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おもらし千夜一夜4

427追憶4「雛倉 綾菜」と手紙。10:2016/09/20(火) 00:56:52
――
 ――
  ――

……。

「うぅ……」

凄く嫌な思い出まで蘇ってきてしまった。
今思えば、前日に限界まで我慢していたのもあの日の失敗の原因のひとつだったのだと思う。
松葉杖もなんで大したことないのに2本使っていたのか……今考えれば後悔ばかり。

「はぁ……」

あの後着替えを病室からもって来て貰って事なきを得たが、
着替えて個室を出る時にはもう紫萌ちゃんの姿は無かった。

そして――その日以降会うことは叶わなかった。
ただ、翌日の朝にこの手紙だけ丸椅子の上に置かれていた。

当時の私は安心したような、でもそれ以上にもやもやした思いが残り気持ちが悪かった。
私の恥ずかしい失敗を見て愛想を尽かされたんだって思った。
それでも、私はまた会いたいと思って看護婦さんに紫萌ちゃんの病室を尋ねた。
だけど、不思議なことに彼女はどの病室にも居なかった。
退院したわけではなく、そんな少女が入院していた記録自体が存在していなかった。

差出人の名前は字廻 紫萌(あざまわり しも)。
その珍しい苗字も看護婦さんに聞いてみたがそれも病院内に該当する人は居なかった。
つまり、もとより彼女は入院などしていなかった、もしくはこの名前は偽名……。
紫萌ちゃんがなぜ私に会いに来てくれたのか、なぜ偽名を使ったのか……。
彼女はこの手紙だけを残して姿を消した。

手紙の内容は失敗したことを気にしないと言う事と、もう私と会えないと言う事。
会えない理由は確り書かれてはいなかったが、近いうちにそれを打ち明けるつもりであったらしかった。
私があんな失敗をしたことで、私が顔を会わせ辛いと思い予定を前倒しにして手紙で伝えたということらしい。
当時の私は、その言葉が信じられずただ幻滅されたのだと思っていたが、今読み返すとそれは私の被害妄想なのだと思える。
その手紙には何度も消しゴムで消した跡があって……何度も書き直し想いを込めて書いてくれていたから。

「……またいつか会えないかな……」

確りお礼を言えなかった。
そして……また彼女と会話を楽しみたい。

私は彼女を顔を思い出そうとする。
だけど――

「……なんで、思いだせないかな……」

いつもそう。
なぜだか紫萌ちゃんの顔を思い出せない。
そんなことじゃ例え出会えてもそれを認識できないのに。

「はぁ……」

私は大きく嘆息して手紙を持った手をベッドにパタンと落とした。

おわり


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