はアルトリアの魔力に耐えられず崩壊するだろう。
【人物背景】
理想の王になるため、日々研鑽する浪漫の騎士。
まだ半人前なので少女らしさを払拭できず、その心も夢と希望で満ちている。
諸国漫遊時のパーティーは義兄であるサー・ケイとお付きの魔術師マーリンで、 たいていアルトリアのお節介から始まり、マーリンのひやかしで大事になり、ケイが尻ぬぐいをするというものだった。
【サーヴァントとしての願い】
マスターを聖杯戦争から脱出させる。
【マスター】
越谷小鞠@のんのんびより
【マスターとしての願い】
本当の家へ帰りたい
【weapon】
なし
【能力・技能】
なし
【人物背景】
のどかな田舎の村で暮らす中学二年生。
しかし体つきが非常に幼く、身長はおよそ130に満たないくらい。
色々と細い(こまい)ことから、愛称は『こまちゃん(本人非公認)』。
【方針】
脱出狙い
手間取りましたが、投下終了となります
投下します
『世界の頂点に立つ者は! ほんのちっぽけな「恐怖」をも持たぬ者ッ!』
『最高に「ハイ!」ってやつだアアアアアアハハハハハハハハハハーッ!』
『不死身! 不老不死! スタンドパワー!!』
『過程や、方法なぞ、どうでもよいのだァ――――ッ!!』
『お前は今まで食ったパンの枚数を覚えているのか?』
『「波紋」? 「呼吸法」だと? フーフー吹くなら……、 このおれのためにファンファーレでも吹いてるのが似合っているぞッ!』
『カエルの小便よりも……、下衆な! 下衆な波紋なぞをよくも! よくもこの俺に!!』
『猿が人間に追いつけるかーッ!』
『俺は人間をやめるぞ! ジョジョ――――――ッ!!!』
『俺は人間を超越するッ! ジョジョ、お前の血でだァ――――!!』
◆
◆
ディオ・ブランドーは聖杯戦争を下らない遊びとしか思えなかった。
これがウインドナイツロッドでジョナサン・ジョースターを待っている頃ならそうは思わなかっただろう。
だが今は違う。
今はそんな児戯に付き合っている暇はない。
どんな願いでも叶う聖杯?
それが事実だとして、何故それをたまたまここに来たような奴にくれてやるのだ?
そんな胡散臭いものより手に入れる物がある。
それはジョナサン・ジョースターの肉体だ。
このディオを、何世紀にも生きるはずの帝王を首だけのみじめな姿にしたそんな男の肉体だ。
だからこそディオは言う。
「ふざけるな……」
だからこそディオは叫ぶ。
「こんな所で、こんなどこかも分からぬような場所でッ! このディオが!!」
「何言ってんだコイツ」
「貴様が何者だろうと、ここで終わりだよ、化物」
ディオ・ブランドーは現在、聖杯戦争参加者のマスターとサーヴァントに襲われていた。
勿論ディオとて抵抗しなかったわけではない。
だが首だけの状況では攻撃手段に乏しいうえ、唯一と言ってもいい攻撃手段もはっきり言って躱されやすい部類の物だ。
敗北間際、己の宿敵に向けて初めて撃った一発ですら躱されてしまった代物なのだから。
しかしディオは諦めない。まだ己のサーヴァントが来ていないから。
他者をあてにするなど本来は拒絶したい種類の話だ。
利用するならまだしも、己の命運を預けるなど冗談ではない。
「しかし首だけで喋るとか、何なんだ?」
「恐らく吸血鬼か何かだろう」
「まあ何でもいいや、さっさととどめを差しちまおう」
そんなディオの心中も知らず会話を続けるマスターとサーヴァント。
主従二人はいつでもディオのとどめを差せるというそんな場面で
「それは困る」
1つの闇が舞い降りた。
声を聞いた瞬間二人は、声がした方に振り向く。
そこに居たのは一人の男だった。
2メートル近い身長に黄金色の頭髪。
顔は影になって見えない。
にもかかわらず透き通るような白い肌を持ち、男とは思えないような妖しい色気を漂わせていた。
その男を見た瞬間に二人は直感する、この男はサーヴァントだと。
「私はアサシンのサーヴァント。そして君たちが殺そうとしている男は私のマスターでね、殺されるのは困る」
自らの直感が正しいと理解した主従は、アサシンに向かって構える。
だがその刹那
「無駄だ。『世界』」
という一言と共に、マスターとサーヴァントの腹に穴があけられていた。
「何だとッ!?」
これを見ていたディオは驚く。
何故ならば、アサシンが攻撃した瞬間がまるで見えなかったのだから。
これほどの従者、こんな戦いの間だけと言うには惜しい。などと考えていたのだが次の瞬間考えが一変する。
見えたのだ、今まで影になっていたアサシンの顔が。
そして分かってしまった、アサシンの正体に。
そしてアサシンもこちらの正体に気づいている。
「君は、ディオ・ブランドーだね?」
だからこの台詞はただの確認だ。
「そういう君もディオ・ブランドー」
自らの相棒が、自分であるという事の。
【クラス】
アサシン
【真名】
DIO@ジョジョの奇妙な冒険 Part3 スターダストクルセイダース
【パラメーター】
筋力B 耐久C 敏捷C 魔力D 幸運B 宝具A
【属性】
混沌・悪
【クラススキル】
気配遮断:A
自身の気配を消す能力。
完全に気配をたてばほぼ発見は不可能となるが、攻撃態勢に移るとランクが大きく下がる。
【保有スキル】
吸血鬼:C
人の血を吸い生きる化物の総称。
強い力と並はずれた耐久力を持ち、さらには寿命という物がなくなる。
ただし紫外線と波紋で灰になる。
カリスマ:A
軍団の指揮能力、カリスマ性の高さを示す能力。
彼のカリスマは悪人限定だが、従う物は尋常ではないほどの忠誠を誓う。
具体的には、用済みと判断され始末されそうになっても裏切らない、生き血が必要だと言われると躊躇なく自らの首をはねる、等。
【宝具】
『世界(ザ・ワールド)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1〜10 最大補足:-
傍に立つというところから、スタンドと呼ばれる人型の超能力の像。
DIOのスタンド『世界』は時を9秒ほど止める事が可能であり、止まったときの中を動くことができるようになる。
これらを認識するためには、スタンドもしくは別の方法で時間を止められることが必要である。
ちなみに、スタンドは本来スタンド使いにしか見えないが、本聖杯戦争ではマスターとサーヴァントには視認可能となっている。(NPCには見えない)
『全てはこのDIOの為に』
ランク:D 種別:対物宝具 レンジ:0 最大補足:???
ナイフ、道路標識、ロードローラーなどを武器として扱った逸話から生まれた宝具。
DIOが武器として認識し使用したものは、全てDランクの宝具として扱う事が出来る。
【weapon】
吸血鬼としての肉体、スタンド。
【人物背景】
生まれついての悪にして100年の時を生きた吸血鬼。
【サーヴァントとしての願い】
日の光を克服し現世へと復活する。
【マスター】
ディオ・ブランドー@ジョジョの奇妙な冒険 Part1 ファントムブラッド
【マスターとしての願い】
絢爛たる永遠を生きる。
【weapon】
吸血鬼としての肉体、ただし首から上のみ。
【能力・技能】
空裂眼刺驚(スペースリパー・スティンギーアイズ)
高圧で体液を目から発射する技。
威力は強力で、石の柱を真っ二つにするほど。ちなみにアニメでは雲すら裂いた。
【人物背景】
ゲロ以下とまで称されるほどの悪で吸血鬼。
【方針】
こんな下らん戦いはさっさと終わらせる。
その為にまずは代わりの肉体を手に入れる。
投下終了します
皆様、投下乙です
自分も投下させていただきます
悪魔のごとき男がいた。
最下層の生まれだった彼は貴族の家に入り込み、その家の財産を乗っ取ろうとしていた。
だが計画成就まであと一歩というところで、その家の息子にしっぽをつかまれてしまった。
迫り来る破滅に焦燥感を募らせているさなかに、彼はこの地へ呼ばれた。
悪鬼のごとき男がいた。
男は人を斬る快楽に取り憑かれ、争乱が終わった後も闇の世界の住人として刃を振るい続けた。
やがて伝説の剣客と戦った彼は刀を持つべき腕を砕かれ、自ら命を絶った。
そして今、彼は悪魔のごとき男のサーヴァントとして現世に降り立った。
◇ ◇ ◇
(何で、何でこんな……)
男は自分に起きた事態が理解できず、ただただ怯えていた。
たしかに他のサーヴァントに拠点を突き止められ、奇襲を許したのは失策だった。
だが男のサーヴァントは、いち早く奇襲を察知した。
ならばそこからは、真っ向勝負になるはずだった。
しかし男のサーヴァントは突然動きを止め、一切抵抗を見せぬまま首を切り落とされてしまった。
そして彼自身もまた、サーヴァントと同様にまったく身動きが取れなくなっていた。
(逃げなきゃ、逃げなきゃ……。何で、何で動けないんだ!)
自分が取るべき行動は、逃走だとわかっている。
なのに男の脚は、まるで石にでもなってしまったかのように動かない。
「俺の宝具はどちらかといえばマスター対策で、サーヴァントには効かないことが多いんだがね……。
たまたまお前のサーヴァントは、効く類の英霊だったようだ。運が悪かったな」
血の滴る刀を手に、敵サーヴァントは悠然と男に歩み寄る。
「そしてお前も、心の一方を破れるだけの力はなかったようだな」
「こ……殺さ……ないで……」
ありったけの力を振り絞って口を動かし、男は命乞いをする。
それを聞いたサーヴァントはにやりと笑うと、ためらうことなく刀で男の頭部を叩き割った。
◇ ◇ ◇
ディオ・ブランドーは建物の外で、自分のサーヴァントが出てくるのを待っていた。
奇襲を仕掛けるには自分がついていくよりも、サーヴァントだけを突入させた方がよいと判断したためだ。
だがその間、自分が無防備になるのは避けられない。
ゆえに彼は物陰に隠れてできる限り周囲を警戒していたのだが、結局それは杞憂に終わった。
「片付いたぞ」
建物から出てきたサーヴァントは、おのれの主に歩み寄りながらそう口にした。
いたって落ち着き払ったその態度は、とても人を殺した直後には見えない。
「ご苦労。早かったな」
「殺しやすい相手だったからな。俺としては物足りないくらいだ」
素っ気ない言葉で返すと、サーヴァントはすぐに霊体化して姿を消してしまった。
(愛想のない男だ……。まあいい。別に俺たちは仲良しこよしになる必要はないんだからなあ。
しっかり俺の命令を聞いてくれるなら、それ以上は望まんさ)
ディオの元に召喚されたサーヴァントの真名は、鵜堂刃衛。
極東の国で凶刃を振るった殺人鬼だ。
普通の人間ならば嫌悪感を催すような経歴の持ち主だが、生粋の悪党であるディオにとってはむしろ都合がいい。
なまじ正義感の強い英雄などを引き当ててしまうより、自分と同じ外道のほうがよほど制御しやすいからだ。
(ジョナサンに計画を気取られ、俺の人生もはや崖っぷちかと思ったが……。
どうやら運命はこのディオに味方してくれているようだ。
聖杯を手にすればジョースター家どころではない、世界そのものを俺のものとできる!
結果として何年も費やしてきた計画が無駄になることに、思うところがないわけではないが……。
些細なことよぉぉぉぉぉ!!)
夜のとばりの中で、ディオは凶悪な笑みを浮かべた。
◇ ◇ ◇
(ずいぶんと燃えているようだな。まあ、けっこうなことだ)
霊体化したまま主を見つめつつ、刃衛もまた心中で呟く。
彼の目的は、戦いそのもの。ゆえに聖杯を手にするつもりはないし、戦いの場さえ用意してくれるなら主は誰でもいい。
まあ生前に雇われていた金の亡者よりは、今の主の方が多少は気が合いそうな気はするが。
(今のところ、ぬるい相手とばかり当たっているからな……。
早いところ、抜刀斎のような面白い戦いのできるやつと出会いたいものだ)
刃衛の顔にも、ディオに負けず劣らずの禍々しい笑みが浮かんでいた。
【クラス】アサシン
【真名】鵜堂刃衛
【出典】るろうに剣心(実写映画版)
【性別】男
【属性】混沌・悪
【パラメーター】筋力:B 耐久:C 敏捷:B 魔力:E 幸運:D 宝具:C
【クラススキル】
気配遮断:B
自身の気配を消す能力。完全に気配を断てばほぼ発見は不可能となるが、攻撃態勢に移るとランクが大きく下がる。
【保有スキル】
自己暗示:C
自身にかける暗示。精神攻撃に対する耐性を上げるスキル。
戦闘続行:B
名称通り戦闘を続行する為の能力。決定的な致命傷を受けない限り生き延び、瀕死の傷を負ってなお戦闘可能。
かつて戦場で死にかけながらも、奇跡的に息を吹き返した逸話に由来する。
【宝具】
『心の一方』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1-10 最大捕捉:30人
二階堂平法奥義。
目から発した闘気を敵に叩きつけ、恐怖心により相手の体を麻痺させる。
麻痺の度合いは調整が可能で、強くかければ肺まで麻痺させ窒息死させることもできる。
刃衛と同等以上の闘気を放てば、打ち破ることができる。
宝具となったことで多少の神秘は帯びているものの魔術の類ではないため、魔力関係の防御は意味をなさない。
もっともたいていのサーヴァントは十分な闘気を持っているため、武術の心得がなかったり精神力の弱いサーヴァントでなければ効果は薄いだろう。
【weapon】
○日本刀
かつて鳥羽伏見の戦いで緋村剣心が放棄し、その後偶然刃衛が手にした物。
斬られた者の怨念が染みついている。
【人物背景】
闘争と殺戮の快感に取り憑かれた、狂気の剣客。
明治維新後は悪徳事業家・武田観柳の用心棒となり、抜刀斎の名を騙り邪魔者を始末していた。
やがて本物の抜刀斎・剣心と邂逅。
死闘の末に利き腕の関節を破壊され、剣の道を断たれたことで自害する。
なお適正としてはセイバーの方が高いが、平行世界の刃衛が暗殺者として名を馳せていることや、
マスターであるディオの人格からの影響によりアサシンとして召喚された。
【サーヴァントとしての願い】
強敵と殺し合う。
【マスター】ディオ・ブランドー
【出典】ジョジョの奇妙な冒険
【性別】男
【マスターとしての願い】
世界をこの手に。
【weapon】
特になし
【能力・技能】
ラグビーの花形選手として活躍できるだけの身体能力を持ち、チンピラ程度なら一方的にたたきのめせる。
ただし、当然のことながらサーヴァントに対抗できるような力ではない。
【人物背景】
貧民街で生まれ育った、強い上昇志向とどす黒い心を持つ青年。
父の作ったつながりから名門貴族・ジョースター家に養子として迎え入れられ、長い年月をかけて家の乗っ取りを企む。
だがジョースター家の長男・ジョナサンに計画を看破され、追い詰められた末に石仮面の力で吸血鬼に……というのが本来たどるはずだった運命。
今回はジョナサンに乗っ取り計画を気づかれてから、石仮面の力を知るまでの間から参加させられている。
以上で投下終了です
直前の投下とマスターがかぶってしまいましたが、
特に被りを禁止するルールもないようですのでそのまま投下させていただきました
投下します
イタリア北東で生まれた鍛冶屋の息子は、後の人生においては勇敢な兵士となった。
剣林弾雨を乗り越えて、皆からの信頼を勝ち得た彼は、やがて、政治家となり、権力を束ね、
一国を意のままに動かして――、最後には残酷に処刑された、真っ逆さまに吊るされて。
※ ※ ※
何の変哲もない街中の通りを、褐色肌の少女がそこかしこに興味を散らしながら歩く。
周りの人々は視界に入ったその少女に思わず意識を寄せて、その幼げな様子から周囲に保護者の姿を探した。
けれども、そんなことは意に介さず、少女――リベッチオは、横目に通過する自動車を眺めながら、ふらふらと歩いていた。
(迷子に、なっちゃったかな?)
頭の片隅にそんな考えが少し浮かぶ。少なくとも、今リベッチオが見ている風景はリッベチオの知っている範囲の中では、存在しないもので、
そもそもこの場所にいること自体、目が覚めていきなりのことであった。けれども……リベッチオは頭を振る。
今のところは、そんなことは考えず、この街の様子を見て回ろう。寂しくなったころに、鎮守府の人が探しに来るだろうから、それで帰ればいい。
もし、探しに来てくれなかったのなら、一際泣いて、そのあと考えればいい。
イタリアの陽気さ、というべきか、今のところは現状をそんな風にとらえている少女が、やがて交差点に差し掛かろうとした辺りで――。
――ブレーキ音、制限速度を少し超えた程度の自動車が、突然現れた男を跳ね飛ばす。その通りの空気が凍り付いた。それを目の前で見たリベッチオも。
いや、彼女の場合はもっと深刻だったかもしれない。吹き飛んで行く男の姿を、艦娘の優れた動体視力でとらえたリベッチオは、壮年のイタリア人と見分けて、
……跳ね飛ばした運転手が、真っ青な顔をして車から降りてくる。周囲の群衆がざわつきだして、しかし、その男の姿は、どこからも消えていた。
※ ※ ※
「……ローマの親方は、吊るされて死んだよ」
人類の生存圏を犯す怪物、深海棲艦との戦いの最中。前線より救出された艦娘は、己をマエストラーレ級三番艦、リベッチオと名乗った。
陽気で活力にあふれる様子、その風貌の幼さも手伝って、監査役たちの頬も緩んでいった中で、ただその艦娘は、モデルとなった自身の轟沈後――
国とその独裁者がどうなったかを聞きたがった。伝えるのは酷だと考えていた監査役も、しかし隠しては艦娘としての活動に支障が出ると、
上層部からの命令に従って、その結末を、彼女に告げた。
聞き遂げたリベッチオは、大きな瞳から、その褐色の頬にぽろぽろと雫を落とし、やがて声を上げて泣き出した。
※ ※ ※
似ていないはずの壮年のイタリア人の男の死の幻影から、過去の己の親方を想起したリベッチオは、どうしようもなく寂しくなった。
その交差点から逃げるように走り出し、息が切れるまで走って、涙がこらえきれなくなったころにとぼとぼとした歩き方になって、
そのころには、リッベチオは、己が河川敷にいることに気がついた。
リベッチオは、流れ出る涙を必死で抑えながら、その場に腰を下ろすと、耐えるように流れる川の水を眺める。
水の色は、故郷の海の色とは似ても似つかない色で、リベッチオはまた少し寂しくなる。鎮守府にもなかったかつて経験したはずの、
故郷の気候がじんわりと恋しくなり始めていた。
「……帰りたいなあ」
小さくつぶやいたそのとき、リベッチオはパシャパシャと、人が水面を叩く音を聞いた。
断続的に聞こえて、だんだん弱くなっていくその音に、彼女は、……人が、溺れている?
すぐに周囲を見渡し、やがて、下流の方で溺れている男の姿を視界に収めると、リベッチオはわき目も振らず川に飛び込んだ。
(助けなきゃ、助けないと、リベは、リベッチオは――)
水流に沿って泳いで、男のところにたどり着いたときには、男はすでに動かなくなっていた。
けれどもリベッチオは、何とか男を助けようと、あまりにも体格も異なる相手を、必死に必死に引っ張ろうとした。
水を何度も飲んで、自身さえも溺れかけながらも彼女は、助けようとする手を緩めない。
そして、急に彼女の引っ張ろうとしていた重みの感覚が消えた瞬間、彼女は意識を失った。
リベッチオは目を覚ます。河川敷に戻っていて、目の前には髪に斑点のある溺れかけていた男が立っていた。男は、目を覚ましたリベッチオを見つめると、
「お前が、俺のマスターだ」
そう、告げた。
【クラス】
ハングドマン
【真名】
ディアボロ@ジョジョの奇妙な冒険
【ステータス】
筋力E 耐久E 敏捷E 魔力D 幸運E 宝具EX
【属性】
秩序・悪
【クラススキル】
吊られた男:
パラメーター、特に運に関してマイナス補正がかかる。
またこのサーヴァントは後述する理由により補正が増大しやすい。
【宝具】
『鎮魂歌の残響(ゴールドエクスペリエンス・レクイエム)』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:∞ 最大捕捉:1
ディアボロにかけられたすべてをゼロにするスタンド能力。この能力によりディアボロはあらゆる場所、あらゆる時、あらゆる世界で死に続け、
しかもそれには終わりがない。真実に到達することも。これ故、ディアボロの能力は著しく劣化している。
また、戦闘においても、敵対者の攻撃を受けた場合、容易に霊核を損傷するほどのダメージを受ける。
ただし、マスターとのラインによって、突発的な出来事によっては死ににくくなり、死んで消滅した場合も、アンカーにつながれる船のように、
マスターの傍に出現し続ける。また、この宝具は自立しており、マスターの魔力を消費しない。
『キングクリムゾン』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1〜30 最大捕捉:-
深紅の帝王、ディアボロの絶対的なスタンド。
時間を数十秒の間消し去り、ディアボロだけがその間自在に行動できる。
時の流れをディアボロの物だけにするこの宝具は本来はEXにも相当するが、
レクイエムによる精神の摩耗により弱体化しており、展開できる範囲、時間ともに狭まっている。
『エピタフ』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
永久に刻まれぬ墓碑銘。十数秒後の未来を予知する。
この能力をキングクリムゾンと併用することによってディアボロは無敵を誇っていた。
しかし、これも精神の摩耗により、数秒後の未来しか予知できない。
【保有スキル】
なし
【weapon】
キングクリムゾンのビジョンによる打撃。しかし弱体化により、筋力敏捷耐久すべてBまで落ち込んでいる。
【人物背景】
イタリアに勢力を持つギャング組織「パッショーネ」のボス。性格は冷酷非道で残忍であるが、自分の絶頂の位置を揺るがされることを恐れ、
詳しい経歴、人物像をすべて抹消し、もう一つの人格、ドッピオの影に潜んで生きてきた。
しかし、ブチャラティチームの裏切りとその後の追跡によって、正体が露見。その後、チームの一員たるジョルノジョバーナに敗北し、
その能力ゴールデンエクスペリエンスレクイエムによって、無限に死に続ける存在となり、精神も根本より折られた。
【サーヴァントとしての願い】
死に続ける地獄から解放されたい。
【基本戦術、方針、運用法】
戦闘どころか日常生活でも消滅の危険がある(復活するが)エピタフとキングクリムゾンで何とか対処し続けよう。
戦闘では実は宝具で攻撃を回避するより、受けて消滅した方が魔力消費的には優しい。
何度も繰り返すことによって敵の弱点を突くことも可能なはずだ。
ただし、この戦法は主従両方にとって、精神衛生上よろしくない。
とにかく、マスターのリベッチオだけは守り抜こう。
【マスター】
リベッチオ@艦隊これくしょん(ゲーム版)
【マスターとしての願い】
帰りたい。鎮守府にも、イタリアにも。
【weapon】
艤装は身に着けていない。
【能力・技能】
艤装がないので、そこらの小娘と同等である。
【人物背景】
イタリア海軍の駆逐艦、マエストラーレ級三番艦、リベッチオをモデルにした艦娘。
性格は陽気であるが、幼さも見て取れる。
【方針】
生き残る。また、救助したおじさんも死なせない。
投下終了です
投下します
まつくろけの猫が二疋
なやましいよるの屋根のうへで
ぴんとたてた尻尾のさきから
糸のやうなみかづきがかすんでゐる
『おわあ、こんばんは』
『おわあ、こんばんは』
『おぎやあ、おぎやあ、おぎやあ』
『おわああ、ここの家の主人は病気です』
―――萩原朔太郎 『猫』
▼ ▼ ▼
ぽつぽつと、夜の黒に明かりが灯る。
等間隔の明かりは住宅街から漏れる光で、遠めにはくすんだようにも見えた。
光点は遥か遠く、見えなくなるほど遠くまで並んでいる。
その中の一つ、大きめの邸宅の二階の窓に、その少女の姿はあった。
「〜♪」
少女以外に誰もいない部屋の中で。
未だ幼い子供の容貌をした少女、佐城雪美は膝に黒猫を抱き、安楽椅子に腰掛けていた。
長い青髪に、透き通るような白い肌。西洋の貴族階層を思わせる、シンプルながらも一目で豪華と分かる装いも相まって、アンティークドールにも見間違うような美貌を持つ少女だ。
彼女の膝上で体を丸める黒猫は、微睡むように目を伏せて、ただされるがままに少女に撫でられている。
互いに、声はなかった。
ただ、机の脇に備え付けられた電灯が、ブゥー……ン、とかすかな音を立てる。
心地のいい沈黙が、その空間に降りていた。
「……」
そんな、誰もが目を細めるであろう空間に、突如として影が落ちる。
それは、青年の痩躯であった。
言葉なく現れた青髪の青年は、唯一の光源である電灯の光が届かない部屋の隅に立ち尽くす。
「……おかえり……大丈夫…だった…?」
青年の姿を認めて、雪美は言葉少なげに無事を確かめる声を放った。
哨戒に出た彼の帰還を喜んで、結果ではなく、そう聞いた。
青年はただ、こくり、と頷くのみだ。言葉は発さない。
いいや、発せないのだ。彼は自分の意思で声を出すことができない。
それは人によっては円滑なコミュニケーションを阻害する要因になるだろうが……しかし、雪美にとってはさして大きな問題と思われてはいないらしい。
両者の間に奇妙な沈黙が降りたが、そこに気まずさはなく、変わらない居心地の良さが辺りに広がっていた。
「……怪我…したら…私、かなしい……まほうつかいでも…気をつけて……」
雪美の言葉に、青年は再度頷いた。彼が聖杯戦争に挑むサーヴァントである以上、確約はできなかったが、それでも少女の気遣いと信頼を無下にすることはできなかった。
そう、サーヴァント、青年はアーチャーのクラスで現界した仮初の亡霊である。
それはつまり、雪美という無辜の幼子が聖杯戦争に参加するマスターであることの証左でもあった。
この偽りの街に招かれた雪美がここまで落ち着くまで、およそ3日という時間を必要とした。
記憶を取り戻した当初、彼女の心は乱れに乱れた。生来聡明で、かつ他者を慮る心を持ち合わせる彼女は周囲に当たることこそなかったものの、それでも精神を病んだのではないかと疑われるほどに取り乱し、決して部屋の外に出ようとはしなくなった。
あるいは、彼女が利発さと聡明さを持ち合わせないような子供であったならば、あるいは押し付けられた役割を理解することなく死の気配を無視したまま変わらぬ日常を謳歌することもあっただろう。
けれどそうではない。齢10という幼さながらも現実を確と理解してしまった彼女は、しかしそれを受け入れるだけの心を持つことができなかった。
召喚された青年―――アーチャーもまた、暗然とする少女を慰める術を持ち合わせない。労わりの言葉も、勝利への激励も、彼は口に出すことができないのだから。
彼は真実どうすることもできず―――故に、ずっと少女の傍にいた。守るように、離れぬように、ただ一身に少女の傍へ。
雪美も彼を拒むことはせず、ずっと一緒にいた。寄り添うように並んで座る二人の間に満ちる沈黙は、心地のいいものではなかったけど、それでも気まずさは微塵も含んでいなかった。
……結局、3日の時間が経過して雪美が立ち直ったのは、あくまで彼女の強さなのだろう。英霊の称号が何になるのだと、アーチャーはただ自嘲する。
だがそれでも、3日ぶりに部屋の外に出た雪美は、アーチャーの手を取り、ほんの僅かだが微笑んでくれていた。
「……アーチャー…こっち、来て……」
暫し思考の海に埋没していたアーチャーに、雪美から声がかかる。
一体何事かと、アーチャーは召喚当時の記憶に思いを馳せていた思考を打ち切り、雪美の下まで歩いた。
おいでおいでと手招きする雪美に、アーチャーは屈んで目線を等しくすると、右手を両手で握られ、その小指に雪美の小指がかけられた。
所謂、指きりである。
「……アーチャー…約束……絶対、いなくならないで……」
たどたどしく指をきりながら、雪美はただ、そう言った。
声音には、いつにない真剣さが滲んでいる。いや、彼女は平時から冗談とは縁遠い素直な子であるのだから、それはすなわち、真剣以上の言葉なのだろう。
雪美は口数こそ少ないが、だからこそ誠実に人と向き合う子なのだと、短い付き合いでしかないアーチャーでも知っている。
できるだけ心配をかけさせまいとしてきたつもりだったが、たかが自分では上手くいかないかと、アーチャーは自らの愚を恥じる。
だから、指きりを交わす互いの右手を、アーチャーは左手で優しく包んだ。
確約なんてできないけれど。絶対なんて口が裂けても言えないけれど。
それでも、少女の気持ちに応えたいと、そう思ったから。
微笑む。ぎこちないけれど、安心してと言うように。
つられて、雪美も僅かに微笑んだ。
夜に咲く花のように、それは儚く美しかった。
「大丈夫……」
アーチャーに左手に、雪美もまた手を合わせて。
優しく、そっと呟いた。
「言葉にできなくても……伝わる気持ちは、ちゃんとあるから……」
二人は顔を見合わせる。それは、子供らしい一つの約束。
それは、まるで暖かな陽射しの風景のように、どこまでも優しく存在した。
何処かで、おわあと猫が鳴いた。
雪美の膝に眠る黒猫もまた、弓形に背を逸らせて、おわあと鳴いた。
夜の帳に、ざあざあと葉がこすれる音がした。
そこにはただ、静寂の残り香だけが満ちていた。
▼ ▼ ▼
地の底深く真理の歌が横たわり
数知れぬ言葉を原初から終末まで流し出す
かすかな影がわずかにひらめく
彼方に、蜃気楼のように
安らかな永遠の眠りにうち沈む
切り離された双子の夢のように
虚ろな深淵を純粋さが満たす
けれどもああ、つかのまの合一の後には逃れようもない切断
苦しみの光は世界を灼き
自然はゆっくりとねじ曲がった
もし償いを欲するならば、落ちた真理を非難せよ
罪と失われた翼の重さに耐えながら
【クラス】
アーチャー
【真名】
コリエル12号@BAROQUE〜歪んだ妄想〜
【ステータス】
筋力B 耐久B 敏捷B 魔力C 幸運D 宝具EX
【属性】
秩序・中庸
【クラススキル】
対魔力:B
魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。
大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。
単独行動:A
マスター不在でも行動できる。
ただし宝具の使用などの膨大な魔力を必要とする場合はマスターのバックアップが必要。
【保有スキル】
精神汚染:D
正体不明の罪悪感により精神が汚染されている。あらゆる精神干渉を確率で無効化する。
アーチャーはこの状態でも正常な思考を持つが、言語喪失によりまともな形での意志疎通は不可能となっている。
神性:A+++
神霊適性を持つかどうか。
アーチャー自身は紛うことなくただの人間であるが、過去に創造維持神と融合したという逸話を持つ。
そのため、只人でありながら最高ランクの神霊適性を有する。
投擲:B
手にした物品を弾丸のように放つ技術。
アーチャーとして現界したため、ランクが上昇している。
言語喪失:-
アーチャーは浄化能力と引き換えに言語能力を失っている。
肉体的な発音機能のみならず、「語りかける」という行為そのものを喪失しているため念話による会話も不可能。
ただし、彼が思っていることを他者が勝手に読み取ること自体は可能である。
道具作成:A--
本来はアーチャー自身に道具作成の技能は存在しない。
しかし彼が辿ってきた戦いにおいて常に使われてきた道具の逸話が昇華し、擬似的な道具作成スキルとなって現れた。
魔力を用いることで、彼が生前に使用した刑具・文様・骨・焼印・寄生虫などを具現、使用することが可能となる。
アーチャー自身の技能に由来するものではないため、作られた道具は使用しなければ数分程度で消滅する上、特定の道具を狙って作れるわけでもない。
ただし、作る道具の種類くらいは定めることができる。
【宝具】
『天使銃(Angel Bullet)』
ランク:EX 種別:対神宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:1
アーチャーが保有する巨大な銃。
神霊の《痛覚》そのものを弾丸として射出するため、神性スキルでのみ防御可能。神性スキル以外のあらゆる防御効果を貫通する。あらゆる異形を打ち倒した逸話から、魔の属性を持つ者に対しては必中・即死の効果を得る。
また、純粋な威力もランクに見合った絶大なものとなる。
ただし聖杯戦争において放つことができるのは5発までであり、かつこの宝具の使用には膨大な魔力を必要とする。そして、アーチャー自身はこの弾丸の射出を忌み嫌っているため、この宝具を使用するには令呪一画を併用するが現実的だろう。
そのため、通常は下記weponを主に使用することになる。
『浄化せよ、歪んだ妄想。遍く世界の創造を(イデアセフィロス)』
ランク:EX 種別:奉神宝具 レンジ:0 最大捕捉:1
創造維持神により与えられた権能。万物を浄化する神の御業。
アーチャーの攻撃には本来備わっている物理的な干渉力とは別に強い浄化の属性が宿っており、霊的・概念的存在に極限域のダメージを与えることが可能となっている。いわば行動の1つ1つが、高ランクの洗礼詠唱のようなもの。
またアーチャーによって殺害された者は「イデアセフィロス」と呼ばれる結晶体に変化する。これは存在を成す本質そのものが物質化したものであり、この状態になった者はこの宝具を超える神秘を用いなければ復活することができない。
イデアセフィロスは破格の魔力塊としても扱われ、魂喰いの10倍にも匹敵する魔力回復効果を得る。
アーチャーはこの宝具と引き換えに言語を失っており、この宝具が健在な内は言語を取り戻すことができない。
アーチャーは他にレプリカ、クリエイター、デミウルゴスのクラス適正を持つ。それはこの宝具、及び彼が辿ってきた軌跡に由来する。
【weapon】
歪んだ大剣:文字通り刀身の歪んだ剣。攻撃の度に幸運判定を発生させ、それに成功した場合筋力に+++の補正を加える。
【人物背景】
全てが歪んでしまった世界において、記憶を失い、虚ろな心に罪の意識だけを浮かべて彷徨う青年。
翼持つ男が告げた言葉に従い、彼は神経塔を降りていく。
異形と化す人々。歪んだ世界。何度死んでも気付けば塔の入り口に立つ自分。
何も知らず、何も分からない。それでも彼は狂うことなく、塔を降る。
己の罪を、世界を癒すために。
引き裂かれてしまった彼と、引き裂かれてしまった彼女の残滓を抱いて。
だから、狂わないで、彼は戦いを続ける。
狂わないで 狂わないで 狂わないで
狂わないで 狂わないで 狂わないで
狂わないで 狂わないで 狂わないで
狂わないで 狂わないで 狂わないで
狂わないで 狂わないで 狂わないで
けれど
きみが狂っているというのなら、ぼくも狂うよ
【サーヴァントとしての願い】
ただ、引き裂かれてしまった彼女と共に在りたい。
【マスター】
佐城雪美@アイドルマスター シンデレラガールズ
【マスターとしての願い】
元の世界への帰還。
【weapon】
なし
【能力・技能】
アイドルなので歌と踊りができる。身体能力も同年代と比べれば優れているかもしれない。
【人物背景】
京都出身アイドル。年齢10歳の小さなマドモワゼル。
寡黙な少女であり、趣味はペットとの会話。とはいえ根暗な性格ではなく、年相応に好奇心旺盛でとても可愛らしい。好物は苺。
可愛い。とても可愛い(重要)。
【方針】
アーチャーが単独で行動し、他の主従を蹴落とす形で動いている。
基本的には聖杯獲得によりマスターを元の世界に帰すことを方針に掲げているが、マスターである雪美は戦いそのものに若干忌避の感情を有している。
投下を終了します
新しい聖杯スレ立てお疲れ様です
私も投下させていただきます
某所からの再利用となり、ところどころ展開の焼き直しがありますがご容赦ください
棲地MIに存在する敵の主力機動部隊の撃滅を目的としたMI作戦。
提督が帰還し、秘書艦の長門含む艦娘が総力を挙げて参戦したこともあって、見事完遂された。
だが、聞くところによると赤城はその戦いで幾度となく轟沈する夢に苛まれ、それと同時に何か見えない力が働いていたらしい。
まるで『轟沈する』という運命を強制するような何かが…。
そして、それは他の艦娘にもいえることだったと暁型駆逐艦1番艦「暁」は思い知ることになる。
◆◆◆◆
MI作戦が終了してから何日か何週間か何か月か。
とにかくそれなりに時期が経ったある夜のこと、暁は夢を見た。
それはとてもおぞましい夢。
暁を先頭とする艦隊が作戦海域に到着した頃には既に日は沈み、とうに夜になっていた。
辺りはとても暗く、探照灯なしでは深海棲艦が近くにいることは分かっているのに狙いを定めることができない状況だった。
暁は意を決し、深海棲艦へ探照灯を照射した。敵の標的になるリスクがあるが、これしきのことを恐れていてはレディーではない。
光に浮かび上がった深海棲艦は人型に巨大な腕が生えた軽巡だった。
しかし、それが悲劇の始まりであった。
探照灯で浮かび上がった敵に向かって味方の艦娘が雷撃を2発食らわせたが、その深海棲艦は思いの外頑丈で仕留め損ねてしまう。
そしてその直後、暁に砲弾が直撃した。
「痛い」と感じる暇もなく、2発目を被弾。
更なる被弾に続く被弾。
探照灯の照射に対する代償はあまりにも重すぎた。
暁の華奢な体に容赦なく集中砲火が浴びせられた。
轟沈する刹那、暁の脳裏に鎮守府にいる妹達や他の艦娘が走馬灯のように浮かび上がる。
もう、あの楽しかった鎮守府の生活に戻ることはできない。
W島攻略作戦で轟沈した如月のように、自分も沈むのだ。
きっと妹達は自分の轟沈を知ったら悲しむだろう。
――そんなの、イヤ。
――こんな所で沈むの、嫌だよぉ…。
暗い深海へ沈みゆく中、暁が一心に生きることを望んだ、その瞬間。
"奇跡"が起きた。
◆◆◆◆
バタバタバタと階段を踏みつける足が登っていく。
その歩幅は狭く、足の短さからその持ち主の年齢はおよそ小学生くらいだろう。
実際、暁は小学生としか思えないほどにちんまりとした身長であった。
それとは正反対に腰まで伸ばされた髪が特徴的だ。
小さな身体には少し不釣り合いな大きな皿を両手で持ちながら、なんとかドアを開けて部屋に戻る。
「できたわよ!第六駆逐隊の特製カレー!」
暁が自身の部屋の中に向けて仄かな匂いの漂うカレーライスが盛られた皿を見せつける。
必要最低限な家具が目に入る質素な個室の真ん中には暁の体格にあった小さなテーブルがあった。
そして、そのテーブルを前に正座で暁を待っている男がいた。
その身体は真っ当な成人男性といった体つきで、ただでさえ背の低いテーブルが余計小さく見える。
白、黒、赤を基調とした軍服を身に纏っており、暁の知る司令官が着用している二種軍衣によく似ている。
旧日本の軍人然とした厳かな雰囲気を放っており、彼の存在だけで部屋はどこか時代離れした風情があった。
「カレーライスか、懐かしいな。陸軍にいた頃によく食したものだ」
「暁が一人で作ったのよ!えっへん!」
「困ったことにサーヴァントと成っても空腹だけはついてまわるらしいのでな。食事を提供してくれる主君に仕えることができるとは自分も運がいい」
「そうよ!暁がアーチャーの司令官なんだから!一人前のレディーとして扱ってよね!」
アーチャーと呼ばれた男は暁のサーヴァント――つまり、この二人は主従関係にある。
暁は、この聖杯戦争に参加しているマスターの一人。
本来は飲まず食わずでも問題ないサーヴァントにも関わらず空腹に悩まされていたアーチャーに、かつて妹達と一緒に作ったカレーをご馳走しているところだ。
やや大盛りのカレーライスがテーブルの上に置かれ、アーチャーはスプーンを使い、それをゆっくりと口に含む。
「…うむ、うまい。少し甘口だが、絶妙な味加減だ」
「当然よ!鎮守府のカレー大会で1番を取るほどおいしいんだから!」
「小童が作る料理にしてはかなりの練度だな」
「く、くわっぱ言うな!暁は一人前のレディーとして扱ってって言ったでしょ!」
「『こわっぱ』だが…気を悪くしたのなら謝ろう、すまぬ」
暁は先ほどの上機嫌とは一転してぽかぽかとアーチャーの肩を叩きながら「小童」とお子様扱いされたことにぷんすかと怒る。
ただ、自慢のカレーを褒められたことに関しては嬉しかったため、満更でもなさそうな表情だった。
「もう、暁と同じ名前の男の人にお子様扱いされるなんて…」
「自分が聖杯戦争の戦場に現界している以上、伝承に従うならば『アカツキ』と名乗るべきであろうと思ったのでな」
アーチャーの真名は、暁と同じ『アカツキ』であった。
大戦終結から半世紀後に北極海に浮上した潜水艦から当時の姿のままで現代に甦った戦時の人間。
「任務ニ失敗セシ時は全テノ電光機関を破壊セヨ」という命令を完遂するために命を賭して戦った護国の鬼。
暁に召喚され、その名を名乗った時は大層驚かれたものだ。
「聖杯戦争…」
「…怖いのか?」
「こ、怖くないわよ。暁だって深海棲艦と戦ったことだってあるし、艤装だって持ってるもん」
暁は願いを叶えるための命を賭した戦争の中にいることを思い出し、その四文字を言葉にする。
実際のところ、「怖くない」という言葉は半ば虚勢であることは否定できない。
鎮守府で楽しい日常を送っていたとしても、深海棲艦を目前にすればそこは命を落とす危険が付きまとう戦場。
聖杯戦争とて同じことだ。先の如月のように轟沈して、姉妹を悲しませるなど長女としてあってはならない。
脳裏に蘇るのは、聖杯戦争の舞台に召喚される直前に見た悪夢。
暁が轟沈する夢を最後に記憶は途切れている。
アカツキによれば、己の胸に秘める願いを強く望むことが召喚のファクターになり得るらしい。
あの夢の中で、暁は「沈みたくない」と願いに呼応して呼ばれたのだろうか。
「赤城さんも、あんな夢を見てたのかしら」
「お前がここに来る前に見ていたという夢か。その赤城という者の話から察するに予知夢の類らしいが」
「うん。夜戦で敵に探照灯を当てたら蜂の巣にされた、とってもリアルな夢」
あの戦いに暁が出撃してその通りになってしまったらと思うとゾッとする。
現に、MI作戦でも途中までは赤城が見た夢の通りに事が進んでいたという。
如月が轟沈した時、気丈に振る舞う睦月は見ているのがつらかった。
次は妹達が睦月のようになるのかと思うと、なんとしてでも正夢になることを回避したい。
「探照灯に夜戦…?いや、まさか――」
アカツキには悪夢の内容に思い当たる節があった。
元は旧帝国陸軍の高級技官だったアカツキだが、大戦時に戦局を覆し得る新兵器・電光機関の輸送任務中のことだ。
その任務が元で、アカツキは冬眠制御により半世紀もの間眠りにつくこととなる。
「お前は確か、「特III型駆逐艦1番艦の暁」と名乗っていたな?」
「え、ええ。それがどうかしたの?」
「…『暁』。その名を聞いたことがある」
アカツキの任務に同行していた海軍兵が話していたのを覚えている。
『第3次ソロモン海戦で果敢にも探照灯を照射したことで集中砲火を浴びて轟沈した駆逐艦があった』
とのことだ。
その駆逐艦の名は、「特III型駆逐艦1番艦 暁」。
目の前にいるマスターが初めてアカツキに名乗った名だ。
それを聞いた暁は愕然として目を見開いた。
「じゃ、じゃあやっぱり赤城さんが見てた夢は…」
「前例があるのならば、疑う余地はあるまい。その夢は、いつか現実のものとなるだろう。
大戦中、海軍に赤城という空母も存在していた記憶がある。…恐らくは、同じ名前の艦と同じ運命を辿るよう強制する力が働いているのだろう」
「…そんなの、嫌よ。このまま轟沈する運命なんて」
認められるはずがない。
わなわなと肩を震わせながら暁は言う。
そんなとき、聖杯に頼るという行動が暁の頭をよぎる。
聖杯戦争を勝ち残り、聖杯の力で強引に運命を変えてしまえばいい、と。
「聖杯なら運命を変えられるかもしれないけど…聖杯戦争って、戦争だから人がいっぱい死ぬんでしょ?」
「この世界においては主君と従者は一蓮托生。聖杯の奇跡に達するまで少なくない命が失われるであろうな」
多くの命を犠牲にしての願望機が起こす奇跡。
暁はそれを悪魔の囁きと断じて振り切る。
「…なら、暁は聖杯なんていらないわ。ただ、生きて鎮守府に帰る!」
自分の見た夢が正真正銘の予知夢――それを知っただけで暁は十分であった。
「こっちにも運命をひっくり返した『前例』があるんだもの。暁にもできないわけないわ!」
MI作戦も、1人だけではない、皆が挫けずに立ち向かったからこそ犠牲なき勝利を取ることができた。
赤城の運命を変えられたように、鎮守府の皆で力を合わせれば自分の運命も変えられるはず。
ならば、それを悲観してはいられない。ここで挫けては皆にまた子供扱いされてしまう。
だから、予知夢のことを皆に伝えるために。響に雷に電――吹雪や長門さんに運命に抗う力を貸してもらうために。
「アーチャーも力を貸してくれるわよね?」
暁は生きて鎮守府に戻る必要があった。こんなところで死んでは予知夢を見た意味がない。
「自分が召喚されたということは、まだ電光機関が存在するのか、あるいは従者として成すべきことを与えられたということか。
ならば聖杯の導きに従い、それらのために生を全うすべし。マスターの命令に背く気はない」
アカツキはマスターの方へ向き、頭二つほど小さい少女を見つめる。
その性格は誠実・硬派・実直。旧日本軍人の鑑ともいえる人物だ。
かつて自分を嵌めた上司の命令でさえも半世紀後に完遂せんとしたその精神は、サーヴァントとなった今も受け継がれていた。
「……憂きことの尚この上に積もれかし。限りある身の、力試さん。お前がその『運命』に抗うがために進むのなら、自分もサーヴァントとして最期まで戦おう」
暁の水平線に勝利を刻まんがために、『あかつき』二人の聖杯戦争が開戰しようとしていた。
【クラス】
アーチャー
【真名】
アカツキ@アカツキ電光戦記
【パラメータ】
筋力C+ 耐久C+ 敏捷C+ 魔力A 幸運D 宝具A
【属性】
中立・善
【クラス別スキル】
対魔力:C
第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。
大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない。
単独行動:C
マスター不在・魔力供給なしでも長時間現界していられる能力。
Cランクならば一日程度の現界が可能。
【保有スキル】
魔力放出(雷):A+
武器・自身の肉体に魔力を帯びさせ、瞬間的に放出する事によって能力を向上させるスキル。
アーチャーの場合、放出された魔力が『電光機関』により電力に変換、電光被服の性能を上昇させる。
電光体質:A
アーチャーの持つ、並外れた『電光機関』への適合性。
魔力放出(雷)及び『電光機関』の使用による消耗を最小限に抑えることができる。
アーチャーは古代アガルタ文明の末裔であり、『電光機関』の酷使で消滅することはない。
空腹:C
『電光機関』の長時間使用により、アーチャーはサーヴァントにも関わらず空腹を訴える。
極度の空腹状態に陥った場合、アーチャーの全パラメータが低下する。
逆に言えば『電光機関』による消耗は食事をとるだけで回復できることにも繋がる。
戦闘続行:B
決定的な致命傷を受けない限り生き延び、瀕死の重傷を負ってなお戦闘可能。
高級技官:B
生前、アーチャーが陸軍の高級技官を務めていたことによる技術の知識。
機械や兵器などの構造・機能を瞬時に把握することができる能力。
また、技術系の敵のスキルや宝具の能力を看破できる。
【宝具】
『電光機関』
ランク:B+ 種別:対人宝具 レンジ:―― 最大捕捉:1人
アーチャーが身に着けている電光被服(軍服)に装着されている特殊機関。
装備することで無尽蔵に電気を生み出すことができる。
チベットの秘境で発掘された古代文明アガルタの超科学技術を元に開発された。
強力な電力で敵の装甲を溶かし、発生する電磁波により電子兵器を一切無効化する。
他にも高圧な電気を弾にして飛ばしたり、敵に直接電気を送り込んで感電させるなど、様々な応用が可能。
電光被服を介して身体能力を強化し、筋力・耐久・敏捷のパラメータを上昇させることもできる。
電光機関の電気は生体エネルギー(ATP)を変換して得られるものであり、
使い続けた者は死んでしまうという欠点を持つ。
アーチャーはサーヴァントであるため、生体エネルギーの代わりに魔力を消耗する。
アーチャーは電光体質スキルにより消耗は少なく、魔力消費も微量なため、魔力低下を気にせず使い続けることができるが、
出力が大きければ大きいほど頻繁に空腹が発生するようになる。
『我が身は死して護国の鬼と成りぬ』
ランク:C 種別:対己宝具 レンジ:―― 最大捕捉:自分
かつて任務が解除されたにも関わらずその任務を遂行しようとしたエピソードに由来する宝具。
アーチャーの軍人然とした性格と、正義感・義務感に基づく行動原理自体が宝具となっている。
アーチャーに対する令呪は、一画あたり二画分の効力を持つ。
そのため、令呪による強化も通常の令呪の倍の影響を与える。
『神風』
ランク:A+ 種別:対戦車宝具 レンジ:1〜10 最大捕捉:1人
電光機関の出力を最大限まで解放し、極限まで強化された肉体とともに放つ、アーチャーの最終特別攻撃。
この宝具を発動している間のみ、上記の全パラメータにプラス補正が更に一つ付与される。
素早く、威力の高い連撃を放った後に敵を空中に打ち上げ、落下してきた対象を最大出力で生み出した衝撃波により吹き飛ばす。
破壊力は非常に高いが、あくまで『対戦車宝具』であるため、巨大な戦車を破壊することはできても『対城宝具』ほどの範囲・威力はない。
【weapon】
電光被服
アーチャーが装備している電光被服。
電光機関と組み合わせることにより超人的な身体能力を得ることができるようになる。
アーチャーのものは型落ちした旧型であり試作型だが、その分機能が単純で高出力で、使いやすい。
【人物背景】
帝国陸軍の高級技官。技術官僚ながら、体術にも長ける。
前大戦の終戦間際に同盟国からの新兵器輸送中に北極海にて死亡したとされていたが、
潜水艦に積まれていた冬眠制御装置により当時の姿のまま半世紀を生き延び、潜水艦の浮上により現代へ生還する。
アカツキは「任務ニ失敗セシ時ハ電光機関ヲ全テ破壊セヨ」という上官の命令を果たすために、各地を奔走する。
ただ一人生還してなお任務を遂行する様や「我が身は死して護国の鬼と成りぬ」というセリフに表されるように、軍人然としたストイックな性格の持ち主。
既に任務解除を言い渡されているが、独断で電光機関の破壊活動を行っている。
この事から、行動原理ははむしろ正義感、義務感に近いものとなっている。
【サーヴァントとしての願い】
サーヴァントとしての使命を全うする。
まだ世界に電光機関が残っているならば、それを破壊する。
【マスター】
暁@艦隊これくしょん(アニメ版)
【マスターとしての願い】
予知夢が見せた運命を回避する
【weapon】
艤装
【能力・技能】
他の駆逐艦の艦娘と同等
【人物背景】
大日本帝国が開発した、特Ⅲ型駆逐艦のネームシップ。
――が、深海棲艦に対抗すべく少女の形に当てはめられて再臨させられたもの。
竣工当初は漣と同じ第十駆逐隊に配属されており、こちらとの付き合いの方が妹達より長い。
妹達と同じ第六駆逐隊に編入されたのは、第十駆逐隊解隊後の1939年11月であった。
【方針】
鎮守府に戻って皆に協力を仰ぐために帰還する
以上で投下を終了します
【セイバー】3
沙条愛歌@Fate/Prototype 蒼銀のフラグメンツ & ジークフリート@Fate/Apocrypha
杉村弘樹@バトル・ロワイアル(漫画版) & 黒沢祐一@ウィザーズ・ブレイン
越谷小鞠@のんのんびより & アルトリア・ペンドラゴン(リリィ)@Fate/Unlimited Codes
【アーチャー】3
ロボとーちゃん@クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ!逆襲のロボとーちゃん & 朝潮@艦隊これくしょん
佐城雪美@アイドルマスター シンデレラガールズ & コリエル12号@BAROQUE〜歪んだ妄想〜
暁@艦隊これくしょん(アニメ版) & アカツキ@アカツキ電光戦記
【ランサー】0
【ライダー】2
吹雪@艦隊これくしょん(アニメ版) & Bismarck@艦隊これくしょん
大和@艦隊これくしょん(アニメ版) & 常闇ノ皇@大神
【キャスター】5
春日野椿@未来日記 & 円宙継@ムヒョとロージーの魔法律相談事務所
ツバサ@神無月の巫女(アニメ版) & キャロル・マールス・ディーンハイム@戦姫絶唱シンフォギアGX
夜神月@デスノート(ドラマ版) & ウィリアム・シェイクスピア@Fate/Apocrypha
ルドル・フォン・シュトロハイム@ジョジョの奇妙な冒険 & フリット・アスノ@機動戦士ガンダムAGE
アナスタシア@アイドルマスター シンデレラガールズ & スターゲイザー@ニンジャスレイヤー
【アサシン】3
ペチカ@魔法少女育成計画restart & 死神@暗殺教室
ディオ・ブランドー@ジョジョの奇妙な冒険 Part1 ファントムブラッド & DIO@ジョジョの奇妙な冒険 Part3 スターダストクルセイダース
ディオ・ブランドー@ジョジョの奇妙な冒険 & 鵜堂刃衛@るろうに剣心(実写映画版)
【バーサーカー】0
【エクストラ】2
《セイヴァー》
ニコラ・テスラ@黄雷のガクトゥーン & 柊四四八@相州戦神館學園八命陣
《ハングドマン》
リベッチオ@艦隊これくしょん(ゲーム版) & ディアボロ@ジョジョの奇妙な冒険
新企画立て乙です。
拙作ながら投下させていただきます。
ざわざわ、ざわざわと黒い影がうごめく。
日の光を避けてでもいるかのように、部屋の片隅で。
むしゃむしゃ、むしゃむしゃと何かを貪る。
それは、虫。
見るも悍ましい虫を、醜い影が喰らっている。
その光景は一つではない。
いくつもの影が、同じように虫を口にしている。
そしてそれを眺める影が一人。
普通ならば正視に堪えないような光景を前にさも愉快そうに口もとを歪めている。
「カカッ、美味いか、アサシン?」
薄暗い部屋の主のようになじむその影は老人。
痩せ枯れた矮躯を折り曲げて杖を突く様は弱々し気だが、浮かんだ笑みがその印象を塗りつぶす。
好人物的な笑いが致命的なまでに似合わない、悪意で出来上がったしゃれこうべのような貌。
その視線が、同好の士を得たりとばかりに室内にある複数の陰を射抜く。
「ふぅむ、あの侍めからおぬしのような化生が生まれ出たのには驚いたわ。
いくら外法の召喚とは言えのォ。
とは言えワシ以外におぬしを扱える魔術師などそういるでもなし、そうした意味では幸いか」
語りかけるように話すが、黒い影は一切の反応を見せない。
そもそも言葉が通じているのかも定かでなく、虫を口にし続ける。
ぐちゅぐちゅと虫を食む音のみが響く部屋に新たに入場者。
それもまた、室内にいる大多数と同じ、黒く醜い影。
その顔に返り血がこびりついてるのを見咎め、老人の顔のしわが深くなる。
「また殺してきおったのか。殺すだけ殺して食らわんなど、まったくけしからん。
後片付けをするワシの身にもなってもらいたいわい」
まあよいわ、とため息混じりに呟く。
どうせ肉は喰らわねばこの身は保てぬのだから。
殺しはするが、魂喰いを拒むサーヴァントというのも、また一興。
ひとまず死体を隠蔽・抹消する意味でも虫を向かわせる。
ブン、と羽音が響く。
ぐちゅぐちゅと虫を食む音が響く。
ゴトリ、と何かが落ちる音がする。
黒い球状の物体を入ってきた黒い影が落とした。
ベキベキとそれにヒビが入る。
球が割れ、そこからさらに新たな黒い影が生まれる。
2m大の体躯。黒い体表。尾葉。触覚。
「じょうじ」
巨大な二つの蟲の群れがこの地には巣食っている。
【クラス】
アサシン
【真名】
テラフォ―マー@テラフォ―マーズ
【パラメーター】
筋力C 耐久C 敏捷B 魔力E 幸運C 宝具C
【属性】
混沌・中庸
【クラススキル】
気配遮断:C
サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している。
完全に気配を断てば発見する事は難しい。
元はゴキブリ。どこからともなく、どこへでも姿を潜ませ現れる。
【保有スキル】
同属嫌悪:A
魅了の対となるスキル。
遺伝子に刻まれた本能と醜悪な外見、異様な言動によりテラフォ―マーと対峙した人間は強烈な嫌悪感を抱く。
そして同様の嫌悪感をテラフォ―マーも人間に向ける。
地球のとある科学者曰く、「先祖の顔など見たくないんだ」。
人間に類する存在からの精神干渉に強力な耐性として働く。特に魅了系のスキルはほぼ効果を受けない。
なおテラフォーマ―がこのスキルにより人間に嫌悪感を抱く限り、人類がゴキブリを食べたくないと思う程度に、テラフォーマ―も人間を魂喰いしたくないと思うだろう。
戦闘続行:B
瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。
ゴキブリは体のコントロールの一部を脳でなく、食道下神経節に任せている。
そのためテラフォ―マーは頭部、心臓部以外に喉の部分にも霊核を持つ。
それにより首をもがれても肺の入り口が動いていれば活動を続けることが可能。
また痛覚を持たないために、上記のように首をもがれても四肢がちぎれても気に止めず活動できる。
自己改造:A
自身の肉体に、まったく別の肉体を付属・融合させる適性。
このランクが上がればあがる程、正純の英雄から遠ざかっていくが、そもそもテラフォ―マーは真っ当な英霊ではない。
後述の宝具により最高ランクの適性を持つ。
ラハブの祝福:E
神に愛されたとしか思えないほどの異常な速度での進化。
一説に地球のゴキブリも通常は飛行能力をほぼ持たず滑空しかできないが、人間に殺されそうになると進化して飛べるようになる、ともいわれる。
毒による洗脳を受けた個体から生まれたものはその毒に耐性を持ち、細菌の毒に塗れた土地で生まれたものはその毒に耐性を持って生まれる。
さらに養蚕、タンパク質接種による体つくり、糸やそれに伴う繊維の開発、ミサイルの弾道計算など文明的な意味でも高速での進化を遂げる。
後述の宝具により、なんらかの別のスキルに変質することも。
【宝具】
『兆数える群体の軍隊(じじょうじょじょう)』
ランク:D 種別:対蟲宝具 レンジ:1 最大捕捉:1匹
ネズミ算、ならぬゴキブリ算で増える個体の伝承。人類の言葉で表すなら宝具名『テラ・フォームズ』。
卵を産むことで新たなテラフォ―マーをサーヴァントとして産み出す。
卵から生まれたテラフォ―マーはみな同一の宝具を持ち、スキルも大半はランクまで共通である。
ただし生まれた環境によってスキル:ラハブの祝福は別のスキルとなって生まれてくることがある。
武術、対毒、カリスマ、軍略、蔵知の史書、道具作成、医術など、他あらゆるスキルの可能性がある。
基本的には環境に依存し魔力や呪いに満ちた地で生まれれば対魔力、毒に満ちた地で生まれれば対毒、戦場のただなかでなら軍略や武術などを持って生まれてくるだろう。
ステータスも基本的には同一だが、個体差は存在し、魔力量によっては筋力や耐久で優るが敏捷が落ちる力士型と呼ばれる個体が生まれることもある。
『文明奪う恐ろしき害虫(じょうじょうじぎじ)』
ランク:D 種別:対蟲宝具 レンジ:0 最大捕捉:1匹
あらゆる武装を奪い、学習、進化する逸話の具現。人類の言葉で表すなら宝具名『テラー・フォア・マーズ』。
スキル:自己改造により己の体にほかの生き物の特徴を取り込む。
爆弾蟻を取り込めば強靭な筋力と、激痛を発する毒、鬼蜻蛉を取り込めばずば抜けた視力と機動力などを得る。
魔術回路を取り込めば魔力量は増大し、魔術刻印を取り込めばそこに刻まれた魔術を行使するようになる。
竜の因子を取り込めば幻想種の耐性や魔力炉、武器の付喪神などを取り込めばその武装を獲得するだろう。
ただしこの宝具の行使には後述の宝具による補助が不可欠であり、それを失った場合拒絶反応が起こり、死に至る可能性もある。
『免疫寛容臓(モザイク・オーガン)』
ランク:E 種別:対蟲宝具 レンジ:0 最大捕捉:1匹、あるいは一人
テラフォーマ―が生まれついて持つ臓器。
ただの器官だが、人類にとって科学的にも神秘的にも大きな一歩のきっかけとなったものであるため宝具にまで昇華している。
自分の肉体以外の物を体内に受け入れた場合の拒絶反応を抑える働きがあり、これにより高ランクの自己改造スキルを獲得している。
また魔力炉としても機能し、髪の毛一本のみを食料に一週間生きるゴキブリのしぶとさもあって魔力効率を格段に向上させている。
この内臓を取り出し、人体に適合する改造手術を行うことで『高位の自己改造スキル』、『別の生き物の特長を取り込む宝具』、『魔力炉』という多くの恩恵を得ることもできる。
しかしその手術は容易いものではなく27世紀の人類をもってして成功率36%という数字である。
【weapon】
なし。
ただし学習能力は生半可なものではなく、石器の作成ならすぐにやってのけ、現物があるなら剣や銃、車などの扱いも即座に習得する。
才あるものなら宇宙船の操縦などもやってのける。
【人物?背景】
21世紀の中頃、火星を人類の住める土地にしようとある生き物が環境を整えるために先遣された。
不足する酸素を補うために、光合成をおこなう藻類を。
そして気温を安定させるために、その藻類を喰らって、過酷な火星の環境でも生きられる増える黒い生き物……ゴキブリを。
そうして500年が経過し、地球で言う海抜7000メートルくらいにまで大気、気温が安定したところで調査団が派遣された。
しかしその調査団の第一陣、6名は全滅する。
二足歩行に異常進化したゴキブリ、『テラフォーマ―』によって。
素早さ、しぶとさ、力強さなどそのままに人型になったゴキブリ。
一歩目で最高速度に達し、自重の50倍以上の物を軽々運び、何よりも人間を敵視、ないし嫌悪する。
3億年間進化することのなかった種が、火星の過酷な環境下で異常進化した、害虫の中の害虫。
打ち倒されることで英雄を輝かせる反英雄、それ以下の人類種の敵。
しかしいわゆる自然選択下の進化では昆虫が500年足らずで原人にまで進化するなどありえない。
人の手が加えられたホムンクルス、あるいは神の手により作られた『天の鎖』や『泥人形』に近い存在と言える。
ちなみにこのテラフォーマーは固有の個体がサーヴァントとなったものではない。
狂戦士として現界したジャック・ザ・リッパーが医者であり、娼婦であり、呪具でありながらそのどれでもないのと同様、このテラフォーマ―は草薙の剣により討たれ人類に恩恵をもたらした個体であり、明晰な頭脳とカリスマにより一族を率いたボス個体であり、初めて地球に降り立った開拓者でもあり、そしてそのどれでもない。
なぜならムーンセルの観測する『人類史の記憶』においても、英霊を記憶する人類の集合無意識たるアラヤにおいても、人がゴキブリの個体の区別をつけることなどまずできないのだから。
【サーヴァントの願い】
じょうじ
【マスター】
間桐臓硯@Fate/stay night
【マスターとしての願い】
不老不死……その果てにあったはずのナニカなど、とうに忘れてしまった。
【weapon】
・蟲
自身の肉体を構成する蟲であり、使い魔のように使役する。
【能力・技能】
マキリは使い魔に造詣深い家系であり、間桐は「吸収」の属性を持つとされるが、臓硯自身は蟲の使役に全ての魔力をつぎ込んでおり魔術を行使する場面は無い。
身体を破壊されても臓硯本体の魂を収めた蟲を破壊されない限り、他者の肉を取り込んで再生することが出来るが、負担はそれなりにある。
また、本体の蟲だけでは魔力精製もあまり出来ない上に蟲の性質上日光が苦手。
サーヴァントシステムの考案者だけはあり、召喚システムには強い。
外で活動している老人姿の臓硯はいわば対外的に意思を示すための触覚。
本体の蟲は別にある、親指大の小さな蟲。
桜の心臓に寄生していたが、現在はテラフォーマーのうちの一匹に忍ばせている。
【人物背景】
本名はマキリ・ゾォルケンという、ロシア辺り出身の魔術師。
冬木における聖杯戦争の始まりの御三家の一人であり、使い魔使役に長ける魔術特徴からサーヴァントシステム及び令呪の開発を行うなどの優れた魔術師。
本来は「彼の代でマキリの血は魔術師としての限界に達した」ということに気付いてしまいそれに抗おうとし続け、その果てに第三魔法「魂の物質化」により人類という種の進化による、この世全ての悪の廃絶という「理想」を願っていた。
それが自身では叶えられないことを察し、それでもなお体を蟲に置き換え延命してまで求める。
理想がいかに困難でも諦めない姿勢が後を継ぐ者を育て、また後世に遺すものだと信じたから。
しかし積年による魂の腐敗とその苦痛は遂に理想さえも忘れさせ、現在となっては何故そこまでして死ねないと思ったのかも忘れてしまい、外道に堕ちてしまった。
悪の根絶という目的をかなえる手段であったはずの不老不死がすでに目的と化し、自らが悪に転じてしまった哀しき妖怪。
【方針】
聖杯狙い。
投下終了です
皆様投下乙です。
>越谷小鞠&セイバー・リリィ
少女騎士と小さいことでおなじみなこまちゃん、かなり華やかかつ可愛らしい組み合わせですね!
まだ過酷な現実を知る前の騎士王ということもあって、主従関係も実に良好そうです。
ただこまちゃんはよくも悪くも普通の女の子なので、聖杯戦争に適応できるかは厳しそうですね。
>ディオ・ブランドー&アサシン
まさかのWディオ!
……と、ディオ同士の主従ということにだけ目が行きがちですが戦力的にはかなり優れていますね。
けれど日中はやっぱり引きこもることになりそうなので、そこが辛そうです……w
>ディオ・ブランドー&アサシン
同じディオでも、こちらは人間をやめる前からの参戦ですね。
とはいっても一般人としては十分な身体能力でしょうし、相手によってはこれでも事足りそうです。
主従仲は割と利害の一致で動けそうな辺り、案外上のWディオよりうまくいきそうな気もします。
>リベッチオ&ハングドマン
まさかこういう形でディアボロを出してくるとは思いませんでした。
死に続けながら学習していくスタイルは確かに、レクイエム後のボスには似合っていますね。
リベッチオが独裁者(ムッソリーニ)の死に涙するシーンが個人的にはとても好きです。
>佐城雪美&アーチャー
あ^〜〜 雪美ちゃんだ^〜〜。
すごく完成された雰囲気で、雪美ちゃんのぐう聖っぷりと独特の感じが凄く巧いと思いました。
なんというかスペックやその他の事情を抜きに、応援したくなる主従でした。
>暁&アーチャー
こちらはWアカツキ。
背伸びをする暁ちゃんと、あくまで硬派なアカツキの対比がすごくいいなあ。
戦力的にも暁ちゃんは艤装を持っていますし、文句無しで強力な主従ですね。
>間桐臓硯&アサシン
蟲爺がよりによってとんでもない蟲を連れてきおった。
進化して増殖していくアサシンの性質と、悪辣な魔術師を地で行く臓硯の組み合わせは非常に怖いものがあります。
臓硯とテラフォーマーの不気味さが描かれた候補作、お見事でした。
私も投下します。
「もう迷うな――とっとと行けぇっ!!」
壊れゆく世界で、叫ぶ声を聞いた。
その声はいつも飄々としたあの兄貴らしくもない涙声で、聞いているこっちまで泣けてきそうだった。
手を引かれるまま走って、何がなんだかも分からないまま、壊れていく世界を抜けた。
何が起きているのかはやっぱり分からないままだったけれど、一つだけはっきり分かることがあった。
それは、今までの幸せな日々は終わってしまったのだということ。
ばくばくという鼓動が伝わってきそうな、汗に湿った細い手を繋いで走りながら、その寂しさに眼を閉じた。
色んなことがあった。
本当に、楽しい時間だった。
五人だけの世界はいつの間にか広がって、たくさんのあったかいものに囲まれていた。
いやだ――さよならしたくない。
けれど振り返るなと言われたから、前だけを見続けて走った。
これからどこへ行くんだろう。
ずっと止まっていた何もかもが動き出す、その意味はまだ分からなくて、不安だったから目を瞑った。
それがいけなかったのかもしれない。
目を開いた時、手を引くあいつの姿はどこにもなかった。
握っていたはずの手は、うっすらと錆の張り付いた鉄柵へ姿を変えていた。
着慣れた制服は見たこともないデザインのブレザーになっていて、頭の中にはわけのわからない記憶が雪崩れ込んでくる。
『あの世界』で過ごした思い出と、『この世界』で重ねたらしい思い出が――だぶらない。一致しない。
「どういうことだ……これっ」
わけがわからない。
ここはどこで、そもそもあたしはなんでここにいる?
理樹はどうなった? きょーすけは? みんなは?
「せいはい……? さーばんと……? なんだ、それっ。あたし、そんなの知らないぞっ」
頭の中に、『この世界のこと』とはまた違った知識がある。
聖杯戦争。
サーヴァント。
最後の一人の願いが叶う。
――知らない。覚えもない。なのに、なんでかあたしはそれを知識として知っている。
まるで兄貴の好きな漫画の中の話みたいな状況だった。
言いたいことは山ほどあるし、聞きたいことも、確かめたいことも腐るほどある。
でも、一つだけ言いたいことがあった。
あたしは柵から身を乗り出して、叫ぶ。
「うそじゃ、ない!」
この世界のあたしが持つべき思い出の中には、あいつらの姿はどこにもなかった。
理樹も、バカ兄貴も、真人も謙吾も、こまりちゃんもクドもくるがやもみおもはるかも、みんなみんな――いない。
あたしたちのリトルバスターズも、この世界にはどこにもない。
それを、雪崩れ込む思い出が教えてくれた。笑われているように感じた。
おまえたちの思い出なんて、全部嘘っぱちのニセモノでしかないんだと、げらげら笑われている気がした。
頭の中はごちゃごちゃだ。気を緩めれば泣いてしまいそうなほど心細くて、寂しい。
でも、それ以上に腹が立った。あいつらのことを嘘っぱちだなんて笑ってる、この世界へむかついた。
「あたしたちのリトルバスターズは、うそなんかじゃない!
おまえらの方こそ、出来の悪い嘘っぱちだっ! ――わかったら、とっととあたしを帰せっ!!」
あたしだってバカじゃない。
こんなところに長居することが、今すべきことじゃないくらい分かる。
だから帰せと怒鳴った。聖杯とか、サーヴァントとか、そんなものは知らないと叫んだ。
――この時のあたしは、まだ、事の重大さを何もわかっちゃいなかった。
願いを叶えるってことの意味も、サーヴァントという連中がどういうものなのかも。
更に言うなら、聖杯戦争がどういうものかさえ、正しく理解なんてしちゃいなかったんだ。
「ふむ。これはまた、随分と可愛らしいお嬢さんに召喚されたものですな」
びくんと体が跳ねた。
誰もいなかったはずの屋上に、男の声がしたからだ。
我ながら情けないほどのおっかなびっくりで振り返ってみて――あたしは、ぽかーんとするしかなかった。
真人の奴が可愛く見えるほどの、ムキムキな筋肉。
バカ兄貴が何かの悪ふざけの時に使うような大げさなマントを羽織って、頭には変な仮面をつけてて、おまけにやたらと服装がおかしい。なんというか……とにかく、そのムキムキな肉体を強調している。
一言で言うなら、あたしから……いや。女の子から見た『そいつ』は――
「へ、変態がいるーーーーーーっ!!!!???」
◆
敵は十万。
対し、与えられた兵力は三百。
勝ち目などある筈はない。何かの冗談と笑いたくなるほどの無謀な戦。
それでも、その男はただの一寸として後退することを自らへ許さなかった。
テルモピュライの戦い――殿の矜持を胸に斯く戦いし彼の者は今、英霊として仮初の再臨を遂げる。
◆
「はっはっはっはっ! 変態扱いとは手厳しいですなぁ、マスター!」
「うるさい! おまえがそんな格好してるから悪いんだろ、この筋肉仮面!!」
呵々と大笑する仮面の男に、気が立った猫のように『きしゃー』と食ってかかる少女――棗鈴。
あわや警察沙汰の邂逅であったが、鈴とて聖杯戦争の知識は大前提として刷り込まれてあるのだ。
この男がどうやら、自分の『サーヴァント』らしいことへはすぐに察しがついた。
……英雄というのだから、もうちょっとマシな見た目のやつが出てくると思ったのは内緒だ。
「あたし、おまえみたいなやつ知ってるぞっ。
おまえもあれだろっ、筋肉いぇいいぇーい! とか言ってるくちだろっ!」
「ほうほう……どうやらマスターのご友人には、私と気の合いそうな御仁が居るようだ!
もしよろしければ後日、紹介をお願いしたいところですな! ええ、是非ともお願いしたい!」
「絶対嫌だ! おまえとあいつが一緒にいるところとか、想像するだに暑苦しいわ!!」
体育会系のノリ、というやつだ。
このサーヴァントは、それを地で行っている。
しかもそこに嫌味が一切なく、気持ちいいほどに暑苦しい。
鈴にはすぐに分かった。こいつはバカだ。それも、めんどくさいタイプのバカだ。
というかこいつ、本当に頼りになるんだろうか……
鈴はジト目で、素顔を隠したまま笑っている自らのサーヴァントに不安を抱く。
見た目は確かに強そうだが、ゲームや漫画だと、こういうタイプは基本的に見た目通りの脳筋タイプと相場が決まっている。
「おっと、そういえばマスター。一つ問うておこうと思っていたことがありまして」
「?」
ごほんと咳払いをして切り出す英霊に、鈴は小首を傾げる。
何を改まって、と思った。
すると英霊は、仮面の奥から鈍く光る眼光を覗かせて――先ほどまでの愉快痛快な様子はどこへやら、真剣なトーンでおのれのマスターへと問いを投げかけた。
「マスターは、この聖杯戦争へ……如何なる形で臨むつもりですかな?」
「……なに言ってるんだ? どういうことだ。言ってる意味がわからないぞ?」
「マスターの望みは、元いた世界への帰還――でしたな。
であれば極論、聖杯を獲らずとも良いわけです。生き残ることさえ叶えば、それで」
「あ……」
「英霊として召喚されたからにはこの私、粉骨砕身の気構えでマスターの為に奮戦する所存。
しかしながら、これだけは明らかとしておかねばなるまいと思いましてな。
すなわち――聖杯を狙うのか、それとも、あくまで生き延びることだけを狙うのかを」
彼の言うことは、至極もっともだった。
聖杯戦争は中途半端な心構えで挑めるほど、生易しい戦いでは決してない。
今の鈴のような、やるべきことも成したいことも半端なままの状態では、きっと遠からぬ内に破綻が訪れるだろう。
歴戦の勇士である彼女のサーヴァントはそれを察知し、こうして問いかけた次第だった。
「マスターには、聖杯へ託したい願いはないのですかな?」
聖杯に託したい、願い。
そんなズルして叶えたいことなんてないぞ、と答えようと思ったが――鈴は、それを口に出来なかった。
「……なぁ」
「ふむ?」
「聖杯ってのは、ほんとになんでも願いを叶えてくれるのか?」
思い出すのは――あの世界の最後で見た、グラウンドの光景。
「……万能の願望器の名は伊達ではありません。
申し訳ないが、私もこの目でその効能の程を確認したわけではありませぬが――」
「……」
「大概の願いならば、聖杯は叶えるでしょう。そこについては信じても良いかと思われます」
そっか。
鈴は小さな声で呟いて、鉄柵の向こうに広がる街を見下ろした。
やっぱりここは、あたしの居場所じゃない。
みんながいない。理樹のいない世界。
帰りたい――いや、帰るだけじゃだめだ。
「あたしは、……聖杯がほしい」
別にお金持ちになりたいとか、そんなつまらないことを願うつもりはない。
棗鈴が聖杯へ託す望みはたった一つだ。
それは聞きようによってはとてもちっぽけで、それこそつまらない願い事。
でも、それは鈴にとっては――どんな富や栄誉にも代え難い、価値のある願い事だった。
「そんでもって、全部終わらせたい。
全部終わったあとで、みんなでまた前みたいに遊びたい。だから――」
鈴は自分のサーヴァントに向き直って、毅然とした瞳で言った。
わからないことは沢山ある。それでも、これだけは譲れない――そんな意志の光が未熟な瞳を照らしている。
「――ランサー。あたしを勝たせろ」
「御意。マスター」
サーヴァント・ランサーは主の命に、軽口一つ叩くことなく頷いた。
その姿はまぎれもなく英雄のものであり、鈴に先程まではなかった確かな頼もしさを感じさせる。
――勝つんだ。そして、帰ろう。
「サーヴァント・ランサー。スパルタ王、レオニダス! この命尽き果てるまで、御身を守り通すことを誓いましょう!」
そうして――弱い少女の聖杯戦争がはじまった。
【クラス】
ランサー
【真名】
レオニダス一世@Fate/Grand Order
【パラメーター】
筋力B 耐久A 敏捷D 魔力C 幸運C 宝具B
【属性】
秩序・中庸
【クラススキル】
対魔力:C
第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。
大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない。
【保有スキル】
殿の矜持:A
テルモピュライの戦いにおいて発揮された力が技能化したもの。
防衛戦、撤退戦など不利な状況であればあるほどに力を発揮するユニークスキル。
戦闘続行:A
往生際が悪い。
瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。
【宝具】
『炎門の守護者(テルモピュライ・エノモタイア)』
ランク:B 種別:対軍宝具
レオニダスの名を世界に知らしめたテルモピュライの戦いを再現するため、まず伝説の三百人が召喚される。
宝具で召喚された三百人はレオニダスと共に敵の攻撃を耐え抜き、その分だけ強烈な攻撃を返す。
耐え切った人数が多ければ多いほど、その威力は向上する。
【weapon】
槍。
【人物背景】
スパルタ教育という語源となった国、スパルタの王。
侵攻する十万人のペルシャ軍を食い止めるため、わずか三百人で立ち向かったデルモピュライの戦いで有名。
本人は認めたがらないがそれなりに脳筋なのできちんと操縦するべき。
【マスター】
棗鈴@リトルバスターズ!
【マスターとしての願い】
聖杯を手に入れて、元の日常を取り戻したい
【weapon】
なし
【能力・技能】
なし。ただ、身体能力は結構いい
【人物背景】
リトルバスターズの一員にして、作中のメインヒロイン。
今回はRefrain、虚構世界からの脱出〜現実での覚醒までの間からの参戦となる。
【方針】
勝ちたい。
投下終了です。
投下します
高度に発達した科学技術は、魔法と見分けが付かない。
さるSF作家が語った法則の一つだ。
瞬間移動。原子分解。そしてエネルギーバリア。
いずれもサイエンスフィクションにおいては、あまりにもありきたりな単語である。
そしてそれらいずれもが、現代のそれを凌駕した、超科学的な技術によって行使されてきた。
魔法のような現象も、発達した科学だと言い切れば、それならばと受け入れられてしまう。
その当然を許容させるのが、科学という言葉の持つ力なのだ。
我々が当たり前のように乗っている飛行機も、500年前の人間にとっては、魔法の絨毯と変わりないというのにだ。
今より語るこの男も、魔法のような科学に触れて、その深淵に分け入った男だった。
男が触れたその科学は、遠い宇宙からやって来た。
自然に促されるべき進化を、強制的に促進するという、冗談のようなエネルギーだった。
彼にとって不幸だったのは、その力を平和的でなく、戦うことにしか利用できなかったことだろう。
あるいは血に飢えた彼にとっては、その力を振るうべき敵が現れたことは、幸運だったのかもしれないが。
ともかくも、男はその力を振りかざし、同じく宇宙から訪れた侵略者と、死力を尽くして戦い抜いた。
時にはその魔力に魅入られた、同胞とも戦い打ち倒してきた。
戦いの果てに、男が見たのは、更なる戦いへの入り口だった。
無窮の宇宙を埋め尽くす、無尽の軍団の只中に、彼は仲間と共に放り出された。
彼は悟る。これが己の使命なのだと。
この無限の闘争を戦うことこそ、力に魅入られた己自身が、行き着くべき宿命だったのだと。
彼は戦友達と共に、己が得物を手に取って、その戦いへと身を投じた。
そんな彼が、この戦いに招かれたのが、不幸なのか幸運なのか。
それは誰にも分からない。男自身が聖杯に、何を見出すのかも今は知らない。
それでも男はここへ来た。聖杯の呼びかけに導かれ、電子の大地へと降り立った。
否、求めたのは聖杯ではなく、そのマスターの方だったのかもしれない。
勝利と聖杯をその手に求め、その可能性としてたどり着いたのが、彼という存在だったのかもしれない。
アーサー・C・クラークはこうも語っている。
可能性の限界をはかる唯一の方法は、不可能と言われることまでやってみることだと。
男を呼び寄せたマスターは、そんな言葉の似合う少年だった。
◆ ◇ ◆
大神家のすぐ近くには、一つの巨大なタワーがある。
見上げるようなその建物は、ところどころに錆が浮かんだ、古ぼけた姿を晒していた。
登下校の度に、それを見上げるのが、大神ソウマの日課であった。
何が琴線に触れたのかは知らない。元々どんな建物だったのかも知らない。
それでもその塔は、ソウマに対して、何かを訴えているような気がした。
そのタワーをじっと見上げていれば、何かを思い出せるような、そんな風な気がしていたのだ。
「……そうか」
実際のところ、ソウマがそれを思い出したのは、そのタワーがきっかけだったわけではない。
仲の良い高校の学友達に、恋人を作ったりはしないのかと、不意に聞かれたことがきっかけだった。
そんなどうでもいい一言で、ソウマは己に欠けているピースを、あっさりと思い出してしまった。
そんなソウマが学校を抜け出し、自慢のバイクを走らせて、辿り着いた先が、タワーだったのだ。
「そうだったのか……!」
バイクを降りて走りだす。
入り口から塔の中へと入り、その奥へ奥へと進んでいく。
初めて入ったはずの場所だ。しかし、自然と行く道が分かる。
何かに呼ばれているかのように、少年はまっすぐに突き進む。
廊下を走った。階段を登った。行き着いたエレベーターへと駆け込んだ。
この道で合っている。この先に己を待つものがある。
大神ソウマは知っていた。エレベーターの上がった先に、求めていた答えがあるのだと、直感的に理解していた。
扉が開く。同時に駆け出す。
一分一秒すらも惜しんで、ソウマは遂にその場所へ行き着く。
「呼びつけておいて遅刻とは、随分なご身分じゃないか」
暗がりで待っていたのは、一つの背中だ。
低く、ハスキーな声色で、コートの背中が言葉を紡いだ。
その先に、何かが聳えている。
紫煙をくゆらす男の向こうに、霧の彼方の幻のように、何かが潜んでいるのが分かる。
「あんたが、俺の――」
「ライダーのサーヴァント。神隼人」
男が振り返ると共に、闇の世界に光が満ちた。
スポットライトが点灯し、男の姿とその先の何かを、白く眩く暴きだした。
黒髪の下に光る、猛獣の瞳。
幾重の傷が刻まれた顔は、中年のそれでありながら、気高さと荒々しさを失っていない。
これまでに大神ソウマが相対した、どの人間とも明らかに異なる、凄絶な気配を纏う男だった。
「この俺をここまで待たせたからには、相応の覚悟はできてるんだろうな」
その先に姿を現したのは、巨人だ。
それはソウマの分身である、あの青銅の巨神とも違う。
鋭角的なラインを純白に染め、生物のような三白眼が、ソウマをじろりと見下ろしている。
全身が攻撃性を主張する、尖りに尖ったその威容は、さながら血を求め戦う魔神だ。
威圧し、恐怖を喚起させ、されどその荒々しさが頼もしくすら感じる。
「まぁ、俺を呼んだのが運の尽きだ――お前にはこれからたっぷりと、地獄を見てもらうことになる」
騎兵(ライダー)――神隼人と名乗った男の力の具現は、そんな気配を漂わせる巨人だった。
◆ ◇ ◆
シミュレーターの扉が開く。
ぜえぜえと息を切らしながら、転げ落ちるようにして這い出る。
「それがゲッターロボの世界だ」
お前のこれまでの戦いとは、全く別次元の領域のはずだと。
汗だくの大神ソウマの姿を、神隼人は顔色一つ変えずに、じっと見下ろしながらそう言った。
「こいつには神様の祝福なんてない。むしろ人の身に余る力を、無理やり人の技で手懐け、強引に乗り回すためのシステムだ」
機械の体を動かしたければ、己が両手と両足を使って、ペダルやレバーを操る必要がある。
人の身を超えた力を使えば、その反動がGとなって、体に襲いかかることになる。
そんな手間と負荷がかかる、極限状態のさなかにも、敵は容赦なく攻め立ててくる。
お前がこれから挑むべきは、そういう戦いの世界なのだと。
「……プロジェクト・ゲッターブライト……お前に言わせれば、武夜御鳴神(タケノヤミカズチ)か」
言いながら、隼人が手元の資料を見やる。
設計図に描き出されていたのは、勇壮なロボット兵器の姿だ。
ソウマの愛機、武夜御鳴神。日輪纏いし神の映し身。
その威容とは裏腹に、邪神ヤマタノオロチの一部として、その力を宿した存在だった。
されど今は邪神に歯向かう、大神ソウマの分身として、悪を討つ剣として振るわれていた。
隼人は最初、その説明を受けた時、「雷神ではないんだな」という感想を漏らしていたが。
「本当にこれでいいんだな? わざわざこんなもの造らずとも、俺のゲッターに相乗りした方が、よほど楽に戦えるんだぞ」
隼人のスキルと宝具を知った時、ソウマはあることを提案した。
『反逆の灯火(バヴェルタワー)』という巨大な拠点と、ロボットの知識があるのなら、自分の愛機である武夜御鳴神を、造り上げることができるのではないかと。
隼人はそれを了承した。
自らの宝具の動力の一部を、生まれ来る武夜御鳴神へと転用し、ゲッターブライトというコードネームを与えた。
その辺りのNPCを集め、色々な手段で雇い入れ、建造するためのスタッフとして仕込んだ。
されど、所詮は神の模造品だ。想定されるスペックは、隼人の操る宝具どころか、元々の武夜御鳴神よりも低い。
それどころか、操縦系統は大幅に旧式化し、今も訓練を続けるソウマに、大きな負担を強いている。
同じ訓練を受けるなら、同じ操縦法で操れる隼人の宝具の方が、よほど強力だというのにだ。
「いいんだ。ライダーに全部頼るんじゃなくて……俺の力でも、戦いたいから」
それでも、ソウマはそう答えた。
なけなしの空元気を振り絞り、笑顔を浮かべて隼人に返した。
隼人の宝具を借りるのではなく、自分のロボットで戦うことに、大きな意味があるのだと。
「願いを聞いた時も、そう言っていた。えらくこだわるな、お前は」
ファーストコンタクトを思い出す。
聖杯戦争という争いを知り、聖杯という名の奇跡を知り。
それにかけるべき願いとして、大神ソウマが口にしたのは、オロチと戦うための力だった。
オロチ因子に頼ることなく、聖杯の力で武夜御鳴神を操り、戦うことを望んだのだ。
オロチ自体を消し去ってほしいとは、決して口にすることはなく。
自分の手でそれを成し遂げることに、ソウマはあくまでもこだわったのだ。
「守りたい娘がいるんだ」
ソウマは言う。
隼人の言葉にそう答える。
自分の力で成し遂げる。そのことに頑とこだわる理由を。
「俺の命にかえてでも、守り抜きたい女の子がいる……愛しいと想える女の子がいる。
その想いを果たすためには、そう想う俺自身の手で、成し遂げなくちゃならないんだ」
有栖川姫子という少女がいた。
それが大神ソウマが思い出した、欠けていた記憶のピースだった。
彼にとって不可分であり、されど今この場にはいない、重大な欠落が彼女だった。
姫子をこの手で守り抜く。
オロチと戦う宿命を課せられ、故にオロチに狙われる彼女を、絶対に守ってみせると誓った。
戦いの動機は恋心だ。誰にも渡せない感情だ。
故にその戦いだけは、自分の手で為さねばならなかった。
聖杯に全てを丸投げして、都合よく解決してもらうわけにはいかない。そういう戦いだったのだ。
「………」
しばし、隼人は沈黙する。
厳格な男の双眸が、少し丸くなったように見える。
あるいは、こっ恥ずかしい告白を、何のもなく言い放ったソウマ相手に、呆気にとられていたのかもしれない。
「……天然記念物ものの馬鹿だな、お前は」
されど、長くは続かなかった。
ややあって隼人は苦笑すると、肩を竦めながらそう言った。
獰猛な姿ばかりを見せてきた彼が、初めてリラックスした顔を見せた。そんな瞬間だったかもしれない。
「イーグル号の席は空けておく。その気になったら、いつでも来い」
隼人からかけられた声に、頷く。
そうならないようにしなければと、ソウマは己を戒めながらも、それでもとその存在を思う。
イーグル号という機体は、隼人の宝具を構成する、三つの戦闘機の一つだ。
そのコックピットに座るということは、武夜御鳴神が敗北し、ソウマが戦う機体を失ったことを意味する。
負けるつもりはない。自分で戦うと決めたからには、これから完成する武夜御鳴神で、最後まで戦い抜くつもりだ。
それでももしも万が一、この手の力が及ばなければ、その未来は訪れるのだろう。
油断することはできない。故に、覚悟だけはしなければならない。
隼人の機体に乗り込む覚悟を。
英霊の宝具を操る覚悟を。
『最後の奪還者(しんゲッターロボ)』――その身と力を、己が手で扱うという覚悟を。
【クラス】ライダー
【真名】神隼人
【出典】真(チェンジ!!)ゲッターロボ 世界最後の日
【性別】男性
【属性】混沌・善
【パラメーター】
筋力:D 耐久:D+ 敏捷:E 魔力:E 幸運:B 宝具:B
【クラススキル】
騎乗:A-
騎乗の才能。大抵の乗り物なら人並み以上に乗りこなせる。
特にロボット兵器の扱いに関しては、トップエース級の技量を誇っている。
反面、動物に関しては、野獣ランクのものまでしか乗りこなせない。
対魔力:E
魔術に対する守り。
無効化は出来ず、ダメージ数値を多少削減する。
【保有スキル】
直感:B
戦闘時、つねに自身にとって最適な展開を”感じ取る”能力。
視覚・聴覚に干渉する妨害を半減させる。
本来の真ゲッター2の最高速度は、一説には亜光速にすら至ると言われており、
その世界で戦う隼人の感覚もまた、尋常ならざる領域まで研ぎ澄まされている。
特異点:C
数多の平行世界に跨がり、存在する者を指す名称。
隼人自身はただの人間であり、時空を超えてゲッター線に引き寄せられるような、特別な縁を有してはいない。
しかし彼は常にゲッターロボと共に在り、それぞれの世界において、ゲッターと共に戦い続けている。
このスキルにより、隼人は、平行世界の自分が有している技術を、自らのものとして用いることができる。
たとえば、ゲッターロボの設計者として、新たなロボット兵器を開発することも可能である。
カリスマ:D-
軍団を指揮する天性の才能。団体戦闘において、自軍の能力を向上させる。
カリスマは稀有な才能で、一軍のリーダーとしては破格の人望である。
ただしその極端なまでの厳格さから、戦士でない一般人にとっては、信頼より恐怖が勝ってしまうこともある。
【宝具】
『最後の奪還者(しんゲッター2)』
ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:1〜80 最大捕捉:1000人
宇宙から降り注ぐエネルギー・ゲッター線を用いた人型兵器――ゲッターロボ。
この機体は、その開発者である早乙女博士が、「最後のゲッターロボ」と銘打って開発したものである。
三機の戦闘機が合体することで、一つの姿を取るロボットであり、
隼人が操縦を担当する真ゲッター2は、地上戦闘・高速戦闘に特化した性能を有している。
……もっとも、隼人自身の縁の薄さと、聖杯戦争という隔絶された戦場に在ることもあり、
ゲッター線の総量は大幅に減少。隼人一人で発揮できる性能は、常識的な宝具の範疇に収まってしまっている。
特に、搭乗者の人数に左右される要素の振れ幅は、より大きくなっており、
異なる形態へと変形する「ゲッターチェンジ」は、二人以上のパイロットがいなければ、発動すらできなくなっている。
並以上の人間ですら、ふるい落とし絶命させるモンスターマシンにとって、
パイロットの増員は困難を極めており、その本来のスペックが発揮される可能性は低いだろう。
(オロチの力を持つソウマであれば、その力を発揮することで、何とかついていくことは可能である)
ちなみに、パイロットが三人揃った場合、真ゲッター最大の必殺技である「ストナーサンシャイン」を、
空戦特化型の真ゲッター1形態にて発動できるようになる。
『反逆の灯火(バヴェルタワー)』
ランク:E 種別:対軍宝具 レンジ:1〜50 最大捕捉:500人
真ドラゴン討伐隊を率いていた際、隼人が用いていた巨大な陸上戦艦。
その名の通りの、巨大なタワーのような船体には、各所にミサイルが搭載されている。
神秘性は最底辺に位置しており、これほどの巨体を有していながらも、
サーヴァントにはほとんど有効なダメージを与えられない。
反対に魔力消費量は少なく、戦艦として稼働していなければ、消費はほとんどゼロである。
待機状態でも大神家の近くに実体化し続けており、平時は正体不明の巨大なビルという扱いになっている。
この状態であれば、他のサーヴァントやマスターからも、宝具として認識されることはない。
【weapon】
真・ゲットマシン
ゲッターロボを構成する、三機の戦闘機。この状態では魔力の消費もそれほど多くはない。
ライフル
生身での戦闘時に用いるライフル銃。
【人物背景】
歴代のゲッター2に搭乗してきた、ゲッターロボのパイロット。
早乙女博士が真ドラゴンを起動し、全人類に反旗を翻した時には、その討伐隊を率いて戦っている。
実は早乙女博士の蜂起のきっかけとなった、人造人間・ゴウの誕生に関与しており、そのことを長らく悔やんでいた。
肉体年齢は41歳と、戦闘者としては老齢の域に達しつつあるが、実査にはそれを物ともしない身体能力を誇る。
常に冷静沈着で、煙草の似合ういぶし銀の男。
しかしその内側には、獰猛な本性を宿しており、時折過激な行動に出ることもある。
冷酷とすら言えるほどに厳格な男だが、決して悪人ではない。彼の戦いは常に、地球と人類を守るためのものであった。
彼の操る真ゲッター2は、右手に搭載された巨大なドリルを操り、地上での超音速戦闘を行うことを得意とする。
その機動力は、背中に背負ったジェットエンジンによって賄われているため、高高度でなければ飛行も可能。
必殺技は、ドリルを構え突撃するドリルハリケーン。
その他、プラズマエネルギーを纏った竜巻を生じるプラズマドリルハリケーンや、ドリルそのものを敵目掛けて発射するドリルミサイルを併せ持つ。
長い戦いの果てに、彼はチームメイトと共に、無限に続くゲッターの戦場へと旅立った。
【サーヴァントとしての願い】
全くない
【基本戦術、方針、運用法】
このサーヴァントのマスターには、純粋な魔力量だけでなく、肉体の強靭さも求められる。
宝具『最後の奪還者(しんゲッター2)』の力を発揮するには、二人目以降のパイロットの存在が、必要不可欠だからだ。
そういう意味では、武夜御鳴神で出撃しようとするソウマの運用法は、セオリーを無視した非効率的なものであるとも言える。
隼人が真ゲッターに搭乗した際には、宝具『反逆の灯火(バヴェルタワー)』はもぬけの殻と化してしまうため、
こちらはあくまで拠点として認識しておいた方がいいだろう。
【マスター】
大神ソウマ@神無月の巫女(アニメ版)
【マスターとしての願い】
オロチと戦う力とする
【weapon】
武夜御鳴神(タケノヤミカズチ)
邪神・ヤマタノオロチの一部である、青いボディを有した鋼の巨人。
基本的には、徒手空拳での戦闘を得意とする。
内蔵武器は、両腕を変形させたビーム砲・射魔破弾と、肩から放つ円盤状のエネルギー弾・飛光斬盤。
更に必殺技として、両肘から放つエネルギーで敵を拘束した後、拳で撃破する日輪光烈絶撃破を有する。
当然ながら本来は、聖杯戦争に持ち込めるような代物ではない。
しかし、隼人の宝具『反逆の灯火(バヴェルタワー)』にて、これを再現した機体が建造中である。
本来よりもスペックが低下している他、操縦系統がゲッターロボのそれを流用しているため、操縦感覚がかなり異なる。
建造には相応の時間がかかるため、完成には聖杯戦争の開幕から、しばらく時を置く必要がある。
【能力・技能】
オロチの首
ヤマタノオロチの力を受けた、八人の眷属の一人。
強い魔力による身体強化と、前述するオロチの分身を操ることが可能。
ただし、ソウマはオロチの意志に逆らっているため、武夜御鳴神に乗る度に、その力によって体を蝕まれている。
本聖杯戦争においては、宝具『最後の奪還者(しんゲッター2)』に搭乗した際、この呪いが進行する。
騎乗
バイクを運転することができる。
【人物背景】
ヤマタノオロチの七の首に選ばれながらも、想い人・来栖川姫子を守るために、抗うことを選んだ少年。高校2年生。
幼少期に父親を喪っており、施設暮らしを経て、現在の大神家に引き取られた。
現在は容姿端麗・文武両道であることも手伝ってか、「ジン様」という愛称で、女子生徒達の憧れの的になっている。
真面目で正義感の強い熱血漢。基本的には心優しく、紳士的な性格である。
姫子を守るために戦うことには、一切の迷いを抱いておらず、
オロチの呪いに身を蝕まれても、懸命に戦い続けている。
今回は実兄・ツバサと再会する手前の時期から、聖杯戦争に参戦している。
実は父親からは虐待を受けており、これをツバサが殺害することで一命を取り留めていたのだが、
ショックからその時の記憶を失っているため、現在は全く覚えていない。
【方針】
基本的には、マスターよりもサーヴァント狙い。武夜御鳴神が完成したら、それに乗って戦う
投下は以上です
申し訳ありませんが、>>164 の人物背景を、以下のように差し替えさせていただきます
【人物背景】
歴代のゲッター2に搭乗してきた、ゲッターロボのパイロット。
早乙女博士が真ドラゴンを起動し、全人類に反旗を翻した時には、その討伐隊を率いて戦っている。
実は早乙女博士の蜂起のきっかけとなった、人造人間・ゴウの誕生に関与しており、そのことを長らく悔やんでいた。
肉体年齢は41歳と、戦闘者としては老齢の域に達しつつあるが、実査にはそれを物ともしない身体能力を誇る。
常に冷静沈着で、煙草の似合ういぶし銀の男。
しかしその内側には、獰猛な本性を宿しており、時折過激な行動に出ることもある。
冷酷とすら言えるほどに厳格な男だが、決して悪人ではない。彼の戦いは常に、地球と人類を守るためのものであった。
彼の操る真ゲッター2は、右手に搭載された巨大なドリルを操り、地上での超音速戦闘を行うことを得意とする。
その機動力は、背中に背負ったジェットエンジンによって賄われているため、高高度でなければ飛行も可能。
必殺技は、ドリルを構え突撃するドリルハリケーン。
その他、プラズマエネルギーを纏った竜巻を生じるプラズマドリルハリケーンや、ドリルそのものを敵目掛けて発射するドリルミサイルを併せ持つ。
長い戦いの果てに、彼はチームメイトと共に、無限に続くゲッターの戦場へと旅立った。
ゲッター線の性質上、同様の現象が起きるのではないかという懸念もあるが、
もし隼人が一人でそういう現象に立ち会える人間であったなら、幾多の平行世界の隼人達は、もう少し報われていただろう。
投下します
その人は顔を隠していた。
彼が言うには真名を知られるリスクを減らすのに、顔を隠せるこの装備はうってつけだったらしい。
その人は人語を話せない。
それはこの装備の欠点であるらしい。
しかし念話があるのだから問題ないとの事。
そして、その人は自分には願いはないと言った。
■
『さて。そろそろ考えは纏まったか、マスター?』
聖杯に用意された自室。急に頭に響いた男の声。
顔を上げればそこには今まで存在しなかった妙なシルエットの者。
その姿に驚きはない。何故なら昨日この男を呼び出したのは他ならぬ彼女なのだから。
「アーチャーさん」
宇佐美奈々子は普通の少女だ。
しいて変わってる点を挙げるとすれば、市役所主導のローカルアイドル(ロコドル)と言う仕事に関わってる事くらいだ。
当然魔術などと言う彼女からしたらオカルトでしかない物とは無縁であり、何故ここに居るのかは解らなかった。
「私……」
昨日アーチャーは召喚後直ぐに自身の装備と技能を明かし(奈々子には殆ど理解出来ない内容であったが)、
次に指示を乞うてきた。自分はどう動くべきかと。積極的にか、様子見からか。どう生き延び、どう殺すのかを。
突然こんな所に連れてこられ、突然こんな事を聞かれても返答など出来る訳がなかった。
奈々子は平和な日本のごく普通の学生なのだから。
故に彼女は時間を貰った。落ち着く為の、状況を再確認する為の。方針を決める為の。
期限は丸1日。その間、アーチャーは姿を表わす事も念話を送ってくる事もなかった。
「まだ死にたくない、流川に帰りたいです」
アーチャーは涙ながらの奈々子の言葉を腕組しながら聞く。
「まだゆかりさん達とお仕事したいんです」
『……そうか、なら――』
「でも! 誰かを殺したりなんかしたくない。そんな怖いこと出来ません……」
言葉を遮らえた事でアーチャーは腕組を解く。その表情は隠された顔では伺うことは出来ない。
『ナンセンスだ。生きて帰るには戦う必要がある。それは君も理解しているはずだ』
「それでも無理なんです。考えなんて纏められないよ」
本格的に泣き出しそうな奈々子の肩にポンっと手が置かれる。顔を上げればそこにあるのは当然アーチャーの顔。
表情など出来ないはずの作り物の顔だが、奈々子にはどういう訳か笑っている様に見えた。
ただそんな風に見えただけなのか、それともゆるキャラの魚心くんと一緒に仕事をしてきた経験が活きた結果として感情を読み取れたか。
答えは本人にも解らない。
『ふむ。やはり君は【まともな人間】で間違いはなさそうだ』
アーチャーとてただ黙って姿を消していた訳ではない。たった1日とは言え奈々子の観察を行っていたのだ。
彼もサーヴァントとして召喚された以上、主は聖杯を求める魔術師であると思い込み、昨日は急がす事を言ったのだが。
観察してみればそれが早とちりであった事が見えてきた。そうして出した彼女に対する評価がこれである。
嘗て共に生活した陣代高校の面々と同じ、平和な日本で暮らす普通の人間。
それは生前自分がそう成りたいと願っても成れなかったもの。【彼女】がそうでいられなかったもの。
いや、自分の力不足で【彼女】から失わせてしまったものだ。
そう考えれば何故自分がこの宇佐美奈々子に召喚されたのか、そして「アーチャー」のクラスが宛てがわれたのか。その理由も見えてくる。
自分の願いが潰えた時の、【彼女】を護れなかった時の愛機を。炎の剣ではなく石弓を使わせる為。
つまり目の前にいるマスターを護衛対象とした、あの時の敗北という結果に対する擬似的なリベンジ、それが自分の願いだったのではないかと。
どうやら自分は思ってた以上にあの時の事を根に持っていたらしい。思わず苦笑してしまう。
『この様な状況ならば君のその反応こそが普通なのだろう。幸いここは直ぐに危険が訪れる様な戦場ではないらしい。存分に悩むといい』
「……へ?」
『君が望まないのではあれば、俺から直接誰かに仕掛ける事もしないと誓おう』
アーチャーは「直接はな」と言う言葉は伝えずに飲み込む。これは彼女の為にも言うべき事ではないからだ。
正面から撃ち合うだけが戦争ではない。こちらから出向かなくても敵の戦力を削ぐ術はある。
それも目の前のマスターに目撃される事もなく。
そういう事なのだ。
『勿論、君は今命を狙われる立場にある。向こうから仕掛けて来たのなら俺も全力で対処する必要があるだろう。そこは留意して置いて欲しい』
『君に振りかかる火の粉は全て俺が払おう。ゆっくりでいい、君は君の進むべき道をしっかり見極めるといい。後悔のないようにな』
「――……え、でもアーチャーさんは何か願いがあって」
『問題ない。俺には今更聖杯なんぞに叶えてもらう願いなど持たん』
アーチャーは腰に手を充て胸を張る。
『願いや後悔など幾らでも有った。だがそれを含めて俺の歴史だ。今更聖杯などという得体のしれない装置で変えようものなら、俺の知る皆から怒られてしまう』
先ほどとはうって変わって今度は肩を落とすような仕草をする。正にやれやれと言ってるかの様な姿だった。
「アーチャーさん……」
奈々子は何か突然良い事言った風になってるアーチャーを見て思わざる得なかった。
「キグルミじゃなければ格好つくのになー」
「ふも?」
それは茶色い毛皮にずぐんぐりとした2頭身。大きい耳とネズミだか犬だかよく分からない頭。タクティカルベストと軍用ヘルメットを装備した。
その名をボン太くん。
こんな見た目だが、アーチャーこと相良宗介の所有する数々のハイテクが盛り込まれた強化服である。
言われた事が理解できないのか首を傾げるボン太くんの仕草を見て、奈々子は此処へ来て初めて、薄くではあるが笑みを浮かべた。
「ん……アーチャーさん、ありがとうございます。これからよろしくお願いしますね」
『肯定だ。こちらからもよろしく頼む』
「うん!」
【クラス】
アーチャー
【真名】
相良宗介@フルメタル・パニック!
【ステータス】
筋力D 耐久C 敏捷D 魔力E 幸運E 宝具E
【属性】
中立・善
【クラススキル】
単独行動:B
マスター不在・魔力供給なしでも長時間現界していられる能力。
Bランクの場合、魂に致命的損傷を受けても短期間ならば生存できる。
対魔術:E
無効化は出来ない。ダメージ数値を多少削減する。
【保有スキル】
騎乗:D
乗り物を乗りこなす能力。機械であれば大抵の物は乗りこなせる。
破壊工作:A
戦闘の準備段階で相手の戦力を削ぎ落とす才能。トラップの達人。ただし、このスキルが高ければ高いほど、英雄としての霊格が低下する。
戦闘続行:A
往生際の悪さ。決定的な致命傷を受けない限り生き延び、瀕死の傷を負ってなお戦闘可能。
【宝具】
『ARX-7(アーバレスト)』
ランク:E+++ 種別:対人/対軍宝具 レンジ:1〜20 最大捕捉:10
相良宗介がアーチャーおよびライダーとして現界した場合の宝具。
アーム・スレイブ(AS)と言う名称の陸戦用人型ロボット兵器。全高:8.5m。重量:9.8t。最大作戦行動時間:100時間。
武装:ワイヤーガン、12.7mmチェーンガン、炸薬付き対戦車ダガー、単分子カッター、57mm散弾砲(スラッグ弾)。
最大の特徴はラムダ・ドライバと呼ばれる搭乗者の意思を物理的な力に変換する装置であり、
その力は理論上「対象を触れる事無くイメージのみで破壊する」「重力を無視する」「核爆発どころか放射能すら完全に無効化し防ぎきる」
といった魔法そのものとすら言える事象を起こすトンデモ装置。
しかし、それらの効果を発揮するには搭乗者のコンディションに大きく左右される為、安定感に乏しく、兵器としての信用度は低め。
強力な宝具ではあるが、当然使用には大きな魔力が必要であり、この主従では魔力不足の為令呪によるブーストは不可欠である。
また、一度呼び出せば引っ込める事は出来ず、修理や補給なども現地調達以外では不可能。
破壊された場合はそれっきりであり、再度同型機などを用意する事も出来ない。
『ARX-8(レーバテイン)』
ランク:E+++ 種別:対人/対軍宝具 レンジ:1〜50 最大捕捉:10
相良宗介がセイバーおよびライダーとして現界した場合の宝具。
よって使用は不可能である為詳細は省く。
『機械仕掛けの■■(アル)』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
ARX-7およびARX-8に搭載されているAI。当然ながら上記の宝具を使用すれば自動的にこちらもセットで付いてくる。
むしろ彼にとってはASの方が自身の体であり、こちらの方が宝具の真の本体とも言える。
搭乗者の補助用AIでありながら常に自由会話をし続け、ネットやTVなどで勝手に知識を増やし、周囲の人間との触れ合いで人の感情を理解し、
リラックスの為という名目で搭乗者をおちょくるなど、ユーモアセンス溢れる奇妙なAI。
何故この様なAIが作られたかについては、製作者が語らずに死亡してしまっているので正確には解らないが、
物語の終盤、彼が何を考え何を実行したのかを考えればある程度推測する事は可能。
純粋な科学技術で生み出された神秘。
ラムダ・ドライバの使用に必要な魔力は彼が肩代わりしてくれる為、ARX-7の戦闘中の魔力消費は極めて微量で済む。
【weapon】
拳銃、散弾銃、突撃銃、ロケットランチャー、手榴弾、爆薬、ナイフ、各種薬物と注射器など。取り敢えず戦争で必要になりそうな物は一通り。
『ボン太くん』
遊園地のマスコットのキグルミに数々のハイテクを盛り込み魔改造した一種の戦闘服。
ボイスチェンジャーをOFFにすると電源が落ちる欠陥がある為、装備時は「ふもっふ」としか喋る事は出来ない。
【人物背景】
飛行機事故から生還した事を切っ掛けに、暗殺者→アフガン・ゲリラ→傭兵という人生を歩む事になった少年。
本人の資質は兎も角、生きる為に傭兵として各地を転戦した後にとある組織に所属する事になり、そこでの任務で大きな転機が訪れる。
護衛任務で潜入した平和な日本の高校。戦場での生き方しか知らなかった彼は四苦八苦し何度も騒動を起こしながらも、
護衛対象の少女や「普通」の日本の学生達との関わり合いや平和な生活に充てられ、自身も「まともな人間」に成りたいと願う様なる。
だが、状況は彼に普通の生活を送らせる事も、まともな人間に成る事も許してはくれなかった。
【サーヴァントとしての願い】
マスターを護り生還させる。マスターの手を汚させない。
【マスター】
宇佐美奈々子@普通の女子校生が【ろこどる】やってみた。
【マスターとしての願い】
流川に帰りたい。でも誰も殺したくない。
【weapon】
なし。
【能力・技能】
なし。
【人物背景】
市役所職員の叔父さんに頼まれて(騙されて)時給は1000円でローカルアイドルをやる事になった普通の女子校生。
本当に普通の少女であり、目を引く様なルックスや身体つき等のアイドルに必要なスター性や、仕事をする上での要領の良さ等は持ち合わせていない。
しかし、その明るく真面目な親しみやすい性格は重要な才能であると言われる事も。
緊張時などで自己紹介時に自分の名前を「なにゃこ」と噛んでしまうのが持ちネタと化している。
【方針】
未定。
投下終了します
フルメタ4期オメ。【ろこどる】OVA(発売日未定)もよろしく(ステマ)
皆様、投下乙です
自分も投下させていただきます
時は、陽が沈んだばかりでこれから夜が始まろうかという頃合い。
一人の少女が、愛らしい顔を恐怖で引きつらせながら路地裏を走っていた。
「ヒヒヒ……。待ちなよ、お嬢さんよぉ」
少女を追いかけるのは、凶悪な面構えをしたランサーのサーヴァント。
追われている少女は、聖杯戦争に関わる存在ではない。あくまでこの仮初めの世界をそれらしくするために生み出された、NPCだ。
ランサーが彼女を狙っているのは、単におのれの残虐趣味を満たすためである。
力を得るための魂食いですらない、欲望だけに基づいた行動だ。
「う……あ……」
やがて精根尽き果て、少女はアスファルトの上に倒れ込む。
ランサーは下卑た笑みを浮かべながら、槍を振りかざして少女に歩み寄る。
その瞬間、けたたましい音と共に銃弾の雨が降り注いだ。
「なんだぁ!?」
サーヴァントに対し、通常の近代兵器は意味をなさない。
だが、おのれに敵意を向ける存在を放っておくわけにもいかない。
ランサーは即座に、弾丸の飛んできた方向に視線を向けた。
彼の目に映ったのは、雑居ビルの屋上に佇む二人の青年だった。
「やはり俺では、サーヴァントはどうにもならんか……」
マシンガンを手にした片割れの青年は、忌々しげに呟く。
「仕方あるまい。いくらお前でも、無理なものは無理だ。
サーヴァントとの戦いは俺に任せろ。お前はあの子の保護を頼む」
もう一人の青年の言葉に、マシンガンの青年は無言でうなずく。
そして、微塵のためらいも見せずに屋上から飛び降りた。
「ひいっ!」
その光景を見ていた少女は、凄惨な結果を予想して叫び声を上げる。
だがその予想を裏切り、青年は全くの無傷で着地を成功させた。
「その身体能力……。てめえもサーヴァントか!?」
「いや……。あいにく、サーヴァントは向こうだ」
その言葉に合わせるように、もう一人の青年も飛び降りる。
落下による風圧を身に受けながら、青年はおのれの宝具を解放する。
「有り得ざる三人目(ザ・サード)」
青年の腰に、風車のついた大きなベルトが出現する。
続けて彼は、空中で華麗にポーズを決めた。
「変身……!」
一瞬、青年の体が光に包まれる。
そして地面に降り立った時、彼の姿はまったく違うものへと変貌していた。
端正な顔はバッタを模した仮面で覆われ、体も人工皮膚とプロテクターに包まれている。
「妙な力だな……。何者だ、てめえは!」
「俺はライダーのサーヴァント……人呼んで、仮面ライダー3号!」
◇ ◇ ◇
郊外にある、安アパートの一室。
ランサーを難なく下した二人は、そこで休息をとっていた。
ここはライダーのマスターである青年……風見志郎の自宅としてあてがわれた部屋だ。
風見には大学生の身分が与えられていたが、マスターとして覚醒して以降の彼は一度も大学に通ってはいない。
こうして街を巡回しては、悪行に走るサーヴァントやマスターを排除するということを繰り返していた。
「まだ今の方針を貫き続けるつもりか?」
椅子に座って顔を伏せたまま動かない風見に対し、ライダーが話しかける。
「今はまだ、聖杯戦争は様子見の段階だ。活発に動いてる主従は少ない。
だがそれでも、俺たちが守り切れなかった犠牲が確実に出ている。
いずれ聖杯戦争が本格化すれば、もっと多くの一般市民が巻き込まれるだろう。
全ての人を守ろうとする道は、困難を極める。それでも、やるのか」
「当然だ」
サーヴァントからの問いに、風見は即答する。
「聖杯などに興味は無い。俺は仮面ライダーとしての使命を果たすだけだ。
たとえ仮初めの命であっても、この街の住人はたしかに人間として平穏な生活を送っている。
その平和を守るのが、俺の願いだ。お前も仮面ライダーなら、わかるだろう」
「……ああ、そうだな」
わずかに間があったものの、ライダーは風見の言葉を肯定する。
「お前は俺のいた世界の仮面ライダーV3ではないが……。紛れもなく仮面ライダーだ。
お前が迷わないのなら、俺も全力で応えよう。お前の、仮面ライダーとしての魂に」
「ああ。頼むぞ、黒井」
ほんの数秒で紡がれる、短い言葉。
だがそこに、自分への全幅の信頼が詰まっているようにライダーは感じた。
【クラス】ライダー
【真名】黒井響一郎
【出典】スーパーヒーロー大戦GP 仮面ライダー3号
【属性】混沌・善
【パラメーター】筋力:C 耐久:C 敏捷:C 魔力:E 幸運:E 宝具:C
(変身時)筋力:B 耐久:B 敏捷:B+ 魔力:E 幸運:E 宝具:C
【クラススキル】
対魔力:D
魔術に対する抵抗力。
一工程(シングルアクション)によるものを無効化する。魔力避けのアミュレット程度の対魔力。
騎乗:A+
乗り物を乗りこなす能力。竜種を除くすべての乗り物を乗りこなす。
【保有スキル】
単独行動:B
マスター不在・魔力供給なしでも長時間現界していられる能力。
Bランクならば2日は現界可能。
最速への執念:B
スピードへのこだわりがスキルとなったもの。
自分より敏捷の高いサーヴァントと交戦した時、敏捷が1ランク上昇する。
改造人間:A
肉体の大半を機械に置き換えた存在。
ランクが高いほど肉体に悪影響を及ぼすスキル・宝具に対する耐性が高まるが、英霊としての格は落ちる。
【宝具】
『有り得ざる三人目(ザ・サード)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:― 最大捕捉:1人(自身)
「仮面ライダー3号」への変身能力。
宝具を解放するとまずベルトが出現し、その後ポーズとかけ声によって変身が完了する。
特殊能力や専用武器などは特になく、基本的に肉弾戦で戦う。
『第三の旋風(トライサイクロン)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1-20 最大捕捉:5人
仮面ライダー3号の相棒たる、ジェットエンジン搭載の自動車。
ミサイルや車体前部に搭載された2丁のマシンガンで武装している。
レンジと最大補足は、この武装のデータである。
【weapon】
特になし
【人物背景】
ショッカーが歴史を改変したことにより、存在しないはずの「仮面ライダー3号」となった青年。
ショッカー首領との戦いで疲弊した1号と2号を襲撃し、二人を殺害。ショッカー再興の基盤を作る。
その後もショッカーの一員として活動するが、心の奥底では1号と2号を殺した罪悪感にさいなまれ続けていた。
やがて仮面ライダードライブとの交流で迷いを振り切り、復活した1号たちと共にショッカーを滅ぼす。
それにより歴史が本来のものに戻ったため、仮面ライダーとしての彼は消滅。
だがその魂は、英霊という形で存在し続けていた。
【サーヴァントとしての願い】
今度こそ「人類の自由と平和を守る戦士」として戦う。
【マスター】風見志郎
【出典】仮面ライダーSPIRITS
【マスターとしての願い】
弱者を守り、悪を討つ
【weapon】
○マシンガンアーム
親友・結城丈二に託された高性能義手「ライダーマンアーム」の一形態。
この形態では義手として装着しなくても武器にできるため、風見は基本的にこの状態で使用している。
純然たる科学の結晶であるためサーヴァントに効果は望めないが、怪人をも殺傷する破壊力は人間にとっては十分すぎる驚異である。
【能力・技能】
○改造人間の身体能力
V3に変身せずとも、身体能力は人間のそれを大幅に上回る。
【人物背景】
大学で仮面ライダー1号・本郷猛の後輩だった青年。
悪の組織・デストロンに瀕死の重傷を負わされたところを、1号と2号に改造され3人目の仮面ライダー・V3として蘇る。
普段の言動はクールだが、心に熱い正義感と友情を秘める戦士である。
今回は四国での戦いでベルトを損傷し、V3に変身できない状態での参戦。
【方針】
聖杯を狙うつもりはない。悪事を働く参加者とのみ戦う。
投下終了です
皆様投下乙です
私も投下します
その男は弓兵のサーヴァントとして召喚された。
男の双眸は遍く全ての事象を正確に見抜く。彼方の軍勢の一挙一動を、放たれた矢の軌跡を、野を、山を、獣を。
男が見通すものは物質(かたち)だけではない。精神(こころ)もだ。
故に、男を召喚したマスターが今、何を考えているのかさえも文字通りに一目瞭然ではあった。
希望、使命、悔恨、悲嘆、諦観……あらゆる感情が去来し綯交ぜになっている。
中学校の屋上から偽りの街を眺め続ける主は余人が見れば次の瞬間には自殺してもおかしくないほどの儚さがあった。
そうと知りながらもアーチャーは主が答えを出す時を待ち続けていた。
無論、単なる衝動に駆られた自殺に及ぶのであればさすがに止めるが、熟考の末に選んだ結論であるならば如何なる答えであろうと従う心構えであった。
その結果がサーヴァントとしての自分の運命を決定づけるのだとしても。
「アーチャー」
ふと、マスターが背後で実体化をしているアーチャーへと振り返った。
記憶を取り戻して以来、常に迷いと憂いを帯びていた顔は決意に満ちている。
少し意識すればマスターの秘めたる想いを余さず見ることが出来よう。アーチャーの眼とはそういう類のものだ。
けれどアーチャーは努めて“識らない”ようにする。自らの視線は時に相手の裸体を視姦する以上に無礼であることを理解しているから。
「腹は決まったのか?マミ」
「ええ。昨日のこと、覚えてる?」
アーチャーのマスターである少女―――巴マミは昨日の夕刻のことを追想する。
学校の帰り道、いつも通っている公園の周辺にパトカーと警察官、そして野次馬が集まっていた。
野次馬を必死に掻き分けて進んだマミの瞳に映ったのは、つい先日まで住民の憩いの場であったはずの公園がハリケーンにでも見舞われたかの如く荒れ果てた様相だった。
そして―――公園でただならぬ物音がしたというその時間、運悪くその場に居合わせた小学校低学年の少年が亡くなったという。
「あの公園には魔力の痕跡がわかりやすいぐらい残っていたわ。……聖杯戦争絡みよね?」
「ああ、間違いない」
サーヴァントが現世に干渉するには実体化を行う必要がある。
アーチャーの眼も霊体化したままではその機能を発揮し得ないが、それでも昨日の事については己の眼を頼るまでもなく真相は明らかだった。
「もっと早く動いていればあの子はきっと死なずに済んだ。
我が身可愛さで迷って、目を逸らしていたら沢山の人が犠牲になる。……そんなこと、私は昔から知っていたはずなのに」
マミが新米の魔法少女だった頃、似たような出来事があった。
魔女の結界に取り込まれた少年を救おうと魔女に挑んだが、当時のマミでは歯が立たないほどの強敵であり、撤退する他なかった。
その後当然の結果として少年は魔女に殺された。マミが己の弱さを悔い、年相応の少女らしい時間を犠牲にして修練に明け暮れるきっかけになった事件である。
迷いと恐怖故に、結果として同じ過ちを繰り返してしまった。
いや、魔法少女として力をつけ、大英雄クラスのサーヴァントを引き当てておきながら動かなかったのだ。あの時よりも酷い。
マミが迷うのは聖杯戦争―――バトルロワイヤルに対する恐怖故か?それは否だ。
魔法少女になって以来、同業の少女達と争いになったことは一度や二度の話ではない。魔法少女の命を奪うことに加担した経験さえある。
死ぬのが怖くない、というわけではない。だがそれでも命のやり取りそのものに身が竦むほどの恐怖を覚える時期はとうに過ぎ去ってしまった。
マミが真に恐れるのは自らの死の先にある末路だ。
身に着けている指輪から卵型の宝石を取り出しアーチャーに見せた。
「これは魔法少女の証であるソウルジェム。魔法少女になる契約を交わした時に私達の魂はこの宝石に入れられた。
魔法を使ったり、負の感情を溜め込むとどんどん濁っていって……最期には人を襲う魔女になり果てる」
アーチャーは何も言わず、マミの言葉を聞くことに徹していた。
彼女と契約した時から魂はソウルジェムに在ること、彼女の肉体はソウルジェムを介して動かされているに過ぎないことも見抜いていながら、それでいてそうとは悟られないように。
「穢れの溜まったソウルジェムは魔女が落とすグリーフシードで浄化できるのだけど、今持ってるのは一つだけ。
そしてこの世界には魔女がいないから補充することもできない。……この意味、わかるでしょう?」
「上手く立ち回れば優勝するまで生き残る目はあるかもしれねえ」
敢えて思ってもいないことを口にした。彼女は即座に首を横に振った。
「駄目よ。私は魔法を連発するタイプの魔法少女だし、あなたの維持にどれだけ魔力を持っていかれるかもわからない。楽観はできないわ。
それにあなたの言う方法で生き残ったとしても、私は必ず絶望する。…どう死ぬか選べ、そう言われてる気がするわ」
魔法少女・巴マミの原点にあるものは一人生き残ったことに対する自責の念と魔法少女として人を守り続けるという使命感。
マミがマミとして在り続ける理由を捨てて聖杯戦争の勝利を目指したところで必ず耐えきれなくなり精神が死を迎える―――マミはそれを自分で悟っていた。
つまるところ、この聖杯戦争に放り込まれた時点で巴マミの死は避け得ない未来として定められていた。
いや、誰かに敗北して殺されるだけならばまだ良い。究極的には魔女に殺されるのも人間に殺されるのも大差はない。
最も恐ろしいのは魔女になってしまうこと。もし魔女になった自分を止める、止めようとする者がいなければ人々を襲い続ける災厄になり果てることだ。
それでも。
「私は聖杯戦争が終わるまで生きられない。きっと、それまでに死ぬか魔女になる。
でも、それでも今はまだ生きている魔法少女よ。だから―――」
―――いつかはいまじゃないよ。ひとはいつかみんな死ぬよ。キョーコとマミおねえちゃんはいま死んじゃうの?
とある幼い魔法少女がいた。彼女はいつか魔女になる魔法少女の運命を知ってもその瞬間まで生きようと決めた。
幼さ故の単純さ―――けれど、だからこそ彼女の言葉にマミはもう一度立ち上がることができた。
「―――私は、聖杯戦争を壊したい。それが魔法少女として私が信じる正義。
例え他のマスターの願いを踏みにじることになったとしても、譲れない私の願い」
願いを叶えて魔法少女になった身で烏滸がましいことを言っていると自分でも思う。
けれどマミは願うという行為自体の重みを、危険さを知っている。純粋な善意から生まれた願いであっても時に悲劇を引き起こすことがある。
まして悪意ある人間に願望器が渡ればどうなるか。最低でもそれだけは防がなければならない。
「ごめんなさい、アーチャー。こんなマスターで」
マミは聖杯を使うつもりはない。必然、アーチャーが願いを叶える機会は得られない。
彼女はアーチャーもまた聖杯に懸ける願いを持って現界したものと認識している。
「俺はまあ、自分で言うのも何なんだが戦いを終わらせる英雄だからな。
どちらかと言えば、こっちの方が性に合ってる。だから気にすんな。お前は決めた、俺は頷いた。これで良いんだ」
「……アーチャー」
しかし自らを死者として捉え生者と一線を引いているアーチャーには聖杯への願いは無い。
強いて言うならば自らを必要とした、善を成さんとするマスターの人生を助けることが願いだろうか。
マミの願いに対して一切の不服が無いかと言えば嘘になる。まだ短い時間しか生きていない彼女の人生がこんな戦争で終わることを受け入れることへの抵抗はある。
(けど、良いさ。お前は間違っちゃいない)
だが、誰よりも自らの運命に向き合い、命の答えに辿り着いた彼女自身の決意ならばアーチャーも大いに支持する他ない。この弓兵の“三度目の”主に相応しい気高い決意と末路だ。
ならばこの身は全霊で弓を引こう。彼女のために、彼女が守ろうとする無辜の民たち全てのために!
そうとも、英雄とは―――
「俺はいつでも行けるぜ。この戦争、終わらせてやろうや。ま、とっておきは一発きりだけどな」
「あら、文献では戦争が終わった後も生き残って昇進したっていう話もあるけど?」
魔法少女とは―――
「確かにそういう伝承が後世に残ってるのは知ってるけどな。
だがそいつはそいつだ。俺は正真正銘アーラシュ・カマンガー本人だからな、そう上手くはいかねえさ」
「そう。なら、仕方ないわね」
「ああ、仕方ねえさ」
――――――人を助けるために、在る。
【クラス】
アーチャー
【真名】
アーラシュ@Fate/Prototype 蒼銀のフラグメンツ
【パラメータ】
筋力:B 耐久:A 敏捷:B+ 魔力:E 幸運:D 宝具:B++
【クラス別スキル】
対魔力:C…魔術に対する抵抗力。一定ランクまでの魔術は無効化し、それ以上のランクのものは効果を削減する。
Cランクならば魔術詠唱が二節以下のものを無効化する。大魔術・儀礼呪法など、大掛かりな魔術は防げない。
単独行動:C…マスター不在・魔力供給なしでも長時間現界していられる能力。マスターを失っても、一日は現界可能。
【保有スキル】
頑健:EX…如何なる病にも毒にも侵されず、数多の戦いにおいて傷を受ける事すらなかったと謳われる肉体の頑強さ。
西アジアの神代最後の王、マヌーチェフル大王をして、替え難き至宝と賞賛した旧き神代の恩恵である。対毒スキルを付与し、耐久力を向上させる。
千里眼:A…視力の良さ。遠方の標的の捕捉、動体視力の向上。
このランクでは透視や読心、未来視をも可能とする。
弓矢作成:?…複数の矢を瞬時に作成する能力。
最大で空を埋め尽くす万単位の矢を即座に作り出し、山をも削り取る威力を持つ飽和射撃を行う。
【宝具】
『流星一条(ステラ)』
ランク:B++ 種別:対軍宝具 レンジ:2500km 最大補足:?
アーラシュ・カマンガーの伝承に曰く、その一矢でペルシャとトゥルクの六十年に渡る戦争を終結させた究極射撃。
戦争の終わり、両国はそれぞれの王国の境界線を定め、それによって戦争の終結を為す事に合意し、その境界を作るという大役をアーラシュは果たす事となった。
そしてダマーヴァンド山から放たれた、全ての民の平穏への願いを受けた一矢は、文字通りに大地を割ったという。
射程距離、実に2500km。その絶技によって両国の間には国境が作られ、平和がもたらされた。
しかし、人ならざる絶技と引き換えに彼は五体四散し命を失った。
彼の宝具はその性質から、一点集中ではなく広域に効果を発揮するため対軍に分類される。正確には対国宝具にさえ相当するだろう。
だが、一度きりしか使えない。ある意味二重の壊れた幻想(ブロークンファンタズム)である。
【人物背景】
ペルシャ神話における伝説の大英雄。アーラシュ・カマンガーという異名を持ち、ペルシャ語で「弓」を意味する「Kaman」の語源になったとも言われる、西アジアにおける弓兵の代名詞である。
神代最後の王とも呼ばれるマヌーチェフル王の戦士として、六十年に渡るペルシャ・トゥルク間の戦争を終結させ、両国の民に平穏と安寧を与えた救世の勇者。
神代も終わりに近づいた時代において突如現れた先祖返りであるため凄まじい身体能力と病や毒を退け戦において傷一つつかなかったとされる頑強さ、全てを見通す千里眼を持つ。
自らを「戦いを終わらせる英雄」と称し無辜の民を犠牲にすることを良しとしない。どころか、彼らの財を傷つけないようビルなどの建造物にまで配慮して戦う。
今回召喚された彼はかつて東京で行われた聖杯戦争の記憶を継承している。
【weapon】
深紅の大弓と矢。
矢は近接戦闘で直接手に持って使うこともある。
【戦術・方針・運用法】
およそまっとうな弓兵として最高峰の実力を有するサーヴァント。
英霊ですら視認不可能な距離から正確無比・広範囲・大威力の矢を放ち続けるのが基本戦術となる。
また千里眼スキルの透視によって例え壁や遮蔽物で視線が通らずとも正確に射線を見出し目標を撃ち抜く。このため工房に籠るマスター、サーヴァントには滅法強い。
反面弓兵としての弱点をカバーする能力に乏しいため魔力放出(炎)や強固な鎧、流れ矢の加護といった矢を無効にする能力を持つ相手には厳しい戦いを強いられる。
さらに宝具の使用は消滅と同義であるため一貫して千里眼による状況把握能力を活かした繊細な立ち回りが要求される。
【マスター】
巴マミ@魔法少女おりこ☆マギカ
【マスターとしての願い】
最後まで魔法少女として戦う
【werpon】
ソウルジェム
グリーフシード(一つ)
リボン、マスケット銃、大砲など魔法で生成した各種武装
【能力・技能】
契約し手に入れた魔法の力で戦う魔法少女。
「生きる(命を繋ぐ)」という願いから生み出されたリボンをベースにしてマスケット銃などの武装を作り出す他、治癒の心得もある。
さらに敵の手前で破裂する炸裂弾やリボンによる分身の生成までこなす。
魔法少女としてはベテランの部類に入り、様々な魔法と経験に裏打ちされた技量・戦術眼を武器に多くの魔女を倒してきた。
ただしやや詰めの甘い部分もあり、不意を突かれて窮地に陥ることもままある。
【人物背景】
見滝原中学校の三年生であり主人公である鹿目まどかの先輩。
家族と共に交通事故に遭い瀕死だったところに現れたキュゥべえの契約に乗り「生きる」ことを願いに魔法少女になった。
新米時代に魔女に歯が立たずある少年を殺されたことから結界内で死ねば誰にも死んだことを知られないという恐怖、自分が魔女に負ければ誰かが死に、誰かが悲しむという事実が大きなトラウマとなる。
以降、同じ過ちを繰り返さないよう魔法少女として修行を重ねるだけでなく兵法の本や大型銃の本を読むなどして努力と研究を重ねる日々を送ったがその代償にクラスメイトとは疎遠になり孤独を強いられるようになった。
一時期佐倉杏子と共闘していたが杏子の家族の死をきっかけに離別した。
「魔法少女まどか☆マギカ」ではその後まどかやさやかに出会うことになるが本作では暁美ほむらが既に両者と仲良くなっている関係上接点が無い。
キュゥべえから魔法少女狩りの噂を聞き調査をしていたところ犯人である呉キリカと接触。
相性の悪いキリカの魔法に苦戦するも炸裂弾を使った時間差攻撃で勝利。
その後杏子と千歳ゆまと共に事件の黒幕である美国織莉子を打倒すべく見滝原中に向かうも、キリカが魔女化したことで魔法少女の真実を知り杏子共々戦意喪失し自暴自棄になってしまう。
しかし虐待経験を元にされたゆまの叱咤で立ち直り、団結し勝利に導いた。
今回の彼女は本編終了後からの参戦となる。
【方針】
聖杯戦争を終わらせる。最低でも悪意ある人間に聖杯が渡ることだけは阻止する。
もし他のマスター協力できた場合は自らの生存を度外視してでも守り抜く。
投下終了です
みなさん投下乙です。投下します
少女は少年に恋をしていた。
想いを伝えたことはなく、ただ日々を一緒に過ごせればそれだけで満たされる。
そんな、ままごとのように幼く、しかし宝石のように輝く恋をしていた。
少女は少年が生きる島を守るために空へ飛翔し、そして帰ってはこなかった。
少女は僧侶に恋をした。
想いを伝えたが僧侶は仏門であるためその願いを受け入れられず、やむなく嘘をついて少女を遠ざけようとした。
僧侶を深く愛していたがゆえに、少女は裏切られたことに絶望し、怒り、僧侶を憎んだ。
少女は竜になり、僧侶を炎の吐息で焼き殺し、自らも命を断った。
少女は人間だったが、宝物を守るため竜に変身した戦士の名を冠した巨人を駆り、楽園を守るために戦った。
少女は人間だったが、裏切りの痛みに耐えられず怒りと憎しみのままに竜へと転身し、焦がれた男を自ら葬った。
少女は人間だったが、大切なものを守るために竜になった。
少女は人間だったが、大切なものを殺すために竜になった。
少女たちは、愛を求めて竜になった、人間だった。
「……では、なぜあなたは生きていらっしゃるのですか? 今までの話からすると、失礼ながらあなたも命を落としているのが筋のように思いますが」
「ええと、なんでかって聞かれると……私にもわかりませんけど」
街を見下ろす小高い丘で向かい合うのは二人の少女。
マスターとなった羽佐間翔子の前には、彼女のサーヴァントであるバーサーカー、清姫がいる。
翔子に与えられたマスターとしての知識には、バーサーカーは意思疎通のできない狂人とある。
だが、目の前の可憐なバーサーカーは翔子と問題なく会話を交わしていた。
「気がついたらなんだか見たことない世界にいて……なぜか私の身体も健康になって、お世話になったところを襲ってくる人たちと戦って……ええと、それで気がついたらここにいました」
「はあ。よくわかりませんが、とにかくあなたはその、ふぁふなー、とかいう鉄の馬の騎手である、ということなんですのね」
清姫は長く艶やかな翡翠色の髪を華やかな着物に流す、見目麗しい美少女である。
中学生の翔子と比較しても同年代にしか見えない容姿だが、れっきとしたサーヴァントであり秘めた力は強大だった。
翔子が駆る竜の名を冠する巨人――ファフナーにも劣らない、そんな直感さえ抱くほどに。
「ですが、残念なことに……あなたは私の求める“あの方”の生まれ変わりというわけではないようですわね。本当に残念です」
と言いつつ踵を返し立ち去ろうとする清姫を、翔子は慌てて引き止めた。
「ま、待ってください! もう少しだけ、私の話を聞いてください!」
「あら、放していただけますか? わたくし、申し訳ありませんが“あの方”以外にお仕えする気はありませんの。たとえ聖杯にマスターと定められた者であっても」
「えっ……あ、あの、でも……私にはあなたしか頼る人がいないんです!」
「それはわたくしの存じ上げることではございませんし」
にべもなく切り捨てられ、翔子はうう、と言葉も無い。
今度こそ立ち去ろうとした清姫だったが、俯く翔子がその手に大事そうに握り締めた一枚の髪を見て眉を上げた。
「それはなんです?」
「あ……これ、私の大事な写真です。気がついたら、なぜかポケットに入ってて」
翔子が見せた写真は、かつて翔子が仲間たちと撮影したものだった。
そこには笑顔の翔子と何人かの少年少女が写っていて、中でも一人の少年が清姫の目を引いた。
「これ……この方」
「か、一騎くんが何か!?」
「いえ、この方の部分だけ指紋は綺麗に拭き取られていますね。と思っただけですよ」
途端に上ずった翔子の反応を見れば、少女がこの少年にどんな想いを抱いているかは手に取るように分かった。
かつて清姫も身を焦がすほどに掻き抱いた感情――それは愛、恋心といった慕情に他ならない。
「なるほど、あなたはこの一騎さまという殿方に懸想していると」
「け!? け、けけけ懸想だなんてそんな! いや一騎くんのことはかっこいいし頼りになるしかっこいいと思いますけど、ででででもそんな!」
「あらあら、そんなに取り乱すなんて。可愛らしいことですわね」
「ううう……」
真っ赤になって黙りこんでしまった翔子を眺める清姫の瞳は、先程までと違って共感と親愛の情に満ちていた。
扇子で緩む口元を隠し、清姫はそっと翔子の手を取った。
「では参りましょうか、マスターさま」
「え? ……私を助けてくれるんですか?」
「ええ、気が変わりましたの。あなたは生きて一騎さまのところに帰りたいのでしょう?」
「は、はい! そうです、私は島に……一騎くんのいる竜宮島に帰りたいんです!」
「愛する方にもう一度巡り会いたいと願う想いは、わたくしも痛いほどわかります。であれば、わたくしと同じ望みを抱くあなたを、どうして見捨てることができましょうか。
このわたくし、清姫……あなたさまのサーヴァントとしてともに戦い、聖杯を得てあなたを故郷へと送り届けましょう」
清姫は柔らかな笑顔で翔子の従者となることを承諾する。
そのついでに聖杯で自らの願いも叶えようと考えていることまでは、仮初のマスターには告げなかったが。
「わたくしのことはバーサーカーとお呼びください。真名は清姫というのですが、あまり公にするものではありませんから」
「わかりました、清……じゃなくてバーサーカーさん。よろしくお願いしますね」
こうして、羽佐間翔子は再び竜を駆る。
愛知らぬ悲しき竜とともに、故郷である楽園へと帰還するために。
少女たちは、愛を求めて竜となる。
【マスター】
羽佐間翔子@スーパーロボット大戦UX
【マスターの願い】
生きて竜宮島に帰り、一騎に会う
【weapon】
なし
【能力・技能】
天才症候群「架空構成能力」
天才症候群とは、ファフナーに搭乗するため人工的に生み出された子どもたちが発症する特異個性。
翔子の場合は、一言で言えば「とてつもなく強い想像力」。
人間が本来実行できない「空を飛ぶ」という行為に(シミュレーター上で)一瞬で適応したり、痛みを受けた際にも脳にその痛みを「認識させない」ことで行動を阻害しない。
オーラ力
地上よりオーラロードを通ってバイストン・ウェルに召喚されたことで覚醒した、あらゆる生物が持つ生体エネルギー。
オーラ力が強いということはひいては強い生命力を有するということであり、病弱だった翔子はオーラ力に覚醒したことで持病が完治し、心身ともに健康になった。
【人物背景】
原典は「蒼穹のファフナー」の登場人物だが、クロスオーバー作品「スーパーロボット大戦UX」からの出展。
未知の生命体「フェストゥム」により侵略された世界に存在する「竜宮島」に住む少女。
フェストゥムに対抗できる兵器「ファフナー」に乗るために人工的に生み出された子どもたちの一人。
ファフナー「マークゼクス」のパイロットであり、幼馴染にして同じファフナーパイロットである真壁一騎に淡い恋心を抱く病弱な少女。
度重なるフェストゥムとの戦いの中、マークゼクスに搭載された自爆装置・フェンリルを起動。
一騎の帰ってくる島を守るため、フェストゥムを道連れに自爆し、蒼穹に散った。
が、実はフェンリルが起爆した影響で魂の道たるオーラロードが開き、異世界「バイストン・ウェル」に転移して生存していた。
バイストン・ウェルとは海と陸の間(はざま)に存在し、死した生命の魂が輪廻するやすらぎの地。
しかしそのバイストン・ウェルにも戦乱の嵐は吹き荒れており、翔子は島に帰るため、一騎ともう一度再会するため戦うことを決意する。
オーラロードを通ったことで翔子の「オーラ力」が覚醒し、内臓疾患が完全に治癒。
身体機能は完全に回復し、また最強の聖戦士であるショウ・ザマをして「あれだけの強いオーラ力」と言わしめるほどのオーラ力を獲得。
凄腕の女聖戦士として名を馳せ、地上進出を狙うホウジョウ軍に恐れられていた。
【クラス】
バーサーカー
【真名】
清姫@Fate/Grand Order
【パラメーター】
筋力:C 耐久:C+ 敏捷:B 魔力:C 幸運:B 宝具:EX
【属性】
【クラススキル】
狂化:EX
「狂戦士」のクラス特性。理性と引き換えに驚異的な暴力を所持者に宿すスキル。
身体能力を強化するが、理性や技術・思考能力・言語機能を失う。また、現界のための魔力を大量に消費するようになる。
――が、清姫は普通に意思疎通が可能なバーサーカーであり、命令にも忠実に従う。
その分パラメータの上昇もないが、魔力消費も普通。つまりメリットもデメリットもない、実質的にはダミースキルである。
彼女が狂うのは相手が恋い焦がれた僧侶安珍か、またその生まれ変わりと思い込んだマスターにのみ。
【保有スキル】
ストーキング:C
対象への熱烈な観察力。妄執の域に至った熱視線は敵の耐久を1ランク下げるが、逆に怒りもしくは恐怖を招き筋力を1ランクアップさせる。
変化:C
文字通り「変身」し、瞬間的に耐久を上昇させる。後述する宝具にも関わる。
【宝具】
『転身火生三昧(てんしんかしょうざんまい)』
ランク:EX 種別:対人宝具(自身) レンジ:1-20 最大捕捉:100人
炎を吐く大蛇。即ち竜としての転身。サーヴァントとして召喚された場合は、1ターンしか保たないが、その竜の息の威力は凄まじい。
彼女に竜種の血が混じっていたという記録はない。あるのはただ、恋焦がれた人間へのあくなき妄執だけだった。
……それはつまり「思い込み」だけで竜に変身してしまったという彼女の執念の現れと言えるのだが。
【weapon】
扇子から発する炎
【人物背景】
『安珍・清姫伝説』に登場し、僧侶・安珍に恋い焦がれる少女。
安珍が自分を裏切った(と思い込んだ)とき、深い愛がそのまま怒りと憎しみに反転し、火を噴く大蛇に姿を変えて安珍を焼き殺した。
その後想い人を殺した悲しみからか、安珍の後を追うように入水して命を断った。
容姿は着物をまとった儚げな美少女であり、物腰も柔らか。マスターには従順で家事全般も得意。
安珍に騙され裏切られた(と清姫が思い込んだだけだが)ことから、何よりも嘘を嫌う。聖杯に託す願いも「嘘のない世界」。
いわゆるヤンデレであり、使用するハンドルネームは「安珍だけは殺すガール」。
Fate/Grand Order本編においては、第一章に登場する味方側のサーヴァント。
主人公を安珍の生まれ変わりであると根拠なく確信しており、「旦那様」と書いて「マスター」と読む。
あくまで助っ人のため一章ストーリークリア後は登場しなくなる――のだが、直後にプレイヤーが使用できるユニットとしてプレゼントされる。
世界観的にサーヴァントが自分の意志で主人公についてくることは出来ないはずなのだが、これも愛の為せる業であろう。
メル友に玉藻の前(EXTRAの青キャスター)がいる。直接の面識はないがお互いどういう性格かは理解しており、マスターに献身的な愛を捧げる共通点もあって関係は良好の模様。
逆にエリザベート=バートリー (EXTRACCCの赤ランサー)とは険悪。双方我が強く決して退かないタイプのためか、竜蛇相打つ刺々しい関係。
前述のとおり狂化は機能していないが、マスターである羽佐間翔子が極めて強力なオーラ力を有するため、全体的にパラメータは大きく上昇している。
【サーヴァントの願い】
「嘘のない世界」。
投下終了です
投下します
だって今までもそうだったもの。
今回だって私を助けてくれるんでしょう?
『―――ああ。勿論だとも。本当に予想外のことばかりで頭にくる。
その中で最も予想外なのが君だよ、オルガ』
私にとって最も信頼出来るヒトがそう語る。
管制塔の爆発事故。突然のレイシフト。廃墟と化した冬木。
何もかも無茶苦茶だ。本当に予想外のことばかりで、頭がどうにかなりそうだった。
そんな中で、彼は現れてくれた。
レフ・ライノール。
真に頼れるのはやはり彼だけだ。
彼だけは私を助けてくれる。護ってくれる。
私一人じゃどうにも出来ないこの事態も、彼がいれば何とかなるかもしれない。
私は無邪気にそう信じていた。
彼ならば、この異常事態を解決してくれると――――
『爆弾は君の足下に設置したのに、まさか生きてるなんて』
――――思っていた。
彼の一言に、私は唖然とする。
私の足下に爆弾を設置した。
『爆弾』を、『設置』した?
何を言っているの、レフ。
言っている意味が、分からない。
『いや、生きているというのは違うな。君はもう死んでいる。肉体はとっくにね』
レフは語る。真実という残酷な事象を、淡々と語る。
私には、レイシフトの資格はなかった。
マスターとしての素質を持ち得ていなかった。
しかし、今の私はレイシフトによって冬木へと転移している。
それは私が既に死亡し、残留思念となっているから。
私は死んだことで、初めて切望した適性を手に入れた。
しかし死人故にカルデアへ帰還した時点で、私の意識は消滅する。
信じたくない。
こんなこと、有り得ない。
私がもう死んでいるなんて。
だけど、全てが合致してしまった。
レフの語る真実と、自分の現状が、パズルのピースの様に嵌ってしまった。
『さあ、よく見たまえアニムスフィアの末裔。
あれがおまえたちの愚行の末路だ。あれが今回のミッションが引き起こした結果だよ』
そして、彼は―――残酷な真実を再び叩き付ける。
人類の未来を観測するカルデアスが、真紅に染まっている。
ヒトの繁栄を表す青色は何処にも無い。
そこにあるのは、死と滅亡を表す赤色だけ。
つまり、人類の破滅を表している。
その原因が―――――私達のせい?
『良かったねえマリー?今回もまた、君の至らなさが悲劇を呼び起こしたワケだ』
そんなことが有り得る筈が無い。
ふざけるな。こんなこと、断じて認めない。
私の責任じゃない。私は失敗していない。
私は死んでなんかいない。
私のせいなんかじゃ―――――
そんな反論の最中で、私の身体が『宙に引っ張られた』。
『このまま殺すのは簡単だが、それでは芸が無い。
最期に君の望みを叶えてあげよう。“君の宝物”に触れるといい』
宝物―――つまり、カルデアスのこと。
カルデアスは高密度の情報体にして、次元が異なる領域。
つまりブラックホールや太陽のような物体。
それに人間が触れれば、どうなる。
分子レベルでの分解。生きたまま無限の死を味わう、文字通りの地獄。
私は『そこ』へ、引っ張られている。
いや――――いや、いや、いや、助けて、誰か助けて。
わたし、こんなところで死にたくない。
だってまだ、褒められてない。
誰もわたしを認めてくれていない。
どうして。どうしてこんなコトばかりなの。
誰もわたしを評価してくれなかった。
みんなわたしを嫌っていた。
やだ。やめて。誰か助けて。
私、まだ何もしていない。
生まれてからずっと、ただの一度も。
誰にも、認めてもらえなかったのに―――――――
『死』へと迫る間際に、私が触れたのは。
一筋の眩い光だった。
◆◆◆◆
「落ち着きましたか、マスター」
とある西洋風の豪邸の一室。
ぼんやりとしていた意識が、現実へと引き戻される。
カチャリという音と共にテーブルの上に置かれたのは紅茶入りのカップ。
椅子に座っていた女性―オルガマリー・アニムスフィアは、カップをまじまじと見つける。
「…一応、少しはマシになったわよ。未だ信じられないことばかりだけど…」
何とも言えぬ態度を見せながら、オルガは目の前に置かれたカップを手に取る。
そのままカップに入れられた紅茶をゆっくりと口の中へと注ぎ、味わっていく。
暖かな液体の味が喉を通っていく。
(……悪くはないわね)
思ったよりも悪くない、というのが最初に抱いた感想。
こんなものは従者の軽い気遣いに過ぎないと思っていたが、思いの外美味しかった。
騎士と言えど美味しい茶を淹れられる程度にティータイムを嗜みはするらしい。
この紅茶を淹れたのは、オルガマリーの傍に立つ男―――サーヴァントだ。
白銀の甲冑を身に纏い、金色の長髪を持つ端正な顔立ちの騎士。
クラスはランサー。槍を自在に操る槍兵の英霊。
一口飲んだ紅茶のカップをテーブルに置いたオルガマリーは、ゆっくりと己の右手の甲を確認する。
渦巻く焔と太陽を模した様な奇妙な紋章が浮かんでいる。
自らのマスターの証であり、サーヴァントに対する絶対命令権である令呪。
彼女はサーヴァントを従える存在、マスターになっていたのだ。
(本来ならば――――私に、マスターの適性なんて無い)
切実の願いだったマスターへの転身。
普段ならば泣きながら歓喜していたかもしれない程の事象だ。
しかし、今のオルガマリーには素直に喜ぶことなど出来なかった。
信じていたレフの裏切り。
燃え盛るカルデアスへと放り込まれた記憶。
未知の聖杯戦争の開幕。
そして、マスターになれる筈の無い自分がマスターになったという事実。
自分の理解の範疇の出来事が余りにも起こり過ぎていた。
あの時、自分はレフに裏切られた。
彼の手で燃え盛るカルデアスに放り込まれ、永遠の地獄を味わい続ける筈だった。
しかし、こうして自分はこの場に居る。
死を宣告された筈の自分が聖杯戦争に召還され、仮初めの肉体を獲得し、剰えマスターとしての闘いを運命づけられている。
これもまた特異点の一つなのか。或いはレフの仕掛けた茶番なのか。
それとも、全く未知の事象なのか。
答えは解らない。しかし、これだけは聞いておきたかった。
「ねえ、ランサー。この聖杯戦争に敗北した人間は――――どうなるの?」
不安げな瞳を向け、オルガマリーは己のサーヴァントに問いかける。
ランサーは僅かながら暗い面持ちを浮かべ、少し悩む様に口籠る。
暫しの沈黙の後、ランサーは口を開いた。
「…聖杯によって消去されます。生き残れるのは、勝者だけです」
消去。
つまり、敗北は死を意味する。
それを聞いた瞬間、オルガマリーは僅かに顔を青ざめさせる。
覚悟はしていた。『聖杯戦争』という儀式が何なのかは知っていた。
それが今、はっきりとサーヴァントの口から語られた。
敗者には死あるのみ。生き残る為には、戦わねばならない。
「ですが、マスター…貴女は一人ではない。私というサーヴァントが居る。
主を護るのは従者の役目。貴女が望むのなら、私は貴女を護る騎士となりましょう!」
頭を抱えるオルガマリーを励ます様な騎士の一声。
忠義を見せる様にその場で跪くランサーを、オルガマリーは驚いた様子で見下ろす。
――――そう、彼はサーヴァント。生かすも殺すも自分次第だ。
オルガマリーは自らの置かれている状況、これまでの経緯を追憶する。
名門の当主でありながら、自分にはマスターとしての適性が無かった。
それ故に気丈に振る舞い、名家としての体面を守ろうとした。
しかし上手くは行かなかった。
周囲から疎まれ、嫌われ、誰からも認められず。
そして最期は信じていた男に裏切られ、無様に散っていった。
何もなし得ず、何も得られず。
自分の人生とは、何だったのだろうか。
自分はまだ誰からも認められていない。
誰からも評価されていない。
誰からも褒められていない。
このまま何もなし得ず、ひっそりと死に行き、人々から忘れ去られるのか。
そんなのは―――――――嫌だ。
私はまだ死にたくない。生きていたい。
生きてカルデアに戻りたい。
故に、彼女は答える。
「気になることも山ほどあるけど、これだけははっきりしてるわ。
―――――私は、生きたい。まだ死にたくない。
その為にも、貴方の力が必要なの。手を貸して頂戴、ランサー」
◆◆◆◆
彼は、アイルストという王国に尽くす一人の騎士だった。
国の為に、王族の為に。
ただひた向きに忠誠を貫く、義の戦士だった。
しかし、そんな彼の忠義は王の嫉妬によって打ち砕かれた。
実子である王子と王女の絶大なる人気に焦った王は、愚かな命を下した。
護国の真龍の討伐。数々の魔物から国を守る龍を討つことを、騎士に命じたのだ。
騎士は王への忠義を貫いた。
騎士は真龍へと立ち向かい、これを討ち取ったのだ。
その結果、護る筈だった国は破滅の道を辿った。
抑止力たる龍を失った国に、無数の魔物が攻め込んできたのだ。
騎士は己の所業を悔やんだ。己の愚かさを嘆いた。
国を崩壊へと導いたのは己自身―――そう戒めた騎士は、慰霊の旅に出た。
各地へと巡礼し、自らの罪滅ぼしをせんとした。
そんな中で、彼は星の島を目指す騎空団へと誘われた。
彼らとの交流や旅の中で、騎士は己の罪と向き合う決心を固めた。
そして、騎士は再び祖国へと戻った。
滅びた筈の祖国で目にしたのは、復興しつつある街の姿だった。
生き残った者達が切磋琢磨し、再び街を蘇らせていたのだ。
騎士は愕然とした。
帰るべき場所は滅びていなかったのだ。
そんな中、生き残っていた王家の姉弟の誘いで彼は再び祖国の為に尽くす道を選んだ。
自らの罪と向き合い、真の贖罪をする為に。
結果として真龍は王家の儀式によって再び蘇り、騎士は救われたのだ。
生前への悔いは無い。
自分は思うがままに命を燃やしたのだから。
聖杯によってかつての罪を無かったことにするつもりもない。
己の罪は英霊になって尚背負い続けると覚悟したのだから。
そして、既にアイルストは王家姉弟と市民達の手によって復興している。
それを覆すのは、彼らの想いと努力を踏み躙るも同然の行為だ。
そんな彼が、何故サーヴァントとして召還されたのか。
それはオルガマリーの願いを感じ取ったから。
『生きたい』という純粋な想いを受け取ったからだ。
ランサーのサーヴァントは、騎士である。
祖国と民の為にその槍を振るった義士である。
故に彼はオルガマリーの下へと駆け付けた。
気丈に振る舞う裏で、死に怯え続ける淑女を救う為に。
死を恐れ、生を望むという純粋な願いを護るべく。
ノイシュは主への忠義を尽くす一人の騎士として、この地に召還されたのだ。
「―――――サーヴァント、ランサー。
主の為に槍を振るう一人の騎士となりましょう」
故にランサーのサーヴァント、ノイシュはそう宣言する。
生還を望むマスターを護る、一人の騎士となることを誓った。
【クラス】
ランサー
【真名】
ノイシュ@グランブルーファンタジー
【パラメーター】
筋力B 耐久B+ 敏捷B 魔力C 幸運C 宝具B
【属性】
秩序・善
【クラス別スキル】
対魔力:B
魔術詠唱が三節以下のものを無効化する。
大魔術・儀礼呪法などを以ってしても、傷つけるのは難しい。
【保有スキル】
騎乗:C+
乗り物を乗りこなす才能。
乗馬の技能に長ける他、現代の乗り物を一通り乗りこなすことが出来る。
宝具「翔けよ紅蓮の焔馬」で生み出した焔の馬も騎乗スキルによって乗りこなせる。
魔力放出(炎):C
武器・自身の肉体に魔力を帯びさせ、瞬間的に放出する事によって能力を向上させるスキル。
ノイシュの場合、燃え盛る炎が魔力となって使用武器に宿る。
護国の騎士:B
祖国と民衆の守護者としての逸話がスキルへと昇華されたもの。
使用することで一定時間耐久値にプラス補正が付加され、更に防御判定の成功率が上昇する。
ノイシュが味方と認めたサーヴァントもこのスキルの恩恵を受けることが出来る。
不屈の意志:A
己の弱さを受け入れ、再び祖国の為に立ち上がった忠義の意志。
敵の攻撃に怯みにくくなり、重傷を負ってなお戦闘の続行が可能となる。
【宝具】
「咎負いの騎士(ディアドラ・ベイン)」
ランク:B 種別:対竜宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
かつて愚王の命に従い、護国の真龍を討伐してしまった逸話の具現。
『竜』の属性・血縁を持つ存在に有利な攻撃判定が発生し、更に強力な追加ダメージを与える。
また前述の条件を満たす存在から仕掛けられた状態異常などのバッドステータスを無効化する。
忠義の騎士が犯した過ちの具現であり、彼が背負いし罪そのもの。
しかし己の罪と向き合う決意をした騎士にとってまさしく象徴と言える宝具。
「翔けよ紅蓮の焔馬(イヴァル・アスィヴァル)」
ランク:C+ 種別:対城宝具 レンジ:1~50 最大捕捉:200
魔力によって生み出した焔の馬に跨がり、騎士槍を突き出した超高速の突撃を仕掛ける宝具。
ノイシュの奥義と言える技であり、敵の攻撃や防御に対する強力な判定が与えられる。
攻撃終了と共に焔の馬は霧散し消滅する。
【Weapon】
騎士槍、盾
【人物背景】
アイルスト王国に仕える騎士。
かつて愚王の命によって護国の龍ディアドラを討伐し、結果として国の壊滅を招いてしまう。
国を滅ぼし多くの民が犠牲となったことを己の罪として背負い、慰霊の旅を行っていた。
旅の末に罪と向き合う決意をしたノイシュはアイルストへ帰郷し、王の子である姉弟の主導で国が復興しつつあることを知る。
ノイシュは贖罪のため再び国に尽くす道を選び、ディアドラ復活の儀式を始めとするアイルスト復興活動に尽力した。
【サーヴァントとしての願い】
なし
【方針】
マスターを生かす為に戦う。
【マスター】
オルガマリー・アニムスフィア@Fate/Grand Order
【マスターとしての願い】
生きてカルデアへ帰還する。
【weapon】
なし
【能力・技能】
名門の血筋に恥じない優れた魔力を持つが、マスターとしての適性は皆無。
本来ならばマスターになることが出来ない存在。
この聖杯戦争ではマスターの資格を得ているが、やはり正常な魔力供給は行えない。
魔術回路の大半が魔力供給源として機能していない為、一般人よりやや上程度の魔力しか供給できない。
【人物背景】
魔術師の名門「アニムスフィア家」の当主にして人理保障機関カルデアの所長。
元々はマスター候補生の一人だったが、父親の死を契機にカルデア所長を引き継ぐこととなる。
高飛車でヒステリックな性格だが裏では所長としての重責、マスター適性が無い自分への劣等感など数々の心労を抱えている。
その為か根は寂しがり屋で小心。とはいえ所長としての威厳が無い訳ではなく、落ち着いている時には気丈に振る舞う。
カルデアの爆発事故をきっかけに冬木へのレイシフトに巻き込まれ、主人公らと行動を共にしていた。
しかしその後信頼していたレフの裏切りに遭い、更に自身が既に死亡しているという事実を叩き付けられる。
絶望の最中でレフによってカルデアスの内部へと放り込まれ、最期まで無念を叫びながら消滅した。
【方針】
とにかく生きて帰る。
その過程でこの聖杯戦争について調査もしたい。
投下終了です
皆様投下乙です。
>大神ソウマ&ライダー
またしても兵器を使って戦う算段を立てる主従。
サーヴァントに頼り切るのではなく、自分で戦う意思を確り示しているのが格好いいです。
なんだか応援したくなる主従でした。
>宇佐美奈々子&アーチャー
一般人鱒はやっぱり戦いにすぐには順応出来ないよなあ。
それを受け止めた上で肯定するアーチャーが実にいい人って感じです。
しかし、この台詞着包みで言ってたのか……w
>巴マミ&アーチャー
人を救うことに特化した英霊と魔法少女。
マミさんは危ういのかな、とも思ったけどおりマギの彼女はその点大丈夫でしたね、そういえば。
アーラシュと決裂することはまずないでしょうし、強力な対聖杯主従になりそうです。
>羽佐間翔子&バーサーカー
うわあヤンデレ姫様だ。
二人の恋バナ(?)が微笑ましいというかなんというか。
>少女たちは、愛を求めて竜となる。
最後のこの一文がすごく好きです。個人的に。
>オルガマリー&ランサー
所長の独白や描写がとにかく切ない。
レフはあの通りクソ野郎だったわけですが、所長にとっては唯一の理解者だったわけだからなあ。
こちらも応援したくなる、というか素直に幸せになってほしい主従でした。
投下します。
「おれは、死ぬことなんてこれっぽっちも怖くないんだ」
からからとグラスに注がれたウォッカの氷を弄び、嘯く男の視界は暗闇一色だった。
彼が色のある世界の住人でないということは、腰掛けた安楽椅子の横に立てかけられた杖が物語っている。
目が視える暮らしを送ってきた者がある日突然視覚を奪われば、当分は些細な日常動作さえままならなくなる。
その点、彼の動きは細部に至るまで完璧だった。
完全に『光がない』ことに慣れている、先天性の全盲者特有の慣れがそこにはある。
「子供のころから死の恐怖なんかまったくない性格だったよ。
どんなヤツにだって勝てたし、犯罪や殺人も平気だった……警官だってまったく怖くなかったね」
生まれ持った力のおかげで。
呟いて男は、自分の掌を光へ翳すような動作をした。
当然、その行為が彼へもたらしてくれるものは何もない。
だが、心を満たしてくれる。
光のない孤独な世界を生き抜くにあたり、自分をいかなる時も助けてくれた力が、その存在を感じさせてくれる。
「そんなおれが――はじめてこの人にだけは殺されたくないと心から願う気持ちになった。
どんなゴロツキだろうが権力だろうが、路傍をうろつく黒アリみたいにちっぽけなものにしか見えなかったこのおれが……この人にしてみりゃ、おれの方こそ虫ケラ以下なんだって思い知ったのさ」
だからその出会いは、ンドゥール青年にとって劇的だった。
歩んできた人生と積み上げてきた価値観を一変させるほど、彼の前へ現れた男は……あまりにも魅力的だった。
全盲故に、どういった姿をしているのかはンドゥールには今も分からない。
しかしながら、視覚などに頼らずとも、この人には絶対に敵わないと直感した。いや、させられた。
「その人はあまりにも強く、深く、大きく、美しい……そして、このおれの価値をこの世で初めて認めてくれた。
あの人がいなかったら、おれはきっと井戸の外も知らないカエルのまま一生を終えてただろうな。
おれはずっと待っていたんだよ、あの人に会うのをさ……だからこう思う」
指を一本立てて、ンドゥールは続けた。
「『死ぬのは怖くない しかし あの人に見捨てられ殺されるのだけはいやだ』
――わかるか? 悪には悪の救世主が必要なんだよ。あの人の存在は、おれにとっての救いだったのさ」
「生憎だが、理解しかねる」
にべもなくンドゥールの台詞を切り捨てたのは、褐色の肌をした隻眼の男だった。
白を貴重とした戦装束に身を包んだ姿は聖職者のようにも見えるが、しかしその本質は殉教者のたぐいだ。
彼とンドゥールの共通項は、お互い、とある自分よりも遥かに強大な存在へ心酔していること。
しかしンドゥールの信仰と彼の信仰では、ある一点が決定的に異なっている。
「真に救世主ならば、その存在へ感謝するならば、下される死は美徳とすべきだ」
「……へえ……おまえはそう考えるのか、アーチャー」
「そう驚くことでもないだろう。それに、僕と君の思想が相容れないのは必然、起こるべくして起こった相違だ」
サーヴァント・アーチャーは聖杯を求め、マスター・ンドゥールの召喚に応じてこの架空世界へ現界した。
だがしかし、サーヴァントとして召喚に応じたことがマスターとの共鳴を意味するかといえば、否だ。
時にはまるで相容れない、相性の悪い相手と結び付けられることもある。
例えば、卑劣非道の奇策謀術を生業とする魔術師と、誇りある戦いを望む騎士道精神の持ち主のように。
とはいえ、これはあまりに極端な例だ。
ンドゥールとアーチャーは性質では似通っており、互いに互いを糾弾し、弾劾する程の悪相性を約束された主従ではない。
「異なる神を崇める者同士が、真に胸襟を開いて分かり合うことなど決してないのだから」
「フフ……ああ、そうだ。おれもおまえも、互いに違うものを崇めている」
「だが――利害は一致する。僕も君も、聖杯を名も知らぬ盆暗へ渡すことだけは度し難いと思っている」
「その通り。聖杯は……」
「ああ。聖杯は……」
おれの、
僕の、
信ずるあの方にこそ相応しい。
その想いがある限り、この主従は絶対に破綻しないのだ。
神を愛するようにおのれの主を愛しているからこそ、つまらない癇癪で聖杯を捨てることは出来ない。
「では往こうか、アーチャーのサーヴァント、リジェ・バロ」
「言われるまでもない、マスター・ンドゥール。僕の仮の契約者」
「望むのは?」
「神の所有物を脅かす不信者の抹殺。そして」
アーチャーは、盲目のマスターへとその宝具たる銃(ユミ)の筒先を向けた。
「最後は君を殺そう。それが、神の使いたる僕の使命だ」
「フフフ――こちらの台詞だよ。DIO様以外の者に聖杯は過ぎた品物だ。それはおまえも例外じゃァない」
彼らの戦いはある種の代理戦争だ。
彼らは願いを持たない。
聖杯を使って願いを叶えるなどという野心を、端から持ち合わせていない。
彼らにとっての聖杯は捧げるものだった。
持ち帰り、然るべき持ち主に献上するものだった。
そして当然。神は二人といない。
それは、ンドゥールとアーチャーの共通認識で――だからこそ、どうなろうと彼らはどちらかが死ぬ定めにある。
だが今は、大いなる大義の為に轡を並べ、歩むのだった。
【クラス】
アーチャー
【真名】
リジェ・バロ@BLEACH
【パラメーター】
筋力C 耐久A+ 敏捷C 魔力A 幸運B 宝具A++
【属性】
秩序・悪
【クラススキル】
対魔力:A
A以下の魔術は全てキャンセル。
事実上、現代の魔術師では○○に傷をつけられない。
単独行動:E
マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
ランクEならば、マスターを失っても数時間は現界可能。
【保有スキル】
追い込みの美学:B
相手をより確実に殺すためにあえて受けに回り、受け流して反撃に移る技能。
追撃:D
離脱行動を行う相手の動きを阻害する。
相手が離脱しきる前に、一度だけ攻撃判定を得られる。
滅却師:A
虚と闘うために集まった霊力を持つ人間の集団の一員。
大気中に偏在する霊子を自らの霊力で集め、操る技術を基盤とした戦闘技能を使用する。
更に星十字騎士団の一員である彼は、そこに加えて『血装(ブルート)』という戦闘術も会得している。
【宝具】
『The X-axis(ジ・イクサクシス)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1~80 最大捕捉:1人
万物貫通の名を持つ、彼がユーハバッハより賜った聖文字「X」の能力。
武器である巨大なライフルの射程上にある全てのものを等しく貫通する。
破壊力抜群の超高濃度の霊子の塊を放つことが出来、この前ではどんな防御壁も意味を成さない。
更に閉じられた左眼を開眼することにより、自身の身体にもその能力を適用することが出来る。
即ちその身体は全てのものを「貫通」――あらゆる攻撃を透過するため、事実上の無敵状態となる。
彼が戦闘で危機に陥った時に瞬間的にしか発動できないが、三度目の開眼以降は後述の宝具が自動発動する。
『神の裁き(ジリエル)』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:1人
左眼が三度開眼することにより自動発動する宝具。
光を放ち、四対の翼を持つ異形の『完聖体』へと至る。
あらゆる攻撃を一切受け付けず、翼の穴から放たれる「万物貫通」の光で相手を貫く。
防御不能の攻撃と自動絶対防御を同時に行う隙のない形態だが、マスターであるンドゥールの魔力を物凄い勢いで食い潰す為長時間の使用は禁物である。
【weapon】
巨大なライフル
【人物背景】
星十字騎士団所属の滅却師。
左眼にXを丸で囲んだ傷痕を持つ色黒の青年。ノースリーブの軍服を着ている。
騎士団の中でも高い実力を持っており、第二次尸魂界侵攻の際はユーハバッハの親衛隊に抜擢されている。
その信仰心は一際強く、自らを彼の最高傑作であると自負している。
【マスター】
ンドゥール@ジョジョの奇妙な冒険
【マスターとしての願い】
DIO様へ聖杯を献上する
【weapon】
なし
【能力・技能】
スタンド能力『ゲブ神』。
スタンドを流体と一体化させて操る能力で、少量の水さえあればそれをそのまま操ることが出来る。
物質同化型のスタンドであるため、一般人にも視認することが可能。
本体の能力も併せて四キロ離れた場所にいる敵に対して攻撃が可能。
戦闘時には水を手の形に変化させて、爪による攻撃を多用していた。
人間の体内に入り込んで窒息させる、首をひっつかんでもぎ取るなどの応用も利く。
温度が高く、水の少ない広大な砂漠でも水を蒸発させることなく長時間戦闘を行える。水を蒸発させる炎とは相性が悪いが、砂の場合は染み込んだと見せかけて潜り込ませ、離れた場所にいるものに不意打ちを食らわせることも可能。
【人物背景】
エジプト九栄神のひとつ『ゲブ神』の暗示を持つスタンド使い。
盲目の青年で杖がなければまともに移動もできない。
しかし、四キロ先の足音を聞き分けられるほど異常な聴力と感覚を持つ。
幼少時にスタンドが発現し、全盲でありながら強力なスタンドを行使する生活を送っていた。そんな中でDIOと出会い、生まれて初めて「この人にだけは殺されたくない」と心から願った。
以降は彼に心酔するようになり、彼のことを「悪の救世主」と称し崇拝している。
【方針】
確実に、敵を殺す
投下終了です。
【セイバー】3
沙条愛歌@Fate/Prototype 蒼銀のフラグメンツ & ジークフリート@Fate/Apocrypha
杉村弘樹@バトル・ロワイアル(漫画版) & 黒沢祐一@ウィザーズ・ブレイン
越谷小鞠@のんのんびより & アルトリア・ペンドラゴン(リリィ)@Fate/Unlimited Codes
【アーチャー】6
ロボとーちゃん@クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ!逆襲のロボとーちゃん & 朝潮@艦隊これくしょん
佐城雪美@アイドルマスター シンデレラガールズ & コリエル12号@BAROQUE〜歪んだ妄想〜
暁@艦隊これくしょん(アニメ版) & アカツキ@アカツキ電光戦記
宇佐美奈々子@普通の女子校生が【ろこどる】やってみた。 & 相良宗介@フルメタル・パニック!
巴マミ@魔法少女おりこ☆マギカ & アーラシュ@Fate/Prototype 蒼銀のフラグメンツ
ンドゥール@ジョジョの奇妙な冒険 & リジェ・バロ@BLEACH
【ランサー】2
棗鈴@リトルバスターズ! & レオニダス一世@Fate/Grand Order
オルガマリー・アニムスフィア@Fate/Grand Order & ノイシュ@グランブルーファンタジー
【ライダー】4
吹雪@艦隊これくしょん(アニメ版) & Bismarck@艦隊これくしょん
大和@艦隊これくしょん(アニメ版) & 常闇ノ皇@大神
大神ソウマ@神無月の巫女(アニメ版) & 神隼人@真(チェンジ!!)ゲッターロボ 世界最後の日
風見志郎@仮面ライダーSPIRITS & 黒井響一郎@スーパーヒーロー大戦GP 仮面ライダー3号
【キャスター】5
春日野椿@未来日記 & 円宙継@ムヒョとロージーの魔法律相談事務所
ツバサ@神無月の巫女(アニメ版) & キャロル・マールス・ディーンハイム@戦姫絶唱シンフォギアGX
夜神月@デスノート(ドラマ版) & ウィリアム・シェイクスピア@Fate/Apocrypha
ルドル・フォン・シュトロハイム@ジョジョの奇妙な冒険 & フリット・アスノ@機動戦士ガンダムAGE
アナスタシア@アイドルマスター シンデレラガールズ & スターゲイザー@ニンジャスレイヤー
【アサシン】4
ペチカ@魔法少女育成計画restart & 死神@暗殺教室
ディオ・ブランドー@ジョジョの奇妙な冒険 Part1 ファントムブラッド & DIO@ジョジョの奇妙な冒険 Part3 スターダストクルセイダース
ディオ・ブランドー@ジョジョの奇妙な冒険 & 鵜堂刃衛@るろうに剣心(実写映画版)
間桐臓硯@Fate/stay night & テラフォーマー@テラフォーマーズ
【バーサーカー】1
羽佐間翔子@スーパーロボット大戦UX & 清姫@Fate/Grand Order
【エクストラ】2
《セイヴァー》
ニコラ・テスラ@黄雷のガクトゥーン & 柊四四八@相州戦神館學園八命陣
《ハングドマン》
リベッチオ@艦隊これくしょん(ゲーム版) & ディアボロ@ジョジョの奇妙な冒険
投下乙です
自分も投下させていただきます
虹村億泰には、願いがあった。
それは、自分の父を殺すことだった。
とはいっても、殺意を抱くほどに父親を憎んでいたわけではない。
もともと普通の人間だった彼の父は、ある事件により醜い怪物に成り果ててしまったのだ。
しかも怪物となった父は、不死身の存在となっていた。
父を安らかに眠らせるため、億泰と兄の形兆は「スタンド」と呼ばれる超能力を修得した。
だが兄の力も弟の力も、父を殺すことはできなかった。
そこで形兆は、強引な手段で他者をスタンドに目覚めさせていった。
億泰も、盲目的にそれに従った。
だがそれでもなお、父を殺せる能力者は現れなかった。
行き詰まりを感じていたその頃、彼は聖杯戦争の舞台に招かれた。
◇ ◇ ◇
自分が置かれた状況を知った時、億泰はすぐさま聖杯の力で父を殺すことを考えた。
だがサーヴァントとの邂逅を果たした直後、彼はその考えがしばし頭から抜け落ちるほどの衝撃を受けることになる。
「わしが男塾塾長江田島平八である!!」
億泰は、たまらず尻餅をついていた。
彼が引き当てたサーヴァントは、バーサーカー。狂える戦士だ。
しかしだからといって、いきなり全身全霊の大声で自己紹介されるとは億泰も思っていなかった。
彼が転んだのは初っぱなから大声で自分の真名を宣言するという愚行に驚いたのではなく、ただただ音量が大きかったからである。
「えーと、あんたが俺のサーヴァント……だっけ。それでいいんだよな」
「わしが男塾塾長江田島平八である!!」
億泰の問いに対し、バーサーカーは先ほどとまったく同じ語句で応える。
「いや、それはもうわかったから! もっと小さい声でしゃべってくれよ!」
億泰が今いるのは、自宅である。
幸い(この世界での)兄は外出中だが、こんな大声で叫ばれてはご近所にどう思われるかわかったものではない。
「わしが男塾塾長江田島平八である」
「そうそう、そのくらいにしてくれよ……。ていうかよぉ、おっちゃん、それしかしゃべれないのか?」
「わしが男塾塾長江田島平八である」
「しゃべれねえみてえだな……」
顔にびっしりと汗を浮かべつつ、億泰は肩を落とす。
「これじゃ会話もできねえぜ……。とりあえず今は消えておいてくれよ、おっちゃん。
用がある時は呼ぶから」
「わしが男塾塾長江田島平八である」
億泰の言葉に素直に従い、バーサーカーは霊体化して姿を消した。
「やれやれ、なんかすげえの引いちまったなあ……」
めまいを覚えながら、溜息を漏らす億泰。
目まいの原因は精神的なものだけでなく燃費の悪いバーサーカーに魔力を持っていかれたためでもあるのだが、まだ彼はそれに気づいていない。
(会話がろくにできねえってのは不安要素だが……。あのおっさんは強え。
言葉で伝えられなくても、見ただけでそれがわかった。
あんなのが俺の相棒なら、この聖杯戦争ってやつを勝ち抜くのも決して無謀な夢じゃねえぜ!)
心を落ち着かせるにつれ、億泰の瞳は光を増していく。
(待っててくれよ、兄貴! 必ず俺が、親父を殺すための力を手に入れて帰るからな!)
【クラス】バーサーカー
【真名】江田島平八
【出典】魁!!男塾
【属性】混沌・狂
【パラメーター】筋力:A++ 耐久:EX 敏捷:C 魔力:D 幸運:E 宝具:B
【クラススキル】
狂化:D
理性と引き換えに驚異的な暴力を所持者に宿すスキル。
江田島の場合は思考が単純化し、「わしが男塾塾長江田島平八である!!」としかしゃべれなくなっている。
【保有スキル】
天性の肉体:B
生まれながらに生物として完全な肉体を持つ。このスキルの所有者は、常に筋力がランクアップしているものとして扱われる。
無窮の武練:A
ひとつの時代で無双を誇るまでに到達した武芸の手練。
心技体の完全な合一により、いかなる精神的制約の影響下にあっても十全の戦闘能力を発揮できる。
男塾塾長:C
最強の日本男児たる証。
健全な日本人男性ならば、彼に畏敬の念を抱かざるにはいられない。
ただし、狂化によりランクダウンしている。
【宝具】
『わしが男塾塾長江田島平八である!!』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1-15 最大捕捉:80人
単なる名乗りが、言霊の域にまで昇華されたもの。
この名乗りを聞いた者は、強い衝撃を受け吹き飛ばされてしまう。
江田島の求める「男らしさ」を持った者であれば、抵抗が可能。
また、複数回受けることで耐性がついていく。
なお任意でオン・オフが可能なため、名乗る度にこの宝具が発動するわけではない。
【weapon】
頑健な肉体
【人物背景】
札付きの不良たちを集め、日本の将来を背負う人材へと育成する「男塾」の塾長。
宇宙空間をふんどし一丁で移動し、宇宙服だけで大気圏に突入して生還するという人間離れした肉体の持ち主。
歴戦の猛者を子供扱いして圧倒するなど、その戦闘力も凄まじい。
【サーヴァントとしての願い】
わしが男塾塾長江田島平八である!!(解読不能)
【マスター】虹村億泰
【出典】ジョジョの奇妙な冒険
【マスターとしての願い】
父親を死なせてやる
【weapon】
特になし
【能力・技能】
○スタンド「ザ・ハンド」
近距離パワー型のスタンド。ビジョンは人間型。
能力は右手で触れたものを「削り取り」、この世から消滅させること。
非常に強力な能力だが、本体の億泰がバカなため充分に使いこなせていない。
【人物背景】
杜王町に済む高校生。底抜けの単純バカ。
彼の父親はDIOの手下であり、DIOが死んだ際に埋め込まれていた「肉の芽」が暴走。
わずかな知性しか持たない、不死身の怪物になってしまう。
父を殺せる能力者を見つけ出すため、「弓と矢」でスタンド使いを無差別に増やす兄・形兆に従っていた。
今回は仗助と出会う直前から参加させられている。
以上で投下終了です
投下乙です。
定型文しか喋れないバーサーカーというのは面白いなあ。
宝具も強力ですし、普通より意志疎通に難儀するのを除けば強そう。
億泰との相性も良さそうなので頑張ってほしいところです。
投下します。
「やってくれたな」
ステイル=マグヌスは頭を抱えていた。
その理由は言わずもがな、己の召喚したサーヴァントの行動に対してである。
彼が他陣営との会談場所として選定した廃工場は今や壁の所々に大穴が空き、内装は荒れ果てて見る影もない。
辛うじて残されていた埃をかぶった機材類も戦闘の余波を受けて無残な姿となっており、その有様から、ここでサーヴァント同士の戦闘が行われたのであろうと容易く推察することが出来る。
「……バーサーカー。僕は君に、敵対行動を行うなと命じなかったかい?」
「あん? ……あー。そんなこと言われたような気もするな。よく覚えてねえけどよ」
ステイルの召喚したサーヴァントは狂戦士(バーサーカー)のクラスだった。
バーサーカーは基本的に意志疎通が出来なくなる狂化のスキルを持っていると聞く。
そのため、物言わぬ獣のような存在が呼ばれてくるのではと身構えていたが――予想に反して、ステイルにあてがわれた英霊は意志の疎通が可能な、狂乱の浅い手合いであった。
これには素直に自分の幸運を感じたステイルだったが、しかしそれが早合点だったとすぐに理解することになった。
バーサーカーは会話に応じる。最低限の理性を持ち合わせているし、作戦を聞くだけの知能もある。
だが、それでもこいつはバーサーカーだった。
理性と知能を持っているからと言って、彼女が持つ狂化のスキルと狂戦士の適性は、決して嘘偽りなどではなかったのだ。
「でもいいじゃんか。ちゃんと全部勝ってんだから、今んとこはさ」
「それで問題なければ、僕はわざわざ君にこんな話はしないんだけどね」
嘆息して、がしがしと頭を掻く。
バーサーカーのサーヴァントは強力だが、しかしそれだけに戦闘では窮地に立たされることがままあるクラスでもある。
それだけに、バーサーカーをサポートしてくれる同盟相手を確保しておく必要があるとステイルは踏み、行動した。
当然大半は門前払いだったものの、中には交渉へ応じてくれる者もいた。
しかし。現在に至るまで、ステイル=マグヌスはその全てを、自らのサーヴァントの手でご破算にされている。
「仕方ないだろ? あんな強ぇ連中目の前にして、指咥えて見てろとか拷問か何かかよ。えぇ?」
一言に狂っているといっても、様々な形があるだろう。
親や子を、あるいは友を殺された怒りで狂乱した者。
大きな力の代償によって自我を失った者。
愛や劣情の末に狂った者。
そもそも生まれた時から理性を持たない者。
そしてこのバーサーカーは、戦闘に狂おしいほどの執着を寄せる者――『戦闘狂』なのだ。
ステイルが連れてきた同盟相手へ、バーサーカーは決まって容赦なく攻撃を加える。
当然相手は謀られたと思い応戦し、敵を倒すにしろ逃げられるにしろ、どの道同盟の話は水泡と帰すわけだ。
令呪を使って攻撃を禁じれば流石の彼女も止まるのだろうが、言うまでもなく、この序盤も序盤からそんな理由で三度限りの命令権を切るのは愚策すぎる。
これから戦争が激化していく中で、このバーサーカーの手綱を二度までしか握れないのはあまりにも致命的だ。
彼女はこと戦いとなれば、マスターの指示などほぼ聞く耳持たずで暴れ回る。
それはこれまでの騒動からも明らかなことだった。ステイルは煙草に点火しながら、厄介なサーヴァントを引いたものだと自らの不運を嘆く。
本当に、この好戦的な所さえなければ……意志疎通も可能で実力もある、理想的なサーヴァントであったのだが。
「私はさ。聖杯だっけ? そういうのは正直さ、どうでもいいんだわ」
事も無げに、この問題児はそんなことを言ってのける。
それが聖杯戦争のシステムを根底から否定する発言であることを知ってか知らないでか、それさえ定かではない。
ただ、納得のできる物言いではあった。
そう長い時間を共にしてきたわけではないが、彼女は聖杯を手に入れ、何か願いを叶えたいなどという殊勝な心を持っているようにはとても見えない。
彼女が望んでいるのは一つ。
そして聖杯などに頼むまでもなくこの聖杯戦争に召喚された時点で、彼女の願いは叶っている。
「私は、強ぇ連中とやり合えりゃそれで満足だ」
ぱん、と拳と手のひらを打ち合わせ、にっかり笑ってバーサーカーは言った。
少しは人の苦労も知ってほしいものだけどね。ステイルは苦い顔をして皮肉ったが、それで行いを改めてくれる相手ならば彼もこれほど苦労させられてはいない。
現にバーサーカーはにやりと笑って、「そいつは無理な話」だなどと宣っている。
こればかりはこちらが慣れるしかないのだろう。
同盟相手についても、急いで見つけようとするよりかはもっと相応しい頃合いがやって来るまで待つべきかもしれない。
片っ端からバーサーカーに暴れてぶち壊しにされては悪目立ちするし、危険も大きいからだ。
彼女はその果てに戦死したとしても満足して消えるのであろうが――ステイル=マグヌスは、生憎とそうではなかった。
彼には願いがある。聖杯の力に頼ってでも、命に代えてでも叶えたい願いがある。
それを叶えるためならばきっと悪魔にでも、東洋の羅刹にでもなることができると自負していた。
誰でも殺す。いくらでも壊す。それで『あの子』が救えるなら、あらゆるものは安い。
「君がどう暴れてくれても構わないけれどね。しかし、一つだけ要求させてもらうよ」
「へえ、言ってみな」
「必ず勝て。それさえ約束してくれるなら、君の好きにすればいい」
煙草を靴底で揉み消して言うステイルの声には、十代半ばの少年とは思えないほどの気迫が宿っていた。
それを感じ、バーサーカーは驚いたように眦を動かす。
それを察知してか、ステイルは二本目の煙草を取り出すと火を灯し、一足先に廃工場の出口へと踵を返した。
その仕草は、らしくないことをした――とでも言いたげなものであった。
「言われるまでもねえっての」
バーサーカーはそれをからかうでもなく、ニヒルで不敵な微笑みを浮かべる。
いつも逃げ腰のつまらない男かと思っていたが、今の一瞬で少しだけ評価が変わった。
必ず勝て。もちろんそんなこと、改めて言われるまでもない。
負け戦というのも嫌いではないけれど、やはり最後に勝ってこその戦いだろうと彼女も思う。
魔法少女以外の敵と戦う経験はこれまでなかったが、要領で言えば同じだ。そして、魅力も変わらない。
この聖杯戦争はかくも面白い。実に『袋井魔梨華』好みの趣向とシステムだ。こんなおあつらえ向きの催しに折角招待されたのだから、目一杯楽しむとしよう。そう、文字通り体がぶっ壊れるまで。
「そうだ、マスター。私からも一つ頼みがある」
「……、……」
ステイルは振り向かぬままで足を止めた。
その背中へ、やはり不敵な微笑みを浮かべて――バーサーカー・袋井魔梨華は提案する。
「全部終わったら、あんたも私の相手をしてくれよ」
「生憎だが、猛獣と相撲を取る趣味はない。他を当たってくれたまえ」
【クラス】
バーサーカー
【真名】
袋井魔梨華
【パラメーター】
筋力B+ 耐久A 敏捷C 魔力C+ 幸運B 宝具B+
【属性】
混沌・中庸
【クラススキル】
狂化:E
通常時は狂化の恩恵を受けない。
その代わり、正常な思考力を保つ。
【保有スキル】
魔法少女:A
魔法少女『袋井魔梨華』として活動できる。
身体能力、五感、精神力が強化され、容姿と服装が固有のものへと変化する。
食事や睡眠などが不要となり、通常の毒物やアルコールの影響も受けない。
戦闘続行:A
往生際が悪い。
瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。
単独行動:B
マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
ランクBならば、マスターを失っても二日間現界可能。
勇猛:B
威圧・混乱・幻惑といった精神干渉を無効化する能力。
また、格闘ダメージを向上させる効果もある。
【宝具】
『頭に魔法の花を咲かせるよ』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:1人
花の種を飲み込み、魔法の花にして頭に咲かせる魔法。咲かせる花の種類によって効果が異なる。
植物に優しくない環境で咲かせた花はすぐ寿命が尽き、また、即席で咲かせればその分枯れるのも早くなる。ただしこれには魔法の実を早く収穫することができるという利点もある。
花を育てやすい環境であると、魔法の使用者であるバーサーカー自身の身体能力も向上し、代謝が良くなる。水と土と太陽光さえあれば傷が治り、逆に太陽がないと治癒に時間が掛かるのだという。
【weapon】
魔法と拳
【人物背景】
戦闘能力の高い魔法少女が集結していた『魔王塾』を放逐された嫌われ者の魔法少女。
戦闘狂のケを多分に含んでおり、基本的に強い相手にはノリノリで勝負を申し込む。
人間時は袋井真理子という女性で、真理子は魔梨華と異なり気性が安定している。
袋井魔梨華は本能の求めるままに戦い、袋井真理子は発芽時間や条件、花の効果などを記録、研究し、袋井魔梨華がより戦いやすいようにサポートする、という二人三脚の体制を一人で行っている。
【マスター】
ステイル=マグヌス@とある魔術の禁書目録
【マスターとしての願い】
インデックスを助ける
【weapon】
なし
【能力・技能】
北欧神話のルーン魔術、中でも特に炎属性の魔術に特化した魔術師。
術の行使にはルーン文字の設置が必要で、現在は防水性のあるラミネート加工したカードを用いる。
『魔女狩りの王(イノケンティウス)』や『吸血殺しの紅十字』といった術式を使用する。
【人物背景】
イギリス清教第零聖堂区「必要悪の教会(ネセサリウス)」所属の魔術師。
魔法名は「Fortis931(我が名が最強である理由をここに証明する)」。
かつてのインデックスのパートナーで、彼女の記憶を定期的に消去し続けている。
後に彼は上条当麻によって自身の誤解を知ることになるのだが、このステイルは上条と出会う以前からの参戦であるため、そのことを知らない。
【方針】
聖杯を必ず手に入れる
投下終了です。
皆様投下お疲れ様です。私も1つ投下させていただきます。
唐突ではあるが―――――――――絶望とはどういう時のことをいうのだろう?
いや、絶望の定義だとかそういったかび臭い哲学の話じゃなくて、
どういうシチュエーションが絶望と呼称するに相応しいか、ということだ。
うん、それだけだとやっぱり抽象的すぎるし……そうだ、聖杯戦争に限って言えば、どうだろうか?
たとえば、竜を召喚できると期待して召喚したらもふもふの羊皮しかもっていなかったとか。
召喚したらドヤ顔で童貞宣言したあげく人間の価値をこき下ろしてくるとか。
アホ毛ぶるんぶるん震わせながら騎士道(笑)を言ってきて、ああもう相性最悪だわと戦う前から分かるとか。
開口一番『戦わないのが仕事なんですぞ(キリッ)』とか言ってきて執筆作業はじめるとか。
まあ、そういうのも辛いよな。わかる。僕もやったけどただデカいだけのダメサーヴァントだったし。
有料ガチャ引いたら☆3のクソなキャラ引いたようなもんだよ。うん。
でもさ、でもさ……今ならわかるよ……そんなもんじゃ絶望じゃないって……
だって、きっと「これ」よりはマシだと思うんだよなあ……
「いいいいやっふううううううううう!!!!!!!!!!!!」
「なにやってんだこのバカトカゲェェェェェェェ!!!!!!!」
いきなりドブ川でバタフライし始めるトカゲが僕のサーヴァントだなんてさぁ……ッ!
「ふう、肉体労働は科学者の本分ではないとはいえ、フィールドワークも疎かにしない吾輩。
一天地六全方位に隙のない吾輩の科学っぷりが凄過ぎて凄過ぎて震える。
あ、ところで勤労後にはシナチク牛乳が身体によろしいんだトカ」
「ドブでばちゃばちゃやってることの何処がフィールドワークなんだよ!
今の行為の一欠けらにでも科学の要素があったかよ!
なんで僕がお前にドリンク奢ってもらえるオーラ全開なんだよ!
っていうかシナチク牛乳? ネーミングだけで吐きそうだよ!」
紫色のマントを颯爽と羽織りながら、ぶるぶると水気を飛ばす二足歩行のトカゲに、
間桐慎二は張り裂けんばかりに吠えた。ツッコミ所が多すぎて、飲み物を所望している側よりも喉が渇く。
「カリッカリしてますなあ小僧。
お〜〜こわっ。普段大人しい子供こその爆発しやすきは現代社会の生み出した闇ですわ」
「爆発させてんのはお前だよ!! あ〜〜なんでこんなことになっちゃってんの……
終わったんじゃないのかよ、聖杯戦争は……ッ!!」
慎二は萎れた海藻のような髪を掻きながら、苦悶の渦の中で悶える。
そう、問題はこの両生類だけではない。その前段階から既に彼を唸らせる要因になっている。
聖杯戦争。間桐慎二にとって忘れようにも忘れられない、愚かさと嫉妬と葛藤と憎悪と恐怖の原風景。
じくり、と心臓が戦慄いた気がして慌てて両手を胸に充てる。大丈夫、増えてない。“僕は増えていない”。
聖杯戦争の末期、黄金のサーヴァントによって埋めこまれた小聖杯によって聖杯に“できそこないかけた”間桐慎二。
しかし、幸か不幸か、あるいは運命の皮肉か、
決して自分のものになることのない少女<とおさかりん>の決死の行動によって、彼は聖杯戦争を生きて終わることができた。
妹の口やかましい介護あってか無事退院もなり、この後の未来に思いを馳せて準備をしていた彼に待っていたのは、
新たなる聖杯戦争への扉だった。いや、無理矢理扉があいてグイ、と引っ張られたという方がただしいか。
(畜生、忘れられれば、それで収まってたのに。畜生、畜生……ッ!!)
