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おもらし千夜一夜4
243
:
名無しさんのおもらし
:2015/02/17(火) 12:47:58
急に山に目覚めたお嬢は有り余るほどの金にものを言わせ、上等な登山用品一式をためらい無しに揃えた。
今日はそのお披露目の日。お嬢の山ガールファッションにも気合いが入る。両親譲りの整った顔立ちとスタイルに、付き添い一同はしばし見惚れた。
お嬢の山行の付き添いは、屋敷の若い衆全員だ。南アルプス阿利馬山から西尾根を縦走、珠敷峰の頂きを踏む。初心者にしてはハードなルートだ。お嬢は弱音も吐かず、我々に配慮する余裕まで見せながら一歩ずつじわりじわりと登る。
珠敷峰の頂上まであとちょっとという所で、我々は梯場に到り着いた。ラスト前の最大の難関だ。
「李世が先に昇るわ」
勇ましい勢いで梯を昇るお嬢。我々一同は直下の足場でお嬢の姿を見守る。
しかし、ちょうどお嬢の腰が我々の頭上の高さまで来た時、お嬢の手は止まった。
「お嬢、いかがなさいましたか!?」
捻挫をした? 体調が悪いのか? 我々は急いで救急の準備をテキパキと進める。
「もう昇れないよぉ……」
「何か、支障が!?」
「そうじゃないの……」
お嬢の弱々しい涙声を聞いて、我々は事情を察する。お嬢は「手を滑らせたが最後、3000m下の麓まで落ちちゃうのではないか?」と述べる。もちろんそれは杞憂だ。梯から手を離しても、我々の立つ足場より下に落ちる事はない。
お嬢の小心と泣き虫は18歳を過ぎても未だ治っていなかった。
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