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四天王「くたばれクソ上司」
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副官「ここが魔王城か」
副官(これまでは辺境勤務で大した実績も残せなかったけど、今日からは魔王城勤務!)
副官(それも四天王の副官を務める事になるんだ!)
副官「ふふ、俺も四天王入りができるかもしれないな」
コンコン
「入れ」
副官「失礼します。本日より魔王城勤務を命じられました副官であります!」
四天王「お前がそうか。ではこれを持て」
副官「は? 何でありますか、この大槌は?」
四天王「これで会議室の壁を破壊してこい」
副官「はい?」
"
"
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四天王「会議室の両隣は現在倉庫になってる。その壁を破壊して会議室を今の3倍の広さにしてこい」
副官「は、いえ、あの、申し訳ありません! 質問をよろしいでしょうか?」
四天王「なんだ? 手短にしろ」
副官「わ、私は四天王付きの副官を命じられております! このような仕事は……!」
四天王「私が四天王だ」
副官「はい?」
四天王「何だ?」
副官「あ、いえ、ですが私は四天王のどなたの副官になるかまだ決まって……」
四天王「だから、私が四天王なのだ。他の四天王などいない」
副官「はいぃ!?」
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四天王「お前は着任初日だ、気になる事も多いだろう。では順を追って話してやろう」
四天王「以前の四天王は私一人ではなかったのだ」
副官「それは、ええ、四人いなければ四天王ではないですからね」
四天王「いや、三人だったのだ」
副官「え、はいぃ!?」
四天王「以前この城には三人の有力な幹部がいたのだ。その頃は多くの者達が『三武将』の通り名で彼らを呼んでいた」
四天王「ところが『三武将よりも四天王の方が縁起がいい。その内もう一人くらい有力な幹部が増えるに違いない』と」
四天王「そう言い張ったバカがいたのだ」
副官「は、はあ」
四天王「そして今や四天王は私一人だ」 ミシッ
副官(ならもう無理に四天王などと言わなければいいのでは、なんて言える空気ではない……)
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副官「で、では他の御二人は今何を?」
四天王「三人だ」
副官「え?」
四天王「私は当時の四天王ではない。なので三人というのが正しい」
四天王「だが三人の後に二人、次に十人、そして私だ」
副官「じゅ、十人ですか? それの方達もやはり……」
四天王「四天王だ。十人でも四天王だ。『四天王は縁起がいいから』だそうだ」 ミシミシッ
副官「あの、さきほどからその、縁起がいいと言っているのは……」
四天王「魔王様だ」 ミシミシミシッ
副官「そ、そうなのですか。で、では何か深いお考えがあっての」
四天王「……あの馬鹿に深い考えなどあるわけがないだろうが……」 ボソボソッ
副官「え?」
四天王「もう話は終わりだ、さっさと会議室の壁を破壊してこい。今すぐにだ!」
副官「は、はいぃぃ!」
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副官「はあ……」
副官(壁を破壊してこい、なんて言われても)
副官「こんなの副官の仕事じゃないだろ……」
副官(もういいや、さっさと終わらせよう)
ドゴンッ ドゴンッ ガシャッ ドゴンッ ドゴンッ ガシャッ
副官「ふう」
副官「後はこの瓦礫を適当な所に捨てて来ればいいか。よいしょ」 スタスタ
「おいそこのお前」
副官「え? はい、私ですか?」
「この魔王の城の中でそのような美しさの欠片もない物を持って歩くな」
副官「は、はあ」
「ふん。以後気を付けろよ? 美しさは大事だからな、美しい物は心を踊らせる。ふふふ」 スタスタ
副官(なんだか偉そうな奴だったな)
副官(というか、城の中を通らずに瓦礫をどう運べばいいのだろう。まあいいか)
"
"
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副官「四天王様、部屋の壁を壊し終わりました」
四天王「よくやった。……すまなかったな、着任早々妙な仕事を頼んでしまって」
副官「い、いえ! とんでもありません!」
四天王「もうすぐ始まる会議の資料を整理していたところに、お前に頼んだ厄介事を押し付けられてな」
四天王「私もあまり余裕がなかったのだ。許してくれ」
副官「は! 感激の極みです!」
四天王「そうだな、まだ会議には時間がある。資料の整理もひと段落したところだ、ささやかなものだが祝いをするか」
副官「祝い、そ、そのような」
四天王「よいよい。食事のついでだ、私も朝から何も食べていなかったのだ」
副官「朝から? もう昼過ぎですが」
四天王「はは、最近どうも食事をする気がしなくてな」
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四天王「すまぬが飯を頼めるか? そうだな、竜肉を使った物を頼む」
料理人「あいよ!」
副官「りゅ、竜肉ですか!? そ、そのような高級品いただけません!」
四天王「はは、いいのだ。先日魔王軍に反旗を翻した竜を討伐してな、その肉を料理人に融通したのだ」
四天王「つまり俺が拾った肉だ、気にせず食べろ」
副官「は、ありがたくいただきます!」
副官(竜の肉か。ふふ、まさかそんな高級品をいきなり口にする事ができるなんてな)
副官(ああ! 期待で涎が止まらない!)