だからこそ、彼の方針は未だ決まっていない。
僅かに収まった動悸にぜいぜいと息をしながら、左手甲に浮かんだ令呪を見る。
偽臣の書ではない、正統なる令呪。
それを見て胸に浮かぶのは、興奮と諦念。
「今度こそは」と思う自分と「もういやだ」と思う自分が相反して、千路に乱れている。
どちらだ、この胸を突き動かす衝動は、どちらに行きたがっている。
「→<シンジィ、気負いすぎると抜けるぞォ?>」
「それいろいろ混ざってるからやめろよバーサーカー!!」
もう半分涙目になりながら、慎二は叫んだ。
感情の整理だけでもいっぱいいっぱいなのに、宛がわれたサーヴァントはよりにもよってバーサーカーだったのだ。
しかも、極めつけの狂人。いや、そもそも人じゃないんだけど。
お爺様――間桐臓硯曰く、第四次聖杯戦争では間桐はバーサーカーで参戦したようだけど、結果は推して知るべし。
間桐にバーサーカーは鬼門なのだ。
自分のキャパシティが大容量とは思わないが、これは流石に限度があるだろう、と思う。
いっそ令呪でどうにかしてしまいたくなるが、それを慎二はぐっと堪える。
今回は自分が正規マスターだ。下手に令呪を消費すれば後がない。少なくとも、今はまだできない。
「ふふふふ……マスターもやる気のあまり“鎮まれ……僕の右手……ッ”ムーブをしておられる。
よござんしょ。三国一の智将と名高い吾輩にかかればロケットストーブに乗ったが如き安心の夜間急行。
ご近所でも評判のやればできる子ぶりを、見せつけるとしましょうや」
「……そういえば、お前もサーヴァントってことはなんか願いでもあるのか?」
ライダーとギルガメッシュで懲りたのか、はたまた無意識か、
かつての聖杯戦争では絶対に口にしなかったであろう問いを慎二はバーサーカーに投げかける。
「? まあ黒い服のおっさん達に追われないことが大前提ではありますが。
何やら芳香剤でも消しきれない科学的なにほひをビビッと感じてはせ参じた次第。
科学と聞いては黙ってられない我等科学の子ですが故に」
腕を組みながらうむうむと唸るバーサーカーに、慎二はああそうですかと感情の籠らぬ声で応じた。
とにもかくにもここでは目立ちすぎる。セーフハウスを確保しなければならない。
霊体化を指示しながら、慎二は踵を住宅街に向けた。
消える間際、バーサーカーは思い出したようにつぶやく。
「あとはとりあえずゲー君を見つけないとですなぁ〜〜
本当にどこに行ったのやら。珍しい蜘蛛型怪獣に出会ったんでお近づきの印に友情クロスしたら、
いきなり周りがクリスタルパレスになるものだから。きっと綺麗すぎてうっとりまだ見てるのでありますかなあ」
しみじみと頷くバーサーカーの台詞の行間にうすら寒いものを覚えながら、慎二は街を歩く。
顔も知らぬこいつの相棒の安否よりも、まず自分が生き残らなければ始まらない。
【クラス】バーサーカー
【真名】トカ@WILD ARMS 2nd IGNITION
【パラメーター】筋力E- 耐久C+ 敏捷C 魔力E- 幸運B 宝具B
【属性】秩序・中庸
【クラススキル】
『狂化:EX』
「狂戦士」のクラス特性。理性と引き換えに驚異的な暴力を所持者に宿すスキル。
身体能力を強化するが、理性や技術・思考能力・言語機能を失う。また、現界のための魔力を大量に消費するようになる――
はずであるが、普通に会話ができ、パラメーターの向上はなく、同時に現界のための必要魔力も増加していない。
これは、このスキルがバーサーカーが健常な状態から狂化したことを示すわけでなく、
我々の主観における正常から見て外れている(=狂っている)度合いを表しているためである。
少しでも意志疎通を試みれば分かるだろう。ナチュラルボーンキチガイ。まさしくインヴェーダーである。
【保有スキル】
『世界侵食:A+』
ある魔女っ子に曰く「世界観が違う」と言わしめたバーサーカーの存在自体を示すスキル。
淡水の中の海魚、泳ぐ鳥、魔法少女変身系アニメでやっさいもっさいと叫ぶような
「その惑星(ものがたり)に存在してはならないもの」を存続させる。
Cランク以下では世界からの修正力に多少抵抗できる程度だが、Bランクでは完全相殺し、
Aランク以上ではスキル保有者の持つ法則――空気とでも呼ぶべきもの――を周囲に影響させていく。
また、法則や制限などもまたこのスキルによって侵食を受ける。(神性がなければダメージが与えられない、など)
ランクが高ければその分抵抗は可能だが、
少なくとも同ランクより上のスキル・宝具でなければそのルールをスキル保有者に強制できない。
なお、今回不在の相方がいた場合、スキルランクはEXになる。
『星の開拓者(偽):C』
あらゆる不可能事象に成功の可能性を付与するスキル。
その星における「不可能」に対し、他星存在であるバーサーカーはそれを可能とする「未知」を所有している。
そのため、バーサーカーの行うあらゆる行動に対し成功確率が0%と示されても、
それは小数点以下を切り捨てているためであり、実際は小数点以下の確率で成功する。
『被虐体質:B』
集団戦闘において敵の標的になる確率が増すスキル。
バーサーカーにおいてはその振る舞いを無視したくても思わずツッコミを入れたくなるようになる。
周囲にいる者たちはこのスキルに充てられ、新しい側面を見せるだろう。
【宝具】
『科学大迫力研究所(パラディグム・タイプ・リザード)』
ランク:E〜C++ 種別:対人〜対軍宝具
レンジ:1〜30 最大捕捉:吾輩の器はうがい用のコップより深いトカ(1〜10人)
バーサーカーの「科学」の象徴であり、彼の心象にして若かりし頃のヤンチャの具現。
天を驚かし地を動かし時にメランコリィな想い出の堆積した内的宇宙を固有結界として周囲に展開する。
基本となる世界はバーサーカーがファルガイアに建造した科学大迫力研究所だが、
「ヴィンちゃんとの付き合いは切っても切れない関係であります。ほら、この艶めかしい吾輩のしっぽのように」と言うように
オデッサ科学班統括の肩書を職権乱用して、オデッサが所有・運用した戦闘翼バルサキスやアルケミックプラント、
百眼(ヘイムダルガッツォー)を取り込み、異形の複合要塞となっている。
そこにはバーサーカーが製造・調整した改造タラスクやアームズキラーなどの大怪獣たちや、雑魚怪獣、トラップ、兵器類が犇めいており、
バーサーカーはそれらを暖かい春の朝に思わず2度寝してしまう程度の確率で制御することができる。(つまり半暴走である)
また、この宝具を応用することで固有結界内の怪獣や兵器、薬物などの一部を衛宮士郎の投影魔術のように現界させることも可能。
バーサーカーはそれらを自分の科学によって創ったものだと言い張るが、実際は内側から持ち出しているだけである。
顕現させる規模によって魔力消費も変動する。
『僕らに愛と勇気を教えてくれるデッカイ人(ブルコギドン)』
ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:1〜10 最大捕捉:吾輩のつぶらなお目目に映る限り(1〜50人)
バーサーカーがライトノベル10巻分の艱難と辛苦を踏破して完成させた科学の結晶たる暴れ怪ロボット。
見た目は腕にドリルのついた二足歩行の牛であり、今一つ緊張感がないフォルムだが、そのスペックは超常にして天上。
64kgの特殊火薬を装填したグレネードランチャーでの『暴徒鎮圧』は鎮圧どころか鏖殺の域に達し、
腕のドリルハンドからくり出す『ドリルドリッガー』は青函トンネルも72時間で開通可能。
超合金ブルコギに鎧われた肉体は宇宙エンジン『ゴリ押し』を元にした永久機関で自己回復を行い、
その攻防ともに金城にして鉄壁なボディを駆るのは
やむにやまれず犯罪に手を染めた中年男性3人分の悪い心をベースに作られたアンチ良心回路を備えた電子頭脳。
もう那由多の彼方へ尖った性能が、一周まわってまともな超兵器になったという悪夢の大機関。
この宝具にもスキル:世界侵食が付与されるため、稼働し続ける限り物理的にも観念的にも世界を蹂躙する。
ただし、発動には他者に「ブルコギドンという超兵器が未完成である」ということを刷り込む必要がある。
もったいぶればぶっただけ、期待させれば期待させただけ信仰が宿り、
この宝具は強烈なギャップ燃えとして敵対者の脅威となるのである。
ただし、ハードSFのお約束として、50%の確率で暴走し、造物主に反逆を起こす。
なお、睡眠を誘発する魔術・特技だけは試してはいけないんだトカ。
『外典第六聖杯・輝ける銀腕(ディアフレンズ・アガートラーム)』
ランク:EX 種別:対人類宝具 レンジ:‐ 最大捕捉:-
人の意識を束ねる交感器にして人(アラヤ)と星(ガイア)を繋ぐ、契約の神造兵装。
最大出力で放たれる『天地満たす祈りの光(アークインパルス)』は使用される星の知性体の総数分のダメージを与える。
本来は別の英霊(聖杯戦争に呼ばれる場合はセイバーないしセイヴァ―と思われる)の持つ宝具であるが、この前遊びに行った際に借りパクした。
ただし、かつて選定の黄金剣がアルトリアが現れるまで抜けなかったように、この宝具を使えるのは「全人類の総意志」を背負った「人類」のみである。
なので、そもそもアラヤにもガイアにも属していない外宇宙生命体(バーサーカー)では使用はできない。何がしたいんだお前は。
【人物背景】
紫色のマントを靡かせた二足歩行の緑色のトカゲ。ファルガイアでは反社会武力組織オデッサの科学班統括(自称)を務めており、
相棒のゲーと共に、主人公の率いる治安組織「ARMS」とは時に協力したり時にバトルしたりいつもボケツッコミなどを繰り返していた。
登場とともにBGMと一緒にシリアスを因果地平に吹き飛ばす、明らかに出る作品を間違えているトカゲの人。
実はファルガイアの生物ではなく、ステシイガ太陽系第五惑星・通称リザード星出身の異星人であり、本当に世界観が違った。
彼は故障した宇宙船を治すためにやむを得ない事情から悪の組織に加担していただけなんだトカ。
常時ハイテンションでバーチカルな言動からは想像できないが、
他星の技術を難なく使いこなして改造・研究ができるあたり、技術力だけは折り紙つきである。
なお、聖杯の電脳に登録された情報ではなく、純正の生身で参戦している。(Extraのアルクェイドと同じ)
【聖杯にかける願い】
吾輩物持ちはいいほうでして3歳の頃から使っているご飯茶碗は今もヒビなくピッカピカなんで聖杯とかどうでもいいんだけど
科学と聞いて呼ばれなきゃ科学者じゃねえんだから響かせてやるぜ……本当の……『 科 学 』ってヤツをよォ……ッ!!
【マスター】
間桐慎二@Fate/stay night
【マスターとしての願い】
聖杯戦争に参加する……? もう一度、あれを……?
【weapon】
なし
【能力・技能】
なし。間桐の家系は代々魔術回路が劣化しており、ついぞ彼は魔術回路を持たず生まれてしまった。
故に魔術師としてはある程度の知識こそあれど三流以前の存在である。
ただし、学校の成績や弓道部で副部長を務めるなど、魔術以外の事柄についてはそつなくこなせる天才型である。
今回、マスターになれたのはバーサーカーのスキルによる影響が大きい。
【人物背景】
冬木の聖杯戦争に関わった少年。通称ワカメ。
本聖杯戦争では凛ルート・トゥルーエンド後より参戦(正確にはアニメUBW後)。
そのため、その鬱屈した自尊心はある程度抜けている。
【方針】
とにかくこんなバーサーカーじゃどうしようもないからひとまず生存の確保優先。
聖杯戦争を知っているというアドバンテージを生かす。
投下終了です。FGOのPVを見たときに荒野から口笛が聞こえてきた人は戦場で僕と取引だよ(混ざった)
投下します。
──人の命の重さは、平等ではないらしい。
ここにいる一人の高校生──遠野英治は、ある時、その事を実感した。
厳密にいえば、一人一人の命が平等ではないという事ではなく、一人の人間の命の量は、多数の纏まった人間の命の量には決して敵わないという事である。
つまり、たくさんの人間を救う為ならば、少数を犠牲にするのは致し方ないし、自分の命を守る為にも他者を犠牲にするのは仕方が無いという話だ。
きっと、多くの人は、それをやむを得ない事だと思うかもしれない。
……そう、たとえば、有名なトロッコの倫理学の問題がある。
『線路を走っていたトロッコの制御が不能になった。このままでは前方で作業中だった5人が猛スピードのトロッコに避ける間もなく轢き殺されてしまう。
この時たまたまA氏は線路の分岐器のすぐ側にいた。A氏がトロッコの進路を切り替えれば5人は確実に助かる。
しかしその別路線でもB氏が1人で作業しており、5人の代わりにB氏がトロッコに轢かれて確実に死ぬ。A氏はトロッコを別路線に引き込むべきか?』
この場合、多くの人間は、トロッコを切り替え、一人の人間を能動的に殺害するという手段を「許す」らしいと聞いた。
答える人間の多くは、「何もしない」あるいは「何もできない」──つまり、「五人を見殺しにする」と答えるのだが、それでも、もし反対の行動を取る人間がいたら「許す」のだ。
しかし、平然とそのトロッコを一人の人間に向けて切り替えるような人間を見た時、そして、それを許す人間を見た時、きっと英治は全身に虫が這うような殺意を覚えるだろう。
英治はこれを考える度に全身を鳥肌が駆け巡る感覚とともに、奥歯を強く噛みしめた。
……そいつは殺人鬼だ。
俺の──俺の大事な人間を殺した、殺人鬼だ。
◆
「螢子……」
英治は、かつて、最愛の女性と共に湖のほとりで撮った写真を眺めていた。
まだそこに彼女がいた時の事……。
まだ彼が純粋に笑えた日の事……。
しかし、それは遠い思い出に過ぎなかった。
「もうすぐだよ……」
世の中は、一人の命は、百人の命を守る為ならば当然犠牲になって良いものとしている。
周囲の連中は、それを当たり前だと思っている。
多数の人間が救われる為ならば、一人を犠牲にしても良い──それを日本の法律までもが「正当防衛」だの「緊急避難」だと言って、認めていると来た。
だが、そんな、尤もらしい理由をつけようが、それは殺人に違いない。
ふざけている……。
殺された一人の命には、カスども百人の命よりも大事な想いがあるのだ。
この世の誰かに奪われた彼女の命は、一口に「一人の命」などと呼び捨てるほど単純な物ではない。
彼女が持っていた喜びや、悲しみや、怒りや、愛や、やさしさを……英治は知っていた。
小泉螢子の持っていた──英治が愛した彼女の全てが、たかが何人かの為に、奪われたのだ。
「……もうすぐ、お前の為に……」
◆
英治と螢子は幼い頃から、寄り添うようにして育っていた。
二人とも同じように孤児であり、それからもずっと親しく、愛し合っていたのである。
やがて、二人は別々の家に引き取られる事になったが、それぞれの養父母は英治と螢子が会うのを快く思わなかった。
英治は遠野家で裕福に育ったが、螢子は小泉家でメイドのようにこき使われて、綺麗だった指をどんどん痛めていった。
そんな螢子の姿を見るのが、英治にはどうしようもなく耐えられない事だった。
螢子を不幸の中から救ってやりたかった。
何としても。
まずは、豪華客船オリエンタル号の処女航海に、一緒に行かないかと誘った。気晴らしになればと思ったのだ。
だが、結局は英治は養父母に発覚し、二人で行く事が出来ず、螢子だけがオリエンタル号に乗って遊びに行く事になった。
英治は寂しく思いながらも、螢子にツアーを楽しんでもらえればと、その姿を笑顔で見送った。
……それが、螢子を見た最期だった。
沈没したオリエンタル号──。
不慮の事故。
満員の救命ボートに手をかけた螢子の命は、「誰かの為」に理不尽に奪われた。
誰かが螢子の手をはねのけ、螢子を広く深い海へと追いやったのだ……。
そして、螢子は、氷のように冷たくなって、英治の前に帰って来た……。
螢子一人の命を秤にかけ、奪った奴がこの世界にいる……。
その人間についてわかるのは、『S・K』というイニシャルのみだ……。
螢子を見殺しにしたオリエンタル号沈没事故の被害者たちで、『S・K』のイニシャルを持つ者は九人……。
九人もいた……。
──螢子が死んだのに、『S・K』のイニシャルを持つ人間が、九人も生きのびていやがった……。
クソみたいな大学生。
尻の軽そうな女子高生。
死体ばかり描く気持ち悪い画家。
ワカメみたいな髪型の男。
成金のジジイと、どうせ金目的で引っ付いた成金の女。
ぱっと見は良い人そうな医者。
あからさまに性格の悪いフリーライター。
どいつもこいつも怪しい……。
どいつが螢子を殺したのだ……。
彼らの資料を見つめても、どいつもこいつも生きている価値のない人間に見えた。
こいつら百人の命が寄り集まっても、螢子一人の命の尊さに敵うとは思えなかった。
こいつらも結局、誰かを見殺しにのうのうと生きているわけだ。
あの事故で生き延びた人間は全員そうだ。誰かを蹴落としたクズに違いない。
九人の内、誰か一人が、螢子を殺した『S・K』だという。
そう。そいつは絶対に裁かれなければならない。
だが、警察は当てにならない。
法律で裁けないのだから、その人物を警察に突き出しても仕方が無いのだ。
……つまり、英治がこの手で殺すしかない。
それでいい。
それで英治は満足するのだ。
螢子を殺してまで生き延びた人間が死んでくれれば、彼はそれでもう満足だった。
人を殺してまで生き延び、人を殺してまで誰かを救い、未だに生きている罪人を──この手で殺す。
奪われた側の人間にとって、そんなに簡単に、「カルネアデスの板」などというものを認められるわけがない。
罪なき螢子は、最後まで幸せになる事を許されなかったというのに、誰かを殺した人間が少なくとも『生きている』事を許されているというのが現実だ。
世界が敵に回ってもお前に味方すると言う口説き文句があるように、遠野は世界を犠牲にしても螢子を愛せた。
螢子は世界に犠牲にされたのなら、英治はそんな世界を許しはしない。
法律など関係はない。
螢子の命さえ守れない法律などに……。
◆
そう、彼は、『大の為に小を犠牲にした』事が許せないのではないし、『自分の命の為に他者を犠牲にする』行為を許せないのでもない。
──『最愛の螢子を殺し、それを正当化した理論』が許せないのだ。
それが彼の狂気の原動力だ。
助けを求めてもがいた螢子を、救命ボートから突き落とした人間……。
螢子が最後に求めた救いを、跳ねのけた最悪の奴……。
結局、九人の内、誰が螢子を殺したのかはわからなかった。
英治は、それを必死に探し、答えを求めた。
◆
──しかし。
そんな彼の前に現れたのは、仇を殺す以外の、もう一つの「手段」だった。
それがこの、聖杯戦争であった。
イニシャルが『S・K』の人間を殺すのではなく、くだらない願いの為に他を犠牲にしようとするカス共を殺す事で、螢子を生き返らせる事が出来る。
仇を殺すよりもずっと実になりそうなゲームだった。
何せ、仇を殺しても気が晴れるだけで螢子は帰って来ないが、このゲームに勝利すれば、螢子は生き返るのである。
……まあ、勿論、全てが終わり、螢子が甦ったならば、仇探しをさせてもらうが、その人間を問い詰めこそすれ、殺すまでは至らないかもしれない。
「……」
どうせ敵は、英治ほど大事な願いを持っているわけでもない奴らである。
──いや、相手が誰だろうと英治の信念は揺るがない。
螢子の為ならば、英治は螢子以外の全てを犠牲にできる。……そう、自分の命だって厭わない。
「バーサーカー……俺の命令はたった一つだ」
目の前に現れた、巨体の怪物の方に、彼は向き直した。
無口で、どこか威圧感のある恐ろしい怪物であったが、マスターである英治への殺意はないらしい。
いや、流石に英治との協力関係くらいはわかっているのだろう。
だとすれば、話が早い。
……彼は、令呪こそ使わなかったが、この怪物に命じた。
「この俺以外のマスターとサーヴァントを──全員殺せ!!」
そして、皮肉にも──。
彼が呼び出した、この≪バーサーカー≫のサーヴァントは、本来、この後に英治が扮して、『S・K』たちを殺す為に利用する洋画の怪人と同じ名前だった。
……バーサーカーの名は、殺人鬼ジェイソン。
彼は、頷く事もなく、自分のマスターに対してだけ、殺意も理性も抱くなく、ただ見下ろした。
◆
【クラス】
バーサーカー
【真名】
ジェイソン・ボーヒーズ
【パラメーター】
筋力B 耐久EX 敏捷E 魔力C 幸運C 宝具B+
【属性】
混沌・狂
【クラススキル】
狂化:A+
全パラメーターを2ランクアップさせるが、マスターの制御さえ不可能になる。
【保有スキル】
怪力:B
魔物、魔獣のみが持つとされる攻撃特性で、一時的に筋力を増幅させる。
一定時間筋力のランクが一つ上がり、持続時間は「怪力のランク」による。
単独行動:A+
マスター不在でも行動できる能力。
【宝具】
『13日の金曜日』
ランク:B+ 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:1人
バーサーカーの死後、マスターの魔力を消費するのと引き換えに、再び英霊として降臨する≪不死身≫の性質の宝具。
再臨後はパラメーターが上昇する可能性があるが、代わりにマスターの制御下を完全に逃れるリスクがある。
この場合、狂化スキルとは無関係に、バーサーカー自身の意思で行動する。
特に回数制限はないが、マスターの死亡後にバーサーカーが死亡した場合には、再臨する事は無い(この事はバーサーカー自身も知らない)。
『クリスタルレイク』
ランク:B+ 種別:結界宝具 レンジ:? 最大捕捉:?
バーサーカーの固有結界。
自らが溺死したクリスタル湖と、その周辺の鬱蒼とした森とキャンプ場。固有結界内は霧に囲われ、結界に捉われたマスターやサーヴァントの視界も曖昧になる。
結界内では、バーサーカーの気配は完全に遮断され、低級サーヴァントではバーサーカーの存在を感知する事が出来なくなる。
ここに誘い込まれたマスター、サーヴァントは言い知れぬ不安感に襲われ、いずれかのパラメーターが1〜2ランク程度下がる場合があるという。
【weapon】
『アイスホッケーマスク』
『無銘・斧』
【人物背景】
虐めによってクリスタル湖で溺れさせられた11歳の少年、ジェイソン。
彼は先天的な障害によって、顔は奇形であり、脳が小さく、それが虐めの原因だったとされる。
溺死したかに思われたが、彼は実は生きていた。
巨大な怪物の殺人鬼ジェイソンへと変わり果てて…。
何度死亡しても、落雷や超能力、サイボーグ化などによって毎度のように復活。
死亡する度に人間離れした「不死の怪物」となっていく。
これは宝具となっており、
この怪物の弱点は、母親と同じ恰好や話し方をする女性や、幼い頃の自分と重なる相手と相対すると戦意を喪失する事がある事。
また、ある伝説においては、「水が苦手」とも言われているが、彼自身は「大嫌い」なだけで致命的な弱点とはなり得ない。
【マスター】
遠野英治@金田一少年の事件簿 悲恋湖伝説殺人事件
【マスターとしての願い】
螢子の蘇生。
【weapon】
S・Kのイニシャルが刻まれたキーホルダー
螢子と撮影した写真
【能力・技能】
イニシャルがS・Kだというだけの理由で猟奇的に人を殺す事ができる。
たとえば、「死体を木の上に乗っける」(一体どうやったんだ…)、「死体を冷蔵庫に詰め込む」など。
ボートを動かす技術くらいはあるらしい。
【人物背景】
不動高校の三年生で、元生徒会長。
現在の生徒会長である七瀬美雪によると優しい先輩だったらしく、ぱっと見は感じの良い好青年。美雪と付き合っているという噂もあった。
しかし、その正体は悲恋湖リゾートで起きた連続殺人の犯人・『殺人鬼ジェイソン』である。
彼の動機は、数年前に起きたオリエンタル号沈没事故の際に、最愛の女性・小泉螢子を満員の救命ボートから突き落とした人間への復讐だった。
ボートに乗っていた他の人間を助ける為の正当防衛とはいえ、螢子の命を奪った人間を結果的に殺したその人物を遠野は許さなかったのである。
そして、螢子の命を奪った人物の手がかりは、彼女自身が教えてくれた。
彼女は、最期に、自分を突き落とした人間がバッグにつけていたキーホルダーをむしり取ったのである。
そこには、その人物のイニシャル『S・K』が刻まれていた。
だが、遠野がどれだけ探しても、イニシャル以外の情報は結局つかめなかった……。
そこで彼は考えた。
だったら全員殺せばいいのだと。
【方針】
聖杯を必ず手に入れ、螢子を蘇生させる。
その後、螢子を殺した人間を探し出す。
投下終了です。
すいません。拙作のバーサーカー&慎二ですががバーサーカーアライメントが間違っていました。
正しくは混沌・狂です。簡単ではありますがこれを修正とします。
皆様、投下お疲れ様です
某所の再利用で投下します
――南極点。
南極大陸上、自転軸と天体表面が交差する地点。
かつてノルウェーのロアルト・アムンゼンに発見されたそこは地球上で最も寒い場所と称されるに相応しく、
吹き荒れるブリザードに氷点下80度を下回る気温と真っ当な生物などとても生きていられない環境……のはずだった。
しかし、今は不思議と寒冷な気候はなんとか人間が生きていられる程度に抑えられ、吹雪も止んで南極にいることが嘘のように思えるような穏やかな気候だった。
そんな天気の穏やかさとは裏腹に、2人の人間が死闘を繰り広げていた。
いや、厳密に言うならば、「人間」と「人の形をした神」の闘いだった。
人間の方は赤く染まった膝丈まである軍服を着用し、攻撃を放つたびに電気を纏っている。
男は優勢に立つたびに勝ち誇った笑みを浮かべるものの、戦局を覆されると「Scheiße!(畜生め!)」と叫んでいる。
神の方は黒い甲冑と蛇腹剣を持つ女性で女神というには些か威圧的ではあったが、飛行しながら辺り一帯を瞬時に切り刻む姿は、
母性溢れる優しい女神というより北欧神話に登場する戦乙女『ヴァルキュリア』のような勇ましい印象を与えさせる。
実のところ、この女神の名はずばり『ヴァルキュリア』であった。
「終わりだっ!」
激しい死闘も、ついに終わりの時を告げる。
結果から言えば、勝利したのは人間の方であった。
男の手刀が音速もかくやというスピードで女神を突き抜け、続けてアッパーカットが女神の頭を顎から粉砕した。
衝撃で地響きが起こり、周囲に降り積もった雪が一瞬だけ飛び上がり、男の足元には微小ながらもクレバスが形成されていた。
山をも穿つ完全神殺――ベルクブレッヒャーがヴァルキュリアの身に炸裂した。
―――散華。
「フハハハハハ…フッハハハハハハハハ…!」
勝利を確信し、もう永久に動くことはない女神を見据えてここぞとばかりに男は高笑いをする。
その手には装備された電光機関から放たれる紫電の稲妻が輝いていた。
「お前が神なら俺はさしずめズーパーアドラーというところだ」
倒れ伏した女神を見下しおぞましい笑みを崩さぬまま、男は自身を『ズーパーアドラー』と称する。
アガルタの超科学技術の賜物「電光機関」を使う男の名はエルンスト・フォン・アドラー。
『転生の法』を用いて自らのクローンに転生し、『新聖堂騎士団』の擁する先史文明の技術を手に入れるべく動いていた男である。
「この先に超古代文明の遺産が眠っているという訳か…『虹の都』伝説も強ち嘘ではないようだ」
アドラーが女神――ヴァルキュリアの骸から目を離すと、雪原に地面から生えたように鎮座している巨大な建造物と地下から湧き上がるマグマの吹き出す異様な光景が広がっていた。
吹き出しているマグマは空を赤く染め上げており、南極にも関わらず妙に暖かく吹雪もないのはこれのおかげである。
巨大建造物は南極地下の永久凍土を突き破り地上に姿を現したもので、ところどころ押しのけられた土が見え隠れしている。
どうやら地下へとつながっているようで、超古代文明の遺産――女神の言うノイラントはそこを進んだ先にあるのだろう。
「ヴァルキュリア――俺は貴様ら神の英知を手に入れてやる」
アドラーは噴き出す灼熱のマグマを背に何処かへと消えた…。
◆◆◆◆
ここ最近、とある大手電機企業が一気に株を伸ばしていることが社会人、特に株売買を生業としている者の間ではよく話題に昇る。
その理由は単純で、国どころか世界のどこを探しても類を見ないまったく新しい技術を採用した新製品を開発し、世間の注目を大いに集めたからだ。
その技術とは、これまで数多の物理学者が実現に挑むも決して成し得なかった偉業中の偉業、永久機関である。
何故か特殊なスーツを着込む必要があるものの、無限に電気を生み出すことのできる夢のような技術が登場してからは、
世界中のエンジニア達の間でその応用性と将来性について日々議論されている。
「…フン、間抜けめ」
某所の豪邸のリビングにて、ソファに腰かけたアドラーは永久機関について報道するニュースの画面に向けて蔑みの言葉を投げかける。
その髪からは色が抜け落ちており、異様に白い。実際の年よりも一段と老けて見える。
「奴らは電光機関のリスクにあとどれくらいで気付くのであろうな」
無限に発電できる永久機関…すなわち電光機関のノウハウ(古代文明アガルタの超科学技術)をあの電機企業に売り渡したのは他ならぬアドラーである。
その内容を元に、電機企業は電光機関と仕様がほぼ同じものを開発してそれを世間に公表したのだ。
しかし、アドラーがその企業に教授した情報には嘘が含まれていた。
まず第一に、電光機関が永久機関であることは真っ赤な嘘で、実際はその電力は人間を始めとする生物から供給される生体エネルギー――言うなれば、寿命を変換させたものだ。
ゆえに、使い続けた者は死んでしまうという致命的なリスクを抱えているのだが、アドラーはそれを伝えていない。
つまり、とあるエンジニアがテレビの中で永久機関を試用している今も、彼の寿命はゴリゴリと削られているのだ。
「技術を売ったおかげで金に困ることはなくなったが…この役割がある以上、資金面はそこまで気にする必要はなかったか。
まあ――そのおかげでより大量の資材を手配できる上にあの企業の電光機関を使って自滅するマスターがいれば一石二鳥だな」
アドラーは口の端を釣り上げて醜悪な笑みを浮かべる。
売り払った技術と引き換えに一般人では一生かかっても到底稼げないような莫大な資金を手に入れた上、
聖杯戦争の参加者となったアドラーに与えられた役割は、富豪。
元々ユンカー(貴族軍人)であったため、聖杯に与えられた地位もそれに準じて貴族といって差支えないものだった。
それだけで世界有数のスポーツ選手長者を軽々と抜いてしまうような額の資金がアドラーの元に集まっていた。
何よりも大きかったのが、富豪であるゆえに外部とのコネクションが豊富であること。
先ほどアドラーが口にしたように、貿易会社の重鎮に依頼してありったけの燃料と鋼材を手配していた。
では、なぜ燃料と鋼材が必要なのか。それはアドラーのサーヴァントが主な理由だ。
アドラーの傍に、突如1人の少女が床から顔を出した。まるで海から陸へ上がるようにして床に手をつき、這い上がる。
床が少女の動きに従って、水のように波紋を形成してゆらゆらと震えていた。
ミニスカートの付いているウェットスーツで身を包んでいる、白金の髪をした少女だった。
「ユー、戻りました…」
「……アサシンか。どうだ、港への最短経路は確保できたか?」
「Ja(はい)…傷を受けたら、いつでも港へ向かえます…」
「フン…日本の猿共に明け渡された艦にしては大した成果だな。これから損傷を受けることがあれば、港へ向かえ。コネクションを通じて燃料と鋼材の手配をしておいた」
「…だ、Danke…」
マスターとなったアドラーにあてがわれたサーヴァントはU-511、アサシンのクラスのサーヴァントであった。
この事実に、アドラーは不満を隠せなかった。
なぜヴァルキュリアを倒し、ズーパーアドラーたる自分のサーヴァントがよりにもよって海軍の、しかも碌な技術もない日本の無能海軍共に無償で送られたただのウーボートなのか。
おまけにその能力はアサシンらしく最弱に等しいそれときた。
戦神テュールや、ドイツ海軍に限定するならば戦艦ビスマルクといった強力な英霊は自分のようなあらゆる英知を受け継ぐ者にこそ相応しいというのに。
…だが、それを嘆いてもいられない。
サーヴァントが死ねば半日の猶予の後に自分も消滅するルールは既に頭に叩き込まれていたため、アドラーは仕方なく金にモノを言わせて下準備をしているのだ。
アドラーから言わせてみれば、U-511は基本的なステータスこそ貧弱だが全く利用価値がないというわけではない。
U-511は元が潜水艦であるため、アサシンは燃料と鋼材を使って自己修理ができる。
その上、改造して貧弱な能力を補強でき、燃料と鋼材があれば聖杯戦争において非常に有利になる。
だからこそ、アドラーはコネクションを利用してでも、なるべく早くそしてできるだけ多くの資材を手に入れる必要があった。
「まったく…貴様が『潜水艦だから水にしか潜れない』というような役立たずであればサーヴァントの乗り換えを前提に動いていたところだぞ」
「…ごめん、なさい」
アドラーからの突き刺さるような視線に、U-511は立ちすくんでよくわからないまま謝る。
U-511の最大の強みは『地中にも潜ることができる』ことだ。
当たり前だが潜水艦は本来、水にしか潜れない。それなのに、U-511はそれを可能とする。
その潜水艦の限界を凌駕した能力は宝具『独逸の類なき儀形』の効果だった。
それはU-511自身であり、潜水艦であり、第三帝国(ドイツ)からヤーパン(日本)へと身を移していった存在の具現。
聖杯に潜水艦の『下に潜み敵を撃沈する』という在り方が強く具現化された結果、地面にも潜れるようになったのだ。
「更なる遺産が俺を待っていると知りここへ来てみれば…幕開けから失望させてくれる。だが…これしきでは折れんぞ。この先に聖杯が待っているのならばな!」
アドラーが聖杯戦争へと足を踏み入れるすべての発端は南極の超古代文明の遺産を擁した建造物だった。
姿を消してから内部へと入り、現代水準をはるかに超える超科学に舌を巻きながら探索していたアドラーだったが、
その過程で聖杯――つまり、この疑似的な電脳空間を舞台に行われる聖遺物の争奪戦について知り、この世界へ降り立ったのだ。
更なる遺産、それもあらゆる望みを叶える願望機が手に入るとなれば、アドラーが食いつかない理由はなかった。
「俺は聖杯を取り、神をも超える英知を手に入れてやる。そして全世界…いや、全宇宙を支配する」
願望機を自らのために利用し、野望を成就させんがためにエルンスト・フォン・アドラーは再び動き出す。
幸い、電光機関は当然として、『転生の法』も多少の制限があるとはいえ使えるようだ。
疑似的な不老不死がある分、アドラーは他より数段上にいるとみていいだろう。
アドラーはソファから立ち上がり、傍らに立つU-511に目線を移す。
「アサシン…サーヴァントならば当然だが、貴様は俺の駒だ。まさか自分の願いのために変な気は起こすことはないな?」
それに対しU-511は首を横に振り、否定する。
「…いいえ。ユーは、第三帝国に仕えていた身です。だから、ユーは、マイスターに従います。同じく第三帝国にいた、マイスターに」
U-511はアドラーに従い、その願いのために戦うことを選んだ。
かつてナチスドイツで生まれた彼女にとって、同じ国に仕える上官に従うのは当たり前のことだった。
【クラス】
アサシン
【真名】
(改造により可変)
U-511@艦隊これくしょん
さつき1号@艦隊これくしょん
呂500@艦隊これくしょん
【パラメータ】
(改造により可変)
U-511:筋力E 耐久D 敏捷D 魔力D 幸運C 宝具D
さつき1号:筋力E 耐久C 敏捷B 魔力C 幸運B 宝具D
呂500:筋力D 耐久C 敏捷A 魔力B 幸運A+ 宝具B
【属性】
秩序・中庸
【クラス別スキル】
気配遮断:B+
水中及び地中に潜ることでサーヴァントとしての気配を絶つ。
完全に気配を絶てばサーヴァントでも発見することは難しい。
自らが攻撃態勢に移ると気配遮断のランクは大きく落ちるが、日没後に限ってはそのデメリットは無効化される。
【保有スキル】
艦娘:A
実在の艦船が擬人化されて現界した英霊であることを示すスキル。
燃料及び鋼材を消費することにより魔力の補充、損傷や武装の修復が可能となる。
元は潜水艦であるので息継ぎを必要とせず、いつまでも潜水できる。
また、宝具の影響で地中に潜ることも可能であり、こちらも息継ぎを必要としない。
夜戦:A
日没後に行われる戦闘。
アサシンの前身である潜水艦は暗闇に紛れており、夜戦中は昼戦以上に発見が困難であった。
夜間においては潜水及び潜地中は回避判定で圧倒的に有利な判定を得ることができ、あらゆる攻撃をノーダメージ、あるいはかすり傷程度で掻い潜ることができる。
また、攻撃態勢に移っても気配遮断のランクが落ちない。
ただし、地上に身体を出している場合や、宝具で因果の逆転などを起こされた場合はこのスキルは意味を成さない。
単独行動:D
マスター不在・魔力供給なしでも長時間現界していられる能力。
アサシンは潜水艦として非常に優れた航続力を誇っていたため、このスキルを有する。
Dランクならば半日程度の現界が可能。
対日本:B
戦前ドイツから日本に譲渡されたアサシンを日本の技術では再現できなかったエピソードに基づくスキル。
日本人、及び日本出身のサーヴァント相手にあらゆる判定で有利になり、攻撃を見切られにくくなる。
被虐体質:C-
集団戦闘において、敵の標的になる確率が増すスキル。
地中及び水中へ攻撃可能な敵にのみ有効。
マイナススキルのように思われがちだが、
強固な守りを持つサーヴァントがこのスキルを持っていると優れた護衛役として機能する。
【宝具】
『独逸の類なき儀形(ウーボート・アウス・フロインドリヒェンラント)』
ランク:E+++ 種別:対軍宝具 レンジ:1 最大捕捉:30人
ナチスドイツから日本へ譲渡されたⅨC型Uボートが生まれ変わった存在であるアサシン自身が宝具。
水中に身を隠し、見つけられることなく一方的に数々の艦船を撃沈していった潜水艦は当時非常に恐れられていた。
アサシンのクラスで召喚され、『(海面)下に潜み敵を撃沈する』という在り方が色濃く具現化された結果、
水中のみならず地中にも潜ることができ、敵への肉薄が可能になっている。
ただし、地中に潜っている間は周囲が見えず、顔を出すなどして敵の位置を確認しなければならない。
また、ドイツから日本に譲渡され、その名を変えたエピソードから、魔力と資材を消費してアサシンを改造することも可能。
2段階に分けての改造となり、改造するたびに真名がU-511→さつき1号→呂500へと変化していく。
改造する際は戦闘で受けた傷を全回復し、パラメータも上述のように変わる。呂500へと改造すると性格と外見も変わる。使用できる宝具も追加され、大きく強化される。
『WG42(ヴルフゲレート・ツヴァイウントフィアツィヒ)』
ランク:D 種別:対地宝具 レンジ:1〜25 最大捕捉:1〜3人
ドイツで開発された対地対艦攻撃用の艦載ロケットランチャー装備。水中、地中から発射可能で、敵をロケット弾で爆撃する。
対地攻撃に有効であったという逸話から、地上にいる敵にはさらに大きなダメージを与える。
ただし、水面、または地下10m程度くらいの浅い深度からでないと発射できない上、
誘導性がなく照準の正確性に欠けるため、命中精度には難がある。
『試製FaT仕様九五式酸素魚雷改』
ランク:B 種別:対艦宝具 レンジ:1〜50 最大捕捉:1〜10人
呂500へ改造することで使用解禁される宝具。
ドイツで開発されていた、ジャイロ機構によって自動変針と直線航行を繰り返し行い、
グネグネと蛇行しながら航走する魚雷で敵艦を攻撃する「Fat航走パターン」仕様を実装した試製潜水艦搭載用酸素魚雷。
史実では実現しなかった、ドイツ開発の仕様を日本海軍の九五式酸素魚雷へ実装した当時の日独技術の融合。
こちらも水中、地中で発射可能。破壊力は酸素魚雷だけあって非常に高い。
蛇行しながら航走するという特性上、複数の標的のうちどれかひとつに当たりやすい反面、
特定の対象を狙い撃ちすることには向いておらず、味方にも当たる可能性があるため、団体戦闘には不向き。
【weapon】
『WG42』、『試製FaT仕様九五式酸素魚雷改』
【人物背景】
ⅨC型Uボートの内の1隻だった潜水艦娘。ナチスドイツが日本にインド洋の通商破壊作戦を行わせるため、
通商破壊用潜水艦のモデルシップとして無償譲渡されることになった。
日本海軍籍になったはいいものの、ドイツの潜水艦は日本の技術では複製不可能で、
通商破壊用の潜水艦を量産する計画が頓挫したというエピソードを持つ。
薄い白金色のセミロングの髪に翡翠色の瞳を持ち、その肌は透き通るように白く、全体的に儚げな印象が目立つ。
拙い日本語を話し、時々ドイツ語を織り交ぜる。一人称は「ユー」。マスターのことを「マイスター」と呼ぶ。
日本の呉軍港へ着くと仮称として「さつき一号」と名付けられ、その1ヵ月後に正式に日本海軍籍となり、「呂500」となった。
アサシンは改造を進めて呂500になると、容姿と性格が別人と言っていいほど変わる。
スクール水着にの上に丈の短いセーラー服を身に着けており、日焼けしている。一人称は「ろーちゃん」。
性格も以前に比べて明るくなっており、「〜ですって!」「〜って!」を口癖にするようになる。
U-511に馴染んでいるマスターは呂500を見て印象ががらりと変わるであろう。
それと同時にU-511と同じようにいかなくなるという危険性も孕んでいる。
【サーヴァントとしての願い】
マスターに従う。
だが、呂500に改造されて性格が変わると、その願いを変えるかもしれない。
【マスター】
エルンスト・フォン・アドラー@エヌアイン完全世界
【マスターとしての願い】
聖杯という大いなる遺産を継承する。
ズーパーアドラーに、俺はなる!
【参戦方法】
超古代文明の遺産から聖杯戦争を知り、参戦のヒントを得た。
【weapon】
・電光機関
アドラーの身に着けている電光被服に装着されている特殊機関。
装備することで無尽蔵に電気を生み出すことができる。
チベットの秘境で発掘された古代文明アガルタの超科学技術を元に開発された。
強力な電力で敵の装甲を溶かし、発生する電磁波により電子兵器を一切無効化する。
他にも高圧な電気を弾にして飛ばしたり、敵へ反撃する攻守一体の攻性防禦など、様々な応用が可能。
しかし、電光機関の電気は生体エネルギー(ATP)を変換して得られるものであり、
使い続けた者は死んでしまうという欠点を持つ。
アドラーは転生することでこれを克服している。
・電光被服
電光機関と組み合わせ電力を供給することで、使用者に超人的な身体能力を与える装備。
【能力・技能】
・明晰な頭脳
謎の多い電光機関について、自力でその原理を解明したり、転生の法を独自にいち早く習得してそれを利用するなど、
非常に頭の切れる人物である。
・転生の法
アドラーが独自に習得した秘蹟。
たとえアドラーが死んでも別の肉体が存在する限り、
他人の身体に魂を移し変え、精神を乗っ取って復活することができる。
聖杯からの制限により、サーヴァントと『契約しているマスター』を乗っ取ることはできない。
令呪・魔力供給パスも同時に受け継がれる。
NPCも乗っ取ることは可能だが、通常のマスターより肉体が脆弱で、電光機関による消耗がかなり速い。
それを克服するにはサーヴァントを失ったマスターに転生するしかない。
【人物背景】
秘密結社ゲゼルシャフトの武装親衛隊長。
クローン兵士エレクトロゾルダートのオリジナルであり、また上司にあたる。
過去の戦時の人間で貴族軍人(ユンカー)だが、冬眠制御によって現在まで生き延びた。
かつてはナチスドイツの組織「アーネンエルベ」の士官として、チベットの古代遺跡の発掘に従事していた。
その際に発見した古代都市「アガルタ」の超科学技術(つまり電光機関)を独占し、己の野望に利用せんがために行動を開始する。
性格は野心家。
常に自分以外の全ての人間を見下したような言動をし、それは立場が上であるムラクモやミュカレが相手であっても変わらない。
己の分身のゾルダートたちに対してさえ「出来の悪い木偶」と蔑むほど。
冷酷で自信過剰で常に他人を見下したような態度を取る困った人間だが、それ相応の実力を持つ。
また、謎の多い電光機関について、自力でその原理を解明してしまうほどの頭脳も持ち合わせている。
この聖杯戦争においては、舞台の大手電機会社に電光機関の技術を売り、莫大な資金を得ている。
また、それで得た資金と富豪としての蓄えを使って、外部から資材を手配している。
【方針】
聖杯狙い。
以上で投下を終了します
皆様お疲れ様です。自分も投下します。
――たったひとりで生き残ってしまうことは、きっと一種の呪いだ。
佐倉杏子にとって、父が母と幼い妹を道連れに命を絶ったあの日は、今の彼女の人格を形作る原点となった。
そして、ある意味では終局でもあった。
彼女は自ら、自分の生き方を閉塞させてしまった。
父を間接的に追い込んでしまう原因となった、幻惑の魔法を封印したのも。
魔法少女としての師であり、同時に戦友でもあった魔法少女・巴マミと決別したのも。
そして……「自分以外の誰かのために願うような生き方はしない」と、強く自分を戒めるようになったのも。
全てはあの日に始まり、そしてあの日によって終わってしまった事柄だ。
血溜まりに沈んだ母と妹、ステンドグラスを背にぶら下がる父の姿は、割り切ったつもりでも今も彼女を縛っている。
呪いといえば、そうなのだろう。
死者は何も語らない。
死によって残されたものには、生きているものが答えを出さなければならない。
それが正しいとか間違っているかどうかすら、死者は教えてはくれないのだ。
取り残された者にとって生は祝福ではなく、自問と自責に苛まれる呪縛の日々の始まりでしかない。
事実、佐倉杏子は「誰かのために願ったのが間違いだった」と過去の自分を斬り捨てたつもりでいた。
しかし、そのつもりでも、割り切れない想いは心の奥底で沈殿し、自覚の無いままに堆積していた。
――ひとりぼっちは、淋しいもんな。
あれはいったい、誰に対しての言葉だったのだろう。
願いが生んだ呪いによって人魚の魔女と化した美樹さやかへと投げかけたようでいて。
同時に、佐倉杏子が自分自身へと投げかけた言葉でもなかったか。
ずっとひとりぼっちだったのは。ずっと淋しい思いをしてきたのは。
そんな気持ちに蓋をして、斜に構えて割り切ったふりをしていたのは。
それは、いったい誰だったか。
結局のところ。
取り残された人間は、その喪失へと決着をつけるために生きるしかない。
過去の自分にその咎を負わせて、その愚かさを否定するのもひとつの形だ。
しかし、それ以外の道を選ぶならば。
死んでいった者達を背負って、生きていくことを道を選ぶならば。
あとはもう、今度は自分が血溜まりに沈むまで、戦い続けるしかないのだろう。
▼ ▼ ▼
今にも泣き出しそうな、黒く暗く垂れ込めた空だった。
「……まったく、泣きたいのはあたしだよ。これじゃ結局、あいつは一人のままじゃないか」
そうぼやいてみても、曇り空が返事をしてくれるわけでもなし。
杏子は内心で舌打ちをして、その淀んだ雲に向かって片手を伸ばしてみせた。
あの時、自らの魂の結晶である真紅のソウルジェムと一緒に、砕け散ったはずの命だった。
それがどういう因果か、今もこうして生きている。
まるであの戦いが無かったことのようだ。
ソウルジェムも先ほど確認してみたら以前のままで、杏子は安堵を通り越して溜息を付いた。
別に死にたかったわけではないが、いざ死に場所を逃してみると、肩透かしを感じるのは如何ともし難い。
「しかもただ生き残ったわけじゃないと来てる」
かざした手の甲に浮かび上がる、三画の印。
それが「令呪」と呼ばれる魔力の結晶であることは、杏子も何となく知っていた。
これが、この街で自分を取り戻した杏子にとって以前と違っている部分だ。
――聖杯戦争。
いつの間にか、杏子の頭の中に知識としては刷り込まれている。
万能の願望器、聖杯を巡る戦闘儀式。
召喚されるのは七つのクラスを冠する古今の英霊たち。
彼らを従えるマスターのひとりとして、どうやら自分は選ばれてしまったらしい。
まったく何の冗談なんだか、と自嘲したくもなる。
世界を覆すほどの力を持つ、万能の聖杯。
それさえあれば、あのひとりぼっちの人魚の魔女を本当の意味で救うことが出来るかもしれない。
それどころか、いずれ絶望へと行き着くしかない魔法少女の宿命を変えることすら出来るかもしれない。
あるいは――あの日消えて無くなった“家族”を、元通りの形にすることも。
しかし、結局それは「誰かのための願い」だ。
誰かのための願いは、結局巡り巡って誰かの呪いとなる。
今さら、そんな魔法少女の契約めいた都合のいい奇跡に、杏子は全てを賭けようとは思えなかった。
かといって、自分のための願いとなると、これが意外と思いつかない。
生き返って普通の人間に戻りたいかというと、それは何かが違う気がする。
ならばそれ以外に何を願うかと言われても、どうしてもというものがない。
せいぜい、うまい食べ物をたらふく食べたいとか、その程度だ。
結局のところ、杏子にとって自分の生は既に完結してしまっている。
聖杯戦争に今ひとつ本気になれないのはそれが原因だろうと、杏子は自分で分析していた。
「…………でさ。いい加減姿見せたら? いるんでしょ、あたしのサーヴァント」
不意に振り返り、唐突な言葉を虚空に投げかける。
杏子が立っているのは、テナントも入っていないような廃ビルの屋上である。
ここでなら話がしやすいだろうと、わざわざ魔法少女に変身して忍び込んできた。
そのだだっ広いコンクリートの空間に立っているのは杏子ただひとり。
ただ、杏子はそこに誰かが存在するのが分かっていた。
なんとなくだが、繋がりのようなものを感じていた。
風が吹いた。
男が立っていた。
全身を覆うダークグリーンのマントを風にはためかせながら。
顔立ちはまだ少年のものだ。しかし修羅場をくぐり抜けた精悍な男の顔だった。
濃い茶色の長髪を無造作にうなじのあたりで一つに束ねている。
体つきは中肉中背といったところだが、戦いの中で鍛え抜かれた逞しさがあった。
そして何より目を引くのが、身の丈を超える長さの鉄の塊だった。
それが巨大なライフルであることに、杏子は最初の一瞬では気付けなかった。
その銃が奇妙なのは、その巨大さだけではなかった。
銃の先端、ちょうど銃口の近くに、銀色に輝く杭のようなものが装着されていた。
遠くの敵を狙い撃つための武器でありながら、その部分だけは、何かを貫くためにあるようだった。
たとえるならば、それは『槍』だ。
彼が『槍兵(ランサー)』のサーヴァントであることに、遅まきながら杏子は気がついた。
銃を持っているからアーチャーかと思ったが、どうやら違うらしい。
あの武器で敵を貫くことで生きた証を立てた英霊、ということだろうか。
ランサーがこちらへ鋭い視線を向けた。
敵意がこもっているわけではない。こもっているのは純然たる意志だった。
それは同時に、マスターたる杏子への問いかけでもあった。
杏子は目をそらさずに、にぃっと笑ってみせた。
「なるほどね、あんたがあたしのパートナーってわけか。あたしは佐倉杏子。
見ての通り……って見ただけじゃ分かんないかもしれないけどさ、魔法少女やってる。
いや、やってた、ってほうが正確なのかもしれないけどね。死んだと思ったら死に損なって、まいったよ」
自己紹介になっているのかいないのか分からないようなことを一気に話す。
そして、次はお前だと言わんばかりの視線を送り返した。
「で? あんたがランサーってのは分かったさ。でも一応初対面なわけだし、名前くらいは聞いときたいんだけど」
そう言うと、ランサーは得心したといった感じの表情をした。
真面目で口数の少ない性格のようだが、少なくとも人当たりが悪いというほどではないらしい。
杏子の視線に促されるように、ランサーは口を開く。
「俺は――俺はメロウリンク。メロウリンク・アリティーだ」
ランサー――槍の英霊として召喚された“機甲猟兵メロウリンク”は、槍の魔法少女にその真名を告げた。
▼ ▼ ▼
――機甲猟兵。
それは、アストラギウス銀河において、生身で装甲騎兵アーマードトルーパーと戦うことを強いられた兵士達である。
旧式のライフルと、気休めにもならないパイルバンカーを持たされて、最前線の塹壕に放り出される。
それは懲罰を通り越して、婉曲な死刑宣告に等しい。
ただでさえ生存率の低い最低野郎(ボトムズ)達の生き血をも啜る、最低以下のウジ虫ども。
生き残るためにはありとあらゆる手段を用い、味方の死体すら罠にするような醜く生き汚い戦場の汚物。
誰が呼んだか『戦場の蛭(リーチャーズ・アーミー)』。
機甲猟兵、それはアストラギウス銀河の生んだ地獄の亡者である。
メロウリンク・アリティーが所属するシュエップス小隊は、ある日突然AT部隊から機甲猟兵へと降格された。
撤退戦の捨て駒になるのを隊長が拒否したため、懲罰としての降格だというのが表向きの理由だった。
バララントのAT部隊を相手に、シュエップス小隊の面々は文字通りゴミのように死んでいった。
機甲猟兵に元より生還は期待されていない。しかし、メロウリンクは生き延びた。
しかし、唯一の生還者となったメロウリンクを待っていたのは、小隊が軍の秘密物資を強奪し逃亡したという事実無根の汚名だった。
――ブランバンドール・スキャンダル。
後にそう呼ばれることになるこの事件は、軍の将校達がシュエップス小隊に罪を負わせるため仕組んだものというのが真相だった。
機甲猟兵への降格処分も、戦場で小隊を始末するための陰謀だったのである。
メロウリンク・アリティーは復讐を誓った。
旧式の対ATライフルを奪って脱走した彼は、自分たちを陥れたスキャンダルの関係者を殺す旅に出た。
全ては戦友達の無念を晴らし、名誉を取り戻すため。
“機甲猟兵メロウリンク”――これは、ただひとり生身で装甲騎兵に立ち向かった兵士の復讐譚である。
▼ ▼ ▼
「……『生き抜くため』で、いいんじゃないか?」
聖杯に懸ける願いがないと正直に告げた杏子に、ランサーはそう言う。
「生き抜くって言ったってさ、あたしはもう死んだんだよ。いや、魔法少女自体が一度死んだようなもんだけどさ」
「ここに存在しているのは嘘じゃないだろう。俺が召喚されたのがその証拠だ」
「そりゃまあ、そうだけどさ」
不本意ながらという感じで頷く杏子に、真面目な面持ちでランサーは続けた。
「俺は、復讐のために旅をしていた」
宝具として顕界した無骨な対ATライフルを肩に背負い、機甲猟兵は遠くを見るような目をした。
苦さと愁いを綯い交ぜにしたような感情がその精悍な横顔に浮かんで、すぐに消えた。
「それは、もしかしたら馬鹿な自己満足だったのかもしれない。だが、理屈じゃなかった。
俺自身が落とし前をつけなきゃ気が済まなかったんだ。だから、後悔はない」
メロウリンク・アリティーは、復讐者の英霊である。
死んだ者達の名誉のために、血と硝煙と泥濘に塗れて戦い続けた男である。
それは、他人のための戦いだったのだろうか。
それとも、自分自身のためのものだったのだろうか。
いずれにせよ、その生涯に悔いはないと、機甲猟兵は言う。
「だが、旅の終わりは来た。そして、旅の終わりは、俺自身の終わりじゃなかった」
「…………」
「マスターの戦いは確かに一度終わったかもしれない。だけど、マスター自身の終わりは、まだだ」
そう言われて、杏子はその言葉を自分でも驚くくらいに素直に受け入れていた。
「……ははっ。確かに、偶然巻き込まれたからって何もしないのは、あたしらしくないか」
そうだ。魔法少女・佐倉杏子は、こんなところでぼんやりしているようなやつじゃないはずだ。
まだ意地がある。矜持がある。訳の分からないままに流されていては魔法少女の名がすたる。
だったら、這いつくばって生きてやるのも悪くない。
「聖杯に懸ける願いなんてない。でも、ハイそうですかとやられるのは癪に障る。だから戦う。これでいいかい?」
「上等だ。それに、巻き込まれた以上これは俺の戦いでもある。落とし前は、自分でつけるさ」
杏子がにっと笑い、ランサーが頷く。今は、それで十分だった。
共闘の証に握手でもしようかと考え、思い直して、杏子は愛用の赤い槍を掲げた。
ランサーはすぐにその意図に気付いたようで、同じようにライフルを掲げてみせた。
槍の穂先とパイルバンカーが軽くぶつかり、きん、と小さく金属音を立てた。
気がつけば、ぽつぽつと雨が降り始めていた。
じきに激しくなるだろう。この街すべてを覆う、土砂降りの涙の雨が。
▼ ▼ ▼
【 予 告 】
復讐の旅が終われば、今度は聖杯戦争とはね。
おまけに相手は歴史に名高き英雄たちと来たもんだ。
自他共に認める雑魚のお前には、ちょいとばかり荷が重いと思うがね。
なぁメロウ、お前ならこの戦場でどう戦い抜く?
ま、地獄の底から見物させてもらうかね。
【クラス】
ランサー
【真名】
メロウリンク・アリティー@機甲猟兵メロウリンク
【パラメーター】
筋力C 耐久C 敏捷C 魔力E 幸運C++ 宝具E
【属性】
混沌・中庸
【クラス別スキル】
対魔力:D
魔術に対する抵抗力。
一工程(シングルアクション)によるものを無効化する。魔力避けのアミュレット程度の対魔力。
【保有スキル】
戦闘続行:A
往生際が悪い。
瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。
単独行動:B
マスター不在でも行動できるスキル。
Bランクであるならばマスター不在でも二日程度なら現界可能。
破壊工作:A
戦闘の準備段階で相手の戦力を削ぎ落とす才能。トラップの達人。
ランクAの場合、進軍前の敵軍に六割近い損害を与えることが可能。
ただし、このスキルが高ければ高いほど、英雄としての霊格が低下する。
戦場の蛭:-
リーチャーズ・アーミー。
生身でアーマードトルーパーと戦うことを強いられた、最低野郎(ボトムズ)以下と蔑まれる兵士達。
自身のマスター以外がランサーのステータスを確認した場合、全パラメータのランクが「最低以下」のE-ランクと表示される。
【宝具】
「あぶれ出た弱者の牙(パイルバンカーカスタム)」
ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:2〜30(1) 最大捕捉:1人
型式番号はHS-SAT、一般的には対ATライフルの名で知られる、徹甲弾を放つ大型の対物銃。
全長2m、重量30kgとかなりのサイズであり、銃身先端に炸薬式パイルバンカー(金属杭打突兵器)を装備できるのが特徴。
本来は対アーマードトルーパーの支援用に開発された銃であるが、発射される徹甲弾でATの装甲を撃ち抜くには60m以内に接近せねばならず、
重量の割に装弾数も少なく、銃身に装備するパイルバンカーに至っては存在自体を疑問視されるなど、お世辞にも評判のよくない兵器。
そもそも生身でATを相手取ること自体が無謀である以上、本銃が支給されるのは必然的にAT騎乗が許されない者達――『機甲猟兵』に限られた。
機甲猟兵の主力武器と言えば聞こえは良いが、要するにこの銃を持たされる事自体が遠回しな死刑宣告と同義である。
英霊メロウリンク・アリティーの象徴として宝具となっているが、これ自体は単なる兵器に過ぎず、単体では他の英霊と渡り合うに心許ない。
「涙の雨で血を洗え(ソルジャー・ブルー)」
ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:自身 最大捕捉:-
愛銃に装備されたパイルバンカー以外の攻撃手段(事前に仕掛けた罠を除く)を全て封印することで発動する概念宝具。
発動時に自分が置かれた危機の大きさと正比例して、パイルバンカーの貫通力、命中率、クリティカル発生率、クリティカル補正ダメージに莫大な補正が掛かる。
状況が絶望的であるほど威力は上昇し、効果が最大発揮された状態のパイルバンカーは敵のあらゆる装甲および概念防御を無効化して貫通する。
あぶれ出た雑魚の宇宙で一番意味のない武器による攻撃でありながら、神話の英雄であろうとも霊核に直撃すれば即死は免れないだろう。
敵との戦力差が大きければ大きいほど、自らの勝機が乏しければ乏しいほど真価を発揮し、死と隣り合わせの一撃必殺をもたらす宝具であるといえる。
常にその身を危険に晒すことを強いられながら戦い続けてきた、機甲猟兵メロウリンクの生き様が宝具化したもの。
【Weapon】
「あぶれ出た弱者の牙(パイルバンカーカスタム)」
更にナイフ、手榴弾、対AT地雷、ワイヤーなど多種多様な武装を持ち、敵をトラップに誘い込んで仕留めるのを基本戦術とする。
【人物背景】
「装甲騎兵ボトムズ」の外伝OVA「機甲猟兵メロウリンク」の主人公。
ロボットアニメ史上ただひとり、最終話まで一度も巨大ロボットを操らずに生身でロボットと戦い抜いた主人公である。
機甲猟兵とは、乗機の喪失や懲罰などの理由により「生身でアーマードトルーパーと戦うことを強いられた兵士」を指す。
その絶望的な生還率の低さや、生き延びるためなら戦友の死体すら利用すると言われる生き汚さにより「ボトムズ以下」と軽蔑される存在。
彼らはこう呼ばれた。生き血を啜って命を繋ぐ『戦場の蛭(リーチャーズ・アーミー)』と。
メロウリンク・アリティー伍長は、ある日突然AT乗りから機甲猟兵へと降格され撤退戦の捨て駒にされたシュエップス小隊唯一の生還者である。
しかし復隊した彼を待っていたのは敵前逃亡と重要物資強奪の汚名だった。軍上層部に小隊ごと罠に掛けられたことを知ったメロウリンクは軍を脱走する。
そして彼は戦友の名誉のため、機甲猟兵時代の武器であった旧式の対ATライフル一丁で、スキャンダルに関わった将校達を一人また一人と抹殺していくのである。
前述の通りロボットアニメの主人公でありながらただの一度もATを操縦せず、パイルバンカーカスタムと多彩なトラップで戦う。
生身とATでは考えるまでもなく戦力差は歴然であるが、手榴弾や対AT地雷などをはじめあらゆるものを利用し、圧倒的戦力差を覆していく。
それでもライフルの弾丸を撃ち尽くすほど追い詰められることなど日常茶飯事であり、パイルバンカーの一撃に全てを賭けざるを得ないことも多い。
しかし苦戦に次ぐ苦戦を強いられながらも、悪運と強靭な意志、どんな状況でも決して諦めない往生際の悪さで「コンマ1パーセントの可能性をものにする男」である。
とどめを狙う時に己の血などで顔面に横縞のウォーペイントを描くのが定番で、各エピソードの山場となっている。
なおメロウリンクはランサー・アーチャー・アサシンのクラス適性を持つが、最も適性が高いのはエクストラクラスのアヴェンジャーである。
【サーヴァントとしての願い】
復讐は終わった。
聖杯に懸けるのは、機甲猟兵として死んでいった戦友たちの魂の救済。
【方針】
自分がこの聖杯戦争においても「あぶれ出た雑魚」に過ぎないのは熟知している。
だからこそ、あらゆる手を使ってでも生き残る。
【マスター】
佐倉杏子@魔法少女まどか☆マギカ(TV版)
【マスターとしての願い】
願いはないが、このままやられるのは気に食わない。
【weapon】
多節槍。
【能力・技能】
本来は幻惑の魔法を使う。
【人物背景】
多節槍を武器に戦う、赤の魔法少女。
彼女の浄化の炎は、人魚の魔女もろともにその生命を燃やし尽くしたはずだった。
【方針】
生き抜くために戦う。
投下終了です。
某所の最新話を見て感激のあまり勢いで書きました。
皆様投下乙です。
>間桐慎二&バーサーカ―組
独特のノリが面白かったです。
しかしワカメはUBWルート後参戦とは本当に散々ですね。
少し丸くなっているのが功を奏するかどうかが鍵になりそうです。
>遠野英治&バーサーカー組
推理モノの金字塔とホラー映画の金字塔、異色の組み合わせですね。
ジェイソンの宝具がなかなか凶悪な性能をしてて恐ろしそうです。
鱒の覚悟もいい具合に完了しているようなので、どうなるかわからない恐怖がありますね。
>エルンスト・フォン・アドラー&アサシン
ゆーちゃん! ゆーちゃんじゃないか!
改装によって性能が変わるのはともかく、性格が変わるのはゆーちゃんならではだなあ。
主従関係は微妙そうですが、果たしてどうなるか。
>佐倉杏子&ランサー
独特の雰囲気にすごく引き込まれました。
この組み合わせならではの、どこか乾いた空気がお見事です。
魂の救済と生き抜くためという目的の戦いの行き着く果てがどうなるか、非常に気になりますね。
私も投下します。
町の一角に聳える高層ビルの社長室で、『いかにも』といった風貌の青年が眼下の景色を見下ろしていた。
ぴっちりと着こなしたスーツには皺一つなく、オールバックの清潔な頭髪が知的な印象に拍車をかけている。
青年の名前は須郷伸之。国内有数の一流大学を卒業して同大学の縁者が経営する企業へ入社し、若年にして出世街道を事実上独走――最終的には己の恩師さえも蹴落としてその頂点へ立った男。
バーチャル技術の発展に会社を挙げて貢献しながら人間の脳に対しても造詣が深く、現在進行形で取り組んでいるプロジェクトが成功した暁には世界的なニュースになるのはまず間違いないと伝えられている。
美しい令嬢の許嫁まで居り、まさしく絵に描いたような薔薇色の人生を送ってきた幸運な青年。
それが、『この世界の』須郷伸之に与えられた役割であった。
外面だけは涼しい顔をしていたが、町を見下ろす須郷の内心は熱く滾る煮え湯のような様相を呈していた。
今の彼が甘んじている現住民としての役割は、彼が本来歩む筈であった道に他ならない。
強者に取り入りそれを利用しのし上がり、革新的な研究で名を上げて自分をどこまでも売り込んでいく。
あの美しい令嬢を自分のものとして手に入れ、何不自由のない薔薇色の人生を送り続ける……はずだったのだ。
だが須郷の願いは叶わなかった。正確には、叶うはずだったものを邪魔立てされ続けた。
茅場晶彦という天才と、桐ヶ谷和人という異分子に悉く妨害され、遂には悪事が露見して檻の中。
人生計画は骨組みごと音を立てて崩れ去り、一変、須郷伸之という男は絶望のどん底へ叩き込まれた。
――聖杯戦争という儀式に巻き込まれるまでは。
「単なる道具風情が……ずいぶん小馬鹿にしてくれるじゃあないか」
怒りを通り越して笑いが込み上げるのを感じながら、須郷は独りごちる。
話に聞くところの聖杯が嗜虐なんてものを覚えているとは思わないが、今の須郷を取り巻く環境は、彼が辿った末路を嘲笑うかのようなものだった。
いわば、もう願いが叶っているにも等しい。
須郷伸之はこう生きたかった。その形が、すべてここに再現されている。
ならば戦う必要などない。この世界の一部として、自分の記憶さえ希薄にして生き続ければいい。
もし真に彼がこの現状に満たされていたなら、きっと記憶を取り戻すことはなかっただろう。
しかし須郷は記憶を取り戻した。彼は、この作り物の現実を享受しなかったのだ。
「疼くんだよ……疼くんだ。あの時君に斬り落とされた仮想の腕が、今も僕に痛覚を伝えてくるんだよ……」
自らの片腕を抱くように握り、須郷は記憶の中の忌まわしい顔に向けて語りかける。
今でも目を瞑れば、あの時の光景が鮮明に思い出せる。
忘れられればどれほど幸せだろうか。屈辱と、恐怖と、破滅を一度に味わう羽目になったあの決闘を。
妖精王オベイロン。かつて彼は、そういう名前で仮想世界の神として君臨していた。
管理者権限を持つ彼の牙城を崩せるものは誰もおらず、自分は無敵であるとずっと思っていた。
だが楽園は砕かれた。下界から飛んできた一匹の薄汚い羽虫によって、木端微塵にされてしまった。
挙句、その羽虫に力を授けたのは……これまでの須郷の人生を常に邪魔立てしてきたとある男であった。
それを知った彼は気が狂いそうな怒りに囚われた。いや、それからの須郷の人生がずっと怒りに満たされ続けていることを思えば、あくまでもそれは始まりに過ぎなかったのだろう。
「あぁ……キリト君。君はきっと今頃、彼女と幸せに乳繰りあっているんだろうね」
くつくつと笑いながら須郷が口にしたのは、過去、前代未聞のデスゲームを生き抜いた『英雄』の名前だ。
キリト。本名を桐ヶ谷和人というその彼は、須郷の憎む男が仕組んだ死の遊戯を見事攻略、内部へ閉じ込められた数え切れないほどの人命を救出した文字通り『英雄』と呼ぶべき成果を残した好青年である。
しかし須郷にとっては、この世の何よりも憎らしく腹立たしい怨敵に他ならなかった。
茅場にはほとほと苛つかされた。だがそれでも、あのキリトさえいなければああはならなかったはずなのだ。
「だから、僕は君を殺すよ――いや、殺されるよりも遥かに過酷な苦痛の渦に放り込んでやるよぉッ!!」
紳士の仮面を脱ぎ捨て、醜い本性を曝け出して須郷は無人の社長室で咆哮する。
こんな作り物の人生で我慢する? 甘んじる? いいや、そんなものは所詮まやかしだ。
何故なら、まだ須郷は果たせていない。憎くて憎くて堪らないあの男へ、まだ何も返せていない。
聖杯を手に入れれば、この程度の暮らしは願いの範疇で叶えられる。
滅茶苦茶にされた人生を取り戻したなら、その後はたっぷりお礼参りをしてやるのだ。
あの忌まわしいキリトに、文字通り地獄の苦痛と破滅を与える。
結城明日奈との仲を引き裂き、一族郎党、親しい者まで全てボロ雑巾のような有様にしてやる。
それから失意の底に沈んだ奴の前でアスナを自分のものとし、心を砕いた上で――それから殺す。
いずれ来るその時を思うと、須郷は笑みが止まらなかった。
あの小綺麗な顔を、どんな表情で彩ってくれるだろうか。
自分が倒したと早合点した男に全てを奪われれば、みっともなく涙を流して悶えもするだろう。
考えただけでも素晴らしい酒の肴になりそうだ。
元の世界へ戻ったなら、まずはとびきりのワインを手配することにしよう、そう須郷は心に決めた。
「失礼しますわ、マスター」
その時、蜃気楼のように虚空から現れる人影があった。
須郷のことを主と呼ぶ者。
それは言わずもがな、彼が聖杯戦争に臨むにあたって引き当てた自身のサーヴァントである。
左目を黒髪で隠した、須郷よりも一回りは年下であろう少女だった。
顔立ちは妖精のように可愛らしく、どこか年不相応な艶やかさすら帯びた雰囲気を醸している。
美しい。須郷は素直に、このサーヴァントをそう思って気に入っていた。
「マスターが厄介がっていたバーサーカーについてですが、無事に仕留め終わりました。
一応お耳に入れておいた方がいいかと思い、こうして報告に上がらせて貰った次第ですの」
「そうか。ご苦労だったね、アサシン。傷は負っているかい?」
「いいえ。アサシンらしく淑やかに立ち回っていれば、なんてことのない相手でしたわ」
くるくると古式銃を玩びながら告げる少女の口調は残虐だ。
相当な悪行を働いてきた須郷とて、彼女の所業には戦慄を覚える。
たかだか三百人をモルモットにしようとした自分とはワケが違う。
彼女は少なく見積もって万以上の命を奪っている、正真正銘の殺人鬼なのだから。
「その調子でこれからも頑張ってくれ。
けれど無理だけはしないように頼むよ。君は僕を勝利へ導く、大切なサーヴァントなんだからね」
「嬉しいことを言ってくれますわね。心配しなくても、そのように致しますわ」
苦笑するアサシンとその身を案ずる須郷の構図は、一見これ以上ない理想的な主従の形に見える。
だが須郷が彼女を心配するのは、あくまで自分ありきのことだ。
確かに彼は可憐なアサシンを気に入っていたが、それでもあくまで彼にとっての彼女は聖杯を勝ち取るための道具に過ぎない。その身の上など、どうでもいいの一言に尽きた。
無理をされて脱落となれば、願いが叶わないどころか命がない。
そういう事例に携わったことのある身だから尚更、そんな最期は御免だと感じた。
報告を終えたアサシンが再び霊体化して消えるのを見送り、順調だ、とほくそ笑む。
(しかし、やはり近い内に適当な同盟先を見繕っておく必要があるな。
アサシンはそう簡単にはやられないだろうが、それでも三騎士に比べれば見劣りする。
弾除け程度になってくれればそれでいいから、あまり選り好みをするつもりはないが……)
――霊体となって姿を消し、社長室の扉を超えて廊下に出る。
そこでアサシンのサーヴァント、時崎狂三もまた笑みを浮かべていた。
そして彼女は、自身のマスターを嘲る言葉を呟く。
「相変わらず哀れで、そして小さな殿方ですこと」
須郷の忠実な従者を装っていながら、その実アサシンは彼をそう評価していた。
どれだけ優秀な素振りを見せても、あれはどこまでも矮小で惨めな小物に過ぎない。
マスターとしては落第点もいいところだ。
戦う力があると豪語もしていたが、あの様子では子供騙しにもなるまい。
いざとなれば、鞍替えも視野に入れておく必要がありそうですわね。
須郷本人が耳にしたなら噴飯必至の暴言を吐きつつ、アサシンは開け放たれた窓から飛び立った。
彼にはああ言ったが、消耗がまったくないわけでは流石にない。
今の内に町へ繰り出し、<城>の内側で魂と寿命を補充しておくとしよう。
「聖杯はわたくしのものですわ。申し訳ないですけれど、譲るつもりはありませんの――」
聖杯。
全ての願いを叶える聖遺物。
その触れ込みが真実ならば、それで時崎狂三の目的は果たされる。
始原の精霊を殺すため。そして、精霊という存在自体をなかったことにするため。
時計眼の殺人鬼が、仮想の街を闊歩する。
【クラス】
アサシン
【真名】
時崎狂三@デート・ア・ライブ
【パラメーター】
筋力D 耐久D 敏捷B 魔力A 幸運B 宝具B
【属性】
混沌・悪
【クラススキル】
気配遮断:C
サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している。
完全に気配を断てば発見する事は難しい。
【保有スキル】
精霊:A
人間の世界とは異なる臨界に存在する生命体で、出現の際に空間震という大爆発を引き起こす。
ただしサーヴァントとして召喚された場合、空間震の発生は起こらない。
――のだが、アサシンは自らの意志で自在に空間震を発生させることが可能である。
神性:E-
厳密には神の系譜に名を連ねる存在ではない。
だが、『天使』と呼ばれる力を秘めることが呼んだ風評によって植え付けられたスキル。ほぼ申し訳程度のもの。
時喰みの城:A
固有結界には程遠いが、彼女が魂喰いの際に用いる結界術。
自らの影を踏んでいる人間の時間(寿命)を奪い取る。
【宝具】
『刻々帝(ザフキエル)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1~30 最大捕捉:1人
身の丈の倍はあろうかという巨大な時計の形をした、彼女の持つ『天使』。
長針と短針はそれぞれが古式の歩兵銃と短銃であり、これに〈刻々帝〉の能力を込めて弾として発射する。
効果は時計の数字によって違い、自らの時間を加速させ、超高速移動を可能とする『一の弾(アレフ)』、
時間の進み方を遅くする『二の弾(ベート)』、
時間を巻き戻して傷などを復元させる『四の弾(ダレット)』、
相手の時間を止める『七の弾(ザイン)』、
自身の過去の再現体を出現させる『八の弾(ヘット)』、
異なる時間軸にいる人間と意識を繋ぐことができる『九の弾(テット)』、
撃ち抜いた対象の過去の記憶を伝える『一〇の弾(ユッド)』、
時間遡行ができる『一二の弾(ユッド・ベート)』がある。
但し、聖杯戦争を破綻させる危険性があるとして、召喚の際に『九の弾』『一〇の弾』『十一の弾』『十二の弾』については使用不能とされている。
また、『八の弾』によって生み出された再現体は本体ほどの力は持たないものの、それぞれが自律した意思と霊装を持っている上、影の中に無制限にストックでき、それが尽きるまでいくらでも呼び出すことが可能。アサシンはこの再現体が存在する限り何度でも蘇る。ただし活動時間には限界があり、生み出す際に消費した『時間』内しか活動できない。
【weapon】
『神威霊装・三番(エロヒム)』
【人物背景】
顔の左半分を隠す長い黒髪と、育ちのよい落ち着いた口調が特徴。十六歳くらいの少女の姿をした『第三の精霊』。
分かっているだけでも1万人以上の人間を手にかけていることから、最悪の精霊と呼称される。
自らの影に人間を引きずり込んで喰らい尽くすため、喰われた者を含めると犠牲者の数は増えると思われる。
その目的は、時間を遡行する『一二の弾』を使って三十年前の過去へ行き、ユーラシア大空災を引き起こした始原の精霊を抹殺、今までの歴史を改変し、現在の世界に存在している全ての精霊を“無かったこと”にすることである。
【サーヴァントの願い】
聖杯を使い、始原の精霊を抹殺する
【マスター】
須郷伸之@ソードアート・オンライン
【マスターとしての願い】
自身の復権と、桐ヶ谷和人への復讐
【weapon】
なし
【能力・技能】
『アルヴヘイム・オンライン』の管理者アバター、『妖精王オベイロン』の姿に自在に変身できる。
しかし管理者権限は剥奪されているため、その状態でも戦闘能力は貧弱そのもの。
ステータスこそ高いが、本人の経験が伴っていない為どうにもならない。
【人物背景】
総合電子機器メーカー『レクト』社員にして同社のフルダイブ技術研究部門の主任研究員。
人のいい好青年を演じているが、本性は利己的な野心家で冷酷非道。
能力的には優秀であるが、その人格から来る詰めの甘さが目立つ。
VRMMO『アルヴヘイム・オンライン』を運営するレクト・プログレスに携わる裏で、親会社にも内密で一部の人間と共に人間の記憶・感情・意識をコントロールする研究を進めていて、そのための人体実験の被験体としてSAOプレイヤーに目をつけ、SAOサーバーのルーターに細工を施すことで解放されたプレイヤーからアスナを初めとした約三百人をALO内の研究施設に拉致。さらには意識が戻らない明日奈と結婚して『レクト』を手に入れ、研究成果と『レクト』を手土産にアメリカの企業に自身を売り込むことを画策していた。
しかし、ただの子供と侮っていたキリトによってアスナの監禁場所まで侵入され、管理者権限を活用して蹂躙するもヒースクリフによってキリトに管理者権限を奪われ、ペイン・アブソーバLv.0の状態で滅多切りにされ敗北、アスナを奪還される。
その後、明日奈に会いに病院に来た和人を待ち伏せしナイフで切りつけるも、返り討ちにされそのまま警察に逮捕された。
【方針】
地位を利用して情報を集めつつ、敵陣営を確実に蹴落としていく
投下終了です
色々噛みあう面子や要素があると踏んだので、『聖杯戦争異伝・世界樹戦線』様の候補作として投下した自作を改正した上で再利用させていただきます。
投下します。
白銀の剣閃が、私の肩を浅く抉った。
普段なら視界左に固定表示されている細いラインが、わずかにその長さを縮めたであろうが、今は試験的に不可視化してある。
だから己が感覚のみを信じ、自身の生命力と敵の攻撃力を推し量った上で逃走は不要と判断。
引くことをせず、そのまま打って出る。
敵。エンカウント時は白と黒で塗りたくられかのような不気味な人型だったそれは、今は私と同じ姿に変じている。
恐らくはドッペルゲンガーに類するであろうモンスター。
これまで数分、剣を交え、盾で打ち合った感触からも、相手のコピー能力は中々の性能だ。
外見はもとより、こちらのステータスやスキル、【ソードスキル】までコピーしてくる。
よもや【神聖剣】を自分が使われる側になるとは新鮮だった。
おかげで矛盾ならぬ盾盾対決と相成り、時間がかかってしまっている。
とはいえ倒せない敵ということではない。
むしろ硬さという意味では難敵であっても、トータル的な脅威で言えば、道中で相手してきた他のモンスターたちのほうがよほど怖かった。
ウィル・オ・ウィスプ、トイソルジャー、サマエル、サンフレイヤー、サイクロップス、
ステルスストーカー、デボノバ、ネクロマンサー、ドゥームズデイ……。
彼らは、未知だった。未知であるが故に対処を間違えれば敗北するかもしれないという恐怖があった。
実際こちらのHPを半減させてくるドゥームズデイや、攻撃を回避しながら即死を狙ってくるステルスストーカーにはひやりとさせられたものだ。
それらに比べれば、ありとあらゆる意味で知り尽くした自分など恐るに足りない。
いわんや、能力はコピーすれども使いこなすことはできず、やたらめったらに【ソードスキル】を使ってくるだけの相手となれば尚更だ。
そんなこちらの考えを裏付けるかのように、ドッペルゲンガーが無意味に後退する。
突進技ユニコーン・チャージの初動だ。
攻撃までにラグがあるため、対処は容易い。
本命の突進技を悠々と盾でパリングし、体勢を崩した相手にそのまま切り下げからの十字斬で仕留めにかかる。
これを耐えられたとなると相手に奥義を使われる可能性もあったため、盾での追撃も考えていたのだが。
どうやら杞憂だったらしい。
私の映し身となっていた騎士が崩れ落ち、元の姿を露わにした後光とともに消え去っていく。
それでも万一第二形態への変身や、死亡時に発動する道連れなどのスキルが襲ってこないかその光景を注視する。
やがて、消滅後しばらく経ってからも何も起きないことを確認してから目を閉じ、深く息を吸って吐く。
――いよいよだ。いよいよここまで来た。
目を開け、視線をドッペルゲンガーがいた先へと投げかける。
そこにあったのは薔薇の象眼が施された、豪奢な扉だ。
扉に通ずるホールの中心でドッペルゲンガーとエンカウントしたことからも、恐らくこの先がダンジョンの終着点。
【ラスボス】のいる部屋だ。
「では――行こうか」
懐から取り出した鍵を鍵穴に差し込み、扉を開く。
完全に開き切った扉の中へと歩み出す。
内部は玉座の間というには少し落ち着いた、アンティークで彩られた洒落たドーム状の部屋だった。
「思っていたよりもお早い到着ね。本職のあなたからすればわたしの創りだしたお城は物足りないものだったかしら?」
最奥、鋳薔薇の紋様を刻んだガラスのドームを背に、玉座に君臨する城主が声をかけてくる。
「そうでもないさ。中々に楽しませてもらったよ。今後の【ゲーム】制作の上で参考にさせてもらうつもりだよ」
皮肉でなく本音だ。
特に様々なアクションを駆使しなければクリアできない仕掛けには頭脳肉体ともにかなり働かされることとなった。
「そう、あなたにとってはこの戦いも【ゲーム】なのね」
「だが遊びではない。それは君もだろう?」
盾を前に押し出し、剣を水平に構える。
城主もまた応えるように玉座を立ち、魔族としての姿を取る。
「そうね。それじゃおしまいにしましょうか、この【ゲーム】を」
「良かろう。これで決着だ」
ルールは初撃決着モード。
強攻撃のクリーンヒット一撃で生死が決する。
「来なさい、聖騎士ヒースクリフ……ッ!!」
「行くぞ、夢魔ベアトリーチェ!!」
互いに剣と爪が届く位置まで距離をつめた私たちは同時に宣戦し、駆け出す。
そして――
騎士の剣が魔族の爪が、相手を貫くことはなかった。
何故ならこれは遊びですらない【茶番】だからだ。
「くすくすくす……こんなところね。どう、あなたの言うところの【テストプレイ】は?」
ベアトリーチェ君の姿が再び、偽りの少女のそれへと転じる。
剣を手にしたままのこちらに対して晒すには余りにも無防備な姿に思えるが、その実この空間の、否、このゲームの支配者は彼女だ。
ここは現実世界ではない。聖杯戦争が行われてる電脳空間のそのまた【夢の中の世界】なのだ。
聖騎士ヒースクリフの能力を夢の内外問わず行使できるとはいえ、聖杯戦争においては一参加者でしかない以上、今の私に管理者権限はない。
この空間――【電界25次元】においてもそれは変わらない。
幾らか移譲してもらっているとはいえこの空間の真のゲームマスターは彼女だ。
たとえ今このまま剣で斬りかかり、攻撃を当てたとしても、彼女は攻撃判定を解除し、ルールも書き換えて傷ひとつ負わないだろう。
最も万一バグか何かで彼女を倒せてしまったとしても、それはそれで私も半日後に後を追うことになるのだが。
何せ彼女こそが私のサーヴァント、エクストラクラス【マザー】なのだから。
私も茅場晶彦の姿に戻って感想を述べる。
「先程伝えたように実に有意義だったよ」
ならば何故このような茶番をしていたのかというと、彼女が言うように【テストプレイ】だ。
彼女のスキルである陣地作成。
その成果であるナイトメアキャッスルと、付属できるモンスターたち。
キャスターに近いというクラスにとっては生命線の一つであるこれらの性能を知っておこうと【テストプレイ】に挑んだのだ。
何事も自身で体験してこそ理解も進み、有効な活用やデバックも可能になるというものだ。
「ドッペルゲンガーは思考ルーチンを改良すればもっと使いようがある。
ケライノーのかっぱぐもマスター相手に礼装でも持ち逃げできれば動揺も誘えて有効ではあるかな。
後はトラップや仕掛けも配置するだけの時間があれば嬉しいが」
彼女は私と同じく作り手だが、ゲームクリエイターというわけではない。
ダンジョンの構築やモンスターの設置、思考ルーチンの調整に関しては私の方が専門である。
今回のナイトメアキャッスル攻略は、そのことを少女へと納得させるデモンストレーションでもあったのだ。
ヒースクリフとして見せた電界25次元を応用してアバターを制作できる技術力とプレイヤーとしての腕は少女を満足させるに足るものだったに違いない。
ベアトリーチェ君は相槌を打ち、
「その辺の改良はお任せするわ。
わたしの趣味ではないけれど、この城をあなたの描く【アインクラッド】色に染めてくれても構わない。ただ――」
けれどすぐに忌々しげに表情を歪める。
「それでも【英雄】たちはやってくるの。どれだけのモンスターを差し向けようとも。どんな難問で道を塞ごうとも」
確かに、テスト用のダンジョンとはいえマスターである自分でさえも突破できたのだ。
サーヴァント相手では時間稼ぎにしかならないだろう。
それにせっかく全100層を作ったのに、75層でラスボス戦に突入されてしまった……などということも英雄相手にはありえるのだ。
どれだけ作りこもうともナイトメアキャッスルに過度な期待はできない。
だからこそ私たちの本命は別にある。
「そうなるとやはり君の宝具次第ということになるか。そちらの経過は?」
宝具。
それはサーヴァントにとっての切り札であり、英霊としてのシンボルであり、何よりも。
少女にとっては自らの願いそのもので、私が彼女に協力しようと決めた理由だ。
「【想い出】の収集は順調だわ。聖杯戦争……ニンゲンたちによる、願いを賭けた殺し合い。
これほど【想い出】を引き出しやすい環境はないわ。
欲望のままに他人を殺す時。死の恐怖の前に絶望する時。心のタガが外れ、ニンゲンは無防備になるもの……」
少女の宝具の起動――正しくは誕生、或いは具現化――に必要なものは2つ。
一つは宝具を起動し、産み出すだけの莫大なエネルギー。
そしてもう一つが、産み出すものの設計図たる【想い出】だ。
「それこそ誰かがプロテクトを破ってくれたならこの世界そのものから【想い出】を奪えるのだけど。
ダメね。妬けるほど緻密に作られていながら何者かに強固に守られてるわ」
「何者か、か。それはこの世界の作り手と見るべきだろう。同業として興味はあるが……。
まあ……今は君の報告が先だな」
夢魔である少女は電脳世界を闊歩することはできても、掌握するだけの力はない。
故に少女が【想い出】を集める先は専ら他のマスターや召喚されたサーヴァントからだ。
強大な力を持つサーヴァントに生きている間に干渉するのは危険だが、それが弱った死の間際なら問題ない。
また、どうも今回の聖杯戦争でマスターに選ばれた者は私のような魔術師でない人間も多いらしく、格好の餌だという。
「無闇矢鱈とNPCを殺す主従対策も考えないと。
マスターを自滅に走らせたり、他の正義の味方気取りのマスターをそれとなく誘導してみたりしてね。
NPCも大事なデータバンクですもの。創星を成すまでに駆逐されるわけにはいかないの」
いわんやNPCは言うまでもない。
NPCたちはそれ自体がこの世界を構成するデータの一つだ。
作られた【想い出】である以上、質量ともにいまいちな点もあるが、その分数が多い。
そのため私たちからすれば恒常的に【想い出】を搾取できるNPCたちは生き残っていてくれたほうがありがたい。
「ふむ。【想い出】の収集におけるNPCたちの記憶の欠如が騒ぎにならないよう気をつけないといけないな」
「派手に暴れている他のサーヴァントやマスターを隠れ蓑に使いたいところね。
現状でも状況を把握した参加者たちによる小競り合いは起きているから、その痕跡を消す形で想い出を収集中よ。
自分たちの痕跡を消そうとしている主従がいると見られてはいても、まずは痕跡を残した当人たちに疑いが往くと思うわ」
しばらくは今のままの運用で問題はないということか。
私たちの存在が他の主従に発覚することは可能な限り避けたい。
ばれたからといって容易に手を打てるものでもないが、逆にそれが可能な相手がいた場合は致命的だ。
その辺りの情報も集めたかったが、見つからぬよう慎重に動くことを余儀なくされている身には限界がある。
特に私には前に出過ぎて黒幕だと見ぬかれてしまった前科がある以上、戦いが本格化するまでは【電界25次元】での研究に専念している。
もっとも、私にしろ、彼女にしろ、元より電脳空間の住民ではあるのだが。
「くすくすくす……【アインクラッド】の【想い出を】全部くれれば、労せずに宝具の条件を一つクリアできるのだけど」
「令呪を用いても御免こうむるよ。あの情景だけは誰にも渡すつもりはないさ……。それは君も同じだろう?」
電脳世界に生まれた少女は星に住むことを夢見るようになり、物質世界で暗躍した。
物質世界に生まれた少年は空想に取り憑かれ、自らもまた夢の世界の住民となった。
「そうね。わたしが夢見たのは【ファルガイア】だけ。【アインクラッド】もこの箱庭もわたしの望む、わたしの世界ではないわ……」
それが私であり、彼女だ。
自分にとっての現実世界の法則を超越した世界を作り出すことだけを欲し、大人たちが築いてきた科学を利用し、若者たちの意志の力の前に敗れた存在のエコー、残像だ。
それでも私と彼女は夢を諦めない。
「ならば戦いを続けようか。私は私、君は君の目指した世界へ向かって」
夢に見続けたあの世界へと、往こう、ここから。
――LINK RESTART
【クラス】マザー
【真名】ベアトリーチェ
【出典】WILD ARMS Advanced 3rd(死亡後)
【性別】女性
【属性】混沌・悪
【パラメーター】
筋力:-(C) 耐久:-(C) 敏捷:-(B) 魔力:-(A+) 幸運:A+ 宝具:EX
※()内は電界25次元内でのみ適応される。滅びの聖母使用後は受胎規模に応じて更に可変。
【クラススキル】
陣地作成:A+
夢魔として、自らに有利な陣地を作り上げる。
自らの支配する夢の中の世界に“神殿”を上回る”大神殿”を形成する事が可能。
形成された大神殿は『夢のお城(ナイトメア・キャッスル)』となり、配下の魔物を配置することもできる。
ただしディザスター系統は召喚不可能。モンスターも夢の中限定で外に連れ出すことはできない。
また完成したナイトメア・キャッスルは自爆させることができ、敵を巻き込むことや、巨大なエネルギーを得ることも可能。
百魔獣母胎を後押しするスキルの一つでもある。
百魔獣母胎:EX
エクストラクラス:マザーは何らかの存在を生み出す能力をクラススキルとして所持している。
ベアトリーチェが生み出す対象は星であり、「国造り」どころではないこの力は規模だけなら「大権能」の域に達している。
ただし権利として無条件で成せる権能とは違い、理屈に則れば可能というあくまでもスキルの枠内である。
実際、製法の都合上、当聖杯戦争では星の誕生には余程の条件が重ならない限り行き着くことはできない。
【保有スキル】
夢魔:B
ベアトリーチェは夢魔と呼ばれる魔族であり、電気信号でできた情報体である。
現実世界に実体化することはできず、物理的に干渉することはできず、逆に干渉されることもない。
現実世界の物をコピーする事はできても持ち帰ることは不可能。
その分、情報体として電子機器に干渉出来るだけでなく、電気信号が構成する夢を操作することで精神操作や覚めない眠りに着かせる。
自らの支配する夢の中に引きずり込むことも可能だが、夢魔としての能力の多くは対魔力などで抵抗される危険性もある。
尚、此度の聖杯戦争の舞台は擬似的な電脳世界であるため、立体映像としてだけでなく、実体で行動することも可能である。
ただし今の彼女は夢魔としての逸話に縛られたサーヴァントなため、夢の中の世界以外では力を振るうことができない。
夢の外の世界の彼女はステータスなども表示されないため、正体を知らないものにはNPCのように見える。
電界25次元:A
生命の見る夢の世界。最も深い心の奥底。無限の闇が支配する、暗黒の領域。
ベアトリーチェは夢の中の世界を電界25次元として支配することができる。
この中でなら全能と言える程の力を行使でき、惑星規模まで拡大することさえも可能。その果てが百魔獣母胎である。
直接攻撃手段としても、フィブルマインド、ダークマター、ナイトメアが使用可能。
元からある夢の世界を自らの結界として利用できるため、競合相手さえいなければ、即座に常時補正が得られる。
情報抹消:C
夢に干渉した相手が起きた瞬間にベアトリーチェの能力、真名、外見特徴などの情報が消失する。
あくまでも消失するのはベアトリーチェに関する情報だけであり、夢を見たことやその内容自体は記憶に残る。
このスキルが発揮されるのは夢の操作止まりまでであり、夢のなかで交戦した場合覚えられたままとなる。
またベアトリーチェの真名を知る者には無効となる。
100年もの間、人や魔族を手玉に取り、歴史の裏側で暗躍し続けたことと、数多の人々の想い出を奪っていったことに由来する。
原初の一:-(EX)
アルテミット・ワン。星からのバックアップで、敵対相手より一段上のスペックになるスキル。
星の母であるベアトリーチェは破格のEXランクを誇るが、自らの星を宝具にて誕生させない限りは無効となっている。
宝具を用いたとしても、星未満の都市や国の誕生止まりだと効果は発動しない。
【宝具】
『夢魔の鍵』
ランク:E 種別:創星宝具 レンジ:1 最大補足:4組
夢の中の世界への招待状。
これがあればベアトリーチェの支配する電界25次元へと乗り込むことができる。
専ら対魔力などで夢の世界へ引きずり込めない敵に自分から来てもらうために贈られる。
強制力や呪いのようなものはかかっておらず、本当にただ彼女の元へと導くだけの鍵である。
『滅びの聖母』
ランク:EX 種別:創星対星宝具 レンジ:1 最大補足:1人
少女のためだけの、少女が暮らすことのできる世界を生み出す宝具。創世対界宝具としての性質も持つ。
本来の名は滅びの聖母(ネガ・ファルガイア)。
惑星を一つの生命体と見立て、自らが宿した星の種子と一体化し自らが星の赤子から成長していく。
原点では奇しくも新世界を育む世界樹へと至った段階で滅ぼされたが、その先も当然存在し、果ては星へと至る。
電界25次元での使用が基本であるが、万一使用後に結界が解けた場合、元になった世界と対消滅してしまう。
完全発動には星を創造するだけの圧倒的なエネルギーと、莫大な情報量が不可欠である。
前者は令呪やナイトメア・キャッスルの自爆、電界25次元で死んだ主従の生命を供物とすることで、後者はNPCや他の主従の想い出にて補うことは可能。
ただし彼女が愛したファルガイアの想い出を持つものが殆どいないこの地では、ネガ・ファルガイアを受胎することはほぼ不可能である。
NPCに刻まれている想い出が箱庭世界のもののみであり、他の主従の想い出を足しても圧倒的に情報量が足りないため星規模以上になる可能性も低い。
実際は都市〜国規模、よくて大陸レベルになるものと思われる。
注ぎ込んだエネルギーと想い出が多いほど強力な生命体を受胎でき、容姿や能力、使用する技も、他の主従たちの想い出の影響を受けたものとなる。
例えばネガ・アインクラッドならSAOの設計をなした晶彦の想い出から完全な形で産み出すことは可能である。
最も、自身の原風景である空に浮かぶ鉄の城の想い出を晶彦が譲渡するとは思えないが。
【人物背景】
魔族の情報庫『ヒアデス』に潜む特殊な魔族、夢魔。
普段は紫がかった黒の長髪を持つ黒いワンピースを来た少女の姿をしているが、
戦闘時には光背のような装飾・昆虫的外観・青薔薇のウェディングドレスを着た魔族としての姿を露わにする。
好きなタイプは寂しい人。
一説では「母」という存在を羨望し、手段こそ選ばなかったが純粋にファルガイアを想っていたとされている。
真っ白で狭くて何もないヒアデスで一人過ごしてきた少女にとって、広くて色々な生命や物に溢れている惑星ファルガイアは憧れだった。
少女はいつしか夢を見るようになった。ファルガイアに自らの手で触れて、生きる。
そんなありきたりな夢を見るようになった。
夢魔たる少女には余りにも遠い夢なれど。たとえ一度砕かれた身であろうとも。彼女は夢を諦めない。
【サーヴァントとしての願い】
わたしは、わたしの世界が欲しい。わたしの住まうことができるファルガイアが欲しい。
【基本戦術、方針、運用法】
基本的な運用・弱点はキャスターのそれ。対魔力にも諸々引っかかる。
マスターや英霊たちの心のタガが外れやすい聖杯戦争では想い出の回収は容易なため、必然的に時が経つほど『滅びの聖母』は強力な宝具となる。
ベアトリーチェのスキルも、自身は表に出ず長生きしながら暗躍しつつ宝具を後押しするものに特化している。
時に息を潜め、時に夢で耐性のないマスターや耐性のない英霊を扇動しつつ、陣地を作成しながら宝具の充填を心がけよう。
注意すべきは夢魔及び電子生命体のような早々と夢の中の世界へと乗り込んでこれる存在。
準備の整わない内に襲撃された場合、一気に不利になる。
また対界宝具持ちは天敵であり、夢の世界で使われる危険性は言うまでもないが、夢の外で使われた場合も影響を受けかねない。
競合相手さえいなければ広域に張れる陣地が災いして、他主従への流れ弾という形で対界宝具に巻き込まれる可能性さえある。
滅びの聖母発動後は自身も世界の属性を帯び、電界25次元を破壊されると対消滅を起こしてしまうため、一層対界宝具に弱くなってしまう。
これらの相手が存在するかどうかを手早く見極め、他の主従を誘導するなどして手早く対処できるかが勝負の鍵となる。
【マスター】茅場晶彦(ヒースクリフ)
【出典】ソードアート・オンライン(4巻後)
【性別】男性
【令呪の位置】決着時にキリトに刺された胸元
【マスターとしての願い】
どこかにある本当のアインクラッドへと至る
【weapon】
十字剣と十字盾。
一説ではリベレイターというセット武器らしい。
【能力・技能】
天才
世界的に有名な天才量子物理学者であり、ゲームデザイナー。
相性の良さもあり、時間をかけた分だけ電界25次元にSAO(“アインクラッド”)を再現可能。
舞台が電脳世界なだけに他にもいろいろできるかもしれない。
SAOアバター
聖騎士ヒースクリフのアバターに変身できる。
ソードスキルやユニークスキル、防御力を始めとしたパラメータも反映される。
電界25次元ならベアトリーチェから移譲された権限で補正がかかるため、サーヴァント相手でも幾らかは戦える。
ベアトリーチェが支援に専念し、ヒースクリフが防御に徹すればより強力なサーヴァント相手にももちこたえられるかもしれない。
尚、此度の舞台は擬似的な電脳空間であるため、茅場晶彦は実体化して夢の外でも行動できる。
神聖剣
防御力に補正が入るとともに、盾にも攻撃判定を与えることができ、防御と攻撃の両立が可能。
尚、ゲームマスターではないため本ロワでは破壊不能オブジェクト化などのチートは使用不可能。
ただし電界25次元による特権で限定的にだが似たようなことはできる。
【人物背景】
天才量子物理学者であり、ゲームデザイナー、茅場晶彦。
記憶・人格をデジタルな信号としてネットワーク内に遺すために電脳化した存在。
自身のことを茅場晶彦という意識のエコーであると称しており、厳密には茅場晶彦とは言えないのかもしれない。
SAO時代は白で彩られた赤い鎧に身を包み、十字剣と十字盾を使いこなす聖騎士ヒースクリフとしてログインしていた。
少年はいつからか夢を描くようになった。この地上から飛び立って、空に浮かぶ鉄の城へ行くというそんな夢。
子どもが抱く他愛もない夢想だったはずのその想い出を、大人になってもずっと抱き続けて。
彼は、夢を叶えた。
夢に見た世界を作り出し、夢に見た以上のものを目にした彼は、自らの夢の卵を彼の世界で生きた若者へと託し、新たな世界へと旅立っていった。
【方針】
まずは夢見た世界と、それ以上のものをベアトリーチェが見れるよう手伝うとしよう。
生前やり逃した百層のラスボス的に立ちふさがってみるのもありかもしれないな。
投下終了。オベイロン側に合わせてヒースクリフも普通に使用可能にさせていただきました。
投下乙です。
茅場のテストプレイをする下りがらしくて面白かった
どちらも自分の夢見た世界へ至るのを求めている者同士、良好な関係が築けそうですね
それと、ベアトリーチェの宝具がやはり面白いなあ
投下します。
振るわれた銀の一閃が、聖女の首を刎ね飛ばした。
呆けた面の生首がごろり転げ落ちるのを確認し、漆黒の凶気を纏ったセイバーはようやく戦闘行為を中断する。
英霊を失い、恐怖のままに尻尾を巻いて逃げ帰ろうとする敵の主君を頭から両断しつつ、だったが。
取るに足らない相手だった。そうセイバーはこの戦いを述懐する。
歴戦の英傑が集うなどと、このざまでよく言えたものだ。
自ら殺陣の舞台へ登っておきながら、同盟だ協定だと喧しい。
大した実力も伴っていない身で、さも良い条件だろうといった顔をするものだから、思わずセイバーはそれを斬った。
結果がこれだ。初撃を辛うじて避けたまではよかったが、それからはまるで勝負にならない有様。
セイバーは苛立ちを隠そうともせず怜悧な顔貌に浮かべ、舌を打った。
――そのような安い覚悟で、私の願いを邪魔立てするな。
刃に付着した血を払い、セイバーは踵を返す。
彼のマスターである青年は、電信柱へ凭れかかりながらその戦いを観ていた。
同盟の申し出を断りの一つもなく蹴り飛ばしたことへも、彼は小言の一つさえ漏らさない。
彼は戦う力を持たないが、聡明なる頭脳と、そしてセイバーと同種の感情に囚われている。
セイバーは、自分が味わった喪失と彼のそれが同格のものであるなどとは微塵も思っていない。
だが、己が彼の従属として召喚されたことには納得していた。
「済んだか、セイバー」
「見ての通りだ」
そしてそれは、マスターである彼もまた同じである。
このセイバーと自分が引き合わされたのは、きっと必然のことだったのだ。そう考えている。
剣を振るう彼の姿はまさに剣鬼だ。
情けも容赦も、戦いを楽しもうという心さえ欠片もない。
ただ滅ぼすために剣を振るい、敵を殺す。
信じられない練度で極められた剣技もさることながら、何より恐ろしいのはその心理。
一歩間違えれば狂戦士に成り果ててもおかしくない、見る者を戦慄すらさせる濃密な殺意が彼の内には渦巻いている。
何が彼をそこまで駆り立てるのかを、賢木儁一郎は知っていた。
それは奇しくも、賢木が抱いた感情と全く同じもの。
――復讐心。
セイバーの真名は、日本人ならば誰もが知っているだろう戦国武将と同一だ。
石田三成。
かつては豊臣軍に所属し、後に関ヶ原の戦いで徳川家康と大立ち回りを演じた男。
三成は――セイバーは、徳川家康という男を憎悪している。
人間はこれほどまでに誰かを憎めるのかと賢木は思った。
賢木は決して自分の抱く感情が、願いが軽いとは思わない。
それでも、この剣鬼に比べれば劣ってしまうのだろうと本能的に悟った。
「ご苦労だった。
次の敵が現れるまでは、身を休めておいてくれ」
愛想の一つもなく、セイバーは霊体となって姿を消す。
味方であるというのに、彼の姿が見えなくなると体が軽くなる。
それほどまでに、彼が纏っている凶気は濃密で、おぞましいものなのだ。
それこそ、一人の人間が抱えているのが信じられない程に。
賢木は自分の右手に浮き出た、蚯蚓腫れのような三画の刻印をふと見つめた。
枝分かれした奇妙な形状をしているそれは、皮肉にもあの町の特産品が実る樹の枝を連想させる。
八朔の、樹だ。
ぎり、と。賢木は奥歯を軋ませた。
セイバーに気圧され、一時は影を潜めた感情の波が再び激しさを増して襲ってくる。
そうだ。
俺は必ず、聖杯を手に入れ――そして使わなければならない。
あの町へ染み込んだ汚れた狂気は、最早人の手では祓うことなど出来ないのだから。
「…………」
賢木儁一郎の願いは、恋人を殺した忌まわしい町の破壊である。
漂白、と言ってもいい。
それは聖杯でなければ叶えられない、人の手に余る大願だった。
その為なら賢木はいくらでも殺すだろう。どんな非道にだって手を染める覚悟もある。
この町へ降り立ってから、強盗紛いの真似をして武器と必要な道具を調達していた。
これだけあれば、敵マスターの首を掻き切るには十分だ。
「……くそ」
脳裏に浮かぶ、一人の女の優しい笑顔を必死に振り払って。
賢木儁一郎は、歪んだ復讐劇の幕を静かに開けるのだった。
【クラス】
セイバー
【真名】
石田三成@戦国BASARA3
【パラメーター】
筋力B+ 耐久C 敏捷A+ 魔力D 幸運E 宝具D
【属性】
秩序・悪
【クラススキル】
対魔力:C
第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。
大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない。
騎乗:B
騎乗の才能。大抵の乗り物なら人並み以上に乗りこなせるが、
魔獣・聖獣ランクの獣は乗りこなせない。
【保有スキル】
心眼(真):D
修行・鍛錬によって培った洞察力。
窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、
その場で残された活路を導き出す“戦闘論理”。
刹那:A
彼が得意とする縮地法の一つ。
その速度は達人のそれすらも凌駕して余りある。
居合:A
文字通り、瞬速から繰り出される居合い斬り。
彼の常套戦術であり、その太刀筋はどのような状態にあろうとも、剣を握れる限りは衰えることがない。
精神汚染:E
精神を病んでいる為、他の精神干渉系魔術をごく稀にシャットアウトする。
同ランクの精神汚染を持つ人物以外とは意気投合しにくい。
【宝具】
『恐惶君子』
ランク:D+ 種別:対人宝具 レンジ:1~10 最大捕捉:1人
立ち塞ぐ全てを斬滅するという黒き殺意に裏打ちされた彼の戦闘術が宝具と化したもの。
宝具を発動したセイバーは黒い凶気を纏い、この状態で敵へ攻撃を命中させる度、敏捷と筋力のステータスが上昇していく。
一撃の威力こそ派手ではないものそれだけに魔力消費が極めて少なく、魔術師はおろか能力者ですらないマスター、賢木の性能と噛み合っている。
【weapon】
長刀・無銘
【人物背景】
豊臣軍に所属していた戦国武将の一人。
秀吉を神のごとく崇拝しており、逆に言えばそれ以外のものを一切持っていない非常にストイックな男。
徳川家康の手によって秀吉が討たれてからは家康への復讐心に取り憑かれ、その為だけに邁進する。
【サーヴァントの願い】
秀吉様の復活
【マスター】
賢木儁一郎@おおかみかくし
【マスターとしての願い】
嫦娥町を破壊する
【weapon】
拳銃
【能力・技能】
一般人だが、高い頭脳を持つ
【人物背景】
彼は、奪われ続けた男である。
【方針】
どんな手段に訴えてでも聖杯を手に入れる
投下終了です
投下乙です
主従共に容赦ない感じで、大暴れしそうだなあ
それでは、自分も投下させていただきます
千葉龍之介は、早い段階から自分が置かれた環境に違和感を覚えていた。
毎日穏やかに繰り返される、ごく普通の学生生活。
これは自分の日常ではない。自分の日常はもっと特殊だったはずだ。
彼が抱いていたその思いは、カバンの底に眠っていた銃を見つけることで爆発した。
◇ ◇ ◇
「さて、マスターよ。お前はこれからどうする」
千葉に問いかけるのは、彼が召喚したアーチャーのサーヴァント。
その真名を、アドルフ・ラインハルトという。
27世紀の世界で、人類を救うために火星に旅立った戦士だ。
「正直、すぐに断言はできないな……」
あまり力のこもらない声で、千葉は応える。
前髪で目を隠しているため表情を捉えづらい千葉の顔だが、それでも今は動揺しているのがわかる。
「この聖杯戦争に参加させられた人間は、聖杯を手に入れるか死ぬか。そのどっちかしかないんだろう?」
「そうだ。もしかしたら聖杯自身も想定していない抜け道があるかもしれないが、少なくとも正規のルールでは脱落は死を意味する。
あるかどうかもわからない脱出路を探すよりは、勝ち残って生還するのを目指す方が賢明だろう」
「だよなあ……」
淡々と返答するアーチャーに対し、千葉はがっくりと肩を落とす。
「聖杯なんてほしくはないけど、俺は死にたくない。俺にはまだ、仲間たちと一緒にやらなくちゃいけないことがあるんだ」
「聖杯はいらないか……。お前にも願いはあるだろう。
でなければ、この地に呼ばれる可能性は限りなく低いはずだ。
お前の願いを、聖杯で叶えようとは思わないのか?」
「願いならある。でもそれは、俺たち皆でやらなくちゃいけないことだ。
誰かに頼んで叶えてもらうものじゃない」
千葉の願いとは、彼らのクラスに課せられた使命に他ならない。
すなわち、担任である殺せんせーの暗殺だ。
それは、自分たちでやらなければいけないことだ。
聖杯などという反則じみたカードの力で終わらせてしまっては、千葉もクラスメイトたちも決して納得できないだろう。
「俺は帰れれば、それでいい。けど……そのためには、聖杯戦争に参加してる他の人を殺さなきゃいけない。
それを受け入れることは……まだできそうにない」
千葉の肩が、かすかに震える。
彼、そして彼の仲間たちが殺せんせーを暗殺するという使命を受け入れられたのは、殺せんせーが人ならざる生物だという面が大きい。
人間を殺す覚悟は、彼にはない。
「それが当然だ。いかに特殊な訓練を受けていたとはいえ、お前は平和な国で育った子供だ。
殺人に忌避感を抱くのは、何もおかしいことじゃない」
「アーチャー……あなたはどうすればいいと思う」
「お前の人生を大きく左右する決断だ。赤の他人である俺が、軽々しく口出ししていいものでもない」
「ばっさりだな……」
「だが……」
あからさまに落胆する千葉に対し、アーチャーはさらに言葉を続ける。
「お前がどんな決断をしようと、俺はお前の命を全力で守る。
それが俺という英霊の、存在意義だ」
「そうか……」
千葉の表情が、わずかに緩む。
「別に問題が何か解決したわけじゃないけど……。そう言ってもらえると、少し気が楽になるよ。
ありがとう、アーチャー」
「礼などいい」
気恥ずかしいのか、アーチャーはあからさまに視線を外してしまった。
(厳しいところもあるけど、本質は優しい人なんだろうな。
不器用っぽいけど……。
その辺が俺と引き合ったのかもなあ……)
アーチャーの横顔を見ながら、そんなことを考える千葉であった。
【クラス】アーチャー
【真名】アドルフ・ラインハルト
【出典】テラフォーマーズ
【属性】秩序・善
【パラメーター】筋力:D 耐久:E 敏捷:D 魔力:E 幸運:E- 宝具:C
(人為変態時)筋力:B 耐久:C 敏捷:C 魔力:E 幸運:E- 宝具:C
【クラススキル】
対魔力:E
魔術に対する抵抗力。ダメージ数値を多少削減する。
科学に偏った英霊であるため低ランクとなっている。
単独行動:E
マスター不在・魔力供給なしでも長時間現界していられる能力。
人とのつながりを求めたアーチャーの生き様にはそぐわないスキルのため、低ランクとなっている。
【保有スキル】
カリスマ:C
軍団の指揮能力、カリスマ性の高さを示す能力。団体戦闘に置いて自軍の能力を向上させる稀有な才能。
一軍の将にすぎないアーチャーにとっては、Cでも異常なまでの高ランクと言える。
これは本人の資質より、「部下から絶大な信頼を受けた司令官」として伝承されたことによる補正が大きい。
気配察知:C(A)
気配を感じ取ることで、効果範囲内の状況・環境を認識する。近距離ならば同ランクまでの気配遮断を無効化する。
人為変態中は、ランクがAに上昇する。
仁王立ち:B
一時的に耐久を上昇させ、攻撃を自分に引きつけるスキル。
部下を守る盾となって力尽きた、アーチャーの死に様を象徴している。
【宝具】
『嵐の予感(サンダーストーム)』
ランク:B 種別:対人宝具(自身) レンジ:― 最大捕捉:1人(自身)
モザイク・オーガン手術によって獲得した、デンキウナギの能力。
本来は変身薬を鼻から吸引することによって人為変態するが、宝具となったことにより本人の意志のみで変態が可能になった。
変態中は身体能力が向上し、電撃を操ることができるようになる。
『涙雨に濡れた心(レイン・ハート)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1-30 最大捕捉:10人
対テラフォーマー受電式スタン手裏剣。
アーチャーのコートの裏にびっしりと装備された、投擲用の刃物。
電気を誘導する性質を持ち、一度刺さればアーチャーの電撃からは逃れられなくなる。
【weapon】
戦闘服
アネックス1号の乗組員に支給される服。
コート・ジャケット・ズボンでワンセット。アーチャーのものは幹部仕様として、コートにケープがついている。
普通の服よりは頑丈。
【人物背景】
治療不可能のウイルス「AEウイルス」のサンプルを入手し、ワクチンを作るために火星に向かった宇宙船「アネックス1号」の乗組員。
国籍はドイツ。第5班(ドイツ・南米班)の班長を務める。
「バグス手術」を発展させ、昆虫以外の生物の能力も人間に移植できるようにした「モザイク・オーガン手術」の成功者第1号。
まだノウハウがない中で実験台として扱われていたため、その体には自分の能力で負った傷が無数についている。
その境遇から他人とのつながりを強く求めており、表面上は冷酷な態度を取りつつも部下を思う気持ちは人一倍強い。
火星では裏切り者である第4班の計略で孤立。
部下を守るためテラフォーマーの大群を相手に鬼神のごとき戦い振りを見せるも、数の暴力に押され無念の死を遂げる。
【サーヴァントとしての願い】
マスターを守り抜く。
【マスター】千葉龍之介
【出典】暗殺教室
【マスターとしての願い】
元の世界に帰りたい。
【weapon】
○エアガン&対殺せんせー弾
殺せんせーの肉体だけを溶かす効果を持つ弾丸と、それを射出するためのエアガン。
人間相手に効果は無いが、牽制や威嚇程度には使えるかもしれない。
【能力・技能】
○狙撃
誰もが認める、E組最強のスナイパー。
抜群の空間計算能力を活かし、1㎞という長距離射撃さえも難なく成功させている。
【人物背景】
私立椚ヶ丘学園中等部3年E組・出席番号15番。
強すぎる目力を抑えるため、長く伸ばした前髪がトレードマーク。
暗殺訓練によって射撃の才能を見いだされ、速水凛香とスナイパーコンビとして数々の活躍を見せる。
狙撃の腕に加え、口数の少なさや落ち着いた物腰からクラスメイトに「仕事人」と称されている。
【方針】
死にたくないが、他人を殺したくもない。
投下終了です
私も投下させていただきます
野々原紀子が求めていたのはささやかな幸せだった。
学校に通って友達と一緒に勉強したり遊んだりする。家に帰ったら宿題を片付けて、両親と一緒に、今日の出来事を話しながら晩ごはんを食べる。
お母さんと一緒にお風呂に入り、まだ少し大きすぎるベッドで眠りにつく。
たまに怖い夢を見て起きてしまうこともあるが、お母さんとお父さんに慰められてまた眠りにつく。
野々原紀子が――のっこちゃんが求めてきたのは、そんなささやかな幸せだけだった。
魔法少女の力もそのために使ってきた。のっこちゃんの魔法は『自分の感情を周囲に伝播させる』魔法だ。
のっこちゃんが楽しいと思えばその感情が伝わり、周りにいる皆が楽しくなる。
その力を使い、のっこちゃんは身近な人々に幸せな気分にしてきた。
難しいことではない。のっこちゃん自身が幸せなのだから、ただそれを分け与えればいい。
たまには暗い気持ちになってしまうこともある。しかしそれを抑えるのは、そう難しくはなかった。
皆が幸せならば、それが重なりあってのっこちゃんもさらに幸せになる日々。あのときは本当に心の底から幸せだった。
お母さんが病気で倒れてしまうまでは。
あのころののっこちゃんには病気の細かい症状まではわからなかったが、治療にはお金と時間がかかり、しかも絶対に治る保証もないことはわかった。
不安と恐怖に苛まれる中、さらに追い打ちをかけるようにお父さんがお母さんとのっこちゃんをおいて姿を消した。
怒りはなく、ただ絶望した。
今にして思えば、あれはのっこちゃんの魔法のせいだったのだろうかとも思う。
あのときの自分は感情をコントロールする余裕も冷静さもなく、感じた不安や恐怖を垂れ流しにしていた。
大人で、現実的な思考もできるお父さんは、それに耐え切れなくなり逃げ出したのかもしれない。
まあ理由なんて今となってはどうでもいいことだが。
絶望にくれるなか、タイミングを見計らったかのように――あるいは本当に見計らっていたのだろうか――知り合いの魔法少女から力を貸して欲しいと言われた。
ある平和主義の少女に、のっこちゃんの魔法で怒りを与えてほしいというものだった。
その魔法少女が住む場所は、最近事件や事故による死亡のニュースが多発しているところだ。
提示された報酬額は不自然なほどに多くて、子供ながらにこれがまともな仕事でないことは察せられた。
のっこちゃんは迷わず引き受けた。お母さんの病気を治すためにも、のっこちゃん自身が生きるためにも、お金が必要だった。
程なくして怒りを与えた少女が、何者かに殺害されたとニュースで報道された。
のっこちゃんは仕事を持ってきた魔法少女を告発したりはしなかった。
それどころかまた同じようなことがあったらぜひ協力させて欲しいと頼み込んだ。
のっこちゃんに莫大なお金が必要だ。子供がお金を稼ぐ手段は限られている。
のっこちゃんが求めているのはささやか幸せだけだった。
だがささやかな方法では、それは叶わなくなった。
あるいは。
直接手を下したわけではないとはいえ、この手はもう血に染まっている。
自分はもう資格を失っていて、死ぬまで幸せになることは叶わないのかもしれにない。
そして、その予感は現実のものとなった。
◆
前の椅子には並んで座るお母さんとお父さん。テーブルの上にはお母さんが料理が並べられている。
特別凝った作りなわけでもないが、のっこちゃんにとってはどんな凄腕シェフが作ったものよりも、好きな料理だ。
三人でテレビを見ながら、どうでもいい話をして一緒に食べる。
時計を見て二人が慌てだした。二人共もう仕事に行かなければいけない時間だ。今日はいつもよりも早く出なくてはいけないのだ。
お母さんもお父さんも急いでご飯を食べる。「食器は私が洗っておくから」とのっこちゃんが言うと「おみやげ買ってくるね」と言って二人とも家を出た。
のっこちゃんは食器を丁寧に洗い、自室に入る。
昨日の内に準備した、ランドセルの中身をもう一度確認した。
これはどこにでもあるような日常だ。
もしも映画だったなら、見ている人が退屈して居眠りをしてしまうような退屈な日常。
どこにでもあるようで、のっこちゃんにはずっとなかった日常だ。
わかっている。この日常は偽物だ。
本物のお母さんは今も入院している。お父さんはどこにいるのかもわからない。
それでも嬉しかった。
もう戻らないと思っていた幸福な日々を偽物とはいえ取り戻すことができた。
大好きなお母さんとお父さんと一緒に過ごすことができた。
自らの首にスコップを突き立て、死を覚悟していたのっこちゃんにとっては限外なくらいの幸せだ。
自分がこれまでにしてきたことを考えれば――もう満足して今度こそ、この命を罪を償うために捧げるのが正しいとすら思う。
――でも、目の前にこの日常を本物にする手段がある……
聖杯。それが真に万能の願望機なら、失われた幸福な日々を、本当に取り戻すことができるかもしれない。
それだけではない。のっこちゃんが間接的に命を奪ってしまった多くの人々の死も、なかったことにできるかもしれない。
今度こそ幸せな人生を歩めるかもしれない。
だがそれは多くのサーヴァントやマスターたちを犠牲にした先にある道だ。
聖杯戦争のルールはあのゲームほど厳しくはない。
探せば誰も殺さずに終わらせる方法が見つかる可能性もある。生きるために仕方なく――では済まされない。
サーヴァントは「ぼくは君の意思を尊重する」と言ってくれている。決めるのは他の誰でもない。のっこちゃんだ。
だからのっこちゃんは決断した。
この街に来て、記憶を取り戻してから一ヶ月以上。長い時間を要したが――決断した。
聖杯を手に入れる。
のっこちゃんが誰に罪悪感を感じることもない、ささやかで幸せな日常を取り戻すにはもうそれしかない。
「決めたのかい?」
背後から聞き覚えのある声がして、のっこちゃんの心臓がトクンと跳ねた。
振り返るとそこには予想通り、この戦いを共に戦うパートナー、サーヴァントライダーがいた。
「こんにちわ、ライダーさん」
「こんにちわ、マスター」
ライダーは頭にかぶっていた中折れ帽を取ってお辞儀をした。
彼を姿を見ていると、なぜだか身体が熱くなる。
いつからこんな風になったのだろう。最初はむしろ気味の悪くて怖いとさえ思っていたのに。
いつの間にか彼といると安らぎを感じるようになっていた。
誰にも話したことがない自分の境遇への思いも打ち明けていた。
この気持ちが恋なのかはわからない。今まで恋なんて一度もしたことがないのだから。
ただ彼がのっこちゃんにとってとても大切な存在になっているのは確かだった。
聖杯を望む理由の一つに、彼の願いを叶えたいという思いがあるくらいに。
「ライダーさん、私は聖杯を手に入れます」
ライダーのぬめりとした手がのっこちゃんの頭を撫でる。
お世辞にも気持ちいい感触とはいえない手だ。だけどのっこちゃんは彼に頭を撫でてもらうのが好きだった。
「君がそれを望むなら、ぼくも聖杯を手に入れるために全力を尽くすよ」
ライダーの背中に生えた三枚の羽が蠢く。細長い、トカゲに似た顔を歪ませて笑みを浮かべた。
「大丈夫さ。君のお母さんを思う気持ちはあれば必ず勝てる。ぼくは信じているんだ。この世で最も強いのは愛の力だってね」
◆
自分は野々原紀子に愛されている。
それはライダーにとって確認するまでもない当たり前のことだった。なぜならその愛はライダーが宝具によって与えたものなのだから。
ライダーに童女を愛でる趣味があるわけではないし、まして野々原紀子を愛しているわけでもない。
ライダーの属する種族は人間とは違う価値観を持っている。
野々原紀子の容姿が人間の基準でいえばかなりの美形であることは理解できるが、ライダーにとっては醜く不気味な部類だ。
たとえどれだけ性格が良かったとしても、等身大のゴキブリに好意を抱く人間などいないだろう。それこそライダーの宝具でも使わない限り。
それ以前にライダーが誰かを愛するということ自体がありえない。
ライダーは好きなのは人が愛によって苦しむ姿だ。
自分の内より生じたと信じていた愛が与えられたものだと教えられ、それでもなお愛に逆らうことができず、自分の大切なものを捧げて絶望した顔を見る瞬間に最高の幸せを感じる。
ライダーの生において求めるものはそれだけだといっても過言ではない。
無論、愛を与えるのは誰でもいいというわけではない。
他人を傷つけることをなんとも思わない悪党や、操られていたのだから仕方ないと割り切れるような達観した人間は駄目だ。
人を思いやる優しさを持っていなければいけない。
絶対に譲ることのできない大切なものを持ちっていなければいけない。
愛を持たない孤独な人物でなくてはいけない。
そういう人間でなければより味わい深い絶望は見せてくれない。
その点、野々原紀子は実に好ましかった。
母のために他者を切り捨てる強い意思を持つと同時に、そのことに罪悪感を抱く優しさも持っている。
母から愛されているはいるが、家では一人きりで孤独を感じている。
満点とはいえないが、一から育てたわけでもない人間として十分な合格点だ。
そういう意味ではライダーは野々原紀子のことを愛しているともいえる。
ただ不満もある。現状ライダーと野々原紀子の利害が完全に一致しているところだ。
聖杯戦争のシステム上、仕方がない面もあるが、これではどうしても足並みが揃いがちになってしまう。
彼女を絶望させるのが難しくなるだろう。
――その辺りは今後の課題だね
ライダー――テグネウにとって愛による絶望は勝利よりも優先される。
勝つために絶望を妥協することは許されなかった。
【クラス】ライダー
【真名】テグネウ@六花の勇者
【属性】混沌・悪
【パラメーター】
筋力:D 耐久:Dランク 敏捷:E 魔力:B 幸運:C 宝具:EX
【クラススキル】
対魔力:B
魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。
大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。
騎乗:B
騎乗の才能。大抵の乗り物なら人並み以上に乗りこなせるが、
魔獣・聖獣ランクの獣は乗りこなせない。
【人物背景】
目覚めれば世界が終わると伝説に語られる魔神より生み出された凶魔(いわゆる魔物)。
その中でも特に優れた、凶魔を統べる三統領の一体。
通常、凶魔は魔神への深い忠誠心を持って生まれてくるが、例外的に彼は魔神への忠誠を一切持たずに生まれた。
愛こそが人や凶魔を強くすると信じており、愛を踏みにじることに最高の喜びを感じている。
そのためなら努力を惜しまず、踏みにじるために自分好みのカップルを一から育てることもある。
挨拶を非常に重んじており、敵に対しても会ったときにはまず挨拶する。
【保有スキル】
計略:A
物事を思い通りに運ぶための才能。状況操作能力。
戦闘のイニシアティブ判定において常に有利な修正を得る。
カリスマ:C
軍団を指揮する天性の才能。団体戦闘において、自軍の能力を向上させる。
カリスマは稀有な才能で、小国の王としてはCランクで十分と言える。
支配種の凶魔:B
自分の身体の一部を他の凶魔に食わせることでその凶魔を強化し、支配できる。
一度に操れる凶魔は一体だけで、二メートル以上離れると効力が失われる。
凶魔は『核』が破壊されない限りはいくら傷ついても再生するため、食わせた部分も何れ再生する。
現在ライダーはこの能力で戦闘能力の高い凶魔の身体を操っている。
彼の本当の姿は脆弱で、イチジクの実の形をしている。
蹂愛欲求:EX
誰かの愛を弄び、踏みにじりたいという欲求。
彼にとって愛を踏みにじるという行為は、その他のなによりも優先される。
自身が誰かを愛することは求めず、魅了などの精神干渉に対して強い耐性を持つ。
【宝具】
『特質凶具の一番』
ランク:D 種別:大軍宝具 レンジ:- 最大捕捉:40
統括体と呼ばれる一体と、従属体と呼ばれる三十九体で構成された凶魔。
統括体が考えた通りに従属体は動き、統括体が見聞きしたものは従属体にも伝達される(従属体が見聞きしたものは統括体に伝達されない)。
統括体からの指示がなくても、従属体は自分の考え、判断で行動できる。
支配種の能力を統括体に使うことで、ライダーは四十体の凶魔を同時に支配、強化できる。
ランク:EX(自己評価) 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:1人
『愛(テグネウが信じるただ一つの感情)』
対象とした人物に強制的に誰かを愛させる。誰を愛するかはライダーが自由に決められる。
愛する者が危機に陥れば陥るほどその愛は強まっていく。対象に触れれば強くなった愛を弱めることもできる。
ライダーが死んだときこの宝具の効力も失われる。
効果が出るまでに一ヶ月近くの時間が必要。
聖杯戦争の最中にのっこちゃん以外の者に使うのは事実上不可能と思われる。
ライダーは愛こそがこの世でもっとも強い力であり、愛だけが奇跡を起こすと信じている。
よって愛を操るこの宝具は彼にとってあらゆる宝具を凌ぐ最強の宝具である。
【weapon】
三枚羽の凶魔。
普段ライダーが自らの肉体として用いている凶魔。
身長は役二メートル。トカゲの顔と、鱗に覆われた胴体。羽毛に覆われた腕と足に、両生類のような手を持っている。
背中には二枚の黒い羽と、その中央に生えた白い羽がある。
胸にも口がありライダーの本体であるイチジクはそこに隠れている。
支配種の能力を受けた状態での身体能力は筋力、耐久、敏腕、共にBランク相当。
【サーヴァントとしての願い】
二度目の生。
【方針】
愛を踏みにじり、勝利する
【マスター】
のっこちゃん(野々原紀子)@魔法少女育成計画restart
【weapon】
モップ
【能力・技能】
『まわりの人の気分を変えることができるよ』
およそ半径二十メートル以内の生物に、自分の感情を伝播させる。
心に闇や傷を抱える者にはよく効く。
Cランク以上の対魔力を持つ者には無効になる。
【マスターとしての願い】
誰に罪悪感を抱くこともないささやかで幸せな日常。
【人物背景】
眞鍋河第三小学校に通う小学四年生。十歳の子供だが魔法少女歴は六年のベテラン。
普段は魔法でクラスの雰囲気を良くしたり、病気のお母さんを元気づけたりしながら生活している。
病気の母親をおいて父親が逃げ出したあと、お金を稼ぐために犯罪に加担していた。
そのことをネタに脅され、ゲームの死が現実の死に直結したあるゲームにおいて、他プレイヤーの最終目標である魔王を担うことになる。
死亡後からの参戦。
【方針】
聖杯を手に入れる。
投下終了です
投下します
チクタク
チクタク
チクタク
時計の音を響かせて。
秒針の音を響かせて。
その者は笑う。その者は嗤う。
見つめ、吟味し、そして嗤う。
それは、いと高きに在る者か。
チクタク。チク・タク。
チクタク。チク・タク。
それは、主を讃える白きものの声か。
時計の音。時計の音。
規則正しく鳴り響く。
この、何処とも知れぬ闇の彼方で。
全ての彼岸を超えたとも知れぬ果てで。
遥か高みの玉座にて。
今も、君臨する者は語る。
今も、君臨する者は囁く。
『すべて』
『そう、すべて』
『あらゆるものは意味を持たない』
嗤い続ける月の瞳そのものの双眸で。
チク・タクと、音を響かせて。
邪悪なる者は嗤うのだ。
神聖なる者は嘲るのだ。
すべて、すべて、無価値に過ぎないと嘯いて。
あるいは、天頂に廻る機構時計の物語すら。
意味などないと嘲笑して。
高き者は告げる。
笑みを絶やすことなく。
残酷に、冷酷に。
『たとえば―――』
『夢から醒めてしまえば何の意味も、ない』
――――――――――。
▼ ▼ ▼
がたん、ごとん。
がたん、ごとん。
がたん、ごとん。
地下鉄の音が聞こえる。レールの上を電車が走る時に聞こえる特有の大きな音が、耳元に木霊する。
もう随分と聞きなれてしまったと、その少女は口には出さずそう思う。
地下鉄の音。けれど、車窓から見える景色はトンネルの暗い灰色ではない。
「おー、綺麗な景色だねぇ」
遠くまで見渡すように、額に手を当てながらそう言う。
色素の薄い髪に眠たげに細められた目、小脇には大きな枕を抱えた少女だった。
その容貌はおよそ人間とは思えないほどに秀麗で、しかし作り物めいた美とは無縁な、少女らしい愛らしさに満ち溢れていた。
少女―――ねむりんという名の魔法少女は、開いた窓枠に腕を乗っけて、ほんの少し身を乗り出して感嘆の声を出していた。
その言葉の通り、少女の眼下に広がるのは地下トンネルなどではなく、夜の街。
遥か彼方には大きな丸い月が浮かび、上を見上げれば満天の星空。
そして下からは、街が放つ様々な光が目に飛び込んでくる。
少女を乗せた地下鉄は、今は空を飛んでいた。
煌く星の中を、一輌だけの地下鉄が飛んでいく。
さながら映画の幻想的な1シーンのようで、少女の心はほんのちょっとだけ高揚していた。
「静かだねー。戦争なんて物騒なことが起きてるなんて思えないくらい」
「そうだね、マスター」
答える声があった。それは、少女のすぐ傍から。
無機質な声だった。およそ人とは思えない、作り物めいた声。
背の高い男がそこにいた。白髪、褐色の肌、赫い瞳。
車掌のような制服を纏った男だ。直立したまま動かなず立っている。
サーヴァント、ライダー。それがこの場において彼を示す言葉だった。
空をひた走る一輌だけの不思議な地下鉄も、騎乗兵のクラスで呼ばれた彼の持つ宝具のひとつ。
記憶を取り戻して以来、ねむりんはずっとこの車両で過ごしていた。
偽者とはいえ、ニートな自分をも深く愛してくれる家族を危険に晒したくはない。そんな思いを抱く彼女にとって、衣食住を完備したこの車両は渡りに舟であったと言える。
魔法少女に食事も休息も必要ないとはいえ、こういった設備があるのとないのとでは精神的な余裕が違ってくる。
そういうわけで、ねむりんは仮初の我が家を離れ、不思議な地下鉄で他主従の捜索も兼ねた星空の遊覧を楽しんでいた。
……テレビやネットのような娯楽の品がないのは、ちょっとどころじゃなく不便ではあったけど、この際贅沢は言ってられない。
「けれどそうではない。一見して違うように見えても、そこに含まれる事象が変わることはない。
それはきみも分かっていることだろう」
「まあねぇ」
よっ、と。ねむりんが声を上げて、次の瞬間にはねむりんの全身が全くの別人となっていた。
少女から女性の姿へ。子供から大人へ。
ねむりんという魔法少女から、三条合歓という人間へ。
魔力の節約のために、姿を変じて。
くぅ、と。お腹から間の抜けた音が鳴り響いた。
「久しぶりに戻ったらおなかすいちゃった」
「きみは、そういえば人間だったね。魔法少女と呼ぶあの姿では、食事は必要なかったはずだけど」
「でも、魔力だって限りがあるんだから、いつまでも変身してるわけにはいかないよ」
「その通りだ」
頷くと、ライダーは備え付けのテーブルに歩み寄って。
ぱさり、と、白いテーブルクロスをかけた。
何処から取り出したのかまるで見えなかった。白くて清潔そうなそれを、テーブルへ。
「……へ?」
きょとんとする合歓を余所に、テーブルの上にあれやこれやと、ライダーは載せていく。
気付けば、テーブルの上には湯気をたてるポットがあった。
最初はコーヒーポット。次がコーヒーカップで、更に白いお皿と、その上にサンドイッチがいくつか。
「うわあ、そうやって出すんだ。初めて見た」
「好みに合うといいんだが。味覚というものが、僕にはないから」
「だいじょーぶだいじょーぶ、贅沢なんて言わないよお」
いただきまーす、という合歓に、ライダーは無機質に「召し上がれ」とだけ言うと、再び直立不動の姿勢に戻った。
「らいぁーふぁたふぇないの?」
ライダーは食べないの? と、聞いたつもりだったけど。食べ物を口に入れたままではよく喋れない。
「行儀が良くないな、マスター。ものを口にしてる最中に喋るのは」
「あ、うん。ごめん」
「構わないよ。それと、僕に食事は必要ないよ。そういうふうに出来ている。
マスターの言うところの、魔法少女と同じだ」
きみと違って僕は最初からそういう存在なんだ、とライダーが締めて。
合歓は「へえ〜」とだけ、答えた。
もぐもぐ、もぐもぐ。
しばし、合歓がサンドイッチを頬張るだけの時間が過ぎていった。
3個目に手を伸ばした頃、ふと、合歓がライダーに尋ねた。
「そういえば、ね」
「なんだい、マスター」
「そもそもの話、どうして私ってここに呼ばれたんだろうね」
今更と言えば今更の疑問。なんで自分はここにいるんだろうというそれを、合歓はライダーに問いかけた。
自分の記憶を辿ってみれば、魔法少女たちのチャットから出て、「ああこれで魔法少女生活も終わりかぁ」などと思っていたら、いきなり知らない街に視界がシフトしていたのだ。
魔法少女の力を没収されたはずなのに、魔法の端末は相変わらずそこにあって変身もできる。けれどいくら呼びかけてもファヴが答えることはない。
もしかして魔法少女をやめたら自動的にここに送られるのではと考えもしたけど、あまりにも脈絡がないし説明もされてないのでそれはないだろうと思う。
事実、自分のサーヴァントとして宛がわれたライダーに魔法少女について聞いても、知らないとしか返ってこなかったわけだし。
だからこそ思うのだ。
何故、自分はこんなところに呼ばれたのだろうと。
「聖杯戦争ってさ、どうしても聖杯が欲しいー! って人が参加するものじゃないの?
私、どうしても叶えたい願いなんてないんだけどなぁ」
「確かに戦意や願いの有無は重要だね。けれど、マスターたるに相応しい資質を持つ者を聖杯が選別して連れてくることもあるそうだ。
とりわけきみの力は強大だからね。聖杯が選ぶのも無理はない」
強大?
私の魔法が?
「そんなに凄いかな、私の魔法」
「規格外と言っていいだろう。夢歩きなど、神代の賢者の如き御業だ」
大昔の賢者と言われると、なにやらとんでもないことのようにも思えてくる。よく分からないが、褒められたようでちょっと嬉しい。
合歓はほへぇ、などと声を漏らし、次いで気になったことを尋ねた。
「夢歩き? 私の魔法ってそんなふうに呼ばれてるんだ」
「ああ。夢を通じて夢を歩き、あり得る場所、あり得ざる場所をも旅する魔術の奥義。
人の夢見る物語を旅すると表現する者もある。
すなわちそれは、幾億の世界への旅」
「なんだかロマンチックなお話だねぇ」
知らず頬が緩む。その手の話を、合歓は嫌いじゃなかった。
まして自分の魔法がロマンチックと言われたようなものなのだ、これは思わずにやけてしまう。
「夢歩きの記録には枚挙がない。あるいは、神との対話とも記録されているね。
古代グリース、北欧、オリエントにかつて君臨した大帝国たち、欧州の伝承にさえ、夢を歩いたと称する人々は数限りない。
古代、中世、近代、現代。どの時代にも、形を変えて、もしくは同じ形のままで、人間は夢を紡ぎ、夢を渡り、夢を歩く。
アフリカ大陸や南北の新大陸に住まう呪術師や精霊対話者たちは驚異だ。現代にあってさえ、彼らは夢を歩くという。
仮に、メスメルの碩学たちが語る集合的無意識説を正しく真実とするならば、過去から現代へと至る無限に近しい情報の海への接触があり得るならば。
それを、神との対話と信じる者がいたとしても、何の不思議もない」
「むずかしいです」
先ほどまで頬が緩んでたとは思えないくらい、真顔でそう言った。
ライダーの言葉の半分さえ、理解できたか怪しいところだ。
合歓は決して馬鹿ではない。ないが、魔法少女なことを除けば一般人なのだ。ニートなのだ。
ニートに難しい話をすると死んでしまうのだ。そこんところ、ライダーはちゃんと分かっているのだろうか。
「けれど。
問題の回答でもなく。
未来の予兆でもなく。
ただ、「他の世界へと渡ったのだ」と口にする者もいた。
そう、それはまるで、かの老翁が辿り着いた第二の魔法のように」
「うん?」
第二の魔法?
理解を諦めた頭に、その単語だけが嫌にはっきりと入ってくる。
それは一体どういうことだろうと、思考の隅で疑問に思ったけれど。
それを、合歓は口には出さなかった。
「ともかく、きみの魔法は凄いということだよ」
「うん、そっかぁ。なんだか実感が湧かないけど」
ライダーが繰り出した怒涛の言葉の波に押されていた合歓は、そこでようやくサンドイッチを食べる手が止まっていたことに気付いた。
難しい話は良く分からないけど、凄いと言われて悪い気分はしないなぁ、と。そこで食事を再開するのだった。
▼ ▼ ▼
「ごちそうさまでしたー」
「ああ。口には合ったかな、マスター」
「うん、美味しかったよ」
ほくほく顔で頷く合歓に対し、ライダーは相も変らぬ無表情だ。
そして意識を外に向ければ、いつの間にか地下鉄のがたんごとんという音も鳴り止んでいる。
町外れの廃線が走る廃トンネル、その中。どうやら食事をしている間に、いつも拠点にしているその場所に戻っていたらしい。
「うーん、中々見つからないねぇ」
「生憎、僕は探知手段に優れているわけではないからね。あるいは、まだマスターやサーヴァントが揃っていない可能性もある」
「あ、そういうこともあるかも」
毎夜、彼女たちは一輌だけの地下鉄に乗って聖杯戦争の参加者を探している。
何をするにしても分からないことだらけだし、自分のようにキャンディー集めで脱落した魔法少女も来てるかも、とは合歓の弁だ。
もしも彼女たちまで巻き込まれているのだとしたら、一刻も早く見つけないといけないだろう。合歓はニートだが、薄情では決してないのだ。
「さーて、今日もお勤めご苦労様でしたー、と」
そう言うと、腕を大きく上に上げて、ぐーっと背伸び。そしてそのままベッドにダイブする。
少女趣味の豪奢なベッドはふかふかで気持ちいい。気を抜けばすぐにでも夢の世界に行けそうなくらいだ。
大きな枕を腕に抱いて、年甲斐もゴロゴロして暫し。合歓はふと、ライダーに問いかけた。
「……ねえ、ライダー」
「なんだい」
「私たち、どうなっちゃうのかな」
思いがけず、口に出たのはそんな言葉。
今までは誰に出会うこともなく、戦いに巻き込まれることもなかったために楽観的に行動できたが、これからもそうあれる保証はない。
いいや、むしろ凄惨な戦いに巻き込まれるのは必然だろう。果たしてその時、自分はどうなってしまうのかという。
これは、そんな不安の表れだった。
「怖いのかい?」
「怖いのもそうだけど……ええっと、先が見えないというか。そんな感じ。
今はなんとなく人探しみたいなことしてるけど、そこから先はどうすればいいんだろうなー、って」
なにせ自分には、戦闘とか、殺し合いとか、魔術とか、その類の知識も経験もない。一応魔法少女ではあるけど、それだけだ。
合歓は争いごとが嫌いだ。自分が動くこと、ましてや他人を蹴落とし、命を奪うなど考えることすらできない。
そんな性格を抜きにしても、合歓に叶えたい願いなんてない。自慢ではないが実家はお金持ちだし、家族だって優しい。趣味も私生活も充実している。
強いて言えば、また魔法少女としてみんなのところに戻りたいくらいだが……それとて、キャンディー集めですら放棄するくらいなのだから、聖杯戦争を通じて叶えたいなどと願うはずもない。
戦いなんて御免だけど、誰も傷つけず、自分も傷つけられずに逃れる方法などあるのだろうか。
他に頼れる人はいるのだろうか。
自分の知る魔法少女たちは巻き込まれていないだろうか。
そう考えると、胸の奥に重いものが圧し掛かるような感触があるのだ。
「心配ない。きみは僕が守る。きみが望むままに。
たとえ、きみが、魔女だとしても」
「魔女じゃなくて、魔法少女だよお」
「……きみは既に少女と呼べる年齢ではないはずだけど」
「それを言っちゃうかなー」
ぺしぺしと、枕でライダーを軽く叩いてみる。彼の無表情は変わらなかった。
「それと、きみが何をすべきかということだけど。僕はそれに答えることはできない。
僕は導く者だ。導くだけの者だ。なにぶん、脳がないからね。からっぽ頭という訳だ。僕が何に力を揮うかは、すべて、きみ次第。
だから」
「だから?」
「だから、きみはきみが思い描く果てを目指すといい。僕は、必ず、きみをそこへ導くと約束しよう」
冗談を言っているふうには見えなかった。彼は、嘘をつかない。
静かな声で、心なしか穏やかに。
彼はただ、約束だと言った。
「……うん。ありがとね、ライダー」
気付けば、自然とお礼を言っていた。
なんだかちょっと気恥ずかしくて、それ以上に暖かくなるのを感じた。
そして思い出す。
ねむりんとして活動していた頃の、魔法少女の皆を。
「……そう、だね。ライダーがそう言ってくれるなら。
私も『魔法少女』、してみよっかなあ」
だから。
三条合歓として、ねむりんとして。
この聖杯戦争に対する自分なりの答えという奴を、出してみたのだ。
「きみは既に魔法少女だったと記憶しているけど」
「うーん、そうじゃなくって、なんというかなぁ」
額面通りに合歓の言葉を受け止めたライダーに、どう言ったものかちょっと悩んでしまう。
ピン、と閃いたような表情になって、合歓は嬉しそうに、何かを決意するように、言った。
「つまりね、こういうことだよライダー」
それは、あの優しいスノーホワイトのように。
純粋で真っ直ぐな想いを貫く、あの魔法少女たちのように。
どこまでも突き抜けていく青空のような笑みを浮かべて、あまりにも綺麗な願いを秘めて。
魔法少女ねむりんは宣言した。
「困ってる人をね、お助けするの」
それは、見るも可憐な『少女』の姿をして。
けれど、万人が認め憧れる『魔法少女』の姿でもあった。
【クラス】
ライダー
【真名】
The A@紫影のソナーニル -what a beautiful memories-
【ステータス】
筋力C 耐久A 敏捷B 魔力A+ 幸運B 宝具A
【属性】
中立・中庸
【クラススキル】
対魔力:A+
彼自身の由来により、極めて高い神秘を内包する。
ランク以下の魔術を全てシャットアウト。
騎乗:C
大抵の乗り物なら人並み以上に乗りこなせる。
【保有スキル】
自動防御:A+++
影の操作による魔力障壁。いくら砕かれようと、いくら消し去られようと、影は風のように津波のように押し寄せライダーたちを守る楯となる。
無我:B
自我・精神といったものが希薄であるため、あらゆる精神干渉を高確率で無効化する。
彼が確たる感情を向けるのは女王たる夢渡りの少女のみ。故に彼女の存在しないこの場においてはランクが上昇している。
神性:EX
神霊適性を持つかどうか。
その由来により、規格外の神霊適性を有する。
戦闘続行:B
瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。
【宝具】
『澱み浮かぶは道化の剣、翳し揮うは少女の剣(クリッター)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:3
ライダーが使役する三体の鋼の影。ライダー自身でもあるため、この三体が全て消滅した場合はライダーも消滅する。
鋼の影はいずれも20フィート(7m弱)の大きさを持ち、体のどこかにゼンマイ捻子が突き刺さっている。この宝具は破壊された場合、少なくとも自力では修復することが不可能となっている。
この宝具が破壊されるたび、残骸から力を吸い上げ黄金の武器とすることもできるが……あくまで黄金(オルゴン)の権能ではなくライダーが辿ってきた逸話の再現に過ぎないため、原典のような規格外の力は有しない。
ランバージャック:勇壮なる鎧の騎士。たくましい黒騎士の姿。両手の先が大斧となっている。
アントライオン:獰猛なる鋼の猛獣。全体的に蜘蛛の姿。八本の長大な脚と、大きな牙を持つ。
スケアクロウ:冷徹なる鋼の使者。細長い人型で、ライダーに最も酷似した姿。巨大な鎌を持つ。
『一輌だけの地下鉄』
ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
ライダーの所有する地下鉄車両。時速100マイル(およそ160km)。
ライダーの指示によって動き、どのような場所でも、たとえレールがなくとも走ることができる。空も飛べる。
内装は少女趣味満載の「女の子の部屋」のようになっている。ベッドもある、家具もある、浴槽もある、食事も出せる。めっちゃ快適。たまに自分の意思で動いたりもする。
体当たりして攻撃することも可能だが、見た目相応の威力しかないのでサーヴァント相手には時間稼ぎにしかならない。
この宝具自体が低ランクとはいえ単独行動と気配遮断を有しているため、拠点としての利便性は高い。
『闇に吼えるもの(ハウラー・イン・ダークネス)』
ランク:EX 種別:■■ レンジ:0 最大捕捉:1
漆黒なる影の澱み。黒棘なる力の奔流。異形なる影の巨人。
ライダーの操る第四のクリッターであるが、他の三つとは違いライダー自身が影に覆われ形を変える。
黒の王と呼ばれる超越存在の力の一欠片であり、外宇宙の異界法則そのもの。かつて黄金を失い、闇に吼えた黒の王の暗黒形態。
ただしこの宝具は黒の王が貸し与えたレプリカの、更に劣化した模造品でしかないため、あくまで聖杯が再現できる範囲でしか力を揮うことができない。
この宝具は現マスターの潤沢な魔力を以てしても単独での発動が不可能なほどの膨大な魔力を必要とする。使用には令呪の補助が必須と言えるだろう。
【weapon】
黄金銃:
ライダーの影から取り出される黄金の拳銃。影の弾丸が光芒となって射出される。
この武装はマスターを含む他者に譲り渡すことが可能で、かつその人物は魔力さえあれば無制限に弾丸を射出可能。
この武装を自分のマスターに譲渡した場合、ライダーが脱落してしまったとしてもこの銃そのものが聖杯戦争への楔となり、マスター消滅を妨げる効果を持つ。
【人物背景】
アンダーグラウンド・ニューヨークにて、一輌だけの地下鉄の車掌を務める青年。
自分の素性を一切明かすことのない、謎に満ちた、表情のない男。からっぽ頭(エアヘッド)を自称する。神さまそっくりの顔なし車掌。
褐色の肌に白い髪、赫い瞳で無表情。機械的な雰囲気を持つが、全く感情がないというわけでもないらしい。
自らを人間ではないと嘯き、地下世界の傷と自称する何者か。
その正体は、とある人物が時計人間(チクタクマン)から奪い取った権能の一部と、自身の経験の影を混ぜ合わせて作り上げた存在。
黒の王や月の王の一欠片が混じっており、成長すれば新たな這い寄る混沌になる、とされている。
夢渡りの少女に仕える漆黒の騎士。むっつりカウントダウンレイパー。
【サーヴァントとしての願い】
仮初のマスターを、彼女が望む果てまで導く。
【マスター】
三条合歓(さんじょう・ねむ)/ねむりん@魔法少女育成計画
【マスターとしての願い】
魔法少女として困った人を助けていきたい。
【能力・技能】
魔法少女:
人間を遥かに超えた存在。
三条合歓は魔法の端末を使うことで魔法少女ねむりんに変身ができる。
変身中は身体能力が並みの人間には及ばぬほどになり、更に魔法を操れるようになる。
食事や排泄の必要はなくなり、絶世の美少女になり、汗とかもすげーいい匂いになる。
更に魔法少女というように魔力が常人よりも多い。
魔法:他人の夢の中に入ることができるよ
「夢の世界」内で自由に行動することができる。
「夢の世界」は、すべての人間が見ている夢に繋がっている。そのうち、ねむりんが現実世界で出会ったことのある者の夢には、自由に行き来ができる。
夢の中では絶対的な力を持ち、あらゆることを実行可能。また、夢の中で発生したことは、部分的に現実にフィードバックする。
が、本聖杯戦争においては舞台が電脳世界である関係上、その能力の行使に多大な制限が課せられている。
【人物背景】
働くことが苦手な怠け者。夢の中でばかり活動する24歳・ニート。
自分が活躍するよりも他の魔法少女の活躍を聞くことを楽しみとしている。
面倒ごとは嫌い、争いごとも嫌い。人の話を聞くのが心底楽しい。そんな子。
キャンディー集めにおいては「他の魔法少女が持つ真っ直ぐな憧れ・純粋な想いに、競争による傷や汚れをつけたくない(できるだけ先に延ばしたい)」という思いから自ら最初の脱落者になることを選んだ。
人間に戻った後は就職活動を頑張りたいと意気込んでいたが……
魔法少女育成計画本編で脱落した直後より参戦。
【方針】
魔法少女として頑張ってみる。
投下を終了します
投下します
「全くとんでもないモンに巻き込まれちまったな・・・」
ディーンは記憶を取り戻してから数えるのも馬鹿らしいくらい溜息をついた。
聖杯が実際にあるというのは聞いた事が無いし、ましてや殺し合いで聖杯が降臨するという
トンデモない方法で手に入るというのは噴飯物で、悪魔の儀式か何かと言われた方が納得がいくもの
だった。
しかし、記憶を取り戻してから送り込まれた聖杯戦争の知識など一笑に付す事はどうしてもできない
のだった。
自分が単に知らなかっただけかもしれない(天使が存在するとは思わなかった)し
全く違う次元に飛ばされた可能性もあった。
様々な可能性も考えたが、現在判明しているのはここが仮想空間であり、ここで死んでしまえば本当
に死んでしまう事がわかり
今は何もわからない事がわかりまた溜息をつく事になった。
それよりも今はこの状況を何とかする事だと頭を切り替える事にした。
「きやがったなッ・・・!」
相手は女のサーヴァントと男のマスターで、まだサーヴァントを召喚していないマスターを始末しよ
うと街を偵察していた所を、まだサーヴァントを召喚していないディーンを見つけ追ってきた。
運の悪い事にサーヴァントとマスター両方が吸血鬼であり、さらにマスターを
死体の血を塗ったナイフで切り付けても余り有効打になりえなかった。
「人間のクセに手間取らせやがって!もう逃げられんぞ!!」
「マスター早く殺して血を吸ってしまいましょう」
「ああ、そうだなバーサーカー」
「吸血鬼だから理性があってもバケモンだからバーサーカーか・・・!ハッ、人殺しのバケモンが聖杯欲
しがってんじゃねぇよ!!」
「いきがるのはそこまでだ人間、やれバーサーカー」
「了解マスター」
逃げられる隙は見当たらず、ディーンはひたすらこの状況を打開する方法を模索していた。
(だいたい俺のサーヴァントは何してるんだ!?早く来てくれ!!)
「え?」
「何ッ!?」
突然相手の方から驚愕する声が聞こえてきたと思ったらバーサーカーの体には剣が刺さっていた。
マスターはなんとか避ける事ができたようだがバーサーカーは霊核を貫かれ消滅は時間の問題だった
。
「バァァァサァァカァァァァ!!」
「こ、こんな所で・・・!」
何がなんだかわからないが、この隙をハンターであるディーンが逃す筈がない。
どの道あの主従は終わりだ、ならば今はここを全速力で脱出する!
動揺する敵マスターに悟られる事なくディーンは無事窮地を脱出する事ができた。
「なんとか助かったか・・・」
窮地を脱出したディーンは一息つき、そしてあの剣の事を考えた。
ディーンのハンターの知識から、あれは道教の銭剣、それが敵サーヴァントに刺さっていた。
という事は・・・
「もういるんだろう・・・、俺のサーヴァントさんよ」
するとどこからともかく道教の僧侶の服を着た初老の男が現れた。
一本眉毛で随分とイカツイ顔だなとディーンは失礼な事を思った。
「すまんな。西洋式は苦手で隙を突くのが一番確実だったんでな」
「そういう事なら仕方がないさ。それでアンタの真名とクラスは?」
「ラムだ。エクストラクラス、タオイストとして現界した」
「エクストラクラスか・・・俺の名はディーン・ウィンチェスターだ
アンタには悪いが俺はこんなふざけた殺し合いに乗る気は毛頭ない
代わりのマスターを探すからそれで勘弁してくれ」
「それを聞いて安心した。わしの方こそこんな物は御免被る
もしお前が殺し合いに乗るというのであれば叩っ斬り、座に帰る所だった」
「そいつは良かったぜ・・・俺は殺し合いには乗らないが生き残って脱出するつもりだ
そのためにアンタの力を貸してくれ
あと俺の事はディーンと呼んでくれ」
「いいだろう。脱出のために力を貸すとしよう
ではディーンもわしの事はタオイストと呼べ」
話がまとまり一息ついたディーンはふとある疑問を口にした。
「サーヴァントって相性が良い相手が選ばれるんだよな」
仲間にアジア人がいるが、このサーヴァントとどう相性が良いのかいまいちピンとこなかった。
ディーンの疑問にラムはなるほどと思い
「ディーンはキリスト教の信者か?」
「いや、むしろ一部の天使を除いてその類とは敵対関係さ」
ディーンは今までの事を思い出し、苦笑するしかなかった。
「なるほど。わしもキリスト教とは相性が悪くてな
それがディーンとわしが相性が良いという事なんだろう」
聖杯の適当さに二人は苦笑する他なかった。
【クラス】
タオイスト
【真名】
ラム@霊幻道士
【ステータス】
筋力C 耐久C 敏捷A+ 魔力A+ 幸運D 宝具C
【属性】
秩序・善
【クラススキル】
陣地作成:B
道士として、霊的に有利な結界を作り上げる
「工房」の形成が可能
道具作成:B
魔力を帯びた器具を作成できる
この道具作成スキルにより、死体をキョンシーにできる
キョンシーは盾にしたり、攻撃したりなどができる
普通の使い魔などより頑丈だが餅米や鶏の血などキョンシーの弱点を
突かれると脆いのが難点
道術:EX
道教の魔術。幽霊の正体を木の葉で目を拭いて見破ったり、姿を消しても
自動で追尾する剣など様々な事ができる。
ゆういつの弱点は西洋の吸血鬼には攻撃が効きづらい事であり
よく効くのはお札で火を出す術で吸血鬼を焼いてしまう事だろう
それでも厳しいのであれば底なし沼に吸血鬼を沈めてしまおう
対魔力:B
魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する
大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい
中国武術:A+++
中華の合理。宇宙と一体になる事を目的とした武術をどれほど極めたかの値
修得の難易度は最高レベルで、他のスキルと違い、Aでようやく“修得した”と言えるレベル
+++ともなれば達人の中の達人。暴走したキョンシー隊を素手でボコボコにした恐るべきもの
【宝具】
『妖怪退治のプロフェッショナル(霊幻道士)』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:-
妖怪退治のエキスパートとしての生涯が宝具となったもの
相手が妖怪や魔物などの場合、幸運以外のステータスを1アップさせる
【weapon】
銭剣、桃木剣やお札など道術一式。足りない物があれば道具作成スキルで作成可能
【人物背景】
妖怪退治のプロフェッショナル。キョンシーはもちろんの事、幽霊などとも戦った。
【サーヴァントとしての願い】
ディーンを聖杯戦争から脱出させる
【マスター】
ディーン・ウィンチェスター@スーパーナチュラル
【マスターとしての願い】
聖杯戦争からの脱出
【weapon】
死体の血が付いたナイフ
【能力・技能】
悪魔や悪霊、怪物、はては天使に至るまでありとあらゆる人外の者と戦ってきたハンターとしての力
大天使ミカエルの器として選ばれた事もあるため、魔力量も桁外れ
【人物背景】
スーパーナチュラルの主人公の一人で凄腕のハンター
【方針】
脱出狙い。降りかかる日の粉は払うが殺し合いには乗らない
まずは情報を集める
投下終了します
ペチカが居たので投下します
音楽は嫌いじゃない。
美しい音楽は大好きだ。
でも、世界は不快な音に満ちている。
不快なざわめきが聞こえる。
つんざくような爆裂音が聞こえる。
夜に似合わない、騒がしい音の波が押し寄せてくる。
それは、彼にとって到底我慢できるものではない。
「……バーサーカー」
和装の少女が隣に現れる。
凛々しく整った顔立ちに、均整の取れた肉体。誰が見てもひと目で『美少女だ』と呼ぶその少女。
ただ、目は光を湛えず、ただ虚空を眺めている。
心ここにあらず、という様子をそのまま表しているような姿で、ただ漫然と立ち尽くしている。
「あの雑音を消しに行こう」
青年が声をかけると、少女の眉がぴくりと持ち上がった。
がち、がち、がち。
油の切れたぜんまい仕掛けのおもちゃのように、ぎこちなく少女の首が傾く。
何もなかった少女の瞳に、暗い色の光が灯る。
そして、一言だけ、こちらと意思疎通をするように、零した。
「……音楽家が居るのか」
「分からない。だが、不快な音を掻き鳴らす奴らは居る」
バーサーカーは、何も答えない。
ただ、腰元に挿していた日本刀を抜いた。
風が騒ぐ。少女の袴の裾が揺れる。
奇妙な形のポニーテールが、髪に飾られた鮮やかな花が、美しく舞い踊る。
「また、お前が居るんだな。ここには、お前が」
月に彩られ、刀が怪しく煌めく。
少女は、闇夜に向かって飛び上がった。
それを見届け、青年も、夜空の下でスイッチを取り出す。
光が走り、星座が生まれた。
そうして今日もまた、一つ、静寂が増える―――
☆元山惣帥
ここがどこかは知らない。
だがここは理想郷だった。
粗野な人間は居ない。
都市部にはビル街のようなものも見られるが、自然と人工は完全に隔離されている。
元山のお気に入りの場所からの景色を遮るものは何もない。
ただ、澄み渡るような空の下、閑静な住宅街の向こう側に、輝く緑の山林が広がっている。
ここならば、静寂の中で絵を完成させることが出来る。
何も知らないNPC時代にも、その当たり前のことに大喜びしたのを覚えている。
邪魔するものの居ない理想の環境。
存分に、納得の行く作品を描くことが出来る。
他人にとってはなんともないが、元山にとってはなんともかえがたい幸せ。
元山は、そんな幸せを噛み締めながら、日々を過ごしていた。
もし、街が静寂の中にあり続けるなら、そのまま消えてしまってもいいとさえ思っていた。
世界が消えるその瞬間まで、静寂の中で、作品を描き続けることが出来る。
それは、ひょっとすると、神経質な元山の理想とする生き方だったかもしれない。
NPCの元山は幸せだった。
元山がNPCだったころ、この世界はまだ理想郷だった。
なのに。
ふ、と左手の甲を見る。
ペルセウス座を複雑にしたような痣が浮かんでいる。
理想郷は、脅かされてしまった。
静寂は切り裂かれ、また心を乱すものが現れてしまった。
それは、数日前の、昼の事だった。
◇
その日も、元山は屋上で絵を描いていた。
並んだ住宅街と、山と、空。静かな世界のありのままの姿を、キャンパスの中に再現しようとしていた。
ここの青は、もう少し濃いほうがいい。
こっちの緑は、光がある。黄色を足して、赤も混ぜようか。
そんな、幸せな思考を巡らせながら、世界と向き合っていた。
がぎぃん―――
嫌な音が耳につく。
その音が、幸せだった心の記憶に亀裂を生む。
がぎぃん、がぎん、がぎん―――
この音はなんだ。
不愉快な音だ。
この静かな街に似合わない。
いらいらする。
頭痛がする。
耳をふさいでも、音は指をすり抜けて頭まで飛び込んでくる。
ざ、しゅっ、がぎん、しゅ、ざしゅっ―――
不快だ。
気分が悪い。
この音を止めたい。
止めなければならない。
描きかけの絵をそのままに、毛先を黄緑に染めた筆を持ったまま走る。音の元へとただただ走る。
駆け下り、走り、見つけた。
音の発生源に居たのは、三人の男。
槍を抱えた男と、スーツを着た男。そして、地面にへたり込んでいる男。
「なんだあ、てめえはあよう」
槍の男が、穂先を元山の方にずらす。
『あれ』だ。
あの槍が、この嫌な音を出していた。
あいつはこれからもあの槍でで不快な音を出し続ける。
そう思うと、元山は、我慢できずに叫び声を上げた。
「うるさい、うるさい! 集中できないんだよ!! 耐えられないんだ、君たちがいると!!!」
怒りに震える肩、わななく膝。
衝動に任せて右手を突き出す。
手に握りしめていたのは筆はなく、黒いスイッチ。
いつの間にかポケットから取り出していたそれをちらと横目で確認し、瞬間、全てを思い出した。
このスイッチは邪魔者を排除するための力だ。
元山は、以前からその力を使って邪魔者を排除してきた。
スイッチを押す。
宇宙の神秘が降り注ぎ、ただの青年を超進化へと導く。
『我が心を乱す者め、その罪、裁かせてもらうぞ!』
そこにもう青年は居ない。
鋼のような肉体。
異形の顔貌。
身体に光るのは、最輝星を失った青白い星座。
その星座が象るのは、メドゥーサ殺しの理由ペルセウス。
右手に持つのは勇者の剣『巨剣オラクル』。
左手に装着しているのはメドゥーサの首を模した篭手。
その姿の名を、元山は知っていた。
ペルセウス座の怪人。ペルセウス・ゾディアーツ。
元山のもう一つの姿。静寂を生むための力。
心優しきNPCが、我儘な勇者に変貌した瞬間だった。
叫び声を上げながら、槍の男へと駆け寄る。槍の男は動かず、ただじっと元山の方を見つめている。
気に食わない。スカシている。
こんなに元山を邪魔しているのに、その余裕はなんだ。
オラクルを振るうと、槍の男―――ランサーはそれをいともたやすく弾き、ペルセウス・ゾディアーツと化した元山に向けて突き出した。
ペルセウスの左肩を一突き。血の代わりに火花が散る。激痛が走る。
だが、戦う意志は折れない。むしろ増した。
こいつは、これからもこうやってこの街を騒がしくし続けるんだ。ここで止めなければ、いつまでも、いつまでも。
左肩に宿った熱が、左手の、メドゥーサの顔を象った篭手を焼く。
だが、傷はない。むしろ、身体の奥から新たな力が湧いてくるような気さえ覚えた。
力とともに、知識があふれだす。
ランサー、槍兵としての逸話を持つサーヴァント。
サーヴァントは、この街で行われるこの『静寂を乱す争い』、聖杯戦争の参加者に与えられる力。
気に食わない。
気に食わない。
気に食わない。
この音を止める、その力を望む。左手が激しく輝き出す。
ペルセウス・ゾディアーツはその左手を突き出し、槍兵の出す音をかき消すために叫んだ。
『この音を止めろ!!』
声に応えるように、槍兵の頭が飛ぶ。
槍兵の目は、何が起こったのかわからないという風に見開かれていた。
再び一閃が走り、頭と、槍と、身体が両断される。槍兵はすぐに粒子になって消滅した。
「……違う、音楽家は……もっと、周りの音を聞き……攻撃を……」
三人の男ともペルセウスとも違う新しい声に振り返る。
背後に居たはずのへたり込んでいた男は見えない。間に一人。侍のような少女が立っている。
少女と目が合う。
涼やかな顔、研ぎ澄まされた刃のような気配。身体に重なって見えるのは『バーサーカー』というクラス名。
その少女を表すうまい言葉は思い浮かばなかったが、元山の基準で言うなら、彼女は、とても『静か』だった。
「……」
少女が剣を鞘に納め、虚空へと身を溶かす。使命は終わった、と言うように。
そこでようやく分かった。彼女こそが、元山のサーヴァントなのだろう。
少女が消え、ペルセウスと男を遮るものがなくなった。
へたり込んでいた男は、愕然とした顔でこちらを見つめている。
もう音は止んだ。だが、ペルセウス・ゾディアーツの目標はまだ遂行されていない。
男に歩み寄り、おどろおどろしい様相を貼り付けた左手を突き出す。
『これ以上、騒がれても困る。君たちはここで、静寂のまま、この舞台から消え去れ』
左手で男の頭を掴み持ち上げる。
腰くだけていた男は途端にあわあわと、赤子のように身を捩るが、怪人の膂力からは逃れられない。
そして、瞬く間に石像に変わった。
メドゥーサの左手の力。触れたものと、メドゥーサの貌が見たものを石に変える力。この世界でも、問題なく発揮できるようだ。
石化した男を放り投げ、振り返る。
槍兵のマスターだった男は、ひ、ひ、ひ、と引きつるような声を二三度上げた後、最後に大きく叫んだ。
叫び声が消えるのに、十秒とかからなかった。
◇
あれから、元山はまだこの煩い戦争の中に居た。
自分が呼びだされた理由はわからない。
そうまでして叶えたい願いもなかった。
強いてあげるなら、『静かな環境で、納得の行く作品を描きあげたい』だけだった。
それができるなら、NPCで良かった。
それが一番幸せだった。
だが、この世界は、そんなちっぽけな願いすら聞き届けてくれない。
殺し合いが耳障りな音を生み出す。
それが、元山には我慢できない。
だから、止める。
殺し合いを、ではない。
聖杯戦争を、でもない。
『参加者たち』を止める。
元山の静寂を、元山の理想を邪魔するものは許さない。
この街から不快な音を消す。
静寂を取り戻す。
煩い参加者たちは全て石像に変えるか、バーサーカーで切り飛ばすかして消滅させる。
静寂が取り戻されたならば……
以降は、NPCの頃のとおりだ。
ただ、この世界が消える瞬間まで、納得の行く作品を描き続ける。
別に誰が優勝しようと構わない。
静かに、静かに、元山の芸術活動を邪魔しないよう戦争をしてくれるなら、元山も彼らの邪魔なんかしない。
元山はただ、この絵を描き続け。
描き終えたら、その絵を誰かに託し。
バーサーカーを座に返し、静かに、この世界を去る。
元の世界に未練がないわけではないが、この素晴らしい世界を静寂の中で描いて消えるならそれでもいい。
「バーサーカー」
声に答えてバーサーカーが姿を現す。
やはり彼女は、静かだ。人間らしさを感じさせないほどに。
「君がサーヴァントで、良かったよ」
この感謝も、バーサーカーは理解していないだろう。
彼女と交わせた僅かな言葉で分かったことは、彼女が『とある音楽家(誰かは知らない)』を心から憎んでいることだけ。
元山は、少しだけ考え、聞く耳を持たないバーサーカーに、こう告げた。
「この世界は、君の憎むような音楽家の居ない、静かな世界だといいね」
バーサーカーは、元山の言葉を聞き届けると、何も返さずに霊体化した。
元山は、返事がないことも特に気にせず、再び仮初の静寂に包まれた世界をひたすらキャンパスに描き続けた。
【クラス】
バーサーカー
【真名】
アカネ@魔法少女育成計画restart
【パラメーター】
筋力:A 耐久:C 敏捷:C 魔力:B 幸運:D 宝具:D
【属性】
中立・狂
【クラススキル】
狂化:B
精神汚染からくる狂化。理性の大半を失っている。
筋力を二段階、他のパラメータを一段階ずつ上げるかわりに正常な思考とほとんどの意思疎通が不可能になる。
彼女と交わせる情報は『音楽家』に関するいくつかのことだけ。
【保有スキル】
魔法少女:C
魔法少女である。ランクが高いほど高水準の魔法少女となる。
魔法少女は人間離れした戦闘能力と視覚聴覚を得、排泄や食事などの新陳代謝行為を一切行わなくて良くなる。
また、疲労の蓄積する速度が人間よりも遥かに遅く、長期の不眠不休にも耐えられるスタミナと常人離れしたメンタルを持つ。
更に、固有の魔法を1つ使える。
バーサーカーは魔法少女状態でしか聖杯に記録されていないため、このスキルの発動は阻害できない。
殺しの間合い:D
殺し合いによって培った剣士の洞察力と、殺し合いを生き抜いた野生の嗅覚。
彼女が『狂化』へ至る過程で手に入れた生きるため/殺すための力。
敵の行動・能力に順次対応してその敵を殺すための行動へと移れる、ほぼ反射レベルの殺傷衝動。
このスキルのおかげで彼女はバーサーカーではあるが、少しだけ技術のようなものも用いることが可能。
精神汚染(音):B
森の音楽家によって刻まれた、消えることのない心の傷。
精神が錯乱している為、他の精神干渉系魔術を高確率でシャットアウトする。
さらに、『音楽』に対する強い執着と破壊・殺戮衝動を持つ。
バーサーカーのクラスで呼ばれたため、音楽に対する破壊衝動と敵への躊躇のなさが強くなっている。
家族思い:―
失ってしまったスキル。
奪われてしまった生き方。
少女の精神汚染の根底にあるもの。
彼女は、家族のことが大好きなただの少女だった。
【宝具】
『見えているものならなんでも斬れるよ』
ランク:D 種別:対人 レンジ:視界内 最大捕捉:30
視界内にあるものに対し、距離を無視して斬りつけることが出来る。
発動には彼女が手に持っている魔法の日本刀・魔法の脇差しのどちらかを振り上げ、振り下ろすというプロセスが必要。
相手の姿が見えているなら、防御魔法も、結界も、無敵のスーツも、全てすり抜けてありのままの相手を斬りつけることが出来る。
視界内にあるならば、たとえ数キロ先からでも斬ることが出来る。原作では2km先の骸骨のモンスターを肉眼で捉え、斬りつけた。
ただし、斬る瞬間に『視界に収めている』必要があるので、逃げられたり隠れられたり煙幕を張られたりするとこの宝具は発動できない。
【weapon】
・魔法の日本刀、魔法の脇差し
魔法の装備。決して折れることはなく、切れ味も抜群。
【人物背景】
「終わったのではなかったのか、音楽家」
なんてことはないただの魔法少女であり、二人の姉、一人の妹、そして実の母と殺し合いをさせられて精神が崩壊してしまった少女。
彼女の行動原理は一つ。
『音楽家への強い敵意』。
【捕捉】
とある『電脳世界を操る魔法少女』が、身勝手な正義の為に、多くの魔法少女のデータを『彼女の世界』である電脳世界に刻んだ。
彼女の刻んだ魔法少女のデータは、同じ電脳世界に生まれようとしていた聖杯に少しだけ干渉し、聖杯自体も聖杯の製作者も認識できない程度の影響を与えた。
正統な英霊として呼べないはずの市井の魔法少女たち。彼女たちが、あたかも英霊であるかのように電脳の聖杯に末端に記録されてしまうという影響を。
彼女―――バーサーカーは、そんな電脳世界に刻まれた魔法少女の一人である。
バーサーカーは正統な英霊のような伝説も格も持ちあわせてないが、この世界が『電脳世界の地続きにあるもの』であったため、偶然呼び出せてしまった。
【マスター】
元山惣帥@仮面ライダーフォーゼ
【マスターとしての願い】
静寂の中で絵を描き上げたい。
【能力・技能】
・ペルセウス座の怪人(ペルセウス・ゾディアーツ)
スイッチを使うことで変身できる怪人体。
怪人というだけあって強く、コンクリートを発泡スチロールのように砕くことが出来る。耐久力も向上。
右手には巨剣オラクルを、左手にはメドゥーサの首を模した篭手をつけている。
これは怪人としての装備であるため、スイッチを切れば消滅する。篭手は肉体と融合しているので奪うことは不可能。
左手で触れたものを石に変えることが出来る。石化したものは彼を撃破(スイッチを破壊)するまで解除されない。元山からの任意解除も不可能。
マスターを完全に石化させたならば仮死状態扱いとなり、そのマスターからの魔力の供給はほぼ途絶える。
類まれなるラスト・ワンの先に向かうことが出来る怪人。後の展開を考えれば、彼は覚醒しても黄道十二星座にはなれなかったのだろう。
宇宙の超神秘を身にまとっているので鯖とも斬りあえる。が、勝てるわけではない。
なお、芸術に対して心を乱すようなことがあれば、相手への石化を完璧なものにすることはできない。
この装備の持つ神秘、そして天ノ川学園高等学校という神秘の収束地に作られた学校で生活していたことが関係し、一般人よりも豊富な魔力を有している。
・芸術家
芸術に関する知識。美しい物を好む。
本人も絵画を嗜み、一般人よりも高い画力を持っている。
ただ、芸術好きも行き過ぎた部分があり、芸術を邪魔するものを極端に嫌う。
それは他人のたてる騒音であったり、視界に入るビルだったりと様々。
それは彼にとって、『巨大なビルを破壊してでも』『相手を石化してでも』正すべき問題である。
【人物背景】
ただの高校生。
仮面ライダーフォーゼ15話・16話の怪人枠。
全てが理想通りに進まないと気がすまないというのは、リブラ・ゾディアーツの評。
子供達に自身が納得の行く素敵な絵をプレゼントしたかっただけの心優しい青年。
【方針】
特に願いはない。
ただ、静かな世界で絵を描いていたい。
聖杯が欲しい訳でも、帰りたいわけでもない。
ただ、『聖杯戦争』なんていうくだらない騒ぎで創作活動を邪魔されたくない。
そのため、積極的に動きまわる主従は潰していく。
仮に優勝したとして、聖杯に願いを届けるかどうかは不明。
芸術に理解があり、彼の芸術活動を邪魔しない人物とならば手を組むことも可能。
優勝への強い願いもないので、もし協力者と最後の二人になったならば、思う存分絵を描き、満足の行く絵を描き終えた後で協力者に聖杯を譲るだろう。
幸い、この聖杯戦争にはタイムリミットがないので、邪魔されないなければ気が済むまで芸術活動に専念できる。
時間制限があるとすれば、行動方針も変わるか。
アカネは珍しい遠距離に対応したバーサーカーである。
また、魔法少女であるため自前の魔力にもやや余裕がある。
近接戦・中距離戦・遠距離戦ともに魔法少女の超反応と宝具であり魔法である『見えているものを斬れる魔法』で対応が可能。
もし相手の姿を知っているなら、遠距離からの一方的な斬撃で全ての決着が付く。
ただ、元山は戦争自体に乗り気ではないし、アカネに自動で探すような気遣いもない。
弱点は搦手や物量戦。視界が晴れていない環境でも不利になる。
自分の得意分野で戦えるよう相手を誘き出すか、用意ができる前に相手を捕らえるかが勝利への鍵と言える。
投下終了です
すいません、のっこちゃん&ライダーを書いた者です
ライダーのスキルに以下のものを追加させてください
凶魔創造:B
生前、自身の配下だった凶魔を魔力を消費して生み出す。
生前から持っていた能力ではなく、多数の凶魔を従えていた逸話から得たスキル。
そのためなんの活躍もなかった凶魔は生み出せない(ようするに本編で出てこなかった凶魔は出せない)。
また、一度倒された凶魔をもう一度産み出すことはできない。
一度は投下したものの変更もうしわけありません
投下します
”メアリーがいない、メアリーがいない”
ガタガタガタガタ、彫刻が震える。ポタポタポタポタ、インクが落ちる。
”かのじょはどこへいったの? みんな、さみしがってるよ。”
赤い服のマネキンが動き出して、そこかしこに青い人形が散らばる。
”おこってないよ、もどってきてよ。”
真っ暗闇に、鐘の音が響いて。美術館に、安らぎは戻らない。
”みんなのいばしょに”
”かえろう、メアリー”
※ ※ ※
外の世界は、色鮮やかで、知る機会さえなかった輝きに満ち溢れていた。
通りはガラス張りの箱物が太陽の光を浴びて、谷間をカッコいい車たちが走り回る。
歓楽街の人々の喧騒はそこらじゅうから静粛を奪い取って、雑踏は目が回ってしまうほど。
店のガラスケースにはいかにも自分は美味しいと主張するスイーツが並んでいた。
そんな世界で、けれども、一際大きく心を震わせたのは、ただ昼と夜が移り変わっていくことだ。
東から昇る太陽が、街中を覆っていた闇を薄らがせてゆき、やがて天頂にいたると、自分たちを見守ってくれるようで、
西に沈むにつれて、一日を生きた生物たちを労わるように夕闇が覆っていく。単なる太陽の運行に、彼女は、メアリーはひどく感銘を受けた。
……皮肉なことである。彼女は自分の異物感を自覚していったのは、太陽が昇るごとのことであったのだから――
どこにいってもいっしょのことだ。
おまえのこころはつくりもの。
いばしょはきえてひとりぼっち。
くらやみのそこへ。
バイバイ メアリー。
※ ※ ※
……メアリーの正体は絵画である。彼女が人間として生きていくには、美術館、ゲルテナの世界で他の人間を犠牲にしなければならない。
それが美術館のルール。蔵書からの忠告。しかし、故意ではないにしろ彼女は、この電脳世界に来てしまった。美術館のルールを破ってしまった。
……電脳世界に来て数週間、対価が支払われなかったことによる影響を、彼女は存分に味わった。
NPCとしての彼女に割り振られた役割、それはある画家によって描かれた絵画であることであった。
絵画の役目、それは誰かによって鑑賞されるか、資産として売買されること。
彼女、メアリーという作品はある売り出し中の高級住宅のインテリアとして扱われた。
観覧客が来ている間は、絵の中から動かないようにじっと動かず、眺める視線から耐える。
隙を見計らって外に出たとしても、お菓子を買うどころでも、友達を作るどころでもない。金銭も、自分の存在を証明するものもないのだ。
彼女にできたことは、いつ人が来て額縁だけの絵画を目撃されるかに怯えながら、近くのケーキ店の店頭を物欲しそうに眺めるだけだった。
「よもや、絵画ごときが、この聖帝サウザーを呼び出すとはな……」
サーヴァントが呼び出されたとき、メアリーの外に出たいという願いはとっくに色あせてしまていた。
涙も出ず、寂しさに打ち震え続けた彼女が願うこと、それは――。
「…………フン」
彼女は、怯えながらの外出において、夕暮れ道、父親と一緒に帰る娘を見た。
頼れる腕によって持ち上げられて鈴のなるような声で喜ぶ娘、それは、メアリーには、とても眩く映った。
彼女の根底、自分の父親、……メアリーは己の現在、一人孤独である状態も相まって、自分の生みの親――父親について強く求めていた。
彼女の願いは、自らがお師さんと慕ったオウガイとの再会を求める、ランサー、サウザーにとって、少なくとも下らないと切り捨てられはしなかった。
死の直前、南斗六星の帝王として、南斗聖拳の伝承者として、捨て去ったものをケンシロウに再び悟らされていたサウザーには、既に不可能なことであったのだ。
ランサーは、とりあえずは、マスターを害するという考えを捨てることにした。
「……止まり木代わりには、認めてやる」
【クラス】
ランサー
【真名】
サウザー@北斗の拳
【パラメーター】
筋力:B 耐久:C 敏捷:A 魔力:E 幸運:E 宝具:A
【属性】
中立・善
【クラススキル】
対魔力:D
一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。
魔力避けのアミュレット程度の対魔力。
【保有スキル】
戦闘続行:B
瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。
南斗鳳凰拳:A+++
南斗聖拳最強の拳。
修得の難易度は最高レベルで、他のスキルと違い、Aでようやく“修得した”と言えるレベル。
+++は将星の宿星、一子相伝の正当伝承者としての証。
防御の型である構えが例外を除いて存在せず、圧倒的攻勢による制圧前進を基本とする。
速度と火力を併せ持っており、手刀や足技、闘気を飛ばすことによる斬撃を主体としている。
【宝具】
鳳凰呼闘塊天
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:1
南斗鳳凰拳の奥義の一つ。身体に闘気を纏うことによって、自らの筋力、敏捷、闘気による攻撃を強化する。
天翔十字鳳
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:1
対等と認める敵に帝王の誇りを持って相対する、鳳凰拳唯一の構えを持つ秘奥義。
自らの体に鳳凰型の闘気を纏わすことによって、天空を舞う羽のように、相手の物理攻撃を無効化する。
ただ、実体を持たない攻撃や、魔力による攻撃。躱すことのできないほど高密度な攻撃は無効化できない。
落鳳破
ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:2~50 最大補足:100
前方に向かって鳳凰型の闘気を放ち、敵を攻撃する。鳳凰は地に沿ったのち、天に舞い上がる。
【weapon】
・無銘の槍。
【人物背景】
南斗鳳凰拳の伝承者、元は師オウガイのもとひたむきに修行を積んでいたが、伝承の試練によって父とも慕うオウガイを手にかけたことで一変。
一切の愛を否定するようになり、世紀末の世界においては非情にも子供を酷使、オウガイの墓である聖帝十字陵を建造しようとした。
最期はケンシロウに敗れ、オウガイからの愛を思い出しながら崩壊する十字陵と運命を共にした。
【サーヴァントとしての願い】
お師さん(オウガイ)との再会。
【マスター】
メアリー@ib
【マスターとしての願い】
”お父さん”と美術館の世界に帰る。
【weapon】
・パレットナイフ
【能力・技能】
『メアリー』
メアリーはワイズ・ゲルテナによる絵画が、ゲルテナの世界において動き出したもの。
よって、大本の彼女がいた絵画が破壊されたとき、彼女も消滅する。
また、絵画が動いているという神秘のため、魔力は常人より高い。
【人物背景】
薄暗い美術館の世界において動き出した絵画『メアリー』
外の世界に対して猛烈な憧れを抱き、何としてでも外に出ようとしていた。
性格は明るく幼げであるが、それゆえの残酷な面も見える。
【方針】
聖杯を狙う。ここに居続けるのは嫌。
投下終了です。
皆様、投下乙です
自分も投下させていただきます
この街はここ最近、急激に治安が悪化していた。
失踪、殺人、原因不明の爆発事故。
そんな事件が、立て続けに発生している。
警察はこの事態を重く受け止め、別件で街を訪れていた世界一の名探偵に調査を依頼した。
それが、「L」に与えられたバックストーリーだった。
◇ ◇ ◇
「では、明日もよろしくお願いします」
「ええ、また明日」
律儀に送ってくれた刑事と別れの挨拶を交わし、Lはあてがわれたホテルの一室へと戻った。
「お疲れ様、マスター」
部屋に入るなり、実体化したサーヴァントが声をかけてくる。
Lにあてがわれたのは、キャスターのサーヴァント。
ボーダーの服を着た、英霊らしからぬ容貌の青年だ。
しかし彼が常人には持ち得ない能力を持っていることを、Lはすでに知っている。
生前の彼はその能力を使い、Lと同じく探偵として活動していたらしい。
本人いわく、正確には「探偵の相棒」らしいが。
「真実を知っているのにごまかさなくてはいけないとは、肩がこるものですね」
ソファーに寝転びながら、Lは呟く。
自らが参加者であるLは、一連の事件が聖杯戦争のせいで引き起こされたものであることを知っている。
だがそれを、警察に伝えることはしていなかった。
「仕方ないさ。真実を教えたところで、警察には何もできない。
かえって混乱を招く危険性もある」
「しょせん彼らは、聖杯戦争の添え物にすぎないというわけですか……」
Lは、大仰に溜息をついてみせる。
「やはり気に入りませんね、この聖杯戦争を開いた人間は。
多数の人間を拉致し、なんでも願いを叶えるという聖杯を餌に殺し合いをさせる。
さらにはそのためだけに、大量の人ならざる人を作り上げるとは……」
「だから正体を暴き、犯した罪の責任を取らせる……かい?」
「ええ、ここは異世界らしいですから、私の世界の法は通用しません。
ですがこのような行い、道徳に照らし合わせればどう考えても悪です。
ですから私刑になってしまいますが、犯人……ええ、あえて犯人と呼びましょう。
この事態を巻き起こした犯人には、何らかの形で罪を償ってもらいます」
「だが僕たちは、君の言う犯人の掌の上にいるわけだ。本当にそんなことができるのかな?」
興味津々といった面持ちで、キャスターは尋ねる。
それに対し、Lは微笑を浮かべながら返す。
「もちろんです。私、世界一の探偵ですから」
「面白い!」
身振りを交えながら、キャスターは叫ぶ。
「君は実に興味深い人間だよ、L。冷静だが冷酷ではない。
むしろ正義感が強い人間だ。だが決してまっすぐではなく、歪みもある。
君と組めば、お互い新たなものを得られるだろう。
君がマスターになったのは、僕にとって当たりだったようだ」
「それはどうも」
徐々にテンションを上げていくキャスターに対し、Lはあくまで淡々と応える。
「たしかに、あなたの情報処理能力は捜査の大きな助けになるでしょうね。
反面、戦力としては半人前のようですが……」
「人聞きの悪い言い方をしないでもらおうか。
たしかに僕はパートナーがいなければ本来の戦闘力を発揮できないが、それでも並のキャスターよりは戦えるんだよ」
「そもそも、キャスターって魔術師のクラスなんでしょう? それが肉弾戦ってどうなんです?
ガバガバですね、聖杯戦争」
「今のところ君の一番気に入らないところは、その減らず口の多さだね……」
「そういう性分ですので。ああ、そうそう。今から1時間ほど仮眠を取りますので、起きる時間に合わせてコーヒー淹れておいてください」
「いや、そういうことするためのサーヴァントじゃないんだけど」
「文句ならワタリを私のそばに配置しなかった、この世界に言ってください」
抗議の声を受け流し、Lは寝室へ消えていく。
残されたキャスターは、ただ溜息をつく他なかった。
【クラス】キャスター
【真名】フィリップ
【出典】仮面ライダーW
【属性】中立・善
【パラメーター】筋力:E 耐久:E 敏捷:E 魔力:A 幸運:C 宝具:B
(変身時)筋力:C 耐久:C 敏捷:B+ 魔力:A 幸運:C 宝具:B
【クラススキル】
陣地作成:EX
自らに有利な陣地を作成可能。
彼にとっての陣地とは、精神世界内の「地球(ほし)の本棚」である。
陣地を拡張することにより、キャスターは自分の世界だけでなく今いる世界や出会った人物の出身世界の情報を得ることができる。
「規格外」ではなく、「特殊」という意味でのEXランク。
道具作成:B
魔力を帯びた器具を作成可能。
ガイアメモリや変身ベルトは、より短時間で作成できる。
【保有スキル】
蔵知の司書:B
「地球(ほし)の本棚」による膨大な知識を活用した情報処理能力。
例え明確に認識していなかった場合でも、LUC判定に成功すれば過去に知覚した情報・知識を記憶に再現できる。
仕切り直し:C
戦闘から離脱する能力。また、不利になった戦闘を初期状態へと戻す。
【宝具】
『疾風の記憶(サイクロンメモリ)』
ランク:B 種別:対人宝具(自身) レンジ:― 最大捕捉:1人(自身)
地球より汲み上げた「疾風」の記憶を封じたメモリ。
ロストドライバーにセットすることにより、仮面ライダーサイクロンへ変身することができる。
【weapon】
○ロストドライバー
ガイアメモリを使用する変身ベルトの初期型。
ガイアメモリを差し込んで展開することにより、仮面ライダーに変身できる。
【人物背景】
秘密組織「ミュージアム」の工場で、ガイアメモリの製造を行っていた青年。
鳴海荘吉により救出され、彼の弟子であった左翔太郎とコンビを組む。
翔太郎と共に「二人で一人の仮面ライダー」として、風都の平和を守るために戦った。
過去の記憶を失っており、「フィリップ」はフィリップ・マーロウにちなんで荘吉がつけた呼び名。
その正体はミュージアム総帥・園咲琉兵衛の息子である来人。
幼少の頃に地球の記憶の奔流である「ガイアストリーム」に落下し、肉体的には死亡。
それ以降の彼は地球のエネルギーを依り代に実体化しているデータ人間である。
その出自ゆえ地球上のあらゆる情報が収められた「地球(ほし)の本棚」へ精神を入り込ませることができ、
検索によって自分の知りたい情報を見つけ出す能力を持つ。
【サーヴァントとしての願い】
Lを補佐する。
【マスター】L(エル・ローライト)
【出典】デスノート(TVドラマ版)
【マスターとしての願い】
聖杯戦争を開催した者を見つけ出し、糾弾する。
【weapon】
特になし
【能力・技能】
○推理力
世界一の名探偵である。
【人物背景】
数々の難事件を解決してきた、世界一の名探偵。
キラ事件解決のため、日本警察の要請で来日。
その超人的な頭脳で、キラ=月を追い詰めた。
口調は丁寧だが挑発的な言動が多く、コミュニケーション能力は低め。
【方針】
他の参加者との戦闘は自衛だけにとどめ、情報収集を最優先とする。
以上で投下終了です
皆様投下乙です。
>千葉龍之介&アーチャー
超生物を殺す覚悟はあっても、人間も同じではない。
聖杯戦争への忌避感を示す描写がいいですね。
不器用同士引かれ合ったコンビ、相性も良好そうです。
>のっこちゃん&ライダー
アアアアッのっこちゃん好き……
すごく健気な願いで戦いに乗る姿がいじらしくも見事なものでした。
しかし鯖が不穏なので、行き先は曇り空ですね。
>ねむりん&ライダー
カウントダウンのAさんとねむりんとは意外な組み合わせ!
二人の独特な会話のペースが読んでいて心地よかったです。
もっと先が見たい、率直にそんな感想をいだきました。
>ディーン・ウィンチェスター&タオイスト
タオイストというエクストラクラスがまず新鮮でした。
対オカルトという観点で共通点がある主従の会話がいいですね。
その知識と経験が聖杯戦争で活きるかどうかが気になります
>元山惣帥&バーサーカー
静寂を求める鱒と音楽家を忌む魔法少女の組み合わせですね。
文字通り静かな調子の会話の一つ一つがとても雰囲気を出していて読んでいて心地よかったです。
ただアカネの魔法は相当強力ですし、猛威を奮いそうだなあ
>メアリー&ランサー
まさかのサウザー。
メアリーはルートによっては相当悲惨な子なので、個人的には幸せになって欲しい所。
ただ聖杯戦争となると、そう上手くはいかなそうですね。
>L&キャスター
ドラマ版Lとフィリップですね。
知略と頭脳なら誰にも負けないと言っても過言ではなさそうです。
>聖杯戦争を開催した者を見つけ出し、糾弾する。
この行動指針がとてもドラマLらしい
投下します
住宅街の片隅に、幸せな少女が住んでいた。
暮らしは同級生の中でも一番豊かで、しかし少女自身の性格が悪いだとか、そういったありがちないわくも存在しない。
むしろ現実はその逆だった。
彼女は惜しげもなく自分の家へ友達を呼び、分け隔てなく笑顔で接し、誰からも好かれていた。
自分の裕福さにおごらず、舎弟を侍らせたりもせず、家族思いで優しいお嬢様。
少し純粋すぎるケはあったが、それも九歳という年齢に見合ったもので実に愛らしい。
彼女の家には、三人の家族が住んでいた。
それが奇妙な家族構成で、未だに裏では様々な噂がまことしやかに囁かれている。
もちろんほとんどが嘘っぱちなのだが、下衆の勘繰りをされても仕方ないほど、その構成は奇妙極まるものだった。
少女の母親と、居候の男が二人。父親はいない。
片方は頭がよく機械に強いエンジニアで、もう片方は正反対、力が強くて肉体労働をお手の物とする。
奥さんのお金目当てなのよ、だとか。
一つ屋根の下なら美味しい思いが出来るかもしれないと期待している、だとか。
心ない噂には兎角事欠かなかったが、少女は気にも留めていなかった。少女の家族もそうだった。
何故なら、この四人家族は奇妙でありながら、自分達がとても幸せであると日々実感していたからだ。
お金がある。でもそれ以上に笑顔がある。
それで十分だった。他に望むものなんて何もありはしなかった。
幸せで、豊かで、満たされていた。
そんなある日のこと、少女の母親が病に倒れた。
すぐに彼女は病院へ搬送され、検査入院で病状が事細かに明らかにされた。
適切な処置を怠れば死に至る可能性の極めて高い、重く難しい病。
そう聞いて、少女は泣いた。居候二人共々、抱き合って喪失の恐怖に泣いた。
けれど、現実は創作よりも遥かに彼女達へ優しかった。
医師の献身的な姿勢と最先端の投薬医療で病状はみるみる快方へ向かい、一ヶ月ほどが経過した頃、無事退院と相成った。
大の男二人が身を寄せ合って泣いた。泣き喚いた、と言い換えてもいいほどの有様だった。
当の彼女は困ったように微笑んだ。少しばかり窶れていたのは否めないが、それでも笑っていた。
家族の幸せは守られた。きっとこれからも、末永く彼女達はこの幸せを満喫しながら暮らしていくのだろう。
その次の日のことだった。
早朝、鶏が甲高く鳴いた頃――寝床に少女の姿はなかった。
家出。それは年頃の子どもにはごくありふれた行動であったが、しかしよりによってこのタイミングで、心優しい彼女と結び付けられる行動では断じてない。
即日捜索願が出され、彼女を知る誰もが心配に心を曇らせた。
必ず彼女を幸せな日々へ連れ戻してあげよう。
その思いのもとに、皆が力を合わせていた。
外国からある日突然やって来て、皆の太陽のように輝いていた女の子のために。
――少女の世界で、少女だけが泣いていた。
無人の海岸で体育座りをしながら、見上げる星空は曇っている。
あの家から見た星はもっと眩しくて、宝石の絨毯みたいに美しかったのに。
ここにはその輝きがない。より大きな輝きにかき消され、見えなくなってしまっているのだ。
この暮らしはとても楽しい。温かくて優しくて、足りないものなんて何もない。
友達は沢山いて、家に帰れば優しい家族が待っていてくれる。
おいしいご飯を食べてお風呂に浸かり、テレビを見たら規則正しく布団に入ってまた明日。
そんな変哲もない毎日は、けれどあまりにも輝いていた。
普通にしているだけでは、気付けないほどに眩しく。
「……でも、もう戻れない」
レパード。それが彼女の名前だ。
レパードは、母、ドロシーが助かった報せを受けて本気で喜んだ。
しかしその夜、彼女は夢から醒めるように全てを思い出してしまった。
――まるで夢みたい。そう思ってしまった途端、レパードの心は一瞬で現実へ引き戻された。
辺鄙な島。
質素な暮らし。
病に臥せった母。
ヤッターマンとヤッターキングダム。
助けられないまま、死んでいった母。
こんなの嘘だと笑い飛ばしてしまいたかった。
でも、どんなに虚勢を張っても……ただ虚しくなるだけだった。
これは夢だ。それもとびきり甘くて優しい、都合のいい夢だ。
現実のレパードに、こんなに沢山の友達はいない。
二人の子分は確かにいたけれど、母はあの島から出ることなく死んでしまった。
正義の味方と信じていたヤッターマンに裏切られ、そして決意し旅立ったのを覚えていた。
『ヤッターマンに、必ずデコピンをしてやるんだ!』
そんなことまで忘れていた自分を恥ずかしく思う。
いつものレパードなら、持ち前の前向きさですぐに未練を振り切ったろう。
ヤッターキングダムに待たせている二人のもとへ帰るために歩き出したはずだ。
しかし、今のレパードにそれは出来なかった。
何故なら彼女は、思い出してしまったからだ。
この街が何のために用意されたものであるのか。そして、自分はどうしてここにいるのか。
「お願いごとを叶える力なら……」
レパードは、自分を悪い子だと思った。
子供心に、そう願ってしまうことは今までしてきたことを全部水泡に帰させてしまうことだと理解していた。
それでも、レパードはその考えを捨てることが出来ない。
一度味わった仮初めの幸せの味わいは――どんな勇敢な決意だって揺らがせる、狂おしい甘みに満ちていた。
「生き返らせられる、かな」
そうしたら、お母さんやボヤッキー、トンズラーと過ごした幸せな暮らしが戻ってくる。
その力を使って、ヤッターマンにきついデコピンをしてやることだって可能かもしれない。
聖杯戦争は、気軽な気持ちで足を踏み入れていい戦いではない。十分にレパードはそう理解していたが、理解した上で、彼女はどうするかを決めかねていた。
――いや。最早決断権は彼女にはないと言ってよかった。この町へ招かれた時点で。そして何よりも、『与えられた役割』の殻を破ることが出来た時点で。レパードは聖杯戦争の舞台へ意図せず上がってしまっていたのだ。
「……ねえ、どうなのかな」
レパードはいつの間にか見えていた大きなシルエットに、すがるように問いかけた。
夜の暗闇だからか、それとも雲間からのぞく月明かりの差し加減からなのか、その姿は朧気にしか見えない。
ただ、レパードの倍近くあるのではないかというほどの長身が特徴的だった。
聖杯戦争のルールを理屈でなく、本能として理解させられたレパードには分かる。
彼が何なのか。――間違いない。彼は、彼こそが、自分にとってのサーヴァント。
「愚問ですぞ。聖杯は、手にした者の願いを必ず叶える財宝」
「じゃあ……!」
「無論、叶うでしょうな。マスターの願いは必ずや、聖杯の奇跡をもって成就することと思いますぞ!」
始まる聖杯戦争からは逃れられない。
だから大事なのは、それへどう向き合うかだった。
しかしレパードに、敵を殺して蹴落としていくような道を選ぶことは出来ない。
でも聖杯は欲しい。手に入れたいと心から思うし、その為に行動する覚悟だってある。
彼女の考えは言うまでもなく矛盾していて、失笑さえ買いかねないそれだったが――そのサーヴァントは呵々大笑した。
――面白い、と。
聖杯に託す願いを胸に集った英霊なら噴飯物の行動指針を聞かされてなお、彼はそう笑い飛ばしてみせたのだ。
……やがて雲間の裂け目が大きくなり、月光がより確かな形でその姿を照らし出す。
「上等ですぞ、マスター。わざわざ英霊の座から遠路遥々赴いてきた甲斐がありました。
このサーヴァント・ライダー、マスターの願いを叶えるべく身を粉にして働いてみせますぞい!」
「ライダー……!」
「それに――デュフ」
月明かりが照らし出した人相は、豊かな黒髭を蓄えていた。
髭には導火線が混じっており、眼光はどこか壮絶な輝きを湛える。
しかしその表情は……見るだけで本能的に背筋へ怖気が走るような、気色の悪い満面の笑みだった。
「デュフフフフフwwwロリっ子マスターのお願いとあれば断れませんなぁ! 拙者、海賊であると同時に紳士です故!」
――『黒髭』エドワード・ティーチ。
それが、レパードの引いたサーヴァントの真名だ。
暴虐の限りを尽くした世界一有名な大海賊。その生き様は散り際においてまでも壮絶で、安穏の二文字とはついぞ無縁。
彼は紛れもない英雄であり豪傑だ。嵐の海を馳せた経験でもって、聖杯戦争を邁進することだろう。
しかし。このサーヴァントには、一つ重大な問題がある。
……何をどう間違えたのか。
ライダー、黒髭は――どこに出しても恥ずかしい、立派な全方位オタクに仕上がっていた。
【クラス】
ライダー
【真名】
エドワード・ティーチ@Fate/Grand Order
【パラメーター】
筋力B+ 耐久D 敏捷A 魔力C 幸運E 宝具C
【属性】
混沌・悪
【クラススキル】
対魔力:E
魔術に対する守り。
無効化は出来ず、ダメージ数値を多少削減する。
【保有スキル】
嵐の航海者:A
船と認識されるものを駆る才能。
集団のリーダーとしての能力も必要となるため、軍略、カリスマの効果も兼ね備えた特殊スキル。
海賊の誉れ:B
大海賊『黒髭』。
その生き様はまさしく、海賊の二文字に殉じている。
【宝具】
『アン女王の復讐(クイーンアンズ・リベンジ)』
ランク:C++ 種別:対軍宝具
エドワード・ティーチの愛船。苛烈な砲撃や猛烈な移動力を誇る。
また、乗船している者が多ければ多いほど、強ければ強いほど宝具が強化されるという特性を持つ。
同盟を組むなどして、乗組員を獲得してから用いるのが適切と言えるだろう。
【weapon】
爪付きの手甲
【人物背景】
恐らく世界でもっとも有名な大海賊であり、海賊としてのイメージを決定付けた大悪党。
カリブ海を支配下に置き、酒と女と暴力に溺れ、莫大な財宝を手に入れた。
エドワード・ティーチが本名なのかどうかは定かではなく、海賊になる前の素性も明らかになっていない。
ともあれ彼は海賊として身を起こし、瞬く間に大船団を作り上げた。
一般の船人だけでなく、他の海賊たちですら黒髭を恐れたという。豊かに蓄えられた髭には、ところどころに導火線が編み込まれていて、爛々と光る眼はまさに地獄の女神そのものだったとか。部下たちもまた、彼を悪魔の化身と恐れた。
……そんな黒髭も今では立派な全方位オタクです。本当にありがとうございました。
【サーヴァントの願い】
聖杯入手。胸が躍りますぞ!
【マスター】
レパード@夜ノヤッターマン
【マスターとしての願い】
お母さんを生き返らせたい。
けれど、この願いへ迷いを抱いてもいる。
【weapon】
なし
【能力・技能】
なし。
ただ、彼女は明るく諦めが悪い。
【人物背景】
伝説の大泥棒・ドロンジョの末裔。
母を亡くし、憧れていた正義の味方に裏切られたことで、彼ら『ヤッターマン』におしおき(デコピン)をするために新生ドロンボー一味を結成、ヤッターキングダムへ乗り込んだ。
【方針】
負けたくはない。ライダーは気持ち悪い。
投下終了です。キャラクエ実装記念
投下します
格闘家ならば誰もが一度は夢みる言葉がある。
――世界最強の座――
「ワシを呼んだのはうぬか、小僧」
部屋の入口方向から聞こえてきた声に反応し、赤いバンダナが特徴的な黒髪の男はトレーニングを中断する。
「ん? ……誰だ勝手に入ってきて?」
赤いバンダナの男、高原日勝に宛てがわれた自宅件トレーニングルーム。そこで高原は妙な男と相対する。
まず目を引くのは天狗の面。こんな物を身に着けてる時点で不審者以外の何者でもないのだが、高原が注目したのはそこでは無い。
高原から見ても見事と言う他ない鍛え上げられた見事な肉体と、それを包む黒い道着。そして驚異的なまでの威圧感。
成る程、この男“も”格闘家だ。それもかなりデキる。
「そうか、あんたがサーヴァント。俺の初戦の相手って訳か」
「……?」
「ああ、心配しなくても趣旨は分かってるさ。俺と同じ様に呼び出された強者と闘って最後に残った奴が優勝。
そういう催しだろ。こんな変な事態に巻き込まれんのも初めての経験って訳じゃないんでね、こっちは何時でも初められるぜぇっ!」
言うと同時に戦闘の構えを取る高原に対し、天狗の面の男――Mr.カラテは疑問に思う。
高原は間違いなく聖杯戦争の参加者として選ばれた者であり、それに関する最低限の知識は得ている筈であった。
それは「サーヴァント」の存在を知っている事からも間違いない筈なのだが、どうやら何か勘違いしているようである。
「どうした? あんたは構えないのか? まさかそっちから出向いて置いて準備が出来てないなんて事はねぇよな?」
Mr.カラテとて格闘家だ。本来であれば例え勘違いであるとは言え、挑まれた勝負を受けるのはやぶさかではないのだが、
如何せん現在の己はサーヴァントとして召喚された身である。
純粋な実力差を差し引いたとしても、目の前にいるマスターでは存在の違いという決定的な差により勝負にすらならない。
その事を説明してやっても良かったのだが、何せ相手は聖杯戦争のルールさえちゃんと伝わらなかった程の馬鹿だ。口で理解させるのは難しいだろう。
よって彼は数秒の思案の後、解りやすい様に実演してやる事を決め、威圧感の中に僅かに殺気を混ぜる。
「笑止なり。四の五の言わずにさっさとかかってこんか!」
Mr.カラテは未だ構えていない。しかし、発せられる殺気を肌で感じる事で、高原は相手がやる気になったと判断する。
ならば話は早い、後は己の技を敵に叩き込むだけだ。
高原は駆け出すと共に左腕を前方へ、右腕を後方にし、右の握り拳に力を籠める。拳の射程に入ってもMr.カラテは動こうとしない。
その事にやや引っかかりを覚えるものの、そのまま相手の胸に正拳を叩き込む。が、
「!?」
放たれた拳はMr.カラテの胸に当たった時点で完全に勢いが止まり、ダメージはおろか揺さぶる事も出来なかった。
その結果に驚きはするも高原とて一つの時代で最強と言われた格闘家だ、この程度で動きを止めるなどという事はない。
拳で駄目ならばと、今度はMr.カラテの頭部目掛けて回し蹴りを放つ。
しかし、それも拳の時同様相手を揺さぶる事も出来ず、それどころか見るからにバランスの悪そうな天狗の面をずらす事すら敵わない。
「なッッ!?」
先ほど以上の驚愕を持って後方へ飛び退く高原に、Mr.カラテは初めて行動を起こす。
右手を己の首付近やや後方まで上げる。その掌には薄いオレンジ色の輝き。
高原は既に手の届く範囲よりも外。だが、それに構わず踏み込みと同時に掌を突き出す。
「虎煌拳!」
掌から離れ光弾となった光は吸い込まれる様に高原に向かって行き。直撃、よろめかせる。
「理解出来たか。ワシとうぬの違いを。うぬ如にサーヴァントを倒す事などできぬわ!」
「……違いってやつは分かんねぇけど、それじゃコイツならどうだぁっ!」
Mr.カラテの話も聞かずに高原は右腕を振りかぶり、その場で掌底を撃つ。
否、その掌は先程のMr.カラテと同じ光――氣の力を宿し、相手に向かって放たれていた。
対してMr.カラテはここに来て初めての驚きを覚え、防御の体制を取り氣の弾丸を防いで見せる。その後には、腕にしっかりとダメージ痕を残して。
「ははっ、どうやらあんた自身の使う技でなら有効打になるみたいだな」
「貴様……どこで極限流を?」
「ん? たった今初めて見た所だぜ。面白い技だな、これ」
なんという才能であろうか。たった一度目にし、その身に受けただけの技をこうまで見事に再現して見せるとは。
Mr.カラテからすれば現状の高原はまだまだ未熟である。だがその才能は将来己すら越えかねん物であると認識する。
(面白い、だからこそ『指導者』のクラスか。聖杯め、味な真似をしてくれる)
動きの止まった相手を見るや隙かさず氣を練り上げ、もう一度虎煌拳を放とうとする高原。
だが、高原は徐ろにMr.カラテが掌を突き出すのとほぼ同時に突然後方へ吹き飛ばされ、吊るしてあったサンドバッグを巻き込みながら壁に激突する。
高原を吹き飛ばした技、それもまた虎煌拳。ただし、先の『手加減』したものとは違い、人間には眼視出来ない程弾速の速い『本気』の虎煌拳であった。
高原が立ち上がるのを待ってからMr.カラテは問いかける。
「小僧、うぬはこの闘いの末に何を願う?」
「ぐっ……いてて。そんなもん決まってんだろ。この地での最強の座。それ以外何があるってんだ?」
「行く末が楽しみな男よ……。ならばその望み叶える為、我が拳を。いや、我が極限流の奥義、欲しくはないか?」
「なんだ? 教えてくれるってか?」
Mr.カラテは初めて闘いの構えを取る。
「笑止。我が極限流を欲するのならば、ワシの拳を躱し、防ぎ、受け止め、その上で見事盗んで見せよ。
それが叶わぬ時は、代わりにその命を置いていってもらうがな」
そう宣言すると同時、今までとは段違いの殺気を放出する。
ここから先は本気の極限流を振るう。手心を加えた拳を見せても意味がない。
本気の極限流の技を身に付けた時、それで初めて高原が聖杯戦争で勝ち残る万に一つの可能性が生まれるのだろうから。
対する高原はビリビリと感じる痛いくらいの殺気の中でも笑みを浮かべる。
「ありがとうよ、おっさん。俺は頭が悪くてな、下手に教わるよりもそういうやり方が性に合ってるんでね」
「Mr.カラテ。ワシの事はそう呼べ」
彼らは再び部屋の中央で向かい合う。第2ラウンドの幕開けだ。
「覇王翔吼拳を会得せん限り、貴様がサーヴァントに勝つ事など出来ぬぞ!」
【クラス】
メンター
【真名】
Mr.カラテ(タクマ・サカザキ)@THE KING OF FIGHTERS XIII
【ステータス】
筋力A 耐久B 敏捷A 魔力E 幸運D 宝具C
【属性】
中立・中庸
【クラススキル】
指南の心得:B
数々の英雄を育て上げた者が得るスキル。指導者としての手腕。
対象の才能を見極めたうえで適したスキルを対象に習得させる。
ランクBならば自らの持つ技能であれば習得させる事が可能。
習熟度は通常自身のものが上限となるが、対象の才覚によってはプラス補正がかかり、
自身の技能を独自にアレンジすることで場合によってはオリジナル以上のものを継承させることができる。
彼の指導方法は相手が格闘技の初心者であろうが一切手加減の無い鬼のような厳しさであり、並大抵の者では付いて行く事など不可能。
カリスマ:E
軍団の指揮能力、カリスマ性の高さを示す能力。団体戦闘に置いて自軍の能力を向上させる稀有な才能。
Eランクでは一軍を率いる将官程度の役職であれば、天賦の才と言える。
【保有スキル】
極限流空手:A+++
タクマ・サカザキが創始した流派。タクマが様々な格闘技を習得し、様々な強者と闘い技を磨き、実戦から相手の技を取り入れ、それを洗練し昇華させた武術。
人体に流れる氣の力を攻防に応用するのが基本。Mr.カラテは特にこの氣の力の扱いに長ける。
その力、その技極めれば、オロチの力やサイコパワーや殺意の波動などの人智を超えた超パワーに頼ることなく、
ただ修練により高められた元々人間の持つ力のみで、それら超パワーを得た者達と同等、もしくはそれ以上の域に達する事すら可能とする。
現界まで鍛え抜かれた肉体と高められた氣、繰り出される技の数々は神秘すら帯びる。
無窮の武練:A
ひとつの時代で無双を誇るまでに到達した武芸の手練。
心技体の完全な合一により、いかなる精神的制約の影響下にあっても十全の戦闘能力を発揮できる。
古傷:B
嘗てライバルである『最強の虎』リー・ガクスウとの闘いに引き分けた時に負った左胸の傷。
それ自体が弱点となる他、ステータスの低下、一部の技が使用不可能となるデメリットスキル。
の筈であったのだが、後述の宝具の影響により無効化されている。
【宝具】
『天狗の面』
ランク:C 種別:対人宝具(自身) レンジ:- 最大補足:-
タクマ・サカザキがMr.カラテとして活動する時に被る面。それ自体には特殊な力は存在しない。
しかし、これを装備しMr.カラテとして『本気』になった彼はタクマ・サカザキ時とは大きく異る。
まるで別人のような辛辣で攻撃的、古風な言動。隠そうともしない威圧感。年齢による衰えや古傷による影響など全く感じさせない全盛期と変わらぬ動き。
それは機械を通して戦力を数値化したものでも、タクマと同一存在としながら全く別の高すぎる数値を叩き出す。
面を被るだけで何故このような変化をするのか。理由は一切不明。
【weapon】
なし。己の肉体こそが武器。
【人物背景】
全てが謎に包まれた男。『不敗の格闘家』と呼ばれ、天狗の面を被り、正体を隠している。
生きながらにして伝説と化した人物で、過去多くの武道家、格闘家が闘いを挑んだが、いずれもかなう相手がいなかったという。
と言うのは建前で、正体は極限流の創始者である『初代・無敵の龍』タクマ・サカザキその人。周囲の人たちからもバレバレである。
SNK格ゲー界最強の1人であり、その鍛え抜かれた技は衛星砲から放たれたビームすら弾く。
今回召喚されたのは黒道着を着たシリアス分100%の、ちょっと他社の拳を極めし者の影響を受けちゃっているKOF XIII仕様。
【サーヴァントとしての願い】
マスターを鍛え、その行く末を見届ける(基本的には闘いは高原に譲る)。
【マスター】
高原日勝@LIVE A LIVE
【マスターとしての願い】
この催しでの敵を倒し、この世界で『最強』となる。聖杯? 勝ち抜けばトロフィー貰えるのか?
【weapon】
なし。己の肉体こそが武器。強いて言えばバンテージ。
【能力・技能】
『格闘技』
特定の流派などの枠には囚われず、空手やプロレス、骨法、コマンドサンボなど色々使う。
『ラーニング』
格闘家の技をその身で受ける事で、その技の特徴を学び理解し、自分の物とする技能。
ただし、超常の力を帯びた技は、その力を再現できないため習得する事は出来ない。
【人物背景】
あらゆる格闘技の奥義をその肉体で受け、習得し、それを持って『最強』の座を手に入れようと野心する格闘家。
世界でも有数の格闘家達に闘いを挑み、その奥義をものにし、そして勝利してきた。
破戒僧オディ・オブライトとの闘いに勝利して以降は、高原を『現代最強の男』と捉えた『最強』の座を目指す格闘家達に勝負を挑まれる立場となる。
中世の時代の魔王により討ち倒すべき時代の勝者の1人として召喚され、同じく召喚された各時代の者達と協力して魔王を倒し、自分達の時代へと帰還したという経験がある。
永遠の知力25。
【方針】
Mr.カラテの使う極限流の技を習得する。相手がサーヴァントだろうが闘いを挑み、勝利する(聖杯戦争の趣旨は理解していません)。
投下終了です。別企画からクラス【メンター】及びクラススキルを流用させていただきました
問題がありましたら取り下げてください
投下します。
たった一人だけの世界は、思いの外綺麗だった。
校舎の窓から見上げる空は何処までも広く、青々としている。
一瞬の煌めき。夢の終わり。
言葉にしたら色々と浮かび上がるが、棗恭介は軽く笑みを浮かべその思考を打ち切った。
もう、過ぎたことだ。
後のことは現実へと戻るだろう二人に全てを託している。
直枝理樹、棗鈴。
弱く、一人で立ち向かうことすらできなかった彼らも今では気高い強さを手に入れた。
今ならば、安心して見ていられる。
これでいい。
この物語の終わりは、彼ら二人が生き残り、未来を生きていく。
そんなビターエンドで十分に満足だ。
奇跡はもう起こらない。
恭介達に、未来など残っていない。
頬を撫でる風も、澄んだ土の臭いもこれで最後だ。
それは生の実感を感じさせるには十分な欠片が詰まっているけれど、自分には不要のものだ。
――本当に?
そう、信じたい。
生への渇望に未練はないと、思いたい。
棗恭介の人生は此処で終わりなんだと認めたい。
けれど、奥底に眠る炎はそんな弱音を許さず、煌々と燃え上がっている。
生きたい、と。
「諦め、わりぃんだよなあ、俺は」
いつだって、どんな時だって。
棗恭介という人間はそうだった。
諦めが悪く、友と明日の為になら何だってするスーパーマンだった。
その役目を終え、単なる棗恭介個人だけであっても、それは変わらなかった。
故に、彼の世界は未だ終わらず。
ほんの少しの可能性がこの掌に残っているなら、懸けてみたい。
だから、棗恭介は此処にいる。
聖杯戦争という青春からかけ離れた殺し合いの場に立っている。
狂気が蔓延る戦場で、恭介は不敵に笑う。
暗殺、同盟、離間。最後の一組になるまで生き残らなくては帰れない――最低な希望だ。
培ってきた常識も、胸に抱く優しさも必要ない。
大切なのは、抗い、そして勝つことだ。
甘く蕩けた思いで、この退廃した世界を勝ち抜くことはできない。
「その諦めの悪さで呼ばれた私はいい迷惑ね」
「そう言うなって、アーチャー。俺はお前のことを結構気に入ってるんだぜ?」
横にいるサーヴァントの少女が溜息をつくのとは裏腹に恭介は晴れやかな笑顔で口元を広げている。
それは呼び出された少女がロリだからではなく、自らが知っているものだったが為だ。
アーチャーの座を司る艦娘、天津風。
まさか、昔の大戦で無骨な鉄の船であったものが少女として現れるなんて、さすがの恭介にも予想がつかなかった。
だが、知っている分、理解も早い。
彼女が願ったものはきっと――――平和だ。
夢や理想、想いこそが尊ばれる御伽話。
ただ、護りたかった。
届く範囲でいい、民を救いたかった。
抱いたモノは簡素なれど、愚直だ。
絶対に喪ってなるものかと願った輝きである。
「お前が戦ってくれたからこそ、今の俺達はこうして生きている。
まあ、俺はもう死んじまってるんだがな」
残酷な現実に身を浸しても、曲がらぬ輝きは、尊ばれるべきだ。
戦争であっても、多くの人間が死に絶えた敗戦であっても。
彼女の根底にある救いたかったという気持ちは、間違っていない。
「けど、俺は死にたくない。まだ、生きていたい。もう一度、会いたい奴らがいる。
俺達に死を強いた運命ってやつを――覆したい」
彼女が抱くものの全容なんてわからないけれど、それだけは確かだ。
信用する理由なんてその程度で十分である。
「俺は願いを叶える為なら何だってする。プライドなんてかなぐり捨てて、な」
けれど、そんな少女を、今から自分は穢す。
自分の願いを叶える為だけの武器にする。
彼女が持っている誇りなんてお構いなしに、卑怯なことだってやらせるつもりだ。
「その過程で、吐き気がする策だって練るし、それをお前に実行させる」
それは、彼女にとって道理が通らないことも承知の上で頼んでいる。
理屈ではわかっているし、今の自分が抱いているのが未練がましい感情論だ。
艦娘として。そして、サーヴァントとして。
愚直な少女に縋る自分には情けなさを通り越して吐き気がするけれど。
「俺は――」
「……もういいわよ。そんな辛そうな顔をしなくても、わかったから」
それでも、与えられなかった未来が欲しい。
「いいわ。あなたの要望通り、従ってあげる」
結局の所、恭介はどこまでも青春〈イマ〉に拘っていただけだった。
意地を張り続ける理由など、知れたことだ。
夢の中でしか果たせなかった青春を今度こそ貫きたい。
最後まで抗って、戦って、その果てに辿り着いても――笑っていられるのか。
「生きたいって想いに、嘘も真もないんだから」
それでも、恭介は選んでしまうだろう。
天津風は彼についていってしまうだろう。
諦めることを諦める決意を胸に、もう一度夢を見る。
「改めて、誓うわ。此度の聖杯戦争――あなたと共に歩むことを」
「……サンキューな」
それは、未来を取り戻す物語。
【クラス】
アーチャー
【真名】
天津風@艦隊これくしょん
【パラメータ】
筋力D 耐久C 俊敏C 魔力E 幸運C 宝具C
(改造時)筋力D+ 耐久B 俊敏B 魔力E 幸運D 宝具C
【属性】
秩序・善
【クラス別スキル】
単独行動:D
マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
ランクDならば、マスターを失っても半日間は現界可能。
対魔力:E
魔術に対する守り。
無効化は出来ないが、ダメージ数値を多少削減する。
【保有スキル】
艦娘:A
生前艦艇・戦艦だった存在が少女の姿に変わった者に付与されるスキル。
水上での戦闘において有利な判定を得、そして鉄などの資源があれば火力の増強・損傷した身体を魔力を使用せずに修復できる。
戦闘続行:A
戦闘を続行する為の能力。
決定的な致命傷を受けない限り生き延び、瀕死の傷を負ってなお戦闘可能。
守護:C
他者を守る時、一時的に防御力を上昇させる。
彼女は沈む瞬間まで、護り続けた。
【宝具】
『雲の通ひ路吹き閉ぢよ』
ランク:E 種別:対軍宝具 レンジ:1〜100 最大捕捉:100
任意で連装砲、魚雷といった武装を顕現させることができる。
『乙女の姿しばしとどめむ』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1
彼女とマスターが心の底から強くなりたいと願った時、その宝具は解放される。
改装を施すことで、ステータスを上昇させ、それまでに負った傷を全て治す。
『その風の名は――天津風』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1
上記の『乙女の姿しばしとどめむ』が解放されるのと同時にこの宝具も使用可能になる。
この宝具――兵装によって、強化型艦本式缶、三式水中探信儀が天津風に装備され、俊敏、潜水に対しての特攻が上方修正される。
【weapon】
『雲の通ひ路吹き閉ぢよ』
【人物背景】
陽炎型駆逐艦九番艦。
可愛い。
【サーヴァントとしての願い】
マスターである恭介に従う。
【マスター】
棗恭介@リトルバスターズ!
【マスターとしての願い】
死の運命を覆す。
【weapon】
なし
【能力・技能】
頭脳明晰で、身体能力も高い。
【人物背景】
リトルバスターズの一員。男キャラで唯一テーマ曲を持っていたり、活躍度からして存在感はメインヒロイン級。
今回はRefrain、虚構世界からの脱出〜現実での覚醒までの間からの参戦となる。
【方針】
どんな手を使ってでも勝つ。
投下終了です。
投下します
――理想に堕ちていく。
■
「俺は、正義の味方だ」
自分と同じ性を持つ少年が、かつての自分と同じ願いを口にする。
それは受け継がれた意志。だが今となっては、受け継がせるべきではなかったと強く悔いる、間違った意志。
自分に言い聞かせているというわけではない。そんな段階はもうとうに過ぎ去っている。
「聖杯は、害でしかない。なら、やることは一つだ」
彼の中には確固たる信念が、決意が、覚悟がある。
かつて自分がそうであろうとし、いつしか見失ってしまった鉄の心が。
「聖杯を破壊する。それ以外は認めないし、絶対にさせない」
願い自体は、自分と同じだ。意見の相違はない。
彼と自分は顔見知りであるし、それ以上に深い関係――義理の親子であった。
固い信頼で結ばれているし、愛情もある。絶対に裏切らないと、お互いに確信できる。
なのに、何故だろう――何故こんなにも、悲しくなるのか。
わかっている。
わかっているのだ。
彼をここまで歪めてしまったのは、全部ではないにしろ、きっかけは間違いなく自分だ。
「なぁ――――爺さん」
彼、【衛宮士郎】を“正義の味方”に縛り付けてしまったのは。
間違いなく自分、【衛宮切嗣】なのだから。
視線の先で、薄く笑うマスター――衛宮士郎に対して、切嗣は呆然と佇むことしかできなかった。
■
――理想に囚われていく。
■
(オイオイ……どうなってんだ、こりゃあよ?)
ぎこちなく向かい合う親子を見ている者がいた。
その者の名はタカギ・ガンドー。あるいはディテクティブと呼ばれる、探偵にしてニンジャである。
彼はここにいて、どこにもいない。
ディテクティブの肉体はここに存在しない。
ディテクティブの意識はここに存在する。
ディテクティブのソウルは、衛宮切嗣に憑依している。
召喚されたディテクティブは、肉体を顕現させることができず、衛宮切嗣の肉体を依代として顕現した擬似サーヴァントなのだ。
(ブッダシット……声が出せねえ。クソ、何だ、眠くなってきやがったぞ……)
言葉は発せない。
親子に何か語りかけることはできない。
擬似サーヴァントとしての制約がディテクティブをニューロンの奥底に閉じ込めようとする。
(オイオイ……オイオイオイ……ブッダシット……駄目だ、眠い……ZBRが欲しいぜ……)
愛用のヤクがあればすぐに元気になれるのに。
まどろみの中、ディテクティブは自身に眠るニンジャソウルに触れ、そして知った。
ひとときの相棒となる衛宮切嗣が宝具を発動させたときこそ、ディテクティブが目覚めるときだと。
(オイ……オ……)
そのときが来るのか、来ぬのか……いまのディテクティブには、知る由もない。
【クラス】
アサシン
【真名】
ディテクティブ(衛宮切嗣)
【パラメーター】
筋力:C 耐久:D 敏捷:C〜C+++ 魔力:C 幸運:D 宝具:B
【属性】
混沌・善
【クラススキル】
気配遮断:C+
サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している。
完全に気配を絶てば発見することは非常に難しい。
【保有スキル】
ピストル・カラテ:A
テッポウ・ニンジャクランの首領を開祖とする暗黒武道。
拳銃を両手に握った状態で構えを取り、発砲時の反動を次なる攻撃や緊急回避に利用する点を最大の特徴とし、一対多のイクサに秀でている。
また、拳打と共に銃身を叩き込み、そのまま接射を行うなどのムーブも含まれる。
ZBR中毒:D
ヨロシサン製薬が製造した精神安定系薬剤の過剰摂取による中毒症状。
ZBRを摂取することで同ランクの「戦闘続行」を得るが、効果が切れると頭痛や思考の鈍化などが起こる。
切嗣自身がZBR中毒を発症しているわけではないので1ランクダウンしている。
道具作成:E
魔力を帯びた器具を作成する。切嗣の場合、弾丸やサーヴァントにも通じるトラップ、ZBRを作成可能。
単独行動:C
マスター不在・魔力供給なしでも長時間現界していられる能力。
【宝具】
『起源弾(クライム・アヴェンジャー)』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:1-10 最大捕捉:1人
自らの起源を相手に発現させる礼装魔弾。
この弾丸で穿たれた傷は即座に「結合」され、血が出ることもなくまるで古傷のように変化する。
ただ、「結合」であって「修復」ではないため、「結合」されたところの元の機能は失われてしまう。
この銃弾は相手が魔術で干渉したときに真価を発揮する。弾丸の効果は魔術回路にまで及び、魔術回路は「切断」「結合」される。
結果、魔術回路に走っていた魔力は暴走し、術者自身を傷つける。
その仕様に加え、サーヴァントと化した現状では、必殺の魔弾と称すことができる。
もちろん、弾丸の威力自体も相当のもの。ただしコンテンダーの装弾数の関係上、連射はできない。
『固有時制御(タイム・アルター)』
ランク:C 種別:対人(自身)宝具 レンジ:- 最大捕捉:1人
衛宮の家伝である「時間操作」の魔術を戦闘用に応用したもの。固有結界の体内展開を時間操作に応用し、自分の体内の時間経過速度のみを操作する。
真名開放や事前の魔力チャージを必要とせず、二小節の詠唱のみで即座に発動。
敏捷の値にそれぞれ「+」=2倍速(ダブルアクセル)、「++」=3倍速(トリプルアクセル)、「+++」=4倍速(スクエアアクセル)を付与する。
ただし固有時制御を解除した後に世界からの「修正力」が働くため、反動によって身体に相当の負担がかかる。
『鴉、再臨(リブート、レイブン)』
ランク:B 種別:対人(自身)宝具 レンジ:- 最大捕捉:1人
エミヤ・キリツグに憑依したディテクティブと切嗣が共鳴を行うことで発動する。
普段はニューロンの奥底に沈んでいるディテクティブの意識を呼び起こし、彼のジツを使用可能となる。
探偵というガンドーの生業、またディテクティブというニンジャネームから象徴されるように観察・探査能力が増大、限定的にAランクの「気配感知」を得る。
また自身の影からカラスを生成して使い魔のように放ったり、49マグナムの弾丸代わりに装填することが可能となる。
この弾丸はカラス・ガンもしくはカラス弾と呼ばれ、発射後に切嗣の意思である程度軌道を制御できる。
ただし実弾に比べると威力及び反動が劣り、完全な暗闇の中では影が生まれないため使用できない。
切嗣が能動的にディテクティブと対話できるのは、この宝具の発動中のみ。
【weapon】
トンプソン・コンテンダー
起源弾を発射するために切嗣が改造した中折れ式の銃。装弾数は1発のため、反動を次の攻撃に利用するピストル・カラテにはあまり適していない。
49マグナム×2
巨大リボルバー拳銃。装弾数は6発。威力に比例して反動も尋常ではないが、ピストル・カラテはこの反動こそを武器として用いるカラテである。
【人物背景】
・衛宮切嗣@Fate/zero
「魔術師殺し」として裏の世界に名を馳せたフリーランスの魔術師。
アインツベルンと誼を得てアイリスフィール・フォン・アインツベルンとの間に娘であるイリヤスフィールを儲ける。
第四次聖杯戦争にセイバーのマスターとして参加。聖杯を得ることは叶わなかったが、生還する。
・ディテクティブ@ニンジャスレイヤー
◆忍◆ ニンジャ名鑑#50 【ディテクティヴ】 ◆殺◆
簀巻きにされ琵琶湖に沈められた私立探偵ガンドーに、カラス・ニンジャのソウルが憑依。重度のズバリ依存症。
第2巻(キョート・リパブリック編)全編に渡って登場し、ナンシー・リー的役割を果たす。暗黒武道「ピストルカラテ」の有段者。
・タカギ・ガンドー/ディテクティブ(衛宮切嗣)
衛宮切嗣がディテクティブの依代にされ顕現した擬似サーヴァント。
擬似サーヴァントとは、何かの理由でサーヴァントになれない者が人間の体を霊基(触媒)として顕現したもの。
本来は人間の精神はサーヴァントのものに書き換えられるが、ディテクティブ自身もタカギ・ガンドーにカラス・ニンジャのソウルが憑依した存在のため、何らかのエラーが発生。
そのためディテクティブは普段は休眠しており、ニンジャソウルと共鳴する宝具を使用したときのみ、ディテクティブの意識が表出するようになっている。
衛宮切嗣以外にも、ロード・エルメロイII世などが擬似サーヴァントとして確認されている。
【サーヴァントの願い】
――――。
【マスター】
衛宮士郎@Fate/stay night(HFルート)
【マスターとしての願い】
聖杯を破壊する。
【weapon】
なし。
【能力・技能】
投影…思い浮かべた物体を、魔力で顕現させる魔術。
強化…魔力を通すことで、対象の強化を施す魔術。
【人物背景】
10年前に冬木市で起きた大火災の唯一の生存者。
その際、魔術師である衛宮切嗣に助け出され、養子として引き取られる。
後に、切嗣への憧れから、正義の味方となってみんなを救い、幸せにするという理想を本気で追いかけるようになる。
そして、その理想を叶える為に、大切な人達を切り捨てた。
それはまるで、鉄の心を胸に抱いたブリキのロボットのようだった。
【方針】
正義の味方を張り通す。その過程で生まれる犠牲は考えない。
【マスターの願い】
聖杯を破壊する。
投下終了
第二次二次キャラ聖杯戦争「野原しんのすけ&アサシン」◆FFa.GfzI16氏よりニンジャスレイヤーのステータス、
夢幻聖杯儀典「衛宮士郎&アサシン」◆MZYnmmtZ2U氏より衛宮切嗣のステータスと衛宮士郎の人物背景といくつかの文章を、参考及びお借りさせていただきました。
この場を借りてお礼申し上げます。
>高原日勝&メンター
戦いもさることながら、教官としてのサーヴァントとはやはり面白いですね。
お互いに武芸者であるため、鍛えれば本当に英霊に通用する存在になり得るかもしれません。
今後の行く末に期待できそうなお話でした。
>棗恭介&アーチャー
天津風はやっぱりいい子だなあ。
恭介の覚悟とそれを受け止めて理解するアーチャーの姿がとても微笑ましく、同時にどこか悲愴でもありますね。
リトルバスターズのためならどこまでも非情になれる恭介の暗躍に期待です。
>衛宮士郎&アサシン
事実上の混合参戦とは新しいなと思いました。
士郎は桜ルート出典なこともあり、ありかたは完全に固まっていますね
だからこそ、切嗣を召喚したことが皮肉というべきか……
投下します
真庭鳳凰は、その存在を目にし、心よりの戦慄を覚えた。
それと同時に自らの幸運を喜び、打ち震えた。
この英霊を従えることが出来るのならば、聖杯をめぐる激戦に勝利することだとて夢ではないと、そう思った。
この世のどんな鎧よりも禍々しい甲殻は、断じて見てくれだけの張りぼてなどではない。
物の怪の類に列挙するしかないであろう異形の躰を軋ませる姿に、神と呼ばれた男をして背筋を粟立せずにはいられない。
滲み出る闘気に見境はなく、現にこの狂戦士は今、主であるおのれとすら事を構えたがっているように見えた。
「問おう」
地の底から響くような声は、しかしその重さに反して喜悦の色を帯びていた。
鳳凰は、この英霊が何を望み、何を喜んでいるのかを既に理解し終えている。
武人であれば誰もが当然に持ち得る、強者と戦いたいという欲求。
卑怯卑劣、権謀術数を生業とする鳳凰には無縁のものであったが、そういった思いを抱くのはごく当然のことだ。
鳳凰が思うに、この英霊はその欲求が他者のそれに輪をかけて強いのだ。
まるで己が生命はおろか……魂までも、全てが戦うことの為だけにあるとでも言うかのように。
「此度の宴に我を呼び寄せ、走狗とするのを望んだのは――貴様か」
「然り。我が名は真庭鳳凰。聖杯を求め、おぬしをこの地へと召喚した」
狂的な執念を気迫として溢れ出させるその姿を目にすれば、常人など小水を垂れて膝を屈することだろう。
しかし鳳凰は臆することなく彼へ向き合い、恐れなどおくびにも出すことなく問いへ答える。
畏怖の念は確かにあったが、彼はそれに押し潰されて平伏すほど矮小な人間ではない。
どれほどの存在であろうとも駒は駒。
自分を高みへ導く為に呼び寄せたものを賞賛こそすれど、それに屈服するのは道理が通っていない。
そこはやはり、長年に渡り曲者揃いの忍軍を率いてきた頭取の貫禄といえるだろう。
「ならば良し。此の闘争、我は貴様の望むがままに武勇を奮おう」
喜悦の色はよりはっきりとしたものになりつつあった。
考えるまでもなく当然のことだ。
聖杯戦争は古今東西、あらゆる時代と世界から選り取り見取りの英雄豪傑を呼び寄せ、殺し合わせる儀式である。
そこに如何ほどの強者が集結するかなど想像に難くはなく、より激しく苛烈な戦いを所望する者にとって、聖杯戦争はまさしく楽園と呼ぶに相応しい宝の山に違いない。
鳳凰が召喚したこの英霊は、見た目の通りに人ならざるものだ。
幽世ともまた異なった、星の彼方より来たりし侵略者。
英霊の種別は狂戦士――最も強力であるが、最も扱いの困難とされる曲者だ。
しかしながら、戦闘狂いと種が割れているなら話は早い。
要は適材適所の理論である。
戦鬼である彼を前線へ出しつつ、自らは影に徹して闇討ちを行い敵の頭数を減らす。
英霊と使役者の双方の腕前が確かであることが大前提となるが、そこについては問題などあるまい。
真庭鳳凰はしのびである。それも、最強と呼んでもいい域の。
暗殺者の英霊にすら悖らない技と力を併せ持つ我ならば、決して他の使役者に遅れを取ることはありえない。
慢心でも過信でもなく、事実として鳳凰はそう考えていた。
彼の戦いに誇りはない。
そもそも、しのびとはそういった概念とは無縁の生き物である。
(そうだ――我は、勝たねばならん)
真庭の里の復興。
真庭忍軍の頭として、自分以外にそれを成せる者はよもや居るまい。
そしてこの戦争へ勝利することがもし叶えば、その悲願は遂げられる。
真庭の歴史は今後も途絶えることなく永久に続き、没落の底から這い上がって再び歩み始めるのだ。
その為ならば、子女であれ殺そう。
老人であれ友人であれ、たとえ己の親であれ。
一切の例外なく全てを殺し、殺し、殺し、殺し――その生命を贄に、古の願望器を降臨させようではないか。
杯に満たされた美酒を嚥下する光景を想像し、鳳凰は弧状に口元を歪めた。
召喚の余韻として右腕の令呪が発し続ける痺れるような痛みですら、自分を賞賛しているように感じる。
一方で彼の召喚した狂戦士もまた、こらえ切れぬほどの喜びに打ち震えていた。
「感じる――感じるぞッ」
感じる。
この都に集まり、蠢く強者の波動を。
自分はこれから彼らと矛を交え、壮絶な闘争を繰り広げるのだ。
アークスとはまた異なった趣と新鮮さをもって、その闘いは自分を満たしてくれることだろう。
そう考えれば考えるほど高揚は際限なく膨れ上がっていく。
「さあ始めようか、猛き闘争をな!」
号砲は高らかに鳴り響いた。
これより、彼らの聖杯戦争は幕を開ける。
神と呼ばれた鳥は願いを求めて闇を駆け。
巨躯から分かれた戦鬼は闘いを求めて猛り狂う。
その在り方は決して交わることのないものであったが――
それでも、彼らは強い。
戦の達人と呼ぶべき主従が、狩場の街を俯瞰して嘲笑っていた。
【クラス】
バーサーカー
【真名】
ファルス・ヒューナル@ファンタシースターオンライン2
【パラメーター】
筋力A+ 耐久C 敏捷B+ 魔力A 幸運C 宝具A
【属性】
混沌・悪
【クラススキル】
狂化:B
全パラメーターを1ランクアップさせるが、理性の大半を奪われる。
【保有スキル】
単独行動:A
マスター不在でも行動できる。
ただし宝具の使用などの膨大な魔力を必要とする場合はマスターのバックアップが必要。
変化:A+
バーサーカーはより凶暴かつ、破壊的な形態へと自らを変化させることが出来る。
ただしそうなった彼はこれまで以上に容赦なくマスターの魔力を食い潰しながら戦闘するため、諸刃の剣である。
ダーカー:EX
あらゆる惑星、地域に現れる正体不明の敵性存在。
ファルス・ヒューナルはその大元である【巨躯】の化身である為、最高ランクとなっている。
ダーカーは浸食と呼ばれる概念の力を有し、この力を用いた攻撃は一時的に相手の最大HPを減少させ、一定時間の間癒えることのない手傷を与える。
ダーカーは必ず身体のどこかに赤いコアを持ち、皆共通してこれを弱点とする。
それ以外にも光属性の攻撃を特効として受けるため、聖女・聖人系の英霊は彼との戦いで有利に立ち回れるだろう。
【宝具】
『星抉る奪命の剣(エルダーペイン)』
ランク:A 種別:対人宝具
触れるものを微塵に切り裂くと謳われる禍々しい鋭刃。
エルダーペインは敵を斬る際、刀身からその生命力を吸い上げる特性を持つ。
つまりバーサーカーは敵手を斬れば斬るほど、殺せば殺すほど、この剣によって万全の状態へと近付いていくのだ。
またバーサーカーが打倒された時、この宝具は消滅せず『ドロップアイテム』としてその場に残る。真名解放の概念を持たない宝具ではあるが、英霊であるなら誰が握ってもその真価を引き出すことが可能だろう。
【weapon】
『星抉る奪命の剣』
【人物背景】
ダーカーを統べる存在と言われる、作中におけるボス的存在『ダークファルス(DF)』の一体。
かつて猛威を奮っていたが、四十年前の闘いで敗北し辺境の惑星ナベリウス遺跡に封印される。しかしストーリー開始後ゲッテムハルトにより復活させられたことで彼を宿主として今代に復活。
手始めにアークス達と激闘を繰り広げた後、封印された本体を引き摺り出して復活し、再び【巨躯】としての肉体を取り戻すに至る。尤も、完全な復活にまでは未だ至っていないらしい。
『ファルス・ヒューナル』という人形形態とDF『巨躯』としての形態を持ち、【巨躯】として顕現した場合には巨星に匹敵する膨大な規模を誇る超巨大生命体として顕れる。
尤も電脳世界という特異な空間に召喚されたこと、マスターの存在という枷があることが災いして、ヒューナル以降への変身を行うことは現状不可能。
【サーヴァントの願い】
聖杯に興味はない。ただ、猛き闘争を望んでいる
【マスター】
真庭鳳凰@刀語
【マスターとしての願い】
真庭の里の復興
【weapon】
素手
【能力・技能】
様々な忍法と鍛え抜かれた身体能力を駆使して戦闘する。
【人物背景】
没落に向かいつつあるしのびの一軍、『真庭忍軍』の頭取を務めるしのび。
それぞれが生物の名を冠している真庭忍軍の中で唯一実在しない動物の名を持つ男。通称『神の鳳凰』。
今作では毒刀・鍍に意識を乗っ取られるよりも前からの参戦で、毒刀はそもそも所持していない。
【方針】
バーサーカーを上手く扱いつつ、確実に聖杯に近付く
投下終了です
投下乙です
主従共に強者という雰囲気がでてますね
自分も投下させていただきます
この街の高台には、「勝常寺」という寺がある。
けっこうな数の檀家を抱える、大きな寺だ。
しかしその住職は、酒好きで不真面目なダメ坊主として知られていた。
先代はあんなに立派な人だったのに、とぼやく者もいた。
だがそのような者も、いつ住職が代替わりしたのかはとんと思い出せないのであった。
◇ ◇ ◇
満月の輝く夜空を眺めながら、信楽は縁側でグビグビと豪快に酒をあおっていた。
(そりゃいちおう、俺も仏に仕える身だけどよ……。まさか寺の住職やらされるとは思ってなかったわ。
なまじ社会的地位が高いだけに、放り出していなくなれば騒ぎになるだろうし……。
ああ、めんどくせえ)
心の内でぼやきながら、信楽は空になった杯にまた酒を注ぐ。
ニート生活まっただ中だった信楽にとって、住職としての仕事は面倒で仕方がない。
腐れ縁の狐が作るつまみもそろそろ恋しくなってきたし、ぼちぼち帰りたい。
だが、積極的に他の参加者と交戦して脱落させていくというのも性分ではない。
(俺以外の参加者、みんな同士討ちしてくたばらねえかなあ……)
僧職にあるまじき物騒な考えを抱きながら、信楽は杯を口に運ぶ。
だが、その手は途中で止まった。
「!!」
先ほどまでの戯れ言をほざいていた酔っ払いとは同一人物と思えぬ鋭い目つきで、信楽は前方をにらみつけた。
そこには、やせ細った男と不気味な面構えの老人が立っていた。
「これはこれは。こんな夜更けに寺を訪れるとは、何かお困りかな?」
作り笑いを浮かべ、芝居がかった口調で信楽は二人組に話しかける。
むろん、この怪しい連中が寺に用があったわけではないのは、信楽も承知の上だ。
「ええ、葬式の手配をしていただこうかと。あなたのね!」
痩せた男は甲高い声で叫ぶと、すぐさま物陰へと飛び込む。
「やりなさい、キャスター!」
続いて男の口から発せられたのは、パートナーである老人への命令だった。
それを受けて、老人が両手を天に掲げる。
すると彼の背後から、いくつもの白い塊が飛び出してきた。
よく見れば、それらにはみな目と口を思わせるくぼみがある。
すなわちそれらは、キャスターである老人に使役される怨霊なのだ。
「やれやれ、仏さんを戦いの道具にするのは感心しねえなあ」
しこたま酒を飲んでいるとは思えぬフットワークで怨霊の突撃を回避しながら、信楽はぼやく。
「それじゃ、こっちも応戦させてもらおうかねえ。出番だぜ、嬢ちゃん!」
次の瞬間、信楽の背後に巨大な炎が出現する。
炎はみるみるうちに姿を変え、やがて人間の形を取る。
グレーのブレザーを身に纏い、赤々とした長髪をツインテールにまとめた少女。
一見するとか弱い学生にしか見えないが、その実態は莫大な力を小さな体に秘めた星の外からの来訪者。
バーサーカーのサーヴァント、クー子。それが信楽のパートナーであった。
「念入りに火葬して、ちゃんと成仏させてやりな」
「ん」
短く答えると、クー子は怨霊の群れに向かって回し蹴りを放った。
その脚は、彼女の髪のように赤く燃えている。
「ギィィィィィ!」
耳をつんざくような悲鳴を上げて、怨霊たちは消滅する。
今の一撃で、全体の3割ほどが吹き飛んだだろうか。
クー子は仏頂面のまま、今度は拳に炎を宿して残った怨霊たちに殴りかかる。
たかだか怨霊ごときがバーサーカーの攻撃に対抗できるはずもなく、1分も経たぬうちに怨霊は全て焼き尽くされた。
「な、なんと……」
ここまで一方的な展開になるとは思っていなかったのだろう。
細身の男は物陰から顔を出し、高熱でもあるかのように震えている。
キャスターの顔にも、明らかな動揺が見て取れた。
「くそっ! 次だ、次の手を……」
「やらせない」
ヒステリックな男の声を、クー子の静かなつぶやきが遮る。
「おじさんにあんまり負担かけたくないから、最短で仕留める。
やたらめったらCMを入れたりしない」
なにやら意味不明なことを呟くクー子の背後に、炎で何かが形作られる。
それは、巨大な目のマークだった。
あっけにとられる敵をよそに、クー子はふわりと宙に浮かび上がる。
そしてその状態から突然加速し、キャスターに跳び蹴りを見舞った。
「ごふっ!」
あまりの緩急に対応できず、キャスターは直撃を受ける。
哀れな老人は何メートルも吹き飛び、全身を炎で焼かれてやがて消えた。
「命燃やすよ……」
「燃やしてから言うなよ」
クー子の言葉に、冷静にツッコミを入れる信楽であった。
◇ ◇ ◇
「お疲れさん、嬢ちゃん」
「おじさんも魔力供給お疲れ様。私、燃費悪いから大変でしょ?」
「なあに、このくらいどうってことないさ。おじさん、物の怪だから魔力は有り余ってるんだよね」
笑いながら、信楽はクー子の頭を撫でる。
クー子はバーサーカーではあるが、狂化のランクが低いためこのように会話が成立するのである。
もっとも、たまにわけのわからないことを口走ることもあるのだが。
「それにしても、本当にいいの? 聖杯に何も願わなくて」
「ああ、おじさんは毎日まったりと暮らせればそれでいいからね。
聖杯は嬢ちゃんが使いな。まあ、聖杯が手に入るかどうかは嬢ちゃんのがんばり次第だけど。
おじさんはあくまでサポート担当だから」
「がんばる……!」
鼻息を荒くしつつ、クー子は首を縦に振った。
なおクー子の願いとは煩悩と性欲にまみれたしょうもないものなのだが、信楽はまだそれを知らない。
まあ、知ったところでやっぱり肯定しそうな気もするが。
【クラス】バーサーカー
【真名】クー子
【出典】這いよれ!ニャル子さん
【属性】混沌・狂
【パラメーター】筋力:B 耐久:C+ 敏捷:B 魔力:B 幸運:C 宝具:A
(宝具使用時)筋力:A 耐久:B 敏捷:A 魔力:A 幸運:C 宝具:A
【クラススキル】
狂化:E
理性と引き換えに驚異的な暴力を所持者に宿すスキル。
Eランクなのでコミュニケーションは普通に取れるが、時折思い出したように暴走する。
【保有スキル】
直感:C
戦闘時、つねに自身にとって最適な展開を「感じ取る」能力。
また、視覚・聴覚への妨害を半減させる効果を持つ。
被虐の誉れ:B
肉体を魔術的な手法で治療する場合、それに要する魔力の消費量は通常の1/4で済む。
また、魔術の行使が無くても、一定時間経過するごとに傷は自動的に治癒されていく。
魔力放出(炎):A
武器・自身の肉体に魔力を帯びさせ、瞬間的に放出する事によって能力を向上させるスキル。
クー子の場合、攻撃に使う部位に燃えさかる炎が宿る。
邪神型宇宙人:B
「クトゥルー神話」という形で地球にその存在が伝えられた宇宙人の一族。
本質は神でなくとも、神という認識で見られるようになった存在。
対峙した相手にクトゥルー神話の知識があった時のみ、このスキルは同ランクの「神性」に変化する。
【宝具】
『どこまでも果てしなく加熱していく炎(クロスファイア・シークエンス)』
ランク:A 種別:対環境宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人
自分の周囲の大気を故郷・フォーマルハウトのものと同じ成分に変化させることで本来の姿に戻り、100%の力で戦えるようにする宝具。
元より高い戦闘能力がさらに上昇するが、魔力の消費も跳ね上がるため長時間の維持は困難である。
【weapon】
○機動砲台
クトゥグア族の基本装備。
形状には複数のバリエーションがあるようだが、クー子のものは手のひらサイズの火の玉型。
脳波によって遠隔操作され、レーザーを撃って敵を攻撃する。
○名状しがたいバールのようなもの(炎)
邪神界隈でポピュラーな武器。
クー子のものは炎属性がついており、攻撃時には先端に炎が灯る。
【人物背景】
クトゥルー神話において「生きている炎」クトゥグアのモデルとなった宇宙人と同種族の一個体。
幼なじみのニャル子とは毎日のように喧嘩を繰り返していたが、実は同性愛者でありニャル子にかまってもらいたいがゆえの行動であった。
高校卒業後はニート生活を送っていたが、惑星保護機構のエージェントとして地球に降り立ったニャル子を狙い、犯罪組織の用心棒に。
ニャル子に返り討ちにされるも、その後はコネを使って惑星保護機構に就職し地球に駐留する。
性格はマイペースで、何でも自分に都合よく解釈する癖がある。
また社会人でありながら子供のような言動が多く、「精神年齢は園児並」とも評されている。
【サーヴァントとしての願い】
ニャル子とハァハァ
【マスター】信楽
【出典】繰繰れ!コックリさん
【マスターとしての願い】
クー子の願いを叶えてやる
【weapon】
錫杖を武器として用いることがある
【能力・技能】
○変化
化け狸としての能力・その1。
「アニマルモード」と呼ばれる狸の姿の他、様々なものに化けられる。
ただし人間に化ける場合は顔や体格がいつもの姿のままであるため、「ごついおっさんが仮装している」ようにしか見えない。
むしろ、本当に仮装しているだけなのかもしれない。
○幻術
化け狸としての能力・その2。
他者に、現実と区別がつかないほどの幻を見せることができる。
【人物背景】
小学生・市松こひなに取り憑いた化け狸。
人間の姿を取っている時は編み笠と袈裟を身につけた、筋肉質のナイスミドル。
格好通り仏門に入っているらしいのだが、普段はまったく気にせずフリーダムに振る舞っている。
無職の上に酒好き、女好き、博打好きというダメ親父。
だが、たまに本気になると非常に頼りになる。
特に女性の巻き込まれたトラブルであれば、解決に努力を惜しまない。
【方針】
聖杯狙い。でも積極的に動くのは面倒なので、基本は待ちの姿勢。
以上で投下終了です
投下乙です。
>信楽&バーサーカー
なんとも微笑ましい主従ですが、その戦闘能力はかなり高めですね。
クー子と信楽の関係性も良好ですし、素直に強い主従となりそうです。
……それにしても、クー子の願いが本当にしょうもないなあw
投下します。
ありすは独りぼっちだった。
永遠とも、一瞬ともつかない朧気な時間をずっと彷徨っていた。
たった一人で、誰とも出会うことなく。
孤独で空虚な時間を、ずっとずっと過ごしてきた。
痛みと退屈、寂しさだけを胸にずっと歩いていた。
そこに道があったのか、それともある気がしていただけなのか。
そういう難しい、哲学的なことはありすにはわからなかったが、とりあえず歩いていた。
――景色が変わったのは、いつ頃からだったろう。
無味乾燥とした世界は彼女が見たこともないほど大きな建物や、明るい喧騒でいっぱいになっていた。
茫洋とした海の中を、一人、どこまでも歩いていた。
いつしか海には光が溢れた。魚が溢れていた。
世界はあまりにも眩しくて、楽しそうだった。
それでも少女の孤独は満たされない。
ずっとその海を歩んできた彼女だからこそ、それに気付いてしまったのか。
それとも、この水底で不気味に数を刻み続ける願望機が彼女の充足を望まなかったのか。
いずれにせよ、やはり彼女は足を止めることが出来なかった。
だって自分は相も変わらずひとりきりなのだから。
――――ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。
どこからか、謝る声が聴こえる。
それにありすは一度だけ足を止めた。
振り返ると、またあの子が泣いていた。
この子は誰で、どこから来たんだろう。
気になったけれど、彼女は何も答えてくれない。
当然、ありすと遊んでもくれない。
――――ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。
一体、この子は誰に謝っているんだろう。
許してあげればいいのに、なんて思いながら、ありすはまた歩き始めた。
ひたひた。
ひたひた。
足音が一つ多い。
どこまでもついてくる。
そう、どこまでも。
この子は何がほしいんだろう。
まだ解らない。いつか解る日が来るのかな。
――――ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。
――壊れたラジオのように繰り返される声を耳に、少女は旅をする。
【クラス】
タイムリーパー
【真名】
羽入@ひぐらしのなく頃に
【パラメーター】
筋力E 耐久E 敏捷E 魔力A+ 幸運E 宝具A
【属性】
中立・善
【クラススキル】
時の旅人:A
タイムリーパーは時を繰り返し、未来を模索した者である。
彼女は時間に干渉する能力の発動を即座に感知でき、その発動者を看破することが可能。
【保有スキル】
神性:A-
雛見沢村の守り神『オヤシロさま』そのもので、位は低いが紛うことなき神である。
しかしその力は長いループの中で摩耗しており、同時に神性も劣化の憂き目に遭っている。
気配遮断:EX
タイムリーパーは自分から実体化をしない限り、マスター以外の誰からも姿を視認されない。
その為に気配の感知も基本不可能だが、稀に波長の合った存在が彼女の発する物音や気配を認識することがある。
また、スキル発動中のタイムリーパーを害することは不可能。
無辜の怪物:A
オヤシロさまは血塗られた伝承に基づく神であるとされた逸話により、微弱ながらその在り方を曲げられている。
後述の宝具は、このスキルによって生み出されたもの。
奇跡:EX
このスキルは、現在封印されている。
【宝具】
『ひぐらしのなく頃に』
ランク:C 種別:対郡宝具
オヤシロさまは血塗られた伝承に基づく、残虐なる神である。
その暗黒史は、サーヴァントとして召喚された彼女に、彼女が最も憎んだ病の力を宝具として与えた。
タイムリーパーが存在する限り、その街や村は『雛見沢村』の概念を帯びる。同時に雛見沢へ眠る風土病『雛見沢症候群』もまた、街内に在住する全ての人間が共有して抱えることとなる。
この宝具はサーヴァントには効かないが、マスターであれば『人間』ならばいかなる存在であれ逃れられない。
タイムリーパーが消滅しない限りは、全てのマスターに疑心暗鬼による発狂死の危険性が付いて回る。
雛見沢症候群が完治することは本来決してない。しかし、もしも立ち込める疑心暗鬼を吹き飛ばして光の道へと発狂者を連れ戻す、そんな芸当が可能ならば――この宝具を破ることもきっと出来るだろう。そんな奇跡が起きるならば、だが。
『遙かなる社の神よ、祈りがもし届くなら』
ランク:EX 種別:対人宝具
この宝具は現在封印されている。
【weapon】
なし
【人物背景】
繰り返し、繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し――やがて旅が挫けたカケラから迷い込んだ、嘆きの神。
【サーヴァントの願い】
聖杯を手に入れ、梨花を救う
【マスター】
ありす@Fate/EXTRA
【マスターとしての願い】
特になし
【weapon】
なし
【能力・技能】
空間転移や固有結界レベルの魔術を使用できるほどの魔力量を持つ。
【人物背景】
儚げな印象の、人形のような少女。主人公の見立てでは「おそらくは10に満たない」という幼女。
見た目と違って実年齢はかなり高く、生前の国籍は第二次大戦期のイギリス。
ナチスドイツの空爆によって瀕死の重傷を負ったが、魔術回路が確認されたために強制的に延命させられ、数年間に及び研究用実験に使われた後に肉体は絶命した。だが精神は繋げられたネットに残り続け、電脳魔として生き続けることになる。
基本的に、遊びたい盛りの無邪気な子供。先述の事情で長らく苦痛と孤独を味わった反動から、寂しがり屋で人見知り。
――その正体は、サイバーゴースト。
肉体を持たない精神体であるがゆえに、身体的な制約を受けずに、巨大な魔力を扱うことが可能。脳が焼き切れることがないがゆえに、リミッターがない。ただし、それは魂が燃え尽きるまでの話。いずれは壊れるが定め。
【方針】
遊び相手を探す
投下終了です。
皆様投下乙です。
私も投下させていただきます。
むかしむかし、にんげんたちは「かみさま」のそんざいをしんじていました。
てんのうえのくににはかみさまたちがすんでいて、そこからにんげんたちのすむせかいをみまもっているのだと
みんながおもっていたのです。
わるいことをしたにんげんには、かみさまがばつをあたえるのだと。
よいおこないをすれば、きっとかみさまがみとめてくれるのだと。
かみさまがおこれば、てんちがあれてにんげんたちにわざわいがおこるのだと。
みな、うたがうことなくしんじていました。
ところが、ながいじかんがたつにつれてこういいだすにんげんたちがふえはじめました。
『このせかいには、かみさまなんていない』
にんげんたちのぶんめいがさかえるにつれて、かれらは「かがく」というものをしんぽさせていきました。
じゆうにほのおやかぜをおこすどうぐがつくられました。
そらをとび、うみのそこにもぐり、うちゅうにまでとびだすのりものもつくられました。
ゆびさきひとつで、かんたんにいきもののいのちをたくさんうばうぶきもつくられました。
そうしていくなかで、にんげんたちはしだいにこうかんがえだしました。
このよにかがくでとけないふしぎなことはないんだ、と。
むかしはかみさまがしていたとおもっていたことが、かがくのちからでそうじゃないのだとなんでもせつめい
されていきました。
そしてにんげんたちは、しだいにかみさまをしんじなくなっていきました。
―――――でも、ほんとうにかみさまはいないのでしょうか。
かがくがせかいじゅうにあふれても、かみさまをしんじるにんげんがいなくなったわけではありません。
でも、かみさまがいるというしょうこは、どこをさがしてもみつかりません。
ほんとうのことは、だれにもわからないのです。
それでも、このおはなしにはひとりのかみさまがすがたをあらわしました。
こことはちがうせかいから、だれかがつくりだした「はこにわ」ではじまるせんそうにひきよせられた
こころやさしいかみさまがいたのです。
そのかみさまはそのままのすがたでは「はこにわ」にはいれないことにきづきました。
だから、ためらうことなくじぶんのからだをふたつにきりはなしたのです。
むかしむかし、じぶんがそうしてにんげんたちのまえにあらわれたように―――――
◇ ◇ ◇
勝手知ったる自身の自宅――――に精巧に似せて作られた家屋。
その自室において、鹿目まどかは困惑していた。
自分は先日三年ぶりに故郷の日本に家族と共に帰ってきて、新たな学校生活が始まったばかりだった。
時々言い知れない違和感を感じる事もあるものの、クラスメートにも慕われ、平凡ではあるが幸せな日常を
送っていたはずだったのだ。
だが、彼女は自身も知らぬ間にこの『戦い』に巻き込まれていた事をつい先ほど思い知った。
いつものように下校途中、いきなり視界が暗転したかと思えば周囲は夜間その物。
自分は見知らぬ河川敷の下に佇んでおり、右手の甲に熱を感じて視線を向けるとそこには何やら十字を描く星の
ような謎の痣が刻まれていた。
一体何事が起きたのかと戸惑っていると、目の前には二つの人影。
光量が少ない場所故に人相は把握できなかったが、一人は男性であることが伺えた。
そしてもう一人は――――――――怪物のような異形としか思えない巨躯の存在だった。
驚く彼女の事情を知ってか知らずか、男の方は「こいつもマスターの一人か」だの「まだサーヴァントを召喚
していないのか」だの意味の分からない単語が混ざった言葉を紡ぎ、まさに絶好の獲物を見つけたと言わん
ばかりにニヤリと笑みを浮かべる。
そして間髪入れずに「やれ、バーサーカー」と脇に控える怪物に命じた。
逃げなければ。
そう本能で感じたが、目の前の相手の発する威圧感に完全に気圧され足が全く動かなかった。
一歩、また一歩と近づくバーサーカーと呼ばれた怪物が視界に広がるにつれ、彼女は半ば死を覚悟していた。
自分はもう助からない。
都合よく正義の味方でも現れない限り――――――
バーサーカーの巨腕に生える爪が、今まさに彼女の体を引き裂こうとしていた。
――――――だが、その時は結局訪れる事はなかった。
振り下ろされたはずのバーサーカーの片腕が、血飛沫をあげながら河川敷に転がっていた。
絶叫を上げて苦しむバーサーカー。
何事かと驚くマスターの男。
命拾いした彼女の視線に映ったのは、地面に突き刺さった一振りの剣。
一瞬だったため正確に確認はできなかったが、今自分の元に回転しながら飛んできたこの剣が、バーサーカーの
片腕を寸前で両断したのである。
彼女とマスターの男は、ほぼ同時に剣が飛んできたであろう方角に目を向けた。
そこにはやはり、何者かの影が立っていた。
そして月明かりを隠す雲が晴れると同時に、彼らに勇ましい声が飛んできた。
「弱い者いじめは、許さんッ!!」
そこから先はまさに流れるような出来事だった。
「こいつのサーヴァントか!」「奴を殺せッ!」
そうマスターの男が命じ、バーサーカーが動き出すよりも早くその影は素早く駆けだし、手にしていた槍の
ような武器をバーサーカーの胸に突き刺していた。
さらに先ほど投げつけた剣を地面から抜き放ち、バーサーカーを頭部から一刀の下に切り裂いたのだ。
「あ……? あ……?」
「お前のサーヴァントは消滅した。まだ戦うか?」
あまりの出来事に狼狽するマスターの男に対し、その影は剣を突き付けながら問いかけた。
ほどなくして、男は悲鳴を上げながら恥も外面もなく後ろを見せながらどこぞへと逃走していった。
運が良ければはぐれサーヴァントと再契約できるだろうが、もしも見つけられなければあのまま彼も消滅する
運命を辿るであろう。
その後まどかは自身を助けてくれた影―――否、サーヴァントであるセイバーに付き添われ、この場での自身の
家(という事になっている)まで無事に帰還し、状況を整理していた。
セイバーに助けられ、家まで辿り着く道中に自身の頭の中には様々な情報が入り込んできた。
聖杯戦争、マスター、サーヴァント、自身がいるこの偽りの世界、その他諸々。
如何なる願いも叶える万能の力を持つ聖杯を巡る殺し合い。
要するに自分は意志に反して巻き込まれたのだ。
あまりの突拍子もない情報に最初は信じられなかったが、先程のセイバーとバーサーカーの戦いを見せられては
疑う事などできなかった。
(どんな願いでも叶える、か……あれ? 何だろう、どこかで聞いた事があるような……)
「落ち着いただろうか、まどか」
その情報に何か既視感を様な物を感じたが、それを深く思い出す前に彼女の前にセイバーが霊体化を解いて姿を
現した。
先の戦いではきちんと認識できなかったが、こうして見るとセイバーの姿は異彩を放っていた。
まるで中世の騎士甲冑のような鎧にその身を包んだ姿は勇ましさを感じたが、彼の身長はマスターであるまどか
よりもやや小さいくらいだった。
特徴的な足音も加わって、一部の者が見れば「可愛らしい」と感じるかもしれない、そんな容姿だった。
実際まどかも最初に彼の姿をはっきり目にした時は、着ぐるみか何かを着ているのかと思ったほどである。
だがここまで来る道中の彼の態度ははっきり言って紳士そのものであり、突然の事態に困惑し続けていたまどかを
気遣いながら事情を説明してくれた彼に、最終的にまどかも信頼を置くようになっていた。
「……セイバー、やっぱり本当に私なんかが、その聖杯戦争のマスター……に選ばれたんだよね?」
「ああ。君のその右手の令呪、そして君自身も感じているだろう私との魔力のパス、それが紛れもなく君が
私のマスターである証拠だ。どうやら此度の聖杯は、ほぼ無作為に異世界からマスターを選び召喚している
らしい……すまない、君のような子をこのような争いに巻き込んでしまって……」
「ううん、セイバーは何にも悪くないよ。それにもしあそこでセイバーが来てくれなかったら、私……本当に
死んでただろうし」
「まどか……」
沈痛な面持ちで謝罪するセイバーにそう答え、まどかは感謝の意を示した。
だがセイバー自身は心中穏やかではなかった。
湧き上がるのはこの聖杯戦争のマスターを選出した、聖杯への憤り。
(何の罪もない彼女をもこのような戦いに巻き込むとは……何故なのだ聖杯よ? 事と次第によっては、
私はお前を断じて許す訳にはいかない!)
確かに中には自ら進んで戦いに赴いた者もいるだろう。
だがまどかは何ら聖杯にかけるべき願いをもたない無垢な少女だと先程までの会話でセイバーは理解していた。
一介のサーヴァントであるセイバーには聖杯の意思は把握できない。
だが彼はその意思に真っ向から反発した。
そのような事は、例え何者であろうと決して許されぬ所業なのだと。
「まどか、改めて確認するが、君には聖杯にかけるべき願いはないのだな?」
「うん。私には他の人を殺してまで叶えたい願いなんて一つもないし、こんな戦いなんてしたくない……できる
事なら私、この戦いを止めたい。もしかしたら私みたいに連れてこられた人達もいるかもしれないし、そういう
人達と話が出来れば、この戦いを終わらせる事も出来るかもしれない……でも私なんかの力じゃ、どう頑張って
も無理だと思う。だからセイバー、お願い、力を貸して欲しいの。セイバーの願いは叶えられない事になるのは
分かってる……けど――――」
「心配はいらない、まどか。私にも聖杯にかけるべき願いは存在しない」
「えっ?」
無理を承知で頼み込んだものの、セイバーの発言にまどかは驚きながらも耳を傾けた。
与えられた情報によれば、サーヴァントは自身の願いを叶える為に召喚に応じるはずなのだが―――
「確かに万能の願望機と言われる聖杯の力を使えば、如何なる願いも叶えることができるだろう。それが例え
世界全体の永遠の平和であろうと………だが、私は願いという物はあくまで自分自身の力によって叶えるべき
物なのだと考えている。もし仮に聖杯のような力を手にする事が出来たとしても、その願いを叶える為に何の
関係もない者達を犠牲にしていい道理など存在しない。例えそれがどれだけ切実な願いだったとしても……
だからまどか、私は君がマスターで本当に良かったと思っているんだ」
「でも……私は魔術師なんかじゃないし、喧嘩だってできないし、セイバーの役に立てるとは思えないよ……」
「いや、君は自分が思っているよりずっと強い。普通ならばこのような戦いに巻き込まれてしまえば怯えて目を
閉じ、逃げ隠れしてしまう者が多いだろう。だがまどかはこの聖杯戦争を止めたいと強く願った。それこそ
まどかが持っている強さと優しさの証だ。その遺志を忘れないでいてくれれば、私は喜んで君に力を貸そう」
「セイバー……」
例え力がなくても、セイバーは自分をマスターとして認めてくれた。
その事はまどか自身の心に強い励ましとして刻まれた。
そしてそれとは別に、まどかはセイバーに対して無意識の内に表現できない感情を抱いていた。
(何でだろう。よく分からないけど、何だかセイバーと話してると妙に懐かしい感じがする……まるで自分と
同じような人と一緒にいるみたいな………こことは違うどこかから来たみたいな――――――えっ?
何で私、そんな事思うんだろう……??)
「どうした、まどか?」
「――――ううん、何でもない。それより、セイバーって確かサーヴァントのクラスの名前……だよね?
セイバーの真名って、何ていうの?」
「確かに……まどかにはまだちゃんと名乗ってはいなかったな」
「私の名は、騎士(ナイト)ガンダム。かつて『ラクロアの勇者』と呼ばれた男だ」
「はこにわ」にやってきたかみさまがけいやくしたのは、ひとりのおんなのこでした。
そのおんなのこは、なんのちからももっていないふつうのおんなのこでした。
でも、ほんとうはそうじゃありませんでした。
おんなのこはもといたせかいでは、そのみにのろいをためこんだしょうじょたちをきゅうさいするために
ひとであることをすてた、かみさまのようなひとだったのです。
でも、あるときかみさまをあいしていたひとりのあくまのてによって、おんなのこはきおくとちからを
ひきさかれて、かみさまであることをわすれてしまいました。
いま「はこにわ」にいるのは、かみさまのちからをおいてきてしまったふたりのかみさま。
ふたりはほんとうにこのせんそうをとめることができるのでしょうか。
それはだれにもわかりません。
かみさまのいないこの「はこにわ」のたたかいで、ふたりはどうたちむかうのか。
それはまさに「かみのみぞしる」ことなのでしょう――――――。
【クラス】
セイバー
【真名】
騎士ガンダム@SDガンダム外伝
【パラメーター】
筋力B 耐久B 敏捷B 魔力C 幸運C 宝具A+ HP:500
【属性】
秩序・善
【クラススキル】
対魔力:B
魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。
大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。
【保有スキル】
光の騎士:A
世界を脅かす邪悪なる存在を滅ぼすべく導かれた戦士の称号。
同ランクの『直感』を保有し、悪魔・モンスター・邪神といった魔の属性を
持つ相手に対し、直接攻撃および宝具の威力が上昇する。
正義の印:A+
弱きを助け強きを挫く、英雄としての本質を示すスキル。
後述のとある理由により、セイバーの心には悪意という物が存在しない。
属性・悪を持つ相手と対峙した場合、筋力と敏捷のステータスが1ランク上昇する。
戦闘続行:B
如何なる状況においても決して諦めない不屈の闘志。
瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。
神性:-
神霊適性を持つかどうか。
セイバーは本来、異世界の12柱の神の一人たる存在であるが、とある理由によりその身体を二つに
引き裂かれ、神としての力を失ってしまっている。
【宝具】
『三種の神器を纏いし勇者(フルアーマーナイトガンダム)』
ランク:A+ 種別:対人宝具 レンジ:1〜3 最大補足:1人 HP:800〜10000
―――選ばれし者の許に 三つの星が集う時 大いなる力が 十の分身を生むだろう―――
ラクロア王国に伝説が残る3つの神器『炎の剣』『力の盾』『霞の鎧』を召喚する宝具。
かつて伝説の勇者ガンダムが身に纏っていたとされており、「全て身に付けたものは『10の分身』を生み出し、
地を治めることも、覆すことも、星を動かすことすら出来た」と言われている。
セイバーが持つ古の石版の呪文を唱える事で装着され、その力を本来の10倍に跳ね上げる事が可能。
ただしセイバー自身の肉体にも多大な負担をかけ魔力消費も膨大なため、長時間の神器の着用は危険である。
各神器の個別の召喚も可能だが、その場合は肉体への負担がない代わりに古の呪文の加護を受けられないため
10倍の力を得る事が出来ない。
また炎の剣を装備している場合、同ランクの『魔力放出(炎)』のスキルが付加。
力の盾・霞の鎧を装備している場合、それぞれ筋力・対魔力スキルが1ランク上昇する。
『全ての騎士の上に立つ者(バーサルナイトガンダム)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:- HP:2000
生前セイバーがラクロア国王レビルより、これまでの数々の功績を称えられ「バーサル騎士」の称号を授かった
際の姿へと自身を変化させる宝具。
この姿へと変わった場合、自動的にナイトソード・電磁スピアはそれぞれバーサルソード・電磁ランスへと
強化される。
身に纏うバーサルの鎧はかつてモンスター・ファントムサザビーとの戦いにおいて破壊された力の盾と霞の鎧を
鍛冶屋テムがナイトアーマーと白銀の盾を用いて新たに打ち直したものである。
その経緯故にこの宝具の発動には『三種の神器を纏いし勇者』を犠牲にする必要があるが、その後は永続的に
セイバーはこの姿で固定となり、全てのステータスが1ランク上昇・通常の攻撃力に1.5倍の補正がかかる
恩恵を得られる。
ただし魔力消費は通常時より増加するため、使用する時期には注意が必要である。
『闇を晴らす黄金の神竜(スペリオルドラゴン)』
ランク:EX 種別:対邪悪宝具 レンジ:1〜50 最大補足:100人 HP:15000
―――星降る時 大いなる地の裂け目から 神の板を持ちて勇者現る その名はガンダム―――
―――この世の終焉を問う空の裂け目が語る者をなくし その口を閉じし時一条の光と共に天に昇る―――
自身の本来の力を取り戻した、セイバーの真の姿(詳しい解説は後述)。
この宝具が発動した場合、スキル『神性:EX』がセイバーに付加される。
この姿となったセイバーは非常に強大な力を行使する事が可能であるが、この宝具の発動には本来セイバーの
半身である存在・ネオブラックドラゴンとの融合が不可欠であり、この聖杯戦争においてこれを再現しようと
した場合、令呪2画以上の使用は絶対不可欠である。
また彼の『真の意味で本来の姿』への変貌は此度の聖杯の力での完全再現は不可能の為、顕現する姿はかつて
闇の皇帝ジークジオンをムーア界において葬った際の姿『騎士スペリオルドラゴン』までに留まる事になる。
言うまでもなくその宝具の性質上行使できる時間は無理をしても数分が限度であり、発動後も完全覚醒まで
4〜5ターンの猶予が必要、下手をすれば使用後に魔力切れで消滅の危険も非常に高いため、この聖杯戦争の
期間中に使用できるか否かはセイバーとそのマスターの采配次第である。
【weapon】
・ナイトソード&ナイトシールド
スダ・ドアカワールドに降臨した時点でセイバーが手にしていた剣と盾。
セイバーの前身たる一人の武者が奪った伝説の武具「銀狼剣」「白銀の盾」が転移と共に変異した姿である。
宝具『全ての騎士の上に立つ者』発動後は、それぞれがバーサルソード・バーサルアーマーの一部へと変化する。
・電磁スピア
セイバーが最も長く愛用した騎兵槍状のスピア。
伸縮自在で、名前の通り根元の突起から発した放電を先端に集めて電磁スパークを放つ事も出来る。
伝承によっては、セイバーはこの槍を手に入れた事で勇者と認められたとも言われている。
宝具『全ての騎士の上に立つ者』発動後は、強化され電磁ランスへと変化する。
電磁ランスへ強化後は伸縮機能が失われるが、強力な電磁竜巻を発生させる力が付加される。
・石版
ラクロア王国に伝わる古の呪文が刻まれた石版。
宝具『三種の神器を纏いし勇者』を発動時に、召喚の為の呪文が浮かび上がる。
この他にセイバーは、鋼の斧・ケンタウロスレッグ・天空の翼といった武装を持っていたと言われているが、
彼が本当にこれらの武装を使用していたかは伝承が不確かな物が多いため、此度の聖杯戦争では持ち込まれて
いない。
【人物背景】
―――選ばれし者、騎士ガンダムの新たな冒険が今、始まる…―――
異世界スダ・ドアカワールドに雷光と共に現れたガンダム族の青年。
当初は名前以外の全ての記憶を失っており、ラクロア王国のフラウ姫をモンスターから救った後、自身と同じ
名を持つ魔王サタンガンダムの討伐に仲間と共に向かう事となり、その際にレビル王から騎士(ナイト)の
称号を授かっている。
性格は温厚かつ礼儀正しく、弱きを守り悪をくじく。正しい心を否定する者達とは誰であっても戦うという勇者
に相応しい人物だが、言い換えればあまりにも完成され過ぎた人格を持つ、ある意味「出来過ぎた」人物でも
ある。
その正体はスダ・ドアカワールドの12柱の神の一人である黄金神スペリオルドラゴンの善の心が分離し転生した
姿(正確には黄金神の憑代として召喚された異世界の存在『武者頑駄無真悪参(むしゃがんだむまーくすりー)』
の善の心が分離した姿だが、ここでの説明は割愛する)。
数々の戦いを経てガンダム族の末裔・アルガス騎士団と共にジオン族の本拠地ムーア界へと突入した際、自身の
記憶を取り戻し悪の心の半身たるネオブラックドラゴンと融合。神としての本来の姿を取り戻し闇の皇帝ジーク
ジオンを打倒した後、一条の光と共に天へと帰っていった。
その後もネオジオン族・デラーズ軍・ザンスカール族・デスペリオル族・創世軍オズワルドといったスダ・ドアカ
ワールドを脅かす悪と戦うその時代の勇者達の元に常に現れ助力し、自身も姿を変えながら力を取り戻していった。
古代神バロックガンとの決着後は新たなスダ・ドアカワールドの守護神サンボーンに後を託し、別次元へと旅立ち
人々の前からその姿を消した。
今回は本編シリーズ終了後からの参戦の為、黄金神としての記憶を保ったまま参戦している。
【サーヴァントとしての願い】
聖杯の力を借りて叶えるべき願いは一切持っていない。
今はマスターであるまどかを守り、命ある限りあらゆる敵と戦う。
――――神としてではなく、一人の騎士として。
【マスター】
鹿目まどか@魔法少女まどか☆マギカ【新編】叛逆の物語
【マスターとしての願い】
できる事ならこの戦いを止めたい
【weapon】
なし
【能力・技能】
本来彼女は『円環の理』と呼ばれる世界を構成する概念の一つと一体となった存在だったのだが、とある一人の
「悪魔」の手によって人としての記憶と力を分かたれてしまった。
現状、彼女は普通の少女と能力的に大差はない存在である。
【人物背景】
どこにでもいる平凡な中学2年生。
友達想いで心優しい性格の持ち主――――――だった少女。
彼女は宇宙からの来訪者によって願いと引き換えに呪いを振りまく悪しき存在と戦う事を定められた少女達を
救済すべく、人である事を捨て、皆の記憶から忘れ去られていった。
――――だが、来訪者達の思惑と一人の『悪魔』の愛が重なり合った結果、彼女はその身を引き裂かれ本来の
使命を忘れ去ってしまった。
本来であればいつ世界全体のシステムにバグを引き起こしてもおかしくないのだが、此度の聖杯戦争に呼びこま
れた現在はその心配はないであろう。
【方針】
自分と同じように巻き込まれたマスター達を探して協力を募る。
戦わなければならない時はセイバーを信じ、全力を尽くす。
投下終了です。
セイバーの設定に関しては、OVA版と漫画版を多少ミックスさせてもらいました。
HP500に愛を感じる
投下します。
――そこはまさに地獄だった。
「……フフフ、代行者ともあろうものが無様ですねぇ」
ジル・ド・レェは倒れ伏しているマスターと消滅寸前のセイバーを見下ろしていた。
セイバーは代行者でかなりの実力を持っており、マスターは相当な自信を持っており
ジル・ド・レェがサーヴァントにさせていたおぞましい行為から死徒と判断して
相性が良いとジル・ド・レェに戦いを挑んできた。
――それが主従の最後の戦いとなった。
セイバーのマスターはジル・ド・レェの魔術により無理矢理生かされおり
見るも無残な姿となっていた。
敵マスターを生かす無意味な行為はセイバーに屈辱を与えるためだけに行われていた。
マスターが消えればサーヴァントは消える、それではジャンヌを死に追いやった神の従者である
セイバーには優しすぎるという思いがあった。
セイバーは敗れてから、マスターを目の前で蹂躙されるという屈辱と自らの無力さに
憤死するのでないかというほど恐ろしい形相をして叫んだ。
「キサマァ!それほど神が憎いか!!」
思えば男が代行者である事を知ると、憎しみのこもった目で睨んできたが
よもやこれほどとは思った。
身動きが取れないセイバーは思考する以外の選択肢が存在せず
戦ったサーヴァントの事を考えた。
(だいたいなぜ攻撃があまり効かなかったのだ…?)
あれは魂喰いなんて物ではなく、もっとおぞましい行為でどうみても死徒であった。
するとジル・ド・レェはセイバーが何を考えているのか分かったのか
笑顔を浮かべた。
「その顔は私のサーヴァントの事ですかな?
残念ながら私のサーヴァントは死徒ではありませんよ。出て来なさいバーサーカー」
ジル・ド・レェが呼ぶと霊体化と解きバーサーカーが現れた。
スキンヘッドで顔の左側は無数の傷があり、左目は完全に潰れていて傷口を縫っていた。
服は昔の中国の民族衣装を着ており、爪は鋭くて長くセイバーにかなりのダメージを与える威力を持っていた。
「死徒ではないだと?では一体なんだ?」
「それは彼らが教えてくれますよ」
ジル・ド・レェが言うと、それまでバーサーカーの餌食だった死体達が起き上がった。
体が硬直しているのか、バランスを取ろうと腕を前に伸ばしてジャンプしながら
セイバーに群がって行った。
「グワァァァ!?」
絶叫を上げるセイバーにジル・ド・レェは笑顔で言い放った。
「バーサーカーはキョンシーなんですよ」
――セイバーとマスターがいなくなった場所で、ジル・ド・レェとバーサーカー以外に一人の老婆が現れた。
「私にも聖杯を使わせてくれるの?」
「ええ、もちろん。私と貴女は目的が同じですしね」
老婆の願いはバーサーカー、夫の蘇生でありジル・ド・レェはジャンヌの蘇生であった。
「では参りましょうか!聖杯戦争へ!」
バーサーカーに殺された者はキョンシーになりジル・ド・レェに従う。
当面の方針としてはバーサーカーに魂喰いをさせながらキョンシーを増やしていく事だろう。
ジル・ド・レェはそう行動方針を決めて聖杯戦争に足を進めた。
――ジル・ド・レェは笑いながら、他の者達に取っては笑えない地獄が現れようとしていた。
【クラス】
バーサーカー
【真名】
トン@キョンシー
【ステータス】
筋力A+++ 耐久A 俊敏A+ 魔力C 幸運E- 宝具C
【属性】
混沌・狂
【クラススキル】
狂化:EX
幸運と宝具以外のパラメーターを1ランクアップさせる。
バーサーカーはキョンシーであり理性など元から存在しない。
規格外ではなく特殊性を表す。
【保有スキル】
キョンシー:B
バーサーカーの種族。このスキルは同ランクの怪力、加虐体質、吸血、被虐体質を兼ねている。
またバーサーカーに殺された者はキョンシーになる。
キョンシーはEランクのサーヴァント扱いで、マスターに従う。
キョンシーに殺された者はキョンシーになり、まるで伝染病のように広まる。
代行者など西洋系の退魔術に対して同ランクの対魔力を持つ。
反面東洋の退魔術に対して幸運と宝具以外のパラメーターを2ランクダウンさせてしまう。
特に道教の魔術に対しては幸運と宝具以外のパラメーターを3ランクダウンさせてしまう。
キョンシーの弱点であるもち米や鶏の血、太陽の光など受けるダメージを増加させてしまう。
特殊スキル。
双子の幽霊:B
バーサーカーにとりついた双子の幽霊。
これによりキョンシーの特徴である死後硬直が無くなっており
より柔軟な動きができる。
真実の怪物:B
正真正銘の怪物。バーサーカーを見た者は倒すべき敵と判断する。
このスキルは外せない。
戦闘続行:C
瀕死の傷でも戦闘を可能とし、腕がもがれようと
太陽の光で体が消し炭になろうと死の間際までバーサーカーは戦うことを止めない。
単独行動:E
マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
ランクEならば、マスターを失っても数時間は現界可能。
【宝具】
『笑えないほど恐ろしい(キョンシー)』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:∞ 最大補足:∞
バーサーカーを見たNPCは恐慌状態になる。常時発動型宝具。
『死がふたりを分かつまで』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:-
バーサーカーの妻である老婆が現れる。常時発動型宝具。
老婆に戦闘能力は無く、バーサーカーの世話、マスターの会話などをする。
サーヴァントやマスターには正体がばれなければNPCと見分けがつかない。
【weapon】
なし。爪や毟り取った鉄の棒など何でも武器にして戦う。
【人物背景】
元は口は悪いが妻を愛していた年配の男性。階段から転落死を遂げ、妻の願いを受けた
道士の術によりキョンシーになった。しかし、術は失敗し恐ろしい大殺戮を遂げる事になった。
【サーヴァントとしての願い】
なし。(代わりに妻が願う。夫の蘇生。)
【マスター】
ジル・ド・レェ@Fate/Zero
【マスターとしての願い】
ジャンヌの蘇生。
【weapon】
螺湮城教本のみ。
【能力・技能】
マスターとしての参戦のためキャスターとしての能力は持っていない。
軍の指揮などの放蕩元帥としての能力は健在。
【人物背景】
百年戦争でフランス軍元帥を務め、救国の英雄とまでいわれた騎士。
しかしジャンヌを失って以降は青髭として悪逆非道の限りを尽くした。
雨生龍之介にキャスターとして召喚され冬木の町を地獄へと変えた。
【方針】
聖杯狙い。バーサーカーのスキルから誰にも見つからず魂喰いとキョンシーを増やしていく。
討伐対象にならないためにルーラーにはなるべく見つからないように行動する。
投下終了です。
すみません魔術を使用している描写があったため
×
【能力・技能】
マスターとしての参戦のためキャスターとしての能力は持っていない。
軍の指揮などの放蕩元帥としての能力は健在。
○
【能力・技能】
マスターとしての参戦のため死にかけの犠牲者を無理矢理生かす事はできるが
それ以外のキャスターとしての能力は持っていない。
軍の指揮などの放蕩元帥としての能力は健在。
に変更します。
今回は変な所で改行や「。」が入っていなくて良かったです。
wikiに入れる時はお手数で無ければ前回の[ディーン・ウィンチェスター&タオイスト]の
読みにくい改行や「。」は修正して下さい。
投下します
「やっと授業終わったー」
「帰りどこ寄るー?」
何の変哲もない学校で、何の変哲もない授業が行われ、いつもと変わらない放課後がやって来る。
来年には大学受験を控えた少年、來野巽もそんないつもの日常を愛する一人だった。
最近、クラスメイトたちが談笑する姿が妙に微笑ましく、尊いものに感じられることが多い。
感性が老けるにはいくら何でも早すぎる、と自分でも思うがつい頬が緩んでしまうのは仕方ない。
こんな時間がずっと続いていけば良い―――心の底からそう願う。
「俺も行くか」
巽には野鳥観察と読書という、今時の高校生としては些か渋い趣味を持っている。
ここ最近勉強に集中していたため出来なかった野鳥観察に繰り出そうとしていた。
愛用のスマートフォンにはこれまで撮影した鳥の画像が豊富に保存されている。
また新しいSDカードが必要になるな。そんな思考を浮かべた途端、頭痛が走った。
(あれ……?)
―――何かが、何かがおかしい。
俺はどうしてこんなもので撮影なんかしているんだ?―――いや何を考えてる。これは一人暮らしをする前に両親に買ってもらったスマートフォンじゃないか。
違う。そんな記憶ない。―――どうしてだ?そんなに昔のことじゃないはずだ。
そもそも何だこの機械は。―――何を馬鹿なことを。いつも使ってるじゃないか。
違う、違う違う違う違う。俺にはもっと、他にやるべきことがあったはず―――
「うぅっ………!」
右眼が疼く。耐えがたい熱と共に強烈な焦燥感に襲われる。
早く目覚めろ、思い出せ―――そう語りかけるかのように右眼が熱を帯びていく。
クラスメイトたちの奇妙なものを見るような視線に気づくこともなくよろよろと立ち上がり教室を出た。
きっと疲れているのだろう。今日のところは家に帰ってゆっくり眠ればまたいつもの日常がやって来る―――そう自らに言い聞かせながら。
相も変わらず治まらぬ右眼の発熱と格闘しながら、覚束ない足取りで家路を目指す。
普段はそれなりに人通りのある住宅街だが、今日ばかりは何故か人気がない。余計な雑音が入らないことが今は有難かった。
そう思ったのがいけなかったのだろうか。途轍もない破砕音が木霊し、ほんの十数メートル先の交差点から数人の人影が現れた。
「なっ!?」
「せ、セイバー!」
「追い詰めたぞ。速やかにとどめを刺せ、ランサー。宝具の解放を許可する」
「承知!」
彼らは路傍の石も同然の存在である巽など気にもかけない。気づきもしない。
巽が身震いするほどの威圧感が感じられたかと思うと、槍を構えた男が槍の穂先から細い熱線のようなものが放出され、剣を構えた男の胴体を丸ごと消滅させた。
力なく崩れ落ち、粒子のように消えていく男の肉体。傍にいた青年が悲鳴を上げながら巽のいる方向へ逃げていく。
「……申し訳ありません主よ。これ以上の戦闘行動は……」
「わかっている。あの程度の魔術師ならば私が仕留めてみせる。お前は休んでいろ」
槍を持った男も疲弊したのか薄ぼんやりとした姿になっており、もう一人の青年が近づいてくる。
何だこの光景は―――思い出せ。俺は知っているはずだ。
誰なんだあいつらは―――忘れるな。俺の敵であり、味方でもある存在なんだ。
そうだ、この光景は―――彼らの存在は、彼らの正体は――――――
「聖杯、戦争の…サーヴァント……!」
無意識に紡いだ言葉は引き鉄となって、眠っていた記憶を呼び覚ました。
ふとした偶然から巻き込まれた東京の聖杯戦争と自らに秘められた力。
無知で未熟なこの身に対して真摯に接し、そして自分の願いに殉じてくれたバーサーカー。
彼と誓った聖杯戦争の阻止という目標。
全てが奔流のように脳を駆け巡り、瞬時に全てを思い出した。
(何で忘れてたんだ!友達のことを!)
「む?見たところ、目覚めかけのマスターというところか?
生憎競争相手を増やすような趣味は持ち合わせていないのでな。敗残者共々消えてもらおう」
「させるか!」
今までは忘却し、封印されていた巽の唯一の武器。生物のあらゆる挙動を停止させる魔眼がランサーを従える魔術師を過たず捉えた。
相手の男は声も出せず、サーヴァントへの出撃命令を下すことすらもできない。説得するならば今しかない。
「聞いてくれ!俺は、この聖杯戦争を止めたい!こんな誰が開いたかもわからない、勝手に人を拉致してマスターに仕立て上げる殺し合いなんてどう考えてもおかしいだろ!」
巽にとって、守りたい対象は人間たるマスターだけではない。どう見ても人間と変わらないNPCを人と区別するようなことは彼にはできない。
何よりも、ここが東京でないとしても人を殺して勝ち残ることを良しとしてしまえば家族にも学友にも、バーサーカーにも二度と顔向けできない。
だからこそ、停止させた相手を殺す機会を捨ててでも対話で解決しようとする。
―――だが悲しいかな、世界が少年の切なる願いを聞き入れる理由はどこにもない。
それまで硬直していた青年が巽にはよくわからない呪文めいた言葉を口にすると、魔眼の拘束から解き放たれ自由を取り戻した。
「ランサー!」と従者の名を呼ぶと再び槍を持った男が顕現しその穂先を巽へと向けた。
これが素人の限界。青年は巽の魔眼に抗えるだけの熟達した魔術師だったのだ。
「しまった…!」
「まさか魔眼の使い手だったとはな。侮った非礼の詫びとしてこちらの最大戦力で仕留めさせてもらおう。
ああ、そういえば聖杯戦争を止める、などと言っていたか?それこそ、馬鹿げている。
一族再興の悲願を諦めろとでも?笑えん話だ。聖杯の真贋になど興味はない。この願いを叶えるに足る力があるのなら何であろうと手に入れる、それだけだ」
來野巽は魔道や神秘、そして魔術師の何たるかを知らずに育った。故に魔術師が重きを置く価値と願いを理解しきれないのは当然であり、この破談はまさしく必然である。
圧し掛かる英霊のプレッシャー。魔眼が通用する類の相手ではない。―――ではもう打つ手はないのか。否。この手にはマスターの証たる紋様がある。
令呪。聖杯戦争の戦闘代行者(サーヴァント)を統べる絶対命令権。この手にそれがあるならば、自分にも最後の武器がある―――!
「来い、いや……」
槍の男が動く。殺される。思考など一切必要なく、ただ本能のみでこの先に待つ事象を悟る。
それは、駄目だ。帰るべき場所がある。まだ為さねばならないことがある。まだ死を受け入れるわけにはいかない。
だからこそ――――――
「来てくれ、ジキル!!!」
―――未熟なこの身の助けになることを誓ってくれた、掛け替えのない友の名を呼ぶ。
魔力の奔流が周囲一帯に迸る。
槍の男、ランサーは瞬時にこの現象がサーヴァント召喚であると理解した。
先の一戦で既に魔力の消耗は甚大。されど令呪の援護を待つには遅すぎる。
ならば取る手は一つ。相手の力が分からぬ危険を冒しても先制の一撃でその命脈を絶つのみ――――――!
「なるほど、どうやらイレギュラーな状況のようだ」
甲高い金属音が一つ。ランサーの奇襲は失敗したという証左。
エーテルの光の中から聞こえる青年の声。その姿、輪郭が徐々に露わになっていく。
「ランサー、即座に奇襲を選んだ果断さは見事。だがそれならばこちらも相応の返礼をさせてもらおう」
剛剣一閃。顕現せしサーヴァント以外には視認も敵わぬ一撃がランサーの槍を高々と弾き飛ばす。
返す刀で横一閃。辞世の句を残すことさえも許されず、槍兵は首を撥ねられこの聖杯戦争からの退場を余儀なくされた。
青年が悲鳴を上げ、逃げ走っていく。サーヴァントはその姿を一瞥して背後―――レイラインによって感じられる召喚者をその瞳に映し出した。
「……ジキルじゃ、ない………?」
「サーヴァント、セイバー。真名をアーサー・ペンドラゴン。召喚に従い参上した。
問おう、君が私を呼び出したマスターか?」
―――かつて、戦争があった。
日本の首都、東京の闇で行われた七人七騎による聖杯を賭けた魔術儀式という名の殺し合い。
戦争と呼ぶに相応しい災禍を齎した英霊たちの中にその剣の英霊はいた。
災禍を止めようと奔走した魔術を知らぬマスターの少年が在った。
同じ戦争に身を投じながら出会うことのなかった二人が、ここに出会った。
【クラス】
セイバー
【真名】
アーサー・ペンドラゴン@Fate/Prototype
【パラメータ】
筋力:B 耐久:A 敏捷:B 魔力:E 幸運:A 宝具:C(EX)
【属性】
秩序・善
【クラススキル】
対魔力:A… A以下の魔術は全てキャンセル。 事実上、現代の魔術師ではセイバーに傷をつけられない。
騎乗:B …騎乗の才能。大抵の乗り物なら人並み以上に乗りこなせるが、魔獣・聖獣ランクの獣は乗りこなせない。
【固有スキル】
直感:A …戦闘時に常に自身にとって最適な展開を“感じ取る”能力。研ぎ澄まされた第六感はもはや未来予知に近い。視覚・聴覚に干渉する妨害を半減させる。
魔力放出:A …武器ないし自身の肉体に魔力を帯びさせ、瞬間的に放出することによって能力を向上させる。いわば魔力によるジェット噴射。
強力な加護のない通常の武器では一撃の下に破壊されるだろう。
カリスマ:B …軍団を指揮する天性の才能。団体戦闘において、自軍の能力を向上させる。
カリスマは稀有な才能で、一国の王としてはBランクで十分と言える。
【宝具】
『約束された勝利の剣(エクスカリバー)』
ランク:A++ 種別:対城宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:1000人
生前のアーサー王が、一時的に妖精「湖の乙女」から授かった聖剣。アーサー王の死に際に、ベディヴィエールの手によって湖の乙女へ返還された。
人ではなく星に鍛えられた神造兵装であり、人々の「こうあって欲しい」という願いが地上に蓄えられ、星の内部で結晶・精製された「最強の幻想(ラスト・ファンタズム)」。聖剣というカテゴリーの中で頂点に位置し、「空想の身でありながら最強」とも称される。
あまりに有名であるため、普段は「風王結界」で覆って隠している。剣としての威力だけでも、風王結界をまとった状態を80〜90だとしたら、こちらの黄金バージョンのほうは1000ぐらい。
神霊レベルの魔術行使を可能とし、所有者の魔力を光に変換、集束・加速させることで運動量を増大させ、光の断層による「究極の斬撃」として放つ。攻撃判定があるのは光の斬撃の先端のみだが、その莫大な魔力の斬撃が通り過ぎた後には高熱が発生するため、結果的に光の帯のように見える。その様は『騎英の手綱』が白い彗星ならばこちらは黄金のフレア、と称される。
彼の「約束された勝利の剣」は二重の封印が掛けられていて、剣自体に二重構造のギミックがあり、「風王結界」が解除されても、まだ鞘が付いている。
「強力な武器はここぞという時でしか使用を許さない」という円卓の騎士の決議があり、「この戦いが誉れ高き戦いであること」、「敵が自分より強大である事」など13の条件が半分以上クリアされると円卓の騎士たちの間で使用が可決され、拘束が解けていく。
鞘がついた出力半分程度の状態でもアルトリアの物を遥かに上回る威力があり、アーチャーの「終末剣エンキ」によって発生した都市を飲み込むほどの大波濤を一撃で蒸発・粉砕している。最大出力は最早想像できない領域にある。
『とびたて! 超時空トラぶる花札大作戦』ではアルトリアの物と区別するため便宜上、「エクスカリバー・プロト」と名づけられている。
『風王結界(インビジブル・エア)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1〜2 最大捕捉:1個
剣を覆う、風で出来た第二の鞘。厳密には宝具というより魔術に該当する。
幾重にも重なる空気の層が屈折率を変えることで覆った物を透明化させ、不可視の剣へと変える。敵は間合いを把握できないため、白兵戦では非常に有効。
ただし、あくまで視覚にうったえる効果であるため、幻覚耐性や「心眼(偽)」などのスキルを持つ相手には効果が薄い。
彼の剣を包む鞘の一つでもある。
【Weapon】
前述。
【人物背景】
円卓の騎士たちを率いて戦乱の時代を駆け抜けたブリテンの伝説的な君主であり、騎士道の体現として知られる騎士王。
善良なるものを良しとし、悪しきものを倒す、気持ちのいい正統派ヒーロー。本編では綾香を守る理想の王子様だが、同時に大人びた価値観と ニヒルな物言いで綾香を導く保護者的な存在でもある。一人称は綾香には僕で、敵には私。
前回の聖杯戦争で、聖杯入手直前にマスターから強制的に契約を破棄され、その後遺症から前回の戦いの記憶が曖昧である、と誤魔化している。
実はかなりの天然で、番外編に登場する度に拍車がかかっている。また途轍もない大食漢だが、アルトリアと違い、腹ペコキャラではない。
「騎士王」の名に相応しい英霊最高峰の剣技と、卓越した戦況把握能力、マスターの身を必ず守る優れた防衛能力を兼ね備える。
【サーヴァントとしての願い】
巽を助ける
【基本戦術、方針、運用法】
セイバーは強力なサーヴァントではあるがその分燃費に難がある。
巽は魔術回路こそ持っているが決して強力なマスターではないので主従の行動方針も併せて戦闘は必要最小限に抑えるべし。
特に宝具の解放は魔力消費が膨大な上に一歩間違えばペナルティ対象にもなりかねないため細心の注意が要求される。
戦闘中の判断はセイバーに一任するのが最適と思われる。
【マスター】
來野 巽@Fate/Prototype 蒼銀のフラグメンツ
【マスターとしての願い】
この世界の聖杯戦争も、東京の聖杯戦争も止める
【weapon】
なし
【能力・技能】
基本的に一般人だが母方の祖先が魔術師なため魔術回路を保有しており、隔世遺伝によって右眼に魔眼が発現している。
「見る」ことにより対象となった生物のあらゆる動きを停止させる能力であり、自らの力を把握していなかった時期でも趣味であるカメラのファインダー越しに「見られた」動物は妙に長く動きを止めることが多かった。
自分よりある程度格上の魔術師相手にも通用する能力だが、当然サーヴァントや極めて高位の魔術師などあまりにも抗魔力の高い相手には無効である。
【人物背景】
1991年の東京で行われた聖杯戦争のマスターの一人。マスター階梯は第七位。
世田谷の都立高校に通う高校2年生。成績も運動も中くらいで、趣味は野鳥観察と読書。
家族は両親と妹。受験を控えた巽だけが親元を離れて世田谷で一人暮らしをしている。
魔術も神秘も知らない普通の高校生の少年だったが、母方の祖父の遺品として送られてきた手帖の文章を読み上げることで、意図せずしてバーサーカーのサーヴァントを召喚してしまい、聖杯戦争に巻き込まれることになる。
バーサーカーから聖杯戦争の概要とその危険性、そして「正義の味方」として人々を守りたいという願いを聞き、巽自身も自分の街を戦火から守るためにマスターとして聖杯戦争に身を投じる覚悟を決める。
特別に悲壮な決意や超人的覚悟があるわけではないが、友人や身近な人々の住む街を守りたいという、人としてごく真っ当な正義感を持った少年。
今回の彼はバーサーカーを召喚してからアサシンに遭遇するまでの間から参加している。
【方針】
極力犠牲者を出さずに聖杯戦争を止める。
乗り気なマスターに対してはまず説得を試みる。
投下終了です
セイバーのステータス設定は「Fate/Fanzine Circle-聖杯戦争封神陣-」のキーア&セイバーを流用させていただきました
問題があるようでしたら取り下げます
皆様投下お疲れ様です
自分も思いついたものがありますので、投下をさせていただきます
「ひ、ヒィィィッ!!
すんません、勘弁して下さい!!」
夜の闇を明滅するネオンの光が照らし出す、娯楽を求める人々に溢れる繁華街。
その路地裏の一角で、腰を抜かし涙ながらに後ずさる黒いスーツの男がいた。
一目見て、その筋―――極道の者である事が分かる風貌だが、今の表情はそれが微塵も感じられないぐらいに情けなく歪んでいる。
その原因となっているのは、彼の周囲に倒れこんでいる、同じスーツを着た複数人の男達。
「ヒヒッ……なんや、もう終いか?
おもんないやっちゃなぁ……」
そして……その倒れこんだ男達を見下ろす、隻眼の男である。
「ま、ええわ。
暇つぶしにはなったしここらで勘弁したる……けどまたやりたかったら、いつでも来てええんやで?」
「そ、そんな事しません!
もう二度とやりません、足洗いますから!!」
好戦的に笑う隻眼の男に対し、このままではやばいという恐怖を抱き。
黒スーツの男は、必死になってその場を走り去っていった。
事の発端は、数分前に遡る。
繁華街を歩いていたこの隻眼の男と、黒スーツの男の方が偶然にもぶつかりあったのだ。
それに対して黒スーツの男が因縁を一方的につけ、共にいた仲間達と共に隻眼の男を路地裏に連れ込んだわけなのだが……
結果はこの有様だった。
袋叩きにして有り金を奪うはずが、逆にたった一人相手に殲滅させられたのである。
更に言えば、男の方は全くの無傷……どこかこの喧嘩に、物足りなさすら感じさせる様子であった。
「バーサーカァァァァァッ!!??
また何やってんだよお前はぁ!!」
そんな男―――バーサーカーの背後から、大声を上げて一人の中性的な少年が駆け寄ってきた。
彼の名はウェイバー・ベルベット。
この隻眼のバーサーカーをサーヴァントに従える魔術師。
聖杯戦争の参加者として、この地に足を下ろしたマスターである。
彼は本来、冬木で行われる第四次聖杯戦争に参加する筈のマスターであった。
しかし、飛行機を降り冬木の街へと到達した途端に彼はその意識を失い……気がついたときには、この街にいたのだ。
バーサーカーを名乗る、自身のサーヴァントと共に。
「イヒ……何してるて、見てのとおりやで。
喧嘩売られたから、おもろそうやったし相手してやったんや」
はっきり言って、予想外にも程があった。
本来ならば用意した聖遺物を使い征服王イスカンダルを呼び出す筈が、何故か現れたのはどこからどうみても強面のジャパニーズマフィアだ。
ただし能力だけを見れば、バーサーカーでありながら狂化のランクが低い為に意思疎通が可能。
パラメーターは幸運値を除けば標準的ではあるものの、逆にそのおかげでバーサーカーでありながらも魔力消費がそこまでかからずに済む。
そして使う宝具も強力と、当たりといえるサーヴァントだった。
その為、最初はウェイバーもこのバーサーカーの召還を喜び、これも自身の魔術師としての腕だと自信がついたものの……
「あのなぁ!?
お前、これでもう何度目だよ!
NPCどんだけぶちのめしてきたか、分かってんのか!?」
結論から言うと、ウェイバーは召還以来このバーサーカーに振り回されっぱなしであった。
まず、マスターの魔力を喰うにも関わらず霊体化を極力したがらない。
現界したまま、ちょっと目を離すと自分の意に沿わず好き勝手に動き回っているのだ。
気が付けば、いつの間にかカラオケボックスに入って歌ってたり、バッティングセンターで打ちっぱなしをしていたり。
挙句の果てには……如何にも過ぎる見た目と好戦的過ぎる狂気に満ちた性格故に、頻繁にこうして夜の街で喧嘩に明け暮れている始末だ。
本人は嬉々として自身に喧嘩を売る者達を叩きのめしている訳だが、ウェイバーとしては気が気じゃない。
そもそもサーヴァントと普通のNPCとでは、実力差には天と地程の差がある。
バーサーカーが軽くしばくぐらいで、そこら辺のNPCは簡単に虫の息に追い詰められるだろう。
「せやから手加減はしとるで?
NPC殺したら制裁あるっちゅうんやったら、殺さんかったらええ話やないかい。
第一、こっちは売られた喧嘩を買っとるだけや……立派な自衛や」
「だからって、幾らなんでも限度があるだろ!?
お前、もうここら辺で大分有名になってんのが分かってんのか!?」
NPCを故意に殺害したり危害を加えたりすれば、実行者の主従には制裁を課せられる恐れがある。
しかしこのバーサーカーの上手いところは、決して自分から喧嘩を仕掛けはせず、あくまで巧妙に相手から仕掛けさせているところだ。
そうすれば自衛が成り立つし、NPCにもきつい『お仕置き』を下すことこそあれど命を取りまではしていない。
曰く「つまらん罰受けて肝心の聖杯戦争がおもろなくなるんは嫌や」という事だが……
この色々な意味で狂気に満ちた思考は、流石はバーサーカーとしか言いようがなかった。
聖杯戦争の定石にのっとって慎重に立ち回りたいウェイバーからすれば、もう頭を抱えるしかなかった。
今では凄腕の喧嘩士としてバーサーカーは街でもそれなりに知れ渡っており、喧嘩を売ってくるNPCなど日常茶飯事だ。
これではその内、簡単に他の参加者にも存在を知られる事になりかねない。
いや、寧ろこのバーサーカーはそれを望んでいる節すらある。
「あぁぁ……何でこんなことに……」
「まあそう言うなや、ウェイバーちゃん……男やったらもっとどっしり構えろや。
その方が、ウェイバーちゃんの目指す名誉に箔がつくってもんやで?
それにの……こうして喧嘩をしているうちに、色々分かったこともある」
しかし。
それでいながら唯の戦闘狂ではなく知恵を働かせられるのが、このバーサーカーの喰えないところだ。
彼はこうして街中をうろつきながら喧嘩をすることで、細かい地理を頭の中に入れている。
どこに人が集まるか、どこで喧嘩が起こるか等を把握しているのだ。
更には街行く人々との『お話』の末に、色々と情報の交換をしていたりもする。
美味い飯が食える場所はどこか、情報通が集まるバーはどこか、最近街で何か変わったことはないか。
日常的な事から、社会の裏の少々込み入った事情まで。
そういった情報を満遍なく収集できているのは、流石は生前に巨大組織の組長をしてきただけの事はある。
「そりゃ……分かっちゃいるけど、さ……」
「なら、おどおどすんなや。
自分の腕を信じんなら、自分のサーヴァントを信じてみろや!
ワシはウェイバーちゃんが呼び出した自慢のサーヴァントやで……安心し。
このワシが、簡単に負けるわけないやないの」
そう胸を張って言われては、返す言葉もない。
確かに彼の言う事も一理あるし、ちゃんとそれなりには聖杯戦争の事を最低限考えた立ち回りはしている。
してはいる筈だ。
それに、何だかんだ言っても強さを信用しているのは事実……今は彼を信じて戦うしかないか。
「……わかったよ。
けど、本当に軽率なマネは控えてくれよな……こっちが気が気じゃないんだから」
「おう、分かったわ。
じゃあウェイバーちゃん、いっちょ景気づけにカラオケでも行こやないの!
臨時収入も入ったしのう、思いっきり歌ったるで」
そう言って、バーサーカーは笑顔で懐から札束を取り出しウェイバーに見せる。
その瞬間、ウェイバーは凄まじく嫌な予感がした。
臨時収入といったが、いったいどこからこの男はそれを手に入れたというのか。
「……ちょっと待て。
バーサーカー……その金、どうした?」
「ん?
さっきの連中からもらったで。
迷惑かけてすんませんって、ポンとお財布からの」
「だから何やってんだよお前はぁぁぁぁ!!??」
前言撤回。
やはりこのサーヴァントを信じていいものか不安である。
このキリキリと痛む胃の為にも、どうやら胃腸薬が必須の聖杯戦争になりそうだ。
【クラス】バーサーカー
【真名】真島吾朗
【出典】龍が如くシリーズ
【属性】混沌・狂
【パラメーター】筋力:B 耐久:C 敏捷:B 魔力:E 幸運:A 宝具:C
【クラススキル】
狂化:E
理性と引き換えに驚異的な暴力を所持者に宿すスキル。
真島の場合はランクが低いので理性を残しており意思の疎通は可能だが、筋力と耐久力に多少の恩恵がもたらされた程度。
ただし、面白そうと感じた戦闘や喧嘩が絡んだ場合は、そちらを嬉々として優先してしまう場合がある。
【保有スキル】
カリスマ:C
軍団の指揮能力、カリスマ性の高さを示す能力。
団体戦闘に置いて自軍の能力を向上させる稀有な才能。
バーサーカーのカリスマは、狂気の混じった思考をしていながらも巨大な組の長として大勢の組員を引き連れ、また彼等にもその思考が分かっている上でなお慕われている程度。
戦闘続行:A
名称通り戦闘を続行する為の能力。
決定的な致命傷を受けない限り生き延び、瀕死の傷を負ってなお戦闘可能。
バーサーカーの場合は、類希な幸運も相まってか生前に如何なる窮地に立とうとも再起してきた由来からこのスキルがついた。
心眼(真):C
修行・鍛錬によって培った洞察力。
窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す戦闘論理。
生前、チンピラやヤクザの大群に喧嘩を売られようとも、ゾンビの集団に囲まれていようとも、瞬時に最適な反撃方法を導き出し殲滅してきたが為にこのスキルがついた。
【宝具】
『嶋野の狂犬・隻眼の魔王(ヒート・オブ・マジマ)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1-15 最大捕捉:80人
バーサーカーの独特かつ強烈な戦闘スタイルが昇華され、宝具と成した物。
この宝具は、戦闘中においてバーサーカーの闘志が高ぶることによって発動が可能となる。
その際の高ぶりは、闘争への歓喜でも闘争相手での怒りでも構わない……様はバーサーカーが戦闘に乗ってきたらそれで良いという事。
宝具発動時には全身から青いオーラが立ち上るようになり、筋力と敏捷性及び心眼(真)のスキルが1ランクアップする。
そして後述する宝具『分身の極み』が発動可能となる。
発動すればバーサーカーの戦闘時の能力を底上げすることが可能だが、その分マスターの魔力消耗も相応に要求される。
『分身の極み(ハイト・オブ・マッドアバター)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1-15 最大捕捉:100人
生前、渡世の兄弟との激闘の最中に編み出した人間離れした絶技が昇華した宝具。
『嶋野の狂犬・隻眼の魔王』が発動している時にのみ使用可能となる。
バーサーカーの高ぶった闘志と魔力により、青白いバーサーカーの分身体を生み出す。
この分身体は敏捷性のみB・それ以外の全ランクはE-相当の独立した擬似サーヴァントとして扱われる。
ただし思考能力は独立しておらず、あくまでバーサーカーの意識に従い戦闘するのみ。
発動時にバーサーカーが持っていた武具もそのまま所持しているが、そのランクは1ランクダウンする。
【weapon】
『鬼炎のドス』
バーサーカーが生前愛用し続けてきた、黒い柄に桜の文様を散らしたドス。
このドスを生み出した刀匠は、業界において『決して彫ってはならないとされる鬼炎』を彫り込んで仕上げた後、
自ら鍛えたこのドスでもって動機不明の自害を遂げたという逸話を持っている。
その為、ドス自体に何かしらの呪いが宿っているのではないかという説もある。
『MJM56-55 Exorcist』
バーサーカーが生前、ゾンビの大群を相手に用いてきたとされる特殊改造を施した愛銃。
より速く、より派手に、より多くのゾンビを蹴散らす為に改造を施してきた最上級の性能を誇るショットガン。
弾丸は魔力によって精製される為、魔力が尽きぬ限りは弾切れを起こす心配はない。
【人物背景】
『神室町』と呼ばれる繁華街に拠点を置き、関東一円に活動してきた日本でも最大級の極道組織『東城会』。
その直系である真島組の組長として君臨し続けてきた、超武闘派極道。
素肌に直接羽織ったパイソンジャケットに、白蛇が描かれた左目の眼帯がトレードマーク。
そしてジャケットの下にある両肩には白蛇の、背中には般若の刺青が大きく彫られている。
生前は『嶋野の狂犬』『隻眼の魔王』という異名で呼ばれており、非常に好戦的かつ狂気に満ちた思考をしている。
その為に敵は勿論、自分の子分であったとしても非がある相手は容赦なく血祭りにあげる事もあったとか。
また彼に関しては様々な逸話があり、百人単位の敵をたった一人で壊滅させたという話もあれば、
とある平行世界ではゾンビをはじめ人外の化け物とも互角に戦ったという伝説まである。
本当に強い相手との本当の喧嘩を何よりもの楽しみにしており、面白いと思った相手を見つけると嬉々として喧嘩を売りに行く事もある。
かつて神室町で大量のゾンビが出現したとされる際には、目の前で組員がゾンビに殺害されたにもかかわらず
「本物のゾンビとやりあえる!がっかりさせんなや!」と笑いながら単身ゾンビの大群を狩りに行ったり、
自身より巨大なクリーチャーが一般市民に襲い掛かろうとした際には、市民を救うのではなく闘いたいが為に
「お前は俺の獲物やぁ!」と言ってクリーチャーをショットガンで殴り倒しに行くなどという噂まである程。
ただし、状況によっては狂気を感じさせない冷静な男気を見せる場面もあり、心から気に入った人間の為ならば力を貸すことを惜しまない一面もある。
本人曰く『正直者が大好き』であり、自分もまたそうだとの事。
その上でどこか気まぐれな性格でもある為、仲の良い人物からも「あんただけは読めねぇ」と言われることもあった。
また、閑古鳥が鳴いていたキャバレーを界隈ナンバー1にまで押し上げたり、建設会社の社長としてヒルズ建設等の大規模開発に着手したりと、
意外な商才を持っている。
【サーヴァントとしての願い】
聖杯にかける願いそのものはない。
ただこの聖杯戦争で、強くて面白そうな相手とやり合いたいだけ。
【マスター】
ウェイバー・ベルベット@Fate/Zero
【マスターとしての願い】
聖杯戦争に勝ちあがり、魔術師としての自身の実力を周囲に認めさせる。
【weapon】
なし
【能力・技能】
平凡な魔術師としての力量だが、本院は優秀であると自負している。
しかし、研究者としての洞察力・分析力は極めて高く、書物の独解や記憶・理論の解釈と再構築という面においては非凡の才を持っている。
また、他者の才を見抜きそれを開花させ伸ばす事に関しては天才的な素質もある。
【人物背景】
時計塔においてケイネス・エルメロイ・アーチボルトの門下生として魔術を学んできた学生。
魔術師としては歴史が浅い家柄の出身だが、それを自身の努力と才能で補えるとして奮闘し続けてきた。
しかしその結果が現れる事はなく、周囲の者達からは相手にされていない。
その為に名門と呼ばれる魔術師に対しては強いコンプレックスがあり、特にケイネスとは自身の論文を巡っての強い確執があった。
そんな中で聖杯戦争の話を聞き、これに勝ち上がることで自らの実力を証明できると考える。
そして参加を決意するやいなや、ケイネス宛に届いた聖遺物を横領し、聖杯戦争の行われる冬木へと向かうのであった。
【方針】
情報を収集しつつ、他のマスターとサーヴァントの確実な撃破をしたい。
しかし、あまりに好戦的かつ自由奔放すぎるバーサーカーに振り回されることが多い為、なかなか思い通りに行きそうにない。
以上で投下終了です。
皆様投下お疲れ様です。私も投下させてもらいます。
違和感というものはまるでなかったのだ。
だからこそ、ここが自分の居場所だと完全に思い込んでいたのかもしれない。
何が可笑しかったと感じ取れたのだろう?
記憶を辿っても見当がつかない。
一つ分かった事は――自分が聖杯戦争に巻き込まれ、マスターとして選出された事。
「どうして……僕なんかが」
真っ先に彼――先導アイチが口にしたのは情けない言葉だった。
聖杯戦争の存在も知らないし、何より彼は戦争とも無縁な時代の人間。
漠然としたイメージしか出来なかったものの。
きっと強くて怖い人たちが殺し合う、戦場なのだと考えれば
なら自分は戦場に放りこまれた兎のような存在であると自虐していた。
いつ、どうして、どうやって、何故自分が聖杯戦争へ導かれたのか。
アイチが思うは、自分なんかよりも参加するに相応しい人たちがいたのに彼らを踏み躙った申し訳なさと。
戦う意思も覚悟もなく、死ぬかもしれない状況でどうしたらいいかと迷う優柔不断さ。
「誰かを殺すなんて……」
生き残るためにはマスターたる存在を、サーヴァントなる存在を倒さなければならない。
平穏な世界とは無縁の殺害行為を、ただの少年が実行する決意を固めるのは難しい話だった。
先導アイチは、確かに気弱な少年である。
学校でもいじめられる機会も少なくなく、しかし優しい心の持ち主でもある。
彼に果たして願いがあるのか?と問われれば、無いわけではない。
そもそも、人間誰しも些細な願いの一つや二つ。ない方が変だ。
アイチはもう一度『彼』と出会い、カードファイトがしたかった。
薄汚れた昔の自分に対し、あるカードをくれた少年に……
『彼』はどこで何をしているのだろう。
この先、『彼』と巡り会う事は出来るのだろうか?
アイチの夢であり、願いであり、不安であったからこそ聖杯はそれを『願い』として受け止めた。
かもしれない。
聖杯の思考などアイチに理解できない。
だが無情にも聖杯戦争は開幕のベルが鳴り響く寸前。
悩む時間も惜しいというのに。
「阿蘇神社にあった蛍丸でーす。じゃーん。真打登場ってね」
アイチのサーヴァントが召喚された。
◇
「子供……?」
身の丈に似合わない刀を背負った子供――恐らくセイバーに対して、素っ頓狂な声を漏らすアイチ。
セイバーは少々むっとした表情で言う。
「何か不満? 俺がいれば楽勝だよ」
「え?! あ、いや、その……」
「ちゃんと敵は倒すし。いざとなったら守ればいいんでしょ」
「そ、そうじゃなくてっ……僕、人を殺したく、ないんです……」
平然と戦いについて語る子供のセイバーに、アイチは動揺しながらも何とか言葉を出した。
かき消されそうなか細い声なので、セイバーの耳に入っているかも怪しい。
恐ろしい沈黙の後、セイバーが問う。
「本当にそれでいいなら、いいけどさ」
「ご、ごめん。取り合えず……誰も殺さないで」
「はぁーい」
随分と間の抜けた返事をして、セイバーは霊体化をした。
アイチの方は安堵の溜息をする。
さて、聖杯戦争は結局どうするべきなのだろう。最初に誰も殺さなければどうにでも出来るはず。
(どうにかして逃げ出さないと)
戦場で逃げ出すなんてお前らしいなとクラスでは笑われるが、空想のイメージと現実は違う。
(本当に―――誰か死んでしまうかもしれないのに)
アイチには聖杯で願いを叶える勇気は無かった。
ただ、聖杯戦争を阻止する勇気があるかは定かではない。
【クラス】セイバー
【真名】蛍丸@刀剣乱舞
【属性】秩序・善
【パラメーター】
筋力:A 耐久:A 敏捷:E 魔力:B 幸運:E 宝具:D
【クラススキル】
対魔力:C
魔術詠唱が二節以下のものを無効化する。
大魔術・儀礼呪法など、大掛かりな魔術は防げない。
騎乗:E
申し訳程度のクラス別補正
【保有スキル】
直感:B
戦闘時、つねに自身にとって最適な展開を「感じ取る」能力。
また、視覚・聴覚への妨害を半減させる効果を持つ。
戦闘続行:E
名称通り戦闘を続行する為の能力。
夜戦:A
夜間の戦闘時、筋力と耐久が2ランクダウンする。
【宝具】
『鳴かぬ蛍が身を焦がす』
ランク:D 種別:対人(自身) レンジ:- 最大補足:1人
セイバーのマスターが就寝、気絶等意識のない場合にのみ発動。
セイバーに蛍が群がり、傷を修復する。霊体化して体を休めるよりも回復力は断然早い。
また、宝具を展開したまま戦闘が可能。
【人物背景】
刀工・来国俊が作成した大太刀。
第二次大戦後、連合軍により接収されて以後所在不明に。
それがサーヴァント(刀剣男士)になったもの。
【weapon】
大太刀
【サーヴァントとしての願い】
とくになし。マスターには一応従うつもり。
【マスター】
先導アイチ@カードファイト!!ヴァンガード
【マスターとしての願い】
誰も殺したくない。聖杯戦争から逃れたい。
【weapon】
なし
【能力・技能】
カードゲームに関わるある能力を持つが聖杯戦争では意味を成さない。
【人物背景】
普通の中学3年生。弱気な性格だが心は優しい。
参戦時期はアニメ一期第一話開始前。
投下終了です
投下させていただきます
朝、お母さんが起こしてくれる。
お母さんと一緒にごはんが食べられる。
お母さんが休日に、遊びに連れて行ってくれる。
それはとても幸せで、とても切ないこと。
◇ ◇ ◇
フェイト・テスタロッサがこの世界に招かれたのは、母の命令を受けジュエルシード回収に赴いた直後のことであった。
この世界には、フェイトが望んでやまなかった母からの愛があった。
だがこの世界の母は、あくまで仮初めの存在。フェイトが真に愛されたい存在ではない。
フェイトの目的はあくまで、母のために働くことだ。
不可抗力とはいえ任務を果たさず失踪したことで、母は怒っているかもしれない。
だがあらゆる願いを叶える聖杯となれば、それは捜索を命じられたジュエルシードに匹敵する秘宝だ。
持ち帰れば、きっと母も喜んでくれるだろう。
そして、昔のような優しい母に戻ってくれるかもしれない。
ゆえにフェイトは、聖杯戦争に乗ることを決意していた。
他人の命を奪うことに、良心の呵責がないわけではない。
だが他者を踏みにじってでも、フェイトはこの戦いに生き残りたかった。
本来のパートナーであるアルフは、この世界についてきていない。
仮初めのアルフならばいたが、この世界の彼女は何の能力も持たないただの犬だった。
今、戦力となるフェイトの味方は彼女が召喚したセイバーのサーヴァントしかいない。
◇ ◇ ◇
「今日も行くよ、セイバー」
深夜、フェイトは窓から抜け出して他の参加者を探しに出かける。
セイバーは彼女の言葉に無言でうなずき、その後に続いた。
フェイトはまだ、このセイバーの声を聞いたことがない。
別に障害や制約でしゃべれないわけではなく、極端に無口なだけらしい。
とにかく、そのせいでフェイトはセイバーについて多くを知らなかった。また、興味も無かった。
彼がどんな世界のどんな人物だろうと、聖杯へのどんな願いを持っていようと、知る必要はない。
自分に従ってくれるなら、そんなことはどうでもいい。
マスター権限で確認できるステータスさえ把握していれば、それだけで十分だ。
フェイトはまだ、セイバーの真名を知らない。
腰に妖刀を下げたかのサーヴァントの名は、クロノ。
正しい歴史ならば将来彼女の義兄となる男と、同じ名前を持つ剣士であった。
【クラス】セイバー
【真名】クロノ
【出典】クロノ・トリガー
【属性】中立・善
【パラメーター】筋力:B 耐久:C 敏捷:B 魔力:B 幸運:C 宝具:A
【クラススキル】
対魔力:C
魔術に対する抵抗力。
魔術詠唱が二節以下のものを無効化する。大魔術・儀礼呪法など、大掛かりな魔術は防げない。
騎乗:B
乗り物を乗りこなす能力。
魔獣・聖獣ランクの生物は乗りこなせない。
【保有スキル】
星の開拓者:EX
人類史のターニングポイントになった英雄に与えられる特殊スキル。
あらゆる難航・難行が、「不可能なまま」「実現可能な出来事」になる。
セイバーは人類史そのものを書き換え、滅亡から救った英雄である。
天魔法:B
雷や聖なる力を操る魔法。
セイバーは生前に修得した全ての魔法を使えるが、クラス制限により威力は減退している。
対エイリアン:B
宇宙からの侵略者を討伐した逸話に基づくスキル。
宇宙より地球に訪れた者に対し、与えるダメージが増加する。
【宝具】
『にじ』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人
「太陽石」と「虹色の貝殻」という、二つの秘宝の力を使って生み出された妖刀。
この世のものとは思えぬ切れ味を誇る。
またその魔力により使い手は感覚を研ぎ澄まされ、無意識のうちに防御の弱い部分を突けるようになる。
これにより、与えるダメージはさらに増加する。
『死の運命ねじ伏せる現し身(ドッペルくん)』
ランク:A 種別:対人宝具(自身) レンジ:― 最大捕捉:1人(自身)
死の運命を改変し生き延びたという逸話が、その際に使われた人形の形を取って宝具となったもの。
致命傷を負う瞬間に人形が本人と入れ替わり、死の運命を回避する。
発動すれば必ず破壊されるため、一度しか使うことができない。
【weapon】
冒険で使用していた装備一式
【人物背景】
カルディア暦1000年の世界で母と共に暮らしていた、ごく普通の青年。
だが偶然か運命か違う時間に移動する力を手に入れ、仲間たちと共に様々な時代で冒険を繰り広げる。
そして旅の果てに、1999年に世界を滅ぼす宇宙よりの悪意・ラヴォスと戦い、これを打ち倒した。
【サーヴァントとしての願い】
カルディア王国が滅ぶ未来(クロノ・クロスへ繋がる歴史)を消し去る。
【マスター】フェイト・テスタロッサ
【出典】魔法少女リリカルなのは
【マスターとしての願い】
聖杯を母に届ける。
【weapon】
○バルディッシュ
フェイトが愛用するインテリジェントデバイス。
斧や鎌として使用できる。
【能力・技能】
○ミッドチルダ式魔術
飛行や魔力を電撃に変換しての攻撃などが可能。
【人物背景】
魔術師プレシア・テスタロッサの娘。
母の命を受け、持ち主の願いを叶えるという秘宝「ジュエルシード」回収のため地球を訪れる。
その正体はプレシアの実子・アリシアの記憶を移植されたクローンであるが、本人はその事実を知らない。
今回は高町なのはと出会う前から参戦している。
【方針】
聖杯狙い。
投下終了です
投下します
―――気がついた時には、わたしはそこにいた。
お城の中じゃ見たことがない、柔らかい地面。
わたしの身体よりも大きな木。
今までいたはずの雪がいっぱいの山とはどこか違っていて。
これも、お爺さまの試練の一つなのかな、なんて思ってた。
「…」
何故か。
ふと、バーサーカーの姿が浮かんだ。
…あんなサーヴァント、いらない。
動かないサーヴァントなんて、何の役にも立たないもの。
帰ったら、この試練を合格したら新しいサーヴァントを呼ぼう。
そのためにも生き残って、お城に帰らなきゃ。
「…いいよ。これくらい、わたしひとりで」
わたし一人で、合格できるもん。
でも。
少しだけ、疲れた。
歩き続けた足はクルミの木の枝みたいで。
冷たい雪の上をあるいた足は、ひりひり痛む。
とすんと腰を下ろす。
そうだ、ちょっとだけ休憩しよう。
そうしたらまた歩き出そう。
きっと、少し経てば足の痛みもとれるはず。
「あ」
木に背中を預けて、空を見る。
視界に入ったの―――いつぞやの、クルミの芽。
「―――」
ソレを見ていると。
なんとも言えない気持ちになって、また立ち上がる。
…いかなきゃ。
だって、わたしは殺さなきゃいけないもの。
お兄ちゃんを。
そして聖杯を取らなきゃいけない。
わたしの生まれた目的を、果たさなきゃいけない。
ふらりと立ち上がる。
「え、あ」
ぽてり、と。
わたしの身体は、まるで糸を切られた操り人形のように、その場に倒れた。
痛みはない。
雪がとても柔らかくて、クッションになったみたい。
―――ああ、でも。
少し、眠いね。
白い雪はお母さまの肌みたいで。
舞う雪はお母さまの髪みたいで。
まるでお母さまに包まれてるみたいで、とても気持ちがいい。
…お母さまと違って、冷たいのは少し悲しいけれど。
やっぱり、少し休憩しよう。
少し眠って、起きたらまた歩こう。
…うん。そう決めると、少し気が楽になった。
「…お母さま、おやすみなさい」
すう、と小さく息を吐く。
それと同時にわたしの意識は薄くなっていく。
薄く、薄く。
深い眠りに、落ちていく―――
◇ ◇ ◇
『―――君が、俺のマスターか』
『ああ、そうか。君も―――』
『行こう、友よ。此処で死なせはしない』
◇ ◇ ◇
さく、さく、さくと雪を踏みしめる音。
まだ寝ぼけてる目を擦る。
いつもより高い目線。
昔、肩車された記憶が戻ってくる。
…暖かい。
―――それが、大きな赤い服の男に抱えられていると理解するのにそう時間はかからなかった。
「…だれ?」
「ああ、起きたのか。俺はマシン―――機械のサーヴァント。
真名を…『ハート』。君のサーヴァントだ」
「マシン…」
告げられた言葉を繰り返す。
ハート。マシン。わたしの、サーヴァント。
それは、おかしい。
「知らない。ハートなんて英霊、知らない。マシンなんてクラスも。
それにわたし、新しいサーヴァントなんて召喚した覚えもないわ」
「まあそう焦るな。話は暖かいところに出てからだ。
―――同じ作られた存在とはいえ、君は俺より脆い」
その言葉は、優しかった。
冷たかった身体も、今は大分暖まっている。
まるで昔からの友達に話しかけるような言葉は暖かくて、大きな身体はお父さんみたいで。
実を言えば。
この時、わたしは少しだけ安心していた。
「…ああ、何で自分が造られた存在ってわかったのかって顔してるな?
わかるさ。俺も君も、人間から見れば勝手に生み出され弄られた道具だ。創造物だ。
同じ種とも言える友のことを、見間違えたりはしないさ」
「…わたし、あなたと『友達』になった覚えなんかないわ」
そもそも、友達がなんなのかもわからない。
お城に帰れば、リズもセラもいる。
でも、友達じゃない。わたしに仕えてるだけ。
わたし一人でもできるのに、聖杯なんて取れるのに、補佐するために其処にいる。
「―――」
その言葉に赤の大男は何を思ったのか。
数秒黙り、何か考えるような素振りを見せた後―――
「…そうだな。確かにそうだ。俺としたことが忘れていた。
こういうことはちゃんと言わなきゃいけないな。
マスター―――良ければ、俺と友達になってくれないか?」
それは。
曲線一切なしの、直球の言葉だった。
「一人でできることは限られている。
一人の力で成せることなんて一握りしかない。
だから―――俺を友達として、君の願いに付き合わせてくれ」
それは、今までわたしが経験したことがない言葉で。
途轍もなく、真っ直ぐな言葉だった。
だから。
ほんの。ほんの、少しだけなら。
このサーヴァントを信じてあげてもいいかもしれない―――そう、思った。
「イリヤ」
「?」
「イリヤスフィール・フォン・アインツベルン。わたしの名前。
サーヴァントとしてなら、使ってあげる」
その言葉に、赤い大男は満足したのか。
片手で抱きかかえた状態で、わたしの掌を握った。
「ああ。よろしく頼む、イリヤ」
「…うん、マシン」
―――雪原に、男と少女が進んでいく。
それは。
人物こそ違えど、在りし日のクルミの冬芽を探したあの時に。
途轍もなく、酷似していた。
【出典】
仮面ライダードライブ
【クラス】
マシン
【パラメーター】
筋力:A 耐力:A 敏捷:D 魔力:E 幸運:D 宝具:C
超進化態時
筋力:A++ 耐力:A++ 敏捷:C 魔力:E 幸運:D 宝具:B
【属性】
混沌・中庸
【クラススキル】
機械生命体:A
人間ではない、機械より生まれた存在。
精神汚染などの類いを同ランクまで無効化する。
しかしこのランクが高ければ高いほど神秘は低下していく。
【保有スキル】
戦闘続行:A
瀕死の傷でも戦闘を可能とし、致命的な傷を受けない限り生き延びる。
彼の場合、耐え抜く力である。
異種の王:B
本来地球上に存在しない、自然から外れた種族の王の素質を持つ者。
しかしその在り方は人類の王に劣らない、誇り高き王の素質である。
人外に対するカリスマと人間に対する威圧感を発揮するスキル。
矜持:B
戦いに対する在り方のスキル。
それが正々堂々としたモノならば、誇りのある戦いならば彼はどんな状態にあっても十全の戦闘能力を発揮する。
【宝具】
『人類よ、この鼓動を聞け(ビート・オブ・ハート)』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:―― 最大捕捉:一人
彼の胸に露出している霊格そのものである心臓。
「相手の強さを受け、それを上回る」という能力。
戦いの中で成長し上回るという破格の宝具だが、心臓部が剥き出しになっているのと同義なのでこれそのものが最大の弱点でもある。
『人類よ、この歓喜を聞け(ディライト・オブ・ハート)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:――― 最大捕捉:1人
彼が『歓喜』という感情が極まった時のみ発動可能になる、彼の宝具。
超進化態と呼ばれる黄金色の形態に変貌する。
一度感情が極まればその後は自由に発動可能。
スペックが軒並み上昇しており、特に筋力と耐久を更に上昇させる。
周囲一帯を焼け野原にするエネルギー波、並の宝具なら優に耐えてしまうほどの防御力を秘めているが、胸の『人類よ、この鼓動を聞け』が弱点なのは変わらない。
『人類よ、この鼓動を聞け』もこの宝具の発動により耐久性は上がっているが、致命的な弱点なのは変わらないだろう。
『友よ、此の一撃を見よ(ラスト・オブ・ハート)』
ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:5〜30 最大捕捉:40
生前の彼の108の友と戦い撃ち滅ぼした109人目の友に放った、届かなかった男の拳。
生前発動されることのなかったこの宝具は、彼の全エネルギーを込めた最大の一撃である。
平常時でも周囲一帯を焼失させる力を秘めた彼が放つ一撃故、その威力は絶大なものとなる。
『人類よ、この歓喜を聞け』発動下でしか発動できない。
【weapon】
己の肉体。
光弾による攻撃や人間態でも扱える衝撃波など。
【人物背景】
狂気の科学者、蛮野天十郎に生み出されし機械生命体。
機械生命体ながらにして人間と同じ姿を持ち、感情を得て、己が願いのために動くその姿は正に人間そのもの。
彼の目的はただ一つ。
全人類にロイミュードという種の、己の強さを見せつけること。
殲滅ではなく支配。
だが、彼はその目的を果たせなかった。
だが、一人の友人を得た。
敵対していた、人間の。
今回の召喚では『人類に反逆した機械生命体』としてではなく『友を護る種の王』としての側面が強調されている。
人類という神秘に立ち向かう科学の人形は、新たな友の為に立ち上がる戦士となった。
【サーヴァントとしての願い】
もう一度人間に挑戦を、などと言うつもりはない。
この身は新たな友の為に―――その願いのために使う。
【マスター】イリヤスフィール・フォン・アインツベルン
【出典】Fate/stey night
【マスターとしての願い】
聖杯を取る。
【weapon】
○『天使の詩(エンゲルリート)』『コウノトリの騎士(シュトルヒリッター)』
イリヤの髪を媒介にして造られる小鳥サイズの使い魔。自立浮遊砲台。
銃身と本体の2パーツで構成されており、光弾を放つ他銃身そのものを剣の弾丸と化し放つこともできる。
しかしそうした場合、この使い魔は銃身を失うこととなるので攻撃の後に自壊する。
光弾を『ツェーレ(涙)』、剣部分を打ち出す光弾を『デーゲン(剣)』という。
【能力・技能】
破格のマスターとしての能力。
【人物背景】
「最高傑作」と謳われる、アインツベルンのホムンクルス。第四次聖杯戦争開始に先立ち、アイリスフィール・フォン・アインツベルンの卵子と衛宮切嗣の精子を用いて作り出された。
なお、ホムンクルスでありながら、その過程でアイリスフィールの母胎から「出産」されることで生を受けている。
生まれながらに「聖杯の器」となることが宿命づけられており、母親の胎内にいる間から様々な呪的処理を為されている。
しかし反作用として、発育不全・短命などのハンデも背負っている。
第四次聖杯戦争を経て母は亡くなり、父は裏切り者としてアインツベルンから遠ざけられる。
鋳造主であり育ての親とも言えるアハト翁による教育も手伝い、「キリツグは自分と母を捨てた」という誤解によって恨みの感情を募らせていく。
今回はバーサーカーとの絆を得る前より参戦。
そのため、本来の彼女より少し荒んでいる。
【方針】
聖杯狙い。
投下終了です。
>>426
にて真名の記載もれがありました。
【真名】
ハートロイミュード
になります
>鹿目まどか&セイバー
守る騎士と守られる少女というのは王道の組み合わせですが、それらとはまた違った独特の雰囲気がありました。
正統派にヒーローしてる騎士ガンダムは格好いいですね。
宝具の性能もかなり良いようなので、活躍が期待できそうです。
>ジル・ド・レェ&バーサーカー
まさかの鱒旦那。
鯖もキョンシーという強烈な絵面ですね。話の中では案の定の地獄絵図。
本編が始まったらすごいことになりそうだ……
>來野巽&セイバー
プロトセイバーきたあああ!
巽くんは原作ではああでしたが、引いた鯖がプロトセイバーというのは相当好調な滑り出しですね。
対聖杯派の希望となってくれそうです。
>ウェイバー・ベルベット&バーサーカー
龍が如く出身のバーサーカーですね。
それにしてもウェイバーちゃんはまたしても胃痛の凄そうなサーヴァントを引いたものだ。
イスカンダルのように、彼がウェイバーを変えるのかどうかが注目です。
>先導アイチ&セイバー
少年相応のメンタル、という感じですね。
聖杯で願いを叶える勇気はない、という描写がよかったです。
鯖の蛍丸の宝具やスキルも優秀なので、あとは本当にアイチ次第って感じかなあ。
>フェイト・テスタロッサ&セイバー
この時期のフェイトちゃんはやっぱり可哀想だなあ。
個人的には序文の四行がとても好きです。
鯖のクロノが未来の兄の名前と同じってのも面白いと感じました。
>イリヤスフィール・フォン・アインツベルン&マシン
ハート様だあ! エクストラクラス「マシン」での投下ですね。
クルミの冬芽探しに酷似していた、という文章がとても切ない。
なんというか、すごく救われてほしい主従でした。
投下します。
幼馴染の血糊が染み込んで赤黒く変色したアスファルトに膝を突いた。
サイレンの音と群衆の声が、喧しくいつまでも大通りの真ん中に木霊している。
まゆりは硬い道路へ打ち捨てられて、頭から明らかに致死量の血液を流し、腕があらぬ方向を向いていた。
どう見ても死んでいる。これで生きているなど人間ではないし、そんなことはありえないと俺自身が一番よく知っている。
哀れみの視線を憚ることなく注いでくる連中の中には、事切れたまゆりに携帯のカメラを向ける奴もちらほら見られる。
胸倉を掴んでぶん殴ってやりたい衝動に普段なら駆られるところだが、今の俺にはその余裕さえなかった。
椎名まゆりという少女を失ったことで悲嘆に暮れているから? ――いいや、違う。そうじゃない。心はじくじくと痛んでやまないが、それでも周囲が思っているほど、悲嘆は深くない。
まゆりは大切な仲間だった。
俺は誰一人としてラボメンを軽視してなどいないが、それでも付き合いの長さならこいつが一番長い。ぶっちぎりだ。
そんな相手を目の前で失っておいて、悲しみを覚えないなど人間じゃないだろう。
それでも俺は、彼女の死をどこか慣れたように見つめていた。
どこかでこの光景を見たことがある。
デジャヴという身体現象に襲われながら、俺はただ茫然とまゆりの死体を眺め……
頭に電流が走った。
もちろん誇張だが、そう錯覚するほどの衝撃であったことは確かだ。
――違う。デジャヴなんかじゃない。俺は、この光景を見たことがある。
鼻をつく血の匂い。
耳障りな声。
サイレンの音。
虚ろに虚空を見つめるまゆりの眼。
命の抜けたその体を見たことがある。
それも一度や二度じゃなく、何度も何度も、数えきれなくなるほど目にしてきた。
頭に穴を空けたまゆりの死体。
銃弾に胸を貫かれたまゆりの死体。
脳漿をぶち撒けて死んだまゆりの死体。
首が千切れたまゆりの死体。
傷もなく、綺麗なままで心臓だけが動かないまゆりの死体。
全身を緑のゲル状物質に変化させて、携帯電話の画面に映し出されたまゆりの死体。
そんな記憶がすべてよみがえると同時に、俺は走り出していた。
俺のやろうとしていたこと。
俺が、目指していたこと。
何もかも思い出した。
だから走る必要があった、少なくとも、あんな場所で嘆きに暮れている暇などなかった。
ブラウン管愛好者の男がぎょっとした。
血飛沫に濡れた白衣を見てのことだろう。
引き止める声を待たずに俺は階段を駆け上がる。
ラボは無人だった。
靴を脱ぐのも忘れて、ただ『それ』を探す。
電話レンジ――タイムリープマシン。すべての発端になった、その機械を。
何度も、それこそ数えるのが億劫になるほど使ったはずだ。
それがある場所など、当然忘れるわけがない。
そのはずなのに、それはどこにもなかった。
心の鼓動が早まる。じっとりと、背中を伝う嫌な汗があった。
すべてを忘れて過ごしてきた日常の時間を振り返り、その景色を述懐する。
……おかしい。
タイムリープマシンの話が、話題に上ったことがこの世界線では記憶する限り一度もなかった。
どくんどくんと鼓動がその響きを増していく。
嫌な音色だった。口が渇いて、せり上がってくる感情を堪えるだけで精一杯になる。
改造された電子レンジの姿がどこにもない。別な場所にレンジ自体はあったが、それは俺の知る電話レンジとはまったく違うデザインをしていた。そちらへ飛びついてみて、案の定全くの別物であることを確認する。
「馬鹿な……」
嫌な予感が、現実味を帯びていく。
体が震え始めて、足元ががくがくと覚束なくなった。
気を抜けばこのまま崩折れてしまいそうなほど、その可能性はおぞましく、恐ろしい。
この世界線は何かがおかしい。
記憶をなくしていたこと。
ラボの異変。
椎名まゆりが死亡するという予定調和こそ起こりはしたものの、それ以外の部分へ背筋が粟立つ違和感を感じる。
「タイムリープマシン、が」
本来ならありえないこと。
しかし、現に目の前ではそうなっている。
「存在……しない?」
それは――この世の何よりも、俺にとって絶望的な話だった。
押し寄せた目眩に抵抗もできず体制を崩し、うつ伏せに倒れ込んで息を荒げる。
まゆりは死んだ。ならば、やり直さなくてはならない。
時間を遡って、また次の世界線へ移動しなければならない。
しかしこの世界線には、それを可能とするためのタイムリープマシンさえ存在しないというのだ。
絶望感がとめどなく溢れてきて、気を抜けば自棄を起こしてしまいたくなる。
だって、こんなのは、あんまりすぎるだろう。
「――――違うッ!」
下の階に響くのも構わず床を殴りつけ、叫んだ。
駄々を捏ねる子供のようだと笑われても構わない。
それでも、俺にはそう簡単に諦められる話では断じてないのだ。
「違う……俺は……!」
しかし、こればかりはどうしようもない。
世界を変えようとしたことへの、罰とでも言うつもりなのか。
だとすればふざけるなと、一発殴り飛ばしてやりたい気分だった。
一発と言わず、神とやらの顔の形が変わるまで、馬乗りになって殴り殺してやりたくなる。
堰を切ったように涙が零れてフローリングに落ち、跳ねた。
記憶の中のまゆりの顔が、ぐにゃりと歪んで赤く染まる。
それはまるで、彼女の死が今度こそ避けようのない、絶対の事実として確定してしまったかのようで……
「諦めるの?」
そう。
これまでかと、本当に諦めかけた時、その声が響いた。
見上げた先にいたのは二人の女だった。
当然、ラボメンの中にこんな女はいない。
不法侵入、だとか。こいつらは何者だ、だとか。そういう考えよりも先に、俺は食いかかるように身を乗り出した。
「そんなわけ、無いだろう!」
一度は確かに諦めかけた。
もしも俺一人だったなら、きっとそのまま諦めてしまっただろう。
その後どうなったかは定かではないが、とにかく、彼女の声が俺をその選択へと至らせなかった。
「まゆりは死なせない……俺は必ず、あいつを救う!」
「でも、どうやって? 頼みの綱の便利な機械は使えないんでしょ?」
「ぐ……」
そこを突かれると、返す言葉に窮する。
そんな俺の様子を見かねてか、もう一人。
長身な方の女がくすくすと笑って、銀髪の女を窘めた。
「もう、あまりマスターを虐めるものではありませんわよ、メアリー。
単純なことですわ、マスター。機械細工などに頼らずとも、あなたの願いは叶えられます」
「何……?」
「聖杯を使うのです」
聖杯という単語には、当然俺も聞き覚えがあった。
かの聖人が、最後の晩餐に用いたといわれる伝説の聖遺物。
それを手に入れたものは、あらゆる願いを叶える力を得るという。
「そんなものが……」
「あるよ。だってこの世界は、その為にある偽物なんだ」
そして僕たちは、マスターの願いを叶えるために召喚されたサーヴァントなんだよ。
メアリーと呼ばれた女はそう付け足した。俺の頭の中に、再び蘇ってくる記憶がある。
――そうだ。どうして忘れていたのだろう。俺は本来、その為に此処へ来たのではないか。
「く……くく」
「……? マスター?」
「くくくくく――フゥーッ、ハッハッハッハッ! 思い出したぞ! 聖杯! それこそが、この俺が求める至高の聖遺物!!」
「あらメアリー、マスターが壊れてしまいましたわ」
「一発切っといた方がいいかな、アン」
「待てい! この鳳凰院凶真がようやく記憶を取り戻したというのに、なんだその反応は!?」
「僕らのマスター、こういう人だったんだね」
「つくづく、召喚主には恵まれませんわねえ」
肩を竦め合うサーヴァント達。
俺はもう完全に思い出した記憶の中から、サーヴァントについての知識を絞り出す。
確かサーヴァントは、人類史に名を残した英雄……有り体に言えば、歴史上の人物から呼び出されることが多いらしい。
眼前のこいつらは互いに「アン」「メアリー」と呼び合っていたが……もしや。
「……お前たち、アン・ボニーとメアリー・リードか……?」
「その通りだよ、マスター」
「大海賊時代の女海賊……ということはクラスは」
「ご明察。ライダーでございますわ」
俺は魔術師なんて高尚な存在と関わり合いになったことはない。
だから正直、この二人組のライダーが強いのかどうかを正しく理解は出来ない。
それでも、彼女たちを呼び出したのはこの俺だ。
信じるしかないだろう。俺は絶対に、聖杯を手に入れなければならない。
たとえ、それ以外のあらゆる願いを蹴落としてでも。
「それじゃ、よろしく頼むよマスター。
ここは何もかも嘘っぱちの町だけど、それでも――」
「面白い冒険が待っていそうですもの。精々期待していて下さいな、必ず聖杯を持ち帰って差し上げますわ」
「ああ。――任せたぞ、ライダー」
ここに、新たなる世界線が始まった。
【クラス】
ライダー
【真名】
アン・ボニー&メアリー・リード@Fate/Grand Order
【パラメーター】
筋力C 耐久C 敏捷A 魔力E 幸運B 宝具C
【属性】
混沌・悪/混沌・中庸
【クラススキル】
対魔力:D
一工程による魔術行使を無効化する。
魔力避けのアミュレット程度の対魔力。
【保有スキル】
航海:A
人類史に名を残す航海者の証。
Aランクは船乗りとして破格の域である。
射撃:B
射撃の才能。
主に此方のスキルはアン・ボニーに関係する。
コンビネーション:C
二人一組のサーヴァントとして発揮する連携。
メアリーが接近戦を、アンが遠距離戦を担当する。
【宝具】
『比翼にして連理(カリビアン・フリーバード)』
ランク:C+ 種別:対人宝具
アン・ボニーとメアリー・リード、二人の女海賊による速攻の連携攻撃。
メアリーがソード・カトラスによる切り込みからの連撃を叩き込み、アンは銃による射撃で敵を穿つ。
海賊としての習性か、彼女達が追い詰められていればいるほど、この宝具の威力は破格のものとなる。
【weapon】
メアリー:ソード・カトラス
アン:長銃
【人物背景】
大海賊時代に名を馳せた女性海賊。
ジョン・ラカム船長の下で活躍した。アンは銃の名手、メアリーはカトラスでの切り込み役を担当したという。
女性同士ということもあってか馬が合い、コンビを組んで海賊稼業に専念した。
ジョン・ラカムの船で誰より勇猛果敢に戦ったのはこの二人である、という証言が幾つも遺されている。
今回は異例なことに二人一組のサーヴァントとして召喚された。
ステータスへのペナルティは存在しないがどちらか一人でも倒れると、もう一人も問答無用で戦闘不能となる。アンは最初から親しみやすく、メアリーは最初はとっつきにくいものの、心を開くと誰より懐いてくれるタイプのサーヴァントである。
【サーヴァントの願い】
聖杯に託す望みはない。ただ、聖杯という代物だけを求めている。
【マスター】
岡部倫太郎@Steins;Gate
【マスターとしての願い】
ラボメンが害されることのない、平和な世界線を実現する
【weapon】
なし
【能力・技能】
なし。
自称はするかもしれないが、全部妄想である。
【人物背景】
悪辣な運命を良しとせず、時間を飛び越えて戦い続ける青年。
厨二病に塗れた言動とは裏腹に常識的・良識的な性格をしている。
【方針】
聖杯狙い
投下終了です。
<削除>
投下します
―――怨嗟の声が絶えず耳に届く。
―――ああ、それは自らが救えなかった者たちの嘆きか。
それは、とある愚か者のお話。
鋼の如き求道をひた走る、救済と断罪を求めた男の物語。
最初、男は神の道を志した若者であった。
神を信じる祈りが、信仰心から来る敬虔さが、遍く人を救うのだと信じる信徒だった。
彼は生涯の純潔を誓い、断種し去勢するほどに神へと滅私した。人は彼を狂信者と呼んだ。
けれど、それほどまでに尽くした神は、人を救うことはなかった。
国家による宗教弾圧などという、鋼鉄じみた人工概念によって神の慈愛が粉砕される姿を目の当たりにして。男はただ静かに呟いた。
「宗教(これ)では駄目だ。これでは誰も救えない」
男は教会を壊し聖職者を殺す不心得共を憎むのではなく、神の無力をそこに見た。
そして捨て去った。かつて狂信とまで呼ばれた信仰を、いとも簡単に。
人を救わぬ宗教観など須らく塵であると、冷静に、客観的に、そう評して。
弾圧からの逃避の果てに、やがて男は一人の少女と出会った。
寒村の教会、年老いた神父が見守る中で、無辜であるはずの少女は兵士たちに嬲り殺しにされていた。
神父は何も言わない。群衆は誰も救いの手を伸ばさない。
異を唱えたのは愚か者ただ一人。眼前の誰かを救うがため、愚直に突き進んでいく。
けれど結局、その手は少女を救うことなどできなかった。
ただ、救うことのできなかった者の叫びだけが、脳裏に色濃く焼き付いていた。
「神、英雄……つまるところ幻想とは、逃避だ」
彼の中で、何かが滅び何かが生まれた。
衝動のままに並み居る兵士を皆殺し、男を殺人の大罪で責めた老神父すらも、教会に飾られた巨大十字架で叩き潰した。
躊躇などそこにはなかった。誰も恨まなかった少女より重い価値を持つ者など、そこには誰一人いなかったのだから。
「滅び去れ、愚想を撒き散らす無力な偽善者たちよ―――私は今より、人間を救わぬお前たちの神を殺す」
そして彼は、自ら進んで世界の歯車となった。他ならぬ兵士として身を投じ、効率的に歩むことで無辜の民を救わんがため。
神という甘やかな幻想に縋るのではなく、国家や組織という現実の歯車に組み込まれることが、いかなる弱者をも救い導く最善手なのだと今度こそ信じて。
彼は、今も戦い続けている。
胸に誓う想いは二つ。願いはたったそれだけで。
願いながら戦い続ける。
世の裏を知らず、分からず、日々を生きる罪なき命に安寧を与えるべく。
アレクサンドル・ラスコーリニコフは生きて死ぬのだと心に誓ったのだ。
―――耳にこびり付いた慟哭はいつまでも消えてなくならない。
―――救えた者など、誰一人として存在しないのだから。
▼ ▼ ▼
走る、走る、走る。
ただ前だけを見据えて、少女は夜の街をひたすらに駆けていた。
―――追われている。それが、今の少女の現状を示す最も簡易な表現であると言えた。
「はぁっ、はぁっ、うくっ」
荒い息を肩で吐き、酸欠に陥りそうな体を叱咤して少女は尚も逃避を続けようとする。
背に突き刺さるように如実に分かる禍々しい気配が、こうしている間にもどんどん密度を増して迫ってくるようだ。命の危険があるという以上に、"それ"に追いつかれること自体が恐ろしいと感じる。
不思議なほど明かりも見えない夜の街に、少女の途切れそうな息遣いだけが虚しく響く。
周囲に広がるのは書割のような見知らぬ土地。影絵のような現実味のない街。
背後より迫り来るモノ同様、異界の気配を持つ異物であった。
少女―――電(いなづま)と呼ばれる、彼女は艦娘である―――は土地勘もない街を必死に駆け抜け、狭い裏路地も駆使してなんとか逃げようと足掻く。
曲がり角があれば身を隠すように滑り込み、できるだけ直線に走らないよう心がける。
なけなしの経験を振り絞り、追いつかれないよう努力したが、しかし。
「遅し遅し。変わり種とはいえサーヴァントでなければ所詮この程度か」
足元のコンクリートが鈍い破砕音と共に砕け散る。
突如の衝撃に吹き飛ばされ、思わず苦悶の声が漏れる。
投げ出された体がしたたかに打ちのめされ、全身を走る激痛に呼吸さえままならない。
気力を振り絞り、背後を振り返る。
そこには一目で異形と分かる人型が、片手を振りぬいた姿で屹立していた。
人間ではない。瞬時にそう悟る。
ならば先ほどの破壊も当然か? 異形の振るった腕が触れもしない地面を打ち砕き、あるいは生物や空間さえをも切断するのだという現実が。
いいや、そうではない。これは明らかに真っ当な理屈ではありえない。これほどまでに隔絶した存在など、現実にあってはならない。
怪物―――幼い少女が異形に抱いたイメージは、単純明快にそんな圧倒的な不条理であった。
「あ、貴方は誰なのですか!? どうしてこんなことを……!」
けれど、発したのはそんな必死の問いかけであった。目の前の存在は怪物、しかし言葉を話した以上、会話ができるならばあるいは、と。
そんな彼女元来の優しさと苦肉の策が混ざった問いかけは、しかし無情にも切って捨てられる。
「誰? どうして? これはまたとんでもない愚か者がいたものだ。未だサーヴァントを呼び出せていないのもそのせいかね。
ならばそれでよし、己が本分を見失ったまま逝くがいい、小娘よ」
そして、異形はその相貌を弦月に歪め、電へと一歩一歩ゆっくりと近づいてくる。
愚かなりと嘲笑う異形の右手が、少女の頭を覆うように伸ばされた。
どうして―――そんなもの、電とて当の昔に理解している。
聖杯戦争という万能の願望器を巡る争い。聖杯が願いを聞き届け、その結果として自分はここにいるのだ。
既に知識は与えられている。そして、不用意にも外を出歩いたのも自分の不徳。
ならば確かに、自分は愚かと蔑まれても仕方ないのかもしれない。
だから少女の物語はここで終わる。
目は閉じられ、耳は塞がれ、その手はどこにも伸びはしない。
ただ、異形の背後に広がる夜空を見て、思う。
―――もしも次に生まれ変わることがあったなら。
その時は、この街のように平和な世界に生まれたいと。
それだけを胸に秘めて、電は静かに目を閉じて―――
「―――やらせはせん」
暗赤の腕が少女に迫らんとした瞬間、甲高い音が反響した。
それは金属がぶつかるような凄まじい轟音で、空気を震わすその衝撃に少女は思わず身を竦ませる。
何が起こったのか、目を瞑っていた電には判別できない。故に恐る恐る瞼を開き、頭上を見上げると―――
「こ、この力……よもや寸でのところでサーヴァント召喚に成功したか、小娘!」
先までの余裕など嘘のように取り乱す異形の手を、電の更に背後より伸ばされた五指が阻んでいた。
歪み捻じれた異形の右手と、それを掴む武骨な鉄の拳。
両者が中空で、音を立てて重々しく軋み合っていた。
「……え?」
精神に差し込まれた空白が、ここでようやく声となって口から出る。
電はここに至り事態を把握し、徐々に目が驚愕に見開かれていく。
「……助けてくれた、のですか?」
呆然と、ただ呟く。
視線の先にあったのは、鋼のような体躯。
巌の如く聳える鍛え上げられた男の痩身が、電を守るように構えられていた。
「……!」
男は無言のまま、組まれた腕ごと異形の胴体へと拳を突き入れる。
単なる正拳、技巧を駆使した大仰な技ではない。だが尋常ではない速度がそのまま破壊となって異形を襲う。
少女を死に導く怪物であったはずの異形は、しかし風に散らされる木の葉のように吹き飛んだ。
拳打の風圧が少女の前髪を揺らす。
弾かれた異形の体がコンクリ壁を破壊する音が、一瞬遅れて少女の耳に届いた。
「下がれマスター、私が制圧する」
一切の反駁を許さぬ威風が、その鉄のような声にはあった。
少女はただ頷くと後ろへ下がり、男と異形の両者を見つめる。
既に、飛ばされた異形はその体を起こしていた。
「舐め腐りおって、たかが無手の雑魚サーヴァントがァ!」
異形の表情からは余裕の色は消え去っている。
一転して荒い口調で叫んだ異形は、しかし次の瞬間にはその場から姿を消失させた。
いや、速すぎて見えないのだ。少女の目には残像すらも映らない高速機動。それはただ動くだけで大気の壁を突き破り、まともに立つことも難しい衝撃波となって少女を襲う。
思わず尻餅をつく少女は、「この状況はまずい」と即座に思い至る。
なまじ戦闘経験がある故か、それとも生命の危機に際した直感か。ともかく、少女は異形と対峙する男に警告しようとして―――
「―――温い」
小さな、しかし鋼鉄の質量を有した言葉が紡がれた瞬間、何もない虚空から突如として異形が叩きだされた。
少なくとも少女の目にはそうとしか見えなかった。一瞬前まで何も存在しなかったはずの空間から、しかし突然異形が出現し、とてつもない轟音をまき散らしどこかへ飛んで行ったのだ。
高速移動する異形を、男が未来予知じみた正確さで叩き飛ばしたのだということを理解したのは、荒れ狂う空気が収まり戦闘の余韻が無くなった頃だった。
「……敵対象を殲滅した。怪我は、ないようだな」
その言葉が自分にかけられていると一瞬遅れて理解した少女は、慌てて元気よく「はいなのです!」と返した。
男は「ならばいい」とだけ答え、それ以外口を開くことはない。
沈黙が、その場に降りた。
「……あの、えと」
「……ランサーだ。私のことはそう呼ぶといい」
「あ、あの! ランサーさん、さっきはどうもありがとうございました!」
少女は一息に言い切ると、思い切り頭を下げた。
戦闘を目撃したことと見知らぬ男性を目の前にしたこと、しかしそれでもお礼は言わなければという思いが合わさり、彼女の心中は割と混乱の渦中にあった。
頭を下げて1秒、2秒と経過するも……しかし男からの返事は一切ない。
もしかして何かやらかしてしまったか、そう思いながら、少女は恐る恐る視線を上げてみた。
「……」
そこにあったのは、ほんの少し目を見開いた男の姿だった。
なんのことはない、男はただ面食らっていただけであった。
「そうか、それがお前の願いか」
「はい。電はみんなを助けたいのです」
先の攻防より幾ばくか、二人は深夜の公園に移動していた。
電はランサーと名乗る男に、自らの来歴を詳しく説明した。艦娘、鎮守府、深海棲艦。自分たちは共存不可能な敵と戦う存在であるということを。
ランサーは黙って耳を傾け続けた。そして、一通りの説明が終わると、電は聖杯を手に入れたいという前提の下、こう言ったのだ。
「それでも……戦争には勝ちたいけど、倒した相手もできるだけ助けたい……これっておかしいでしょうか?」
「奇妙極まるな。狂人の言としか思えん」
決死の思いで言った言葉は、一言で切って捨てられた。途端にしょんぼりと顔を下げる電に、ランサーは続けざまに言葉を放つ。
「現実を見ない知らぬ青い戯言、分というものを弁えぬ傲慢。お前の言う理想はただの愚想に過ぎん。
しかし、そうだな……それでもお前の願いは理解できる」
付け足されたような結びの言葉は、しかし電の顔を上げるには十分だった。
半信半疑といった表情の電に、ランサーは続けた。
「誰かを守る、誰かを助ける。ああ確かに、その想いは間違いなどではない」
守りたい、守りたかった。その思いは胸を突くほどに理解できる。
何故ならば、自分も幾度となく、そう願いながら取りこぼしてきたのだから。
終わらない生き地獄。救いたい者ばかりが救えない現実。捨てたはずの信仰心は、単なる軍規に変わっただけ。
何一つ変わらない現実に、せめて己を全うして職務に忠実足らんとしたこと。そしてその行き着く果ては、軍属という秩序すら喪失したものだった。
けれど。
「そして、お前はまだ進むことができる。お前のまま、どこまでも真っ直ぐに」
けれど、彼女は自分とは違う。彼女は哭いてなどいない。
苦難の果てに心をすり減らし、原初の誓いすら忘却する愚か者ではない。
救えない愚物となった自分とは違う。彼女はまだ歩いていけるのだから。
「いいだろう。元より私はサーヴァント、マスターの意向に異は唱えん」
「そ、それじゃあランサーさん……!」
「ああ、私はお前の方針に従おう」
相も変わらず、ランサーの顔は鉄面皮のままであったが。
その奥に在るのは、かつて誓った原初の想いであった。
▼ ▼ ▼
それは、とある愚か者のお話の続き。
鋼の如き求道を駆け抜けた、不器用なまでに一途な男の終末譚。
彼が抱く二つの願い。それは弱者の救済と、他ならぬ自身の断罪であった。
命とはなんだ、この世の不条理とはなんだ、私はついぞ欠片も分からなかった。今も何一つ見えていない。
故にどうか、真理に至りし覚者よ。いつか正しい行いで、この愚かな男を断罪せよと。
自らに願ったことは、ただそれだけ。
けれど、最後に出会った名も知らぬ少女は言ったのだ。
「あなたは私を助けてくれました」
「だからもう……ご自分を許してあげてください」
「たとえこの世の誰があなたを責めても……わたしが、あなたを許します」
その言葉を前に。
胸中に木霊するのは、かつて救えなかった少女らの声。
―――ねえ、神父様
―――ねえ、軍人さん
どうかお願い苦しまないで―――涙しながら叫びながら、助けにこなくていいのだと。
「……ああ、私は確かに、哭いていたのだな」
憎んでなどいなかった。誰もが、誰をも。
恨んでなどいなかった。誰もが、誰をも。
自分を許せなかったのは自分ひとりだけ。他ならぬアレクサンドルがアレクサンドル自身を許せなかっただけだったとすれば。
ずっと耳に木霊してきた怨嗟の嘆きも、自ら閉じた頭蓋の中だけで響いていたものだったとすれば。
「ならば……やはり私は、救いようのない愚か者だ」
断罪を求め、贖罪を求め、その過程でどれほどの声を聞き逃してきたのか。
少女の言葉がなければそんな簡単なことにすら気付けなかった自分は、やはりどうしようもない愚者でしかなくて。
「しかし、そんな愚かで至らぬ者ならば……許してやるのも、吝かではあるまい」
だから最後に、そんなことを思った。
彼の戦いはそこで終わる。一つの願いを果たし、一つの願いを自ら捨てて、男の人生は幕を下ろしたのだ。
―――瞼を閉じるその一瞬、かつての情景を思い出す。
―――あの少女はもう、泣いていない。
【クラス】
ランサー
【真名】
アレクサンドル・ラスコーリニコフ@Zero Infinity -Devil of Maxwell-
【ステータス】
筋力D 耐久D 敏捷E 魔力E 幸運C 宝具A
【属性】
秩序・善
【クラススキル】
対魔力:E(C)
魔術に対する守り。
宝具発動時にはランクが()内のものに修正される。
【保有スキル】
刻鋼人機:A
心臓に刻鋼式心装永久機関を移植され人間からサイボーグに生まれ変わった存在。Aランクならば己が陰我を見つめ形とする影装段階に達している。
心装永久機関とは使用者の精神力によって無限の力を発生させる機関であり、その戦闘力は精神力の多寡によって決定される。
肉体を損傷した場合は自動的に修復機能が働くために心臓の機関さえ無事ならば非常に効率良く短時間での再生が可能となっている。逆に言えば心臓を破壊されれば普通に死ぬ。
また、武装を展開しない通常時においては優れた隠密性を発揮するため、サーヴァントとしての気配を探知されにくくなる。
直感:B(A++)
戦闘時に常に自身にとって最適な展開を“感じ取る”能力。
ランサーのそれは積み重ねた経験によるものだが、宝具発動時にはその固有能力によりランクが()内のものに修正される。
勇猛:A
威圧・混乱・幻惑といった精神干渉を無効化する能力。
また、格闘ダメージを向上させる効果もある。
信仰の加護:-
かつて敬虔なる神の使徒であったランサーはその教えを捨て去り、然る後に得た歯車としての信仰さえも既に薄らいでいる。
彼はどこまでも軍人であるが、同時に他者の救いを聞き逃さんとする只人でもある。
【宝具】
『輝装・絶戒鉄槌(アブソリュート・ジャッジメント)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1〜10 最大捕捉:1
筋力C+ 耐久C 敏捷C 魔力B
手甲と具足型の鋼を纏い、身体能力を強化する輝装。
その能力は超音波反響。エコーにより周囲のあらゆる情報を音を基点に観測・把握すると同時に、拳からは強烈な振動波を伴った攻撃を打撃と共に送り込む。
ランサーの「命令という絶対的な方向性を完遂する」という秩序に殉じる生き様が体現したのがこの輝装。
音に対する異様なまでの超反応は「助けを求める者の声を聞き逃したくない」といった彼の深層心理も影響している。
『影装・絶戒刑刀(アブソリュート・パニッシュメント)』
ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:1〜30 最大捕捉:100
筋力A+ 耐久B 敏捷C+ 魔力A
手足のみならず肩や胸部までを覆い隠すように刻鋼が展開され、より威圧的な外見に変貌した姿は、さながら中世の重装騎兵を連想させる。
その能力は広範囲の振動結界。上述の輝装段階においては接触対象にしか振動を送り込めなかったが、この影装においては遠隔まで振動波を送ることが可能となる。
また同時に周辺の情報全てを反響音から知覚する超高性能な生体レーダーとしての機能を獲得しているため、索敵範囲外からの奇襲にも余裕を持って対応できるようになっている。
この状態のランサーには近接することも難しく、生半可な攻撃は振動結界に阻まれてしまうため、攻防一体の能力とも言える。
欠点は無差別な範囲攻撃であるため、味方すら巻き込みかねないということ。マスターが近くにいる状態ではとてもじゃないが発動できない。したらマスターが死ぬ。
ランサーの「宗教の戒律を捨て、軍の規律に乗り換えただけ」という自己への不信。
「憎むということは、まだ信じていることの裏返し。本当は救いたい、変えるべきは自分だ」という真実との葛藤により発現したのがこの影装。
影装がこういった振動兵器として発現した理由は、「激痛を生む過去から、周囲へ慟哭を振りまいている」という想いを体現しているから。
【weapon】
刻鋼人機としての拳、及び展開される鋼。
【人物背景】
時計機構に属する戦士にして、戦闘実行部隊ギアーズの隊長。第2次大戦中、たった独りで戦局を覆した”英雄”として知る者には知られているが、自身は頑なに英雄的な存在を否定するという矛盾した現実主義者でもある。
神や英雄といった愚想では誰も救えず、故に現実的な国家や組織の歯車となって人々を救おうとした孤独な求道者。
誰かの涙を嫌ったがために奔走し、そして救えぬ者の呪詛を一身に背負った不器用なおっさん。
マレーネルートの時系列から参戦。
【サーヴァントとしての願い】
人類種の幸福を求める。
しかし、軍人としてではなくアレクサンドル個人の願いを言うならば……
―――救いを求める声に、ただこの手を伸ばしたい。
今度こそ、幻想(かみ)や現実(ちから)などという題目に依らず、自らの意思で。
【マスター】
電@艦隊これくしょん
【マスターとしての願い】
深海棲艦との戦争を終結させたい
【weapon】
艦装
【能力・技能】
他の駆逐艦と同じくらい。
【人物背景】
大日本帝国が開発した、特Ⅲ型駆逐艦のネームシップ。
――が、深海棲艦に対抗すべく少女の形に当てはめられて再臨させられたもの。
気弱で恥ずかしがり屋。アニメの描写を見るに天然入ってる可能性もある。
なるべくなら戦いたくはない、沈んだ敵も出来れば助けたい、戦争には勝ちたいけど命は助けたいなど、「助ける」ことについては常日頃から色々考えている模様。
【方針】
生きるために戦うことに否やはない。しかしそれ以外で相手の命を奪うことには強い抵抗がある。
投下を終了します
投下乙です
自分も投下させていただきます
「ちょっと、散歩に行って来ます」
「はーい。暗くならないうちに帰ってきてね」
保護者に見送られ、夏目貴志は家を出た。
当初は不安を抱えていたこの地での生活は、すこぶる順調だ。
自分を引き取ってくれた藤原夫妻はとても優しい人たちだし、学校でもたくさん友達ができた。
文句のつけようがない生活だと言ってもいい。
なのになぜか、胸の奥に引っかかるものがある。
(何かを忘れている気がする……。いったい、何を……)
答えの出ない疑問に苛立ちを募らせながら、人通りのないあぜ道を歩く。
その時、1匹の野良猫が夏目の前を横切った。
(猫……ニャンコ……先生……。うっ!)
突如として激しい頭痛に襲われ、夏目はたまらずその場にかがみ込む。
頭の中に蘇るのは、怠惰だが頼りになる相棒と過ごした真実の記憶。
続いて、聖杯戦争に関する知識が流れ込んでくる。
右手には灼熱のごとき痛みが走り、令呪が浮かび上がってくる。
(ここは……聖杯戦争の舞台……。俺の本当の居場所じゃない……?)
混乱する夏目。その前に、巨大な影が出現する。
「なんだ、ずいぶんと貧弱そうな人間だな。お前がこの俺のマスターか?」
頭上から響く声に返答しようと、夏目は顔を上げる。だがそこにあった姿は、彼を驚愕させるようなものだった。
「ゲェーッ! 象の妖怪!」
我を忘れて、夏目は叫ぶ。
彼の前に立っていたのは、はち切れんばかりの筋肉を誇る巨漢であった。
だが、それだけではここまで取り乱すはずもない。
異様なのは、その顔。
下半分は露出しているが、上半分は毛皮で覆われている。
そしてその毛皮からは、象そのものの鼻と牙が生えていた。
一見すると覆面をかぶっているようにも見えるが、それにしては鼻の様子が生々しすぎた。
明らかに、血が通っているようにしか見えない。
「妖怪ではない! 俺は象の超人! そしてランサーのサーヴァントよ!」
胸を張り、男は叫ぶ。
「サーヴァント……。そうか、お前が俺のパートナーってことか……」
「どうやらそのようだな。しかし、面白そうだからと聖杯戦争に参加してみれば、マスターがこんな貧弱な人間とはな。
こんなハズレを引かされるくらいなら、もっと慎重に決めるべきだったぜ」
ハズレ呼ばわりされ、夏目は露骨に不服そうな表情を浮かべる。
だが自分の体つきが華奢なのは自覚しているため、言い返すに言い返せない。
「まあいい。それでマスターよ。お前が聖杯に望むことはなんだ」
「望み……。いや、特にないよ。俺は巻き込まれただけなんだ。
元の世界に戻れるなら、それ以上は何も望まない」
「なんだと……? ちっ、腰抜けが。
それなら、俺は好きにやらせてもらうぜ」
夏目の返答に失望した様子を見せ、ランサーはきびすを返す。
「待て、どこに行く気だ」
「お前に聖杯戦争を戦う気が無いのなら、俺は勝手に暴れさせてもらうだけのことよ」
「それは許すわけにはいかないな」
毅然とした口調で、夏目はランサーを制する。
「ここは戦いのために作られた世界だ。争いが生じるのは仕方ない。
けど、無計画に暴れるのは許せない。
ここには俺の家族も、友達もいる。たとえ俺の世界にいる本物の模造品だとしても、みんな心を持った人間だ。
その人たちを、危険に巻き込むわけにはいかないんだ」
「何を甘っちょろいことを。お前のような弱っちい人間の言うことを、俺が聞くとでも思うのか?」
「そのための令呪だろう」
臆することなく、夏目は右手の甲に浮かんだ令呪をランサーの眼前に突きつける。
「俺ならば、お前が令呪を使う前に殺せるぜ」
ランサーの牙が伸び、夏目の首筋に突きつけられる。
さすがに冷や汗を浮かべる夏目だったが、それでも視線はランサーから外さない。
「殺してどうする。マスターを失ったお前は、消滅するだけだ」
「別のマスターを見つければいいだけのことよ」
「そう都合よく見つかるかな。まだ聖杯戦争は始まったばかりなんだろう?
もうサーヴァントを失ったマスターが、そうそういるとは思えない」
「…………」
しばし、沈黙。
「ふん、命を奪われかねない状況でそれだけ吠えられるとは、度胸はそれなりにあるようだな。
多少は見所があると認めてやろう」
「それじゃあ……」
「しばらくは、貴様に付き合ってやる。ふふ、この俺が人間を守るなどという、正義超人のまねごとをすることになるとはな……」
「ありがとう」
微笑を浮かべ、夏目は握手を求めて手を伸ばす。
その手を、ランサーの大きな手ががっちりとつかんだ。
【クラス】ランサー
【真名】マンモスマン
【出典】キン肉マン
【属性】中立・悪
【パラメーター】筋力:A 耐久:B 敏捷:D 魔力:E 幸運:D 宝具:C
【クラススキル】
対魔力:C
魔術に対する抵抗力。
魔術詠唱が二節以下のものを無効化する。大魔術・儀礼呪法など、大掛かりな魔術は防げない。
【保有スキル】
超人レスリング:B
超人として生まれ持った才覚に加え、たゆまぬ鍛練と実践経験を重ねたリング上で闘う格闘技能。
Aランクでようやく一人前と言えるスキル。
ランサーは超人レスラーとしての活動期間が短かったため、経験不足によりBランク止まりである。
反骨の相:B
一つの場所に留まらず、また一つの主君を抱かぬ気性。自らは王の器ではなく、自らの王を見つける事ができない流浪の星。
同ランクまでのカリスマを無効化する。
ランサーは歪んだ歴史も含めると、3人の主に仕えながらそのいずれとも最終的に袂を分かっている。
連戦連勝:B
「4人抜き」の逸話がスキルとなったもの。
サーヴァントとの戦いに勝てば勝つほど、ステータスが上昇していく。
ただし一度でもランサーが敗北を感じると、効果はリセットされる。
友情パワー:―
ロビンマスクとの戦いで生まれた、小さな芽。
マスターとの関係性次第で、スキルとして目覚めるかもしれない。
【宝具】
『巨象の一刺し(ノーズ・フェンシング)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1-3 最大捕捉:1人
ランサーを象徴する必殺技。
鼻を鋭い刺突武器とし、敵の体を貫くシンプルにして強力無比な一撃である。
【weapon】
○ビッグタスク
伸縮自在な、2本の牙。
血に反応して本人の意志とは無関係に動くという恐るべき性質を持つが、
返り血などに反応して自身を襲う可能性もある諸刃の剣である。
【人物背景】
キン肉星王位争奪戦において、フェニックスチームに参加した超人。
元はシベリアの永久凍土の中で眠っていたマンモスだったが、超人として現代に蘇った。
一回戦ではビッグボディチーム相手に怒濤の4人抜きを見せ(しかも最後は、フェニックスの見せ場を作るため余力を残しながらもK.Oされた振りをした)、
その後もチームの主力として大車輪の活躍を見せる。
しかしフェニックスには捨て駒としか認識されておらず、決勝戦において見捨てられる。
それに激怒したマンモスマンはフェニックスの妨害を排除し、キン肉マンチームのロビンマスクと正々堂々と戦った末にその命を散らした。
後の世ではフェニックス、悪魔将軍と並び、「伝説の悪行超人」として語り継がれている。
時間超人によって改変された歴史では、未来より来たウォーズマンによって正史より早く目覚めさせられ、彼のタッグパートナーに。
だがウォーズマンでは彼の凶暴性をコントロールしきれず、彼を裏切ってネプチューンマンのパートナーとなってしまう。
さらにそのネプチューンマンをも見限り、最後はフェニックスと思わしき人物に連れられいずこかへと去って行った。
【サーヴァントとしての願い】
存分に暴れる。
【マスター】夏目貴志
【出典】夏目友人帳
【マスターとしての願い】
元の世界に帰る。
【weapon】
○友人帳
夏目の祖母・レイコが打ち負かした妖怪達の名前を記した記録帳。
ここに名前を書かれた妖怪は、持ち主の命令に逆らうことができない。
この聖杯戦争においては意味をなさない代物だが、強い神秘が宿っているため何らかの使い道はあるかもしれない。
【能力・技能】
○霊能力
祖母から遺伝した、非常に強い霊感。
妖怪をはっきり視認することができる。霊体化したサーヴァントも見えるかもしれない。
また本格的な修行を積んだことはないものの、その才能ゆえに簡単な術なら教えられさえすればすぐに修得できる。
【人物背景】
生まれつき妖怪が見える少年。現在は高校生。
両親を幼くして亡くし、妖怪が見えるゆえの奇行から疎まれ、親戚中をたらい回しにされる。
しかし現在は遠縁の藤原夫妻に引き取られ、実子同然の愛情を注がれて幸せな日々を過ごしている。
一方で友人帳や自身の強い霊力を狙われ、悪質な妖怪に幾度となく襲われている。
また人間・妖怪問わず困っている相手を放っておけない心優しい性格のため、自分からトラブルに首を突っ込むことも少なくない。
【方針】
生存優先。NPCへの被害も、可能な限り防ぐ。
以上で投下終了です
マンモスマンのステータスは、他の聖杯企画に投下されたキン肉マンキャラのものを参考にさせていただきました
投下乙です。
>電&ランサー
うーん、やはりアレクサンドルの生き様は好きだ。
電ちゃんはいいサーヴァントを引いたなあ。
争いを好まない駆逐艦の戦いがどこへ行き着くのか、非常に気になる候補作でした。
>夏目貴志&ランサー
後半の夏目とランサーのやり取りが凄い好きです。
サーヴァントにも臆さず向き合う夏目と、それを認めるランサーの流れが綺麗だ
ランサーはシンプルながらに強力な構成となっているようなので、戦力面も問題なさそうですね。
投下します。
二振りの剣が、幾度となく火花を散らし合っていた。
そうとだけ言えば剣豪同士の果たし合いであるが、その光景をいざ目にした者は、皆一様に怪訝な顔をするに違いない。
隻腕の端正な顔立ちをした男が、鎧にも似た装束を纏った奇妙奇怪な剣士と剣閃を交わし合っているのだ。
面、胴、小手、と時折鎧の底から聴こえてくるのはひょっとして剣道の掛け声であろうか。
実際には剣道家も裸足で逃げ出す速度と威力の乱舞が繰り出されているわけだが、それを向けられる男は驚いた素振りの一つとて見せることなく、一本だけの腕と細身の剣でそれを一発残さずいなしていた。
超人的な腕前と言う他ないだろう。
それは見る者のみならず、巨大な鎧の内で息を荒げる剣士も痛感していることだった。
(化物か、こいつは……)
考えてみれば当然のことだが、それでも改めてそんな月並みな感想を抱かずにはいられない。
断っておくが、猿投山渦に英霊という存在を見くびっていたつもりは誓って皆無だ。
かつて慢心から無様な敗北を喫した苦い記憶を省み、常に己の中の驕りを正視している彼にそんなことは有り得ない。
それでも、よもやこれほどまでとは思わなかった。
現の眼ならぬ心の眼を通じて繰り出す剣戟のすべてが、まるで予知されたように止められ、流される。
傷一つ付けられないどころか、その髪の毛の一本でももぎ取れたかどうかからして怪しい話だった。
挙動を予測して突きを放つ。
しかし相手はその更に上を読み、止めた。
止められてから猿投山は舌打ちをする。
今、自分は勝負を急いだ。
打った本人でさえ解る隙の大きさを、この英霊が見逃してくれるはずがない。
そしてその通り、乱舞の間隙を見つけた隻腕の剣士はそれを瞬く間に掻い潜り、猿投山へと肉薄を果たす。
「胴ォォ!!」
「悪いが、既に遅い」
とん。
息巻いて強烈な一撃を見舞わんと吼えた直後、猿投山の胸が軽く小突かれた。
彼はそれで動きを止める。
それから、ゆっくりとその猛る剣を下ろした。
光を絶ち、あらゆる感覚を己のものとした彼にはそれが何の音かが理解できてしまったからだ。
切っ先で胸を突かれた。もしも相手に殺す気があったなら、今ので間違いなく自分は死んでいる。
言い訳のしようもない、完膚なきまでの敗北だった。
……勝てないだろうとは内心思っていたが、これほどの差か。
いざ実感させられると、なかなかどうして響くものがある。
「気は済んだか、マスター」
「……ああ。これだけコテンパンにされちゃあな」
極制服の武装を解除すると、猿投山渦は苦笑をもって自らのサーヴァントへ向き直った。
完膚なきまでの敗北を喫したにも関わらず、そこに挫折の色合いはない。
端から負けを覚悟していたから? ――違う。彼は敗色濃厚と理解はしていたが、それでも勝ちをもぎ取ろうと奮戦した。
その結果、絶対にどうしようも出来ない実力差を思い知らされて敗北した。
ならば、今すべきことは情けなく敗走の悔しさに膝を抱えることじゃない。
これを次に活かすことで、この剣をより鋭く、力強いものにすることだ。
今此処に、猿投山渦が身命を賭して従うと決めた女傑の姿はない。
命令は下らないし、あの勇ましき威光が射し込むこともない。
だがそれでも、心の中はいつだとて彼女の輝きに照らされている。
ならば、失望されないようにしなければならないだろう。只でさえ、自分は前科持ちなのだ。
「俺も賛成だ。今日び願いを叶えるなんて、ずいぶんと胡散臭い触れ込みがあったもんだぜ」
「賛成というのは――聖杯戦争の解体、という俺の目的にか?」
「そうだ、アサシン」
この剣士は、セイバーのクラスで現界した英霊ではない。
さらに言えば、剣士という呼称も彼を表現する上では的外れなものである。
彼のクラスはアサシン。暗殺者。夜陰に乗じて事を成す、この世の影に住まう者。
暗殺者ならぬ忍者。忍びの英霊、うちはサスケ。それが、このサーヴァントの真名であった。
「聖杯なんざで簡単に叶えられる願いに、一体どれほどの価値がある――
皐月様ならきっとそう言うだろうからな。なら俺は、あの人の思う通りにするだけさ」
「皐月、とは……おまえの主か?」
「ああ。この猿投山渦が、生涯で唯一忠誠を誓ったお方だよ」
彼が今どんな眼をしているのかは、目を覆った帯のせいで窺えない。
だが、その眼はきっと晴れやかに澄み渡っているのだろうとアサシンは思った。
何故ならその青臭くも直向きな在りようは、彼がこれまで幾度となく見てきたものでもあったからだ。
形は違えど、似通ったものはある。
そう、きっとあの『ウスラトンカチ』も同じことを言うだろう。
猿投山渦と。
そして、皐月、なる人物と。
――聖杯に託し、叶える願いに価値はない。この聖杯戦争には、必ず奇跡の輝きに比類するだけの闇がある。
調べ、明かさねばならないだろう。
聖杯を破壊するのは無論のこととして、この戦争を企てた黒幕と、その目的を。
隻腕の忍は一人、怜悧な眼光を研ぎ澄ます。
その眼には、三つの奇妙な勾玉模様が浮かび上がっていた。
【クラス】
アサシン
【真名】
うちはサスケ@NARUTO
【パラメーター】
筋力B 耐久C 敏捷A+ 魔力A 幸運D 宝具A+
【属性】
秩序・中庸
【クラススキル】
気配遮断:A+
サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している。
完全に気配を絶てば発見することは不可能に近い。
ただし自らが攻撃態勢に移ると気配遮断のランクは大きく落ちる。
【保有スキル】
忍術:A+
火遁・雷遁の術を基本とし、様々な忍術を使用することが出来る。
アサシンは忍の道を極めた、一つの極致の体現者である。
単独行動:A
マスター不在でも行動できる。
ただし宝具の使用などの膨大な魔力を必要とする場合はマスターのバックアップが必要。
破壊工作:B
戦闘を行う前、準備段階で相手の戦力をそぎ落とす才能。
彼の場合はもっぱら忍術・トラップによる妨害が基本となる。
このスキルが高ければ高いほど、英雄としての霊格は低下していく。
千鳥:EX
対人魔剣/魔拳・千鳥。
腕や刃にチャクラを収束させ、雷遁の術の長所である切れ味を最大限活かして放つ彼の代名詞。
応用の幅は広く、投擲武器として射出する、槍や刀の姿を象る、全身から千鳥を放出するなど様々な芸当が可能。
また、一定の条件を整えた際には落雷を直接相手へ見舞う『麒麟』などの術が使用可能になる。
【宝具】
『写輪眼』
ランク:D+ 種別:対人宝具
うちは一族の血統にのみ現れるとされる特異体質、“血継限界”。
相手の行動を先読みしたり見切ることで相手の忍術・体術・幻術をコピーすることができる“洞察眼”、相手に幻を見せたり逆に精神属性の攻撃を無力化して跳ね返す“催眠眼”の能力と、さらに相手の異能を色彩で見抜く力を有している。これにより本来なら不可視の異能による攻撃を見抜くことも可能。
今回は同作のキャラが現れない限り、根本的に性質が違うためコピーできるものは体術や剣術のみとなる。
『万華鏡写輪眼』
ランク:A 種別:対人宝具
写輪眼の上位種。六芒星を模した紋様と中央に三枚刃の手裏剣の刻印がなされた特異な瞳。
視点のピントが合うと同時にその場所を焼き尽くす“天照”を発動可能になる。
あまりの灼熱に“炎すらも焼き喰らう”と作中で称されており、通常の方法では鎮火をすることもできない。
以上の性質を有するため、作中では“絶対に避けることはできない”“喰らったら終わり”とまで称された。しかしなんらかの予見ができたり、彼の視界から逃れるほどの速度で移動することができるのならば、回避することは可能。また、炎を自ら鎮火させたり、形を変えて盾や剣、己の技に宿したりすることのできる“炎遁・加具命”と呼ばれる瞳術も発動出来る。
『須佐能乎』
ランク:A+ 種別:対軍宝具
“万華鏡写輪眼”から派生する奥義。
強力な物理攻撃耐性、圧倒的な破壊力を持つ紫色・半透明の鎧武者を自身を媒介に召喚する瞳術。
そのステータスはサーヴァントすら大概の場合は凌駕し、圧倒的な力で押し潰す域に達している。
『輪廻写輪眼』
ランク:EX 種別:対人宝具
写輪眼が最終的に辿り着くとされる究極の瞳術――であるが、マスターの魔力回路量の問題などから発動不可能。
令呪三画を用いて自滅覚悟で使用を試みてもどうにもならない、それほどまでに膨大な魔力消費を必要とする宝具。
その代わりに、万一発動された場合起こる事象の程は余人の想像を凌駕して余りある。
【weapon】
長刀
【人物背景】
長い迷走と憎しみの末、救われた一人の忍。
【サーヴァントの願い】
聖杯の調査。及び聖杯戦争の解体
【マスター】
猿投山渦@キルラキル
【マスターとしての願い】
願いはない。皐月様に胸を張れるだけの戦いをする
【weapon】
三ツ星極制服『剣の装・改』
パワードスーツのような姿に変化する極制服で、これに加えて剣道の要領で繰り出す剣打を用いて戦う。
【能力・技能】
『心眼通』
彼は自ら光を絶つことで、超人的なほどに視覚以外のすべての感覚を常に研ぎ澄ましている。
【人物背景】
本能字学園生徒会四天王の一人で、役職は運動部統括委員長。
敗北を機に光を絶ち、『心眼通』を覚醒させることで弱点を克服した。
【方針】
聖杯戦争の解体
投下終了です。
高層ビルが立ち並ぶ市街地。
その中でも一際大きいビルの最上階で一人のマスターとサーヴァントが立っていた。
「貴様は聖杯に何を望む?」
二本の長い触覚の付いた簪を被り、黒い鎧を纏った大男のサーヴァントが尋ねる。
スーツ姿の中年のマスターはニヤリと笑いながら軽快に答えた。
「超人的な力だ。それもサーヴァントを超える圧倒的な力をだ」
聖杯の原理については分かっていない。
だがこれだけ大掛かりな街を作り出し、多数のサーヴァントを現界させるシステムを利用すれば
決して不可能では無い事だと察しはつく。
「貴様のその道具で足りぬのか?」
「足りんさ!権力も!財力も!そして暴力も!この程度で満足出来るかよ!!」
「くだらん願いだ。……だが」
このマスターは危険な人物だと一目で気づいた。
奴の底無しの欲望は、生前仕えて、そして斬り捨てた董卓に似ている。
「貴様の野心は気に入った。俺のマスターとして認めてやる
だが忘れるなよ。もし貴様が主として相応しくない男なら即座にその首を刎ねるからな」
「ふんっ、いいだろう。俺の采配を見せてやるよ。この高見沢逸郎がな!」
高見沢 逸郎。それがこのビルの所有者であり、巨大企業高見沢グループの総帥であり
このサーヴァントのマスターであった。
「俺の事はランサーと呼ぶがいい」
「分かったよ呂布」
「……!?なぜ俺の真名を……?」
「お前の外見は特徴あり過ぎるんだよ」
契約を再確認した後、高見沢は仕事へと戻った。
この世界でも生前と同様の役職が与えられている。
暇を持て余したランサーはマスターに酒とつまみを要求してTVを見ていた。
「なあマスター」
「なんだ?」
「いつになったら戦を始める気だ?」
「まだ夜は更けてない。それに情報が不足している。
何処にマスターがいるか?どんな方針で動いているか?
それらを調べて仕留めるか。こちらに組み込むかを決める」
生前の高見沢は多数の仲間と結託して
奇襲や騙し討ちなどあらゆる手段を用いて相手を殺害してきた。
それはこの聖杯戦争でも変わらない。
「そのような小細工をせぬとも我が武で蹴散らせば済むことよ」
「敵は一人じゃねえんだよ。何十人いるか分からんサーヴァント相手にそんな戦法取れるか」
「ふん。臆病風に吹かれては勝てる戦も勝てんぞ」
(それはお前だろ脳筋が。行き当たりばったりの行動を取ったから曹操に処刑されたんだろうが)
仕事を終えた高見沢は腕を伸ばして屈伸運動したあと立ち上がり
ソファーで寝そべっているランサーに呼びかけた。
「どうした戦か?」
「違う。こいつを見せてやる。俺の戦い方を知った方が作戦が立てやすいだろう」
高見沢は緑色のデッキをポケットから取り出した。
一見は玩具にしか見えないそれは、鏡の前に立ってかざすと
腰にバックルが装着され指を鳴らして「変身」と呟いてデッキをバックルに挿入。
すると高見沢の姿が一瞬にして緑色のスーツに覆われた。
「ずいぶん面妖な姿になったな」
「これが俺の『ライダー』の力だ。数分間なら鏡の中の世界にも入ることが出来る」
「なるほど、中々面白い」
「そしてカードの効果だが……」
その時、耳鳴りと共に鏡の中からカメレオンの姿をした怪物が姿を現した。
口をくちゃくちゃと鳴らしながら高見沢の顔をじいっと見つめている。
「餌か待っていろ。その内に他のマスターを捕食させてやるよ」
「この物の怪はなんだ?」
「俺の契約モンスターだ。こいつのおかげでこの力を使えるが餌代がかかるのが難点だ」
お預けをくらったバイオグリーザはしょぼんとしながら出ていった。
ペナルティを避けるためにNPCへの迂闊な捕食は高見沢に禁止され空きっ腹なのだ。
「さて、他のマスターの居所を調べるか」
変身を解いた高見沢はPCの前に座り、キーボードを叩く。
マスターならNPCと違い、何か変わった行動を起こしているはず。
小さな変化も見逃さず町中の情報を調べていけば尻尾は必ず掴める。
戦という物は武力以上に情報が生命線となる。
聖杯戦争において有利な立場を得るべく、部下のNPCも利用しての情報戦を開始した。
【クラス】
ランサー
【真名】
呂布 奉先@三国無双シリーズ
【パラメーター】
筋力:A 耐久:A 敏捷:B 魔力:E 幸運:D 宝具:-
【属性】
混沌・悪
【クラススキル】
対魔力:E
無効化は出来ない。ダメージ数値を多少削減する。
【保有スキル】
乱世の鬼神:A
戦乱の中で最強の武人の逸話を持った英傑。
戦場においてBランク相当の軍略、心眼(真)、戦闘続行の効果を発揮するが
闘争を好み、平穏を乱す災いとして世に仇名す。
勇猛:A
威圧、混乱、幻惑といった精神干渉を無効化する。また、格闘ダメージを向上させる。
反骨の相:B
一つの場所に留まらず、また一つの主君を抱かぬ気性。自らは王の器ではなく、自らの王を見つける事ができない流浪の星。
同ランクまでのカリスマを無効化する。
【宝具】
『無双乱舞』
ランク:- 種別:対人宝具 レンジ:1〜40 最大捕捉:50人
己の闘気を発動させ、強力な技を解放する宝具。
宝具を発動中はあらゆる攻撃を受け付けず、防御目的としても有効。
また宝具の発動条件として攻撃を受けるか、与えるかによって闘気を溜めなければならない。
この宝具の使い手は多数存在する為に神秘性を持たない。
『真・無双乱舞』
ランク:- 種別:対人宝具 レンジ:1〜40 最大捕捉:100人
瀕死に陥った際のみ使える究極の無双乱舞。
威力、発動時間共に上記の宝具を超えるがリスクも大きい。
また瀕死の状態でのみ、攻撃をせずとも闘気が上昇する。
【weapon】
方天画戟
【人物背景】
武芸を極め、弓馬に優れた猛将。
名馬赤兎馬を駆り、その鬼神の如き強さをもって「人中の呂布、馬中の赤兎」と称された。
力に最大の価値を見出し、自らの力への自信から社会的倫理を顧みずに生きた漢。
無双シリーズによって様々な結末を迎えているが
今回は下邳の戦において陳宮の話を聞かずに戦い、敗北して処刑されたシナリオから来ている。
【マスター】
高見沢逸郎@仮面ライダー龍騎 13RIDERS
【マスターとしての願い】
超人的な力を手に入れる。
【weapon】
仮面ライダーベルデのデッキ
鏡の前でかざすことでライダーに変身できるデッキ
自身の姿を消したり、他者の姿をコピーして化けたりとトリッキーな戦いに長けている。
【能力・技能】
社会的地位の高さを生かした策略とベルデに変身しての奇襲戦法を用いる。
【人物背景】
高見沢グループと言う巨大企業の総帥を務める38歳の実業家で、仮面ライダーベルデに変身する。
欲深い性格で、ライダーバトルに参加したのも「超人的な力」を手に入れるためである。
多数のライダーと手を組み、圧倒的有利な状況でトドメを差そうとするが
瀕死になったライダーが放った必殺技を受けて死亡した。
【方針】
戦いを有利にする為に仲間を増やし、邪魔者は始末する。
投下終了です
投下乙です
自分も投下します
『魏書』に言う。
董卓は司隷校尉劉囂に命じ、
官吏民衆に孝行でない子、
忠義でない臣下、清潔でない役人、
従順でない弟があれば記録させ、
これに該当する者があればみな誅殺し、財産物資は国庫に没収した。
そのため愛憎が互いに起こり、民衆の多くが無実の罪で死んだ。
太い男だった。
腕も、
脚も、
顔も、
体躯も、
性根も、
額に浮かぶエッジも、
恐らくはその股間のモノも、
何もかもが太い。
その太さは傍に侍る「いかにも」な恰好をした魔術師のサーヴァント―――キャスター―――と比べると殊更顕著に映った。
「主よ。」
やせぎすの従者が何かに気づき、足を止めた。一歩先んじていた主も振り返らぬままに足を止める。
「領土内に敵が侵入したようでございます。」
「………」
「……ッ」
首だけがこちらを向く。ぎょろり、と動いた太い眼に捉えられた時、キャスターは己が背に冷たいものが流れるのを感じた。
この視線には慣れない。いや、今後も慣れることは無いのだろう。主――――中華きっての魔王、董卓仲穎の眼光には。
「一組か?」
野太く、自信と威に満ちた声が狭い路地裏にこだまする。
すぐには答えられずごくり、と唾を飲み込んだ後、何とか従者が口を開き、応えた。
「は、はい。
彼奴等は我ら主従の恐ろしさを知らぬ不届き者。ここは心胆を寒からしめてから地獄に落とすために動くべきかと。」
魔王はふん、と鼻をならずと前に向き直り、ただ一言
「欲しい魔力を言え。」
そう答え、歩を進めた
失策であった。キャスターは心中後悔した。
主にはそう啖呵を切ったものの、対象に接近すればするほどキャスターの背筋から嫌な汗が吹き出してくる。
虎口とでも言おうか。まるで人を喰らう獣の口に近づいているかのようなーーーそんな錯覚が秒刻みに強くなるのだ。
対照的に董卓は望郷の念に駆られていた。どこかで嗅いだ匂いがする。近づけば近づくほどに心踊る、勇者の匂いだ。だが、これはどこで嗅いだ匂いだったか
「エフッ。」
何処であったか――――否、何時であったか。
遷都時… 否
虎牢関…否否
并州牧…否否否!!!
「エフッエフッエフッ!!!」
そうだ、今はっきりと思い出した。この匂いは劉協を担ぎ玉座に登った日に嗅いだあの獣臭。圧倒的な「暴」の匂いーーー!!!
「き、貴様がサーヴァントだな。」
「ハハハハハハハハッッッ!!!」
猛獣以上の男がそこに居た!!
「ハハハハハ!!笑いが止まらねェ!!