四天王「ところでお前、出身は何処だ?」
副官「は! 東の山岳地帯の方になります!」
四天王「あの辺りか。ではこちらの気候は暑苦しく感じるのではないか?」
副官「ええ、実は少々暑さが――」 四天王「では冷風のまじないを――」 副官「なるほど名案で――」
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料理人「はいよ、竜肉の厚焼きステーキ特製ソース和えだよ!」 ドンッ
四天王「早かったな。つい話が弾んでしまった」
副官「しかし四天王様も槍を得意としていらっしゃるとは」
四天王「最近は前線に出る事もあまりない、振るう機会のない槍というのも物悲しいものだ」
四天王「と、話はこれくらいにして。会議前に酒とはいかぬが、まずはお前の着任を祝って乾杯だ」
副官「乾杯!」 ゴクリ
副官(さあて、それじゃあこの肉汁たっぷりの竜肉ステーキをがぶりと……)
「んん? 何をしているのだ、お前達は」
副官「え?」
副官(あ、さっきの偉そうな奴)
四天王「は。魔王様、私達は食事をしております」
副官(え、これが魔王様!?)
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魔王「そのようなこと見ればわかる。俺を馬鹿にしているのか?」
四天王「いえ、そのようなことは」
魔王「では答えよ。なぜこのような時間に食事をしているのだ」
魔王「他の者を見てみよ、皆働いているではないか」
魔王「よりにもよってお前は魔王軍の幹部、四天王なのだぞ」
魔王「「うむ、四天王……やはり何度言っても良いものだ」
魔王「その四天王であるお前が率先して動かずしてどうするのだ?」
魔王「大体会議の準備はどうした?」
四天王「そちらの方は、はっ、手抜かりなく」
魔王「ではなぜここで怠けているのだ?」
副官「あ、あのー」
魔王「? 誰だお前は?」
副官「は! 私は本日着任いたしました副官と申します!」
魔王「知らんな」
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副官「は! 私如きを魔王様が知らぬのは当然の事と存じます!」
魔王「で?」
副官「は! この食事は四天王様が開いてくださった私の着任祝いなのであります!」
副官「会議の始まるまでの短い時間にささやかな祝いをしようと四天王様が催してくださったものであり」
副官「決して四天王様は怠けていたわけではありません! どうかご容赦を!」
副官(こんな些細な誤解で四天王様が叱責を受けるのはあまりに忍びないしな)
魔王「ちっ」 イライラ
副官(あれ?)
魔王「つまりお前は俺が間違っていると言いたいのだな」 イライラ
副官「え? いえ、とんでもございません! そのような事は決して!」
魔王「言ったではないか! 今更誤魔化そうと言うのか!」 イライラ
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副官「とんでもございません! 魔王様に対して誤魔化してなど!」
魔王「それが誤魔化していると……!」
四天王「魔王様、内々にお話したき事が……」
魔王「なんだ、邪魔をするつもりか!!」
四天王「いえ。ただ、以前魔王様が御所望されていた王国所蔵の絵画が手に入りそうなのです」
魔王「なんだと!? なぜそれを早く言わんのだ!! 詳しい話を聞かせろ!!」
四天王「それには少々ここは騒がしいかと。どこか話のしやすい別室などで……」
魔王「さっさと行くぞ!」 スタスタ
副官「あ、あの」
四天王「あの程度日常茶飯事だ、すぐに忘れる。大人しくしておけ」 スタスタ
副官「は、はい」
副官(魔王城勤務になり未来は明るいはずなのに、なぜだろう)
副官(なんだか不吉な気配が漂っている気がする)
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これは間違いなくクソ上司
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弊社かな?
"
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