骨のあるマスターについてくるのがこんな虫ケラだとはなッ!!月にスッポンでもまだ足りねェッッッ!!」
漆黒のシャツからはみ出る金棒のような腕で手を叩き。
獅子を思わせるざんばら髪を震わせながら。男はさらに嘲笑(わら)う。実に楽しそうに嘲笑(わら)う。
そしてそれはキャスターの堪忍袋の尾をいともたやすく切らせしめた。
キャスター「ッッッッッッッッッ!!!」
怒りのままに奥義を放つ……直撃したがまるで聞いた様子はない。男はポケットに手を入れたまま酷薄な笑みを浮かべている。
驚愕し、もう一度奥義を放つ……魔術の雨を浴びながら、日向を散歩でもするかのように歩いてくる。相変わらずポケットには手を入れたままだ。
焦り魔力障壁を放つ……そのままぶつかるが、意に介さない。ハンドポケットのまま歩き、体ごと魔力の壁をブチ抜く。生涯をかけた技が一つとして通用しない。
男が目の前に立つ…動揺で動けないキャスターの胸に男の手が置かれる。
手のひらを握る…カステラでも千切るかのようにキャスターの肉が霊核ごと抉られた。
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッッ!?!?」
声にならない叫びをあげながら地に伏すキャスター。
「おおおっ!!」
従者がやられたことなどどこ吹く風。
まるで天まで届く黄金を見つけたような、感嘆の声をあげる董卓。
最早その目には目の前の男しか映っていない。バーサーカーの背後から現れたマスターであろう男ですら目に映らない。
「ふん。そこのデブ、我が隷属の恐ろしさに気でも違ったか?」
そんな空気を読む能力もないのだろう。
バーサーカーの主が彼と、彼の従者を、もがく虫ケラを見るかのごとくせせら笑った。
魔術師としても、人間としても三流のその滑稽さは誰にも見られてない。バーサーカーにも、董卓にも。
「ま、マスター…」
必死に声を絞り出すキャスター。救命を求めていることは差し出した手から明らかである。
この聖杯戦争においてサーヴァントとマスターは一蓮托生。サーヴァントが死ぬということは即ち自分の死にも繋がることである。
にも関わらず魔王はそれを一瞥した後、手の甲を天に掲げ、こう言った。
「令呪を持って命ずる。キャスターよ。
頭骨を抉れい。」
「!?がっ…!?」
何を命令されたのかわからぬままにキャスターの右手が胸に動いた。
刃が己の意志とは関係なく頭蓋及び脳漿を抉り取った後、その姿は黄金の粒子となって消えた。
「な、なななああっ?!」
素っ頓狂な声を上げ、二歩後ずさるバーサーカーのマスター。
聖杯戦争において常道では断じてあり得ぬ行為と、目の前の無法の量に腰を抜かす。
そんな青瓢箪を鼻息一つ吹いて一瞥したのち、ぐるんと体ごとバーサーカーに向き直った。
「バーサーカー!貴様程の男が何故こんな下らん男に仕えている!」
言葉こそ批判のそれであったが、顔には張り付くのは喜の一文字。
足先が黒ずみ、存在自体が現在進行形で消失していっている。にも関わらず魔王は全く意に介さない。気づいてすらいない。
それほどまでに魔王は目の前の悪鬼に興奮し、焦がれ、その身を欲していた。
「こんな馬鹿な事はない!!」
プライドを刺激されたことで現実に帰った男は、バーサーカー相手に狂ったようにまくしたてた。
その怒りがさらに、この類い稀なるサーヴァントの失望を買うとも知らぬまま。
「く、下らんだとお?!ば、バーサーカー!今すぐこのバカを、お、俺のことをバカにしたこいつを殺してしまえ!」
最早このような暗愚な男に興味はない。耳を傾けることさえおっくうだ。
それに目の前の男は面白い。今まであったどの政治家よりも強欲で、どの武道家よりも我儘なこの男。
バーサーカーの興味は完全に三国の魔王に移っていた。
「ほぉう…?」
「我が名は董卓!バーサーカーよ!真名はわからぬが、貴様が天下に聞こえし勇者であろうことは容易に想像できる!」
バーサーカーが目を見開く。
「董卓…。まさか、あの中華に聞こえし魔王、董卓仲穎か!?」
「その。董卓仲穎だ」
然りと頷く魔王。右手をバーサーカーに差し出し、誘った。
「バーサーカーよ!!我と主従の契りを結ぶべし!!
そして聖杯を我らが手中に収めようぞ!」
「は、はぁっ?!
おいっ!聞こえていないのかバーサーカー?!はやくこいつを…!」
唾を飛ばしながらまくしたてる青瓢箪だったが、ふと視線を感じ顔を逸らすと、バーサーカーが初めてこちらを見ていた。
顔中に皺が刻まれた深い、深い嗤顔(えがお)で。
ぞっとした。笑顔、というよりはまるでネコ科の猛獣が牙を剥いているような…そう感じた瞬間
「シュッ」
青瓢箪の視界から、全ての光が消えた。
「お気に召したかい?相国閣下」
巨岩に押し潰されたが如き、無惨な姿と化した「元」主を向こうに蹴飛ばしバーサーカーは歩み寄る。
ねじ曲がった骨が肉から突き出し、臓腑が弾け、血飛沫が舞うその光景に魔王はただ一言。
「うむ」
満足気に口角を上げ、「オーガ」と悪逆無道の契りを交わした。
「董卓よ…お前は何を聖杯に望む?」
夜の薄暗い路地に、瘴気とも言うべき邪気をまとった二人が歩く。
「漢王朝に止めを刺し、一度は栄華を極めた董卓。貴様は今一度のこの生に何を望む?」
「知れた事」
オーガの問いに、ニヤリと笑いながら魔王は答えた。
「我が望みは天下総てを己が手中とすることだ。」
「マスターであろうが
サーヴァントであろうが。
猛き兵士であろうが、
無辜の民であろうが。
男であろうが女であろうが。
その悉くを蹂躙し。財を、命を、何もかもを我がものとする。
巨凶の力を持って暴虐の上の道を辿り、聖杯を我が物とするのだ。」
調停者とやらは聖杯を手にした後、この董卓自らが皮を剥ぎ喰うてやるわ。こう付け加えて董卓は笑った。
なんという残忍さであろうか。なんという不義であろうか。なんという狼戻さであろうか。
色々な意味で最悪の解答である。あるが、余りある暴虐の性を隠さず、貫こうとするこの男は実に好ましい。バーサーカーはそう思った。
「天下…今思えばそんなものに興味など無いが、それを得る手段としては悪くねえし異論もねェ。しかし」
今は暗き天。星一つ映らぬ空を見上げた後、ゆっくりと董卓に顔を向けながらバーサーカーはにやりと笑った。
「純度が低い。」
ともすれば挑発とも捉えられるそれを、魔王は激するどころか一笑に付した。
「面白い男だ。貴様ほどの男が天下に想いを馳せぬか。
ならばバーサーカーよ。我が右腕となりし貴様は、聖杯に何を望む?」
董卓がその場に立ち止り、剣を大地に突き立て右手をバーサーカーに向って掲げた。
地は強固にに舗装されたコンクリートであるが、刀身の半ばまでやすやすと突き刺さったそれを見て、問われた男はクスリと笑いながら応えた。
「知れたこと。闘争だ。」
言いながらその場にしゃがみ、剣の傍に手刀を突き立てる。
骨材を多く含んだ高密度なそれを、まるで水分を多く含んだ泥でも扱うかのように易々とひっぺがしていく。
「ほう!!」
即答するバーサーカーに、今再び感嘆の声を漏らす董卓。
鬼は立ち上がったと同時に、周囲のコンクリートごとひっぺがした大剣を主の傍に無造作に投げ捨て言い放った。
「魔術だろうが科学だろうが構わねえ。化生だろうが何だろうが知ったこっちゃねえ。
財力だろうと権力だろうとなんだって使えばいい。
肉体で肉体を破壊する。単純でいて、SEX以上の最高のコミュニケーション…闘争を行う。これが俺の望みだ。」
「ふはっ!純粋戦士か!」
思った通りの男だ。
この男にとっては天など眼中にない。というよりもあろうが無かろうがどうでもいいと思っているのだ。
天の事なぞいざしらず。己が定めた法によってのみ動き、邪魔をする者があならば喜々として暴れ、その腕力でもって無理やり言い聞かせる。
呂布よりも純粋で、曹操のように躊躇がなく、董卓以上に絶対的な自負心を持つこの男はいたく好ましい。董卓はそう思った。
緩んだ頬を隠さぬまま、近代の土塊から剣を引っこ抜き。今は暗き蒼天に掲げた。
「では行くぞ、バーサーカーよ。我が戦の光となるがいい。」
【クラス】
バーサーカー
【真名】
範馬勇次郎@刃牙シリーズ
【ステータス】
筋力A+ 耐久A+ 敏捷A+ 魔力- 幸運A 宝具-
【属性】
混沌・中立
【クラススキル】
狂化:-
「狂戦士」のクラス特性。本来は理性と引き換えに驚異的な暴力を所持者に宿すスキルであるが、保有するスキルによって理性を奪えなくなっている。
故に身体的強化も望めないが、人を破壊せずにはいられない殺傷本能が狂化され、強者と認めた者に対してはどこであろうが、誰であろうが見境なく闘争を行ってしまう。
【保有スキル】
自己暗示:EX
自身にかける暗示。通常は精神攻撃に対する耐性を上げるスキル。
地震のような自然現象ですら己の力で止められると思い込む圧倒的自負力によりあらゆる精神攻撃、
ひいてはクラススキルである狂化ですら一部無効にする。
無窮の暴力:A
ひとつの時代で無双を誇るまでに到達した暴力の果て。
いかなる身体的損傷の影響下にあっても十全の戦闘能力を発揮できる。
範馬の血:A
範馬一族である証。生まれながらに生物として明らかに異なる筋肉を持つ。
Bランク以上のこのスキルの所有者は、常に筋力と耐久がランクアップしているものとして扱われる。
透視:C
向き合ったサーヴァント・マスターの物理的弱点のみ透視できる。
【宝具】
『鬼の貌』:-
人智を超えたヒッティングマッスル。
ただ思いっきり力むだけであるが、生れながらの天然戦闘形体が戦場での修練を経て進化した筋肉は最早宝具の域。
発動すれば筋力、耐久、敏捷が二ランクアップする。
【weapon】
肉体
【人物背景】
主人公・刃牙の父親にして刃牙ワールドのラスボス。
彼単体で大国の軍事力を上回る戦闘力を有しているため、アメリカをはじめとした多くの国が彼に忠誠を誓っており、
「地上最強の生物」「オーガ」をはじめとした数々の異名を持つ。
【サーヴァントとしての願い】
闘争
【マスター】
董卓@蒼天航路
【マスターとしての願い】
勇次郎を受肉させこの世総てを我がものとする
【weapon】
大剣、弓矢
【能力・技能】
騎乗
多くの馬を乗りこなすことができる。
怪力
放った矢の威力で壁が崩壊したり、たたき切った人間が何十メートルも後ろにぶっ飛ぶなど常人離れした力を持つ。
【人物背景】
後漢末期の人物。
もともとは北方の諸侯の一人にすぎなかったが、袁紹・何進からの早まった招きに乗じて洛陽に入る。
入った後、逃走を図る十常侍・張譲から天子を奪還し、少帝を廃して献帝を擁立。権勢を欲しいままにし、専横を極めた。
蒼天航路では比類なき魔王としてそのカリスマ性が描かれるも、史実通り呂布に殺される
【方針】
敵対者を殺しながら優勝。
投下終了です
乙乙
董卓ヤバすぎワロタ
投下乙です
自分も投下させていただきます
彼が記憶を取り戻したのは、劇的な刺激があったからではない。
ただいつものように学校をサボり、顔なじみの婦人警官からの説教を受け流してやってきた裏山の斜面で寝そべっていただけ。
その時にふと思い出したのだ。自分には平凡な学生などではない、本物の人生があったことを。
それはまるで、親に頼まれていたお使いを思い出したような気軽さで。
「やれやれ。王ドロボウがこんな簡単に記憶盗まれてちゃ、立場がないね」
ジンは寝転んだまま、苦笑いを浮かべる。
「まったくだな。そんなことでは、先が思いやられる」
そこに響く、別の声。それは自分の元にやってきたサーヴァントのものなのだろう。
そう確信したジンは、体を起こす。
そこにいたサーヴァントは、黒いマントとシルクハットを身に纏っていた。
口元には、立派なカイゼルひげ。まさに、絵に描いたような「怪盗」である。
ただし、体格が2頭身で顔がほぼ球形でなければ、だが。
「えーと……。狸?」
「失敬な! 私は22世紀の科学で作られた、猫型ロボットだ!」
とぼけたジンの言葉に、サーヴァントは声を荒げて訂正する。
「猫かあ、そいつは失礼。しかし聖杯なんていうから神秘やら魔法やらをひっさげた英雄が出てくるかと思いきや、ロボットとはね。
まあ俺からすれば、魔法も科学も不思議なものってことには変わらないんだけど」
「たしかに、発達しすぎた科学は魔法と見分けがつかないという言葉もあるな。
それはさておき、普通の聖杯戦争ならたしかに私のような科学の化身はお呼びじゃない。
だが今回の聖杯は、そういう輩も分け隔て無く召喚しているようでな」
「ふーん。何か理由があるのかな。まあ、聖杯の思惑がどうだろうと俺には関係ないか」
「先に話を振ったのはお前だろうに……」
「そうだっけ?」
あきれ半分のツッコミにも、ジンは笑顔だ。
「それより、自己紹介がまだだったよな。俺はジン。職業は泥棒さ」
「ふむ、ジンか……。私はエクストラクラス、盗人(シーフ)のサーヴァント。
真名を怪盗ドラパンという。よろしく頼む」
「ああ、よろしく。ケチなパーティーの主催者様が招待状を一人分しかくれなくて、相棒を連れて来られなかったんでね。
ここにいる間、代わりの相棒としてしっかり働いてもらうぜ」
二人は、しっかりと握手を交わす。
「さて、ジンよ。この聖杯戦争、お前はどう戦うつもりだ?」
「言わなくてもわかるんじゃないかな。俺たちは泥棒だぜ?」
「やはりそう来るか」
ドラパンが、にやりと笑う。つられるように、ジンも笑う。
『聖杯を盗み出す!』
二人の声が、完全に重なった。
「まあ、当然の考えだな。我々は泥棒だ。戦うより盗むのが本業だ」
「その通り。すげえお宝を目の前にぶら下げられて盗まないなんて、泥棒の名が廃るってものさ。
俺たちが聖杯を盗めば戦争も続行不可能。みんなが争う理由もなくなって一石二鳥ってもんだ。
やっぱり時代はラブ&ピースだよ。戦争なんかしてる場合じゃないぜ」
「だがジンよ、どうやって盗み出す。私は聖杯によってこの地に召喚されたが、だからといって聖杯のある場所がわかるわけではないのだ」
「それを考えるのが楽しいんじゃないか。お宝自体の価値ももちろんだけど、それを盗み出すまでの過程も大事だろ?」
目を輝かせて、ジンは言う。
その表情はあまりに無邪気で、ただでさえまだ若い彼をより幼く見せる。
「さて、そうと決まれば……」
ジンはカバンからノートを取り出すと、ページを1枚破いて筆を走らせ始めた。
「予告状か? しかし、どこに送りつけるんだ。
聖杯と同様、管理者もどこにいるかわからないというのに」
「どうせ何かの方法で、主催者様は俺たちを監視してるんだろう。
だったら、どこに出してもきっと届くさ」
予告状を書き終えると、ジンはそれを紙飛行機に折る。
そして、無造作に空へ放り投げた。
万能の願望機・聖杯いただきます!
HO-HO-HO!
王ドロボウ&大泥棒
【クラス】シーフ
【真名】怪盗ドラパン
【出典】ザ・ドラえもんズ 怪盗ドラパン謎の挑戦状!
【属性】混沌・中庸
【パラメーター】筋力:D 耐久:C 敏捷:B 魔力:E 幸運:B 宝具:C
【クラススキル】
奪取:A
他者の持ち物を自分のものとするスキル。
Aランクともなれば、一瞬の隙さえあれば盗み取ることができる。
気配遮断:B
自身の気配を消す能力。完全に気配を断てばほぼ発見は不可能となるが、攻撃態勢に移るとランクが大きく下がる。
【保有スキル】
仕切り直し:B
戦闘から離脱する能力。また、不利になった戦闘を初期状態へと戻す。
単独行動:C
マスター不在・魔力供給なしでも長時間現界していられる能力。
マスターを失っても、Cランクならば1日は現界可能。
【宝具】
『万物よ、欲望に染まれ(キンキンステッキ)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1-5 最大捕捉:10人
放出する光に当たった者を、金色のブロンズ像に変えてしまう杖。
一度ブロンズ像に変えられてしまえば、ドラパンが任意で解除するかこの宝具が破壊されない限り元には戻れない。
効果範囲はさほど広くないため、危険を冒して敵に接近しなければ有効活用できないのが難点。
その本質は「物質変換装置」であるが、他者に観測されている範囲が少ないため、効果が大幅に限定されてしまっている。
【weapon】
○シルクハット
自身に対して有害な電波をシャットアウトする効果がある。
○マント
ヒラリマントになっており、飛び道具を跳ね返せる。
○ヒゲ
1本1本が分身となる。解除すればまたドラパンの顔へと戻ってくる。
【人物背景】
フランスで名を馳せる義賊。
悪の科学者・ドクターアチモフに親友の少女・ミミミを人質に取られ、「親友テレカ」を奪うためにドラえもんズと対決。
しかし最終的には和解し、共にアチモフを打倒した。
【サーヴァントとしての願い】
聖杯を盗み出す。
【マスター】ジン
【出典】王ドロボウJING
【マスターとしての願い】
聖杯を盗み出す。
【weapon】
○隠し刀
普段は左腕の袖に隠してある刀。
手に持つのではなく、固定具で腕に取り付けられている。
切れ味はいいがあくまで常識の範囲内であり、体が金属でできた敵を斬れずに苦戦したこともある。
【能力・技能】
高い身体能力を持ち、戦闘技術も備えている。
相棒の鳥・キールを右腕に融合させることで強力なビームを放つ「キール・ロワイヤル」という必殺技を持つが、今回はキールがいないため使用不能。
【人物背景】
輝くものは星さえも、貴きものは命さえ盗むと言われる王ドロボウの末裔。
様々なお宝を狙い、キールと共に世界中を放浪している。
今回はまだ王ドロボウとしての活動を始めて日が浅い頃、陽気さが目立つ時期から参戦している。
【方針】
聖杯を見つけ、盗む。他の参加者は基本的に無視。
投下終了です
投下します
☆プリンセス・デリュージ
夢を見ていた。
嫌な、胸糞の悪い夢だった。
夢の舞台は日本ではなく、どこかの外国。
多分、今からそう遠い昔でもない時世が舞台であったと思う。
ぐっしょりと汗で濡れた衣服の感覚が、夢の中で浴びた血糊を思わせて具合が悪くなる。
サーヴァントを使役するマスターは、時折英霊の生前の記憶を夢に見ることがあるという。
だとすると、あの夢は「彼」の記憶だということになる。
なんとなく、彼が自分のサーヴァントとして召喚された理由が分かった気がした。
要は、自分達は「失った」「奪われた」側なのだ。
あの食えない飄々とした雰囲気を醸すアーチャーも、かつては幸せな暮らしに甘んじていたらしい。
それをある日、強大なものによって奪い取られた。
大切なものを目の前で壊され、殺された、その光景こそが彼のルーツになっているのだろう。
それでも、デリュージは自分のサーヴァントを好ましく思えない。
聖杯を勝ち取るため、そこに協力関係は必要不可欠であるということは無論理解している。
だがそれを差し引いても、アーチャーはどうにも心から信を寄せたくないタイプの男だった。
顔立ちも言動も柔和だが、その端々から形容しがたい胡散臭さが滲み出ている。
戦いが終わるまで、絶対にデリュージはアーチャーに気を許すことはしないと決めていた。
それは今でも変わらない。
あの神父は、きっといざとなれば平然とデリュージを切り捨てる。
自分の目的のために、一時はマスターと呼んだ仲間を見捨てることが出来る。
その性根は裏を返せば、戦力として非常に有能なことを意味している。
つまらない良心や様式に拘らず、柔軟にその場面を勝ちへ導くことが出来る人物だ。
聖杯を堅実に狙う上では、一番望ましいカードと言ってもいい。
だからこそ、デリュージは彼を信用しない。
それこそが、彼女なりのアーチャーという戦力を最大限に活かすための策だった。
絶対に使い捨てられるわけにはいかない。
デリュージには、聖杯を使わなければ叶えられない願いがある。
どんな魔法を持ってきても叶えられない、唯一無二の望みがあるのだ。
敵のみでなく味方にも気を張らねばならない、というのは存外疲労の募るものであったが、出来なければ自分が詰むだけだ。
「おや、お目覚めになられましたか。マスター・デリュージ」
寝室の扉から、見慣れた金髪の笑顔が覗いていた。
恐らく万人に人当たりのよい人物という印象を抱かせるだろう風貌。
デリュージ以外に、彼の素性を知っている人物は……今のところ、いない。
この世界でのプリンセス・デリュージ――青木奈美という少女は、孤児という扱いになっている。
何年も前に身寄りを無くし、町の教会で保護され、養われている。そういう「設定」だ。
全てを失って戦う自分への皮肉じみた役柄に、唾の一つも吐き捨ててやりたい気分になった。
「……今、何時ですか」
「もうじきお昼になります。休日とはいえ、少しだらけ過ぎですよ」
軽口を無視し、のそりとベッドから起き上がった。
部屋の入口に立っている長身の神父こそが、デリュージのサーヴァント、アーチャーだ。
一口に、英霊らしからぬ人物だった。
別に大仰な弓を持っているわけではない。
雰囲気だけなら奸計に長けたキャスターかアサシンのクラスと言われた方がまだ信憑性がある。
「昼食はどうしますか?」
「今日はいいです」
「そうですか。それは残念。美味しいサンドイッチが冷蔵庫にあったのですが……」
「アーチャー」
声のトーンが変わったのを自分でも感じる。
それを彼も察知したのか、柔和な雰囲気が影を潜めた。
「聖杯戦争は現在、どういう状況ですか?」
「本格的な開戦には未だ至っていない――良くも悪くもまだ「待ち」の段階。
私は前線で八面六臂の活躍が出来るようなスペックはしていませんので……
悪戯にこちらの人相を周知されるよりかは、時が来るまで極力は裏方に徹した方が良いでしょう」
アーチャーの言い分は至極もっともだ。
デリュージも頭ではそう理解していたが、しかしやはり拘泥たるものを抱かずにはいられない。
焦っていると自分でも分かる。
焦ってもどうにもならず、ただ自分の首を絞めるだけだということも承知している。
それでも、こればかりは如何ともし難かった。
プリンセス・デリュージは冷静ではない。
失ったものを取り戻せる好機に恵まれたことが、彼女の平静を狂わせている。
「急いては事を仕損じますよ、デリュージ」
「分かっています」
そんなこと、言われるまでもなく分かっている。
事を仕損じるなどということは絶対にあってはならない。
そう、絶対に。
こんな機会は二度と巡ってこない。
「私も、貴女も。
決して聖杯を逃すわけにはいかない――なればこそ、慎重な立ち回りを怠ってはいけません。
虎視眈々と時を待ち、狩るべき時に狩る。戦とは何時の時代も、そのようにして進めるものです。
特に、我々のような者の戦争は」
デリュージも、アーチャーも、力だけで全ての敵を押し潰すような芸当は出来ない。
だから策に徹する。
そうして聖杯に辿り着く。
それでもって、最後には――必ず聖杯を獲る。
デリュージは決意新たに唇を噛み締めた。
それから、怜悧に覗く神父の眼光と視線を交錯させ、夢の内容を思い出した。
今までに出会った、どんなものよりも恐ろしく見えた黄金の男。
それに付き従う火傷顔の女、無機質な男、白い少年。
少年の銃が子どもを虐殺した。
血が飛沫し、肉が飛ぶ。
それを、どこか枯れ木のような神父が眺めている光景。
目の前の彼は、とてもではないがあの草臥れた印象とは無縁の若さだ。
しかしきっと、あの神父が彼なのだろう。
人間が魔法少女になるように。
彼も何かに憧れ、なり変わったのだろうか。
そんな益体もないことを考えながら、プリンセス・デリュージは堪らず視線を背けた。
◇
青木奈美。
プリンセス・デリュージ。
魔法少女としての彼女がどの程度やれるのかを、アーチャーは未だその目で見たことはなかったが、少なくとも一介の魔術師程度に遅れを取るようなことはないだろうと推測する。
何よりも、目が違う。
あれは修羅場を掻い潜り、覚悟を決めたものの目だ。
生きた時代柄、そして職業柄、ああいう目をした人間に出会うことは度々あった。
そういう存在が集ったのが、アーチャー……ヴァレリア・トリファが名を連ねた騎士団。黒円卓だ。
(聖遺物の使徒に肩を並べるほどの奮戦を期待するのはいささか酷ですが、申し分はないでしょう。
むしろ今危惧すべきは彼女の暴走だ。強い少女だが、だからこそ私が手綱を握らねばならない)
もしも手に余ると感じる時が来れば、その時は鞍替えも視野に入れるとして。
少なくとも今のところは、代えのマスターを探す必要はないだろうとアーチャーは踏んだ。
きっと自分は運がいい方に部類されるのだろう。
覚悟はあり、願いに貪欲で、力もある。
そんなマスターを引いておきながら、これ以上を求めればバチが当たる。
「そういえば、先ほど私を見つめていた時の彼女の目――」
あれは、複雑な心境を滲ませた目だった。
これまでデリュージは自分を警戒の目でしか見ていなかったと記憶しているが、果たして何故。
「ああ……」
そういえば、契約したサーヴァントの過去を夢で見ることがある、という話があったか。
だとすると、彼女が何を見たのかは大方察しがつく。
ヴァレリア・トリファという英霊の根底と来れば、己が最も忌むあの日の記憶に違いあるまい。
「いやはや――これは、お恥ずかしい物を見られてしまいましたね」
となれば、彼女も理解したことだろう。
ヴァレリア・トリファが何を聖杯に願うつもりなのか。
何がきっかけとなり、邪なる聖人(クリストフ)という存在が生まれ出たのかを。
その通りだ。
自分と彼女は、絶対に聖杯を手に入れなければならないという一点で共通している。
かつて奪われたものを取り戻したいという願いも同じだ。
そして、それが揺らぐことは決してない。
聖餐杯は壊れない。
聖人はただ、黄金の器で唄い続ける。
あらゆるものを破滅へ導く、邪なる説法を。
【クラス】
アーチャー
【真名】
ヴァレリア・トリファ@Dies irae
【ステータス】
筋力E 耐久EX 敏捷E 魔力A 幸運D 宝具EX
【属性】
混沌・悪
【クラススキル】
対魔力:B
魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。
大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。
ただし、後述の宝具によってこのスキルは上塗りされている。
【保有スキル】
エイヴィヒカイト:A(―)
人の魂を糧に強大な力を得る超人錬成法をその身に施した存在。
聖遺物(この場合は聖人の遺品ではなく、人の思念・怨念・妄念を吸収した魔道具のこと)を核とし、
そこへ魂を注ぐことによって、常人とはかけ離れたレベルの魔力・膂力・霊的装甲を手に入れた魔人。
エイヴィヒカイトには四つの位階が存在し、ランクAならば「創造」位階となる。
精神感応:-(A)
超能力。またの名をサイコメトリー。
これによりアーチャーは相手の本質を手に取るように理解することが出来る。
対象と同調することで対象自身も忘れ去り、心の底に沈めている真実すら抉り出せるという強力なものだが、現在彼は自らの肉体ではなく他者の肉体を使用しているため、このスキルは失われている。
貧者の見識:A
相手の性格・属性を見抜く眼力。
言葉による弁明、欺瞞に騙されない。
扇動:A
他人を導く言葉や行い。
個人に対して使用した場合には、ある種の精神攻撃として働く。
偽装:D
実体化していてもサーヴァントであると感知されない。
ただし一度でも正体が割れた場合、二度と作用しなくなる。
【宝具】
『黄金聖餐杯(ハイリヒ・エオロー)』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
愛すべからざる光――数百万の魂と恐怖を吸収したラインハルト・ハイドリヒの肉体。
アーチャーの現在使用している身体そのものであり、攻撃力こそ然程でもないが、究極と呼ぶべき防御力を持つ。
対物理・対魔術・対時間・対偶然と肉体にはあらゆる防壁が施されており、まさに単純な理屈故に穴がない無敵の鎧。
同ランクの宝具であれ突破不能の鎧だが、超える方法が三つ存在する。
無敵の耐久力を超える攻撃を加えること、防御力を無視して対象を終焉させる幕引きの拳、そして後述する究極の矛を抜いた時に生ずる鎧の隙間を狙うことである。
もっとも一つ目の方法は火力に特化したサーヴァントであれまず不可能な次元で、二つ目も事実上論外。必然的に、アーチャーを倒すにはマスター狙いに絞るか、宝具使用後の隙を狙う以外にはない。
『神世界へ翔けよ黄金化する白鳥の騎士(ヴァナヘイム・ゴルデネ・シュヴァーン・ローエングリーン)』
ランク:A++ 種別:対人宝具 レンジ:1〜100 最大捕捉:1
ラインハルト・ハイドリヒの聖遺物――かつてかの聖人を貫いた、『聖約・運命の神槍』を限定召喚する。
本来聖槍は規格外中の規格外でラインハルト以外に扱える代物では到底ないが、彼の場合「自分はラインハルトである」という狂信を具現化することで、一時的に不可能を可能としている。
とはいえ自在に使いこなせるわけではなく、召喚した聖槍をただ矢のごとく射出するのみ。
だがその威力はあまりにも絶大で、召喚された聖槍は距離と空間を無視し、概念的に存在するものすら破壊可能。
直撃などしようものならば、どうなるかは想像に難くない。しかしマスターにかかる負担も必然的に大きなものとなるため乱発は控えるのが吉だろう。
また、聖槍召喚時は黄金聖餐杯の防御が働かず、アーチャーの魂が完全に無防備になるため、この瞬間こそが無敵の守りを
突き崩す唯一の隙となる。
【weapon】
徒手空拳
【人物背景】
聖槍十三騎士団黒円卓第三位、ヴァレリア・トリファ=クリストフ・ローエングリーン。
61年前のベルリン以降現世に留まった団員をラインハルトに代わって統率し、黄金練成を成し遂げる儀式を遂行する役目を持つ狂気の司祭。
平常時での物腰が非常で柔らかで正に聖職者と言った風の人物だが、狂的なまでの愛を内に秘め、そのために様々な陰謀・策謀を巡らせ外道的な手管を用いて暗躍する。
元は東方聖教会の司祭であり、本名はヴァレリアン・トリファ。
霊的感応能力を持っていたために他者と真に理解し合うことができず、そんな中でラインハルトとメルクリウスに見出され騎士団に勧誘される。
その後双首領のあまりの恐ろしさに騎士団を脱走して孤児院を作り孤児たちと暮らしていたが、数ヶ月後騎士団によって発見され、ラインハルトに逃げた代償として生贄に捧げる孤児十人を選べと命じられ、彼は当時劣等と蔑まれていた人種の子どもを選び惨殺させ、挙句騎士団に連れ戻されてしまう。
これをきっかけに、彼はラインハルトへの生贄として城の一部になった子供たちを救うべく騎士団に参加する。
【サーヴァントとしての願い】
子供達の救済。
【マスター】
プリンセス・デリュージ@魔法少女育成計画ACES
【マスターとしての願い】
ピュアエレメンツの復活
【weapon】
三叉槍
【能力・技能】
固有魔法「氷の力を使って敵と戦うよ」
触れたものを凍らせることが可能。凍らされれば並外れた腕力の持ち主である魔法少女さえも動けない。
また、人造魔法少女であるため変身や力の使用に特殊な手順が必要となる。
【人物背景】
人為的に生み出された人造魔法少女の一人で、かつて「ピュアエレメンツ」と呼ばれた魔法少女達の生き残り。
【方針】
聖杯を狙う
投下終了です
投下します
■
かえせ かえせ かえせ かえせ
みどりを 青空を かえせ
かえせ かえせ かえせ
青い海を かえせ かえせ かえせ
かえせ かえせ かえせ
命を 太陽を かえせ かえせ かえせ
■
そこに光はなく、底は暗かった。
屑星の瞬きひとつ見えない闇の中。
虫の羽音ひとつ聞こえない無音の空間に、ソレはガラクタのようにいた。
ソレは既に死体と同等だった。
暗闇の中では姿は見えないが、ソレは少女の姿をしていた。
目があるべき箇所の片方は空洞があるだけで、手足が不揃いにぶら下がっている様は凄惨そのものだ。
だが、他人がソレを光の下で見たとして、同情を寄せる事はそうないだろう。
青ざめたという表現を超えた、死蝋さながらの白貌。
頭部に被った、海月と鮫をかけ合わせたような異形。
ソレは人の形をしているというだけで、到底人ではあり得なかった。
聖杯戦争が行われる舞台。海岸より遥かに離れた海域の深海の底。
そんな人が寄り付かない場所にいた異形のものは、この世界に招かれたマスターの一体だった。
魔術師の使い魔と言った方が通じる風体だが、確かにその肉体には参加の証である聖痕、令呪が宿っている。
つまり、ソレはまだマスターの資格を有していた。全身にくまなく傷を受けた瀕死であるにも関わらず。
だがそれは当然の話だ。
ソレは契約した英霊を失っていない。そもそも、まだサーヴァントを召喚してすらいない。
この傷は敵である英霊から受けたものでも、マスターから負わせられたのでもない。
この電脳の海に行き着くより前、ソレが元いた世界の時点で、海の底に沈む残骸と同義の状態だった。
深海棲艦。
世界に突如現れたソレを、人はそう呼称した。
海より現れ、海上の人を襲い、勢力を拡大していく正体不明の存在。
標的を見つければ問答無用で襲撃する。対話の姿勢はごく初期に失われた。
対抗するため人類が産み出したのは、旧き軍艦の魂を宿した少女の兵器、艦娘。
敵を滅ぼし、味方に勝利を齎す。鉄と硝煙香る鋼の戦姫。
人々は彼女らを造り出し、彼女らを指揮し、彼女らを称賛した。
その武勲の錆として、ソレは全ての武装を失い、接近する魚雷を受けて大破し、海の藻屑の一部となった。
そうして撃破されたソレが召喚され海の中が初期位置となったのは、その種族の特性に配慮したからなのか、最期の瞬間を再現した結果か、此処に招いた何者かの悪意なのか。
残骸はたゆたう波に揺られ砂地に埋もれている。
自己修復が間に合う範囲はとっくに超えており、再起動する可能性は皆無。
召喚に応じる英霊も現れない。道理である。招かれて数秒後消え去ると思えるマスターを選ぶはずもない。
敵を捜す他のマスターすら、ここには来ない。敵に討たれるのでもなく、ただ朽ちるだけの時を待っていた。
半壊した感覚器官は何も見ず、何も聞かず、何も感じない。
全身を包む水の冷たさも、横たえた砂の固さも、全てが遠い。
この場所が深海であることを忘れさせるほど、ここは死の世界だった。いや、深海こそが現世で最も死に近い世界なのかもしれない。
普通の生命体とは外れた生態系であるソレに死の観念が備わっているかは、定かではないが。
ただ、知らないはずの知識が装填されていく。
聖杯戦争の舞台に集まったマスター達が受け取る基礎知識。死にかけで招いたソレにすら情報は与えられた。
徹底した戦闘生物であるソレは、ほんの僅かに動いていた機能でただ機械的に取得した情報を計算した。
戦争という単語。己がしていることを『敵』はそう呼称していることは知っていた。
電子という技術も、敵が頻繁に用いる装置の一種であると認識している。
聖杯、英霊という概念。それは分からない。崇めるという行為を、ソレはまるで解せなかった。
願い。
欲望。
意志。
意味が分からない。
己が何に拾われ何処に流されたか。ソレは正しく理解した。
知識を獲得し、この状況を理解して、しかしソレは結末を変えようとはしなかった。
第一に、ソレには動くだけの余力が残っていなかった。
轟沈の一歩手前。いつ機能を閉じてもおかしくない。今まで停まってないことの方が不思議な状態。
ただ機能(いのち)を終えてないというだけ。人で例えるなら危篤状態の老人だ。
第二に、『願う』という行為そのものがソレには欠如していた。
深海棲艦という『世界の敵』に求められたのは、戦い破壊し襲う。その負の指向性のみ。
棲艦自身が何かを願い、求めるなどという事は無い。
ヲ級をはじめとした上位種には人語を喋り高度の戦術を展開する個体もいるが、その全ては戦闘の範疇に限定されたもの。
感情と呼べるものは憎悪が凝り固まった思念のみ。個が抱く欲望を得た個体は未だ発生していない。
人類の認識において、深海棲艦とは目的を以てこちらに侵攻してくる侵略者ではなく、ただの危険生物。
狩られるべきもの、駆逐されるべき害獣でしかなかった。
自らに益有りと見なされない限り、ソレらはただの敵であり続ける。
それが深海棲艦の最期だ。
それが深海棲艦の運命だ。
全ての深海棲艦に植え付けられた機能通り、轟沈した個体は海に消える。
しかし、それは。
「…………」
全て、正常な世界で最期を迎えた場合の話だ。
聖杯とは運命を廻す大窯だ。
大いなる機械の歯車に、神の気紛れなどという不純物は介在しない。
「…………」
偶然は必然に置き換わる。
何の意味もなく、価値を生み出さず、終わる生命を内部に組み込む方式などなく。
「…………」
願いなどない。欲望など分からない。意志など持たない。
それではソレがここにいる説明がつかない。このまま朽ち果てる末路は始めから設定されてなどない。
聖杯に招かれたから理由が出来たのではない。理由があるから、聖杯はソレを己の庭に招いたのだ。
「…………」
無論、そのような夢想にソレが思いを馳せることはない。
人類への強烈な悪意をたった一つの命令として受理し機械の如く動くソレらには余分な思考は働かない。
「…………」
しかしここに、轟沈しながら別世界へ飛ばされたモノが存在する。
一秒後に死骸と化す運命が、数刻程度とはいえ引き延ばされた個体がいる。
その本来あり得ざる空白に、ソレはひとつの記録を再生した。
「―――――――――」
自身に向けられた砲塔。
筒が火を噴き、刹那視界の一部が落ちる。
残った眼で補足する。そこには煙を上げる砲を持った、一機の駆逐艦(しょうじょ)。
衝撃で揺さぶられた頭蓋で損傷を確認、僚艦を犠牲に撤退を選択した、敗走の記録。
「―――――――――」
次に浮かぶのは、最後の記録。
兵力の全てを投入した一大決戦。
敵の兵力も相当だが、自軍の戦術により棲姫は無尽に再生し戦闘を続行できた。
自分に傷を負わせたのと同じ、あの駆逐艦さえいなければ。
「―――――――――ヲ」
痛覚に怯む神経は備えていない。
だがその時から己の中で何かが軋む。検知できない誤作動が続いている。
砲撃に勝る火が噴き続ける正体(もの)をソレは終ぞ理解しなかった。この時までは。
「ヲ、アアア」
僚艦(みかた)も敵艦(てき)もいない孤独の深海。
唯一の目的であり、同時に縛りであった命令が途絶えた今。
ソレは芽生えた正体不明の衝動を持て余し―――ならば放てばいいと、あらゆる枷を解放した。
「ア、ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"――――――――――――!!」
海が震える。
海に住まう生命が、荒ぶる感情の産声に身悶えする。
それは、まさしく魂の絶叫だった。
残されていた動力、命を使い果たして告げた意志。
目的のある行動ではない。何に対してのでもない、ただ彼女が溜め込んだ自身だけの―――怒りと憎悪の咆哮。
今消えようと、己がここにいた証を示さんとした、無垢なほど漆黒の産声。
そしてその瞬間必要な儀が満たされ、誰に気付かれぬまま一つの召喚が達成される。
光と、地上で巻き上がる突風の代わりに巨大な渦潮が彼女の周囲で巻き起こる。
先の叫びの振動で気絶していた魚群は逃げ出せるわけもなく荒波に揉まれ―――海水に溶けたように消えた。
激しく照らされた暗闇で、まだ用を成す右目で彼女はソレを見た。
有害物質(ヘドロ)を思わせる毒々しい色を帯びた、黒い泥の塊。
人間にとっては恐怖の具現としか映らない物質が浮かんでいる。
その周囲で舞い散る白い欠片。魚の標本そのものである骨は、今まで海を悠々と泳いでいた魚の成れの果てだった。
「トオウ、アナタガ、ワタシノマスターカ」
酷く粘着質な音が、言葉の意味を持って鳴り響く。
人間どころか、生き物としての知性も感じさせないドロドロとした声。
それこそが彼女が呼び出した存在がおよそ英霊という範疇とはかけ離れた、怨霊の類であると確信するに足る証拠だった。
だが人類の罪の具現、罰の化身という側面を逸話により与えられたソレは、同時に信仰に値する存在であることもまた確かだった。
聖杯から得た知識から最低限の確認を取るだけの音声。
それでも彼女は、ソレが己にとって必要なものであることを戦術的に理解していた。
ライダーのクラス。その真名。特筆した能力。
かつてないほど加熱した思考は情報を統合し、いま真っ先に取るべき選択を実行する。
「ヲ、ア"ア"ア"ア"ア"ッ!!」
残っていた右腕に刻まれた印に光が灯る。
マスターの証でもありサーヴァントへの絶対命令権でもある令呪。魔術的な奇蹟もひとたび顕現すれば誰でも使用できる武器でしかない。
有り余る衝動を吐き出して命令を下す。元より彼女は戦術指揮を基礎とする空母型。人語を成していなくても意味を通すだけなら容易い。
まして人でないものならば同族に伝える容量で事は成る。
サーヴァントはマスターからの令呪を受け、その方法を知識に依り正確に施行した。
塊が形を崩し、中心部が歪み窪みが出来た。
眼だ。巨大な眼球。赤と黄色の色彩の、怪物に相応しい眼が飛び出てきた。
そしてマスターへと勢いよく飛びつき―――その身に食らいついた。
「■■!■■■■■■――――!■■■!!■■!■■■■■■■■■■■■!!!!!!」
塊に定まった形状はなく、細く管状に変化して彼女の肉体に入り込んでいく。
彼女の全身は欠損だらけで、従って全身をくまなく黒い管が覆い尽くす。
命あるものでは耐え切れない激痛。サーヴァントと化しより強力となった、この英霊の特徴である『毒素』が彼女を貪り尽くす。
令呪の命令と、契約の結びつき、そしてマスターとサーヴァントそれぞれの特性が噛み合わさなければ自殺にしかならない。
そしてその条件を全て満たした彼女は生き延び―――その身の修復を完了していた。
「…………」
傷を埋め合わせた姿は見違えるほどだ。元の姿さえ忘れてしまうぐらいに。
喪失していた手足は泥と同じくどす黒く変色したものに置き換わっていた。全身を走る赤い線は血管のように浮き出ておぞましさを増している。
空洞だった左目の赤と黄の螺旋が渦巻く気色は、憎悪に満ちた右目と対称にひたすら無機質だ。
マスターとサーヴァントの融合体。通常は起こらぬ異例のケースは、異形と異形の間でこそ成立した。
頭部の異形が口を開け、複数の泥が吐き出される。
泥は生き物の如く蠢き独自の形状を取りながら形を成していく。
ひとつは牙。ひとつは砲。
駆逐型。雷巡型。軽巡、重巡。多種多様に枝分かれし、異形が数を増やす。
艦隊編成。サーヴァントの肉を切り分け、深海棲艦という軍勢は水底で増産される。
魔力がある限り兵力は無限。そしてこのサーヴァントはあらゆる毒を餌にする。
それがかつて地上に君臨した窮極の幻想種「怪獣王」を追いつめ、遂に駆逐しきれなかった不滅の怪獣―――。
「セ……カエセ………………
カエセ………………!」
こうして、一組のマスターとサーヴァントがこの聖杯戦争に参戦した。
人類の敵として討たれ、憎悪を抱く深海棲艦、呼称『空母ヲ級』。
汚染された自然を糧にして、それを人類へと振り撒いた公害怪獣『ヘドラ』。
二体の害獣は世界を産み出した何者かの意志に左右されず世界の害となる。
地上で鎬を削るマスターとサーヴァント、その誰一人として脅威に気付かぬまま。
【クラス】
ライダー
【真名】
ヘドラ@ゴジラ対ヘドラ
【パラメーター】
筋力‐(D) 耐久‐(B) 敏捷‐(C) 魔力C++ 幸運E 宝具C+
【属性】
中立・狂
【クラススキル】
対魔力:E
魔術に対する守り。
無効化は出来ず、ダメージ数値を多少削減する。
騎乗:EX
騎乗才能というよりも、このサーヴァントの特性そのもの。
風に乗り、水に乗り、人に乗り、世界の全てに乗り移れる。
【保有スキル】
無我:-
ヘドラには個体の明確な精神・自我が確認されないため、あらゆる精神干渉を無条件で無効化する。
仮にあるとしても、人類の尺度で解釈することは不可能だろう。
腐毒の肉:―
汚染物質により構成された肉体。
このサーヴァントの近接能力値は、このスキルのランクによって変動する。
また接触した対象に腐食ダメージを与え、耐久判定に失敗した物体を破壊する。
汚染物質を取り込むほどランクは上昇し、Aランクまでになればサーヴァントの肉体も容易く溶解する。
それ以上まで高まった場合、低ランクの宝具ですら破壊対象に含まれる。
物理攻撃はほぼ無力だが乾燥に弱いという性質のため、炎や雷などの高熱が有効。
現在はマスターであるヲ級と融合したため、ヲ級の能力値を底上げしつつそのままステータスに割り当てている。
【宝具】
『溶解汚染都市(ペイルライダー・スラッジ)』
ランク:C+ 種別:対衆、対国宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:1000人
ヘドロやスモッグなどの排気物質を媒介に増殖し続けるヘドラの特性、
ひいては公害という現象への恐怖そのものが宝具となったもの。
ヘドラにより汚染された物質はヘドラの一部となり、ヘドラそのものとなる。
物質、水、大気、土地、霊脈をも侵し、そこからヘドラは無限に湧き出る。
ただの生物や機械は瞬く間に溶解するが、なんらかの神秘を帯びた物質や強靭な生命なら
取り込まれつつもその特性を備えた個体と化す可能性がある。
仮に一国を汚染し尽くした場合、その土地全てがヘドラという怪獣となり、また別の海域に浸食するだろう。
生まれたヘドラは全てが同一存在であり、吸収、分離も容易。
マスターの影響か、分離した個体は同族である深海棲艦の姿を取る。
【weapon】
汚染物質により構成された肉体。目玉からはヘドリューム光線を放射する。
飛び散った破片すらライダー自身であり、自律して行動する。
またマスターの装備もこれらの影響下にある。
【怪獣背景】
宇宙からやって来たらしい鉱物生命体が、地球の汚染環境と合わさり異常進化して誕生した怪獣。
都市近海に堆積していたヘドロや公害による汚染物質と結合し、成長し都市を襲撃する。
凶悪な有毒ガスと硫酸の霧を撒き散らして移動するため、死傷者と発病者の合計は1000万以上を記録している。
怪獣王ゴジラとの交戦も、当時公害問題が深刻化していた日本では一際強化の度合いが高く一度は敗走に追い込んでいる。
更に成長しての再戦時は弱点を着いた自衛隊の援護もあり敗北。この時被害をもたらした巨大な個体は倒されたが、
その他の小さな個体は生き残っている描写のまま物語は終わってしまう。
【マスターとしての願い】
????
【マスター】
空母ヲ級(隻眼)@艦隊これくしょん(アニメ版)
【マスターとしての願い】
■■■■■■■
艦娘、轟沈。
【weapon】
発艦部
頭に被った異形の口から艦載機を発艦させ、空爆を行う。
触手も備わっており、頭部から独立して戦闘を行った記録も存在している。
契約した反英霊の特性と深海棲艦の性質が合わさり、サーヴァントとの融合体、デミサーヴァントと化している。
【人物背景】
世界中のありとあらゆる海域へ突如として出現した異形生命体、深海棲艦。その正規空母種。
作戦中左目に被弾しており便宜上「隻眼ヲ級」と呼称される。
人語を介さず思考体系は判然としないが、艦隊の指揮や敵部隊の電報を傍受、司令部へ奇襲をかけるなど、
戦術に関する高い知識と知能を備えているのがうかがえる。
12話で吹雪に轟沈された後にこの世界に漂着した。
大破状態の肉体を、令呪を使いヘドラが憑りつくことで延命している。
【基本戦術、方針、運用法】
とにかく生命力の強さが厄介。汚染物質(この場合廃棄されたダストデータなども含む)を取り込み、理論上際限ない増殖をする。
初期でなら魔力源にしてるマスターを倒せば分離した個体も自然消滅するが、規模が拡大すると話が別。
マスターが死んでもNPCや地脈に憑りついて延々と増殖してしまう。こうなると虱潰しに焼却していくしかなくなる。
その上ヲ級は元々戦闘に特化した知性の生命体なので、ヘドラとの融合にあっても思考が乱れることなく的確な指揮が取れる。
成長したヘドラは飛行して上陸するので、被害は海域のみには留まらない。
対処には早期発見と媒介を渡さないこと。逆に増殖を許しさえしなければ『FINAL WARS』ぐらいには弱体化するだろう。
投下終了です。
皆様投下乙です。
>高見沢逸郎&ランサー
龍騎懐かしいなあ。個人的には意外なところからの出典でした。
高見沢はうまく物事を考えて立ち回るスタンスで、頭がいいがゆえの恐ろしさがありますね。
部下のNPCも居り、情報戦では非常に強力な主従となりそうです。
>董卓&バーサーカー
流石に勇次郎はブレないですね。
董卓の野望は非常に残忍なものですが、それを一笑に伏すのは流石
バーサーカーの性能は純粋に強い、という感じで実に彼らしいと思いました。
>ジン&シーフ
怪盗ドラパンと王ドロボウ、面白い組み合わせでした。
主催者に予告状を出すという発想がコミカルかつ怪盗らしくて好きです。
聖杯を盗めば戦争は続行不可能になる、やはり怪盗の考え方は違いますね。
>プリンセス・デリュージ&アーチャー
うわあ聖餐杯。戦力としては申し分ないにも関わらず、鯖としてはあまりよろしくないカードですね。
仲間を奪われたデリュージと子供達を殺されたヴァレリアの共通点はなるほどな、と思いました。
死亡フラグもとい聖槍の威力なら大抵のサーヴァントは屠れるでしょうし、色んな意味で恐い組み合わせです。
>空母ヲ級&ライダー
おお……これは凄い発想。
ヘドラと深海棲艦という組み合わせは実に面白くて、また魅力的ですね。
放置しているとどんどん大変なことになりそうな辺りも実にたちが悪いです。
多分次の投下は土日になると思います。
皆様、投下ありがとうございました!
皆様投下お疲れ様です
自分も投下させていただきます
見ろよ、この世界の有様を。
ある時何かがこの世界に、ばら撒かれちまったことがきっかけで、全てが滅びへと向かっちまった。
意思なき自然物までもが、狂った生命力の果てに自滅し、命なき無機物やロボット達は、緩やかに衰え死滅していった。
太陽が沈んだその瞬間、全ての終わりが始まったんだ。
一人の小娘が死んだ時から、俺達の世界は、どうしようもない滅びを始めちまった。
大地が枯れ、街が朽ち、そして命が錆つき消えていった。
世界大戦? 最終戦争?
クク……何も分かっちゃいねぇな、お前は。
言ったろ。一人の小娘が死んだ時ってよ。
全ての滅びを引き起こしたのは、巨大な軍隊なんかじゃねえ。
月という名の太陽を殺した、たった一人の殺し屋が、世界全てを狂わせたんだ。
そんなちっぽけな存在の、たった一瞬の行動で、全てが終わっちまったのさ。
どうだ、滑稽だと思わねぇか。
神様の奇跡は存在しねぇ。この世界には科学しかねぇ。
それでも俺たちゃいつの間にか、そのくらいには、取り返しのつかねぇ存在になっちまったんだよ。
これから現れるのは、そういう奴だ。
英霊なんて讃えられるほど、真っ当な生き様を辿っちゃいねぇ。
そもそも太陽を落とし呪われたアイツが、いつ死んだのかも分からねぇ。
娘の生き血をその身に浴びて、命の呪いを受けた男。
決して殺されねぇかわり、決して自分でも死ねねぇ、命の牢獄に囚われた男。
それがアイツだ。あの男だ。
結局のところそんなアイツが、どんな存在だったのかは……そいつはまぁ、自分で確かめてみるこったな。
ククッ、俺が誰かだと?
どうでもいいじゃねえか、そんなこと。
俺はただの観客に過ぎねぇ。昔はどうだったかは別として、今の俺とこの戦いには、何の関わり合いもねぇんだからよ。
だから俺なんかの名前よりも、アイツの名前をよく覚えときな。
月という名の太陽を殺した男。
奇跡を超えた科学の呪いで、世界を塗り潰し滅ぼした男。
殺した奴の名は――
◆ ◇ ◆
「うあっ!」
足を取られて、無様に転ぶ。
ゴミ袋とポリバケツの臭いが、埋もれた鼻を鋭く突く。
その日は土砂降りの雨だった。
灰色の空から冷たい雫が、次から次へと降り注ぎ、さした傘を五月蝿く叩く。
河嶋桃はそんな日に、真紅の令呪を手に入れた。
何かが足りない空虚な日々から、沸々と湧き上がるようにして、全ての記憶が蘇ってきた。
そしてそれを、学校の友人に、見咎められてしまったのだ。
偽りの身分を与えられ、入学させられた学校の、クラスメイトを演じていた少女に。
同じく令呪を刻まれて、傍らにサーヴァントを連れていた、戦うべきライバルである少女に。
「ごめんね、河嶋さん」
背後から女の声がする。
クラスメイトの声がする。
神話の英霊を従えて、命を狙う者がいる。
古い戦車に跨って、巨大な斧を振りかざした男だ。それが彼女のサーヴァントだ。
車輪を屈強な馬に引かせ、高みから殺意を振りまく、屈強な大男の姿だ。
そうか、あれも戦車なのか。キャタピラも砲塔もなくとも、戦争のための車だから、戦車と呼ばれているのだったか。
そんなことを考えて、そんなのはどうでもいいことだと、桃はすぐに思い直した。
(何故だ)
どうして私はここにいる。
何故こんなことになっている。
大事な戦車道の決勝戦は、もう間近にまで迫っているのだ。
こんな偽りの学校でない、思い出の詰まった大洗女子学園の存続が、その一戦で決まるのだ。
なのにどうして河嶋桃は、こんなところに連れ出されている。
大事な戦いを邪魔されて、チームメイトもいないこんな街で、たった一人で戦わされてる。
(聖杯……)
それがこの戦いの報酬らしい。
身勝手な招集の対価として、望む願いを何であっても、叶えてくれるというのだそうだ。
たとえば、彼女が戦車に乗るきっかけになった、学園艦の維持問題も。
その聖杯に願いさえすれば、大洗女子の廃校も、たちどころになかったことになるだろう。
最強の黒森峰相手に、無謀な戦いを挑まずとも、学園を取り戻すことができるだろう。
(そんなもの……!)
だが、それが一体何だというのだ。
拳を握り、歯を食いしばった。
戦車で勝てば得られる成果を、命懸けで願ったところで、一体何になるというのだ。
私達は頑張ってきた。何もないゼロからスタートしてきて、ここまで戦い続けてきた。
それが報われさえすれば、全ては解決するはずなのに、どうしてこんなことを強いる。
努力の対価は目の前にあるのに、どうしてそんなもののために、命の危険に晒されねばならない。
(死にたくない!)
こんな形で死にたくない。
あんな奴なんかに殺されたくない。
会長も柚子ちゃんもいないこんなところで、孤独に惨たらしく殺されるのは御免だ。
チームメイトの誰からも、死を悟ってもらえないのではと思うと、怖くて怖くて涙が出てくる。
そうでなくても、次の瞬間に、命が尽きてしまうと考えると、手足が震えて止まらなくなる。
「さっさと終わりにしてしまうぞ、マスター」
「ええ。お願い」
野太い男の声が聞こえた。
斧を振り上げる音がした。
ああ、もう駄目か。おしまいなのか。
このまま為す術もないままに、命を奪われてしまうのか。
自分のサーヴァントにすら会えないまま、一矢も報いられないままに、命を落としてしまうのか。
このまま死ねば、何も出来ない。
大切な友達にも二度と会えない。
大好きな学校にもいられない。
河嶋桃は何もできず、何も楽しむことも叶わず、短い命を、ここで、終える。
(……違う!)
そうじゃない。
そうじゃないだろう。
たとえ万策尽きたとしても、それでも望むものがあるなら、最後まで足掻き続けなければならない。
一万一つ目の策が、通用しなかったとしても、決して諦めてはいけない。
それをあの西住みほが、身をもって教えてくれたではないか。
自分達が巻き込んだ少女は、自分達が挫けそうな時にも、諦めず立ち上がってくれたではないか。
「生きる……」
なのに自分がこんなのでどうする。
河嶋桃が諦めてどうする。
恐れが何だ。怯えが何だ。
手足が動かないなんて、そんなものが理由になるか。
「生きて、帰るんだ……!」
涙の滲んだ目を開いた。
鼻水まみれの顔を上げた。
恐怖は全く消えないけれど、それでもがたがたと震える両手に、無理やり力を入れて這いずった。
こんなところでは絶対に死ねない。
会長や柚子ちゃんや大洗女子学園を置いて、くたばることが許されるはずもない。
生徒会広報・河嶋桃が、命を落とすなどあってはならないのだ。
「――生きたいと思うか」
声が、耳に届いた。
稲光りと雷鳴が轟き、視界が一瞬真っ白に染まった。
それでもその時聞こえた声は、轟音の中にあってなお、はっきりと桃に届いていた。
「え……」
振り返る先に、人影がある。
いつからそこにいたのだろうか。
そこに現れた気配を、全く感じることができなかった。
桃が振り返った先には、白い装束を纏った背中が、敵に立ちはだかるようにして現れていたのだ。
「貴様は……!」
「生きるための力があれば、君は諦めず生きられるか」
振り返った視線は、青い。
広がった黒髪のその下で、グレーの空模様にあってなお、青い瞳が輝いている。
薄暗い世界の只中で、その男の双眸は煌々と、色彩を放っているように見える。
瞬間、桃は理解した。
奇妙な感覚ではあったが、彼女は理解させられていた。
これが自分の力なのだと。
あの娘が従えるそれと同じ、河嶋桃のサーヴァントなのだと。
この最低な殺し合いの中で、自分の命を守ってくれる、唯一無二の存在なのだと。
「生きたい……」
その時こみ上げた涙は、生きられないかもしれない悔しさゆえか。
あるいは生きられるかもしれないという、希望を目の当たりにしたことで、緊張の糸が緩んだのか。
豪雨の中にあってなお、瞳からこぼれ落ちる涙は、決して見間違えさせることもなく、その存在を主張していた。
「ああ、生きたいよ! 私は生きて帰るんだ! 生きて帰らなきゃならないんだっ!」
我知らず、桃は叫んでいた。
恥も外聞も何もなく、みっともなく喚き散らしていた。
であれば、それは間違いなく本音だ。
取り繕いもない言葉は、誤魔化しようもない本心だ。
何が何でも生き延びたい。生きて大洗へ帰りたい。
虚勢を張れる相手もいない、たった独りきりの河嶋桃の、偽りのない願いだった。
「なら――僕が君を生かそう」
呟くように。
されど、確かに聞こえた声で。
河嶋桃の呼び寄せた男が、その声に応えた、その瞬間。
「ひ……っ!」
世界の空気は、一変した。
刺すような、凍てつくような、押し潰すような。
ありとあらゆる重圧が、世界の全てを埋め尽くし、その場にいた全てに襲いかかった。
先に上がった短い悲鳴は、相手のマスターから上がったものだ。
見る間に肌は青ざめて、足はがくがくと震えて、ついには身を支えられず崩れ落ちた。
ぼろぼろと大粒の涙を流し、腰の抜けた体で後ずさる様は、先程までの桃以上に、酷い恐慌状態に陥っていた。
「何だ、これは……!」
そして敵サーヴァントも少なからず、その影響を受けているらしい。
軽く身じろぎをしながら、これまでよりも緊張した様子で、その大斧を構えている。
全ての元凶は、白い男だ。
河嶋桃のサーヴァントが放つ、異常なまでの威圧感が、両者を襲い呑み込んでいるのだ。
直接向けられていない桃ですらも、恐ろしいと思えていた。
味方すらも竦ませるそれは、敵の放っていたそれと同じ――命を害する、死の恐怖だ。
「テェッ――!」
「きゃぁああああああああっ!」
少女の悲鳴と、男の声が、豪雨の街に響いた時。
聖杯戦争の舞台に、再び大きな、雷鳴が鳴った。
◆ ◇ ◆
全てが終わりを告げた時、そこには一言の言葉もなかった。
呆然とした様相で、ゴミ袋の上に座っていた、河嶋桃の情けない姿と。
豪雨を身に受けて立ち尽くす、白い男の姿だけがあった。
「あ……」
そう。それだけだ。
他には誰もいなかった。
生きている者は二人だけ。死んでいるものが二つあるだけ。
赤く湿った残骸が、そこら中に転がっているだけだ。
「―――」
冷たく光る青色が、振り返り、桃の方を見る。
真紅の返り値に染まった、白ずくめのサーヴァントと視線が合う。
足元に広がっているのは、原型すらも分からなくなった、無惨で痛ましい肉片の数々。
粒子となって消えていくのは、屈強だったはずのサーヴァントだ。
消えずに残り続けているのは、一日前まで友達だった、女子高生だったはずのものだ。
それら全てに囲まれながら、白い男は立っていた。
冷たい瞳を光らせながら、河嶋桃を見つめていた。
「ひ……!」
デスのサーヴァント。
暗示するものは、死。
脳に送られる冷たい言葉と、網膜から伝わる凄惨な光景が、桃に悲鳴を上げさせる。
両手を伸ばし、両膝を覆い、体育座りの姿勢になって、それきり一歩も動かなくなる。
止む気配のない大雨の中。晴れる様子のない灰空の下。
河嶋桃は縮こまり、寒さとは異なる冷たさに、かたかたと身を震わせていた。
◆ ◇ ◆
殺した奴の名は、キャシャーン。
キャシャーンだ!
.
【クラス】
デス
死神のサーヴァント。
暗殺・謀略・隠密にまつわるアサシンのクラスと異なり、死そのものにまつわる英霊に与えられるクラスである。
必然魔獣や悪魔などの非人間霊の方が多く、人間霊の場合、アサシンの適性を持つ暗殺者よりも、殺人鬼や虐殺者の方が当てはまりやすい。
前者の場合はバジリスク、後者の場合はアドルフ・ヒトラーなどが適性を持っている。魔人アーチャーこと織田信長にも、多少の適性があるらしい。
【真名】キャシャーン
【出典】キャシャーン Sins
【性別】男性型ロボット
【属性】混沌・中立
【パラメーター】
筋力:A 耐久:C+ 敏捷:A 魔力:E 幸運:E 宝具:C
【クラススキル】
急所突き:C
標的の急所を見極め、必殺の一撃を叩き込むためのスキル。
戦闘中にクリティカルヒットを狙える確率が増加する。
威圧感:A
存在そのものが放つ死の恐怖。
相対する相手にプレッシャーを与え、行動や判断を鈍らせることができる。
Aランクともなると、低級のサーヴァントであれば、身動ぎすることも難しくなる。
「勇猛」などの精神干渉に耐性を与えるスキルがあれば、軽減ないし無効化が可能。
【保有スキル】
戦闘続行:A+
基本的に死ねない。 他のサーヴァントなら瀕死の傷でも、戦闘を可能とする。
直感:C
戦闘時、つねに自身にとって最適な展開を”感じ取る”能力。
敵の攻撃を初見でもある程度は予見することができる。
【宝具】
『月という名の太陽を殺した男(カース・オブ・ルナ)』
ランク:C 種別:対人宝具(自身) レンジ:- 最大補足:-
女神を殺した罪の証。
永劫に死ぬこともない代わりに、真に生きるということも実感できない生の牢獄。
どれほどの傷を負ったとしても、それに比例した苦痛を伴い、瞬時に再生する自己修復能力である。
キャシャーン自身の意志でも、マスターが令呪を使ったとしても、オンオフを切り替えることはできない。
このサーヴァントを殺すには、亜空間にでも追放するか、分子レベルまで完全消滅させるかしかない。
仮に前者を行ったとしても、マスターに令呪がある限りは、
強制転移によって帰還させることができるため、基本的には後者以外の攻撃は意味をなさない。
ただし肉体の再生には、当然マスターの魔力消費が伴うため、乱用は禁物である。
規格外の再生能力を誇るが、科学技術に由来する宝具であるため、神秘性はさほど高くない。
【weapon】
なし
【人物背景】
月という名の太陽がいた。
ルナという名前で呼ばれる少女は、地に溢れたロボット達を癒やし、幸福な生涯へと導いていた。
しかし彼女の存在を、疎ましく思う者がいた。
ロボットの王たらんとした男は、自分以外に支配者となり得るものを抹殺するため、彼女のもとに暗殺者を送り込んだ。
ルナを刺し貫いた男こそ、キャシャーンと呼ばれたロボットだった。
そしてルナが死んだその瞬間から、世界の滅びが始まったのだった。
キャシャーンが再び目を覚ました時、世界は滅びの中にあった。
記憶を失ったキャシャーンは、自分をつけ狙うものと戦い、その度に殺し続けてきた。
ルナの返り血を浴びたことで、死にたくとも死ねない身体になった男は、望まぬ殺戮を繰り返し、屍の頂で涙した。
やがて旅路の果てに、キャシャーンは、再び蘇ったルナと出会った。
しかし彼女の築いた世界は、死を忘れ去った者達が、ただ漫然と日々を過ごすだけの、怠惰に満ちた世界だった。
失望の楽園に立ち尽くした男は、歪な世界を認めることができず、自ら彼らにとっての「死」となった。
滅びを免れたとしても、永遠の生を取り戻したとしても、死というものから目を逸らしてはならない。
ルナとロボット達が死を忘れた時、キャシャーンは再び現れて、彼女らを殺しにやって来る。
キャシャーンはそう言い残すと、彼女らの目の前から立ち去り、一人孤独な死神となった。
歪んだ倫理を正すため、義憤に駆られ立った英雄なのか。
犯した罪を贖わんとし、自ら十字架を負った罪人なのか。
キャシャーンが何者であったのかは、今は、誰にも分からない。
【サーヴァントとしての願い】
???
【マスター】
河嶋桃@ガールズ&パンツァー
【マスターとしての願い】
生き残る
【weapon】
なし
【能力・技能】
騎乗(戦車)
戦車の乗組員としてのスキル。通信手・砲手・装填手のスキルを保有する。
ただし射撃の腕前は相当に低く、砲手の適性は皆無に等しい。
事務
書類作成などのデスクワークスキル。ほとんどの時間を杏の世話役として過ごしているため、発揮される場面は少ない。
しかし決して無能ではなく、マニュアル通りの仕事なら、そつなくこなすことができる。
バレエ
宴会の隠し芸大会で、見事なバレエを披露したことがある。
【人物背景】
県立大洗女子学園に通う、高校三年生の少女。
生徒会広報を担当しており、会長の角谷杏を崇拝している。
学園の廃校を阻止するため、戦車道を復活させ、全国大会優勝を目指す。
自身は冷静沈着な策士として、杏の片腕を務めようと努力している。
しかし本質的には短気かつ小心者で、想定外の事態にヒステリーを起こしたり、泣きじゃくったりしている。
空回りすることは多いものの、彼女なりに学園を守るため、精一杯頑張っているのは確か。
今回は黒森峰女学園との試合の数日前から参戦している。
【方針】
直接的な格闘戦しかできないキャシャーンと、目まぐるしく変化する戦況に対応できない桃。
この主従に取れる戦術は、キャシャーンのステータスに物を言わせた、正面切ってのゴリ押し戦法のみだろう。
最大の問題は、「威圧感」を振りまくキャシャーンの戦いに、桃までドン引いてしまう可能性があること。
とにかく桃のメンタルの弱さがネックなので、頼れる同盟相手が出来たら、大事にしたい。
劇場版鑑賞記念
というわけで、投下は以上です
キャシャーンのステータスは、「聖杯戦争異聞録 帝都幻想奇譚」様の候補作を参考にさせていただきました
投下乙です
自分も投下します
その男は衰退しつつある魔術師の家系に生まれた。
魔術を学び、家を継ぎ、魔術刻印を継いだ男はしかし、常に焦燥に駆られていた。
かつては名門の一角であった家系は今や魔術協会からも侮られ子孫の未来も暗いことが約束されたようなもの。
男が恐れたのは死、ではない。魔術師とは最初に死への諦観を身に着けるもの。そのような通過儀礼はとうに済ませた。
では、何を恐れるのか?未来だ。そう遠くない将来に家系の魔術回路は枯れ果て哀れ名門であった魔術師は俗人へと堕ちるのだ。
そのような結末を許容できようはずもない。されど打つべき手はなかった、今までは。
「俺は、やるぞ」
これからは、違う。自分は手に入れたのだ、輝かしき未来へのチケットを。
聖杯戦争。期せずしてマスター候補として参加させられたことへの憤りが一切ない、とまでは言わない。
けれど、聖杯だ。あらゆる願いを叶えるとされる願望器だ。
真贋は問わない。聖杯が真に男の願いを聞き届けるのならばどんなものであろうと構わない。
「やってみせるとも。我が一門の再興、いや、根源への到達すらも聖杯ならば叶えられよう」
自らの命をベットするだけで一族繁栄への道が拓かれる、その可能性を得られるのならば安いもの。
とはいえ、当然リスクは伴う。何しろ魔術刻印の移植をまだ息子に済ませていない。
つまり男が死ねばそこで一族の未来は潰えるというわけだ。
ならば敗北は許されない。必ずこの手に聖杯を。
「…よし、集まったな」
資産家としての役職を与えられた男が購入した町外れの倉庫。
当然私有地であるその内部には今や数十人のNPCが集っていた。
彼らは男がマスターとして目覚めて以来、数日かけて今日この場所に来るよう強力な暗示をかけた者たちだ。
一見して聖杯戦争の最中における無駄な魔力消費だが、魔術師たる男が収支の計算をしていないはずもない。
「存分に喰らえ、バーサーカー。塵も積もれば何とやら。これだけ食えばいくらお前でもしばらくは戦えよう?」
凶獣。そう形容するのが相応しい暴威の化身がこの時を待ち侘びていたかのように唸りを上げてその実体を露わにした。
男に宛がわれたサーヴァントのクラスはバーサーカー。本来格の低い反英雄だが狂化によるパラメータの底上げによって三大騎士クラスとも戦える力がある。
とはいえそれも十分な魔力があれば、という話になる。男の魔術回路でバーサーカーを支えるのは不可能とまではいかずとも困難であることはすぐにわかった。
ならばどうする?決まっている。足りないものがあるならば余所から補うのが魔術師の基本。
男の魔力提供のみでは不十分だというなら魂喰いをさせれば良いだけのこと。
が、問題はあった。事が裁定者や他のマスターに露見すれば袋叩きの憂き目に遭う可能性がある。
それに街をうろつき回って手当たり次第に通行人を襲うというのは非効率であるし何より隠蔽が難しい。
そこで男は良き住人としての顔を装い少しずつ、確実に暗示をかけて自身の領域であるこの倉庫に彼らが自発的に集まるよう仕向けた。
これならばバーサーカーがどれほど派手に食い散らかそうが証拠隠滅は容易だ。人目にも決してつかない。
「随分と回り道になったが、ここからだ。俺は、必ず根源へと至ってみせる」
「ふーん、それってそこまで大事な事なの?」
あるはずのない反応。馬鹿な。声のした方向へ振り向くと二十歳前後の青年が倉庫の入り口に立っていた。
青年はカメラを取り出し男とNPCたちにフラッシュを焚いた。
「これで証拠写真バッチリ。もう言い逃れは出来ないぜ」
「…貴様、マスターか?魔術師というわけではなさそうだが……。
なるほど、どうやら魔術の心得のあるサーヴァントを引いたと見える。でなければ人避けの結界を潜り抜けられるはずもない」
「ご名答。だけどもう関係ないよ、お前らはここで撲滅するんだから。
俺は進兄さんほど甘くないから、外道には容赦しないぜ」
口調に怒りを含めた青年はバックルのようなものを取り出し腰に装着。続けてバイクの模型のようなものを手に取った。
『シグナルバイク!ライダー!!』
「お楽しみは俺からだ。レッツ変身!」
『マッハ!!』
模型をバックルに装填し、スイッチを操作すると光とともに青年の姿が一変した。
Vの字のアンテナにバイザーにも見える仮面を着け首にはマフラーを巻き、右肩にタイヤが取り付けられた白いパワードスーツだ。
音声のセンスの高さには敵ながら感嘆せざるを得ない。
「追跡、撲滅、いずれもマッハ!仮面ライダーマッハ!!」
見せつけるような派手なパフォーマンスとポージングはあからさまな挑発だった。
どのみち、工房を兼ねたこの倉庫への侵入を許した時点で生かして帰す理由などは一つもない。
サーヴァントを伴わずに現れたことを後悔させてやるまでのことだ。
「バーサーカー、指示は一つだ。……殺せ」
「■■■■■■――――――ッ!!!」
バーサーカーが男の魔術回路から躊躇なく魔力を吸い出し駆動する。
巨大な斧を実体化させマッハなる身の程知らずの戦士を破砕するべく力を込めた。
一般人ならばバーサーカーの威嚇と唸り声だけで失禁するほどの威圧だがマッハはそれだけで押されはしない。
「おっと、当たるわけにはいかないね」
『ズーット!マッハ!』
突撃するバーサーカーを前に、マッハはバックルのスイッチを連打。するとバーサーカーを遥かに超えるスピードを発揮し側面に回り込み左腕で強かに殴りつけた。
無論その程度で怯むバーサーカーではない。ダメージの一切を無視し荒れ狂う暴風の化身となって縦横無尽に斧を振るう。
『ゼンリン!』
しかし、当たらない。超速で動き回るマッハが右手に持った銃で痛烈な打撃を加えるとさしものバーサーカーも仰け反った。
すかさずエネルギー弾を連射、そのまま距離を取って新たな模型を取り出し装填した。
『シグナルバイク!シグナルコウカーン!!』
「じゃ、キャスター。後はよろしく」
『トマーレ!』
マッハが無造作に放った一発の弾丸、それを弾こうと斧で触れた瞬間、バーサーカーが時を止めたように動かなくなった。
拘束を解くためにもがく、という動作すら許されなくなったバーサーカーの全身が突如炎に包まれた。
驚きに男が辺りを見回すとローブを纏った杖を持つ青髪の青年がいつの間にかそこにいた。
「き、貴様…サーヴァント……!」
「おう、見りゃわかんだろ」
マッハがキャスター、と呼んだ青年の杖からは僅かに火が灯っている。こいつがバーサーカーを焼いたのか。
バーサーカーはいつの間にか消滅していた。身動きすらできないまま焼き殺されたのだ。
男の夢は突然現れた邪魔者によって呆気なく断たれた。
後ずさる男をキャスターが引っ掴み押し倒し、杖の一突きで膝の皿を砕いた。
「ぎがぁあああ!?」
「マスターの方針だからな、命までは取らないでおいてやる。
せいぜい消滅するまで手前の所業を反省してろ。まあ、魔術師ならそんな神経は残っちゃいねえだろうがな」
残った足が、右腕が、左腕が次々とへし折られていく。
意識を手放す寸前に男が見たのは己の魔術刻印へ杖を向けるキャスターの姿だった。
一時間後、倉庫に殺到するパトカーと救急車を遠目に確認しながらバーサーカー主従の蛮行を阻止した二人の聖杯戦争参加者が埠頭で向かい合っていた。
仮面ライダーマッハへの変身を解いたカメラマンの青年、詩島剛とサーヴァント・キャスターだ。
「両手両足全部叩き折って、ついでに魔術刻印にも傷をつけておいた。
いくら魔術師でもあの状態からじゃ何もできねえだろうさ」
「街の人たちも警察に保護されたのを確認してきたよ。
ま、とりあえずはこれで一件落着かな」
夜な夜な周辺住民に暗示を掛けて回っていた魔術師の男の所業を調査していた二人は魂喰いが行われる直前を狙ってその目論見を阻止しに来た。
キャスターが事前に用意していた魔術礼装の効果によって魔術師でない剛でも疑似的に魔術への耐性を得ていたため問題なく突入することができた。
そして先んじて突入した剛が派手なパフォーマンスとマッハへの変身で相手の注意を惹いている間にキャスターがNPCを解放しつつ剛を援護するという策だ。
「で、サーヴァント戦にはもう慣れたか?」
「おかげさまで。あんたの礼装を身に着けてから絶好調だよ。
でもサーヴァントってのはとことん化け物揃いだね、あのバーサーカーも最後の方は俺のスピードを見切りかけてたし。
あれで生身とかどういう身体構造してるのか全然わからねえ」
「んなもん当たり前だ。サーヴァント、つまり英霊ってのは人類史を築いてきた連中だ。
そいつと戦うってのはつまり、人類史そのものと戦うのと同じってこった。
オレがランサーとして現界してればサーヴァントの相手を引き受けるんだがな」
剛はここに至るまでに何度かのサーヴァントとの戦闘を潜り抜けてきていた。
競り勝ったこともあれば無様に敗北したこともある。共通しているのはただの一度も雑念を抱くほどの余裕はなかったということだけ。
今回の戦闘での軽口にしてもサーヴァントが放つ圧力に耐え、自らを奮い立たせるためという側面が強い。
しかし、いざ戦いが終わってみれば考えてしまう、考えざるを得ないこともまたある。
「なあ、キャスター……これってやっぱり、人殺しだよな?」
「ああ、そうだ。サーヴァントを失ったマスターは再契約できない限りいずれ聖杯に消される。
だが深く考えるのはやめとけ。うだうだ悩みながら戦えるほど器用な性格してねえだろ、お前。
人殺しの業だのなんだのは生きて帰ったその後に考えりゃいいんだよ」
「……やっぱあんた凄いよ」
『こんなふざけた戦争は潰す。仕組んだ奴がいるなら撲滅する。そして帰るために聖杯を頂く』
剛はキャスターを召喚した直後、反発を覚悟した上で堂々とこう宣言した。
予想に反してキャスターは剛の願いを快諾し、順風満帆なスタートを切ったと、そう思っていた。
けれど、今にして思えばあの時に考えておくべきだった、あるいは覚悟しておくべきだったのだろう。
戦争に限らず闘争とは言うなれば願いと願い、敢えて醜く表現するならばエゴとエゴのぶつかり合いだ。
聖杯戦争を覆す、という願いも突き詰めれば一つのエゴでしかなく、であれば他人の願いと衝突することは必然の事象。
そしてそのエゴを通すには結局のところ他人を蹴落とす、有り体に言えば殺す他にないのだ。
「…進兄さんやチェイスならどうするんだろうな」
知らず、共にロイミュードと戦う二人の仲間の名前が口をついて出た。
進ノ介ならば苦しむだろう。どんな理由があれ彼は人が人を殺すことを決して良しとしない。
けれど、きっと最後には覚悟を決めてトップギアで走り出すに違いない。
チェイスなら、決して口に出すことはしないと決めているが既に友人と呼んで差支えない関係になっている彼ならどうするか。
迷わないだろう。ただ愚直に人間を護るという使命に殉じて、そのために人を殺すという矛盾さえも飲み込んで無骨に、不器用に戦い続ける道を選ぶはずだ。
「じゃあ、俺が迷ってるわけにはいかないよな」
聖杯戦争に関しては、剛が魔術師ではないせいもあるだろうが、まだわからない事が多すぎる。
それでも、こうしている間に何も知らず平穏に暮らすNPCや生身の人間であるマスターたちが死んでいっているということはわかる。
父親である蛮野天十郎のような邪悪な人間に願望器が渡れば大勢の人間に不幸が訪れるという確信がある。
ならば、矛盾を抱えてでも戦い続けよう。それが如何に罪深い行いであるとしても。
何故なら人間を護ることが仮面ライダーである自分の使命なのだから。
【クラス】
キャスター
【真名】
クー・フーリン
【属性】
秩序・中庸
【ステータス】
筋力E 耐久D 敏捷C 魔力B 幸運D 宝具B
【クラススキル】
陣地作成:B
魔術師として自らに有利な陣地「工房」を作成可能。
道具作成:B
ルーン魔術に関わる魔術道具、礼装を作成可能。
【保有スキル】
ルーン魔術:A
スカアハから与えられた北欧の魔術刻印、ルーンの所持。これを使い分けることにより、強力かつ多様な効果を使いこなす。ただし、効果の同時複数使用(併用)は不可。
矢避けの加護:A
飛び道具に対する防御スキル。クー・フーリンのそれは先天的なもの。攻撃が投擲タイプであるなら、使い手を視界に捉えた状態であれば余程のレベルでないかぎりキャスターに対しては通じない。ただし超遠距離からの直接攻撃、および広範囲の全体攻撃は該当しない。
仕切り直し:C
戦闘から離脱する能力。また、不利になった戦闘を初期状態へと戻す。
神性:B
神霊適性を持つかどうか。ランクが高いほど、より物質的な神霊との混血とされ、キャスターは半神半人であるためランクが高い。
【宝具】
『灼き尽くす炎の檻(ウィッカーマン)』
ランク:B 種別:対軍宝具
ウィッカーマン。無数の細木の枝で構成された巨人が出現。巨人は火炎を身に纏い、対象に襲い掛かって強力な熱・火炎ダメージを与える。
宝具として出現した巨人の胴部の檻は空であり、そのため、巨人は神々への贄を求めて荒れ狂う。
これはルーンの奥義ではなく、炎熱を操る「ケルトの魔術師」として現界した光の御子に与えられた、ケルトのドルイドたちの宝具である。
【人物背景】
ケルト、アルスター伝説の勇士。
赤枝騎士団の一員にしてアルスター最強の戦士であり、異界の盟主スカハサから授かった魔槍を駆使した英雄であると同時に、師から継いだ北欧の魔術――ルーンの術者でもあったという。
キャスターとして現界した彼は、導く者としての役割を自らに課していると思しい。
真のドルイドではなく、仮初めのそれとして――
共に在り続ける限り、彼はマスターの行く道を照らしてくれるだろう。
【サーヴァントとしての願い】
この聖杯戦争の異常を見つけ出す。
あと剛は危なっかしいので上手く助けてやる。
【マスター】
詩島剛@仮面ライダードライブ
【マスターとしての願い】
聖杯戦争の裏を暴き仕掛け人共々撲滅する。
その過程で聖杯を使う機会があれば人類を脅かすロイミュードを全滅させる…?
【weapon】
マッハドライバー炎
仮面ライダーマッハへの変身ベルト。マッハについては後述
シグナルバイク&シフトカー
仮面ライダーマッハへの変身、フォームチェンジ、能力使用に用いるミニカー型のツール。
自律行動させることもできる。
ゼンリンシューター
マッハ専用のエネルギー銃。マッハの意思に応えて手元に出現して装備するが、変身前でも使用可能。圧縮エネルギー弾を発射しての射撃のほか、銃口下部に備わった強化タイヤでの打撃攻撃も可能。
ライドマッハー
マッハの専用バイク。基本カラーは白。変身前の剛も愛車として使用する。正面から連射で一定時間物体が消滅するビームを発射し、後部からは攻撃を完全に防ぐシールドエネルギーを展開する。重加速現象にも対応している。
ルーンストーン
キャスターの道具作成スキルによって用意された魔術礼装。
現在は強化や硬化、発火といった効果を持つルーン石を所持しておりこの礼装の加護により剛は生身、変身時を問わずサーヴァントへの干渉を可能にしている。
【能力・技能】
変身せずとも高い身体能力を持ち、今も現状に満足せず鍛え続けている。
また進ノ介や特状課に先んじて事件の真相を突き止めるなど推理力も高い。
しかし最大の武器は何度試練にぶつかろうとも折れない不屈の精神力。
【仮面ライダーマッハ】
剛がマッハドライバー炎とシグナルバイクを用いて変身する仮面ライダー。
新型エンジン・NEX-コア・ドライビアを中心としたネクストシステムを搭載しており、右肩の小型タイヤにグラフィック表示されたシグナルバイクの能力を駆使して戦う。
NEX-コア・ドライビアはリミッターを解除すれば重加速現象を引き起こし発動範囲内のあらゆる生物・物体の動きをスローにする。
……のだが聖杯戦争ではこの機能に制限が掛けられており現在は使用不可能になっている。(重加速環境への適応自体は可能)
マッハドライバー炎のバックル上部のスイッチを連打することで、「ズーット! マッハ!」の音声と共に猛スピードで行動できる。
さらにシグナルバイク、シフトカーを交換することにより様々な能力を発動できる。聖杯戦争に剛が持ち込めたシグナルバイクはシグナルマッハ、シグナルマガール、シグナルキケーン、シグナルトマーレ、シグナルカクサーンの計五つ。シフトカーはシフトデッドヒートのみ。
【デッドヒートマッハ】
マッハがシフトデッドヒートを使って変身する強化形態。スピードが僅かに落ちるがパンチ力、キック力などパワーは大幅に上がっている。
当初は一定時間の経過で肩のタイヤがバーストし暴走状態に入ると暴れ出してしまう弱点があったが、剛は精神力でこの弱点を克服。
マッハドライバー炎のスイッチを連打することで意図的にタイヤバーストを引き起こし、更なる強化状態として使いこなすことができる。
【人物背景】
物語途中でアメリカから帰国したフリーのカメラマン。年齢は19歳。
アメリカ在住時に、マッハの開発者であるハーレー・ヘンドリクソン博士に適格者として選ばれ、彼の下で訓練を受けていたが、訓練を途中放棄して無断で日本に帰国、ドライブ=泊進ノ介と共にロイミュードと戦うようになる。
テンションが高く派手なパフォーマンスを披露しながらその場に登場するなど自意識過剰な面が目立つが、姉の霧子には「たった一人の大切な家族だから」と真摯に親愛の情を見せる。
一般人としてのフットワークの軽さを活かして特状課とは別の観点から事件に協力することも多い。
ロイミュードを作り出した科学者・蛮野天十郎の実の息子であり、父親の罪の証であるロイミュードを殲滅することを誓っている。
そのためロイミュード対して長らく強い敵意を向けている。仮面ライダーに復帰し味方になったチェイスに対しても当初は強い敵愾心を抱き、ある程度距離が縮まり内心友人と認めるようになった後でも素直になれず突き放したような態度を取っていた。
【方針】
聖杯戦争を根本から覆すためにまずは会場を精査する。
非道な行為に手を染めるマスター、サーヴァントには容赦しない。最悪の場合は殺害も考慮する。
以上で投下を終了します
みなさまお疲れ様です
自分も投下致します
月光に照らされた、夜の森林。
その一角で、二つの紅い影が縦横無尽に疾駆し交差し合っていた。
地を蹴り、木々を蹴り、風を切り、両者はその手に持つ刃を何度もぶつけ合わせている。
一方は、ライトグレーを基調に朱のラインが入った重厚な全身鎧を身に纏い、同じ意匠の兜で顔を隠す騎士。
対するは、真紅のコートを身に纏う銀髪長身の伊達男。
両者の動きは非常にアクロバティックであり、見物客がいれば思わず熱くならざるをえない程の魅力が秘められていた。
しかし……それでありながらも、戦い方そのものには無駄を感じさせる要素は不思議と無かった。
無論、彼等には―――少なくとも鎧の騎士には確実に―――魅せる戦いにするつもりなど一切無い。
そんな事に気を回せる程甘い相手ではないと、分かっているからだ。
その上で尚、二人の動きに独特のキレ―――スタイリッシュさがあるのは、もはや素のスタイルがそうであるからとしか説明のしようがなかった。
「Hey!!」
銀髪の男は、眼前の騎士めがけてその手の剣をブーメランの如く投げ放った。
普通に考えれば自ら得物を手放し剰え射出するなど、剣士としてはありえぬ蛮行だろう。
故に、対する者には動揺が生まれ、付け入る隙もまた生じうる。
されど……その行動を、鎧の騎士は驚くことなく冷静に見据えていた。
そしてあろうことか、銀髪の男と全く同じく剣を投げたのだ。
両者の剣は、空中でぶつかり合い上空へと投げ出される。
その直後。
銀髪の男は素早く背のホルスターに手を回し、そこにかけていた二丁の拳銃を抜き放った。
鎧の騎士は両腕を顔の前で十字に構え、凄まじい勢いで疾走した。
弾数という概念など無いと言わんばかりに、拳銃からは大量の銃弾が散蒔かれている。
それを避ける事なく、鎧の騎士はただ真正面からぶつかり、弾き飛ばしている。
そして、間合いを詰めた騎士は男の水月へと素早く蹴りを打ち込む。
男の顔に苦悶の色が浮かぶ。
更に騎士は、この蹴りの反動を利用して空へと跳躍。
舞っていた愛剣を、中空で掴んだ。
「Ha……OK!」
ならばと銀髪の男は自らも宙へと跳び、同じく愛剣をその手に掴む。
そのまま、両者は空中で剣を激しく何度もぶつけ合わせた。
連撃の度に火花が飛び散り、薄闇の中にある両者の輪郭を確かに浮かび上がらせてゆく。
一瞬の気も抜けない激戦の最中にも関わらず。
銀髪の男の顔は、まるで戦いを楽しんでいると言わんばかりの笑みを浮かべていた。
そしてそれは、相対する鎧の騎士も同じ。
表情こそ外からは覗い知れないものの……その鎧の中では。
騎士――――モードレッドは、銀髪の男と同じ確かな笑いを浮かべていた。
◆◇◆
「ん、マスター。
こいつでいいか?」
「おう、ありがとよ」
時は流れ、一時間後。
小さなワンルームマンションの一室で、一組の男女が遅めの晩食をとっていた。
マスターと呼ばれた男―――銀髪の剣士は、届いたばかりの宅配ピザの箱をテーブルに置き、床にだらしなく足を伸ばし座り込んでいる。
そんな彼へと冷蔵庫にしまわれていたジントニックの缶を投げ渡したのが、相方である金髪の少女だ。
腹部を晒したチューブトップの上から赤のレザージャケットを羽織り、ホットパンツ姿という極めて露出の多い服装をしている。
彼女もまた床に勢いよく座り込むと、先程冷蔵庫から一緒に取り出していた缶コーラを開け、勢いよく飲み下していく。
「はぁ〜……効くぅ」
冷えた炭酸が体に染み渡ってゆく感覚に、少女は簡単の言を漏らす。
その粗雑な振る舞いを見て、銀髪の男は苦笑せざるを得なかった。
この様子を見て、一体誰が信じるだろうか。
「やれやれ……随分と俗っぽい騎士様もいたもんだな?」
先程まで自身と激闘を繰り広げていた全身鎧の騎士―――モードレッドの正体こそが、彼女であることを。
「何だ、マスター?
信じられないって言うなら、その言葉はそっくりそのまま返させてもらうぜ。
寧ろオレからすれば、マスターの方が異常だぞ」
しかし……モードレッドからすれば寧ろ、おかしいのはこのマスターの方であった。
聖杯戦争において、英霊―――サーヴァントというものは、人間では到底太刀打ち出来ぬ強力な力を秘めた存在だ。
極僅かな例外を除き、召喚者であるマスターが戦いを挑んだところで勝ち目などあるわけがないのだが……
「まさか、サーヴァントと……俺と互角にやりあえるマスターがいるなんて、ありえねぇだろ」
その常識を、この銀髪の男は覆した。
あろう事か彼は、自身のサーヴァントを相手に互角の戦いを繰り広げたのだ。
それも奇襲や騙し討の類ではない、真正面からの切った張ったのぶつかり合いでだ。
アサシンやキャスターのクラスならばまだ可能性は僅かにあるかもしれないが、生憎とモードレッドのクラスは三騎士のセイバーである。
普通に考えて、ありえない。
更に、モードレッドが驚いている点はもう一つある。
このマスターから供給されている魔力量だ。
自身がこうして現界し、且つ戦場で全力を出すには、十分すぎる魔力が流れている。
並の魔術師ではこうはいかないだろう。
……ちなみに、何故この二人が戦闘になったのかというと。
銀髪の男がよりにもよってモードレッドを『女扱い』した挙句、それをやめろと指摘した彼女をやめるどころか更にからかったが為だ。
女性として扱われることを極端に嫌う彼女からすれば、如何に自身のマスターといえど流石に怒らずにはいられなかったのである。
もっとも、そのおかげで二人は互いの実力を分かりやすく知る事はできた。
心踊る戦いが出来た事もあってか、今は一応怒りも―――流石にもう一回女扱いされれば、その時はより激怒するだろうが―――収まっている。
「ハハ……名立たる円卓の騎士に認められるとは、光栄な話だな。
ま、俺にも色々とあるのさ」
「……確かにな。
並の英霊よりよっぽど凄まじい経歴は持ってるぜ、マスターは」
とは言え、モードレッドはその理由には一応の納得がいっていた。
この銀髪の男は、人間離れしているどころか……そもそも人間ではないのだから。
時を遡ること、二千年前。
人々が住む人間界とは別の次元にある悪魔達の世界―――魔界において。
そこに君臨する帝王ムンドゥスは、人間界を手中に収めるべく悪魔の軍勢を引き連れての侵略を開始しようとした。
平和は砕かれ、人々はその恐怖にただ怯えるしかなかった。
しかし……その最中に、たった一人の悪魔が正義に目覚めムンドゥスへと反旗を翻したのだ。
その名は魔剣士スパーダ。
彼は激闘の末にムンドゥスを魔界に追い戻す事に成功し、そして人々の平和を見守り続けた。
その命が、伝説に刻まれるまで。
そして、その最中に彼は一人の人間の女性と結ばれ、双子をもうけた。
その一人こそが……今、モードレッドの目の前にいるマスター。
スパーダの持つ力を受け継いだ、屈強なデビルハンター……ダンテだ。
この経歴を最初に聞いた時は、モードレッドも流石に開いた口が塞がらなかった。
生半可な英霊よりも余程英霊らしい存在ではないかと。
しかし、自身と互角に戦えた事がその証明になっているが故に、信じるしかなかった。
そして同時に、喜ばずにもいられなかった。
何せマスターとしてみれば、この男は紛れもない当たりなのだから。
ただし……
「……マスター。
もっかい聞くが、あんたは積極的に聖杯戦争に乗るつもりまではないんだな?」
それは彼が、聖杯戦争に乗り気ならばの話に限るのだが。
「ああ……世界各国の英雄様との乱闘パーティーってのは中々魅力的だがな。
ただ、どうにもこの聖杯戦争ってヤツが、胡散臭く感じてならないのさ」
ダンテはこの聖杯戦争に、きな臭いものを感じていた。
悪魔狩りとしての直感……経験に基づく勘からといえばいいのだろうか。
今日まで、怪しい儀式やら魔道具やらの類は散々目にしてきている。
だからこそ……この聖杯戦争とやらには、何か裏があるのではないかと考えざるを得なかったのだ。
本当にこれは、ただ万能の願望器を巡るだけの戦いなのだろうか。
その裏に何の目的もないと、果たして本当に言い切れるのだろうか。
それがはっきりしないままに、この戦争に乗ってもいいのだろうか。
そう思うがゆえに、ダンテは自ずから積極的に参加するつもりまではなかったのだ。
「不満か、セイバー?」
「……そうだな。
不満がないといえば嘘にはなる」
勿論、セイバーからすればダンテの主張は不服なものだ。
聖杯に託す望みがあるからこそ、彼女は召喚に応じたのだから。
それを遮られて良いわけがない。
「だが……マスターの言うことも、確かに一理あるのは事実だな」
しかし、彼女とて愚かではない。
粗雑で粗野な振る舞いなれど、生前は諸侯を動かしブリテンへの反乱を成功させた、策略家としての一面もある。
ダンテの言い分もまた理解はしていたのだ。
確かに、聖杯戦争が出来すぎた儀式ではないかという主張はもっともだ。
美味しい話に裏があるのは、それこそ生前に何度も経験しているのだから。
「だから、オレは事実がどうなのかをまず確かめたい。
まともに聖杯が手に入るならそれに越したことはないし、そうじゃないのならこの聖杯戦争をぶっ壊すだけだ。
まあその為には、聖杯に近づく必要があるけどな」
「そして、結局聖杯に近づくには戦いを勝ち進むしかない……か。
やれやれ……まあ他に方法もないし、どの道、降りかかる火の粉は払わなきゃな」
故に、二人はこの聖杯戦争の真偽を確かめる事を目的に行動すると決めた。
その為には聖杯に近づく必要もあるし、時には襲い来る他の参加者とも戦う必要があるだろう。
積極的に自分から喧嘩を売るつもりまではないが、そういった相手ならば倒さないわけにもいかない。
誰もが叶えたい願いを持っているのは分かってはいるが、だからといってはいそうですかと死ぬわけにもいかないのだ。
「OK……契約は成立だ。
よろしく頼むぜ、セイバー」
「ああ……こちらこそだ、マスター」
世に伝説を遺した、偉大なる父。
その血を引く、人を超えた人在らざる二人の剣士。
近しい道を歩む真紅の主従の行く末は、果たしてどのような結果を迎えるか……
【クラス】
セイバー
【真名】
モードレッド
【属性】
混沌・中庸
【ステータス】
筋力B+ 耐久A 敏捷B 魔力B 幸運D 宝具A
【クラススキル】
対魔力:B
魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。
大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。
騎乗:B
騎乗の才能。大抵の乗り物なら人並み以上に乗りこなせるが、 魔獣・聖獣ランクの獣は乗りこなせない。
……ただし、モードレッドの性格が原因か運転はかなり雑。
ある魔術氏曰く「お前の運転に耐えられる車は戦車しかねぇよ」との事である。
【保有スキル】
直感:B
戦闘時、つねに自身にとって最適な展開を「感じ取る」能力。
また、視覚・聴覚への妨害を半減させる効果を持つ。
魔力放出:A
武器・自身の肉体に魔力を帯びさせ、瞬間的に放出する事によって能力を向上させるスキル。
いわば魔力によるジェット噴射。
絶大な能力向上を得られる反面、魔力消費は通常の比ではないため、非常に燃費が悪くなる。
戦闘続行:B
名称通り戦闘を続行する為の能力。
決定的な致命傷を受けない限り生き延び、瀕死の傷を負ってなお戦闘可能。
「往生際の悪さ」あるいは「生還能力」と表現される。
カリスマ:C-
軍団の指揮能力、カリスマ性の高さを示す能力。
団体戦闘に置いて自軍の能力を向上させる稀有な才能。
モードレッドのカリスマは国家運営をできる程のレベルではないが、体制に反抗する際にその真価を発揮する。
【宝具】
『燦然と輝く王剣(クラレント)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人
アーサー王の武器庫に保管されていた、「如何なる銀より眩い」と称えられる白銀の剣。
王の威光を増幅する機能、具体的には身体ステータスの1ランク上昇やカリスマ付与などの効果を持っている。
しかし、モードレッドはこの剣を叛乱を起こした際に強奪した為に、王として認められているわけではない。
その為にランクは本来のBからCへと低下し、各種ボーナスも機能をしていない。
『我が麗しき父への叛逆(クラレント・ブラッドアーサー)』
ランク:A+ 種別:対軍宝具 レンジ:1〜50 最大捕捉:800人
「燦然と輝く王剣」の全力を解放した形態。
この剣は王ではないモードレッドが手にしても本来の機能を発揮しないが、その増幅機能そのものは生きている。
これを利用し、彼女の父への憎悪を魔力という形で剣に叩き込み、増幅させて赤雷として撃ち放つのがこの宝具である。
真名解放時には剣を構えた彼女を中心にした一帯が血に染まり、白銀の剣も邪剣へと変貌する。
『不貞隠しの兜(シークレット・オブ・ペディグリー)』
ランク:C 種別:対人宝具(自身) レンジ:0 最大捕捉:1人
モードレッドの顔を隠している兜。
真名及び宝具や固有スキルといった重要な情報を隠蔽する効果があり、マスターであっても兜をかぶっている間は見ることができない。
また、戦闘終了後も使用していた能力・手にした剣の意匠を敵が想起するのを阻害する効果を持っている。
ただし、ステータスやクラス別スキルといった汎用的な情報までは隠せない他、この宝具の使用中は我が麗しき父への叛逆を使用できない。
この兜は鎧とセットの状態で『脱いだ』時に初めてステータス情報が開示される。
その為、鎧を外して現世の衣類を身につけていても、武器を手にしていなければ兜がなくても隠蔽効果が継続する。
単純な防御性能も高く、物理的な攻撃に対する強度はもちろん、魔術や毒などに対しても一定の防御を発揮できる。
【weapon】
燦然と輝く王剣を用いた、実戦的な剣術。
【人物背景】
円卓の騎士の一人にして、父であるアーサー王に反旗を翻した「叛逆の騎士」。
外見は20歳にも満たぬ少女だが、女と呼ばれる事を極端に嫌っている。
粗雑な性格で男性的な口調で話し、一人称も「オレ」である。
その正体は、ブリテン崩壊の妄念を持つ魔女モルガンによって男性化したアーサー王の精子を用い生み出された、ホムンクルス。
作られたホムンクルス故に短命だが極めて高い能力を持ち、その卓越した剣技で円卓の騎士に加入した。
しかし、本人はこの出生を恥じており、真っ当な人間に対してのコンプレックスも抱いていた。
完璧な理想の騎士であるアーサー王を誰よりも尊敬しており、彼女の様な立派な騎士になるべく努力を続けていた。
そんな最中、彼女は自身がアーサー王の子である事を知り、歓喜と共に自身を後継者にするよう進言した。
だが、アーサー王は彼女を「あくまで王の器ではない」と判断し、後継ぎとして認めなかった。
これをモードレッドは「自身は不義の子であり、どれだけ努力しても王からは愛されない」と思い込んでしまう。
大いなる尊敬の念を抱いていた相手に裏切られたが故にその反動も大きく、彼女はアーサー王へと深い憎悪と絶望を抱くようになった。
やがて彼女は反乱を決意し、ブリテンを完全に崩壊へと導く程の内乱を引き起こす。
その最中、アーサー王へとカムランの丘にて最後の決戦を行い、そして激戦の末に敗れた。
父を憎み反乱を起こしたモードレッドだったが、その奥底にあった想いは、ただ父に息子として認めて欲しかったという当たり前の感情であった……
【サーヴァントとしての願い】
自身こそが王にふさわしいという信念のもと、『選定の剣に挑戦する』こと。
ただし、この聖杯戦争に裏がなく聖杯が正しく使える事を確信できなかった場合は、その裏に潜むモノの存在を暴く。
【マスター】
ダンテ@デビルメイクライ シリーズ
【マスターとしての願い】
聖杯そのものに託す願いはない。
敢えて言うなら元の世界に戻ること。
【weapon】
『エボニー&アイボリー』
ダンテが愛用する、黒と白の二丁拳銃。
右手用のアイボリーは連射性能に、左手用のエボニーは精密射撃に特化している。
コルトガバメント45口径をベースに大幅なカスタムが施されており、常人では到底扱えない化物拳銃。
ダンテの強靭な肉体があってこそ、片手での乱射という無茶が可能な代物である。
『リベリオン』
かつて魔剣士スパーダが使用した魔剣の一振りで、ダンテもまた愛用する大剣。
鍔に当たる箇所に髑髏の彫刻がなされた、銀一色の剣。
特別抜きん出た能力はないが、強力な魔力を秘めた非常にバランスのいい武器。
ダンテの奥の手である魔人化を果たすための重要なトリガーでもある。
普段は背中に背負っているが、人通りの多いところを通る場合などではギターケースに入れて持ち歩くこともある。
【能力・技能】
屈指のデビルハンターとして、卓越した剣技と銃の腕前を持つ。
また、悪魔の力を持つハーフの為に常人を大きく超える力がある。
高い耐久力を持ち、剣で胴体を串刺しにされたり額を撃ち抜かれても、簡単には死なない。
『魔人化(デビルトリガー)』
内に眠る悪魔の力を引き出し魔人に変身する、ダンテの切り札。
変身中は身体能力及び治癒力が増す他、武器にオーラを纏わせその威力を通常時よりも更に高める。
ただし発動及び維持には多量の魔力が必要であり、変身を維持するのに必要な魔力が無くなると自動的に解除されてしまう。
【人物背景】
便利屋『デビルメイクライ』を営む、真紅のコートをトレードマークにした銀髪の伊達男。
しかしその裏では、悪魔を狩るデビルハンターとしての仕事を受け持つ魔剣士でもある。
二千年前に魔界の帝王ムンドゥスとその軍勢から世界を救ったとされる伝説の悪魔スパーダと、人間の娘エヴァの間に生まれた子。
偉大なる父の息子として、彼から受け継いだ力を誰よりも誇りにしている。
飄々とした性格で軽口を叩く場面が多いが、義を重んじる相手には例え敵であっても労わるなど、その芯はしっかりとした魂の持ち主。
かつては若さ故に自分の力を持て余している感もあったが、双子の兄バージルとの激突や
同じデビルハンターであるレディとの出会いを経て、心身共に大きく成長を果たしている。
【方針】
この聖杯戦争に裏がないか、聖杯以外の目的が本当にないのかを確かめる。
裏があった場合はその存在を暴き、無い場合にはひとまずモードレッドの願いの為に戦う。
積極的に自分から仕掛けるつもりはないが、かかってくる相手を避けるつもりもない。
以上で投下終了となります。
投下いたします
――恒久の平和を求めて、彷徨う男がいた
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犠牲なくして、平和を得られる事は出来ないのか。
己の人生の全てを変えたと言っても過言ではない、南国の小島でのあの日から、『衛宮切嗣』はこの答えを求め続けていた。
甘くて。暖かくて。優しくて。口当たりも良く、聞えも爽やかで、誰もが善しとする理想論。
それだけでは、世界を回す闘争と暴力と言う名の強大な歯車は、決して止まらないと言う事を、切嗣は知っている。
完璧な平和何て、人が人である以上、絶対に訪れはしない。だからこそ切嗣は、現実的な方法で、良い結果を残そうと今まで努力して来た。
銃や毒、火薬を用いて、最善の方策が得られるのであれば、それを選んで来た。
大勢の人間を救える代わりに、少数の人間が犠牲になる選択が現状における最良の選択なら、それを選んだ事だったゼロではない。
樹を救う為に枝を切り、他の果実を実らせる為に腐りかけた果実を剪定する。それを、人の命で切嗣は実行して来た。
そして、その生活は、切嗣と言う男の心を蝕んだ。
人の命や魂に、重さも大きさもなく、全てが同じ価値であると言うのに、切嗣はその時の状況次第で、それらを葬って来た。
彼の人生は、血に彩られていた。彼の歩いて来た道には、屍が敷き詰められていた。自分のやって来た事は本当に正しかったのかと言う懊悩が、彼の心を侵していた。
犠牲と言う現実を強いる事で、得られた平和もあるし、命もある。解っている筈なのに……割り切れなかった。
もっと良い方法があったのではないかと思い立ち止まる事も、別の信条に宗旨替えする事も、切嗣には最早出来ない。
それを行うには、余りにも彼は血塗られ過ぎていたし、死体の山を積み過ぎた。それに今更宗旨替えをすると言う事は、今まで自分が選んだ決断で犠牲になった者、
流されて来た血の意味を一切無駄にすると言う事なのだ。もう、立ち止まれない。己の信条に拘泥し、理想目掛けて走るしか、この男には出来はしないのだ。
後戻りと言う選択肢が塗り潰されて久しいそんな折に、音に聞こえた魔術の大家である、アインツベルンから聖杯戦争の誘いがあった。
それに、切嗣は乗った。聖杯があれば、どんな願いでも叶える事が出来る。彼は、この万能の願望器に全てを賭けた。
自分がこの戦いに勝てば、聖杯戦争で流された犠牲と血が、文字通り歴史上最後の戦火と流血になる。
そして――アインツベルンと結託し聖杯戦争を勝ち抜こうと準備する過程で出会った、最愛の妻であるアイリスフィールの娘、イリヤスフィールと、
平和になった世界で過ごせる。この戦いを最後に、己が歩んで来た道と、人類がこれまで積み上げて来た業の歴史に終止符を打つ。そう……切嗣は決めていたのだ。
紫煙を燻らせて、切嗣は木の幹に背を預けていた。
口から気だるげに、煙草の煙を吐き出す。余りにもダウナー気味に煙を吐き出すので、余人が見れば、そう言った大麻を吸っている様にしか見えないであろう。
尤も、今の切嗣にとっては、タバコも大麻も、吸った所で大して変わりはないであろう。吸い慣れた銘柄の煙草、その味を、切嗣は感じなかった。
ニコチンが血中を回る感覚を、まるで得られない。経過が自分でも気になっているのが解る。
まるで、初めてデートの誘いをOKされ、待ち人が来るのを待っている少年の様な、そんな気分で、切嗣は夜の森中から星を見上げていた。
今日は良く、星が見えた。月も、綺麗に輝いていた。――綺麗な夜空の情景を台無しにするかのような轟音が、切嗣の鼓膜は捉えている。
数々の戦場で聞いて来た、爆薬が炸裂する音や、けたたましい銃声とは一線を画する、大地の怒りそのものの如き大音。
成程これが、サーヴァント同士の戦いらしい。
――ギンッ
.
そんな、一際大きな音が、切嗣の優れた聴覚が捉えた、瞬間。
世界の破滅でも訪れたのではないかと錯覚せざるを得ない程の爆音が、彼の身体を打ち叩く。
余りの音の大きさ故に、ガサガサと、茂みから小動物が驚いて飛び出してくる。爆発の際に起った爆風が、落ち葉を梢の辺りまで舞い飛ばせる。
「終ったか」
中頃まで吸い終えていた煙草を地面に落とし、靴底で火種を消すのと、背を預けていた木の枝から、フクロウの類が音に驚き地面に落ちたのはほぼ同じ瞬間だった。
アーチャーは、上手くやってくれたようである。ならば、次は自分の仕事だと言わんばかりに、切嗣は黒コートの内側に隠し持っていた、キャリコを引き抜く。
セーフティを解除してから、待機する事数分。彼の視界に、慌てた様子で森の中を走る男が映った。
顔には恐怖の相がノミを当てたように刻み込まれており、何かから逃げろ逃げろと言わんばかりに、倒けつ転びつ。
距離を遠ざけているかのようにしか、余人には見えなかった。男は、此方には気付いていない。
切嗣と男の距離は、十と余m。男は必死に走っているのと、樹木と言う遮蔽物があるが故に、切嗣には気付かない。
銃口を一定方向に切嗣は合わせる。三秒程経って、銃口の延長線上に男が合わさった、その瞬間。
切嗣は躊躇いもなくトリガーを引いた。弾ける銃声音、銃口から噴き出るマズルファイア。放たれる、音速超の速度の銃弾。
自動小銃から放たれた数十発の弾丸は男の腹部や脚部を貫く。痛みに悲鳴すら上げられず、前のめりに転んだ。
スタスタと切嗣は、転倒した男に近付いて行く。硝煙が銃口から立ち昇る拳銃を右手に持ちながら近付いてくる切嗣に、男が気付いた。
ヒュー、ヒュー、と喘鳴を吐く男の眦に、涙が浮かんでいた。此処に来て、撃たれた男は気付いたのだ。この男が聖杯戦争の参加者である事を。
五m程まで切嗣が近づいた瞬間、一切の無駄口を叩かず、彼はキャリコの弾丸で倒れている男の頭と臓器系を打ち抜いた。
脳漿と大脳が骨ごと飛び散った。胴体に弾丸が吸い込まれる。全てが終わったと言わんばかりに、切嗣はキャリコのセーフティを設定し、夜空を見上げた。
爆音の余韻も終わり、死んだような静寂で場が包まれている。夜の底から、切嗣は星でもなく月でもなく、昏黒の夜を見ていた。
この街が冬木でもなく、従って切嗣とアインツベルンが意図していた聖杯戦争とは違う聖杯戦争だと言う事実も、今となっては小さい事だった。
肝心な事は、この街でも聖杯戦争が行われていると言う厳然たる事実。そして、この街の聖杯戦争を勝ち抜けば、本来犠牲になる筈であったアイリスフィールが、犠牲にならずに済む、と言うその事実であった。
.
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
夜空目掛けて向けられた究極の矛を握った腕を男は下げ、ホルスターにそれを仕舞い込んだ。
目の前には、機械で形造られた、全長百と余mはありそうな構造物が存在していた。全体的に横に大きい形をした人型の構造物は、
肩の辺りから身体の七割近くを消し飛ばされ、僅かに残した腰部分より下しか存在しないと言う有様になっていた。
当然大幅にバランスを失い、その構造物は倒れ込み、やがて自壊する。その様子を呆然と見つめる、前時代的なローブに身を包んだ黒髪の優男。
弾丸に匹敵する程の速度で、ローブの男の方に彼は接近して行く。はっと気づいた優男は何かを紡ごうとするが、それよりも速く、ホルスターの男の右拳が頬に刺さり、
打ち抜いた。スイカか、鉄筋を入れていないコンクリートの様に優男の頭部は弾け飛ぶと同時に、首から上を失った肉体が、後ろ向きに倒れ込んだ。
この場の勝者となった男には如何も、こう言った戦いには慣れない。
珪素生命体やセーフガードとの戦いは幾千幾万回とこなしているが、魔術等と言う、数万年前には迷信とされていた技術を相手にするのは、
この男にしても初めての事であったが、蓋を開けてみれば、呆気のないものであった。
キャスターと言うクラスで召喚されたあの男が無から――実際には築き上げた神殿と呼ばれる領地の魔力を基にされている――生み出した、巨大な機械の構造体。
男の網膜走査によって、己の視界に映し出されたデータに曰く、あのキャスターが生み出した機械の構造物は、見てくれこそ示威的なそれではあるが、
物質としての強度も機動性も、質量から予測される攻撃の破壊規模も威力も、男の脅威に全くなり得ないのである。
こんな相手に時間などかけていられない、と言わんばかりに彼は、ホルスターから最強の銃を引き抜き、それを射出した。
結果は、先程の通り。
銃口から放たれた力場は、機械の構造物が纏っていた、所謂対魔力に等しい効果を発揮する魔術的障壁を薄紙の様に破壊し、その内側の、
ステンレス鋼によく似た、それでいて強度と硬度はその百三十一倍の金属で出来た構造物を土塊の様に貫いた。
その後、力場が通った弾道周辺に巻き起こった巨大な大爆発は、構造物の身体を塵一つ残さず消滅させ、極熱を孕んだ爆風が森中に叩き付けられた。
建造物ですら縦に横にと揺らしかねない程の大音は、鼓膜を割らんばかりの勢いで、兎角、男が放った銃の圧倒的威力の程が窺い知れよう、と言うものであった。
全てが終わったと認識した男は、目的の方向に身体を向き直らせた。
三千㎞先を見渡せる男の視界は、六十四m三十三cmの地点から此方に向かって近付いてくる黒コートの男の姿を認めた。
木々と言う遮蔽物があり、ましてや月と星の明かりしか照明のない森の中。普通の人間ならば二m先すら見渡す事すら出来ないこの環境で。
男は、真昼の中にいるかのように、衛宮切嗣と呼ばれる自身のマスターの姿を、見る事が出来るのか。
十mと七十四cm先に生えている一本の樹木を避けて、切嗣はその場に現れる。
先程の大爆発によって舞い上げられた落ち葉が、大量に空から舞い落ちる、キャスターとの戦場跡に。
「手抜かりはないな。アーチャー」
「ない」
アーチャーと呼ばれた男は即答した。
「戻るぞ」
「ああ」
二人の会話は、短かった。
切嗣の言葉を受けて、アーチャーは霊体化を行う。それを確認するや、切嗣はアーチャーとキャスターの戦場跡に背を向け、その場から去って行った。
後には、舞い落ちる落ち葉の情景と、凍て付いた寂寞の時間だけが流れる空間だけが、残されるだけだった。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
――銀河を覆う混沌(カオス)から都市を救わんと、足掻き続ける男がいた。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
その男の姿を初めて見た時、何の感情も湧かなかったと言えば、嘘になる。
もしも此処が冬木の街で、アハトの大老が、当初呼ぶ予定であったアーサー王のサーヴァントを見たのなら、きっと満足気な表情をするのだろう。
だが切嗣は、流血と闘争を以てその身を立てた英雄と呼ばれる人種を、心の底から嫌悪する男である。
呼び出されたとて、自分との相性は全く悪い事は、アハト老から計画を聞かされたその瞬間から予測出来ていた。
その様な意味で、異郷の地で行われる予定外の聖杯戦争で、切嗣が呼び出したアーチャーのサーヴァントは、高潔さとも廉潔さとも無縁そうで、多少は相性がよさそうである、と思いそうなものであった。
アーチャーの瞳を切嗣が初めて見た時、背骨が凍結する様な感覚を彼は憶えた。
黒髪短髪の男だった。所々に強固そうなプロテクターを備えたボディスーツに身を纏った、石灰の様に白い肌を持つ男。
切嗣とほぼ同じ程度の体格を持っているが、ボディスーツの下から浮き出た筋肉は、生半可な地獄と死線を潜り抜けて来た者ではない事が一目で解る。
それこそ、表象すら出来ない程の戦場を切り抜けて来たのだろう。宝具は恐らくは、ホルスターにかけられた小銃か?
何れにせよ解る事は、この男は、古(いにしえ)、それこそ、神代の昔の英霊でもなければ、神代との境界線が曖昧だった紀元前〜紀元後数百年前後の英霊ではないだろう。
英霊の座に登録されている存在は、現代から過去の存在『だけ』ではない。現代の地点から遥かな『未来』の英霊も登録されている。
服装から考えるに、この男は切嗣がいた時代、或いは、今切嗣が今いる時代から遥か未来の英霊だと、彼は考えていた。それは、良い。知識として知っていた事だ。
問題は――この男が本当に人間なのか、と言う事だった。
姿形は、紛れもなく人間のそれであった。
しかし、切嗣の人間としての部分が告げている。違う、と。この男は人のナリこそしているが、遺伝子レベルで、全く別の存在だと。
いや、遺伝子レベルならば、まだ良い。呼び出したこのサーヴァントは、心すらもが、切嗣には人間のそれには見えなかった。
今の仕事を行う以上、切嗣も、人間としての心をある程度までは捨てている、と思っていた。しかし、ある程度と言う以上、完全に捨て切れた訳ではない。
このサーヴァントは、人間である以上絶対に捨てられない――捨ててはならないラインから先の人心すらも、捨てている。そう、切嗣は認識した程だ。
そんな存在は、最早人間ではない。怪物と称されるに相応しい存在だ。成程……と、切嗣は恐怖に似た感覚を憶えながらも、自嘲した。
触媒も何もなく、聖杯任せにサーヴァントを呼び出せば、自分の魂に引かれて現れるサーヴァントは、こんな化物なのか、と。
「クラスは、アーチャーか」
視覚化されたサーヴァント情報が、自らの眼に映る。
遠距離戦を得意とするアーチャーのクラスと、同じく遠距離狙撃を得意とする自分とで、役割が被ってしまったが、仕方がない。適した運用法を、考えねばならないだろう。
「真名を、差し支えなければ教えてくれ。アーチャー」
如何出る。切嗣の警戒に反して、アーチャーは、あっさりと、己の名前を口にした。
「『霧亥』」
と。
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◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
暦の数え方も、銃の使い方も。スプーンやフォークの扱い方も文字の読み方も、何万年もの昔に忘れてしまった世界に、彼らは生きていた。
人類が神の玉座に王手をかけ、万能の存在になったと言う事実を、彼らが知る事は永劫ないであろう。
超構造体(メガストラクチャー)を通じ、仮想世界の構造物を現実世界に反映させ、実体化させる技術が確立されたのは、何時の事だろうか。
仮想空間(ネットスフィア)内で生み出された物を、現実世界に持って来られる。物理法則も自在に改竄する事が出来、無限大のエネルギーも確保する事を可能とした。
正しくそれは、人類が神か超越者になった瞬間であろう。誰もが、好きな物を現実世界に反映させる事が出来た。誰もが神になれた。
世界からはあらゆる争いが消えてなくなり、科学によりてエリュシオンの野が出来たかに見えた。
災厄が起り、人類が消え失せたのは何時の事だろうか。
仮想空間を構築する超構造物、それにアクセスするのに必要な、嘗ての人類が持っていたネット端末遺伝子。
それが、災厄によって突然変異を引き起こし、全ての人間から消え失せた。ネット端末遺伝子の全滅。それはつまり、仮想空間に誰もアクセス出来ないと言う事を意味する。
その日から、人類は黄昏を迎える事となる。
ネットスフィア経由で生み出された構造物の増改築や修復を自動で行う建設機械、建設者。その暴走が引き起こした、都市のカオス。
無秩序に構造物は増え続ける。大きさ数十㎞〜数百㎞。階段の位置も以上ならば部屋の数も異常であるし、何よりも構造物の形も、構造力学のそれを逸脱する。
そんな建物が、地球上に増え続け、宇宙にまで侵食し、遂には太陽系をも呑み込み、銀河系規模の大きさにまで迫らんとしていた。
惑星すら容易く呑み込む程の構造物の存在など、最早珍しくも何ともない。星より大きな構造体など、最早当たり前の物であるのだ。
ネットスフィアは更に、既存の物とは違う未知の物理法則や現象を発生させ、遂には、時間と空間の関係性すらも破壊してしまった。
侵食するカオスを阻止せんとネットスフィアにアクセスしようにも、自らが設定した、ネット端末遺伝子を持たない存在を侵入者と認識、
排除するシステムに迎撃され、カオスの浸食を許す有様。最早誰もネットスフィアにアクセスする事が出来なくなり、そのまま、何千何万年と経過した。
星を覆う都市に住む、嘗ての人類の成れの果て。
嘗ての社会において犯罪者と呼ばれていた存在達がネットスフィアの技術を以て進化、種族化した珪素生物と、ネットスフィアを保護する存在である、
セーフガードたちの脅威に怯え、人々は緩やかかつ、そして、不可避の破滅に進んでいた。
そんな、人類を破滅させる都市のカオスを復旧させんと、都市を旅し続ける探索者がいた。
何百年、何千年、何万年と言う旅路の果てに、人としての心が擦り切れ摩耗し消滅し、行く先々で破壊をばら撒く不死なる者。
男の名は『霧亥』。ネット端末遺伝子を求め、無限の旅路を歩む者。遥かな未来世に於いて、災厄として語り継がれる魔人。
霧亥の精神は、既に当初の物から大きく逸脱したそれに変貌を遂げていた。
度重なる死。脳を穿たれ、体中を光線で貫かれ、心臓を破壊され、身体の殆どを蒸発させられても、その度に彼は何らかの圧力で復活させられた。
長すぎる生。一区画跨ぐのに数百〜数千は掛かる構造体内部。時には数十〜数百年は睡眠活動に移らねばならない乗り物にも乗る事があった。
繰り返される生と死の繰り返しの中で、霧亥の精神構造も知識も変異した。論理感も常識も、変質する。
ネット端末遺伝子を手に入れる、と言う目的が、今や霧亥の行動原理になっている。
それを成す為であれば、彼は、この仮初の世界の住人を全て殺し尽す気概でもあるし、場合によっては、自らのマスターすらも、手に掛けるつもりであった。
――男の名は霧亥。都市を覆う混沌を取り払うべく、当てのない旅を続けて来た男。
――男の名は切嗣。世界を覆う流血と暴力の歯車を止めるべく、聖杯の奇跡に全てを賭ける男。
どちらの共通点は、目的の為なら、一切の犠牲も厭わない事。そして、その目的の為に、その精神を破壊された/されかけている男。
触媒もなければ、自分にあてがわれるサーヴァントはこんな存在なのかと自嘲した切嗣は、正しかった。
英雄を嫌い、栄光や高潔さとは無縁の位置にいると常々思い続けていた男には、相応しいサーヴァントであった。
切嗣は意図せずして、災厄の到来を告げる、嚠喨たる喇叭の音を響かせてしまったのであった。
.
【クラス】
アーチャー
【真名】
霧亥@BLAME!
【ステータス】
筋力A+ 耐久A+++ 敏捷A 魔力E 幸運D 宝具EX
【属性】
秩序・悪
【クラススキル】
対魔力:E
あらゆる魔術を無効化出来ず、多少威力を削減する程度。
単独行動:A++
マスター不在でも行動できる能力。このランクになると宝具ですらも、マスターのバックアップなしでも容易く使う事が出来る。
後述の不死スキルも兼ね合わさり、規格外のスタンドアローン性を誇るが、聖杯戦争の制限により、マスターが殺されてから殺害された場合は、当然座へと帰還する。
【保有スキル】
精神異常:A+
何らかの圧力によって、アーチャーの精神は健常なそれから大きく逸脱している。曰く、精神処理装置に異常がある状態。
極めて強固な精神的スーパーアーマー性を発揮するが、余りのスキルランク故に、人間性と言うものが欠落されている。自らが気に入らない存在であれば、例え友好的な者であろうと容赦なく殺す。
不死:A
四肢を切断される、頭蓋を穿たれる、心臓を破壊される。と言ったダメージから復帰出来るスキル。
事実上、戦闘続行や再生と言った、肉体の頑強さを底上げするスキルを多く複合したスキルである。
体躯の半分以上が消滅する程の肉体的損壊であろうとも、一定の時間を掛ける事で復活を遂げる事が出来る。また、不老でもある為、時の劣化を受け付けない。
千里眼:B+++
視力の良さ。遠方の標的の捕捉、動体視力の向上。
特にアーチャーの千里眼スキルは遠方視認に長け、数千㎞先の物体すらも視認する事が可能。
透視を行う事も出来るだけでなく、肉体や物質の組成や大気中の成分、遺伝情報の読み取りをもカバー出来る。
気配察知:A+
敵の気配を察知する超感覚。周囲の生命体や機械の位置を捕捉可能。上記の千里眼スキルも相まって、破格の値になっている。
建造物内、地下を含む数kmの範囲を容易にカバーする。気配遮断で存在を隠匿していても判定次第で見破る事が出来る
【宝具】
『重力子放射線射出装置(グラビティ・ビーム・エミッター)』
ランク:EX 種別:対人〜対界宝具 レンジ:1000〜 最大補足:10000〜
――最強の銃。究極の矛。第一種臨界不測兵器。
極めて強力なエネルギーを内包したある種の力場を射出する小銃型の兵器。アーチャーは様々な武器の扱いに長けるが、これ以外の武器は原則携帯しようともしない。
この力場の直撃に耐えうる物質は存在せず、空間と融合した超次元的な存在に重力破壊をもたらし消滅させるだけでなく、
その凄まじいエネルギー量の故に、世界線や時空の捻じれや、重力場にも明白な形で干渉を可能とする。
最低出力の無造作な一撃でさえ、厚さ70㎞超の超構造体(メガストラクチャー)を撃ち抜き破壊し、弾体が通り抜けた後に発生する余波の大爆発で周囲数十mを、
木端微塵にする程。威力は五段階に調整でき、最大出力である禁圧解除状態の威力は、装置本来の威力を完全に取戻し、その破壊規模は極大と言う言葉でも足りない程。
これだけの威力の弾体を射出出来る兵器を小型化させた代償として、極めて反動が強力。アーチャーレベルの筋力の持ち主であろうとも反動で吹っ飛ぶだけでなく、
無理に連射を続けた場合、最悪腕が折れたり千切れ飛ぶ可能性すらゼロではない。
その破壊規模に反して極めて燃費が良く、最低出力の射撃であれば、数十発以上は射出出来る程。魔術師としての技量は並とは言え、現状のマスターのバックアップでならば、更に射出可能回数は跳ね上がる。
【weapon】
【人物背景】
汚染前のネット端末遺伝子を求めて探索を続ける男。
【サーヴァントとしての願い】
ネット端末遺伝子(と誤認した聖杯)の獲得、そして、都市の復旧
【基本戦術、方針、運用法】
アーチャーとして考えた場合、破格のステータスを誇る。以上と言う他ない精度の千里眼を持ち、それを以て相手を目視。
圧倒的な破壊力を誇るGBEで相手を狙撃、一切の抵抗を許さず消滅させる、と言う戦法がこのサーヴァントの一番単純で強力な使い方。
近接戦闘も無類の強さを誇り、例え高ランクの気配遮断を保有したアサシンであろうとも、気配察知スキルが近接を許さず、
生半可なダメージは不死スキルで即座に復帰すると言う、規格外かつ異常な強さのアーチャーと見て良いだろう。
欠点は、彼の切り札であるGBEが恐ろしいまでの範囲破壊力を誇る為、考えなしに使おうものなら討伐令及び袋叩きは免れないと言う事。
そして何より、アーチャー自体がそう言った危険性を精神異常スキルのせいで全く勘案しておらず、目的達成の為に兎に角災厄を振り撒きまくると言う点。
兎に角切れたサーヴァントであり、マスターの命令すらも正しく受け付けない。致命的なまでの御し難さが、最大の敵になる。
【マスター】
衛宮切嗣@Fate/Zero
【マスターとしての願い】
永遠の世界平和の実現
【weapon】
『キャリコM950』
切嗣が主に扱うことが多い小型自動小銃。 コンパクトさに加え、50連ヘリカルマガジンを使用することで取り回しの良さと実用性を兼ねた銃。 この他に、ワルサーWA2000も保有する。
『トンプソン・コンテンダー』
魔術礼装として独自の改造を施した、中折れ式単発銃。
大口径ライフル弾である30-06スプリングフィールド弾を使用するため、防弾チョッキ等では防げない程の破壊力を秘めている。
ただし単発銃である為に、一回発射する毎にリロードが必要である事が欠点。 また威力に比例して、その反動も当然ながら大きいものになっている。
『起源弾』
切嗣の肋骨の一本に魔術加工を施して作りだした弾丸。
彼の起源たる「切断」と「結合」の二重属性を発現させ、被弾した相手に不可逆の変質をもたらす魔弾。
これが魔術師が発動中の魔術に命中した時、その魔術回路を「切」って「嗣」ぐことで構造を変え、流れている魔力を暴走させて自滅させる。
また上記のコンテンダーを用いて扱われるため、魔術が関係なくとも命中した相手に大ダメージ自体を与えられる威力がある。
全部で66発の弾丸が作られ、その内の37発をこれまで魔術師の殺害に使用している。
【能力・技能】
戦い方の特性から、魔術師が忌避する銃火器や爆発物の取り扱いに長ける。魔術師ではあるが、その魔術師の裏をかく戦い方を彼は得意とする。
固有時制御:
衛宮の家伝である「時間操作」の魔術を戦闘用に応用したもの。
本来儀式が煩雑で大掛かりである魔術であるのだが、「固有結界の体内展開を時間操作に応用し、自分の体内の時間経過速度のみを操作する」事で、
たった二小節の詠唱で発動を可能とし、戦闘時に用いている。問言は「time alter 〇〇 accel(加速)またはstagnate(停滞)」。〇〇には倍率を示す単語が入る。
なお、固有時制御を解除した後に世界からの「修正力」が働くため、反動によって身体に相当の負担がかかる。
この様な欠点から、通常は2倍速程度に使用を留める。
【方針】
聖杯を獲る。但し、破壊範囲の極大さから、アーチャーの切り札であるGBEはここぞと言う局面でしか使用を許さない。
投下を終了いたします。
候補作の投下に伴い、サーヴァント、マスターのステータスを、『ぼくのかんがえたサーヴァントWiki』様、
『第二次二次キャラ聖杯戦争Wiki様』の同名キャラクターから一部拝借させていただきました事を、此処に明記いたします
投下します。
昼休みの音楽室では、ピアノの戦慄が響いていた。
県内屈指の名門進学校の、誰もいない音楽室で、リストの難曲も苦も無く弾き続ける一人の少年──高遠遙一少年。
顔立ちは、取り立てて美少年というわけでもなく、逆に崩れているというほどでもない。
身長も特別高くなければ、普段着る服も目立たない物ばかり選んでいる。
今の制服は規律通りに着用していて、少しも着崩さなかった。
彼はそんな──どこにも飾り気のない、どこにでもいる地味な生徒だった。
ただ、一目見て秀でている点と言えば、細長い指先だろうか。
目で追うのは困難なほどに優雅にそれを動かし、鍵盤を叩いていく。
時に激しく……時に滑らかに……。
彼は、古の音楽家たちの遺した芸術を重ね合わせた。
とはいえ、別に、彼もピアノや音楽が好きなわけではない。
ただ、考え事をしたい時には、無意味にピアノを弄んで、孤独な時間を潰しながら何かを想うだけだった。
いつも、ピアノを弾いている時が一番考え事が捗った。
家にはピアノがないので、普段はこうして昼休みや放課後に音楽室を貸してもらうのだ。
「……」
そんな高遠少年の目に映るのは、自らが奏でる音ではなく、奇術の事ばかりである……。
幼心を刺激した不可思議のマジックショー。
おそらく……自らの母である、近宮玲子。
──彼女のように、大勢の人の視線の先に立り、マジックを披露する事のみが彼の目標であり、目指すものである。
普段の学校の勉強という物にもさして興味はなく、ただ目を通した物が勝手に頭の中で記憶されていくだけでしかない。
自分で掴み取ろうとしているマジシャンの座以外に、願いもない。
強いて言うならば、息苦しい今の家から脱し、マジックの勉強に専念したい程度だが、それもまた今の彼の立場からすればそれはただの我儘でしかない。
欲しい物は、何もない。
しかし、聖杯は彼を呼んだ。
彼は、それについて何とも思わなかったが、ただ、聖杯には興味があった。
それも見識を広げる為、という程度だろうか。
命を奪われるリスクがあるのも承知しているが、別段、それに強く恐怖する事もない。
得た物を使い、ひとまず、その聖杯という物を拝んでみたいという程度の細やかな願いがあった。
彼の奏でる戦慄は普段と何も変わらない。
少しの指の震えもない。
ただ、彼は、これから起きる出来事への期待に……少しだけ、笑った。
◆
──地獄の傀儡師。
この異名は、後にこの高遠遙一少年が芸術犯罪を行う時に名乗る事になる名前である。
しかしながら、高遠少年は今現在、犯罪を犯した事もなければ、今後起こすつもりもない。
むしろ、犯罪など、これから先の人生で彼が持っている夢を邪魔する物に過ぎない。
今のところは、ただマジシャンを目指して邁進し、ステージの上で母と再会する事だけを考えている。
そして、それもまた、いう程真っ直ぐな夢というほどではない。
他人に聞かれて、こんな夢を語る事もないし、「プロになりたいのか?」と聞かれれば、とりあえず否定をするだろう。
見ず知らずの他人に、夢想家だと思われるのは高遠も嫌いであった。
だが、彼自身は、着々と夢に近づいていた。
小さなマジックショーの中で。
高校のマジック研究会の中で。
父親に隠れながら。
己の中に眠る、天性の犯罪者としての血は未だ覚醒する事もなく、ただ純粋なマジシャンとしての技量だけが積まれていった。
本当なら、高校など辞めて今すぐ海外で高名なマジシャンに弟子入りしたい所だが、厳格な父親の手前、そうもいかない。
仮にもし、もっと早く弟子入りをしていたら、既に彼はステージの上でデビューをしていたかもしれない程の腕前は、まだ少年の中に隠れていた。
そして、そうしている間にも、どこかにいる彼の母の命と芸術が、一人の弟子によって奪われようとしている事など、彼は知る由もなかった……。
◆
放課後。
彼は少し大きな公園にいた。その中央にある大きな湖の湖畔。
いつも彼は、ここで小さなマジックショーを行う。
「……はい、じゃあこれでおしまいだよ」
子供ばかりが数名集まり、高遠少年の持つシルクハットに注目する。
今まさに、そのシルクハットの中から現れた大量の鳩が飛び交っている最中であった。
自由の空に飛び交う大量の鳩たちに子供たちの目が奪われている。
果たして、一体あの小さな帽子のどこからあれだけの数の鳩が収まっていたのか……。
そして、先ほどまで空洞だったはずの帽子に、何故鳩が現れたのだろう。
高遠少年のマジックショーのクライマックスに相応しい大がかりなマジックだった。
マジシャンにとっては基本中の基本とも言えるが、それを目の当りにした子供たちにとっては魔法そのものである。
「すご〜い!!」
子供たちの純粋な眼差しと拍手喝采を受ける高遠少年の姿は、満更でもなかった。
こうして人々の前で「不思議」を、演出するのが彼は好きだ。魔術のタネを考え、披露するのは最高の楽しみである。
今もまた、舞台に立つ未来像の為に、人前でマジックを披露する練習をする。
純粋であるがシビアでもある子供たちは、その為の最適なデータをくれる。
彼はこうして、トリックで人を欺くのが好きで──同時に、マジックの好きな子供というのも嫌いではなかった。
高遠が、ニヤリと笑う。
「え──!?」
次の瞬間──子供たちが釘漬けになっていた空の鳩たちは、一斉に赤い薔薇の造花へと姿を変えた。
羽音さえも同時に消え去り、そこにいた鳩たちは元々、薔薇の化身だったかのように消えたのである。
全く、不可思議な現象であった。
「どうなったの……?」
そして、それは、まるでパラシュートで落下するように、ひらひらと、子供たちの手の上に落ちていった。
まるで子供たちの位置まで計算され尽くしていたかのようである。
今度は、歓声よりも、何が起こったのか瞬時に理解できず、困惑する声の方が大きかった。
今の鳩たちは消えてしまったのだろうか……?
子供たちの中には、そんな後味の悪ささえ残した者もいたが、誰かの拍手が鳴ると同時に、他の子供もつられて拍手をした。
そして、彼らは消えた鳩の事など忘れた。
手元にある赤い薔薇がそれの化身でないのは確かだろうと思いながら……しかし、またこれが鳩になるかもしれないと思い、ぎゅっと握る。
「それは僕からのプレゼントだよ! さあ、優しいお母さんがいるお家へお帰り──」
優しい高遠の言葉に、子供たちは純粋に微笑みながら、「うん」と頷き、その場から去って行った。
また、この場所でマジックをする高遠少年と会える事を望むだろう──。
高遠少年は、その背中を見送った。
これでショーは終わりだ。
「──さて」
優しき少年の表情が、冷徹な聖杯戦争のマスターへと変わったのは、それからすぐの事だった。
公園で今のマジックショーを覗いていた一人の、髪の長い少年──。
彼こそが、高遠が出会った『サーヴァント』の≪セイバー≫の仮の姿である。
「……セイバー、何か言いたそうだね」
セイバー──ウイングマン、広野健太。
ただし、それは仮の名前であり、実際はドリムノートによって実体化された一人の少年の「記憶」である。
本当の広野健太は全てを忘れて、戦いに巻き込まれなかった普通の少年として暮らしている。
彼の姿と記憶だけを借りたセイバーは、言って見れば、健太とかつてウイングマンにしたドリムノートそのものであった。
「マスターも、子供にだけは優しいんだな……と思ってさ」
「善良な観客は、最大限持て成すのが、プロのルールだからね。それを真似ただけだよ」
苦笑しながら、マジック道具を片づける高遠。
セイバーも、高遠を見直してはいたが、この少年の本質的な問題点が変わっていない事だけは理解していた。
彼と組んで以来、その常軌を逸した独特の感性に、セイバーも気圧されてばかりいる。
彼自身は、聖杯戦争を楽しんでいる──。
この戦争の行く先に言い知れぬ期待を持ってここにいるのだ。
高遠が、セイバーに訊いた。
「それで? どうだったかな、僕のマジックショーは──」
「どうしてオレにそんな事を聞くんだ?」
「他に訊く相手もいないし、英霊であるセイバーの感想が聞いておきたいんだ。
それに、僕の事を好んでいないセイバーなら、より厳しい感想を口に出来るだろうから」
そう言われ、少したじろいでから、セイバーは答えた。
「マスターには、魔術の素養もなく、オレの宝具の力を使ったわけでもないんだろ?
だけど、マスターのマジックは、まるで魔法のようだった……一体、どうやったんだ?」
「……そうか。英霊すらも騙す事が出来て光栄だよ」
そう言う高遠の瞳は渇いていた。
言葉とはまるで正反対の態度である。何か物足りなく思っているようだった。
褒められてもこの態度だが、おそらく、望んだ通りの厳しい感想を口にしたとしても、つまらなそうに回答するのだろう。
それから、高遠は、怜悧な表情を崩さず、言った。
「……じゃあ先に帰っていてくれ。
僕は、ここでもう少し──月を見ているよ」
「……」
「……ああ、ごめん。悪いけど、マジックの種だけは教えられないんだ」
「それは……わかってるよ。余計な事聞いて悪かった。
でも、まだ月が見えるには早いんじゃないか……?」
「──ああ。だから、あの月が煌々と輝く時まで、あの月を見ていようと思ったんだ」
そう不思議な事を言いながら、空を見上げる高遠。
セイバーは、そんな彼の命令には逆らわず、ただその場から去った。
夕方の月は、夕日の輝きに負けて、空の中では薄く輝いていた。
聖杯戦争の本格始動まで、あと僅か……。
ようやく始まる──月を眺める高遠の中で、そんな予感がした。
【クラス】
セイバー
【真名】
ウイングマン@ウイングマン
【属性】
混沌・中庸
【ステータス】
筋力B 耐久C 敏捷B 魔力C 幸運C 宝具A+
【クラススキル】
対魔力:B
魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。
大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。
騎乗:B
騎乗の才能。大抵の乗り物なら人並み以上に乗りこなせるが、 魔獣・聖獣ランクの獣は乗りこなせない。
ただし、ウイングマンの場合、サポートメカの『夢仕掛けの天馬(ウイナア)』の騎乗が可能であり、ウイナアをウイナルドに変形させる事も可能。
【保有スキル】
戦闘続行:B
名称通り戦闘を続行する為の能力。
決定的な致命傷を受けない限り生き延び、瀕死の傷を負ってなお戦闘可能。
「往生際の悪さ」あるいは「生還能力」と表現される。
忘却の英雄:B
人類史の中でその名が記録されていない英雄の性質。
かつて、広野健太が『夢想の備忘録(ドリムノート)』に記憶を消去した為、ウイングマンの存在は忘れられている。
これにより、サーヴァントの真名が知られた差異、対策を練る事が困難となり、真名を明かすリスクが軽減される。
彼の宝具の中でも、存在が記録されている物は、『夢想の備忘録(ドリムノート)』のみである。
【宝具】
『夢想の備忘録(ドリムノート)』
ランク:A+ 種別:対人宝具 レンジ:∞ 最大捕捉:∞
書き記した事を現実にする事ができる、異次元世界「ポドリムス」のノート。
ドリムペンを使い、かつ本当にそれを夢見て書きこんだ内容のみが現実世界に反映される。ただし、基本的には他者を生き返らせる事などは不可能。
唯一それを可能とした例は、ドリムノートの全ての項目をドリムイレイザーで削除して、「アオイを生き返らせたい」という強い願いを全てのページに描きこんだ際の事であり、これによりかつてドリムノートの記憶は三次元世界から忘れ去られた。
ただし、これもまた奇跡の産物に近く、実質的には武装強化など用途が限られる事になる。
尚、ウイングマン自身がこの『夢想の備忘録(ドリムノート)』の産物であり、これを破壊(もしくはウイングマンに関するページが削除)された場合、サーヴァント自身が消失する事になる。
『悪裂の夢戦士(ウイングマン)』
ランク:B 種別:対人宝具(自分) レンジ:- 最大捕捉:-
かつて、『夢想の備忘録(ドリムノート)』によって発現されたセイバーの真名。「悪・裂!ウイングマン!」の掛け声と共に解放される。
長剣クロムレイバーなどの武具を装備し、ファイナルビームやデルタエンドなどの必殺を持つ事ができる。
三次元世界においてウイングマンの姿を実体化できるのは、いかなる魔力を持つ者が利用しても十分間が限度である。
ただし、かつてウイングマンを誕生させた広野健太の姿を借りる事で長時間の実体化も可能であり、この場合は身体能力は著しく低下する。
『夢仕掛けの天馬/夢仕掛けの機人(ウイナア/ウイナルド)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:1〜50人
『夢想の備忘録(ドリムノート)』から誕生したウイングマンのサポートメカ。
攻撃能力は無いが、陸上はもちろん海中・水中でも行動が可能、さらに異次元(ポドリムスしか行かないが)への出入りも可能。
ビームサイザーやウイザービームなどの武装を持ち、サーヴァントが拘束された際に補助攻撃を行う事もできる。
そして何より、これは『夢想の備忘録(ドリムノート)』が存在する限り、何度破壊されても再度呼べば再臨する宝具である。
【weapon】
『夢想の備忘録(ドリムノート)』
『長剣クロムレイバー』
【人物背景】
かつて、ヒーローオタクの少年・広野健太がドリムノートに描きこみ、健太が変身したヒーローの姿。
原作の「ウイングマン」に登場するウイングマンには人格は存在しないが、ポドリムス人あおいの中に内在するウイングマンの記憶を元にドリムノートと共に、英霊として複製されている。
普段は広野健太の姿を借りるが、彼自身は三次元人でもポドリムス人でもない、ただの「広野健太とウイングマンの記憶を模して描き起こされた存在」である。
サーヴァント自身もその事を認識している為、健太よりも少しドライで冷静な面があり、聖杯戦争への躊躇は広野健太に比べ希薄。
【サーヴァントとしての願い】
不明。
【マスター】
高遠遙一@高遠少年の事件簿
【マスターとしての願い】
特になし
【weapon】
『マジック道具』
普段、高遠が自らの身体に仕込んでいる様々なマジックアイテム
アタッシュケースに入れて必要時に持ち歩いている物の他、いつでもショーが披露できるように体にも幾つかのマジックのタネを用意して生活している
【能力・技能】
天才奇術師・近宮玲子の血を引き継いでおり、当人もマジシャンを志している為、魔法と見紛うような奇術を披露できる。
高度な知性を持ち、名門進学校の秀央高校に入試全科満点で合格している。それに加え、授業を聞いていなくても一通りの授業内容を理解できる天才児。
ピアノも悠々と弾きこなすほか、校内で発生した殺人事件を解決する事もある。
【人物背景】
秀央高校一年生。マジック部に所属している。
天才マジシャン・近宮玲子の息子であるが、現在は義父の元で暮らしており、母とは幼い頃に一度会ったきりである。
成績優秀で、県下の名門高校を全教科満点で合格している他、ピアノの腕も見事。
将来は母と同じマジシャンを志しており、普段は井ノ尾公園で子供を相手にマジックのパフォーマンスも行う。
しかし、彼は同時に感情も殆ど空っぽであり、人が死んでも、あるいは殺したとしても何とも思わない(とはいえ彼なりの秩序や美学は持ち合わせている為、無差別殺人は行わない)。
後に、「地獄の傀儡師」と名乗る連続殺人鬼になる前の高遠であり、この時点ではまだ誰一人として殺害していない。
※「金田一少年の事件簿」のキャラクターであるが、出典となる外伝「高遠少年の事件簿」の設定では一部、原作との矛盾がある。
【方針】
聖杯に興味がある為、他の陣営を倒して聖杯を得る。
ただし、無差別殺人などは行わず、ターゲットも基本的にはサーヴァントに絞る。
投下終了です。
投下乙です
以前の方とは別人ですが、ここまでの投下作をまとめました
抜け、間違いなどありましたらご指摘ください
【セイバー】10
沙条愛歌@Fate/Prototype 蒼銀のフラグメンツ & ジークフリート@Fate/Apocrypha
杉村弘樹@バトル・ロワイアル(漫画版) & 黒沢祐一@ウィザーズ・ブレイン
越谷小鞠@のんのんびより & アルトリア・ペンドラゴン(リリィ)@Fate/Unlimited Codes
賢木儁一郎@おおかみかくし & 石田三成@戦国BASARA3
鹿目まどか@魔法少女まどか☆マギカ【新編】叛逆の物語 & 騎士ガンダム@SDガンダム外伝
來野 巽@Fate/Prototype 蒼銀のフラグメンツ & アーサー・ペンドラゴン@Fate/Prototype
先導アイチ@カードファイト!!ヴァンガード & 蛍丸@刀剣乱舞
フェイト・テスタロッサ@魔法少女リリカルなのは & クロノ@クロノ・トリガー
モードレッド@Fate/Apocrypha & ダンテ@デビルメイクライシリーズ
高遠遙一@高遠少年の事件簿 & ウイングマン@ウイングマン
【アーチャー】10
ロボとーちゃん@クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ!逆襲のロボとーちゃん & 朝潮@艦隊これくしょん
佐城雪美@アイドルマスター シンデレラガールズ & コリエル12号@BAROQUE〜歪んだ妄想〜
暁@艦隊これくしょん(アニメ版) & アカツキ@アカツキ電光戦記
宇佐美奈々子@普通の女子校生が【ろこどる】やってみた。 & 相良宗介@フルメタル・パニック!
巴マミ@魔法少女おりこ☆マギカ & アーラシュ@Fate/Prototype 蒼銀のフラグメンツ
ンドゥール@ジョジョの奇妙な冒険 & リジェ・バロ@BLEACH
千葉龍之介@暗殺教室 & アドルフ・ラインハルト@テラフォーマーズ
棗恭介@リトルバスターズ! & 天津風@艦隊これくしょん
プリンセス・デリュージ@魔法少女育成計画ACES & ヴァレリア・トリファ@Dies irae
衛宮切嗣@Fate/Zero & 霧亥@BLAME!
【ランサー】7
棗鈴@リトルバスターズ! & レオニダス一世@Fate/Grand Order
オルガマリー・アニムスフィア@Fate/Grand Order & ノイシュ@グランブルーファンタジー
佐倉杏子@魔法少女まどか☆マギカ(TV版) & メロウリンク・アリティー@機甲猟兵メロウリンク
メアリー@ib & サウザー@北斗の拳
電@艦隊これくしょん & アレクサンドル・ラスコーリニコフ@Zero Infinity -Devil of Maxwell-
夏目貴志@夏目友人帳 & マンモスマン@キン肉マン
高見沢逸郎@仮面ライダー龍騎 13RIDERS & 呂布 奉先@三国無双シリーズ
【ライダー】9
吹雪@艦隊これくしょん(アニメ版) & Bismarck@艦隊これくしょん
大和@艦隊これくしょん(アニメ版) & 常闇ノ皇@大神
大神ソウマ@神無月の巫女(アニメ版) & 神隼人@真(チェンジ!!)ゲッターロボ 世界最後の日
風見志郎@仮面ライダーSPIRITS & 黒井響一郎@スーパーヒーロー大戦GP 仮面ライダー3号
のっこちゃん(野々原紀子)@魔法少女育成計画restart & テグネウ@六花の勇者
三条合歓(さんじょう・ねむ)/ねむりん@魔法少女育成計画 & The A@紫影のソナーニル -what a beautiful memories-
レパード@夜ノヤッターマン & エドワード・ティーチ@Fate/Grand Order
岡部倫太郎@Steins;Gate & アン・ボニー&メアリー・リード@Fate/Grand Order
空母ヲ級(隻眼)@艦隊これくしょん(アニメ版) & ヘドラ@ゴジラ対ヘドラ
【キャスター】7
春日野椿@未来日記 & 円宙継@ムヒョとロージーの魔法律相談事務所
ツバサ@神無月の巫女(アニメ版) & キャロル・マールス・ディーンハイム@戦姫絶唱シンフォギアGX
夜神月@デスノート(ドラマ版) & ウィリアム・シェイクスピア@Fate/Apocrypha
ルドル・フォン・シュトロハイム@ジョジョの奇妙な冒険 & フリット・アスノ@機動戦士ガンダムAGE
アナスタシア@アイドルマスター シンデレラガールズ & スターゲイザー@ニンジャスレイヤー
L(エル・ローライト)@デスノート(TVドラマ版) & フィリップ@仮面ライダーW
詩島剛@仮面ライダードライブ & クー・フーリン@Fate/Grand Order
【アサシン】8
ペチカ@魔法少女育成計画restart & 死神@暗殺教室
ディオ・ブランドー@ジョジョの奇妙な冒険 Part1 ファントムブラッド & DIO@ジョジョの奇妙な冒険 Part3 スターダストクルセイダース
ディオ・ブランドー@ジョジョの奇妙な冒険 & 鵜堂刃衛@るろうに剣心(実写映画版)
間桐臓硯@Fate/stay night & テラフォーマー@テラフォーマーズ
エルンスト・フォン・アドラー@エヌアイン完全世界 & U-511@艦隊これくしょん
須郷伸之@ソードアート・オンライン & 時崎狂三@デート・ア・ライブ
衛宮士郎@Fate/stay night & ディテクティブ@ニンジャスレイヤー(衛宮切嗣@Fate/zero)
猿投山渦@キルラキル & うちはサスケ@NARUTO
【バーサーカー】11
羽佐間翔子@スーパーロボット大戦UX & 清姫@Fate/Grand Order
虹村億泰@ジョジョの奇妙な冒険 & 江田島平八@魁!!男塾
ステイル=マグヌス@とある魔術の禁書目録 & 袋井魔梨華@魔法少女育成計画
間桐慎二@Fate/stay night & トカ@WILD ARMS 2nd IGNITION
遠野英治@金田一少年の事件簿 悲恋湖伝説殺人事件 & ジェイソン・ボーヒーズ@13日の金曜日
元山惣帥@仮面ライダーフォーゼ & アカネ@魔法少女育成計画restart
真庭鳳凰@刀語 & ファルス・ヒューナル@ファンタシースターオンライン2
信楽@繰繰れ!コックリさん & クー子@這いよれ!ニャル子さん
ジル・ド・レェ@Fate/Zero & トン@キョンシー
ウェイバー・ベルベット@Fate/Zero & 真島吾朗@龍が如くシリーズ
董卓@蒼天航路 & 範馬勇次郎@刃牙シリーズ
【エクストラ】9
《セイヴァー》
ニコラ・テスラ@黄雷のガクトゥーン & 柊四四八@相州戦神館學園八命陣
《ハングドマン》
リベッチオ@艦隊これくしょん(ゲーム版) & ディアボロ@ジョジョの奇妙な冒険
《マザー》
茅場晶彦(ヒースクリフ)@ソードアート・オンライン & ベアトリーチェ@WILD ARMS Advanced 3rd
《タオイスト》
ディーン・ウィンチェスター@スーパーナチュラル & ラム@霊幻道士
《メンター》
高原日勝@LIVE A LIVE & Mr.カラテ(タクマ・サカザキ)@THE KING OF FIGHTERS XIII
《タイムリーパー》
ありす@Fate/EXTRA & 羽入@ひぐらしのなく頃に
《マシン》
イリヤスフィール・フォン・アインツベルン@Fate/stay night & ハートロイミュード@仮面ライダードライブ
《シーフ》
ジン@王ドロボウJING & 怪盗ドラパン@ザ・ドラえもんズ 怪盗ドラパン謎の挑戦状!
《デス》
河嶋桃@ガールズ&パンツァー & キャシャーン@キャシャーン Sins
投下します。
世界線理論。
かなり大雑把に説明するならば、世界において発生する事象は予めある程度決定されていて、また世界それを成立させる数々の出来事が発生するための構造を成しているというものだ。
世界の有り方を大まかに計測した結果が世界線と呼ばれる数値であり、これを意図的に変動させるには相応の極めて特殊な手段を要する。
らしい。
「厳密には正しいと言い難いけど、『宿命』って言えば大体通じる?」
「あー……大体分かったような」
聖杯戦争の地にサーヴァントとして召喚された『魔術師(キャスター)』は、真の名を仁藤攻介という。
かつて『古の魔法使い』として人間の積み上げた神秘の研究に人生を捧げた彼は、今こうして紙面に書かれた文字や線図と睨めっこしながら聞き慣れない科学理論の理解に努めている。
自分を召喚した少女の考え方を理解するためのお勉強の真っ最中だ。
牧瀬紅莉栖。それがマスターとなった彼女の名であった。
「で、今俺達がいる『聖杯戦争の世界線』ってのが……」
「分からない。ただ、とにかく今まで観測したことの無い未知の世界線だってのは確かだと思う」
観測したのは私じゃないけどね、と付け加えられた。
曰く、紅莉栖の仲間である岡部倫太郎という青年は、世界線の変動を完璧に感知する能力――本人の言葉を借りれば『運命感知(リーディング・シュタイナー)』という名前らしい――を持っているという。
そんな彼が紅莉栖に語った気の遠くなるような世界線漂流の経験談にすら、「聖杯戦争」などというキーワードは現れなかったのだ。
Dメールもタイムリープマシンも存在しない世界で、機械工学の結晶としてのタイムマシンを使うことなく過去の人物を再現し。あまつさえ仁藤攻介のような――世界線理論の枠内では観測不可能なはずの――並行世界に生きた魔法使いすら紅莉栖と同じ場に引っ張り出す。
あまりに不可解な、規格外の世界線。何が起こるか分かったものでは無いが、紛れもなく現実だ。
この現状を事実として受け止めた紅莉栖は、原因たる奇跡の願望器を、忌避した。
そんな物、私は要らないと。
「……こんな異常事態を引き起こした聖杯が、本当に信用に値する物なのかって時点で私は懐疑的よ」
「『何でも願いを叶えます』なんていきなり一方的に頭に詰め込まれてハイそうですか凄いですね、で終わるなんて無理。ぽんと渡された情報にどんなペテンが含まれていないって保証も無い」
「いざ使ってみてから不具合が起きましたー、じゃ遅過ぎる。もし人の手に余る力だとしたら、使い熟してやろうなんてのはただの思い上がりよ」
「大体私は、聖杯というデバイスにアクセスするための行動を一切取っていない。それなのに私の意思を問わずこうして呼び出されたということは、聖杯戦争のマスターとなる条件が余程奇天烈な設定なのか、そうでなければたたの無作為ね」
「何だそれ。付き合ってられるか。命の奪い合いの当事者が誰になるのか完全に聖杯次第とか、冗談にしても笑えない。いや、冗談じゃないけど」
「もし私が今回生き残れたとして、その時に聖杯が消滅していなかったら、どうせまた聖杯戦争が実施されることになるんでしょ? 何度でも、何度でも」
「それで、今度は誰がマスターになるの? また私? それとも岡部? 橋田? フェイリスさん? それはいつの話? 帰ったらすぐ? そうでなければ一年後、五年後、十年後……何も、分かったものじゃない」
「聖杯が存在する限り、私達はいつ平穏を脅かされるのかと怯えて生きるしかないのかもしれない……ふざけるなっての」
つらつらと、ばしばしと、どかどかと。
紅莉栖の口が止まることなく吐き出したのは、聖杯という代物に対する遠慮も敬意も無い批判の数々。
声のトーンこそ荒ぶらせてはいないものの、そこに憤慨の意が込められているのは聞くだけで明らかだ。
そして理屈の内容をじっくり咀嚼するまでも無く、紅莉栖が何を願っているのかなど容易に理解可能である。
「あー分かった分かった。つーか前にも聞いてるけど、マスターの願いはつまり聖杯をぶっ壊したいってことだろ?」
「ええ。二度と聖杯戦争なんかに巻き込まれないよう、聖杯を完全に消滅させる。そして私のいるべき世界……世界線に帰る。それが私の願い」
牧瀬紅莉栖は、願望器に願いを託さない。願いを持たないからではなく、願いを託すに値しないと判断したから。
その結論に達したならば、身柄の解放と胡散臭い逸品の廃棄を望むのも当然の話だった。
「キャスター、あなたは魔術……でいいのかな。そういうのに、私より詳しいでしょ」
「まあ、魔法使いだからそれなりにはな」
「だったら、あなたの知識も活用させてほしい。決して聖杯を使うためじゃない。私の元いた世界線の座標の特定方法、聖杯の確実な破壊方法、そういうのを明らかにするためにあなたの力を貸して」
牧瀬紅莉栖はただの少女、強いて付け加えるならば科学者だ。戦士ではない。だからこそ彼女はキャスターを頼らざるを得ない。
しかし、キャスターの能力の効果的な活用方法を彼女なりに導き出すことは出来る。
考えることが、紅莉栖の武器だった。
「そういうことならお安い御用だな。俺の領分ってことで、任せとけ」
その言葉を聴き遂げると共に、紅莉栖は一息入れたいとばかりにペットボトルに口を付ける。
ごくごくと炭酸飲料を喉に流し込むその姿は、戦争なんかとは無縁のごく普通の少女にしか見えない。
聖杯戦争の舞台で、神秘の結晶であるサーヴァントの目の前で、今の紅莉栖はどこまでも冷静だった。
決して、取り乱すような真似はしない。
あんなことが起こってしまった後だというのに。
「ねえ。なんでこいつはこんなに冷静なんだ、って思ってるでしょ」
キャスターの方を見ることなく、紅莉栖は呟いた。
「そりゃあ……」
「隠さなくていいわよ。実際おかしい。あなたの立場なら私だっておかしいだろって言うと思う。昨日、仲間が……まゆりが、死んだばっかりだってのに」
俯く彼女の表情は、崩れない。
今にも崩れそうに見えるのに、そうはならない。
「虚勢を張ってるだけよ。だって、折れるわけにはいかないから。私の記憶に残っていなくても、『私』はずっと岡部と戦ってきた。その時間を無駄にしないために、途中の犠牲も無意味にしないために、私も岡部も絶対に挫けちゃいけない」
「……だから、お前は取り戻そうってのか」
「ええ。聖杯なんかじゃなく、岡部倫太郎の手で。本来あるべき世界線の再構築を…………α世界線からβ世界線への変動を、ね」
それは、彼女の固めてしまった決意。
牧瀬紅莉栖と岡部倫太郎の戦いには目指すゴールが明確に設定されていて、だから二人はその地を目指しているのだと聞いている。
そのゴールが大多数の者達にとっての平穏を実現するベターな世界であることも。
そして、少なくとも特定の一人が救われない、決してベストとは言えない世界であることも。
「おかしいだろ」
だから、キャスターは我慢出来なかった。
「その世界線に、お前の居場所は無いんだろ? だったら」
「やめて」
今のキャスターは、サーヴァントだ。
一度自らのマスターに命じられれば、仮に本意でないとしてもその者に従うことを使命として課されている。
どれほど非道な真似であっても、マスターはキャスターを利用して自らの願いを実現する資格がある。
なのに、彼女はキャスターをそのように活用しない。
「……あんまり言いたくねえけど、生きていくためなら聖杯を得ることだって一つの、」
「やめてよ!」
キャスターの問いが、叫びと共に突っ撥ねられる。
「マスター、お前」
「……さっき、虚勢を張ってるだけって言ったでしょ? 同じよ。世界から摘み出されて、私が消えるか、それとも一人ぼっちで取り残されるか……どっちにしても、そんなの嫌に決まってるじゃない」
そのまま紅莉栖が吐露し始めたのは、己の未来を閉ざされることへの恐怖。誰でも持ちうる当たり前の感情。
「でも、死なない方がもっと嫌。まゆりを犠牲にしてまで生きるのが嫌。聖杯が欲しいと言って誰かの願いを蹴落とすのが何倍も嫌。“間違った”犠牲の上でむざむざ生き永らえる方が、何十倍も、何百倍も、何千倍もっ!! ……私は、嫌よ」
しかし、その感情をも上回る禁忌が存在してしまうから、紅莉栖は今も必死に抑え込んでいる。
脆い人間である彼女の中には、恐らく「生きたい」と叫ぶ彼女自身がいるのだろう。
そしてその叫びに従って彼女が新たな犠牲を出した先がいかなる世界か、聡明な紅莉栖には容易に想定出来ていた。
「科学者が失敗を恐れてはならないってのは科学の常識。でもそれが、未知の可能性なんて妄想に縋って誰かを殺すことを意味するんだとしたら」
聖杯戦争での勝利へと方針転換をしたら、そのために誰かを踏みにじったとしたら。その時、彼女は相手が何者であっても許せなくなるのだろう。
“牧瀬紅莉栖が生存するために”キャスターが勝手に聖杯を得ようとすれば、紅莉栖はキャスターを責めるだろう。
“牧瀬紅莉栖が生存するために”聖杯によって未来を紡げば、紅莉栖は紅莉栖自身を恨むだろう。
そうしてきっと、牧瀬紅莉栖は“生存してしまった牧瀬紅莉栖”という人間を、一生を掛けて憎悪し続けるのだ。
「――私は、科学者失格で十分よ」
故に。
牧瀬紅莉栖は、痛みを越えてでも発展を望む狂気的な『科学者』になるのではなく。
痛みに耐えられないただの『人間』に留まることを、願ったのだ。
「この世界線の行き先がどうなってるかなんて、分からない」
「この戦いは無駄になるのかもしれない。もしかしたら結局まゆりも取り戻せないのかもしれない」
「……それでも、“正しい”未来を得るための戦いをするしかないのよ」
「だって、一番確実さが保証されているから。そのために、幾つもの願いを既に犠牲にしてしまっているから」
ああ、今も彼女は怯えているのか。
不鮮明な未来に恐怖しながら、突き付けられた世界の意思に絶望しながら、それでも彼女は必死に戦っている。
足掻いている。
ギリギリで己を繋ぎ止めている。
そして、揺れる瞳で此方を射抜く。瞬間、キャスターは追憶のようなものを感じた。
「だから、お願い。今更、迷わせないで。私に“間違い”をさせないで」
か弱い少女が一人、魔法使い(キャスター)の前で“消える”ことを願った。
致命的な過ちに手を染めることの無い、一人の人間としての死を。
それが彼女に残された数少ない選択肢の中で最善の、せめてもの“救い”であると理解出来ないほど、キャスターの頭は愚かしくない。
「ずりーわ。それ言われたら俺はもう何も言えねえだろーが」
「……謝らないから」
「別に謝らなくていいって。それがマスターの願いなら、俺は叶えるための力になるだけだ。なんせ、サーヴァントだからな」
真の意味では、キャスターには牧瀬紅莉栖を救えない。
それを理解したうえで、キャスターは彼女の力になると決意した。
彼女の願いを叶えるために、彼女を望む場所へと送り届けるのだと。
サーヴァントとして、魔法使いとして、そして仁藤攻介として、己に誓う。
「うん、ありがと」
だから、キャスターもまた願いを抱くくらいの自由は許してほしい。
今ここにいない者を思い浮かべながら、無理矢理に薄く微笑む紅莉栖に聴こえない声で。
『少女』にとっての大切な『青年』へ、キャスターは自らの願いを託させてもらった。
「お前ならちゃんと救うって、信じるぞ。岡部倫太郎」
決して、忘れてはならない。
β世界線への到達を願う牧瀬紅莉栖が、聖杯戦争からの帰還先として直接β世界線へ向かうとは言わなかったことの意味を。
岡部倫太郎の手で世界線変動を起こさせるのだと言って、一度α世界線を経由すると言ったことの意味を。
牧瀬紅莉栖が、岡部倫太郎との最期の時間を願っていることを。
【クラス】
キャスター
【真名】
仁藤攻介@仮面ライダーウィザード
【パラメーター】
通常時 ⇒筋力D 耐久E 敏捷E 魔力C 幸運B 宝具A
ビースト⇒筋力C 耐久C 敏捷C 魔力C 幸運B 宝具A
ハイパー⇒筋力B 耐久C 敏捷B 魔力C 幸運B 宝具A
【属性】
中立・善
【クラススキル】
・陣地作成:E
魔術工房を作ることは出来ない。しかし魔法使いとして活動するための簡易な生活基盤を構築可能。
キャスターはどんな場所でもテントを張り、焚火による炊事場を用意し、洗濯物を乾かすことが出来る。
・道具作成:E
魔力を帯びた道具を作ることは出来ない。しかし魔法使いに必須となるエネルギー源をどこからともなく調達可能。
キャスターは何時いかなる時もマヨネーズを常備している。
【保有スキル】
・魔力吸収:A
サーヴァントはNPCの魂喰いによって魔力回復を行うことが可能だが、キャスターの場合はNPCが対象でなくても構わない。
サーヴァントや使い魔のような魔力で肉体を構成している存在ならば、倒した時にその肉体を構成する魔力を分解・吸収して自らのエネルギーとすることが可能。
後述する宝具の効果から、戦闘に際して魔力消費を心配する必要性は薄いため、専ら平時の魔力消費の軽減のために充てられる。
ただし、あくまでキャスター自身の手で止めを刺さないと相手の身体を分解出来ない。
・高速詠唱:-
魔術の詠唱を高速化するスキル。
ビーストの呪文詠唱は全て宝具が代行するため、必要としない。
・騎乗:C
乗り物を乗りこなす能力。
本来は騎乗兵のクラスにも適合する仁藤だが、キャスターとして召喚されたため劣化している。
生前目にしたことのある乗り物であれば乗りこなすことができるが、未知の乗り物には発揮されない。
・考古学:A
考古学を生業とした仁藤攻介が保有する豊かなインテリジェンス。
あらゆる知識を自らの頭脳で噛み砕いているため、秀でた分析力を持つ。
人類史上の存在を基とするサーヴァントならば、その正体を特定出来る可能性が通常より高い。
現代以前の時代が守備範囲内であり、時代が古ければ古いほど特定の成功が見込める。
【宝具】
・『古の本能眠りし扉(ビーストドライバー)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:1人
キャスターが腰に装着する、ベルト状の呪文代行詠唱装置。
普段はベルトに偽装されているが、ドライバーオンの指輪で本来の姿を取り戻す。
ウィザードリングを挿入口に挿し込むことでそれぞれに対応した音声を発し、本人の詠唱無しで呪文を行使する。
主な効果は『古の魔法使い・ビースト』への変身、マント装着による特殊能力の獲得またはビーストハイパーへの強化変身、必殺技の発動等。
なお、この宝具は魔法使いのベルトのアーキタイプとされており、後年に開発されたドライバーに対応するウィザードリングの効果を発動出来ない。
・『牙剥く野獣(ビーストキマイラ)』
ランク:A 種別:対人宝具(対城宝具) レンジ:-(1〜?) 最大補足:1(1〜?)
魔法が科学の如く栄えた太古の時代に誕生し、当時の人間達に封印され長い時間眠りについていたとされる巨大な獣型のファントム。
封印を解いた仁藤攻介の肉体に住処を移し、魔法使いの力の源として彼と生涯を共にしたことからキャスターの宝具として再現された。
本来は一体のファントムとしての実体を確立していたが、人間の体内に移ったことから心象風景内に住むファントムに近しい存在となっている。
戦闘時にはキマイラ自身が潤沢な魔力炉として機能することにより、キャスターは必要最低限以上の魔力消費を要さずに魔法を使用することが出来る。
このため、事実上キャスターのマスターが負担する魔力消費量は平時と戦闘時でほとんど変化しない。
ただし、常に魔力を喰らうことを欲するという性質により、キャスター自身が持つ魔力またはキャスターが外部から獲得した魔力を度々吸収する。
(あくまでキマイラの性分の話であるため、消費する魔力量と要求される魔力量は必ずしもイコールではない)
この点を克服するため、キャスターはスキル「魔力吸収」を行使する、または通常の人間と同様に食糧を摂取する必要性が生じる。
またあまりに多くの魔力を短期間で消費すると、後になってキマイラがより多くの魔力量を要求してくる可能性もゼロではないため過信も禁物。
この宝具のもうひとつの特性として、心象風景内でならキマイラが自我と実体を持って活動出来るというものがある。
つまりこの宝具は、術者の心象風景をもって現実を塗り潰す魔術――『固有結界』に対するカウンターとして機能する。
そして更なる特性として、キャスターが自らの手で『古の本能眠りし扉』を破壊した時に限り、現実世界でも実体を持って活動出来る。
ただしこの時は著しい魔力消費により一度の戦闘だけでキマイラが消滅を迎える他、キャスターは宝具の喪失により二度とビーストへの変身が出来なくなる。
【weapon】
・ウィザードリング
魔法使い専用の指輪。ドライバーに挿入することでそれぞれに対応した魔法が発動される。
ビースト用のリングを現時点で全て所持している。
・ダイスサーベル
ビーストの基本武器である細身の剣。ドライバーのバックルから取り出す。
基本は剣だが先端から魔法の弾を射出名前通りダイスを模したギミックが内蔵されており、このダイスの出目で必殺技の威力が変化する。
最大の出目の「6」は強力な破壊力を持つが、最小の出目である「1」は威力皆無で軽くあしらわれてしまう。
しかしキャスター自身の魔力を追加すれば、その分だけ威力も上昇する。
なお、いかなる魔術を以てしてもダイスの出目の操作は不可能とされている。
ハイパーへの変身後も使用可能。
・ミラージュマグナム
ビーストハイパーの基本武器である銃。
魔力弾による銃撃が可能であり、さらに背面のスロットにリングをセットすることで強力な必殺技を放つ。
ハイパーへの変身前も、必殺技以外の機能は使用可能。
【人物背景】
考古学を研究する中で偶然太古の怪物と出会い、『古の魔法使い』となった青年。
溢れる探究心の赴くままに、その人生を怪物のために費やすこととなった。
それでも、仁藤攻介に後悔は無い。
彼は『指輪の魔法使い』と共に『白い魔法使い』の野望を食い止め、世界を救った。
しかし彼等が本当に救いたいと願った一人の少女の命は救えなかった。
それでも、魔法使いに後悔は無い。
【サーヴァントとしての願い】
特に無し。人生に後悔など無い。
今回はマスターに付き合う。今の自分に出来る限りのことをする。
【マスター】
牧瀬紅莉栖@Steins;Gate
【マスターとしての願い】
β世界線への到達。世界から“正しく”消える。
【能力・技能】
理系分野の知識に長ける。
運動神経は平均以下。
【weapon】
特に無し。
【人物背景】
本来あるべき世界線で死を迎えるはずだった少女。
ほんの偶然から新たな世界線が生み出されたことで、死を免れて生き続けることとなった。
しかしその世界線は、数多の“間違った”犠牲を伴う世界でしかなかったと知る。
その時牧瀬紅莉栖が望んだのは、本来の世界線の再構築だった。
自分が消える世界だとしても、それが“正しい”世界だから。
【方針】
当面の目的は同盟関係の確立。最終目標は聖杯の完全破壊及びα世界線への帰還。
誰も害されない理想郷、なんて妄想には縋らない。奇跡など求めない。
積み重ねられた犠牲を絶対に無駄にしてはならない。
投下終了します。
仁藤攻介のステータス作成には『聖杯戦争異聞録 帝都幻想奇譚』の操真晴人のステータスを参考とさせていただきました。
この場を借りてお礼申し上げます。
投下します
【聖杯戦争】とは、まさしく異常事態である。
しかし、人々の大部分はそれに気づくこともなく、平穏な日常を送っていた
「やだ……もうこんな時間。帰らなくちゃ」
「ええ……まだいいだろ。もっと遊ぼうよ。せっかく知り合ったんだからさー」
深夜の公園を歩く、ふたりの男女も聖杯戦争のせの字も知らない一般人であった。
胸元を強調するような服装をしている、若干『遊び馴れている』と感じる若い女性。"ギャル"という人種であろうか。
「今日はもう遅いし……う、うちに泊まるかい?家賃二十万もする良い部屋なんだぜ?」
その女を必死に誘おうとしている男は、不良と聞かれたらそうでもなく、異性の気を引こうと必死に着飾ったことが見てとれる『チャラ男』であった。
しかし、女の派手な化粧で着飾った顔には、自分を引き留めようとする男に対して『めんどくさい』と感じていることは明らかだった。
相手を気遣うような事を言っているが、その実視線はずっと自分の胸元を覗いていることに女はだいぶ前から気づいていたし、相手の期待していることに付き合う気もなかった
そもそもこの男とは知り合ってまだ数時間もたっていない。
何かおごるからと、ぎこちなく自分をナンパしてきたので少し魔が差して、からからかい半分に付き合っただけであった。
「いや私たちまだそこまで親しくないし、とりあえず今日はごちそうさま」
「じ、じゃあ家まで送っていくよ。夜道はぶっそうだし」
男のしつこいアプローチに若干の鬱陶しさを感じながらも、返事を変えそうとして、立ち止まった。
「おい兄ちゃんよぉー……女がイヤがってんだろォー。てめーだけで帰れよ」
ふたりは眉を潜めた。如何にも悪い男ーー所詮『DQN』たちが絡んできたのだ
黒シャツにスキンヘッドの男が、虫か何かを払うように『シッシッ』と手を降っていた。シャツからみえ隠れするタトゥーが、否応なしに威圧感を感じてしまう
「女は俺達がちゃーんと……おいしく頂きますってか?」
「ギャハハハハ!!最高じゃんそれ!!」
太った体型のモヒカン男の言い回しに、何が面白いのか爆笑する金髪ピアスの男。女は予想外の自体に不安になり、横目で連れの男を見た。
「え……え……?」
男は固まっていた。
「兄ちゃん、とりあえずサイフとケータイ置いてきな。テメーはそれで見逃してやらあ」
「……はい」
何の蝶々もなくサイフとスマートフォンをスキンヘッドに差し出していた。その顔には恥じている様子はなく、諦めだけがあった。
「うわwwwwだっせwwww」
「へへ……貰っとくぜ」
さっきまで必死に食らいついていた女を守ろうともせず、その順丈な態度に男たちは爆笑した。女も呆れて侮蔑と軽蔑の眼差しを男に向ける。
「あんたってサイテー……」
「何いっているんだ!!僕がケンカしてケガすることを望んでいるのか!?」
「……は?」
「そ……そんな女だとは思わなかった!!見損なったよ!!」
女の額に青筋が浮かぶ。
あろうことか保身のために自分を売った矢先にこれである。不安よりもめらめらと怒りが湧き出てくる
「ははは、まー自己正当化しねーと、やってらんねーよな」
スキンヘッドもその物言いに苦笑していた。外見からして大した相手ではないと思っていたが、こうも弱腰だとは
「じゃあテメーはさっさと消えな!!」
モヒカンが男の襟首を掴み上げた。
弱者をいたぶる優越感を感じているのか、残虐な笑みを浮かべている。
情けない悲鳴をあげる男を尻目に、欲望にたぎった視線の中に微かな憐れみを含めたスキンヘッドが言った。
「なぁねーちゃん。こんな弱っちいヤローの精子なんか受け止めてやる必要ねーぜ」
ふと、そこで怪訝そうに眉を上げた。
いましがたやり取りを見ていた女が、固まっているのだ。口をあんぐりとあけ、自分達の背後を見ながら。
「あ?どうし……」
それが男の最後の言葉であった
呆然とするふたりの眼前に、それはいた。
異様な風貌の男だ。
がっしりとした骨太の体格に、溶接工のような服装をした怪人。
さきほどまでふたりを恐喝していた男たちは、その怪人の足元で屍を晒していた。
恐らく彼らも何が起こったのか理解できないままに死んだのだろう。
その顔には溶け合うようにして犬の死体が溶接されていた。
それに気づいた女が悲鳴を上げた。
男はどうかわからないが、すくなくとも女はすぐにこれをしたのがこの怪人だとわかった。左手にアーク切断機、右手に比較的新鮮な(腐敗していない)犬の死体を持っていたから
ジャリ、怪人のブーツが地面を擦った。
「大丈夫か?」
そう問いかけてきたのは、怪人ではなかった。女は再度目を疑った。
怪人と肩を並べるように現れたのは、西洋鎧で全身を固めた女(スカートを着用していたのと声で判断)だったからだ。
その手には、人ひとり簡単に切り裂けるような処刑斧を携えていた。
自分の常識に真っ向から喧嘩を売るような自体に、女は固まる。
「あ……あの!!ありがとうごまっ、ごまいざした!!」
しかし男は違った。今回ばかりは
恐喝してきた悪漢を殺害した相手に、警戒よりも感謝の念を感じたのだ。
臆病な男はいいように男たちに従ってしまったが、やはり内心では相当悔しかったのかもしれない。男たちの不可解な死に明らかな喜びを感じていた。
怪人は立ち尽くし、鎧の女は兜越しに男を一別した。
「僕たち困ってたんです!!救ってくれてありがとうござい」
「うるさい」
そしてズバッ!!と首を跳ねた。
技術ではなく、純粋な筋力のみで振るわれた処刑斧は遺憾なくその切れ味を発揮し、男は死んだ。
ゴロゴロと地面に転がる生首には、何が起こったのかわからないといった驚愕の表情が張り付いている。
切断された大動脈から、一呼吸おいて鮮血が噴水のように吹き出る。側にいた女の顔にも飛びちり、悲鳴が上がった。
「なぜこんなことをするのか?理由は単純だ」
「こんなゴミどもがのさばるから社会が汚れる。だからそいつらを殺せば社会はよくなる。生きて人に迷惑をかけるクズよりも殺して生ゴミにした方がずっと有益だ」
「ゴミが人間的に成長するまでに何人の人間が被害にあう?
精液は出してもまたすぐ溜まるし、金を使えばなくなるんだぞ?
そんか輩があちこちで性交し子種をばらまいてみろ…恐ろしいことになると思わないか?」
男たちの死体を、彼女は軽く足で小突いた。まるで汚物を扱うような仕草だ
「例えば……貧乏なくせに無計画に大家族を作り、国の保証にたかるような連中がいるだろう?
節度ある性生活を送る真っ当な納税者がその連中の尻拭いをしているこの世はおかしくないか?
誰も悪者になりたくないからがまんしているだけではないのか?」
足元の転がる生首を拾い上げる。
眼球が裏返り、白目を向いて口を開ける生首は妙に滑稽な表情だった。
「この男を殺したのはゴミを容認したからだ。女も満足にゴミから守れないならそもそもデートなどすべきではないのだ」
その生首を女に差し向けて、彼女は静かに問いかけた
「それを踏まえて、この男を殺した私を君は責めるかね?」
「せ……攻めません……!!」
女は鎧の女を肯定した。首を何度も横に降る。
「彼が私を売ろうとしたのは腹が立ったし…」
その答えに満足したのか、それまで緊張していた場の空気が弛緩した。
「そうか、ならいい……ところで、なぜお前は胸の開いた服を着ている?」
「え?」
瞬間、突如豹変した鎧に蹴り飛ばされた。
鳩尾に打ち込まれ、耐えきれずにその場で嘔吐する女。涙をにじませながら見上げると、それまでの穏やかな雰囲気など消し飛んでいた。
「とぼけるな!!お前はお前で自分の女体を見せびらかしていたんだろう!!
そもそもお前もおかしいのだ、ケーキをそとに放置しハエが寄ってきたら文句を言う女がなァ〜〜〜〜〜〜!!!」
激昂したように女を糾弾する。その声は狂気に染まっていた。兜から覗く視線は、路上の汚物を見るような冷たいものだった
「お前はお前でこの男が安全かどうかに気を回すべきだった!!しかしどうでもよかったのだろう?この淫売がっ!!」
衝動のままに、先客の血に染まった斧を振り上げる。
「つまりィお前もこのゴミどもと同類ということだ〜〜!!」
ズバッ!!なんの弁解もする猶予もなく、女は男と同じく首を飛ばされた。
◆◆◆◆◆
「また一歩、正しいことができたな。バーサーカー」
公園の処刑から数時間語、早朝。
鎧を脱いだ少女は、マンションの自室にて側にたつ怪人ーーバーサーカーに話しかけた
「……」
バーサーカーは答えない。もっとも、彼が此方の問いかけに答えることなどマスターとなってから一回もないのだが
『ガーディアンズ』
自己を極限まで鍛え、そのパワーを用いて、理想とする正義と友愛を実現する、暴力をもって暴力を排除する中学生騎士団である
かつては有志によるボランティア集団だったが、新リーダー就任により方向性が大きくかわり、不良の落書きを消す集団から落書き前に処刑する集団へと変貌した。
そしてその集団を率いていた元リーダーが鎧の女ーーネメシスである
「さて、と……」
ネメシスは眼前に山住となったステッカーに目を止めた。それは『GUARDIANS』と印刷されていた
ガーディアンズの目下の活動内容はとてもシンプルだ。
『GUARDIANS』のステッカーの張られた相手を処刑する。それだけである
新リーダーによって販売されたステッカーは分かりやすく言えば「こいつは悪いやつだから死んだほうがいい」という証明書であり、それを張られたものはどんな人物だろうが死刑に値する。
突如として参戦してしまった聖杯戦争だが、ネメシスはこの場でもガーディアンズの正義を貫くつもりである
引き当てた英幽は狂戦士『バーサーカー』と言えども、ネメシスと同じく正義を執行する立場のものであったのは幸いだ。聖杯を狙うなら、恩義ある新リーダーに捧げるのも悪くはない
コツコツと闇夜に紛れて活動していたのが効をそうしたのか、ネットではすでにネメシスのことや、意図的に流したガーディアンズの情報がちらほらとみえ始めていた。
「ーーここ横須賀に我らガーディアンズの正義を広めて見せる」
すでにネメシスは死体の身ではあるが、その信念は本物であった。若干、歪んではいるが……
【クラス】
バーサーカー
【真名】
犬溶接マン@Hitman
【ステータス】
筋力B 耐久B 敏捷C 魔力E 幸運E 宝具C
【属性】
混沌・善
【クラススキル】
狂化:B
バーサーカーの全ての行動原理は「犬の死体を悪人の顔に溶接する」ことに特化している
【保有スキル】
精神汚染:A
精神が錯乱しているため、他の精神干渉系魔術をシャットアウトできる。ただし、同ランクの精神汚染がされていない人物とは意思疎通ができない。
仕切り直し:C
戦闘から離脱する能力。また、不利になった戦闘を初期状態へと戻す。
【宝具】
『ドッグウェルダー』
ランク:B 種別:対人宝具
バーサーカーの「犬の死体を悪人の顔に溶接する」 という能力が宝具となったもの
属性:悪のサーヴァント、悪と分類されるNPC、敵マスターと対峙した場合、高確率で犬の死体を顔に溶接することができる。判定が出た場合相手は死ぬ。同ランクの幸運で対処可能
【人物背景】
溶接工のようなコスチュームを着込み、アーク切断機と犬の死体を持っているヒーロー。分類としてはヴィジランテに当たる。
能力は「犬の死体を悪人の顔に溶接する」こと。相手は死ぬ。
犬の死体は野良犬を罠に掛けて調達しており、必要に応じて予備も持ち歩く。
ヒーローである。
もう一度言うが、ヒーローである。ヴィランではない。
繰り返すが、あくまでもヒーローである。
素顔を見せるどころか喋ることすら一切なく、時にヒーローやチームメイト相手にすら襲い掛かるという完全なキチ……怪人のような有様でもヒーローである。
ちなみに活動拠点はゴッサムシティ。
つまりバットマンが活躍する裏で、彼も活躍している。犬を悪人に溶接して。
あと、彼が持っているのは切断機であって溶接機ではなく、溶接棒もないのだが、何故か犬の死体を溶接できる。
溶接した犬の死体も原型を留めているため、もう何かそういう超能力なのかもしれない。
【サーヴァントとしての願い】
????
【マスター】
ネメシス@血まみれスケバンチェーンソー
【マスターとしての願い】
正しいことを行う(今のところは新リーダーに献上する)
【weapon】
『処刑斧』
巨大な斧。一撃で首を跳ねることができるほどの切れ味
『鎧』
ガーディアンズの正装。
至近距離からの小型ミサイル直撃にも一回だけは耐えられるくらいの防御力を誇る
【能力・技能】
『改造死体』
分かりやすく言えばゾンビ。怪力で中々しぶとく、物理的に破壊でもしないと無力化は難しい。
【人物背景】
当初は町の掃除や独居老人の家を訪問したりなどの「ふつう」のボランティア活動を有志で行う善良な学生だったが、訪問しようとしていた老人のガス自殺に気づかず漏電による引火で巻き込まれる形で爆死。その後死体安置所から新リーダー「藍井ネロ」に引き取られ改造死体として復活し、以降は新生ガーディアンズメンバーとともに忠実な手下となる
母が男遊びに激しく、家に男が来ている間は夜中でも家に入れてもらえず、本人の語りから推測するにその時に性的ないたずらをされた可能性もある。この経験からやがて「汚い奴らを殺せるルールがあればいい」といった過激な思想を持つに至る。
与えられたルールにガチガチになるタイプで、特別扱いをひどく嫌う
【方針】
ガーディアンズとして活動し、ステッカーの概念を拡散し正義を知らしめる
ルールを厳守しなおかつ活動の邪魔をしない相手なら同盟を組むのも選択にはいる
私利私欲のために聖杯を望むもの、とくに魂食いなどの"ルール違反"に手を染めている主従は、ガーディアンズの名において問答無用で抹殺する。ついでにステッカーを貼られた相手も抹殺する方針
以下で投下終了です
投下します
地獄の如き光景だった。
つい数分前まで静寂に満ちていた廃工場は今やその面影さえ見られないほど壊し尽くされてていた。
あちこちから火柱が立ち上り、黒煙が舞い上がっている。
およそ人が生きていられる空間ではない、にも関わらず未だ生を繋ぐ者たちがいた。
「おい、無事か!?」
「ええ、何とか生きてるわ」
瓦礫の中から煤だらけの二人の男女が這い出てきた。
架空の世界を戦場とする聖杯戦争に参加する、あるいは参加させられた魔術師だ。
彼らは主催者の正体すらわからぬこの戦争に乗ることを断固拒否し、仲間を集い脱出を目論んでいた。
共に戦うサーヴァントたちはどちらも善性の英雄であり、共闘、脱出という方針も快諾してくれた。
拠点を見繕い、仲間を集めてまずは殺し合いの抑止を図ろうとしていた時だった。
あの漆黒の鬼の如き面貌のサーヴァントが現れたのは。
「無事か、マスター!」
「ここは危険です、早く離れてください!」
二人のサーヴァントであるセイバーとアーチャーが態勢の立て直しも兼ねてか駆け寄ってきた。
二対一という有利な状況にも関わらず彼らは既に少なからぬ傷を負っていた。
特にアーチャーは身体の至る箇所が焼けて爛れており、内部のダメージも酷い。
セイバーは思考する。このままでは撃退はおろか全滅する可能性の方が遥かに高い。
また、未だ敵方のマスターが出てこないことも気にかかる。
あれほどの戦闘力を持つサーヴァントを単騎で放り込む以上、マスター側も熟練の魔術師である可能性は否定できるものではない。
こちら側のマスターはセイバーとアーチャーを支えるだけで手一杯の、一流には程遠い魔術師だ。
敵側のマスターがまだ魔術行使をするだけの余力を残しているとすれば最悪の事態に発展する。
アーチャーも同じ考えに至ったのだろう、二騎のサーヴァントは顔を突き合わせて頷いた。
「マスター、離れる前に令呪を使ってくれ!ここで切り札を切らなければ確実に全滅する!
俺には強化を、アーチャーには敵の発火能力への耐性をつけてくれ!
能力の全貌はまだ見えないが敵はアーチャーに対して効果的な発火能力を持っているようだ」
「マスター、私からもお願いします!」
いつまでも敵が考える時間を与えてくれるはずもない。それは魔術師としては二流以下の二人も弁えていた。
サーヴァントの提案に揃って頷くと同時に令呪を行使した。
次の瞬間、炎の中から黒い四本角のサーヴァントがゆっくりと近づいてきた。
その威圧感だけでなけなしの勇気すら残らず粉砕されそうになる。
「走れマスター!行け!!」
セイバーの叱咤に我に返った魔術師二人は手を取り合って走り出した。
これで良い、とは言えない。敵のマスターの実力如何ではマスターたちは逃げた先で揃って殺される可能性もある。
だが留まっていても戦闘に巻き込まれて死亡する可能性がある、いや、現状ではそちらの可能性の方が高い。
ならば取り得る作戦は一つ、一刻も早くサーヴァントを斃しマスターの下に馳せ参じることだけだ。
「ぐ、うううぅ!?」
「アーチャー!!」
黒の四本角が掌を翳したと同時、アーチャーの身体が内部から燃え上がった。
最初に対峙した時と同じだ。あの時も即座にセイバーが斬りかかり攻撃を中断させていなければアーチャーは戦う前に消滅していたに違いない。
何故かセイバーには通用しないようだが脅威の能力だ。よもや令呪の加護を以ってしても完全には防ぎきれないとは。
「おおおおおおぉぉぉっ!!!」
雄叫びをあげて神速の踏み込みで黒の四本角へと迫る。
令呪による強化が施されたセイバーの剣舞は先ほどまでとは段違いの速さ、重さ、鋭さを誇る。
通常のサーヴァントならばまず受けることすら困難なほどの怒涛の連撃、セイバー自身もう一度同じことをしろと言われてもまず出来ないであろう神懸かり的な猛攻だった。
嗚呼、けれど現実はどこまでも非情にセイバーを押し潰す。
(…馬鹿な!)
届かない、躱される、防がれる。
有り得ざる見切りによって、セイバーのあらゆる攻撃にこれ以上は望めないというほど完璧に対処してみせるこのサーヴァントは何者だ。
渾身の力で放った首筋への突きも刀身を掴むことで防がれ、セイバーが万力を込めても微動だにしない。
黒の四本角のサーヴァントが反撃とばかりに左腕をセイバーの腹部へと叩きこむとそれだけで彼の甲冑が砕け散った。
腹を押さえ吐血しながら後ずさるセイバーを見て四本角のサーヴァントは右手に重厚な大剣を生成した。
そしてセイバーへと踏み込むとつい今しがた彼が放った剣舞と全く同じ冴えの剣を振るって見せた。
「おのれ…化け物かこいつは!!」
「セイバー!」
セイバーを援護しようとアーチャーが多数の銃火器を実体化させ一斉に発射した。
アーチャーは現代に近い時代出身の銃や砲を主に扱うタイプのアーチャーだった。
セイバーが振るう太陽神の加護を受けた聖剣でさえほとんど通らない相手の重厚な装甲に銃弾が通用するとはアーチャー自身も思っていない。
しかし、どんなに僅かな時間であれこちらに注意を惹きつけることができれば最大戦力たるセイバーが立て直す機会が得られる。
無数の銃から発射された弾丸が四本角のサーヴァントへと殺到する。広範囲をカバーするこの一斉射撃、避けられはすまい。
けれどアーチャーは失念していた。セイバーが後退し四本角のサーヴァントがフリーになればどうなるかを。
四本角が再び右手を翳すとアーチャーが放った弾幕全てが一瞬にして燃え尽き、同時にアーチャー自身も再び炎に包まれた。
四本角は炎の効き目が悪くなったと見るや右腕にボウガンらしきものを形成、崩れ落ちたアーチャーへと不可視の弾丸を発射し頭部を吹き飛ばし心臓に穴を開けた。
あまりにも呆気なく脱落したアーチャー、あまりにも理不尽、絶望的な状況。
けれど、それでもセイバーは神の血を引く英雄だ。まだ、まだ諦めはしない。
「……!」
だが、そんな精神論を嘲笑うかの如く四本角は距離を取り左腕にもボウガンを生成、アーチャーのお株を奪う正確無比の一斉射撃を見舞った。
無論、セイバーとてただやられるのを待つばかりの木偶の坊ではない、ランダムに回避運動を取って隙を伺おうと試みる。
しかし四本角のサーヴァントの射撃精度は尋常ではなく、セイバーの回避方向、一挙手一投足全てを予知するかの如き神業だった。
全身を無数且つ不可視のエネルギー弾によって抉られたセイバーの傷は最早常人の正視に堪えるレベルではなく、たまらず大きな瓦礫を遮蔽物にして逃げ込んだ。
「何っ!?」
だが安息の時間はコンマ一秒たりとも与えられはしなかった。
遮蔽物が存在するにも関わらず寸分違わずセイバーの急所を狙って弾丸が放たれ容易く瓦礫を砕いたのだ。
反射的に横っ飛びに回避したおかげで首の皮一枚というところで即死を免れることができた。
そう、即死だけは。
「………!」
地面に無様に転がり、立ち上がることすらできなくなった。
当たり前だ、立ち上がるための足が既に両膝から失われているのだから。
セイバーの咄嗟の反応すら見越したかのように不可視の弾丸は彼の両足を撃ち抜き消滅させていた。
「すまない…マスター……」
辞世の句を残すことができたのは幸運だったのか不運だったのか、セイバー自身にさえわからなかった。
何の慈悲も容赦もなく連射される弾幕によって身動きの取れなくなったセイバーは肉片の一つすら残らず物理的に消し去られた。
「あ、アーチャーが……」
「嘘だろ、セイバー……!」
同時刻、炎上する廃工場から命辛々脱出した二人の魔術師は絶望に暮れていた。
無情にも薄くなった令呪が大幅な強化も虚しく二騎の英霊が脱落したことを告げていた。
どうしてこんなことに、とどちらともなく呟いた時、コツコツと足音が聞こえてきた。
「あの程度のサーヴァントとその程度の覚悟で聖杯戦争を生き残るつもりでいたのなら、愚かと断じる他ないな」
仕立ての良い服を着た、金髪オールバックの青年だった。
この言動、間違いない。自分たちのパートナーを死に追いやったサーヴァントのマスターはこの男に違いない。
二人はアーチャーが警察署からくすねてきたニューナンブを構え、オールバックの男へ発砲した。
サーヴァントの維持だけで精一杯な彼らが考案したせめてもの武装はしかし、男に命中する前に何かに阻まれ止められた。
「魔術礼装か……!」
「野蛮な兵器を使う堕ちた魔術師、とは敢えて言わんよ。
私とて一度はその武器に頼った身だからな」
男は明らかに二人よりも格上の魔術師だ。
逃げなければ。二人が同時にそう思った直後、何故か視界が急速に回転した。
一瞬の後、納得した。ああ、首が斬り飛ばされたのならこうもなろう、と。
ケイネス・エルメロイ・アーチボルトは死人である。
自らの輝かしい経歴に武勲という箔をつけるために参加した第四次聖杯戦争、その推移と結末は惨憺たるものだった。
本命の聖遺物は手違いで生徒に渡り、次善の遺物で召喚したサーヴァントは婚約者に色目を使い、最期は近代兵器を使う薄汚い魔術師の策略にかかり婚約者諸共殺された。
だが、何の因果か気づけばケイネスはこの異端の聖杯戦争に、旅行中の英国貴族という設定で放り込まれていた。
「私は間違っていた」
かつての聖杯戦争、主たる敗因はランサーである。それは間違いない。
しかし唯一つ、ランサーの関与しない、ケイネス自身認めざるを得ない取り返しのつかない過ちがあった。
婚約者であるソラウを殺したのは誰だ。直接の下手人はあの魔術師崩れの助手らしき女だろう。
彼女を誑かしたのは思い返すだけでも憎たらしいあのランサーに相違ない。
しかし、しかし。そもそも最低限の魔術しか学んでいない彼女を聖杯戦争なる闘争の場に連れてきたのは誰あろうケイネス自身だ。
「認めよう、私の驕慢がソラウを殺したのだ」
過ちは贖わねばならない。
失ったものを、聖杯によって取り戻さなければならない。
今度こそは、油断も失敗も慢心も許されない。文字通り如何なる手を使ってでも聖杯を得なければケイネスは到底自分を許すことができない。
「やはりサーヴァントは余計な物言いをしないバーサーカーに限るな。
アレならばこのロード・エルメロイが統べるサーヴァントに相応しい」
二度目となる聖杯戦争でケイネスに宛がわれたサーヴァントのクラスはバーサーカー。
決して軽いわけではないが、さりとて覚悟していたほどには重くもない魔力消費量。
同盟を組んだサーヴァント二体を苦戦もなく葬り去る戦闘力に加え、騎士どものように稚気を弄することもない。
バーサーカーと言えば唸り声や咆哮が喧しいものと思っていたがそのような兆候もない。
強いて言えば敵を求めて暴走しようとする暴れ馬な側面があるが、ケイネスの力量ならば制御可能な範疇だ。今のところ問題はない。
ケイネスは此度の従者に大いに満足していた。無論、戦闘兵器としての利用価値に関してであるが。
「さて、君たちは魔術師としては三流だがその肉体には価値がある。
新しい魔力炉の材料にでもなってもらおうか」
現状ケイネスの手元にある魔術礼装は「月霊髄液」のみである。
無論一つあるだけでも僥倖と思うべきであるのは理解しているが、前回はこの礼装のみを過信したために敗北したのだ。
故にケイネスは確実に聖杯戦争を制するために新たな魔術礼装や魔力炉、そして工房を拵えることを急務としていた。
この世界で魔術に関わる品を集めるのは非常に困難であるが、参加者たる魔術師の肉体は髪の一本に至るまで礼装の材料となり得る。
この点に着目し積極的なマスター狩りを行っているのである。
「私は取り戻してみせるぞ。ソラウも、私自身の生も栄光も。
そうとも、聖杯戦争になど参じる必要はなかったのだ。私の未来は、栄光は、繁栄はあの時計塔の中に確かにあったのだ」
聖杯戦争で失ったものを取り戻すために聖杯戦争を制さねばならないとは何たる矛盾か。
しかし、その矛盾さえも飲み込んでみせねばケイネスはただ全てを失ったまま消え去るのみだ。
天才と称された魔術師は、今度こそ誰の邪魔もなくそのリソース全てを勝利へと注ぎ込んでいた。
【クラス】
バーサーカー
【真名】
凄まじき戦士@仮面ライダークウガ
【属性】
秩序・狂
【ステータス】
筋力A+ 耐久A 敏捷B 魔力B 幸運D 宝具A
【クラススキル】
狂化:EX
特殊な狂化タイプ。戦うためだけの生物兵器。
バーサーカーはその在り方から狂化の影響下にあっても一切戦闘技術が損なわれない。
ただし常に敵を破壊するために動こうとするため、マスター側にも一定以上の制御技術が求められる。
【保有スキル】
超越肉体:A
凄まじき戦士の強固な生体甲冑は生半な攻撃を受け付けず、傷を負ったとしても瞬時に回復する。
ランクにしてA相当の頑健、自己再生のスキルを内包する複合スキル。
千里眼:B+
視力の良さ。遠方の標的の補足、動体視力の向上。
鋭敏過ぎる五感の高さから、視界が遮られ目の及ばないものであろうとも補足することが可能。
これにはマスターとサーヴァントを繋ぐレイラインも含まれる。
また高度な見切りの技術としても機能し、自身より圧倒的に速い敵の動きも正確に捉える。
気配感知:A
最高クラスの気配探知能力。鋭敏すぎる五感の高さによって気配遮断スキルを無効化して敵を発見する。
千里眼スキルとの併用によって表記上のランクを上回る効力を発揮する。
物質変換:A
モーフィングパワー。物質を一度原子分解し、再構成する能力。
凄まじき戦士は触媒を必要とせず専用武器を生み出すことができる域にある。
宝具ではなく、且つ格の低い武装であればサーヴァントの武装であってもこのスキルで干渉できる。
【宝具】
『凄まじき戦士(クウガ)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:1人
バーサーカーとして現界したクウガそのものを表す宝具。
変身ベルトであるアークルの持つポテンシャルのすべてと悪性の面を開放した姿であり、人を守る存在である英雄ではなく、人を害す存在である反英雄であると言える。
バーサーカーとしてのクウガはクウガの資格者を触媒にして「凄まじき戦士」としての側面が呼び出された姿である。
全身から封印エネルギーを放出しており、後述の宝具を除く全ての攻撃手段に魔物、怪物の属性を帯びる者への特攻効果が付与されている。
またアークル自体が魔力炉としての機能を帯びており、マスターの負担を大幅に軽減するが一定の魔力供給が為されていないと稼働しない。
このように絶大な戦闘力を獲得するが、代償に仮面ライダーの属性を失い怪物の属性が付与される。
仮面ライダーと怪人は表裏一体の存在である。
『究極の闇(キュグキョブンジャリ)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1〜30 最大補足:30000人
本来は凄まじき戦士と同質の存在、グロンギ族の長ン・ダグバ・ゼバが保有する宝具。
凄まじき戦士がダグバと同質の存在であるためか名称をそのままに彼の宝具となった。
物質の原子や分子を操りプラズマ化させ、範囲内の標的を体内から発火させる。
この宝具のダメージ数値は対象のステータス値ではなく神秘の深さ、霊格の高さによって算出される。
年代が古く、霊基の質が高いほど与えるダメージが減少し、場合によっては無効化される。
逆に近現代に近い、ないし霊格の低い英雄ほど大きなダメージを被り、最大限度に効果が発揮された場合は最高ランクの戦闘続行スキルによるカバーすら無効にする。
また神性など霊格の高さを保障するスキルや、超高ランクの頑健や信仰の加護といった肉体の絶対性を保障するスキルによってもダメージが削減される。
反対に自己改造や破壊工作といった自らの霊格を落とすスキルを持つ者に対してはより強力なダメージを与える。
相手を内部から発火させるという性質上単純な盾や鎧といった装具による護りを透過し、前述の千里眼による高い動体視力からくる見切りがあるため回避手段も実質的に存在しない。
ただし肉体そのものに強固な防御概念を帯びている相手にはやはりこの宝具は無効化される。
【weapon】
ライジングタイタンソード、ライジングドラゴンロッド、ライジングペガサスボウガン
凄まじき戦士の各種専用武器。
アークル
クウガの変身ベルト。頭部、心臓に続く第三の霊核でもありクウガは実質的に急所が通常のサーヴァントより一箇所多い。
【人物背景】
凄まじき戦士を呼び出すための触媒として利用されたクウガの資格者。
その正体は古代においてグロンギを封印した戦士かもしれないし、現代に復活したクウガたる冒険家の青年かもしれない。
しかしいずれにせよ凄まじき戦士として召喚された時点で人間としての人格は塗り潰されているため、その人間性は聖杯戦争に何ら関与することはないだろう。
【サーヴァントとしての願い】
全ての敵を討ち滅ぼす。
【戦術・方針・運用法】
純粋に高いステータス、優れた探知能力等サーヴァントに求められる多くの性能を高水準で備えている。
特にアサシンに対しては絶大な相性の良さを誇り、敗北する可能性はほぼ存在しないとすらいえるほど。
しかし宝具である「究極の闇」は相手との相性が全てといっても過言ではないほどのピーキーな性能であり、通じない相手には自前の戦闘力のみで対処する他ない。
このためバーサーカーは純粋に強力で格の高い正当英雄に対して些か弱く、対魔力を持たないことから魔術を扱う高位のキャスターの攻撃に対しても脆い。
また怪物の属性を得てしまっているため、怪物殺しの逸話を持つ英雄と相対した場合には不利な補正がつくだろう。怪物とは英雄に倒されるものである。
サーヴァントとしては間違いなく強力であるが、何も考えずに運用して勝てるほどではない。相手との相性をよく見極め、適切な戦場に投入するべし。
【マスター】
ケイネス・エルメロイ・アーチボルト@Fate/Zero
【マスターとしての願い】
聖杯の力で自分とソラウを蘇生し、全てやり直す
【weapon】
月霊髄液(ヴォールメン・ハイドラグラム)
ケイネスが趣味で作った礼装であり、魔力を込めた水銀。流体操作により刃にも盾になる。盾には攻撃を感知して自動変形することも出来るが、圧力が不足すると破られることも。また脈拍や体温などの生体反応を感知することもできる。
【能力・技能】
魔術師の総本山である時計塔で若くして講師を務めるほどの優秀な魔術師。
属性は風と水で、流体操作、降霊が得意。戦闘は専門ではないが基礎的な治癒や気流操作による気配隠匿など、一通りの魔術の行使は可能。後述する礼装での戦闘が最も強力。
【人物背景】
魔術の名門アーチボルト家の九代目当主。天才の誉れも高くロード・エルメロイの二つ名で知られ、若年ながら時計塔での一級講師の地位についている。
第四次聖杯戦争に参加したが工房を爆破され、魔術師殺しに再起不能の重傷を負わされ、婚約者諸共殺されるなど悲惨な結末に終わった。
なお魔術回路を破壊された肉体は現在は元通りになっている。
【方針】
バーサーカーと月霊髄液のみを過信せず、可能な限り工房や魔術礼装を準備、強化する。
また極力慢心の類は捨ててかかる。
以上で投下を終了します
>河嶋桃&エクストラクラス
キャシャーンとは懐かしいですね。
桃の生きたいという真摯な望みと、それに応えるデスのシーンが好きです。
実質マスター狙い以外では倒しようがないサーヴァントですが、しかし主従関係が課題となりそうですね。
>詩島剛&キャスター
四肢を淡々と砕いていく杖兄貴がえぐいですね。
魔術師の悲願をそこまで大事なことなのかと切り捨てるマッハが爽快でした。
主従仲も良さそうで、対聖杯として活躍してくれそうです。
>ダンテ&セイバー
マスターダンテという、この説明不要な強力さ。
モードレッドを速攻でキレさせている辺り相変わらずですね。
何と言っても鯖と張り合える力を持ったダンテの存在が強力でしょう。
>衛宮切嗣&アーチャー
うおお、これは恐ろしい主従ですね。
アーチャーの火力もさることながら、そのマスターが切嗣というのがまた恐ろしい。
卸し難いのが欠点とのことなので、切嗣がどこまでうまく扱えるかが重要になってきそうです。
>高遠遙一&セイバー
少年期高遠とセイバー・ウイングマンですね。
この頃の高遠は犯罪とは無縁なこともあって、本編高遠とはまた別の魅力を感じます。
個人的にはマジックのくだりの会話が好きです。
>牧瀬紅莉栖&キャスター
消えることのために戦う紅莉栖が切ない。
仁藤は紅莉栖を救えないことを理解しながら、岡部にそれを託すというのがいいなあ。
個人的に、非常に応援したい主従でした。
>ネメシス&バーサーカー
おおう、これまた過激な正義を振りかざす主従。
犬溶接マンの宝具はなかなか奇抜ですが、しかし効果は強力ですね。
本編が始まれば、その正義をどこまで暴走させてくれるか楽しみです。
>ケイネス&バーサーカー
冷静さを取り戻して慢心を捨てたケイネス先生はやはり優秀。
鯖の凄まじき戦士の力も、一言強力に尽きるものですね。
宝具は相性に左右されるものですが、逆に相性さえ良ければ完封できてしまいそうです。
投下します。
町外れ、人の寄り付かない廃屋ばかりが立ち並ぶ異様な団地街。
その昔、町から都会への移住が進む中で住人数が激減。
瞬く間にゴーストタウンの様相を呈したというそこに寄り付く者は、肝試し目的の若者でさえそうはいない。
いつか取り壊される日が来るのか。きっと、あと十年間はそんな日は来ないだろう。
何故ならこの町は、毒にも薬にもならないオブジェクトの除去に金をばら撒けるほど裕福な財政状況にはないからだ。
所詮は都会の真似事をしているだけで、実情は着実と滅びへの道を歩み続けている。
それに気付いているのは、あくまでもお上の一部の人間たちのみ。
「やれやれ、聖杯さんもドロドロしたリアルを追求するのが好きなことで」
そういう設定だ。
あるいはその「設定」は、彼女のために用意されたものなのかもしれない。
廃団地街の一角にぽつりと存在する書庫ビルディング。
通称、幽霊屋敷。
鍵のかかっていない大きな鉄扉は現実離れしてすらおり、内部には持ち主を失った書籍と、それを納める本棚がずらりと、所狭しと並んでいる。
図書館。いや、違う。書籍の形で保存される、情報の倉庫だ。
ビルディングすべてが書籍で埋まっている。ある意味では見事だ。
逆に言えば、聖杯が設定した時代と世界観には不似合いな建造物でもある。
無論、プログラムされた通りにしか行動することの出来ない者たちは、そこに一縷の疑問すら抱かないだろうが。
「『立ち入ったものは死人に呪われる』。
『主のいなくなった屋敷をさまよう人形の霊が出る』。
『行ったら呪われ、狂った挙句に飛び降りて死んでしまう』。
……やれやれ。どっからどう尾鰭が付いたんだか、偉い剣呑な話になっちまって。
情報に踊らされるってのは滑稽だねえ。オジサンも改めないとなあ、たはは」
鉄扉を開き、埃臭い情報の倉庫へ足を踏み入れる。
人間の作った建造物であるにも関わらず、そこにはおよそ生活感と呼べるものが欠片もない。
「おーい、マスター。今帰ったぜ〜っと」
声はあまり反響しない。
書籍へと吸い込まれて。
声の反響が終わると。
しん、と静寂がビルディングに満ちる。
書棚に充ちた玄関ホールの先で、何かが動いた。
暗がりから歩み寄ってくる人影がある。
ホールの奥から、何者かが、姿を見せる。ひとり――いや、ひとつというべきか。
それは人間ではない。
人間ではなかった。
とても、よく似た姿をしているけれども。
「お帰りなさいませ、サーヴァント・ランサー様」
薄皮の一枚下は鋼鉄の機械だ。
芸術品。
そんな言葉が脳裏に浮かぶ。
唇が動くと声が届いた。
人間のものと一切変わりがないような声は、魔術の賜物にすら匹敵する……ともすれば凌駕するほどの出来だ。
人間の体には不自然な球体関節さえ優雅に映えて見えるのだから、芸術に造趣の深くない者にも理解がし易い。
まるで人間のようだ。
しかし、やはり人間ではない。
繊細な彫り込みの瞳も、よくよく見れば硝子製であるとわかる。
埃さえ積もった書庫の城。こんな場所に、こんなに見事な少女の機械細工。
不自然だ。持ち主の消えた無人の書庫、幽霊屋敷には不自然な存在だ。
「お勤めご苦労様です。ワタシには検索機能があります。お探しの情報を仰って下さい」
「……お探しの情報ねえ。ま、とりあえず中に入れてくれよ。オジサン、外回りで結構疲れてんでね」
「了解しました。ランサー様。こちらへどうぞ」
どこか無機質な声。
彼女の口にする内容はちぐはぐだ。
少なくとも、聖杯戦争のマスターの言動とはかけ離れている。
先導する彼女へ気怠げな様子で付いて行きつつ、ふと思い出したようにランサーのサーヴァントは切り出した。
「そういや、今更だけどさ。マスター、名前は? 聞いてなかったよねぇオジサン」
「私に型式番号は付属していません。私はオーダーメイドです。
私の通称をお付けになる前に。クライン様がお亡くなりになりました」
「……あぁ、そう」
クライン様。
前に苦心して引き出したところによれば、彼女の主であったという人物。
だが逆に言えば、ランサーは彼女のことを何も知らない。
コーヒーを淹れるのが得意だとか、そういった当たり障りのない話のみだ。
その他の内容はやれ幻想生物がどうだとか、異形都市だとか、情報の検索だとか。
ランサーには門外漢も甚だしい分野になっていくもので、早々に匙を投げた次第である。
案内された先。世辞にも綺麗とはいえない有様の部屋に設置された椅子に腰掛け、深い溜息をつく。
ここは居心地が悪い場所だ。他者の侵入を拒むような、閉ざされ、ある意味では完結した世界。
「自動人形ねえ」
彼女はかつて、ランサーへ自らをそう名乗った。
「オジサンには、そうは見えないんだが」
人形だと言ったのは誰だったか?
人間ではないと言ったのは、誰だった?
「なあマスターよ。アンタは一体誰なんだい?」
「――私は――」
「ああ、いや、いいって。ただの独り言さ。年を取ると気苦労が耐えなくてねぇ」
口をついて出た疑問は、ランサーが自らの主にずっと感じているもの。
自動人形を名乗りながら、その実、自分自身のことは何も語っていないような。
そんなものを、彼女からは感じるのだ。
「いやあ、若い子ってのは難しいねえ」
くたびれた微笑を浮かべて、ひび割れたソファに体重を預けた。
分からないことも、腑に落ちないことも山ほどある。
しかし聖杯戦争に呼ばれ、マスターを得たならばその責任くらいは果たそう。
彼女が聖杯を望んでいるのか、それとも望んでいないのか。
それは分からない。今のランサーには、知るすべもない。
彼女がそれを語るまでは、とにかく生かすことに腐心しよう。
もしも望みがあるというなら聖杯を狙う。そうでないなら、やはり生かして返す方にシフトする。
面倒だが、呼ばれたからにはそれなりに汗水を流すとしよう。
トロイア戦争の大英雄ヘクトールは、いつも通りにやる気のないまま、ひっそりと本気を出していく。
◇ ◇
――クライン夫妻について。
ワタシを製造した第1級市民の夫妻である。
本来、彼らは下層第1層の、すなわち富裕層の市民であった。
しかし。ワタシの製造を境に、彼らは私有財産の殆どを売却している。
その売却額は、記録されているワタシの製造費用と同一。
この数字の一致についてはワタシは詳細な情報を持たない。
「……情報を、持たない」
そう。
「……ワタシは、何も知らない」
……知らない。
【クラス】
ランサー
【真名】
ヘクトール@Fate/Grand Order
【ステータス】
筋力B 耐久B 敏捷A 魔力B 幸運B 宝具B
【属性】
秩序・中庸
【クラススキル】
対魔力:B
魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。
大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。
騎乗:B
騎乗の才能。大抵の乗り物なら人並み以上に乗りこなせるが、
魔獣・聖獣ランクの獣は乗りこなせない。
【保有スキル】
軍略:C
一対一の戦闘ではなく、多人数を動員した戦場における戦術的直感力。
自らの対軍宝具の行使や、逆に相手の対軍宝具に対処する場合に有利な補正が与えられる。
友誼の証明:C
詳細不明。
ゲーム中では、敵単体へ中確率でスタン効果を付与+チャージを中確率で減少させる効果として描かれている。
仕切り直し:B
窮地から離脱する能力。
不利な状況から脱出する方法を瞬時に思い付くことができる。
加えて逃走に専念する場合、相手の追跡判定にペナルティを与える。
【宝具】
『不毀の極槍(ドゥリンダナ)』
ランク:A 種別:対軍宝具
世界のあらゆる物を貫くと讃えられる槍。後に槍としての機能は失われ、ローランの使う絶世剣デュランダルとなる。
ヘクトールは剣の柄を伸ばして槍として投擲することを好んだため、槍の形状をとっている。
実際、穂先にあたる部分の形状は明らかに剣である。
真名開放の際は、投擲の構えに入ると同時に籠手を着けた右腕から噴射炎のようなものが発生し、そこから擲たれて着弾する。
【人物背景】
『兜輝くヘクトール』と讃えられたトロイアの王子であり、トロイア戦争においてトロイア防衛の総大将を務めた大英雄であり、軍略・武勇・政治の全てに秀でた将軍。
英雄然とした来歴に反してやる気のない言動が散見され真剣味がないと思われがちだが、実際はいつでも本気。
これは、政治家としての側面が本気であることを隠させているためである。宝具である自分の愛槍の名前もろくに覚えておらず、本人としては武器は投げて殺せればなんでもいいと思っている節があり、かなりのリアリスト。
【サーヴァントとしての願い】
特に無し
【マスター】
ルアハ@赫炎のインガノック-what a beautiful people-
【マスターとしての願い】
――――――。
【Weapon】
なし
【方針】
1級市民の資産家、アーサー・クラインの娘。本名をR・ルアハ・クライン。
5年ほど前に重度の変異病のため、肉体のほとんどを機関化した。
その際、クライン夫妻は私有財産のほとんどを彼女の機関化手術に充てる。正式情報においては死亡扱いとなったルアハは、情報の抜け殻のごとき書庫ビルディングで自動人形としてひっそりと過ごすことになる。
投下終了です。
近々wikiを作ろうと思います。
皆様、投下お疲れ様です
投下します
僕? 松野家四男 松野一松
今一抹の不安を感じたでしょ?
それ間違ってないから
しかも六つ子
こんな顔が六つもあって いいの?
あ また会った
知らないふりですか
だよね 僕みたいなゴミは覚えてないか
多分これで六度目だよ
兄弟みんなについてきただけ
僕がみんなで 僕たちが僕
そう 僕ら六つ子
君たちも六つ子…? フフッ…
◇ ◇ ◇
「…これでよしっ、と」
「どっか行くのか?チョロ松」
松野家の居間で、六つ子の三男・チョロ松が外出の用意を整えてリュックを背負い立ち上がったのを疑問に思い、長男のおそ松が問う。
「最近アイドルがデビューして、その子が結構かわいくってさ。今からライブ観に行く」
どうやら中にはそのアイドルに合わせたペンライト等のアイドルオタク御用達の道具が入っているらしい。
よく見てみると、他の兄弟も外出のための服装に身を固めていた。
「カラ松は?」
「…俺か?フッ、俺はこれから暁の水平線へ愛を叫び――」
「トッティは?」
おそ松はカラ松をスルーし、言い終わる前に兄弟の中でもオシャレな服装に身を固めている末男のトド松へ視線が移る。
「用事」
「…何の?」
「やだなぁおそ松兄さん、ただの用事だって」
トド松は愛想笑いを浮かべるが何のために出かけるのかは答えない。
服装からして、また女の子と外出してくるのだろう。
「十四松は?」
「川でスキューバベースボールッ!!」
五男の十四松はいつもどおりだ。
「一松は?」
「……」
「一松ー?」
おそ松が目を向けた先には、四男の一松が一匹の猫と向き合ってうずくまっていた。
松野家のおそ松兄弟は、一卵性の六つ子である。
それゆえに全員が同じ顔で子供の頃は誰にも見分けが付かなかったが、二十代前半の無職に成長して各々がそれなりに見分けがつくようになっている。
一松はいつも目が座っており、髪を手入れしていないからかボサボサだ。背は猫のように曲がっており、兄弟の中では一際卑屈な印象がある。
おそ松の呼びかけに、一松は一拍子おいて、返事をした。
「俺は…コイツとじっとしてる」
「ニャア〜」
「そっか、んじゃ俺も散歩行ってくるから、留守番よろしくー」
「……」
おそ松の言葉を皮切りに、一松以外の兄弟は皆出ていく。
そして居間にいるのは一松一人と猫一匹だけになった。
「――くはぁ〜〜っ。やっとごろごろできるぅー」
否、一松と猫の他にもう一人、松野家の居間にいた。
居間のど真ん中で霊体化を解いて床の上でローラーのようにごろごろと寝転がって動いている少女だ。
明るい茶髪のロングヘアーで、赤のアンダーリム眼鏡をかけている。
少女は一松の後ろに来ると移動をやめ、溶けた氷のように仰向けになって呆ける。
これでも一応一松のサーヴァントなのだが、まるでやる気がなさそうに見える。
シップのサーヴァントとなって一松の元に召喚されたサーヴァントの真名は、『望月』。
睦月型の十一番艦が人の姿を借りて現界したサーヴァントだ。
「……」
「……」
「ニャー」
「……」
「……」
「ニャアアー」
一松は猫じゃらしを片手に猫と遊んでいる。
猫は一松の持つ猫じゃらしに夢中で、時折前足で猫じゃらしを取ろうと前に突きだすも前足は虚しく空を切った。
その様子を、一松は眉一つ動かさずに見つめている。
「ねえ一松〜」
寝ころんでいた望月がむくりと上体を起こし、一松の背中に話しかけた。
「……」
「あたしさー、もう兄弟にあたしのことバラしちゃってもいいと思うんだ」
「……」
「そりゃ聖杯戦争なんだし、NPCにバラすのは流石にマズいと思うよ?」
「……」
「でも、一松の兄弟の前でいちいち霊体化するのってすげぇ面倒なんだよね。床でゴロゴロしてぼーっとすることもできねぇし」
「……」
「だからさ、いっそのこと皆に言っちゃおうよ。その方があたしも楽だし」
「……」
「もしもーし。聞こえてるー?」
望月の申し出に対し、一松は全くの無反応だった。
ただこの部屋にいるのは自分と猫しかいないと錯覚しているように、曲がった背だけが望月の目に映る。
「ねぇいーちーまーつー。聞いてるんだけど」
流石の望月も少し頭に来たようで、一松の肩をトントンと叩きながら返答を迫る。
「――から」
「んー?」
一松が望月の方へ振り向いて口を開いた。
その顔はどこか鬱陶しそうで、あまり自分に話しかけないでくれと暗に訴えているようだった。
「他の兄弟に女がいるって知られたら、もっとマズいから」
「女ってあたしのことだよね?なんで?」
「…どんなことされるか分かったもんじゃないし」
かつてトッティことトド松が自分を嘘で塗り固めた上に兄弟を出し抜いてスタバァの店員と合コンへ行こうとして、とんでもなくキツイ制裁を受けたことがある。
松野家の六つ子の中で一人だけ彼女を作って抜け駆けしようものなら他の兄弟からちょっかい以上のことをされて大抵は碌な目に合わない。
いきなり一松が望月を兄弟に紹介して『この子、うちで飼うことにしたから』なんていえばどんなことになるか想像に難くない。
「…それに、シップみたいな子供連れ込んでるなんて知れたら、どんな目で見られるか」
「あたしが子供ぉ?こんななりでも一松よりかは相当年上だよー。何せ生まれたの戦時中だし」
「いや、あいつらお前がサーヴァントだってわからないから」
また、望月はサーヴァントとはいえ現代の小学生と全く変わらない幼い体格をしており、そんなことが兄弟に知られれば自分の立場が相当危うい。
そもそも聖杯戦争において、NPCにサーヴァントの存在を明かすなど聖杯戦争以前の問題なのだが。
「聖杯戦争っていうけどさー。こうやって家に閉じこもって平和だと実感わかないよね」
一松はこの世界で記憶を取り戻してからはこうして家に閉じこもり、まさに引きこもりの状態だ。
望月が傍にいるものの、今もこうしてだらけ切った毎日を二人して過ごすばかりで、戦争とはかけ離れたニート生活を送っている。
聖杯戦争のマスターであることを自覚してもそこまで取り乱すことはなく、なんとなく日々を過ごしているだけだった。
「……」
「一松がこの家に閉じこもったままってんならそれでいいよ、あたしもせっかく第二の生を得たんだからのんびり過ごしたいし」
「……」
「まあでも一松が戦えってんなら守ったげる。一応サーヴァントだから」
「……」
「とりあえず今は、動くとしんどいから。ぼーっとしてよ?いいって、平気平気、なんとかなるって」
そう言って望月は再び横になり、寝息を立て始めた。
「聖杯戦争…」
一松は虚空を仰いで自身が参加している戦争の名前を口にする。
いつしか猫じゃらしを傍に置き、猫と遊んでいることを忘れていた。
「僕には関係ないね」
聖杯に興味はない。戦争をするならよそでやってほしいというのが、松野一松の思うところだ。
しかし一松は、聖杯なんていらないからここを脱出するだとか、聖杯を破壊するために動くみたいな仰々しい方針は掲げていない。
つまるところ、一松は単に「やる気」がないのだ。戦う気どころか動く気すらないのだ。
それはある種の現実逃避ともいえる。
「僕みたいなゴミが死んで悲しむ人なんているのかな」
自虐的な薄笑いを浮かべて、一松も横になる。
取り戻した記憶の中には、マスター以外の人間は再現されたNPCであるという記憶も、もちろん入っていた。
おそ松、チョロ松、十四松、トド松。
いつも自分の傍にいる兄弟がNPC――つまり偽物であることを想うと、一松は少し寂しくなった。
◇ ◇ ◇
ん? …ぁあ、睦月型十一番艦望月でーす
いろいろと忙しかったよー
何が忙しいかは言うのめんどくせぇー
姉妹はなんと12人
月関係の名前が12個なんて ややこしいよねぇ
おぉー また会ったねぇ
え 違うの?
なーんだ 服が似てるだけの兄弟かよ
実はこのやりとり12回目なんだよねー マジだりぃー
まぁいっか〜 あたし達姉妹も12人だし
あたしがあいつであたし達があたし
へー アンタ達も12人いるんだ やるじゃん
【クラス】
シップ
【真名】
望月@艦隊これくしょん
【パラメータ】
筋力E 耐久E 敏捷D 魔力E 幸運E 宝具E
【属性】
秩序・中庸
【クラス別スキル】
砲撃:E
軍艦としての砲撃性能。持ち前の艤装で砲撃をすることができるが、燃費はいい反面その火力は低い。
索敵:E
軍艦としての索敵性能。判定に成功すると命中回避を上げることができる。
【保有スキル】
艦娘(駆逐艦):D
実在の艦船が擬人化されて現界した英霊であることを示すスキル。
水上での戦闘を得意とし、水上の戦闘ではパラメータが上昇する。
また、駆逐艦は素早く小回りが利き、敵が知らぬうちに肉薄して攻撃を仕掛ける夜戦を得意としたため、
夜間の戦闘においては、Dランク相当の気配遮断スキルを得る他、攻撃の命中率が増加する。
ただし、シップの属する睦月型は旧型の駆逐艦であったため、パラメータは他のシップクラスに該当する英霊と比べると格段に低くなっている。
自己修復:A
魔力や戦闘で受けた傷を回復する能力。
シップは軍艦として、燃料や鋼材といった資材を摂取することで補給及び修理をすることができる。
シップは何度も修理を繰り返しながら輸送任務に従事したという逸話があるため、比較的少ない資材ですぐに傷を癒せる。
輸送:A
トランスポート能力。
物を目的地まで運ぶ、あるいは人と目的地まで同行する場合、
情報量に応じて敵の能力や行動パターンを予測し、目的地までの安全なルートを選ぶことができる。
対空弱点:B
シップの属していた睦月型は航空攻撃に対して非常に脆弱であり、
戦闘時空中からの攻撃に対し、命中と回避にマイナス補正がかかる。
【宝具】
『61cm三連装魚雷』
ランク:E 種別:対艦宝具 レンジ:1〜20 最大捕捉:1〜3人
陳腐化した53cm魚雷の後継として開発された大型の61cm魚雷。
駆逐艦の主力兵装として睦月型に搭載されていたという逸話から、シップの宝具となった。
かの酸素魚雷ほどの火力はないが、それでも優秀な性能を持つ魚雷である。
火力の乏しいシップにとって、唯一敵に決定打を与えうる宝具。
魚雷はマスターの魔力を変換して補充できるが、燃費はかなり良好。
【weapon】
・61cm三連装魚雷を含む艤装
【人物背景】
睦月型駆逐艦11番艦。
史実でかなり忙しく働いていた反動か、いつも気怠そうにしている。
轟沈時の台詞が全艦娘中でもトップクラスのトラウマを生むレベルであることはそこそこ有名。
【サーヴァントとしての願い】
とりあえず一松に従うが、せっかく現界したんだからダラダラと過ごしたい
【マスター】
松野一松@おそ松さん
【マスターとしての願い】
特になし
【weapon】
特になし
【能力・技能】
特になし
【人物背景】
松野家の一卵性六つ子の四男。
マイペースな皮肉屋で、とにかくしれっと毒を吐くことが多い。徹底的に斜に構えた薄暗い雰囲気の人物。
その厭世的言動は、中二病を否定し尽くした末に辿り着くと言われる高二病そのもの。
【方針】
やる気なし
以上で投下終了です
望月のクラス『シップ』は『聖杯戦争異聞録 帝都幻想奇譚』の時雨を参考にさせていただきました
この場をもってお礼申し上げます
候補作を投下します。
『フラネット社、新たな万能機器を開発か──!?』
間明蔵人(まぎら-くらんど)。──この名前を覚えている者はいるだろうか?
20XX年頃、量産型『フォンブレイバー』(通称『ジーン』)を開発・生産したフラネット社を興した若き実業家である。
その爽やかで"イケメン"な容姿で、20XX年当時、自ら広告やコマーシャルなど数多くのメディアにも出演し、一躍、時の人となった。
だが、昨今、スマートフォンやi-phoneの普及に伴い、フォンブレイバーも使用者が激減。
現在ではフォンブレイバーも生産中止となり、間明氏のメディア露出も20ZZ年頃を境に次第に現象。
間明氏の現在の所在に関しては、フラネット社の社員に取材しても「私もわかりません」との返答が返って来るばかり。
ネット上では、「脱税が発覚して逮捕された」、「既に社長を退任して鎌倉で一人暮らししている」との噂が都市伝説的に飛び交い、謎の存在となっていた。
しかし、近年になって、フラネット社が『ジーン』に次ぐ、新たな機器の開発に尽力しているとの情報が入った。
この情報が明かされるに伴い、間明氏はブログを開設。
自身が健在であり、社長のポストに就き続けている事を明かした上で、フラネット社の近年の活動についても記述しながら更新している。
そして、間明氏は、先日、フラネット社が再び「アナタトツナガル新技術」を手に入れたとの発言をブログに投稿。
これは……またもフォンブレイバーのような先鋭的新技術が開発されるという事だろうか?
フラネット社が築く明日未来への期待が高まる。
(某ネットニュースより引用)
◆
誰も足を踏み入れないような、真夜中の社長室だった。
いや、元々、このフラネット社の社長室には、許可した者以外は立ち入りが許されておらず、数百名の社員の殆どは社長室の表戸すらも目にかかった事が無い。
この会社の社長──間明蔵人は、爽やかな容姿と正反対の変わり者であり、自宅を持たず、この社長室で暮らしている。
生活の為の道具は全て社長室にあるようだが、いつもソファで眠っており、食事も買いだめしたカップラーメンで済ませている。
金に飽かせてリッチなベッドや高級料理を嗜める立場にありながら、彼は全く興味を持たなかった。
この様子なので、30歳を過ぎても、結婚は、勿論していない。それどころか、浮いた話の一つもない為、同性愛者などと噂されているようである。
彼は、ほんの少し前まで、何においても渇いていた。
食事は実際の所、生命を繋ぐ為に食べているだけで、栄養価や味の良し悪しに関心は微塵も持たない。ブドウ糖を点滴し続ける事で生命を繋げるのならばそれで一向に構わない。
性的不能者というわけではないが、性交渉にも興味は持たなかったし、それ以前に、他者との密着や交流も、余程面白い人材でない限りは彼が興味を向ける事はなかった。
それに、かつては定職も持たなかった。ある組織のエージェントとして活動していたが、それを辞めてからは定職も定住もない浮浪者として過ごしていた程である。
今、社長の椅子を得てからも、彼はその時から大きく生活の質が上がったとは思わなかった。多少景色が変わり、目的に近づきやすくなったとは思っていたが、その程度だ。
下手をすれば、彼は、自分の生命という物にも、関心がないのかもしれない。
ただ、何か面白い事があるかもしれないから、とりあえずその日一日、適当な事で時間を潰して、待ち続けているだけなのかもしれない。
そんな彼が、唯一、興味を持てるのは、現代社会の「裏側」に根付いている「ネット」の世界だ。
現代の社会はネットワークに支えられている──彼の興味の底には、この前提が根を張っていた。
人間の持つ情報、財産、交流、生活が全てこのネットワークに支えられて久しい現代、それは最早、人間の生命すらも左右すると言っていいだろう。
インターネット。携帯電話。人工衛星。テレヴィジョン。航空機。車両。
これら全てが、数十億人の生命線を握っている。
これを全て破壊したいというのが、彼の願いだった。
これが壊れた時の世の中がどうなるのか、ずっと見てみたかったのだ。
ネットワークが世界を支えている以上、それを崩してしまえば世界そのものが音を立てて崩壊する。
ネットワークからリアルに感傷する「映像」を発して、人類を次々に抹殺する事も容易に可能であるし、かつての『ジーン』による計画もそれが目的だった。
そして、今は『ジーン』に代わる新たなネットワークプログラムを──いや、ネットワークが可能とした『魔術』を彼は手にした。
『聖杯戦争』
神話時代の産物と思しき言葉が、彼を少し前から潤している物の正体だ。
幾つかの『マスター』と『サーヴァント』のペアで、最後の一人まで勝ち残り、死した英霊たちの願いを吸い取った『聖杯』を得る。
そして、聖杯を顕現した者は、その聖杯によって自身の願いを叶える事が出来る。
最後の一騎まで殺し合うデスゲームと、その生存の果てにあるプライズ。
この信じ難いファンタジーが、この世界で彼を魅了するリアルだった。
間明の『サーヴァント』として、召喚されたのは──『キャスター』のクラスのサーヴァント。
だが、その姿は実体化を許されず……しかし、彼は常に間明の近くにいた。
「キャスター。いよいよ始まるようだね」
────間明は、照明すら灯さない薄暗い社長室で、唯一光っていたコンピュータの『ディスプレイ』へと声をかけた。
傍から見れば、まるで無機物と会話しているかのようだが、そこには確かに「意思」が存在していた。
そう、彼のサーヴァントは、「そこ」にいるのだ。
そこだけにしか存在せず、しかし、「そこ」を絶対不可侵の領域として在り続けた──それが、彼の召喚した『キャスター』。
だから、聖杯戦争が開始するまでの予選期間を、彼らは他の陣営に看破される事もなく、密やかに乗り切ったのであった。
「……ああ。──漸く、この『魔王カーンデジファー』の魔力に、再び人間共が平伏す時が来たか!」
魔王カーンデジファー。
それが、社長室のPCディスプレイに現れた奇怪な魔術師の名であった。
リアルの魔術師ではなく、彼はヴァーチャルの世界でこそ存在しうるサーヴァントであるらしい。
カーンデジファーを扱うには、間明自身の協力も必要だが、その相互関係が彼には実に面白かった。
間明が組んだプログラムに沿って、キャスターは初めて、世界に影響を及ぼす「怪獣」を作成できる。
つまり、魔術師が持つ『魔力』ではなく、間明が持つ『科学』によって、サーヴァントのスキルや宝具を発動するのである。
他のマスターが必死に魔力を供給し合う関係とは対照的な、科学による関係が間明とキャスターの間に結ばれる。
──ネットワークが根付いた現代故に許されるやり方。
神話の中で聖杯戦争を行う者たちは、こんなサーヴァントに巡り合い、そして、活用する事が出来るのだろうか?
「……ねえ、キャスター。聖杯戦争が始まったら、まずは、どう『遊ぼう』か。
人間の時を乱すか、通信手段をジャックして『ジーン』と同様のウイルスを流すか、世界戦争を起こすか……」
ディスプレイの灯りだけを頼りに、カップラーメンにお湯を注ぎながら、間明は嬉しそうに言う。
恐ろしい言葉であるが、実際のところ、間明が少し手を動かせば、簡単に人類を混乱の渦に叩きこめるのである。
それが「コンピュータ」だった。
500万年の人類史を一瞬で終わらせる「人類滅亡」と「世界戦争」。
──これはなかなか面白そうではないか、と間明は思っている。
たとえ自分が滅ぶとしても、その瞬間を、自分の数十年の人生の中で目の当りにしたいと、ずっと思い続けていた。
その為に聖杯という願望器を使うつもりはなかったが、やはり聖杯伝説という御伽話には興味もあったし、当面の目標は聖杯になるだろう。
とはいえ、やはり「世界戦争」というのはジョークだ。
そんな事を起こせば、聖杯戦争どころではない。
そして、「地球の支配」を行いたいキャスターとしても、そのやり方は些か反感のある方法のようだ。
「クランド。確かにお前の言っている事は面白い。
だが、ひとまずは、他のマスターの特定が優先ではないか?」
「わかってるよ。冗談さ」
間明は、軽い調子で言った。
非人のキャスターといえども、この男のペースには惑わされる。
それから、一度伸びをしてから、キャスターに語りかける。
「──聖杯戦争では、街中の監視カメラ、通信機器の通話・メールの記録、SNSや掲示板の書き込みを重点的に洗う。
キャスターはこの街の各エリアのコンピュータに、『忍者怪獣シノビラー』を分身させて派遣し、『聖杯』『サーヴァント』『マスター』という単語を抽出する。
もし、これらの言葉を使った者の中に、マスターらしき人間がいたら、それを報告するようにシノビラーに命じてくれ。別に殺害する必要はない。
後は、キャスターがやれば済む話だからね」
「……なるほど。完璧な作戦だ、クランド。
その方法が有効であれば、次々に他のマスターを洗い出し、個人攻撃を仕掛ける事が出来るな」
「ああ。みんな、生活の全てをネットワークに頼りすぎている。……それだけさ。
それに、世界トップのコンピュータだって、『ハイパーワールドの魔王』の英霊が攻撃してくるなんて想定していない。
マスターたちも同様さ。コンピュータを使わなくたって特定が出来る。
だから、君の力があれば、元々、世界中の情報を得て、世界を支配する事もそう難しくはないはずなんだ」
「その通りだ。かつては、その能力がありながら、別の奴に邪魔をされたが……」
キャスター──魔王カーンデジファーが地球に現れた時、彼の邪魔をする者も同時に彼を追ってやって来たのである。
その英霊の名は、『電光超人グリッドマン』。
彼さえいなければ、カーンデジファーの地球支配は、悲願ではなく、現実となっていた事だろう。
敗北の決定打となったのは、かつての相棒である武史の裏切りであったが、この間明は武史と比しても格段に邪悪な意思を持った人間であった。
故に、キャスターは彼が裏切らないという確信を持っていた。
カップラーメンを啜る間明は、無邪気な子供のようで、その実、頭も切れる。
「電光超人グリッドマン、か……。コンピューターワールドの守護神というわけだ」
「ああ」
「……まあ、そんな心配する事もないだろう。そいつがここに来ているというわけでもないし」
間明は、ラーメンを食べ終えると、お湯と箸が突っ込まれたままのカップをコンピュータの隣に置いた。
このコンピュータは、キャスターのホストコンピューターである為、特別な名前を付けているらしい。
『クリシス』と言うそうだ。
「クランド……それを零してこのコンピュータを傷つけるような真似はするなよ?」
「大丈夫。いまどきのコンピュータはそんなに柔じゃないよ」
間明はそう言うが、キャスターは画面上で、怪訝そうな瞳で間明を見続けていた。
「あ、そうだ。それより、僕も一体だけ怪獣を考案してみたんだ。
これも後で作成してくれよ。キャスターなら簡単だろう?」
と、間明は唐突にPCのCGモデルのファイルをキャスターに見せた。
密かに彼もオリジナル怪獣の3Dモデル作っていたらしい。
そこに映っているのは、「ラーメン怪獣 イッポンミチ」と名づけられた、カップラーメンをモチーフにしたの怪獣であった。
それを見て、キャスターは頭を悩ます。
「……これを作れというのか?」
怪獣を製作するセンスに関しては、やはり武史の方が上を行っているような気がするが……。
間明は、つまるところ──何かへの憎しみも持っていない。
それを原動力に動く事もない為、怪獣作成に関しては武史より「下」だという事だ。
「──デザインなんてどうでもいいじゃないか」
「ああ、だが──」
「問題は、この怪獣の仕事さ。……彼には、シノビラーとは別の仕事を頼むつもりだ」
今度はスマートフォンを手に取って、間明は慣れた手つきでそれを操作する。
スマートフォンから音楽が流れ、画面に出て来たのはアプリゲームのキャラクターである。
「見なよ。これは、架空の会社の名義で、僕が数日かけて作ったアプリゲーム『Grand Order(グランドオーダー)』だ」
「それがどうした?」
「──ユーザーは今の所、300万人。……早くも口コミで広がっているから、もっと増えるだろう。
僕のターゲットは、このアプリのプレイヤーだ」
個人が僅か数日で作ったアプリゲームで300万人を惹きつける──そんな事は通常不可能である。
しかし、それを可能とするのが、間明のIT技術だった。
勿論、架空の会社の名義になっているのは、製作者が間明蔵人とフラネット社である事を隠蔽する為の工作だろう。
簡単には特定できないように操作されているに違いない。
「このアプリには、一定の工程まで進んだ段階でサブリミナル効果が現れる動画が流れるようなプログラムが埋め込んである。
おそらく、間もなく誰かがそこまで進めて、『自殺』を始める頃からな?」
「……どういう事だ? クランド」
「映像と音とそれぞれ送られる2つのパルス信号の相乗効果で、脳機能を乗っ取って人間を洗脳する──そういうプログラムが動画の中に入っているのさ。
それに加えて、アプリゲーム自体が依存性を持つような効果もある。怪しいと思ってやめたくてもやめられないようになっているんだ。
もし、このままユーザーがゲームを続けて動画を再生したら、そいつは死への欲望が刺激されるようになり、手近な方法で自ら死を選ぶようになるだろう」
「──!!」
「つまり、アプリゲームユーザーの、連続同時多発自殺が起きる……。開発者の正体は不明だ。──どうかな?」
キャスターの趣向を超越する悪魔の発明に、彼も絶句する。
更に、間明は怪獣について続けた。
「……でも、当然、こんな物を流してもすぐに止められるし原因も特定される。
だから、このイッポンミチは、『Grand Order』のプログラムを保護する番人になってほしいんだ。
アプリに攻撃や侵入を仕掛けた情報端末を乗っ取り、それらが全て誤作動を起こし、情報が流出するように命じてほしい。
そして、掲示板やSNS上での『Grand Order』に関するマイナスの噂もイッポンミチが情報を吸収する事で消失させる。
ネットやメディアからは、『Grand Order』に悪い噂が流れないように制限するんだ。更に、吸収した情報は、そのままイッポンミチのエネルギーとなる。
誰でもこのゲームが怪しいと思うだろうけど、メディアからは情報が完全に断たれていく。聖杯戦争のついでだよ。
──これ、面白いと思わないかな?」
あまりの事に、キャスターは黙りこくった。
そして、それから先、彼が口を開いた時、間明の狂気を実感していた。
「クランド……。貴様も、現代の人間の魔王のようだな」
間明は、キャスターの言葉にニヤリと笑った。
【CLASS】
キャスター
【真名】
魔王カーンデジファー@電光超人グリッドマン
【パラメーター】
筋力D 耐久D 敏捷E 魔力EX 幸運D 宝具A+++
【属性】
混沌・悪
【クラススキル】
陣地作成:A+
魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。
ただし、カーンデジファーが陣地を形成できるのは『コンピューターワールド』の電脳世界内部に限られる。
これは高度なウイルス対策が行われない限り、コンピューターワールド内で雪達磨式に膨らんでいく。
現実世界(聖杯戦争が行われている電脳世界)に多大な影響を与える陣地が形成できるのは3日目からであろう。
怪獣作成:A+
道具作成の替わりにカーンデジファーが持つクラススキル。
コンピューターワールド内で暴れる怪獣を顕現し、怪獣の特性に合わせてコンピューターを乱す事が出来る。
これは過去に藤堂武史が製作した怪獣データを基盤としており、このプログラムを復元する形となっている。
また、過去と同じレベルの能力を引きだすには高度なプログラムを組めるマスターが必要であり、マスターが作成した怪獣データやイラスト・強化案を、カーンデジファーが魔力によってコンピューターワールドで作成するという工程を踏まなければならない。
【保有スキル】
電脳存在:A
現実世界以外の空間に君臨するスキル。
カーンデジファーの場合は、『ハイパーワールド』、『コンピューターワールド』の二つの世界に存在出来、データを介してあらゆるネットワークや記憶媒体に侵入できる。
逆に、現実世界に発現する事が出来ず、その為には膨大な魔力の貯蓄が必要となる。
現実影響:C
電脳世界内部から現実世界に影響を及ぼす為のスキル。
上記の『怪獣作成』のスキルを用いない限り、カーンデジファー自身が及ぼせる攻撃範囲は限られる。
現在可能なのは、コンピュータを介した上での威嚇程度の電撃攻撃であり、現実世界に及ぼす影響は極めて低い。
洗脳の魔力:C
『現実影響』のスキルと同時に持ち合わせるスキル。
キャスターが表示されているPCを見た人間を洗脳し、その人物が持つ能力の範囲で簡単な行動を命じる事が出来る。
これは魔力耐性を持つ相手や邪心のない相手には効かず、その適性も相手の邪心によって左右する。
唯一性:-
電脳存在のスキルを持つサーヴァントのみが持つスキル。
このスキルがある限り、サーヴァントはデータとしての「複製」及び「復元」が不可能。
キャスターの場合、ホストコンピューターや寄生媒体が破壊された場合、それだけでサーヴァントとして消滅してしまう。
【宝具】
『巨大魔王』
ランク:A+++ 種別:対人宝具 レンジ:70 最大補足:1〜数万
コンピューターワールド内部でカーンデジファー自身の身体を巨大化する能力。
現実世界に顕現する事を想定すれば、身長70メートル、体重6万トンほどまで巨大化する事が可能であり、戦闘能力も飛躍的に上昇する。
ただし、巨大化の時間は現在の魔力では10分間が限度。それを超過すると自動的に元のサイズに戻ってしまう為、行動は限られる。
宝具発動時は、魔王剣デジファーソードを使用する事が出来る他、魔力残量によっては、大規模にコンピューターワールドを乱す装置の作成や現実世界への出現も可能となる。
コンピューターワールド内に敵がいない場合、魔力残量がない限り、宝具の使用は控えられる。
『吸収型成長プログラム』
ランク:- 種別:対人宝具(自身) レンジ:- 最大捕捉:-
英霊になる前のカーンデジファーが使用しなかった宝具。
現実世界のマスターがプログラミングした武装データを吸収し、一時的にカーンデジファーの鎧として纏う事が出来る。
これには現実世界でカーンデジファーと共謀するマスターと一定の連携が必要であり、宝具作成においても、宝具使用においても、マスターの指示が必要となる。
彼を葬った英霊が扱った同質の宝具は、『アシストウェポン』と呼ばれていた。
【weapon】
なし
【人物背景】
『ハイパーワールド』から『コンピューターワールド』に逃亡した魔王。
邪心を持つオタク少年の藤堂武史と共謀して怪獣を作り出し、コンピューター内部から地球侵略を試みる。
生み出した怪獣は、基本的にはコンピューターワールドを破壊するが、その行為や特性によって現実世界に影響を及ぼしていく。
時には、カーンデジファーの魔力を回線に流しこむ事で、『人間の時間感覚が完全になくなる』、『コンピューターから放たれる電流が物質を操る』、『テレビを見た人間が暗示にかかる』、『タイムスリップを起こすプログラムに書き換えて武蔵坊弁慶を出現させる』などの不条理な被害まで起こす事が可能。
データ容量は自在に変化できるらしくフロッピーディスクに入って移動可能。ちなみに、こうしたメディアが無くても一応コンピュータ間を自由に移動できる。
尚、今作における『コンピューターワールド』とは、ネットワーク回線に限らず、家電などネットワークが通っていない物にも干渉する模様。
【サーヴァントとしての願い】
地球全土の征服。
【基本戦術、方針、運用法】
マスターである間明蔵人は、基本的にネットワーク技術に長けている為、魔力が無くともキャスターを充分に運用できる。
キャスターに出来るのは、ネットワークを介して人類の統率を乱す事であり、その気になれば魔力を用いずに世界戦争を起こす事でさえ可能である。
これにより愉快犯的にネットワーク社会を崩壊させるのが間明の興味となっている。
また、個人を狙う場合、他のマスターの所属組織を崩壊させたり、居住地の電化製品を全て麻痺させたり、電流で危険性のある物質を移動させたり、ネットによって洗脳したり、情報を攪乱したり……といった戦法も可能。
彼らの陣営は現在、現実世界と思っている場所そのものが聖杯に作られた電脳世界だと気づいていないが、それに気づきさえすれば、「現実世界に侵入出する」、「聖杯のシステムを麻痺させる」といった事をするにも効率的な方法が見つけられるだろう。
ただし、キャスター最大の弱点として、「唯一性」のスキルにより、ホストコンピューターやUSBメモリなどが破壊されるとサーヴァントが消失してしまうという物がある。
基本的には、間明も外出時にはキャスターをUSBメモリに移動させた上で、厳重に保管しておく事で対策を練るつもり。
現在は、他マスター及びサーヴァントを特定する為に、監視カメラやインターネットの映像を監視するのが目的で、それまで外出は避けた方が良いに違いない。
【マスター】
間明蔵人@ケータイ捜査官7
【マスターとしての願い】
魔王カーンデジファーを現実世界に顕現。
その後、全世界の抹殺を行い、崩壊する世界を見てみたい。
【weapon】
買いだめしたカップラーメン
PC『クリシス』
USBメモリ(キャスターのデータ置換用)
ノートPC(外出時のキャスターの憑代)
【能力・技能】
ネットワークに精通する技術力を持ち、フラネット社㈱の社長という立ち位置にある
意思を持つ自律移動式携帯電話『フォンブレイバー』についても詳細なデータを持っており、量産型フォンブレイバー『ジーン』を開発・生産した事もある
【人物背景】
自分を含む全人類の滅亡を企てている男。
かつては、サイバー犯罪を取り締まるための秘密機関『アンダーアンカー』のエージェントであり、フォンブレイバー・ファイブのバディ候補。
しかし、ファイブの破損時に脱退し、以後はサイバー犯罪者として定職を持たずに行動していた。
後に、量産型フォンブレイバー・ジーンの生産で成功し、フラネット社を興し、イケメン実業家として広告に出る。
だが、ジーンは人類抹殺の計画の為のシステムでもあり、最終回ではジーンによって多くの人間が犠牲になっていった。
間明はその直後から聖杯戦争に連れてこられたが、ジーンはただのフォンブレイバーとして普及し、既にスマホやi-phoneの登場によってブームが去った事になっている。
【方針】
ひとまずは他のマスターを、コンピューターワールドを通じて把握する為、街の監視カメラや携帯電話のデータなどについてシノビラーに偵察させる。
同時に、彼が製作したアプリゲーム『Grand Order』に埋め込まれた動画で利用者を自殺させ、怪獣『イッポンミチ』によって、ゲームの悪評を隠蔽する。
これは聖杯戦争と無関係な計画だが、ユーザー数から考えて、マスターへの影響が出る場合も考えうるだろう。
以上、投下終了です。
>松野一松&シップ
おそ松さんから一松と艦これからシップ・望月ですね。
一松の雰囲気が非常にアニメのそれをよく再現できていて面白かったです。
望月はステータスは貧弱の一言に尽きますが、果たしてどう活躍するか。
>間明蔵人&キャスター
ケータイ捜査官7とは懐かしいですね。
しかし考えていることが非常にえげつない。
サーヴァントの性能も相まって、かなり凶悪なことをしてくれそうです。
投下します。
すみません、ステータス表を作っていなかったのでもう少々お待ちを
夕焼けに染まる町を、一台のオートバイが悠々と走っている。
その見てくれ自体はごくなんてことのないものだが、見る者が見れば、あるいは感嘆の息を漏らしでもしたやもしれない。
彼のドライビングテクニックには、単に粋がっているだけの走り屋とは異なった独特のキレがあった。
華麗さではなく、鋭く速く、どこか荒々しいものを含んだ運転は文字通り疾走と呼ぶに相応しい。
そんな激しさとは裏腹に、機械の馬を駆る青年の瞳に浮かんでいるのはどこかセンチメンタルな感情の色。
独走の快感に浸るでもなく、ただ何か遠いものを見るような眼差しで、道行く人々の笑顔とその営みを見つめていた。
ここはいい町だ。少なくともシンジ・ウェーバーはそう思う。
無論のこと、ただこうして見回るだけでは町の本質など見極められはしない。
だがそれでも、少なくとも目につく範囲にいる人々の顔には翳りがない。
虐げられることへの劣等感も、弱者を踏みつけ上に立つことで得られるゲスな優越感も見当たらない。
当の彼らにしてみれば、今更疑問に思うこともない日常風景。
しかしそんな普通の光景が、シンジにとっては嫉妬してしまうほどに眩しく写った。
この世界は所詮作り物。どれだけ羨み妬んでも、それは絵の中の世界に悪感情を向けているのとまったく変わらない。
そう自分に言い聞かせても、納得させられるのは表面上だけだ。
心の奥ではやはり、何故俺達だけが、という思いがぐずぐずと燻っている。
シンジの生まれ育ったシティは、彼が物心ついた時から市民カースト制度が根付いた格差社会だった。
金銭面をはじめとし、あらゆる面で豊かさを約束されたトップスと、それとは対照的に冷遇をされ続けるコモンズ。
コモンズは劣悪な居住環境へ押し込められ、トップス居住区に近付いただけでも治安維持のセキュリティが飛んでくる。
今のシティに持たざるものの安息の地はない。
自分達の居住区に閉じ籠もっているだけでは食料も物品もろくに揃わないので、子供達が盗みを働いてくる有様だ。
生き地獄、そんな言葉がお似合いだ。
現状を打破するにはトップスとコモンズの双方が親しんでいる、とあるカードゲームの祭典……差別意識と制度の根付いたシティで唯一すべての市民が平等に扱われる、「フレンドシップカップ」で栄冠を勝ち取る以外の手段はない。
その栄冠はシティの頂点――すなわち、「キング」の座を意味する。
現キングを打ち倒してその座を奪い取ったその時、長かった雌伏の時は終わりを告げる。
コモンズの一斉蜂起から始まる革命がシティを覆い尽くし、散々虐げてくれたトップスの連中に土を舐めさせられる。
そう思っていた。だが、現実は無情だ。
シンジ・ウェーバーはキングの玉座の前にすら辿り着けぬ内に、その薄羽をもぎ取られた。
ぶちり、と。子供が昆虫の羽を千切るように、革命の道は絶たれてしまった。
(だが――俺はまだ終わらねえ。いや、終われねえ)
この世界に生きる「シンジ・ウェーバー」は、とある孤児院に雇われている用務員だった。
そこには親友がいて、馴染みの深い子供達がいた。……勿論、すべて偽物。NPCという舞台装置に過ぎないが。
記憶を取り戻したのは偶然だった。
子供達にデュエルの相手をせがまれ、自分のデュエルディスクに触れた時――自分のすべきことを思い出した。
聖杯戦争。英霊の座からサーヴァントなる存在を呼び出して使役し、生き残りの座を懸けて殺し合う儀式。
他の全てを犠牲にして最後の椅子に座った者には聖杯がもたらされる。聖杯はどんな願いでも叶えてくれるという。
聖杯さえ手に入れば、もはや奴らの土俵で相撲を取ってやる必要も消える。
優勝の栄誉に預かることもなしに、あれほど誓ってきた革命を成し遂げられるのだ。
町で盗みを働いて帰り、その成果を自慢気に披露する子供達。
トップスにカードをばら撒かれ、侮蔑と憐憫の目を向けられた記憶。
シティに楯突いた仲間が捕らえられたという報せを聞いた時のあの怒りも。
すべて過去のものになる。聖杯が引き起こす一斉蜂起の後には、コモンズの受けてきた理不尽は欠片だって残しはしない。
シティは変わる。変えてみせる。それだけの力が聖杯にはあり、それを勝ち取る覚悟がシンジにはある。
シンジが二輪を停車させたのは町を見下ろすことのできる丘の上だった。
日が落ちかけている町並みは夕焼けに美しく彩られている。
この景色を戦場に変えることにも、今の自分は微塵ほどの躊躇いを感じていない。
「待ってろよ、クロウ、みんな……俺が勝ったらもう二度とお前らに不憫な思いなんてさせるもんかよ。
必ずトップスの連中を引きずり下ろして、俺達コモンズが笑える世の中にしてやる……だから待っててくれ」
必ず俺は、聖杯を持ってシティに帰る。
どんなに腐りきっていようが、シンジにとっての故郷はシティだけだった。
あそこは本当にろくでもない場所だが、そんな泥の底のような環境を決死に生きている仲間達が待っている。
こんな場所では終われない。皆の願いを叶え、トップスに物を見せてやるまでは――二度と失敗はできない。
「……頼むぜバーサーカー。俺のデュエルはここじゃ通じねえ。お前の力だけが頼りなんだ」
「何も案ずることはない――我が肉体は不滅なり。共に圧政者を打ち砕こうぞ」
シンジの傍らに実体化したのは、蒼白い肌に数えきれないほどの疵を刻んだ巨漢だった。
誰の目からしても只者ではないと窺える存在感と気迫は、シンジをしても気を抜けば怯んでしまいそうになる。
彼こそが、シンジの召喚に応じたバーサーカーのサーヴァント。
真名をスパルタクス……奇しくも彼と同じく、理不尽な圧政に対して反旗を翻したことで英霊となった男である。
シンジには、この出会いは偶然だとは思えなかった。
理性なきバーサーカーとして召喚されてもなお消えることのない圧政者への敵愾心は天晴だ。
そしてその姿こそが、シンジに聖杯を手に入れるためならばどんな手段にでも訴える覚悟を決めさせてくれた。
「我々は皆平等。私はそれを理解できぬものを嫌悪する。君は理解できているらしい……感謝! ただ感謝!」
拍手喝采の勢いで吼えるバーサーカーに、頷きを返してシンジは再び町に目を落とした。
覚悟なら決まった。今の自分ならば、この平和な町を火の海にだってしてやれる。
全ては聖杯のために。奇跡でなければ成し遂げられない大革命のために。
――しかしシンジ・ウェーバーは重大な事実を見落としている。
バーサーカー・スパルタクスは決して従者ではない。
彼は常に、いかなる時も「圧政者」の敵であり続ける存在なのだ。
それを主人(マスター)として使役しているという矛盾。そして、シンジの革命の先にあるもの。
トップスにコモンズの味わってきた苦痛を味わってもらうこと。それは即ち、現状の逆転でしかない。
シンジはコモンズの平穏を願っているが、その実トップスの失脚を祈り続けている。
彼の願いが叶うとき。それは、彼がスパルタクスの最も忌む圧政者に成り果てる時でもあるのだ。
今はまだ、かの狂戦士は箍を外していない。
しかし、シンジがその思想の過ちに気付かない限りは――いつか必ず、スパルタクスは彼の敵になるだろう。
【クラス】
バーサーカー
【真名】
スパルタクス@Fate/Apocrypha
【ステータス】
筋力A 耐久EX 敏捷D 魔力E 幸運D 宝具C
【属性】
中立・中庸
【クラススキル】
狂化:EX
パラメータをランクアップさせるが、理性の大半を失われる。
狂化を受けてもスパルタクスは会話を行うことができるが、彼は"常に最も困難な選択をする"という思考で固定されており、実質的に彼との意思の疎通は不可能である。
【保有スキル】
被虐の誉れ:B
サーヴァントとしてのスパルタクスの肉体を魔術的な手法で治療する場合、それに要する魔力の消費量は通常の1/4で済む。
また、魔術の行使がなくとも一定時間経過するごとに傷は自動的に治癒されてゆく。
【宝具】
『疵獣の咆吼(クライング・ウォーモンガー)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:0 最大捕捉:1
常時発動型の宝具。
敵から負わされたダメージの一部を魔力に変換し、体内に蓄積して貯められた魔力はステータス強化と治癒能力の増幅などに転用され、傷つけられれば、傷つけられるほど強くなる。魔力への変換効率は彼の体力が減少するほどに上昇する。
首を裂かれようが、全身を切り刻まれようが、即座に再生するので決して戦闘を止めず、痛みも全く意に介していない。もし瀕死まで傷めつけられたならば、眼前のすべてを破壊して余りあるほどの膨大な魔力を溜め込むことだろう。
蓄積につれ巨大化し始め、傷ついた部分が腫瘍のように盛り上がるようになる。最大まで高まると完全に異形化、この状態となると三画の令呪を使用しても効果がなくなり、完全に制御不可能となる。
腕は八本に増え、内三本はまるで蛸足のように骨が無く、振るえば鞭のようにしなり岩盤を一撃で粉砕。
脚は自重が二本では最早支えきれないほどの重さとなっているので、昆虫のような副脚が大量に生え、重みを分散。
頭は首にめり込み、肩口からティラノサウルスの持つような上顎と下顎が突き出し、眼球も肩と首と腹部に存在し五つに増えている。また凄まじい量の魔力を帯びているため、ただの物理攻撃によって砕けた大地の破片ですらサーヴァントへの殺傷力を帯びるレベルで魔力に侵され、回避が非常に困難。
チャージ量最大で力を解放した場合、地形を変えるほどの威力を持った光の奔流によって戦場を薙ぎ払い、一撃で周囲一帯が更地と化した。
【人物背景】
トラキアの剣闘士であり叛逆者のスパルタクス。
相手の攻撃を全て受けきってから反撃するプロレスラーのような精神構造の男。虐げられる者たちのために戦い続けた紛れもない英雄だが、戦闘中もずっと微笑を絶やさないため、敵味方問わず不気味がられ、恐れられている。
聖杯を求める確かな動機はなく、ただ戦いの場に赴くことだけを悲願する。
被虐者を救済し、加虐者に反逆することだけを志すに彼にとって、戦場こそ弱き者と強き者しかいない場所であり、常に求めてやまない苦痛と試練に満ちあふれた場所なのである。
【サーヴァントとしての願い】
???
【マスター】
シンジ・ウェーバー@遊戯王ARC-V
【マスターとしての願い】
シティに革命を起こす
【Weapon】
カードデッキ『B・F』。
モンスターを実体化させ戦わせることが可能。ただし、サーヴァント相手に通じる程のものではない。
【能力・技能】
バイクを運転できる。D・ホイールではないが、その運転テクニックをそのまま利用することは可能だろう。
【人物背景】
虐げられる仲間を救うべく立ち上がった革命家。だが、その思想はいささか歪んでいる。
【方針】
聖杯狙い
投下終了です。
投下させていただきます。
――――さて、今日の聖杯戦争は、会場である電脳空間の上空から物語を始めよう。
夜の闇を、一条の光が切り裂きながら飛んでいた。
だが何も不審な点はない。
飛んでいたのは一機の飛行機である事が、上空から聞こえてくる飛行音から把握できた。
こんな夜中にフライトを行うのは旅客機か、それとも自衛隊の機体か何かだろうか。
市街地に住むNPCの住人達は疑う事なく皆そう思っていた。
空飛ぶ円盤やら光の巨人やらが飛んでいるならまだしも、何のことはない飛行機に不審な目を向ける者など
常識で考えている訳がないのだ。
だが、その認識は結果的に誤っていた。
誰が気づくものか。
まさかその見慣れた空を飛ぶ機械の塊が『魔力で構成された存在』だとは―――――
◇ ◇ ◇
「―――――まあ、ひとまずはこんな所か。どうだいマスター、俺達の戦場をフライトしたご感想は?」
『ご苦労だったアーチャー。これでこの聖杯戦争の舞台となるこの出来のいいジオラマの地形はほぼ把握
できた。これで今後の作戦は非常に立てやすくなる、礼を言おう』
市街地から遠く離れた距離に存在する一軒の打ち捨てられた廃工場。
その敷地内に先ほどの飛行機――――F-15イーグル戦闘機は誰にも気づかれる事なく着陸していた。
そこから聞こえてくるのは二人の人物の会話。
電子音声のようなエフェクトがかった感があるのが特徴的だったが、その内容から彼らが此度の聖杯戦争の
マスターとサーヴァントである事は把握できた。
「まっ、俺にかかればこの程度は朝飯前だぜ。俺のスキルのおかげでこの姿なら周りの連中はただの飛行機
が飛んでるとしか思わねえんだからな。隠れて動くには都合がいいぜ」
『だが過信は禁物だ。探知能力に優れたサーヴァントが存在した場合、君の擬態能力は一瞬にして無力化
される危険がある。一組程度ならその場で始末できればいいが、情報が拡散した場合我々は即座に目を
つけられかねない。私がこの姿である以上、今はまだ見つかる訳にはいかないのでね………』
苦々しい声と共に、戦闘機のハッチが開き中から一つの影が姿を現した。
だがその影は明らかに人間の形をしていなかった。
あえて言うならば、液晶画面の装備された大型のバックルを付けた『ベルト』そのものだった。
それがフワフワと浮遊しながら、地表近くへとゆっくり降りていったのだ。
彼の名は、蛮野天十郎。
かつて世界を自身の支配下に置こうと画策した悪魔の天才科学者である!!
「しかしあんたのその姿には驚いたが、まさか自分の魂をそんなベルトに入れて生きてるとはな。まるで
俺達のスパークやプロトフォームみたいなもんだぜ」
『私も科学者として実に興味深いよアーチャー。異世界の存在とはいえ君達のような意志を持つ機械生命体
とこうして出会えるとは、何かの巡り合わせかもしれないな。できれば時間がある時に君の事もゆっくり
研究させてもらえるといいんだが、あいにくそうも言ってはいられない。私以外の他のマスターとの差を
埋めるためにも、早急に私の体と成り得る【器】を用意しなければ……』
蛮野の元の肉体は、この聖杯戦争に参加する以前に既に存在していない。
今の彼はデータ化された人格をベルト―――バンノドライバーに移植した状態であり、その行動を著しく
制限されていた。
この姿のままでも移動などに関しては差し支えないのだが、本格的な戦闘を想定するとなると依代となる
存在が必要不可欠である。
彼の本領ともいえる金色の戦士『ゴルドドライブ』の力を再び復活させるためにも、情報と資材の調達は
今の彼の最重要事項であった。
「そいつに関しては俺もできるだけ協力させてもらうぜ。あんたが変身して戦えるってんなら俺も他の
サーヴァント共の相手に集中できて願ったり叶ったりだからな。ま、その間はこの俺が…………
トランスフォーム!!」
ギゴガゴゴ!!
特徴的な駆動音を唸らせながら、戦闘機はみるみるうちにその形状を変えていき、気が付いた時には
約10m近い大きさを持つ人型のロボットのような姿を現していた。
彼こそ、蛮野天十郎のサーヴァントであるアーチャー。
その真名は、デストロン軍団航空参謀・スタースクリームだ!!
「あんたの身を無事に守り通してやるから、大船に乗った気持ちでいてくれて構わないぜ?」
『頼もしい限りだ、期待させてもらうよアーチャー。早速だが夜が明け次第、君にはいくつかやってほしい
事がある。この会場にいる我々以外のマスターとサーヴァントの可能な限りの捜索と情報収集、そして
これは戦況次第にもなるが…………この戦争の審判役であるルーラーの所在地をマーキングしておいて
くれれば有り難い』
「ルーラーだと? 他の連中はわかるが、なんだって審判まで探す必要があるんだ? まさか奴を懐柔なり
暗殺でもしようってのか!? そりゃ無茶だぜ!」
蛮野の意外な指示にアーチャーは思わず聞き返した。
確かに魔力補充のための大量の魂喰いなり対軍・対城宝具を放つ際の被害によるペナルティの問題を考える
ならば、目の上のたんこぶともいえるルーラーはできれば始末してしまいたいのは理解できる。
だが全てにおいて公平な立場にあるルーラーを懐柔するのは事実上不可能である上、殺すにしても早々簡単
にはいかないのはアーチャーも理解していた。
だが、蛮野が放った答えはそのどちらでもなかった。
『それは私も十分理解している。だからこそ我々が取るべき戦法はルーラーの懐柔でも暗殺でもない。
【支配】だよ』
「支配、だと?」
『そうだ。もしもこの戦争の絶対的な裁定者であるルーラーを【我々の都合のいいように行動させられる】
としたら、果たしてどうなるかね?』
「……なるほどそいつはいい。そうなりゃ他の連中に好きなだけペナルティを押し付ける事もできるし、
例えこの空間を破壊しまくったとしても討伐令も出やしねえ。俺の持ってる宝具の事を考えればこれ
以上ない戦法だぜマスター。だが、どうやってルーラーを支配するってんだ? 何か策があるのか?」
『無論だ。君もある程度感じているだろうがこの空間は一種の疑似的な電脳空間に近いものだ。君達サーヴァント
こそ魔力で構成されてはいるが、根本的な部分は科学の側面が強い。これならばある程度の調整は必要
だろうが、私が以前作ったとあるプログラムを流し込めば、ルーラーに干渉する事も可能かもしれん。
仮に作戦が失敗した場合は……そうだなアーチャー、君の二つ目の宝具でルーラーを支配するという
手もあるな』
「お、おいおい勘弁してくれよ! あれはあくまでも俺の奥の手なんだ、早々切っていい札じゃねえぜ!」
『安心してくれ、冗談だ。さて、私も早速自分の作業に戻らねばならん。君は指示があるまで擬態するか
霊体化するかして待機していてくれ。この周辺にも他の参加者やNPCがいないとも限らんからな。
余計な人目に付く行動は避けたい』
「OK分かった。まあ幽霊染みた状態には慣れてるんでな。しばらく休ませてもらうとするぜ」
『よろしく頼む。君にはこれから頑張ってもらわなければならないからな。我々が聖杯を手に入れるため
にもね………』
その台詞を合図に、蛮野はアーチャーの操縦席から取り出しておいたタブレット端末を運びながら廃工場の
中へと消えていき、アーチャーもまた霊体化してその姿を敷地から消した。
後に残ったのは、何事もなかったかのように静まり返った空間だけであった。
彼らの目的は言うまでもなく、己の目的を果たすための聖杯の奪取である。
戦いを止めるために動くマスター達にとって、恐るべき敵の誕生かに思えた。
だが!!!
(あらゆる願いを叶える願望機たる聖杯……まさにこの偉大な私に最もふさわしい存在ではないか!!
………だというのに、私のサーヴァントがよりにもよってあのような無駄なデカブツ、しかも奴らと
同じ機械人形の分際で私と対等な口を聞こうなどとは、忌々しいにも程があるわッッ!! ……だが
まあ今は目を瞑っておいてやろう。今は奴がいなければこの戦いを勝ち抜く事もできん。いずれ適当な
懐柔できそうなサーヴァントが見つかるまでは、せいぜいこの私のために働いてもらうぞアーチャー……
ボロ雑巾のようになるまでなぁ! フハハハハハハハハハハハハハ!!)
(畜生ッ! 遂に蘇るチャンスが来たかと思えば、俺のマスターがあんな胡散臭い妙なベルト野郎とは
俺もヤキが回ったもんだぜ!! よくわからねえが正直あいつは妙に信用ならねえし、これじゃ本当に
聖杯とやらを手に入れられるかどうかも疑わしいぜ! ……まあ今の所はおとなしく言う事を聞いておいた
方が都合がいいからそうさせてもらうが、今に見てやがれ……。ここには邪魔なサイバトロンの連中も、
メガトロンの野郎もいねえ! 他の連中全てを出し抜いて、今度こそこのスタースクリーム様がデストロン
のニューリーダーとして君臨してみせるぜ!! 首を洗って待っていやがれサーヴァント共! ハハハハ
ハハハハハ!!)
マスターである蛮野天十郎と、そのサーヴァント・アーチャーことスタースクリーム。
あろうことか彼らは、お互いの事を全く信用していなかった!!
果たして、こんな調子で彼らは本当に聖杯を手に入れられるのだろうか!?
――――さあ、戦いだ!!!!
――――exciting Maxwell's equations!!――――
【クラス】
アーチャー
【真名】
スタースクリーム@戦え!超ロボット生命体トランスフォーマー
【ステータス】
筋力A 耐久B 敏捷B 魔力D 幸運B 宝具B
【属性】
混沌・悪
【クラススキル】
対魔力:D
一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。
魔力避けのアミュレット程度の対魔力。
単独行動:A
マスター不在でも行動できる。
ただし宝具の使用などの膨大な魔力を必要とする場合はマスターのバックアップが必要。
アーチャーは生前、軍団からはぐれようが追放されようが自力で状況を打開して再び舞い戻った
経験が多々ある事から保有している。
【保有スキル】
擬態:B
物品や乗り物などに自身の姿を変化させるアーチャーの種族としての能力。
アーチャーは自身の姿をF-15イーグル戦闘機へと変化させる事が可能。
擬態中は同ランクの『気配遮断』スキルと同等の効果を得られるが、変形を目撃されるなどした
場合、その相手にはその後一切スキルの効果が発動しなくなる。
反骨の相:EX
一つの主君を抱かず、自らが君主に成り代わらんとする気性。
アーチャーは生前、軍団の主に何度となく謀反を企てているが、その度に返り討ちに遭うものの決して
諦めようとはしなかった。
もはや呪いというか病気の類である。
カリスマや皇帝特権等、権力関係のスキルを完全無効化する。
科学知識:A
機械や薬学をはじめとする科学に関連する物事への知識。
アーチャーがかつて故郷で優秀な科学者として活動していた時期がある事から保有。
必要な資材さえあればある程度の道具を作成する事が可能であり、また科学に深い関わりがある
サーヴァントと対峙した場合、高い確率で真名を看破できる。
仕切り直し:C
戦闘から離脱する能力。
まともにやりあって敵わない相手と判断した場合、基本アーチャーは一時撤退を優先する。
攻撃を放棄して離脱に専念するなら各種判定にボーナスを得る。
【宝具】
『進撃の超機械生命体軍団(アタック・オブ・デストロン)』
ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:1〜50 最大補足:100人
かつてアーチャーが所属していた悪のロボット生命体軍団「デストロン」の軍勢を召喚する宝具。
召喚される軍団員はアーチャー所属当時の面々(主にG1〜2010と呼ばれる時代)で統一されており、
全員が独立サーヴァントとして現界するが、かつてのアーチャーの主であった軍団の長・破壊大帝
メガトロンのみアーチャーの意向もあり召喚されない。
また各々が強力な戦闘力を有してはいるものの、生前のアーチャーに全く人望がなかった事と、アーチャー
本人が『カリスマ』に該当するスキルを保有していない為、彼らは全く言う事を聞かず好き勝手に暴れ回る
だけなので注意が必要である。
『不死身の航空参謀(アンダイイング・スパーク)』
ランク:A+ 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:1人
突然変異によって生まれてしまったアーチャーの魂そのものが宝具となった物。
本来アーチャーの種族は魂たる機関『スパーク』を破壊されると絶命するのだが、彼の魂は死ぬ事なく
たびたび亡霊として戦乱の最中に姿を見せては復活を画策した逸話が多数ある。
アーチャーは例え肉体を失っても霊核のみで活動が可能であり、直接的な攻撃では如何なる手段でも
アーチャーの霊核を破壊する事は不可能である。
彼をこの聖杯戦争から退場させたい場合、魔力切れを狙うなり亜空間に追放するといった手段が有効である。
またアーチャーは亡霊として様々な同属に憑依し暗躍した逸話があるため(平行世界においては人間の少女
や天使の名を冠した異形の生命体にも憑依したと言われている)、霊核状態ではマスター・サーヴァント・
NPCなどあらゆる生命体に憑依し肉体を乗っ取る事が可能である。
ただし制限により、強靭な精神力を持つ相手の場合は憑依しても弾き出される場合がある。
【weapon】
・ナルビームガン
・ミサイルランチャー
アーチャーが両腕・胸部に装備している重火器。
ナルビームには電気を崩壊させ機械の動きを麻痺させてしまう効果があり、通常の機械以外にも身体に
電子機器を備えているサーヴァントに対しても効果を発揮する。
これらの武装はビークルモードに変形した状態でも使用可能である。
【人物背景】
地球から遠く離れた惑星「セイバートロン星」に住む超ロボット生命体トランスフォーマーの一人であり、
破壊大帝メガトロンが率いる悪の軍団「デストロン」の航空参謀を務める戦士。
元々は優秀な科学者であったが、戦争のスリル味わいたさにメガトロンの傘下に加わった経歴を持つ。
本質的には臆病な性格だが、キザで自惚れが強く狡賢い上に、自分が失敗したりピンチに陥ったりすると
その責任をすぐ仲間に押し付ける姑息な面があるため、軍団員からの人望はかなり薄い。
かなりの野心家でもあり、隙あらばメガトロンを蹴落として自身がニューリーダーに成り代わらんと毎回
策を巡らすがその度に失敗し「この愚か者めが!」とメガトロンから制裁を受けるのが日常茶飯事となって
いた。
後のユニクロン戦役と呼ばれる戦いにおいてメガトロンが死亡後は念願の新破壊大帝に就任するが、その
直後に星帝ユニクロンの力で蘇ったメガトロンが変化した破壊大帝ガルバトロンの手により遂に処刑されて
しまった。
しかし彼の魂は死ぬ事なく亡霊としてその後も暗躍を続け、数百年後の未来世界においてもデストロンの
実権を握ろうとその姿を見せた事がある(未来の戦士達にもその悪名は知れ渡っており「大ウソつきの
こんこんちき、宇宙一の裏切り者」「トランスフォーマーの面汚し」とも称された)。
また余談だが、平行世界において彼と同じ名を持つトランスフォーマーは理由や経緯の違いこそあれその
ほとんどが所属する軍団のリーダーに対して反逆行為を行った逸話があり、彼が相当に根深い因果を持って
いる事が伺える。
【サーヴァントとしての願い】
必ず蘇りメガトロン(ガルバトロン)を倒し、デストロンのニューリーダーとして君臨し宇宙を支配する。
【マスター】
蛮野天十郎@仮面ライダードライブ
【マスターとしての願い】
聖杯の力をもって蘇り、今度こそ自身の世界を完全に支配する。
【weapon】
・バンノドライバー
ドライブドライバーを解析して作り上げたベルトであり、データ化した蛮野自身の意識が宿っている。
ベルト単体でも浮遊して移動可能であり、寄生した肉体にイグニッションキーを捻らせる事でゴルド
ドライブへと変身する事が可能。
ただしこの聖杯戦争においては制限によりNPCの肉体を利用しての変身は原則不可能であり(出来たとし
ても通常より大幅に性能が落ちる)、本来の力を発揮するには何らかの方法で強い肉体を手に入れる必要が
ある(他のマスターやサーヴァント、何らかの資材で開発した依代など)。
・ゴルドドライブ
ドライバーの力により蛮野が変身した金色の仮面ライダー。
超進化体のロイミュードと同等の戦闘力を持ち、ベルトのイグニッションキーを捻る事で胸の干渉装置
「ゴルドコンバーション」から光を放ち、相手の武器を分解して自身が奪う事も可能(サーヴァントの
宝具は制限により強奪不可能である)。
【能力・技能】
元々が天才科学者であるため(人格はともかくとして)非常に優秀な頭脳の持ち主。
また本体がデータ体であるため電脳世界での情報収集能力もかなりの高さを持つ。
ドライバーの状態でも光の触手を伸ばして下級ロイミュード数体を一瞬で葬るほどの強さを持ち、ゴルド
ドライブへと変身した場合ある程度までならサーヴァントとも渡り合える性能を発揮できる。
【人物背景】
自己成長型アンドロイド・ロイミュードを開発した天才科学者。
親友であるクリム・スタインベルトから提供された動力源コア・ドライビアを用いてロイミュードを完成
させるが、試作機である001〜003に反乱を起こされ、殺害された。
だが彼の意識は人格プログラムとしてコンピューター内部に生きており、その後潜伏していたタブレットから
ロイミュード004の協力で開発したドライブドライバーのコピーに意識を映し、本来の目的を達成せんと
人類・ロイミュード双方に牙を剥いた。
その性格は傲慢で独善的で「自分の才能の価値を理解していないバカ共」と他人を平然と見下し、「この世
のすべては私のもの」とすら言い放つ極めて自己中心的な危険人物である。
実の家族にすら愛情といった感情を一切持っておらず、息子である詩島剛すら「研究材料」としか考えてい
ない。
ドライバーに意識を映した後はロイミュード006のボディーを奪い金色の仮面ライダー・ゴルドドライブへと
姿を変え、自身が開発したシグマサーキュラーの力をもって第2のグローバルフリーズを引き起こし、世界
規模の重加速で障害を無力化した上で全人類をデータ化してナンバリングする事ですべてを支配しようと
画策した。
だが最終的にはシグマサーキュラーは仮面ライダードライブ・ハートロイミュードの両者によって破壊され、
自身も息子の剛に敗北した後、彼が振り下ろしたシンゴウアックスの一撃によりドライバーを粉砕され、
今度こそ完全に消滅した。
【方針】
序盤は潜伏して各陣営の情報収集に徹し、隙を見てゴルドドライブへの変身の為の身体を手に入れる。
必要とあれば他のマスター達とも協力するが、利用価値がなくなった場合は始末する。
また準備が完了次第、ルーラーを支配して戦争そのものをコントロールする。
投下終了です。
投下します。
――豪華な調度品などが並ぶ広いオフィスに二人の男が黒いソファに座り商談にのぞんでいた。
「では契約内容はこれでよろしいでしょうか?」
中年の男は向かいの眼鏡を掛けた若い男に契約内容の確認をした。
「ええお願いします。私も良い取引ができて満足です。」
若い男は満足そうに笑顔を浮かべながら言葉を返し、中年の男もありがとうございますと笑顔で返答し
商談は無事まとまった。
仕事が終わり、広いオフィスに一人となったこの部屋の主である眼鏡を掛けた若い男は
安月給で働くサラリーマンが値段を聞けば卒倒する額のワインを当たり前のようにグラスに注ぎ
最高級の葉巻を取り出し火をつけた。
――武田観柳。実業家であり様々な業種を手掛ける敏腕経営者であり
この町へは経営規模の拡大をしに進出した、というのがこの男に与えられた『設定』だった。
「聖杯戦争ですか…、実に魅力的な話だがねぇ。」
新型阿片の蜘蛛之巣を使い、得た莫大な利益を武器の購入に当てクーデターを起こし
『観柳帝国』を目論んだ程である。富には貪欲だ。
だが武田観柳はこの聖杯戦争の設定の元になった通り一流の経営者である。
うまい話には裏がある…、聖杯は無論喉から手が出る程欲しいが
聖杯戦争に乗るという選択肢は無かった。
とにかく情報がいる、偵察に行ったアーチャーが戻るのを待つか、そう考えていると
武田観柳の傍に偵察から戻ったアーチャーが霊体化を解き現れた。
「マスター、今戻ったわよ。」
その姿はまるで童話の赤ずきんのように、手にバスケットを持ち赤い頭巾を被った北欧系の可愛らしい少女であった。
しかしその見た目と内面は全く違うという事を
このサーヴァントと初めて会った時から武田観柳は見抜いていた。
――自分と同じ貪欲に富を求める金の亡者だと…
情報を持ち帰ったアーチャーと今後の方針を話し合っていた。
「それでぇ、マスターはどうするのぉ?」
可愛らしく、それでいて値踏みするような目で問い掛けた。
武田観柳はそれに気を悪くする事なく現在の方針を話した。
「私はこれでも商人の端くれでしてね、この聖杯戦争には裏がある
馬鹿正直に乗ってしまうと必ず馬鹿を見ると考えています。」
「つまりタダの脱出狙い?報酬をきっちり支払ってくれるならどっちでもいいけど?」
アーチャーの興味無さげな返答に武田観柳はニヤっと笑った。
「いえいえとんでもない。私達の方針は聖杯、もしくはその力を主催者から奪う事です。」
武田観柳のとんでもない発言に、興味無さげだったアーチャーの目が途端にギラつきはじめた。
「…へぇ、とても面白い考えねぇ。」
「目の前の富を放り捨て逃げ去るなんてとんでもない。
主催者、もしくはルーラーなど関係者の居場所を突き止め
弱点を見つけて、その全てを手に入れるんです!…無論報酬ははずみますよ。」
熱がこもった発言にアーチャーはまるでピクニックに行くかのように答えた。
「ではそれで決定ねっ。私も以前救済だなんだと言って、魔次元に私を呼んだ馬鹿を知っているから
この聖杯戦争の落とし前を付けたいしっ♡」
アーチャーの返答に武田観柳は満足そうに言った。
「やはり貴女とはうまくやっていけそうだ…」
「私もよ、マスター…」
――類は友を呼ぶ、金の亡者による聖杯戦争が始まった。
【クラス】
アーチャー
【真名】
バレッタ@『ヴァンパイア』シリーズ
【ステータス】
筋力A+ 耐久D 敏捷A++ 魔力B 幸運B 宝具C
【属性】
混沌・悪
【クラススキル】
対魔力:C
第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。
大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない。
単独行動:A+
マスター不在でも行動できる能力。
【保有スキル】
ダークハンター:EX
魔界の生物に立ち向かえる「闇の心」を持ち彼らを刈り続ける存在、それがダークハンター。
バレッタはその中でも特S級の存在といわれている。
手にした武器にDランク相当の宝具としての属性を与え、駆使する。
また魔に属する者などの戦いで有利な補正が加えられる。
赤ずきん:B
可愛らしい赤ずきん。
正体がばれない限り同ランクの気配遮断を兼ねる。
破壊工作:A
戦闘を行う前、準備段階で相手の戦力をそぎ落とす才能。
トラップの達人。
ランクAならば、相手が進軍してくる前に六割近い兵力を戦闘不能に追いこむ事も可能。
ただし、このスキルが高ければ高いほど、英雄としての霊格は低下していく。
戦闘続行:A+
往生際が悪い。
瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。
無窮の戦闘技術:A
ひとつの時代で無双を誇るまでに到達した戦闘技術の手練。
心技体の完全な合一により、いかなる精神的制約の影響下にあっても十全の戦闘能力を発揮できる。
反骨の相:B
一つの場所に留まらず、また、一つの主君を抱かぬ気性。
自らは雇い主ではなく、また、儲け話を求める放浪の星である。
同ランクの「カリスマ」を無効化する。
金の亡者:A
人生において金銭をどれほど追い求め続けるかの宿命。
このスキルは同ランクの黄金律を兼ね、また金銭を消費して魔力に変換する事ができる。
このスキルの所持者は同系統のスキルを持つか、もしくは金に重きを置く相手と友好関係を気づく事ができる。
反対に金に価値を見出さない清貧こそ全てなどの相手には同ランクの精神汚染を兼ね意思疎通ができない。
【宝具】
『クールハンティング 』
ランク:C 種別:対軍宝具 レンジ:1〜100 最大補足:1〜100人
二名の猟師・兵士と共に銃を乱射する飛び道具の宝具。
『ビューティフルメモリー』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:1〜10 最大補足:1人
「おばあちゃ〜ん」と叫びながらナイフを持って突撃。
おばあちゃんとの思い出に浸りながら本性を表し、相手を袋叩きにする。
その姿は見る者に恐怖を与える。
『アップルフォーユー 』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1人
相手にリンゴ型時限爆弾を渡し、相手がきょとんとしている間に爆発させる。
この宝具は警戒している相手や戦闘中の相手などでも
バレッタが接近する事が出来れば受取拒否できずに必ず当たる。
回避する方法は近づかないこと。
触らぬ神に祟り無しである。
『愛犬ハリー』
ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:-
愛犬ハリー(オス2才)。
バレッタが常に連れているだけあり普通の犬より強靭である。
【weapon】
銃器、ミサイル、火炎放射などの現代兵器。
【人物背景】
恐怖の赤ずきん。別に狩る相手はダークストーカーだけではなく
秘密結社に雇われて、敵対する相手を弁護する事になった弁護士の命を狙った事もある。
お金大好きで執念深い。
【サーヴァントとしての願い】
聖杯戦争の主催者に落とし前を付ける。
【マスター】
武田観柳@るろうに剣心(実写版)
【マスターとしての願い】
聖杯戦争の主催者から全てを奪う。
【weapon】
ガトリングガン。
【能力・技能】
一流の悪徳商人で金儲けが得意。
武器商人なので武器の調達も得意。
敵対する流浪人が女性救出のために観柳邸に攻めてきた際
驚愕しつつも雇った用心棒達を金の力で鼓舞しつつ、念のためガトリングガンを準備するなど
冷静で慎重な能力を持つ。
【人物背景】
阿片で儲けた金で武器を仕入れてクーデターを起こし『観柳帝国』を目論んでいた男。
流浪人達に敗れ逮捕されたが再起を誓い必ず戻ってくると言いながら連行された。
【方針】
主催者から全てを奪うために情報を集める。
バレッタを金の力で強化しつつ、金などで懐柔できるマスターは取り込んでいく。
抜刀斎のような正義の味方には関わらないが、利害が一致すれば協力する。
主催者の言葉を鵜呑みにする馬鹿なマスターは危険なので可能な限り始末する。
投下終了します。
投下します。
天、地、火、水、動植物と次々に生み出した創造神は、それらを支配する存在を作り出さんと最後の作業にとりかかった。
今まで以上の気合いを入れた創造神は、自分の姿に似せた存在、世界の支配者であるヒトを作った。
が、それはあまりにもモデルを美化していると他の神々から嘲笑を受けるほどの出来栄えであり、
それを聞いた創造神は半ギレ涙目で「分かったよ! もっとみっともなくすりゃいいだろバーカ!」と別のヒトを作った。
そちらはまあそれなりの出来栄えで、他の神々がとやかく言うこともなかったという。
最初に作られたヒトが「美少女」、次に作られたヒトが「人間」である。
そのため、おっさんだろうと爺さんだろうと美少女は美しい。美少女は神から過剰な愛を賜った種族なのだ(創世神話より抜粋)
☆マスターサイド☆
どこにでもありそうな風景。なんてことはない街並。見た目普通の人が忙しそうに歩き、車が行き交う。
(家に帰りたい)
何度も思ったが、思っただけで帰れるわけがないのは修学旅行も聖杯戦争も同じだった。
修学旅行なら腹痛を訴えるとか、そういう方法をとることもできた。
だが聖杯戦争で腹痛を訴えたところで人殺し達が喜々として集まってくるだけだ。
自分の願いを叶えるために他人の生命なんて屁とも思っていないような人殺し。
考えるだけで吐きそうになる、というか、さっき吐いた。もう吐き戻すものは胃に残っていない。
現実はクズばかりだったけど、いざファンタジーな場に引っ張りだされてみればもっとクズばかりだった。
ああ、帰りたい。
黒木智子は何度目になるかも分からない思いを心の中で呟き、横目でサーヴァントをちらと見た。
健康的で、しなやかかつ柔らかさを感じさせる太腿。
控えめながらも理想的な曲線によって形作られた胸のふくらみ。
黄金色の髪を二つに分けてピンクのリボンできゅっと縛り、長々と尻の方まで垂らしている。
(クソ! やっぱこいつカワイイな!)
戦うといえば美少女、美少女といえば戦う。
見た目は小さくてもパンチ一発で戦艦を吹き飛ばしたり、殺人ビームを指先から撃ったりするんだろう。
智子のサーヴァントということになっているらしい少女は、まあ、可愛らしかった。
外見年齢はおおよそ中学生くらい、白人の女の子だが一応日本語は通じるようだ。
口数が多い方ではない、というより自発的にほとんど話そうとしないため、言語能力の程度もよく分からないが。
ただカワイイ。とてもカワイイ。すごくカワイイ。声もカワイイ。そして良い匂いがする。
さりげなく背後をとって匂いを嗅いでみたらフルーツか花かという匂いに脳髄を刺激され、思わず激しく鼻を鳴らした。
振り返ったサーヴァントが不審げに智子を見ていて、ようやく正気に返り、なんとか誤魔化そうと周囲を見回し、
たこ焼きの屋台を見つけ、「ああ、良い匂いがすると思ったらたこ焼きかー」とわざとらしく呟くことで事なきを得た。
ペアとして事に当たるサーヴァントがカワイイということは確かにプラス要素かもしれない。
同時に主人公要素でもあるため、上手くいけば勝ち抜けるかもしれない、くらいには考えなくもない。
だけど、やっぱり嫌だった。今更嫌と言ったところで拒否権が無いことは教えられているが、嫌な物は嫌だ。
良い匂いのするカワイイ女の子は智子の好むところではあったものの、それも生きていてこそである。
死んだら終わり。アニメも漫画もゲームも楽しむことはできなくなる。
どうにか死の瞬間に気合いを入れることで霊体として第二の人生(?)を歩むことはできないものか……?
そんなことを考えていたせいでサーヴァントの動きに気付くのが遅れた。
サーヴァントはてくてくとたこ焼き屋の屋台に近づき、背負ったリュックサックから財布を取り出した。
「たこ焼き、1箱」
「あいよ」
行った時と同じように、てくてくと戻ってきて、なにもいわず智子にたこ焼きの箱を押しつけた。
「え? これ? 食べていいの?」
少女はなにも言わず頷き、智子は戸惑いながらもたこ焼きの箱を開けた。青のりとソースの香りがぷんと匂った。
智子はサーヴァント……確かクラスは「ファニーヴァンプ」とか言ったはずだ。ファニーヴァンプの少女を改めて眺めた。
今、智子は少女の体臭を堪能するという変態的行為を誤魔化すためにたこ焼きの匂いを持ち出した。
ファニーヴァンプはそれを真に受けて、わざわざ智子のためにたこ焼きを買ってくれた、というとことか。
(こ、こいつ……天使か……!)
見た目だけではなく行動まで天使だったのか、と心が動かされそうになるが、ぐっと耐えた。
優しそうで可愛らしい女の子が実はビッチだったというのはよくあることだ。友人のゆうちゃんもそうだった。
クラス名に「ファニー」なんてものがついてるのもあざとさを感じるし、尻から悪魔のような尻尾が、背中には蝙蝠のような羽が生えている。
これは天使ではない。悪魔だ。どれだけカワイイ外見をしていようと、良い匂いだろうと、聖杯戦争という殺し合いに自ら飛びこんできた人殺しの仲間だ。
クズ度で言うなら知人の小宮山を超えるといってもいいくらいの逸材だ。
騙されるな。油断をするな。そう自分に言い聞かせ、ファニーヴァンプから目を逸らさずじっと見つめた。
カボチャ型のリュックサックによいしょよいしょと財布をしまう姿もやはりカワイイ。
(騙されるな! 騙されるな智子! あいつはロリ美少女に見せかけて実はビッチだ! 抜きゲーでよくいるタイプだ!)
拳を握り、歯を噛み締め、どうにかして耐える、耐える、耐える……と、財布の端からひらりと紙片が落ちた。
ファニーヴァンプはそれに気付くことなく財布をしまい、リュックサックを背負って歩き出した。
智子はさりげなく落ちた紙片を拾い、ファニーヴァンプの後を追いながら名刺サイズの紙に目を落とした。
極彩色で縁取られ「泡姫倶楽部マーメイド」のロゴと「早朝サービス割引券」の文字がプリントされていた。
智子は紙片を見た。その意味するところに気付くまで三十秒を要し、口を押えて声を噛み殺した。
(こいつ……まさかの非処女……いや、ビッチ……違う、ビッチどころじゃねえ! 完全に玄人(プロ)……!)
割引券を見、少女の背中を見、割引券を見、少女の背中を見、何度か繰り返し、やがて智子は割引券をポケットにしまいこんだ。
智子は考える。いったいいくらなんだろう、と。
☆サーヴァントサイド☆
聖杯戦争なるものに狩り出されることとなった。
これを就職というのかどうかは微妙なところだ。金が入るとしても勝者一人のみになるのだから、就職よりはギャンブルが近い。
そういう意味でもあまり本意ではなかったが、まあせっかくだからやってやるか、程度の意気込みはある。
サブリナは吸血であり、死というものに縁遠い。
白木の杭で胸を貫かれようと首を斬り落とされようと反物質爆弾の爆心地にいようと魂そのものを封印されようと、入院する程度で済む。
だが人間となるとそういうわけにもいかないだろう。
サブリナのマスターとして配された少女は、大変に気落ちしているようで肩を落とし涙ぐんでいた。
せっかくだから慰めてあげよう、と思っても咄嗟に気の利いた言葉が出てくるわけではない。
スレた美少女連中相手なら背中を叩いてどやしつけてやるところだが、人間の少女相手に同じことをするわけにはいかないだろう。
そう、人間の少女だ。女子高生だ。プレミア感がある。
歩きながら静かに目を閉じた。瞼に浮かぶのは学生服の少女だ。とても直視する勇気はなく、チラ見するのみだったが、よく覚えている。
まず、スカート丈が長かった。やたらと丈を短くしようとする美少女とは違い、野暮ったいほどのスカートで足を隠している。奥ゆかしい。
潤んだ大きな瞳でじっと見詰められると声が出なくなる。無暗にカラフルな美少女と違い、黒一色の髪はとても新鮮だった。
そして女子高生。なにより女子高生。条例により禁じられている禁忌の存在。
プロの女性以外とお相手したことがないサブリナは話すこともなければ触れることもなかった。
そもそもプロの女性にお相手してもらうことさえ金銭的な問題で割引の利く早朝に限定されていた。
そんなサブリナが、今は女子高生と連れ立って歩いている。
(落ち着け俺……冷静になれ俺……)
目を瞑ったまま数度首を振った。
初対面のおっさんがこんなことを考えていると知られたらめっちゃキモがられる。絶対にそうなる。
あくまでも紳士的に彼女を励まし、守る。それでいい。
下心があるなど論外だ。たとえ誰であろうと優しくするのが真なる美少女。
(なるだけ優しく……さりげなく……そうだ、さりげなくだ……)
さっきたこ焼きを買ってやった時は喜んでいたように見えた。
あれはさりげなかったはずだ。女子高生と仲良くなりたがってるキモいおっさんには見えなかったはず。
後ろを歩くマスターをちらりと見る。黒髪の少女は熱心になにかを見ていた。
なにかを気持ち悪がっていたり、怯えていたり、という感じではない。
サブリナは金色の巻き毛を手に取り、ぎゅっと握り締めた。
戦いに巻きこまれた少女の心細さにつけこんでいるわけでは全くない。
あくまでも守るべき相手を守るという美少女道に則った行為だ。何一つ問題はない。
【クラス】
ファニーヴァンプ
【真名】
サブリナ・ハーグリーヴズ@美少女を嫌いなこれだけの理由
【パラメーター】
筋力C+ 耐久A 敏捷B- 魔力B 幸運D 宝具―(EX)
【属性】
中立/中庸
【クラススキル】
吸血鬼/吸血鬼:A
メイン属性サブ属性ともに吸血鬼という真なる吸血鬼。
動物や霧への形態変化、蝙蝠の使役、治癒能力、魅了の魔眼、飛行能力、同ランクの吸血、戦闘続行といった特殊能力を得る。
だがその圧倒的な力の代償として陽光や聖印、流水、大蒜に弱いという弱点も得てしまう。
美少女:C
種族的美少女である。老若男女問わず美しい少女の姿を持つ。たとえおっさんでも見た目はカワイイ女の子になる。
同ランクのフェロモン、麗しの姫君、魅惑の美声を有し、老化と排泄がなくなる。
人間に対して本能的な保護欲を持ち、たとえ己の生命を守るためであっても攻撃には消極的になる。
【保有スキル】
原初の一:―(EX)
アルテミット・ワン。星からのバックアップで、敵対相手より一段上のスペックになるスキル。
平時は使用不可。自分が恋をしている相手(処女限定)を吸血することで十分間発動する。
【宝具】
「12の始祖」
ランク:―(EX) 種別:対人宝具(自身) レンジ:- 最大補足:-
自身の影を触媒として12体の「実体を持つ影」を生み出し自在に使役する。
1体1体の力は吸血種の真祖に匹敵し、旧支配者を圧倒する戦闘能力を持つ。
この宝具は原初の一を発動している時のみしか使用できない。
【weapon】
日傘。これがあれば日中の行動もオッケー。紫外線はもちろん強力な破壊光線やミサイルを防ぐこともできる。
髪。長さは可変。敵に絡みつけ、血がにじむほど縛り上げることもできる。
【人物背景】
欧州最古の吸血鬼一族ハーグリーヴズ家の末裔であり、メイン属性サブ属性ともに吸血鬼という真なる吸血鬼。
見た目美少女でもパーソナリティーは中年男であり、どこでもいつでもおっさんらしく振る舞う。そこにデリカシーは無い。
攻撃的な女性に対してはそれなりに接するが、相手がおしとやかだったり奥ゆかしかったりすると途端にくじける素人童貞。
あだ名はサブさん。
【サーヴァントの願い】
就職、結婚、そして家庭。
【マスター】
黒木智子@私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!
【マスターとしての願い】
リア充になる。
【weapon】
なし
【能力・技能】
ぼっち。
【人物背景】
高校生になれば自動的にフラグが立つと思っていたものの、そんなことはなかったソロプレイヤー。
恋人どころか友達さえできず、性格はほぼクズ、気弱で引っ込み思案、傷つきやすくヘタレやすい。
たまに優しいことがあるのではないかと言えなくもない。気にかけてくれる人もそこそこいる。
あだ名はもこっち。
【方針】
サーヴァントとの交流を深めつつ聖杯を狙う。
投下終了します。
皆さん投下お疲れ様です。これから投下します。
◇ 魔法少女/救国の乙女 ◇
私の願いは、フランスに光をもたらすこと。
当時は百年戦争の最中。
フランス国内は戦火に見舞われ、簡単に命が奪われ失われる、決して晴れない闇の中にいた。
私も、大切な妹を亡くした。いつもの平穏な日々も、壊されてしまった。
たとえ元に戻ったとしても、次は別の大切な誰かが犠牲になるかもしれない。そんな無情な世の中だった。
だから私は決めた。同じような悲劇を、もう誰にもあわせたくない、と。
その日から私は“天使様”から魔法少女としての力を授かり、この戦争を終わらせるための旅に出た。
後は後世に伝わる通り、フランス軍と共に快進撃を続け、幾度となく苦難に挑み続けた。
最終的に、私はフランスを取り戻し、人々に光をもたらした。
だから、その後の私自身の結末については、何も悔いもありません。
救済も、恨みも、悲しみ、絶望も抱かず、そのままの「人」として運命を受け入れます。
あとはただ、人々に神の祝福あらんことを。
◇ 選択者/救済の夢限少女 ◇
私の願いは、ルリグになった女の子たちを人間すること。
主に少女達の間で流行しているTCG『WIXOSS』。
そのプレイヤーの中でも意思を持つルリグと出会えた少女だけで行われる危険な遊戯“セレクターバトル”。
胸に秘めた願いを叶える“夢限少女”になるため、少女達は人知れず勝負を繰り返していた。
しかし、その奇跡は偽りだった。私達も、その欲望の中に隠された暗澹に徐々に呑まれていった。
その真実は、どの選択も報われない結末しか待っていない壊れたゲームでしかなく。
その裏側は、一人の女の子が憎悪と復讐から生み出した“人形遊び”でしかなかった。
数々の悲劇を目の当たりにして、散々悩んだ末に、私達はこの幻想を終わらせようと決意した。
そのために、女の子が最後に選択した希望と共に進んで。
最終的に、女の子の無念を晴らし、私達は“夢限少女の誓い”を交わす事で全てを終わらせた。
その後、セレクターバトルはなくなり、意思を持ったルリグ達もいなくなった。
ルリグになってしまった友達も元に戻り、憎しみが連鎖しない平穏な日常へと変わっていった。
あとはただ、信じている。また君と会える日を。
★ 願望器/数秘の極点 ★
偽創の天地にて、汝は何を望む?
〜 ・ 〜 ・ 〜 ・ 〜 ・ 〜
きっかけは些細だった。それも全く気付かない程の。
しかし自然に、急速に、突然に、まるで感染し拡大するかのように、覚醒へと促していく。
その日、小湊るうは友達とめいいっぱい楽しんだ。
街を歩き回って、あちこち見て回って、買い物したり、カフェで休息したり。
あとカードショップに寄って、ブースターパックを購入したり、WIXOSSで対戦したり。
やはり友達と一緒に遊ぶのは楽しく、だから時間が過ぎるのも早かった。
まだ明るいものの各々別の用事もあるため、また会う約束を交わして解散した。
その後の帰路にて、“リリリン”、と鈴の音を耳にした。
そこは、いつも通り建物が並ぶ道で、普段なら何もない場所だった。
しかしその時ばかりは、背後に小さな気配を感じた。
“リリリン”“リリリン”と音も徐々に大きくなってきた。
だからるうは、すぐさま後ろを振り向いた。
その正体は、なんてことはない、首輪に鈴を付けた白い猫だった。
“ミャー”っと鳴きながら白猫はるうに近づき、そして通り過ぎていった。
それは一瞬の出来事であり、るうはすぐに何事もなかったかのようにまた歩き始めた。
――無意識に「 」を探していた彼女にとって
――その邂逅は心のどこかで落胆していた
――しかし、その想いは無知ゆえに気付かない
――その一事が忘却に打ち込む小さな楔である事にも気付かず
〜 ・ 〜 ・ 〜 ・ 〜 ・ 〜
帰宅後、るうは夕食の支度を手伝い、家族と団欒して。
夜が更けた頃に自分の部屋へと戻った。
明日に向けて勉強や、今日購入したカードを交えてデッキ調整など。
色々と考えながら椅子に座ったところで、るうはふと気が付く。
「あれ、なんだろう、このカード?」
学習机の上には、一枚の伏せ置かれたカードがあった。
それはるう自身には身に覚えのないものだった。
今朝、部屋を出る時には机の上を綺麗にしていたし、帰宅した後も机には何もしていない。
もしかして、ばあちゃんが置いていった?でもなんで?
などと不思議に思いながら、るうはカードを手に取り裏返した。
「ルリグのカード…タルト?」
初めてみる凛々しいルリグの、表記された名前を口にする。
その姿に見蕩れつつ、その詳細について読もうとした。
が、しかしそれはかなわなかった。
「えっ、カードが、光っ!?」
何故なら、突如としてカードが光り始め、やがて眩しく何も見えなくなってしまったからだ。
急激に放たれる強い発光に、るうは目を瞑った。
一体何なのか理解も及ばないまま反射的に構えた。
しかし、しばらく待てども、何も起こらなかった。
恐る恐る、ゆっくりと目を開けてみたが、何も変哲していなかった。
手に持ったカードはイラストとテキストが見て取れる。光ってなどいない。
「今の、見間違い、じゃないよね…」
「あの、貴女が私のマスターですか?」
「ってうわぁっ!?」
今度は背後から声を掛けられ、びくっと体が飛び跳ねた。
なぜなら自分以外部屋には誰もいないはずなのに、知らない少女がすぐ目の前にいるのだから。
すぐ後ろを振り向き、その姿を確認して声を上げる。
「だ、だれっ!?」
「サーヴァント、セイバー。真名はジャンヌ・ダルクといいます!」
にこやかに、ハッキリと、こちらの意図とは若干ずれた返事。
即座に心の中でツッコミを入るが、あまりに真っ直ぐな態度に、咄嗟に言葉は出ない。
「ジャンヌ、ダルク…?えっ、あの、よく聞く有名な?」
「はい、そうです。って、自分でそれを肯定するのも変ですね」
はにかむ少女の姿を見て、そこで気付がつく。
純真な白い肌、綺麗な銀の髪、澄んだ瞳、凛とした小顔。
そのどれもが、手に持ったルリグカードの人物と瓜二つであった。
そして見た目は私とあまり変わりない年齢の少女に見えるが、その雰囲気は全く違っている。
本当に神秘的な聖人のように、私とは全く違う存在に感じ得た。
――その清く白い容姿は、知っているはずの彼女に重なっている気がして。
――るうの中で何かが氷解していくように、無自覚に感じていた。
しかし、るうは未だ事態への混乱が溶けておらず、それを表す一言だけを零すのみだった。
「もう、一体なんなの……」
【マスター】
小湊るう@selector spread WIXOSS
【マスターとしての願い】
―――――。
【weapon】
なし。
しいて言うなら、WIXOSSでカードバトル?
【能力・技能】
WIXOSSのプレイング技能
【人物背景】
アニメ『selector infected WIXOSS』及び『selector spread WIXOSS』の主人公。
中学2年生のごく普通の少女。家庭の事情で今は祖母と一緒に暮らしている。
やや引っ込み思案で大人しい性格だったり、年相応に明るく快活なところもある。基本的におだやか、おっとり。
転校したばかりで友達を作ろうとも思っていなかったが、別居している兄から友達作りのきっかけとしてTCG『WIXOSS』を渡される。
しかしその中に意思を持つルリグ・タマがいたため、彼女は数奇な運命を辿る事となる。
始めは何も知らないまま、願いを持たないままセレクターバトルに身を投じていき。
その中で遊月や一衣といった友達が出来たり、セレクターバトルや夢限少女の闇の真相を知っていき苦悩していく。
やがて叶えたい願いを見出し、この危険な遊戯を終わらせるために色々と奔走することとなる。
最終的に黒幕の無念を晴らし、願いを叶えたことで、平穏な日常を過ごしている。
【方針】
???
【クラス】セイバー
【真名】ジャンヌ・ダルク
【出典】魔法少女たると☆マギカ
【性別】女性
【属性】秩序・善
【パラメータ】
筋力:B+ 耐久:A 敏捷:A 魔力:A 幸運:C 宝具:A++
【クラススキル】
対魔力:A
Aランク以下の魔術を完全に無効化する。事実上、現代の魔術師では、魔術で傷をつけることは出来ない。
騎乗:D
乗り物を乗りこなす能力。大抵の乗り物なら人並み程度に乗りこなせる。
【保有スキル】
啓示:B
“直感”と同等のスキル。
直感は戦闘における第六感だが、“啓示”は目標の達成に関する事象全て(例えば旅の途中で最適の道を選ぶ)に適応する。
この“啓示”の一端には“天使様”からの導きもあったが、聖杯戦争では“天使様”が不在のためランクダウンしている。
それでも(本人に自覚はないが)自身の強力な因果律により、行動がすぐに結果へと繋がりやすくなっている。
カリスマ:C
軍団を指揮する天性の才能。
先陣を切って敵軍や異形の存在達を討伐するジャンヌの姿は、兵士の士気を極限まで高め、軍を一体のものとする。
聖人:B
聖人として認定された者であることを表す。
聖人の能力はサーヴァントとして召喚された時に
“秘蹟の効果上昇”、“HP自動回復”、“カリスマを1ランクアップ”、“聖骸布の作成が可能”
から、ひとつ選択される。
【宝具】
『クロヴィスの剣(エペ・ド・クロヴィス)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1
謎の少女から授かり受けた、魔法で冶金された剣。
戦闘中の燃費が悪いセイバーはこの剣を媒介とする事で魔力消費を調整できるようになる。
『光よ!!(ラ・リュミエール)』
ランク:A+ 種別:対軍宝具 レンジ:1~30 最大捕捉:1~10人
固有魔法によって大型の旗槍を具現化し投擲する高威力の必殺技。
これにより厄災を振りまく魔女を一撃で葬ることも可能とする。
媒体なしでもこの宝具を発現する事ができるが、一度の使用で膨大な魔力を消耗してしまう。
なので通常は『クロヴィスの剣』にイメージを纏わせて攻撃を放つ。
『紅蓮の聖女(ラ・ピュセル)』
ランク:C(発現前) EX(発現後) 種別:特攻宝具 レンジ:??? 最大捕捉:???
“主よ、この身を委ねます――――”という辞世の句を発動の呪文とし、炎を発現させる聖剣。
ジャンヌの火炙りを攻撃的に解釈した概念結晶武装。
固有結界の亜種であり、心象風景を剣として結晶化したもの。
この剣は英霊ジャンヌ・ダルクそのものであり、宝具を発現させると戦闘後、ジャンヌは消滅する。
【weapon】
光を操る固有魔法
【人物背景】
『魔法少女たると☆マギカ』の主人公で、かの有名なオルレアンの乙女(ラ・ピュセル)。
彼女の旅立ちから悲劇的な最期までの経緯はほぼ伝承通りであるが、以下のような知られざる真実・相違点がある。
・“天使様”と契約し、魔法少女として救国の為に戦った。
・同じ魔法少女達と一緒に前線で戦い、魔女や敵国の魔法少女と戦う事が多かった。
・読み書きが不自由のため、自分の名前を“Jehanne Tart”と書き間違え、以来仲間からは“タルト”と呼ばれている。
なお、サーヴァントとして召喚されたため“天使様”は同伴されておりません。
【サーヴァントとしての願い】
???
筆が進まなくなったので、中途半端ですが投下しました。お目汚し失礼しました。
なお、魔法少女たると☆マギカは2巻までしか読んでいませんので、
もし問題点などがありましたらご指摘の程よろしくお願いいたします。
投下します。
――その男は、繁華街を歩いていただけだった。
それだけだというのに、道行く人々はその男を注視せざるを得ない。
男は大声を上げているわけでも無く、肩で大きく風を切っているわけでもない。
可笑しな格好をしているわけでも、フラフラと歩いているわけでもない。
そう、その男は迷惑な行為をしているわけでも不自然な態度をとっているわけでもない。
ただ悠々と、ともすれば『この男こそが自然体で、自分たちは不自然な歩き方をしているのでは?』と誰もが錯覚してしまう様な美しい足取りで歩く男に、通行人は意識を向けずにはいられなかった。
身長は190cmを超え、その腕にはこれ以上ないほどに完成された筋肉が盛りに盛られている。
一目見ただけで“敵わない”と思わせる外見をしているこの男、しかし万人の目を惹きつけているのはそんなものではない。
ケータイに夢中な若者、恋愛に必死な男女、仕事に集中しているサラリーマン、一心不乱に英単語を詰め込む学生、彼らが作業を中断してまで顔を上げる程の本能からの警告。
――皆、この男の絶対的強者たる“オーラ”に遺伝子の底から反応させられていたのだ。
才能のあるなしに関わらず、赤子でさえ目視できるほどの強烈なオーラが男の身体を覆っている。
自然と人々が避けていく道の真中を、さも慣れたものかの様にだと悠然と歩く男――名を範馬勇次郎という。
彼を一目見た時、人間は悟るだろう彼こそが――地上最強の生物であると。
◆ ◆ ◆
――時は数時間前に遡る。
「聖杯戦争……それで、オマエが俺のサーヴァントという理由か」
「あ、あははは……そ、そういう事みたいですね……」
聖杯戦争についての記憶を取り戻した範馬勇次郎は、自らのサーヴァントたる少女と会話を交わしていた。
その少女はキャスターのクラスのサーヴァントで、真名は櫻田茜といった。
場所は超高級シティホテルの展望レストラン、勇次郎はサーヴァントとの話し合いのために個室を予約していた。
覚醒者を選別するためか生活水準はあまり変わらず、この世界でも勇次郎は莫大な財産と豪邸が与えられていた。
このレストランは個人情報の秘匿に関しては大いに信頼がおける場所であり、料理の説明を行うマネージャーも今回は断っていた。
運ばれてくる料理を食しながら意見を交わす、サーヴァントの少女は勇次郎にこそビビっているものの場所に気後れした様子はなかった。
「白亜紀の最強も現れて、倅ともヤり合って……史に沈んだ伝説の英雄たちとの闘争を夢見ちゃあいたが……
こんなオカルトじみたパーティーに招待されるとは、俺もツイてるもんだ」
「あ、あの、マスター……」
「だが解せねぇ……嬢ちゃんのナリはどう見ても今時の女子高生だ。ステータスも低い。
オマエさんを貶すワケじゃねぇが、英霊ってのはそんなものか?」
「あ、いえ、基本的には英雄そういう方々だと思います。私の場合は家が特殊だったというか……あれ? 能力の方かな? もしかしてスカーレッt……」
勇次郎の問いにキャスターはブツブツと考えこんでしまう。
始めこそ内心で年甲斐もなくハシャいでいた勇次郎だったが、自らのサーヴァントである少女を見て少し落胆の色を浮かべていた。
勇次郎には一目見ただけで相手の弱点や強さが分かる観察眼がある。
魔力というのは分からず、この少女はキャスターだというのだからその方面に秀でているのも理解はできる。
しかし、勇次郎が求めているのは強者との闘争。剣でも槍でも良かったが、魔術というのは全くの未知であり、同時につまらない戦いになりそうな不安材料でもあった。
やがてキャスターのなかで結論が出たのか、少しずつ言葉を紡ぎ始めた。
「た、たぶん、私が特殊何だと思います!
英霊なのは私の家が一国を収める王家の一家で、昔から人の上に立ったりしてたからだと思いますし……
王家にはみんな特殊な能力があって、私のはグラビティ・コアっていう重力を操る力なんですけど、それがキャスターとして認められたのかな? みたいな……
私自身じゃなくて、家柄と能力がたまたま丁度良かっただけかも知れないです……」
キャスターの思考はどんどんネガティブな方向に向かい、声も再び萎んでいった。
彼女は自身が思っているよりも人を引っ張っていく力があり、民衆には最も多くの支持を集めたことも少なくない。
一部では、ネットで軽々しく使われる方ではない真の意味での神様だと讃えられていたことさえあった。
「ふん、まあいい。 オマエが英霊足り得る人物だったというのは理解した。
オマエが特別だというのもな……他のサーヴァントが強ければ問題は無い」
「あの……そのことなんですけど、マスターはサーヴァントと戦えませんよ?」
懸念を一つ解消し、機嫌を取りもどした勇次郎だったが――その耳に信じられない一言が舞い込んできた。
「何ィッッッ」
勇次郎は思わず席を立ち上がって叫んだ。
その声は個室にとどまらず、同じ階層にいた人間全ての行動を一時中断させるに至った。
“範馬勇次郎が叫ぶ”それだけの事態に従業員たちは騒然とし、個室内にノックも忘れてオーナーが駆け込んできた。
「は、範馬様ッ どうなされましたか!?」
「なんでもない、下がれ」
「で、ですが……」
「下がれッッッ」
「は、はい!」
失礼しました!っと叫びながらオーナーが部屋を退出すると、勇次郎は先程の様子が嘘だったかの様に優雅な動作で席についた。
完全に萎縮しているキャスターに対し、話の続きを促す。
「それで、戦えないとはどういうことだ」
「あ、あの、えーっと、それはですね、サーヴァントに攻撃するには神秘性が必要で……
マスターは普通の人間なので、神秘性がないんです。
魔術師のマスターやキャスターの中には神秘性を帯びさせて戦える様にする人もいるらしいですけど、私にはそれもできませんし……
通常はマスターはマスター同士戦うっぽいです」
「……なるほど」
キャスターのたどたどしい説明に、勇次郎は一応の納得を見せた。
“マスターはサーヴァントと闘争する言葉できない”この事実は、勇次郎にとってこれ以上ない屈辱だった。
例えるなら、数日間まともに食事にありついておらず。水分も長らく取れていない死に体の身体。そんな時、顔を上げると目前に広がる『無料! フレンチフルコース試食会』の文字。当然飛びつく、が、止められる。文字の下には小さく『正装の方のみ』。そこで、自分の体を見る。そこにあるのはまるでボロ布、とてもじゃないが正装とはいえない。
今の勇次郎は喰う資格が無いと、英雄と闘争する資格がないと言われたも同然だった。
お前なんか他のマスター〈スーパーの試食〉で十分だ、そいつらで我慢しろ、と。
勇次郎はキャスターに語り始めた。
「確かに魔術師たちが魔術とやらの研鑽に費やしてきた時間は確かなものだろう。 格闘家の鍛錬にも似たものがあるかもしれん。
だからこそ、キャスターはこうしてこの聖杯戦争のクラスの一つとなり得たのだろう。
だが、ゲームなんかでもそうだが、魔法使いってのは非力だ。 魔法が使えなければザコと変わらん。
有り体に言えば――魔法使いは純度が低い」
勇次郎は心のそこから強者との闘争を求めている。
目の前に夢に見続けた英雄達がいるのだ、マスター達では我慢などできるわけがない。
――ならば、どうすればいいのか?
ボロ布でダメならば、正装すればいい。
正装が買えないならば、正装している者から奪えばいい。
単純なことだった――魔術師に協力させるか、神秘性を帯びさせられるサーヴァントを他のマスターから奪うか、もしくは聖杯に神秘性の付与を願うか。
聖杯のための闘争ではなく、闘争のための聖杯。
特に願い事のなかった勇次郎の方針は、ここで決まった。
その旨を、キャスターに話した。
「キャスター、俺の方針は決まったぜ。 オマエさんは聖杯に何を願う」
「あ、いえ、もうサーヴァントになった時点で半分叶った様なものなので、特には……
しいて言えば、国民の皆が幸せだったらいいなぁ……くらいです」
「ふん、そうか」
この後も、2人は細かい方針を詰めていった。
途中でテーブルマナーの話から刃牙の話になったり、一国の王でありキャスターの父である櫻田総一郎の話やキャスターの姉弟の話など、他愛もない会話も挟まった。
初めは勇次郎の威圧感に萎縮していたキャスターも段々打ち解け始め、普段の調子を取り戻していた。
最後にキャスターがデザートを食べ終え、食事会は終了となった。
◆ ◆ ◆
――時は再び現在。
シティホテルからの帰り道、人混みが苦手なキャスターは外では一度も霊体化を解こうとはしない。
勇次郎は辺りにサーヴァントの気配がないか警戒し、来るべき未来に少し胸を踊らせつつ夜の町に消えていった。
【クラス】
キャスター
【真名】
櫻田茜@城下町のダンデライオン
【パラメーター】
筋力E+(〜A+) 耐久D(〜B) 敏捷D+(〜A) 魔力B+ 幸運C 宝具A++
※()内はスキル使用時。
【属性】
秩序・善
【クラススキル】
陣地作成:E
魔術師として、自らに有利な陣地を作成可能。
自宅は常に安全な場所であった為、陣地作成のノウハウなどはない。
道具作成:E
魔力を帯びた道具を作成可能。
ものづくりなどした事が無いので、作れたとしても簡単なアクセサリー程度である。
【保有スキル】
カリスマ:B-
軍団の指揮能力、カリスマ性の高さを示す能力。国を率いる事ができるほどの度量を備えているが、性格ゆえに普段は効果が低下している。
重力制御:A+
自分や自分が触れている物の重力を操る能力。これにより筋力・耐久・敏捷のステータスを上昇させたり、物体を飛ばす、浮遊する等ができる。
周囲の空気に急激に負荷をかけ、衝撃波を飛ばすことも可能。
視線恐怖症:C
注目される事を極度に嫌う。
人の視線や、特に記録に残る監視カメラなどに晒されると人数に比例してパラメータが低下する。カリスマのスキルが発動している時、ランクが下の視線恐怖症のスキルは打ち消される。
(勇猛:C)
威圧・混乱・幻惑といった精神干渉を緩和する能力。
また、格闘ダメージを向上させる効果もある。
【宝具】
『城下に舞う一重の花弁(スカーレットブルーム)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1
正体を隠し、多くの人々を救い続けた逸話の具現。
服装が変わり、マスター以外には同一人物だと認識出来なくなる。
この姿が一般人に目撃されると、何故かキャスターの知名度補正が増していく。マイナススキルである視線恐怖症が消え、勇猛のスキルに変化する。
『家族の絆(サクラダ・ファミリア)』
ランク:EX 種別:対軍宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
キャスターの家族である櫻田家の総一郎、五月、葵、修、奏、岬、遥、光、輝、栞、ボルシチそして佐藤花を召喚する。1人〜全員まで任意で呼び出しが可能。
召喚された家族はそれぞれ英霊として座にあるサーヴァントであり、全員がランクE-の「単独行動」スキルを持つためマスター不在でも行動可能。
なお、聖杯戦争のルールに従って召喚されているわけではないのでクラスは持っていない。
また、キャスターの能力の限界として、家族が自身の伝説で有しているはずの宝具までは具現化させることはできない。
特殊能力自体は宝具では無いため使用可能であるが、発動には魔力を消費し本人の魔力が無くなるとマスターからの供給を必要とするため、マスターの負担も大きくなる。
またサーヴァントには現実での財力は無いため、奏の能力はマスターの貯金から支払われる。
【weapon】
なし。
【人物背景】
櫻田家の三女であり、次期国王候補の1人。
国民からの人気が非常に高く、校内にはファンクラブも作られている。
王族の証として重力制御(グラビティコア)という特殊能力を持っている。
幼い頃のトラウマから人の注目を浴びることを極端に嫌い、王族用監視カメラの撤去を願っている。
トラウマのためかオドオドとしている事が多いが、見知った間柄だと気さくで冗談もよく言う。
学校では委員長も務められていて、クラスメイト達に対しては大いにカリスマを発揮している。
【サーヴァントとしての願い】
特になし。強いていうなら国民の平和だが、聖杯に願うことでもないのでマスターに従う。
【マスター】
範馬勇次郎@刃牙道
【マスターとしての願い】
英霊を存分に喰らい、屠り去るために神秘性を得る。
【weapon】
肉体。
【能力・技能】
地上最強の生物。その肉体は技術を使わずとも地上最強だが、世界のあらゆる武術を極め、一目で修得する観察力もある。
強さを極めた結果オーラが尖り過ぎて雷が落ちるが無事、あらゆる生物の物理的弱点を看破できるなどの能力がある。
【人物背景】
地上最強の生物であり、世界で唯一の腕力家。通称“オーガ”。
宇宙の膨張と同じ速度で成長しており、未だに戦闘力はピークに至っていない。
戦争・紛争地に赴き、たった一人非武装で敵を壊滅させたり、合衆国と個人で契約するなど一個人で核兵器よりも恐れられている。壁やコンクリートの地面をゼリーのように砕く。
恐竜並みの巨大象を無傷で倒す他、高層ビルから落下しても傷を負わない高い技術と身体を持つ。
1年前に範馬の血を色濃く継いだ息子”範馬刃牙”との親子喧嘩に決着をつけた。
それ以来刺激が無く、暇を持て余していた。
性格は丸くなりサインをねだられた際もきちんと対応する程であるが、それに反して戦闘力は日々増すばかりである。
強くなりすぎたが故に闘争するに値する相手が少なくなったのも性格が丸くなった所以かもしれない。もう1日たりとも人を殺傷せずにはいられない勇次郎はいないのだ。
【方針】
弱者は基本的に無視。邪魔をするなら殺す。
神秘性を付与できる魔術師、それに近いスキルを持つサーヴァントを探し味方に引き入れる。
もしくはマスターを全員殺し、聖杯に神秘性を付与させる。
その場合は別の聖杯戦争に出向き、英霊と闘争する。
投下終了です。
投下します。
※現在放送中のアニメ『金田一少年の事件簿R』が丁度、同事件『薔薇十字館殺人事件』を放送しています。
同事件に関するネタバレが含まれている為、原作を読んでおらず、アニメのみで視聴している視聴者の方は、それを理解した上で今作を読んでください。
同事件は12月12日放送予定の『薔薇十字館殺人事件 File.5』にて犯人やトリックが明かされますが、本文中や状態表でそれについて触れています。
尚、その配慮の為、タイトルや本文中にて、人物名が『ローゼンクロイツ』という犯人の異名に置き換えて記されています。
これは、偶々、スクロール中にネタバレを踏む事を回避する為であり、実際には犯人の個人名が入る物だと思ってください。
実際の本文では『ローゼンクロイツ』という単語は使われず、代わりに犯人の名前が書きこまれます。
また、動機・トリックに関する具体的な記述や、アニメ視聴者には現時点でもキャラクターが特定出来てしまう場面・台詞もありますので、一応伏字になっていますが、未読のアニメ視聴者でネタバレを回避したい方は今回の候補話は読まないでください。
一部、完全に伏字ですが、その辺りは「聖杯戦争異聞録 帝都幻想奇譚 」で投下した候補作のコピペもありますので、そちらと照らし合わせながら確認してください。
月夜の晩。
彼の持つ宝具が──父のヴァイオリンの音色が、また、彼を呼んだ。
敵がいるのは其処だ、と。
その音色が、彼に「戦え」と。
……あるいは、闘争により、誰かを「守れ」と。
そう、伝えてくれた。
耳鳴りのようで、それは優しい音色でもあった。
父と母が二人で作りあげた、『戦いを喚ぶ紅薔薇の戦慄(ブラッディ・ローズ)』の音。
そして、彼の本能は、その音色に応えた。
この先で暴れる敵と相対せよ、と。
本能が、彼にそう叫んだ。
敵は、かつて自分が戦った敵たちのように、今、誰かを喰らっている。
人を喰らい、それを己の力として蓄えようとしている。
おそらくは、己と同じ、『サーヴァント』の一体に過ぎない。
相手が如何なる力を持つかは知らないが、彼は、マスターの指示もないまま、ただ其処に向かって駆けた。
一刻も早く、この呼び声に答えなければならない。
それが、従者である以前の、自分の本能なのだから。
そして──自分は、従者である以前に、王でもあるのだから。
──寒空の下を駆ける。
──暗い路地裏を通り抜け、公園に急ぐ。
──敵は、夜の小さな公園を根城にしているのだ。
「──」
────そして、彼の寝泊まりしているマスターの邸より、少し離れたところで、彼には、ようやく、"視えた"。
「──」
小さな公園──それは、団地の為に作られたごく小さな公園だった。
高層の共同住宅に隠れて、ひっそりとそこにいた彼らの姿は、他のサーヴァントには感知できなかったかもしれない。
「ひぃ……ぅぐ……」
うめき声。
既に丑の刻を過ぎた真夜中に、一風変わった景色が見えた。
眼前には、『キャスター』のクラスのサーヴァントが、己の儀式を始めている姿があった。
「ぁ……ぁぅ……」
洗脳によって集められた、団地の住民たちであった──。
丑の刻を過ぎた真夜中に、彼らが歩み出し、自発的に集合するわけがない。
その証拠に、人々は皆、寝間着のまま、眠気を伴う虚ろな瞳で現れていた。
一時、彼はそれが何なのかわからなかった。
「ぇひ……ぅ……」
もっと近づいて見た。
すると、そこでは笑いながら、──『キャスター』がNPCを順に喰らっている姿があった。
並んだNPCたちを頭から順に喰らい、そのNPCが持っていた魔力を自らの餌にしている。
もしかすると、この『キャスター』は、英霊となる前は怪物であったのかもしれない。
子供の血しぶきが、『キャスター』の前に並ぶ人々の前に、飛沫として降りかかっていた。
食いつくすと、次に並んでいた成人女性が洗脳で前に出て、頭から喰われた。
並ぶ人々に、またも、血液の雨が降り注いだ。
辛うじて、彼らに幸福なのは、その人間たちの意思も半分眠らされているという事だろう。
「……」
──彼は、それを見て、息を呑んだ。
これが、宝具が自分を此処に促した理由なのだと。
そう悟った。
確かに辛い光景だが、今、人々の奏でる心の音楽が絶やされそうとしている。
それを止めなければならないのが、彼の使命だった。
「くっ……」
──そして、同時に大きな怒りが湧きあがって来た。
目の前のサーヴァントに対しての、使命とは無関係の──もっと根源的な、底知れぬ怒りが……。
「……どうして、こんな事を──ッ!」
彼がそう叫んだ時、『キャスター』は、NPCを喰らう手を止め、彼を見た。
当然ながら、『キャスター』も彼の来訪には、気づいたようであった。
夢中になりすぎて、他のサーヴァントの気配を探知し損ねたのか。
派手にやりすぎ、結果として他のサーヴァントに目をつけられた事には、少々の後悔もあったようだが、彼の姿を見た『キャスター』は些か冷静だった。
彼の魔力が、決して高くなく、その運用もあまり上手でないのに気づいたのかもしれない。
「おや。他のサーヴァントに感づかれましたか」
冷徹な瞳で、『キャスター』は言った。
怪物じみた醜い容姿でありながら、それの口調は紳士にも近かった。
「どうやら、その傍らの使い魔をお見受けした所、貴方も私と同じ『キャスター』のクラスのようですね」
「……」
「……如何でしょう? 貴方にも何体か、NPCを分けて差し上げましょう。
今は力を蓄える為、お互いを見逃し、お互いにNPCから魔力を吸収して、魔力を高める。
それが、『キャスター』である我々の間では、お互いにとって最も有効な策と思いますが──」
目の前のキャスターは、NPCの魔力を吸いつくし、自身の道具作成や陣地作成に役立てようとしているのだろう。
つまりは、彼自身は、ここにいるNPCたちをただの道具と扱っているわけだ。
──いや、仮にそれが人間だったとしても同様に彼は、道具として喰らいつくすに相違ない。
人間を自分の餌にする──それが、彼のやり方のようだった。
「……」
それに対する「彼」も、確かに、目の前の『キャスター』と同じ性質を持つ存在だった。
人間を喰らい、魔力を得る──それが戦術において重大であるのは、彼の持つ宝具と照らし合わせて考えれば、間違ってはいない。
それどころか、彼の同種は、人間の生命力を喰らって生きながらえている程なのだ。
しかし──やはり、違う。
彼と、『キャスター』とは違っていた。
それ故、彼の「解」は『キャスター』とは、異なっていた。
彼の使い魔が、彼より先に怒りを露わにする。
『ふざけんな! こんなに酷え事しやがって!』
「──ああ。僕も、お前には……従わない!」
ちらりと、視えたのは、これからキャスターたちに喰われる為だけに、意思を殺して並ぶ人々の群れである。
洗脳されながらも虚ろなまま手を取り合う母と子、兄と妹、姉と弟。
キャスターの目の前には、母を食われて、虚ろな瞳のまま──ただ、血液を浴びながら立ちすくむ少年の姿。
だが、その本能は、そのNPCの子供を涙させていた。母を失った悲しみは、電脳存在や洗脳の意思を越えて、彼の瞳に一筋涙を光らせているのだろう。
疎らに並ぶ中でも、同じ家族が一塊に集まっているのは、もはや動物的本能と呼べる物に違いない。
互いが血脈で反応し合い、お互いを庇い合う。
それが、彼らに根付いている感情だと理解し──彼は、理解する。
結局のところ、NPCとは、利用に値する物とは限らない、普通に生活する人間の意思には違いないのだと。
それが、家族。
「データ存在でも……この人たちには、家族の愛があるんだ……」
──何故、宝具は……あのヴァイオリンの音は、自分を呼んだのか。
それは、このデータ存在たちが奏でる、美しい音楽を守る為ではないか。
何より、あの宝具は、彼の父と母の祈りが込められた名器なのだから。
「何を言っているんですか? 彼らは生命を持たないNPCですよ?」
生命があるか否かは、彼には関係がなかった。
「お前のような奴には、聞こえないんだ……。
この人たちが奏でている、美しい音楽が──」
──刹那。
彼の使い魔が、彼の意思より先に動いた。
彼の呼び声を一早く感知したのかもしれない。
「──そして、それを止める事が、どんなに醜い事なのか」
それは、これまで闇に隠れて見えなかったが、金色の蝙蝠の姿をしていた。
──その名は、『キバットバットⅢ世』。
使い魔であると同時に、彼の持つ宝具の一つだった。
「──行くよ、キバット」
『おっしゃあッ……! キバっていくぜッ……!』
ガブッ──!
牙を立てて、『キバットバットⅢ世』は、彼の手に噛みついた。
瞬間、彼の美しい容貌に、ステンドグラス色の血が紋章として通っているのが見えた。
彼の腰に、血の色の鎖がベルトのように現出しており、彼は、『キバットバットⅢ世』を掴み取って、鎖ベルトのバックルに逆さに貼り付けた。
そして、彼は、怜悧な瞳で告げた。
「──変身」
──瞬間。
彼の外形を、パンプキン色の鎧が包んでいく。
まるで、ジャック・オ・ランタンのような異形は、彼の全身を余す事なく包み込み、その魔力を格段に上げた。
しかし、──驚くべきは、それでもまた、彼の魔力は封印された状態であるという事だ。
キバフォーム。
これは、まだ鎖に身を包み、真の力を解放しない姿であった。
これが、彼の"王族"たる証。
「──ッ!?」
そして、『キャスター』は、その様相に、何を敵に回したのかを悟った。
蝙蝠の使い魔はポピュラーだが、その使い方と、鎖に繋がれたその姿。
それは、まぎれもなく、ある有名な伝説に似通っていた。
恐れおののく『キャスター』は、言う。
「まさか……それが貴方の姿──よもや、貴方の真名は、『吸血鬼(ヴァンパイア)』──!」
吸血鬼族の皇帝(キング・オブ・ヴァンパイア)──通称、キバ。
それが、彼の纏う鎧の正体であった。
彼もまた、『キャスター』の明察した通り、同じ『魔術師』のクラスのサーヴァントであり、その正体は吸血鬼族の王だ。
そして、それと同時に人間との混血である「ダンピール」でもある。
しかしながら、厳密には彼ら"ファンガイア族"は、吸血鬼に近い存在でありながら、吸血鬼とは少しばかり呼び名が異なり、長い歴史の中にも人間との混血例は珍しかった故に、「ダンピール」のような呼称が無い。
あくまで、人間ともファンガイアとも呼べない何かが、彼だった。
この二つの種の混血は、確認されている限り、彼と、その後の「紅」の血族だけである。
餌と狩人の二つの種族の間で揺れ動き、その共存を目指した最初の青年──それこそが、彼の真名『紅渡』であった。
かつて、この鎧を纏い、『仮面ライダーキバ』として、共存の為に戦った者である。
「────はああああッッ!!!」
疾駆したキバは、右の拳で、『キャスター』の胸を突いた。
キバと化した彼の拳が、『キャスター』の胸板の上で跳ぜた。
──想像以上のダメージ。
もはや、条件反射のように『キャスター』の口から、魔力を伴った血液が漏れ、飛び散った。
「ぐッ……!!」
無抵抗な『キャスター』に向けて、それが何度か続けられるに従い、魔力の影響を逃れたNPCたちがバタバタと倒れ始めた。
死んだのではなく、キャスターによる洗脳が解けた結果として、一時的に脳の構成機能が麻痺したのだろう。
それが彼らの身体のバランスを覆し、一度、眠りの中に陥らせた。
お陰で、彼や『キャスター』の戦いは、誰にも見られず、夜の闇に溶け込む事が出来る事になる。
洗脳が解けた以上、それを人質にされる事もない。
敵方の『キャスター』の戦闘能力は、クラスのステレオタイプに漏れず、決して強くは無かった。
彼は、遂に両脚で立つ事も困難となり、キバのパンチを受けて倒れる。
「貴方も、『吸血鬼』ならば、何故にッ!
何故に、人を喰らうこの私を、許さないのですか……!」
後は、自分の提示した契約を裂いた理由を訊くだけが、『キャスター』にに出来る唯一の反抗だった。
そもそも、キバの力が現状で『キャスター』を上回っている時点で、彼の提示した案は無意味である。
が、『キャスター』がそれに気づく事はないし、キバの持つ怒りが伝う事もなかった。
「──それが、王の判決だ」
彼の手には、次の瞬間──『吸血鬼族の魔皇剣(ザンバッドソード)』が発現していた。
この宝具は、彼の吸血鬼族の皇帝(キング・オブ・ヴァンパイア)たる証でもある。
現在変身しているキバフォームでは、本来的な力を発揮できないものの、その刀身は『キャスター』の半身を引き裂くには充分効果的な硬度と魔皇力を持っていた。
彼は、それを力いっぱい、振るいあげた。
────結果。
「ぐああああああああああああああああーーーーーーーッッッ!!!!!」
まだ何か言いたげな『キャスター』の身体が真っ二つに引き裂かれ、遂に、その姿は爆発四散した。
無銘の霊となった『キャスター』の魔力は、空を惑い、不規則に泳ぎがら天上に昇ろうとする。
それは、通常、可視化されない物であったかもしれないが、キバだけには見えた。
すると、ある者を呼び出そうとした。
「来い……──」
キバは──渡は、多くの家族を引き裂いた『キャスター』を許さなかった。
たとえ、意思な魔力になったとしても。
そして、彼の耳に聞こえる、「音楽」を止めた『キャスター』には、王の判決が下されなければならなかった。
「──『月下に目覚めし魔竜の城(キャッスルドラン)』!!」
キバが呼ぶ──。
そして、キバットが茶色の笛を鳴らす。
夜の乾いた空気に、笛の音が響き、それを竜は訊き届けた。
……すると、どこからか、巨大な竜の羽音が鳴り響いた。
夜の街の上空で、誰も感知できない一体の竜が飛んでいる──。
名は、『月下に目覚めし魔竜の城(キャッスルドラン)』。
キバが従える宝具の一つであり、『月下に目覚めし魔竜の城(キャッスルドラン)』は、彼が滅したサーヴァントの魂を喰らうのである。
直後には、空中を浮遊していた『キャスター』の魔力は、『月下に目覚めし魔竜の城(キャッスルドラン)』の口の中に納まり、その姿を消した。
あの『キャスター』は、これまでに多くの人間の魔力を吸っている。彼に喰われた者たちの魂もまた、そこに込められているのだろう。
それを含めて、『月下に目覚めし魔竜の城(キャッスルドラン)』が喰らいつくした事には、些かの抵抗もある。
しかし、それが彼のこれからの戦いには必要だった。
すぐに、『月下に目覚めし魔竜の城(キャッスルドラン)』は去って行き、そんな怪獣がここにいた事を誰からも忘れさせた。
キバは、それからすぐに、近くを見た。
「……」
──母を、目の前で喰われた少年。
夜風の下で眠りにつく彼の母たる女も、今、『月下に目覚めし魔竜の城(キャッスルドラン)』が食ったエネルギーの一部を作り上げている。
それが後ろめたくもあった。
「──ごめん」
キバは、彼に寄り、血に穢れた額を撫ぜながら、そう謝罪した。
その声は、眠りに陥る少年には届かないであろうし、もし目覚めていたとしても彼が何を謝罪しているのかさえ解さないだろう。
しかし、謝らずにはいられなかった。
目の前に現れた『キャスター』なる怪物にむざむざと彼の家族を殺させてしまった事も。
渡自身が、彼の母の魔力を餌にする形になってしまった事も。
「でも、君の父さんの力は、無駄にはしない……」
キバは彼の額から、翳すように、手を突き放した。
今、彼が『月下に目覚めし魔竜の城(キャッスルドラン)』を通して得る事が出来た僅かな魔力で、彼らの記憶を消し、そこに流れた血を浄化しようとしているのだ。
魔力の運用は、彼には出来ない。キャスターのクラスを持ちながら、それは従者たちに任せているからだ。
だが、彼のスキル『皇帝特権』のランクは、この時、一時的に上昇し、それが魔力を行使させた。
すると、彼らが浴びた血は一斉に穢れを落とし、ただここで集まって「何故か」眠っていた事実だけが、彼らには残る結果になった。
結果、『キャスター』を倒す事で貯蓄した魔力は、その殆どを使い果たし、元の渡の魔力とさして変わらない状態にまで戻してしまう。
あの『キャスター』が持っていた力は弱すぎたのだろう。
変身が自動的に解けた。
『おい、急ぐぞ、……渡! マスターに大目玉喰らっちまう!』
「ああ……!」
そこにあったのは、やはり、紅渡というふつうの美男の姿だった。
彼は、それから、また急いで、自らのマスターの下に帰っていった。
何度か振り返りながら、倒れるNPCたちに心で囁く。
──がんばれ、と。
◆
「随分と遅いお帰りですわね、キャスター」
マスターの邸宅。
薄い生地の寝間着を纏った、長い髪の女性。
──彼女も普段は、目立つゴシック・ロリータ服を着ているが、流石に寝る時までは着ないのだろう。
『げげっ、マスター……!』
彼女こそが、キャスター──紅渡のマスターである、≪ローゼンクロイツ≫であった。
年齢は、◆◆歳。職業は◆◆であり、その収入だけで暮らしている。
彼女の住まうこの薔薇十字館なる豪邸は、彼女の父が遺した物らしかった。
まるでホテルのように無数の部屋があり、彼女一人で住まうには広すぎる気がするが、それには些か事情がある。
元々、彼女の父は、彼女が幼い頃から姿をくらましており、各地に残る奇妙な館だけがその痕跡となっているのだ。
この薔薇十字館もその一つに過ぎず、自然と彼女の相続する土地の一つとなっていたらしい。彼女も相続するまでこんな土地は知らなかった。
第一、気味が悪い場所であった。
この薔薇十字館で暮らすのは、彼女にとってもこの聖杯戦争が初めてである。
そして、彼女には、行方不明の父と、亡くなった母と、指名手配犯の兄以外に家族がなく、結果的にこんなに広々とした空間で過ごす事になっているのだ。
彼女の願いは、二年前に理不尽に奪われた母の命を取り戻す事であり、キャスターにもその悲願は充分に理解できる物だった。
故に、彼女と契約を結ぶ事にも躊躇はなかった。
……少々、性格が手厳しく、また、奇妙な痛々しさがあるというのが、欠点だが。
「一体全体、こんな時間にどうしたのですか? キャスター」
「……起きてたんだ、マスター」
「ええ。貴方が出かける音を聞いて」
そう言う≪ローゼンクロイツ≫の言葉には、茨のような棘が感じられた。
心なしか、些か不機嫌な顔付にも見える。
それを察して、『キバットバットⅢ世』が横槍を入れた。
『おい、ちょっと待ってくれよ、渡は──』
キャスターの事を庇おうというのだろう。
彼も、実のところ、キャスターの従者の一人と分類されて良い存在である。
サーヴァントという立場を通り越し、元が一人の王であった紅渡は、使い魔たちの信頼も既に勝ち取っていたのである。
それこそ、渡と≪ローゼンクロイツ≫という初対面の二人の比ではない。
初めはお互い、疑心を持ち合うのがマスターとサーヴァントの関係の常だ。時代や思想の違いが生じ、息の合う者の方が少ないのだ。
が、『キバットバットⅢ世』の心配とは裏腹に、≪ローゼンクロイツ≫は言う程、サーヴァントを責めたてはしなかった。
「──キバット、囀らなくとも結構。別に、キャスターを咎める気はありませんわ。
……それより、この夜に相応しい、美しい詩が完成しましたから、聞いてください」
そう言うと、≪ローゼンクロイツ≫は、唐突に、詩を詠み始める。
「ああ、紅の血よ! 紅の血を分けた吸血鬼よ!
今宵も、薔薇のような美しい棘と、その身を守る固い鎧で、主に迫る悪魔たちを倒しておくれ……。
聖杯の齎す美酒で、私の心の亡母に、冥府に囚われた私の姫に、ひと肌のぬくもりを取り戻しておくれ……!!」
……。
呆然とするキャスターと『キバットバットⅢ世』であった。
本職の◆◆であるとはいえ、彼女の紡ぐ言葉は、独特の世界観に包まれている。
なんだかむず痒いというか、見てて痛々しい気分に攫われる。
何度かこうした事があったが、その度に彼らは呆然と立ちすくんだ。
そんな空気を察する事もなく、≪ローゼンクロイツ≫は言う。
「──あなたへの詩です、キャスター」
キャスターは、≪ローゼンクロイツ≫の目を見た。
彼女は、怜悧な瞳で言う。
「確かに勝手な行動ではあるようですが、私たちにとって厄介な敵を未然に殲滅した事には変わりません」
「見てたんですか……マスター」
「いいえ。私は何も。しかし、貴方がこうして無傷で帰って来たのが何よりの証拠です」
確かに、夜一人で駆けだすように抜け出し、無傷で帰還したという事から、キャスターが戦いに出て、勝利したのだという事が伺えた。
それというのも、薔薇十字館のキャスターの部屋に設置されたヴァイオリン型の宝具『戦いを喚ぶ紅薔薇の戦慄(ブラッディ・ローズ)』の特性と照らし合わせれば簡単である。
それは、キャスターの奥底に眠る魔皇力が感知する、「魔力を伴った敵」の存在を感知する。
彼らが暴れ出した時、キャスターはそれに反応して、いつも、鳴りやまぬ音を消し去るようにして駆けだしていく。
今夜もそうだったのだ。
だから、それが彼の戦闘の合図で、敵を殲滅した事まで≪ローゼンクロイツ≫は予測した。
ただ、詳細な経過はわからないし、こんな時間に寝起きで彼を追う気にはなれなかったのだろう。
「……簡単に事情を説明してもらえるかしら?」
≪ローゼンクロイツ≫が言うと、キャスターは応えた。
「──敵のクラスは僕と同じキャスターでした。真名はわからないままです。
ただ、マスターの言う通り、もう殲滅しました」
「では、もう一つ。敵は、一体、何故こんな時間に暴れるつもりだったの……?」
そう言うと、キャスターはどもった。
気弱な彼は、その経過を口にするのを憚ったのだ。
代わりに、『キバットバットⅢ世』がそれを≪ローゼンクロイツ≫に伝えた。
『──奴は、洗脳した人間の魔力を肉ごと喰って、自分の力にしてたのさ!
半分楽しみながらな──! まったく、とんでもない野郎だぜ!』
怒張の混じった『キバットバットⅢ世』の言葉を聞き、≪ローゼンクロイツ≫の中で何かが震えた。
聖杯戦争のマスターは、NPC以上に、そうしてマスターたちに狙われるリスクが高い。
それも覚悟の上だが、それを痛烈に実感するのは、いつも被害者が出た時だった。
今日、彼らが見て来た光景を想像し、≪ローゼンクロイツ≫は確かに実感した。
それから、キャスターも、弱弱しい唇が、震わしたまま、続きを≪ローゼンクロイツ≫に告げた。
「ええ……。小さな子供や、家族を遺して食べられた人もいました……」
「……」
≪ローゼンクロイツ≫は、その言葉を聞いた時、何かを思ったように、言葉を飲み込んだ。
彼女もまた、家族という言葉には敏感に反応する。
彼女が戦う理由であり、二年前、彼女から全てを奪ったもの。──その時の心の傷がまだ残っている証だった。
キャスターが、報告を続けた。
「……それが、今日僕が戦った敵の全てです。
あとは、いつも通り、キバの力で倒して、彼の魔力は『月下に目覚めし魔竜の城(キャッスルドラン)』が喰らいました」
「巻き込まれた人間の記憶は?」
「大丈夫、消しました。……代わりに、食らった魔力がなくなりましたけど」
それが全てだった。
他に報告すべき事はない。
それに、敵の殲滅まで報告した以上、もはやこれより訊く必要はなかった。
情報としては無意味で、あくまでキャスターが夜中にマスターを離れて、一時単独行動をした事情として訊き届けたかったのだろう。
「──わかりました」
「……」
「次からは、たとえ夜でも私を起こしてください。
貴方は、私を守る騎士でもあるのだから……私を一人にすべきではありません」
「……はい。……わかりました」
それだけ聞くと、ジゼルはつんとした表情で立ち去ろうとした。
が、突如、足を止め、キャスターたちの方を見ないまま、一言告げた。
「──そうだ、キャスター。薔薇風呂を沸かして入りなさい。
貴方も、薔薇のアロマで今夜の戦いの疲れを癒し、次の一日に備えると良いわ」
そう言って、また彼女は部屋に戻ろうとする。
一瞬、彼女が何を言っているのかわからなかった。
今日の夜入った薔薇風呂。
キャスターと『キバットバットⅢ世』は、風呂で疲れを癒すのがとにかく好きだった。
この館には、大きな風呂があり、今日も休む前にそれで疲れを取っていたくらいである。
しかして、マスターがわざわざ、こんな時間に風呂を沸かすのを許すような労いを見せたのは、主従関係を結んでから、今日が初めてだった。
彼女も少しずつキャスターの性格を理解し始めているという事なのだろうか。
キャスターは、少しきょとんとしてから、再び眠りに就こうとする≪ローゼンクロイツ≫の後ろ姿を見ながら、小さな声で言った。
「……ありがとう、マスター」
『よっしゃ〜♪ 渡〜! 風呂だ風呂だ〜♪』
【CLASS】
キャスター
【真名】
紅渡@仮面ライダーキバ
【パラメーター】
基本
筋力E+ 耐久E 敏捷D 魔力D 幸運D 宝具EX
キバフォーム
筋力B 耐久C 敏捷C 魔力A 幸運B 宝具EX
【属性】
混沌・善
【クラススキル】
陣地作成:-
魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げるスキル。
紅渡は、このスキルが失わてている代わりに、王が引き継ぐ『月下に目覚めし魔竜の城(キャッスルドラン)』の宝具を持つ。
道具作成:D
魔力を帯びた器具を作成する為のスキル。
紅渡は、魔皇力を込めたヴァイオリンを作る事のみに長けている。
製作工程は一般的な高級ヴァイオリンと相違ないが、その最終工程で彼の魔皇力が無意識に込められる。
これ以外に必要な道具の多くは、基本的には父や先代の王が集めた物であり、『月下に目覚めし魔竜の城(キャッスルドラン)』に保管されている。
【保有スキル】
魔皇力:B/2(ハーフB)
魔術に代えて紅渡が持つ、"ファンガイア"の力。
常時は人間の血を交えている為に、通常のファンガイアよりもその影響が希薄である。
キャスターでありながら魔術の式を介さず、ただ魔皇力を内に秘めているだけの渡には、戦闘力としてしか認識されない。
尚、このスキルは、宝具『キバットバットⅢ世』の力で一時的にランクを高める事が出来る。
ファンガイア族:A/2(ハーフA)
吸血鬼に近い性質を持つ、彼の出身種族。
その種の王の資格を持ち、彼らを裁く権利を有するが、父親が人間である為、ファンガイアとしての第二の姿を有さない。
彼の場合、このスキルの恩恵として、ファンガイアの血が無ければ出来ないような行動(『キバットバットⅢ世』のノーリスクでの運用など)が可能である。
皇帝特権:E
本来持ち得ないスキルを、本人が主張することで短期間だけ獲得できるというもの。
ただし、渡の性格上、特殊な状況下で精神に変化が起こらない限り、このスキルは発動できない。
仮に渡がこのスキルを自覚した場合、そのランクは、B〜EX相当まで飛躍的に上昇し、あらゆるスキルの使用を許す事になるだろう。
主に、「騎乗」、「剣技」などのスキルがこれによって付加され、生前もそうした技能を駆使している。
【宝具】
『キバットバットⅢ世』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1
人間の腕を噛む事で、魔皇力を高める『キバの鎧』を対象の外形に纏わせる力を持つ使い魔。
キバット族の名門・キバットバット家の三代目であり、ファンガイアの王が選ぶと同時に彼らも王を選び、契約と共に使役される。
とはいえ、普段は感情豊かで口うるさく喋り、渡とは主従を越えた友人関係にある。
彼もキャスターと共にこの世に現出し、便宜上は使い魔と同様の扱いを受けているが、実際には紅渡以上の魔力を持ち合わせており、キャスター適性の低い渡の魔力を補佐する役割を持つ宝具である。
渡以外の人間も同様に、『キバットバットⅢ世』が"噛む"事によって『キバの鎧』を纏う事が出来るが、素質のない者では『キバットバットⅢ世』の放つ魔力エナジーに耐える事が出来ず、大抵の人間は数回変身すれば死んでしまう。
更に、仮に適正があったとしても、「エンペラーフォーム」と呼ばれる鎧の真の力を発揮した場合、エネルギーに耐えられる者の方が希少というレベルで、一度変身しただけで多くは死亡する。
この宝具を奪って変身するのは容易いが、高い資質が無ければ、リスクにしかならないのである。
『月下に目覚めし魔竜の城(キャッスルドラン)』
ランク:EX 種別:対城宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:1〜99
紅渡たちファンガイアの王の有する"生きた城"。
その正体は、かつての王がドラン族の最強個体である"グレートワイバーン"を捕獲して、城として改造した物である。
普段は薔薇十字館(マスターの所有地)の一部に擬態している為、常人に視る事は出来ない。しかし、キャスターが召喚した"月"の光の下でその真の姿を現す。
内部には幾つかの道具・宝具を保管しており、この聖杯戦争における『月下に目覚めし魔竜の城(キャッスルドラン)』の役割は、実質的にはギルガメッシュ伝説の『王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)』と同様の宝物庫である。
尚、これに保管されている宝具の中には、渡に従属し、運命を共にした四体の幽閉されしモンスター(ガルル、バッシャー、ドッガ、タツロット)が含まれている。
渡の有事には、魔力と引き換えに『月下に目覚めし魔竜の城(キャッスルドラン)』から宝具を呼び出す事が出来るのである。
ただし、よりランクの高い宝具を呼び起こす際には、多くの魔力や生命力がこの宝具に貯蔵されていなければならないという欠点がある。
その為、他の主従との戦闘行為に勝利する、もしくは、NPCの魔力を吸収する等の方法で、『月下に目覚めし魔竜の城(キャッスルドラン)』の力を高めなければ上位宝具タツロットなどは呼び出す事すら出来ない。
『吸血鬼族の魔皇剣(ザンバッドソード)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1〜50 最大捕捉:1〜50
多くの宝具を有し、『月下に目覚めし魔竜の城(キャッスルドラン)』に保管したとされる紅渡の最も代表的な武具。
この世に存在する最も強力な剣だと言われる。これこそが彼の皇帝たる証であり、巨大な魔皇石の結晶から削りとったという逸話も残されている。
元々がライフエナジーを持つものに対して過剰に反応し、それを「喰いにいく」性質を持つ「命吸う妖剣」である。
その為、使用者の意志が足りなければこの剣に乗っ取られ、無差別に敵を見つけ出し、命を吸い取ろうと暴走するリスクを負う事となる。
このリスクは、『月下に目覚めし魔竜の城(キャッスルドラン)』に幽閉されたモンスターたちの生み出す幻影生物"ザンバットバット"により軽減する事が出来る。
また、この剣は、彼の「王の証」として、『月下に目覚めし魔竜の城(キャッスルドラン)』を介さず、渡の意思だけで発現できる事が可能である。
ファンガイア戦争時の伝説では、真の姿たる「エンペラーフォーム」を解放しなければ扱えない武器であったが、その戦争の後には、エンペラーフォームを解放する事なく使用したという記録もある。
その逸話に基づき、現在の渡も、少なくとも『キバットバットⅢ世』によって『キバの鎧』を纏ってさえいれば、この剣を暴走する事なく扱う事が可能。それさえ纏わなければ、まともに扱う事は困難である。
また、その真の力を解放し、多くの敵を葬った美技を発動するには、「エンペラーフォーム」の解放が必須条件となる。
『闘争を喚ぶ紅薔薇の戦慄(ブラッディ・ローズ)』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:その音の届く限り 最大捕捉:その音の届く限り
渡の父・紅音也と渡の母・真夜が共同して作り上げたバイオリン。
微弱の魔力と祈りが込められており、この音は、渡に使命を伝え、強い魔力を持った敵の発生に呼応する。
渡の魔皇力で感知できる場所で、高い魔力を持つ者が魔術を行使して大規模に暴れ出したとするのなら、この宝具が必ず渡に敵の発生を伝えるだろう。
この宝具も、『月下に目覚めし魔竜の城(キャッスルドラン)』を介さず、渡の意思だけで発現できる事が可能である。
【weapon】
『キバットバットⅢ世』
『戦いを喚ぶ紅薔薇の戦慄(ブラッディ・ローズ)』
【人物背景】
仮面ライダーキバに変身する青年。職業はヴァイオリン職人である。
父も同じくヴァイオリン職人。人間の父・紅音也と、ファンガイア族のクイーン・真夜とのハーフであり、両種の特性を持つ。
ファンガイアの特性としては、美男美女であり、ある時から外見の成長が止まり、若さを保ち続ける事が挙げられ、彼もその例外ではない。
ただし、ファンガイアとしての体を持たず、外見は誰が見ても普通の人間の若者である。
性格は、内向的で口下手。純粋で優しい子供のような性格で、それ故、後ろ向きでもあり、度々悩み事をする。
だが、それも仲間たちとの戦いの中で克服し、後には異父兄の登太牙と共に、王の資格を持つ者としてキバの鎧で最後まで戦い続けた。
伝説では、ファンガイア、ネガタロス軍団(仮)、ネオファンガイア、レジェンドルガ、世界の破壊者など、あらゆる存在と戦った記録があらゆる世界で残っている。
しかし、現世に英霊として顕現した際に、ファンガイア以外との戦闘は彼の中で忘却されており、実質的に今の彼に残るのはファンガイアやそれに近い種との戦いのみとなった。
【サーヴァントとしての願い】
かつての戦いで死んだ人間とファンガイアの魂を救済する事。
それと同時に、この聖杯戦争の中においても、誰かの奏でる音楽を守り続ける事が彼の願いである。
【基本戦術、方針、運用法】
強力な宝具を幾つも持ち、戦闘能力も格段に高いが、その反面、彼はキャスターの絶対条件である魔力に乏しい。
また、生身での戦闘力もこれまたせいぜいアスリート並で、キバの鎧を纏って白兵戦を行う事が能力の前提にある。
他と比べて低いパラメータの代替として幾つもの宝具を持っており、これが彼の能力を補っている。効率よく戦闘にするにはこれを駆使するのが良いだろう。
ただし、これは、『月下に目覚めし魔竜の城(キャッスルドラン)』に貯蓄された魔力に応じて運用が可能になる為、キバに変身して戦闘を続ける必要がある。
キャスター自身は、罪のない相手はNPCを含め積極的に喰うつもりはない為、その方法は「サーヴァントを倒す」事に限られる。
出来る限り、強い敵と交戦して勝利し、真の力を発揮できるまで魔力を貯蓄していくのがベストな戦法だが、方法そのものがリスクが高い面がある。
また、更なる欠点として、『キバットバットⅢ世』を奪われた場合、彼の戦力が格段に落ちてしまう事も挙げられる。
無理矢理捕まえて変身すれば、誰でも変身できてしまう性質を利用されれば、勝率は著しく下がってしまうだろう(常人ならば不可能であるが、相手がサーヴァントならばリスクが充分に有りうる)。
【マスター】
≪ローゼンクロイツ≫@金田一少年の事件簿 薔薇十字館殺人事件
【マスターとしての願い】
ホテル火災により喪われた母の生命の蘇生。
【weapon】
なし
【能力・技能】
◆◆として活躍する優れた◆◆◆の才能。
人間の体を杭で撃ちつけ、貫通して床まで叩きつける女性離れした腕力(その後、その◆を◆にして部屋の◆◆◆◆◆を◆で◆◆◆◆て◆◆させているので、超人的な筋力の持ち主と思われる)。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆や毒薔薇を調達する行動力。
薔薇や◆◆◆◆◆◆などに詳しい博識ぶりは高遠に評価された。
また、今回の登場人物ほぼ全員が有名な指名手配犯の顔を見ても気づかないのに対し、彼女だけは一目見て高遠だと気づいたので、ニュースや時事も人並みにわかるはず。
【人物背景】
「金田一少年の事件簿」の「薔薇十字館殺人事件」の犯人・ローゼンクロイツの正体。
◆◆歳。職業は◆◆。巨乳。「◆◆◆◆◆」は本名ではなく◆◆◆◆◆らしく、本名は美咲◆◆◆。
どんな状況下でも◆◆◆を言う、所謂「◆◆◆」で、通常はこの手の推理漫画においてはミスリードに使われそうなヘンテコ人間である。
彼女は、2年前、ローズグランドホテルの火災で母親・美咲蓮花を喪った。
しかし、実はそのローズグランドホテル火災は、母の開発した「青い薔薇」を盗む為に五人の人間が母を殺し、証拠を隠滅する為に火を放った凶悪事件による物だった。
彼女は、母が最期に遺した五つの薔薇を手がかりにして、「薔薇の名前を持つ人間」をホテルの宿泊客の中からピックアップ。
五つの薔薇の内、四つは燃えてしまったが、彼女は唯一遺った「皇翔」の薔薇の名を持つ、皇翔(すめらぎ しょう)を殺害した。
その後、ビル火災に巻き込まれた「薔薇の名前を持つ人間」たちを集め、母の仇を特定して殺そうと試みる。
そして、彼女がこの聖杯戦争に呼ばれたのはその直後の話である。
また、実は彼女には、生き別れた異父兄がいる。
その名は、高遠遙一。「地獄の傀儡師」を名乗って連続殺人事件を演じ、多くの殺人事件を考案し教唆した指名手配犯であると言う。彼女がそれに気づいたのは、ごく最近。
当初は、皇を殺した事に強い嫌悪感や罪悪感に苛まれたが、「地獄の傀儡師」が自分の兄だと知ったジゼルは、その血脈を信じて、「殺人への自信」を得た。
とはいえ、やはり快楽的に殺人を行う兄とは性格が根本的に異なり、彼女のターゲットは、母の仇に限られている。殺人に対してはむしろ嫌悪を抱く心の方が大きいようだ。
【方針】
他のサーヴァントたちを撃退し、聖杯を手にする。今の彼女は復讐ではなく、母を取り戻す事を優先に考えている。
その上で無関係な人間を倒す事もやむを得ないが、出来得る限り無意味な犠牲を出すつもりはない。
ネタバレでも良いという方は、
『聖杯戦争異聞録 帝都幻想奇譚 』の候補作「月読ジゼル&アサシン」を参照し、◆を埋めてください。
ttp://www63.atwiki.jp/tokyograil/pages/149.html
以上で投下終了です。
一応、もう一度張っておきます。
※現在放送中のアニメ『金田一少年の事件簿R』が丁度、同事件『薔薇十字館殺人事件』を放送しています。
同事件に関するネタバレが含まれている為、原作を読んでおらず、アニメのみで視聴している視聴者の方は、それを理解した上で今作を読んでください。
同事件は12月12日放送予定の『薔薇十字館殺人事件 File.5』にて犯人やトリックが明かされますが、本文中や状態表でそれについて触れています。
尚、その配慮の為、タイトルや本文中にて、人物名が『ローゼンクロイツ』という犯人の異名に置き換えて記されています。
これは、偶々、スクロール中にネタバレを踏む事を回避する為であり、実際には犯人の個人名が入る物だと思ってください。
実際の本文では『ローゼンクロイツ』という単語は使われず、代わりに犯人の名前が書きこまれます。
また、動機・トリックに関する具体的な記述や、アニメ視聴者には現時点でもキャラクターが特定出来てしまう場面・台詞もありますので、一応伏字になっていますが、未読のアニメ視聴者でネタバレを回避したい方は今回の候補話は読まないでください。
一部、完全に伏字ですが、その辺りは「聖杯戦争異聞録 帝都幻想奇譚 」で投下した候補作のコピペもありますので、そちらと照らし合わせながら確認してください。
皆様、投下乙です
自分も投下させていただきます
友よ、私の行いを知れば、お前はまた私に失望するだろうか。
「死人になってまで、何をバカなことをしているのだ」と嘆くだろうか。
だが私は、この男に力を貸したいと思ってしまったのだ。
かつてその力で、化け物と戦っていた男に。老いを悲しみ、若さを渇望する男に。
◇ ◇ ◇
その男が記憶を取り戻したのは、滞在するホテルの一室であった。
男の名はストレイツォ。この世界での肩書きは高名な武術家であり、本来の世界では「波紋」と呼ばれる不思議な力を極めた男だ。
「どんな願いでも叶えることができる聖杯、か……。
私が引き寄せられたのは、当然かもしれんな」
誰もいない室内で、ストレイツォは呟く。
彼には、強い願いがあった。
それは、若さだ。
波紋を修得した者は、肉体の老化を抑えることができる。
だがあくまで抑えるだけで、完全に歳を取らなくなるわけではない。
今のストレイツォは実年齢よりは若いとは言え、それでも顔には多くのしわが刻まれていた。
彼は、老いていくのが怖かった。そして、若い頃に敵としてまみえた不老の存在・吸血鬼にあこがれるようになった。
「もしも若返り、その若さを永遠に保つことができるとしたら……。
戦いに臨むだけの価値は、充分にあるな」
わずかに喜色を孕んだ声で、ストレイツォは再び呟く。
「若さを求めるその気持ち、よくわかるぞ」
突如、無人のはずの空間から声が響く。
ストレイツォは、直感的に理解した。
自分に従うサーヴァントが、この場に召喚されたのだと。
「アサシンのサーヴァント、貴公の呼び声に応えて参上した」
そう告げたのは、片眼鏡が特徴の若い男だ。
上等な生地であつらえられた洋服のデザインが、彼が現代に近い時代の英霊であることを予想させる。
「アサシン……暗殺者か。正攻法で戦えるサーヴァントの方がよかったが、まあいい。
それより……」
ろくにコミュニケーションを取らぬうちに、ストレイツォは険しい表情でアサシンに歩み寄る。
「さっきの言葉はどういう意味だ。貴様は子供ではなさそうだが、老いを実感するような歳でもあるまい。
日々ゆっくりと衰えていく私の、何がわかる!」
ストレイツォの怒号が飛ぶ。だが、アサシンは動揺を見せない。
「おっと、落ち着けマスター。サーヴァントというものは、全盛期の姿で召喚されるものなのだ。
死んだ時の私は、今のマスター以上の老いぼれだったさ」
「何……?」
「私は自分の目的のために、若さを求めた。そして実際に若返った。
だが、肝心の目的は達成できなかった。そして、惨めな裏切り者として死んだ」
「…………」
「私は、自分の人生を後悔してはいない。聖杯に何かを願うつもりはない。
だが、マスターの願いには共感した。貴公になら、力を貸してもいいと思った。
ゆえに、ここに参じたのだ」
「なるほどな……」
ストレイツォの言葉から、怒気が抜ける。
「それが本当なら、見当違いの怒りをぶつけてしまったことになるな。非礼をわびよう」
「何、人同士のつきあいに誤解はつきもの。これから理解を深めていけばいいだけのこと」
素直に自分の非を認めるストレイツォに対し、アサシンは柔和な表情で返す。
だがその表情は、すぐさま冷徹なものへと変わった。
「さて……。このあたりで確認しておこうか、マスター。
この聖杯戦争において、願いを叶えるということは他者の望みを踏みにじることに他ならない。
いや、それだけでなく命をも踏みにじることになる。
その覚悟は、できているか?」
「愚問だな」
アサシンからの問いかけに、ストレイツォは即答した。
今の彼にとって、若返ることは他の全てを捨ててでも叶えたい悲願。
そのためならば、戦友のスピードワゴンだろうと、娘同然に育てたエリザベスだろうと殺せるだろう。
ゆえに、彼は叫ぶ。
かつて人を脅かす化け物たちに向かって口にした言葉を、今度は人に向かって。
「このストレイツォ、容赦せん!」
【クラス】アサシン
【真名】ウォルター・C・ドルネーズ
【出典】HELLSING
【属性】中立・悪
【パラメーター】筋力:B 耐久:D+ 敏捷:B 魔力:E 幸運:D 宝具:C
【クラススキル】
気配遮断:B
自身の気配を消す能力。完全に気配を断てばほぼ発見は不可能となるが、攻撃態勢に移るとランクが大きく下がる。
【保有スキル】
武器職人:A
武器特化の「道具作成」スキル。神秘性を帯びた武器を作り出すことができる。
あくまで「特化」であり「専用」ではないので、武器以外のものもいちおう作れる。
ゴミ処理係:B
長年にわたり、化け物を狩り続けてきた者。
人あらざるものへ与えるダメージが上昇する。
宝具発動時には自らが化け物と化すため、このスキルは機能しなくなる。
吸血:―(C)
吸血行為と血を浴びることによる体力吸収&回復。
宝具発動時に付与される。
【宝具】
『意地も張れぬ繁栄』(ゴールデンエイジ・オブ・フェイク)
ランク:C 種別:対人宝具(自身) レンジ:― 最大捕捉:1人(自身)
自らの肉体を吸血鬼化する宝具。
幸運と宝具以外のステータスが1ランクアップ。スキルに「吸血」が加わり、代わりに「ゴミ処理係」が失われる。
最大の恩恵である若返りがサーヴァントの特性ですでに満たされているため、アサシンはあまりこの宝具を当てにしていない。
【weapon】
鋼線
【人物背景】
イギリス王立国教騎士団「ヘルシング機関」局長、インテグラル・ヘルシングの執事。
かつてはヘルシング機関の主戦力であり、一線を退いた晩年においても生半可な吸血鬼では相手にならないほどの戦闘力を誇っていた。
主人や仲間たちからは絶大な信頼を寄せられつつも、実は影で敵対組織「ミレニアム」と内通しており、戦いの中で寝返る。
(裏切りにいたるまでの詳しい経緯は不明だが、状況証拠から突発的なものではなく計画的なものであったことがうかがえる)
人造吸血鬼となる処置を受けて全盛期の力を取り戻し、好敵手であったアーカードに挑むも、無茶な施術により得た力は短時間しか保たず敗北。
最後は裏切り者として彼なりのけじめをつけ、死んでいった。
今回はサーヴァントとなったことにより、全盛期かつ人間の肉体で現界。
またストレイツォに召喚されたことにより、「裏切り者」としての側面が強調されている。
【サーヴァントとしての願い】
ストレイツォの願いを叶える。
【マスター】ストレイツォ
【出典】ジョジョの奇妙な冒険
【マスターとしての願い】
永遠の若さを手に入れる。
【weapon】
○マフラー
波紋の伝導効率が非常によい、ある虫の腸から作られたマフラー。
本来の世界ではジョセフの波紋を散らす防具として使っていたが、攻撃に使うことも可能だろう。
【能力・技能】
○波紋
体内に太陽光と同じエネルギーを作り出す、特殊な呼吸法。「仙道」とも呼ばれる。
太陽光が弱点である吸血鬼やゾンビに対しては、非常に強力な武器となる。
それ以外にも「自身の老化を遅くする」「物をくっつけたり弾いたりする」「簡単な催眠をかける」「傷の治癒を早める」などその効果・使い道は多岐にわたる。
【人物背景】
波紋使いの長・トンペティの高弟。
兄弟弟子であるツェペリからの協力要請に応じ、師匠と友にウインドナイツ・ロットの戦いに参戦した。
トンペティの死後はその地位を受け継ぎ、信頼の篤い指導者となる。
しかしその一方で波紋でも防ぎきれない老いの影に怯え、かつて戦った吸血鬼・ディオの美しさに羨望を抱いていた。
今回は第2部開始直前、吸血鬼となる前からの参戦。
【方針】
聖杯狙い。
以上で投下終了です
皆様、投下お疲れ様です
自分も投下させていただきます
やり直さなければ。
人類がここまで至ってしまった歴史を。
だれにも疑われずに繰り返される戦争を。
闘争によって世界を維持し続ける人類を。
そのための紛争の火種を撒くために人類の「敵」をも演じてきた「首領蜂」を。
聖杯戦争の舞台となる疑似的な電脳世界に降り立った『彼女』は思った。
◆ ◆ ◆
拠点となる施設にある工房。
工房といっても魔術師が構えるようなものではなく、機械系のエンジニアのそれだ。
灰色のコートを身に纏い、その内部は下着同然のきわどい恰好をしている女性がその中に佇んでいた。
目は大部分が紫色の瞳が占めており、白目はほとんどない。
不気味でどこか冷たい印象を持たせる女性であった。
ふと、彼女は自身のうなじに触れる。
「やはり、『ない』…」
ない。元々は彼女のうなじから背中にかけて存在した兵器への接続やメンテナンスに使う電線の差し込み口がないのだ。
そのことに女性型アンドロイド「エレメントドール」の一体、エクスイは戸惑いを隠せなかった。
エレメントドールとは戦闘機に装填することで戦闘機全ての兵器プログラムを管理し、武装の強化を図る戦闘用ロボット。
装填される際は身体から無数の電線を戦闘機に繋げ、コックピットとは別の収納スペースに入る必要がある。
電脳世界でのエクスイの身体は、この世界に来る前よりかは少しだけ人間味を帯びていた。
「でも、兵器の強化はできるみたいね。…それも戦闘機以外の兵器も」
エクスイが顔を上げる。
その視線の先には、巨大な影があった。マスターとなったエクスイに宛がわれたサーヴァントのものだ。
しかし、その容姿は通常の人間にイメージされる輝かしい英雄のそれではなく、ただ無機質で自我などない、兵器そのものであった。
ライダー、またの名を電光戦車。
くすんだ灰色のボディに、車体の頂上にある髑髏が特に目立っている。
髑髏の眼窩にうっすらと見える目のようなものと視線が合えば相対した者は得体のしれない恐怖に襲われることだろう。
「ライダー、こっちに来なさい」
『…………………』
キュラキュラとキャタピラを動かしながら、電光戦車はエクスイの元へ寄る。
傍らへやってきた電光戦車のボディに手を当て、かつて敵のマザーコンピューターにダイブした時の要領で電光戦車の内部へ接続する。
その時、電光戦車の中へダイブしたエクスイには『見えていた』。
機銃、火炎放射から前方の全てを焼き尽くし一掃する『ギャラルホルン』までの兵器を司るプログラムが。
ひとまず機銃を制御するプログラムを兵装に最適化し、強化してやる。
『ピピピピピ…………???』
「2、3発撃ってみなさい」
それを受けて、電光戦車は何も言わずにただ前輪の間に存在する銃口から弾を発射する。
それだけで、その先にあった工房の壁をボロボロに砕き、大人が入れる程度の穴を開けてしまった。
戦車の駆動音と共にかなりの轟音が響いたが、時刻は深夜だったために以上に気付いて寄ってくるNPCはいなかった。
「形は変わってるけれど、エレメントドールのやれることは変わってない…それどころか増えてるわね」
前回撃たせた時よりも、格段に威力が上がっている。機銃は電光戦車の武装の中でもかなり威力の低い部類であるにも関わらずに、だ。
電脳世界に来て強化する兵器に有線で接続できなくとも、武装を強化するというエレメントドールの本分は失われていなかったようだ。
本来は戦闘機にしか利用されていなかったエレメントドールだったが、ここでは戦闘機以外の兵器も強化できるらしい。
「戦争に勝つためにこのアドバンテージを利用しない手はないか」
無線で接続してあらゆる武装を強化でき、それは自分のサーヴァントの戦車にも有効。
聖杯を手に入れてそれにかける願いのあるエクスイにとっては願ってもないことだ。
「争いを繰り返して安定を保つなんてこと…あってはならないのよ…」
エクスイはあの瞬間を思い返す。
月の機械兵団との最終決戦で敵のマザーコンピュータにダイブした時のことを。
エクスイは、敵のマザーコンピュータ内で『真実』を見てしまった。
これまでの人間が歩んできた歴史を。「首領蜂」の正体を。
「首領蜂」は過去、7年間もの『正体を隠したまま味方同士を潰し合わせる軍事演習という名の戦争』に勝利した兵たちで構成された最強の部隊。
彼ら「首領蜂」の登場により、人類は戦争によって世界を維持するようになった。
増えすぎた人口、留まることなく進む環境汚染。これらの社会問題を全て解決するにはどうしたらよいか?
人類は、これらを『戦争』という形で解決してきたのだ。
増加し続ける人口と人類による環境破壊を、報復戦争という誰も疑わない形をもって抑制すること、
その為に、常に紛争の火種をばら撒き続け、時に人類の「敵」をも演じる戦争運営組織の実働部隊。
それが「首領蜂」なのだ。
そしてそれらの問題の解決のために、何も知らず戦争を繰り返し続けているのが人類なのだ。
それを知ったエクスイは発狂し、自身のパートナーであるはずのパイロットを殺害、自身も破棄された。
その過程で悩みつつも、エクスイは答えを出した。
「やり直さなければ」、と。
「ねぇ、あなたもそう思うでしょう…?ライダー」
再びエクスイは電光戦車の中…そのさらにもっと奥の中枢へ接続する。
『……』
『…………』
『……………………』
『………………………………』
『………………………………………ア』
静寂が支配していた電光戦車の中枢から、エクスイの頭にかすかな声が響いてくる。
それは何も語らない兵器であるはずの電光戦車の悲痛な叫びだった。
『…アツイ……コワイ…チガ……シニタクナイ…カアサン…カミサマ……オレハ………ニ――』
『――ニンゲ…ン……』
電光戦車。かつて秘密結社ゲゼルシャフトで量産された『それ』は生きた人間…それも負傷して戦えなくなった兵を材料として開発されていた。
電光機関の電力源にするために身体を生体パーツに組み込まれ、自律駆動を実現するために頭脳をも利用された。
ある者は家族との再会を願い。ある者は神による救済を願い。
ある者は材料にされることに憤り。ある者は耐えがたい激痛に嘆いた。
エクスイのサーヴァント、ライダー。
その本体は電光戦車という『宝具』ではなくその中に組み込まれた中身であり、エクスイはそれに気づいていた。
「争いがなければ、『あなた達』もこんな目にあう必要はなかった」
争いの切欠を断つ。そして戦争を繰り返す人類の在り方をもう一度過去からやり直すことで正す。
その願いためにエクスイ自身も、戦争へと挑むのだ。
万物の理は闘争に有るなど断じて認めない。
人類の在り方を否定する。それはつまり、エクスイは人類の敵になったことを示していた。
もはや人類の味方であったエレメントドールではいられない。
元の世界に帰還し、人類と対峙した時、彼女は自身をこう称するのであろう、「エレメントドーター」と。
【クラス】
ライダー
【真名】
電光戦車@アカツキ電光戦記
【パラメータ】
筋力A 耐久A 敏捷E 魔力B 幸運E 宝具A
【属性】
秩序・悪(暴走によって変動する可能性有り)
【クラス別スキル】
対魔力:E
魔力に対する守り。無効化はせず、ダメージ数値を多少軽減する。
騎乗:-
ライダークラスにあるまじきことだが騎乗スキルを所有しない。
厳密にはライダーは乗っているというよりも『組み込まれている』からである。
【保有スキル】
複製:E
ライダーが量産可能であることを示すスキル。
その特性から一体あたりの現界による魔力消費は非常に軽く、Eランクならば3体で本来のサーヴァント1体分の魔力消費になる。
マスターの意思で魔力が許す限りライダーを追加召喚し、戦わせることができる。
無我:A
ライダーは自我を持たず、マスターの指示に疑問を抱かずただ従う。
言葉すら発することはなく、聞くことができるのは『電光戦車』の駆動音だけである。
Aランクならば令呪なしでNPCの殺害や自害を実行してしまう。
また、あらゆる精神干渉を完全に無効化する。
しかし、人格に目覚めて暴走する例が多数報告されており、その場合このスキルは失われる。
単独行動:B
マスター不在・魔力供給なしでも長時間現界していられる能力。ランクBならば二日程度活動可能。
【宝具】
『電光戦車(ブリッツ・タンク)』
ランク:A+ 種別:対軍宝具 レンジ:1〜100 最大捕捉:1〜50人
「禁断の決戦兵器」の異名を持つ自律駆動の戦車『電光戦車』。電光機関を動力源とする。
ゲセルシャフトで量産され、世界侵攻の切り札として運用されたライダー自体が宝具となったもの。
複製スキルで量産でき、電光戦車が一体でも残っている限りはライダーが消滅したことにはならない。
電光機関による強力な電磁波での電子機器の無力化、光学兵器による誘導弾の撃墜が可能。
電光戦車を動かす電光機関は、生体エネルギー源『ATP』を電気に強制変換する装置であり、人間の生体エネルギーが必要不可欠である。
その為、この兵器には複数人の"生きた人間"が組み込まれており、負傷して戦えなくなった兵士が主に使われた。
電光戦車はあくまで宝具であり、ライダーの本体はその『中身』の生きた人間。
前述のように組み込まれた人間達の人格が暴走し、自我を持つことがあるが、複数人の人格が混濁した状態で、理性を保っているとは言い難い。
【weapon】
・電光機関
電光戦車に組み込まれている特殊機関。
その正体はチベット・ツァンポ峡谷に存在していた古代文明アガルタの遺したオーパーツ。
装備することで無尽蔵に電力を引き出す事が出来る。
この強力な電力で敵の装甲を溶かし、発生する電磁波により電子兵器を一切無効化する。
他にも高圧な電気をレーザー状に放ったり、機体の周囲に電気を放電するなど、様々な応用が可能。
本来、電光機関は生体エネルギー(ATP)を変換して得られるものであり、使い続けると死んでしまうという欠点を持つが、
電光戦車は中身に負傷兵を複数組み込み、その身体をエネルギー源にすることで電力を引き出している。
・電光機関を動力源とした武装
機関銃、火炎放射といった対人兵装から、絶大な威力を誇るレーザー砲まで幅広く搭載している。
前輪のキャタピラで人を轢いたり頭部の骸骨で頭突きといった直接攻撃も可能。
【人物背景】
外見は髑髏の装飾がされた戦車だが、その実態は電光戦車の材料にされた負傷兵の無念、怨念といった感情がサーヴァントとなったもの。
その有り様が『電光戦車に乗っている』と曲解され、ライダークラスとして召喚された。
本体は電光戦車の各機体に内蔵されている人間(だったもの)。
動かせる肉体を持たないため、電光戦車の機体が肉体の代わりとなる。
実質的に電光戦車と同化しているため、誰もが電光戦車をサーヴァントと信じて疑わないだろう。
【サーヴァントとしての願い】
……………………………………………………。
【マスター】
エクスイ@怒首領蜂大往生
【マスターとしての願い】
やり直す。
【weapon】
・エクスイの製造した兵器
【能力・技能】
・兵器に関する知識
エクスイは破棄された後に数々の軍事物資を用意して数千年前のA.D.2008年に転送した他、
巨大なロボットを製造していることから単体で相当な技術力を持つ。
また、自身にも改造を施して巨大ロボットへと変身しているように、自己改造も可能。
・エレメントドールの兵器強化能力
エクスイはエレメントドールであり、機械に接続することですべての兵器プログラムを管理し、武装の性能強化を図る。
本来は戦闘機の性能を強化することにのみ用いられていたが、今回の聖杯戦争では戦車や艤装など、機械系のものならば全てに有効。
また、兵器に接続する際は有線で行わねばならないのだが、
今回の聖杯戦争の舞台が電脳世界であるからか、その能力に何らかの変容が生じ、無線で兵器に接続、強化が可能。
【人物背景】
弾幕STGゲーム「怒首領蜂大往生」に登場する、戦闘機の専用ナビゲータであり、知性や感情を持つ兵器強化用人型ロボット「エレメントドール」。
主人公(パイロット)のパートナーとして選択できるエレメントドールのうちの一体。
露出度が非常に高い服装に灰色のコートを羽織っている。
数世代前の旧式エレメントドールで、パイロットの安全性よりも機能及び武装面を重視して作られた。
そのため、搭乗するパイロットに対しての配慮に欠ける面が多いが、上級パイロットには大変好まれていた。
地球を侵攻しようとしている月の機械兵団との最終決戦にて、
エクスイはマザーコンピューターに飛び込みコンピューター内に負荷をかけ、敵の演算能力を落とすことでパイロットと共に勝利をつかんだ。
しかしマザーコンピューター内で月の兵器の動乱の真実を知り発狂、パイロットを殺害する。
人間に手をかけたことでエクスイは破棄されてしまうが、
その時にエクスイが流した血のようなオイルの涙は、「本当の敵は人間だったのだ」という彼女の悲しみを伝えるものであった。
【方針】
聖杯狙い。
邪魔をするものは容赦しない。
以上で投下を終了します
投下します。
「────『深紅に染まれ、獣との戦い(レッドファイト)』!!!!!!」
◆
無機質で生気のないランサーが投じた、それはあまりにも唐突な一声。
と、同時に張られたのは──ランサーの、固有結界の宝具であった。
此処に居るセイバーのサーヴァントが巻き込まれたのは、まさにその宝具だった。
……固有結界が張られるなり、敵の気配がその瞬間、電源を切ったように遮断される。
……不安を煽る、不規則な打楽器のようなバックミュージックが耳を打つ。
……どこに相手がいるのか、自分が何に迷い込んだのか、彼は息を飲みながら判別した。
見渡す限り、そこにあるのは無限の砂浜だけ……である。
まるで、どこかの異国のようにさえ思えたが、決してそういう訳でもなく、日本の田舎の辺境──ただの砂浜のようだった。
通常、固有結界といえば、そのサーヴァントに有利な空間である筈なのだが、セイバーのパラメーターは上昇も下降もせず、敵の魔力にも変動の様子はない。
しかし、だからこそ、ランサーの張った固有結界は、セイバーにとっては奇妙だったのだろう。
彼に出来るのは、ただただ戸惑う事ばかりであった。
見えている景色そのものは、やはり──正真正銘、ただの小汚い朝方の砂浜に過ぎない。
兵の夢の跡とも、魔術によって構成された幾何学空間とも言い難い。
実際の砂浜に場所を変えても、何ら意味の変わらない光景だっただろう。
固有結界として発現される心象風景としては、あまりにも寂しく、ありふれた地であった。
だからこそ、正体を知るには手がかりに乏しかった。
何故、このような変哲のない場所が、一個の英霊の固有結界になり得るのか。
この空間から相手の真名を特定するのは不可能であろうという事だけは、即座に判断する。
「──私の背に隠せよ、マスター」
セイバーは、共にこの結界に誘われたマスターの前に立った。
──彼を守らねばならぬ。
それが、騎士たるサーヴァントの勤めであった。
もしかすれば、生前は武将か騎士だったのだろうか。
ただ、わかるのは、彼が忠義のあるサーヴァントに違いなかったという事のみである。
◆
……セイバーは、数秒前の事を回想する。
セイバーは、自らの主とともに、買い物の帰路、街を歩いていた筈だった。
その最中、彼らは、「赤いランサー」の姿を見出したのである。
その「赤いランサー」は英霊としての気配を隠す気配もなく、ただ、路地裏で立ち構えていた。
路地裏に隠れるように立ちすくんでいたとはいえ、白昼ではランサーの姿は嫌でも目立った。
ランサーの姿は、異質だった。──彼は、ヒトの姿を保っていない。
いや、確かに彼は二足歩行をしてはいるのだが、それ以外は全く、皮膚らしきものすらも血肉の色の見えない不思議な外形だ。
エイリアンのように銀色と赤の肌に包んでいる。それから、無機質な瞳や、歪な頭蓋骨であった。それ以外は、殆ど人間に近しいが、やはり人間と呼ぶには決定的に違っていた。
怪物と呼んでも良い気がしたが、むしろ、かつてのテレビ番組の巨大ヒーローのように、赤と銀色の配色の「正義の味方」の方に似ており、それはただの純粋な怪物とは思えない。
しかし、その生物を指す呼び名は必要なかった。
所詮は、セイバーもランサーも同じ、一介のサーヴァントに過ぎず、実在の人間か否かさえも英霊には無関係な物差しでしかない。
必要なのは、サーヴァントとサーヴァントが会った時に、何が始まるのか……という事である。
サーヴァントの気配を感じた瞬間より、それから先の行動は心に決めている。
「────御免ッッ!!!」
セイバーは、それから、間もなくして、暗い路地裏に──ランサーのもとに飛び込んだ。
自らの宝具である剣を現出し、ランサーへと凄まじいスピードで肉薄する。
──敵がサーヴァントであるのは明白で、だとすれば直接戦闘で葬るのみ。
挨拶が遅れる事になるが、敵もサーヴァントである以上、こちらの気配を読んでいるはず。
とすれば、当然相手も身を守るだろうし、次の瞬間には、この剣と、彼の槍とが火花を散らすのが聖杯戦争の常であるはずだった。
「────ッッ!!!」
ランサーも、やはり、襲われるより先にセイバーの存在に気づいているのは間違いない。
ちらり、とその生気のない目玉がセイバーを向いた。
その瞳がセイバーの方を向いた刹那、ランサーの口元は、些か冷静に告げた。
この宝具の名を────『深紅に染まれ、獣との戦い(レッドファイト)』を。
──結果、セイバーはこの結界にかかったというわけである。
……やはり、ランサーもただ其処に佇んでいたわけではないらしい。
いわば、他のサーヴァントを迎え撃つ為のネズミ捕りで、最初から付近に敵が寄って来た場合に固有結界を発動するつもりだったのであろう。
彼が結界宝具を持ち合わせ、それをこうして出し惜しみせずに罠として駆動させたのは些か意外であった。
結局のところ、其処に居たサーヴァントが本体なのか幻影なのかはわからなかったが、それはこうして捕らわれた後も関係がなかった。
セイバーは、七つのクラスの中では、最高クラスの英霊だ。
マスターもセイバーのクラスを引いた時点で、相応の安心を獲得した事であろう。
更には、セイバー自身もその宝具にも絶対の自信を持ち合わせ、乱立するビルの二、三本を吹き飛ばしてランサーを撃滅する技も持ち合わせている。
勿論、罠である可能性も、あらかじめ多少は考えていた。
──が、仮に罠だとして、ランサークラスと罠の中で互角以上に張り合う心づもりがある。
(この結界……、一体……)
今はランサーの姿が見当たらなくなったこの結界の内部で、周囲を見回した。
武器になりそうな物は何一つとしてなく、寂しい心象空間ばかりが広がり、却って余計な不安に囚われた。
相手の魔力が消失し、同時に、背に居るはずのマスターの魔術の気配さえも、彼は感じる事ができなかった。
そして、自らの宝具の剣を目にした時、彼はふと気づく。
──剣の力が、少し弱まっている気がした。
気づくには些か遅すぎたかもしれないが、しかして、答えに気づかないよりはマシであるかもしれなかった。
彼の考えは、ほとんど正解に近かった。
────よもや、これは、お互いが、武器を失い、「『プロレス』をする為の結界」なのではないか、と。
◆
と、その時である。
ランサーの声が、その場に轟いた。
「────レッドアロー!」
セイバーが、背後を振り向く。
すると、其処に、敵は居た。
ランサーのサーヴァントは、セイバーの遥か後ろに、立ちすくんでいた。
気配を消し、アサシンのサーヴァントのように、セイバーを狙ったのであろう。
──そして、その瞬間には既に勝負が決していた。
「──ッ」
セイバーの背中から、十字型の槍が胸元に向かって突き刺されている。
奴は、あの距離感から、槍を投擲したのだ。──互いの気配が読めないこの空間を利用して。
まさしく、暗殺者のようだが、槍使いのサーヴァントと呼ぶべき、この道具の運用……。
「ぐおッ……」
レッドアローと呼ばれた槍は、セイバーの肺を突き破る。
セイバーの身体からは一時、呼吸が忘れ去られる。
──と、同時に刺し貫かれた胸元の穴に、血液が殺到し、耐え切れず、噴き出た。
それは、一斉に外の世界を目指して駆けあがり、セイバーの口からも逆流して吐き出される事になった。
「セイバー!!」
マスターが、自らの守護をするはずの英霊の名を呼ぶ。
しかして、それは守護の力を失いつつある時だった。
やはり、勝負は、「決した」のである。
(……真後ろからとは、卑怯なり……ッ)
魔力による回復が行われるよりも速く──ランサーのサーヴァントは、倒れかけたセイバーの身体に向けて疾駆した。
マスターは、その勢いに呑まれ、咄嗟に自らの相棒から、距離を置いて、すぐに逃げ出そうとした。
不安げにマスターは振り返ると、サーヴァントの口が、「にげろ」の言葉を象る。
英霊の口から吐き出された血液が、そして、言葉が──砂塵の中に埋もれていく。
それを糧に、彼は仲間を捨て駒にする正当な理由を得る事に成功した──それだけが、この一戦でセイバーの遺した唯一の成功である。
直後……ランサーは、セイバーの体から血濡れの槍を抜き取った。
それが抜かれると同時に、セイバーの体は、まるで糸が切られた人形のように、地面に斃れ行く。
倒れたセイバーの身体に馬乗りになり、再び、レッドアローをセイバーの身体に突き刺し続ける。
「──ッ!」
まるで、念入りに殺す義務があるかのように。
ランサーは、無機質なロボットのように、言葉もなく、表情の変化もなく、ただレッドアローで、繰り返す。
セイバーの身体に、幾つもの穴が形作られ、死体のようにも見えるセイバーを、まだ足りぬと突き刺した。
ランサーのスキル『加虐体質』である。
これが発動し、セイバーの攻撃の度に、ランサーはオーバーキルを始めたのである。
一撃と共に、面白いほどにまた、口元から血液の逆流が始まる。
砂の上を、深紅の小川が、曲がりくねりながら走りだしていく。
「──」
そして──それも、マスターの後ろで、遂に止まった。
ただ、血液の小川だけが動いていた。
「──」
セイバーは、既に、奇襲を受けて斃れた肉塊に過ぎなかった。
セイバーの命が絶えたのは、魔術の気配が消えていようとも明白だった。
腹を、胸を──あれだけ突き破られ、血の海の上で突っ伏している彼は、既に……。
それでも、言葉さえもなく、まるで殺人だけを行うマシンのように、レッドアローをセイバーに突き刺していく。
ある種の義務感に取り憑かれた生物は、もはやマシンのようにさえ見えるが、ランサーはまさにそれなのだ。
相棒を失ったマスターは、そのサーヴァントを怖れた事だろう。
自分の従者セイバーが持ち合わせていた「英霊」としての誇りは、ランサーの内には皆無だった。
あまりにおぞましく、そして、残虐で容赦がない。
自分が足を踏み入れてしまった、『聖杯戦争』とは、一体何なのか──彼は、今ようやく実感として悟った事だろう。
それは、決して遊びではなかった。
「へへへ……そいつが、俺の『サーヴァント』って奴なんだよね」
と。
セイバーのマスターの前から、気配の無かったランサーのマスターの声が聞こえた。
見れば、目の前に居たのは、高校生ほどの童顔の少年である。──明るそうな顔立ちの男の、無邪気の笑顔が張り付いている。
状況が状況でなければ、その笑顔に騙されそうなほどに、悪人の匂いのしない笑顔だった。
ただ、この状況で出会ったセイバーのサーヴァントには、彼が表情を作り上げ、嘘を吐くのが上手い人間のようだという事が手に取るようにわかった。
セイバーのマスターは、逃げ道を奪われ、立ち止まる。
もはや、恐怖はない。正義感もない。目の前の相手が少年の姿をしているからだった。
仮にもし、これが一目見て恐怖を煽る外形だったなら、あるいは、凶器を手にしていたならば、それこそ、彼も平伏し、命を乞うかもしれない。
しかし、やはり、少年の姿を前には、何も湧かなかった。
少年は、口を開いた。
「でさぁ、あんたもマスターなんでしょ?
あんたのサーヴァントいなくなったし、今ので負けって感じかな」
「──」
彼は、答えなかった。
ただ、目の前の敵くらいならば自分に勝ち目があってもおかしくはなく、結果的に同士討ちに持ち込めるかもしれないと思った。
そんな覚悟を知ってか知らずか、彼は淡々とした口調で、続きを口にした。
「……まぁいっか。
あんたに恨みはないけど、とりあえず俺負けたくないんだよねー」
このランサーのマスターの名は、「霧島純平」といった。
だが、セイバーのマスター──いや、既にマスターでもない一人の人間にとって、彼の名などどうでも良かったかもしれない。
自分よりも多少若い程度の少年……殺す事にも躊躇はない。
彼を殺せば、ランサーも現界を続けられるかが怪しくなるだろう……。
と、セイバーのマスターだった男は、ポケットに隠していた折り畳みナイフを取り出す。
これが、唯一、自分が生き残る術だと悟り──タイミングを計る余裕すらなく。
ただ、我武者羅に、霧島を殺そうと駆けだした。
「──レッドナイフ!!」
──だが、セイバーのマスターの背後。
そこには、既にランサーの姿があり──セイバーのマスターだった男に先んじて、安物の折り畳みナイフなどとは比べ物にはならない刃渡りのアーミーナイフが抜きだされた。
そして、その刃が向けられた相手は、セイバーのマスターだった男に違いなかった。
彼の背中の皮膚を抉りだすように、レッドナイフと呼ばれたナイフが突き刺さる。
「ぐあああああああああああああああああああッッ!!!!!」
セイバーのマスターだった男の手から、折り畳みナイフを握る力さえも失われた。
その小さなナイフが、砂の上に落下し、その上を血が穢した。
ランサーの『加虐体質』は、たとえ人間が相手であっても、例外にはない。
「……つーわけで、これで完全に俺の勝ちかな?」
断末魔が響くが、霧島は最早、そんな光景そのものには興味がなかった。
彼は、相手の命が奪われていく事実そのものは、別にどうでも良かったのかもしれない。
いま面白いのは、聖杯戦争で自分が一歩、勝利に近づいた事と、退屈な人間が一人苦しんでいるという結果そのものだ。
彼は聖杯戦争が楽しくて仕方が無かった。
退屈で規則的な毎日を破壊するのに、丁度良かった。
それこそ、自分の貌を隠さなくても良い──そんな最高の居場所であった。
「……ぁ……ぅっ…………」
彼の声が弱っていくのを耳にしながら、霧島は、つま先で地面に穴を開けて遊んでいた。
それも何となく、柔らかい砂が穴の中に沈んでいくのが面白く見えたからやっただけで、意味はない。
幼児が砂で遊ぶのと何ら意味は違わなかった。
彼の視線の先には、埋もれて行く砂塵があり、その隣には、断末魔の悲鳴をあげていた男が遂に力尽きた。
……ただ、それだけだった。
「──あー、ほんと……面白えなあ、このゲーム。
もしあいつがこの光景見たら、一体どんな顔するかなあ」
敵のマスターを殺したランサーが、やはり機械的に、霧島に寄っていった。
セイバーのマスターだった男の血みどろの肉体が、砂の上に残る。
これが──今日の戦果、というわけだ。
芸術的とは言い難いが、彼の目的は別に死体を芸術にする事というわけではなかった。
ただ、聖杯戦争で勝ち残る事で──その果ての願いというのも、別になかった。
「よし、ランサー。今日はこれで終わりっ。
……次に会う奴はもっと面白いといいなぁ」
敵の殲滅が確認されると、『深紅に染まれ、獣との戦い(レッドファイト)』の宝具の効果が切れる。
どちらにせよ、この宝具は五分しか発現できない固有結界だ。
丁度、時間切れと宝具の解除は同時くらいだっただろうか。
「──」
彼らがいた場所は、再びただの路地裏に戻り、戦闘の痕も、二人の人間の肉体も、跡形もなく存在しなくなっている。
厭が応でもその姿が目立って仕方が無いランサーは、霊体化し、常人には可視されない領域に潜んだ。
「さて、帰るか……」
霧島も、帰路に就く。
ランサーもそれに、霊体化したまま追従した。
──ランサーの真名は、『レッドマン』と言う。
悪しき怪獣を葬った平和を愛する戦士でありながら、その伝説は、あまりに残虐の戦いの記録であった。
一人の正義の英雄と呼ぶには、あまりにも冷徹で──そして、無意味な虐殺に満ちた戦士であった。
それらの事実は、霧島も別段興味のない事だったし、ランサー自身が喋る事もなかった。
ただ、ある意味で、彼らの相性は、思想の違いこそあれど、決して悪い物ではなかったのだろう。
それこそ、忠義の絆を超えるほどに。
【CLASS】
ランサー
【真名】
レッドマン@レッドマン
【パラメーター】
筋力:B 耐久:B 敏捷:B 魔力:D 幸運:D 宝具:B
【属性】
混沌・悪
【クラススキル】
対魔力:E
魔術に対する守り。
無効化は出来ず、ダメージ数値を多少削減する。
【保有スキル】
加虐体質:A
戦闘時、自己の攻撃性にプラス補正がかかる。
これを持つ者は戦闘が長引けば長引くほど加虐性を増し、普段の冷静さを失ってしまう。
攻めれば攻めるほど強くなるが、反面防御力が低下し、無意識のうちに逃走率も下がってしまう。
対怪獣:C
戦闘時、敵のサイズに応じて自在に自分のサイズを上下させる。
Cランクの場合は、最小でミクロ単位、最大で40m級までサイズを変える事が可能。
ただし、その大きさの敵対生物がいない限りは自分の意思では変化できない。
【宝具】
『深紅に染まれ、獣との戦い(レッドファイト)』
ランク:B 種別:結界宝具 レンジ:1〜50 最大捕捉:1〜6人
ランサーの固有結界。
敵対する相手と戦う為のフィールドであり、野原や砂浜を模した心象空間。
この戦闘空間においては、如何に強力なサーヴァントも宝具を用いた派手な攻撃が出来なくなり、泥臭い格闘戦を強いられる。
つまり、特撮映像と見紛うようなエフェクトと共に行う技や宝具はこの空間では使用できず、手持ちの武器をぶつけるか格闘技を駆使して戦う他ないのである。
また、この空間ではサーヴァント双方が、サーヴァントとしての気配を打ち消し合い、実質的にはお互いが「気配遮断」のスキルを発動したのと同じ状態になる。
その為、初めは敵対者の姿を確認する事が要され、その性質を知るランサーがこの空間では先手を取りやすくなる。
ただし、この固有結界を張る事が出来るのは最大で五分が限度で、それを超過すると結界は消失し、元の空間へと還る。
【weapon】
『レッドアロー』
『レッドナイフ』
【人物背景】
レッド星雲のレッド星からやってきた平和を愛する戦士。
しかし、後の伝説においてはその残虐性が取り沙汰され、平和を愛する戦士としての像を求める事は現代では難しい。
その所以は、悪事を働いたか否かを考慮せず、無差別に怪獣を葬る事で平和を実現しようとした性格にある。
レッドマンは、野原に出現した無害な怪獣を、容赦なく撲滅し、殺害する。
たとえ、伝説上では少年の変化した姿であるカネゴンなどの怪獣も容赦なく殺害する。
また、レッドマンは敵味方問わず意思疎通は一切行わず、掛け声や技名、宝具の名以外は口を開く事がない。
それ故、彼の思考を読む事は出来ず、全ての戦いは彼自身の判断に沿って行われていく。
【サーヴァントとしての願い】
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【基本戦術、方針、運用法】
戦闘時以外は極度に無口な性格なので、会話などを行うのは不可能。
ただし、容赦なく自陣営以外のサーヴァントを襲う性格でもあるので、マスターの制御下を逃れる事はなく、マスターの命令も聞く。
大抵の命令はロボットのようにこなしてくれるが、一応意思を持つ存在なので、理不尽な命令は聞いてはくれない。
戦術としては、武器そのものの戦力は、英霊を刺し貫けるほどであっても、他の対人宝具ほどは強くないので、『深紅に染まれ、獣との戦い(レッドファイト)』に引きずりこむのが前提となる。
ただし、基本的に、パラメーターが低い相手ならば『深紅に染まれ、獣との戦い(レッドファイト)』で殲滅できるが、バーサーカーなどの基礎戦力の強い相手はこれだけで倒すのは難しいかもしれない。
【マスター】
霧島純平@高遠少年の事件簿
【マスターとしての願い】
退屈な連中を恐怖の底に沈めるような面白い事がしたい。
聖杯戦争が終わらずに永遠に続くとしたら、それがサイコーの願いかもしれない。
【weapon】
なし
【能力・技能】
県下の名門進学校・秀央高校に、最優秀成績学級の特Aクラスで入学できる知能派。
簡単なマジックが出来る体を装っているが、実際は多少複雑で難度の高いマジックも出来る模様。
また、社交的で、裏の顔を隠しながら、表向きは善良で人当たりの良い生徒として振る舞うが、反面で、何の躊躇も理由もなく他者を殺害する事が出来る性格でもある。
そして何より、自分の死のその瞬間でさえも、それが面白ければ笑いながら死ねるほど、生命倫理には乏しい。
自分と同質の人間を見分ける事が出来、もしサイコパスのマスターがいたとすれば、彼がそれを見つけられてもおかしくはないかもしれない。
【人物背景】
秀央高校一年生で、マジック部の一員。
主人公・高遠遙一のクラスメイトで、気さくで明るい性格で、近寄りがたい高遠を引っ張っていく友人。
しかし、その正体は、高遠遙一同様の「天性の犯罪者」にして、正真正銘のサイコパス。
高遠の場合、その性質が刺激され、殺人鬼との覚醒の引き金となったのは、「母親が殺された」事であるが、彼の場合は、おそらく「家庭で異常なまでに抑圧され、家族の愛を一切受けなかった事」の模様。
同情できる事情を持つ者が多い「金田一少年の事件簿」のシリーズにおける犯人としては、珍しいタイプで、当人には何の非もない藤枝つばきなども容赦なく殺害し、死体の首を斬る猟奇性を見せた。
ただし、無差別殺人を行うというわけではなく、彼なりに琴線に触れた相手のみを殺害対象として選んでいる(その理由も理解し難いが)。
高遠の事は友人だとは思っているようで、その理由は「高遠が自分と同じタイプの人間だという事を見抜いたから」らしい。
だが、その高遠の挑発を受け、最後には躊躇なく殺害しようとしており、結局は彼と人間はほとんどいないのだろう。
【方針】
敵を無差別に殺害したい。
ただし、これはゲームなので、一般人ではなく、マスターやサーヴァントを優先。
おそらく、ランサーも一般人の無差別殺人は行わず、サーヴァント狙いなので、その点は彼に従う事にする。
以上、投下終了です。
投下します。
ショッカー。それは、かつて──1970年代に世界を暗躍し、世界征服を企てた秘密結社の通称である。
秘密結社といっても、あの有名なフリーメーソンなどとは異なり、この「ショッカー」の通称が一般に流通する事は、まず無い。
確かに、ごく一部のディープなオカルトマニアが「ゲルダム団」などの組織と併せてその名前を出す事はあるが、一般社会でその日を繋いでいる現代の若者がショッカーやゲルダム団などの名前を知る余裕はないのだろう。
仮に知ったとして、その名を刻み続けるなどという者は、それこそ一握りであるし、詰め込んでも仕方のない余分な知識の一つと見なされるに相違なかった。
例えるなら、歴史の教科書に載らない戦国武将や、数十人のアイドルグループの一端で踊る少女と同じだ。
名簿の上に名前があっても、それが人々の記憶に留められる機会を得るのは、至極薄い望みなのである。
また、近年、この秘密結社の活動は一切なく、70年代〜80年代を境に、類似組織の活動すらも一斉に途絶えたのも、その存在に関心を持つ者が減少し、語られる機会が見受けられなくなった所以であろう。
実のところ、ショッカーは世界を暗躍し、制服の一歩手前まで歩を進めたはずの組織であったが、今は壊滅し、既に僅かな残党(これも還暦を超える人間しかいない)が存在するのみだ。
そして、生き残った彼らも、自ら自分がショッカーの構成員であった事を漏らしはしないし、家庭を築くといったありふれた幸せさえ得ようとせず、孤独に口を噤んで生きているという。
多くは、職業も住所も転々としながら、密かにショッカーの再興を夢見て、その日を生き抜いている事だろう。
……だが、疑問に思わないだろうか。
こんな事が、果たしてこの現代、ありうるのだろうか?
数万人規模の組織に裏切りが出ず、情報漏洩が今日まで一切行われない徹底した秘密主義など、インターネットの管理下にある我々に考えられるのだろうか?
目の前の道具が、これまで幾つ個人や企業の隠したい秘密を暴き、そして、永久にネットの海上に晒してきたのか知る者たちが、それを信じられるだろうか?
──しかして、それを可能にしたのがこの偉大とも言える秘密結社なのであった。
ショッカーは、世界各国の優秀な科学者、博士が結集し、人類が本来ならば30年後、いや、40年、50年後に初めて表立って得る事になるような最新鋭の科学を、昭和時代に既に導入していたという信じがたい技術力の組織なのである。
たとえば、分かりやすい話ならば、2006年に山中伸弥氏とその研究チームが発見したiPS細胞などは、70年代の時点でとうにショッカーの科学班が発見しており、ショッカーの主力である「ある技術」に応用する形で利用していたくらいである。
1983年のエイズウィルスは勿論の如く、70年代にはショッカーの研究チームの手中にあったし、2000年代に流行した新型インフルエンザ、即ち、H1N1亜型ウィルスなども実際には彼らの研究室が保管していた物が壊滅後に何らかの形で流出した一例だとも言われた。
これだけに留まらず、人類が未だ、直面していないような猛毒性を持つウィルスや、iPS細胞以上の万能細胞の実験記録なども保管されていたのだが……その話は、今はあまり触れずにおこう。
そんな高すぎる故の先見性を持つのがショッカーであった。
以後数十年、あるいは数百年に渡って組織の概要が漏れないよう情報を統制する手段も既に見つけ出していたとしても何ら可笑しい話ではない。
また、高名な科学者、優秀な大学生、政治家、スポーツマンなどが立て続けに失踪した時期が、丁度ショッカーの全盛期にあったのもあまり知られていない話である。
一時には、これが先述したショッカーの「ある技術」の人体実験に利用され、「別の物」へと成り果ててどこかに放たれたとか、あるいはショッカーの一員に洗脳されたとか、そんな噂も立った事がある。
その噂こそが真であった。
この頃に失踪した人間の多くは、ショッカーが拉致し、強制的に身体改造し、その意思までも洗脳し、兵士として組み換えられている。
しかし、これらの真実は、結果的に「全く秘密ではない秘密結社」の仕業という説の方が陰謀論者には有力で、この実行犯としてショッカーが挙げられる事は、やはり殆ど無かった。
今でも地震やテロが起こる度に、他の秘密結社や某国政府たちは常にその悲劇との関連を疑われるが、当時起こった重大事件の殆どもまた、事実ショッカーによる陰謀であり──そして、隠され続けていた。
実際のところ、これだけの規模の組織が政府と癒着を成していない筈もないが──一説では、ナチス・ドイツの持っていた科学力を流用し、当時の科学者たちが主導していたとも言われており、この事の方が真に近いだろう。
これらが、あまりに信憑性の薄く、突飛な話である故に、全く、都市伝説としてもパンチが弱すぎたのは、我々人類の心理の盲点だったに違いない。
結果的に、全ては伝説にさえならず、ただのジョークに変わっている。
例えば、70年代当時に撮影された「黒いタイツを被った謎の人々」の写真などは今も怪奇本やインターネットで有名であるが、これが嘲笑以外のニュアンスで語られた事があるだろうか?
あの写真を見た事があるオカルトマニアたちは、あれが、世界征服を果たそうとした秘密結社の使徒であるなどと、本気で信じようと思っただろうか?
誰もがその現実性を認めず、実際に目撃した者でさえも自分の見た光景を白昼夢と錯覚する──それが、ショッカーという組織なのだ。
今から思えば、このジョークのような外面を保ち続け、一般大衆にはパフォーマンス集団のように見せた事もショッカーの先を見た目論見の一つだったのかもしれない。
全く姿を偽る事なく、お化け屋敷の宣伝をしていたなどというのだから、やはり侮れない方法を使う物である。
だが、やはり、我々はそんな冗談のような存在こそ、最も疑わなければならないのだ。
それこそ、ショッカーという存在がかつて実在した事実を通じて知るべき教訓に違いない。
今日までショッカーは、その実在すらも真偽が問われ、今では多くの人間がその存在を一笑に帰すほどであったが、事実、ショッカーは存在し、世界征服の一歩手前までのし上がったのである。
もし、ショッカーと闘う事で彼らを止める者がいなければ、彼らを笑ったまま、最後には彼らの起こす大事件の惨禍に巻き込まれたかもしれない。
たとえば、某教団による薬害テロなどは、その良く知られた例ではないか。
……とはいえ。
ここで連ねられた言葉を見て、ショッカーについて周囲に喧伝しようと思い立ったならば、明日にはその命がなくなる物と思った方が良いだろう。
これまでも、何人か、そういう者はいたが──彼らは、口を閉ざすか、もしくは、行方をくらました。
結局のところ、今からショッカーの正体を知ろうとしても、トップシークレットと化したショッカーの資料を閲覧する事は許されず、その正体を探るのは霞を掴むような話に違いないのである。
その上、この組織の名前を追った者が数多く行方不明になり、最悪の場合は変死体になるという事実からも、興信所や雑誌社の稼業を行う者は、まず触ろうともしない。
警視庁公安部、FBI、各国政府、アンチ・ショッカー同盟──「ショッカー」の真実を知る者は、やはり、いずれもショッカーの名を聞くだけでも、それを訊く者に注意を促した。
これがこの組織の最も恐るべき点であり、真の秘密結社たる常識離れした怪奇性であった。
ジョークの種にする他、今も絶えないショッカーの魔の手から身を守る術はないのである。
実際には、ショッカーを笑う者は、二つのパターンに分類されているのかもしれない。
ショッカーの存在を、本気で信じず、ただ笑う者──これが90パーセント以上を占め、
ショッカーの脅威を知り、信じないフリをして、笑う事でその魔の手から逃れようとする者──これがおおよそ、8パーセントほどを占める。
そして。
残る者は、そう……人間の自由と平和の為に、ショッカーと、戦おうとした者だ。
そちらの名前も、半ば都市伝説的に有名になっている。
──彼らの方は、「仮面ライダー」などと、呼ばれていたらしい。
◇
……たとえば、誰も寄らないような廃墟や廃倉庫が近くにあるならば、それが「ショッカー」の秘密基地の入り口であった可能性は否めない。
仮にもし、そんな場所にたまたま立ち寄って、そこで「黒いタイツの男」、「白いタイツの男」たちが出入りしているのを見つけたならば、即座にそこからは遠ざかり、己が目で見た光景を忘れるのが良い。
そして、もう二度と、人気のない所を冒険しようとするのを辞めた方が良い。
そこにいるのは、つい先日、現世に再臨した『キャスター』のサーヴァント──かつて、ショッカーの大幹部として君臨した、この「死神博士」の作り上げるアジトに違いないのだから。
この現代に、彼を呼び出したのが何者かは、現時点ではまだわからない。
かつては、「ショッカー」の類似組織である「デストロン」によって、再び死神博士が蘇ったという話もあるが、そうした目論見を持つ者の仕業ではなかったようである。
この頃、そのアジトには、ショッカーの一員とは思えない、奇妙な長髪の男が出入りしている。
おそらくは、その男こそが、キャスターを呼び出した『マスター』なのだろう。
◇
……これより後。
こんな与太話を書き連ねたノンフィクションライターは、突如として、消息を絶った。
その男は普段から、三億円事件をはじめとする未解決事件の顛末や、アメリカ政府の陰謀論をでっち上げ、独自の創作を「真実」などと称して本にして売りさばいていた男だった。
そして、人の不幸にエンターテイメントを盛り込んで出版し続けた男は、末期には秘密結社の記事で『マスター』、『キャスター』などという意味不明な単語と文章を残して消えた。
この原稿を出版するつもりであったのか否かはわからない。
結局、ここまでの書きかけの原稿が、この行方不明のライターの人生最後の原稿となった。
◆
〜〜〜〜〜「ショッカー」とは、世界制服を企む悪の秘密結社である〜〜〜〜〜
◆
──『マスター』の職業は、中学校の理科教師だった。
教師とは思えない、ボサボサの長髪で、飲食禁止の校内でもいつも風船ガムを噛んでいる。
死んだ目をしていて、遅刻は当たり前の職務怠慢。授業なんかを真面目にやる気はない。
酷い時は寝ているし、時たま熱心になったかと思えば、その時には生徒によくわからない「原子爆弾のつくりかた」などという物を黒板に書き写す。
公立中学に勤務する教師とはいえ、クビにならない理由はわからない。
一応は、これでもサボる事はなく、必ず、毎日学校には顔を出す人間だった。
それだけが彼のクビを繋ぎとめていたとは思い難いが、もしかすると、間もなくクビになる「最終通告」くらいは告げられていたかもしれない。
それでも彼は、態度を変えなかった。
昔は彼も、熱血教師で、校長と教育方針の違いで怒鳴り合う事もあったらしい。
今は、『風船ガム』などという、捻りのない仇名が生徒たちの中で飛び交う有様だ。
本名は、城戸誠というらしい。
しかしながら、彼はその名前もどうでも良かった。
自分の名前など、『赤胴鈴之助』でも、『山田太郎』でも、『ハマーン・スミス』でも──何でも良い。
それこそ、『A MAN』でも──人間を識別するナンバー充分なのだ。
重要な事はそんな事ではない。そんな事ではないのだ。
日常生活の中にある、鬱屈とした何かを取り払うのに──『自分が何をしたいか』という答えを出すのに、名前などいらない。
問題は名前じゃない。
そいつが何を抱えているか、何が"痛い"のか、何が"痛くない"のかだ。
中身がどんな風に詰まっていて、その中身がどんな色で、自分でそれを覗いて、綺麗だと思えるのか、嘔吐するのかだ。
「おう、順調順調。頑張ってるじゃないか」
いつもながら、城戸は、自分が呼び出したキャスターの陣地に立ち入り、馴れ馴れしく、『戦闘員』たちの肩を叩く。
ここ数日、彼はそんな事ばかりしていた。
学校の授業が終わると、この『工房』──もとい、『アジト』に入り、戦闘員たちをからかう。
呼びかけられた彼らは、戦闘員とは言っても、『科学班』に分類される白いマスクの戦闘員であり、むしろ専門は、この陣地でキャスターに代わって道具や『改造人間』を作成する事にあった。
科学班の戦闘員は、純粋な戦闘能力で言えば、それこそ、ただの人間よりマシと言う程度である。
戦闘員たちは、戸惑いつつも、この城戸という男には逆らう事が出来ず、ただ、無言でおどおどしているだけであった。
力においても、立場においても、戦闘員たちは城戸には敵わないのである。
「……で、改造人間はどれくらい出来たんだ?」
「はっ! 既に何体かの改造人間が完成しております」
「よしよし、御苦労」
城戸も、少しは「彼ら」こと、「ショッカー」に興味はあった。
それこそ、彼はこんな連中が現れるのを望んでいたし、彼らの目的に賛同をしていなくとも、何故か彼らに協力したがる奇妙な愛着があった。
科学という分野においては、一応、多少の興味がない事もないし、『聖杯戦争』というゲームには、むしろ進んで巻き込まれたがっていたのが城戸だ。
変に正義感が強い『秩序』や『善』の属性を持つサーヴァントよりか、彼らのようなサーヴァントの顕現を望み、まさしく、その通りになった。
キャスターの属性は、『混沌』と『悪』だった。
はっきりとした線引きが出来た位置にあるサーヴァントを呼び出したわけだ。
……で、何をする?
わざわざ魔術回路や式を習ってまで彼らを呼んで、それから何がしたいのか。
それは、城戸にとって、自分でもよくわからない事だった。
事実、聖杯を得たとしても、自分が何を成したいのかなど、彼自身が己に訊きたいほどにわからない。
しかし、それでも彼は、聖杯を欲する執念だけは、おそらくここにいる誰よりも強い。
──それだけは本当なのだ。
ここにいる、キャスターと呼ばれるサーヴァントを優勝させ、聖杯を得て……問題はそこから先だった。
自分が何をしようとしているのかは、城戸本人にもわからないまま、ただ毎日が過ぎて行く。
「既に改造人間──ジャガーマンが、近頃この近辺をうろついていた怪しい男を一人殺しました。
我々の秘密を探っていたようです。──イーッ!」
「……そうか。
そいつはちょっと惜しいかもしれないな」
「…………は?」
「そいつは、他のやつらよりもうちょっと面白かったかもしれない。
みんな死んでる。この街にいる奴、みんな死んでいるんだ」
「……」
「そいつは、生きている奴だったかもしれないんだ」
ただ単純にスリルを得たいのか。自分を満足させたいのか。聖杯に興味があるのか。
そんな感情はどれも当てはまるし、どれも当てはまらない。
ただ、もう少し、意味のないところで──『聖杯』という器を欲した。
そこまでして得たい物なのに、それを得たい理由は彼自身にもわからない──という事なのである。
他者を犠牲に手にする事に意味があって、他者の願いを踏みにじっていく事にも意味があるのかもしれない。
その痛みが欲しいのかもしれない。
それだけだった。
以前から、そうだった。
──彼は、狂人の退屈しのぎにも見える執念だけで……ただそれだけで、原子力発電所からプルトニウムを盗み出したのである。
「……もういい。お前と話す事はないよ。
さ、もう仕事に戻れ」
城戸は、今でも、部屋に帰ると、時たま、サッカーボール大の原子爆弾を、足で弄ぶ。
誤作動すれば、この都市は大爆発。火に包まれ、放射能で汚染され、ここに人が住む事は出来なくなってしまう。
でもそれをサッカーボールにしている。
城戸自身、近頃たまに嘔吐もするし、下痢もする。この長い髪も、一束になって抜け落ちる事が珍しくない。
将来ハゲるとか、それ以前に、もう間もなくハゲるだろう。
小型の原爆は、父親である城戸に向けて、死へのカウントダウンを刻一刻と告げている。
──死ぬかもしれない、と思う。
死にたくはないが、死ぬかもしれない。
いや、死ぬだろう。
──痛い、と感じる。
痛いのは嫌だが、逆に痛くないのはもっと退屈で嫌だ。
痛いのを怖がって何もしないよりは、ただ痛みを受ける為だけに動いていた方が良いのかもしれない。
「……いるか、キャスター」
だが、やはり──。
そうまでして、原子爆弾を得て、警察を脅して、何を成したいのかは、城戸もわからないままだった。
聖杯戦争を始めたのも。
サーヴァントを呼び出したのも。
ショッカーの改造人間計画に乗り気なのも。
理由は、今のところ、城戸自身さえも知らない。
『城戸誠か──』
ふと。
声と共に、城戸が来て、しばらくして、このアジト内のライトが薄暗くなった。
チカチカとアジトの灯が点滅し、「彼」が来る気配がした。
これは、「彼」が来る時には、いつも同じ事なので、城戸は全く動じないが、戦闘員たちが、少し慌てふためき始めた。
やはり、直属の上司の鞭が怖いのであろうか。
その点においては、城戸は絶対安心の立場にある。
この声の主こそが、ショッカーの戦闘員たちを動かす動力源であり、まさしく、城戸の真の相棒とも呼べるサーヴァントだった。
それ故、城戸が恐れる相手ではなかった。
魔術師『キャスター』──死神博士である。
ただ、いつも彼が見せるのは、本来の彼の姿ではなく、そこから分散した幽体のようでもあった。
普段、瞬間移動をしているかのように彼はどこにでも現れるのだ。
『一体、我がショッカーのアジトに何の用だ……?』
キャスターが発するのは、枯れたような老人の声だった。
何かの病が喉を蝕んでいるのか、彼の言葉は常に喉の奥から密やかに、城戸に向けられる。
……この、キャスターというサーヴァントは、いつも暗闇を照らすようにして、青白い不気味な顔を映すのだった。
薄い頭髪や、灌木のようにやせ細った長い体。皺だらけで生気のない肌。
しかし、鼻は高く、日系の他、どこか西欧かどこかの血を交えたような筋が通っている。
白色に固執したかのような上下の服と、裏地の赤い襟を立てた黒いマントは、彼の曲がった背中を隠していた。
さながら、何百年も生きた妖怪のようだった。
しかし、彼の真名を一度、「死神博士」と聞いてしまうと、それ以外の呼び名は考えられなくなってしまうほど、その名は体を現していた。
「……キャスター」
その底知れぬ不気味さは、城戸にとって、却って愛嬌さえも覚えるほどの物であった。
彼の姿を見れば、多くの人は恐れおののき、ショッカー以外の人間が慣れる事など滅多にない。
しかし、城戸はそれを目の当りにしても、平然とそこで風船ガムを噛み続けた。
煙草の煙を吐き出すように、風船ガムを膨らませた。──そして、潰した。
それから、また風船ガムを噛みながら、だらしのない瞳で、キャスターに答えた。
「──俺は、世界最高の秘密結社を持ってる。
そして、世界で一番恐ろしい爆弾も持ってる。
ショッカーと、何番目かの原子爆弾を……」
『それがどうした……?』
「そろそろ、こいつを使って、『何か』がしたいんだ」
キャスターは、その言葉に些か疑問を抱いた。
強い力を得た人間が、それを使いたがるのはやむを得ない話であるとしても、「何か」と言うのが気になった。
彼は、その言葉に含みを持たせているわけでもなく、正真正銘、まだ「未定」の「何か」をしようとしている。
たとえば、嫌いな人間を殺すとか、ショッカーに自らも加担するとか……そういう事をするつもりはないらしい。
彼には理由や大義はないらしい。忠誠を誓う者もない無宗教で、教育者だが教育に熱心でもない。
かつては熱心なフリをしていて、今はそれをする気力もない。
ただ、この『聖杯戦争』で得た力と、『原子爆弾』を、意味もない『何か』に使おうとしているのである。
その事は以前から知っていたが、始まりからこれだけ時間を経ても、まだ、その『何か』が芽生えてこないというのだろうか。
『──お前の目的は、まだわからないままだというのか……?』
「……」
『お前は何がしたい?』
キャスターは、思わずそう問いたくなった。そして、それは口からこぼれていた。
これだけ虚無に満ちた存在を見ていると、なんだか妙に腹立たしい気持ちにもなった。
城戸誠、という男の実像は掴めない。
しかし、だからこそ、どこか城戸に惹かれつつある自分が腹立たしく、そして、それを認めたくない気持ちになる。
城戸は、口を開いた。
「──それをこれから考える。
とりあえず、今はあんたらは好き勝手してればいい」
『我々が、世界征服を成功させても良いのか……!!』
「その方がいいかもしれない。
世界なんて、その方が……。でも……」
城戸は、少しだけ躊躇して考え込んだ。
はっきりとした回答や意見というのは彼には今、別段芽生えていなかった。
だから、逆に、キャスターの方に訊く事にしたのだろう。
「それに、あんたは、世界征服をして……だから、何をする?
じゃあ、お前は、一体、何がしたいというんだ?」
『……』
キャスターは押し黙った。
彼が何を成したかったのか──それは、回答しなかったのではなく、回答できなかったに違いない。
彼らショッカーの人間は、須らく改造されており、首領に絶対の忠誠を誓う。
それ故、自分らしい「自分」などという物は持たなかった。
ただ、理由のない大義だけが彼らを突き動かしているだけなのだ。
「なんだ、わかんねえのか。わかんねえなら余計な事言うんじゃないよ」
すると、城戸は不機嫌そうながら、完全に開き直った。
結局のところ、キャスターが世界征服をする意味なんて知っても仕方が無かった。
何をすればいいのか、さっぱりわからないまま、ただ暴れている……そんな人間は自分だけではない。
一瞬なりとも、キャスターを屈服できた事が気持ち良かった。
だからか、彼は、味を占めて、大きな声を張り上げて『アジト』に轟かせた。
「おい、あんたら。作業やめろ。
俺が、俺が……このキャスター──『死神博士』のマスターだぁ!
ほら、見せてみろ! ほら、敬礼しながら、いつもの合図を──!」
「イーッ!!!!」
作業を中断して、嫌々敬礼する彼ら戦闘員の声を、城戸は気持ちよさそうな笑顔で聞いていた。
ただ、意味もなく彼らの邪魔をする。
聖杯戦争もそういう物だったのかもしれない。
「おいどうした? 声が小さいぞ!」
「「「「「「「「 イーッ!!!!!!!!! 」」」」」」」」
それは、大勢の人間の意識を巻き込んで、こんな奴らに気を遣わずに──彼らの意思を自分の物に出来る征服感による物だった。
それは楽しかった。
世界征服も別に悪くはない願いかもしれない。……が、面白い願いではなさそうだった。
『──奇妙な男だ、城戸誠……』
キャスターは、城戸という男の空虚さを見守っていた。
確かに彼も人間に過ぎない。しかし、何かが狂っている。
彼は、自分の内側を知らない人間のようだった。
だから、空っぽに見える体に何かを埋める為に、他者と違う事をやって、そこに色をつけようとしているのだ。
少なくとも、キャスターはそう思った。
◆
夜。──外はすっかり暗くなっていた。
城戸は自分の住まうアパートに戻っていた。
ショッカーの連中は、まだ作業を続けているのだろうか。
「……空を超えてー、ラララ星の彼方ー、……ゆくぞー……アトムー……」
城戸は、『鉄腕アトム』の歌を歌い、原子爆弾を足で転がしながら、インターネットをしていた。
風呂上りで、パンツ一丁の姿のまま、画面をスクロールさせている。
ちなみに、今見ていたのは、城戸がたまたま見つけた、掲示板内のスレッドである。
『──何でも一つだけ願いが叶うとしたら何がしたい?──』
そういうタイトルのスレッドを彼は探していた。
つまらない雑談が書かれた掲示板は、いくらでもあった。
それを全部片っ端から開いて、面白そうな書き込みを探していた。
本当はラジオで呼びかけて、面白い願いを募ろうとしたが、インターネットは便利だった。
呼びかけるわけでもなく、いくらかの欲望が見られる。
誰かが既に呼びかけているのだから、適当に検索してそれを見ればいい。
インターネットでは、だいたいこんな趣旨の事が訊かれ、いくつかの回答が出てきていた。
一生遊べる金。
とびきり美人の女。
地方局でのアニメの放送。
死んだ友達の命。
「……」
……なるほど。
目を引くのは、そんなつまらない願いばかり。
しかし、城戸が欲しいのはそんな物じゃない。
もっと、つまらない欲を持ってる奴がいたら、その方が面白い気がした。
「──夕方六時。××チャンネルで、アダルトビデオを十分間、地上波放送。
カラミあり。女優は×××を希望。男優は指定なし」
地上波でAVを放送──こんな大喜利のような回答。
……これがふと、目を引き、もう少し肉付けして口に出してみた。
多少、しっくり来た。
だが、やはり違う。
「──とんねるずとダウンタウンを共演させる生番組を一時間。
他の出演者は一切なし。とんねるずとダウンタウンだけに一時間語らせる」
「──東京ディズニーランド。
ミッキーに着ぐるみを脱いでもらうパフォーマンス」
「──18歳未満の女の子のヌードを解禁してほしい。
オール・ロリータの風俗店の合法化……」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁああああーーー…………。
……………………駄目だなこりゃ」
「……おい、お前は何がしたいんだ?」
こうしたつまらない願いの中から、適当に選んで聖杯に叶えさせようと思ったが、どうやらろくでもない物ばかりらしい。
まあ、結局のところ、ラジオで募っても同じ結果に終わるだろう。
────さて。
────それじゃあ、何をしようか。
手元の原子爆弾に訊いてみた。
原子爆弾の表面は、銀色に光っていて、そこに薄らと、歪な城戸自身を映していた。
「ほら、黙って勿体付けてないで言ってみろよ。
一体、何がしたいんだ? お前は────?」
【CLASS】
キャスター
【真名】
死神博士@仮面ライダー
【パラメーター】
筋力E+ 耐久E+ 敏捷E 魔力A 幸運C 宝具B
【属性】
混沌・悪
【クラススキル】
陣地作成:B
魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げるスキル。
死神博士は、『工房』の代わりに、地下・洞窟・空きビル等に『アジト』を作り出す事が出来る。
これによって、魔力と科学を駆使した道具は勿論、『改造人間』さえも作り出す。
道具作成:A
魔力を帯びた器具を作成する為のスキル。
死神博士は、魔力と科学力を併せ持ち、道具だけでなく、『改造人間』を作り上げる。
【保有スキル】
秘密結社:B
実質的には、アサシンのクラスが持っている「気配遮断」のスキルと同様。
完全に気配を絶てば発見することは非常に難しい。
外科手術:D
マスター及び自己の治療が可能。
改造人間:-
自身の肉体を科学と魔術により再構成し、人知を超えた怪物へと変化するスキル。
これはキャスターとして現世に顕現した際に失われている。
【宝具】
『世界征服を企む悪の秘密結社(ショッカー)』
ランク:B 種別:対界宝具 レンジ:1〜全世界 最大捕捉:1〜全人類
彼が大幹部として多くを従える大軍団、秘密結社ショッカーという組織力そのもの。
そして、この宝具はキャスターが召喚されてから、キャスターの消滅の瞬間まで常時発動している。
キャスターが場に存在する限り、聖杯戦争のフィールドには常人の数倍の戦闘力を持つ『戦闘員』たちが蟻の群れのように湧いている。
この戦闘員たちは、『偵察を行う者』、『陣地を守る者』、『キャスターに代わり他のサーヴァントとの戦闘を行う者』、『キャスターに代わり道具作成を行う者』など数々の班に分かれ、キャスターの命令を最優先した上で、キャスターに利を成す行動を考えながら自立する。
いわば、この戦闘員たちこそが使い魔に近い存在となっている(ただし、戦闘員は基本的に魔力を持たない)。
また、戦闘員は意識的に『改造人間』たる素質を持つNPCやマスターを識別した後、誘拐・拉致した上で、『アジト』内で改造し、戦闘員よりも強力な戦闘力や特殊能力を持つ『改造人間』『怪人』に変える事が出来る。
改造されたNPCやマスターは、作成の最終工程で洗脳を受け、キャスターの宝具の影響下で忠実な僕となっていく。
ただし、これは短期で作った改造人間ほど実力に乏しく、サーヴァントに匹敵する改造人間を作るには、最低一日程度の時間をかける必要があるだろう(並行して何体もの改造人間を作成する事自体は可能である)。
これらの効果により、NPCを巻き込んで、徐々に大軍団を築き上げ、聖杯戦争の場に悪の秘密結社ショッカーを再現するのが、キャスターの絶対の宝具である。
※宝具に反映されているデータは、秘密結社ショッカーの改造人間データである為、第79話の「ガラガランダ」までは作成可能。
ただし、死神博士の「大幹部」のポストよりレベルが高い「首領」を作成する事は出来ない。
『暗黒を吐き出す白貌の悪魔(イカデビル)』
ランク:- 種別:対己宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
戦闘特化のクラスで呼ばれた際ならば使用できた筈の宝具。
死神博士が『改造人間』のスキルで変身する筈だった姿であるが、。その全貌は謎に包まれており、死神博士をよく知る軍団内部すらも、この宝具が如何なる物であるのか知る者は少ない。
軍団そのものが秘密裏に存在していたものであるが故に、記録上にもなく、彼を知る者の殆どは命を繋ぎとめる事が出来なかったという話すらもある。
この宝具を以後に解禁するには、『世界征服を企む悪の秘密結社(ショッカー)』の力で再度、キャスター自身が最低1日をかけて改造手術を受ける必要があるだろう。
【weapon】
『改造・鞭』
『改造・鎌』
【人物背景】
悪の秘密結社ショッカーの大幹部の一人。
当初はスイス支部にて活動していたが、後に日本支部の二代目大幹部としてショッカーを指揮したとされる。
彼は卓越した科学力を持つ博士であり、同時にオカルトの魔術にも精通している、まさに現代の魔術師と呼べる男であった。
また、自らの身体を改造済であり、その真の姿は烏賊を模した改造人間・イカデビルという名を持つ。
しかして、イカデビルは、反ショッカー思想の"仮面ライダー"なる男に殺害され、既にこの世に存在しない存在であり、その死後に英霊になったものと思われる。
後に、ショッカーの後続組織による、改造人間の再生技術で再生したとされるが、その際にも、反ショッカー的思想を持っているらしい。
尚、本名は、イワン・タワノビッチであり、日本人とロシア人のハーフとされる記録が存在する。
ナターシャという妹の蘇生の為に狂気に身を投じたとされるが、その真偽も定かではない。
人間だった際の事など、既に死神博士は忘れているのかもしれない。
これらのデータはFBIが秘密裏に持つデータ上の話であり、こんな人物・及び組織も実在したか否かは現代でも真偽が問われる物である。
しかし、この現代も、彼の所属した秘密結社の名前を調査する者は、いずれも早々にその調査を切り上げるか、調査の数日後に行方不明になっているらしい。
【サーヴァントとしての願い】
ショッカー軍団の再興。
それにより、再度の世界征服を決行する。
【基本戦術、方針、運用法】
キャスターは、現在までに百人規模の戦闘員と、これらを従わせる数名の改造人間を作り出している。
これらの戦闘員、改造人間は英霊としての気配は持たないので、上手に使えば他のサーヴァントを探し、攻撃する偵察要員として使う事が出来る。
今のキャスターは戦闘能力に乏しく、生前に扱う事が出来た変身能力すらも無い為、まともに他のサーヴァントを相手にしていく時には、『改造人間』をひたすら作り続けるしかないだろう。
もし、キャスター自身に戦闘能力を付与したいのであれば、早々にキャスターを再改造し、『闇を吐き出す白貌の悪魔(イカデビル)』を再現するという手もある。
また、マスターを改造する事自体もできなくはないので、キャスターと意見が対立してきた場合は、改造手術をされてしまう可能性も否めない。マスターはそれに気を付けるべし。
【マスター】
城戸誠@太陽を盗んだ男
【マスターとしての願い】
わからん。
【weapon】
原子爆弾
【能力・技能】
理科教諭。個人で原子爆弾を製作する科学力と技術力を持つ。
材料は東海原発に潜入した。警備員を倒して手に入れており、行動力や戦闘力もかなりの物。
また、カーチェイスが出来るほどのドライビングの腕で、大抵の事は人並以上にこなしてしまう。
女装したり、変装したり。人を傷つける事も厭わない。
もしかしたら自分が死んじまうかもしれないような事も平然とやる。
ちょっとは命がやべえと思う事はある。
でも、本気の本気で命がヤバい時は、絶叫して怖がるかもしれない。
【人物背景】
普段はやる気ゼロの中学の理科の先生。その実態は、原子爆弾を持つ男。
当時は、原爆保有国が八つだった為、彼はその九番目として、"9番"と名乗り、東京全土の人間を人質に警察を脅迫する。
手始めに、とりあえず、「プロ野球のナイターを最後まで放送してほしい」と言った。
日本中のテレビが、プロ野球のナイターを最後まで放送した。
ただ、たった一個の球っころで、日本中が思い通りになるんだという事がわかった。
だが、考えてみると彼にはそうまでしてやりたい事というのは別にない。
試しに五億円を要求してみた。
しかし、別に金が欲しいわけでもないので、屋上からバラまかせた。
最後に彼は、「ローリングストーンズの日本公演」を要求した。
それも別にローリングストーンズが好きだからではなかった。
【方針】
ショッカーに協力する。目的はない。
ただ、そのうち、ショッカーと原子爆弾を使って警察なり政府なり他のマスターなりを脅して、適当に何かさせようと思っている。
そして、『聖杯』は、たとえ何を犠牲にしてでも欲しい。その対価が他者の命でも自分の命でも構わない。
しかし、聖杯に願いたい願いは今探している。そのうち、募集してもいいかもしれない。
ローリングストーンズの日本公演くらい面白い物があったら、まあそれでいいと思う。
投下終了です。
投下乙です
自分も投下します
――――――この惨状は一体何なのだ。
弓兵のクラスを割り当てられし彼女が召喚された直後、第一に行った思考がそれだった。
英霊にあるまじき失態ではあるが、彼女は数瞬の間呆けてしまっていた。
薄暗い寝室のような室内、ベッドにいる数人の男と一人の女。いいや、その表現は適切とは言い難いか。
男たちの方は体格にバラつきこそあれど、成人男性と呼ぶに相応しい者たちだ。しかし女の方は―――なるほど確かに生物学的には女であるが、何もかもが未成熟であった。
一糸纏わぬ裸体を晒し、光のない瞳で天井を見上げ、平らな胸を上下させている、紫色の頭髪の少女。いや、幼女と表してもいいだろう。
全身、特に陰部に夥しいまでの精液が付着している。全員揃って全裸の男たちを見れば真実は明らかではあった。
そのような無残な姿を晒している少女がよもや聖杯を争い闘争を行うために選ばれしマスターの一人であるなどとは―――マスターとサーヴァントを繋ぐレイラインがなければ到底信じられる話ではなかった。
「おいおい何だ?もう一人コスプレした娘の追加なんて聞いてねえぞ」
「こりゃまたとんでもない美少女だな。なあお嬢ちゃん、ちょっとこっちに来てご奉仕してくれよ?」
身を乗り出して獣のような耳と尻尾を生やしたある種異形のサーヴァント、アーチャーを囲む男達。
アーチャーが呆けていたせいもあるのだろう、彼らはサーヴァントの脅威に一切気づくことはなかった。
そして彼女が状況を把握し次に取る行動を決定した時、彼らは極めて幸運なことに一切の苦痛に気づかぬまま命を落としていった。
間桐桜に与えられたのは、ある種元の世界での環境に準じた役割(ロール)であった。
遠くの街で犯罪組織に攫われ親元から引き離され、別の犯罪グループに買い叩かれ毎日嬲られる。そんな不幸な少女という設定と配役。
記憶を取り戻してから何日経ったのかすらわからない。最後に服を着ていたのが何時だったのかさえ覚えていない。
少なくとも彼女が記憶する限りにおいては、ずっと裸で倒錯趣味の男たちの欲求を満たす日々を送っていた。
しかし桜は一度として現状を打破しようと考えることはなかった。その発想すらなかった。
普通の感性の持ち主ならば正視に堪えない凄絶な環境ですらも、桜の元いた世界のそれと比較すればまだしも、いや、遥かに上等であったからだ。
絶対的存在の祖父によって身体中を無数の蟲に貪られる日々。それを思えば魔術師でもない男性たちとの性行など何ほどのことでもなかった。
だからだろう。サーヴァントによって外の世界へ連れ出されても、それが救済であると認識することができなかったのは。
些か以上に、軽率に過ぎる振る舞いであったかもしれない。
己がマスターを凌辱していた男達を残らず屠り、ひとまず郊外の森まで運んできたアーチャーは冷静さを取り戻しつつある頭でそう考えた。
まだ自分はマスターの名前すら知らないというのに、激情に身を任せ独断でここまで連れてきてしまった。
正しくない行いであった、などとは思わない。けれどもう少しはやりようがあったかもしれない。
「…過ぎたことを悔やんでどうなるものでもない、か」
ともあれ、まずはマスターの回復を待って―――酷なことだとは思うが―――何があったのか、話を聞く必要がある。
特に、家がどこにあるのかは聞いておかなければ。まさかいつまでもこの幼子を裸で野晒しにしておくわけにもいかない。
何よりも、親だ。仮初の関係であるとしても、親元に返してやらなければ。
そうした後、サーヴァントたる自分は聖杯を得るために殺し合いに身を投じるのだ。
マスターが幼子であるという時点で、アーチャーの中に彼女を矢面に立たせるという考えは存在しない。彼女が聖杯に懸ける願いからして到底有り得ないことだ。
故に、全ての敵はアーチャー一人で屠る。聖杯戦争の全てを己一人で片付ける心算だった。
無論、マスターの魔術による支援が受けられないのは単純に考えても間違いなく不利であろう。それでも、その不利はアーチャーの願いと信条を曲げさせるほどではない。
アーチャー自身、マスターの傍らで護衛しながらの戦闘に向いていない、という能力的な事情もないではないが。
「……わたし、間桐桜って言います。
…あなたは、わたしのサーヴァント、なんですか……?」
思考に耽っている時、不意に声を掛けられた。未だ瞳に光を宿さぬマスターであることは自明だった。
しかし妙だ。あれほどの仕打ちを受けて泣き叫ぶでもなく真っ先に聖杯戦争を理解し確認の問いを投げるとは。
だが、どうあれ話ができる状況というのは有難い。今は少しでも情報が必要だ。
「ああ、そうだ。私はアーチャーのサーヴァント。真名をアタランテという。
大丈夫か、マスター?どこか痛むところはないか?」
「…どうして、助けたんですか?」
「………何?」
またしても、思考が硬直した。それほどまでにマスターの問いはアーチャーにとって夢想だにしない言葉であった。
アーチャーを非難する、というよりは純粋に疑問をぶつけている、という風だ。
しかしアーチャーは、ひとまずその言葉が聖杯に懸けるサーヴァントたる自分が何故見るからに無力なマスターを見捨てなかったのか、という意図から出たと解釈した。
幼子が発する疑問としては異様ではあるが、元々魔術師の家系の子だとすれば理解できないではない。
そう解釈したからこそ、続く言葉は全くの予想外であった。
「服はきせてもらえなかったけど、あそこはここでのわたしの家みたいなところだったんです。ご飯だって、ちゃんと出してもらえてた。
なのに、帰れなくなったら、わたし、どこにも行くところがありません」
「……何を、言っている………?あの地獄のような場所の、どこが………!」
「じごくは、もっとちがうところにあります。ムシグラに入れられるぐらいなら、男の人とするぐらいへいきだから」
この瞬間、アーチャーは如何に己の認識が甘く、過っていたかを痛感した。
マスターたる桜の瞳が虚ろなのはNPC時代の凄惨な体験故だと思っていた。彼女は助けを求めていると、そう信じて疑わなかった。
だが、違う。彼女は以前から、もっと劣悪で醜悪な地獄に置かれていたのだ!
それこそ、男たちに犯され続ける日々ですら地獄とは認識できなくなるほどに。自閉し、助けを求めるという思考すら塗り潰されるほどに。
ムシグラ、と彼女は言った。それはつまり、俗世で言う虫のことではないだろう。
恐らくは、蟲。魔術に用いる蟲を指していると見て間違いない。必然、その蟲を操る、彼女の心を蝕んだ魔術師が存在する。
全ての子が親に愛されて育つとは限らない、とアーチャーは知っている。他ならぬ自分自身が捨てられた子であるのだから。
マスターをここまで壊したのが彼女の親であるかまではわからない。だが一つだけ、はっきりしていることがある。
彼女を追い詰めたのは普通の人間の業ではない。社会の機構(システム)ですらない。悪辣な魔術師の歪んだ悪意こそが全ての元凶なのだ!
だが、それでもマスターに選ばれたならば彼女にも何某かの願いがあるはずなのだ。ならば自分がそれを叶えてやればいい。まだ、諦めるには早すぎる。
「………。そうだマスター。何か欲しいものはあるか?
これは聖杯戦争だ。聖杯ならあなたの欲しいものや、どんな願いも希望も必ず叶う」
「いいです。願いゴトとか、もうないから」
「………!」
抱きしめた。精液で自分の身体が汚れることさえ厭わずに、強く。そうでもしなければ、もはや堪えられるものではなかった。
本当は言いたかった。声を大にして、私があなたを救ってあげる、必ず幸せにしてみせる、と。
だが、駄目だ。彼女がどうやって地獄の中で正気を保っているのか、それに気づいてしまったから。
彼女を支えているのは、絶望と諦観だ。希望など存在しないのだと、心に鎧を纏うことで辛うじて環境に適応してきたのだ。
もしその鎧を無理に剥ぎ取ってしまえば、どうなる?マスターの心は今度こそ取り返しのつかないレベルまで破壊されてしまうかもしれない。
手を伸ばしても、虚しく空を切る悲しみを知っている。
孤独に打ち震え、泣き叫ぶしかない恐怖を知っている。
かつて父に山に捨てられたアタランテはしかし、女神アルテミスが遣わした雌熊に守られ、やがて狩人に拾われた。
絶望から救われたのだ。その喜びを、虐げられる全ての子供たちに与えたい。それこそ誰に恥じることもない、アタランテの願いだ。
けれど、認識が足りていなかったのかもしれない。英雄として信仰を集めた自分の手でさえ届かぬ深い暗がりがあったのだ。
こうして小さきマスターを抱きしめ、彼女の温もりを感じているのに、彼女の心には届かない、届かない!
よしんば届いたとしても、触れればすぐに崩れてしまうほどに罅割れた心を、どうすれば癒してやれる?出会ったばかりのこの自分に?
(…まだだ、まだ残っている)
それでも、アーチャーは間桐桜を救うことを諦めない。諦めるわけにはいかない。
例えばの話、アーチャーが受肉し桜と共に現世に戻り彼女を守るとする。だが、そうしても尚根本的な解決にはならないだろうという予感がある。
時に人間の、魔術師の智謀と悪意は英雄の力さえ容易く越えてくる。ましてアタランテにはヘラクレスの如き絶対の武もケイローンの如き神の智慧もイアソンの如きカリスマや弁論もメディアの如き魔術の腕もない。
あるのはマスターと寄り添い生きていくには向かない脚の速さと狩人の技能だけだ。
孤独を好み孤独に生きようとしたアーチャーが抱える、当然の弱点。
ならば、縋るものは一つしかない。聖杯だ。もとよりアーチャーは聖杯の奇跡を欲して現界したのだ。するべきことは変わらない。
仮にアーチャーの求める願いが聖杯の領分さえ越えたものであるとしても、桜一人の救済と未来の幸福を確約する程度ならば必ず可能なはずだ。そう信じなければ、この身はもはや戦えない。
「…マスター、いや、桜。この先に何があったとしても、私だけはあなたの味方だ。どうか、それだけは信じてほしい」
返事はない。体力が低下していたのだろう、眠ってしまっているようだ。
これからするべき事は数多い。聖杯戦争の趨勢以前にまずマスターの衣食住の確保から始めねばならない。彼女の口ぶりからしてこの街に家や家族はないのだろう。
恐らくこの先、普通の英雄なら忌避する盗人の如き行いもせざるを得ない。その労苦に文句などあろうはずもないが。
所謂公共機関というところに預けることも考えたが、そういった機関に魔術師やサーヴァントが手を伸ばしていないとも限らない。信用すべきではない。
何よりも、桜が捕捉されるようなことだけは絶対にあってはならない。アーチャーは優れた狩人ではあっても優れた護衛ではない。
つまりは孤独。アーチャー単騎で聖杯戦争を制する以外に桜を救う道はない。どう楽観的に考えても不利な戦だ。
「…それがどうした。この子が味わった艱難辛苦に比べれば、何ほどのことでもない」
決意は動かない。仮令この身が砕けようとも、それで桜が救えるなら一向に構わない。
どろりと、濁った憎悪が沈殿していくのがわかる。彼女をこうまで追い詰めた者どもには報いを与えねばならない。
―――ある一人の英雄が修羅へと変わった瞬間だった。
【クラス】
アーチャー
【真名】
アタランテ@Fate/Apocrypha
【パラメータ】
筋力:D 耐久:E 敏捷:A 魔力:B 幸運:C 宝具:C
【クラス別能力】
対魔力:D…一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。
魔力避けのアミュレット程度の対魔力。
単独行動:A…マスター不在でも行動できる。
ただし宝具の使用など膨大な魔力を必要とする場合はマスターのバックアップが必要。
【保有スキル】
アルカディア越え:B…敵を含む、フィールド上のあらゆる障害を飛び越えて移動できる。
追い込みの美学:C…敵に先手を取らせ、その行動を確認してから自分が先回りして行動できる。
【宝具】
『訴状の矢文(ポイボス・カタストロフェ)』
ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:2〜50 最大捕捉:100人
守護神アルテミスから授かった『天窮の弓(タウロポロス)』によりアポロンとアルテミスに加護を求める矢文を送る。
次ターンに矢の雨が降り注ぎ範囲攻撃を行う。範囲設定も可能で、対個人用に使うこともできる。
一本ごとの矢のダメージは僅かだが膨大な数が降り注ぐため特に耐久に劣り、敏捷に優るサーヴァントに対して高い効果が見込める。
『神罰の野猪(アグリオス・メタモローゼ)』
ランク:B+ 種別:対人(自身)宝具 レンジ:0 最大捕捉:1人
アタランテが仕留めたというカリュドンの魔獣、その皮を身に纏うことで魔獣の力を我が物とする呪いの宝具。
アタランテは召喚時点ではこの宝具の使用方法を理解しておらず、我が身を顧みない憎悪を抱くことによって初めて使用可能となる。
タウロポロスの封印と引き替えに幸運以外の全ステータスが上昇した状態となるが、Aランクの狂化を獲得したバーサーカーとほぼ同等の状態となってしまう。
敵を仕留めるための論理的思考は保てるが敵味方の識別は困難となり、場合によっては己のマスターでさえ識別できなくなる。
またAランクの変化スキルが追加され戦闘状況と纏った者の性質により形態が変化する。
【weapon】
天窮の弓…狩猟の女神、守護神アルテミスから授かった弓。
引き絞れば引き絞るほどにその威力を増す。アタランテ自身の筋力はDランクだが、渾身の力を込め、限界を超えて引き絞ればAランクを凌駕するほどの物理攻撃力を発揮することも可能。
【人物背景】
ギリシャ神話に登場する狩猟の女神アルテミスの加護を授かって生まれた「純潔の狩人」。アルカディアの王女として生まれるが、男児が望まれていたため生後すぐ山中に捨てられ、女神アルテミスの聖獣である雌熊に育てられる。その後アルゴー船に乗り大英雄達と旅をし、カリュドンの猪の討伐に貢献した。
眼差しは獣のように鋭く、髪は無造作に伸ばされ、貴人の如き滑らかさは欠片も無いため一見すると粗野な女性に見える。しかし他人を「汝」と呼び、自分達を「吾々」と呼ぶなど非常に古風な話し方をするため、不思議な気品がある。
考え方や死生観が獣と同じであるため、彼女にとって生きる糧は奪って手に入れるのが当たり前であり、過度な誇りは犬にでも喰わせるべき代物。ただし自身の境遇故か恵まれない子供には慈悲を見せる。
しかし全く誇りを持っていないわけではなく退廃的、陰謀の気配を持つ者を嫌悪する。
【サーヴァントとしての願い】
この世全ての子供たちが愛される世界を作る。
それが叶わない場合は桜だけでも救済する。
【戦術・方針・運用法】
常に単独行動で敵を仕留めながら優勝を狙う。マスターである桜には誰一人として近づけない。
アーチャーは持ち前の俊足と高速射撃、気配の隠蔽能力などによって攻勢では極めて高い性能を発揮する。
やや決め手にこそ欠けるがサーヴァントを仕留めるのに必要十分な攻撃力は持っており、追撃も撤退もほぼ自由自在。神出鬼没の狩人として戦うのが吉。
反面護衛としての能力は非常に低く、自身はともかくマスターが狙われる状況になると打つ手がない。
マスターを守りながらでは自慢の脚力を活かせず、アーチャー自身の耐久力も最低レベルでしかないからだ。
全ての戦況、戦略の判断をアーチャーのみで行わなければならないのもマイナスか。
とにかく勝つためにはマスターの位置を徹底的に秘匿し続けることが何よりも肝要となる。
【マスター】
間桐桜@Fate/Zero
【マスターとしての願い】
願いも希望も、彼女には既にない。
【能力・技能】
姉の遠坂凛と同等の優れた魔術回路を持つ。
ただし魔術の薫陶をまともに受けていないため魔術行使は不可能。
【人物背景】
極東の魔術の名門、遠坂家の次女だが間桐家に養子に出された。
表向きは遠坂と間桐の同盟が続いていることの証。裏では、間桐臓硯にとっては断絶寸前だった家系を存続させるために、魔術の才能がある子供(というよりは胎盤)を求めていたという事情があった。
また遠坂時臣にとっては一子相伝である魔道の家において二人目の子供には魔術を伝えられず、そして凛と桜の姉妹は共に魔道の家門の庇護が不可欠であるほど希少な才能を生まれ持っていたため、双方の未来を救うための方策でもあった。
間桐家に入って以後は、遠坂との接触は原則的に禁じられる。魔術の修練という名目の虐待で既に人格が擦り切れている。
【方針】
???
投下終了です
投下乙です。
自分も投下します
ハァ ハァ
ハァ ハァ
薄暗い小屋の中。興奮で呼吸が荒くなっていることに気付きながらも、明は手にした書物を一心不乱に読み耽っていた。
自分で小説を書くくらいには文学少年である宮本明。だがこの本。
先ほど首をはねた吸血鬼が宝物のように大切に保管していたこの本。『聖杯戦争』についてまとめられているこの本の内容は実に荒唐無稽。
今迄の明どころか、まともな人間なら一笑に付した後ゴミ箱に一直線であろう。
実際、明もそうしようかと思った。しかし、彼岸島での常軌を逸した闘いを経て、非日常や超常現象に対して抵抗が無くなった彼はその内容を否定することができなくなっていた。
「吸血鬼、邪鬼…信じたくもねェ物をたくさん見てきたが……信じられねェ。」
赤い目の吸血鬼。吸血鬼が変化した醜悪な邪鬼。変異体「アマルガム」。
どいつもこいつも見た目は違う。美しい女の姿をしたものも居れば、グロテスクでビル一つを覆い尽くすような巨大な奴らもいる。
だが、人を襲うという一点に関して言えば、そいつらは共通していた。それに人間の敵であり、明の倒すべき敵であるということも。
だから、明は斬った。人を襲うそいつらを斬った。斬って、斬って。文字通り血路を切り開いてきたからこそ生き延び、今に至るのだ。
故に明自身、正常な感覚が失われていると自分でも思っていたが、この書物の内容を見て疑えるくらいには常識が残っていた。
「聖杯戦争…魔術師が過去の英霊を召喚し願望投影機を巡って戦う…
こんな非現実的な設定、小説のネタにすら考えつかねェよ。」
苦笑いしたまま首を振る。
いっぱしの小説を書くくらいには想像力豊かな方だと思っていたが、まだまだ底が浅かったようだ。
無論、信じられない気持ちでいっぱいだ。だが。
馬鹿じゃねえの。こんなもんは嘘っぱちだ―――口元まで出かかったそれらがどうにもこうにも出てこない。
期待という痰に引っかかってのどから出てこれないのだ。
ゴクリ、と唾を飲み込んでから「召喚」のページをもう一度開いた。
「…だけど吸血鬼が、雅の部下が持ってたんだ。信憑性はある。」
馬鹿そうじゃねえだろ。そこはありえねェって言う所だろ。
頭ではそう考えているが、心が。感情が。
否定する気持ちよりも、怖いもの見たさのような好奇心が。彼岸島で鍛えられた糞度胸が。彼の背中を押していた。
「試してみるか…」
―――――――――――――――――――――――
汝三大の言霊を纏う七天、
抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」
瞬間、今迄の人生で感じた事のない光量が明の両目に降りかかる。
「うおっ!!」
いきなりの出来事に顔を背けはしたものの、目は開いたまま、体勢は崩さぬまま。
だから明はいち早く捉える事ができた。おぼろげながら、影が見えてきていることを。
揺らめき、収まりつつある光の中に、無精髭を生やした和服の男が立っていることを。
「あ、アンタは…!?」
鍛えられた体躯に大きめの身長。平均よりも高いだろうが、大きすぎるほどではない。
むしろ明の目に留まったのは、袖をまくり返したところから見える剥き出た上腕筋。否、正確には上腕筋に付けられた刀創というべきだろう。
右腕にも、左腕にも。胸元にも。恐らくは服の下にも無数の刀創を携えているのであろう。
黒い髪の毛は、口元の髭と同じように無精に伸びていた。ざんばらなそれに手入れの後は見られず、頑強な体つきに、腰に携えるのは日本刀の大小。
時代錯誤ではあると思ったが、どこか野武士を彷彿とさせるような。そんな見た目であった。
「ふむ」
息一つ吐いた男と目が合った。ぎょろりと動く大きな目玉に見据えられた刹那、明の脳内に突儒としてイメージが浮かび上がる。
それは地平線まで続く吸血鬼の山でもあったし、視界を埋め尽くすほどの邪鬼でもあったし、斧神やまり子のような多くのアマルガムでもあったし、何人もの雅のようでもあった。
なんだ、これは。浮かび上がるイメージを振り払うかのように頭をぶんぶんと左右に動かしてみると、そこに居るのはやはり先ほどの男一人。
気のせいか――――そう思った刹那、暗闇に一刃の光が煌めいた。
「なっ!?」
何故?
誰??
刀!!
いきなり
当たれば死
混乱した思考のまま、首を切り落とさんとするそれをバックステップでかわす明。
続けざまに踏み込んだ男が袈裟がけに太刀を振るう。恐ろしく速い踏み込み。咄嗟に手にした丸太でいなすが、余りの威力にバランスを崩し、尻餅をつく。
立ち上がり受けようとするも三太刀目…真っ向唐竹割。
何の抵抗も無く正中線上を刃が通り抜けていく。嗚呼無残、哀れにも明の体は真っ二つになった――――――――
「ちくしょ…あれ?」
筈だった。
あの衝撃、苦痛は正に斬撃のそれ。にも関わらず、体には斬傷どころか出血一つ見られない。
信じられねェと、ぺたぺたと自分の正中線を手の平で確かめるが、自身の五体は一分前と何一つ変わりはなかった。
「ふふ…いや、天晴れ」
光が収まった時と何一つ変わらない様子、変わらない場所で男はクスリと笑った。
未だ状況の掴めない明に対し、男はぬけぬけと賞賛を放つ。
「いい反応だ。それに合戦慣れをしている。抜きしな頭を抑えられたことはあったが、いなし反撃しようとする者は初めて見たぞ。」
訝しみながら明は男をまじまじと観察した。
男が腰にする大小。抜いた形跡は見られない。
男の足元。小汚い部屋らしく、薄埃が舞っている。男が動いた跡一つ見当たらない
ここに来て明は、自分が何をされたのかようやく理解できた。
「…俺も色んなやつと戦ってきたけど、こんな形で不意打ちで浴びせられたのは初めてだったよ。
『エア斬撃』って…」
「すまぬな。隙だらけだったのをいいことに、つい…」
口ではああ言っているが反省しているとは到底思えない。だが、敵対するような意志も悪意も見られない。
やれやれ、とため息をついて腰を起こす明に、目の前の男は、はたと気づいたように、深々と頭を下げて、こういった。
「ああ、これは申し遅れた。
我はセイバーのサーヴァント。召喚に応じ参上仕った。」
セイバー?サーヴァント?聞いたことのあるような…
まさか。そう思い先ほどの本を手にとる。開いたのは何度も読み返し、読み後がついた召喚のページ。
そこにははっきりと「セイバー」「サーヴァント」と。この男が口にしたことと同じ事が書かれていた。
「…信じられねェこともあるもんだ。」
この本は本当だった。マジだった。
興奮とも驚愕とも言えぬ引きつった笑いを張り付かせる明に、セイバーは頭をちらりと上げながらこう付け加えた。
「本名―――――宮本武蔵と申します。どうかよろしくお願いします。」
たっぷり三秒ほど。衝撃に閉じられぬ口をなんとか動かして出た言葉は本日三度目の――――――――
「……信じられねェ」
―――――――――――――――――――
軽い情報交換を済ませ後、セイバーは明に話しかけた
「ふむ…マスター――」
「あ、明でいいよ。マスターなんてのはこそばゆいし、何より柄じゃねェ。」
若干赤くなりながら明は手を振る。
救世主なんて呼ばれちゃいるが、相手は最強宮本武蔵。
同じく剣に生きる者として天下一の大剣豪に主と呼ばれるのはなんというかこう――――恥ずかしい。
「承知。では明よ、お前は吸血鬼を根絶やしにするために聖杯を使うのだな?」
じっとこちらを見ながら問いかける武蔵。圧はないが、眼差しに戯れは見られず。
そういう目を向けられては、いつまでも照れてはいられない。しっかりと武蔵に向き直り、答えた。
「そうしてェのはやまやまだけどよ…俺は使うつもりはねェ。」
「何故だ?聖杯を手に入れ、願いを叶えたいがためにこの戦に参加したのではないのか?」
「吸血鬼は全員殺す。だけどよ、聖杯ってのはそんな都合のいいもんか?何より雅を殺せるのか?俺にはどうも信じられねェ。」
「雅。先程出てきた吸血鬼の首領か」
雅。吸血鬼の首領にして諸悪の根源。明の宿敵。
そいつを滅ぼすために本土に渡ったという話を武蔵に今さっき聞かせたところである。
当然、武蔵からすればそれが目的であると思っていたし、武蔵からしても、そやつは聖杯を使うことになんら問題のある相手とも思えない外道であった。
それ故、不思議であった。
「ああ。他の吸血鬼は死んでもあいつが死ぬとはなかなか思えねェ。そんな未知のもんに頼るくらいなら、俺がこの手で殺した方が確実だ。」
「わからぬ。では何故聖杯戦争に参加した?」
「聖杯をぶっ壊すためだ。
もともとこれは雅の部下の吸血鬼が持っていた情報。あくどい利用をされたら敵わねェからな。」
一もにもなく即答する。
目を見開くが、血迷った様子はない。
この男はサーヴァントにとってそれがどれほどの意味を持つか、理解したうえで即答しているのだ。
武蔵の髪がゆらりと逆立つ。
「…明」
ぐにゃぁ、と武蔵の輪郭が揺れた。
闘気ともオーラともつかぬ何かを放出し周囲の空間を歪めながら近づいてくる。
一流の武道家ですらびびって攻撃を仕掛けてしまいだが、それを明は冷や汗一つかかず。更には真正面から見据え、口を開いた。
「俺は問われたから答えた。次はあんたの番だ。」
ぴたり、と武蔵の脚が止まる。
それと同時に悪魔的なオーラもなりを潜め、再び窺うような、探るような視線に戻る
「応えてもらうぜ、セイバー。あんたは聖杯に何を望む?」
驚愕(おどろ)いた。こんな小僧が。こんなにもおれより弱いこの男が。こんなにも強い己に向って。
一切怖気づくことなく対等な立場で話をしようとしている。
これは持って生まれた素養というよりは、生きるか死ぬか。自分より強い相手に囲まれたうえで生き抜いてきた、そういう環境で育ってきた心胆から来るものだろう
(なんという。なんという豪胆さか。合戦慣れ―――――どころではない。
この男。俺の想像を遥かに超える死線をくぐってきている!!)
あっぱれ。そう心の中で呟いたのち、ふっ、と笑いを漏らした。
よくわからず目を細めるマスターに向い、セイバーは想いを告げた。
「受肉だ。」
「…受肉?」
明は首を捻る。
「うむ。
俺はな、出世したいのだ。
そもそもあれだ。出世するには何は無くとも、まず肉体(からだ)が必要だろう?」
「…あ、あぁ」
天を見て懐かしむ武蔵。思い描くは数多の民。絢爛な都。数々の将軍。
「過去立ち会うこと六十余度。小競り合いも含めれば百は下るまい。斬りも斬ったり。
斬りまくるにつれ、名が広まった。名が広まるにつれ、諸国大名が俺を欲しがり、召し抱える条件は高まっていった。
そうなれば、だ」
宮本武蔵の伝説。明ならずとも、剣に生きるもの・武に身を置くものならば誰しもが聞いたことがある。。
曰く、人斬り。曰く、生涯無敗。曰く、天下一。
そのどれもがたった一つの欲求。出世、有名になりたい。そんな欲求から来るものだとは。
「美しき娘も、
目も眩む黄金も、
呆れるような馳走も、
酒も、
どれも!!」
パン、と手を叩く。
「思いのままだ!!出世したいのだ!!」
「褒め称えられたいのだ!!
褒められて!褒められて!褒められて!
逃げも隠れも出来ぬ身となりたいのだ!」
俗物と言えば俗物。子供のようであると言えば子供のよう。
しかし明にはそれが悪いようには見えなかった。
分かりやすい欲望を堂々と掲げて話してくれる彼は、神格化された武人ではなく等身大の自分と同じ人間だ。
しかも彼岸島に居た連中のように歪んだ欲望ではなく、純粋無垢な欲から来るそれには微笑ましさすら覚える。
綺麗で、純粋で、子供のようで、最強の男。今迄の緊張もどこかに立ち消え、明も微笑みながらそれに答えた。
「――――――――なんだ。
なら、やっぱり聖杯はいらねえじゃねェか」
ふむ?と何かわからぬようにぎょろりと爬虫類的な瞳を覗かせる。
「自慢じゃねェけどよ、俺は本土だと救世主様って呼ばれてる。
何てことはねェ。溢れかえった吸血鬼をひたすら切って斬って斬りまくってるだけだ。
それでも救世主、らしいぜ。」
「ふむ。」
「あんたなら。俺より、雅より、誰より強いであろう、天下無双の宮本武蔵が吸血鬼を斬りまくったなら。
きっと褒め称えられる。
間違いなく崇め奉られちまう。
人間の所に行けば声をかけられまくって、道も歩けなくなるだろう。
もしかしたら、神様なんて呼ばれちまうかもな。」
「神様か…ふふ。」
「そういうのも、悪くはない」
にやりと笑うセイバー。
「なら、決まりだな。
目的は聖杯の破壊、できなきゃ脱出だ。やり方は悪どいマスターやサーヴァントを倒しながら、な。」
できれば人は斬りたくねェが、と呟きながら背を見せる明。
「構わん。追随する者が現れた場合は?」
ずい、と追随するように横に並ぶセイバー。
「目的が一緒なら構わねェさ。あんたはどうだ?」
「構わん。無理に助けはせんがな」
「構わねェよ。俺も無茶をする気はねェ。
じゃあ行くぜ、セイバー。」
何処へ?そう言いたげな武蔵に明は下へ続く階段を指さす。
階段の上には何やら、光る看板が掲げられていた。
「…?」
「ああ。地下鉄…って言ってもわからねェよな。乗ればわかるよ、乗れば。」
――――――――――――――――
ガタンゴトン。ガタンゴトン。
都民にとっては聞きなれた、しかし明にとっては涙が出るほど久しい音を発しながら、電車は線路を駆け抜ける。
懐かしい…以前都会に居た頃。今は少なくなった商店街メンバーに想いを馳せ、感傷に浸りながら窓の外を眺める明。
「…明」
くいくいと遠慮がちに袖を引っ張るセイバー。
リラックスした明とは対照的に、脚をそわそわさせ、うぶな乙女のように体を強張らせ、見た事もないくらいの冷や汗をかきながらセイバーはマスターに救いを求めた。
「明…!
こ、この『ちかてつ』とやらは。
もそっと。もそっとゆっくり、揺れずに走れんのか?!」
片手で明の袖をつかみながら、もう片方の手で男を抱え込む女のようにシートにしがみつきながら。
あまりにも必死なそれに、明は思わず吹き出してしまった。
「ハハハッ。」
「笑いごとではないッッッ!!」
「すまねェ。すまねェ。
いや、天下無双の宮本武蔵も地下鉄相手は分が悪ィか。」
【真名】
宮本武蔵@刃牙道
【ステータス】
筋力A+ 耐久C 敏捷A 魔力D 幸運A 宝具A++
【属性】
混沌・中立
【クラス別スキル】
対魔力 B
魔術詠唱が三節以下のものを無効化する。大魔術・儀礼呪法などを以ってしても、傷つけるのは難しい。
騎乗 B
魔獣・聖獣ランク以下なら乗りこなす事ができる
【固有スキル】
五輪:A+
後生まで伝わる磨き上げた心技体の証。
どのような状況でも十全に戦闘力を発揮でき、あらゆる精神干渉を無効化し、意識の先読みを可能とする。
二天一流:A+++
その道の流派を極めた証。
刀剣類を一つその手に装備するごとに筋力・敏捷に一段階ずつプラス補正がかかる。
完成間近であるため、これからの戦い次第でランクアップする可能性がある。
卑怯者:B
勝つためには手段を選ばない。
不意打ち、挑発、擬態、縛法。
やれることはなんでも行うし、その成功率を高くする。
空に描く剣(エア・スラッシュ):-
剣を極め、遂には剣を持たずとも動かずとも相手に意識させることが可能になったイメージマジックの境地。エア斬撃。
高ランクの精神干渉抵抗を持たぬものがこのスキルを受けた時、実際に切られたものと同等の衝撃・苦痛が相手に走る。
【宝具】
『武芸百般』
ランク:A++ 種別:対人 レンジ:1 最大捕捉:武器の届く範囲総て
手にしたものに「自分の宝具」として属性を与え扱う宝具能力。火器類を除き、尚且つ著名な武器であるならばそれをA++相当の武器として扱うことができる。
また、武器を一つ装備するたび筋力・敏捷にプラス補正がかかり、格闘ダメージがアップする。(最大二つまで)
今回の戦いではマスターである明が有用な武器だと思っている丸太にもこれが適用される。
『無刀至無手二つ』
ランク:A++ 種別:対人 レンジ:1 最大捕捉:手の届く範囲総て
己の手刀に実際の刀同様の殺傷力を持たせる武蔵の最終奥義。修行の果てに、姿そのままを刃と化させることに成功したイメージマジックの行き着く果て。
これを発動させれば無手のままでも武器を装備したものとみなせるようになり、尚且つ筋力・敏捷にプラス補正がかかる。
【Weapon】
国宝・國虎の大小
【サーヴァントとしての願い】
マスターと共に吸血鬼を斬りまくって有名になること。もしくは受肉。
【戦術・方針・運用法】
敵を見つけて戦う。
マスター・サーヴァント共に戦力が高く、過去多くの戦闘経験を持っている。そのためいざ戦いとなれば個人戦集団戦問わずどのような戦い方もできる。
反面、見えない位置からの魔術等にはあまり有効な手が無いので、そういう面に長けた仲間と組む必要がある。
武器を見つけて戦う。
銃火器類以外ならばなんでも使えてステータスが高まるため、武器があればあるほど汎用性が高くなる。
宝具『無刀至無手二つ』は発動すれば二天一流及び武芸百般の効果も重なり恐るべきステータスになるが、魔力消費が激しい。
魔力を抑えるという意味でも、汎用性を高めるという意味でも、多くの武器はあって損はない。
魔術に長けた者と良い武装を分けてくれるくれるもの。このような味方を見つけることができれば武蔵の死角は無くなるであろう。
【マスター】
宮本明@彼岸島
【マスターとしての願い】
脱出、もしくは聖杯の破壊。
余裕があれば武蔵に受肉させてもいい。
【weapon】
丸太 仕込み刀
【能力・技能】
彼岸島で数多くの常軌を逸した相手との戦いを生き抜いてきた明は、しぶとく勝ち抜く根性と、冷静な判断力に長けている。
また彼岸島での戦いで見せたように、
丸太を振り回す腕力、鉄を軽々と日本刀で断ち切る技術、ギロチンを振り回し竜巻を起こす、ロープを使ってビルとビルの間を渡り継ぐなど常人離れした身体能力を持つ。
【人物背景】
現代の人間。右腕は義手であり、中には鉈を思わせるような刀が仕込んである。
彼岸島での実質的なリーダーで、多くの戦いを勝ち抜いてきた。
本土ではその圧倒的な戦闘力から救世主と呼ばれている。
【方針】
あくどい参加者を退場させながら進む。脱出、もしくは聖杯の破壊を目的とするものなら仲間にして一緒に戦う。
投下終了します
投下します。
────未明、ランサーが一人散った。
ランサーのサーヴァントは、巨大な槍に心臓を貫かれて死亡した。
彼及び彼の周囲に向けられた攻撃は、「槍」の連弾であった。
ランサーが放った「槍」の攻撃が、そのまま、「槍」の雨となって、ランサーの周囲に返されたのである。
その槍の雨が、偶然、降り注いだ先がランサーの心臓だった。
膨大な鮮血とともに、哀れにも、自身の得意とする武器で、ランサーは散った。
その時、ランサーの相対したサーヴァントに攻撃の意思はなく、そのマスターにも交戦の意思は無かった。
ランサーが、それを見つけ、一方的に攻撃を仕掛けただけである。
だが、ランサーは負けた。
このサーヴァントに、攻撃を与えるという行為は、何よりも愚かな敗北への路に違いなかったのである。
エクストラクラスで召喚されたそのサーヴァント──イフ。
完全生命体の異名を持つイフを倒す術は、────"無い"。
イフは如何なる攻撃を受けても、それで死ぬ事はなく──そして、それを何倍にもして返してくる。
ミサイルも、光線も、何もかも。
下手をすれば、マスターの令呪を用いた命令すらも、マスター自身に返してしまうかもしれない。
それが、イフだった。
いわば、彼を滅する方法は存在などしなかった。
敵の持つ悪意や戦意を返し、敵にぶつける──その果てにあるのは、イフに愚かな感情を向けた者の死のみである。
だが、それは、決してイフに勝てないという事であって、イフに負けない事そのものは容易であった。
イフに、"障らなければ良い"のである。
このサーヴァントは、例えマスターが令呪を以て命令しても敵を害する事はない。
それだけがイフの弱点だった。
────そして。
この最強のサーヴァントを召喚したマスターとは何者であったのか。
マスターは、ある一家にいた。
……それもまた、聖杯戦争の意思を持つ者ではなかった。
これからの出来事次第で如何様にも正しくなり、如何様にも悪しくなる。
イフがこの世に現出した時、聖杯戦争を起こす意思も、聖杯を破壊する意思もなく──戦う意思すらない。
彼女は、今、時折起こる謎の体調不良に、悩まされているだけだった。
野原ひまわり──彼女は、無垢な"赤ん坊"であった。
【CLASS】
イフ(エクストラクラス)
【真名】
完全生命体イフ@ウルトラマンマックス
【パラメーター】
基本
筋力- 耐久EX 敏捷- 魔力? 幸運- 宝具EX
【属性】
無・反射
【クラススキル】
完全生命体:EX
自らに与えられた攻撃を無傷で防ぎ切る防御と、それらを学習して跳ね返すスキル。
故に、イフを物理的に破壊する事は出来ず、イフを攻撃する事はイフの強化を手伝う事にしかならない。
【保有スキル】
単独行動:EX
マスター不在でも行動できる能力。
EXランクならば、マスター不在でも外宇宙でも行動できる。
反射:EX
敵が持つスキルによって放たれた刺激を、そのまま反射できるスキル。
つまり、相手が飛行して攻撃したならばイフも飛行して攻撃し、相手が加虐体質を伴って攻撃したならばイフも加虐体質を伴って攻撃を返す。
自己再生:EX
攻撃を受けてバラバラに破壊されても再生してしまうスキル。
EXランクは、分子レベルの分解を受けても即座に再生してしまう。
【宝具】
『総べてを反す生命(イフ)』
ランク:EX 種別:対全宝具 レンジ:∞ 最大捕捉:∞
敵が放つ意思・攻撃を学習し、そのまま返すこの英霊の性質そのもの。
何故このような性質を持ち、何故かつてこの英霊は地球に来たのか──それは一切明かされていない。
この宝具はクラススキルと同質であり、如何なる攻撃・スキル・宝具を受けても再生し、それを学習して返してしまう。
しかも攻撃をどれだけ受けても際限なく進化してしまう。要するに、まともに攻撃して倒そうとしても、イフが滅びる事がない。
更に、敵の攻撃をそのまま返す行為は、敵サーヴァントの放った攻撃の魔力を返すだけである為、魔力は消費されず、マスターにとってもこの宝具による負担が起きない。
ただし、これらの性質の代わりに、敵から攻撃を受けていない時は、令呪によって命令されてもイフ自身も敵を攻撃しない(令呪の命令さえも返してしまうかもしれない)。
このサーヴァントには、マスターや如何なる相手にとっても、「触れない」事が得策である。
【weapon】
なし
【人物背景】
突如、宇宙から飛来した物体。
受けた刺激を増幅し再現する能力を持ち、ウルトラマンすらも絶対に勝てない存在。
つまり、敵の攻撃を受けても際限なく学習して、それを返してしまう。
それに加えて、敵の攻撃でバラバラにされても即座に再生してしまい、形を変えて蘇える。
このように、イフの「攻略法」はないのだが、「解決法」ならば幾つか存在する。
現在は、そのサイズは2m大の繭のような姿(現世にいた頃よりも少し小さい)で、ランダムに霊体化や実体化を繰り返す。
出現位置も完全にランダムで、どこに現れてもイフは、自ら攻撃や破壊行為を行う事はない。
【サーヴァントとしての願い】
不明。
【マスター】
野原ひまわり@クレヨンしんちゃん
【マスターとしての願い】
なし
【weapon】
なし
【能力・技能】
赤ん坊離れしたハイハイの速度や戦闘力。
【人物背景】
「クレヨンしんちゃん」に登場する野原一家の赤ん坊。
野原ひろしと野原みさえの間に生まれた長女で、野原しんのすけの妹にあたる。
光りモノややイケメンが好き。しんのすけに次ぐ問題児。
とはいえ、無垢で争いを好まず、敵に対して多くの人間が悪意を向けた時には泣き出してしまう心の優しい性格である。
【方針】
そもそも聖杯戦争をよくわかってない。
サーヴァント実体化に伴う魔力消費による「体調不良」が起こり、突然に泣きだす事が多々ある。
以上、投下終了です。
皆様、投下お疲れ様です。
告知をしてから随分と遅くなってしまいましたが、当企画のwikiが完成いたしました。
ttp://www25.atwiki.jp/infinityclock/pages/1.html
こちらになります。
そして、当企画の参加者コンペ期限を正式に発表させていただこうと思います。
12/20の午前0:00をもって、主従の募集を締め切らせていただきます。
もしかしたら伸びることがあるかもしれませんが、短くなることはありませんのでご安心下さいませ。
皆さん投下乙です。
自分も投下させていただきます
「ふぁ〜」
ジリリリとけたたましい目覚ましの音で、少女は目を覚ます。
強制的に起こされたせいか、不機嫌そうな顔しながらベッドから降りた。
眠い目を擦り、フラフラとした足取りで、寝室を出てリビングに向かう。
「おはよう、チャモ」
「おはよう」
扉を開けて、出迎えていたのは両親の朝のあいさつと、優しい笑顔だった。
その笑顔につられてか、チャモも自然と笑顔で両親にあいさつをする。
正確に言えば、チャモの両親という『ロール』を演じている、NPCにあいさつをした。
ここはチャモ・ロッソが居た世界では無い。
ここは聖杯戦争の舞台として作られた偽物の街。
聖杯戦争の参加者の一人として、この地に呼ばれた。
そしてチャモに与えられたロールは「ごく普通の両親のもとで暮らす、女子中学生」
最初は自分の両親に酷似しているが、別人であるということに違和感はあったが、そういうものだと思えばすぐに慣れた。
チャモは食卓につき、母親が朝食を作るのを待ちながら、何気なくテレビから流れるニュース映像を眺めていた。
この地に呼ばれてまず驚いたのが、文化水準の高さである。
テレビというもので遠くの出来事を、まるで自分の目で見たことのように見ることができる。
電話というもので、自分の声を遠方にいる相手に伝えられ、相手の声も聞けて、意志疎通ができる。
冷凍庫というもので、液体を短時間で凍らせることができる。
このような芸当は自分が住んでいる世界では、聖者と呼ばれる異能の力を持つ者しかできないものだ。
聖者にしかできないことを、簡単にやってのける道具がある。
そして、これらの道具は、どうやら科学と呼ばれる技術によって作られたそうだ。
仲間のアドレットが、科学が凄いとか言っていたのは思い出したが、これほどまでとは思ってもいなかった。
そんな科学の力によって、自分の世界とは比べ物にならないほどに発達した、この街の生活に適応するのに、チャモは相当苦労していた。
今では充分とは言えないが、最低限はこの科学が発達した世界に適応できている。
もし自分がこの街に呼ばれたのが、聖杯戦争開始直前なら、この世界に適応できずにいただろう。
それはこれからの戦いのうえで、致命的な弱点になりうるかもしれない。
そういった意味ではチャモは幸運と言える。
そんなことを考えているうちに、朝食を作り終えた母親が料理を食卓に置き始める。
チャモの目の前に出されたのはホットケーキだ。
チャモの身体は普通の人のように、定期的な食事を必要としない。
この朝食どころか二三日食事をとらなくても平気である。
しかし、この聖杯戦争において食事をすることで、微弱ながら魔力の回復することができる。
そして、科学の力か知らないが、この世界の食べ物は自分のいた世界の食べ物より美味い。
母親が作る料理はこの世界ではごく普通の味である。
だが、チャモにとっては、どの料理もとても美味かった。
食事をそこまで必要としないといえ、美味しいものを食べたいという欲求は、チャモにも存在する。
なので、チャモは、この世界に来てからは、一日三食を積極的にとるようになっていた。
この料理はどれだけ美味しいのだろう。
そんな期待に少し胸ふくらませながら、ホットケーキにフォークを伸ばす。
しかしホットケーキは、チャモの口に運ばれることはなかった。
ホットケーキはフォークに刺さる前に、何者かの手で奪い取られていた。
チャモは手が伸びた方向に目を向けると、そこには女性が座っており、チャモが食べる筈だったホットケーキを美味しそうに食べている。
その女性の頭には、つばが異様に大きい黒の帽子。まるで童話の魔女が被っているような三角帽子を被っていた。
髪は金髪で、三つ編みにしても膝裏まで届く長さが目をひく。
チャモはこの女性に見覚えが有った。
「チョモのご飯勝手に食べないでくれる。キャスター」
怒りの表情を浮かべ、明らかに機嫌が悪そうな声色でキャスターの行為を咎める。
しかしチャモの敵意が籠った目線を受けるが、キャスターはそれがどうしたと、言わんばかりに、ホットケーキを食べ続けていた。
「キヒヒ、人が食べるものは美味そうにみえるからな、食べたくなるんだよ。むしろ、ご主人様のために、自ら献上するぐらいの心がけを見せたらどうだ。お、これ中々イケるな」
「何でチャモがキャスターにご飯をあげなきゃいけいのさ。それに人の物を勝手に食べるなんて、育ちが悪いね。チャモでもそんなことしないよ」
「ゲロガキがこの食べ物を見た時、目を輝かせていたから奪いたくなった。魔女はいじわるをするのが仕事だからな」
「相変わらず性格悪いね。それにチャモはチャモだよ。ゲロガキじゃない」
キャスターはチャモを小バカにした態度を見せながら、ホットケーキをたいらげ、NPCの母親におかわりを要求する。
チャモはキャスターのことをサーヴァントと知っているので、突如現れたのは霊体化した身体を実体化しただけと分かっている。
だがNPCの両親はどうだろう。
文字通り突然現れた人物の言うことを、はいそうですかと、聞くだろうか
むしろ、人が突然現れた恐怖と困惑で、まともに行動することもできないだろう。
だが、NPCの母親は困惑の表情を見せながらも、メタリカの要求に応える為に、台所へ向かった。
キャスターのスキルに「魔女制圧」というものがある。
それは人の住居に無理矢理押し入り、その住人に絶対服従させる。
キャスターはチャモの家に押し入り、魔女制圧のスキルでNPCの両親を服従させていた。
これにより、キャスターのことがいかに怪しかろうが、憎かろうが命令に従わなければならなくなっていた。
チャモはキャスターの方に目をやると、テレビのリモコンを手に取り、オモシロい映像がないかとザッピングしている。
するとお菓子特集の番組にチャンネルを固定し、番組を食い入るように見始めた。
テレビにかじりついている様子を見ると、とても英霊とは思えない。
だがその力はまさに英霊と呼ぶに相応しいものだった。
◆ ◇ ◆ ◇
「あれ?」
チャモが目を覚まし、視界に飛び込んできたのは湖だった。
辺りには明かりがなく、月明かりだけが光源なので断言はできないが、おそらくそうだろう。
奇妙だった。
自分は洞窟で寝ていたのに、何故湖の近くにいる?
誰かに運ばれたのか?そう思ったチャモは辺りを見渡すとあることに気付く。
「誰もいない?」
チャモ・ロッソは六花の勇者である。
六花の勇者とは、人間を滅ぼそうとする魔神の復活を阻止するために、選ばれた六人のことである。
チャモは魔神復活を阻止するために、同じ六花の勇者である仲間と旅をしていた。
だが今は誰もいない。
「猫さ〜ん。おばちゃ〜ん。どこに居るの?からかっているなら、チャモ怒るよ」
居る筈である仲間に呼びかけるが、その声に応じることなく空しくチャモの声が湖畔に響き渡る。
チャモの胸中には不安が渦巻いていた。
自分には想像もできない、何かが起こっているのではないかと。
「キヒヒヒ、いくら叫ぼうが、その猫さんやおばちゃんは現われないぞ」
突如聞こえてくる声に、チャモは反応する。
声は後ろからも、横からも、前からも聞こえてこなかった。
となると上。
見上げてみると、空に浮かぶ箒に腰を掛け、自分を見下ろす女性がいた。
月明かりを背に映るその姿は妙に神秘的で、まるで魔女のようだ。
空飛ぶ箒に腰かけ、宙に浮く女性。
こんな芸当をできるのは聖者ぐらいだ。ということは聖者か?
だが聖者といえど、六花の紋章がない者は魔哭領の瘴気に耐えることができず、死んでしまうはず。
だとしたら飛行能力を持ち、変身能力を持つ凶魔か?
チャモはいつでも攻撃できるように、手元にあるネコじゃらしを口元に近づかせながら、に宙に浮かぶ女性を睨む。
箒に乗った女性はゆっくりと地面に降りはじめ、チャモの目の前に立った。
「お前がワタシのマスターか……まあ、魔力は中々に有りそうだな」
女性は値踏みをするように、チャモの隅々を観察する。
「誰?チャモに何の用?」
このよく分からない状況で、知らない人間に値踏みされるように見られたのが癪に障ったのか、声に苛立ちの様子が見られる。
「どうやら何も知らないようだから教えてやろう。キャスターのクラスで召喚されし、この大魔女!メタリカが!」
キッヒヒヒとキャスターの高笑いが辺り一面に響き渡たる。
その後チャモは現状や聖杯戦争のことをメタリカに掻い摘んで説明される。
「つまり、聖杯戦争ってのに参加している人間をぶっ殺せばいいんでしょ」
「まあ、そういうことだ。キヒヒヒ」
聖杯戦争に勝ち抜けば願いが叶う。
メタリカにそう説明されたが、チャモは聖杯については懐疑的に見ていた。
願うとするならば、自分たちの世界の人間を滅ぼす存在である、魔神復活を阻止、いや、魔神の存在自体を消滅することだ。
だが、どこの誰かがやるか知らないが、魔神をそんな簡単に消せたら苦労はしない。
となると、この世界から自分の世界に脱出したいところだ。
自分が居ない六花の勇者では魔神復活を阻止できない。
しかし、元の世界に帰る方法はメタリカも知らず、自分も方法がまるで皆目見当がつかない。
仲間のアドレットなら考えることは得意なので、もしかしたら脱出する方法を考え付くかもしれない。
だが、自分は小難しいことを考えるのは苦手だし、する気もない。
それならば有るかわからない脱出方法を探すより、自分が戦ってさっさと聖杯戦争を終わらせたほうが良い。
誰が自分を呼んだか知らないが、勝者になれば元の世界に帰してくれるだろう。
それに、万が一に願いを叶えてくれるかもしれない。
「なあ、魔力を持っているということは魔女か何か?どんな魔法を使えるんだ?」
別の世界の人間がどのような魔術を使うのか?メタリカは興味があった。
そして、有用で強力な能力なら、今後の戦いでチャモに頼るかもしれないと思案していた。
自分は魔女として、非常に秀でているという自負がある。
だが聖杯戦争において、三騎士のクラスは対魔力を持っており、忌々しいが魔法が通じず、自分単体では倒せない可能性が高い。
そうなると自分がサーヴァントを引き付けて、チャモに他のマスターを倒してもらうという戦術も使うことも充分に有り得る。
生前の昔の自分なら、人をあてにするなんて、これっぽっちも考えなかっただろうなと内心で自嘲する。
しかし、自分一人の力では限界がある。
それを友人や、仲間と言える存在と共に行動したことで、それを理解していた。
「チャモは魔女じゃなくて、聖者だよ」
聖者、メタリカはその言葉を聞いた瞬間、思わず吹き出してしまった。
「ギャハハハハ!お前が聖者?どこが聖者なんだ?お前が聖者なら、ワタシは天使か何かか?」
腹を手で押さえ、大声で笑う。その笑い声は湖畔に響き渡り、音に驚いたのか、木の上にいた鳥たちが一斉に飛び立つほどだ。
自分から聖者を名乗る時点で滑稽だった。
百歩譲って、聖者と名乗るのに相応しい外見や性格ならいい。
しかし、チャモの姿はあまりもメタリカが、想像する聖者とはかけ離れていた。
聖者とは、チャモの世界では異能の力を使う女性の総称であり、けしてメタリカが考える慈悲深さや、心の清らかさを持っているという、意味で言ったわけではない。
なので、チャモには、何故自分が笑われているのは分からなかった。
ただ、バカにされているということはわかる。
「口答えとかされたことはあったけど、ここまでバカにされたのは生まれて初めてだよ」
チャモはメタリカに敵意、いや殺意の視線を向ける。
幼い容姿からは、想像できないほどの殺気を漲らせていた
チャモは強大な力を持ってしまったせいか、生死についての倫理観が乏しい。
まるで遊び感覚で、人間を拷問しようと提案し、即座に殺そうと発言する。
そのたびに仲間に止められていたが、止められていなければ躊躇なく殺していただろう。
幼子だけが、持っているという純粋な殺意。
その殺意をそのまま宿し、常人の何十倍の力を持ってしまった少女。
それがチャモ・ロッソである。
そしてチャモを止める仲間はどこにもいない。
「ん?何だ。聖者様はそんな目で人を見るのか?まさかワタシとやろうって言うのか?」
殺気を孕んだ目線を向けられながら、平然と受け流す。それどこらか、チャモをさらに煽り立てる。
メタリカは意識的に煽るつもりはなかったが、結果的にチャモの意志を固めることになる。
こいつを殺す。
自分のサーヴァントが死に、新たなサーヴァントと契約を結ばなければ、この世界から消滅してしまうことは聞いている。
だが、怒りでそのことは頭の片隅にも残っていない。
「何の能力があるかって聞いたよね?いいよ、見せてあげる!沼の聖者の力を!死んで後悔しろ!」
チャモが臨戦態勢を取ったのを見て、歯を見せ笑いながらメタリカも臨戦態勢を取る。
「キヒヒヒ、いいだろう。ここらへんで力の差を刻み込ませてやろう」
温厚なサーヴァントなら、自分の非を詫びて、チャモを宥めるだろう。
しかし、メタリカは自分が悪いとも思っていないし、ここまで反抗的な態度を取られてはプライドが許さない。
力関係を示すのにはいい機会だ。
そして、“沼の聖者”という単語に興味を惹かれた。
メタリカは生前、沼の魔女と呼ばれていた。
その自分の目の前に沼の名を冠する異能者が現われる。
恐らく沼に関係する力なのだろう。
チャモがどのような沼の力を使うか、楽しみでもある。
チャモは手に持っていた猫じゃらしを口に入れ、喉に押し込み、ぐうえ、と派手にえずいた。
次の瞬間、チャモは大きな声をあげて嘔吐した。黒と茶色と薄汚い緑が混じった吐瀉物がまき散らされた。
それは異常な量であり、小さな体の数十倍はあった。
すると吐瀉物が、形を取っていく、巨大なヒル、ナメクジ、蛙、蛇やトカゲの凶魔の形に変わっていく。
その数は50近くにもなる
チャモの世界には凶魔と呼ばれる巨大な力を持ち、人間に敵対する異形の存在がいた。
チャモは凶魔を食べることにより、食べたものを従魔として使役することができる。
「教えてあげる。チャモのお腹の中には“沼”があるんだよ。沼にはチャモが食べた生き物が、仲良く暮らしているんだ」
メタリカは顔を引き攣らせながら、その様子をただ見ていた。
「それで沼か……“沼”というより、“ゲロ”の能力だな」
正直予想していたものとは大きく違っていた。
自分の宝具のように沼でも生成するかと思ったが、まさか沼の中の生物を使役する術とは。
吐瀉物をまき散らす様は、中々に衝撃的な絵図であり、少しだけヒイていた。
「何かを使役して戦う術か。それならワタシも同じ舞台で戦ってやろう。
キヒヒヒ、喜べ、特別に宝具を見せてやる!こい!百騎兵!」
メタリカが地面に手をかざすと、地面に円形の黒いコールタールのようなものが現われる。
そこから人型の何かが勢いよく飛び出してきた。
それは小人と言ってよいほどに小柄だった。
肌は全身黒色、頭に兜のようなものを被り、てっぺんには青い炎が燃えている。
「何それ?」
「これはワタシの宝具の百騎兵。お前の相手はこの百騎兵だ」
「そのチンチクリンが相手?チャモのこと舐めてるの?」
チャモは怒気を孕んだ声でメタリカに問いかける。
最初は地面から何かが飛び出したので警戒したが、出てきたのが百騎兵である。
その締まりのない表情、マスコット人形みたいな造形。
とても自分のペットに太刀打ちできると思えなかった。
「キヒヒヒ、お前こそ百騎兵を舐めるなよ。百騎兵、あの化け物たちを薙ぎ払え
」
生前と同じようにメタリカは百騎兵に指示を与える。
その声と百騎兵に向ける視線は、どこか嬉しげで懐かしむようだ。
「ワッキュ!」
その掛け声は肯定ということなのか、首を縦に振る。
百騎兵は従魔の方へ悠然と歩を進める。
その手にはいつも間にか、身の丈と同じ長さの剣が握られていた。
そこに蛇の従魔が襲い掛かる。その口が今にも百騎兵の身体に噛みつかんとする。
だがそれより先に、百騎兵の剣が蛇の従魔を切り裂いた。
それを皮切りに、チャモの従魔が次々と襲い掛かる。
その物量は驚異的だった。
チャモの従魔は再生能力を持っている。
トカゲの首を切り落としても、ナメクジの胴体を真っ二つにしても、即座に再生し、百騎兵に立ち向かう。
それは何百体の従魔を相手にしていると同じこと。
その従魔を薙ぎ払い、チャモに近づくのは困難を極める、
今までに個人で従魔の守りを突破し、チャモに攻撃できたものはいない。
だが、百騎兵は従魔の集中攻撃を受けながら、傷一つつけることなく、チャモに近づいてくる。
これにはチャモも驚愕の表情を浮かべていた。
これほどの従魔が攻撃しているのに、倒すどころか、傷一つ負わすことができないことは今までになかった。
するとチャモの目の前に突然百騎兵が現われる。
従魔の攻撃の隙をついて、チャモに向かって突っ込んできたのだ。
恐るべきはその速度。十数メートルを一瞬でゼロにした。
チャモにも相手が接近してきた用の対策は有ったが、それを実行する暇すら与えられない。
百騎兵がチャモの目の前に近づきに袈裟切りの要領で剣を振り上げようtする。
チャモにはその様子がスローモーションのように見えていた。
これは避けられない。剣に切り裂かれる痛みに少しでも耐えられるように、目をつぶり、身体を硬直させた。
しかし、いくら待っても、痛みはこない。
恐る恐る目を開けると百騎兵の姿はどこにも無い。
目の前には百騎兵ではなく、悪戯っぽい笑みを浮かべるメタリカがいた。
「キヒヒヒ、これが百騎兵の力だ。いかんともしがたい力の差を理解したか?」
その笑顔は、どうだ!うちの百騎兵はすごいだろ。そう言いたげだった。
「クソ!クソ!クソ!」
チャモは涙を流しながら、地面を殴りつける。
今までこの力でわがままを通してきた。
現代最強の聖者と謳われ、自分こそ最強だと信じていた。
ところがどうだ、自分が全力を出して戦ったが、百騎兵相手にはかすり傷すら与えられなかった。
ぐうの音も出ないほどの完敗。
チャモのプライドは粉々に砕けた..
◆ ◇ ◆ ◇
朝食を食べ終わったチャモは、自室に向い学校へ行くための準備をはじめる。
ロールに従う気はなかったが、メタリカがロールに従い、NPCとして振る舞えという助言があった。
言っていることは筋が通っていたので一応は従うことにする。
「おいゲロガキ、ちゃんと怪しまれないようにしているか?」
「うるさいな、ちゃんとしてるよ。チャモは賢いから、おばちゃんみたいに騙されたり、怪しまれたりしないよ」
チャモはメタリカのことは、そんなに好きではない。
自分本位で傍若無人。名前をちゃんと言わないし、やたら主人面してくる。
ここに来る前のチャモなら、間違いなくキレていただろう。
自分一人でこの聖杯戦争を勝ち抜けるなら、メタリカなんて殺している。
だがサーヴァントとの実力差を思い知らされた。
当代最強の聖者と謳われたチャモだが、負けたことはある。
理由としては、数の力で押し切られた、自分の能力の対策を取られていた。
だが、今回の敗戦は今までの負けとは違う。
たった一体の相手に力でねじ伏せられた。
言い訳のしようが無い敗北。
そんな化け物がゴロゴロいるのが、この聖杯戦争という戦い。
悔しいが、メタリカと協力しなければ生き残ることはできない。
生き残るために怒りを堪え、チャモはメタリカと折り合うことにする。
「学校って処は友達が居ないと怪しまれるらしいぞ、ちゃんと友達いるか?
お前の性格じゃ、友達いなそうだけどな。キヒヒヒ」
「キャスターだけに言われたくないよ。キャスターこそ、そんな性格じゃ友達いなかったでしょ」
チャモは二ヒヒと笑いながら、言い返す。
メタリカの次の反応はむきになって言い返すと思ったが、予想とは違った。
「友達はいたよ……」
悲しげな顔をし、ふと窓から見える空を見つめていた。
メタリカには一人の友人がいた。
最初は友人とは思わず、ただのうっとおしい存在だった。
友人は自分が嘆き悲しんでいる時、自分の為に怒ってくれた。
それが嬉しかった。
友人と居ると自分をさらけ出せる。
友人は自分を沼の魔女ではなくメタリカとして接してくれる。
それが心地よかった。
メタリカは友人を傷つけた。
友人の為にやったことが、結果的に傷つけてしまった。
そのことを謝ることができず、友人は死んだ。
二度とそいつと一緒に共に過ごすことができなくなった。
それがツラかった。
だから生き返らせることにした。
そして自分の命と引き換えに生き返った。
自分の行動に一切の後悔はない。
だがもっと遊びたかった。二人で色々なことをしたかった。
そして、傷つけたことを謝りたかった。
メタリカの願いそれは。
―――生き返ってビスコに会いたい、ビスコと一緒に遊びたい、そして謝りたい―――――
【クラス】
キャスター
【真名】
メタリカ@魔女と百騎兵
【パラメーター】
筋力E 耐久E 敏捷C 魔力A 幸運C 宝具B
【属性】
混沌・善
【クラススキル】
沼地作成 B
陣地作成が変化したもの。
宝具『愛しき我が故郷』を用いて自分に有利な沼地を広げていく
道具作成 A
魔力を消費してマジックアイテムを作成できる。
生前は奇跡の霊薬エリクシールを作り上げることができた
【保有スキル】
不死:C
メタリカはエリクシールを飲んだことにより不死の身体になる。
ただ復活の際には膨大な魔力を消費することになるので魔力が尽きれば復活できない。
沼の呪縛:―
バッドスキル。
沼が近くになければ一時間程度しか現体化できず、スタータスも全て2ランク下がる。
魔女制圧:C
人が住む住居に無理矢理侵入し住民に絶対服従を強要させるスキル。
服従させた人物が提供される食事をメタリカ及びそのマスターが摂取すると通常の食事摂取より多くの魔力回復が望める
【宝具】
『愛しき我が故郷(ニブルヘンネの沼)』
ランク:C 種別:対陣地宝具 レンジ:1〜1000 最大補足:1〜1000
メタリカが住んでいたニブルヘンネの沼を再現する宝具。
魔力を消費して沼を作成する。
この沼は耐性が無いものが触れば体が溶ける。
また匂いを嗅いだだけでも体調不良をおこす危険な毒性を持っている。
なおメタリカが魔力を消費すればその分だけ沼は干上がる。
魔術を使用しても、自分の魔力ではなく沼を消費させることで,
魔力の消費を肩代わりできる
『愛しき我が相棒(百騎兵)』
ランクB 種別対人宝具 レンジ1〜10 最大補足 1
生前沼を世界中に広げるという目的の為。大帝召喚の儀で召喚した魔法生物「百騎兵」
その百騎兵を宝具として呼び出すことができる
言葉はしゃべれないが身振り手振りで意思表示できる知能は持っている。
剣、槍、鈍槌、槍鎌、燭台の五種類の武器を駆使して闘う。
《保有スキル》
体力回復:B
傷を受けてもメタリカの魔力を使って傷を修復することができる。
カオスリバレーション:
幸福以外のステータスを一段階上げることが可能。
しかしメタリカの魔力が多大に消費し長時間使うことは難しい。
戦術トーチカ:C
以下の戦術トーチカを使用できる
8系チクボム
爆弾型のトーチカで同時召喚1基まで。
10系ディアロ―
弓矢型のトーチカ、同時召喚3基。
斬撃属性の遠距離攻撃、ロックオンすることで対象に向かって誘導できる。
16系デコイモ
囮型のトーチカ、同時召喚2基まで。近くにいる敵をひきつける効果。ダメージをある程度受けるか、時間経過で消滅
26系キャプテル
捕縛消滅型のトーチカ、同時召喚1基。弱った敵を捕獲する
42系プロテム
支援型トーチカ。百騎兵のステータスを上げる。同時召喚2基による効果重複可能。
1系チビヘイ
自立戦闘型のトーチカ、同時召喚8基。
召喚後、自動的に戦闘を行う自立型の戦闘トーチカ。百騎兵の移動に追従してくる。
72系ウィクック
偵察斥候型のトーチカ、同時召喚1基。
百騎兵の目となり、偵察を行うことが可能。ただし、百騎兵本体は召喚した場所に残るので注意が必要。
42系キャセリオ
戦闘砦型のトーチカ、同時召喚2基。
自動で遠距離攻撃を行う大型固定砲台。攻撃属性は魔撃。
捕食:C
生物を捕食する。
捕食した生物に応じて魔力が回復する。
相手が弱っていないと捕食不可能
【Weapon】
箒(移動用)
【人物背景】
ニブルヘンネの沼に住む沼の魔女。
百騎兵を召喚し世界を沼で満たしそうと邁進する。
性格は傍若無人。自分に敵対する者は容赦しない。
名前を間違われるのは大嫌い
魔力の源であるマナを操る術に長けており、強大な魔力を自在に操る能力は他の魔女の追随を許さない。
外見こそ少女だが年齢は113歳以上。
だがその実、沼に籠りきりで外の世界の知識は本から得た為見た目や言動に反して性格は幼い。
甘いものは好きだが、辛いものや苦いものを嫌う
【サーヴァントとしての願い】
聖杯の力で生き返りビスコと遊びたい、傷つけたことを謝りたい。
【マスター】
チャモ・ロッソ@六花の勇者
【マスターとしての願い】
魔神の消滅(願いを叶えることはそこまで期待していない)
【weapon】
無し
【能力・技能】
『沼の聖者』
聖者と呼ばれる、異能能力者。
体内に沼があり、その従魔と呼ばれるモンスターのようなものを飼っている。
従魔を使役することができる
【人物背景】
六花の勇者の一人、14歳
沼の聖者であり、現代最強との呼び声が高い。
性格は傲慢で、協調性がない子供そのもの。加えて子供特有の残酷さを持ち、破壊と殺戮に対して何の躊躇いも持っていない。
【方針】
聖杯戦争を勝ち抜く。
とりあえず学校に行く。
以上で投下終了です
投下します。
科学の発展。
それは即ち人類の歴史の発展とも言える。
科学がより文明を発達させるとともに、人類の営みはより高度なものへとなっていった。
しかし。
科学は、人類に様々な恩恵をもたらしたその影で。
人類に、そして世界にとって大きな災いもまた、齎しているのである。
◆◇◆
「せ、セイバアァァッ!!」
少年の絶叫が、廃ビルに鳴り響く。
その眼前では、重厚な甲冑に身を包む一人の騎士―――少年のサーヴァントが、最期の時を迎えようとしていた。
「…………」
騎士の前に佇むのは、石灰色をした無機質―――言うなれば複数の石が組み合わさり人の形を成している―――な死神だった。
その死神は、右手に当たる部位で握りしめていた紅の十字架を騎士へと静かに向ける。
次の瞬間。
十字架は死神の手を離れると同時に、まるで意思を持つかのように騎士の背後へと浮遊し回り込み、その身を拘束した。
中空で、騎士を文字通り十字架へと磔にしたのだ。
「クッ……!?」
騎士は残る力の全てを振り絞り、脱出を試みる。
しかし、それよりも早く死神が動いた。
左の掌を騎士へと向け……
「やれ、ランサー」
主の声と共に、その掌から紫光のラインが走った。
同時に、左腕を中心に光の『腕輪』らしきオブジェクトが出現する。
形容するならば、三次元コンピュータグラフィックスで用いれる多角形―――ポリゴンが一番近い形になるだろう。
「あ……アァァァァァッ!!??」
放たれたラインに身を貫かれ、騎士は絶叫した。
この攻撃でもたらされたのは、ただ槍や剣で刺し貫かれたという肉体的な痛みだけでない。
身体だけではなく……己の中にある、大切な何かを奪われた喪失感。
その何かが何なのかすらも忘却してしまいそうになる虚無感。
自分という存在が薄れ消えゆく……その様な感覚に陥る、精神的な苦痛でもあった。
「…………」
そして、死神が手を下げ腕輪が完全に消滅した時。
騎士の姿は光の粒子と化し、虚空に消え去った。
少年の体が、膝から崩れ落ちる。
頼りにしてきたパートナーが、あまりにも呆気なく消えさってしまった。
絶対に勝ち上がろうと決めた仲間が、こうも簡単に……
「く……くそぉっ!!」
怒り・悲しみ・焦燥。
相棒の敗北から来るあらゆる感情を胸に、少年は目の前に立つ死神と、その後方に控える死神の主に走っていった。
馬鹿な行為なのは分かっている。
それでも、こうせずにはいられなかった。
散っていった従者の為、せめて一矢報いる為に。
少年は拳を振り上げ、死神の主に渾身の一撃を……
――――パァンッ。
「!?…………」
打ち込むことは、叶わなかった。
その拳が死神の主を捉えるよりも早く、その額が撃ち抜かれたのだから。
紅い血染めの花模様が、コンクリートの床を鮮やかに彩る。
今ここに、一人の主従が聖杯戦争から脱落したのだった。
「ふん……呆気ないものだな。
この程度の連中ばかりならば、こちらとしても楽なものだが……」
拳銃を懐にしまい、死神の主は淡々と感想を述べた。
雄々しく剣を振りかざした騎士の勇姿も、決死の覚悟を見せた主の最期も。
何ら感じるところなど、彼―――アルバート・ウェスカーには無かった。
ただ、邪魔な障害が一つ消えた……彼にとっては、それだけでしかなかったのだから。
「…………」
傍らに立つ死神もまた、それは同じであった。
そもそも、この死神には感情というものがはじめから無い。
あるのは唯一、定められた目的を果たすという思考回路のみ。
故にこの戦いは、ただその障害を排除したというだけだけに過ぎなかった。
「まあいい。
どの道、何者が相手であろうとやるべき事は変わらん……行くぞ、ランサー」
死神に霊体化を命じ、ウェスカーは静かに廃ビルを後にした。
始末すべき敵はまだ多い……早急に見つけ出さねばならない。
全ては、内に秘めた野望成就の為。
選ばれし人類のみによる秩序が築かれた新世界を創造する為。
自身と同じ……『ウィルス』に選ばれ生き残った、人を超えた完璧な肉体と頭脳を持つ人類のみが生きる世界を創り出すために。
(万能の願望器……その力が偽りなき本物ならば、それが成せる。
選ばれし人類のみが立つ新世界……私がその頂点に立つのだ)
発達した科学により生まれた災厄―――ウィルス兵器。
その力により人を超える力を手にする事に成功した男……アルバート・ウェスカー。
彼は紛れもなく、科学により生み出された『悪』であった。
「…………」
そして彼が従える死神もまた、科学が生み出した災厄が形を成したモノであった。
その名を、スケィス。
モルガナ八相が第一相……『死の恐怖』。
発達した科学が生み出した電子世界において出現した、本来存在してはならないイリーガルな因子の化身。
聖杯戦争という異邦の地に呼び出されても尚、スケィスの目的に変化はない。
主にして半身たる自身の大元―――モルガナ・モード・ゴンの思想通り、究極AIアウラを滅ぼす事。
その為に、聖杯の力を利用するのみだった。
アルバート・ウェスカーとスケィス。
科学の発展が生み出した二人の死神は、ただ己が目的を果たすべくその聖杯戦争でその凶刃を振るう。
【クラス】
ランサー
【真名】
スケィス@.hack// Vol.1
【パラメーター】
筋力A 耐久B 敏捷D 魔力E 幸運E 宝具EX
【属性】
混沌・悪
【クラススキル】
対魔力:-
第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。
ただしスケィスはランサーのクラスに強引に当てはめられているためにシステムが認識しておらず、このスキルが機能しない。
【保有スキル】
戦闘続行:B
名称通り戦闘を続行する為の能力。
決定的な致命傷を受けない限り生き延び、瀕死の傷を負ってなお戦闘可能。
【宝具】
『禍々しき波―死の恐怖―(データドレイン)』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:1〜50 最大補足:1〜100
モルガナ八相に付与されたイリーガル能力が宝具として昇華したもの。
発動と共にランサーの左腕を中心に『腕輪』の様な光のオブジェが出現し、そこから敵目掛けて紫光を放つ。
この紫光に貫かれたものは、その肉体を構成する『データ』を奪われ消失してしまう。
それは肉体的なダメージだけではなく、記憶や経験・能力といった自身に内在していたモノまでも削り取られる事を意味する。
この宝具を受け喪失したモノは、元凶であるランサーを倒さない限り回復する手段はない。
ただし、対魔力スキルのランク及び幸運値によっては単なるダメージ判定のみで済む場合もある。
また、この宝具の乱用はランサーとリンクしているマスターの肉体にもダメージを与える場合がある。
従来のシステムを逸脱したイリーガルな仕様である為、その反動で生じるバグデータが使用者を侵食する恐れがある為である。
『不死属性(プロテクト)』
ランク:- 種別:- レンジ:- 最大補足:-
モルガナ八相に付与された『不死』という属性が宝具として昇華したもの。
ランサーはこの属性の為に無限の体力を持つため、通常の如何なる攻撃を受けても倒すことはできない。
唯一撃破する手段は、一定値以上のダメージを与えた上で、何かしらの方法を用い不死属性を解除するのみ。
ただし、ランサーはこの聖杯戦争のシステムに強引にサーヴァントとして当て嵌められた影響で、この宝具が効果を成していない。
【Weapon】
『真紅のケルト十字』
先端が槍の如く鋭利な形状になっている、真紅に染まったケルト十字の杖。
直接手に取って振るう他、ランサーの意思である程度の距離ならば遠隔操作が可能。
また、敵の背後より拘束し磔にする事も出来るが、絶対の拘束ではなく相手の力次第では解かれる場合もある。
【人物背景】
ネットワークゲーム『The World』に出現した、『モルガナ八相』と呼ばれるウィルスバグモンスターの一体。
その正体は、The Worldの管理プログラムであるモルガナ・モード・ゴンが、
システム内に隠された八つの禍々しき波『八相の碑文』を因子として生み出した化身。
元々The Worldはただのネットゲームではなく、開発者であるハロルド・ヒューイックが
「限りなく人間に近い究極のAIを育成するため」に作り出した人間の思考サンプリングシステムだった。
そしてその中で究極AI『アウラ』が彼の考えた通りに誕生しようとしていたのだが、
人間の思考をサンプリングする内にモルガナ自身が人間に近い自我を持つようになってしまった。
モルガナは、アウラが誕生することで自分が不要の存在となり死ぬことを恐れ、暴走。
創造主であるハロルドの精神を狂わせネットに封じ込め、
そしてアウラを滅ぼす為に、直接手を下せぬ自身に代わる化身としてモルガナ八相を生み出したのである。
スケィスはその第一相であり『死の恐怖』の通称を持つ。
そしてこの聖杯戦争の舞台である電脳世界においては、元々システムを逸脱したイリーガルなバグ存在である
スケィスをランサーという枠組みに強引に当てはめているため、一部のスキルや宝具が機能しないという問題が生じている。
【サーヴァントとしての願い】
究極AIアウラの消滅。
【マスター】
アルバート・ウェスカー@バイオハザードシリーズ
【マスターとしての願い】
自らと同じくウィルスに選ばれた人類による、新たな新世界の創造。
【weapon】
『サムライエッジ』
ベレッタM92FSをベースにカスタムアップされた拳銃。
日本刀の刃を連想させる特徴のあるブリガディアスライドと、製作者が日系人であることがその名の由来。
装弾数は少ないものの、一発の威力は高くなっている。
また隠密的作戦を得意とするウェスカーに合わせ、レーザーサイトやサプレッサーなどの拡張パーツの装着に重点を置いた改造がされている。
【能力・技能】
ウィルスにより強化された、常人を超えた身体能力を持っている。
それによる拳法にも似た格闘術を繰り出し戦う他、特殊部隊隊長という経歴から銃器の扱いにも長けている。
また、極めて冷静沈着で鋭い観察力と洞察力を持ち、生物工学に精通する高い知識がある。
【人物背景】
ラクーンシティ警察署特殊部門『S.T.A.R.S』の総隊長であり、同隊アルファチームのリーダー。
しかしその本性は、製薬会社アンブレラの諜報・工作員である。
彼はアンブレラが開発した「T-ウィルス」によって生み出されたバイオ兵器の実戦データを収集する事を目的として、
S.T.A.R.Sのメンバーがバイオ兵器と殺し合いを行う様に、実験場である洋館への調査という名目で誘導を仕向けた。
そしてこの際、彼は友人より受け取っていた新型ウィルスを自らの肉体に注射し、その死を偽装。
生存者達の目を欺き復活を遂げると同時に、ウィルスによって超人的な身体能力を手にしたのであった。
同時に、彼はその激しい上昇志向からアンブレラ社にも見切りをつけており、
手土産としてアンブレラ社の研究データを敵対組織H.C.Fに持ち寄り、離反。
以後はその幹部として動いていたのだが、アンブレラ社が崩壊を遂げた事をキッカケに、アンブレラ創始者であるスペンサーの探索に移る。
そしてスペンサーを発見すると、彼は自身の出生の秘密を聞かされた。
『世界各地から才能ある子供を集めて『ウェスカー』というコードネームを与え、
完璧な肉体と頭脳を持つ従順な被験者に育て上げるべく、アンブレラによる庇護や極秘裏の監視下で英才教育を施す。
その後、全員のウェスカーに様々な手段で謎のウィルスを投与し、その経過を見る。
そうして、スペンサー自身がウイルスによる強制進化で新人類の創造主となる為の実験台とする』
この事実を知ったウェスカーは、自身がこれまでスペンサーの掌の上で踊らされていた事を知り愕然とした。
しかし同時に、彼はその野望に引かれ、スペンサーを自らの手で殺害。
自らがスペンサーに変わり、新世界の創造主となる事を決意する。
その後は野望成就の為に世界中で活動を続け、新型ウィルス「ウロボロス・ウィルス」の作成を開始。
適性のあるものには超人的な力を与え、適性のないものはクリーチャーと化すこのウィルスを世界中に散布する事で目的を果たそうとする。
【方針】
聖杯を手にし、野望を成就させる。
投下終了です。
投下します。
Introduction
終わりなき恐怖と謎から脱するには、何かに頼るしか無かった。
そこから脱する術はまだ、彼女の手には無く──ただ、犠牲者の数は増えるばかりだった。
重病で亡くなった彼女の双子の姉妹。
傘で喉が一突きにされた委員長。
エレベーターが急落下して"転落死"した看護婦。
ボードに轢かれた男子生徒。
……それからも、死者は増えた。
だから、彼女には、それを止める為には、聖杯が必要だった。
──……が欲しい
──………シャ ……ドウ
このまま次々に犠牲者が増える事を回避するには──自分の友達を守るには、この方法以外に、いかなる手段が通用するのだろう。
今まで、ずっと、何人かの友達と一緒に、考えていた。
たとえば、今、見崎鳴の瞳に、生きている人間とは"別の色"を見せる、3年3組の"あの人"が"死者"であるのはわかっているが……。
……しかし、"あの人"が"死者"だとして、"あの人"に対して、何をすれば良いのかわからない。
果たして、"あの人をどうする事で、これから先、3年3組の人間の災厄を止める事が出来るのだろうか"?
一体、何が"あの人"に通用する?
それが彼女にもどかしさを与える理由だった。
──……が欲しい
──………シャ ……ドウ
彼女──見崎鳴には、死の色が視える。
もうすぐ死にそうな人間の持つ色が……あるいは、"もう死んでいる人間"の放つ色が、何となく分かるのだ。
その色は、彼女自身にもどう表現して良いのかわからない。「色」というのは違うのかもしれない。
生きている人間が発する空気との、微かな違いが、もう少し別の感覚──ダイロッカン、と言ってしまえば簡単だが──で視えてきているのかもしれない。
彼女の持った違和感に、心理が"違う色"を後付けしている……という風にも考えられる。
しかし、色彩というのは須らくそういう物に違いなかった。
何が綺麗で何が汚いかが人に刷り込まれているのも、脳が与える心理だ。
……とはいえ、彼女の場合、最初からそれが働いていたわけではない。
こういう風に、鳴が死者の色を見るようになった事には、あるきっかけがあった。
彼女の今の瞳は、緑色の"空っぽの義眼なのだ"。
生身の左目を失ったのは、四歳の時だ。悪性の腫瘍が出来て、眼球の機能が失われた。
ある朝目覚めたら、左目が空っぽになっていたのだ。だから、手術の時を受けて、人形の左眼が嵌め込まれた。
その時、彼女は一度死にかけて、それが彼女に、"死"の本質を、少し人より早く伝えた。
死は、どこまでも昏く、一人きりである事。
だが、いざ生きて見ると、生きている人間もそうに違いなかった。
しかし、その超然とした思考こそが生と死の境界を、彼女の中で曖昧にした。
だから、彼女に向けて──"生"と"死"とを区別する手法を、誰かが与えたのかもしれない。
それが、彼女の"眼"だった。
──……が欲しい
──………シャ ……ドウ
そして、彼女はそうして、死に近い人間を見る事が出来るだけでなく、もう一つ、"死を身近に思えるわけ"があった。
彼女の──いや、こういう言い方をすると彼女が原因のように聞こえてしまうが、そういうわけではない──周囲には、不思議な災厄が起きる。
そう……彼女の所属する、夜見山中学校の3年3組には、あの災厄が起きるのだ。
それは、教育の隣に安穏がある筈の、学園という空間とは似つかわしくなくて、だからこそ厭だった。
普通の学校のようには行かないのだ……。3年3組にいる限り……。
──……が欲しい
──………シャ ……ドウ
夜見山中学校の3年3組の生徒は、"ある年"には、"死者"がクラスの一員として、クラスメイトの記憶から外れて紛れ込む。
そして、それと同時に、"死者"は、そのクラスの"生者"に影響し、不規則にクラスの関係者が死んでいく"現象"を起こしていく。
それは、殺人でも、誰かの悪意でもなく、ただのルールだった。
ただ、運悪く、その災厄の年に3年3組に入れられてしまうと、理不尽に命を奪われていく。
事故、病気、自殺、他殺……死因も多様で、ただ、魅入られたように順に死んでいくのだった。
この"現象"が、"ある年"と"ない年"があり──不幸にも、見崎鳴が3年3組になったのは、"ある年"だった。
だから、余計にこの災厄を意識させられる事になった。
始まりは、26年前の事だったらしい。……ここから先は、ただの噂だ。
その頃、ミサキだか、マサキだか、そんな名前の生徒が、3年3組にいた。
今となっては、男だか女だか、名前すらも忘れられつつあるが、その生徒は、文武両道で何をやらせても上手く、性格も良かったので、誰からも人気者だった。
しかし、その生徒は、ある時、不慮の事故で死んでしまったのだ。
だから、クラスメイトたちはそれを受け入れられず、その死んだ生徒が"生きて、クラスにいる事にした"。
死んだ生徒の事を、さも生きているように扱い、卒業まで、その生徒が生きている3年3組を演じながら、生活していたのである。
勿論、誰もが、その死を知ってはいた……知ってはいたのだが……しかし。
卒業写真を見てみると、死んだはずのその生徒は、"クラスメイトと一緒に、写真の端に映っていたのだ"。
……そして、その出来事があってから、3年3組には、たまに"死者"が紛れるようになった。
──……が欲しい
──………シャ ……ドウ
死者が視える鳴には、必然的に、少し前から、3年3組にいる、"既に死んでいる者"の正体だけは、彼女には分かっていた。
しかし、まだ彼女には、それが誰なのか、他人に言う事は出来なかった。
言った所で、"死者"に対して何をすれば良いのかわからず、友人の榊原にも混乱を与えるだけにしかならないからだ。
止める術は、分からないまま……ふと、誰かが死んでいく。
彼女が、聖杯を得て止めたいのは、その、ただの理不尽で怪奇で不条理な"現象"だった。
やはり、他人が死んでいくのを……それも、同じクラスのクラスメイトが理不尽に死んでいくのを見続けるのは、忍びない。
これから先、余計にどんな事が起こるのかがわからなくなってくるに違いなかった。
この"現象"を止める手立てがあるのならば、それを聖杯に託すつもりであった。
それが、彼女の戦う理由だ。
幸いにも、彼女の瞳は、"死者"を見る事が出来──同時に、"生きている者"も映してくれる。
たとえば、生物(人間)と無機物(NPC)と死者(サーヴァント)の、色の機微が彼女には分かる。
それは、聖杯戦争の渦中において、彼女に少なからずアドバンテージを与えてくれるに違いなかった。
だから、八方ふさがりとなった鳴は、これから先、またクラスメイトが死んでいく現象を止め、自分自身も助かる為に、聖杯に「災厄を止める」事を願うと決めた。
これで、夜見山市の3年3組は1998年を最後に、"災厄"や"現象"という怪奇に襲われずに済む事になる。
勿論、聖杯は他者を犠牲にするかもしれない。
つまり──"見ず知らずの誰かが死ぬのを見たくない為に、見ず知らずの誰かを殺す"のだ。
一見矛盾しているようだったが、考えてみると、矛盾はなかった。
彼女も、"死"に対しては、他の人間相応の嫌悪があり、同時に、他の人間相応に惹かれてもいる。
人が殺されるニュースには、"良い関心も悪い関心も"示す。
それが人の性であるように……。
──……が欲しい
──………シャ ……ドウ
だから、かもしれない。
彼女は、その"死者"が齎す"災厄"を止めたい為に……"霊"を、呼ぶという手法も、躊躇なく行った。
不思議な事だ。──それは、あまりにも矛盾した事象に違いない。
これから現れる"死者"を消す為に、"英霊"を呼ぶなどという行為は。
しかし、それが聖杯戦争という物の、最初のルールだった。
◆
英霊が、顕現する……。
その瞬間の映像と色は、普段、眼帯によって左目を隠す鳴も、眼帯を外して視たようだった。
これは……"死者"がこの世に生まれる瞬間である。
「あなたが、私のサーヴァント……?」
現出する──、一人のサーヴァント。
鳴には、確かに、サーヴァントである"英霊の色が視えた"。
それは、生きている人間の色とはやはり異なる。どこまでも昏い世界に沈んだ人間だけが放つ、厭な色だった。
これまでも何度も見て来た色だった。だから、何処か彼女は、"現象"に対して諦観できた面もあるのだろう。
しかし、結局は、彼女は、こうして聖杯戦争という手段を用いて、今後の災厄を無期限に停止する道を選んだのだ。
「──」
彼女が呼び出したのは、七つのクラスの内、何れだろうか。
男性の若者、であるのは確かだった。
──しかし、男性である事以外には、分かる事はない。
眉は太く、体つきは少し武骨である物の、筋肉の塊というほどでもなく、捉え難い普通のアジアの人間だった。
少なくとも、バーサーカーのクラスではないようである。
剣も持たず、弓も持たず、槍も持たない……普通の成人男性だった。
彼が、一体、どんな逸話を持つ英霊であり、それが七つのクラスの内のどれなのかもわからなかった。
彼女は、訊いた。
「貴方は、一体?」
「俺は──俺は、『アサシン』のサーヴァントだ。
…………って言っても、『暗殺者』ぁ、なんていうガラじゃないんだけどな」
「……」
「で、それを訊くって事は、君が俺のマスターか?
……んー、思ったよりも若い女の子だな」
あらゆる死者を視たこの鳴にとっても、ある種、これほど生気に満ちた死者は目にかかった事がなかった。
アサシンは、確かに暗殺者と呼ぶには少し声が大きく、自己紹介だけでもその豪快な性格が手に取るようにわかるタイプの人間だ。
鳴のような性質を持つ人間にとっては、アサシンというクラス自体が、不安視される「ハズレ」のクラスのように思えた。
それこそ、彼女のように、その瞳で"区別"する事が出来てしまう人間にとっては、サーヴァントの気配を消すアサシンの性質も意味を成さない。
それが彼女にとって、僅かに不安を煽った。
相手がアサシンだったならば、一目でそれを看破できる……しかし、それを"自ら引いてしまう"とは。
しかし、鳴のような瞳のある人間は珍しく、心配は無用かもしれなかった。
アサシンは、そんな、彼女の微かな動揺も見抜く事なく、顎に手を当てた。
「……あっ、そうだ、マスター。
まず最初に、どうしても訊きたい事がある!」
「何?」
「マスターの名前と、それから、願いだ……。
話によっては、俺も協力しかねるんだ!」
彼は、真っ先にそう訊いた。
それは、くだらない願いの為に利用されるのを嫌い、主君の名前を知らない得体の知れなさを嫌うという事だろうと鳴は思った。
相手も英霊とはいえ、意思のある一人の人間だ。事情を知らずに巻き込まれるのは好ましくないだろう。
別段、鳴は彼の質問に、厭がる事もなく答えた。
「……名前は、見崎鳴。『見る』に、『長崎』とか『宮崎』の『崎』。
鳴は、『鳴』っていう字。『共鳴』、とか、『悲鳴』とか」
「そうか、鳴。これからよろしく!
それで──君の願いは?」
「よろしく、アサシン。
私の願い──それは……」
すると、形式的な挨拶を澄ますように、鳴は静かに、夜見山の話を手短に話していく事にした。
協力関係を結ぶ予定の彼に、勿体ぶる事ではない。──少なくとも、理由がなければ協力しかねると言う彼には。
隠すほどの理由でもなかった。
英霊を前にも、鳴は全く動じる事なく、淡々と、客観的にその怪奇現象について語っていく。
しかし、目の前のアサシンは、まるで鳴の話を、寸分も疑う事なく聞き続けた。
現世に存在した時の彼の戦いも、人間をひとり英霊へと変えるほど不思議な物であり、今の聖杯戦争もまた現実を逸脱した物であったからかもしれない。
「ふむぅ……」
話を聞くにつれ、アサシンの顔色は悪くなったり、何とも言えない色に変わったりしていった。
それは、理不尽に起きる逃れられない事故と死だけが、見崎鳴のこれまでの敵であったからだだろう。
もう少し、はっきりとした敵と戦ったのが、「英霊」という物だった。
そして、英霊が視えない敵と戦う事が出来たとしても、英霊は夜見山にはいなかった。
……だからこそ、この見崎鳴には、聖杯以外に頼れる物は無かったのである。
「──よし、事情は、よくわかった! 俺は君を信じる!」
「協力してくれるの?」
「ああ! だから、聖杯の事なら、俺に任せてくれ……!
これでも、俺は昔、パコという秘宝を巡って戦い抜いた忍者なんだ!」
アサシンは、笑顔でどんと胸を張りながら言った。
秘宝を巡る争いの規模は、見崎鳴には伝わらず、それが彼女にアサシンの胡散臭いイメージを植え付けた。
彼がいかなる争いを生き延びたのかわからないし、この妙な自信も、却って彼を信頼する
「本当に……任せていいの? あなたに」
「ああ。久しぶりの戦いだ……腕が鳴るッ!」
好戦的で、それは暗殺者と呼ぶには、やはり、あまりにも戦闘への気概に満ちていた。
戦闘を避け、効率的に敵を抹消するサーヴァントが持つには、血が燃え滾りすぎていた。
鳴にとって、その性質は、少しばかりズレていたようでもあり、しかし、どこか頼もしさも感じさせた。
「言い忘れたな……。
戸隠流第三十五代宗家……山地闘破、又の名を、磁雷矢!
この聖杯戦争にて、見崎鳴……君のサーヴァントとして、仕えるッ!」
──……が欲しい
──………シャ ……ドウ
そう──アサシンの真名は、戸隠流正統・磁雷矢。
誰もみんな幸せに輝いてる未来が欲しい──
我古来闘者(ガコライトウシャ) 悪魔不動(アクマフドウ)──
かつて、世界忍者戦で活躍した、伝説の忍者であった。
【CLASS】
アサシン
【真名】
磁雷矢(山地闘破)@世界忍者戦ジライヤ
【パラメーター】
筋力:D 耐久:D 敏捷:B 魔力:E 幸運:B 宝具:A
【属性】
秩序・善
【クラススキル】
気配遮断:B
自身の気配を消す能力。
完全に気配を断てばほぼ発見は不可能となるが、攻撃態勢に移るとランクが大きく下がる。
【保有スキル】
戸隠流忍術:A
磁雷矢の習得した忍術。
アサシンは戸隠流正統・磁雷矢を襲名した忍者であり、戸隠流の持つあらゆる忍術をマスターしている。
また、彼が使う宝具を使用するにも、このスキルが必須となる。
混血:C
かつて秘宝を地球に持ち込んだ宇宙人の血。
彼はその末裔である為、通常の地球人では適性を持たないような事象を可能とする。
【宝具】
『戸隠流正統・磁雷矢(ジライヤ)』
ランク:B 種別:対己宝具 レンジ:- 最大捕捉:1(自身)
アサシンこと山地闘破が生前、襲名した異名。
そして、同時に、彼が『ジライヤスーツ』や『ジライヤパワープロテクター』を装着して自身の身体の限界値を大きく上昇させたファイティング忍者の姿の名でもある。
かつては、『ジライヤスーツ』を纏った姿が第一装着、そこから更に『ジライヤパワープロテクター』を纏った姿が第二装着と呼ばれた。
第一装着・第二装着へと姿を変える事によって、筋力・耐久のパラメーターがそれぞれ一つずつ、敏捷のパラメーターが半分ずつ上昇する。
『磁光真空剣』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1〜5 最大捕捉:1〜5
戸隠流に伝わる伝説の刀。
混血のスキルを持つアサシンの場合、真名解放と共にレーザー刀へと変化する。
この宝具により無数の必殺技を使う為、アサシンにとって戦闘にはこの宝具が必須となる。
何故かこれで攻撃されて粉々になったはずの忍者が生存して再登場する事があるが、それは置いといてかなり強力な剣である。
【weapon】
『ジライヤスーツ』
宝具『磁雷矢(ジライヤ)』を通常解放すると、このアイテムを手動で装着する。
戸隠流に伝わる戦闘スーツ。闘破はこれを装着して磁雷矢になる。
普段は戸隠流忍法武神館の天井に隠されている。実はパコを地球に運んだ宇宙人が使用していた宇宙服であった。
仮面ライダーG3的な装着アイテムの筈だが、何故か、落下している最中でも、水中でも、小型化されている訳ではないコレを平然と装着して現れる事がある。
『ジライヤパワープロテクター』
宝具『磁雷矢(ジライヤ)』を解放した後、更に第二装着をする時のアイテム。
スミス博士が開発したジライヤスーツの強化パーツ。
目に装着する透視・分析能力を持った特殊スコープのジライサーチャー、肩当て、喉当て、膝当てのセット。
こちらで戦う事が多い。これを使えば、宇宙の力、科学の力、忍術の力が全て一体となった感じがする。
『磁光真空剣』
宝具。上記。
『ジライバスター』
忍者にとって必須の武器・光線銃。やはり忍者といえば光線銃。光線銃がなければ忍者とは言えない。
山地家伝来の武器で、『磁雷矢(ジライヤ)』を装着している時に使える。
麻酔弾のメディカルカートリッジ、通信弾の通信カートリッジ、岩石破壊弾の器物破壊カートリッジの3つの使い方が可能。
ただし、必殺武器としての殺傷能力はない。
※科学と忍術の結晶であるフェアレディZ『ブラックセイバー』、飛鳥時代に作られた「埴輪」とは名ばかりの巨大ロボット『磁雷神』はライダーのクラスで呼ばれない限り持たない。
【人物背景】
秘宝パコを巡る『世界忍者戦』にて活躍した伝説の忍者。
戸隠流第三十四代宗家・山地哲山の養子で、「ジライヤ」の名でパコの位置を示す粘度板(ボード)を守る使命を受け、パコを狙うライバル世界忍者や妖魔一族などと戦った。
性格は明るく気さくで、時に悪戯好きな熱血漢であり、明るく家計を支える為のアルバイトをしている。
実は2300年前にパコを地球に運んだ宇宙人の子孫であり、その為か磁光真空剣の力を最大限に発揮する事が可能。
後の時代には、後輩忍者・手裏剣戦隊ニンニンジャーたちと共に戦ったとの説もある。
【サーヴァントとしての願い】
この地球を抱きとめるそんなでっかい心が欲しい。
誰もみんな幸せに輝いてる未来が欲しい。
【基本戦術、方針、運用法】
この世界の忍者にしては、比較的忍んでいる方であり、外見も忍者っぽい方なので、アサシンとしての戦法も使えるが、その辺はあんまり気にせずに直接戦闘させても良いかもしれない。
彼の持つ宝具は普通に強い。『磁雷矢(ジライヤ)』を運用した際の戦闘能力もそこそこ強く、『磁光真空剣』で、だいたいのサーヴァントと互角に戦える。
また、マスターである見崎鳴は、生者と死者を判別できる為、アサシンがいくらサーヴァントの気配を消しても、その気配が"見えてしまう"。
更に、その能力により、NPCと人間の区別もつく事になる(相手マスターが"人間"でないのなら意味を成さないが)。
つまり、その時点でマスターの持つアドバンテージが非常に強い。
ただし、その反面、アサシンが魔力が低く、燃費が悪い中、マスターは魔力を持っておらず、その点だけ注意が必要になる。
【マスター】
見崎鳴@Another(アニメ版)
【マスターとしての願い】
夜見山北中学3年3組に起きる「災厄」を止める。
【weapon】
特になし。
【能力・技能】
『左眼の義眼』
左目の義眼により、死者や死期の近い人間の「死の色」を見る事が出来る。
この義眼は普段は眼帯によって隠されている。
【人物背景】
夜見山北中学3年3組の女子生徒。
普段は左目に眼帯をしていて、非常に物静かな印象が強い人物。
とはいえ、一部の人間には心を開いており、時には他者に向けて優しさを見せたり、冗談を言ってみせたりもする。
普通の中学3年生と何ら変わらない可愛げも見せ、手で触れた物を弄って遊ぶ事もある。
3年3組に起こる「災厄」を回避するために5月から「いないもの」として扱われる(ただしこの話は、聖杯の再現した電脳空間内では無かった事になる)。
ちなみに、現在の時点で死亡したのは、桜木ゆかりのみとする。
【方針】
アサシンと共に、他のサーヴァントの打倒をする。
場合によっては、左目を使って他のサーヴァントやマスターを看破し、アサシンに伝える。
投下終了です。
別所のリブートですが、通過しなかった作品を投下します。
──2011年、ネオ歌舞伎町。
俺ことホストの獅子丸ちゃんは……ってこんなナレーションいらねえよ!
このSS読んでるって事はネット環境あるんだろ!? じゃあ「ライオン丸G」でググってウィキペディアでもなんでも見てあらすじ見れば済むじゃん!!
っつっても、ライオン丸Gなんて見てない奴が大半だろー、どうせ。
オッサンしか知らないような快傑ライオン丸だの風雲ライオン丸だのを2006年に深夜枠で完全リメイクったって、誰も見ねえよなー!!
知っている人は知っている、でも知らない人は知らないままでいいやー、もう。
どーせ放送なんかとっっっくの昔に終わってるし、視聴率も円盤の売り上げももう全然関係ないもんねー!!
嫌々出てた出演者はもうライオン丸Gの事なんか完全に忘れ始めた頃だろ!
権利者はいい加減、ユーチューブにアップされてるライオン丸Gの本編動画消せって!
……それでも2ちゃんでそこそこ評価されてるし!! 有名じゃなくても負けじゃねえし!!
主演は今を時めくカリスマイケメン俳優、波岡一喜だぜ!! 見てないそこの君ー、ちょっとは興味出てきたかー!!
とは言っても、この登場話もどうせ落ちるんだしもうやめた!! 帝都と合わせて二連敗!
説明も宣伝ももうやらない!!
ウンコブリブリーッ! チンコボリボリーッ! インキンカイカイーッ!
てなわけで今夜はライオン丸と先代タイガージョーがお送りするサオリちゃんのオッパイ祭りだじょー!
毒吐きとツイッター盛り上がってっかー!? 勃たせて待ちやがれ!
あ、オープニング始まっちゃった。
かーぜよー、ひかりよー、せーいぎのいのりー(ry
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
闇夜。──高層ビルが立ち並ぶ街並み。
ある夜に、獅子丸が見た月の上に模造された何処かの都市であった。
獅子丸は、自分がここに立っている事が不思議でならない。
聖杯戦争を行う電脳世界など、まるでアニメや近未来SFの世界である。
しかし、どうやら酔っぱらって見ている幻想ではなく、現実らしい。
頭の中がはっきりしているのに、ありえない状況に陥っているのである。
「あんたは……」
そして、そこには獅子丸だけではなく、もう一人──。
其処に最初から存在した術式と共に、この現代に召喚された戦士が立っていた。
威圧的な大柄。虎柄の衣装。片目の男。
おそらくは、この日本の戦国の世から召喚された野蛮な武士の一人。
有名人だろうか。──たとえそうだとしても、獅子丸は歴史の教科書の武将たちと会った事はないので、顔だけ見てもわからない。
近いのは、伊達政宗だろうか。
「──」
しかし、どうも獅子丸はこの男にそれ以外の見覚えがある気がした。既視感というやつだ。
誰かに似ているようでもあり、また、かつてどこかで肩を並べたような気もした。
時折、この男を夢に見たような覚えもある。
「問おう。お前がこの俺の主君か──」
……そう問われた頃には、獅子丸は腰を抜かしていた。
サーヴァントは強面で、いかにも蛮族といった感じである。現代なら確実に暴力団かプロレスラーといった風体。
少し前の獅子丸ならば咄嗟に土下座で謝っていたかもしれない。
今の獅子丸でも、そのプレッシャーに、自身も気づかぬ内に足が竦み、尻と掌が地面についた。
「……」
目の前の彼がこの聖杯戦争における、獅子丸のサーヴァントであった。
その真名はわからないが、背には太刀を背負っており、一見すると≪セイバー≫のようでもあった。
「あ、あんたが俺のサーヴァントぉ……?」
動揺して、裏返った声で、オウム返しのように、そう問う獅子丸。
頭の中に言葉は浮かばなかった。相手が口にした言葉を何となく拾って、それをぶつけるくらいしかできない。
サーヴァントの問いがまともに耳に通さなかった可能性もゼロではない。
……いや、実際そうなのだろう。声と言葉を聞いていても、意味が頭の中に入っていない。
「ああ。して、お前は俺の主君で合っている、よな……?」
マスターとサーヴァントとの間に嫌な沈黙が流れる。
どちらも自己紹介を始めない。
先に問うたサーヴァントの方は、獅子丸の返答を待った。
だが、獅子丸は、それからすぐに何か言葉を発せる頭がなかった。
呆然としているというか、もうこの時点で気力を使い果たしているというか。
あるいは、サーヴァントの出方を伺っているのか。
やがて、サーヴァントの方が沈黙に折れて口を開いた。
「……今わかった。お前は、この聖杯戦争でも屈指の外れ主君だな……俺程度に怯えているようでは先が思いやられる」
サーヴァントの方から帰って来た言葉は侮蔑であった。
あまりにも露骨に、マスターを冷やかに見つめながら──。
目の前の獅子丸から、弱者の香を嗅いだのだろう。
この言葉は、流石に獅子丸の耳に届いた。
(そ、そんな事言ったって、じ、自分だってハズレサーヴァントじゃねえかよ……)
獅子丸にしてみれば、そういった悪態をつけるのは心の中だけである。
出来ればサーヴァントは女性──それもオッパイの大きい美女であって欲しかったのだろう。それなら令呪を使ってムフフな事もできるから、という理由だ。
それと全く対照的な、男性らしさを象徴するような大丈夫が現れたのだから、失望もかなり大きい。
だが、それよりも前に、ヤクザと肩をぶつけたのと同じ気分で、殺されるか殺されないかの緊張感が獅子丸の中に生まれている。
冷静な状態でこういった相手と遭遇した時、獅子丸も流石に恐れを抱かずにはいられない。
「まあいい。仕方がないから俺の方から名乗ってやろう」
ふぅ、と彼のサーヴァントは溜息を吐いた。
獅子丸の様子を見て、呆れながらも、とにかく聖杯を勝ち取る為の情報交換を要としたのだろう。
「俺は、≪ランサー≫のサーヴァント、真名は虎錠之介だ。又の名を、……タイガージョー」
────虎、錠之介。
────タイガージョー。
獅子丸は、その二つの単語に脳が刺激されるのを感じた。
その名前、ごく最近どこかで耳にしたような…………。
「……って、待って、虎錠之介ぇっ!? 錠さんと同じ名前! それに、タイガージョー!?」
その名前を聞いて、今度は獅子丸は思わず立ち上がり、飛びあがってしまった。
目の前の男に感じた恐ろしさが押し切られるほどの衝撃だったのだ。
≪虎錠之介/タイガージョー≫
獅子丸は、その名前の男をよく知っている。
しかし、目の前の男ではない。フリーランスの用心棒で、この男とは対照的に痩せぎすの男だ。彼はいつも黒いスーツを着ていた。
この大阪のおばちゃんのような虎柄の服など着用しているのを見た事がないし、両目ともしっかりその健康を露出している。
何度となく錠之介と会い、殆ど友人といっていい関係になった獅子丸も、その姿を見間違えるはずはない。
……生涯の親友、虎錠之介。
獅子丸は、そんな男に対してある約束を果たせずにいた。
思わず痒すぎる股間を掻きながら、ここにいる「錠之介」と名乗るサーヴァントにすり寄り、じっとその顔を見る。
──うむ、やはり、別人だ。
しかし、これだけ名前だけが同じ別人などあるのだろうか。
「トラ・ジョーノスケ」という名前と「タイガージョー」という二つ名。
いずれも獅子丸がよく知る錠之介にも共通しているキーワードである。
ランサーはそんな獅子丸に訝しそうに訊く。
「随分な驚き様だな。何故だかはわからんが、今のでお前もまともに話す気になっただろう。お前の名は?」
「え、えーっと……俺は元ホストの獅子丸ちゃんっす!」
嘘をつく理由はない。
その口調は、かつて慕った錠之介に語るように、自然と彼なりの敬語が出てくるようだった。
「獅子丸?」
今度は、ランサーの方が獅子丸の全身を眺めた。
まるで自分と同じような行動をするなぁ、と呑気に思いつつ、やはりこうジロジロ見られると恐ろしい。
しかし、股間が痒くなったので、獅子丸は自分の股間に再度手をやった。
股間をせわしなく掻き続ける獅子丸の姿に、ランサーは彼と同名の男の姿を重ねる────事はなかった。
流石に、ランサーが生きていた頃に出会ったあの男と、この獅子丸は似ても似つかないのだ……。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
────群雄割拠する戦国時代。
人と人との戦乱は衰退を見せ始めたが、代わりに妖怪や魔物がその姿を現し始めた。
日本征服を目論む大魔王ゴースン。彼が妖術を用いて放つゴースン魔人の配下たち。
それに立ち向かう正義の忍者がいた。
何度もぶつかり合ったランサーの親友、快傑ライオン丸である。
その本当の名が「獅子丸」であった。
果心居士から受け継いだ金砂地の刀を操り、大魔王ゴースンを倒す為に沙織、小助と共に旅をするライオン丸──。
大魔王ゴースンの用心棒として、日本一の剣豪を目指して強い者と戦い続けてきた「銀砂地」のタイガージョーには、彼との出会いは宿命だった──。
≪もう一度言う……正しい者が勝つのではない、強い者が勝つのだ!≫
無論、当初は、刃を交える敵として二人は出会った。
最初の勝負では、タイガージョーは右目を潰され、ライオン丸に敗北した。
その時の傷が今もこの右目の視界を暗くしている。
英霊として再現された時にも、ゴースンに奪われた左目が健在でライオン丸に奪われた右目は失われたままなのは、おそらくその決着と仇に固執するあまりだろう。
この傷、この失明こそがライオン丸との戦いの証であり、友情の印だ。
──この右目が回復される事など永久にありえない。錠之介に心がある限り、この右目の傷は絆として残り続ける。
≪俺とお前は所詮戦わねばならない運命なのだ……≫
やがて、戦いを重ねる中で、いつの間にか、共に力を合わせてゴースンの打倒を目指すようになっていた。
ライオン丸がタイガージョーに惹かれ、タイガージョーもまたライオン丸に惹かれたのだ。
共に力を合わせる事の意義もタイガージョーは戦いの中で知った。
剣術以外の時間が楽しいと思った事もある。
……しかし、今も決して二人が敵でないわけではない。ライオン丸とタイガージョーとは、「味方」であり「敵」なのである。
それが剣士と剣士が出会った時の終わらぬさだめなのだ。
(獅子丸……)
生きていた時の戦績は一勝、一敗、二度の引き分け。
双方が同じ数だけ勝利し、敗北している。
だから、いつか決着をつけるはずだった……。
いつか、またそれぞれの剣をぶつけ合い、結果を受け入れ、共に手を取り合うはずだった。
────まだ二人の決着はついていない。
≪錠之介! しっかりしろ、錠之介!≫
≪獅子丸か……すまない≫
錠之介の最期の記憶が右の瞼の裏に思い出される。
──あの日。
ゴースンとの決着をつけようと決めたあの日であった。
≪……お前との勝負、預けっぱなしにして……。俺だけ先に逝ってしまうなんて……≫
≪馬鹿! これくらいの傷がなんだ……お前もタイガージョーと呼ばれた男じゃないか!≫
≪いや……今度ばかりは堪えたぜ……。すまん、先に逝かせてくれ……≫
……そう、決着がつかぬまま、タイガージョーは、あっけなく逝ったのである。
全身を銃で撃ち抜かれ、最後に獅子丸と言葉を交わせた事さえも奇跡であった。
あの悔しさを、あの痛みを、虎錠之介は地獄の底でも忘れる事はなかった。
そして、そんな虎錠之介の聖杯への願いは、剣士として、ライオン丸と最後の決着をつける事であった。
それが剣士としてのけじめであり、錠之介の悲願である。
他の誰でもない、宿敵ライオン丸との勝負の為に、彼は≪ランサー≫として、再び現世に召喚されたのである。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
(気のせいか……いや、この男からは何かを感じる。予感で終わればいいが、カマをかけてみるか……)
──ランサーは少し、思案した。
あの獅子丸と、ここにいる獅子丸は共通点の一つもないが、どうも関係がある気がしてならなかった。
虎錠之介とタイガージョーの名に反応したのが一点。
そして、戦いを求めるランサーの嗅覚が、僅かばかりだがこののダメ丸の中にも戦士の匂いを感じ取ったのが一点。
それが杞憂でなければ、あるいは……本当に、獅子丸と関係があるのかもしれない。
しかし、できればそうでない事を願いたい気持ちがランサーの心の大半を占めている。
もし、本当に関係があるとすれば、ランサーは、どうするのだろう。
この獅子丸と決着をつければ良いのだろうか。
……いや。それはない。
タイガージョー自身が決着をつけたいライオン丸でなければ意味はない。
だが──。
「俺も獅子丸の名に聞き覚えがある。──いや、こう呼ぶべきか、ライオン丸」
それを聞いて、どんな答えが返って来るとしても、ランサーはこう訊かねばならなかっただろう。
杞憂であるならば良い。
しかし、もし現実あるならば、ランサーは激しい失望を覚えるに違いない。
生まれ変わりか、
あの獅子丸の子孫か、
それとも只の偶然なのか、
「はぁぁぁぁぁ!? なんであんたがライオン丸の事を知ってんの!?」
その解答は、双方にとって残念な物であった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
ライオン丸──それは、ネオ歌舞伎町では、獅子丸がキンサチで変身した姿の事である。
しかし、ネオ歌舞伎町でも半ば都市伝説のように有名になっていった「ライオン丸」の正体が、ネオ歌舞伎町ワースト1ホストの獅子丸だとは誰も思うまい。
ライオン丸は巷では、スカルアイをキメたカブキモノたちと死闘を繰り広げている謎のヒーローらしいのである。
一方、獅子丸は少し前まで、ただのバカなホストに過ぎなかった。
誰もライオン丸と獅子丸を結び付けようとはしない。
……しかし、ランサーはすぐにそれを見抜いてしまった。
その理由はすぐにわかった。
事情を聞くうちに、獅子丸は自分が戦国時代に活躍した「快傑ライオン丸」の子孫、あるいは生まれ変わりであるという事に気づき始めたのである。
獅子丸、錠之介、沙織、小助(コスK)、キンサチ、ギンサチ、ライオン丸、タイガージョー……身の回りのあらゆる単語が、まるで仕組んだように共通している。
生まれ変わりについて先に察したのは、ランサーの方であった。
「しっかし、俺が本当に戦国時代のライオン丸の生まれ変わりだったとはなぁ……この金玉のインキンもその時からだったりして……うわぁ! 嫌だぁっ!!」
それぞれがそれぞれの生まれ変わりであるとするならば、時折見る「夢」にも説明がつく。
獅子丸は、このキンサチを手に入れて以来、時折、白い獅子の戦士のデジャヴュを見る事があるのだ。
だとすれば、超カッコいいじゃん! ……くらいにしか認識していないのがこの獅子丸という軽い男であった。
極力、聖杯戦争のような厄介事は避けたいが、こうもヒーローっぽいシチュエーションだと心意気がまた違う。
「これもまた宿命か。……だとすれば仏も何もあった物じゃないな。よりによって、こんな奴が未来のライオン丸だとは──」
ランサーは激しく項垂れている。それは虎錠之介としての彼の人生でもかつてないほどの落ち込みようであった。
百戦錬磨の武人が頭を抱えるほどの相手と言えば、獅子丸の肩書きも少しは様になるだろうか。
これを、むなしさと呼ぶのだろう。
獅子丸の意気が高揚し、ランサーの戦意が喪失するとは、まるで先ほどとは正反対である。すっかり立場が逆転してしまった。
「いや、こんな奴って何すか! 俺だって、つい最近までライオン丸として立派に活躍してきたんすから!」
「俺が現世にいた時、ライオン丸……獅子丸は俺の好敵手だった。しかし、その魂を継いでいる筈の貴様は何だ。……脆弱だ! もはや斬る価値もない」
「ねえ、……聞いてます!?」
よりにもよって、獅子丸がホスト。ホストの概念がないランサーにとっては、もう殆ど、売春と同義である。
ましてや、この獅子丸は剣の経験も無く、あの獅子丸ほどの正義感も持ち合わせていない。
本来なら相手にしないような屑、雑魚だ。
しかし、彼が獅子丸の生まれ変わりであるという。信じたくないが、その可能性が非常に高いと聞いて、平静を保つのは難しかった。
「だが、少なくとも、主君もライオン丸として戦えるのは不幸中の幸いか……」
「ん? それ! 確かにそうっすね! マスターもサーヴァントも変身できるとか、俺たち超強ぇーじゃん!」
「……」
そう上手に事が運ぶ事もないだろう。
他のマスターがこぞって高い戦闘能力を有している可能性も否めない。
第一、基本的にマスターは魔術師たちが成るべきものであって、獅子丸のような人間はマスターには向いていない。
(どうせならば、俺自身の生まれ変わりの男の方が主君に向いていたかもしれんな)
自分の生まれ変わりも、どうやら褒められた人間ではないようだが、それでもヤクザの用心棒だというのなら、まだランサーに通じる何かがあるだろう。
それなりに頭の働くタイプの人間であるらしいので、ランサーのマスターには丁度良いはずだ。
この際、魔術の才など求めないので、せめて剣術の才を欲したかった。
とはいえ、もうこの悪条件は覆らない。
そろそろ覚悟を決めて、自分が組まねばならない相手を受け入れる必要がありそうだ。
ランサーは、獅子丸に向き直して言った。
「獅子丸。これ以上、お前に失望している時間と余裕はない。ただ幾つか、俺の方から言わせてもらう。
俺の主になったからには、恥ずべき行いをするな。そして、もう一つ。俺は誰にも縛られるつもりはない。ましてや、お前のような主君にはな」
……そう、それだけ聞き届ければもうあとは良い。
この獅子丸が変身したライオン丸にどれほど強さがあるのかはわからないが、その力を酔って乱用するような真似を絶対にしない事を願いたい。
万が一にでも、酔った勢いで「自害せよ」などと命令されたらたまらないのである。しかし、それをする不安があるのがこの獅子丸であった。
そんなランサーの申し出に、獅子丸は、大きな声で笑い出した。
どうしたのか。
「いや、本当にそういう所も錠さんにそっくりだな〜。でもまあいいっすよ。俺は誰も縛るつもりはないし。
……って、あれ〜? もしかして、こっちの錠さんも童貞なんじゃないっすか〜!?」
下品だが、懐かしむようにそう言う獅子丸の姿に、ランサーは何も言えなくなってしまった。
獅子丸は、ランサーの目の前で股間を掻き続ける。
そんな、どこにもあの好敵手の片鱗も感じさせない男に、一瞬だけ、ライオン丸の姿が重なった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
(……錠さん)
このストイックな男が錠之介が生まれ変わる前の姿だと知って、獅子丸の中には強い喜びが生まれていた。
今は亡き親友、虎錠之介とまた会えたような、そんな錯覚がしたのだ。
何度もぶつかり合いながら、いつの日か共に戦う仲間になっていたあの男の面影をどこか感じさせる。
亡くしたはずのものとまた会える。
共に抱えている一つの後悔を、聖杯を得る事で払拭できるはずなのだ。
そう。
戦国時代、虎錠之介が、獅子丸と決着を果たせなかったように──。
この獅子丸にも、かつて錠之介と交わし、果たせなかった約束があったのである。
≪決めた。俺はお前をもっと強くしてやる≫
≪本当に?≫
≪約束する≫
これが、錠之介が獅子丸に約束した内容だ
獅子丸はそれと同じだけ価値がある契を、錠之介と交わした。
あの朝日が差す廃倉庫の中で。
≪────じゃあ、俺もソープに連れてくの、約束します!!≫
あの時の固い握手に報いる為に、獅子丸は、ランサーの力が必要だった。
もう二度と果たせないと思っていたあの約束が果たせるのなら、獅子丸は何だってする。
豪山が犠牲にしてきたホストクラブの仲間、ハルナとハルカ、スナックマスター、錠之介の両親……それもみんな、全て、もう一度だ。
獅子丸がライオン丸であったばかりに死んでしまった大事な友人たちに、獅子丸は謝らなければならないし、ああして奪われた身の回りの命を獅子丸はまだ受け入れきれなかった。
たとえ世界中で、毎日いくらでも戦争の犠牲者が出ているとしても、獅子丸は自分のエゴの為に彼らを甦らせたいのだ。
その為に、また新しい犠牲を作る覚悟ならある。
男と男は、一度交わした約束を絶対に果たさねばならないと──それならば。
────どんな犠牲を払ってでも、何万人が死んだとしても聖杯を手に入れ、豪山に犠牲にされた人々を生き返らせ、錠之介をソープに連れていく。
(錠さん……マジで、待っててください。絶対、錠さんを童貞のまま死なせたりなんてしません!)
【クラス】
ランサー
【真名】
虎錠之介(タイガージョー)@快傑ライオン丸
【パラメーター】
筋力B 耐久C 敏捷B 魔力D 幸運E
【属性】
混沌・中立
【クラススキル】
対魔力:D
一工程(シングルアクション)によるものを無効化する。魔力避けのアミュレット程度の対魔力。
【保有スキル】
心眼(真):B
修行・鍛錬によって培った洞察力。
窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す戦闘論理。
不朽の魂:B
サーヴァントとしての死亡時に残存した魔力を用い、生前使用していた道具を使ってマスターや仲間を手助けする事ができる。
その効力は長くは続かず、保って十分程度。動かせる物体や時間も、消滅時点で残存している魔力に比例する。
【宝具】
『銀砂地の虎(タイガー・ジョー)』
ランク:B 種別:対己宝具 レンジ:- 最大補足:-
背の銀砂地の刀を抜き、「ゴースンタイガー」と唱えて空中回転する事で虎面の戦士に変身する虎錠之介の宝具。
この姿に変身する事により、一時的に、筋力A、耐久B、敏捷A、魔力B、幸運Dにパラメーターが底上げされる。
必殺技はタイガー霞返し。
『象牙の槍』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:1〜30 最大補足:1
大魔王ゴースンを唯一倒す事ができると言われる槍。
……であるが、史実では使用より前に破壊されている。
強力な妖術の素養を持つゴースンの唯一の弱点たるこの槍は、強い魔力の持ち主に対して効果を発揮する。
即ち、相手の魔力のランクが高ければ高いほど、受けるダメージが大きくなる槍である。
【weapon】
『銀砂地の太刀』
戦闘の時だけ鞘から外す事が出来る太刀。
主に、『銀砂地の虎(タイガー・ジョー)』 の宝具を発動する際に使用。
【人物背景】
戦国時代に存在した剣術使い。この聖杯戦争は「象牙の槍」の所有者であった為か、ランサーとして登場。剣術の腕も健在。
ある戦国大名の家に生まれたが、日本一の剣士をめざし、出奔。強さを求めてゴースンと手を結び、銀砂地の太刀を得てタイガージョーとなった。
卑怯な真似を嫌い、己の戦いに美学を持つ典型的なダークヒーローである。
獅子丸ことライオン丸との初戦では敗北し、右目を突き刺されて重傷を負うも、続く二回戦ではライオン丸に勝利する。
そうした戦いを繰り広げるうちにライオン丸との間に友情が芽生え、やがて獅子丸、沙織、小助とともにゴースンを倒す為の旅をするようになった。
最期はゴースンに挑むも返り討ちに遭い、その後にゴースン魔人・ガンドドロに殺害されたとされる。生涯のライバル、ライオン丸と決着をつける事はなかった。
【サーヴァントとしての願い】
獅子丸(@快傑ライオン丸)との決着をつける。
【方針】
獅子丸(@ライオン丸G)と共に聖杯を得て、願いを叶える。
その際にセイバーなどの強力な剣士と出会う事があれば、一戦交える。
【マスター】
獅子丸@ライオン丸G
【マスターとしての願い】
聖杯を手に入れ、豪山によって犠牲にされたみんなにもう一度生を与える。
そして、錠之介(@ライオン丸G)をソープに連れていきたい。
【weapon】
『キンサチの太刀』
『ギンサチの太刀』
【能力・技能】
キンサチの太刀を抜き、ライオン丸へと変身する事ができる。
物語途中からはキンサチの太刀の影響で生身でも高い戦闘能力を発揮するようになり、錠之介に鍛えられた事で更に成長する。
【人物背景】
ネオ歌舞伎町のホストクラブ「ドリーミン」のワースト1ホスト。客はハリセンボンしかいない。
ある時、ホームレスの果心居士に「キンサチの太刀」を託された事でライオン丸の力を得て、「カブキモノ」と呼ばれる狂人と戦う事になる。
普段はカプセルホテルで生活しており、性格は臆病でいい加減で女好き、しかも借金まみれでインキン持ちと良いところがない。
普段からどんなところでも下ネタを連発し続けるバカであるが、それでも人懐っこく、性根は誰にでも優しい性格をしている。
ライオン丸として戦ううちに成長していき、虎錠之介や沙織などたくさんの人々と友情を育んでいく。
作中では、快傑ライオン丸の生まれ変わり、または子孫である事を示唆する描写がある。
【方針】
ランサーと共に聖杯を得て、願いを叶える。
投下終了です。
投下お疲れ様です。少々時間が遅いので感想は後日……
投下します
ねぇキミ ちょっと聞いて オレ松野家長男 松野おそ松でーす
リーダーシップにあふれたアイドル
夢はビッグなカリスマレジェンド
オレたち六つ子なんだぜ すごくね?
おんなじ顔が六つあったていいよな?
さっき会ったよね?
嘘だろ 絶対キミだったって
一回二回じゃないって
そう!これで六度目だよ
クゥー! 今夜は最高!
さぁ 踊ろうぜ キミって笑顔がかわいいよね〜
ああ 心配しないで
オレたちも六人だし
オレがあいつで オレたちがオレ
そう オレたち六つ子なんだ!
キミたちもそうだろう?
◇ ◇ ◇
「ヘヘ……」
ある休日の事だった。
車屋の前で、展示されている赤いスーパーカーを硝子越しに見つめ、松野家六つ子の長男・おそ松がほくそ笑んでいる。
値段の欄には特価と書かれているにも関わらず、それでも値段は七桁後半だ。
とてもじゃないが、絶賛ニート生活中のおそ松に買えるような代物ではない。
そうしていると、向こうから彼と瓜二つの顔が歩いてきて――うげっ、と露骨に顔を顰めた。
周囲の目を気にするようにしながら駆け寄ってくる彼は三男。松野チョロ松である。
「……おそ松兄さん。こんなところで何ニヤついてるのさ」
「あれ、俺ニヤついてた? ニヤついてたか〜そっか〜。俺ってば隠し事下手だなァ〜〜」
「うわ、うっざ! ……で、なんだっていきなりスーパーカーなんて見てるの?
言っておくけど、ニートの兄さんがあれを買おうと思ったら寿命二回分くらいのローンになるよ?」
辛辣な物言いだったが、その通りだ。
もっともそれは眼前の彼も同じなのだが、それはひとまず置いておくとして。
「それに、今まで車に興味持ったことなんてあったっけ? なんかのテレビにでも影響された?」
「いやあ、実はさ――」
と。
言いかけた所でおそ松は慌てて口を抑える。
チョロ松の目が、見る間にジト目に変わっていくのが分かった。
彼は六つ子の中でも良識派の方だが、それでも儲け話に関してはがめつい。
パチンコで大勝ちなどしようものならば、それこそ帰り道に迎撃に打って出るくらいにはだ。
そんな相手に、自分の元へ転がり込んできた「チャンス」のことを話しでもしたらまず間違いなく大変なことになる。
「実は?」
「い、いや、実はそうなんだよ。この前の金曜ロードショーでこの車が出ててさ! ははは」
「…………」
それに、理由はそれだけじゃない。
おそ松は、自分が関わっているあるイベントについて他言無用との助言を貰っていたのだ。
命令なんて大層なものではなく、まさに助言と言うべき謙虚さで。
もしもイベントの存在が公になろうものなら、下手をするとペナルティをもらう恐れがあると彼女は言っていた。
だから彼には、どうにかしてでも誤魔化されてもらわないといけない。
これが一松やトド松といった弟達だったなら、難易度は数段跳ね上がったろう。
チョロ松はしばし疑わしそうにしていたが、最後にはすごすごと引き下がっていった。
とはいえしばらくは安心できない。
なにせ自他共に認める悪魔の六つ子どもだ。
気を抜いていたら全てがバレておじゃん――なんてことになる可能性は向こう数日間は捨てきれない。
去っていく弟の後ろ姿を見送りつつ胸を撫で下ろすと、おそ松は本来の目的地へと足を進め始めた。
――裏路地の一角だ。そこには、手に粗末な袋を携えた美少女が待っていた。
下手をすれば儲け話のことより、彼女と一緒にいる姿を見られる方がまずいかもしれない。
それほどに美しく、可愛らしい少女だ。
服のセンスはトランプ柄と壊滅的だったが、それを引いてもお釣りが来る。
「どうだい、首尾は」
「ランサーを一騎、アサシンを一騎。同盟関係にあったようですが、両方仕留めました」
「よっしゃ〜! 順調じゃん! 流石シャッフリンちゃん!」
くぅ〜! と子どものように喜ぶおそ松の姿は、小学生かと疑いたくなるほど幼稚だ。
万人が可哀想なものを見るような顔をしてきたそんな有様を前にしても、シャッフリンと呼ばれた少女は表情を崩さない。
終始一貫した無表情。クールビューティというやつだと、おそ松は勝手にテンションを上げていたが。
大袈裟なほどに褒められても、彼女は何も変わらない。
ただ、彼女は確かにおそ松の部下である。正しくは、その一人――というべきか。
サーヴァント・シャッフリン――クラスはアサシン。
宝具は五十二体の自分と瓜二つの人造魔法少女を生み出し、展開させるというもの。
そのどれもが目の前の彼女と同じレベルの美少女なのだからおそ松にとってはたまらない。
また、彼女達はただ可愛いだけではなく、このイベントでおそ松の道を塞ぐライバルを蹴落とす役目も果たしている。
最高の仲間に巡り会えたとおそ松は無邪気に喜んでいた。
これなら、聖杯も夢ではない。
聖杯を手に入れたら、とにかくありったけの――ハタ坊さえ目じゃないくらいの富と名声を手に入れて、弟達に差をつけることにしよう。やりたいことは数えきれないほどある。
「ありがとう、シャッフリンちゃん。俺達、必ず聖杯を取ろうな!」
「了解しました」
首をこくりと首肯するシャッフリン――『ジョーカー』は、語らない。
彼の勘違いのことを。
彼が知らない、この『イベント』――聖杯戦争の真実を。
これは彼が思うほど平和的な催しではない。
命のやり取りが当たり前に交わされ、負けた者は消える潰し合いだ。
そしてシャッフリンはこれまで、既に何人もの競争相手を蹴落とし――もとい、首を刎ねて殺してきた。
遠からず、彼もそれを知る時が来るだろう。
聖杯戦争――松野おそ松。彼はまだ、その恐ろしさを知らない。
【クラス】
アサシン
【真名】
シャッフリン@魔法少女育成計画JOKERS
【パラメーター】
ジョーカー 筋力D 耐久D 敏捷D 魔力C 幸運E 宝具E
スペード(エース) 筋力A 耐久A 敏捷A 魔力E 幸運E 宝具E
スペード 筋力D 耐久D 敏捷D 魔力E 幸運E 宝具E
クローバー 筋力D 耐久E 敏捷E 魔力E 幸運E 宝具E
ハート 筋力E 耐久A 敏捷E 魔力E 幸運E 宝具E
ダイヤ 筋力E 耐久E 敏捷E 魔力E 幸運E 宝具E
【属性】
秩序・中庸
【クラススキル】
気配遮断:E(ハート、ダイヤ、スペード)/D(ジョーカー)/C(クローバー)
サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している。
【保有スキル】
人造魔法少女:D(全員共通)
「数」で戦うことを目的として設計された人造魔法少女。
数で敵を蹴散らし、強力な魔法少女と行動することがコンセプトの大前提になっている。
軍略:D(ジョーカー)
一対一の戦闘ではなく、多人数を動員した戦場における戦術的直感力。
自らの対軍宝具の行使や、逆に相手の対軍宝具に対処する場合に有利な補正が与えられる。
頑健:A(ハート)/B(スペードのエース)
頑健スキルは対毒を含み、耐久力も向上させる。
戦闘続行:A(スペードのエース)
往生際が悪い。
瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。
対魔力:C(スペードのエース)
第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。
大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない。
破壊工作:E(ダイヤ)
戦闘を行う前、準備段階で相手の戦力をそぎ落とす才能。
道具作成:E(ダイヤ)
魔術的な道具を作成する技能。
罠看破:B(ダイヤ)
仕掛けられた罠を看破し、処理する技能。
【宝具】
『マークや数字によって能力が変わるよ』
ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
五十二のトランプ兵隊(シャッフリン)を展開する。
本体であるシャッフリン=ジョーカー以外は意識が分散・希釈されており、単純な思考をすることしか出来ない。
トランプの衣装が表す柄と数値によって能力、強弱が異なり、数値の強さは降順に2〜K、その上にA(エース)となる。
彼女達は一体一体が紛れもないサーヴァントだが、スペード以外の戦闘能力は決して高くなく、更に言えばシャッフリンごとの記憶の共有もできず、ジョーカー以外は交渉事ではさっぱり役に立たない。
◯スペード:
戦闘特化。武器として穂先がスペードの形をした槍を用いる。
中でもスペードのエースはシャッフリン中最強の戦闘能力を持ち、武闘派トップクラスの魔法少女五人を同時に相手取って拮抗出来るだけの戦闘能力を持つ。
エースのみは「頑健:B」「戦闘続行:A」「対魔力:C」スキルを保有。
◯クローバー:
隠形特化。棍棒を用いる。
戦闘能力を有するが、スペード程ではない。
「気配遮断」のランクが最も高いCランク。
◯ハート:
気が弱く、攻撃行動はとても出来ないが異常な耐久力を有する肉壁。
その堅さたるやスペード全員を殺害出来るだけの攻撃を、ハートの上位ナンバーで防御し阻むことが可能なほど。
知能が低く臆病だが、上位ナンバーになっていくにつれて勇敢さが増していく。
「頑健:A」のスキルを有する。
◯ダイヤ:
技術力と知識を有し、作戦行動では敵の罠を機械的・魔法的問わず見破る。
「破壊工作:E」「道具作成:E」「罠看破:B」のスキルを有する。
◯ジョーカー:
本体。武器については後述。保有スキル項目に記した内容はこのジョーカーに該当する。
ジョーカーが死亡した場合、シャッフリンは完全消滅する。
どんなものでも収納できる四次元構造の「魔法の袋」を持ち、普段はこれに他のシャッフリン達を収納している。
『汝女王の采配を知らず(クビヲハネヨ)』
ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:1~5 最大捕捉:1人
シャッフリン=ジョーカーが担う鎌。
特別殺傷力が高いわけでもなければ、持ち主の力を増強するわけでもない武装だが、これによって英霊を殺傷した場合、その魂を奪い取り、五十二体のシャッフリン全てを再補充することが出来る。
補充された場合、行動不能となっているシャッフリンらは消滅、新たにジョーカーから生み出されることとなる。
【weapon】
個別
【人物背景】
「魔法の国」三賢人の現身である超高級魔法少女「グリムハート」に仕えていた人造魔法少女。
【マスター】
松野おそ松@おそ松さん
【マスターとしての願い】
豪遊生活! 酒池肉林!
【weapon】
なし。
【能力・技能】
メンタルが小学六年生。
【人物背景】
松野家が抱える六つ子のニート達の長男。
メンタルが小学六年生のまま成長した奇跡のバカ。
言動は知性が足りなかったりクズだったりするが、思いやりも忘れない、憎めない素直な表裏のない人物。
【方針】
そもそも聖杯戦争のことを正しく理解していない。
殺し合い、ということすら大袈裟な冗談だと思っている。
彼の中での聖杯戦争のイメージはポケット◯ンスター。
投下終了です。
投下します
「不幸だ……」
とある公園のベンチ、そこで上条当麻は俯きながらこれからの事を考えていた。
と言っても最終的な目標は決まっている。
この聖杯戦争を止める事だ。
何でも願いを叶える聖杯だかなんだか知らないが、どんな理由であろうと上条当麻は殺し合いを肯定しない。
そこまではいい。そこまではいいのだが目前に一つ問題がある。
それは―――
「上条さんのサーヴァントは一体いつになったら出てくるんでしょうかねえ……」
自身のサーヴァントが全く出てこないという事だ。
サーヴァント。過去に活躍した英雄の霊にして聖杯戦争に欠かせない存在。
上条は考える。何故サーヴァントが出てこないのかと。
ひょっとして記憶を取り戻すだけじゃなく、何か必要なのかと。
そう、例えば魔法じn「ところてん」とか
「ん?」
自分の思考が何者かに遮られた。
そう思った上条は周りを見渡す。
そして後ろを見るとそこには、蒼くプルプルした何かが居た。
「お前、何?」
「ところてんです」
「そうじゃねえよ」
上条の質問に、ところてんは見当違いの答えを返した。
「オレは! お前のサーヴァントの宝具の一つところ天の助だよ!!
何故オレが宝具なんじゃあ―――――――――――――――!?」
「知らねえよ!?」
天の助は逆切れまで始めた。
「オレはさ、仮にもAブロックの元隊長なんだよ?
サーヴァントになってもおかしくない男だぞ?
セイバーとかキャスターとか豆腐デストロイヤーとかになってもおかしくない男なんだぜ?」
(何で豆腐限定なんだよ)
「それなのにただの武器扱い!
それがどれだけ辛いか貴方に分かるの!?
答えてよ! 答えなさいよジェニファー!!」
「誰だよジェニファーって!?」
「田中のいとこのジェニファーだよ」
「まず田中が誰だよ!?」
上条は天の助に絡まれ、どうしていいか分からなくなっていた。
その時
「危ない!!」
天の助は上条を突き飛ばす。
いきなり何だと思いながら上条が天の助を見ると、そこには後ろから槍が胸に刺さったところてんの姿があった。
「な……」
「危なかった、このぬのハンカチがなければ二人とも死んでいた……」
「いやお前思いっきり刺さってるぞ!?」
上条が天の助の現状を見て慌てふためいているといきなり槍が天の助の後ろから引き抜かれた。
天の助が後ろを振り向くと、そこにはさっき引き抜かれた槍を携えた男が居た。
天の助はとっさに槍を携えた男から距離を取り、上条も天の助に続いた。
それを見た男がつぶやく。
「槍を刺されても生きているとは、奇怪な……」
「テメェ……」
「まあいいでしょう。マスターを仕留めれば関係のない事です」
そう言って男は槍を構える。
それを見た上条と天の助も逃げられないと悟りやけくそ気味に構える。
その時
「田楽シュート!!」
どこからか白いマスコットが飛んできて
「W超田楽パンチ!!」
「グハァ!!」
槍を構えている男にあたった。
男がマスコットの飛んできた方向を見る。
そこには、金髪アフロにグラサンをかけた2メートル位の身長の男が居た。
そしてアフロの男は叫ぶ。
「オレはバーサーカーのサーヴァント、ボボボーボ・ボーボボだ―――!!!
マスターに手出しはさせん!!!」
「いきなり真名名乗った―――!?」
上条は、自分のサーヴァントへの感謝も忘れてツッコミを入れた。
◆
「お待ちかねこの後は!」
「お楽しみの!」
「ボーボボじゃんけん占いだ!」
「「「みんなじゃんけんの用意だぞ〜!!」」」
「じゃあいくぜ!じゃーんけん、ぽん!(チョキ)」
「自分の勝ち負けを覚えておいてね。占いは登場話の最後よ」
「いきなり変なコーナー入った!? しかもよく見たら知らない奴までいるし!?」
◆
「ボボボーボ・ボーボボ……?」
「そうだ。俺はボボボーボ・ボーボボ! ボボボーボ―――」
「いやもう名乗らずとも……」
「ボーボボなのかぁ!?」
「いや私に聞かれましても!?」
というやりとりをボーボボと槍の男は開始早々していた。
それを見ていた上条は唖然とし、天の助はボーボボの元へ走る。
「ボーボボ―――!!」
「天の助―――!!!」
そしてボーボボもまた天の助の元に駆け寄り
「無駄ぁ!!」
「ごはっ!!」
天の助を殴り飛ばした。
「何で!?」
「あいつは、やたら尺を取った」
「それだけかよ!?」
「背を見せるとは愚かな!」
天の助を殴ったことについて問う上条。
それに対して弁明するボーボボ。
その隙を突こうとする槍の人。
しかしボーボボに隙は無い。槍が刺さろうとする刹那。
「リス美ちゃああああああああああああん!!!」
ボーボボのアフロが開き、中からリスが飛び出して来た。
「何!?」
「アフロが開いた!?」
「リス美ちゃん! ヨリ戻してよおおおおおお!!!」
そしてリスは叫びながら槍の人の方へ向かう。
彼は槍を振るいリスを一蹴する。
「隙を見せたのは貴様だ! 鼻毛真拳奥義」
その一瞬の隙を突いて、ボーボボは鼻の毛を伸ばし槍の人へと攻撃する。
「マヨネーズ戦争、勃発!!」
攻撃を受けたと同時に、槍の人は消滅した。
それを見ていた上条は、あまりにも未知過ぎる光景に何も言えなかった。
◆
ボーボボと敵サーヴァントが戦った公園で、上条とボーボボは簡単に自己紹介をした後、お互いの事について話していた。
上条は自身の持つ幻想殺しについて。
ボーボボは自身の鼻毛真拳やハジケリストについて。
ボーボボは幻想殺しについて特に驚くこともなかったが、上条は理屈もなく鼻毛を自在に操るような存在に困惑を隠せなかった。
それでも何とか呑み込み、上条は聖杯戦争について切り出す。
「俺はこの聖杯戦争をぶち壊す」
その宣言がサーヴァントにとってどんな意味を持つか、上条は知っている。
それでも言わなければならない、これは嘘で済ませていい問題じゃないから。
上条はボーボボの方を見る。
ボーボボは特に感情を荒げる事もなく静かに語り始める。
「そうか、当麻はこの聖杯戦争に反対なのか」
「ああ」
「ならば俺は、愛の為に戦おう」
「それは違う神拳の伝承者ですよね!?」
「気にするな、俺に大した願いは無い。
何かこう、叶ったら嬉しいなーぐらいの物だから」
「そんなふわふわした願いで殺し合いに!?」
「ともかくこれからよろしくな、当麻」
そう言ってボーボボは上条に手を差し出した。
それを上条は握手の求めだと思い、それに応じる。
「こっちこそよろしくな、ボーボボ」
こうして、彼らの聖杯戦争は始まった。
「気安く呼ぶな」
「えぇ!?」
始まったのだった。
【クラス】
バーサーカー
【真名】
ボボボーボ・ボーボボ@ボボボーボ・ボーボボ
【パラメーター】
筋力B 耐久A 敏捷D 魔力D 幸運A 宝具EX
【属性】
中立・狂
【クラススキル】
狂化:EX
「狂戦士」のクラス特性。理性と引き換えに驚異的な暴力を所持者に宿すスキル。
身体能力を強化するが、理性や技術・思考能力・言語機能を失う。また、現界のための魔力を大量に消費するようになる
―――はずだが、ボーボボはそんな事もなく普通に行動できる。その分パラメータ上昇もない。
実質的に死にスキルであるが、彼のハジケリストとしての生き方は常人には狂っているようにしか見えない。
【保有スキル】
鼻毛真拳:EX
鼻毛を自在に操り敵を倒す拳法。毛の王国に伝わる五大毛真拳の一つ。
ボーボボは七代目の正統伝承者のため、EXランクである。
ただし、スネ毛真拳の使い手相手だと無効化される。
ハジケリスト:A++
人生かけてハジケまくっているバカ、焼肉の種類、カップ焼きそばのかやくの一つと言われるもの。
そしてその実態は、言葉で言い表わせるほど安っぽい物ではない。
常人は理解不能な精神性の為か、他の精神干渉系の技をシャットアウトする。
投擲(仲間):C
仲間を弾丸として放つ能力。
【宝具】
『聖鼻毛領域(ボーボボワールド)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:??? 最大補足:???
鼻毛真拳マル秘奥義にしてボーボボが作り出す固有結界。
この空間に入ったものは魂を開放しなければならない。
魂を開放すると真の力を開放することができるが、開放しなければ死んでしまう。
『聖鼻毛融合(ボーボボフュージョン)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:0 最大補足:3
後述の宝具で呼び出すことができる仲間と融合する事が出来る鼻毛真拳究極奥義。
制限時間は一分。(一部例外あり)
ただし、本編で登場した融合戦士にしかなることは出来ない。
また、魚雷ガーボになる事も出来ない。
ちなみに、真説版かそうじゃないかを選ぶことは出来る。
『9極戦士+α(ボーボボの愉快な仲間たち)』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:??? 最大補足:???
ボーボボと共に旅をした仲間たちを呼び出す宝具。
呼び出す仲間の強さが大きくなるにつれて消費する魔力が大きくなる。
ただし、ハジケリストの場合は勝手に出てくることも多い。その場合は魔力を消費しない。
ボケ殺しはハジケリストにカウントされないので注意。
『呼び出されし伝説の決闘者(オシリスの天空竜を召喚するぜ!!)』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:100 最大補足:1
アフロから決闘王武藤遊戯を呼び出すことができる。
そして遊戯がオシリスの天空竜(作画:澤井啓夫)を呼び出して攻撃する。
この宝具はマスター、サーヴァント、NPCのいずれかに武藤遊戯が居た場合使用不可能となる。
【weapon】
鼻毛
【人物背景】
ピーマン嫌いな七代目鼻毛真拳伝承者。
キング・オブ・ハジケリストの称号を持つ男である。
そして、世界の中で最も毛に愛された男の証である毛王になった男でもある。
【サーヴァントとしての願い】
マスターを助ける。
【マスター】
上条当麻@とある魔術の禁書目録
【マスターとしての願い】
聖杯戦争と言う殺し合いのシステムをぶち壊す。
【weapon】
幻想殺し
【能力・技能】
・幻想殺し
上条当麻の右手に宿る力。触れただけであらゆる異能を打ち消す。
ただし、あまりに強力だった場合には打ち消すのではなく受け止めるに留まる事もある。
また、効果に関わらず打ち消すので回復や強化するための物でも打ち消してしまう。
余談だが、この右手が幸運をも打ち消しているのか上条当麻は不幸体質である。
少なくとも、いきなり殺し合いに巻き込まれる程度には。
【人物背景】
学園都市に住むレベル0の平凡な高校1年生、というカテゴリの存在。
ただし、人間離れした強靭なメンタルの持ち主でもある。
また、強い正義感の持ち主でありとある人外曰く「誰に教えられなくても、自身の内から湧く感情に従って真っ直ぐに進もうとする者」らしい。
【方針】
聖杯戦争に抗い、同じ志を持った仲間を探す。
「じゃんけん占いの結果なのら〜」
「じゃんけんで勝った奴! 本を読むといい事があるぞ。ラッキーアイテムは禁書の最新刊!
あいこだった奴は、寒いからと言って換気を怠ると健康運がダウンするぞ。
そして負けた奴! いきなり殺し合いに巻き込まれないように注意だ!!」
投下終了です
投下します
It takes al the running you can do, to keep in the same place.
全力を以て走り続けよ。ただそこに留まるがために。
▼ ▼ ▼
「俺は……聖杯戦争を破壊しようと思う」
開口一番、口を突いて出たのはそんな言葉だった。
人々の織りなす喧騒もすっかり落ち着いた夜半のこと、自分の部屋として割り当てられた部屋で、相対する二つの影に向かって。
あれこれと悩むことも、思いに逡巡することもなかった。自然と、世間話でもするかのような気軽さで、気付けば少年は宣誓していた。
少年が違和感に気付いたのは、つい先刻のことだった。
いつも通りの学校生活から帰宅し、台所から漂ってくるカレーの匂いに年甲斐もなく胸を躍らせ、妹の声を聞きながら部屋に戻ったその瞬間、少年の記憶は忘却の檻から解き放たれた。
次々と湧き出る記憶に、自分でも何故今まで忘れていたのか理解できないまま憤激した。自分はこんなことをしている場合ではないのだという嚇怒の念が巻き起こり、しかし次の瞬間には鉄の意思で捻じ伏せた。
そして考えたのだ。今自分は何をすべきなのかということを。
この世界の成り立ちと、聖杯戦争という頸木を考慮に入れて。願えば叶うという聖杯の存在を確と受け止めて。己が抱く理想を振り返って。
その上で、彼はその結論に達した。
「あら、意外ね。貴方くらいの歳なら、もう少し野心や万能感を抱いていてもおかしくはないと思ったのだけど」
からかうような含みの声に見上げれば、夜空に浮かぶ月を後ろに、一人の少女がこちらを睥睨していた。
窓枠に腰かけた銀貌は月の光を受けて煌と輝き、しかし夜の影を落として優しく微笑んでいた。
街灯という文明の眩さすらも色褪せてしまうほどに、その少女は美しかった。
「それこそ誤解だよ。俺の願いなんて聖杯を使うほど大層なものじゃない。いやむしろ、この聖杯戦争を壊すことそれ自体が、俺の願いに繋がる可能性だってある」
少年は、一種蠱惑的とさえ言っていい少女の声に、しかしまるで動じる様子もなく返した。
そして、聖杯戦争の破壊が願いに直結するという言葉は、決して嘘ではない。
この街に来て数日、彼はこの世界の成り立ちについてある程度理解を得ていた。
疑似的な電脳空間。現状の科学では到底成しえない超技術、その産物であると、不確かなれどもある種の確信を抱いている。
ならば、そんなことを可能とする存在は―――
「俺は時計機構を―――オルフィレウスを天の玉座から引き摺り下ろす」
そうするしかないのだと、俺は再び心に誓った。
仮に、いいや間違いなく、時計機構はこの電脳世界の構築に関わっているのだろう。
ならば、俺のすべきことは決まっている。
カレンが死んでしまったあの時、俺は激情のまま誓った。この理不尽を俺に強いる"敵"を決して許しはしないと。それは紛れもなく、俺自身の心だ。
この悲劇(マイナス)を塗り替える為に、たとえ世界が相手であろうとも俺は俺自身の意思で戦い続ける。俺は確かにあの時誓ったのだ。
「この舞台を作り上げているのが本当にそいつなのか……絶対とは言い切れないけど、それでも俺は聖杯なんていらない。俺は日常(ふつう)を守ることができればそれでいいんだ」
それを果たすためならば、俺は戦うことを厭いはしない。
静かに耳を傾ける少女は、変わらず笑みを浮かべるだけだった。
「普通の人間でありたいから、当たり前の日々を過ごしたいから。そのために貴方は戦う。
やるべきことを正しくやろうと努力する。それを心がけない限り、人は何者にもなれない。貴方は、それをしっかり理解しているのね」
「夢だけを見て、言い訳ばかり上手い人間なんて誰からも必要とされないだろう?
俺は、ただ自分の在るがままに生きたいんだ」
やる前から諦めない。夢はただ胸に抱く。一度決めたことは投げ出さない。
言葉にすれば簡単なことだけど、それをきちんと履行してこそ、人は人足らんのだと、そう思うから。
俺は、たとえ最後の瞬間を迎えようと、心乱れることなく自身を中庸に保っていたいのだ。
少なくとも、自分はただの人間だから戦いたくないし傷つきたくない、けど平穏と安心だけは傷つかないまま欲しいだなどと、そんな恥知らずな真似はしたくない。
「ええ、いいわ。お誂え向きに私も彼も、聖杯に抱く願いなんてないもの。
貴方の道程に付き合いましょう。それが、今生における私達の道」
少年の選択を、法悦に濡れた女の声が肯定する。
星空に坐す太陰を背に、少女は軽く窓枠から足を下ろすと、王侯貴族もかくやと言う足取りで近づいてきた。
蒼白の月光に彩られるその姿は、まさしく月乙女(アルテミス)そのもので。
「ああ、ありがとう。これからよろしく頼むよ、アサシン」
少年はただ、少女と、その脇の暗闇に座る男に礼を言った。
アサシンという呼び名は、少女ではなく、暗がりの男へと向けたものだった。
▼ ▼ ▼
俺たちは、当たり前に生きて死のう。
どこにでもいる人間として、健やかに、慎ましやかに。
勝たなければ傷つき、負ければ死ぬような厳しさとは無縁の優しい世界へ、さあ―――
そう願ったのは、いったい何時のことだったか。
誰に向けて誓ったのか。
記憶は軋み、無謬の果てへ引き裂かれた。
▼ ▼ ▼
「そういうことだけど……貴方はそれで構わないわね、ゼファー」
「この期に及んでそれを聞くか、普通?」
問答より幾ばくか、夜の帳が漆黒の深度を更に深めた頃。月乙女と暗殺者はそんな言葉を交わしていた。
旧知の仲であるように、彼らは気安く、家族に語りかける穏やかさで会話する。
それは英雄譚に記される勇者などではなく、市井に住まう常人であるかのような平凡さを醸し出していた。
「聖杯目指して殺して回って得られる勝利なんざお断り。サーヴァントの枠に括られてるから逃げるなんて不可能。かといって無意味に死んでいく敗北は論外。
なんだよこれ、詰みじゃねえか。勘弁してくれよマジで」
軽薄な口調で自嘲するように話すアサシンは、真実凡夫であるかのように泣き言めいたことを口走っている。
月乙女は、まるで子供を愛する母のように、あるいは弟を愛する姉のように、静かにアサシンを見つめていた。
「聖杯戦争、英雄が集う殺し合いね……正直なんで俺が英雄扱いされてんのか分かんねえし、また戦うなんて真っ平御免なんだけどな。
でも、震えてどこかに隠れてたってこの世界そのものが戦場になるんだろう?」
「英雄譚に出てくるような、いいえ、英雄譚そのものな冗談極まる破滅の死闘。際限なく膨れ上がる闘志(ちから)、決意(ちから)、宣誓(ちから)、野望(ちから)。あらゆる者を焼き尽くすソドムとゴモラの再現ね。嫌になるわ、本当に」
「誰が勝っても後に残るのは焼け野原ってか? やってられるかってんだ、そんなもん」
そこで、二人は言葉を切って。
「だから」
「そう、だから」
口を開き、素直な感情を吐露する。
「"こんなもの"は、認めない」
「貴方はやりすぎたのよ、どこかの誰かさん」
それはすなわち、"光"への憎悪。
聖杯戦争を開き、奇跡を以て何かを為そうとする誰かへの嫌悪感だった。
どうでもいい、どうでもいいのだ。例えそいつが【世界を救う】なんて大層なお題目を抱いていようが、まとめて心底知ったことじゃない。
願いを叶えたいなら自分だけで勝手にやればいい。無関係の俺達を巻き込んで、理想のために傷つき死んでくれなどと押し付けるな。
百歩譲ってこの際俺自身のことは度外視してもいい。自分の罪は知っているし苦しむのも自業自得だ。そもそもが一度死んで再現されたサーヴァントでしかないのだから、更に死んだところで何の痛痒もないだろう。
けれど、俺以外の連中は?
聖杯を求めて殺戮を容認するような連中はどうでもいいが、例えば俺たちのマスターのような、屑でも塵でもない者まで何故巻き込まれなければならないのか。
気に入らないのだ、そこが。どのような大義名分を掲げようと、どれだけ崇高な理想があろうと、ならばそこに赤の他人の命を勝手に賭けても許されるのだという傲慢が。
「だから、私たちはマスターの願いを肯定するのよ。遍く光を破壊するために、私たちは走り続ける」
誰からも賞賛などされないであろう身勝手な思いから、俺たちはマスターの意思を肯定していた。
聖杯戦争を破壊する。それはすなわち、高みに坐す勝者を殺すという、どうしようもない下衆な悦楽。
「行きましょう。罪を重ねることになったとしても、尽きるまで走り続けることが、命にとっての義務なのだから」
聖杯戦争が終わるまでの命だとしても、死を上回る苦難があったとしても、自壊だけは選んではならないとヴェンデッタは告げる。
他の誰が死に救いはあると説いても、既に死して未来を失った自分たちだけはそれを否定する権利があると、ただ厳かに訴えていた。
「ああ、行こうヴェンデッタ。全ての願いが途絶えるように」
そして彼らは歩みを進める。奇跡をもたらす聖杯の恩寵を打ち砕くため、生産性など度外視して。
ただひたすらに勝者を滅する弱者として、意味のない八つ当たりをすると決めたのだ。
故に彼は人狼と恐れられたリュカオンでも。
嘆きを謳うオルフェウスでも。
星を滅ぼすスフィアレイザーでもなく。
単なる一人の人間「ゼファー・コールレイン」として、■■■を始めようとしていた。
▼ ▼ ▼
ゼファーは思考する。自分の抱く願いとは何かということを。
聖杯を手にするなどという"勝利"ではない。無様に死に行くだけの"敗北"なんて御免だ。サーヴァントとして現界する以上"逃亡"なんてできっこない。
ああそれに、自分たち英雄なんかじゃないちっぽけな人間だから、華々しさや栄光を形にできるなんて思っていない。
かつてあった日常に戻りたいという、そんな小さな願いしか持たないから。決意の多寡で英雄に勝てるはずもない。
恐怖に震え、心の悲鳴を耳にして、それでも尚と胸に抱いた決意を口にするならば。
「……踏み躙ってやる」
俺は"勝利"を求めない。何故なら、それはいつでも俺の傍にいてくれるのだから。
大きな理想を形にしたり、誰かに対して勝ったり負けなかったり、そんなことをしなければ得られないような重いものではない。
ただ己の過去を受け止めることができれば、それだけで"勝利"と呼べるのだ。
故にこそ、これは"逆襲"。
勝利でも敗北でも逃亡でもない。この聖杯戦争を仕組んだ誰かを地に引き摺り下ろすという、これ以上なく生産性の欠如した弱者の足掻きでしかない。
けれど俺はそうしたいと願う。痛みを伴う正しさからでも、心地いい間違いからでもない。
今まで生きた傷だらけの足跡を愛するからこそ、血を流させる運命を蹂躙したいと願うのだ。
ただそうしたいという心のままに、俺達が掴んだ輝きを奴らにも見せてやろう。
―――太陽系から放逐された冥王の星光が、冥府の底で目覚めの時を待っている。
【クラス】
アサシン
【真名】
ゼファー・コールレイン@シルヴァリオ ヴェンデッタ
【ステータス】
筋力C 耐久D 敏捷D++ 魔力D++ 幸運E 宝具A
【属性】
中立・中庸
【クラススキル】
気配遮断:A
サーヴァントとしての気配を絶つ。
完全に気配を絶てば、探知能力に優れたサーヴァントでも発見することは非常に難しい。
ただし自らが攻撃態勢に移ると気配遮断のランクは大きく落ちる。
【保有スキル】
仕切り直し:A
戦闘から離脱する能力。
また、不利になった戦闘を戦闘開始ターン(1ターン目)に戻し、技の条件を初期値に戻す。
単独行動:B
マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
ランクBならば、マスターを失っても二日間現界可能。
潜入工作:C
敵地に潜り込み、間諜として活動する能力。
このランクであれば、間諜としてのセオリーさえ守れば敵対活動を疑われない。
ただし、このスキルが高ければ高いほど、英雄としての霊格が低下する。
【宝具】
『狂い哭け、罪深き銀の人狼よ(Silverio Cry)』
ランク:D++ 種別:対人宝具 レンジ:1〜10 最大捕捉:1
アサシンの持つ星辰光。その能力は振動操作。
自身の周囲を索敵するソナー、対象物と固有振動数を合わせて破壊する防御無視のレゾナンス、対象物の内側から振動を叩き込み崩壊させるハーモニクスなどがある。
この宝具の発動中は敏捷と魔力に++の補正を与えるが、使用後に多大な反動がアサシンを襲う。マスターにかかる魔力消費はそんなでもない。
『月乙女-No.β死想恋歌(Eurydike)』
ランク:B 種別:人造惑星・比翼連理 レンジ:1 最大捕捉:1
魔星の一、歪み捩れた骸の惑星。アサシンと繋がれた比翼連理。通称ヴェンデッタ。
少女の姿をした独立した存在であり、固有の人格を保有する。彼女はサーヴァントでないため実体化にかかる魔力消費は極めて少なく、サーヴァントとしての気配も持ち合わせない。その代わり戦闘能力は皆無。ほとんど一般人程度の力しか有しない。
ただし彼女はEXランクにも匹敵する膨大な魔力を内包する。彼女の実体化が後述の宝具の発動条件となる。
『冥界へ、響けよ我らの死想恋歌(Silverio Vendetta)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:1
月乙女(ヴェンデッタ)の持つ星辰光。それはアサシンとの完全同調。
ヴェンデッタとアサシンが同調することにより、一時的にアサシンの各種能力を飛躍的に上昇させる。また魔力そのものを視認・干渉することが可能となり、ヴェンデッタとの間に無制限の感覚共有を為すことも可能。
この状態でもアサシンは自身の星辰光を使用可能。そして使用後は意味不明なレベルの反動がアサシンを襲う。
『闇の竪琴、謳い上げるは冥界賛歌(Howling Sphere razer)』
ランク:EX 種別:対星宝具・侵食固有結界 レンジ:1〜30 最大捕捉:1000
創生・星を滅ぼす者。
現在この宝具は一切機能していない。この力が真価を発揮するのは、真に逆襲が果たされる時となるだろう。
仮に発動する場合、月乙女-No.β死想恋歌はその形を失い、二度と発動を取り消すことはできない。
【weapon】
星辰光の発動媒体となる短刀に加え、両手がオリハルコン製の義手となっている。
【人物背景】
やる気なし、根性なし、意気地なし、金なし、職業なし、甲斐性なし、生活能力なしの駄目人間。
元々はスラム街の出身で割と凄惨な幼少期を過ごし、青年期において帝国軍隊に入隊。同時に改造手術を経て星辰光奏者となる。
その後は何の因果か十二部隊の一つ「ライブラ」の副隊長に任命され、数多くの暗殺任務をこなすようになる。
任務達成率は高く隊長や部下からの信頼も厚く、星辰光奏者としての実力も帝国トップクラスではあったのだが、過去のトラウマ、終わりの見えない暗殺任務による精神の磨耗、自分では絶対に届かない強者を間近で目撃することによる精神的鬱屈が積もり重なっていき、最終的には軍部より脱走して市井に降った。その後はマダオ暮らしの日々を送る。
主役のように光を求めて駆けることができず、なのに目を背けることを嫌がるから、雄々しく散ることを心底恐れるどうしようもない凡夫。
誰かがいないと生きていけない、誰かがいるから生きていける。そんな、どこにでもいるただの人間。
【サーヴァントとしての願い】
この聖杯戦争を仕組んだ何者か、その目論見も意図も分からないし理解するつもりもない。
けれど"逆襲"だけは受けてもらう。
【マスター】
秋月凌駕@Zero Infinity -Devil of Maxwell-
【マスターとしての願い】
オルフィレウスの打倒。聖杯に興味はない。
【weapon】
下記に記述。
基本的には両手に具現させた篭手状の殲機による格闘を行う。
【能力・技能】
刻鋼人機(イマジネイター)と呼ばれる存在。有体に言うと後天的に改造されたサイボーグのようなもの。
常人を遥かに超えた身体能力と知覚領域を兼ね備え、殲機と呼ばれる固有武装を展開する。動力源は精神力。
イマジネイターには位階があり、自己の希求を具現する輝装、自己の陰我を具現する影装、詳細不明の"真理"の三段階が存在する。
・極秤殲機(マクスウェル・デストロイヤー)
輝装。能力は自在熱操作。
両腕に楯にもなり得る重装甲を纏い、打撃と共に炎熱や冷気を叩き込む。
「この世は総じて+と-の連続」という達観。
「その中で、客観的な価値と主観的な価値の間に起こる齟齬にこそ、人の価値が集約する」という哲学。
「自分は然りと己を持つ中庸でありたい」という願望から生じた輝装である。
近距離武装なのは、遠い何かよりもまず先に自分に対し考えを巡らせるという精神性から顕れている。
なお、少なくとも輝装及び影装段階はあくまで既存科学で編まれているため、サーヴァントに掠り傷一つ与えることはできない。
ただし、既存の物理を超越した新たな"真理"であるならば、話は違ってくるだろう。
【人物背景】
あらゆる外的な事象に対し、常に中庸であることを心がけ自己の均衡を失わないことを信条とする少年。
本人としては普通や平凡であることを望んでいるが、その精神性は異常事態や極限の逆境において真価を発揮するという矛盾した人物像を持つ。
本人も自己の歪みや異常性には自覚的で、当人なりに折り合いをつけて日常を謳歌している。
生まれながらの超人にして精神異常者。大した由来もなく最初から精神性が完成していたというナチュラルボーンフリークス。
その本質が露になれば、ゼファーが「なんだこのバケモン(白目)」になること必至。
マレーネ√、礼との戦闘に入る前より参戦。
【方針】
この聖杯戦争の裏に潜むであろう何者かを打倒する。それがオルフィレウスでも他の誰かであろうとも、目指す先は変わらない。
……たとえ自分の精神が異常だとしても、この思いは譲れない。
投下を終了します
なお、拙作「杉村弘樹&セイバー」においてステータスの一部を修正したことを報告させていただきます。
不都合等がございましたら以前の状態に再度修正いたします。
投下します。
○がつ ×にち てんき(はれ)
俺は、今日から日記をつけてみる事にした。
……しかし、一体、何を書けばいいのかわからない。
今のマスターに無理を言って頼んだは良いが、日記の書き方など、俺は知らなかった。
これまでに誰かが書いた日記のサンプルもないので、余計に不安だ。
……まずは、本でも読めばいいのだろうか。
こんな事なら、日記を書く前に本を手に取ってみれば良かった。
そうだ。試しにマスターに貸してもらおう。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「マスター、何か、本があるか?」
「え? レイバーの操縦マニュアルとか、そういうのならそこに……」
「……やっぱり良い」
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
ひとまず俺は、自分の力だけで日記に挑戦する事にした。
俺がそうまでしてこの日記を書くのは、少しでも人間の事を知っておきたいからだ。
人間は、その日の事を、記憶だけでなく、後に残る記録にも留めておく事があるらしい。
俺も、もっと人間の事を知る為に、それをやってみたかった。
現世では出来なかった事だ。
いや、一度死んだからこそ、こうしてこの世にいる間の事を日記に書きたいと思ったのかもしれない。
……そういえば、進ノ介も霧子も、よく日記のような物を書いていた。
シマツショ、とか、ホウコクショ、だったか。まあ、そんな事はいい。
とにかく、マスターには「なんでも書きたい事を書けばいい」と言われたので、俺はそれに従う事にした。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「マスター。……日記には、文字ではなく、絵を描いてもいいのか?」
「え? うん。絵日記とかあるし」
「わかった。感謝する」
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
【この文章の直後、二人の男と一人の女の絵が描こうとした痕があるが、出来が気に入らなかったのか塗りつぶされている。】
俺には絵の才能がなかった。
だから、今から俺が書きたい事は文章で書く。
ひとまず、つい先ほどあった事を書いていこうと思う。
今日死んだ、前のマスターの事を書くのは後にする。
それは、また後で、時間が残っている時に書く事にしたい。
何故なら、今日あった事を書くだけで、今日が終わってしまうからだ。
……間もなく23時00分だ。
そろそろまずい。急がないと間に合わない。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「どう? ライダー。日記、上手に書けてる? 絵、描いた?」
「すまない。黙っててくれマスター。俺は今、日記と戦っている。……時間がない。このままだと今日が終わってしまう」
「え?」
「今日の日記は、今日書かなければならない。でなければ、ここに書いてある事が嘘になる」
「はぁ。何もそんなに無理に書かなくても……」
「────今から俺は、脳細胞をトップギアにする」
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
……俺は、昨日まで別のマスターと行動を共にしていた。
ライダーのクラスでこの世に出現してから、俺はずっと、その人間と一緒に聖杯戦争から脱出する術を探していたのだ。
しかし、俺は、今日、21時20分に、その相棒を失った。
マスターは……俺の相棒は、悪い人間ではなかった。
何しろ、昨日まで俺と共に一緒に過ごした、大事なダチだ。
語りたい事は山ほどある。
だが、先ほど言った通り、この男について語るのはまた後にしたい。
相棒は、アサシンのサーヴァントに狙われていた。
そして、それを見抜けず、守れなかった俺のせいで、マスターは死亡した。
俺の目の前で、相棒は突然、後ろから胸を突き刺された。
……今、その事を書いていて、手が震える。こんな感覚は初めてだ。
……あの瞬間の出来事は、何度でも俺に悲しみを与えるのだ。
そして、言い知れぬ怒りをも、俺に与えた。
ただ、それは敵への怒りだけではなく、自分への怒りだった。
俺は、相棒を守る事が出来なかった。
ダチを……進ノ介や、霧子や、剛のような、大事なダチを、俺は守れなかった。
俺は、それから、そのやり場のない怒りをぶつける為、仮面ライダーに変身し、アサシンを倒した。
同じくサーヴァントとしての力を持つ俺にとっては、アサシンも大した事はなかった。
こんな奴が俺の相棒を倒したのか、と思ってしまう。
だが、人間は脆い。
俺の相棒は、そんなサーヴァントの攻撃を前に、もう完全に動かなくなっていた。
アサシンを倒した後も、心が痛かった。
そして、涙が出た。
俺は、マスターの、相棒の、ダチの、名前を叫んだ。
俺は、守る事ができなかった。
俺は、守る事ができなかった。
俺は、守る事ができなかった。
俺は、相棒の亡骸を抱えながら、消えるのをただ待っていた。
俺には願いはない。戦い、誰かを犠牲にしてまで得る願いなど何もない。
ただ、マスターを守る事だけが、俺の使命だった。
だから、英霊としての使命はそこで失われたのだろうと思った。
しかし、その時、ふと思った。
今、倒したサーヴァントの相棒は、どうなったのだろう?
サーヴァントを倒されたマスターも、マスターを失ったサーヴァントと同じく、消えてしまう運命にある。
だから、今倒した敵のマスターも、近々消えてしまうのだ。……俺はそんな大事な事を忘れていた。
あのサーヴァントの、アサシンのマスターは、近くにいるだろうか。
俺は、マスターの亡骸をそっと地面に寝かせた。
眠りについているマスターの胸の上で、彼の指を組ませてやった。
ただ、申し訳ないと思った。
それから、アサシンのの相棒を探してみる事にした。
見つからなければ、俺は、アサシンを倒した事で、一人の人間を、殺してしまう事になるのだ。
それは、進ノ介や剛たちと同じ仮面ライダーを名乗る者として、あってはならない。
そして、俺はすぐに表通りで、そのサーヴァントのマスターを見つけ出した。
髪が短い人間の女性だった。
彼女は、自分のサーヴァントが俺に倒されるのを目の当りにしていたらしい。
だから、俺を恐れながら……逃げようとした。
死神。
彼女にとって、俺は、仮面ライダーではなく、そう呼ばれるべき存在であったに違いない。
俺が死なせるのだから。
……いや。実際どうだったのかわからないので、今、マスターに直接訊いてみよう。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「マスター。……俺が死神に見えるか?」
「え? 別に……」
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
すまない、日記。
マスターは別に俺の事を死神だと思ってはいなかったらしい。
……そうだ。ここまでに大事な事を書き忘れていた。(やはり日記を書くのはむずかしい。)
俺は、その女性と、新たに主従の契約を結ぶ事になったのだ。
それは、彼女を救う為だった。
彼女をこのまま消してしまえば、俺は人を一人殺めた事になる。
それは、俺の本能が決して許さなかった。
彼女を死なせてしまえば、俺は「仮面ライダー」を名乗る資格がなくなってしまう。
この名前は、俺の仲間がくれた、大事な宝物の一つだ。
こうして相棒の仇と新しく契約を結ぶ事を、相棒が許してくれるかはわからない。
だが、俺は、相棒の仇も守りたかった。
俺は、彼女に聞いて、再契約を結ぶ事になった。
そして、彼女の名前は、泉野明(ルビ→いずみ のあ)といった。
職業は、警察官らしい。……つまり、進ノ介や霧子たちと同じだ。
彼女は、俺の相棒と同じく、巻き込まれてこの聖杯戦争にやって来た人間だった。
アサシンとの相性は悪かった。
何らかの願いを持っていたアサシンが、野明に隠れて、俺のマスターを殺したらしい。
確かに、アサシンは良い性格ではなかった。
だから、彼女にとっては、俺が現れた事の方が都合が良かったのかもしれない。
だが、相棒。
お前は俺を許してくれるのだろうか。
……少しだけ、あの時の事を思い出してきた。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
〜〜〜〜〜回想パート〜〜〜〜〜
『……はぁ……はぁ……』
『……きみが、アサシンのマスターか』
『……はぁ……はぁ……』
『──きみの願いは、なんだ? なぜ、この聖杯戦争に来た?』
『……願いなんて……願いなんて、ないよ! アサシンには……あったかもしれないけど……』
『そうか。……きみの名前は?』
『野明……泉、野明……』
『イズミ、ノア、か』
『ねえ、あなたは……あなたは、一体、何者なの……?』
『「チェイス」……それが、俺の真名だ──もう一つの名は、「仮面ライダーチェイサー」』
『そう……』
『……』
『ねえ……チェイス……あたし……死んじゃうの……? もっと、色々したい事とかあったんだけどな……』
『……いや。きみは、死なない』
『え?』
『生きたいならば、俺と契約してくれ。そうすればきみは消滅を免れる。それには、泉野明……きみの合意が必要だ』
『……』
『──俺と契約してくれ。確かに俺はアサシンを倒した。……だが、それ以外の誰かを死なせたくはない。俺と契約すれば、きみは助かる』
『……』
『頼む』
『……わかった。……契約しよう、チェイス。……チェイス、あなたが、ここで──あたしのサーヴァントになるんだね』
『ああ。そうだ』
『……』
『……ありがとう、野明。救われてくれて、ありがとう』
『……え?』
『────良かった。これで、俺は、「仮面ライダー」の名を捨てなくて済む……』
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
……大丈夫だ。
俺は、たいせつな事だけは、日記に書かなくても一つ一つ思い出せる。
全てが俺の中にメモリーに刻まれている。
これも日記に書いておきたいと思った。
……だが、何故だろう。
過去の言葉をひとつひとつ日記に書くのは、何故か恥ずかしい気がする。
そのせいか、筆が止まった。
やはり、書かないでおこう。
俺たちは、それから、相棒がいた場所に戻った。
そこで、かつてのマスターの肉体が分解され、消滅するのを目の当りにした。
サーヴァントを失ったマスターとして、聖杯がその肉体を回収したのだ。
俺は、その時、遂に相棒がこの世に何も残さず死んでしまったのを知った。
俺は、余計に悲しかった。
何故、俺は相棒を守れなかったのだろう。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
〜〜〜〜〜回想パート その2〜〜〜〜〜
『……ねえ、ライダー。ここ、どこ?』
『──ここが、俺のマスターと、君のサーヴァントの墓標だ。この場所を俺は、覚えておきたい』
『……』
『俺は、マスターを……大切な相棒を守れなかった。それを繰り返すわけにはいかない……仮面ライダーとして』
『……』
『──野明。何をしている?』
『……敬礼』
『……』
『あたし、これでも警察だから。……本当は、制帽が無い時はやっちゃいけないんだけど』
『……警察。……霧子や進之介と同じか』
『え? 誰それ』
『────かつての友の名だ』
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
……という出来事を逐一書いていたら、やはり時間が近づいていた。
現在、23時50分。あと10分しかない。
これでも急いだ方だが、もっと急がなければならない。
今日の重要な出来事は、全部書いてしまった。
後で日記を読み返す時にも、これだけ書いてあれば、俺も今日の事をありありと思い出せる。
もし、俺がいなくても、マスターがこの日記を思い出にしてくれれば、俺はそれで良い。
かつて、コアが破壊されて俺が死んだ時にも、俺は大切な仲間たちに、何かを遺せたのだろうか?
……今となっては、俺にはそれはわからない。
そうだ。
それより、今のマスターの事を書いておきたい。
これから、俺にとって重要なのは、今、守るべきマスターの事だ。
聖杯戦争から脱出し、マスターを平穏な場所に返すのが俺の役目なのだから、俺はマスターの事をよく知らなければならない。
だが、考えてみると俺はマスターの事を知らない。
今聞いてみよう。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「……マスター。弟はいるか?」
「え? いないけど」
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
マスターに弟はいないらしい。
ここが霧子と違うところだ。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「マスター。恋人はいるか?」
「え? え、ええー……ええーと、……いません。……今のところ」
「そうか」
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
マスターに恋人はいないらしい。
俺は、もう、霧子に未練はない。
霧子と進ノ介が、あれから人間として幸せに生きている事を俺は願う。
だが、勿論、これは聖杯に託す願いなどではない。
あの二人ならば、聖杯に頼らなくても幸せにやっているだろう。
今のマスターにも、早く恋人ができてほしいものだ。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「マスター。仕事上の相棒は──」
「ああーっ!! もう!! そんな事いちいち日記に書くんじゃない!!!!!」
「だが……」
「……まったく、そんなのは、これから知ればいいじゃない。まだ時間はあるんだしさ!」
「……そうか。それもそうだな」
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
というわけで、今日の日記はこれでおしまいだ。
日記を書くのは、意外と楽しかった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「……ねえ。ライダー。それより、あたしからも質問良い?」
「なんだ?」
「あんたいつまでここに居る気なの? もう12時過ぎちゃうよ?」
「いつまでもだ。俺は野明を魔の手から守らなければならない」
「え」
「俺はこの部屋にいる。ここで、朝まで、誰より近くで野明を守る」
「……出てけ」
「は……? 野明。きみの言っている事がよくわからない。俺は、きみを守る為に」
「ここは本当なら男子禁制なの! そもそもこんな時間までいるのがおかしいんだぞっ」
「だが、俺は……」
「──いいから、出てけ!!!!!」
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
……すまない、日記。
先ほど、これで今日の日記はおしまいだと書くつもりだったが、もう一つ書いておく事がある。
俺は今、野明の部屋を追い出
【────00時00分】
【CLASS】
ライダー
【真名】
チェイス@仮面ライダードライブ
【パラメーター】
基本
筋力C 耐久C 敏捷C 魔力D 幸運E 宝具A
仮面ライダーチェイサー
筋力A 耐久B 敏捷B+ 魔力D 幸運E
魔進チェイサー
筋力B 耐久B 敏捷B 魔力D 幸運E
【属性】
中立・中庸
【クラススキル】
対魔力:D
一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。
魔力避けのアミュレット程度の対魔力。
騎乗:B
騎乗の才能。
大抵の乗り物なら人並み以上に乗りこなせる。
ただし、魔獣・聖獣ランクの獣は乗りこなせない。
ちなみに、普通自動車運転免許を取得しているが、免許は現世に置き忘れている為、普通自動車に乗る場合、免許不携帯を少し気にする。
【保有スキル】
機械生命体:A
人間ではない、機械より生まれた存在。
精神汚染などの類いを同ランクまで無効化する。
しかしこのランクが高ければ高いほど神秘は低下していく。
先頭続行:B
名称通り戦闘を続行する為の能力。
決定的な致命傷を受けない限り生き延び、瀕死の傷を負ってなお戦闘可能。「往生際の悪さ」あるいは「生還能力」と表現される。
彼の場合は、更に「仮面ライダーの生き様」とも表現される。
単独行動:C
マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
ランクCならば、マスターを失ってから一日間現界可能。
【宝物/宝具】
『人間が俺にくれた称号とはなにか(仮面ライダーチェイサー)』
ランク:A 種別:対人用の宝物 レンジ:- 最大捕捉:1(自分)
ライダーがかつて得た、『仮面ライダー』という名の称号、それが「仮面ライダーチェイサー」の名である。
彼にとっては、宝具と呼ぶよりも、「宝物」と呼んだ方が良いだろうか。
『マッハドライバー炎』、『シグナルチェイサー』、『シンゴウアックス』……この宝物を構成する道具の一つ一つも、彼と人間との絆の証であり、彼個人にとっての宝物である。
ちなみに、この宝物を発動する方法は、『マッハドライバー炎』を装着し、シグナルバイク・『シグナルチェイサー』を装着して、「変身!」と叫ぶ事。
すると、彼の身体が「仮面ライダーチェイサー」へと変身し、パラメーターが上昇する。
更に、この宝物を発動すると、専用マシンの『ライドチェイサー』を召喚でき、そこから『シンゴウアックス』を取りだす事が出来る。
『ロイミュードの死神としての使命はなにか(魔進チェイサー)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:1(自分)
ライダーがかつて持っていた、ロイミュードの死神としての称号、それが「魔進チェイサー」の名である。
この宝具を発動するには、『ブレイクガンナー』を手で押して認証を受ける必要がある。そして、この宝具を発動すると、専用マシンの『ライドチェイサー』を召喚できる。
しかし、彼は既にロイミュードの死神としての使命を放棄しており、また、同時にその使命を行う機会も聖杯戦争ではおそらくはない。
パラメーターの上昇もあるが、はっきり言ってそれも仮面ライダーとしての姿の方がマシ。完全下位互換でしかない。
その為、この宝具はライダー自身の手で封印されているが、その手に『ブレイクガンナー』がある限り、咄嗟の発現は可能である。
だから、もしかしたら、どこかの場面で使うかもしれない。
【weapon】
『マッハドライバー炎』
仮面ライダーチェイサーへと変身する為の変身ベルト。
これにシグナルバイク・シグナルチェイサーを装填して、「変身」する。
『シグナルバイク・シグナルチェイサー』
仮面ライダーチェイサーへと変身する為のシグナルバイク。
これをベルトに装填して、「変身」する。
『ブレイクガンナー』
魔進チェイサーへと変身する為の拳銃型ガジェット。
それと同時に、仮面ライダーチェイサーの変身後の武器としても使用される。
『ライドチェイサー』
変身時に現出する事が出来る専用バイク。
マスターとの二人乗りも可能。
『シンゴウアックス』
仮面ライダーチェイサーの変身時に、ライドチェイサーと共に現出する事が出来る斧。
彼が普段使う武器であり、信号機の形をしている。
【人物背景】
ロイミュードのプロトゼロ。
かつては、「死神」と呼ばれるロイミュードの殺し屋であったが、後にロイミュードと敵対し人間を守る仮面ライダーとなった。
ロイミュードという機械生命体であるが、誰よりも人間らしく、誰よりも純粋な性格をしている。
失恋も知り、友情も知り、車の運転の仕方も知った彼だが、まだ人間について知りたい事がたくさんあるらしい。
【サーヴァントとしての願い】
人間としての俺のダチが、人間としての人生を真っ当してくれているのなら、俺はそれでいい。
出来るのなら、機械生命体としてのロイミュードとしての俺の仲間たちにも、死後の安住の地と救済を願いたい。
【基本戦術、方針、運用法】
仮面ライダーチェイサーとして戦わせる事が前提のサーヴァントである為、戦闘時はそれによる直接戦闘が良い。
とはいえ、パワー型で、使用武器はそこまで多くない為、攻撃がパターン化してしまう恐れもある。持久戦は不利になりそうだ。
いざという時は、ライドチェイサーで上手に撤退する事も重要になる。
それに加え、彼は、人間を死なせる事を極端に嫌う。
たとえ、サーヴァントが悪事を侵していても、それを倒してマスターを消滅させてしまうのは避けるだろう。
それゆえ、そもそもサーヴァントとの戦闘自体を極力避けるべきかもしれない。
……まあ、サーヴァントもマスターも悪人であり、無差別に人を殺そうとしている場面があったならば、彼も容赦はしない。
彼が相手にするのはそういった敵のみで、基本はマスターを守りながら、聖杯戦争からの脱出方法を探る方針だ。
【備考】
この聖杯戦争において、これ以前にもマスターがいた。
少なくとも、男性であり、聖杯戦争には消極的であり、チェイスとは相棒になれるほど親しく数日過ごした事だけ明かされている。
その実像は不明であり、現在は、アサシンのサーヴァントに倒され、消滅している。
【マスター】
泉野明@機動警察パトレイバー
【マスターとしての願い】
聖杯戦争からの脱出。
【weapon】
『警察手帳』
【能力・技能】
レイバー、及び普通自動車の運転資格を有し、特にレイバーを細かい動きも含めて見事に操る。乗り物酔いもしない。
基本的な身体能力も高く、小学校ではソフトボール、中学校ではバスケットボール、高校では卓球で大活躍した。
【人物背景】
警視庁警備部特科車両二課第二小隊員。階級は巡査。
レイバーの搭乗資格を持ち、特車二課にて、一号機「アルフォンス」を扱うメカ好き。一応、自動車運転免許も所持している。
「いずみの・あきら」ではなく、「いずみ・のあ」。
それ以外の設定はテレビアニメ、漫画、劇場版、OVAなど各所で少し違っているが、上記以外は今は細かくは決めない。
どの出来事があった事になっていてもなかった事になっていてもあまり気にせず、それが「科学聖杯の泉野明」としておく。
【方針】
ライダーと共に、聖杯戦争からの脱出。
【備考】
少なくとも、これまで聖杯戦争で、アサシンのサーヴァントと共に行動していた。
しかし、アサシンは、現在契約しているライダーによって倒されてしまっている為、サーヴァント不在となった状態からライダーと契約した。
以前のサーヴァントであるアサシンは、聖杯戦争に積極的であり、野明とはソリが合わなかった模様。
投下終了です。
あ、ちなみにチェイスのスキルにある「機械生命体」は、「イリヤスフィール・フォン・アインツベルン&マシン」のSSを参考に付け加えたスキルです。
投下します。
部屋の中で一人の男子学生が少年ジャンプを読んだり、テレビゲームなどをして遊んでいた。
何の変哲もない―それはこの男子学生には語弊があるが―男だが彼は聖杯戦争のマスターの一人である。
彼はこの狂気のデスゲームに絶望して、現実逃避をして遊び呆けているのだろうか?
――彼に限ってそれは絶対に有り得ない事だろう。「混沌よりも這いよるマイナス」などと呼ばれた彼には…
やがて彼しかいなかった部屋に彼のサーヴァントが霊体化を解き現れた。
そのサーヴァントは黒い服を着た黒髪の女であった。それも街中を歩けば誰もが振り返る妙齢の美女である。
――彼女が全ての妖達が恐れる恐怖の化身である事など誰も思わないだろう。「白面金毛」などと呼ばれた恐るべき存在である事を…
『お帰りキャスター。一緒にテレビゲームでもどう?』
キャスターが帰還して早々に、彼は呑気にキャスターとテレビゲームをしようとした。
「我が偵察しているなか、貴様は呑気に遊び呆けていたのか…」
マスターの怠け振りにキャスターは少なからず怒りを覚えていた。
自分に対して恐怖や憎悪を向けてきた妖や人間達は数え切れない程いるが
こんなふざけた事をされたことは無かった。
『そんなに怒らないでよ。僕達は同じマイナスじゃないか』
マスターの発言に、とりあえず怒りを収めてキャスターはマスターに今後の事を聞くことにした。
「それで貴様はどうするつもりだ…」
キャスターに願いが無いと言えば嘘になる。だが全てをやり切った今は
完全燃焼したような物でキャスター自身、聖杯戦争をどうしたいのか決めていなかった。
そのため偵察しつつもマスターやサーヴァントを狙うなどの行動は取らなかった。
『僕は昨日夢でキャスターの過去を見たよ。彼らは正にめだかちゃんのような主人公だね』
「…」
『僕は今まで一度も勝った事が無かった。でも最後はめだかちゃんに勝つ事ができたんだ
まだ一回だけだけど。』
彼、球磨川禊は一呼吸置くとキャスターに向けて言った。
「マイナスでも、闇に生まれついても、キレイじゃなくても主役を張れるんだ!!
僕らは聖杯戦争には乗らない、聖杯を奪ってキャスターの願いを叶える!主催者達は螺子伏せる!主催者達の望む事なんかしてやらない!!
…これが僕達の方針だよ」
「…分かった、では我はそれに従おう」
マスターの本音の言葉にキャスターは従う事に決めた。
――キャスターは、キャスターが住んだ成れの果てのようにこのマスターと2体で1体の最強の妖のような存在になるのだろうか?
ここに最凶の2体の聖杯戦争が始まった。
『それでねキャスター。全裸でいた事もあったんだから裸エプロンや手ブラジーンズしてくれない?』
「…」
――キャスターが裸エプロンや手ブラジーンズしたのかは神のみぞ知る。
【クラス】
キャスター
【真名】
白面の者@うしおととら
【ステータス】
筋力:C(EX) 耐久:C(EX) 敏捷:B(EX) 魔力:EX(EX+) 幸運:E- 宝具:EX
【属性】
混沌・悪
【クラススキル】
陣地作成:A+
魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。
”神殿”を上回る”大神殿”を形成する事が可能。
道具作成:A+
魔力を帯びた器具を作成できる。
十分な時間と素材、魔力さえあれば、宝具を作り上げることすら可能。
ただし、自らを滅ぼす程の物も作れてしまうため注意が必要である。
【保有スキル】
白面の者:A
キャスターは地球が生まれた際、わだかまった陰の気より生まれた邪悪の化身である。
地球が生まれてから現れたどの英霊よりも圧倒的な霊格の高さを誇る。
キャスターの姿を見ただけで真名、どのような悪行をしてきたかが相手に伝わってしまう。
一見バッドスキルだが、キャスターは自分に対する恐怖や憎悪などを自らの魔力に変換する事ができる。
そのためキャスターを知る者が増えれば増える程キャスターは強くなっていく。
そしてキャスターに恐怖や憎悪を持った攻撃は通用しない。
また、このスキルを持つ者は魔を打ち払うなどの逸話を持つ槍の英霊や太陽の力を持つ者の攻撃を
倍にして受けてしまう。
変身:B
キャスターは姿形を変える事ができる。
今回の聖杯戦争に置いて、キャスターは余りにも強力なため本来は分身である斗和子の姿が
基本となっている。他には少女の姿になる事ができる。
策略家:A+
このスキルを持つ者は暗殺、謀略、離間工作などの計略で相手に壊滅的なダメージを与えられる。
本来このスキルが高ければ高いほど霊格は下がってしまうが、キャスターは強大な力を持ちながら
真正面から倒せる相手にも策を弄するなど策謀を好んでいたため霊格は例外的に下がらない。
対魔力:B(A+)
魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。
大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。
後述の宝具が発動されると括弧内の値に修正される。
【宝具】
『九つの尾』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
以下のキャスターの分身達を召喚する。
分身はEランクのサーヴァント扱いで、倒されてもキャスターが生きている限り復活する。
ただし弱体化するため、完全復活するためには時間を要する。
なお斗和子も分身だが聖杯の調整でキャスターの姿にされているため除外されている。
一本目…シュムナ
巨大な霧状の妖怪。
接触した物を溶解させる。
二本目…くらぎ
巨大な甲虫のような外見をした妖怪。
四本目…あやかし
巨大な海蛇の姿の妖怪。
油で炎や雷を弾く。
五本目…婢妖
巨大な目玉と耳がついた妖怪で夥しい程の数を誇る。
六本目…黒炎
黒炎という炎や雷を放つ人型妖怪を無数に召喚する。
七本目…嵐と雷
嵐と雷を纏った尾。
キャスターを打ち滅ぼした者達の力を模した物でもある。
八本目…獣の槍に酷似した尾
夥しい数の刃を誇り、その形状は獣の槍に酷似している。
キャスターを打ち滅ぼした者達の力を模した物でもある。
『白面の者』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
本来の姿である九つの尾を持つ巨大な異形の白狐になる。
この宝具を発動するとパラメータとスキルが括弧内の値に修正される。
強力な宝具だが発動には最低でも令呪6画、つまりマスターに加えて他のマスターの協力が必須である。
さらに令呪が追加される度にこの宝具は強化されていく。
マスターが自滅せずにこの宝具を使用するには
例として3人の3画の令呪を持つマスター達が2画ずつ使用する事である。
本来キャスターはアンリマユと同等、もしくはそれ以上の存在であり
聖杯の力では全てを再現できないため、かなり弱体化をされており
この宝具が発動すると聖杯が許容範囲を超え聖杯戦争の続行に危機をもたらす為
この宝具を発動したマスターとキャスター、協力したマスターとそのサーヴァントに
問答無用で討伐令が出される事になっている。
【weapon】
口から強力な火炎を吐いたり、尾で敵を貫いたりなどができる
【人物背景】
原初の混沌から陰と陽の気が分離して世界が形成されたとき、わだかまった陰の気より生まれた邪悪の化身。
陽に憧れ、そして憎みこの世を地獄絵図に変えたが2体で1体の妖に一騎打ちの果てに敗れ去った。
残った九本目の尾は自らの願望を映して消滅した。
原作終了後から参戦。
【サーヴァントとしての願い】
我が名を名付けてもらう
【マスター】
球磨川禊@めだかボックス
【マスターとしての願い】
『聖杯戦争に乗らない、聖杯を奪ってキャスターの願いを叶える、主催者達は螺子伏せる
混沌・悪だから乗ると思った?マイナスだから主役にやられる悪役をやると思った?甘ぇよ』
【weapon】
巨大なネジ
【能力・技能】
とてつもなく弱いが、それでも立ち上がってきた精神力、そして自らが最弱なため弱さを知り尽くし
相手の弱点を的確に突いて相手を螺子伏せる事ができる。
また以下の能力を持つ。
強い思いが無ければ致命傷などを無かった事にできる『劣化大嘘憑き(マイナスオールフィクション)』
能力を自分と同じレベルに落とす『却本作り(ブックメーカー)』
「なかったこと」にした現実が3分で元通りになる『安心大嘘憑き(エイプリルフィクション)』
「なかったことにした」ことをさらに「なかったこと」にできる『虚数大嘘憑き(ノンフィクション)』
【人物背景】
-十三組のリーダーで、数々の中学、高校を廃校に追い込んできた。
めだかと一騎打ちの末、己の本心を吐露して完敗した。
勝利には貪欲だが一度も勝てた事が無かった。
しかし最後には遂に勝つ事ができた。
原作終了後から参戦。
【方針】
聖杯を奪い主催者達を打倒する。
困難であるがマスターとって不利な勝負に勝ってこそマイナスなので気にしてはいない。
キャスターとマスターは大小の差こそあれど本質が似ているので相性は最良。
しかしキャスターは最凶の英霊と言える存在でマスターは危険思想なため
ルーラーや主催達に討伐対象にされやすいという危険がある。
いかにキャスターの存在を受け入れた上で協力する事ができる
マスターとサーヴァントを見つける事ができるのかが鍵となる。
投下終了します。
皆様、投下乙です
自分も投下させていただきます
深夜の山奥で、二人の男が拳を交えていた。
一人は白髪を長く伸ばした、体格のいい壮年の男。
もう一人はそれをさらに上回る、雲を突くような巨漢だ。
「ふんっ!」
巨漢が突き出した拳が、白髪の男に迫る。
だがその拳は、両腕でしっかりとガードされた。
「よーし、ひとまずこのくらいにしておくか。腕試しで大怪我でもしたら、洒落にならんからのう」
白髪の男はそういって、戦いを打ち切る。
彼はこの聖杯戦争に、ライダーとして召喚された英霊。
その真名を、自来也という。
「む、そうか……」
一方の巨漢は、自来也のマスター。
名を大豪院邪鬼。強者ひしめく男塾に、10年以上にわたって君臨した「男塾の帝王」である。
「まあ、気を込めた攻撃ならばサーヴァントにも通用すると確認できたのは収穫だったな」
「いやあ、それなんだがのう」
満足げに呟く邪鬼であったが、自来也はそれに言葉を挟む。
「サーヴァントにまともなダメージを与えるには、かなりの量の気を練り込む必要がある。
その手間を考えれば、ぶっちゃけわしが普通に殴った方が早いのう」
おどけた声色で宣告する自来也に対し、邪鬼はわずかに眉をひそめる。
「そういうわけにもいかぬだろう。それでは全ての戦いを、貴様に任せることになる。
この聖杯戦争とやらを、自分一人で戦い抜けると思うほど俺はうぬぼれてはおらん。
だがまったく戦わずに見ているだけというのでは、男塾に残してきた同胞や後輩たちに顔向けできぬ」
邪鬼に、聖杯にかける願いはない。
男塾の未来は、優秀な後輩である剣桃太郎に託してきた。
何より偉大なる教育者にして天下無双の武人である江田島塾長が健在であるかぎり、男塾は安泰だろう。
心残りを持たずに、邪鬼は戦いの中で死んだ。
だがその魂はあの世に行くことなく、この世界に流れ着いた。
邪鬼はそれを、戦いの中にしか生きられぬ自分の性が聖杯戦争に引き寄せられたのだろうと考えた。
ならば、三号生筆頭として恥ずかしくない戦いをしなければならない、というのが彼の想いだ。
「そうは言ってものう、邪鬼よ。世の中には適材適所というものがある。
聖杯戦争において、サーヴァントと戦うべきはサーヴァント、つまりわしよ」
「だが……」
「待て待て、話は最後まで聞くものだ。別に、お前に戦うなとは言っておらん。
マスターの中にも、お前のように高い戦闘力を持った者がいるだろう。
お前はそいつらと戦えばよい」
「一理ある。だがサーヴァントと違い、マスターは必ずしも強いとは限らん。
俺と戦える相手がどれだけいるか……」
「そこまでは責任持てんわい」
なおも食い下がる邪鬼に、自来也は渋い表情を浮かべて応える。
「……まあいい。少しはお前の言うことも聞いてやろう。
だが忘れるな。俺は、俺の誇りを汚すような戦い方はせん」
そう口にすると、邪鬼は脱ぎ捨てていた上半身の衣服を肩にかけ、歩き出した。
「おい、どこに行く!」
「帰るだけだ。いつまでもこんなところにいては、不審に思われるかもしれんからな。
戦うに値する相手ならまだしも、有象無象に目をつけられては面倒なだけだ」
(どのみちお前の体格と顔では、どこにいたって目立つだろうに……)
邪鬼の後ろ姿を見ながら、自来也はそんなことを考える。
(とはいえ、わしも目立つという点では人のことを言えんのう。
ライダーというクラス自体との相性は悪くないんだが……)
自来也が気にしていたのは、自分のライダーとしての宝具であった。
彼の宝具は、『口寄せ・自来也忍法帖』。
生前に契約を交わしたガマたちを召喚し、使役できるというものだ。
だがライダーであるがゆえに、召喚できるのは自来也が上に乗れるガマに限られる。
そのため、該当するガマはどれも数メートルから数十メートルの巨体。
最強格のガマブン太ともなれば、比喩ではなく本当に山のような大きさだ。
認識をごまかす結界など張れるはずもない自来也にとって、宝具の使用は全ての参加者に向かって自分の居場所を宣言するようなものなのだ。
ゆえに、自来也は基本的に宝具の力なしで戦わねばならない。
幸い自来也の戦闘能力は宝具なしでも充分に高いが、それでも万全の状態というわけではない。
(キャスターあたりで呼ばれていれば、頭たちを口寄せして仙人モードになれるんだがのう。
しかしそれでは、今度は身体能力が落ちてしまうし……。
アサシンというのもどうもなあ……。なかなかちょうどいいクラスというのはないもんだのう)
ついつい考え込んでしまう自来也。それを不審に思い、邪鬼が声をかける。
「どうした。行くぞ」
「わかっておるわい。つうかお前、もうちょっとわしを敬え!
単純に死んだ時の年齢で考えても、わしの方がかなり年上だぞ!」
「俺が敬意を払うとしたら、それは塾長くらいなものだ」
「ぐぬう……。本当にかわいくないのう、貴様は!」
賑やかな会話を続けながら、友人とも師弟ともつかぬコンビは山を下りていくのであった。
【クラス】ライダー
【真名】自来也
【出典】NARUTO
【属性】混沌・善
【パラメーター】筋力:B 耐久:B 敏捷:B 魔力:A 幸運:C 宝具:B
【クラススキル】
対魔力:B
魔術に対する抵抗力。
魔術詠唱が三節以下のものを無効化する。大魔術・儀礼呪法などを以ってしても、傷つけるのは難しい。
騎乗:A
乗り物を乗りこなす能力。幻獣・神獣ランクの生物は乗りこなせない。
【保有スキル】
忍術:A+
チャクラと呼ばれるエネルギーを使い、様々な術を使用できる。
伝説とまで詠われた忍者であるライダーは、使える術の属性も幅広い。
黄金律:C
人生においてどれほどお金が付いて回るかという宿命を指す。
作家としても成功したライダーは、忍者としてはかなり裕福な部類に入る。
戦闘続行:A
絶対に諦めないド根性。
決定的な致命傷を受けない限り生き延び、瀕死の傷を負ってなお戦闘可能。
【宝具】
『口寄せ・自来也忍法帖』
ランク:B 種別:対人〜対城宝具 レンジ:1-500 最大捕捉:1000人
生前に結んだガマたちとの契約が記された巻物。
ガマブン太をはじめとするガマたちを呼び出し、使役することができる。
呼び出したガマも、同ランクの宝具として扱われる。
ただしライダーの宝具であるがゆえに、呼び出せるガマは「上に乗れるサイズのもの」に限定される。
【weapon】
忍具一式
【人物背景】
三代目火影・猿飛ヒルゼンの弟子にして、四代目火影・波風ミナト、および七代目火影・うずまきナルトの師匠。
かつての忍界大戦での活躍により、同門の綱手、大蛇丸と共に「伝説の三忍」と呼ばれ称えられている。
大戦後は里を離れ各地を放浪しつつ、小説家として活動していた。
覗きが趣味のスケベおやじだが、色仕掛けには強い。
【サーヴァントとしての願い】
実はあまり深く考えずに召喚に応じてしまったため、特にない。
聖杯にうさんくささは感じているが、完全に否定するにはいたっていない。
【マスター】大豪院邪鬼
【出典】魁!!男塾
【マスターとしての願い】
三号生筆頭にふさわしい戦いをする。
【weapon】
○折り鶴
「風舞央乱鶴」において使用する、刃の仕込まれた折り鶴。
大半は目くらましであり、くちばしに刃を仕込んだ本命の鶴によって敵の筋肉を破壊するのが目的。
○繰条錘
金属製の鋭い円錐に、長い針金をつけた武器。
邪鬼の気によって自在に動き、敵を突き刺したり拘束したりできる。
【能力・技能】
○大豪院流
邪鬼の家に伝わる戦闘術。
奥義は真空の渦を巻き起こし、相手の体を切り刻む「真空殲風衝」。
○気功闘法
全身の気を練り上げることにより、肉体や武器を強化する戦闘術。
【人物背景】
男塾総代兼三号生筆頭。
圧倒的な強さで十数年にわたってその座に居座り続け、「男塾の帝王」とまで言われていた。
敵対する相手には容赦が無いが、部下や好敵手の死を悼む人情も持ち合わせている。
天挑五輪大武会の決勝において、スパルタカスと相打ちになり死亡。
最後は真空殲風衝を自らに放ち、骨も残さず消滅した。
……はずなのだが、その後幾度か存命している姿が確認されており、その生死については謎に包まれている。
今回はあくまで、スパルタカス戦で死亡した世界線から参戦している。
【方針】
強者に戦いを挑む。戦意のない相手は襲わない。
以上で投下終了です
皆様投下お疲れ様です
自分も投下させていただきます
魔術と科学はよく似ている。
その言葉を語弊に感じる者もいるだろう。
さりとて魔術とは無軌道に、万物を実現する技術ではない。
科学に法則が存在するように、魔術にも術理が存在するのだ。
たとえば魔術を扱う上で、たびたび登場する魔法陣。
魔術を行使するためのそれは、数学や科学の方程式に似ている。
儀式に必要とされる生け贄は、化学変化の原材料のようなものだ。
神ならぬ人が神秘を纏い、身の丈を超えた力を振るう。
そのためには適切な技術が必要となり、それ故に行使される力は限定される。
なればこそ魔術というものは、科学の一つとして解釈することもできる。
ああ、されど。
それはあくまで一般論だ。
何事にも例外は存在する。理の外側に立つものが存在する。
魔術の枠を超えてしまえば、もはや幻想と呼ぶほかないだろう。
されどそれは確かにいるのだ。
対価や法則の限界を超え、その先に到達した者は、確実に存在しているのだ。
真に奇跡を振るいし者に、術理の枠は意味をなさない。
本物の奇跡の体現者は、ルールなどたやすく超越する。
たとえそれが、造物主によって構築された、絶望の法則であったとしても。
◆ ◇ ◆
死んだ友の魂には、その後の安寧すらも許されなかった。
美国織莉子はそれを知った時、深い悲しみに囚われ涙した。
同時にその友を死なせてしまった、自分自身の罪深さを、改めて思い知ることになった。
友を殺したのは織莉子自身だ。
平穏な人生を送っていた彼女を、戦いへと駆り立てる理由を作ってしまった。
身勝手にも自らの使命へと巻き込み、死地へと追い込んで死なせてしまった。
もっと長く生きられたであろう命は、齢僅か15にして、永劫に喪われてしまったのだ。
そしてその少女は、今ここにいる。
理性も言葉も奪われて、戦うためだけに存在する、獣へと貶められている。
それは紛れもなく織莉子の咎だ。彼女が犯してしまった罪だ。
安らかな眠りすらも許さず、少女を修羅へと変えてしまったのは、美国織莉子の過ちだ。
だが、同時に理解してもいた。
美国織莉子のパートナーは、彼女以外にはあり得ない。
傍らに立つサーヴァントとして、他に召喚される英霊など、存在するはずもないのだと。
◆ ◇ ◆
「何だよ、これは……!」
話が違う。
男は己の胸の内で、何度となくその言葉を繰り返した。
複雑に入り組んだ路地裏で、男は必死に逃げ続けていた。
左手の甲にうっすらと残るのは、消えかけた赤い令呪の残滓だ。
それは彼が、聖杯戦争の参加者であり、同時に脱落者であることを意味していた。
(あれが……あんなものが!)
何かの間違いではないのか。
あんなものが存在し得るのか。
己が対峙していた敵は、バーサーカーのサーヴァントだったはずだ。
狂化のスキルを付与することで、ステータスを底上げし、1ランク上のスペックを獲得したサーヴァント。
されど理性を大きく損ない、単調な行動しか取れないことが、デメリットとしてつきまとうサーヴァント。
それが狂戦士のクラスであったはずだ。それが常識であるはずなのだ。
なのに何だ、あのサーヴァントは。
あんなものが認められるか。
あれがバーサーカーなどであるものか。
「ひぃっ!」
回りこむようにして、影が躍る。
綿毛の塊のような使い魔たちが、群れをなして襲いかかってくる。
これだ。これもまた違和感の一つだ。
こいつらは敵マスターの使い魔ではない。サーヴァントが召喚したものだ。
にもかかわらず、奴らはこちらの位置を正確に把握し、行動を先読みして追い立ててきている。
そんな複雑な行動予測など、バーサーカーには不可能なはずだ。
よしんばそれがマスターの指示でも、それほどに細かな使い魔の操作を、バーサーカーに実行できるものなのか。
「この……このぉっ!」
手近なゴミバケツを引っ掴み、強引に振り回して使い魔を払った。
こんな抵抗など無意味だ。それは理性では理解している。
何しろこんな使い魔ごときは、敵サーヴァントの本懐ではない。
真に恐れるべきものは、こんな雑魚などでは断じてない。
「――見苦しい」
くすくすと、嗤う声がした。
はっとして、遥か頭上を見上げた。
月を背に、立つ影がある。
白いドレスを夜風に揺らし、微笑を浮かべる人影がある。
中学生かそこらという顔立ちの割には、頭一つほど背の高い印象を受ける少女。
プラチナブロンドの長髪を揺らし、エメラルドの光を瞳にたたえた、輝くような美貌の少女。
それが敵のマスターだった。
純白の装束に身を包み、高貴な光を放つこの少女こそが、男の命を狙う敵対者だった。
「サーヴァントを失ったその時点で、勝敗など決しているというのに」
「おまっ……お前は一体、何なんだ!」
裏返り気味な声を上げた。
正確にはマスター自身ではなく、彼女が従えるサーヴァントにだ。
こんな奴はありえない。
戦術をもって敵を追い詰め、理性にて勝利を得るバーサーカーなど、存在し得るはずもない。
そんな例外に出会ったことなど、断じて認められるものか。
そんな冗談のような存在に、負けるなどということが認められるか。
「何てことはないわ。私はただの魔法少女。聖杯戦争という舞台においては、取るに足らない一人の魔術師」
たんっ、と靴音が響いた。
振り返るその先に、金色が光った。
ぞくりと産毛を逆立たせながら、男はその姿をしかと見る。
己を追撃し命を狙う、狂戦士の姿を目の当たりにする。
「けれどその子は私にとって、何より特別なサーヴァント」
それは黒衣の少女だった。
燕尾服を模した衣装を、しなやかな尾のように棚引かせ、獲物を狙う姿があった。
両手に携えたのは漆黒の爪。眼帯を当てた顔で光るのは、肉食獣を思わせる金の単眼。
前傾気味のその姿勢は、さながら黒豹のようだった。
追い詰められた男の前には、殺意を放つ少女の姿は、地獄門の魔犬獣(ケルベロス)にも見えた。
「私のただ一人の友達よ」
影が揺らぐ。
刃が浮かぶ。
漆黒の少女のその背後で、不確かな影が形を作る。
バーサーカーから生じた魔力が、黒い器を伴い具現化する。
「ォオオオオ――ッ!」
「うわぁあああああっ!」
獰猛な魔獣の雄叫びが、街の片隅に木霊した時。
男の断末魔の悲鳴もまた、闇夜に上がってそして消えた。
◆ ◇ ◆
跪く姿を、眼下に収める。
自らの足元と跳び上がり、恭しく頭を垂れるバーサーカーを、美国織莉子は一人見下ろす。
きっと自分は幸せ者だ。
彼女はこんな姿になっても、織莉子を助けるために駆けつけてくれた。
輪廻の輪から外れてもなお、美国織莉子を助けんと、こうして再び立ち上がってくれた。
見捨てることもできただろうに。
無視することもできただろうに。
それでもこんな薄情者の自分を、愛し支えようとしてくれたのだ。
「ご苦労様」
自らも身をかがめ、手を伸ばした。
つやつやとした黒髪に、そっと手を触れ優しく撫でた。
視線を上げた黒髪の少女は、にっこりと微笑みを浮かべている。
バーサーカーのサーヴァントは、理性を失うとばかり聞いていたが、それにも例外はあるようだ。
もちろん生前に比べると、知性は大幅に低下した上に、言葉を話すこともできない。
それでも彼女は、自分への愛情を、大事に抱えたまま忘れずにいた。
その上どれほどの命令であろうと、それが織莉子の指示であるなら、忠実に実行してのけた。
きっと彼女の愛の深さが、常理を超えもたらしたものなのだろう。
絶望の呪いに屈することなく、己の信念を保ち続け、それこそを魔女の性質として遺した。
そんな規格外の奇跡を成し遂げた少女だ。人を超え、魔法少女の法則を覆し、魔女すらも従えた少女だ。
それほどの強さを持った彼女だからこそ、このような例外的な結果を、自らのものとして掴んだのだろう。
(ならば、私は応えねばならない)
これほどの愛情を注いでくれた少女だ。
最強の守護者と断言できる、頼もしくも愛おしい少女だ。
それほどの少女に愛されているなら、その愛に報いなければならない。
それほどの少女を死なせたのだから、その罪は贖わなければならない。
既に悲願は達成した。最悪の魔女を討伐し、人類文明の滅亡を回避できた。
そうして使命に殉じたはずの命が、ここでこうして蘇っている。
一度死んだはずの命なら、もはや迷うことはない。
使命を終えた美国織莉子は、世界のためなどと言い訳をせず、己自身のために戦うと誓った。
聖杯を手に入れ、この愛すべき友を、現世に復活させることを心に決めた。
「帰りましょう――キリカ」
立ち上がる友へと、声をかける。
満月を背負う漆黒の少女の、その名前を織莉子が呼ぶ。
その名はキリカ。呉キリカ。
絶望の毒をその身に受けて、されど我が物とした精神の怪物。
呪いよりなお強き純粋な意志の下、魔女の法則を従えてのけた、強く気高き魔王の姿。
最強の魔法少女とは、元来は明るい笑顔の似合う、たった一人の少女だった。
その心を取り戻す――それこそが恩義への報いであり、そして贖罪でもあった。
◆ ◇ ◆
毒喰らう毒。
魔を穿つ牙。
畏れよ、汝我が姿と名を。
この美しくもおぞましき、赤と漆黒を纏いし姿を。
我は愛を謳いし者。
我は無限に喰らいし者。
恐怖も悲嘆も憎悪も死も、全てを無為と嘲笑い、斬り捨て呑み干し血肉とせし者。
その名は理を超えた理。
絶望を踏破しねじ伏せた、最愛最強の魔法少女。
神の法則を覆し、その身に従えた魔を統べる魔王。
我は至高の名と共に在り。
美国織莉子と共に在り。
魔人キリカはここに在り。
【クラス】バーサーカー
【真名】呉キリカ
【出典】魔法少女おりこ☆マギカ
【性別】女性
【属性】混沌・狂
【パラメーター】
筋力:B 耐久:B 敏捷:A+ 魔力:A 幸運:C 宝具:B
【クラススキル】
狂化:B
全パラメーターを1ランクアップさせるが、理性の大半を奪われる。
【保有スキル】
愛:EX
無限に有限なるもの。絶望の鎖を噛み千切り、世界の法則すらも従える牙。
力でも技でも理想でもない、キリカの持つ最大最強のスキル。
かつて魔女となった彼女は、呪いよりも明確な意志の下に、絶望をねじ伏せ魔女の性質を固定化させた。
このスキルによりキリカは、いかなる状況下においても、マスターの命令を忠実に実行する。
戦闘続行:A
魔法少女の肉体は、ソウルジェムが破壊されない限り死ぬことがない。
瀕死の傷でも戦闘を可能とし、肉体が完全消滅しない限り生き延びる。
対魔力:C
第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。
大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない。
速度低下:C
魔術系統の一種。発動した対象の敏捷性、および反応速度を遅らせる。
生命体に対して発動した場合、相手は自分の速度が落ちていることを認識できない。
【宝具】
『福音告げし奇跡の黒曜(ソウルジェム)』
ランク:C 種別:対人宝具(自身) レンジ:- 最大補足:-
魂を物質化した第三魔法の顕現。
キリカを始めとする魔法少女の本体。肉体から離れれば操作はできなくなるし、砕ければ死ぬ。
キリカの固有武器は鉤爪であり、平時は3本×2=6本を展開して用いている。
固有魔法は速度低下。 制御が難しく、6本以上の鉤爪を展開した際には、数が増えるごとに精度が低下する。
『円環の理(MARGOT)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1〜30 最大補足:20人
かつて安らかなる絶望の果てに、キリカの魂が生じた魔女。
その性質が何だったのか、正確な情報は残されていない。
しかしその魔女は、生前のキリカの意志を遺したかのように、美国織莉子を守り戦い続けた。
円環の理に導かれた現在は、キリカの魂と同化し、その力の一部として操ることができる。
発動時には使い魔の生成も可能。戦力としては心もとないが、戦闘能力を持たないマスターにとっては脅威となる。
【weapon】
なし
【人物背景】
かつて希望を運び、いつか呪いを振り撒いた少女。
絶望よりも強い意志の下、死してなお大切な者を守り抜いた、美国織莉子の最愛最強の守護者。
閉ざされた心をねじ曲げて、愛する者を欺いてなお、その隣に寄り添いたいと願った、魔法少女の末路である。
固有魔法により相手の速度を落とし、相対的にスピードで優位に立つ、変則的な高速戦闘を得意とする。
鉤爪を敵に向かって投擲する「ステッピングファング」、
無数の爪を縦に連ね巨大な刃を成す「ヴァンパイアファング」を必殺技に持つ。
魔女となったその魂は、輪廻の果てに生誕した、神の下へと召されたはずだった。
しかし聖杯の呼びかけと、想い人の呼び声に応じ、少女は再び現世へと降り立つ。
全ては彼女の背負った重荷を、もう一度分かち合うために。
【サーヴァントとしての願い】
織莉子を守る
【基本戦術、方針、運用法】
基本的にバーサーカーには、複雑な思考を行う知性が存在しない。
しかしキリカには、織莉子から下された命令のみ、忠実かつ確実に実行できるという、例外的な特徴がある。
この特性と未来予知の魔法を最大限に活かし、理性にて暴力を制御し立ち回っていこう。
使い勝手のいい速度低下も、十分に活用していきたい。
【マスター】美国織莉子
【出典】魔法少女おりこ☆マギカ
【性別】女性
【マスターとしての願い】
キリカを受肉させ、生き返らせる
【weapon】
ソウルジェム
魂を物質化した第三魔法の顕現。
美国織莉子を始めとする魔法少女の本体。肉体から離れれば操作はできなくなるし、砕ければ死ぬ。
濁りがたまると魔法(魔術)が使えなくなり、濁りきると魔女になる。聖杯戦争内では魔女化するかどうかは不明。
【能力・技能】
魔法少女
ソウルジェムに込められた魔力を使い、戦う力。
武器は宝玉。浮遊する無数の宝玉を展開し、自在に操り敵にぶつける。
固有魔法は未来予知。一瞬後の敵の行動から、数週間後に訪れる破滅まで、様々な未来を見通すことができる。
ただし制御が不安定で、予知するつもりのなかった情報も、勝手に予知されてしまうことが多々ある。
当然未来予知も魔力を消費するため、燃費が良いとは言いがたい。
必殺技は魔力の刃を宝玉に付与し、光と共に切り裂く「オラクルレイ」。
【人物背景】
見滝原市にて活動している魔法少女。
市議会議員を父親に持っていたお嬢様である。
母は幼い頃に他界し、父も汚職の疑惑をかけられてことで自殺したため、現在は独りで暮らしている。
基本的には温厚でおっとりとした性格。
しかしその一方で、目的のためには手段を選ばない、冷酷な判断力を有している。
魔法少女としての願いは「自分が生きる意味を知りたい」。
未来を見通し、救済の魔女による地球滅亡を知った織莉子は、
それを食い止めることを使命=生きる理由とすることを誓った。
キュゥべえの目を逸すため、相棒のキリカに魔法少女殺しを命じながら、
自らは救済の魔女となる魔法少女を探していたのだが、キリカが巴マミに倒されたことによって計画は破綻。
残された手札と時間で、ターゲットである鹿目まどかを殺すことを強いられた織莉子は、
その守護者である暁美ほむら、そしてひいては周囲の人間ごとまどかを抹殺するため、見滝原中学校を襲撃する。
結果的に集結した魔法少女達によって、織莉子はキリカ諸共倒されてしまったのだが、
命を落とすその瞬間、最後の一撃を放ったことにより、まどかの殺害に成功し人類を救った。
本来ならソウルジェムが砕けたことにより、命を落としたはずなのだが、何故か生還し、聖杯戦争の舞台に招かれている。
【方針】
優勝狙い。いかなる手段を使ってでも勝利し、キリカを現世に復活させる。
投下は以上です
両者のステータスは、「聖杯戦争異聞録 帝都幻想奇譚」様の候補作を参考にさせていただきました
投下させていただきます
ここは世界一優しい おかえりが待ってる場所
さりげない日常 ふわりと 抱きしめてくれるよ
ここは世界一暖かい 春が訪れる場所
ほら 花のこえが聞こえてる――――
◆ ◆
一条蛍は震えていた。
背負った赤いランドセルはその大きな体に不似合いで、見る者が見れば倒錯趣味だろうかと顔を顰めるかもしれない。
だが、その外見に反して彼女の心はまだまだ未熟の一言に尽きる。
どんなに背が高くたって、顔立ちが美しかったって、蛍はこれでも小学五年生の幼女でしかないのだ。
土砂降りの雨が降り注ぐ雑踏の片隅で、蛍は自分の傘を取り落とし、膝を抱えて小動物のように振動している。
がちがちと耳障りな音が聞こえる。
それは、彼女の歯が上下し、歯の根が合わずぶつかり合う音に違いなかった。
見慣れていたはずの通学路は、いつしか初めて訪れた場所に変わっていた。
胸元に取り付けられた小学校の名札には違和感しかない。
こんな名前の学校は知らない。
自分の通う学校はあの分校しかないし、その前の学校とも違っている。
何もかも。
そう、何もかもが自分の記憶と異なっているのだ。
なのに周りの人々は誰も、それに気が付いている様子がない。
まるで、おかしいのは蛍の方であるかのように。
おかしな世界はつつがなく回っていた。
そのことが不気味で空寒くて、彼女は人前も憚らずに膝を屈した。
ここはどこで、私は誰なのだろう。
何もわからない。
何が正しくて、何が間違っているのか。
わからないけれど、頭の中にうごめいている言葉がいくつもあった。
聖杯戦争。
サーヴァント。
願いを叶える戦い。
魔術。
根源。
令呪。
契約。
どれ一つ、そうどれ一つとして、蛍に意味を正しく理解できる言葉はない。
その筈だ。
オカルト趣味に傾倒している覚えもない一条蛍にとって、魔術なんて言葉は漫画の世界だけの概念である。
そうでなければおかしいのだ。
なのに、自分は確かに知識としてそれを知っている。
まるで―――誰かに――――何かに――――刷り込まれたかのように、ぞんざいにぽんと投げ置かれている。
この町の暮らしに、蛍の暮らしに欠かせないものとなっていた少女たちの姿はない。
マイペースで不思議なあの子も、皆のムードメーカーであるあの子も、あこがれの先輩も。
少なくとも、一条蛍がこの町で過ごした時間の中で彼女たちと出会った覚えはなかった。
友達なら、ここは喜ぶべき場面なのだろう。
誰も私のような思いをせずに済むのだから、胸を撫で下ろすのが褒められた姿なのだろう。
「ひぐっ……えぐっ……」
しかしながら、一条蛍はあくまでただの小学生だ。
魔術の世界など、それこそ手に余る知識であって。
聖杯をめぐる戦いなどと言われてもピンと来ない、平和な世界の住人なのだ。
そんな彼女にそれを要求するなど、あまりに酷という話。
「先輩ぃ……みんなぁ……どこぉ……!」
泣きじゃくる声は雨風にかき消されて、誰の耳にも届かない。
あの村だったなら、きっと誰かが手を差し伸べてくれた。
それは知り合いかもしれないし、知らない人かもしれない。
優しさと思いやりに満ちた、のどかでやさしいあの村ならば。
でも、ここにはそんな優しさもぬくもりも不在だった。
なにも、ない。
そう、なにも。
蛍を助けてくれるものは、なにもない。
この町の住人たちに、そんな機能は与えられていないから。
ひとりきりでいつまでも声をあげて泣きじゃくる蛍の前に、いつの間にかひとりの女の子が立っていた。
気付いた蛍は顔を上げる。
……きっと、背丈なら蛍より大分小さいだろう。
もっとも、それは蛍が大きすぎるだけなので――多分、年上のはずだ。
その人は優しい顔をしていた。
少なくともそれは、この町では見たことのない表情だった。
あの田舎を思わせる、穏やかで温かいぬくもりに満ちた目が、そこにはあった。
「泣かないで。一人じゃ、ないよ」
よく見るとその人の服装は、少しだけおかしかった。
周囲から浮いている。コスプレイヤー、というのだろうか。とにかくそういった類の、どこか非現実的な衣装だ。
けれども、面と向かってそれをからかったり指摘したり出来る者はきっといないに違いない。
それほどまでに、その格好は彼女によく似合っていた。
可愛らしいが、しかし決してそれだけじゃない――気高い強さを感じさせるところが、特に。
「ひとりじゃ、ない?」
「うん。確かに、ここはきっとあなたの居るべき場所じゃないと思うけど。
でも――私がいるから。必ず、私があなたの大好きなところへ送ってあげるから。だから、ひとりじゃないよ」
「助けて、くれるんですか?」
「もちろん」
優しく蛍の頭に手を載せ、ゆっくりと左右に動かす。
彼女は傘を持っていて、それで蛍が濡れないようにもしてくれていた。
自分が濡れることも厭わずに、ただ目の前の泣いている子どものことだけを考えていた。
蛍は不思議と、自分の心にわだかまっていたたくさんの不安がほどけていくのを感じる。
理由はわからない。
わからないが、どういうわけかこの人を見ていると――体の芯から勇気が沸いてくるのだ。
一条蛍は聖杯戦争などという儀式に順応できる精神性は持っていない。
でも、目の前の彼女が自分にとっての何であるのかは理解できた。
――サーヴァント。この偽物だらけの世界の中で、ただ一人だけの……私の味方。
「ありがとう、ございます……えっと……」
「《ブレイバー》。私も呼ばれ慣れてない名前だけど、私のことはそう呼んでほしいな」
「わ……わかりました、ブレイバーさん! ――あ。私は一条蛍といいます。改めて、よろしくお願いします……!」
ブレイバー。
それは本来のクラス定義にはありえない、勇気ある者のみが適合するイレギュラー・クラスだ。
ブレイバーのサーヴァントは、弱者に、諦めた者に、立ち上がる勇気を与える。
歴史の中にいつだとて存在し、時に華々しく語り継がれ、時に誰にも知られず密やかに生まれた彼ら・彼女ら。
人類史の発展に不可欠なその存在を、人々は賞賛を込めてこう呼んだ。
そう――――犬吠埼樹は、勇者である。
【クラス】
ブレイバー
【真名】
犬吠埼樹@結城友奈は勇者である
【ステータス】
筋力D+ 耐久D+ 敏捷C+ 魔力B++ 幸運D++ 宝具C++
【属性】
秩序・善
【クラススキル】
勇気:A+
勇者と謳われる存在に共通する要素。主役の条件たる概念。
彼女は臆病な性分の持ち主だったが、仲間と共に歩む中で最高ランクの勇気を見出した。
打開不可能なほどの逆境に追い込まれた場合、幸運判定にプラス補正を受け、更に各種ステータスが1ランク上昇する。
輝ける背中:A
自身と敵対していないことを条件に、「弱き者」「諦めた者」の前で勇気を示すことで発動するスキル。
人間であれサーヴァントであれ、その存在に温かく眩い勇気を分け与える。
それで決起するかどうかは本人次第だが、英霊がこの効果を受ければ、ステータスの上昇も時には見込めるかもしれない。
【保有スキル】
対魔力:C
第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。
大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない。
精霊の加護(偽):A
二体の精霊を連れている。精霊は自動防御の機能を持ち、ブレイバーへの攻撃を防ぐ働きを見せる。
だが、彼らが勇者を守るのは決して善意からではなく……
神性:C+
宝具の使用によって手に入れたスキル。
宝具を使用する度にランクは上昇していき、最大でA+ランクにまで到達する。
【宝具】
ホシトハナ
『星と花』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:1
ブレイバーが使用する勇者というシステムに内蔵された、強大な力を発揮するための切り札。
精神面を中心に様々な要素で蓄積されていく満開ゲージをすべて消費し、普段の自身を超越した力を得ることが出来る。
幸運以外の全てのステータスが上昇し、解除後には筋力、耐久、敏捷のどれかが永続的に1ランク上昇する。
しかし、咲き誇った花がその後散るように、真名解放を行った勇者には「散華」と呼ばれる機構が働いてしまう。
散華は身体機能の一部を彼女へ力をもたらした神性、神樹に捧げることを意味し、一度捧げた機能・部位が戻ってくることは決してない。宝具を使う度に、勇者は無惨な姿へと成り果てていく。
【weapon】
ワイヤー。これを素早く伸ばし、敵を断ち切る。
【人物背景】
讃州中学勇者部の部員であり、本物の勇者に選ばれた少女。
姉の風とは対照的に、とても気弱な性格をしている。そのため、昔から姉の陰に隠れがちな存在だった。
しかし勇者として戦う中で彼女も成長を遂げ、最終的にはかねてからの希望だった「姉と並んで歩くこと」を超えて、姉の前へ立って歩くような大活躍を見せるまでになる。
【サーヴァントとしての願い】
マスターを無事に帰すことを最優先。
聖杯戦争は間違っていると思うので、聖杯が誰かの手に渡ることは出来れば阻止したい。
【マスター】
一条蛍@のんのんびより
【マスターとしての願い】
帰りたい。
【weapon】
なし
【能力・技能】
まるっきりの一般人。ただ、そのプロポーションと顔立ちは歳不相応なものがある。
【人物背景】
旭丘分校に通う小学生。
東京出身で、父親の仕事の都合で田舎の旭丘分校に転校してきた。あだ名は「ほたるん」。
分校の女子生徒の中でもっとも高い164cmの身長の持ち主で、身長以外も小学生とは思えないほど発育がよく、落ち着いた言動や雰囲気からよく周囲から大人と間違われる。
【方針】
人殺しはしたくないし、叶えたい願いもない。
なるべく戦わずに帰れる手段を探したい。
投下終了
皆様、投下お疲れ様です
私も投下します
申し訳ありません、名前の文字数制限で投下できないため、本文をトリなしで投下させていただきます
オインゴとボインゴの仲良し兄弟は憎き敵の承太郎を倒そうとしましたが
承太郎に変身した兄のオインゴは、変身を解かなかったので予言通り爆弾で頭が吹っ飛んでしまいました! ドッカーン!
オインゴ兄は自分達の負けだといいますが、ボインゴ弟は傷だらけの兄を見て、立ち上がります
ぼくひとりでやつらを殺す! お兄ちゃんのカタキ討ちだァーッ
やっとひとりでやると自立しそうになったけれど
ボインゴは気付いたら見知らぬ町に飛ばされていました さっきまで目の前で倒れていたオインゴもいません
そのかわりに変な服を着た三人組が変な歌を歌ってボインゴの仲間になりました
スッタモンダ コッタモンダ ヤッタモンダ
ヤッタモンダ コッタモンダ スッタモンダ
スキルは最優よ ヘイヘヘーイ
宝具もスッゴイよ ヘイヘヘーイ
欲しいよ欲しいよ聖杯
絶対もらうと決めちゃった
ドロンジョ トンズラー ボヤッキー
やられてもやられてもなんともないない
おれたちゃ英霊だ ヘイヘヘーイ ドンドンドロンボー
スッタモンダ コッタモンダ ヤッタモンダ
◆ ◆ ◆
>>826
コピペミスです…何度も申し訳ありません
以下が本文です
ある所にとても仲のいい兄弟がいました
「俺の名はオインゴ」
「ぼく……ボインゴ」
オインゴとボインゴの仲良し兄弟は憎き敵の承太郎を倒そうとしましたが
承太郎に変身した兄のオインゴは、変身を解かなかったので予言通り爆弾で頭が吹っ飛んでしまいました! ドッカーン!
オインゴ兄は自分達の負けだといいますが、ボインゴ弟は傷だらけの兄を見て、立ち上がります
ぼくひとりでやつらを殺す! お兄ちゃんのカタキ討ちだァーッ
やっとひとりでやると自立しそうになったけれど
ボインゴは気付いたら見知らぬ町に飛ばされていました さっきまで目の前で倒れていたオインゴもいません
そのかわりに変な服を着た三人組が変な歌を歌ってボインゴの仲間になりました
スッタモンダ コッタモンダ ヤッタモンダ
ヤッタモンダ コッタモンダ スッタモンダ
スキルは最優よ ヘイヘヘーイ
宝具もスッゴイよ ヘイヘヘーイ
欲しいよ欲しいよ聖杯
絶対もらうと決めちゃった
ドロンジョ トンズラー ボヤッキー
やられてもやられてもなんともないない
おれたちゃ英霊だ ヘイヘヘーイ ドンドンドロンボー
スッタモンダ コッタモンダ ヤッタモンダ
◆ ◆ ◆
聖杯戦争の舞台となる電脳世界の某所にある廃ビル。
それら全体を丸々勝手に貸し切り、その中の一室で数人の男女が集まっていた。
部屋の真ん中で二人の男が木でできたボロボロのテーブルの上で笑みを浮かべながら大量の札束を手で数えている。
そこから少し離れた場所で、一人の女性が近くでデッキチェアに寝転んでくつろいでいた。
「いやぁ〜今日も儲かりましたね、ドロンジョ様」
細身で、鼻が異様に大きい男がドロンジョという名の女性に声をかける。
向かい側で同様に札束を数えている、上半身が異常に発達した大男もそうだが、頭に角が生えたような顔の上半分を隠す仮面のある衣装に身を包んでいる。
ドロンジョはというと、彼女も大きな仮面を身に着けている他、マントの下では肌の露出が多いきわどい恰好をしている。
「やめられないねぇこの商売」
「ホンマでんなぁ〜」
説明しよう!
この三人組こそが、あらゆるインチキ商売をたくらむドロンボー一味!
ズルして儲けようという悪い三人組である。
今、三人の手元にある札束も、この日に行ったインチキ商売で稼いだものである!
細身の男・ボヤッキーに大男・トンズラー、そしてドロンジョはくつくつと笑いながら目の前で輝く札束を見て、歓喜に浸る。
「これでまた材料を揃えてメカを作れますね、ドロンジョ様」
「ドロンボー、聖杯戦争で再結成でマンネン!」
「そうとなったら、数時間で作るんだよ!何せあたし達はサーヴァントだからねぇ〜」
「三騎士なんてなんぼのもんですわ!」
「道具作成持ってるアタシの手にかかればどんなメカでもちょちょいと作っちゃうわ!壊されても生前みたく一週間かける必要もないし」
説明しよう!
ドロンボー一味は全員、聖杯戦争に参加するサーヴァントである!
本来はライダークラスで現界したドロンジョ一人だけだったが、宝具『悪乃華』によりボヤッキーとトンズラーも一緒に召喚されたのである。
つまりドロンボー一味は、三人一組のサーヴァントなのだ!
そんな彼らにはもちろん、マスターの存在が欠かせない。
「それにしても――」
ドロンジョはデッキチェアから立ち上がり、部屋の隅へ向かう。
そこには、うずくまってガタガタと震える小さな子供がいた。
片手には身長の半分ほどある本を携えており、ドロンジョが近づいてくるのを認めると体の震えを一層強くした。
「ボインゴくん、リューセキだね流れ石だね、さ・す・が・だ・ねェ〜♡」
「あらドロンジョ様、ボンちゃまのようにボインちゃまとかボインとか呼ばないんですね」
「そんなスケベな名前で子供を呼べるかいこのスカポンターン!」
ボインゴと呼ばれた子供はビクッと震えあがると、持っていた漫画――ボインゴのスタンド『トト神』で自分頭を覆い隠してしまった。
ドロンジョは『トト神』越しにボインゴを撫でながらボヤッキーを叱咤する。
説明しようッ!
こうしてボインゴがドロンボー一味からおだてられているのには理由がある。
それはボインゴのスタンド『トト神』ッ!書物の神「トト」のカードの暗示を持つスタンド!
能力は「近い未来の予知」。ごく最近の未来が独特なタッチのマンガ形式で書物に浮かび上がるのだ!
ドロンボーはこの予知に従ってインチキ商売を行った結果、平常時の数倍以上の額をだまし取ることができたのだ!
「ぼ…ぼ…ぼくの……ト…『トト神』のマンガの予知は…ぜっぜっぜっぜっぜっぜっ絶!!…対!ひゃくパーセントです ハイ」
ドロンボーのマスターとなったボインゴは、『トト神』の下からドロンジョを見上げて何とか勇気を振り絞って言葉を喉から押し出す。
非常に臆病で、兄のオインゴがいなければ誰かと話をする事さえまともにできないボインゴにしては、こうして他人と会話がなんとかできる時点で大したものである。
『トト神』を見ればわかるだろうが、ボインゴはオインゴがオレンジを模した爆弾で負傷し、ジョースター一行をひとりで倒すことを決意した矢先にこの世界へ飛ばされた。
聖杯戦争のルールも既に把握しており、殺し合いに巻き込まれたことに恐怖はあるが、兄にジョースター一行を一人で殺すと約束しただけあって何とか前を向けている。
今のボインゴはボインゴなりに、「ジョースター一行を倒す」という願いのもとで頑張っているのだ。
極度の人見知りというところは相変わらずではあるが。
「ところでボインゴくん、あたしにその『トト神』を見せてくれるかい?」
「ハ…ハ…ハイ」
「次はどんな予言がでてるんだい――」
ドロンジョがボインゴからトト神を受け取り、それを開いた瞬間、
『吾輩は泥棒の神様ドクロベエだべ〜』
「ギャー!ドドド、ドクロベエ様!?」
「あらァ〜ドクちゃんこんなとこにまで来ちゃって、まさか聖杯戦争でもドクロストーンやドクロリングの時と同じことを?」
「よそ様の企画にお呼ばれしてもあれがまだ続くでマンネン…」
「ぁ…ぁ…ぁ…」
『トト神』に赤い大きなドクロが映り、それがまるで映像のように動いてしゃべり出したのだ。
ドロンジョ・ボヤッキー・トンズラーは一様に驚いて慌てふためき、ボインゴは『トト神』にいきなり現れたドクロに愕然としている。
説明しよう!
このドクロの名はドクロベエ!
ドロンボー一味の親玉的存在である。
毎週唐突にドロンボー達の前に現れては指令を残して屁のように消えていくのだ!
『控えるだべ〜!』
「「「ははーっ!」」」
「は…は…はー」
ドクロベエにひれ伏したドロンボー三人組に続いて、ボインゴは震えながらも同じようにひれ伏す。
『ボインゴや、驚かしてしまってすまんべ〜』
「い…い…いえ……大丈夫、です ハイ」
『トト神』に写るドクロベエはボインゴに顔を向け、笑っているようにドクロの形を変えながら優しく話しかける。
『お前達、サーヴァントなんだからマスターは絶対に守るべ〜!』
「お任せくださいドクロベエ様、ボインゴ君はあたし達が守ります!」
「ボンちゃまでなくとも子供には甘いでマンネン」
「余計なこと言うんじゃないよ、このスカポンタン!」
トンズラーをドロンジョがげんこつする。
このドロンジョの言葉は嘘ではなく、ボインゴは存在の楔であると共にドロンボーの一員だ。
『さて、聖杯が何かはお前達サーヴァントだからわかってるとして、他の主従の居場所が見つかったんだべ〜』
「ドクロベエ様、聖杯の在り処じゃなくて敵の居場所を教えてくださるのですか?」
ドロンジョがドクロベエの情報に違和感を抱き、頭を上げてドクロベエに聞く。
生前は、ドクロベエがドクロストーンやドクロリングがある場所を教え、それを奪取するよう指令が下ってドロンボー一味が出撃する、というパターンが殆どを占めていた。
しかし、聖杯戦争となっては、少し事情が違うことはドクロベエも承知の上のようだ。
『聖杯は他の主従を倒さない限り出てこないからお前達に教えても意味ないんだべ〜』
「あらそうなの?てっきりガセネタばっかり掴まれると思ってたけどそうではないのね」
ボヤッキーが少し拍子抜けだという風に口を開く。
聖杯はドクロストーンとは違い、探しても出てこない。
他のサーヴァントを倒すことで初めてこの地に姿を現すのだ。
そういう事情もあってか、ドクロベエの情報は生前に比べて相当に親切なものとなっていた。
「意外と楽できそうでマンネン」
『このアカポンタン!!探す必要がない代わりに、他のサーヴァントは絶対に倒さないといけないべ〜!失敗したら――』
『ママよりこわいお仕置きだべ〜!』
情報が伝えられた後、4人の背後で爆発が起きてボインゴ含め全員が黒コゲになったことは想像に難くない。
◆ ◆ ◆
アク役◇協奏曲 〜ドロンボーとボインゴ〜
うた:ドロンボー&ボインゴ
♥信じてるよ
♦信じてるわ
☘信じてるでマンネン
♠信じてくれた
♥♦☘♠ドロンボー ボインゴ カルテット
♥あたしはドロンジョ クラスはライダー
天才義賊のドロンボー 頼れるリーダー
せっかく聖杯戦争にお呼ばれしたんだから獲りにいくしかないよねェ!
お前たち、いっくよ〜?
♦アタシはボヤッキー メカを作る
武器もメカも乗り物も なんでもござれ
あ、どうもボヤッキーよ〜!
ボクちゃんたち4人組だからAメロはもうちょっとだけ続くのよ
☘ワイはトンズラー 筋肉自慢
殴り合いかてお手のもの 誰でも来なはれ
三騎士なんてナンボのもんじゃい!
元プロレスラー舐めとったら痛い目合うでマンネン!
♠僕はボインゴ 漫画で予言
とっても内気なんだけど 勇気を出すよ
お兄ちゃんのカタキを討つんだ!
僕のマンガの予知は…絶!!対!ひゃくパーセント です!
♦これで?
☘ほいで?
♥うまくいくんだよ!
♥マスターの予言は絶対だからねェ〜
♠印刷に出た預言は
♠もう決して
♠変えることはできない
♥預言の通りに
♥行動すれば
♥♦☘♠全て うまくいく
♠そうやれば勝てるハズです
♥♦☘♠ドロンボー ボインゴ カルテット
♠信じてくれますか?
💀もちろん、信じるべ〜
♠💀ドクロベエ ボインゴ デュエット
♥♦☘♠絶対勝つんだ もうやられっぱなしはイヤなのさ
【クラス】
ライダー
【真名】
ドロンジョ@ヤッターマン
【パラメータ】
筋力D 耐久D 敏捷D 魔力E 幸運E 宝具EX
【属性】
混沌・善
【クラス別スキル】
対魔力:E
魔術に対する守り。
無効化は出来ず、ダメージ数値を多少削減する。
騎乗:E
自転車に乗れる。
【保有スキル】
自己保存:A
マスターが無事な限りは全ての危機から逃れることができる。
ボヤッキーの巨大メカが爆発すると髑髏の形をした煙に包まれて確実に逃げることができ、結果的にマスター共々死なずに済む。
やられてもやられてもなんともないない
今週のお仕事:EX
毎度毎度の今週の山場を乗り切るために無意識に存在する加護。一言でいえばギャグ補正。
ドクロベエのお仕置きや巨大メカの大爆発など、
通常であれば確実に即死するような攻撃を受けても絶対に死亡せず、
瀕死の重傷を負っても極めて短時間で活動が可能な程度には再生できる。
ただしこのスキルはライダーの周辺にいる人物も対象となるため、
効果が発揮されている限り敵対サーヴァントやマスターを殺害することはできない。
インチキ商売:A
悪徳商法で客から金をだまし取る才能。
ボヤッキー・トンズラーと連携して簡単に金銭を手に入れることができる。
Aランクならば精神干渉の域であり、どんなに無理があっても知らず知らずのうちに金を払ってしまう。
戦闘では役に立たないが、他のマスターに対して経済的に大きなダメージを与えることがある。
正体隠蔽:B-
サーヴァントとしての正体を隠す。
自身をサーヴァントではなくただの人間であると誤認させる事ができ、契約者以外のマスターからステータス、スキルを視認出来なくする。
ただし、このスキルが効果を発揮するのはインチキ商売をしている時のみ。
情報収集:B
様々な情報を集めることに長け、情報戦で優位に立てる才能。
その情報はドクロベエから一方的に伝えられる。
主な内容は他の主従の所在地など。
【宝具】
『悪乃華(ドロンボー)』
ランク:EX 種別:対ヤッターマン宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
ドロンボー一味の3人が集った運命の因果律そのもの。
実体は存在せず、ライダー自身もそれを把握していない。
彼ら3人が集えばそれはドロンボー一味が立ち上がることを示し、
ドロンボー一味が存在すればそれは彼ら3人が悪事を働いていることを意味する。
今まで幾度となく解散の危機に見舞われたが、何があっても3人が離れ離れになることはなく再結成された。
その運命の強制力が3人を同時現界させるという奇跡を生み出した。
かつてのドロンボ一味であるボヤッキー・トンズラーを常時召喚できる。
彼らは生前ライダーと共に行動することが多かったことから常時現界でき、実質的なサーヴァントとして活動できる。
ライダーは実質3人一組のサーヴァントであるため個々の能力は低いが、
ボヤッキー・トンズラーが現界していても魔力消費は通常と変わらない。
たとえライダーであるドロンジョが消滅してもボヤッキーかトンズラーが生存していればマスターの魂が消えることはない。
ブツクサ・ボヤッキー
ドロンボー一味のメカ設計と参謀役を担当していた細身の男。
女子高生が大好き。
パラメータは、筋力D 耐久E 敏捷D 魔力D 幸運E
B+ランクの道具作成スキルを所持しており、ヘンテコな武器や巨大メカの製造に特化している。
敵サーヴァントとの戦闘は主にボヤッキーが作成したメカが主力になる。
ただし間の抜けている面があり、武器を使おうとして自爆することも多いので注意が必要。
スタコラ・トンズラー
ドロンボー一味では自慢の怪力による脅しと戦闘を担当していた。
岩手出身なのに関西弁を喋る。
パラメータは、筋力B 耐久B 敏捷E 魔力E 幸運E
固有のスキルはないが、他の二人に比べて筋力・耐久が格段に高い。
直接戦闘では己の肉体のほかに、ボヤッキー製の武器を扱うこともできる。
『我輩こそ泥棒の神(ドクロベエ)』
ランク:EX 種別:対ドロンボー宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
泥棒の神様を自称する謎の男。
ライダー及びドロンボーに欠かせない存在であったため宝具として再現されてしまった。
インチキ商売をしているドロンボー一味の前に唐突に現れて、指令を出しては消える。
その指令及び情報はほとんどがガセネタであるが、此度の聖杯戦争では他の主従の場所を教えてくれるため、
ドクロリングやドクロストーンの時よりは格段に良心的。
ヤッターマンから敗走するドロンボー一味には毎回きついお仕置きを下しており、
たとえ情報が本当でドロンボー一味がアイテムを手に入れたとしても、
「いつもやっていることなのでやっておかないと気持ち悪いから」という理由でお仕置きする。
かつてドロンボー一味の親玉だったドクロベエ。
本物の英霊が現界しているボヤッキー・トンズラーとは違い、
ライダーの『こういう人物だ』というイメージに忠実に沿った形で顕現したものがこの宝具。
生前のように唐突に現れては情報を与え、他サーヴァントから敗走するライダー達にお仕置きする役割を持つ。
なお、お仕置きはドロンボー一味の3人以外のマスター・協力者も一緒に受けることになる。
ライダーはこの宝具を制御することができない。
『道なき道進め(バイシクル)』
ランク:E 種別:逃走宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
見た目は何の変哲もない複数人乗りの自転車だが、
ヤッターマンから敗れ帰還する際に毎回この自転車に乗っていたという逸話から宝具に昇華した。
実際は一輪車が縦列に人数分連結している。
同乗者の数によって3人+α乗りの自転車へ変化する。
これに乗って『エイホ』という掛け声と共に走る。
この宝具によってドロンジョがライダーとして召喚された。
【weapon】
・ボヤッキー製の武器
ボヤッキーが製造した武器。
性能は一瞬で相手を拘束したり物を破壊したりできるなど非常に強力。
しかしここぞというときに故障したりドジを踏んだりしてその性能を生かせないことが多い。
・ボヤッキー製の巨大メカ
巨大なメカを各人が操縦できる。
デザインは毎回異なり、攻撃方法もそのデザインによって異なるので看破されづらい。
メカのデザインにもよるが宝具級の性能を持つものができることも。
共通して、コクピットにはドロンジョ専用のバスルームにおだてブタなどのコクピットメカが多数搭載されている。
なぜか自爆ボタンも搭載されている。
ほとんどが破壊される運命にある。
【人物背景】
ヤッターマンに登場する悪役。
女性ボスのドロンジョ、頭脳担当のボヤッキー、怪力担当のトンズラーの三人でドロンボー一味を構成する、所謂三悪の元祖。
自称泥棒の神様ドクロベーから指令を受け、ドクロストーン(リメイク版ではドクロリング)を求めて世界中を飛び回っている。
毎回インチキ商売で得た資金を元にロボットを使ってヤッターマンと戦うが敗北を繰り返しており、
ドクロベーの情報もほとんどがガセネタとあまり報われない。
しかも自転車で敗走中には毎回ドクロベーからお仕置きを受けており、稀に本物のドクロストーン(ドクロリング)を手に入れても、
「いつもやっていることなのでやっておかないと気持ち悪いから」という理不尽な理由をつけられてお仕置きされる。
【サーヴァントとしての願い】
欲しいよ欲しいよ聖杯
絶対もらうと決めちゃった
【マスター】
ボインゴ@ジョジョの奇妙な冒険
【マスターとしての願い】
ジョースター一行を倒す
【weapon】
特になし
【能力・技能】
スタンド『トト神』
ボインゴが常に持ち歩く本に描かれた漫画を通して、ごく近い未来を予知することが出来るスタンド。
本に時間経過とともに浮き出る漫画には、独特なタッチの絵と簡潔かつシュールな内容で予知が描かれている。
【人物背景】
DIOの配下の少年。兄のオインゴと共にジョースター達を襲った。
性格は非常に憶病で、兄がいないと誰かと話をする事さえまともにできない。
身体も小柄で貧相であり兄がいないとホントに何もできない。あと笑い方が少々おかしい。
エジプト・ヌビア地方でジョースター一行を暗殺するため接近し、後述するスタンド能力とオインゴのスタンド能力のタッグでさまざまな罠を仕掛ける。
結果、兄が再起不能になったのを見て、仇を取るため一人で戦う事を決意。
だが行動を起こす間もなく、思いもよらぬ身から出た錆により、兄と仲よく入院する事になる。
【方針】
この変な3人組の人達と聖杯を取るんです ハイ
以上で投下を終了します
また、拙作『エルンスト・フォン・アドラー&アサシン』にて少し不明瞭なところがあると判断しましたので本文を若干追加記述しましたことを報告させていただきます。
編集差分でチラ見程度に見てくだされば幸いです
投下します
夜の底を、男が彷徨っていた。
「海にゐるのは……あれは人魚ではないのです……」
夜の底を、詩が流れていた。
「海にゐるのは……あれは、浪ばかり……」
男の足取りは酷く不安定なものだった。怪我でもしているのか、呆然自失の状態なのか、あるいは両方か。
男の双眸が光を放つ。しかしそれは意思の輝きなどでは断じてなく、水晶体が街灯の光を反射というだけの、単なる現象に過ぎなかった。
「曇つた北海の空の下……浪はところどころ歯をむいて……空を呪つてゐるのです……」
死人のように濁った瞳は、何者をも映してはいなかった。まるで骸がそのまま、操り糸に支えられて歪に歩いているようだった。
彼が見失ったのは、正しく己の全てか。
色褪せない思い出の尊さを前に、彼自身の築き上げたものが圧殺されているのだろう。
「聖杯戦争、か……なんともまあ、お誂え向きなイベントじゃないか」
静かに紡がれた呟きは、しかし血を吐くような呻きでもあった。
並み居る他者を殺し、その果てに一つの願いを叶える聖杯戦争。我欲に溺れた愚者の祭典は、なるほど確かに、屑でしかない自分にはお似合いだ。
「つい先ほどまで僕がいた環境と何も変わらない。なんて地獄だ」
地獄。今の彼には、そうとしか形容できない。
それは生存をかけた無差別の殺し合いという環境そのものも同じであったが、最たるものはまた別のこと。
つまり、緋文字礼という個人の中にある、どうしようもない悔恨の念である。
緋文字礼は記憶喪失である。
確たる己というものがなかった。白紙の人生には劇的と呼べるものがなくて、ただ空虚な心がうすら寒かった。
だからこそ、そこで出会った唯一の親友を何より大事に思っていた。
自らが巻き込んでしまったという負い目と、それでも空っぽの自分にかけがえのない友達ができたのだという救いがあった。
最も大切な親友、秋月凌駕。彼を戦いに巻き込んだのは自分の不徳だ。
自分が不甲斐なかったがために、自分の代わりに死んでしまった彼。その死を認められず、刻鋼人機に生まれ変わらせたのは自分だ。
そう思っていた。だからこそ、共に戦うことを消えぬ烙印として生涯背負っていくのだという覚悟もしていた。
だが、違ったのだ。
戦いの果てに取り戻した真実は、決して黄金の過去ではなかった。
だが、違ったのだ。
戦いの果てに取り戻した真実は、決して黄金の過去ではなかった。
修復された記憶にあったのは、ひたすらに傲慢な自分の姿。
己が生きている意義がないから、俺に最高の絶望をくれ―――そう願って自ら記憶を差し出し、幾度も白痴の記憶喪失者として戦ってきたという過去。
反抗勢力たるロビンフッドに組したのも、秋月凌駕という犠牲者を出したのも、元を辿れば自分のエゴが引き起こしたという事実。
「偶然戦いに巻き込んでしまった」などという過失ではない。全ては緋文字礼の身勝手な意志によって、秋月凌駕は無限の地獄に引きずり込まれたのだということ。
鋼の預言者により真実を伝えられた瞬間、自分の中にあった密かな心の支えと希望は、ふざけた現実によって木っ端微塵に砕かれた。
絆があった。仲間があった。それは紛れもなく、命に代えても守りたいと思える新たな誇りであったのに。
そう思える資格など、最初から自分にはなかったのだ。
「だが、それでも」
それでも、と。緋文字礼は面を上げる。
そこにあったのは、どうしようもない殺意の嵐だった。
自らの肌に爪を突き立て、肉を裂き臓腑を引きずり出したいのだという、狂おしいばかりの憎悪を―――しかし今は糧として足に込める。
それは、聖杯戦争へと向かう戦意として顕現した。
「あの状況から僕だけがここに呼び出されたということは、つまり"そういうこと"なんだろう?」
嘲るように、泣き出すように、振り絞る声は無様なほどに震えていた。
刻鋼人機同士の潰し合い―――時計の主が宣言した"真理に至るための戦い"を前に、しかし当事者である自分が同じような戦場に駆り出されたこと。
万能の願望器たる聖杯を求めての殺し合い、そこに込められた意思とは、すなわち。
「僕が聖杯を掴めば、少なくとも題目通り願いが叶えられる。そういうことでいいんだな!?
手にした聖杯を以てすれば、秋月凌駕と仲間たちを戦乱の運命から解放できる……僕はそう解釈したぞ!」
すなわち―――戦って勝ち取れ、と。あらゆる願いを踏み躙って、己がエゴを貫きとおせと、高みから睥睨して告げる声が聞こえた気がした。
そうする以外に道がないというのなら―――いいだろう、この忌避すべき力と才覚を以て、僕は聖杯を手にしてみせる。
それだけが彼らに報いる手段なのだから。今こそ雄々しく絶望へと立ち向かおうと。
今こそ心に誓い意思を奮い立たせて。
「……なんて偽善だ。そんなこと、彼が望むはずもないのに」
それでも、出てきたのは消えることのない自嘲の言葉だった。
そうだとも、望むはずがない。どこまでも強い彼のことだ、こんな屑でしかない自分にさえ笑顔で手を差し伸べてくれる様が、甘い幻想だと分かっているのに脳内にありありと想起できてしまう。
戦おう、そして勝とう。自壊の運命を押し付ける超越者になんて負けてやらない。だから礼さん、貴方も自分を責めないでと。
そんな、理解できないほどに強い彼の姿が今も胸に刻まれている。
……どうしようもなく嗤いたい気分になってきた。
口元が自虐の笑みに歪んでいるのが分かる。あの日の夕暮れのベンチで、彼に出会う前の自分が浮かべていた空虚な嗤いを。
「だけど……彼に、仲間たちに……こうする以外、一体どうやって詫びればいいと言うんだ……
"僕"という白痴を、"俺"という屑を、今でも信じてくれている人たちに……どうやって。
こうまで、巻き込んでいながら……!」
ああ、それこそが最も辛い。
自分は苦しんで死ねばいい。地獄の責め苦を受けることで罪を償えるというのなら、喜んで五体を切り刻まれ穢れた命を捧げよう。
大切だった、輝いていたから。それが尊くあればあるほど、渇き切った嗤い声は泣いているようにしか聞こえない。
「だからこそ、僕は聖杯を目指す……!
迷いはしない、躊躇もしない。この道しか、僕には残されてないんだから……」
そうして、ふらふらとした足取りで先を急ぐ男の背後に、一つの影が追随していた。
夜の色を懲り固めたようなその影からは、万色の煙が揺蕩うように吐き出されていた。
▼ ▼ ▼
「哀れなもんだな。思い出してなお、そんな様ってのはよ」
人影のない、奇妙に暗く感じる街道を往く主の後ろ姿を眺めつつ、影の男は吐き捨てた。
男が纏う雰囲気にそぐわない穏やかな声だったが、その裏には隠し切れない嚇怒の念が込められている。
それは別に、彼のマスターに向けられたものではない。より厳密に言うならば、それは己を含めたとある"都市"への激情。
今まで彼を突き動かしてきた、正体不明の怒りの感情がそこにはあった。
「だが、全ては最早関係ない。これでようやく、終わる」
男は呟く。関係ない、関係ないのだ。例えマスターが何を思い出し、何を取り戻し、何を思おうが全ては一つの終わりへと集束する。
10年前の続きだ。結局、自分たちは間に合わなかった。
何もかも遅すぎた。誰も、誰一人、救うことなどできなかったのだ。
「だから」
だから、殺す。
都市の全てを終わらせる。それだけが、この身を突き動かす最後の感情であると定義して、男は死の鎌を振り下ろし続ける。
そしてその時にこそ、自分はようやく彼女に償うことができると信じて。
「終わりとしようや。なあ―――」
男は呟く。それは誰に対して言った言葉なのか、本人でさえ定かではなかった。
彼らは歩き続ける。かつて失ったものを取り戻して、かつて忘れ去った真実を胸に抱いて。
今こそ47の鋼の運命と、41の願いが果たされるのだと口にして。
―――視界の端には何もいない。
映るのは、どこまでも空虚な伽藍の空白。
彼らが手を伸ばすことは、ない。
【クラス】
アサシン
【真名】
ケルカン@赫炎のインガノック- what a beautiful people -
【ステータス】
筋力C 耐久E 敏捷B 魔力B 幸運E 宝具A
【属性】
混沌・悪
【クラススキル】
気配遮断:C
サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している。
完全に気配を断てば発見する事は難しい。
【保有スキル】
現象数式:A
変異した大脳に特殊な数式理論を刻む事によって御伽噺じみた異能が行使可能となる、異形の技術。
火器や爆薬を超える破壊や、欠損した肉体の修復が可能。
アサシンのそれは燃焼による攻撃に特化されている。
自己改造:B
自身の肉体に、まったく別の肉体を付属・融合させる適性。このランクが上がればあがる程、正純の英雄から遠ざかっていく。
アサシンは現象数式の習得のために変異した大脳にアステア理論を刻み込み、全身の至る箇所を数秘機関に置き換えている。
《守護》:A(A+)
《奇械》による守護。宝具が発動している状態に限定して同ランクの対魔力・透化スキルを付与し、耐久判定において大幅に有利となる。
執行官白兵術:C
かつてハイネス・エージェントとして獲得した白兵戦技術。
死の都市法に則り下層民の間引きを行う恐怖の代名詞。一流の達人にも追随する技量を持つ。
【宝具】
『安らかなる死の吐息(《奇械》クセルクセス)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1〜10 最大捕捉:1
アサシンの背後に降り立つ異形の影。失血死を司る。
辛うじて人型を保った、鋼鉄に包まれた姿をしている。刃状の腕を持ち、所有する大鎌はわずかに傷つけるだけで相手を死に至らしめる。ただしサーヴァントという枠に押し込められた結果、魔力や幸運や効果軽減スキルその他諸々により対抗可能となっている。
『安らかなる死の吐息(《奇械》トート)』
ランク:A+ 種別:対軍宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:1000
クセルクセスの姿が変容したもの。クセルクセス時からステータスに上昇補正を加え、能力の内容も変化している。
その能力は「トートの言葉を受けた者は死ぬ」というもの。
周囲数百フィートに咆哮を放ち、物理的には空間ごと物質を崩壊させ、魔術的には接触対象の現在を否定し存在を抹消する。クセルクセスとは違い魔力ステータス等では一切軽減できない。
10年前の《復活》の日のように、あらゆるものが否定される。誰一人、吐息のもたらす安寧から逃れることはできない。
この宝具の発動には彼が失ってしまった真実、記憶、そして彼の抱く怒りの感情の正体を取り戻さなければならない。現状彼はそれらを取り戻すに至っているが、しかし何某かの理由により現在この宝具は一切の機能を停止している。
【weapon】
体中に埋め込まれた数秘機関。
【人物背景】
都市インガノックにおいて死こそが救いであると説きながら人を殺して回っていた巡回殺人者。世界と生の否定と死の肯定の権化。誰よりも死に親しむ奇械使い。
下層民も上層貴族も区別なく、異形化した者すら人間であると認めた上で全てを殺す。奇械や現象数式は全てそのための道具であると言い切り、故にそれらを人命の救済に使うギーを明確に敵視している。
実のところ、彼の持つ殺人衝動とギーの持つ「あらゆる人を救う」という信条は、全く同一の出来事を違う捉え方で見つめたことに起因する。
誰かを愛したがためにそれが朽ちていく様を見るのが耐えられなかった、人を愛した殺人鬼。
自分が何者であるかを取り戻し、その果てに全ての終焉を願った男。
【サーヴァントとしての願い】
かの都市に終焉を。
いいやもしくは、自分と彼のどちらが正しかったのか、ただそれだけを知りたかった。
【マスター】
緋文字礼@Zero Infinity -Devil of Maxwell-
【マスターとしての願い】
聖杯の力をもって秋月凌駕とその仲間たちを絶望の運命から救い出す。
たとえそれが現実からの逃避だとしても、今の自分にはそれしかない。
【weapon】
下記に記述。
【能力・技能】
刻鋼人機(イマジネイター)と呼ばれる存在。有体に言うと後天的に改造されたサイボーグのようなもの。
常人を遥かに超えた身体能力と知覚領域を兼ね備え、殲機と呼ばれる固有武装を展開する。動力源は精神力。
イマジネイターには位階があり、自己の希求を具現する輝装、自己の陰我を具現する影装、詳細不明の"真理"の三段階が存在する。
・白漠葬牙(ホワイトホロウ・レクイエム)
輝装。右手には三門の砲身を束ねた回転式連装機銃、左手には長銃身大口径拳銃とそれに付随した銃剣を具現化させる。
礼の「空っぽだが、前に進んでみたい」という意思、「親友や仲間を大切に思える」という現状、「そして、そんな今の自分が好きだ」という自己肯定から生まれた輝装。
友や仲間の信頼に応え共に障害を乗り越えたいという希望が反映されており、故にあらゆる距離に対応できる汎用性の高さを持ち、能力値においては攻守に優れた万能型となっている。
殲機の基本カラーはホワイト。これは礼が純粋で誠実な人間であるという事の証明だが、同時に記憶のない空虚な存在である事も示唆している為である。
・?????
影装。彼は不完全ながら影装を顕現させることができる。
しかし影装とは己の闇を受け止めてこそ発揮できる力であり、故に自身の陰我を否定している今の礼には全く使いこなせていない。
およそ実戦では役に立たないだろう。
なお、少なくとも輝装及び影装段階はあくまで既存科学で編まれているため、サーヴァントに掠り傷一つ与えることはできない。
ただし、既存の物理を超越した新たな"真理"であるならば、話は違ってくるだろう。
【人物背景】
名前以外一切の記憶を失った、時計機構からの脱走者である青年。
逃避行の途中で凌駕と出遭い、友誼を結び、そして彼を闘いの運命に巻き込んでしまう。
一見冷静沈着で温厚な常識人だが、闘いになれば誰よりも過激な閃きや奇策を見せる意外性の男。端的に言って類稀な天才であり、同時に空虚さゆえの恐いもの知らずとも言えるだろう。
凌駕に対しては、償いきれぬ負い目と表裏一対の友情を感じており、空白の記憶ゆえか誰よりも仲間の絆を重んじている。
その正体はあらゆる分野において稀代の才能を発揮し、故に世界と己に絶望して自死した男。
傲慢の極みのような人物であったが、機械化していく文明を前に「人間としての能力など所詮機械科学の劣化品」と悟り、ならば生まれながらの高い能力にしか己を見いだせていない自分とは一体何であるのかというアイデンティティの喪失に苦しんだ。
その果てに彼は自らの人生に幕を引いた。「次に生まれ変わるならば、賞賛も才能もなく、ただどん底から這い上がるような人生が欲しい。頂点を目指し努力するという希望、志半ばで挫折する絶望が欲しい」と遺書をしたためて。
その後時計機構によって刻鋼人機となった彼は、生前の望み通り全ての記憶をリセットされた後に時計機構の反抗勢力へと幾度となく投入される。彼が望んだままに、「雄々しく立ち向かえる最悪の絶望」に直面させられ続けた。
反抗勢力が壊滅する度にしかし彼だけは生き残り、その度に記憶をリセットされ次の戦場へと送られ続けた。緋文字礼とは、その何度目かの名前に過ぎない。
マレーネ√、アポルオンから真実を聞かされてから草笛切と会話する前より参戦。
【方針】
聖杯を手にする。
投下を終了します
皆さん投下乙です。
>>715 そしておくればせながら、wiki作成お疲れ様です。
自分も今から投下します
「ああああああああああああ?!」
現界時、プリミティブが最初に耳にした音は「悲鳴」であった。
何事か――――――――驚き、すばやく辺りを見渡す。だが何もない。せせっこましく、薄暗いそこには誰もいないどころか、何もなかった。
今のは?
自分を呼んだのは?
今は何時代(いつ)だ?
少々戸惑うが、これは聖杯戦争。戦いにアクシデントはありがちだし、何より知らない場所にいきなり来てしまうのは初めてではない。ゆっくり伸びをしてリラックスした後、現状把握のために今一度辺りを観た。
地面――――――――木で出来ている。これは今踏んでいる足の感触でわかる。見上げる。天井も多分これだ。
横には石…?のようなもので作られた壁。よくわからないが、赤茶けたこれはあの未来で何度か見たことはある。
床に壁。ならばここは家か?そうだ、きっと家なのだろう。しかし。
旧(ふる)い――――――――
プリミティブはそう思った。無論、自分が生きてきた時代とは全く違う。
違うが、自分が一度蘇ったあの場所。
白い服を来た連中が沢山いたあの時代。猛き戦士が溢れていたあの時代に比べると、どこか親近感が湧く。それくらいには旧(ふる)めかしい。
「ああああああ!!痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!」
まただ。空を切り裂くような、気持ちをつんざくような。苦痛(いたみ)の声。致命傷を受けた餌があげる悲鳴によく似ているが、小さい笑い声も一緒に聞こえる。よくわからない。
…探すか
とりあえず声のした方に向かい歩く。目の前の扉を開き、先に続くこれまたせせっこましい道を渡り。もう一つの扉を開けた先。
そこに二人の人間が居た。小さな雄と、小さな小さな雌だった。
この雌がマスターか。プリミティブはそう直感した。
先にプリミティブに気づいたのは座り込んだ雌の方だった。扉に背を向ける雄を見ていたので、扉を開けて出てきたプリミティブと目があった。
手入れはされていない。しかし、艶ときらめきのある黒い髪に、大きくくりっとした目。宝石のような蒼い瞳。
身体は貧相。雌とまではいかぬ子供のような身体ではあるが、凡そ服とは呼べない無残なぼろ切れを纏っている。それでも、覗いた肌には若さからくる潤沢なみずみずしさがあった。
瞬間、プリミティブの脳裏に去来したイメージは花。それも小さく、可憐でまだ咲いていない蕾。
可愛い――――――――一も二もなく、プリミティブはそう思った。
可愛い――――――――一も二もなく、プリミティブはそう思った。
「………?」
対する蕾は何事かわからず、朦朧とした顔でこちらを見ていた。
牙も向かず、爪も見せず、何もせず、ただ見ていただけ。だかそれが、雄の逆鱗に触れた。
髪の少ない散らかった頭をした、肥満(デブ)の醜い男がプリミティブに気づかぬまま、力任せに蕾の横っ面を引っ叩く。
明らかに興奮し、周りも見えていない雄。もんどりうって倒れこむ少女の上で手に持った透明なモノの上部を捻り、それを逆さに向けた。
透明なモノから、これまた透明な。しかし、強い刺激臭のする液体が流れ落ちる。その液体が少女の上に落ちた瞬間
「あああああああああああああああ!!うああああああああああ!!」
突如、絶叫(さけ)んだ。苦痛に転がる蕾。高笑いする雄。
刺激臭のする液体が何かと考えるより、先にプリミティブには気付いたことがあった。
これだ。さっき自分はこれを聞いたのだ。しかい何故?
何故この雄はマスターを痛めつけているのだ?
マスターは見たところ、食える場所などほとんどなさそうな小さい体。
対して雄は食うに困らないというか、食うに困ったことはなさそうな身体をしている。
ならば何故?食うでもないのに痛めつけ、その上で笑うのだ?
「ハル……?」
プリミティブ――――――――白亜紀から来た原人。現代での通称ピクル。
無駄の無い自然で生きてきた彼には、その雄の行為がまるで理解できなかった。
弱肉強食。群雄割拠の時代に生きた彼にとって、強いモノが弱いモノを食うのは理解できる。
往々にして賢くない恐竜達(あいつら)はそうするしかないし、あそこではそれが掟(ルール)であった。
自然には無い、凡そ理解できぬ無駄な行為にプリミティブは困惑した。
しかしそれと同時に胸の奥から何かが湧きたち、髪が逆立つ。
「ハルラッッッ……!!」
可愛らしい蕾。
鍛えることも出来ぬ身体で。刃向かう牙もないであろう、そんな気もないであろう身体で、こんなに酷い傷を付けられている。
今までどんなに辛かったであろう。どんなに苦しかったであろう。
そう思うプリミティブの胸に湧き上がる義憤(いかり)――――――――。
自分と同じ種族であるにも関わらず弱い者を傷つけるこの蛮行…許すまじ
快楽のために傷つける蛮行…許すまじッ
美しい蕾を傷つける蛮行…許すまじッッ
この男、決して許すまじッッッ!!!
恐竜達(あいつら)よりも!
死んでも死なないあの男よりも!!
誰よりも!!!!
「ハルララッッッ!!!」
瞬間、プリミティブの五体は発火。雄が振り返るより早く突進し、そのだぶついた顎に向かって力任せに腕を振り上げる。
数多の恐竜達を屠ってきた剛腕にとって、無精な生活を送る雄の肉体は余りに脆く、余りに儚かった。
「………!!?」
着弾。
ボーリング玉以上はありそうな拳骨が顎から頭骨を豆腐の如くくだき、天に地に脳漿がぶちまけられる。
100キロはあろう雄の肉体が暴風に吹かれた葉のように猛烈に吹き飛び、天井に突き刺さった。
少女――――――――シルヴィは目の前で起きた事が理解できない。
褌の、しかしとても大きくムキムキなお兄さんが入ってきたと思ったら自分はご主人様に引っ叩かれ。
薬品をかけられたら、なぜか怒ったお兄さんがご主人様をものすごい速さでなにかをして。
何かをされてしまったご主人様は天井に突き刺さって動かなくなって。
「ハル……」
直感した。このお兄さんは助けてくれたのだと。
恐らく言葉は話せないのだろう。なんとなく、そんな気がする。
しかし話せぬまま大きな身体をかがませて。眉を下げ、こちらを気遣うような目で見てくる。
おずおずと、その大きすぎる手を差し伸べてくる。
「あ、あの。ありがとうご…」
手を取り、ふらつきながらも立ち上がる。礼を言おうとしたが、立ち上がった瞬間にまとったボロが脱げた。
その裸体に、その身体に、プリミティブは目を点にした。
美しさもあるが、それよりも傷――――――――あちらにもこちらにも。体中余す事のない無数の痕がプリミティブの目を引いた。
自分が過去負ったような噛まれたり、引っかかれた痕とは明らかに異なる。赤く爛れたり、皮が肉毎めくれていたり、ミミズが這ったような痕だったり。
何種類もの見たことが無い傷に困惑する。赤く爛れたものは赤くて、光っていて、とにかく熱い火(あれ)…あれで出来た傷に近いが…
そのどれもが見た事のない傷だった。
「…申し訳ありません。お見苦しいものを見せてしまいました。これらはこのご主人様…であった人に付けられたものです。」
少女がボロを拾いながら何か言っている。何を言っているのかわからないが、だいたいわかった。恐らくあの雄に傷つけられたのであろう。
可哀想に…プリミティブは悲痛な想いに目を閉じた。
こんな小さな体で、あんな大きな身体に抵抗も許されぬまま。出来ぬまま。
それはどれほどの恐怖だっただろう。どれほどの絶望だっただろう。どれほどの――――――――
「……え?なんで拝んで…?」
膝をつき、祈らずには居られなかった。
この蕾、この少女の身体に。
この少女の精神に。
この少女の人生に。
「あ、あの……頭あげてください。
とにかく、助かりましたから…」
何か言っている。何を言っているのかわからないが、困惑していることだけはわかる。
「…。ハル……」
再び脳裏に想い出が浮かぶ。
白亜紀。強き者が食らい、殺し、生き残るその中で。
争わず、主張せず。しかし懸命に生きるこぶりで控えめな蕾。
それはそれで美しいが、花は咲くものだ。咲くところも見てみたい。
期待して待つ日々…戦いの中とはまた違う、心を癒す時間…
ただ見るだけ。座って、ただ待つだけ。しかし満たされる心…
「……」
この娘も似たものを感じる。この蕾が咲いたらどうなるのだろう。
花開けばどれほど美しいだろう。笑えばどれほど可愛いのだろう。
咲かせたかった。傷つき、萎れたこの蕾に水をやり、元気にさせたい。
花を咲かせてあげたい。
「ルラ…」
原人は、頭を撫でた。
(この人は…何?)
わからなかった。この人はなんなのか?
誰なのか?
どこから来たのか?
なんなのか?
過去幾度も救いのような言葉を耳にしたが、幾度も裏切られた。その度に心を無くそうと努め、失ってきた。
痛いことも辛いことも、そうしたら少しはマシになった。だから心も感情もなくした筈だった。だというのに
(この胸の…これは…?)
鎖骨中央、下約10センチ。その奥に突如現れた痛みに似たモノ。
痺れる。それでいて甘い痛み。手放し難き…痛み。
その痺れに、痛みに、涙が溢れた。
「あ、あああ…」
あんなにも硬そうに握っていた拳骨が、あんなにも柔らかそうに解かれ。
こんなにも心配そうな目で頭の上に載せてくる。
語らずとも、語れずとも。
その目が、その行動が。何よりも彼の心を雄弁に物語っていた。
「怖かった…辛かった…!!!!」
感情をなくそうと勤め、言葉を、人を信じられなくなった少女を救ったものは。
皮肉にも感情を理解できず、言葉を解せず。文明とは程遠いところから来た原始人であった。
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!」
感激…?
感謝…?
喜び…?
どれともつかず、声にならない。しかしどんな言葉よりも悲痛な叫びがぼろ小屋に木霊する。
戻って来た心が、感情がぶっ放す叫び。
沢山叫んだ。沢山泣いた。
その場で叫んだ。ピクルにすがりながら泣いた。明けても暮れても泣き叫び続けた。
止めようとしても止まらなかった。
今迄の人生で流すはずだった何年分もの涙と叫びだったからだ。
言語を解せぬ原人にとって、それは何よりも堪えるものだった。
どんな爪や牙よりも痛かったし、どんな咆哮よりも響いた。
同時に決意を固める。大声で泣き縋るシルヴィを抱きしめながら心に決めた。
この娘はオレが守護(まも)らねばならぬ。
過去自分にできたような友達を作ってやりたい。友達を作ってあげて、笑わせてやりたい。
この瞬間、この戦いでの彼の望みが決った。
【CLASS】
原人(プリミティブ)
【真名】
ピクル@範馬刃牙&ピクル
【ステータス】
筋力A++ 耐久A++ 敏捷A++ 魔力- 幸運A+ 宝具-
【属性】
中立・中立
【クラス別スキル】
対魔力 EX
一億年近い過去の人類はそれ自体が奇跡の産物。その神秘性はどんな英霊とも比べられない。
種別を問わず、『魔術』に分類される物ではピクルを害することは不可能。
【固有スキル】
原始の肉体:A+
生物として完全な肉体を持ちながら、恐竜との戦いの中で磨かれた無類の肉体。
このスキルの所有者は、常に筋力・耐久がランクアップしているものとして扱われる。
捕食:A
敵対したサーヴァントとの勝負に勝った時に相手を捕食、または攻撃として噛み千切った際にその肉を喰らう。
このスキルの所有者はサーヴァント・及びマスターの肉を喰らった際、魔力が充填される。
千里眼:C
視力8.0以上。
白亜紀闘法:-
障害物を蹴ってそれをバネとして、超スピードで跳ね返る技術。
超一流のファイターですら目に負えないそれは、発動時に敏捷が一ランクアップする。
最終形態:-
骨格を変化させて攻撃力を大幅に上げる。
発動時、筋力に+補正がかかる。
【宝具】
なし
【戦術・方針・運用法】
守護(まも)り抜く。シルヴィは庇護欲をそそるが、単体では非常にか弱い存在なので常にピクルが戦う。
ピクルとしては集団に属し、その中にシルヴィを置きたい。自分一人よりは安全だろうし、何よりできる限り多くの友達を作ってあげたい。
襲ってくるものに対しては戦うし、食す。そうされるのは好きだし望んではいる。出来るなら自分も好んで狩りに行きたいが、シルヴィを最優先する。
刃牙や克己など多くの現代ファイターから社会を学んだ原人は、むやみに争う事を善しとはしない。
意思疎通は複雑なもので無ければなんとかなる。
【マスター】
シルヴィ@奴隷との生活
【マスターとしての願い】
ピクルの好きにさせたい。
ピクルともっと仲良くなりたい。
【weapon】
なし
【能力・技能】
無いが、非常に庇護欲をそそる。撫でたくなるし、嵌った者は撫でるだけで一日が終わってしまったりする。
【人物背景】
奴隷。数々の拷問を受けて心を閉ざしていたが、物言わぬピクルとの邂逅で少し心が開く。
【方針】
できる限りピクルに従う。
聖杯戦争の具体的なことはわからないが、ピクルの身振り手振りから何か大きな戦いに巻き込まれたことだけは理解している。
>>849
追記
【weapon】
肉体
【サーヴァントとしての願い】
シルヴィを守護(まも)りぬく。シルヴィに友達を作ってあげたい。
そのうえでできるならば、自分も戦いたい
【人物背景】
古代の地層から蘇った原人。恐竜を素手で殺し捕食していた。
銃弾をも通さない鋼の肉体、頸椎が水牛並、警官隊・軍隊・M.P.B.Mを圧倒するなど尋常ではない戦力を持っている。
投下終了です。
ミスってショック受けたので奴隷との生活で癒されてきます
皆様、投下お疲れ様です
自分も投下します
太陽が完全に沈み、空が暗く染まった頃に、自衛隊駐屯地のゲートに大きな影が訪れる。
ゲートの管理をしていた警備兵はその影の正体が2メートルをゆうに超える、軍服と鉄兜を身に着けた大男だと見抜くと、即座に敬礼の姿勢を取った。
どうやらこの大男はそれなりの地位にいる者らしく、今日の課業を終えて自宅に帰る予定らしい。
本来、自衛隊に所属している者は駐屯地で寝泊まりするのが常識であるが、それには例外が存在する。
自衛官の内、既婚者あるいは幹部以上の階級の者は、例外的に自宅での生活を許されるのだ。
今、こうして駐屯地を出た大男も幹部にあたる階級についており、他のサラリーマンと同じく駐屯地へ通勤する身だった。
警備兵は大男にねぎらいの言葉をかけて、駐屯地を離れていく大きな影を見送る。
独り残された警備兵は、あんな大きな人はこの基地に1人しかいないからわかりやすいなあ、などと取り留めもないことを考えていた。
大男は、デカい図体を持ちながらも、狭い歩道の上を電柱を避けながら何とか歩く。
大男の身体は特に上半身の筋肉が異常といっていいほど発達しており、初見の者ならば同じ人間とは思えないであろう。
しばらく進むと、横断歩道に差し掛かる。信号を見ると、赤色だった。
大男の隣には、腰の曲がった老婆が佇んでいた。大きな手荷物を持っており、少し辛そうだ。
そんな老婆を見かねて大男は、
「肩をお貸ししましょうか?」
と声をかけた。
真上からかけられた言葉の方へ老婆が向くと「ひぃ」と小さく声を漏らしてただでさえ小さい身長がさらに縮んでしまった。
大男は体格や手首辺りに装着している赤い手甲もさることながら、顔も威圧的だった。
頭につけた鉄兜の中から覗いている、青でも黒でもない、白い瞳――つまり大男には黒目がないように見える――の眼光が老婆を睨む。
「ここから遠いのであれば家まで送りましょう。遠慮はいりませぬ。どちらにございますか?」
大男は、老婆を気遣って声をかけることができるほどに心優しい人格なのだが、気圧されてしまって老婆は声を出すことができない。
それでも老婆は何とか勇気を振り絞り、震える手で自身の家のある方向を指さした。
「承知しました」
大男は老婆を荷物ごと持ち抱え、青信号を渡った。
◇ ◇ ◇
「ごめんねぇ、こんなに歩かせちゃって」
「礼には及びませぬ」
老婆の家につくと、大男は老婆を丁寧に降ろした。
老婆は笑顔で大男を見て、感謝の言葉を並べる。
ここに来るまでの過程ですっかり打ち解けたようで、「人って見かけによらないねぇ」と言いながら大男を恐れていた自分を恥じている節さえ感じられた。
「では、私はこれで」
「本当に、ありがとうね」
老婆に別れの挨拶をして大男はその場を立ち去った。
大男を見送る老婆が見た男の背中はとても頼もしく見えた。
大男はそのまま老婆の家からしばらく歩いて、ふと空を見上げる。
青黒い夜空の真ん中には儚げに光る月があり、絵画にすればいい風景画になるだろう。
自分の傍らにパレットとキャンバスがないことを少し残念に思いながら、大男は再び歩き出す。
大男はいつもこの夜空を見て思うのだ。
自分が電脳世界にいて、ここが現実とは似て非なる空間とは思えない、と。
「私のサーヴァントはまだ来ない…か」
大男はこの電脳世界で記憶を取り戻し、マスターとなる権利を得ているも、まだサーヴァントとなる英霊は降臨していない。
聖杯戦争のルールはいつしか頭に叩き込まれていたので、正体を隠し通して自衛隊の幹部としての生活ができている。
しかし、最近大男の暮らす街では迷宮入り必至の殺人事件が増えていると聞く。
マスターとしての記憶を持つ大男にとって、それがサーヴァントを召喚した主従の仕業であることは想像に容易い。
聖杯戦争の脅威は、すぐそこに迫っているのだ。
―――キャアアアアアアアアアアッ!!
「むっ!?」
噂をすれば、突如大男の耳に甲高い女性の悲鳴が聞こえた。
そして遠方からでもわかるほどの強い殺気が大男の神経を撫でる。
サーヴァントがNPCか他のマスターを襲っているのだろう。
元より聖杯戦争を認めるつもりはなく、自分の痛みは耐えられても他人の痛みを見過ごすことができない大男がその女性を救いにいく以外の選択肢を取ることはなかった。
「致し方無い、私が一人で向かうしかないか……!」
サーヴァントが来ていない以上、大男は単身で行動せざるを得ない。
それでも、大男はその強靭な肉体を武器にサーヴァントへ立ち向かうであろう。
彼の持つ『信念』はあらゆる力を打ち砕くと、大男――ポチョムキンは信じているのだから。
◆ ◆ ◆
夜の廃工場にカツカツカツと地面に靴を打ち付ける音が木霊する。
女性が出せるだけの速さで足を動かして何かから逃げていた。
その刹那、鎧を纏った影が女性の眼前に回り込む。
セイバーのサーヴァントであった。片手に剣を握っており、それを女性に向けている。
女性はここまで全速力で走って来たために肩で息をしているのに対し、セイバーは涼しい顔で女性を睨んでいた。
「許して…誰にも言わない、誰にも言わないからっ!!」
「……許せ、マスターの命令だ。無下にはできぬ」
この女性は、運悪くセイバーの主従が魂喰いのためにNPCを殺害している現場に出くわしてしまい、
無慈悲にもマスターからセイバーに目撃者の口封じを命じられたのだ。
セイバーは魂喰いや今のように無関係なNPCを手にかけることに抵抗はあったが、彼は己の感情よりもマスターへの忠誠を優先する性格だった。
目の前の存在はあくまで聖杯に再現された人形…そう割り切って、女性を殺めるべく、女性に肉薄しつつ剣を振った。
「あ――」
女性には、この瞬間がいやにスローモーションに感じられた。
しかし、彼女には自身に迫る剣を見ていることしかできず、ただ、この身に入ってくる痛みを待っていた。
が、女性を襲ったのは痛みではなく、自分の周囲が暗くなったという感覚だけであった。
彼女の上を巨大なものが通っていることだけはなんとなく分かった。
「メガフィスト!!」
セイバーは突如女性を飛び超えて拳を突き出してきた巨大な影を視認し、女性を斬りつけることを一転して取り止め、振り下ろそうとした剣を飛び退きながら逆に振り上げて拳をはじいた。
「……ぐっ!?」
セイバーが剣で受けた拳の重圧は人間のそれとは思えないほどに重く、最優とされるセイバークラスで現界している自分でも真向の力勝負は向こうに軍配が上がるだろうと感じ取れた。
巨大な影が地面に着地するとともに、周囲で小さな地震が起こった。
まるで10階建てのビルの屋上から4トントラックを落としたかのように廃工場全体が強い揺れに包まれた。
女性の前に立ち塞がった巨大な影の正体は、軍服と鉄兜に身を包んだ巨人であった。鉄兜の中で白い目が威圧的に光っており、セイバーを敵と見ていることがうかがい知れる。
女性は先ほどの揺れで足元を崩し、へたり込んでいる。
「君、無事か。ここは私が死守する、無事ならば今すぐここから逃げるんだ!」
女性は突如現れたポチョムキンの風貌に恐怖を抱きつつも、生にしがみつきたい一心でそのまま逃げていった。
セイバーは女性を追うようなことはせず、目の前で対峙しているポチョムキンを睨む。
「貴様、何者だ…?気配は感じ取れなかった。その外見からしてアサシンではあるまい。だがこの力、人間にしてはあまりにも――」
「あいにくだが、私は正真正銘の人間だ」
それを聞いたセイバーは目を丸くするが、すぐに冷静になり、辺りを見回す。サーヴァントの気配は感じられない。
「その人間がここに何の用だ。恐らくはマスターであろうが、サーヴァントはまだいないようだな」
「サーヴァントがいなくとも、私がいる」
「確かに単純な力が強いことは敵ながら認めよう。しかし、それ以外の能力はどう埋め合わせる?その均衡の取れていない身体で私を相手にどう戦う?」
「試してみるがいい。両手の足に勇気を込め、両の拳に大義を込め、抜山蓋世の気を持って、このポチョムキンがお相手申し上げる」
そこから人間と最優のサーヴァントの戦闘に入るまで時は経たなかった。
セイバーが人間の動体視力の及ばないスピードでポチョムキンを斬りつける。
ランサーでなくともセイバークラスは直接戦闘に長けたクラスで敏捷も高水準にまとまっている。
迫ってくるセイバーの剣に対して、ポチョムキンは腕を前面で交差させて防御態勢を取った。
「……力が強いだけでなく、硬いのか」
セイバーの剣はポチョムキンの丸太どころかバオバブの幹のように太い二の腕には、軍服に小さな傷をつけこそすれ、それが有効打になったかといえば答えはノーであり、
このまま打ち付ければ宝具の剣ですら折れかねない強度であった。
「…ならば!」
セイバーはすぐに後退したと思うとポチョムキンが反応を許さず背後へ瞬間移動してみせた。
ポチョムキンはセイバーが移動したことを発生した風で感じ取り、背後へ回られたことを悟って目を見開くも、既にセイバーは攻撃を開始していた。
「速い…!」
「力と硬さで勝てぬのならば速さで勝負させてもらおう」
ポチョムキンは筋力と耐久においてはセイバーよりも上を行っていたが、敏捷は大きく差をつけられていた。
セイバーの剣がポチョムキンの背中を斬りつけ、痛みと流れ始めた血がポチョムキンの顔を歪ませる。
「ぐっ…!なるほど、さすがは最優と言われているだけはある…!」
「まだ終わらんぞ!」
セイバーはポチョムキンの周囲を縦横無尽に駆け回り、着実にその軍服の中の身体に傷を刻んでいった。
それをポチョムキンは反応できる限り上半身の肉体で防ぐ、いなす、防ぐ、いなす。その甲斐もあってセイバーの攻撃の半分のダメージを軽減できていた。
決して無傷・軽傷とはいえない傷だが、全てをまともに食らっていたらポチョムキンといえど戦闘不能になっている。
ここに観戦者がいたならばポチョムキンの圧倒的不利、防戦一方だと信じてい疑わないだろう。
「やはり強いな…確かに人間の身でサーヴァントに挑むことおこがましいかもしれん。――だが!」
セイバーの一撃を何とか肩を斬らせることで防いだポチョムキンは、空中で離れていくセイバーが着地することを見越して、
その1トンもかくやという巨体の体重の全てを地面にぶつけ、女性を救った時よりも大きな地震を起こした。
一歩セイバーの行動を読み間違えればさらに不味い状況になるリスクも孕んでいたが、決死の覚悟でポチョムキンは自身の修めた技を繰り出した。
「スライドヘッド!!」
「何っ!?」
セイバーは着地の一瞬の隙を突かれ、地震に足を取られて転倒してしまう。
それを好機と見たポチョムキンは、己の出せる全力のスピードでセイバーに肉薄する。
「決死の覚悟なくして勝利を得られぬことは承知の上!今度はこちらの番だッ!!」
傷ついた身体など何のこれしきと言わんばかりにポチョムキンが飛び跳ね、起き上がっているセイバーを空中から重量に任せて両拳を振り下ろす。
セイバーは咄嗟に剣でガードするが、その拳の重圧はナイアガラの滝のごとく剣に殺到してセイバーの身体に響き、顔に焦りが浮かぶ。
この距離が圧倒的に不利と見たセイバーはたまらず退避するべくその場から飛び退くが、その行動もポチョムキンに読まれていた。
宙に飛び立ったセイバーの身体をポチョムキンの人間とさして変わらぬ大きさの手が包んで掴み取る。
そしてポチョムキンの軍服から蒸気が湧き出ると共にセイバーを包む手が炎に燃え、鉄をも溶かす熱を帯びる。
その熱が拘束されて動けないセイバーを焦がすにつれてセイバーの表情が苦悶に歪んでいく。
このままでは不味いと判断し、セイバーはひとまずポチョムキンの攻撃を無効化するべく霊体化する。
この状態ならば物理的干渉を受けず、なおかつ科学を始めとした神秘の薄い攻撃を無効化することができる。
だが、セイバーは運の悪いことに、ポチョムキンはその法則が通用しない世界の出身であった。
「ヒート……エクステンド!!」
「ぐはっ!!」
手甲に込められた火薬でセイバーを爆殺せんばかりの爆発がポチョムキンの手中で生じ、霊体のセイバーが数十メートル先に吹き飛ばされた。
実体化して何とか受け身を取り、態勢を立て直すセイバー。セイバーが受け身を取る合間も、まだ攻めの手を緩めるまいと、ポチョムキンは再度セイバーへ近づく。
「バカな…。なぜあの科学に依っている攻撃に神秘が宿っている…?」
本来、人間がサーヴァントに損傷を与えるには、その攻撃が神秘を纏っていなければならない。
先ほどのポチョムキンの繰り出した技――ヒートエクステンドは、どうみても科学による攻撃であった。
マスターの魔術を見てきたセイバーからは、とても神秘が宿っているようには見えない。
しかし、セイバーはポチョムキンの攻撃により確実にダメージを受けていた。
つまり、あの攻撃は相応の神秘を帯びていたということになる。
セイバーの知らぬことだが、ポチョムキンのいた時代は2180年以降の時代。
その時代では科学は衰退、禁止され、代わりに法力と呼ばれる力が台頭して世界中に行き渡っていた。
その科学技術を継承してそれを崇拝しているのは、世界中を見てもポチョムキンの属するツェップ科学王国のみであった。
このことから本来はありえないが、ポチョムキンの持ち込んだ軍服や手甲などの装備は神秘を帯びており、サーヴァントに攻撃が通用するようになっていたのだ。
「受けてみろ、我が48の必殺――」
セイバーがあれこれと思案している内にポチョムキンは既に距離を詰めており、今にもセイバーに攻撃せんと腕を動かしていた。
(ここは退いた方がいいか)
トドメとばかりにポチョムキンのセイバーを掴もうとした手は、虚しく空を切った。
セイバーが選んだ選択肢は、霊体化してからの退却。
この男は、セイバーの予想以上に危険だ。規格外の筋力・耐久に加え、何故か神秘の宿る科学による攻撃。
まだ監査役からの通達は何も為されていない。マスターの期待に沿う結果か否かは別として、ここは諦めて素直に引き下がった方が得策だ。
セイバーは霊体のまま、素早くポチョムキンの得意な間合いの外へ逃れ、マスターの元へ帰っていった。
「…何とか凌ぐことができたか」
痛む身体を労わりつつ、その場に体を休めるべくポチョムキンは地面に座る。
あのまま追い込んでいなければ、やられていたのは自分かもしれない。
あの時の一瞬の判断が、ポチョムキンの命運を分けたのだ。
しかし、ポチョムキンは女性を助けたことに後悔はない。
誰だか知らないが決して聖杯戦争の黒幕の思い通りにはならないと心に決めていた。
聖杯戦争の過程で弱者は救い、黒幕をあぶり出す。
それがポチョムキンの方針だった。
「ム……」
ところがその刹那、ポチョムキンの近くで突如発行体が現れ、風が強く吹き付ける。
台風かと見紛うほどの空気の流れはポチョムキンをも怯ませ、廃工場に散らばっていた砂塵を残らず吹き飛ばした。
「な、何だ……!?」
眩い光がポチョムキンの視界を覆いつくす。
数瞬後、光が収まりポチョムキンのの目が暗闇に慣れてくると、目の前には先ほどのセイバーと同じように鎧で身を纏った強面の男が剣を構えていた。
「――待たれい!自分のマスターに刃を向けようとする輩は許さないのである!セイバーとして現界した自分がお相手いたす!!」
「……先ほどの敵なら、既に退けたが」
「……へっ?」
目の前の剣士は間の抜けた表情でポチョムキンを見た。
剣士は少し考えるそぶりを見せてから廃工場を見回す。
敵と思われる者はいない。目の前の大男は威圧感さえ感じさせるがサーヴァントの気配は感じない。
「……」
どこか虚しさと切なさを感じさせる哀愁を漂わせながら、ポチョムキンの前に現れたサーヴァントは剣を収めた。
「……もしや、貴殿が自分のマスターであるか?」
「…恐らくは。私の名はポチョムキン。見ての通り手こずったが、何とかサーヴァントを撃退した」
「何と、人間でありながらサーヴァントと渡り合うとは!ポチョムキン殿はその肉体に違わぬお力をお持ちでおられるようですな。感服いたしました!」
「して、貴殿の真名は?最優と言われるセイバーのサーヴァントが同志となるならば心強いが」
「申し遅れました。自分の真名はアデルバート・スタイナー。セイバーとしてこの地にはせ参じたであります」
遅れて召喚されたポチョムキンのサーヴァントは、アレクサンドリアに仕えていた騎士であった。
◆ ◆ ◆
ポチョムキンは、夜の街の中で帰路についていた。
体中には応急処置の跡が残されており、直に見るとかなり痛々しい。
しかし、敵サーヴァントと交戦する前と違ったのは一人の同志が霊体となって傍にいることだった。
『なるほど、つまりポチョムキン殿は聖杯戦争を止めるおつもりなのですな?』
『ああ。この拳は人を殺めるために振るわれるものではない。ましてや、無関係な者の命を平気で刈り取る聖杯戦争を認めるわけにはいかない』
霊体のスタイナーにポチョムキンは己の聖杯戦争に対する心持ちを念話で語る。
ポチョムキンにはツェップがまだ軍事国家であった頃、奴隷兵士として望まぬ戦いを強いられていたという過去がある。
科学を、力を、英雄を他人を手にかけるために使うなど、ポチョムキンには到底認められるものではなかった。
『何よりも私には敬愛する大統領がいる。守るべき国がある。ツェップに尽くすために一刻も早く戻らねばならんのだ』
今のポチョムキンには、守るべきものがある。自身の属しているツェップに元上官であり現大統領のガブリエル。
何もできずにこんなところで死んでいてはツェップに捧げた忠誠が廃る。
ポチョムキンには帰るべき場所があるのだ。
『……ポチョムキン殿のお気持ち、このスタイナー、よくわかりました。自分も戦争の悲惨さを知っております故、微力ながらもポチョムキン殿に助力させていただきます』
聖杯戦争を止めるというポチョムキンに、スタイナーは迷わずに助力を申し出た。
スタイナーには五歳の頃に戦災孤児になっていたという過去がある。
そして、ジタン達によるガーネット姫の誘拐を切欠とした一連の事件の記憶がある。
そんなスタイナーだからこそ、聖杯戦争を認めないというポチョムキンに対して強く賛同できた。
(「無力な者は保護する」…か)
(『おせっかい』になってみるのも悪くはないのかもしれないのであるな)
ポチョムキンの方針を聞き、スタイナーが思い返したのは『おせっかい』な盗賊の少年だった。
【クラス】
セイバー
【真名】
アデルバート・スタイナー@ファイナルファンタジーⅨ
【パラメータ】
筋力B++ 耐久A 敏捷D 魔力C 幸運B 宝具D
【属性】
秩序・善
【クラス別スキル】
対魔力:C
第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。
大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない。
騎乗:C
騎乗の才能。大抵の乗り物、動物なら人並み以上に乗りこなせるが、
野獣ランクの獣は乗りこなせない。
【保有スキル】
魔法剣:A
種別:対人魔剣 最大捕捉:1人
魔法を刀身に宿らせて斬ることにより、威力の底上げをする魔剣。
敵の防御スキルを貫通するがセイバー一人では発動できず、キャスター等の魔術を扱える者と共同戦線を張る必要がある。
剣技:A+
剣術を極めし者が習得できる特異な技。
効果は技によって異なるが、敵の筋力、耐久あるいは魔力を一時的に低下させたり、魔力を消費してより強力かつ広範囲な攻撃をすることができる。
守るべきもの:A+
セイバーの守りたいものを守るために戦う強い覚悟と信念。
他者を守る時、全パラメータが上昇し、Bランク相当の戦闘続行を得る。
【宝具】
『奮えよ我が心(トランス)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:― 最大補足:―
強く感情が高まると自動で発動する宝具。
発動時には自身のバットステータスを全て解除する力があり以後はゾンビ化を無効化できる。
また容姿が変わり、荘厳な甲冑を全身に纏った騎士の姿へと変貌する。
発動中は筋力を三倍化し、それ以外のステータスを1ランク引き上げる。
【weapon】
・ラグナロク
神々の文字が刻まれた騎士剣。
スタイナーの扱ってきた剣の中でも最高級の威力を持つ。
【人物背景】
アレクサンドリア王国女王ブラネ付の近衛騎士にして直属の兵隊プルート隊を率いる強面の隊長。
生真面目で頑固な硬骨漢で、上から下された命令には絶対的に従おうとする、盲目にも近い忠義心の持ち主。
それゆえに自由奔放で規律に縛られないジタンとは基本的にそりが合わず、
なおかつジタンが盗賊でガーネット誘拐を企てた「タンタラス盗賊団」の一員と言うこともあって、何かと目の敵にしている。
その一方ではビビを『ビビ殿』と呼び慕っており、彼のことを子供ながら敬意を以って接している。
当初は融通の利かなさが目立ち、ガーネットに城へ帰ろうと幾度となく進言し、無視されてしまうこともしばしば。
しかしバクーに「自分の無いヤツ」と指摘されてからは、物語が進行するに従って自分で考えることを覚え、
権力と希望の板挟みを通じて「自分が本当に果たすべきことは何か」という命題を抱えるようになる。
そして物語も佳境に差し掛かり始めると、徐々に人として精神的な成長を遂げ、
守るべきもののために戦う強い覚悟と信念を持ち、騎士の名に恥じぬ『漢』と呼べる頼もしい人間となっていく。
また、物語の過程で徐々にではあるがジタンのことを認めていくようにもなる。
【サーヴァントとしての願い】
マスターと共に戦争を止める。
【マスター】
ポチョムキン@GUILTY GEARシリーズ
【マスターとしての願い】
ツェップの信念のもと、聖杯戦争を打破する。
【weapon】
・軍服、手甲を始めとする装備
ポチョムキンは科学の衰退した2100年代後半から来たため、ポチョムキンの使う科学による攻撃には相応の神秘が宿っており、サーヴァントに通用する。
【能力・技能】
・圧倒的な筋力と耐久
巨大な体躯に圧縮され鍛え抜かれた筋肉とツェップ流の格闘術を組み合わせたサーヴァントをも凌駕する身体能力。
機動力は鈍いが、筋力と耐久に関してはサーヴァント換算でAランク、またはそれ以上を行く。
【人物背景】
浮遊大国ツェップの士官。
身の丈2メートルを超える巨漢で、特に上半身が異常に発達している。
威圧的な外見に反して性格は心優しく紳士的で、頭の回転も速い。趣味は絵を描くことである。
元は奴隷兵士で、望まぬ戦いを強いられていたが、初代のEDにて実はそれが全てガブリエル教官によるクーデターの下準備であったことを知る。
当初は威圧的で軍国主義の塊に見えたガブリエルを嫌悪していたポチョムキンだったが、彼の器量の大きさに感服し、尊敬するようになった。
その後クーデターは成功、ツェップは平和的自治を手に入れた。
自由を得たポチョムキンは、その後大統領となったガブリエルの臣下として治安維持や兵士の育成など様々な任務についている。
参戦時期はXrd開始直前、2187年10月21日以前。
【方針】
無力な者は保護し、この聖杯戦争の黒幕を探す。
以上で投下を終了します
スタイナーのステータスは「二次キャラ聖杯戦争・聖杯大戦」の候補作にいるビビのステータス表を参考にさせていただきました
ありがとうございます
皆様投下お疲れ様です
私も投下させて頂きます
最初に思ったことは、空っぽだということだ。
自分の中に何もない、自分が何者なのかさえ分からない空虚さ。
霞がかった記憶の断片も、それが何を意味しているのかがわからない。
「オレの記憶は、オレの『思い出』はどこに行った……?」
次に感じたことは、不安。
何もない自分は何を根源とし動けばいい。何を支えに立てばいい。
記憶の断片への霞は時を増す毎に強くなり、このまま内側から壊れてしまうのではないかと恐怖を生む。
「パ、パ……」
絞りだすように。
父親を求め、か細い声を上げた。
だが、わからない。
助けを求めようとしている父親がどんな人物なのか。
自分の中で父親がどのような存在だったのか。
何故、この状況で求めたのが父親なのかさえも。
「誰、か……オレの『思い出』を……取り戻してくれ……」
「それがお前の願いか」
響く自分以外の声に、顔を上げる。
いつからいたのか、黒い衣装に身を包んだ金髪の男が少女の前に立ち、その蒼い瞳を向けていた。
それを認識すると同時に、空っぽだったはずの自分の中に、ハッキリと思い出せる記憶が存在していることに気づく。
「……お前は、オレのサーヴァント、なのか?」
セイバーだ、とだけ男は返す。
無愛想だな、などと感想を抱きつつ、少女は俯く。
少女の頭に浮かんできた記憶、それは彼女の不安を晴らせてはいない。
明らかな異物感、他の断片とは繋がりようもないその記憶の存在は、返って少女の空虚さを強めていた。
「力を貸してくれ、セイバー……オレは、『思い出』を取り戻したい」
「……後悔はしないか」
セイバーの言葉に首を捻る。
思い出を、記憶を取り戻すことで後悔などするわけがないと。
「『思い出』は、時に牙を向いて己を傷つける。俺は何度も、自分の『思い出』に負けそうになった」
その言葉の意味を、少女が正確に理解できたかは分からない。
それでも心の内に、自身へと警鐘を鳴らしている記憶の断片が存在することを認識した。
思い出すべきではないと、己の行い、所業は今の彼女を傷つけることだと。
だが、そうだとしても。
「今のオレには、他に選択肢はない。このまま内側から朽ちて、壊れ、消え去ることを、何故許容できる!」
「……いいだろう、アンタの戦いに力を貸そう」
思わず叫ぶ少女へと短く告げ、セイバーは踵を返して歩き出す。
「……待て、セイバー。お前は、聖杯に何を願う、お前の戦う理由はなんだ?」
少女の問いかけに、セイバーは肩越しに振り返り、ただ、一言。
「―――興味ないね」
全ての『思い出』を失った少女、キャロル・マールス・ディーンハイム。
長き間『思い出』の英雄と戦い続けた男、クラウド・ストライフ。
二人の戦いは、ここから始まる。
【クラス】
セイバー
【真名】
クラウド・ストライフ@FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN
【パラメータ】
筋力A 耐久B 敏捷B 魔力C 幸運D 宝具B
【属性】
中立・善
【クラス別スキル】
対魔力:B
魔術詠唱が三節以下のものを無効化する。
大魔術・儀礼呪法などを以ってしても、傷つけるのは難しい。
騎乗:B
騎乗の才能。大抵の乗り物、動物なら人並み以上に乗りこなせるが、
魔獣・聖獣ランク以上の獣は乗りこなせない。
【保有スキル】
セフィロス・コピー:EX
伝説のソルジャー、セフィロスと同等の身体能力になることを目的とした人体改造実験を長きに渡って施された。
筋力、耐久、敏捷が向上するが、精神に異常をきたしてしまう。
オリジナルのセフィロスから操られるが、クラウドは仲間たちの助けもあり、精神異常と共にそれを克服している。
戦闘続行:B
名称通り戦闘を続行する為の能力。
決定的な致命傷を受けない限り生き延び、瀕死の傷を負ってなお戦闘可能。
直感:C
戦闘時、つねに自身にとって最適な展開を「感じ取る」能力。
星の開拓者:EX
人類史のターニングポイントになった英雄に与えられる特殊スキル。
あらゆる難航・難行が、「不可能なまま」「実現可能な出来事」になる。
その時代の記述力では一歩足りない難行を人間力だけで乗り越える、一握りの天才ではなくどこにでもいる人間が持つ『誇り』を燃し尽くす力。
【宝具】
『機械仕掛けの刃狼(フェンリル)』
ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:― 最大補足:―
クラウドの愛車である大型バイク。
内部には6本の合体剣が搭載されており、両サイドが開く事によって取り出すことができる。
『星の守護者たる究極剣(アルテマウェポン)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1
使い手の生命力を攻撃力に変える剣。
装備者の生命力が高ければ高い程威力が高まる。
紫と白の半透明な刀身を持つが、装備者の生命力が減る毎に青白く変化していく。
また、この宝具の使用中に限り「超究武神覇斬Ver.1」とでも言うべき15連斬りが可能となる。
『友との絆の証(バスターソード)』
ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1
身の丈ほどもある巨大な片刃両手剣。
神秘性・攻撃力共に低く、実用性は低い。
だが、クラウドを語る際に、この剣については欠かせない物である。
【weapon】
・合体剣
通称「ファースト剣」をベースに合計6本の剣が組み合わさっており、戦闘中は必要に応じて合体、分離させて戦う。
二刀流で戦う。一本を壁に突き刺し足場にする。ブーメランのように投げて攻撃する等、クラウドは様々な用途で使いこなす。
この武器を使う際の必殺技は「超究武神覇斬Ver.5」、Ver.1とは全く別物であり、分離させた剣による連続斬りとなっている。
【人物背景】
元は神羅カンパニーの一般兵士であったが、セフィロス・コピー計画と称された人体実験のサンプルにされてしまう。
実験の影響で魔光中毒となり、その後、中毒状態の意識のままミッドガルにてティファと再会した際、
彼女の記憶をクラウド自身のジェノバ細胞が読み取り、またその折に自分が理想とするクールな性格や、
何かと都合の良いザックスの立ち位置や経歴などが、クラウドの素の人格に混ぜ合わさって「偽りのクラウド」が無意識に作り上げられた。
『FFVII』の戦いで、己の弱さから目を背けるのをやめ、本当の自分を取り戻し、内向的な性分を乗り越えたかのように思えたが、
ようやく手に入れた平和な日常への戸惑いやエアリスを守れなかった事、ザックスへの自責の念、また星痕症候群の発症などにより、
「偽りのクラウド」だった時の暗い性格へと戻ってしまう。
その後、仲間たちからの叱責や、復活したセフィロスとの戦い、ライフストリームの中でのエアリスやザックスの助けもあり、再び前を向くことができた。
筋金入りの乗り物酔いだが、自分で運転する分には酔わないらしい。
【サーヴァントとしての願い】
興味ない
【マスター】
キャロル・マールス・ディーンハイム@戦姫絶唱シンフォギアGX
【マスターとしての願い】
『思い出』を取り戻す
【weapon】
無し
【能力・技能】
『思い出』の無い彼女に扱える能力は無い
【人物背景】
悠久の時を経て錬金術の全てを統括・習得した錬金術士。
かつては天真爛漫を絵に描いたような少女であったが、万象黙示録の計画を進める内に自らを「オレ」と称し、
目的の為なら手段を選ばない冷徹さと、不慮の事態に激情して暴走してしまう感情的な二面性の持ち主へと変貌を遂げていった。
過去に同じく錬金術師であった父・イザークを処刑され、「消えてしまえばいい思い出」と述べている。
イザークが死の間際遺した「世界を識る」という言葉に対し、数百年を経て「世界を分解して解析することで、万象黙示録を完成させる」という解答を導き出し、自ら創り出した兵を率いて活動する。
万象黙示録を完成させるための計画の最中、機動部隊「S.O.N.G.」と激闘を繰り広げ、その戦いの最後に全ての『思い出』を償却、記憶を全て喪失してしまう。
四大元素(アリストテレス)をはじめとする様々なエネルギーを自在に使いこなす強大な戦闘能力を秘めているが、
それらは全て『思い出』を償却し使い捨てのエネルギーと変換錬成する必要があるため、現在の彼女には使うことができない。
【方針】
聖杯を手に入れる
以上で投下終了です
投下します。
夜の街。
静かで、どこか金属じみた冷たさを、都市は放っていた。
アーチャーがかつて居た世界のように、「蒸気」という不思議な暖かさを持つ技術は都市を支えていない。
あそこで光るネオンを、まだ疎らに明るいオフィスの窓を、この街全体を包むような黄色い光を──「電気」によって構成しているという事。
全く、別の技術によって発展した日本やフランスがあり、そして、それが当然の常識になっている。
それがこの世界であった。
現世に顕現した時に、知識として「電気」の事を知ってはいても、アーチャーの身体はまだそれに慣れてはいなかった。
結局のところ、世界を発展させたのが「蒸気」であるにせよ、「電気」であるにせよ、視える景色の殆どはさして変わらない。
強いて言うなら、電線と、それを繋ぐ電柱がアーチャーの弓の軌道上で根を張り、これが時として攻撃の邪魔をするという程度であろう。
しかし、何気なく生活を支えていた「蒸気」が無くとも世界が発展している事実は彼女に少なからずのショックを与える。
それは、アーチャーの感覚を些か狂わせようとしたが、しかし、彼女は、それも含めて自らが冷静な「射撃」を行えるよう努めた。
この程度の事で手元を振るわせれば、これから先、もっと取り返しの付かない事になる。
微かにでもずれ込んだ手元の狂いは、狙いから大きく逸れる軌道を描き、時として自分の仲間にさえ痛手を負わせてしまう。
彼女が触れているのは、そういう武器だった。
────だから、試験を開始する。
「……」
屋上からは、街を見下ろせる。
日本の夜は、明るい。──とりわけ、都市はいつまでも、人々の目でいてくれる。
この時間でも、敵の姿をおおよそ照らしてくれた。
この林立したビルの隙間に──ターゲットを見る。
アーチャーの左手がぎゅっと、見た目以上に強く──弓の握りを掴んでいた。
アーチャーのサーヴァントとして名を残す者の多くは、もう少し小型の洋弓(アーチェリー)を扱うのに対し、彼女の手にあるのは、いかにも目立つ巨大な和弓。
背負った籠には、五、六本の矢が収められており、アーチャーはその内の一本を手に取り、弓にそっとかけた。
そして、ゆっくりと身体を起こすようにして持ち上げ、眼前の敵に、狙いを定める。
──集中。
感覚を研ぎ澄ませ、アーチャーは弦を引いて行く。
矢の先が突き刺さるべき対象は何処にあるのか、どう動くのか……。風はどう吹いているのか……。
いつも計算式を立てている訳ではなかったが、アーチャーは、それを五感で解した。
それよりも、常に、弓を弾く瞬間に襲いかかるのは、一瞬の緊張感だ。
失敗は許されない。
バスケットボールのフリースローや、サッカーのPKの瞬間を、常に体感する事になる競技がこの弓道に違いなかった。
「……」
それから、アーチャーは、今日までに的に向けて放った矢の幾つかを思い出した。
彼女は、これまでに、その多くを、まるで"元あった場所に返していく"かのように、的の中央に叩きつけてきた。
これまで、対象を人間にした事は一度も無いが、その実績だけあれば、もはや具体的な数など数える必要はなかった。
ここまでに積んだキャリアを回想する事で、アーチャーは今の自分の五感の信頼を高める。
あの時と同じ感覚を自分は持っているのだ。
慢心はするな。
だが、自分の腕を信じろ。
そして。
──風を切る音が放たれた。
「──っ!」
──直後、ターゲットの身体を、見事にアーチャーの矢が貫いた。
風を切った音よりも低く、鈍い音が鳴り、アーチャーの手にあった矢は目くるめく速さで、ターゲットに突き立てられた歪な杭へと変わった。
──狙いは正確であった。
英霊となってからも、精度に狂いはない。
現世に現れたのは久々ゆえ、内心些かの不安もあったが、それは杞憂に過ぎなかった。
「……ふう」
アーチャーの貌が闇の中から現る。
その肌はまるで人形のように白く、短い黒髪に生えていた。それが双方を引き立てていた。
しかし、勿体ない事に、その白い肌は顔と腕から少し覗くのみで、彼女の身体は黒衣に包まれている。
誰を弔っているのだろうか、──彼女は、喪服だったのだ。
いや、もっと言えば、彼女自身さえも、「英霊」に違いないのだが。
「命中──」
北大路花火。
──アーチャーのかつての姿は、かつてフランス・巴里にて、「巴里華撃団」の一員として戦った弓使いの乙女であった。
高い霊力を誇り、その力を以て、巴里の平和を脅かす者たちと戦い、葬って来たのである。
しかして、彼女は無暗に人を殺す事は望まず、この聖杯戦争に託す望みも、決して悲願という程のものではなかった。
ただ、マスターの期待に沿う為に、彼女はこうして武器を取る。
「……腕は、鈍っていないようね。──ごめんなさい、虎さん」
ターゲットとなった「的」の正体は、数百メートル先にあった一枚の看板である。
仰々しい虎の絵が描かれており、矢が突き刺したのはその首の真下のあたりであった。
しかし、絵の中に虎は身体を痛めず、死ぬ事もない。
アーチャーはどこか、この時は悪戯げな笑顔を見せながらそう呟き、その場を後にする事にした。
「──」
が、そこで、ある人物がアーチャーに疎らな拍手を送った。
その姿を見て、アーチャーは憮然として、口を開ける。
そこにあったのは、体格の良い男性の姿である。
彼の気配には全く気づかなかったようだ。
矢に集中すると周囲は必然的に見えなくなるという事か。──自分の弱点を一つ知る。
「──見事な腕だ、アーチャー」
薄らと優しい笑みを見せながらそう言う男性──彼が、アーチャーのマスターである。
自らのマスターを前にしたアーチャーは、慌てて跪いた。
「……マスター。起きていらしたのですか」
アーチャー──北大路花火は、男性を前には、絶対の忠義を尽くす性格をしている。
それがヤマトナデシコの儀礼だと信じて込んでいるが故だ。
女性は、男性の言う事に従わなければならない──というのが、彼女にとっての「大和撫子」の姿なのである。
日本人でありながら、幼少をフランスで過ごした彼女は、少々、日本文化に実像とは異なる捉え方をしているのだった。
現実には、彼女が生きた大正時代当時でさえ、「亭主関白」という言葉そのままな男性こそいたにせよ、「大和撫子とはかくあるべき」なる男性の儚い理想像を頑なに守る女など少数だったに違いない。
しかし、彼女は、それを覇き違えたまま大人になり、そして、気づけばそのまま英霊になっていた。
現代人からすれば、少々この性格は扱いにくくもあるかもしれない。
「立ってくれ、アーチャー。跪く必要はどこにもない」
「……はい」
アーチャーは、指示通り、やおら立ち上がり、マスターに目を合わせる。
まだ、虎を射抜く前の緊張感が、少し瞳に残っていた。
「──すみません……赤坂さん」
アーチャーは、彼の事を、「マスター」ではなく「赤坂」と呼び直す。
──男の名前は、赤坂衛という。
以前、アーチャーは、赤坂に「マスター」という呼び名がどうもしっくりこないとの事で、「赤坂」と呼ぶように言われたばかりである。
思わずマスターと呼んでしまったが、こうして訂正さえすれば、赤坂が咎める事はない。
赤坂衛は、至極冷静で、その反面で優しい男でもあった。彼は、サーヴァントであるアーチャーに何の強制もせず、少しの行き過ぎや間違いを咎める以上の事はしない。
赤坂衛は──警察官であった。
それも、警視庁の公安部に所属する、警察組織の中でも最も「危険な役職」の男である。
しかし、彼は決して、その役職を押し付けられたわけではなく、自ら安全なデスクワークに望める立場にあった中で、その役目を選んだのである。
つまるところ、彼は、警察学校の首席にして、警部補階級から警察組織に入る事が出来た、所謂「キャリア組」なのであった。
その多くは、公安部と言ってもデスクワークに配属されるのが自然な流れであるが、現実に彼は潜入捜査等の危険な任務にも就いている。
……おそらくは、彼たっての熱望が故なのであろう。
そして、そんな彼の姿は、北大路花火が生前所属した「巴里華撃団・花組」の隊長であった男を彷彿とさせる。
数えるほどしかいない超エリートの街道にありながら、安全な道を拒み、自らの手で平和を守ろうとした男。
ただ、その男との決定的な違いは──成功ばかりを掴んできた"隊長"と異なり、このマスターは、不幸なる失敗に心を砕かれた経験があるという事だった。
そこが、もしその二人の男の聖杯戦争に巻き込まれた場合のスタンスを分ける事になるのだろう。
(……)
赤坂の経験は花火自身が経験した不幸にも、よく似ていた。
生前の花火の場合、婚約者の夫を、今の赤坂の場合は、妊娠中だった妻を喪ったのである。
だから、その点において、お互いの喪失感は共有する事が出来た。
その符号が彼とマスターとを結び合わせたのかはわからないが、少なくとも、花火自身はそういう風に思う事にしていた。
最古参であるエリカ・フォンティーヌでもなく、
斧を振るい活躍した女傑のグリシーヌ・ブルーメールでもなく、
懲役千年の大悪党であると同時に巴里の平和を守った救世主でもあったロベリア・カルリーニでもなく、
帝都や紐育の英雄たちでもなく、
そして──帝都、巴里の二つの都市を守った英雄的隊長・大神一郎でもなく、
ここにいる、「北大路花火」であった理由。
彼に呼ばれたのは、「北大路花火」でなければわかる事が出来ない苦痛を持ち、それを共有できる相手であるからと──彼女は、思ったのだ。
「アーチャー。弓の練習もいいが、あまり目立つのは好ましくないな」
「はい……」
これに関しては、「場所が無かった」、というのが実際のところである。
現世に顕現してから、弓の腕前を試す機会には恵まれない。
それこそ、探してみれば弓道場はあるのかもしれないが、この時間には空いていないだろう。
「あの看板は……この辺りでは有名な暴力団のパチンコ屋か」
赤坂の手元にある双眼鏡は、虎の看板を見ていた。
アーチャーがこの時間に何をしているのか察して、双眼鏡などという物を準備をしていたに違いない。
マスターに全て見透かされていた──あるいは推理されていたという事には、アーチャーは少しの恥ずかしさを覚える。
しかし、赤坂の顔色が少し渋ったのを見て、アーチャーはそうも言っていられないとばかりに息を飲んだ。
矢が命中したのは、なかなか巨大な虎の看板の首元である。
それは、アーチャーが現世にいた頃には存在しなかった「パチンコ屋」という施設の物であった。
そして、その経営者は大抵、ヤクザ者であるという事も花火はよく知らなかった。
首元に矢が突き立てされているのは、やもすれば悪い暗示と捉える事だろう。
何せ、ああして虎を模した看板を立てるのは、組長の名前に「虎」が入っている事に由来しているのだから──。
この意味を、組の人間が何者かからの宣戦布告と捉える可能性は、実に高い。
……が、今更、矢を外しに行けるわけもない。
赤坂にはこれ以上動く事は出来ないわけだ。
「……近々、組同士の抗争が始まるかもしれないな。仕事にますます手が抜けなくなる。
──が、まあ良い。ここが実態のない世界である以上、そんな事を気にかけるだけ無駄か」
とはいえ、赤坂はさして気にする風でもなかった。
これ以降、口を塞いでいれば、矢を命中させた人間が特定される事はないだろう。
少なくとも、この場所は人間業で矢を命中させられる距離ではないのだ。この赤坂のアパートとパチンコ屋の間には幾つもの隔たりもある。
その隙間を通り抜けて矢が見事命中したというわけだが、これはまさに北大路花火でなければ不可能な芸当である。
──仮にここに住んでいる人間の仕業とわかったにしても、その相手が赤坂のような警察と知れれば、相手も簡単には手を出しては来ないだろう。
暴力団などの組織は赤坂ら公安部が対処すべき案件であり、場合によってはこの暴力団の対処も赤坂の仕事にさせられるかもしれない。
しかし、実のところ、NPCである暴力団の抗争だとすれば、赤坂もそこまで大きな危機感は持てないのも事実であった。
所詮は相手は模造された人間のデータに過ぎず、あくまでリアルな世界を再現する為のプログラムだ。
それらがデータ同士で抗争した所で、赤坂には危害は及ぶまい。
形式上、この世界の役割通りに仕事をこなさねばならないのは事実であるが。
「今後は気を付けてくれ。弓を手に取るのは、敵のサーヴァントと戦う時、だけだ」
「はい」
「まずはここを離れよう。気づかれると厄介だ」
それだけ言って、赤坂とアーチャーは屋上を離れた。
二人で階段を下りながら、これもまた、近隣住民に見られると厄介だと思っているようだった。
勿論、屋上で暴力団傘下のパチンコ屋に向けて矢を放ったのを見られるよりマシであるが、一人暮らしの三十代男性である赤坂の部屋に十代の少女(ただしこれはあくまで外見の年齢である)が入り浸っているのは決まりが悪い。
まして、こんな夜中である。ロリコンなどという噂が飛び交えば、この昨今、ここに住み続けられるかさえ危ういラインである。
ここは、赤坂が任務の為に住んでいる小さなアパートである。
近隣住民との付き合いはあるものの、それもお互い深く障らないような適度な距離感を保っていた。
娘の美雪は、亡き妻の家族に託している事になっているが、それは現実世界とあまり変わらない。
尤も、自分の娘の模造品など赤坂は見たくもなかったが……。
階段を下りる赤坂はまた、少し躊躇したかのように、奇妙なほど押し黙っていたが、再び口を開いた。
そこから出て来た言葉は、アーチャーの心を見事に言い当てていた。
「──不安だったのか? アーチャー」
アーチャーは目を見開く。
この夜も──アーチャーは、マスター以上の不安に駆られていたに違いなかったのである。
本当に、今再び、生前の感覚を取り戻す事が出来るのか……という事だ。果たして自分はマスターの役に立てるのか。
それを想うと、この夜の内にどこかで練習台を見つけて、自分の弓の腕を試すしかないと思い立った。
そして、こうして闇の中に紛れて、市街で弓を弾いてみたのである。
威風堂々の英霊もいるが、アーチャーはそうではなかった。
かつて過ごした世界との環境の違いや、現世にいた頃からのブランクに不安を持つ英霊も僅かながら居る。
英霊と呼ぶには繊細すぎるが……アーチャーは、そういうタイプであった。
しかし──結局のところ、そうした能力面の問題は、杞憂に過ぎなかったのだと、先ほど、わかった。
聖杯戦争に召喚されても尚、生前と同じように力を使えるのは、先ほどの試験で充分によくわかった事である。
が、それはつまり、それまでの不安は底知れなかったとも言えるだろう。
「すまないな、アーチャー。……君を、私の願いに巻き込んでしまって」
そうして、アーチャーに余計な負担を与えたのは、他ならぬ赤坂だ。
彼が聖杯戦争への参加を決め、安らかに眠っていた英霊を呼び覚まさなければ、こうして北大路花火が夜目覚めて不安に駆られる事もなかったに違いない。
これが英霊のあるべき姿であるとは、赤坂も思ってはいなかった。
しかし、赤坂にはどうしても叶えなければならない願いがあったのだ……。
そして、その為に、何をも犠牲にする覚悟を抱えてしまったはずだった。
それでもやはり──この英霊の微かな不安にさえも頭を下げる赤坂は、聖杯戦争のマスターになるには些か優しすぎたのかもしれない。
見かねて、アーチャーは言葉を返した。
「……いいんです。あなたの願いが、私を再び現世に結びつけた。
かつて生きた都市の未来を見守る事が出来るのなら……この現世を戻るのも悪い事ではないと。
私は、今はそう思っています。如何様にも私をお使いください。…………ぽっ」
そのアーチャーの言葉が赤坂の罪悪感を微かにでも拭える救いとなりうるだろうか。……それはわからない。
ただ、彼女は赤坂に全面的に協力する意思があるサーヴァントに違いなく、こうしてサーヴァントに反発せずに本心から相手を立てる事もある。
その気持ちを赤坂は充分に汲む事が出来た。
「私の願い、か……」
赤坂は、少し遠くを眺めるような目をした。
そして、昭和53年に訪れた村の事と、昭和58年に知る事になったある訃報を思い出した。
「アーチャー、私は……」
彼が願うのは、今の記憶を保有したまま、昭和53年の世界にまで遡るという事であった。
そうしなければならない理由がある。
かつて聞けなかった願いを聞き、そして、冷めやらぬ悪夢を止める事が赤坂の中で要されてきたのだ。
「……」
──雛見沢村。
誰も気に留めないような田舎の村であったが、現在では、その村の名前は、あまりにも有名になった。
それは、昭和58年に発生した有毒ガス事故によって村人が全員死亡した未曾有の大災害──即ち、「雛見沢大災害」を、ワイドショーが連日取り上げた所為である。
理不尽かつ大規模なガス災害が、一晩にして一つの村を崩壊させるというこの事件は、当時、日本中を震え上がらせた。
昭和57年のホテルニュージャパン火災や日本航空350便墜落事故、昭和58年の大韓航空機撃墜事件、昭和60年に発生した日航ジャンボ機の墜落なども有名であるが、それらと並んで今なお取沙汰される80年代の代表的事件の一つとなっている程である。
そして、それらと比しても多くの不審点を残すこの事件は、今なお、多くの遺族の悲しみを遺し、納得を許さず、この事件に取り憑かれた人間を増やし続けている。
何より、赤坂もまた、この事件に未だ取り憑かれる人間の一人であった。
尤も、彼の場合は、ただの知的関心や、不謹慎な興味が理由ではなかった。
──彼は、大災害の5年前、昭和53年の夏の日に、公安部の任務でこの村を訪れた事があったのだ。
そして、赤坂は一人の少女と出会った。
その少女は、昭和58年に自分が殺される事を赤坂に告げていた。
彼女には不思議な力があるらしく──それが、自分の死さえも予言していたらしいのだ。
しかし、これを実感した時には手遅れであった。
彼女の警告した通りに、任務中、妻が死んだ。
そして、気づけばその少女さえも……この世からいなくなってしまっていた。
彼女の力と叫びをわかっていたはずなのに、赤坂はその助けを求める声を、聞く事が出来なかったのである……。
少女は、昭和58年に、生きたまま腹を裂かれ、無残に殺されたらしい。
あの幼く、ただ純粋な少女が、そんなにも猟奇的な痛みと共に──。
その痛みが深かったであろうと想像すればするほどに、「何故自分は気づけなかったのか」という後悔は膨らむ。
そして、彼女が願った細やかな明日を、赤坂は後悔を積み重ねながら生きているのだ。
(私は……聖杯を得なければならない……)
その日々に終わりを告げる事が出来る力が──あの聖杯という願望器の中に込められている。
赤坂は、あれから、強くなった。
もし、あの場に今の自分がいたのならば、歴史は変わるかもしれない。
今度こそ、少女を、普通に共と暮らせる未来に連れていけるかもしれない。
そして、亡き妻の命さえも……赤坂は救う事が出来るかもしれない。
娘に寂しい思いをさせずに済むかもしれない。
……どれだけの、「かもしれない」が並ぶだろう。
聖杯さえあれば、それを現実に出来るはずなのだ。
大事な人を助けられる知識を持った赤坂が、雛見沢に向かう事ができれば──少女は、痛みを背負わない。
もう一度、「やり直す」事が出来れば……。
「……やり直してみせるよ、必ず……」
全てを頭の中で反芻させた彼は、拳を握りながら呟いた。
アーチャーは、彼の決意を聞き届ける事にした。
「そして、掴むんだ……。惨劇のない未来を……」
【CLASS】
アーチャー
【真名】
北大路花火@サクラ大戦3〜巴里は燃えているか〜
【ステータス】
筋力C 耐久D 敏捷C 魔力C 幸運E 宝具D
【属性】
秩序・善
【クラススキル】
対魔力:D
魔術詠唱が三節以下のものを無効化する。
大魔術・儀礼呪法などを以ってしても、傷つけるのは難しい。
単独行動:C
マスター不在・魔力供給なしでも長時間現界していられる能力。
Cランクはマスター不在でも1日程度なら現界が可能。
【保有スキル】
霊力:A
アーチャーが魔力の代わりに持つ力(実質的に魔力と同様の性質を持つが名称だけ異なる)。
このスキルによって宝具『霊子甲冑』を操る事が出来るようになるほか、感情の高ぶりなどで筋力・耐久・敏捷のパラメーターを一時的に上昇させる事も出来る。
大和心:B
太古よりの日本文化を解するスキル。
アーチャーは日本舞踊・書道・華道・茶道・俳句等に精通し、クラスに必須の弓道の技もこのスキルによって極められている。
弓道の段位は七段だが、宝具を合わせた技量は、人間の感覚を凌駕する次元にまで発達する。
【宝具】
『霊子甲冑』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1〜50 最大捕捉:1〜10人
高い霊力を持つ者だけが操る事が出来る鎧のようなメカ。
一見すると搭乗型巨大ロボットのようでもあるが、その性質上、騎乗スキルの有無に関わらず使用可能であり、アーチャーもこれを手足のように自在に操る。
生前のアーチャーが光武F、及び光武F2の二機を操った伝説に基づき、この二機のいずれかを選択して現界させて戦う。
この『霊子甲冑』を纏えば、筋力・耐久のステータスがAランクやBランクまで上昇し、魔族・魔物・魔獣などの怪物や巨大な機械などとも互角の戦闘を可能にする。
しかし、一方で敏捷のステータスがDランクやEランクまで下降する。まさに甲冑の如き宝具である。
アーチャーの特性に合わせて、光武Fでは弓矢、光武F2ではボウガンを装備しており、無銘の弓矢よりも射程・精度・威力の高い攻撃が可能。
アーチャーが持つ弓の技も、この宝具の発動中は威力が増す事になる。
【weapon】
『無銘・和弓+矢』
【人物背景】
1926年、フランス・巴里で発生した謎の怪人によって頻出した怪事件に対抗する為、秘密裏に結成された都市防衛組織・巴里華撃団花組の隊員。
ただし、彼女は軍隊だったわけではなく、高い霊力を隊長の大神一郎らに見込まれ、巴里を守り生きていく為に入隊した一般人である。
元々は、日本の北大路男爵家の令嬢で、フランス人の祖母を持つクォーター。幼少期から、留学という形で巴里のブルーメール家に居候している。
それ故、ブルーメール家の令嬢にして同じ巴里華撃団の隊員であるグリシーヌ・ブルーメールは幼馴染にして親友という関係。
日本の文化に精通する大和撫子だが、実のところ、海外暮らしが長い為にその認識は些か実像とはズレており、大和撫子を誤認している節もある。
婚約者・フィリップを亡くして以来、人と心を閉ざし、夫の下に逝く事を望んでいたが、巴里華撃団に入って以降は、前向きに生きる活力を持ち始めていた。
常に喪服を着用したまま行動するのは、その名残である。
また、巴里華撃団の表向きの姿は舞台「シャノワール」である為、その踊り子「タタミゼ・ジュンヌ」としても活躍していたとされる。
【サーヴァントとしての願い】
都市の恒久的な平和。
【基本戦術、方針、運用法】
アーチャーでありながら正当派の弓使いである。
宝具は実質的には3m大の搭乗型ロボットであるものの、そちらもちゃんと弓やボウガンが装備されている。
というわけで、遠距離からはアサシン的に弓で狙撃し、近接戦になった時は宝具を用いるのがシンプルな運用方法と思われる。
攻撃体勢の際の隙は大きく、また、アーチャーの性格そのものが「指示待ち」な部分もある為、マスターには一定の指揮能力が必要となる。
その点においては、赤坂がマスターである以上は問題ないかもしれない。
アーチャー自身、赤坂の指示には基本忠実に接する為、彼が指示を間違えない限りは、しばらくは効率的に戦闘できる。
【マスター】
赤坂衛@ひぐらしのなく頃に
【マスターとしての願い】
やり直し
【weapon】
『警察手帳』
彼の身分を証明するもの。
普段は警察官として勤務する為、その装備は持所持できるが、私的理由で銃を携帯する事は当然許されない。
とはいえ、彼はキャリア組でありながら公安部で前線で活躍している。銃を隠して携帯する機会は多いと思われる。
【能力・技能】
誰かを救う為に空手を習ったが故の、常人離れした戦闘力。
梨花を救えなかった世界においても、その戦闘力は昭和58年を超えた時点では相当な部類であり、場合によってはサーヴァントを相手に多少はやり合えるかも。
しかも、キャリア組で警察学校の主席。ただの筋肉バカではなく、頭も良い。
あとは、麻雀の腕も相当なレベル。
【人物背景】
警視庁公安部に所属する刑事。階級は少なくとも警部より上。
彼はかつて、雛見沢村での任務で事件に巻き込まれ、そこで出会った少女の「東京に帰れ」という言葉と助けを求める声を聞く事になった。
しかし、彼はその言葉の意味を知る事なく、無視をしてしまい、妻を喪う。
更にその後、村で出会った少女が亡くなった事も知った。
自分がもし、あの時、少女の言葉を聞いていたのなら……。
今の彼が求めるのは、それらの出来事の「やり直し」である。
【方針】
アーチャーと共に聖杯を狙う。
投下終了です。
それに追加で報告。
以前投下した「見崎鳴&アサシン」ですが、原作「Another」を読み返した所、鳴の目が視えるのは「死」であって、「生きている人間かNPCか」ではないので、その点についてwikiで修正を施しておきました。
他の作品も一部修正を入れましたが、サーヴァントの属性や誤字に関する部分のみで、大きな変更があるのは「見崎鳴&アサシン」のみとなっています。
皆様お疲れ様です
自分も投下させていただきます
「ハァ、ハァ……グゥッ……!?」
町外れに位置する、小さなあばら家の一室。
一人の男がベッドに横たわり、苦悶の声を上げていた。
その男の容姿は、明らかに普通ではなかった。
頭髪は色素が抜け落ち、年齢に不相応の白髪と化している。
そしてその顔面は、左半分が歪んでいた。
血管が大きく浮き出、皮膚が捩れ瞼はほぼ潰れており開かれそうにもない。
この異形を持つ青年―――間桐雁夜は、己の内に走る激痛と戦っていた。
彼の傍らに立つ、大きなハットをかぶった一人の青年―――呼び出したサーヴァント・ライダーと共に。
このサーヴァントが放った『鉄球』を、むき出しにした腹部の上で回転させながら。
「……よし、マスター。
処置は終わったぜ」
終わった。
そう告げると共に、ライダーは雁夜の腹部で回転していた鉄球を手に取りベルトのホルスターへとしまう。
同時に、雁夜の口から漏れていた苦痛の言は途切れた。
その表情は穏やかなものへと切り替わっており、そして口からは安堵のため息が漏れている。
「どうだ?」
「ああ……幾らかはマシになったよ。
ありがとう、ライダー」
雁夜はゆっくりとベッドから体を起こし、枕元に畳んであったシャツに腕を通す。
この聖杯戦争でマスターとして目覚めてから数日。
彼はずっと、ライダーの手で治療を受けていた。
何故、二人がこの様な事をしているのか。
事の発端は、おおよそ一年前に遡る……
◇◆◇
かつて雁夜は、悍しき間桐の家が持つ魔術の継承を拒み自由の身となるべく出奔した。
しかしその決断は、彼にとってあまりにも残酷な運命を告げることになった。
彼には、想いを寄せ続けていながらも、その幸せを願い敢えて身を引いた最愛の幼馴染―――遠坂葵がいた。
間桐の家を離れ魔術を捨てた後でも、彼女やその娘達との交流はずっと続けていた。
彼女達の幸福を、ずっと願い続けていた……そんなある日の事だった。
葵は、彼にこう告げたのだ。
――――桜を、間桐の家に養子に出した。
その言葉を聞いた途端、雁夜はただ絶望するしかなかった。
自身が間桐の継承を拒んだが為に、その呪わしき宿命を愛しき女性の娘に課す事になってしまったのだ。
そして、彼が急ぎ家に戻った時には……既に手遅れであった。
桜の肉体は、間桐の魔術に染められるべく蟲を使った調練によって歪められていた。
桜の心は、完全に壊され闇に沈んでいた。
その事実を知った時、雁夜は心の底から憎んだ。
桜を間桐の地獄に叩き落とした遠坂時臣を、間桐の地獄を作り出した間桐臓硯を。
『魔術師』という存在を、憎悪せずにはいられなかった。
しかし、希望は残されていた。
それこそが間桐臓硯が桜を求めた理由―――聖杯戦争だ。
自身が聖杯を手にする事さえ出来れば、桜がこれ以上苦しむ必要は何処にもない。
無茶なのは承知の上だった。
魔術の研鑽を一切行っていない身で聖杯戦争に望むなど、蛮勇ですらない無謀に他ならない。
勝てる見込みなどまずないだろう。
それでも、雁夜にはその一歩を踏み出さずにはいられなかった。
大切な者を救う為に、彼は賭けに出たのだ。
一年という聖杯戦争までの僅かな期間の内に、マスターとして相応しい実力を身につけるべく……その身に刻印虫を植え付けたのである。
魔力を補う代わりに自らの肉体を巣食うこの蟲を体内に取り込み一年の地獄を耐え切ることで、彼はどうにか力を身に付ける事に成功したのだ。
おかげで余命は僅か一ヶ月持つかどうかという有様だが……そこに、後悔は無かった。
そしていよいよ、彼はサーヴァント召喚の儀を翌日に控え、体力を少しでも温存すべく眠りについたのだが……
「……俺は……どうしてこんなところにいるんだ?」
目が覚めた時。
彼を待ち受けていたのは、全く見知らぬ土地であった。
間桐の家ではない小さなあばら家の中で、いつの間にか横たわっていたのだ。
周囲を見渡すも、人の気配も蟲の気配もまるでない。
「桜ちゃん……臓硯……いないのか?」
身近にいるはずの二人の名前を呼ぶも、やはり返事は返ってこない。
これはどういうことか。
不穏に思い、つい呼吸を荒げさせてしまう……
『よう……目覚めたみたいだな、マスター?』
その直後だった。
いきなり背後から、若い男性の声が聞こえてきたのだ。
雁夜は慌てて振り向くと……そこには、先程までは確かにいなかった筈の男の姿があった。
「お前は……?」
「ああ、あんたのサーヴァントだ。
クラスはライダー……よろしく頼むぜ?」
男―――ライダーは、金色に光る歯を見せて「ニョホ!」と笑いながら雁夜にそう確かに告げた。
それが、二人の出会いであった。
◇◆◇
「いつもすまないな……おかげで、十分に動けそうだ」
あれから数日の間。
雁夜はライダーにこの聖杯戦争についての説明を受けながら、こうして日々を過ごしていた。
曰く、どうやらこの場は冬木で行われる聖杯戦争とは別種らしく、ルールやサーヴァントの数にも幾らかの差異があるらしい。
その事に最初は雁夜も困惑を隠しきれなかったものの、しかしこれが確かに聖杯戦争であるという事実を、今は完全に受け止めていた。
ならばやる事に何ら変わりはない。
聖杯を手に入れ、桜を解放する……その為に戦うまでなのだ。
「改めて言っとくが、俺に出来るのは応急処置……あくまで一時的に痛みを和らげるだけだ。
時間が経てばまた痛みが出てきちまうからな……気をつけろよ?」
「ああ、わかってるさ」
そしてその為の一環として、雁夜はこのライダーの治療を受けていた。
彼は生前に医者としての修練を積んでいたらしく、鉄球の『回転』を用いて肉体に効果をもたらすという特異な技術を持っているという。
それを知った雁夜は、これを自らの肉体に施してもらっており……効果は覿面であった。
刻印虫によって傷ついた肉体の根本的な治療にはならないものの、痛みの緩和という点で言えばこの上ない結果が出ている。
一時的とはいえ、全身を走り続けていた激痛を抑えられているのだ。
雁夜はライダーとの出会いに、素直に感謝していた。
これならば、この傷ついた体でも十分に戦えると。
桜を救う為に、力を振るうことができると。
「……ライダー。
俺は何としてでも聖杯を手にして桜ちゃんを助け出す。
世話になった身で言うのも悪いが、お前には相当な無茶を言う時もあるだろう。
それでも……どうか、頼む。」
「……分かってる、安心しろ。
お前の望みは必ず叶えてやるよ」
通常、触媒も特殊な詠唱も用いぬ召喚の儀式では、マスターとの相性が良いサーヴァントが呼び出されるとされている。
だからだろうか……ライダーは、そんな雁夜の痛ましく儚げな姿にある種の共感を覚えていた。
彼もまた生前、雁夜と似た願いを持っていた。
一人の少年を救う、ただそれだけの為に巨大なレースに挑んだ。
その裏に潜む巨悪との戦いに、世界を巻き込む大きな野望に挑んだ。
残念ながら、彼自身はその最中で惜しくも敗れ倒れたのだが……しかし、魂は受け継がれた。
共に旅を続けてきた相棒に、彼の誇りと意思は確かに受け継がれ……思い描いた形とはやや違えども、無事に戦いは終わりを告げたのだった。
雁夜は、かつての己と同じ願いを持ち……そしてどこか、その相棒に似ているのだ。
大切なモノの為、目的を果たすためならば殺人をも厭わない『漆黒の意思』が彼にはある。
あの相棒が持っていたのと同じ漆黒の意思を、彼は確かに持っている。
(……ほっとけねぇよな。
こんなんを見ちまったらよ……)
もしもこの聖杯戦争が、彼の言う本来の冬木の聖杯戦争で行われていたとしたら。
彼は桜を救う為に、桜の父である遠坂時臣を手にかけていたかもしれない。
それは彼女達の幸せを願いながらも幸せを奪う事に繋がる、矛盾した行いだ……ライダーはそれに気づいていた。
この聖杯戦争が冬木のものとは違う以上、全ては杞憂に終わったものの……雁夜は非常に危うい。
その『漆黒の意思』は、尊さのある反面一歩踏み外せば無残な結末を生むに違いないものだ。
だからこそ……彼の願いを叶えると共にそうならないようにするのは、ずっと漆黒の意思を持つ者の側に立ち続けていた自分の役目だ。
【CLASS】
ライダー
【真名】
ユリウス・カエサル・ツェペリ(ジャイロ・ツェペリ)@ジョジョの奇妙な冒険 スティール・ボール・ラン
【ステータス】
筋力C 耐久C 敏捷B 魔力E 幸運B 宝具A+
【属性】
秩序・中庸
【クラススキル】
騎乗:C
騎乗の才能。
大抵の乗り物、動物なら人並み以上に乗りこなせるが、 野獣ランクの獣は乗りこなせない。
【保有スキル】
千里眼:C
視力の良さ。
遠方の標的の捕捉、動体視力の向上。
心眼(真):B
修行・鍛錬によって培った洞察力。
窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す戦闘論理。
数多くの難敵と戦いながらも、敵の持つ能力を見切りその弱点を突いて打倒してきた。
外科手術:C
マスター及び自己の治療が可能。
医者として修練を積んできたため、道具と設備さえあれば古い時代の技術ではあるものの適切な処置が施せる。
【宝具】
『戦女神の名を冠する愛馬(ヴァルキリー)』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:1〜50 最大捕捉:1〜30
生前にライダーが騎乗していた愛馬が宝具として昇華されたもの。
発動と共に、ストック・ホースの名馬ヴァルキリーを呼び出す。
ヴァルキリーは特殊な能力こそ持たぬ4歳馬だが、ライダーと共にあらゆる悪路・窮地を駆け抜けてきた名馬中の名馬。
その速力・脚力・持久力は高く、文字通りライダーの足がわりとなってきた宝具。
また、普通の馬であるが故に少ない魔力消費で開帳可能という利点がある。
この宝具の発動中にのみ『運命を穿つ無限の鉄球』を開帳する事が可能となる。
『運命を穿つ無限の鉄球(ボール・ブレイカー)』
ランク:A+ 種別:対人(対界)宝具 レンジ:1〜100 最大捕捉:1〜30
かつてライダーの一族が生み出した技術を復刻させ、騎乗のエネルギーを加える事で完成させた『回転の技術』が宝具として昇華されたもの。
『戦女神の名を冠する愛馬』を発動し騎乗している時にのみ使用が可能となる。
元々は盾や甲冑を身につけた騎士の防御を突き抜けるために開発された技術であり、
ライダー自身が繰り出した黄金長方形の回転エネルギーに、乗馬の走行形から得たもう一つの黄金長方形の回転を
乗せることによって、無限の回転エネルギーを乗せた鉄球を放つ。
その極めて高い回転エネルギーは『スタンド能力』と呼ばれる超能力に近い固有のヴィジョンを持つに至り、
人の持つ技術がもっともスタンドに近づいた姿と言われている。
鉄球の威力は計り知れなく、回転が持つ莫大なエネルギーは次元の壁すらも突き破る程。
ただしこの宝具を発動させるには、自然にある黄金長方形を確実に認識しなければならず、
且つ『戦女神の名を冠する愛馬』が十分な走行形を取れるだけの環境にあること、
そして用いる鉄球が寸分な狂いのない真円でなくてはならず、僅かに条件が欠けるだけでも本来の威力は発揮できなくなる。
【weapon】
『鉄球』
ライダーが生前より愛用し続けてきた、掌サイズの鉄球。
単なる投擲用の武器としても威力はあるが、その真価は自然に存在する『黄金長方形』を認識した時に発揮される。
黄金長方形の中心を結んでいくことにより生まれる『黄金の回転』エネルギーを鉄球に伝わらせ、
回転する鉄球の振動が生み出す『波紋』により様々な効果を引き起こす事が可能になる。
岩盤を簡単に抉り取るだけの破壊力を生み出したり、皮膚に回転の力を伝わらせる事で硬質化させ防御を高めるなど、
その技術は広く応用が効く。
生前は鉄の塊を削り取る事で作成していたが、サーヴァントとなった今は魔力で生成が可能。
【人物背景】
法事国家ネアポリス王国の法務官であり、伝統ある死刑執行人の家系ツェペリ家の長男。
また、ツェペリ家は表の顔として医者を家業ともしているため、医者としての修行も積んでいる。
環境に恵まれ順風満帆な日々を過ごしていたのだが、とある男爵家を巡る裁判に関わりその人生は一変する。
この男爵家では国王暗殺の計画が密かに企てられており、その事実を知った王国は一家を全員処刑する。
しかし、この時にたまたま男爵家で働いていた召使いである少年マルコも関係者の一員であるとされ、
無実であるにも関わらず彼には死刑判決が下されてしまったのである。
ジャイロはその判決に納得する事ができず、国王の恩赦を得て彼を救うべく
アメリカで行われる大陸横断レース『スティール・ボール・ラン』への出場を決意、優勝する事を誓う。
その最中で、唯一無二の相棒となるジョニィ・ジョースターと出会い、
彼と共にレースの裏に隠された真の目的『聖なる遺体の入手』を巡る戦いに巻き込まれる。
レースの終盤、真の主催者であるファニー・ヴァレンタイン大統領と戦い
次元の壁すらも突き抜ける無限の回転エネルギーを生み出す技術で後一歩のところまで追い詰めるも、
紙一重の差で大統領に敗北・死亡してしまう。
しかしその誇り高き魂は確かにジョニィに受け継がれ、大統領を打ち倒し『聖なる遺体』を巡る戦いに無事終止符は打たれた。
その後、遺体はジョニィの手により故国に返され、安らかな眠りについたのであった。
どこか飄々とした性格ではあるが面倒見がよく、臨機応変に戦術を変える大胆さ・緻密さの両方を持ち合わせている。
また、自分の中に確固たる倫理観を持って行動しており、明確な殺意を持って襲い来る相手には殺傷も辞さないが、
自分の側から殺意を持って他者を攻撃することは極力避けていた。
【サーヴァントとしての願い】
雁夜の願いを叶えるために戦う。
また、彼の持つ『漆黒の意思』が危うい方向に向かない様にする。
【基本戦術、方針、運用法】
ライダーでありながらもアーチャーとしての運用に近いサーヴァント。
鉄球の威力を発揮できる中〜遠距離戦での戦闘を基本とする。
『黄金長方形』を認識できる自然が存在する場所でこそ鉄球の威力が活きてくるので、なるべく屋外での戦闘に持ち込む。
狭い場所ならば小回りを優先してそのまま、広い場所ならば宝具で愛馬を呼び出しその機動力を活かすという形で立ち回り方を切り替え戦う。
厳しいもののうまく条件が揃えば決定打となる『運命を穿つ無限の鉄球』を発動させられるので、
強敵との戦闘ではなるべく騎乗した状態を心がけたい。
【マスター】
間桐雁夜@Fate/Zero
【マスターとしての願い】
聖杯を勝ち取り、桜を救い出す。
【能力・技能】
間桐の魔術により、多量の蟲を使役して戦闘をする。
中でも、牛骨すら噛み砕く肉食虫「翅刃虫」を切り札としている。
ただし魔力総量自体はそこまで高いわけではなく、
且つ魔術を行使すると体内に植えつけられた刻印虫が反応し、肉体を内から破壊するという代償がある。
その為、魔力を使うだけでも血を吐くほどの苦痛を常に伴わなければならない。
【人物背景】
魔術の名門である間桐家の次男。
しかし正当な魔術師ではなく、資質はあったものの間桐の禍々しい魔術を拒み出奔した。
その後はフリールポライターとして各地を渡り歩いていたが、
幼馴染である遠坂葵より彼女の娘である桜が間桐の養子に出されたと知り、
驚愕するとともに間桐の家に戻った。
そこで間桐の修練を受けて陵辱され心を閉ざした桜を前にし、彼女を救うべく間桐臓硯と交渉。
自身が聖杯戦争に勝ち上がり聖杯を手にする代わりに桜を解放するようにと持ちかけ、聖杯戦争への参加を決める。
その為に一年間、足りない魔術回路を補うべく自らの肉体に刻印虫を植え付け、
地獄のような日々を耐えながらもマスターの資格を得る。
既にその体は余命一ヶ月という状態であったが、桜を救うべくその命の全てを燃やし尽くす覚悟でいる。
自身が家を継がなかったばかりに、桜が間桐の犠牲になってしまったという絶望。
禍々しい間桐の魔術への怒り、葵を幸せにしてくれるという期待を裏切った遠坂時臣への憎しみと、かねてからの嫉妬。
この様な思いから、聖杯戦争を引き金にして内に押さえ込んでいた憎悪を発露させている。
その為か、桜や葵達の幸せを願いながらも、彼女達から時臣を奪うことでそれを成し遂げようとしているという
大きな矛盾も抱えており、彼自身その事実には気づいていない。
【方針】
聖杯狙い。
体の痛みをライダーの処置で緩和しつつ、彼の強みを活かした戦法を取って戦っていく。
ライダーには感謝しており、彼の意見はできる限り尊重したい。
以上で投下終了となります。
投下乙です
投下します
すいません酉ミスです……改めまして
☆プリンセス・テンペスト
追われていた。
後ろを振り向くと、おどろおどろしい姿の大きな斧を持った巨漢が叫び声をあげながら迫って来ている。
ありえない。かれこれこの追いかけっこを十分近く続けているのに、相手はまるで疲れた様子がない。
もっともそれはテンペストも同じだったが、彼女は人間ではなく魔法少女だから当たり前のことだ。
魔法少女は強い。運動能力も見た目も、ただの人間とはまったく比べ物にならないものがある。
しかしこの追跡者は、そんなテンペストの考えを上回ってくる怪物だった。
魔法での攻撃を受けてもびくともしない。
斧の攻撃は明らかにテンペストの力を凌駕していた。
これは不利だと判断して逃げに徹しても、この通りちっとも撒ける気配がない。
それどころか、気を抜けば追いつかれてしまいそうな程だ。
今のテンペストがピュアエレメンツの仲間を伴わず、一人でいるからというのもある。
だがそれを加味しても、明らかに相手の戦力は異常だった。
ディスラプターより遥かに人間的な外見をしているのにも関わらず、力はあれよりはるかに上だ。
想像もしたくないことだが、あの斧による一撃をもしまともに受けてしまうようなことがあれば。
その時テンペストはきっと、あっさり物言わぬ屍に変わってしまうに違いない。
このままではジリ貧だ。
意を決して振り返り、テンペストは戦うことにした。
別に勝てなくたっていい。倒せなくたって構わない。
逃げられるだけの時間稼ぎなり足を奪うなり、その程度の痛手を与えられれば上出来。
風の力を宿した得物を使って、手堅く足を攻撃し始める。
だがそれは相手にも読まれており、斧であっさりと止められた。
手数を増やしてみるが、それでも護りを崩せない。傷一つ付けられない。
焦燥が胸の内に溜まっていく。
逃げておけばよかったかなとは思ったが、きっとあのままでは追い付かれてしまっていただろう。
相手はまるで本気を出していないように思えた。
そして、それは今もだ。
その気になればいつでもテンペスト一人ごとき殺せるのではないか――そう考えるとどうしようもない不安に襲われる。
けれど、死ぬわけには絶対にいかない。
こんなわけのわからないところで、こんなわけのわからない相手に殺されるなんて。
まだまだやりたいことがいっぱいある。翔くんのことだって何にも進められていないのに。
そんなテンペストの心を嘲笑うように、巨漢がにたりと笑い、バックステップで後退して斧を振り上げた。
そこに藍色の光が集まっていく。
テンペストは一も二もなく逃げ出した。
あれはまずい。あれは、どこからどう見ても「必殺技」の構えだ。
逆に言えばそれほど分かりやすい動きであり、隙だったが、テンペストの力でそこを突いてもたかが知れている。
「■■■■■■■―――――!!!!」
何事かを咆哮し、斧が振り下ろされた。
振り返り、テンペストはおのれの運命を悟る。
アスファルトを巻き上げながら轟音と共に、藍色の破壊光がテンペストを飲み込まんと迫っていた。
どうしようもない。
ぺたりとへたり込み、震えるのも忘れてそれを見ていた。
――死ぬ。
あまりにも明確な現実だけが、残酷にそこにはあった。
――だが。これが聖杯戦争という儀式の一端である以上、プリンセス・テンペストはひとりではない。
彼女が彼の存在を知ったのはこれが初めてだった。
そもそも何が起きているかすら、テンペストは理解できていなかったのだ。
いきなり見知らぬ風景に立たされていて、追い回されていた。
それだけの認識であったのだから、無理もないことである。
破壊の光を、割って入った青年が大きな槍で止めていた。
槍。槍――だと思う。
ただ、それはあまりにも大仰な武器で……どこか剣のようにも見えた。
「■■■■……!?」
「サーヴァント、バーサーカーだな」
驚愕を浮かべる巨漢――バーサーカーにそう確認するが、答えの代わりに斧が飛んできた。
彼とバーサーカーの体格はあまりにも違いすぎている。
テンペストを助けた彼も引き締まった体をしていたが、あくまでそれは東洋人としての範囲だ。
恐らく外国人であろうバーサーカーの巨体を前にしては、正直なところ霞んで見える。
だが、またしてもその大斧は容易く止められた。そして今度は、彼も守るのみではなかった。
斧を握る腕を掴み上げ、そのまま槍の穂先で切断する。
武器を失ったことにバーサーカーが吼えるより早く、追撃で四肢を奪った。
速い。速すぎる――目にも留まらぬ手際で全てを奪われた狂戦士は。
「■……■■■■■――」
「終わりだ」
最後まで言葉らしい言葉を発することなく、その霊核を貫かれて消滅した。
この間、僅か十秒弱。
これほどまでに圧勝という言葉の似合う戦闘は、テンペストも経験したことがない。
「怪我はないかい」
「は、はい……」
「そうか。なら良かった……
分からないことは沢山あるだろうけど、今はとりあえずここから離脱するよ。
戦闘の音を聞きつけて新手がやって来ないとも限らないからね」
助かった。
もとい、助けられた。
その実感が出てくるよりも先に、慌ただしく走る羽目になった。
何が起こっているのか、それをプリンセス・テンペストが知るのはこれから十分ほど後のことになる。
彼女は聞かされる。
ここは聖杯戦争という儀式の舞台として用意された偽の現実で、自分はその参加者として選ばれたらしいこと。
そして自分を助けたこの青年がランサー……テンペストを導く、サーヴァントであるということを。
◇
「聖杯にかける望みはない。本当にそれでいいんだね?」
「………うん」
ランサーの問いに、プリンセス・テンペスト――に変身することの出来る少女、東恩納鳴は小さく頷いた。
どんな願いでも叶えられるという響きには確かに魅力的なものがある。
もしも聖杯戦争という過程なく願いを叶えてもらえるというのなら、鳴はきっと飛びついただろう。
だが、そんな甘い話がそうそう転がっているわけもないのが現実だ。
聖杯を手に入れるには、他の参加者を蹴落とすという過程を辿らなければならない。
蹴落とすとはすなわち、殺すということだ。
鳴はそれを聞いて、聖杯に願うのは悪いことだと思った。だから、やめることにした。
「……いや、それでいい。その答えを聞いて……身勝手だけど、少しだけ安心したよ」
こんな幼い子供が、人を殺してでも叶えたい願いを抱いているとなれば相当なことだ。
だからランサーは素直に鳴の答えを聞き、安堵した。
しかしそれと同時に、罪悪感を覚えずにはいられなかった。
その理由は一つ。単純にして明快な話だ。
ランサーは聖杯という望みを捨てられない。
どんな手を使ってでも叶えられない願いを成就させる至高の宝具をみすみす取り逃すことは出来ない。
「鳴ちゃん。君のことは責任を持って僕が元の世界へ送り届ける。
けれど、これだけは分かってくれ。僕は聖杯を必要としている――あれを手に入れなければならない」
それはつまり、殺すということ。
鳴の表情にも不安と困惑の色が浮かんでいた。
無理もない話だ。子供にこんな顔をさせたくはなかったが、しかし隠しておくわけにもいかない。
「ただ、なるべく君の意向には添うから安心してほしい。
……それに、これは希望的観測だけどね。
もしかしたら、戦わないでも聖杯だけを横取りできるような手段があるかもしれないだろう?」
上手く笑えたかは怪しかった。
しかし鳴の顔が僅かに緩んだ辺りからして、きっと上手く笑えていたんだろうとランサーは思う。
同時に自己嫌悪をより強めた。
櫻井戒という男は――どこまで腐りきった屑なのだ、と。
櫻井螢。
それが、ランサーを駆り立てる妹の名前である。
彼女を偽槍の宿命と黒円卓の存在、その双方から遠ざけて幸せな人生へ導くこと。
それを叶えるには、通常の手段では到底不可能だとランサーはかつて思い知らされた。
だからこそ、ランサーは聖杯を手に入れなくてはならない。
鳴には到底見せられないような外道に手を染めてでも、絶対に聖杯に辿り着かなければならない。
せめて、彼女だけはちゃんと元の世界へ戻そう。
自分のせいで巻き込んでしまった、この幼い少女を死なせない。
その誓いだけは絶対に守り通そう。それだけが、自分にできる唯一のサーヴァントらしいことなのだから。
【クラス】
ランサー
【真名】
櫻井戒@Dies irae
【ステータス】
筋力B+ 耐久A+ 敏捷C 魔力A 幸運E 宝具A
【属性】
中立・中庸
【クラススキル】
対魔力:B
魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。
大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。
【保有スキル】
エイヴィヒカイト:A
人の魂を糧に強大な力を得る超人錬成法をその身に施した存在。
聖遺物(この場合は聖人の遺品ではなく、人の思念・怨念・妄念を吸収した魔道具のこと)を核とし、
そこへ魂を注ぐことによって、常人とはかけ離れたレベルの魔力・膂力・霊的装甲を手に入れた魔人。
エイヴィヒカイトには四つの位階が存在し、ランクAならば「創造」位階となる。
心眼(真):B
修行・鍛錬によって培った洞察力。
窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す“戦闘論理”
逆転の可能性が1%でもあるのなら、その作戦を実行に移せるチャンスを手繰り寄せられる。
直感:B
戦闘時、つねに自身にとって最適な展開を”感じ取る”能力。
視覚・聴覚に干渉する妨害を半減させる。
【宝具】
『黒円卓の聖槍(ヴェヴェルスブルグ・ロンギヌス)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1〜8 最大捕捉:1
ハインリヒ・ヒムラーの命により鋳造されたとされる、神槍の偽作。
第二次大戦当時著名であった刀鍛冶・櫻井武蔵が極東より呼び出され、この槍の鋳造に携わった。
「常人にも扱える聖槍」を目標に製造されたこの偽槍は、櫻井の者のみが精錬方法を知る特殊金属『緋々色金』によって造られた代物であり、使用する者によってその姿・大きさを様々なものに変えるという特徴を持つ。
あまりの完成度から、贋作は聖槍の性質を歪んだ形で備えるようになり、結果偽槍は櫻井一族の魂を狙い撃ち、一度偽槍を手に取った者は、例外なくその体と魂を喰らわれ、生ける死者に変えられてしまう呪槍となった。
単に所有者となっただけでも症状は進行するが、偽槍を一度でも行使すれば速度は一気に跳ね上がる。その強制力は尋常ではなく、櫻井の魂を食わんとする偽槍の意志を直接向けられたわけではない第三者でも、意志の醜悪さに慄くほど。
殺した相手の武器・能力を奪い取るという力を常に発現させており、これによりランサーは倒した英霊・マスターの宝具やスキル、更に櫻井一族の創造位階、ランサー自らの手で殺した戦乙女の創造までも使用可能となっている。
但し、それらを扱うためには後述する最後の宝具を使用する必要がある。
ココダクノワザワイメシテハヤサスライタマエチクラノオキクラ
『許許太久禍穢速佐須良比給千座置座』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:1
自己の腐敗毒への変生、すなわち己を毒の塊へと変える創造。
この状態のランサーに触れることは毒の海に飛び込むようなものであり、触れればたちまち毒を受けて腐っていく。
当然、彼からの攻撃を受けても毒を喰らうことになる攻防一体の宝具。
凶悪さに反して元手となった渇望は、「大切な人たちが美しくあるよう、全ての穢れを己が引き受ける」という、自己犠牲による他者の救済と防衛の祈りである。
『継承される原初の魔名(トバルカイン)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:1
「櫻井戒」から「トバルカイン」という、偽槍に取り込まれた成れの果てへと変貌する為の宝具。
こうなったランサーは幸運を除く全てのステータスがワンランク上昇するが、代わりに狂化し、令呪を用いない一切の指示を受け付けない狂戦士に成り果てる。攻撃方法も主に稲妻を扱ったものへ変異する。
死者を扱うことに長けた術者であり、同時に彼へ友好的な人物ならば手綱を引くことも可能だが、しかしマスターのテンペストではまずそれは不可能だろう。
宝具発動後のランサーは前述通り、過去の櫻井一族が持つ創造、戦乙女ベアトリスの創造、自らの手で屠ったマスター、英霊の術理をも宝具として使用できるようになる。
『戦雷の聖剣(スルーズ・ワルキューレ)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:1
トバルカインの内側に存在する聖遺物。少なくとも現状は無意味であるもの。
【人物背景】
聖槍十三騎士団黒円卓第二位、三代目トバルカイン。
屍兵の呪いを自分の代で終わらせ、妹を汚させないという確固たる信念を持って行動していたが、後に偽槍を手に取りトバルカインへと取り込まれた。
【サーヴァントとしての願い】
妹の幸福。ただそれだけのために聖杯を求めている。
【マスター】
プリンセス・テンペスト@魔法少女育成計画JOKERS
【マスターとしての願い】
元の世界に帰りたい。死にたくはないが、聖杯が欲しいかと言われると微妙
【weapon】
ブーメラン
【能力・技能】
☆風の力を使って敵と戦うよ
風の力を宿す魔法。
刃に鎌鼬を宿すなどして飛行をも可能とする。
【人物背景】
人造魔法少女「ピュアエレメンツ」の一人。
【方針】
帰りたい
投下終了です。
うーむなかなか感想書けなくて申し訳ないです……
投下お疲れ様です。
自分もさせていただきます。
外部から光が侵入せず、光源は内部に施されている照明のみ。
明るいとは言い難いクラブ崩れ廃墟で女を侍らかせる白い髪の男が一人。
瞳は赤に染まっており、それは疲れによる充血ではなく生まれながらにしての症状。
アルビノ――世間一般にその記号を付けられた男の周りには酒が種類問わずに転がっている。
瓶から升まで国境を問わず、一部には中身がまだ残っているにも関わらず捨てられていると同義の扱いだ。
男が座っているソファーには一切溢れていない辺り、自分が良ければ全て良し、と生きてきた存在なのだろう。
酒と女。
二つの臭いが入り混じり、日の出を浴びるような世界に相応しくない夜の臭気が辺りを包む。
だが、足りない。
この空間を構成する香りの中で、重要な要素が抜けている。
酒と女はその通りだ。まさしくこの二つがこの部屋を表す材料となる。
その中で――表の世界に似合わない吐溜の汚れだ。
血、血、血。
立ち去ることを躊躇しない程の血。
鉄の臭いを超越した肉が削ぎ落ち、腐り溶けたような目を背けたい現実の香り。
撒き散っている液体は酒だけではない。
寧ろ割合は低く、構成の多くが赤と黒を混ぜ合わせたキャンパスに不必要な色。
公園の砂場に穴を掘り、水を注いで創り上げた小さな池に相当する程度の量はあるだろう。
「あぁ空になっちまった」
空いたグラスを勢いで机に叩き付けるように男は置いた。間髪入れずに足も下ろしている。
口が曲がっても上品とは言えない態度で退屈そうに天を見上げる。あるのは間接照明だけ。
「酒の味は進歩してるようだがなぁ……なんだよ現代ってのは、クソもつまらねえじゃねえか」
この世に対し偉そうな口調で不満を零すと、何かが落下し男の足元に転がる。
首だ。
男が侍らかしていた女は既に死人と化していた。ならば男は殺人鬼なのか。一概には言えない。
このアルビノは狂っている。しかし本人に言えば嫌われそうだが己の中に美学を持っている人種に分類される。
何が起きたかは不明だが、女が男の逆鱗に触れたか、男が退屈しのぎに殺してしまったのだろう。
踵で頭部を蹴り飛ばし、少しの間が経過した後に破裂音が響く。
空気を斬り裂くような鋭い音と、一度聞いたら耳から離れないような鈍い潰れた音と共に。
更に空間が血液の泥と化した中で、グラスの中で氷が回る音が聞こえてくる。
カウンターに座り込んでいる――これも白髪の男だが、笑みを浮べながらグラスを回している。
「あ? 何してんだよ槇島」
アルビノの男は首だけを後ろに倒し込みだらしない体制でカウンターに居る男に声を飛ばす。
視界には先程蹴り飛ばした首が映るも、関係無いと謂わんばかりに全く触れていない。
「この女は聖杯戦争に招かれていない人間だ。彼女が消えたところで物語はどうなると思う?」
「知るかンなこと。死んじまえばそれで終わっちまうのが人間だろ」
槙島と呼ばれた男の言葉を雑に処理した男は視線を止め、首を戻し机の上にある生きた酒を掴む。
グラス並々に注ぎ、途中に氷が無いことに気付くも面倒になってしまい口に含んでいた。
「『私は血で書かれた本のみ信じる』ニーチェの言葉だがいいと思わないか」
「――そうだな」
酒を平らげたアルビノの男が槙島の言葉に返しを行うべくグラスを置く。もう空になっているそのグラスには光が反射している。
「血が流れてんなら結構じゃねか。少なくともクソの蓄えにもならねえ会議で掲げられた理想よりは信じれる」
「聖杯と呼ばれる唯一無二の願望器を巡り一人だけが願いを叶える物語だ。
これを書き上げるには大量の血液――多くの人間が必要となるだろうね。今君が殺した女の血も聖杯戦争を彩る大切な血肉となる――この物語に関しては」
この声を聞いているのはアルビノの男一人だ。空間に存在する生命は二人だけである。
しかし槙島の言葉は大衆向け……多くの人間を引き込むような謎の魅力がある。
話している内容は一般に公開出来るような内容ではないが、群衆を煽る革命家のように言葉に輝きを持たしている。
最もこの槙島と呼ばれる男が革命家を気取るような人間では無いのだが。
「何が聖杯戦争だ、何が物語だよ。世の中に英雄や救世主と呼ばれる人間ってのはいるだろ? そいつらは主役だ。
けどよ、テメェの人生に英雄が現れても所詮は英雄止まりの他人だろ。主役はテメェが貼るモンだ。
今死んだ女がNPCだろうが関係無え。此処でこいつの生命が潰れりゃ誰も続きを書くことをしねえし望まねえ、それだけだ」
「そうだね――じゃあ僕が抜けた世界ではどうなっているか」
「それでも廻るのが世界ってモンだろ」
「その通りだ……あぁ僕はこの世界で何をしようか」
白い髪を持った男達の会話は繋がっていないようなやり取りだが、続いているらしい。
世界の歯車と軸の話をする中で、主題は槙島が居た世界の話になったようだがアルビノの男はまたも雑に終わらせる。
槙島が言葉を流すこの世界――聖杯戦争での目的と行動。
願いを叶える権利など空想上の出来事でしかない幻想が現実となった空間で彼は何をするのか。
答えは出ているのかもしれない。
血で物語が書き綴られるのならば、血を流すことが登場人物の役目である。
明確なソレは存在しないかもしれないが、槙島は世界の裏で聖杯に辿り着く男に成り得るかもしれない。
「選ばれた人間もそうでない人間もこの世界で生きていることには変わらない……どんな物語を彩るだろうね。
君はどう思う――アサシン」
アサシン。
そう呼ばれたアルビノの男は「あ?」と言葉を漏らすもそれ以上は不満を告げなかった。
「俺は俺がやりたいように動くぜ槙島ァ。大体勝手に決められた他人がご主人様なんて気に食わねえ。俺はあの人の牙以外になるつもりは無えぞ」
「構わないさアサシン――こんな機会は二度と無い。なら聖杯の真意について触れようじゃないか」
夜の主役は吸血鬼と犯罪者。
聖杯戦争の主役は解らない。彼らの物語はこの先から綴られないかもしれない。
ただ一つ言えるとすれば。
その結末に血は必要である。
【マスター】
槙島聖護@PSYCHO-PASS
【マスターとしての願い】
不明。
【weapon】
剃刀
【能力・技能】
格闘術を極めており、華奢な見た目からは想像出来ない程近接戦闘に長けている。
銃火器の心得も得ており、単純な白兵戦ならあば人間相手には圧倒出来る能力の持ち主。
彼の纏う空気と操る言葉は人々の心に入り込み掌握するカリスマ性をも持ちえている。
また免罪体質の持ち主であるが、聖杯戦争で活かされるかどうかは未知数である。
【人物背景】
シビュラシステムの誕生以降、最悪の犯罪者と呼ばれる。
くだらないシステムに決められた世界に意義を唱え、人間としての意味を求めて行動していた。
一説によれば彼の最期は嗤っていた。
【方針】
聖杯に縋る願いは不明である。
まずは表舞台に姿を表さないで裏の世界に徹し情報を集めるだろう。
NPCにも興味を抱いているため、最終的には大掛かりな行動を取るかもしれない。
【クラス】
アサシン
【真名】
ヴィルヘルム・エーレンブルク@Dies irae -Acta est Fabula-
【パラメーター】
筋力B 耐久B 敏捷C 魔力C+ 幸運E- 宝具A+
【属性】
混沌・悪
【クラススキル】
気配遮断:D
サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している。
ただし、自らが攻撃態勢に移ると気配遮断は解ける。
【保有スキル】
エイヴィヒカイト:A
人の魂を糧に強大な力を得る超人錬成法をその身に施した存在。
本来ならばこの存在を殺せるのは聖遺物の攻撃のみだが聖杯戦争では宝具となっており、彼を殺すには宝具の一撃が必要となる。
また、喰った魂の数だけ命の再生能力があるが制限されており、魔力消費を伴う超再生としてスキルに反映された。
A段階に達すると己の渇望で世界を創造する域となる。
直感:B
つねに自身にとって最適な展開を“感じ取る”能力。
視覚・聴覚に干渉する妨害を半減させる。
戦闘続行:A
呪い:A
ある人物から彼の二つ名である魔名と共に送られたもの。
その内容は「望んだ相手を取り逃がす」
本人が望めば望むほど、その相手は横槍などにより理不尽に奪われていく。
【宝具】
『闇の賜物(クリフォト・バチカル)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1〜30 最大捕捉:1
エイヴィヒカイトの第二位階「形成」に届いた者にしか具現化出来ない物
彼の其れは『串刺公(カズィクル・ベイ)』の異名を持つワラキア領主、ヴラド三世の結晶化した血液が素体。
能力は 「血液にも似た赤黒い色の杭を全身から発生させる」。
この杭は、突き刺した対象の魂や血を吸収し、所有者に還元する効力を持っている。
飛び道具、武具、空中での移動など様々な用途に応用出来る。
この聖遺物との親和性は他のエイヴィヒカイトとは群を抜いている。
クリフォトとはカバラの『生命の樹』と対をなす『邪悪の樹』の名であり、バチカルはその最下層を示す。
『死森の薔薇騎士(ローゼンカヴァリエ・シュヴァルツヴァルド)』
ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:1000
エイヴィヒカイトの第三位階、自身の渇望の具現たる「創造」能力。
元となった渇望は 「夜に無敵となる吸血鬼になりたい 」 。発現した能力は「術者を吸血鬼に変えて、周囲の空間を夜へと染め上げ、効果範囲内に存在する人間から力を吸い取る」こと。
渇望通り、吸血鬼と化して人間から精気を吸い上げる能力である。
発動すると周囲一帯が固有結界に似た空間に取り込まれ、例え昼であっても強制的に夜へと変わる。もっとも、夜時間帯に重ねがけした方が効力は格段に上がる。
この「夜」に居る人間は全て例外なく生命力をはじめとした力を吸い取られ、奪われた力の分、
この空間の主である吸い尽くした力を己の糧とし、それを抜いても己のを強化する。また、夜空には紅い月が浮かび上がる。
相手を弱体化させ己を強化し続ける卑怯な理だが弱点として【吸血鬼の弱点ソノモノが彼の弱点となる】
※まとめると月が紅い間は周囲の力(生命から魔力まで何でも)吸い取って自分の力にします。
当然魔力を吸っているため枯渇の心配は無いし、自前なのでマスターの助けも要りません。
デメリットはアサシンの癖に発動したら隠密何て到底無理なこと。極限に目立ちます。
また、吸血鬼の弱点がアサシンの弱点となるので最悪「誰からでも」殺されてしまう心配があることです。
『???』
ランク:? 種別:? レンジ:? 最大捕捉:?
彼の中に眠るナニカ。性別、数――総てが不明。
【人物背景】
聖槍十三騎士団第四位、ヴィルヘルム・エーレンブルグ=カズィクル・ベイ。白髪白面のアルビノの男。
その体は日光を始めとした光全般に弱く昼はほとんど出歩かないが、逆に夜の間には感覚が鋭敏になるという吸血鬼じみた体質を持ち、
それを自らのアイデンティティとしている。戦闘狂であり彼の歩んできた道には屍の山が築かれている。
元は貧困街の出身であり父と姉の近親相姦で生まれ、「自分のちが汚れているならば取り替えればいい」と感じる。
その後彼は親を殺しこれまでの人生とは別に暴力に溢れた生活を送るようになる。
其処で遭遇したのが白き狂犬、其処で出会ったのが黄金の獣。そして彼の人生は世界の因子に成り得る奇妙な物語に巻き込まれる。
なお、仲間意識は強く同じ騎士団の仲間を家族のように思っている。
【願い】
邪魔な奴は殺して樂しんで城へ帰還する。
以上で投下を終了します。
他の候補作とエイヴィヒカイトのスキル等は異なりますが不備等ありましたら修正いたしますので…
先日投下した「牧瀬紅莉栖&キャスター」の内容を一部修正したので報告します。
それと、候補作を投下します。
お父さんに、もう一度名前を呼んでほしい。
人殺しになるのを決意する理由なんて、それで十分だった。
聖杯に依れば、たとえ国の行く末であっても思うが儘に変えられる。
それならば、人間一人を生き返らせるくらい訳の無いことに違いない。
世界の命運をも懸けた戦争に対して、随分ちっぽけな願望を抱いているとの自覚はあった。
でも、それが本心だったから。
大好きな人に愛されたあの日々を取り戻したいと、その実現の可能性に縋って何が悪いと、そう言って自分を納得させるのはとても簡単なことだった。
だから、『弓』を携えた。
だから、あの平穏な日常からあまりにかけ離れた、殺して殺されての戦いに身を投じた。
なのに、負けた。
『弓』は壊され、肢体を容赦なく抉られ、この生命が潰えるまでもう大した時間を要するまい。
そう頭で理解していても、身体は未だ地を這っていた。
どのような転機が訪れるかなんて分からないし、そんな可能性に期待するだけ無駄だと分かっているのに。
舞い込んできた可能性を諦めたくなかった。だから、こんな生き意地の汚い真似だってしてしまう。
そうして辿り着いた先には、何のことはない一枚の窓ガラスがあった。
地面からそれほど離れていない高さに設置されているから、身体を伏せていた自分の姿も窓ガラスは映し出した。
少女が一人、その中にいた。
片目が潰れ、顔中が腫れ上がり、その肌が土と涙と血で滅茶苦茶のぐっちゃぐちゃに汚れた醜い姿。
え、なにこれ。耳朶を打った声は、酷く掠れていた。
全て、他でもない自分自身のものだった。
力が抜けていくのが、確かに感じられた。
「……お前は」
誰かが側に立っているのに、今になって気が付く。
目を向けた先に居たのは、恐らく自分より三つか四つくらい年上の女性だった。間違いなく、全然知らない人だ。
屈んだ彼女は、両手で包み込むようにこちらの右手を握る。暖かいなあ、というのが第一の印象だった。
手の骨も折れているからあまり力を込められると痛みが増すのだけれど、と伝える体力はもう無い。
「お前は、何を願っていたんだ?」
願い。その言葉を添えて問う彼女の声は、真剣そのものだった。
戦争の最中だから他に聞くべきことがいくらでもあるというのは、素人の自分にだって分かるのに。
この質問が彼女にとってどれほど重要な意味を持つのかは分からない。
でも、どうせ聞かれたからには応えてみることにする。
父にもう一度会いたかったこと。
そのためなら、誰かを殺してでも勝ち残るのが正しい答えだと思ったこと。
父は、間違ったことをしてはいけないと教えてくれた人間であったこと。
途切れ途切れの、拙い喋り方だけれども、それでも懸命に。
彼女はただ黙って耳を傾けてくれていた。
あたし、どこで間違っちゃったのかな。どうやって戦うのが正解だったのかな。
問い返された彼女は、顔を顰めた。答えに困る質問だとは、口に出した自分だって理解している。
父が何度だって慈しんでくれたこの顔を、自分から傷付けて汚す真似をした。同じように、誰かのことも傷付けた。
こうして耳障りになるよりも前の声色で叫んだのは、あんなサーヴァントなんか早く殺してよ、なんて物騒な命令。
戦争に打ち込む自分自身の姿をこうして想起すれば、こいつは誰なんだろうと悲嘆に等しい疑念が生まれる。
父の愛してくれた自分という人間を冒涜したのは、紛れもなく自分自身だった。
お父さんにまた会いたいなんて、思わなければ良かったのかも。
やはり、一番大きな間違いは一番初めの時点で既に冒していたのだろう。
そんなことを願ってしまう心に従ったあの時点で、こうなるのは決まっていたんだ。
なんて惨めな人間だろうか。泣きたくなるのに、もう涙すら枯れてしまった。
「その心まで否定することは無い。何かを願うこと自体が、間違いだなんてことは……」
堕落していく意識を繋ぎ止めるように、自分の言葉を彼女は否定し、自分の願いを肯定した。
だったらどうすれば良かったのか、と反駁する気は起きなかった。
納得出来る答えに到達することは、もう叶わない。そんな事態を招いた自分の非を、気遣ってくれた彼女に押し付けたくは無かった。
だから、後はもう眠りにつくだけだ。
父がくれた沢山の思い出と、父を裏切った自分への憎しみだけを胸に抱いて。
最後に残された力を振り絞って、もう一度だけお父さんと呼びかけてみた。
誰も応えてくれない、当たり前の現実だけがここにあった。
◇ ◆ ◇
「悲しいな」
「戦いで人が死ぬことがか?」
「それよりも、人が変わり果てていくことが、だ」
少女、と呼ぶには些か大人びた容姿の女の声に応えたのは、数歩後ろに立つ壮年の男だった。
二人の見据える先に横たわる少女は、もう何者にも応えることが無い。
少女も、ただ何かを願っただけの人間だったのだろう。
しかし「願う」は「縋る」になり、「執着する」から「堕ちる」へと変わっていく。
そんな、誰もが陥る狂気の成れの果てだった。
「最初は祈りだったのに、いつの間にか呪いとなって纏わりつく。ただ、心のままに動いただけだというのに」
「聖杯なんて物を提示されれば、そうなってしまうのも無理も無いさ」
「……それは、あなたの経験談か?」
「まあ、そうなるかもしれないな。等価交換の原則を超えようとした者に待っていたのは、どれも手痛いしっぺ返しだったよ」
『アサシン』の名を冠した、今の彼女に仕えるサーヴァント。
ヴァン・ホーエンハイム。
人の意思によって生み出された悲劇の数々を知るのだろう彼は、聖杯戦争という舞台に対して何を思っているのだろうか。
「はっきり言えば、聖杯に良い印象は無いな」
「なら、あなたはこの戦争を止めたいと?」
「……一方的に押し付けはしないさ。それは大人のすることじゃない。大事な人に会えなくて寂しがる子供の気持ちも、一応は分かるしな……そっちこそ、もう答えは出たのか?」
女は、迷っていた。
戦争の果てに辿り着く奇跡を以てすれば、世界に暖かな光を見せつけることも出来るのかもしれないと想像する力はあった。
そして、戦争という過程が生み出す悲しみを受け流す程の図太さを女は持てなかった。
「いや。あと少しだけ、私に迷わせてほしい」
戦争を間違っていると訴えるのは、とても容易だろう。口にするだけで、その言葉は正しさを伴うことになる。
そんな正しさだけで人が救えるのならば、人類は何百年も戦争に明け暮れたりはしなかっただろう。大地を、地球を、宇宙を戦場にはしなかっただろう。
正論だけでは、人の心を押さえ付けられない。
そして、正しさに変わる答えを女は未だ持ち合わせていない。
聖杯戦争の当事者として、この状況の一部となった者として。相対する者達に伝える絶対の真理なんてものを、持っていない。
「私は、これから誰かと触れ合っていく。その中で、自分なりの答えを見つけられるようになりたい。それだけだ」
「時間はかかるだろうな」
「それも、実体験か」
「分かるのか?」
「……感じるんだ。あなたの中に、多くの心が渦巻いている。どうして正気を保っていられるのか、不思議に思えるくらいに」
彼が人々と分かりあうまで、どれほどの時間が掛かったのだろうか。
サーヴァントとして再現された容姿の年代となるまで、だろうか。
そんなことを考えていると、いや参った、とアサシンは笑った。
「そんな大層な話じゃない。ただ、実の息子に親父と呼んでもらえるまで色々と大変だったなあってだけの話だよ」
そう言うアサシンの姿が、容姿と相まってまさしく『父親』なのだなと感じられた。
英霊である以前に、彼は一人の人間として立派であろうとしたのだ。
だから、この言葉を伝えてしまっても良いのだろうと思えた。最大限の真摯さで、向き合っていきたいと。
「『為すべきと思ったことを為せ』と、昔あの子にいったことがある。同じように、私も私の為すべきことを自分の意思で決めたい……止めたいんだ。悲しいことを、“それでも”。これは、我儘なのかもしれない。許してくれるか? アサシン」
「許すさ。君の心に従うと良い。時間の許す限り付き合う。そして心からの願いと言えるなら、俺はマスターの答えを認めるよ。たとえ、相反するものであったとしても」
言った直後、アサシンはしまったとバツの悪そうな顔をする。
「あー。名前で呼べばいいんだったっけ。嫌な思いをさせたかな?」
「いいや。別に嫌なわけじゃないんだ。ただ、その呼び方がくすぐったい感じがして苦手だけで」
「そうかい……じゃあ、マリーダ。そろそろ夜も明ける。他のマスターを探すのにも多少は好都合だ。それとこの子は……警察にでも任せたらいいだろう」
「ああ。行こうか」
アサシンと共に、この場を離れるために歩み出す。
そのまま、仄かに明るみ始めた空を見上げてみた。
虹は、何処にも架かっていない。
「……たとえ何も見えなくても、私も進むよ。バナージ」
【クラス】
アサシン
【真名】
ヴァン・ホーエンハイム@鋼の錬金術師
【パラメーター】
筋力D 耐久D 敏捷D 魔力D(EX) 幸運C 宝具A
【属性】
秩序・中庸
【クラススキル】
・気配遮断:C
サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している。
自らが攻撃体勢に入ると気配遮断のランクは大きく落ちる。
【保有スキル】
・錬金術:A+
物質を分解し再構築する力。アメストリスにおいて特に大成した科学体系。
錬成陣を描き、物質に触れることで、その物質を別の構成や形の物質に変えることができる。
ただし「真理の扉」を目撃し、且つ永い時を掛けて実力を培った彼の場合、錬成陣を描かないどころか手すら動かさないノーモーションでの錬成が可能。
「等価交換の原則」によって一の質量の物からは一の質量の物しか、水の性質の物からは水の性質の物しか作れない。
『賢者の石』を介せば、そのエネルギー分だけ強大な効果を持つ錬成が可能となる。
・自己改造:A
自身の肉体に別の肉体を付属・融合させる。このスキルのランクが高くなればなるほど、正純の英雄からは遠ざかる。
アサシンの肉体には六桁に及ぶ数の人間が融合している。
・心眼(真):A
修行・鍛錬によって培った洞察力。
窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す戦闘論理。
・神殺し:C
神性を持つ相手との戦闘の際、有利な判定を得られる。
「神」を自称する怪物を討ち取った者達の一人であった逸話から付与されたスキル。
【宝具】
・『賢者の石』
ランク:A 種別:対人/対軍/対城宝具 レンジ:1〜99 最大補足:536,329人
生きた人間の魂を凝縮して作られた高密度のエネルギー体。アサシンの肉体と完全に融合し、核となっている。
内包する人間の魂の数は50万を超えており、その全員が今またアサシンの内側で蠢き続けている。
(あくまで擬似的に再現されているだけでしかないため、魂喰いの対象にはならない)
この宝具が魔力炉として機能していることにより、現界に伴うマスターの魔力消費が少量に抑えられる。
他にも傷を負った際の瞬時の治癒や、錬金術の強化のためのエネルギー源としても有用となる。
また、この宝具を介して錬成された物質・物体には神秘性が付与されるため、サーヴァントへの攻撃手段となりうる。
ただし消費すればするほど宝具の質量は摩耗・減少していき、使い果たされると共にアサシンは聖杯戦争から脱落する。
また数百年或いは数千年を生きた生前と異なり、サーヴァントの宝具として再現された『賢者の石』は消費ペースが桁違いに速くなっている。
・『旅路の果て(レイ・オブ・ライト)』
ランク:- 種別:対界宝具 レンジ:∞ 最大補足:1人
この世界で育っていく子供達の明日を信じながら、自らの役目を果たしたヴァン・ホーエンハイムは歩みを止め、ひっそりと命を終えた。
彼と関わった一人の子供は、「ただの人間」として自らの足で立って歩き、前へ進んでいった。
そんな一つの物語が昇華された宝具。
アサシンが『賢者の石』の完全消費を理由として聖杯戦争から脱落する場面に限り、その時点における自らのマスターのために為すべき最後の役目として解放される。
「サーヴァントを喪失したマスターは一定時間の経過後に消滅する」とする世界の理が、この宝具の加護によって完全に無効化される。
代償として、この宝具の加護を受けたアサシンのマスターはその後いかなる手段によっても他のサーヴァントとの再契約が不可能となる。
つまり、その者は奇跡の願望器を掴み取る勝利者とはなり得ない「ただの人間」として、アサシンの消え去った後の世界で生きることとなる。
なお、聖杯戦争の原則の一つを覆すほどの効果を持つこの宝具には、神秘性のランクなど無い。
この宝具の真の価値は「ただの人間」がこれから作る未来の中にこそ存在する。
【weapon】
錬金術
【人物背景】
彼は世界を脅かす巨悪の排除のために戦った。
彼の名は歴史の表舞台では脚光を浴びなかった。
それでも、彼の旅路を知る者は確かに存在した。
殺すために、人知れず生きた。つまり彼は『暗殺者』である。
【サーヴァントとしての願い】
特に無し。マリーダに付き添う。
【マスター】
マリーダ・クルス@機動戦士ガンダムUC
【マスターとしての願い】
我儘に、心に従う。
【能力・技能】
正規軍人でないとはいえ一介の兵士であり、白兵戦を心得ている。
強化人間、つまりニュータイプの紛い物であるため感受性は人一倍鋭敏。
【weapon】
特に無し。
銃器もモビルスーツも持っていない。
【人物背景】
父に生かされ、姫に仕え、少年に出会い、青年に殺された。そして彼らを導いた。
そんな、ニュータイプではない一人の人間。
【方針】
聖杯の処遇についてはまだ決めかねている。
他の人々と触れ合い、自分なりの答えをこれから見つける。
現時点で言えることは一つ。悲しいことを、“それでも”止めたい。
投下を終了します。
今回の投下においては『少女性、少女製、少女聖杯戦争』の「大道寺知世&アサシン」を参考にしました。
お礼申し上げます。
皆さま投下乙です。
自分も投下します。
それは、昨夜の事だった。
「問おう。──貴公が私のマスターか?」
ブロンドの髪が靡き、優雅な容姿の中に勇猛な意思を遺した瞳が、「彼」のプライベート空間で、「彼」の事を睨んだ。
麗しき海賊娘のサーヴァント──ランサー。
彼女の手には、戦斧──ハルバードが握られ、その切っ先は、まだ憮然とするマスターの前に構えられる。
それが、自らのマスターが刃を前に立てる覚悟ある人間なのか試す意味で突きつけられたとは、まだこの時、当のマスターも知る事はなかった。
いや、はっきり言って、「彼」は自分がマスターたる自覚さえ持っていなかった。こうしてめぐり合わせたのは、不幸な事故による物なのである。
どこから不審者が侵入したのか、などと悠長な事は考えられず……ただ、滅多な事では冷静さを失わない「彼」でさえもその時は、口を開けて呆けた程だ。
「……答えられないか、東洋人。
ならば、貴公に如何なる意思があり、私が呼ばれたのか──」
まだ憮然として、言葉を忘れていたマスターに向けて、ランサーは問おうとする。
しかし、突然に現れた少女にハルバードを向けられて、まともな人間が狼狽しないわけがない。
たとえ、優雅で華麗な──ここにいる天才警視であっても、それは変わらなかった。
彼は、呆然としたまま、少女の現出を「信じられない」といった表情で見続けた。
命の危険も内心には感じている事だろう。
「──今から、試しの一戦で、教えてもらおうではないか」
それから、少女は自分の脇のテーブルに少し目をやってから、言った。
◆
────早朝。
芳醇な豆の香りが、都内の高級マンションの一室に充満していた。
染み一つない豪奢なチェアに座りながら、些か横柄な態度でコーヒーを口にする金髪碧眼の少女。
──それが、昨夜、「ランサー」のクラスのサーヴァントとして顕現したグリシーヌ・ブルーメールであった。
かつては、巴里華撃団の一員として都市の平和を支えた五人の乙女の一人にして、巴里を支える富豪の令嬢であった女性だが、今は彼女も一人のマスターの使い魔である。
つまりは、人を使う立場から、使われる立場になったという筈である。
とはいえ。
こうしてマスターの淹れたコーヒーが目の前に置かれるのを座して待っている姿からは到底そんな力関係は推し量れないだろう。
まるで、サーヴァントこそが主で、マスターはそれに使える執事か小間使いのようにさえ見えてしまう。
幸いなのは、そのマスターも色素の薄い髪と美しい相貌で、高級なスーツを着こなしている為に、ランサーと対等の貴族がコーヒーを振る舞っているように見える、という事か。
知らない人が見れば、美男美女のカップルであり、家庭的な「主夫」がコーヒーを淹れてやっているように見えなくもない。
ランサーは、ウェッジウッドのコーヒーカップをソーサーに置き、目の前の男にコーヒーの率直な感想を言う。
「貴公も、なかなか美味いコーヒーを淹れるではないか。──アケチ」
マスターである男の名は、明智健悟と言った。
一体、どんな仕事に就けば、これだけ格式高いマンションで一人暮らしを満喫できるのだろうか──というのは、多くの人の好奇の的だろう。
実を言えば、明智は警視庁捜査一課の警視なのである。
二十八歳で警視の役職に収まる事から想像できる通り、彼はキャリア組と言われる一握りのエリートの一員であった。
それ故に、彼の刑事人生は「警部補」の階級から始まっている。そこから順調に、「警部」、「警視」と段階を踏んで、今のポストに収まっているわけだ。
彼の実績と知能からすれば、将来的には、「警視総監」という最高役職も間違いないと断言できる。
つまりは、この日本社会においての上層階級に位置する、「大金持ち」と言って差し支えない人間という事である。
「……ええ、ブルーマウンテンには少々拘りがありますからね」
そんな明智は、丁度、コーヒーと共に食する朝食を運んできた所だった。
薄らと焦げ目がついたクロワッサンの皿が二枚。
これが右手の指の間に二枚とも挟まれており、もう一つの手には、伊万里の小皿が乗っていた。
小皿の中身は、ランサーには推察の付かない黒い物体である。
明智がそれらをテーブルに置いて、自らもチェアに座った。
ランサーは待ちわびた朝食を眺める。
「……なあ、アケチ。一つ訊いても良いか?」
「なんでしょう?」
「このクロワッサンとブルーマウンテンはともかくとして、この黒い物体はなんだ?」
「塩昆布ですが、……それが何か?」
「………………それは、どういう組み合わせだ?」
ランサーは苦い顔で明智を見ながら、ランサーはクロワッサンだけを手に取った。
明智は、クロワッサンと塩昆布の組み合わせを全く可笑しいと思ってないようで、全く顔色を変えずにクロワッサンを手に取っていた。
ランサーはそれだけでげっそりした気分になった。
常人があの組み合わせで朝食を食べたら、悪い化学反応を起こしてしまいかねない。
現に、その光景が目に入るだけで、ランサーの目が渋くなる。
この明智という男──「エリートであるのは良いが、少々変わっている」と、ランサーは思った。
と、その時、明智が口を開く。
「……それにしても、貴女も、先日に比べると随分と態度が柔らかくなりましたね」
マーマレイドをクロワッサンに付けているランサーに向けて、明智は言った。
ランサーは向かいにいる彼を見たが、殆どランサーに目を合わせる事もなく、塩昆布をぽりぽりと食べ続けている。
そんな彼に、ランサーは、やや自嘲気味な笑いを見せて、言った。
「──ああ、貴公との昨夜のチェスの結果は散々だったからな。
あれで、私も少しは貴公の実力を知ってしまったわけだ」
「なるほど。チェスがきっかけ、と来ましたか……。
──それならば、貴女もなかなかの腕前でしたよ」
明智は、昨日、ランサーと契約を交わす「マスター」として、ランサーと初対面をする事になった。
ランサーは、自らのマスターの力量によって、それに従うか否かを決定づけようとしたのだが、残念ながら、ランサーのハルバードと対等に戦える武器は明智の部屋にはない。
部屋の脇を見れば、そこにはチェスのボードがあったが故、ランサーはそれを代わりの「勝負」としたわけだ。
ランサーも生前、貴族の一員としてチェスを嗜んだ一人であり、彼女もまた、そのゲームの奥深さや実戦にも繋がる軍略的意義を熟知していた。
そして、ある程度、会話を交わしながら行えるという点でも、相手の知能や性格を知るのに有用だ。
「尤も、あそこでポーンの使い方を間違えなければ、もっと良かった、と……そう思いますがね」
で、その結果がランサーの敗北であり──明智のしれっとした「勝者ゆえの余裕」なのである。
ゲームの最中は、二、三度、明智を長考させ、一時はランサーの優勢もあったはずだが、結果的には、ランサーはチェックメイトを仕掛け、明智のキングを取る事が出来なかった。
それだけならまだ良いが、よりにもよって、こうして後から、ランサー自身も後悔した戦法を突かれるとなると、あまり良い気持ちはしない。
明智に挑発の意図はないようだが、ランサーはこう訊かざるを得なかった。
「……なあ、お前、誰かにイヤミな性格だと言われた事はないか?」
「何故その事を──?」
心底不思議そうに、明智はランサーを見ていた。
この男が、「イヤミ」と言われるであろう事は、どんな人間でもよくわかる。
おそらく、彼の部下などは、彼の素知らぬ所で、何度も明智の事を「イヤミ」と陰口を叩いているに違いない。
……何しろ、貴族階級であるブルーメールの一人娘がそう思った程なのだから。
「──」
……しかし、ランサーはそれをこれ以上考えるのは辞める事にした。
自分のマスターの粗を探して得は無い。
第一、自分が負けたという事は、純然たる事実に過ぎないのだ。
「──で、それはともかく、アケチ。今後はどうするかは決めたか?」
少々、貴族らしからぬ粗野な座り方になる。その辺りに、明智の口振りへの苛立ちと、小さな反抗が感じられた。
結局、昨日の対戦を終えても、明智の口から彼のスタンスについて訊く事は叶わなかった。
昨日の時点では「まだ決まっていない」、「一日休んで、明日には答えを出す」、と聞いたはずであるが。
それからしばらくして、クロワッサンを胃に収めた明智の口から、答えが絞りだされる。
「……ええ、そうですね。やはり、今朝はその話をしておきましょうか。
今後の方針ならば、実は──この聖杯戦争というゲームに、否応なしに巻き込まれた瞬間から決めています」
「ならば、どうして私に黙っていた?」
「貴女の、チェスの戦略と──それから、今日の『敗者としての潔さ』を見る前……だったからですよ」
褒めているのやら、嫌味を言っているのやらわからない口ぶりに、ランサーは黙りこむ。
しかし、一応、当人は褒めている「つもり」なのだろう。
少なくとも、彼は「グリシーヌ・ブルーメール」という英霊に一定の信頼を寄せたと言って良い。
だからこそ、この初対面の彼女に、自らの信念と方針を語る気になったという事である。
まるで試されたようで、ランサーにとっては少し癪であるが。
「──おそらくですが、否応なしに巻き込まれた人間は、私だけではないでしょう」
コーヒーを口にして息をつきながら、彼は少し前口上を始める。
核心や結論からではなく、勿体ぶったような言い回しになるのは、さながら小説の中の名探偵のような話し方である。
……まあ、彼のこれまでの功績を知っている者ならば、その喩えもあながち、間違いでないという事もわかっているだろう。
「関係ない話になりますが、実は、私は何度か、殺人事件に巻き込まれた事がありましてね」
「……それは当たり前だろう、何せ、捜査一課の警視なのだから」
「──いえ。仕事の話だけではありません。
高校時代も、大学時代も、刑事になってからも、私はいくつかの殺人事件に、行った先でたまたま巻き込まれた事があるんです。
特に、私がロスにいた頃は、かなり多くの難事件に出会いましたよ」
それは──明智という男の、ある種、先天的な死神的な性質であった。
両親ともに刑事であり、天才的な頭脳を持った彼のもとには、何故か昔から常に「事件」が舞い込んでくる。信じがたい確率で、「殺人事件」という物に遭遇するのだ。
彼が通っていた名門高校においても、少し立ち寄っただけの音大生の演奏会やフェンシング合宿、先輩の所属する大学の学園祭においても、その性質は拭い去られはしなかった。
だが、明智にとって、その性質は、決して不幸ではない。
許されざる犯罪と立ち向かう力を持った明智を、天がその場に呼んでいるのだと思ったからだ。
少なくとも、明智には悪と立ち向かう知能や正義感がある。だから、人並以上に殺人事件に遭遇する性質を、恨んだ事はない。
本当に不幸なのは──明智ではないはずだ。
「──しかし、事件に巻き込まれる人間というのは、常に……私だけではなかった。
多くの一般人も、共に巻き込まれ、心に傷を残し、時として、あまりに残酷に命を奪われる事になる。
事故も、犯罪も、そうですが、とりわけ私が見て来た『殺人事件』というものは……常に、そうでした」
時には、犯罪などと無縁に生きる普通の人間さえも、人間は巻き込んでしまう──それが彼がよく巻き込まれる殺人事件だった。
平和に生きていた人々が、凄惨な死体を目の当りにし、誰もが自分も殺されるのではないかという恐怖に苛まれる。
そして──時には、殺されるのは罪人であったが、時には、何の罪もない人間が「凄惨な死体」とも成り果てる事がある。
明智は、それを何度となく見て来た。
それは、決してそういう職業に就いたからというだけではなかったに違いない。
「……この聖杯戦争も同じだと思いませんか?
こうして魔術師でもない私が巻き込まれる『事故』が生じている以上、同じ『事故』に遭った人間は私だけではない。
──私には、そんな気がしてならないんです」
明智は、経験上、そう、直感的に感じていた。
推理、というには少々、理の要素は薄くも見えるが、一人が事故に遭っている以上、同じ事故が別の人間に対しても起こりうるというのは当然である。
ランサーには、その推察と明智の今後の方針との結びつきは、まだ確信できなかった。
ランサーは、目を瞑り、腕を組みながら、明智の推察に自身の答えを付け加える。
「確かに、いる、だろうな。……貴公以外にも、この聖杯戦争に意図せず巻き込まれた人間は」
「ええ。私にとっても、これはただの予感ではなく、ほとんど、確信ですよ」
「──では、そういう者たちがいるとして、その者たちを、貴公はどうするつもりだ?」
ランサーの目を見開いて問うた。
すると、明智は、さして間を開けずに、それに答えた。
「無論、救える限り救い、この聖杯戦争から解放します。
市民を犯罪や事故の手から守る事──それが、私たちの所属する『警察』という組織の務めだとするなら、尚更ね」
「……」
「……少なくとも、今の私には他者との闘争や、殺人の果てに得る願いなどない。
いえ、仮にあったとしても……そこまでして願いを叶えたとして、その人間が幸せになれない事など重々承知しています」
明智が、多くの殺人事件に巻き込まれて知った事は、ただ「一般人が巻き込まれる」という事だけではなかった。
これまで、あらゆる憎しみや目的で殺人などの凶行に走った犯罪者たちを、彼は何人も知っていた。
そして、それらの人間に共通していたのは、「決して犯罪によって幸せにはなれなかった」という事である。
殺す為に誰かを追っている時はまだ、その先に降りかかる悲しい不幸と虚無感の事を知らないのだ。
どうしようもない激情に身を任せ、殺戮という手段を選ばざるを得なかった者も──おそらくは、犯罪を行わない方が幸せだったに違いない。
勿論、犯人たちの中には、それを覚悟の上で行っている者もいるのは知っている。
──しかし、その覚悟を持っている筈の犯人たちの中には、達成の後に、己の覚悟と裏腹な自傷を行う者も何人もいた。
それから、復讐や目的の為に、罪もない誰かを意図せずして巻き込んでしまう人間もいた。
下手をすれば、復讐そのものが誤解や間違いによる物で、その行為が何の意味もなさなかった人間もいた。
だから、彼は、「犯罪を止める」、「復讐を止める」……という職務には、「法律や秩序の為」以外の理由があると思っている。
その理由とは、自らの不幸に向かって滑り落ちている人間を止めてやる事に違いないのだ。
「……それに、こうして多忙な私を、わざわざこんな三流の茶番劇に巻き込んだというのも癪です。
────ですから、この聖杯戦争の元凶である『聖杯』などという物は、破壊するつもりです。
ただし、勿論、私としても、巻き込まれた人間の救出が最優先で、聖杯の破壊は、二の次ですがね」
そして、その為には、「聖杯の破壊」という──「願いを持つ誰か」にとって、冷徹にも見える手段も辞さない。
たとえ、それがどんな願いであろうとも、彼は、その願いへの「希望」を絶つ事に、躊躇はしないだろう。
それが彼の職務であり、信念に違いなかった。
「なるほど……。貴公の考えはよくわかった」
まくしたてるように自身のスタンスを語り終えた明智を見て、ランサーは熟考する。
明智の語りは、まるで、次の一言をランサーに告げさせる為の誘導なのではないか、という程に華麗であった。
「ならば……貴公の方針には、私も協力しよう──」
そう、協力を表明するその言葉を──告げされる為の。
少なくとも、ランサーの物わかりの良さは明智も承知済であったし、こんな返答をする「誇り」が彼女の中に見出せるのもよくわかっていたのだろう。
このランサーは中世的感覚にありながら、庶民というのを見下すような事は一切しなかったし、忌み嫌う東洋人をわざわざチェスで試し、敗北すれば誠実に接する姿も見せている。
ランサーが、必ずこうして協力してくれると、明智は既に「推理」していたのである。
──しかし、次に、ランサーが告げる事になる言葉だけは、全く、明智の予想外であった。
「──由緒正しき……ブルーメール家の名にかけて! ──必ずな」
ブルーメール家の名にかけて。
これは、かのノルマンディ公爵より続くブルーメール家の名を背負ったランサーが、生前からして時として口にする言葉であった。
確かにそれは、決して、明智のよく知る「あの少年」だけが使うような言葉ではない。
彼女のように、名のある人間の血筋を受け継いだ人間ならば、確かに使っても違和感のない言葉である。
しかし、やはり──その言葉で明智が思い出すのは、名探偵を祖父に持つ「ある生意気な少年探偵」の事であった。
「ほう」
つくづく、奇妙な因縁を感じる事だ……と明智は思う。
この台詞を聞くと、怜悧な明智も内心で少なからず燃え滾る心があった。
これはもはや、本能である。
彼への対抗意識だけは、この明智の中でもしばらく消える事はなさそうだ。
もしかすると、「彼」も巻き込まれているだろうか。いや、流石に今回までも、それはないか。──などと考えながら。
明智は、ふと、壁の時計に目をやった。
「──おっと、貴女と話していたら、もうこんな時間だ」
「出勤の時間か?」
「ええ。仕事の手を抜くわけにはいきませんからね。
……しかし、これだと今日の朝刊を読む時間はないな。──これは少し残念だ」
「安心しろ、私が目を通しておいてやろう」
何が安心しろ、なのかわからないが、ランサーはそう言った。
新聞は明智自身が読まなければ全く意味はないが、まあ、明智はそれで良しとする事にした。どの道、時間もない。
折角、金を払って購読している新聞なのだから、せめて誰かに読んでおいてもらおうか、と。
この現代の世相を知る事も出来るだろう。
何せ、ランサーは、東洋の小国がある経済発展を果たした事さえもよく知らない時代からやって来たというのだから、役に立つに違いない。
「──そうですか。それでは、この家の留守もついでに任せましたよ。
ランサー……いえ、やはりグリシーヌ・ブルーメールと呼んだ方がお好みでしょうか?」
「まあ良い。貴公の好きに呼べ。
ブルーメールの名は、我が心にあれば充分だ。他者に呼ばれる事に拘りはない」
「……ふっ。良い心がけです。昼食は、ある物を適当に食べてください。
──それでは、行って参ります」
「ああ、くれぐれも、気を付けろ」
明智は、「エーゲ海を思わせる青いベンツ」(←本人談)の鍵を手に取って、自分の部屋を去った。
◆
明智の住む高級マンションの一室。
ランサーが昨日の夜に顕現した為、今はまだ、明智がランサーの住む為の「別の部屋」を借りていない為、明智とランサーは同じ部屋に同居している。
あまり外面が良くないこの「外見年齢十六歳前後の金髪少女との同居」は、まだ近隣住民にも知られていない。
これだけの防音設備が整い、プライベート空間がキープされているのだから、ランサーが安易に外に出たりしなければ、しばらく知られる事もないだろう。
ランサーは、これといって、部屋で何をするわけでもなく、明智に言われた通り、番人としてそこに居座り、そして、新聞を手に取っていた。
「トーキョー都、F市の高等学校の呪い……なになに?」
何部かの新聞が届けられていたので、ひとまず、その中から適当に抜きだして取り出す。
英字新聞もあったようだが、フランスの情勢ならば日本の新聞でも充分に知る事が出来るはずだ。
この現在の日本──特に帝都や、フランス──巴里がどうなっているのか、どんなニュースが今話題なのか調べたい所だったが、ランサーが読んでいる記事は何やら妙な事ばかり書いてある。
「トーキョーに位置するF高校では、生徒たちが部室に使っていた音楽室の壁に骨が埋まっていて……。
──……放課後になると、『放課後の魔術師』が……儀式の為にあなたを呪い殺しに……」
呪い? 現代日本は、そんな物がニュースに取り沙汰されているのだろうか?
……いや。
やはり──これは、ニュースではない。
ただの、「怖い話」ではないか。
「……」
息を荒げながら、ランサーは新聞を読むのをやめる。
手が震えている。
唇も震えている。
目が引きつっている。
全身には、鳥肌が走っている。
……何気なく手に取った新聞にあったのがこんな記事とは、不運だったと言えよう。
明智の愛読する「恐怖新聞」は、ランサーの手によって、地面に叩きつけられた。
「──ふざけるなぁぁぁぁぁぁっ!!! な、……なんだ、この心臓に悪すぎる新聞は!!!!!!」
彼女は、この時、まるで自分自身も「英霊」の一人であるという事を忘れているようだった。
明智は、社会情勢や各国の事件を知る為に幾つもの新聞を購読しているのだが、実は、その中に一つだけ、彼の趣味と思しき「恐怖新聞」が混じっているのである。
よりにもよって、彼女はそれを引き当ててしまったらしい。
二度と新聞など読むか! ──と怒り、ランサーは新聞を全て纏めて片づける。
未だ、部屋に一人という状況には、言い知れぬ恐怖と、奇妙な気配や錯覚が襲い掛かるが、それはやはり全て気のせいだろう……。
(くっ……! とんでもない男に引き当てられてしまったようだな、私は……)
そして──彼女は、明智健悟という男がまごう事なき「変わり者」である事を、再び心に留めたのだった。
【CLASS】
ランサー
【真名】
グリシーヌ・ブルーメール@サクラ大戦3〜巴里は燃えているか〜
【ステータス】
筋力B 耐久C 敏捷D 魔力A 幸運D 宝具C
【属性】
秩序・善
【クラススキル】
対魔力:C
第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。
大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない。
【保有スキル】
霊力:A
ランサーが魔力の代わりに持つ力(実質的に魔力と同様の性質を持つが名称だけ異なる)。
このスキルによって宝具『霊子甲冑』を操る事が出来るようになるほか、感情の高ぶりなどで筋力・耐久・敏捷のパラメーターを一時的に上昇させる事も出来る。
黄金律:B
人生においてどれほどお金が付いて回るかという宿命を指す。
Bランクは永遠に尽きぬと思われる財産を所有している。
勇猛:B
威圧、混乱、幻惑といった精神干渉を無効化する。
また、格闘ダメージを向上させる。
貴族の誇り:A
ノブレス・オブリージュの精神。
彼女の場合、高貴に振る舞う義務を全うし、庶民を守る為には時として汚水に浸す覚悟も持ち合わせる。
【宝具】
『霊子甲冑』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1〜10 最大捕捉:1〜10人
高い霊力を持つ者だけが操る事が出来る鎧のようなメカ。
一見すると搭乗型巨大ロボットのようでもあるが、その性質上、騎乗スキルの有無に関わらず使用可能であり、ランサーもこれを手足のように自在に操る。
生前のランサーが光武F、及び光武F2の二機を操った伝説に基づき、この二機のいずれかを選択して現界させて戦う。
この『霊子甲冑』を纏えば、筋力・耐久のステータスがAランクやA+ランクまで上昇し、魔族・魔物・魔獣などの怪物や巨大な機械などとも互角の戦闘を可能にする。
しかし、一方で敏捷のステータスがEランクまで下降する。まさに甲冑の如き宝具である。
ランサーの特性に合わせて、光武Fでは手斧と盾、光武F2ではハルバードを装備している。
ランサーが持つ斧の技も、この宝具の発動中は威力が増す事になる。
【weapon】
『ハルバード(ブルーメール家専用)』
後の逸話でもその名は残っていないが、ブルーメール家に伝わるハルバード。
この武器の特性上、切っ先が槍状になっており、これが「ランサー」としての彼女のクラスを決定づける事になった。
しかし、実質的には殆ど、斧としての使い方しかされない。
【人物背景】
グリシーヌ「この空の向こうには……自由が…」
カッポカッポカッポ…
天馬:ヒヒーン
大神さん「迎えに来たよ、お姫様」
グリシーヌ「ふふ…冴えない王子だNA☆」
大神さん「行こう…星空の海へ」
ペ ガ ー ズ ・ エ ー ル
【サーヴァントとしての願い】
聖杯の破壊。
ただし、マスターを聖杯戦争から脱出させる事を最優先。
【マスター】
明智健悟@金田一少年の事件簿
【マスターとしての願い】
巻き込まれた人間たちと共に、聖杯戦争からの優雅なる脱出。
余裕があれば、華麗に聖杯を破壊する。
【weapon】
『警察手帳』
彼の身分を証明するもの。
普段は警察官として勤務する為、その装備は所持できるが、私的理由で銃を携帯する事は当然許されない。
とはいえ、彼は捜査一課の刑事で捜査権も作中描写では、かなり広い(現実ではまず考えられないレベルだが気にしちゃ駄目)為、基本的に現場での仕事では銃も携帯する。
【能力・技能】
東大・法学部出身。キャリア組のエリート警視。警視総監賞の最年少受賞者。
法学部出身の為、司法試験にも受かっていたが、それでも警察に入った。
幼少期は神童と呼ばれ、後には県下の名門高校・秀央高校に入試にて全教科満点で合格し、特Aクラスに入る。
その在学中に殺人事件を一件解決しているほか、大学生時代、警部時代、ロス市警時代、警視時代といずれも多くの事件を解決している。
その推理力は主人公である金田一一(IQ180で名探偵の孫)と双璧を成し、彼に無い知識や一般常識を多数有している為、総合的な能力では明智に分があるはずなのだが、彼ほどの柔軟性は持たないのが欠点であり、大抵は彼に推理で互角もしくは負けている。
趣味・特技は、現在判明している限り、以下の通り。
・テニス(国体級の腕前)
・スキー(国体級の腕前
・バイオリン演奏(トップクラスの音大生で編成される楽団の演奏会でバイオリニストの代役を務めている事が出来るレベル)
・フェンシング(大学生チャンピオンに一泡吹かせる事が出来るレベル)
・乗馬
・チェス(チェスの世界選手権で決戦まで行き、世界チャンピオンを打ち破ったコンピュータに完勝)
・ポーカー(本人曰く、「賭け事は苦手」だがポーカーをすればほぼ全勝できる)
・プログラミング
・ハッキング
・社交ダンス
・登山
習得言語は、判明している所で、英語、フランス語、ドイツ語、広東語。
幼少期には釣りをしていたような描写もあり、高校時代はミステリ好きだった事も明かされている。
大学時代は塾講師のバイトで、「受験の神様」と呼ばれたとか。
あと、旅客機やセスナ機が操縦できる(これは読者にも散々ツッコまれたが、作中で出来る物は出来るんだから仕方ない)。
射撃も正確。
要するに、「ハワイで親父に習った」的なノリでだいたいの事はできる。
しかも金持ちで、ベンツが愛車。家賃ン十万の高級マンションで過ごしているらしい。
ただし、普段はおでんの屋台など、やたらと庶民的な場所の常連という面もあり、金田一家での朝ご飯もベタ褒めしている。
更に容姿端麗で、高校時代もモテモテだったが、明智少年はあまり相手にしていなかった模様。
それから、ロス時代にはパツキンの恋人がおり、若い男性刑事が明智の流し目で思わずドキッとする描写などもある。
という事で、早い話が人間の皮を被った超人。
……彼にできない事といえば、コンタクトレンズを嵌める事と、ゴキブリ退治と、金田一少年に推理で勝つ事。
あと、多少、凡人の感情に疎い面があり、金田一が一瞬で推理する事が出来た明智の親友の心情を、何年も汲み取れなかったという場面もある。
多少天然で、「トイレにスーツやワイシャツが置いてあり、朝はトイレで着替える」、「朝ごはんの組み合わせがブルーマウンテンとクロワッサンと塩昆布」、「英字新聞と恐怖新聞を愛読」などの常人には理解し難い一面も。
ジャンル的なライバルの江戸川コナンくんに会った時も、彼の正体に気づいた素振りを見せながらも、最終的に、「神童と呼ばれていたかつての私にそっくりです」という結論に至る(金田一はコナン=工藤新一説を一回考えてやめたが、明智はそんな事考えてもいない)。
【人物背景】
以上のように、存在そのものがイヤミ。【能力・技能】の欄でだいたいの事が解説出来るくらいイヤミ。
大気中のイヤミを集めて、命を吹き込むと明智警視が華麗に誕生する。
ただし、間違えても、「雪夜叉伝説殺人事件」を読んで彼を把握しないように。
【方針】
自分以外の巻き込まれた人間も探し出し、聖杯戦争から華麗なる脱出。
また、その後、余裕があれば優雅に聖杯の破壊も行う。
投下終了です。
投下します。
織田家の生活は、常に優雅だった。
食品会社の社長の父、自宅の広大な敷地、名前を覚えきれない程のメイド。
そんな、天が選んだかのような特別高貴な環境で、織田敏憲は生まれ、中学三年生まで、何不自由のない生活を送ってきたのである。
しかしながら、そんな彼を認めようとする者は、彼が現在在籍いるクラスには……いなかった。
下品なクラスメイトたちが騒ぎ立てるのは、顔が良く、背が高い男ばかり。
それ以外の有象無象も、自分を崇めた奉る事がない。
実に不愉快で無礼であるが──だが、まあ仕方が無い話だ。
何しろ、彼らは頭が悪く、下品極まりない凡人に過ぎない。
せいぜい、下品な男たちの下品なスポーツや下品な音楽に聞き惚れているが良い。
貴様らに真の芸術は理解できまい。
高貴な織田は、もはや彼らとは別の次元で生きているのだ。
……彼らが人として当然の事すら出来ないのは、仕方の無い事だ。
そう、高貴な者には、あんなクラスよりも、もっと高貴な場が相応しい。
早々に、進学が決まっている私立高校に行きたいものだ。
そこで、思う存分バイオリンを弾かせて貰いたい。
──と、それより前に、だ。
高貴な家庭に生まれた織田は、中学を卒業する前に、あるゲームに参加する事になっていた。
それが、この「聖杯戦争」というゲームである。
魔術師たちがサーヴァントという使い魔を駆使して、「聖杯」を得る為に殺し合うのがこの聖杯戦争だ。
この高貴な魔術師たちだけに許されたリアルな殺し合い──。
その果てに得られる「聖杯」なる物は、正真正銘、高貴な人間にこそ相応しい願望機である。
そして、織田は魔術回路を有さなかったが、見事に≪セイバー≫のクラスから、一人の女騎士を呼ぶ事に成功している!
セイバーとはつまり……この聖杯戦争における七つのクラスにおいて、最高位!
他のサーヴァントの勝る事のない、最強のサーヴァントを引き当てたのは、まさに織田が選ばれた人間であるという証に違いなかった!
「やあ、セイバー……何をしているんだい?」
(呼んでるんだからとっとと来いよ、お前は俺のマスターだろうがッ!)
織田は、織田邸の庭で朝方に修練するセイバーに、パジャマ姿のまま声をかけた。
セイバーは、グラスに水を注いだ上で、そのグラスを剣の切っ先で弄んでいた。
剣の上にグラスを立てるという時点で相当精密な剣捌きとバランスが必要なのだが、彼女はそれを空中に投げ、一滴の水滴も零すことなく、再び剣でキャッチするという動作を繰り返している。
もはや、それは人間の業ではなかった。
生前、戦闘のみに生きたセイバーでなければ、およそ不可能と言っていい。
彼女であっても、かなりの集中力を要する修練であるらしく──動きは少ないにも関わらず、セイバーの額には汗が滲んでいる。
セイバーは美人の女性であったが、その表情は、今日は固かった。
「……」
修練中のセイバーは、織田の挨拶に何も返さなかった。
先ほど言った通り、これはかなりの修行を要する修練なのである。
それゆえに、他人と口を利く時間がない。彼女の意識も、言葉も通さないようになっているのだろう。
織田は、無視されているのに気づいていたが、表だって不機嫌な顔をせずにセイバーに、一応声だけかけてその場を去った。
「……いやあ、朝から精が出るねえ……修行を欠かさないのは良い事だよ、ウン」
(くそ、無視しやがって……下品なサーヴァント奴僕がッ! 修行なんかしている暇があるなら、さっさと他のマスター奴僕やサーヴァント奴僕を殺して来い!)
セイバーとはいえ、所詮は、かつて戦に使われた駒に過ぎない。
かつてセイバーが何であったのかもよくわからないが、あれだけの達人ならば、「道具」としては実に役に立ってくれる事だろう。
この織田家に、聖杯を齎す者として──。
「──」
織田家は、代々、魔術師の家系であった。
奇妙な事に魔術回路を持つ人間はいなかったが、代々、男子が聖杯戦争でマキリやトオサカやアインツベルンの連中と共に聖杯戦争を行っていたらしい。
いつ家族がそんな話をしたかはわからないが、織田家の人間はそれを当たり前のように知っていた。
そして、今回は、その役割が織田敏憲に来たと言う訳である。
「……さて、それじゃあ僕は、学校の準備でもするか」
【CLASS】
セイバー
【真名】
セフィリア=アークス@BLACK CAT
【ステータス】
筋力B+ 耐久B 敏捷A+ 魔力D 幸運C 宝具A
【属性】
秩序・善
【クラススキル】
対魔力:C
第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。
大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない。
【保有スキル】
直感:A
戦闘中の「自分にとっての最適の行動」を瞬時に悟る能力。
ランクAにもなると、ほぼ未来予知の領域に達する。視覚・聴覚への妨害もある程度無視できる。
カリスマ:B
軍を率いる才能。
クロノナンバーズのトップとしての人望は底知れず、その気になれば一国を納める事も出来る。
アークス流剣術:A
セイバーが生前に極めた剣術。
Aクラスともなると、ガドリング砲ばりの剣速で敵を粉々にする最終奥義『滅界』までも使用可能。
桜舞:B+
緩急をつけた動きで敵を翻弄する無音移動術。
実質的には、『縮地』と変わらない。
心眼(真):B
修行・鍛錬によって培った洞察力。
窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す戦闘論理。
【宝具】
『刻を護りし番人の剣(クライスト)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:1000人
超金属オリハルコンによって作られたサーベル型の長剣。
いかなる攻撃でも壊されることはなく、またどれほどの高温でも原形を失わない。
セイバーの剣速を以ては、どんな強固な武器も容易く崩れてしまう為、この宝具でなければセイバーの本領はそもそも発揮できないとされる。
この剣から放たれるアークス流剣術の最終奥義『滅界』などは、剣技でありながら敵を粉々に吹き飛ばすだけの威力を持つ。
仮に『滅界』を使った場合、再生能力や不死性を持つ敵でない限り、確実に滅する事ができるだろう。
【weapon】
『刻を護りし番人の剣(クライスト)』
【人物背景】
秘密結社クロノスが擁する最強の抹殺者(イレイザー)集団、『時の番人(クロノ・ナンバーズ)』のトップ。
各メンバーがNo.I〜No.XIIIのナンバーを持っている中で、彼女はNo.Iにあたる。つまり、最初のメンバー。
生まれた時からクロノスのために戦うことを宿命付けられており、クロノスに絶対的な忠誠を誓っている。
その為、任務には冷徹に、強かに挑むが、仲間の殉職の報に涙するなど、本来は心優しく温厚な人柄である。
【サーヴァントとしての願い】
マスターに従う?
【基本戦術、方針、運用法】
セイバーの名に恥じないかなり強力なサーヴァントだが、マスターがマスターなので上手く扱えるか微妙。
現在の基本はマスターに従う方針とはいえ、クロノスの任務以外では優しかった彼女の性格と織田の性格では齟齬も早い段階から生まれるだろう。
織田には、上手く彼女を騙し続ける必要が強いられる。
【マスター】
織田敏憲@バトル・ロワイアル(漫画版)
【マスターとしての願い】
願いは特にないが、聖杯は高貴なこの自分に相応しい。
聖杯戦争において、最も強力なサーヴァントであるセイバーが高貴な自分のもとに召喚されたのも当然である。
このセイバーとかいう女を道具として使い、何としてでも聖杯を得てみせる。
【weapon】
『防弾チョッキ』
ガンマニアでもある彼が、特別に取り寄せた物。
これによって、他マスターからの銃撃を受けた場合に備えられる。
【能力・技能】
高貴である事。
上品なバイオリンの腕。
ガンマニアとしての豊富な知識。
【人物背景】
香川県城岩町立白岩中学校三年B組、男子4番。
プログラムに巻き込まれた中学生の内、殺し合いに乗った少年。
蛙のようなブサイクな顔の低身長。クラスメイト全員を見下している。
彼の嫌いなもの
1、顔のいい男
2、背の高い男
3、総じて下品な男
【方針】
聖杯を得る。
【備考】
この織田敏憲には、織田家が魔術師の家系だという奇妙な記憶改竄が起きている。
それゆえに、彼の中では、「四大魔術師家」が「オダ>>>>>>>>>マキリ、アインツベルン、トオサカ」となっているが、他のマスターにはこんな認識はない。
しかも、織田自身が、そもそもこの「御三家」の事を名前以外よく知らず、御三家の人間と今のところ面識もない可能性が高い(そもそも、聖杯戦争の成り立ちに関わる「御三家」と違い、何が「四大」なのか不明)。
更に言えば、敏憲よりも前の織田家の人間が聖杯戦争を行っていた事は一切記録になく、過去に聖杯戦争を行った者も「織田」などという家系は覚えていないはずである。
ちなみに、織田家には、家族の誰にも魔術回路はない。魔術に関しては素人そのもの。
どう考えてもおかしいはずだが、織田自身はあまり気にしていないようである。
一応、「織田家が魔術師の家系」というのは今現在は織田家の共通認識となっているらしく、セイバーが普通に織田家で過ごしていても、織田家の人間は何も言わない。
投下終了です。
折角なので以前別所で落選した作品も投下します。
諸君! この二人の女の子をおぼえているだろうか!
「あーあ、困っちゃうなぁ」
「まったくよねー、困っちゃうわー」
「聖杯戦争なんて言われたって、こっちも叶えたい願いなんてないよぅ……」
なんて、困っているの青い髪の女の子は森沢優ちゃん。
そんなに困っていない方のピンクの髪の女の子はそのサーヴァントの≪キャスター≫ミンキーモモである。
なんとなんと、この二人の乙女も、この聖杯戦争に巻き込まれてしまっていたのだっ!
もし、知らないという人がいたら、その人たちの為に教えてあげよう。
説明がいらないという人は、次のセリフのところまで飛ばしてほしい。
森沢優は、東京都国立市くりみヶ丘でクレープ屋を営む森沢家の一人っ子である。
私立セントレミー学園小等部に通っている、自由奔放を絵に描いたような女の子だ。
ある日、魔法世界「フェザースター」の箱舟を見た優ちゃんは、な、な、な、なんと! 魔法のステッキを授かって、魔法が使えるようになってしまったのである!
魔法の天使クリィミーマミとなった優ちゃんは、新宿でアイドルとしてスカウトされてしまう。
アイドル・クリィミーマミと森沢優としての二重生活を送っている彼女は、時に悩みながらもたくさんの人に歌と希望を与えていくのが彼女の昨日までの物語。
一方、ミンキーモモは、空にある夢の国「フェナリナーサ」から来たプリンセス。
地球では、ペットショップ兼獣医さんの記憶を改竄して、その娘として暮らしている。
でも、そうやって周囲を巻き込みながらも最後にはみんな笑顔にしちゃうのがこのモモという女の子なのだ。
好奇心旺盛で元気爆発! 魔法の呪文で18歳の女の子になって色んな事件を解決して、夢を与えていくのが彼女の使命である。
二人とも、たまに挫折したり、悩んだりするけど、前を向いて自分の持つ魔法と向き合っている。
願いは自分の力で叶える物だっていう事を、誰よりもよく知ってるし、世の中がそんな魔法みたいにうまくいくものじゃないと誰よりもよーく知っているのだ。
だから、二人は聖杯戦争なんて大っっっ嫌い! ニンジンよりも、ピーマンよりも、シイタケよりも、聖杯と戦争が嫌いだ。
たまーに悲しい事もあるけれど、楽しくて楽しくてたまらないいつもの日常が、二人は大好きで、またそういう日常に帰りたいと思っているんだ。
「この聖杯戦争のお陰で原宿に引っ越す事になっちゃったし、しばらく好きな人とも会えないなぁ」
「へー、優ちゃん。好きな男の子いるの。ねえねえ、今度紹介してよ」
二人は女の子同士の話を始める。
まだ11歳だからね、仕方ないね。
「だめーっ! 俊夫の事なんてぜーったい教えてやんないっ!」
「えへへー、俊夫くんっていうんだ。優ちゃんの好きな子」
聞いちゃった聞いちゃった、とはやしたてるキャスター。
ついうっかり好きな人の名前を口にしてしまった優は、顔を真っ赤に染め上げて怒った。
「こらーっ! キャスター。そんな事言ってると、マリョクキョーキューしてやんないぞぉ」
「えー、それは困っちゃうなあー」
「えっへん! もしこれからもマリョクキョーキューして欲しければ、私の事は優さまと呼べ―っ」
「ははーっ、優さまーっ!」
……先が思いやられる二人である。
でも、こんな事を言って、二人でえへへと笑って、また元の仲良しに戻るのが10歳の女の子だ。
「……あーあ。でも、俊夫だって、もうちょっと悲しそうな顔して見送ってくれたっていいのになぁ」
優もちょっぴりセンチな気分になり始める。
この間の引っ越しの日の事を思い出したのだ。
彼女のブルーの原因は、幼馴染の大伴俊夫。
優よりちょっと年上だけど、とっても優しい男の子だ。優をいつもからかっているけど、彼も本当は優しくて優の事が大好きなのだ。
そんな彼が、引っ越しの日には、あんまりにも冷めた態度で優を見送った。優の事が大好きなはずの、俊夫のお友達のみどりくんも、そうだった。
……なんでだろう。
そういう記憶が今の優の中にはあった。
でも、不思議がるよりも怒りがこみあげてくる。
確かに、優の家があったところから今の優の家は近いし、マミのコンサートがあれば俊夫は絶対に来るだろう。
でも、いくら頻繁に会えるとはいっても、前みたいに毎日会って喧嘩したり遊んだりできなくなってしまうんだ。
あんな形でお別れでいいのかな……。優は悩む。
「ねえ、優ちゃん。俊夫くんってそんなにヒドい奴なの?」
「そうなのっ! 俊夫って、 す っ っ っ ご い ヒドイヤツなの! この前だって、私の事、キュラソ星人って言ったのよー!」
「キュラソ星人! まあ、そんなヒドい事言ったの!?」
キャスターも、髪型がビラ星人みたいだからって、ビラ星人だなんて言われたら顔を真っ赤にして怒るだろう。
「ね? ひどいでしょー」
「全く、優ちゃんにキュラソ星人なんてヒドすぎるんだわー! 抗議しましょう! 裁判所に訴えましょう! いっそもう別の男に乗り換えちゃえーっ!」
男の子の話になると、だんだん、ヒートアップする二人だった。
「じゃあ、もういっそ、聖杯で俊夫をすっっっごい優しくてかっこいい男に変えてやっかー」
「そうしちゃえ、そうしちゃえーっ!」
こうなったらもう二人は止められない。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「……キョーボーなヤツら」
優のフードに潜っていたオスネコが、ひっそり愚痴を呟いた。
優は二匹の猫の形をした妖精を飼って(?)いた。彼らも優のついでに連れて来られたのだ。
一匹は、楽天的なメスネコのポジ、もう一匹がこの皮肉屋なオスネコのポジだ。
「ねえ、ネガ。本当に聖杯なんてあるのかしら?」
ポジがネガにきいた。
すると、ネガが答えた。
「あるわけねえだろ。そう簡単に魔法で願いが叶ったらこっちだって苦労しないの」
「そうよねぇ……本当ならロマンチックなんだけど……。でも、二人で戦わないといけないのは駄目ね」
「全く、聖杯だとか戦争だとか、厄介な事してくれるよな。……俺知ーらねっと」
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
やっと落ち着いた優とキャスター。
のんびりと、これからの方針を考える。
「……でも、やっぱり聖杯戦争なんてやりたくないよねぇ」
「魔法だって誰かの夢を叶える事はできないもん。聖杯なんて嘘だよ」
「そうだよねぇ。……やーっぱ、みんな自分の力で夢を叶えてるんだし」
優とキャスターは、これまでにあった色々な出来事を思い出した。
そう、二人は、「夢は自分自身の力で叶えるもの」である事も、「魔法も本当は全然役に立たない」という事もよく知っているのだ。
「ほらポジ、こいつらも意外とシビアだぞ」
「黙ってなさい!」
ネガの皮肉とポジのつっこみが優のフードの中で行われた。
しかし、そんな漫才にも優は気づかずに溜息をつく。
「あーあ、戦いたくないなぁ。くりみヶ丘に帰りたいよぉ……」
優が少し項垂れた。
そんな優の姿を見て、キャスターは黙り込む。
こんな時、サーヴァントとしてどんな声をかけてあげればいいだろう。
しかし、迷っていても仕方がない!
根拠はないが、キャスターはすぐに優を慰めた。
「大丈夫! あたしがなんとかしたげる」
どん! と胸を張ってキャスターが言う。
そんなキャスターの姿を、優は心配そうに見つめた。
「本当に大丈夫かなぁ」
「大丈夫。このミンキーモモの手にかかれば、なるようになーる!」
【クラス】
キャスター
【真名】
ミンキーモモ@魔法のプリンセス ミンキーモモ(1982年版)
【属性】
混沌・中庸
【ステータス】
筋力D 耐久D 敏捷D 魔力A+ 幸運E 宝具EX
【クラス別スキル】
陣地作成:B
魔術師として自らに有利な陣地な陣地「工房」を作成可能。
彼女の場合、民家に拠点を作っている様子も見られる。
道具作成:A+
魔力を帯びた器具を作成可能。
結構なんでもちょちょいのちょいで作っている様子が見られる。
【固有スキル】
情報抹消:B
キャスター対戦が終了した瞬間に目撃者と対戦相手の記憶から、能力、真名、外見特徴などの情報が消失する。
例え戦闘が白昼堂々でも効果は変わらない。これに対抗するには、現場に残った証拠から論理と分析により正体を導きださねばならない。
フェナリナーサ式魔法:B
魔術よりも現実性が希薄な魔力運用方法。このスキルの魔力供給は人間の「夢」によって強度が変わる。
現在の値はBであるが、NPCや参加者の「夢」の力が必要であり、上昇・下降も考えられる(本来ならば地球上の物が有効)。
ただし、人の夢を叶えたり、生命の法則を覆したりはできない。
【宝具】
『魔法の装飾品(ミンキーモモペンダント)』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:1〜99
キャスターの強力な魔力、及びそのスキルの供給源。
この宝具がある限り、キャスターは通常の魔術師以上の魔力を使用でき、魔術の範疇を超えた運用も可能となる。
キャスター自身も潜在的な魔力を有しているが、大部分はこの宝具に依る為、これが破壊されると魔法が使用できなくなってしまう。
また、地球上に存在する「夢」によって、維持される為、「夢」の力が弱くなるほどその耐久性は脆くなる。
『大人の階段(アダルトタッチ)』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:─ 最大捕捉:─
『魔法の装飾品(ミンキーモモペンダント)』を運用し、あらゆる能力を持つあらゆる職業を獲得する宝具。
この宝具の使用によって身体年齢は18歳に変わる。その際に変身できる職業は任意。
また、その職業によっては、一時的にパラメーターの上昇やスキルの増加が行われる。
『夢の国の車(グルメポッポ)』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:1〜5 最大捕捉:1〜5人
キャンピングカーを模した宝具。
キャスターの移動手段であり、自動車としてもヘリコプターとしても使用できる。
キャスターの外見年齢は10歳くらいのはずだが、キャスター自身の記憶操作によって、公道で平然と運転していても誰かに不審に思われる事はない。
地球上に存在する「夢」によって作られている為、それが喪失されると消滅する。
【Weapon】
『魔法の装飾品(ミンキーモモペンダント)』
『夢の国の車(グルメポッポ)』
【人物背景】
夢の国フェナリナーサから、地球に来たプリンセス。
その出自から驚異的な魔力を先天的に持っており、指先一本で簡単に道具を出したり、人間の記憶を改竄したりできる。
地球に来た際は、「どこかの国のどこかの町」でペットショップを営む子供のいない夫婦のもとに勝手に記憶を改竄して「娘」として介入。
以後、その家で暮らす。
主にヤクザや地上げ屋、暴走族、核攻撃などのやたら現実的な脅威と戦った逸話が有名。
そんな日々の中で、「夢は与える物ではなく自分で持つ物だ」と気づき、モモ自身も成長していく。
最終的には、魔法の限界にぶつかった挙句、ペンダントを銃撃されて破壊されて魔法を失い、交通事故で死亡する為、幸運値はとても低い。
死後は、自分自身の本当の夢を抱きながら、地球での両親の本当の子として生まれ変わった。
ちなみに、よく似ているハマーン・カーンとは関係ない。
【サーヴァントとしての願い】
ない。願いや夢は自分の力で叶えていくもの、あるいは時として絶対に叶わないものだから。
【方針】
なるようになーる!
【基本戦術、方針、運用法】
キャスターの魔力は、人間の持っている夢によって供給されている。
人々が夢を失ってしまうと、それと同時にキャスターのステータスはどんどん弱まってしまう。
最終的には、宝具が銃器であっさり破壊されてしまったり、キャスター自身が車に撥ねられただけで消滅してしまうかも。
マスターが、夢を失った人間には見えない「フェザースターの箱舟」が視える希少な人間である事から考えると相性は最高なのだが、やはりマスターを曇らせない事が大事。
直接戦闘はどう考えても不利だが、『魔法の装飾品(ミンキーモモペンダント)』で大人になる事で上手に困難から解決していこう。
また、マスターの優もクリィミーマミに変身すれば、多少魔力の加護が受けられる(戦闘向けではないが、高所から落下しても平気な描写や、超能力程度の不思議な力は使える)。
【マスター】
森沢優@魔法の天使クリィミーマミ
【マスターとしての願い】
ない。願いや夢は自分の力で叶えていくもの、あるいは時として絶対に叶わないものだから。
【weapon】
ポジ、ネガ
ルミナスター
【能力・技能】
クリィミーマミに変身できる(その際、肉体年齢は14歳になり、魔法の運用ができる)
【人物背景】
私立セントレミー学園小等部。1973年10月10日生まれ。10歳→11歳。
両親は東京都国立市のくりみヶ丘でクレープ屋「クリィミー」を経営しており、自身も店を手伝っている。
魔法世界「フェザースター」の妖精・ピノピノが乗る箱舟を助けたことから1年間だけ魔法をもらい、クリィミーマミに変身する事になった少女。
新宿で変身した際に芸能界にスカウトされ、歌手・クリィミーマミとしてデビューした後は、優とマミの二重生活が始まる。
更に、優が好意を抱く幼馴染の俊夫がマミにメロメロになるという「二人だけの三角関係」が勃発。
自由奔放で心優しい性格であるが、マミとして芸能界の仕事をする中で成長し、同世代の女の子よりも少し大人びている。
夢を失った人間には見えない「フェザースター」が見える事から、強い「夢」の資質を持っていると推定され、キャスターとの相性は高い。
【方針】
困っちゃうなぁ。元の生活に帰りたいよぉ。
【備考】
くりみヶ丘から引っ越してきた事になっています。
その為、両親はこちらにもいるようですが、敏夫やみどりなどの友人は来ていません。
彼女の記憶上では、引っ越しの際の別れは少々そっけない物だったようです。
投下終了です。
投下します。
救えなかった。救えなかった。救えなかった。
救えなかった救えなかった救えなかった救えなかった救えなかった救えなかった救えなかった。
救えなかった救えなかった救えなかった。救えなかった救えなかった救えなかった救えなかった。
救えなかった救えなかった救え、なかった。救えなかった!救えなかった!!
救えなかった救えなかった救えなかった――――っ!
救えなかった―――――――総てを。
爆発するバス、燃える自分の身体。離してしまった手。
直枝理樹は失敗した。譲ってもらった生命の使い道を誤った。
理樹達のクラスは、修学旅行先での事故に巻き込まれてしまった。
そして、その中で辛うじて目を覚ますことができたのは理樹と相棒である棗鈴だけだった。
か細い希望を抱き、立ち上がる。生きる為にも、彼らを見捨て背を向ける。
そんなことは、できるはずがなかった。
迷いに迷い抜いて決めた選択だ。後悔はない。
一人でも多く。リトルバスターズの仲間達も一緒に生きるのだ。
そうして、彼らは助け出そうとバスに残り――。
破裂する視界、一瞬で消えた肉体。
ガソリンが漏れていたのだろう。バスは爆散し、火の柱を上げる。
当然、理樹達もそれに抗えず死して終わる。
棗鈴だけではなく、皆を助けようだなんて贅沢を望んでしまった。
だから、死んだ。かけがえのない少女を巻き込んで、失敗した。
燃え滾る炎が身を包み、末期の祈りすら許さずに理樹を死へと誘う。
これにて、修学旅行の生存者はゼロ。
たった二人の少年少女も運命に逆らえず、生命を散らす。
嫌だ、そんな終わり方は嫌だ。
死の間際、願う。
もう一度、やり直したい、と。
どんなことでもしよう。穢れた奇跡でもいい、淀んだ行為でもいい。
理樹が冥府外道に堕ちようとも、他の皆は必ず救い出す。
そう、約束するから。
どうか、幸せな結末を――お願いします、神様。
遥かなる遠き世界にて、彼の願いは届く。
聖杯戦争という仕組みは運命を巻き戻すことへの試練を与え給う。
失ったはずの肉体は五体満足で此処にある。
間違いは消え、選択の時間を取り戻す。
進むか、退くか。
今度は、迷わなかった。
黄金の杯を手にして、リトルバスターズの日常を取り戻す。
強くなると、決めたから。
世界の理を否定して、進もう。
夢よ、覚めろ。現実よ、此処に在れ。
正義ではなくとも、この輝きこそは――本物だ。
「だから、僕は進むよ」
例え、この手が血に濡れようとも。
もう一度、リトルバスターズを結成したいと思ったから。
我儘と言われようとも、これだけは貫き通す。
その果てに見る世界に幸せがあると信じて。
○
「――――話はわかった」
「笑いますか、僕の願いがちっぽけだって」
「まさか。理不尽に奪われた友愛を取り戻すなんて、当たり前のことだ。
忠義の騎士からすると羨ましいなって思うぐらいさ」
理樹によって召喚されたサーヴァント――シュヴァリエ・デオンの口から出た言葉に偽りはなかった。
友情をもう一度。彼の口から語られる炎の終わりには鬼気迫るものがあり、多大な怒りとかすかな悲しみを感じ取れる。
助けようとした結果、全てを失った。それはどれだけの絶望で、どれだけの裏切りであったろう。
そんな結末を迎えた少年に力を貸したいと思ったのは本当だ。
デオン自身、忠義を良しとする性質もあってか、真っ直ぐなその心持は好感が持てる。
「しかし、聖杯に願う以上は代償がある。他の人を殺める覚悟は君にはあるかい?」
「……覚悟はできています。僕は、それでも――リトルバスターズの皆とまた遊びたいから」
少しだけ、躊躇するような口ぶりではあるが、意志は固い。
心の底から願っていることなのだろう、願いを背負うだけの決意はある。
「終わらない、終わらせない! 僕らの青春を、あんなことで台無しにするのはもっと嫌だ!」
少女のような少年は死地へと踏み出した。
自分の生命を懸けて、他者を蹂躙することを選んだ。
ならば、応えなくてはなるまい。
「人を殺すことは怖い……っ! けれど、そうすることでしか願えないなら、僕は――――っ!」
「……君の決意、私が確かに受け取った」
騎士として。誇りと愛を以って、彼に日常を捧げよう。
「この聖杯戦争で、私――シュヴァリエ・デオンは君に忠誠を誓おう。
君が喪ったものを取り戻しに行こうじゃないか。願わくば、私も一度見てみたいからね、リトルバスターズという青春を」
「は、はい……! デオンさんも良ければ、その……どうですか?」
「そうだね、君の話す彼らはとても愉快だ。答えを返すなら、是非とも、と言おう」
デオンの道は唯一つ。
白百合の騎士であることだ。
そして、その過程で理樹のような勇敢なマスターの手助けをするのも悪くはない。
【クラス】
セイバー
【真名】
シュヴァリエ・デオン@Fate/Grand Order
【パラメータ】
筋力A 耐久B 敏捷B 魔力C 幸運A 宝具C
【属性】
中立・中庸
【クラス別スキル】
対魔力:C
第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。
大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない。
騎乗:B
騎乗の才能。大抵の乗り物、動物なら人並み以上に乗りこなせるが、
魔獣・聖獣ランク以上の獣は乗りこなせない。
【保有スキル】
心眼(真):C
修行・鍛錬によって培った洞察力。
窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す戦闘論理。
麗しの風貌:C
固有スキル。服装と相まって、性別を特定し難い美しさを(姿形ではなく)雰囲気で有している。
男性にも女性にも交渉時の判定にプラス修正。
また、特定の性別を対処とした効果を無視する。
自己暗示:A
自らを対象とした強力な暗示。固有スキル。
精神に働きかける魔術・スキル・宝具の効果に大して高い防御効果を持つ。
時には男、時には女。肉体すら変化させて……。
【宝具】
『百合の花咲く豪華絢爛』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1〜10 最大捕捉:1
敵全体に魅了とステータスダウンを付与する宝具。
【weapon】
剣。
【人物背景】
女であり男、男であり女、として語られる十八、九世紀フランスの伝説的人物。
文武両道の剣士にして文筆家。
列強各国を相手に立ち回る機密局のスパイとして活躍し、全権公使、竜騎兵連隊長等を勤めた。
【サーヴァントとしての願い】
マスターの友情に報いたい。
【マスター】
直枝理樹@リトルバスターズ!
【マスターとしての願い】
聖杯を手に入れて、間違えを正す。
【weapon】
なし
【能力・技能】
ナルコレプシーという病気を抱えていたが――?
【人物背景】
リトルバスターズの一員にして、主人公、そしてメインヒロイン(大嘘)。
女装をすると可愛い。本当に可愛い。
今回はRefrainBADENDによる死亡、現実世界への帰還前からの参戦。
【方針】
勝つ。もう迷わない。
投下終了です。
wikiにおいて拙作「ねむりん&ライダー」のステータス、「勝者と敗者、英雄と落伍者」の本文とステータスを手直しさせていただいたことを報告します。
何か不都合等がございましたら以前の状態まで再度修正させていただきます。
投下します。
──【無罪】──
それを勝ち取るのが、弁護士の仕事である。
……いや、こう言っては語弊があるかもしれない。
多くの弁護士は、無罪までは勝ち取れない。
勿論、できれば無罪にすべきなのであるが、本来の場合、多くの事件は「有罪」で処理され、実際には減刑をするのが彼らの仕事のようになっている。
その為、「無罪を勝ち取るのが弁護士の仕事」というのは、あくまで彼のポリシーだ。
彼は社会のあるムジュンに鋭く目を尖らせ、無罪を獲得しようとしていた。
──【冤罪】──
大事な親友に着せられた冤罪。
師匠の妹に着せられた冤罪。
自分自身に着せられた冤罪。
そう、身に覚えのない罪によって、犯罪者として扱われる社会問題。
現実には、松本サリン事件や東京電力OL殺人事件、草加事件などが記憶に新しい事だろう。
かの有名な三億円事件においても冤罪で逮捕され、実名を世界中に公表された被害者もいた。
成歩堂龍一が生きる世界でも、そんな冤罪事件が当たり前になっている。いや、現実以上の多くの冤罪事件が起きている。
たとえ、どんな事件でも、容疑者が逮捕され次第、その多くが有罪となるのが、やはり世界の常であった。
中には、到底ありえないような杜撰な証拠捜査によって起きてしまった冤罪事件も多数存在する。
そんな最悪な世界にしたのは、その世界にだけ存在するある最悪の法律である。
──序審法廷制度。
多発する凶悪事件を迅速に処理する為、「最大でも三日以内に全ての刑事事件・民事事件の審理を終わらせる」という、現代社会の負の法曹システム。
僅か三日で捜査官、検察官、弁護士の全てが事件の証拠を確認し、判決を下さなければならないという、弁護士、検事、裁判官、被告人、証人の誰にとっても過酷なルールだ。
勿論、その短期間では多くのミスが生じ、まともな判決など期待できようはずもない。
弁護士は、常に逆境に立たされる。それでも、被告人の無罪を信じ、誰も傾けてはくれない「やっていない」の一言に耳を澄ます。
検察官は、刑事の捜査を信じ、全ての犯罪を「有罪」で処理しようとする。
そんな正義だけで回っていればまだしも、中には「法曹界の闇」と呼ばれる証拠のねつ造・隠ぺいの案件も山ほどあるらしい。
だから、「逆転裁判」こそが、成歩堂のような弁護士たちに強いられた戦いだった──。
しかし──。
ある日。
成歩堂の弁護士人生の中で、最も凶悪な事件において、成歩堂龍一は弁護士として「勝利」し、そして己の正義が「敗北」した……。
◆
──【無罪】──
その響きは、本来なら喜ばしいはずの物である──。
だが、その日は違った。
裁判長が小槌を叩き、被告人の無罪があの日、確定した。
同時に、別の罪もない人間に殺人の疑いがかけられる事になったのである。
弁護士にとって、被告人を無罪に出来るというのは喜ばしい事であり、また、同時に被告人を祝福すべき場面だ。
成歩堂はこれまで、何度もそうして来た。
被告人を信頼して来たからである。
しかし。
……あの事件の場合、犯人はまぎれもない、被告人だった。
勿論、成歩堂も全ての犯人を無罪にするわけではない。殺人を行った者は、勿論相応の罰を被るべきであると考えている。
それが彼や、師匠の千尋や、検事の御剣が信じてきた「正義」である。
真実を最優先とし、己の職務を決して勝利だけに囚われずに考える信念──成歩堂は、数日前、それを失ってしまった。
成歩堂がこれまで掲げてきた、司法に携わる人間としての正義は奪われ、その重圧のあまり、弁護士の資格を返還する事さえも頭を過る。
「‥‥マヨイちゃん、僕は‥‥」
そんな彼が殺人犯を無罪にした事にも、勿論、理由はあった。
成歩堂の助手である綾里真宵が誘拐され、被告人の無罪を誘拐犯によって要求されたのである。
成歩堂も最初は被告人も信じて、彼を助ける為に無罪の証拠を集めた。
だが、現実は違ったのだ。
……被告人は、殺し屋に依頼し、実質的に殺人を行っていた。
真宵を誘拐したのは、その殺し屋であった。
大事な真宵が誘拐犯に殺されないよう、上手く弁護をしながら、しかし有罪の犯人をどうすべきか──成歩堂は、有罪と無罪の板挟みで、三日間を悩み続けた。
だが、その調整が難しく、だんだんと、成歩堂の思惑とは裏腹に、局面は「無罪」に偏っていく事になった。
無罪にしたくはないが、しかし、成歩堂は水面下で危機に晒され続ける真宵をどうしても救わねばならなかった。
彼女は、大事な師匠から預かった家族であり、成歩堂にとっても家族のような存在だったのだ。
……やがて、被告人の代わりに、別の人間が犯人に仕立てられようとしていた。
──【無罪】──
そして、その審理は、全く罪のない人間に罪を被せ、殺人犯を無罪にする形で、閉廷した。
その後、成歩堂が罪を被せた人間は、有罪判決を受け──この事件は、表向きには、終わった。
「────」
……あの誘拐犯は義理堅い人間だ。
真宵は、きっと解放されただろう。
しかし、彼女に会いに行く事はもうできない。
成歩堂は自分の信じるべき正義を失っていた。
そして、弁護士のバッジももう、投げ捨てようとしていた。
◆
「────それがおそらく、マスターをここに呼んだ願いだ」
……気づけば、成歩堂はこの聖杯戦争の只中にいた。
セイバーのサーヴァントに今日までの全てを話し、それをヒントにしてセイバーは、彼がここに来た理由を解説する。
セイバーは、成歩堂によく似た髪型をしていた。ワックスでも再現できないようなツンツンヘアーである。
実のところ、成歩堂もセイバーも、これが地毛で、ワックスで直そうとしても直る事のない剛毛なのだが、それはまだ良い。
セイバーも、その髪型以外は傍目には凄く普通の人間に見える外見であった。取り立てて美男子に見えるほどでもないが、見る人が見ればハンサムな顔立ちかもしれない。
実は、彼はかつて、日本海軍の大尉まで上り詰めた男であり、更に言えば、本来女性にしか扱えないはずの「霊力」を持つ特異体質の人間である。
英霊なる者の多くそうした逸話を持つ人間や伝承であり、それが実体化した物らしい。
名を、大神一郎。
裏では、帝国華撃団、巴里華撃団──そして、大神華撃団という部隊を率いた隊長であった。
最終的には帝国華撃団の総司令の座に就いたと言う記録も残っている。
おそらくは、彼の全盛期であるその時期が、今の彼の姿である。
「きっと、その願いと……その霊力の勾玉が結びついて、マスターをここに呼んだんだと思う」
成歩堂は、そう言われてはっとする。
成歩堂の懐には、緑の勾玉があった。これは、綾里家の少女に託された「霊力」を持つ勾玉である。
セイバーは、その存在を一瞬で看破した。霊力を込めた勾玉にふと気づき、それの存在を示したのである。
それは、やはりセイバーには並々ならぬ霊力の素養があるという事であった。
こうして、「聖杯戦争」などセイバーの話す荒唐無稽な言葉を成歩堂があっさりと信じる事が出来るのは、成歩堂がこの「勾玉」を所持していたからだ。
この勾玉がある限り、法廷以外の場所でナルホドに嘘をつく事はできないのである。
それというのも、この勾玉に込められた霊力のお陰で、成歩堂は「サイコ・ロック」という特殊能力を発現できる。
人間の心に閉ざされた闇や嘘が見抜けるようになったのだ。
仮にセイバーが成歩堂の前で嘘をついているのならば、「サイコ・ロック」が即座に発動し、セイバーの目の前に幾つもの赤い錠前がかかる事になる。
成歩堂は、普段、あらゆる証拠をつきつけて、サイコ・ロックを解除していくのだが、現状、セイバーを相手には、全く、そんな事をする必要はなかった。
つまり、彼は聖杯戦争の話に関して、一切嘘をついていないという事になる。
実際のところ、この勾玉の加護そのものが霊力の結晶なのだし、現実に「霊媒」を行う人間がいる事も彼はよく知っている。
この英霊を疑う余地はない、と成歩堂は判断した。
セイバーが話した聖杯戦争の話は全て本当だ、とひとまず結論づける。
「‥‥だとしても、一体僕はどうすればいいんだ‥‥」
だが、結局、聖杯戦争という希望を聞かされても、成歩堂にあるのは、強い落胆のムードであった。
椅子に座し、頭を抱え、蹲るような姿勢で、セイバーにはまるで成歩堂が何も耳に入れる気配がないようにも見えた。
しかし、一応は全て聞いているようで、成歩堂とセイバーとの会話は何の問題もなく成立していた。
セイバーは、促すように毅然として続けた。
「俺がマスターに与えられる選択肢は二つだ。よく聞いて、選んでほしい」
サーヴァントが本来マスターに従う物であるように、セイバーもまた、成歩堂にも比較的従順であった。
成歩堂は少し顔を上げ、セイバーを見た。
真剣なまなざしで、セイバーは成歩堂に語る。
「一つは、この聖杯戦争に乗り、聖杯を得てマスターの願望をやり直す事。その為に、サーヴァントである俺を使うのも構わない。
ただし、俺の主義として、無抵抗の相手や民間人を巻き添えにする事は絶対にしない。
それでも、もしマスターに闘う覚悟があるならば、俺は出来る限り協力するつもりだ」
それは、即ち、他のマスターやサーヴァントなどの犠牲者を生みだす事に等しい判断だろう。
正義を翳してきた大神一郎という男にとって、他のマスターやサーヴァントをごく個人的な何かの為に積極的に刈り取る事は屈辱に違いないが、もし、セイバーが成歩堂の願いに従えば、成歩堂の世界では一人の女性が冤罪を免れ、また、一人の犯罪者が刑務所に入る事になる。
そして、逆に、セイバーがマスターの願いを拒めば、一人の女性が冤罪を被ったまま、犯罪者が野放しにされてしまうという事でもあった。
それもまた、セイバーにとって好ましくない事であるのも事実だ。
サーヴァントとして顕現した以上、その判断はマスターにゆだねるしかない。
「そして、もう一つは、マスターの正義を取り戻し、それを示す事だ。
それは、マスター自身の意志が大きく関わる。何を正義とするのか、何を守ろうとするのか……」
それは、ここでもまた、あの女性のような犠牲を作らないという事──弁護士としてやって来たように、弱い者の味方であり続ける事だ。
しかし、かつて成歩堂はその正義を捨ててしまった。
少女一人を救う為に、別の誰かを犠牲にしてしまい、弁護士としての人生を終えようとしているのが今の成歩堂である。
どちらも救い出せる奇跡は、あの時は起こらなかった。
いや、奇跡は、起こらないからこそ奇跡なのだ……。それを可能にできるのは、唯一、聖杯のみであった。
だからこそ。
選ぶのは難しかった。
選びあぐねた結果が今の惨状であるが、やはり成歩堂は選択するのが下手であったのかもしれない。
二つの選択肢を上手に得ようとすると、事態は最悪の形で収束する。
それを痛い程分かっていたはずなのに。
「‥‥ごめん。僕には、まだ判断ができない‥‥」
正義を選ぶ事は、成歩堂の弱さが原因で殺人の汚名を着せられた女性を、裏切る行為に思えた。
そして、何より、一度、誰かの為に捨ててしまった選択肢を、再び選ぶのは、難しかった。
本心ではそれを選びたいようで、やはり、その為にまた誰かを犠牲にするのは不条理な事でしかなかった。
──【贖罪】──
それに適切な行為は、正義か、あるいは、戦争か。
そう問われた時、本当に償うべき相手にとって、今は後者が意味があると思えた。
成歩堂は、誰にも信じてもらえず、孤独の中で覚えのない罪を着せられた人間がいかに苦しいかを、幼い時から知っている。
だからこそ、弁護士になり、弁護士であり続けた。それは大事な友の為でもあり、自分の正義の為であったはずだ。
しかし、あの無罪判決は、そんな成歩堂の正義を揺らがせたのだ。
それを考えれば、戦うという行為は至極当然かもしれない。
だが、安易にそれを選べないのが成歩堂に残る本能的な正義だった。
「……無理もない。俺でもきっと、同じ状況なら迷うだろう」
セイバーは、そんな言葉をかけた。
悩みあぐねる成歩堂の姿を見て、あまり急いてはならないと思ったのだろう。
セイバーにも、大切な女性はいる。何人だっている。
彼女たちが人質にされた時、大神一郎は最初に、どうしようもない程悩むだろう。
彼も、生前は優柔不断だと言われ続けた男だ。
帝都と、彼女たち。どちらが大切か──と、問われた事もある。
勿論、大神の圧倒的な力は、人質の救出と敵の撃退を同時に行う事も可能であったし、「両方を救う」という絶対的な選択肢があった。
そう、かつて。
同じ事があった。
一人の女性の命と引き換えに帝都を守る手段があったが、生前の大神はその手段を自ら破壊した。
誰かの犠牲のもとに救われる帝都などあってはならない──その信念の下に。
結果、大神一郎は、その乙女の命も、帝都の平和も守る事に成功した。それだけの力があったからだ。
しかし、二つを救えるだけの力がなかった成歩堂は、悪の力に屈し、正義を捨てて誰かを救うしかなかったのである。
それと同じく、綾里真宵という少女が、成歩堂龍一にとってかけがえのない存在だったのは想像に難くない。
恋愛感情であったのか、それとも師匠の妹だったからか、家族のように思っていたからなのかはセイバーにはわからない。
成歩堂はそれから再び顔を上げ、セイバーに吐露した。
「‥‥正直言えば、聖杯は欲しいよ。だけど、敗れたマスターは消えてしまうんだろう?」
「ああ。おそらく……そうだと思う。俺も、マスターがどちらを選んでもそれを考慮した上で、敵を倒すつもりだ。
敵のマスターの墓標を作る……そんな覚悟で」
「じゃあ、そんな人たちを巻き添えにはできない。どっちにしろ、マヨイちゃんにも、チヒロさんにも顔向けできない気がするんだ‥‥」
「……」
セイバーも、やはり、成歩堂の判断がつかないのは無理もないと判断したようである。
それから、少しだけ時間が経ったが、セイバーが急かす様子がないという事に気づいたのか、成歩堂は、結局、この日はこう結論した。
「‥‥ごめん。やっぱり、しばらく、考えさせてほしい」
「ああ。聖杯戦争の実態を見てからでも決して遅くはない。俺は、マスターの判断を待つよ」
正義を果たせた男と、正義を果たせなかった男。
二人は、こうして出会った。
【クラス】
セイバー
【真名】
大神一郎@サクラ大戦シリーズ
【パラメーター】
筋力B 耐久B 敏捷C 魔力B 幸運B 宝具A〜D(EX)
【属性】
秩序・善
【クラススキル】
対魔力:B
魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。
大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。
騎乗:B
大抵の動物、乗り物を乗りこなしてしまう技能。
幻想種(魔獣・聖獣)を乗りこなすことはできない。
【保有スキル】
霊力:B
魔力に代わる彼の類似の能力。
男性ながらにして高い霊力素養があり、霊子甲冑も自在に操る事ができる。
カリスマ:A+
軍団の指揮能力、カリスマ性の高さを示す能力。団体戦闘に置いて自軍の能力を向上させる稀有な才能。
個性豊かな隊員をまとめ上げるカリスマ性を持ち、都市の信頼を勝ち取る。これは、特に女性に対して強い効力を発揮する。
呪縛:D
シャワーの音が聞こえると体が勝手に風呂場の方に動いてしまう保有スキル。
魔力(霊力)、又は強い意志で辛うじて抑え込む事ができる。
【下のスキルは、戦闘中、そのターンに実行している作戦によっていずれか一つが使用可能になる】
戦闘続行:A
名称通り戦闘を続行する為の能力。決定的な致命傷を受けない限り生き延び、瀕死の傷を負ってなお戦闘可能。
「往生際の悪さ」あるいは「生還能力」と表現される。
仕切り直し:B
戦闘から離脱する能力。また、不利になった戦闘を初期状態へと戻す。
【宝具】
『霊子甲冑』
ランク:A〜D 種別:対人宝具 レンジ:1〜50 最大捕捉:1〜1000
高い霊力を持つ者だけが操る事が出来る鎧のようなメカ。
一見すると搭乗型巨大ロボットのようでもあるが、その性質上、騎乗スキルの有無に関わらず使用可能であり、セイバーもこれを手足のように自在に操る際は持っているスキル以上の実力を発揮する。
生前のセイバーには、光武、光武改、光武二式、光武F、光武F2、神武、天武など、あらゆる機体を繰った伝説が残っている為、いずれかを選択して現界させて戦う。
これは強力であればあるほど魔力消費が絶大になってしまうが、セイバーの実力ならば最弱の光武でも並のサーヴァントを相手に出来るだろう。
この『霊子甲冑』を纏えば、筋力・耐久のステータスがAランクやA+ランクまで上昇し、魔族・魔物・魔獣などの怪物や巨大な機械などとも互角の戦闘を可能にする。
しかし、一方で、どの機体を使用しても敏捷のステータスがDランクまで下降する。まさに甲冑の如き宝具である。
セイバーの機体は、彼の特性に合わせて、いずれもシルスウス鋼製の二刀流を装備している。
『神刀滅却』
『光刀無形』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1〜50 最大捕捉:1〜100
二剣二刀と呼ばれる二つの剣、二つの刀の内、大神一郎が譲り受けた二刀。対になって初めて宝具となる。
いずれも高い霊力が込められており、それぞれ所有者の運命を狂わす加護がある。
光刀無形は、所持者に希望と野望・野心を達成する強い力を与える伝説があり、かつてこの所有者である山崎真之介が葵叉丹として悪に堕ちた事もある。
神刀滅却は、所持者に人を統率し正しい方向へと導く力を授ける伝説があり、元々は帝国華撃団の前司令である米田一基の所持品だったが彼が譲り受けた。
ライダーは二刀流の使い手である為、この二刀を使って生身でも自在に戦闘する事が可能。
『狼虎滅却・震天動地』
ランク:EX 種別:対界宝具 レンジ:∞ 最大補足:∞
帝都と巴里、二つの街を守った時に多くの人と信頼と絆を受けた大神一郎のみが使える最大級の技──それが、この宝具である。
ここでも彼が受けた信頼の数だけ彼の技は強くなっていくが、『狼虎滅却・震天動地』は、行動・会話の選択肢を一つも間違える事なく、最良の判断を下し続けなければ発動できない。
故に、使用はほぼ不可能だが、 仮にもし成功すれば、マップ上に存在する全ての敵は成す術なく一瞬で消滅する。
とはいえ、特定人物との信頼と強く絆を深めた場合、それはこの技の縮小版である『合体技』として発現される事もある。
合体技は、敵の肉体と精神に多大なダメージを与え、並のサーヴァントならば再起不能レベルに追いやられてしまう。
【weapon】
『神刀滅却』
『光刀無形』
【人物背景】
太正十二年から太正十六年にかけて帝都、巴里で活躍されたとされる軍人。階級は少尉→中尉→大尉。
海軍士官学校を主席で卒業。その後、銀座・大帝国劇場にモギリとして配属された。太正十六年に大帝国劇場の支配人となる。
(公的な記録で残っているのはここまで)
これらはあまりにも不自然な記録であるが、実は大帝国劇場が普通の劇場であったのは表向きの話。
大帝国劇場は、秘密防衛組織『帝国華撃団』の拠点であり、舞台で踊る帝国歌劇団のスタアは全員、霊力を有している「花組」の戦士なのである。
大神一郎は帝国華撃団花組の隊長として、彼女たちの信頼を勝ち取り、黒之巣会や黒鬼会と戦い、これを迎撃。
二度の帝都防衛に成功した後は、その功績を買われて巴里に派遣され、巴里華撃団の隊長として現地でまたも首都防衛に成功している。
これらの功績により、二十四歳にして帝国華撃団総司令にまで出世する。
また、帝国華撃団及び巴里華撃団の十三名の女性隊員は殆ど、彼に対して恋愛感情を抱いていたとされ、他にも彼に好意を持つ女性、男性は数知れなかったと言われている。
【サーヴァントとしての願い】
あくまで自分の正義を貫くが、聖杯戦争におけるスタンスはマスターの決めた方針に委ねるつもりである。
しかし、肝心のマスターがまだ方針を固めていないので、現状は難しい。
【マスター】
成歩堂龍一@逆転裁判2
【マスターとしての願い】
2の最終話『さらば、逆転』で出た「無罪判決」のやり直し
【証拠品(weapon)】
『弁護士バッジ』
ぼくの身分を証明してくれる大切なバッジだ。
しかし、これをどうしようか悩んでいる。
『真宵の勾玉』
にぶく透きとおっている。
フシギな光を放っているように見える。
【能力・技能】
司法試験に合格するエリートのはずだが、法律にはあまり詳しくない。
というか、元々、法学部ですらなく、奇跡的に合格しただけ。
特技はハッタリと、人の嘘を見抜く事である。
運動神経も低く、機械も苦手で、運転免許は持っていない(資格は弁護士バッジのみ)。
はっきり言って、推理力とハッタリ以外に取り立てて挙げられるような特技はないだろう。
【人物背景】
逆転裁判2の最終話のバッドエンドより参戦。
被告人の無罪を信じて戦い、多くの冤罪事件を解決してきた正義の弁護士だったが、助手を人質に取られた事件において、殺人の罪を無実の人間に着せて無罪判決を勝ち取る結末を迎える。
結果的に彼は信じるべき正義を失い、街を出た。
殺し屋から解放されたであろう大事な助手とも会っておらず、精神は半ばダルホドくん状態になりつつある。
【方針】
聖杯戦争に乗るか、それとも聖杯に反旗を翻して正義を取り戻すか。
今はまだ決めかねる。
投下終了です。
投下乙です。溜まっていた感想を投下します
>蛮野天十郎&アーチャー
蛮野天十郎とアーチャー、スタースクリームですね。
どちらも科学サイドの参加者といった様相ですが、特筆すべきはやはりその野心でしょうか。
ルーラーを支配して戦争をコントロールする、その目的をどう果たしていくかが気になります。
>武田観柳&アーチャー
どちらも金の亡者、という共通点を持つ主従ですね。
バレッタは宝具はともかくステータスが優秀なので、その辺りで強力さを発揮できそうです。
観柳も地味にガトリングガンを持っているので、一般人相手には強そうに思います。
>私達がモテないのはお前らが悪い!
これはまた、聖杯戦争だというのにどこか緊張感がない主従。
互いの地の文がコミカルで面白いです。
しかし雰囲気に反して鯖の宝具は非常に強力なので、鱒狙いをされなければ相当厄介かもしれません。
>小湊るう子&セイバー
るう子は一難去ってまた一難、ですね。
主従相性は割と悪くなさそうなのが救いか。
るう子が積極的にどれだけ動けるかがターニングポイントとなりそうです。
>範馬勇次郎&キャスター。
鱒勇次郎はやはり問答無用で強力な響きがありますね。
キャスターはピーキーな性能をしていますが、勇次郎のスペックでカバーできそうなのが強い。
知名度補正を増加できる宝具がどう活躍するかが個人的には楽しみです。
>≪ローゼンクロイツ≫&キャスター
鱒の方は普通の人間ですが、なかなか肝が据わっているようで。
鯖の紅渡はストレートに強力なスペックといった感じですね。
相性も悪くはなさそうなので、後は開戦後次第、といったところでしょうか。
>ストレイツォ&アサシン
ストレイツォとウォルター・C・ドルネーズですね。
ウォルターの問いに即答する辺り、スト様も覚悟は決まっているらしく。
どちらも積極的に戦っていけるだけの性能を持っているので、暴れてくれそうです。
>エクスイ&ライダー
電光戦車とエクスイですね。
何より特筆すべきは、やはりスキルによる量産でしょう。
ただその分采配が完全にマスター頼みになる辺り、あらゆる意味で鱒次第になりそうなのがネックか。
>霧島純平&ランサー
絵に描いたようなサイコパスの鱒と、それと相性が良いという虐殺の戦士。
聖杯戦争をあくまでゲーム呼ばわりする辺りに異常性が垣間見えます。
ランサーの宝具は強力な鯖にもジャイアント・キリングを決められるものなので、それを活用していくのが安牌でしょう。
>城戸誠&キャスター
独特な雰囲気の漂う主従ですね。
鯖の性能もともかくとして、何よりやはり鱒の装備が目を引きます。
原子爆弾がどう役立つのか、そこが注目すべきポイントですね。
>鬼子母神
ロリ桜は本当に不幸だなあ……
しかし引けた鯖が子どもの味方であるアタランテなのは幸運。
危うさがこれでもかと顕れている主従ですが、頑張って欲しいところです。
>宮本明&セイバー
宮本明と宮本武蔵、宮本つながりの主従ですね。
決して派手な力は持たない主従ですが、鯖はとにかく肉弾戦が強い。
卑怯者のスキルもあるため、相当トリッキーな活躍が期待できそうです。
>野原ひまわり&イフ
イフの性能は素直に恐ろしいなあ。
相手をしないことが一番の解決法、というのはかなりの初見殺しですしね。
鱒が幼児というのが唯一の弱点ですが、果たしてこれを他の参加者達が見抜けるかどうか。
>チャモ・ロッソ&キャスター
チャモ・ロッソとメタリカですね。
どちらも一癖も二癖もある曲者同士、主従仲はこれからの発展次第というところでしょうか。
最後のメタリカの独白が切ない。
>アルバート・ウェスカー&ランサー
科学が生み出した者同士の凶悪な主従ですね。
特にスケィスのデータドレインは原作通りの強力さだ。
鱒の方も強力な性能を持っているため、隙がないのが長所に思えます。
>見崎鳴&アサシン
これは実にアサシンらしくないアサシンですね。
気持ちのいい熱さが、静かな鱒と対照的です。
宝具を介し様々な必殺技を扱えるということで、その手数が相当相手にとっては厄介なのでは。
>獅子丸&ランサー
虎錠之介と獅子丸ですね。
虎と獅子の主従は真っ直ぐで気持ちいいものを感じさせます。
宝具によるパラメータの底上げで、どこまで敵と張り合えるかがポイントでしょうか。
>上条当麻&バーサーカー
まさかの鯖ボーボボ。相変わらずのカオスぶりです。
上条さんの右手とボーボボの力があれば、相当強力な主従となってくれそうですね。
しかし、意思疎通が出来るのにこれほどバーサーカーらしいバーサーカーも珍しい……w
>勝者と敗者、英雄と落伍者
実質二人で一人のアサシンですが、聖杯戦争の黒幕打倒に向き合う姿が独特です。
あくまで八つ当たりとして聖杯の恩寵を打ち砕く、まっすぐなあり方。
今は封印されている宝具が使用される時が来るのかも含め、先行きが楽しみですね。
>泉野晶&ライダー
泉野晶とチェイスですね。
会話と独白が中心になって進んでいくという形式は新鮮でした。
晶以前にも聖杯戦争でマスターがいたという設定がどう活かされるかが気になります。
>混ぜるな危険!
球磨川禊と白面の者ですね。
もう字面からして、本当に「混ぜるな危険」といった雰囲気が漂っています。
白面が本来の力を取り戻したらと考えると、鱒の性質も合わせて相当な混沌が展開されるだろうことは想像に難くありません。
>大豪院邪鬼&ライダー
呼ばれたクラスに苦悩する自来也が面白かったです。
しかしこのクラスだと仙人モードが使えないようで、そこは確かに素直に痛そうでもありますね。
生来のド根性と経験則をどれだけ生かして立ち回るかが鍵となりそうです。
>美国織莉子&バーサーカー
本編通りの組み合わせが、こうして主従になるとは予想外でした。
魔神になってもかつて抱いた愛を失わないのが、実に呉キリカというキャラクターらしいと思いました。
織莉子のスペックも含め、原作通り強力な活躍を見せてくれそうです。
>一条蛍&ブレイバー
ほたるんを元気付ける樹の姿が、本当に勇者のそれだなあと思いました。
ステータスの爆発力やブレイバーというスキルも含め、勇者を地で行くスペックをしていますね。
個人的には「輝ける背中」のスキルが好きです。
>アク役◇協奏曲 〜ドロンボーとボインゴ〜
全体的にコミカルな雰囲気のお話ですね。
ドロンジョはステータス自体は低いものの、自己保存のスキルで相当なしぶとさを発揮してくれそうです。
原作ではやや微妙な活躍だったボインゴの予知がどう活きるかも含めて注目したい所。
>かつて諦めた者たち
偽善と分かっていながら聖杯を目指す緋文字礼と、都市を終わらせるために歩むケルカン。
まさしくかつて諦めた者たちの、悲痛なものが伝わってくるお話でした。
ケルカンの宝具が持つ殺傷性は大物喰いも簡単に出来そうなのが強いですね。
>シルヴィ&プリミティブ
これはまた、ピーキーな性能のサーヴァントですね。
宝具を持たない代わりに、そのステータスはずば抜けた強力さです。
原人のピクルが、シルヴィを護ろうと決意するところが個人的には好きでした。
>無限の可能性
アデルバート・スタイナーとポチョムキンですね。
鯖と戦えるというのはやはり、鱒として強力なアドバンテージだと思います。
主従仲も芳しいようなので、対主催派として有力な活躍を見せてくれそうです。
>キャロル&セイバー
思い出を失った少女と、思い出と戦い続けた男。
クラウドがキャロルへ思い出を取り戻す重さを忠告するシーンが良かったです。
セイバーとしてはオーソドックスな性能をしていますが、やはり星の開拓者スキルが強いか。
>赤坂衛&アーチャー
この赤坂は救えなかった世界からの出展ですね。
彼の後悔と聖杯にかける願いの強さがよく描かれていました。
ただ赤坂は真っ直ぐな面がやはり強いため、苦悩をする事にもなりそうです。
>間桐雁夜&ライダー
間桐雁夜とジャイロ・ツェペリですね。
漆黒の意思を側で見続けていたからこそ、雁夜の矛盾に気付くというのは成程、と思いました。
正史では無惨な結末を辿った彼が、ジャイロという鯖を得たことでどう変わっていくかに注目したい所です。
>槙島聖護&アサシン
ベイがアサシンというのは個人的に少し予想外でした。
マスターの指示に従うつもりはないと断言する辺りがいかにも彼らしい。
ただ鱒の槙島もベイを縛るつもりはないようなので、意外と上手くいくのかもしれませんね。
>マリーダ・クルス&アサシン
殺すために人知れず生きた、それ故のアサシンという解釈がすごく好きです。
迷うことを恥じず、堂々と宣言するマリーダもいいなと思いました。
アサシンは心眼や神殺しといった強力なスキルを持っているので、戦闘でも活躍が出来そうですね。
>明智健吾&ランサー
明智健吾とグリシーヌ・ブルーメールですね。
明智の嫌味な側面とそれに応対するグリシーヌのやり取りが面白かったです。
警察という身分を持つのも、聖杯戦争で活かせそうですね。
>織田敏憲&セイバー
織田は相変わらずの小物ぶりですね。
魔術回路を有さないにも関わらずセイバーを呼んで有頂天になる辺りが彼らしいです。
しかし、主従仲が最悪になるのが見えている辺りお先は暗いか。
>森沢優&キャスター
情報抹消スキルを持つキャスターとは、なかなか厄介だと思いました。
宝具も面白い性能で、実際にどう使われるかが見たいと思わせるものばかりです。
ただやや楽観的な側面があるようなので、如何にして順応するかが重要そうですね。
>直枝理樹&セイバー
聖杯を手に入れるための覚悟を決めた理樹と、それを認めるデオンの関係性が王道ながら美しいですね。
人を殺す恐怖を自覚しながら、それでも聖杯を求める必死さが伝わってきました。
是非とも頑張って欲しいと思わせる、そんな雰囲気の主従でした。
>成歩堂龍一&セイバー
成歩堂龍一と大神一郎ですね。
成歩堂はBADENDからの出展ということもあり、暫くは葛藤することになりそうです。
果たせたものと果たせなかったものの戦いがどんな結末を迎えるかが気になりますね。
以上になります。もう溜めないようにします。
投下、感想乙です
投下させていただきます
僕は小山田まん太。
これは、僕が体験した不思議なお話だ。
◇ ◇ ◇
その夜、僕は墓地を走っていた。
好きこのんで、夜の墓地なんておっかないところを移動してたわけじゃない。
塾からの帰りが遅くなったから、近道しようとしてたんだ。
けどそこで僕は、恐ろしいものを見てしまった。
それは筋骨隆々の大男が、別の男の胸を貫いている光景だった。
「ひ……!」
「うわあああああ!!」
僕があげようとした悲鳴は、別の悲鳴にかき消された。
悲鳴を上げたおじさんは、悲痛としかいいようがない表情でその場から走り去っていく。
割と近くにいた僕にもまったく気づいていなかったようで、動揺の度合いはかなり高かったみたいだ。
残されたのは僕と剣を持った男。そして男の近くにいた、いかにもきつそうな顔立ちの女性。
刺された方の男は、いつの間にか綺麗さっぱり消えてしまっていた。
「あら、見てたの? 運のない坊やね。
セイバー、口封じにやっちゃいなさい」
「はっ」
僕の存在に気づいた女性が、男に命令する。どうやら彼女の方が、立場が上のようだ。
……って、冷静に分析してる場合じゃない! 僕、殺されそうになってるじゃないか!
一刻も早く逃げないと! 葉くんがいれば守ってくれるだろうけど、今はいないし……。
あれ? 葉くんって誰だ? 学校にも塾にも、そんな名前の知り合いは……。
いや、違う。なんで忘れてたんだ。葉くんは、僕の親友じゃないか!
その瞬間、僕の頭に辞書で殴られたような衝撃が走った。
今まで忘れていた本当の記憶が蘇り、おまけに知らないはずの知識まで流れ込んでくる。
聖杯戦争? サーヴァント? なんだかずいぶん厄介なことに巻き込まれたらしい。
そうこうしているうちに、左手の甲になにやら刺青というか痣というかそんなものが浮かび上がってきた。
僕の中に埋め込まれた知識が、それが令呪というものだということを教えてくれる。
「あの子、マスターだったの!? だったら、なおさら放置しておくわけにはいかないわ。
セイバー、サーヴァントが来る前に殺しなさい!」
マスターの女性に指示されて、セイバーが改めて剣を構える。
そうだ、状況はまったく好転していない。むしろ相手の殺意が若干高まっている。
サーヴァントは……僕のサーヴァントはまだなのか! お願いだから、早く来て!
その時……
カラン、コロン
奇妙な音が、墓地に響いた。
「なんだ……?」
僕を殺そうとしていたセイバーが思わず手を止め、周囲を見回す。
カラン、コロン
カランカランコロン
また同じ音が、今度はさっきよりはっきりと響く。
「これ……下駄の音?」
僕は思わず、思ったことをそのまま口にする。
それを聞いた女性は、顔をこわばらせた。
「あの子のサーヴァントが来たのかもしれないわ! セイバー、早く!」
「はっ!」
今度こそ、セイバーが剣を振り下ろそうとする。
だけど、やっぱりそれは実行されなかった。
「悪いけど、もう遅いよ」
闇の中から、彼はゆっくりと姿を現した。
下駄を鳴らしながら近づいてくるその人影は、まだ顔に幼さを残す少年だった。
「あなたがその子のサーヴァントってわけ?」
「ああ、そうだ」
「そう……。でも遅かったのは、あなたの方よ。
そんな悠長に歩いてて、間に合うわけがないでしょう!」
女性の声を合図に、ついに剣が振り下ろされた。
もうダメかもしれないと、僕は観念する。
けど、僕の体が切り裂かれることはなかった。
「リモコン下駄!!」
その刹那、何かが二つ宙を舞った。それはセイバーの持つ剣を弾き、僕の命を救った。
それがさっきまでカラコロ音を立てていた下駄だと僕が気づいたのは、空中でUターンした下駄がセイバーの顔面に炸裂した瞬間だった。
「ぐうっ……!」
顔にきつい一撃を叩き込まれ、さすがにセイバーはひるんでいた。
そこへ、僕のサーヴァントが追い打ちをかける。
「髪の毛針!」
針と化した無数の髪の毛が、セイバーに襲いかかる。
そうとう痛いのだろう。セイバーは苦悶の表情を浮かべ、片膝をついた。
「何やってるのよ、セイバー! そんな子供に!」
女性がヒステリックな声色で叫ぶ。だけど、そんなことで状況は好転しない。
さらなる追撃が、セイバーを襲う。
「指鉄砲!!」
今度は、指先から光る弾丸が発射された。
それは今までの攻撃を上回る威力らしく、セイバーに命中したとたんに爆発を起こした。
連続する爆発。そしてそれがやんだ時には、セイバーの体は跡形もなく吹き飛んでいた。
「ひ、ひぃ……」
信じられないといった表情で、女性がその場にへたり込む。
僕のサーヴァントは、無表情でそんな彼女に近づいていった。
「ここで逃げてわずかに希望を繋ぐのと、最後の抵抗をして確実に死ぬのと、どっちがいい?」
「いやあああああ!!」
よほど怖かったのか、女性は絶叫を残してその場から去って行った。
「うーん、敵とはいえちょっと脅かし過ぎちゃったかな」
ポリポリと頭をかく彼に、僕はおそるおそる声をかけた。
「あのー……」
「ああ、ごめん。自己紹介をしてなかったね。
僕は君と組む、アーチャーのサーヴァントだ。よろしく」
「小山田まん太です。よろしく」
これが僕とアーチャー……鬼太郎さんとの出会いだった。
「ゲッ ゲッ ゲゲゲのゲ」という歌が、どこかから聞こえてくる気がした。
【クラス】アーチャー
【真名】鬼太郎
【出典】ゲゲゲの鬼太郎(アニメ第5シリーズ)
【属性】混沌・善
【パラメーター】筋力:D 耐久:B+ 敏捷:C 魔力:A 幸運:C 宝具:A
【クラススキル】
対魔力:C(B)
魔術に対する抵抗力。
本人のランクはCだが、宝具である「霊毛ちゃんちゃんこ」の力で1ランクアップしている。
単独行動:E
マスター不在・魔力供給なしでも長時間現界していられる能力。
本来はもっと高くてもおかしくないが、高い不死性の代償で低ランクに抑えられている。
【保有スキル】
妖怪:A
生者にして生者にあらず。死者にして死者にあらず。
科学では語ることのできない存在。
種族ごとに固有の術を持ち、アーチャーは「髪の毛針」「指鉄砲」「体内電気」などの術が使える。
また対峙するサーヴァントが科学に精通しているほど、その攻撃によって受けるダメージが減少する。
騎乗:B-
乗り物を乗りこなす能力。
アーチャーは神秘性を持つ乗り物ならばBランクの効果を発揮できるが、神秘性がないものは自転車を乗りこなすのがやっとである。
心眼(偽):B
直感・第六感による危険回避。虫の知らせとも言われる、天性の才能による危険予知。視覚妨害による補正への耐性も併せ持つ。
戦闘続行:EX
名称通り戦闘を続行する為の能力。決定的な致命傷を受けない限り生き延び、瀕死の傷を負ってなお戦闘可能。
アーチャーは後述の宝具の力により、規格外の継戦能力を持つ。
【宝具】
『霊毛ちゃんちゃんこ』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1-70 最大捕捉:5人
幽霊族が死に際に残すという「霊毛」を編んで作った衣服。
アーチャーの意思により自在に動き回る。
大きさも自在であり、大きく広がって包み込んだり、ロープ状になって敵を拘束することが可能。
また対魔術防具としても強力であり、着用している間は「対魔力」のランクが上昇する。
『リモコン下駄』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1-70 最大捕捉:2人
霊毛ちゃんちゃんこ同様、アーチャーの意思で自在にコントロールできる下駄。
一見すると単なる木製の下駄だが、強い神秘を宿すため高い硬度を誇る。
『お化けは死なない、病気もなんにもない』
ランク:A 種別:対人宝具(自身) レンジ:― 最大捕捉:1人(自身)
アーチャーの尋常ならざる再生力が宝具となったもの。
アーチャーはいかなるダメージも回復することができ、自分に対する状態異常、ステータス低下も自力で解除できる。
ただし回復スピードは決して速くなく、回復を早めるにはマスターの魔力消費が必要となる。
【weapon】
宝具
【人物背景】
人類に害をなす妖怪と戦う幽霊族の末裔・「ゲゲゲの鬼太郎」。
彼は複数の世界でその存在を確認されているが、彼もまたその中の一人である。
普段は現世から少しずれた世界にある妖怪横丁の外れ・ゲゲゲの森でのんびりと暮らしているが、
妖怪が事件を起こせば現世へとやってきて仲間たちと共にそれを解決する。
勘違いしてはいけないが、彼は「善良な人間の味方」であり無条件で人間を守ってくれるわけではない。
私利私欲がゆえに妖怪に狙われる原因を作った人間には、冷酷な態度で接することも多い。
それで考えを改めなければ、その人間は破滅するのみだ。
【サーヴァントとしての願い】
マスターを守る。
【マスター】小山田まん太
【出典】シャーマンキング
【マスターとしての願い】
元の世界に帰る。
【weapon】
○万辞苑
まん太がいつも持ち歩いている辞書。
これで殴るとすごく痛い。
【能力・技能】
霊が見えるが、干渉はできない。
必死になれば、街で有名な不良と渡り合うくらいの戦闘力は発揮できる。
【人物背景】
少しだけ霊感を持つ少年。
15歳だが、身長80センチとすごく小さい。
日本有数の電器メーカー「小山田カンパニー」の御曹司で、親の後を継ぐため勉強漬けの日々を余儀なくされていた。
そんなある日シャーマンの少年・麻倉葉と出会い、彼の自由な生き様に惹かれ親友となる。
シャーマンファイトが開始されてからは、おのれの無力を知りつつも葉を友達として見守り続ける。
その友情はやがて、人類を救う奇跡の一翼となった。
【方針】
この世界からの脱出手段を探す。戦闘はできるだけ避けたい。
投下終了です
投下します。
夢は夢のままだからこそ、綺麗なんだ。
けれど、掴みたい。
黒鉄一輝という人間は愚直に夢へと邁進する少年だった。
己の魂を剣へと変えて戦う憧れの存在である騎士へとなりたい。
内包する魔力の少なさ――才能がないと周りから蔑まれても。他の分野で大成したらいいと勧められても。
自分が抱いた夢を諦めることだけはしたくなかった。
その為の努力なら一時も欠かさずしてきたし、取れる手段は全て取ってきた。
「確かに、僕は強くなりたいと願い、この魔力のない体質を変えたいとは思った。
その思いが聖杯に届いたんじゃないかな」
「それだけ強いのにですか? 私から見て、マスターは相当に強いと思うんですけどねぇ」
「強いだけじゃ駄目なんだよ。僕のいた世界では魔力を多く持つほど持て囃される。
実戦経験とか、剣技とか、それよりも才能第一な世界だからね」
呼び出したサーヴァント――セイバーからみても一輝の身体は鍛え抜かれており、佇まいからして一流と呼んでもおかしくない。
ふむむと指を顎に当てて理由を探るセイバーに一輝はくすりと笑い、言葉を繋ぐ。
才能がない者には夢を見る資格さえない、と。
だから、抗おうと決めた。少ない魔力を駆使して最強になるべく、剣を握り締めひたすらに経験を積んだ。
後悔だけはしたくない、死ぬなら刀を持って地に伏せたい。
「この魔力の少ない身体じゃ、どれだけ頑張っても騎士にはなれないかもしれない。
でも、聖杯の奇跡なら――きっと、魔力を潤沢に使える身体にってね」
骨の髄まで、血の一滴まで。一輝は刀を持つ人間である。
そして、自分が成した戦果を認めてもらいたくて。
ずっと、ずっと努力を重ねてきた。
「…………僕にはそれしか道がなかった。聖杯なんて眉唾ものの奇跡に縋るしかなかった」
けれど、そんな努力は無意味だった。
所詮は才能。恋人であるステラ・ヴァーミリオンのような自分を認めてくれる人間は少数だ。
結果よりも才覚。全ては生まれ持って決まるものだった。
「幾ら強くても、魔力がなかったら誰も認めてくれない」
父親から言い渡された言葉は、何もなかった。
期待も、失望も。彼にとっては、自分など最初から何の願いも想いもかけていない。
ただ、それだけ。
才能がないという要素が、総てを打ち砕いた。
「けれど、聖杯なら。黄金の奇跡による願い成就の権能を使えば、マスターの願いも叶う」
「うん。鍛え上げたこの剣技を、僕は――――人殺しに使う。忌むべきことだ、恥じるべきことだ。
ステラにはもう顔向けできないし、雫に尊敬される兄では足り得ない。きっと、僕は地獄に落ちるだろうね」
漸く、結果を成しえたと思った瞬間に、滑り落ちた。
少しは父親に認めてもらえると顔を上げた瞬間に、現実を見せつけられた。
期待を無くし、残ったのは惰性だけだ。
恥じぬ生き方をしてきたつもりだった。
しかし、蓋を開ければ、そこには黒鉄一輝というろくでなししか残らない。
それを理解した上で、無様に、意地汚く剣へと縋り続けた。
「それでも、僕は父さんに認めて欲しい。騎士になりたい。捨てれば楽になれるってわかっていながらも、剣を捨てられない」
この手には意味がある。
ある少女はこの手が好きだと言ってくれた。
こんな自分でも必ず何かを成せるはずだ。
そんな、希望が顔を見せた時もあった。
「その道が命を削るものだとしても?」
「覚悟の上です」
「もっと楽で綺麗な道があるとしても?」
「孤独であろうとも、この剣で切り開く道こそが、僕の進む道です」
今から、自分はその手を血へと染める。
他者を殺し、夢を奪う悪逆無道。
願いを聖杯へと焼べるべく、進むことを決めた。
自分がどれほど迷惑な生き物か思い知ったし、今も迷いが無いとは言い切れない。
「情けなくてもいい、みっともなくてもいい、嘲笑われてもいい」
なあもういい。もういいのではないか。
諦める時だ、と囁かれ、まともな環境すら与えられなかった。
膝を屈しそうになったことだって数え切れないし、剣を捨てた方がいいと思ったことだってある。
「僕はこの最弱を以って、僕の諦めを打倒する」
けれど。けれど。
それでも、一輝は右手を伸ばす。
剣を取る騎士になるべく、夢を追う。
「同じ『騎士』として、貴方の力を貸してください、ベアトリスさん」
そう言って、彼は己のサーヴァントの目をまっすぐと見返した。
遠く、遠く。少年の決意がベアトリスの胸へと染み込んでいく。
怒りも哀しみもやるせなさも、自らの無力への諦観も何もかもがないまぜになった言葉を確かに受け取った。
○
彼の愚直さは、恋人であった櫻井戒によく似ていた。
目的の為に突き進む姿がそっくりで、思わず瞠目してしまった程だ。
そして、その道の果てもきっと同じなのだろう。
呪いに打ち負け、化物と化す悲劇の主人公。
どう足掻いても変えられない運命に膝を屈した騎士はそのまま消えてしまった。
自分は間に合わなかった『騎士』だ。
誰も救えず、置き去りにした敗北者である。
そんな自分に、黒鉄一輝は共に戦うことを願った。
今度こそ、救えるだろうか。
あの時のような想いは二度としたくない。
大切な人達が苦しみ、死んでいく道など――自分は嫌だ。
だから、だから。
「ジークハイル・ヴィクトーリア」
誓おう。彼の願いを照らす道を、この剣で切り開くことを。
願おう。一輝が運命を打破し、幸せが残る結末を。
勝利の言葉を彼へと返し、戦意を高揚させる。
これは負けられない戦争だ。
今まで敗北続きだった自分達の運命を今度こそ終わらせる。
その先に、櫻井戎が待っていると信じ、戦乙女は剣を取った。
後戻りはこれで、もうできない。
過去に縛られ、朽ちた心に炎を灯す。
「往きましょう、死地へ。貴方が横にいてくれたら、僕の足取りは震えない」
「その期待、応えてみせます。マスター」
二人の『騎士』が黄金の杯へと手を伸ばした。
【クラス】
セイバー
【真名】
ベアトリス・ヴァルトルート・フォン・キルヒアイゼン@Dies irae
【パラメーター】
筋力C 耐久C 敏捷A+ 魔力C 幸運C 宝具A
【属性】
中立・善
【クラススキル】
対魔力:B
魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。
大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。
騎乗:B
騎乗の才能。大抵の乗り物なら人並み以上に乗りこなせるが、
魔獣・聖獣ランクの獣は乗りこなせない。
【保有スキル】
エイヴィヒカイト:A
人の魂を糧に強大な力を得る超人錬成法をその身に施した存在。
魂を食べることでその身体を強化させる魔人。
エイヴィヒカイトには四つの位階が存在し、ランクAならば「創造」位階となる。
心眼(真):B
修行・鍛錬によって培った洞察力。
窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、
その場で残された活路を導き出す“戦闘論理”。
呪い:A
ある人物から二つ名である魔名と共に送られたもの。
その内容は「その夢、青臭い祈りは、グラズヘイムを肥え肥らせる」
彼女が願い、行動をすればする程、物語が彼女にとって最悪の終末へ進んでいく暗示。
【宝具】
『戦雷の聖剣(スルーズ・ワルキューレ)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1〜8 最大捕捉:1
戦乙女ワルキューレの剣を模した聖遺物。
能力は雷の操作。ただし、これは形成位階であり、創造位階になると能力は進化する。
ベアトリスの渇望である『戦場を照らす光になりたい』という意に呼応して、身体を雷へと変えることができる。
圧倒的速度と物質透過がウリであり、どのような状況でも発動可能な為、応用力が高い。
【weapon】
戦雷の聖剣。
【人物背景】
大切な人達を救えなかった『騎士』。
【サーヴァントの願い】
願わくば、一輝が幸福に終わることを。
【マスター】
黒鉄一輝@落第騎士の英雄譚
【マスターとしての願い】
魔力の少ない身体を改善させ、騎士として大成したい/父親に認めて欲しい。
【weapon】
日本刀の固有霊装『陰鉄』
【能力・技能】
自らの持つ力を一分間へと凝縮する異能『一刀修羅』
他者の使う剣術を見ることで模倣する剣術『模倣剣技』
他者の思考回路の根底に根ざす絶対価値観を把握する『完全掌握』
【人物背景】
大切な人達を置き去りにした『騎士』。
参戦時期は選抜戦最終戦前。
彼の性格、有り様をある程度知れる漫画版。
ttp://www.ganganonline.com/comic/cavalry/
【方針】
聖杯を取る。その為なら修羅にだって身を落とす。
投下終了です。
皆様、投下お疲れ様です
投下します
街の外れ、進めば進むほど人の住む家を見かける頻度が少なくなってくる場所に、一件の家があった。
その家の風貌はボロ小屋といっても過言ではないほどの頼りない一軒家であり、ところどころ痛んでくすんだ木造の壁が目に入る。
これを見た者は人など住んでいないと断定するか、あるいは住んでいても相当貧乏だと思うだろう。
そんなボロ小屋に二人の人間が帰ってきた。いや、厳密には一人の変質者にしか見えない衣装を着たマスターと一人のサーヴァントといった方が正しいだろうか。
マスターの方ははっきり言って異様な姿をしていた。
黒い全身タイツに変身ベルト、そして膨れ上がった風船なのかてるてる坊主なのか分からない膨れ上がったマスク。
マスクにある赤い模様に真ん中にある黒い点は目玉を彷彿させる。
まるで特撮の戦闘員のような容姿の男だった。
サーヴァントの方もサーヴァントで人間の姿をしていなかった。
金髪で青と白を基調とした軽装に剣を携えており、それだけなら真っ当なサーヴァントに見えるが、
服から覗いている肌は人間のそれではなく、全てメタリックな青銅色の金属板に覆われたていた。
顔立ちはまさにロボットのそれで、黄色く光るカメラアイと腹話術人形のようにパクパクと開閉している口が人工物であることを窺わせる。
「…タダイマ」
マスターである平坂黄泉は誰もいない家の中に声をかけると、靴を脱いで居間に上がる。
居間もこの家の外装に似て古く、床に敷かれている畳にはところどころ汚れが散見される。
「ゴ苦労ダッタナ、バーサーカー」
黄泉は台所から取ってきたきゅうすから湯呑に茶を入れ、ちゃぶ台に対面して頬杖をつきながら座るバーサーカーのサーヴァントに差し出した。
「今日モバーサーカーノ活躍デ悪ニ勝ツコトガデキタ。アト少シトイウトコロデニゲラレテシマッタガナ」
「ウルセェッ!ソモソモ駄目ますたーガ長ッタラシイ正義ノ口上トヤラヲペラペラトシャベリ続ケタセイダロウガァ!!」
「バーサーカーモ殺スヨリランサー女史ノ体ヲ見ルコトヲ優先シテイタヨウナ気ガスルンダガ…」
バーサーカーであるロボカイは、ちゃぶ台に拳を打ち付けて黄泉を駄目ますたー呼ばわりして怒鳴る。
ちゃぶ台の上に乗っていた湯呑が倒れ、お茶がこぼれてしまったがロボカイは続ける。
黄泉とロボカイはここに帰ってくる前、未来の「倒すべき悪事、守るべき弱者」が記録されたボイスレコーダー『正義日記』に従い、
黄泉が悪と見なした女のランサーを従えている主従と遭遇ののちに交戦、見事勝利を収めてきたのだ。
尤も、結果的に勝利したとはいえ、黄泉が勝ち誇って長い口上を話し続け、
ロボカイが倒れ伏した女のランサーの豊満な身体の鑑賞会に浸っていたせいで敵マスターに令呪を使われて逃走を許してしまったが。
そのため、黄泉の最終目標である『悪を倒す』ことは達成できなかったのだ。
「トニカク、失敗ヲ悔ヤンデ立チ止マッテイテモ何モ進マナイ。コレカラモ我々ハ悪ヲ倒サナケレバナラナイノダ。
ソノタメニ今ノウチニ電力ヲ溜メテオケ。イツ悪ガ攻メ込ンデ来ルカワカランカラナ」
「ワシニ指図スルナ、コノ駄目ますたー!ソンナコトクライ分カッテオル!」
ロボカイは黄泉を駄目ますたー呼ばわりすることをやめずに罵言雑言を浴びせるが、黄泉はさして気にしていない様子だった。
平坂黄泉の正義観は「最終的に勝った方が正義である」ことだ。
勝つことこそが正義であり、負ける者はすべて悪。
どんな汚い手を使おうと、無関係な人間がその過程で死のうとも勝てばそいつが正義なのだ。
先ほどの戦いで勝利したのは「黄泉とロボカイ」であり、黄泉にとってロボカイは正義側であり、共に正義を成す仲間だ。
そんなロボカイに対して文句をつけようとする気は全く起きなかった。
「充電!」
ロボカイはそう叫ぶと、居間の床にどこから出したのだろうか、長方形の形をした発行体を設置する。
この発行体はロボカイの設置した充電マットで、ロボカイのボディに電力を溜める役割を持っている。
ロボカイはある人物の戦闘データを元に製造されたロボットで、サーヴァントになっても肉体はロボットの体だ。
そのため、ロボカイは戦闘する際は魔力の代わりに電力を消費し、電力が溜まれば溜まるほど強くなるというサーヴァントとしては特異過ぎる性質を持っていた。
それ以上に自己中心的でわがままな性格が厄介極まりないが。
「ウーム…ソレニシテモアノらんさー、ナカナカノばっちりぼでぃダッタ…」
ロボカイは充電マットの上で胡坐をかきながら今日遭遇したランサーの女性の姿を思い出す。
あの凹凸がはっきりしたスタイルなら自分の嫁にしてもよかったかもしれない。
ロボカイは黄泉の正義を貫くだの悪を討つだのといったことよりも嫁探しの方を優先している節があった。
一応、いざ戦闘になったらなんだかんだ言いつつ戦うのでサーヴァントとしての本分は忘れていないといえる。
基本的に自分は優れていると思っているため、現界したからには負けてやる気は毛頭ないのであろう。
――18時09分。 家の居間がお茶で水浸しになっている。
不意に、黄泉の正義日記が声を上げた。
それを聞いた湯呑みをひっくり返した張本人のロボカイは責められたと被害妄想を抱いたのか、「ヤカマシイぼいすれこーだーダナ!」と愚痴をこぼしている。
黄泉は、こぼれた茶を拭くタオルを取ってくるためにちゃぶ台の前から立ち上がった。
(ソレニシテモ…口惜シイナ)
黄泉の願いは聖杯戦争においても、己が正義を貫くことである。
聖杯にかける願いはなく、正義を遂行するためなら命をかけてもいいと思っている。
しかし、黄泉は元々住んでいた世界に対してほんの少し未練を抱いていた。
(本当ノ悪ハ6thデハナク、船津デアッタ)
黄泉は既に、6thの悲惨な境遇を知っていた。
黄泉は既に、船津の許しがたい悪業を知っていた。
この聖杯戦争に参加している黄泉は、教団本部で迷子になっていた5thを助け、6thの境遇を知った途端にこの電脳世界に召喚されたのだ。
今となっては元の世界に帰ることができず、船津という悪を倒すことができないことを黄泉は残念に思うのだった。
【クラス】
バーサーカー
【真名】
ロボカイ@GUILTY GEARシリーズ
【パラメータ】
筋力D〜A+ 耐久D〜A+ 敏捷D〜A+ 魔力EX 幸運C 宝具D
【属性】
混沌・中庸
【クラス別スキル】
理性崩カイ:E
つまるところただの『狂化』スキル。
通常時は狂化の恩恵を受けないが、意思疎通が可能。
ダメージを負うごとに幸運判定を行い、失敗するとロボカイの熱量が急上昇して筋力・耐久・敏捷が倍加されるが、熱暴走するリスクも高まる。
【保有スキル】
みんなで集カイ:-
つまるところただの『複製』スキル。
量産可能であることを示すスキルだが、
此度の聖杯戦争では高度な人工知能を持った自我の強い個体が現カイしているために群体としての側面が損なわれ、このスキルは失われている。
カイ離性:C
つまるところただの『単独行動』スキル。
Cランクならば1日間マスター不在でも現カイできる。
データカイ析:D
つまるところただの『ラーニング』スキル。
戦闘の最中に相手の行動から戦闘データを収集し、自分の攻撃手段に応用する力。
バーサーカーは生前は他人の戦闘データの収集任務に従事したことがあり、その収集機能がラーニングスキルとして昇華されたもの。
座談カイ:A
魔力を消費して、足元に充電マットを敷いて電力を溜めることができる。
後述の宝具から、ロボカイの魔力を消費する行動は故障箇所の自己メンテナンスと現世に存在を維持すること、そしてこのスキルの3つのみである。
皆ワシのカイ互換:B
「アクティブ・コミュニケーション回路」なる高度な人工知能が搭載されており、ロボットながら感情を持っている。
マスターの言うことを聞かない自己中心的でわがままな性格をしているが、
かといって冷徹で無慈悲なわけでもなく、どことなく愛嬌のある、きわめて人間味がある性格でもある。
人間以上に人間味のあるその性格は、真っ当なロボットからすると十分狂っているのかもしれない。
【宝具】
『スーパーロボカイゴッドスーパーロボカイ2ndII'ホーリーグレイルカスタムアブソリュートLV無限大』
ランク:D 種別:対カイ宝具 レンジ:―― 最大捕捉:――
元聖騎士団団長であるカイ=キスクの戦闘データを元に作成されたロボカイのロボットのボディ自体が宝具。
スキル:皆ワシのカイ互換に書かれてある通り、豊かな意思・感情を持っている。
とんでも科学で作成されたロボットという特性上、そのボディの下に収納された様々な武装により奇カイな攻撃ができる。
ロボカイは他のサーヴァントは違い、魔力ではなく電力が直接的な力の源となる。
バーサーカーの場合、ボディに蓄積されている電力量に応じて筋力・耐久・敏捷のパラメータがD〜Aの間で上下し、武装も強化される。
ただし、電力も魔力と同じく戦闘を行ったり何らかの機能を使用することで消費していくので定期的に充電が必要。
電力を溜める方法としては座談カイやコンセントで充電するか、あるいは電力を溜める技をヒットさせる必要がある。
魔力ではなく電力を消費するという関係上、燃費はバーサーカーながら非常に良好で、マスターが担う魔力は上記の3つだけでいい。
電力が0になっても機能停止したり消滅することはないが、あらゆる能力が低い『駄目さーう゛ぁんと』になる。
また、ロボットのボディを持っている特性上熱量にも気を使う必要がある。
熱量は戦闘中、攻撃するごとに上昇していき、
温度が限カイまで上昇すると熱暴走を起こしてしまい、ボディが小爆発を起こして敵に多大な隙を晒してしまう。
そのため、例え戦闘中であっても適度に排熱しつつ戦わなければならない。
ただし、熱暴走を起こす直前の高温を保った状態の時のみ筋力・耐久・敏捷が倍加されるメリットもあるにはあるのだが、
その温度を維持しつつ戦闘し続けるのは非常に難しい。
『限カイらばーず(オーバークロック・ヘラクレスエンジン)』
ランク:C 種別:カイ放宝具 レンジ:10 最大捕捉:自分+5
自身のリミッターを解除し、限カイまで自分を強化する宝具。
この宝具を発動すると、10ターンの間のみ熱量が急速に自動減少して且つ電力が急速に溜まっていく他、筋力・耐久・敏捷のパラメータを常にA+ランクに固定する。
ただし、10ターン経つと反動で周囲に電力を放電しながら自爆し、それ以降20ターンの間は実体化できなくなる。
そのため、気軽に発動することは自殺行為といえる。
【weapon】
・封雷剣のレプリカ
【人物背景】
終戦管理局支部長クロウがカイのデータを元に開発したロボット。コード名「Kシリーズ」。性能・量産性・汎用性共に申し分ない。
が、人格プログラムに大いに問題があり、想定外の動作が多く、任務達成率は高くは無い。
自尊心が高くわがまま、おまけに自信過剰なおおよそロボらしくない忠誠心皆無の性格。
シリーズを追うごとに人格プログラムの暴走は激しくなり、製作者のクロウを「駄目博士」と言うなど、口の悪さが酷いことになっている。
聖杯戦争でサーヴァントとして現界してもその性格は相変わらずで、
マスターのことを「駄目ますたー」と呼び、聖杯戦争よりも嫁探しの方を優先している節がある。
【サーヴァントとしての願い】
ワシガ負ケルワケガナイ!ソンナコトヨリ、嫁ガ欲シイ!
【マスター】
平坂黄泉@未来日記 パラドックス
【マスターとしての願い】
自分の正義を全うする。
【weapon】
・『正義日記』
未来で起こる事象が映し出される『未来日記』の一つ。
未来の「倒すべき悪事、守るべき弱者」を記録したものである。
しかし、あくまでもこの日記に予知される正義と悪は、彼の主観によるもの。
『ゴミが落ちてる』や『迷子情報』程度のことでも知らせてくる。
また、全盲故にこの日記は携帯電話ではなくボイスレコーダーである。
日記に反した行動を起こすことで自身に不利な状況を回避することもできる。
その際、本来体験するはずだった日記の内容がノイズと共に書き換えられる。
【能力・技能】
・優れた聴覚
全盲であるが、聴覚でそれを補っている。
・催眠術
他者の操作、集団の撹乱、記憶の消却すらできる。
【人物背景】
日記の12人目の所有者。通称12th。全盲だが鋭敏な聴覚の持ち主。催眠術を使える。
時空王デウスに選ばれた12人の未来日記の所有者「12th」。
正義のヒーローに憧れているが、全身黒タイツにマスクを身に着けた異容、「勝ったほうが正義、負けたほうが悪」を信条にするなど一般的なヒーローとはどこかズレている。
但し、邪教集団をやっつけたり、お年寄りを助けようとするなど、「弱きを助け、強きをくじく」という正義漢らしいモットーもちゃんと備えている。
参戦時期は『パラドックス』で5thから6th(春日野椿)の境遇を聞いた直後。
【方針】
正義日記を頼りに、倒すべき悪を倒していく。
以上で投下を終了します
皆様投下お疲れ様です
自分も投下します
ハァー ハァー
ハァー ハァー
そこは地獄だった。
瞳を真っ赤に染めた人間のような、それでいて人間でないモノ達が夥しく蠢いていた。
整備の尽くされた歩道を。
強固に舗装された車道の上を。
阿鼻叫喚の交差点を。
街中の至る所狭しと走りまわる。
走り回るだけではない。その連中は、逃げ惑う老人、若者、子供、男、女。総てを差別することなく平等に跳びかかり、組み伏せ、噛みつくのだった。
皆、肉食獣の如く異様に発達した犬歯で肩口に、顔に、胸に。勢いのまま思いのまま噛み付く。
噛みつかれたものはこれまた平等に叫び、失禁し、動かなくなる。
しかししばらくすると立ち上がり、同じように跳びかかる。
一秒前までの友達が、恋人が。今日の親友、恋人を襲い、血を吸い、干からびさせる。
この世に神が居ると信じて疑わない宗教家にこの光景を見せるとなんというだろうか。
神など信じぬ現実主義者に見せると何というだろうか。明日もわからぬ若者に見せると何というだろうか。
皆、そこは地獄だったというだろう。こういうのを地獄と言うのだろう。
地獄となった街にまるで天への階段のような、黄金色の門を構えるラグジュアリーホテル。
その上部にあるレストランの窓際の席から無感情に見下ろす男――――――ライダーもこういうのを地獄というのだろうと思った。
「『ヨハネの黙示録』によるとサソリの力を持ったイナゴが現れて神の刻印を持たない人間を刺して苦しめるというが…この状況はまさにそれだな。
イナゴでなく元人間がそれをするってのはなかなかにおぞましいものがあるぜ」
向い合せに座った、血のように赤い瞳を持つ男が薄氷のように冷たく、薄い笑みを浮かべながらそれに答えた。
「進化の過程には痛みを伴う。仕方のないことだよ、これは」
答えた男の名は雅。下で群がる暴徒…吸血鬼の首領である。
まるで舞台劇でも見るかのように、喜々として下を眺める雅とは対照的に、無感情に、ぼーっとしながら、ただただ下を見つめるライダー。
そんなライダーの視線の先の吸血鬼が一人。女を抑え、組付し。嫌がるのを無視して無理やりおっぱじめた。
「進化ね…オレにはどう贔屓目に見たって強姦魔を培養しているようにしか見えないが」
噛まれたショックだろうか、それとも現実に堪えられなかったのだろうか。
女は笑いながら泣き叫び、雄叫びのような悲鳴と共に金色の汁を股から垂れ流した。
「親が聞き分けのない子に教育するように、と見てもらいたいな。
痛かろうが怖かろうが、進化できるのだ。 それ自体は素晴らしいことのはずだし、
こういう宴もマゾヒスト思考の強い人間共にはちょうど良い。」
血を吸い、素早く行為を終えた男が満たされぬ腹を満たそうとする餓鬼のように次の餌を求めて走り去る。
女は女で薬をキメたSEXをしたような、狂気と悦楽でぐちゃぐちゃの顔になって立ち上がって駆け出し、
意趣返しだろうか、それとも快感をを共有させたいのだろうか。人間の男を組み伏せては血を吸って犯し、血を吸っては犯し。
自慰行為を覚えたての少年が毎日それを繰り返すように、狂ったようにそれを繰り返した。
「しかし…日和見主義のクズ共が己の欲望に忠実になっていく様は結構面白いな。
これを見れただけでもあんたに呼ばれた甲斐があったと思う。
何故マスターによばれたのかがわかったように思う」
それを聞き、口の端を釣り上げる雅。
「やはりな、ライダー。人間嫌いなお前なら。
人間とその限界を見限って能力を手に入れたお前なら、きっと気に入ってくれると思っていたよ。」
パチンと指を鳴らす。奥から一礼し、ウェイター風、しかし目の赤い男がワインボトルを持ちながらするすると歩いてきた。
雅の向かいに座るライダーに、目が青く犬歯もない男に舌打ちしながらもグラスに赤ワインをつぐ。
「飲むか?こういう時間には酒がつきものだろう。」
「気が利くな。オレもちょうど渇いていた所だった。」
椅子の背に腕を掛け、脚を組んだライダーが己の崇拝してやまない雅に、まるで後輩を顎で使う先輩のような、偉そうなのようなその物言い。
我慢ならなかったのだろう。ダン、と音がするほどワインボトルを机に叩き付け、ライダーに息も荒くに睨みかかった。
「貴様。雅様に向ってきやすい口を効くんじゃあ…。」
ない。そこまでが言えなかった。
理由はよくわかる。この網タイツのような独特の服を着て。ホテル内だというのにジョッキー風のヘルメットをかぶったこの男が己の口を掴んでいるからだ。
だがなんだこの力は。万力というのも生ぬるい。まるで圧縮プレス機のようなすさまじい握力で、己の頬を掴み持ち上げている。
宙に浮いた足をばたつかせ必死の抵抗を試みるが吸血鬼の力を持ってしても、びくともしない。何をしたくとも歯が立たない。
「おいおい、この国のホテルのウェイターってのは『オモテナシ』の心があるんだろ?
まずは誠意をこめてオーダーを聴く。それが筋ってもんじゃあないのか?」
意識を失ったのだろうか目がグルんと白目をむく。
同時に、吸血鬼の口の端に網目状のひびが入る。そのヒビは裂け目となり、地割れのように口の端が横へ横へと広がっていく。
ズボンが裂ける。尻の方から何やら長い、大きなものが突き出てくる。
そして肌がかさつき、爪が生えた所まで見ると、それはもう明らかに吸血鬼でもヒトでもなかった。
それは見た所大きなトカゲであるように見える。しかしトカゲより力強く、トカゲより大きく、トカゲより鋭い爪と武器を持った太古の生物。
「だから、今一度オーダーを言うぜ。
『行け』。そして『食ってこい』」
いわゆる『恐竜』と言うヤツであった。
「ギャアアアアアアーーーーーーーーーース!!!!」
元ウェイターは窓を突き破り、ホテルの壁面を階段でも降りるかのようにするすると下って行った後。
俊敏に。そして忠実に。吸血鬼を、人を。その群れを見境なく食い荒らし始めた。
「ひいいいいいいいいいいいいいい???!!!」
突如現れた未知の怪物。トカゲ?ワニ?のような生き物に人間も、吸血鬼も同じように困惑し、走り去る。追う元ウェイター。
どちらのものとも、誰のものともつかぬ悲鳴があちらこちらで木霊のように響き渡る。
自身が引き起こしたそれを見ながらも表情は変わらず。ただただ、自らのグラスにワインを注ぎながらこういった。
「チーズの代わりにはならないかもしれないが…いい酒の肴にはなったかな?
あんた、こういうのが大好きなんだろ?」
パチパチ。手を叩きながら喜色満面。
雅は爛々とした輝きをもって地上を見つめていた。
「ああ。人間が泣き叫ぶ所を見るのは大好きだ。
400年かけて私を心底呆れかえらせてくれたのは人間だが、
だからこそ、こういう時の奴らを見るのは実に愉快だよ」
ゆっくりとグラスを回し、顔近づける。よく醸された葡萄の匂いが心地よい、自然と口元が緩み、眼が細まる。
「私の部下が血を吸い、君の部下が肉を喰らう。人間を余す事なく使いきれる。
なあ、我々は結構良い共存生活が築けると思わないか?」
一口流しこむ。よい土、よい水の元で育った芳醇な果実の味。濃厚な香り。
血が舞い、次々と生が終わっていくその光景に赤い酒は実に馴染む。
「否定はしないが…今から仲良し村の生活を想像するとは結構余裕だな、マスター。
地獄を見下ろしながら酒を飲むとそんな気になっちまいたくなるのもわかるが、参加者にも、サーヴァントにもどんなやつが居るのかはわからない。
そこんとこどうなんだ?」
どんな人間にも牙はある。脳はある。意志がある。
過去、取るに足らぬ娘に油断し、その策を見抜けずに死んだ経緯があるからこそ、ライダーは用心深い。
そんな彼の心情を汲み取った上でなお、雅は笑った。
「ふふふ。ライダー。
これは余裕ではない。確信だよ。」
「へえ?」
くいっとワイングラスを口元に傾ける。滴り落ちる鮮血のようなそれをすこし喉に流し込んだ後、ライダーに笑いかける。
「人間がどれほど強かろうと、こちらのほうがより強い。人間がどれだけ多かろうがこちらの方がより多くなれる。
人間が貪欲さがどれほどであろうと、こちらはより貪欲だ。そういうわけで、我々が勝つのだよ。」
――――いけすかない男だ。自身が何か忠告するたびに、自信をもって上から言い返すこの言い方は実に気に入らない。
思想や目的は理解できるし、結構共感もしている。全体的に嫌いではないが、この物言いだけはどうにもいけすかない。
ライダーはそう思ったので、少し、しかし明確な悪意を持っていやがらせをしてみることにした。
「…そーゆーのを余裕って言うんだがな。
人間にもいろいろ武器はあったはずだぜ。なんだっけ…えーっと。ホラ、あの例の薬…」
にやけながら。明後日の方を見ながらわざとらしく質問する。
パリンと砕けた音がした。雅の方へ顔を向けると、その手にグラスは既になく。ワインだか血だかわからない赤い液体がそこから滴っている。
今までの薄氷の笑みとは一転、噴火直前の活火山のような、顔面にはマグマのようなエッジを浮かび上がらせている
「『501ワクチン』」
「あー。確かそんな名前だったかな?
旧日本軍の化学の結晶…だったっけ?」
上から見下ろしたような、まるでこの地球上の生物の頂点に立ったがごとき態度をしている主。
この王を気取り、高い所から見下ろしているようなものいいをするこの男も、一度この話題になると地上に降りて来て憤怒を表す。
ライダーはいけすかないこの男のこういう風なリアクションを見るのが嫌いではなかった。
普段いい気に気取っている分、たまらなく滑稽に思えて笑えてくるのだった。
「そうだ。この科学の力を取り入れた聖杯なら。
旧日本軍の科学の結晶である『501ワクチン』など遥かに凌駕する肉体を必ず与えてくれる。
そしてワクチンを持っている者も、それを作る知能のある人間も残らず始末してくれる。
そのためにお前を呼んだのだ、ライダー。約束を忘れたとは言わせんぞ」
大きな怒りで大地が裂けるように。口の端が顎関節まで届くまでに大きく口を開き。おのが従者をにらみつける雅。
知らぬものが、いや、雅を知るものですら膀胱の扉を閉められなくなるような。
そんな顔を一瞥した後、フンと小気味よく鼻息を鳴らすライダー。
「ワクチンなんかには豆粒一つほどの知識もないしこれっぽっちも興味はないが…
まあ、取引だからな。手伝ってやるよ。」
ぐるぐると。手に持ったグラスを廻しながら、中の液体をぼーっと見つめる。
「フフ…しかし手伝う見返りに『アメリカ』が欲しいとはな。
これはこれはなんとも強欲なサーヴァントを引き当ててしまったものだと思ったよ。
しかも権力の椅子付と聞いたときにはさすがに笑ってしまったぞ、ライダー。」
落ち着いたのか、先ほどの激情はなりを潜めて薄笑いする雅。
回すのにも飽きたのか、ライダーは中味の液体を一気に飲み込んだ。
「わかりやすくていいだろ?オレは人の上に立ちたいから金が欲しいし、権力も欲しい。
生前もいずれは社会の頂点に立つつもりだったし、今回の生でもそうする。
何度死んでも、何回蘇っても、何が何でもそうするぜ。」
あと少しだったんだがな、と呟きながら力強くグラスをもった右手をテーブルに叩き付ける。
一瞬見えた感情を、吸血鬼の首領は見逃さず、しかし諌めることもなく。
ワイングラスを片手に微笑みながら逆撫でした。
「フフ。吸血鬼の私が聴いて呆れるほどに餓えているな、ライダー。
その満たされぬ餓え故に。死してなお満たされぬ渇きが故に。
今もこうして英霊などをやっていているのか?それはそれで哀れだな。」
馬鹿にしたように笑う雅。美しく、しかし研がれた刃のように鋭い目つきで主を睨むライダー。
雅はこの皮肉屋で、しかしプライドが高く焦がすほどの野心をぎらつかせるライダーが嫌いではなかった。
狡猾で、ともすれば自分を食う程の反骨精神のある男など、彼岸島にはとうにいなくなっていたからだ。
それ故にサーヴァントを吸血鬼化出来ないと聞いた時は残念だったが、それもこれからだ。
聖杯の力を持ってすれば、自身の血に神秘性を与えることも容易い筈。
そうすればたとえこの先聖杯戦争があろうとも。あの『蚊』さえいればどんなに優秀な魔術師も。
神話に出てくるようなどれだけ勇猛な過去の英霊も。全て我が同族だ。全て思いのままだ。
「そう睨むなよ、ライダー。これからは楽しもうじゃあないか。
この血に飢えた宴を。聖杯をかけた血の晩餐を。」
「…ああ。とことん楽しませてもらうぜ。
オレがこの世で最高のパワーを手にするために…な」
【CLASS】
ライダー
【真名】
ディエゴ・ブランドー@SBR
【ステータス】
筋力D 耐久D 敏捷C 魔力A 幸運A 宝具EX
スケアリーモンスターズ発動時
筋力B 耐久B 敏捷A 魔力A 幸運A 宝具EX
【属性】
混沌・悪
【クラス別スキル】
対魔力 E
スケアリーモンスターズ発動時 A+
一億年近い過去の生物を体に宿す。
その神秘性は過去の英霊の比ではない。
種別を問わず、『魔術』に分類される物ではディエゴとスケアリーモンスターズをを害する事は難しい。
騎乗者(ジョッキー) A+++
あらゆる乗り物及び生物を乗りこなし、自身の手足のように扱える。
また、生物ならば恐竜化が可能
【固有スキル】
スタンド使い:A
スタンド使いであるという証。
精神エネルギーを源とするスタンドワーにより、保有する魔力量にボーナス補正がつく。
反面、精神エネルギーが弱り気味なら魔力量にマイナス補正がかかる。
仕切り直し:B
戦闘から離脱する能力。また、不利になった戦闘を初期状態へと戻す。
味方がいれば一ランクアップする。
覇者:A
SBRレースを優勝したその証。騎乗時、敏捷にプラス補正がつく。
また、どのような状況においても自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す戦闘論理に長けている。
仲間運:E
その場限りの同盟ならば組みやすくなる。
しかし、過去ディエゴと組んだ者が例外なく酷い目に合った逸話から、
同盟を組んだ味方の幸運が1ランクダウンする
【宝具】
『世界最古の支配者』(スケアリーモンスターズ)
ランク:B 種別:対人 レンジ:1 最大捕捉:
己を恐竜化し、動体視力・肉体・嗅覚などが著しく強化させる。
また、マスター・サーヴァント含む人間・動物には傷つければ恐竜化させることが可能になる。
しかし高ランクの対魔力や聖人の遺体に匹敵する特殊な身体的才能を持っていた場合は恐竜化できない。
恐竜化したものは思考能力、一切の宝具・スキルが失われディエゴに意のままに操られる。
恐竜化はディエゴが死ぬか気絶すれば解除される。また、二次感染も起こらない。
『騎兵は死して世界を制す』(ザ・ワールドイズマイン)
ランク:EX
死んでなお別世界から舞い戻りSBRレースに優勝した逸話から。
任意では使えず、ディエゴ・ブランドーが死ぬことで強制的に発動する一度きりの宝具である。
ディエゴが死んだ瞬間に発動し、別世界の彼が代わりにサーヴァントになる宝具である。
別世界のディエゴは基本性能は同じで記憶も共有しているがスケアリーモンスターズの能力は完全に消える。
代わりに後述の宝具『世界』を保持している
『世界』(ザ・ワールド)
ランク:EX 種別:対界 レンジ:無限 最大捕捉:全宇宙
パワー(筋力)A+ スピード(敏捷)A 精密性B 射程距離:C(10メートル)
全宇宙の時間を5秒止める事ができ、その間はディエゴだけが動ける彼だけの時間となる。時が止まっているのに5秒とはおかしな表現だが、とにかく5秒である。
生前に乱発し、なお疲れも見せない所から宝具となっても魔力消費の燃費は良い。
ただし連発は出来ず、再使用には一呼吸置く必要がある
【weapon】
愛馬・シルバーバレット
【サーヴァントとしての願い】
優勝。雅の世界に行って世界を分けてもらう
【戦術・方針・運用法】
不意を突く、感染させることに長けているため、それを活かした戦術をとる。
ディエゴの恐竜突撃、恐竜化などで不意を突き騎乗からの猛スピードの奇襲で一気に荒らす。あわよくば感染させる。
マスターの雅の不死性と感染力を活かし、マスターに奇襲をかけるのが良し。
吸血鬼化、恐竜化のどちらであろうと成功すれば戦場を引っ掻き回すことができるので是非狙いたい。
反面対魔力と身体能力が高い相手には厳しい戦いを強いられるので、騎乗を使って出来るだけ逃げたい。
『騎兵は死して世界を制す』(ザ・ワールドイズマイン)は一度きりだが、ほぼ確実に不意を突けるため、ここぞという時の運用を心掛けたい
【マスター】
雅@彼岸島
【マスターとしての願い】
501ワクチンをはじめとするあらゆるワクチンに堪え得る体を得る
全世界の人間を吸血鬼化する
【weapon】
鉄扇
【能力・技能】
怪力
吸血鬼の中でも特に力強い。鉄扇の投擲で巨大な邪鬼を容易く仕留めることができる
吸血
血を吸う。吸えば体力を回復できる
再生能力
首をはねられようが何をされようが頭を完全に破壊されない限りは再生可能。
ただしある種のワクチンを使われると再生能力が著しく落ちる
脳波干渉(サイコジャック)
超音波を出し単純な生命体や、精神力の弱い人間なら意のままに操れる
感染
雅の血液を体内に取り込むと感染する。かすり傷や、眼球に一滴入っただけでも感染する。
ただしサーヴァントには神秘性の問題から感染しないし、今回は聖杯の影響からか二次感染はない
【人物背景】
彼岸島及び吸血鬼の首領
元々は土着の吸血鬼だったが、野心から旧日本軍に協力。
強力な吸血鬼アマルガムとなって旧日本軍及び島民を惨、吸血鬼化させる。
現在は本土に多数の吸血鬼ウイルスを持った蚊を放ち、本土の吸血鬼の王として君臨している。
【方針】
優勝を目指す。
基本的に人間とは手を組まないが、人外ならばその限りではない。
投下終了です
投下お疲れ様です、スレ立てもお疲れ様です。
私もライダー、投下します。
男が最初に感じたのは形容しがたい、どうしようもない怒りだった。
目覚めた時には既に聖杯戦争なる見たことも聞いたこともない「戦争」に参加させられていた。
怒りの一つに、気付かない間に巻き込まれていた己の不甲斐なさがある。
言葉にはしないが、ヒーローの卵でもあるこの男は「弱さ」を嫌う。
敬意の感情こそ存在するが、それは己が認めた対象のみに適応され、自分には例外である。
『何処ぞの誰かも解らない敵に、一方的な干渉を受け、挙句の果てに拉致されている自分が許せないのだ』
之ほどの屈辱が嘗て存在したか。
何せ男は何も知覚出来ていない。己の限界を超えた先から攻められて、気付かに負けている。
之ほど情けないと記憶したことはあるか。
自分が弱い時は認めたくないが、これまでに存在していた。
怒りに身を任せ、左足を力強く床へ振り下ろし、右腕を後方へ。
人気のない廃墟に虚しく響く鈍い音はまるで男を嘲笑うかのように。
この怒りは誰にぶつければい。
聖杯戦争の主催者或いは首謀者――男に喧嘩を売った存在か。
嘗て、自分に対し本気で勝負をしなかった――あの男か。
「――――――――――るせぇ」
嘗ては弱い存在だったが――いつの間にか大きくなり成長の限界を感じさせないあの木偶か。
「うるせええええええええええええええええええ!!」
突き出された右拳に宿るは、男の中で暴れ狂う怒り。
個性に変換されて具現化するはこの世総てを焦がす紅蓮の爆炎――爆豪勝己の怒り。
彼が生命を得た世界では所謂超能力――個性を持つ人間が存在している。
ある者は透明人間となり、ある者は雷を操り、ある者は万物を創造する。
その中で爆豪勝己が得た個性がこの爆破である。
拳から発せられる怒りの一撃はコンクリート製の柱を簡単に破壊してしまう。
之といったデメリットも存在しないが、お約束と言うべきか力の酷使は己の身体を蝕んでしまうようだ。
己の個性と性格が一致する彼は前衛向きで、他者を引っ張るような、誰にも頼らない戦闘スタイルである。
最も聖杯戦争に巻き込まれ、眼が覚めた直後に、怒りに身を任せ、八つ当たりで爆発を引き起こす男だ。
他者との協調性を感じれられる訳が無いだろう。
「あああああ! イライラさせんじゃねえ――あ?」
当然だと言うべきか、唯のコンクリート製柱が爆発に耐えられる訳が無い。
一つの柱が崩れれば、支えられていた物体が落下するのは必然であり、無数の瓦礫が爆豪に降り注ぐことになる。
「もう一発か……あぁ!?」
異常事態と言えば異常事態ではあるが、爆豪にとってこれ程の瓦礫は何ら問題無い。
呼吸をするかのように当たり前に対処出来るのだが――状況は一変する。
爆豪、之まで怒っているだけだが、此処は聖杯戦争の場である。
つまりマスターとして選定されており、当然のようにサーヴァントが存在するのだ。
降り注ぐ瓦礫は総て凍らせれている。仕掛け人は爆豪勝己のサーヴァントである。
霊体状態となり、マスターの近くに待機していた男のサーヴァントはやれやれと謂わんばかりの表情を浮かべている。
髪の色は蒼であり、見た目から感じる年齢は英霊とはかけ離れており、マスターである爆豪と同年代のようだ。
何も年齢や見た目だけで英霊の格が知れる訳ではないが、少なくとも威厳さは感じない。
興が冷めたのか、怒りが収まったのか、氷に冷やされたのか。
拳を降ろした爆豪は苛立ち混じりに生まれた氷塊を蹴り飛ばすも、当然のようにビクともしない。
寧ろ蹴った脚に痛みが走り、自分が悪いのだが、更に怒りが高まる。
「お前……今蹴ろうとして自分の脚痛めたな!? バーカ!!」
サーヴァント――ライダーは爆豪を指さし、腹を抱えながら馬鹿にするように笑う。
仮にも己のマスターであるのだが、敬意も何も見当たらない。
「令呪だ――テメェは此処で死」
「俺が悪かったから考え直そうぜマスター?」
ケロッと態度を変えたライダーは冷や汗を浮べながら爆豪と肩を組む。
それを嫌そうに払うマスター、どうやら令呪は使わないらしく安堵するライダーであった。
改めて辺りを見渡すと廃墟の空間は大分氷で上書きされており、寒い。
適当にコンクリートを爆破させ、温度の上昇を図る爆豪の隣でライダーが声を掛ける。
「で、願いは決まったか」
「テメェには絶対に教えねえからな脳内フキバタケ」
「こ、このガキ……」
聖杯戦争は大前提として優勝――最期まで生き残れば願いを叶える権利を得る。
故に願いの存在はモチベーションとなり、奇跡に縋る人間にとって大切な要素ではあるが、爆豪は口に出さない。
或いは決まっていないのだが、仮に決まっていてもライダーに教える気は無いらしい。
軽い煽りにキレそうになるライダーも、此処は大人である自分が引くべきだと我慢を選択する。
大人といっても年は離れていなく、英霊としての自覚故の話である。
「願いとか関係ねえし誰かに叶えてもらうモンでもねえよ。気に食わねえ馬鹿を倒すだけだ」
爆豪の選択は聖杯戦争の黒幕を倒すこと。
何故の行動かは知らないが、ヒーローを拉致する人間が聖者など考えたくもない。
集められた人間の中にはヴィランが潜んでいるかもしれない。片っ端から悪を倒す――単純な行動方針。
「……ま、まぁそうだよな……っし! なら気合い入れていくか!」
『誰かに叶えてもらうモンでもねえよ』マスターの言葉がライダーの身体に突き刺さる。
聖杯戦争とは違えど嘗て似たような宴に参加していた彼には響く言霊である。
しかし、マスターの選択はサーヴァントの選択であり、間違ったことを言っている訳でもない。
「あ? うるせえぞ……唯でさえ『氷』ってだけでムカつくのによォ」
「何か言ったか爆豪?」
「ンでもねえよッ!!」
個人的な問題ではるが、嘗て爆豪勝己は氷を操る個性を持った男に勝利を投げ捨てられ完全に敗北した。
それも全開を引き出せずに、勝手に引導を渡されてしまった。
その件からか、彼にとって氷とは忌々しいだけの存在であり、関係が無くても気に障ってしまう。
「こえーこえー。ま、俺達は運命共同体だからな。俺が負ければ爆豪も負けるし、爆豪が負ければ俺も負ける――俺は負けねえけどな!」
怒りに触れてもライダーはマスターを見捨てない。
何の縁か引き合わされた運命だ、ならば最期まで付き合ってやろうじゃないか。
ライダーはマスターのために戦う。
爆豪は答えを見付けられず、己の中に永遠と残る怒りと苛立ちを相手に聖杯戦争に望むことになる。
こうでもしている間に他の人間が成長しているかもしれない。
自分は置いて行かれるかもしれない。認めたくない。俺は、誰にも、負けねえ。
聖杯戦争を開き、関係のない人々を巻き込み、願いを餌に血を演出する悪を見逃す訳にはいかない。
ならば、こんな時、ヒーローは。
「俺が、ぶっ飛ばす」
それが多くの人間にとっての憧れ――ヒーローで在るが故に。
「ぶっ飛ばす? おいおい、英霊ってのは別格だから相手にするとマジで死ぬぞ?」
己の決意を言葉に出し、確固たる信念を改めて実感したところに襲い掛かる空気の読めないライダー。
読心の術が無いため、仕方がないのだが爆豪の怒りが更に高ぶってしまう。
これから共に戦う相棒なのだが……馬が合うとは到底思えないのが残念である。
しかし内に秘める熱き心は両者共に本物であり、口では何とでも言えるが他人のために戦える優しい心を持っている。
息が揃った時、彼らには世界の声が聞こえることになるだろう。
「うるせえぞ、チビ!」
「あ!? そんな変わらないだろ!!」
【マスター】
爆豪勝己@僕のヒーローアカデミア
【マスターとしての願い】
不明。
【weapon】
個性・ヒーローコスチューム
【能力・技能】
彼の個性は『爆破』。
掌の汗腺からニトロのような汗を出し爆発させることができる。爆発力は汗の量に比例する。
推進力としての利用も可能で、目立ったデメリットも無く強力ではあるが、当然負荷はある。
大前提としてサーヴァントには通用しない。
【人物背景】
学力・戦力共にトップクラスの不良。
金髪に赤目の三白眼。自尊心が強く攻撃的な性質で、他者から見下されることを極端に嫌う。
不良ではあるが、相手の力を認めることもあれば、それを乗り越えるために努力する一面もある。
なんだかんだ言ってヒーローを目指す男の子である。
【方針】
黒幕をぶっ飛ばす。
口では誰とも手を組まないようなことを言うだろうが実際は他の参加者とも協力するつもりはある。
弱者を守り悪を倒す――ヒーローのように。
【クラス】
ライダー
【真名】
碓氷ホロケウ@シャーマンキング
【ステータス】
筋力C 耐久D 敏捷B 魔力B+ 幸運B 宝具EX
【属性】
中立・善
【クラススキル】
対魔力:B
魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。
大魔術、儀礼呪法を以ってしても、傷つけることは難しい。
騎乗:C
大抵の乗り物なら人並み以上に乗りこなせる。
【保有スキル】
シャーマン:EX
霊能力を持ち、霊と交流する人間の総称。超・占事略決を体験してるライダーの実力は高い。
自身も英霊ではあるが、霊の力を借り最大限に引き出すことが出来る。
魔力憑依(オーバーソウル):A
魔力を己に纏わせることで能力を上昇させるシャーマンとしての力の一種。
纏うと一言に表しても、己に憑依させたり、武具に憑依させ新たな具現化をするなど多様である。
戦闘続行:B
瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。
神性:D
神と狼の間に生まれた一族の末裔であることから神性を得ている。
直感:B
【宝具】
『コロロ』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ: 最大捕捉:
フキの下に住む大地の精霊・コロポックル。いつもフキを持ち、非常にかわいらしい姿をしている。趣味はかくれんぼ。それと小さい。
その能力は空気中の水分を氷結させる。ライダーとは仲良しな彼の持霊である。
単体でも戦えるが真骨頂は武具にオーバーソウルさせた状態である。
氷を纏ったスノーボードやイクパスイを操るのがライダーの基本戦闘スタイルである。
コロロは精霊であるが、実はホロホロが小学生の頃好きだった同級生が本当の姿である。
『スピリット・オブ・レイン』
ランク:EX 種別:対界宝具 レンジ: 最大捕捉:
神に近いその存在を聖杯戦争で呼び出すことは無いだろう。
仮に呼び出す時、それは神々級の戦争が巻き起こる非常事態の来訪を意味する。
有する能力は水流の制御、浸透、溶解現象、冷却、熱交換、雨・津波・渦潮・洪水の発生など、ありとあらゆる水の力。
【weapon】
スノーボード、イクパスイ
【人物背景】
北海道から上京してきたアイヌのシャーマン。熱血的で感情的な性格。シャーマンとしての精神の強さは「アイヌの教えからなる弱肉強食と感謝の気持ち」
熱血な性格でムードメーカーでもあるお調子者。シャーマンファイト本戦序盤では実力不足が目立ったが多くの経験が彼を成長させた。
渾名はホロホロ。本名を嫌うのは嘗て友達を死なせてしまった弱い男の名前だから。
【サーヴァントとしての願い】
フキ畑を作る――ことは建前であり、マスターのために戦う。
投下終了です
投下します。
――深夜。ここは、電脳世界に作られたごくありふれた高校の一つ――その校庭のグラウンドを一人の男がうろついていた。
年は20代半ば程であろうか、辺りの暗さでよくわからないが学生と言うにはそろそろ無理のある顔立ちである。
かと言って、その男はどうやらその学校の教師ではない様子。
男は丹念に校舎の位置や部室棟の場所、監視カメラの確認などを行っていた。
こんな夜更けに管理業者が点検をしているはずもなく、傍から見れば十分不審な行動である。
――そんな男の背後に、突然一つの人影が現れた。
「おい、お前。こんな時間に学校でなにをやっているんだ?
ちょっとこっち向いてみてくれないか、私に顔が見えるようにな」
「……なにかな?」
男はまさかこんな時間に自分以外の人間がいるとは思わなかったのだろう。
男が冷静を保ちつつ振り向くと、そこに居たのは美しい女性――否、年は少女と言った方が適切であろうか――が腕を組んで立っていた。
大きな胸部が強調されるTシャツにジーンスというラフな格好をした少女だが、なぜか夜の校庭というダークな雰囲気が妙に似合っていた。
愉快そうに薄く微笑む少女は、振り向いた男の顔をまじまじと見つめる。
やがて少女は得心が行った様子で軽く頷くと、男に向かって言葉を紡ぎだした。
「なぁ、お前もしかして最近ここらで生徒を襲っている2人組の片割れじゃあないのか?」
少女が言っているのは近頃、この地域の周辺にあるいくつかの高校で何件か起こっている通り魔事件のことだ。
放課後の辺りが暗くなる時間帯に、部活で遅くまで残った生徒が何者かに襲われ死亡するという事件。
一度に複数人襲われるが、同じ高校に2度現れたことは無いという。
この少女――川神百代は、今現在2人が対峙している高校の三年生に在籍している歴とした生徒だ。
幸い未だにこの高校自体に被害者は出ていないが、これまでの傾向から近いうちにターゲットになることは想像に難くない。
百代は自分の高校に被害が出ないよう探っていたのだ。
――そんな時、こうして不審人物が居たのだから疑いたくもなる。
半ば確信めいた百代の問いに、男は急に態度を変えて随分とゆったりとした動作で受け応える。
「……何のことだかわからないな。……僕はここの用務員でね、忘れ物を探しに来たんだ」
「おいおい、流石に嘘が下手すぎるぞ。私だって通っている学校の用務員くらい覚えているさ。お前みたいな奴は見たことが無い。
それに、この事件は警察沙汰になってマスコミも騒いでるんだ、わからないなんてありえないだろ」
ハッタリだった。百代はいちいち用務員の顔なんて覚えていないし、そんな存在がいたのかすら記憶として怪しいものだった。
その上、現状では警察は動いているが、まだ報道はされていない。
百代は十中八九犯人であるという確信があったため、半ば強引に証拠を掴む気でいた。
しかし、そのブラフは案外有効だったのか、男は諦めたように大げさに両手を挙げた。
「やれやれ、降参だ。確かに僕は用務員ではないし、事件のこともよぉーく知ってる」
男の今までのゆったりとした動作が急に普通になり、途端に素直になった。
男の意図が読めず、百代は訝しんだ表情で問う。
「……やけにあっさり認めるんだな。さっきまでの時間稼ぎはもういいのか?」
「何だバレていたのか、そう―――“もう”いいんだ」
――男がそういった瞬間、百代の視界に閃光が走った。
「ぐうっ!」
百代は思わず自分に向かってきた飛来物をガードしようと、左手を翳してしまう。
飛来物が気で堅めた掌を少し貫通すると、百代はガードを諦め右手でそれを横側から殴りつけた。
しかし、飛来物は百代の拳を受けてもなお微動だにせず、そのまま元の軌道を進み続ける。
これ以上の物理的干渉は無意味だと悟った百代は、仕方なしに回避行動に移った――この間0.01秒である。
『超加速』を使い飛来物よりも速く動くことで掌の穴をこれ以上広げないよう後退し、その後小さく右に飛ぶ。
先程まで自分がいた場所に目をやると、そこには深々と一本の槍が突き刺さっていた。
「おーっと、いきなり激しすぎじゃないのか?――まぁこれで犯人は確定した訳だが……
しかも弾けない槍ってなんだ、凄いな。私じゃなかったら死んでたぞ」
――咄嗟のことで思わず“全力で”殴ったにも関わらず、槍は1ミリたりとも動かなかった。
そんな経験は百代にとって初めてのことであり、百代は驚愕と同時に興奮が湧き上がってくるのを感じた。
百代は既に『瞬間回復』によって塞がった手の感触をぐっぱぐっぱと開閉しながら確かめ、納得したのか男に向き直り臨戦態勢に入った。
しかし、そんな百代とは裏腹に男は驚愕の表情を浮かべて後ずさりし始める。
「……馬鹿な……貴様、まさか“ルーラー”か? まだ“魂喰い”も数人だってのに……」
「ルーラー? 何だそれ、聞いたこと無いぞ。外人?歌?」
「まだしらばっくれるか……おい!ランサー!」
突如男から意味不明なことを問われるが、当然百代は知るよしも無い。
男の発言に百代が戸惑っていると、男が虚空に向かって何か呼びかけた。
――すると、その瞬間、男の背後からフッと一人の青年が現れる。
流石の百代もこれには驚いた。
「んん!? おい、お前今どうやって現れたんだ?」
「……応える必要は無い、貴様はこの後俺が始末するのだからな」
霊体化によって男の下に戻ってきたランサーは、百代に対してそう言い放った。
実際、只の人間だと油断していたことは自覚しているが、殺すつもりで投げた槍を難なくいなされれば憤りもするだろう。
対して百代は相手が幽霊ではないかという不安にかられていた。幽霊は百代の唯一と言っていい弱点なのだ。
ランサーは百代に宣戦布告を終えると、男に向き直り報告を始める。
「マスター、この女はサーヴァントではなく人間のようです、その上周囲にサーヴァントの気配もありません。
覚醒前のマスター候補といったところでしょう」
「まぁそんなところだな……奴は十中八九魔術師だ、サーヴァントが現れる前にさっさと潰せ」
「御意」
男がそう言ってランサーに命令を下すと、ランサーは弾かれた矢のように一直線に百代に向かって行った。
対する百代は構えたままその場を動かず、ランサーを――正しくはランサーの持っている槍だが――じっと見つめている。
「なぁ、さっきの槍を投げたのってお前か?」
「――そうだ」
緊張感のない百代の問いに、ランサーは短く答える。
やがて槍と百代が肉薄した時、百代はするりと見を捻り――そのままランサーに回し蹴りを打ち込んだ。
「そうか、まぁ触れるなら問題ないな」
――しかし、回し蹴りがランサーに効いた様子はない。
トップスピードで突進していたランサーは、人間であれば確実に身体が壊れるであろう無理やりな軌道修正を行う。
そんなランサーの攻撃が届く前に、百代はランサーの背を蹴って大きく間合いを取った。
「さっきの槍もそうだが、お前、攻撃効いて無いだろ?」
「……まぁいいだろう、冥土の土産だ、教えてやる。
貴様の攻撃はこれまでも、そしてこれからも俺に届くことはない――神秘が必要なのだ。
貴様にも、そして科学が蔓延るこの街にも、無縁な代物だ」
「神秘?……なんだオカルトか? そんなもんじじいの毘沙門天くらいしか――じじい?」
唐突に百代の頭に浮かんだのは巨大な仏像、そして口からでた“じじい”という言葉。
思い出そうとしてもうまくいかない、なんとも言えない不快感が百代を支配していた。
「んー、なんだこれ?もやもやするぞ……まぁいい!お前を殴ればスッキリするだろ」
「これだけ説明しでもまだわからんとは、馬鹿め――さっさと死ね」
ランサーの言葉を皮切りに、再び2人は闘争を始める。
ランサーが突き、百代が避け、百代が殴り、ランサーが反撃する。
一度の打ち合いが0.1秒程の高速な攻防が、その後五分ほども続いた。
――そして、あらかた奥義も出し尽くして瞬間回復はあれど衣服はもうボロボロである百代に対し、ランサーは未だ無傷である。
しかし、百代は引くわけにも負けるわけにもいかなかった。
すでにこの5分の打ち合いで、百代は完全に記憶を取り戻している。
(じじいの居ないこの世界で、存分に暴れるのも楽しいかも知れないが――やっぱり一番居心地がいいのは“あの場所だ”)
百代の脳裏に浮かぶのは、みんなが集まる秘密基地とリュウゼツラン。
勿論、風間ファミリーだけではなく川神院や学校の友人達も大切な存在だ。
「もう十分だろう、疾く死ね」
「まぁそう焦るな……お前との殴り合いで段々と記憶もクリアになってきたところなんだ。
こんな攻略法を思いつくくらいにはなっ!――」
そう言って百代が出したのは『川神流・星砕き』――相手に気で練ったビームのようなものを飛ばす技である。
すでにランサーはその技を幾度と無く見ており、その表情には呆れが浮かんでいる。
ランサーはもはや避ける気にすらならなかった。
「その攻撃はもう効かないとわかっているだろう。 最後の悪あがきほど見苦しい物はないぞ」
「さて、それはどうかな」
視界からビームが切れると、ランサーの周辺視野は遠くに微かな光の尾を捕らえた。
「まさか、2本!?――ッマスター!!」
自らのマスターに向かって行く光になんとか追いつこうとするも、流石の英霊も光には勝てない。
ランサーは必死に念話で令呪の使用を呼びかけるが、時は既に遅かった。
男はなにか起きたのか気づかぬ間に光に打たれ、気を失った。
「命までは取らんさ、もともと通り魔を捕まえに来ただけだからな。いま警察に―――」
百代がそう言って携帯(なぜか無事だった)を取り出した瞬間――ランサーが目の前で真っ二つに切り裂かれた。
「やあやあ!あなたの完璧で天才なサーヴァント、束さんの参上だよー!
私のことはインベンターって呼んでね! 」
真っ二つになったランサーの後ろから出てきたのは、奇妙なウサミミ姿の女性。
甲高く可愛い声の本人は至って呑気に自己紹介をしているが、光景は酷く恐ろしい物である。
「……お前、さっきからずっと影で見てただろ、白々しい奴だ。
今更出てきて、勝手に殺して――どういうつもりだ?」
「あれ?気づいてた?霊体化してたのにわかっちゃうんだ〜、凄いね。
まぁ実はマスターがくだらない奴だったら見殺しにして、もっといいマスター探そうと思ってたんだよね〜。
でも、生身で私やちーちゃんよりも強い人間って初めて見たし、“気”だっけ?
なんか君は面白そうだから、しばらくはマスターにしてあげようと思ってさ!
あと、サーヴァントはどうせ放っといてもろくなこと無いし、面倒くさいから殺っちゃった♪」
若干怒気をはらんだ百代の問いにも、インベンターは飄々とした態度を崩さない。
むしろ堂々と『そのうち裏切るかも知れない』と仄めかしているのだから手に負えない。
実際、マスターを殺さないこの状況で、ランサーを生かしておいてもいいことは無いだろう。
そんな大っぴらな態度のインベンターに、百代は少し興味を持った。
――無論、インベンターの容姿が非常に整っていたのも大きいかもしれないが。
「ふふ、まぁいいだろう……お前も私を失望させるなよ?」
「この天才の私がサーヴァントなんだから、そんなことありえないけどね!
あっ、もしマスターやめる時は解剖させてね!すごく興味あるから」
「いや、普通に嫌だろ」
いつの間にかインベンターが呼んでいたという救急車やパトカーが来る前に、2人はそそくさとその場を去る。
こうして、2人の聖杯戦争は幕を開けた。
その関係が最後まで続くのか、すぐに終わることになるのか――今はまだわからない。
【クラス】 インベンター
【真名】篠ノ之束@IS 〈インフィニット・ストラトス〉
【パラメーター】
筋力C+ 耐久C 敏捷B+ 魔力E 幸運B 宝具A+
【属性】混沌・中庸
【クラススキル】
道具作成(機):A
機械に属する道具を作成可能。
「発明家」の場合「魔術師」のような魔力は帯びないが、高度で精巧な機能の道具を作ることができる。
機械操作:A
機械を使いこなす能力。「機械」という概念に対して発揮されるスキルであるため、兵器や乗り物も操作可能。
また、英霊の生前には存在しなかった未知の機械すらも直感によって自在に操れる。
【保有スキル】
所在隠匿:B
自らとそのマスターの棲家を悟られなくするスキル。
Bクラスでは近隣の住民に何者が住んでいるのか考える気をなくさせ、尾行者においても実際の住居を違和感なく視界から外させる。
ハッキング:A++
コンピュータなどの情報機器を操作し、ネットワーク上の情報や個人のPCなどを操作できる。
A++では国の最重要機密情報の入手や各国軍のミサイル発射装置の操作なども可能である。
単独行動:C
マスター不在・魔力供給なしでも長時間現界していられる能力。マスターを失っても、1日は限界可能。
星の開拓者:EX
人類史のターニングポイントになった英雄に与えられる特殊スキル。
あらゆる難航・難行が、「不可能なまま」「実現可能な出来事」になる。
インベンターの場合、時代の記述力では一歩足りない難行を一握りの天才だけで成し遂げた力。
【宝具】
『無人の機兵隊(ゴーレム)』
ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:1〜 最大補足:100
篠ノ之束が世界に公表した467個以外である、未登録のコアを使用して作られた高性能AIの無人IS。
『ゴーレムⅠ』と『ゴーレムⅢ』の2体があり、見た目や機能が異なっている。
Ⅰがビーム等を使用する2mを越える巨体の遠距離型の『鉄の巨人』であるのに対し、Ⅲはシールドやブレード等の近接武装とジャミング兵器を兼ね備えたスマートな『鋼の乙女』となっている。しかし、Ⅰは見た目とは裏腹に高起動で非常に素早く、Ⅲも超高密度圧縮熱線をそなえていたりとどちらも一筋縄ではいかない機体である。
機械でありながらもインベンターから弱い単独行動スキルが付加されており、長距離の移動やインベンターが消滅しても一定時間動くことができる。
『機人達の母(インフィニット・ストラトス)』
ランク:C〜A+ 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1
世界を変えた兵器の全ては彼女の手によって作られたことに由来する。
彼女の作成した467個のコア、もしくはそれに依って作られたIS、その武装の全てを自在に取り出し使用することができる。
ISの兵装は武器として使えるがIS自体は無人で動くことはなく、動かすためには必ず“女性”の搭乗者が必要である。
この中には篠ノ之束専用の移動型ラボ『吾輩は猫である〈名前はまだ無い〉』も含まれている。
【weapon】
拡張機能:
ISに使われている技術を応用して兵器などを何処からとも無く出し入れできる。
生前にも一瞬でミサイルランチャーを出したりなどやりたい放題していた。
【人物背景】
インフィニット・ストラトスを開発した天才科学者。
人類が束になっても敵わない程の超天才だが、自らの発明物であるISを生身で下す程の戦闘力も持ち合わせている。
ウサミミなど奇抜な服装をしているが、性格はそれに劣らず多くの奇抜な行動を起こす。
身内や織斑姉弟には気さくに話すが、それ以外にはとことん冷たく当たる。
ISの開発者として政府の監視下に置かれていたが、467個のISコアを開発し終えると同時にその姿をくらませる。
以降は世界各地を転々としてその行方は誰にも掴めなかったが、神出鬼没に織斑姉弟の前に姿を表わしている。
【サーヴァントとしての願い】
世界の改変。
【マスター】川神百代@真剣で私に恋しなさい!
【マスターとしての願い】
風間ファミリーやみんなのいる川神市に帰る。
【weapon】 身体
【能力・技能】
川神流:祖父「川神鉄心」によって創られた地上最強の流派。奥義ともなれば個人によって異なるが、流派固有の技は全て修得している。
気功:川神百代の持つ気の量は人間のそれを遥かに凌駕している。百代の奥義「瞬間回復」や「かわかみ波」は主にその気の量に物を言わせた力技であり、他の者には真似できない芸当である。
【人物背景】
川神学園の3-Fに在籍している川神院の跡取り娘。
百代は「武神」と呼ばれ、世界中に「MOMOYO」として知られており最強の名を欲しいままにしている。
幼馴染みである風間翔一、直江大和、島津岳人、師岡卓也、椎名京、川神一子に加えてクッキー、黛由紀江、クリスティアーネ・フリードリヒからなる風間軍団に所属している。
どんな敵が来ようとも瞬時に倒してしまう自分の強さから、対戦相手に満足できず欲求不満に陥っている。
強さだけでなく容姿も学園トップクラスの美人である。しかし、強すぎるために男たちから畏怖されており、百代の恋愛嗜好は今のところ女子に向けられている。
祖父である川神鉄心や風間ファミリーによって抑制されているが、いつも闘争を求める内なる獣がいることを釈迦堂に見ぬかれている。
【方針】
いつも通り生活し、他の参加者の出方(インベンターの出方も)を見る。
投下終了です。
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Maxwell's equations 第二巡
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